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国務大臣(
田中六助君) まあ、まとめて私の見解を申しますと、実はアメリカの現状が大型車であったということはGMもフォードもクライスラーもそれぞれ認めているところでございまして、アメリカ人の黒人も含めまして一生の大きな理想はあの大型車のリンカーンとかクライスラー、そういうものに乗ることが一生の夢である、そういうことでずっときたわけですが、このようにこの数年間燃料危機、エネルギー危機というようなことで、さあ小型車に転換しようと言っても間に合わなかったという私の思いはあなたの思いと一緒ですけれ
ども、こういうことをやっておるアメリカ、つまりITCがこの前五人の
委員のうちに予想を覆しまして三人がシロという断定をいたしました。これは、私はアメリカの良識が生きておる証拠であると同時に、この三名がアメリカの自動車産業が不振に陥ったのは輸入車に原因があるんではないという結論を下しているわけです。したがって、私
どもがひそかに実は思っておるのはそういうことであるし、私もときどき国会で言うんですけれ
ども、安くてよくて燃費のかからない車をアメリカ国民が要望しておる、国民が買いたがっておるのになぜ議会やその他まあ業者と申しますか、そういう者がクレームをつけるんだろうかと。アメリカが二十万人のレイオフ、失業者がおるならば、
日本の自動車産業に直接参加している人は六十二万人います。非常にすそ野の広い
仕事、業界でございますので、ディーラーまで含めますと約五百万人おる、それなら
日本の失業者が怒ることについてはどういうふうに
考えますかと。このことは、余り国会で私
どもがいま交渉をしておるさなかに、実はそういうことを言ってもいいと思いますけれ
ども、まあアメリカと
日本との関係は御
承知のように、
日本が千五百億ドルぐらいの貿易の中、少なくとも四分の一は対アメリカでございますししかも、これは一、二年のことじゃなくて過去三、四年もそうでございますし、これから先もあの広い大きな市場で
日本の製品を輸出し、いろいろ買ってもらわなくちゃいかぬのは事実ですし、アメリカなくして
日本の将来というものも——アメリカの市場のことです。マーケットのことでございますが、そういうことを
考えるときに、やはり今回の自動車交渉というものはそういうものも踏まえた上でやらなければ、私が冒頭に申しましたような
日本の主張だけではどうかという疑問があるわけです。したがって、まだ総理が行く前に解決しろという命題がありましても、いまから余りいろんなことをしゃべったり、いろんなことをすることはどうかなあという気持ちがあるために多少うろちょろしましたけれ
ども、私
どもの
考えというのはベースはそこにあるのです。何とかかんとか言っても、
日本の国益と私
どもの同胞の
仕事のなくなるということ、これがやはり私
どもの
政府の責任者としても頭に残るし、これの解決ということにむしろ頭が痛いわけです。したがって、腹の中はそういうことでこれからもいきますけれ
ども、いま国会で腹の中のことまで全部ぶちまけて、これはまあまた困ったなあとは実は思っているんですけれ
ども、私
どもの言ったことが
一つ一つ全部アメリカに筒抜けになるのです。しかも、
政府の担当者である私がいろんなことを——いままたあなたはいまからどういう方法があるかというようなことを聞くかもわかりませんけれ
ども、私
どもはそういうことを一々ここで、
日本というのは非常に——私も新聞記者出身でございますけれ
ども、裏表全部書いてしまうもんだから、相手側というのはもう交渉しなくても手に取るようにわかると笑っている
部分があるのです。
だから、そういうことも含めまして、私
どもは、まあ人のことは言えませんけれ
ども、大体普通の人が
考えることぐらいは私
どもも
考えているというふうに思っておりますので、私の思いの一端を述べて
お答えとしたいと思います。