○目黒今朝次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
日本航空株式会社法の一部を改正する
法律案に反対の討論を行うものであります。
反対理由の第一は、不当な料金値上げを導入されていることであります。
改正案は、民間の活力と自主運営の強化の視点からの提案とされています。
日本航空が真に
国際競争に耐え、かつ勝てる力量があるならば、自由競争の経済原理を適用し、たとえば
運賃の面では許可制を廃止して、
国際市場の
運賃を導入して利用者本位のサービスに徹すべきだし、
国際線の就航の面では競争相手の
全日空、東亜
国内航空の申請や希望を認めるべきであります。しかるに、これらの点については、
昭和四十五年の閣議決定をてこに、政府は拒否しています。したがって、今回の改正は別な角度、すなわち株の配当をてこにした財政面からのねらいであり、当面一年ないし二年は料金の引き上げがないと答弁していますが、今後政府株の配当の確保のため航空料金の引き上げが連動され、国民大衆に不当な負担を強いる結果になるからであります。
反対理由の第二は、安全面、
労働面にしわ寄せされるからであります。
日本航空株式会社の損益勘定の過去十カ年の推移を見ると、
昭和四十九年が二百六十六億円の赤字に対し、
昭和五十二年が百九十八億の黒字、
昭和五十四年が四億弱、
昭和五十五年が八億程度の黒字と経営の振幅がひどく、また経営状態にも一部の危惧さえあります。しかるに、改正案による政府株配当資金は、名目で約百億以上を超えると答弁されています。制度上の歯どめがなく、経営努力によってと強弁されていますが、これにも限界があり、そしてそのしわ寄せが人と物の面、特に
労働強化と安全面にされる可能性があります。
労働三法による
労働者の保護とゆとりある安全を確保されることが
国策会社の使命である点から見れば、本改正案は相反するものとして認めるわけにはまいりません。
反対理由の第三は、総合交通政策の確立に欠けている点であります。
われわれは、国民の足を確保するため陸、海、空を機動的に結合させ、特に国鉄ローカル線、私鉄、都市交など、公営交通を確保するため総合交通特別会計制度の確立を要求し、財政的な裏づけを迫ってまいりました。
運輸省も、一昨年から陸上特別会計制度を提起しましたが、政府部内の反対でいまだ制度化されていません。今日、ローカル線のバス転換、五割増特別
運賃制の導入など、過疎地帯の住民に二重、三重の負担が強いられている現状を考えますと、緊急の事態だと考えます。反対理由の第一項、第二項にかかわらず、政府案を一応肯定するとすれば、交通政策の中で新しい財源である
日航株配当資金、現行ベース約四十億前後、これを陸上交通会計制度の資金として確保し、加えて自動車税などの一部を投入して財政的な裏づけを行い、総合交通政策の実施に迫るべきでありますが、この発想が全然ない点が反対の第三であります。
反対理由の第四は、不当
労働行為の体質を存続した現状の改善が全然なされていない点があります。
日本航空株式会社の出資株の四〇%を占め、予算事業計画に至るまで
運輸大臣の許可が法制化されています。言いかえれば、
運輸大臣の行政機能がきわめて強い、いわゆる
国策会社であります。しかるに、ここ数年不当
労働行為事件が続発し、また
労働基準法違反が摘発されています。また、
労働裁判所的性格を持っている中央
労働委員会及び東京都
労働委員会における公益
委員を
中心とした審査の結果の救済命令を十五件も受け、加えて
日本航空乗務員組合の解雇問題では裁判所の命令に従わず、二百万円の過料空二回も受けているのに、現在一件も解決していないのははなはだ遺憾であり、社会的に糾弾されるべきであります。
不当
労働行為は、角度を変えれば人権無視であり、人間
差別であります。これを排除するため、
労働三法が厳しくこれを禁止しておるのも基本的人権擁護のためであります。私は、この問題の解決のため、当
委員会で再三にわたり具体案を提起し、
運輸大臣、
労働大臣の決断と
日本航空株式会社
朝田社長ら首脳の善処を要求してきました。しかるに、この現状を黙殺して法の改正に便乗し、政府の責任を回避しようとする政治的措置は断じて認めるわけにはまいりません。法改正が多数決で成立しても、不当
労働行為の存在は絶対に放置できません。十年前の国鉄の組織的大規模な不当
労働行為事件、いわゆる国鉄マル生事件の当時の責任者であった私は、当時磯崎国鉄総裁の引責辞職と大規模な損害回復の措置をさせました。当時の不当
労働行為に対する政府声明、国鉄を含めた政府見解を再認識し、かみしめ、塩川
運輸大臣の指導力と
朝田社長の決断で早期に解決し、労使関係の円滑化と安定を図り、厳しい
国際競争に勝てる力を備えるよう、特に関係者に要請して、反対討論を終わります。