運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1981-03-19 第94回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十九日(木曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員の異動  三月十八日     辞任         補欠選任      馬場  富君     桑名 義治君  三月十九日     辞任         補欠選任      藏内 修治君     大木  浩君      玉置 和郎君     仲川 幸男君      増岡 康治君     内藤  健君      松尾 官平君     長谷川 信君      田代富士男君     中尾 辰義君      小笠原貞子君     立木  洋君      伊藤 郁男君     栗林 卓司君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木村 睦男君     理 事                 亀井 久興君                 古賀雷四郎君                 平井 卓志君                 宮田  輝君                 粕谷 照美君                 和田 静夫君                 渋谷 邦彦君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君     委 員                 板垣  正君                 岩上 二郎君                 大木  浩君                 熊谷  弘君                 源田  実君                 下条進一郎君                 鈴木 省吾君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 竹内  潔君                 谷川 寛三君                 名尾 良孝君                 内藤  健君                 仲川 幸男君                 長谷川 信君                 秦野  章君                 林  寛子君                 堀江 正夫君                 八木 一郎君                 山崎 竜男君                 大森  昭君                 志苫  裕君                 竹田 四郎君                 寺田 熊雄君                 本岡 昭次君                 安恒 良一君                 大川 清幸君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君                 中野  明君                 立木  洋君                 栗林 卓司君                 前島英三郎君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君        文 部 大 臣  田中 龍夫君        厚 生 大 臣  園田  直君        農林水産大臣   亀岡 高夫君        通商産業大臣   田中 六助君        運 輸 大 臣  塩川正十郎君        労 働 大 臣  藤尾 正行君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    安孫子藤吉君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       中山 太郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       中曽根康弘君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        国防会議事務局        長        伊藤 圭一君        警察庁長官官房        長        金澤 昭雄君        行政管理庁長官        官房審議官    林  伸樹君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局監察審議        官        佐々木晴夫君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁人事教育        局長       佐々 淳行君        防衛庁衛生局長  本田  正君        防衛庁経理局長  吉野  実君        経済企画庁調整        局長       井川  博君        外務大臣官房審        議官       関  栄次君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        大蔵省主計局長  松下 康雄君        大蔵省国際金融        局長       加藤 隆司君        文部大臣官房長  鈴木  勲君        文部省初等中等        教育局長     三角 哲生君        文部省大学局長  宮地 貫一君        厚生大臣官房長  吉村  仁君        厚生大臣官房会        計課長      小林 功典君        厚生省公衆衛生        局長       大谷 藤郎君        厚生省環境衛生        局長       榊  孝悌君        厚生省社会局長  山下 眞臣君        厚生省児童家庭        局長       金田 一郎君        農林水産大臣官        房長       渡邊 五郎君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省農蚕        園芸局長     二瓶  博君        農林水産技術会        議事務局長    川嶋 良一君        食糧庁長官    松本 作衞君        通商産業省通商        政策局長     藤原 一郎君        通商産業省貿易        局長       古田 徳昌君        通商産業省機械        情報産業局長   栗原 昭平君        資源エネルギー        庁長官      森山 信吾君        資源エネルギー        庁石炭部長    福川 伸次君        運輸省鉄道監督        局長       杉浦 喬也君        労働大臣官房長  谷口 隆志君        労働省婦人少年        局長       高橋 久子君        労働省職業安定        局長       関  英夫君        自治大臣官房審        議官       大嶋  孝君        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君        自治省行政局長  砂子田 隆君        自治省行政局公        務員部長     宮尾  盤君        自治省財政局長  土屋 佳照君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君    参考人        東京都立大学助        教授       山住 正己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十六年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十六年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十六年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
  3. 木村睦男

    委員長木村睦男君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十六年度総予算案審査のため、本日の委員会東京都立大学助教授山住正巳君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 木村睦男

    委員長木村睦男君) これより粕谷照美君の一般質疑を行います。粕谷君。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 まず、厚生大臣にお伺いをいたします。  ベビーホテル問題に関連をいたしまして、厚生大臣が、また厚生省が、迅速な対応をとられている、こういうことがよくわかりました。しかし、各論となりますと、大変な人員増、大変なお金、これが必要になるということはもう明々白々の事実であります。そこで、いまある施設を利用する、金が余りかからないで子供たちが安心して母親に、両親に育ててもらうことができる、こういうことについて当面考えなければならないと思うのです。それできょうは、乳児院についての基本的な大胆のお考え伺いまして、その乳児院がどのようにあるべきかということについては、厚生省大臣のお考えをきちんとお話しをいただいてあるものと思いますので、そちらで御返事をいただくということで、大臣のお考えについての御所見をお願いします。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおりに、ベビーホテルのいろんな惨事、悲惨な状態を考えますと、将来の問題もありますが、当面どのような臨時措置をとるか、こう考えていきますと、おっしゃいましたとおりに、保育所もそうでありますが、特に乳児院等は、いままでの概念から外れて、応急にここでなるべく受け入れるような方法を講ずることが一番大事だと考えております。  そこで、先生御承知のとおりに、乳児院で預かるのには一般的な特定の基準というのはないわけでありますけれども、慣例というか、何というか、なかなかむずかしい条件がいっぱいありまして、しかも手続等も、最後には民生委員その他が相談をして親の状況を見たりして決める、こういうことではとうてい間に合いませんので、したがいまして、とりあえずは応急措置というか、融通をきかして、この乳児院でなるべく受け入れるようにやれと、こういうふうに事務当局に指示しているところでございます。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、その事務当局とあとは詰めさせていただくことで、厚生大臣、どうもありがとうございました。  次に、総理府総務長官にお伺いをいたします。  差別撤廃条約批准に向けまして、ずいぶん長いこと議論がなされてまいりました。そういう中で私どもが得ている感触は、法務省の国籍法改正については非常に前進した回答が出ている、こういう感触を得ております、ところが、労働省関係になりますと、雇用における平等法は、きのうの労働大臣答弁でも、平等法が必要かどうか、必要とするならば、というような、何か後退した感じがないわけでもありません。非常に重苦しいおもしがついているような気がいたします。また文部省の、家庭科女子のみ必修の問題につきましても、文部大臣は、これからよその国のことなども調べてと、こういうことで、本当のスズメの涙はどの前進はありましたけれども。まだまだ私ども考えているような、差別撤廃条約のあの中に盛り込まれているような精神がきちんと生きているというようには考えられません。  それで、幾ら横並びと申しましても、総理府総務長官は副本部長であります、したがいまして、この撤廃条約そのもの批准ができるように全力を挙げて御努力をいただけるのかどうか、改めて確認をしたいと思います。
  10. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) お答えをいたします。  差別撤廃条約批准を昨年七月に政府がいたしまして、これからの五カ年のいわゆる期限が切られたわけでございます。この条約批准に向けて関係各省差別撤廃のための国内法の整備というものにつきましては鋭意努力をいたしているところでございますが、私どもといたしましては長い慣習の中にあって新しい大きな国際的な協約に署名したわけでございますので、二の条約批准に向けて一層努力を続けてまいりたい、また、関係各省調整もいたしてまいりたいと、このような覚悟でおります。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 総務長官のお考えがわかりましたので、どうもありがとうございました。  それでは。労働大臣にお伺いをいたします。  私がいま手に持っておりますのは、これ、労働省婦人少年局から出されたものでありまして、主題は、「あらゆる分野への男女共同参加をすすめましょう」、なかなかいいパンフとリーフなんですね。この中に、「男子有職者家事時間」という調査があります。非常に出色なグラフだというふうに思いますけれども、フランスの男性に比べて日本男性家事を手伝うというその率が三分の一ぐらいだというのがあるんですね。西ドイツやソ連に比べましても、大体もう半分よりももっと少ないという、非常に亭主関白の数字が出ているわけであります。これを直そうというのだと理解をいたしますが、こちらのリーフのところに、「家庭で」では、「家事や育児を女性だけの仕事と決めていませんか」、こう問いかけをして、そして家庭の主婦に対して、あるいは夫に対して注意を促しているわけでありますが、そのもう一つのところに、「職場で」というのがあるんですね。その「職場で」のところに、「仕事女子向き男子向きと固定化されていませんか」と、こうなっています。「固定化されていませんか」というのは、されていることがいいことだというふうに労働省としては、問いかけをしているのか、悪いことだ、望ましくないことだというように問いかけをしているのか、御存じでしょうか。
  12. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) なかなかむずかしい御質問でございまして、私も返答にちょっと困っておるわけでございますけれども、大体もう、いまどう考えてみましても、同じ仕事について同じ待遇を受ける、これはあたりまえのことでございますね。また、そういうことで考えてまいりますと、労働条件の中で、いま非常に大きな問題になっておりまするような定年制度の問題でございますとか、あるいはその他のいろいろな職場でのいろいろな福祉政策、そういったものは均等に受けるのがこれはあたりまえのことでございますので、それはいまこの段階で私が申し上げるまでもなく、コンセンサスといたしまして一般化しておる、かように考えるわけでございます。  しかしながら、仕事が一体男子向き女子向きかということになりますと、本来そのような差別があってはならぬわけでございますから、原則といたしましてはそんなことはあろうはずはない。でございますから、ここで書いておりますことも、固定化されておるようなことでは困りますから、そういったところがあるのなら、ひとつどんどんとそういった点を指摘をされて改善していただけるような努力をお互いにしようじゃありませんか、こういう意味であると、私はかように解しますけれども、さて、そうなってまいりますと、仕事自体によりましてそれじゃ全く同一かと、これはちょっと私はまだむずかしい問題がそこに存在をしておるような感じがするというのが正直なところでございます、
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、大臣お答えは非常に正しいと思います。本来あってはならない。だから改善していかなければならないと、こういうことが目標だとおっしゃるのはそのとおりだと思います。  ところで、いま配ってあります上級職試験資料1、それから、それと同じものでありますけれども、昨年の、一年前の自治体募集状況における差別、そして3は、これは募集差別の動向で全部まとめたものでございます。  自治大臣、お伺いいたしますけれども、いまの労働大臣の御答弁をもとにいたしまして、各自治体がこのような募集条件を出しているということについての御感想をお伺いしますし
  14. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) 採用につきまして男女の差をつけるべきじゃない、これは原則的にそのとおりだと思います。ただ職種等によりまして、やはり主として男子でなくちゃならぬというようなものがあるとするならば、そうした合理的な理由のつくものについてはこれもやむを得ないものでなかろうか。原則としては男女平等であるというふうに考えておりますが、一部の地方自治団体におきまして、その合理的だといったてまえからだと思いますが、差を設けているところもあることも承知をいたしておりますが、この辺は十分検討して男女平等の原則に反しないように処置をしていかなくちゃならぬと考えております。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 同じくこのリーフに、「地域社会で」とこうありまして、「地域のしきたりやとりきめは男性優先になっていませんか」と、このようなことがあります。先日も公明党の渡部委員からの御指摘がありましたが、広島県の婦人少年室でもって、やっぱりそういうことをちゃんと掘り起こしているわけであります。女人夫出不足廃止運動こういうことがありまして、大変この労働省のやっている運動は大きな社会的な波紋を巻き起こしていると、こういうふうに私どもは把握をしまして、ぜひ皆さんがんばっていただきたいと、こういうふうに思います。  ところで、どうも地方自治体ばかりではなくて、国家公務員の中にもそういうことがあるのではないかと、こう思われますが、いかがでしょう。——具体的に言いますと、先日も高卒の国税職員婦人採用されるようになった。刑務官もそうだ。入国警備官にも婦人採用されるという条件がつくられた。こういう前進は認めますけれども、まだありますね、しかし、郵政省については深夜業があるということですから労基法違反、わかりました。防衛庁いかがでしょう。
  16. 本田正

    政府委員本田正君) 防衛庁の場合は、防衛医科大学校を私の所管で持っておりますけれども防衛医科大学校につきましては男子だけに限っております。
  17. 粕谷照美

    粕谷照美君 知っているんですが、その理由は何ですか、
  18. 本田正

    政府委員本田正君) 防衛医科大学枝といいますのは、幹部自衛官である医師を養成するために設置しているわけでございます。幹部自衛官であります医師を私ども医官と読んでおりますけれども自衛隊におきます医官任務というのが、有事に際しまして直接これが、戦闘要員ではございませんけれども戦闘要員とともにありまして、部隊等を指揮し、戦傷者の後送、収容、治療あるいは防疫そういった衛生救護活動に従事するものでございますし、また、平時におきましては、僻地あるいは寒冷地等を含みますところの全国の部隊に勤務を命ぜられまして、日常有事に際しての訓練を行いますとともに、自衛隊員の入隊時の身体検査健康管理それから疾病、傷害の治療、リハビリテーション、そういった衛生隊指揮統轄、統率そういったことを行うことを任務としているわけでございます。そういった任務業務特殊性からいたしまして、医官は必ずしも女性にふさわしいものと考えにくい面がございますので、防衛医科大学校入学資格男子に限定しているのが現状でございます。
  19. 粕谷照美

    粕谷照美君 私どもは、自衛隊についてはそれぞれの、一つの党の意見がありますけれども、しかし、医科大学校に入るということを、女性であるからだめだということにはならないというふうに思うのですね。一切のことがその他の省庁で検討されたのですから、新たに私は検討をしてもらいたいと思います。  さて、地方公務員の問題についてちょっと警察庁にもお伺いいたしますけれども警察庁どうでしょうね。
  20. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) お答えをいたします。  地方都道府県警察一般事務職におきましては、一部男子のみを採用するという県もございます。しかし、大部分の県におきましては、男女事務職員平等に採用しておるわけでございます。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 もう少し明確に、細かく教えてください。
  22. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 初級職におきましては、男子のみということで採用しておりますのは、現在秋田県と沖縄県の二県だけでございます仁
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 その二つの県はなぜ男子のみというふうに募集をしているのですか。
  24. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) お答えいたします。  警察におきます一般職員仕事でございますが、大部分は普通の一般事務をしておるわけでございますが、各警察署からの照会業務であるとか鑑識の業務であるとか、そういった第一線と一体となって行動するという仕事も多々やっておるわけでございます。したがいまして、仕事状況に応じましては、深夜にわたるとか非常に不規則な状況に及ぶとかこういったことが考えられますので、一部の県においてはそういった男子ということを強く考えて現在採用を行っている、こういう状況理解をしております仁
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 本庁にはそれはありませんか。
  26. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 本庁では、特にそういったことはやっておりません。
  27. 粕谷照美

    粕谷照美君 本庁でできて地方でできないということはありませんから、労働基準法に明確に違反するものであればこれは当然女性募集しないということはあたりまえな話であります。ぜひその点についての御指導、話し合いもしていただきたい、こう思います。  私は、全県の職員採用試験案内書を取り寄せてみました。ずいぶんいろいろなものがあります。獣医師さんであっても男女ともに構わないというのもありますし、獣医師は男に限ると言っているところもあるわけです。県によって男女どちらでもいいということになっているのでありますから、女だからといって県の獣医師が勤まらないわけはない、こういうふうに思いますので、自治大臣の御指導を心から期待をいたします。  さて、もう一つあります。皆さんのお手元に配ってあります5の資料でありますけれども、これはNHK募集要項です。NHKは放送とアナウンスと取材経営管理について募集をいたしますよと、こういうふうに出しているわけですけれども、この中には一切の男女差別がありません、しかし、具体的に、学校の推薦を受けてそしてぜひ取材に入りたいと、こういった女子が、面接の試験場に行って女はだめだということがはっきりわかったと、こういうふうになっているんですね。だから、私ども考えなければならないのは、表面は差がない、しかし内容には差があると、こういうことはおかしいわけであります、また、そのNHKの面接に行った人が、あなたは結婚したらどうするかと、こういう質問を受けています。そのこと自体はどうということないんですが、結婚しても仕事をやり続けていきたいと、こう答えたら、あなたは大した自信家だなと、自信家のようだけれどもと、こうやゆをされているんですね、こういう態度そのものが私は特殊法人であるNHKにあるのかと思いますと非常に残念に思います。  労働大臣、女だけが親元から通勤をしなければならないと、こういうことなども含めまして、雇用における採用時における男女差別——広告なども含めまして、これからどのような御指導をいただけますでしょうか、お伺いいたします。
  28. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 実は、私は新聞記者の出でございますから、放送とか新聞とかといいますものの仕事の中身はわりあいに知っておるつもりでございます。でございますから、先生がいま御指摘になられたことと反対のような立場になるかもしれませんけれども、非常に有力な、優秀な婦人記者がおられまして、その方の母性保護のために夜勤を禁止をするというようなことになりますと、取材記者といたしましての能力をそこで非常に減殺をしておるということになりまして、自由に、本来ならば伸びていかれるべきそういったジャーナリストというものの能力を、制度によって途中でさえぎっておる、そういうことは私はきわめておかしなことだと思うわけでございます。  でございますから、確かに母性保護はいたさなければなりませんし、深夜業の禁止はしなければならぬ、これは原則でございますからそのとおりだと思いますけれども、そういったことを承知をされた上で、しかしながら、自分は仕事のためにやるのだということであれば、これは私の方の、基準法の私がこれは施行者でございますから、非常につらいことでございますけれども、それはその職種によりましてはかなりフレキシブルな考え方を多少とも加えるということはあってもいいのじゃないかという気がするわけでございます。  ところが、いまお話しのようなNHK等々の採用試験において、採用試験者がそのようなことを口走った、これは私は口走る方がよっぽどどうかしていると思いますけれども、しかしながら、そういうことでありましたならば、その日走ることがどれだけの効果を持つのかということにもよりますけれども、それは明らかに口走る方が間違いでございますから、そういったことはどんどん御提訴をいただいてそのようなことのないようにさせるというのがあたりまえでございますし、第一、それは採用試験者として受験者に対しまして失礼きわまりないですな。ですから、そういう採用試験者は採用試験者としての資格を持てないわけでございますから、その辺のところをきちっとけじめをつけさせるようにさせることが大事だとかように思います。これはNHKだけに限る話じゃございませんですから、すべてそのようにきちっとやるべきことはやらなきゃならぬ、かように考えております。
  29. 粕谷照美

    粕谷照美君 取材の記者でありましても、あの堂本暁子さんなんていうのは見事なお仕事をやられていらっしゃるわけで、女性であるから仕事ができないと、そんなことは絶対にないのでありますから、仕事の内容についてきちんと説明をし、そのことを女子がどうやって受けとめ、自分がなおかつ意思を固めていくという、それを大事にしていただきたい、そういうことの御指導もいただきたい。そして女であっても、深夜勤の労働がなければやっていけないという職種につきたいという方についての特別的な取り扱いというのはやれないことはないわけでありますから、その辺のことについても御審議をいただいているというふうに思います。ぜひ早目に結論が出るようにお願いいたします。  最後に、労働大臣にお伺いをしたいのは、いま労基法に母性保護の項目があります。そしてまた深夜勤だとか、危険有害業務だとかあるいは夜勤の制限だとかありますね。それについて、恩恵なんだ、与えてやっているんだというような感じをお持ちでいらっしゃいますか、それをひとつお伺いいたします。
  30. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 恩恵などというのはとんでもない話でございまして、そうではございませんで、もっともっと大きな私どもの人口政策、民族政策といたしまして、私どもの将来を担われる方々を私どもは守り育てていかなければならぬ、そういうことのできますのは、これは母性以外にないわけでございますから、そういう趣旨でそのようなことをさしていただいておりますわけで、これが特別の恩恵などという不逞な考え方は私は毛頭持っておりませんし、さような考え方を持っております者がこの世の中におろうとも思っておりません。
  31. 粕谷照美

    粕谷照美君 大変力強いお言葉をいただきまして、大臣もお急ぎのようでありますから、私の質問はこれで終わりますが、条約は、母性を社会的機能として尊重するということを強調しているわけでありまして、ぜひ、母性保護が男女平等の基礎であり、母性が差別理由とされてはならないというこの項目を大事にしていただきたいと心からお願いを申し上げます。  教育問題に入ります。  山住参考人は、一般公述人として教育問題についての応募をなさったわけでありますが、ちょっと時間が間に合いませんでしたのでだめということになりまして、私は、ぜひ山住先生に来ていただきまして、特に教科書問題についてのお話を伺いたいと思っております。  この予算委員会でも、教科書の参考人はこれで三人目でありまして、自民党の参考人、共産党の呼ばれました参考人、それぞれテレビにのりまして、国民は教科書問題についての大きな論議の視点というものがわかったというふうに思いますけれども参考人は、教科書というのはいままでどのようなものであったと、こういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
  32. 山住正己

    参考人山住正己君) ただいま、教科書というのはどういうものであったかというお尋ねですが、日本の教科書の性格をはっきりさせるためには、学校で教科書というものが使用されるようになった明治以後のことについて、簡単にでも振り返っておかないと問題点がはっきりしないのではないかというふうに実は考えます。  日本の教科書で一番大きな問題は、第二次大戦後反省されましたように、画一的であったというところに一番大きな問題があるかというふうに思います。  それで、いつ教科書が画一化したかということが非常に大きな問題になってくるかと思います。教科書が学校で使用され始めたのは一八七二年、明治五年の学制が公布されてから後ですが、当時は、いま出されております自民党の「いま、教科書は…」というパンフレットの中でも書いてありますように、当時は自由発行、自由採択という制度であったわけです。そういうふうに自由に始まった教科書制度が一体どこでどう変わったかというところに日本の教科書の大きな問題があるのではないかというふうに思います。  それで、いま紹介しました自民党のパンフレットによりますと、近代国家として統一的な国家として進めていくのには、やはり教科書がばらばらではいかぬと、そこで、明治十年代に教科書について統制が加えられるようになったというふうに書いてありますが、これは近代国家としてというよりも、当時の教育政策に関係があるというふうに言わざるを得ないわけで、これについては、文部省が出しました「学制八十年史」という書物がありますが、非常に大きな書物です。その中でも、明治十年代に入って教学大旨による教育方針の指示があってからは、小学校において用いられている教科書についても調査し、国民教化の精神に適合しないものは教科書として採用しないのだというふうな方向に変わってきたというふうに書かれているわけです。あるいは同じく文部省の「文部時報」千二十二号、これは学制九十年に出されましたが、そのときもはっきり「自由民権運動を抑圧する方策との関連において」教科書が統制されるようになったというふうに明記されているわけで、これが大体日本の教育史の常識ではないかと思うのですが、この明治十年代における教育政策の転換、これ以後教科書が画一化してきたというところに非常に大きな問題があるのではないかというふうに思います。それから以後、一九〇二年の末の事件——教科書疑獄事件をきっかけとして、一九〇三年に教科書が国定化されましたが、国定化された場合には、国が思いのままに教科書を書きかえるということが行われ始めます。  そこで、お配りしました岩波新書の「教科書」の六十二ページのところでも南北朝問題が挙げてありますが、一夜にして教科書が書きかえられてしまうということがあります。さらにまた、同じ人物を取り上げても、そのときの政策いかんによって違った書き方が行われる。たとえば、百七十四ページに野口英世のことを取り上げでありますが、これも一九三七年版の教科書では、野口英世は「「手は不自由でも、一心に勉強して、きっと、今に、りっぱな人になって見せるぞ。」とかたく決心しました。」と書いてあるのですが、一九四三年版になりますと、「一心に勉強して、お国のために、きっとりっぱな仕事をしてみせるぞこというふうに書きかえられる、これは明らかに、そのときどきの政策によって歴史上の出来事あるいは歴史上の人物についても思いのままに書きかえが行われてしまっているということの一つのいい例になるのではないかというふうに思います。  こういうふうにして画一化する方向で日本の教科書が進んできた、これが戦後十分克服されないままに依然として教科書においてはかなり画一的な傾向が広がっているというところに非常に大きな問題があるのではないかというふうに考えています。
  33. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、現在の教科書制度というのは一体どんな精神で出発をしたと、いままでの先生のお話から踏まえて御報告をいただきたいと思います。
  34. 山住正己

    参考人山住正己君) 現在の教科書制度は、第二次大戦後の教育改革によってスタートをしているわけです。これはただいま申しました戦前の教科書に対する反省というところから始まっていることは明らかなんですが、それは一九四七年、昭和二十二年の教育改革、教育基本法が出されまして学校教育法が出される。学校教育法で教科書制度が国定から検定というふうに改められたわけですが、その学校教育法と同じ一九四七年の三月に出されました学習指導要領というものが、教科書制度を改革していくときの基本的な精神というものをよくあらわしているものではないかというふうに思います。  そこにどういうことが書いてあるかといいますと、従来の教育の最大の欠陥は画一的であったということだというふうに言っているわけです。それで、その例として、たとえば四月になると日本じゅうどこでも桜のことを教えなければならなかった。日本列島は北から南にかけて長い。北の方ではまだ桜がつぼみにもなっていなえ、一方南の方ではすでに散ってしまっている、それであるにもかかわらず、四月になると桜のことを教えなければならなかった。こういう画一的な教科書ではよろしくない。そこで、これからはどういうふうにしていかなきゃならぬか。それは「学習指導要領・一般編(試案)」の冒頭に書いてあるところですが、これからは下の方からみんなの力でいろいろとつくり上げていかなければならない。これがこれからの教育課程、教科書のあり方であるというふうに明記されているわけです、その方針に従って当時さまざまな教育実践が先生たちの手によって進められた、戦前には考えられなかったような実践というものが進められていたというふうに言えるかと思います。実に多様な実践があった。  当時は、そういう教科書、つまり文化の実体に関することですが、それについても教育刷新委員会その他でいろいろな議論がありまして、たとえば文部省は廃止して学芸省にするのがよろしいという建議が、一九四八年、昭和二十三年の二月六日の教育刷新委員会で建議されておりますが、そこでは文部省はやめて、学芸省にして、「民意の尊重、国民の創意と活動への期待、いやしくも科学、技術、芸術、教育、その他文化の実体に干渉を加えることがあってはならない」というようなことがその建議には書かれています。つまり、「文化の実体」と。教科書というのはまさに文化の実体なので、そこに干渉しないということが非常に大事だということが戦後の教科書制度の出発点において示された精神だというふうに考えます。
  35. 粕谷照美

    粕谷照美君 戦後の教科書制度の発足の精神から大きく逸脱を、逸脱といいますか、大きく変わってきているなという昨今であると私は思います。衆議院においてもわが党の湯山委員大臣の検定を通った見本本が供給本になっているときに、もう大きく記述内容が違っているということを取り上げて質問をいたしましたが、いま、社会的に教科書が大きな問題になっています。それは異常ではないかと思われる内容がまた問題になっております。そのことを先生はどのように分析をしていらっしゃるか、それをお伺いして最後の質問といたします。
  36. 山住正己

