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1981-07-22 第94回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年七月二十二日(水曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 井上  孝君                 高橋 圭三君                 降矢 敬雄君                 円山 雅也君                 佐藤 三吾君                 峯山 昭範君     委 員                 坂元 親男君                 内藤  健君                 仲川 幸男君                 成相 善十君                 福田 宏一君                 穐山  篤君                 粕谷 照美君                目黒朝次郎君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 柄谷 道一君                 森田 重郎君    国務大臣        労 働 大 臣  藤尾 正行君    説明員        国税庁徴収部徴        収課長      山本 市蔵君        厚生省年金局年        金課長      佐々木喜之君        社会保険庁年金        保険部厚生年金        保険課長     武内 稔和君        通商産業省機械        情報産業局産業        機械課長     見学 信敬君        運輸省自動車局        業務部長     大久保一男君        労働大臣官房長  松井 達郎君        労働省労政局長  吉本  実君        労働省労働基準        局長       石井 甲二君        労働省労働基準        局監督課長    岡部 晃三君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      小俣 和夫君        労働省婦人少年        局長       高橋 久子君        労働省職業安定        局長       関  英夫君        労働省職業安定        局雇用政策課長  中村  正君        労働省職業訓練        局長       森  英良君        自治大臣官房地        域政策課長    藤原 良一君        会計検査院事務        総局第三局長   坂上 剛之君        日本国有鉄道理        事        吉井  浩君        日本国有鉄道理        事        半谷 哲夫君    参考人        日本鉄道建設公        団理事      吉村  恒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和五十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十三  年度政府関係機関決算書(第九十一回国会内閣  提出) ○昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第九十一回国会内閣提出) ○昭和五十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (第九十一回国会内閣提出)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和五十二年度決算外二件を議題といたします。  本日は、労働省決算について審査を行います。     —————————————
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 和田静夫

    委員長和田静夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 きょう私は、ちょうど七月大会のシーズンでありまして、なかなか十分な事前連絡もできませんでしたが、この前の決算委員会引き継ぎ事項として、きょうは中小企業労働問題、労使関係の問題について、具体的な問題を掲げながら、大臣なり、関係者見解を聞きたい、こう思うわけでありますが、昨今、この労働問題というのは非常に官公労、民間大手を問わず、厳しくなっておるわけでありますが、特に中小企業労使関係について、大臣は基本的にどういう考え指導なり、対処に当たろうとしているのか、そういう大臣の基本的な考えをまず冒頭お伺いしたい、こう思います。
  7. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) ただいま目黒委員から、中小企業という特定をされまして、それに関する労使関係についての所信を問うということでございますけれども、私の立場からいたしましたならば、これは大企業中小企業もないわけでございまして、ありとあらゆる日本に存在をいたします労使関係といいますものが、法令に定められ、かつまた国際的にも認められるようなりっぱな関係にならねばならぬ、かように思います。  ただ、御指摘のとおり、大企業におきまする労使関係といいまするものは、組合員も非常にしっかりしておられますし、労使の間できわめて妥当なお話し合いがなされまして、それが守られておるということはございます。  しかしながら、中小の場合には、これが財政上でありますとか、あるいは企業の体質、強さ、そういったことから申しまして、私どもが望んでおりますような関係にまでなかなかなるために時間がかかるということがございます。これをできるだけ早く埋めまして、中小企業労使の慣行におかれましても、私どもが期待をいたしておりまするようなものに、一日でも早く近づけるような努力をやっていくことが私どもの責任である、かように考えております。
  8. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 中小企業労使関係がおくれているということについては、大臣も率直に認めておられるわけですが、少なくとも、いろんな事情はあるにしても、行政指導する、あるいは労使関係に関与をする場合に、労働組合法労調法労働基準法、この労働三法はやっぱりぎりぎりの線としてこれを守り、実行をさせるためのあらゆる手段、あらゆる措置を行使するということは基本的に間違っていないと思うんでありますが、大臣考えは原則的にいかがでしょうか。
  9. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 御指摘のとおりでございます。しかしながら、現実には、労働三法規定をされておりまする条件といいますものを果たしていない未組織の労働者方々が、いま日本労働界におきまして三分の二を占めておるというこの現実といいまするものを、私どもはきわめて遺憾に考えております。何とか全体が先生の御指摘のような、そういった法律を実際に守っていけるような体制に、一日でも早くなってほしい、かように考えるわけでございます。
  10. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私はこの前の決算の総括で質問した際に資料要求をしました島根県のナカバヤシ株式会社の問題について、私は先月の十九、二十日、島根県に参りまして、この会社実態について県側会社側労働者側並びに地方自治体の首長さん——町長さん、助役さん、あるいは議会の議長さん、そういう方々と幅広くお会いしていろんな意見を聞いてきたわけでありますが、自治省にお伺いしますが、このナカバヤシという企業本社が大阪にありまして、島根県に誘致企業として進出してきた会社であります。したがって、企業誘致はいろんな例もありますが、私の生まれ故郷でも企業誘致をやっておりますが、宮城県の大河原でありますが、やっぱりそれ相当町の財産を、土地の問題、税制の問題、そういう問題で相当程度提供しながら、会社もよくなる、地域住民雇用問題も改善される、そういう目的企業誘致が行われている、私はそう思うんでありますが、自治省誘致企業誘致するに当たって、こういう労使関係であるとか、あるいは雇用関係であるとか、地域住民環境整備の問題とか、そういうことについて、具体的に指導されているのかいないのか、その点をひとつ基本的にお伺いし、同時にこのナカバヤシ島根県への進出についても、そういう意味での情報を持っているかどうか、自治省にお伺いいたします。
  11. 藤原良一

    説明員藤原良一君) 実は、企業誘致につきましては、地方公共団体がそれぞれ地域の振興を図るという目的で、地域実情に応じて、自治体が自主的に行っているのが実情でございまして、私どもの方といたしましては、企業誘致内容とか、あるいは方法等について、特別の指導を行っていないわけでございます。  また、企業誘致に際しまして生じておりますいろいろな問題、そういうことも承知していない状況でございます。
  12. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうするとあれですか、私はこの仁多町の町長さんにお会いしたところ、このナカバヤシ誘致問題については、県と当該企業とそれから仁多町の町長と三者で誘致企業に関する三者協定を結んでいる、そういう証言を得ておるわけでありますが、こういうことについては自治省は全然ノータッチと、どうぞ地方で御自由におやりくださいと、こういう考えなんですか。それともこういう企業誘致の際には、県と当該市町村と、それから当該企業と、やはり三者協定を結んで遺憾のないようにというふうに指導されているのか。この辺はどうなんですか。
  13. 藤原良一

    説明員藤原良一君) 一応自治体企業誘致条例等を定めました場合には、自後的に報告は受けておりますが、具体的に誘致に当たって、関係者間でいろいろ相談されると、そういう内容を具体的に事前報告を受け、指導するというふうな具体的なことはやっていないというのが実情でございます。
  14. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、名はあって体はなしということだ。  じゃ労働省に伺いますが、この前の決算委員会でこの三者協定についての資料をお願いしたわけですが、三者協定内容についてコピーでも入手したら提示してもらいたいと、こう思うんですが。
  15. 岡部晃三

    説明員岡部晃三君) 先生指摘の三者協定でございますが、これは私ども地方出先機関を通じまして知り得ました限度でございますが、当時、すなわち昭和四十六年の島根工業開発促進条例施行規則に基づく協定が、進出企業をめぐりまして、三者すなわち県、町、会社によりまして取り交わされているという状況が多いというふうに聞いております。ただ、私ども、この点につきましては、たまたま先生指摘仁多町にかかわるものではなくて、別な町にかかわるものをサンプルとして情報を得ているわけでございますが、その内容を見ますというと、これは中に、たとえば誘致企業につきまして、「従業員労働条件福利厚生施設等にとくに配慮し、県内における優良な雇用の場の形成に努める。」というふうな規定のようでございまして、これが仁多町の場合に当てはまるかどうか存じませんが、そのような内容締結が進められておるというふうに承知しておるところでございます。
  16. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私もその原文を見ておりますから、この昭和四十六年の締結したことが、以下、仁多町も含めて七つの工場に全部適用されているということで、資料収集御苦労さんでした。  いま政府委員の方からあったとおり、労働条件等については、あるいは環境整備、こういうものについては最大努力をするというふうにうたっておるわけでありますが、私はこの会社に行ってみて非常に驚いたことは、まず最初に、私は六月の十九日にこの仁多工場に行ったんですが、玄関前に本社総務部長と名のる私よりよっぽど人相のいい男が、かっぷくのいい男があらわれまして、大体二十五、六歳前後の自衛隊上がりとも思われると言っていいかどうかわかりませんが、非常に元気のいいお兄さんたちがばあっと参りまして、社会党の国会議員と言っても、お前ら帰れと、一歩たりとも門に入ることまかりならぬと、まるで門前払いを食ったわけであります。私もずいぶん、余り学歴のない国会議員ですが、全国、沖縄から北海道まで歩きまして、門前払いを食ったというのは私は初めてであります。そこは私も心臓でありますから、何言うかと、何このやろうということで張り合いまして、中に入りまして、いろいろお話を聞いたところであります。ところが、私はそういう感情的なことはどうこう申しません。ただ、労使関係として、この会社ナカバヤシ島根統一労働組合という会社の息のかかった組合がありまして、いろいろ密接な労使関係があったようでありますが、地場で採用された労働者皆さんが、余りにもやり口がひどいので、これではとてもわれわれの条件が守れないということで、五十四年の十一月十五日、ナカバヤシ労働組合というものを結成いたしまして、会社側にいわゆる団体交渉権の問題、あるいは三六協定の問題、二四協定の問題、そういう労働条件問題等について、労働協約締結方を申し入れておるわけであります。以来一年半になるわけでありますが、この労働協約締結するという姿勢そのものさえも会社側が全然示そうとしない。少なくとも労働組合をつくった以上は、やはり百名近くの労働者がおるわけでありますから、それの皆さん労働協約を結ぼうと言った場合には、当然、とりあえず賃金の問題、勤務時間の問題、時間外協定の問題、それから給料からカットするいわゆる労働基準法の二四協定の問題、これらはその日からと言っていいくらい、やっぱり働く者にとっては大変な問題ではなかろうか。これを一年四カ月も放任しているという点は、私は、会社側経営者としてどういうものだろうか。労働大臣に冒頭お願いした労働基準法、そういうことに対する経営者の感覚の欠如と言いますか、きわめて私は遺憾なことだと、こう思うんでありますが、こういう問題について、地元の労働基準局、あるいは労働基準監督署などから情報の提供なり、問題把握を受けておれば、政府側の認識について御答弁願いたい、こう思うんです。
  17. 石井甲二

    説明員石井甲二君) ナカバヤシ労使関係、あるいは労働実態につきましては、先生指摘のとおりの問題もいろいろあるようでございますけれども労働基準監督庁といたしましては、たとえば、就業規則につきましても調べておりましたところ、ある一部の分工場におきまして、就業規則届け出がなかったという実態もございました。そこで、その点につきましては、会社側は、その工場はいわば本工場に対して分工場であるので、就業規則届け出は本工場において届け出をしているのであるから、分工場届け出をしなくてもいいのだという解釈と言いますか、そういうことであったわけでありますが、その後、監督指導をいたしまして、その分工場につきましても、単独の工場として就業規則届け出をさせるということをいたしました。その他、そういう実態に応じまして、基準法上あるいは監督官としての職務上の指導、あるいは実際の監督を現在続けておるわけでございますが、今後とも実態に即した進め方をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  18. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いま答弁でもちょっと触れておったとおり、就業規則があるから云々と、こういう会社側の釈明ですが、あるいは現地労働基準監督官もそういうことを言っておったんですが、しかし、これは釈迦に説法がと思うのでありますが、就業規則というのは、会社側はつくる際に、組合なり、あるいは従業員過半数意見を聞いて、そうして意見書を添付してやるわけですね。労働組合がないときは、そういうこともやっぱり一つ従業員勤務を規制するという点ではぎりぎりの最低の線だということは私も認めます。しかし、現に労働組合があって、そうしてある工場においては過半数を制しておる、ある工場においては前の何とか組合が制している、ナカバヤシ島根統一労働組合ですか、そういう際に、やっぱり労働協約締結要求があった場合には、労働協約締結をむしろ積極的に指導すべきであって、就業規則があるから万事足れりという姿勢は、労働行政としては誤りだと私は思うのであります。現地労働基準局長、それから基準監督署監督官、それから県の労政部長、三者に私はこれは誤りだと、労働行政としては。最悪の場合は就業規則があったとしても、やっぱり基本的な労働協約を結ぶために最大努力をすべきだ。それで、こことこことここが問題点でなかなか妥結しないと、これはとりあえず就業規則の条項を入れて、とりあえず労働協約を結んで、それで改定交渉改定交渉としてまたやりましょう、そのくらいの次善の策をきちっとするのが、中小企業における労働行政指導としては私は正しいと、こう理解しているんですが、私の考えが間違っているか、すべて就業規則に依存するという現地指導方針が正しいか、どちらでも結構ですから、やっぱり労働省労働協約に関する基本的見解をこの際聞いておきたい。そして、私の言っている点が正しければ、現地の県の労政並びに基準局、並びに基準監督官に対して、それなりのやっぱり私は指導をしてほしい、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  19. 吉本実

    説明員吉本実君) 労働条件等先生がおっしゃるように、いわゆる労使の自主的な話し合いで決めて、労働協約という形で明確にすることが望ましいことは当然でございます。この労働協約締結するかどうかという点は、労使の判断によって決まってくるということでございます。  ところが、本件につきましては、そういった、先生指摘のようになかなか協約締結するまでに至っておらない、むしろ労使間に組合活動だとか、団交についてのルールそのものが確立されておらないというような現状であろうと思います。そういう意味で、協約締結もさることながら、まずは労使間のルールを先にこれを確立していくことが、健全な労使関係をつくる上で必要であろうと思います。そういう意味におきまして、ただいま現在いろいろ労使関係で、この工場につきましては、先生御承知のように紛糾しておるところでもございますので、労働省としましては時期をとらえて、島根県の労政機関ともよく連絡をとりながら、対処してまいりたいと思います。
  20. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それからもう一つ就業規則の問題について、ナカバヤシ総務部長という方はどこまで理解されているか、大学卒業のりっぱな先生らしいですけれどもね。就業規則は少なくとも労働協約締結されるまでの間、従業員勤務人事、その他を規制するわけですね。したがって、提出をする際に、関係方面意見を聞くというのは当然だと思うんですよ。  そこで、ナカバヤシ労働組合ができた五十四年の十一月十五日以降、どういう取り扱いになっているのかと聞いても、チンプンカンプンでちっともわからない。それから組合勤務変更——交代から二交代、あるいは二交代から三交代、あるいは変則交代、そういう勤務の提案があるので、それは何を根拠にやるんですかと言うと、就業規則だと、こう言うらしいですな。では就業規則はいつ変更届け出を出したんですかと言われるとチンプンカンプン。全く大学卒業してりっぱな総務部長さんだけれども、あなたどうですかと聞いたら、私は労働組合を扱うのは初めてなので、まことに先生方申しわけありません。そうは言っても、天下の総務部長さんともあろう方が、自分の従業員を規制する就業規則の本質と問題点取り扱いについて欠けておって、従業員労務管理をする、これはちょっとやっぱり経営者教育が足りないんじゃないか、こう思うんですね。ですから、この就業規則実態がきわめてあいまいもこである。  それでお願いするんですが、当該島根県の労働基準局長に一連の就業規則昭和四十六年にこの会社進出したんですから、昭和四十六年から今日までの就業規則届け出中身と、意見具申と、変更内容と、それを一覧表で出してくださいと、そういうことをてこにして、いま言った総務部長さんの考え方をただす以外ないですと、こういうふうに再三お願いしたんですが、当該島根県の労働基準局長は、いや、そうは言われても会社との関係がありましてと、これまたきわめて消極的な局長さんで、あなたこれは従業員に公表するたてまえですから、やっぱり事務的におたくのところで昭和四十六年以降今日まで、就業規則届け出内容と、変遷の歴史と、従業員意見、それを経過的に見せてくださいと言っても、とうとうわれわれには提示をしなかったんです。それで、このナカバヤシ労使関係を洗うためには、どうしても就業規則が必要なんで、いわゆる私の請求に対して労働省の方でしかるべく措置をしてもらいたい、公式にできなければ非公式でも結構、見たら返しますから、ただ歴史的な事実を、中身さえ点検できればいいんでありますから。そうしないと、全然従業員がわからないままに、勤務変更を勝手にやられている。こういうことはやっぱり労働者としては許してはならないと、こう思いますから、この就業規則取り扱いについて、ひとつ見解なり、あるいは所感を述べてもらいたい、こう思うんです。
  21. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 就業規則につきましては、先ほど私から御答弁申し上げましたように、これまで届け出のなかった分工場、具体的には田井、布勢工場でありますが、この工場につきましても、その後就業規則届け出をさせることにいたしたわけであります。  ところで、先生指摘就業規則内容について、その場で先生に対して基準局長がなかなかそれを提出をしなかったということの背景には、このナカバヤシ労使関係が非常に混乱をしているという背景も、恐らく局長の頭にあったんじゃなかろうかというふうに推測をしておるわけでありますが、ただ、就業規則につきましては、届け出をいたしておりますから、その内容監督署において十分に把握できるわけであります。また就業規則につきましては、これは当然のことながら、従業員には提示をしているものでありますから、御指摘のように、その内容につきまして、先生必要な範囲につきまして、これを現地連絡をいたしまして、御趣旨に沿うような方向で検討させていきたいというふうに思います。
  22. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ぜひそうお願いします。  それからもう一つ、これはもう私は専門家同士でこんな議論するのはいやなんですが、どうも現地がばっとしませんから。この三六協定、二四協定というのは事業場単位に結ぶんですね。その事業場単位に結ぶ際に、過半数云々と、こうあるんですが、どうも現地労働基準監督署指導では、事業場従業員の中に、特に職制ですね、勤務命令権を発する方、工場長または工場長代理、分工場長あるいは主任課長、そういう者も含まれるという解釈をしているんですが、私はちょっと頭をひねっているんです。だから、民間労働組合であれば、どの範囲労働組合を結成し、どの範囲がいわゆる人事権を行使する部類がということは、労働協約その他によって決めますから結構なんですが、これは労使関係ありません。労使関係のないこの仁多工場正社員が七十九名、臨時が五名、ナカバヤシ総評系組合員が四十名、この正社員七十九名の中にはいま言った分工場長から主任から皆入っているんですよ。それを入れると総評系組合員過半数に一名か二名足りない。工場長とか、分工場長を抜いてしまうと総評系組合員が一名か二名多いと。きわめて際どい攻防戦なんで、その戦略戦術はわからないわけではないけれども、やっぱり法のたてまえというのは厳存いたしていると思うんですよ。だから、この事業場における従業員の三六協定とか、二四協定締結する範囲は、おたく労働省指導としてはどこにポイントを置いているのか、これはやっぱり現地とのずれがありますから、やはり統一見解として御提示願いたいと、こう思うんです。
  23. 岡部晃三

    説明員岡部晃三君) 労働基準法三十六条の「労働者過半数」という概念におきまするこの「労働者」の意義でございますが、先生指摘の管理、監督者、あるいはパートというふうな、通常の労働者と立場の違う者が含まれるか否かという問題は、実はこれは長年の論争点とも言うべきものでございます。先生御承知のとおり、いろいろな学説がございまして、そのようなものを除くべきであるという有力な説もあることは私ども承知をいたしております。  しかしながら、私ども労働基準法を読みます際に、「労働者」という概念、あるいは「労働者過半数」という概念は、他の条文にもいろいろ出てくるわけでございますが、たとえば十八条、二十四条、三十九条、九十条と出てくるわけでございますが、それらにおける「労働者過半数」という考え方は、やはり統一的に考えなければいけないということでございまして、この意義につきましては、やはり当該事業場雇用されているすべての労働者過半数意味であるということで、これは法制定以来意思を統一いたしまして、全国的に施行しているというふうな状況でございます。その辺の御議論はいろいろとあることは私ども承知をいたしておりますけれども、そのようなことで、統一的な解釈をして今日に至っているという状況でございます。
  24. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 極端に言えば、すべての労働者というのは、国鉄の場合は国鉄総裁以下——あれ賃金労働者だからね——経営権は、出資は政府が持っているけれども、総裁もりっぱな役員給という給料をもらっているあれは賃金労働者ですよ。そうすると国鉄総裁以下全部含むんですか。会社も、自分が株主で自分が社長だという方は、それは除くとしても、会社から給料をもらってやっている社長もおりますわな。その場合に社長も含むんですか、そのすべての労働者に。だから、もう具体的に工場長あるいは工場総務部長、あるいは人事担当の云々と。われわれは公労協ですから、公労委で判定する公労法上の組合員範囲ありますわね、労組法上は労働組合との協約で結ぶのが一番いいことですから、それは慣例としてあるんですが、この場合は、たとえば仁多工場なら仁多工場の場合は何を言うんでしょうか。工場長も含むんですか、含まないんですか。それは労基第何号によって含むという統一解釈をしていますという、専門的に、労基第何号あるいは労政第何号で結構ですから、通達があれば通達の件名を言って表示してもらいたい。いい悪いは別に論争します。今日のおたくたちの指導は、こういう工場ではどの範囲を、いわゆる三六協定、二四協定労働者範囲にしているかという点を具体的に言ってもらえばいいんです。
  25. 岡部晃三

    説明員岡部晃三君) ただいまの国鉄の例でございますが、これは総裁ということになりますと、使用者そのものでございますので、労働者概念からは外れると考えます。私どもの現在解釈の基本としておりますのは、昭和四十六年一月十八日、基収第六二〇六号、この通達で統一的な見解を示しておるというところでございます。工場長につきましては、その方に代表権があるのかどうかというふうな諸般の状況を判断して考えたいというふうに考えます。
  26. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 しかし、工場長とか、総務部長とか、人事部長とか、そういうその事業場従業員を管理する立場にある方、これは三六協定上の事業所の労働者の中に入るかどうか、私は疑念に思います。でありますから、これはやっぱり本社がそういう指導でありますから、現地もそういう指導だろうと思うんですが、私は承服いたしません。だから見解だけ表明しておきます。論争は論争でやります。そんなことで三六協定結んだら、実際の事業運営にどういう悪影響を及ぼすのか、国鉄なら国鉄の例を使って一回やってみましょう。千五百名もおる運転所長を三六協定の適用の対象だと言ってやったら、国鉄の運行できませんよ。あすこに専門家いるけれども、国鉄の運行できませんよ。そういう実態論からいってこの考え誤りである。したがって、われわれは仕事としては工場長人事部長あるいは総務部長のように、一定の従業員に指令、指示を与える方を除いて考えてほしい、それが業務の実態から当然だろう、こういう意見を持っておるということだけはきちっと表明して、現地で争います。  それで、最後にこのナカバヤシの問題については、この前もちょっと言ったとおり、この組合は不当労働行為を提起しています、五十六年四月二日。ですからこの中身についてここで質問したって、それは地労委で審理中ですからと逃げられるのが関の山ですから、私はそういうことをいたしません。  ただ、実際に私はこの前言ったとおり、お父さんやお母さんが病気だと言うと、そんなおやじは早く死んでしまえと、それからちょっと女性でありますからおめでたになったんで病院に行きたいと、そんな暇があったら会社をやめて、おやじと楽しく過ごしたらいいだろうとか、そういう言っていいことと言って悪いことが私はあると思うんです。言って悪いことをぬけぬけと管理者が言ってまかり通る労使関係、これは自治省もよく覚えておいてください。仁多町長もこの事実は知っていました。それは本当に町としては誘致企業を持ってまいりましたけれども、このナカバヤシ労使関係で町の中が本当に暗くなっているというんです。格子なき牢獄だという言葉も使いました。したがって、これに文句言うと誘致企業は引き揚げると言う。引き揚げてしまえば四百名近くの町民が困る。その弱みにつけ込んで、ぬけぬけとい主言ったようなことを、白昼公然と公言しているという点は、やっぱり労使関係以前の問題だと私は思うんです。  たとえば機械でここ四本切った人が来ました。私見ました。これは機械にはさまったんではなくて、うちでガラス切りで切っておったら、ぽっと外れちゃって、ガラス切りでぽんとなっちゃったことだと、そのかわり十分給料もくれる、労災関係会社の点数が下がるから、何とかガラス切りで切ったことにしてやってくれと。それを断ると、あしたから来なくともいいと。こういう実に私は大変なことがこの島根県の片田舎で行われているということを私はこの目で確認してきたんです。ですから、私はいま事業所の問題は若干見解を異にしましたが、就業規則の問題についても、もう少し県と労働省関係現地方々と、それからこのナカバヤシ本社は大阪にありますから、大阪の本社の方と、三者がテーブルに着いて、町が本当にこの企業誘致してよかったなという環境づくりのために、私は大臣に最後に労働問題として、努力方、善処方をあなたに要請したい、これが中小企業労使関係をやっぱり開拓していく私は一つの例だと思いますから、大臣努力を要請したいと思うんですが、いかがでしょうか。
  27. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) ただいま御指摘のような労使関係以前の、そういう非人間的な姿勢で臨んでおるということは、決してこれは正しいことでもありませんし、私どもがそれを認めていくわけにもまいらぬわけでございます。でございますから、先生せっかくの御提案もございますし、私は労働大臣といたしまして、適切に指導をいたしますということを申し上げます。
  28. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ぜひそういう努力をお願いしたいし、自治省にもそういう誘致企業という政策目的が別な方に展開されているということについても、重大な関心を持ってもらいたい、こう思いますから、これは要請だけしておきます。大臣の善処方を要請します。  次は、もう一つ、これも余りよくないことなんですけれども、これは私の生まれ故郷の方のことなんですが、しかしこれだけはやっぱり私は見逃しができない。これも中小企業一つの私は労使関係だと思うんですよ。私の生まれ故郷、宮城県の柴田郡の柴田町に柴田タクシーというのがあるんです。これは車が九台で十六名、それから隣に槻木タクシーというのがありまして、これは十五台で運転手が二十一名、中小のタクシーです。このタクシーが春のベア問題で、五月ころから賃金の欠配などがありまして、労使関係でいろいろ話が始まったと。ところが、その中でとんでもない副産物が出てきた。それはこの会社は、従業員から社会保険とか、税金を給料からいただいておりまして、いただいた社会保険科を納めなかったんですね、これは。仙台保険事務所にわれわれが当たったところでは、槻木タクシーが社会保険料が千六百七十三万五千四百三十一円、三年分未納、それから柴田タクシーが千七百二十二万五千六百二十七円、これも三年間未納。  それで、これは厚生省の方にお伺いしたいんですが、三年間も社会保険料が未納になっているというのは、ちょっとわれわれ常識では理解できないんですがな。これはどういう経過があったのか。政府委員の方でレクチャーで当たってほしいということを言ったんですが、大体この私がつかんだ数字、三年間おおむね未納、この実態については間違いないでしょうか、一応事実確認いたします。
  29. 武内稔和

