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戸叶武君
外務大臣の予定は、今後も国際
会議にはいろいろ出席しなけりゃならないのでさぞかしお忙しいと思います。そこで、今後この間々をとって内閣の持っている
外交方針を聞かなけりゃならないという変則のような状態に
国会が振り回されていますが、私たちはいまのような激動変革の時代、それもやむを得ないと思います。したがって、最も効果ある形において時間を割いてもらって、やはり
外交権は内閣にあるといいますけれ
ども、主権者である国民の合意を得ないで条約の締結その他もできないということは、よく内閣も知っていると思います。そこで、私たちは主権者としての国民を代表して、
国会の権威というものが内閣のみに振り回される、内閣を運営していくところの一党独裁的ないまの動きと、それからこれに癒着した財界と及び大企業、財界といっても大企業とそれからそれに仕える官僚、こういう形の三位一体のいまの変則的な政治に対して、国民の代表機関としての
国会がここにいるんだぞということを絶えず内閣にも知らせておく必要があると思うのです。それは一国の
外交及び
防衛の問題で一歩誤まると祖国の運命を危うくする危険性があるからであります。
いまの鈴木内閣はいろんな点で誤解を受けているけれ
ども、やはり保守党の内閣においては危機が内と外にあるということを意識した
一つの、私は無軌道というんじゃなく、何か自信がないが、危なっかしくないような危ないような、頼りがいのあるようなないような運営になっているのですけれ
ども、これも
日本の政治の
一つの反映だと思っております。
いま自民党が党是として掲げている
憲法改正などというのをすぐに打って出たならば、国民の怒りの前に折伏されてしまうということは
承知の上で、悪く言えば何か徐々に既成事実をつくり上げることによって、そういうはでなやり方より危なげのないような危ないような橋を渡っていこうというところにアクロバティックな
外交がここに展開されていると思うんです。それだけに国民からもよそからも信用されていないような信用されているような、何か「危に倚る者は危うからず」という禅語がありますが、危ないところにぶら下がっていると、サルもなかなか木から落ちそうで落ちない。サル知恵よりはやはり知恵の発達している鈴木内閣の
外交、
防衛を担当している責任者という者は、そういう「危に倚る者は危うからず」の危ない例を意識しているか意識してないか知らないが、行っているところに
日本の政治の霧の中を模索して歩いているような状態があると思うんです。
そこで、いま
松前さんから
日米同盟の内容及び非常に今後に問題が残っているような歯切れの悪い、すでに大体ネジは回されているんだと思いますが、こういうことに対して国民がやっぱりもっと明快なものをやはりわかろうと努力しているんですから、それをやってくれたと思います。そこでまた、急にフランスのミッテランの社会主義政権が出てきたわけです。一般の連中が、前にはカーターとレーガンのときにも、
日本の新聞なりテレビなり一般の通という予想は、まあまあわけはわからぬけれ
ども、レーガンよりはカーターの方が危なっかしくないんじゃないかというような見方であったが、
アメリカの人心の動きというものは、あんなわけのわからない芝居をいつまでも見ちゃいられない、剣劇役者よりは少しましだろうからまあレーガンにでも行って局面を展開しなけりゃならないと、こういう変化を望む
アメリカの国民の心情というものが一般の
日本人的常識を破ってレーガン政権をつくり上げたと思います。レーガンがかわったからといって、
アメリカの
外交が全部変わるとは思いませんけれ
ども、選挙で公約している点において、自民党と同様に公約したものに対しては何かやはりそれらしいそぶりを見せていかないとインチキだと言われるから、やはりなったばかりにはそういうことをやってみようとするが、実際上はやれないのが現状ではないかと思います。
そこで、今度はミッテランの社会主義政権というものがきわめて慎重な足取りで登場したけれ
ども、ミッテラン社会主義政権がフランスに実現したということは西ドイツと結び、またイギリスにおいても労働党の勝利は必至と見られているとすると、西ドイツ、フランス、イギリス、おのおのそのニュアンスは異なるけれ
ども、ECの国々においては社会主義の実権が
外交、
防衛上の中においてもやはり具体的に進むであろうと、そこは何ぴとも思うのであります。そこで、そうなったら大変だからというので、かつて
世界経済恐慌のときにイギリスのヤクドナルド内閣を揺さぶってナショナルレーバーへ分解さしたときと同じような形でこのフランスのミッテランを手も足も出ないようなことにしなけりゃならぬというような次の総選挙の構えが、金融資本なりあるいは大企業においてなされているのじゃないか。ドイツにはいち早くナチス的なテロリズムが勃発したと言われている不安が醸し出されております。このことはヨーロッパだけじゃなくて米ソに与える影響も
日本に与える影響も非常に大きいと思います。
外務大臣はこれに対してどういう見通し、というよりは予測を、二通りや三通りは
考えていると思いますが、現在、漠然としてでもいいが描いているところの予想はどういう見通しですか。