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国務大臣(中山太郎君) お答えをいたします。
この青少年の非行問題は、実は昨年
鈴木内閣発足当時、暴走族の問題が非常に大きな問題になりまして、早速八月を暴走族の取り締まり月間と、こういうことで教育団体、各市町村、警察等にも連絡をいたしまして、それのリーダー格の方々に連絡をして解散を勧誘するということから取り締まりを強化したために、暴走族事件というものはその後急速な減少を来しました。一方、その減少と時を合わせるように問題になりましたのは学校内暴力の問題でございますし、また先般両親をバットで殴り殺すというような少年が逮捕後平然として留置場で食事をすると、こういうふうな異様な子供たちの心理が一体どこから出ておるかと、こういうことをとらまえまして、早速これは
政治問題だということで閣議で皆さん方御
意見が一致しましたので、
総理府の青少年対策本部が中心となりまして検察庁、警察庁、それから文部省、労働省、それから厚生省と関係各省庁の
局長会議を十二月の十九日に
総理府で開催をしたようなことでございます。
そういう時点でいろいろと各省から御報告をいただきましたが、特に私どもこの戦後の三つの波、先ほども
お話がありました二十六年のいわゆる戦後の混乱から起こった中での少年の非行、あるいは三十九年の高度成長過程における所得のアンバランスにおける社会の格差の中から起こった青少年の非行問題、今回の第三の波は、豊かな社会における忍耐心の欠除、いまよかったら将来のことはどうでもいいという少年の調査の結果も、現在主義の少年が余りにも多くなって未来に
希望を持っていない。こういうことで、私どもとしては関係省庁の
意見を尋ねたわけでございますが、その中で、特に警察庁の報告では、いわゆる収容された少年たちは、
自分たちが家庭でもっと厳しいしつけを両親から受けておればこんなことにならなかったという陳述がきわめて多かったということも、私どもは留意をせなければならない一つの大きな問題であろうと思います。この背景には、やはり親の放任主義、あるいは核家族の一人っ子の問題、あるいは学校放課後の少年たちの遊びの問題、こういうことで関係各省からの
意見をいろいろ求めましたが、具体的な政策として打ち出せるものは、先ほど警察庁からの報告がございましたような、いわゆる学校と警察との連絡によって学校内暴力を未然に防止するということが当初出てまいりました。
私は、それだけでは政府としての責任ある政策はとれないということで、これは十二月の十九日でございましたが、さらに今度は一月の十六日までに、いわゆる戦後における青少年非行の問題と、戦前の
日本における青少年非行の問題の対照はどうなっておるか。もう一つは、情報化社会におけるいわゆるテレビの影響でございますね、テレビ、漫画の子供たちに与える影響はどのようなことになっておるか。また、先進国における青少年非行の実態はどうなっておるかということの宿題を出しまして、それを一月十六日に第二回の関係省庁の
局長会議を開きました。その結果、一つの大きな姿が出てまいりましたが、それは、先進国が軒並みこの青少年非行が増大の傾向を示しておる。その中では
日本がまだ一番低いところにあるということ。それから、西ドイツは最近ポルノを解禁したために非常に青少年犯罪、特に性犯罪の増加が証明されたわけでございます。こういう問題が一点存在をしておる。もう一つは、世界じゅうの子供たちのいわゆる一日の生活パターンの中で、いわゆるテレビを見る時間、漫画を読む時間が一体どうなっておるかという調査の結果が出てまいりましたが、その結果、驚くなかれ、
日本の子供たちが一番テレビと漫画を見る時間が多いということが報告されたわけであります。
こういうことから見まして、昨年の
総理府青少年対策室の調査の状態から一つの
方向として出たものは、少年たちは一体何を望んでいるかというのは、戸外における放課後の健全ないわゆる運動をやるような場所が大都会にきわめて少ない、これをふやしてほしいというのが少年たちの
希望としても出てきておることも見逃すことのできない大きな問題でございます。特にいわゆる一般の義務教育あるいは高等教育を受けた大人と、それから教育もまだ受けていない子供たちとが家庭の中で同じテレビの情報を受け取る、新聞とか
雑誌というものは文字が読めなければこれはわからないわけでございますけれども、漫画とかテレビというものは文字がなくてもいわゆる画面で判断ができるわけでございまして、こういう問題を今後どう取り扱っていったらいいのか、今年度の予算で
総理府は青少年の情報化社会における非行の問題点についての予算をお願いしておりますけれども、これは一党一派に関する問題ではございません。全政党あらゆる階層の家庭に最も深い関係のある問題でございまして、まさに社会全体の問題だと私どもは
考えておりますが、どうかそういう意味で、私どもとしましては、やはり議会においても徹底的にこの問題については御論議をお願いしたいし、政府といたしましては、この青少年問題審議会の答申を受けつつ、しかも中間答申をどんどん上げながら、具体的に政策として実行できるものは実行してまいりたいと
考えておるところでございます。