    説明員(武内稔和君) ただいま先生お尋ねの槻木タクシー及び柴田タクシーでございますが、先生指摘のとおりに、槻木タクシーにつきましては、昭和五十三年五月から五十四年一月までの間、それから五十四年三月、五十四年五月から五十五年九月まで、五十六年の二月から五十六年の四月までで、滞納金額一千六百五十二万九千五百三十円ということになっております。それから柴田タクシーでございますが、やはり五十三年三月から五十四年一月までの間及び五十四年三月、それで、滞納金額につきましては、私どもの調査では一千八百十一万三千三百五十三円ということになってございまして、先生の御指摘の数字とほぼ同様の数字になっております。
  30. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ちょっぴり違うけれども、大体大筋において、約三千万を超す社会保険料を、中間でちょぼちょぼウサギのうんこのようにごまかすために納めているけれども、大勢としては約三年間、社会保険関係従業員から差っ引いておって納めなかったという点ははっきりしたと思うんです。  それで、いま従業員が心配しておりますのは、これが三年間も納めなかったものですから、一つはいわゆる疾病になった場合の健康保険の関係はどうなるんだろうかと。これは大丈夫だと私は思っているんですが、健康保険の取り扱い、それから年金関係、厚生年金、この関係などについてはどうなるのか、従業員が心配しているものですから、当面の事務取り扱いについて明らかにしてもらいたい、こう思うんです。
  31. 武内稔和

    説明員(武内稔和君) ただいまの件でございますが、健康保険、厚生年金保険、両制度とも被保険者の資格につきましては、保険者の確認ということで行っておるわけでございまして、保険料の滞納と、被保険者の資格というのは直接の結びつきがないという制度になっております。したがいまして、両事業所につきましては三千万の滞納があるわけでございますが、従業員資格につきましては、その会社従業員が勤めておられて使用関係がある限りにおきましては、健康保険、厚生年金保険とも資格が存続されますわけでございますので、健康保険につきましては保険証の使用が可能でございますし、厚生年金保険につきましては、将来当然のことながら年金の期間になるということでございます。
  32. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いま明快に答弁もらったので、帰って伝えます、家族を含めて大分心配していますから。  それからもう一つ、今度は税金、これは柴田タクシーが税金関係が百六十一万三千六百十円、これは所得税です。それから大河原の町に納めるやつが二十二万九千二百二十円。それから槻木タクシーは町税を含めて百三十六万九千三十円。これも若干の数字の食い違いがあるかもしれませんが、大体税金の方も従業員から取っておって、役場や税務署に納めなかったと、こういうことも確認していただきたい。これは国税庁関係どうですか、多少の数字が違っても、こういう行為については事実を認めますか。
  33. 山本市蔵

    説明員(山本市蔵君) 本件につきまして、国税庁におきましてその実態を把握しておりません。そういうことでお答え申し上げて御勘弁願いたいと思うわけでございますが、早速近く国税局を通じまして実態を調査いたしたいと思います。
  34. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは社会保険と同じように、どんぶり勘定でやっておったんですかね。私も大河原の人間ですから、大河原の税務署でこれは調べてきたんですから、私の町で自分が見たんだから間違いないと思うんですが、なお国税庁で確認してください。  それからもう一つ、法人税関係もそうなんですよ。法人税はどうなっているか、これは会社が書類を持って逃げて歩いているので、法人税はつかむことができませんでした。でも、税務署の話では、大体三年間ぐらいはやっぱりポケットに入れている、納めていないということでありますが、金額は確認できませんでした。  それで、ひとつ確認をお願いしたいんですが、この法人税とか、所得税、それから町に納める税金、これを社長が従業員から集めているわけですね、そして納めないんですよ。だから現に納まっていないものですから、税務署の方では個人に、税金が納まってないから早く納めると、こういう請求が来て困っているというんです、従業員が。こういう点はどうなるでしょう。私はやっぱり社長が従業員から集めたんですから、請求は当然社長とか、専務の方に請求すべきであって、各個々の従業員に請求するというのは的違いじゃないかと、こう思うんですが、税務の指導上これはどういうふうになるのが正しいのでしょうか。
  35. 山本市蔵

    説明員(山本市蔵君) 本件につきまして実態を把握いたしておりませんので、具体的に申し上げることはできませんが、通常の場合につきまして、たとえば法人税について御説明申し上げますと、法定期限内に納付しなければならない法人税があるという場合に、その期限内に納付がなかったということになると法人税は滞納ということになります。その場合、われわれの方では滞納処分を行うわけでございますが、その滞納処分の相手は、納税義務者がこの場合滞納者でございますので、それは会社でございます。したがいまして、国税当局といたしましては、会社を相手に滞納処分を行う、こういうことでございます。
  36. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私もそうだと思うんですがね。これは運輸省に後でまた聞くんですが、この会社はそんなかっこうで蒸発したものですから、何だかんだと全部ひっくるめると、地元の新聞では約六千万をあちこち食い逃げしていると、社会保険料、税金、それから会社の借金。それでどうにも経営が成り立たなくなりまして、先月の六月の二十六日から、会社側とタクシーの運転手の皆さんが話し合って、当分の間会社の運営は運転手の皆さんがやる、いわゆる運転手が自主管理をする。もちろん営業でありますから陸運事務所の了解をもらって、運行管理者あるいは営業を行うためのいろいろな諸手続を全部完了した上で、いま従業員が連行管理をやっている。この運行管理を協定しますが、その協定書の最後の項に、自主管理を行うための諸経費の支出は組合側に一任する、しかし、いま言った、以前における負債についてはすべて経営者側の責任において処理を行うものとすると、こういう申し合わせがあるわけなんですよ。この申し合わせとおたくのいま一般論を結合いたしますと、法人税なり、所得税のいわゆる滞納処分に対するいろんな請求なり、処分とか、いろんな事務の行いということは当然社長さんが、これ武田さんというんですが、この武田さんのところに滞納処分に対するいろんな事務的な取り扱いとか、そういう点は行われるべきであって、現に自主管理をしている個々の組合員、個々の運転手に請求をするのは門違いだというふうに理解していいんでしょうか。
  37. 山本市蔵

    説明員(山本市蔵君) 実情を調べました上で、その実態を踏まえまして適正に処理をいたしたいと思っております。
  38. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ぜひこれは、私も税金には弱いもんですから、税務署に行っていろいろ勉強さしてもらうと、いや目黒さんこうだよああだよと言われれば、なるほどそうかなとも思ってくるし、従業員の方に行って聞くと、なるほど従業員の言うことも本当だしなということで迷っているんです。ですから早急に仙台を通じて大河原の税務署に、法人税と所得税、徴税の扱いについて適切な処置をしてもらって、現に本人は納めているんですから、従業員はもうさっ引かれておるんですから、三年分ね。そういうことを十分に配慮した善処方をお願いしたいと、こう思うんです。これは要望です。その結果を早急に私の方に御連絡願いたいと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  39. 山本市蔵

    説明員(山本市蔵君) 承知いたしました。
  40. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ではこの問題で運輸省にお伺いしますがね。私は陸運行政から言って余り芳しくない会社の社長さんだと、こう思うんです。しかし、これは現地の陸運局なり、あるいは宮城県陸運事務所も努力されて、いま組合側と紛争状態にあるわけじゃありません。組合側とよく話し合って、再建のために早急に手を打とうと、歯車がかみ合って努力しているわけでありますから、私はその努力を見たいと思うんですよ。したがって、自動車局長については、こういうことは余りよろしくないことだと、速やかにこういう社会的不信感を除去して、会社再建の青写真をつくって、組合側なり、あるいは陸運事務所と話し合って、一日も正常な運営に返るように、最大限の短期間で努力をしてもらいたいというように要望しておく以外にないと思うんです。ここへずいぶん私持ってきたんですが、ここであの手この手、この手あの手と余りやりますと、現地の再建に支障を来すという政治的な配慮もあるようでありますから、これ以上私は申しません。ただいま言ったことだけは陸運行政の一環として、ハイヤー・タクシー業の社会的任務として、ひとつ運輸省にその取り組み方を要請したいと、こう思うんですが、きょうは自動車局長お願いしたんですが、来れないそうでありますから、その私の要請に対して見解を述べてもらいたいと、こう思うんです。
  41. 大久保一男

    説明員大久保一男君) 柴田タクシーと槻木タクシーにつきましては、先生指摘のように、賃金の遅配を契機といたしまして、ことしの六月以降労働組合による営業収入の管理が行われております。会社側といたしましては、できる限り早期にみずからの責任で経営再建をいたしたいという意向でございまして、現在再建案を検討中であるというふうに聞いております。私どもといたしましても、現地の陸運局、陸運事務所を通じまして、会社側会社再建に全力を挙げて取り組むように強力に指導してまいりたいと、かように存じます。
  42. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私のきょうこれ以上質問しないという気持ちをよくくんで、この武田さんという人は私の隣町の町長さんやった私よりかちょっと三つ四つ上のまだばりばりですからね、こんな不正事件——不正事件とは言いませんが、こんな社会的問題を起こすような人じゃないと思っておったのですが、現に発生しちゃったんです。ですから、早急にいま答弁のやつを実行してもらって、逐次中間的な報告を私の方にしてもらいたい。私もそれによっては次の運輸の決算委員会に、改めて持っているネタを全部大臣の前に明らかにして、私も免許取り上げを含めてやはり決断をしてもらいたいということもありますから、善処方をひとつ要請だけしておきます。  それからヤクルト問題をやりたいのですけれども、ヤクルト問題についてはこの前労働省の方から調査しますという話があったのですが、ヤクルトおばさんの労働条件の問題については、労働省ももう少し立ち入って努力してほしい、こう思うんです。そうして一番決め手になるのは大阪販売のヤクルトのおばさんが、白ろう病問題で裁判をやって、白ろう病が認定された事件がありましたね。白ろう病が認定されたということは、いわゆる労使関係雇用関係にあるということを裁判所が認定したことなんですよ、これは。そういう基本的認識に立って間違いないと思うんですが、ヤクルトの白ろう病判決と雇用関係ということについて、労働省は基本的にどういう認識を持っているか、まず冒頭お聞きしたい、こう思うんです。
  43. 岡部晃三

    説明員岡部晃三君) ヤクルトおばさんの中で、大阪の事案でございますが、白ろう病にかかられた方がございまして、これは昭和五十四年に問題になった事案でございます。野田智佐子さんというセンターマネージャーの職にあられる方が、その病気にかかられまして、これが労働者性が問題になったわけでございます。この点につきましては、私ども労働基準監督機関におきましても、雇用実態を調査をいたしまして、すでに五十四年の十月八日に、本省から地方あてに、本件については労働者性ありというふうな判断を示しておるところでございます。これはそういう労災上の認定につながってまいりまして、労働者としてこれが取り扱われる、こういう案件であったわけでございます。
  44. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それで、私のところにもいろんなヤクルトおばさんから投書が来ているんですがね。最初会社側が勧誘する際には、一日二、三時間やればいいということで行ってみると、結局は実態は婦人販売店、この前ちょっと局長が言った婦人販売店というのにすりかえられて雇用関係は全然ない。一本配るごとに七円の配達料をもらうというのが基本システムで、社会保障も労災も、いまのやつはもう例外でね、社会保障も退職金も何もない、こういう形で使われているんですが、こういうことが現にどこをどういうふうに巧妙に法をくぐって歩くかについては、なかなかまだ、ヤクルトという会社は私がこのごろ二、三回やっているものですから、なかなか資料を提供してくれない。資料を提供してくれないから、その実態がなかなかつかめない。いわゆるヤクルトのおばさんをつかまえて、あなたはどうなんですか、あなたどうなんですかとこういうふうに聞くしかない。ですから、これはやっぱり労働者を守るという実態から見ると、もう少し労働省行政権を使って、ヤクルトおばさんの労使関係雇用関係、あるいは待遇関係ということをもっと全国、大規模的に、これも中小企業労働者を救うという観点から、私は組織的な調査をしてもらうべきだと、こう思うんですが、その決意はいかがでしょうか。私も時間があれば、いろんなヤクルトおばさんの実態、年間七十万の問題とか、それからピンはねの問題とか、ずいぶんあるんですよ。ですからピンはねの問題は断片的に投書で持っていますけれども、それを組織的にやっているのはやっぱりヤクルトの本社だと思うんですよ。だから、組織的にやっている実態労働省はぜひ把握するための努力をしてほしい、行政府は、こう思うんですが、いかがでしょう。
  45. 石井甲二

    説明員石井甲二君) ヤクルトおばさんの問題につきましては、実態の問題の背景となる問題が実はございまして、一つは約六万人というヤクルトおばさんがおるわけであります。それからもう一つは、会社のあるいは営業所とヤクルトおばさんとの間にセンターマネジャーという一つの組織がございます。したがいまして、現在、先生指摘のような問題が問題として対象になりますのは、このセンターマネジャーとそれからヤクルトおばさんの二つだろうと思うのです。  ところで、実は労働省におきましても、このヤクルトおばさんの実態につきまして、どういう実態であるかということについて、ヤクルト本社の責任者を呼んだり、あるいは実情を調べたりいたしましたが、現在のところ一つはヤクルトおばさん、すなわち約六万人に上るヤクルトおばさんのおおよその実態労働者性がないような形で、実際の運営が行われておるように見受けられます。ただ問題は、この中でも先ほど白ろう病のお話がございましたが、個々のケースにおきまして労働者性を持っているような実態を持っているものもあるという、かなり地域によりまして、あるいはその内容におきまして、そういうものも含んでいるというのがいわば実態だろうと思います。  それからセンターマネジャーにつきましては、これはいわばこの約六万人のヤクルトおばさんの中に入りまして、ある意味での商品の売買といいますか、つまりヤクルトおばさんとの中に立ってコントロールするとか、あるいはヤクルトおばさんの販売の仕方についての教育訓練とか、そういうものを兼ねておりまして、これはかなり労働者性ありという方のニュアンスが多い集団だというふうな状況で把握をしているわけであります。  ところで、そういう実態からしまして、マネジャーとヤクルトおばさんの態様は性質がやや違うようでございますけれども、いずれにせよヤクルトおばさんにつきましては、いわゆる請負契約であるならば、それにふさわしいような実態会社にやってもらわなくちゃいけない。それからセンターマネジャーにつきましては、むしろ労働者性ありという実態であるならば、これをはっきり会社側一つのいわば就労体制として明確にして指導しませんと、いつまでも灰色の状態で介在いたします。その点につきまして現在労働省からヤクルト本社に対しまして指導を行っている。本社の方でもこの点について対応をしようということになっておりますけれども、しばらく指導を続けてまいりたいと思います。
  46. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いま労働省基準局長が言ったのが実態だと思うのですが、ある例を調べてみると、毎月の目標が割り当て制をしておって、たとえばおまえは三百五十本だと割り当てられる。そうすると、どんなに努力しても三百本しかやれない、あるいは二百八十本だと、こういう場合でも、いわゆる三百五十本マイナス三百本とすると五十本分ですね、五十本分は全部強制的に買い上げさせられるんですね、このシステムは。だからあるおばさんが私に言うことは、私は三百本です、割り当ては三百五十本、そして一本七円ですから三百本で一日二千百円だと、二千百円もらうところを、ヤクルト本社に行くと五十本分はおまえ自分で買い取れと。七円を差っ引いた二十三円で五十本を買わされて、それが千百五十円。そうすると、三百本一生懸命配って歩いても、三百五十本という割り当ての重圧によって、手取りはわずか九百五十円だというんですよ、五時間も六時間も歩いて、これはひどいのでやめようと思ったら、これはまた契約金というのを取られているんだね、契約金三万円、やめるんなら契約金を払いませんよと。ヤクルトおばさんは非常に生活困っている人だから、三万円も取られるんじゃ痛ましいと言って、また無理無理働くと。じゃ、少し請負なら請負らしく、ヤクルトからもらったこれを多少プラスアルファの金をつけて売ろうかと、こう思って会社にかけ合うと、一銭たりとも提示価格より上げてはならないと、会社のメンツが下がると、そこは完全に請負じゃないですな、そこは。そういうがんじがらめでヤクルトおばさんが大体千円か二千円程度の日収しか取ることができないような、きわめて巧妙な仕組みでヤクルトおばさんが締めづけられているという実態なんです。これは全国六万います。その点は、これは目黒さん何とか助けてくれと言って、あの手、この手で私に資料いっぱいよこすが、われわれも労働省がやることについては協力いたしますから、やはりヤクルトおばさんの実態、ヤクルト本社のからくりを——からくりとは余り言いたくありませんが、いわゆる第二部上場から第一部上場に上がるための、この前質問したああいう株のからくり、片や株のからくり、片やヤクルトおばさんをこき使うと、両方からしぼって、自分だけがいい子になろうとすると、これはやっぱり私はヤクルトの経営姿勢については疑念を持たざるを得ない。もうかるならもうかってもいいけれども、その分をヤクルトおばさんの方にどんどんくれて、おばさんも喜んで働くと、そういう環境をつくるんならそれなりに私は理屈があると思う、いい悪いは別にして。こっちの株価操作をやって、証券局の方と適当にやっておって、ヤクルトおばさんをぎりぎりしぼると、これはやっぱり私は人間的な経営者ではない、こう思うんですよ。きょうは時間がありませんから、証券会社の方はこの次また大蔵大臣でも来たらやるとして、とりあえずヤクルトおばさんの労働条件雇用関係、そういうものをぜひ労働省の手で徹底解明をしてもらって、やっぱり請負なら請負らしくきちっとする、創意工夫が生かされるようなヤクルトおばさんの行動なら行動をすると、あるいは共同化してもいいわけですからね、五人から十人、完全な請負ならば。そういうことを通じてやっぱり中小企業の働く皆さん行政の一環として努力してほしい。これはやりとりはわかったろうから、大臣ね、こういう惨めなヤクルトおばさんもおるんですから、大臣からもひとつそれは力を入れてやろうというふうに大臣から御見解を聞きたい、こう思うんですが、局長の方はもう何回も聞きましたから、大臣いかがですか。
  47. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 前回、目黒委員からそのようなお話がございまして、私は私なりにヤクルトおばさんにそれぞれの実態についてお伺いをいたしました。  私が伺った方々は、非常に経営状態がよろしいのかどうかわかりませんけれども、これは自分たちが会社との契約においてヤクルトを買って、それを自由価格で売っておる。ヤクルトの本社は、その自由価格について、一応の標準価格というものは指導をされておられるけれども、私どもはそれに従ってやっておりますけれども、しかし、それは決して強制ではありませんというような、非常に判こて押したようなお話でございました。私は目黒先生のところにいろいろな資料をお出しになられた方々は、そういった方々とまた違った意味であるということでございますから、これが全国均一的に同じ状態で、同じ条件で働いておられるというようなことではないような気がいたします。したがいまして、そういった面におきましては、私ども行政当局が言っておりますように、ヤクルトおばさんとヤクルト本社との間に雇用関係があるかないかということになりますと、表面的にはないということの方がいま一般的であるという気がするわけでございます。しかしながら、いま申し上げましたとおり、マネージャーというような立場に立っておられる方々は、これまた若干性格が違いまして、会社の業務をこれでやっておられるわけでございます。こういった方々につきましては、雇用者と被雇用者といたしましても、私は地位は確立をしていかなければならぬのではないかという気がいたしております。現在この問題につきましては、なお私ども行政当局において調査をいたさせておりますから、その調査がきちっとまとまり次第、私がそれを拝見をいたしまして、ヤクルトの当局者との間の話し合いに私も入りまして、私の思っておることを申し上げてみたいと、かように考えております。
  48. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それじゃ雇用関係問題、大臣大臣なりの見解を持っておるようでありますが、その形態のいかんを問わず、ヤクルトおばさんというあの方々が、大変な低賃金と吸い取られる機構の中でもがきながら苦労していると、こういう実態は客観的に私は否めないと思うんですよ。したがって、客観的に苦しんでおるヤクルトおばさんの生活をきちっとするためにも、あるいは希望を持たせるためにも、ぜひ大臣のいまの言葉を通じて、精力的な取り組み方をお願いしたい。私が持っておる資料等について要請があれば幾らでも投書そのものを大臣のところに提出してもいいと、もう何通か来ていますから。そう思っておりますからよろしくお願いします。  時間が参りましたので、それでは証券関係の問題とか、きょう大蔵省も呼んでおるわけでありますが、冷し株の問題、それから株価操作の問題、それからこの前のヤクルトの関連会社の問題などについては、もう今回は時間がありませんから省略しますが、いままでの決算委員会で提起した問題について、なお一層の大蔵省関係努力を基本的に要請をしておきます。後しかるべき機会にもう一回やります。  そして、国鉄関係呼んでいますから、国鉄関係二つ、三つ時間が来ましたからお願いします。  一つは、私が今回勤労の大会、自分の大会だから勝手だと言われればそうでありましょうけれども大臣、ことしの春闘の仲裁裁定に対する政府の決定と、春闘段階における運輸大臣とか、国鉄総裁であるとか、あるいは労働大臣組合幹部の接触、そういう点から考えまして、きわめて政府に対する不信感といいますか、そういうのが非常に大会を通じて濃厚にあらわれました。これは傍聴者、家族を含めて、このことは単に勤労だけでなくて、今月末に国労も開かれますし、あるいは全施労あるいは国鉄関連の他の組合も相次いで大会が開かれると思うのでありますが、この仲裁裁定の問題について、もう過ぎたことはどうにもなりませんけれども、きわめて労働行政上不手際であったという点は、私としてはやっぱり基本的見解を聞いておくことが必要だと思うんですが、労働大臣は、この仲裁裁定についてやむを得なかったと、こう思っているのか。もう少しやっぱりがんばるべきであったと、こう思っているのか。次の第二次臨調の答申にかかわる問題との兼ね合いもありますから、なかなか苦しい立場でしょうけれども、主管大臣労働大臣ですから、主管大臣として仲裁裁定の取り扱いについてひとつ基本的な見解を、やはりこの決算委員会労働大臣として示してもらいたいなと、こう思うので、基本的な考え方で結構ですから、大臣見解を聞きたい、こう思うんです。
  49. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) この仲裁裁定問題は、もう皆様御案内のとおりでございまして、私どもといたしましては閣議決定をいたしまして、国会の御判断をちょうだいをするという手続をとりまして、非常に私自身は残念だと思いますけれども、現在国会の手の中にその審議はお預けになっておると、こういうことでございます。したがいまして、国会の場において御審議をなさっておられる途中でございますから、その途上におきまして私がよけいなことを申し上げるということは穏やかでない、普通ではございませんので、この点は遠慮をさせていただきたいと思います。
  50. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 国会国会と言われますけれども、国会でよろしゅうございますけれども、提案権者はやっぱり政府であり、具体的な提案は労働大臣が担当大臣ですから、主管大臣ですから。しかし、これ以上言ってもなかなかむずかしいでしょう。ただ私は国鉄の例を知っておりますが、三十五万人体制で去年の臨時国会でわれわれも問題点を整理しながら処理した経験がありますが、それはやっぱり一番何といっても自民党を含めて、この問題は労使関係の改善がポイントだということも言われております。それは私も否定いたしません。いいこともあったし、悪いこともあったし、私も大分たたかれるけれども、私も言いたいことはいっぱいある。でも、まあ時効になったから言わぬ。今後が大事ですから。  ただ、仲裁裁定をこのようなかっこうで取り扱いをしたことが、国鉄の労使関係に微妙に私は反映している。たとえば東北、上越新幹線の運転士の一人乗務の問題が延々として今日までかかっておる。あるいは検修合理化の問題が依然として進まない。そういう問題はやっぱり組合側の抵抗ということが出てきているんではなかろうかと、こんなふうに私は私なりに分析をするわけであります。ですから、三十五万人体制のいろんな諸懸案事項の労働団体交渉がスムーズにいっているのかいかないのか。いかないとすればどこにポイントがあるのか。この仲裁裁定を実施すると言って約束した限り、運輸大臣そして主管大臣労働大臣、まあいまも答弁ありましたけれども、こういう問題が今後の三十五万人体制、国鉄再建に及ぼす影響というのは私はきわめて微妙なものがあると、こう理解をしているんです。国鉄側としてこの問題をどう受けとめて、今後どう取り組もうとするのか、基本的な認識だけでも結構ですからこの際、今後の問題もありますから、聞かしてもらいたい、こう思うんです。
  51. 吉井浩

