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1981-05-27 第94回国会 参議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月二十七日(水曜日)    午後一時四分開会     —————————————    委員異動  五月二十七日     辞任         補欠選任      石破 二朗君     板垣  正君      鍋島 直紹君     中村 啓一君      広田 幸一君     佐藤 三吾君      大川 清幸君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         亀長 友義君     理 事                 金井 元彦君                 熊谷  弘君                 志苫  裕君                 伊藤 郁男君     委 員                 板垣  正君                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 後藤 正夫君                 名尾 良孝君                 福田 宏一君                 小谷  守君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 和泉 照雄君                 神谷信之助君                 美濃部亮吉君    国務大臣        自 治 大 臣  安孫子藤吉君    政府委員        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       金子 憲五君        自治大臣官房審        議官       川俣 芳郎君        自治省行政局長  砂子田 隆君        自治省行政局公        務員部長     宮尾  盤君        自治省財政局長  土屋 佳照君        自治省税務局長  石原 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    参考人        二本松市長    石川 信義君        立教大学教授   和田 八束君        関西学院大学講        師        高寄 昇三君        自治体問題研究        所主任研究員   中西 啓之君        関西学院大学教        授        橋本  徹君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、石破二朗君、鍋島直紹君及び広田幸一君が委員を辞任され、その補欠として板垣正君、中村啓一君及び佐藤三吾君が選任されました。     —————————————
  3. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として二本松市長石川信義君、立教大学教授和田八束君、関西学院大学講師高寄昇三君、自治体問題研究所主任研究員中西啓之君及び関西学院大学教授橋本徹君、以上五名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、皆様には御多忙中のところ本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  本案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にいたしたいと存じますのでよろしくお願い申し上げます。  なお、議事の進行上、参考人方々にはそれぞれ十五分程度意見を順次お述べ願い、陳述が全部終わりました後に、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。  それでは、まず、石川参考人お願いいたします。
  4. 石川信義

    参考人石川信義君) 御紹介をいただきました、全国市長会の相談役をいたしております福島県二本松市長石川でございます。  地方行政委員会の諸先生方には、地方行財政の諸問題につきまして日ごろ格別の御支援を賜っておりまして、厚く御礼を申し上げます。  本日は、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、地方団体を代表して意見を述べる機会をいただきましたので、地方の第一線で直接行政に携わっている者の立場から、地方財政をめぐる問題点中心に若干の意見を申し述べたいと思っております。  昭和五十六年度地方財政計画は、総額四十四兆五千五百九億円と策定されまして、前年度に対する規模伸び率は七%で、その内容におきましても、日ごろ住民の要望の強い単独事業について八%の伸び財源確保されていること、さらに、財源対策債縮減によりまして歳入に占める一般財源構成比が高まり、財政構造改善に着手されている等の配慮がなされており、現時点における措置としては一応の評価をするものでございます。  また、地方財政計画策定前提となった地方財政対策について、前年度財源不足額は二兆五百五十億円でございましたが、五十六年度においては所要の措置により不足額が一兆三百億にとどまったわけでございます。この財源不足見込額については、臨時地方特例交付金交付税特別会計借り入れによる地方交付税の増三千四百億、建設地方債の増発六千九百億をもって補てんする措置が講ぜられ、当面五十六年度の単年度財政運営に支障を来さないよう措置が講ぜられております。したがいまして、これらの措置に基づく本改正案は、当面とらざるを得ない措置内容であり、これを前提として地方財政計画が策定されており、すでに動き出しておるものでございますので、きわめて当然の措置として賛意を表するものでございます。  御案内のとおり、地方財政実態は、昭和五十年度以降毎年巨額の財源不足を生じ、この状態が解決されないまま今日に至っております。また、各年度地方財政対策は、いずれもいわば臨時応急的な措置でございまして、その結果、五十六年度末における地方債残高は三十一兆五千億、さらに交付税特別会計借入残高七兆八千億を加えますと、地方借金は三十九兆五千億にも達することとなります。そのため、財政構造の悪化を招き、地方財政基盤の確立は緊急課題となっております。もちろん地方自治体においても行政簡素化財政効率的運用を図り、経費の節減に極力努めているところでありますが、先ほど申し上げましたとおり、財源総量の絶対的不足地方債の累増に伴う公債費並びに国の施策による義務的経費増大によりまして財政硬直化を招いております。したがって、地方自治体努力だけでは歳出の圧縮にも限界がございます。現行制度のままで推移することになりますと、地方財政状況は一段と厳しくなることは当然でございます。  以上のような状況を踏まえて、財政問題を中心に主要な事項について意見を述べさせていただきます。  第一は一地方一般財源拡充強化でございます。  地方行財政制度は、国と地方事務合理化及びこれに伴う財源配分を明確にした上で、地方自治体財源は本来その行政運営に必要な経費住民自身負担する税によって賄い、さらに不足する額について税源の偏在による調整機能として、いわば地方公共団体共有地方税とも言うべき地方交付税により保障することが必要であると考えております。しかしながら、最近における地方財政、特に都市財政状況は、財政需要増大に反し税収入構成比が、歳入中に占める割合が低下して、これをカバーすべき地方交付税も必ずしも十分でないため財政硬直化を招き、その弾力性を著しく欠いているのが実情でございます。  御理解をいただくために、二本松市の昭和五十六年度予算編成実態についてお聞き取りいただきたいと存じております。  国の策定する地方財政計画トータルでの話でございまして、府県の場合は、規模の大小はございますけれども内容としては大体同種のものでございますが、市町村となりますと全く区々でございます。  私ども一般財源について申し上げますが、酒税、地方譲与税自動車取得税交付金娯楽施設利用税交付金地方交付税使用料、手数料、財産収入、諸収入、これらをトータルいたしまして三十七億九百八十万七千円でございます。そのうち一番多い額が地方交付税の十七億七千七百七十四万七千円ということになっております。  歳出でございますが、人件費中国補助のつくものを除きまして、純粋の市の負担となる分が十三億二千八百万——端数がございますが。それから事務経費で、物件費、委託料、役務費等トータルで、これも国庫補助のつくものがございますので、それらを差し引きまして、特定財源を差し引いて純粋な市の持ち出しで四億一千六百八十万一千円。建設事業、いわゆる公共事業補助のつくものの補助起債で充当したものの残で市の持ち出し分が三億四千四百十万六千円。それから国、県が打ち出します各種政策経費がございます。もちろん任意制ではございますが、周辺市町村がやっている場合にやらないというわけには結果的にいきませんので、その政策経費の市の持ち出し分が二億九千二万五千円。それから保育所とか区画整理とか、そういう特別会計の繰り出しが四千万ちょっとでございます。それから広域行政組合負担金が三億五千七百五十九万七千円、わりあい大きな数字になっております。この中で、消防は例のとおりでございますが、衛生関係施設起債償還維持経費、そういうことで二億を超す金額になっているわけでございます。それから公債費が六億六千二百九万五千円。それから開発公社土地開発基金等先行取得をしておりますものの年度払い込み分が二億四百万、維持補修費が三千四百万で、トータルで三十六億七千八百四十三万五千円となります。  一般財源歳入からこういういわば義務経費的なものを差し引きますと、残りが三千百三十七万二千円という数字になるわけでございます。これがいわば市長としてある程度自主的に配分できる予算である。予算総額は六十七億くらいになっておりますが、その中には補助金があり、あるいは臨時地方道整備債のような大型の借金があり、そういうことで三十七億の財源に対して六十七億程度予算になるわけでございますけれども、その中で、自治体の長として自分の意思で予算編成できる金が何と三千百万であるという結果になっているわけでございまして、これらについては産業行政、農業、商工業、観光あるいは教育関係社会教育社会体育、それらの市独自の施策各種団体に対する補助金等でどうしても二億近くがかかるわけでございます。五十六年度の場合は、一億三千万程度財産処分をする——処分する財産を持っているだけ幸せかもしれませんが。それから五十五年度繰り越しを約三千八百万ほど見て予算のつじつまを合わしているというのが実情でございます。こういうことが弱小都市財源実態であるということを御理解いただきたいと思うわけでございます。したがいまして、今後歳入の根幹をなす地方独立税源、特に市町村税制拡充強化を図るとともに、地方交付税総額確保について特別の御配慮を賜りたいと存じます。  この際、地方交付税総額確保について付言させていただきますと、御案内のように、地方交付税法第六条の三第二項においては、引き続き地方財源不足が生じた場合には地方行財政制度改正または交付税率変更を行うものと規定されておりますが、最近の状況は、まさに法改正を必要としている事態にあることは御承知のとおりでございます。したがいまして、前述の地方税源確保とあわせて、地方交付税制度について交付税率引き上げ等、安定的な交付税総額確保を図るための抜本的な改正を早急に行って地方一般財源拡充強化お願いする次第でございます。  さらに、地方財政支出実態に即した適確財源確保するため、基準財政需要額算定に当たっては、引き続き算定強化を図られるよう、特に御配慮いただきたいと存じます。  なお、財源対策債は、本来一般財源措置すべきものを地方債に振りかえられているものでございまして、将来の財政負担を軽減し、財政構造改善を図るためには、今後引き続き縮減に努めていただきたいと存じます。  第二は、国庫補助負担金の問題でございます。  補助負担金等につきましては、地方自治体自主的財政運営効率的運用とを図る見地から、全国市長会はもちろんのこと、地方団体におきましてもその改善合理化をかねてから強く要望しておるところでございます。特に全国市長会においては、具体的改善意見を決定して、地方自主性を尊重し、国、地方を通ずる財政資金効率化を図り、行政経費のむだを省く観点から、国庫補助制度のあり方について一般財源化の促進、補助金統合メニュー化総合補助金制度事務手続簡素合理化等、具体的な改善意見を取りまとめて、その推進をお願いしているところでございます。  また、地方超過負担につきましては、諸先生方に従来とも格別の御尽力をいただきまして逐年解消措置が講ぜられておりますが、まだ不十分でございます。引き続き改善を図られるよう御尽力お願いするものでございます。  第三は、現在政府が検討されている行財政改革の問題であります。  政府は、総合的かつ中長期的な行財政改革構想を策定するため、臨時行政調査会を設置し、今後の行政改革の指針と具体的な改革計画の作成に取り組むこととされております。地方自治体行政改革を実施し、国と地方を通ずる簡素にして能率的な行財政制度を確立することは国民的要請であると理解しておりまして、国と協力してその実現に努力すべきものと承知をいたしております。ただし、今日の行政改革を行うに当たっては、地方公共団体が全面的に協力できるような配慮が必要でございまして、そのために地方団体は先般行政改革に関する意見を取りまとめ、関係方面に提出しておるところでございます。  この際、若干の点に触れさしていただきますと、当面の緊急課題として取り上げるとされている国庫補助金等整理合理化については、対象事務事業を再検討して事業整理を行い、補助金整理すること。なお、この場合には法令等改正によりその旨を明確にすること。事務事業の廃止を伴わない単なる補助率等引き下げ等は、地方への負担を転嫁するということになりますので行わないこと。事務事業の再配分に伴い地方公共団体負担となるものについては、これに相当する財源措置をしていただくこと。  また、最近の国の財政危機を打開するため地方交付税を減額する議論が見られますが、これは地方財政実態地方交付税の性格からして私どもはとうてい容認できないものであることを御理解いただけると存じております。  最後に、本改正法案早期成立についてお願い申し上げます。本委員会先生方は、あらゆる立場から地方財政健全化について御努力をいただいているところでございまして、御承知おきいただいていると思いますが、年度当初においては、地方団体は税の収納が少ない、反面、財政支出がかさんで、資金繰りに非常に苦しんでいるところでございます。本改正法案成立を見ていないために、すでに交付されている四月概算交付額は、千三百二十八億円が未交付となっております。六月概算交付の時期を迎え、さらに同額の地方交付税が未交付となることが懸念されるわけでございます。したがいまして、多くの団体が一時借り入れによって賄っており容易でないところに、さらに金利負担を生ずるということになるわけでございます。私どものような貧乏な団体では特に悩みでございますので、格別の御考慮を賜りまして、一日も早く法案を通していただくよう強くお願いを申し上げる次第でございます。  以上、よろしくお願いを申し上げます。
  5. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ありがとうございました。  次に、和田参考人お願いいたします。
  6. 和田八束

