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美濃部亮吉君 初めにお断りしておきたいことは、私は私の意見と申しましょうか、申し述べたいことを申し述べまして、それで締めくくりに後で御
質問をいたしたいと思います。
私の知事十二年において、ごみ問題ほどてこずった、そうしてまた苦心をした問題はございません。いわゆるごみ戦争と言われた問題でございまして、これは四十六年九月で新夢の島、十五号地でございますが、そこで
東京都のごみの総計一万三千四百トン、その七〇%を江東のいま申しました新夢の島へ捨てておりました。そして、清掃車が一日五千二百台参りまして、その結果、交通は混雑し、悪臭は振りまくし、ハエが発生いたしますし、それから夢の島の中ではメタンガスが発生して火事が起こるというふうな状態になったのでございます。
そうして四十六年の十一月になりまして、江東区は実力を行使することを決定いたしまして、このごみの持ち込みを阻止するということを決定をいたしました。私は、江東区の区議会に参りましたりしまして、結局一億七千万円迷惑料という形で罰金を払いまして、一応実力行使まではいかないで済んだのでございます。
そうして四十九年になりまして、江東区は、いままで
東京湾の中央防波堤の内側と外側にいまの鉄の板を張りまして、捨てることを頑強に反対しておりましたけれ
ども、四十九年になりまして、中央防波堤の内側及び外側に投棄することを承認いたしました。それで、われわれといたしましては、地区内
処理、つまりそれぞれの区が
自分の
焼却炉を持つと、そういう地区内
処理で全量のごみを
焼却をすると、そうして産業
廃棄物あるいは産業不適ごみと申しましょうか、プラスチックその他の燃焼不適ごみと、それから不燃物、これはいま申しました中央防波堤の内側及び外側に捨てると、そういう体制でもって昭和六十年まで何とか持ちこたえられるということで一応片がついた、ごみ戦争が終了したわけでございます。
しかしながら、全量
焼却を約束したと、それでございますから、
焼却炉をつくらなければならない。この点については大川さんが先ほどいろいろと御
質問をなさいましたけれ
ども、全量
焼却をする——そのころは三五%くらいしか家庭ごみは焼いていなかったと思いますが、それを全量
焼却するというのは大変な金と労力がかかるわけでございました。しかしながら、金に糸目はつけないと、とにかく
東京じゅうがごみになるよりは、赤字団体に転落してでも清掃工場を建てるべきであると思いまして、江戸川、北、石神井、世田谷、千歳、大井、多摩川、江東、板橋、葛飾、足立というふうに十一ヵ所ですか、
焼却場ができました。
さらに杉並工場を杉並に建てるということも、これは先ほどお話に出ませんでしたけれ
ども、大川さんとの話の中で、
焼却炉をつくることが非常にむずかしいという話が出ましたけれ
ども、地元と
焼却炉をつくることで合意をするというのは非常にむずかしいんでございます。それで、杉並工場はたしか五年か六年かかりまして、ようやく合意を得られたということでございます。
これでとにかくごみ戦争が一応終わったわけでございますけれ
ども、このごみ戦争を通じまして、私はごみについていろいろな教訓を得ました。そして、その教訓に従っていろいろの
措置を講じたわけでございますけれ
ども、昭和四十八年から分別収集、つまり、家庭ごみと、それから燃焼するのに不適なごみと、それから不燃ごみと
三つに分けまして、そして、不適切ごみはプラスチック、皮革等ですね。それから不燃ごみというのは、冷蔵庫とかそういうふうなものでございます。これを別々に分けて収集して、そうして燃える、つまり家庭から出るごみは
焼却炉に持っていく。それであとの産業
廃棄物——燃焼に不適切なごみとそれから不燃ごみとは防波堤に持っていって捨てるということで一応済んだわけでございます。
ところが、これで問題は解決したわけではございませんで、この不適ごみとそれから不燃ごみとをどういうふうに処分をするか、これが大問題でございました。私は、一言で言えば、産業
廃棄物とでも申しましょうか、いまのこの問題を解決するにはリサイクリング以外に
方法はないと、こういう産業
廃棄物をどういうふうにしたならばもう一度それを再生して一般の需要に向けることができるだろうかということ、私が幾ら
考えたってそんなことわかりっこはないので、新日鉄と連携をいたしまして実験工場をつくって、一生懸命で
努力をしていただいたわけでございます。
その結果といたしまして、新日鉄は鉄の生産企業でございますから、つまり、溶鉱炉というようなものをつくって、非常に高温にして、そうして不燃ごみあるいは不適ごみをその中に入れて高熱で
処理するということ、それから、その場合には有毒ガスが出ますから、そのガスの毒性を抜く、いろいろ非常に
努力をしてくださいまして、約三年工場で実験をいたしました。その結果として、私としてはよくわかりませんけれ
ども、ガスとそれから銑鉄、つまり不燃ごみの中から出る金属の銑鉄とそれから残渣、この残渣は細かく砕くと道路をつくるときなどの砂利の代用品になる。それから、それをれんがのように固めると、防波堤をつくるときなどに使えるということでございました。