    参考人山住正己君) 教科書の内容について、いまさまざまな議論があります。果たして国会で教科書の内容にまで立ち入って議論するのが適当なのかどうかということがまず第一に非常に大きな問題ではないかと思います。教科書の内容に立ち入るのではなくて、一体どういうふうにして教師を励ましていくかということが本来のあり方ではないかというふうに思います。しかし、現在教科書の内容に対してさまざまな議論が行われていますしもちろんさまざまなところで、どこで教科書が議論されても構わないのですが、しかしそれがここで議論するのが適当かどうかということについては、なおもう一度考えるということも必要ではないかと思います。  いま問題になっています幾つかのことについて取り上げますと、一つは、たとえば中学枝の社会科、公民の分野で、吉田茂首相の名前が出てこないというようなことがありますが、これは教科書をひとつ見ていただくとすぐわかることなんですが、同じく中学校社会科の歴史教科書には、七社のうち五社まで、はっきり吉田内閣あるいは吉田首相、吉田茂というような名前が出てまいります。それから、社会保障の問題などについても、これもいろいろ議論になっているところですが、日本の社会保障制度全体を一度検討して、その上で議論するということが必要ではないのかというふうに考えます。  それで、いま問題になっていることの一番大きな点は、やはり教科書を使用する教師をどうやって励ますかということが非常に重要なことではないかと思いますが、これも先ほど取り上げました、「いま、教科書は…」という自由民主党のパンフレットを見ますと、冒頭のところで出てきますのは、「いまの教師には自ら学ぼうという積極性がまるでないようだ。」ということとか、残念なことには、実力のない教師たちには教科書以外のものを使う裁量が認められているにもかかわらず、ただひたすら教科書にしがみつき、教科書を教えるのにきゅうきゅうとしているのが実情であるというふうに書かれているわけですが、やはり学校の教師たちがどういうふうに苦労しながら教育の実践を進めているか。それをもう少し正確に見ながら、また実際にどういうふうに子供たちが先生たちの教育実践を受けとめているかという細かい教育そのものについての検討と、これを踏まえた上で教科書のあり方についても議論を進めていく必要があるのではないか。何よりも教師に対する不信感、これが出されるということは、教育を後退させる以外の何物でもないというふうに考えるわけです。
  37. 粕谷照美

    粕谷照美君 どうもありがとうございました。  関連質問です。
  38. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 本岡昭次君の関連質疑を許します。本岡君。
  39. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いまの教科書問題に関連して、文部大臣に質問をいたします。  一九六七年、東京教育大学家永三郎教授が、高校日本史教科書「新日本史」の検定不合格処分に関して取り消し請求訴訟を行ったことは御存じだと思います。それは、その後東京地方裁判所において、一九七〇年七月十七日、文部省の検定は憲法第二十一条二項に禁止する検閲に該当し、同時に教科書の記述内容の当否に介入するものであるから教育基本法第十条に違反すると判決をされています。文部省はこれを不服として東京高裁に控訴しましたが、東京高裁も、一九七五年十二月二十日文部省の控訴を棄却し、検定不合格処分を違法といたしました。そしてその判決の中に、教科書検定の反民主的運用の実態にメスを入れて検定制度そのものの民主的改革の必要まで言及をいたしています。  現在、最高裁で係争中でありますが、文部省は、いまいろいろ論議されておる教科書検定の問題や制度について、東京地裁、東京高裁のこうした一連の判決が示した判断を尊重しながら行わなければならないと私は考えますが、文部大臣のお考えはいかがですか。
  40. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  御案内のとおりに、教科書は学校教育における最も重要な教材として主要な役割りを占めておる次第でございますが、ただいま御質問のございました教科書検定訴訟につきましては、現在なお審理中のことでございまするし、なお、文部省といたしましては、教科書の検定制度というものは教育の機会均等等の確保なり、あるいは教育水準の維持向上なり、適切な教育内容の保障を目的とした必要かつ合理的なものである、さように考えておりますが、裁判がこの点につきましての理解の上に立って行われまするように期待をいたしておりまするが、同時に、教科書の検定訴訟というものは現在、ただいま御質問でおっしゃったように第一次訴訟が東京高裁で、第二次の訴訟が最高裁で係属しておるものでございます。  文部省といたしましては、教科書の検定制度は憲法あるいは教育基本法の趣旨に適合するものであり、具体的な検定処分も適法なものであると、かように考えておりまするし、裁判がこの点についての理解の上に立って行われることを期待いたしておるのでありまして、なお具体的な詳細の問題は担当の政府委員からお答えいたします。
  41. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) さらに御質疑があればお答えさせていただきますが、ただいま大臣から申されたとおりでございます。
  42. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 係争中ということでありますが、最後の最高裁の判断が出ていない中でも、この検定の問題にかかわって検定をもっと強化すべきであるとか、あるいは国定教科書へと変革すべきであるとかという議論がやかましいわけですが、そういう中にあって現にいまでも検定が行われているわけです、高校の教科書のしそういう状況で、現在文部大臣が、あなたが一番判断の基準として置かなければならないのはこうした高裁等の判決の中身ではないかと、このことをお尋ねしているわけです。
  43. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおり、検定制度そのものは現行法で、しかもわれわれがこれに従いまして教科書の検定をいたしております。この意味におきまして、正しいものだという前提に立ってのお話を進めておるのでございます。  なお、検定それ自体の訴訟の問題等々につきまして、ただいま申し上げたように、より具体的な御意見なりあるいは御質問がございますれば、政府委員からお答えいたします。
  44. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後に一問。  これは大臣お答えになれなければ政府委員でもいいんですが、特に高裁の判決の中に、現在の教科書検定そのものがやはり「不断の検討と改善の措置をとるのに十分でなく、現行制度の慣行的運営になれ安んじていたことによるもの、とのそしりを免れがたい」というところまで、やはり文部省の検定そのものの民主的な運営ということについて指摘をしておるのですよ。こういうことについて文部省あるいは検定そのものに携わっている人たちはどのように考えているのか。
  45. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 本件につきましては、政府委員からお答えいたします。
  46. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) ただいま御引用の判決、まあ判決でございますからいろいろなことを言っておるわけでございますが、文部省としては、本件におきます改訂検定制度の趣旨から申しまして、法令の定めるところに従って公正に行われたものと考えておるわけでございまして、今後、最高裁において審理がさらに続けられておるわけでございますので、一々のことについて余り申し上げることは控えたいと存じますけれども、私は、やはり控訴審の判決には誤解があったというふうに思っておりますので、その誤解が解かれることを期待しておる次第でございます。
  47. 粕谷照美

    粕谷照美君 高裁の判決に誤解があったというのは私は初めてお伺いいたしましたが、いずれこのことについては後ほどじっくりとやりたいと思います。  しかし、いずれにしろ教科書の検定制度が秘密の部分が多過ぎる、検定基準が明示されて、処分理由は公開されるべきだと、こういう当然の要求が出ていると思いますし、また、教師からは採択権が奪われているのであります。選定審議会、専門調査委員会、選択委員会、それぞれありますけれども、一切氏名は秘密であります。ところが、これはもう教科書会社の方では先刻御存じだと、この辺のところにも大きな問題があろうかと思います。  また、この教科書の臨時措置法の施行規則が最初出されたころ、教科書を見てもらいたい、父母にも教師にもと、こういうことで出されたときには、六月一日から二カ月間の期間があったわけです。ところが、最近ではどうでしょう。七月の一日からわずか十日間であります。こんな短い期間に、しかも学期末の一番忙しい時期に、教師たちがこの教科書を見られるわけはありません。私は、教科書の採択、検定についてのもっと大らかな条件が整備されるように文部省としては努力をすべきだという考え方を持ちながら、いま行われているこの教科書論議によって教科書に対する不信が国民の中から出ている。それは右だ左だという言葉を使えば、右からも出ているし左からも出ているわけであります。国民の信を失った教科書、教師はこれで教えることは非常に困難になってまいります。また、教師不信をあおり立てる、そういう中で、どうしていい教育ができましょう。私は、りっぱな教育ができるように、文部大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  48. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 私は、教科書がりっぱなものでなけりゃならない、それに向かいまして現行の検定制度を正しく守ってまいりたい。同時にまた、この重要な役割りを持っておりまする教科書であればあるほどに、文部省といたしましては、法令の定めるところに従いまして公正に検定を行うことにこれまで以上の努力を払ってまいらなくちゃならぬ。今後ともに教科書がさらに一層適切なものに、りっぱなものになるように期待をいたし、努力いたします。
  49. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も教科書の論議がいろいろ起きるのは大賛成なんです。たとえば、ここに、男女平等の教育を考えるシリーズなどといって、教科書の中の性差別はどのように取り扱われているか、一生懸命に研究をしているグループがあるわけです。こういう人たちの意見も出ていく、そうでない意見も出ていく、そういう中から本当にりっぱな教科書がつくられるということは心から望ましいというふうに思いますし、山住参考人も、教科書というのは欠陥があるということはもうやむを得ないことだというふうにもおっしゃっておられるわけでありますから、本当にいまの文部大臣のおっしゃるようにりっぱな教科書ができるように心から期待をいたしまして、参考人、本当にどうも長時間ありがとうございました。
  50. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 山住参考人には、お忙しいところを御出席いただいてありがとうございました。御退席くださって結構でございます。
  51. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣、きのうの学校の卒業式、中高で、二百校が警察を入れて、そして暴力が起きないようにということで対処をしたと、私は非常に胸が痛いわけでありますが、大臣の御感想、お気持ちをお聞かせください。
  52. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 新聞で拝見をいたしましてまことに残念なことであると、本当に遺憾千万なことでございます。
  53. 粕谷照美

    粕谷照美君 どうするかということについてのお考えが発表されませんでしたけれども、これもまた時間の関係で後ほどやります。  さて文部大臣、先日前島委員の質問に対して、養護学校の義務化について総理が答弁をされ、その前の大臣答弁と、総理答弁の後の大臣答弁、またちょっとニュアンスが変わってきているように思います。重要な問題ですので確かめたいと思います。
  54. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  去る三月の十六日の予算委員会におきます前島議員の御質問に対しまして、総理は、障害児の養護学校就学を強制することは、養護学校義務化の本旨に反するという趣旨の答弁をされたやに存じますが、私は、この総理のお答えというものは、養護学校への就学につきまして親の気持ちというものを尊重しながらこれを行うようにとの御趣旨であったものと理解いたします。総理を初め、国の方針にのっとりまして、文教政策といたしましてもこれを推進いたしますとの答弁を行ったものでございまして、現行法令におきましては、政令で定められました程度、すなわち重度の障害がある子供さんにつきましては、盲、聾、養護学校への就学義務が生じます。そうして、具体的なこれらの学校への就学の指定につきましては、都道府県教育委員会の権限と責任におきましてこれを行うことといたしておりまして、この制度の基本につきましては変えるべきではないと、かように存じます。  文部省といたしましては、総理の御答弁の趣旨にも沿いまして、各教育委員会がこの学校への就学の指定を行うに当たりましては、就学指導委員会等で十分に子供さんの心身の状態を把握するとともに、この間に親の気持ち等をしんしゃくいたしながらこれを行うようにすべきである、かように考えるものでございます。今後十分これに留意をいたしまするように指導してまいります考えでございますが、なお、さきに述べたとおりに学校の指定については教育委員会の権限と責任とにおいて行われることになっておりますので、いろいろの配慮にもかかわらず最終的には親の希望等に沿えない場合もあり得ることもあると存じます。大体総理の御答弁もそのお気持ちで仰せられたものと、かように解釈いたします。
  55. 粕谷照美

    粕谷照美君 そこが異常なことだというふうに思います。私は総理答弁をお伺いして思わず拍手を送りました。それはなぜかといいますと、海部文部大臣、砂田文部大臣内藤文部大臣連続してそのことを、ぎりぎりになったらどうするのかという質問をしてきたときに、常に、いまの文部大臣がおっしゃったように、最後の問題は権限があるんだと、教育委員会に。そういうことをおっしゃっておられたわけでありますけれども、しかし先日の総理の御答弁はそうじゃないんですね。教育委員会等が、こういう程度の者は養護学校へ行くべきだと、こういうことを強制をするというようなことは本旨に反するとおっしゃっているわけです。これは私、速記のところへ行きまして総理答弁をちょっと調べてきたわけですけれども、本旨に反するものであれば、あの法律は問題がある。あわせまして、そのことを御存じだからこそ、私は、田中文部大臣も、総理を初めと、つまり総理がいまおっしゃったことも、そしてそれだけで終わってないわけですね。国の方針にのっとりましてと、その後にわざわざつけ加えていらっしゃる。これは実に私は、文部大臣はよく法律を御存じだからこういう答弁をされたと思うのですけれども、どうしても総理と文部大臣との間にそごがあります。その辺はいかがですか。
  56. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 強制することは義務化の本旨に反するという総理の御答弁の趣旨は、つまり国の方針にのっとりということは、法の規定するところでございますが、その中におきましても、親御さんの気持ちを十分に配慮しながらその教育委員会の決定をしなけりゃならぬ、こういう御注意であろうと存じます。
  57. 粕谷照美

    粕谷照美君 速記を調べてみると、そうではないんですよね。やっぱり設置の義務があるんだというように総理は答弁をしていらっしゃる。最後の判断は親のところにあるんだと、こうおっしゃっているんで、文部大臣が勝手に、総理大臣も国の方針にのっとりと、こう言葉をつけ加えられるのは私としては納得ができません。しかし、この問題についてはいずれまた質問を続けるということでおきたいと思います。  大蔵大臣にまことに申しわけないんですけれども、ちょっと順番を変えまして、大蔵大臣になるべく早く質問がわたるようにしていきたいと思います。  文部大臣にお伺いしますけれども、先日私は、文部省がわざわざつくっているあの育児休業法、教師がどのくらい利用しているかということについてお伺いしました。五十一年、五十二年、五十三年、それぞれ最初は九千八百人、次が一万二千、次が一万三千と、こういう御報告がありましたけれども、あの育児休業をとることによって、一人の先生が休む、かわりの人を入れる。これで、国の予算としてはどのような状況になりますでしょうか。
  58. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 現在の実態でございますけれども、五十五年度で申し上げますと、育児休業の教員の平均の一人当たり給与は年額二百八十一万円でございますが、これの補てんと申しますか、この休業の後を埋めますための代替教員につきましては平均給与が約二百一二十七万円と、こういうことになっております。その手当を国としてしているわけでございます。
  59. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、お休みになった先生の年額が二百八十一万円、平均して。かわりの先生の年額が約二百三十七万円。そうしますと、国の予算は四十四万円余るということになるじゃないですか、育児休業をやると。なぜこんなことになるんですか。
  60. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) それから、先ほどちょっと申し落としましたけれども、育児休業給というのが粕谷委員御存じのようにあるわけでございまして、その分が十五万五千円余りでございますから。そうして、ただいま四十四万円ぐらい余る——余るというお言葉をお使いになりましたが、計算をいたしますと、計算上はいまおっしゃいました四十四万円から十五万五千六百円引きますと二十八万四千四百円、これは差額として生じますけれども。これは余るといいますか、余るという表現にはちょっと私こだわるのでございます。
  61. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、局長のおっしゃるように差額として二十八万円残る、大蔵大臣、よろしいですか、残る。いま説明がありましたから。育児休業の制度をしくと国の予算がうんとかかるということは、これはないというように理解をしていただいていいと思います。一人につきですよ。そうすると、それが年間一万三千人ほどやっているわけですから、育児休業制度をやるということは財政上は大きな圧力にならないと、こう理解されましたでしょうか、どうでしょう。
  62. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 御指摘のように、現在の育児休業制度を実行いたします上には、そのことによる経費面での追加の財政需要が生じてないというのが実態でございます。ただ。余るとおっしゃいましたけれども、実際には将来の退職金の支払いでございますとか、昇給期間の計算でございますとか、負担が若干将来において増加する要因もございますので、ただいまの金額が余剰として出てくるということでは必ずしもないと思っております。
  63. 粕谷照美

    粕谷照美君 私どもはこの育児休業の制度は大変うれしいと思っておりますけれども、しかし無給であるということに非常に問題点を持っております。したがいまして、本人の希望で、しかも有給で、そのお金の出る場所はまた別途考えますけれども、六割ぐらいと、こう考えまして、また女だけではなくて、男の大もとることができる。ヨーロッパではこういうことになっておりますので、そのことなども含めたいま法案を検討中でございます。また自民党も、この家庭基盤の充実に関する対策要綱の中に、すべての勤労婦人への適用は国際的見地からも実施に踏み切るときに来ている。非常に正しい、明確な分析をしておられます。また同様、自民党の仮称乳幼児基本法の制定集中にもそのことが含まれております。いわゆる差別撤廃条約の中にも大きくこのことが取り上げられておりますので、政府としてもこの育児休業法の拡大に向けて努力をしていただきたい。心からお願いをいたしまして、先日の文部大臣答弁を多とするものであります。  さて、時間がありませんので次に移りますけれども厚生省来ておられると思いますが、乳児院の利用がいま検討されておりますけれども、いま全国的に定員と入院率、つまりどのような利用がされているか、それから大都市中心ではどうであるかということについて御報告ください。
  64. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 乳児院昭和五十年十月一日現在の施設数は百二十五カ所でございますが、定員四千二百六十名に対しまして現員は二千九百五十四名、入所率は六九%という状況でございます。  なお、大都市等の入所率でございますが、たとえば東京都では七〇%、大阪市が九四%、福岡市は六六%という状況でございます。
  65. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは乳児院の設備、運営について説明をしてください。
  66. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 乳児院には、構造設備といたしまして、寝室、観察室、病室、匍匐室、日光浴室、調理室、浴室等の設備が必要となっております。  また職員につきましては、医師、看護婦、この看護婦のうち三分の二は乳児の養育経験のある女子をもってかえることもできることになっております。その他栄養士、事務員、調理員、用務員等を置かなければならないことになっております。また、看護婦等の数はおおむね乳児一・七人に対して一人を配置することとなっております。
  67. 粕谷照美

    粕谷照美君 子供一・七人に看護婦さんが一人配置をされる、お医者さんもいなければならない、それから調理員もいなければならない。こういう状況は非常にベビーホテルなんかと違うのに、こんなにすばらしい条件があるのに、なぜ入所率が六九%ぐらいなんでしょうか。しかも、その入所率というのは、五十三年が七六、五十四年が七三、五十五年が六九・五と七〇%台を割っているわけですね。どこに原因があるのでしょう。
  68. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 乳児院への措置乳児数の減少の原因といたしましては、最近の出生数の減少が考えられるわけでございますが、乳児院はもともと、御承知のように、孤児とか捨て子等、親のない子供のための施設という考え方が根強いことも理由一つ考えられております。しかし、最近では核家族化、母親の病気等によりまして、直ちに家庭での養育が不可能となる場合も増加いたしておりますので、このような観点に立った乳児院の活用についても積極的に考えてまいりたいと考えているところでございます。
  69. 粕谷照美

    粕谷照美君 いま、出生率が減少した、イメージが悪いなどとおっしゃいますけれども、もしそのことを了とするならば、なぜベビーホテルがあれだけ繁盛するのかということにもなるわけでありますから、その辺はやめていただきまして、もう一つ、この職員というのは基準どおりに配置をされていますでしょうか、
  70. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 乳児院の職員の配置につきましては、乳児の入所率が全国で、先ほど申し上げましたように約七〇%でございますので、現員に対しましては最低基準を上回って職員が配置されている状況でございます。
  71. 粕谷照美

    粕谷照美君 もったいないですね。せっかくの国の予算を使って、そうしてお医者さんまで配置しながら子供たちが入らない、入れない。そうして、その一方でベビーホテルの問題が出てきている。それは私は、やっぱり措置基準が厳しいからだというふうに思いますしこの措置基準を拡大して入院の子供たちをふやす必要があるというふうに思いますけれども、いま厚生省ではどういうことを検討しておられますか。
  72. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 乳児院につきましては、近年事務の簡素化を図りますため、長期的な入院を考えまして、費用の支弁を月単位ということにいたしております。しかし、ベビーホテル問題とも関連いたしまして、入院が一週間ないし二週間程度の短期入院にも対応できるように、措置費の支弁方法につきまして日割り計算が行えるように積極的に配慮してまいりたいと存じます。
  73. 木村睦男

    委員長木村睦男君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  74. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記を起こして。
  75. 粕谷照美

