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1981-07-28 第94回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年七月二十八日(火曜日)    午前十一時二分開会     —————————————    委員の異動  六月六日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     山内 一郎君  六月八日     辞任         補欠選任      梶原  清君     桧垣徳太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         林  ゆう君     理 事                 藏内 修治君                 矢田部 理君                 柄谷 道一君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 中西 一郎君                 林  寛子君                 堀江 正夫君                 片岡 勝治君                 野田  哲君                 山崎  昇君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中山 太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        警察庁刑事局長  中平 和水君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        外務大臣官房調        査企画部長    秋山 光路君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省欧亜局審        議官       堂ノ脇光朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査並びに国防衛に関する調査  (国の防衛に関する件)  (国務大臣の靖国神社参拝問題に関する件)  (北方領土問題等に関する件)     —————————————
  2. 林ゆう

    委員長林ゆう君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題といたします。  この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。大村防衛庁長官
  3. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私は、六月二十八日から七月三日の間訪米し、ロング太平洋軍司令官ワインバーガー国防ヘイグ国務長官アレン大統領補佐官、タワー、プライス上下両院軍事委員長等会談するとともに、米国の各種の軍事施設を視察してまいりました。米国国際情勢に対する厳しい認識及びわが国防衛努力に対する強い期待については、ハワイでの事務レベル協議報告等から十分予想していたところではありましたが、今回米側責任者と親しく意見交換をする機会を得、米側期待の強さを改めてはだ身にしみて感じた次第であります。  次に、米国における会談の要点を御報告いたします。  まず、国際軍事情勢については、ソ連軍事能力現状評価と将来の見通しに重点を置いて話し合いましたが、ソ連軍事能力が大幅に増大し、国際情勢が厳しさを増していることに双方意見一致いたしました。  米側は、レーガン政権のもとで、社会保障等国内施策経費を削減する一方、軍事費増加させて軍事バランスを回復する政策をとっていることを説明し、米国がこのように並み並みならぬ犠牲を払っていることに対して、日本としても真剣な考慮を払ってほしいということを力説しました。  これに対し、わが方より、あらゆる会談機会をとらえて、わが国防衛基本は憲法のもと専守防衛軍事大国にならないこと、政府は現在財政再建行政改革に真剣に取り組んでいること、防衛力整備は他の諸施策とのバランス考慮すべきであり、余り急激に行うとかえってよくない結果となるおそれもあること、また来年度の防衛予算に関し、七五%はシーリングで査定の対象となることを指摘しつつ、他の諸施策のためのシーリング原則として伸び率ゼロである中で七・五%のシーリングが設定されたこと、さらにできるだけ早く大綱を達成すべく努力しており、これまでの米側意見については、できるだけ五六中業作成の参考としていきたいなどをるる説明いたしました。  これに対し、米側は、日本国内事情はよく承知していると述べつつも、次の諸点を指摘しました。  第一に、日本防衛力はいまだ小さく、七・五%はインフレを考えれば少な過ぎること。  第二に、昭和五十一年と現在では国際情勢は大きく変化し、防衛計画大綱達成予定の八〇年代末では情勢はさらに厳しくなることを考えてほしい。日本側説明は、日本の不十分な防衛力基本的に変えていくというものではない。日本はもっと組織的、有機的な防衛力を整備する努力が必要であり、これまでに米側が提示した意見は、日本防衛力について日米間の対話を行うための一つの案であると受け取ってほしいこと。  第三に、米国内には、日本は十分な努力をしていないとの認識が広まっているが、日本防衛努力について、米国と同様の認識に立ってコンセンサスをつくる努力をしていることを具体的に米側に示すことが、米国の対日信頼感見地よりぜひとも必要であるということであります。  さらに、米側より、日米間の装備技術交流を推進したい旨を強調し、このような交流活発化は、米国防衛技術の対日輸出を従来どおり円滑に行うという見地からも重要であるとの発言がありました。これに対し、私より、この分野における日本政策現状について説明するとともに、米側の希望は持ち帰り政府部内で検討してみたいと述べておきました。  なお、本件については、関係省庁の間で今後検討を行うことといたしております。  また、在日米軍経費分担については、米側は、これまでどおり、日本側のなお一層の努力期待しているものと思います。  そのほか、「日米防衛協力のための指針」に基づく、極東有事事態における米軍に対する便宜供与に関する日米間の研究作業については、今後日米間で調整の上進めることとなりました。  以上のような種々の問題について、日米双方は、今後ともあらゆる機会をとらえて緊密な協議を行い、相互理解を深めるよう努力することが確認されました。  今回の訪米を通じての全般的な所感を申し上げます。  まず、日本防衛力増強問題については、国防省、国務省及びホワイトハウスの間は、意見一致しているとの印象を受けました。今後、米国としては、粘り強く対話を継続していくとの姿勢をとるものと考えられます。特に米国期待しているのは、日本が、米国国内施策の面で犠牲を払いつつ、国防力の回復を図っていることを真剣に受けとめて、厳しさを増す国際軍事情勢考慮に入れつつ、防衛努力をできるだけ多く、できるだけ早く行うことであると思われます。  わが国としては、今後の防衛努力のあり方について、米国との対話協議を継続していくことが必要と思われますが、いずれにいたしましても、私といたしましては、今回の訪米を通じ、わが国としては、みずからの国はみずからの手で守るとの基本に立ち、みずからの防衛のために相当の努力を行うことが、日米安保体制信頼性を維持・向上させるとの観点からも、緊急の課題であるとの感を強くした次第であります。  私は、その後引き続き、ヨーロッパに渡り、七月六日、まずベルギーにおいてルンスNATO事務総長を、次いで同日西独アペル国防大臣の招待により同大臣を訪問し、ひざを交えて意見交換を行ってまいりました。  それぞれの会談においては、わが国防衛政策基本的考え方及び防衛努力並びにポーランド情勢を含む対ソ認識NATO諸国防衛努力戦域核問題等が話題となり、それぞれの問題について率直に意見を交換し、相互理解を深めてまいりました。  また、西独においては、各地の軍事施設を訪れ、同国における各軍の現状についてつぶさに視察してまいりました。  以上でございます。
  4. 林ゆう

    委員長林ゆう君) それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 野田哲

    野田哲君 訪米関係については後で伺いたいと思いますが、その前に、まず別の問題でお伺いしたいと思います。  これは防衛局長に伺いますが、防衛庁の関連している仕事で「日本安全保障」というレポートが毎年出ておりますが、この「日本安全保障」というレポート、これはどういうスタッフでつくられて、どこを対象に配付をされているのか。まず、その点からお伺いしたいと思います。
  6. 塩田章

    説明員塩田章君) 防衛庁関係防衛庁作成しております資料で「日本安全保障」という書物は承知しておりません。
  7. 野田哲

    野田哲君 この「日本安全保障」は朝雲新聞社が出している。あなたは全く承知しておりませんか。
  8. 塩田章

    説明員塩田章君) 朝雲新聞社が出しておるということは知っておりますが、その内容等、その作成等につきましては私は承知しておりません。
  9. 野田哲

    野田哲君 あなたが承知していないのか、それとも防衛庁は一切この資料提供等もかかわりを持っていないのか、その点はいかがですか。
  10. 塩田章

    説明員塩田章君) 防衛庁の発行しますいろいろな資料を使っておるかどうかは私ども承知しておりませんが、防衛庁として、その本の作成に当たって協力を依頼されて協力しておるということはございません。
  11. 野田哲

    野田哲君 それでは調査をしていただきたいと思うんですが、「日本安全保障」、朝雲新聞社が出しているこのレポート、これは最初は安全保障調査会という名前で出されていた、これを朝雲新聞社が引き継いだ、こういう経過になっているようであります。一九六八年版の「日本安全保障」、こういうレポートがあるわけです。この安全保障調査会、これは東京都港区赤坂七丁目二の十七、こういう所在になっております。取扱所は朝雲新聞社。  問題は、本年三月三十日に、私は大村防衛庁長官塩田防衛局長に対して、「わが国における自主防衛とその潜在能力について」、こういう表題レポート存在をしている、その内容は、日本における核兵器生産能力を具体的に調査をした、こういう内容になっているわけです。これを決算委員会長官局長にただしたわけでありますが、防衛庁側は、一切その経緯等については承知をしていない、中身存在をしない、防衛庁には存在をしない、こういうふうに一切知らぬ存ぜぬという形で答えておられるわけです。このことは長官局長も記憶されていると思うんです。それで一九六八年版の「日本安全保障」、この膨大なレポートがあるわけですが、この中に、あなた方が一切知らぬ存ぜぬ、存在もしない、こういうふうに答えておられるこのレポート内容がそっくりそのまま掲載をされているわけであります。  この内容を見ると、これは資料等については防衛庁から提供をされた、あるいは防衛庁協力がなければとてもできるようなものではないわけであります。具体的に日本の安全諸政策掲載をされているわけであります。この中に、防衛庁が一切承知していない、こういうふうに答えておられる日本核装備の問題、これが具体的にこのレポートと全く同じ内容掲載をされております。表題はこのレポートよりもさらに具体的になって「わが国核兵器生産潜在能力」、こういう形で登載をされているわけであります。これだけ具体的に、安全保障調査会、こういう名前で、しかもこれを取り扱ったところは防衛庁出版物等専門に取り扱っている朝雲新聞社が取り扱っている。そして中身には、防衛庁のその年々の具体的に公表されている資料国会へ提出されている資料等が使われているわけであります。  私の調査したところによると、この「日本安全保障」というレポートをつくっているのは、これは防衛庁の現職の制服、それから退職された元制服幹部等々を含めたプロジェクトを構成をして防衛庁資料等を使ってつくっている、こういうふうに私は調査の結果具体的な資料を持っているわけです。そのことを具体的に記述をした報道もあります。したがって、こういうものが具体的に出た以上は、日本において核兵器生産能力検討していることについて防衛庁が一切かかわっていないとは私は言えないと思うし、そういう資料について承知をしていない、こういうことは言えないはずじゃないか、こういうふうに思うわけです。  さらにまた、元防衛大学校長をやっておられた猪木さんが代表をやっておられる平和・安全保障研究所、ここから昨年の四月に「軍事科学技術進歩わが国防衛構想」、こういう膨大なレポートが出されている。承知されていると思うんです。この中にも具体的にわが国核兵器を持つことについての問題点等が記載をされています。内容は、わが国で持つとすれば戦術核である、そしてその戦術核アメリカ戦略核と連動して、アメリカ戦略核の発動の引き金として日本戦術核を持って使うべきである、こういうふうに問題を提起をしているわけであります。防衛庁の周辺でこのような形で具体的に核兵器生産能力について検討が行われ、あるいは防衛庁外郭団体として防衛庁資料の中にも登録をされている平和・安全保障研究所幹部の中には防衛庁を退官された幹部職員もたくさんいらっしゃるはずなんです。そこから具体的に、持つならば戦術核だ、アメリカ戦略核とこういう形で連動すべきだ、そこまで具体的に提起をされている。防衛庁は一切これを承知しないとは言えないはずだと思うんですが、いかがですか。
  12. 塩田章

    説明員塩田章君) まず前段の朝雲に関連しました御質問でございますが、御指摘の三月三十日の決算委員会でもお答えいたしましたように、御指摘レポートにつきましては私どもは一切承知いたしておりません。で、いまその関係で、承知していないのなら調査をすべきではないかという御要望でございましたが、可能な限りの調査はいたしたいと思いますが、繰り返し申し上げますように、レポートそのものは私ども承知いたしておりません。  それから、後段の方の元の防衛大学校長猪木先生の主宰しておられます研究所におきまして御指摘レポートが出されたことは、これは私どもよく承知しております。私も読んでおります。その中でいま御指摘のような核の問題を研究しておるということも承知しております。やはり民間のそういった機関でいろいろそういった立場研究をして発表されるということ自体、これは私どもむしろ当然のことではないか、そういうことを、私ども関係のある外郭団体ではございますけれども民間立場で御研究なさることを私どもとやかく、言うべきではないと思いますし、また、いまここでその内容についての御議論はいかがかと思いますが、先生はその指摘の中で戦術核を持つべきであるというふうに指摘しておるではないかというふうな御指摘だったように思いますが、私どもが読む限りでは戦術核を持つべきだという結論ではございませんで、いろんな核政策についての選択肢についてそれぞれ議論をしておりますけれども、その中でこの研究結論的なことは、現在の非核原則を堅持しておっていいんではないか、ただ、必要によって事前協議対象として考えたらいいんではないかという趣旨の結論が出ておるというふうに私は思いますが、いずれにしましてもそういった核問題についての議論を展開しておることは事実でございます。それは民間一つ研究機関としてそういうことをなさることをわれわれがとやかく言うべきではない。防衛庁自一身が政府の中にありまして非核原則を堅持しておることは申し上げるまでもないと思います。
  13. 野田哲

    野田哲君 戦術核を持つべきだということではなくて、持つのであれば戦術核だと、こういうふうに言っていますね。具体的には、国際情勢の変化によって核兵器を持つ、そういう政策転換の必要に迫られたときに周章ろうばいしないで済むように、日本能力を適当な政府機関で点検をしておくことが必要である、こういうふうに言っていますね、結論として。最後はそうなっているわけです。  そこで、局長はいま、民間団体がやっていることなんだから何を研究しようと自由だというふうな意味に言われたわけですけれども、これはそういう意味のものでないでしょう、防衛局長。この研究をやったのは「学者、マスコミ関係者評論家、元幹部自衛官方によるプロジェクトチームによって進められた。」そして「この資料は、防衛庁委託により行った軍事科学技術進歩わが国防衛構想に関する調査研究報告書防衛庁の許可を得て複製したものである。」と、こういうふうになっていますね。防衛庁の元幹部も加わってプロジェクトチームを編成をした、そして防衛庁委託研究によってやったんだと。そして核問題については、非核原則を廃止をして核を持つというような情勢になってきたときにあわてふためいてはいけないから、いまから政府機関の中で検討をしたらどうか、こういうふうに提起をされているわけですが、こういう提起に対して大村長官はどういうふうに受けとめておられますか。
  14. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 三月の末の決算委員会における野田委員の御発言、また政府委員の答弁については私も承知しておるところでございます。本日重ねてお尋ねがございまして、いま政府委員から御答弁申し上げたのでございますが、私としましても同様の見解を持っているものでございます。また、今後におきましても、私といたしましては、わが国の国是とも言うべき非核原則を堅持している以上は、防衛庁といたしましてもこれに逸脱するようなことは毛頭考えていない。これまでも考えておりませんし、考えていないということを改めて申し上げておきたいと思うわけであります。
  15. 野田哲

    野田哲君 非核原則は堅持をする、現段階ではそういうふうに言われているわけですが、このレポート提起をしておりますが、潜在的な生産能力調査検討というような問題についても一切取り合わない、こういうふうに確認をしてよろしゅうございますか。
  16. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) そのとおりであります。
  17. 野田哲

    野田哲君 政府機関で直接やらない、あわせて、そのようなことを外郭団体等に対して委託をして検討をやらせる、こういうことも一切やらない、こういう理解でいいですか。
  18. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 外郭団体等が自主的に行うことまではとめるわけにはいかないと思いますが、委託してやってもらうというようなことはいたしません。
  19. 野田哲

    野田哲君 アメリカとの問題について伺いますが、去る七月一日に、長官はワシントンにおられたときであろうと思うんですが、宮津官房長官は、アメリカからの非常に強い防衛力の増強の要求に関連をして、対ソ認識について日米間でずれがある、こういう意味発言をされているわけでありますが、その翌日、大村長官は直ちに海の向こうから、対ソ認識には落差はない、こういう発言を行っているわけであります。そうして、また帰国後の発言でも、対ソ認識では一致した、こういうふうに発言をしておられるわけですが、対ソ認識一致したということであれば、レーガン政権対ソ認識、すなわちソ連ヨーロッパ中東アジア、この三つ地域同時作戦能力を持つ、こういうのがアメリカ対ソ認識だと思うんですが、そういう点や、あるいはまたソ連と共同しての北朝鮮脅威、こういう見解アメリカ対ソ認識になっていると思うわけですが、こういう見解一致した、こういうふうに長官対ソ認識で受けとめてあのような発言をされておられるんですか。この対ソ認識、いかがですか。
  20. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の訪米における米側首脳部との会談におきまして、ソ連軍事能力が大幅に増大し、国際情勢が厳しさを増しているということにつきましては、双方意見一致したところでございます。この点は冒頭の御報告でも申し上げたとおりであると私は考えているわけでございます。  いま先生が御指摘になりましたソ連軍事能力現状とか評価の問題、先方もいろいろ申されておりまして、アメリカとしてはグローバルな観点からそういった見解を述べたことは事実でございます。また、北朝鮮軍事能力が最近非常に増加しているということも指摘されたわけでございます。その点は、軍事能力が強化しているという点でございまして、これが客観的な事実であります以上は、わが方としてもその点については特に異を唱える必要はないと考えているわけでございます。  ただ、対応の仕方について言いますと、国際社会における日米両国立場相違や、それぞれの国内事情等を反映されて若干の相違があってもやむを得ないところであると私は考えているわけでございます。
  21. 野田哲

    野田哲君 いや、抽象的な対ソ認識一致ということを私は聞いているのではなくて、今回の一連の会談を通じて、アメリカ対ソ認識というのは、ヨーロッパ中東アジア、この三つ地域で同時に作戦能力を持つ、ここまでにソ連軍事力が増強した、そういうふうな認識アメリカは持っているんではないのか。そしてアメリカ自身がこれに対して、同時多発、こういう戦略で臨もうとしている。そしてさらに朝鮮民主主義人民共和国、これがソ連と共同して南進をする、こういう脅威、これもアメリカ側から強調されている、こういうふうに言われているわけでありますが、その点はどうなんですか、一致したということは、そういう点を含めて認識一致したと、こういうことなんですか。
  22. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) まずグローバルな点につきましては、ソ連軍事能力が著しく増大し、また、これを背景とした第三世界への勢力拡張が行われている、こういった点から国際情勢が厳しさを増しているという点につきましては見解一致しておるわけでございます。なお米側は、米ソ軍事バランスは放置すれば遠からずソ連が優位に立つ趨勢にあるというふうに見ておりますし、また、ソ連の最近の軍事能力は、欧州、極東等幾つかの正面においてそれぞれ作戦し得る能力は備えているというふうに申しておりますし、その点は私は事実であると思うのでございます。  また、北鮮軍事能力増加につきましてもお話があったわけでございますが、この点につきましては、日本政府としましては、昨年の国会で申し上げましたとおり、これをそのままわが国に対する潜在的脅威の増大と受けとめることは必ずしも国益に沿わないと申し上げているわけでございますので、わが国としましては、北鮮の問題が直ちに脅威であるというふうには考えてないわけでございます。
  23. 野田哲

    野田哲君 そうすると、北朝鮮の問題については、これはアメリカ長官との間は見解が異なったと、こういうことなんですか。
  24. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 北鮮軍事能力増加という点につきましては、見解は異にするものではございません。ただ、対応の仕方につきましては、先ほども申し上げましたように、立場相違等からして若干の相違があってもやむを得ないと考えているわけであります。
  25. 野田哲

    野田哲君 長官は、訪米、訪欧の成果について、「朝雲」という新聞に、インタビューに答えていろいろ述べておられるわけですね。これを読むと、対ソ認識について一致をしたというよりも、長官自身見解はほとんどないわけです。アメリカがこういうふうにソ連脅威について述べているんだということを、そのまま、アメリカがこう言っているんだ、こういう形でインタビューに答えておられるわけです。だから、この対ソ認識一致というのは、ワインバーガー国防長官あるいはヘイグ国務長官対ソ認識をあなたはそのままうのみにしたんじゃないか。当時のアメリカからの報道を見ても、対ソ認識についての長官とワインバーガーあるいはヘイグ等々のアメリカ側の高官とのやりとりの中では、先方からの対ソ認識についてはこれでもかこれでもかと強調されたのが報道されているんですが、あなたの対ソ認識というのは、アメリカからの特派員の報道でも全然ないですよね、賛意を表したというような形で片づけられているわけです。  そこで、この「朝雲」という新聞の報道によると、あなたは、ソ連の極東軍事力の強化という問題について、ソ連の意図は「なにを意図するのか、定かではない」、こういうふうに述べておられるわけですね。ソ連軍事力の増強を具体的にずっと、バックファイアがどうだとか、あるいはSS20がどうだとか、こういうふうに増加をしているんだ。ところが、「こういった一連の状況がなにを意図するのか、定かではないけれど、アメリカの見方を引用すると、陸軍は主として中国向けだろうと。ところが、海軍や空軍は、ことに空軍では中国はまだ近代的じゃありませんから、中国向け以上の戦略的要素が……。海軍についても、」「相当行動半径が広く日本海とかオホーツク海だけでなくて、太平洋を行動する力を十分持ってますから、これも中国向け以上のものを持っている。しからば中国以外はなにかというと、まずアメリカの太平洋艦隊しかない。」、こういうふうに、極東におけるソ連軍事力の増強の意図は定かではないが、まず陸上は中国向けだ、海と空は中国向け以上の能力を持っているんで、それはアメリカの太平洋艦隊に向けてだろう、こういうふうに述べておられるんですけれども、これを読む限りは、日本ソ連脅威を感ずるということにはならないし、対ソ認識一致をするということに私は全くなるはずはないと思うんですが、どうですか。これは防衛庁が最も親しい「朝雲」という機関紙で報道されているんですよ。
  26. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) あの新聞との座談会において、アメリカ側説明の要点を聞かれたものですから申し上げたわけでございます。ただ、最近の極東における配備状況からしまして、陸海空とも質量ともに非常に増強されているということは米側資料にもございますし、また防衛庁がその他の点から調査した点からも同様な傾向がうかがわれるということは私ども承知しているわけでございます。ただ、陸軍が非常にふえた、五個師団ふえたというような点が、主としてこれは中国向けの配備であろうということでございますが、やはりそのうち北方領土に一個師団近いものが配備されているという点あたりは必ずしも中国向けでないという点は明白ではないかと思うわけでございます。あと、海空軍の著しい増強ぶりは中国だけを意図しているものではない、太平洋方面を意図しているものではないか、そういうお話が先方でもありましたし、確かに足の長い爆撃機とか、それから洋上を航行できるような大型の艦艇、原子力潜水艦等を見ますると、これは中国ではなくて、むしろ太平洋方面を念頭に置いているんではないかというふうに見られるわけでございます。その場合に、一体日本が含まれるかどうか、これは先方の意図がわかりませんので、わからないことはわからないということを申し上げているわけでございます。
  27. 野田哲

    野田哲君 先方の意図がわからない。意図がわからなければ、私はわからないということで日本アメリカの要求をお断りすればいいと思うんだし、この「朝雲」という新聞に述べられている限りでは、脅威というのは、これは侵攻する能力とこれに加えて意思というものがなければ脅威ではないはずなんですから。あなたがインタビューに答えている限りでは、陸は中国向けだ、海と空は太平洋方面だ、いまあなたはこういうふうに言われたが、ここでははっきりとアメリカの太平洋艦隊を対象にしているんだ、こういうふうに書いてある。方面とアメリカの太平洋艦隊とでは対象は全然違うんですよ、これは。だから、日本はこれならば脅威を感ずる必要がないではないか、こういうふうに思うし、いまあなたは先方の意図はわからないと、わからないということであれば、そこで明確に対ソ認識について大きな食い違いができているんではないか、なぜこれが一致できるのか、私はこういうふうな疑問を持つのですが、いかがですか。
  28. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先方との会談でお話がありましたのは、極東ソ連軍の配備状況からして、主として陸海の配備や太平洋方面を考えているものと思われるということでございまして、太平洋艦隊に特定しているものではなかったということを申し上げておきたいと思います。
  29. 野田哲

    野田哲君 あなた、ここでは特定していますよ、アメリカの太平洋艦隊と。いまになって、こういう部内へ配るこれとここでの答弁と、そういうふうにその場その場で変えられちゃ困るんですよね。
  30. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 御指摘の記事が必ずしも正確でなかったと思いますので、この席で正確な点を申し上げているわけです。
  31. 野田哲

    野田哲君 そこで、具体的にアメリカ側からは装備の強化について、ここには、いまの長官の冒頭の報告では具体的には言われていないんですが、具体的にはどういう問題を要求されたんですか。これは防衛局長で結構ですから、報道されているとおりですか。
  32. 塩田章

    説明員塩田章君) 日本に対するアメリカ側の具体的な対日期待といいますものは、大村長官訪米の席で具体的に出たわけじゃなくて、むしろハワイのわれわれの事務レベルのときに出ました。それを踏まえてワシントンでの会談が行われたわけですが、そのハワイの事務レベル協議アメリカ側が具体的に言いましたことは四点でございまして、一点は即応性ということであります。コンバット・レディネスということがいまの自衛隊において一番欠けていることではないかということ。二番目は、いわゆるC3Iと称しておりますが、コマンド・コントロール・コミュニケーションのCが三つ、それからインテリジェンスのI。そのいわゆる指揮・管制・通信能力あるいは情報処理能力といった点がいまの自衛隊には大変欠けているんじゃないかという指摘が第二点。それから第三点は継戦能力でございます。継戦能力が自衛隊における大きな欠陥ではないか。それから第四点が装備の近代化。この四点についての指摘があったわけであります。
  33. 野田哲