    説明員(吉井浩君) ただいま先生指摘のように、私ども現在もう後のない計画として、経営改善計画の推進に取り組んでおるわけでございます。また五十五年度につきましては、大臣の御認可に先立つ年度でございましたが、予定どおり一万一千人の実質減ということを達成いたしまして、予算定員も一万一千削減ということをいたしたわけでございます。引き続き今年度におきまして、もろもろの交渉事案に取り組んでおるわけでございますが、ただいま先生指摘のように、すべてまことに速やかに、あらゆる事案が解決するということにはなっておりません。これはただ事柄自体は、御案内のように、乗務員の乗り組み数の問題でございますとか、そういった事案団体の困難性に基づく結果といたしまして、やはり十分にお互いに議論を尽くして、納得の上で事柄を処理してまいりたいということで、かなりの時日を費やしたわけでございますが、おかげさまで、東北、上越新幹線の乗り組み問題につきましても、一応の整理ができたわけでございます。残りの問題につきましても、目下鋭意交渉を重ねておるわけでございます。  この問題と、現在の仲裁裁定がどのように絡んでくるか、こういう先生の御指摘でありますが、確かに率直に申し上げまして、私ども組合のみならず、いろいろな現場を回りまして、今年度の仲裁裁定の帰趨につきまして、職員の中の不安がないと申し上げては、これはうそになります。かなりの関心を皆持っておりますが、私どもといたしましては、御案内のように、仲裁裁定一たん出ました以上、労使としてはこれに拘束をされるわけでございます。また、昨年来のお互いの合理化をめぐります労使関係、さらに今後お互いに協力をしながら三十五万体制を達成していかなければならぬ、こういう前提の上で、この仲裁裁定が例年のようなつつがない結末を見ることを衷心より期待もいたしておりますし、またそのように関係方面にもお願いをいたしておるわけでございますが、ただこの問題が現在のような状況であるから、したがって合理化が進まないということでは、これまた私どもの経営改善計画に対する労使の取り組みの姿勢としては問題があろうということでございますので、仲裁裁定につきましてはその関係方面の御努力をお願いいたすという方向で、私どもも誠意を尽くしてまいりたいと思いますし、また、合理化は合理化問題としてこれと並行して進めたい、このように考えておるわけであります。
  52. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それくらいが精いっぱいの答弁でしょう。  それからもう一つ、われわれ地方で困るのは、三十五万人体制と直接は影響がないと思うのでありますが、間接にはあると思うのでありますが、上越新幹線の開通問題がある。私はこの前、決賞委員会の段階でも鉄建公団に私の疑念、トンネル問題について本当に大丈夫かと再三念を押したら、まあ御信用してください、来春は間違いありません、こういう御答弁を得て心強く思っておったんですが、最近また、この前仙台へ行って、あちこち、あるいは盛岡へ行って聞いたら、どうもやっぱり国鉄関係の相当熟練しておる土木技術屋さん、トンネル専門の技術屋さん、そういう方の、名前は言いません、そういう方の上越新幹線のトンネルの健康診断によると、ちょっと頭を三回ぐらいかし曲げなければならぬ状態だと、場合によっては迂回線もとらざるを得ない。迂回線をとってしまうと一体いつまでかかるのか、そうなると一体東北新幹線は無理心中するのか、東北新幹線だけが先行して上越新幹線はトンネルを待つのか、どっちなんだ、AだBだCだという組み合わせがかんかんがくがくちまたに流れているわけで、そのしわが全部これは現地労働者にかかっているんです。そして、マスコミはいわゆる東北新幹線の一人乗務の問題に組合が理解を示さないから東北、上越新幹線の開通が延びるんだといって労働者側にマスコミが集中的に攻撃してくる、こんなへんてこなからくりになっているんですよ。ですから、私は、この際国鉄側の東北新幹線と鉄建公団側の上越新幹線、これについて的確な私はやっぱり開通の見通し、それとそれに対する組合側に対する提案、これを正しくマスコミに載せてもらわないとかえって混乱をする。ですから、私は、やっぱりこの問題について鉄建公団と国鉄側に新幹線の開通の見通し、それをきちっと言ってもらって、三十五万人体制に絡む労使関係の不要な紛争を発生させないように心から願う意味において、この見解を鉄建公団と国鉄側にお伺いしておきます。
  53. 半谷哲夫

    説明員(半谷哲夫君) いまお尋ねのございました東北、上越新幹線の開業の見通してございますが、実は昨年の十二月にこの両新幹線の開業見込みといたしまして、五十七年春ということを発表したわけでございます。実はその時点で、五十七年春というやや幅を持ったお話を申し上げたということは、東北新幹線について言いますと、大宮の北にまだ取得できない土地を残しておりました。しかし、その土地につきましては現時点までにほぼこの買収が終わったと申し上げていいと思います。ただ現在では埋蔵文化財の発掘調査を多少残しておりますけれども、今後の見通しといたしまして、大幅に工事がおくれるというような原因はまずなくなったと見ていいかと存じます。  それから、いまの上越新幹線でございますけれども、これにつきましては、公団の方でいま施工中でありますけれども、中山トンネルの見通しもいろいろいま伺っているところでありますけれども、一番難所であります軟弱地盤の掘削に現在がかって、ある程度これが進んでいるというふうに聞いております。その結果につきましては近々公団側から、その完成見通しについて私どもの方に状況のお知らせがあるということでございます。したがいまして、私どもといたしまして開業の時期、方法でありますけれども、これはあくまでも両新幹線を同時に早く開業するというのが、私どももいままでそう考えてまいりましたし、地元でもそう期待を持っておられると思います。なるべく早く両新幹線を同時に開業するというのが私どもの念願でありますが、今後この工程の見通しを聞きまして、両新幹線の工程をすり合わした上で、開業の諸準備についての打ち合わせを済ませて、この見込みを皆さん方に発表したいというふうに考えております。その時期につきましては、もう来年のことでありますから、なるべく早くこれを実施いたしたいというふうに考えている次第であります。
  54. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) お答えいたします。  中山トンネルの工事の進捗状況でございますが、トンネル全長約十五キロございますけれども、今日現在、坑口から約五キロのところに百六十メートル区間、それから、それともう少し奥へ一キロ半ばかり行きましたところで八十メートル、合計二カ所で二百四十メートルというところがまだ本坑が掘れておりません。未開通でございます。その前後のところはそこまで寄せてきたわけでございます。二百四十メートルというところにしぼられてきたわけです。この区間は非常に高い水圧の大量の地下水を含んでおります未固結の火山灰の層でございまして、地上とトンネルの坑内と両方から薬液注入を行いまして、地山を固結させた後、これを掘っておるところでございます。いま、その注入をいたしましたところを掘り始めたところでございます。何分にも合わせてあと二百四十メートルというわずかな区間でございますけれども、いま申し上げたように固める効果がどの程度かということが死命を制するわけで、いまのところ、掘り始めた段階で全工程を確実に見通せるところまでは来てないのでございますけれども、かなりいいところまで固まっているなという部分的な感触は得ておるところでございます。  したがいまして、今後も最大努力をいたしまして工事をやるわけでございますが、間に合うか、あるいは多少おくれが出るかという微妙な段階でございまして、半谷常務から御答弁申し上げましたように、時期も来ておりますので、今後至急その見通しを固めていきたいというところでございます。先生のお話の中に、迂回線とかというようなお話がございましたが、そういうふうな基本的な難航とは今日現在違いまして、そんなに一年とか二年とかいう大幅におくれるということではないわけでございまして、微妙なところの見通しをいまつけよう、早急につけようということでございます。
  55. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 質問やめますが、そういうことが言いわけにならないように、われわれも技術屋の端くれですから、それなりに情報は収集しているわけですが、そういう最悪の事態にならないように最善の努力をしてもらう。そして、次の決算で運輸のなにがありますから、改めてもっと具体的に質問したい。きょうはこれで終わります。
  56. 穐山篤

    ○穐山篤君 最初に、先ほど委員長からもお話がありましたが、労働省決算内容は省略なさいました。しかし、不当事項が五十三年度も三つ指摘されておりますね。これは言うところの保険勘定になるわけですが、私は五十一年と五十二年度の労働省決算に当たりまして、相当きめ細かくこの問題を取り上げまして、労働省側の善処を要望をしたわけです。相当システムとしても改善がされたことも承知をしております。それから、現場の出先の方々努力もよく承知をしております。  しかしながら、毎回、毎年度この三つのことにつきましては、重ねて指摘をされているわけです。  そこで、なぜこういう問題が毎年毎年起きるのかという原因ですね、これはまあもう一度明らかにしてもらいたいことと、それから、各種給付金につきましては、この前の法律改正でかなり整理整とんされました。これからは少しは変わるものと思いますけれども、それも踏まえて、できる限りこういう不当事項が指摘をされないようにするためにはどういう方法があるのか、あるいはまた、がんになっている問題点は何かというふうなところを明確にしていただきまして、できるだけ今後この種のことがないようにしたい、ないようにまた努力をお願いをしたいと思いますんで、冒頭この検査報告の三つにつきましてお伺いをしておきたいと思います。    〔委員長退席、理事佐藤三吾君着席〕
  57. 関英夫

    説明員(関英夫君) 五十三年度の指摘といたしまして、雇用保険の失業給付が不適正であったということが前年度、あるいは前々年度に引き続き指摘されておることはまことに遺憾でございます。  その原因ということでございますが、このほとんどが就職したことを秘匿いたしまして、不正に受給をするということでございます。中には非常に悪質な擬装的なものもございますけれども、ほとんどが就職した日にちを秘匿して、そのことにより不正に受給をするといった事例でございます。私ども事業主あるいは受給者に対しまして、そういった届け出、これを正確に行うように、常に指導いたしておるところでございますし、また、先生指摘のように、これを電算機で資格取得と受給との関係を照合するといったことにも努めまして、そういうことによって、防止を図るというようなことにも相努めておるわけでございまして、少しずつではございますが金額が下がってきているというようなところに、私ども努力が多少でも実りつつあるのではないかと思いますが、依然として後を絶たず、重ねて御指摘を受けている、大変遺憾に存じておるところでございます、  今後におきましても、受給者、あるいはそういった方を雇用する事業主、そういった方々に対しまして、この給付の趣旨を十分周知徹底いたしまして、正確な届け出、こういうものを励行していただく、こういうことを十分に周知徹底を図りまして、こういった御指摘を重ねて受けることのないように努めていきたいと思っております。  それからまた、雇用調整給付金の問題でございますが、これは多くは休日の取り扱い等、そういった点で適正でないといったことで御指摘を受けておるわけでございます。  経済情勢によりまして、不況業種も次々と変わってまいります。そういうことで、この雇用調整給付金を利用して失業になることを防いで、休業で対処していこうと、それを助成するわけでございますし、そのこと自体は事業主の方に大いに活用していただくことがこの目的に沿うわけでございますが、新しくこういう状況に立ち至った業種、あるいは事業主におきましては、必ずしもその取り扱いが適正でないものがある、これは私ども指導もまだ不十分な面もございます。そういう意味で、この周知徹底、指導、そういったことに今後とも十分意を尽くしまして、この制度が適正に活用されて、失業の予防に役立つように努めていきたいと考えておるところでございます。
  58. 穐山篤

    ○穐山篤君 最近、景気の影響をいろいろな角度から受けて失業者も多いわけです。したがって、この制度の適用者も一時的にはふえるという感じだと思うんですね。  そこで、いまお話がありますように、当該の事業主に対して、十分啓蒙を図るということは当然だろうと思うんです。それから、まあ調べてみるとよくわかるわけですが、労使の間で故意に協定をしてごまかしているのも幾つか見受けられるわけです。  それから、私は少し気になりますのは、いろんな努力でできるだけ少なくしていくという努力はわかりますが、この現場の要員の問題にかなりその原因があるというふうにも幾つかの場所を歩いて、自分もそう思いましたし、出先の皆さんからもそういう主張があるわけですが、この要員の問題というのは、どういう角度からこれから措置をしていくのか、あるいはまあ手段なり、あるいは手続、その他方法を変えることによって、人間の問題をカバーされていくのか、その点はどんなもんでしょう。
  59. 関英夫

    説明員(関英夫君) 先ほど先生指摘ございましたように、この各種給付金につきまして、いろいろとこの委員会でも御指摘をいただきまして、そういったことを踏まえまして、さきの国会におきまして法律改正もお願いいたしまして、この各種給付金について大幅な整理統合、それから、いろんな支給要件の合理化を図ったところでございます。それ以前はこの支給要件も非常に複雑で多岐にわたりまして、細々しておったもんですから、その要件に該当しているか否かを調査する、第一線におきましての調査に当たりまして、非常に手間暇がかかる。そのためにそればかり朝から晩までかかりっ切りの職員が何人かいるというような状態もあったことは事実でございます。そういったことを踏まえまして、今度の改正におきまして十分合理化をいたしたつもりでございます。そういう意味で、従来よりはそういったものの審査に余り多くの人手を要せずに、適正な審査ができるようになってきた。ただその効果はことしの六月以降あらわれてくるものでございますので、まだ現実にどの程度効果があったとここではっきり申し上げるわけにはいきませんけれども、抽象的なお答えで恐縮でございますが、相当効果がこれから出てくるのではないかというふうに期待しておるところでございます。  また、その前に御指摘ありましたが、最近の経済情勢によりまして、不況業種の指定も非常に弾力的に行っておりますのでふえてまいりました。紙パルプのように全国的に相当数の休業を実施するところもございますが、一部新聞報道で、夏休みをこれに当てるようなものも散見するわけでございますので、すぐ業界を呼びまして、従来から行っている夏休み、それをこれに振りかえるということになると、これは問題がある、十分そういう点を注意するように、本省段階で直接的に指導いたしますとともに、全県にそういった点の審査に遺漏なきを期するように連絡もいたしております。ここしばらくの間、最近の経済情勢に応じまして、相当数の支給が行われていると思いますが、より一層適正な処理に意を尽くしてまいりたいと考えているところでございます。
  60. 穐山篤

    ○穐山篤君 本問題はぜひ御努力をいただきたいと思うんです。  さて、その次に御案内のとおり、今月の十日に第二臨調の答申がありました。細かいことはこれからの作業に移ることでしょうが、一応認識を統一をしておきたいという意味でお伺いしますが、労働省にかかわります一まあ労働省にかかわりますというか、公務一般としてかかわります第二臨調について、共通事項がほとんどだろうと思いますが、労働省側の担当部分について、どういう項目があるのか。それから、どういう考え方でこれに対処をしたいのか。それから、この答申には入っていないけれども労働行政の効率化という見地から、将来に向かって何らか新しい行政改革をお考えになっているのか。いるとすればどういうものがあるのか。その点を冒頭お伺いしておきたいと思うんです。
  61. 松井達郎

    説明員(松井達郎君) 七月十日に、先生いまおっしゃいましたように、第二次臨調の答申が出たわけでございます。中身につきましては、各省庁の共通の指摘事項ということで、いま先生が御指摘になりましたように労働省にも関係があります事項と、それから労働省の固有の事項と二点に大別して申し上げることにいたしたいと存じます。  共通の事項につきましては、「緊急に取り組むべき改革方策」というのが第二項目としてございまして、この中には幾つか関係する事項がございます。最初に、一般行政経費、これにつきまして前年度と同額以下に抑制するという点は、これはもちろん労働省としてもかぶってまいるわけでございます。それから補助金等の整理合理化、これにつきましてもかぶってまいるわけでございます。さらに、その後にまいりますと、利子補給の問題がございますが、これにつきましても、事業団について、たとえば財形融資とか、あるいは安全衛生関係の融資とか、こういうものがございますので、これについては対象になってまいるというふうに存じます。それからさらに、国の行政部門の合理化、効率化ということで、定員等の合理化問題が取り上げられてございますが、これはもちろん労働省の定員ということで、問題は関連してまいるわけでございます。    〔理事佐藤三吾君退席、委員長着席〕 それからさらに、特殊法人のところにまいりますと、特殊法人の役職員の定数等の合理化問題が取り上げられてございますが、これは労働省関係の政府関係特殊法人ということで関連してまいるわけでございます。それから、その次に、国の施策に関連する地方公務員の増員抑制等、各種の合理化施策が触れられてございますが、ここにつきましては、たとえば職業訓練校の訓練指導員、これなどは補助金で出ておりますので、やはり関連してくるというふうに私どもといたしましては理解しておるわけでございます。一般的と申しますか、共通的と申しますか、大体主なところはこういうところではなかろうかというふうに思います。  そのほかに労働省に対しまして具体的に、あるいは個別的に関連いたします事項といたしましては、これは「国民生活と行政」という部門がございますが、ここで年金とか、恩給について触れているところがございますが、この中で公的保険に対する事務費の国庫負担について、「各種公的年金に対する事務費国庫負担の保険料財源への切換えを図る。」とされていると同様の観点から、公的保険についても逐次改善を図ると。この関連では、労働省としましては雇用保険の事務費の国庫負担分が対象となってまいるのではないかというふうに思います。それから、最後のところで「許認可等の整理合理化方策」という点がございますが、ここで労働安全衛生規制と消防規制で重複するものについて、その整理合理化を図るという点が触れられてございますので、この二点が労働省としては個別的に該当する項目ではなかろうかというふうに存じます。  そこで、これにつきましてどんなふうに考えるかという点でございますが、もちろん先般の閣議におきまして、「最大限に尊重し、速やかに所要の施策を実施に移す」という決定がなされたわけでございまして、それで労働省関係で個別的、具体的に指摘された事項、先ほど申しました二点につきましては、今後この答申の趣旨に沿って、どのような方向で具体化していくかという点については、これからその取り扱い策も決まって、詳細を詰めていくというような点もございますと思いますが、この答申の趣旨に沿いまして、私どもとしましてもその具体策を検討を進めてまいりたいというふうに思います。  それから、各省の共通の事項、たとえば先ほど申しました定員問題とか、あるいは補助金の整理合理化問題とか、各般の事項がございます。これらにつきましては、さらに今後政府部内におきまして、その具体化のための取り扱い方針が詰められていくと思いますが、私どもとしましては、労働行政実態等を反映しましたことになりますよう意見を申し上げ、そしてまたその具体策の策定、それからさらに細目の詰めという点につきましては、いま申し上げましたような観点で対処いたしてまいりたいというふうに存じます。
  62. 穐山篤

    ○穐山篤君 各省庁共通して、具体的には次の臨時国会なり、あるいは通常国会に、必要なものは法案として出るんでしょうが、ここで労働省考え方をお伺いするという意味で、一、二の例で明らかにしてもらいたいと思うんですが、たとえば労働基準監督署が、あるいは基準局でもそうですが、事業場の調査なり、あるいは労働安全衛生などの教育、あるいは災害が生じた場合に現地の調査、まあいろいろの業務があるわけですね。その場合に、わりあいに労働行政というのは人を食う業務というのが多いわけですね。そうなりますと、機械的に五%定員の削減と、欠員の不補充というふうな単純な話でいけるかどうかということは、われわれ労働問題を扱った一員としましては、危惧をするわけです。そのことによって労働者の健康なり、安全なり、何なりというものが損なわれるようなことになっては困る。  あるいは、皆さん方がよく事業場指導というものを行うわけですが、これの回数も、たとえば七年に一遍しか事業場を回っていない。ある特定な地域では、十年に一遍しか事業場を見ていないという実績が現にあるわけですね。そういうことを踏まえますと、単純にこの定員削減というものを見るかどうか、  もしこれが、特に要員の場合に、削減というのは頭を切ることは不可能ですね。何とかの所長を切るとか、何とかの基準局長の定数、定員を減らすということはなかなかむずかしい。そうなりますと、勢い第一線の現場の職員、従業員に全部しわ寄せが行きますから、結果的に七%とかあるいは一〇%の定員の削減、実員の削減ということになるわけでして、そういうことを考えてみた場合に、果たして労働省としてはこの答申を受けて立つ自信があるかどうかという問題について、今日的な段階で結構ですが、考え方をお伺いしておきたいと思う。
  63. 松井達郎

    説明員(松井達郎君) 先生のおっしゃいましたように、労働省行政というのは、人を対象にしている行政という色彩が非常にはっきりいたしております。いま御指摘のように、基準局の仕事にいたしましても、これはたくさんの中小零細企業監督指導というのが重要な任務になっております。また安定所を見ましても、最近は身障の方とか、あるいは中高年の方とか、いわばマン・ツー・マンで職業紹介に当たるとか、あるいは適職を見つけて差し上げるとか、こういうような面が非常に多いわけでございます。この点は私ども行政の大きな特色であろうかと思います。ただ、それにしましても、やはり人の問題を考える前に、どうして労働行政全体の効率化を考えていくか、先ほど給付金の統合の問題でも安定局長が触れましたように、その点は考えなきゃならぬ点だと思いますし、また行政を進めるに当たって、いかにして重点的にやっていくかということも考えなきゃならぬと思いますし、また職員の資質を向上するという点も大事なポイントではなかろうかと思います。これらのことを考えた上で、さらに先生の御指摘のように、定員の問題がまいるわけでございます。そこで私どもとしましては、いま申し上げましたような労働行政の特色というのを、実際にこの臨調の答申に基づきまして、定員の削減計画が今後出てくるんじゃなかろうかと思いますが、その作成に当たっては、関係の当局に主張すべきことはぜひ申し上げて反映していく、それからまたさらに伸びていく行政については、増員の問題というのが片方で出てくるわけでございますから、そういうことは申し上げるということで、この第一次答申に基づきます定員問題に関する方針、これは政府として最大限に尊重するという方針を決めたわけでございますから、その中でこの労働行政の特色をどうして生かしていくかということを、今後関係者とともによく検討しながら、その意見を計画の策定に当たって反映して、具体的なものをつくり上げていくということで努力いたしてまいりたいと思います。
  64. 穐山篤

