○
衆議院議員(松沢俊昭君) ただいま
議題となりました日本社会党提案に係る
総合食糧管理法案につきまして、提出者を代表して、提案の
趣旨を御
説明申し上げます。
御
承知のとおり、わが国
農業は米を初め、牛乳、果樹など主要な農畜産物に対して
生産調整が強行され、
生産農民は厳しい生活と経営の中で悩み、苦しみ抜いているのが
現状であります。
一方、国内穀類自給率は、年々低下の一途をたどり、
政府の長期見通しては、
昭和六十五年には三〇%になろうとしているのであります。これは、麦を初めとする大量の外国農畜産物の膨大な
輸入の結果でありまして、このような
財界優先の経済、貿易政策を根本的に変革し、
生産農民が
農業に希望を持てる農政の
確立なくして
国民のみなさんへ主要
食糧を長期的に安定的に
供給することは不可能であろうと確信いたしております。
かかるゆえに、国会においてもまた去年四月、与野党一致で
食糧自給力強化に関する決議が行われ、その中において、今後の農政のあるべき
基本方向を広く国の内外に表明しているところであり、この
基本方針のもとに
農業政策の具体化を真剣に論議をいたしてまいったところであります。
このため、わが党は、かねてより、
食糧、
農業の
基本立法として、
食糧自給促進と備蓄のための
農業生産振興法案の制定準備に取りかかってまいりました。
その
基本的な
考え方は、
国民の栄養基準量を最低限度一人一日二千六百カロリー、たん白質八十五グラムの摂取を目途とし、穀物自給率を十カ年計画で七〇%まで高めることを前提にしております。
そのため、国が農畜産物の自給促進と備蓄の計画を年次別に定め、それに従って
農業生産体制の整備強化を図り、もって
国民に対する主要
食糧の安定的な
供給を
保障することとしております。
ただいま提案いたしておりますこの法案は、わが党の、
農業生産振興法を前提にして国が主要
食糧を総合的に直接管理をし、いささかたりとも一億一千万有余の
国民に
食糧不安のない体制をつくろうとするものであります。
したがって、
政府が提出している
食糧管理法の一部
改正案とは根本的に発想が異なっていることをここに明らかにしておきたいと存じます。
政府は、今回の
改正に当たって、現行食管法の
基本を守りつつ、
制度と
実態の乖離部分、たとえば使われていない購入通帳の廃止、あるいは縁故米、贈答米の容認等
現状追認するものであって、
制度に大きな変革はないことを強く印象づけておりますが、私たちは
食糧管理の根幹を根本的に変革するものであると
理解をいたしております。
すなわち、自主流通米
制度や買い入れ制限の法制化であり、米の直接全量管理体制から部分管理体制へと一歩踏み込んだことを示していると言わなければなりません。
また、このこととは別に、
改正するのであるならば、戦時中の強権供出等農民の
基本的人権をじゅうりんする
制度は、当然のことながら見直しをしなければならないと思うのでありますが、
政府は
改正しようとはしておりません。
このような
政府の
改正案は、
生産農民に対し、米過剰のときは
生産の制限と低米価を押しつけ、不足のときは強権の発動で米を集荷しようとするものであり、消費者にとってもメリットのない、権力者の得手勝手な改悪案と言わざるを得ないのであります。
これに対し、わが党の提案は。新たな
食糧管理体制をつくり上げる中で、民主的な手法で自給率を高め、その
価格面で
生産者、消費者の利益を守り、配給の思想を維持しながら
国民に対して
食糧の安定
供給を図ることとしたほか、あわせて平常時から計画的な備蓄を行うことを盛り込み、
食糧の安全
保障に向けての法体系の整備を行うこととしたところであります。
以下、この法案の主な
内容についてその概要を御
説明申し上げます。
第一は、管理対象品目の拡大であります、
本法案で管理する主要
食糧は、米穀、麦のほか、大豆、トウモロコシ、コウリャン等の
食糧とし、総合
食糧管理体制を整えることとしたことであります。これは、
国民の食生活の変化により動物たん白の摂取が増加し、それがため家畜の飼料となる穀類を野放しにしておくことができない
状況になってきたとの判断によるものであります、
第二は、米穀の管理
制度を民主化することであります。
まずその一は、米穀の
政府買い入れにつきまして、別に
法律で定めるところにより
生産された米穀を、その
生産者の売り渡しの申し込みに応じて買い入れなければならないものとしております。そして、その買い入れ
