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1981-04-27 第94回国会 参議院 安全保障特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月二十七日(月曜日)    午後二時一分開会     —————————————    委員の異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      柳澤 錬造君     柄谷 道一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 衛藤征士郎君                 堀江 正夫君                 桑名 義治君                 上田耕一郎君     委 員                 板垣  正君                 岩本 政光君                 江島  淳君                 梶原  清君                 源田  実君                 戸塚 進也君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 村上 正邦君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 渋谷 邦彦君                 柄谷 道一君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君    政府委員        内閣法制局第一        部長       味村  治君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁参事官   上野 隆史君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁長官官房        防衛審議官    西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁衛生局長  本田  正君        防衛庁経理局長  吉野  実君        防衛庁装備局長  和田  裕君        防衛施設庁総務        部長       森山  武君        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務大臣官房外        務参事官     渡辺 幸治君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        海上保安庁次長  大塚 正名君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        警察庁警務局給        与厚生課長    小池 康雄君        大蔵省主計局主        計官       畠山  蕃君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の安全保障に関する調査  (有事法制研究についての中間報告)  (日米首脳会談に関する件)  (防衛計画大綱に関する件)  (昭和五十六年度中期業務見積りに関する件)  (有事法制研究に関する件)  (ソ連艦船射撃演習に関する件)  (わが国の貨物船米国原子力潜水艦との衝突  事故に関する件)  (対外経済協力に関する件)     —————————————
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。  国の安全保障に関する調査議題といたします。  この際、大村防衛庁長官から有事法制研究について報告を聴取いたします。大村防衛庁長官
  3. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 有事法制研究については、かねてから防衛庁において作業を進めてきておりましたが、今回その中間報告を取りまとめましたので、ここに御報告を申し上げます。  有事法制研究は、昭和五十三年九月二十一日の見解で示しておりますように、有事に際しての自衛隊任務遂行の円滑を図るという観点から、法制上の問題点の整理を目的とするものですが、研究対象が広範であり、また、防衛庁以外の省庁等所管にかかわる検討事項も多く、検討の結果を得るには相当長期間を要するものと考えております。  したがいまして、今回御報告いたしますのは、現在までの研究状況と中間的にまとめた問題点概要であることをお断りいたします。  まず、研究状況でございますが、有事法制研究対象とする法令につきましては、防衛庁所管法令、他省庁所管法令、それに所管省庁が明確でない事項に関する法令に区別いたしまして、このうち防衛庁所管法令を優先的に検討するということで作業を進めてまいりました。  次に、問題点概要でございますが、これには、第一に現行法令に基づく法令が未制定であるという問題があり、有事の際の物資の収用、土地使用等について規定する自衛隊法第百三条の規定に基づく政令、それに有事における職員の給与の特別の措置について防衛庁職員給与法第三十条の規定に基づく法律が未制定ですので、これについて検討をいたしております。このうち、自衛隊法第百三条の規定に基づく政令につきましては、それに盛り込むべき内容についてほぼまとまっております。  第二に、現行規定補備の問題があります。自衛隊法第百三条には、処分の相手方の居所が不明の場合の措置土地を使用するに際して工作物を撤去することについて規定されておらず、また、同条の物資保管命令に従わない者に対する罰則規定がございません。自衛隊法第九十五条は、武器等の防護を規定しておりますが、これにはレーダーや通信器材等規定されておりません。これらについて補備する必要があると考えております。なお、罰則につきましては、その必要性有効性等につき慎重な検討が必要と考えております。  第三に、現行規定適用時期の問題があります。自衛隊法第百三条による土地使用の時期、同法第二十二条による特別の部隊編成等の時期、同法第七十条の予備自衛官の招集時期につきましては、いずれも、現在よりその適用時期を早める必要があると考えております。  第四に、新たな規定の追加の問題があります。部隊が緊急に移動する場合に土地等を通行し得る規定防衛出動待機命令下にある部隊が侵害を受けた場合に部隊の要員を防護し得る規定、これらを追加することが必要と考えております。  以上、現在までの研究状況問題点概要について御説明いたしましたが、今後の有事法制研究につきましては、今回まとめた内容にさらに検討を加えるとともに、未検討のものについて検討を進めていくことを予定しております。  また、今回取り上げた問題点の今後の取り扱いについては、有事法制研究とは別に防衛庁において検討するとともに、関係省庁等との調整を経て最終的に決定を行うこととなるものと考えております。  なお、御参考までに、御報告した内容について整理したものをお配りしてあります。  以上、有事法制研究についての中間報告とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 堀江正夫

    堀江正夫君 きょうは外務大臣防衛庁長官大変お忙しいところを本委員会に出席していただきまして、大変御苦労に存じます。私は日米首脳会談に関連した諸問題、それから五六中業作成の問題、最後に有事法制の問題の三つについて御質問をいたしたい、このように思います。例によりましてきわめて限られた時間でございますので、簡明な御返答を賜るようにあらかじめお願いを申し上げておきます。  まず第一に、日米首脳会談に関連した問題でありますが、この会談に備える意味もあると思いますが、防衛庁は明日の国防会議昭和六十二年度に防衛計画大綱水準を達成するという方針の承認を求める、こういったようなことが報ぜられておるわけであります。同時に、けさ新聞の中には外務省大蔵省筋からの不協和音も伝えられております。この問題につきましてはいろいろな要素があると思うわけでありますが、最も重要な一つは、国際情勢認識について政府部内の共通認識、これができているのかどうか、共通認識に欠けておるのじゃないかということがその第一ではないかと思っております。そしてそのために国防会議議員懇談会を開く等の措置が今日まで何らとられておらない。こういうようなところに一つ大きな問題があるように思われてなりません。政府間に連絡調整の不備があるのじゃないかという疑念を提起せざるを得ないわけであります。この国際情勢に対する共通認識を図るという問題につきまして防衛庁はいままでどのような手を打ち、あすの会議でこの点をどのように取り扱われるつもりか、まず防衛庁にその点をお伺いしたい、このように思います。
  6. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま堀江委員から、明日の国防会議に五六中業作成についての報告があると聞いておるが、その考え方前提としての国際情勢認識について防衛庁考え方、どのようなことを考え説明していくのかという趣旨お尋ねがございました。  そこで、明二十八日開かれる予定の国防会議についてでございますが、防衛庁といたしましては五六中業作成に際しての基本的考え方報告し、了承を得られればその後速やかに各幕僚長統幕議長に対し五六中業作成に際しての指針としての長官指示を発したいと考えているところでございます。  そこで、その前提となりますか、基礎となります現下の国際情勢につきましては、防衛庁といたしましては、厳しいものがあると考えております。五六中業作成に際しましては、このような認識のもとに、防衛計画大綱に定める防衛力水準を達成することを基本として作業をいたしたい、そういう考え方を持っておることを申し上げておきたいと思います。
  7. 堀江正夫

    堀江正夫君 私は、防衛庁がそういう認識を持っておられることについてはそう疑いを持っておらないわけですが、従来そういう問題について政府間で本当に意思の統一を図られておったのかという疑念を提起したわけであります。さらに、明日もそういったような問題がやはりまず諮られなければ問題というものは解決しないのじゃないか、こう思うわけでありまして、あえてこの問題を申し上げたわけであります。  次に、首脳会談における主要テーマ一つ国際情勢である、このように報ぜられておるわけであります。私は、三月十九日の予算委員会一般質問の中で、ちょうど訪米直前でいらっしゃいました伊東外務大臣に対しまして、この国際情勢認識についてお尋ねをしたわけであります。その際に大臣は、今度米国へ行って要路の人たちと十分にひざを交えて話し合ってその意見も聞いてきたい、こういうお答えでございました。私は、この問題の焦点というのは米ソ軍事バランスの問題にあるのだ、このように認識をしております。そして米国は現在を緊急の事態と受けとめておる。向こう数年間は最も危険な時期と見ておる。米国は、このような事態認識の上に立って、これに対応するために、抑止効果を十分に発揮するようにその内外の政策を展開している、このように思うわけであります。  外務大臣は、先般の御訪米によりまして、この国際情勢に関してどのような御認識を持ってこられたか、率直な御所見、御認識を承りたい、このように思うわけであります。
  8. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先般アメリカへ参りまして、国際情勢につきまして意見交換をやってきたわけでございますが、これは、東西軍事バランスの問題はもちろんござい呈すし、あるいは東南アジア、あるいは中東の問題とか、各般にわたって意見交換をしてまいったのでございますが、国際情勢が厳しいということにつきましては意見の一致を見ているわけでございます。いまおっしゃいましたように、軍事バランス、特に対ソの軍事バランスにつきまして、アメリカ経済再建でまず自分のことを強くするということをやる中にも防衛費はふやしているというようなことでございまして、厳しい見方をしておるということは両方の意見交換でわかったわけでございます。その際に私は、それはそのとおりだろうが、話し合いで平和を保っていくということもまた大切じゃないかということで、米ソ首脳会談でございますとかSALTの問題等も話したのでございますが、ソ連出方、実際の行動が、いろいろな、平和攻勢といいますか、口にしますけれども、実際どういう出方をするか見きわめた上でその問題は慎重に検討する、窓をあけておくことは確かだというようなことを話し合いをしましたし、あるいは中東の和平につきましては若干パレスチナ問題について意見の違うところがあったり、カンボジア問題については大体同じだと、いろいろな意見交換をしてきたわけでございますが、八〇年代は厳しい国際情勢だということにつきましてはまさに認識が一致しております。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 当然この自由陣営外交政策としては、広範な立場から緊張の緩和をする方向に努力するということも必要であることは言うまでもございませんが、基本は厳しさというものをまともに受けとめることがやはり基本だということについては同じ御認識のようでございます。  そこで次は、けさのある新聞によりますと、経済協力についてその額を今後画期的にふやす、同時に、従来の南北問題に加えて安全保障観点から、そのキーポイントになる国に対しても、今後はさらに経済協力を強化するという趣旨が報ぜられておったわけであります。これにつきまして、もしもけさ報道のとおりにお考えであるとするならば、それは私はもう大賛成でありますが、一方二十四日、外務大臣が何か総理進言をされたという報道もございました。それによりますと、必ずしもこの経済協力についてもそのようなお考えでもないようにも承知するわけであります。実際はどうなのか、その点をまず承りたいと思います。
  10. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アメリカに行きましても、経済協力の問題はヘイグさんと話し合いをした問題の一つでございます。それで日本は、経済協力というものは発展途上国民生の安定、あるいは社会福祉向上社会経済開発の促進ということが中心になるべきだというふうに実は考えておるということも私は言ったわけでございまして、現在もそういうふうに考えております。まあ南北問題というものが中心に据わって考えるべきじゃなかろうか。といいますのは、世界平和ということから考えますと、やはり生活水準の低い、開発のおくれたところがたくさんあるということは、これは社会不安あるいは政治不安につながり、そしてそれがまた大きな国際平和の問題にもつながっていく問題なんだということで、発展途上国社会開発経済開発民生安定、福祉向上ということを中心に据えて経済協力というものは考えるべきじゃないか、これは私は原則だろう、こういうふうに考えております。  ただ、大きな目標は、人道主義経済協力世界一般論として通ずる人道主義、あるいは相互依存ということをみんな考えているわけでございます。その相互依存の中には経済問題もございましょうし、また政治上の問題もあるわけでございますので、先ほどの南北問題ということを中心にしまして、たとえば紛争周辺国等おくれた国の開発援助考えていく、それは民生の安定にもつながるということも、これは一切そういうことはしないということじゃなくて、相互依存関係の中にもそういうことは入れて考えていくというのがわれわれの考え方でございまして、ヘイグさんと議論したときも、東西関係ということで、これは友好国、これは非友好国と頭から分けてしまって経済協力考えるということは、第三世界をむしろ別な方に追いやるというようなことになりかねないのじゃないか、やはり中心は南北問題ということを中心にして考えて、さっき言ったような相互依存ということも加味して考えていくということが経済協力中心じゃなかろうかという議論をしたのでございまして、私どもは原則はそういうことの考え方でいるわけでございます。
  11. 堀江正夫

    堀江正夫君 外務大臣のそういうお考えは、私自身も理解できないわけではございませんけれども、現在、結局置かれている国際情勢に対する認識の問題に返ってくると思うのですね。いかにして自由陣営が力を合わせながら歯どめをしていくか、抑止的な効果を発揮していくか、こういう観点からの施策というものがやはり今後はますます大きく要請されてくる、こう私には思われてなりません。ある程度幅を持ったお考えをお持ちのようであります。  これはこのくらいにしますけれども、もう一つ、従来政府考えておられます中に、防衛努力肩がわりにこの経済協力をするという考え方があるやに私は思っておるわけであります。しかし、この問題を同次元で、こちらはいろいろとむずかしい問題もあるからこちらだという問題ではないのじゃないか、こう思うわけです。これが適当な例がどうかしりませんけれども、世界的に大地震が起こる可能性が大変強いんだ、その際に、日本国内での地震対策措置、これは現在まだ不十分な面がたくさんある、これをやるということになるとやはりいろいろな障害もある、そこでその分を外国に手をかすことによってカバーしようと思っても、そんなことで国内地震対策がカバーできるはずのものではないことは言うまでもないわけであります。この点、もう蛇足でございますけれども、やはり経済協力というものとわが自衛力をふやすという問題をてんびんにかけるといったような考え方が仮にあるとすればそれはもう間違いである、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  12. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 総理もよくおっしゃっておるように、日本では防衛というものは憲法で、日本国を守るには個別自衛権ということで専守防衛日本防衛というものはそういうものだ、そのほかの地域日本軍事力期待されてもそれはできないことだということは総理がいつも言っておられることでございまして、これはもう今度もアメリカへ行って総理はそういうお話をされると思うのでございますが、先ほど言いました経済協力というのは世界の平和にこれが寄与してくるということの観点考えるべきだというふうに思いまして、特に発展途上国というのは、第三世界といいますか非同盟の国といいますか、そういう国も非常に多いわけでございます。そういうところに経済協力をするということは世界の平和にとって私は非常に大きな役目であろうと思うわけでございますので、防衛軍事力というのは日本を守る、専守防衛というだけでございまして、世界の平和に貢献できるのは、いま申し上げましたような経済協力で南北問題を中心にしまして生活水準を上げる、社会不安をなくす、そしていわゆる紛争が起きる地域というものを少なくしていくということが大切だ、こういうふうに考えております。
  13. 堀江正夫