私は、なおこれを単なる実験だけではなしに、工場生産に移すことが可能かどうか研究を続けてほしいと思いましたけれ
ども、私がやめると同時に鈴木さんはこの実験もやめてしまったということで、新日鉄がことしの秋からもう一度この実験を、新日鉄だけでやって工場生産に持っていけるかどうかというふうなことを試みるということでございます。
それで、私はつまり家庭ごみはそれを焼く、そうしてそこで非常に熱が出ますから、あるいは発電にそれを使う。私たちはまだ発電は本当に非常に小規模でございましたけれ
ども、付近に老人ホームや何かをつくりまして、それに始終湯を供給をして、いつでも老人にお湯に入っていただけるというふうな、それから江戸川にはスイミングプールの温水をつくりまして、子供たちに非常に喜ばれております。そういうふうに家庭ごみは焼くときの熱を利用して発電をすることもできますし、いま言ったようなおふろとか温水を供給することもできるわけでございます。それですから、灰は残りますけれ
ども、家庭用ごみはほぼ完全なリサイクリングができるということでございました。
それで、産業
廃棄物はほかにもいろいろと実験をしているところがございます。そうでございますが、ほかの場所の実験の結果は、私よく存じません。しかしながら、新日鉄の実験でも実用になることは不可能ではないと思うんです。
それでございますから、完全なリサイクリング、つまりいま申しましたような完全なリサイクリングでございますけれ
ども、これに国が非常に金をかけてこの
フェニックスプランをやる何十分の一かのお金を使えば、このリサイクリングの技術、きょうの
委員会でもたびたび出ましたけれ
ども、私もリサイクリングができるようになるかならないかということがごみの問題の基本的な解決ができるかできないかという問題であると思いますんで、このごみ、いまの
フェニックスプランでございましたらば、十年たてばまたそれがいっぱいになってもう一度つくらなきゃならない。何しろできるだけ早く江田さんも言われたようにリサイクリングの技術を発展させるということが必要なのではないか。
それから、もう
一つは
下水の
汚泥、これのコンポスト化、これは大川さんも言われましたように
重金属が入っていることが難点でございますけれ
ども、先ほど言われた多摩ニュータウンの
下水の
汚泥からはほぼ完全な、そうして非常に有効な堆肥の代用になるような肥料が生産されるということが実現しているわけでございまして、このコンポストというのもごみのリサイクリングの一翼を担うことであろうと思うんです。
それで、こういうふうに基本的な問題においてはいま言ったようなごみの
処理の問題がございますけれ
ども、今度の
フェニックスプランについては私は非常に多くの欠陥があるのではないであろうかと思うんです。
その第一は、
フェニックスプラン、つまりごみ捨て場でございますけれ
ども、このことは一般市民の生活と裏表の
関係にあると言ってもいいほど密接な
関係を持っている。一方、確かにごみ捨て場ができるのはありがたい、しかしながら、できることによってこうむるデメリットも非常に多い、そこをどういうふうに
考えるかというので、徹底的に都民参加と申しましょうか、都民との対話が必要である、これが欠けているのではないだろうかということが第一。
そしてまた、この
計画をもしやると決まったらば、どういうふうにしてやったらば一番悪い
影響が出ないで済むかということを中立の学者、技術者を入れました
委員会にかけて第三者の意見というものを私は聞くべきではないだろうかと思います。
それから、今度の
計画につきましてはPPPの原則、つまり
公害の基本的な問題であります
公害を出した企業はその
公害について全責任を負うというPPPの原則が欠けているのではないだろうかと、つまりPPPの企業の責任であるべきところを国があるいは地方自治体が肩がわりすると、それでこの点は私は、この
フェニックスプランの一番の欠点は、非常に広いこみ捨て場を一ヵ所に設ける、これは夢の島でも全く閉口したので、そこに第一集まってくる自動車がどうなるのか。それの出す
大気汚染をどうするのか。それから、もしはしけでもって運ぶとするならば航路がそれだけ混雑をし、莫大な船舶の量になりますから、
東京湾の船舶の交通がそれだけ阻害されるのではないか、そういうふうに思います。
それから、第三の問題は地方自治との
関係であって、このプランは要するに市町村の固有事務であるところの清掃という事務を、地方公共団体あるいは国が選任した
委員会なり
管理者なりで
管理される
センターというのにほとんど全部の権限が移される。これは大川さんが言われましたような発想を変えて、ごみは国で集中的に
処理をするということに決まればまたぼくは別な
考え方がある。しかしながら、いまの状態のままであるならば、地方自治を侵害をするということになると思います。
それから千二百ヘクタール、つまり千代田区とほぼ同じくらいの面積の、あるいは一ヵ所であるか、あるいは数ヵ所であるかは別問題といたしまして、その千二百ヘクタールという広大な
