○
参考人(
北裏喜一郎君) 本
委員会におきまして、四
法案の御
審議を進めるに当たりまして、皆様方各位非常に御熱心に御
審議いただいていることに対して、お礼がたがた非常に高く評価いたして御尊敬申し上げております。と同時に、こういう
機会に私
ども証券業協会の
意見を申し述べよということでございまして、非常に厚く感謝いたします。
それでは、特に
銀行等の行う
公共債の
証券業務に関してのみ
意見を申し上げて御
参考に供したいと思います。
御承知のとおり、証券界といたしましては、今回の
銀行法の
改正に際しましては、
銀行法上
公共債に関する
証券業務を明記することは非常に反対でございまして、絶対反対の
意見を主張してまいりましたが、私
ども証券界がこのような主張をしてまいりました
根拠は、すでに皆様御承知のとおり、第一には、国債の個人消化と申しますのは、現状におきましては着実に進行いたしておるということであります。
第二は、
銀行が
証券業務に進出するということは、
お客様にとりましては公正な取引あるいは価格形成の両面におきましていろいろの弊害をもたらすおそれがあると、こう思ったからであります。
第三には、
銀行が
公共債をお
取り扱いになるということは、これを主要
業務といたしております証券会社にとりましては重大な
経営上の
影響を及ぼすということでありました。
第四には、御承知のとおり、間接
金融を上位といたしまする
わが国の体制が十分
金融界では確立されておりますので、
国民経済的な
観点からしましても、
銀行が
証券業務を行う必要性も、また必然性も認められないということでございました。
私
どもは、このような主なる理由から、
銀行の
窓口販売、ディーリング等につきましては
基本的に反対してきたのでありますけれ
ども、昨年末大蔵省
当局からいわゆる三原則という
考え方が提示されましたのでございます。その三原則と申しますのは、
銀行法上、
公共債業務に限定して明記するということでございます。第二番目は、
証券取引法上
認可を必要とする。それから第三番目は、
銀行の
証券業務を法制化いたしましても、明記いたしましても、直ちに
認可しないというものでございました。私
ども証券界といたしましては、この三原則が証券取引
審議会及び
金融制度調査会の
答申を踏まえまして、大蔵省
当局におきましても十分なる御
検討を経て出されたものでございますから、いたずらに自己の主張のみに拘泥することは許されないものと判断いたしまして、証券界にはなお強い強い異論がございましたが、まずは三原則による法制
整備が図られることにつきまして、ぎりぎり、これまたやむを得ざる線と
考えまして、受け入れることにいたしました。
このような意味から、今回の
法改正につきましては、三原則の精神が今後も引き続き維持されるという前提のもとに、また、今回の
法改正はあくまでも法制
整備の一環として行われるものであるという
理解のもとに、私
どもといたしましてはこれに原則として賛成するのでございます。したがいまして、
銀行法、
改正証券取引法の具体的な運用につきましては、今後の問題として残されているものと了承いたしております。
つきましては、今後の
法律運用に関しましては証券界といたしまして要望
事項を申し上げたいと存じますので、何とぞ御
理解賜りますよう
お願い申し上げる次第でございます。
まず最初に申し上げたいのは、今後窓販問題について御
検討される際には、この問題の
背景となっております国債の発行、消化が今後どうなっていくか、この点を十分御配慮願いたいと思います。御承知のとおり御
当局より、大蔵省より明らかにされておりまする「財政の中期展望」等の資料に基づきますのでございますが、幾つかの前提を置いて試算いたしますと、今後の国債発行は漸減するという見通してございまして、また、これにより国債の消化負担も相当に軽減されると見込まれておるのでございます。すなわち、「財政の中期展望」等によりますと、新規国債の発行額は、今年度は十二兆円でございますが、
昭和六十年になりますと七兆円弱と相なりまして、減少することになっております。一方、六十年度からは借換債の発行が本格化いたしまして、これが大きな問題になっていることは事実であります。しかし御承知のとおり、借換債というのは、本来市中から新たな
資金を吸収するのではございません。また、同じく六十年度から大量の赤字国債——特例国債の償還が始まりますが、これまた償還
資金は市中に還元されまして、国債に振り向けることも可能でございます。
このような諸種の事情を
考えますと、今後の個人消化というものは、
