○木島則夫君 私は、せんだっての連合審査を踏まえた上で、私が聞きたかったことが時間の制約上聞けませんでしたので、あえて
難民条約の審議に入る前にその問題について聞いておきたいと思います。
核を積載をする核積載艦船のわが国への寄港、通過については、政府は、園田外相、駐日マンスフィールド・
アメリカ大使との間で寄港、通過も事前協議の
対象にするとの再確認を盾にしまして、
アメリカから事前協議の申し入れがなかった以上持ち込みはなかった、今後も日米信頼
関係のもとに非核三原則を堅持をするということで議論を押し通されたわけでございます。しかしこの説明は、有事即応体制にある第七艦隊が寄港、通過に先立って海外の基地に核兵器をおろしてくるという、われわれ専門的な知識のない者でも常識的に考えてあり得ない前提に立っていることが、改めて浮き彫りにされたと思います。また、
アメリカ側は核の存在について肯定も否定もしない政策をとっている上に、
日本側には立ち入り検査ができない制約がある。したがって、持ち込ませずというこの条項は、検証をすることが不可能なんだという側面のあることも浮き彫りをさせたわけだと思います。
こうした
状況の中で、鈴木総理は現在の状態が日米の納得できる接点だと答弁をされている。私の質問に対してこの答えが返ってきた。そして、良心に誓って核が持ち込まれていないと信じている、こう言われたのでありましたが、余りにもたてまえと現実が離れ過ぎておりまして、これでいいのかということが改めて論議の的にならざるを得ない、こういう印象を私は深めたわけであります。これはこれとしてきょうはおいておきます。
さらに、きょう伺いたいこと、問題として考えなければならない点として、核抑止力による安全保障の実態、そして将来の方向についての総合的な見方が、せんだっての連合審査においてもう少しなされた方がよかったのではないか、こういう印象でございます。
日本政府は、これまでの説明で
日本本土内に核を持ち込まなくても十分に抑止力は生ずると説明されてきた。しかし、一九七〇年代以降、核兵器の性能向上は著しいものがあります。こういった変遷は、結果として戦略核、戦域核、戦術核の総合的な均衡と効果的な運用が重視されなければならない
状況を好むと好まざるとにかかわらずつくってしまっている。これが現実です。
かつては、米ソが核ミサイルを撃ち合うという想定でしか考えられなかった核戦争、こういうものであったのだが、アジアではソ連が中距離移動式核ミサイルSS20あるいは超音速中型爆撃機バックファイアを極東に配備するに至って、その危機感はきわめて大きいものになりつつある。つまり、
日本列島がその射程にすっぽりと入ってしまったからであります。これに対応する
アメリカ側の抑止力というものは、
一つはポラリス型原潜をして戦域核的な運用をするというやり方で対抗をしているようだけれども、このポラリス型も聞くところによると来年じゅうには退役をするということです。そして、こういうものを補う
意味として巡洋艦に戦域核ミサイルを積載することを検討をしている、こういうことも私は聞いているわけでございます。つまり、
アメリカ政府は、アジアでも局地的、限定的な核戦争に対応できるような近代的戦域核の体制の確立を痛感し始めていて、統合的な戦域核戦力の改善計画に着手しているようですね。こういうことが言えると思う。こういうように戦略核とか戦域核とかあるいは戦術核が複雑に絡み合った形で抑止力が形成をされているし、されようとしている。ここまでが前提であります。
そこで、その核抑止力による安全保障の実態と将来の方向をどう認識したらよいかということ、これは、きょうは防衛庁の方おいでになりませんから、
外務省的な立場での御認識を私はいただきたい。きょうで
委員会終わりですから、私も突っ込んだ質問をしたつもりでありますから、ひとつ
外務省も大臣も、こういった、つまりいま言ったような複雑な形で絡み合った抑止力が形成をされている現在、またされようとしている、そういう中で核抑止力による安全保障の実態をどう認識されて、将来の方向をどう認識したらいいかということを、せっかく最後の
委員会でありますから、外務大臣に伺っておきたいと思う。