    参考人和田八束君) 立教大学和田でございます。  昭和五十六年度地方交付税法改正に関連いたしまして、若干私見を申し述べさしていただきたいと存じます。  五十六年度におきます地方財源不足が一兆三百億円というふうに言われておるわけでありまして、最近続けて不足であったわけですけれども、五十六年度はかなり減ったというふうな結果になっております。いずれにしましても、最近の推移を見てみますと、国の方での財政難のもとでともかく交付税総額確保されてきたということは、関係者努力の結果であるというふうに私としては一応評価をしたいと思います。もっとも、財源不足という言葉自体は余り適切ではないわけでありまして、御承知のように、交付税法における財源不足額というのは、基準財政需要額基準財政収入額との差をもって言っているわけでありまして、最近年次において財源不足というふうに言っておりますのは事実上交付税不足額でありまして、本年度の例で言いますと、八兆七千億円に財源対策債を含めて大体九兆四千億円程度財源不足というふうに言うべきでありまして、一兆三百億円はこれは交付税不足額というふうに言う方がよろしいのではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、一応地方財政として必要な最低限の財源確保されてきたというのは、国の財政当局との折衝その他の努力は多としたいというふうに思うわけでございます。  しかし、それにいたしましても、このような方式を長らく続けるということは法律の上から言っても妥当ではありませんし、実態面から言いましても決して好ましいことではないと思うわけでありまして、当然これは基本的に交付税率引き上げによるべきであるというふうに考えるわけであります。もっとも、交付税制度全体について言いますと、交付税率引き上げで万事解決するというものではありませんけれども交付税額確保という点から見ますと、まず第一に交付税率引き上げというものを優先して考えるべきであって、財源対策債発行というのはきわめてまずいというふうに考えるわけであります。おおよそ、ことしの場合で言いますと、三七%程度交付税率にならなければならない、これは財源対策債も含めてですが、というふうに考えますので、約五%程度引き上げが必要であろうというふうに考えるわけです。  現在、交付税制度というのはどういうふうになっているのかというふうになりますと、きわめてわかりにくくなっているわけであります。五十六年度の例で見ましても、交付税中身といいますのは五つあるわけであります。  一つは、本来の交付税でありまして、三税の三二%というのがこれに当たるわけであります。これが骨格であるということは言うまでもないわけです。  それから第二番目には、毎年度出されております臨時特例交付金による財政措置というのがあるわけです。これは毎年事情が変わりまして、いろいろな要素、要因というものが入っておりまして、返済方法というのも違っているわけでありまして、国と地方とで折半して返済その他の負担あるいは臨時中身というのは違ってくるわけでありますけれども、いずれにしても臨時特例交付金がある。  それから三番目には、借り入れ臨特というふうに言われておりますものでありまして、借り入れに対して二分の一を臨特措置するというものであるわけです。つまり既往の、すでに借り入れている分の二分の一の国庫負担をするというわけであります。  それから四番目には、財源対策債利子負担に係るいわゆる利差臨特というふうに言われておるものが四番目になるわけです。  それから五番目に地方債というのがあるわけでありまして、これが充当率変更かさ上げ等によって行われているというようなことであります。  地方交付税としてあらわれてくるのは一から四まででありまして、本来の交付税と毎年度臨特借り入れ臨特利差臨特というふうなものが合わさったものが出てくるわけで、地方債分は別になるわけでありますけれども、こうしたものが地方交付税として予算計上されるわけでありますが、一体これが交付税制度として一括して言えるのかどうかという点については大いに疑問とせざるを得ないわけです。こういうふうないろいろな措置をともかく毎年操作をして、そうして交付税総額確保し、そしてできるだけ自治体負担を軽くしてきたという当局努力評価するわけでありますけれども、こういう複雑な措置制度として永続されるということについては問題があるというふうに考えるわけであります。  以上のようなことから交付税計算が非常に不明確になっており、非常に複雑化しているわけです。五十六年度の例で言いましても、結局、足し算をしたり引き算をしたりして数字合わせをしているということであります。中でも、五十六年度で言いますと、交付税特別会計からの借り入れ償還方法変更によって一部財源を生み出している。それから五十四年度繰越分の計上、つまり五十五年度予算における補正繰り越しを計上しているというようなことになっておりまして、結局必要財源から足したり引いたりするということで数字合わせの技術といいますか、そうしたことで、最初に申し上げました一兆三百億円という不足額に落ちつかせているということであります。  これはよくよく見たり聞いたりしないとわからないわけでありまして、一般国民にとってはきわめてわかりにくいことではなかろうか。何よりもやっぱり、交付税というのはもともと複雑でわからないわけでありますけれども総額計算というのは少なくとももうちょっとわかりやすくしなければならないのではなかろうかというふうに思います。また、その足し算引き算の過程で、果たしてそういう足し算引き算が妥当なのかどうかというふうなことについても問題があるわけでありまして、たとえば繰越分でありますけれども、五十五年度補正予算において繰り越した分が計上されるわけでありますけれども、これは結局交付税特別会計における精算以前であるという年度の帰属の問題もありますけれども、また、五十五年度でも地方財政の方は財源不足状態であったわけでありまして、そういたしますと、やはり繰り越しよりも特別交付税その他で交付する金額をもっとふやしてもよかったのではないかというような点など、どうも数字合わせのために五十五年度繰越分を無理して五十六年度に持ってきているというような操作というのは、かなり疑問を持たざるを得ないわけであります。  次に、財源対策債も毎年発行されているわけでありますけれども、これは交付税一般財源の保障であるという制度のたてまえから見まして、やはり好ましいことではない。早急にこれはやめるべきであるというふうに思うわけであります。ただ、財源対策債につきましては、減ってはきているわけですけれども、しかし、今年度の場合には一兆三百億円の財源不足のうち六千九百億円が財源対策債でありますので、例年に比べてウエートが高いというところは問題だろうと思います。もっとも、逆に言いますと、財源対策債を余り少なくしてしまうと、五条債充当率が急速に低下することによって地方財政を圧迫するということになりかねないわけであります。つまりこのところがもう一つの問題でありまして、財源対策債発行するということは、このように地方財政にとって不安定要因を強めるということになるわけでありまして、交付税制度はもともと財政安定化もねらいとしているという点から言いますと、財源対策債発行という操作によりまして不安定化を強めているということでありますので、この点は速やかにやめるべきであるというふうに考えるわけであります。  それから、交付税不足分につきましては、毎年度借入金資金運用部資金からの借り入れによって行われているわけでありますけれども、この残高がかなりの金額になってきておる。七・八兆円程度になると見込まれているわけであります。この償還というのは五十九年度以降次第にふえて、六十五年度ぐらいにピークを迎えるわけでありまして、大体五千億円程度になると見込まれているわけであります。この償還をどのようにするのか。この財政負担について、改めて国の負担、あるいはそれに対する財政保障というものを考えるべきであろうというふうに考えます。これについては従来までも検討は加えられなかったわけではないんですけれども、しかし、今後非常に大きな問題だろうと思います。  それから次に、このような状態を見てみますと、昭和二十九年度地方交付税制度ができたわけでありますけれども、この地方交付税制度のあり方というのは事実上崩れてしまっているというふうに言わざるを得ないわけであります。二十九年度における地方交付税制度成立というのは、それ以前の地方財政平衡交付制度に比べて長短あると思いますけれども、今日までの事態を見てみますと、ほぼ交付税制度というのはメリットが高かったというふうに考えているわけであります。地方財政に対して比較的安定的な財源を与えてきたという事実は否定できないわけでありますけれども、四十年度の国債の発行以降、特に昭和五十年以降の大幅な国債増加、赤字国債の発行のもとにおいて、すでに交付税制度が安定的な地方財源としての機能を果たし得なくなっているというふうに言わざるを得ないわけであります。その結果、先ほど来申し上げましたように、さまざまな、借り入れでありますとかあるいは地方債でありますとか、その他臨時特例措置というふうな形で細々といいますか、あるいは何といいますか、もうがたがたと何とか動いてきたというふうな事態でありまして、これは単に一時的な不足を処理するというふうな問題ではなくて、交付税制度の根本的な問題といいますか、根本的な行き詰まりに着目しなければならない事態である。したがって、この交付税制度についてそうした根本的な検討と改革とを必要としているというふうに考えるわけであります。  そうしたことはいろいろな点で見られるわけでありますけれども一つの指標としては、交付団体がここ十年ぐらいの間次第にふえてきているという、こういう事態であります。特に都市、大都市において交付団体がふえてきておる。そしてまた、地方財政全体といたしますと、財政力指数が低下傾向にありまして、結局のところ地方交付税交付額というものが地方財政において次第にウエートを高くしてきているということであります。このことは地方財政が慢性的、構造的な財源不足にあるということにほかならないわけでありますけれども、しかし、同時に国の財政における国債の発行というものが、昭和三十年代あるいは四十年代を通じての地方交付税中心とした国、地方財政関係というものを大きくゆがめてきている、あるいはその関係の一応安定的な姿というものが崩壊してきているという事態にほかならないわけでありまして、そのような事態を前提にしておいて交付税をいろいろ算定してみても、結局のところうまくいかないのではないか。つまり、交付税算定の技術の問題でありますとかあるいは幾つかの一時的な対策の積み重ねというものではいけないのであって、根本的な対策が必要となっているというふうに思うわけであります。その点で申し上げますと、さしあたり交付税率引き上げ、最低でも五%程度は必要であろうというふうに考えるわけでありますけれども、これは根本的ではなくて一時的な措置をこのような五%程度引き上げで行うということにすぎないわけでありまして、根本的にはもっといろいろほかの問題があろうかと思います。  それは、一言で言いますと、国と地方における財源の再配分税源地方移譲、そして交付税制度中身におけるいろいろな制度の手直しといいますか、こうしたことが必要だろうと考えるわけです。幾つか思いついたままで申しあげますと、特に所得税、法人税等の地方移譲を拡大する。特に都市団体に対して自主財源増大させるということで、都市、大都市における交付団体を大幅に減少させるということをこのねらいとしなければならないと思います。それから、交付税財源が現在三税になっておりますけれども、これについては、国債発行が続いているという事態から考えますと、間接税等も含めるとか、あるいは国債発行額の一部を算入するというふうなことで交付税財源を拡大するということも考えてよろしいのではないかというふうに思うわけであります。それから次には、地方自治体の側における地方税の自主課税の拡大と、そしてまたそうしたさまざまな自主課税分について、基準財政収入額へ算入することなく、自主財源として運用させるというふうなことももっと考えてよろしいのではないか。こうしたことによって地方自主財源増大し、不交付団体も増加し、そして交付税が今日のように大幅に地方自治体に対して交付されるというふうなことではなくて、もっと集中的に、農村団体あるいは弱小団体に対して集中的に交付されるというふうな、もともとの交付税の目的に沿った機能に改められることが望ましいというふうに考えるわけです。  それから次に、基準財政需要額につきましては、特に今日の事態に対応したナショナルミニマムを明確にするということでありまして、基準財政需要額をそうした点で再検討する時期に来ているのではないかというふうに考えます。  その他、超過負担の解消、それから単独事業の拡大というようなことは当然考えられて、織り込んでいくべきだろうと思います。  それから、最後になりますが、昨今行政改革問題が議論されております中で、地方交付税率を切り下げるというんですか、あるいは再検討するというふうな意見があるやに聞いておるわけであります。まあ行政改革中心補助金にある。補助金整理縮小というふうなところに一つの大きなねらいがあるということは承知しておるわけでありますが、どうも補助金地方交付税とが混同されて議論されている向きがあろうかと思うんです。これは交付税の何たるかを知らない人たちが言っていることでありまして、こういう無知な議論でもって事を進められるということは非常に困ったことであります。地方交付税補助金とは全く違う性格のものでありまして、地方交付税を引き下げて一体どのようにして地方財政成立し、そしてまたこのことによって国の財政自体がうまく成り立つかということについて、もっと十分な知識を持って発言をしてもらいたいというふうに考えるのであって、交付税をそういう補助金と同列に議論をするというのは、全く問題にならないというふうに考えるわけでありまして、行政改革ベースで交付税率の引き下げが行われるというふうなことについては納得できない、こういうふうに考えております。  以上、羅列的に申し上げましたけれども、こうした点についてひとつ御検討いただきたいというふうに希望をいたします。
  7. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ありがとうございました。  次に、高寄参考人お願いいたします。
  8. 高寄昇三

    参考人(高寄昇三君) 御紹介いただきました関西学院大学の高寄でございます。  地方交付税法改正についての私見と、あと、地方財政全般についての意見を述べたいと思います。  このたびの地方交付税法改正ですけれども、これは五十年来引き続いておりまして、総額においては一応保障されたということですけれども交付税法不足金額を補てんする方法としては、かなり問題があるのではないかということです。    〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕 これは法律論になりますけれども地方交付税法六条の三の二項ですけれども、一応権力解釈では「著しく異なる」というのは大体一割程度ということですから、それから「引き続き」というのは二カ年ということとなっております。このたびのような交付税率引き上げずに金額だけの補てんが、いわゆる法律上言う制度改正に当たるかどうかということですけれども、当たるというような見解もありますけれども、私は当たらないのではないかということです。  どういうことかといいますと、こういうことが行われることがもし制度改正と言いますと、交付税そのものがかつての平衡交付金と非常に性格が一致してくるということですね。交付税というのは、そういう平衡交付金の弊害を少なくするということで、そのように三二%と決めて著しいときは引き上げる。これは一般消費税の問題があったとか、非常に不景気が急に来たというようなことで、一応暫定的だというような感じだったんですけれども、五十年から五十六年まですでに数年行われているということですね。一体こういう制度がいつまで行われるのかということです。こういう制度一つの弊害は、公共団体側にとって補てん金額がはっきりつかめないということが一つある。ことに不足額は、補てん債でする場合に、交付税の補てん債という意識は公共団体側には少ないと思うんですね。そういうことですから、起債充当率が上がるとか補てん債の認可があるといいますと、不要不急、過剰の投資が行われやすいということですね。こういうことになりますと、交付税の性格というのは非常に本来の性格から逸脱してくる可能性を持っておるということです。  それから、三二%で据え置いてあとを金額で補正したわけですけれども、これ果たして交付税法が言っている財源保障の機能を発揮したかどうかというと、ことしは、五十四年度、四兆一千億あったものが五十六年度は一兆三百億ということですけれども、これは増税の問題とか公共事業の落ち込みとかそういうことを計算しますと、一応こういうことの計算に落ちつくと思うんですけれども、その根本にある基準財政需要額というのは果たして根本的に洗い直したかどうかということですね。一応それはおいていて物価分だけ洗い直すというようなことですけれども、やっぱり三二%が四十一年度以降据え置かれておりますし、この間の経済とか社会構造の変動というのは非常なもので、たとえば高等学校の進学率一つ見ましても、これは相当な進学率がある。それから高齢化の問題、そういうことを見ましても非常に大きな財政需要増大があったんですけれども、これが物価スライド分ぐらいの手直ししか行われなかったんじゃないか。公共団体側としてそういう需要を見ておりますと、たとえば下水道とか公営住宅についての基準財政需要への算入というのは非常に少ない。これは交付税で見ぬ分は補助金とあと使用料で見ろということですけれども、現在公営住宅の家賃というのは非常に高額でございまして、これから下水道整備を補助金使用料だけで賄うというのは、これから新しく始めるところにとっては非常な負担となるということで、そういう面から見ましても、一応計算的には一兆三百億となりますけれども、根っこの基準財政需要そのものをかなり実態に合わしてもう一度算定するというのが必要ではないか。  それから、交付税のもう一つの機能であります富裕な団体と貧困な団体財源を調整するということですけれども、現在は地方財源が非常に貧弱であるためにほとんどの団体交付団体になっているということで、実感として財政力が一・〇の人口急増市というものは実際は非常に苦しいのではないかと思うわけですね。そういう面で、地方財源の充実というのは、これからむしろ交付税と並行して、交付税よりかもっと行う。行革の関係で増税は行わないというようなことですけれども、公共団体の場合は一般的な人口変動の非常に少ない市町村とか非常に流動の激しい市町村と単一ではございませんので、増税なしに行政を進めるということは非常にむずかしいんではないかということです。  そういう面から見まして、もちろん法人税とか住民税の問題もありますけれども一つ、二つ言いますと、固定資産税というのは私は現在でも低いのではないかと思うわけです。かつては固定資産税は住民税よりかはるかに多かったわけですけれども、現在はその比率がひっくり返っているということですね。それから下水道なんかの兼ね合いから言いますと、ことに最近は使用料を上げているわけですけれども、そういう保育料とか下水道とか公営住宅とか高等学校の使用料を上げておりますけれども、むしろ公共投資との兼ね合いから言いますと、不動産の譲渡所得の減税なんかはきわめて問題が多いのではないかということです。それから特に地下鉄をつくるとか、下水道を先行的につくるというようなこと、こういうのは固定資産税の地域別の不均一超過課税をするとかということで、法人税とか住民税とかということで国に乗っからずに、公共団体はサービスとドッキングしたある程度負担というのを保育料とか公営住宅というような形じゃなしに、もっと広い意味で求めていく必要があると思う。ことに市町村にとりましては、府県とか国に比べまして、ことに市町村道の整備の特定財源率というのは非常に少ないわけでございます。    〔理事金井元彦君退席、委員長着席〕 こういう市町村道の道路財源というのはせめて国、府県並みに充実してほしいということです。これは別に充実した財源を持ってローカル線のあれに充てるということじゃなしに、むしろ市町村の道路財源を充実していただきますとそういう浮いた財源で郡部の方でそういう地方のローカル線の対策の費用というのも出てくるわけじゃないかと思います。  地方財政を長期的に見ておりますと現在でも非常に起債が多いわけですけれども、人件費にしましても、人口急増市とか、福祉関係の一般職員の平均年齢が上がってくると思うわけですね。それから高齢化社会の問題とか、それから家庭の生活水準が上がってきますと当然サービスの水準が上がってこざるを得ない。もちろん人口のスプロールも行われるわけで、人口がスプロールするということは、人口としては一緒であるけれども、たとえば一つの小学校を二つつくらにゃいかぬというような形で非常に地方財政にとっては、増収がないのに公共投資が強要されるということでございます。  それから、このたびの行政改革につきましては、私はサービスを落としてまで行政改革をする必要はないと思うんです。だから行政改革の基本は国と地方財源整理せずに仕組みを変えればたとえば十の費用を十五に効果的に使われる。具体的に言えば補助金ですね。非常に零細な補助金補助金便覧を見ていただければわかりますけれども、たとえば厚生省の老人福祉関係の補助金ですね、非常に零細な補助金がある。そういう補助金を果たして公共団体が本当に欲しておるのかどうかという問題もある。ああいう補助金は廃止しまして全部交付税に振りかえていくということですね。こうしますと、国は別に一銭も得にならぬですけれども、公共団体としては、一の経費が一・五に生かされるというようなことですね。私は経費の仕組みを変えていけばいいと思うんです。もちろん公共団体については民間委託を進めるとか、そういう形で、どうしても不足分は自前の経営で生かしていくと、そういうようにこれから経費を削るということは、少なくとも市町村ベースの行政では非常にむずかしいんじゃないかと思うんです。ですから、これからむしろ増大してくるような財政需要に対して、資金とか制度を、そういうものを上手に組みかえながら進めていく、そういうことが非常に重要ではないかと思います。  一応そういうことで論述を終わらせていただきます。
  9. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ありがとうございました。  次に、中西参考人お願いいたします。
  10. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 御紹介いただきました中西でございます。  地方交付税法等の一部を改正する法律案にかかわって、私の意見を申し述べたいと思います。  すでに多くの方から御指摘がありましたように、今日の地方財政は多額の負債を抱えて、多くの問題をはらんでいると思います。根本的には、昭和五十年以降地方行財政の需要に対して歳入が伴わず、毎年地方債の増発と交付税特別会計借り入れという一時しのぎ的な方策で切り抜けてきたというところに問題があるわけでございまして、今日の地方財政の問題を根本的に解決するには、私は二つのことが必要であるというふうに考えます。  一つは、地方財源確保するために、国、地方を合わせた税制改革、補助金制度の抜本的な改革、地方交付税の税率引き上げを含めた根本的な行財政制度の改革というふうなことが第一に必要であるということであります。特に地方交付税にかかわって申しますと、先ほど来述べられておりますように、第六条の三の二項に定めておりますように、交付税率引き上げ行財政制度の改革を行うべきであるというふうに考えます。なお、最近国及び地方財源確保とかかわって、大型一般消費税を導入しようという動きがあるようでありますが、これは所得の少ない人ほど負担が重くなるという負担の逆進性をもたらしますので、こういう税制は適当ではないというふうに考えます。  第二の問題ですが、国及び地方行政改革ですね。むだや浪費をなくして、あるいは利権や汚職をなくす、国民本位でかつ住民本位の行政改革を実現していく、これが第二番目に必要であるというふうに思うわけです。これにかかわって、御承知のように第二次臨時行政調査会が発足して審議が行われておりますが、地方行政の面では、すでに数年前からいわゆる都市経営論に基づく減量経営が進められておりまして、そのやり方にはいろいろ問題点があるわけですが、ある意味で地方自治体の方が一歩先に行政改革を進めているというふうに言っていいのじゃないかと思います。  そこで私は、行政改革、つまり地方自治体の現在の状況から言いますと、減量経営の基本的なあり方について二、三の意見を申し上げたいわけでございます。  まず第一に、行政改革の基本といたしまして、あくまで国民本位、住民本位ですね、住民のための行政サービスの水準を向上させるために行政改革を行うという大目的、これを明確にする必要がある。これはごくあたりまえのことでありますが、なぜこれをことさらに強調するのかと申しますと、現実に地方自治体で減量経営を進める段になりますと、いつの間にかこの大原則がどこかへ行ってしまう、減量そのものが目的になって、本来手段であるべき行政効率化が目的そのものになってしまうという転倒した状況になりやすいということであります。  一例を申し上げますと、東京都で昭和五十四年に都財政再建委員会が設置をされまして、同年の十一月に中間答申が出され、五十五年の四月に最終答申が出され、これに基づいて減量経営が進められておりますが、その内容を見ますと、五十五年度で国保料でありますとか、都営住宅の家賃でありますとか、高校授業料とかも含めて、三十二件、二百五億円に上る都民負担増大が行われている。都営交通、上下水道、都立病院等々の公営企業への補助が打ち切られて料金が引き上げられる。で、従来実施されておりましたゼロ歳児保育や長時間保育に対する補助が削減をされる。消費者センターの縮小廃止が提起をされる。都立高校や障害者施設あるいはその他の福祉施設の建設が抑制をされる。あるいは小中学校の教職員や都の職員の定数が削減をされるということで、都政のサービス水準を引き下げて都民の負担増大させるということにおいて減量経営が進められる。都財政再建委員会の中間答申の中で、財政再建の視点の第一に効率の原則というのが挙げてございますが、一体これは何のための効率なのかという疑問を持たざるを得ないわけでございます。効率のための効率。ただ無原則に経費を節減して結局は都民がその犠牲になるというのか残念ながら実態ではないかと思うわけであります。  数日前に、地方団体の方で行政改革に関する意見というのが出されておりますが、その中に、財政再建に急なる余り、改革本来の理念ですね、これが見失われてはならないということが述べられておりますが、私もやはりこの行政改革の根本理念、これが非常に大事でないかというふうに考えるわけでございます。こういう減量経営の基礎になっているのがいわゆる都市経営論でございまして、その内容は日本都市センターの都市行財政研究委員会でつくられました「都市経営の現状と課題」及びその改訂版の「新しい都市経営の方向」でまとめられているわけであります。  この都市経営論にはいろいろ問題があると思うんですが、私はこの中の二つの問題を取り上げたいと思うわけです。一つは、いわゆる行政守備範囲論と民間委託の問題、いま一つは、行政の公平あるいは公正と受益者負担の問題であります。  行政守備範囲論と申しますのは、そもそもは、住民行政への要求が多様化する中で、一体どこまで行政が責任を持つ領域とすべきかという議論であったと思うんですが、これ自体は非常に重要な問題でございまして、いろいろ検討を加える必要があるというふうに思うわけです。しかし、最近の地方自治体の動きを見ておりますと、無原則に何でもかんでも民間の業者に委託をしていくと、いわゆる無原則な民営化の方向が急激に進んでいるように思われるわけです。もちろん、民間でやるのが一概に悪いというわけではなくて、いろんなメリット、デメリットがあると思います。しかし、原則的な問題といたしまして、地方自治体が担当しております教育とか文化、あるいは医療、保健、福祉等々の仕事は、住民サービスを第一義的に考えなければいけないという、きわめて公共的な性格が強いというふうに思うわけでありまして、これが民間でやられると、その公共的な性格がゆがめられるという危険性がある。民間でやるとなりますと、まず第一に採算をとるということが大前提になりますし、もうけを確保しなきゃいけない。そうすると、結局営利の原則が貫かれるわけでございまして、そういう公共的な性格と採算性、営利性とが相矛盾をするということが必ず起こるわけであります。  福祉や医療、保健、あるいは教育、文化、環境等々の仕事がもうけ本位にやられますと、さまざまな弊害を生むわけでございまして、これは日常われわれが経験するところでございます。たとえば、採算に乗らない仕事は、もう幾ら住民にとって大切でも切り捨ててしまう、あるいは採算をとるために住民負担をどんどん重くしていく、こういうことが極端に進みますと、福祉や医療や教育、文化の商品化、営利化が進むわけでございまして、いわゆる文化や医療、保健、福祉の荒廃化が進むという結果をもたらすのではないかと思います。  さらに、民間委託にかかわって、委託先の労働者の労働条件の問題がございます。自治体の現業的な部分、たとえばごみや屎尿の収集を委託にすると、その限りでは安い経費で済むというわけでございますが、これは実態を見てみますと、委託先の労働者がきわめて安い賃金と劣悪な労働条件で働かされているわけでございまして、結局労働者の犠牲によって減量経営が進められる。委託による経費実態がどうかということをトータルに見てみますと、委託した部分は安くても総体として必ずしも安くならないというふうなデータも出されております。  確かに民間委託とかあるいは行政守備範囲論にかかわって、いわゆる地方自治体や国なんかで仕事をやる場合に、お役所仕事とか親方日の丸と言われるような官僚制の欠陥ですね、これは確かにあると思います。しかし同時に、こういう事実の上に立ってこれを改善しようとする自治体の職員の方の運動もあるわけでございまして、一例を挙げますと、昭和五十年に名古屋市の守山環境事業所という、ごみと屎尿を収集する事業所でございますが、職員が自主的に、仕事は早くきれいに親切に、市民からチップは受け取らない、というスローガンを掲げて、住民と一緒にそういう仕事の改善をやって大変喜ばれたというふうな実例もあるわけであります。問題は、こういう状況がどういうふうに一般化されるかというところが一つの問題だと思います。  次の問題は、都市経営論とかかわって、公平あるいは公正論と受益者負担の問題でございます。日本都市センターの都市行財政研究委員会の「新しい都市経営の方向」の中で、保育園と幼稚園、公営住宅、特別養護老人ホームを取り上げて、それらの施設の利用における受益と負担との間に不公平があるということが述べてございます。たとえば保育園について、横須賀、浦和等々の八市のデータを取り出して、公立保育園の園児一人当たりの経費と保育料が比較されているわけですね。それによりますと、園児一人当たりの経費が五十一年度ベースで三万二百九十二円で、本人負担、いわゆる保育料が五千六百九十一円ということで、大幅な公費が公立保育園に投入されている。そういたしますと、この保育所が利用できる住民はいいけれども、利用できない住民と利用する住民の間に不公平がある。それから、私立の施設の場合、保育料がはるかに高いわけでございまして、私立と公立の利用者の間に不公平があるというふうなことが指摘される。  ここで言われておりますのは三点ぐらいの問題がございまして、第一には、所得間の格差、すなわち低所得者でなくても保育所の大変な恩恵を受けているということは不公平じゃないかということ、第二には、公私間の格差、公立の利用者と私立の施設の利用者との間に大きな格差があるから不公平じゃないかということ、第三には、市民間の格差、つまり施設の利用者と非利用者の格差から来る不公平があるじゃないか。この三つを問題にしているわけですね。この不公平、社会的な不公正を正すために、公立の施設の料金を引き上げなければいけないという結論がいわば誘導されてるというふうに思われます。  一見、これは非常にもっともなように思えるわけでございますが、これは非常に重要な問題をはらんでいるのじゃないか。まず第一に、これをうのみにいたしますと、福祉関係の公立の施設の利用料は軒並み引き上げられなきゃいけない。住民負担が大変重いものになってくる。その根底には、福祉の受益、すなわち公費で福祉を賄うのは低所得者だけに限定するという、いわば十九世紀的な福祉の考え方に逆行する、そういう考え方があるのじゃないか。これはもう低所得者のみは公費を投じて、それ以上の低所得者からはみ出る部分についてはもう原価主義を導入して、受益者負担の対象にどんどんしていくという考え方のように思われます。すでに国際的にも、保育とか福祉とかいうのは単に一部の低所得者だけのものじゃなくて、国民全体を対象にすべきだという考え方は定着しておりますし、各国でそういう実績がどんどんつくられているということでございますから、これは非常に時代に逆行するのじゃないか。  ここで言われておりますこの公平論、公正論の特徴は、きわめて限定された範囲での市民の間の格差に目をつけて、その差を強調することによって市民間の反目と対立をあおる、結局福祉のレベルを全体として引き下げて平準化しようという考え方になるわけですね。しかも暗に、施設の水準そのものは現状を前提にする、つまりふやさないということなんですね。もし、すべての市民がいつでも利用できるだけの施設が建設されていれば、これは利用者と非利用者の格差は解消する。もし、私立の施設に適切な補助がなされていけば公私間の格差は解消する、そういう条件をつくり出していく見通しとプランですね、これが示される必要がある。施設や条件はいつまでも現状のままで負担だけを引き上げるというのでは、結局総体として福祉のレベルダウンをもたらすということでございまして、こういうことのために公平とか公正ということが使われると大変困るわけでございまして、こういう狭い、限定された局面で公平、公正を問題にするのではなくて、たとえば都市における大企業の開発利益は一体どうなのかとか、あるいは、現在の高額所得者や大企業にきわめて有利な税制のあり方はどうかというふうなことを問題にすべきではなかろうかと思うわけでございます。  こういうふうに、最近の地方行政における減量経営のあり方を見ていますと、どんどん行政サービスが切り捨てられて、営利本位に行政がゆがめられる、公平、公正という名のもとにどんどん住民負担が重くなる、行政サービスの水準が引き下げられるという傾向が進んでいるように思われるわけでございまして、現在審議が進められております第二次臨時行政調査会のいわば答申等々もそうした傾向を強めるのではないかという危惧の念を抱いております。したがって、行政改革においてそもそもその基本的な目的は一体どこにあるのか、あくまで国民のための行政サービスを向上させるために行われるべきであろうということを最後に申しまして、私の意見を終わりたいと思います。
  11. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ありがとうございました。  次に、橋本参考人お願いいたします。
  12. 橋本徹

