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1981-03-31 第94回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月三十一日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  十二月二十三日     辞任         補欠選任      岩本 政光君     中山 太郎君     大河原太一郎君     永野 嚴雄君  三月三日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     小谷  守君  三月二十四日     辞任         補欠選任      小谷  守君     田中寿美子君  三月二十五日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     小谷  守君  三月三十日     辞任         補欠選任      宇都宮徳馬君     田  英夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 宮崎 正義君     委 員                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 小谷  守君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 田  英夫君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        外務政務次官   愛知 和男君        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君        資源エネルギー        庁石油部長    志賀  学君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      澤田 和彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○レーガン米大統領そ撃事件についての概況報告国際情勢等に関する調査  (昭和五十六年度外務省関係予算に関する件)  (レーガン米大統領そ撃事件に関する件)  (日米外交問題に関する件)  (軍縮問題に関する件)  (日中石油開発問題に関する件)  (国連機関の招致に関する件)  (先進国首脳会議に関する件)  (ブラジルの武器の生産と輸出に関する件)  (朝鮮半島の平和問題に関する件)  (カンボディア情勢に関する件)  (対EC貿易不均衡問題に関する件) ○万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結  について承認を求めるの件(内閣提出) ○小包郵便物に関する約定締結について承認を  求めるの件(内閣提出) ○郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定の締  結について承認を求めるの件(内閣提出) ○郵便小切手業務に関する約定締結について承  認を求めるの件(内閣提出) ○日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の郵便支払指図交換に関  する約定締結について承認を求めるの件(内  閣提出)     —————————————
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  伊東外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。伊東外務大臣
  3. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 委員先生方皆御承知だと思うのでございますが、レーガン大統領狙撃事件がありましたので、このことについて御報告を申し上げます。  事件概要でございますが、向こうの三月三十日午後二時半ごろ、レーガン大統領はAFL・CIOという労働組合会議で演説を行いまして、会場のワシントンのヒルトン・ホテルを出たところで、二十二歳になるそうでございますが、二十二歳の白人青年により左胸部を撃たれ、ジョージ・ワシントン病院に収容されました。  容体でございますが、最初から発表の、ホワイトハウス及びヘイグ国務長官記者会見によれば、容体は安定していると言われております。いまのはけさ連絡でございますが、また九時四十分に在米大使館より電話の連絡がありまして、医師団から次のとおり発表があったということでございます。  医師団手術が終わり、リカバリールームで休養中、現在安定したよい状態にあり、目を覚ましていて意識明断である、ということでございます。いかなる過程でも重大な状態はなかった、麻酔により二時間程度手術室に入っておられた、腹部の出血は認められない、大統領健康状態は非常によく、問題が起こるとは思えない、意識は明晰なのであすにもいろいろな決定が下されるのではないか——いろいろ物判断だろうと思いますが、決定が下されるのではないか、心臓には全く影響がない、弾丸はわきの下から入り、七番目の肋骨に当たって弾が回り三インチ肺に入った、六インチの長さの手術で弾を取り出した——九時四十分現在だそうでございまして、弾の摘出手術は終わって容体も安定しており、意識明断だと、こういうことでございます。  以上、とりあえず事実関係を御説明申し上げます。  われわれとしましては、一日も早く健康を回復されることを本当に心から祈っているわけでございまして、私は実は大統領にお会いしたばかりでございますので、非常に衝撃を受けましたが、いまのような経過が逐次大使館に入っておりまして、非常に容体は安定しておられる、意識明断だ、弾丸摘出も終わったということでございますので、本当に心から一日も早い回復を祈っているところでございます。     —————————————
  4. 秦野章

    委員長秦野章君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  まず、昭和五十六年度外務省関係予算についてその概要説明を聴取いたします。愛知外務政務次官。    〔委員長退席理事大鷹淑子君着席〕
  5. 愛知和男

    政府委員愛知和男君) 昭和五十六年度外務省予算重点事項を御説明いたします。  昭和五十六年度一般会計予算において、外務省予算としては、三千五十三億六千五百万円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、六・八%の伸び率となっております。  次に内容について御説明いたします。  激動する国際情勢下にあって、有効かつ、機動的な外交展開のため、外交実施体制を一層整備強化していく必要がございます。この見地から、昭和五十六年度においては、特に定員の増強を最重要施策といたしました。このほか機構整備在外職員勤務条件改善の諸施策を進めており、かくして、外交実施体制強化充実を一層推進し、もって外務省責務遂行に遺漏なきを期することといたしました。  外務省定員につきましては、本省及び在外公館新規増七十七名、他省振替増三十八名、計百十五名の増員となりますが、他方、定員削減が三十五名ありますので、純増員といたしましては八十名となります。この結果、五十六年度外務省定員は合計三千五百六十三名となります。  在外公館機構整備につきましては、ジンバブエ大使館の設置が予定されております。  このほか、ヴァヌアツ国に兼館の大使館を設けることといたしております。  不健康地勤務条件改善関係経費は、五億七千七百万円であり、前年度予算と比較いたしますと、一億九千九百万円の増加でございます。  次に経済協力拡充強化に関連する予算内容を御説明いたします。  政府開発援助すなわち、ODA重要性は、経済協力を通じて世界の平和と安定に貢献するとの観点から、ますます高まっており、このため、政府は従来の三年倍増に引き続き五年間にわたる新たな中期目標を策定し、その拡充強化に努めております。ODA事業予算全体としては、五十六年度で五・八%増の八千八百八十八億円が計上され、その対GNP比は前年度と同水準の〇・三四%となっております。  外務省所管経済協力費についても積極的拡充が図られており、五十六年度分としましては、総額二千百六十七億六千万円が計上され、五十五年度当初予算と比較いたしますと、二百十四億三千四百万円の増加となり一一%の伸び率となっております。  特に、二国間無償資金協力外交の円滑なる推進に重要な役割りを果たしており、その予算は、前年度より八十億円増の八百三十億円が計上されております。  技術協力拡充は、人づくり協力でございます。  このための国際協力事業団事業費は、前年度に比べて一二・七%増の六百五十二億七千百万円が計上されております。  なお、同事業団移住事業関係予算は、対前年度比三・五%増の三十二億八千五百万円となっております。  国際機関を通ずる援助拡充につきましては、近年、開発途上国を中心として、国連等国際機関を通ずる援助を一層強化拡充すべしとの強い要請がございます。わが国としては、国力の充実に伴いこれら機関活動に対し、一層積極的に協力すべく、前年度に比して、九・九%——円ベースでございますが、九・九%増の六百六十八億二千万円を計上いたしました。  次に広報文化活動推進でございます。  海外広報活動拡充強化のための経費は二十七億九千万円で、これは前年度予算に比し一億二千九百万円の増加でございます。五十六年度においては、特に対アラブ諸国広報重点を置くことといたしております。  国際文化交流事業展開のための経費は三十四億五千万円でございます。このうち、一般文化事業費は、前年度予算に比し一二・六%増の六億八百万円でございます。これにより在外公館における文化活動等拡充を図るほか、新たに、アジア太平洋地域諸国外交官わが国に招いて、日本語研修を行うことといたしております。  また、国際交流基金に対しましては、すでに出資済みの四百七十五億円に加え、さらに、十億円の追加出資を行い、海外での日本研究の促進、日本語普及等その事業内容の一層の充実を図ることといたしております。  重点事項の第四の柱は、日本人学校の新設を初めとする海外子女教育充実強化でございます。このため十三億九千七百四十三万円が計上されております。  現在海外に在住する学齢子女はおよそ二万七千五百人に達しており、これらの子女教育がきわめて切実な問題となっております。  このための具体的施策といたしましては、西ドイツのハンブルグ、スペインのマドリッド、ブラジルのベロオリゾンテの三都市に全日制日本人学校を新設することといたしております。  このほか、学校施設等に対するものとして、校舎新築購入及び借り上げ経費に対する援助現地採用教員の手当の一部を援助することといたしております。  以上が外務省昭和五十六年度予算重点事項概要でございます。
  6. 大鷹淑子

    理事大鷹淑子君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 秦野章

    秦野章君 けさは大変不幸な御報告をただいまも承ったわけですけれども、対米交渉に行っておられて直後のことでもあるし、いろいろ感慨深い大臣気持ちはよくわかります。この不幸な出来事がさらに不幸な結果にならぬにしても、アメリカ体制の中で、レーガン大統領リーダーシップというものが相当大きかっただけに、今後のアメリカの動向、大臣が折衝され、いろいろお話し合いになった日米関係の問題、世界戦略情勢といったような問題等にもどのような影響があるのか、これはちょっとわかりませんけれども、たとえば五月の首脳会談なんかもうちょっと開きにくくなったのではないかという感じもするわけです。そういうことがあるからといって日本の対米交渉の問題が非常に変わってくるということもないとは思うのですけれども、その辺、非常に突然のことであります、われわれは特に今度の大統領はいろいろ個性的なスタッフをそろえてその上に立ってリーダーシップを発揮してこられたように思うし、大統領にかわるリーダーシップというのはレーガンさんの個人の問題に非常に関係するように思うのですけれども、そこらの辺で大臣の御感想はいかがでございましょうか。
  8. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私もけさ第一報を聞いて非常にショックを受けたような次第でございまして、その後、出てまいりましたら逐次容体の詳報が入りまして、いま弾丸、弾の摘出も終わって容体も非常に安定しておられるということで安心しているわけでございますが、先ほども事実関係で申し上げましたように、一日も早く回復されることを祈っておるわけでございます。  この前アメリカへ行ってレーガン大統領にも会い、副大統領国務長官以下各長官にお会いしてきたのでございますが、私の受けた感じは、いま秦野さんのおっしゃるように、非常にスタッフをそろえて、そのスタッフを十分働かして仕事をやっていこうというような性格というような感じを受けました。スタッフは十分そろっておられるわけでございますので、私はきのうからの事件アメリカ対外政策その他にそんな大きな影響はないのだろうというふうに思っているわけでございますし、またそうあるべきことだと祈っているわけでございます。  いま首脳会談のことにちょっと触れられました。けさ閣議もやってきたのでございますが、そうしたことは全然話題にも上らなかったのでございますが、政府としましては、やっぱり一日も早く回復されまして、予定されております日程がそのままスムーズに行われることを心から祈っている、期待しているというのがいまの心境でございます。
  9. 秦野章

    秦野章君 今度の対米折衝をされた中で、意外と車の問題が時間が長かったというお話でございましたが、自動車の問題がうまくいかなければ次々に問題が起こるという説があるわけですよ。これは政府筋にもそういう説もある。いろいろ説があるのだけれども自動車の問題がうまくいかないとどういう問題が起こってくるということなんでしょうかね。
  10. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 行きましていろいろな話し合いをしましたが、まあ今度行きましたのは、交渉ということよりも、新しい政権になりまして新しい政権首脳意見交換をしてお互い相互理解を深めるあるいは日米関係友好協力関係といいますか、信頼度といいますか、そういうことを強めるということが目的でございましたので、何か交渉して物事を決めてくるということではございませんでしたが、その中で、自動車の問題がかなり話が出たこと、そのとおりでございます。特に私は、ヘイグさん、国務長官と話しましたときに、自動車の問題は自動車の問題でこれは何とかお互い両方の努力で片づけようじゃないか、そしてこの問題をほかの問題といわゆるリンケージといいますか、関係させないで、車は車の問題ということでひとつ両国で取り組もうじゃないか、車の問題を過去における繊維交渉のように紛糾させて両国の間でまずい感情を残すとか、いろいろな問題に波及させるとか、そういうことのないように、この問題はこの問題だけで取り組もうじゃないか、波及させることはしないということでやろうと、これは両方ともそういう意見ヘイグさんと実は一致、そのことは考えが一緒だということで話しましたので、この問題がほかの問題に波及してということのないようにお互いにしようという合意と言ってはなんでございますが、了解のもとにこの問題と取り組もうということでいまやっております。
  11. 秦野章

    秦野章君 大変結構だったと思うのですけれども、その意味は、車の問題はいわば経済的問題、経済的側面の問題、そういう色彩の強い問題だと思うのですが、経済問題としてもほかの経済問題には波及しない、いろいろ経済問題はあるわけですけれども。いわんや経済以外の問題だとえば防衛とはまるっきり関係がない、そういう理解でいいわけでしょうかね。
  12. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そのときも例に挙げまして、経済問題の中でもアメリカとの間に皮革の問題があったり、半導体の関税の問題とかいろいろ経済問題としてもあるわけでございますが、そういう例を挙げまして、そういう問題にも波及はさせない、ましてや経済外の問題に波及するようなことはない、この問題を自動車問題ということで取り組もうということで、ヘイグさんとは二人で了解をして話し合いをしているところでございます。
  13. 秦野章

    秦野章君 そういう方向で行く場合に、ある種の、一つの時間的制約といいますか、日米首脳会談という問題が少し様子が変わってくると思うわけでございますけれども、車の問題について日米首脳会談が予定どおり設定されれば、なるべくなら大筋をその前に解決していきたいというようなことでございましょうけれども大筋というのが一体どういう筋なのかということもちょっとわかりにくいんだけれども、私ども気持ちからいくと、要するに経済問題なんだから経済原則というものがあるので、国際的に少なくとも自由諸国間においては通用する経済原則は、言うならば保護貿易といった方向に行かないようにという大筋のコンセンサスはあるはずだ、ただ自動車は例外なんだと、これがアメリカの立場だと思うんだけれども、それはちょっと必ずしも説得性のある議論ではないような気もしますので、これらの問題については、なるべく時間をかせぐというのはおかしいけれども、いろいろ向こうにも説明を求め、向こうからも人に来てもらうというようなことも聞いておりますが、よくひとつ事前折衝を、経済間においてもまた政府間においても事前話し合いをあくまでも続けていって、アメリカもたとえば立法化みたいなことは大きな原則に反するんだという理解に持っていってもらうように、われわれの方ももっと説得というか、主張というものを聞いてもらうようにといったことで、時間かせぎという言葉はおかしいけれども、いついつごろまでに大方のめどをつけなきゃいかぬみたいな話ではなくて、この自動車問題だけはあせらぬでやってもらった方がいいのじゃないか、余り手際よくやるということはよくないのじゃなかろうかという気がするんですが、大臣、これはいかがでしょうな。
  14. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの御意見でございますが、向こうへ行って話しましたときに、これはヘイグさんあるいはレーガン大統領もみずから車の話でございました。そのときに、さっき申し上げましたように、繊維交渉のようなああいうことには絶対ならぬようにしようということをヘイグさんと特に話したのでございますが、レーガン大統領のところで話が車の話になりましたときに、大統領もこの問題は日米間で余り紛糾させるのは好ましいことでないので、鈴木総理が来られる前に大体大筋話し合いができることを希望するというような話があったわけでございます。日本側も、実は鈴木総理が、自分向こうへ行く前に大筋は解決するようにということを通産大臣にこれは何回も言っておられることでございますので、向こうへ行きましての話では、できることならば両首脳が会われる前に大筋了解ができて、両首脳が会われたときは、自動車問題について台数をどうするのだとか、どういう方法でやるのだとか、そんなことは話題にならぬで済むようにしたい、こういうのが向こうもこちらもということでございましたので、帰りましてから総理に御報告をしまして、官房長官通産大臣、大来政府代表集まりまして、大体大筋総理の行かれる前までに話し合いをつけるということにしようじゃないかということをしたことは事実でございます。  これはいろいろ考え方がありますが、まあ時がどういうふうに働くかということでございますが、アメリカ国内の調整、あるいは議会が両院、上院、下院とも保護立法輸入制限法律をやろうということで非常に大方合意がある、法律はどうもいまのままでは通るだろう、というようなことを大統領も言っておられたのでございまして、拒否権をどうするかというような話まで実は出たのでございます。  それで、長引かしてこじらす、あるいは長引かしてうまくいく、それは両方考えられるわけでございますが、まあ両国政府としましては、自由貿易は守る、自由貿易はどんなことをしてもこれは守っていくという原則のもとで、何とかいい方法はないかと。私は大統領に、アメリカ自動車産業の地位、いまの状態日本が何も日本車輸出をしたからそうなったのじゃない、アメリカ対策、適応の方法を間違ったからこういうことになったのだということを大統領にも説明したのでございますが、まあそれはそれとしまして、アメリカの中の保護貿易動き、特に議会での動き、あるいは自動車産業アメリカ産業の中において非常に影響力の大きな産業であり、労働界自身アメリカ労働界に非常に大きな影響力があるという特別な産業だというようなことがありまして、アメリカでもいま対策に苦慮しているわけでございますので、私はアメリカからも使節団日本に来て、アメリカ自分国内自動車産業に対してどういうことをやるのだということをやっぱりよく日本説明をすべきだ、それを聞いて日本もどうするかということの協力できることは協力するというような、段取りはそういうことではないか。  まあ日米友好自由貿易擁護というようなことを頭に置きまして、そういう手だてで話し合いをすることが必要ではないかというふうなことを話してきたわけでございまして、大統領の今度の狙撃事件というようなことがなければ来週でも使節団が来るのじゃないかという電報も打ちましたし、予想をしていたところでございますが、私どもは余り長引かして紛糾させることはまずい、アメリカの中に保護貿易のようなことをねちった立法議会を通るということもまずいというふうないろいろ判断をしまして、まあ大筋は両首脳が会われる前までに話し合いがつかないものかと、努力してみよう、こういうことで実は話し合いをしました。
  15. 秦野章

    秦野章君 そうすると、いまおっしゃったその大筋合意だけは早い方がいい、大筋合意だけは日米首脳会談の前にはしとこう、その大筋合意というものの中にはたとえば数量みたいな具体的なものは含まないと、こう理解していいわけですか。
  16. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それはこれからの問題でございまして、何に一番関心があるかということ、これが問題でございますから、やっぱりアメリカ使節団の人の説明も聞いて、重点はどれとどれだというような話になりましょうから、私はどれがいまその中に入るかということはいまここでお答えできませんが、実は私はアメリカへ行きまして、その先生のおっしゃった数量の問題とか、規制をするかしないかその方法とか、そういうものには実は一切触れなかった。向こうもまたそういうことを言いませんでした。言わぬで向こうの窮状を訴えて、何とか自由貿易を守るということにいい知恵はないかということで、数量とか方法とか、そういうことは一切どちらからも話が出ないということでございましたが、使節団が来ますれば、その中でどういうことを向こう重点に考えるかということが私はわかるのじゃないかと思いまして、いまここでどれが大筋でどれがそうじゃないかというような御答弁、これはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  17. 秦野章

    秦野章君 総理通産大臣大筋合意ということをおっしゃっているそうですが、その大筋の中には数量を含むということですか、含むということもあるということですか。
  18. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 総理と田中通産大臣の二人の話し合いというのは、私立ち会っておりませんから聞いておりませんが、大筋ということでございまして、どれが大筋かというのは、これはお互い日米両国話し合いをしているうちにわかってくる問題だと思いますので、いまここで総理大筋というのは、どれとどれが大筋だと言ったということは私は直接は聞いておりませんので、これからだんだん話し合いのうちに出てくることだと思っております。
  19. 秦野章

    秦野章君 レーガン大統領がああいう事故に遭われて、しばらく通常執務をとるという体制には時間がかかろうかと思いますが、少なくとも五月の首脳会談ということはちょっと無理ではないかと思います。もしそういうことだったら少なくとも——大統領に当選されて総理は行っておられぬですけれども、何か総理が訪米されるというような、見舞いを兼ねるとか、何かそういうことは考えておられるんですか。
  20. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) きょうの閣議でもある大臣からお見舞いということを考えられるかという、実はそういう同じような発言があったのでございますが、けさのことでございますし、総理とそういうことは御相談を全然まだいたしておりません。いまのところはまだそういうことを考えておりませんが。
  21. 秦野章

    秦野章君 一度もまだレーガン大統領にお目にかかっておらぬわけですけれども、私どもはむしろこういうときには総理がおいでになった方がいいのじゃないかという気もするのですけれども、具体的交渉大統領自身とはできなくてもスタッフがいるしするから、こちらとしては見舞いもある意味ではやっぱり必要ではなかろうか。それからまた、向こう首脳部と会うというようなことも、首脳部はいずれ残っていくでしょうからそういうようなことも必要じゃなかろうかと思うんですが、外務大臣個人の御意見はその辺はどうでしょうか。
  22. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは大統領の御容体にもよることだと思いますが、いま入ってきておるのは非常に容体も安定しており、意識明断だと、こういうことでございますし、回復の度合いがどういうことになりますか、私はすぐ総理がというふうにまだいま考えていないのでございますが、これから総理とそういうことにつきましては十分話をしてみたいと思います。
  23. 秦野章

