○
国務大臣(
伊東正義君) お答え申し上げます。
きのう
ポリャンスキー大使と二時間余にわたって
会談したわけでございますが、今度の
会談は、先般
ポリャンスキー大使から
外交ルートを通しまして、
総理にお会いしたいということがあったわけでございます。
内容はどういうことかということは全然何にもなくて、ただ会いたいということでございましたので、
総理がお会いになります前に私がお会いをして、どういう用件であるかということをまず聞こうということで、
総理と御
相談して、私がまず会ったわけでございます。
向こうからの
申し入れは、
ソ連の
指導部から
日本の
指導部に対しての
申し入れだと、こういうことでございまして、
内容は、この間の
ブレジネフ演説の中で、
日本との
善隣友好調係は支持するという部分で、今後も
友好関係を続けたいということが一点と、それから
信頼醸成措置ということがあったわけでございます、あの
演説の中に。それは御
承知のように、
ヨーロッパではヘルシンキで
ヨーロッパのそういう枠組みができておるわけでございますが、
極東にもそれを及ぼしたいということで、
演説の中に触れておりますのは、アメリカ、それから
日本とか
中国とか、そういう
意味のことが触れてございます。それで、
演説の中で
極東におけるそういう
信頼−
醸成とはきのう言いませず、
信頼措置ということを言っていましたが、そういうことをする必要がある。
ヨーロッパでは大きな軍の移動でございますとか、演習の場合のそれを外国に見せるとか、そういうことを連絡するとか、いろんなことがあるのでございますが、
極東においてもそういうことをやることが平和の維持につながるのだと。ついては、そういうことをやるとすれば、
事務レベルといいますか、いろいろ
相談をしなければならぬこともあるだろう、
ソ連としてはその
相談に乗る用意があるという
意味の
申し入れがあったわけでございます。そのほかのことは何もございませんで、そういう
申し入れがございましたので、そのこと自体は
総理にお伝えするし、
日本としても十分検討して、そうしてモスクワにいる魚本
大使から
グロムイコ外相にも返事をしようというようなことを言いまして
会談に入ったわけでございます。
私は、こういう
信頼措置ということを言われるけれども、ご
承知のように、
日本では
領土問題が解決をしないということが、両国の
相互理解のもとに平和的な
友好関係を続けていくということに対してこれは支障をなしているのだと、
領土問題が残っている、また、その
日本の
領土の上に軍備の増強というようなことがやられている、そういう情勢がある中で
信頼措置と言われても、これは
ソ連がむしろそういう
信頼措置をやろうというようなことに逆行しているようなことをやっているんじゃないか、そういう前提で
信頼措置と言われても、なかなかこれはできる問題じゃない、まず
領土問題について
話し合いをする、返還するということをしてもらうということはこれは
国民の
総意で、「
北方領土の日」をつくったということも、これは共産党、社会党ももうみんな含めて、
全会一致でこれは決めた
国民の
総意なんだ、避けて通れる問題じゃないということを言いましたことと、
ブレジネフ演説の中に触れております、
日本が
軍国主義化しているということを言っておるのでございますが、そういうことはないと。これは憲法で
日本の
国民が
平和主義ということを選択したのでございまして、そういう
軍国主義という
非難はいわれない
非難である。また、
日米中が三国結託して
ソ連に当たるのだといったようなことを言っているが、そういうことは全然違うと。
日本は、
日米安保があることはこれは前から御
承知のとおりなんだ、あとは、日中はこれは国交正常化したが、
経済的な
協力をやっているんだ、軍事的な
協力なんというものは
考えていないわけでございますので、
日本は、日中は日中、
日米は
日米、
日ソは
日ソということでやっているので、三国が結託して
ソ連に当たるなんということは
考えておらないという
——ブレジネフ演説の中に
日本を
非難したことがございますので、それについて
日本の
考え方を言い、そうして
ソ連が
アフガニスタンに対する
軍事介入をしている、あるいは
軍事介入という問題があれば、東南アジアではベトナムのカンボジアに対する
軍事介入もあるのだと、あるいは
ポーランドについていろいろ言われていることがある、こういうことはその
国民が、
自分の手で、
自分の意思で、どういうリーダー、政権をつくるのだということを
国民が決めるべきであって、第三国が干渉したり、軍隊を介入させておったり、そういうことはおかしなことなんで、
アフガニスタンからは撤兵をすべきだし、
ポーランドの問題は
ポーランド自身の
国民が決定するのだ、そうでなけりゃおかしいというようなことを、私の方の
考えを述べたわけでございます。
それに対しまして
ポリャンスキー大使は、
領土の問題は、これは
ソ連は何回も
日本に対して
意見を言った、それ以上つけ加えることは
領土の問題についではない、いつまでも二国間で
領土の問題にかかわっていてそれから将来の問題に入っていかないということではこれは
自分はいかぬと思うので、二国間には
経済問題もあり
文化の問題もあるだろうし
科学技術の問題もあるだろうし、いろんな問題がある、そういうことを話していくべきじゃないか、
領土の問題はたな上げという
言葉なんでございます、そういう
意味でございます。そういう
主張をされましたので、
日本としては、
領土の問題はどうしてもこれは避けて通れない
国民の
総意なんだということをるる
両方でやり合ったわけでございます。
そして、
経済問題の中で議論しておりましたときに、
向こうで何か
政治レベルの、いろんな
レベルの交渉、
話し合いでございますとか、
経済問題とかいろいろあるが、
日本側から何か
提案はないかと、こういうことでございましたので、私はまず
提案と言われれば、
コンブの漁、
民間同士で話し合っているのだけれども、
コンブの漁もまだ話がつかない、あるいは
北方領土への
墓参の問題もずっととだえたままだ、こういうような、特に
墓参の問題やなんかは人道上の問題なんだから、これは従来の
身分証明書で
墓参に行けるように、そういうことこそまず第一に
考えるべきじゃないかというようなことを
日本側から
主張をしたのでございますが、きのうの
会談の中で具体的に何か
話し合いがつくというようなものじゃなかったのでございます。二時間余にわたっていろいろ
意見の交換をしたということで、
最後は、
平和条約の
話し合いのテーブルにつけるようにひとつ
両方で努力しようじゃないか、
日ソの
友好親善関係が恒久的にできるように努力しようじゃないかということで別れたというのがきのうの会見の
内容でございます。
最後に
ポリャンスキー大使から、
総理によろしくお伝え願いたいという、よろしくということで
最後は別れたのでございまして、
総理にその旨きのう報告したというのがきのうの
会談の全容でございます。