    参考人橋本徹君) ただいま御紹介にあずかりました橋本徹でございます。  参議院の地方行政委員会参考人として、地方交付税法等の一部を改正する法律案について意見を述べる機会を与えられましたことをまず感謝いたします。  私は、本日この問題に関連いたしまして、三つの観点から意見を述べたいと思います。第一は、今般の改正法案におきまして、とりわけ総額確保についての評価に関するものでございます。第二は、この地方交付税法等改正案地方団体の行財政の運営にどのような影響を及ぼすものであろうかといった観点からの意見でございます。第三は、今後の地方交付税制度等の改革の方向について、この際若干の私見を述べさせていただきたい、かように考えております。  もっとも、このように考えてきたのでございますが、先ほどから四人の参考人の方がるるお述べになりました点と、正直なところかなりの点が重複をしてまいります。したがいまして、問題を整理する意味ではなるべく重複を避けて発言した方が効率的であろうかと思いますので、若干要点だけの発言にとどめさしていただきたいと考えております。  第一の問題に関してでございますが、先ほどから皆さんがお触れになりましたけれども、今日、第二次の臨時行政調査会が置かれまして、いわば行財政制度全般にわたりまして見直しが行われようとしております。そのこと自体につきましては私も敬意を表するものでございます。  ところで、国、地方を通ずる行政改革は今日急務でございますが、その議論の過程の中で、本日議題になっております地方交付税に関連いたしまして取り上げられていることにつきましては新聞報道等で承知しておりますが、それは先ほどから和田教授、高寄教授、皆さんお触れになりましたが、確かに昨今の地方団体の運営、とりわけ職員の増加あるいは給与水準の高さ、そして国、地方を通ずる財政危機の中にもかかわらず、地方団体における単独事業費の増大といった状況にかんがみて、この際に地方交付税率を引き下げるべきであるとする意見に関するものでございます。また、この地方交付税率の引き下げにつきましては、昨年の十二月に財政審議会の報告の中で、地方交付税の税率の引き下げの意見もあるといったような趣旨の表現があったように記憶しております。もちろん新聞報道等によるものでございますから、七月のいわゆる中間答申が出ているわけでもございませんし、どのような決着がつくのか予測ができないわけでございますが、したがいまして、そのこと自体を直接論評するつもりはございませんが、地方交付税の本質を考えるに当たりまして非常に興味のある課題だと思うわけであります。  今般のこの地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由によりますと、「地方財政の現状にかんがみ、地方交付税総額確保に資するため、」ということで、五十六年度地方交付税総額について幾つかの措置を講じているものでございます。そうして、かろうじて財源不足額を補てんしようとしているものであります。また、地方団体等では、従来からたとえば交付税率を四〇%に引き上げるべきであるとか、あるいは先ほど和田教授は五%ぐらいの引き上げが基本的には必要ではないかといったような御意見も披露なさいましたが、あるいはまた地方制度調査会にありましても、たとえば第十七次の調査会の五十三年十二月の答申は、例の五十三年度におきます法定措置、すなわち交付税特別会計の借入分を、その償還に当たって半額を国庫が負担する、半額は交付税会計が負担すると、こういった措置によって講じられているものを、交付税法附則第八条の三の措置の継続を要望しております。  こういった、交付税率をめぐりまして、一方では交付税率引き上げを主張し、一方では交付税率の引き下げを主張するというところに、私は交付税の問題のいわばむずかしさがあると思います。とりわけ、私ども納税者の一人、国民の一人といたしまして、確かに私は専門家ではありますけれども、学者ではありますけれども国民一般といたしまして、交付税率というのは非常にむずかしいもの、税制というのはむずかしいものであるし、かつまたわかりにくいものでございます。事ほどさように今日の財政危機は深刻であるという証拠であるかもしれません。  私は、交付税率の引き下げ、引き上げに関して申しますと、もちろん交付税率の引き下げという意見には賛意は表しかねるものでございます。その意味で申しますと、今般の改正案交付税総額確保ということにつきましては一応の評価をいたします。かと申しまして、それではいま、原案にはございませんか、交付税率を引き下げることができるだろうか。国の税収の不足に対しまして、五十六年度予算におきましても特例公債、いわゆる赤字公債が依然として五兆何がしでありましたか発行されている現状におきまして、所得税、法人税、酒税、この三税の三二%という法定税率を確かに地方財政立場からすれば引き上げた方が法にはかなう、あるいは地方財政の運営にはかなうという議論ができるわけでございますが、制度そのものがそのまま実施できないような経済、社会の環境にありますときに、一つ法律のみを強調してそれの完全実施を迫るというやり方では、いわば財政行政全般にわたる制度の禍根を将来に残すものになるかと思います。  かといいまして、それでは現在のこういった措置が好ましいものであるのかということになりますと、決してベストであると私は評価するものではございません。思えば昭和五十年度から五十六年度まで、そしてこのまままいりますと、まだまだそういった状況、少し文学的表現を使いますならば、いつまでトンネルの中に入っているのだろうか。トンネルを抜ければ雪国であったというある文学表現がございますが、雪国でなくて、トンネルを抜けても春がいつまでも来ないという状態を、地方交付税臨時的なと申しますか、この措置に感じるのでございます。  ところで、先ほど申しましたように、今般の交付税総額確保につきましては、先ほどから各参考人の方がお述べになっておりますように、地方財政計画上の財源不足額一兆三百億円を、いろんな工夫をいたしまして、三千数百億の交付税の増額、そして財源対策としての地方債発行によりまして約七千億ですか、といった補てんをいたしております。これについてはまことにやむを得ませんが、総額確保という点については賛成をいたしたいと思います。  ところで、こういった賛成をいたしますのには、もちろんそれ相応の基準が必要だと思います。基準と申しますのは、たとえば行政改革にも幾つかの基準があるわけですが、三十九年の臨時行政調査会の答申には行政事務配分の原則が掲げられております。その中には、現地性の原則と総合性の原則と経済性の原則と三つが掲げられております。また、私どもが大学で学生に教えます教科書の中には、たとえばアダム・スミスの国富論の租税原則を引用いたしまして、租税というのはまず第一に公平の原則が必要である。そしてそのほかアダム・スミスは三つの原則を挙げております。御案内のように、確実ないしは明確の原則といいますか、それから便宜、便利であるということの原則、そして最小徴税費の原則、こういった原則を掲げておりますが、私は、地方交付税制度あるいは地方税制度ないしは地方行政制度等を考えます場合に、やはり原則が要ると思います。これまでの先人のいろんなものは継承はいたしますが、今日どうしても外せないのは効率性の原則であると思います。いま一つは、公平ないしは公正の原則であると思います。またもろもろ原則はあると思いますが、重要な二つの原則、これは相矛盾する場合もあります。あるいはまた両方ともうまく適用できる仕組みも考えられないこともございません。  ところで、私、ただいま効率性という言葉を使いましたのは、日本語というのは非常に不便でございまして、人それぞれ、広辞苑などを引きまして解釈をするわけでございます。私は、いま効率性と申し上げましたのは、限られた資源を最適に配分する、国民経済ででき上がりました約二百兆ほどのGNP——国民総生産をわれわれの欲求を満足するために民間経済と公共経済とに配分する、その上で公共経済の中で国と地方団体のそれぞれの公共サービスに何ほど配分するか、その配分が効率的でなければならないという意味であります。もちろん効率性の中には行政的な効率性といいますか、たとえば最小の経費で最大の効果を上げるというのもそうかもしれません。あるいは能率と言った方がいいかもしれませんが、そういう能率もございます。その効率性という先ほど申しました意味、資源をできるだけ有効に配分するということは、これは経済社会の原則としては重要な原則であると思いますが、残念ながら、国の行政にしろ地方行政にしろ、マーケットメカニズムといいますか、市場機構を持っておりませんので、いろいろな需要の中でどれを優先するかとかどれをたくさんつくるかということについて、市場の価格機構が利用できません。そして予算機構でそれを決めてまいります。  ところで、予算機構で決める場合に、私は国の予算でたとえば教育サービスにどれだけやるか、福祉サービスにどれだけやるかということを決めるよりも、住民に身近な地方団体予算において、その地域において、公共サービスのうちで教育サービスに重点を置くか、それとも福祉サービスに重点を置くか、教育サービスの中で義務教育に重点を置くか、それとも社会教育に重点を置くかといったような判断を、できるだけ地方団体予算で、市民に議会で問うた方が資源の効率的な配分が実現する。これが市場機構を欠く場合に必要であると考えております。  そういう意味で、先ほどの第二の問題でございますが、この地方交付税法改正によりましてねらっておるところは、できるだけ住民に身近な地方団体で公共サービスの適否あるいはその数量の度合い、そういったものを判断させようというものであると思います。今般の改革の中には、総額確保以外に基準財政需要額の適正化、あるいはまた、手数料等の受益者負担の適正化等も触れられておりますが、地方団体がみずから地方税とあわせましてその一般財源をもって地方団体行政財政の運営を行うことがいわゆる効率の原則に合致するわけであります。  ところで、第二の問題に触れたいと思いますが、しからば、そのように地方団体に判断させるとするならば、本来は地方交付税ではなくて地方税ではないかという議論が当然できるわけであります。その点については当然でございまして、地方団体財源は本来地方税であるべきだと思います。ところが、いかんせんいま一つの原則である公正の原則を考えてまいりますと、現在の地域間の所得の格差ということを考えますと、いま主として所得課税による現行税制を前提にいたしまして税制を組んでまいりますと、言うまでもなく地域間には税収の格差が出てまいります。しからば、税収の少ない地域に住んでいる住民は低い公共サービスを甘受すべきかということになりますと、そうではございません。地方交付税法の第一条にございますように、ある妥当な水準の行政水準を全国ある一定程度確保するということが考えられるわけであります。  ところで、地方交付税の仕組みが、五十年度以降このようにいわば臨時的、緊急避難的な措置を講じたために、地方団体財政運営においてみずからの責任で運営しようということが、ややもすれば怠りがちになると言えないこともないと思います。    〔委員長退席、理事熊谷弘君着席〕 特に国が赤字財政を続けているにもかかわらず、地方交付税では財源不足額措置ということで財源が補てんされる。もちろん財源対策債あるいは減収補てん債等も出されたわけでありますが、そしていつの間にやら交付税特別会計借り入れだけでもう五十六年度末には約八兆円になるということが算定されますが、これは全国で八兆円であって、各地方団体にとっては、その八兆円という借り入れは将来のことというふうに感じられないのでございます。そういたしますと、ちょうどことしはその償還方法を変えて幾らかお金をつくり出すということが行われましたが、地方団体はややもすれば、五十九年度、六十年度になるとまた何か国が適切な措置を講じてくれてわが身には火の粉は降りかからないといったようなことを考えないとも限らないわけでございまして、そういう意味ではこの際地方団体も、みずから財政運営についてその適正化を図っていく、とりわけ長期的な財政運営といいますか、長期的な観点から見直すということが必要であると思います。今度の交付税改正案におきまして、たとえば先ほど申しました手数料等の引き上げ等はそれの一つの刺激であろうかと思います。  第三に、関連いたしまして、今後の国と地方財政を通じての、とりわけ地方交付税法の改革について若干の意見を述べさせていただきたいと思いますが、基本的には国と地方の事務の再配分行政改革の中になくてはなりません。とりわけ国の地方出先機関の整理、あるいはすでにもう行政改革の方針として決まっておりますけれども地方事務官の問題、機関委任事務の整理等、すでにもう現在地方団体はその行政をかなりをゆだねても十分な力を持っていると思います。とりわけ地方団体において納税者の意向に沿うように総合的に、そして現地性の原則に従って行政確保しようとするならば、住民の監視のもとに地方団体財源をして行政を進めるべきでありまして、その意味では、各参考人もお触れになりましたが、国と地方を通ずる税源の再配分も含めまして税制改革が必要でございます。租税の総量の増大につきましてはかなり意見の衝突が見られますが、私自身は効率的な政府をつくるという行政改革の考え方と、小さい政府にするか大きい政府にするかということは峻別すべきであると思います。現在のわが国の国民の全般的な感覚はともかくとして、あるべき姿としてはいま少し現状よりも——現状を特例公債等で糊塗しておりますが、税によって賄うことの方が合理的である。ある程度いまよりも大きい政府にすることが必要であると思いますので、税の総量についての増大も必要でありますが、国と地方税源の再配分をその中で取り上げるべきであると思います。したがいまして、地方交付税制度はその再配分をした結果、地方税の地域間の格差がどのようになるかということとの関連で制度改正が行わるべきでありますが、制度そのものについていいますと、一口に言えば、私は現在よりももっと制度簡素化した方がいいのではないか。もちろん世界に冠たる精緻な制度であることについてはそういう評価はございますが、もう少し簡単になった方がいいのではないだろうか、もう少しみんなで工夫をして、地方交付税制度の仕組みを簡素化する方がいいのではないかと、かように思います。  ところで、一気に税制改革が、税源配分ができないとするならば、経過的には全国知事会あるいは地方制度調査会、全国市長会等が主張しておりますように、国庫補助金の整理合理化、そして一般財源の振替が必要かと思います。とりわけ職員設置費、保健所あるいは農業改良普及員、生活改良普及員、社会教育主事等々職員設置が国庫補助金で見られておりますが、人件費に関するものは義務教育国庫負担については意見が分かれるかと思いますが、人件費に関するものはできるだけ一般財源に振りかえることでもって一般財源強化するという必要が経過的には必要であろうかと思います。  以上、少しはしょって発言をいたしましたが、今般の措置につきましては、総額確保については基本的には賛成をいたしますが、今後の改正、改革を強く要望いたしまして、参考人としての意見を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  13. 熊谷弘

