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国務大臣(園田直君) そういう提言はございません。そこで演説したことは事実でございます。しかしそういう誤解を受けちゃいかぬと思ったから、私の言葉遣いが悪かったので訂正した事実はございます。
なお、ちょっと時間をいただいてその背景を描写いたしますと、私は上田さんと違って、世界観、
日米関係については
意見を異にするものでございます。しかし、人類の目的ということについては
意見は変わってないと、こう思います。私はソ連でも申しましたが、
アメリカにも申しました。
日本は
日米関係が
外交の基軸であり、かつ
日米安保は
日本防衛の基軸である、こういうことをソ連と
アメリカ両方へ言っております。そこで、私は特にそれを言いましたことは、
日米首脳者
会議というものがやられておる。その会談の際に、当初
会議に先立って
アメリカの
大統領と
日本の
総理大臣単独の会見がございました。ここでどういう会合をされているのかうかがい知るところではないが、われわれはやや不満がある。莫大な金と貴重な時間を費やしてわざわざ
アメリカに来て会談するのに、
日米間に横たわる問題だけ議論されては困る。それよりも、世界平和のために
日米がどうやって協力するかということのために、
アメリカがその年あるいは全般的な世界に対する方略というか戦略というか、そういうものを説明されることが妥当であると思うけれ
ども、一言も話がない。したがって、私の方から質問をいたしますと、こういうことで、第一には米ソの軍事力、これについて
意見を述べました。質問をいたしました。第二番目には、アジアの平和は何といっても中国が
中心である、そこで中国に対して
アメリカはどうやるつもりか、特にソ連と中国の対立、こういうものをどう
考えているのか、これが二番目でございます。三番目には、中東の問題についてこれが非常に大事な問題であると。当時はまだアフガニスタンにソ連が来なかったときであると思いますけれ
ども、正直に言って、あの油田地帯というものを超二大国がいろんな
意味でねらっていることは事実だと第三者は判断をする。ところが、中東に対する
アメリカの政策は必ずしも巧妙ではなくて拙劣である、今日の困難の大部分は
アメリカの方がやったんじゃないかと。そこで、正直に言うと、中東の諸国はこういうことを言っている。自分たちはフランス、イギリスから占領されておった。植民地にされておった。しかし、そのフランスやイギリスもいまはうまくわれわれと話し合っている。
アメリカがわれわれと話し合い、われわれの立場を理解しないはずはない。しかるに、一方的にイスラエル等を支持をして、この中東の問題を
アメリカが妨害しているとわれわれは思うと。特に大事なことは、ソ連の南下に対して非常に鋭敏に警戒をしている。そこで、われわれが有事の場合にこれに抵抗はできない。やはり
アメリカというものの存在もわれわれは意識をする。反米言辞を弄しておる国々でさえも、
アメリカの実情をよく知っておる。やっぱりソ連というものに対抗して
アメリカがおるということが、これが平和のために大事であり自分たちも望む。しかしながら、いま
アメリカが軍事基地などを持ってきて、直接この中東の問題を東西問題にされることは非常な迷惑であって、火花を散らすことはもってのほかである、こういうことであるから、力を持っていま中東に臨むとか、軍事基地をつくるということは、いまのような実情から真剣に中東諸国が
アメリカに対して反発をするおそれがある、こういう
意見は言ったことがあります。そのときに、どの国もそうだと、いま
アメリカに近寄ってもらいたくない、ソ連も南下してもらいたくない、
両方が遠くにおって、その間で自分たちは中東の問題をみずから解決したいんだ、こういうのが念願であると。ただ、オーマンだけは違う。オーマンだけは
アメリカに軍事某地を貸してもいいと。湾岸諸国を初めとして、
アメリカに軍事基地を提供すべきでないという決議をしたことがございます。ところが、オーマンだけはこれに反対だと直接私に言った。なぜかというと、公平にやってもらいたい。自分の国は国境を接して隣の国がある、隣の国にはソ連の軍隊とソ連の基地がある、このソ連の基地も引き揚げて
アメリカも出てくるな、こういうなら賛成をするが、お隣のソ連の軍事基地と駐とん軍はそのままにしておいて、
アメリカだけ出てくるなということは不公平である、だから私は湾岸諸国のほかの
意見には賛成してない。こういうことは言っておるけれ
ども、
アメリカがいま力をもって軍事基地など進めることは適当でない、こういう話はしたことがございます。それが間違って誤解を受ける原因になったと思います。