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参考人(
大熊政崇君)
自動車価格のアップが
自動車需要にどういう影響を与えるか、これはほかの
商品についても御承知のように
一つの理論がございまして、ほかの条件が全部動かないとした場合に、仮に
価格が二%上がった場合に
需要が何%減るか、
価格弾性値理論と言っておりますが、
商品によりまして一の場合もありましょうし、一以下の場合もありましょうし、一以上の場合もあるということでございますが、実はこれは余り意味のない議論なんですね。と言いますのは、ほかの条件が全く同じということはあり得ないわけでございます。それから
価格弾性値理論そのものも、たとえば
自動車の
需要が上向きの場合の
価格弾性値と、同じ
自動車という
商品でも
需要が下向きになっている場合の
価格弾性値とでは、当然過去の経験から見まして違ってまいります。したがいまして、この
物品税のアップそのもので何人の失業が出る理屈だというようなことはなかなかむずかしいのでございます。
私
ども一番この
物品税の問題について申し上げたいことは、今回の
物品税の調整の趣旨が、いろいろな
商品を見渡してみると、ある物については
物品税が課されておる、ある物については課されていない、課されていない
商品についてはかの課されておる
商品との兼ね合いでかけてしかるべきものであるというようなものを取り上げて、ピックアップして
課税対象を
拡大しようじゃないかというのが趣旨であったように伺うのでございます。したがいまして、われわれ
業界といたしましても、
ライトバンのようなものに
物品税の対象を
拡大するということにつきましては、まあ
ライトバンのような
自動車の最近の使われ方とかあるいは
ライトバンという
自動車そのものの性質などから判断いたしまして、
税率がリーズナブルなものでございますれば、
ライトバンに対象を
拡大するということはやむを得ないんじゃないかと、こう思っておりますが、ただ
乗用車というものを取り上げまして、これの
増税をしようと。もっとも最終的には、当初五%の
増税というのが半分の二・五%になったわけでございますが、私
ども問題にしておりますのは、
消費に水をかけるから困るということももちろんございます。
国内が冷え込んでおる時期でございます。それから
国内が売れない分だけ
輸出でカバーするということもできないような
状態でございますので、この際
消費に水をかけるような
増税は御免こうむりたいと。国際的に見て
自動車に対する
課税が低過ぎるということであればまた別の話でございますけれ
ども、むしろ一番高いんだということでありますと、そういう環境のときに
増税をするのはどうだろうかと。
それからもう
一つ重要なことは、陳述の中にも申し上げましたように、FC並びにアメリカに対する通商問題でございます。特に、アメリカの方は、
日本の市場をもっと開放しろということを強く言っておりまして、
自動車の関税はゼロにし、それから
部品の関税もゼロにし、いろんな検査基準も運輸省さんに
お願いして非常に
簡素化していただいたわけでありますが、まだこの
物品税について高過ぎるとかあるいは大型と
小型と差をつけているのはけしからぬとか、とにかく
物品税のかかり方が、アメリカから持ってくる場合には、例のCIFですね。値段だけじゃなくて、いわゆる太平洋を渡ってくる運賃とかそれから保険料とか、そういったものがかさんだものに対して同じ
税率がかけられると。ところが
日本でつくった車を
日本で売る場合には工場からの蔵出し
価格にかけられるわけなんで、そこでもうかけられる元金についてハンディキャップがあるじゃないか。それから元来アメリカの
自動車は少し大き目でございますので、大体
日本に持ってくると高い方の税金がかかると。それから今回の値上げも二・五%同じ率であるけれ
ども、元来アメリカの車の方が大きいだけに値段が高うございますから、それだけやはり
増税の額が大きいんだとかいろんなことを言いまして、現に先ほど申し上げたように、
公聴会の席上で、USTRの当時のホーマッツ次席が非常に不愉快であると、われわれの考え、まあ顔を逆なでするような措置だということを強く言っておりまして、われわれやはり日米
自動車問題、非常に通商問題心配しておりますものですから、この際にことさら顔を逆なでするような措置をしなくていいんじゃないかと。特に今回の趣旨が、
課税されてない
商品の中で権衡上
課税した方がいいものを拾い上げて
課税しようという趣旨であるなら、何もこの際、
国内も非常に冷え込んでおる、それから通商問題も起こす可能性があるといったような時期に、
乗用車に対する
物品税を二・五、まあわずかではありますけれ
ども、上げるようなことをしなくてもいいんじゃないだろうかと、そういうのが率直のところ
自動車業界の感情でございます。