    ○理事(熊谷弘君) ありがとうございました。  以上で、各参考人意見の開陳は終了いたしました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 自民党の名尾良孝でございます。  ただいまは、参考人の各先生方から貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。先生方の御意見、将来の地方財政制度はどうあるべきか、現在はどのようにこれを改革していかなくてはならないか、さらに地方交付税制度地方税法との関連、さらには現在行われている行革に絡んで補助金の問題、いろいろ貴重な御意見を拝聴いたしました。  まず、いま審議をいたしております地方交付税法等の一部を改正する法律案、この法案に対しまして、先ほど参考人石川市長さん、それから参考人橋本先生からは条件つきのようなことでございましたが、賛成であるという御意見をちょうだいいたしております。順次御質問を申し上げる冒頭に、和田参考人、高寄参考人中西参考人の各先生方から、まず結論的に、本法案に対しては賛成であるのか反対であるのか、もし反対であるならば、それに対しまして簡単に御意見をいただきたいし、条件つきであれば、その条件等についても簡単にお伺いをさせていただきたいと思います。
  15. 和田八束

    参考人和田八束君) 私は、先ほど冒頭に申し上げましたように、ともかく、五十六年度もそうですが、五十年度以降、最低限度ではあるにしても交付税総額確保してきたということについて、関係者努力を多としたいというふうに申し上げたわけでありまして、今回もこれと同様の意見でございますので、御了解いただきたいと思います。
  16. 高寄昇三

    参考人(高寄昇三君) 一応金額的には賛成できますので、現時点では一応条件つきで賛成でございますけれども和田参考人と同じように、十月ごろになりましてから大蔵省と総額についてどうこうというよりか、この際政府当局で、交付税制度が平衡交付金と同じように接近化していることについて、一体交付税率をどういう状態になったら引き上げるのか、どういう状態ならば引き上げないのかというような点は、やはりもう少しはっきりしてもらわぬことには、公共団体の方も非常に心理的に不安定ではないかということですね。ですから、本法案につきましては条件的に賛成ということであります。
  17. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 先ほど述べましたように、地方交付税にかかわって地方財政制度の改革の提起がないということと、それから受益者負担の適正化についても疑問がございますので、反対でございます。
  18. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 地方交付税制度、この制度の目的は、御承知のように、国と地方との間の財源配分調整、そして各地方団体の間の財政力の均一化を図るということでできている制度でございます。それが昭和四十一年までだんだん交付税率が上げられてきたのですがその後上がっていない。そういうことから、ただいま参考人先生方の中で、まず交付税率引き上げるべきではないか、そういう御意見を承りました。石川市長さんは、地方団体の代表としておいでになっておりますから、大体四〇%の引き上げが適当ではないかという御意見だろうというふうに思っております。したがって八%の引き上げ和田先生は、先ほど五%の引き上げということをおっしゃったわけでございます。  地方財政歳入の根幹をなしております三本の柱は、もう御承知のように、地方税十七兆八百七十六億円、交付税八兆七千百六十六億円、国庫支出金十兆六千八百億円、これが三本の柱になっているわけであります。そして国税三税は二十五兆二千六百十億円でございますから、算術計算で、その三二%というのは八兆八百三十五億円。そこで石川先生の御希望による四〇%ということになりますと十兆千四十四億、八%増を計算しますと二兆二百億ということに相なるわけであります。そして和田先生のおっしゃられた五%ということになりますと一兆二千六百三十億ということになるわけでございます。  そこでお伺い申し上げたいのは、まず第一点は、四〇%によって二兆二百億円が地方自治団体配分される、あるいは和田先生の言われる一兆二千余億が地方団体配分されます。なるほど地方団体はそれによって財政的には非常に助かるわけでありますけれども、ところが今度は、国の立場に立ってまいりますと、たとえばその二兆余円、一兆余円というものの財源というものを一体どこに求めたらいいのか。現在大蔵省の中期展望、これはまあ大蔵省が出しているあれですから多少サバが読まれているとは思いますけれども、来年度予算においてすでに名目二兆七千七百億円の赤字が出る、歳入不足が出る、実質的には三兆三千億の歳入不足になるであろう、こういうふうに言っておるわけであります。そこで、国税二十五兆二千六百十億の配分をさらに地方自治団体の方に重くして配分するとすれば、それを捻出するために国としてはまたあるいは赤字国債を発行しなければならないかもしれないし、また増税を国民方々に強いなければならないというようなことにもなりかねない、結局そのツケが国民に回ってくるわけでございます。そのことについて、ひとつ石川参考人和田先生から簡単に御意見を承りたいと思います。
  19. 石川信義

    参考人石川信義君) お答えをいたします。  多少回りくどい表現になるかもしれませんが、交付税というのは税源の偏在をカバーする、結果として地方団体に一定水準の行政確保させるということなんでしょうが、その一定水準の行政という中には、御承知のように国が地方団体に対して機関委任事務、団体委任事務で、いわば強制的に事務執行させているという責任を国は持っているわけでございます。それに対する対策として、当然財源の乏しいところにはその事務を執行するに足る財源を付与するというのが当然だというふうに考えているわけでございまして、私は非常に荒っぽい表現ですが、まあ補助金全廃論者といまのところ言っているんです。全廃ということはあり得ないかもしれませんが。私ども仕事をしておりまして、住民が第一に要望しているのはどの仕事なんだ、二番目はどれだ、三番目はどれだと、こうあるわけでございますが、現実の問題として、四番目までの仕事には補助金がつかない、それで一般財源でやれるのかというとそれはやれないんです。たまたま五番目の仕事が——まあ五番目なり八番目なりでいい仕事に補助金がつくためにそれを優先してやらざるを得ないという財政運営をしております。まあ体裁のいい表現として、総合的長期的視野に立ってと、こんなことを言っているわけですが、現実には、金がないので後でいい仕事を前にやらざるを得ないというのが現実でございます。  そういう点から考えまして、私どもは貧乏な市ですから、経常経費などは本当に圧縮をして、ここ数年来前年度据え置きでございます。まあ郵便料の値上げとか何かありますから若干上がらざるを得ないものはあるわけですが、そういうことでかなり無理をしながらやっておりますので、いま三二%が八兆八百二十五億、現実に交付されるのが今度の借り入れを足して八兆七千百六十六億ということになりますから三四・五%になるわけで、その差というのは二・五%。先ほど申し上げたように、国全体の交付税というのは、交付方法が非常にむずかしい。単位費用の算出も毎年毎年変わってきますので画一的に言えませんが、これを非常に荒っぽく二本松市に引き延ばして考えた場合、さっき申し上げたように余裕財源というのは三千百万きりない。住民から言うと六十七億という予算市長が随意に使えるような感じをしているだろうが、現実にはほとんどひもつきで身動きができなくて、市長の意思でやれるものは三千百万きりない。    〔理事熊谷弘君退席、委員長着席〕 現実には二億欲しい。二本松市にこれを簡単に引き延ばすと、全体で三四・五%になった三二%という法定率との差の二・五%というのが、これは議論の分かれるところですが、きわめて単純に二本松市で三二%から逆算して二・五%ふやすとすると六千九百万ぐらいになります。そういう面から言うと、その三倍、七・五%であれば大体二億円ということになる。そうすると三九・五%。地方団体ではそれを四〇%と、こう言っている……
  20. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 時間がありませんので……。
  21. 石川信義

    参考人石川信義君) したがって、国は財源が容易でないんでしょうが、補助金でひもつきにして使途を制限するのではなくて、画一性というのは大体一応完了したんでしょうから、地方の特色を生かすという面からいっても、補助金をやめて一般財源に何らかの形で振りかえればいいのではないだろうかなと、そういう感じをいたしております。
  22. 和田八束

    参考人和田八束君) 根本的な問題はさておきまして、私が先ほど三七%程度まで引き上げるというふうに言いましたのは、現在三七%ぐらいになるわけですね、それを言ったわけでありますけれども、したがって現在三二%を上回る分についてはいろいろやっておりまして、一応現行の算定の上では埋めている。先ほど論述のところで、二番目でちょっと臨時というふうなことを言いましたけれども、二番目はこれは借入金なんですが、借り入れ臨特利差臨特とか、それから地方債などでやっているというふうに私は申し上げたわけですけれども、そういうふうにやっているのを一般財源で、三税にするかほかの税を含めるかはともかくとして、何らかの適正な措置をするということでありまして、ですからその点では財源的に若干一般財源負担は国の方でふえるかもしれませんけれども、できないことではない。  といいますのは、結局のところこれは何を問題にするかというと国債ですね。国債の一部をやっぱり振りかえざるを得ないのではないかということですね。そういたしますと、国債がその分だけふえるのかということになりますと、若干それもやむを得ないかもしれない、つまり、国債の減額というものをややマイルドにするということもその点では考えざるを得ないのかもしれない。しかし、それはそれほど重要ではなくて、税制改革ですね、不公平税制の是正とか行政改革というふうなことでもう少し努力をすれば、おっしゃるような一・二兆円程度一般財源というのはそれほど国庫を圧迫することにはならないだろう。したがって、最低限五%程度交付税引き上げということは不可能であるというふうには私は考えないわけでございます。
  23. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 和田参考人にお伺いいたしたいんですが、交付税制度と関連いたしまして、地方税拡充強化ということで、先ほど地方税の対象税目を拡充したらどうかと、それには例をおとりになりまして、所得税、法人税の一部を地方移譲するようなことも考えたらどうかという御意見でございました。そういたしますと、いま国税三税の三二%、それを配分する国税三税のうちから所得税、法人税の一部が地方移譲されますというと、その配分するもとの額が減ってくるわけです、それが一点。  もう一つは、その一部移譲することによって地域間の格差、税収入の格差というものがむしろ大きくなる可能性があるのではないかということが第二点であります。  第三点は、地方税の自主課税権というものを地方団体に与えたらどうかという御意見でございます。そうしますと、いま、地方税の税率というものは地方税法によって決められておりますけれども、その点をもう少し説明していただきたいのでございますが、標準税率というようなものを決めて、それに幅を持たして、徴税といいますか、税の調定をさしていくのか。あるいは、もう初めから各地方自治団体に税率というものまで自主的に決めさせるのかという点でございます。その点についてひとつ簡単に御説明いただきたい。
  24. 和田八束