    野田哲君 そこで、このような要求をしてきたが、結局長官との会談でも結論が出ないで持ち越し、こういうふうになっているわけですね。  そうすると、これはいつごろまでにどういうパターンで決着をつけようと考えておられるんですか、長官
  34. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 鈴木・レーガン首脳会談に基づく共同声明におきましても、日米安全保障問題については今後継続協議していこうということが明白にうたわれております。その一環として、ハワイにおける事務レベルの会議、それから私と国防長官ですね、各レベルの会議に期待するということでございまして、一連の会談を通じて双方意見交換を深めまして、それぞれの考えているところが逐次明らかになってきているわけでございますので、そういった点を踏まえて、今後あらゆる機会を通じて協議を進めていきたいと私は考えているわけでございます。したがいまして、なるべく早くまとまることが好ましいわけでございますが、いつまでと、そういった点はいまのところはっきりいたしておらないわけでございます。
  35. 野田哲

    野田哲君 いつまで云々ということは、いまよく語尾がわからなかったんですがね、長官のおっしゃること。時期が決まってないというふうな意味だろうと思うんですが、しかし、あるいは秋にはあなたはワインバーガー長官日本に来るように招待したわけでしょう。それから、いずれにしても昭和五十七年度の予算編成にかかわる問題があるわけですね。そうすれば、およその時期のめどと、それはこういう場面で決着をつけるんだという両国間の接触の場面というものが想定をされていると思うんですが、それはどうなんですか。
  36. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 向こうに行っている間にワインバーガー長官が近く日本を訪問してみたいという意向が非公式に伝えられたことばありますが、私の方から招待したことはございません。  それから、明年度の予算編成は、御承知のとおり八月をめどに概算要求を鋭意作成中でございます。これと米側といつ協議するか、直接関係もございませんので、米側といつ話をするということは聞いておらないわけでございます。
  37. 野田哲

    野田哲君 そうすると、あなたはきのう日本記者クラブで講演をされているわけですが、その中で、今回の訪米による日米防衛協議防衛力増強問題が継続協議になったことに関連をして、継続協議のテーマが日本防衛力改善のあり方、装備技術の交流、在日米軍の駐留経費分担、四つ目が日米防衛協力の指針に基づく極東有事の研究、この四項目が継続協議対象だと、こういうふうに講演の中で述べておられるわけですね。ところが、いまのあなたのお答えは、予算は八月ごろまでには決めるが、それとアメリカとの協議関係ない、こういうふうに言われているわけですが、本当に関係ないのか、それなら結構なんですが、一切これから、それじゃ継続協議になっていることとはかかわりなしに予算は予算でつくっていく、こういうことなんですか、そこのところをはっきりしてください。
  38. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 明年度の概算要求の作成につきましては、さきに決定を見ましたシーリングの範囲内で防衛庁としましては概算要求をつくりたいと思いまして、現在鋭意作業中でございます。その過程によりまして、現在の自衛隊の足らない点につきまして私どもも平生から研究いたしているわけでございますが、ハワイ協議あるいはワシントン協議等の場において出されました意見につきましても、参考として取り入れるものがあれば取り入れるということで進めてまいりたいと考えているわけでございます。  なお、私が昨日記者クラブでお話ししました装備の改善の問題につきましては、来年度の予算編成も関係がなきにしもあらずでございますが、主として私が申し上げましたのは、次の中業の作成を主として申し上げたつもりでございます。御案内のとおり、五六中業を防衛計画大綱基本として作業に着手する、先般の国防会議で御了承を得ておりますので、これから一年ほどかけてこの作業をやる際に、また米側意見のうち取り入れるものがあれば参考としていきたいと、むしろその方を念頭に置いているということを念のため申し上げておきたいと思います。  それから、その他の事項でございますが、装備品の技術の交流の問題、ガイドラインの研究問題等につきましては、それぞれの協議の場がすでに設けられておるものもございますので、そういった点につきましてはそれぞれの場を活用して協議が続けられるようにいたしたいと、さように考えておることをまとめて申し上げたつもりであります。
  39. 野田哲

    野田哲君 どうもよくわかりませんが、今回あなたがアメリカへ行かれ、あるいはその前に事務レベルでアメリカへ行かれて、アメリカ側から非常に防衛力の増強についてあるいは近代化について等々具体的な要求が出ているわけですが、これだけのものが出されている以上は、ソ連の軍事的脅威、こういう点について具体的なシナリオが示されていると思うんですね。アメリカの対ソ戦略については先ほども議論いたしましたが、同時多発報復戦略、こういう戦略に立っているというふうに報道されています。これは軍当局あるいは国防長官等が議会で証言をしております。紛争が発生した場合に、相手の弱点に力を注ぐべきで、攻撃を受けた地点だけではなく弱点である全領域を対象とする、こういうふうにジョーンズ統合参謀本部議長やあるいはワインバーガー国防長官が議会で証言をしておりますが、こういう具体的な日本に装備の要求をしてくる、これがこのような戦略に基づいてどういうシナリオが日本の装備の近代化あるいは質の増強の前提として示されているのか、これをひとつ具体的に明らかにしてもらいたいと思います。
  40. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私が訪米の場合の会談におきましては、いま先生がお述べになりましたようなシナリオとか、あるいは日本防衛力強化について具体的にどうしてくれとか、こういうお話は一切なかったわけでございます。ただ、ハワイの事務レベルの会談、これは事務当局の忌憚のない自由な意見の交換の場でございましたので、それぞれ出席者の間から若干それに触れるようなお話もあったろうかと思いますが、その点は、防衛局長が両方に出席していますので若干補足さしていただきたいと思うわけでございます。  また、このシナリオとか、そういったものはなかったにいたしましても、米側日本防衛努力について要請している重点は、共同声明第八項に書いてあります、やはり日本の領域及び周辺海空域において一層防衛の改善をしたいと総理大臣がお述べになり、大統領が賛成したと、この点が中心であったと、私の会談におきましても、その点が主として中心になり、そして意見の交換を図ったということであることをつけ加えて申し上げておきます。
  41. 塩田章

    説明員塩田章君) いまの大臣のお答えで尽きておると思いますが、ハワイでございましたのは、先ほど私が言いました四つの点について御指摘がありました際に、その前提といいますか、前提としまして、日本防衛の役割りについて、共同声明の適切な役割り分担ということを受けまして、日本に何を期待するかということをアメリカ側はあらかじめ指摘したわけでございます。それによりますと、日本防衛力につきましては、あくまでも日本の領域あるいは周辺海空域及び航路帯にあっては約一千海里という、私どもが従前からお答えを申し上げておることをそのままアメリカ側指摘しまして、そこの防衛日本がやってもらいたいと、日本防衛力の整備目標として掲げておりますことをそのまま認めまして、その防衛をやってもらう、それについて、その日本防衛についていまの自衛隊では以下述べるようなことが足らないではないかという指摘でございまして、先ほど申し上げましたような四つの項目を挙げてアメリカ側見解を示したわけでございます。  その際、つけ加えておきますが、アメリカはいろいろ四つの項目に関連して詳しいことを言いましたが、これはあくまでも数値等につきましては十分まだ検討したものではないと、いまからの日米の話し合いの試みの案、試案として言うものであるから、そのつもりで受けとめてほしいということを前提にしましていろいろ詳しい意見があったと、こういうことでございます。
  42. 野田哲

    野田哲君 防衛局長、そういう抽象的なことではなくて、具体的にP3Cをどれだけ持てとか、護衛艦をどれだけ持てとか、E2Cをどれだけ持てとかいうふうに要求しているわけでしょう。そうすれば、当然具体的にソ連がこういう形の軍事行動を起こしてくる、これに対してアメリカ日本はどういう役割りを持ってどういう対応をするか、こういうシナリオがあるからこそ具体的に機数までこういうふうに、あるいは飛行隊をどういうふうに増強しろとか、弾薬を六十日をあるいは九十日、こういうようなことを言ってきているわけでしょう。あるんでしょう、それは具体的なシナリオが。どうですか。
  43. 塩田章

    説明員塩田章君) 具体的なシナリオということでなくて、いま申し上げたようないろいろな話が出たものですから、むしろ私の方から言いまして、たとえば何が何機あってしかるべきじゃないかとか、何が何隻要るんではないかということを言われましても、それはどういう根拠でどういう向こうの考え方のもとにこういう数字を言っているのかというようなことについては、当然われわれの方からむしろ疑問を持ったわけでございます。アメリカ側の言い分といいますか、試みの試案としてはそれはわかりましたけれども、しかし、その根拠、どういう構想で出てきたものかというようなことにつきましては、ハワイでも、それからその次のワシントンの長官訪米の際にも、結局具体的には出ませんでしたものですから、先ほどから申し上げておりますように、今後そういった協議を続けていく間でアメリカ側はどういう考えでこういうものがこれだけ要るのだと言っておるか、われわれはまたわれわれの作業をいまやっていますから、それに基づいてわれわれの見解はまた向こうに示すというような形で今後話し合いは続けていこう、こういうことでございまして、具体的にこういうシナリオだからこれだけ要るのだという、そういう説明ではなかったわけであります。
  44. 野田哲

    野田哲君 シナリオなしにばかばかばかばかアメリカから要求を突きつけられて、シナリオも示されないで、あなた方はそれを持ち帰って相談するということは、私は余りにも担当者としては見識が足りないのじゃないかなと、失礼な言い方になりますが。  また、そういう構想も示されないでこれから装備の増強の予算を審議する、これも国会としても見識のない議論をしなきゃならぬ、こういうことになるんじゃないでしょうか。当然シナリオを具体的に示せということを突きつけるべきじゃないんでしょうか。  これは押し問答になりますからもうそれでとどめますが、新聞のこの囲みなんかによると、ある新聞で、あるいはまたいろいろ巷間伝えられるところによると、今回のこのアメリカからの装備の増強等の要求については、日本制服幹部のところからまずアメリカ制服のところへリストが輸出をされて、それから今度はアメリカ制服のところから国防総省を通じて日本に突きつけられておる。こういうふうな形で、その増強のシナリオは制服同士で先にすり合わせができているのだ、こういう報道がありますね、御承知でしょう。うわさもありますよ。日本防衛力の増強のことについて、国民も国会も知らない間に制服がリストを持ってワシントンに行き、あるいはハワイに行き、それから今度は政府間の交渉に持ち込まれる。こういうことがあるとするならば、私はこれはとんでもない話だと思うんです。どうでしょうか。
  45. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私は、日米安全保障条約に基づいて万一の場合に日本防衛について責任を担うことになりますアメリカが、平時から日本防衛力について関心を持っていろいろ研究もされ、意見があってもこれは不思議ではないと思うわけでございます。また、そういった意見があれば私どもも慎重に検討して、取り入れるべき点があれば取り入れる努力をすることは当然ではないかと思うわけでございます。ただ、先生指摘のように、制服同士があらかじめ打ち合わせたものを先方から言うというようなことがあっては、これはシビリアンコントロールを損なうことになりますので、そういうことはこれまでもわが方としましては許しておりませんし、今後といえどもそういうことはないようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  46. 野田哲

    野田哲君 大分時間が迫りましたので、あと防衛関係で二つ伺った後、次の官房長官の方へ移りたいと思うんです。  端的に伺っておきたいと思うんですが、自由民主党の中では防衛計画大綱についての見直し、これはかなり声が高くなっている。金丸元防衛庁長官が代表をやっている日本戦略研究センター、ここから出されている提言の中でも、防衛計画大綱と中期業務見積もりの抜本的な再検討、こういうことを提言をした印刷物が出回っておりますね。自民党の三原さんが会長の安全保障調査会でもこの見直しと、いう方針を固めたという報道されて、しかもこれについては、防衛庁長官やいまお見えになった宮澤官房長官も、総理が国会防衛計画大綱は見直さないということを言っている手前政府から言い出せないので、まず党の方でやってもらいたいということのコンセンサスが得られているのだと、合意が得られているのだと、こういう形の中で見直し論が非常に声高くなっている。長官自身も、最近の報道によると、防衛計画大綱は見直さなければいけないという意味発言があったやの新聞報道がされております。これはアメリカ側からの防衛協議が継続交渉になった、そこである程度大綱を上回る要求が突きつけられている。これに対応していくためには、実質的にこの大綱を変えていくことを国会の論議などを抜きにして政府と自民党の関係者の間で合意を形成をして、その中で対応していこう、こういう動きになってきているのじゃないかと勘ぐらざるを得ないのですが、端的に伺いますが、長官、あなたは防衛計画大綱について一言で答えてください。見直すという必要があると考えているのか、見直しは必要ないと考えているのか、いかがですか。
  47. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛計画大綱についてのお尋ねでございますが、繰り返し申し上げておりますように、私といたしましては、現在の防衛計画大綱の水準を達成することがわが国防衛努力を果たす上で最も重要なことであると考えておるわけでございます。また、これを進めるに当たりましても、相当な財政上の裏づけがないとできないわけでございますので、それをいかにして達成するか等に全力を挙げて取り組んでおるところでございます。したがいまして、私といたしましては防衛計画大綱を見直すということは全く考えておらないわけであります。
  48. 野田哲

    野田哲君 もう一つ、外務省の局長に伺いますが、今度の訪米に関連をして装備の技術交流、こういう問題がアメリカ側から要求が出ている。これについて外務省としてはどういうふうに対応されようとしているのか、これを伺いたいと思うんです。
  49. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 私の承知しているところでは、装備技術については従来からアメリカ側から技術の提供がございます。ただし、日本側からの提供について十分でないということで、アメリカ側がこれを両面交通にしたいということを言っておりまして、具体的にどういう技術を今後アメリカ側日本から欲しいのかという点については、まだ何らの意思表示はございません。  そこで、私たちとしては、そういう具体的なアメリカ側の話を聞いた上で態度を決定していきたいという考えでございます。
  50. 野田哲

    野田哲君 宮澤官房長官に伺いますが、与党の自民党の中で八月十五日の議論が大分盛んになってきているようであります。一つは、八月十五日に総理に靖国神社に公式参拝を求める、こういうことと、それからもう一つは、八月十五日を慰霊の日として定めろと、こういう議論があるやに報道されておりますが、まずこの八月十五日について、昨年もいろいろ総理が靖国神社へ参拝されることについて議論があったわけですが、ことしは自民党のこのような情勢の動きなどの中で、八月十五日にどういうふうにこの問題をされようとしているのか、伺います。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どもの党内でいろいろ議論があることは承知いたしておりますけれども、党としてこういう考えであるということをまとめたとは聞いておりません。したがいまして、政府に対して党の方から何かの形で申し入れがあったというような事実はただいまのところございません。  なお、八月十五日に鈴木総理大臣が靖国神社に参拝をいたしますかどうか、ただいまのところ、私承知をいたしておりません。
  52. 野田哲

    野田哲君 承知をされていないということは、何か新聞の報道では、自民党はきょうの総務会でこれについての態度を協議されるというふうに報道されておりますし、何かきのうは櫻内幹事長が総理の自宅でこの問題について相談をされたという報道があるわけですが、そういういろんな動きをにらんでまだ決めていないと、こういうことなんですか。それとも、もう議論がやかましいから参拝はやめたと、こういう意味なんですか。どうでしょうか。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨日、櫻内幹事長が総裁・総理に対しまして、八月十五日という日を将来長く記念の日とすべきかどうかということについて党内に異論があるという、そういう御紹介をされた、説明をされたというふうには存じておりますけれども、それ以外のことをあるいは党で何かの決定を考えている、あるいは決定をしようとしているということは存じておりません。  それから、総理大臣の八月十五日の日程につきましては、別段党内にそのような議論がある、なしということで決めることをちゅうちょしておるというような意味ではございません。
  54. 野田哲

    野田哲君 櫻内幹事長の見解新聞に報道されているのを読みますと、党内からの公式参拝の要請があることについて、一つ政府が、従来から公式参拝ということになるとこれは憲法上の疑いが出てくる。それからもう一つは、私的参拝ということで行っているが、実際は総理大臣という肩書きを記帳しているんだから、実質的には公式ではないか。だから、もうこれ以上は公式か非公式かを突き詰めなくともいいじゃないかと、こういうふうな意味発言をされているわけですね。そういう形で、問題をあいまいにされたままでまたこの参拝をされる、こういうことでは私は、これは問題がさらに尾を引くことになるんではないか。政府は、やはり依然として、公式参拝ということは憲法二十条のたてまえからできない、この見解は間違いないわけですね。
  55. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) 正確にお答えをいたしますが、昨年の政府が衆議院の議運に対して示しました統一見解というものがございます。それを読み上げたいと思います。「政府としては、従来から、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは、」その次が正確な表現でございますが、「憲法第二〇条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。」、こういうことでありまして、違憲であるというようなことで断定はいたしておりません。
  56. 野田哲

    野田哲君 公的、私的、この区別はどういうふうにつけるわけですか。恐らくまたことしも参拝するということになると、八月十五日、武道館に引き続いて靖国神社へと、こういうことになると思うのですが、けじめはどこでどうつけるのですか。
  57. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) この点につきましても従来からたびたび申し上げているところでございますが、政府としては、憲法二十条三項との関係におきまして公的参拝が問題があるという立場をとっておるわけでございます。その場合の公的、公式参拝というのは、これも昨年、衆議院の稲葉議員に対して答弁書でお答えをいたしておりますけれども、定義的に申し上げれば、いわゆる公式参拝とは公務員が公的な資格で参拝することを、いうという定義に沿って解釈をしているわけであります。  そこで、次の問題として、公式参拝はそういう定義の上に立って、実際に私的参拝との区別、基準いかんということになろうかと思いますが、この点につきましては、御承知かとも思いますが、五十三年十月十七日の安倍官房長官が参議院の内閣委員会でお示しをしました統一見解というものによって政府は判断をしているわけでございます。
  58. 野田哲

    野田哲君 八月十五日を記念日にしろということについては、これは政府としてはどういうふうに取り扱われようと考えておられるわけですか。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、この問題について自由民主党の中でいろいろな議論が行われているのでございますけれども結論というところに至っておりません。したがいまして、政府に対して申し入れというようなこともただいままでのところございませんので、政府としてどうするかということを決定いたしておりません。もしそのような党からの申し入れでもございましたときには、その段階で閣僚とも諮りましてどういうふうにすべきかを決めたいと思っておりますけれども、ただいままだ相談をいたしておりません。
  60. 野田哲

    野田哲君 八月十五日の問題と、それから靖国神社公的参拝という問題は、これはやはり連動していると私どもは受けとめているわけです。したがって、靖国神社参拝についても公的ではいけないが私的ならいいんだ、こういうことで問題が決着がつく性質のものではないと思うんですね。私どもは、やはり公的、私的の問題はかつて三木総理が見解を表明された、閣僚は地位の重みからして公私の区別はつけがたい、こういう見解、これがやはり正しい見解ではないかと思うんです。私的ですよと言えばそれは私的だ、私的参拝だと、公的だと言えば公的、こういうような形で処理できる問題ではないと思うんですね。恐らく長官、あれでしょう、八月六日広島にお見えになるというふうに聞いているわけで、私も広島の出身者として、広島にお見えになることは心から歓迎をいたしますが、あれは恐らく公的だと思うんです。八月十五日靖国神社へ行くのは私的、広島の原爆慰霊碑の前にかしずかれるのは公的、国民はどうやって区別がつくんですか。これはつかないと思うんです。だから、私はやはり八月十五日を記念日にするという問題と靖国神社の問題、連動した一連の問題でありますから、政府としては十分憲法の精神等を照らして対処してもらいたい、このことを要望して終わりたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御指摘の点はよく留意をいたしてまいります。
  62. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  63. 林ゆう

    委員長林ゆう君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 山崎昇

    ○山崎昇君 まず総務長官にお尋ねをしておきたいと思うんですが、これは本来なら官房長官にお尋ねするのが筋かもしれませんが、けさの新聞に鈴木総理の北海道視察というのが報道されておりまして、あのとおり確定をしたのかどうか、まずお聞きをしたい。
  65. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 総理の北方領土視察問題につきましては、新聞紙上いろいろ報道されておりますが、まだ公式に決定をいたしておりません。
  66. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、検討中なんだが、行くとすればあの報道のような大体日程とわれわれとしてもある程度推定をしておいて間違いではない、こういうふうに思うんですが、どうですか。
  67. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) かねて北海道及び東北の北方預出返還運動の国民大会からも、総理の北方領土視察を要望する決議を受けておりますので、総理としては適当な機会に北方領土を視察したいという希望を述べられておりましたが、ただいま新聞で報道されているような日程が一つの時期であるとも考えております。
  68. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで、重ねて総務長官にお尋ねしますが、私の知る限り、北方領土の視察については、昭和四十三年に当時の田中総理府総務長官が行かれて以来毎年のように総務長官が行かれる。その間に宮澤外務大臣も行かれました。また、いま外務大臣になりましたが、園田外務大臣もかつて行かれ、今度は総理が行かれるわけですね。言うならば延べにしまして十四、五人の方が行っておられるんですが、一体行って何を見て、そしてその後何をしているんだろうか。素朴に現地の人は、ずいぶん大臣は来るんだけれども、来たときには大変調子のいいことを言って帰るけれども、帰ったが最後何にもないではないか、ただ私の知る限り、今日までにできたのは、北方領土の日だかというのが決まったのと、根室地域の振興計画だかというのが多少決まったのと、あと外交的に一体どんなことが行われたんだろうか、一つも何にもないではないか。ただ国内であっちこっちで領土復帰の何か決起集会だとか会合だとかということは持たれておるようでありますけれども、どういう進展があったんだろうか。全く視察される方は、来て見てもらうということはうれしいことに間違いがないかもしれませんけれども、その後の措置について、総務長官、一体どういう状況になっているのかお聞きをしておきたい。
  69. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 先生も御案内のように、北海道、東北の方々の御決議というものが、要望事項というものが三つございまして、一つは北方領土の日の制定、もう一つは総理の現地視察、もう一つ地域振興に力を入れてもらいたい、この三つが北海道・東北国民大会の決議であったと記憶をいたしております。  そういう決議を受けまして、まず昨年の十一月に総理じきじきに閣議で、いわゆる四島周辺の漁業に従事している人たちの精神的にも経済的にも安定をさせるために地域振興のための格段の配慮をせよという御指示がございまして、北海道開発庁を中心に十一省庁が連絡を強化いたしまして、予算におきましても配慮が行われたと、こういうことでございます。  北方領土の日につきましては、すでに御案内のように、本年一月六日の閣議において了解されて、二月七日には各党の代表者の御参加を得て北方領土の日の行事が行われたことも御承知のとおりでございまして、最後の一つである総理の視察ということがまだ実行が行われていないと、こういう状況でございますが、私は近い機会にそれが実現されるというふうに考えております。  なお、外交に関しましては所管ではございませんので、外交案件につきましては外務当局からひとつお答えを願いたいと、このように考えております。
  70. 山崎昇

    ○山崎昇君 外務省には後で聞きますが、いま総務長官から答弁されたわけですが、かけ声だけでっかくて、そして現実的には外交的にはほとんど何もされてない、むしろこっちから動くのは損だというような私は外務省のいま態度じゃないかという気がしているわけなんですが、そしてかつて園田さんが行かれたときに、年に一度は訪れるよう次の大臣に申し送る、あせらず、怒らず、あきらめず、三ず主義でいくんだ、これが当時の外務大臣の言葉であったわけですが、それを受けてかどうかわかりませんけれども、いま根室地域の振興と言っても大したことをやっているわけじゃない、ただ年に一回あっちこっちで集会を開いている程度の話である。そして領対、領土復帰の何かあなたの方は本部ですね、外務省との関係もあるんでしょうが、本部ですね。行かれることは行かれるけれども、帰ってきたら何もしてない。これは本当に私ども、私も北海道でありますけれども、遺憾だという気持ちでいっぱいですね、正直なことを申し上げまして。  外務省にお尋ねしますが、外交的にどういうことをいまやっておられるんですか。
  71. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 北方領土問題に関しますソ連の態度というものは、これは委員よく御承知のとおりでございまして、一九七三年、当時の田中総理が訪ソされましたときには、戦後未解決の諸問題があるということで北方領土問題の存在を認めていたわけでございますが、その後ソ連側はその立場をかたくななものにいたしておりまして、最近では、北方領土問題というようなものは存在しない、ソ連には余っている領土というようなものはない、北方領土問題などというものは日本国内の一部の反ソ分子が言っているだけであるというような言い方をしているわけでございまして、ソ連がこのようなかたくなな態度をとっていることは、私どもといたしましてきわめて遺憾に存じている次第でございます。  そこで、外務省といたしましては、北方領土問題につきましては、折あるごとにソ連側に対しましてソ連の言い分に理由がないということを指摘し、わが方の基本的な立場を繰り返し述べているわけでございまして、最近におきましても在ソ魚本大使からグロムイコ外務大臣に対しましてこの問題を提起し、一九七三年の共同宣言のラインに立ち戻って平和条約交渉を開始するということについての日本側の考え方というものを述べた経緯があったわけでございます。  いま申し述べましたように、最近の状況は一九七三年当時に比べて悪化しているということでございまして、私どもといたしましては、ソ連が当時の日ソ共同宣言のラインに戻りまして北方領土問題を解決し、平和条約を締結するための交渉のテーブルに着くことを期待している、また、そのための、ソ連側をそのようなところに持ってくるためにあらゆる機会をとらえまして努力しているというのが現状でございます。
  72. 山崎昇