    秦野章君 今度話は、何といいますか、大統領の事故に関連した憶測を言ったところで始まり達せんから、アメリカ体制、いまの体制が継続されていくという前提のもとでの話になりますけれども、このアメリカが軍事力を増強する予算をいま国会に出しているわけですね。アメリカの米ソ軍事バランスというものをアメリカがしっかりした足場をつくって、その足場のもとにアメリカ外交というか、世界戦略というもののもとにおける外交展開が進んでいくのだろうと、これは常識的に思うわけですが、現在米ソの軍事バランスというものは、現在はバランスがとれていると、しかし、近い将来にそのバランスが崩れるという心配があるというような配慮のもとに、これはアメリカ側がですよ、レーガン大統領がそういう発想、そういう観点でいるわけでしょうかね、その辺の感触はどうですか。
  24. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 大統領とは防衛の問題の話はいたしませんでした。防衛の話をしましたのはヘイグ国務長官とワインバーガー国防長官でございましたが、両方とも米ソの軍事バランスが八〇年代の半ばぐらいに至ればどうもバランスが崩れてしまうというおそれがあるということで、やはり話し合いをするには、軍事バランスというものがとれた上に立って話し合いをするということでないと不毛の話し合いになってしまうということで、軍事バランスをとっていくという努力をしなければならぬ、今度の国防費というのはそれにかかっているのだという話がありました。
  25. 秦野章

    秦野章君 アメリカ大統領としては当然の発想というか立場だと思うんですけれども、要するに、何だかんだ言ってもやっぱり力の立場がないと外交展開ができないというのが現実的な問題ですから、そういう意味では理解できるんですが、そういうふうに外交上の発言権を着実なものに確保して、そしてその上に立ってアメリカ外交展開していく、その外交の中の一つにそういうスタンスがきっちりすれば核の軍縮もできるんだと、これはレーガン大統領が就任間もない記者会見で核の数を削減をするということを言ったことがあるのですけれども、これはやっぱりそういう線というものは当然あると思うんですが、その辺はどうでしょう。
  26. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私もその問題につきましてヘイグさんあるいはワインバーガーさんに意見も言い、向こう意見も聞いたのでございますが、SALTの交渉でございますとか、軍縮の問題ということで話をしたわけでございます。それで核の、戦略核についてはまずヨーロッパでは話し合いをするつもりだということでございまして、SALTの問題につきましては、これはSALTIIがアメリカの国民の納得を得られるとは自分らは考えておらぬ。ですからこれからの交渉でそれを直すか新しいものにするか、それはまだ国内的なコンセンサスは得てない、そこは十分検討して交渉をするつもりだ、ただ、その場合にもソ連がいろいろ平和攻勢の呼びかけがあるけれども、そのように誠実に行動するのかどうかということを少し見きわめてからでないとどうも自分らはいかぬと思う、もう少し慎重にそのところを見るべきだと思う、ということがございました。  軍縮につきましては、軍縮というのは軍縮だけが一人歩きするのじゃない、自分らも軍縮の必要性は考えているが、それは安全保障の中で軍縮というものを考えていくという立場で軍縮というものを考えていくのだということで、力のバランスのことは一方では話は出ますが、また話し合い、軍備管理とか軍縮というところの話し合いの必要性、それはソ連の出方次第だが、そういうものも話し合いをしていく用意はあるという意味のことも出たわけでございまして、アメリカとしてやっぱり両方それは考えて、これからは力だけではないということでやっていくんだろうというふうな感触を私は受けました。
  27. 秦野章

    秦野章君 私ども両方というよりもむしろ安全保障というものが確保されて、その前提で軍縮を進めるのだということにならざるを得ぬと思うのですけれども、それは当然そうなるだろうと思うが、しかし、その軍縮というものの中で、そういう安全保障というものが確保されるという前提の中で軍縮を進める、その軍縮の中で核の軍縮ということについては格別にこれはやはり日本も関心を持たざるを得ないし、またこの問題はかねがね日本も言ってきたことでありますけれども、とにかく現在核というものの脅威がますます増大化をしておるわけでございますから、この点についての日本の具体的な対応というものが、これから−−来年は軍縮特別総会もあることでございますので、そういう方向に向かっての日本の具体的な核軍縮、アメリカの政策をもちろん了承しながら、また日本も独立国として、被爆国として日本独自の対応策が私は出てくるべきだと、こう思うんですよ。これは声を大にしても、同じような面もありますけれども、しかしこれは出なきゃならない。核兵器というものは、人類史上とにかく人殺しの兵器じゃなくて絶滅の兵器である、絶対兵器であるという実に革命的な兵器であるがゆえに、人殺しを相対的になるべく多くしようという兵器がいままでの兵器ですけれども、そうじゃない兵器であるという絶対兵器であるという、この基本的な認識に立つと、こんなこわいものはないわけですからね。だから中には使われない兵器だと言います。使われない、多分使われないであろうと思いますけれども、しかし人間の自然なる性というものに変化がない限り、人間の自然なる性質、性というものは未来永劫私は変わらぬと思うから、何が起こっても不思議はないと思うような人間の性質だと思うんですよ。そういう意味においては、やはりよほどの努力をしないと核の脅威というものは大変なことだと思いますので、これの対応ですね、軍縮に対する対応は、日本日本なりにやってきたわけでございますけれども、どっちかという日本の努力としてはそう大きいものはなかったのではないか。たとえば軍縮総会で総理大臣が演説するなんということは一遍もなかったでしょう。来年あるわけですけれども、どういう構え方で日本が行くか。また軍縮総会で日本が、総理大臣が演説すればそれで済むという問題でもなかろうかと思いますが、やはりいろんな多彩な行動をしていかなきゃならぬ。アメリカのスタンスが決まって、アメリカも安全保障というものを前提にしながら核軍縮はやっていかなきゃいけないという、そういう目覚めというものはあると信じていいと私は思うのです。そういうものに対応しての日本のアクションを具体的にいまからでもいいからやはり練り上げてほしいと私はこう思うのですけれども、外務大臣の見解いかがですか。
  28. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 特に核の軍縮につきまして秦野さんおっしゃったのでございますが、私はその点同感でございます。国連総会でも私も核軍縮の問題は言及したのでございますが、特に来年は軍縮の特別総会があるわけでございまして、ことしから、ことしは二回たしか準備会議があるわけでございますから、そこへも積極的に参加して、やはり特に核軍縮については日本は他の国よりも声を大にして幾ら言っても差し支えないと私は思うのでございますので、例の包括的な核実験の禁止とか、少しでも実現するようにしていくことがやはり大切だと私は思いますので、特に核軍縮の問題につきましては、日本としては積極的に取り組んでまいるつもりでございます。
  29. 秦野章

    秦野章君 これは政府委員でいいんだけれども、ストックホルムの国際平和問題研究所というのは年鑑を出していますが、これは権威あるものと見ていいですか。
  30. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 御指摘の研究所は、SIPRIということでございまして、国際平和問題研究所ということでございますが、この研究所は伝統のある研究所でございまして、その発表については相当の権威があると思われております。私どもとしては、この研究所からの発刊物についてはかねてから注目をしております。
  31. 秦野章

    秦野章君 いま一つの文献でワルトハイム国連の事務総長に、日本のいまクウェートの大使やっている今井さんなんかが入って十二名で核兵器の包括的研究ということやりましたね。あの成果とストックホルム研究所が出している核の問題についての報告内容、これは時間をとるから言いません、どっちも外へ出ておるわけですけれども、核の脅威というもの、具体的な脅威というか、その実数というものを挙げているんです。これは余り変わってないと思うんですが、どうですか。
  32. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) ワルトハイム事務総長への報告書でございますが、当時民間人でおられた今井現クウェート大使が参加されまして、十二人の各国専門家、これは個人の資格で参加いたしたわけでございます。この報告書はわれわれも注目しておる次第でございますが、これは基本的には核兵器の現状をながめ、安全保障との関係を検討し、核軍縮の必要性を論じておるということでございまして、特に核抑止力についての分析においていろんな意見が出ております。端的に申しまして核抑止力を尊重すべしという議論が大勢でございますが、同時に核の軍備の問題が複雑性を増しておりまして、核抑止力自体の問題が余り簡単に論ぜられるということはいかがなものであるか、核抑止力に対して絶えず分析を加えていく必要があるという意見も併記されておる点については、これは注目をする必要があると思うわけでございます。この報告書は圧倒的多数で採択をされておるわけでございます。  それから御指摘のただいまのスウェーデンの研究所が出しておりまするところの米ソの核戦力の比較でございますが、これは私どもといたしましては、核戦力比較を詳細に分析してこれが唯一無二の権威のあるものであるというふうには必ずしも考えておりませんけれども、ごく簡単に数字を挙げますると、米ソの戦略重爆撃機、潜水艦ミサイル、大陸間弾道弾の三大分野におきまして、重爆撃機については米国の優勢、ミサイルについてはソ連の優勢、大陸間弾道弾についてはソ連の優勢、トータルにおいてソ連の優勢という記述がございますが、この点については私どもとしてこれが最新にして絶対性のあるものとは考えておりません。
  33. 秦野章

    秦野章君 そういう比較論なり、それから核の抑止力としてのある種の平和への貢献みたいな側面もあることは認めながら、もっと物理的に非常に核兵器の量が増大しているという報告がありますわな。その点についてはどっちも余り違った分析じゃないでしょう。
  34. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 核兵器の複雑性と申しますか、複雑性、多様化とということはこの報告書の指摘しているところでございまして、量的な拡大ということはトータルにおいてはこれは否定できないわけでございますが、同時にSALT交渉において、米ソ間においては、特定の分野の兵器ではございまするけれども、これを漸減しよう、戦略的な平衡を保ちながら漸減しようという試みが行われておるわけでございまして、われわれとしてはその方向についての努力、さらには戦域核につきましても、まだ結実しておりませんけれども、米ソの交渉が行われておることも事実でございますので、方向としてはその方向が促進されるということを期待しておるわけでございます。
  35. 秦野章

    秦野章君 時間があれですが、一つは日韓大陸棚条約を結んで、その後の開発というものが順調にいっているかどうかという問題をちょっとお尋ねしたいんだけれども、あの条約はいろいろ意見がありましたが、日本の石油は安全保障という立場からも非常に重要であり、手近なところで油が出れば一番いいわけですから、その手近なところの問題として掘削をしていこう、政府もバックアップしようということで条約もつくり、法律もつくった、さあその後の経過というのは一体うまいこといっているんだろうかという声があるわけですね。これは衆議院の方でもありましたけれども、いずれにしてもそこに何か物理的、技術的、財政的、経済的、政治的に何か制約されているようなものが全然ないのかあるのか、そこらの問題について、通産省の立場でごらんになっていろいろ報告もとっておられるでしょうから、会社が経営しているわけですから、企業合理性みたいなものもあるんだろうと思うんですね。しかし、石油掘削というのは大きなリスクですから、だから株式会社の企業合理性だけでいけるはずのものでもない、そこらの点についていろいろ世間で心配する向きがあるんですよね。そういった制約条件でもし制約された条件があるならばそれを取り払っていくという努力をせにゃならぬ、そういう点についてどうでしょうか。
  36. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答え申し上げます。  日韓大陸棚の共同開発でございますけれども、これは国会で御審議いただきまして御承認をいただきました日韓大陸棚の共同開発協定、それから日韓大陸棚特別措置法、この二つが五十三年の六月に施行になったわけでございます。その後日本側、韓国側双方の開発権者の指定などがございまして、実際に本格的な探鉱作業に入りましたのが五十四年の十月からでございます。五十四年の十月からまず物理探鉱をいたしまして、その後昨年の五月ごろから第五小区域と第七小区域におきまして、それぞれ一本の試掘を打ったわけでございます。第五小区域は日本側が操業責任者、それから第七小区域の方は韓国側が操業責任者ということで、それぞれが責任を負って一本ずつ打ったわけでございます。残念なことにこの二本につきましては、商業的に生産可能であるほどの油あるいはガスというものの発見には至らなかったわけでございます。  現状を申し上げますと、韓国側、日本側双方におきまして、この試掘の結果を分析して、次の探鉱をどう進めていくかということにつきまして検討を進めているという状況でございます。私どもの承知しているところでは、本年におきまして第五小区域及び第七小区域につきましてそれぞれ各一本ないし二本というような試掘が行われるのではないかというふうに承知しておるわけでございますけれども、この問題につきまして、どうも進み方が遅いのではないかという御意見があることは私どもも承知しております。で、この評価でございますけれども、私どもも基本的な立場といたしまして、できるだけ早く推進したいというところにおきましてはまさに私どももそのように思っておるわけでございますが、若干事情を見てみますと、開発権者の設定に至る前におきまして、この海域において確かにエカフェの調査があったわけでございますけれども、このエカフェの調査というのは、スパーカーによります非常に粗い調査でございます。したがいまして、これを本当に探鉱し、開発するというための作業というのは開発権者の設定以前には余りやられておりませんでした。たとえば北海などに比べてみますと、北海は一九五〇年代から非常に本格的な、かなり活発な物理探鉱が行われておりまして、その上で鉱区が設定されたというわけでございますけれども、それに対して事前調査、情報というのがきわめて不足しておる、そこのところから現在詰めていかなければいけない、こういう状況でございます。  そういう意味合いから申しますと、この日韓大陸棚の探鉱は非常に初期の段階であるということでございまして、一般的に石油の探鉱というものの進め方でございますけれども、初期の段階におきましては物理探鉱をやり試掘をやり、またその両方を総合しながら物理探鉱をやり試掘を打っていくと、非常にそういう積み上げ的なプロセスというのが初期の段階ではございます。私ども、現在の日韓大陸棚の状況というのはまさにそういう初期の段階ではあるというふうに思っているわけでございます。したがいまして、そういう初期の段階として見ますと、それほど現状特に遅いというふうには私ども見ておらないわけでございますけれども、ともあれできるだけ早く進めたいという気持ちがございまして、会社側ともよく連絡をとりながら進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  よくこの件について言われますけれども、たとえば資金面あるいはリグ、そういった点で支障があるのではないかという御意見をよく承るわけでございますが、資金面についてまず申し上げますと、この海域におきます試掘というのは一本大体二十ないし三十億かかるわけでございますけれども、現状から申しますと、この資金について民間側で調達し投入しているわけでございますが、この程度の現段階では資金的な制約というのは特にないというふうに承知しております。  またリグの点でございますけれども、現在世界的にリグの需給がタイトでございます。したがいまして、将来今後さらに本格的な探鉱という段階に入ってまいりました段階ではあるいはリグの手当て、確保というのが必要になってくるだろうというふうに思っておりまして、その点につきましては会社側ともよく連絡をとりながら私どもとしてリグの確保につきまして万全の対策をとってまいりたいというふうに思っているわけでございますけれども、現在のような初期の段階ではリグが制約になっていることは余りないのではないかというふうに思っております。
  37. 秦野章

    秦野章君 端的に答えていただきたいんだけれども、いまたとえば日石開発が投資した金額、費用はいままでどのくらいですか。
  38. 志賀学

    政府委員(志賀学君) これは会社側が自己資金によって調達をして投入しております。
  39. 秦野章

    秦野章君 幾らぐらい。
  40. 志賀学

    政府委員(志賀学君) したがって私どもも詳細は十分な把握はしておりません。ただ一本当たり、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、大体常識的に見ますと一本二十億ないし三十億でございます。で、韓国側と……
  41. 秦野章

    秦野章君 端的に答えてくれないかな。あなたの方は会社から報告をとる権利があるでしょう、これだけバックアップしてやれと言った以上は。法律にも書いてあるわけだ。だから会社から報告をとっていままでどのくらい費用を使ったか、それだけ聞いているのよ。一本幾らかかるなんてそんな予算の話じゃない。
  42. 志賀学

    政府委員(志賀学君) これは私ども確かに会社側からいろいろ聞いております。ただ、これは個々の会社の問題でございますので、どうも日石開発が具体的に幾らかけたかということはちょっとお答えは控えさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、それにかえまして、先ほど申し上げましたように、常識的に言うと二、三十億、その半分を日本側が負担しておると、こういうことというふうに御理解いただければ幸いだと思っております。
  43. 秦野章

    秦野章君 そうかね。やっぱり掘削に費用を幾らいままで使ったかということは答えられないのですか。法律報告をとる権利が留保されたでしょう。普通の会社だったら、株式会社で何に幾ら使ったかなんて大きなお世話だけれども、あの法律でこの石油開発については政府が監督義務というのか、バックアップをするというか、そういう性格のものだから報告の義務があるんでしょう。とればとれるんじゃないの。だから、細かなことはいいんだけれども、およそどのくらい使ったかということぐらいは別に秘密も何もないじゃない。そういうことまでとれないということなら、十分通産省は見ていないということになるんじゃないかと私は思うんだけれども、どうかね。
  44. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 私ども、会社側の方からは当然費用その他分析の結果を含めまして報告は詳細とっております。
  45. 秦野章

    秦野章君 だからどのくらいいままで投資したのかということぐらいは別に秘密もくそもないでしょう。それが一つ。  それからいま一つは、いま試掘、掘削の装置——リグね、リグの話が出ました、これが制約になっていないかという。そもそもこの掘削装置のリグというのは日本に何台あるかといったら大変少なくて、こういうものが一つの技術的制約になっていないかいう心配は私は無理がない心配だという気がするのよ。だから、日本は要するにでき上がった石油を買うことでは得意だったけれども自分が開発していくということについては投資も低かったし努力もなかったですよね。人が掘削したものをいただくということで来たんだよ。今度はそれだけじゃいけない。日韓大陸棚なんかは石油が出るかもしらぬということで始まったので、そういう意味ではリグの運用、使い方というかな、経験も乏しいし、技術的な問題もあるのかもしらぬが、よほど、これは日本にこの台数が少なければリースがあるのかどうかとか、あるいは新しくつくるというような問題があるのかとか、要するに掘削装置だから。聞くところによると一台かなんかを韓国と両方で使っているという話も聞くんだが、そういうようなことで果たして石油開発の心意気が一体あるのであろうかという感じがするわけよ。そういうところでちょっと聞いているわけなんだけれども、どうだろうな、そこのところは。
  46. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 日石開発がどのくらい探鉱のために……
  47. 秦野章

    秦野章君 まあいいよ、そんな大きな話はいいからよ。
  48. 志賀学

    政府委員(志賀学君) リグの件でございますけれども、現在日本に七杯ございます。それで、そのうちああいうやや深いところで使えるリグというのが三杯でございます。  で、確かにこの七杯のリグで十分対応可能かという問題があろうかと思っています。現段階におきますと、初期の段階ということで、この七杯のリグのうちから使用可能なものをここに充てているということで対応可能というふうに思っておりますけれども、将来の問題として、この探鉱が本格化したときにこれだけで足りるかという問題がございます。その点につきましては、海外におきましてもリグがいろいろございますので、リースであるとかあるいは日本での建造であるとか、そういった点を含めましてリグの確保というものに努めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  49. 秦野章

    秦野章君 ひとつぜひ、リグの問題なんかは制約条件かもわからないという感じもするんですよ。私もいろいろ聞いてみたんだよ。そういうことで通産省もそこらにポイントを置いて、とにかく北海油田なんかは、それは開発に至る前提の事情も違ったし、いろいろ地層も違うようだけれども、試掘の段階における掘削の本数がまるっきり違うわけよね。向こうは何十本と、こうやっていく、こっちは一本か二本という調子だからちょっとしょぼしょぼやっているなという感じがするのもあたりまえだと言えばあたりまえだと思うんですよ。そこに何の制約があるんだと、制約が全然ないのならいい。やっぱりいろいろ聞いてみればリグあたりも制約かもわからぬという感じなんですよね。その辺のどころを通産もひとつ指導してもらって、技術的な制約が仮にあるとすればこれを取り払うことに——これは技術だけじゃないかもわからない、技術だけじゃないかもわからぬが、その辺のところなんかを、これからのことでございますから、ぜひひとつ努力をしてもらいたい。要望をしておきたいと思います。  それから石油開発の問題について、東シナ海というものがかねがね問題になっているわけでございますが、これは外務大臣、どうでしょうな、東シナ海の石油開発という問題、われわれはおおむね中東に依存しておるわけですけれども、東シナ海の石油開発という問題は日中の問題が非常に大きくなってきますが、やはり中国も最近経済的には大変予定どおりいかぬようなところもあって、しょせんそれは石油が原因だというふうに言われているのですけれども、東シナ海の石油開発について、日中間における何か前向きな経済外交を展開していくというような話し合いみたいなことを進めていかれているのか。また、そういう方向に行かれる意図がおありなのか、その辺のところを。尖閣列島のときも問題になったのですけれども、尖閣列島のときに、あそこは大変石油があるという話があって、いまでもあるわけですけれども、あれは日中共同でやるというような方向になればいいがな、どうなんだといって私が外務大臣に聞いたら、それはそのとおりだと言っていましたけれども、あの辺に限らず、東シナ海の石油開発という問題については、何といっても、代替エネルギーもそう簡単にはいかぬようだし、やっぱり石油に依存する年月というものはしばらく続くと思いますが、何か前向きな交渉をおやりになるか、あるいはまた現にやっているのか、その辺はどうでしょう。
  50. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの御質問でございますが、あの辺の大陸棚の境界の問題が実はございまして、海洋法でもまだ大陸棚の問題が最終的に決まってない問題がございますので、たしか一、二度大陸棚に関して協議をしたことがございますが、いま先生のおっしゃるような、それ以上踏み込んで開発の相談をするという段階までにはまだ至ってない。事務的に大陸棚のあの辺の東シナ海の問題の話し合いはしたことがございます。
  51. 秦野章

