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柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました
国家公務員法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対し、賛成の討論を行います。
わが国は先進諸国にも例を見ない速度で高齢化社会を迎えますが、それは雇用、
労働条件、社会
保障、福祉の問題のみにとどまらず、組織の機構、運営や人事、退職管理制度、さらに地域社会や家庭のあり方など社会全体について変革をもたらすものであり、抜本的な対応が求められていることを
意味するものと認識いたします。
こうした視点に立てば、戦後三十年以上を経過した
公務員諸制度については、退職管理制度はもちろん、
給与制度と昇進、昇任の管理、退職手当、
共済年金、行政能力の維持向上対策や業務管理等々、その全般にわたる見直しと改革が必要であることは論をまちません。まして、行財政の改革による増税なき財政再建が当面する緊急の政策課題となっている今日、いたずらに既得権意識にとらわれ、現行諸制度を聖域化するという姿勢では、とうてい国民多数の理解が得られるものではないと信じます。
今日まで
公務員の退職管理制度は、民間における
定年制にかわるものとして退職勧奨が存在してきましたが、
給与法
適用職員の平均年齢が年々高まりつつあり、今後高齢者の
労働市場が狭まり、勧奨が十分機能しにくくなる中で、適正な新陳代謝を促進し、あわせて長期的展望に立った計画的人事管理の展開を図る必要が生じてくること。また、民間において
定年制が定着し、かつ政府が民受に対し
昭和六十年度六十歳
定年を
一般化し、雇用
保障と公的年金の連結を図る施策を推進している現状や国民世論の動向を踏まえるならば、本法の
改正は適当と
考えるべきであると思考します。
さらに、
定年制度は、
定年年齢に達すれば自動的に退職しなければならないという自動的な退職
要件であると同時に、その年齢に達するまでは退職を強要されることがないという雇用
保障制度であり、制度の導入により退職後の生活設計が立てやすいという面や、現在の平均勧奨退職年齢と対比して雇用年齢が現実に延長されるという点にも留意しなければなりません。
こうした視点に立ち、本案に賛成するものでありますが、この際政府に対し、特に次の諸点を求めておきます。
第一は、民間において六十歳
定年到達後、
定年の延長や多様な形の制度的継続雇用方式が今後拡大する傾向にあり、また
労働省も八〇年代後半の重要施策としてそれを奨励する政策を展開している事実に照らし、民間の動向を常に掌握し、その対応策を積極的に検討し、高齢化社会に対する施策を確立すべきであります。
第二に、
定年制実施後も残る個別的勧奨退職の
運用については、厳正を期し、いやしくも個人の意思に反して退職を実質的に強要されることがないよう
保障されるべきであります。
第三に、
定年退職後の再就職を促進するため、
定年前の職業訓練や講習制度、職業相談とあっせん体制、六十歳までの就労が困難と
考えられる特定の現業職種に対する配置転換や特例措置など、きめ細かな施策を
定年制の実施までに確立すべきであります。
第四に、今回
公務員に
定年制を導入することは、そのこと自体に意義があるばかりでなく、それを契機として
公務員の
労働条件全般を見直すきっかけになるという面で重要であると
考えますが、政府は、
労働条件の変更に通ずる問題の法制化に当たっては、
人事院や
団体交渉の機能を十分に生かし、
職員の
意見を十分聴取し、これを公正に尊重するよう運営すべきであります。
最後に、本法と重要な関連を持つ
国家公務員等退職手当法の一部を
改正する
法律案が、絶対多数の院の意思にもかかわらず、
審議にも入れないまま継続
審議となったことに対し強く遺憾の意を表しますとともに、このような事態では国民の期待する
行財政改革を達成する道は遠いことを警告して、討論を終わります。