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政府委員(小山昭蔵君) ただいまの先生の御質問の御
趣旨は、わが国の証券市場における上場株式につきまして、個人株主のシェアが逐年低下してきているという現象について、これを私
ども証券局においてどのように認識しておるか、また、これに対していかなる施策を考えておるかと、こういう御質問であろうかと思うわけでございます。
御指摘のとおり、戦後
昭和二十年代に上場株式の六一%という高率のものが個人の所有であったわけでございますが、その後、逐年この率は低下してまいっておりまして、
昭和五十四年度末には三〇%すれすれ、三〇・四%というところまで低下しております。それを裏返した数字、七割弱が法人の所有になっていると、こういうことでございます。
私
どもは証券市場の健全な育成という観点から、できるだけ健全な個人投資者が株式を多数所有していただく、多数の健全な個人投資者が株式の所有者になっていただくということが
資本市場の今後の発展のためにも、また、流通市場の健全な運営のためにも非常に必要なことであるというふうに考えておりますので、このような個人株主の持ち株比率の趨勢的な低下という現象を非常に憂慮しておるというのが、現状に対する認識でございます。
そこで、この問題につきましては、実は証券取引
審議会というのが大蔵省にございますが、ここでも取り上げていただきまして、
昭和五十一年にこの問題に関する報告をいただいております。「株主構成の変化と
資本市場のあり方について」という題で報告をいただいておりまして、その中に、このような現象が生じている非常に大きな原因として、
一つは株式に対する投資魅力が減退している、これは現在、配当の利回りが平均いたしまして一・四%台という非常に低いところまで下がってきているということで、なかなか健全な投資者が、採算を考えると自己の金融
資産の選択の中で株式投資ということを好まなくなるといいますか、そういう大きな原因になっている。
この点につきましては、さらにその原因を言えば、結局、企業といいますか、発行
会社の額面配当主義というものがその原因をなしているわけでございまして、たとえば時価発行増資を行いましても、それによって得られたプレミアムは配当負担のかからない金だというふうに一般にお考えになりまして、企業としては額面五十円なら五十円という額面に対して、一割なら一割という一定の配当をしておけば株主に対して報いたことになるといったような風潮が一般的になおあるわけでございまして、これがただいま申し上げましたような配当利回りの異常な低下ということになり、株式の投資魅力の減退ということになっておるというふうに認識しております。
もう
一つの大きな問題は、
昭和四十年代に入りましてから顕著になったわけですが、いわゆる安定株主工作というようなものが企業間で行われるようになりまして、それとあわせまして企業の系列化とか取引
関係、そういったような純投資の動機以外の、ほかの動機による法人間の株式の持ち合いという現象が進んでまいっておるということが、もう
一つの大きな原因ではないかというふうに考えます。
さらに、私
どもの身内のことを申し上げるならば、証券
会社の営業姿勢自体にもそういう法人を
相手にする営業、あるいは非常に大口の投資者を
相手にする営業に比べまして、零細なといいますか、一般の個人投資者に対する営業姿勢にいま
一つ欠けるものがあったのではないか、このようなことが、先ほど申し上げました
審議会の報告書の中でも指摘されておるわけでございまして、私
どももそのとおりではないかというふうに考えております。
そこで、これに対する対策、改善策でございますが、いま申し上げましたように非常に根が深く、いろいろな原因が重なり合ってそういう現象が生じているわけでございますので、これが決め手だというような、それだけで非常に大きな効果が期待できるような対策というのもございませんし、また、証券行政なり証券
会社なりだけの努力で問題が解決するものでもない、産業界一般の御理解もいただかなければならないでしょうし、いろいろな施策を総合的に組み合わせて対策を講じていかなければならないというふうに考えておりますが、先ほど申し上げました投資魅力という点で申しますと、たとえばプレミアムの還元ルールというのを引受証券
会社の自主ルールで決めておりますが、そういうものをより強化いたしまして、配当性向というものを一層重視したプレミアムの還元のあり方を発行
会社に採用していただくということを、これは昨年の秋、自主ルールの改正を通じて措置いたしておりますし、また、証券
会社に対しましては、最近も健全性省令の一部改正というようなことも行いまして、個人株主本位の営業姿勢の徹底を図るよう指導しているところでございます。
さらに、今回の
商法改正によりまして、これが実現いたしますならば、プレミアムの
資本組み入れ割合の引き上げであるとか、法人の相互保有規制の
制度の創設であるとかといったような内容が含まれておりまして、これらの内容は、ただいま申し上げましたような観点に沿うものとして、私
どもも非常に有意義なものではないかというふうに考えております。
以上、申し上げましたようなことで、なかなか広範な原因、かつ根の深い原因に基づくものでございますが、私
どもとしては今後とも
関係方面の御理解と御協力をいただきながら一層努力してまいりたい、このように考えております。