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政府委員(
高橋元君) しばしば伺いますのは、
土地、株、金、また海外ということだと思います。
土地の問題は、これはどうしても
公簿によってその
所有権の移転ということが把握されますので、
金融資産にかえまして
土地を取得するという場合には、
土地の
異動というものは、比較的
国税当局に把握されやすいわけであります。御案内のように、四十四年一月以降取得した
土地を売ります場合には最低四〇%、
一般の
総合課税の場合の一割増し、いずれか高い方の税額ということになっておりますから、
土地に
金融資産から
シフトをしていくということは
制度の面からしてもなかなかむずかしい問題がある、したがって、私
どもは
土地への逃避ということがそう簡単に起こるというふうに考えておりません川また、事実起こってもいないようであります。
株式でございますが、これは
証券局長から後ほど、もし必要があれば
お話があろうかと思いますけれ
ども、私
ども、五十年以来の
個人部門の
株式の売買というものを見てまいりますと、過去五年間、ことしの二月ごろまでずうっと年間を通じますと、
個人の売り越しになっております。したがって、
金融資産を手離して株を取得する、株の
個人の持ち高が
プラスになっていくという
状況ではない、現状はそうだと思っておりますし、仮に
株式に
シフトするということになりますと、
配当はどうしても
名義を書きかえて
株主名簿の上に出てまいります。したがって、
株式の
配当につきましても、これまた
利子同様に
総合課税の対象になる。あわせて
株式は、これはもう日常に起こり得ることでございますが、
キャピタルロスというものにさらされるわけでございますから、したがって
資産選択の基準として
預貯金を選ばれるということが元本の確実ということに着目されるのであるならば、容易に
預貯金から
株式に
シフトをするというようなことは簡単に起こってまいるというふうに思えないと考えております。
金の問題でございますけれ
ども、ことしになりましてから、クルーガーランド金貨というのがございまして、これは十分の一オンスで一万何ぼというく
らいの金目のものでございますが、非常に売れたわけでございます。去年のボーナスあたりからかなり売れている。そういうことが発端になりまして、
個人が
金融資産にかえて金を買っているんではないかというような御指摘がしばしばございました。通関の統計を見ましても、金の輸入量はふえてきております。しかしながら、これは五十五年全体の金の輸入の統計を見ましても、それ以前の年に比べてそれほど多くなっているわけではございませんので、たまたま九月以降、当時一オンス七百ドルをつけておりました金がどんどん下がってまいりまして、年を越して五百ドルを切ったわけでございます。それに金価格が下がってまいったということによる需要増、それが国内でのクルーガーランド金貨の価格が下がったということになって、それによる需要増というものが起こってまいったと考えております。総体の量で申しましても、一年間の金の売却の半分が仮に金
シフトだと、こういうふうに考えたとしましても、年間の輸入量の半分で、わずか六百億という
程度のものでございまして、二十二兆円というようなオーダーでふえてまいります
個人貯蓄というものに対して六百億円
程度の金への
シフトということは、それほど
シフトが起こっているということを論ずる論拠にはならないであろうというふうに考えておるわけでありまして、あわせて申し上げれば、金はさっきも申し上げましたように、大変値段の上がったり下がったりするものでございますから、これも投資対象ということにはなかなかならないというのが実情かと思います。
海外でございますが、海外への
預金は改正されました外国為替管理法のもとでも、日銀の個別許可ということになっておりまして、単純な貯蓄目的のための海外
預金ということは許可されないという方針であります。外貨
証券とか海外の不動産を購入する場合、そういう形で海外へ
金融資産から
シフトをするんではないかという問題につきましては、これは新しい外為法のもとでも手続が必要でございます。したがって、手続をとることによりまして、為替取引の記録が国内に残るわけでございますから、そういう形で
課税から逃がれるということは容易には起こらないというふうに考えております。まあいろいろお考え、ないし世の中の御議論というものは、
土地、株、金、海外ということを言われるわけでございますけれ
ども、総じて、私がいま申し上げましたように、それらの
金融資産から
金融資産以外の実物資産への投機ということを大量にまたは顕著に引き起こし得るものという考え方は全く持っていないわけであります。