    粕谷照美君 七月の十七日の日にコペンハーゲンで差別撤廃条約に高橋代表が署名をされました。国際的に条約に署名をするということの意義をお伺いをいたしたい。  あわせて、この条約は一九七九年の十二月の十八日、国連の第三十四回総会で日本も賛成をして、そしてこれ成立しているわけですね。その条約が七月の十五日ぎりぎりまで署名のゴーサインが出なかった。非常に慎重な審議が行われたというふうに思いますが、あのときの高橋大使のサインは、諸外国に対しての体裁を考えて、そして軽々なサインであったかどうかということについてお伺いをしたいと思います。
  76. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) この署名につきまして閣議決定しましたのは大平内閣の最後のときでございまして、いまも光景を思い出すのでございますが、外務大臣から発言がありまして、関係大臣がこれみんな署名をすることは賛成だ、国内法の準備はひとつ自分たちが責任を持ってやろうというようなことであれは署名をしたのでございまして、体面を考えてどうとかと、そういうことじゃございません、これは。閣議でみんなで諮ってやったことでございますし、日本としましては、これを署名した上で国内法の整備をしまして、なるべく早く批准の手続までしょうということで署名をしたわけでございます。  その後、内閣はかわりましたが、衆議院でも問題になりまして、各大臣とも非常にみんな積極的な御発言でございました。外務省としましては、各省とよく相談をしまして、あと五年あるから五年いっぱいでというようなつもりじゃなくて、なるべく早い時期に、国際婦人年の十年の後半の早い時期にこれが批准できるように各省と十分協議をしていきたい、こういうふうに思っております。
  77. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で粕谷君の一般質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  78. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、堀江正夫君の質疑を行います。堀江君。
  79. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私は、防衛問題、特にわが防衛政策の基本に関すると思われます若干の事項につきまして、関係の各大臣から直接率直な御見解を承りたいと、このように存ずる次第であります。特に、きょうは外務大臣も官房長官もいろいろ御日程の都合があるようでございます。お答えの方もできるだけ簡明にしていただきまして、全部の議事進行に御協力いただければ幸いであります。  まず初めに、鈴木内閣の対米外交姿勢と事態認識について承りたいと、このように思うわけであります。御承知のように、大平前首相が昨年の夏訪米をされまして表明をされましたところの、日米は同盟国であるというところの認識、そしてまた米国との共存共苦の精神をうたわれたわけであります。鈴木内閣は、この大平前総理の考え方、それをそのまま継承しておられると、このように考えて差し支えございませんか、外務大臣
  80. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 亡くなった前の大平総理がアメリカとの関係、特に西側の一員と、リーダーとして苦しいときにはお互いが助け合うというようなことで、たしか去年五月行ったときいろいろ話したわけでございますが、その考え方は全然変わっておりません。
  81. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 変わっておらないというお考えでございます。私は、少なくともそのような考え方に立つ以上は、政治目的とともに事態認識を一つにする、こういうことが重大な前提であり基本である、こう思うわけでございますが、いかがでございますか。
  82. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 基本的には国際情勢の認識とか、そういうものにつきまして十分お互いが考え方を率直に述べ合った上で相互理解をしていくということが大切だということは同感でございます。
  83. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そうしますと、レーガン大統領が先般八一、八二両会計年度の予算修正を通じて大変な軍事努力の姿勢を鮮明に打ち出されたことはよく御承知のとおりでございます。  そこで、特にその前提となっておるところの情勢につきまして、米国はどのような分析と認識に立ってあのような政策を打ち立てたというふうにお考えであるか。その辺御見解を承りたいと、このように思います。
  84. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) いまこの段階でアメリカの国防政策といいますか、安全保障政策全般がどうかということを私が論評することは、まだ向こうの責任者とも会っておりませんので、直接会って話をこれからするところでございますので尚早だと思うのでございますが、いままで演説とかいろんなところにあらわれておるアメリカの認識は、ソ連の引き続いた軍備の増強あるいはアフガニスタンに対する軍事介入という、第三世界に対する軍事介入とか、こういう現在の厳しい国際情勢の認識に立って。アメリカが世界の平和を守っていくというためには、よく言われる平和の幅と安定の幅といいますか、力による平和といいますか、そういうことによって世界の平和、安定、繁栄を保っていこうという強い認識の結果、予算の削減という中で軍事費は増強するというような立場をとられたのだろうというふうにこれは想像されるところでございますが、これからアメリカへ行きまして、その辺の国際情勢の認識、十分意見の交換をしてみたいと思っております。
  85. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 今後も両国の間で、少なくとも事態認識についていささかもずれがあるというようなことのないようにしていただきたいと思うわけでありますが、もう一つ、ヘイグ国務長官がこの一月九日に上院外交委員会で審査を受けました。そのときに次のような証言をしておるわけであります。  それは、「第二次大戦以来の着々たるソ連の軍事力増強は、比較的平和な時期においてはかって見られなかったほどの、世界的立場での力関係の逆転をもたらしてしまった。これを阻止しないならば、ソ連の軍事力の増大は、結局は西方自由世界の政策を一括して麻痺させてしまうことになるであろう。したがって、われわれの面しているごく近い将来は、異常に危険な時期である。アメリカ国民はいかなる犠牲を払っても、平和というふうな偏見を抱いては、そういう年月を生き抜いていかれない。」以下略しますが、訳文も必ずしも練れてはおりませんけれども、大体このような証言をしております。  このように、ヘイグ国務長官は、現在の事態というものを、きわめて近い将来、生き死ににかかわるきわめて深刻な事態だ、こう受けとめておる。このように考えられるわけでありますが、このような世界的な危機の認識について外務大臣御自身の御認識を承りたい、こう思います。
  86. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) いまのような証言があったということはわれわれも聞いておるのでございますが、国際情勢が、対ソ関係のみならず中東の問題でございますとか、あるいは東南アジア、カンボジアの問題でございますとか、方々に緊張状態、紛争状態が起きている非常に厳しい情勢の中にある。そういう中でアメリカの認識は、軍備の増強ということが八〇年代の中央以降になると非常にアンバランスが出てくるんじゃないか、そういうことになれば、力のアンバランスということから過去の歴史は紛争が起きてくるのであるから、そういうことに対しては、いわゆる力による平和といいますか、バランス・オブ・パワーといいますか、そういうことを心がけて、西側陣営のリーダーとして頼れるアメリカをつくりたいという意味のことを言っておられるわけでございまして、これは私がこれから参りまして、国際情勢、世界情勢の認識の問題ということについては十分に意見の交換をしてまいりたい。そして認識の一致できるものは一致する、あるいは違うことも出てくるかもしれませんが、十分に率直に意見の交換をしてまいりたい、こう思っております。
  87. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いまも外務大臣申されましたが、本当によくこの面については腹を打ち割って、ほかのこともいろいろあると思いますけれども、本当に腹を打ち割って話していただきたい、こう重ねてお願いをする次第であります。  そこで問題は、認識が大事でありますが、その認識に基づくところの対応、すなわち当面このような認識に基づいて日本がどのような政策をとっていくのか、これが一番日本にとっても重大な問題だと思います。しかし、これは非常に差し迫った問題ではありますけれども、これからの問題であります。私自身も時間をかけなければなりませんので、この面につきましては他日に譲ることにしたいと思います。  もう一つ、われわれが防衛政策を考える上においてやはり基本的に考えなければならない要素の一つは、わが防衛力の現状をどう認識するかということがあると思います。これはやはり今後の防衛力整備の原点、出発点にもなる、こう思うからでございます。  そこで、わが防衛力の実態認識について、実は、本日おいでの各大臣にどの程度確実に御理解いただいているか、具体的に一つずつお聞きするつもりでありました。が、いろいろ考えまして、これはきょうはやめます。  そこで、ただ自衛隊の現在の能力、そして有事米軍の赴援、これについて一般的な御認識を、防衛庁長官を除く、きょういまお二人しか大臣おられません、お二人の大臣に承りたい、このように思います。
  88. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 防衛力の問題でございますが、政府は防衛計画大綱というものをつくって、それに基づいて防衛力、自衛力の整備ということをやっておるわけでございますが、まだ防衛計画大綱の水準まで達してないことはこれは確かでございますので、政府としましては、この水準になるべく早く達するように努力するということが私は政府のとるべき態度であるというふうに考えております。  また有事の際の問題でございますが、これは日米安保条約という、この五条の問題だと思うわけでございますが、そういう事態になれば、日本を守ることがアメリカの国益にも合うんだという認識を常にアメリカに持ってもらうように、日本理解をしてもらうように努力しなければいかぬことでございますし、また、すぐ来援をして共同の危機に対処するというためには日本も平生努力しなければならぬということをわかってもらう、理解してもらうという意味で日本がまたみずから努力をするということが大切だと私は思っておるわけでございます。アメリカとの信頼関係というのは日本の外交の基軸でございますので、いま堀江先生おっしゃった、とことんまで率直に話して、そして信頼度を強めるということは非常に大切なことだというふうに私は思っております。
  89. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) わが国の防衛力の現況についてどう認識するかというお尋ねでございます。  私は専門家じゃありませんからその技術的なことはわかりませんが、装備の老朽化とか即応態勢の不備とか、基地等の抗堪性の不足とか、弾薬備蓄の不足とか、あるいは継戦能力の不足というような問題がいろいろ専門的に問題にされておるということは承知をいたしております。しかし、それじゃどれだけ充実したら十分なんだと言われましても、これも際限のない話であって、一応われわれとしては防衛計画の大綱というものをつくっておる以上は、それをとりあえずやるということでいいんじゃないかと。特にやっぱり防衛の問題というのは、そういう火器だけ充実してみても、問題は精神がそれに伴わなければならないし、ことに国民の全面協力がなければそういうような戦闘能力というものがうまく展開するはずがない。したがって、国民からきわめて反感を買うような防衛体制というものを早急に進めるということについては問題がある。したがいまして、私といたしましては、国民の理解と協力を得ながらやっていくということが大切であって、もちろんそのためのわれわれは努力もいたしますし、そうして多少時間もかかるとこそれからもう一つは、他の予算の費目とのバランスということも、これも全然無視するというようなことをすれば国民の理解と協力が得られるわけはないのでありますから、そういうものにも配意をしながらやはり総合的に考えて、本当に信頼される自衛隊というもので、国民がみんなでそれを支えるという態勢に持っていくことが一番いいんではないか、そう基本的には考えておるわけであります。
  90. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私が御質問したのは、自衛隊の現能力あるいは有事の場合の米軍の赴援についてどの程度御理解、御認識しておられるかということを聞いたんですが、各両大臣お答えを聞いていますと、政治的にはぐらかされたのか、あるいはよく御存じないのかよく知りません。まあ結構でございますが、本当は結構とは言えません。私があえてこのような質問をしましたのは、重要な防衛政策の決定に当たられておるわけです。官房長官もおいでいただきました。官房長官ももちろん同じであります。少なくとも自衛隊の現在の能力はどうなんだといったような実態については、その中の重要な問題、これはぜひとも正確に御認識いただかなきゃならないのじゃないか。その上でやはり防衛というものを地位づけていくということが必要じゃないか、こう深く思うからでございます。こういうような点におきまして、私は防衛庁長官、従来もやっていただいていると思いますけれども、各大臣がよく御理解いただけるように、さらに積極的にこういったことをアプローチをしていただく責任が長官にはあられるんだと、こう思う次第でございまして、この点を心からお願いをする次第でございます。  次に、私はわが防衛政策上、現在使用されておる用語の概念と内容につきましてお聞きしたいと思います。  鈴木総理は本通常国会の劈頭の施政方針演説の中でも、「わが国の防衛は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とならず、」云々と、このように申しておられます、これは鈴木総理、この委員会を通じても何度も申されました。また各大臣もこのように申しておられます。実は私はここで言われております専守防衛って何だ、近隣諸国に脅威を与えない防衛力って何だ、軍事大国というのは何だ、あるいは節度のある質の高い防衛力をやるのだと言われますが、その内容は何だと、私自身わからないわけです。私自身わからないのですから、国民もわからない方が多いのだろうと思うわけであります。それじゃ、政府の皆様方が本当に意思統一しておられるのかどうか、これも私は若干疑問に思っております。  そこで、まず専守防衛とはどのような概念、内容を持ったものか、官房長官、総理にかわってその見解をお聞かせいただきたいと、こう思います。——いや、官房長官の認識を聞いているんです、総理がいつも言われますから。専守防衛とは何だ。それじゃ、外務大臣いかがでございますか、外務大臣もそう言われるわけです、いつでも演説の中で。いかがでございますか。専守防衛って何でございますか。
  91. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 私も使ったことがありますからお答えを申し上げます。  専守防衛というのは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使すると、こういう意味だと思うわけでございまして、これは受動的な防衛戦略の姿勢と、こう言ったらいいと思うのでございますが、その防衛力の行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめる。また、これを保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものだということで私は使っておるわけでございまして、あくまでこれは受動的な防衛戦略だ、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力の行使をするのだと、こういう行使の仕方、態様、こういうものをいわゆる専守防衛だというふうに解して私は用語を使っております。
  92. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 法制局長官、いかがでございますか。概念規定をひとつ統一をして示していただきたい。
  93. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 専守防衛という言葉は別に法律用の用語ではございませんけれども、いわば憲法の精神にのっとったわが国の基本的な防衛政策の態度として使われている言葉だと思います。その内容につきましては、いま外務大臣から御答弁になりましたものと同様なものだと私も考えております。
  94. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 それじゃ防衛庁長官、最後に決定版をひとつ示していただきたいと思います。
  95. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 専守防衛につきましては、いま外務大臣がお述べになりましたので尽きると私は思うのでございます。  しかし、重ねてのお尋ねでございますので申し上げますと、専守防衛とは相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その防衛力行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものと考えております。これがわが国の防衛の基本的な方針となっているものでございます。  また、政府といたしましては、この専守防衛を基本として防衛力の整備を行うとともに、米国との安全保障体制と相まってわが国の平和と安全を確保し、安保条約と相まって専守防衛をやっていくという基本的な考えを持っていることを、つけ加えさせていただきます。
  96. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いま防衛庁長官の御説明によりますと、自衛隊の運用や防衛力整備の前提になる基本的な方針なんだと、こういうふうに言われたと思います。それはそれで間違いありませんか。
  97. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) そのとおりです。
  98. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そうしますと、四十七年の十月三十一日に衆議院の本会議で、当時の田中総理が民社党の春日一幸氏の質問に答えられまして見解を表明されております。その中で、ここにも官報がございますが、戦略守勢と同意義だと、こう言われているんです。いいですか。専守防衛というのは戦略守勢と同意義だと、こう言われているんですよ。戦略守勢というのは、それじゃ何ですか、防衛庁長官
  99. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 軍事的な専門用語ではないかと思うわけでございますが、大変失礼でございますが、政府委員からお答えさせていただきます。
  100. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いやいや、それは総理が答えておられるんです、そういうふうに総理が。専守防衛というのは戦略守勢と同意義だと、こう言っておられるんです。軍事用語じゃない。政治用語ですよ、もうそうなりますと。どうですか。
  101. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 専守防衛の中に、いまお話もございましたように、運用にかかる基本的な姿勢をあらわす面も含めておるということを申し上げましたが、それを戦略的に見ました場合には戦略守勢ということになろうかと思います、いま御指摘田中総理の答弁のこと、いま具体的に私承知しておりませんけれども、その議論は戦術的には攻勢はあると。しかし、戦略的には守勢であるということの議論ではなかったかと思いますが、専守防衛と戦略守勢とは同義語である、同意義であるという意味は、私がいま申し上げましたように、専守防衛の中の運用面を見た場合に、同じ基本的な姿勢をあらわしておるということをおっしゃったと思います。
  102. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 先ほど専守防衛の話で、これは田中総理も言っておられるんです。受けて立つのだ。それまでに攻撃することはないのだ。また攻撃されても、相手の基地を専守防衛じゃこちらからやることはないのだと、こう言っておられるんですね。ところが、戦略守勢というのは違うのですね。たとえば一つの例で言いますと、ソ連がかつてヨーロッパ正面に攻勢をとる。そのときにおいては、アジア正面は戦略守勢に立つ、その戦略守勢はただ守るだけか。そうじゃないんです。時日の余裕を得るために、少数の兵力で持久の目的を達成するのですから、その達成する手段としては、それはもう積極的に限定的な攻撃をすることもあるんです。ですから、その辺が、戦略守勢と言われる専守防衛の解説、全く矛盾しているんですよ、これは。それはお認めになりますか。官房長官、お聞きになっていかがでございますか。——いや、もうあなたに聞いてないんだ。政治的な見解を聞いているんですよ。
  103. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  専門家の堀江先生の御質問でございますので、戦略守勢の定義なり、あるいは専守防衛との関係、いろいろな論議があるということは承知しているわけでございます。しかし、基本的には私は合致しているのではないかと思います。いま御指摘のありましたようなケースにつきましても、かつて私の先輩である防衛庁長官が、座して死を待つような場合には先方の基地をたたくこともあり得るというような答弁をされたということも記憶しているのでございますが、いずれにいたしましても、基本的には同じことを考えているのではないかと、私はさように承知しておるわけでございます。
  104. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私はもうこの問題につきましてこれ以上見解を聞くつもりはございません。ただ、四十七年に一応統一見解を総理の答弁によって出されたかっこうになっておりますが、確定された定義もありません。どうもいまの短い討議を通じてみても、概念もはっきりしません。しかも、軍事的な合理性から言うならばきわめておかしい。しかも、これが日本の防衛の基本だと、こう言われているんですよ。アメリカでいろんな防衛問題を話すときも、専守防衛だから日本はどうだと、こう言われようとしておるのです。私は、そんないいかげんなことで本当にいいのだろうか、重大な防衛政策というものかと、このように案ぜられてなりません。ぜひとも、もっとはっきりとわかる用語を使っていただきたい。もしも今後も専守防衛という言葉を使われるならば、その内容をもっと合理性のあるはっきりとわかるものにしていただきたい、こう思うわけですね。そうでなければ大変な混迷でございます。官房長官いかがでございますか。官房長官、この専守防衛ということについて、今後、私が言ったような意味において御検討いただく意思があるかないかということです。いまお聞きになっただけでもおかしいでしょう。
  105. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど防衛庁長官からも、また法制局長官からも外務大臣からもお答えがありまして、そういう定義のもとに使われておる言葉だと承知をいたしておりますが、なおもう少し定義を明確にせよということでございましたら、関係者の間でそれは検討してもらうのにやぶさかではございません。
  106. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そのほかにも、たとえば軍事大国にならぬと、こう言われます。これは防衛庁長官には、そういう言葉はもう一切使わないでくださいということを去年二回委員会で言いました。政府で使わないように防衛庁長官から働きかけてくださいということを言いました。ところが、もうますます盛んに使われます。軍事大国って何だと。これはひとつまず法制局長官、概念規定をお聞かせください。
  107. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 軍事大国という言葉は、もう専守防衛以上に政治的と申しますか、非法律的な用語でございますから、私はとても定義はできませんが、あえて申し上げれば、憲法の九条というものでわが国は自衛のため必要最小限度の武力行使しかしないし、またそれに相応する必要最小限度の実力の保持しかできないのだと、そういうことが憲法九条の解釈として言われておりますから、それと相反するような防衛力を持つというようなのが、恐らく軍事大国という意味で使われているのだろうと思います。
  108. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 世界で軍事大国と言われる国はどこでございますか。防衛庁長官、いかがでございますか。
  109. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  具体的に国の名を挙げよという御質問でございますが、核兵器、通常兵器を含めて、そういった大きな能力を備えている国は、何といっても米ソ両大国は挙げることができるのじゃないか。その他になりますと、ちょっと定義の仕方にもなりますので、いろいろな御意見があろうかと、こう思います。
  110. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 どうもはっきりしませんですがね。常識的に言えば、私は世界規模の各種武力を行使する力を持った国、だから、言ってみれば米ソを言うのだろうと思います。しかし、それだけかといいますと、たとえば東南アジア諸国にとっては、ベトナムはまさに軍事大国ですね。相対的なものです。私は日本の場合、どう考えてみても、絶対的にも相対的にも軍事大国なんかになり得るはずはないと思っているんですね、そんなことは。なり得るはずがないのを、あえて総理以下が軍事大国にならぬと言われる意味がわからないわけです。強いて言えば、憲法の精神からするならば、侵略的な防衛力は持たないのだと、こういう言葉はわかるわけです。そのほかにも、先ほど言いましたようにいろいろございます、他国に脅威を与えない防衛力であるとかなんとか。いろいろきょうは聞こうと思いましたが、もうやめますしひとつもっとわかりやすい言葉を使っていただきたい、はっきりする言葉を使っていただきたい。軍事的に合理性のある言葉を使っていただきたい。誤解を与えないような言葉を使っていただきたい。ひとつその辺を重ねてお願いをいたします。  あと五分でございますので、最後に私は、文民統制につきまして若干お聞きしたいと思います。大蔵大臣、もう結構でございます。  官房長官、日本で文民統制はよく機能しておるというふうに御認識でございますか。まずそれをお聞きします。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一応そう考えております。
  112. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 それでは法政局長官、文民統制の本旨と役割り、こういったようなことについてひとつ御説明ください。
  113. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) どうも私がお答えするには資格がないような気がいたしますが、一応文民統制として法律的な角度から申し上げれば、要するに政治が軍事を統制することを文民統制というふうに理解しております。そのことは、憲法の上でそのものずばりという言葉であらわされているわけではございませんけれども、しかし、国防に関する、防衛に関する国務が内閣の権限のもとに属せしめられていることだとか、あるいは防衛に関する国務も国政も国政調査権の対象になっているとか、あるいは国務大臣が文民でなければならないというような規定を持っているわが憲法から言えば、それが憲法の原則として定められているというふうに言えるかと思います。また、それが現実にどのように機能をしているかということについては、これは私はちょっと知識がございませんので、御答弁を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  114. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 文民統制は歴史的な発展の経緯があるわけであります。御承知のとおりでございます。いまさらここでは申し上げません。いろんな役割りというものもあるわけです。しかし、大きい役割りというのは、やっぱり軍の暴走を政治がコントロールするという一つの機能がございますね。もう一つは、やっぱり政治が軍というものをどのように地位づけるか、これが一つの大きな役割りなんですね、そのほかいろいろありますけれども。それについて官房長官いかがお考えでございますか。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点、まさに御指摘のとおりと思います。
  116. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そういうような意味において、二つの大きな柱を考え日本の文民統制はよく機能しておると、こうお考えですか。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私自身は防衛庁の中からこの問題を見た経験がございませんので、その点は申し上げる資格がございませんけれども、もう少し広い一般的な立場から考えておりますことは、自衛隊におられる諸君が、非常に困難な任務を使命感を持ってやっておられることに対して、国民的な理解が十分にあるであろうか。そういう人たちに対する十分な評価を国民がいままでずっとしてきただろうかというところには、私ども問題があるような気がいたしております。その場合、そういう状態が非常に長く続きますと、そういう任務に当たっておる人たちは、時として挫折感を持ちやすい、フラストレーションを持ちやすいと思います。自分たちの考えでいることが十分に理解されていないというふうに考えるようになりました場合には、ただいま言われましたような問題を呼び起こす危険がないとは申せない。その点について、これはかって旧憲法の時代のわが国の軍のあり方についての反省から、ずっと今日その反作用としていろんな問題がそうなってきたのであろうと思いますけれども、逆に、ただいまのような心配が全く皆無かと言えば、そうとは申せないと思いますので、やはりそういう意味で風通しをよくしておくということが大事なことではないかと思います。
  118. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 どうも文民統制といいますと、軍というものが政治の下にあると、こういう考え方になりやすいんですが、それならコントロールという言葉は使わないですね。相互尊重なんです、これは。それを大枠の間で政治がコントロールしているということですね。結局、本当にコントロールするためには、政治が軍事を知らないでコントロールできるはずはないと思うわけなんです。ところが、本当にいま政治が軍事を知っているだろうか、私はそういう懸念を持つわけです。そういうような意味で、いま官房長官から一般的なお考えを聞きましたけれども、具体的に私は、政治が軍事を知るために、もっと文民統制を実際的なものにするために、今後どういうような具体的な施策を講ぜられるつもりか、あるいはそういう面での補佐機能をどのように持っていく方がいいとお考えか、もしお考えがあれば承らしていただきたいと思います。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 防衛庁長官にはおのずからお考えがおありになられると思いますので、私の分野で申し上げますならば、たとえば国防会議という場でいろいろな問題が議論せられるわけでございますけれども、従来国防会議は大変に議題が限られ、また時間的にも限られておりますこともありまして、一般的な軍事情勢等々について十分議論をする、話を聞くという時間には実は余り恵まれておりません。で、国防会議という名でなくても、国防会議懇談会でもよろしいと思うのでございますけれども、できるだけそういう場をしばしば設けて、そして総理大臣以下議員が政治、軍事についての話を聞く、討議をするというような場は、これはもう少し私はたくさん設けた方がいいということはかねて考えております。
  120. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 ぜひそのようにお考えいただきたいと思いますが、同時に、総理の側近に防衛庁との太いパイプ、適切なパイプ、そして常時そういう面で補佐できるような体制も今後お考えいただきたいと、こう思っておるわけでありまして、これは希望させていただきます。  最後に防衛庁長官にお伺いします。  防衛研究の報告を去年受けられた、その中には中央指揮機構、統幕機能の強化の問題もある、このように承っていますが、どういうような報告をお受けになったんでしょうか、内容をお聞かせいただきたいと思います。
  121. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 防衛研究、これは部内の研究でございますが、一月末一応まとまりましたので、その報告を私受けたのでございます。  その中で、お尋ねの関連のある問題としまして、統幕議長及び幕僚長の補佐のあり方に関する問題が含まれておるわけでございますので、そのことについて若干御説明をさせていただきますと、三自衛隊の一層の統合的運用を確保するという観点から、防衛庁長官の行動命令が三自衛隊について整合性を持って迅速かつ的確に発せられるようにするため、統合幕僚会議及び同議長の長官の指揮命令に対する補佐機能を強化することが適当ではないかと、こういう指摘がなされているわけでございます。この点につきましては、改めて庁内の関係部局において慎重に検討して結論を出す必要があると私はいま考えているところでございます。
  122. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いまの話でもっと具体的に私ちょっとお聞きしますと、ということは、具体的に統幕が部隊行動の基本について長官を直接補佐するということですか。
  123. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現在、統幕の機能の中に、出動時における指揮命令の基本に関することというのが書いてございまして、これは御存じのとおりでございますが、その内容としまして、現在、先ほど大臣お答えしましたように、三自衛隊の行動の際の整合性のある行動ということについての統幕議長の長官を補佐するに当たっての役割りということについて、いまの指揮命令の基本に関することということだけでいいかどうか、そこをもう少し突っ込んで検討する必要があるではないかという指摘でございまして、具体的にはいまからの検討になると思いますしその点の研究結果の指摘があったということでございます。
  124. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 大体中央指揮機構の施設はもうやがてつくられるわけですね。いつまでにそれは決められますか。
  125. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 防衛研究の成果を今後どういうふうにあらわしていくかということは、物によりましてもちろんすぐできることもございますし、法令あるいはその他の改正を要することもございますし、いろいろあろうかと思いますし、また防衛庁としまして、いまの防衛研究というのは運用サイドからだけの研究でございますので、防衛庁としてこれをどう取り上げるかという観点からさらに検討していかなくちゃなりませんので、具体的にどの項目をいつごろ政策化していくかということについてのめどをいま持っているわけじゃございませんで、そういうことも含めていまからの、さらに今後の検討課題だと思っております。
  126. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いまの防衛庁の設置法では、参事官が基本を握っていることになっております。防衛局長が行動の基本を握っていると、こういうことになっています。塩田防衛局長は戦略、戦術は勉強していますか。
  127. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 勉強の範囲はどの辺のことをお尋ねかわかりませんが……。
  128. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 戦略、戦術ですよ。常識的なことじゃないですか、部隊運用。
  129. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いわゆる常識的なことは勉強しておりますけれども、具体的な部隊運用についてまでの勉強はいたしておりません。
  130. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私は、今後この問題、検討されると思うんですね。検討されるときに、いまの法制から言うと、やはり文官である防衛局長が基本を握ることになるわけです。しかし、有事の場合の部隊運用の基本を、いまも言われました、もう本当は勉強してないんですよ、部隊運用。幹部学校で戦術、戦略を勉強したことなんかあるはずがないのです。そういう人たちが基本を握って長官を補佐するなんかできないじゃないか、私はそう思いますね。できるはずがない。やるとするならば接点の接点のもうごく一部だ。この辺をはっきりさして、今後の検討を、やはり本当に有事に対処する日本の防衛機構という面からお考えいただきたい、この点を切望する次第であります。長官の御見解を承って、私の質問を終わります。
  131. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします、  有事においては効果的な防衛を行うという観点からいたしまして、内局、各幕、統幕等が相互に密接な連絡調整を図りながらそれぞれの職責を全うすることがきわめて重要であると考えておりますので、先生ただいま御指摘の点も含めまして、これからも一層対処してまいりたいと、さように考えている次第でございます。
  132. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 終わります。
  133. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で堀江正夫君の一般質疑は終了いたしました。(拍手)  午前の質疑はこの程度にとどめます、  午後一時三十分より委員会を開会することとし、これにて休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  134. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十六年度総予算三案を一括して議題といたします。     —————————————
  135. 木村睦男

    委員長木村睦男君) これより立木洋君の一般質疑に入りますが、この際、園田国務大臣から、先般の上田委員の質疑に関し、発言を求められておりますので、これを許します。園田国務大臣
  136. 園田直

    国務大臣園田直君) 上田発言で指摘されました点についての私の一連の発言について、不適切な点があり、誤解を招くおそれがありましたので、直ちに削除を求めてきたものでございます。御理解をいただきたいと存じます。     —————————————
  137. 木村睦男

    委員長木村睦男君) それでは、立木洋君の一般質疑を行います、立木君、
  138. 立木洋

    立木洋君 先日の上田議員の核弾頭のコンポーネントに関する質問についていろいろな答弁の仕方があったので十分に理解しかねたわけですが、これはきわめて重要なので、核弾頭そのもののコンポーネントの持ち込み問題について政府の見解を最初にお尋ねしておきたいと思います。
  139. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) お答えいたします。  実は先日の御質問の際に私たちの了解していたところは、核兵器及びその兵器のコンポーネントということでお答えしたわけでございますが、いまのお尋ねが核弾頭そのもののコンポーネントということであればおのずから答えは変わってまいりまして、どういうコンポーネントかによって直ちにそれが核弾頭かどうかということを一概に言うことはできませんけれども、理論的な問題といたしまして、いろんな部品を前もって日本側に持ってきておいて、それをすぐ組み立てれば核弾頭になるということであれば、当然それは核弾頭ということでわれわれは事前協議の対象になるというふうに了解しております。
  140. 立木洋

    立木洋君 大臣、いま局長が述べられたとおりですが、私たちも、アメリカの統合参謀本部の責任ある資料によりますと、「核弾頭のコンポーネントというのは外被セクションズと関連コンポーネントを含むが、それは一個の完成した核弾頭を組み立てるものとなっている」というふうに明確に述べているわけです。ちょうど一昨日、わが党は御承知の核問題について非常に詳しいラロック元提督に電話で直接ワシントンに対してインタビューいたしたんですが、その際もこの問題に関しては明確に、コンポーネントというのは起爆装置だとか核物質などを指しているわけである、こういうことをはっきりラロック元提督も証言しているわけです。ですから、この核弾頭のコンポーネントというのは当然持ち込みの禁止の対象にしなければならないということは明確だと思うんですが、大臣の立場からその点はっきりとさしておいていただきたいと思います。
  141. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 政府で調査したわけでございませんので、それはいまおっしゃったのは共産党の立場でアメリカへ照会をされたのだと思うのでございますが、いま政府委員が言いましたように、部品——部品と言ってなんでございますが、部品をみんな持ってきてここで組み立てればすぐできるというようなものであれば、政府委員が言いましたように、これは核弾頭の持ち込みと同じに考えてもいいじゃないか、それは事前協議の対象になるだろうということをいま政府委員も言ったわけでございまして、私は政府委員の言ったことはそのとおりと思っておるわけでございます。いまおっしゃった部品がそういうものであるかどうかということにつきまして私はいま、政府で向こうの政府と当たって調べたわけでございませんので、ここで何とも申し上げかねますが、政府側の答弁は、いま政府委員が、淺尾君が申し上げたとおりで、この点につきましては十分私の方でも検討したいと思います。
  142. 立木洋

    立木洋君 局長、アメリカが言っている核弾頭のコンポーネントというのはどういうふうな位置づけになっているか、アメリカ政府としての、位置づけをちょっと聞かしていただきたいと思います。
  143. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 実は私も軍事専門家でございませんので、いまお尋ねの、御指摘になりましたアメリカ側の定義そのものが政府の中でどういう位置づけかどうかということをここでにわかに御説明することが困難でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、日本側の政府の見解というものは、アメリカ政府がいかに考えようとも先ほどお答えした立場には変わりないわけでございます。
  144. 立木洋

    立木洋君 アメリカの「対公共活動の規則」という海軍長官指示文書の中によりますと、核兵器またはコンポーネントは、いかなる艦船、基地もしくは航空機にあるものといえども、存在を肯定も否定もしないということはアメリカ政府の確固たる政策であるというふうに述べておりまして、核兵器そのものとそのコンポーネントというのを明確に同様のものとして位置づけをしているわけです。ですから、この点についてははっきりと持ち込み禁止の対象にするということをもう一度大臣の立場から確言していただきたいんですが。
  145. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) いま立木さんおっしゃったのは立木さんの調査でそうおっしゃるわけでございますので、私の方もこれはちゃんと調べまして、その上で御返答するのが当然かと思いますが、いままではそういう核弾頭というようなものにつきましては事前協議の対象になるということは、これははっきり中・長距離のミサイルとしているわけで、まだそういう協議はないわけでございますので、私の方も、政府としてももう少し検討し、調べてみたいと思います。
  146. 立木洋

    立木洋君 そうすると、核爆弾あるいは核地雷、こういうものの持ち込みは禁止の対象になるんでしょうか。
  147. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まさに核地雷その他御指摘の点は、持ち込みの禁止の対象でございます。
  148. 立木洋