    堀江正夫君 少なくとも外務大臣のお考え方の中に、日本のこの不安定な状況をより改善するために自衛力を増強するという問題、これはもう当然のことであって、こんなことと経済協力の問題をてんびんにかけているわけじゃない、こういう御見解だと確認をする次第でございます。  次に、日米首脳会談議題の問題に関連しまして、総理ワインバーガー国防長官との会談が予定されておる、このように報道されておりますが、これはそのとおりなのかどうか。そうなると相当突っ込んだ防衛問題の話が出るのじゃないか、このように思うのでございますが、いかがでございますか。
  14. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先ほどの、てんびんにかけているのじゃないという考え、そのとおりでございます。  それからいまのワインバーガーさんの問題は、まだ総理の日程がワシントンできちっと最終決定をしておりませんのでまだわかりませんが、向こうから宿舎の方へ表敬訪問もしたいという希望があることだけは確かでございます。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 これも新聞報道でございますが、外務大臣がこの二十四日に、総理に対しまして防衛計画大綱の六十二年度達成という具体的な話は首脳会談では持ち出さない方がよいのだと御進言になったということが報道をされております。それにつきまして、一般論だけでいけるということなのか、だとすると、それでいけるという根拠はどこにあるのだろうか、これが第一であります。  第二番目は、もう米国の方からもいろいろな反応があるようでございます。米国にはもっと早くせよとの声もあるのだ、したがって、この時期において余りはっきりしたことを言わないで、もっと米国考え方というものをじっくりと見きわめた方がよいというお考えがあるのかどうか。あるいは仮に約束してみてもできない場合もある。その場合の日米関係というものを考えると、やはりはっきりした返事はしない方がいいというお考えなのか。さらに、外務大臣は六十二年度に達成するというそのものには御賛成なのか反対なのか、その辺をひとつ承らしていただきたいと思います。
  16. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非常にいろいろむずかしいことをお聞きになったのでございますが、総理日本自衛力にとっては質の高い自衛力というものを着実に増加するように取り組んでいくのだ、強化するように取り組んでいくのだということを国会でもおっしゃっておりますので、私は首脳会談ではそういう総理決意アメリカ側にも伝えられるということでが大切なことでなかろうか、私はこう思っておるのでございます。と申しますのは、アメリカ側も私の行ったとき話も出ました、あるいはいろいろな人に話があるのでございますが、いろいろ数字を挙げて日本政府に要望するとか期待を表明するとか、そういうことをやることは余り好ましくない、むしろゆっくり自主的な話をするということの方が必要でなかろうかというようなことを前々から言われておるわけでございますし、私に対しましてもそういう話があるのでございますので、私は日本総理向こうへおいでになったときいろいろな数字等を挙げられてお話になりますと、数字というものはとかくひとりで歩き出すわけでございます。数字ひとりで歩き出すおそれが多分にある。そうしてアメリカに対して何か数字を挙げて約束したのじゃないかというような誤解を受けることも多分にある。また、首脳会談期待以上のものを向こうに与えるというようなことになっても、これは信頼関係を後で失うことになります。約束したことは必ず守る、できないようなことは約束してはいかぬというのが私の考え方でございますので、いろいろそういう点を考えますと、首脳会談の際に総理は、そういう一般的な国際情勢認識防衛についての考え方総理決意とか、そういうふうなものをお話しになった方が首脳会談としてはよいのではなかろうかという私は考えがありましたので、この前、向こうへ行かれます勉強会がありましたときに、私の意見として総理に申し上げたということでございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、先ほどの質問の中の一つでありました外務大臣自身が少なくも防衛計画大綱水準に六十二年度までに達成しようというそのこと自体についてはいかがでございますか。
  18. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非常にむずかしい問題を御質問になったというのはそのことでございまして、あした国防会議がどういうことを議論されるのか、まだ私自分自身は承知していないのでございますが、いろいろな問題が出てくるだろうと思います。国防計画大綱の中の問題、あるいはどういうものが残っていてどういうふうにそれはやるべきか、GNPとの関係はどうなのか、財政再建との関係はどうなのかとか、いろいろな議論する問題が私はあるだろうと思いますので、そういうことを十分話を聞きまして、そして納得のいくところで私は結論を出そう、意見を言おうと思っているわけでございまして、いまここで賛成か反対かとお聞きになっても、私はまだよく説明を十分に聞いた上で判断をしよう、こう思っているところでございます。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 大変慎重なお考えですが、もうあしたはこの問題が国防会議に出されるわけでありまして、少なくとも日米外交関係の責任者でいらっしゃる外務大臣でいらっしゃいますから、この問題の扱いといいますか、日本防衛力の整備に対する努力、これを少なくとも具体的にはっきりさしておかなければいかぬ、なるべく早く達成しなければいけない、こういう基本的な考え方については、毫末も大臣のお考えにいろいろと複雑なものがあるとは思っていないわけですが、まあそれはあしたに譲ります。  そこで、五六中業に関連をしてお伺いをしたいと思いますが、あしたの国防会議で承認を受けようと防衛庁考えておられます内容はどんなものでありますか。
  20. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) あすの国防会議に提案する内容を説明せよというお尋ねでございますが、現在準備中なので、しさいにわたって申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、まず、あすにお諮りします事柄についての大綱について申し上げますと、先生御承知のとおり、次の五六中業の準備にかからなければならない時期に来ているわけでございます。そこで、次の五六中業作業にかかる場合に、私といたしましては部内に指示をしなければいかぬ、その事柄を幾つか予定しているわけでございます。  その中には手続的な面もございますし、先ほど先生から御指摘のありました国際情勢認識に係る点もあるわけでございますが、私といたしましては、五十一年健策定されました防衛計画大綱、毎年度の予算において国会で御審議していただきまして、それを目標にして近づける努力は続けておるわけでございますが、五十六年度の予算が実施されたといたしましても、まだまだ隔たりが多いわけでございますので、次の中業の際にはこれを達成することを基本的な考え方として作業にかからせていただきたいという趣旨のことも織り込みましてあしたお諮りをしたいと考えておるわけでございます。もし御了解が得られれば、その線に沿いまして部内に指示をする、そしておよそ一年間かかりまして次の中業の中身がまとまりましたならば、国会で次の中業そのものは何らかの形で国防会議に付議するということをお約束しておりますので、また改めてその段階でお諮りをして、メンバーの閣僚の方々の御意見も出していただいてその段階で決定をする、いわばまあ明日は作業の取りがかりの段階で、おおよその方向についての考え方を提出さしていただきたい、さように考えている次第でございます。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 私は現在の情勢を踏まえて考えますと、昭和六十二年度に五十一年の平和の時期につくった大綱水準を達成する、本当にそんなことでいいとは思っておりません。けれども、いろいろな関係がある。少なくもこの問題を首脳会談で、外務大臣がおっしゃいますように、言うか言わないか別でありますが、少なくもこの時点において最小限このくらいのことははっきり国防会議で決めておく、これはもう私は日本としてはぎりぎりのことじゃないかと思います。いろいろな意見が出るでしょう。いろいろな意見が出るでしょうけれども、ひとつ長官、長官は国民に対して国の安全についての第一義的な責任を持っておられる、この点を十分に御自覚いただいて、いろいろな意見に対しても最小限の目標だけははっきりさしておいていただきたい、これは私の心からのお願いであります。  そこで、これが決められて、仮に六十二年までに達成するということになった場合に、月内に長官指示が出されるというように報ぜられております。訓令の第四条には、必要に応じて作成に関する指針事項を示すということになっています。どういうような内容の指針を出されて、そしていつから作成にかかられるおつもりでございますか。
  22. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先ほども申し上げましたとおり、明日の国防会議において御了解が得られましたならば、直ちに各幕僚長に対して指示を出しまして作業に入ってもらうようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  23. 堀江正夫

    堀江正夫君 各幕僚長に対して示すと言いますが、この計画作成の訓令によりますと、長官指示を出される。そうなりますと、それに基づいてまず統合中期見積もりをやる、そして統合中期見積もりを参考として各幕僚監部の中期見積もりをつくる、これをつくるのが来年の三月までである、こういうふうになっておると思います。  そうしますと、たとえば情勢判断あるいは別表以外の主要な即応性、抗堪性、継戦能力、こういったような各事業の取り扱い、さらにこれらの優先度、重点、これなんかについては長官指示で出されるのか、いや、それは統合中期の検討結果を待って、あるいはそれと並行的にやっていこうとされるのか、この点いかがでございますか。
  24. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 五六中業防衛計画大綱に定める防衛力水準を達成することを基本として作成したいと考えておりますが、その場合、大綱の別表は言うに及ばず、本文にあります防衛の構想に基づく防衛の大宗等についても達成することを考えておる次第でございます。  ちなみに五三中業におきましては、有効な防衛力の発揮に資するための後方支援、教育訓練態勢等の整備充実を重視事項として作成しておりますが、諸般の事情からその計画内容及び実施状況においては抗堪性の充実等を初め各般の面で必ずしも十分とは言えないと考えているところでございます。そこで五六中業におきましても、最初に申し上げましたような考え方のもとに、そういった問題を含めて努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  25. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまおっしゃいましたこの継戦能力、抗堪性あるいは即応能力の確保といったような問題は、これは五三中業でも重視をするというふうに言われていますけれども、これはもう全く刺身のつま程度でございましてほとんど中身がない、これが実態でございます。やはりこういうものをあわせてやらなければ防衛力にはならないわけでございますので、当然こういうものを、どちらが優先するという意味じゃなくて並行的にやっていただかなければならない、私はそう思います。  まだその辺が決まっておるかどうか知りませんが、今度そういったような作成をされるについて、私はまずそういったような事業を積み上げていくということが優先しなければならぬと思います。その辺はもうお考えは決まっておるわけですか。
  26. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま事業を積み上げていかなければならないという趣旨の御発言でございますが、私もそのとおりじゃないかと考えているわけでございまして、そういった方向で指示をいたしていきたいと考えておる次第であります。
  27. 堀江正夫

    堀江正夫君 時間がございませんので、最後に有事法制の問題に触れたいと思います。  防衛庁としてもう四年近くになるわけでございますね。今日まで検討された結果を先ほど中間報告をされたばかりでございます。したがいまして、細部の具体的内容について質疑をすることは後日に私は譲りたい、こう思いますが、きょうも御報告になりましたこの参考資料の中にもございますが、いわゆる防衛庁所管法制、これについても補備修正すべき幾つかの点が指摘されておるわけでございますが、まだ取り上げられておらない重要な部門が残されておるように私には思われてならないわけであります。いろいろあります。  一つだけ例を言いますと、有事の長官の補佐機能体制をどうするのだといったような問題もその一つでございます。いま申し上げました、まだ残っておるという問題にはどんな問題があるのかということを伺いたいというのが第一でございます。  時間がございませんから、まとめて私この問題については申し上げておきます。  次は、私はこのたびの中間報告を一応も二応も評価するのにやぶさかではございませんが、この検討に着手した当時と現在の情勢は大きく変化をしておる。これはもう明瞭な現実でございます。そして第一分類で具体的に取り上げられておる内容を見ましても、致命的な問題についていかに不備が多いかということが今日初めて国民の前に防衛庁の責任ある報告の中で明らかにされたわけであります。現在の情勢下、全国民に何とかして安心をしてもらうようにしなければならぬ、また自衛隊員の士気高揚のためにも、さらに抑止力を有効なものにするためにも私は早急な法制の整備が必要な時期になっておる、このように思います。  したがいまして、これに関連をしまして、この有事法制整備についていつごろまでにこれを行うのかといったような全般的な計画を防衛庁は持っておられるのかどうか。現在持っておられないとするならば、そのような計画をつくる考え方はあるのかないのか。  さらに今後のこの有事法制の整備を考えますと、私はまず国防会議基本的な方針を示す、その上に立って関係各省庁との協力分担関係もでき、そして具体的な問題について国民の理解を求めながらやっていく、こういうような段取りというものが大変必要じゃないかと、こう思うわけでございます。それらの点につきまして一括して御返事をいただきたい、このように思います。
  28. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 有事法制研究についていろいろな角度からお尋ねがあったわけでございますが、取りまとめましてお答え申し上げます。  まず、防衛庁所管法令に係る問題につきましては、私どもといたしましては現段階で考えられる問題点を一応整理したものと考えております。ただ、御指摘のとおり、有事の場合の長官の補佐のあり方の問題あるいは防衛庁職員給与法第三十条の規定に基づく法律の問題あるいは保管命令に従わない者に対する罰則の問題についてはさらに検討を行う必要があると考えているわけでございます。  また、この研究に着手したときと今日とでは、情勢に大きな変化があるではないか——変化が相当あるということは承知しているわけでございますが、繰り返し申し上げますとおり、とりあえず防衛庁所管法令についての研究のまとまったものを本日御報告したわけでございます。他省庁所管法令あるいはいずれの省庁に属するか明らかでないもの、こういったものにつきましては今後引き続き検討を進めてまいりたいと思うわけでございます。  また、研究の成果についての法令の整備の問題でございますが、これは研究とは一応別個のものといたしまして、防衛庁として新たに検討を進めてまいりたい。その場合におきましては、防衛庁内部でさらに勉強をすることは当然でございますが、所管法令といたしましても実効あらしめるためには、関係の省庁の協力も得なければならない面が多々あるわけでございます。そういった方面の協力を求めることにおきましても努力をいたしまして、そういった点がまとまり、かつ世論の動向等を見て次の段階の運びを決めることにいたしたいと考えております。したがいまして、一定の整備計画、時期をいつまでということで進めているわけではございません。残されました問題をできるだけ早く詰めまして今後のやり方を固めていきたいと、そういう考え方でおるわけでございます。  また、国防会議に対する関係でございますが、研究の出た段階で直ちに国防会議報告するということは考えておりませんが、いま申し上げましたような、今後の問題点の取り扱いについての今後の検討て法的措置をとる必要が出てくるというような段階におきまして、また国防会議なりにお諮りすることについてもさらにその段階で検討していきたい、さように考えておる次第でございます。
  29. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 警察庁、いらっしゃいますか、警察庁。  先日もタイの難民ボランティアの殺人事件、また昨日はマレーシアで日本のダム工事の事務所の所長が殺された。大変痛ましいことであり、心から悲しむことだと思います。  ところで、国内においては例の通り魔殺人に対する救済が七百万円ということで行われるわけですが、たしかあの法律によれば、海外であっても日本の船とか飛行機の中であるならばこれはよろしいということですが、たとえばタイとかマレーシアという外地において日本人がこういう通り魔的なことに遭った場合には救済の適用がなかったと思うが、事実関係だけ。
  30. 小池康雄

