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1981-05-12 第94回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

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  1. 理事の辞任及び補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査 (会議録情報)

    昭和五十六年五月十二日(火曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      下田 京子君     立木  洋君  四月三十日     辞任         補欠選任      田沢 智治君     浅野  拡君      谷川 寛三君     安孫子藤吉君      名尾 良孝君     中山 太郎君  五月一日     辞任         補欠選任      浅野  拡君     永野 嚴雄君      川村 清一君     田中寿美子君  五月六日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     園田 清充君      安孫子藤吉君     江藤  智君  五月九日     辞任         補欠選任      江藤  智君     安孫子藤吉君      園田 清充君     中山 太郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        外務大臣官房審        議官       関  栄次君        外務大臣官房外        務参事官     渡辺 幸治君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省条約局長  伊達 宗起君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局運        用第二課長    芥川 哲士君        外務省北米局外        務参事官     松田 慶文君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (日米首脳会談に関する件)  (フランスの政権交代に関する件)  (秋田沖における日米共同演習と漁業問題に関  する件)  (米国のアジア政策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、理事辞任についてお諮りいたします。  宮崎正義君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事渋谷邦彦君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 日米首脳会談が行われたわけでございますが、どうも外務大臣大変御苦労さまでございました。まあこの首脳会談の全貌については、もうすでに報道等によってわれわれもある程度承知しておるわけでありますが、参議院の方は本会議での正式な報告をまだ伺っていないわけであります。  そこで、時間が余りないものですから、概略外務大臣からお話しいただくのと同時に、この会談についての各国の反応といいますか、いろいろとあろうと思いますが、特に、昨日、この外務委員会のメンバーで秦野委員長が座長になっていただいて、ポリャソスキー大使との懇談会を行ったわけであります。その席で、ポリャンスキー大使から、ソ連行動についてこの日米首脳会談冒頭の方で述べられている、ある意味で言うと、ソビエトを対象とした対策といいますか、そういうものがこの中に盛り込まれているのじゃないかという憂慮を表明されたわけであります。この点について、私どもとしましても、ソビエトを、まあ言葉が悪いかもしれませんが、日本仮想敵国といいますか、そういうふうなことで取り扱っていくような感じもしないではない。その点について外務大臣から最初にお伺いをいたしたいと思います。
  7. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 御質問でございますが、今度の会談あるいは共同声明等を通しまして、いま先生のおっしゃった国際緊張というものがどういう理由で起きているかということで国際情勢認識という話があったわけでございますが、その中で、ソ連アフガニスタンに対する軍事介入、その他一連の行動がやはり国際緊張に大きな影響をもたらしているということにつきましては、両首脳認識が一致したことは確かでございます。ただ、そういうことは、ソ連に対決するとか、それを先生のいまおっしゃった仮想敵国考えるとか、そういうことを頭に置いて会談をし、あるいは共同声明をつくったということではございませんで、何としても緊張緩和ということをしなければいかない、世界の平和というものの確保、繁栄の確保ということをやらなければならぬということで、一つとしてアメリカ防衛ということに、力のバランスといいますか、そういうことに非常に力を入れているのは御承知のとおりでございますが、首脳会談の間でも、その力のバランスということとあわせて、やはり話し合いという窓を開いて、話し合いで平和を達成していくということも必要でないかということは、これは日米とも意見は一致しているわけでございまして、私とヘイグさんが会ったときにも、ヨーロッパで今年中に戦域核話し合いソ連とするのだ、九月にも、国連総会ではグロムイコ外相と会って話すつもりだということを言っておりましたし、文字どおりの首脳会談でも、レーガン大統領防衛の問題あるいは経済の問題、そういう問題についてソ連話し合いをすることは、もうこれは必要だと思うし、そういう窓口をあけておくことも大切だと。穀物禁輸解除の問題も、そういうことの一つのあらわれとしてそういうことをやったのだという説明がございまして、先生のおっしゃっているような、日本としてソ連仮想敵国とか、あるいはことごとソ連と対決するという意味で今度の話し合いをしたということはないわけでございます。ただ、一般の国際情勢認識の中に、ソ連行動というものがそういうことに非常に大きな関係があるんだということは、これは共通した認識ということでございます。
  8. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そうしますと、共同声明の中に盛られているのを見ますと、対ソ共同政策、これ二番目になろうと思いますが、対ソビエト政策というものが共同声明の相当前の部分に、二番目に出てくるわけですね。ですから、これについては相当共同声明としては重要視しているのだというふうに解釈をされると思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  9. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 二番目に書きましたのは、これは両首脳ソ連軍事力増強、それからアフガニスタンへの軍事介入、その他の地域におけるソ連の動きに対して憂慮の念を示したということと、ソ連アフガニスタン介入は容認できないということを言ったことと、あとポーランドの問題をこれは述べたわけでございまして、西側先進民主主義国が協力して協調した政策を遂行するということは、ポーランド軍事介入ということが、もしポーランドに対する介入が起きた場合には、ということでこれは二番目に書いてあるわけでございまして、このことは前から申し上げておるわけでございますが、もしもポーランドヘの介入というようなことが起きた場合には西側としては、全部同じことをやるという意味じゃございませんが、協調した政策をとるということにつきましては、その必要があるだろうということについては前々からお話しをし、ここでもお答えをしておりますので、これは従来と特に変わったことは、これはないわけでございまして、従来の考え方をここで述べたということでございます。
  10. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 それから冒頭の方に、これ衆議院外務委員会でも恐らく質問があったのじゃないかと思いますが、「同盟関係」という言葉を使われておるわけですね。「関係」とついておりますが、「同盟関係」。これは恐らく共同声明の場合ですと、日本語とそれから英文と両方でもって発表されるのだと思うのですが、この「同盟」という問題ですね。これについての理解が、アメリカ日本解釈が違うような印象を私持っているわけです。たとえば、英文では一体どういう文字を使ったか。衆議院での議論の中で出てきているのですが、アライアンスという言葉だというふうに言われているのですけれども英文の場合はアライアンスを使ってますか。
  11. 政府委員(淺尾新一郎君)(淺尾新一郎)

    政府委員淺尾新一郎君) 英文アライアンスでございます。
  12. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そうしますと、これはまさに「同盟」というふうに訳してあるわけなんですが、このアライアンスというのは一体どういう意味か。これはちょっと解釈のしようによって違うかもしれませんが、一般的には、二つまたはそれ以上の国家が相互援助防衛のために形成する連合と、こういうふうに一般的に訳されておるわけですね。  そうすると、外務大臣がきのうでしたか、おっしゃっておられたのは、相互援助の方を強調されておられたような気がするのですが、防衛のために形成する連合ということも含まれたものがいわゆる「同盟」、アライアンスというふうな意味であると、こういうことになりますと、いわゆる集団防衛ということを意味してくるのじゃなかろうか、私はそういうふうに考えるのですけれども、その点いかがでしょうか。
  13. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) ここに「同盟関係」と使いましたのは、日本アメリカとの緊密な連帯関係ということをあらわす意味でこれは書いたのでございますが、ここにありますように、これは、「民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれていること」ということで、日米の広い関係の緊密な連帯関係ということをあらわす意味で使ったのでございますが、実は、この言葉は去年もおととしも、これは亡くなった大平総理でございますが、アメリカへ行ったときに演説とかその他で使っている言葉でございます。  私どもがこれを使いましたのは、いま申し上げましたように、日本アメリカというのは、外交日米関係というのは基軸であり、これはもう日本外交の本当の基礎になるものだと、それで日米関係というのは緊密な連帯関係にあるのだということで使ったわけでございまして、よく軍事的な目的を意味して使ったのじゃないかとか、いろいろ質問をされる方があるのですが、そういう意味ではちっともないわけでございます。  御承知のような、安保条約、二十数年前にもうつくってあるわけでございますが、これではまさに片務的でございまして、憲法でも集団自衛権というのはもう認められてない、個別自衛権だけでございますので、日本を守るというだけでございます。双務的なものは全然入ってない、憲法もそれを認めてないという前提に立っての「同盟関係」ということでございますので、特に新しく軍事上のことを頭に置いて、双務的なことを頭に置いてというようなことは、全然これはないわけでございます。  防衛のところでも、実はレーガン大統領日本憲法を改正してくださいとか、そういうことは全然考えていませんということをわざわざ言ったのでございますので、いま先生おっしゃったように、これは双務的な、あるいは集団自衛権的な、そういう考えというものはこれは毛頭この中には考えてないということでございます。
  14. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 集団自衛的な考えを持たないで、この「同盟」という言葉を使うのに合意したと、こういうふうなことだと思いますけれども、これは、大体この言葉アメリカ側から提示された言葉だというふうに言われていますが、事実そうでしょうか。
  15. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) この共同声明の中にいろいろございますが、どっちがどう言ってどっちがどうしたんだということは、私はそういうことはいろいろな関係お答えは差し控えたいと思うのですが、「同盟関係」、「同盟」ということは日本側からも去年もおととしもこれは言っているわけでございまして、特にどっち側が強く言ってどうだということじゃなくて、日本側でもこういうことは頭に置き、去年、おととしからも言っていたことでございますので、私はこれが、これによって日米関係というものが従来より変わったものになる、質的に変わったものになるんだとか、そういうことは全然ない、いまの関係そのままをこういう言葉で言いあらわしたというふうに考えております。
  16. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 日本側としてはそういう解釈をしているとおっしゃるわけですが、アメリカ側も全く同じ解釈をしているかどうか。これはどうもちょっと確認できないのでわかりませんけれども、この共同声明というのは全世界に発表するわけですね。そうしますと、やはり他の国々が恐らく英文で見るのじゃないかと思うんです。そういった場合に、やはりいまさっき私が懸念しているようなことを感じ取るのじゃなかろうかと私は思うものですから、そういう意味でこの「同盟」という言葉にちょっと固執したわけなんですが、その点、もしくはいま外務大臣がおっしゃったようなことでお互いに合意し、何か取り決めでもする、あるいは話し合いをして十分確認してあるということであればまあ解釈という問題に尽きてしまうのじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。ですからこの点、私としてはどうも一歩踏み出してしまったのじゃなかろうかという感じがしないでもない。というのは、「同盟」というのは普通防衛というものが必ず絡んでくるものであるし、しかも日米安保があるわけですね。その中でこの「同盟」という言葉をわざわざ使うということは、非常に一歩踏み出したという印象を受けざるを得ないものですから、そういう意味でいま質問さしていただいたわけなんです。  それからさらにもう一つは、「日米両国間において適切な役割分担」という言葉も使われておるわけです。これもまた衆議院であるいは質問があったと思いますけれども、この「適切な役割分担」というのは非常に抽象的な表現なんですが、具体的には一体どういうことを想定してこういう言葉を使われたのか、その点ひとつ御説明いただきたい。
  17. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) いま松前さんのおっしゃったのは、この八項の中だと思うのでございますが、「両者は、日本防衛並び極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割分担が望ましいことを認めた。」、こういうところの御質問じゃないかと思うのでございますが、首脳会談でも、さっき申し上げましたようにアメリカ側はもう日本憲法を改正してくれとか、日本防衛の問題でいろいろな強制、そういうことはしませんというようなことを首脳会談でもこれはもうはっきり出たわけでございまして、鈴木総理日本防衛に対する考え方、これは国会でおっしゃったと同じ、もうはっきり向こう側にできること、できないことというようなことをおっしゃったわけでございます。そういうことが前提にあるわけでございますが、ここに書いてあります「適切な役割」ということであれば、一つ日本防衛という問題と、もう一つ極東の平和、安定ということに絡んでの「適切な役割分担」ということになるわけでございますが、日本防衛ということにつきましては、これは御承知のような安保条約日米がそれぞれ協議をして、防衛庁協議もしてあるわけでございますが、そういう役割りについて相談をしていることはそのとおりでございますし、極東の平和、安定ということになりますと、日本役割りというものはそこでどういうことかと言いますれば、極東の平和、安定のためには在日米軍があり、施設区域を提供しているというのは日本役割り一つであり、あと軍事力極東の平和、安定に日本役割り分担するということはこれはできないわけでございますので、これははっきりしている。経済協力でございますとか外交でございますとか技術協力でございますとか、いろんな軍事力を除いた広い面で日本役割り分担をしていくというのが「適切な役割分担」だというふうに両者話し合いをしたわけでございまして、何もこれによって新しい日本役割りを何か分担するとかそういうことは考えていない。いま言ったことが日本の適切な役割り分担であろうというふうに考えてこれを書いているわけでございます。
  18. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そういうふうにおっしゃるのですが、総理プレスクラブでの記者団との会見のときの記者団質問に対して、防衛努力について述べられておるわけなんですが、その中で、日本周辺海域数百海里、シーレーンについては千海里と、こういう具体的な数字が出てきておるんですね。これは前にも私この委員会指摘はしたんですが、もうすでにこの件についてはアメリカ側から前から要望されていたんだと私は思っておるわけなんですが、この中の数百海里というのは二百海里から九百海里まであるんですね。非常に広い範囲なんですが、こういった具体的数字が出てきたということ、これがやはり軍事的に何ら新しい拡大をしないということをおっしゃいますけれども、どうもこれが分担の一部じゃないかと私ども理解せざるを得ない、その点についていかがでしょうか。
  19. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 総理プレスクラブでおっしゃったことはいま松前さん言われたとおりでございますが、これは国会で何回も総理も言われ、防衛庁側も長官初め皆言われ、私も使ったことがございますが、そのことのとおりこれは総理おっしゃったわけでございまして、これが何も新しく役割り分担を引き受けたんだという意味では私は全然ない。総理もそんなお気持ちはなかったわけでございまして、国会で答弁していられることは当然もうアメリカの方にもマスコミを通じて行っているわけでございましょうし、それと同じことを実は言われたわけでございます。でございますので、私どもは今度向こうへ行って話して、新しい何か役割り分担を引き受けたんだとか約束したんだとか、そういうことは実は全然ございません。国会総理が言われたとおりのことを言われたということでございます。
  20. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そうしますと、この日本周辺海域数百海里、シーレーンについては千海里というのはもうあたりまえのことで、今後こういう体制をとっていくと、こういうふうに発表されたというふうに理解してよろしゅうございますか。
  21. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 従来どおりということでございます。
  22. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そうしますと、このシーレーンというやつですね、これ一体どういう、大体航路帯というふうなことだろうと思いますが、どういう範囲を指して言っているのか。シーレーンというのは、船ですから道路ができているわけではないんですから、当然船は自由に航行するわけですね、太平洋の上を自由に航行する。そうしますと、千海里というのは、東京だったら東京を中心にして千海里の半径部分というふうに理解されるのですけれども、その点いかがですか。
  23. 政府委員(淺尾新一郎君)(淺尾新一郎)

    政府委員淺尾新一郎君) 防衛力整備の目標として防衛庁考えているのは、まず周辺数百海里ということです。それから、いま御引用になりました航路帯、これは二つありまして、南東南西がある。南東の場合は京浜地区からグアムへ伸びる線、南西は阪神からフィリピンへ伸びる線ということでございまして、そこで考えている航路帯にどの程度の幅があるかということでございますが、これは航路帯性格上何マイルというふうに厳密な意味で規定されているわけではございません。ですから、いま先生が言われた千海里の弧を描くという考えではなくて、弧を描くのは周辺数百海里でございます。
  24. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 しかし、その航路が決まっていないのですから、結局はあっちこっちにみんな出ていったら全部弧を描いたのと同じことになるわけですね。その点いかがですか。
  25. 政府委員(淺尾新一郎君)(淺尾新一郎)

    政府委員淺尾新一郎君) これは防衛力整備の大綱でございますので、厳格には防衛庁の方が権威ある説明ができると思いますけれども、一応いま言っております航路帯というのはやはり一つの帯ということでございますので、どこまでも広がるという性格というふうにわれわれは理解しておりません。
  26. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そういうふうに言われればそれっきりになってしまうのですけれどもね。またもう一つ数百海里と言うんですね。数百海里というのが、数百海里というと千海里までの寸前まで含むわけですから、私はその二つの文章を重ねてみると、結局は千海里半径ぐらいのところですね、すべての海域というふうにこれはとっても一向差し支えないような表現になっているわけですね。どうもいままでかつて、去年でしたか、予算委員会のときは、こういうことはありませんということをおっしゃっておいて、最近になってだんだんなし崩しにこうやってふやしてくると、こういうふうな印象を私持っているから、余りその言葉信頼感を持っていないのですけれどもね。私の理解では、これは数百海里というのは二百海里以上九百九十海里まである、九百九十九まであるというふうに解釈するのですが、そうなるとほとんどの水域が入ってしまう、こういう解釈を私はとっているのですが。しかし、帯というふうにおっしゃれば帯の幅がどのぐらいかわかりませんけれども、その辺から先はもう水かけ論になりますからやりませんけれども、その辺ちょっと私としてはまだ疑念を持っておるわけです。  それからさらに、ホワイトハウス筋から役割り分担として、さっきの役割り分担に関してですが、特に内容を指定されたことというのはございますか。
  27. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) ホワイトハウス大統領それからブッシュさんやなんかと会ったのでございますが、その役割り分担の中身についてどういうことという具体的なことは、大統領とかブッシュさんの話では出たことはございません。
  28. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 これは報道ですから、果たしてどうかわかりませんが、監視機構分担ですね、監視機構。これは恐らく対潜あるいは対空の監視機構だと思うのですが、こういう分担を挙げているというふうに報道されているのですが、これは事実でしょうか。
  29. 政府委員(淺尾新一郎君)(淺尾新一郎)