金融資産の増加がほぼ推測いたしますと年間四十億ぐらいでございますが、郵貯
資金の活用等の道もございますので、これを加えて
考えますと、国債の発行条件が市場実勢と著しく離れぬ限りは、適切に決定されます限りは、大きく見まして私は今後の国債の市中消化は相当余裕を持って行われるものだと信じております。
第二に申し上げたいことは、私
ども証券界は、これまで国債の個人消化促進に鋭意
努力してまいりましたが、今後も従来に増して
努力を重ねまして、業界を挙げて万全の態勢をとってまいりたいと
考えております。
御
参考までに申し上げますと、昨五十五年度につきましては、私
ども証券界といたしましては、国債の市中消化額約十兆のうち三八%に相当いたします三兆九千億を取り扱っております。また、国債の大量発行が始まった五十年度からの通算でも、平均市中消化は二四%でございまして、これを
考えますと、
昭和四十一年の国債発行以来、人的にも
資金的にも公社債
部門の充実に努めてまいりました結果にほかならないのでありまして、しかも、こうした公社債
部門の充実の動きは、当初は大手でございましたが、いまや二百五十五社ございますが、全部証券会社挙げての動きとなっております。私
どもは、御承知のとおり、大量国債が発行されて以来三、四年でございますが、その受け入れ
機関といたしましてさらに今後体制を整えまして、万全の消化体制をしきたいと存じております。
ここで、あえて付言さしていただきますれば、私は、国債の個人保有は、本来
金融資産の増加に応じまして徐々に増加していくことが望ましいと
考えております。もともと私は、
銀行が窓販を行いますとしましても、全体としてトータルとして個人の消化が増加するとは
考えておりません。しかし仮に、これによりまして急激に個人消化が増加するということになりますと、その後の流通市場を預かっておりまするわれわれとしましては、価格形成において非常に好ましからざる
影響が生ずることがあり得ると思うのであります。そのことを実は心痛しているのでございます。
第三に申し上げたいことは、これまで申し上げてまいりましたことを踏まえまして
考えますと、窓販等の実施時期につきましては、いまこの段階では云々するだけの客観情勢はあるとは存じておりません。
しかるに、
法案が国会に提出される前から、新聞などで巷間、実施時期が決定しているかのごとく伝えられますのははなはだ遺憾でございます。まして、五十九年から実施を予定されておりまするグリーンカード
制度とのかかわり合いから、窓販の実施時期を云々する向きがございますが、もしそれが事実であるとするならば、これは本末転倒した
意見であると思います。その意味におきましては、実施の時期等御
検討につきましては、今後の国債の発行の
推移、その中の国債消化の
状況一時に個人消化の
状況等、客観情勢に慎重な御配慮を願いたいのでございます。
最後に、今回の
法改正が意味していることはどこにあるかと申し上げますと、私
どもの
考え方を率直に申し上げますと、その一つのポイントは、
銀行の営み得る
証券業務が
公共債に限って、
証券取引法上の
認可業務として明記されたことであります。
一部には、
証券取引法上の
認可を受けないでもできる
証券業務の
範囲はどこまでかという細かい議論もあるように聞いておりますが、しかしながら、今回の
法改正の趣旨に照らしまして
考えますれば、おのずから結論は明らかでございます。
改正法の
施行後におきましては、法の趣旨に従いまして厳正な運用をされ、いやしくも法の趣旨がゆがめられることのないように十分な御配慮を
お願いしたいのでございます。
次のポイントは、過去五十年続きました
銀行、証券のそれぞれの分離主義というものが依然として貫かれておるということでございます。
今回の
法改正に当たりましては、
銀行が
認可を受けて営むことができる
証券業務が
公共債に限定されたことは、あくまでも兼業主義による弊害を避けようとする御判断によるものと存じます。資本市場の健全な発展を図っていくという見地から、この点につきましては、今後とも明確に一線を画していかれますようによろしく
お願いする次第でございます。
以上、今回の
法改正につきまして私
どもの
考え方を申し述べた次第でございますが、申すまでもなく、
銀行と証券は資本市場におきましておのおのその
機能を十分に発揮することによりまして、
民間経済の適切な
運営に寄与することが期待されることは、
先ほどの
銀行協
会長と同じ
意見でございます。
先生方におかれましても、今後とも政策の決定に当たりましてはこの点を十分御配慮くださいますように
お願いする次第でございます。
ありがとうございました。