○亀井
久興君
予算委員会地方公聴会福島班につきまして御
報告申し上げます。
福島班は
木村睦男委員長、
和田静夫
理事、
鈴木省吾
委員、竹内潔
委員、
藤原房雄
委員、そして私亀井が参加し、去る二月二十五日福島市において開催されました。
公述項目は経済、景気動向、農林災害問題、交通網整備問題を含む地方財政の三項目であり、九名の公述人から意見を聴取し、これに対して各
委員より熱心な質疑が行われました。
以下、公述順に従い、公述人の陳述内容につきまして、その概要を御
報告いたします。
まず、経済・景気動向につきましては、福島県農業
会議副会長松田徳君、福島大学教授米田康彦君、福島県商工
会議所会頭三枝利光君から意見を聴取いたしました。
松田公述人は、福島県の景気動向は、昨年来の冷害や豪雪等によって、農業機械、家電、自動車関係等、特に中小企業の落ち込みが激しく、百貨店の売り上げも前年比四%台の伸び率にとどまり、
物価の上昇が続いていることを考えれば、実質的な伸びはマイナスとなっている。このため、速やかな景気浮揚策を望みたい。
また、
地域振興のため、公共事業費の配分等を実態に即するよう適正化するとともに、零細な補助金でも効果があるので、一律削減は行わず、農村環境をよくするため、農林計画法のようなものを策定し、公共施設を合理的に整備するほか、農地三法の施行に伴う関係機関の分担を明確にし、米の消費拡大の措置、国産飼料の試験研究の充実、畜産振興のための国有林の活用等について配慮されたい。
なお、農地の値上がりに影響されて、宅地も値上がりしているので、地価対策の確立が必要であるなどの意見が述べられました。
米田公述人は、現在わが国もいわゆるスタグフレーションの状況にあることを認識する必要がある。わが国の場合、従来型の財政・金融
政策では、その効果は期待できない。それは、わが国の経済が、大企業の管理価格の強化とか、設備投資の手控えのため、不況の中の
物価高という現象があらわれている。わが国では欧米諸国に比べ、
物価上昇のテンポも鈍く、生産性低下もやや微弱であるが、これは輸出増、省力・省エネ投資によるものである。しかし、それも限界にきている。個人消費の不振、中小企業の経営深刻化等に見る不況の打開のためには、内需拡大は不可欠であるが、金融緩和措置だけでは、いたずらにインフレを促進するおそれがあると思われる。財政支出や、金利操作によらない個人消費の拡大と、設備投資、特に中小企業の設備投資拡大が重要ではないか。その方策としては、法人税についても、企業規模別、収益別に段階的な課税方法が必要であるし、大企業の余裕資金の吸収とか、
所得税減税と福祉拡大、あるいは農業の振興、独禁法の強化などの対策を抜本的に講ずる必要があるとの意見が述べられました。
三枝公述人からは、まず行政改革
推進の必要性が述べられ、景気については、冷害、豪雪の影響は、今後ますます深刻化し、建設、自動車、繊維関連の企業を初め、大企業の進出に押されている本県の食品雑貨等の中小零細企業は強い危機感を持っている。
従来二月にはほとんどなかった倒産も増加しており、六月ごろが危機ではないか。加えて、県内企業の約半数は赤字経営に陥っており、特に金利負担に苦しめられている。
今回の法人税の増税実施については一応賛成するものの、その条件として貸出金利の引き下げが絶対不可欠である。現在の本県の平均貸出金利は、普通銀行、相互銀行とも五十四年当時と比べ二%程度高くなっているので、少なくとも、厳しい環境下にある中小企業活動の活性化のため、早期の金利引き下げを要望するとの意見が述べられました。
次に、農林災害問題について、福島県相馬郡飯館村冷害対策本
部長山田健一君、福島県東白川郡鮫川村雪害対策本
部長石田卯子八君、振動障害対策巡回指導事業実施市町村代表星力君より意見を聴取いたしました。
山田公述人は、昨年の気象条件は、二十八年の冷害年より悪く、日照時間は平年の四三%であった。このため、水稲の作況指数は一〇を割り込み、被害金額も米十二億七千万円、葉たばこ、牧草等総額十五億円にも達し、農家の実態は困窮をきわめている。
飯館村としては、国、県とタイアップして、農業共済組合補助、種子確保事業、桑の樹勢回復事業等のほか、暗渠排水事業、造林地保有等を内容とする救農土木事業を行い、また、税の減免、給食費免除等の
予算措置を講じてきたところである。今後、冷害を克服して足腰の強い農業を確立し、若者が喜んで農業に取り組めるよう、各種施策
推進のため、天災融資法及び激甚災害法の早期指定、農業共済制度の改善、畜産を中心とした農業転換制度の確立を要望したいとの意見が述べられました。