    立木洋君 実は、藤山・マッカーサー口頭了解がつくられたのには、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設」というふうになっているわけですね。そして、藤山さん御自身が書かれた「政治わが道」と題する中では、この口頭了解がきわめて大ざっぱなものであったということを認められて、「核持ち込みについても、私がこの問題を軽視していたわけでは決してないが、当時はいまのような小型核兵器の技術が進んでいなかったこともあって、それほど大きな論議を呼ぶ問題ではないと考えていた。」というふうに証言されているわけです。だとするならば、ここに述べられているのはまさに核弾頭及び中・長距離ミサイルなんですね。そうすると、いま申し述べましたように、核爆弾だとか核地雷だとか、それからいま言いましたコンポーネント、こういう問題も明確に持ち込み禁止の対象にする、あるいは事前協議の対象にするということであるならば、いまのこのままの口頭了解では、これは保障がないということも起こりかねないんじゃないかと思いますが、どうですか。
  149. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解については、その後国会での御議論もございまして、この口頭了解について昭和五十三年三月に日本側の考えとアメリカの考えは何ら異なっていないという点の回答がございまして、その点国会においても御報告済みでございますので、私たちとしては現在この藤山・マッカーサー口頭了解というものを改めて再確認するという必要はないというふうに考えております。
  150. 立木洋

    立木洋君 これは条約上のやはり違反かどうかという問題にまで発展するわけですし、ですから明確に——日本政府は禁止の対象にこれらは含まれると言っても、それが文言上明確に確認されていないならば、国際法上違反だと言ってその持ち込みが禁止されるという対象にならなくなるわけですから、ですから先日のような核弾頭そのもののコンポーネントとなるといろいろな答弁が出てくる危険性があるわけですから、ですから、こういった点については事前協議のもちろん対象になるということを明確にしたアメリカ側との話し合いをすべきではないか、この点について大臣の御見解を。
  151. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) この間から出ておりますのは、コンポーネント、部品の問題が出ているわけで、その部品がいわゆる核弾頭になるか核兵器になるかということで御質問が出ているわけでございまして、政府委員もそれについて答弁をしたわけでございます。で、立木さんのお調べではそういうコンポーネントが核兵器に該当するんだ、核弾頭に該当するんだ、こういう御意見でございますが、いままで政府とアメリカ側ではそういう事前協議もないわけでございますので、いませっかく御質問でございますから、そのコンポーネントの問題はひとつ私は調査してみましょう、研究してみましょうと、こう申し上げたわけでございます。
  152. 立木洋

    立木洋君 核物質そのものがコンポーネントなんですよね、組み立ての一部で。だから部品、部品と言うと何か非常に聞こえが軽く感じられますけれども、これは大変な爆発するその一つなんです。その部品すらもコンポーネントというふうに言われるわけですから、その点改めて重視して、いま大臣が言われた調査を、検討を重ねて要望しておきたいと思うんです。  では次の、きょうの午前中第三回総合安保の関係閣僚会議が開かれましたが、その内容について詳細に御説明をいただきたいと思います、外務大臣
  153. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答えしますが、私がやるのが適当かどうか、ちょっとこれわからぬのでございますが、たまたま私出ていましたのでお答え申し上げますと、私から国際情勢につきまして報告をいたしました。ブレジネフ演説でございますとか、レーガン政権の経済再建計画でございますとか、そういうものの説明をし、通産大臣がエネルギーの説明をされ、経済企画庁長官が中期ODAの目標、五年に過去五年のものを倍増するという、この三つの説明があったわけでございまして、あとはフリートーキングをするという形で終わったわけでございます。
  154. 立木洋

    立木洋君 その内容について聞きたいんですがね、内容。
  155. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 大体いま申し上げたのでございますが、一々どれがどう言ったということじゃなくて、そういう議題について説明をしたということでございまして、フリートーキングをした内容を一々話せとこうおっしゃられても、それはちょっと私から申し上げることは御勘弁を願いたいと、こういうことでございます。
  156. 立木洋

    立木洋君 そうしたら、現在の日本の対外経済協力、対外経済政策といいますか、そういう観点からどういうふうなことが問題になり、大臣としてはそれをどういうふうに受けとめられたのか、その点だけお尋ねします。
  157. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 私に関する限りのことなら申し上げますが、私はアメリカの経済再建計画の中で注目すべきことは、いろいろな歳出の削減があった、その中で防衛費はふえたということが一つでございまして、もう一つは、対外経済援助の削減ということがよく言われたわけでございますが、実質を洗ってみますとことしの実績よりも若干ふえるということじゃないかというふうに私は見ています。それほど大きく伸びなかったということで、カーター政権でもっとうんと伸ばそうといって出したものはやはり今度の削減計画で二六%ぐらいに削減になって、結果は、ことしの実績と来年と、若干来年のがふえるということではなかろうかという報告をしたわけでございます。  そして経済企画庁長官から五年間に倍増するというお話がありましたときに、私は、これまでの経済協力という問題は世界の理念として人道援助、相互依存という関係が基本になっている、その中で相互依存という問題につきましては、経済的な依存もありましょうし、あるいは政治的な国際協調ということも依存関係にありましょうし、そういう角度で従来どおり南北の問題ということを頭に置いて経済援助をやっていくべきだと、その際には、衆議院の外務委員会で決議がありました民生安定、福祉の向上、社会経済開発ということが目的でございますというような私は説明をしたわけでございまして、そういうことを私は言ったということでございます。
  158. 立木洋

    立木洋君 レーガン政権が登場しまして、アメリカの対外経済政策というのは、言うならば国際機関あるいは多国間援助というものよりも、それを大幅に削減する、それから援助の内容についても、友好国とそうでない国に分けた選別援助といいますか、そういうものが問題になってきておりますし、また内容も開発援助よりも安全保障の援助というふうなことに重点が置かれているというふうなこのアメリカの対外政策の特徴について大臣はどうお考えでしょうか、
  159. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) この経済協力問題につきましては、恐らく私があさってから行きましたときに話題になることだと私も思っております。いま立木さんのおっしゃるようなことがいろいろ言われていることは確かでございますが、経済援助の問題については、やはり日本として、日本が自主的にどの地域にどのくらいの比率でということで、御承知のように、アジアが七割、中東、アフリカ、中南米が一割ずつぐらいになっております。私はそういう地域配分で大体いいじゃないかと、こういうふうに思っているわけでございますし、もともと南北の問題ということが非常にこれは人道援助その他であるわけでございますから、これは原則として南北問題を中心に考えていく、それが世界の平和ということに非常に大切なことじゃないかというような私は考えを持っておりますので、そういうことをアメリカと話し合いをする場合には、日本はこう思いますよと、自主的にそれを判断していくという主張を私はしようと思っております。
  160. 立木洋

    立木洋君 それからもう一つのレーガン登場後の特徴ですが、これは再々問題になっておりますけれども、大変な軍事費の増大、これが数年間の間に、いま全予算の中の二五%比が三七%ですか、高めるというふうなことも問題になったり、あるいはアメリカの艦船を三〇%ふやして世界のすべての海にアメリカの艦船を置くだとか、あるいはペルシャ湾の国際常設緊急展開部隊を創設するだとか、カリフ海の沿岸国の軍事援助を増強するだとか、モロッコには新型の戦車を輸出する、あるいは韓国に対してはF16という足の長い飛行機を売却するだとか、まあ大変な事態というのがわずか二カ月足らずの間に急速にアメリカの姿勢として展開されてきているわけですが、この点についてどのようにお考えになっているのか、外務大臣防衛庁長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  161. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) レーガン政権が、ソ連の軍事力の増強あるいは第三世界への武力介入というような問題につきまして非常な重大な関心をアメリカが払って、世界の平和、安全ということについて非常に危惧の念を持っておられるということをいろんな国会の証言とか演説とかということで私は知っているのでございますが、直接まだ話し合いをしたことがございませんので、直接は向こうの意見というものはまだ聞けないわけでございます。でございますので、そういう一般的な証言とか演説とかそれをもってアメリカの全部の国防政策であるとか安全保障政策だということを私は断定するのはまだ早い、やっぱりよく相談をしてみなけりゃわからぬというふうに思うわけでございますが、アメリカが世界の西側の一つのリーダーとなって外交上も一貫性を持って、そして西側の諸国と協調して信頼性をもって、連帯を保って世界平和を維持していこうという、私はそういう努力といいますか、認識といいますか、そういうものについては私は当然そうだろうと思うし、日本としてもそのこと自体については、世界の平和を守るということについて同じ考えを持って協調連帯を保っていくという考えでございます。
  162. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  レーガン政権が修正予算において国防費の増額を図るとともに、今後もそのあれを高めていくということを最近講じているということは私も承知しているわけでございます。この点につきましては、ただいま外務大臣がお述べになりましたとおり、米国の自由世界を守るという決意を表明するものと受けとめております。
  163. 立木洋

    立木洋君 アフガンに対するソ連の介入はもちろんわれわれは反対ですよね。しかし、この問題はいま述べられたように、平和といういわゆる口実のもとに力で対決する、物事を武力で解決するというふうな姿勢というのはいかがなものか、大臣どうですか。
  164. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 世界の平和を守っていくというときに武力だけで守れるかということでございますが、私はもっと広く考えなけりゃいかぬ、経済の問題も南北の問題もあれば、外交努力もあれば、いろんなことで平和を守っていくという、総合的にこれは考えなけりゃいかぬ。ただ、バランスが崩れたところに過去において歴史的に見れば紛争が生じたということをたしかワインバーガー国防長官かだれかがどっかで言ったことがあると思うのでございますが、それもまた歴史的な事実としてこれは認めざるを得ないと思うのでございますが、軍事力だけということでは私はない、もっと広く考えにゃいかぬ、こう思っております。
  165. 立木洋

    立木洋君 外務大臣ね、大臣が所信表明演説をなさるときに「わが国としても、平和国家として、」「核軍縮を中心とする軍縮の促進のために一層大きな役割りを果たしてまいる決意でございます。」と明確に述べられているわけですね。ですから、本当にこういう力で解決するというふうなやり方に対しては毅然とした日本の平和国家の姿勢を明確にとるべきだということを、重ねて大臣の姿勢をお尋ねしておきたいんですが、会談に当たっての、いかがでしょう。
  166. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) いま軍縮の問題のお話ありましたが、特に核の問題については、まず包括的な核実験の禁止ぐらいはどうしても私はやるべきだと、一歩でも進むべきだというふうに考えておりますので、そういう話も先方に伝え、やはりバランスと言っても低レベルのバランスということもあるわけでございますから、そういう考え方は私は外交演説で述べたことは変わりないつもりでございます。
  167. 立木洋

    立木洋君 それから韓国、ジャマイカ、オーマンなどに対するアメリカからの経済援助の要請があったのかどうなのか、あったとしたら、それに対してどういうふうな姿勢で対処されるんですか。
  168. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。  経済的な問題につきましても、具体的にどこがどうというような要請はございません。韓国につきましては、従来日本は日韓ということの友好のために国の経済協力というものはずっと続けてきたわけでございまして、これも経済協力でございまして、軍用とか、軍事用とか、そういうものは一切ないということで、ことしも御承知のように、病院とか、学校とか、そういうところにたしか百九十億でございましたか、経済協力をやったということでございます。これはあくまで日本の判断でやっているわけでございます。  オーマンにつきましては、これも昭和五十二年から技術協力をやっているわけでございまして、もうずっとやっているということでございまして、特に去年ですね、園田特使が行かれたときに、民生安定上どうしても農業をもっとやらなけりゃいかぬと、それには水がないので地下ダムをつくりたいからぜひ協力してもらいたいということで、それが可能かどうかという調査団を何回も実は派遣をして調査をしているというのが現状でございます。  ジャマイカにつきましては、先般世銀主催の会議がありまして、二十一億でございましたか、世銀の会議のときに日本も出まして援助を決めたというのが、いま先生の挙げられました三地域、国ということに対して日本がやったことでございますが、これはアメリカの要請があってやっているということじゃなくて、日本が自主的に判断して実はやったということでございます。
  169. 立木洋

    立木洋君 昨年の十一月二十四日ですね、ブラウン長官やコマー国防次官、いずれも当時のあれですが、と日本側からは坂田、三原、金丸三元防衛長官と大使が同席していますが、その席上でコマー国防次官から、韓国に支援をしてほしいという要請が明確にあったんじゃないですか。この問題については、あなたが訪韓されたときに、この問題で今後韓国に対する援助を増強するというふうな話し合いはそれとの関連で行われたんではないですか。
  170. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) いまおっしゃいました去年の十一月の話は、これは前に防衛庁長官をやられた方々が行って会われたということでございまして、政府がこれに関与しているということは一切ないわけでございますから、その点は誤解ないようにしていただきたいのでございます。私がこの間訪韓しましたときにこういう話がありました。日本は韓国から物を買うのがどうも少ない、日本の物はよけい入ってくる、正常化以来百九十億ドル日本に払う支払い超過がある。そのわりに日本は投資ということについて努力が少ないじゃないか、もっと投資ということを考えてもらいたいという話があったことは確かでございます。しかし、これは民間のことでございますので、政府がどうこうすべきものじゃございませんので、これはそういう話があったということで、帰ってきて総理にも御報告するということでございます。国の経済協力をもっとふやしてくれという話は、私との間では向こうへ行きましてこれは出ませんでした。ただ、一般論として経済関係の援助といいますか、投資、そういうものをみんな含めて日本は今後ともやってもらいたいという話があったことは確かでございまして、それは去年の十一月二十四日との関連とかそういうふうには私どもは全然考えておりません、
  171. 立木洋

    立木洋君 それでは、ジャマイカの存在しているカリブ海の現在の情勢をどのように認識されているのか。ジャマイカに対する援助というのがその情勢に対してどういう意味を持つとお考えでしょうか。
  172. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 詳細は、ジャマイカの情勢等につきましては政府委員から申し上げますが、ジャマイカに対して日本は輸出入銀行のバンクローンをやっていたのです。これはいままでもやっていたわけでございますが、今度世銀が主催をしまして、ジャマイカの経済状態その他考えまして外貨の不足がある、それでまあ商品援助という形で外貨の欠乏をひとつ援助してもらいたい。これは世銀の主催の会議でございまして、それで日本がそれに応じたということでございまして、これ一つによってカリブ海の関係の政治的な関係がどうとか、そういうふうに私ども考えておりません。
  173. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) ジャマイカの経済情勢の問題でございますけれども、極度の外貨不足のために世銀、IMFといたしまして緊急援助する必要があるということになりまして、IMFは七億五千万ドルの外貨が必要であるという判断を下したわけでございまして、日本はこの世銀主催の会議に出まして、先ほど大臣から御答弁のございましたように、二十一億円までの商品援助による円借款を行うという意図表明をやったわけでございます。
  174. 立木洋

    立木洋君 それじゃオーマンですがね、これはオーマンのあれはアメリカから要請はなかったといいますが、実は八〇年の二月、当時の園田外務大臣が参りまして、そのときオーマンの問題というのは、オーマンに対する援助というのは中東の安全に対してきわめて重要な役割りを持っているということを明確に述べられているわけですね。そして、いまオーマンにはアメリカ軍の基地があるわけですし、ここに対する援助というのはやはり事実上今度急激にふやすという態度をとっているわけですから、私は単純なものではない、やっぱり中東におけるアメリカの政策との関連ということを全く度外視するわけにはいかないじゃないかと思うんですが。いかがでしょう。
  175. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) オーマンとは日本も油の輸入をしているわけでございまして、相互依存ということから言いましても、これは前から技術協力ということをやっていたことは昭和五十二年から実はやっているわけでございまして、園田特使、これは去年の二月は中東湾岸に園田特使として行かれたのでございますが、そのときに民生安定にひとつ農業を振興したいんだということで、大体一千ヘクタールぐらいのところに灌漑のできる水を何とか確保したいということで、日本に民生安定のためにひとつ協力してもらえないかという話があった。それで、技術者を出しまして調査しているということでございまして、私どもはオーマンの相互依存関係等考えまして、経済的な相互依存等を考えまして、そして民生安定のために向こうでぜひという需要がございますので、これはダムをつくれるかどうかという調査をしているというのが現状でございまして、調査の結果はまだ報告は来ておりません。報告を見てどうするかということを考えようと、こう思っておるわけでございます。
  176. 立木洋

    立木洋君 そしたら、米側から中東のこれらの緊急展開部隊を米軍が創設すると、国際的な。そういう軍事施設や基地の建設などの協力要請が来た場合にはどういう態度をとりますか。
  177. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 経済協力は、御承知のように、軍事用途はいかぬ、あるいは国際紛争を助長するようなことがないようにということでございまして、その国の民生の安定とか、社会経済の開発ということが目的になっているわけでございますから、軍事基地とかそういうことに経済協力はこれはしないという方針を貫いていくつもりでございます。
  178. 立木洋

    立木洋君 日本の民間企業が協力するというのはお認めですか。
  179. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 民間のことにつきましては、これは従来も武器の輸出というあの原則あるいは政府の統一方針、あれに基づきまして判断をしていくというのがいままでの政府の態度でございますので、その点は従来どおりでございます。
  180. 立木洋

    立木洋君 公明党の黒柳議員の質問に対する回答の中で、外国の軍事施設の建設にかかわるものがあるからといって直ちに規制することは適切ではないというふうに回答書の中には述べられてあるわけですね、民間の場合には。これとの関連はどうです。
  181. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 軍事基地といってもいろいろな対応があるわけでございます。住宅だとかプールだとか、そういうようなものも入っている場合がある。したがって、五十三年の経済協力の議論のとき、それから五十一年のときの議論もあるわけでございますが、一応直接戦闘の用に供されないものというようなことで従来やってまいりましたので、ただいま申しましたようないろんな対応があって直接戦闘に供されるものはやらない、そうでないものは従来もやっておったと、そういう趣旨でございます。
  182. 立木洋

    立木洋君 これは明確に、衆議院の五十三年の外務委員会の決議の中でも、軍事的用途に充てられる経済協力は行わないということに明確にされているわけですね、そうすると、軍事基地に対しても、施設に対しても、いろいろな対応があるからといって、それなら一体どこでけじめをつけるんですか。
  183. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 衆議院の外務委員会の決議は、これは経済協力で政府が関与して円借款やったり無償協力をやるというときのこれは決議でございまして、民間の経済援助とか協力とか、そういうものの決議じゃないということでございますので、そこはひとつ誤解ないようにお願いします。
  184. 立木洋

    立木洋君 それでは、民間では構わなくて政府の場合はだめだというのがけじめですか。
  185. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 民間の場合はいま政府委員から申し上げましたように武器輸出の三原則政府の統一方針というふうなものに基づいてやっているわけでございますので、政府でお金を使ってやる場合にはいま言ったような衆議院委員会の決議を厳格に守っていく、政府が関与して経済協力はそういうものにはしないと、こういうことでございます。
  186. 立木洋

    立木洋君 通産大臣、そういうふうな姿勢で民間企業を指導しているのでしょうか、
  187. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 私どもはあくまで国際紛争を助長するようなことはいけないといったてまえをまずベースにいたしまして、武器輸出三原則並びに政府の方針、そういうものにのっとって民間の貿易あるいは経済協力というようなものを進めております。
  188. 立木洋

    立木洋君 いや、通産大臣ね、先ほどは軍事的な施設といってもいろいろなものがございますから一概には申せませんというのが話なんですよ。どこで区別をつけるのかということも含めて
  189. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま申しましたように、軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるものと、こういうようなものはやらないと、そういうことでございます。
  190. 立木洋

    立木洋君 もう一度通産大臣ね、経済的な協力という口実でいろいろな場合の対応があるわけですわ。しかし、軍事的な用途に協力しないということについても、やっぱり民間に対してはそれなりの指導を平和国家としてやらなければならない。だから、何をけじめでやるのか、通産大臣のお考えをもう一度はっきりさしておいていただきたい。
  191. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 先ほど申し上げましたように、政府の方針、武器輸出三原則というものをベース、土台にいたしまして、私どもは申請があればそれを受けてよく調査します。それから今度は税関でそれをチェックして、それが不当ならば罰則を適用するというようなことをずっと貫いておるわけでございます。
  192. 立木洋

    立木洋君 大蔵大臣、大蔵省が発表されました五十九年度までの財政中期展望の中で、対外経済協力については大体一一%からの毎年の伸びが展望されているということですが、いわゆる対外経済協力は、いま外務大臣や通産大臣いろいろ述べられましたけれども、どういうふうな考え方で大蔵省としてはお金を出すのか。国民の血税を使うのですから、そのあたりのけじめ、大蔵省としてのお考えもお尋ねしておきたいのです。
  193. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) わが国の経済協力の基本方針といたしましては、従来から、開発途上国の民生の安定と向上、これを図る、そのための自助努力を支援する。くれっ放しじゃありませんよと、お金をやって、そのかわりお金とか物で、そいつをてこにその国の経済を発展させなさいというためにその役立つものを上げます。それによって世界経済全体の均衡のとれた成長を確保する、こういうことのために経済協力をいたすわけであります。一口で言えばそういうわけです。
  194. 立木洋

    立木洋君 外務大臣、重ねてこの経済協力の問題で最後にお尋ねしておきますが、先ほど来、韓国。ジャマイカ、オーマン等々言いましたが、さらには、つけ加えるならばケニアだとかあるいはソマリアだとかいろいろな日本がやっておる援助の対象国があるが、これらの国々というのは、いまのカリブ海の状況を見ましても中東の状況を見ても、アメリカがきわめて重要にてこ入れをしている、軍事的な、こういう国々なんですよ。そういう国々に対して日本の援助というのがやはり伸びてきている。これはやはり私は黙って——いま大臣が言われたように、アメリカから言われたからだということではないというけれども、私はこれはきわめて重要な点だ。本来、先ほど言われたように、南北問題を重視し、人道的な立場、開発援助を重視するという観点でやるならば、この点については明確にアメリカに対して、そういう要請があった場合には、受け入れられない、日本の平和国家としての立場はこうだということを明確に述べるべきだと思いますが、その点もあわせて、もう一度最後にこの経済協力の問題で御確認を願いたい。
  195. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) いまお挙げになりましたケニアにはたしか経済援助をいままでやっております。それからソマリアには食糧援助。人道上の問題でたしかやったことがございます。いままでも実はやったことがあるわけでございまして、いま立木さんのおっしゃったことは、従来やっていたものまでやめろと、おかしいじゃないかということでは私はないと思うのでございまして、これはどういうふうに考えるか、その援助の内容次第の問題だと私は思うわけでございまして、これは日本が自主的に判断してやっぱり決めていくという原則は貫こうというふうに思っております。
  196. 立木洋

    立木洋君 エネルギー政策を総合安全保障の重要な柱だというふうにとられているわけですが、具体的にはどういう政策をお進めになるのか。
  197. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 総合安全保障の中におきますエネルギー政策の位置づけでございますが、何といいましてもわが国のエネルギー、大変脆弱な体制にあるわけでございますので、いかにして安定供給を図るかということに最大の主眼を置いているわけでございます。  その安定供給のために私どもは三つの柱を考えているわけでございます。その第一は石油の安定供給の確保、第二は省エネルギーの思想の徹底、第三は石油代替エネルギーの開発、この三つをベースにいたしましてわが国のエネルギーの安定供給の確保を図りたい、これが総合安全保障におきますエネルギーの位置づけだというふうに認識をいたしている次第でございます。
  198. 立木洋

    立木洋君 そのエネルギー政策の中で、石炭液化開発はどういう位置づけでしょうか。
  199. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 石炭の液化につきましては、将来私ども石油の依存率を全エネルギーの半分にしよう、五〇%にしよう、十年後ですね、六十五年までにしたがって、代替エネルギーの中に石炭の液化というものはかなりのウエートを占めておりまして、この点については、日本の国内では三段方式の液化を進めていくと同時に、海外におきましてもSRCIIとか、コミニック、つまり神戸製鋼、日商岩井、三菱化成などが合同して豪州褐炭のビクトリア州で緒についておる石炭液化、そういうようなもの、日本のいままでやっておった液化とそういう海外での液化方式を最後は研究自体でジョイントして液化をさらに進めていこうという方針でおります。
  200. 立木洋

    立木洋君 日本政府が参加することになったSRCII計画、これはアメリカ政府が手を引くとかというふうなことで進んでおるようですが、事態は現在どういうふうになっているでしょうか。
  201. 田中六助

    国務大臣田中六助君) SRCIIは、国会でたびたび問題になっておりまして、私どもも、いま上程しております新年度予算案の中に百五十億円のSRCIIのプロジェクト、つまり共同開発の日本側の分を、これはアメリカ、西ドイツ、三国のうち、アメリカが五〇%、西ドイツと日本が二五%ずつでございますけれども、すでにこれは昨年度は七十三億程度日本は計上しておりまして、それを使っておりますし、今回は先ほども申しましたように百五十億程度を見込んでおります。  ところがアメリカ、レーガン政権になりまして、一般教書の中に、これは日本で言えば一般会計でございましょうが、そこから合成燃料公社というところにこれを移したいということを言っておりまして、これにつきましては、立木委員承知のように国際的な協定でございますので、アメリカが一方的にそういうことをいたしましても、日本としてはまだ十分のアメリカ側の本当の意向を聞いておりませんし、それについての協議などが正式にあればやらなければならないという段階でございます。
  202. 立木洋

    立木洋君 大臣、いわゆる契約するその主体がかわるわけですね。アメリカ政府のエネルギー省が手を引く。そうすると、これはどういうふうな——主体が変わってくるんですから、これは全く白紙に戻さないとどうなるかわからないのじゃないですか、アメリカ政府が手を引いて。
  203. 田中六助

    国務大臣田中六助君) いずれにしても、合成燃料公社というところに金を移してやるというんですから、やることには間違いないわけですね。ただ、そういう一般会計みたいなどころから出ないということが問題だろうと思いますけれども、ただいま申し上げましたように、国際協定を結んでやったことで、昨年日本が金を出資しただけではなくて、アメリカ自身も昨年度は出しているわけです。今年度は合成燃料公社というところに任せてそこでやるんだということでございますけれども、これは明らかに協定違反、合意違反でございますので、しかも、アメリカ側のそれについての言葉が、これを実行するについては協定国である日本や西ドイツと十分協議した上で決めるというふうになっております。したがって、いずれ協議をしなければならないでしょう。そのときに、私といたしましては、去年そういうふうにやって——これは御承知のように約八年間の契約でございますから、長期展望も持っておりまして、急にアメリカから二年日から私のところは合成燃料公社に持っていくんだというふうに言われましても、これはちょうど、物の大きな丸の半分がそういう意向で、私ども、それから西ドイツもそうでございますが、まだそういうふうに納得はしておりませんし、もしアメリカのいまの考えが正しいものであるならばいずれ協議という段階になるでしょう、話し合いという段階になりましょう。しかし、私ども日本の立場をあくまで貫く方針でおります。
  204. 立木洋

    立木洋君 大臣、エネルギー省から公社の方に変わった、したがってただ引き継いだだけだと、これは単純じゃないんですね。もともとレーガン政権というのは支出を少なくするために切り捨てるというふうな態度をとったんですから、その結果がこうなっているんですから、ですから、単純に問題を考えてもらっては私は困ると思うんですよ。だから、どのような状況の変化があっても日本としては分担金を出すという姿勢をとるのか、ある場合には白紙に撤回するというふうな態度で臨むのか、その点を明確にしていただきたい。
  205. 田中六助