    ○穐山篤君 労働大臣一つお伺いをしますが、それは労働問題担当という意味でお伺いするわけですが、第二臨調の中で国家公務員の給与等の合理化という話があるわけです。一般的に人件費をできる限り節約をする、冗費を省いていくというふうな一般論は私もよくわかりますが、今年度の国家公務員の賃金の問題について臨調は触れておりますね。公務員の給与のあり方については、「労働基本権の制約、社会経済情勢、財政事情、国民世論の動向等が十分考慮されるべきものと考える。差し当たり、本年度の給与改定については、以上の点を踏まえ、適切な抑制措置を講ずる。」国家公務員の賃金というのは、人事院で勧告がされる制度になっているわけですから、直接労働大臣担当ではないわけですけれども、少なくとも公務員の賃金というのは、この八一年春闘で、主として民間の賃金が妥結した状況も踏まえる、それから物価の状況も検討するというふうなことが人事院規則に書かれているわけですが、まだ上げるとも下げるとも言っていない段階で、適切な抑制措置を講ずるというふうな答申というのは、私は適切じゃないと思います。これは勇み足ではないかと思うんですが、たとえば公務員の賃金なり、あるいは地方公務員の賃金が、民間の賃金に比べて何十%も高く勧告される可能性が強い、そういう情勢だから抑制をするというなら、これはよくわかるわけですが、目下人事院がきちっと調査中にもかかわらず、こういう臨調の答申が出るというのは不愉快でしょうがないんです。大臣労働問題をあずかる責任者としていかがでしょうか。この点についての基本的な考え方をお伺いしておきたいと思います。
  65. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 御案内のとおり臨調という制度は、これは臨時に調査をやっておられる方々が、その調査に基づいて意見を述べられるわけでございますから、それは御自由でございまして、私がそういった臨調の方々の御答申について、それがいいとか、それが悪いとか言う立場じゃございませんし、御自由であろうと、かように思います。しかしながら、その答申を受けました政府がどのような決定をするかということは、これはまた別問題でございまして、私どもは臨調というものをお願いをしてつくっているわけでございますから、さきに閣議で決定をいたしましたようにその御苦心の御答申といいまするものを最大限尊重をする、これは私はあたりまえだろうと思いますね。でございますから、それはそのようにいたしましても、実際にこれをどのように実施に移していくかということになりますと、実施に移していくためには、政府自体がこれは責任を持つわけでございまして、私どもは決して臨調のもとに閣議やっているわけじゃありませんから、臨調の言うことは臨調のおっしゃられること、私どもの決定をすることは内閣として決定をすること、そこのところはきちっと私どもといたしまして、事柄を踏まえて一つ一つ精査をいたしました上、対処をしてまいらなければならぬ、さように思います。
  66. 穐山篤

    ○穐山篤君 閣議は最大限臨調答申を尊重するということになっておりますが、政府としては十分検討して独自の判断を下す、自主的に責任ある判断を下すと、こういうことになるわけですね。  次に、雇用促進事業団の建設をしております住宅問題についてお伺いをいたしますが、これは御承知のとおり移転就職者という者の住宅を確保するというところから出発をしているわけですが、昭和四十八年ごろからは、職業安定所長の認定があれば特別の者でも入居できるという資格の範囲といいますか、拡大が行われたわけであります。そういうことについては十分承知をしておりますが、事情を明らかにするという意味で、いわゆる現在までに建設をされました雇用促進事業団の住宅の居住者の中で、当初目的の移転、離職という意味で入られている方、それからそうでない職業安定所が認定をした勤労者で入られている方の割合、大体どのくらいか。  それから、これは本来ある事業者がみずからの社宅を建設をして、それが建設ができるまで暫定的に一年、延びても二年、それ以上の場合、特例があったにしましても、ごく短い期間というふうにわれわれは承知をしているわけですが、仄聞するところによりますと、一生の居住地にしている人も中にある、こういうことをしばしば聞くわけですが、そういう状況について、まず現状の認識を明らかにしてもらいたいと思います。
  67. 中村正

    説明員(中村正君) ただいま先生から御指摘のございましたように、三十五年度から雇用促進住宅の建設が進んでおりますが、現在十二万五百二十九戸という数を数えております。そのうち現在運営を実際に行っておりますのが十一万四千二百九戸ということでございまして、その中に居住する方々につきましては、条件先生の御指摘のとおり四十八年で緩和されまして、従前の移転就職者以外でありましても、住宅困窮者であり、職業の安定の観点から居住させることが適当であるという者については入居させていると、こういう状態でございます。現在その入居戸数が十万二千六十四戸になっておりますけれども、そのうち移転就職者以外といいますか、旧概念でない方々がお住まいになっているのは六三・七%に達しております。  それから、居住期間の問題でございますけれども、確かに一部には長く住んでおられる方もいらっしゃいますが、おおむねは二年ないし三年の居住期間を持っておられる方が多うございまして、その意味では確かに一部には長くいらっしゃる方もいらっしゃいますけれども、当初の目的に従ったような形で、回転が居住者の中で進んでおると、こういう実情でございます。
  68. 穐山篤

    ○穐山篤君 その空き家をつくっておくということは、臨機応変に対応しなければなりませんからよくわかるんですが、それは標準的には従来五%というふうに聞いていたわけです。空き家の状況を数字で見ますと、少なくとも五%以下というのは、たとえば東京、神奈川、それから愛知、それから高知、長崎、沖縄と、そのぐらいのものでありまして、極端なところへいきますと、青森の一二%、岩手一三、宮域一九%、茨城二一%、新潟二一%、さらには山口で一五%、愛媛二三%、大分が二三で、宮崎になりますと三二%というふうに、相当空き家があるわけですね。これは移転の激しいことはよくわかりますし、それから古い住宅にはなかなか入ったがらないということもよくわかるわけですが、皆さん方が検討されておりましたその五%標準というのが、これほどばらつきがあったり、また宮崎のように三分の一もあいているというのは、いかにせん国費のむだではないか、どこかに考え方の、あるいは運営上の欠陥があるんじゃないかというふうに指摘をせざるを得ないと思うんですね。その点はどうなんでしょうか。
  69. 関英夫

    説明員(関英夫君) 全体的には一〇%程度でございますが、先生指摘のように、地域によっては非常に空き家が多いという事実がございます。設置するに当たりましては、その地域におきます企業立地の状況、そういったような数字を地元からとりまして、移転就職者が見込まれるということで設置決定をして建設をいたすわけでございますが、その後の経済情勢の変化、そういったことに伴います企業立地のおくれ、あるいは先生指摘のように、昔は非常に活用されたわけでございますが、非常に古くなって、最近は当初つくっておりましたような狭い住宅には入る方がおられないというようなところも出てまいってきておる、そういったいろんな原因から、空き家が出てきていることがございます。決算委員会でこういった点を御指摘いただくことは大変遺憾でございますが、一つには、従来古くなってきたものをできる限り手直しいたしまして、一部屋ではどうにもなりませんので、二戸分を二月に手直しするとかというような形で、余りにも狭いものは直していく、ただ、その場合にも現に居住者がおりますと、なかなか手がつけにくいわけでございますが、そういった努力を続けていく。あるいはまた、工場立地等が予定どおりいかない場合には、先ほどの移転就職者以外に住宅に困るがゆえに職業の安定が図られないような困窮の勤労者に対して貸与していく、そういった方途を活用いたしまして、有効利用に努めていかなければならないと思っておるところでございます。
  70. 穐山篤

    ○穐山篤君 先ほど数字が出ましたように、移転就職者以外の勤労者が六三・七%、ですから、当初の法律の趣旨であります移転、広域配転者といいますか、就職者、そういう者は三〇%程度ですね、かなり性格がもう変わってきていると思うんです。それと同時に、私これを調べていきまして、問題だなと思いましたのは、事業主に対して、社宅を建設をするようにと、そのために必要な融資というものはこういう制度がありますよと、あるいは、土地についてもこういう公的な土地を活用したならばどうかという、ある程度の補強の話がないと、一たんもうこの雇用促進住宅に入ってしまうと、それに根が生えて、事業主の方では何にもしないというところが非常に多いんですね。これは法の趣旨から考えてみて適法ではないと思うんですよ。そういう点については、いままで労働省としてはどういうふうな努力を重ねられてきたのか、その点をひとつ明らかにしてもらいたいと思うんです。
  71. 関英夫

    説明員(関英夫君) 第一義的には、先生指摘のとおりに、事業主に対しますいろんな助成制度を活用していただいて、そして、そういった社宅等に転居していただく、それからそれが困難な場合にも、公営住宅といったようなところへの転居、そういったことをお勧めする、あるいは自力による持ち家、そういったものをお勧めするようなことで、いろいろ努めておるところでございますが、入居者の企業規模別を見ますと、やっぱり圧倒的に三十人未満の小規模のところに勤めておられる方が多いわけでございます。そういう意味でいろんな努力はいたしておりますが、なかなかそういった努力が実を結びませんで、中には先ほど来御指摘のように、相当年数ずっと住んでいらっしゃる方もおるわけでございます。今後とも事業主への働きかけはもちろんのこと、公営住宅あるいは自力による持ち家政策の活用、そういったようなことをきめ細かく指導していくということに努力していきたいと考えておるところでございます。
  72. 穐山篤

    ○穐山篤君 現実に一万戸以上の空き家があるわけですね。にもかかわらず、今年度計画では三千戸の建設の予定になっている、これはどう考えても余りいい措置だというふうには考えるわけにいかないと思うんですね。  それから、いまお話がありましたけれども、移転労働者ではない一般の労働者が六三・七%も入っているわけですが、この入居につきましても多分所得の制限、あるいは入居の制限、基準というふうなものが全然明示をされていないわけです。そうしますと、これは国全体の住宅の建設の政策だとか、あるいは財形による住宅の政策の問題だとかというふうな絵合的な問題に、政策的にはまとめざるを得なくなっているんじゃないかというふうに思うわけですが、その点はどうなんでしょう。
  73. 関英夫

    説明員(関英夫君) 移転就職者以外の住宅に困窮している労働者に貸与する場合の月収基準というものを特に設けてはおりませんが、入居者の月収調べによりますと、非常に多いところが十二万五千から十五万の段階、この辺で約三割を占めております。そういうような状況でございまして、非常に所得の高い方が入っているという状態にはなってないんじゃないかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、空き家が現にある地域がございます。ある程度の空き家は全国的に確保しておきませんといかぬわけでございますが、現在の状態はやや空き家が多いわけでございますので、そのあいているところにつきまして、本当に庁宅に困窮している労働者に活用していただくというようなことをさらに進めていかなきゃならぬかと思っております。  建設計画につきましては、従来五千戸ずつ建ててきたわけでございますが、これは国の建設五ヵ年計画の中で位置づけられてやってきたわけでございますが、今度の、本年度から始まります計画におきましては、最近におきましては労働者の移転就職といったことが、前よりは少なくなってきている、地元志向、あるいは中高年齢者になりますと移転するということが非常に困難でございます。そういう意味で従前よりは移転、就職というものが減ってくるであろう、こういうことも考えまして、五千戸を三千戸ということで、今後の五カ年間の住宅計画の中に組み込まれておるところでございまして、そういった計画に即して、今後とも進めていかなければならないと思っておりますが、この設置決定に当たりましては、移転、就職、工業立地の状況等を十分見まして建設すると同時に、当初目的だけでなく、住宅に困窮している、そのために職業が不安定になる、そういった者に対する住宅、いわば雇用の安定のための雇用促進住宅であるということも十分考えまして、そういった方の利用、こういう点にも十分配意をして、設置決定を進めていきたいと思っているところでございます。
  74. 穐山篤

    ○穐山篤君 地方公共団体が公営住宅を建設する場合には、同からの補助が二分の一、それから、沖縄の場合には三分の一あるわけですね。そうしますと、地方自治体の気持ちから言うと、雇用促進の住宅建設というのは非常に歓迎されるんですよね。国のお金でどんどん家が建っていく、それで一般の勤労者、あるいは低所得の人たちがそこに住んでくれるという意味でいうと、非常に歓迎される、その意味はよくわかりますけれどもね、空き家がこれだけありながら、そして三分の二程度の人はもう一般の勤労者ですよ。そうなりますと、私きょう建設大臣はお呼びはしておりませんでしたけれども、全体の住宅問題、政策にかかわるというふうな感じがするわけです。これからの労働行政の中でいろいろ考えてみますと、失業者の予防とか、救済という問題もあるんでしょうが、これから中高年齢層の就職の機会を与える、あるいは職業訓練ということも出てくる、場合によりましたならば、そういう中高年層の移転の住宅というものもこれ想定されるわけですね。ですから、きょうじゅうに議論は済むわけではありませんが、いままでやってまいりました住宅政策というものを少し見直しをして、いま私がたまたま中高年層の職業訓練なり、あるいは労働対策ということを申し上げましたけれども、金の使い方というものをもう少し変えていく必要があるんだろうというふうに考えますけれども、その点いかがでしょう。
  75. 関英夫

    説明員(関英夫君) 先ほど申し上げましたように、第四次になりますか、住宅計画の中で、この雇用促進住宅が毎年三千戸ということで組み込まれて、全体で国の計画になっておる面はございますが、その中で、ただいま先生指摘ございましたように、最近の核家族化等のいろんな情勢に応じて、労働青の住宅に対する欲求といいますか、そういうものもずいぶん変わってまいります。移転就職者は全体的にはだんだんと少なくなってまいりますけれども労働者の住宅に対する要望というものはますます強いものもございますので、ただいま先生の御指摘になりましたような、定年退職後の中高年齢者のなお労働者として働かなければならない人たちの住宅の問題、いろんな問題を十分これから検討いたしまして、設置に当たって、その当初目的ばかりでなく、これから変化するであろう労働者の住宅に対する欲求に十分即応するような建設というようなことに検討、注意を払っていくようにしてまいりたいと考えているところでございます。
  76. 穐山篤

    ○穐山篤君 労働大臣、まとめとして意見をお伺いするわけですが、いま短い時間でありましたが、御案内のとおり、現状おわかりになったと思うんです。  それで、雇用保険の勘定から建っている延物ですから、他からくちばしを入れる筋合いのものではありませんけれども、この雇用促進住宅の居住、それから建設の問題というのは、この際政策的に変えなければやっていけないというふうに私は感ずるわけです。  それと同時に、五年以上、あるいは十年以上という居住者が何十%かいるわけですが、その現に居住している人を追い出せというつもりはないんです。もっともっと国の住宅政策というものを充実してもらう、あるいはこの場面で言うならば、事業主が積極的に勤労者、従業員の住宅を建設ができるように促進をして移ってもらう、そして回転をよくしていくということが、この住宅の性格であるわけですから、この際もう思い切って再検討していただいたならばどうかというふうに思いますが、最後に労働大臣見解をお伺いしておきます、
  77. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 本来、住宅政策といいますものは、これは建設省の御当局が責任を持っておやりになっておられるわけでございます、そのうちの一環といたしまして、金の出どころをたまたま雇用促進事業団というもので、雇用者等々の御協力を得て、特殊な方々に対しまして住宅を提供をするという仕事をその住宅政策の一環としてやらしていただいておる、それが今日の姿であろうと思いますけれども、仰せのとおり、一万戸も空き家ができて、そうして、しかも一回お入りになられた方々がみんなこれ一般的になってしまって、腰を落ちつけてしまわれるということになりますと、これは雇用促進住宅といいまするものの本旨と若干違ってくるような色彩が非常に強まっておる、御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、この点につきましては、ひとつ建設御当局と十二分に話し合いをさしていただきまして、是正すべきところは是正をしていくということで、再検討をさしていただくことが至当であろうと、かように考えます。
  78. 穐山篤

    ○穐山篤君 じゃ、いまの件はそういうことでお願いします。  それから、もう時間がありませんので最後に、御案内のとおり昭和五十四年十二月二十七日に「自動車運転者の労働時間等の改善基準」というのが出ました。従来この種のものは二・九通達が一つの基準でありましたが、それが二七通達というふうに改正、改善をされました。まあ中身について一々申し上げることはないと思いますが、一定の期間まあ周知徹底をして、それから実施に移ったわけです。私は前からこの車の関係につきましては、非常に興味を持っておったわけですが、最近労働省のこの二七通達の実績の調査というものが発表になりまして、まあ従来かなり違反事項は多いだろうというふうに認識をしておりましたが、全く愕然としてこの資料を見ざるを得ない状況にあるわけです。  時間ありませんからごく簡単で結構でありますが、従来はハイヤー、タクシーというものが中心でありましたが、もう貨物にも適用の範囲が拡大をされる。それから業種別に、砂利であるとか、セメントであるとか、鮮魚であるとか、そういうトラック輸送にも適用がされて、調査をされたわけですが、調査の結果、この表からどういうものを労働省としてはくみ取っておられるのか。  それから、その次に問題は、違反事項が、なべて言いますと八〇%違反しているわけですよ。これは青ナンバー、白ナンバーに限らず共通して言えますことは、違反の事業場の数が、十のうち少なくとも七つから八つ何らかの項目にみんなひっかかっているわけです。それほど高度成長のときを踏まえて、この自動車関係労働条件、あるいは労働時間、労働安全衛生というものが放置をされていた、勝手に競争してやれというふうな形になおざりにされておったことがこういう結果を生んだわけではないだろうかというふうに思いますが、労働省としては今回の調査の結果を見て、どういうふうにおくみ取りになっているか、その点あらかじめお伺いします。
  79. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 「自動車運転者の労働時間等の改善基準」、すなわち御指摘のように五十四年十二月に二・九通達の改定をいたしました。それに伴いまして、労働基準局といたしましては、昨年の十月から十一月にかけまして、全国一斉にトラック関係あるいはハイヤー、タクシー関係の五千二百二十五事業場につきまして、監督を実施をいたしました。その結果はくどくど申し上げませんが、御指摘のように、たとえば何らかの違背が認められた事業場は六一・五%ということでありまして、違反項目といたしましても、日勤勤務最大拘束時間違反が三四・九%という、基本的な時間の違反についてはそういう高い数字にあるということは御指摘のとおりでございます。  そこで、この問題につきましては、改善基準についての遵守を図ることが非常にむずかしい実態にあるということの反映もあると思います。たとえば、中小零細企業が非常に多いという実態、あるいは過当競争の状況にあるということ、またトラックでありますと荷主の発注条件等にかなり支配的に関与されると、あるいは事業場外での労働という性格を基本的に持っておるわけでありますから、言ってみれば、事業場の、事業主のいわゆる管理という面で非常に、実態的な面で非常にむずかしい性質を持っておるといういろんな問題があると思います。したがいまして、この問題に対処するためには、そういう総合的な問題を問題としてはっきり把握をいたしませんと、ただ監督するということだけでは、この問題についての前進はなかなか期しがたい一面を持っているということを考えております。したがいまして、しからば今後どういうことをこういう違反の状況実態背景にしまして、展開をしていくかということでありますが、何といいましても、一つは業界団体等を通じて、業界団体自体がこの改善意識といいますか、これをはっきり持っていくことが必要であろうということが第一であります。したがいまして、業界団体等を集団的に指導する体制をとっていきたいということが一つであります。  それからもう一つは、やはり監督指導につきましての厳正な態度ということであります。これは言うべくして、通常のことではありますけれども、こういう実態に即して、監督指導姿勢を厳正にするということでありまして、現在春と秋との交通安全運動期間に、一斉に監督を実施するという体制をとっておりますが、そういう交通安全期間というものとある程度併合したような形を考えるということも一つ考え方であります。  それから、もう一つ重要なことは、陸運関係のそういう機関との相互通報制度というものを活用してまいりたいということであります。特に相互通報の制度は、陸運局あるいは警察等と現在これまでにそういう体制をとっておりますので、これをより実質的に作動するような形で運営してまいりたい。また、荷主団体等に対する協力要請というようなこと。それからもう一つは、やはり運転者、労働者自体の自己管理といいますか、そういう面についての教育ということも非常に重要だと思います。  総じて言いますと、単に監督し、これを厳正にやるということは基本でありますけれども、先ほど言いましたような違反が非常に多いという、その背後にある問題意識を総合的に理解し、把握し合うという総合対策という点を今後とも進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  80. 穐山篤