    政府委員淺尾新一郎君) いま御指摘になりましたホワイトハウス筋というのはどういうことをお指しになっているかわかりませんで、私たちもそういうことをホワイトハウスの人が報道関係者に話したのかどうかということを調査しておりますけれども、具体的にいま御質問のありましたような点、すなわちその監視機構を特記して日本にやれということを向こう側が今回の会談で具体的に話したということはございません。
  30. 松前達郎君(松前達郎)

    松前達郎君 そうしますと、正面切ってそういうことを言われたことはないというふうに解釈していいわけですね。  それから、時間がもうほとんどありませんが、アジアの平和のところで、共同声明ですが、朝鮮半島における平和維持促進について触れているわけなんですが、この促進という意味ですがね、これは一体どういうふうな促進というふうに解釈をされているのか。それから在韓米軍がいるわけですから、やはりその例によって力の対決のバランス上の問題で平和を維持しようというのか、あるいはそうじゃなくて、南北の統一とかそういった新たな方向についての促進考えておられるのか、その点についての解釈、どういう解釈をしておられるか、それについてお伺いします。
  31. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 朝鮮半島の平和の促進という意味でございますが、この中で一つ在韓米軍のことを評価していることがございます。でございますので、日本としましては、朝鮮半島全部の平和の促進ということがアジアの平和にとって大切だというのは、前々からの主張でございます。その方法論の問題で、こうやったがいい、こうやったがいいということまで中に立ち入った議論はございませんでした。でございますので、いま先生がおっしゃった統一とかそういう話は出なかったのでございますが、アメリカアメリカで在韓米軍を置いて、そして北からの南進を防いで、そういうことが起こらぬようにしてあの朝鮮半島に平和を保っていくという、それを、平和の促進ということを考えておることはもう確かでございますし、日本ももちろん韓国と友好関係、平和友好関係を結んでいるわけでございますから、これの経済協力をするということは、当然日本としましてこれはやっていくということでございますが、さらに日本としましてやはり朝鮮半島にはそういうことをやると同時に、その平和の環境ができるような環境づくりをしていくというのがまた日本の平和促進の努力だろうと思うわけでございます。内容につきましてどういう方法でどういうことをやるということまでは話は首脳会談ではなかったのでございますが、互いに朝鮮半島の平和というものができるように努力をしようという意味話し合いはございました。
  32. 戸叶武君(戸叶武)

    戸叶武君 外務大臣の予定は、今後も国際会議にはいろいろ出席しなけりゃならないのでさぞかしお忙しいと思います。そこで、今後この間々をとって内閣の持っている外交方針を聞かなけりゃならないという変則のような状態に国会が振り回されていますが、私たちはいまのような激動変革の時代、それもやむを得ないと思います。したがって、最も効果ある形において時間を割いてもらって、やはり外交権は内閣にあるといいますけれども、主権者である国民の合意を得ないで条約の締結その他もできないということは、よく内閣も知っていると思います。そこで、私たちは主権者としての国民を代表して、国会の権威というものが内閣のみに振り回される、内閣を運営していくところの一党独裁的ないまの動きと、それからこれに癒着した財界と及び大企業、財界といっても大企業とそれからそれに仕える官僚、こういう形の三位一体のいまの変則的な政治に対して、国民の代表機関としての国会がここにいるんだぞということを絶えず内閣にも知らせておく必要があると思うのです。それは一国の外交及び防衛の問題で一歩誤まると祖国の運命を危うくする危険性があるからであります。  いまの鈴木内閣はいろんな点で誤解を受けているけれども、やはり保守党の内閣においては危機が内と外にあるということを意識した一つの、私は無軌道というんじゃなく、何か自信がないが、危なっかしくないような危ないような、頼りがいのあるようなないような運営になっているのですけれども、これも日本の政治の一つの反映だと思っております。  いま自民党が党是として掲げている憲法改正などというのをすぐに打って出たならば、国民の怒りの前に折伏されてしまうということは承知の上で、悪く言えば何か徐々に既成事実をつくり上げることによって、そういうはでなやり方より危なげのないような危ないような橋を渡っていこうというところにアクロバティックな外交がここに展開されていると思うんです。それだけに国民からもよそからも信用されていないような信用されているような、何か「危に倚る者は危うからず」という禅語がありますが、危ないところにぶら下がっていると、サルもなかなか木から落ちそうで落ちない。サル知恵よりはやはり知恵の発達している鈴木内閣の外交防衛を担当している責任者という者は、そういう「危に倚る者は危うからず」の危ない例を意識しているか意識してないか知らないが、行っているところに日本の政治の霧の中を模索して歩いているような状態があると思うんです。  そこで、いま松前さんから日米同盟の内容及び非常に今後に問題が残っているような歯切れの悪い、すでに大体ネジは回されているんだと思いますが、こういうことに対して国民がやっぱりもっと明快なものをやはりわかろうと努力しているんですから、それをやってくれたと思います。そこでまた、急にフランスのミッテランの社会主義政権が出てきたわけです。一般の連中が、前にはカーターとレーガンのときにも、日本の新聞なりテレビなり一般の通という予想は、まあまあわけはわからぬけれども、レーガンよりはカーターの方が危なっかしくないんじゃないかというような見方であったが、アメリカの人心の動きというものは、あんなわけのわからない芝居をいつまでも見ちゃいられない、剣劇役者よりは少しましだろうからまあレーガンにでも行って局面を展開しなけりゃならないと、こういう変化を望むアメリカの国民の心情というものが一般の日本人的常識を破ってレーガン政権をつくり上げたと思います。レーガンがかわったからといって、アメリカ外交が全部変わるとは思いませんけれども、選挙で公約している点において、自民党と同様に公約したものに対しては何かやはりそれらしいそぶりを見せていかないとインチキだと言われるから、やはりなったばかりにはそういうことをやってみようとするが、実際上はやれないのが現状ではないかと思います。  そこで、今度はミッテランの社会主義政権というものがきわめて慎重な足取りで登場したけれども、ミッテラン社会主義政権がフランスに実現したということは西ドイツと結び、またイギリスにおいても労働党の勝利は必至と見られているとすると、西ドイツ、フランス、イギリス、おのおのそのニュアンスは異なるけれども、ECの国々においては社会主義の実権が外交防衛上の中においてもやはり具体的に進むであろうと、そこは何ぴとも思うのであります。そこで、そうなったら大変だからというので、かつて世界経済恐慌のときにイギリスのヤクドナルド内閣を揺さぶってナショナルレーバーへ分解さしたときと同じような形でこのフランスのミッテランを手も足も出ないようなことにしなけりゃならぬというような次の総選挙の構えが、金融資本なりあるいは大企業においてなされているのじゃないか。ドイツにはいち早くナチス的なテロリズムが勃発したと言われている不安が醸し出されております。このことはヨーロッパだけじゃなくて米ソに与える影響も日本に与える影響も非常に大きいと思います。外務大臣はこれに対してどういう見通し、というよりは予測を、二通りや三通りは考えていると思いますが、現在、漠然としてでもいいが描いているところの予想はどういう見通しですか。
  33. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 今度の選挙の結果につきまして、私どもアメリカにいて百脳会談をやっていたのでございますが、これはもう本当に伯仲で大方はどっちが勝つかわからぬというそういう見方をしておりました。選挙でございますから本当にあけて見なければわからぬわけで、非常に大接戦だろうというふうな感じを持っておりましたが、首脳会談あるいは共同声明をやりますときはどっちが勝つだろうというようなことは前提に置かぬでやったわけでございますが、帰ってきましてからミッテラン新大統領が誕生するという情勢を迎えたわけでございますが、これまだ選挙直後でございましてどういう外交政策をとられるのか、どういう内政をやられるのかということがまだ本当に漠然としてはっきりしないわけで、国内の選挙もあるのじゃないかということを大方の人が予想しているという状態でございますから、いまここでどうという予測することは非常にむずかしいのでございますが、私どもは国内経済問題等についてはある程度の変化というのがあるかもしれませんが、外交は私どもはそう大きな変化はないのじゃないか、ミッテラン氏が選挙中も西側には残るというふうなことをたしか言っておられたようなことがございましたし、あるいは当選すればサミットの問題もあるわけでございますが、そこに出ないというようなことはわれわれはもうないと、やはりフランスは西側の一員として世界の平和、安定ということに努力されるのじゃなかろうかというふうに見ておりまして、本当にこれからでございますからわかりませんが、外交はそう大きな変わりはないのじゃないかというふうに見ております。ただ従来のジスカールデスタン大統領とシュミットさんの個人的な関係とかそういうものは従来どおりということまでにはいかぬこともあるわけでございますし、ある程度ヨーロッパの情勢あるいは西側の情勢、世界の情勢につきましてなかなかむずかしい局面というものも考えておかなければならぬのでしょうけれども、しかし、いまの段階ではいろいろなことを予想するのはまだ早いものですから、大きな変化はないのじゃなかろうかというふうなことをみんなで話しているところでございます。
  34. 戸叶武君(戸叶武)

    戸叶武君 具体的な事例としては、ソ連アフガニスタンに進駐して世界じゅうから袋だたきに遭ったときに、フランスの共産党がソ連の立場を守って、そうしてソ連を孤立化させないようにした考え方はそれなりの考えがあっての仕方だと思いますが、当時私はフランスに行っておりまして、画家である私の親戚の者を案内人にしてタクシーに乗って町じゅうの反響を聞いて歩きましたが、フランスにおいてはタクシーがなかなか自由職業であって相当教養のある連中が自由な自由職業としての選択でタクシーをやりながら一見識を持っている人が多いのでありますが、彼らがなぜ、フランス共産党の指導者には聡明な人がいるのに全体の世論を無視して、大衆の動きを無視してソ連を孤立化してはならないという考え方以外に考えることはできないが、どうして自分たちが大きなこれは衝撃を受けるであろうということを承知の上でああいうことをやったのかわれわれにもちょっとその意を解し得ざるところがあるが、今後フランスの共産党は大きな打撃を受けるであろう、という見方でした。共産党に支持を受けている国会議員も当時出ておりまして、共産党グループとEC議員の中におけるいろいろな社会党グループとかあるいは保守党のグループとかいう集まりがありましたが、その中でやはり共産党グループに参加した方は、党の立場かどうかはわかりませんが、やはりアフガン問題に対しては割り切って、とにかくフランス共産党とは違うように、日本の共産党の支持を受けている人はやはりあの問題はあの問題として軍事介入に反対というような意思表示を当時しておりましたが、日本の共産党にもいろいろないままでの破乱万丈のあれを通ってきましたが、過去の経験からして、あるいはやはり非常に大衆的な考え方から遊離した形においては議会運営はできないというお考えに変わったのかどうか、これも承っておりませんでしたが、フランスにおける反応はそのとおりフランス共産党の惨敗になったと思います。ところが今回の選挙の前にソ連がミッテランよりもジスカールデスタンの方がソ連のためには都合がいいというような発表までし、結果があらわれると今度は必ずしもそうでないような意見も出ておりますが、政府は、外務当局はいろんな接触を通じての情報というものを重視してきているはずですが、どういう意図のもとにおいてフランス共産党がミッテラン支持に回り、あるいはミッテラン支持に回りながらもその過程においていろいろないざこざもあったと思いますが、ソ連がミッテラン支持よりもジスカールデスタン支持の方が好ましいというような発言をなしたか、その根拠はどこにあるか、少なくとも非公式情報であるにしても情報化時代のときに外務省はどういう情報の取り方をやっているかの試しとして、ひとつ承っておきたいと思います。
  35. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 欧亜局長からまた詳細お答え申し上げますが、いま先生がおっしゃったこれからのミッテラン政権の一つの大きな問題は、共産党の関係だと私も見ております。どういう共産党と関係をされるかということが内外の政策に大きな影響が出てくるわけでございますから、この関係が一番私はフランスの問題として大変な問題だというふうに見ておるわけでございますが、御承知のように、フランスの共産党はアフガニスタンの武力介入があったときに、それを支持するということをやりました。ミッテランはそれは反対だと。全然考え方が違うわけでございますし、またポーランドの問題につきましても、一月の社会党大会で、ポーランドの労働者が自由に組合を組織する、そういう権利があるのじゃないかということを、ミッテランはそういう発言を――といいますか、フランスの社会党はやっておるわけでございますので、そういうことがソ連から見れば、いま戸叶さんがおっしゃったような感じを持っているのじゃないかというふうに私は想像しているわけでございます。今後、これから国内選挙があるとすれば、そういうものを通してミッテランが共産党とどういう態度で臨むかということがいろんな政策を見きわめる大きな要素になるというふうに見ておるわけでございます。
  36. 政府委員(武藤利昭君)(武藤利昭)

    政府委員(武藤利昭君) ただいまお話ございましたフランスにおきます社会党と共産党の関係でございますけれども、非公式なりにともということでございましたが、やはり外務委員会の席でございますので、余り憶測を交えたことを申し上げるのも必ずしも適当ではないかと思うのでございますけれども、ただ、一つ広く言われておりますことは、御記憶のとおり八、九年前になりますですか、社共共同綱領というようなものがあった時代があったわけでございますけれども、その後どうも社会党と共産党の間がしっくりいたしませんで、その後更新されない。今度の大統領選挙に当たりましてはそのような共同綱領というものがなかった。それが選挙にどういうような影響があったかというようなことも取りざたされているわけでございますけれども、少なくとも第一回の投票でマルシェ共産党代表の方は第二回投票に残る順番をかち得なかったわけでございますが、その後早々とミッテラン候補に対する支持を表明したと、そういうこともございまして、ミッテラン候補が大統領に当選いたしますと、早速閣僚のポストを要求しているというような情報もあるわけでございますが、その辺のところは社会党といたしましても非常に対応のむずかしいところでございまして、そういう過去からのいきさつ、またその国内の今後の政況に及ぼす影響等々も考えながら、必ずしもすっきりしない現状にあるということのように観察いたしております。
  37. 戸叶武君(戸叶武)

    戸叶武君 今度のミッテラン政権が、長い間到来のときをしんぼうして待ちわびてきてからの立ち上がりで私は軽卒な動きはしないと思いますが、そうかといって何にもしないという方が一番安全だという前の佐藤榮作さんや、いまの総理大臣は何かしているようなかっこうだが、何もしてないと同じような慎重ぶりを発揮しておりますが、時をかせいでいるのかもしれませんが、タイミングということが非常にフランスの歴史から見ると重要になっております。このダイナミックな歴史の動きに対して、最もダイナミックな形においてタイミングを外さない政治行動というものがなされる可能性はなきにしもあらずと思いますが、外務大臣はそれをどのように受けとめますか。
  38. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 戸叶さんのおっしゃったのは、まあダイナミックという言葉を使われたわけでございますが、いろんな変化があるかもしらぬ、それに機動的に対応していくタイミングが大切だという意味のことをおっしゃったわけでございますが、私もそれはそのとおりだと思います。時というものの大切なことはよくわかるわけでございますが、いまのフランスに新しく社会党の政権ができたということは、これはフランスでは戦後初めてでございますので、これは一つの大きな出来事だと思うわけでございますが、それに何か日本が即応してということでございますと、これはもう少し実は様子を見ませんと、国内の選挙もフランスでありましょうし、いま申し上げました共産党との関係もありましょうし、どういう外交政策、どういう国内政策がとられるのか、われわれはまだはっきり予想もつかぬわけでございます。  恐らく、いろいろそういうものがはっきりし、各国の首脳が集まっていろいろ話をするということは、サミットが一つあるわけでございます。サミットまでに、あるいはサミットのときに、いろいろそういう動きがあるのかなというふうにまあ考えているわけでございますが、実は今度、総理は帰りにカナダに寄ってトルドー首相と話をしてきたのでございますが、トルドー首相は今度サミットの議長国になるわけでございまして、ここでどういうサミットの運営、うまくいくか、どうやったらうまくいくんだろうということで非常に苦心をしていられるという話を総理とされまして、南北問題とか世界に重要な問題があるんだ、これについて各国の首相にニュアンスの違いがある、これをどうしてまとめていくか、というようなことを非常に鈴木総理にも相談しながら話しておられましたが、今度新しくここにフランスのミッテラン氏が入ってくるということになりますと、サミット等でいろんないままでと違った動きがあるのかなというようなことで、いまそれを見守っていると。ただ、どんな事態になってもそれに即応はできるようにということを考えながら、サミットというのがこれは一つの大切な節目になるんだなというふうに見ております。
  39. 戸叶武君(戸叶武)

