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山崎昇君 本来なら、あなたの方に通告してありますように、多少
外交方針等について種々聞きたいつもりでおりましたけれ
ども、きょう少し時間が制約されてまいりましたので大変恐縮に思っておるわけですが、最後に一点、
外務省にお聞きをしておきたいんですが、今月の七日に国連
事務総長のワルトハイムさんがおいでになる予定のようでありますね。
そこで、私はお会いしたこともありませんし、直接この人を知っているわけでもありません。ただ努めて、どういう方かということで、幾らかでも本等を読んで理解をしようと思っておるわけなんですが、実はここに持ってきておりますのはワルトハイムさんが直接これ書かれた「世界で最も厄介な仕事」という一冊の本があるわけなんで、これを読みながら、国連
事務総長というのは大変な仕事であるし、現職がよくこういうことを書いたものだと思って興味を持って見ているわけなんですが、その中に私は注目すべき一節があると思っているので、その点だけあなたの
見解をお聞きをしておきたい。
本来なら
外務大臣にもお聞きをしたいと思っているんですが、実は先般来鈴木
総理がアメリカへ参りまして日米共同声明が結ばれたわけなんですが、その中の最も
議論になりました同盟
関係というものと関連しまして、改めて言うまでもありませんが、日米両国間の同盟
関係は、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれているから同盟
関係なんだという趣旨の共同声明になっているわけです。
そこで、これに対して、ワルトハイムさんはこの西洋民主主義というものに対して痛烈な批判をしているんですね。ごく簡単ですから一節読ましてもらいますけれ
ども、
ついこのあいだ解放されたばかりの国々は今日、国連の過半数を占めているだけではなく、自分たちにふさわしい立場を要求し、平等に扱われるよう希望してもいる。「西洋中心主義」は、彼らにはますますもって耐え難くなってきており、この主義は彼らのなかに無理解と偏見とをひきおこすようになってきている。
だが、これらの国々の独立のどれもこれもが必ずしも幸福には結びついていない、ということを、西洋圏内で耳にすることはまれではない。また、第三世界のほとんどの国々は独裁体制に支配されている、と主張されることも時々ある。こうした
発言が外交レベルにおいて、けっして先進国と発展途上国のあいだの
関係改善には貢献しないということはここでは置いておくとしても、ここには
考え方のうえで大きな
誤りがある、と私は思う。
その
誤りは、西洋民主主義のことを世界で最上の政体であるのみならず、地球上のすべての国々にとって、その文化、歴史、生活水準のいかんにかかわらず自動的に通用する唯一の政体にちがいない、とする見方である。こういう見方をする人が往々にして忘れがちなのは、ヨーロッパの国々においては苦心の末に国家を統一し民主主義を建設する前に、何百年以上にもわたる長い、そしてしばしば流血のいきさつがあったことである。
と指摘して、言うならば
日本とアメリカは自由主義あるいは民主主義ということを共通の認識として、同盟
関係で、これが世界で最大の価値みたいなことを両者で結んでいるようでありますが、国連の
事務総長はこれに対して、そういうことをおっつけたり、それが唯一の政体だと思うことは
誤りだという指摘をしているんですね。
七日に来られるようでありますが、一体こういう国連の
事務総長の指摘に対して、こういう日米共同声明を結んだ
外務省としてはどういうふうにお考えになるのか。まあ、多くのことを本当は聞けばいいんですけれ
ども、時間がありませんからこの一節だけあなたに聞いておきたい。