    参考人和田八束君) まず第一の点ですけれども、所得税、法人税というふうに、これは基幹的な税目ですのでそういうふうに申し上げたわけなんですが、それは確かに現在三税、法律的にリンクされておりますので、この三税の収入額が少なくなるということはおっしゃるとおりでありますけれども、それによって地方税源の方がふえるわけですから、結局基準財政収入額がそれだけふえるということでありますし、それから地方交付税制度全体についてこれは見直しをするということが前提にありますので、現行制度でそのまま横滑りということではございませんので、整合的な制度改正ということが行われればそれはいいだろうということです。  二番目の、格差が拡大するであろうということなんですが、これはある程度格差の拡大ということが実は前提でありまして、現在は余りにも格差の縮小ばかりねらいにしておりますので交付団体がふえてくるわけでありまして、もう少し格差は是認して、少なくとも大都市所在都道府県とか、それから人口三十万程度以上の県庁所在都市とかその他の中堅都市とかいうふうなのは不交付団体でよろしいというふうな考え方が前提にありますので、そのかわりこの不交付団体のところはかなり精力的に都市政策なり地域政策をやってもらうというふうなことでありますので、それ以下のところについてできるだけ調整していくというふうな考え方をとっておりますので、ある程度の格差というのは……余りひどい格差は困るんですけれども、あっていいんじゃないかということであります。  それから第三番目におっしゃいました点ですけれども、これは現在でも一部行われております超過課税でありますとか法定外普通税の創設でありますとか、超過課税といいますのは、おっしゃるように標準税率以上を上回るものでありまして、これはやっぱり地方自治体の自主課税権といいますか、自主財政運営に属することでありますので、それによって大幅な財源が生み出されてくるというほどには期待し得ませんけれども、いろいろな地域、あるいは自治体によっては特殊な事情がございますので、そういう特殊な事情、条件に応じた財政運営が図られてしかるべきであろうというふうな意味で申し上げたわけでございます。
  25. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 実は、私も県議会に長くおりましたときには、県会のたびごとに地方交付税率を引き上げ引き上げよという意見書を各党一致で決議をしてきたのでありますけれども、いま国政の段階に立ってみますと、必ずしも、果たしてそれか適切であるかどうかということに対して多少疑いを持っておる、と申しますのは、この交付税制度ができた昭和三十年から石油ショックに至るまでの間の日本の経済というものは大体安定をして伸びてきた。特に四十一年ころまでずっと伸びてきた。ですから、その間、交付税率を適当に伸ばしてくることだけで地方自治団体財政に対して国が援助をするということに余り気を使わなくてもよかった。ところが、その後急激に不景気が参りました。もう来年の経済状態は一体どうなるか予測がつかない、そういうような非常に変動の激しい中で、いま、法律の六条があるからといって、たとえば交付税率引き上げます、ところが、実際に最後にいってみると結局足りないから今度と同じような総額確保しなければならないというようなことがやはりまた繰り返していかれるようなことになるのではないか。したがって、私としては、いまの経済状態の中では現在の方法よりほかに方法が見当らないのじゃないかと思うんです。  その点について橋本参考人にお伺いしたいんですが、実は、いま不交付団体は都道府県のうち東京都たった一団体である。それから市町村は、三千二百五十六団体のうち二%の六十五団体であります。つまり、むしろ全部の地方団体ほとんどがこの交付税制度によって財政を安定さしているというと語弊がありますけれども、いまの地方財政というものを維持していけるわけであります。  そこで私が申し上げたいのは、いま地方団体が抱えている債務というものが、現在地方債の残高が三十一兆六千億、交付税特別会計借入残高七兆八千億と合わせて三十九兆五千億。ところが、一方において国の方で抱えている国債残高というのは、本年三月末で七十兆五千九十八億になるわけであります。そうしますと、国も借金を抱えている、地方団体借金を抱えている、だから、地方団体の方の借金は埋めてやって借金は全部国がしょえばいいじゃないかということだけでは済まない問題があると思う。国で行革が盛んに行われて、いま第二臨調でやっておりますけれども、あわせて私は地方自治団体行政簡素化あるいは行政経費の節約ということにやはり一層の努力をしてもらわなければならぬじゃないか。  特にその中の一点だけ申し上げておきたいのは、国民の目からはっきりわかる給与のラスパイレス指数が現在五十五年度で一〇六・九%、地方自治団体の中の人件費が十二兆円、その中でもちろんそれは警察官、教職員が入りますから、この六・五%というのは全部にわたるわけではございませんけれども、まずそういうものからでも私は国家公務員並みにしていく努力をしていくべきではないか。そうして国と地方が協力をしながら行政簡素化行政経費の節約ということに努力をしていくべき時代がもう来ているのじゃないかというふうに思いますけれども参考人橋本先生のそれに対する御意見を承って私の質問を終わらせていただきます。
  26. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 私もいま先生が御指摘になりましたように、基本的には、行政改革というのは国だけではなくて地方団体——国、地方を通ずる行政すべてが改革されるべきであるとかねがね考えております。そうして、御質問のように地方財政地方行政においてどうかということにつきましては、私、関西におりまして、これまで岡山県やその他の、それからまた大阪周辺の各市の幾つかの行財政改善の審議会の一端を汚しておりまして、その場でも御指摘の人件費等の問題についてはこれを見直すべきであるという主張をしております。  ただ、個別に各市の事情をお聞きいたしますと、一気には是正ができない面がないわけではないようでございます。それはとりわけ人口急増の段階で町村から市へ変わった場合とか、それから人口急増に合わせて職員数を急増してきた場合に、とりわけ昭和四十年代の前半でございましたために民間の給与水準がかなり高かった。そこでそういったいわば市が職員に優秀な人材を確保するといいますか、その地域の民間給与水準と合わせましてかなり初任給を、国のレベルで言えば恐らく二号俸から三号俸上げているということと、それから学歴構成におきまして、その以前において町村等であったために、国の基準で言いますと、学歴構成で言いますと、高卒と大卒との比重におきまして高卒等が多かった、ところが、機構の膨張に合わせまして職階制を一応しいできますと、比較的若い年齢の方で、学歴の高卒などの方が係長、課長に格づけされる。その結果、給与を課長級ということで上げる。そうしますと、国と比較いたしますと、どうしても年齢相応に見ますと高い給与、そのほか私もいろいろなところで書きますけれども、例のわたりという制度というか、そのやり方が各市で給与の団体交渉等の結果で、いわば既得権といいますか、という形で二等級ぐらいまで、はなはだしいときは一等級まで上がっているところがあるそうでございますが、そういったものが現実にあったものですから、これを初任給を下げるとか、あるいは職階に応じた——職階と年齢との給与を一気に下げていく。それから、高年齢の方の定年制の問題が絡んでまいりますが、高年齢の方がありましたために国の基準と比較いたしますと比較的年齢層の高いところがある。そこで、それを解消するためには退職等でないと解消できない。退職するためには、現在の仕組みですと一時に退職金が必要である。退職金には、たとえばラスパイレスが高いとか、あるいは財政運営がよくないとか、退職債も認められないということで、いわばかんじがらめになっておりまして、特定の地方団体の理由を聞きますと、かずに時間がほしい、徐々に初任給を下げていきます、そして適正にしていきます、あるいはわたり等ももちろん是正いたしますということを主張している向きはございますので、それぞれ事情はあろうかと思います。しかし、今日ではかなりそういった点が改善をされております。  それともう一つは、これはここで論争しても始まりませんが、先ほどの、都市センターの「都市経営の現状と課題」におきまして、私もメンバーでございまして責任があるわけでございますが、私は、公共サービスの負担を税金でするという話と、そのサービスそのものの生産を公共でやるか民間でやるかということはこれは区別しなければいけない。非常に悪い例で恐縮ですけれども、戦争中の話で最近読んだ小説ですが、軍艦「大和」は呉の海軍工廠で建造いたしまして、軍艦「武蔵」は三菱の造船所、民間造船所でつくったわけでございます。これなどは、負担は税金で負担した軍艦でございますが、建造は海軍工廠と造船所ということをやっております。それがそのままいくわけじゃございませんが、たとえば現在保育所行政というのは、保育所市長は保育の措置をするわけですが、これは社会福祉法人の保育所であろうと公立の保育所であろうと同じように保育措置をされているわけでありますが、たまたま公立保育所でありますと、厚生省の考えております保母配置基準よりも多くの保母を配置し、しかも、どう言うんでしょうか、ゼロ歳保育とかあるいは長時間保育とか早朝保育とか土曜日の午後保育とかいう形で、民間保育所に比べますと同じ保育でありながら職員数をたくさん持っております。ですから、それを比較いたしますと、しかも保母の年齢が厚生省の考えた基準より多くなっておりますので、実情は高いものですから賃金が高くなっている。ですから、そういった一つ一つ行政サービスの問題から解決していかないと、まとめてラスパイレスを何ポイント下げろといったような乱暴な議論はできない。個々に行政サービスごとに考えていかなくてはならないと思います。  したがいまして、基本的には先生の御指摘のように、地方団体自体がラスパイレス等を含めまして財政運営の適正化を図る時期にあると、かように思っております。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 どうも先生方、御苦労さまです。いろいろの参考になる御意見をいただきまして、大変判断の材料をいただいたわけでありますが、少し時間の制約もございますので、全部にお尋ねすることができないかもしれませんが、御了承いただきます。  最初に石川参考人お願いしたいんですが、これは、直接現場でおやりになっておりますので、ちょっと具体的な問題なんですがね。先ほどのお話で、補助金のことにかかわって、仕事の順番が仮に八番、九番であっても、何といっても補助金のつく仕事ということになると二番、三番に上がらざるを得ない。単独事業がその分後ろに下がるということなんですが、実はことしの地方財政計画を見ましても、単独事業は目いっぱい見て八%伸ばすということで実際は組まれております。しかし、毎年結果を調べてみますとさまざまな事情があってそうはなっておらないわけですね。ことしは財対債の充当率も減ったりさまざまなことがありまして問題がさらに出てくると思うんですが、あなたのいまの感じでいいんですが、単独事業の八%というのは果たしてそこまでいくものだろうかということについてひとつ感触をお伺いしたい。  それから、財対債の充当率がさらに低下をしたわけです。全体として地方財政構造が健全であるのかないのかという議論はこっちに置きまして、現実の問題としてはどういうことになるかという問題点ですね。  それから第三点で、これは二人の先生からもちょっとそれに類した意見がありましたが、私もそれをお聞きしたいと思ったのですが、地方財政は、和田先生のお話を待つまでもなく、まさに構造的には大変な事態、交付税制度というのも何だかわけのわからぬ仕組みになっちゃっておるというので、まさに転機に立っておると思うんですが、にもかかわらず借金であれ起債であれとにかく銭は何とかあると、そういうことからくる実際に地方自治体における財政の危機感とでも言いますか、そういうものは一体どんなところなのかということを率直にお伺いをいたしておきたいわけです。先ほど高寄先生の御意見でしたか、財対債も借金だという意識がわりかし薄れておって、そのうちにだれかが何とかめんどうを見るだろうというような御意見もちょっとあったようですが、その辺についてのお考えをお伺いしたい。これ三点です。
  28. 石川信義

    参考人石川信義君) お答えをいたします。  先ほど冒頭で申し上げましたように、交付税措置というものはトータルでの議論でございますので、個々の市町村に行った場合はかなり違うと思っております。  参考までに申し上げますと、私の方の周辺に六つの町村がございます、それを見てみますと、五十四年度の決算で、税収が人口一人あたり一万九千円の村は、交付税が一人当たり八万八千円。それから二万の町村が二つあるんですが、これは交付税で九万四千円でございます。私どもの方は、税が四万一千円です。交付税が四万九千円です。これをトータルしますと、弱小の町村で税収が人口一人当たり一万九千とか二万というところが、税と交付税を足して十万から十一万四、五千円になる。私の方は九万にきりなっていない。こういうところに交付税の漸増漸減という原則論があるわけですが、毎年毎年どこにウエートを置いて配分するかということで違ってきて、府県が有利になったり、大都市が有利になったり、弱小町村が有利になったりしますが、総体的に見て、私どものような弱小市は恵まれない都市が多いということでございます。先ほど申し上げましたように、広域圏の負担が三億何千万かかるわけですから、町村によって何千万があるいは何百万かになってしまう。そういうものがあんまり加味されていない。したがって、トータル単独事業を伸ばしたといっても、結果的に財源としてあり得るだろうか、ほとんどない。こういうことになっているというのが実情でございます。第一点です。  第二点の財源対策債問題でございますが、確かに一ころは、借金といつでもどこでも同じような比率で、一定水準で借りるわけですから、せっかく金を借りられるときに借りないで高ようじでいるのがいいのか、借りて仕事を進めた方がいいのかという問題があったわけでございます。私どもは、変な話で恐縮ですが、現実の問題として、私どものような市の場合は、地方財政硬直化というようなことを言われたときの方が以前よりも仕事がしやすかった。起債充当率が九〇になったり、交付税措置があったり、借金ですから返すのは容易じゃないんですけれども住民が求めていたことをある程度できた。特に、臨時市町村道整備債なんていうのができたことによって、いままでは道路の舗装なんというのは一年に一本ぐらい、何百メーターかやるだけであと手も足も出なかったのが、かなりのスピードでやれるようになった。それだけ住民の生活も便利になったし、よくなってきたということですが、おととしあたりから、そろそろ返していかなくちゃならないが容易でないということを実感として感じておりまして、五十六年度あたりでは枠はあってもそうは借りない。財政対策債でなくて、市町村道整備なんか返すのか容易でないので、この辺でだんだん締めていかなくちゃしょうがないだろう。そういう感じをしみじみいたしております。したがって、過去においては私どもは、悲しい現象ですが、財政危機が言われる前よりも言われたときの方が仕事がしやすいなんていうことは、根本的に地方財政対策に対するどこかに欠陥があったんだろう、そういう感じを私は実感として持っておったわけでございます。  しかしながら、繰り返しますが、隣近所全部が、全国の地方団体が同じような率で財政対策を受けているんですから、わが家だけ受けないでしんぼうする必要もないだろうという気持ちが三、四年くらい前まではかなりあったわけですが、最近はかなり渋くなってきております。したがって、公債費比率というのがだんだん高まってきておりまして、最近ではことのほか危機感を持っております。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 和田先生、先生のお話をお伺いしまして、一つは、とにかく交付税制度がややこしいといいますか、わかりにくいというか、ごちゃごちゃになっちゃっておるという御指摘がありました。総額確保する仕方にしても、あるいは確保したお金の配り方にしましても、なかなかわかりにくい。また、ほかの先生方からもそれに付随して御意見がありましたが、一方で交付税を配る場合のお話をしますと、配る場合は、できるだけひとつあの需要もこの需要もみんな勘定してくれという要求も確かにあるにはあるのですね。そうすると、高等数学の専門家でないとわからないような仕掛けになってしまって、国民は知らぬでよろしいという仕掛けになるわけです。恥ずかしい話ですが、ぼくらもここであんな分厚い本を読んだってなかなかわからないです。そういう問題に一つはぶつかっているわけです。簡素化をという橋本先生の御意見もありましたが、私は、全体の絡みがありますが、この制度だけについて言えば、思い切って簡素化にしまして——精密のようでいて、めちゃくちゃに要素をたくさん持ち込めば、一つ一つのファクターというのは、重みが減っちゃっていくわけですから、下手な考え休むに似たりで、簡単、単純なファクターでいいということも逆説で言えるわけでありまして、そういう意味で、もう少し簡単な要素を持ってきて勘定するという、うまい御意見がないものかどうかというのが一つです。  それから、臨調の交付税切り下げるべしという種類の意見につきまして、ほとんどの先生方から御意見がありました。ここで一つ問題になりますのは、交付税というのは何だ、交付税は、これは当然のことながら地方財源交付税のもとになっている金は何だ、これは国の金だと、こういうことになるわけですね。もとは国の金で、そのうちの一定の分けた分は地方財源だと。分け方はいろいろで、双方で意見を言うのはあたりまえじゃないかと、こういう議論が絶えず出てくるわけであります。  そこで、橋本先生でしたか、交付税地方税なんだよと。あるいはまた、和田先生の意見の中で、交付税の対象になっておる大どころの税金、これ地方の金にしたらどうだというような御意見もありましたが、これらをまとめて考えますと、国の税金から分けてもらうというふうになっておるからなかなか問題が乾かぬのであって、税目や配分みんな変えてしまいまして、税目の対象を変えてしまいまして、地方税と国税とに分けて、地方税の中の一部を全体の調整分に回すというふうな、たとえばそういう制度というものは合理性があるのかないのか、この辺の点についてひとつ御意見を伺いたい。
  30. 和田八束

    参考人和田八束君) 最初にお話がございました点ですが、私も同感でありまして、先ほども申し上げたのですが、複雑というかわかりにくいのですね。わかりにくいのはある程度専門的になってやむを得ないと思うのですけれども、やはり少なくとも地方自治体財政の担当者が、一体自分のところにどういうふうに配分されてどういうふうにくるのが妥当なのかというようなことぐらいわからないといけませんし、総額については、ある程度国民に理解はされるということでなければならないのですが、ことしの場合など、五十六年度の場合などで見てみますと、非常に頭をひねくらないとよくわからないというほど配分につきましては非常に精緻な、世界で冠たる方式ができ上がっているのですが、それほどは必要はないだろう。というのは、先ほど橋本先生おっしゃった点で、私ももうちょっと簡素化できるのじゃないか。しかし簡素化だけではぐあいが悪いので、簡素化と同時に簡素化を実現するための中身についても同時に検討したい。その一つとしては、やはりナショナルミニマムは何か。地方自治体なり国なりが国民に対してミニマムとして保障すべきサービスの水準というのは何かということは、ここで改めて考えてみたい。非常にむずかしい問題ですけれども、それがないと、目安がないと、金はこっちにある、金に合わせて配分を考えるからこうなってしまうわけで、どれだけの金か必要なのか、どれだけのミニマムが必要なのかということが先行しなきゃいけない、これが第一点だと思います。  それから国と地方との行政区分、財源負担、これか非常に入り組んでいて、これが地方交付税配分を複雑にしていると思うんですね。結局国庫補助金につられてしまって、単価は国庫補助金の単価を下敷にしている、それから国庫補助金で行われているもの、あるいは機関委任事務で行われているものの地方負担分を結局交付税の中に次々入れていかなきゃならないというところで複雑になってくるわけでありますので、やはり国と地方との行政区分、財源負担というものをきちっと分けて、そうして地方一般財源を調整し保障するというふうにしないと、結局いまのように国庫補助金の負担を保障するための潤滑油みたいな形になってしまっているから複雑になっている、これが二つ目だと思うんですね。  それからもう一つは、先ほど私も言いましたように、やはり税源を適正に大幅に移譲して、そうして交付団体を減らしていく、つまり、日本全国の団体がみんな交付団体だと、東京都以外はみんな府県も交付団体だと、これはおかしいと思うんですね。いま十一大都市ですか、これが全部交付団体だと、これは非常におかしいのであって、やっぱり交付団体というものがそんなに多くてはいけない。それは制度自体か大分ひずみを持ってきていると、こういうふうに思うわけです。  それからもう一つは補正係数、これが非常にわかりにくいし、配分上、自治体間で一体適正なのかどうかよくわからなくなっているので、補正係数について一度再検討すべきではないかというふうに考えます。  それから第二番目の点で、交付税のそもそもの何といいますか、帰属といいますか、こういう点なんですが、私どもは、かなり教科書的になるかもしれませんけれども交付税というのは基本的に地方財源であるというふうに考えているわけです。形の上では一遍国の予算に計上されてくるわけですから、何か国の財源あるいは国の財政からもらっている、配分されているというふうに見えるんですけれども交付税交付金とは違うわけでありまして、交付金あるいは平衡交付金その他交付金というふうになっていれば、これはまあ言葉の揚げ足を取るようで恐縮ですけれども、これは交付される国の財政の都合によって左右されるところがあるわけですが、交付税というふうになっておるわけであって、これがその前の平衡交付金と現在の交付税制度との基本的な違いであろうというふうに私は理解しているところであって、交付税というのは基本的にこれは地方財源であるというふうに考えるべきであると思います。  ただ、その場合に、いまのように国の一般会計に計上されて配分されるということに問題があるとすれば、別途の方向、たとえば譲与税のように特別会計に直接入れるとか、あるいは先生おっしゃいますように、三税の一定割合、現行は三二%ですけれども、その分については、何といいますか、地方税的な考え方をもっとはっきりさせるような何らかの制度上の裏づけといいますか、を行うというふうなことがあっていいと思うんですが、ただ財政調整を行わなけりゃならないという地方財政の性格から言えば、全部を地方税にしてしまうということはやはり不可能でありまして、一定限度の調整財源というのがあるわけでありまして、それをどうするのか。この点については地方自治体委員会といいますか、地方団体側の代表者による配分委員会というふうなものをつくって、そうして地方団体の自主配分制度というふうなものをつくるというふうなことになれば、なおさら地方財源であるという基本性格がはっきりすると思いますので、そういうふうなことも含めていろいろ制度上の工夫はあってしかるべきではなかろうかと、こんなふうに考えます。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 では、同じ問題ですが、橋本先生、あれでしょうか、先ほどの交付税地方税だというのはまあ地方財源だというお話だと思うんですが、臨調でこれがやっぱり問題になりますのは、何%とこう決めましてね、決めるとその内側はおれの金だということが言えるわけです。率を上げるか下げるか——もっと上げてくれということになりますと国の金を取るという印象になるわけですね。それで、国と地方がどれだけ分けるかという話になっていくものですから臨調でも議論をする資格があると、こういうわけで、三二%の内側をどう使うかなんというのは臨調もよけいなこと言わぬけれども、ふやすの減らすのということになると、分け前の問題だから国だっておれも言い分もあると、こうなるわけですよ。ですから、いまの和田先生の話と絡むんですが、何かその辺に工夫がないものでしょうかね。
  32. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 各国のいろんな事例もないわけではございません。たとえば、まあ交付税に類するもので申しますと、国が徴収して、それを現在のわが国の制度のように地方交付するという仕組みもあれば、ある一定額を逆に地方団体が徴収して、そしてそれを、上納金じゃないですけれども、ある一定額国へ持っていくという制度は考えられないわけじゃないですね。  問題は、確かに御指摘のように、いまは国から言えば現行制度前提ですから、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れて、そこから——私はおかしいと思うんですが、補助金便覧には、交付税会計から交付金として、補助金便覧の総額の中に地方交付税交付金が挙がっているのが現状でございます。ですから、臨調で補助金整理と一緒に交付税が取り上げられたりするのも、場合によっては、そういった補助金便覧そのものが交付税補助金の中に掲げているような実態にあるわけです。  ですから工夫としては、御指摘のように、先ほど和田さんもおっしゃったように、いきなりある税金分を特別会計にそのまま収納する、その特別会計において配付するということをやるということであれば、その議論はかなりすっきりするかもしれません。しかし、納税者からしたら多分、どこに行こうと自分の納めた税金がどういう形で使われているかということでありますので、いま国の金か地方の金かという議論がないわけではありませんが、あの議論そのものが少し観念論になっておって、それよりも私は、国税であろうと地方税であろうと、そして国税の一部の交付税であろうと、その税金をいかに効率的に使うかということを判断するには、なるだけ住民に身近な地方団体に公共サービスの配分を考えさせる仕組みにできるだけ持っていった方がいい。  ただ、それができないのは、私も計算したんですが、仮に所得税と住民税を五〇、五〇に配分をいたしまして、現行制度で県民税と市民税との配分割合を固定しておきまして、所得税と住民税全部を五〇、五〇に配分して計算をしてみました。ところが、五十二年度の決算額を利用して計算しましたら、東京、大阪、神奈川、愛知、埼玉、兵庫等は言うまでもなく大変増額になります。交付税も同じような仕組みで配り直すわけです。交付税減りますから配り直しますと、二十三の県がいまよりも地方税交付税を含めた財源がふえるわけです。それ以外の県はもちろん減るわけです。減る県は、東北五県、北陸、信越六県、山陰の二県、四国の三県、和歌山一県、九州七県と、これが減るわけですね。  ですから要は、そうなってきますと、大変申し上げにくいんですが、その所得税から住民税に税源を移譲するということは、現行制度地方税プラス住民税の配分と現行の配分を変えるということですから、だから地方団体間で現行よりも悪くなるところと現行よりもよくなるところか出てきまして、そこで今度は利害が——まあ政策提言というのは私どもがする仕事ではなくて、ひとつ国会の先先方で十分お考えいただくことになろうかと思いますが、計算をしますと、移譲の結果二十三……。  ですから、先ほど私ちょっと触れましたように、税源のやりとりも大事ですが、もう一つは総量としての税収の増大を何らかの仕組みで考えないことには住民のニーズに合わないのではないだろうかというふうに考えます。もちろん前提としてできるだけ安く使うという行政改革前提にございますが、そういった計算をしますと、そう簡単には税源移譲もうまくいかないというふうに考えます。  どうもお答えになりませんが……。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 高寄先生、総額だけの確保は法で言うところの制度改正ではないと。その議論はしょっちゅうここでもやっておるわけですが、自治省は制度改正だと言ってがんばっているわけですけれどもね。いま、本法六条の三の二はそれはそれでおきまして、御存じのように附則で総額確保のことを書きまして、法律で書いたから制度改正だと、こういう論理なのかもしれません。その辺についてのひとつ法律上の御見解があればお伺いをしたい。  それから、サービスを落としてまでも行革の必要はないんだというお話がありまして、ここで国と地方の仕組みの問題にも触れられたわけでありますが、ちょっとこれに関連をいたしますが、先生御自身はいまの補助金——極端なことを言うと私も全廃論者の一人なんですけれどもね、補助金というものを国と地方の割り振りを考えてどの程度まで国のいわば補助金という仕組みのものに残すべきものなのか、この辺のけじめとでも言いますか、何かその辺に御意見でもございましたら。
  34. 高寄昇三