    国務大臣田中六助君) ただいま二回にわたって申し上げましたように、私どもは、これは協議をしなければ一方的にそういうことをされても、実はそれぞれの計画があって、アメリカが困るからさあいままで協議をしておったのを違えるのだというようなことが、国際的に通るかどうかは私はきわめて疑問だと思いますし、私どもは、放棄もへったくれもない、決まったとおりのことを言うだけでございます、
  206. 立木洋

    立木洋君 もともとこの石炭液化計画が問題になったときのハドソン研究所の一九七七年九月の報告お読みになっているだろうと思いますが、どういう内容ですか。
  207. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 私、ハドソン研究所のそういう石炭液化についての項目を、正直に申し上げて読んでおりませんので、事務当局が知っておるなら別でございますけれども、一応尋ねてすぐ御返事いたしたいと思います。
  208. 立木洋

    立木洋君 読んできてくださいと頼んだんですが。
  209. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) ただいま御指摘のハドソン研究所の石炭液化計画の報告に関しましては、私ども承知いたしております、  どういう内容かという御質問でございますので、一口で申し上げますと、日米独三カ国の共同開発にかかわるこの事業につきましては、その成果によって出てまいりました燃料につきまして、平常時におきましては日本とドイツにも供給してもよろしいけれども、一たん緩急のあった場合、つまり石油事情につきまして大変な、いわゆる石油ショック的なことが起こった場合には日本と西独には供給をストップして、そのかわりにお金を払った方がいいのではないかと、こういう提案を、ハドソン研究所が国家エネルギー計画委員会の諮問を受けましてエネルギー省に報告をしたと、こういうのが一口に申し上げますとレポートの内容でございます。
  210. 立木洋

    立木洋君 通産大臣、いまお聞きのようなことなんですよ。問題は、アメリカからさあ参加してくださいといってSRCIIに参加した、今度はアメリカが支出を削るからといって政府が金を出さぬ、そんな場合でも日本は白紙に撤回するというふうな強硬な意思さえとれない。もともとこの基礎になったのは何かと言うんです。いわゆる金がたくさんかかるんだから日本と西ドイツを入れたらいいじゃないか。いざとなって困れば非常時のときには供給を打ち切る、こんなことであんたエネルギーの安全保障の政策だと言えますか、このSRCII参加が。どうですか。
  211. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 先ほどお答え申し上げましたハドソン研究所のレポートは、申し上げたとおりの内容でございますけれども、これはあくまで、ハドソン研究所といたしましてアメリカのエネルギー省に対しますレポートであるわけでございまして、私どもも、昨年の七月に本件につきましての契約を調印いたします際に大変この問題を気にいたしたわけでございます。せっかく大金を拠出いたしましてこの共同プロジェクトに参加いたしましても、出てまいりました油を日本に供給することができないということでございますと参加をする意義がないということでございますので、ハドソン研究所のレポートをどういうふうにエネルギー省として評価するのかということも確認いたしまして、このレポートは別といたしまして、政府間でその問題につきましては十分なる確認を行うということを確認いたした上で、契約に調印をしたという次第でございます。
  212. 立木洋

    立木洋君 製品が日本のものに確実になるという保証はありますか。
  213. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 私どもは外交ルートをもちましてその点を確認いたしておりますので、そういうふうに確信いたしております。
  214. 立木洋

    立木洋君 この問題最後になるので、最後にお答えいただきたいんですが、この結んだ協定の第六条の中に述べられておりますように、製品引き渡し条件、支払い条件等については交渉して決めるということになっているんですよ。だから、明確に必ずなるとなってない。非常時の場合には向こうで打ち切るんだと。日本や西ドイツを都合のいいときには入れておいて、金がたくさんかかるんだからと。ハドソン研究所が、それが研究した報告が基礎になってこのSRCII計画というのが出てきたんですよ。そういう問題について、これで日本のエネルギーの安全保障の政策だと言えるのかどうなのか。この問題は、やはりいまの時点で明確に白紙に撤回すべきだということを含めて大臣考え方をお聞きします。
  215. 田中六助

    国務大臣田中六助君) できた石炭の液化物は日本に出すということもうたっておりますし、それからもう一つ、私は、最初に申し上げましたように、別に技術を盗むわけではございませんけれども日本がガルフ社を含めた技術というものを習得することは、将来の石炭液化について非常に助かると思います。そういうことも含めての協定でございますし、私どもはこれをいま白紙に撤回するというようなことはさらさら考えていませず、あくまでこれを貫いていくという方針に変わりはありません。
  216. 立木洋

    立木洋君 エネルギー政策の面でも完全にアメリカに追随していくような姿勢だということがはっきりしただろうと思うんです。  その問題はまた次の機会にお尋ねすることにして、次に、韓国との協力の問題についてですが、私は、五十二年の十一月二十二日、参議院の外務委員会でこの問題についてお尋ねしたときに、韓国の軍需指定工場のようなものには日本は協力しないと当時の鳩山外務大臣が明確に述べたんですが、現在でもこのお考えにお変わりがないかどうか、伊東外務大臣と通産大臣にお尋ねします。
  217. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げますが、政府の関係する経済協力は、先ほどから申し上げますように、社会経済開発、民生の安定、福祉の向上ということが目的でございますので、いまやっておりますのも福祉の向上、民生の安定というようなことで、学校とか病院とかに経済協力をやっておるわけでございますから、従来同様、鳩山外務大臣お答えしたというのと同様、政府が関係する経済協力はそういうことは考えていかないということでございます。
  218. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 衆議院の外務委員会での決議も踏まえて、私どもは、経済協力というものは、先ほど外務大臣が述べましたように、あくまで民生の安定とかあるいはその社会経済に及ぼす影響を十分考えた上で経済協力を進めております。
  219. 立木洋

    立木洋君 軍需指定工場に対して協力をするというふうなことについて、いかがですか。
  220. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 武器輸出ということではなくても、私どもは国際紛争の種になるようなことを差し控えて、しかもそのベースには武器輸出三原則あるいは政府方針というものを踏まえて経済協力というものを進めておるわけでございまして、そういう観点から外れるようなことは私どもとしてはそれをやらないという方針でございます。
  221. 立木洋

    立木洋君 通産大臣、なかなか直接的な御答弁をされませんけれども事務当局で、政府委員の方にお答えいただきたいんですが、外務省、韓国防衛産業振興会というものはどういうものか御説明ください。
  222. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) お答えいたします。  防衛産業振興会は、一九七六年に設立されたものでございまして、防衛産業業界の関係の団体でございまして、業界の研究開発に対する指導あるいは業界の政府に対する意見の取りまとめ等に当たっておられるというふうに聞いております。
  223. 立木洋

    立木洋君 これはどういう措置法によって成立した組織でしょうか、
  224. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 軍需調達に関する特別措置法によって設立された団体でございます。
  225. 立木洋

    立木洋君 その特別措置法の二十二条の二にこう書いてあるんですね。「軍需企業体及び研究機関を経営する者はことして、「国防部長官の認可を受けて防衛産業振興会を設立することができる。」と、このように書かれてあるわけです。ですから、まさにこの振興会は軍需企業体、その研究機関の責任者で構成されているということになるわけですが、間違いありませんか。
  226. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 御指摘のとおりでございます。
  227. 立木洋

    立木洋君 委員長、ちょっと資料を配らせていただきたいのですが……。    〔資料配付〕
  228. 立木洋

    立木洋君 いま資料をお配りしましたけれども、これはつまり韓国防衛産業振興会の役員、メンバーが社長となっておる企業であります。ここに出されてあるのは十五社でありますけれども、この十五社に対して何と日本の協力しておる企業は四十社に上っているわけです。こういうようなことは、これは少なくともいまの答弁から見ても許されるべきではない。これは三年前の私への答弁からは若干後退したような答弁をされておりますけれども、しかし、現在の答弁ですら、こういうことはもっと取り締まるべきではないか。いかがでしょうか。
  229. 田中六助

    国務大臣田中六助君) これは、日本との交流というか、日本から物資が輸出されているという意味ですか、こういう会社は。どういうことなんでしょう。
  230. 立木洋

    立木洋君 技術協力や投資や貿易や、そういう協力関係にある企業です。軍需指定工場に対する協力ということです。
  231. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 日本の企業がこれらの軍需会社である韓国の企業と協力しておるというふうな見方でございましょうけれども、私どもはあくまで先ほどから申しますように、国際紛争の種になるようなこと、それから武器輸出三原則あるいは政府方針、そういうものに基づいたことでやっておるわけでございまして、それが軍事的ないろんな品物をつくるのに一緒になってやっておるというような解釈は全く持っておりません。
  232. 立木洋

    立木洋君 外務大臣、これは明確な軍需指定企業体なんですよ。これはさっきの特別措置法で明確に認定されている企業なんです。これは何も私が勝手につくり上げたものじゃないのです、韓国の政府が明確にしておる振興会の軍需企業体それ自体なんですよ。それに対する協力がこうして行われている、こういうことをどうお考えですか、外務大臣
  233. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 先ほどから申し上げております外務委員会の経済協力に対する目的の限定的な目的というのは、これはあくまで政府が経済協力をする場合のあれは決議でございまして、一般の民間の企業の場合には、これはいわゆる武器輸出の三原則あるいは政府の統一方針ということでこれは行われているわけでございますので、この内容がどういうものであるか私は直接わかりません。わかりませんので、わからぬ段階でその三原則政府統一方針にこれが抵触するかしないかということは、私自身いますぐここで判断できませんので、私から答弁することは差し控えたいと思います。
  234. 立木洋

    立木洋君 事務当局で結構ですが、韓国では武器を勝手に生産できるでしょうか。
  235. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 先ほどの法律の指定に基づきまして、そういった企業が武器の製造に当たるものと承知いたしております。
  236. 立木洋

    立木洋君 通産大臣、先ほど武器輸出三原則の精神にのっとってという趣旨のことを言われましたが、いまも言いましたように、ここで出されておる特別措置法の精神から言っても、これは韓国では軍需物資、武器なんというのは勝手に生産できないのですよ。これは韓国政府の認定を受けなければならないことになっている。その企業に対してこうして公然と協力がやられている。まさに韓国の軍事増強に協力をする、民間でもこんな四十社がこれほど大々的に協力する、こういうことは許されるのですか。もう一度はっきりさせてください。
  237. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 政府委員としてとりあえずお答えさせていただきますが、先ほどの表を拝見いたしておりませんけれども考えまするに、日本の関係企業がこれらの韓国にある韓国の企業と協力ないし提携いたしましているにしても、いわゆる兵器製造との関連で協力しているものではないというふうに考えられるものと思うわけでございます。
  238. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) いまアジア局長の方から御答弁がございましたが。いま配付されました資料をとりあえず拝見しておるところでございますが、「協力している日本企業」というところにずっとたくさんの企業の名前が入っておりますが、協力の態様というのはいろいろあろうかと思います。恐らくは、合弁企業の場合には韓国の法制から言いますと武器の製造はできないということになっておりましょうし、ここにございます協力の内容は、すべて軍事的な関連のない面についてだけの協力というふうに理解するよりほかないかと思っております。
  239. 立木洋

    立木洋君 これ以上この問題で時間をとるわけにはいきませんが、通産大臣、最後に、私がこれほど調べたんです。これは全く明確な事実なんですよ。政府自身が先ほど武器輸出三原則に基づいて今後対応していくと言われるならば、少なくともそういうふうな軍事的な増強に役立つようなことはしないということも亡くなった大平さんも言われている。そして、そういうような軍事の増強やあるいは紛争を拡大するようなそういうようなことに、直接軍需指定工場に協力するなんというようなことはやるべきではない。だから、最低限あなたは責任を持ってこの問題をよく調査をして、今度の予算委員会までに私の調査した内容がどういう内容なのか、そのものを報告していただきたいが、いかがでしょうか。
  240. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 日本の企業会社が四十数社も韓国の会社に協力しておるということは、品物の方を見ますと非常に汎用品みたいなものが多いし、それが全部軍需にいっておるというような見解を私は現段階でとるわけにはいきませんし、どうしても調べると言うんでしたら、それは十分調べて御報告申し上げたいと思います。
  241. 立木洋

    立木洋君 外務大臣、通産大庫もよく聞いていただきたいんです。先ほど言った、私は、五十二年十一月二十二日に外務委員会で質問をして、大韓重機は軍需指定工場である、これと協力している日本の企業があるからこれを調査せよと言って要求したんです。そうしたら、ちゃんと当時のアジア局長中江さんが韓国の商工部に照会したと言うんです。照会した結果は何か。そういうことは一切ございません。ございませんじゃない、堀田ハガネはちゃんと事件として出てきているじゃないですか。とことんまでわれわれが追及して、はっきりしようとしない。そのときそのとき、その場逃れのようなことを言ってもらっておっては困るんですよ。責任を持って私は調査してもらいたいと思います。そういう事例があるからこそ私は言っているんです。出てきたら、またあなた謝らなければならぬということになるんですよ。
  242. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 謝るかどうかまだ決まっておりませんけれども、まあ立木委員指摘のようなことがあるかどうかは、これから調べて報告しろということでございますので、それをして、その結果またいろいろ対処してみたいと思います。
  243. 立木洋

    立木洋君 では調査してくださるということですから、その点よろしくお願いしたいと思います。  次に、国鉄の問題ですが、あの特定地交線の政令が公布施行されてからいま選定作業に入っているようですが、その段取りと日程について御説明いただきたい。
  244. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私からお答えいたします。  政令は三月三日制定いたしました。それを基準にいたしまして鋭意国鉄で対象路線の選定を急いでおる段階でございまして、まだ私の方には具体的に選定作業がどの程度まで進んでいるかという報告はございませんが、懸命に努力しておるところだと思っております。
  245. 立木洋

    立木洋君 いまのは国鉄にやってもらった方がいいんです。国鉄に、段取りと……
  246. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 基準を決める政令をお出しいただきましたので、それに基づきましてもろもろの要件に該当するかどうかという実態を少し調べてみる必要があるわけでございますので、われわれとしては、所要のお役所等にいろいろの実態を御照会いたして、そう遠からざる時期に選定をいたして運輸大臣の方に申し出たいというふうに考えております。
  247. 立木洋

    立木洋君 特定地交線の選定に当たっては知事の意見は聞くということがございますが、その地元住民の意向をどういうふうにくみ上げていくのか、そういうふうな点についてはどのようにお考えですか。
  248. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 当然に地域の住民の方々の御意見なり御要請を承ることになるわけでございますが、それは主として協議会、いわゆる法律に基づきます協議会がございますので、協議会の場において所要の御意見を所要の方々から承るということになろうかと思いますし
  249. 立木洋

    立木洋君 第三セクターの問題で、財政負担について現在の時点で運輸大臣はどのようにお考えですか。
  250. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 第三セクターにつきましては、自治省と私との方で統一見解というのをつくっておりまして、それに基づきまして——こういうふうな統一見解でございます。これは五十五年十一月六日、「特定地方交通線の第三セクターによる鉄道輸送への転換については、現状から見て、第三セクターにより経営する場合でも赤字が生ずるおそれがあるので、地方公共団体が第三セクターに参加することについては、その財政負担を慎重に検討した上対処しなければならない。」こうなっております。したがいまして、私たちといたしましては、第三セクターの申請がございましたら、その第三セクターによって経営していく場合においてどの程度まで赤字に対応し得る力があるか、あるいはまた経営の実態から見て第三セクターにたえ得るものであるかどうかという点を十分に判定いたし、その上で決定いたしたいと思っております。
  251. 立木洋

    立木洋君 第三セクターという点について、自治大臣はどのようにお考えですか、いまの時点で。
  252. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) いま運輸大臣から申されましたとおりに、自治大臣と運輸大臣でもって昨年の十一月運輸委員会において、いま申し述べられたようなそうしたことを表明しているわけです。  そこで、地方自治体といたしまして、これが赤字という問題については、御承知のとおりに五年間は運営費の赤字の二分の一は国鉄といいますか運輸省の方で見ると、こういうようなことになっておるわけですが、大体それでおさまるかどうかはっきりしないわけですね。そうしますと、これについては現在地方団体としては財源措置はないわけです。そういたしますと、一般財源と申しますか、ほかの事業を切ってでもそれをやるというようなことにならざるを得ない。また、それをやる結果はほかの地方団体にもいろいろな影響を及ぼす、そういう点から慎重にやってもらわにゃいかぬと、こういうことを表明しておるものだと理解しております。
  253. 立木洋

    立木洋君 慎重に検討した上対処すると言われてもう四カ月なんですが、その検討はどういうふうになっています、運輸大臣
  254. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 具体的な線名がまだ選定されておりません。したがいまして、それぞれによりまして事情が違いますが、その選定が具体的に進んでまいりました段階で、第三セクターへの移行についての希望が出てくるように思うのでございます。その希望が出てまいりました段階でわれわれは検討いたしたいと思っておりまして、いまは一般論にしかすぎないと思っております。
  255. 立木洋

    立木洋君 大臣ね、慎重に検討するということだけしか決まっていないんでしょう。それで実際にはもう知事に通告するわけでしょう、四月に入ったら、そして実際には協議会が数カ月後に発足するというわけでしょう。協議会は一体何を協議するのか、政府が基本的にただ慎重に対処することだけが決まって、中身が決まらないで一体何を協議するんですか。
  256. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) その選定がされて協議が始まりましてから二年の歳月がございますから、この二年の間に十分な協議が整い、その中で第三セクターの問題についても意見がいろいろ取りまとめされていくものだと思っております。
  257. 立木洋

    立木洋君 では話をちょっと具体的にしまして、三陸縦貫鉄道に対して運輸省はいままでどういう認識でこられましたか。
  258. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) いわゆる三陸縦貫鉄道につきましては、地元では開発線の工事を鋭意急いで完成してもらいたいという希望がございます。われわれもその線に沿って努力をしてまいりましたが、五十五年春以降は工事がとまっております。したがいまして、この線につきまして地元でどのように今後この鉄道全体を扱うかしそれはすなわち、地域交通としての活用と地域の開発問題と密接に結びついておりますので、この件につきましては十分に地方団体の意向を聞いてわれわれは対処いたしたいと思っております。
  259. 立木洋

    立木洋君 鈴木総理がまだ総理になる前、去年ですが、この三陸縦貫鉄道というのはばらばらに見るのではなくて統一して見ると、これは運輸省や国鉄としても幹線として認識しているというふうに述べられてきたんですが、それが今回ばらばらに考えられて、いわゆる第一次選定対象に入っているわけですが、このあたりのお考え方について国鉄総裁と運輸大臣のお考えを聞きたいんです。
  260. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 今回、地方交通線ないし特定地方交通線という概念をどういうふうにしたらいいかということをいろいろ議論いたしました段階で、いろいろ本線という名がついているところもありますし、いろいろあるわけでございますけれども、やはり基本的には従来の社会的通念として成り立ってまいりました一つの線区という概念を中心に構成せざるを得ないのではないかということでありまして、まあ三陸縦貫鉄道という言葉は地元では大変なじんでおられる名称といいますか、呼び方でございましょうけれども、従来は何々線という幾つかの線区に分けてわれわれとしては概念構成をしてまいりましたので、これを一たん崩しますと、全国的にどれを一つの線と見るかということについていろんな論議が出るわけでございまして、法制技術的にはとにかく、実質的には従来の名称をとっておる単位というものを中心に立てたわけでございまして、また現実に三陸縦貫の問題は、そういう線区ができますれば、一つの長い線になるわけではございますけれども、実際のお客様の流動としては、盛岡まで東北新幹線ができるというようなことになりますと、かなりの量が、やはり海岸と内陸部とをつなぐ線を御利用になって行かれる方が多くなるはずでございまして、必ずしもいま名づけられております三陸縦貫というものが、一つの長い線区として縦に御利用になるということが、地元でおっしゃるほど将来の姿にはならぬのではないかとわれわれは考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、現在のところはこれまで呼びなれてまいりました線区の名前の単位によって、お客さんが多いとか少ないとかいうことを基準考えてまいりましたし、これからもそうせざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  261. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 仰せのとおりいわゆる三陸縦貫鉄道、これは一部まだ完成しておりませんので、貫通しておりませんが、これが全部工事が完了し貫通いたしましたら、やはり海岸線地帯におきます幹線としての重要な交通的役割りをするものと思います。さらにこの線が貫通することによりまして、あるいは漁港としての産業振興なりあるいは観光開発なりも進んでまいりましょうし、さらには先ほど国鉄総裁が言いましたように、盛岡を中心といたしました新幹線網との横の連絡も盛んになる、そういう意味におきまして、三陸縦貫鉄道はいわばあの地方におきます骨幹的な路線になるであろうと思っております。でございますから、現在の状況におきましては、いわば開発線の工事も進まないし、また特定地方交通線としての廃止の対象になっておりますが、これがいわば岩手県を中心といたしまして、地方団体等が中心となって、建設と経営について地元交通として維持していくという意思が明確になり、その体制をとってくれるならば、われわれといたしましても工事の再開を急いでいきたいと思いますし、また縦貫鉄道としての貫通を図っていきたいと思っております。
  262. 立木洋

    立木洋君 総裁、全線開通した場合などの経営試算等々行っていますか。
  263. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私の方では公式にそういう作業は行っておりません。ただ地元でいろいろ御研究願うことは必要なことでございますし、その場合にいろいろな資料その他は国鉄が一番持っている場合もあるわけでございますから、個別個別にお尋ねがあればお答えをするというようなことはやっておりますが、国鉄として見通しを立てたり、収支を立てたりするということは現段階ではいたしておらないわけでございます。
  264. 立木洋

    立木洋君 三陸縦貫鉄道のいま開通している部分のいわゆる輸送密度は、それぞれどうなっているんでしょうか、事務当局の方で結構です。
  265. 杉浦喬也

    政府委員(杉浦喬也君) お答えいたします。  三陸縦貫鉄道の北の方から申し上げますと八戸線ですね、これが輸送密度三千七百八十一人、これは昭和五十四年度の実績でございます。それからその次に久慈線というのが続いておりますが、これが輸送密度七百六十二人、その後に同じ名称の久慈線がいま建設中でございます。それから、そこにさらに宮古線というのが北から接続いたしておりまして、これの輸送密度が六百五人、さらに宮古線から釜石にかけまして山田線の一部が接続しております。この山田線全線にわたりましては二千四百二十三人という輸送密度でございます。それから、釜石から南におりまして盛線というのがいま建設中のものと、それから現在一部、部分開業しているものがございます。盛線の開業部分は一千三十九人でございます。そこにさらに南に気仙沼線が接続をいたしております。この気仙沼線は千五百九十六人、こういうような接続及び輸送密度の状況でございます。  ただいま五十四年度と申し上げましたが、五十二年から五十四年の三年間の平均でございます。失礼いたしました。
  266. 立木洋

    立木洋君 先日のある新聞によりましていろいろ試算された内容が報道されていたわけですが、たとえば久慈線、宮古線をつないで七十一キロにして開通した場合に、久慈線の需要が三割増し、宮古線の需要が倍になる、そういうふうな計算をしますと、現在述べられた数字から言えば、いわゆる選定基準四号になって第一次選定対象からは外されるということになるのではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  267. 杉浦喬也

    政府委員(杉浦喬也君) お答えいたします。  現在、輸送密度の算定の方法につきまして、これは運輸大臣が決めるということになっておりますが、その場合にいろいろな将来需要の予測数値をつけ加えるための基準を設ける必要がございます。この新線の問題につきましても、新線が六十年度までに開業をするという確実性のあるものにつきましては、開業後にやはり当然従来のぶっちぎれた線に比べまして輸送需要増が期待できるわけでございますが、そういうものはこれから開業後貫通された場合の輸送需要増というものを付加して算定をしたい。ただ、現時点におきまして私どもの方では数字的に明確にまだ把握をいたしておりません。ふえるということは間違いないと思いますが、現時点ではお答えがしにくい状況でございます。
  268. 立木洋

    立木洋君 鉄建公団の試算によるという報道によりますと、この三百四十五キロ三陸縦貫鉄道が全線開通した場合、倍になるというふうな数字だとか、あるいはその輸送密度が二千六百六十二名になるというふうな数字なんかも出ているわけですが、こういうふうにしてくると、第一次選定対象からやっぱり外すだとか、いろいろな変更されなければならない要因も出てくるのではないかと思うのですが、そこらあたりの鉄建公団の内容が報道されている点もあわせてどういうふうにお考えになっているのか。
  269. 杉浦喬也

    政府委員(杉浦喬也君) 鉄建公団などで事務的な観点からいろいろな線で計算をいろいろとやっていることは事実かと思いますが、これは正式なものではございませんで、また、われわれもその数字を承知しておりません。したがいまして、新聞報道で出ました数字につきまして、これが妥当なものであるというふうに、いま申し上げることができません。ただ、輸送需要としてはふえるであろうということだけは申し上げたいと思いますけれども、いずれそうした予想数字を確定いたしまして判断をすることになろうと思います。
  270. 立木洋

    立木洋君 それでは運輸大臣に最後にお尋ねしておきたいのですが、先ほどの御答弁もありましたが、国鉄だとかあるいは鉄建公団だとか、内部的にいろいろ試算されるということはこれは当然あり得るだろう。それは公表できるかどうかということの問題は別として、またそうしなければ仕事が実際には進まぬだろうと思うのです。しかしそれがある程度固まってほぼ間違いないというふうな状況になってきた場合には、この政令の中でもはっきり述べられておりますように、これは旅客輸送量の増加見込みの確認の結果、変更することがあるということまで考えられているわけですから、十分に明確に試算をしてよく検討していただく、そうしてやはり地域の住民の要望にこたえ得るような、足が多いのにただ切り捨てることだけが先行するというようなことがないように十分に対応していただきたいと思うので、その点、最後に運輸大臣の御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  271. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほど来、鉄監局長が答えておりますように、私たちといたしましても将来需要についての考慮は十分いたさなければならないと思っております。ただその場合、ムード的な問題であるとかあるいは主観的にそう仰せになっておる問題等については、これは行政を担当する者としては取り扱いにくいだろうと、でございますから、あくまでもそういう需要増を裏づける客観的な事実というものがそこに裏打ちされなければならぬと思います。そういたしますと、そのことは関係市町村とやっぱり十分協議して、そこでわれわれも需要増が確実であるという把握ができる、そういう中でこの決定を考えていきたい、こう思っておりまして、とりあえず三陸線等につきましては、地方団体の関係者と十分に話し合って進めていきたいと思っております。
  272. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で立木君の一般質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  273. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、栗林卓司君の一般質疑を行います。栗林君。
  274. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、自動車問題を中心に若干の質問をいたしたいと思います。  まず、通産大臣にお尋ねをしますけれども、現在、懸案になっております日米の自動車摩擦問題について、これに取り組む政府の基本的な考え方をまずお尋ねをしたいと思います。
  275. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 日米経済摩擦のいまの基本線は自動車でございます。この自動車をアメリカ側は日本の輸出量が多過ぎてレイオフ、つまり失業者の輸入だ、二十万人ぐらいが失業する、困るということで、この摩擦を何とかしようということになっておるわけでございまして、結論は鈴木総理が五月の初句にアメリカに参りますので、その前に片づけておきたいというのが基本方針でございます。  しからば、どういうふうに具体的にやっていくかということでございますが、現在、アメリカではダンフォース、ベンツェンという上院の議員が制限立法を行っておりますし、運輸大臣であるルイスさんが座長となってタスクフォースを検討しております、これは日米間の自動車だけじゃなくて、自動車産業全体についての枠組みで検討されておりまして、本当は最初のころはいまごろはもうタスクフォースもできているということでございましたが、アメリカの国内の事情で少し延びているようでございます。したがって、私どもはこの法案とそれからタスクフォースの発表、あるいはまた私どもが手に入れてそれを十分見た上で、日本側もそれを参考にしていろいろ検討していきたいというふうに思っております。
  276. 栗林卓司