    ○山崎昇君 それは言葉だけで、モスクワにあります大使館を通じてただ申し入れしておりますというだけの話じゃないですか。あと、私も毎年のようにモスコーへ行っておりますけれども、ほとんど動きらしいものはありませんね。改めてこの問題はまた私はやりたいと思いますが、いずれにいたしましても外交的にはほとんどと言っていいぐらい積極的な動きがない、日本には。この点はきわめて私は遺憾だと思うんです。  そこで、関連しまして警察庁にお尋ねいたしますが、最近北海道におきましては、暴力団が政治団体を結成をしまして、そして北方領土返還運動を表舞台にして各会社等を回って賛助金を集めて暴力団の資金源にしている、そういう動き等がかなり最近は多くなってきている。こういうことが私、先般道庁にございます領対本部に参りました際にそういう話が出てまいりました。  そこで、警察庁としては全体的にこの暴力団というものに対していまどういう対処をしているのか。また、あわせまして、いま北海道では私の承知する限り六団体ぐらいと聞いておりますが、ついことしの四月にもまだ服役中の者が代表になって実は政治団体が結成され、活動開始をしている、宣伝カーを札幌に持ち込んで北方領土返還の運動をやる、こういう状況にあると私ども聞かされておるわけですが、警察庁はどういうふうに把握しているのか、お聞きをしておきたい。
  73. 中平和水

    説明員(中平和水君) まず北海道の暴力団の全体の状況でございますが、昭和五十五年末現在で北海道警が把握しております暴力団の数は、百二十二団体、四千八百四十五名でございます。これを昭和五十五年度中に検挙いたしました件数は四千五百五十四件、人員は二千六百七十名を検挙いたしている次第でございます。  暴力団取り締まりの基本的な方針でございますが、御案内のように、暴力団というのはこれは一つの反社会的な集団でございますから、現在のわが国の治安の最大のガンである、こういう基本的なとらえ方のもとに暴力団の徹底的な検挙を通じての解散、壊滅、それから暴力団を社会から孤立化させる作戦を通じての解散、壊滅、そういうことを総力を挙げてやっていますので、道警においても同様の方針においてやっておるわけでございます。  なお、北海道におきます右翼活動を仮装する暴力団の実態でございますが、私どもの把握しておる数は、先ほど先生指摘ございましたように六団体、総数で申し上げますと七十四名を把握しておる状況でございます。その中には、北方領土の問題を一応スローガンの一つに掲げまして、企業等についての資金集めをしている団体が一部にあることも承知をいたしております。しかしながら、これらの団体はあくまでも本質は暴力団でございますので、私どもは暴力団取り締まりの一環としてとらえ、これに対して適切に対処してまいる、こういう方針で臨んでおるわけでございまして、したがいまして、まず第一には、それら資金集めを通じて行われる違法な行為、たとえば番付の強要だとかあるいは脅迫だとか恐喝だとか、そういうことがありましたら、これは厳正に取り締まりをする方針でございます。  なお、この種の暴力団に対して、政治活動を仮装しているとはいえ、これに金を出すという企業の体質、これまた問題でございますから、幸い私どもの方では暴力団取り締まりの一環として、特に総会屋対策といたしまして特殊暴力対策協議会というのを設けまして、警察と企業との間のパイプをつくっておるわけでございます。その機関を通じましてこれらの実態を企業に周知徹底させ、そうしたことが行われないようにさらに指導を強めてまいりたい、このように考えております。
  74. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま北海道の状況について、あなたが六団体七十四名、昨年検挙した者四千五百五十四件、二千六百七十名、こういう数字を発表になりましたね。私どもの聞くところによりますと、全国的にも暴力団の政治団体への名乗りがかなりふえていると聞いているんですが、全国的に一体警察庁はどの程度にこれを把握しているのか、重ねてお聞きをしておきたい。
  75. 中平和水

    説明員(中平和水君) 私ども現在把握しております右翼活動を仮装する暴力団は、団体数で九十団体、構成員で約二千人一応把握をしております。これは御案内のように、暴力団取り締まりを強化されてまいりますと、一つには、従来の暴力団の基本的な形である恐喝とか傷害とか覚せい剤だとかいうこと以外に、一般の企業活動あるいは個人の経済活動等に介入してくるいわゆる知能的な暴力がふえてまいるわけでございます。ところが、先般の商法改正等によりましてこの種の総会屋対策としての法的な手段がとられましたわけでございますから、今後さらに私は政治活動の分野に暴力団が進出してまいるおそれが多分にある、このように考えまして、先般来この種の視察活動、これに伴う違法行為に対する厳正な検挙、これは全国的に指示してやっている次第でございます。
  76. 山崎昇

    ○山崎昇君 総務長官にお尋ねしますが、いま警察から説明のあったとおりです。一体、領対本部を預かる総務長官としまして、どういうふうにこういう状態を把握しておったのか。あるいはいま警察から、具体的な強制にわたるような寄付だとか、そういう違法行為があった場合には取り締まる、こう言う。そして、あなたの方は取り締まりでありませんけれども、事柄は北方領土という領土問題に関連をしまして暴力団が政治団体に形だけは変える、そしてその背景は資金源として会社を回って金を集めて歩く、こういう状況にあるわけなんですが、私はこれはゆゆしい問題ではないんだろうか。これが特に対ソ脅威論が国内で強まれば強まるほどこういう動きもまた私は強まってくるんではないんだろうか、こう思うんですが、領対本部長として、一体総理府としてはこれからこの種の問題について、ただ警察の取り締まりだけではどうにもならぬ点も出てくるのではないかと私は心配するんですが、あなたの見解をお聞きをしておきたい。
  77. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 先生指摘の暴力団による北方領土をいわゆる利用した資金集めというものについては、総理府といたしましても大変重大な関心を持っておるわけでございます。従来、領土の返還運動というものは民族の純粋な願望をかけたものでございまして、暴力団との関係というものは一切われわれとしては断ち切りたい。また、現在もそういう姿勢で臨んでおるわけでございます。私どもとしては、今後ともこの種のいわゆる行為が行われないように、関係各方面にどの団体が最もその目的を果たすためのいわゆる確認された団体であるかということのPRを啓蒙をするということに努力をいたすとともに、関係各方面とも十分連絡をとり、この民族の悲願というものの達成が純粋な形で行われるように努力をしてまいりたいと考えております。
  78. 山崎昇

    ○山崎昇君 きょうの段階はこの程度に私はとどめておきたいと思いますが、北海道民から言いますと、実際これは何ともやり切れないやり方だと思うんですね。そして御存じのように、宣伝カーもボリュームいっぱいいっぱい上げましてやっているわけです。特に選挙戦なんかになりますと、特定の候補者を目がけてその後をついて歩いて妨害をするという行為もありますし、ですから、これは警察はもちろん具体的な事案が起これば当然取り締まりをやるんだろうと思いますが、事柄は領土問題にかかわるやり方でありますから、ぜひひとつ慎重に配慮願っておきたいと思います。総務長官と警察、結構です。  そこで、外務省に重ねてお尋ねをいたしますが、先般来、日米首脳会議あるいはオタワ・サミット等々一連の外交日程が大変こなされているわけですが、それに関連をしまして外務大臣がさまざまな発言をするわけでありますけれども、マニラにおきます発言あるいはオタワ・サミットを終わった後におきます発言等を見ると、どうも共同声明等の場合には、何か日本は世界と一緒になってのめり込んでいくような声明発表をする。実際の外務大臣発言になると、あの共同声明なんというものは出さない方がよかったんだとか、あるいはオタワのサミットの後で言えば、あれは一般的な合意であってわれわれは何も義務を負っているわけではないんだとか、受けるわれわれとすれば外務大臣の真意というのがよくわからぬわけです、正直に言いまして。そうかと思うと取り消してみたり修正してみたり、何かどうもぴんときませんので、本来ならこれ外務大臣じきじきに私ども聞かなきゃなりませんけれども、何かあすから南北サミットに出られるというのできょうは出席ができないということでありまして、かわって局長から十分そのそれらの真意についてはお伝えをしますと、こういうお話でありましたから、私は局長の出席だけできょうがまんをしているわけでありますが、どこまであなた言えるかわかりませんけれども、一体最近の外務省のこれら一連の動きというものについて、その真意をきょうは承っておきたい。
  79. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) まず私からマニラにおける大臣の共同声明についての発言について申し上げます。  御承知のとおり、マニラで記者会見をされて、共同声明に拘束力がないというふうに報道されているわけでございますけれども、その後で、大臣自身が補足説明という形で二回目の記者会見をされ、そこでも述べられ、あるいは帰朝されてからも述べられているように、ここで大臣の真意というものは、共同声明一般についてまず触れられて、その共同声明というものは、御承知のとおり条約とかあるいは協定とは違って法的な拘束力がない。しかし当事国にとっては、それは国際的なアピールを出したので当然に政治的、道義的には重要なことであるということであって、先般の日米の共同声明もまさにそういうふうに大臣としても理解されている。それから、共同声明それ自身が、二回にわたるワシントンにおける首脳会談ということを反映しているというふうに後でまた補足説明をされているわけでございます。  それからもう一つ、その共同声明を出すか出さないかという問題でございますけれども、これは国際的な慣行が確立されているわけでございませんので、出すこともございますし出さないときもございます。大体において、新しい首脳の出会いのときというときには出しますけれども、それ以外のときには出さない、あるいは西欧諸国の首脳同士の間では出さないというようなことになっておりまして、必要に応じて共同声明というのは出すということになっておるわけでございます。  なお、オタワの問題については、私行っておりませんので、欧亜局の審議官の方から答弁いたします。
  80. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) お答えいたします。  オタワにおきますサミットにおきましては、共同コミュニケとそれから政治問題に関します議長総括説明と、この二つが発表されたわけでございます。共同コミュニケの持つ意味合いにつきましては、先ほど北米局長からお答えしましたような性格のものであると思いますが、政治問題に関しまして議長国の首相としてトルドー首相が発表されました議長総括説明は、サミット会議における政治問題についての討議の全般を取りまとめまして議長の責任において対外向けに発表するということでトルドー首相がまとめられたものでございまして、その内容、また発表するということにつきましては、各国首脳が賛同をしたという趣旨のものでございます。
  81. 山崎昇

    ○山崎昇君 いや、私が聞いているのはそんなことじゃないんです。そんなことは私もわかっています。外務大臣が、終わられてから記者会見等やりまして、いろいろなことを述べるわけです。そして、いまも局長から答弁ありましたように、その後でまた訂正をする、修正をする、そういうことは受けるわれわれとしても混乱するわけですな、正直なことを言いまして。だから、その真意がぼくらにはわからぬわけです。そういう意味で先ほど来聞いているわけですが、私は、あのマニラの発言だとかオタワのサミットを終えられて日本へ帰られてからの新聞記者会見で述べられたこと等を聞いておりまして、ああ、園田さんというのはかってサンフランシスコ条約と安保条約に反対投票した人ですからね、ですから基本的にはそういうことがあって、その上に立ってこういう会談に臨まれて私は彼の思想なりに物を言っているのだなという受け取り方をしたりするわけです。  いずれにいたしましても、一国の大臣がいろんなことを言われるのはいいですけれども、すぐ訂正しなきゃならぬとか修正しなきゃならぬとか解説しなきゃならぬとか、このあいまいを残すようなことは言わぬでもらいたいと思うんですよ、正直なことを言って。われわれはその会談に臨んでいるわけでありませんからよくわからぬです。そういう意味できわめて私は納得しがたいものあるわけですが、きょうはしかし本人でありませんし、それからそればかり私質問するわけにいきませんので、きのう政府委員の方来られて、局長が十分その大臣の意を体して答弁しますと言うから私はきょうお聞きをしているわけなんですが、重ねて局長ね、いまあなたは共同声明を出すときもあるし出さぬときもある、ただ出すのは初めての首脳が会ったときが大体出す慣例になっておって、その他は出さぬと言うんですね。ところが大体いままではほとんど出ますわね、ほとんど出ます。初めてばかりでありませんね。ですから、出すのが私ども慣例かなという気持ちもありましたが、いまあなたの説明ではそうでもないようですね。そういう意味で私は、一遍ああいうトップクラスが出されますと、共同宣言であれ共同声明であれ、政治的にはきわめて重いものだと私どもは受け取るわけです。それがそうでもない。出さぬ方がよかったんだと、こういうふうに言われてきますと、これは大変私は問題を残すんじゃないかと思いますから聞いているわけなんで、その点は指摘をしておきたいと思うんです。  それから、きょう午前中、野田委員の方から対ソの問題については防衛庁長官を通じましていろいろ聞きました。そこで、きょう外務省おいでいただいておりますから、世界情勢についていろいろ首脳間で話し合われたようでありますが、そのうち二、三どういう点について検討されたのか聞く意味でお聞きをしておきたいと思うんです。  時間が私余りありませんので四つばかりにまとめて聞いておきたいと思うんですが、一つは、アフガニスタンの現状についてどういう討議がなされたのか、これはまあ秘密事項は要りませんが、お聞きをしておきたい。第二は、いまイランの国情も反映しておりますけれども、イランとイラク戦争の現状についてどう把握をされているのか。第三点は、大変注目を集めておりますポーランド情勢についてどういう話し合いが行われ、また外務省としてはどういう把握をされておるのか。それから第四は、午前中も野田委員から質問を防衛庁長官にしておりましたが、朝鮮民主主義人民共和国との関係についてどういう観点から議論をされたのか。たくさんありますけれども、とりあえずいま特徴的な四つの点についてお聞かせを願いたいと思います。
  82. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) サミット会議におきまして政治問題が首脳間また外務大臣間で議論されまして、その内容につきましては、議長総括説明あるいはサミット会議終了後の合同記者会見、あるいは総理、外務大臣の邦人への記者会見等で発表されているところでございます。  ただいま御質問のございましたアフガニスタンに関する問題につきましては、昨年のサミットにおきまして特別声明が出されたという経緯もございまして、今回も活発に議論が行われました。特に、昨年のアフガニスタンに関する声明にもかかわらず、その後事態の変更がないということにつきましては、各国首脳ともその状態はきわめて遺憾である、したがってなるべく早く外国軍隊の撤退を実現すべきであるということから、最近のEC諸国が行いました新しい平和解決のための提案につきましてこれをソ連が受諾することを求めるということで全参加者の意見一致があったというふうに了解しております。また、このEC諸国の提案につきましては、キャリントン外務大臣から、首脳会議におきましてこれを直接モスコーにキャリントン外務大臣自身が赴きましてソ連側に説明し、ソ連側と話し合った経緯につきましても報告があったということでございます。  次に、イラン・イラク戦争につきましては、中東情勢が世界の平和と安定のためにきわめて重要であるということを特に外務大臣レベルでは外務大臣から強く御指摘なされまして、そして現状の持つきわめて危険性ということから各国に対して自制を求める、責任ある行動を求めるということで意見一致があったというふうに了解しております。  それからポーランド問題につきましては、たまたまサミット会議の行われております最中にポーランドにおきまして第九回臨時党大会が開かれておりまして、そういうことから、その成り行きを見るという観点から余り突っ込んだ議論はなかったというふうに了解しております。ただし、外務大臣同士の食事の際に、ポーランドで新しく選出された中央委員会総会の顔ぶれの話、あるいは政治局員の顔ぶれの話については非公式に意見が述べられた、そして現在ポーランド政府及び国民自身が行っております問題の解決の努力、これを注意深く見守っていきたいというようなことで大方の意見一致していたというふうに聞いております。  それから最後に、朝鮮民主主義人民共和国の問題でございますが、この問題につきましては討議が一切されなかったものと了解しております。
  83. 山崎昇

    ○山崎昇君 朝鮮民主主義人民共和国の問題については一切討議されなかったと。そうすると、関連して防衛庁長官にちょっとお尋ねしますが、防衛庁長官の方の訪米その他になりますというとこの問題が軍事力の問題と関連して大変な議論になるが、外交的にはこれらの問題についてはほとんど討議がない。何か私どもいまの説明では少しぴんとこないものがあるんですがね。午前中も野田委員からの質問もありましたけれども、そこらのことについては防衛庁と外務省というのはほとんど何も連絡がないわけですか。防衛庁防衛庁で軍事的にだけ走る、外務省は外交的にだけ走る、そのほかには何にもない、こういう状況なんですか、その点についてお聞きをしておきたい。
  84. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 朝鮮民主主義人民共和国のお話は、私がワシントンに参りましたときの話や軍事能力が増強されるという点ではお話は出たわけでございます。また、米国といたしましては在韓米軍存在を継続することによって政治的安定が図られているというところまではお話があったのでございますが、それ以上のお話はなかったように私は承知しておるわけでございます。
  85. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、日本政府というのは、あれだけのスタッフが行っておって、いまアフガニスタンから始まって聞きましたが、言えぬこともあるでしょう、外交上の問題ですからね。それにいたしましてもきわめて皮相的なことしかやらぬのですね。いま聞いた限りでは、私どもなりぐらいしか首脳なんというのは余り討論しないものなんでしょうかね。私はきわめて半分残念だし、半分は一体その程度のものかなあという失望の感も持たざるを得ないと思う。しかしこれも、そのほかまだまだ国際情勢はこんなものじゃありませんから、多くのことありますので、いま特徴的な点だけ聞いたわけですが、そういう気持ちだけ述べておきたいと思うんです。  外務省に三番目にお聞きしておきたいのは、あの日昇丸事件が起きてかなり日にちがたっているんですが、一体これはその後どういうふうになっているんですか。
  86. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 二つございまして、一つは補償の問題、一つは最終報告の問題でございます。  最終報告の問題は、先般中間報告を出した時点でちょうど日米首脳会談が行われて、山崎委員承知のとおり、総理大臣の方から、最終報告も早急に出してもらって国民の納得するような解決を得たい、こういう話がございまして、大統領の方もできるだけ早く報告書を出したいということになっているわけでございます。その後、六月の二日に最終報告が第七艦隊司令官を経て太平洋軍司令官の手元に移りまして、最近の情報ではすでに海軍作戦議長の手に渡っているということでございますので、海軍作戦部長が検討した上いずれ日本側にその最終報告を知らせてくるであろうというふうに考えておりますが、時期的にいつということをまだちょっとここでは、アメリカ側からも何も言っておりませんし、私の方からも判断はつきかねるわけでございます。  次に、補償の問題でございます。補償の問題は御承知のとおり二つございまして、一つは人身損害、もう一つは船舶及び船荷でございます。  これは別々の弁護士の方が在日米海軍の法務部と折衝中でございまして、その過程において、本来この問題は当事者間で話し合う問題でございますが、外務省としても何らかの便宜をお図りするという意味でいろいろ便宜の供与をしております。  人身損害の方の一部については、私たちの聞いているところでは、最近進展が見られているということでございます。  それから船体、船荷については弁護士側の方から損害の額の提示がございまして、アメリカ側が現在その提示について関係機関の中でレビューしているというふうに承知しております。
  87. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、いまの説明を聞くというと、全くいまのところいつごろどうなるというめどがないというふうに言わざるを得ないんじゃないかと思うんですね。ただ、いまの答弁で人身損害だけは進展をしておりますと言うけれども、どんな進展なのかわかりませんし、それから外務省としてはこの解決に一体どういうふうに積極的にこれから入っていこうとするのか、その辺重ねてお聞きをしておきたいと思うんです。そうでなけりゃ、世間ではもうほとんど日昇丸事件なんというのは忘れかけている。最近は余り新聞にも出てまいりませんし、一体どこで何をやっているのかさっぱりわからなくなる。これが出たときには、えらいこれ責任問題等もこの委員会でも議論になりました。しかし、最近はもう世の中から忘れ去られようとしているんじゃないかというように私思うんですが、きわめてこれ重大な事件なんで、重ねて見解を聞いておきたい。
  88. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 最終報告については先ほど申し上げましたような状況でございますが、私たちも折に触れて同じような認識で、できるだけ早く出してほしいということをアメリカ側に言っておりますし、在京のアメリカ大使館も、日本側指摘を待つまでもなく、中間報告についてあれだけの早さで出したので、やはり最終報告についても、ただ日を待つのでなくて、できるだけ早く出すことによって中間報告を出したということの最後の仕上げをしたいと、こういうことでございますので、われわれとしては折に触れてアメリカ側に督促をしているという状況でございます。  それから、補償の問題については、先ほど申し上げましたように、これは当事者間の話でございますので、私たちが、現在のところどの程度進展をしているかと、あるいは進展をしていた場合にも、どの程度の金額かということまで首を突っ込むということはいかがかと思われます。ただし、状況に応じて弁護士の方とも連絡し、あるいはアメリカ側とも連絡し、早期の補償解決、これは総理も非常にその点については私たちにも指示をされておりますので、われわれの許される限りでこの補償問題について進展があるように期待しておるわけでございますが、もう一言つけ加えるならば、あくまでもやはり当事者間の話し合いが早急にまとまるというのをいま期待しているところでございます。
  89. 山崎昇

    ○山崎昇君 それから、もう一つ問題になっております日米合同演習によるはえなわ切断事件、これも一体現状はいまどうで、どういうふうにあなた方はこの解決に向かって努力をされているのか。もちろん、これは水産庁もかかわるでしょうし、関連する省庁もあると思うんですが、しかし外務省としては外交問題絡むでしょうから、いまあなたに代表してお聞きしているわけですが、この漁業補償の問題等についても現状をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  90. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) いまの山崎委員指摘のとおり、まさにこれは水産庁あるいは他の省庁全部関係している問題でございまして、内閣の方で取りまとめをしているという状況でございます。問題は、どこの漁船がどこの船によって網を切られたかという具体的な証拠の提示がないとなかなか補償ができないということでございまして、関係の省庁の会議において相当な進捗が見られて、ある程度の資料作成もできているということでございますので、われわれはその資料作成を受けてこれから話を進めていくわけでございますが、二つございまして、対アメリカ、対ソ連ということで、私の主管のアメリカとの関係を申し上げれば、これも日昇丸の事件と同じように、すでに確立された経路がございまして、漁船の方々を代表する弁護士の方とアメリカの海軍との間の話し合いと、こういうことになるかと思います。ただ、日昇丸と違いまして、今回の場合は幾つかの船が関連しておりますし、なかなか日昇丸のように一本にまとめるということはむずかしいこともあるかと思いまして、その限りでわれわれとしてはアメリカ側との話し合いで助言をする度合いというものも大きくなっていくんじゃないか。それでございますので、資料が整い次第、当事者間の話しを促進するように協力していきたいというふうに考えております。
  91. 山崎昇

    ○山崎昇君 本来なら、官房長官でもおいで願って、政府としての対策をお聞きするのが筋道なんですが、きょうそういう時間ありませんでしたので呼ばないでいるわけですが、いずれにいたしましてもこういうこの種の問題というのは、もちろんむずかしさありますけれども、時間がたてばたつほどなかなか逆にまた解決しにくくなってくる、そういう点もありまして、外務省が直接の所管ではないかもしれませんけれども、十分ひとつ、これは外交問題絡みますから、配慮を願っておきたいと思います。  それから、もう一つ外務省にお聞きをしておきますが、最近貝殻島のコンブ漁の問題で、実はこれは私も一部関与をしておりました。それは、去年訪ソして、北海道水産会の代表との交渉をやるというところまで私ども話つけたつもりであります。それ以来交渉しているわけなんですが、いまどういう現状にあるのか。それから外務省が、北海道水産会とソ連との間でいろいろ話している内容についていろいろあなた方が意見出されておるらしいんですが、どういう点がどうで、水産会との間はどういうふうになっているのか、現状についてひとつ説明願っておきたい。
  92. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 貝殻島のコンブにつきましては、経緯は御承知のとおりでございまして、かつては大日本水産会と、ソ連は当時まだ漁業省というものがございませんで、漁業省の前身でございました国民経済会議附属漁業国家委員会と両者の間で民間協定が締結されまして、十三年間はそのような取り決めのもとに無事コンブ漁が行われていたわけでございますが、一九七七年にこの民間協定が中断してしまいまして、これは二百海里の問題が起こったということも関係したわけでございますが、翌一九七八年から、今度は北海道水産会を代表といたしまして、ソ連の漁業省と交渉が続けられているわけでございます。  基本的な問題点は、これはもう先生よく御承知のとおりでございまして、この七八年以来の交渉におきましては、ソ連側が従来の大日本水産会時代の取り決めの内容に変更を加えまして、領土問題に関連するような本質的な変更を加えたいということ、そのために交渉が進展を見ないまま現在に至っているということでございます。最近、また北海道水産会の方から六月及び七月、二回にわたり訪ソされまして、ソ連側と交渉をされ、案文の面につきまして若干の進展は見ているわけでございますけれども、先ほど申し上げました基本的な問題、つまり北方領土問題にかかわるような、何と申しましょうか、貝殻島におけるソ連の領土主権にかかわるそのような表現につきましてまだ最終的な決着を見ていないというのが現状でございます。  外務省といたしましては、これはもちろん当事者は北海道水産会でございますけれども、側面からできるだけ御協力したいということで、案文につきましていろいろ御相談に応じたりいろいろ資料を出したりしながら現在に至っているわけでございます。その詳しい内容につきましては、まだ交渉が進捗中でございますので、申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、ポイントは先ほども申し上げましたとおりでございまして、貝殻島に関するソ連の領土主権というものが表に出てくるような条文であってはぐあいが悪い、それをどのようにして回避できるかというところに苦労のしどころがあるわけでございます。  それで、そういうことで北海道水産会と十分お打ち合わせをしているところでございまして、また再度モスコーに代表の方がおいでになりまして交渉を継続するという御方針のように承っておりますけれども、今後ともそういうことで、外務省といたしましては、そのようなたてまえを崩さない限りにおきましてできるだけの知恵を出すということで御協力をしたいと考えているのが現状でございます。
  93. 山崎昇