    戸叶武君 時間がないようですから、私は質問だけして、次の機会にでも答弁を求めますが、私がコペルニクス的な転換がことしは行われる年だというふうに言っているのは、ことしになってからやっとコペルニクスの地動説をローマ法王が認めたのですけれども、ローマ法王が認めようが認めまいが真理は真理なんです。すでに、そういうイデオロギー的な、宗教的な権威というものを余り権威化して見ることは間違いであって、どろくさい、いまのポーランドにおける指導者の大地とともに歩んでいく、あの素朴な歩みの中にすらコペルニクス的な発想の転換がひそんでいる。いままで理屈ばかり言ってきた中国においても、西欧のルネッサンスとは違ったコペルニクス的な発想の転換がなされようとしているときに、この西洋のルネッサンス以後におけるショービニズムが、どれだけ宗教が、イデオロギーが、戦争や排他的な民族主義をあおったりしてヨーロッパの暗黒時代をつくったかわからないの等と違って、アジアにとって、またこの間エジプトの指導者とも話してきましたが、大きな変換が、私はむしろポーランドのような非常に鈍いと思われる素朴な動きの中に、何を考えてどうやって歩んでいるのかという模索の中に新しい芽が出ようとしているし、理論闘争では、議論ではあくまでも一歩も退かぬというような中国が沈黙を守って近代化の道をたどろうとする転換を現実において示そうとしたりするとき、鈴木さんも恐らくはその轍を学んでいていま半分わけのわからないこと言っているんだと思いますけれども、ちゃんとわかっているんだと思いますが、私はこれは第二次世界戦争後における虚脱状態のナチから革命を生んだベルサイユ体制の崩壊と同じように、いまの米英ソ三国のヤルタ協定における秘密協定において、他国の主権を無視して領土を奪うというようなことを、事実上においてお互いに戦争中の謀略だからやむを得ないというのであのままでやっているところに、私はベルサイユ体制と同じくみずからの反省によってこれが改められなければ、崩壊必至のところへ来ていると思うんです。このことを考えないで目先のことだけを考えて小手先細工の権謀術策は何にもならぬと思っていますが、もっと大胆率直に、明快に私は外交においても物を言う習慣をつけないといけないのじゃないかということだけを御注文し、次の機会に、主として領土問題を中心としての不明朗な世界の秩序を新しい秩序に切りかえるための勇断がいまこそやはり必要じゃないかという点を回答を求めたいと思います。  以上で終わります。
  40. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 私は、先ほど松前委員も問題にされました「同盟」という問題ですが、これまで総理大臣が訪米されるごとにパートナーからイコールパートナーになり、今度はアライアンス、「同盟」という言葉にまで共同声明で踏み切ったその真意は一体どこにあったのか。私ども考えからしますと、日米安保体制そのものがすでに軍事同盟的な色彩を持っているものだと思っているのですが、はっきりと「同盟」という言葉を出したその真意はどこにあったのか。レーガン大統領というのは大変話術の上手な人で、中身よりも話術が上手だし、それから大変はでな人で、大変スキンシップでいい気持ちになってそこまで踏み切ったとも思えないんですね。この種の共同声明というのは、やっぱり両国政府当局で十分準備してあって、打ち合わせてあったはずですから、両首脳が会ったところで直すなんということはなかったと思うんです。外務当局がすでにこの「同盟」という言葉について賛意を与えていたのではないかと思いますが、いかがですか。
  41. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) これはいま田中さんおっしゃるように、首脳会談でぽこっと出てきたということではございません。両方でもういろいろ打ち合わせをやっている中で出てきたのでございますが、これはもうすでにこの「同盟関係」ということは、去年もおととしも首脳会談では日本側からこれは発言して言っている言葉でございます。大平総理が言っている言葉でございますが、今度新しい政権、向こうも新しい、こっちも新しい政権になりまして、日本アメリカの緊密な関係、一層緊密な連帯関係というものを保っていこうじゃないか、新しい政権になりましてからさらに日米関係のきずなを強くしていくという意味で、従来も使っていた言葉でございますが、これをここに載っけたということでございまして、しかしこれは何もいままでの関係と別な関係ということじゃないわけでございまして、いま田中さんおっしゃるように、日米安保、これは片務的なものでございますが、あるいは軍事的な条約だったわけでございまして、あれはもう二十何年前からあるわけでございますから、そういうものも全部入れて経済、政治、外交、文化、いろんな関係をひっくるめまして、日本アメリカ関係は本当に緊密な連帯関係なんだということをさらにはっきりあらわそうじゃないかというようなことでこれを載っけたということでございまして、新しい同盟とか新しい関係を何か特別に結ぶとか、そういうことじゃなくて、従来の緊密な関係をさらに一層強くしていくということをこれに書いたという趣旨でございます。
  42. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 そうすると、日本の側からのイニシアチブだったという意味ですか。
  43. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) あれは、この共同声明、どっちがどう言って、それがどうだというようなことじゃなく、これはもう両方で意見が一致したことということでございまして、これは日本側からも使っていた言葉でございますし、アメリカも使っていた言葉でございまして、これは意見の一致をしたということでございます。
  44. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 その後の方の文の防衛役割り分担のところなどからも考え、また最近の防衛力増強への政府の方針などを考えますと、一歩踏み出したという印象はもうぬぐえないと思います。その背景にはアメリカ経済力の低下、そして日本経済力の向上、それがあって、日本はそれを防衛においてアメリカ同盟関係を持って経済的に役割りを引き受けるのだというようなものがあるのではないですか。    〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕
  45. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) アメリカ経済力が前に比べると落ち、日本が上がったというのは、それはもうそのとおりでございます。そういうことを前提にしまして、経済問題でございますとか、いろいろ話し合いを今度もしたわけでございますが、ここで何か日本役割り分担ということで特別に軍事の目的あるいは特別に経済分担とかいうことはなくて、先生は一歩踏み出したと、こうおっしゃいますけれども、現在まで国会でも答弁し、やっていることをこれはそのまま続けてやっていこうという意味でございますが、いま先生のおっしゃった役割り分担の中で極東では日本軍事的に役割り分担などできないことは、これはもう法律上もはっきりしていることでございますから、日本のやれることは、それは外交なり政治なり経済協力なり、こういうことが日本の適切な役割りなんだということは従来どおりだというふうに考えております。
  46. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 政府側はアメリカに押しまくられたのではなくて、日本側が自主的に主張したということを強調していらっしゃるのですけれども、その役割り分担の項のところですが、これなどを見ておりますと、アメリカ軍事戦略体制の中に次第次第に深く組み込まれてきたというふうに感じられるのですね。それで、たとえばこれは共同声明のときには「適切な役割分担」というような言葉にしかなっていませんけれども、ナショナル・プレスクラブの方で総理がわざわざ自分の方から、いまさっきもお話がありましたような、日本周辺海域数百海里の防衛あるいはシーレーンの一千海里の防衛を引き受けるんだ、これはたとえばアメリカが緊急展開作戦をとってペルシャ湾の方に第七艦隊が行っていたり、インド洋に行ったりした、その後のところを引き受けるんだという説明まで加えていらっしゃるんですがね。なぜ総理はこんな具体的なことをその場でおっしゃったのか、これはもう意図的にそういう方針で行かれたんですか。
  47. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 私もプレスクラブのときはそばに座っていたのでございますが、いま田中さんおっしゃったくだりは、あれは質問があって答弁の中で、たくさんの質問の中の一つ質問の中で答弁をされたのでございますが、日本としては従来から言っているとおり、周辺数百海里、航路帯であれば千海里ということを言われまして、それが日本防衛の整備の目標でそういうことも考えているんだということを言われたのであって、その海域日本が引き受けるんだと、だからそこにもしもおるとすれば第七艦隊がほかへ全部行っていいんだとかいう、そういう意味の発言をされたのじゃないわけで、日本を守るという、日本を守るためにはこういう周辺数百海里、航路帯千海里ということについても日本としては考えているんだということを言われたのであって、これは国会でもいままでずっと言われていたことだし、日本個別自衛権日本を守るという場合にはそういうところを整備の目標にして考えているんだということで、いままで言われたことと全然新しいことは何にもないんです、あのとき言われたのは。でございますので、発言を求めてみずからそういうことを言ったんだとかいうこともなし、質問の中で答えられたことでございまして、ここで書いてあることはいままで国会で言ったとおりのことでございますし、総理レーガン大統領とも話されて、憲法の問題、専守防衛の問題、軍事大国の問題、あるいは国民のコンセンサス、財政再建の問題、国会で言っておられるとおりのことをレーガン大統領に実は言われたわけでございます。また、向こうもはっきりとレーガン大統領日本憲法を変えてくださいというようなことは言わない、あるいは強制するということはしません、というようなことを、これははっきり言ったわけでございまして、いま先生のおっしゃるように、一歩何か踏み出して防衛分担役割りを引き受けてきたんだというようなことは、実は毛頭ございません。
  48. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 シーレーン一千海里などということは、大変これは重大なことなんであって、これを具体的に言えばきっと大変問題が起こってくると思います。いま時間がありません。  ただ、もしそういうことを引き受けるということであれば防衛費の増加をもたらすこと、これは必然的なことなんじゃないかしらというふうに思われますが、どうお思いになりますか。
  49. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) そこは、引き受けるとかどうとか、そういう発言じゃなくて、日本を守るためにいままでそういうことをやりますということは何回も、防衛計画大綱の整備目標はそういうことを前提にして、目標として計画大綱の充実というのをやるんですということは、これは何回も国会総理お答えをし、意見を言っているわけでございまして、その点は、新しく何にも総理は約束するとか、そういうことはなかったわけでございます。  それで、いま田中さんのおっしゃる予算、財政の問題とこれは関連してくるわけでございますが、防衛計画大綱を何年までに達成するかということによって財政面でどれだけのものを計上しなけりゃならぬということが問題になってくるわけでございますから、そのことにつきましてはこの間の国防会議でも、一年かかって作業はしてみるということをこの間決めたわけでございますし、五十七年度予算についてどうするかという問題は、これから内閣として予算要求のシーリングを決めるとか、そのときどう扱うかということ、そこに今度は来年以降の問題として出てくるというふうに思っております。
  50. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 この日米同盟という考え方ソ連の脅威を前提としているものだと思われますけれども鈴木総理は記者会見で、ソ連の脅威は潜在的な脅威だと、そのソ連の脅威感において日米の間には開きがあるというようなことを言っていらっしゃいますね。どういう開きが、つまり日本はどういうふうにソ連の脅威をとらえ、アメリカはどういうふうにとらえているとお思いになります。
  51. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 記者会見で、総理ソ連については日本は潜在的な脅威だと思っているという御発言は、そのとおり、国会で言われているとおりの発言がございました。それで、日本アメリカでいろいろ議論をしました場合に、世界のいろんな地域の名前が出て議論をしたことがあるのですけれども、そういうことは、アフガニスタンというようなことは、これは軍事介入ではっきりしていることだが、そのほかのことは、地域としていろいろあるけれども、国の名前を挙げていろいろやるというようなことは適当じゃないとわれわれ考えておりまして、そういう主張もしたりしてこういう共同声明ができたわけでございますので、一〇〇%全部アメリカの言うことはそのとおりだというふうじゃなくて、ソ連との問題を話すときにもいろいろ議論があってこういう表現にしたわけでございます。若干の違いはあることは確かでございます。  それで、しかしここに書いた範囲においてはこれはいわゆる基本的なソ連との認識は一致したわけでございますが、ただ対応策はどういうことだどういうことだと言って一々相談したことはございません。ございませんが、やはり私は、対応策というものは国によってそれぞれの力の問題あるいは国情の問題がいろいろございますから、私は、基本的な認識は一致しましたが、対応策についてはそれぞれ違うことがあってしかるべしというふうに考えておりまして、何もソ連と対決しようとか、ソ連を敵視するとか、そういうことは日本としては考えていないということでございます。
  52. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 レーガン政権の対ソ強硬外交政策ですね、これ最近やや軌道修正しつつあるように思われますね。そして米ソの間での戦略核兵器の制限交渉もまた始めていいとか、    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕 あるいは欧州の戦域核兵器の制限についても、ブレジネフ書簡に対してレーガン大統領は親書を出してやや両方が歩み寄る気配が見えてきているような状況なんですがね。その辺はどのように外務大臣は今度行かれて把握されたか。そして日本としてはだからこそ米ソがデタントに向かっていくように、たとえばSALTIIの交渉はぜひ進めるようにというような提言はなさったかどうか。
  53. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) アメリカソ連に対する考え方あるいは措置の問題でございますが、選挙中と政権をとられてから若干の軌道修正といいますか、政策が現実的になってきているということは私もそのとおりだと思います。三月に行きましたときもそういう感じを私は持ちました。選挙中と違ってやはり政権をとれば政策は現実的になるんだな、またそうすべきだという感じを持ちまして、三月にヘイグさんと私行きましたときは首脳会談の問題とかSALTの問題とかいろいろ話したのでございます。今度は行きましてもその点はやはり感じは同じでございまして、片っ方で力のバランスということは言いながらも、いま先生がおっしゃったような戦域核の問題で今年中にこれはソ連と話し合うつもりだと、またヘイグさんは九月に国連総会があるときに自分はグロムイコ外相にも会ってその話をするつもりだということを言っておりましたが、非常に結構なことだと言ったのでございますが、それからレーガンさんもみずからソ連とはやはり話し合うということは必要だと思っていると、穀物禁輸を解除したのもそれは一つそういうことを頭に置いているんだ、それから防衛の問題あるいは経済の問題ソ連と話し合う用意はあると、ただその場合にはその問題を一つだけ取り上げるということだけじゃなくて、ソ連世界のあちこちでやっている行動についてもやはり自分としては取り上げるつもりだというようなことを言っておりましたが、やはりソ連と、単に力だけで対決するということじゃなくて、そういう話し合いの場を持とう、そういうことが必要だということは軍縮のときにも話が出ましたし、話し合いをしていくつもりだということでございますから、私は、アメリカの態度というものは、選挙中に言われたことと今度現実に政権をとって政策を行うときは、やはりそれが非常に現実的な動きが出てきているというふうに見ております。
  54. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 日本からはそれを進めるように発言をなさいましたか。
  55. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 首脳会談の、私が入っていない二人のお話のときにもソ連との話が出たそうでございます。われわれが入った全体会議でもレーガン大統領の方から、むしろ、こういうことをやるつもりだという話がございました。ヘイグさんと私が会ったときにもヘイグさんの方からそういう話が出て、それは非常に結構なことだ、私は前にも言っておりますので、非常に結構なことだと言ってまいりました。
  56. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 最後に経済援助の項ですけれども共同声明の方では、「政府開発援助の拡充に努め、また、同政府が世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化してゆくと述べた。」――同政府というのは日本ですね。そしてプレスクラブの方では、今後アジア以外においても、世界の平和と安定の維持のために、重要な地域に対しては援助を強化していく所存である、というふうに言われていますね。鈴木総理が行かれる前には、経済援助に関しては選択はしないというふうなことを強調していらっしゃるんですね。親米的なところとかあるいはアメリカの要請のあったところだけというようなことはしないというふうに言っていらっしゃるのですけれども、この特別に要請された地域、アジア以外の地域、この中ではたとえばアフリカや中東における紛争のことも出ておるわけでありますが、何かそういう経済援助の地域に関して要請があり、そして、それに答えられましたですか。
  57. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 今度の会談では、首脳会談でも私とヘイグさんの会談でも、具体的にどの地域にどうしてもらいたいというふうなことは一切ございませんでした。  この九項は大体南北問題を主にしてこれは書いているわけでございますが、日本としてはあくまで南北問題が中心だということは、これは話の中でやっております。後の方についておりますのは、具体的に言いますと、タイとかパキスタンとかトルコとか、そうしたところに、紛争周辺地域の西側にまた経験が、実績がございますので、そういうことをこれは頭に置いて実は書いたわけでございまして、今度アメリカ側からどの地域、中米なら中米のどの地域、どの国、あるいはアフリカのどの国というような名指しで経済協力をやってもらいたいということはなかったのでございます。
  58. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 日米首脳会談の内容に入る前に、きょうは防衛庁があちらこちらかけ持ちなんだそうでございますので、最初防衛庁にお伺いいたしましょう。  けさの一部の新聞の報道によりますと、秋田沖において日米合同大演習、海空大演習と、漁民にとってはいまマス漁の最盛期であるということもありますので非常に深刻な状況が伝えられております。それは事実かどうか、その規模はどういう規模なのか、その点からまず説明をしてください。
  59. 説明員(芥川哲士君)(芥川哲士)

