○坂倉藤吾君 長時間の御審議で大変お疲れのことと思いますが、お許しをいただきまして、私は、ただいま
報告をされました農林漁業三白書並びに
趣旨説明のありました食管法の一部
改正につきまして、食管法の
改正にしぼり、
日本社会党を代表して、鈴木総理及び関係
大臣に質問をいたします。
政府は、この
改正案は、
現行食管法の理念並びに
制度の基本を変えるものではなく、実態との乖離を埋めるための現状追認にすぎない旨の説明を盛んに展開されておるわけであります。
そこで、第一の質問は、この
改正案の持つ性格についてであります。
果たして、これが説明をされているような単なる現状追認なのでしょうか。私は、
政府の説明が軽々しさを主張すればするほどに、生産農民と消費者をたぶらかす重大な政治的意図を感じるのであります。なぜならば、生産米は
政府が全量を買い上げて管理するのが
現行法の基本であります。ところが、近年、行政指導の名であえて強行してきました予約限度数量制や、水田利用再編と称して、再編の伴わない減反の押しつけという
法律違反
行為を免罪にし、正当化しようとしていることであります。
また、第三条第一項ただし書きは、
政府買い入れ米以外の米について実質的管理を放棄しようとするもので、明らかに
制度そのものの後退であります。なお、基本計画は、用途別、品質別、流通態様別に需給見通しを策定することになり、加え七、予定価格や入札
制度が絡むことから、その結果、重大な価格格差の拡大と混乱を持ち込むことであります。これは明らかに食管
制度の骨格と理念の変更であり、現状追認の範疇ではありません。
改正の性格とねらいについて、総理並びに農水
大臣の確たる所見を求めるところです。
第二の質問は、食管のあり方についてであります。
確かに、最近の米需給は、生産者への過酷な減反の強要によって辛うじて均衡を維持するという過剰基調であります。そのために、
現行法の厳格な統制諸
規定が現実にそぐわなくなっていることは否定をいたしません。しかし、食管
制度が
国民食糧の確保と経済安定に大きな
役割りを果たしてきましたし、今後なお重要であることは
政府も述べられているとおりであります。
今日、
世界の食糧需給に関する展望は、白書でも
報告をされたとおり、決して明るいものではありませんし、近年の
世界的な異常気象の多発、政情不安、食糧の戦略物資化、さらに
わが国の外貨保有の見通しなどを考えますとき、食管
制度はますます重視、拡充されなければなりません。拡充強化こそが食糧自給力強化に関する国会
決議の具体的実践を義務とする鈴木
内閣の基本的態度でなければならないはずではありませんか。いわんや、
わが国の食糧供給構造は、一〇〇%自給の米と全く輸入に頼る小麦、飼料穀物、これに代表されますように、まさに両極に分かれて併存する二重構造であります。食糧の安全保障の必要性、これを一本の柱として強調いたしました昨年秋の農政審答申の根拠も、こうした状況を踏まえてのことであります。
わが
日本社会党が、食糧自給促進と備蓄のための農業生産振興法の
提出準備をしながら、本国会に総合
食糧管理法案を
提出いたしましたのも、大局的な見地から一日も早くその備えを確立すべきだと、こういうふうに考えるからであります。
私は、本
改正案のように、食管機能を部分化し後退させることは、時代逆行、情勢無視の暴挙であり、国の安全にとっても憂慮すべきことと考えます。かつて農林
大臣を担当され、第一期水田再編を計画して減反を
実施された鈴木総理に率直な御見解を承りたいと同時に、食糧安保の観点に立った農産物輸入の
問題等について日米首脳
会議に臨む基本的態度はいかなるものであったのか、それに対し具体的に会談が行われたのか、その詳細について
報告を求めるものであります。
第三の質問は、米の中間流通過程における競争原理の導入についてであります。
第四条第一項の入札
制度の導入を前提とする予定価格の設定は、米の流通に一般競争原理を公然と迎え入れることになり、卸売業者の自由選択を大幅に認める商取引に移行するものと予測をされます。その結果、特に四類、五類米の価格を押し下げ、
政府買い入れ価格にもはね返ることは当然であります。
また、自主流通米の分野ではこの傾向が強く顕在化をして、特別自主流通米などの生産原価をも度外視しての売り込みを誘うような結果にもなりかねないのであります。そして、価格政策は崩れ、産地間では品質、価格の両面での激しい敵対性をあおって、生産者の不信と不安を増大させ、生産意欲をも喪失させて、
国民主食の安定供給をも揺るがすことになりかねません。これは競争原理の正しい導入ではなくて、分断支配の典型となる危険性が濃厚であるというふうに言わざるを得ません。どのような
施策をもって適正な競争原理を活用されるのか、農水
大臣にお尋ねをいたします。
第四の質問は、日経調等の食管なし崩し論についてであります。
日本経済調査協議会、すなわち岩佐
委員会が食管の部分管理への移行、正米市場による米価形成などを
内容とする
制度改革案を提起しておりますけれども、この提言にどのような見解で対処されますか。
本年度の食管会計への繰入額は、過剰米処分に伴う損失八百四十七億円を含めても六千五百二十億円で、