    ○山崎昇君 それで、外務省としてはどういう見通しを持っていますか、それについて。
  94. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) これは要するにソ連の出方次第ということになるわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、かつての大日本水産会時代の協定がだめになりまして新しい交渉をやっておる。それが、ソ連側がこの機会に領土権に対するソ連側の主張を一歩前進させたいというそういう基本的な考えがあるのであれば、これはなかなかむずかしいのではなかろうかというのが率直な感じでございます。その辺のところをソ連側が理解をいたしまして、ともかく現地の零細漁民のことを思いまして、何とかその辺のところをお互いに工夫をして、コンブ漁を可能にすることについてソ連が本当に協力的であるのであれば打開の道はあるのではなかろうかという印象を持っております。
  95. 山崎昇

    ○山崎昇君 私どもの気持ちで言えば、民間団体が必死でやってくる。持ってきたものをあなた方は、これはだめ、あればだめと物を言っているだけで、外務省として貝殻島のコンブ漁について積極的に動いたなんということは私は余り聞かない。どうも私は日本の外交姿勢というものは、何かしらん待っているというんですか、何か来ればそれはだめです、ここもだめですと言うだけの話で、あなた方が積極的になって解決するなんということをほとんど私どもは見れないですね、正直に言って。この点は見方の相違かもしれませんが、私もここ四年ばかりこの問題にかかわった一人として言えばそういう気持ちが強いです。ですから、もう少し外務省も積極的にやっぱり動いてもらいまして、これらの問題を解決してもらいたいということだけ申し上げておきます。外務省結構です。  そこで、もう余り時間なくなりましたから、防衛庁に二、三お尋ねいたします。本来なら日米問題から始まっていろんなことをお聞きしたいと思っている気持ちもありますが、きょうは時間ありませんから、二、三の具体的な問題にしぼってお聞きをしておきたいと思います。  まず第一点は、先般衆議院の安保特で防衛庁から米ソの軍事情勢についての発表があったとぼくらは聞いておるわけなんですが、その記事を読めばいいんですけれども委員会でありますから、当委員会でも改めて説明をまず願いたいと思います。
  96. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 先般、衆議院安全保障特別委員会におきまして申し上げました数字は、昨年の防衛白書作成以来一年間の推移を振り返ってみまして、そろそろ新しい防衛白書もつくらなければいけないということで、現時点におきます極東ソ連軍の数字をまとめたものでございます。それについて御説明申し上げます。  地上兵力について申し上げますと、中ソ国境全域では昨年は四十六個師団、四十五万人と考えておりましたけれども、本年は五十一個師団、四十六万人と推定しております。このうち、いわゆる極東地域では、昨年は三十四個師団、三十五万人と言っておりましたけれども、本年は三十九個師団、三十六万人と考えております。師団数の増加の割りに人数の増加が少ないと申しますのは、これは充足率の低い種類の師団がふえているということでございまして、これは有事の際には急送に充足率を上げられる性質のものでございます。それから、増加した場所は、これはいわゆる極東と申しますのはザバイカル軍管区以東でございますけれども、もっとはっきり申しますと、極東軍管区とモンゴルの二軍管区に集中しております。その目的は、中国と同時に太平洋方面をもにらんだというふうに解しております。  それから、極東におきます航空兵力につきましては、昨年は二千六十機と考えておりましたけれども、本年は二千二百十機と推定しております。この増加は、すべて戦闘機及び戦闘爆撃機の増加でございます。空軍の増強につきましては数の増加よりもむしろ質的向上が重要でございまして、ミグ23、ミグ27、SU24などの新しい戦闘機、戦闘爆撃機が半数以上を占めるに至っております。これ先般のアメリカ側説明でも、これらの新型航空機の増加は昨年一年間でアメリカの全太平洋空軍の機数以上であるというふうに説明しております。このほか新型爆撃機バックファイアが、これはもともと大陸内部のソ連空軍にいたんでございますけれども、沿海地方の海軍航空部隊に配備されました。その数は作戦可能な機数であるというふうに推定しております。  それから海上兵力につきましては、昨年はソ連太平洋艦隊七百八十五隻、百五十二万トンと推定しておりましたけれども、本年は約八百隻、百五十八万トンというふうに考えております。  それから核ミサイルにつきましても、全ソ連戦略ミサイルの約三〇%に当たります各種の核戦力が極東に配備されておりまして、さらにSS20の配備も数十基に達していると、かように考えております。
  97. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで、あなたにお聞きをしますが、いま主としてソ連軍事力について説明あったんですが、こういう発表をするというその根拠といいますか資料といいますか、それを判断された基礎になったものは何なのか、それをひとつ明らかにしてほしい。
  98. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) これは一般的に申しまして、防衛庁は情報を判断するに際しましては、種種の情報資料を総合的に見て判断しております。非常に詳しくという御質問でございますれば、これは防衛庁自身も独自の情報源を持っておりまして、たとえば海軍の艦艇の数などはこれは伝統的にきわめて緻密な観測をしておりまして、その結果につきましてはもちろん同盟国と終始すり合わせを行いまして、お互いに疑問点があればお互いにその説明を求める、あるいは資料を求める、あるいは証拠を求めるという形でもってお互いの資料をより正確なものにするように努めております。
  99. 山崎昇

    ○山崎昇君 いまあなたの説明あった、たとえば去年の防衛白書の場合の数字なんか私どもよくわかりませんが、手元にある資料で言えば「ミリタリー・バランス」等がほとんど載せているものですよね。ですから私の方から具体的にお聞きしますが、それが基礎でその上に、たとえばアメリカとあなたの方とすり合わせてそれに防衛庁の独自の情報を交えて発表と、こうなるんですか。
  100. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) いま仰せのとおりの手続を踏んだ場合もまたございますし、また「ミリタリー・バランス」というものも、各国から情報を求めまして、それを総合的に判断いたしまして、これを自分の持っている情報とまたすり合わせましてつくる。結局自由諸国内の各政府、各研究所というのはお互いに緊密に連絡し合ってどうにかしてバランスのとれた数字を出そうというふうに努めているところでございまして、自然に数字が似通ってくるのは当然のことでございます。
  101. 山崎昇

    ○山崎昇君 私がいまこういうことをお聞きしているのは、あなたが「VOICE」のことしの七月号「米・ソ危機の構造」という中でいろいろ書かれているわけなんですが、その中で私はやっぱり注目しておりますのは、それぞれ資料を勝手に都合のいい部分だけとってきて、これで議論されるのは迷惑だ。客観的に事実に基づいて議論してもらわなければ困る。特にあなたの言葉そのままで言えば「「ソ連脅威の過大評価だ」、「そんな見方は甘い」、という相互非難が相譲らないまま平行線を辿るというような状態は、くだらないとしか言いようがない。」と、こうなる。そうすると、たとえばこの委員会で私どもは私どもなりの資料議論をすると、あなた方の意見と合わなければあなたの方はくだらぬという解釈をとるかもしれない。これではいけませんからね。あなたがいま公の席上で発表になったわけだから、それはこういう基礎ですということをやっぱり国会に明確にすべきじゃないですか。そうでなければ一あなたのこの文章どおりくだらないのかもしれませんよ。  どういう意味でこういうことを書いているのかよく私はわかりませんけれども、やっぱり基礎をもう少し明快に、たとえば「ミリタリー・バランス」なら「ミリタリー・バランス」こうでありました、アメリカとのすり合わせでこうでありました、防衛庁のとっている情報ではこうでありました、三つ足したらこうなりました。正確にやっぱりこの委員会で言ってください。そうでないと、私どもこれからこれだけ重要な軍事力の問題について議論することはなかなか困難になってきますよ。あなたの方だけは専門で、われわれ素人みたいな扱いにされたんじゃたまりませんので、特にその根拠というのを明確にしてください。
  102. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 御引用いただいた部分はごく一部分でございますけれども、これは別に「ミリタリー・バランス」からとって、アメリカの公表からとってそれを足し合わせたということでございませんで、われわれ自身としましては、これは公表できないいろいろな資料も全部検討いたしまして、このあたりが公正妥当なところであろうというふうに考えております。実は公表できないということには種々な理由ございますけれども、非常に機微な情報と申しますのは、情報源を公表いたしますとそれから後は情報源がとだえる、かえって情報をお知らせする方法がなくなってしまうと、そういう場合がございますので、情報源そのものはこれはなかなか公表できないんでございます。  そこで、そこにも申し上げましたけれども、結局これはわれわれもう終始努めておりますのは、現在われわれ情報源を申し上げないで発表するわけでございますけれども、それが長い目で見たら、たとえば一年、二年たってこれは過大評価であったとか、あのとき大げさなことを言ったとか、そういうような非難をこうむらないようなきわめて慎重な配慮を持ってやっていると、それ以外申し上げられないんで、そうしますと、結局情報の独占ということになるんでございますけれども、これは過去十年ぐらいのわれわれの数字でも、これは人間でございますから細かい間違いがあることはございますけれども、結局皆様をミスガイドしたとか、あるいは過大の評価をしたとか、そういうことはないように慎重に努めておりまして、結果としてもそういうことがなかったというように考えております。この点はちょっと御信頼いただく以外方法ないと思います。
  103. 山崎昇

    ○山崎昇君 それなら、あなたの方はいろんな情報を持って、発表できないようなものを持って述べているかもしれない。われわれはそれわからぬわけですね。そうすると、われわれのそのときの判断で物を言うと、あなたのこの文章からいくと、それはくだらぬことなんだと、何年か先になったらおれらの言うことほら証明されたでしょう。しかし、そのときはそうなりませんね。もしそういうことだとすれば、あなた方の態度は私は思い上がっていると思うんだ。もう少し謙虚にそのときの情勢であなた方は物を聞くべきじゃないでしょうか。そういう意味で、私はこの一文を読んできわめて遺憾だという気持ちを持っているんです。そして去年の数字を見るというと、「ミリタリー・バランス」とか「ジェーン年鑑」とか、あなたの載せております数字もほとんどそうです。多少ことしはいま説明ありましたように、たとえば日本周辺の戦力で極東ソ連、昨年は二千六十機が二千二百十機になっている。そういう数字はいまあなたから出た。じゃ、この二千二百十機というのはどこから出てきたのか、何を根拠にしてこういう機数になったのか、われわれにはわかりませんね。しかしあなたは、それは言えない情報源もあるからもう少したったらそれはそのとおりになるでしょうと、こう言う。そうかもしれませんね。そうかもしれませんが、そのときはやっぱり謙虚にもっと聞く態度だけはあなたに申し上げておきたいと思うんです。  それからあわせまして、何かあなたのこの——あなた国際担当だというんだから続けて聞くんですけど、あなたの持論がアングロ・サクソン論とかというんだそうだね。これはどういうものか私わかりませんが、防衛庁の中枢におる者が書いているわけですから、現役の人が。これはどういうものか、ごく簡単でいいですけれども、ちょっと説明してくれませんか。
  104. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 委員長、よろしゅうございますか、現在の私の職掌外でございますけれども
  105. 山崎昇

    ○山崎昇君 職掌外って、あなたが「私は、ここでは、政策論として国家戦略にも、持論であるアングロ・サクソン論にもふれる余裕はないと思う。」と言うんだ。あなたの持論というのはアングロ・サクソン論だと言うんだ。それが国家戦略にも政策論でも反映さしたいとあなた書いているんでしょう。私どもにはわかりませんわな。しかし、もう余り時間もありませんから、ごく簡単にどういうことか、あなたは参事官なんだから、そしてこういうものを発表しているわけだから、どういうことを考えているのか簡単に説明してくださいよ。
  106. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) それでは、私見で申しわけございませんけれども委員長の御許可を得て申し上げますと、実はほかのいろいろな資料に書きましたものを出版部の方からむしろそれを中心に書いてくれと話がございまして、いや、とてもそんなものを書く暇がないということで、外部の方にはわかりにくい表現になっておりますけれども、結局これ私が各所で、別なところで書きましたことは、歴史的に見て明治以来日本の外交というものはこれはアングロ・サクソンと。アングロ・サクソン勢力、これはかつてはイギリス、日英同盟のころはイギリス、現在はアメリカでございますけれども、それとロシアの力との板ばさみになっていると。それで日英同盟のころあるいは戦後日米安保条約のころ、この時代におきましては、日本は平和とそれから繁栄を維持し得た、そういう意味でございます。国内の平和と繁栄を維持していると、そういう意味でございます。
  107. 山崎昇

    ○山崎昇君 それがあなたの持論でアングロ・サクソン論ですか。よくわかりませんがね。これはいずれもう少し中身をお尋ねいたします。あなたの論から言ったら、一体第二次大戦なんというのは何であったのか。そういうものにもかかわってきますから、改めてこれは聞きます。  それから次に、長官にお聞きしておきますが、これは先般私が北海道の視察に行ったときにも、千歳の第二航空団でもちょっとお聞きをいたしました。重ねて公式の場でお聞きをしておきたいと思うんですが、七月六日の晩八時から「NHK特集」でミグ25事件に関連して自衛隊出動という番組が報道されました。これは再放送もありましたから私も二回見たわけでありますが、多くの問題点を含んでおりますが、私は二つお聞きをしておきたいと思う。  誤った情報で動くということぐらい結果は重大なものを招くということはないんじゃないかと思うのは、一つは情報の管理という、あるいは伝達というのはどういうふうに防衛庁内部でやられているのか。それはどういう意味かというと、あのときにも丸山防衛事務次官等が出ていろいろしゃべっておりましたけれども、現地は、ミグ25をソ連が奪回にやってくると、そういう意味で陸上自衛隊が出動したんですね。これが問題なんですが、そういう情報があったというんです。師団長は異常な決意で、これは第七師団でありますが、出て行ったわけです。そうすると、中央ではそんな状態にはない、こういう丸山さんの意見でもありました。一体、この情報というのはどこで集約して、どういう形で第一線に伝達をされて部隊が動いていくのか。そういう意味で、私は情報の管理という意味で一点お聞きしておきたい。  それから、第七師団が出て行ったわけでありますが、これ武器携行して出て行ったわけです。これは異常な決意だったそうでありますけれども、出て行った。ただ、これは武器を持って行っただけで、ミグ25そのものは亡命事件でありましたから大事に至りませんでしたけれども、もしそうでなければ、これは第一線の判断で私は武器の使用まであるいはいったのではないかと、これは推定になります。これは大変重要な私は問題を含んでいるんじゃないかと思ってあれ見ておったんですが、防衛庁としての見解をこの機会でありますから聞いておきたいと思うんです。  ただ、私は第二航空団の幹部の方に聞きましたら、あのNHKの報道はかなりうそも多いというんですね、率直に言って。私ども取材されたのとずいぶん違ったやり方ですということを私どもに言っておりました。どういう点が違うのかよくわかりませんけれども、いまの二点についてひとつ長官お答え願いたい。
  108. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま山崎先生から情報の管理についてミグ25事件に関連してお尋ねございましたので、私からまとめてお答え申し上げます。なお、事実関係の点につきましては防衛局長から補足説明させていただきたいと思います。  当時の防衛庁における情報連絡体制については、ミグ25型機の函館着陸当日に長官への報告に時間を要するなど、問題点が見受けられたことも事実でございます。このため、当該事件を契機として情報連絡及び指揮の体制の一層の充実強化の必要性を痛感し、まず全庁的に対処すべき非常事態に際し庁内において情報を一元的に入手、整理、配付するための情報連絡室の制度を設置、これは五十二年五月二十八日の次官通達です。さらに行動時等における長官の指揮を迅速的確に行うための中央指揮所の整備を進めることといたしております。  事実関係につきましては防衛局長説明いたさせます。
  109. 塩田章

    説明員塩田章君) 補足させていただきます。  第一点の情報、特に誤情報等につきましてどういう管理をしているのかということでございますが、まず一般的に申し上げますと、平素では防衛庁の中に内局には調査関係の課がございます。統幕にも情報関係の室がございます。それから陸海空各幕に調査関係の部課がございまして、それぞれがそれぞれの各部隊、各情報機関から情報を得まして、それを持ち寄りまして内局の方で取りまとめまして取捨選択といいますか、情報調整をやりまして毎週大臣のところに報告すると、もちろん全部じゃございませんけれども、主要なものを報告する、こういうのが平素の体制でございます。いまのような、ミグのような事件がございました関係から、いま大臣が申されましたように、非常事態の場合の体制としまして情報連絡室というものをさらに設けていこうということで、制度的には五十二年から情報連絡室というものを考えております。これはもちろん平素常置しておるわけではございません。そういうやり方を現在しておるわけでございます。  それから、武器携行の第二点の問題でございますけれども先生第七師団とおっしゃったのは私は第十一師団ではないかと思うんですけれども、それはともかくとしまして、当時十一師団の、特に函館の二十八連隊等が待機の姿勢に入ったことは事実でございます。ただ、このことが武器の使用について第一線の指揮官の判断にゆだねられて重大な結果を招くのではないかというような御心配の御指摘でございますけれども、これは平素から武器の使用につきましての規定が現在あるわけでございまして、それは十分当時におきましても各部隊の指揮官、それも承知した上での行動でございまして、その点につきまして私ども結果的にももちろん何もなかったわけですけれども、もし何かあったとしましても、その規定に反するような使用を考えておったわけではないというふうに私どもは考えておるわけであります。
  110. 山崎昇

    ○山崎昇君 師団名をちょっと間違えまして恐縮しました。  しかし、私はあれを見ておりまして、中央におられる方々はそんな情報はなかったと言う。しかし、第一線の師団長はそういう後で誤った情報だと言うんだが、に基づいて部隊を出動さしている。異常な決意で師団長は出したと言うんです。私はあれを見ておって、かつて栗栖さんが言いましたように、超法規的な動きというのはああいうことかなという実は心配等もしましていまあなたに聞いているわけです。しかし、いずれにいたしましても正確な情報で、正確な指令で第一線が動きませんと、これはやっぱり異常な事態になった場合には、特に私は後で取り返しのつかない問題が起きてくるんじゃないだろうかと思いますね。そういう意味でいま情報管理のシステムだけは聞きましたけれども、ただ制度だけあってもきちっとした運営がなければ意味がないわけでありますから、この点はあのテレビを見ながらどうも私はまだ釈然としないものがありますけれども、二つの点にしぼっていまお聞きしているわけなんで、厳重に私は注意を願っておきたいというふうに思います。  もう時間がなくなりましたから、最後に一点だけお尋ねをいたしておきますが、実は帯広の第五師団にこの間視察に行きました。そして、隊員の状況が師団長から報告があって、隊員の充足率が七四%というんですね。私はいいか悪いかは抜きにしまして、最近対ソ脅威論が横行して、あしたにでも北海道へソ連軍が上陸するんじゃないか、たとえば去年の三月の予算委員会では、与党の玉置委員からあの名寄、それから音威子府の地図まで持ち出してあたかもあそこに上陸するような質問戦が展開されました。そういうのが私も当時予算委員でありましたから見ておりまして、それで今度帯広へ行って聞いたら、意外と充足率が少ない、欠員が物すごく多い。一番肝心であります陸上自衛隊が、私はその機能がある意味では減殺されているんじゃないかと思うんですね、そういう事態になったと仮定するならば。そして師団長に  一体——こういうやり方は師団長の責任ではありませんけれども、海原さんの論でいけば、防衛力というのは人員と弾丸の相乗積だと言うんですね。その人員がまともでなければ私は致命的な欠陥ではないかと思うんですね、陸上自衛隊という側から見れば。  そこで、師団長にどうされるんですかと聞いたら、いや私どもは何ともできません、ただ北部方面総監から欠員の補充はもらえばもらっただけでやるんですという話でした。それから予備自衛官の問題を聞いても、師団長は何もわかりません、それは上の方でやっているんですと、こういう話ですね。だから、私はなるほど与えられた情勢で、与えられた力でやるのが師団長の任務かもしれませんが、しかし師団長クラスになれば——私は軍政、軍令という言葉は余り好きではありませんけれども、両方にある程度の知識を持っておって、そういう判断をしながら第一線の部隊を動かすというのが師団長の任務じゃないかと思うんだけれども、あの答弁を聞いておりましてどうも意外な感じを私は受けているわけです。  そういう意味では、一体この陸上自衛隊の欠員補充という問題をどういうふうに考えられるのか。言葉の上では北海道危ない北海道危ない、いまにでもソ連が上陸するような宣伝をわんわんわんわんなされる。そしてアメリカへ行っても、日本も、ソ連軍事力がふえました、危ないです、こういうことばかり言っている。現実にぼくらが自衛隊に行ってみるというと、足元の整備なんていうのは欠陥だらけである。これは私は視察に行ってみまして、実際何となしに腑に落ちないようなものを受けるんですがね。私は増強せよという意味で言っているわけじゃありませんが、少なくともあなた方がいまやっていることにかなり私はちぐはぐな点があるんじゃないか、こう思うんです。そういう意味で、もう時間来ましたが、この陸上自衛隊の欠員の補充といいますか、こういう問題について一体防衛庁長官はどういう判断をされているのか、お聞きをしておきたい。
  111. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま第五師団の実例を引かれて人員補充についてお話があったわけでございますが、充足率が低いということにつきましては私も非常に心配をしている次第でございます。第五師団の充足率がいま七〇%台ということでございましたが、現状においてはやむを得ないものと考えられますが、有事即応という点から見ますると、決して十分なものとは考えられないわけでございます。防衛庁といたしましては、今後とも部隊の精強性、即応性等の観点からは充足率の向上に努力していく必要があると考えているわけでございます。  また、海原さんのお名前を引かれて引用されました弾薬の備蓄の点につきましてもきわめて不十分な点がございまして、この点はここ二、三年来向上に努めておるわけでございますが、引き続き向上を図らなければならないと考えているわけでございます。  また、予備自衛官の点について現地の師団長が直接答えられなかったというお話でございますが、恐らくこれは地連で所管いたしておりますので具体的な点をお答えしなかったのではないかと思うわけでありますが、一線を預かる者としてはその辺もひとつ念頭に置いてお答えしていただきたい、これは私の希望でございますが、感じがいたしたわけでございます。  以上、感想で恐縮でございますが、御指摘の点につきましての私の考え方を申し上げた次第でございます。
  112. 山崎昇

    ○山崎昇君 時間が来ましたからやめますが、私は何も自衛隊を増強するという意味で言っているわけじゃありませんが、ただ現実に行ってみて、あなた方が対ソ脅威論を述べるわりあいには肝心な足元は欠陥だらけじゃないだろうかという気持ちがありましていま述べているのであって、間違いないようにしてもらいたい、そのことだけ述べておきます。
  113. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 与えられた時間が三十分だけでございますから、率直に私は個々の問題につきまして御質問します。お答えの方もそのように簡明にしていただきたい、こう思います。  まず第一でございますが、それは野田議員も御質問になりました現在の情勢認識に関連をした問題であります。  ことしの五月以来の総理以下各段階における数次の日米会談を通じて、現情勢に対する認識についてはいろいろな経緯ございましたけれども、最終的には一致しているんだと、このように政府では申されております。そこで、具体的に次の点について承りたい、こういうことでございます。  その一つは、日本に予想される武力侵略の態様についての認識であります。すなわち、従来は日本に対する侵略は限定的な侵略、これに関連するものと受けとめられてきたと、このように私は理解をしております。しかし、中東地区を発端とするところの世界戦争に連動をする侵略の可能性というものも十分に考えなければならない、こういうような認識、これはもう間違いない。  次は、その戦争の期間の問題であります。これについての認識は従来と変わってくるのか、変わってきたのか。変わったとするならばどのように変わったのか。まずこの武力侵略の態様について承りたい、こう思います。
  114. 塩田章

