○三治重信君 私は民社党・
国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました
所得税法、
法人税法及び
租税特別措置法の一部を改正する各
法律案に対し、一括して反対の態度をとり、
昭和五十五年度
歳入歳出の
決算上の
剰余金の
処理の
特例に関する
法律案及び
関税暫定措置法の一部を改正する
法律案は賛成の
立場から討論いたします。
わが党は、わが国経済の発展と
国民生活の安定を図る
立場から、行財政改革の断行と、不公正税制の是正を図り、大衆
増税によらない財政再建を図るよう強く主張してまいりました。しかるに、
昭和五十六年度予算案は、行財政改革をないがしろにし、財政再建の名のもとに、国債の二兆円減額を
国民生活全般に多大な影響を及ぼす大幅
増税で賄おうとする大衆
増税予算と断ぜざるを得ないのであります。
まず、
所得税について述べます。
第一次石油危機を契機として、わが国経済は激しいインフレに見舞われ、次いで深刻な不況に陥ったのでありますが、その痛手から回復したのもつかの間で、一昨年来、再び第二次石油ショックの影響をもろに受けたのであります。わが国経済は、このショックを
実質賃金の低下に見られるような勤労者の犠牲のもとに辛うじて乗り切ったのであります。
すなわち、昨年一年間の賃金は、前年に比べ七%増加したのでありますが、消費者
物価指数はこれを上回り八%
上昇したため、昨年一年間の
平均実質賃金は対前年比〇・九%城となり、戦後統計史上初めての賃金目減りという異常な事態を招来したのであります。年度間をとりましても、消費者
物価指数は七・八%程度で大勢には変わりはありません。現在の景気のかげりは、まさにこの
実質賃金の減少による
個人消費の低迷がもたらしたものにほかなりません。
政府は、来年度において
個人消費を中心とする民間活力により、五・三%の
実質経済成長の達成を期待されております。そうであるならば、この際、勤労者や中小企業者に対する各種の大幅
増税を取りやめるとともに、五十二年度以来据え置かれたままになっている
所得税に対し、少なくとも
物価調整
減税を無視し続けたことに対し、厳しい反省を求めるものであります。幸い議長裁定により、五十五年度の
剰余金は、その全額を
所得税減税に充てることが与野党間で合意され、全党一致の議員立法ができることを喜ぶものであります。このたびの
所得税法改正案では、配偶者控除の対象となる配偶者の
所得限度を現行の二十万円から二十九万円に引き上げることとされております。これは、配偶者控除を受けられる
所得限度額を七十九万円に引き上げるものであり、一歩前進と
認めるにやぶさかではありません。しかしこの限度額を超えてしまうと控除が受けられなくなり、税
負担がふえるためむしろ減収になる
ケースが多く、このため主婦のバートの年収はその限度額以下に抑えられがちで、諸
物価高騰の中でパートの賃金が
伸び悩んでいる元凶ともなっております。今回の改正による限度額の七十九万円への引き上げ程度の
措置によっては、パートで働く主婦にとって、厳しい
物価高の
状況を解消することはとうてい期待できるものではなく、配偶者控除が受けられる配偶者の
収入限度額を当面少なくとも百万円程度へ引き上げることが必要だと考えるとともに、できる限り早く夫婦の経済、社会的存在を示す配偶者控除は、高額
所得合算の一千万円までは受けられるように前向きに対処されることを強く要望するものであります。
次に、
法人税については、先進国との対比において、税率の低位、大
法人の担税力の余地の存在、企業収益の回復等にかんがみ、大企業の
法人税率を二%引き上げるとともに、中小
法人の軽
減税率の適用
所得限度現行七百万円を千二百万円に引き上げるべきだと主張してまいりました。これに対し、今回の改正案は、税率の引き上げを、大企業に対してのみならず中小
法人、公益
法人、協同組合等に対しても一律に行われようとされ、同時に中小
法人に対する軽
減税率の適用
所得限度を八百万円に引き上げるにとどめておられることは、とうていわれわれの容認できるところではありません。しかし、大蔵
大臣の御説明によれば、中小企業の九〇%が八百万円の限度額以内におさまるものと理解されます。今後における限度額引き上げについて九〇%をめどに十分の配慮をもって対処されるよう要望しておきます。
最近の金融機関の取引先企業に対する厳しい選別融資、公共投資の抑制、
個人消費の低迷、住宅建築の不振、素材部門を中心とした在庫調整の大幅なおくれなどにより、このところ中小企業の倒産が相次いでおり、昨年一年間の企業倒産は件数、負債総額とも五十二年に次いで史上二番目の高水準を記録したのであります。さらに、今後緩和の方向にある金融政策の効果が中小企業に浸透するには時間がかかること、また円高や貿易摩擦によりこれまで景気の牽引力であった輸出の
伸びが余り期待できないことなどから、企業倒産は引き続き高水準で推移することが予想されるわけであります。このように中小企業を取りまく環境はきわめて厳しい
状況にあることを十分
認識され、税務行政、特に徴税実務上無理のないよう特段の配慮をお願いいたします。
最後に、租税特別
措置についてでありますが、わが党はかねてより、社用族天国との批判が多いことから、交際費は
原則として益金扱いとするよう主張してまいりました。これに対し、政府は来年度の税制改正において、当初交際費
課税のかなり強化を検討されていたにもかかわらず、最終的にはわずかばかりの
課税強化にとどめられたことはきわめて遺憾であります。この交際費
課税を初めとして現行の租税特別
措置にはなお見直しを要する不公正が温存されており、今後その不公正是正に政府が全力を傾注されるよう強く求めるものであります。
なお、近藤君
提出の
所得税及び
法人税法の一部を改正する両
法律案の修正案には反対であります。
以上をもちまして私の討論を終わります。