    ○穐山篤君 もう時間が来ましたので、細かく見解を聞けないのは残念ですが、たとえば一番基本的な労働時間でいきますと、一般の区域の貨物が五一%、特定貨物が四八・五%も違反をしていますね。それから危険物の輸送ですね、タンクローリーその他いろんなものがあるわけですが、これが三三・三%、言いかえてみますと、三分の一労働時間では違反をしているわけです。かねがね指摘を私もしてまいりました長距離輸送については、何と八割三分が労働時間では二七通達を守っていないわけです。それから、わりあいに組織化がされておりますハイヤー、タクシーについて言ってみても、四二%労働時間が守られていない。それから賃金制度でいきますと、六割以上保証給を保証しなさい、累進歩合は絶対だめだよと、こういうふうに指導されているにもかかわらず、ハイ・タクでもいま一七・五%ぐらい違反をしているわけですね。全く労働省の通達というのは守られていないというよりも無視されているというふうに思うわけです。一方、自動車局長の方から、運転者の健康状態に起因する事故防止というふうなものが出ております。これは事故を起こすなとというような指導だけしてみても、これは始まらないんですよね。これは過労運転のことも起因しておりますし、賃金制度そのものが労働問題になるわけですから。ただ単に事故を起こすなという事故防止だけの通達では私は用をなさないと思う。そこで、労働省も運輸省も十分に協力をしていただいて、二七通達が直ちに一〇〇%実践されるとは思いませんけれども、健康な限り事業者に対し、あるいは従業員に対し、あるいは荷主に対しましても、相当の啓蒙をしていただきませんと、これはうまくないと思うんです。  それから、時間がありませんので、私の主張だけになって恐縮でありますが、覚せい剤と麻薬の検挙数をいろいろ調べてみますと、職業運転者の件数が非常に多いんです。一般的なものもよくありませんけれども、最近特に私は注目しておりますのは、核燃料の輸送だとか、それから低レベルの廃棄物の輸送だとか、それから病院、研究所を含めまして、アイソトープの輸送というのは大都市で非常に行われているわけです。そういう運転者の中に麻薬、あるいは覚せい剤の常時使用者がかなりいるということが数字の上でも、実績の上でも検挙された中にも明らかにされているわけです。これはゆゆしい問題でありますので、この二七通達の中の一番最後に、労働安全衛生規則の適用の問題についても厳しくうたっているわけです。したがって、労働省は通達を出したからというだけでなくして、これの点検、チェックも含めて、運輸省と相談を十分にして、違反事故がないように、特にいま私が申し上げましたような覚せい剤によるところの運転者が検挙されたり、あるいはそういう中毒患者の運転者が職業運転士の中にいるということは、余りにも常識の外だろうというふうに思うんです。その意味でぜひきちっとやっていただきたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十五分まで休憩いたします。   午後零時三十三分休憩      —————・—————   午後一時三十五分開会
  82. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、昭和五十三年度決算外二件を議題とし、労働省決算についての審査を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最初に大臣にお伺いいたしますが、午前中に穐山委員の方からお話あった行革の問題ですけれども、「行革は国も地方も待ったなし」と、こういうスローガンで、答申も七月十日に出たわけでございます。これに対して各界各層、また地方等からもいろいろな反応が出ておりますけれども、先ほどお話あったように、各省にわたっての特殊法人、補助金の問題、それから定員削減の問題、また労働省に関しては年金、恩給の問題、許認可の問題、こういろいろ出ておりますけれども大臣は、臨調の御意見は御自由でございますと先ほどちょっとお話ありましたけれども、それはそれとして、鈴木内閣の一閣僚でもございますし、また労働関係の所管大臣として、この第一次答申に対する御見解はいかがか、最初にお伺いいたします。
  84. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 先ほどもお答えをさせていただきましたけれども、これは鈴木内閣がいろいろ御事情あるところを押してお願いをいたしまして、御検討願っておる臨調でございますから、その臨調が夜も日も明けず御勉強になられて出されました答申でございますから、これを最大限尊重していくというのはあたりまえのことであろう、かように考えますし、当然、閣議でこれをそのとおり決めたわけでございますから、私も閣僚の一員といたしましての責任から申しましても、当然これを最大限に尊重をしていく、私はこれはあたりまえのことであろうと思います。しかしながら、御案内のとおり臨調の答申といいますものは、決してこの第一次答申がすべてではないわけでございまして、これは当面五十七年度予算の編成という差し迫ったことをどのようにこれとリンクしてやっていくかという、とりあえずの方針を第一次答申の中にまとめられたと、さように考えます。したがいまして、本当の意味行政機構改革とか、行政改革とか言われますのは、この第一次答申ではございませんで、それに引き続きます第二次、第三次の答申といいまするもので、私は行政改革といいますものがどの程度進められていくかということが、この臨調といいまするもののかなえの軽重を問われるこれからの私は非常に重大な目安になっていくであろう、かように考えます。そういった臨調全体の位置づけというものを考えてみまして、その中におきまする第一次答申ということでございますから、とりあえずその第一次答申の重さをどのように私どもが評価をし、それを実行するかということが、非常に臨調自体の私は評価にもつながっていく。そういった意味におきましては、臨調部内でもいろいろな御議論があったようでございますけれども、過般の米価決定というようなことで、本当に少しではございましたけれども、〇・五%の生産者米価を値上げをしなければならぬという決定をされた。こういった決定が臨調のいわゆる所期せられておられましたそれでは物価対策、あるいは米価対策、あるいは農林行政、農林政策に対しまする方向というものと一体どのようにこれかみ合うんだというようなことを考えましても、なかなかむずかしい問題いろいろございまして、答申そのものがそのとおり生きるかどうかということは、別個これは政治がこれを判定をして、そして政治的決断のもとに実行に移していくべきものであろう、私はかように考えますので、最大限に尊重するということは即そのまま実行するということではない。この点は私どもはきちっと踏まえていきませんと、非常に誤解を生みやすい、かように思います。  私どもは臨調のその御指導の精神、それから来るべき第二次、第三次の御答申といいまするものの方向も大体踏まえていけるような、そういう姿勢の中で、とりあえず第一次答申の中に盛られた諸項目に、どの程度の私どもの判断を加えていくことができるかということで対処をしていくのが筋であろうと、かように考えます。
  85. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それではこの臨調に関してもう一点だけお伺いいたします。きょうは、実はこの後に高年齢者対策、高年齢者の就業の問題だとか、能力開発の問題であるとか、失業者の問題、その再就職、再雇用ですか、さらに賃金問題等を質問いたしますので、この臨調の答申の中に出ているこの点について、どうこれから対策を立てられるかという点についてお伺いしたいと思います。これの第一次答申の、臨時行政調査会から出ている本の三十四ページでございますけれども、「高齢職員の離職を促進するため、離職後の再就職に備えての能力開発等に資する臨時暫定的な制度として、一定の期間に限り、終了後の離職を条件とする新たな特別の勤務制度(退職準備制度)(仮称)を速やかに検討する。」、こういうことが答申に出ておりますけれども、これに対してどのような考えを持っておられるか、この点をお伺いいたします。
  86. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 私は、臨調の答申があろうとなかろうと、私どもがこれから非常に大きな変動をもちまして変革をしていく、この私どもの人口の変化、人口構造というようなものを考えてみましても、あるいは、それに伴います私ども雇用のあり方、こういったことを考えてみましても、この高齢者対策といいまするものに重点を置かざるを得ないのは当然でございまして、これが答申の中にそういうことが書いてあるからどうとか、書いてないからどうとかということでなくて、私どもといたしましては、できることは最善の私どもの能力を挙げまして、それに取り組んでいかなければならない。しかしながら、一遍にこれは階段を飛び上がるわけにはいかないわけでございまして、私ども実際政治をやるわけでございますから、着実にできることからやっていくということで、とりあえず仮に定年制度というようなものを考えてみましても、段階的にこれを延長していく方法を考えていかなければなりませんし、そういったことをそれぞれ各雇用の中で御実現をいただくにいたしましても、やはりかなりの時間をそこにかけてやっていかなければならぬ。これはもう当然だと思います。同時にそういうこととこれは関連いたしまして、これは後ほど鶴岡先生の御趣旨の中にも入っておるようでございますけれども、私どもがいま考えてみまして、かつての産業革命にも匹敵するぐらいの大きなここで機械化革命が現に起こりつつあります。こういったものが一体どのくらいの程度に、どれだけの規模を持ってやってくるのかということも、これはあわせ考えてみまして、そういうものとこの高齢化社会といいまするものとの組み合わせの中に、いろんなことを私ども考えていかなければいけないわけでございます。ここで私どもは一瞬の懈怠も許されませんし、またそれに対しまして道を誤りまして、非常に大きな革命が行われておるさなかに乗りおくれるというようなことがあっては、将来に対して申しわけない。こういうことでございますから、私どもは臨調のそういった御趣旨といいまするものは御趣旨として考えながら、しかも私どもが今日置かれております労働行政というものはどうあるべきかという、その本来私どもに与えられております責任と任務といいまするものを十二分に考えて、後でほぞをかまないような、そういうことのないような万全の対策を十二分に慎重に進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  87. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、高齢者の能力開発の問題とか、再雇用の問題については、後で細かくお聞きしたいと思います。  最初に労働白書についてでございますけれども、先般発表された労働白書について、ことしの白書を見ますと、第二次石油ショックの調整過程にあった五十五年は、民間設備投資や輸出は堅調に伸びたものの、個人消費支出それから住宅投資、公共投資が停滞し、労働経済面でも労働力需給の改善が停滞し、完全失業者は五十五年の十月から五十六年にかけて増加をしております。ことしの三月には百六十二万人にもなりましたけれども雇用は一方年間を通じては増加している。生産、雇用の面で、業種間、規模間で格差が生じているが、しかし、五十六年に入ると景気回復の気配が見られる。第一次石油危機のときは実質賃金は減少しなかったが、企業収益が悪化し、大幅な雇用調整が行われ、雇用に大きな影響が出ましたけれども、今回は実質賃金は減少したけれども雇用の方はまずまずで、労働者にとって不利だったとは言えない。五十五年春の賃上げは実質賃金がマイナスになったが、その賃金決定は第二次石油危機の調整を早期に完了させる役目を果たし、わが国が第二次石油危機をうまく乗り越えたことを評価しています。これが白書の内容になっております。  確かに諸外国に比べて石油ショックの影響が最も大きかったわが国が、うまく石油危機を乗り越えたというか、このように評価されておりますが、一方勤労者は実質賃金の低下にどう対応しているかというと、これは労働省ではよく御存じだと思いますけれども、消費は教育費それからローン返済など、切り詰められないものを除いて極力切り詰める、奥さんがパートに出て少しでも現金収入を得ると、こういうことで切り抜けているのであって、勤労者だけがしわ寄せを受けて石油危機を乗り越えたことは賢明な選択であったとは言えないと思いますけれども、こうした勤労者の生活を守る立場にある労働省として、大臣、この点についてどうお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。
  88. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) ただいまそのお引きになられました白書の問題は、これはまあ文章でございますから、全般といたしまして、そのようなつかみ方をされておられるということは、それは私は大体そのとおりだと思います。しかしながら、そういった文章にあらわせない実態の変化というものがそこにあるわけでございますね。それは本当に、その中にも指摘されておりますように、各業態によりましても全部違いますし、全部響き方が違っております。しかしながら、私どもといたしましては、そういった総花的な、平均的なものを目安にして考えてはならぬのでございまして、少なくともそこで非常な被害を受けておられるような、そういった方々に対しましても、被害がないように配慮をしてまいるということが私どもの仕事でございます。そういった面から言いまして、万全を尽くし得なかったということは、まことに残念千万なことでございますけれども、少なくとも、昨年非常に御迷惑をおかけいたしました物価の高騰によります実質賃金の低下というようなことにつきましては、これは労働省がどうだこうだということでございませんで、国を挙げてそうあってはならぬということで勉強さしていただきました結果、どうやらこうやら、非常に三、四ヵ月のおくれはございましたけれども、大体今日にまいりまして、私どもが所期いたしました成果の一部が出始めて、実質賃金といいまするものも下げどまったばかりでなく、幾らか実質賃金も余裕が出てきたかというところまでまいっておるであろうと思います。そういったことを考えてみまして、それではそれでいいのかということになりますと、そうもまいりませんで、おっしゃられるとおり、実際勤労者の方々のこの石油ショックに対しまする対応の仕方、そういったのは、できるところであらゆるものを詰められるものはみんな詰めるんだということをもって、ようやくどうにかこうにかこの危機を乗り越えてきたということなのでございますから、私どもといたしましては、早期にそういったがまんのできるものは全部がまんをしようと言って耐えられてこられた方々の、そういった忍耐の蓄積をもさらに将来は埋め合わせていくぐらいの努力を、どこかでやっていかなければならぬ、さように考えております。  しかしながら、これは全体として考えていただいて、私は石油ショックの大きな影響といいまするものを、ここまでともかくもやってきたということは、これは国民の皆様方にも非常な御負担をおかけいたしましたけれども、その国民の皆様方の御負担はむしろこれからだということで、少なくともここ数年の間は、政府も企業も勤労者もみんな一団となって、それぞれのシェアの中で耐えられるものは耐えていく。いままで私どもが国民の皆様方から借りておりました、たとえば公債なら公債というような形のもの、そういったものは支払っていくのだという一応の心組みというものは別途必要であろう、かように考えるわけでございます。
  89. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つ、今回のこの白書で特徴的なことは、一つは女子労働者の問題を全般的に取り上げている。いままでなかったんですけれども、この問題が取り上げられているということでございます。すでに女子労働者の三三・九%、いわゆる三分の一が女子労働者である、こういう日本労働界の感じになっているわけです。したがって、女子労働者の問題を抜きにして、わが国の経済の発展は考えられないわけでございますけれども、こういうことで、当然この問題を取り上げるのはもっと早くすべきではなかったか、こういうふうにも思います。そういう点で、この問題を取り上げたということは私は一歩前進だと、こういうふうに評価をしております。  ところで、その中でパートタイムのことをかなり詳しく分析しておりますが、パートタイム労働者は女子労働者の約二割、こういう数字が示されております。白書によると、企業がパートタイムを採用するのは、四十年代は若年労働力が得られないために、そのかわりにということで採用していたんでありますけれども、石油危機以後、それが変わって、一つは人件費が格安である、二つ目は生産量の増減に応じて雇用調整、すぐやめさせることができる、そういう雇用調整が容易であるためと、こういう形に変わってきたような感じがいたします。そういうことで、しかもその労働時間というのは普通の人とほとんど変わりがない、週四十八時間以上働いている。賃金は八割という、これが実態であります。  そこで、先ほど言いましたように、五十五年には企業の求人が減り、求職がふえた。当然失業者も増加し、雇用情勢は不況型であるにもかかわらず、雇用者は全体の数からいくと総数は前年より約百万人近く多くなっている、こういう現象が起こっているわけです。女子のフルタイマー、一日労働といいますか、高年齢者で雇用が減った分を、女子のパートでカバーをしたからであり、女子のパートタイム労働者がわが国の就業構造のひずみを一身に受けているということに理屈はなってくるわけです。  そこで、このパートタイム労働者の問題について白書は、一般労働者との格差是正、専門職など就業職種の拡大を図ることを課題として挙げていますけれども、それでは具体的にどのような施策を進めていくつもりか、この点についてお伺いをいたします。
  90. 高橋久子

    説明員高橋久子君) 先生指摘のように、最近女子労働者は大変ふえておりまして、雇用労働者全体の三分の一と。私どもは女子労働者が大変国の発展、経済の発展の大きな力になっているというふうに考えているところでございます。ただ、女子労働者の増加の中で、パートタイム労働者が大変ふえているというのもまた事実でございます。このパートタイム労働者がふえた原因については、いろいろ考えられるところでございまして、労働白書等でも分析をしているわけでございますが、大きな理由といたしましては、第三次産業等を中心にいたしまして、パートタイム雇用に対する需要が非常に大きくなってきているという需要側の要因がある。それからもう一つは、供給側の要因といたしましては、婦人の場合には職業生活と家庭生活との調和ということが大変大きな問題でございまして、パートタイム雇用という形の就労を希望する婦人も多いわけでございます。このようなパートタイム労働者につきまして、いろいろな問題が指摘されております。そういった問題を改善していくことが急務であるというふうに考えられるわけでございまして、雇用の安定や、労働条件の改善というものを図っていきますために、労働協約締結時に、その内容を明確にするということがまず必要である。そういうことを重点にいたしまして、労働契約の適正化指導に努めるということをやっているところでございますし、今後もまたそういった努力をしてまいりたいということと、それから同時に、労働関係法規というものは、パートタイム労働者に対しても適用されるわけでございますが、それが必ずしも十分に守られていないという面がございますので、それが必ず遵守されるようにという監督指導を行っているところでございます。  私どもは、基本的にはパートタイム労働者というのは、労働時間が短い労働者という意味であって、それが決して臨時労働者とか、そういった労働者ということを意味しているわけではないというふうに考えておりますので、パートタイムであるということを理由にして、不安定な労働力、安上がり労働力として扱われることがないように、パートタイマーというものが、本格的な労働力として、企業雇用体系の中にきちんと正しく位置づけられるように、これは労使初め社会一般にも、パートタイムというものの意味、あり方が正しく理解されるように指導啓発に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  91. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大変答弁は的確な答弁だと思いますけれども、そういうことで、労働者労働者でありますから、パートであっても、フルタイムであっても。ところが、これは後でお聞きしますけれども条件等が非常に悪い条件になっている、こういうことで、ぜひこの点については行政指導なり何なり、労働者サイドとして努力をしていただきたい、こういうふうに思います。  もう一つ、賃金といま申しました労働条件の問題ですけれども、わが国の労働生産性の水準は、製造業の多くの業種がすでにアメリカや西ドイツを上回っておりますけれども、製造業の中で業種間の格差、また、製造業と一次産業、三次産業、この一部の業種との間に格差があるわけです。また、大企業中小企業労働生産性の格差は年々拡大をしております。こうした格差は労働条件の面でも同じように格差が生じております。生産性の低い部門の労働条件はますます悪くなり、賃金格差も大きくなることを指摘し、低生産性部門の労働者労働条件をよくするためには、いま申しましたように、行政の積極的な働きかけが必要ではなかろうかと、こういうことで、五つの問題を挙げておりますけれども、この低生産性部門に多い労働者には、特に賃金を初めとする労働条件等行政の行き届いた配慮が必要ではなかろうか、今後の対応について、労働省のお考えをお聞きしたいと思います。
  92. 石井甲二

    説明員石井甲二君) お答えいたします。  この生産性と労働条件の問題でありますが、まず生産性の差によって、たとえば、大企業中小零細企業の生産性が非常に格差が拡大している、あるいは産業間の生産性の問題もあるんだと思います。この生産性の問題は、これは単に労働基準行政、あるいは労働行政というものだけでない、大きな生産の問題とか、あるいは需要の問題とか、あるいは供給の問題とか、非常に広範な性質を持ったものの中で実現しているものだろうと思います。  ただ、労働省としてこれに対応する場合に、一つはやはり労働条件について、労働基準法の遵守をすることはもちろんでありますけれども、できるだけ格差を縮小するような行政努力といいますか、言ってみれば福祉向上の観点からもそういうことが要請されるわけでありますから、それが同時に企業の側としてこれを受けとめるという一つ条件として、生産性向上を図るということが出てくる形が一番いいわけです。ただしかし、非常に総合的な概念として作用するものでありますから、それだけでは生産性と賃金の問題を論ずるわけにいかないと思います。  ただ一つ先生御承知のように、いわゆる最一低賃金という制度がございます。これは現実に毎年最低賃金を各地域別に、さらにその上にもう一つ産業別に最低賃金を設定しているわけでありますけれども、これを毎年改定をしながら、できるだけ底辺の労働者の賃金の底上げを行っております。そういうものが総じて全体の企業体質に生産性向上というインパクトを与えるというような形が、一つ労働省行政として対応する姿であろうかと思います。そういう面で、生産性というものが労働条件、非常に大きな基本的な一つ条件といいますか、及ぼすことは確かでございますので、労働省の中での総合的な対策を立ててまいりたいと、こういうふうに考えております。    〔委員長退席、理事佐藤三吾君着席〕
  93. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、労働省が発表した「労働力需給の長期展望」、これによりますと、これは長期展望ですから予測でございますけれども労働力人口の中で五十五歳以上の者は、昭和五十五年は九百十二万人、十年後の六十五年には千二百五十万人、それからその十年後七十五年には千四百七十万人とこうなるだろうと。全体の割合から見ると、五十五年の九百十二万人は一六・一%、六十五年には二〇・三%、七十五年には二三・〇%と、こういう水準になるだろう。大体そうすると四人に一人は高年齢者——定年の問題ですけれども一ということになるわけです。ですから、今後はいわゆる高年齢者、ことに六十歳代の人の雇用対策は重要な問題に、先ほども大臣おっしゃっておりましたけれども、これはだれが考えても重要な問題になってくるわけです。  そこで、この六十歳定年制を昭和六十年までに実現するという政府の目標、現在のところどの程度の進捗状況、見通しであるか、この点についてお尋ねいたします。
  94. 関英夫

    説明員(関英夫君) 労働省で実施いたしております雇用管理調査によりますと、これは本年一月の状態を調べたものでございますが、定年延長は大企業を中心に急速に進んでいるということが言えるかと思いますが、まず、六十歳以上の定年制を採用する企業の割合が前年三九・七%だったものが四二・六%にふえ、五十五歳定年制を採用する企業の割合は、前年三九・五%であったものが三八%まで下がっておりますが、さらにこういう一月現在の状態に加えまして、すでに、たとえばことしの四月からとか、あるいは来年とかというふうに、六十歳以上の定年制を採用することを予定している、あるいはそういうことを決めているというような企業の割合を加えますと、六十歳以上の定年制を採用する企業の割合は五三・七%というふうに、過半数を超える状況が見込まれております。  そういう意味で、大企業を中心に最近急速に定年延長が進んでまいりました。私ども実際に行政指導をやっております感じからいたしますと、中堅といいますか、あるいは中小企業でややむしろ取り組みが遅くて取り残される部分があるんではないか、こういうような感じもいたしておりますので、今後個別に定年延長の非常にむずかしい企業指導いたしまして、できるだけ早い機会に六十歳定年を一般化するように努力していきたいと考えております。
  95. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この定年延長の問題だけではなくて、高齢者社会への対応策はいろいろあるわけですけれども、現在この数字から見ますと、高年齢者雇用率制度があって、雇用率は五十五歳以上六%と決めてあってもまだその雇用率を未達成の企業が五一・八%と半分以上もある現状では、雇用率制度の周知徹底と達成がまず必要ではなかろうか、それと事業主に対する各種の助成措置が必要である、高齢者の雇用対策は整ったといっても再就職は容易でない、これは現実の問題であります。  男子の年齢別で見たいわゆる有効求人倍率は五十五年で、五十四歳以下は一・四一倍であるけれども、五十五歳以上は〇・二倍という低さで、この有効求人倍率の低さは就職率にも非常に影響をし、五十四歳以下は八・七%であるのに対して、五十五歳以上は三・六%である。失業率でも同じことで、五十四歳以下は一・八%であるのに対して五十五歳以上は三・四%、こう高くなっているわけです、失業者の失業期間が六カ月以上の者を見ると、五十四歳以下では二〇%から三〇%、この程度であるのに、五十五歳以上になると六二%と、失業すると半数以上の人は、半年たっても就職をできない状況であります。高齢者のいわゆる職場の確保には、よほどの工夫と努力が必要ではなかろうか。この労働白書による参考資料、この表を見ても、これは年齢差があって当然だとは思いますけれども、失業して、たとえば一ヵ月未満に就職をする人は、十五歳から二十四歳まで四三・八%、二十五歳から三十四歳までが二二・二%。ところが、五十五歳以上は一カ月以内に就職できるというのは四・八%。また、六カ月から一年以内という数字を見ますと、ごく若い十五歳から二十四歳までが一二・五%、五十五歳以上は三八・一%、こういうことで数字が出ているわけでございます。  そこで、求人開拓の前提である就業機会をつくり出さなければなりませんけれども、八〇年代の高年齢者の雇用開発はどういう見通しがおありであるか、また対策はどういうお考えであるか、この点をお伺いいたします。
  96. 関英夫