    説明員塩田章君) 第一点は、日本に対する武力侵略の様相をどう見ておるかということでございますが、いまお話のございましたように、全くこれはいろんな想定が考えられますので、一義的にこういう様相であろうというふうに考えることは大変むずかしい一むずかしいというか、そういうことを逆にすべきではないとさえ思うわけでございます。最近、特にアメリカの方からグローバルな戦略観点から云々ということで、日本についても日本に対する限定小規模ということでなくて、よその地区からの連動する侵略ということの可能性があるのではないかという御指摘がいま含まれておったわけでございますが、もちろんそういうこともあるかもしれません。しかし、いずれにしても私ども日本に対する侵略の様相がどういう様相であろうというふうに具体的に限定して申し上げることはむずかしいというふうに考えております。  それから、戦争の期間について何か考え方が変わったのかということでございますが、これは、まずハワイにおきますアメリカとの会談におきましては、アメリカ側が言っておりましたことの中に、戦争を必ずしも短期戦としてのみ考えることは危険である、やはり通常兵器による長期戦ということも考えておかなければいけないという意味のことをアメリカ側が言っておりました。それでは具体的に何日間を見るのかということになりますと、それは何日というような話があったわけではございませんが、単に従前のように短期間戦争のみを考えることは危険であるということを言っておりました。私どももその点では同感であります。
  115. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いまの問題につきましても、私自身はもっとはっきりしたいと思いますけれども、聞きたいことはたくさんありますからそのくらいにしておきましょう。  次は、もう一つ現状認識について承りますが、防衛体制を整備をする時期的な目標ですね、これについての認識の問題なんです。  先ほど冒頭に、長官が御訪米の全般的な所見として、防衛努力をできるだけ多く、できるだけ早く行うことだと、こう言われました。私はそういう抽象的なことで防衛力の整備なんてやれる問題じゃないと、こう思います。いまの六十二年までに中業計画を達成をするということになりますと、まさに一九八〇年代の末にならなければ、そのとき発注した防衛力というものは実際に実力にならないわけですね。こう考えてみますと、現在置かれている情勢から見ると、本当にもっと早くある程度の体制を整えなければいけない。当然この情勢ではそういう時期的目標というものをはっきりさせなければならないんじゃないかと、こう思うわけなんです。したがって、具体的に現情勢下何年ぐらいでどの程度の防衛体制を整える必要があるというふうに認識されたのか。そう言ってみても、政府は六十二年にいまの水準を達成するという以外に言わないかもしれませんけれども、感じとしてどう受けとめてこられたのか、その辺をひとつ承りたいと思います。
  116. 塩田章

    説明員塩田章君) どういうふうに受けとめてきたのかということでございますから、恐らくアメリカとの話の中でどういうふうに受けとめてきたかというお尋ねかと思いますが、アメリカ側も具体的に何年までにどうしろということではございませんでした。ただ、早く早くということは盛んに言っておりました。わが方もいまお話しのように抽象的なことしか従来言っておりませんが、いまここで具体的に率直にいまの防衛庁見解を示せということでございますれば、それはかねてお答えしておりますように、また、いまの先生のお話の中にもありましたように、ことしの四月の国防会議で決めていただいたいまの五六中業の作業を来年にかけてやっておるわけでございますが、その中で、五六中業で防衛計画大綱の線に達することを基本として作業をしておるということを申し上げるだけでございます。  したがいまして、いまお話のありましたように、六十二年に調達ベースで防衛計画大綱の線になるべく達するようにしたいという観点で作業をしておる、こういうことでございます。
  117. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 すでに参事官会議等で来年度の概算要求の主要事項についてはいろいろと検討をされておる段階だと思います。あるいはもう主要なものは一応終わったんじゃないかと思いますけれども、そこで当面五十七年度の概算要求の問題につきましてお伺いしてみようと思います。  その第一は、すでにシーリングが七・五%、金額にして千八百二億というのが決まっておりますね。この中には、当然すでに契約をしたものの歳出可能予算も含まれる、あるいは人件費が含まれる、いろいろなものが含まれるわけです。そうなりますと、具体的に新しく事業ができる、事業に充当できる金額というのは幾らぐらいなのか、ひとつ。
  118. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) 五十七年度の概算要求につきましては、防衛計画大綱に定めます防衛力の水準をできるだけ速やかに達成するということのために、主要装備の早期整備を図ることを基本にいたしまして取りまとめていく方針をとっておるわけでございますが、ただいま御指摘にありました七・五%増、千八百二億円増の枠内におきましてどういった新規施策を取り込むことができるかということは、まだ現在部内で鋭意検討を詰めておる段階でございまして、現在の時点でございますと、どの程度新規施策に充当可能であるかということを具体的にはちょっと申し上げることが困難な状況でございます。今後さらに検討を進めていきたい、こう考えているわけでございます。
  119. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いまの段階じゃなかなか言いにくいことだと思いますが、私の試算では、どんなに大きく見積もってみても二百五十億を超えることはないんじゃないかなと、こう思うんですが、いかがですか。
  120. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) ただいま申し上げましたように、繰り返すようですが、現在なお諸般の調整作業を進めておる段階でございまして、明確な金額でお答え申しかねるという点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  121. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私があえてそういうことを言いますのは、やはりこの共同声明以降の一連の日米会談を受けた後の、しかも現在の情勢下における来年度予算でございまして、その中にはやはりいろんな重要な問題を含めなきゃならないと。それを含める上において、当然その大枠というものが一つの規制要素になってくるんだ、こう実は思っておりまして、後の質問とも当然関連をしてくるわけでして申し上げたわけです。いまの段階、数字は言っていただけないというならば、もうこれ以上追及するのはやめますが……。  そこで、来年度要求の重点事項というのは、これは長官のことしの春の業務計画の指針によってはっきりされておるわけですね。ところがそれだけではない。野田議員にも先ほど防衛局長から回答された四項目の米側の提言、あるいは長官が御説明になったところの在日米軍基地の負担増の問題、こういうものも当然重点項目として、この新規事業充当が可能な金額、これによって計画をされるんだろう、こう思うんですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  122. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま明年度の概算要求の重点は何かというお尋ねがございましたが、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたとおり、私といたしましては、現下の厳しい国際情勢にかんがみまして、防衛計画に定める防衛力の水準をなるべく速やかに達成することを念頭に置いて概算要求をまとめたいと考えております。このため、航空機、艦艇、陸上装備等の主要装備の早期整備を中心に、いま御指摘のありました即応性、継戦能力、抗堪性、そういった面における現状の不備の是正にも配慮して、質の高い防衛力の整備を図っていくためにこの枠を活用してまいりたい、そういうことでいま作業を進めているところでございます。
  123. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 先ほど山崎議員からその充足率の問題が出ました。さらに先ほどは防衛局長から、米側が提言した四項目、その中で即応態勢の強化という問題が第一に提示をされたと、このように承りました。しかし、いま長官が申された中には即応態勢の即の字も申しておられないような気がしました。私の聞き落としですか。
  124. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ありました。
  125. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 ああ、そうですか。それは失礼しました。それなら結構なんです。  それでは、大体やはり現情勢に対する認識一致している。したがって、アメリカが提言したいろんな項目、この重要性についても認識をしておる、こういうことだろうと思いますね、いまの長官の御返事は。そうなりますと、まず第一に即応態勢の強化のために最も防衛庁がいま重視しなければならないと、こう思っておられる事項というのは何か、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  126. 塩田章

    説明員塩田章君) 即応態勢の強化ということでアメリカも言っておりましたが、二つに分かれるだろうと、一つは人の面であり、一つは装備の面ということであります。  装備の面につきましては、長官指示にもいろいろ書いてございますが、長官指示には比較的具体的な細かい項目で書いてございますので、即応態勢という形でまとめて書いてございませんけれども、それを拾っていただきますと、たとえば従前からやっておりますE2Cの導入でありますとか、公用マイクロ回線の整備でありますとか、中央指揮所の整備でありますとか、魚雷、機雷の管理、運用態勢、あるいはミサイルの搭載といったような措置というのはいずれも即応態勢の強化として今後ともやっていくという装備面での事項であります。  一方、もう一つの要素は人の面であります。人の面で充足が非常に欠けておるというようなことについても、アメリカ側からも指摘もありましたし、また指摘をされるまでもなく、われわれもそれは感じておるところでございまして、その二つの面——装備の面、人の面、両方の面からできる限りの努力をしていきたいというふうに考えております。
  127. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いま御説明がありました人と物の面からの即応態勢の強化、これはもうもっともだと思います。  それで、いままで私は何度も他の委員会でも特に陸の人の充足の問題、きょうは本当に初めて山崎先生が同じような観点から、増強をやれという意味じゃないと言われるけれども、はっきり現場を見て言われたわけですね。ひとつ長官、行政整理とか言っていますけれども、そういうことと国会が認めた編成定数を充足すること、そんなのはもう全然別個の問題じゃないですか。ひとつ、今後もいろんな問題あると思いますけれども、やはり何といっても充足率の向上は、私は、いろんなもの大事ですけれども、最大喫緊じゃないかと思いますね。その点ひとつ長官、もう一度この問題について御見解を承りたいと思います。
  128. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま明年度の概算要求に関連いたしまして、即応性の問題について防衛局長から人的面と物的面があるということをお答えいたした次第でございます。  人的面におきましては、何と申しましても充足率が著しく低いと、これが法律として認められておる定員に対して予算上低く抑えられているという点が何といっても隘路になっておるわけでございます。明年度の予算編成は、行革という厳しいただ中で行われる予算編成ではございますが、私は、防衛庁関係予算の全体についてできる限り効率化、合理化を図りながら、この充足率の問題につきましても改善が図られるように努力してまいりたい、さように考えている次第でございます。
  129. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 この即応態勢をなるべく早くやればいい。ただ、でき上がり分の一じゃ困ると思うんですね、私は、国民としても、国としても。少なくとも即応態勢については五十七、五十八両年度ぐらいにはまず心配ないところまで持っていくんだ、こういうぐらいのひとつ計画のもとで五十七年度取りかかってもらうと。それから同時に、いま人と物の問題しか出ませんでしたが、即応態勢といいますと人と物だけじゃない。やはり有事法令と称するもの、こういった規範的な問題も全部含むわけですね。その辺についても私はぜひともひとついままでと考え方を新たにしてこの問題に取り組んでいただきたい。そのことが本当に私は抑止力になると思います。日本の安全を確保する第一の前提だと、こう思います。これについては、もう時間ありませんから御返事聞きません。御理解いただいた、このように思います。長官も特に大きくうなずいておられますからね。  二番目は、重点項目の中に先ほども言われました継戦能力の問題ですね、この強化のために特に何を重視をされようとしておるのか。いろいろありますね、継戦能力の中で。それをひとつ承りたいと思います。
  130. 塩田章

    説明員塩田章君) 継戦能力の場合、やはり人間の問題と装備の問題、二つに分かれると思います。  人の問題は、端的に申し上げまして、予備自衛官の問題であります。これにつきましては、陸上自衛隊につきましては例年一千名相度のことを毎年お願いをしてきておるわけでございますが、海と空につきましては現在非常に貧弱といいますか、空の場合は全然ございません。そういうような点も今後配慮していきたいと考えております。  装備の面につきましては、さらに分ければ二通りございまして、一つは弾薬——ミサイル、魚雷、機雷等を含めた弾薬の備蓄の問題であります。これは先生も御理解いただいておると思いますが、昭和五十二年までずっと減ってきたものを五十三年以降何とか備蓄の方向に転換をさせまして、現在非常な努力をしておるつもりでございますが、これもさらに一層の努力が必要であるというふうに考えております。  それから、物の面でもう一点は、いわゆる基地の抗堪化といったような問題もやはり継戦能力という点から必要な問題であろうと思います。そういった点につきましても、従前必ずしも十分なスピードではございませんけれども、少しずつ改善を図っておりますけれども、これをさらに今後強化していきたいというふうに考えております。
  131. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 もう一つ、次は、やはり重点項目の第四でございます。装備の近代化と、それから特に海空の量的な増強の問題でございます。各新聞にいろんな計画が出ております。二十一日の朝日には、たとえばP3C、F15なんかについて五十九年度発注分を繰り上げてやるんだと、防衛庁御自身も少なくとも来年度は五三中業における一年前倒しを達成するんだと、こういうような御意向があるようにも聞いておりますが、こういった基本的な考え方、これはもう当然そうだろうと思いますが、大体間違いありませんか。
  132. 塩田章

    説明員塩田章君) 現在五三中業をやっておりまして、来年度も当然五三中業の継続でございますが、その場合、五十六年度以来五三中業につきましては可能な限り早期達成ということで努力しておるということを申し上げてきておるわけでございますが、五十七年度につきましても、五十六年度に引き続きまして、少しでも早期に達成さしたいという努力をしたいということは基本的に考え方は全然変えておりません。
  133. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いままで私が重点項目として質問をしました項目は、必ずしも重点項目全部を集約しているとは思いません。思いませんが、少なくともいままでの質問とそれに対するお答えによりますと、先ほどもちょっと触れたんですが、「五十七年度業務計画の作成に際して指針とすべき事項に関する長官指示」、四月二十八日に出された。これと少なくも即応性というような問題、これについてこれには欠けているじゃないかと、こういう感じがしますね。そうなると、やはり少なくも来年度これに引き続き統一した強力な態勢でもってこれから予算と取り組まれるということになりますと、この長官指示についてのやはり修正がなされなければ筋が通らないじゃないかと、こう思いますが、そういうような御意向はあるんですか、いかがでございますか。
  134. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほども話が出たわけですが、長官指示の方は比較的具体的な項目を書いておりますので、即応性という言葉でくくってはおりませんけれども、中を見ていただければいろいろ即応性を考えた項目は出ておると思います。  ただ御指摘の御趣旨は、人的な面での即応性のことではないかと思いますが、その点についての文言がないことは事実でございますが、この長官の指示の全体を読んでいただければ、いま申し上げましたような意味で、即応性についてももちろん配慮した上で私どもはこの指示は出されておるものと考えておりまして、特にいまこの指示をそういった観点から修正する必要があるというふうには考えておらないところでございます。
  135. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 それはちょっと強弁だと私は思いますね。私もいままで長官指示をいただいて実際作業をしてきた体験が何回もあるわけですが、どう考えてみても、そういうものを全部含んでおるとこうおっしゃいますけれども、そういう思想はここには流れておりませんですよ、長官、そうお思いになりませんか。ここでは私は指摘だけにとどめておきますから、長官よくお考えください、これは。これは一度出したのを変えるのはどうだとか言うんじゃなくて、やはり情勢認識が進んでくればそれに応じてやられるのはあたりまえだと思いますね。それはひとつぜひとも御勘案願いたい、こう思います。  もう時間でございますが、最後に私はお聞きしたいと思います。これはお聞きしようと思っておった項目と違うことを聞きます。お許しください。  それは、きょうの長官の御報告の中で二ページの最後であります。これまでの米側意見については、できるだけ五六中業作成の参考としていきたいなどをるる説明したと、こう書いてございます。この五六中業をつくるときに、基本的には大綱の達成がまず第一だということだろうと思います。ここで言われておるアメリカ側が具体的にいろいろ言った、これを参考にして作成をしていこうというのは、具体的に何を考えておられるのか、ひとつお考えをお聞きをいたしたいと思います。
  136. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 最初に長官指示についていろいろ貴重な御意見を述べられたのでございます。これにつきましては、防衛局長から申し上げましたように、即応性に関連ある事項を具体的に挙げておりますので、わざわざ即応態勢という言葉を追加しなくても趣旨は貫けるんではないかと思うわけでございます。  充足率の問題につきましては、これは重要な問題でございますので、今回の概算要求を取りまとめます際の一つの重要課題として、全般取りまとめの際に慎重に検討を続けてまいりたいという考えを持っておるということを申し上げておく次第でございます。  それから、報告の第二ページの末尾についてお尋ねでございましたが、これはハワイの協議等の際に、米側から一つの参考の試案だという形で述べられました点があるわけでございます。そういったものにつきましては、今後背景等いろいろ分析してみまして、わが方としましても取り上げるべき問題がありますとすれば、この大綱の範囲内でひとつできるだけ中業作成の際に参考として取り入れるものがあれば取り入れるようにしたいと、こういう考え方を述べたものでございます。具体的には、いろいろ飛行機の数とか艦艇の数とか、例示的に挙げられておりますが、そういったものの背景をよく聞きまして、先生承知のとおり、大綱の別表にこれこれについてはおよそ何隻とか、これこれについてはおよそ何機とかというのがあります。そういった中で取り入れるものがあれば取り入れていきたい、こういう考え方を持っておるわけであります。
  137. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 それじゃ終わります。
  138. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 最初に、日米共同声明に関しまして外務省、防衛庁に若干お伺いしたいと思います。  今回の日米共同声明の第八項はいわゆる役割りの分担、ここに書かれておることは、非常に内容的に日本防衛政策上画期的な事柄であると思うわけでございます。そこで、これは、この共同声明が発表されるまでに当然国防会議、少なくとも総理提唱の総合安全保障会議ぐらいは開かれて、そこで得られた結論としてこの共同声明に盛られるべき筋合いのものではなかったか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、防衛庁長官はこの声明を発表する前に総理とどの程度意見交換をされたのか、また防衛事務当局は外務省や内閣官房とどのぐらいの協議をされたのか、まずその辺からお伺いしたい。
  139. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先般の総理訪米に際しましては、その基本的対処ぶりにつきまして事前に外務省と協議をしたところでありまして、日米共同声明はこれに沿って作成されたものであると防衛庁としては承知しております。
  140. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 総理の訪米の前には関係当局、具体的には防衛庁あるいは内閣官房と基本的な方針について打ち合わせをしておりますし、また関係大臣にもお集まりいただきまして、その共同声明を含めて防衛問題について今回の会談でどういう方針で臨むかということについて打ち合わせをしております。
  141. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 打ち合わせはされたでしょうけれども、共同声明の内容についてほば了解が得られたわけですね、防衛庁と外務省。その点いかがでしょう。
  142. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 共同声明は御承知のとおり相当の時間をかけて作成するわけでございまして、その作成については、その前提となる首脳会談に臨む基本方針というものを踏まえているわけでございまして、ここに書かれたものはそういう基本方針に基づいて作成したものでございます。
  143. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから次は、この共同声明に「同盟」という言葉が使われておるわけですが、これもずいぶん各所で議論をされておるところでございますけれども、一点だけお伺いしますけれども、一般的に攻守同盟を意味する同盟条約の存在というものは、これは第二次大戦後その反省から、国連創設のときに国連憲章の規定する安全保障体制という考え方によってこの存在が否定をされ、その後NATOほか西側で生まれた集団安全保障条約、もう皆国連憲章の規定にその基礎を置いて、そういうような形をとって同盟という名の条約はなくなっておるはずでしょう。ただ一つだけ中ソ同盟条約、これが戦後残されたものであって、いまごろ「同盟」という用語が、西側の連帯をあらわすいかにもふさわしい言葉であったとしても、いまになって蔵から持ち出してきたというような非常に時代錯誤もはなはだしく思うわけでございますけれどもわが国としては国連主義を唱えておるわけですから、わが国立場上こういう用語を使うのはどうかと思うのですが、これはいかがでしょう。
  144. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) ただいまの御質問のございました「同盟関係」という言葉でございますけれども、これは当委員会を初めとして衆参両委員会でたびたび御説明しておりますように、そこで言っている「同盟関係」というのは、いわゆる攻守同盟ということではございませんで、日米両国関係というものが民主主義あるいは自由という共有する価値のもとにできていると、そして日米関係というものが政治、経済あるいは社会ひいては安全保障、そういう面を全体を規定したことをここで「同盟関係」ということで言っているわけでございまして、いま御質問になりましたような攻守同盟ということではございません。他方、国連との関係では、いま御指摘がございましたように、集団安全保障体制というものは国連も何ら否定しているわけでございませんで、日米安保条約というものも集団安全保障体制ということから言えば、それは国連が考えている一つでございますし、安保条約の前文を見ていただけば、すべて国連の規定あるいは精神に従うという条項がございますし、国連において世界の平和を維持するという、そういう能力ができてきた場合には安保条約もなくなるということでございまして、何ら国連憲章に違反するというような考えを私たちは持っているわけではございません。
  145. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 意味はわからぬでもないんですが、それじゃ今日「同盟」という用語を使っておるいろんな条約等があるのかどうか、中ソ同盟、これは別として、いかがでしょう。
  146. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 私も実は条約の専門家でございませんので網羅的にお答えできませんが、中ソ同盟条約というのは確かにございます。しかしここで言っているのは、いわゆる攻守同盟と、そういう言葉でなくて、より政治的な意味での同盟関係ということでございますし、もっと広い意味での用語の使用としてアメリカヨーロッパとの関係を同盟関係と言い、あるいは日本との関係を同盟関係と言っている、そういう意味で使っているわけでございます。
  147. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ次に役割り分担の項につきまして、この解釈につきましてお伺いしますが、日米「両者は、日本防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割の分担が望ましいことを認めた。」と、これがいわゆる役割り分担の項でございますけれども、このうち、まず極東の平和及び安定のための役割り分担については、政府はこういうふうに答弁しておるわけですよ。これは鈴木総理の答弁でありますけれども、五月の二十九日、衆議院の外務内閣安保連合委員会ですが、「極東の平和と安全につきましては、日本が安保条約によりまして施設、区域を提供しておる、こういうことがございます。しかし、日本自体の防衛以外の面につきましては、日本は軍事的にこれをなし得るところはございません。これは個別自衛権であり、集団的自衛権に入ることが許されない日本立場におきましてはそれはない。極東の平和と安全という分野におきまする日本の役割りというのは、経済、技術協力でありますとかいろいろな外交の分野でありますとか、そういう面に重点が置かれるということでございます。」、総理はこういうことを本会議でも何遍も言っておるわけですけれども、そうであれば、総理の言うように日本の受け持つ分担は安保条約上の基地の提供のみに限られ、ほかは経済、技術協力等の分野のみと、こういうふうに言い切れるのかどうか。集団的自衛権の認められていない日本として軍事的役割りが初めからないことを認めるならば、何も八項に新しく「役割の分担が望ましい」と、こういうことを確認しなくてもいいんじゃないかと思うんですが、その辺はいかがですか。
  148. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) いまの役割り分担の解釈については、委員が引用されたとおりでございます。しかし、そういう新しいことがないのなら共同声明に書かなくてもいいんではないかという御質問については、やはり首脳会談の中でも日米間の役割りという話がございまして、総理の方から、日本の憲法あるいは基本防衛政策にかんがみて、日本は極東の安全と平和あるいは自国の防衛以外の点については軍事的役割りを果たせないと、むしろ経済、外交の面でその役割りを果たしていくんだということを言われておりますので、そういうことを受けてこの八項を書いているということでございます。
  149. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 どうもよく聞いておってわからぬのですがね。要するに安保条約において基地提供、これは約束しておるわけですけれども、それ以外は経済、技術協力等に限られておると、こうはっきり言っておるんですから。その上に役割り分担ということを果たして言う必要があるのかどうかと、こう思うんですけれども、まあよく理解がしにくい点もありますけれども……。  次に、安保条約第五条とこの共同声明の防衛の面についてどういう関係性があるのか、どうも私この辺がまだよく理解ができないのでお伺いしますけれども日本防衛の役割り分担について、これも総理が答弁しておるんですが、「わが国自体の防衛に当たって共同対処する日米両国の間に役割り分担が生ずることは自然なことであります」、今度はこうおっしゃっているんですよ。今度は、わが国防衛に当たって共同対処する日米両国の間に役割り分担が生ずることは自然なことであると。ところが、今度は共同声明においては、「日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善し、」「なお一層の努力を行うよう努める旨述べた。」と、こう出ているんです。日本の領域のみならず、領域プラス、領域のほかに周辺海空域における防衛力増強を述べておるわけですけれども、この安保条約の第五条を見ますると、こうなっていますね。各締約国は、日本国の施政のもとにある——施政ですよ、施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合、日米の共同防衛条項がこれ働くことになっているんですが、いまのこの条約は、わが国の施政のもとにある領域における武力攻撃があった場合です。そうしますると、いまの共同声明は、これは領域外に、周辺海空域における防衛力を改善すると、そのように努力すると、こうなっているんですが、この両方の関係性はどうも私は矛盾するように思うんですよ。だから聞いているんですが、その辺はいかがなんですか。これは防衛庁と外務省と両方にお伺いしたい。
  150. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) まず私の方から安保条約との関係でお答えいたしますが、安保条約の五条については、いま委員の御指摘になりましたように、発動の要件が日本の施政のもとにある領域に攻撃が加えられた場合に初めて日米で共同対処するということでございまして、そこで言っていることとこの共同声明の八項で言っている日本の領域あるいは周辺海空域における防衛力を整備するということは私たちの考えでは矛盾しないと。それはしかし、日米間で共同対処する場合に当然その役割りは違ってくるわけでございまして、それは軍事的な能力あるいは性格、そういう相違から役割りというのは違ってくるんじゃないかなという気がいたします。以上が安保条約との関連での解釈でございます。
  151. 塩田章

    説明員塩田章君) 結局同じことでございますけれども、安保の五条のいまの先生がお読みになった規定は、そのとおり施政下に対する攻撃ということでございますが、共同声明で言っております周辺海空域、あるいはわれわれがいつも言っております航路帯一千海里といったようなことを申し上げておりますのは、安保条約の発効の条件とは違います。安保条約が発効しました後、わが国わが国防衛を行うに当たりましてどういった区域に対して防衛作戦を行うかということでございまして、安保五条の発効条件とは違いますので、私どもは、いま淺尾局長が申されましたように、矛盾はしないというふうに考えております。
  152. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それなら、周辺海域については、従来防衛庁長官の答弁を聞いておりまして、数百海里ぐらいと、航路帯は千海里と、こういうことでございますけれども、まず外部から武力攻撃を受けた場合、憲法上許される自衛隊の行動の地理的範囲というのはどうなるんですかね。その辺まず……。
  153. 塩田章

