○沓脱タケ子君 これは前
厚生大臣の園田さんは、
被爆者はとっても納得し得ないだろうということを言われておりますが、
被爆者は確かにこの答申については納得をしておられません。すでに、これは声明等でも明らかにしておられますように、こういうふうに答申に対して
被爆者は言っております。
答申は、健康・
生活・精神という人間存在の全面にわたる原爆被害の総合性を認めず、これを単なる
放射能障害、しかも晩発性
障害だけに矮小化している。
そして、アメリカの原爆投下行為の国際法違反性について全く言及しないばかりか、全文を通じてここには原爆に対する批判のかけらすら見当らない。という形で言っておられますし、これは全文を読むと長くなりますけれ
ども、
さらに答申は、「およそ戦争という国の存亡をかけての非常
事態のもとにおいて」生じた
国民の被害は、「すべての
国民が等しく受忍すべきもの」とし、一般市民の戦争被害に対し国が今日まで何らの
措置を講じて来なかったことを当然視している。これは、国の戦争
責任を問おうとしないのみならず、戦争を肯定する
姿勢といわざるをえない。
というふうに言われておるわけでございます。したがって、この答申については
被爆者がとうてい納得し得えないものというふうに言われているのは、これはもう御
承知のとおりでございます。
この人類史上初めての惨禍を受けた
被爆者の苦しみの深さというのは、これはいろいろな形で表現をされておりますけれ
ども、すでに
大臣も御
承知のとおりだと思いますけれ
ども、たとえば一九七七年のNGOの
被爆問題シンポジウムでは原爆被害の特徴というものを五つに分けて言っているんですね。
その一つは、民衆に逃げる余裕を与えない瞬間奇襲性。二つ目は、一定地域の全住民を殺傷する無差別性。三つ目は、人間及びあらゆる生物及び
環境破壊という根絶性。四つ目は、人間
生活の今、暮らし、心の全面被害、この全面性。五つ目は、被害の持続拡大性ということを挙げておるわけでございます。
そういう
状況というのは、実際には
被爆者は、みずから人類がかつて経験をしたことのない
被爆体験の中で、こういうこの世のものとも思われない中から生き延びて、今日大変な苦労をしておられるという
状況になっているわけです。しかも、被害がいまなお続いているという
状況でございます。
したがって、これは私
ども基本問題懇の答申を見ましても、全くこういった特殊性に目を覆うというわけにもまいらないという立場がところどころの表現に片りんとしては出ているんですね。たとえば「人間の想像を絶した地獄を現出した。」とかあるいは従来の
対策というのは、
政府の施策というのは
社会保障制度という見解をとってきたけれ
ども、そういうものではだめなんで、「「特別の犠牲」であることを
考えれば、国は原爆
被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する」云々、それが「広い意味における国家補償」というふうに言われているところでございますけれ
ども、こういう全体像をきちんとつかまえるという問題がはっきりやられてこなかったところに、今日の
被爆者の置かれている苦しみの根源があろうと思うわけです。
私はいつも思うんですけれ
ども、たとえば最近のことであれば、ポラリス潜水艦の当て逃げが起これば、やっぱりこれは補償問題がすぐ出てくるわけでしょう。はえなわが切られたら補償問題が起こってくるわけでしょう。それで、これは現にやられるわけですよ。ところが戦争の中でとは言いながら、やはり国際法違反とも言われる原爆投下をアメリカがやった、これによる被害が償われないというのは、
被爆者にとってはがまんのならない思いだと思うんですね。それはサンフランシスコ条約で賠償権の放棄をしておるというふうな経過がありますから、
政府にしか言えないというこのくやしさというんですかね、
被爆者にとっては。どうして加害者に対して直接被害補償を請求ができないのかというがまんのならないもどかしさというものを
被爆者は率直に感じているところでございます。そういうものを、三十六年もたった今日ではあっても、何とかして、少しでもこういった
被爆者の皆さん方の心持ちを実現していけるためにということで、すでに国会では、野党の共同提案で少なくともそういった
被爆者の願いにこたえるという立場で国家補償という精神に基づく
被爆者援護法を提出しております。施策の中身というのはそんなにおおきに違わないですよ。そういう基本的な立場に立つのかあるいは立たないのかというところの違いなんですね。これがどうしてできないのかということは非常に残念だと思うのでございますけれ
ども。
そこで、いろいろ申し上げたいことはあるのですが、限られた時間ですのでちょっと聞いておきたいのは、たとえば従来は
政府の施策というのは、
社会保障制度として
対応してきていた、しかし、今度の基本懇の答申では「広い意味」というような妙な言葉がついておりますけれ
ども、国家補償の見地に立って
対策を講ずべきというふうに言われているわけですが、今度の
改正案ではこの立場を踏まえてつくられたのですか。