○
田代富士男君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十五年度補正予算三案に対し、反対の討論を行います。
現下の経済情勢の中で国民生活に脅威を与えているのは、物価の高騰であります。
政府は、五十五年度当初、経済見通しにおいて消費者物価の対前年度上昇率を六・四%と見込み、その抑制に全力を尽くすと明言しておりました。ところがわが党の
指摘どおり、物価の上昇は六・四%ではおさまらず、昨年十一月には実に八・四%にも達するなど、国民生活に重大な圧迫を加える結果になっております。
しかも昨年十二月には、
政府は当初の見通しの誤りに気づき、五十五年度の実績見込みで七%程度に変更せざるを得なくなったのでありますが、この七%すらも守り切れない
状況にあり、
政府の責任はまことに重大であると言わざるを得ないのであります。
経済成長率について言えば、昨年十二月において四・八%を達成し、一応の実績を示しているとはいえ、その内訳を見れば、決して順調でないことは一目瞭然であります。すなわち、個人消費支出について
政府が当初見込んでいた九・七%は実績では八・三%に落ち込み、また、
民間の住宅建設に至っては一〇・二%の伸びを見込んでいたのが、実績では前年度より一・六%も下回ってしまっているのであります。このように個人消費支出や
民間住宅建設という内需の面での大きな見込み違いが今日の景気停滞となってあらわれていることは、まことに遺憾に思うのであります。
しかも、このような誤った見通しに対して適切な措置を講ぜず、国民生活を無視した
政府・自民党の施策を厳しくたださなければなりません。
以下、補正予算三案に対する主な反対理由を申し上げます。
反対理由の第一は、国民から最も要望のあった物価調整減税を実施しなかったことであります。
今回の補正予算では税収が七千三百四十億円追加されておりますが、これは五十五年度当初予算が過小見積もりだった結果であります。五十五年度予算の審議においてわれわれが強く要求した物価調整減税を、
政府は税収不足を理由に見送ったのであります。また、五十四年度補正予算の
段階でも、税収は一兆九千億円にも上り、適正な見積もりを行えば減税なり戻し税を行うことは可能であり、最近の
政府の過小見積もりの傾向を
指摘せざるを得ません。しかも、六・四%を見込んでいた消費者物価が八%近くも上昇し、実質所得がマイナスになっており、そのために国民は必然的に節約を余儀なくされ、ひいてはそれが景気低迷の一因となっているのであります。
第二は 物価安定に対する具体策が欠如していることであります。
現在の上昇する物価動向にもかかわらず、今回の補正予算には物価安定に対する配慮が欠けております。たとえば、野菜について言えば、現在非常に値上がりしており、多くの国民は家計のやりくりに苦しんでおります。ところが
政府は、野菜価格安定対策費としてわずか二十九億円しか計上しておりません。この野菜の価格については、われわれは五十四年暮れから五十五年春にかけて起きたような値上がりを再び繰り返さぬよう、さきの臨時
国会で
政府に対して強力な対策を求めたのであります。その際農林
大臣は冬場の野菜の確保を約束されたにもかかわらず、結果は野菜の高騰となってしまったのであります。このような物価上昇に備えて、与野党四党合意の上、五百億円の物価対策費を計上したのであります。ところが、この四党合意を踏みにじり、わずか二十九億円程度の予算しか組まないというのは一体いかなることでしょうか。この物価対策費五百億円をフルに活用して、生鮮食料品対策をこの補正予算に組み込むべきものと
考えます。
第三は、経費節減に関する重大な疑問についてであります。
今回の補正予算の中で、既定経費の節減と称して七百三十八億円を計上しております。既定経費の節減によって国民の税金を大事に使用していかねばならないことは当然過ぎるほど当然のことであります。確かに既定経費の節減と言えば聞こえはよいのですが、問題は、当初予算に既定経費節減分を見込んでいるのではないかと思われる節があるということであります。なぜかならば、毎年毎年節減の対象となる同じ項目があるからであります。すなわち、大豆、なたね生産者
団体等交付金は、当初予算には百八十億円計上され、今回そのうち二十一億円が節減されております。また、農林金融費も毎年減額の対象となっております。中でも農業近代化資金利子補給補助金は百八十五億円計上され、今回十二億円節減したことになっております。国民に対しては、血のにじむような努力の結果経費の節減を行ったと宣伝しておりますが、毎年同じ費目が節減項目になっていることを
考え合わせると、当初予算を水増ししているのではないかとの疑問が生ずるのであります。したがって、このような毎年節減対象となっている経費については抜本的な見直しを行うべきはもちろんのこと、その上もっと節減経費額の少ないものまで適切に検討するならば、一千億円程度は捻出可能ではないでしょうか。
以上、反対理由を述べましたが、
最後に、物価安定と減税を行い、国民生活を一日も早く安定されることを強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)