    秦野章君 ある意味では時期が来たのではないかという感じも、中国の事情等も見て思わぬではないわけで、ひとつこれは前向きに検討してもらったらどうかという気がするんですけれどもね。  それから、時間がなくなりましたから最後に要望なんですけれども、また別の機会にいろいろ提案もしたいと思いますが、日本の安全保障の問題で、もちろん専守防衛の自衛力も着実な前進を図らにゃいかぬと私ども思っていますが、何せ安全保障はいろんな角度から攻めていかなきゃならぬ。そういうことで、何ほどの効果があるかは必ずしも測定しがたいけれども、去年私はウィーンへ行ってつくづく思ったんですが、国連の機能というものを一生懸命ウィーンが自分の国に引っ張り込んでいる。国連ニュータウンをつくって大分——ワルトハイムがあそこの出身だというあれもあるのですけれども、まああそこは永世中立国を条約で保障されているから日本の立場とは違う。日本の立場とは違うけれども日本も米ソの谷間みたいなところにおって、西側社会に属するけれどもなかなか日本が平和と安全に生存を全うするということは難行だと思うんですよね。その難行を何としても打開していかなきゃならぬという一つの試みとしては、国連の機能を日本に持ってくるということ、これはウィーンのようにはいかぬと思いますけれども、アジアではバンコクとかフィリピンとかに、それから日本にも若干の国連大学その他統計機関みたいなものはあるんですけれども、統計を見ると毎年のように国連の機能がふえているんですよね、いろんなことをやる。平和維持機能は必ずしも十分でないが、それ以外の機能ではだんだんふえているから、そういう国連の機能を日本に持ってくる、誘致する。そしてアジアの国連センターを日本につくるぐらいの意気込みでね、これは安全保障政策だと思うんですよ。だから国連のアジア・センターが日本にあるということは、アジアの先進国としておかしくはないし、アジアは人口で言うならば、アフガンを入れる入れないはともかくとして、パキスタンぐらいまで入れて大方世界人口の五割はあるわけですよ。だからその中の先進国といったら日本だけだから、国連ニュータウンをつくろうと思えばできないことはないだろう。そういう一種の安全保障政策というものは比較的金のかからない安全保障費ではないのか、その辺のところにナショナルプロジェクトとして取り組むぐらいの意気込みがあってしかるべきであろう、まあ効果がどの程度あるかはともかくとして。しかし、国連の機能というものは何といったってこれはほかにないんですよ。世界政府だの何だかんだと言ったって、そんなものなかなかできませんからね。だからいまの国連の中のいろんな機能が出てくる、あるいはいまあるニューヨークの機能でも日本へ持ってこれるものは持ってきちゃっていいじゃないか。日本に来れば家賃がただだよ、職員の宿舎もつくりましょうというので、何かこう金で買うような話になるけれども、しかし、金もそういうときには出さなきゃだめですから、いま国連負担金が百何億の負担金ですけれども、まあ、先進国日本経済大国日本が国連で百億ばかり出しとったって大したことないんだ、思い切ったそういう方向への投資をして国連のアジア・センターは日本だと、東京あるいは日本のどこかに、沖繩でもどこでもいいや、そこにこういう機能が来るようにするというふうにして、そこに一つの日本の誘致運動というか、活発なそういうものをやっていく、これはかなりいける可能性もあるのではないか。この間国連へ行っておった緒方さんの話もちょっと聞いてみたら、やっぱり可能性はないことはないだろう、ありましょうよと、こう言ってましたよ。それは一人の意見を聞いたからといってどうってことない、いまあるものを持ってくるというのは大変だけれども、あるものでも持ってこれるものがないとは限らない。国際会議場が当然要るわけですよね。国際会議場はニューヨークの国際会議場を除けば、マニラなんかもちょっとつくったようですけれども、大したものでないというのが評判でございます。国際会議場なんていうのはすばらしいのをつくるという腕前は日本にはあるわけですから、何かひとつ外務省推進力になって、これは国の、政府のナショナルプロジェクトとして、そのくらいの方向に踏み出すということが日本の置かれた立場、その立場から出てくる広い意味での安全保障政策、そういうことで私はぜひやってほしいとかねがね思っているんですけれども、きょうは具体的に詰める時間がないんですよね。ウィーンなんかの実情を私も見てきましたけれども、これはやっぱり見事だと思うんですよ。ウィーンの国際環境と日本の国際環境は違いますけれども、機能によっては可能性もあるし、理解も得られるだろうというふうに思いますので、これは前向きな検討課題としてひとつ取り上げてもらいたいんですがね。ここで言うだけじゃとてもこれは問題が大き過ぎるんですけれども、このことを最後に提案をし、もし外務大臣意見あったら伺って、私の質問を終わります。
  52. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生のお話はごもっともなことが私あると思うし、国連で世界の安全、平和ということを考えていくこと、これはだれでも思う。その国連の機関日本にと言われるのはよくわかりますので、国連大学やなんかもう来たわけですが、まずあれをもっと充実せにゃいかんと思います。日本へ行ったけれどもだめだということになっちゃいかぬので、国連大学やなんかも充実せにゃならぬと思うわけでございますが、一つの先生のアイデアとして私はよくそれは理解いたします。ただ、現実の問題としてと言うと、大蔵大臣の顔がすぐ頭に浮かびますので、なかなかむずかしいことで、わかるのですが……
  53. 秦野章

    秦野章君 まあ、大蔵大臣なんかの問題じゃないからね。
  54. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アイデアとして伺っておきます。
  55. 松前達郎

    ○松前達郎君 この前、伊東外務大臣が訪米をされて、いろいろとアメリカ側との折衝その他あったわけでありますが、それに関してまず最初にお伺いいたしたいと思います。    〔理事大鷹淑子君退席、委員長着席〕  その中で自動車問題というのは、先ほども出てまいりましたけれども、最近ではアメリカの大新聞の意見といいますか、論説が、自動車日本からの輸入制限に対して反対であるというようなそういう意向も大新聞、幾つかの新聞で書かれている、こういうことも最近、ごく最近出てきておるんですね。私自身もアメリカのそういった関係者と会って話したときも、自動車の輸入に対して制限をするということはアメリカの努力そのものが行われないで、ただ外国からの自動車の輸入というものをただ単に制限するというのはどうもおかしいじゃないかという意見もたくさんあったわけです。そういうことで今回アメリカ側とのお話し合いの中で、自動車問題いろいろ大きな問題とはなったと思いますけれども、先ほど申し上げました大新聞の論説等も含めて動きがちょっと変わってきたような気もしますので、その点いかがお考えでしょうか。まず最初にお伺いします。
  56. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの問題ですけれどもアメリカの中にいろいろ議論があることはおっしゃるとおりでございまして、ITCより去年出ましたときにも三対二でシロというのが出た経緯もアメリカの中にございます。でございますから、いまのような意見のあることはわれわれも十分承知しております。それで、今後私、参りましての印象でございますが、運輸長官が中心になってタスクフォースでいまやって、結論はまだ発表になっておらぬのでございますが、その中でもアメリカアメリカ自動車業界に対してどういう対策を立てるのかということはまだはっきりした説明をわれわれ聞いていないわけでございます。そういうことがある一方に、御承知のような、先生のような意見もあるし、特にアメリカ議会の中では輸入制限法というものが現実の問題となって議論されているというそういう情勢もございますし、アメリカ自動車産業アメリカ経済の中における特殊な影響力等があって、向こう政府が非常に苦慮しているということは確かでございまして、そういう説明がいろいろあったわけでございます。私、向こうへ行って、最後は大統領と話したのでございますが、日本側からすれば、何も日本輸出がふえたからアメリカ自動車業界がああいう状態になったのじゃない、それはアメリカの責任なんだということは何回も説明をしましたが、その中でやはり現実の問題としていろいろ問題が出ているわけでございまして、何とかこの際自由貿易は最低守るという原則に立って両者でいい知恵を出し合って解決する方法はないか、こういうことでございましたので、日本としてもアメリカの置かれている地位、問題はよくわかる、ただ運輸長官がいろいろ対策を立てているんですから、国内的にはこうするのだということをやっぱり日本にもはっきり説明をしてもらいたい、そうでないとよくわからぬ、アメリカはまずどうするかということでございまして、まあ向こうからひとつ使節団に来てもらいたいと、そしてよくアメリカ対策その他を説明してもらいたいということを話したわけでございます。先生のおっしゃるような意見があることはよくわれわれも知っております。
  57. 松前達郎

    ○松前達郎君 自動車の問題で今度の会談の大部分の時間が割かれたというような報道もあるんですが、私はやはりその裏に隠れている防衛の問題ですね、これがやはり今後大きな問題となってくるのじゃないかというふうに思っておるわけです。そこで、外務大臣行かれてソビエトの脅威あるいは世界情勢に関する国際的認識ですね、これに関してアメリカと全く同じ立場にあるということを表明された、こういうふうに伺っておるわけでありますが、アメリカへの追随というか、そんなような感じがどうもしないでもないわけなんですが、その点いかがでしょうか。
  58. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 認識が一緒になったというのはこういうことでございます。  八〇年代の国際情勢の緊張、緊迫といいますか、これはソ連の軍備増強あるいは第三世界への軍事介入というようなことから非常に緊迫してきたという情勢認識は一緒でございますと、こういうことでございまして、それではどういう対策があるんだということにつきましては、これはいろいろそれぞれの国で違うわけでございまして、日本防衛としては日本の個別自衛権で日本を守るというだけだと、日本としては経済協力とかあるいは外交、平和外交推進とかそういうやり方で西側の一員として世界の平和を守ることに努力していくんだ、こういうことを言ったわけでございまして、何も全部アメリカと一緒と、こういうことではないのでございます。ただ八〇年代の国際情勢の緊迫、緊張した原因については同じ見方だと、こういうことでございます。
  59. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、防衛問題というのは、今度の日米会談の中では余り出てこなかったと、ある程度何か話しはあったんじゃないかと私は思うんですが、その点、いかがですか。
  60. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 防衛問題は主としてワインバーガー国防長官と話しました。それからヘイグ国務長官のときも出ましたし、ブッシュ副大統領のときも出たのでございます。ですから防衛問題を話したのは副大統領国務長官、国防長官、三人とも話は出ました。  防衛問題は、私は日米間の基本的な問題としてやはりこれは大きい問題だと思っております。自動車の問題はいま現象的と言っては何でございますが、これは解決すれば一応何とかおさまるという問題でございますが、防衛の問題というのはやはり基本的に非常に重要な問題だと私は思っております。またそういうつもりで向こうと話したときも話しました。
  61. 松前達郎

    ○松前達郎君 その話の内容なんですけれども日本に対する防衛分担という問題がいま盛んにあちこちから出てきているわけですが、そういう話はなかったわけですか。
  62. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) こういう形で出たわけでございます。ヘイグ国務長官のときはこれはごく簡単でございましたが、国際情勢——これは対ソだけじゃなくて全部でございますが——の認識の問題で議論をしたときに簡単に出たのでございますが、アメリカとしては、先ほども秦野先生にお答えしたように、対ソのバランスということを考える、その上に立って外交というものを考えるんだが、アメリカ一国で世界の国際的な平和維持といってもこれはなかなかできることじゃない、友邦国、同盟国と緊密に連絡をして友邦国との新しいパートナーシップというものを育てていかなきゃいかぬと自分は思っている、それで防衛というだけでなくてそれも含めた広い意味で西側の一員としての協力をしてもらいたい、その中には、防衛努力もひとつ防衛力の強化をするような努力をしてもらいたい、というようなごく一般の触れ方でございました。  それからワインバーガーさん、これは国防長官でございますから、もうほとんど全部防衛関係の話でございまして、このときも出た話は世界情勢の話がございまして、アメリカの国民は、まずアメリカを強くしろということで、いま出ている経済再建計画でまずアメリカ経済を強くするということをやらなけりゃいかぬということと、それから対ソの力のバランスをとるように抑止力を十分保つようにというこの二つでレーガン政権を選んだんだという話からございまして、アメリカはいろいろ防衛のために努力をしている、その例としてペルシャ湾の問題、インド洋の問題あるいは南西アジア、東南アジア、北西太平洋というような話の中でグアム島以西、フィリピン以北というようなところも言葉の中に出しながら、こういうところで努力をアメリカはしている、また追加防衛の努力もペルシャ湾やなんかでしている、こういう努力をしているんだからひとつ日本経済力が大きくなったんだから防衛強化について努力をしてもらいたい、という期待表明はございました。その言葉の中に、日本の憲法というものもあるという日本の制約はよくわかっているということを言っておりました。ブッシュさんも大体いまと同じような意味で、日本の制約はよくわかっていると、しかしその中で防衛力の強化という努力はしてもらいたいというような抽象論の話があったわけでございます。具体的と言えば私は一点だと思うんでございますが、在日駐留軍の経費につきまして許せる範囲の増額といいますか、負担といいますか、そういうものを考えてもらいたい、こういうことがあったのでございまして、そのほかはどこで肩がわりするとか、どこの海峡を持ってもらいたいとか、そういうような具体的ないわゆる期待表明はございませんでした。  これが向こうの話の内容でございます。
  63. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまお話を伺いますと、大体抽象的といいますか、大まかな線での日本に対する期待というものが述べられたというふうに解釈できるんですけれども、恐らくこれだけじゃ済まないと思うんですね。やはりその裏には何か裏づけがあって、今後どういうものを要求すると、恐らくそういうものが出てくるんじゃないか、そういうふうに思うんですが、在日米軍の経費の負担というのはどっちかと言えばアメリカとしての期待の中のごく一部じゃないかというふうに思うんですね。  そこでどうなんですか、外務大臣として、その裏に隠れているといいますか、具体的に一体アメリカ日本にどういう防衛努力を期待しているとお考えでしょうか、それをちょっとお聞かせいただきたい。
  64. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういう話がありましたときに、私はここでいつでもお答えしているのでございますが、憲法その他法令上の制約の問題、これは個別自衛権だけだということでございますが、専守防衛なんだということを話しまして、国民の防衛についてのコンセンサスというのはなかなかむずかしいんだが、やっと去年から安保委員会というものも国会にでき、だんだん国民も防衛というものに関心を持ってきているという話をしまして、日本は五十一年に決めた防衛計画大綱というものが防衛庁にあると、それに基づいてそれの充足を図っていくということをやっているのであって、それ以外のことは何もないんだ、その国防の計画大綱をなるべく早く充足するという努力をしていると。なお中期業務見積もりについては、これは防衛庁が持っている見積もりというか、計画でございますので具体的な話、そういう話はいずれ事務レベルの協議があるだろうし、あるいは防衛長官とワインバーガーさんが会われて話す機会もあるだろうから、具体的な問題はそういうところで話してもらいたいということを私は言ったのでございまして、アメリカが具体的に日本に対して何を、どういうものをということは会談の中では実は感じなかったわけでございます。  それで会談の中で、ブラウン前国防長官がいろいろ言ったことがあるが、自分はそういう態度はとらぬ、というのは何%とかいう数字がひとり歩きするとか、そういうことは好ましいことではない、そういうことはやらぬつもりだ、防衛の大きな方針については話し合いをする、そしてそのもとで何をやるかということはその国が決めるべきことなので自分の方から押しつけがましく何をせい、かにをしてくれ、そういうようなことは言わないというようなことを、これも抽象的な話でございますが、私とのやりとりの間であったわけでございまして、アメリカ日本防衛に努力を期待しているのかなということでございますが、私はそういうことは余り考えないで一般論をやり、向こう一般論で終始したというのがこの間の話でございます。
  65. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうことで交渉といいますか、会談が行われたということはわかるんですけれども、どうもちらちらいろんな要求が出てきているわけですね。たとえば防衛大綱の見直しを迫ってくるとか、あるいはその他いろいろと具体的な要求なり要望がアメリカ側から出てきている、こういうふうなことになるので、今度五月に総理が訪米される、具体的な課題は全部そっちの方にしわ寄せを持っていっちゃったという感じがしないでもないわけなので、大変な訪米になるのじゃないかという気もするんです。  そこで、これは大平前総理時代にアメリカと交わした防衛費の伸びの約束ですね、これは私数字がちょっと正確でないかもしれませんけれども、一一%ぐらいでたしか約束されたのじゃないかという気もするんです。相当高い数字だった。その後また防衛費の伸びについてカーター政権の時代に九・七%という約束をされた。その約束が実際にふたをあけてみて、五十六年度の予算で見ますと七・六%である。これは九・七——さっき一一という数字は正確じゃありませんと申し上げましたが、その大きな数字と九・七に下げた間にはマンスフィールドが調整に入っている。そういうふうなことでやっと九・七にしたんだけれども、どうも現実は五十六年度は七・六、こういうふうな数字になってきている。こういう外交的な、外交といいますか、一つの予算的な面から見た数字ですが、このプログラムですね、外交プログラム。この中から見てみるときに、やはり今後これらについて相当大きな圧力がかかってくるだろうと、これは予測できると思うんです。  そこで、九月でこれを再び調整をして、防衛増強に関して九月で補正をするんだというふうな報道が行われて、これは三月二十七日の読売新聞ですけれども、九・七%達成を数字的には九月ごろにしてしまうんだという、そういうふうな報道もあるわけなんです。ですからこのいまの外交プログラムの中の、たとえば総理の訪米に関連していろいろと大きな問題が今後出てくるし、それに対応するのはいろいろ対応策がとられているのではないかと思うんですが、これどうなんですか。これは防衛予算の伸びですね、防衛予算九一七%達成を補正予算でやるという報道について、これに  ついてはどういうふうにお考えですか。
  66. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 松前さんおっしゃいましたが、私向こうと話して、向こう防衛計画大綱の見直しなんということは一言も言わなかったんでございます。これはいろいろ報道されておりますが、そういう話は一言もなかったのでございますので、これは先住誤解ないようにお願いしたいと思うんです。  私との話は本当に抽象論だったんですが、それでは具体的なことは総理が行かれたときに出るだろうというお見通しでございますが、しかし、総理のときにそういう話は恐らくないのじゃないか、これはまあ先のことでございますからわかりませんが、私は、具体的な話がいろいろあれば事務レベルの協議あるいは大村長官とワインバーガーさんのお話し合いのときにされるのじゃないかと、こう思っております。  それから、前総理の大平総理が一一%の約束をしたというようなお話でございますが、これもまた全然ないことでございまして、当時、私官房長官をしておりましたので経過をよく知っておりますが、カーターさんとお会いしたときに、カーターさんが、政府部内にある計画を早期に達成してもらえば極東アジアの平和に役に立つという意味のことを抽象的に言われた、これに対して大平総理は、同盟国として何ができるかということを真剣に検討しましょうというふうなことを言っただけであって、これは具体的に中業の一年繰り上げだとか当時言われたんですが、そういうことでもなかった、ましてや一一%なんという話は全然これはなかったことでございますので、誤解ないようにしていただきたいと思うんです。  それから九・七というのは、これは何も約束じゃなくて、防衛庁が五十六年度の防衛費の予算要求をされるときのシーリング、上限ということで九・七というのが出まして、そして大蔵省との折衝の結果七・六ということになって、いま国会に予算をお願いしているという段階でございまして、九・七というのはこれは何も約束ではないんです。これは予算の要求の上限ということで出た、たまたま出た数字でございます。でございますので、私は今度行って抽象論で合意がございました。恐らく総理も抽象論だと思うのでございますが、やはり数字になって出てきますのは、この七月末か八月初めのシーリングのときに予算要求の数字が出るわけでございますから、このときがやっぱり防衛にとっての一つこれは問題を提起するときだなと思っておりますが、九・七というのは約束ではございません。  それで、松前さんより何か補正予算で七・六を九・七にするような話がということを御質問あったのでございますが、私もあれが一つの新聞に出ているのを見てびっくりして、何のことやらと思っていろいろ聞いてみたのですが、どこでもそんなことを話した公証がないわけでございまして、いま本予算をお願いしている段階で補正予算を云々するなんということは、これはまああり得ざることでありますし、ましてや七・六を九・七にするんだなんという話は全然政府の中にはないということだけははっきり申し上げます。
  67. 松前達郎

    ○松前達郎君 数字を強引に持ち上げていくというのじゃなくて、結果論としてそうなっていると、なるんじゃなかろうかというふうな説明があるわけですね。たとえば石油の値上がわあるいはその他の人件費の値上がり、そういうものを含めると、計算してみると、結局はそうなっていたと、まあそういうふうなことを予期してやるんだというふうなことが報道されていると。そういうことですから、まあこれいまそういうことはないとおっしゃいましたけれども、結果としてそういうふうになる可能性もなきにしもあらず、その辺いかがでしょうか。
  68. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは先のことで、経済がどう動くかとか、そういうことでいま予想はつかぬのでございますが、いまのところは政府の中ではそういうことは何も考えてないのじゃないかと、私はそう思います。詳細、これは防衛庁の予算でございますので、防衛庁でも呼んで聞いていただけばいいのですが、われわれは全然そういうことは聞いていないわけでございます。
  69. 松前達郎