    説明員(小池康雄君) ただいまおっしゃいますように、ことしの一月一日から施行になりました犯罪被害者等給付金支給法の適用は、「日本国内又は日本国外にある日本船舶若しくは日本航空機内において行われた人の生命又は身体を害する罪に当たる行為」により被害を受けたその被害について行われるわけでございまして、それ以外の場合には適用がないということで、外国におきまして何らかの犯罪被害を受けたという場合には適用されないわけでございます。
  31. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 私も、党でこの法律を担当した一人として、非常にいま後悔しておるのですけれども、いろいろそういうケースというものが十分考えられなかった点もある。その点は私自身も反省いたしますが、この際早急にこの法律を手直ししてこのような非常に気の毒な立場の方々を救済する、そういう法改正の意思がありますか。
  32. 小池康雄

    説明員(小池康雄君) ただいまの御質問、大変むずかしい問題でございますが、率直に申し上げますと、この法律ができる過程におきまして、ただいま申し上げましたように、被害というものを日本国内または日本国外における船舶、航空機内において行われた犯罪による被害に限ったその考え方といたしましては、わが国の法秩序のもとで凶悪犯罪によりまして被害を受けて大変苦しんでおられるという方をそのまま放置しておくことがわが国の法秩序に対する国民の信頼を維持する上でどうであろうかということ、あるいはさらに、わが国の法秩序がそういう形で破られておるというのを少しでもそういう方たちを救済することによって秩序の回復を図ろうというような観点から議論されたように承知しておるわけでございます。  それで、確かに先生のいまおっしゃるような被害につきましては、大変お気の毒でありますし、何とかそういう方法が考えられないかという点につきましては、私どももそういう報道に接しまして同じような考えを持ったわけでございますが、外国における日本国民の生命、身体、財産の保護というような観点から、外務省中心に御検討が行われておるというように承知いたしておるわけでございまして、端的にこの法律をいますぐ改正してそういう対象を取り込むような改正内容を私どもの立場で考えるかどうかということについては、はっきり何とも申し上げられないというような状態でございます。
  33. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 外務大臣、お聞きのとおりなんでございますが、しかし、これは非常にお気の毒だし、それからまた総理自身も、何とかならないかというようなこともおっしゃっているそうでございます。外務大臣の立場からも、いまの法律を改正して外地のそうした問題に適用する方法がいいか、それともまたああした難民のボランティアなどは、軍事力は海外へ出すということは絶対しないのですから、せめて世界安全保障に平和的に役立っているボランティアなどを積極的に救済してやるということは必要なことだ、少なくとも国内と同じような扱いにしてやるべきだと、こういう点で外務大臣どうでしょうか、政府部内で検討していただいて何とかひとつ救済していただけませんか。
  34. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの問題、先ほど政府委員からもお答えしましたように、いろいろ法の問題から考えるとなかなかむずかしい問題が片方にある。現実は、ボランティアという非常に社会奉仕の高い理想から働いている方のああいう被害がある。そこをどういうふうに調整するかということで、これは頭が痛い問題でございまして、いまの方自身にはその法律の適用はございませんので、私としましてどうやってそれに類するぐらいの経済的なことを世話してあげられるかなと思って実はいま私は法律を離れまして別によく考えておるところでございますが、将来の問題としては、外国のどういう活動をした人まで認めるかというなかなかむずかしい問題がありますが、少なくともボランティアの人たちが安心して働けるということを何かの形で考えてやらなければいかぬなと私も思っておりますので、これはもう少し時間をいただきたいと思っております。
  35. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 原子力潜水艦の衝突事故につきまして、これは日米首脳会談などに影響があってはいけない、あるいは国内の世論もございますし、これは、できれば総理訪米前ぐらいにある程度の決着をつけるような、そういう努力が必要かと思いますが、その点外務大臣はどんなお考えでございますか。
  36. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は本件が日米の友好関係に傷を残す、悪い影響を与えるということは避けなければならぬと思っております。犠牲になられた方々、遭難された方々が非常に気の毒な、遺憾な事故だと思っておりますが、いま申し上げましたように、日米信頼関係を損なわぬようにと思って努力をいたしておるわけでございます。  先般、大統領から総理に親書が参りまして、鈴木総理がワシントンに来られる前に両方で必要な十分な進展が見られるように自分としては非常に期待していますという、大統領がみずから親書でそういうことを言ってこられたのでございまして、その後、私も先週も大使館に催促をしまして、今週も大使と会ってそのことを話すことを考えておりますし、総理が行かれるまでにある程度のものはわかる、全部決着しなくてもある程度のことがわかって国民に説明ができる、補償の問題は別にやっておりますが、ということでないといかぬというふうに私は考えて今後ともアメリカと交渉を続けるつもりでございます。
  37. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 先般のソ連軍艦の日本近海の実弾射撃についてお伺いいたしますが、その後、ソ連側から日本に事前通告をしてあると、こういう話でございますが、私はまた別の角度から、それは違う、聞いていないというようにも聞いております。真実はどちらでございますか。  さらに、ソ連に対して厳重に抗議したと聞いておりますが、外務大臣はどのような抗議をなさいましたか。  さらにまた、このような近海で、公海といえども非常に日本がびっくりするような、安全を損なうのじゃないかと思うようなことをするソ連のねらいは何だと思いますか。これはあるいは日本に対するデモンストレーションだというふうにも考えられるが、どうですか。  さらにまた、最近のスクランブル、特にソ連の飛行機らしい飛行機など、そういったようなものの動きはどうなっておりますか。  もう一点は、今回、アメリカが対ソ穀物の禁輸を解くというようなことから、何かソ連との雪解けムードのようなことを言われておりますけれども、甘くなってはいけない。この点については、過般外務大臣が外相会談もあるいはやるというようなお話も議連の方にあったそうでございますが、その場合等もやはり北方領土問題等、これはしっかり解決しなければならぬ問題があるわけですから、そういう問題をきちっとするという会談であっていただきたい、こう思います。  以上の点をそれぞれから伺いたい。
  38. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 後の方の問題でございますが、私が外相会談と言いましたのは、平和条約の交渉はお互いに交互に東京とモスクワでやろうということの約束ができているわけでございまして、二年前に園田外相が向こうに行かれて話をされ、今度はグロムイコ外相が平和条約の話に来る番になっておるわけでございますが、その後、来日がないわけでございますので、平和条約の話し合い、それは領土問題というものが前提にある平和条約の話し合いに来られるということであれば自分は喜んでひとつ会談をしようということを、あの議連の方が来られたときに申し上げたのでございまして、それはあくまで筋を通すということは当然でございます。  それから、穀物禁輸の問題でございますが、これはおとといですか発表になり、その前の晩、アメリカから通報があったのでございます。対ソ措置については、そのほかのことは、肥料の問題は若干ありますが変えない、アフガニスタンに対する軍事介入ということに対してこれは国際平和に対する大きな侵害だという考え方も変えないという連絡があったわけでございます。それで、穀物の問題は、先生御承知のように八百万トンはずっと輸出しているわけですから、その上につけるこぶを輸出禁止ということをしていたわけでございますが、そのこぶを輸出してもいいということを決めたということでございますが、日本ソ連の間は穀物の関係は全然ないわけでございますが、そのほかの点につきましては肥料を除いてアメリカも方針を変えたわけじゃございません。  日本としましても、その辺のところは十分に検討しまして、どういう態度でいくかということは検討をいたしますが、いま日本でやっております高い技術の製品についてココムで世界的に統一している。それから政府ベースの信用供与はケース・バイ・ケースで、森林開発でございますとか天然ガス、石炭、石油というようなものについては相互に利益があるのだということでケース・バイ・ケースで認めておりますので、この点については従来の方針を私は変えるべきではないのじゃないかというふうにいま思っておるということでございまして、あのことを契機に対ソの措置が変わるということは私は考えておりませんし、あれをやりました原因はソ連のアフガニスタンに対する軍事介入、北方領土に対する軍備の増配、整備ということでございますので、その情勢が変わらぬ限り日本としては自主的に物を判断し、従来とそう変えないという方針でございます。
  39. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) ソ連艦艇の射撃訓練につきまして御報告申し上げます。  二十三日のタス通信が、その前日、津軽半島の西側の沖合いでソ連の軍艦が行いました射撃訓練について事前通報したということを言っておるわけでございますが、そのような事実はございません。ソ連側から事前通報と申しますか、航行警報という形で予告をするわけでございますが、最近ソ連側からそのような航行警報がございましたのは、一つはカムチャツカ半島東南沖での射撃訓練、それからもう一つは沿海州沿岸での射撃訓練についてでございまして、津軽半島沖合いでの射撃訓練についての事前通報ないし航行警報というものは一切なかったというのが事実でございます。  それからまた、この件に関します外務省の対応ぶりでございますけれども、訓練の行われました翌日二十三日、早速在京ソ連大使館の館員を外務省に呼びまして、事前通告もなしに日本の近海において、公海上とはいえ、そのような射撃訓練を行ったのは一体どういうわけかということについて釈明を求めております。外務省に参りました館員の方は、自分はその事実関係は知らなかった、早速聞いてみるということで帰ったわけでございまして、現時点ではそのような釈明を求めている、ソ連側の意図について照会をしているということでございます。  それで、このような射撃訓練を行った意図をどのように判断するかという御質問でございますけれども、ソ連側の意図につきましては、いま申し上げましたようなことで照会しているところでございますので、現時点において憶測で申し上げるということは差し控えたいと存じております。  いずれにいたしましても、日本側の照会に対しますソ連側からの回答を待ちまして、その次にどのような外交的施策をとるかということは検討してまいりたいと考えております。
  40. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいまスクランブルの状況や艦艇の動向についてお尋ねがございましたので、取りまとめてお答え申し上げます。  ことしに入ってから実施しましたスクランブルの件数は一月八十四件、二月五十八件、三月八十五件でございます。四月はまだまとまっておりません。五十五年度全体を通じてのスクランブルの実施件数は七百八十三件であります。中越紛争の起こった昭和五十三年度の七百九十八件にはちょっと足りませんが、五十四年度は六百三十六件でありますから、二三%もふえております。  最近のスクランブルの目立った特徴としましては、ベトナム方面へのソ連機の飛行が定着し、このため西部及び南西部方面におけるスクランブルが増加していることでございます。ベトナム方面へのソ連機の飛行で注目すべきところは、対馬海峡を通峡してベトナムと往復するイリューシン62型機の飛行が昭和五十五年度南下、北上合計で百六十六回実施されたこと、及びベトナム常駐機の交代と見られますTU95ベアの飛行が昭和五十六年六月以降太平洋回りで約二カ月間周期に定着したことなどが挙げられます。  次に、防衛庁としましては、わが国近海における外国艦艇の動向については、特に三海峡を中心として監視を行っているところでございます。そこで、三海峡におけるソ連艦艇の動向につきましては、過去五カ年間の平均、たとえば対馬海峡百五十隻、津軽海峡五十五隻、宗谷海峡百五十五隻の計年間三百六十隻でございますが、最近注目されるものといたしましては、昨年及びことしにおいて宗谷海峡において行われました結氷期における航行訓練と、ただいま外務省からお答え申し上げました四月二十二日の青森沖における射撃がございます。  なお、潜水艦の行動につきましては厳に秘匿されておりまして、これを把握することはきわめて困難でございますが、日本周辺におけるソ連の潜水艦については、時たま浮上航行しているものを海峡監視あるいは監視飛行中に見つけることがございます。  以上、お答えいたします。
  41. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 最後に、外務大臣防衛庁に一点ずつ伺って終わります。  外務大臣、日韓の首脳会談、近く韓国の外務大臣がおいでになるそうですが、引き続いて韓国の大統領との首脳会談は予定されておりますか。  防衛庁に伺いたいのは、先日防衛庁長官防衛機密の保持について検討すると言われましたが、事務方として具体的にどういう点を検討されているか。  最後に、航空自衛隊浜松基地を民間で併用して使いたいという声が大変強いのですが、それについては協力していただく余地があるかどうか。  以上を伺って終わります。
  42. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日韓の外相会談は六月の上旬に行う予定でございます。首脳会談につきましては、この間、両方とも会って直接話すことを楽しみにしているということでございましたが、まだ外交ルートを通しましていつごろ、どこでというような具体的な交渉はいたしておりません。
  43. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 秘密保護に関する防衛庁としての事務的な検討状況についてはどうかというお尋ねでございましたが、防衛秘密を含めまして秘密保護のための新たな立法措置の問題につきましては、防衛庁といたしましてもいろいろな角度から検討しているところでございますが、仮に防衛上の秘密に限ったとしましても、保護すべき秘密の範囲、一般国民との関係、他の公務員とのバランスなど十分に検討すべき問題が多く含まれておりますし、また防衛庁だけでは解決できないものもありますので、国会の論議、世論の動向等も踏まえ慎重に対処しなければならない問題であると考え、さらにそういった考え方のもとに検討を続けてまいりたいと考えている次第でございます。  次に、浜松基地の民間航空との併用の希望が地元にある、これに対する防衛庁見解はどうであるかという趣旨お尋ねでございましたが、先生御承知のとおり、航空自衛隊の浜松飛行場におきましては航空自衛隊の航空機操縦士を養成するための教育訓練を実施しているところでございます。同飛行場といたしましては、このような性格上、教育課程にある者に対しましては十分時間をかけて訓練を実施できる環境を保持する必要がございますし、また飛行態様の異なる民間機と操縦技能証明を有しない者等の、訓練段階にある操縦者が操縦する多数の訓練機がまざって飛行するといいますことは、安全面から見た場合好ましくないと思われますので、防衛庁としましては浜松飛行場における民間航空との共用問題につきましては相当問題があるのではないか、さように考えている次第でございます。
  44. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 終わります。
  45. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、日米首脳会談を目前に控えておりますので、その重要な議題となると思われる防衛、軍事問題あるいは原潜問題等についてお尋ねをしておきたいと考えています。  最初に、防衛大綱の達成時期につきまして、六十二年にその水準に到達をする、そういう時期的な話が防衛庁長官総理との間にまとまったのかどうか、その点を確認的に伺っておきたいと思います。
  46. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答え申し上げます。  私は先週の金曜日の午後総理大臣にお目にかかりました。二十八日の国防会議において次の中業、すなわち五六中業の進め方として防衛計画大綱を達成することを基本として作業を始めることにつきましてお諮りをしたいということを申し上げまして御了承を得たのでございます。したがいまして、防衛計画大綱そのものを六十二年に仕上げるという趣旨で申し上げたわけではございません。五六中業作業を始めるに当たりまして、大綱の示す水準を何とか次の中業の期間中において達成することを基本的な考え方として始めさしていただきたい、その趣旨のことを国防会議にお諮りをする、こういうことを申し上げたのでございます。
  47. 矢田部理