    説明員塩田章君) これもいつも議論になる点でございますが、自衛隊の防衛のための行動の区域を地理的に限定した規定、あるいはそういったものはございません。要するに、自衛のために必要な範囲の行動かどうかということから規制を受けるわけでございますけれども、それが具体的に何海里までならよろしいとか、そういう意味での地理的区域でもって限定されておるという性質のものではございません。
  154. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、空にたとえた場合、領空があってその外側に防空識別圏がある、その外側に周辺空域がある、こうなるわけですが、これは自衛隊の行動の上から、平時の場合と有事の場合とどのように三つの空域は行動の面から違うんですかね、その辺どうです。
  155. 塩田章

    説明員塩田章君) 三つの点の御指摘でございますが、まず防空識別圏から申し上げますと、これは、この空域に入ってきた飛行機については、どこの飛行機であるか、どういう飛行機であるかを識別するということでございまして、これは平時から行っておる、現在も行っておることでございます。そこに入ってきた飛行機がアンノーンであると、どこの飛行機かわからないという場合に、さらにその飛行機の行動を見ながら必要によってはスクランブルをかけていくということになります。その判定をする線を防空識別圏と言って、ここまで来たらその飛行機がどこの飛行機であるかを判定しましょうと、こういうための識別圏でございます。  いまの防空区域といいますか、防空戦闘のための考えられる空域といいますものは、もちろん平時におきましては領空侵犯等がない限りは別に何もないわけでございますが、戦時になりましてわが方の防空戦闘隊がどの範囲で防空要撃作戦を行うかということになりますと、これはわが国の周辺海空域ということになります。その具体的な海空域の区域はどこなのか、どこまでかといいますと、これはいま先生防空識別圏の外に防空区域があるとおっしゃいましたが、必ずしもそういうわけではございません。防空識別圏の方が外にあるところもありましょうし、そういう、つまり防空識別圏とは全く別個にわが国の防空戦闘機の戦闘の要撃能力、具体的に言えば行動半径によりましておのずから決まってきます。わが国の戦闘飛行隊の基地、その基地を中心にした行動半径ということによっておのずから決まってきますので、そのことは防空識別閥のように一定の区域を限っておりません。そういう区域でなしに、実際上能力の点からおのずから限度がある。しかし、ごく常識的に見ていただければ、大体防空識別圏の示しておる区域、程度ではなかろうかという大ざっぱな議論であれば、それは防空識別圏の区域と大体似たようなものだという御認識をいただくのは結構でございますけれども、同じものであるというふうに思っていただきますと、それは違いますということをいつも申し上げておるわけでございますが、そういうふうな性質のものでございます。
  156. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、私が聞いているのは、平時の場合と有事の場合に自衛隊が行動をとる上からどういうふうに違うのかということです。領空と防空識別圏と周辺空域ですね。
  157. 塩田章

    説明員塩田章君) 平時の場合に、先ほど申し上げましたように、防空識別圏に入ってきた飛行機についてはこれはやりますと。それがさらに直進してきまして、領空まで来るということになるとスクランブルをかけます。そして、スクランブルによって相手がどういう態度をとるかわかりませんけれども、対領空侵犯措置をとるわけであります。それがもし本格的に攻撃ということになりますと、それが戦時状態に入っていくわけであります。戦時状態に入っていきました後は、先ほど申し上げました要撃戦闘区域というところでわが方は要撃戦闘を行う、こういうことになろうかと思います。
  158. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうすると、有事になった場合は領海も空域ももう見境なく戦闘行為があるわけですな、当然これは。
  159. 塩田章

    説明員塩田章君) 有事になった場合に、相手方の攻撃の態様によりましてわが方はいま申し上げましたような要撃戦闘を行うということになるわけであります。
  160. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、これは共同声明の中で、「自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、」云々、こういうふうにあるんですが、この「基本的な防衛政策」というのは何を意味するのか。総理がよくおっしゃっておる軍事大国にはならない、専守防衛に徹する、非核原則を国是とする、シビリアンコントロールを国民のコンセンサスを得ながら防衛問題と取り組むと、こういった点ではなかろうかと思うんですが、なぜこういうような具体的なことを共同声明に書くことはできなかったのか。レーガン大統領にはおっしゃったようなふうに聞いているんですが、これはどうです、外務省。
  161. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 共同声明は性格上、その首脳間の応答を一々すべて書くということでございませんで、そこであらわれている要点をまとめるということでございまして、いま御指摘になりました憲法の範囲、あるいは基本防衛政策ということを言えば、当然にいま御引用になりましたことは入っているということでございますし、共同声明を作成する過程でも、わが方の考え方というものはアメリカ側には十分伝えてあるわけでございます。したがって、もし日本側がそういうすべての項目を網羅するということになれば非常に長いものになってしまうということでございまして、これは共同声明の性格上できないわけでございますが、一番の要点であるその基本的な防衛政策とかいう、あるいは憲法の範囲ということは、共同声明で非常に明らかにして、日本防衛についての立場というものを明確にしてあるわけであります。
  162. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 次に、専守防衛という言葉につきましてお伺いしますが、これは再三再四国会で総理の口からも聞くわけですけれども、専守防衛という言葉、用語、これは防衛庁の公式文書にどこを見ても書いてないですね。昭和四十五年の中曽根長官のときに初めて出された防衛白書「日本防衛」では、「日本防衛力」の一項として「専守防衛防衛力」として「わが国防衛は、専守防衛を本旨とする。」と、これは明確に表現をされておるわけでありますが、その後昭和五十一年の防衛白書以降、完全にこのような明確な項を起こしての記述は姿を消して、いまや昭和五十五年の防衛白書では、「わが国防衛力の意義と性格」と題する文章の中では専守防衛という言葉は一つも出てこないんです。これはどういうことなのか、なぜ出てこないのか、これが一つと。それから専守防衛ということは改めて一遍どういうことなのか、これひとつ説明を願いたいと思います。  だんだん防衛力が増強されまして、それがだんだん広がってくると、これは非核原則みたいに有名無実になっちゃって、専守防衛もだんだん姿を消していくんじゃないか。そういう気がするんで私は改めてお伺いしたいんです。
  163. 塩田章

    説明員塩田章君) まず防衛白書の記述でございますが、四十五年以降も防衛白書には専守防衛の記述はいたしております。五十一年にも三十五ページ、それから五十三年の白書でも五十七ページあるいは五十八ページ、それから五十四年の白書では六十三ページから六十四ページにかけて、五十五年では九十七ページというところに、の量の大小は別としまして、一応記述はいたしております。それでその間、どの程度の記述をしたかは別にしまして、このわれわれの考え方が変わったわけではもちろんございません。  専守防衛の言葉の意味でございますけれども、これはもちろん法律用語でも何でもございませんから的確な定義があるわけではございませんが、いずれにしましても、基本的な防衛の姿勢といたしまして、相手方から武力攻撃を受けたときに初めて防備力を行使するんだと。それで、その防衛力行使の態様も自衛のために必要な最小限度のものにとどめなければならない、また平素保持しておる防衛力も自衛のために必要最小限度のものに限られるという憲法の精神にのっとった、いわゆる受動的な防衛戦略のこの姿勢を専守防衛というふうに言うものとわれわれは理解しております。
  164. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、今度日本の周辺海域、かなり広範囲にわたって防衛空域、海域が延びるわけですけれども、そして防衛力を改善するということは専守防衛に反するじゃないかとか、こういう意見もありますが、改めて答弁をお伺いします。
  165. 塩田章

    説明員塩田章君) いま申し上げましたような専守防衛の言葉の意味からしますと、私ども、周辺海域、空域、数百海里とか、あるいは航路帯約一千海里といったようなことを申しておりますが、そういったところにおきます防衛力の整備を図ることが専守防衛に反するかどうかということは、ちょっと次元の違った議論ではないかというふうに思うわけであります。そういった空域の防衛力を整備いたしましても、基本的に専守防衛防衛戦略というものを、その姿勢を崩さないということはもちろん申し上げるまでもないことでありまして、その前提に立って、わが国防衛上、わが国の自衛上必要な最小限度の防衛力の整備ということは少しも矛盾するものではないというふうにわれわれとしては考えておるわけであります。
  166. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、専守防衛と言っても、防衛力の増強という面とはこれは関係ないわけですか。だんだんだんだん兵器が近代化されてまいりますと、防御のための兵器もだんだん進んでいくわけですから、そのたびにあなた方は平素兵器の近代化をやらなきゃならぬということで、これは無事予算は幾らでもふえると、そういうことになりますな。その辺いかがでしょう。
  167. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほど専守防御の考え方のところでも申し上げましたが、無制限ということではもちろんございませんで、平素保持する自補力につきましても必要最小限度のものでなければならないという考え方であるということを先ほどの専守防衛意味のところで申し上げました。その考え方は当然貫かれていかなければならないというふうに考えておるわけであります。
  168. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それが、必要最小限度のということをもう何遍も聞いているんですけれども、言葉としてはわからぬでもないんですけれども、どこまで必要なんだと、こうなりますとこれはようわからない、われわれとしては。だからGNP一%で抑えてあるから大丈夫だとおっしゃるかしれませんけれども、GNP一%はこれは毎年だんだんだんだんふくれていくわけですから、それで心配しておるわけですな。  まあそれはそれまでとして、もう時間がありませんので、次にひとつ、長官訪米、訪欧につきましていま所感が述べられたわけですけれども、それを若干お伺いします。  まず、これは最後の方、五ページですね、「わが国としては、今後の防衛努力のあり方について、米国との対話協議を継続していくことが必要と思われますが、いずれにしても、私としては、今回の訪米を通じ、わが国としては、みずからの国はみずからの手で守るとの基本に立ち、みずからの防衛のために相当の努力を行うことが、日米安保体制信頼性を維持・向上させるとの観点からも、」云々と、こう出ておるんですが、これはこれとして、これだけに終わるのか、まだあなたの胸の中にあることがあるんじゃないか、私はこう思うんですな。それは、よく政府が言っているんですけれども、西側の連帯の強化のためと、こういうようなことが長官の胸の中にあると思うんですが、そういう話は出てなかったのかどうか、やっぱりこの際素直にこういう所感に書かれてわれわれの判断の材料としてもらわぬと、何かこういうことを書いたらまた野党に突っ込まれるからどうのこうのと、そういうことじゃわれわれとしては審議がしにくいんですが、その点いかがでしょうか。
  169. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私の報告の中に西側連帯強化にかかわるような文句が入ってないのはどういうわけかというお尋ねでございますが、私といたしましては、自由と民主主義を基調とする米国を初め西側の諸国との連帯を図る、意思疎通を図る、そういうことは必要だと考えておりますが、特別そういったことはこの報告には書いてございませんが、そもそも私の訪米が両首脳の共同声明の第八項に基づいて行っておるものでございますので、その趣旨に基づいてやっておりますので特別そういったことは申し上げておらないのでございますが、そういうことを私は考えてないということではないことを申し上げます。
  170. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ考えていらっしゃると思って私は質問を続けますけれども、「次に、米国における会談の要点を御報告いたします。」として、その次にソ連軍事能力現状評価、これが書いてあるんですね。そこで、「ソ連軍事能力が大幅に増大し、国際情勢が厳しさを増していることに双方意見一致しました。」、ここまでは書いてあるんですが、これは私もいまの極東情勢もわかっておりますけれども、そこでソ連脅威論について、何回も長官の口から出ておるんですけれども、改めてお伺いしますが、対日侵略の点から果たしてこのソ連脅威についての日米間の相違はあったのかなかったのか、その辺はいかがです。私は当然、これはアメリカは何といっても自由陣営の、西側陣営のリーダー格であり、核保有大国である。日本はやっぱり憲法上制約もあるし、ソ連と国境を接しておる関係もありますし、そういう観点から、これは当然日米間においては若干の——若干というよりか大きな差があると思うんですがね。長官のお考え、いかがでしょうか。
  171. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の訪米におきまして、ソ連軍事能力の増強の点につきましては、グローバルな点におきましても、また極東における配備の増強につきましても、日米間に意見一致を見たところでございます。ところが脅威の点はどうかというお尋ねでございますが、わが国といたしましては、かねがねからソ連軍事力の増強につきましては潜在的脅威の増大というふうに受けとめているというふうに申し上げているわけでございます。客観的な、軍事能力は著しく増強されておりますが、意図につきましてははっきりしておらないわけでございます。そういった軍事能力の増強という点にかんがみまして、わが国としましても領域並びに周辺海域における防衛力の改善を図る必要がある。これは日米首脳会談で総理大臣がお述べになり、先方の大統領も同意されたところでございます。そういった線に沿いながら私はこの会談に臨んだ次第であります。
  172. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 外務省、どう考える。
  173. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) いま防衛庁長官がお答えになりました点以上に特に私どもからつけ加える点はございません。
  174. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 あなたの答弁はあっさりし過ぎているんだよな。本当はこれ大臣を要求してあるんだよ。これは余り突っ込んで議論してみても水かけ論になりますからね。また、外交上言いにくい面もありましょうから、その辺は考えておりますので、この辺で終わりますけれどもね。  次に、こういうのがありますね、「第二に、昭和五十一年と現在では国際情勢は大きく変化し、防衛計画大綱達成予定の八〇年代末では情勢はさらに厳しくなることを考えてほしい。日本側説明は、日本の不十分な防衛力基本的に変えていくというものではない。日本はもっと組織的、有機的な防衛力を整備する努力が必要であり、これまでに米側が提示した意見は、日本防衛力について日米間の対話を行うための一つの案であると受け取ってほしい」ということですか、これは一つの案として受け取れと、こういう意味ですか。その辺をもう少し説明をしていただきたい。
  175. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 午前中の御質問に対して私からお答え申し上げましたように、ワシントンにおける私の会談の際にはそう具体的な案が出なかったわけでございますが、その前のハワイにおける事務レベルの会談の席上、いろいろ率直な意見交換をした場合に具体的な案が出されたわけでございますが、これはここに書いてありますように対話協議を続けていく上の一つの試案である、決定的な固定したものではないという趣旨のお話があったことをここに念のために申し上げてあるということでございます。ただ、そういう試案でも、出されました以上はわが方としては吟味をして、いい案であれば参考にいたしたいという気持ちは持っておるわけでございますが、先方としましてもそういう意味で出したものであるということを記しているわけでございます。
  176. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私が聞きたいのは、ただ案を出したのか、それともこういう具体的数字を並べてこれをつくれ、あれをつくれと強要されたのか。その辺聞きたかったから、案であればそうあわてて増強する必要もないじゃないか、そういうような感じもするし、いまさっき申し上げましたように、対ソ認識それ自体がアメリカの場合と日本の場合違うわけですから、一説によりますと、向こうさんの方は産軍複合体が盛んであって、どんどんどんどん兵器をつくって自転車操業をしておるわけですから、メニューを並べてあれも買えこれも買えと、まあ兵器の売り込みにかかっておるというような批判もあるわけですから聞いておるわけです。もう一遍、長官
  177. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私との会談におきましては、先方はあくまで対等の協議を行うんだと、押しつけるものではないということを終始申しておるわけでありますので、押しつけるものではなく、案であるということを申し上げております。
  178. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、時間がありませんけれども、今度の共同声明八項で日米間の役割り分担が規定をされたわけですが、そうなりますと昭和五十一年設置の日米安全保障協議委員会の防御協力委員会の前提条件あるいは研究協議事項、あるいはまた、すでに決まっている日米防衛協力のための指針、こういうものに何も変更を加える必要はないのかどうか、その辺いかがですか。
  179. 塩田章

    説明員塩田章君) 今度いろいろお話し合いを通じまして、確かに共同声明にいろいろ書いてあることが、役割り分担とかいろいろと議論が出ましたが、話を通じまして感じましたことば、結局軍事面について言いますと従来と少しも変わっておりません。変わっておりませんので、私どもは、いま御指摘防衛協力委員会あるいはガイドラインの研究作業、そういったような従前からやっておりますことにつきましてこの際何らかの変更を加えるという必要はないというふうに判断をしております。
  180. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃこれで終わりますけれども防衛計画大綱というものが白書にも出ている。私ども見ているんですが、なかなか大まかなことしか書いてないものですからね、まだ日本防衛計画大綱の水準に達しないとか、六十二年までやるんだとかいろいろ答弁聞いていますけれども、どうもこれを見ただけじゃわからない。それで細かい数字を出せと言うても、それは兵器も変わるし、そんな細かい数字まで出せないというような答弁もあったようですけれども、それでこの大綱の達成をされたときの水準ですね、それと現状の水準、これ陸海空に分けてどのくらいの差があるのか、この辺は説明できると思うんですが、いかがですか。
  181. 塩田章

    説明員塩田章君) 大綱に書いてありますことが、御指摘のように別表で具体的に量を示した項目と別に量を示してない、項目とございますから必ずしも比較が的確にできるわけではございませんけれども現状で比較して申し上げますと、たとえば陸上自衛隊の場合、定員十八万人というのが現在達しております。師団の数あるいは各いろんな特科団とかヘリコプター団とか、そういった団の数も達しております。ホークの部隊の数も達しております。ただ陸上自衛隊の場合、装備の近代化といった問題はまだ残されておりますし、先ほど来議論の充足率の問題も残されておりますけれども大綱の別表に掲げる水準から見ますと、数字的には同様の規模に達しております。  それから海上自衛隊の場合は、艦艇数が対潜水上艦艇数が約六十隻というのに対しまして、現在の段階ではまだ五十数隻という段階で、必ずしも達しておりません。それから潜水艦にしましても、十六隻というのに対して十四隻ということで達しておりません。それから作戦用航空機につきましても、二百二十機というのに対しまして数十機足らないという状況にいまございます。そういった数字的な面でまだ海上自衛隊の場合不足がありますと同時に、内容的に古い艦艇、古い装備のものというのがございまして、それを更新していく必要があるというふうに考えます。  航空自衛隊につきましても、作戦用航空機約四百三十機というものに対しまして、現在約百機ばかり数の上では不足しております。同時にまた、内容的にもいろいろ新しい機種に変更していく必要があると考えておりますし、またナイキの部隊を新しく内容的に近代化を図っていく必要がある。あるいは別表にはございませんけれども、警戒部隊二十八個部隊というレーダーサイトの数はありますけれども、これが非常に旧式化しておるというような問題がございます。  非常に大ざっぱに申し上げましたが、そういう数の上で達して内容的に達してないもの、あるいは数の上でも達していないもの、いろいろございます。そういう現況でございます。
  182. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 新聞等を見ますると、かなり具体的に書いてあるんですね。たとえば飛行機の場合、四百三十機といいましても、その中身まで、F15が何機とか。ですから私は聞いているんですね。新聞は推測かもしれませんが、大体当たっておるんですよ。  それで、いまおっしゃったようなことをもう少し詳しく、防衛大綱の現在の水準、陸海空に分けて。それから、大綱を達成した場合はどのくらいになるか。その乖離、その差がどのぐらい、各項目に。それをひとつ資料を出せませんか。
  183. 塩田章

    説明員塩田章君) 資料として出せると思いますので、考えさしていただきます。
  184. 安武洋子

    ○安武洋子君 官房長官にお伺いをいたします。  七月二十一日付の新聞でございますが、自民党の櫻内幹事長が、現在、首相ら閣僚が行っている靖国神社参拝は本質的に公式参拝である、こういう見解を明らかにしたと報道いたしております。従来政府は、首相とか閣僚の参拝、これは肩書きを書いたり、それから事実上の閣議の申し合わせをしたりしながら、私人の資格でと、こう言ってこられました。靖国神社の参拝につきましては、三木内閣当時の公式参拝の四条件、これを、いまは玉ぐし料を国費から支出したかどうかだけ、こういう一条件にするなど、なし崩しに拡大解釈、運用を行ってきております。こういうふうな状態といいますのは、実質的には憲法違反の靖国神社公式参拝であると国民の目に映るのは当然でございます。だから批判を浴びてきたわけですけれども、いま公然と、本質的には公式参拝である、こういう発言が出てきたことは、私どもが再三指摘してまいりましたけれども、それをいかに私的参拝と言おうが実質的には公式参拝であるということを自民党首脳が裏づけたことになります。  そこで、官房長官にお伺いをいたしますけれども、現在の首相、閣僚の靖国参拝、これを本質的にどのように見ておいででございましょうか、お伺いをいたします。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 自民党の幹事長の発言云々につきましては、私、その内容を存じませんので、つまびらかにいたしませんので、私からどうもコメントを申し上げるわけにまいりません。  なお、後段の御質問につきましては法制局長官からお答えをいたします。
  186. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) 毎回申し上げておりますが、いわゆる公式参拝につきましては憲法二十条第三項との関係において問題がある。その問題があるという意味は、憲法違反ではないかという疑いをなお否定できない。したがいまして、事柄の性質にかんがみまして、慎重な立場をとり、いわゆる公式参拝を差し控えるということが政府としての一貫した態度である、こういうことを従来から申し上げておりますし、昨年の統一見解でもそのように申し上げているわけでございます。
  187. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、官房長官が櫻内幹事長の発言を御存じないとしても、いまの総理ないし閣僚の参拝をどういうふうに本質的に見てなさるのかということをお伺いいたしましたので、法制局の御答弁でなくて長官の御答弁を伺いとうございます。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま法制局長官が申し上げたとおりでございまして、政府としてはその見解に基づいて行動をいたしておるということでございます。
  189. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、公式参拝ではないと否定なさって、櫻内発言と異になるというふうなことだと思います。  そこで、靖国の公式参拝につきましては、先ほどの御答弁にもありましたように、政府の統一見解が出ております。その中には、憲法二十条の三項の関係で問題がある、こういう立場で一貫しているとか、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないとか、こういうふうに述べておられます。昨年八月十二日、私も当委員会で御質問申し上げましたけれども、そのとき宮澤長官は、玉ぐし料を国費で支出をする、これを私的だと言うわけにはいかないというふうにも答弁をなさっておられます。ところが、政府の与党であります自民党の内閣部会と靖国神社問題小委員会、これは首相、閣僚の靖国神社公式参拝の実現及び八月十五日の戦没者追悼の日の閣議決定、これを政府に求めようとしておりますし、本日の自民党の総務会と政務調査会では、それぞれ異議なく、内閣部会から出されていた二つの要求を確認して政府との交渉を党四役に一任し、一両日中にも政府に申し入れることになったというふうに聞いております。それから七月二十二日ですね、政府・自民党の間では、自民党が公式参拝を叫ぶから政府の方は否定せずに黙認するというふうな暗黙の合意があるというふうな報道もなされていたわけです。  私は、鈴木内閣が統一見解立場、こういう立場に立つなら首相、閣僚の公式参拝は鈴木内閣の方針、これに沿わないもの、こういうふうに思いますけれども、この点は官房長官いかがお考えでございましょう。
  190. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 自由民主党の中でいろいろな議論がございまして、本日も議論になった由でございますが、政府の方にまだどうということの申し入れはございませんので、内容についてわかっておりません。  それから、政府の物の考え方はどうかと言われることにつきましては、これは先ほど法制局長官から申し上げたとおりでございます。
  191. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、閣僚の公式参拝というのは鈴木内閣の方針には沿わないものというふうなことだと思いますが、靖国神社の公式参拝、それから戦没者追悼の日の設定、こういう策動がいまの軍備大増強、それから日米軍事同盟の強化、それから非核原則の空洞化というふうな中であらわれているということは、私は実に重大なことだと思っております。で、五月二十日の靖国神社公式参拝実現全国総決起大会、この中でも靖国神社の国家護持は防衛の精神の支柱、こういうふうなことが相次いで発言をされております。これを見ましても、靖国神社公式参拝と戦没者追悼の日の設定というのは根は一つだというふうに受け取らざるを得ません。靖国神社法とか、あるいは天皇、首相の公式参拝の要求というふうなことは、再び靖国を軍国主義の日本のシンボルに復元しようというふうなもので、私は首相などの公式参拝、これはこういう動きに呼応するものだと思います。戦争犠牲者を本当に追悼して遺族の悲しみに報いる道というのは、侵略戦争を再び繰り返さない、その先頭に政府が立つことだ、立って努力をすることだというふうに思います。  ですから、私は宮澤長官に御要求申し上げとうございますけれども、党四役から二つの要求の申し入れ、これが一両日中にあるそうですけれども、こういう申し入れがあってもこの申し入れを閣議決定をしない、そして従来のような形で総理、閣僚の靖国参拝、この八月十五日もですが、それ以後も行わないということを私は御要求申し上げとうございます。いかがでございましょうか。
  192. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 申し入れがあるかないか、まだわかりませんし、またどういうお話であるのか、どういう考え方であるのかわかりませんので、そういうことがございましたときに考えてみたいと思っております。
  193. 安武洋子