    ○松前達郎君 まあ午後また防衛庁に質問がありますから、そのとき聞いてみますけれども。  そこで次は、これはマンスフィールド駐日大使からの戦略的な要求というのがこれも報道されてきているわけですね。わが国に対する防衛分担強化の問題です。これで、日米防衛協力指針というものについて、今後どういうふうにこの中で議論を進めていくのか、それについてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  70. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 御承知のとおり、防衛協力指針というのは五十三年にできまして、それに基づいて、現在日米の制服の間で話をしているわけでございます。この制服同士の話し合い内容については、私たちもその一般的な進捗状況というのは承知しておりますが、それ以上詳しい内容は知っておりません。  ただし、御承知のとおり、防衛協力の指針にはいろいろな前提条件がございまして、たとえばその中で憲法上の問題とか、あるいは非核三原則、さらには事前協議、こういうものはその協議の対象にしないということでございますし、それからまたそこの中で出てきた問題を、これを実施するかどうかということは、それぞれの政府の責任において行いますし、かつ現在の日米安保条約あるいは関連取り決めの範囲内でやる、こういうことになっているわけでございます。
  71. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、この防衛協力指針、ガイドラインの検討項目としていろいろなことが言われておるのですけれども、その中で、特にこれは私もアメリカの要求としては当然出てくるのじゃないかと思うのですが、海峡封鎖ですね、これはさっきも話が出ましたけれども、最近の核戦略の問題から言って当然こういう問題はアメリカ側として要求をぶつけてくるのじゃなかろうか。それとさらに、特に最近ではICBMなんというやつは、これはもうあるところははっきりわかっていますから、これに対する対処というのはある程度進んでおるかもしれませんが、SLBMに関する問題が今後の重要な問題になるのじゃないかと、こういうふうに思っているわけなんです。  先ほどお話ありましたように、たとえば第七艦隊がインド洋に勢力をとられているから手薄になるから、日本近海あるいは太平洋のその北の部分の防衛について分担しろという、これは非常に抽象的な話なわけなんですが、核戦略の中でいま申し上げたような大型ミサイルについては、大体陸上サイロから打ち出すわけですから、これについてはもう査察が全部終わっているし、あるいは衛星等を使って大体どこにあるかわかっておるわけですね。アメリカの場合ですとミニットマン2と3、これを中心に、あるいはタイタンですね、こういうもののICBMを装備して、大体ワイオミングとかミズーリ、サウスダコタ、あっちこっちに基地が置いてある。ソビエトの場合ですと、これはSS16とか17あるいは19というやつですね、こういうものを中心にして大体バイカル湖の西北、クラスノヤルスクですか、その付近から西側の方に配備されている。こういうことは大体見当がついているわけですね。SS20なんというやつはヨーロッパ用あるいは中国用だ、これは航続距離が五千キロ前後です。そういうふうなことで大体陸上、陸上、お互いの核戦力については大体見当がついているんですが、いまのSLBMについては、これは非常に生存率の高い戦略兵器であると、こういうことになろうと思うんで、恐らく今後の問題としては、対潜水艦対策というか、こういう問題が出てくるのじゃなかろうかと、こういうふうに思うんです。さっきストックホルムの平和研究所ですね、SIPRIの話も出ましたけれども、このイヤーブックにも全部そういうことは出ているわけですね。  そんなようなことで、恐らく今後の要求としては三海峡封鎖というのが必ず出てくるのじゃなかろうか、これが私なりの想定なんですけれども、周辺海域防衛分担要求としてそういうものがいままで話があったかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。
  72. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) アメリカ側からその周辺海域の防衛に関して海峡封鎖等について日本側にやってくれという要請は、少なくとも私たちの承知している限りではございません。先生が御指摘されたのは、あるいは昨年の国防報告の中に、ブラウン長官がヨーロッパについて述べたその後で、アメリカの海軍は極東においては三海峡封鎖ずる能力があるということを述べていること、あるいは言及されているのかもしれません炉、それ以外日本側に対して具体的に三海峡封鎖をしてほしいというような要請はございません。
  73. 松前達郎

    ○松前達郎君 これも、余り細かいことは防衛庁の方かもしれませんので、このぐらいにしておきますけれども、しかし、アメリカ日本に期待するというのは恐らくそういうことであろうと大体想像がつくと私は思っているんです。ですから、対潜早期警戒能力の向上を図れとか、そのためにP3Cとかなんとかいろんなものの導入というものが考えられておる、こういうふうなことで、恐らく今後そういった問題が議題に上ってくるのじゃなかろうかと思っておるわけで、いま申し上げたわけなんですけれども、この点今後、これから防衛分担という問題で、専守防衛というふうにおっしゃっていますが、専守防衛との関連で非常に板ばさみに合うようなそういう状況が展開されていくのじゃなかろうかと、こういうふうに思うんですが、いままでは非核三原則あるいは日本の憲法問題からして専守防衛という立場に立ってできないことばかりおっしゃってきたわけです。アメリカ側にも説明をされたということを伺っています。アメリカが今度言ってくるのは、恐らく、では何ができるんだということを必ず言ってくると思うんですね。それが私、最初申し上げた外交プログラムの中で、今後事務レベルの話し合いも進むでしょうけれども、その最終的な煮詰めとして総理が訪米されたときの話題になるに違いないんだと私は思っておるわけです。しかし、そのぐらいのところは考えておきませんと、抽象論だけでぼやかして逃げ出すわけにいかないわけですから、その点は十分外務省としても考えられているのじゃなかろうかと思うんです。  そういったいろいろな問題、今後大変な日米の問題ですね、いろんな問題が出てくるだろうと思うんですが、これからのアメリカとの交渉、折衝、会談等を含めて、外務省としてのプログラムとしてどういうのをお持ちでしょうか。
  74. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 防衛の問題について言いますと、総理が五月にいま予定では行かれるわけでございますが、どういう話が出るか、これは先生と私、若干意見が違うところでございますが、恐らくその前になるか後になるか、例の事務レベルの協議というのがあるわけでございます。これは恐らく総理訪米の後になると思いますが、事務レベルの協議がある。その後には、恐らくこれは外務省じゃなくて防衛長官向こうの国防長官に会っていろいろ話をされるというような段取りになるのじゃないでしょうか、と思っております。
  75. 松前達郎

    ○松前達郎君 その辺防衛庁は、恐らく会談すると勇ましいことで大体終始するのじゃないかと思うんですね。その点外務省としてもやはり防衛庁との意見調整は十分やっておかなきゃいけないんじゃないかと、こういうふうに思うわけです。しかし、総理訪米までのスケジュールというのは大分いろいろ込み入った計画もあるようですから、その点いま私の方から質問さしていただいたわけなんです。  さて、ちょっと話が変わりますが、レビン議員がまたいろんな情報を流しているんですね。レビンというのがいます、これもまた新聞に出る。いろんなことが最近起こって、いろいろ怪情報かもしれませんが流れておるわけなんですが、それと先ほどの国防省の見解その他も出ていると言われておりますけれども、そういうこととの関連等も十分踏まえた上で今後の外交折衝をやっていかなきゃならないんじゃないか。それと同時に、今度七月になりますとオタワ・サミットがありますね。恐らくこのサミットについてはアメリカが大きな旗を振って対ソ戦略サミットというふうになるのじゃないかと、外務大臣もそういうふうになるだろうということをおっしゃっていたという報道もありますけれども、このサミットに対する日本としての態度ですね、これに臨む態度というものについて基本的にどういう態度をお持ちでしょうか。
  76. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 七月のサミットにつきましては、どういう議題で協議が行われるかということは、議題はまだ決まっておりません。また南北問題とか含めまして、エネルギーの問題でございますとか通貨の問題でございますとか、いつもそういういう経済問題が中心でございますが、昨年のベニス・サミットで初めてソ連軍の軍事介入を非難するというような政治問題が取り上げられたわけでございます。それで、恐らく私は、今度、八。年代の緊張した国際情勢がございますので、オタワのサミットでも経済問題と一緒に政治問題が取り上げられるであろうということは、これはわれわれは予想はしております。ただ、その政治問題、どういう問題としぼって取り上げるかというような、そういう議題の詰めはまだできておりませんので、議題をまず決めるということから、その後でどの問題についてどういう態度をとるかということを決めていくのが私は順序だというふうに考えております。
  77. 松前達郎

    ○松前達郎君 いろいろな国際的な問題、討議するものがどんどんこれから出てくるわけですけれども、その点については十分ひとつ幅広くあらゆる面から検討した上で臨んでいただければと、これを要望いたしまして私の質問を終わります。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 グローバルな時代がすでに到来したので、それに対応すべきところの国際政策が各国においても確立しなければならないときに、日本で確たる一つの自主的な外交防衛政策というものが確立しているのかどうかというのに対して、国民不在の現実においては外交防衛政策が空転しておるのでありますが、日本外務省は少なくとも日本の運命に対して、外交防衛に対して責任感を一番持たなけりゃならない、そして唯一の平和維持機関としての機能も果たすべき一つのポジションを持っているのでありますが、いままで大平さんとでも、あるいは園田さんとでも、大来さんでも、伊東さんでも、いままでの自民党の人たちとは違った、自民党から遊離できない関係はあるけれども世界動きに対応して筋は立てながらも柔軟な一つの姿勢でこの狂乱怒濤を乗り切ろうという構えがあるのは事実でございますが、簡単に結論だけの御質問をいたしますが、これから米ソ両国でも、核戦争が予想されるような時代に、核戦争が始まるならば世界の破滅を意味するものであって、米ソ両国は断じてそれに加わらない、もしもそういう徴候があらわれても、それは遠隔の土地において局地戦争として食いとめようというような構えがあるのじゃないかと思うんですが、あなたはどういうふうにそれを見ておりますか。
  79. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アメリカへ私今度行きまして、ヘイグ国務長官にいろいろ意見を言ったのでございますが、力のバランスということ、それはそれでわかりますが、アメリカとソ連が全面的に対決して核戦争になるというようなことになれば、これは私は人類の破滅だ、そういうことは何としても避けなければならぬ、そういう意味で、SALTの交渉でございますとか米ソの首脳会談の問題でございますとか、いろいろソ連側から平和攻勢といいますか、信号が出ているわけでございますので、こういうものに対して話し合いをしていくというアメリカの態度どうだろうというような、いろいろ意見交換をしたわけでございます。  アメリカも、それは一方ではバランスをとってその上での外交ということはもちろん考えておりますけれども、何もそれを敵視するんじゃない、これはブッシュ副大統領がはっきり言ったのでございますが、何も敵視しているわけではない、やはり米ソの間では平和を何とかして保っていくということがこれは大切なんだということをアメリカ側も認めておりますので、私は、日本としましてこの米ソが全面的に対決するようなことがないようにということを心から期待をしておりますし、またそういう意見両方に伝えるというようなことをすべきだと、何としても日本がそういうことに巻き込まれることは絶対避けなければいけませんし、また米ソが全面的に対決するということも世界のために避けなければいかぬというふうに私は思っております。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 私は、一九六二年七月二十三日の正午に、くしくも、ブラジリアで行われるところの列国議会同盟会議に列席するためにニューヨークの国連本部を訪れ、岡崎大使から午さん会の招待を受けました。そのときに、池田さんが政権をとって、事に敗れた佐藤榮作さんが橋本登美三郎及び木村武雄両氏を従えて、そうして世界を歩いて、世界を見てきたという感触を受けたので、とりあえず私は、もう米ソ間において戦争はできないという見通しをつけているけれども日本がなすべき大きな仕事は、イデオロギーや何かという理屈でなくて、隣国の中国と日本の責任において、ヨーロッパにおけるルネッサンスとは名前がいいけれども、ルネッサンス以後における宗教革命、民族的なナショナリズムの抗争、ああいう権謀術策の中にどれだけヨーロッパが損失を招いたかしれないので、アジアのルネッサンスとアジアの新しい近代化はヨーロッパのあの悲劇を乗り越えていくところから始まらなければならないと思うし、いま中国と日本とが謙虚な態度で率直にやはり交わりを結んでいくということがアジアの将来を考えると一番大切なものだが、あなたはそれを感じないかと言ったら、彼はそれに共鳴をし、私はやはり日本なくしてアジアの進歩がなく、中国を除いてアジア問題の解決はないんだと、いまの自民党のちゅうちょしている態度の中にどれだけ日本が、また中国が世界からおくれをとるかわからないんだと言って話し合ったことがありましたが、そのときの午後、ワシントンのショーラムホテルへ着くと、朝海大使が飛行場に迎えに出たがすぐに消えてしまった。何かこれは突発事件が起きたんじゃないかと思ってショーラムホテルでテレビにかじりつくと、ケネディのあの悲痛な歴史的なキューバ事件によるところの演説が行われた。私は、これによって初めて危機感というものをアメリカ感じて、アメリカ自身の中に戦場を持ち込んだら大変なことになってしまう、やはり戦争は避けなければならない、米ソ間に突発事件が起きないようなパイプを通ずるというようなことも米ソ間において行われることになったというのを後から知って、私は世界史が大きく変化するということを感じました。  いま、それが証拠に、アメリカがEC諸国、NATOを説得する場合においても、NATO地域においてソビエト・ロシアの核兵器を撃ち落とすことができるようないろんな開発ができたということを持ち込んでいっても、ドイツでもフランスでも応じないのは、アメリカが戦場になるなら別だが、なぜヨーロッパが戦場になってアメリカの安全を守らなければならないかということに対する国民的疑念というものが深く根をおろしているので、私はアメリカベースにおけるところのこのヨーロッパに対するNATOの説得というものには限界点があると思う。これは問題は、アメリカでは強硬論をやっているが、大学生がだれも戦場に行くやつはいない。日本の青年会議所の何とか太郎さんなんかは志願兵をつくれと言うが、金持ちは安全地帯にいて志願兵に戦争やらせるなんてばかなことをだれも国民は納得しない。そういう意味において、私はこの戦争に対する取り組む姿勢というものが非常に変化していると思うんです。  あのベトナムにおいてでも、黒人を利用して、しまいには麻薬を飲ませて半気違いにさせて、そしてベトナム戦争を続行するなんということは奴隷戦争です。こんなことをいつまでもやっていたならば、アメリカにおけるブラック・アンド・ホワイトの抗争というものが気違いざたの動きが生まれることは必然であって、こういうニヒリズムの中から、絶望感の中から新しい世界というものは創造されないと思うんですが、外務大臣、いかがなものでしょうか。
  81. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非常に高邁なお話で、どうお答えしたらいいのかということでございますが、いま先生のおっしゃったような、自分だけはぬくぬくとして他人につらいことを押しつけるというふうなことで世界がうまくいくかというお話がございました。これは私はそのとおりだと思います。おっしゃるとおりでございまして、みんな自分が、自分の国が自分の責任というものを感じて、防衛の問題でもあるいは経済の問題でも、努力、責任というものを感じてやらなければならぬということだと思いまして、私は日本がやはり西側の一員として考えていくという場合には、やはり日本日本としての責任を十分感ずる、アメリカアメリカとしての責任をちゃんと感じてもらう、ヨーロッパもそうだというような中で、国際の連帯というか協調といいますか、そういうものが生まれてくるんだというふうに私も思うわけでございます。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 問題は一転して隣の中国の問題に触れますが、中国の問題にはもっと時間がなければ深入りすることは困難ですけれども、いまの中国におけるプラント中止の問題をめぐって政府も中国も模索中であると思いますが、中国自身も、一九六〇年の安保闘争のときの私はカンパニアの総団長として周恩来、廖承志君と三人だけで忌憚ない話をしたこともありましたが、友好商社貿易なんという変則的な貿易でなく、国と国との責任を持って貿易関係をやはり確立しなけりゃいけない。社会主義国家においては、やはり資源があっても運営するだけの資金なり何なりがないんだから、そういう問題に対しては長期的な信用が確立しなければ私はその国の近代化はできないのじゃないかということに対して、周恩来氏も同見解であって、信義ということが大切だと、共産党的なマキアベリズムでなくて四千年の文化等々の中に脈々として流れている、立場は違ってもお互いに信じ合うという信義というものがやはり大切だということを率直に、直ちに言える民族というものの中には、それだけでも私は政治的な感度と責任感があると思うのですが、いまでも中止ということをやって、ソ連との関係で一度アメリカとソ連が近づいたときに、中国を犠牲に供していろいろな中国に対する援助を断ち切ったときに、彼らが悲憤の情を漏らしていたけれども、その中でもソ連に裏切られても借金は借金として、いま苦しい中で返しているんだというのは、信義をつなぐためにやったとにかく中国民族の一つの悲願であったと思いますが、いま名前を言うのは避けますが、率直な話し合いを中国の一流の人とすると、恥ずかしくってわれわれは日本に何をしてくれということが実際言えないんだと、自分がやはり見通しを誤り、いろいろな指図はしたんだけれども、それ以上こうだああだということが言えないんだという秘められた側隠の情というものがあり、やはり私は中国人の中には恥を知る、信義を守れなかった者に対するところの心の痛みというものを持っていると思います。  そういうときに日本は、かつて加藤高明の中国に対する英国主義的な要求をやって、五四運動あるいは五四運動を誘発させたときのような九十九ヵ年の租借などというようなまねをして、ドイツやイギリスの帝国主義を上回ったようなやり方をした国民、間違いの清算をいまやるときですが、私たちはやっぱり他の人たちの苦しみというものをくみ取って、地下三千尺の心をやはりくみ取って、ソ連に対応するだけの構えというものがなければ、隣国との本当の結びつきというのはないのじゃないかと思いますが、外務大臣はどのように具体的に中国問題を今後展開しようと考えていますか。
  83. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生おっしゃった信義、信頼といいますか、そういうものは外交などというもの以前の問題かと思いますが、これが大切だということは私も全然同感でございます。  日中の関係でございますが、私アメリカに行っても話したのでございますが、日中は非常に平和友好関係で緊密になっていると、また日米もいいんだが、米中というものも友好関係を続けてもらわなければアジアの、平和等に影を差すおそれがあるので、米中も友好関係を保つようにというようなことを意見として言ったのでございますが、これは中国というものが日本にとりましても、アジアにとりましても非常に大きな影響力のある国であり、日中関係も平和な関係を続けるということが、私はいろんな総合的な面から考えまして大切なことだというふうに思っておるわけでございます。  それで、プラントの問題、具体的な問題でございますが、これは土光さんが——その前に岡崎さんとか藤山さんも行かれ、土光さんも行かれ、大来君はその前に行くというようなことで、向こう意見もいろいろ具体的にわかったわけでございまして、いまあのプロジェクトに関係した人が四月早々向こうにまた——会社の人でございますが、行きます。それから、谷牧副総理が来る前に、恐らく向こうも事務的な考え方を持って人が来るのじゃなかろうかと、そうしてそういう詰めた上で、どうしても残る問題が出てくれば政府がそれをどういうふうに考えるかというような段取りでこの問題を考え、この問題で日中間に傷が残らぬように、日中の平和友好関係にいろんな傷跡が残らぬ、従来の関係が続けるようにすべきだというのが私の考え方でございます。
  84. 戸叶武