    栗林卓司君 大臣、私昨年アメリカに参りましてたくさんの人にお目にかかりました。中の一つを例に引きながら申し上げてみたいと思うんですが、クラウスという労働次官代理の方だったと思いました。その方に会いましたらこういう言い方をしておられました。いまアメリカで問題となっているのは、経済的に見て何が正しいかということではありません。われわれにとってこの問題は——自動車問題ですよ、この問題は政治問題そのものなのです。したがって政治的な解決が必要であり、しかも急がれております。自動車工場がある町では自動車のほかに目ぼしい産業はありません。自動車がだめになると地方自治体に入ってくる税金も減ります、片方ではレイオフされた労働者、他方では市の行政の行き詰まり、何ともしようがなくなります。そして、その町の人たちはそれもこれも日本車の輸入のせいだと言っております。日を置けば置くほど事態は悪くなります。  で、これを引用した理由は、政治問題化させないために努力をするという言い方か言えた時期もありましたけれども、いまはもう政治問題そのものであると、特にアメリカにおいては、という認識をまず持つべきだと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  277. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 私どもがこの経済問題を政治問題化したくないということをたびたび申し上げておるのは、やはり経済問題であるこの自動車問題をだんだん政治の中に突っ込んでいきますと、それこそ日米間がぎくしゃくしたような関係になりますので、できたら経済問題として切り離して処理したい。と申しますのは、政治問題となりますと、いろいろ両国の全面的なこの感情と申しますか、あらゆるものが政治的な問題が多うございますし、その中にこの自動車問題を突っ込まれると解決が非常に困難——たとえば自動車問題を台数をこうするんだというようなことと防衛問題、さあ何問題何問題というようなことがずらりと混合されますとかえって混乱するんじゃないか。したがって、自動車問題は自動車問題で一本で行きましょうという希望から、私どもはそう言っておりますが、アメリカ側がこれを経済も政治もないと、もうこの問題は政治問題だと言いましても、私どもは経済的にうまくこれを冷静に対処していかなければならないという基本方針はいまでも変わっておりません、
  278. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、外務大臣にお尋ねをしますが、通産大臣でもどっちでもよろしいんですが、外務大臣にまずお尋ねをします。  ちょうど同じ時期にバニックさんに会いました。民主党の議員で昨年暮れ引退されましたけれども、著名な方ですからお名前を御存じだと思います。バニックさんに会いましたら、非常に真剣な顔をされましてね、私にこう言ったんです。私は心から日本に忠告をしたい、日本は、われわれが要求したのに牛肉もオレンジも買わなかった、農業問題が政治的にむずかしいということはわかる、だからわれわれはがまんをした、だからいま日本は農業でできなかった分も含めて工業部門で犠牲を払え、その結果日本で失業が出るだろう、そのときにはいまわれわれがやっているように失業保険を出せばいい、とにかくいま何かしろと言ったんです。これはバニックさんの御意見ではありますけれども、アメリカの議会の雰囲気を十分伝えている発言ではなかろうかと思いますが、その点、外務大臣の米議会に対する心証はいかがですか。
  279. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。  いまの発言でございますが、まず農業問題が先に出たわけでございますが、あれは牛場さんとそれから中川当時の農林大臣がアスキューさん相手に長く交渉された結果、オレンジ、柑橘類、それからジュース、牛肉という数量を、日本側としましてはある程度農村のことも考えながら一方ではふやすということで、あれは四年間でございましたか、    〔委員長退席、理事宮田輝君着席〕 一応の数量の取り決めができておるわけでございまして、私はそれ自身両方不満があったかもしれませんが、これは合意したことでございますから、私はその合意は守っていくべきだというふうに思いますので、そういうことに対しての批判は人によっていろいろあると思いますが、これは私はその批判というものは、できたものは守っていくという態度からすればちょっとおかしいなという感じがするわけでございます。  それから自動車問題につきまして、行政府と違ってまた議会の中にはいろいろ法案が提出されたり、いろんな動きがあることを私どもも知っております。人によっては防衛問題との関連とか言う人もある。これは政府じゃございません、国会の中でございますが、そういう日本の自動車問題を含めまして経済問題についていろいろそういう批判の声があるということは、私どもも知っておりますが、私どもは今度参りまして向こうの政府とよく話す、タスクフォースの中でもいろんな意見があるんです、御承知のとおり。自由貿易で、制限するべきじゃないという意見とか、いろんな意見があって、まだ報告が出てないという状態でございますから、私どもとしてはそのタスクフォースの結論をじっといまのところは見ているというのが現状でございます。
  280. 栗林卓司

    栗林卓司君 政治問題にしないでこれが自動車に限って解決ができれば一番いいとは思いますけども、アメリカとの関係でなかなかそうはならない。したがって、日本でもこれから政治問題化するかもしらぬという性格の問題であるということだけまず申し上げておきたいと思います。  労働大臣にお尋ねをしたいんですが、いわゆる日本車の規制問題はまだ先方が言ってきておりませんから、海のものとも山のものともわからないんですが、しかし、伝えられていることを含めていくと、日本の失業問題に波及する可能性がある問題だ、そういう認識でこの問題をとらえておいでになりますか。
  281. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 今日の段階でさように私どもが決めつけましてこれに対応するということはきわめて尚早であろう、さように考えておるわけでございまして、アメリカ側の意向がはっきりし、日本側との折衝が進められました結果がどのようなことになっていくか、それがどのように雇用の上に影響してくるかということを見きわめてから考えてよろしい問題であろう。特に私が腹の中で何を思っておりましょうと、それを口に出すということは、これは別途大変なことでございますので、この際は御勘弁をいただきたい。
  282. 栗林卓司

    栗林卓司君 大臣、私が伺ったのは、この問題は失業問題と絡んでいるんだと、これを言ったってアメリカは怒りませんよ。そういう角度で認識してない方がよっぽどおかしいんですよ。だから、それはおっしゃっていいんです、いま失業問題伺いましたので、一つだけアメリカ側がこの問題にどういう感じを持っているかということで一つ伺いたいんですが、いまのレイオフの実態並びに失業保険の給付状況、御存じでしたらお伺いしたいと思います。
  283. 関英夫

    政府委員(関英夫君) お答えいたします。  アメリカにおきます失業保険の実態でございますが。全産業についての数字しかございません。大統領経済報告によりますと、一九八〇年の一月から十一月までの間の月平均で受給者実人員が三百四十二万人、初回受給者数が、同じところでございますが、月平均で四十九万七千人、支給金額が一月から九月の月平均で十二億四千万ドル、こういうような状況でございます。そのうち自動車産業からの離職者がどのくらいかという数字は残念ながら私どもつかんでおりません。  それからレイオフといいますか、自動車産業からの失業者の状況でございますが、アメリカ労働省の「雇用と賃金」という資料によりますと、八〇年の年央ごろ三十一万人とか三十二万人とかいうのをピークといたしまして、その後十二月にかけて少りずつ減ってまいりまして、自動車産業からの失業者数は一九八〇年の十二月で十二万三千人という数になっているというふうに承知いたしております。
  284. 栗林卓司

    栗林卓司君 そんなこと伺ったんじゃなくて、自動車産業というと関連を含めて何ぼあるかというのが常識なんです。先方が言うのは一口百万と言っています。現在は百万割っているでしょうが、しかし八、九十万のレベルで推移していることは事実です。いま失業保険で伺ったのは、ああいう説明ではなくて、私の理解に間違いがなければアメリカの失業保険は州によって違います、大体六カ月から九カ月。ところが輸出入の関係で被害を受けたという認定がおりますと、貿易調整援助措置が働いて通算一年間が確保できるんです、一年間ですよ。だけれども、この自動車問題で最初に出たレイオフはおととしの九月八万二千五百人なんです、もう一年もはるか前なんです。この人たちがいまどうなっているのか、それに選挙区で会っている向こうの政治家はいま一体何を考えているのか。これはアメリカ社会に刺さった大きなとげでありまして、これはこれとして理解してあげないと向こうの交渉もへったくれもない、それを私はまず申し上げたかった。  それで委員長資料を配りたいんですけれども、よろしいですか。
  285. 宮田輝

    ○理事(宮田輝君) はい。    〔資料配付〕
  286. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、以下しばらく資料に沿ってお尋ねをしたいと思います。  この資料、とじてありますけれども、一番最初に図表が載っておりますが、別に他意があるわけではなくて、単にアメリカの雑誌から引いてきたものです。大体、こういうかっこうで説明をされております。したがって、ここにありますように過去二年間を見ると米国製の自動車の販売が低下をした、これに対して輸入車は新記録だ、何と情け容赦もない輸出をしたものだという印象がこの表からは出てまいります。そこで一枚めくっていただいて次の表を見ていただきたい。アメリカのマーケットを少し分けて見ました。一番上のフルサイズと書いてあるのはアメリカで言う大型であります。コンパクト、サブコンパクトというのは小型車であります。下に日本車のアメリカに対する輸出、向こうで言えば輸入が並んでいる。小型だけを見ていただきますと、なるほど日本車はふえております。しかしアメリカ製の小型車も同じようにふえているんです、これは占有率で見ました。次のページをめくっていただきますと台数があります。台数も同じように日本車がでこぼこしながら伸びているのと同じように米国製の小型車も伸びております。小型車だけを見ると共存共栄で何の問題もない。そうは言ったってこの小型車ふえなくたっていいじゃないか、そう言えるだろうかと次のページをおめくり願います。見てみますと、これは日本のガソリン小売価格、これは東京地区だと思いますが、これが一九七三年からずっとカープがあります。一九七三年から始めた理由は七三年末に第一次石油危機がありました。一枚さらにめくっていただきますと、そこにあるカープはアメリカのガソリン小売価格です、日本と何でこんなにカープが違うのか、それを頭に置いていただきながらさらに一ページめくっていただきますと、点線のガソリンの価格とあわせて上下に高下しているカーブがあります、これは輸入小型車の販売実績です。目でごらんになってもきれいに同調しているのがおわかりだと思います。これ実際に計数で見るともっときれいに、驚くほど一緒なんです。ということは、アメリカにおける輸入小型車の増加というのはガソリン価格の高騰につられてふえてきている。無理に売ったのでもなければ何でもない。ごく中立的に自然に伸びてきた。売ったのではなくて売れたんです。しかもそれが、もとに戻りますと、小型車だけを見ると、アメリカ製の小型車と日本製の小型車は全くお互いに幸福な状態にある。まずこの点について通産大臣お認めになりますか。
  287. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 大型車は別でございますけれども、小型車のこのトレンド、方向は私も認めます。
  288. 栗林卓司

    栗林卓司君 通産大臣にお尋ねしたいのは。大型を見ますと占有率でも販売台数でも七八年の末を境にしてがくんと落ちている、ここでがくんと落ちてきた理由は何でございましたか。
  289. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 大型車ががくんと落ちたということでございますけれども、これはやはり小型車がそれに入れかわりつつあるという証拠ではないかと思います。
  290. 栗林卓司

    栗林卓司君 もう一遍席にお戻りいただいてアメリカのガソリンの値段の表を広げていただきたいと思います。これを見ますと、ガソリンの値段がぐんと上がっているのが七八年から七九年。アメリカの大型車の転落というのはガソリンの価格が急激に上がったことが原因なんです。これ間違いありませんね。
  291. 田中六助

    国務大臣田中六助君) それは間違いないと思います。
  292. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこでお尋ねしたいのは、先ほどの日本のガソリン価格、これはわりあいに素直と言っては間違えるでしょうけれども、わりあいに海外の原油高を反映している。なぜアメリカだけがこういう変わったガソリン価格のカーブになったんだろうか。この点はいかがですか。外務大臣でも通産大臣でもどちらでも結構です。
  293. 田中六助

    国務大臣田中六助君) ガソリンが高くなったから大型車から小型車にかわっていったというはっきりした証拠があらわれておるわけで、もう一つは、私が思いますのに、やはりそれに従って大型車から小型車にかわりますと雇用と申しますか、そういう面についても大きな穴があいてそういう状態が起こったんじゃないかというふうに思います。
  294. 栗林卓司

    栗林卓司君 私がお尋ねしているのは、何でこんなカープになっちゃったんだと聞いているんです。
  295. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 何でそんなカープになっちゃったんだろうかと私もいろいろ考えておりますが、いますぐちょっとわかりかねますけれども……。
  296. 栗林卓司

    栗林卓司君 おととしボンでサミットがありました。そのサミットで、私、二週間ばかり前向こうに参りまして、西ドイツのマットヘーファー大蔵大臣と会いながら今度のサミットはどうですかと聞いたら、大体話はもう済んでまして、幾つかの空欄が残っているだけです、その空欄の一つはアメリカのエネルギー政策なんです、かつて産出国でありました、いまでもそうでありますけれども、あのアメリカがいま名だたる輸入国です、これが原因となってドルの赤字のたれ流し、    〔理事宮田輝君退席、委員長着席〕 世界の物価が安定しない、景気が安定しない、自由諸国がみんな困る、何とか今度のボン・サミットでカーターに輸入課徴金の一つもかけさせなければだめだというのが、これは国際的な話題で、わが国政府も参加をしているわけです。そのこととこのガソリンカープは、同じことを聞いているんです。アメリカのことだからこれは知らぬよというんでは返事になりません。
  297. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) アメリカのガソリン価格につきましての御質問でございますが、御承知のとおりアメリカはエネルギー政策といたしまして、国内の製品価格と原油価格とが遊離するような形になっておったわけでございまして、これは製品につきましての統制があったからでございまして、最近になりまして新しい政権になりまして価格統制を撤廃するということで、原油価格とパラに動くような形に変わりつつあるというふうに理解しております。
  298. 栗林卓司

    栗林卓司君 からんで伺うわけではないですけど、あんな簡単な答弁がなぜ大臣できないんですか。
  299. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 勉強不足だと思います。
  300. 栗林卓司

    栗林卓司君 日米問題をこれから取り組もうという人が勉強不足でございますと言って済むのか済まないのか。  前運輸長官——これはアメリカの話ですが、彼はある雑誌でインタビューを受けてこう言っているんです。七三年、七四年の原油の値上がりが深刻なエネルギー危機の前ぶれであることを、われわれは国民に伝えることに完全に失敗した。国民は安いガソリンを満喫をした。V8エンジン、大型エンジンが売れに売れたんです。一夜にして変わったのです。それはさっきの統制価格の問題、それがアメリカの大型を急激な低落に誘い込んだ。大臣、これは知らないとアメリカで日米交渉やったってだめですよ。いまアメリカの自動車産業のあの惨たんたる姿の原因はこの大型車の転落ですからね。したがって、小型車は先ほどから言っておりますように、日米両方の車も幸福な状態で売れているんです。問題は大型が低落をしたんだ、そのことははっきり覚えておいていただきたいと思います。  外務大臣と通産大臣伺いますが、「晴れた日にはGMが見える」という本が出ました。まず通産大臣、これをお読みになりましたか。
  301. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 読んでおりません。
  302. 栗林卓司

    栗林卓司君 外務大臣、いかがですか。
  303. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 通産大臣と同じでございます。
  304. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、かわって申し上げます。中に——もっともこの本というのは御存じでしょうけど、GMの元副社長デロリアンという人を中心に書いた記録であります。そこの中に「棚上げされた小型車計画」という章がございまして、中にこう書いてあります。  「GMは昔から、大型乗用車の販売を得手としてきた。」、「アメリカの消費者は昔から大型車に目がなく、ほんのちょっとでも大きな車が手に入るとなると、そのために何百ドルか余分に代価を支払うことをいとわなかった。これがGMにたっぷりとした報酬をもたらしたのは言うまでもない。」、「シボレー・カプリスとそれよりも大型のキャデラック・ドゥビルは、製造原価が僅か三、四百ドルしか違わなかったのに、小売価格は三千八百ドルも違っていた。」フォードは、「「小型車よりも大型車の方が儲かる」事実を認識し、同社の大型車、特にリンカーン・マーキュリー事業部が市場に提供していた大型車の設計変更、改造計画に」、「金を注ぎ込んだ。」、「一九七〇年代を通じて、フォード社は、主としてリンカーン・マーキュリー事業部の大型車の市場占有率の上昇によって、売上高と利益の両面で新記録を樹立したのである。」  これも大臣に覚えておいていただきたい常識の話なんです。原価が何百ドルしか違わなくて売り値が数千ドル、こんなぼろい商売はない。そのことのよしあしは私は言いません。ただ、これだけの利益を持った大型が急速に転落をした。これがいまのアメリカの惨状なんです。  そこで、この原因は何かというと、一つは先が見えなかったビッグスリーの経営責任があります。もう一つは、エネルギー政策を誤った米国政府の責任があります。しかも、その米国政府の誤った決定に対してむしろ力をかした米国議会の責任があります、  以上三点がいまアメリカが深刻な状態に陥った主要な理由なんです。日本は全く関係ない。この点についていかがですか。
  305. 田中六助

    国務大臣田中六助君) まあ、まとめて私の見解を申しますと、実はアメリカの現状が大型車であったということはGMもフォードもクライスラーもそれぞれ認めているところでございまして、アメリカ人の黒人も含めまして一生の大きな理想はあの大型車のリンカーンとかクライスラー、そういうものに乗ることが一生の夢である、そういうことでずっときたわけですが、このようにこの数年間燃料危機、エネルギー危機というようなことで、さあ小型車に転換しようと言っても間に合わなかったという私の思いはあなたの思いと一緒ですけれども、こういうことをやっておるアメリカ、つまりITCがこの前五人の委員のうちに予想を覆しまして三人がシロという断定をいたしました。これは、私はアメリカの良識が生きておる証拠であると同時に、この三名がアメリカの自動車産業が不振に陥ったのは輸入車に原因があるんではないという結論を下しているわけです。したがって、私どもがひそかに実は思っておるのはそういうことであるし、私もときどき国会で言うんですけれども、安くてよくて燃費のかからない車をアメリカ国民が要望しておる、国民が買いたがっておるのになぜ議会やその他まあ業者と申しますか、そういう者がクレームをつけるんだろうかと。アメリカが二十万人のレイオフ、失業者がおるならば、日本の自動車産業に直接参加している人は六十二万人います。非常にすそ野の広い仕事、業界でございますので、ディーラーまで含めますと約五百万人おる、それなら日本の失業者が怒ることについてはどういうふうに考えますかと。このことは、余り国会で私どもがいま交渉をしておるさなかに、実はそういうことを言ってもいいと思いますけれども、まあアメリカと日本との関係は御承知のように、日本が千五百億ドルぐらいの貿易の中、少なくとも四分の一は対アメリカでございますししかも、これは一、二年のことじゃなくて過去三、四年もそうでございますし、これから先もあの広い大きな市場で日本の製品を輸出し、いろいろ買ってもらわなくちゃいかぬのは事実ですし、アメリカなくして日本の将来というものも——アメリカの市場のことです。マーケットのことでございますが、そういうことを考えるときに、やはり今回の自動車交渉というものはそういうものも踏まえた上でやらなければ、私が冒頭に申しましたような日本の主張だけではどうかという疑問があるわけです。したがって、まだ総理が行く前に解決しろという命題がありましても、いまから余りいろんなことをしゃべったり、いろんなことをすることはどうかなあという気持ちがあるために多少うろちょろしましたけれども、私ども考えというのはベースはそこにあるのです。何とかかんとか言っても、日本の国益と私どもの同胞の仕事のなくなるということ、これがやはり私ども政府の責任者としても頭に残るし、これの解決ということにむしろ頭が痛いわけです。したがって、腹の中はそういうことでこれからもいきますけれども、いま国会で腹の中のことまで全部ぶちまけて、これはまあまた困ったなあとは実は思っているんですけれども、私どもの言ったことが一つ一つ全部アメリカに筒抜けになるのです。しかも、政府の担当者である私がいろんなことを——いままたあなたはいまからどういう方法があるかというようなことを聞くかもわかりませんけれども、私どもはそういうことを一々ここで、日本というのは非常に——私も新聞記者出身でございますけれども、裏表全部書いてしまうもんだから、相手側というのはもう交渉しなくても手に取るようにわかると笑っている部分があるのです。  だから、そういうことも含めまして、私どもは、まあ人のことは言えませんけれども、大体普通の人が考えることぐらいは私ども考えているというふうに思っておりますので、私の思いの一端を述べてお答えとしたいと思います。
  306. 栗林卓司

    栗林卓司君 お気持ちは私よくわかります。ただ、向こうも困っているし、世界のこともあるしというのはお互いに頭にありながら、それはそれとして、あの原因はこうであったではないか、それに対して、日本はむしろ関係なかったではないか、ITCもそういう審決を下したではないかということをやっぱり言っていかなければいけないことであろうかと思います。  そこで、こういう伺い方もあるいはまずいのかもしれませんけれども、ただ、問題を正確に言うためにお尋ねするのは、たとえば日本の小型車が向こうでふえてきた。向こうの人が欲しいと言うから供給してきただけの話でありますけれども、それを供給しなかったら、あれほど供給しなかったら、アメリカで少なくも値段の面で何が起こったとお考えになりますか。
  307. 栗原昭平

    政府委員(栗原昭平君) お答えいたします。  特に昨年の春以来爆発的に小型車が売れ始めたという事実がございますが、そういった状況とわが国の輸出の増加ということを兼ね合わせて考えてみますと、当時、私も四月にアメリカに行っていろいろ話をした記憶がございますけれども、やはり先方の政府として、当時の判断としてはやはりインフレが非常に加速されるだろうということを一番心配しておったわけでございますし、やはり価格の高騰、小型車価格の高騰という問題がそのとおりに出ただろうというふうに思います。
  308. 栗林卓司

    栗林卓司君 なぜ伺うかといいますと、よく集中豪雨の輸出ということが言われるんです。私は、集中豪雨の意味というのは、特定の地域もしくは特定の国に対して集中的に輸出ドライブをかけることが、言ってみれば集中豪雨的な輸出だと、こう言えると思いますが、アメリカの場合その言葉が当たるんだろうか、むしろ恵みの雨だったんじゃないか。干天の慈雨だったんじゃないか仁しかも、恵みの雨、干天の慈雨はこれから長続きするんだろうかというと、実は見通しが分かれている。アメリカの議会の方はしりに火がついているように言ってくる。これが実態だと思うんです。  ただ、私は総理等の発言を聞きながら思うのは、集中豪雨的な輸出というのをそう軽々に言うべきではない。なるほどふえておりますよ。ふえているけれども、アメリカの小型車だってふえている。しかも、こうやって日本を含めて輸入小型車が供給された結果、インフレはむしろ抑えられた、もとはといえばデトロイトが早く小型車に転換しなかったことがいかぬのでありますから、したがってそういう面で、集中豪雨なるがゆえにいま日本がとかくのことを言われていると私は思い過ぎるべきではないと思います。  そこで、じゃどうするのかという話で先取りされましたけれども、交渉の前であっても私は一つだけやはりはっきりしておきたいことがあります。  この委員会大臣が、たしか寺田委員の質問に答えてだったと思いますけれども、自粛といってもいろいろやり方はある。お互いに目と目見合わせながらの以心伝心でうまくいけるという趣旨のことをおっしゃったと思います。しかしこれは、このことそのものが明らかな反トラスト法違反だということをやはり私は申し上げておかなきゃいけない。アメリカの交渉で一番頭が痛いのは、反トラスト法という余りにも強力過ぎる独禁法があることなんです。  ですから、仮に百歩譲りまして、規制するとして、手段が幾つあるかというと、まず最初は、トヨタにしても日産にしても、各社が自分で判断して勝手に規制する。しかし、これはほかの会社が増産するだけですから、実際問題として意味がない。これは外します。  各社が協議をして決める。いわゆる行政指導で決める。法律で規制する。アメリカがOMAで規制する。そして、アメリカがセーフガードを使って規制する。以上五つです。  この中で、業界各社が相談をして規制をするというのは、これは明らかな反トラスト法違反。  では、行政指導でやったらどうか。これも過去の例に見る限り、反トラスト法違反、反トラスト法というのは、中央政府と向こうの市民とどちらでも提訴ができるわけです、じゃ、こちらの方がアメリカの窮状を見るにしのびないといってのこのこ規制に応じたとして、その日本に提訴するだろうか、間違いなくします。なぜなら、規制をすると車の値段が上がるんです。だから、アメリカではいまだに意見がまとまらなくて、じりじり日を送っている。  こうした中で、仮に規制を受けるとして、どういう手段があるかというと、まことにタイトなものしかありません。反トラスト法というのはもともとそういうものなんだということは御存じでございましょうか。
  309. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 私どもが実は恐れておるのは、あなたが指摘するように独禁法なんです。御承知のようにアメリカは独禁法を生んだ国なんです、シャーマン法三条が母体です、後はこの独禁法は西ドイツに行きまして育ち、日本に来ております。  まあ簡単に独禁法はそれでいいんですが、たとえば自主規制という言葉を使いますときに、問題があるのはやはり貿管令、輸取法、行政指導、全部ひっかかるんです。だから、私ども国会で、私もこれはまあ失言を——私は失言とは思わなかったんですけれども、自主規制みたいなことを実は二、三日前申し上げました。そうすると、アメリカではもうそれを、通産大臣がそう言っているのは、これは独禁法違反と言うんです。  さあ、私どもが、この自動車問題をいろいろ解決しようという頭があるんですけれども一つ一つそれが流れていきますと、日本の独禁法にひっかかるか、向こうはまだ、委員が御指摘のように非常にシビアな独禁法を持っております。したがって、何かにつけてそういうことになりかねないものですから、私どももまあ国会の皆さんや国民の皆様にとっては、くつの上から足をかくような歯がゆい思いをするかもわかりませんけれども、私どもは、ぎりぎりになるまでまあ自分のカードというものを聞かすことは大きな問題があるんです、したがって、何にもしてないように思っても、私どもは一応責任がございますし、夜を日に継いでまあ事務当局もいろいろなことをやっております。私がまたそういうことを一々——ほんとはきょうは大体半分以上は言ってしまいましたけれども、いろんなことがあるわけです。  したがって、まあそれももとを正せばやっぱり国益、それから日本のそういう失業者、アメリカの失業者も考えてやらなければいけませんけれども、アメリカと違って、アメリカの自動車産業は、私に言わせればどっちかというと、衰退とは申しませんけれども、御承知のようにGMは四百七十五万台でトップでございますけれども、二位は日本のトヨタが三百二十九万台ぐらい、それから日産がこれまた二百六十四万台です。フォードはぐっと落ちてしまって、クライスラーに至っては十番以内にいたんですけれども、これは十四番ぐらいに下がっておりますし、東洋上業と三菱が九、十に入っているんです。そのように非常に日本にとっては自動車産業というのはいまは非常に大切な基幹産業で、これに結びつく雇用というものは日本の中小企業を初めすべてに大きなダメージを与えます、それだけに私どもも、まあない頭をいろいろしぼっておる現状でございます。
  310. 栗林卓司