    ○安武洋子君 それでは、いま私が申し上げました趣旨を十分に踏まえていただいて、そのお考えの中にこれを入れていただき、私の要求をかなえていただきたいということをもう一度強く申し上げます。  そこで、もう一問伺いますが、現在非常に行政改革が大きな問題になっております。こういう時期にもかかわらず、防衛庁が石油ショックで中止をした観艦式、これを八年ぶりに復活をするという方針を決めたと伝えられております。防衛庁行政改革防衛費の圧縮にどう協力をしようとしているのか、私はその姿勢を大変疑問に思うわけです。官房長官としては防衛庁の行革についてどのようにお考えでございましょうか、御答弁をお願いいたします。
  194. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 行財政改革はいまわが国が臨んでおります急務でございますけれども、また国の安全ということも一刻もないがしろにできない問題でございます。防衛庁長官が国の安全のため最小限必要だと御判断になられましたことであれば、これはそれとして大切に考えていかなければならないと思います。
  195. 安武洋子

    ○安武洋子君 観艦式の例を挙げましたけれども、石油ショックのときに石油が値上がりした、財政を圧迫するということで国民の感情をおもんぱかってやめたものをこの時期になって八年ぶりに復活をするという中に、本当に行革についてどう協力をしようとしているのか、防衛庁の姿勢は疑わしい、そしてこういう防衛のところだけを、いまの御答弁でもわかるように聖域化しようという政府の姿勢というのは私は解せないんです。私は行政改革を本当に推進なさるなら、こういうむだな観艦式のようなものはおやめになるべきだ、そのことを強く申し上げますが、もう一度御答弁を願って、時間のようですので、官房長官結構でございます。
  196. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 聖域化というお言葉は必ずしも当たらないと思います。恐らく防衛庁長官のお立場としては、国の安全のために何が大切かということを十分優先度をつけて御判断になっておられると思いますので、その中で優先度が高いというお考えであれば、それは国の安全のためにおやりになるということは私は十分考え得ることだと思います。
  197. 安武洋子

    ○安武洋子君 その御答弁では納得できない。観艦式が何が国の安全かというふうなことで、八年ぶりにこういうものをいまの時期に復活させようという防衛庁の姿勢に対して、私は官房長官がそういう姿勢をおとりになるということを大変不満だということを申し上げさせていただいておきます。  次に、質問を変えますが、七月の十九日付でございますが、ワシントン・ポスト紙、この報道によりますとワインバーガー米国長官は、このほどまとめました広範な戦略上の指針では、ソ連との長期間の通常戦争、この通常戦争が発生した場合、日本にはソ連軍の日本海海峡の複数の通過を防いでもらいたい、こういう期待を表明しているとのことです。防衛庁はこういう指針の内容について一体御存じなのでしょうか、お伺いをいたします。
  198. 塩田章

    説明員塩田章君) いま、ワインバーガー長官が三海峡封鎖について触れられたということでございますが、直接私それを承知しておりません。
  199. 安武洋子

    ○安武洋子君 それでしたら、日本にかかわることがこのような形で報道をされているわけです。ですから、私は事実かどうかをアメリカに問い合わせてその結果を報告していただきたいと思いますが、やっていただけますでしょうか。
  200. 塩田章

    説明員塩田章君) その三海峡封鎖の問題は、アメリカに問い合わせるまでもなく、われわれがかねて申し上げておりますように、日本が攻撃を受けた場合に必要な措置として三海峡の封鎖を考えなければいけないということもあり得るだろう、そういう場合にはそういう作戦も考えられるということを申し上げております。その考え方は少しも変わっておりません。わが国が攻撃を受けた場合に、必要ならば封鎖することもあるでしょう、こういうことでございまして、いまさらアメリカの考えを問い合わせてみるという必要はないと思います。
  201. 安武洋子

    ○安武洋子君 御答弁がすりかわっています。わが国が攻撃を受けた場合とはこれはなっていないわけで、指針では、ソ連との長期間の通常戦争が発生した場合、日本にこういうことを期待するという形で言われているわけですから、私は中身を問い合わせて、そして御報告をいただきたい、こう申し上げております。
  202. 塩田章

    説明員塩田章君) 通常戦争が発生して長期間にわたる場合ということでございますが、いずれにしましても、わが国が攻撃されなければ三海峡の封鎖ということはあり得ないのですから、そのことはわれわれとしては少しも変わっていないということを申し上げているわけです。
  203. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから、わが国が攻撃をされてもいないのに、こういうことを期待しているということが表明されているなら、やはり問い合わせる必要があるんじゃありませんか。
  204. 塩田章

    説明員塩田章君) そういうことを私ども考えておりませんので、問い合わせる必要がないというふうに考えております。
  205. 安武洋子

    ○安武洋子君 あなたが考えなくても、相手がそういう期待をしているというふうなことであれば、いまアメリカとの関係ではいろいろアメリカの要求も受けていかなければならないんでしょう。だから、こういうこと一つ問い合わせができないんですか。私は大変不愉快な態度だと思います。ワインバーガー長官発言というのは、レーガン政権同時多発戦略の具体化、これが日本に対して日本海海峡の複数の通過を防いでもらいたい、こういうふうな形で私はあらわれてきていると思うんです。米ソ戦の際、日本日本海の三海峡封鎖などということはいまできないとおっしゃったんですから、日本が攻撃を受ける以外は。そうですね。日本が攻撃を受けた場合にはやらざるを得ないとおっしゃるということは、言葉を返せば、日本が攻撃を受けてもいないのにそんなことはできないわけでしょう。だから、そういうことであれば、アメリカにそういうことはできませんということをやっぱりちゃんと言うべきではないかと思いますが、いかがですか。
  206. 塩田章

    説明員塩田章君) できないではないんで、しないんであります。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 同じじゃありませんか。
  208. 塩田章

    説明員塩田章君) いや、大分違います。いまアメリカといろいろ話をすべきでないかということでございますが、改めてそういう問い合わせをしなくても、いろいろ日米のそういう接触の場面があるわけでございまして、たとえばガイドラインに基づく研究もやっておりますが、そういったいろいろな場面で、アメリカ側の方からもしそういう要請があるのならば、そういう作戦の経過の中でこういうときにはこういうことをすべきでないかという話は出てくるだろうと思います。それに対してわが国はその場合にどう答えるかということで十分であって、いまだれが何を言ったからといって一々問い合わせる必要はないという意味で申し上げているわけであります。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 ではそういうときに、米ソ戦の際に日本が攻撃も受けていないのにアメリカから三海峡を封鎖してくれと言われた場合には、それは一切そういうことはできないというふうに答弁されますね。
  210. 塩田章

    説明員塩田章君) そういうことはしないと答弁をするわけであります。
  211. 安武洋子

    ○安武洋子君 では関連して聞きますけれども、七月の二十日から統合幕僚会議指揮の統合演習が行われておりますね。この実動演習というのは、中東の紛争を契機にして朝鮮半島がくすぶり始めた、そうして北海道への侵攻と海峡防護に対処するもの、こういうふうに言われておりまして、アメリカの有事想定にぴったりと一致するというふうに言われているわけです。対馬への着上陸作戦というのは、アメリカの極東有事想定に基づく三海峡封鎖作戦、これを私は想定したものとしか考えられないというふうに思っておりますけれども、一体防衛庁はどういう想定のもとにこの大演習は行われたんでしょうか。
  212. 塩田章

    説明員塩田章君) アメリカ戦略にぴったりだという報道があったことは承知しておりますが、私どもが今度の対馬の演習を計画しましたのは、陸海空の三自衛隊が平素ばらばらであって、統合的運用の訓練ができてないという観点から、かねて統合的運用をしたい、そのための訓練をしたいということを考え、一度五十四年にそのはしりをやったわけですけれども、引き続いて今後もやっていきたいということで、今回の統合的運用のための演習を考えたわけです。その今回のテーマとしましては、主として輸送作戦を考えました。したがいまして、特にどこの海峡の防衛のためのシナリオということでなしに、陸上自衛隊の部隊をある数送るのに海上自衛隊、航空自衛隊がどういう協力をし、どういう統合作戦をやってそこに隘路があるか、困難な点があるか、そういうようなことを勉強するためにやった演習でございまして、どこの地域に何が起こったからどうするというシナリオを持ってやったわけではございません。
  213. 安武洋子

    ○安武洋子君 ただ単に統合的な運用訓練だと、そしてその中の輸送だと、私はそういうことではなく、大きくやはりどこかでどういうふうな有事というふうなことを想定して訓練というものはなされるべきだと思います。そういうことで私は、何らかの仮想敵がどこにどういうふうに侵攻してきたのかと、それにどう対応してどう輸送するのかというふうなことで訓練がなされていると思いますけれども、そういう前提が全然なくて、ただ物をちょんと運んでみろと、そんなことで訓練をやるんですか。
  214. 塩田章

    説明員塩田章君) おっしゃいますような想定もして訓練をするということももちろんあるでしょうと思いますが、そういったことを否定はいたしませんが、今回の訓練におきましては、とにかく陸海空が非常にそういった統合的運用にふなれでございますから、非常にイージーな演習から始めるということもございまして、ともかく陸上自衛隊の部隊を送ると、それに対してどういう強力な共同作戦ができるかという訓練をとりあえずやったということでございまして、先生の御指摘のようなバックになるようなシナリオを持ってやったわけでは少なくとも今回はございません。
  215. 安武洋子

    ○安武洋子君 今回の訓練が何がイージーなんですか。あのように大がかりにやっていて、そしていろいろなことから総合しまして、私はこれは何と言われようと、もう明らかにガイドラインに基づく極東有事の研究の先取りだというふうに言わざるを得ないと思います。だから私は、こういうふうな極東有事の先取りをするような演習、研究、こういうものは一切中止をすべきだと、このことを強く申し上げます。いかがでしょうか。
  216. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほど申し上げましたように、極東有事の先取りというようなシナリオでやったものではございません。
  217. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、極東有事というふうなことで想定した演習はやらないと、今後もやらないというふうに受け取らしていただきます。  六月二十九日の報道ですけれども、共同作戦計画の研究内容というのは、これ北海道に武力侵攻があった場合を想定した着上陸侵攻阻止作戦、それから海上交通保護作戦、それから航空侵攻阻止作戦、この三つの作戦研究から構成されている、こういう報道がありますけれども、このとおりなんですか。
  218. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほどの件ですが、今後そういう演習をしないというふうに私申し上げるわけではございません。そういう演習をするかしないか考えておりませんので、今後しないというふうに申し上げたわけではありません。今回の演習はそういうシナリオではなかったと申し上げたわけです。  それから、いまの共同作戦計画が北海道に上着陸あるいは海上防衛というような内容かということでございますが、かねてから申し上げておりますように、想定したシナリオの中身につきましては、これは事柄の性質上控えさしていただきたいということでございます。
  219. 安武洋子

    ○安武洋子君 中東有事を想定した訓練は今後やると、そういう計画はあるということですか。
  220. 塩田章

    説明員塩田章君) そういう計画はございません。
  221. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、将来やるかもわからないと、いまお答えになった。将来やるかもわからないんですか。
  222. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほど私が言いましたのは、今回の対馬におきます演習は、対馬に対する輸送訓練を目的とした演習であるということを申し上げただけでありまして、それ以外に何も将来のことを申し上げておりません。
  223. 安武洋子

    ○安武洋子君 では将来のことを聞きますけれども、そういう中東有事を想定した訓練というのは今後やりますかやりませんか。
  224. 塩田章

    説明員塩田章君) 現在やるかやらないかを考えたことはございません。
  225. 安武洋子

    ○安武洋子君 やるべきではありません。だから、おやりにならないでということを私は先ほど申し上げたわけです。  極東有事の事態における米軍に対する便宜供与、これについて伺いますけれども、こういう研究作業を行うというふうに言っておられます。この内容について塩田防衛局長は、自衛隊基地の共同使用のことがいま考えられると、こういう答弁をなさっていらっしゃいます。自衛隊基地を米軍が使用するようになれば、当然私は給油とか、修理とか、こういうことで役務の提供とか、こういうことが問題になろうと思います。こういう役務の提供というのは一体なさるんでしょうか、どうなんでしょうか。
  226. 塩田章

    説明員塩田章君) 自衛隊基地の提供というのは、今度のガイドライン三項に基づく研究をやります場合に、自衛隊としての関係してくる部分はその点だけだということを申し上げたわけであります。  その中身はどういうことをするのかというお尋ねでございますが、まさにどういうことができるかできないかをいまから研究しようと、こういう段階でございます。
  227. 安武洋子

    ○安武洋子君 自衛隊の基地使用に際して役務の提供というのは、安保条約の六条、それから自衛隊法上これはできないわけでしょう。この点ははっきりしておりますね。ですから、こういうことは提供しませんね。この点を確認します。
  228. 塩田章

    説明員塩田章君) 御承知のように、ガイドラインは現行法に基づいての研究でございまして、現行法上できないことはいたしません。
  229. 安武洋子

    ○安武洋子君 「日本防衛戦略」という本の中ですけれども、元北部航空方面隊司令官植村英一氏、この方は、後方支援における役務の提供をはっきりさせておく必要がある。アメリカの艦船を海上自衛隊の造修所で整備する場合は、施設は貸せても、役務は提供できないようになっていると、こう述べております。そして元自衛艦隊の司令官北村謙一氏、この方は、安保条約第六条を役務の提供ができるように改めるとともに、自衛隊の関係法令を改める必要があると、こう述べております。  そこで聞きますけれども、今後こういう関係法令の検討も行いませんね。
  230. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほどから私がお答えしておりますのは、三項の場合、自衛隊が何をできるかということで申し上げております。ですから、自衛隊ではなくて日本政府として、具体的には施設庁として何ができるかという話は別な話でございます。自衛隊としては基地の共同使用ぐらいしかできないだろうということを申し上げているわけですから、その点を念を押さしていただきます。
  231. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、政府としては役務の提供をこの基地内でやるということなんですか。
  232. 塩田章

    説明員塩田章君) 防衛庁設置法の防衛庁の権限の中に、「条約に基づいて日本国にある外国軍隊(以下「駐留軍」という。)に対して施設及び区域を提供し、並びに駐留軍のため物品及び役務を調達すること。」というのがございます。
  233. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、それに基づいて役務を提供するということなんですか。
  234. 塩田章

    説明員塩田章君) 当然そういうこともあり得るわけでございますから、具体的にどういうことをするかということを研究すると、こういうことでございます。
  235. 安武洋子

    ○安武洋子君 ということは、先ほど言いました安保条約の六条、それから自衛隊法、この改定も検討をするということになるんですか。
  236. 塩田章

    説明員塩田章君) 条約とか法律とかを改定するということを研究の目的にしておりませんので、ちょっといまのお尋ね、私はどういう御趣旨かわかりませんけれども、先ほど申し上げました現行法の中で研究をするということでございます。
  237. 安武洋子

    ○安武洋子君 しかし、いまのこの元自衛艦隊司令官の北村氏、この方が安保条約第六条、これは役務の提供ができるように改めるとともに自衛隊の関係法令を改める必要があると。それでなければ役務の提供はできないのだというふうなことを述べておられるわけですよ。いまの現行法ではそういうことはできませんでしょう。
  238. 塩田章

    説明員塩田章君) いまの北村さんの書かれているのは、自衛隊ができないということですね。自衛隊は現行法上できません。
  239. 安武洋子

    ○安武洋子君 塩田防衛局長とそれから外務省の淺尾北米局長ば、七月の十五日の衆議院の安保特、ここで、極東有事の場合自衛隊が米軍のために輸送であるとか、それから探査であるとか、偵察、補給などは考えられない、こういうふうに答弁されておりますね。このようなことが考えられないということは、これは集団的自衛権を禁止した憲法上できないということなんですか。
  240. 塩田章

    説明員塩田章君) ちょっと私、憲法上かどうかということになりますと、いまちょっと的確にお答えいたしかねますけれども、いま先ほど来申し上げております自衛隊がどういうことができるか、どういうことができないかということにつきましても、私一般論として申し上げましたが、たとえば油の保管等について役務の提供は現在でもできる部分がございます。ですから、全般的に絶対にできないということではなくて、原則としてできないということを先ほど来申し上げております。  先ほどの憲法上自衛隊がそういうことができないのか、できるのかということでございますけれども、現在私どもは自衛隊法上そういうことが認められておりませんので、できないということを申し上げておるわけでございます。
  241. 安武洋子

    ○安武洋子君 そうでしょう。極東での米軍の戦争に自衛隊がかかわっていくというふうなことは、これは集団的自衛権の行使に含まれるわけですからね。憲法上できないというふうにやはりちゃんと私は押えておいていただかなければいけないと思うんです。  しかし「日本防衛戦略」、この村木杉太郎元統幕事務局長さん、この方が書いておられるんですけれども、たとえば西日本方面に紛争が起きると、わが自衛隊はある程度の支授をせざるを得ないだろうと、そして米軍展開のための輸送を担当することが起こるかもしれない、こういうふうに言われているわけです。こういうことは検討もしないし、将来もこういう検討はしないというふうなことでよろしいですね。
  242. 塩田章

    説明員塩田章君) どなたがどういうことを書いてあるということで一々聞かれても、ちょっといまそれについて一つ一つ的確にお答えできませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、ガイドライン三項に基づく研究に入りました場合に、日本政府として何ができるか、自衛隊として何ができるか、逆に言うとどこまでしかできないかということを踏まえた上で具体的にどういうことができるか、できないかを研究していこう、こういうことでございますので、御了承いただきたいと思います。
  243. 安武洋子

    ○安武洋子君 了承するとかしないとかでなくて、極東で米軍が紛争を起こすと、戦争すると、それに自衛隊がかかわっていくなんということは、これは集団的自衛権の発動ですからね、行使ですからね。私はこんなことは明々白々で、こういう検討はやはりしないと、将来もやはりできないというふうに御答弁になるのが至当じゃありませんか。
  244. 塩田章

    説明員塩田章君) 先ほど来申し上げておりますように、現行法上自衛隊が何ができるか、何ができないかを研究するのだということでございます。それ以上のことを考えておるわけではございません。
  245. 安武洋子

    ○安武洋子君 そんなことは聞かなくてもわかっているわけだから、現行法の枠をはみ出さないように、はみ出しますからね、こういう検討はしないようにということを申し入れております。  それから次に、時間がないので移りますけれども、P3CとF15の購入について伺いますけれどもアメリカはP3Cは百機、それからF15を二百機購入せよと要求していると言われております。防衛庁は五十七年度にはP3C十七機、それからF15四十三機を発注することを内定したと、こういうふうに伝えられておりますが、そうなんでしょうか。
  246. 塩田章

    説明員塩田章君) 内定をしておりません。  それから、アメリカが言った数字もそのとおりであるかどうかを私ここで申し上げるわけにいきませんが、アメリカは具体的にF15を何機とかP3Cを何機とかいうふうに言ったわけではございません。
  247. 安武洋子

    ○安武洋子君 P3CそれからF15、これは五十二年度の閣議了解でP3Cは四十五機、それからF15は百機と決められております。そのうち、残された数というのはそれぞれ二十七機、四十三機ですね。これまでの防衛庁の購入予定は、P3Cは五十七年度は十二機、それから五十九年度は十五機、F15は五十七年度三十二機、五十九年度は十一機、こういう数であったと思いますけれども、これはいかがですか。
  248. 塩田章

    説明員塩田章君) 五三中業の計画のことをおっしゃっておられると思いますが、五三中業は、かねてから申し上げておりますように、年度割りで何年度に何をというふうに具体的に決めたものがあるわけではございません。したがいまして、いまお話のありましたように、五十七年度に何機、五十九年度に何機と、こういうふうに決まったものがあるわけではございません。いずれにしても、五十七、八にそれだけのものを買うという、購入したいということにはなるわけでございますけれども、具体的に何機、何機というふうに振り分けておりたわけではございません。
  249. 安武洋子

    ○安武洋子君 年度別に振り分けをしないでも、一つの目安としてこういう数字を検討なさったと、こういうことはありますね。
  250. 塩田章

    説明員塩田章君) そういうことはあります。
  251. 安武洋子

    ○安武洋子君 アメリカは中業の早期達成を要求しております。それで五十九年度を待たずにP3C、F15、これは閣議了解の数を消化しようとしているのではないかというふうに私は思うわけですけれども、いずれにしましても防衛庁はF15、それからP3Cにつきまして、次期の中業作成前にP3C四十五機、それからF15百機、この目標を引き上げる閣議了解、これがなされなければ私は追加計画は立てられないというふうに思うわけです。だから、国防会議の開催を要求することになるんでしょうか、お伺いします。
  252. 塩田章

    説明員塩田章君) これは今後の問題でございますけれども、国防会議の数字はいまお話しのように決められておりますから、必要によっては、場合によってはひとつ国防会議をお願いせにゃいかぬということになるかもしれませんが、いまそういう具体案があるわけではございません。
  253. 安武洋子

    ○安武洋子君 具体案はないけれども、そういうことで国防会議を開催要求をする可能性もあるというふうに承っていいわけですね。
  254. 塩田章

    説明員塩田章君) 将来あり得るかと言われれば、あり得ると思います。
  255. 安武洋子

    ○安武洋子君 今後の軍事力増強計画とそれから見通しをお伺いいたしますけれども、先ほど同僚議員の質問に対しての御答弁で、五六中業の中で大綱の達成を目指すと、こういうふうに御答弁なさっておられます。それなら、五六中業というのは六十二年度までですね、ですけれども実際には六十一年度から五九中業が始まります。だから、五十九年度には現在の大綱にかわるものを作成しなければならなくなるはずです。そうすれば、五十九年度には大綱の見直しをせざるを得ないということは、これは同時に五十九年度大綱見直しですからね、再来年ぐらいですね、五十八年度ぐらいからその検討に入らざるを得ないと、必然的にこうなりますが、このとおりですね。
  256. 塩田章

    説明員塩田章君) 必ずしも必然的になると思えないのですが、かねて申し上げておりますように、大綱を見直すかどうか検討する時期というのは三つの条件が考えられる。国際情勢あるいは国内の諸情勢あるいは大綱の達成状況、こういったものを考えながら将来検討する時期があるかもしれないという意味のことを申し上げておりますが、現在でもそのような考え方でおります。
  257. 安武洋子

    ○安武洋子君 そうはならないじゃありませんか。先ほどの御答弁で、五六中業の中で大綱の達成を目指すと、こう言われた。だから、繰り返すまでもなく、五六中業というのは六十二年度までと。しかし、実際には六十一年度からは五九中業が始まると、こういうことになるわけですね。ですから五十九年度には、現在の大綱にかわるそういう大綱作成しなければならない。それなら、検討は再来年ぐらいからしなければならない。論理的にこうなるじゃありませんか。いまの御答弁はおかしいと思いますが……。
  258. 塩田章

    説明員塩田章君) 少しもおかしくないと思うんですけれども……。というのは、五六中業は、なるほど大綱の達成を目指すと申しておりますが、それは決まったわけじゃないんです。いま作業をしておるわけです。ですから、現在はそういう時点でございますから、私が申し上げておるのは少しも矛盾しないと思います。
  259. 安武洋子

    ○安武洋子君 目指すと言われておりますけれども、目指して、これをあらかた達成すればこうなりますでしょう。それでなかったら、目指すなんて言うのはおかしいわけですからね。だから私は、五六中業の中で大綱の達成を目指すと言われるなら論理的にこうなりますよと、こうならざるを得ませんよと、こう言っているわけなんです。もう一度御答弁ください。
  260. 塩田章

    説明員塩田章君) 目指すと言っているから論理的に成り立つのであって、できた場合と言えば論理的におかしくなるんですね。私は、いま作業中でありますし、五六中業で達成したいと、目指しておるということを申し上げております。したがいまして私は、私の言っていることは少しも矛盾しないと、こういうふうに思うわけです。
  261. 安武洋子

    ○安武洋子君 いかに作業中であっても、目指すと、大体そこで完成しようというわけですからね。あなたがそうおっしゃろうと、やはり私がいま申し上げたようにならざるを得ないわけなんです。押し問答している時間がありませんので、こんなことをどんどんどんどんやっておられると、この秋には日米安保協議委員会も開かれる。アメリカは、ここでもやはり私は、ソ連脅威論をあおり立てて、日本に対してレーガン政権の、レーガン戦略の一翼を担えというふうなことで大軍拡の要求は具体的に突きつけてくると思います。ですから、行革ということで福祉や教育を切り捨てていくというふうなことをやりながら、軍事費だけは物すごく膨張させていかなければならないと、こういうF15とかP3Cとか、こんな高価な兵器をやはり購入していくというふうな、そして日本を戦争に引きずっていくというふうなこういうやり方については、私は断固やめるべきだということを申し上げて、残念ながら時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。
  262. 柄谷道一