    戸叶武君 いまアメリカの軍部なりアメリカ中心の防衛戦術を考えている権謀術策派の人たちの中には、日本と中国とアメリカとが結んで軍事包囲線を固めていくならば、ヨーロッパのECもこれに呼応してくる、ソ連を孤立化することはできるというような考えを持っている人があるようですけれども、戦国争乱の時代の哲学において、孫子がこの包囲せん滅の作戦というものは必ず間違いを起こす、相手の退路を遮断してはいけない、退路を遮断することによって窮鼠ネコをかむような目に遭う。日本が中国の大陸政策で包囲せん滅戦をやって成功したのは一つもなかったのが事実であります。そういう点において、乱世の哲学においては孫子の兵法でも、あるいは荘子の哲学でも、もっとヨーロッパの人たちよりは深刻な私は苦悩の中に哲学を持ってきておって、ナポレオン包囲のためのメッテルニヒの権謀術策の策を近代において活用しようというようなキッシンジャーや、あるいは力によって包囲の成果を上げようとしたような封じ込め政策のダレスさんのような考えというものは東洋においては全部失敗しております。東洋だけじゃなく、中東においても失敗しております。その彼らの動きの目覚しい記録は出版屋を通じて彼らのもうけにはなっているけれども、民族のエネルギーを消耗させたショービニズム、排他的な独善主義というものは全部破れております。  いまのポーランドにおいても、ナポレオン崇拝がやまないというのは、ナポレオンの戦術に幻惑したのじゃない、やはりフランス革命が生んだ奇形児ではあるけれども、国民解放という点においてポーランドの若者たちに与えた影響力というものが、いまだにポーランドの中にはフランス的な文化というものがやはり根を張っているのは、あのときの感激をやはり幾たびか悲憤に見舞われたポーランドの民衆は忘れることのできない記憶としてその国家なり旗なりにやっぱりしるされているのであって、伝統の歴史というものはその民族の血となりあるいは骨となり、そして根性を養っていると思うんですが、私はいまポーランドですらヤルタ協定の清算を要求しています。日本でも下田条約のような、黒船で威嚇されて、二月七日に腰抜けの倒壊する幕府が帝政ロシアに強要されたような下田条約をもって日本の北方領土解決の記念日にするなんというばかげた、歴史も知らない、民族の悲歌をその心の中に秘められていない外交においては、私は日本の本当の意味の民族を躍動させて世界の平和共存の復興の方向方向づけるというだけのものは生まれてこないんじゃないか。米英ソ三国だけが戦争のどさくさ紛れに他国の主権を無視して領土分割を策したようなヤルタ協定の清算から始めて、世界の新秩序をつくり上げようというだけの、簡単にはできないけれども、なぜ言うだけでもそれだけの主張を言い、それに一歩でも近づけるような方向づけをやるだけの見識と気魄というものが民族の中にもっとなぜ躍動しないのかということを痛切に感じますが、まあ、きょうはあなたはむずかしい立場で、うっかり返事すると自民党でいじめられても困りますから。しかし、本当に憂国の志を持つならば、まずみずからを律して、ひとつの人心を躍動させるだけの根性で世界観を確立してもらいたい。その世界観なしに外交は小手先のものであっては国民を納得させ得ないし、世界をも説得することはできない。  みじめな苦しみの中を耐え忍んでいくポーランドの国民ですら、本当のことを言って武器なき闘いをやっているときに、ぬくぬくと高度成長を調歌して、腐敗政治の中に埋没している日本に侍の根性がなくなったのでは、もう日本はどこに捨て場——埋め立てがありますから埋め立ての方へでも廃棄物をやはり処理しなければならなくなる。いま日本にとっては、よそごとじゃなく、日本自身の立て直し、世界新秩序確立への大きなやはり一つの方向づけの一番大切なときだから、外務大臣の一人や二人はどうぞ詰め腹を切らされても構わないから、撃たれても構わないから、民族のためにひとつびくびくしないで、やはり民族を背景に、民族の合意というのはネコなで声の好意なんか受けたってしようがない。民族から孤立してもいい、それだけの気魄で私は日本外交なり政治の立て直しをやらないと、腐った魚は犬もネコも食いません。  どうぞそういう意味において外交の中から、せっかく人がそろっているんだから。大平さんは苦悩して七月七日の七七の中に埋没してしまったが、やっぱり苦悩の限りを尽くした。どうぞ、私は大来さんでも、あなたでも、持ち味はみんな違うけれども、あなた一番粘り強いし、とぼけることも知っているし、苦労人だから、ここらはやはり自民党からすぐ消えちまっても困るから、やっぱり自民党の中にも私は本当に国を憂える人が出てくると思うから、いまの連中に迎合しないで、ここに日本人あり、ここに世界のために憂いを分かとうとする日本人ありという外交をこの辺でやってもらうことが一番いいことで、とにかくアメリカ大統領が傷ついたことをいたみながら、傷つかないうちに、死んでもいいというだけの根性でひとつ、それを上回る気魄で外交をやってもらうことをお願いします。
  85. 秦野章

    委員長秦野章君) それでは午後二時に再開することとして、休憩いたします。    午後零時十五分休憩      —————・—————    午後一時五十九分開会
  86. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 午前中にも質問があったようでございますけれども、今回のレーガン大統領狙撃事件、まことに痛ましいことであったと思います。  その後の経過は刻々と外務省にも入っておると思いますけれども、どうでしょうか。
  88. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その後情報が入っているのでございますが、手術後の予後の経過は順調で容体は安定をしておるということが入っております。そして、日本大使館からの連絡もあったのでございますが、米国政府の継続性は確保されているということを伝えてくれという本国政府からの要請があったということで、大使館からも連絡があったわけでございます。それで、向こうで新聞発表等いろいろあるのでございますが、恐らくノーマルな状態に回復されるには二カ月余はかかるかもしらぬというようなことが大統領補佐官の記者会見で述べられたりしておるのでございます炉、手術後の容体は安定してグッドだということでございますし、恐らくあしたからでも国家としての意思決定はもうできるというふうなことも言っているようでございますから、意識明断であるというようなのがわれわれのところに入っているいまの状況でございます。
  89. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、私どももテレビ報道等を通じて、あるいはラジオ以外に知るよしも毛頭ございませんけれども、これちょっと乱れ飛んでいる状況があるように思うんですね。ラジオ放送だと二週間ぐらいで全快退院できるんじゃないかという説もあれば、主任医師の発表によれば、いまのところわからないけれども、そう簡単に退院できるというような情勢ではないであろうという、そういう発表もございますし、なぜ私がそれを伺うかはもう申し上げるまでもなく、五月には総理の訪米というものがここに出てまいりますので、そうした日本政府としての外交日程の上で何らかの変化が起きはしまいか、となれば、あるいは総理の訪米を延期をされるのか、延期するとすればいつごろが望ましいのか、それはもちろんレーガン大統領の病状回復ということが大前提になることは言うまでもございませんけれども、やはりかけがえのないお立場の方であるということになれば、当然十分用心をしながらその療養に努められるであろうということを考えますと、相当やはり長期間というふうに考えた方がいいのではあるまいかというふうに思うわけでございますけれども、きのうのきょうでございますから、いま外務省としても直ちにどうこうという判断を下すというには早計かもしれませんけれども、まず大事をとるということを考えると、一ヵ月や二ヵ月はやっぱりわれわれの常識として考えてみた場合に、凶弾を受けたその場所が場所でありまして、年配ということもございますし、当然予測して取り組む必要がありはしまいかと、こんなふうに思うんですけれども、その点は、いま直ちにというのは大変無理かもしれませんけれども、どうでございましょうか。
  90. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) まだ事件が起きた直後でございますので、そういうことを向こう連絡したりというまだいとまがないわけでございます。それで、向こう発表も、完全に回復して全く通常な状態になれるまでには二ヵ月半ぐらいかかるのじゃないかというようなことを報道官が新聞記者会見で言っているわけでございますので、その辺のところはどういうことになりますか、もう少し時間をかしていただきたいと思うのでございます。  実は、私きょう前からの約束でマンスフイールド大使にも、これは前から約束していたのでございますが、偶然こういう日になったのでございますが、委員会後お会いすることになっておりますので、まあその辺の感触もいろいろ話し合ってみようかとは思っております。何しろいまきのうのきょうでございますので、今後アメリカ側とその辺のところは十分協議をしてまいりたいというのが私どもの考えでございます。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、視点を変えて次の問題に移りたいと思いますが、先般、予算委員会の集中審議の際にも若干触れさしていただきましたけれどもレーガン政権誕生の前後を通じまして、とりわけソビエトに対する敵意むき出しという大統領を初めまた側近といわれる方向発言が大変目立ったのではあるまいか、一体そこまでむき出しにした感情というものは個であったのか、その真意は一体どうわれわれとしてはとらまえたらいいのか、まあ、言うなればレーガン政権のそれが真意なのか、あるいは戦略的な意図を持った宣伝効果をねらう一つの発言であったのか、大変理解に苦しむ点がないではございません。伊東さんが向こうへいらっしゃっていろんな方とお会いになりました。しかし、私がいま申し上げているような発言というものについては恐らく多くをお聞きになる機会はなかったであろうというふうに思うわけです。私どもがさまざまな報道を通じて知り得ることを通じいま申し上げているわけでございまして、少なくとも一般常識で考える限りにおいては時には大変激烈な口調でもって敵意を示すような発言が目立つという、そうした点についても恐らく伊東さんが訪米される前に十分、その辺の真相と言った方がいいのか、アメリカのいま意図している考え方が那辺にあるのかという事柄についてもさまざまな角度から分析をなさって訪米されたであろう。したがって、当然今後のアメリカ外交展開の上で一体どういう方針を立てながら取り組むのであろうかと、われわれとしても大変気になるところでございます。したがいまして、その辺の結論的なことよりも、むしろ伊東さん御自身がいろんな方にお会いをされたその話し合いの中で受けた感触、ソビエトに対する感触、どういうものであったか、ここで改めてお聞かせをいただければ大変ありがたいと思います。
  92. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 向こう大統領以下要路の人に会ったわけでございます炉、いまの点について直接該当すると思われるようなこういう話があります。  アメリカの国民がわれわれレーガン政権を選んだのは、一つは、アメリカ経済的にどうもいろいろ生産性は低くなり、弱くなり、インフレだあるいは失業だということでどうも弱くなった、で、経済的にまずしっかりせにゃいかぬと、経済政策に対する一つの信託があった、もう一つの信託は、対ソ関係で、どうも対ソの軍事、力のバランスというものが不利になるのじゃないか、それでは困るんだということで対ソの力のバランスということに対してそれをしっかりやるようにという信託があった、この二つの信託の結果レーガン政権が誕生したんだ、という説明がありました。これはアメリカの国民がそういう強いアメリカということでわれわれを選んだのだという意味のことの発言があったわけでございますが、そういう説明を聞きますと、アメリカの国民がソ連に対してある程度の力のバランスといいますか、あるいは力強い対抗といいますか、そういうものを期待していたのだ、というような説明があったわけでございます。  私は、向こうの人といろいろ話し合いましたときに、その力のバランスという説明があった際に、私はアメリカとソ連との関係が本当に全面的な対決になって核戦争のようなことになったらもう本当に人類の破滅ではないか、そういうことは日本としては望むところにあらず、米ソはやっぱり平和的な関係が維持されるのだということが必要だと思っていると、そういう意味で首脳会談とか軍備の管理とかいうことの話し合いについてはどういうふうに考えるかという質問もし、意見交換をしたのでございますが、その際、向こうの考え方として、やはり慎重にソ連の出方を自分らは具体的にどう出るか見守っているのだ、そうして首脳会談でございますとか軍備管理の問題でございますとか、そういうものと取り組んでいく、やはり話し合いをするという態度は崩さないのだ、敵視するのじゃないんだという話がございました。その場合、そのソ連の行動というのはリンケージとよく言われる世界の各国で各地域でいろんな行動をする、そういうこともよく見きわめなければならぬが、やはりその話し合いということは、その中に平和を探っていくということは自分らも考えているんだという意味の説明があったわけでございまして、これは私も直接聞いたのでございますが、西側ECの外相等もアメリカへ行っていろいろ国際情勢の認識をしたときにそういう話があったらしいのでございまして、米ソの関係について力だけで対決するということじゃない、話し合いという、そういう道もやっぱりあけて、そして平和というものを探っていくんだということで、ECの外相たちもそういう認識を持って帰ったというようなことが前に報告があったのでございますが、私も同じような考えを持って話し合いを聞いて帰ってきた、向こうの態度もそういうことだろうなと思って帰ってきたところでございます。
  93. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま御答弁をいただいたような、本音をアメリカが言ったとするならばまことに私は結構だと思うんですね。大統領が就任になる前、選挙期間中を含めてということになりますと、大変フリーな立場で発言をという、缶来の考え方をむき出しにということも考えられましょうし、政権担当ということになれば責任ある立場でございますから、当然発言にも十分気をつけて取り組まなければならない、これも当然だろうと私は思うんです。ところが、就任以後においても側・近の発言を聞いても、いま受けたその答弁と大分矛盾があり過ぎはしまいかということから、一体本音とたてまえというものを日本流に考えますと、アメリカもそれを踏襲しているのかなと、非常にその辺が、われわれが選択をしようというときに非常に大きな混乱を与えるような危惧があることを非常に心配するわけですね。一方においてはこうだと言って、もうまるで恐怖感をあおるようなそういう対ソ攻撃をやる、ところが伊東さん御自身がアメリカへ行かれる、話し合いをする、確かにもうイタリアの外相も行っている、サッチャーも行っている、あるいは西ドイツの外務大臣も行っている、恐らくいろんな話し合いがなされたであろうと思います。  いまお話を伺っておりましても、確かに平和を志向する、そういう方向に立って結束を固めて西側陣営としては新しい一つの体制を組み込んでいくんだと、それはわかります。ところがまた一方においては、まあこれは勘ぐりかどうかわかりませんけれども、いま御答弁の中にもちらっと出ました中に、強いアメリカを建設するという、そのためには、いま国内で抱えている問題たくさんございます。それはもう言うまでもないことであります。そうした、いま混乱に満ち、あるいは秩序の上においても大変不安感を持たれるアメリカ国内情勢において、何とか国民的な団結を図って新しい国づくりをしなければならない、その意図はわかります。そのための一つの方便として、その眼をソビエトの方に向けさせながら、いまこういう情勢である、しかも軍事的にはという、これは一つの方便ではないだろうか、そういうような背景のもとに大変手厳しいそういうような発言がいろんな形になってあらわれたのではあるまいかというのは私の少し思い過ぎかなあという感じがするんですけれども、その辺はどのようにお受けとめになったでしょうか。
  94. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま方便という言葉を使われましたが、私はやっぱりアメリカが、バランスが崩れた中の話し合いというのはどうも不毛の話し合いになる、あるいはバランスが崩れるということになると歴史の示す教訓は必ず紛争というようなものも起きてくるということで、力のバランスはどうしても保たなければいかぬという努力はこれからもしようということでございまして、方便ということじゃなくて、やっぱりそれはそれで一つは真実そう思っている。そして、その上に立って平和の模索といいますか、話し合いといいますか、そういうものを見つけていこう、こういうことだと思うわけでございまして、一方の方は力強く主張されたということじゃないかなと、私はそういうふうに見ております。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられたバランス・オブ・パワーですか、これはいずれ私、締めくくり総括のときに、いまちょっと用意している問題がありますので、その際にもっと政府の考え方をお尋ねしたいと思っておりますが、しかしいませっかくそういうお話が出ましたものですから、あえて申し上げたいわけですけれども、力のバランスというものはアメリカのみならず、アメリカが考えればソビエトも考えるであろう、じゃその力のバランスというものはこれから際限なく行った場合に一体どうなるんであろうか、これは軍事専門家ならずとも、われわれ素人が考えましても、ふとそういう危惧を抱くということはこれは常識であろうと思います。崩れないという保証はありませんし、じゃ崩さないとするならば、これは際限なく、とめどもなく、恐らく世界の資源が枯渇するまでそういったことが続けられていくであろうかというようなことまで、突き詰めていきますとそういうことになりはしまいか。そういったところに、アメリカも基本的にはどうしてもそれを貫いていくんだ、そうであっても貫いていくんだ、そういう考え方なのか、逆に、多少のバランスが崩れる、崩れてはいるけれどもお互い話し合いによってその突破口を開こうという努力の方が優位に立っているのか、この辺がこれからの平和を探る上から非常に重要な私は要素になるのではないだろうかというふうに実は思えてならないわけですね。  日本政府としても、当然安保条約を基軸にした日米親善をこれからも推進し、多少なりとも世界平和のために貢献するというのが一貫したいままでの外交政策の指針であったわけです。それを願うならば、当然のことながらその危惧というものをどこかで除去しなければならない、アクションを起こしていくことも私は必要であろう。ただいたずらに力のバランスだけを考えて、際限なくこれから行くことが理想なのかどうなのかという問題、これは必ず突き当たる、あるいはいま直ちに突き当たらなくても近い将来必ず突き当たる問題であろう。そのときには取り返しのつかない私は結果になりはしまいかということを恐れるから、あえてその点についても日本として米国政府に対してこうあらねばならないということを忠告するにやぶさかではございませんでしょうし、またそれを解消する方途としての考え方があれば、それを提言することも私は大きな意味があるのではないだろうか。いまアメリカがそういうような発想の中に立たされているとするならば、やはり危険な道をこれからますますエスカレートして歩まざるを得ないのではないかという、そういう感じがしてなりませんけれども、やはり伊東さんとしてはそれを米国の考えていることがもっともであるというふうにお受けとめになるのか、それともそうあってはいけない、どこかで歯どめをかけなければならぬというふうにお考えになるのか、その点はいかがでございましょうか。
  96. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) バランス論の話が出ましたが、これはバランスといっても低レベルのバランスもあるかもしらぬわけでございまして、いまそれがどのレベルのバランスということは私は明確にお答えするような能力もありませんけれども、低レベルのバランスということもあり得ると思うわけでございます。  私はヘイグさんと会ったときに話しましたのは、軍備管理の話もしたわけでございます。SALTの交渉の話もし達した。それから軍縮の話もしたわけでございます。それは、両方とも軍備管理、軍縮ということでございますから、方向としてはどこまでも軍備をやるということじゃなくて、管理をし、軍縮という考え方でいろいろ話したのでございますが、ヘイグさんは、SALTの問題もどういう形の内容にするかという、まだ国民的な合意が得られてないと、これからSALTの内容についてもアメリカとしては考えなけりゃならぬ問題がある、それから軍縮の問題も、軍縮、軍縮といって軍縮だけが目的ということじゃなくて、やはりそれは広く安全保障という立場の、広い立場の中でどういうふうに軍縮をやっていくかということを考えていかなければならぬという考えを述べ、ソ連との間については、ソ連が本当に誠実な行動をとるのかどうかということを見て、もうしばらく慎重に出方を実はアメリカとしては見ているんだということの話、意見交換があったわけでございますので、アメリカといえども、やっぱりSALTの問題とか軍縮の問題というものは頭に置いて一つの世界の戦略といいますか、外交政策といいますか、そういうものを私は当然考えているというふうに思うわけでございます。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょうはしなくも軍備管理、軍縮の問題についても話し合われたということをいまお伺いいたしまして、また一つの大きな課題を与えられたなあという気がしてなりません、これは後日に譲りたいと思いますが。  先ほどお触れになりましたレーガン大統領にお会いしたときのお話だったか、ワインバーガーとのお話か、ヘイグかどうかわかりませんが、アメリカが軍事的優位に立たなければ交渉しても意味がないというような−−私のちょっと聞き違いであったかどうか、これは私がたしか過日の質問の際にレーガン大統領がかねてからの自分の抱負の一環としてSALTIIというのはやっても要するに意味がない、なぜ意味がないかと言うと、それはアメリカが軍事的優位に立たないからである、立ったときに初めてその話というものは進むであろう、まあ、そういうことを私申し上げたと思うんです。レーガンさんとしては恐らく年来のかたい決意のもとにそういうような見方をしている。いまちょうどそういうようなことにお触れになった御答弁がございましたので、前回の御答弁のときに。そうして考えてみた場合に、やはり一抹の——これから対ソ路線についても対日路線についても対欧路線についてもいかがなものであろうか、恐らく対ソ路線がある程度の修正を加えられたり変更があるということになりますと、言わずもがな対日、対中、対欧あるいは対中南米等々、いろんな変化が起こってきはしまいか、そこまで思い詰めて考える必要ございませんでしょうか。
  98. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 大統領と会談したときはそういうところまでの話は出ませんでした。国務長官でありましたか、国防長官でありましたか、とお話し合いのときに、いま渋谷さんのおっしゃったような話が出たことがございます。優位という言葉はちょっと私正確に覚えておりませんが、私はバランスじゃなかったかと思うんですが、そういうものがちゃんと保たれたときでないとなかなか話しても不毛の結果になるというようなことをどちらかの話のときに出たことがございます。そして、いまおっしゃった世界の、対ソの問題あるいは対中国問題、対アジア問題ということでいろいろお話が出ましたが、私どもが議論した中では、対ソのことはカーター政権当時よりもより強くバランスの問題が出たことはございますが、そのほかの地域につきましては特に前と大きな変化ということは感じませんで、国盟国とはよく協議をし、密接に連絡をしていくんだと、そして新しいパートナーシップを育てていくんだと、育成していくんだというような表現でございまして、そのほかの地域で、前の政権話し合いをしていて、特にそう大きな変化はないなという感じでございました。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題一応置いておきましょう。  次に、いろんな話し合いがなされた中で、自動車の問題もございましたでしょうし、ここでもう一遍私自身の問題意識を鮮明にするために、漁業問題についてもお話し合いになったということを集中審議の際おっしゃいましたね。農業は話は出なかったけれども、漁業問題。これは確かに二百海里問題もさることながら、入漁料の問題等々、いま日本が抱えている問題はソビエトの二百海里問題にまさるとも劣らない問題点があるはずだというふうに理解をしているわけであります。こういう点については、具体的な解決の方途としては何か話が進んだんでしょうか。どうなんでしょうか。
  100. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 漁業の話をしましたのはヘイグ国務長官とボールドリッジ商務長官、これは商務長官が担当なんでございます。お二人とお話し合いをしたわけでございます。特に担当のボールドリッジ商務長官とお話をしたときには、日本のサケ・マス漁業がべーリング海の、御承知のような百七十五度以西の問題でございますが、そのアメリカの二百海里の中でイシイルカというイルカの混獲がございまして、イルカについて特別に許可がないとサケ・マスもとれなくなるということがございますので、これは漁業者にとって大問題でございますので、イルカの混獲の許可というものはぜひ出してもらいたい、従来どおりに操業できるようにしてもらいたいということが一つと、もう一つはズワイガニ、これはおととしあたりまで一万五千トン、去年が半分の七千五百トン、ことしは割り当てがゼロになっているわけでございますので、このズワイガニをとるということも考えてほしいということを向こうに要請をしたのでございます。これはヘイグさんにも同じ要請をしました。ボールドリッジ商務長官ヘイグさんもズワイガニのことは、なかなかこれは一回決定してあるのでむずかしいのじゃなかろうかという意味のことを言っておりました。それからイシイルカにつきましては、これは何とか混獲の許可を出せるように、委員会その他があるけれども自分の方としても努力をするというような話がございました。ボールドリッジさんからは、日本でもっと水産物を買ってほしいというような要望があったというのが水産問題を話しました内容の全部でございまして、私はアメリカの水産物を一番買っているのは日本でございますので、日本は非常に市場としてアメリカの水産物の大きな市場であるのだし、そういう状態の中でズワイガニゼロとかイルカの混獲を認めないなんということは、これは余りに一方的じゃないかというふうなことで話し合いをしました。  ただ、先生のおっしゃった入漁料の問題は、これは持ち出さなかった、私の方から言ってありません。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 イルカの混獲の問題もそうでしょうし、いま、とりわけ北海道漁民あたりが困っているのは、入漁料の問題で大変困っているということが言われておりますので、とにかく年々入漁料が高くなっている、採算が全然合わない、そんなところまで話し合われたのかなと。きょう水産庁来ておりませんから、あえてこの問題をこれ以上申し上げたくはございません。しかし、将来のやはり課題として漁業問題は捨てておけない。日本が買う量が多いからということだけじゃなくて、日本の漁民が安心して操業ができる、そして希望を持って操業ができるという道をやはり開くことが私は一つの方途であろうというふうに思うから、いまあえてこの問題についての話し合いの状況をお尋ねしたわけでございます。  まだほかにもと思っているうちに、もう時間があと残り少なくなりました。枝村さんお待たせいたしました。済みません。  最近、米ソのみならず、武器の生産というものは、そしてその生産に絡む、昔ならば死の商人ということになるんでしょうけれども、もうこれは世界的な規模に広がっているんですね。とりわけブラジル、イスラエル、最近ではアルゼンチン等々、いわゆる中進国と言われる国々がゲリラ戦用等々を一つの目標としたそういう武器の生産あるいは輸出をやっている。また、それぞれの国がそれをバックアップしているというようなところもあるようでございます。あるいは秘密の兵器工場というものもあるのかどうなのかは私はつまびらかではございませんけれども、前々から第三世界におけるそうしたことが外貨獲得の一環として、これは必要悪と言った方がいいのか、その表現は当たらないにいたしましても、もう著しい生産の上昇がいま考えられている。一方においては米ソが競争している、一方においては第三世界、一体世界どうなっちゃうんだろうなという、こういうような、何も核兵器のみならず、通常兵器においてもそういうようないま状況であるということならば、大変憂慮にたえない。大体また武器の輸出というのは中東だとか、それから中南米あたりでも、とかく革命が起こるような、また起こる要素を持っている国柄にどんどん輸出をされている。アフリカあたりも例外ではないというような状況。恐らく国連あたりでもこれが大きな一つの国際問題として何らかの解決の方途を考えているのであろうと思うけれども日本としてやはり平和を志向する立場に立つならば、当然のことながら、国際秩序のルールを確立する上からも、こうした問題にやっぱり何らかの抑制を加えていくような話し合いというものが必要ではあるまいかというふうに思えてなりません。  そこで、一昨日でございますか、ある新聞に掲載された、ブラジル内における——私もあっと驚いちゃったんですがね、もう、いまでは通常兵器の生産においては世界第七位だという。驚くべきバイタリティーといいましょうか、があるようでございます。その辺はどのような分析と、あるいは経過があったか。あと持ち時間が五分しかございませんので、簡潔で結構でございます、残余の中身についてはまた、まだ時間があしたかあさってございますから、十分またお尋ねいたしますので。
  102. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) 御指摘のとおり、ブラジルで最近、武器の生産というものはかなりの伸びを示しておる、そのとおりでございまして、艦船でありますとか、戦車、装甲車、航空機、あるいはミサイル、小火器は申すに及ばず、かなり大規模な産業に成長してきておる、事実でございます。生産の規模が年産五十億ドルぐらい、GDPの三%ぐらいにも及ぼうかということでございまして、そうなりますと、私どもといたしましてもやはりブラジル経済生活あるいは対外関係にもそれなりの影響を及ぼすわけでございますから、完全に掌握しているというほどではございませんけれども、一応概括的な情報はつかんでおりますし、今後とも関心を持っていきたいと思っております。  輸出の方に関しましては七九年の数字、もうこれはいろいろの公開資料に出ておりますとおり、三億ドルほどということでございます。御承知のとおり、新聞にも出ておりましたが、カスカベルという小型のタンクが非常に中近東あたりで評判がよろしいようでございますし、輸出の約七〇%が大体そういう装甲車だというふうに私ども承知しております。ことし現在の数字、必ずしもはっきり持っておりませんけれども、私ども大体推測でございますが、昨年中は一昨年の三億ドルが十億ドルぐらいに伸びたのじゃなかろうかというふうに推測いたしております。最初に申し上げましたように、やはりブラジルの対外関係経済状況にそれなりの影響を持ってくるように思いますので、私どももそういう観点から今後とも見てまいりたいというふうに思っております。
  103. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あと二分でございますので、村田さんにも実はイスラエルの状況についてお尋ねをしたかったんですけれども、きょうは伏せておきます。申しわけありません、せっかくお越しいただきましたが。  さて、そこで伊東さんね、いまちらっとお答えがございました、恐らくきょうは賀陽さんにもその点についてお伺いしたがったんですよ。国連あたりで一体どういう対応の仕方をしているのか。いまそれを私申し上げてお答えをいただく時間がございません。ただし、いまそういう趨勢が世界の趨勢として、そういう方向へ地響きを立ててと言っても言い過ぎではないくらいの勢いでもって進んでいる。この情勢をどういうふうにごらんになっているか。このまま放置しておいては私はいけないと思うんです。したがって、日本政府としてやり得る方途、手段があるとするならば、何が考えられるであろうか。それは簡単でいいです、足りないところはまた後日伺いますから。
  104. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 本件は非常に国連でもむずかしい問題になっておりまして、日本は御承知のように、武器輸出原則でもうやらないということでございまして、軍縮特別総会で園田大臣のときに無原則な通常兵器の国際移転は抑制すべきじゃないかということを言われたのでございますが、非同盟、特に非同明の第三世界といいますか、諸国がなかなか国の安全保障ということを頭に置いて積極的じゃないということで、その決議もうまく通っていないのでございますが、しかし、国連の中でこの問題を検討していこうということになっておりますので、日本としましてはやっぱり国連でこの問題を大きく取り上げて、軍縮の特別総会とかそういうところで大きく取り上げていくということが、私は一番いい、適切な方法でなかろうかというふうに考えております。
  105. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 終わります。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 大臣アメリカを訪問されていろいろ会談をなさってきた内容について私もお尋ねしたいのですが、アメリカ側としては日米首脳会談に向けて両国間での国際情勢の基本的な認識の一致ということを非常に重視されておったと、大臣自身も、国際情勢についての認識の一致を共有するという趣旨のことをスピーチでも述べられておりますし、こういう点で、いままで帰ってみえられてから各種の発言の中で、どういう点での認識の一致があったかということはもう何回かお述べになっているし、またどういう点で認識が一致しなかったかという点についても二点ほどお述べになっているわけですね。  私は、そこでお尋ねしたいのは、国際情勢の基本的な問題での認識の一致の点と、それから日米間でそれに基づく大筋の協力上の問題で残されている問題、つまり日米首脳会談に向けてどういう問題がまだ残されていると大臣はお考えになるのか。一致した問題、不一致の問題はもういろいろ何回もお述べになっているので、首脳会談に向けて残されている問題、これ基本的な問題で残されている問題、これをお尋ねしたいんですが、いかがでしょうか。
  107. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私行きまして国際情勢の意見交換をしたのでございますが、要するに八〇年代が非常に国際緊張のある時代だということの原因が、一つは経済問題から来ている、石油等の価格等から来ております。エネルギー問題から来ているインフレの問題とか、失業の問題とか、景気の後退という経済的な不安が一つあるということと、もう一つは、ソ連の軍備増強、またソ連の第三国への軍事介入というようなことで方々の地域で国際緊張が出ていると、こういうことが一つ政治面あるいは軍事面からの緊張、一つは経済面の緊張だということは、これは情勢判断で一致している点でございます。  それで、日本は国際平和を、安全を求める、そこに初めて日本の平和があるんですから、日本のその中で西側の一員としての役割りを果たしていこうというようなことは、これは認識の一致した点でございまして、私はそういう大きな点はもうアメリカ日本の間では意見は一致していると、こういうふうに見るわけでございまして、あとそれに対するにはどういうふうにして対処するかという具体的な問題になってまいりますと、日本防衛の問題でございますとか、あるいは中東関係に対してどういうふうに中東の和平を考えるかとか、そういう具体的な問題で、あるいはもう詳細までは話し合いは何も詰めてないわけでございますので、そういうようなことをめぐっていろいろ首脳会談でも防衛の問題も出ましょうし、あるいは東南アジア、あるいは中国の問題とか、中東の問題とか、いろいろそういう問題についてのお互いの認識を述べ合うということが首脳会談の大きな目的であり、また経済問題についても話をするということじゃないかと私は思っております。大きな違いというものはないと、そういうふうに見ております。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 情勢の認識での基本的な点では、いま述べられた点ということは繰り返しお聞きしているわけですが、先般の参議院の予算委員会の集中審議の中で、大臣自身がもう基本的な方針といいますか、基本的な枠組みというんですが、こういう点がすべてぴしゃりと決まって、あとは具体問題だけが残されているということではないということを述べられているわけですね。ですから、大きな方針上の問題、あるいは基本的な枠組みという表現ですが、これは質問者がそういう質問の仕方をしたのかもしれませんが、その点でもまだ問題が残されておるというように受け取ったんですが、これは違うんですか。
  109. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 予算委員会で問題がありましたのは、これは防衛についてこの質問があったんです。そして、基本的な枠組みを何かつくるそうだというような御質問があったのでございますが、そういうことは何も相談はしておりませんよと、防衛問題で出ましたのは、前の政権時代のように何%とかそういうものが両国の間で争いになるとか、あるいは具体的に何かを押しつけるというようなことはしない、防衛の基本的な方針の話し合いを十分する、そうして方針が決まれば、そのもとでどういう具体的なことをするかということは、それはそれぞれの国が決めるべきことなんで、という話をこの間予算委員会の中ではしたわけでございます。基本的枠組みとかそういう言葉は、一回も実は出なかったんです。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 防衛に関する基本的な方針という表現をいま大臣お使いになったわけですが、それならば、いままで再三問題になりました西太平洋地域における共同防衛という課題は、これは残された問題だと、首脳会談に向けてあるいは今後の日米の間において残された問題だというふうに認識してよろしいでしょうか。
  111. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 首脳会談で、私はこれから首脳会談ですから、どういう話し合いになるかはこれからの問題でございますが、そんな具体的な問題に立ち入ることは私ないと思って見ています。ワインバーガー国防長官と私が話し合いをしましたときに、いろいろ具体的な問題はあるでしょうと、そういう問題は、中業の問題でございますとか、いろいろ事務レベルの会議でもありましょうし、あるいは大村防衛長官とワインバーガーさんがお会いになるときにいろいろ話し合いが出ましょうということを、私は具体的な問題はそういうところでよく御相談ください、こういうことを言ったわけでございまして、具体的な問題がどういうことかというようなことはまだ私は頭に置いて言ったわけじゃない。首脳がお会いになるときもそういう具体的な話というのは、私は意見が違うとかなんとかということでは出ないと思っております。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 防衛庁にお尋ねしますが、日本防衛庁としてはこの西太平洋地域の防衛という問題については、これは首脳会談なんかと一切関係なしですよ、防衛庁としては西太平洋地域の防衛というのはどういうふうにお考えになっていますか。
  113. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) お答えいたします。  西太平洋という言葉でございますが、これは実は具体的意味が必ずしも明確ではございません。私ども防衛庁では、従来から西太平洋ないし西太平洋地域という言葉を余り用いてはいないわけでございます。ですから、いま御質問の中にもございました西太平洋という言葉あるいは概念が、たとえば単純に太平洋の西半分というような広い範囲のことを意味しておりまして、またそこにおきますいま防衛という言葉がいわゆる制海権、シーコントロールといいますか、これを確立するとか、あるいは全般的かつ常続的な海上軍事力のプレゼンスというようなものを樹立するんだというような意味であれば、そういう広い、広大な海域においてそんなことをするということは海上自衛隊にとりまして困難というよりも不可能に近いことでもございますし、わが国防衛のために、防衛としましても必ずしも必要ではないと思っております。しかし、いわゆる西太平洋という言葉が、そういう太平洋の西半分というような広い意味ではない、あるいはそれに近いような広い概念ではなく、単に太平洋の西の方の端と、すなわちわが国が位置しておりますわが国の周辺海域であるということでありまして、そしてそこにおける防衛と言いますのがわが国の沿岸地域あるいは重要な港湾、海峡の防備でありますとか、あるいはわが国の周辺海域におきますわが国の海上交通の保護というものを意味するものであれば、これはわが国が御承知のように島国でございます、それからわが国の生存に必要な物資の非常に多くの部分を海外からの供給に依存しているわけでございますから、このわが国防衛のためにわが国の周辺海域におきます海上交通路の安全を確保するということはわが国にとってどうしても必要なことであると考えております。そして防衛庁といたしましては、いま西太平洋という言葉を言われます場合には、当然従来から考えておりましたわが国周辺海域のことであると理解いたしまして、海上自衛隊としましては従来からここにおきます海上交通の安全確保を目的として逐年防衛整備を続けてきているわけでございます。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 課長ね、西太平洋というのはあんまり使ってないと言うけど、私はこの間、先日のここの参議院の安保特の委員会で外務大臣防衛長官とがお二人並んでいる席上で、西太平洋に関する防衛の問題についてということで長官が西太平洋という言葉を二回使われているんですよ。この西太平洋という、長官が使われた概念というのはグアム島以西、フィリピン以北という地域とほぼ一致するというふうに考えていいんですか。
  115. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) お答えいたします。  西太平洋というのは、まず余り使っていない……
  116. 立木洋