    参考人(高寄昇三君) 交付税の現在の措置制度改正に当たるかどうかということですけれども、先ほども言いましたように、平衡交付金の金額総額をめぐりまして、かつては公共団体側と大蔵省が争うたということですね。そういうことで、一応簡明な交付税率に決めてしまえということですね。そういうような交付税の誕生の背景から見ますと、制度改正というような言葉は、恐らく交付税率引き上げということを言っているのだろうと思います。  それから、サービスを落として行革云々ということですけれども、私は少なくとも地方団体にとって収支を償うということは非常に簡単だと思うんです、ある意味では。サービスを落とせばいいわけです。これは民間企業と違いまして、極端なこと言えば何にもしなくても交付税と税金だけは入ってくるということで、ことに公共団体の場合、大半のサービスが小学校とか清掃とかいうことですね。そういうサービスを落として、収支を償ったって結局意味はないと思うんですね。むしろ重要なことは、サービスを落とさずに、現在の財源の中でどうやってしていくかということをもっと真剣に考えるべきだと思うんです。  それから補助金改正ですけれども、ことに行革で補助金を十四兆とかなんとか言っておりますけれども、その大半の八〇%は国庫負担金ですね。だから、それを国が引き受けてしてくれるのなら、公共団体は別にどういうことないというわけですから、恐らく補助金で対象になるのは本来の奨励的補助金ではないかと思うんです。これは非常に少ない金額ですね。そういうことですから、補助金で行革はできるということは私は余り期待できないのではないか。現実に小学校とか生活保護の基準を抑えれば別ですけれども、そういうことをしない限り補助金整理という、ことに奨励的補助金整理で巨額の財源を生み出されるということは余り期待できないのではないかということです。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 中西先生、いろいろ都市経営のお話ありましたが、そのことはきょうは質問をする時間もございませんが、それぞれの御意見にありましたように、地方交付税制度というもの自体が転機に立っておると思うのですが、先ほど和田先生のお話では、構造的にもう矛盾が噴き出しておる。それをそのままにしておいて率を幾らか上げてみてももとの病気が治るわけではないという種類のお話もございました。確かにそういう感じもするのですが、先生の御意見では、交付税制度そのものはどうあればよろしいというようにお考えでしょう。
  36. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 先ほどからいろいろ御指摘がございましたように、基本的には地域経済ですね、これの不均等な発展、この経済の地域格差というのが非常に進んでいるわけでありまして、地方税の何倍もの地方交付税が農村では来るというふうな現状ですね。これがある限り、何らかの地方財政調整制度そのものは必要だと思うのですね。そういう点で、どういう形をとるにしろ、大都市地域あるいは比較的税源の豊かな地域の税収を税源の少ない地域に回すという措置は、これは地域経済の格差が存在する限りどうしても必要だというふうに思うわけですね。  問題は、一つはこれもいろんな方から御指摘があったわけですが、この交付税総額が果たして妥当かどうか。この総額が果たして妥当かどうかという場合に、やはり税制の問題を抜きにして実際は論じられないと思うのですね。いまの国や地方全体を通ずる大変な財源難、財政危機、国債、地方債の大変な累積という状況の中で、やはり抜本的な税制改革とのかかわりで交付税総額も決めていかないとこれは基本的な問題の解決にはならないということが第一点と、それから交付税交付をする際のいわば手続とかあるいは算定とか、そういうものはいろいろまた改善をする余地はあるのじゃないか。非常にむずかしいということもございましたし、この算定簡素化ということもありますし、それからたとえば特別交付税算定、これが地方自治体側には必ずしもその根拠がよくわからない。これの算定過程をもう少し公表してほしいとか、もう少し交付税算定そのものに地方自治体側の意見がいろいろ通るようなパイプをもっと考えるというふうな改善点もございますでしょうし、そういう大きな総額の問題、それから交付税の運営のあり方の問題等々、少し次元は違いますけれども、いろんな改善点はあろうかというふうに考えております。
  37. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 各参考人先生方には、大変貴重な御意見を聞かしていただきまして大変ありがとうございました。  私は、まず高寄参考人和田参考人にお尋ねをいたしますが、昭和二十九年に地方交付税制度が創設をされた当時には、不交付団体というのが大体七・三%程度であったものが現在では二%弱と、このようになっておりますが、これは自主財源確保ということに問題があったのではないかと思うわけでございますけれども、それではどの程度に自主財源確保されているのか税制と交付税制度がバランスがとれているということかとなりますと、大変問題があるのではないかと思うわけで、そこでよく巷間言われるのは、地方団体の三分の一ぐらいが不交付団体であるのが妥当ではないかという説もあるようでございますが、私は少なくとも、税源が豊かである十の指定都市のほとんどが交付団体の中に入っておるということは大変異常なような感じがいたすわけでございますけれども、それはどういうところに原因があるとお思いになるか、御所見を聞かしていただきたいと思います。
  38. 高寄昇三

    参考人(高寄昇三君) 交付税交付団体が非常に多くなりまして、この点はある意味では全団体交付団体に落ちる方が財源調整としては非常に公平だということも言えるわけですけれども、私の感じでは、交付税上の財政力指数が一というところが一番苦しいのじゃないかと思うんです。こういう団体は概して人口急増市なんです。交付税算定で一番算入率が悪いのがやはり敷地ですね、土地の費用の算入というのが非常におくれているのじゃないか。そういう点から考えますと、この現在の交付税の基準というのが必ずしも地方自治体実態に一致していないということで、不交付団体が必ずしも裕福だと言えないわけで、そういう意味では私は現在でも不交付団体でも実際は交付税が欲しいと思いますね。そういう意味では、実態は全部が交付団体になっている。  問題は、税源を増税してする場合はわりかた簡単なんですけれども、既存の交付税財源を食って自主財源へ持っていくという行き方ですね、これか一番むずかしいわけで、現在指定市が交付税をたくさんもらっているというのは法人税関係の税が少ないということで、実は橋本教授も言われましたように、これは非常にむずかしい問題で、増税の場合はわりかた簡単ですけれども、既存で移す場合に、ことに府県の場合はともかくとしまして、市町村の場合は非常にその市によって財政力の格差が大きくなる。たとえば、法人税を移した場合は、日立とか豊田という市が非常に裕福になってしまうということですね。それから住民税を大幅に移した場合は、芦屋市というようなところががばっと金持ちになる。これは私は、固定資産税の中にあるように、ある程度府県が、そういう財政力指数が一・五とかというような非常に裕福な団体があらわれるようなことのないように、府県の財源調整措置というものを働かすようなシステムを考えながら、やはり地方とか国の現在の税源市町村に移していく、そういうことで順番に交付税交付額が少なくなり、税金が多くなる。そういうことで、決め手の一つは、結局府県の市町村に対する調整機能というものをもう少し活用したらどうかということなんです。
  39. 和田八束

    参考人和田八束君) 私も大体先生と同じような意見でありまして、余りにもいま交付団体が多いというのはどうかと思うんですけれども、つまり地方自治体全体が交付税の、何といいますか、網の目といいますか、枠組みの中に入ってしまっているというのはどうかというふうに感じているわけなんですね。やはりある程度のレベル以上のところは交付税の対象団体にならないで自前でやっていけるような制度が望ましい。これは地方自治という観点から言っても望ましいし、それから交付税制度をもう少し弾力的に運用できるという点から言っても好ましいので、そういう観点で少し税源配分それから事務配分等も含めて考え直してみたらどうかということをかねがね言っているわけです。  特にお話のように、指定都市が交付団体になるということは、これは大変他に圧迫を与える原因になりまして、横浜市、大阪市、札幌市というふうな、そういった政令指定都市が受け取る交付税総額というのは、その府県内の他の市町村交付税額にほぼ匹敵するぐらい、つまり他の周辺の十数市町村あるいは何十市町村分をまとめ上げたぐらいの交付税を一挙に受け取るということになるわけであって、つまり、非常に単位の大きいことになるわけでありまして、これはやはり本来交付税を必要とする弱小といいますか、中小市町村といいますか、そういうところに対して圧迫要因になっていることは否定できないわけでありまして、その辺をやはり改善すべきではないか。そういうふうになってきたというのは、やっぱり都市財政需要が非常に増大したというわけなんですけれども増大したわりに税収がそれに伴ってふえなかった。つまり、ふえるような都市税源の開発というのがうまくいかなかったというそのギャップだろうと思うんですね。そのために交付税で埋めていった。昭和四十年代になりますと、交付税で態容補正あるいは都市圏補正等々で、それまでは農村に対して傾斜していたのが、都市に対して非常に傾斜を強めるというふうに変わってくるということですね。これはやはり都市財政のひずみといいますか、そういうところにあるわけで、そこのところをやはり制度改正としては問題にしなければいけないのではなかろうか。  そして、その他政令指定都市の問題で言えば、都道府県とそれから政令指定都市との財源、それから行政事務の配分がうまくいっていないといいますか、中途半端である。やはりもっと政令指定都市に財源と権限を移譲するというふうな形で、政令指定都市の制度そのものを見直すべきところかあるのではなかろうか、こんなふうに考えます。
  40. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いまのお答えで、大体そういう不交付団体が少ない、交付団体が多いということは余り好ましい状態じゃないということのようでありますが、やっぱりその原因というのは、自主財源不足をしたことが主な原因のようでございます。  そこで、先ほどいろいろと各先生方から見解をお聞かせ願ったわけでございますが、どのような方法で自主財源を拡充をするのか、それが第一点。  それから、国税から地方税へ移譲するのにはどういう税目があるのか。また、そういうことの可能の税目はどういうものがあるのかという具体的な指摘。  そのほかにもっと別な方法地方の税制の拡充ができる御意見がありましたら、やはり和田参考人と高寄参考人にお答え願いたいと思います。
  41. 高寄昇三

    参考人(高寄昇三君) ことに都市財源につきましては、なかなか国の方も、法人税の移譲とか、また府県の方も簡単に財源をくれないと思いますね。指定都市の財源だけに限れば、現在事業所税というのがあるわけですけれども、実はこれが交付税に四分の三入ってしまっているというわけですね。これは指定都市としましては、何か自分の特定財源のつもりで税を設定したのに交付税財源になってしまった。これは都市財源の充実という面から非常にマイナスの現象を与えているのではないかと思っております。私は、府県の関係でいろいろ娯楽税とか料飲税とかありますけれども、それから国の関係では法人税関係ありますけれども、私は基本的には地方自治体もある程度自分で財源を見出さざるを得ないのではないかということですね。  ことに、いま言いましたように、固定資産税というのは私はやはり低いと思います。恐らく先生方も余り平均的には払っていないのじゃないか。私個人の印象でも余り固定資産税というのはなくて、むしろ住民税と所得税の負担というのは非常に重いのではないかと思うんですね。だから、都市財源充実のストレートではないですけれども、やはり固定資産税の増税ということは、評価がえのピッチを上げるとかそういう問題はやはり急速に進めなければならない。  それからあと一つは、最初にも言いましたように、サービスとの関係、これからは一般的な増税がむずかしいとなりますと、サービスとの関係で税を集めるということがこれからますます必要になってくると思うんです。現在の固定資産税は地域的な不均一課税というのを禁止しておりますけれども、私は、欧米の例から見ましても非常に、地下鉄を一部につけるような場合、ことにこれから既成市街地の地下鉄が済みまして郊外へ延ばすようなケースが非常に多くなってきているんですけれども、これを開発負担金で取りますと大蔵省の方は補助金を削ってきますわけで、どうしても固定資産税の不均一の超過課税をしたいとか、あと非常にスムーズにいくかどうかということですけれども、公共団体ごとに市町村の事務で大きいのはやはり清掃の関係ですね、こういうのは民間の企業が流通、消費の関係で製品を発売するわけで、例の京都市で空かんの問題がありましたですけれども、結局ああいう終末処理のために非常に金が要る。それは一つ一つ市町村で課税しておりましては非常に煩雑なんで、国の方でああいう空かんに類するようなものの放出税というような形で徴収するか、場合によっては市町村の法定外普通税で、自動販売機税ですか、そのようにして、私は余り大きな大幅な財源改正が行われましても、一般的なものは運営の関係がありまして、それは余りストレートに効果が及ばないと思うんです。むしろ公共団体がじみちにサービスとの兼ね合いで税源を見出していく、それが私は一番正攻法ではないか。大きな税源改正にはならないですけれども、サービスの抑制とか費用負担の公正化という面ではこれが一番実現可能性があり、正攻法の方法だと思います。
  42. 和田八束

    参考人和田八束君) 具体的には大変むずかしいことでありまして、実際には計数的にもはじいてみなきゃいけないわけですし、それから国と地方との全体の整合性といいますか、こういう点もありますので大変むずかしいのですが、何といいますか、大まかなビジョンとして私が考えているのは、大体所得税は基本的に市町村で——逆に言いましょうか。市町村においては、所得税とそれから財産課税、これを基礎にする、そして府県と政令指定都市は、法人関係税を基礎にする、こんなふうにひとつ大まかに整理できるのではないか。そして、国と地方、それから府県と市町村との間での配分ももう少し見直してみる。たとえば、府県と市町村との間で言いますと、都道府県民税、これはやはり市町村に移譲して、府県では都道府県民税は整理した方がいいんじゃないか。そのかわり府県及び政令指定都市の方は法人税割をふやし、それから事業税等の外形標準課税を進めるべきではないか。これは全国知事会で前に提言したところですけれども、これを進める。そして、たとえば府県の不動産取得税などは市町村に移譲したらどうか、そして市町村の方は、法人については少なくとも外形課税的な均等割程度でどうかというふうな考え方である程度整理をして、そして国との税源配分についてもそういうふうな配分前提にして考えられないかというふうに考えているわけです。そして府県につきましては、同時に、何といいますか、現在のような機関委任事務を中心というふうなあり方を改めて、市町村間の連絡調整、あるいは市町村の連合的な事務を処理するというふうな立場に改めていく。つまり、府県の肩の荷をうんと軽くして市町村中心でいくというふうなビジョンといいますか、イメージといいますか、そういうものを持っているような次第です。
  43. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、石川参考人にお伺いをいたします。  最近、第二臨調では、緊急課題一つとして地方の行財政のあり方を検討すると、このようなことになっておるようでありますが、そのほかに財界などから地方交付税率の引き下げ——さっき話題になりましたが。それから地方の過剰職員の問題、あるいは高水準の給与の批判と、こういうような批判が日ごとに強まっておるようでございますが、自治省はこれに対して徹底抗戦のような構えでございますけれども、地元で、現場でやっておられる石川参考人におかれましては、この地方交付税率の引き下げ、それから地方の過剰職員の問題、高水準の給与の問題、これについては、第二臨調の批判というものをどのように受けとめて、批判をされる御見解がおありだと思うんですが、お聞かせ願いたいと思います。
  44. 石川信義