    説明員(芥川哲士君) お答え申し上げます。  海上自衛隊はきょうから今月の下旬にかけまして米海軍との間で対潜戦――潜水艦を見つけて攻撃する訓練でございますが、対潜戦を主体とする共同訓練というものを実施することにしておるわけでございます。その概要のお尋ねでございますので次のとおり申し上げたいと思います。  まず期間は、これは前半と後半の二つに分かれておりまして、前半は本日より十五日までの四日間でございます。次に後半でございますが、これは今月の十九日から二十三日までの五日間。したがいまして実際に訓練を行います日にちを合計いたしますと九日に当たるわけでございます。  それから場所は、ある新聞には秋田沖ということだけしか出ていないところもございますが、秋田沖の公海上の海面でございまして、その広さを申し上げますと、縦約百二十マイル、横約百四十マイル、平方キロで申しますと約四万平方キロぐらいに当たると思います。  次に、参加艦艇等でございますが、これは共同訓練でございますので、まず海上自衛隊の方から申し上げますと、艦艇十隻参加するわけでございます。この艦艇の内訳は、護衛艦七隻でございます。それから補給艦が一隻、これは油を積んでおる船でございます。それから潜水艦、これが二隻出てまいります。それから航空機、この種類はP2Jでございますが、これが延べ十六機参加いたします。それから米海軍の方でございますが、これは前半に参加する艦艇等と、それから後半に参加する艦艇等とは若干数が違いますので、まず前半の方から申し上げますと、前半に参加する艦艇は五隻でございまして、駆逐艦が四隻参加いたします。それから潜水艦、これは通常型の潜水艦でございますが、これが一隻参加いたします。それから航空機、機種はP3Cでございますが、これが若干ということで、まだ本日まで正確には決まっておらないようでございます。それから後半の部分でございますが、これは艦艇が十二隻、内訳はまだ米軍の方から発表になっておりません。それから航空機、P3C等若干ということになっております。  次に、主要な訓練内容について申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、対潜、すなわち潜水艦を見つけ、そしてこれを攻撃する訓練というもの、それから通信連絡訓練、これは艦艇同士あるいは艦艇と航空機との間の通信連絡を行う訓練でございます。  それから第三番目に防空戦訓練、これは艦艇を攻撃する航空機に対して艦艇の方がこれを迎え撃つという訓練でございます。  それから水上打撃戦訓練というのが第四番目にございまして、これは艦艇同士が互いに撃ち合う訓練ということでございます。  そこで先ほど申しましたような訓練におきましては実は一切射撃というものを行わない。すなわち、訓練の手順だけの、そういう訓練項目の手順だけの演練に終わるということにしております。  なお、航空自衛隊の方からは後半の部分におきまして若干の戦闘機が参加するということになっております。  以上演習の概要について御説明を申し上げました。
  60. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 今回の演習には実弾は全く使用されないと理解してよろしゅうございますか。
  61. 説明員(芥川哲士君)(芥川哲士)

    説明員(芥川哲士君) お説のとおりでございます。
  62. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 タイミングがよ過ぎるというのか、日米首脳会談が終わった直後、しかも先般、先月末、四月のたしか二十三日だったと思いますが、ソ連のミサイル駆逐艦の実弾演習があったばかり。いま海域については公海だと説明がありました。しかし、ソ連の駆逐艦の実弾演習も公海だったですね。しかし、日本の領海からそんなに離れてない。ということになると、漁業者にとっての心配というものが当然起こりはしまいかということが一点。そういった点については、事前に水産庁あるいは地元の漁業者の方へ何らかの形で通報が行っておりますか。
  63. 説明員(芥川哲士君)(芥川哲士)

    説明員(芥川哲士君) その点についてお答えいたします。  私ども従来から、先生先ほど御質問なさいましたとおり、実弾あるいは訓練弾も含めてでございますが、射撃を行うというものにつきましては、これは大変危険度が高うございますので、これにつきましては事前に航行警報あるいは告示等の手段を講ずることはもとよりのこと、地元の皆様及び関係都道府県ということでは十分調整を行っておるところでございます。本日の新聞報道にもございましたけれども、青森県の八戸沖での訓練においては何か地元との十分事前の打ち合わせがあった、しかしながら、今回の訓練においてはそういう打ち合わせがなかった、という記述がございましたけれども、そのとおりでございまして、射撃等の危険度の非常に高いもの、これにつきましては私ども十分地元との調整も終え、それから必要な告示その他の手続を経で行っておるわけでございます。  今回の訓練は、先ほども申し上げましたとおり、実弾射撃という、あるいは訓練弾も含めてでございますが、射撃を一切行いません。そういうことでございますけれども、今回は特に漁民の皆様方等の御関心も深いということで、事前に航行警報等の手段をとるよう水産庁の方にもお願いいたしましたし、それから漁民の皆様方ともお話をいたしております。
  64. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 ところがその話がちょっと違うんだな。水産庁の方からさっき調べたんだけれども、水産庁は全然知らされなかったとあるんだよ。水産庁来ている――来ていなければいい。こちらで調べたその内容だけ申し上げたいと思うけれども。  いまおっしゃったとおり、確かに実弾を使わないから安全というものは十分確保されているはずだと、したがって、地域の方々及び漁民に対しても通報の必要は認めないということであろうと私思うんです。防衛庁の方から全然連絡はなかったし、また新聞を見て初めて演習を知ったと、こうなっているわけです。これは水産庁の沿岸課の話です。もちろん秋田県からも漁業に支障のないよう海域を変更してもらいたいと、こういう要請を防衛庁に申し入れたというふうになっているんですが、そういう申し入れについては承知をしているかどうか。防衛庁のそれについての返答は、飛行機によるパトロール、船からの見張りを通常よりふやし、支障なきよう万全の注意をすると、この要請に対してこういう回答が寄せられているんです。しかしこの前後を考えますと、やはりたとえ実弾を用いなくても、先ほど触れましたように、ソビエトのミサイル駆逐艦の実弾演習もこれあり、しかも大体同じ、離れているとはいうものの、公海上であるとはいうものの、やはり何らかの不安というものは恐らくございましょう。それは人間の心理ですよ。そうすると、仮に実弾を使わないにしても、今回は心配ありませんということの通知ぐらいは親切におやりになってしかるべきではないか。演習はやらないにこしたことはないというのは、これは水産庁の話なんでね。これにはいろいろまた問題もあるかもしれないけれども、漁獲量に影響は余り出ないだろうと、それはそうでしょうね、実弾使っているわけじゃないですから。しかし影響は少ないと思うということは、ないとは言ってないんです。この辺はやはり勘案してあげませんとまずいのじゃないかなという感じを持つのですけれども、その辺の整理、これは合同演習については将来何も秋田沖だけじゃないとぼくは思うんですよ。ほかの地域でも行われる。しかもいまマス漁の最盛期だということになりますと本当に大丈夫かしらと気が気じゃないわけですね。通報があればこれは大丈夫だということで安心して出漁もできるだろうというふうになると思うんです。その辺の地元の方々との合意のとり方というものはどんなふうになっているんですか。
  65. 説明員(芥川哲士君)(芥川哲士)