    栗林卓司君 大臣、私先方の人と会いましたときに、まあ十人が十人こういったことを言うんです、というのは、日本を見ていると規制をしている国には自動車のラインを持ってくる。アメリカのように規制をしていないところ、したがって自由市場でいつでも入ってこれるというところは幾ら言っても持ってこない。資本進出をしてもらおうと思ったら、やっぱり規制をかけなきゃだめなんだろうかという言い方を、半分まじめ、半分冗談で言われるのですが、いまは量的規制が何となく中心のようなぐあいに新聞等で書かれておりますけれども、あわせて、かねて先方が言っている対米進出問題があるというように考えてよろしいですか。
  311. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 本当は、考えるのはあなたの自由ですと言いたいところでございますけれども、それは十分まあ妥当なことだというふうに思います。
  312. 栗林卓司

    栗林卓司君 アメリカやめます。ヨーロッパについて伺いますけれどもね、これも言葉じりをとるようで恐縮なんですが、気になったものですからやっぱり聞かせてください。  日米、日・EC、日本・カナダ、自動車問題の同時決着、同時着陸ということを大臣が御答弁なさったように私は思います。ただ、言葉じりを私はとらえません。ただ伺いたいのは、アメリカとの関係の自動車問題とヨーロッパとの関係の自動車問題というのは質が全く違うんではないか。違う一つ理由を申し上げますと、一口にECと言いますけれども、産業問題では一本になっておりません。あえて分けていきますと、西ドイツ、フランス、イタリー、イギリス、ベネルックス三国、その他。六つぐらいに分かれちゃう。それと、仮にも一国で店を張っておりますアメリカとの交渉と同じにならない。したがって、同時決着ということを言葉のはずみでおっしゃったのかもしれませんけれども、余り意識して取り組む必要はむしろないんではないのだろうか、そう思いますが、いかがですか。
  313. 田中六助

    国務大臣田中六助君) まさしくあなたのおっしゃるとおりで、ECは、ECと一口に言いますけれども、ドイツも事情が違いますし、フランスなどはガット違反もいいところ、三%台に抑えておりますし、イタリーは二千台。いろいろなことを考えますと、EC諸国は本当はばらばらなんです。しかし私どもといたしましては、アメリカ問題を片づけて、同時着陸、同時ということをまあ私は言ったのですけれども、それは概念的なことでございまして、一度にそれが片づくはずはないのです。したがって、まあアメリカが片づいたら余り時間を置かずにそういうことをしなければならないという私の考えを、そういうふうに表現したわけでございまして、実際問題として、それが同時着陸というようなことはできないと思いますけれども、これはカナダもそうでございますけれども、カナダやEC諸国、それらの国々は十分そういうことは熟知しておりながら、対米輸出、輸入、そういうことばかりに日本は頭を使うじゃないか、われわれの国はどうしてくれるんだ、EC諸国もみんなそう言うんです。したがって、私どもが向こうから来たときに答えるのは、アメリカをやったらあなたのところもアメリカと同じような条件でやりましょう、すかさずやりますということがまあそういう同時着陸ということになるのですけれども、実際にこの問題を片づけるならば、そこに大きなタイムラグがあるということは十分認識してやっております。
  314. 栗林卓司

    栗林卓司君 じゃ、あと一点だけ伺って質問終わりますけれども、私どもが受けている印象というのは実はこうだったのです。五月の七、八に総理が行かれる。それについて早目に、その前に手軽く片づけてくれという指示が出てきた。どう見てもそういった問題ではない。といううちに、だんだんとアメリカの状況もわかり、そうこうしながら、どうもむずかしい問題らしいということに今日相なったわけですけれども、総理御自身も含めてこの問題のむずかしさ、広がりが十分御理解いただいてはないんだろうかという不安がありましてね、いまでも消えているわけではないのですが。その意味でいま通産大臣言われました、指示は指示としてそれはそれでとおっしゃいましたが、その辺も含めて所管大臣として総理にこの問題の広がり、深さをぜひお伝えいただきたいと思います。
  315. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 総理の姿を見ておりますと、非常に勉強しております。もちろん資料も、私どもも、私が直接行かずに事務当局から届けておりますし、やはり日米会談というものが鈴木首相にとって一番当面の大きな問題であるということを総理自身十分認識しておる、それから自動車問題にいたしましても軽く見ていないということは、はっきり断言できます。
  316. 栗林卓司

    栗林卓司君 結構です。
  317. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で栗林君の一般質疑は終了いたしました。     —————————————
  318. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、志苫裕君の一般質疑を行います。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  319. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記を起こして。  志苫裕君。
  320. 和田静夫

    ○和田静夫君 ちょっと議事進行について一言だけ述べますが、ちゃんと事前に時間が予告されているのですからね、政府側がそろうために休まされるというよりもおくれちゃいかぬですから、委員長一遍政府側に注意してくださいよ。
  321. 木村睦男

    委員長木村睦男君) わかりました。
  322. 和田静夫

    ○和田静夫君 いろいろと運営を考えながら予算委員会は運営されているのに、政府側の都合によって時間が狂っていくというんじゃ。どんなに協力しようと思ったってできなくなってくるわけですから、十分に注意をしていただきたいと思います。
  323. 志苫裕

    志苫裕君 質問の順序が変わりましたが、まず通産大臣にお伺いしますが、大手石油会社の日本石油が、四月の中旬にも石油製品の値上げを実施したいという意向を表明したと伝えられておりますけれども、これに対して通産大臣の見解をお伺いしておきたい。
  324. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 石油会社は全部で三十五社ぐらいあります。その中、半分が民族系それから約半分が外資系でございまして、特に石油元売り会社というのは十三社ぐらいでございますが、円高差益と申しますか、そういうものがずっとあったのが事実でございますけれども、御承知のように昨年の十二月のバリ島におけるOPECの総会以来三十二ドル、それから中間が三十六ドル、シーリングで天井が四十一ドルというふうに、これはもちろん一バレル当たりでございますが、そういうことで原油価格が上がってきたために、現実に半分ぐらいの会社は今度は、具体的にある会社のことを言いますと、某会社では一日に一億円ぐらい損になっておるようです。そういうふうに非常に一時円高差益ということでもうけておった会社も、そういう現状になっておるものですから、どうにも成り立たぬと、行き先真っ暗だというようなことがありまして、日石あたりもだんだんそういう窮地に追い込められておる現状から、そういう石油製品の値上げということが議題になっておるというふうに思っております。
  325. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、どう対応されるといいますか、見解を聞きたいわけですよ。
  326. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 私どもも、やっと物価が安定しておるというような時期でございますので、そういう赤字会社に対しましては、よくわかるけれども、全体のことを考えて石油価格の値上げについてはあなたたちも考慮——考慮という意味は上げるという意味じゃなくて、十分考えた態度をとってほしいということは伝えております。
  327. 志苫裕

    志苫裕君 通産大臣結構です。  文部大臣、医科系の国立大学から公的病院等に医師をいろいろ派遣していますね。それは相当の報酬を受けてもおるわけでありますが、この派遣をすること、あるいは報酬を受けること、それらについての根拠や手続など取り扱いをお伺いしたいわけです。
  328. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指摘の国立大学の者が、教員が報酬をもらって他の治療等を行うような場合、民間の病院等値の事業に従事しまする場合には、国家公務員法百四条の規定によって文部大臣の許可を要するものとされておりますが、このような医師の兼業は、地域医療への協力等いろいろな観点から行われておると承知をいたしております。文部省といたしましても、本務への支障のない限りは、この兼業を許可するような方針となっておる次第でございます。  それからまた、国立病院の方から一般の病院への医師の派遣は、地域医療への協力その他いろいろな観点あるいは動機から行われておるものと承知いたしておりますが、患者に迷惑がかかることがないように関係者の間であらかじめ十分な連絡調整が行われておる次第でございます。
  329. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  330. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記を始めて。
  331. 志苫裕

    志苫裕君 いわゆる教室のなわ張りだとか、文部大臣、あるいは徒弟的な制度をめぐってとかく問題を起こしておるわけです。社会問題にさえなったこともありますが、しかしこのことはきょうは触れません。しかし、まあとにかく大学の都合というんですか、教室の都合というんですかな、その都合で派遣をするとかしないとか、行っている者を引き揚げるとかいうようなことが起こりますと、国民が医療を受ける権利との衝突が起きるわけであります。このことをめぐって人権申し立て等の事案が出ているということも承知をしておるのでありますが、その中身のほどはきょうお伺いしませんが、そういった場合の調整には一体どういうふうな扱いをなさるのか、考え方を伺っておきたい。
  332. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま先生の御指摘の件につきましては、具体的ないろんな事例や問題でもございますから、政府委員から御答弁させます。
  333. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先ほど地域医療に対しまして、国立大学の附属病院が協力するという形につきましては文部大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、一部の病院等におきましてその派遣問題をめぐりまして若干当事者間の意思疎通が十分でなくて誤解を招いた件があったことはまことに遺憾に思っております。その後、関係者間で協議が整いまして、協力体制も確立されたというぐあいに私ども伺っております。大学病院といえども可能な限り地域医療の充実、発展ということで協力をすべきことは当然のことでございまして、地域社会の要請に適切に対応するよう今後とも指導いたしてまいりたいと、かように考えております。
  334. 志苫裕

    志苫裕君 文部大臣、結構です。  次、行政改革についてお伺いいたしますが、三月十四日の総括質問で、行政改革の大きな柱として地方自治の基本原則を具体化をするように私は主張をいたしました。自治にとって最大の懸案は自治体の自立性の確保、言うならば国の公権的な関与を制限をして分権を保障せよという主張でありますが、この種の主張や提言は、古くは神戸勧告から第一臨調、七次、第九次、第十次の地方制度調査会、その他各界の識者、地方団体組織等からもしばしば提起をされておるのですが、これが余り進まなかった理由は何でしょうね。これはひとつ行管長官と自治大臣に。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シャウプ勧告あるいは神戸勧告、あるいは累次にわたる地方制度調査会の答申、勧告等で中央と地方の再調整等の問題が論ぜられておりますことは志苫さん御指摘のとおりでございます。これがどうして進まなかったかということでございますが、一つには中央の地方に対する不安感というものがありまして、権力あるいは補助金に対する権限等を放すのを非常にこわがっている、なわ張り根性という点もあるのではないかと思います。また一方、地方におきましていろいろ公選制が実施されましたものですから、住民の意向というものが非常に理事者にも反映して、それがややもすれば適正を欠くような判断に陥りやすいという場面もあり得る、いわゆるばらまき福祉とか、あるいは定員がよけいどんどん増加するとか、給与が上げられるとか、そういうような面から不安視しているという面もあるのではないかと、両方のそういう相乗作用がどうもがん性症状を呈してきてそうして進まなかったのではないかと、そのように考えます。
  336. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) ただいまの点は、中曽根長官がおっしゃったような要素、意見、そういうものが確執をいたしましてなかなか進捗しないというふうに私は判断しております。
  337. 志苫裕

    志苫裕君 第二臨調で地方固有の問題を扱うかどうかという政府部内でも少し論議になったようですが、私はこれは自治の原則にかかわる問題だと思うのです。国と地方の関係はもう地方分権を進めるという方向で積極的に抜本的にやるべき、取り上げるべきだと思いますけれども、固有の問題にまで立ち入るということになりますとこれは地方自治の原則にかかわってくる、あるいは違法の疑いさえ出る、このように思いますが、この点はどうなんですか。
  338. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第二臨調で取り上げます範囲は第一次臨調と同じでございまして、地方自治の本旨をわきまえて地方自治の問題については中央との関連においてこれを調査、審議する、そういう方針で臨むことになっております。
  339. 志苫裕

    志苫裕君 ところで自治大臣、この間私も取り上げました。それであなたから答弁をいただき、総理からも答弁をいただきましたが、自治法の改正問題はその後政府部内どうなっておりますか、私の立場は、不十分ながらも地方分権を進めるという方向に沿っておるというふうに理解をして、この間もその督促方を総理にも要望したところですが、現段階どうなっていますか。
  340. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) まだ最終的な調整が行われておりませんが、どうしても今国会に御提案を申し上げたいという趣旨で目下最大の努力をしている最中でございます。
  341. 志苫裕

    志苫裕君 今国会提出の何というんですか、閣議とでもいうか、そういうものの何かぎりぎりの日があるでしょう。いつごろになっているんですか。
  342. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 閣議を経て国会へ提出する期限は、実は三月十三日が最終の期限でございました。しかし、各省との調整がとれませんので、現在延期方をお願いしておるところでございます。
  343. 志苫裕

    志苫裕君 だんだん雲行き怪しい話ですが、これは、官房長官いませんね。——官房長官、政府部内の調整ということになると、総理おらぬからあなたにかわってもらわなきゃいかぬのですが、どういう模様になっているんですか。
  344. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私、まだ自分で聞いていないんでございますけれども、大変むずかしいことになっているようでございます。
  345. 志苫裕

    志苫裕君 今国会に出したいという人と、むずかしいという人がおるんですが、これはやっぱり私は、第二臨調にかかる、かからぬの問題じゃなくて、いま進めておる行革の大きい一環だと思うんですが、行管長官どうですか。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは各省、たとえば文部省とか厚生省とか建設省とか、そういうかかわっておる各省がいま自治省といろいろチャンチャンバラバラやって奮闘しておる最中のようです。行管庁としては直接補助金やったり、許認可をやっておるわけじゃございませんので、そこで、各省がどういうふうにやっておるか、いま見守っている、こういう状態でございます。
  347. 志苫裕

    志苫裕君 長官、そういうきれい言葉だめですよ。チャンチャンバラバラやっているのはおたくもそうなんです、特に私は、今度の自治法の問題で重視しておる第十七次、十八次答申では、一つは、監査機能の強化の問題ですね。一つは、自治体の国政への参加といいますか、この問題はしばしば議論をして、私も地方制度調査会の委員の一人でしたからこの議論にも加わったわけでありますが、それはやっぱり若干の衝突はあるだろうと思うのですけれども、これぐらいのことをやってのけられなければ、私は行政改革進まないと思うのですよ。何のことはない、なわ張り争いですよ、これは。こんなものの決まりつけられないでどうします。もう一度あなたが決意をされれば、大分進みますよ。
  348. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政管理庁長官には残念ながらそれほど力がございませんで、やっぱり各省の方が実権を握っておりまして非常に力があるのでございます。それで、行政管理庁としては、ある段階に来たら調整機能を果たすように心がけておりますが、まだその段階まで来ていないのを残念に思います。
  349. 志苫裕

    志苫裕君 行政改革に非常に熱心な大蔵大臣、あなたのこの考えどうです。
  350. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 自治省案の要点、私も詳しくわからないんですが、確かになわ張り争いのところがあるんですよ、それは。しかしまた、たとえば原案で、六団体による国会、内閣への意見の提出を法定化するとか、それから内閣はそいつを、意見書を持ってきたら尊重義務をくっつけるとか、これはちょっと私も賛成しかねるのですよ。それでなくてさえも、知事会とか市町村長会とかというのはかなりのこれはやっぱり政府にとっては圧力団体ですからね、実際のところが。そうでなくともかなりの政治勢力持っていることは間違いない。そこで、法律的に義務づけられちゃって、それぞれもう、たとえば交付税にしても、現在でも足りぬからもっとよこせと、こう言っとるわけですから、だから、そういうようなことをみんな法律で義務づけるというようなことについては、現在財政を預かる大蔵省当局といたしましては、はい結構でございますとはなかなか言えないですね、これは。しかし、私は賛成してもいい部分もあるんです。したがって、それらの点はひとつ、もうあきらめてもらうものはあきらめてもらう、それから、こちらが譲るものは譲るということでまとめられればいいなあと。だから積極的に調整に参加をしなさいということを言っておるわけでございます。
  351. 志苫裕

    志苫裕君 このことで私は余り議論する時間は持っていませんけれども地方公共団体に重大なかかわりのある法案を勝手にぼんぽんぽんぽん国がつくって、そしてときどき仕事だけはやらせる。こういう地方公共団体に大きいかかわりのある法案をつくるときに地方の都合、地方の意見、こういうものを取り入れる仕組みをつくらないで、そこのところに今日自治の喪失だとか、よけいな仕事をどんどん引き受けるとか、機関委任事務がもうすでに地方公共団体の仕事の八割近くになるとかという実態があるわけですよ。これは道理ですよ、あなた。地方に関係のある法案をつくるときには地方団体の意見を聞く。該当者の意見なんだからあたりまえじゃないですか。
  352. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはいまでもかなり意見を聞いているのですよ、一〇〇%はなかなか聞けないけれども。それは特に与党・政府にとっては、地方団体長の意見を聞かないと選挙に負けちゃいますからね、これは実際問題として。ですから、そんな対立があるということを、真っ正面からぶつかるようなことをやっておったらそれはわれわれは、政権の座は崩れちゃう。したがって、現在でもかなり意見は聞いておるのです。したがって、そういう点は法律でなくとも、現実の問題としては話し合いの中で、まあ満足一〇〇%ということにはお互いいかないでしょう。だから、そこの調整の問題だと、こういうようなことを申し上げたわけです。
  353. 志苫裕

    志苫裕君 まあいずれ、国会は続いていますからまたやりますが、いずれにしても、行政改革には政治責任をかけるという総理が、この委員会で、今月十四日の総括質問で、今国会に提出をしたいということで努力を表明したわけでありますから、これは官房長官も、行管長官も、それぞれひとつ皆さんよく銘記をして、時間が過ぎないように、この点は要望しておきます。  次に、厚生大臣にお伺いするのですが、私はこの間、補助金の統合・メニュー化あるいは包括補助金制度のことを提起をいたしまして、それは即補助金の削減にはならぬにしても、補助金削減の問題点というのは各縦割りのなわ張り争いなんですよ、これをなかなか減らせないということだけで。ですから、まとめることによってある程度の端緒をつかめるという意味もあるし、地方自治体が自主性を強化できるという面も副次的に効果がある。まあ仰せこの縦割り補助金というのはもう中央集権を支えた手法でして、この地方自治制の喪失とか、たかり構造なんて生んだ根源なんですよ、これは。そういう意味では大胆でなきゃならぬのですが、そこで、厚生大臣のお手元に、しゃべると長くなるんで、質問をあらかじめ資料で通告しておきました。これに対して御意見を。
  354. 園田直

    国務大臣園田直君) お答えをする前に、改めておわびをいたします。  私の出席がおくれたために御迷惑をかけたことをまことに遺憾に存じます。時間の計算を間違えましたが、今後は余裕を持って数分前に出席をするように心がけますので、お許しを願いたいと存じます。  いまいただきました、事務費その他の補助金統合の問題でございますが、この中で、生活保護法施行事務補助金、これは他の関係補助金と一緒にいたしまして、統合して、事務の簡素化と、経費の執行の効率化を図ることとしておりまして、今後もそのように努力いたします。  他の数多く並びました問題については、これは私、将来確かにむだを省くためにまとめることが大事でありますが、二つほど心配なことがあります。  一つ事務当局のいろんな難点、もう一つは、大臣としてこれをまとめてどうこうやる場合に財源の確保が困難になってくるんじゃないか、大蔵大臣を目の前にしてなんでありますが、予算折衝のときにここで縮められていくんじゃないかという心配等もありますが、そういうことを十分検討してやります。
  355. 志苫裕

    志苫裕君 下段の部分は。
  356. 園田直

    国務大臣園田直君) 落としましたが、並べられた補助金を地方自治体の一般財源に振りかえることについてでございますが、これもいま統合をする、それから、これをまとめてむだを省く、こういう点についてはおっしゃるとおりでございますが、これまた一般財源に振りかえることによって財源の確保が困難になるという心配はありますけれども、この方向で将来進むべきものと考えております。
  357. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと厚生大臣、問題点がわからぬな。私はまとめろなんて言ってないんで、一口に言えば、下の方は問題点も若干あると思うから、私は断定をしていませんが、この種のもの——例示ですから、これは、この種のものはもう制度が始まりましてずいぶん長くたちまして、地方自治体仕事そのものにもうなっています。国は統一的な企画であるとか管理というような分で持ち分を、ナショナルミニマムですから持たなきゃならぬと思いますが、仕事そのものは自治体仕事です。したがって、財源を地方自治体の財源に振りかえて仕事をやってもいいじゃないかという提起なんですよ。これについてひとつ行管長官、自治大臣、改めて大蔵大臣厚生大臣、ちょっと見解を述べてください。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体当該大臣がその問題については直接責任を持っているものでございますから、当該大臣がどういうふうに処理するか、それをまず尊重して、それが行き過ぎであった場合にわれわれも考えてみる、こういうことにしてみたいと思いまして、余り出過ぎない法をいまとっておるところであります。
  359. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) 地方団体に定着をしたこうした補助金は、まとめるなり一般財源にした方が私はいいと思っております。  そこで、それは包括的に財源を付与するのか、あるいは一般財源というとどういう形にするのか、その辺はよほど研究を要するのじゃないか、そこで、いま大臣からもお話ありましたが、そうした場合に、その予算の確保について問題が生ずる点もありはしないかという御懸念もありました。この点も私としましては十分検討いたしまして、どういう形で一般財源の付与というものを制度として樹立をさせるかどうか、この点は研究問題だと思っております。包括的補助金というものにするならば、これは余り問題はないと思います。この点、私、若干疑念を持っておりますので、研究をいたしたいと思います。
  360. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは社会保障関係の似たような補助金をここへずっと並べたわけですが、これ全部一本にできるかどうかは別として、ある程度まとめた方がいいのじゃないかと私もそう思いますから、十分検討させます」これはむしろ各省の各課ごとにやっぱり自分のところのやつは持っているという傾向がどうしても強い、その裏から見ると、やはりいろいろ理屈くっつけちゃ似たような仕事予算要求してくるという点もあるんですよ。これはこれはかりでなくて、どなたでしたか、いろんな農林省とか運輸省とか文部省で似たような集会所ばかり名前だけ変えてぞろぞろ出してきたという御質問がありましたが、あれなども似たような話ですから、やはり私は一緒にこの際はもっと事務の簡素化と経費の節減と、この二つをあわしてやることに努力をいたします。
  361. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど言われました地方自治体に対する補助金の問題でありますが、私の省、相当かなり多くございます。新しい制度をつくることに看板は厚生省がもらうが、費用は自治体に押しつけるという傾向なきにしもあらずでございます。  それともう一つは、事務費、補助金ともにこれを包括していければ相当なむだが省けるし、それからまた今日のように定着してきた場合には、ある程度自治体に責任を持ってもらうことが必要だと考えますが、先ほど自治大臣がおっしゃいましたとおりに、これを包括してやる場合に、いろいろ制度によって違いがあるし、あるいは地域の偏在がある、その場合にこの一般財源に振りかえて交付税として出す場合に、やはり厚生大臣もそれに相談さしてもらうという一つの道をあけていただければ、ぜひそういう方向で進むべきだと考えます。
  362. 志苫裕

    志苫裕君 それぞれに答弁ありましたが、余り勉強してないですね。私がきょう提起をしたのは仕事を財源づきで地方にやったらどうかという提起。前回のときに提起しましたのは、これはみんなまとめちゃったらどうかという提起なんですね。その辺が少しごちゃごちゃになっているようですが、いずれにしても、私はそれはいいことだというんで、仕事はやるわ、金はやらぬわじゃ、これは大変ですね。ですからこの辺の点は注意を指摘しておきまして、いずれにしても検討を進めてもらいたいと思います。  ちょっと余談ですけれども、私ちょっとも承服できませんのは、大蔵大臣、この間柳澤さんか何かの質問で補助金の話に触れたときに、いやまあ地方には学校を建てるのが好きな人やら、お湯の券配るのが得意の人やらというふうな形で表現あったけれども、あれがさっき行管長官が言った地方自治体不信なんですよ、地方自治体不信だ。そんな、地方自治だって、地方自治はそれはもう始まって戦後だけで三十五年ですから、ただ中央統制のもとにやたらとよけいな介入があって、補助金というものでたかり根性を醸成されているから地方は生きないんであって、あなたのようなそういう考え方じゃ、それは地方はいつまでたっても自立性が出ませんよ。これは承服できないということだけ言っておきますからね。
  363. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私が言ったのはこういうことなんです。たとえばこういうような補助金をある程度統合してこれらの目的に使うようにするので事務の煩瑣を少なくすると、それは私はいいと。しかし、これを一般財源の中に入れてしまう、たとえば社会保障費、このようなものもね。そうすると、人によって、現在でもやはり地方交付税交付金の算出基礎というのはいろいろあるわけですが、みんなそれはその中へ入っています、入っていますと、こう言われても、これはその首長によってはそいつをうんと建設事業の方に使いたいという人もかなりいるし、そうでなくて、もうこれは文教が好きだという人もうんといるし、東京都の周辺の新しい市なんかでは月給ばかり上げちゃってもういろいろ非難を受けているというところも現にあるわけです。したがって、そういうことになってもまずい。やはり社会保障の費用は社会保障の費用の中で使われるというようなことだけはやっぱり区分しておく必要があるんじゃないかと、そういう意味のことをぼくは言ったわけで、別に他意はないわけです。そういうわけですから。
  364. 志苫裕

    志苫裕君 それはあなたが言うた他意が出てくるんでね。これはまあいいです。  この間ちょっと不十分になりましたので、輸入バナナに使用されている殺虫剤テミックという農薬なんですけれども、これの毒性をちょっとこの間指摘をしました。農林省、これはどういう農薬ですかね、世界の使用状況等。
  365. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) お答えいたします。  テミックは綿、バレイショ、落花生、バナナの殺虫剤、殺線虫剤等として土壌に施用される農薬でございまして、アメリカ、ヨーロッパ、南米、東南アジアなどに広く使用されていると聞いております。わが国では本剤に係ります農薬登録はございません。
  366. 志苫裕

    志苫裕君 これはユニオンカーバイド社の製品ですね。アメリカの取り扱いどうなっています、
  367. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) アメリカにおきましては限定的に農薬の使用を認めております。
  368. 志苫裕

    志苫裕君 そういう言い方でなくて、食用植物には使用禁止ですね。そうなっていますね、
  369. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) いろんな使用の仕方ありますが、結論的には先生がおっしゃったようなそういう生食用に供するというものについての使用というのはないようでございます。
  370. 志苫裕

    志苫裕君 この製品の注意書き。これなんですがね、この段ボールの。これによりますと、危険、有毒、吸引すると致命的と、こう書いてあるんです。私は英語読めないからわからないけれども、そうなっているんだそうですよ、これは。問題は残留毒性だと思うんですが、私の手元には若干のデータはありますけれども厚生省、これ改めて報告をしてください。
  371. 榊孝悌

    政府委員(榊孝悌君) テミックの毒性につきましては、いま残留毒性等いろいろお示しがあったわけですが、FAO、WHOの合同残留農薬専門委員会におきましていろいろ毒性学的に評価をされております。その結果によりますと、テミックにつきましては、三世代の繁殖試験あるいは優性致死試験それから発がん試験というふうなものが行われておりますが、その結果異常は認められておりません、このものにつきましては主としてやはり急性毒性、これが中心でございます。一応そういう評価がされております。
  372. 志苫裕