    参考人石川信義君) 給与の高水準という問題は、三千幾らの団体ですからいろんな要素がございまして、ある団体ががっぽり高くしてきますと、結果としてそれが周辺にだんだん広がってきているといういままでの経過がございます。確かに指摘のとおりだと考えております。したがって、団体自体がこの問題に対処して努力をしていかなくちゃならないことだと思っております。  それから、過剰人員の問題でございますが、法律上制約されているものたけで論じるわけにはいかないという気がいたしております。たとえば市町村の場合ですと、国なり県の用地買収まで、現実には法律上何の規定もございませんが、市町村の職員かやらざるを得ない。あるいは国、県のいろんな、市町村には法律上権限のない仕事でも下調査であるとかいろんな問題で資料調製をやらなくちゃならない。そういう表にあらわれない事務というのか相当ございまして、結果として人員が過剰になってしまうということになっているのではないかと思っております。私どもは、四年間退職があっても新規採用を全然しないということで、今後ともそういう方針を貫いていくわけですが、実質的にはそういう問題がございますので、表向きだけで市町村の職員数が多いんじゃないかと、国は増員をしていない、県も法令で規定されたもの以外はふえてないじゃないかというような議論がありますけれども、現実に市町村にはそういう問題があるんだということを御理解いただきたいと思っております。  それから、交付税の問題ですが、給与の高水準とかいろんなことが絡んで、ショック療法でどこかで締めつけたら立ち直るのじゃないかという考えが経済人にはあるのかもしれませんが、これは先ほど申し上げたとおり、地方団体自体の財源であるという考えに徹しているわけでございます。御理解いただきたいと思います。
  45. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 最後に、橋本参考人中西参考人にお尋ねいたします。  鈴木総理が、行革には政治生命をかけると、このように断言しておりますけれども、どうも見ておりますと、やはり第二臨調においても、公務員の抵抗を意識してか、機構改革、定員の削減というものは棚上げされるような模様で、大分後退しておるのじゃないかと、このような印象を受けるわけでございますが、やはり行革というのは即効性のある補助金の削減ということに重点を置いておるようでございます。  そこでお尋ねをしますが、この補助金整理合理化についてはどのようにお考えになっておるか、その点が一点でございます。  それから第二点目は、地方団体から要請の強いところの補助金一般財源化、それから統合メニュー化についてはどのようなお考えをお持ちなのか。御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  46. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 補助金整理合理化についてどう考えているかということでございますが、実は私、いま補助金便覧をひっくり返しましていろいろと勉強をしております。その途中経過での意見でございますが、たとえば零細補助金と言われるもの、私なりに独断と偏見で基準をつくりまして、たとえば仮に国単位で一億ぐらいのものを零細補助金と考えて計算などしてみました。そうしますと、正直言いまして件数はたくさん上がってくるんですが、金額としてはきわめて微々たるものでございます。したがいまして、もし補助金整理することによって何がしかの金額として財源を浮かそうと思うならば、かなり聖域に近いところの、たとえば法律補助の中で国が三分の二負担するとか二分の一負担すると書いているものと、それから「予算の範囲内において」負担することができるとございますから、仮に、予算の範囲内において負担することができる等々のいわば法律補助の中でわりと緩いもの、こういうものを取り上げてやればある程度金は出てくるかもしれませんが、しかしこれは話が逆であって、実は法律そのもの、事業そのものを見直すべきでありまして、したがいましてたとえば零細補助金というものを整理したからといって金は浮いてこない、こういうふうに思います。  ただ、では、零細補助金について目をつぶっていいか。あるいは古くからある、三十年代四十年代の初期からある補助金がいまだにあることについてどう考えるかということについては、この際ゼロベース的な発想で補助金そのものを洗い直すことに意味があると思います。それは行政の姿勢を正すといいますか、人件費等にも関連しますが、私あるところで書きましたけれども、これは具体的な例で恐縮ですが、大阪府下のある市におきまして一年間に老人健康教育の補助金に九千円の交付を受けた、これは二分の一の補助でございますから一万八千円の事業費。これで大阪府では十八万円の補助金を国から受けております。それで実態は、市はどうしているかというと、一回講師を招いて老人健康教育教室を開催しております。そのこと自体がいい悪いじゃないと思いますけれども実情はそうでございます。その一万八千円では事業はできませんので、いわば超過負担で、実際には事業費が約三万円ほどになっておりますが、一回だけ老人を集めている、私は担当者に、なぜこういう仕事をしますかと言うと、それは補助金が来るから、法律があるからと、こう言います。そうしましてなお聞きますと、しかし先生、老人が一年間に一回でも老人健康教育と称して公民館に集まることは、日本の社会の安定のためにずいぶん寄与するのではありませんか、とりわけおしゅうとさんと若い人との間の家庭の問題が、外にちょっとでも老人が出る口実ができればいいじゃないですかと言われまして、なるほど補助金というのはいろんな効果があるというふうに考えました。しかし、零細補助金整理は必要だと思います。  それから二番目に統合メニュー化、これにつきましては、左の極に補助金があるとします。右の極に地方税すなわち一般財源があるとします。これはそれぞれ目的が違うわけで、補助金の場合にはいわば国が、国の経済計画に適合するような計画に対して補助をするとか、あるいは国と地方の相互に利があるような補助をするという国からの考え方があります。当然でございます。国が負担する。こちらの場合には、先ほど私申し上げましたように、地方団体住民の選好に合わせて行政を進めるという意味があります。そうしますと、総合補助金なりメニュー化補助金というのは、いわばその両方の基準の真ん中にあるものでございますから、そういう意味での妥協と申しますか、そういう予算もありましょうし、こっちからいえばそれだけこちらの基準が少なくなったわけですから、こちらからいえばぐあいが悪い、こちらからいえばこちらに近づいてきた。ですから、いずれが是か非かということは言えませんが、しかし新聞紙上などで、玄関を二つにして、柱を真ん中に置いて、こっちは労働省の補助金でこっちは文部省の補助金だといったようなのを見せつけられますと、納税者から見ればいかにも困ったことであると、かように思います。
  47. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  48. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 速記再開。
  49. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 補助金の問題を考える際には、二段階ぐらいにレベルを分けて考えてみたいわけです。それで一つは、地方財政制度の全体的な改革とかかわって補助金を一体どういうふうに改革するかという場合と、それから当面の補助金をどう改善するかという二つあると思うんですね。この補助金の特質ですけれども一つは、国の政策を補助金交付することによって実現をさせていくという面と、それから地方自治体に一定の財源を保障するという積極面とあると思うんですね。  それから問題点としては、補助金というのが機能としては国、中央官庁と地方自治体をつなぐ重要なパイプになっていて、その交付要綱が非常に膨大なものがつくられている。それで監査がまた厳密に行われる。しかも、非常にたくさんある補助金一つ一つについてそういう事務が行われるわけで、それ自体非常に膨大な中央、地方を含めた人件費がかかっているわけですね。歴史的に日本の中央、地方の官僚機構は、中央の方に非常に指導性が強くて、中央官庁が一から十まで基準とか交付要綱とかそういうものを非常に緻密につくって地方自治体に実施をさせるというやり方できたと思うんですが、やはり六〇年代、七〇年代を通してかなり状況が変わってきたんじゃないかと思うんですね。地方自治体の方の行政能力というのが非常に高くなってきているのじゃないか。これは非常に著しい変化だと思うんですが、もう中央官庁に負けないくらいの行政執行能力、あるいは計画能力とか、そういうものを地方自治体というのは備えつつあるというふうに思うわけですね。  そうすると、一つ一つ補助金について、大変詳細な指導とか監査とかあるいは交付の際のいろんなめんどうな手続というのはむしろできるだけ改善をした方がいい。そのためには、ただ中央官庁の機能を全然否定するのじゃなくて、やはり全国的な政策の提示であるとか、一定の基準とかそういうものは必要なんですが、それをうんといわば詳細なものは省いて、大ざっぱというのですか、基本的なことに限って、地方自治体に多くはもう任せてしまうというやり方をとって、同時に、現在の機関委任事務の制度とか団体委任事務制度とかそういう委任制度を変えていけば、たとえば福祉関係なんというのは機関委任事務で八割が国が持つとか非常に繁雑で、あの事務というのは一般的な基準を中央官庁が示せばほとんども地方自治体で独自にこなせるということですから、さしあたって各省庁別に大幅な補助金の統合、いわゆる総合補助金化ですね、これをやっていく。そうすると、中央官庁の人員がかなりの程度節減できると思うんですね。それから地方自治体の方もかえって仕事が、いわゆる縦割りの弊害がなくなりますからやりやすくなる。地方自治のいわば趣旨というのも、地方自治体のいわば権限とか責任とか能力というのをより高める形でこれは改善ができる。  ただ、これをやるためには大変ないわば改革になると思うので、なかなかそう簡単にはいかない。特に中央官庁、地方自治体を含めた改善ですから、非常にこれはいろんな困難があるだろうというふうに考えておりますけれども、全体的な補助金制度の改革の一般論としてはそういう方向が重要であろうというふうに思っております。  それから当面の問題については、やはり私は原則として、いまの補助金というのは、国民の生活にやはりいろんな形で役立っているものが多いわけですね。これを何の代償措置なしに切ると、結局やはり生活のレベルがダウンするということになりますから、やはり基準として、その補助金が一体国民生活にどういう役割りを果たしているのかということで、レベルをダウンさせるような切り方はすべきじゃないというふうに考えております。
  50. 神谷信之助

    神谷信之助君 参考人の皆さんには大変御高見を聞かせていただいてありがとうございます。時間を過ぎておりますから、私の方は簡単にお尋ねしたいと思います。  一つ補助金、いま和泉議員の方から聞きましたが、補助金問題をお尋ねしようと思っておりましたが、もう二人の方の御意見をお聞きしましたので、あと三人の方にこの問題で御意見お願いしたいと思うんです。  私は、補助金制度というのは、中央の自治体に対する支配の一つの道具といいますか、そういってこの役割りを非常に果たしているというように思うんです。それで先日も当委員会で自治大臣とその点でいろいろ話をしたんですけれども補助金制度があって、何とか自分の県に補助金をもらいたいと思うと、陳情をやっぱりやらなきゃならない。隣の県が一生懸命やっていれば、それに負けぬようにやらぬともらえない。そうなっては住民に不利益だということで、結局やっぱりそういう陳情合戦に陥らざるを得ないと、こういう話が出てきています。そして実際に、都道府県の副知事さんとかあるいは総務部長、財政課長、地方課長というところには自治省出身の方が非常に多いですね。これはそういう補助金あるいは起債の認可を受けるという点でもやっぱり顔のきく人がおった方が都合がいい。そういう点ではメリットかあるという、そういうことを私は否定できないというふうに思うんです。そういう形で、先ほど石川参考人がおっしゃったように、市長が自由にできるのは三千百万円で、結局、そういうひもがつく事業をまず考えないとどうにもやっていけないということになってしまう。だから、本当に地域住民の要求にこたえるような仕事をやっていくためには、この補助金制度にやっぱりそういう意味ではメスを入れる必要があると思う。たとえばいま第二臨調が考えているような一割削減とかそういう問題ではなしに、その財源を少なくとも自治体の自主財源に転換をする。たとえばいまの税制なら税制、税収はそのままにしておいても、それは国税から地方税へ転換をするという方法でできるわけですから、そういう方法でやれば、もっと地方自治あるいは地方自治の本旨に近づくことができるだろう。そういう意味で私はこの補助金制度というものにこの機会にひとつ大いにメスを入れるべきではないかということで議論をしているんです。  ところが、自治省の側では、やっぱりそうやると、この間もありましたけれども、ほかの大臣でしたが、道路をつくるのが好きな知事は道路ばかりつくるわ、こっちは福祉の好きな知事は福祉ばかりやるわと、むちゃくちゃなことになると言わんばかりの答弁があったことがありますけれども、私はこれは、本当に住民が主人公である、あるいは国民が主人公である、そのことに信頼を置かない考え方で、やっぱりよそと比べて悪かったらもう文句は出るんですね。長期的に見ればちゃんと自然に淘汰され、平均化される。しかも、その中にそれぞれの地域の特殊性というのが生かされて、みずからのふるさとに誇りを持つことができる。そういう方向へ向けて私は進むべきだというように思うんですが、この辺について、石川参考人和田参考人、高寄参考人からお伺いしたいと思います。  それから、橋本参考人中西参考人にお伺いしたいのは、地方税の決定方式なんですが、いま地方税の決定はもう実質上は国会がやっているわけですね。結局三月三十日か三十一日にできるんですから、実際には自治体の議会は、三月議会に地方議会で議論することができなくなって、専決委任をしてもらうという方式をやっているんですね。だから、地方議会で地方税を実際に議論をするのは、法定外課税をやるか不均一課税をやるか、そういうその自治体自身独自のものをやるときに議論をする、住民税を初め固定資産税、その他すべてが国会で決まると、こういうことになっているんですね、いまのは。だから私は、それぞれの自治体の主人公は住民なんですけれども、これは住民が払う地方税について地方議会で論議されないわけですから、その自治体に要る費用を自分たちが払っているという意識を持てと言ってもこれは無理な話だ。だから、地方税法には税目なりあるいは課税標準なりあるいは税率なり一定の基準、それから税の計算のいろんな仕方とか実務的な問題、全部統一してやらなきゃならぬ事務的な措置、こういったものを決めて、あとはそれぞれの自治体が一定の範囲を決めて、それぞれの自治体の自主的な選択にゆだねると、こういう方法をとれば、これはもっともっと地方税に対して住民の関心が高まる。隣の町と比べて高いとか低いとかという問題もできてくるわけですから、高くても、それはこういう学校なら学校を建てるために、こういう特別の条件があるんだということでコンセンサスを得られればそのことがいいわけでしょう。だから、こういった点をやって初めて私は自治意識もさらに一層発展をさせることができるのではないかというように思って、この点も当委員会で何回か議論をしているわけですけれども、この点も先ほどと同じように、税金が高いところと低いところができてどうも困るじゃないかという話があるんです。江戸時代ならいざ知らず、いまのように交通が頻繁で自由に行き来できるわけですからね、その点の比較検討はできるし、そこで議論は起こるし、そして一定のコンセンサスの中で一定の税率を自分たちで決めてやっていくというのがやっぱり地方自治を確立していく上でも非常に大事なんではないかというふうに思っているんです。この点についての御意見を、中西橋本参考人からお願いしたい、こういうように思います。
  51. 石川信義

    参考人石川信義君) お答えをいたします。  補助金制度については先生と私大体同じ意見でございます。これはアメリカ式のデモクラシーで、税金の行方が住民がわかるとかわからないとかいろんなこと言われておりますが、現状では地方税プラス交付税、その他の収入等で形成されておりますので、税金の行方なんかわかりっこない。当然だと思うんです。住民からいろんな要望があったものを優先してやっていくというためには、補助金全廃というのはちょっと暴論かもしれませんが、将来は補助金制度をなくしていく。一挙にやりましたら両方で失業者が出てきますから、地方と国で。これは一挙にやれませんけれども、やっぱり年次計画でなくしていくべきである。その結果として交付税の充実というものが当然出てくるわけですが、結果として、たとえば単年度でできたものが四年かかる、五年かかるということがあるかもしらない。しかし、それは住民の納得が得られるだろう。いま御指摘のように、たとえば消費経費にすっかり使ってしまうとか、特定のものにだけしわ寄せをしていくとかいうようなことがございますれば、選挙、リコールという制度があるわけでございまして、そういうものでだんだん時間をかけて定着していくんだろうと思っております。もちろん制度改正というのは一〇〇%いいなんていうことはありっこないんですから、いい面もあれば悪い面も出てくるでしょうけれども住民自治という基本的な考え方からいうと、補助金制度というものはやっぱりなくしていくべきだと思うんです。それによって、時間がかかっても、その団体が自主的に判断をして仕事をしていくという姿であるべきだという考えをしております。  それから、私への質問ではございませんが、地方税法の改正の問題で、私どもは、たとえばことしの場合ですと、軽自動車税の月割り課税の改正の分だけはあらかじめ議会の了解をいただいて専決をする。それ以外のものについては法案が決まり次第、決まる見通しを大体考えて議会を招集して、次の日に議会で議論するという方式をとっておりますので、これらについては、やっぱり少なくとも三月初旬ぐらいに、あるいは二月末ぐらいに上げていただかないと、地方団体としてはそれから課税事務というのがあるわけですから、はなはだ迷惑しているんだということを御理解いただきたいと思います。
  52. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま石川参考人がおっしゃいましたけれども、私が言うように、税率やらすべてを地方議会で決めるということになれば地方税法を毎年改正する必要はなくなる。必要な三年か五年のときに税率の幅をどうするかというのを変える、あるいは税目を新しくつくるかという場合だけであって、いまのように毎年やって、しかも成立するのは三十日か三十一日というそういう状態はなくなるということです。
  53. 石川信義

    参考人石川信義君) 地方税法が交付税なり地方財政計画なりの一貫したものの中で操作されておりますので、毎年税率改正その他というのが生まれてくるわけですが、私も補助金制度をなくすることによって、たとえばどうしても早目にこういう仕事をしたい、住民の強い要望があったら超過課税とかいろんなことでもう少し弾力的にやれるんではないかというような考えを持っております。
  54. 和田八束