    説明員(芥川哲士君) まず初めの点でございますが、水産庁の方から秋田県の申し入れというものを聞いておるのかどうかという点でございますが、昨日水産庁の方から電話で次のような秋田県からの要望事項というのを受け取りました。  それは二つございますが、一つは、訓練海域が広範であるので、訓練直前でもよいから具体的な場所の連絡、漁業の操業に支障のないよう要請するというものが一つでございます。  それから第二番目は、演習最後の日が五月二十三日になるわけでございますが、五月二十三日の約三時間にわたる仮泊場所については、事前に地元の漁協と連絡の上やってもらいたいという要請があったということを水産庁の方からお聞きいたしております。  したがいまして、先ほど先生がおっしゃいましたことと若干違いまして、私ども、訓練を中止せよということでございますとか、あるいは訓練海面をよその場所へ移してくれという要請があったというふうには承知しておりません。  それから、いずれにしろ訓練をやるのであるから、漁民の皆さんには不安感が生ずるのでないかという点でございますが、これは先ほども申し上げましたとおり、実弾はもちろんのこと、訓練弾を伴うものではございません。それからわが方の安全対策あるいは今回の訓練の実施要領といたしましては、先生いまおっしゃいましたように、私どもの航空機によるパトロールを続けますし、あるいは艦艇におきましては、艦艇の通常見張りというものは、当直、これがブリッジという一番船の高いところにおりまして、一名当直員というのがついておる、これが始終四方を見回して見張りをしておるわけでございますけれども、今回の演習はこれに加えまして、船の頭の方に右、左おのおの一名、それから船の後ろの船尾の方へ一名、計三名を増員いたしまして、これによって漁船の動向というのをつかむということをしております。仮にそこで漁船の動きというのを見つけました場合には、私どもの方からそれをよけるという行為をとるわけでございまして、漁船の方の操業には全く支障がない、すなわち漁船の方はそこで漁業に従事しておられるのであればそのとおりやっていただきたいということでございまして、私どもとしては、確かに不安感はあるかもしれませんけれども、その不安は抹消していただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  66. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 それは当局としてみればそうだと私思うんですよ。ではこの間のジョージ・ワシントン号の原潜問題どうでした。あれはもう起こしてはならないことが起こっちゃったわけですよ。潜水艦、今度用いていらっしゃるわけでしょう。仮に実弾演習がないといたしましても、船の接触ということもないではない。万が一ということをやはり常に防衛庁としても想定されながらああしたような事故の起きないことを十分念頭に置きつつ対応されるんだろうと思いますけれども、しかしやっぱり漁民側にとってみれば、ついこの間ジョージ・ワシントン号の原潜の事故があったばかりじゃないか、おちおち操業もできないじゃないかというような、そういうことがあっては非常に気の毒ではないかということなんですね。もっと遠くでやればいいかもしれませんよ。それは海域にもよるかもしれない。それはほとんど沿岸漁業、近海漁業の行われないようなそういう海域で行われるのならばあるいはそういう事故の再発というものも防げるかもしれませんけれども、どうも想定されるいまおっしゃったその海域がどの辺になるのか、これは地図を見ないと話だけでは何ともここで確認のしようがないので、しかし、伝えられるところによると、この間のソ連のミサイルの実弾演習と余り離れていない海域が用いられている。となると、もう大体近海ですわ。と、しょっちゅうその辺に日本の漁船が出ているということが考えられる。これは常識ですね。ですから十分な配慮は結構で、当然それはとっていただかなきやならぬわけですので。きょうみたいなまた濃霧なんか襲ってきますとこれはわかりませんね。P2Jからも見えなかった、P3Cからも見えなかった、それでぶつかっちゃった、こういうことだってないとは言えないです。もう始まっているんですから、きょうから演習は始まるんでしょう。ですから水産庁もびっくりしちゃったらしいし、秋田県の方からも防衛庁に対して要請をせざるを得ない。事前にそういうことが緊密に連携がとれていれば県としても当然そういう災害防止のための事前のいろんな対応というものが考えられるでしょうし、漁船に対してもこういう区域でもって演習が行われているからそういうところにはできるだけ立ち入らないようにというようなことのアドバイスもできるであろう、やっぱりその辺もう少しく親切にやっていただいた方がよろしいのじゃないかなというふうに思いますが、あなたは三十五分にここを出なければ衆議院に間に合わないそうですからもう行ってください、それだけ要望しておきます。今後の演習についてもあることですから、よろしくお願いします。  それではちょうどお疲れが出てくるころではないかという伊東さんに対して大変恐縮でございますが、もう少ししんぼうして聞いていただきたいと思うんです。  もうすでに衆議院等においても、先ほども日米共同声明を通しての質疑が行われているわけでございますが、全体的にこう拝見いたしますと、確かにずっといま答弁伺っていてもそうなんですが、何もこれという約束をした事実というものはここには示されてないわけです。言うなれば、まあ抽象論と言ってしまえば抽象論かもしれない。今度もう一つはこの文革の読み方というものがあるかもしれない。なかなかこれはめんどうだなという、そういう側面を兼ね備えたのが今回の日米共同声明ではないのかなという――そこまで勘ぐる必要はないのかもしれません。先ほど来から「同盟」ということがしきりに言われているわけです。これは私自身も常識的な認識を一歩も出ないわけでございますけれども、特に限定しない限りはこれは軍事同盟であるというのが通常定義だというふうに言われているんですね。これをずっと拝見していきますと、確かに文章はずっと流れているのですけれども、やはり何となく軍事同盟的な性格を非常に色濃く持っている中身ではないのかな、しかしいま繰り返しお述べになりましたようにそれは全くないんだと。ここで私、くどいようですけれども、再度その確認をしておいてよろしゅうございますか。
  67. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 先ほどから申し上げているとおり、これは日本アメリカ経済、政治、外交、広い範囲のものを含めて、それはお互い基本的には民主主義、自由ということが両国の共有するこれは価値感なんだという前提の上に立って広く両国の緊密な連帯関係考えているわけでございます。軍事的な同盟じゃないか同盟じゃないかということをよく言われることがあるのですが、日本アメリカ関係は、これは日米安保条約というものがあるわけでございまして、これは先生承知のように片務的なもので、個別自衛権ということでやっておるわけでございます。それも日本アメリカ関係の中には、これは当然入っていることでございますが、そういうものも全部含めて、全部含めて「同盟関係」と、こう言ったわけでございますので、ここで新しく何か軍事的に同盟関係を結んだのだとか、結ぶのだとか、そういう関係にあるのだとかいうことは毛頭ない。現在の緊密な連帯関係というものを評して「同盟関係」とこう言ったわけでございますので、いま渋谷さんがおっしゃるように、これによって軍事的に何か新しい同盟ということを考えたのだということはございません。
  68. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 そのとおりだと思いますよ。ただ、いま述べられた中で、この日米共同声明の背景には日米安全保障条約というものを基軸にしつつ、それ自体もいろいろ議論がございまして、全くあれは軍事同盟的な性格を持つものである、そういう解釈も成り立つであろう、それを柱にしながら共同声明というところで再確認された、このように理解した方がむしろ素直な受けとめ方ではないのかな、となりますと、やはり日米共同声明というものは軍事同盟的な、それは改めてということではなくして、ここで再確認された、そういう声明ではないのか、それではあんまりあれですか、行き過ぎた考えですか。
  69. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) そういうお考えは何かお考え前提にあってそういう御質問をされているのかなと、いま伺っていたところでございますが、日米安保条約軍事同盟だということをおっしゃるとすれば日本アメリカの間にはもう二十何年か前からあるわけでございます。何もそれといま変わりない。その安保条約を双務的にしようとか、してくれとか、そういうことは一切ないわけでございますから、安保条約との関係はこれは二十何年前から同じなんでございます。そういうことを前提にして、日本アメリカの緊密な連帯関係ということから広い意味同盟関係という言葉を使っているということでございます。
  70. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 確かに日米安保条約は片務的ですよ。ただここでいま改めて確認をというふうに私つけ加えさしていただいたのは、相互というふうに性格的に変わってきているのじゃないかと、ここには明確にそういう内容は文章的に盛られていませんよ。それが第八項目あたりを見ますと、それがにじみ出ているような表現で連なっているという受けとめ方をするわけです。伊東さんがおっしゃればきっと先ほどの繰り返しのお答えが返ってくるに違いないと思うんです。絶対そんなことはありません、そんな約束をした覚えはありません。しかしちょうどいらっしゃるあれは一週間ぐらい前ですか、ワインバーガー国防長官がサンフランシスコにおいて実に強烈な演説をやっているわけですね。それがこの日米共同声明とどう連動するのか、しかもこの八項目の最後にこういうことが出ておりますね、「六月に予定されている大臣レベル及び事務レベル双方での日米両国政府の代表者による安全保障問題に関する会合に期待した。」。大村さんが恐らくこのときにいらっしゃる予定をかねがね伺っております。こうなるとそこで初めて具体化されるというふうに私どもはずっと伺っているわけです。そうするとやはり日米共同声明というものは文章的には約束事はないみたいであるけれども、しかしやはりこれが一つの柱になり、その前段においては、ワインバーガー国防長官の演説内容がこれあり、そしてまた大村さんが行ったときにはさらにこの拘束された、それはあくまでも日本は独自の立場で、自主的に防衛というものの防衛力整備をやるのだと、これは当然でしょう、独立国家ですから、一々アメリカから何だかんだと言われてやるなんていうことは変な話でございますけれども、しかし、やはり友好国、同盟国というその立場を考えてみた場合に、これはやっぱりやらざるを得ないのじゃないかというふうに傾斜していく、どうしてもそういうような受けとめ方の方が素直ではあるまいか、こんなふうに感ずるんですが、いかがでございましょうか。
  71. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) その点は先ほどから申し上げているとおりでございまして、総理ももうはっきりレーガン大統領に法律、憲法上の制約の問題あるいは専守防衛の問題、軍事大国にならぬ、国民のコンセンサスが大切だと、財政再建の問題ということを一つ一つ挙げて、実は第二回の会談は三十分で終わるということだったんですが、あれは一時間半ぐらいに実はなったのでございます。それは総理がいま言われたことを、詳細国会で言っておられることを説明されて、日本防衛についての考え方を述べられた、大統領もそれはわかったということで、向こう日本憲法を改正してくださいなんということは言いませんよと、あるいは日本に強制するということはしませんよということをわざわざつけ加えて、まあ、向こう防衛に対する考え方を述べるということが第二回目の首脳会談であったわけでございまして、あくまでも日本側の態度というのは、何回も御説明しておりますように、日本の国を守るというその防衛につきましては、これは当然防衛計画大綱を着実に整備していくということでやります、極東の平和、安全については、日本ができることは在日米軍に対する施設区域の提供ということはできますが、それ以外は経済問題でございますとか経済協力とか、あるいは外交の問題とか、そういうような問題で日本は平和と安定を守るということに努力していくんですよということをこれははっきり述べられておるわけでございまして、先生が何かこう双務的なものがあるのじゃないかというお話でございますが、これはそういうことは実は一切ないと、国会総理が答弁しておられる、われわれが言っているとおりでございます。  で、私はヘイグさんとも特別にまた会談をやったわけでございますが、日本としてはできないことは幾ら言われてもできないんだと、ハワイの会談でもそのことは日本としてはっきり言うというようなことを私もヘイグさんに言ってきたのでございまして、先生がいま考えられる、いろいろ御質問がございましたが、そういうことは今度の首脳会談では一切出ておりません。
  72. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 ちょうど訪米前とお帰りになってからの答弁をつなぎ合わせてみますと、全然変わってない。ということは、日本政府としてはかねがねこの当委員会においても主張してきたことを貫いたというような印象を非常に強く受けるのですが、それだけでしかし果たしてそうなのかなという、また後ずさりをせざるを得ない、こっちが後ずさりをするのかどうかわかりませんけれども、ただ、いま繰り返し繰り返し確かに私も何回もいまおっしゃったことを判で押したようにまことにきちょうめんにお答えになっていらっしゃるのですけれども、そういったことは百も承知だということをワインバーガー氏も言っているわけでしょう。その上に立ってなおかつと、ここに問題が一つある。いわんや先ほどおっしゃられた日本憲法改正しなさいなんということを私は言いませんなんて、これはあたりまえのことでありまして、だれが言おうとも外国からそんなことを言われて日本国の憲法を変えるなんてこれはとんでもない。もう主権というものが一体どこかへ飛んじゃっているのじゃないか、それこそ重大問題になるわけですから、なぜそんなことまで触れざるを得ないのかなというような、そういう疑問が出てきます。それが一つ。  それと同時に、いままでずっと述べてこられたように、憲法だ、専守防衛だ、非核三原則だ、その枠の中でと、それも十分承知をしているけれども、現在、通常兵器によるところの防衛能力はまだ万全ではないということを繰り返しまたアメリカがそれを主張している。だが、それはもちろん共同声明では出ておりませんよ、それは具体的な問題ですから。恐らくそれが六月に出るだろうと、それは出るためにはある程度といいますか、暗黙の了解という日本には非常にうまい言葉があるのですけれども、そういうような暗々裏の中に了解がやはりなければ、具体的に大村さん行ったときにもう非常に苦労しちゃうわけでございますので、その点は一体どういう成り行きであったのかなという心配が実はあるわけですよね。だから、ワインバーガーさんが言っていることは、全然これはもう取るに足らないのか、しかしもう明確に――いま演説内容をここにぼくは持っているのですけれどもね、これは非常に強烈なんですよ。そうすると、もう何かもう少しく拡大解釈をすると、枠を広げろ、また防衛海域についても日本分担してくれと、その分担というところで、これからずっと拡大していくような、エスカレートしていくような危険性というものがどうしてもこの共同声明から見る限りにおいては感じざるを得ないのですが、その心配は毛頭ないというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  73. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) レーガン大統領憲法の話をしたというのは、それはこういうことだと思うんです。いまの安保条約というのは、あれは片務的なものでございますが、たとえばそれを双務的なものにするというようなことになりますと、これはもう当然憲法との問題が出てくるわけでございますので、私は憲法ということを大統領が言ったということは、その裏の安保条約を双務的に直すというようなことを言っているのじゃありませんと、言いませんよという意味がそこに入っているんだと私は解釈しております。おっしゃるとおり、憲法を外国から云々されるなんということは、これはもう独立国として問題でございますから、そういうことは私どもも全然問題外としているところでございますが、恐らく安保条約の双務的というようなことを頭に置いて言ったのじゃなかろうかと、私はそれを解釈しております。  それで、いままで首脳会談でいろいろお話が出たのは艇かに一般論だけでございますが、先生のおっしゃるように具体的な問題になると、これは防衛計画大綱をこの間、国防会議でいろいろ議論したわけでございまして、いつまで達成をするかというようなことで議論があったわけでございます。一年かかってひとつ防衛計画大綱をどういうふうに達成するかという答案を、いわゆる五十六年中業案というものをつくってみるというような国防会議のこの間相談を踏まえて、そして向こうへ行ったわけでございますから、向こうも当然それは防衛計画大綱をどうするだろうというようなことが頭にあることはそれは間違いございません。ただそれを何年までに達成してくれとか、それをどうしてくれとか、変えてくれとか、そういう話は一切なかったわけでございます。  ハワイで恐らくそういう問題についてはいろいろ向こうの希望表明とか議論があるだろうということはこれは私は予想されるわけでございまして、三月にワインバーガーさんに私が会ったときに、中業の問題とかそういう具体的な問題は、防衛庁長官と会われるだろうから、そのときにいろいろ意見を交換されたらどうかというようなことを私はワインバーガーさんにも言いましたし、今度もヘイグさんと会談をしましたときに、ハワイでいろいろ具体的な話は出るだろうけれども日本としてできることとできないことは、そこでもまたはっきり言う、そういうことを日本としては言うべきであると考えているというようなことを、私はヘイグさんと話したわけでございまして、ハワイの事務レベル会議あるいは防衛庁長官とワインバーガーさんの話では具体的な話が出るということは予想されるわけでございます。
  74. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いずれ、項目的に一つ一つお伺いしなければならぬのでございましょうけれども、先ほど来も出ておりましたように、将来役割り分担といい、「日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善し、」ということが具体的にどうなるのか、恐らくいまお答えになりましたように、実務的な会談の際にこれが詰められるであろう、詰められる際に、かねがねアメリカが要望していたその線に沿うたことが強く日本にはね返ってきはしまいかということを、どうしてもやはりその点がぬぐい切れない。こればかりやっておりますと次に入れませんので、この点一つの留保問題として、これだけにしておきたいと思います。  さて、これ全体見ますと、私が非常に気になっておりますのは、軍縮についてはわずか何行でしょう、一行ぐらいで、すぱんと締めくくられているのですね。この軍縮については、どれだけの熱意を持ってレーガン大統領に迫っていただいたのでしょうか。これは軍拡の方へはどんどんその議論が進むかもしれませんけれども、軍縮の方へはたった一行ぐらいで、すぱんともう締めくくられているというのは、どうも解せない中身ではあるまいかなというふうに思うのですけれども
  75. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 軍縮、軍備管理の問題につきましては、これは首脳の間で話が出たわけでございまして、両方から、軍縮、軍備管理ということはソ連との間でもひとつ話をしなければならぬことだと、そういう問題について窓をあけて、そして話し合いをし努力をするということをやらなきゃいかぬということが首脳会談で出たわけでございまして、具体的にどの場所でどういうやり方でやろうかとか、そういうような話ではなくて、一般論として戦域核の話が出ましたり、そういうことで話を両方でされたということでございます。
  76. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 非常に残念だと思いますのは、ヨーロッパ諸国などにおいてもデタントの方向へ非常に強い願望がある。日本としても平和国家を目指す以上は、当然その軍縮へのむしろ具体的な考え方なり方途というものを明確に世界に宣言するということが、この日米共同声明あたりにおいても必要ではなかったのかなという感じがしてならないわけであります。恐らくアメリカが対ソ脅威を打ち出し、そして軍事的な優位というものを維持できない場合には、SALTIIの再開交渉にいたしましても、あるいは軍縮への具体的な取り組みにいたしましても、ナンセンスな話だという考え方アメリカ側にはあるのではないだろうか。恐らくこのままでいけば、当然われわれが一番恐れている軍拡へ軍拡へという道を広げることに役立つだけでありまして、世界平和への願望とは全くかけ離れた方向へ行きはしまいか。今回の日米首脳会談はその意味においても非常に大きな意義があったし、チャンスであったのではなかろうか。したがって、いま触れましたように、もっと軍縮の問題、軍備管理の問題について具体的に鮮明にすべき必要があったのではないかというふうに思えてならないわけであります。  加えて、先般この当委員会において私は、訪米前に当たり、ソビエトの第二十六回党大会におけるブレジネフ書記長の提言、とりわけ核軍縮あるいは両国首脳会談の呼びかけ等々について、日本としても十分そのソビエトの意図をわきまえつつ、可能な限りそういう提案に対してアメリカが同調することが願わしいとぜひ日本としても建言をしてもらいたい、そしてまた伊東さんはここでお約束をされたはずであります。そういった一連のこの核軍縮を通じて、そうしたまた提言に対して、アメリカ側としてはどういう反応があったのか。そしてまた、具体的にいま私が申し上げておるようなことが将来展望の上に立って推進されていく可能性というものが十分あり得るのかどうなのか、この点はいかがでございましょうか。
  77. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 後の方からお答え申し上げますが、首脳会談、SALTの問題等につきましては、実は私はヘイグさんとこの前会ったときに話しまして、それが必要だという話をしたことに対して、アメリカ側は、もう少しその問題はソ連の具体的な行動を見てから慎重に考えたいということのこの前行ったときの話し合いがあったわけでございます。  今度は、ソ連との話し合いの問題については大統領の方から話がございまして、ソ連との話し合いの窓口というものはあけておく必要があるんだと、そして防衛の問題についても経済の問題についても何でもソ連と話し合うつもりだと。ただソ連と話し合うときは、その問題だけ取り上げて話すというわけにいかぬ、世界のあちこちでとっているソ連行動について話し合いをする必要があるのだ、ということを向こうから実はこれは言い出したことで、アメリカから言い出したことでございまして、鈴木総理も、それは話し合いをすることは結構なことだということが首脳会談であったわけでございまして、一つ一つ取り上げて、これはどうだ、こうすべきだというようなことは時間の関係等もあってやらなかったのでございますが、その話し合いということについては、向こうから必要だということが今度はあったわけでございます。
  78. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 今後の推移を見守る以外にないであろうというふうに思いますが、日本としても近隣ということがございますので、決して拱手傍観できないそういう立場であろうということでございます。この問題まだまだいろんな含みを持っているのではなかろうかと思いますし、少なくとも軍拡へ力をかすような危険な選択だけは絶対に日本としてはとるべきではない、これは伊東さんとしても恐らく同じお気持ちであろうというふうに思うわけであります。  あともう限られた時間、間もなくやってきますので、断片的に一、二お伺いして終わりたいと思いますけれども、この前文には、「両国間の連帯、友好及び相互信頼を再確認した。」、まことに結構な言葉がちりばめられているのですけれども、ただ残念なことに最近においては原潜の問題、アメリカの穀物の禁輸解除の問題、みんな頭越しに行われた、こういったことが果たしてこの再確認される中身に入るのかどうなのかという疑問を抱かざるを得ないのですけれども、そういったことが将来においてもちろんあってはなりませんし、その辺は十分話し合いがされたのでしょうか。そして同時に、原潜の問題については残念ながらまだ決着がついておりません。この問題について恐らく中間報告を踏まえて、必ずしも満足な報告でなかっただけに、アメリカ側に対しても申し入れがされたであろうし、そしてまた正式な最終報告というものが当然出されるであろう、そうした時期はいつごろになるのか、こういった問題が未解決のままでありますと、この日米共同声明の精神に反することに、もとることになりはしまいかという危惧を抱くがゆえに、穀物の問題といい、原潜の問題といい、最近起こった問題を挙げましても果たしてどうだろうか、こうした問題がやっぱり一つ一つ確認されて解決されていきませんとね、本当にそうかしらという一つの疑いを起こさせることに作用しては絶対ならない、日米の今後のあり方を考えてみた場合に、私どもとしてもやはり日米というものは友好親善であらねばならないというその立場を堅持する意味からも、その辺政府としても十分対応に万全を期さなければならないであろう、こう思えてならないわけでありますけれども、その辺を含めて御答弁いただければありがたいです。
  79. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 考え方、私は同感でございます。  原潜の問題も穀物禁輸の問題も、首脳二人だけのときにも出ましたし、私とヘイグさんが会ったときにもこの問題は両方で議論したのでございますが、原潜につきましては、これはもう向こうもまた遺憾の意を表明し、なるべく早く徹底的な調査をやって報告はよこすと、レーガン大統領総理に言われ、ワインバーガーさんも私にそれは確約をしております。ただ、時期の問題につきましては、もしかすると向こうで裁判になるかもしらぬ、責任問題や……、裁判になると少しいろんな証拠等の関係等で若干おくれるかもしらぬ、時期は、いま最終報告はいつかという時期は約束できぬが、なるべく早く出せるように努力をする、ということがございました。レーガン大統領がみずからこれは下に命令しているんだという話がございました。  それで中間報告ではまだ不十分でございますので、私もヘイグさんに、日本側は海上保安庁で調査をしている、生存者から意見も聞いている、それも海上保安庁からまだもらってないが、もらって中間報告等どうも胴に落ちぬと、こういうところが腑に落ちぬというところがあれば、アメリカにこれは再質問をする、そして、それも前提にして、踏まえて報告をよこしてもらいたいという話をしましたり、補償も向こうはできるだけ早くやるということを言って、非常に遺憾の意を表したことは確かでございますが、それはそれとして日米関係に傷の残らぬように、もっと国民の皆さんが納得するような説明がほしい、調査がほしいということをはっきり言ってきております。  それから、穀物の問題につきましては、これは日本に通報だけで協議しなかったことは申しわけないということがございまして、特にレーガン大統領から鈴木総理に、今後こういう問題についてはひとつ協議をするということをやると言って、これも遺憾の意を表明したということがございましたので、私どもはやっぱり両国の信頼関係というものの上に立って、いわゆるいま渋谷さんおっしゃった頭越しにいろんな重要なことがぼんぼんと決まる、出てくるということでないように、これは向こうも済まなかったということを言ったそうでございますし、今後ともそういう考え方アメリカとはいろんな話し合いをしてまいります。
  80. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) 午後一時十五分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ―――――・―――――    午後一時十七分開会
  81. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  82. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 午前中も大臣、問題になりましたけれども同盟関係の問題やあるいは分担の問題ですね、私は非常に危険な方向に大幅に踏み出したという感を強くするわけです。これは、もちろん大臣としてはそういうふうには肯定されないでしょうけれども。そこで私は、この八項の問題に限ってきょうはお尋ねしたいと思います。  ここで述べられております、この役割り分担の問題なんですが、午前中も同僚議員がお尋ねしましたが、大臣はそこで、日本としては、ここで言う日本防衛の問題のみであって、そして、極東の平和及び安全に寄与できるものではもちろんないのだということを述べられたわけですが、しかし、ここの文脈から言えば、この日本側としても極東の平和及び安全に寄与する、軍事的にも寄与するというように解すこともできるような文脈になっているのじゃないかということを、その疑念をどうしてもぬぐい去ることができないのですが、改めてその点、お尋ねしたいんです。
  83. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 午前中お答えしましたように、これは、極東の平和、安全ということに日本軍事的に何かできるのじゃないか、そういうことを何か話したのじゃないか、これを意味するものじゃないかと、こういう御質問でございますが、極東の平和、安全のために日本ができますのは、在日米軍施設区域を提供してやると、これは一つの問題でございますが、そのほかは、あと日本を守るということは軍事的にはできますが、極東の安全、平和のために直接日本軍事的に何か寄与する、役割り分担するということは、これは法律上ももうはっきりできないわけでございまして、アメリカとの話し合いでも、それは経済的な協力であるとか外交とか、そういう面の日本役割りなんだということはもうはっきり言ってありまして、ここで何かそういうことを頭に置いて考えたというようなことは毛頭実はございません。
  84. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 それで、いま大臣の御説明によりますと、従来の分担の内容と基本的には変わりがないということになるわけですが、全く変わりがないのですか。一点も変わりないのですか。
  85. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 役割りにつきましては全然変わりございません。
  86. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 ところがよく読んでみますと、「日米両国間において適切な役割分担が望ましいことを認めた。」というんですね。いままでと全く変わらないことを引き続いてやるならば、それをさらに充実することを確認したとか、それを一層促進することを認め合ったとか、望ましいということは、いままで存在しない新たな内容を持ち得ること、そういうことに対する新たな願望の表明ですよ、これは文脈からとってもいままでと全く変わりないなどというような言い方は、大臣これは何ぴとも納得させることができないのじゃないですか。
  87. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 「適切な役割分担が望ましい」ということは何か新しいものを分担するという意味だと、そういうふうにとられると、こうお読みでございますが、私どもは現在持っておる役割りというものがあるわけでございますが、それが望ましい姿であると、こういうふうに解しているわけでございまして、まあ読み方そう読めると立木さんおっしゃるのでございますが、話し合いの中ではそういうことは全然出なかった、日本に対して新しい役割りを持ってくれというようなことはこれは出なかったわけでございまして、この周辺の海・空域の問題もこれは日本が従来言っていたとおりのことでございまして、特におっしゃるような新しい役割りを持つ、それが望ましいのだというようなことはございませんでした。
  88. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 アメリカ側の内容から見ますと、いままでもう西太平洋での顕著な防衛力の増強等等、ワインバーガー氏などからも発言が繰り返し行われてきているわけですが、こういう、アメリカ側としては極東の平和と安全に軍事的に関与してほしいという、そういう願望ということはここの共同コミュニケの中には含まれていると――日本側は別ですよ、日本側は。いま大臣が言われたことが正論だとするならば。アメリカ側にはそういう願望があるということはどうなんですか。
  89. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) アメリカは、大統領とも話しましたし、私はヘイグさんとも話しましたが、日本軍事力日本防衛すること以外に使うということはできないということは、もう向こうははっきりしているわけでございまして、それを望ましいとか、そういうことをやってほしいとかというようなことは一回もなかったと、自分の国を守るということをひとつしっかりやってもらいたいという意味のことはありましたが、それ以外、それを枠を広げて極東の安全、平和というところまでに、そういう期待表明はどこからもありませんでした。
  90. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 これは在米中の記者会見の中で、この役割り分担の問題に関して鈴木総理自身が言っているのですが、日米間の役割り分担の問題で、アメリカ側軍事面の分担と言うかもしれないが、日本とは立場が違う、日米両国解釈の違いが出てくるのはやむを得ない、というような見解を示したという報道があるのですが、これはいままでアメリカが主張してきた内容、いわゆる西太平洋における日本防衛力の向上、これらの問題についてのいままでの一連の発言から見れば、アメリカ側としてはこの極東の平和と安全に寄与してほしいという願いを持っているということは、これは否定できない私は裏実だと思う。そこらあたりの食い違いということがやはり会談の内容ではあったのじゃないですか。だから日本側としてはそう強弁をしているのじゃないでしょうか。
  91. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 会談の中で、日本防衛する、その防衛力の強化ということに努力をしてもらいたいと思っているという話はありましたが、極東の平和、安全のために日本軍事力を行使するという意味で役立ってもらいたいというようなことは、どこでも日本に対してはそういう期待表明ということはございませんでした。これはもうそのとおりでございます。私たちの日米首脳会談では、私とヘイグさんの話も入れて、そういうことは日本に対して期待表明は全然なかった、自分の国を守ることの防衛をしっかりやってもらいたいということでございました。
  92. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 それでは重ねてお尋ねしますけれども、ここで言う「適切な役割分担」というような点について、いわゆるどういう内容で両者が見解を一致させているのか、その具体的な内容の点についてもう少し立ち入って御説明をいただきたいのですが……。
  93. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) ここにありますように、在日米軍の財政的負担を軽減するために一層の努力を行うということをここに書いてます、これは努力するように。これは一つの具体的な問題でございまして、在日米軍の駐留費を、地位協定の範囲内で、日本が負担できるものはもっと負担できるように努力をしましょうということを述べた項がございます。これは在日米軍施設区域を提供しているということに関連しますと、一つのこれは具体的な問題だと思いますが、そのほかは、アメリカ日本極東の安全、平和のために軍事的なことはできないということをもうちゃんと知っておりますから、日本経済的な協力をする、あるいは財政的、外交的、政治的な協力をする、技術協力をするというようなことで日本側極東の平和ということに役立っているということでございまして、これは日米間で一致した考え方でございます。
  94. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 ところが、ナショナル・プレスクラブでの総理の記者会見の後の質問に答えて、総理が述べている内容を見てみますと、アメリカの第七艦隊はインド洋もしくはペルシャ湾方面に移動し、この海域の安全確保に当たっている、これにより日本周辺がそれだけ留守になる、この留守となった日本周辺海域を少なくとも自分の国の庭であるということで、日本が十分自分で守るだけの苦労をすべきではないかと、こう述べられておるわけですね。つまり、ここではいま日本周辺で第七艦隊が果たしていたある意味での役割り、これについて日本側がある側面で肩がわりをするということを述べたというふうに考えられますが、その点はどうなんですか。
  95. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) それは私そばにいまして、しっかりした言葉、いま立木さんがおっしゃったとおり言われたかどうか、どういうことかちょっといま記憶はございませんが、それはこういうことだと思うのです。結果論として出てくることだと思うのですが、日本は自分の国を防衛するために防衛努力を強化せにゃならぬということを言っているわけでございまして、そして周辺数百海里、航路帯の場合は一千海里ということを整備の目標にしてやっていますということは、これはもう何回も総理が言っておられる、防衛庁長官も言っていることでございますが、そういうことの充実をすれば、結果において、そこにアメリカの軍というものが注いだ力が結果においてそれはほかへ回り得るということもあり得るだろうという意味に私はそれは解しているわけでございまして、アメリカの軍隊が守ったところがほかへ行って留守になったからそのために日本が守らにゃいかぬのだということじゃなくて、日本が自分の国を守るためにしっかりやるということが、これが大前提でございまして、その結果においてそういうことが出てくるかもしらぬ、こういう私は論理の順序だというふうに考えているわけでございまして、日本防衛力の強化をしていくということは、これは日本として自主的に考えていかにゃならぬことだと、こういうふうに思っています。
  96. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 それは一国の首相なんですからね。第七艦隊ということを一つは明確に名指しをしているわけですよね。そしてそれが留守になった、それが日本の庭である、自国の庭であると考えてそこで十分にやるべきだと、これは私はいわゆる単純な発言ではないと思うのですよ。これはいままでの経過から見ても明らかですけれども、中東の石油に依存しているのは日本が一番比率が高いではないかということが一つ問題になっておりましたね。ところが、これの防衛をやってきたのはアメリカが十分の役割りを果たしてきたじゃないか、その日本はおかげをこうむっているじゃないか、おかげをこうむっているというのはこのコミュニケの中にもはっきり述べられている。そうしてその結果として、この地域の問題に関しては死活的地域を守るという、これが日本の死活的な地域であるということすら記者会見の中では総理は述べられておる。これに対して、いままでしかるべき役割り日本が果たすべきだということは繰り返しアメリカ側から言われてきたわけですから、そういう状況のもとでこのことが述べられているわけですよ。しかも共同コミュニケの中では日本防衛並び極東の平和と安定に関して両国間での適切な役割り分担が望ましいということを認めたという、こういう文脈から考えるならば、この第七艦隊が果たしておった役割り、これについて一体どういう部分役割り日本側としては担うのか。これは単純に結果論からだけは言えないのじゃないかと思うのですが、その点もう一遍お尋ねしたいと思います。
  97. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) そこは日本日本防衛するというのが軍事的にできることでございまして、それ以外のことはできないということははっきりしているわけでございますから、日本として防衛力の充実といいますか、そういうことをやっていこうと。その場合の整備の目標は、何回も申し上げますように、周辺数百海里、航路帯千海里ということを何回も言っているわけでございますから、そこをそういうものを整備の目標に置いて日本防衛をやるのだということが先決でございまして、そういうことをやることがこれがまた世界の平和といいますか、極東の平和といいますか、そういうことにこれは関連してくることなんだ、役立つことなんだ、日本日本をしっかり守る努力をするということが必要だ、というのが日本の立場でございます。
  98. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 ワインバーガー氏と防衛問題で話し合ったという中で、鈴木総理との話し合いの中で、日本本土及び周辺海・空域の自衛力を高めることができれば、その結果、米軍弾力に余裕が生じ、インド洋、アラビア湾への展開が容易になる、こういうことがワインバーガー氏の発言としては述べられているわけですね。先ほど挙げた記者会見の中では、つまり今度鈴木総理は、アメリカ側にしてみれば、この海域の自衛のための防衛をしっかりとやるならば、これさえしっかりやれば、今度は心配なしにアメリカはインド洋、ペルシャ湾岸、オマーンとかに力を専念できる、これはアメリカの明確な要求にこたえた内容になっているわけじゃないですか。
  99. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 私さっきから言っていますが、結果論として、日本日本を守るためにしっかりした努力をすると、そういうことをやれば結果論としてそれがここに防衛の努力をした、アメリカの力が、ここは日本がしっかり守るということであれば結果として外に行けるということは、これはもうだれでもわかることでございまして、しかし、それは目的はやはり日本日本をしっかり守るのだということがこれが目的なんだ、そういう努力をしなければいかぬというのが必要最小限の自衛力を持っているということだと私どもは解しておりますので、結果においてそういうことが出てくるかもしらぬが、しかしそれは日本を守るためなんだ、そしてそれがまた極東の平和なり世界の平和に貢献するのだということだと私は思っております。
  100. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 くどいようですけれどもね、大臣、先般も防衛庁長官並びに塩田局長の方で確認されているように、日本、この周辺海域について言うならば、グアム以西、フィリピン以北とほぼ同じと考えて構いませんという答弁があるわけですね。この地域でいわゆる第七艦隊が果たしておった役割りの一体何を――安心して第七艦隊がインド洋やペルシャ湾に出ていけるようにするためには、一体日本の自衛隊は何をやるということになるんですか。
  101. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 私にそこまで軍事力の内容にわたって答弁しろと言われましても、間違って答弁するといかぬし、これはまさに防衛庁の役目でございますので、それは防衛庁のしかるべき人を呼んで御質問願った方が私は正確な答えが出ると思いますので、立木さんのそれにつきましては、答弁を遠慮させていただきます。
  102. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 きょうは衆議院の内閣委員会がありまして、関係の方が一人もおいでにならないというので、その会談の席上におられた大臣ですから、話し合いの内容によって答弁がいただけるかと思いましたが、そういう御答弁ならば、これは場所を改めてこの問題についてはお尋ねすることにしたいと思うのですが。ただ、ここで述べられておる第七艦隊のある意味での機能、どういう機能を代行するかという問題まで含めた内容になりますと、これは非常に日本の現在の軍事力、これをさらに高めなければならないということにならざるを得ないと思いますが、その点についての会談における感触はいかがでしたか。
  103. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 財政にまで触れてどうこうという話は出ませんでした。それで、私どもは防御計画大綱の水準にはまだ達しておらぬので、その整備目標がいまの中で前提にしていますのは、いまの千海里、数百海里だということを言っているわけでございまして、防衛計画大綱を達成していくというのが日本考え方だということを言ったわけでございますが、その際それを何年まで達成すればどうとか、防衛大綱の水準に達してもなおそれは足るか足らぬかとか、そういう議論はワインバーガーさんと総理の間ではなかったわけでございますので、いま先生の御質問のことは、これから防衛庁が一年かかって五十六年中業の計画をつくってみると、こう言っているそういうことに恐らく私は関係してくる問題だというふうに考えております。
  104. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 防衛問題で総理も直接話し合われたり大臣もいろいろ話し合われたわけですね。私はそういう感触で聞いているわけですが、いままで新聞などを見てみましても、たとえばP3C百機体制だとかあるいは護衛艦八十隻、潜水艦四十隻だとかいうふうな問題がいろいろ報道されているわけですね。ですから、私はここでいままでのような状態では、やはりアメリカ考えておるいわゆる希望ですね、これにはやっぱりこたえていくことができない、もっと軍事力をふやさざるを得ないのだという感触をお持ちになったのかどうなのか、いや、いまのままで結構だ、アメリカのそういう要望に対してはいまのままで結構だというふうにお感じになったのか、そこらあたりの大臣の感触をお伺いしたい。
  105. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) その問題はレーガン大統領鈴木総理会談で特に出た問題でございます。総理の口からは、いま私もそんなこと言ったことございませんが、護衛艦の数とかP3Cがどうとか、そういうことは今度の会談でも一切出たことがございませんが、総理レーガン大統領にるる日本防衛の状態についての説明をされたわけでございます。それは憲法論、法律論、個別自衛権の問題、専守防衛の問題、軍事大国にはならぬというような問題も詳細話され、それから国民的なコンセンサスの問題も触れられ、それから財政再建という問題にも触れられたわけでございまして、いろいろ歳出を削減しようと言っている際に防衛だけが突出するというようなことはなかなかむずかしい問題なんだと、そういうことまで具体的に言われて、そんなことをすれば政局もいまのままというわけにいかぬような状態になるおそれもあるんだと、そんなことまですれば。ということまで話されまして、いまの国民の世論というものは自分が言っているようなものなんだと言って、るる防衛に対する日本考え方を言われたわけでございます。これに対してアメリカ大統領は、それは理解するということで、憲法の問題とかいろんな強制はしないとか、自主的に考える問題はそのとおりだとかというようなやりとりがあって、防衛の話は実は首脳会談では終わったわけでございます。  それから後でワインバーガーさんが来まして表敬に来たというのは、今度の会談での防衛の問題は総理を前にして出た問題でございますが、総理は従来どおりの日本考え方を述べられ、アメリカは、世界の情勢からいって、自分の方は予算もほかは削減するのだが防衛費はふやすのだと、充実するのだというような話があって、それでこういう共同声明になって終わったわけでございますが、その感触を言えということでございますが、アメリカはカーター政権時代と私は日本に対する防衛の期待というのは何にも変わってないという感じがします。前からカーター政権のときからブラウンさん初め強い期待を言ったわけでございますが、カーター政権とレーガン政権と、ともに日本防衛に対する期待といいますか、それは変わってない、その点は前からと同じ調子だというふうに私は感じております。
  106. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 どうも最後の重要な点で御答弁がいただけないので、もう時間が来てしまいましたが、私は、今回、重大な疑点が幾つかあるわけで、今後引き続いてお尋ねしていきたいと思うのですが、もう一遍最後に、大臣は日本のいまの防衛力をさらにふやさなければならないという感触を受けられたのかどうなのか、いまのままで結構だというふうにお感じになったのか、再度そのことをお尋ねして私の質問を終わりますが、はっきりしていただきたいのです。
  107. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) それは国防会議でもいろいろこの間議論をしたところでございまして、いつまでにいまの防衛計画の水準に達成するということができるのだということを大分国防会議でもいろいろ議論をしたわけでございます。もしも、やり方によってはGNPの一%を超えるような問題も出るだろうし、どういうふうに考えるんだということを国防会議で議論して、それから向こうへ行ったわけでございますが、私はヘイグさんにもいろいろ期待表明はあるだろう、ハワイでもこれから会談を毎年やるのですから協議をするわけでございますが、日本としてはやっぱりこれはできることとできない範囲というのがあるのだ、その中には国民のコンセンサス、財政の問題もあればさっきの法律の問題もあれば、全部ひっくるめてやっぱり総合的に日本考えなけりゃいかぬのだ、だからそんなにできないことまで言って過剰な期待を与えるようなことは日本はすべきじゃないと私は思っている、というふうなことをヘイグさんとの話し合いでは私はしたわけでございまして、向こうがどういうことを日本に期持しますかわかりませんが、恐らく防衛計画の大綱とかそういうものをめぐっていろいろ議論が私は出るだろうと思います。これは議論が出るのは当然議論はあると思いますが、しかし、その場合の日本の態度というものは、従来のように着実にあの水準を達成していくように努力するのだというのが私は日本の態度だというふうに思っております。
  108. 立木洋君(立木洋)