    志苫裕君 現に確かにデータによりますとわりあいに早い時間で毒性が消えていくようですが、ですからフィリピンなんかでも輸出し残ったやつは捨てちまうと、捨てたやつを子供が食っていっちゃったとかというケースもあるそうですから、まあいろいろまだまだ一定期間内の毒性は高いが、時間がたっと急速に減るというデータがずいぶん多いようです。ただ、いわゆる発がん性あるいは遺伝形質への影響というようなのはまだまだデータが不足のようでありますので、日本においても少しこれ真剣に、ずいぶん大量なものを輸入しているわけでありますから、研究、調査をなさるべきではないかと思います。大臣どうですか。
  373. 園田直

    国務大臣園田直君) 事務当局から答えましたが、なお大事な問題でありますから検討いたします。ただいま係官を現地にも派遣して調査をいたしております。
  374. 志苫裕

    志苫裕君 厚生大臣いいです。  次は、防衛庁長官お待たせしました。ちょっと防衛問題に入る前に、先ほど堀江さんが質問なさったんで、それに関連をして聞きます、  堀江委員は、もうしばしば軍という用語を用いられまして質問しました。これに官房長初め防衛庁長官、それぞれ御答弁なさいましたが、軍とは何ですか。
  375. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 軍とは何かというお尋ねでございますけれども、現在、日本の場合には軍という言葉あるいは軍のつく言葉はないわけでございますので、ちょっと御説明することはむずかしい……。
  376. 志苫裕

    志苫裕君 いや、皆さん答弁されていたから聞くんです。官房長官どうですか、
  377. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私は、先ほど大抵自衛隊のことを仮にそうおっしゃっていらっしゃるのだろうと思ってお答えをして、あえてまあそれは申し上げなかったのでございますけれども……。
  378. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私これ意地悪質問ではないのですね。憲法九条の解釈をめぐって、軍隊であるかどうかは議論になっているのだ。軍隊と言うたらどうという意見もある。皆さんは自衛隊と、こう言っている。しかし、軍という言葉が使われることは構いませんが、それに的確にお答えになるから皆さんの認識を聞いている。もう一遍聞きます。
  379. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えいたします。  軍隊と自衛隊とは違うと思います。私どもは憲法九条のもとにおいて自衛のための必要最小限の実力は持てると解しておりますが、これはあくまで軍隊とは違うと考えております。
  380. 志苫裕

    志苫裕君 もう一つ、専守防衛の質問に関連をして、座して死を待つより相手の基地をたたけという先輩防衛庁長官の言を引用し、それと同じ意味だとあなたはお答えになった。これはどういう意味ですか。
  381. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  これはたしか昭和三十二年ごろの当時の防衛庁長官、たしか船田中先生だったと思いますが、国会の御質問に対しまして、有事の際に、どうしても他に方法のないような場合には、ミサイルの基地のようなものをたたくこともあり得るという趣旨の答弁をされたということを私は国会の記録で読んだ記憶がございますので、そういったような議論もこれまであったけれども、お尋ねのあれと専守防衛という言葉は、基本的には同じことを意味するものではないかと、そういう趣旨のお答えをしたわけでございます。
  382. 志苫裕

    志苫裕君 これは私はちょっと重大な発言だと思うのです。相手の基地はたたかない、これを専守防衛と、少なくともしばしば口が酸っぱくなるほど答弁をされているはずで、その答弁防衛庁長官政府の見解として変えるんですか。
  383. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  変える考えは全く持っておりません。
  384. 志苫裕

    志苫裕君 変える考えは持っていないと言ったって、あなたそう言っているでしょう、相手の基地をたたけと。そういうことがその防衛庁長官答弁にあると言うんですか。これは重大なあなた国是変更ですよ。
  385. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いまの大臣お答えにつきまして、当時の政府統一見解をお答えいたします。  三十一年の二月二十九日、鳩山総理答弁の船田防衛庁長官の代読でございますが、「わが国に対して、急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」というのが当時の政府の統一見解でございます。
  386. 志苫裕

    志苫裕君 それと、しばしばお答えになっておる、わが国は専守防衛、相手の基地はたたかないということとはどういう関係がありますか。
  387. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  わが国の方から進んで相手の基地をたたくということは全然考えておらないわけでございますし
  388. 志苫裕

    志苫裕君 官房長官ね、わが国の領域、周辺海域の防勢に当たるのであって、相手の領域には攻め込まないということをもって専守防衛をも説明されていました。しかし、ただいまの答弁は明らかに違う。政府としての統一見解をそれではまとめてください。
  389. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和三十一年でございますか、この問題が問題になりまして、統一見解としてまとめましたものを先ほど政府委員が申し上げたのだと私了解しております。つまり、急迫不正な攻撃に日本自身がさらされるという、そういう現実の事態に立ってと、こういうことを統一見解は申しておるのだと思うのでございまして、何でもかんでも構わずよそへ行っていいとかなんとかいうことをむろん言っておるわけではない、先ほどのが統一見解と思います。
  390. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっとこいつにこだわりたくなかったのですけどね。  そうしますと、そういうときに相手の基地をたたくに必要な防衛力を持つんですね。
  391. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、非常に厳密にむずかしい問題でございますから、きちんとお答えをしなければならないのだと思いますので、先ほどの統一見解は、何でも、どういう状況でもそういうことをしていいという意味ではなくて、急迫かつ不正な侵害がわが国、国民に加えられる場合にどうするかということについての見解であると思っております。
  392. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、急迫かつ不正な侵害というのがあり得るという前提に立てば、それの防衛力を整備しなければいかぬでしょう。すなわち攻撃用の兵器を持たなければだめでしょう。
  393. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ただいまの三十一年の政府統一見解の後、三十四年の三月十九日に当時の伊能防衛庁長官の同趣旨の答弁がございますが、その答弁、前段は同趣旨でございますから省略しますが、後段でこのように述べております。前段の終わりの方で「法理的には自衛の範囲に含まれており、また可能であると私ども考えております。」と言われました後で、「しかし、このような事態は今日においては現実の問題として起こりがたいのでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から、他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。かように、この二つの観念は、別個の問題で決して矛盾するものではない……。」というような答弁がございますが、要するに政府の統一見解は、法理的には自衛の範囲に含まれる場合もあり得るということを政府の統一見解としてお答えしたものであります。
  394. 志苫裕

    志苫裕君 まあいずれ……。法理論的にそうなるということと、そういう政策をとるということとの間をごちゃごちゃにして返答なさっているようです、防衛庁長官は。ですから、私もあれですが、特に言いますのは、先ほどの堀江委員の質問に関連するわけじゃありませんけれども、とにかく相手の基地をたたけたたけ、専守防衛のとめ金外せという主張も一部にないわけじゃない。それだけに、私は従来政府がとり続けてきた専守防衛のとめ金というものを重視をするし、鈴木総理もしばしばそのことを述べておられるので、このことを問いただしたわけであります。  次は、大蔵大臣ね、あなたせっかく残ってもらって申しわけないのですが、シビリアンコントロールの非常に大事な面として、予算審議、これも重要なシビリアンコントロールだと思うのですね。私が不勉強なんでしょうかね、率直に言って予算書を見ただけでは防衛の実態がわからない。予算書見たり明細書見たり、説明書聞いたり附属書を見てもわからない。大蔵大臣もわからないんじゃないかと思いますがね。もうちょっとひとつ防衛予算を審議していただく場合の工夫をしてもらえませんか、資料のつくり方とか提出する範囲とか。こういう点、防衛庁長官とそれから大蔵大臣、し
  395. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 実は予算書のつくり方についてわかりづらいという質問がございましてね、たとえば去年の九月二十五日寺田議員、それから衆議院では十月阿部助哉議員、同じく十月予算委員会で参議院の赤桐操議員、こういう議員から質問があって、私お答えをしたんです、極力わかりやすいようにいたしますということで。予算書のことでございますから、防衛庁のところだけをつくるというわけにはいかない、全部であります。したがって、たとえば財政法二十八条の五十五年度予算参考書というようなところを見てもらえばわかりますが、ことしと去年ではかなり違うんですよ、わかりよくなっている。非常に親切になった、親切に。お見せしますから……。(資料を示す)
  396. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私は全部見ておりますけれども
  397. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) こんなにわかりいいでしょう、これ。こんなごちゃごちゃ書かないで、ちゃんと欄を分けて、わかりやすくちゃんと
  398. 志苫裕

    志苫裕君 これだけではわからぬですよ、依然として。
  399. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いやいや、だからかなりわかりやすくなっている。だから、これだけじゃわからないと言われますが、いままでにないことをこれやっているわけですよ。同じページを比べて、二百十一ページというところを比較してもらえば、各事項みんなそうですから。ですから、工夫はしているわけです。したがって、さらにそれのなにのやつということは防衛庁等で参考資料をつくっていただけばいいと思うわけで、大蔵省は防衛の予算のところだけもう特別扱いする、ほかの省の予算のところはしないというわけにはいかないんです、私の方は。全体としてわかりやすくしてあるということでございますから、その点は御了解をいただきたいと存じます。しかし、進歩の跡は歴然としていることもお認めをいただきたいと存じます。
  400. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えいたします。  いまの予算書の改善の点につきましては大蔵大臣からお答えあったわけで、そのとおりでございます。防衛庁関係の予算につきましても、これまでの国会におきまして、わかりにくい、もう少しわかるようにせよとしばしば御指摘がございまして、大蔵省と相談して、ことしの予算書並びにその関係書類においてはあとう限り私ども努力いたしたつもりでございます。その詳細は、必要があれば政府委員から御説明申し上げさしていただきたいと思います。
  401. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、約束の時間が来たからいいです。私も約束を守ります。  それではガイドラインの問題につきまして質問をいたしますが、三月十四日の質問の連続性にひとつ留意をして的確にお答え願いたい。  まず、事前協議の問題について、イエスを仮定をした研究、あるいは共同作業を行いながら、いざそのときになって違った対応をとるということは論理的に一貫をしない。ましてや、この作業は両国政府の了解のもとに行われておるものであります。したがって、有事の際の対応はイエスもしくはノーではなくて、ノーコメントという立場をとるのではないですか。
  402. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 前回の御質問のときに、米軍部隊の来援があった場合に、事前協議の対象になるような部隊の来援があった場合にイエスという前提で進めておるという趣旨のお答えをしたわけですが、それは研究を進めるに当たりまして、その段階でもうノーということであれば研究になりませんから、もし日本政府がイエスと言った場合にはその後こういうふうに進展するであろうということに立たない限り研究になりませんので、そういう意味では確かにイエスと言った場合にはこうだということで研究を進めておることは事実でございまして、そのとおり申し上げました。  しかし実際に、それではもう一種の約束をしたようなことではないかと、ノーということではなくてイエスを約束したことではないかという趣旨のお尋ねだと思いますが、これ、何回も申し上げておりますように、このガイドラインそのものあるいはガイドラインに基づく研究あるいはその結果、すべて両国政府の自主性ということは非常に強調されておりまして、お互いに、そういうものがここで決まったことがお互いを拘束するものでないということも基本的な認識として日米双方にございますし、また実際問題としましても、しばしばお答えいたしておりますようにいまの研究はある一つの設想を置いているわけでございます。現実に起こる事態というのはそれこそ千差万別でございます。  したがいまして、確かにそういうことで研究はしておりますけれども、実際に起こった場合にイエスと言うかどうかは当然その時点で判断すべきことであるというふうに私どもは思っております。したがいまして、このガイドラインの研究がそういうことで進めておるからといって、イエスを先約したものであるというふうには私どもは全然思っておりません。
  403. 志苫裕

    志苫裕君 こうなったらこうしましょうという約束でやってきてそうなった。そのときには国内向けにはノーと言わなきゃならない。アメリカに向かってはイエスと言わなきゃならないという矛盾した立場に立つわけであります。したがって、ノーコメントという立場を恐らくとるのではないかということを私は指摘をしたわけです。  そこで重大な疑問を生じましたのは、事前協議、憲法制約、非核三原則というのは対象にしなかったという前提条件の意味でありますけれども、これは三つの問題を研究・協議の際に制約的に取り扱ったというのではなくて、あえてコメントしなかったということで、むしろ幅を持たせたのではないか。このように理解をされますが、どうですか。
  404. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  日米防衛協力のための指針の作成のための研究・協議を進めている上で、前提条件としましていま申されました憲法の問題、非核三原則の問題等三つを研究・協議の対象としないこととしましたが、これを前提として、その枠内で研究をすると、こういう意味でございます。あくまで前提としてこれを尊重してやっていくと、こういうことでございますので、御理解を願いたいと思います。
  405. 志苫裕

    志苫裕君 「研究・協議の対象としない。」と書いてあるのでありまして、この三つの原則は制約として取り扱うと書いているんじゃないんですよ。ですから政府答弁のように、非核三原則に触れることは指針に盛られていない、制約的に取り扱ったというのであれば、対象にしないというのではなくて、むしろ対象にしてその制約を明記するというふうに書くのが日本側の文脈にならなければならない。そう思いますが、この点について日米双方の議論があったんじゃありませんか。いかがですか。
  406. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) この点につきましては別段異論があったということは聞いておりません。
  407. 志苫裕

    志苫裕君 それなら私の言う文脈になるのが当然でしょう。
  408. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 憲法に触れないということ、非核三原則日本側は守るということ、それをまた先方も認めること、そしてまた協議事項は対象としないということ、この三条件は指針を作成するときの日米両国政府が意見の一致した点でございますので、文字どおり対象としないということだったというふうに理解しております。
  409. 志苫裕

    志苫裕君 それはこの間からそういう答弁いただいているのですが、私はいろいろやりとりをして、これはそういうふうに、文脈に読めない。これはコメントしなかったというふうに読むのが至当だというふうにだんだん疑問を感ずるようになりました。  ちょっと外務省、このガイドラインでもそうですし、大綱でもそうですが、「米国の協力をまって」という文言がありますが、「まって」というのはどういう意味ですか。
  410. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ちょっと先生の御指摘になりました「協力をまって」という個所が私すぐ思い出せないんでございますけれども、(志苫裕君資料を手渡す)これは日米安保条約に基づきまして、第五条で米軍は日本来援の義務を持っております。そういうことでございます。
  411. 志苫裕

    志苫裕君 来援をまつ。まつというのは、人が来るのを待つという待つか、相まってのまつか、どっちですか。
  412. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いまの先生のお言葉で言えば後段の相まってということでございます。
  413. 志苫裕

    志苫裕君 相まってですね。としますと、作戦構想における陸の場合はともかく——これはまつ方ですね、来援を要請するんですから。海上、航空の場合は、侵攻の初期から米軍の判断で作戦に当たることから見て、核持ち込みについてはノーコメントにしておく以外にあるまい、こういう論理になります、指針はそのための道をあけたのではないか。あえて言えば、政府は非核三原則の変更を意図したのではないか、こう判断しますが、どうですか。
  414. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど先生はガイドラインの文脈からして制約にはなっていないというふうに読めるんじゃないかとおっしゃいましたが、私どもは、このガイドラインに基づく作戦計画の研究に当たりまして、米側から見れば日本の持っておる非核三原則あるいは日本が持っておる憲法上の制約、こういったことは米軍にとっての行動上の制約になるわけです。これはもうはっきりしております。したがいまして、米側から見れば日本と共同計画を研究するに当たってはそういう制約があるんだという前提に立って米軍の行動についての研究をしていく、こういうことになるわけであります。
  415. 志苫裕

    志苫裕君 外務省すみませんもう一度。  事前協議事項ですね、まあ三つありまして、そのうち重要な装備というのは、核弾頭が入っておるとかあるいは編成、配置の問題にはどれぐらいの規模の軍隊とかというその中身というのはどういう手続を経て変更できますか。
  416. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま御質問のございました安保条約に基づく事前協議の対象は三つございまして、いま先生の御質問は「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更」ということを指しておられると思います。「重要な変更」とは、従来から日米間で合意しております「陸上部隊」の場合には「一個師団」、こういう文言がございます。私たちは現在のところ、この日米間の約束はアメリカ側も遵守しておりますし、日本側としてもこれを変更するという意向は全然ございません。
  417. 志苫裕

    志苫裕君 どういう手続ですか。
  418. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) これは手続を強いて言うとすれば、まさに論理的な問題でございますが、安保条約に基づきまして日米いずれかの政府から発議して、ここに言っておる交換公文に基づく「配置における重要な変更」の内容を変更したいということをいずれかの発議で、そこで合意が成立すればそれはできるわけでございます。
  419. 志苫裕

    志苫裕君 それは口頭による了解も含みますか。
  420. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま私の申し上げました「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更」というのは、もともとまさに藤山・マッカーサー口頭了解でございます。
  421. 志苫裕

    志苫裕君 口頭了解で変更できるということですが、私は、この非核の問題について言えば、この指針はすでに政府によって了承されたものでありますが、その中身はどう見ても、政府が一貫して国会と国民に約束した国是とも言うべき問題の違約、背反という性格のものが含まれておるのではないかという疑問をぬぐい切れない。でありますから、それをもう少し明らかにされなきゃならぬと思うので、やっぱりその段階ではすべての作業を中止をする、指針の洗い直しをするということを政府は検討すべきだと思うんです。官房長官、どうですか。
  422. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど防衛庁政府委員が申し上げました言葉をかりますならば、これらの三つの問題は向こう側から言えばいわば差しさわりになる、支障になるものでございますが、これは動かせないものであるから研究や協議の対象としても意味がないんだ、それは研究や協議の対象としない、こういうことがこのガイドラインのはっきりした立場であろうと考えます。
  423. 志苫裕

    志苫裕君 とにかく非核三原則を貫くという政府答弁を指針に即して言えば、まず、必要に応じて来援する米陸上部隊は核装備をしない。第二点、侵攻の初期から共同して海上、航空作戦を実施する米軍部隊日本の領域内で作戦に当たらない。第三点、領域内で当たるときは核装備をしない、あるいは機動打撃部隊は作戦に当たらない。第四点、日本国内における補給品の取得、装備品の整備に当たるときは核装備を外す。これが満たされなければ政府答弁が充足をされません。一体そういう条件を満たした共同作戦というのは成り立ちますか。
  424. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ちょっといま速くおっしゃいましたので全部読み取れなかったんですが、一の陸上の来援部隊は核を持ってこない、これはそのとおりでございます。  それから、二の海上、航空の直ちに、何といいますか、出動してくる部隊、これは日本の領域内では核を持ってこれない、それもそのとおりでございます。  それから三番目に、逆に言いますと、核を持っている部隊日本の領域外でないとだめだと。  四番目が何でしたか。
  425. 志苫裕

    志苫裕君 補給品の取得、装備品の整備。
  426. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 装備品の補給等でございましても核を持った艦艇は日本の領域内には入れない、こういうことでございます。
  427. 志苫裕

    志苫裕君 そのように答弁としては承っておきます。  次に、専守防衛との関連で聞きますが、先ほど専守防衛とはどういうことかということでわかったようなわからぬような答弁をいただきましたが、ガイドラインに即してお伺いしますが、「作戦構想」によりますと、「自衛隊は主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行いこと、こうありますのは、敵国の領域に対する攻撃ないし海外派兵は行わないと表明したものですか。
  428. 塩田章

    政府委員(塩田章君) まず、後段の海外派兵を行えないことはこれはきわめて明瞭であります。  前段の敵国の領域を攻撃しないということは、先ほど最初に御議論のございました点で法理論上は可能であるということを、何といいますか、申し上げて、攻撃は行わないと、その留保をつけて攻撃は行わないというふうに申し上げます。
  429. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、法理上そうだと言っても政策上は——あなた三十何年の説明がありました。あなたの方の想定問答集によると、敵国の領域に対する攻撃は行わないということを表明したとなっているんじゃないですか。
  430. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そのとおりでございます。
  431. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、米海空機動打撃部隊による侵攻兵力を撃退するための作戦には相手国領域に対して攻撃を加える可能性を含んでいますか。
  432. 塩田章

    政府委員(塩田章君) アメリカの海上機動打撃部隊あるいは航空打撃部隊はその可能性は含んでおると私は考えます。
  433. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、わが国の防衛のために自衛隊と米軍が共同して作戦を実施をして、その一つ部隊、米軍でありますけれども、これが相手領域を攻撃をするということになれば、自衛隊は専守防衛でもわが国としては専守防衛にならない、こう理解していいんですね。専守防衛ではない、こう理解していいですね。
  434. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 米軍の行動としましてどういう行動をとるか、そのときの情勢によると思いますけれども、そういうことが——そういうことというのは相手国の基地を攻撃するというようなこともあり得るということは想定されますが、そのことがわが国が専守防衛の立場をとっておるということと私は矛盾しないというふうに考えます。
  435. 志苫裕

    志苫裕君 そうでしょうかね。わが国の防衛のために共同作戦を組んでおるわけです。別に海域分担もしているわけでも何でもないんです。領域の分担もしてないわけです。共同作戦していますね。そして、そのパートナーあるいはその防衛軍の一部と言っていいでしょう、これがその相手領域に侵攻をする、こういうことになれば、いやそれは仲間になっておるあいつがやったんだということには私はやっぱり論理的にならないじゃないですかな。もう一度、この点はどうですか。
  436. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私は、結局こういうふうに思います。というのは、アメリカが安保条約の義務によって日本に来援をしてきて、日本の防衛について日本を援助するわけですが、そのことはアメリカ側から見ればこれは集団自衛権の行使だと思うのです。ですから、アメリカはアメリカの立場で必要な状況に応じた戦闘をするということはこれは考えられることでございまして、そういう意味で私は先ほど日本の専守防衛の立場とは矛盾しないというふうに申し上げたわけであります。
  437. 志苫裕

    志苫裕君 私は軍事専門家じゃありませんから事態がどう展開するかわかりませんが、しかし識者の間では、核を伴うような大規模な戦争が起きればそれは人類の破滅になるのであって、抑止力というようなものを保有をしながらも大規模な戦争にならないというもっぱらの見解が強いようですが、仮にそうではない、日本に対する限定的小規模な侵攻、それが一体どういうものであるかわかりませんが、模様見といったようなものなのかもしれませんけれども、限定的小規模な侵攻があったとして米軍の対応いかんによっては重大な局面に展開をする。すなわち相手基地をたたくという米軍部隊の持っておる機能、行動の自由ということから見て、限定的小規模な侵攻というふうなものがその対応いかんによっては重大な局面に展開をしていくという可能性を持ちませんか。
  438. 塩田章

    政府委員(塩田章君) おっしゃいますような模様見というような作戦が現実にあるかどうかわかりませんけれども、いまのような仮にそういうことがあった場合にという前提を置いたとしまして、日本から見ればいずれにしても限定的小規模であろうがなかろうが、とにかく侵略があれば日本にとってはそれは侵略でございます。したがいまして、日本にとってはそれに対してしかるべき対処を当然日本はいたします。それについて、いまのアメリカが言うなれば過剰的な反応をした場合という御指摘であろうと思いますが、結局そのときの状況判断といいますか、日本に対するそういった限定的小規模な攻撃、その規模にもよると思いますし、情勢いかんにもよると思いますからちょっと一概に申し上げにくいのですけれども、まあそのときの起こりました状態が要するに計画的なものであるかどうか、そういったようなこと、あるいはその規模、いろんなことを考えてアメリカはアメリカの立場から判断をするだろうと思います。日本から見れば、いずれにしても日本にそういった侵略があれば、小規模であっても大規模であっても日本にとってはそれは侵略としてしかるべく対応すべきものというふうに私は考えます。
  439. 志苫裕

    志苫裕君 戦火が拡大するかしないかはアメリカ次第という答弁のようです。この問題は、またいずれ細かくお伺いすることにいたします。  最後に、これは外務省と防衛庁、両方で答えてください。ガイドラインの第三項「日本以外の極東における事態で」のこの項目です。「日米両政府は、日本が上記の法的枠組みの範囲内において米軍に対し行う便宜供与のあり方について、あらかじめ相互に研究を行う。」というこの「研究」についてでありますが、これがどうして防衛庁長官の指示によって制服によって行われるんですか。
  440. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えいたします。  いま御指摘のありました第三項の、日本が米軍に対して行う便宜供与のうち自衛隊基地の共同使用等防衛庁の所掌に当たるものにつきましては、防衛庁は米軍との間で研究作業を行うことになりましょうが、それ以外の日本として与える便宜供与については外務省が中心となって研究作業を実施することになるものと考えております。  そこで、防衛庁が米軍との間で行う研究作業につきましては現在統幕が中心となって進めておりまして、自衛隊基地の共同使用の問題についても、自衛隊部隊運営とも関係するので同様に研究作業を行うことになると思いますが。これについては適宜内局とも緊密に連絡し、防衛庁長官に報告されるものでありまして、シビリアンコントロール上問題があるとは考えておりません。  外務省の関係については、外務省の政府委員からお答えしていただきます。
  441. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま防衛庁長官お答えされたとおりでございまして、この第三項の「研究」はまだ始まっておりません。  そこで、いかなる便宜供与が出てくるかということは今後の研究の課題でございますが、あるいは場合によっては防衛庁限りでは処理できない問題が起きてくるであろう、その場合には外務省がこの担当になるということでございまして、もう一つつけ加えるならば、この第三項はあくまでも米軍と自衛隊が直接的な軍事協力の関係に立つということでなくて、先ほど御説明のありましたような基地の使用等の便宜供与ということを前提にしているわけでございます。
  442. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、「日米両政府は、」と、こうなるんでしょうが、私は、このガイドラインは国防会議にかけて、閣議が了承をして、防衛庁長官の指示を発して制服を中心に研究を行う。それは防衛庁長官が掌握しているんだけれども、一番親方の総理にぐらいには言うと、あえて閣議に諮ったり国防会議にかける性格のものでないという答弁をしたでしょう、この間のときに。しかし、いま現実に、個々の点を指摘したように外務省の分野も出てくるじゃありませんか、あなたの答弁、正確でないですよ。
  443. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  私は、いま進めております作戦計画の研究につきましては防衛庁が中心になって進めているわけでございまして、そのようにお答えしたわけでございますが、いまの三項に挙がっておるような問題、その他ガイドラインの予定している数項目がございます。そういったものが研究が進んだ場合には、その段階において外務省との関連も生じてまいりますし、またいろいろなことが出てまいります。その場合には防衛庁限りで処理し切れないので当然関係官庁とも協議していくと、こういうことになるであろうと思うわけでございます。
  444. 志苫裕

    志苫裕君 防衛庁長官答弁正確でないですね。防衛庁長官の指示によって行う研究作業は共同作戦計画ばかりじゃないんです。指針の中にもっとたくさんあるんで、八項目に分かれていますね。そういうものがあるんですが、いずれにしても私は、第三項あたりはやっぱり制服中心じゃなくて、これは外務省なりそういうところでおやりになる方が筋じゃないかなという感じがいたしましたので、この点は提起をしただけです。  いずれにしても、時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  445. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で志苫君の一般質疑は終了いたしました。  明日は午前十時から公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会