    ○立木洋君 短かく簡単でいいです。
  117. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) はい。  いまおっしゃったように、言葉で出ていることは承知しておりますが、これは先ほどお答えいたしましたように、わが国の、従来から国会でしばしば防衛長官あるいは防衛局長等が御答弁申し上げておりますように、わが国の周辺海域であると、このように理解しております。したがいまして、いまグアム島以西、フィリピン以北とおっしゃいましたが、グアム島と言いますと、たとえば東京からおよそ千三百海里ぐらいと思いますが、そういうことではないと、従来の、わが国からおおむね航路帯等を設定します場合に、約一千海里程度と申し上げておるわけでございますが、こういう意味のわが国の周辺海域のことであるというように理解しております。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 では、課長結構ですわ。また長官に改めて長官御自身のお考えを聞くことにいたしますけれども。  そこで大臣ね、大臣この間も、二月二十七日、ここで、長官が安保特で所信表明をなさったとき、大臣一緒におられたからお聞きになっておられるだろうと思いますが、ここではいま申し上げましたように、西太平洋の問題に関して最近見られるように、いわゆるアメリカの空母機動部隊が全くの空白を先ずるような事態が起こってきておるということを述べられて、「米軍のかかる展開」、これがいわゆる「西太平洋に常時三〜四隻、七〇年代後半に人ってもおおむね二隻を中心とする空母群が展開されていた」と、この米軍の空母群が三隻から四隻展開していた地域というのは日本の周辺だけじゃないんですよ、ここで言っている、まさに長官が言われているのは。そしてこの地域、つまり西太平洋のこの地域の安全保障を考えるに当たって、留意すべき新たな要素になっている、米軍のこの地域における質の向上は引き続いて行われているものの、米海軍力の低下という事態ですね、これについては、留意すべき新たな要素となっているということを長官自身が述べておられる。これは私は何もいまの段階でアメリカから要請されてからそういうふうに述べているというような意味で言っているのではなくて、日本防衛長官がこの西太平洋という地域における防衛の問題を新しい留意しなければならない要素だと考えているということです。これはもう大臣自身総合安保の閣僚会議だとか、あるいは大臣アメリカに行かれる前に防衛長官ともいろいろお話し合いをしているわけですから、そういうことについては全く知らなかったということには私はならないだろうと。それから福田元総理が外相の前に訪米されてレーガンさんと話し合いをされたと、そのときにも西太平洋地域における共同防衛という問題が出されたというふうに報道されております。  それから、先日この問題に関する大臣御自身の説明の中では、防衛問題の中でワインバーガー国防長官がこの問題については説明をした、しかし誤解が生じたらいけないというので、そういう問題は非常にむずかしいんだということを大臣がお答えになった。むずかしいという表現は使っておりますけれども、それはできないというように明確に拒否したという形にはなっていないわけですね。それから二十三日に、このワインバーガーとの会談が終わった明くる日行われたのがこの大臣のスピーチですよ。この大臣のスピーチの中で、もう時間がないからあれですが、文革をよく見てみますと、この日米安保体制の枠組みの中で所要の自衛力を整備し云々として、西太平洋地域におけるこうしたわが国の政策というのは安全に貢献をしておる、そしてさらに、自衛力の整備等々この問題に関しても今後日米両国の共同の努力により平和と安全の確保を図るという枠組みの中でやっていきたい、という趣旨のことをお述べになっている。だからこれは、アメリカから要請があったかどうかということは別問題としても、私はこの西太平洋に関する防衛という問題に関しては当然大臣の念頭にはあったと、なかったと言えば私はうそになると思う。なかったならばこういう発言をするはずが私はないと思うんです、防衛長官も留意すべき新しい要素として西太平洋の防衛の問題を考えているんですから。そのことが一つあったかどうかということが第一点お尋ねしたいのと、それからもう一つの問題に関しては、この西太平洋における今度は日本防衛という問題だけではなくて、つまりアメリカ側との共同防衛あるいは海域分担ですね。この西太平洋における共同防衛あるいは海域分担、これは私は憲法上許されるべきことではないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。この二点お尋ねしたいんです。
  119. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そこで、西太平洋という言葉、私スピーチで使ったことはたしかでございます。ただこれはいまお話がありましたように、太平洋の半分を西としてそれ全部なんて考えたわけでは全然ないんで、日本の周辺と言いますか、そういうところ、太平洋の西の部分ということを頭に置いてそれは言ったのでございまして、防衛長官がどう言われたか、正確な言葉は私は覚えておりませんが、アメリカとの話し合いでもいま言われたグアム島以西、フィリピン以北ということの説明があったことはたしかでございますが、それを西太平洋と言ってそこを日本防衛してくれとか、そういう話はこれは全然なかったんです。そういうことではなくて、ずっとペルシャ湾からの説明の過程に出てきたことであって、一般的にそういう防衛アメリカがやっているんだから、日本経済力がついてきたんだからひとつ自分防衛力の強化には努力してもらいたい、こういう一般的な話があったのでございまして、そこで使いました西太平洋というのは機動部隊がいて云々の西太平洋という意味で私はこの場合は考えてはおりません。  それからもう一つは海域分担、共同防衛の問題でございますが、海域分担というのはこれは防衛庁がお答えになればいいことでございますが、ここはアメリカの海域、これは日本の海域なんというて、そういうことでは私はないと思うのでございます。そこでもそんなことを考えたわけでは毛頭ないわけでございます。そして、共同防衛というお話が出ましたが、これは日米安保で日本が五条で攻撃を受けた場合には当然日本の本土周辺を共同で対処するということ、これは安保条約にはっきり五条のこと書いてあるわけでございまして、私は、そういう意味でそれは安保条約の当然の帰結だと思うわけでございます。ただそれは西太平洋とかそういうことではないので、これは本土並びに周辺海域ということを頭に置いてそういうことをもし言うとすれば私は言えるんだろうと思いますが、そのスピーチではそういうことを、広い意味の西太平洋なんというのを頭に置いて言ったことでないのだけは確かでございます。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一問だけ。  それで正確を期しておきたいのですが、海域分担という点については、坂田防衛長官の時代に、これは憲法上の制約からそういうことはできないということを明確に述べられているわけです、海域分担ということについては。それで、きのうの衆議院で問題になった点で、憲法上の制約ではなくて、いわゆる防衛大綱の枠をはみ出るからできないのだというのは、いわゆる海域分担の意味なのかどうなのか。だから、海域分担ということについては、憲法上の制約でできないと、集団自衛の関係から、というふうにいまでもお考えになっているのかどうなのか、その点だけ最後にはっきりさしていただきたい。
  121. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) きのう衆議院で質問がありまして申しましたのは、個別自衛権の範囲の問題で、個別自衛権は、たとえば何キロまで、何百キロまでは個別自衛権で、それから少し距離を延ばせば個別自衛権でないとか、そういうことでは私はないと思う、自衛権というものは法律上は許された範囲はもっとあってもしかるべしだ、ただ日本防衛力の整備ということから考えれば、これは日本防衛力の整備の目標は五十一年の防衛計画大綱で決めてあるわけでございますから、その範囲内でこれはやっていくというのが日本政府の政策でございます。こういうことを言ったわけでございまして、個別自衛権ということになると、これはまあ法律論で法制局がやればいいわけでございますが、もっと概念的には個別自衛権は距離とかなんかには——百キロまでは個別自衛権だけど、百一キロになれば個別自衛権でないとか、そういうことでは私はないと、こういうことを言ったわけです。
  122. 木島則夫

