○野田哲君 ただいま議題となりました
昭和五十二年度決算外二件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
昭和五十二年度決算は、
昭和五十三年十二月二十六日国会に提出され、翌五十四年五月三十日当委員会に付託され、また、国有財産
関係二件につきましては、
昭和五十四年一月三十日国会に提出され、同日当委員会に付託されました。
当委員会は、決算外二件の審査に当たりましては、国会の議決した
予算が法規に基づき適正かつ効率的に執行されたかどうかについて、広く
国民的視野からの実績批判を行い、将来の
予算策定の際、その結果を反映させるべきであるとの観点に立って審査を行ってきたのであります。
この間、本件審査のための委員会を開くこと十七回、別に述べるような内閣に対する警告にかかわる
質疑のほか、
財政経済政策、行政改革を初め、外交、防衛、教育、金融、医療、労働、幼児保育などの行
財政全般にわたる諸問題について熱心な論議が行われましたが、その詳細については
会議録によって御
承知願います。
四月十五日
質疑を終了し、討論に入りました。
議決案の第一は、本件決算の是認、第二は、内閣に対する九項目の警告であります。
討論におきましては、
日本社会党を代表して穐山委員、公明党・
国民会議を代表して峯山委員、日本共産党を代表して安武委員、第二院クラブを代表して喜屋武委員より、それぞれ本件決算は是認できないが、内閣に対する警告案には賛成である旨の意見が述べられ、また、自由民主党・自由
国民会議を代表して降矢委員、民社党・
国民連合を代表して柄谷委員、また森田委員より、それぞれ本件決算を是認するとともに、内閣に対する警告案にも賛成である旨の意見が述べられました。
討論を終わり、議決案を採決の結果、本件決算は多数をもって是認すべきものと議決され、次いで、内閣に対する警告案については、全会一致をもって警告すべきものと議決された次第であります。
内閣に対する警告は次のとおりであります。
(1) 会計検査院の検査機能の拡充強化については、本院においても、再度議決を行ってきたところであるが、その後も、依然として抜本的な
措置がとられないまま推移していることは、極めて遺憾である。
政府は、会計経理にかかる監督機関としての会計検査院に対する、
国民の強い期待にこたえるためにも、同院が検査の目的を十分達することができるよう、速やかに、所要の
措置を講ずべきである。
(2) 婦人問題については、雇用における男女別定年制、結婚退職制等が、まだ十分に解消されておらず、かつ、募集・採用においても、男女異なる取扱いをしている企業がかなり見られ、また、教育の分野においては、高等学校における家庭科教育が、女子のみに必修とされたり、更に、国籍法においても、婦人の地位への配慮が欠けるところも見受けられる。
政府は、「国連婦人の十年」の後半期にあたり、これらの改善に、一層の行政
努力を傾注するとともに、男女の平等
確保のため、
昭和五十五年七月に署名した、「婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の早期批准に向け、積極的に、国内
法等諸条件の整備に努めるべきである。
(3) 公害防止事業団が、工場移転用地として造成し、譲渡した東大阪作業工具工業団地においては、未
承認の企業が入居したり、または、無断で用地に権利を設定するなど、同事業団との譲渡契約条項に違反した
事態が発生したことは遺憾である。
政府は、同事業団に対し、今後におけるこの種契約条項の完全な履行を図るため、十分な管理体制を確立し、債権の保全と事業目的の遂行に万全を期するよう指導監督すべきである。
(4) 日本私学振興財団が、私立学校振興助成法に基づき、私立大学等に交付している経常的
経費の国庫
補助金については、毎年のように会計検査院から不当事項の指摘を受けているにもかかわらず、先般、一部私立医科大学等において、学校法人会計で処理すべきであった寄付金
収入につき別途経理を行い、その経理処理において適正を欠いたため、
補助金の返還を求められる
事態が発生したことは、極めて遺憾である。
政府は、私学助成の重要性と、これら
補助金の原資が
国民の税金であることにかんがみ、学校法人の経理処理が適正に行われるとともに、
補助金の交付及び利用が厳正かつ有効に行われ、それによって私立大学等の教育研究条件の整備、教育の充実向上が一層図られるよう、まず私立大学等に対し反省を求めるとともに、将来におけるこの種