    柄谷道一君 五月七日、八日の鈴木・レーガン会談によりまして発表された日米共同声明は、その第一項から第八、項を通読する限り、論理的にはソ連脅威を出発点として、両国が対ソ軍事力の整備に努力することを共通の認識にしておる、このように私は受けとめるのでございますが、外務省の認識をお伺いします。
  263. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 五月の首脳会談では、まさにその時点における国際情勢、それから日米関係について両首脳の間で包括的な討議を行いまして、そこで幅広い認識一致を確認いたしました。そのことは共同声明にも盛ってございますが、一言で言えば、日米両国は、西側先進国、民主主義国として世界の平和と安定のために相協力していくということでございます。  御指摘対ソ認識でございますけれども、これは共同声明の中で、特に第二項の中にソ連軍事力の増強あるいはアフガンへの軍事介入ということが書いてございまして、そこで日米両国現状認識という点について一致しているわけでございます。
  264. 柄谷道一

    柄谷道一君 ところが、そのような共同声明に対しまして、国内日米軍事同盤化の批判が出てまいりました。そこで総理の姿勢は、このときからぐらつき始め、総理周辺、各大臣発言には取り消し、言い直し、修正が続いたわけでございます。時間の関係でその経緯は省略をいたします。  私は、こうした政府のぐらつきは、対ソ政策で、いわゆるタカ派的なイメージが強いと一部で言われております日米共同声明を何とか中和させたいという思惑がその背景にあったのではないか。また、総理の六月の訪欧に際しましても、その点が特に意識され、対ソ政策と銘打つことは避けながらも、事実上軍事的均衡と対話との間を揺れ動いたというのが素直な国民一般の受けとめ方でございます。  私は現在、国民の中に、また外務省の一部にも、総理はソ連脅威存在という日米共通の認識から逃げるべきではない、その座標軸がぐらぐらすると、日米関係相互信頼を損なうのではないか、西欧諸国もまた日本を信頼しなくなるであろうという意見が強まっていると考えておりますが、外務省の認識はいかがですか。
  265. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 先ほども申し上げましたように、日米首脳会談において、対ソ認識を含めて、そのときの国際情勢について日米両国間で意見の交換を行い、基本的な認識について日米間で意見一致したということは先ほど申し上げたとおりでございます。  わが国の外交は、あくまでも自由主義世界あるいは西側陣営の一員として日米関係、それを基軸としてやっていくと。ただ、その認識は同じでございますけれども、その場合の対応というものは、当然国力、国情に応じて違ったものが出てくるわけでございまして、その点についてはアメリカ側も十分認識しておりますし、いま申し上げました私の国際情勢認識、あるいはそれに基づく日米両国の役割りが、それぞれ国力、国情に応じて異なっていくという点については、アメリカももちろん理解しておりますし、先般のオタワにおける日米の首脳会談、あるいはそれ以前からアメリカ側も、五月の日米首脳会談以後、日本国内においていろんな出来事はあったけれども、それによって日米首脳会談あるいは共同声明、その効果はいささかも減殺されていないということを何度も繰り返して言っておりまして、われわれも同じような認識を持っておる、こういうことでございます。
  266. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまの答弁では、総理の座標軸は揺るぎがない、こう言われるのでございますが、それでは伊東前外務大臣がなぜやめられたのか、高島事務次官がなぜ辞表を提出されたのかということは説明がつかなくなります。  しかし、この問題はさらに次の機会に譲りまして、ソ連と地続きという地政学的な必然性からソ連脅威を痛いほど認識しております欧州各国は、現に大きな軍事費を投入して軍事的均衡を図ろうといたしております。西ドイツはアメリカ戦域核の自国配備を容認いたしましたし、フランスが自前で核武装を行っていることは説明の必要もないと思います。私は、西欧各国は、そのような抑止力を背景として、一方でソ連との対話、経済関係の増大を図るデタント路線を同時進行をさしている、いわば一定の条件、政策的整合性のもとでの対話である、こう認識をするものでございます。わが国の場合、きわめて情緒的に軍事均衡と対話の間を揺れ動く、それではナショナルコンセンサスはとうてい得られるものではないと、こう思いますが、いかがですか。
  267. 秋山光路

    説明員(秋山光路君) 西側の全体がその平和と安定を維持する、確保するという意味合いで、いま北米局長指摘のとおり、各国の国情によってその対応が異なるということを申してきたわけでありますが、この点、今回のサミットにおいてもその点は十分生かされておると私どもは考えております。
  268. 柄谷道一

    柄谷道一君 ちょっと答弁が趣旨と違うんですけれども、時間がもったいないですからまあいいでしょう。  私は、オタワ・サミットは、激動する国際情勢を反映しまして、経済問題でなく東西関係を中心とした政治問題について突っ込んだ討議が行われたことに特色があると思います。過去六回の先進国首脳会談とはその点様相を異にしまして、トルドー議長の名で政治声明を発表いたしております。その中では、ソ連軍事力強化に対する深刻な懸念と防衛力強化の必要性を打ち出しているわけでございます。また、総理は二十一日、レーガン大統領と再会談をいたしまして、日米同盟関係をうたった共同声明を再確認し、その線に沿って防衛力増強についての対話と協調を継続することで意見一致したと報ぜられております。私は、この一連の会談を通じて米欧同盟関係日米同盟関係が結びつけられ、日米欧同盟関係の枠組みをつくり上げたというところに特徴があるのではないか、こう思うのでございます。  ところが、総理はそのオタワ・サミット後の記者会見で、日本が外国と一緒になって強大な軍事力を持つことはあり得ないと発言されております。私はこれはまさに虚の姿勢だろうと思うんでございます。防衛安全保障の問題にわれわれが触れるときに、政府の一貫した答弁は着実な整備、できる範囲内での増強という言葉であり、軍事大国にならないという繰り返しでございます。私は、これはまさに虚の姿勢ではないか、こう思います。防衛力の増強が善か悪か、軍事大国への道を選ぶのかどうか、こういった白か黒かの選択として防衛問題が扱われる、そして政府がその対応に揺り動かされている限り、私は、国民の合意も形成されなければ、西側各国からの信頼も得られるものではない、こう思います。  一部のタカ派の国民を除きまして、国民のほとんどは日本軍事大国にしようとは考えておりません。また西欧各国にも、またASEAN各国にも、日本軍事大国になってほしいと望んでいる国はないと思います。言ってみれば、軍事大国になるかならないかという議論は虚の問題であると言っても私は過言ではない。実の問題とはそれでは何か。それは西側の一員として国際情勢をどのように分析し、日本がどのような防衛安全保障戦略をとるのか、それに必要な防衛力の相対的な質と量、これを日本の置かれた諸条件の中でどのようにすべきか、それによって日本が西側の安全保障にどのように貢献していくのかという具体的問題に真っ正面から取り組み、国会や国民に対して正面から語りかける政府の姿勢ではないか、こう思うのでございます。防衛庁長官の御所見をお伺いします。
  269. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の米国との会談におきまして、米側より、ソ連軍事力の著しい増強ぶりと、また極東における配備の状況についていろいろ説明がございまして、そういった点について協議を交わしました結果、その軍事能力が高まり、そしてそのために国際的緊張が強まっているという点につきましては意見一致を見たところでございます。これに対しまして、わが方としていかになすべきかという点につきましては、これは共同声明第八項にうたわれておりますとおり、憲法、国防の諸原則に従いながら、領域及び周辺海空域の防衛力の改善に一層努めるというのがわが方としてなすべき事柄であると考えているわけでございます。と同時に、安保条約の有効性を高めるために、信頼関係を高めるための努力を払い、また米軍の駐留に伴う経費の負担軽減についても同様に努力していくと、こういうことに相なっているわけでございます。
  270. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は国民が率直に抱いているわが国防衛安全保障に対する政府の姿勢の根幹についてお伺いしているわけでございますけれども、ただいまの御答弁を聞いておりますと、恐らく大多数の国民は政府答弁に大きな失望を抱くのではないか、こう思います。外務省、結構でございます。御苦労様でした。  それでは、具体的な問題にこれから入っていきます。  私は、いま顕在化し、また今後顕在化するおそれのある地域は、アフガニスタン、インドネシア、朝鮮半島、ポーランド、中近東の地域ではないか。そして、その背景にあるソ連の急速な軍拡と西側との間の不均衡が生じたことではないかと、こう思います。たとえば具体的に、ソ連の国防費は現在二千七百億ドル、アメリカのそれと比較いたしまして五〇%増だと言われております。核兵器数はICBMが六九年に、SLBMが七三年に、それぞれ量においてソ連米国を上回った。アメリカはスイング戦略をとらざるを得なくなり、第七艦隊の中東、インド洋に展開したことによって西太平洋に穴があいた。また、中近東で仮に紛争が不幸にして発生した場合、ソ連からは九百マイル、アメリカは空路で七千ないし一万二千マイルで、米ソの空輸能力に大きな差がある。通常兵力においても、ソ連アメリカと比較いたしまして、地上軍で二・四倍、艦艇数で三・六倍、要撃機数で十・八倍、極東地域においても地上軍は五・二倍、艦艇数が十三・七倍、航空機が三倍と、大きな差がある。これらのことが私は、軍事的な不均衡が抑止力を弱めているんではないかというのが、日米会談そしてオタワ・サミットにおいて具体的に表現されているソ連脅威という表現になってあらわれてきているんではないか、こう思うんですが、いかがです。
  271. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま地域別に具体的な数字を挙げてのお話でございましたが、いま挙げられました細部の数字等につきましては、御指摘のとおりのものもございますし、若干違う点もありやしないか、あるいは不明な点もあるかと思いますが、お尋ねのこの米ソ間における国防費、戦略核戦力及び通常戦力の比較並びに軍事体制等に関する総体としての見方におきましては、日米間で認識の差はないものと考えているわけでございます。いずれにしろ、ソ連の世界的規模にわたる長期かつ大幅な軍事力増強及びこれを背景とした第三世界への勢力拡張などから、国際情勢が厳しさを増していることについては意見一致を見たわけでございます。  また、米ソ軍事バランスは、ほおっておけば遠からずソ連が優位に立つ趨勢にあるとされていること、さらにソ連は欧州、極東など幾つかの正面においてそれぞれ作戦し得る態勢をとっていると見られることといった基礎的な点につきましては日米間の認識一致しているものでございます。
  272. 柄谷道一

    柄谷道一君 七月十五日の衆議院安保特別委員会で岡崎参事官は、防御白書発表以降のこの一年間の極東ソ連軍等の増強についての具体的な数字を発表され、本日もまた本委員会でその数字を述べられてきたところでございます。  そこでお伺いいたしますが、朝鮮民主主義人民共和国の軍備の現状、この一年間の変化について、現時点で把握している数字を明らかにしていただきたいと思います。
  273. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 北朝鮮につきましては、最も注目すべきことは、過去十年間にわたります陸軍を中心とする大幅な増勢でございます。この結果、北朝鮮の軍備は現在次のとおりでございますが、昨年との比較という御質問にはちょっとそのままの数字をいま持ち合わせておりませんけれども、陸軍は四十個師団、約六十万人でございます。六十万という数字は昨年とほぼ同じでございますけれども、六十万よりも多いのではないかというような推定があちこちに出てきております。それから、特に最近は歩兵部隊の機械化には著しいものがございます。それから、不正規戦用の部隊でございますが、これは従来八万とか十万とか言われていたんでございますけれども、われわれいま十万というふうに想定をしております。  それから海軍は、潜水艦十六隻を含む四百八十隻、約六・七万トンでございまして、この一年間で約二十隻増加しております。  それから空軍は、約六百十五機の作戦機を保持しておりまして、この一年間で約四十五機の増加がございます。  なお、南北間の兵力比率、特に陸軍兵力の比率につきましては、これはアメリカの推計でございますけれども北朝鮮軍が韓国に対して戦車で約二・五倍、装甲車で約二倍、野砲類で二、三倍まさっていると、かように報告されております。
  274. 柄谷道一

    柄谷道一君 そうした軍備の増強について、防衛庁潜在的脅威認識しておられますか。また、この朝鮮半島の状態について米軍認識はどうであったのか、お伺いします。
  275. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 朝鮮半島の平和と安定の保持は、わが国の、安全保障にとって緊要であるばかりでなく、東アジア全域の平和と安定にも重要な事案であると考えております。  そこで、朝鮮民主主義人民共和国の最近における軍事力増強は、朝鮮半島の軍事バランスに影響を与えるものであり、ひいては、直接的ではないとしてもわが国に影響を及ぼす可能性があるものと考えております。ただ、潜在的脅威であるかどうかと申しますと、この点につきましては、潜在的脅威と申しますことは必ずしもわが国の国益に沿うものとは考えておりません。  米国は、韓国防衛に当たっていることから、わが国とは立場は異なりますが、基本的には同様な認識を有しているものと考えております。
  276. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、アメリカ側は六月のハワイ協議などを通じまして、ソ連による同時多発侵攻のシナリオによって極東、特に朝鮮半島に起こった有事が日本に波及する事態の研究に熱意を示した。そして、そのチャンネル及びスタッフは今後調整を残しているけれども、統幕事務局と在日米軍との間で極東有事の研究、すなわちガイドライン第三項の下相談を行うと防衛局長は衆議院安保特別委員会で答弁されていると承知しております。  といたしますと、この極東有事の研究は、朝鮮半島の情勢とどういう関連を持っているのかお伺いします。
  277. 塩田章

    説明員塩田章君) いま御指摘の点は、ちょっと私のお答えしたところと違っておりますので、正確を期して申し上げたいと思いますが、私が衆議院の安保特で言いましたのは、朝鮮半島で有事の事態が発生して、それが日本に及ぶ場合をシナリオとして考えるという、そのための研究を行うんだというふうにいま先生おっしゃいましたが、そういうわけではございません。いまガイドラインに基づく、一つのシナリオに基づく研究が行われて、一つ結論を得ようとしておりますが、これは日本が攻撃をされた場合、つまり安保条約第五条の場合でございます。今度アメリカ側が希望しておりますのは、安保条約第六条の場合を研究しようではないかと、こう言っているわけです。そのシナリオがどういうシナリオになるかということは、いまからそういうことも含めて検討しようじゃないかと、こういう段階でございますから、必ずしも朝鮮半島で事態が発生して、それが日本に及んでくるんだということを前提にしておるわけではございません。  それから、今後どういうふうに進めていくかということにつきまして、統幕事務局等を窓口にして云々ということを確かに私、下相談という意味でお答えをしたわけでございますが、これはまさに下相談でございまして、これはどちらかといいますと主体は外務省にもなりますので、直接私どもが申し上げるべき立場じゃございませんけれども、従来、現在の共同作戦計画の研究について統幕事務局が当たってきておりますので、そういう点からいって向こうとの窓口が現在形成されております。そこで、まあ今後どうするかということについての下相談はあるんじゃなかろうかと。もちろん、それを受けてどういうふうに進めていくか、どういうシナリオでいくかということにつきましては、われわれ外務省とよく相談してやっていかなければならないと考えております。
  278. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、一連の日米会談の中で、これは新聞の報道でございますけれども、即応性すなわち人員充足率の上昇、継戦能力すなわち弾薬、燃料、部品の備蓄、指揮・通信機能C3Iの充実、装備の近代化、特に防空・対潜能力の向上等が語り合われた。そこで具体的に日本側は、十八機編隊の迎撃機一個飛行隊を二十五機編隊に改める。大綱で定める十個隊のままでアメリカ要求の十四個隊に相当する機数をそろえるとか、護衛艦隻数については大綱の六十隻は変えない、そのかわりにすべての護衛艦をミサイル化して対潜・防空能力アメリカの要請に近づける。  このように、いわば大綱の形式を堅持しながら、装備の近代化や部隊編成の変更によって実質的に大綱を乗り越えた水準達成を図りたいと日本側説明したのに対し、アメリカ大綱そのものの見直しを譲らなかったと、こう報道されているんでございますけれども、流れはそのとおりでございますか。
  279. 塩田章

    説明員塩田章君) 大変違っておりますので、はっきり申し上げたいと思うんですが、たとえば十八機編成を二十五機編成にするとか、そういうことをわれわれが考えておるとか、あるいはそれをましてや相手側が言ったとか、そういうことは全然ございません。今回は、ハワイ会談、ワシントン会談を通じまして、そういうことを向こうが言ったと、それがしかも試案であると、今後協議の土台にしようという意味の提案があったということだけでございまして、それをどう受けとめるかは全く今後の課題でございまして、先ほど防衛庁長官からもお答えいたしましたが、今後協議の中で参考になるものがあればそれは取り入れていきましょうということを申し上げましたが、まさにそういう段階でございまして、いま先生の御指摘のようなことは一切まだございません。
  280. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、アメリカ側がP3C百機、要撃戦闘機部隊十八個飛行隊、護衛艦七十隻、潜水艦二十隻、弾薬備蓄三カ月分というものを要請したという新聞報道も事実と違うわけですか。
  281. 塩田章

    説明員塩田章君) いろいろ確かに具体的に数字を言ったことは事実でございますが、先ほど午前中の質疑にもあったと思いますが、これはあくまでもフリーなディスカッションを行うというたてまえから、具体的な数字は公表しないということで会談に臨んでおります。米側との約束でございますので、具体的にどういう数字があったかをここで申し上げることは御勘弁いただきたいと思います。
  282. 柄谷道一

    柄谷道一君 アメリカとの約束で言えないということですから、これは聞いてもむだだと思いますが、深く否定をされなかったんで、大体そこらの線だろうと推測をいたしておきます。  そこで、それは別として、防衛庁長官長官アメリカの要請について——要求というのか、要請というのか、希望というのかそれはわかりませんが、どの部分についてインポシブルと答え、どの部分についてポシブルと答えられたのか、お漏らし願う範囲でお答えをいただきたい。
  283. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私がワインバーガー国防長官等と会談しました場合には、いまお話の出ましたような具体的な数字は会談の席上先方からも出されなかったわけでございます。先ほど来、お尋ねに対してお答えしましたとおり、ソ連軍事力の増強、またそれに対してアメリカが非常な困難を冒して努力を始めていると、同盟諸国においてもその立場防衛努力をやってほしいと、こういういわば一般的な見解のあれがあったわけでございます。それに対しまして私は、わが国立場でどういう努力をしているかということをるる御説明いたしたわけでございます。それに対しまして先方から、その点は理解できるけれども、なおもっと早く、もっと大きく努力してほしいと、こういう見解の表明があり、今後なお両国間で継続協議していこうと、こういうことになった次第でございまして、どの点はいいとかどの点は悪いとか、そういうやりとりをいたしたわけでございませんので、せっかくのお尋ねでございますが、直接のお答えはお許しを願いたい、こう思うわけでございます。
  284. 柄谷道一

    柄谷道一君 どうも答弁食い違っているんですよね。局長日米間の約束だからアメリカの要請は言えないと言ったんですね。ということは、そんな一般的な話し合いとか情緒的な話し合いなら言えるんですよ。言えないということは、やはり具体的数字が述べられたと、しかし、その内容は言えませんよということだと思うんですね。そこで、いま長官のお答えはそれと趣を異にいたしまして、防衛長官ワインバーガー国防長官の話はきわめて一般論であり、情緒的に、世界の平和大変むずかしいものですなと、世間話とは失礼ではございますけれども、そのような話がされたと。この両者の答弁、大変食い違っておりますので、私この点も突きたいんですけれども、質問時間が迫っておりますので、これは私の所感だけを言っておきます。
  285. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 委員長、ちょっと……。  ワインバーガー国防長官との会談が何か和気あいあいとしておったようなお尋ねでございますが、そうではございません。ソ連軍事力の増強につきましてきわめて憂慮を示されておりました。また、米国政府が今回の予算措置を講じましたいきさつ等につきましてもきわめて真剣な態度で説明がございましたので、私の方からは、日本立場において現在努力しておりますことを誠意を込めて真剣に御説明した、そういったやりとりがあったということをつけ加えさせていただきます。
  286. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあいいでしょう。  そこで、防衛庁は今日までの答弁、私ずっと整理してみますと、これは一貫しているんですね。それは、防衛大綱は策定当時と比べて国際情勢が大きく変化していることはそのとおりである。しかし、大綱に示されている基本的な考え方は、平和時において備えるべき最低限の防衛力ということであり、直ちに大綱を見直すまでの必要は生じていない。で、国際情勢の変化、国民世論の動向、経済・財政状況等の国内情勢大綱水準の達成状況といった三項目を見きわめ、将来大綱を見直す時期が来るかもしれないが、いまはその情勢ではない。こういうことなんですよ、どの委員会で御質問しましても。  ところが、防衛大綱を私一遍隅から隅まで読んでみたんです。すると、五十五年八月の防衛白書の九十二ページには、いわゆる別表が明らかにされております。それと対照して九十八ページに現有勢力が記載されているわけでございます。そこで私、これ一覧表を自分でつくってみました。すると、大綱と現有勢力の差は、陸上自衛隊においては、平時地域配備する部隊のうち一個混成団。海上自衛隊の場合は、対潜水上艦艇部隊、これは地方隊が一個隊、潜水艦部隊一個隊、主要装備としては、対潜水上艦艇一隻、潜水艦二隻、作戦用航空機約三十機。航空自衛隊になりますと、警戒飛行部隊一個飛行隊、作戦用航空機二十機。これだけなんです。あとは全部大綱と水準は一致いたしておるわけでございます。しかもこの大綱の二百四十九ぺ−ジにも、規模的には目標とするところとほぼ同水準にあると思われる、こう書かれているわけですね。  問題は、大綱水準の達成達成と言っておりますけれども、これだけではわからないんです。要は、人員充足率をどこまで上げるのか、部隊編成をどうするのか、装備近代化をどうするのかといった、いわゆる質の問題というものを明らかにしない限り、いま政府が当面大綱水準の達成と言っておりますけれども、一体どこに向かってどの水準まで整備しようとしているかということは国民の目にはわからないというのが防衛白書を読んだ率直な所感でございます。  いま中尾委員の方からもその要求がございましたけれども、そうした秘密に触れない範囲で、質を含めていかなる水準に到達しようとしておるのか、その資料は御提示願えますか。
  287. 塩田章

    説明員塩田章君) まさに先生のおっしゃるとおりのことであろうと思います。ただ、質は別表のように数的にあらわせないものでございますから、具体的にどういう表でお答えできますか、いまちょっとわかりませんが、いずれにしましても、大綱の水準に達する達すると言っているのは、数字的な面と同時に質的な面がある。その面につきまして数的な面も、もちろん質的な面も含めて現在作業をやっております。その結果でどういうものが出てくるかというのはまだいま何ともわかりませんけれども、そういう両面を含んでおりますことは事実でございまして、先生の御指摘のように、数的な面だけの比較でちょっとわかりにくいとおっしゃることはそのとおりであると思います。ただ、質的なものをどう表現するかというのはなかなかむずかしゅうございますので、どういう表ができますか、いまちょっとわかりませんけど、工夫してみたいと思います。
  288. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、用意いたしました質問は、そのほかにも航路帯千海里上空の防衛能力の整備の問題、さらに在日米経費の負担増、特に日本人従業員の労務費の負担枠増加の問題などなど多くの質問を用意してきておったんですが、時間があと三分程度しかございませんので一つの問題にしぼりたいと思いますが、それは、いま山崎委員からも触れられましたが、陸上自衛隊の充足率の問題でございます。  現在、陸上自衛隊は一口に十八万体制と言われておりますけれども、実際は八六%の充足率であって、隊員数は十五万四千名にとどまっております。しかもこの八六%というのはあくまでも陸上自衛隊の総平均でございまして、司令部、航空部隊、対空ミサイル・ホーク部隊、さらには補給処、業務隊、学校等が一〇〇%充足されておりますし、北海道では新たに設置されました第七機甲師団、これの充足率も高い。したがって、いわゆる普通科の場合はさらにその充足率が低くなって、大体連隊で六七%、中隊で五〇%程度の充足率にしかすぎないと、こう言われているわけですね。事実、われわれが視察さしていただいた第五師団でも、その充足率がきわめて低いという指摘が師団長から出されました。私は、これ古い話ですけれども、かって予備士官学校で、これは戦時中の充足率というのは、戦史ということでございますけれども、七〇%を割ったらもう攻撃は不可能だ、五〇%を割れば防御そのものもむずかしくなるというのが一般軍事的常識なんですね。そこで、この低い、特に第一線師団、普通師団の充足率の低さということは、果たしてこの現状のままで抑止力たり得るのかどうか、この点に大きな疑問が投げかけられておることは事実だと思います。  そこで、陸上自衛隊では去る十九日に、五十七年度予算要求で人員充足率の一%アップを最優先項目にする、こう決めたと報道されているわけでございますが、防衛庁のお考えをお伺いしたい。  なおその場合、予算総枠は七・五%のシーリングの枠がございます。人員充足に重点、最優先順位を置くとすれば、それは必然的に正面装備の増強、近代化、また弾薬備蓄等の継戦能力の増大は制限される結果となると、こう思いますが、いかがでございますか。  この二点をお伺いします。
  289. 塩田章

    説明員塩田章君) 御指摘の点は、いままさに検討中でございまして、何%充足を要求するかというようなことをまだ決めておる段階ではございません。  また、後段で御指摘のように、この充足の問題は、同時にそれは七・五%のシーリングがあるわけですから、その中でそれは当然その額いかんによってそれ相応の隊への影響があるということも、これはもう事実でございます。その辺をにらみ合わせて今後検討していきたいと考えておるわけであります。
  290. 柄谷道一

    柄谷道一君 質問を残しますが、これで一応終わります。
  291. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会      —————・—————