    ○矢田部理君 表と裏の話であって、言うなら同じ話だと思うのですが、五六中業というのは御承知のように五十八年から六十二年、その五六中業の間に防衛大綱水準を達成するために努力をしたいという話をしたところ、それでよろしい、六十二年達成にしようと、こういうことになったわけですね。
  48. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 御承知のとおり、中業と申しますのは三年ごとにつくることに相なっております。現在の五三中業が五十五年から五十九年でございまして、次は五十八年から六十二年、これを大体まあ一年前に作業に着手するということで、五六中業につきましてもそろそろ始めなければいかぬ。それを始めるに当たりまして、これまでは防衛庁限りで進めておったわけでございますが、次の中業からはでき上がった段階で国防会議の何らかの形で議題とするということを国会でも申し上げておりますので、まあこの着手の段階でございますが、ひとつおおよその考え方だけは国防会議に諮って御了解を得ておいた方がよろしいのではないかということで、いま申し上げましたような事柄も含め、その他事務的な手続もございます、また、前提となります国際情勢認識の問題もあります、そういったものを用意しまして明日の会議に提出して御意見を聞こうと、こういう段階であるわけでございます。
  49. 矢田部理

    ○矢田部理君 同じ質問の繰り返しをやめたいのですが、私が聞いておりますのは年度の問題だけなんです。五六中業は六十二年までの計画ということになるわけですが、それで防衛水準を達成するということで防衛庁作業を進めたい、したがって、六十二年度には防衛計画で立てた、とにかく別表等で示された水準に到達するということについて総理は了解をされたというふうに伺っていいですか。イエスかノーかだけでいいです。
  50. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛計画大綱水準を達成することを基本的な考え方としてお諮りをしたいと申し上げているわけです。
  51. 矢田部理

    ○矢田部理君 それを六十一年度までに達成することを基本として話をしたところ、総理は了解されたと、こういうことですね。
  52. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 基本的な考え方として進めるということをお諮りするということで御了解を得たわけです。
  53. 矢田部理

    ○矢田部理君 防衛庁がどう進めるか聞いているのじゃなくて、それについて総理は了解されたかと聞いている。
  54. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁が出す案について御説明しました。内容はいま申し上げました点が中心でございますが、それらを含めてあすの国防会議にかけることについて御了承を得たわけです。
  55. 矢田部理

    ○矢田部理君 了承を得た。  そこで外務大臣に伺いたいのですが、先ほど堀江さんからの質問に対して、あしたどんなものがかかるのか知らぬ、よく話を聞いてから応答をしたい、態度を明らかにしたいと言っておられるわけですが、大筋の話は御承知なんでしょう。五十八年から始まる五六中業、六十二年に終わります。この六十二年の時点で、いまお話がありましたように、防衛計画大綱水準、別な言い方をすれば、大綱水準というのは私なりに理解をしますと、別表が付されています。そこで予定をされた装備、それを五三中業でもやってきているわけですが、その別表マイナス五三中業というふうに考えてもいいわけですね、単純に見れば。それを五六中業で実現をする、こういう内容になっていると思うのです。そういう内容と、しかも五六中業の最終年度に達成をするという、つまり六十二年度に達成をする、こういう中身、方向、時期的な考え方について外務大臣はどう受けとめておられるのですか、あるいは外務省の態度はいかがなんですか。
  56. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) たしか国防会議の幹事会ですか、きょうやられたと思うのですが、私はまだ結果を国会にずっといましたので聞いておりませんが、幹事会があったということを聞いております。防衛計画大綱の着実な水準達成ということの内容で御相談があるということは私も聞いておりますが、いま長官がおっしゃったように、よくみんなの意見を聞いてみようと、こういうことでいまも御答弁になりましたので、それがGNPとの関係でございますとか財政再建との関係でございますとかいろいろな問題がありますから、よく説明を聞いて、そして判断をしようということをさっき申し上げたとおりでございまして、いまも防衛庁長官はよくみんなの意見を聞いてみようと、こういうことでございますから、その辺のところはよく御説明を聞いて意見を述べようというのが私のいまの考え方でございます。
  57. 矢田部理

    ○矢田部理君 大蔵省が来ていると思いますので、大蔵省に伺いたいと思いますが、五六中業防衛計画大綱水準まで到達をする。これを達成するということになりますと、財政負担がきわめて大きくなると思うのですが、その財政負担等についてどう考えておられるか。五六中業ないしは防衛大綱水準に到達するために、軍事費として概算どのくらい支出すべきか、必要なのかということなどについて試算などをしておられるか、あるいは防衛庁からその筋の相談があったかどうか等を含めて大蔵省の見解を伺っておきたいと思います。
  58. 畠山蕃

    説明員(畠山蕃君) 御質問に直接お答えする前に、先ほど来防衛庁長官からるる御答弁申し上げている件について若干触れさしていただきたいと思いますが、あすの国防会議で予定されております内容は、防衛庁長官が各幕僚長に対して五六中業作業を開始するための指針を示す、それはこういう基本的考え方のもとにおいてやってよろしいかということについて国防会議報告を受けて了承をするという性格のものだと私どもは聞いております。したがいまして、政府として一年ぐらいかかってでき上がってまいりますところの五六中業そのものについて、防衛計画大綱水準を達成することを現段階で決めてしまうという性格のものではないわけでございます。  その前提に立ちまして、すなわち五六中業作業開始を現段階で始めまして、およそ一年間ぐらいかかって作業を行います関係上、現段階では全くその防衛計画大綱水準達成を基本とするとは言いながらも、その五六中業内容が具体的にどういうものであるかということは全くわかっておりません。したがいまして、その総経費が幾らかかるかということは私どもも独力には積算できませんし、それから防衛庁からもまだコンサルトを受ける段階に至っていないということで、現段階では全く数字についてはわからないという状況でございます。
  59. 矢田部理

    ○矢田部理君 話が少しく局部的なんじゃありませんか。先ほど防衛庁長官と同じようなやりとりを何度もしましたのは、五六中業防衛大綱水準まで到達をしたい、その五六中業は六十二年度までを計画として立てる。ここで大枠が決まるわけですね、それについて総理も了解をされた。五六中業は何かということになりますれば、いろいろな手順、段取りもあるだろうと思いますが、概括的に見れば、かってつくった防衛大綱水準、別表等に示された装備の内容、そのうち五三中業終了時までに到達できなかったもの、引いた残りがいわば五六中業ということに、概括的に言えばなるわけです。だから、当然のことながら、時期的な問題、概括的な内容が示されれば、それに対して財政当局としてどう考えるのか。いまきわめて財政難だ、行革も一方で進行しなければならぬという時期に、ただまだこれから始めるのだからということで黙ってお話を聞くわけにはいかぬと思うのですが、それについて大蔵省は全く議論も態度も決めずに臨むのですか。
  60. 畠山蕃

    説明員(畠山蕃君) 御承知だと思いますが、防衛計画大綱と申しますのは、実は抽象的な書き方の部分も含めまして、たとえば後方経費、教育訓練費といったものにつきましては、臨戦態勢に足るようなものを整備するという趣旨のことが書かれているだけでございます。したがいまして、防衛計画全体の大綱水準を達成するという場合には、まずその意味において数字的に必ずしも明らかになるようにできていないということが一点でございます。  それからまた、御指摘のありました、それでは別表に一部については具体的な数字が出ておるじやないかということもあろうかと思いますが、その別表におきましても、たとえば海上自衛隊の対潜水上艦艇約六十隻というのが出ております。それで、現段階で何隻だからその差額が何隻になるではないかという計算は、一応機械的には出ますが、その艦艇それ自身も、実を申しますと、一隻約六百億もするDDGと称するものにするのか、あるいは三百億円程度であるDDというものにするのか、あるいはさらにそれよりも安いDEというものにするのか、その具体的中身が決定を見ないことには、隻数が仮にわかったとしてもわからないという問題がございます。それからまた陸上自衛隊の例で申しますと、防衛計画大綱の別表には師団数が書いてあったり、何個団という数字は書いてございます。それから定員数も書いてございますが、そこにどういう装備を盛るかということまでは具体的に別表に示されていないわけでございます。したがいまして、これから防衛計画大綱水準として自動的に、一義的に決定される数字は出てまいらないということでございます。したがいまして、現段階でこの数字をわが方ではじくということは不可能でございます。
  61. 矢田部理

    ○矢田部理君 私も、厳密な意味で何が幾らという数値が出るだろうというふうには考えていません。もちろん五六中業等でどういう装備を何年度にどうするかということがもうちょっと詰められなければならぬ課題があることは事実だと十分承知しておりますが、しかし大綱水準というのはやはり一定の中身があり、ただ抽象的にだけ決めているわけではありません。それから時期的な目標が設定されたということになりますれば、それに基づいて、こういう艦艇を採用した場合にはこのぐらいかかる、こういう装備の場合にはどの程度だということのいわば予算的な裏づけなり試算なりが相伴わなければ、言うならば実質上のものになかなかなりにくいということだから、あしたの段階ではただお話だけ聞いて帰りますということでは済まないだろうと思う。財政当局の考え方なり立場なりを明らかにしてしかるべきだと思うわけだし、同時にまた、これはまだ入り口だからということだけでは済まされない。そこで、基本方針について了解を与えるということになりますれば、財政当局としても、言うならばそれを財政的に裏打ちしていく応分の責任をやはり持たざるを得なくなってくる。それだけに、あしたの国防会議というのは私は重要だと思っているのですが、財政当局としては、これまたお話を聞いて帰ってくるというだけの話ですか。
  62. 畠山蕃

    説明員(畠山蕃君) ただいま御質問お話の中にもございましたように、御質問では入り口という言葉をお使いになりましたが、先ほど申し上げましたとおり、あすの国防会議の審議——審議といいますか、報告、了承という形の対象になりますものは、防衛庁が五六中業作成に向けて作業を開始するというための基本方針としてこれでよいかということでございます。したがいまして、一年ぐらい具体的に作業をしてみないことにはわからないので、具体的に作業をしてみた結果でき上がってきたものについて、その段階で、一体財政負担はどのくらいたなるのか、あるいはそのほかに、財政当局だけではなくて、たとえば通産省の方でも、あるいは外務省の方でもいろいろと、そのでき上がったものについてはそれぞれの立場から意見がおありになろうかと思いますが、そういったでき上がった審議の対象物がないとわれわれとしても意見の申し上げようがない、ついては、さしあたってとにかく作業を始めてもらおうということで、あしたのところは、作業開始の基本的方針の報告を受けて、したがってその方針でやっていただきたいということで了承するというふうに私どもは理解しておりまして、一年後になりましょうと思いますが、その成果品ができ上がった段階でまた改めて協議検討するという立場でございます。
  63. 矢田部理

    ○矢田部理君 ではそう伺っておきましょう。  そこで、外務大臣に戻りますが、外務大臣は、先ほど堀江さんからの質問に答えて、それにしても数字などを出すべきでないという趣旨お話がございました。それは、日米首脳会談を目前に控えて、五六中業大綱水準を達成するとか、六十二年にこの水準に到達するとかいうようなことをこの時期に言うのはどうであろうかと、こういう趣旨でございましょうか。
  64. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ちょっとそれは違うのでございます。私の言いましたのは、国防会議のことじゃなくて、日米首脳会談の話でございまして、日米首脳会談で話されることは、大所高所に立った世界情勢の認識でございますとか、あるいは西側の一員としての日本の地位の問題、役割りの問題でございますとか、あるいは二国間の経済問題、防衛問題、そういう問題を当然お話になると思うわけでございますが、その際にいろいろ具体的に数字等が出てまいりますと、とかく数字というのはひとりや歩くということになりますし、数字を挙げて何か約束したのかというような誤解をまた人に与えることもございますし、防衛というものはあくまでこれは自主的に決めるものでございますので、私は、首脳会談ではその辺のところは注意された方がいいのじゃなかろうかというのが私の意見なんですということを申し上げたので、国防計画大綱国防会議で云々、どうするとか、そういうことを申し上げたのじゃない。首脳会談の中の話し合いをされる場合、御注意された方がいいのじゃなかろうかというようなことを私はこの前の会議で言ったということでございます。
  65. 矢田部理

