○多田省吾君 私は先ほども申しましたように、法人税の方は五十六年度は相当の
増税を図ったにもかかわらず構成比は昨年のと同じなわけですね。
所得税の方は、御存じのように若干のいろいろな減税がありましたけれども、
制度的にはほとんど減税しなかったわけです。ところが、そのために御存じのように大変な実質
増税が、隠れた実質
増税が図られまして、先ほども申し上げましたような
自然増収のうちの六一・六%も
所得税の方で増収になっている、そういう結果が出ているわけでございます。私は、いま言われた物品税や酒税につきましてもこれは低所得者層ほど負担が大きくなると、いわゆる逆進制であると、所得再配分に逆行すると見ておりますが、そのほかに今後の公共料金の値上げにつきましてもすでに昭和五十六年、現在までに引き上げられたものには郵便料金、国鉄運賃、健康保険、それから消費者米麦価、国立大学の入学金等がございます、これから引き上げが予想されるものには塩とかあるいは私鉄運賃、各種手数料等がありまして、これら
政府主導による公共料金の引き上げというものも受益者負担という大義名分のもとに実際には低い所得の層の方に負担が大きくなるようになっておりまして、これも所得再配分に逆行しているわけでございます。特に私は、
所得税につきまして昭和五十二年度と五十六年度を比べてみますと、GNPの伸び率は、五十六年度の見込み額は五十二年度のGNPに対しまして三八・八%の伸びに対しまして、
所得税収の方はどうなるかといいますと何と五十二年に比べて五十六年の方が九八・八%伸びております。ですから、GNPの伸び率に対して二・五四倍でございます。
大蔵省が「
財政の中期
展望」に用いております税収全体の弾性値が一・二であるということを思いますと、いわゆる
所得税収の伸びがいかに大きいかということがこのことからもわかるわけでございます。しかも
所得税の捕捉率は十割である。四年間の
所得税減税の見送りで実質
増税が図られ、低中所得者の負担ほど大変上昇している、このように思うわけでございます。ですからこの五十六年度
予算というものは、税の分野から
考えましても所得再配分の機能についてはむしろ逆行しているんじゃないか。私は、やはりこの際特に五十七年度以降において
所得税減税というものを
財政機能を復活する
意味においても図っていかなければならない、このことを強く主張するわけでございます。
次に
質問をいたしますけれども、昭和五十二年度と五十五年度を比較して所得階層別の税負担率というものを試算いたしますと、昭和五十二年度の消費者物価指数を一〇〇としますと五十五年度は一一六・二となりまして一六・二%の上昇になっております。ところが、五十二年度の年間給与
収入三百万円の給与所得者で四人家族の場合、物価と同じ率の
収入増があったと仮定いたしますと、五十五年度の
収入は三百四十八万六千円ということになります。この場合は物価と同率の
収入増ということでございますから、実質賃金の伸びはゼロであるにもかかわらず
所得税額の伸び率は実に七一・七%にも及んでおります。同じような計算をいたしますと、昭和五十二年度の年収が五百万円の人は
所得税額の伸び率は三九・九%と計算できますし、五十二年度の年収が一千万円の人は四一%となります。このように
所得税額の伸び率から見ましても、一千万円の方よりも五百万円の方よりもやはり三百万円の年収の方の方が、すなわち低所得者層の方々が圧倒的に税負担が高くなっていると、この点から見ましても所得再配分の機能は麻痺
状態にあると言わざるを得ないわけでございます。
で、私は、どうしても五十七年度以降において、こういう
意味におきまして
所得税の課税最低限の引き上げというものを行う必要があるんじゃないか、それから、いろいろな公共料金の値上げ等から見ても所得再配分の機能は逆行している、このように言わざるを得ないのでございまして、その上に私は、この大変な
所得税の所得再配分の機能を逆行させているという面におきまして強く
所得税減税を求めるものでございますが、この点はいかが
考えますか。