石田公述人は、阿武隈山系は、従来積雪量が少ないことで、豪雪に対し無防備であった。このため雪害の復旧もほとんど進んでいない。
森林災害の特殊性は、農林施策の復旧が遅くとも一年以内に完了するのに、森林資源は直ちに復旧造林をしても、現状復帰までに二十年から三十年かかり、その間の収入の道がとだえることにある。
また、森林資源の公益的機能の低下は重要で、折損木等の放置は、春先の乾燥期において山火事の原因や害虫の巣窟となる。その他、河川のはんらんや、水源涵養機能の低下は大きい問題である。今後とも造林意欲を喚起させるため、森林の公益的機能を重視して、激甚災害法、復旧造林の早期指定を希望するとともに、復旧造林の補助率は少なくとも五〇%程度にしてほしい。
また、従来公共事業の対象となっていない折損木の整理を、その対象にしてもらいたいと要望されました。
星公述人は、舘岩村は福島県南会津郡の最南端にあり、林野率は九五%を超えている。当村における林業従事者は、百六十名程度であり、うちチェーンソーを使用する者は八十名に及び、主に伐木造材作業に従事している。長期間のチェーンソー使用が原因と考えられる振動障害による労災補償保険認定者は六名となっている。
振動障害防止対策については、国、県の指導のもとに、振動障害の早期発見と健康の維持増進のため、巡回方式で毎年実施している一次と二次の特殊健康診断を行うほか、チェーンソー操作技術、障害防止のための特別教育の実施、さらに
昭和五十五年度より三カ年計画で振動障害対策巡回指導事業を実施している。今後とも振動障害防止のため、低振動チェーンソー買いかえに対する助成とともに、当地区には総合的医療機関が皆無という状況から、医療機関の整備強化に対し配慮してほしいとの意見が述べられました。
最後に、交通網整備問題を含めた地方財政について、福島県副知事友田昇君、福島県市長会会長高橋元君、福島県町村会会長
田中清
太郎君から意見を聴取いたしました。
友田公述人は、
昭和五十六年度地方財政対策について、地方税の若干の充実、地方債の依存度の低下等、歳入面で改善された点は評価される。しかし、一般財源不足の補てん策は、地方交付税の借り入れ、地方債の増発という数年来変わらぬパターンで、抜本的な税制、財政の確立という点には至っていない。
福島県財政の特徴としては、人口、面積等の関係で量的な面は大きいが、県民所得や財政力指数等で見た質的な面ではおくれており、県道舗装率も全国平均に及ばない。本県の五十六年度
予算は五千二百三十八億円、前年比七・二%増であるが、歳入面では自主財源率が低く、農林水産費、土木費等投資的経費の割合が高い。退職金の支払いや、県立医科大学の移転費用等の負担増で、今後とも財政
運営は厳しい。国に対しては、県民ニーズの多様化に対処するため、補助金のメニュー化、総合補助金の拡充の実現が早急に望まれると述べられました。
高橋公述人は、県内の人口の流動は、近年、都市集中化傾向にあり、市部と町村部の人口比は、約六対四の割合である。市町村財政も財政体質の強化が必要であり、そのため、地方税制制度の見直し、地方交付税の税率改正、地方債資金の総枠の拡大、国庫補助負担制度の改善、特定
地域に対する財政援助等を、国との行財政関係の改善、簡素化、合理化とあわせて断行すべきである。緊急の課題としては、高齢化社会に対応した保健医療制度の抜本的な是正、幼稚園就園奨励事業の国庫負担率引き上げ、水道事業に対する起債の利率の引き下げ等が必要である。
県内市町村では、冷害の被害六百億円、豪雪被害が三百二十五億円あるのに加え、高潮の被害もあって、市町村財政は三重苦に責められているので、国の積極的な援助を要望したいと述べられました。
田中公述人は、福島県内の交通網は、東北新幹線、東北縦貫自動車道の整備に伴い、高速交通時代への対応が重要な課題である。いわき市、郡山市、福島市等都市化の進化と、会津地区等の過疎
地域や、電源地帯との交通網の確保のため、常磐及び東北横断道路の建設促進を期待している。
東北新幹線については、大宮暫定開業では、特別のメリットはないので、早期の上野開業が望まれ、それまでは在来線特急等の確保が必要である。赤字ローカル線については、いわゆる会津三線のほか、丸森線など、それぞれ
地域の事情があるので、将来とも確保することが望ましく、単に乗車密度だけで廃止されることだは問題がある。なお、東北地方に空港がないのは本県だけであり、成田空港の副空港としての役割りもあり、第五次空港計画に福島県空港の計画を組み入れられたいとの意見が述べられました。
以上で福島地方公聴会の
報告を終わります。