    ○矢田部理君 質問趣旨というか、角度を変えて申し上げますと、かつて大平・カーター会談のときも、国民はほとんど五三中業なんというのを知りませんでした。にもかかわらずそれが日米会談の主要な議題になる、あるいはその早期達成を求められるという過去の経過に徴してみて、当然のことながら今度は軍事問題や防衛問題が日米首脳会談の主要な議題になるということはだれしも否定できないところに来ているわけです。  その首脳会談を前にして、六十二年には五六中業防衛計画水準の達成を行うということになりますと、当然のことながら数字が出てくる。もっと早くできぬのか、もっと早くやれというような話に進むことを恐れて外務大臣はそう言っておられるのではありませんか。
  66. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 亡くなった大平総理が参りましたときに、中期業務見積もりという言葉は実際は出てないのです。出てなくて、政府部内にある計画と、こういう抽象的な表現でございました。それを早期達成をすることは極東の平和のためにもたしか有意義、言葉そのままでございませんが、有意義だという意味のことがあったのでございまして、総理は、同盟国の一員として防衛の問題をいままでやってきたが、今後とも真剣にこれは検討していく問題だというようなやりとりがあったわけでございます。でございますので、私は首脳会談というのは恐らくそういう一般論でおやりになった方がいいのじゃないか、具体的な計画等につきましては皆担当の各国務大臣があるわけでございますから、そういうところでいろいろ話し合いをするということがあると思うのでございますが、総理は私はいま言ったような形で話されるのが一番いいのじゃないか、向こうも恐らく一般論としての日本の努力とか、そういうことの話し合いがあるのじゃなかろうか——厳しい情勢はそのとおりでございますが——というのが私の考え方でございまして、これ以上余りこれを言うとぐあいが悪いのでございますが、私の考えはそういう考えに立って御意見を申し上げたということでございます。
  67. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務大臣考えでいることが理解できないわけでもないのですが、どうも日米首脳会談を前にして、防衛大綱水準の達成とかその年度を明らかにするとか、さらには有事法制の準備状況を明らかにして訪米の手みやげにしようと思ったところが逆に足をとられる、逆にそれを足場にして早期達成なり日本軍事力増強を求められる、そういう可能性が強まってきているというふうに思えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  68. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 首脳会談はこれから行われるわけでございますから、いまから手のうちのいろいろなことを行かれる前にここでお話するというのは余り私は適当じゃないと思いますので、私の考え方は先ほどのとおりだということで御勘弁を願います。
  69. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本軍事力増強について、それが大きな議題になるということは事実のようでありますが、大平総理のときもそうでした。日本にある政府内部の計画について早期に達成を望むと言われたら、来年度予算で返答を出すとかいう返事をしたとも伝えられています。特に今度のように年度まで示して水準落成に努力するということになれば、そこにつけ込んでくる可能性もなしとしない、大きいと見なければなりません。アメリカとの間にへたな防衛約束などを、あるいは軍事増強の約束などを断じてすべきでないということを外務大臣に特に申し上げておきたいというふうに考えています。  そこで、原潜の問題に移りますが、原潜問題の時期的な決着を首脳会談前に、ということが事故直後に言われておったわけでありますが、どうもその後の状況を見ると、そうならない。むしろ調査報告などはおくれる。首脳会談前に何らかの前進をというふうに先ほど外務大臣は言われておるわけですが、どんな点での前進を期待し、あるいは現時点で考えておられるのでしょうか。
  70. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日米首脳会談の前に、私はある程度のことがわかるような報告をもらわないと困るということを言っている。向こうに一番言いましたのは、事故の再発防止という意味でも、なぜこういうことが起こったのだ、そのときの状態はどうであったのだということをはっきりして、そして事故の再発防止ということに役立てる必要があるので、そこをひとつはっきりわれわれにわかるように報告をしてもらいたい。それから、なぜ通報がおくれたのだ、どういう理由なんだ、これは国民はどうもわからぬということでございますので、なぜおくれたかということも報告してもらいたい。それから、衝突があったとすれば、その後で人命救助ということについて、海で生活をする人の道徳といいますか、人命救助ということにどういう努力をしたかということについてもどうもわれわれは納得のいかないところがあるということ、これは早急にひとつ国民がわかるように報告をしてもらいたい、それとあわせて、事後処置がしっかりしていないとこれは後に日米関係に悔いを残すということがあってはまずいので、補償問題を含めて事後処置はしっかりやってもらいたい、こういうことを冒頭から実は向こう側に伝えておるわけでございまして、それで少なくとも向こうの大統領からも双方に必要なことを満たす十分な進展があることを首脳会談の前に自分期待しているというような親書が来ているわけでございますので、い重言いましたようなことはやっぱり総理が行かれる前にある程度向こう調査の結果もわかっていないと困る。日本側の調査は海上保安庁でやっておられますから、これはそれをもって日本側の調査とすべきだと私は思いますが、向こう調査もある程度それが説明がつくようなものがないと、やはり総理が行かれたときに何にもわからぬということでは困るじゃないか、国民も、何にもまだわからぬのか、その中で首脳会談、こういうような感情になりますので、大統領の親書にもありますように、首脳会談前にある程度の報告をしてもらいたい、このことを実は先週も催促しました。きょう日本の大使が帰ってきておりまして、あした向こうへ帰りますので、大使にもいま私は厳重に言ったわけでございますし、私自身も今週マンスフィールド大使に会う予定をしておりますので、そういうことを厳しく伝えよう、向こうに要請しよう、こういうふうに思っております。
  71. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務大臣が努力していることは認めないわけではないのですが、首脳会談前にいま言われた事故の原因、救助と連絡のおくれ等について何らかのアメリカ側調査の結果についての説明があるというふうに見通されているのでしょうか。
  72. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私はそれを強く期待しています。
  73. 矢田部理

    ○矢田部理君 いろいろなことを期待されながら、あるいは中間報告を求められながら、みんな断られてきて延び延びになっている、時期的な見通しが立っていないというのが現状なんじゃありませんか。期待だけでなくて何らかの感触を持っておられるのですか。
  74. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 補償の方はもうすでに始まっております。これは向こうも責任を認めて補償するということで具体的に始まっておるわけでございます。そういうこともありますし、マンスフィールドさんも、異例のスピードということをわざわざ使って異例のスピードで調査する、そして出てきた真実はそのまま伝える、これをうやむやにするようなことはないということを実は何回も私に言っているわけでございまして、やはりそれと大統領の親書もございますし、それを評価して、それを信じて強く期待するというのが私のいまの立場でございます。
  75. 矢田部理

    ○矢田部理君 海上保安庁に伺いますが、日本調査はいつ結論が出ますか。
  76. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) 現在まで十三人の乗組員の皆様方からいろいろ事情聴取を行わせていただいておるわけでございますが、今日まで大体その供述内容もまとまりつつあるわけでございます。しかしながら、その供述の一つ一つを取り上げますと、やはりもう少し補足的にほかの方からのお話もあわせてこれを整合性を保つという必要のある部分もございますので、なおもう少し若干の日時をちょうだいできたら大変幸いだと思っているわけでございます。
  77. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは、当然のことながら首脳会談前に日本側の調査結果あるいは見解というのはまとまることになりますね。
  78. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) 先生も御存じかと思いますが、事故当時十日と十一日二日間にかかりましては、現場の串木野保安部におきまして十三人の方からまとまってお話を伺う機会を得たわけでございますが、現在におきましてはそれぞれお国元に帰られておりまして、これから先ほど申しましたような補充的なお伺いをするについては、相手方の御都合を伺って出かけていくということもございますので、いま具体的に首脳会談前に云々ということについては、大変申しわけございませんが、間に合うとか間に合わないとかいうことまではちょっとお答えできかねる状態でございます。
  79. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっとそこがおかしいのですよね、一つは。外務大臣、それは加害者でありますから、とりわけ連絡もせず救助もせず、きわめて不愉快な事態が続出をしたわけでありますから、当然にアメリカ側内容報告を求めるのは考えられるわけだし、それはしなければならぬわけですが、同時に、被害者としての立場として日本自身は調べた結果はこうだということを明確にしなければならぬ、それが少しくおくれ過ぎてはいないのか。捜査の専門家からすれば単純な事故なんですね。相当日数がかかりながらまだ日本側の調査の結論もいつになるかわからぬ、これじゃ首脳会談に臨んだって物の言いようがないじゃありませんか。被害者の調査の結果はこうだ、加害者側はこれを認めるか、この点はどうなっているのかというのが話し合い内容でなければならぬ、物の言い方はいろいろあるかもしれませんけれども。その点で、海上保安庁の調査中心にして行っているとすれば、当然のことながら首脳会談前に日本側の調査結果、結論を出すべきだ、それをもとにしてアメリカとの折衝をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
  80. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私もその点はおっしゃるとおりだと思うのです。でございますから、運輸大臣と十分これはこれから相談します。
  81. 矢田部理

    ○矢田部理君 海上保安庁も、いつになるかわからぬという話はないでしょう。捜査とか調査というのは大体いつまでに上げる、あるいは方針、方向を出すという目標を持ってやらなければ、しかもこんなものは単純な捜査ですよ、普通なら三日もあればできる性質の内容ですよ。何かその結論を出さないことは思惑なり考え方があってのことじゃないのですか。やはり緊急に日米首脳会談前にやるという約束をすべきだし、同時にまた、その内容については国会に報告するという約束をすべきだと思いますが、いかがですか。
  82. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) 一般論といたしまして、こういった衝突海難につきましては、私どもとしては両方の当事者からそれぞれ事情を聞きまして、それを突き合わせて詳細な分析をいたしまして一つの結論に達するというのが通常の形でございます。今回の場合におきましては、アメリカ側調査結果がまだ出ておりませんし、私どもといたしましては日昇丸サイドだけの、アメリカのどんな調査結果が出ましてもいつでも即応できるような形でしっかりしたものをつくっておきたいというふうに考えております。したがいまして、先ほど申しましたように、なお若干不明な点もございますので詰めさせていただきたいということでございます。
  83. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと観点が違うのですよ。海上保安庁は日米両国の上にある機関じゃないのですよ。被害者側からも聞き、加害者側からもお話を聞いて、それから結論を出すのですというので祖ちょっと違うのではありませんか。最終的な真実なりあるいは救助や連絡がおくれた理由はアメリカから聞かなければなりませんが、被害状況はかくかくだった、こういう状況のもとで衝突をされ、救難もされなかったという事実関係とその周辺状況を明らかにすることは日本自身でできるはずだ、それをやって、被害者の事実認識はこうだということをまず明らかにするのが先決じゃありませんか。米国日本の上に立って明らかにする官庁じゃないはずだから、その点もう一度、いまの答弁はおかしいと思いますので答弁を求めます。
  84. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) まさにいま先生の御指摘のように、そういう気持ちで私どもも当たっているわけでございますが、何ぶん先ほど申しましたような事情でございまして、もうこれで全部だというところまで確信を得ておりませんので、いましばらくのお時間をちょうだいしたい、しかしいろいろな段階の出し方がございますので、その点につきましては関係当局とよく御相談申し上げていきたいと、かように存じております。
  85. 矢田部理

    ○矢田部理君 調査の実務から言えば、首脳会談前にもちょっぴり残っているけれども大体できるというふうに承っていいですね。
  86. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) 海上保安庁サイドだけの問題から申しますと、でき上がりのぐあいがございますが、仮にそれでもいいというような話になりましたらそういうこともあり得るかと思いますが、ここでははっきりお約束できないのは申しわけございません。
  87. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうもはっきりしませんが、いずれにしたってそれは総理が行く前に日本調査結果が終わっていないというようなことがあってはならぬし、アメリカにその調査結果を求めるためにも日本の事実関係調査はかくかくだということを言うことによってより迫力が出てくると私は思いますので、外務大臣も含めてその点は十分留意をして作業を進めてほしいというふうに考えます。  そこで、関連して伺いますが、在日米海軍の話では、「ジョージ・ワシントン」は太平洋から南朝鮮の鎮海に向かって航行中であったという話があり、報道の一部にも伝えられておるわけでありますが、そういう事実関係については外務省内で確認しておられますか。
  88. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私たちも、そういう新聞報道がありましたので直ちに在日米海軍に問い合わせました。在日米海軍の方から、在日米海軍として報道されているような事実を公表したことはないという返事をもらっております。
  89. 矢田部理

    ○矢田部理君 新聞報道も公表というふうには言っておらないのです、伝えるところによればということなんですが、正式発表ではなくても、そういう状況の発表ないしは話があったのではありませんか。
  90. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先方の言い分は、あくまでもそれは報道であって、在日米海軍としてそれを公に承知すると、そういうようなことではない、したがってこれは単に報道にすぎないという回答でございます。
  91. 矢田部理