    説明員(関英夫君) いろいろお話がございましたが、まず高齢者の雇用率につきましては、御指摘のとおりに全体では六%を昨年の六月で超えたわけでございますが、未達成の企業も多うございます。その最大の原因は、やはり定年制がまだ六十歳に達してない企業が多いと、こういうところに問題がございます。私どもとしては、先ほど申し上げましたように、六十年までに、できるだけ早い機会に六十歳定年を一般化する。大企業はもうすでに大体そういう予定になっておりますので、残りの中堅、中小企業のところに力を入れていくと同時に、定年が来れば、それですぐ企業外に去っていただくというんではなくて、定年後も引き続き再雇用をするなり、勤務延長するなり、いろんな形での定年後の継続雇用といったものを奨励していくと、これがまず高齢者対策の第一だろうと思います。そういう意味で、雇用関係の給付金につきましても御審議をいただきまして、高齢者の雇用確保助成金制度をつくることをお認めいただきましたので、できるだけそれは弾力的に、いろんな高齢者の就業ニーズに応じた多様な形の就業形態、そういうものを奨励していきたいと思っております。  高齢者になりますとフルタイムの勤務は無理だ、パートタイムでもいいから勤めたいという方も出てまいります。そういう意味では、従来のような必ずしも常用雇用、フルタイム一本やりということでなくて、多様な形の高齢者の就業形態を助成する、そういうことによって高齢者の就業の場の拡大を図っていきたいと思っております。  それから、高齢者の再就職の困難性の御指摘がございました。確かにわが国の雇用慣行のもとで、高齢者の求人が少なく、再就職は非常に困難でございますが、雇用関係の給付金の活用によりまして、例の中高年齢者の十万人の雇用開発といったことも、私ども一年間でなし遂げた実績を持っておりまして、安定所の紹介による高齢者の就職というのは、過去に比べて格段とふえてまいりました。今後ともいろんな助成措置を活用し、あるいは事業主に対する、高齢者の職場、これを改善していくための融資制度、そういったものを活用して高齢者の働く職場をふやし、かつそういうところへの助成つきの雇用を進めていくというようなことで、高齢者の再就職の促進に努めていきたいと考えております。
  97. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 先ほど大臣からお話がありましたように、高齢者社会を迎えるに当たって、高齢者のいわゆる就職、再就職、再雇用、この問題ももちろん当然でございますけれども、それに加えて技術革新といいますか産業革命というか、マイクロエレクトニクス——MEの産業がいま盛んに伸長しております。この点について通産省にお伺いしたいんですが、このマイクロエレクトロニクスの普及は、今後予想される技術革新の最も大きなものであって、産業革命とも言われるほどであり、技術革新の波は八万に広がり、各分野に浸透していくとともに、あらゆる業界で必要不可欠のものになっていくだろうと言われておりますけれども、このMEを利用した産業用機械、その中の一つである産業用ロボットの普及、事務用機械に利用したオフィスオートメーション化はどの程度進んでいるのか。まず通産省から、わが国におけるME機械の普及状況を御説明いただきたいと思います。
  98. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) ME機械につきましては、実は手元に資料、きょう持ってきておりませんですが、御指摘の中のロボットについて若干御説明申し上げたいと思いますが、現在、特に医療用等も含めたロボット産業の現状を申しますと、現在、製造企業数で見まして、新規参入が非常にふえておりますので、百五十社ほどに及んでおります。生産額にいたしまして、五十五年で七百八十四億と、対前年比八五%の伸びを示しているわけでございます。  ロボットにつきましては、いろいろ用途に応じてたくさんの機種が生産されておりますけれども、加工物の着脱用のロボットであるとか、塗装用のロボットであるとか、溶接用のロボット等の普及が進んでおります。
  99. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 このロボットですけれども、これは新聞報道で私は知ったんですが、今日の日本の産業用ロボットは、世界で働いているうち、ロボットは一人と言うのか、それとも一匹と言うのか、一台と言うのかわかりませんけれども、約八〇%占めていると、いわゆるILO、国際労働機構はこういうように報告しているわけです。この日本国内におけるME産業の企業数、いまちょっとお話ありましたけれども、また機種ですね、それからこのロボットの価格の推移。五百万というのもあるし、それから三千万ぐらいのもあるし、いろいろあるようでございますけれども、この点について、過去三年間どんな伸びをしているか、細かいところまでわかれば、ちょっとお話しいただきたいと思います。
  100. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 日本のロボット製造業は、いろいろ、新聞等によりますと世界第一という数字がいろいろ出ておりますけれども、御存じのようにまだ開発されてから非常に年限がたっておりません、幼稚産業でございますので、世界的に定義が必ずしも統一されておりません。  たとえば一例を申し上げますと、昨年イタリアのミラノでロボットのシンポジウムが行われました。そこでの数字を申し上げますと、世界で約三万台ほどございます。そのうち一万四千台が日本でございます。大体半分ぐらいの数字になっております。先生指摘のILOの数字では新聞情報によりますと八〇%を日本が占めておると、こういう数字になっておりますが、定義の食い違いによって若干の数字の差異はございますが、いずれにせよ開発され、利用されている数は、日本が世界一であると思われます。  それから、御質問の生産の伸び率でございますが、五十三年が前年に比較しまして二六%増で、二百七十三億円の生産でございました。五十四年は、前年比五五%のアップで四百二十四億。そして、先ほど申し上げましたけれども、五十五年が八五%アップで七百八十四億でございます。  価格につきましては、いろいろな機種が開発されておりますので、なかなか同一接種の比較はむずかしゅうございますが、安いものではたとえば着脱用のロボットのうちでは、数十万円程度の非常に安いものもございます。ただし作業は単純な作業しかできない、こういったロボットでございますが、御指摘のように高いものでは、二千万ないし三千万近く、いろいろな部品、装置を入れますと、そういうものもございます。  以上でございます。
  101. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この伸び率というのは相当な数であるといま報告を聞きましたけれども、それでは産業用ロボットと、事務用ロボットの皮術開発は、今後低成長下において、進むことは進むでしょうけれども、通産省としてはこのME産業の技術革新の見通しは、それではどういう見通しをされておるか。いまお話があった数字だと、五五%から八五%、前年比それだけ伸びているわけなんで、今後はどうなるか、予測はいかがでございますか。    〔理事佐藤三吾君退席、委員長着席〕
  102. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) MEだけでなくて、ロボットということでお答えしてよろしゅうございましょうか。  ロボットにつきましては、今後の開発動向でございますが、在来開発されておりますロボットというのは、やはりまだ性能的に単能的なものが多うございます。そして、人間があらかじめ教え込んだ動作を単純、繰り返し的な機能でもって作業するものが多い、こういうことでございますが、将来は視覚とか、触覚のような、いわゆるセンサー機能を持った、周囲の状況をその機械がいろんな形で認識しまして、それに対応したいろいろな判断能力を持つ、いわゆる私ども知能ロボットと言っておりますが、そういった方に開発が進むと思われます。そしてその結果、需要方面としましては、たとえば原子炉の関連の発電所内のいろいろな放射線を浴びないような形での作業を機械がかわりにやっていただく。こういった作業であるとか、海底作業でございますとか、あるいは宇宙開発に関連した作業でございますとか、あるいは身障者を看護する、あるいは盲導犬のかわりになるようなものであるとか、そういった形の知能ロボットが今後進むんではないかと思っております。ただ、ここ数年見通した場合には、まだまだいわゆる普通の産業用の現在のロボットにやや進んだぐらいのものが、実績としては伸びていくんであろうと、こういうふうに考えております。
  103. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 数でももちろんふえるでしょうし、それからいまおっしゃった知能ロボットですか、ただ単純作業をやるんではなくて、見ることから、聞くことからと、そういうことで技術革新はされていくと思います。そういった点で通産省に最後にお聞きしますけれども、このロボットの導入を図ることによって、雇用政策の面でも影響があるんじゃないか、こういう点については、通産省としてはどんな見解を持っておられますか。
  104. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 御指摘雇用問題への影響でございますが、現在までのところと将来と若干違うかもしれません。現在のところをまず申し上げますと、現在非常に導入が促進されておりますのは、溶接であるとか、塗装であるとか、成形加工、メッキ等々の危険ないし過酷な作業環境、労働環境、こういったものの中での作業を回避するために、そういったロボットに代替しているという作業がございます。こういった問題につきましては、労働安全衛生の向上に非常に大きく役立っているんではないかというふうに考えますし、将来をおもんばかりますに、熟練労働力の不足が非常に訴えられておりますが、そういった状態が続くと考えますと、そういったものの労働代替とかということになりますので、深刻な形での雇用問題が発生するとは私どもはとりあえずは考えておりません。  それからもう一点、現在まで入っているものの中では、商品の多様化、需要構造の多様化に伴って、在来の専用機によるオートメーションから、比較的弾力的な生産に対応できるような機械システム、こういった形でロボットが活用されることが間々ございます。こういったものにつきましては、機械から機械への代替が大筋でございますので、比較的労働問題が起きていない、こういうことでございます。ただ、今後産業用ロボットの技術開発動向いかんによりましては、場合によりましては労働問題が発生する可能性も否定できないところでございますので、私どもとしましては、ロボット導入に伴う雇用問題の重要性を認識しながら、その動向を慎重にウォッチしてまいりたい、そうして必要に応じまして、適時適切な措置をとっていきたい、こういうふうに考えております。
  105. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、労働省側にお聞きしますけれども、ロボットというのは御存じのように休みもなし、年じゅう働くわけでございますし、ある大臣言わせれば、お茶も出すこともないし、また休暇をやる必要もないし、失業保険も必要ないしと、そういうことで、恐らくこれからは、先ほどお話があったように伸びていくんじゃないかと、こういうふうに思われるわけでございますけれども労働省は先般MEを利用した一般機械器具製造業を対象に、NC工作機械等の導入に伴う雇用への影響の調査結果を発表されておりますけども、それによると、NC工作機械は常用雇用者千人以上の大企業では九三・七%、三十人から九十九人の中小企業でも四〇・九%が導入している。大企業ほど導入率が高く、常用雇用者三十人から九十九大規模の企業でも平均二・六台持っている、こういう数字が出ておるわけでございます。  企業面への影響については、五十二年に比べNC機械類を導入した事業所も、非導入の事業所も減少しているけれども、その減り方は導入した方は二・五%減り、非導入の方は四・四%減って、非導入の方が減り方は大きい。また導入した事業所の中で、常用労働者のふえた事業所が四八%、減った事業所は四二%で、ふえた事業所の方が多い心常用労働者がふえたのは導入によっていわゆる受注量が増加し、また新技術に伴う新職種の増加などによるものであり、また新技術導入による省力化で、労働者を減らした部門は他部門への配置転換を行っている。雇用への影響は少ないと見ているようでありますけれども、これは一般機械器具製造業を対象とした場合であるけれども、産産全般的に見た場合、やはり雇用への影響は大きいと思うんですけれども、この数字から言って少ないと見ているようですけれども、この点についてはいかがですか。
  106. 関英夫

    説明員(関英夫君) 先生指摘になりました調査は、NC工作機械、あるいはトランスファーマシン、そういったようなものの導入に伴う雇用面がどうなったかということでございます。先ほど来先生いろいろ御質問の産業用ロボット等に象徴されますマイクロエレクトロニクスの進展、それが今後さらに事務部門にまで及んでいった場合にどうかということになりますと、従来NC工作機械やトランスファーマシンの導入に当たって考えられた以上の雇用面への影響というものを、いろいろ私どもは予測しなければいかぬのじゃなかろうかというふうに思っております。総じてMEにつきましては、それを製造する産業自体の伸びということがございますので、そこへの雇用の伸びがあるわけですけれども、それを導入すれば、必ずそこに省力化があるわけでございまして、省力化に非常に大きなメリットがあるわけですから、雇用面への影響は必ずあるわけでございます。ただ従来は熟練労働者が不足したのをそれで補うとか、あるいは社内の配置転換で間に合うとか、あるいは受注量が増大したから雇用の減少はなくて済んだとかというようなことで十分対処できてきた、従来までの導入は円滑に行われたということは言えるんだろうと思いますけれども、これから先もそれと同じような状態であるかどうかということについては、慎重な検討を要すると思います。特に高度の産業用ロボットというようなものが導入されてくれば、それだけに省力効果は多いわけですから、少なくとも従来その仕事に従事していた人の配置転換のような問題、あるいは職種を変えなければいけないような問題、そういうような問題が生じてくるでございましょうし、その場合には教育訓練といったような取り組みもまた必要になってくるだろうと思いますし、あるいはまたそういった機械を導入することによって、労働者の安全が守られるという面もあるかもしれませんが、また逆に新しい機械における安全衛生の問題というような新しい問題も生じてくるでございましょう。あるいはまた、中高年齢者がそういった新技術に対応しにくければ、そこをどうやって解決していくかというような問題も生じてくるかと思います。  いずれにいたしましても、この将来の動向についてはまだまだ予測しにくい点がございますので、私ども専門の先生方の研究会もお願いして、十分慎重な調査検討を続けてまいりたいと考えておるところでございます。
  107. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 従来は、今日まではその対応ができてきたと、これは認めますけれども、このMEの技術が飛躍的に進んで、そのために小型化し、大幅に値段もコストダウンしてくると、そうすると、先ほど四、五十万のもあるという通産省のお話ございましたけれども、溶接用ロボットは一千万台、中にはい主言ったように五百万のもあるし、四、五十万のもあると、十年前と同じ機能のロボットに比べて半値にもなり、中小零細企業でも十分貝える価格になっておるわけです。  そこで、中小企業が最先端のME機器を大企業をしのぐ勢いで導入し、人の要らない、無人化工場が続々できてくるわけです。中小企業経営者にしても、農業の三ちゃん農業じゃありませんけれども、お父ちゃんとお母ちゃんとロボットちゃんという三ちゃん工場も珍らしくないわけです。このように零細企業にまで導入されるようになると、この導入によって、大企業はいいですよ、配置転換とか、いろいろな部門がありますから。そこからはみ出すというか、省力化された者は、たとえばセールスになるとか、事務系統へ回るとか、そういうことになりますけれども中小企業の場合は五人か十人、それを配転すると言ってもこれはむずかしい問題でなかろうか、私はこういうふうに思います。  また、高年齢者の再就職、そこで中小企業で省力化によってはみ出た者、その人が高年齢であるという場合には、これはちょっとむずかしい問題じゃないかなと、こういうふうに思われますけれども、この影響はどうなるか、その辺はいかがでございましょうか。
  108. 関英夫

    説明員(関英夫君) 先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、今後の雇用面に対します影響については、現時点では私ども正直申し上げて、非常に予測しがたいものがございまして、大変勉強不足でございます。  単に、今後どの程度のスピードで、どのくらいの量のMEがどういう分野で伸びていくかという予測、これもむずかしいわけですが、それが雇用に与える影響といいますと、単に数量的な影響だけでなく、労働者の能力、職種、そういうものにも関連した質的な影響というようなことにもなってまいりますと、非常にむずかしいわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、専門の先生方によります研究会を組織していただきまして、そういった面の数量的な、あるいは質的な今後の雇用に与える影響、こういったようなものを十分調査検討していただくことにいたしております。  いずれにいたしましても、これからの非常に大きな問題として、私ども十分意を尽くして取り組んでいきたいというふうに考えております。
  109. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それに関連して、今度職種転換の訓練でございますけれども、NC工作機械等への職種転換の訓練はどんな方法で行われているのかというと、これも労働省の調査ですけれども、事業所内での訓練、これは五〇・四%、導入機械の会社への派遣、これは六六・七%、職業訓練校への派遣は二・一%、こういう数字になっているわけです。職業訓練校はほとんど利用されていないようでございますけれども、大企業は事業所内での訓練で対応していくとしても、先ほど申しましたように、これから零細企業労働者については、公共職業訓練校で訓練を受けられるようにしなくてはならないけれども、その対応はできておりますか、体制はどうなっていますか。そうでないと、大企業の場合は結構ですけれども中小零細企業の場合には、これはちょっとむずかしい問題ではなかろうかと、こういうように思うんですけれども、体制はどのように整えられていますか。
  110. 森英良

    説明員(森英良君) お答えいたします。  産業用ロボットの導入などに典型的に見られますような技術革新の進展に伴いまして、今後労働者の技能が大きな変容を受けるであろうということは、当然予想されるところでございまして、そういう前提に立ちまして、この四月につくりました第三次職業訓練基本計画におきましても、一つの重点としてそういう技術革新に対応できる体制の整術ということを取り上げておるところでございます。  具体的には、昭和五十三年の職業訓練法の改正に基づきまして、いわゆるスキルドワーカーでなくて、高度の技術と技能をあわせ持ったテクニシャンと呼ばれるような技能労働者の養成を目的にいたしまして、職業訓練短期大学校の増設ということを現在進めておりまして、そこでは生産機械科、あるいは電子科というようなところにおきまして、マイクロコンピューターその他の関係の科目を必ず習得できるように措置しておるところでございます。  なお、一般の職業訓練校におきましても、電子計算機科、情報処理科というふうな関係の養成訓練の科目を持っておりまして、その増設を進めておりますし、特に企業独自の力ではこうした技術革新の進展に対応しまして、十分職業訓練のできないような中小企業の在職者のために、そういう関係の職種に転換できるための向上訓練というものをできるだけ拡大したいということで、これも努力をしておるところでございまして、現在マイクロコンピューター関係で定員で約千六十九人、それからNC工作機械で四百十人、コンピューターのプログラミング関係で三百八十四人という程度のものは、最新のエレクトロニクス技術に関する訓練科目として受け入れて、向上訓練をやっておるというところまできておるわけでございます。  しかしながら、おっしゃるとおり、今後中小企業におきましても、こういう産業用ロボットの導入等がありますと、それらを扱えるだけの基礎的な知識を持った労働者の必要が、ますます中小企業方面でも高まるわけでございますから、御指摘の点も踏まえまして、今後ともそういう在職労働者に対する公共職業訓練施設における訓練機会の増強ということにつきましては、一層努力してまいりたいというふうに考えております。
  111. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いままで何点がやりとりしましたけれども、これは製造部門の点でございますけれども、これに加えてオフィスやサービス業、この事務作業でもこれからMEの導入の影響を、量的にも、質的にも受けてくるんではないか。自動車産業や電機産業のような製造業の場合、すでに生産性が高いレベルに到達しているため、雇用への影響は比較的少なかったとしても、いま申しましたように、サービス部門、オフィス部門はこれまで生産性の伸びが低かった部門であり、オフィスオートメーションの導入による省力化が進むと、雇用の影響が相当にあるのではないか。雇用の影響は職種転換と雇用減が絡み合ってくるでしょうが、そのための対応はいまから十分しておかなければならない、こういうふうに思います。今後の中高年齢層に合った雇用開発の分野、三次産業がいま言ったように、オフィスオートメーション化によってこれに狂いが出てくるんではないか、こういうふうにも思われますけれども、この点はいかがお考えになっておられますか。
  112. 関英夫

    説明員(関英夫君) 御指摘のように、今後事務部門にもオフィスオートメーションという革新の波が激しくなってくるだろうと思われます。現に、すでにそういったオフィスオートメーションをやりました会社には、見学者が相次いでおるという現状でございますから、各社ともこういった点には今後は非常に力を入れていくんではなかろうかと、その場合に製造工程におけるとまた違った対応というものも出てくるんではなかろうかと思われますが、現在までのところ、そういったオフィスオートメーション化を進めたたとえば岡村製作所のようなところでも、それによる雇用減ということではなく、従来の雇用量でより業績を上げているといったような対応をしてきている。そこには、日本におきます日本的な雇用慣行がよく生かされていると、こういうことで現在までは来ておると私は思いますが、先ほど来申し上げておりますように、今後これが非常に急速に進んでいった場合に、事務部門において先生の御指摘のような形で、雇用減なり、あるいは職種の転換なり、営業方面への転換とか、いろんな形での雇用面への影響が強まるものと予測されます。また、新しい技術に適応しにくい中高年齢者にとって、そういったオフィスオートメーションに適応していくということが非常に困難なことも考えられます。ただ、いずれにいたしましても、また繰り返しになりまして恐縮でございますが、事務部門におきますオフィスオートメーションの影響といったことにつきましては、私どもまだまだ勉強不十分でございます。専門の先生方の研究を積極的に進めていただきまして、それに応じて対応していきたいと考えているところでございます。
  113. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 時間が来てしまいましたので、この後家内労働問題についてもいろいろお伺いしたいと思っておりましたけれども、これはまた後の機会にということで譲りまして、最後に大臣にお伺いしたいんですが、今後の技術革新による雇用の面のしわ寄せを受けるのは中高年齢層、ことに中小企業、零細企業、こういう人たちがその影響をもろに受けるんじゃないかと、いろいろ先ほどから対策は立てておるようでございますけれども、私はやはりその影響を受けるのは年齢のいった中高年齢層、中小企業、零細企業と、こういうことになりはしないかと、こういうふうに懸念されるわけです。これまでのわが国の経済発展を支えてきたこの中高年齢層だけが、技術革新によって離職、就職難というような波をかぶることのないように、政府は職種転換のための職業訓練、能力開発、あるいは雇用開発に早急に、十分なきめ細かな対策をとらなければならないのではないかと、こういうふうに思いますけれども大臣の所見をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  114. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 本当にありがたい御配慮でございまして、拳拳服庸をして、十二分に対策をしていかなければならぬ、かように考えております。しかし、御案内のとおり、これからの技術革新といいますことは、必ずしも若年の方々のみに頼るということばかりではないと思いますね。たとえば、それが機械化をされて、機械がオートメーションで動いていくということになれば、しかし、これは機械のことでございますから、いつどのような故障が起こるかもわかりませんので、当然その機械を数台受け持って見回っていかなければならぬとかいうような態様に恐らく私は変化していくんじゃないかと、さように思いますが、そういったことになりますと、かなりお年を召しましても、それに十二分に熟練さえしておられれば、それで対応し切れる、私はそういった職能のあり方といいますものは十二分にあり得る、かように考えておるわけでございます。特段と私がここで考えなければなりませんのは、御案内のとおり、これから非常に若い方々の赤ちゃんの出生率が減っておりますものでございますから、これがこの情勢のまま推移してまいりまして、後十年、二十年ということになってまいりますと、若年の方々、それは若年の方々にこしたことはございませんけれども、その方々だけではとても回り切らぬぐらいの労働需要と言いますものが私は出てくるであろう、さように思いますし、そういったことを考えてみましたならば、中高年の方々であろうと、これは決してそれと並べて能力がどうと、こういうことではございませんけれども、御家庭の御婦人の御参入というふうなことも、あわせて低下していく若年の方々の量に対応する、そういう施策と言いまするものも考えていかなければならぬ。私どもはそういったありとあらゆる場合を考えまして、どの場合にいたしましても、それに対応し切れる、需要に応じ切れる施策を打っていかなければいけないわけでございますから、いままでもこれは勉強をそれぞれ一生懸命やっておりますけれども、ただいま安定局長から申し上げましたとおり、まだまだ忙しさに取り紛れて勉強が足りないというようなことも現実にはあるわけでございます。したがいまして、ここのところ、私が最高責任者といたしまして、大いに省内の人材によりよけいなひとつ活動、勉強、努力を集中してもらいまして、そうして将来ともに遺憾のない対応ができる、そういう体質の行政に改めていかなければならぬ。私どもといたしまして、瞬時の懈怠も許さない、かように考えておるわけでございます。一生懸命やります。
  115. 柄谷道一

    柄谷道一君 労働省関係の行財政改革につきましては、同僚議員から多くの質問のあったところであります。また、大臣は閣僚の一員として、臨調の答申を尊重してその実施に努力する、しかし、その細部につきましては、行政の責任者として適切に対応していきたい、このような趣旨が述べられたわけでございます。  そこで、労働省の五十六年度予算を見ますと、総額四千九百九十一億円のうち、補助金は千百五十四億六千万円を占めておりますが、その八四・八%に相当する九百七十九億四千万円は、いわゆる法律補助でございます。したがって、予算補助は一五・二%の百七十五億二千万円にしかすぎません。そのほかに補助金以外で法律により国が負担または補助を支給することが定められている経費として二千九百二十九億一千万円がございます。これらは、いずれも政策目的を持つものでございます。また、今後多くの方々から指摘されましたように、減速経済が続き、かつ、高齢化社会への急速な接近に対する対応というものが要請され、さらに充実した雇用政策の展開が望まれている今日でございますけれども、多少の補助金と比べ、非常に特殊性と言いますか、異なった様相を持つこの労働省関係予算の行財政の改革、特に、補助金の削減に対して、大臣としてどのように対応しようとしておられるのか、まず、その基本的なお考えをお伺いしたいと思います。
  116. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) いま柄谷さん御指摘のとおり、私どもの予算は、一般会計に関しまする限りは全部寄せましても五千億ないわけでございますから、全部差っ引いたところで、ゼロにしたところで五千億というようなことでございますので、他の一般会計をそれぞれ管掌しておられる他省と比べまして、削減するとかなんとかというようなことを言いましても、その範囲は非常に狭い、もともと場が狭いわけでございますから、そういったことがございます。さらに、ただいま御指摘のとおり、それぞれ本当に政策目的を持って、法律によってやられておるものが大部分でございますから、そういったものを超えて、全部法律改正をやって、その目的を変えていこうということならば、これはまた別でございますけれども、そういうことでないということになれば、おのずから私ども考えていかなければならない当面のこれの対応といいますものは非常に限られてくる、かように考えるわけでございます。  私は、もちろん閣僚の一員でございますから、内閣全住が仮に一つ一つを精査して、一々そのところを得しめる、本当はそれが一番よろしいんでございましょうけれども、それだけの時間がないというようなことで、仮に、補助金を全部、補助金と称するもの、あるいは経費も含めて、一割をちょん切るんだというようなことが仮に決められるということにいたしましても、そういった場合にどのような対策をどこで考えていくかということは、これは私なりに考えていかなければならぬことでございまして、そのことによって、私ども労働省行政の機能が損なわれるというようなことをさせるわけにはまいらぬわけでございます。そのところはこれは十二分に臨調でもお考えをいただいておる、かように思いますし、また、そういったことを今後予算編成の中であらわしていきます場合に、十二分に話し合いをいたしまして、それぞれの関係者庁の大臣との間に御了解を得て、そうして私どもの機能が発揮できる、そういった体制だけはどんなことをいたしましても維持してまいる、それはできる、かように考えております。
  117. 柄谷道一

    柄谷道一君 わが党は、御承知のとおり、行財政改革の推進を基本的な方針としているものでございますけれども、私は、大臣ただいま申されましたように、確かに合理化すべき点は勇断をもつてその合理化を図らねばならない。しかし、いやしくも雇用政策の後退にそれがつながってはならないと、こう思うものでございます。本日は具体的なものがまだ出ておりませんから、この点は強く大臣の善処を求めておきたいと、こう思います。  問題を次に進めますが、経済企画庁はさきに景気の底離れ宣言を出しました。事実、一般的に景気が回復過程に向かっているという見方が大勢を占めております。しかし、これとは逆に、雇用情勢は悪化の度合いを強めているのではないかと、こう思われるのでございます。  たとえば、六月三十日に総理府統計局が発表いたしました五月の雇用関係指標を見てみますと、五月の完全失業率は季節調整済みの数値で二・三九%、これは昭和三十四年二月の二・四五%以来の高率を示しております。完全失業者数は百三十二万人、これは前年同月比で二十三万人、二一・一%の増加でございます。有効求人倍率も二月以来四カ月連続して前月を下回り、〇・六五倍に落ち込んでおります。また、雇用の先行きを示す所定外労働時間も大幅に落ちております。また、雇用者保険の受給者の数は、前年同月比と比較いたしますと、昨年九月からその増加が続いております。決して、この雇用関係の指数を見る限り、景気の底離れ宣言とは逆の現象を示していると、こう読み取れるわけでございます。雇用面から見て、景気はきわめて警戒すべき状況が続いていると、こう言わざるを得ないわけでございますけれども労働省として、その要因と特徴をどのように分析、把握しておられるのか、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  118. 関英夫