価格は、新たに設立されることとなる農民組合の代表者と
政府との協議により決定するものとし、協議が難行した場合には、当事者の申請に基づき、総合
食糧管理
委員会があっせんまたは調停を行うものとし、また、一定期日までに
価格決定ができない場合には、その
委員会の仲裁により決定するものとしております。
その二は、米穀の
政府売り渡しにつきまして、米穀を
食糧用として売り渡す場合には、配給計画に従って行うものとし、その
価格は、
政府が総合
食糧審議会の意見を聞いて、消費者の家計安定を図ることを旨として定めることとし、その
価格決定に当たっては、国会の承認を受けなければならないものとしております、そして、
生産者、消費者の利益を守る二重
価格制による適正米価の実現を図ることとしたことであります、また、米穀を飼料用として売り渡す場合の標準売り渡し
価格は、畜産業の経営の安定を図ることを旨として定めるものとしたことであります、
その三は、
農林水産大臣が毎年、総合
食糧審議会の意見を徴して
食糧用米穀の配給計画を定めることとしたことであります。
配給の実施は、卸売販売業者及び小売販売業者が、その割り当てを受けた数量の範囲内で消費者の買い受けの申し込みに応じてこれを売り渡すものとして、消費者の
段階では買い入れの選択の自由を
保障することとしております。
その四は、米穀の需給が逼迫し、
供給確保が困難となったときは、米穀の
生産者に対し、その
生産した米穀を
政府に売り渡すべきことを勧告することができるものとし、その勧告に従って
政府に米穀を売り渡した場合には、その
生産者に出荷協力交付金を交付することができるものとしております。
その五は、米穀の
生産者がその
生産した米穀であって市
町村長の許可を受けた数量のものを無償で譲渡する場合は、譲渡売り渡しの制限を緩和し、これを認めることとしたことであります。
第三は、麦、大豆、トウモロコシ、コウリャン等の管理
制度を新設したことであります。
その一は、麦等の
政府買い入れ及びその
価格につきまして、米穀の場合と同様、
生産されたものを
生産者の売り渡しの申し込みに応じて買い入れをしなければならないものとし、その場合の
政府買い入れ
価格は、米穀の
政府買い入れ
価格の決定方式の規定を準用するものとしております。
その二は、麦等の
政府売り渡しに係る標準売り渡し
価格は、
食糧用のものについては消費者の家計安定を、また、飼料用のものについては畜産業の経営の安定を旨として定めるものとしております。
第四は、主要
食糧の輸出入の規定の整備を図ったことであります。
すなわち、
政府みずからが行う主要
食糧の輸出入は総合
食糧審議会の意見を徴して行うものとし、その
輸入を行うに当たっては、国内
生産を阻害することのないよう十分配慮し、また、その輸出を行うに当たっては、開発途上国の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行うものとしております。
また、米穀または麦等の輸出入を行おうとする者は
農林水産大臣の許可を受けなければならないものとし、その
輸入した米穀または麦等は、
政府に売り渡さなければならないものとしております。
第五は、主要
食糧について、計画的な備蓄を行うことを法に明記したことであります。
第六は、主要
食糧の
価格、譲渡に関する命令、調査、報告、検査、罰則等、本法の目的を達成するための管理に必要な規定を整備することとしております。
なお、本法案施行に要する経費でありますが、主要
食糧の範囲の拡大、備蓄に要する経費等を含め、初年度で約一兆四千億円を要するものと見込んでおります。
以上がこの
法律案の
趣旨及び主たる
内容であります。
食糧は、人の命の安全を
保障するものであり。いささかも
国民にその不安を与えてはなりません。今後の
食糧事情は昨今の内外にわたる気象災害等に見られるような短期変動があらわれるほか、長期的に見ても世界の穀物需給の逼迫は必至の
状況にあります。
まさに
食糧問題はエネルギー問題とともに
国民生活を守る
最大の
課題であります。また、この
課題の解決こそが八〇年代の政治の責任であろうと確信いたしております。わが党が本法案を提出したゆえんも実にここにあるのであります。
何とぞ賢明なる各位から慎重な御
審議を賜り、速やかに可決されるようお願いを申し上げまして、
説明を終わります。(拍手)