    ○矢田部理君 公に認めたかどうかは別として、もしこの報道が事実だとすれば、「ジョージ・ワシントン」は太平洋から鎮海に向かったコースとして九州の南端を回った可能性があります。もっと具体的に言えば、鹿児島の南に御承知のように大隅海峡があります。この海峡を航行した疑いがある。しかも、事故地点との関係で線引きをしてみますと、この大隅海峡経由で事故地点に達したとすれば、その周辺には宇治群島とか小さい島がかなり存在します。したがって、日本の領海は東シナ海に向かって大きく延びているわけです。当然のことながらここで領海侵犯、とりわけポラリス型原潜等については無害通航という立場から見てだめだということになっているわけでありますが、非核三原則の問題にも問題が発展をする可能性がある。したがって、外務省としてはそういう報道があり、しかも在京米海軍筋の伝えるところによればということになっているのであるが、公式に発表したかどうかは別として、この原潜の行動等についても米海軍なりあるいは米軍、さらにはアメリカ筋にきちっとやはり調査を求めるべきだ。その点いかがでしょうか。
  92. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほど委員が御質問になりました線引きと申しますか、地図について私たちも新聞では承知しておりますけれども、原子力潜水艦、特にこういう核装備の原子力潜水艦が仮に領海を通るということであれば、従来からの日米間の約束といいますか、日米間において核の持ち込みについては事前協議の対象になっております。したがって、今回事前協議を向こうから求めてきていないということから、われわれとしては今回の場合も核の持ち込みに当たるような行為を原子力潜水艦がなしたというふうには考えておりませんし、やはり日米間の信頼関係という上から、アメリカ側は従来再三にわたって大統領なりあるいは国務副長官が言明しております。そういう約束は必ず守っているというふうにわれわれとしてはまた確信しております。さらにロング大将も外務大臣に対して、日本の非核三原則というものはアメリカ側もよく承知しているということも述べております。  他方、アメリカ側政策として、原子力潜水艦の行動については公表しないということでございまして、われわれとしても、まさに原子力潜水艦がそういう行動の秘匿性というのが原子力潜水艦それ自身の持つ核の抑止力であるということを十分にわれわれとしては、政府としては理解している点でございます。
  93. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう外務省の態度がいま国民的な非難の的になっているのではありませんか。今度の事故に即して考えてみれば、あるいは考えてみても、あれだけ大きな事故を起こして人命まで失っていながら、後でまた問題にしますけれども、最初は霧の中で見えなかった、視界不良、その次は、見えたけれども事故を起こしたふうもなく安全に航行していったので救助しなかった。ときどきによって説明が違う。救助もしなければ連絡も三十何時間もおくれてからしかしない、こういうアメリカのやり方を信頼できるのですか。だからこそみんなこのことを問題にしているのじゃありませんか。    〔委員長退席、理事堀江正夫君着席〕 これに対して外務省は、再三にわたるわれわれの要求にもかかわらず、アメリカ日本に核を持ち込まないことになっている、非核三原則は十分に承知しているからそういうことはないはずだ、御信頼申し上げておりますという外務省の態度がいま一つ大変問題になっているのじゃありませんか。特にロング司令官との会談で鈴木総理やそれから伊東外相も非核三原則に言及をされたくだりが報道されておりますが、どうもひょっとするとそういう領海侵犯なり「ジョージ・ワシントン」が領海を通航した疑いがそれらにあったのでこんな問題が改めて出たのではないかというふうにすら勘ぐらざるを得ないようなことになるわけであります。  その点で私は、少なくともアメリカに対してさまざまな調査要求の重要な一つに、母港であるグアム港を出発して太平洋に出、かつこの東シナ海に渡ったわけでありますが、そこで日本の領海のきわめて近いところで事故を起こしたわけでありますから、この事故を中心とする前後の行動については明確にさせてしかるべきだ、その中から日本の非核三原則首脳会談でもさらにアメリカに確認を迫るべきだというふうに考えますが、外務大臣いかがでしょうか。
  94. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非核三原則の問題は私もロング司令官にお話ししたのでございまして、それはアメリカとしても従来も尊重していたし、今後も尊重するということであったわけでございます。  それで、本件がさっき御質問にあったようになぜ起きたか、なぜ通報がおくれたか、人命救助がどうであったかということがわからないと、いま矢田部さんのおっしゃったような不信感といいますか、そういうものが出て、日米の友好関係にかげりが差すということは本当に避けなければならぬことでございますので、私はアメリカに対して早急に調査をして国民に納得のできる説明をしてもらうことがいま先生のおっしゃったような疑問の解消にもなるわけでございますので、それをひとつ早く出してもらいたいということを要請しているわけでございまして、これは今後とも続けてまいりますが、いま淺尾局長から申し上げましたように、原子力潜水艦の行動等につきましては、これは照会をしましてもアメリカ軍としては言わない、詳細な発表はしないという従来からそういう態度でございますので、それがなくても、なぜ起きたか、なぜ通報がおくれたかというようなことは調査の結果でわかる可能性多分にあるというふうに私は思いますので、そのこと自体の原子力潜水艦の行動全部について照会はしていないということでございます。
  95. 矢田部理

    ○矢田部理君 少なくとも領海侵犯の疑いが指摘をされておるわけでありますから、日本の近海付近における原潜の行動、「ジョージ・ワシントン」の動き等については照会をしてしかるべきだ、これは強く要望しておきたいと思います。  あわせて米側の発表できわめて不可解なのは、衝突直後には霧と雨で視界が妨げられて、救助のために浮上したが見つからなかった、こう言っているのですね。ところが、日本のあの調査では視界不良などという状況ではない、それは雨と霧はあったかどうか知らぬけれども、十分に視界は可能であった。三キロ説もあるし、視界について防衛庁の資料を私きょうもらいましたが、十五キロあったと、こう言う。こういう議論が日本で出てきますと、いや、衝突後直ちに当該海域の捜査を行ったが、日昇丸が遭難の様子もないまま航行して去っていくのを目撃した、だから安心して帰りました、こういう報告になっている。  海上保安庁に一点だけ伺っておきますが、この日昇丸は衝突されてから沈むまでに十五分かかったと言われておりますが、相当程度衝突現場から航行をした事実はあるのでしょうか。それとも、ほぼ衝突地点で浸水を受け、機能がだめになって沈没をしたというふうに事実はなっているのでしょうか。
  96. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) 乗組員の皆さんの供述を総合いたしますと、日昇丸が衝突直後どの程度行き足があって航行したかどうかについては一切述べられておりませんので、その点についての確たるあれはございませんが、ある供述によりますと、ドカンといった後すぐ何か動かなくなったような趣旨の供述もございます。
  97. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういうことは緊急に調査すべきことであって、いまの供述ということがあるとすれば、またそれが事実とすれば、このアメリカの後の発表もこれまたおかしいということになるわけです。  同時にまた私が問題にしたいのは、いずれも目視を基本にしてアメリカ日本報告をしてきているわけですね、視界不良だったとか、視界はあったけれども安全に航行しているので去ったとか。しかし、原子力潜水艦の他船に対する探知能力は目で見るだけであるはずはない、さまざまな機器をもともと潜水艦は備えているわけでありますから。防衛庁、一般的にこの潜水艦というのはどんな探知能力、機器等を備えているでしょうか。
  98. 塩田章

    政府委員(塩田章君) お尋ねは潜水艦が他の船に対する探知能力というふうに承りましたが、一つはソナー、もちろんパッシブ、アクチブとあると思いますが、ソナーがあります。それから潜望鏡があります。主としてあとは視認、もちろん潜望鏡等を上に出した場合のレーダーによる捜索能力ももちろんございますが、潜没しておる場合にはソナー、上に上がった場合はレーダー及び潜望鏡による視認ということになろうかと思います。
  99. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が調べたのでも、たとえば「ジョージ・ワシントン」はパッシブソナーを持っている。それはAN/BQR−21DIMUSソナーというものであるというような記録もあるわけでありますが、そういうパッシブなものだけではなくて、アクチブソナーも持っているというのが常識だと思うのですね。加えて、これは漁船ですら持っているわけですから、レーダーあるいはさらにはエンジン識別機、そしてまた磁気探知機というようなものも一般的には備えているだろうと言われているわけです。また、そういう機器を備えなければ海中海上で行動する原子力潜水艦が行動そのものができないわけですよ。だから視界不良で見えなかったとしてもレーダーではとらえられるはずだし、海中に没すれば例のソナーでパッシブ、アクチブ面ソナーを備えているわけですから十分に探知できたはずだというふうに考えられますが、いかがでしょうか。
  100. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現実に「ジョージ・ワシントン」が何を持っておったかは私ども承知しておりませんが、一般的常識的にいえば十分に探知できたであろうと私もそう思います。
  101. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務大臣、そこに問題があるんですね。最初は視界不良で見えなかった。これは見たけれども別に沈没の様子もなくて安全に行ってしまったから救助しなかった。目で見ただけではなくてこれだけ高度の性能を有する原潜でありますから、さまざまな探知機器を持っているし探知能力を有している。当然のことながら日本の船の沈没は十二分過ぎるくらい確認ができた。にもかかわらずやらなかった。やらなかっただけではなくて連絡もしなかった。P3Cだって同じですよ。こういう態度をとってきているアメリカ側に対して、単純に調査結果待ちと、早く出してくださいと言うだけでは済まないもっと本質的なものを持っているということを私は考えておるわけでありますが、その点外務大臣としての見解を伺っておきたいと思います。
  102. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま矢田部さんのおっしゃるように、新聞等に出ている生存者の意見アメリカがステートメントで言ったこととは余りにも違っておるということでございますので、われわれとしてはあのステートメントだけでは国民が納得する説明はできない。もっと国民が常識的にもわかるような調査報告をしてもらわないと困るということを強く向こうに要請をしておるわけでございます。でございまして、そういうことがどういう調査結果が出ますか、それと海上保安庁でやっておられる調査結果というものを突き合わせてみて、言うべきことをまた言うということをしなければならぬと思っておるわけでございますが、このこと自体が日米関係信頼関係とか、そういう関係にひびが入るということになりますことは避けなければなりませんので、その点はアメリカ側にも十分説明をして、安保体制というものが、日本日米関係信頼関係というものが基軸なんだと、それに影響を与えるようなことがあってはいかぬということで私もアメリカ側に強く事情の調査ということを要請しているという考えでございます。
  103. 矢田部理

    ○矢田部理君 日米会談に影響を与えるかどうかはかかってアメリカ側の態度にある、日本側の心配すべきことではないというふうに考えるわけですが、その日米首脳会談にあって当然のことながらこの問題は論議に供さなければならぬと私は思います。どういう視点でやろうとされているのかということが一つと、もう一つ、補償問題は私も非常に重要だと思うのです。特に亡くなられた方や遭難をされた方々、船主等も含めて十分な補償をやってしかるべきだと思いますけれども、同時に、この補償問題が先行をして、事故の十分な原因、アメリカ側のとった非人道的な態度、これがあいまいにされてはならないというふうに思います。その点で補償問題を中心にして政治決着をしてしまうのではないかという心配をしている向きもあるのですが、この点外務大臣としてはどう考えますか。
  104. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういう考えは毛頭ございません。補償は補償、先ほどから言いました調査というものはやはり日本側の大部分の国民が納得するような調査でないといかぬわけでございますので、マンスフィールド大使もうやむやにはしないということを言っておるわけでございまして、補償とこれは別、両建てでちゃんとしてもらわないと困る、是々非々で間違ったところは間違ったということをやることが日米関係を、また友好関係をつないでいくゆえんでございますので、補償がもう済んだからこっちはうやむやということは毛頭考えていないということでございます。
  105. 矢田部理

    ○矢田部理君 いろいろ準備してきたのですが、ちょっと時間がありませんので、最後に有事法制中間報告がございましたので二、三点だけこれに触れた質疑をしておきたいと思います。    〔理事堀江正夫君退席、委員長着席〕  この内容を見ますと、三年から四年かけて研究をした成果、とりわけ防衛庁中心のまとめだというふうに言われておるのですが、三年も四年もかかってこれだけの内容かということになりますといささか疑問も持つわけです。(「隠しておる方が多いんだ」と呼ぶ者あり)いま不規則発言があったとおりでありまして、むしろ氷山の一角にすぎないのじゃありませんか。事実この別紙の方でも奇襲対処論については別途検討中、さらにはいわゆる防衛研究作業もあるというふうに言われておるのですが、その辺、きょう中間報告をされた内容と全体との関係、全体の作業状況とのかかわり等についてまずもって伺っておきたいと思います。
  106. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま厳しい御批判があったわけでございますが、私どもといたしましては、有事法制研究を始めましてここに三年近くの月日を経過いたしたのでございますが、その間に防衛庁所管法令についてできる限り努力を払いました結果、本日御報告しましたような研究の成果にたどりついたわけでございます。防衛庁所管法令につきましてもまだ研究の行き届かない面が若干あるわけでございますが、まず防衛庁所管法令につきましては一応まとまりましたものを御報告さしていただいたということでございます。そのほか他省庁の所管する法令もございますし、また所管官庁がいずれであるか必ずしもはっきりしないところも残されておりますので、そういった方面につきましては引き続き関係省庁とも御協力する、あるいはまた防衛庁だけでは詰められない問題等につきましては内閣等にも御相談して今後進めてまいりたい、さように考えている次第でございます。
  107. 矢田部理