    説明員(関英夫君) 御指摘のとおり、雇用面につきましては最近非常に弱含みで推移いたしております。これは昨年の年央ぐらいから求職者がふえ、求人の方が減るというような状態が出てまいりまして、今日までそういう状態が続いてきているということのあらわれでございますが、先生御承知のように、経済の動向と雇用面には六カ月から長い場合には一年ぐらいのタイムラグがございます。そういう意味で、いろんな生産の指標等から、景気は底を打ったとか、あるいは底離れとかいろいろ言われておりますが、そういった状況雇用面に響いてまいりますには、相当のタイムラグがあるということが過去の経験からして言えるわけでございます。私どもとしては、三月におきます総合経済対策、これを受けて、特に求人開拓等に努力するように末端を激励しているところでございまして、最近新規求人倍率等にややその求人開拓の効果が出始めているんではないかと思われますので、今後景気の着実な回復が期待されれば、雇用面にも次第に明るさが戻るのではなかろうかと思いますが、なおしばらく楽観を許さない情勢であるということで、注意深く見守っていきたいと考えているところでございます。
  119. 柄谷道一

    柄谷道一君 景気と雇用指数の関係でございますけれども、これはいろんな説があるわけですね。完全失業者数や求人倍率の統計数値は雇用情勢を実態よりも悲観的に映し出すものである。たとえば働きに出たいという主婦の増加もこの中には含まれているわけであるから、数値が示すほど深刻ではないと、こういう説を述べる人もおります。またいま局長がちょっと触れられましたように、いわゆるタイムラグ説というのも存在することも事実でございます。しかし日銀の見方では、企業短期経済観測調査で、在庫調整は七−九月ぐらいまでかかるのではないか、経済企画庁の出した景気底離れのこの宣言というものは時期を早まり過ぎたのではないか、こういう批判も一部にあるわけでございます。きょうは経企庁呼んでおりませんので、これらの問題はまた別途の機会にしたいと思いますが、しかし、私は政府の経済政策運営の重点が景気、物価面のみに注がれて、雇用対策が軽視されている。それがこのやや早い景気底離れ宣言となってあらわれたのではないだろうか、こう思うのでございます。私は、こうした景気底離れというものと、雇用情勢の的確な要因分析なくして、新しい、または適切な雇用政策が生まれるはずはないと、こう思います。閣議でも大臣は、この経企庁の底離れ宣言に対して、やや批判的な御意見を述べられたと、こう報道されているわけでございますが、大臣どう思っていらっしゃいますか。
  120. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 閣議の中でどうだこうだとかということではございませんけれども、私は、先生が御心配になっておられるとおりの心配を、私自身がこれは労働大臣でございますから、しておるわけでございまして、ただ一般的に、底離れでございますから、御案内のとおり、底というのは一番底でございまして、それより下はないわけでございますから、底を少し離れだというだけの話で、決してよくなったということを言っているわけではないわけでございます。そういった意味で、私ども雇用の指標といいますものが、なおかつ先に非常に警戒すべき要因をたくさん秘めておるということさえ御認識をいただいておけば、それでよろしいわけでございまして、私といたしましては、先ほど安定局長も申し上げましたとおり、指標自体が雇用の場合タイムラグでおくれてくる、これは定説のようでございますから、それはそれなりに私どもは受けとめるといたしましても、しかしながら、何といいましても、私どもの今後の経済運営に当たりまして、雇用考えないで、すべての要素を推しはかっていく、そういうことはできないわけでございます。一番大事な点が経済発展と結びついてまいりますのは雇用でございますから、雇用の伴わない経済の発展、拡大というようなことは、これはナンセンスでございまして、私どもといたしましては、当然、経済企画庁におきましても、私どもの趣旨は十二分にお考えをいただいておる、かように思いますし、そのたびごとに私は大きな声を出しますから大丈夫でございます。
  121. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣ね、経企庁の底離れ宣言が出て、よくなってないとぼくは言ってないんですよ。底離れ宣言が出てから、なお雇用指数は落ち込んでおるのですよ。雇用指数に関する限り底離れしていないんですね。この事実を篤と御認識をいただきたい。  今後も声を大にして経企庁に言うと言われるのですから、それは期待をいたしておきたいと、こう思います。  そこで、その新経済社会七カ年計画では、六十年の完全失業率の目標を一・七%に置いております。そして、これに基づく第四次雇用対策基本計画、さらに五十六年度年次計画及び総合経済対策が打ち出されているわけでございます。しかし、ただいま私が申し上げましたような、最近の雇用関係指数や、今後の景気見通し等から見まして、六十年目標の一・七%達成は不可能であるという意見が一般的でございます。この際、改めまして、中長期の展望に立った雇用労働需給及び失業の見通し、特に一・七%の失業率が昭和六十年に完全に達成できるという確信をお持ちかどうか、お伺いします。    〔委員長退席、理事佐藤三吾君着席〕
  122. 関英夫

    説明員(関英夫君) 最近の完全失業率の動きを見てまいりますと、オイルショックの後非常に悪くなりまして、以降、たとえば五十二年、年平均で二・二%、五十四年は二・一%、五十五年は二・〇%、そういうことで、非常に足取りは遅いわけでございますが、改善が図られてきたわけでございます。ごく最近は、先生の御指摘のとおりに、昨年年央以降の情勢を反映しまして、タイムラグもございまして、なおかつ落ち込みつつあるわけでございますが、昨年、この新経済社会七カ年計画のフォローアップも行いましたときに、今後五・五%程度の経済成長が持続できるならば、やはり昭和六十年一・七%は可能であるという推計もフォローアップ作業の中でなされておるわけでございまして、これからの景気の回復あるいはその後の着実な成長、そういうものを前提としつつ、私どもとしては一・七%程度にとどめるよう最大限の努力をしていきたいというふうに考えております。
  123. 柄谷道一

    柄谷道一君 この点も論じ合えば時間がかかるわけでございますけれども昭和六十年までは行財政改革の財政再建期間中ですね、公共投資の支出は抑制ぎみでございますし、よほど民間活力を利用する新しい経済政策の展開というものがなければ、口で言うほど一・七%の失業率の実現ということは容易でないと、これはもう一般的な見方ですね。そこで労働大臣、これもっとこの面にも声を大きくしていただいて、全体の景気の浮揚と失業率の低下、このことに労働省サイドとしてのやはり発言というものがもっと強く閣内に反映されるべきではないだろうか、労働省抜きの経済政策というのは私はナンセンスだと、こう思うのでございます。この点に対して、これは質問ではございませんが、大臣のせっかくの今後一層の御努力を求めておきたい。そうしなければ、一・七%の目標はただ絵にかいたぼたもちになってしまうであろう、このことを憂うるものでございます。  そこで、総理府統計局の労働力調査で明らかにされているわけでございますが、最近五カ年間の年齢階層別完全失業者数の推移、これを見ますと、私は四十五歳以上を仮に中高年者と見て、五十五年は全体の百十四万人中四十万人が、これらの年齢層によって占められておるわけでございます。昭和五十一年以来の平均をずっとながめてみますと、四十五歳以上の完全失業者の数というものは、一向に減少いたしておりません。また、年齢階層別の有効求人倍率の推移を見ましても、昭和五十五年は四十五歳から五十四歳〇・五八、これは前年より悪くなっていますね。五十五歳以上は〇・一七、これは横ばいということで、改善の兆しは見えていないわけでございます。この中高年齢者の問題が取り上げられてこれは久しい問題でございます。大臣もこのことに対して全力を挙げるという答弁は、何回も今日まで社労委員会等で行われたわけでございますけれども、数値を見る限り、一向に改善されたということが数字にあらわれていないわけでございます。これは決意だけで達成されるものではないと思うんですね。大臣、この数値を見られましてどうお考えになりますか。
  124. 関英夫

    説明員(関英夫君) ちょっと私から先にお答えさしていただきたいと思いますが、確かに先生指摘のとおり、完全失業者の中の中高年齢者の数、あるいは中高年齢者の求人倍率、そういったものの改善の足取りは非常に遅いわけでございますが、一つには先ほどの六十年一・七%の問題にも絡みますけれども、中高年齢者ほど再就職に時間がかかる、これはわが国の雇用慣行から見て求人も少ないし、また賃金体系その他も中高年齢者を新規参入しにくくしている、こういった面がございまして、そういったものの改善には非常に多くの時間を要すると思います。    〔理事佐藤三吾君退席、委員長着席〕  しかしながら、先生御承知のように、一方で定年延長、あるいはその後の継続雇用、そういうものを進めてきておりまして、そういったものの改善が図られてきておることも事実でございます。  また安定所におきます高齢者の就職状況を見てまいりますと、これも非常に改善が図られておりまして、たとえば就職件数、これを五十年から五十五年の五年間で比較してみますと、高齢者の場合には七四%の就職者の伸びを見ております。就職件数全体は五%程度の伸びでございます。そういう意味で、私ども第一線では非常にこの就職困難な高齢者、あるいは中年者、こういったものに特に力を入れて、その再就職の促進に努めるということに力を入れているわけでございます。ただ、雇用慣行、日本雇用構造、こういったものが早急に変わらない限り、求人倍率、そういった面では相変わらず高齢者になるほど求人が少ない、こういう状態は早急には変わらないだろうと思います。しかし、そういう中でも、現実に失業して出てきた高齢者に見合った求人を特に開拓して就職に努力すること、これが私どもの務めであろうかと思います。そういう意味で、いろんな助成策も講じながら、今後ますます努力していきたいと考えているところでございます。
  125. 柄谷道一

    柄谷道一君 雇用政策調査研究会、これは馬場啓之助さんが会長でございますが、六月二十四日の日に、「労働力需給の長期展望」を発表されております。その中で特に強く指摘しているのは、高齢者と女性の雇用政策の充実についてでございます。女性関係につきましては後ほど質問をしたいと思いますが、この報告書で昭和七十五年の労働力予測を明らかにしておりますが、その時点で十五歳以上人日中の五十五歳以上人口の占める割合は三五・五%に高まる。著しく高齢化が進展すると、こう指摘し、労働力人口に占める高齢者の労働力人口も、五十五年の一六・一%から七十五年には二三%、いわゆる四人に一人の割合に高まるであろうと、こう予測しているわけですね。そして、いま局長も申されましたが、わが国の賃金、雇用の慣行のもとでは、ミスマッチが年齢階層別で生じやすく、高齢者の雇用のあり方はきわめて深刻な問題が予想されると、こう指摘いたしまして、六十歳定年制が一般化することを前提に、六十五歳程度まで雇用の延長が図られることが望ましい、こう提言しておるわけです。そして、その場合、六十歳以上の雇用延長につきましては、フルタイムの労働に限定せず、パートタイムや出向、自営など種々なコースを選択できるようにして、フルタイム労働から完全な引退へ一挙に転換することによる精神的なショックや、大幅な収入減を緩和させるべきであると、その方向を示唆しております。端的に言えば、半労働、半年金、こういった新しい発想を六十歳以上に取り入れるべきではないかというのがこの提言の特色なんですね。この提言に対する労働大臣の評価をお伺いしたいと思います。
  126. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) この馬場先生の御報告といいますものは、私はそれなりに非常な御勉強になられた結果でございますから、確かに一つの方向を示唆しておられますし、また常識で考えましても当然の方向であろうと、かように考えます。したがいまして、私どもといたしましては、これから先の変化ということに対しまして、今日この段階では六十年六十歳というようなことを、たとえ定年制一つとりましても考えておるわけでございますけれども、それにとどまるものではないということで、かねてから申し上げておりまするように、六十歳からさらに六十二歳、六十五歳というような方向に延長できるところは延長してほしいということでございますし、本当にそのとおりでございますが、そのことは決してフルタイマーばかりのことを意味するわけではない。当然仕事、働きというものに対する多様性といいまするものを、肉体の変化と同時にいろいろ多様に考えていく、そういう選択があってしかるべきである、かように考えますし、大体お考えになっておられることは、そのまま私どもが取り入れていって差し支えなかろう、かように思います。これは女子の問題にいたしましても同じことでございまして、私どもはそういった事態といいまするものを想定をして、そのような変化がしやすい方向にいまの行政を変えていかなければいけない、そのように考え指導をいたしておるわけでございます。
  127. 柄谷道一

    柄谷道一君 そうした大臣のお考えであるとすれば、当然厚生年金のあり方もこの際見直す必要が出てくると思うんです。厚生省は今日まで、私からするときわめて短絡的に、財政上の理由からだけで、六十歳の支給開始年齢を六十五歳に引き上げていくと、こういう考えを示されてこられたわけですね。六十歳から六十五歳までの雇用の形態というのは非常に多様化するであろう。また、いま大臣は、そのようなお考えもきわめて示唆に富んだ提言であると、こう評価されるとするならば、私は、そうした継続雇用雇用形態を展望して、これと整合する形における六十歳から六十五歳までの年金のあり方というものが、当然それを求めて検討するということがあるべき姿ではないかと、こう思うんですが、いかがでしょう。    〔委員長退席、理事降矢敬雄君着席〕
  128. 佐々木喜之

    説明員佐々木喜之君) お答えを申し上げます。  厚生年金の老齢年金、これは先生十分御承知のように、職業生活から引退をいたしました労働者に、賃金にかわりまして所得を保障するためのものでございまして、当然退職を要件といたしております。ここで退職と申しますのは、厚生年金の保険集団から離れる。つまり適用事業所から使用されなくなると、こういうことをもって退職といたしておるわけでございまして、ただいまお尋ねの中にありましたような、いわゆるパートタイム労働でありますとか、自営というような場合には、現行の制度のもとではこれは退職でございますので、一〇〇%の年金が出ると、こういう仕組みになっておるわけでございます。これを半分の年金にするというような御提言もございますが、その辺につきましては、そういう御意見もごもっともな面もあろうかと思いますが、年金制度の上では、あくまでも退職ということを要件にいたしまして支給するというのが年金制度のたてまえでございます。退職ともつかず、いわゆる灰色の領域を認めまして、これに対応するということは、制度の考え方の上から申しましても、また実態の把握というような面から申しましても、大変これはむずかしい問題でございまして、十分に研究させていただいた上でございませんと、なかなか申し上げられないことではございますが、大変むずかしい問題であろうと考えております。
  129. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、現行制度はそのとおりであるし、現行制度というものを中心に考えれば、いまのような答弁しか出てこないと、それはそのとおりだと思うんですよ。  じゃ、さらに厚生省にお伺いしたいですけれども、六月二十四日、財団法人日本人事行政研究所、これは尾崎さんが理事長でございますけれども、「「将来のあるべき人事管理を考えるための基礎調査」の結果と解説」これを発表いたしております。これを見ますと、損して企業の支給する賃金は低い万ほど労働者にとって有利である。いわゆる賃金と減額年金の合算額を対比をいたしまして、賃金支給額別にその合計額を試算いたしておるわけですね。そこでこの点については、高齢者の活用という見地からも、また悪化しつつある年金財政の上から見ても、きわめて問題であるので、厚生年金の支給方法について、高齢者能力の活用の方向にとってインセンティブになるようなきめの細かなものに改めていく必要があると、こう指摘いたしておるわけでございます。高齢化社会というのはどんどん来るんですよ。今日までの発想で対応できるもんではないと思うんです。その点労働大臣、これは厚生大臣と、きわめて高度の政策的な問題にかかわる問題でございますから、労働省の志向しつつある六十歳以上の継続雇用の形態と現行の年金制度をどのように整合させるか、これは一省だけの判断ではできる問題ではございません。これは本当にひざ突き合わせて、両大臣考え方をすり合わせまして、新しい発想というのが打ち出されるべきである、こう思うんでございますが、大臣、そのように御努力願えますでしょうか。
  130. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) せっかく厚生省のお役人さんが言っておられるんですから、それはそれなりに評価して差し上げたい、さように思いますけれども、この人は行政官でございますから、いままでの法制のあり方の上に立って、そのような間違いのないお答えをしておる、かように思いますけれども、本当に御指摘のとおり、世間も動いておりますし、政治も動いていくわけでございますから、こういった人が食べていく、生活をしていくよって立つ基本、そういったものは状況が変われば変わっていくのがあたりまえでございまして、私が厚生大臣と話をするというようなことでなくて、制度全体が、政治の姿勢といたしまして、こういったところにメスを加えていく発展的な対応といいまするものが必要だと思いますし、私も当然、今日労働大臣をさしていただいて、いつまでもやっているわけじゃありませんけれども、やめましても、そういった方向につきまして、私が私なりの努力をしていくのはあたりまえのことだと思いますから、さように心がけてまいりたい、かように思います。    〔理事降矢敬雄君退席、委員長着席〕
  131. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひそのようにお願いをいたしたい、期待いたしております。  労働大臣官房統計情報部が六月二十九日に雇用管理調査の結果を発表されております。本日は時間に規制がございますからその内容を触れませんけれども、一言で言えば六十歳定年制が主流になった、こういう胸を張っての自負でございます。そして今後の各企業の予定を見ると、あと四、五年先にはおおむね七割以上のものが六十歳定年になるであろう、こういう推定なんですね。しかし大臣、私この前社労委員会で大臣にお伺いしましたら、私は責任を持って昭和六十年に六十歳定年を実施してみせると、非常に心強い御答弁をいただいたわけでございますけれども、この雇用管理調査の結果は、大臣の決意はとうといですよ、しかし実態はそこまでなかなか至らないということが如実にこの正式の統計の中に出てきておるわけですね。  さらに、これを業種別に見ますと、金融保険業での普及が非常におくれまして、五十五歳定年制が五一・七%を占めております。これは、昨年に比べまして〇・二%しか減っておりません。また、六十歳定年制もこれらの業種につきましては二一・五%にしかすぎず、他菜種より著しく低位にございますし、さらに、将来定年年齢を改定すると決めているか、または予定する企業の調査でも、金融保険業は七四・三%が未決定であると答えております。さらに、これは定年のみに限りません。たとえば、職業安定局業務指導課が五十五年十月二十一日に発表した身体障害者の雇用状況を見ましても、金融保険、不動産業は実雇用率が〇・七一、これは製造業の一・三四に比べてきわめて劣っております。雇用率未達成の企業の割合も七三・五%を占め、製造業の三五・一%と比べまして非常に低位にございます。また、週休二日制の導入促進につきましても、その対応がおくれております。大臣は社労委員会で、昨年九月に市中銀行に対し定年延長を申し入れた、その後の進展が期待されると、こうお答えになったわけでございますけれども実態はこのとおりでございます。いわば私は、金融保険、不動産業というのは、雇用に対する政府の施策に対し最も冷淡であり、かつ非協力であるということが統計上明らかにされていると、こう思うんでございますが、大臣はこれをどう思われますか。
  132. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) あなたのおっしゃられたのは二点あるわけでございますけれども、第一点の、六十年までにおまえ偉そうなことを言って、みんなやると言ったけれども、この統計を見るとできてないじゃないかと、こうおっしゃいますけれども、六十年は大分先でございまして、今日はまだ五十六年でございますから。
  133. 柄谷道一

    柄谷道一君 四、五年先でも七割しかできないと言っているんですよ。
  134. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) いや、それは紙に書いてあるだけのことでございまして、私は紙に書いてあることをやるんじゃなくて、私のやることがやがて紙に載るわけでございますから、それは私の方に御信頼を置いていただいた方がよろしい、かように考えます。  それから金融界、特に銀行その他が定年制度につきましても、あるいは身体障害者の雇用につきましても、非常にノンアクティブだという御指摘でございますけれども、市中銀行は大体全部私の言うとおりいたしますと、こう言っておりますから、恐らくいたしましょう。ただいま御指摘のようなことが現実にまだありますのは地方銀行でございます。地方銀行におきましても、東海銀行とか、埼玉銀行とかというやつは、大体私の言っているようにやっておりますけれども、その他の方々がまだ足並みがそろってこない。これはほうっておくわけにはいきませんから、そのうちに私がお集まりを願って、強力に指導さしていただくということにいたしますから、これまた私の言い分をまるきり知らぬ顔で過ごしていくほどの度胸はない、私はかように考えておりますから、大体大丈夫であろう、かように考えております。
  135. 柄谷道一

    柄谷道一君 社労委員会と決算委員会で二回にわたり、大臣の確信ある答弁がなされたわけでございますから、私もそのとおりになると期待をいたしますし、また今後の結果を客観的に見守っていきたい。六十年までひとつ労働大臣を続けていただきたいと思います。  そこで、失業問題は人々に犠牲を負わせるものであることはこれは当然でございまして、その深刻さに比べまして、一般的な社会問題になりにくい面があると思います。私は、いまさら言うまでもございませんが、失業は重大な不公正であるばかりでなく、憎悪と恐怖を生むものなどの考え方に立った、完全歴用実現のための真剣な取り組みが必要であろう。私は昨日、通り魔殺人事件の多発の問題について、警察庁、自治省にただしたわけでございますけれども昭和五十五年、覚せい剤取締法違反者、これは一万九千九百二十一名が検挙されておりますけれども、そのうち無職者が実に一万四百七十二名を占めているわけでございます。私はこういった一つの事例をとらまえましても、労働省の推進されようとする、またされなければならない雇用対策というものが、社会問題としてもきわめて深いかかわりを持つということを十分に自覚されまして、労働省としてのなお一層の御努力を要請いたしておきたい。  そこで、次に婦人問題に触れますけれども、本年の労働白書で特に女子の問題が取り上げられました。これは昭和五十三年の白書でちょっと触れられたんでございますけれども、本格的に女子の問題が白書の中に大きく取り上げられたのはことしが初めてであろう、こう思います。そのことに対しては評価するわけでございますけれども、単に白書に書かれただけでは問題の解決にはなりません。婦人少年局長として、この白書の結果をどのように今後の施策に生かしていかれようとするのか、基本的なお考えで結構ですからお伺いいたします。
  136. 高橋久子

    説明員高橋久子君) 今回の労働白書におきまして、女子労働者実態につきつぶさに分析をいたしまして、その結果に基づいて結びの中で提言をしているわけでございます。その提言の内容は、これからの社会において婦人労働者というのはなくてはならない存在であると、その婦人労働者が平等の立場で社会の発展に参加できるようにする、男女平等を確保するということが大変必要なことであるという提言をいたしております。  私どもは、この白書におきまして分析の結果、新たに示されましたこういった問題提起というものを、私どもはこれからの行政で実現していきたい。男女平等を促進していくということの必要性を、もう一度私どもは新たに認識をいたしまして、これからの行政の中で十分にその努力をしてまいりたいと、このように考えているところでございます。
  137. 柄谷道一

    柄谷道一君 労働白書の中には、女性の能力に応じた就業分野の拡大、採用時における男女差の解消、配置、昇進、昇格、教育訓練、退職等における不合理な男女差の解消、女性の就業しやすい条件整備等について具体的に指摘されているわけでございます。その趣旨につきましては、これ何人といえども総論においては反対のないところでございます。しかし、これはすでに従来から語り尽くされ、表現し尽くされた作文であるとも言えると思います。いま強く求められておりますのは、それを実現するための具体的ハウツーではないか、こう思うのでございます。  そこで、たとえば婦人少年局は、五十二年六月、若年定年制、結婚退職制等改善年次計画を発表されました。五十五年、五十六年度に男女別定年制のうち、女子の定年年齢が五十五歳未満のものを解消する、こうされているわけでございます。ところが、本年六月二日に発表された「男女別定年制・結婚退職制等の改善状況」によりますと、これは統計の読み方なんですけれども、改善の実が上がっていることは評価します。しかし、逆にこれを読めば、女子の定年年齢が五十五歳未満の男女別定年制があるとして、重点的に指導した一万八千六百企業のうち、なお八千七百企業に男女差別が残っていると、これは逆に読めばそういうことになるんですね。労働省が五十四年度までに解消を図ろうとした四十歳未満の女予定年及び結婚、妊娠、出産退職制についても、指導した二千八百企業のうち、五百企業ではその制度が依然として残っていると。どう改善されたのかという統計を逆に読めば、まだ年次計画は達成されていないと、こういうふうに読み取れるわけでございます。私は、やはり使用者に対する適切な行政指導、環境づくり、これがまだまだ至っていないということをこの実態報告は物語るものであると思いますが、いかがですか。
  138. 高橋久子