    立木洋君 では次回にあとは譲ります。
  109. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 今朝来の外務大臣のお話を伺っておりますと、共同声明で初めて規定をされた「同盟」という解釈について、日本アメリカとの緊密の関係、しかもより広い範囲での緊密関係意味し、大平総理大臣も首脳会談ではしばしばこういった言葉を使っていたと、そして日米安保条約もあくまで片務的なものであって、片務的な立場での同盟関係であって、集団自衛権あるいは双務的役割りを持たないという同盟関係で、いままでの日米関係と変わったものではないのだという御趣旨のことをおっしゃっておったわけであります。  そうならば、必ずしも私はここで「同盟」という言葉を規定しなくてもよかったのじゃないだろうか。そこで、まあ原則的なことになりますけれど、初めて「同盟関係」と規定をした理由、友好関係とどう違うのか、そして同盟関係に伴う具体的な責任分担、まあけさからお話があったと思いますけれど、改めて伺っておきたいと思います。
  110. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 「同盟関係」と書きましたために新しく責任分担をするとか、新しい役割りを持つとか、そういうことは何も考えておらぬわけでございますので、「同盟」と書いたから特別に何か新しい役割りとかそういうものが出てきたのだというふうには、そういう話し合いは全然しませんでした。「同盟関係」と、こういうことをわざわざ書かぬでもいいのじゃなかったのかということでございますが、このこと自身は「同盟関係」という言葉はもう二年前から総理大臣が向こうへ行ったときも使っていたことでございまして、新しい政権ができて、両方とも新しい政権でございますので、日米の緊密な関係を新しい言葉で言うにはどういうことがいいのだろうということで、これは従来使っておりましたが、この言葉を使ったということでございまして、まあ緊密な連帯関係ということ、なお一瞬変わらぬ強い、力強い緊密関係というものが緊密な連帯関係というものだというふうに日米関係考えるということで、新しい政権ができた機会にこういう言葉を使ったということでございまして、ただ現状を変えるとか、いままでのものを変えるとか、新しい役割りをつけ加えるとか、そういうことは考えておりません。
  111. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 まあいままでと変わらないのだというおっしゃり方の中に、日米関係をより緊密な力強いものにといういま御発言がございました。これは何か特別の意味がございましょうか、力強いもの。
  112. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 特に緊密、力強いと、こう言ったから何か新しいことがあるかと言われれば、それは力から何か別なものを想像するとかそういうことじゃなくて、いよいよ変わらない緊密な関係をということでこれをこういう「同盟関係」という言葉を使ったわけでございまして、何かそこから新しいものを役割りをつくっていく、そういうようなことを考えてこれを書いたわけじゃございません。
  113. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 「同盟」という規定のされ方の中には、より緊密な力強い、いまおっしゃったとおりでありますけれど、私は日米二国間の緊密な関係と同時に、西側の一員としての日本の果たすべき役割り、参加というものがこの同盟という規定によってフィックスをされる、もう後へ引けないものになっていく、そういった印象を私は非常に強くしたわけです。それがこの項目の中にもございますように、一つは政府開発援助というものを拡充をしていくと同時に、重点地域へこれを集中をしていくのだというようなこともここに共同声明の中にございますね。こういうことは、重点地域ということになれば当然安全保障上の観点からもこれが論じられなければならないということになって、ますます同盟という規定の中で日本西側の一員としての役割りの強化、こういうものを果たす結果になっていく。  そこで、伺いたいのでありますけれど、政府開発援助というものはいままでの一般的援助、つまり南北問題を中心としたまんべんのない、こういう援助と大きく変質をしていくのだろうか。そして、ここで言う重点地域、重点国というものを日本はどうとらえているのか、この辺をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  114. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 九番に書いてあることでございますが、九番目の問題は、南北問題を頭においてずっと最初書いているわけでございます。続いて経済協力のことを書いたのでございますが、その経済協力の中でも、ここに書いてありますように、最初に「開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であることを確認した。」、こういうことでございまして、開発途上国というものの安定ということが大切だということを話して、ここに経済協力をやっていくのだということをまずこれは書いたわけでございます。それで、そのあとのことはここに「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する」ということを書きましたのは、これはここで書いたのを頭においたのは、紛争周辺国のタイでありますとか、パキスタンでありますとか、あるいはトルコとか、そういうものを頭においてこれは書いたわけでございまして、アメリカと話しましたときにも、開発援助というものは日本は自主的にやるんだと、自主的にどういうところにやらなければいかぬかということをやるんだということを、私は特にヘイグさんと会談したときも言ったわけでございまして、ここの西側から考えて重要な地域に援助を集中するんだという意味のことをちょっとおっしゃいましたが、そういうことは何も考えてないのです。やはり、南北問題を中心にしまして、紛争周辺国とか、そういう相互依存の場合に、西側との依存ということも考えてやるんだと、人道的なこと、相互依存、相互依存の中に経済的な問題と政治的な問題があるということで、その政治的な問題の中に一つ紛争周辺国というのを入れたわけでございますので、そういうことを念頭においてこれを書きましたので、アメリカが何かどういうところ、どういうことを言ったじゃないかという御質問が午前中ありましたが、アメリカ側からは一切そういう話はなく、むしろ私の方が、これは日本が自主的に考えるということを向こう話し合いをしたわけでございます。
  115. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 いま重点地域の中にタイとかトルコとかパキスタンを外務大臣挙げられました。では日本は、自主的に重要地域として、ほかにどういうところをお考えになりましたか。
  116. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 紛争周辺国としていま具体的に要望が出てきておるところはないわけでございますので、私どもとしてはこれはまあ、これからの国際情勢との関連その他の問題があるわけでございまして、それはその国の需要が出てきた場合にその都度考えていくということで、これをやりますときにどこを頭においてこれを、新しいところをどこをやるというようなことを頭においてこれを書いたということではございません。
  117. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 そうしますと、当然いままでその南北問題の解決のために日本が寄与していくというこの面、この面での日本の果たす役割りというものも当然やりながら、しかも重点地域へのということになりますと、これは財政的にも非常に私は大きな負担になると思うのですけれど、その辺はやはり、この「同盟」という規定の中、つまり西側の一員、西側の戦略の中に日本がやっぱりある意味でフィックスをされてきたという、そういう重みを大臣、この辺で私は感じないわけにいかないのですけれど、どういうふうにこれを読んだらいいのでしょうか。
  118. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 「同盟関係」と書いたから経済協力関係を東西関係を相当重点を置いて考えなきゃならぬとは私ども毛頭考えておりません。アメリカに言いましたのも、南北問題をしっかりしないと世界平和にとって非常に問題になりますよ、南側が経済不安、社会不安、政治不安ということになることによって東西関係にまた微妙なバランスが崩れて、西であったところが東にいくとか、そういうことになってはまずいので、南北問題ということは世界の平和に非常に関係があるのだということを今度も私はヘイグ長官と大分やったわけでございまして、そういう意味からしますと、先生のおっしゃるように、日本経済協力西側に組み入れられて、その東西の目で見て使うものがよけいになるというように、私はそんな運営を日本はやるべきじゃない。中期目標で予算は毎年毎年決まるわけでございますから、その中の配分の問題でございますが、やはり重点は南北問題だということで、日本は自主的に運営をしていくということだと思っております。
  119. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 これは改めて十五日に一応総理大臣の日米首脳会談の御報告がございますから、その折にも詳しく触れさしていただきたいとは思いますが、項目の中でカンボジア問題の解決にも触れております。で、ポル・ポト派とあるいはソン・サン、シアヌーク、こういった三者が集まって、反ベトナム統一戦線というものがいま形づくられつつあるわけでありますけれど、このカンボジア問題解決への日本の具体策というか、そして統一戦線への対処の方法、あるいは支援といっては少しアクションが過ぎるかとは思いますけれど、こういったものに対する日本考え方というものをどんなふうにお述べになったのか、聞かしていただきたいと思います。
  120. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) お答えします。  ここにインドシナの問題でカンボジア問題に触れているわけでございますが、先方からも、たとえばソン・サンがアメリカへ来て議会筋と大分話していった。かなりの支持を受けたようだとか、アメリカ側としての統一戦線についての見方がございました。日本はこの統一戦線につきまして、それはもう原則的にはこれはカンボジア人が自分で決めることでございますから、日本としてどっちがいい、どっちが悪い、こういって言うべき筋合いじゃございませんが、この統一戦線の動きについては、日本は好意的にこれを見守っていくというのが日本の立場でございますので、そういう意味で、そういうことを頭に置いて私とヘイグさんで少しこのカンボジア問題について話し合ったことがございます。  ただ、カンボジア問題の解決につきましては国連の決議があって、国連の事務総長の代理もこの間、エサフィさんが来てやっておりますので、日本アメリカもその動きをひとつ支持しようじゃないかというような話し方を向こうとやりました、というのがカンボジア問題、インドシナ半島問題に対する見方でございます。日本アメリカも、統一戦線については好意的に見ている、こういうことでございます。
  121. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 一応各項目についてきょうは触れさしていただきたいのでありますけれど、今度の共同声明の中でも軍備管理、特に核軍縮についての項目がございます。軍縮促進への日本としての働きかけというようなものについて、積極的なアプローチを外務大臣なさいましたでしょうか。
  122. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 軍縮の問題は、軍備管理とあわせてアメリカ側から、自分らとしてこれはソ連話し合いをする窓口を開いておいて、こういう問題についてはソ連とよく必要があれば話すということを大統領からもヘイグさんからも実はあったわけでございますので、向こうがそういう態度でソ連と話をするということでございましたので、それは結構なことなんで、ひとつそれをやってもらいたいということを言いましたが、こちらから、向こうがそういう態度だったものですから、こちら側から積極的にこういうことをしたらいい、ああいうことをしたらいいというようなことは今度は言っておりません。
  123. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 軍縮について特に日本から積極的な御提言というか、役割りを果たすという、そういう御意思はございませんか。
  124. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) それは軍縮一般という問題、安全保障の中の軍縮でしょうけれども、そういう問題については国連の軍縮の特別総会もございますし、これはスイスでもやっておりますので、日本としては軍縮につきましては、たとえば包括的核実験の禁止とかそういうような問題、具体的にそういう場で日本としては主張するつもりでございます。
  125. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 今朝来から、問題になっております周辺海・空域での日本防衛ですか、こういうお話が出ておりますけれど、確かにアメリカの第七艦隊がインド洋、ペルシャ湾に展開をする、日本周辺がお留守になる、それを日本の庭として当然日本が守るべきではないかと、そしてたしかこれは記者会見の中であったと思いますけれど、アメリカ行動をして後顧の憂えのないようなものにしていきたいのだというような、これはたしか記者会見の中でそういう言葉があったかなかったか、まずそのことの確かめをしておきたいのでありますけれど、総理はそういうことをおっしゃったのでしょうか。
  126. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) そういうそのままの発言だったかどうかは私はいまどうも記憶しておらぬのでございますが、先ほどから私言いますように、日本がまず日本防衛のことに自主的に努力をせにゃならぬと、それには防衛計画大綱というものを持って、それの水準に早く達成するように努力をするということが日本のこれは役目でございますので、それは日本は着実にそれをやっていくというのが前提でございまして、その結果として、アメリカの第七艦隊であれば第七艦隊がほかの方へ展開する力が、余力が出てくるということが結果として私はあるということはこれはわかるわけでございますが、日本のやることは、しかしそれは日本防衛をまずしっかりするということが世界の平和といいますか、極東の平和、安全に役立っ、こういうことだと思うので、片っ方が出ていくから、その留守があくから大変だ、日本がやらにゃいかぬということと私は順序が逆だと、こういうふうに考えております。日本のために努力せにゃならぬ、その結果論としてそういうことが出てくるかもしらぬ、こういうのが私の考え方でございます。
  127. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 そうしますと、あくまで日本の自主的なつまり防衛力の強化によってそれを守る、周辺海域を守る、その結果がそういうことになるのだと、こういうふうにいまおっしゃったわけであります。  そこで、これはきのうの外務委員会でも私どもの同僚議員から話がたしか出たと思いますけれど、果たして質量ともに要求される相当密度の濃い、そういう防衛体制をつくるということになると、現在の大綱の水準ではこれは私は不可能ではなかろうかと思う。この辺についてのお話は出たのでしょうか、それとも外務大臣としての御意見でも結構でございます。私は、現在の大綱の水準では不可能じゃないかと思う。つまりわれわれは、状況が非常に厳しくなった、大綱そのものも見直すべきだというふうな御提言を申し上げているわけでありますけれど、この辺については外務大臣、どういう感触をお持ちでございましたか。
  128. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 向こうと話したときに、首脳会談でも、ワインバーガーさんとの話でもヘイグさんとの話でも、直接向こうから防衛計画大綱に触れた話はございませんでした。むしろ私の方で、日本防衛計画大綱というものがあるのだと、それの水準には達してない、その水準を達成するように日本として努力をするのだということは、これはこっちで言ったことでございまして、向こうとの話し合い向こうから何か出たかということであれば、向こうからはそういうことは出ませんでした。  それで、防衛計画大綱というもので装備というものを考えるわけでございますが、その装備を考えるときの前提は、何度も申し上げますように、日本周辺数百海里、航路帯であれば千海里と防衛庁がよく言われますが、それが、水準を達成した場合の日本防衛でやれるところはそういうことじゃないかということであの大綱水準達成ということをやっているわけでございますので、いまの先生の御質問で、防衛計画大綱の水準に達したときでもなおかつそれはできるのかできないかというような問題は、これは今度は国防会議防衛計画大綱のことの議論をしながら新しく五六中業をつくると、こう言っておりますので、そういう際にそれができるのかできないのかというような議論を当然国防会議で私はしていくものだというふうに考えております。いま、このこと自体が大綱を見直す、改定するかどうかということにつながるかと言われれば、私は水準、これを目標にしてやっているのだから、水準達成にひとつ努力をしていくということが私のお答えなわけでございます。
  129. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 まあこれもやっぱり防衛庁に直接お尋ねをするのが筋であろうと思いますのでくどくは申し上げませんけれど、しかし総理のお口からはっきりと周辺海域数百海里、そして航路帯一千海里、つまりキロに直せば千八百キロですか、こういうものを日本が守るということになったら、水準ではとてもとてもどうかという意味でも私申し上げたわけで、現実的に外務大臣どうなんでしょうか、そういう数字が出てくるとなると、私はさっき言った水準の見直しというのは当然行われるべきではないだろうかと、こう考えるわけですけれど、いかがでしょうか。
  130. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) それは木島さんもおっしゃったように、防衛庁がいないところでとおっしゃった。やっぱりこれは防衛庁に聞いていただかぬと……
  131. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 そういうことを言うのは、質問がへたかもしれませんけれど。
  132. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) いやいや、私からこれはお答えすることはどうも文科の学生に高等数学を聞かれるようなものだから、たとえ話でございますが、そういう感じがいたします。
  133. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 さて、ミッテラン政権が誕生をいたしました。今朝来からこのミッテラン政権に伴う影響、これからの西側陣営の団結などというものについて多少お話がございましたけれど、西側陣営の連帯にミッテラン政権がどんな影響を及ぼすと見るか。まだ誕生して直後でございます。訪欧の際、ミッテランにどういう注文をするのか。ミッテラン政権が共産党と、たとえば共産党が入閣をするようなことになったらば、西側の連帯、フランス自体はNATOの軍事機構には入っておりませんけれど、NATOの性格に私は相当大きな影響が出て、このミッテラン政権というものが西側、つまり自由陣営に与える影響というものも相当大きいものだと思う。で、外務省としてもこれはもう鋭意分析をされ、御研究をされていることではあろうと思うけれど、今日の段階での感触としてで結構であります、いま私が申し上げたミッテラン政権がどんな影響を及ぼすと見るか。訪欧の際、ミッテラン氏に何か特にお話をするような注文があるのかどうか、また、NATOに及ぼす影響、今日の段階で結構でありますから、外務大臣の感想を伺って私の質問を終わります。
  134. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) きのうのきょうでございますので、これはもうどういう動きをされる、どういう政策をとられるのかというのは本当に五里霧中、わからぬというのが真相でございます。ただ、選挙中のいろいろな演説や何かとか、あるいは社会党大会がたしか一月にありましたが、ポーランドの労働者は労働組合をつくることは自由じゃないかというような決議があったり、アフガニスタンへの介入に対して非難をするというようなことが過去においてあったりしたこと、あるいは西側に残るのだということを言われたこと、いろいろそういうものを積み合わせて考えるしかいまの段階ではないわけでございますが、将来の問題は、おっしゃったように共産党とどういう関係になるのか、何か政策協定でもやって入閣でもあるのか、その辺のところは非常に微妙な関係だというふうに見ておりますし、国会の解散も恐らくあるわけでございます。その帰趨もありましょうから、いまここでどうだということを申し上げるのはむずかしいのでございますが、やはりフランスはいまNATOに入っていることは入っているんです。ですから、その辺のところ、西側に残るということを選挙中も言っておられるわけでございますから、恐らく西側に残り、たとえばサミットであればサミットに出てくるというようなこともあるだろうというふうにきょうの段階で予想しているわけでございます。  ただ、いままでと違ってECの運営とかドイツとの関係とか、その辺、外交は余り変わらぬと思いますけれども、やはり微妙なニュアンスの違いというものはあるだろうということは想像されるわけでございまして、実はアメリカの帰途、総理はトルドー首相とカナダで会談をされた。トルドーさんが一番心配していましたのはサミットの議長国だと、これはどうやってサミットをうまく運営できるんだと、いろいろな議題、南北問題の議題等についても意見のいろいろ違うところがある、どうやってまとめるんだというようなことを盛んに鈴木総理に相談をかけ、意見を聞いておられたのでございますが、私は、トルドーさんの顔を思い出しますと、また、ミッテランさんが大統領になりましたのでサミットの運営も議長国として大変だなというような感じを私は持って、いまも総理にそういう話をしてきたのですが、まあきのうのきょうですからわかりませんが、前と若干ニュアンスの違ったことはあるだろうということは想像しております。  ただ、外交関係は、内政については私はあると思いますが、外交についてはそう大きな変化というものはないのじゃないかなとは思っておりますが、まだきょうの段階ではとてもそれ以上言える何も持っておりませんので、御勘弁願います。
  135. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 何か注文はということではやはり無理ですか。
  136. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) それで、総理がヨーロッパへ行かれるわけでございますが、まだいまの段階で向こう政策その他が決まらぬ段階でございまして、総理が行かれるときまでというのはもうわずかしかありませんから、まだ総理と御相談は申し上げておりませんが、日本としてこういうこと、こういうことということは、まだきょうの段階ではそこまで相談をしておりません。
  137. 木島則夫君(木島則夫)