    参考人和田八束君) 補助金につきましては、思い切ってメスを入れるべきであるという先生のお考えには私も賛成であります。補助金につきましては、民間とかあるいは特殊法人等に交付されるものと地方団体交付されるものと大別されるわけですが、私はかなり大ざっぱな議論をさせていただければ、民間とか特殊法人に行っているものは原則的になくするというのが妥当だろうと思うんです。これは多くのものが補助金のために認可団体をつくったり、あるいはいわゆる天下り的なものが多いということから言いまして、本当に必要なものは後で残るでしょうけれども、原則的には整理していくというふうに考えるわけです。  それから、地方団体に対するものは、負担金といわゆる奨励的補助金といいますか、があるわけで、負担金の問題につきましては行政事務の見直しということを基調にしながら一般財源化を図り、それから奨励的補助金にかかわるものはこれは原則的に廃止する。それで必要なものは一般財源化を図るというふうなことになろうかと思います。  それからなお、補助金につきましては、地方自治体が、都道府県、市町村それぞれが独自の補助金を非常に多くの種類を持っているわけでありまして、これもやはり非常な弊害を持っているように思いますので、自治体としても独自に自分のところの補助金の洗い直し、見直しを図るべきではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  55. 高寄昇三

    参考人(高寄昇三君) 補助金の問題の一般財源化とか、ことに地方道路に対する補助ですね、これは道路財源の譲与税化であらかた済むのではないかと思うんです。私は今度の臨調で一番心配しているのは、補助金、ことに法律補助はよう廃止しなくて、負担区分の変更とか基準単価を抑えてくるのではないかということですね。ところが、負担区分というのは、本来その事務の性格が整合するかどうかによって決められているわけで、たとえば生活保護費の基準の十分の八を三分の二にしてくるとか、そういうようなやり方が行われるのではないかということは非常に心配しておる。  それから補助金ですけれども、そういう生活保護とか保育所とか義務教育とかいうそういう法律的な補助は別にしまして、また、さっき橋本教授が言われましたように、国全体で総額一億円ぐらいの補助金ですね、これは公共団体としては、それがあるから欲しいということだけで、なかったらどうしても困るということはないわけです。大体、文部省の文化ホールの補助ですけれども、一カ所あたり三千万とか五千万とか言っておりますけれども市町村へ行ってみますと、総額十億とか三十億の文化ホールをつくっておるわけですね。それで果たして補助金の意味があるのかということを考えますと、あるから欲しいということで、なければないで私は済むと思うんですね。そういう補助金中心にしてやれば、金額は少ないけれども市町村行政としては非常にさっぱりするのではないかと思うわけです。百分の一とか五十分の一の補助金をもらうためにわざわざ建設をおくらすとか国の基準に合わすような設計にして、住民の基準に合わないとかというようなことを考えますと、ない方が、日本経済、マクロとしては非常にコストが低くなる、あるためにかえってむだが生じていると思います。
  56. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 地方税を国会で決めるのではなくて——確かにいまの地方税法ですと、もう税率から詳細に至るまで国会で決められてしまって、しかも、いつか東京都が固定資産税の不均一課税をやろうとするとすぐさまやるべきじゃないというふうな通達が出されるというふうな状況は、改善をしていく必要があろうというふうに考えます。  ただ、地方税法を全く廃止をして、地方の条例ですべて税金を取るというふうな形にするのがいいのかどうかということは、私も大分疑問がございまして、やはり全国的に一定の基準であるとかあるいは全国的な一つの目安であるとか、そういうものはあって当然じゃないかというふうな気がいたします。したがって、できるだけ地方自治体の独自性というのですか、独自裁量権というものをいまよりもっともっと拡大をしていく。地方自治体の条例の自主権というのを広げるという方向で私は考えるべきじゃないかというふうに思っております。
  57. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 現行の税法の中で、地方税の自由度、たとえば超過課税あるいは法定外普通税、そういったものの自由度を高める方向については、私は基本的に賛成をしております。ただ、地方税も租税でございますので、現行憲法では租税法定主義でございますから、法律そのものは国会で審議するのがこれがたてまえでございますので、地方税であるから地方議会で決めるというわけには、憲法との抵触がございます。  それと、国民経済の全般から見ますと、現在の税源地方団体に拡散しておりますので、税源と納税者の居住とのその不一致という問題がございまして、もし地方税にかなり自由な超過課税を認めますと、税源の侵食といいますか、そういった点がありまして、かなりの制約が加えられると思いますのと、いま一つは、かつてオプション1、オプション2、オプション3といったような住民税の選択の幅があったにもかかわらず、それを現在のような方式、標準税率制になったのは、一方では現行制度前提地方住民が、特定の地方団体において税負担が高いことを好まないといったような地域横並び主義が強くあった。しかし今日において、そういった横並びがもしないとすればどうかと思いますが、現状は住民税の超過課税を法人税を別にしてやっている地方団体はほとんどない。それから、固定資産税の超過課税におきましても、いま調べましたら四百三十二団体のみが、特に町村、五万以下の市のみがやっているところから見ますと、その自由度をやることは考え方としてはいけますが、果たして納税者がそれをすぐさま、いまの制度前提として受けるかどうかは疑問でございます。しかしながら、自由度を高めるという考え方においては賛成をいたします。
  58. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 最後になりましたけれども、本当は全参考人に御意見をお伺いしたかったんですが、時間の制約がございますので、ただ一点だけ御見解をお伺いをしておきたいと思います。  それは橋本先生と、現場で御苦労をなさっている石川市長にお伺いをしたいんですが、私どもは、例のいわゆる地方財政法の十条の二の公共事業に係る国の負担金、普通建設補助金とも言っているわけですが、これを一括して第二交付税として位置づけて、そしてもう地方交付すると、こういう制度を創設すればいいのではないかと、こういう見解を持って、国会の場でもそのことを政府に要求をし続けてきているわけですが、神谷委員の発言ではありませんが、政府はなかなか地方を余り信用なさらぬわけですね。道路の好きな市長は道路ばっかりつくっちまうというようなお話がございましたけれども、そういうように信用しないという面もありまして、なかなか踏み切ってはいかないわけですが、これについての御見解をお伺いをいたしまして、それだけにとどめたいと思います。
  59. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 私も新聞紙上で第二交付税の構想が出ましたことを承知しておりまして、そのときに、非常にユニークなといいますか、あるいはおもしろいといいますか、非常にいい案であるというふうにそのとき感じました。理由は次の二つであります。  一つは、昭和四十年代と違いまして、五十年代に至りまして、公共投資の中で基盤整備はある程度できてきた。とりわけ土地に定着したような、道路は道路財源がございますけれども、公共施設はかなり進んできた。そして五十年代に入りましてからは、言葉はちょっと変ですが、上物といいますか、公益施設といいますか、住民の利用する施設、とりわけ社会教育とか社会福祉とかあるいは公民館とか、そういった施設に重点が移ってきております。そこで、そういった公共投資の重点か、いわば産業基盤的な社会資本から生活関連社会資本へ移ってきたときに、とりわけそういった公共投資の優先順位は地方団体にゆだねた方がいいのではないかということか一つであります。  もう一つは、産業基盤的な、たとえば道路とか河川とか堤防等々、もうすでにかなりレベルが上がってまいりましたが、そういう施設にいたしましても、ある程度、もちろん各省の考え方があろうかと思いますけれども、地域において優先順位を決めた方か総合的な効果が上がるのではないか。そういう意味で、それぞれの五カ年計画で、公共事業五カ年計画でやっております現在のやり方で、一都市一点というような形で認可して、公共事業で都市計画事業を何百メートルといったような形のものよりか、先生の御指摘のようにもう少し包括して、公共事業包括補助金ですか、ですから第二交付税という名前がいいかどうかわかりませんが、要は個別特定補助金から公共事業包括補助金で都市全般あるいは市町村全般の産業基盤なり生活関連の基盤を整備するという自由度を認める考え方について、私は望ましいと考えております。
  60. 石川信義

    参考人石川信義君) 先生の御意見どおり、私どもは自主財源の増強ということを常に念願しておりますので、ひもつきでないものがふえるということには大いに賛成をするわけでございます。橋本先生からもお話がありましたけれども、国全体のものとして、その年その年でどこにウエートを置いて、たとえば地方交付税を配るにしても、どういう点に重点をかけるかというようなことが決まってくるわけなんですが、これまた国全体のトータルとしてということになるんでしょうが、主として先進地域がどうしても意見が強くて中心になってしまう。特に市町村間の格差というのは非常にひどいわけでございまして、ある都市では家ができ上がって家財道具をどうするかということで議論している、片っ方では土台石をどうするかということで議論している。それを十把一からげにして議論されるというところにいろいろ問題があるわけでございまして、その辺は非常にむずかしいと思っております。  いずれにしても、自主財源がふえるということが望ましいと考えているわけでございますが、いまちょっと道路関係でお話が出ましたので、長くなって恐縮ですが、たとえば地方譲与税で自動車重量譲与税と地方道路譲与税としての揮発油税が市町村交付されます。これは国から言えば道路目的財源でしょうが、市町村から言えば交付税基準財政収入額に見られちゃうわけですから、これが三二%と抑えられて、それで間に合った時代はそれがふえただけ財布が大きくなるわけですからいいんですが、いまのように不足分をカバーするということになりますと、これはちっとも道路財源なんかじゃない、単なる一般財源になってしまう。国はこの道路財源を守るというようなことで、建設省が中心になって、その道路財源の恩恵を受けない市町村が金を出し合って、運動費を出して騒いでいるなんというのが現状でございまして、はなはだナンセンスだと私どもは考えているわけです。かく申す私自身が、その道路関係の役員をしているわけなんで、たとえば国の道路整備計画で国道なり県道がある水準になった、この次は市町村道、まあ何年か前から市町村道の補助事業というのをやっております。私どもから言うんだったら、それを建設省が押さえていて補助でくれるのではなくて、一般財源に回すべきだと。そういう例は各省にまたがっていると思うんです。  私、和泉先生、神谷先生がおっしゃったほど被害者意識を国に対して持っているわけじゃないんです。私、もう二十年市長やっているものですから、かなりずうずうしくなっていまして、そういうのは持っていないんですけれども、やっぱり制度としていろんな問題点があるだろうというような考えをいたしております。
  61. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれにて終了いたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ、長時間御出席をいただき、また、貴重な御意見を拝聴さしていただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  引き続き政府に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  62. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 大臣にお尋ねをいたしますが、ただいま参考人方々にいろいろ意見を聴取したわけでございますが、その中で、自主財源の拡充について意見の聴取をいたしましたが、これに対して参考人方々から、税源の再配分、それから国から地方への税の移譲、交付税の三税の税目の拡大、その中には間接税の導入、またある参考人の方は固定資産税の税率が低いので、これを引き上げて税収を確保するというような御意見もありました。また、事業所税は交付税財源として四分の三導入をされておるので、この比率を軽減するか、あるいは全額使えるようにしてやることも大事ではないか、また交付税三税の中で国から地方への移譲を考えた場合に、所得税は市町村に、法人税は都道府県に配分するというような御意見が出たわけでございますけれども、これに対して大臣はどのような対応をお考えであるか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  63. 安孫子藤吉

    ○国務大臣(安孫子藤吉君) 今後における地方財政を申し上げますると、どうしても地方団体財源を充実してやらなければ本当の自治行政ができない実態にあると思います。それで、現行制度で十分じゃないことは、交付税率でもって足りなくていろいろと臨時措置を講じておる、そういう実態でございまするから、今後充実する方法を自治省といたしましては検討し、推進をしなくちゃならぬと思いますが、そのためにはやはり地方税強化するという面が一つあるだろうと思います。それから、交付税の問題はもちろんあります。それから、いまお話のございました一般税制の問題もあると思いますが、いずれにいたしましても、方向といたしましては地方税源を拡充をする、強化をするという方向にどうしても行かざるを得ないだろう、それが正しい方向だと、さように考えておりまするので、自治省といたしましてはそういう方針でもって今後進めてまいりたいと思いますが、一々のことにつきましては担当局長から申し上げます。
  64. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) ただいまの御指摘のうち、地方税源の絶対量を増強、充実すべきであるという点については、私どもかねてその必要性を痛感しているところでございます。  現在の地方交付税配分上、ほとんどの団体交付団体であり、不交付団体がきわめてわずかしかないということは、とりもなおさず財政需要に対して自主税源の絶対量が不足しているということのあらわれであろうと思います。そういった意味で、今後自主税源の充実強化地方税財政上の最大の課題であろうと、このように考えております。  ただ、具体的にしからばどのような税目でどのように充実を図っていくかという点については、これまでも税制調査会あるいは地方制度調査会等において種々論議が行われてきたわけでありますが、ただ、現状におきましては、御案内のように新しい間接税の導入等いわゆる税制の抜本的な改正についてはある種の制約が加えられております。そうした中で、地方の自主税源強化を図るということになりますと、かなり土俵が狭くならざるを得ないと思うのであります。しかし、そうした中におきましても、私どもは所得課税、法人課税、あるいは流通課税、資産課税を通じて、現行税制の枠組みの中でも可能な限りの自主税源強化を図っていかなきゃならないと、このように考えております。  それから、参考人意見として指摘されたようでありますが、主として府県と市町村、あるいは府県、大都市と市町村との間の税源配分の見直しの点につきまして、いわゆる個人所得に対する課税は一般市町村に主として帰属させ、法人所得に対する課税は府県や大都市に主として帰属させるというようなお話があったようであります。一つの考え方であろうと思います。ただ、指定都市といい、都道府県といい、やはり今日地方自治体として重要な役割りを果たしておりますから、個人所得に対する課税を全くなくしてしまうということについては、いまの税制の基本的な流れの中でいかがなものかという感じを持ちます。いずれにいたしましても、この問題は地方税制のまさに基本的抜本的な改正の中で考えていくべき問題でありますけれども、法人課税をできるだけ規模の大きい団体にウエートを置いて配分するという考えは一つの考え方であろうと思います。  それから、固定資産税につきまして、現在の負担水準がやや低いではないかというような御指摘があったようであります。確かに固定資産税につきましては、昭和二十五年の現行地方税法が制定された当時においては、住民税よりも固定資産税のウエートが高かったわけでありまして、まさに地方税の中の基幹的な税目として重要な地位を占めておりました。ところが、高度成長期を通じまして固定資産税の相対的な比重が下がって、住民税の方が比重が高まってまいりました。そうして、市町村、特に都市の税源伸び悩みの大きな原因として固定資産税の伸び悩みということが指摘されたことは事実であります。  しかしながら、昭和五十年代に入りましてから、固定資産税のシェアも次第に回復してまいりまして、最近では昭和二十五年当時に匹敵する、あるいは団体によってはその当時のシェアを超えるように、固定資産税のウエートが高まってきております。その原因は、主として地価の上昇に伴いまして、固定資産税の課税標準となります地価の評価額、土地の評価額が非常に上がってきているということが寄与していると思います。私どもは、現在の状況のもとでは、固定資産税につきましては、税制調査会の中期答中でも指摘されておりますように、資産の評価の適正化をさらに促進する、評価の適正化均衡化に努めるということでかなりの増収が期待できますので、その上さらに税率まで引き上げるということは、固定資産税の税負担感というものの現状からして困難なのではないかと、このように考えております。
  65. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 最後に、先ほども参考人方々にお尋ねをしたわけでございますが、特に第二臨調で最近緊急課題一つとして地方行政のあり方を検討することを決めたようでございますが、その中でも地方交付税の引き下げ、二番目が地方の過剰職員の問題、三点目が高水準の給付への批判等がかなりきつく言われておるようでございますけれども、大臣はこの臨調の地方行財政の見直しに対してどのように対処をされるつもりか、決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  66. 安孫子藤吉

    ○国務大臣(安孫子藤吉君) 第二臨調ではこれからいろいろ論議が進行すると思いますけれども、その中でいまちらほら出ておりまする問題は、一部から地方交付税というものをいじったらどうかというような意見も散見をいたしておりますが、私はこれは全然問題にならない事柄じゃないかと思っておるわけでございます。一般補助金と全然性質の違うものでございまして、これは地方のための税でございまして、財源としてはきわめて重要な財源でございますにしたがいまして、いま地方の時代とか、ひとつ地方をしっかりさせていかなくちゃいかぬのじゃないかというときに、この補助金なんかと全然性質の違う地方交付税について云々するということは、きわめて不適当な事柄であると思っておりますので、そうした論議が表面化いたしました際には、自治省といたしましては、その意味を十分に話をいたしまして、そうしたことのないように努めてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。  あと、人員の問題は、これもしばしば申し上げておるわけでございまするが、その大部分のものはこれは国の制度との関連においての人員増でございまして、そうでない人員などというものはむしろ減少しておる傾向もあるわけでございまして、人員につきましては、数の上で比較いたしますといかにもふえておるようではありますけれども実態はそうじゃない、やはり国の制度の関係からきておる問題でございまするので、この点は多くの方々は理解をしておるところではございまするが、ともいたしますと、表面的な数字の上からその論議が表面化するということははなはだ遺憾なことだと私は思っておるわけでございます。この点はさらに十分徹底するように今後とも努力をしていかなければならぬと考えております。  それからもう一点は給与の問題ですか、給与の問題については、いかにも国家公務員と比較いたした場合に論議を呼ぶ一つの要素であると、私も考えております。多くの県等におきましては非常な努力をいたしまして、大体国家公務員と比較をいたしましてそうおかしくないというところになっておると思うのでございまするが、しかし、一部の市あるいはそういうところにおきましては相当引き離れた高い水準を保持しているというところもなきにしもあらずでございます。この点については本当は自主的な努力によりましてそうした国民的批判が発生しないようにひとつ努力を願わなくちゃならぬ問題だというふうに、問題意識としては私は持っておるわけでございまするが、これもできるだけひとつ地方団体におきまして当該団体が自主的な努力をしてもらわにゃいかぬ問題だろう、こういうふうに思っておるところでございます。     —————————————
  67. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 委員異動について御報告いたします。  本日、大川清幸君が委員を辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  68. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四十九分散会