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参考人(
渡邊剛權君) 私、
日本洋酒酒造組合の常務理事
渡邊剛權でございます。
きょう、この参議院
大蔵委員会におきまして、
酒税法の一部を改正する
法律案につきまして、
参考人として洋酒関係の
意見を述べさせていただきますことを非常に光栄に思い、また大変ありがたく存じます。
まず、洋酒の概要について簡単に御説明申し上げます。
一口に洋酒と申しましても非常に多種多様な
酒類がございます。ウィスキー、ブランデー、リキュール、スピリッツ、果実酒——甘味果実酒がこれに入り、その中でもたとえばウィスキーとブランデーにはそれぞれ特級、一級、二級の三つの紋別がございます。またリキュールの中には、お節句に使われる白酒や草根本皮の薬剤を浸した薬味酒等が含まれております。同様にスピリッツの中にはジン、ウォッカ、ラムといった蒸留酒が含まれ、甘味果実酒にはスイート
ワイン等が含まれております。
日本で洋酒の製造が始められましてから一世紀近くになってまいりましたが、その間に洋酒
業界は
酒類業界の中でも特に他の
酒類業界と異なり自由化が早く、かつ国際的な
競争も年々増大してきたため、
企業努力によって
品質を非常に
向上させるとともに、
コストの引き下げ
努力もした結果、洋酒の
価格も御愛飲家の
方々に親しく御愛用いただけるような状態になっておりますために、今日では
日本人のほとんどの
方々に御愛用いただくまでになりましたことを深く感謝しております。
洋酒と申しますと何か舶来の物で、
日本の大部分の
方々に余り召し上がっていただいていないように感じておられる方もあろうかと存じますが、今日の
日本人のすべての
方々が洋服を着ておられるように、洋酒も
日本人のすべての
方々に召し上がっていただいており、非常にうれしく存じております。今日、
日本の服装の関係では洋服と和服が並び用いられておりますように、お酒の関係でも
日本に昔からあったお酒と洋酒とが並び用いられております。いまや洋酒は
国民の多くの皆様の
生活に溶け込み、
国民大衆のものとなっております。このように
日本の多くの
国民の皆様に御愛用いただいております洋酒の
立場から、
酒税法の改正法案について
意見を申し上げます。
まず最初に、今回の
酒税法改正法案についての総括的
意見を申し上げます。
今回の改正法案の主要な部分は、申し上げるまでもなく
酒税の
増税でございますが、これにつきましては次のように考えております。
酒税の
増税は、今回のものを加えますと、
昭和五十一年以来この六年間に三回も行われることになり、
酒類に対して再三このような
増税を行うことはいかがなものかと存じますが、特に洋酒につきましては、従量
税率についてはその都度
増税率が最大でございまして、その結果、洋酒を御愛用いただいております
国民の皆様の
酒税負担が大きくなってまいりました。ただ国家
財政の再建という緊急な重要問題を考え、また既存の他の税目についてもほとんどその
見直しが行われることとも考え合わせますと、今回の
酒税の
増税には大局的な見地から従わざるを得ないものと考えておりますが、次の三点につきまして、なるべく早い時期にぜひ実現していただきますように
お願い申し上げます。
その第一点は、洋酒の
酒税負担の均衡でございます。洋酒の
酒税負担は、他の
酒類のそれに対して割り高になっております。今回の改正法案が実施された場合にはその不均衡がさらに拡大いたします。つきましては、将来なるべく早い機会に
酒類間の
酒税負担のバランスの御
検討をいただき、洋酒と他の
酒類との
酒税負担の均衡を図っていただきたいと考えております。
このように申し上げますのは、次のような事情によるものでございます。
洋酒、特に
ウイスキー類は、他の
酒類に比べて相当重い税
負担となっております。たとえば
ウイスキー特級のサントリーの角びん、ニッカのノースランド、オーシャンの特色クラスの二千百五十円の物の
小売価格に占める
酒税の
負担割合は四七・三%でございまして、従量税適用の
酒類中最高の
酒税負担率となっております。
先ほど申し上げましたように、洋酒は御愛飲家の皆様のおかげをもちまして、
日本人の
方々のほとんどの
方々に御愛用いただくまでになっており、すでに大衆のお酒になっております。ところが一方、同じ大衆酒と言われるものでも洋酒に比べてはるかに低い税
負担率となっているものがあり、洋酒を飲んでいただいております
国民の
方々は割り高な
酒税を
負担していただいている
現状でございます。さらに、洋酒は、次に申し上げますように、国際的な自由貿易体制のもとで輸入酒と厳しい条件で
競争をしていることもあわせて御配慮の上、何とぞ将来できるだけ早い機会に洋酒の
酒税負担の
見直しをぜひ実施していただきたいと考えております。
お願いの第二点は、
酒税の従価税の
課税標準についてでございます。
国産洋酒
業界は、他の
酒類業界と異なり輸入酒と激しい国際
競争を行っておりますが、その
課税標準は輸入洋酒に比べて国産洋酒が著しく不利になっておりますので、この不平等をぜひ是正していただきたいと存じております。従価税の対象となる
酒税の
課税標準は、国産洋酒につきましては
生産者の販売
価格と定められておりますので、
生産者の広告宣伝費、販売費、
一般管理費等の経費及び利潤のすべてが
課税の対象となっております。これに対しまして輸入酒の場合には、法律上、CIF
価格に関税を加えた額と定められておりますために、輸入洋酒についての輸入
業者の広告宣伝費、販売費、
一般管理費等の経費及び利潤の全部または一部が
課税の対象から除かれ、国産洋酒に著しく不利になっております。
ウイスキー類特級に対する
酒税の従価
税率は二二〇%あるいは一五〇%と特に高いため、内外
酒類の
課税標準の差による
影響がきわめて大きいので、
酒税負担の公平を図るため、同一
税率のもとでは
酒税の
課税標準も当然実質的に同一水準のものとしていただきたいことを国産洋酒
業界は最も強く希望いたしております。どうぞ、内外ウィスキーの
酒税の
課税標準につきましては、以上申し上げましたような大きな不公平がございますので、できるだけ早い機会に
課税方式等を御
検討の上、その是正をしていただきたいと考えております。
最後に、海外旅行者が
日本へ持ち帰る免税
酒類の本数を、現在の三本から他の先進国並みに縮小していただくように
お願い申し上げます。
先ほ
ども申し上げましたように、今回の
酒税の
増税が実施されますと最近六年間に三回の
増税が行われることになり、また他の諸税も多く
増税が行われる見込みでございまして、まさに
増税時代を迎えた感がございます。このようなときに当たり、外国旅行に行ける人は比較的裕福な方のように思います。その裕福な人が高率な
酒税の免税を受けた
酒類を一人三本も持ち帰ることができるということは問題ではないかと思います。またこのような免税
酒類が、大量に国内に持ち込まれることによる国産
業界に与える
影響も決して少ないわけではございません。どうぞこれらのことを考慮されまして、
日本へ持ち帰ることのできる免税
酒類の本数を、現在の三本から他の先進国並みに縮小していただきたいと考えております。
以上、私の
意見を述べさせていただきましたが、重ねて申し上げますと、第一に、洋酒と他の
酒類との
酒税負担の均衡を図っていただきたいこと、第二に、内外
酒類の
酒税の
課税標準の不平等を是正していただきたいこと、及び第三に、海外旅行者の免税
酒類の取り扱いを改正していただきたいことの三点につきまして、ぜひできるだけ早い機会に実現されますよう重ねて
お願い申し上げます。どうもありがとうございました。