    ○木島則夫君 結構です。
  138. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 外務大臣、体のぐあいがお悪いそうですが、どうですか。体のぐあいは大丈夫ですか。
  139. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) はい。
  140. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 簡単にひとつお答えください。  今度、首相とともにレーガン大統領に会ってこられていろいろ話されたわけですが、大臣は一番よく知っていらっしゃると思いますけれども、どうなんですか、いままでと日米関係、特に防衛をめぐる日米関係に大きな変化が起こったのですか、起こり得るのですか、あるいは何にも変化がないのですか、お答えください。
  141. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 日米関係は、カーター政権のときと、今度レーガン政権になりましても特に基本的に何か変わるということはない、今度行きましても、前のカーター政権時代の考え方と特に変わったものはないという、私の印象はそういう印象でございます。
  142. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 私はあなたがちょうどワシントンに行かれる少し前に中国におりまして、鄧小平副主席ですか、あの人といろいろ話したわけですが、その際に、私の印象に非常に残ったのは、カーター政権はとにかく朝鮮半島から撤兵するということを一応公約していた。レーガンさんはむしろ駐兵を続ける、それから韓国の軍隊に軍事援助をいよいよふやしていくということ、これは賢明な政策とは思えない。北の金日成主席は、八時間でモスコーに行けるんだけれども、二十年間一度も行ったことがない。しかし、アメリカがいまのような政策を続けると、彼は八時間の飛行距離を利用するかもしらぬというようなことを言っておりました。鄧小平さんは明らかにカーター政権とレーガン政権が朝鮮政策において違ってきているのじゃないかという印象を受けているようですね。それから、台湾政策ども違ってくるんじゃないか、これは賢明な政策でない、こういうことを言っておられました。外務大臣はどうお考えになりますか。
  143. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 中国政策と朝鮮半島政策に限定してお話がありましたが、朝鮮半島の問題もカーター政権のときは撤兵ということを打ち出して、後でやめたわけでございます、御承知のようにそれはできないということでやめたわけでございますので、カーター政権のさきの方と後の方ではその辺のところの空気が違っていたのでございます。私どもが見ておりまして、カーターさんももう撤兵しない、できないということでやりましたので、レーガン政権がそれを続けるということはカーター政権の後の政策とそう変わりはないと私は見ております。レーガン政権もやっぱり朝鮮半島の平和ということが大切だということを言っております。  中国の問題につきましては、まだアメリカのはっきりしたいろんな具体的な行動といいますか、出ていないわけでございまして、選挙中は確かに台湾問題、非常に重視して取り上げたわけでございますが、現実の政策としてどういうふうにやるかということがいま出ておりませんのではっきりはわからぬわけでございますが、米中関係がよくなければいかぬと、米中関係の友好親善ということにつきましては、これは三月に行きましたときも、今度行ったときも同じでございました。日中、米中ともに、それぞれ中国に対していまの友好関係を続けるようにということについては一致しているわけでございます。ですから、台湾のことは選挙中にレーガン政権はいろいろ言いましたが、それが実際具体的にどういうことになるのかという、具体的な政策行動につきましてはまだはっきり表へ出ておりませんので、いまここでそれが違うとか違わぬとか私どもはまだ言う段階でございませんが、米中関係をよくせんならぬと言っていたことは確かでございます。
  144. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 この日本と中東との関係は、油一つ見ても非常に重要な関係です。そして中東に第七艦隊を振り向ける場合に、その後を埋めてくれという要求もあるやに聞きますが、中東問題についても中国の見解とアメリカの見解と少し違うようである、それはイスラエルというものに対する態度ですね。イスラエルに対する態度がアラブの諸国家を刺激して非常にまずいことになっておる。イスラエルに対する態度もカーター政権時代ともっと違った密接さを増すのじゃないかという危惧があるように感じられました。  それから、南アに対する政策、これはブラックアフリカのいろんな問題と関連があるわけですけれども、朝鮮、それから台湾、イスラエル、南アに対するアメリカ政策、特にレーガンさんがあるいはとるかもしらぬと思われている政策は賢明でないと、こう言っていましたが、私ども、全くこれは同感なんです、本当言いますと。イスラエル政策は変わると思われますか、変わらぬと思われますか。
  145. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) イスラエル政策につきましては、中東問題で話を首脳会談でも、私どもヘイグさんともしたわけでございますが、いまのところ政策が変わるというふうには、そういうことがうかがえるような議論ではございませんでした。私は、特にヘイグさんにPLOの問題も出して、日本アメリカは違うということをまたやってきたのでございますが、アメリカがいま変えるだろうというふうには見ておりません。
  146. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 いずれにしましても、中国と日本あるいはアメリカとの関係が良好であるという状態が、日本の安全にとって非常に重要であることは間違いないわけです。これはもう若干の軍備とか何かと比較にならぬほど重要である、こういう点は伊東外務大臣もよく了解しておられると思いますが、その芽がやっぱり一つは朝鮮半島にあるわけであります。朝鮮半島に対するあなたのお考えは韓国に行って言われたわけでありますけれども、あの当時のお考えと変わりはありませんか。
  147. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 私は、考え方は一貫して変わりありません。
  148. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 それでは、私は、条約局長に少し伺いたいのですけれども日米安保条約の第六条によりまして、日本は基地や施設をアメリカに与えることが条約で許されておるわけですね。これらの基地はそこに駐留している軍隊に与えられているいろんな特権とともにあるわけですが、現在、アメリカ日本の施政権下に持っている基地というものは幾つくらいありますか。
  149. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) お答え申し上げます。  現在わが国にございます施設区域の数は本土で六十九、沖繩で四十九、合わせまして百十八でございます。
  150. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 その施設の地域の総面積はわかりますか。
  151. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) お答え申し上げます。  本土六十九に係る面積は二百二十八平方キロ、沖繩四十九施設区域の分が二百五十七平方キロ、合わせまして四百八十五平方キロでございます。
  152. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 地位協定によってそれに伴ういろんな権利をアメリカは持っているわけですけれども、たとえば軍票の発行権、使用権のようなものも依然として規定されていますが、これは現実にはどのように行われていますか。行われていませんか、使われていませんか。
  153. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 現状では全く使用されておりません。
  154. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 いつころまで使用されていましたか、地位協定にありますね、明らかに。
  155. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 私の記憶では、地位協定の実施以降そういう例は全くございません。
  156. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 ただ紙に書かれた権利というわけですね。
  157. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) さようでございます。この地位協定でかかる規定がございますものは、一般に安全保障条約を米国と各国が持っております一般的なこういった規定にどこでもあることでございますが、実際には権利が保留されているのみで、実際の行使は行われておりません。
  158. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 それから、この施設に伴ういろんな航空路とか、そういうものに対する特別な権利も保留されていますが、それはどういうふうになっていますか。
  159. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 施設区域の中に飛行場がございます。その飛行場の直接の運用に係る管制等は当該飛行場の運用の一部として米軍がみずから行います。しかし現状では、日本の空はすべて、航空管制を含めましてわが国に返還されておりますので、運輸省で統括しております航空交通規制の枠組みの中で運用がされております。
  160. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 それは間違いありませんね。
  161. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) はい。
  162. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 それからいろんな細目の規定があるわけですが、たとえば電波ですね、電波、電力に関する特別なやっぱり規定がありますけれども、これはどうなっていますか。
  163. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 電波に関しましては幾つかございます特例法、米軍に適用除外を定めました特例法の一つに電波法の特例法がございまして、電波の特例は米軍の使用する電波にはかかっておりません。
  164. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 電波の使用がですか。
  165. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 一般に電波の使用は、電波法に基づきまして周波数の使用等につきましては郵政大臣の管理する規範のもとに服するわけでありますが、その規制は米軍には及びません。したがいまして電波の使い方につきましては、別途日米合同委員会を持ちまして日米間でどのような電波を割り当てるかを調整して使用させております。
  166. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 米軍の使用し得る電波数というのは幾つくらいですか。
  167. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 電波は非常に波の質と種類とそれから周波数帯、それと目的、船舶、飛行機等々の状況で非常に複雑多岐な表になっておりますので、私ただいま全部を申し上げる能力ございませんので、追って資料にて御説明させていただきたいと思います。
  168. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 この資料のとき、先ほど申し上げた基地なんかについてもやはり詳細な資料を出していただきたい、こう思います。
  169. 説明員(松田慶文君)(松田慶文)