    説明員高橋久子君) 先生がおっしゃいましたように、五十二年六月に定年制、結婚退職制等の改善の年次計画をつくってやってまいりまして、その改善状況先生がおっしゃったとおりでございます。私どもといたしましては、半数を超える企業において改善されたということについては、かなり成果があったのではないかというふうに思いますが、まだまだ多くの企業が残っているという状況でございます。  この五カ年の年次計画は、今年度が最終年次でございますので、いま地方の婦人少年室を通じまして、鋭意この改善に努めているところでございます。これらの企業において、このような差別的制度が解消ができない理由といたしまして、いろんな理由を挙げております。女子は結婚によって退職して、定年までいる者がいないからその必要はないとか、あるいは、女子は結婚すると家事、育事に追われて能率が落ちるとか、あるいは年功序列賃金のもとで、補助業務の女子は仕事と賃金とのギャップが拡大するとか、年齢が高くなると能率が下がるし、配置がえできる職種がない、あるいは厚生年金の支給開始年齢が男女で異なっている。いろんな理由を企業の方は挙げるわけでございます。  これらの企業に対しまして、私どもは、そういった理由は合理的理由にはならないということで、集団指導、あるいは個別に出向いた個別指導を行っているところでございますけれども、婦人少年室の主体的能力も十分ではございませんで、なかなかその改善は困難をきわめております。  特に、これらの職場における男女差別の問題の改善に当たって、大変困難でございますのは、一般の男女差別意識、男性と女性の固定的な役割り分担意識といったものが職場の中に反映しているというのが、私ども行政指導を大変困難にしているわけでございます。したがいまして、今年度最終年次に、私ども企業に対しまして、その改善指導をやりますのと同時に、そういった制度というものが、もはや存在すべきではないということにつきまして、関係労使、あるいは一般の認識を高めるというようなことを努めてまいりたいと、そのような形によって、この計画が達成されますように努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  139. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ御努力願いたいと思いますが、時間が参りましたので、最後に局長大臣にお伺いしたいと思うんですが、労働白書によりますと、女子の労働力率は世帯主の所得水準が低い世帯ほど高い。ことに中年層世帯ほど経済的動機による就業が多いのが実態である。こう分析されております。  ところが、雇用政策調査研究会のこの提言では、「女子就業は従来の家計補助的な家内労働から、家庭外における職場に進出しつつある。とりわけ、中年女子においては仕事は従で、短時間の勤務を希望しているものが多く、求職理由も生計上の必要からというよりは、知識や経験、あるいは余暇を活用したいからという動機づけにもとづいている。」この文章だけ見ますと、白書の婦人労働に対する分析と、大臣も評価されました雇用政策調査研究会の分析は、同じ統計を使いながら、見方が裏と表になっているわけですね。私もその根拠を時間があれば指摘したいんですけれども、その分析のもとに、なりました統計を見てみますと、問題はこれは統計の読み方だろうと思うんです。と同時に、私は痛感いたしますことは、概して言えば女子労働者の意識がきわめて多様化している。これは男子の場合とまた違った視点からの分析というものが必要であることを意味していると思いますし、それだけに婦人の雇用対策につきましては、エリートの考え方だけでは何ともならない、非常に多様化された政策の組み合わせ、これがないと労働白書に指摘しているこの問題の解決というのがきわめてむずかしいのではないか。こういう実感を、この二つの分析とそのもとになった統計資料を見れば見るほど深くするわけでございます。  時間がございませんので、また婦人問題は改めて深く御質問したいと思いますが、これらに対する局長の御所見と、締めくくりの意味において、労働大臣の今後の婦人の雇用政策に対するお考えをお伺いしまして、私の質問を終わります。
  140. 高橋久子

    説明員高橋久子君) 先生がおっしゃいますように、確かに婦人労働問題は大変多様でございます。男子の場合にも業種別等できめ細かな政策が必要とされるわけでございますけれども、婦人はさらにそれに加えまして、結婚、妊娠、出産というような、いろんな生活の問題と、職業の問題、いろんな問題が出てまいります。また、その意識につきましても、非常に多様化しているという点は御指摘のとおりでございます。それからまた、婦人の就業分野も大変最近では多方面にわたっておりまして、先生が言われましたような一部管理的専門的な職業についている者、あるいは生産現場で働いている者、いろんな多様な婦人労働者がいるわけでございます。そういった婦人労働者、いろんな婦人労働者のニーズにこたえて、きめ細かな行政を進めていくという必要性がいまほど高い時期はないというふうに考えられますので、こういった婦人労働者実態、あるいはそういったニーズがどこにあるかということを十分見きわめ、そして専門家の方々にも十分御審議をいただきまして、行政の実が上がるように努めてまいりたいこのように考えているところでございます。
  141. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) これは別の機会にも申し上げましたとおり、人口構造が非常に大きな変化をこれから遂げてまいります。特に赤ちゃんの出生が少なくなっているわけでございますから、そういった若い方々の減少といいますものを、非常に巧利的に考えて申しわけございませんけれども、補っていかなければならぬ、それは私は家庭にお入りになる御婦人に御参入を願うということが非常に大きな要素である、かように考えております。  そこで私は、いま婦人少年局長からも申し上げましたとおり、この婦人労働の問題といいまするものを特別に抜き上げて私ども考えていくということ事態が、これからは非常にその方がおかしくなる、つまり、婦人であろうと男であろうと、すべて労働というものに対するときには、全く同じスタンスでこれは考えられていかなければならぬ。ただ、私どもがそこで特別に婦人労働問題として取り上げていかなければなりませんのは、ただいま局長が申し上げましたとおり、結婚、出産、育児というような、婦人でなければならない問題がこれに伴うわけでございますから、そういったどうしても起こってくる問題を、私どもは順調に越えていくことができますような、決して保護というような横着なことは申しませんけれども、そういった当然私どもが配慮すべき、婦人問題に対して行き届いた配慮をしていくという婦人労働政策といいまするものが、労働政策と別個にそれに付随したものとして考えられてしかるべきであるということは考えておりますので、それに対しましては十二分の配慮を加えてまいりたい、かように考えます。
  142. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、産業用ロボットの雇用への影響についてお伺いをいたしたいと思います。  五十六年の六月十二日付で労働省がマイクロ・エレクトロニクスの雇用への影響に関する調査研究を発表なさっていらっしゃいますけれども、これは拝見いたしますと、「NC・MC工作機械、トランスファーマシンの導入は、かなり進んでいるものの、現在までのところ雇用に厳しい影響を及ぼすまでには至っていないと考えられる。」こういうふうに述べておられます。しかし、この中にもこのような、「これに関連する技術革新は、現在及び今後における技術革新のうちもっとも大きなものの一つであり、その影響は広範囲に及ぶものと考えられている。」というふうにも述べておられます。このような影響というのも、私も非常に広範囲に及ぶものと考えますけれども、やはり雇用に厳しい影響を与えずにはおかないのではなかろうかと、そういうふうになるのではなかろうかと憂慮されるわけでございます。こういう点、どうお考えでございましょうか。そしてまた、どのような対策をとろうとなさっておるのでしょうか。まず最初にその点をお伺いいたします。
  143. 関英夫

    説明員(関英夫君) 産業用ロボット等に象徴されますマイクロ・エレクトロニクスの導入、こういったものが雇用にさまざまな影響を及ぼすということは御指摘のとおりだろうと思います。  二つに分けて考えますと、一つにはそういったME関連の製造の業種それ自体は非常な勢いで発展しておりますので、そこにおける雇用の増というものが一方であろうかと思います。あるいは、そこにおきます熟練した労働者の養成、訓練、そういったものの必要性、そういったことが一方であろうかと思います。一方で、ME化は非常な省力化を伴うわけでございますから、そこに大きなメリットがあるわけでございますから、当然そこでの雇用量というものが減るということがあるわけでございます。ただ、従来はわが国の雇用慣行もございまして、直ちにそれを雇用人員の減に結びつけずに、配置転換で補うとか、あるいは販売額の増加で補うとか、あるいは熟練労働力の不足をNC工作機械、あるいはMC、あるいはトランスファーマシンで補ってきたというようなことがあって、従来までは余り直接的に直ちに雇用量の減にはなっていないという調査結果でございます。しかし、これから先事務部門等でオートメーション化が進んだ場合に、雇用量の減につながらないかどうか、いろんな問題があろうかと思いますし、従来の場合でもそういったME化に伴います配置転換、そういったものは行われているわけでございまして、その配置転換に伴う労働者のいろんな対応にそれなりに企業内で対応してきておりますものの、今後急速にME化が進んだ場合に、その対応にいろいろ問題があるんではないか、教育訓練の問題もございましょうし、あるいは工場がかわるということになれば、住宅その他いろんな問題が出てきましょう。それからあるいはまた新しいそういった機械といいますものは、それなりに安全衛生面でもいろんな問題を起こしてくるのでないか。従来非常に安全衛生面で危険であったとか、問題があったという点を解決するという面も非常にあろうかと思いますけれども、全く新しい機械でございます。そういう意味で新しい面のそういった問題が起こりはしないかと、いろんなことが考えられます。そういう意味で、単に雇用量ということじゃなくて、多方面にわたりまして、今後十分な調査研究が必要であろうと考えております。
  144. 安武洋子

    ○安武洋子君 いままでは雇用に直接的な影響がないというふうにとらえておられます。しかし、この報告を拝見いたしますと、常用労働者の増減状況の調査ですね、ここで昭和五十二年以降三カ年の雇用量の増減率、これは製造部門の常用労働者というのは、他の部門に比べまして、減少率、それから減少寄与率とも大きくなっております。そして規模別では千人以上の事業所で五・一%減、大変大きな減少となっております。これはNC等の導入事業所の減少が大きいというふうになっておりますように、NC等が多く導入されている大企業ほど、製造部門の常用労働者が大きく減少しているというふうなことを示していると思います。こういうことは今後この傾向が広がっていくというふうに考えるのが私は常識ではなかろうかというふうに思います。  この報告では、NC工作機械等の導入に際しまして、事業所における職種転換、それから配置転換が円滑に実施されて、直接的な人員の削減はわずかであるというふうなことが明らかになったというふうにも書かれておりますし、いまの御答弁の中にもそういう点がございました。ところが私は現場の実情というのは、なかなかそんななまやさしいものじゃないというふうに思っております。円滑に配置転換が行われているところもございましょう。しかし、多くのところ、特に大企業の中では、そんななまやさしいものでないという例を私ここにひとつ日産自動車村山工場の実例を持ってきておりますので申し上げとうございますが、日産自動車では徹底した人員削減や、工数低減の一つとして、機械化、自動化が進められてきているわけです。この機械化、自動化によって大幅に削減された労働者は、応援という形で職場転換が進められております。車体のある職場では、ロボットの導入によりまして、一直の人員三十九人が一挙に十人に減らされまして、この減らされた二十九人、これは組み立て、塗装などへの職場配置転換がなされております。この配転者の中には年配の病弱者も含まれておりまして、多くの労働者はなれない職場への配置転換で、心身ともに苦痛を感じているというふうな結果も出ておりますけれども、製造関係のある職場でコンピューターを用いたNC機械が導入されまして、古くからの旋盤など使ってきた中高年の金属工労働者に取ってかわって、若年労働者に切りかえられております。組長だった人が平に降格させられていると、こういう例も生まれております。また、ある職場の調査では、九八%の人が精神的に疲れると訴えております。このような機械化、自動化は、労働再編成とか、作業形態の変化に大きな影響をもたらしております。この機械化に伴いまして、大量に行われる応援というのは、部門部門の応援体制まで綿密に組まれて実施されているというふうなことで、恒常的に行われているそうです。この村山工場の中で応援経験者、これは工場部門はすでに七〇%に達しているというふうに言われております。しかも、本人の意思を尊重するどころか、処分を連発して応援に従わせるというふうなことも行われております。具体的にいろいろありますけれども、時間の関係上こういう例を申し上げておきたいと思いますけれども、私はこの報告のように、ただ円満に行われているんだというふうなことではなくて、いま少し実態を直視していただいて、現状を総合的に調査をしていただきたいと、こう思いますが、いかがお考えでございましょうか。
  145. 関英夫

    説明員(関英夫君) 調査はちょうどオイルショック後の雇用調整が産業全般として行われた時期等が含まれていることもございまして、製造業全体で常用数が減っている時期でございます。そういう意味で、雇用量の減というものが、受注量の減等もあって行われたというような回答もございまして、必ずしもこのNC、MCあるいはトランスファーマシンの導入に伴って、直接的に行われたということでもないかとも思いますし、また調査の中で、これら機械の導入に当たっての処理方法として、職種転換及び配置転換が中心でございまして、直接的な人員削減を行った事業所は非常に少ないということが出ております。配置転換が六五・二%で最も高く、雇用調整を行ったとする事業所はわずか三・九%でございます。そういう意味で、こういった機械の導入に伴って直ちに雇用量に響いてくるということはないと思いますが、御指摘のとおり、また私も申し上げておりますように、必ず省力化が伴うわけでございまして、そこにメリットがあるわけでございますから、どうしても配置転換あるいは職種の転換、そういったことが必要になってくる場合がこれからも多いと思います、そういう場合にどのように対応していって、円滑な転換を図っていくかということが、今後の最大の課題であろうと思いますので、そういう点も含めて、単に量的側面だけでなく、質的な面も含めて、十分な調査検討を行ってまいりたいと思っております。
  146. 安武洋子

    ○安武洋子君 その点は十分にお願いしておきます。やはり量的な変化だけでなく、労働条件の大きな変化を来すわけです。  次にお伺いいたしますけれども、兵庫県の川崎重工業明石工場、ここで七月四日の午前五時十分ごろに、発動機事業部第二製造部工作課第一係、ここの浦田憲二さんという方、三十七歳の方ですけれども、休日に夜勤出勤を命ぜられて作業中に、作業用の機械とユニメートロボットの先端部分にはさまれて圧死されると、こういう痛ましい事故が起こっております。この事故の経過は御存じでございましょうか。御存じならその経過とその状況、原因、これをお聞かせ願いとうございます。
  147. 小俣和夫

    説明員(小俣和夫君) 七月四日川崎重工の明石工場で自動車用歯車の仕上げ加工を担当しておりました労働者が、故障中のシェービング加工機でございますが、これの調整をしておりましたところ、歯車の着脱用の産業用ロボットが突然作動いたしまして、そのロボットのアームとシェービング加工機械との間に胸部をはさまれまして亡くなったと、こういう事故が発生、報告を受けております。  原因としましては、単独作業でございますんで、目撃者の証言とか、そういったものが取れておらないというような実情でございまして、明確ではございませんが、現在わかっておるところでは、機械をとめて入るという作業手順になっておるところを、機械を全体をとめませんで、個々の機械をとめておやりになった。その結果ロボットが作動をしてはさまれたのではなかろうかと、こんなような状況でございます。
  148. 安武洋子

    ○安武洋子君 私の調査で承知しておりますところでは、この事故に遭ったときに気づいた人はだれもいないわけですね。たまたま通りかかった労働者が発見をしたというふうなことです。ここではこのロボット導入で、六名いた労働者が一人で十四台の機械を持って、一人ラインというふうなことで、操作は本人にしかわからないというふうになっております。この事故が発見されたときに、ほかの人では操作がわからないから、ほかの人ではどうにもならなかったというふうなことで、ガス溶接で切断をしてこの本人を機械から外したというふうなことなんですね。この職場では残業が月に六十時間から七十時間もあるし、多いときでは月三回の休日出勤、そして隔週の夜勤の二交代があるというふうなことで、常時組み立てラインをとめるなどか、誤差を出すなとかというふうなことが言われているそうです。ですから、やはり全部の機械をとめるということについて、本人にいろいろの迷いがあったのではなかろうかというふうなことも考えられますし、当日二十数名の夜勤、休日出勤がおりますけれども、責任を持つ職制はいないというふうな中で、こういう事故が起こったというふうにも聞いております。この事故を起こしたロボットというのは、これまでも労働者の手に重傷を負わせたり、それから腰ですね、腰部を強打するというふうな事故を起こしている。機械にも悪い機械があるんでしょうか、いわくつきのロボットだったそうです。いわゆる産業ロボットによる死傷事故というのは、払いままであったのかどうか、あったとすればどれぐらいなのかということをまずお伺いしたいと思います。
  149. 小俣和夫

    説明員(小俣和夫君) 私どもの方で、産業用ロボットという形で災害を統計として把握してはおりません。
  150. 安武洋子

    ○安武洋子君 ということは、いままではそういう事故を全然把握していないからないという、そういうことですか。
  151. 小俣和夫

    説明員(小俣和夫君) 産業用ロボットという形で現在まで私どもまだ災害統計等が完備しておりませんので、個々の事案としてありますが、一般機械としての災害の中に包括してとらえていると、こういうことでございます。
  152. 安武洋子

    ○安武洋子君 まず、私いま申し上げました川崎重工業のこの明石工場の事故について十分調査浄していただいて、原因がどこら辺にあったのかということを把握していただきとうございます。その結果をお知らせくださいますでしょうか。
  153. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 十分把握をいたしまして御報告申し上げます。
  154. 安武洋子

    ○安武洋子君 ロボットの生産とか、それから導入とかと、これは大変著しく増加をしていると思うんです。八〇年では産業用ロボット工業の調査によりますと、約五万七千台稼働いたしております。労働省が御調査なさっておりますのでも、一般機械機具製造業だけ、これだけでも半数の事業所でNC工作機械等を導入して、保有台数というのは一万四千八百一台というふうになっているというふうに調査されております。これは今後私はますます増加していくだろうというふうに思うわけですけれども、現在このようなロボットなどについて、私は一体どのような安全対策を講じられているのかということをお伺いいたしとうございます。
  155. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 産業用ロボット、あるいはマイコンという新しい一つの流れに対応して、どういう対策をとるかということは、非常に重要なことだと思います。現在のところは、安全衛生規則を適用いたしまして、一般機械の範疇の中にロボットが入っているという状況でございまして、先ほどの明石工場の事故につきましても、その法規的な規制は、先ほど申し上げましたように点検、修理をやる場合には電源をとめるという規定がございます。これは一般機械の安衛規則の範晴に入っているわけでございます。これが現在の状況です。  ただしかし、これから産業用ロボットが広範に事業場の中に入ってまいりますと思いますし、またそれが将来大変な問題になるということが先ほど来の御議論であったわけでありますが、そこで労働安全の面からこれを見ますと、幾つかの要素があると思います。一つは非常に有害な環境あるいは有害な物質、そういうものの作業の現場にそういう産業用ロボットが入ってくるということは、これは人体の保護という面から好ましい面があると思います。しかし一方、一つは先ほど先生指摘のように、ロボットという新しいシステムに随判する新しい形の安全基準が必要かどうかという問題が別途あるわけでございます。その場合に、もう一つはロボットを監視する労働というものの場合に、いわば単調労働といいますか、非常に単純な労働の形態、あるいは非常に孤独な労働の状態、そういうものに対して精神的な面からの対応、こういう面が考えられるだろうと思います。  ところで、現在ロボット等の導入に伴って、労働安全衛生の面からどういう検討を行っているかということでございますが、本年度におきまして産業安全研究所におきまして、ロボットの幾つかのパターンに伴う安全上の諸問題について検討に入っております。さらに、この問題について、今後とも引き続き拡大をしながら、これについての新しい基準の開発を行うかどうか、その辺の検討をいたしたいと思っておりますし、また現に、現在の安全衛生規則で行われている、その中の範疇に入っている規制の体制を、さらにそれを強化しながら、これに対する対策を当面とってまいりたいというように考えております。
  156. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、いまの新しいロボットなどというものが、どんどんどんどん導入されるわけですね。そしてそれに対する安全の基準としては、一般の回転軸等による危険防止ですか、百一条、おおむねこの中に含まれるんだろうというふうに思うわけなんです。ですけれども、神戸製鋼所の脇浜工場、ここで二年前にオートメ化に伴う事故がございました。ここでは、この安全規則にはうたわれておりませんけれども、人がロボットに近づいていくと光線などでキャッチをして自動的に電源がとまるというふうに設備を改めております。私はやはり省力化が進んで、ロボットがどんどん導入されていくというふうなことになりますと、先ほど申し上げた川崎重工業明石工場ですね、こういう事故がこれからも起こる可能性をはらんでいると思うんですね。しかし、起こっては大変だということで、やはりロボットに人が一定の距離近づくと光線などでキャッチをして、そして機械が自動的にとまるというふうにやはりすべきだというふうに思うんです。こういうことは安全規準のどこを見ても書いてありませんから、安全基準に加えてこれをやはり載せるというふうなことも含めまして、新しい機械による新しい災害を防止する総合的な安全対策、これを調査、充実していく必要があるのではなかろうか。いまこの時期にロボットに対しての安全を十分やっていただかないといけないのではないかと思うんです。大臣、先ほどからの論議を聞いていただいておわかりだろうと思いますけれども大臣は私のいまの提案をいかがお考えでございましょうか。ぜひやっていただきたいと思いますが。
  157. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 環境が変わるわけでございますから、法制はその環境に合わせて変えていかなければならぬ、御指摘のとおりだと思いますよ。でございますから、それやらなきゃなりませんけれども、私が考えますのは、ただいまのこの時期におきますNC、MC、トランスファーマシンというようなものの導入は、その第一段階でございまして、これからもっともっと私は大きな変革が起こり得るであろう、また必ずそうなっていくというように思います。したがいまして、今後の労働とその安全というような、私ども人間の一番大切な働く環境、働く者の福祉、そういったものを増進するのがこれは政治の目的でございますから、法制は当然そのように逐次段階を追って、よりその環境の変化にふさわしいものに変えていかなければならぬ。それに怯懦であってはいけない、かように思いますから、どんどんやります。
  158. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは労働安全衛生法の第三条にも、やはり「労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な作業環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」ともうたってございますし、いまの大臣の御決意で、ぜひロボットに対する安全対策を十分立てていただきたい、このように希望いたします。  次に、一般的な意味でお伺いいたしますけれども労働災害であろうとなかろうと、患者が医者にかかる場合に、どの医者を選ぶかということは全く本人の自由意思によって選ぶべきものだというふうに考えますが、この点いかがでございましょうか。ちょっと時間がないので、簡単にお答えください。
  159. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 労働省の場合に、労災保険が当面の担当でございますが、御指摘のように、被災労働者がその傷病を治療する医師を選択することは、本人の自由な意思にゆだねられるべきだと思います。
  160. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま多くの大企業では、直接病院を経営いたしております。労災などの患者が発生しましたときに、自分のところの病院以外で治療することを制限している例が大変多うございます。たとえば三菱電機では三菱病院とか、住友金属では住友病院とか、川崎製鐵では神鋼病院というふうに指定をしているわけですね。ここに私持ってきておりますけれども、川崎製鐵阪神製造所の場合、これ川崎製鐵阪神製造所の安全衛生課発行で、「負傷者の取扱いおよび処理要領」、これをつくっておりますけれども、これによりますと八条で「無断で診療所以外の医療機関で診療を受けてはならない。」、無断診療の禁止の条項、「無断診療の禁止」ということで条項をつくっているわけです。また、七条で「転医を必要とする場合は安全衛生課に連絡してその指示に従わなければならない。」、こういうふうになっております。転医が必要かどうかというのは医者とか、あるいは患者自身が判断するべき問題であって、そして患者の医師選択の自由は、先ほどの御答弁にもありますように、制限するものではないというふうに思います。すでにこの件につきましては、一労働者が神戸の東労働基準監督署提出をしておりますので、私は、この件については御存じだろうと思いますけれども、私はこれは改善すべきだというふうに思います。この点いかがお考えでございましょうか、御見解をお伺いいたします。
  161. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 先ほど申し上げましたように、患者の自由であることは原則としてそのとおりでございます。その実態につきましてもう少し検討さしていただきまして、調べさしていただいて、また御報告したいと思います。
  162. 安武洋子

    ○安武洋子君 やはり患者が医者を選ぶ、これは自由であるということは明々白々なわけです。ですから、ここに規則がうたわれておりますのは、それに私は明らかに違反していると思うわけですね。無断診療の禁止というふうなことで、それから転院を必要とするときも、これはやはり指示を受けなければならないとかというふうなことになっておりまして、これは本人の申告も出ていることですから、早急にこの実態を調べていただきまして、私が申し上げたとおりであれば、そういうことを是正するようにということでやっていただきたいと思います。御返事をお待ちいたしております。終わります。
  163. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  164. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 速記を起こして。  ほかに発言もないようですから、労働省決算についてはこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十二分散会      —————・—————