一般会計予算に占める率は一・四%にしかすぎません。四十年度が三・二%、四十五年度が四・六%であったことと比べましても、その負担は大きく軽減をされておるはずであります。まして、
国民主食の大宗である米の安定供給を確保する重大な使命のために、この程度の
経費の投入がどうして過大な負担であり、むだだと言えるのでしょうか。生産者の経営と生活安定、
国民主食の安定供給の約束という最重要な
制度の裏打ちをする
経費としては、食管
予算は大いにその効果を発揮しているものではありませんか。
なるほど、今回の
改正に際し、財政負担の軽減に関して一切の提起がありません。しかし、昨年産米から四、五類を自主流通米に組み込み、今回の
改正案で、自主流通量の拡大に通じる部分管理、間接統制に持っていこうとの対応は、明らかに財界の主張にこびまして、筋を曲げ、負担軽減のための
改正案であります。
この際、総理並びに農水
大臣に確固たる所見を求めると同時に、食管
予算に関する見解を大蔵
大臣に、そして、仮に食管体制が崩れ、
国民食糧がその量と価格に不安定をもたらすとき一般経済にいかなる影響を与えるものか、その意味での現食管
制度に対する評価を経企庁長官にお尋ねをするところであります。
第五の質問は、緊急時と称する配給統制を発動する
条件についてであります。
通常の需給
条件下では配給統制を廃止し、緊急時のみ復活させようとする
規定、すなわち第八条ノ四は、その発動
条件の厳しさから、結局は抜くことのない伝家の宝刀的性格と考えますけれども、この緊急時の判断を含めた発動
条件を農水
大臣にお尋ねをいたします。
第六の質問は、やみ米規制についてであります。
国民が遵守できる食管法にしようというのが今回
改正のたてまえでありますが、果たして、流通秩序が回復して、やみ米は消滅をするのでしょうか。贈答米、縁故米を認め、自主流通のパイプを太くし、さらに二重米価の特性を弱める逆ざやの解消は、不正規流通を
増加させる
条件づくりを
改正案が果たすことになりかねません。やみ米
防止体制をどのような対策に求めようとしておられるのか、農水
大臣に明らかにしていただきたいのであります。
第七の質問は、消費者サイドからの競争原理の貫徹に関してであります。
卸、小売業者は都道府県知事の許可を得ることになりますが、この運用は全面的に政令事項となっております。消費者と直接にかかわり、かつ米の消費拡大のかぎを握る部署だけに、その許可
条件、運用
条件に競争原理の正しい反映とその貫徹が望まれます。卸、小売間の結びつき
登録制度や、商圏域による小売業者の新規参入規制等、従来の措置を競争原理に照らしてどのようにされるのか、農水
大臣の考えを示していただきます。
第八の質問は、生産者米麦価政策についてであります。
生産者米価は、需給実態を価格に反映させ、生産抑制的な運用を行う必要ありとする考え方、また、長期的には中核農家の生産費にシフトした価格を目指すべきだとする考え方が財政
制度審の建議や農政審の「八〇年代の農政の基本方向」に示されておりますが、
政府は今後こうした考えにどう対応されるおつもりなのか、総理並びに大蔵
大臣、さらに農水
大臣に明らかにしていただきたいのであります。
値上がりの激しい生産資材、農地三法
改定に伴っての統制小作料の廃止、五十三年産米以降据え置かれている米価、この間におきます他産業
労働者の賃金上昇という生産をめぐる諸
条件を見るとき、ただ財政事情、需給事情を
理由にこうした厳しい
条件変化の事実を無視をすることは許されないというふうに考えますが、この際、五十年産米価についての基本的態度を農水
大臣に明らかにしていただきたい。
なお、生産者麦価算定方式の改悪が準備されていましたが、今回は見送られたと聞き及んでおります。ところが、
政府と生産者団体及び自由民主党との間で、ここ数年のうちには
改定をする旨の基本的了解に達しているというふうにも承っておりますので、その真偽のほど、農水
大臣の釈明をきちっと求めるものでございます。
第九の質問は、標準価格米に関する態度についてであります。
最近、五十五年産米が冷害の影響等から大量の低品位米を生じたため、特例標準価格米が新設をされ、すでに十七都府県では従来の標準価格米の販売が中止をされたとの報道がなされました。
昭和四十七年に物価統制令適用廃止に伴って設けられました標準価格米は、現在、年間米消費量のおよそ三分の一に上り、
国民の間に定着をしておるのであります。それが小売店の店先から姿を消すという事態が広範囲に生じている
実情に対しまして、
政府の対処方針をお聞かせいただきたい。また、今後、標準価格米の常置及び行政指導価格の継続、こうした問題はどのようにされるのか、あわせて農水
大臣にお伺いをいたすところであります。
以上、九点について尋ねてまいりましたが、最後に、米過剰の深刻化、食管財政負担の増大という課題に当面しております食管
制度に対して、財界等は農業過保護という立場でのとらえ方から攻撃をしてきておるのであります。こうした攻撃への安易な迎合ということは、食糧安全保障体制の確立、こういう面から
国民的要請に反逆をするものであり、農政百年の伝統と歴史に重大な禍根を残すこととなる点を重ねて指摘をいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