    ○木島則夫君 伊東外務大臣の訪米御苦労さまでございました。  まあ向こう首脳とのお話を終わってお帰りになった時点で、こういったレーガン大統領狙撃事件が起こったということで大変外務大臣にとってはショックであったと思いますけれど、これからの日米会談そのほかを含めた政治日程上いろんな制約が出てくるであろうということもよくわかるわけでありますけれど、事件発生の直後でありますからそういった点をここではむしろ詰めないで、その後何か新しい情勢が入っているかどうか、まずそのことの御報告を受けたいと思います。
  123. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) きょうの午前中に当委員会で御報告している以上に、特に私たちとして新しい状況をまだ把握しておりません。十時半ぐらいの事態で先方の記者会見がありまして、大統領状態は安定しているというようなことがございまして、その前に無事に手術を終わってリカバリールームに入っていると、それで、大統領意識は非常に明確であるという程度でございまして、その後特に格段の新しい情報はまだ入っておりません。
  124. 木島則夫

    ○木島則夫君 先週土曜日の参議院予算委員会では、ワインバーガー国防長官との会談で防衛計画の大綱の見直しとか改定とかの話は出なかったと答弁をしておりますけれど、帰国後の記者会見で、ワインバーガー国防長官が、大綱が制定されたときに比べて、その後国際情勢が変わってきているのではないかと発表したことを紹介された上、これは大綱の見直しを求めた発言とは受けとめていないと述べておいでになります。しかし、自然に受けとめれば、大綱の見直しの必要を示唆したものと受け取るのが自然ではないだろうかと私は思うわけでございます。  さらに、ワインバーガー国務長官がグアム以西、フィリピン以北の海域の防衛分担を求めたのかどうかをめぐってのこれまた予算委員会での外相の発言は、一般的な防衛努力についての期待表明であって、この海域を分担してほしいという言い方ではなかったけれど、黙っていては誤解を受けるので、そういうことはできないんだとはっきり言っておいたと、こういうふうに答弁をされているわけでございます。で、この外相答弁は、はしなくもアメリカの国防長官からそういった要請があったことを明らかにしたものではないかというふうに受けとめております。なぜこういう要請をいま直ちに日本が受けられないかということについては、国内のいろんな制約もあって当然のことであろうと思いますけれど、私が伺いたいことは、わが国が西側の一員としての責任を果たすという立場を表明する限り、この種のアメリカ側からの要請は今後も後を絶たないであろうと思いますね。一体西側の一員として責任を果たす立場と、憲法の枠の中で専守防衛に徹する立場とは両立し得るのであるかということ。  もうちょっと具体的に申し上げたい。昨年五月の大平、カーター会談で、日本政府内にある計画という表現ではあったけれど、当然中期業務見積もりの一年繰り上げ達成を要請してきています。これにこたえる形で防衛費の九・七%の増枠が議論をされた。結果的には七・六%に落ちついた。恐らくアメリカ側としては大きな不満があったであろうと思います。こういった問題が出てくるので、秋の臨時国会においてこの不定分を補正をすることがあるのではないかという、こういう論理上の表現がある種の新聞に載ってくるという、これもまた私は論理上こういうことが言われるのは当然であろうと思います。つまり何というか、場当たり的と言ってはおしかりを受けるかもしれませんけれど、その場をつくろいながら先に問題を延ばし延ばししながらアメリカの要求をこなしてくると申しますか、こういう態度が果たして旗幟鮮明となったレーガン政権下において通じるんだろうかということであります。今度アメリカに行かれまして抽象論に終始したとおっしゃっているけれど、私はむしろ抽象論に終始したということは、問題の重大さというものを逆に認めるべきではなかったか。つまり、いままではアメリカからいろんな要請があったと、日本側はこれにこたえて九・七を出したり、結果的には七・六になってしまったと。もうあなた方の言い分は信用できないよと、こう言ったか言わないかは別としまして、今度はあなた方日本が具体的な何ができるかということをお出しをする番じゃないだろうかと、こういうことが言外に入っていたのじゃないだろうか。伊東外務大臣アメリカ首脳とお話しになってこういうことはお感じにならなかったかどうか、その辺の感触も含めてひとつ御報告をいただきたい。
  125. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) たくさんございましたので順序が違うかもしれませんが、グアム以西、フィリピン以北という言葉が出たことは確かでございます。それにもっと前に続いているのでございますが、ペルシャ湾とかインド洋とか、西南アジア、東南アジアとか、最後は北西太平洋ということでそういう名前が出てきたのでございますが、そういうところで、アメリカが従来よりは追加的な防衛をやっているところもあり、従来からもやっているところもあるが、そういうところヘソ連のいろいろ軍事上の影響力が出てきておるということもあり、アメリカとしてそれに対抗して防衛をするということをやっているのであるから、それで日本としてももっと防衛力の強化、そういうことに努力してもらいたい、こういう一般論があったわけでございます。そのときに私は、グアム以西、フィリピン以北という言葉が出ましたので、これはそういうことが出たということで、何かそこの肩がわりを日本がやってくれというふうにとられれば、これは非常にお互いに誤解であるということが後でわかってはこれはつまらぬことになりますので、私は即座に日本防衛というのは防衛計画大綱に決めてあるので、先ほど話がありました航路帯千海里、周辺数百海里ということで防衛庁はやっておるのでございますから、その防衛力の整備の目標はそういうことになっているので、いま言われたようなことはむずかしいんですよ、そういうことはできないんですよという意味のことを私は即座に言ったわけでございまして、向こうから具体的に穴埋め論とかそういうことは全然出ませんでした。  それから、防衛計画大綱はこれは私の方が実は言ったわけでございまして、そういうものに基づいてやっているんだということの説明をしたわけでございますが、向こう側からは防衛計画大綱の見直しとか改定とかそういう言葉は一回も出なかったのでございまして、向こうから出ましたのは、国際情勢というものはその後も非常に緊迫した状態になっているんですというような抽象的な説明でございまして、防衛計画大綱の見直しとかそういうことは一言もなかったということでございます。  それから、七・六、九・七の問題でございますが、これは私も新聞を見て驚いたのでございますが、そういうことは、いま本予算をお願いしている最中に補正予算のことを口にするということもおかしいことでございまして、ましてや防衛費という非常に重要な問題につきまして七・六を九・七までに補正予算でということは政府の中では全然私は考えてない、一言も聞いたことのない話でございます。それから、抽象論に終始したということが非常に大切なことだ、現に大切なことじゃないかというお話でございますが、考えようによりましては、防衛問題というのは自動車問題よりも非常に重要な問題だと私は自分で考えておるわけでございまして、もちろんそういう中で抽象的な一般的な話があったわけでございます。その話の内容には、もうその押しつけ、こういうことをやってほしいとか、そういう具体的なことはレーガン政権としては余り言いたくない、むしろ方針を決めてその中で何をするかという具体的なことは各国が考えるということが必要でなかろうかという話で、各国にその具体的なこと、押しつけがましいような期待表明はしないということが話の中に出ていたわけでございまして、私はそれは自主的に各国が防衛というものは考えていくんだと、日本も従来言っていることでございますし、まさにそのことと私は考え方は一緒だなという感じを持ったのでございます。  しかし、抽象的であった、一般的であったということだけで防衛の問題はぐっと力が抜けたというようなことじゃなくて、やはり防衛の問題というのは基本の問題として日本は自主的に、法律に許された範囲内の問題として自主的にこれは取り組んでいく、努力していくという必要があるということは、西側の一員として私はやっぱり責任を持ってやるべきだということを痛感はしております。
  126. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がない私の持ち分の中で、こういうたとえ話をここで紹介をするのは大変私の立場として不利なんですけれど、レーガン大統領の顧問をしているある将軍が、現在の国際情勢を野球チームにたとえているわけですね。野球の試合にたとえているわけですよ。その力の落ちた現在のアメリカでは、ソ連という強打者を向こうに回して、アメリカ人だけで九人の野球チームを編成するには余りにもアメリカの力が低下をし過ぎたと、したがって、アメリカはバッテリーは譲れないけれど内野はNATOに任せたい、で、当面アメリカと中国が組んでソビエトに対決をしているという、こういう利害関係の中では外野は中国でいいだろうと、こう言っているんです。そして、さて日本は一体どこを守るかということで、ショートストップであると、こう言っています。ところがその将軍が言っているんですよ。ところが、バッターボックスに入った途端に日本という選手が、憲法の制約もこれあり、国民感情からして私は試合はやれないと言ってグラブを投げ捨てて太った体をグラウンドの上に横たえて寝そべってしまった、一同唖然としたと、こういうたとえ話であります。  私は笑えないと思う。だからいますぐGNP比三%とかどうのこうのという議論にそれをつなげるということでは決してないんです。つまり向こう側に立ったときに、果たして日本のいま言っている西側の一員としての協力云々ということを口でばかりは言っているけれど、実際にあなた方が果たしているかどうかということへの痛烈なるたとえ話であろうと思うんですね。なお、この将軍は、そうかといって、日本が軍事大国になって、おれにピッチャーをやらせろというのも困る、しかし、あなたの守備範囲に来た球だけはとってほしいというのが結論のようであったと覚えております。  さてそこで外務大臣、せんだっての日米首脳会談で、数字とか細かいことは一々押しつけはいたしませんけれど、あなた方の自主的な範囲でやるべきことはやってほしいというお話がたしかあったと思いますけれど、そのときに外務大臣はどういうふうに日本の自主的な立場を表明されたか。ちょっと前置きが長くなって恐縮でありましたけれど、よければお話をしていただきたい。
  127. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 防衛の問題が出ましたときに一つ言いましたことは、日本は専守防衛、軍事大国にならぬと言っているのでございまして、ASEANも回りましてASEANの日本に対する感情、防衛力の強化問題等も話をしました。また軍事的な役割りというのは憲法に制約されている、それだけでなくて、これは日本経済とか経済協力とかあるいは文化とか技術とか、そういう面で協力をしていきますという話をいたしました。  いまの比喩は、議会に行きましたとき安保ただ乗り論が出たわけでございます。それと一脈通ずるお話じゃないかと、向こうの将軍の言うことでございますが、これに対しましては、私は防衛というものは本当に自主的にやっていかなきゃいかぬ、そして、やっと国民が防衛というものに対して認識を持ち始めた、国会でも安保委員会というものができるということで、だんだんそういう意識は高まってきたんだが、日本防衛につきましてはもう法律の制約もあり、そして国防計画大綱というもので決められている、それを着実に実行していくというのが日本防衛に対する考え方なんだ、あとは経済問題とか技術問題とか、そういう面で協力をしていくんだ、というような話を私はしたわけでございまして、副大統領もはっきり日本の憲法は尊重するというようなことを言っておりましたし、ワインバーガーさんもヘイグさんも日本法律その他の制約があると、専守防衛だということはよく知っているということを必ず前置きのように向こうで言っているわけでございまして、やはりその範囲内で私は着実に防衛力の強化をしていくということが日本防衛に対する考え方だと思いますので、常にそういうことを向こうでも主張をしたわけでございます。
  128. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうしますと、カーター政権下で、日本に対して何遍か求められたその着実にして顕著なという、顕著なという言葉は今回は要請はございませんでしたか。それと同時にレーガンさんのこういう突発的な事故がありまして、果たして五月に首脳会談が行われるかどうかはこれは定かではないという前提に立ちながらも、やはりここでは相当私は重大な日米の意思決定が行われる、これは当然であろうと思います。それに向けての外務省、外務大臣の一つの姿勢——と申しますのは、では日本が果たして何ができるのかという具体的な問題に置きかえられたときに、私見としては、経済大国の責任をもっと徹底して行うと、たとえば政府開発援助の増額、難民の受け入れの問題、いろいろあるでしょう。世界の中では一体具体的に何をなすんだという基本的な姿勢をもう一度伺いながら、日米首脳会談に臨む日本側の決意というものも、やはりこの際伺っておきたいというふうに思うわけであります。これだけで予定の時間でありますから、簡明率直にひとつ答えていただきたい。
  129. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 上顕著なという言葉は一回も今度行ったときは出ませんでした。向こうで演説やなんかには出たということは知っておりますが、私に対しては顕著なという言葉は出ませんでした。それからこれにかわる言葉としては、一層の努力ということでありましたが、顕著なということは出なかったです。  それから日本役割りでございますが、いま木島さんおっしゃったように、日本としては軍事的には、憲法上も法令上も専守防衛というようなことで、個別的自衛権ということで、もうこれは決まっているわけでございますから、その範囲で着実に充実をしていくというのが日本のこれは軍事上の役割りでございまして、あとできますことは、やはり木島さんおっしゃったような経済協力でございますとか、あるいは技術協力でございますとか、そういうことで世界のために西側の一員としての役立ち、責任を果たしていくということだろうと私は思っているわけでございます。
  130. 木島則夫

    ○木島則夫君 そういった従来の日本の姿勢を貫くそのことが、経済問題への逆な形でのはね返り、悪い影響にはならないかどうかということも最後に一言伺っておきたいと思います。  これで私質問を終わります。
  131. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは自動車問題をやりますときに、具体的な例で申し上げますと、自動車問題を防衛問題とかそのほかの経済問題とはリンクといいますかリンケージといいますか、させないということで、経済問題としてやろうじゃないかと、レーガンさんもそれはそのとおりだということで実は話したわけでございまして、私はいまのように防衛問題がほかの方に悪い影響を与えるということのないようにするのがわれわれのやっぱり外交をやっている者の役目だと、こう思っております。
  132. 田英夫

    ○田英夫君 私は少し皆さんと違った問題を一、二取り上げたいと思いますが、まず第一は、今回の外務大臣の訪米で、朝鮮問題については、いろいろ予算委員会とかあるいは報道によると、ヘイグ国務長官とのお話の中で若干出ているということを伺ったわけでありますが、いわゆる防衛問題についてワインバーガー国防長官とのお話の中で、先ほどのペルシャ湾とか西太平洋とかいうような、アメリカはこういうふうに防衛努力をしているという話があったというそういう関連の中で、北朝鮮を含めたつまり朝鮮半島の問題については話が出たのかどうか、この点はいかがですか。
  133. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 朝鮮半島の平和の問題の話が出ましたのは、ヘイグさんとワインバーガーさんと両方のとき出ました。
  134. 田英夫

    ○田英夫君 ワインバーガー国防長官との関係では、どういう形で出ているわけですか。
  135. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ワインバーガーさんとの話では、この間の米韓の共同声明が出ていて、そしてアメリカが韓国に地上軍を継続して駐留させるということの決定があったことに関連して、朝鮮半島全部の平和の問題が出たわけでございます。
  136. 田英夫

    ○田英夫君 今度の一連の訪米でのお話で、これは外務大臣の印象でいいんですが、レーガン政権というのはカーター政権に比べて朝鮮問題について考え方が変わったのか変わらないのか。カーター政権のことはもう言わずもがなでおわかりのとおり、いわゆる人権外交的なにおいをかなり強く出して、当時の朴政権との間にはいささかすき間風が入ったような印象もあったわけでありますけれども、今回は全斗煥大統領世界じゅうのいわゆる元首と言われる人の中で一番先にレーガン・全斗煥会談をやったということもあるわけでありますが、その辺の御印象はいかがですか。
  137. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 印象として申し上げますと、やはり人権外交というのが占める席次が後ろの方にこう下がってきたという印象は受けます。ただ韓国問題については、カーター政権のときにも最後はやはり米軍の駐留を継続すると、それが抑止力になるんだということが駐留の継続を決定をしておりますので、今度もあとほとんどその点は変わりないわけでございますから、人権外交という色合いが少し後ろへ来たなという印象はありますが、基本的には変わってないのだというふうに思っております。
  138. 田英夫

    ○田英夫君 先日の予算委員会の集中審議で鈴木総理は、朝鮮半島は一つの朝鮮になることが望ましいと、当面は韓国との間に国交があり、北との間には文化その他の交流を深めていきたいというお答えがありました。私は全く同感なのでありますけれども、従来からカーター政権も含めてアメリカでは二つの朝鮮論というものが基盤にあるというふうに私は理解をしてきましたけれどもレーガン政権はその点についてきわめて明確な二つの朝鮮論に立っているのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  139. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点は私若干違うと思うんですが、米韓の共同声明の中でもたしか、全斗煥大統領が南北統一のための話し合いをする、両方首脳が自由に訪問して話し合いをするという声明を支持するということが、あれはたしか米韓の共同声明の中に入っていたはずでございます。ただ、支持はするがアメリカが直接また北と話し合いをするようなことはない、話し合いをするときは必ず三者集まってするというようなことが後ろについていたはずでございますが、しかしそういう声明は支持するということをレーガン政権が言っておりますから、レーガン政権も全斗煥大統領が南北統一を平和裏にやりたいということについては、私はやっぱり支持しておるというふうに見ております。
  140. 田英夫

    ○田英夫君 今回、来週から十日間ぐらい北朝鮮を訪問しようと私は思っているんですが、そういう中でいささか危惧いたしますのは、アメリカ側のレーガン政権の態度がまだ不明確であるにもかかわらず、北側はかなりレーガン政権に対しては、敵意と言えないまでも批判的な態度をすでに明らかにしているのではないかと思います。鈴木内閣には対しても、実は鈴木総理に対して最近の平壌放送はかなり激しい言葉と言ってもいいような言葉で批判をしていると思うのでありますが、こういう状態に対して、北朝鮮の態度というものを外務大臣はどういうふうにいま見ておられますか。
  141. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 北の態度がいまおっしゃったように鈴木内閣というものを批判しているということでございますが、これは恐らく鈴木内閣だけじゃなくて、いままでもずっと日韓というものは、これは本当の隣人であり、日韓関係の友好発展、この関係を維持発展させるということの態度そのものに対して私は北側が批判しているのだと思いますので、鈴木内閣だけでなくて、日本側がずっとそういう政策をとっていることについての私は批判だと思いまして、持に鈴木内閣だけについてというのじゃなくて、日本の歴代の内閣がそういう態度をとっているということに対するずっと継続した考え方じゃないでしょうかと思いますが。
  142. 田英夫

    ○田英夫君 まあ要は鈴木総理言われるとおり、日本としては北との間には交流を深めるということが当面は非常に重要なことだと思いますが、外務大臣の御見解を伺いたいんですが、とにかく朝鮮半島が日本、中国、この両隣人と南北朝鮮を含めてきわめて友好的な状態になるということが望ましいし、それは最終的には一つの朝鮮になったときにそれが実るという方向を目指すのが日本のとるべき態度だと私は思いますが、この点はいかがですか。
  143. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 朝鮮半島そのものについて言いますと、いま非常に緊張のあることは、これは私もそのまま認めますが、また米国の韓国駐在というものも抑止力になっているということで、バランスでございますが、その上に安定が保たれておるという状態でございますが、なるべく早く南と北が実質的な話し合いができる、たとえば郵便の交換とか、親捜しとか、そういうようなことができるような雰囲気になることを本当に私は心から願っておるし、また将来は、全斗煥大統領も金日成主席も言っている、平和的に何とか統一、朝鮮半島の民族、同じ民族、同じ文化、同じ言語、この民族が平和的に統一することが望ましいと両方が言っているわけでございます。日本も、私は心からそうなることを期待するわけでございます。なかなかむずかしいことでございますが、将来はそういうことになることが日本にとりましても、これは中国にとりましても、アジアにとって、もっと大きく言えば世界にとって最も好ましいことだと私は思います。
  144. 田英夫