    ○矢田部理君 三年も四年もかかってつくったというのが、言うならばこれだけということになると、相当程度隠しているのではないかということが一つ。  もともと私どもは有事立法が必要だというふうには考えておりません。ここに出てきた内容は、国民の立場は二言も書いていない。仮に有事の場合に国民の生命や財産はどう守るのかということは全く触れていない。どうやって国民の権利を長害し財産を奪うかということだけが書いてあるのがこれなんですね。しかも、すべてが憲法条項にかかわってくる。二十九条、強制労働等々、憲法違反という指摘も十分に根拠のある問題点が次から次と出されてきている。特にわれわれは戦前非常に忌まわしい思いをしたのでありますが、戦前には徴発令と国家総動員法でこれをやってのけた。この内容とどこが違うのでしょうか。従来、自衛隊法百三条は罰則がなかったということで、徴発令との違いを説明している本があります。今度は罰則までつけてくる。まさにこの徴発令、改めて読むまでもありませんが、「戦時若クハ事変二際シ」て、「所要ノ軍需ヲ地方ノ人民二賦課シテ徴發スル」制度。米麦、みそ、しょうゆ、薪炭、乗馬、車両等、さらには人夫、宿舎、飲み水、石炭などの徴発を規定した。これでも足りないということで、昭和十三年には国家総動員法がつくられている。兵器、艦艇、被服、医薬品、通信用物資、土木・建築用物資、燃料、電力など万般にわたって総動員体制が敷かれた。この再現じゃありませんか。  私はそういう意味で、忌まわしい徴発令や国家総動員法、あの戦争中の軍需負担とどこが違うのか、全く本質的には同じだということを指摘をして、中間報告などと言わないで、もうすべては報告を撤回してやめた方がいい、厳重に御忠告申し上げておきたいと思います。  最後に、いま私が幾つか指摘した問題、今後各論的にも、あるいは内容的にもさまざまな論議をしなければならぬかもしれませんけれども、いま幾つかの指摘に対してお答えがあれば、防衛庁長官見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  108. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま憲法を無視しているのではないかというお尋ねがございましたが、そのようなことは全くございません。この研究を始めるに当たりまして、私どもは日本国憲法の趣旨を十分踏んまえて、その上で自衛隊任務遂行に必要な法令について問題点の整理を主として行うということを初めから銘記して作業に臨んだわけでございます。したがいまして、ただいま御引用なさいました国家総動員法、あの場合には、先生御存じのとおり、広範な委任命令が多いわけでございますが、私どもの研究におきましては、憲法及び現行法令をしさいに検討しまして、その上で必要最小限のものを、立法措置を講ずるならばこうしたらどうか、あるいは現行法律に基づく政令制定するとすればこの内容はどうあったらいいか、そういった点の研究をしさいに検討して取りまとめて御報告した次第でございます。  また、徴発令につきましては、これは明治十五年の太政官布告と非常に古いもの、旧憲法も制定されない時代でございますので、そういったものは全く私ども念頭に置いておらないわけでございまして、あくまで現行憲法の範囲内で法律の制定等について必要最小限どの程度のものをしたらいいかという点を研究として掲げたわけでございます。  さらに、この研究に基づいて立法化する場合におきましても、これはまた別途に検討してまいる、もちろん憲法の制約等を十分念頭に置きながら、また関係省庁とも協議の上進めるということで、防衛庁限りで独走するとか、憲法を無視して独走するとか、そういうことは全く考えていないことを申し上げる次第でございます。
  109. 矢田部理