事態発生の根絶を期するため、その方途について十分検討すべきである。
(5) 医療法人芙蓉会が経営する富士見産婦人科病院等一部医療機関において、無資格者による医業行為等の不祥事が生じ、かつまた、同病院については、早くから患者などよりの、不適切な診療や広告の指摘に対し、その
対応が必ずしも十分でなかったことは、極めて遺憾である。
政府は、医療が、生命・身体に重大な影響を及ぼすことにかんがみ、医療行政のあり方について根本的に見直すとともに、患者の意見も配慮する方途を講じ、再びこのような事件が起こらぬよう、医療機関の指導監督に万全を期し、医療行政に対する
国民の信頼を、速やかに回復するよう努めるべきである。
(6) 農林水産省では、農業者団体等を事業主体として、各種の国庫補助事業を実施しているが、これら事業の中には、意図的に事業費を過大に精算し、
関係業者から割戻金を受けるなど事業の実施及びその経理に不当な
事態があり、会計検査院によって毎年度指摘を受けていることは遺憾である。
政府は、これら
事態が依然として後を絶たない点にかんがみ、これらの発生原因について十分把握し、都道府県や市町村当局に対しても、事業主体に対する指導監督を徹底するとともに、事業
計画内容の審査から竣工検査に至るまで補助事業としての実施体制を十分確立させるなど、再発防止のため実効ある
施策を講ずるよう指導すべきである。
(7) 通商産業省が監督する財団法人日本消費者協会において、幹部職員による横領事件が発生し、かつ、この事件が、五カ年度の長期にわたり、被害額も一億数千万円にのぼるまで発見できなかったことは、同協会内部における監査の不徹底、あるいは相互けん制体制の不備などによるものであり、遺憾である。
政府は、同協会が、消費者利益の保護などを事業の目的として、国庫
補助金の交付を受けている団体であることにかんがみ、これら事業が健全に遂行されるためにも、同協会における監査制度の充実強化等について、指導監督に努めるべきである。
(8)
日本電信電話公社では、近畿電気通信局等において、
昭和五十三年度及び五十四年度に、架空の旅行命令書もしくは
会議開催伺書等により、不正に旅費、
会議費を支出してこれを別途に経理し、または、正規の手続をとらないで実施していた会食の
経費に充てるなど、経理が著しくびん乱した
事態が発生した。しかも、これら不正行為は、綱紀粛正の叫ばれているさ中に行われたものであって、極めて遺憾であり、同
公社はもとより
政府の責任も厳しく問われなければならない。
また、
昭和五十三年度において、
予算総則等に定められた基準外
給与の額を超えて支出するに際し、正規の手続をとらず、これに関連した決算書の執行実績について事実と相違する表示をしていたことなどが指摘された。
政府は、同
公社が
予算執行の適正化並びに公開化、会計経理面における相互けん制機能の十分な活用及び監査機能の強化などを図るよう指導監督に努めるとともに、
公社の当事者能力の問題も含めて、郵政省の監督指導のあり方についても慎重に検討を加え、この種
事態の根絶を期すべきである。
(9) 地方公共団体が、事業主体となって実施している国庫補助事業の中には、年度末までに工事が完了せず、年度経過後も
相当期間未完成のままであるのに、法令の定める
予算の繰越手続をとることなく、年度内に完了したこととして、
補助金の交付を受けているものが数多くあり、かつまた、これらの
補助金を、別途銀行預金等として長期間保管するなどの
事態が指摘されていることは、遺憾である。
政府は、これら
事態が、
補助金等の
予算の執行の適正化に関する
法律などの
関係法令に違反するのみならず、
補助金の効率的使用の面からみても問題があることを省み、まず地方公共団体が、繰越手続等を積極的に励行して適正な事業の実施を図るとともに、監査委員制度の十分な活用を図るよう、実効ある指導監督に努めるとともに、今後、このような
事態が生じた場合には、法令の定めるところによる
補助金返還等の
措置をとるなど、厳正に対処すべきである。
以上であります。
次に、国有財産
関係二件につきましては、採決の結果、いずれも多数をもって
異議がないと議決された次第であります。
以上、御報告申し上げます。(
拍手)
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