    ○田英夫君 お互いによく理想はわかっているにもかかわらず——お互いにというのは伊東さんと私も含め、あるいは南北朝鮮指導者も含めてそういうことがあるにもかかわらず、実は現実はきわめて逆の方向に行っているのではないかという気がするんですね。全斗煥政権というものが異常な形の中で生まれてきた。このこと自体、まことに私は率直に言って不幸なことだと思いますが、にもかかわらず、伊東さんのお立場から全斗煥大統領の就任式においでになったということ。そして、その延長線上では日韓外相会議、さらには日韓定期閣僚会議というようなものが再開されるというふうに言われておりますが、私はそこにかなりの危惧を感じながら実は伺うわけでありますが、日韓外相会議というものは、四月は向こうが都合が悪いと言ってきたそうですが、これはどういうことになりますか。
  145. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外相会議は、私向こう大統領の就任式のとき行って、私が行ったんだから次はなるべく早い機会に韓国の盧外務大臣日本に来ていろいろ話し合いをする時間を持ちましょうやと言って招請をしたわけでございますが、選挙もあり、その後向こうの国会の関係もあり、四月はどうしても無理だ、恐らく六月の上旬じゃないかということの連絡が私がアメリカへ行く前にございまして、いまのところまだ日が決まりませんが、恐らく六月の前半にあるんじゃなかろうかと私は思っております。
  146. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、これが、いわゆる全斗煥政権が生まれた以後の最初の政府間の正式な接触になると考えていいわけですね。
  147. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 実は、私が向こうへ行きまして大統領の就任式に出たわけでございまして、そこで大統領とも話し、総理、副総理、外務大臣とも話したわけでございますから、まあ第一回目の接触ということになれば三月二日、三日かもしれません。しかし、時間がありませんでしたので、ゆっくり話をするというようなことになれば、これが最初かもしれません。
  148. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、いわゆる日韓閣僚会議も年内には開くという御予定ですか。
  149. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そのときに話しましたのは、二年ぐらいこれは途絶していたわけで、中断したわけでございますので、大体秋口には閣僚会議をやって、いろんな問題について話し合いをしましょうかということを言いましたので、いまの了解では大体九月じゃなかろうかと、こう思っております。
  150. 田英夫

    ○田英夫君 北とはいま政府が接触をなされない状態にあるわけですけれども、先ほど申しました最終的な理想へ近づいていくということの一つの問題として、今回国会議員の間に国際軍縮議員連盟をつくるということも今国会中には実る方向にあるわけでありますが、そうした問題の中で当然米ソの核軍縮ということは最大のテーマでありますが、きわめて身近なといいますか、われわれ日本に身近な問題として、朝鮮半島のことに関連をして考えれば、かねて金日成主席も提案をした南北の朝鮮の軍縮という問題、こうしたことを日韓の政府接触の中で話題にされるというお気持ちはありませんか。
  151. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外務大臣と会いましてどういう話をするかということは、まだ何にも決めてないわけでございます。  それで、この軍縮の問題でございますが、軍縮ということをやるにはやっぱり相互間の信頼関係というものが私は基礎であると思うわけでございまして、その問題の相互間の信頼ということを何としてもつくっていく。それには、全斗煥大統領首脳会談ということを呼びかけたわけでございますので、私はそういう信頼関係の基礎ができていくということをまずやっていくということが前提でなかろうかというふうに考えます。
  152. 田英夫

    ○田英夫君 まあ朝鮮とやや関係があるんですが、いま平壌にいるシアヌーク殿下と、先日キュー・サムファン——民主カンボジアのキュー・サムファン首相が会談をしたということが報ぜられております。この接触は当然新しいカンボジアの政治体制というものをつくろうという、中国をも含めた構想の一環と考えられるわけでありますけれども、ソン・サン氏を含めた新しいカンボジアの政治体制をつくるという動きに対して、政府としてはどういうふうにお考えになりますか。
  153. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日本としましては、それに積極的に手をかしてどうという、そういうことはないわけでございますから、見守っておるところでございますが、そういう話し合いができて、いままでのポル・ポト政権が国際的にいろんな過去にやりました政策、行為につきまして非難を浴びているということが一方ではございますので、それにかわるような、国際的な信頼も得られる、カンボジアの国民からもまた信頼を得られるというような政権話し合いでできるということであれば、またそれをASEANが支持していくということになりましょうから、ASEANのそういう態度には日本も支持を与える、支持をしていくというつもりでございます。
  154. 田英夫

    ○田英夫君 ということは、まあ介入をしたり支援をしたりするということはしないけれども、見守るけれども、この方向は好ましい方向だというふうに受け取っていいでしょうか。
  155. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういう国内からも歓迎され、国際的にも信頼がいままでよりもあるという政権であれば、私は歓迎をしていいと思います。
  156. 田英夫

    ○田英夫君 それともう一つ関連をして、カンボジア問題はやはり、先日の予算委員会でお尋ねしましたが、ベトナム軍の撤退ということが何といっても大前提になるわけで、そのために伊東外務大臣も国際会議を開くことを提唱され、ASEAN諸国も支持しているわけですが、ベトナムは容易にこれに出席をしてこないという現実がありますけれども、にもかかわらずこれを今後もいままでのような形で主張し続けられるのか、何らかの打開の道をすでにお考えなのか。この国際会議の問題はどういうふうにお考えですか。
  157. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまワルトハイム事務総長の指名した特使がASEANを回り、ベトナムも寄っているわけでございまして、私は、日本としてはやはり国連の事務総長のやる努力を支持していくというのが一番私はいい方法だろうと思っておりまして、近く日本にもその特使が立ち寄るというようなことを言われておるわけでございますから、よく相談をしてみようと思っております。
  158. 田英夫

    ○田英夫君 民主カンボジアのイエン・サリ副首相兼外相が、昨年の夏だったと思いますが、民主カンボジアの東京事務所を開設したいということを伊東外務大臣に申し入れておりますが、いまの状態でこの問題をどういうふうにお考えになっておりますか。
  159. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) そういう考え方が民主カンボジア側にあることは承知いたしております。しかし、正式に私どもにまだそういうアプローチはございません。
  160. 田英夫

    ○田英夫君 これは承認をしている国でありますから、PLOの東京事務所というのとは、また国でもあり、性格は当然違うのでありましょうが、開設するという正式の要求があった場合にはその方向に進むのか、その場合に、外交特権を持ったものになり得るのかどうかという点はいかがですか。
  161. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 御指摘のとおり、外交特権を持った外交使節になるものと考えております。
  162. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  163. 山田勇

    ○山田勇君 大臣にお尋ねいたします。  昨年末の五十六年度予算案編成のころ、外務省の中で、米国はソ連の軍備増強に困っているから、日本が米国に対して日米友好を根幹とする限り米国の軍事要請にこたえるべきだという積極論があり、これに対してマスコミの批判的な論調があったと記憶しているんですが、米国の信頼を得るために米国の意に沿う軍事増強が得策だと考えておりますか。外交本来の姿と申しますか、外交本来の使命というのは戦争によらず、武器に頼らず、国際関係において平和を築き上げることだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  164. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その場合、米国が日本にどういう具体的内容の期待をするかということをよく検討しなければわからぬわけでございますが、米側が言われた期待表明があれば日本が何でもするということじゃなくて、やはり防衛という問題につきましては、もちろん日米安保がございますから、よくいろいろ平生話し合うということが必要でございますが、やはりどういうふうに防衛努力をするかということについては日本の自主的な判断でやるのが妥当だというふうに私は考えておりまして、アメリカにも常に、自主的にこれは考えなければいかぬということを言ってあります。
  165. 山田勇

    ○山田勇君 先般の集中審議でもお尋ねをいたしましたが、日本の軍事力増強がアメリカの意に沿って推進された場合、ソ連や近隣諸国を刺激し、かえって緊張を高め、軍拡競争の火に油を注ぐという結果になり、結局はアメリカにとっても高くつくように私は思えてならないのですが、インドネシアのモフタル外相は三月二十一日、東南アジア諸国連合という会で、アジア・太平洋地域の防衛問題に関し、分担増大に向けて積極的な役割りを果たそうとする日本のいかなる試みにも反対をするだろうと言明をし、ASEAN五ヵ国、タイ、ビルマ、フィリピン、マレー、インドネシアは、第二次大戦で日本が行ったことを決して忘れていないと指摘したとジャカルタ発のDPA時事が伝えておりますが、鈴木総理が一月に親善訪問したASEAN諸国ですが、外務省としてはこういうインドネシア外相の見解についてどのような御理解を持っておられますか。
  166. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) つい最近もモフタルさんに会ったことがあるんですが、私にはそういう話は一切しませんでしたが、一月に鈴木総理のお供をして東南アジアへ回ったときに、インドネシアで青年と私は座談会をやりましたときに、日本防衛というものにつきまして、過去の忌まわしい思い出があるんだということで話がございました。まあ危惧の念を持っておると言ったらいいのかもしれませんが、そういう話がインドネシアであったことは確かでございます。逆にシンガポールはもっと防衛努力をしろ、こういうようなことでございましたが、国によって若干色合いは違っておりました。それで、東南アジアの諸国がやはり過去のことを忘れないという、そういう感情的な問題が残っているということは私もわかります。  アメリカへ今度は行きまして防衛の話をしましたときに、東南アジアを回ったときにそういう印象を持っているという国もあったということを私は言いまして、日本防衛というのはやはり日本が本当に専守防衛で、それを憲法の許される範囲内で自主的にやっていくということがやはり日本としては一番妥当だと思う、そして西側の一員としてまたやれることは経済協力でございます、そういうことによって役に立っていくということが日本の役目でなかろうか、というようなことを私はアメリカにも主張したのでございます。
  167. 山田勇

    ○山田勇君 日米間の自動車を中心にした経済摩擦の成り行きは対EC問題にも影響すると思いますが、貿易量の増大とともに対ECの輸出と輸入のバランスが崩れ、対ECの黒字幅が大幅に拡大をしてきております。この貿易不均衡にEC側は懸念を表明していますが、政治問題化したときは政府としては業界に対して譲歩、自粛というカタをとるんでしょうか、どうですか。
  168. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ECは、いま山田さんおっしゃるように、自動車の問題とか工作機械の問題、テレビの問題、こう非常に日本から輸出がふえたものを取り上げていることのみならず、貿易全般について赤字だ、日本はECに対して非常に輸出超過だということで、日本に対していろいろ不満といいますか、いろんな意見があることはおっしゃるとおりでございます。それで、日本自由貿易なんだ、自由貿易なんでECももっと努力すべきじゃないかというようなことを言っているのでございますが、ECとしていろいろな問題があることは承知しております。  しかし、ECといっても中にいろいろございまして、フランスとかイタリアあたりは日本自動車は非常に輸入を制限しているというやり方をやっております。ドイツとかベルギーとかオランダは自由にしているというような、ECの中でもいろいろ実は、千差万別と言っちゃ何でございますが、違いがあるわけでございますので、いろいろこれから自動車問題、アメリカの問題を考えたりなんかするときにはECにも、ECの一部には同じ問題もあるんだというようなことを十分頭に置いて経済の運営というものをやらなけりゃいかぬというふうに思っております。
  169. 山田勇

    ○山田勇君 いま大臣が述べられたように、ECの外相の理事会の中でも特にフランスが強硬な姿勢を出してきております。大臣はフランスの大統領とも会っておられるんですが、フランスが特に今回のECの理事会の中でも強硬な発言をしているというその裏というのは何でしょうかね、大臣、特にフランスが強い発言をしているように思うんですが。
  170. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 裏と言われると、どうも私はなかなかむずかしいと思うのでございますが、やはりフランスの経済がいろいろ景気の問題、インフレの問題、失業の問題等で、たとえばドイツと比較しますと、ドイツの方がはるかに運営がうまくいっているわけでございます。そういうようなことがございますので、フランスの抱えている経済問題、失業とかインフレとかそういう問題を抱えておりますので、私は、やっぱり一番日本に対していろんな意見がフランスから出てくるのかなという感じがしますし、ECの中でフランスの地位というものも非常に高いわけでございますので、代表のような形で意見が出てくるというのが現状でございます。
  171. 山田勇

    ○山田勇君 午前中の同僚議員の質疑の中で、アメリカ自動車の問題に触れて、アメリカの企業努力も足らなかったからこういう結果になると、日本輸出ばっかりがこういういまの自動車貿易摩擦を起こしているんじゃないというようなことは、相手方にもはっきりと伝えたという大臣のお言葉だったんですが、ぼくはいろいろ思って、日本自動車業界と、またアメリカ自動車業界との、体系といいますか、諸般の事情がちょっと違うように思うんですね。その辺が、われわれ素人考えですが、防衛自動車が常に平行線で問題になるということは、自動車輸出はそこそこに抑えていく、そのかわり防衛費を増強した分においてそこに自動車業界に見返りがあるといいますか、アメリカ工業全体が伸びていくことによって、アメリカ国内自動車に対する世論を抑えていくと、これは一足す一は二というような形でお尋ねをするわけですが、そういうふうなことがあるからこそ、特に自動車という問題についてわれわれ国民は非常に注意深く見守っているわけなんです。  たとえば、両長官レーガン大統領にお会いになりますが、この場合、お会いになるときは通訳の方などは、大臣、どちら側から出られるんですか。
  172. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 通訳は両方からでございます。向こうもおられる、こっちもおられるという、両方からそれぞれ出るわけでございます。
  173. 山田勇

    ○山田勇君 当然そのときにはプレス関係の方も出席はなさっておられません。そこで、外務大臣がお帰りになって、実はこれこれこういうふうに交渉してきた、こういう話だったということは、われわれ国民というものはそれをうのみにといいますか、大臣のおっしゃったことを一つの指針として政策も決定し、われわれもその方針に従い、いろんな形の中で、やはり伊東外務大臣日本の代表として交渉したこと、すべてそのままわれわれはそのことによって物を考え、そして一つの国の方針なり、指針というのは決めていくわけです。ですから、仮に、大臣が何らかの形で、自動車の問題にしろ、防衛の拡大、防衛の問題にしろ、そこに真実がなければ、何ぼここで百の議論をしても本当に実が実らないものだろうと思います。そういう点、これはいいか悪いかは別として、これはたとえ話ですが、ヘイグ国務長官の諮問会、査問会と言うんですか、上院議院がヘイグさんにいろいろと質疑をしているニュースといいますか、ドキュメンタリーの放送をテレビで見たんです。カンボジアの問題ウオーターゲート事件の問題、そういう問題について、上院議員は、誤りを誤りとして認めてほしいというような意味の、要求的な質疑をしております。その中で、ヘイグさんは、あなたたちにはそういう満足のいく返事はできないだろう、たとえ満足のいく返事をいろんな形で、ベトナムは悪かったとか、ウオーターゲート事件の真相はこうだったとか、おれはこの程度までかかわったんだという満足のいく返事を与えることはできない、たとえば満足のいくような返事は与えても、これは何ら国益にならないという、一つの国益という形を持って、自分の一つの信念というか、ああいうタカ派的な宗旨を持った方ですが、それはそれなりでぼくは立派な姿勢だなというふうに感じていたわけです。  それと同じで、やっぱり大臣が真実を述べて、真実を報告することによっていろいろこれから展開をしていくと思うんです。ですから、自動車の問題にしても、決して防衛とは絡まないということは何度も予算委員会を通じても大臣にお尋ねをいたしております。それだけに、大臣のお人柄を信じてわれわれはこれから大臣の御報告を受け、それからこういういろんな形でこれから審議をしていくと思うんですが、その中でソ連最高会議民族会議外交委員が、朝日新聞の三月二十日のインタビュー記事の中で、「ソ連は何回も軍拡の停止と軍縮の促進を提案している。言葉だけでなく、実際に中部ヨーロッパから兵員二万と、戦車千台の一方的撤退も行った。ところが米国は何もやろうとしない」「米国には、軍拡から巨額の利益を得ている独占体が存在する。ソ連には、戦争や軍拡から物質的利益を受けるものは一人もいない。むしろわれわれは、軍備に向けられているカネを国民生活と経済の発展に回したい。軍備への支出がわが国経済を圧迫し、弱めていることは事実だ」、こういうふうに述べております。ソ連側の言い分を全面的に私も信用するものではありませんが、このことについて大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。
  174. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 経済体制の違いというのはこれはあるわけでございまして、共産主義と自由主義といいますか、資本主義といいますか、そういう経済の運営が違っておるということがありますから、だれが利益を得ているとかどうとかいうことにつきましては、これは考えの違うことは私はあると思います。ただ軍備の問題はこれは相対的な問題で、先ほどからバランス、バランスというような問題が出ているわけでございまして、どっちがやったからどっちがどうだという問題はこれはもうなかなかむずかしいんで、それはいまおっしゃったことはソ連の側の主張ということでございまして、それが正しいかどうかということは、これは私がこの場所でそれをどういうふうに批判するとかということはやめたいと思いますが、なかなかこれはむずかしい問題でございまして、日本とソ連との間を考えましても、ソ連の領土は、たとえば領土問題ですともうないと言っていますし、日本はもうそんなことはないと、固有の領土で不法占拠されているというようなことで国と国との間でそこは同じ物の見方でもいろいろ違うことがございますので、私はいまおっしゃったことをここで批判したり、そういうものは差し控えたいと思います。
  175. 山田勇

    ○山田勇君 最後に、先ほど来述べましたとおり、やはり真実の外交が本当の国益に沿っていくものだとかたく信じております。外務委員になりまして日が浅うございますが、外交、外務というのは大変なものだと、少なくとも日本を代表している伊東外務大臣の真実と外交姿勢というのはこれからの国益に即するものだとかたく信じて、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  176. 秦野章

    委員長秦野章君) 本日の調査はこの程度といたします。      —————・—————
  177. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結について承認を求めるの件、小包郵便物に関する約定締結について承認を求めるの件、郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定締結について承認を求めるの件、郵便小切手業務に関する約定締結について承認を求めるの件、日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の郵便支払指図交換に関する約定締結について承認を求めるの件、以上五件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。外務大臣
  178. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ただいま議題となりました万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結について承認を求めるの件、小包郵便物に関する約定締結について承認を求めるの件、郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定締結について承認を求めるの件及び郵便小切手業務に関する約定締結について承認を求めるの件につきまして、一括して提案理由を御説明申し上げます。  万国郵便連合は、世界で最も古い歴史を有する国際機関の一つで、創設以来国際郵便業務の発展の中心的役割りを果たしておりますが、わが国も、明治十年に加盟して以来積極的に連合の活動に参加し、郵便の分野における国際協力のために努力をしております。  連合は、その基本的文書であります万国郵便連合憲章に基づいて機能しておりますが、連合の枠内において、すべての加盟国について締結が義務づけられている万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約と、個々の業務を規律し締結が任意とされている約定とが作成されております。これらの文書は、連合の最高機関であって通常五年ごとに開催される大会議において更新されることになっており、現行の文書についても、昭和五十四年にリオデジャネイロで開催された第十八回大会議において、国際郵便業務における最近の事情を考慮してその内容に変更と補足が行われました。その結果、現行の文書にかわる新たな文書が作成されました。これらの新たな文書は、いずれも、本年七月一日に発効し、現行の文書にかわることになっております。  以下、簡単に個々の内容について御説明いたします。  万国郵便連合一般規則は憲章の適用及び連合の運営について定め、万国郵便条約は国際郵便業務に適用する共通の規則と通常郵便業務に関する規定とを内容とするものでありますが、これらの文書は、ともに、憲章第二十二条に規定する連合の義務的文書であります。  小包郵便物に関する約定は、締約国の間における小包郵便物交換を規律するもので、わが国は明治三十五年から締約国となっております。  郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定は、送金の制度としての郵便為替業務等を規律するもので、わが国は、明治十八年から締約国となっております。  郵便小切手業務に関する約定は、郵便振替口座を利用して行う送金の制度である郵便小切手業務を規律するもので、わが国は大正九年より締約国となっております。  以上の一般規則及び条約並びに諸約定締結することは、我が国が連合の一員として今後とも連合における活動を続けるため、また、わが国と他の締約国との間の各種郵便業務の円滑な運営の継続を図るために必要であると考えられます。  よって、ここに、万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約並びに三つの約定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の郵便支払指図交換に関する約定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国と外国との間の郵便送金業務は、一般的には、万国郵便連合の郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定または郵便小切手業務に関する約定に基づいて実施されております。しかし、連合王国は、これらの約定のうち、郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定締結しておらず、また、郵便小切手業務に関する約定締結しているものの同約定に基づく払い出し業務は実施しておりませんので、わが国郵便為替業務及び郵便振替の払い出し業務に該当する郵便支払い指図の業務を両国間で実施するためには両国間で約定締結する必要があります。  両国政府は、このため、約定締結交渉を行い、約定の案文確定のための調整を重ねた結果、先般最終案文について合意をみるに至りましたので本年二月十三日に東京において日本側大臣及び山内郵政大臣と連合王国側コータッツィ駐日連合王国大使との間でこの約定の署名を行いました。  この約定は、前文、本文十一ヵ条及び末文から成り、わが国と連合王国との間で郵便支払い指図の交換を行うに当たって必要となる基本原則について定めております。  この約定締結し、わが国と連合王国との間に新たに郵便支払い指図の交換を開始することとなれば、両国国民間の送金の利便が拡充されるとともに両国の協力関係の一層の促進にも資するものと期待されます。  よって、ここに、この約定締結について御承認を求める次第であります。  以上五件につきまして何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願い申し上げます。
  179. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で趣旨説明は終わりました。  五件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時七分散会      —————・—————