埋立地ができる。それから、
大阪は八百ヘクタールという
埋立地ができる。そういう
埋立地がたださえ狭い
東京湾あるいは
大阪湾にできたときのその
影響というものは非常に大きいものではないかと思うのであります。この
埋立地ができることによってどういう
影響があるか、私には常識的なことしかわかりません。それで、
東京大学の名誉教授である桧山先生に書面でもって伺ってみました。それによりますと、こういうふうにいろいろ悪い
影響があろうとは思っておらなかったんですけれ
ども、第一には水が汚染される。
それは、
一つは、
埋立地でもって内海との交流がそれだけ阻害される、したがってその
埋立地の
埋め立ての内側の水というのは非常に汚染されて腐ってしまう、汚物を捨てたということから出てくるいろいろな水の汚染は別として、
埋め立てたということ
自体からしてそういう悪
影響がある。
それから、都会地の海辺の空気というものが海が大きければ大きいほど自浄作用があって、そうして空気がきれいになる。それが非常に大きな場所が
埋め立てられればそういう力が弱る。
それから第三に、温度の変化を調節する。これはわれわれにもわかると思うのです。それから釣りやボート遊びなど、都民の何といいますか遊びが奪われるということ。それから、これはよくわからないんですけれ
ども、都市から出る高分子の有機物を酸化及び還元によって分解して
大気と水に還元する自浄作用がある。それで、分解された後は、水の中にいる生物に非常な肥料、えさになって、浅い海の太陽光線の日射によって特殊の生産物ができる。たとえば浅草ノリであるとかアサリであるとかハマグリであるとかカキであるとかカレイの類であるとかハゼの類であるとか、そういう多様な生物が育成される。そういうふうな効果があるんで、非常に広い、千二百ヘクタールというような広い
埋め立てをなすべきではない。それは都市に住まっている都民にとって非常に悪い
影響を与えるのではないだろうか、そういうことでございました。
それで、いまも申しましたけれ
ども、
廃棄物から汚水が
一つも流れないようにするということはほとんど不可能であって、最初はできてもだんだん古くなるに従って汚水が漏れて水が汚染されるということもある。それから夢の島の経験から言ってメタンガスから火災のおそれもあるし、爆発のおそれもある。それから先ほど申し上げました、つまりごみを運ぶ自動車、空になって帰る自動車、それが夢の島でもって五千台であるならば、それの何層倍かの大きさのごみ捨て場であったならば何万台にもなる。そうすると、それを、先ほ
どもお話に出ましたけれ
ども、その自動車の通行する道路をどうするのか、道路をすっかり新しく
計画をしてつくり直さなければどうにもならない状態になるのではないか。
それから船舶、つまり
東京湾がそれだけ狭くなるのですからして、いまでさえ混雑する船舶が非常な混雑になって衝突するおそれも出てくるだろうと思います。そうして、何万トンというタンカーが衝突したときには、
東京湾全体が火災になって、それこそ恐るべき災害が起こってくるのではないだろうか、そういうふうに
考えるのであります。
それでありますから、私はこの
フェニックスプランというのは余りプラスの面よりもマイナスの面の方が大き過ぎるのではないだろうか。もっとリサイクリングを、国が資金を注いで、何とかしてできるだけ早く完成をして、そしてこのごみ捨て場がなくても済むようにしてほしいものであるというふうに思うんです。
それで、私の意見はおしまいにいたしまして、まず
厚生省には、私が申しましたリサイクリングによって、この
フェニックスプランとは別な
考え方で、リサイクリングによってごみを
処理するという発想の転換はできないものであろうかと。これは
環境庁長官にもお聞きしたいと思うんです。リサイクリングの問題は江田さんが聞いて皆さん賛成でございますけれ
ども、私はもう少し現実的にこの
フェニックスプランのかわりにそれを
考えられないだろうか。
それから自治
大臣には、清掃事務というのは自治体の固有事務であるけれ
ども、これが奪われるということについて、どういうふうにお
考えになるか。
それから、
環境庁長官には、これはどうも都民との対話なしに、PPPの原則を無視してこの案ができ上がったのではないかと。それから、私のいま申し上げました
埋め立てによる
環境破壊と、それをどうお
考えになるか。それから自動車、船舶は別ですけれ
ども、自動車の混雑の対策をどうなさるおつもりか。
それから運輸
大臣には、船舶の問題、船舶の混雑の問題をどういうふうにお
考えになるのか。
私は、
フェニックスプランというのは、七千億円という大金をかけた大規模なプロジェクトに間違いはないと、いま大規模プロジェクトはやるべきではないんじゃないだろうか。第二臨調をやって、そうして経費の節約を一生懸命に
考えているときに、少なくともこの周囲の住民に対して非常な悪
影響を及ぼすおそれのある大規模プランに、七千億円も投ずるというのは間違っているのではあるまいか。その点もひとつお伺いしたいと思います。