    説明員(松田慶文君) 承知いたしました。
  170. 宇都宮徳馬君(宇都宮徳馬)

    宇都宮徳馬君 それでは私の質問を終わります。
  171. 山田勇君(山田勇)

    ○山田勇君 今回の鈴木総理の訪米は、結果的に見まして、総理が国内向けにどういう説明をしようが、共同声明や各種会談の経緯を分析してみますと、日本アメリカが対ソ認識の一致ということから軍事協調路線に踏み出したと見るのが当然だと思うのですが、その見解について大臣の御答弁をお願いいたします。
  172. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 軍事協調ということをおっしゃいましたけれども日本軍事できますのは自分の国を守るだけで、あとほかの地域で軍事的な役割りを果たすということは何もできないわけでございますから、軍事協調とおっしゃる意味がどういう意味かよくわかりませんが、従来の方針を何も変えたというようなことはございません。
  173. 山田勇君(山田勇)

    ○山田勇君 午前、午後からの質疑の中で、「同盟」という言葉をめぐっていろんな質疑応答がございましたが、その中で大臣は、同盟ということ、従来とはちっとも変わってないのだということをおっしゃいました。その中には緊密、連帯、友好というふうなことを再三再四御答弁の中にも出てまいりました。それほど緊密、連帯、友好の日本アメリカとが緊密なら、先ほども少しほかの委員が触れました穀物の解禁のとき何ら通達がなかったということですね。そういうことでは非常にわれわれとしては、緊密、連帯、友好という中で、要請、要望するときはしてきて、同じように経済封鎖をやろうということを言っておいて、解禁するときはもう一切の通告なしに先にやってしまうということでは、大臣の言われる同盟にしろ友好にしろ西側の一員にしろ、緊密、連帯、友好という言葉が当てはまらないのではないかというふうに思います。
  174. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 穀物禁輸解除のときは、通報はあったんです。ただ、協議して日本の意見はどうだとかそういうことはございませんでした。通報があったことは確かでございますが、しかしこの問題につきましては、レーガン大統領鈴木総理に会われたときに、最初の二人だけの会談のときに、そういうことにおいてどうも手続が十分でなかった、それは遺憾だったと、今後は十分にいろんな大きな問題については協議するからというふうなことで、向こうから遺憾の意の表明があったそうでございまして、今後とも重要な問題については協議をしていくと向こうが言っておりますから、私どももそういう大きな問題については方針が間違わないようにというような協議をすることは必要だと思っております。
  175. 山田勇君(山田勇)

    ○山田勇君 鈴木総理は、レーガン大統領の第二回会談、三十分というのが一時間からも延びて会談をされたんですが、その中で非常に日本の言うべき立場として憲法の制約、軍事大国にはならない、苦しい財政事情など、るる大統領に御説明になったと思うわけです。それは大臣も先ほどから強調されておりました。それなら、今回の共同声明の全文を読ましていただいてもこういうことがちっともこの共同声明の中に盛り込まれてないということなんですね。そういう点について大臣はどうお考えになっておられますか。
  176. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) 防衛の問題につきまして総理がるる述べられたのでございまして、大統領総理大臣が「憲法及び基本的な防衛政策に従って」とここに書いてありますが、述べられたことに対して理解を示したということでございまして、この中にありますように、防衛、安全保障の問題の中で、日本は自主的にやる、かつ憲法それから基本的な防衛政策ということでございまして、これは専守防衛の問題とかいろいろ入っているわけでございますが、従来の姿勢を述べられた、それに対して大統領理解したということを言ったわけでございまして、そのことは八の中にも触れてあるわけでございまして、総理が言われたこともこの中に入っておりますし、向こうがそれは理解すると、こう言ったことも八の中には入っているわけでございますし、また第一の中に、世界の平和と繁栄ということを目指して緊密にこれは協力していかなければいかぬのだということで、目標は世界の平和と繁栄だということも両者で確認し合っているということでございますので、鈴木総理がおっしゃったこと全部そのままという書き方にはしておりませんが、要点は、自主的にやる、憲法を守っていく、日本の基本的な防衛政策に基づいてやるのだということを言われたことはここにも書いて、大統領理解しているということでございます。
  177. 山田勇君(山田勇)

    ○山田勇君 ソ連脅威論、きのうもソ連大使との懇談会の中で申し上げましたが、そのソ連脅威の背景というのは確かにあることはあるわけです。まあ遠くはチェコの問題、アフガニスタンの問題、ポーランドの問題、るるそういうようなソ連脅威論を芽生えさすような背景はあることはあるのですが、朝日新聞の四月二十四日の記事で、ソ連政府機関紙イズベスチヤの政治評論員、これは恐らくボービンだと思いますが、レーガン政権の軍拡政策で米国の優位が確定した場合、ソ連としても軍事力を一段と強化せざるを得ないのではないかとの問いに対して、米国が対ソ優位を確保しようとすれば、ソ連は黙って見守るわけにはいかない、もちろんソ連も国家の安全を確保するため軍事力を強化することになる、と答えています。  このように、大臣、果てしない軍拡競争に進もうとしている中で、ソ連に軍備増強の理由づけを与えるような結果にもなるような鈴木訪米では困るわけでして、これからわれわれ世界に住んでいる国民が平和を本当に願望している、その世界の平和に背くような結果にならない共同声明であってほしいと私は願う一人でございますが、大臣の考えを聞かしていただきたいと思います。
  178. 国務大臣(伊東正義君)(伊東正義)

    国務大臣伊東正義君) おっしゃるとおりでございまして、やっぱり目的は世界の平和をどうやって守るか、繁栄をどうやって守るかというのがこれはもう大きな大原則でございまして、おっしゃるように、これによって日本防衛あるいはアメリカ防衛というものは、アメリカは予算をいま出しているわけでございますからそれに基づいてやるのでしょうが、日本として新しい大きなものを何か引き受けるというようなことではなくて、西側として協調、連帯をするということによって世界の平和を守っていこうじゃないかという趣旨でございますので、おっしゃるように、何とかして平和を守るという努力を私は日米ともにやるべきであり、米国もソ連とは話し合いはやる、窓口をあけておくということをどの段階でも、大統領、国務長官も言っておるわけでございますので、私どもはまたそういう努力もやらなければいかぬというふうに思っております。
  179. 山田勇君(山田勇)

    ○山田勇君 原潜問題についてお尋ねいたしますが、北米局長、安全保障課が窓口で補償のいろんな連絡は行っておられますでしょうか。
  180. 政府委員(淺尾新一郎君)(淺尾新一郎)

    政府委員淺尾新一郎君) 補償の問題は、当事者、すなわち日昇丸の乗組員とアメリカ側との話し合いによって行われるものでございます。ただ私たちとしては、そういう話し合いが円滑に進むように、いろいろ側面的なお助けをしているということで、現実的に日昇丸の弁護士の方からも、補償についてどういうふうな手続で行われるのか、あるいはその他の点で助言を求めてまいりました。それに対して、私たちの方としてそれに答えているというのが現状でございます。
  181. 山田勇君(山田勇)

    ○山田勇君 きょう第一回会談が大阪の相馬弁護士事務所で三時から行われているわけです、横須賀基地のリード大佐が出席しましてですね。損害賠償請求補償という書類を正式にきょう、事前には渡してあるわけですが、それについて第一回目のアンサーがきょう相馬弁護士事務所で行われるということでございます。これは神戸ナビゲーションサービスという株式会社――船員を補給している会社と、それと乗組員、亡くなられた遺族二名を含めて弁護士が代行してやるということでございますが、その中にいろんな、請求額は三億八千万を超える問題があると思うんです。きょう、先ほど相馬弁護士と連絡をとりましたところ、ここへ来るまで実際は大変だったと、あっちの窓口へ行きゃそっちへ行ってくれ、こっちへ行きゃあっちへ行ってくれという形の中で、やっと外務省の安全保障課の方が窓口としていろいろ指示を受けているというふうなことを言っておられました。当然、この会談の結果も安全保障課の方に御連絡はあると思いますが、そういう点について、ここまで来たんですから、大臣ね、ひとつせめて補償だけにでもアメリカサイドの誠意をぜひ見せていただきたいと思いますし、何らかの形で外務省もこの問題については誠心誠意、ひとつ御便宜を図っていただきたい、特にこれは要望いたしまして、私の質疑は終わらしていただきます。
  182. 委員長(秦野章君)(秦野章)

    委員長秦野章君) 本日の調査はこの程度として、これにて散会いたします。    午後二時四十三分散会      ―――――・―――――