    ○矢田部理君 委員長、資料要求だけひとつお願いしたいと思います。  最後になりますが、海上保安庁の原潜事故にかかわる調査内容についてできるだけ詳細に当委員会報告すべきだ、報告とあわせて資料を提出すべきだと思いますが、その点当委員会としても要求をしていただきたいし、できれば時期的なめどづけをしてほしいと考えます。  以上、委員長にお願いしたいと思います。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 当面の日米首脳会談関係について二、三御質問します。  外務大臣も先般首脳会談の地ならしと申しましようか、訪米されまして、国務長官等レーガンの首脳と会ってきたわけでありますが、自動車問題も国内にみんなげたを預けられて、ある意味ではこちらの責任が全うできるかなと、こういう感じがします。自動車問題が解決しますと、首脳会談のテーマは防衛問題が当然最大のテーマになろうかと、こう思うわけでありますが、その辺、先月訪米されて首脳と話し合った感触はどのようなものでしょうか。
  111. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) この前首脳と会いましたときに、ちょうど自動車問題が出ておりましたので、自動車問題を話した時間はわりあい多かったわけでございます。それから、国際情勢認識につきまして、特にブッシュ副大統領、ヘイグ長官、ワインバーガーさんあたりは国際情勢というものの認識意見交換というものが多かったということでございますが、その国際情勢の中でやはり中東問題でございますとかあるいはソ連に対する国際協力の関係でございますとか、ソ連関係の平和関係維持の問題でございますとか、若干意見の食い違うことはございますが、八〇年代の国際情勢が厳しいということは意見が一致しておるわけでございます。  それで、先生のおっしゃった防衛問題でございますが、これはもう副大統領、国務長官、ワインバーガーさんとはもちろん出たわけでございまして、今度総理がおいでになればそういう国際情勢認識ということをお話しになり、二国間の問題でございますれば、当然防衛問題というのはどういうふうに考えるかというのは大きな問題としても話題になるというふうに私も思っております。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 私たち野党ですから、ある意味では勝手なことが言える立場にあって、ある場合には都合がいいのですけれども、どうも日米政府の対話というものがお互いに憲法を前面に出すわけです。向こう向こうで憲法をよく知っています、だけどまだやれることはあるじゃないですか、こちらはこちらで憲法の枠がありますからひとつ御了承願いたい——それでただ単に憲法という大枠の中で話がどうもすれ違っている面もあるのじゃなかろうか。いわゆる国内的な政治配慮、この多くはGNPの一%にしましても、これは小さいと言えないのでしょうけれども、国内の駐留米軍の日本政府の駐留費の負担の問題、こういうことを含めまして、憲法憲法と言いながら、憲法で決められた枠の中で核の問題なんか当然理解はあるでしょうという問題と、そうじゃないものがあるじゃないか、そこらあたりどう考えるのか。これを一緒くたに日本側は憲法の枠でと、こう言っているのじゃなかろうか、個々にはそれはそんなことはないと私はそう思いますよ。ですけれども、非常に憲法というものをお互いに前面に出しながら、それじゃ憲法の枠でできないことできることは何なのかという日本側の提示、さらに、向こうからも、北大西洋の、あるいはシーレーンあるいは防空、対潜のいろいろな、ひとつ日本のできることはやってもらいたいとか、マンスフィールドはもっと具体的な限定した発言をせんだってもしておりましたけれども、そういう、何か憲法をお互いに尊重しながら、事務レベルといいますか、事務レベルより首脳会談があるわけですから、外相会談があるわけですから、そういうところでもっと具体的に一つ一つテーマを挙げて、これはできるのだ、できないのだ、こういう問題の詰めがどうも欠けているのじゃなかろうか。一方、制服側は、もっとそれ以上に何かよからぬ先行しているものもあるいはあるのか、ここらあたりは私たちは全くわかりません。私たち国会でもたまに論議が出るだけでありまして、どこでどうやっているのかわかりません。ですから、今回の首脳会議におきまして、あるいは限定された時間かと思いますけれども、私たちの感触としては、もっと具体的にはっきり、できることできないことというものを詰めてくるべきじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、こういう考えはどうでしょうか。
  113. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 両方で憲法問題を言うというのはおっしゃるとおりでございまして、その憲法問題の中で、日本個別自衛権なんだ、いわゆる集団的自衛権というものはない、ですから、軍事力自分の国を守るたけだということを、これは向こうも了解し、日本も憲法上専守防衛、軍事大国にならぬということを言っているわけでございまして、これはお互いが認め合っての中の議論であることはまず御承知のとおりでございますが、日本個別自衛権という中で、日本はどういうことをすべきかということについての考え方の問題であることは間違いございません。私がこの前行きましたときにも、特にワインバーガーさんは、ペルシャ湾からインド洋、それからグアム以西、フィリピン以北ということで、太平洋の問題というようなことを例示をして、そして、アメリカ防衛努力をやっているのだ、でございまするので、日本としても、自分の国を守るというために一層の努力はしてもらいたいというふうな話がございまして、その中の具体的な問題としては、駐留米軍の経費を行政協定の範囲内でできるだけ持ってもらいたいという、具体的なということでございますればそういうことでございまして、あとは一般的な防衛努力をしてもらいたいということでございます。  そして、ワインバーガーさんの話は、パーセンテージを挙げたり、具体的にどこをどうしてもらいたいとか、そういうふうなことはレーガン政権は言わないつもりだ、基本的な国際認識の問題でございますとか、そういう基本的な話し合いをして、あと日本はどういうふうに具体的に考えていくのだということは、それは日本考えることなんで、われわれは一々そういう具体的な、こうこうこういうことを何%とか、どこの地域とか、どういう種類のこととか、そういうことは言わないつもりだ、それは日本自分考えるべきことだということが私と話し合いをしました中心でございますので、先生、具体的にもう少しいろいろ詰めたらどうかというお話でございますが、私は、やはり防衛というのは自主的に判断すべきだと思いますので、基本的な話し合いを首脳はされる。そして、ワインバーガーさんに言ったのですが、具体的なことは、当然防衛庁長官あるいは国防長官のワインバーガーさんが会われるでしょうから、そういうときに、こういうふうに期待をするという話をされるということはあり得るのじゃないかというようなことで私は話してまいりました。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 抽象的な問題で日米間の防衛問題、あうんの呼吸が合えばいいですけれども、具体的な問題は自主的に日本がやる、これはもう当然な話であります。  防衛庁長官、そうしますと、あしたが国防会議で、防衛庁が努力した五六中業の達成が六十二年と総理から基本的な考え方の了承はもらった。こうなりますと、自主的判断で来るべき日米首脳会談でこのことはぜひとも日本側の一つのテーマに防衛庁としてはしたい、こういう意欲は当然出てくるのじゃなかろうかと思いますが、いかがでしょう。
  115. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) あすの国防会議に付議する事項は、先般も御質問に対してお答えいたしましたとおり、防衛庁といたしましては、当面着手しなければならない次の中期業務の見積もりの作業を開始するに当たりまして、基本的な考え方を取りまとめて国防会議の御了解を得る。やってみなければわかりません。御了解を得られれば、その線で関係者の作業に入ることを進めたい、さように考えておるわけでございます。  作業の結果はいつ出るかといいますと、一年後に出るわけでございます。また、出たものは何らかの形で国防会議に付議する、幾つかの作業過程は今後予想されるおけでございます。  そこで、あしたお諮りする事項の中に、いまお話の出ました防衛計画大綱水準の達成を次の中業の期間に実現することを基本的な考え方としてその作業を進めるということをお願いしたいと考えているわけでございます。  御審議の結果、どのようになるかわかりません。また、それが了解されたといたしましても、次の中業そのものが、中身がそれで決まるとか、そういうことではございません。防衛庁として、担当官庁でございますので、そういった作業を進めるに当たって、明日の国防会議で御了解を得たい、そういうことで努力している最中であるということを申し上げざるを得ないわけであります。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、あした了解が得られることを前提にするということです。また総理が、先ほどおっしゃったように、基本的には六十二年達成は結構だ、こういうわけであります。ですから、いま外務大臣が、日本は自主的に防衛問題は論議すべきであると。当然そうです。ただし、抽象的なことばかりでなく、具体的なことも必要であろう、こういう中において外務大臣は、駐留費の問題は具体的にやってきておる。ですから、防衛庁としましては、こういう問題についてもあした了解を得られれば、総理基本的に了解しているのですから、首脳会談では、日本の自主的な判断としまして一つのテーマにしてもらいたい、こういう気持ちはありますか。
  117. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 繰り返し申し上げますが、次の中業作業を始めるに当たりまして、そういった事柄を一つ事項として織り込ましていただきたいということを明日お諮りするわけでございます。お諮りしましたところ、また列席の議員の中からいろいろ御意見も出ることと思いますので、国防会議全体としての意思がはっきりいたしましたら、それを踏んまえて私どもは作業にかかるようにいたしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ盛んに書いてあることだけ限定されて一生懸命お読みになっているのも結構ですけれども、日米会談のテーマになるかならないか、これは別にしましても、自主的に日本防衛努力をこのぐらいしているのだ、こういうようなことも言わなければならない、外務大臣はそういうふうにおっしゃった。これは当然ですよ、押しつけられるものじゃない。その中にあって、具体的となると、これは当面具体的な問題になり得るのじゃないのでしょうか。米国が了解するかしないか、これはわかりませんよ。ですから、そういうものについて、いわゆる六十二年に達成するかどうかというのは、外務大臣数字は控えた方がいいと、こうおっしゃっている。どうですか外務大臣、やはり一つのテーマとして日本はこういう問題についてアメリカと対話をするという姿勢はあった方がいいと、こういう点はどうですか。六十二年について数字とか具体的なものはともかく、その点はどうですか、外務大臣
  119. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私が言っておりますのは、数字をいろいろ挙げて話をしますと、向こうとそれを約束したとか、またそれが達成できなかった場合にどうとか、約束がどうの、いろいろな問題が出てくる可能性がいままでの経験上ございますので、私は、抽象的に考え方決意といいますか、そういうものを総理がお述べになるということが適当だろうというふうに考えて、総理に御意見具申し上げたわけでございまして、総理がどういうふうに判断されるか、まだあしたの会議の結果もございましょうし、今後話すこと、向こうと少しまた詰める余地もございますので、私は、いま先ほどから申し上げるような考え方総理に申し上げているところでございます。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 決意というのは、こういうものも含めて決意の中に入れろということですね。
  121. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) でございますので、こういう問題ということになりますと、こういう問題がどういう問題かというので、六十二年達成とかそういうことになってきますと、数字が入ってくる問題でございますので、あしたの会議の結果、どういうことになるかわかりませんが、総理は一応いろいろなことを頭に置いて、総理国際情勢に対する認識日本防衛努力に対する決意とか、そういうこともお述べになるだろうと私は思っております。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がありませんので、有事法制も聞きたいのですが、先ほど問題になった原潜の話です。  いわゆる原因と通報と救助の問題ですけれども、これは国民の皆さん方の納得するようにというお話なんです。どういうことになって納得するのか、これはわかりませんですけれども、ともかく大河原大使のお話ですと、中間報告は出ないと、これだけしかわかりませんですね。首脳会議前に出るという約束も向こうからないわけでありまして、これは速やかにやると、こちらも早くせいと、こういうことだけでありますから、万が一、首脳会談前にこれが出ないというと、これはもう相当首脳会談に悪影響を及ぼすと、こういう判断をして間違いないでしょうね。
  123. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 中間報告が……
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや中間はもう出ないのでしょう。
  125. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 出ないと言いましたのは、ロング司令官と私が話したときに、初めてそういうことを向こうが言いまして、三十日ということを言ったわけでございます。私は、三十日ということは首脳会談前に間に合わないじゃないかということで、中間報告が出なくてももっと前に報告が出るようにということを言ったのでございますが、その結果マンスフィールド大使は、それから一日後に、異例のスピードで調査はやる、そして大統領の親書を持ってこられまして、日米首脳会談の前に双方に必要なことが満たされる、十分な期待自分は持っておりますというふうなことを書いて、日米首脳会談の前にということを向こうからも親書が来たわけでございまして、マンスフィールドさんも異例なスピードでやる、出た真実は隠さぬ、うやむやにはせぬということを言っておられますし、大統領のそういう親書が来ましたので、私は首脳会談の前にある程度のことはわかるということを、その善意を信じて期待しているというのが現在の心境でございます。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然その首脳会談の場ということは、これはもうその前ということじゃなくて、厳密に幾日の何時と首脳会談がセットされるかわかりませんが、当然日本を出る前ということですか。総理日本をたたれる前、あるいはワシントンでやるその前であれば、首脳会談の前、ある程度リミットというものは当然あるでしょうね、首脳会談前と言ったって。いつまでだというようなことがあるのじゃないでしょうか。いまの憲法の枠なんというのと同じでありまして、いつまでということが当然あるのじゃないでしょうか、首脳会談といいましても。外務大臣はどういう考え首脳会談前と言われているのですか。
  127. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 向こうと詰めて、それは何日までだということを言っておりませんが、首脳会談が行われるのは七日、八日の予定でございます、アメリカでは。日本を出発されるのは四日でございますので、私どもとしましては出発前にある程度のものをぜひともと期待しております。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、あと六日間ですね、六日間までにこれが出ないと相当重大な日米間に悪影響を及ぼすと、ぜひこの話はマンスフィールドに聞かせなければならないと、こう思うのです。  それから、いま申しましたように、たとえ出たとしても——まあ出るでしょう、これだけアメリカも真剣なんですから、また出してもらわなければ困るんですが、原潜の構造なんというのは全く秘密ですから、機密ですから、それがどういう原因であったかなんということはまず出るのかなと、私たち素人でも、常識的にむずかしかろう。それから通告、救助の問題、なぜおくれたか、なぜできなかったか。これもやはり霧で、あるいは浮かんだけれども、日昇丸が航行可能だからもぐったとか、そういういままでに出た範囲とほとんど変わらない範囲が出たとすれば、これはもう納得できませんな。そうすると外務大臣として、海上保安庁の方も相当調査しているわけでありまして、聞いているかと思います、当然これが大きな問題になっているわけですから。これは単に通告がおくれたと、救済できたのかできないのか、こういう点ですけれども、もっと具体的に、生存者の証言がどんどんあったわけですから、外務大臣として、どういうところがもっと不可解なのかという具体的な問題、あれがもう今日あたりになるともうちょっと集約して認識の中にあるのじゃないかと思うのです。  それで、それが出れば国民は納得する、それが出なければ納得しないと、ここらあたり詰まっていないと、出たものについてもうこれで納得するのだと。これは外務大臣政府は納得するかもわからないけれども、国民は納得するかどうかわかりませんでしょう。それには、後六日後に出る予定ですな、訪米前ですから、離日前ですから。外務大臣として一番当初から姿勢は非常に明快だったですね、おかしいと。当初の衆議院の外務委員会からこれはおかしいとはっきり外務大臣はおっしゃったんですから。そうすると、それがずっと証人やなんか、向こうからも生存者の事情聴取なんかしているわけです。そういう海上保安庁やなんかのいろいろな報告を聞いて、ただ単に通報のおくれだとか人命救済ができたとかできないとか、こういう漠然たるものじゃなくて、たとえばこの点をもっとはっきりしないと国民に納得できる問題とはならないとか、こういう具体的な点についてはどうでしょうか。
  129. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) おっしゃるとおりでございまして、この前の通報で、ああいうことで国民が納得するかといえば、おかしいとわれわれ思ったわけでございますから、同じような程度の報告であればどうも納得できないということを言わざるを得ない。まだもらっておりませんが、日本の海上保安庁の報告はこうでございますということは、やはり突き合わせてみることは、私当然やらなければならぬというふうに思っているわけでございます。原潜の問題でございますから、アメリカも行動を全部、どこからどこへ行くときであったとか、そういうようなことは私はないと思うのです。それはなくても、どういうところでそういう事故が原因で起きたのか、あるいはどうして通報がおくれたのだという、人命救助は、向こうは見えなかったと言う、こっちは、新聞によれば、二キロぐらい見えたと、こういうようないろいろ違いがあるわけでございますから、それがやはり釈然としないと、わかるようでないと国民の皆さんは納得しない、われわれも納得しないということだろうと思います。  でございますので、これはどういう調査が来るかわかりませんが、調査次第によっては、これはどうもここは日本の調べとはおかしいから再調査してくれとかというようなことも当然私はあるものというふうに思っております。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 その再調査も、可能性を含めて四日までですか、三日までですか、ちょっと日にちが足りませんな、来てみなければわからないけれども。
  131. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それは報告内容いかんでございまして、いまここで完全に両方突き合わせてどうする、最終のものがどこかと私は言っているわけじゃないのでございますが、少なくとも国民が納得するような調査首脳会談前にはもらいたい。向こうも真実は隠さぬと、こう言っている、とにかくわざわざ言っているわけでございますから、私はそれを期待している、こういうことでございます。
  132. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから補償問題で、異例のスピードでやっているわけですね、向こう国内の軍事裁判を飛び越えて、結論が出る前に。向こうの責任の感覚というのは、事故を起こした責任、さらに通報のおくれ、救助についてのミス、これをもう全部含めて向こうの感覚というのはやはり責任と、だから補償と、こういう感覚が強いのじゃないでしょうか。どうでしょうか、外務大臣。これはまあ調査の結果が出ないのでわからないということでしょうけれども、向こうがこれだけ異例の、いまだかつてない、アメリカ国内の事故において、異例のこういうことをやる。こういうことはやはりすべての責任をと、人命救助も申しわけなかった、当然衝突の原因、それからさらに通報のおくれもうまくなかった、これを全部含めて責任なんだと、こういう感触じゃないのでしょうか。
  133. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 海軍長官が今度の事故は海軍の責任だということを認めたステートメントを出しているわけでございます。それで、補償の問題は早くやるということをやっているわけでございます。ただその中に、通報のおくれとかあるいは原因とか、あるいは人命救助の問題等につきましては、これはその責任者の処罰といいますか、そういう問題にも関連することなので、これはよほどの調査をしていただけないとはっきりしたことは言えないということをアメリカ側は盛んに何回も言って調査を待ってくれと、こういうことを言っているわけでございますが、この事故のことについては向こうに責任があるということを認めて補償の問題の話し合いに入っていくということでございます。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 有事法制について一、二お聞きしますけれども、この百三条の政令に盛り込むところの「医療等に従事する者」。これは物資のこと、土地使用のこと等々ありますが、なかんずく私権のあるいは人権の制約になるかどうか、いろいろこれは憲法上問題があるわけですけれども、それで、「災害救助法施行令に規定するもの」とすると、ここらあたりちょっと具体的にわからないのですけれども、これはお医者さんとかあるいは土木作業に従事する人、あるいはパイロット等の人の業務従事命令の手続だけをこの災害救助法にのっとってやると、こういう判断でしょうか。いかがでしょうか。
  135. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 百三条におきますところの従事命令というのは、先ほど御報告した資料に書いてありますように、おおむね災害救助法施行令と同様の規定だと、こういうことでございまして、まずその対象の範囲でございますが、災害救助法の施行令には、たとえば医師、薬剤師、土木建築業者あるいは鉄道業者、自動車、船舶等の運送業者というものがその対象に入っているわけでございます。私どもの対象の範囲も大体この災害救助法施行令と同じようなものを考えているというのが第一でございます。ただし、おおむねと申しましたのは、たとえば保健婦であるとか助産婦であるというものは私どものその百三条の従事命令の対象としては考えておらない。しかし一方、たとえば航空運送事業者というものは必要ではなかろうかというふうにいまおおむね考えているというのが実情でございます。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 この災害救助法については罰則規定がございますですね。いま考えているのは罰則規定もつけるという考えなんでしょうか。どうですか。
  137. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この百三条が実施されなければならないような事態というのは、相当事態が逼迫し国の安全に非常に重要な時期であるということから見て、私どもとしてはこういった従事命令につきましては当然のことながら国民各位の御協力が得られるものというふうに期待しております。また、罰則がなければ相当な効果が確保できないということでは、たとえ罰則を付したところで私どもの希望する効果というのは得られないわけでございますから、私どもは罰則を従事命令について科すということはいま考えておりません。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、逆に、災害というのは局部的なもので、人体に、生命にかかわるようなものではないところからお医者さんやなんか連れていくわけです。有事の場合にはもう日本全体、国民全体、まして近代戦ですからね。これはもう後方も前線もないでしょう。そういう中において協力を得られるものだという考えは道なんじゃないでしょうか。災害の場合には協力を得られるだろう。また県なり市なり国家なりがいろいろな工夫、システムを確立しておりますですね。ところがこの場合には災害と逆じゃないでしょうか。協力を得られるというよりも協力が得られない、そういう考えの方が合っているのじゃないでしょうか。災害と有事、戦乱、この場合においては災害の方が協力を得られる、戦争の方は協力を得られないというのが一般的常識じゃないでしょうか。得られるという考えに立っての研究でしょうか。
  139. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 有事の際に由の防衛というか、安全保障が損なわれるという事態になれば、当然のことながら国民各位はいろいろな意味での政府に対する協力というのは私まず第一に期待できるとかたく信じております。  それから第二点の問題ですが、従事命令というのは、この百三条をお読みになればおわかりのように、第一項において実際の自衛隊の行動にかかわる地域というものをまず規定しておりまして、この中では土地の使用、物資の収用、保管、施設の管理というものが入っておりますが、この従事命令というのは百三条の第二項でございまして、第一項にかかわるいわゆる自衛隊の行動にかかわる地域以外の地域、すなわち戦闘の行われている地域とは若干距離的にも離れた地域というふうなものを想定してつくられておるわけでございまして、したがいまして戦闘が行われているような地域、狭い、まあ非常に生命に危険のあるような地域については従事命令というのは適用されないというような形になっておることをつけ加えさしていただきます。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 これからの戦争、しかも日本の本土でしょう、この本土にどういう形で飛行機が攻撃するのか、艦砲射撃が来るのか、敵の部隊が上陸するのか。いま私は前方も後方もないでしょうと言ったのは、くしくもいや後方でと、生命にかかわらないところでと、生命にかかわるかかかわらないかなんていうのは余り問題じゃないのじゃないでしょうか。ここは生命にかかわらないからあなたたちはひとつ自衛隊に協力してくれ、そして罰則規定は設けないからひとつ善意で参加してくれと、こういう考えですか。私何も罰則規定を設けろとか、これがいいのだとかと、こういう考えじゃないので、まだ中間で研究ですからね、私はそういう考え方だけをいまお尋ねしているのです。まあ極端に言うと、危険な方向にいかないようにと、こういうことで。要するに危険なところじゃない、後方だから参加してくれるだろう。参加するしないというのは災害救助法、災害よりは戦争の方がよほど厳しい。災害こそ後方じゃないですか、災害が終わった後です、後片づけです。この場合には真っただ中で動員するんでしょう。それが後方も前線もないのじゃないんでしょうか。後方で命が危険じゃないから従事してくれるだろうと、そんな考えでこれをつくっているのですか。  そうすると、防衛庁というのは、憲法の制約の中でこれをつくらなければならない、もしこれに罰則規定や何か入れると憲法の制約の外に出るから罰則規定は入れられないのだと、こういうことでしょうか。そしてだから後方で生命の危険がないところで働いてもらうという詭弁に属するようなことをおっしゃらなければならないのでしょうか、どうですか。
  141. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず第一に、罰則規定につきましては、先ほど申し上げたとおり、物資保管命令などの場合を除きまして、特にこの従事命令についてはその効果が疑わしいということを考えまして、今回罰則規定を設けるということを考えなかった次第でございます。  それからもう一つ御指摘のあった、日本全土が戦場になるのではないか、特に近代戦における戦闘を考えた場合に前線と後方というふうなことを考えるのは非現実的ではないかというようなことにつきましては、私なるほどと思う向きもございますけれども、先ほど申し上げたことは、この百三条の立て方がそういう形になっておるということでございまして、戦闘の態様、事態によって千差万別でございましょうけれども、こういった事態考えられるということでございまして、有事になったら必ずこの従事命令を出して云々ということを決めているわけでございませんで、できるならば民事契約あるいはそういうことを必要としないで済むことが望ましいわけですが、最悪の事態にこういうことをお願いする必要があるのではないかということでこの報告にまとめさしていただいたということでございます。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 憲法との関係はどうですか、罰則規定、憲法との関係
  143. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 憲法につきましては、確かにこうした問題について罰則を設けるということは国民の権利義務というものに非常に重大な影響があるということが一つあろうかと思います。そういったことも私どもの念頭にあったことは事実でございます。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 憲法の枠の中でということで罰則規定は設けられないということで、これから善意に基づいてこういう作業をする。  それで時間がありませんので、そうすると今度は自衛隊自衛隊が敵前逃亡すると懲役七年ですか、しかし七年というのはそんなに軽くないのですけれども、わが身大事ですから、七年間どこかに入っているのとそこで命を失うのと、こうてんびんにかけたとき、それはおのおのの考えが当然あるのですけれども、出てくるかと思いますが、ただ、ここでいわゆるこの有事法制研究という中においての考え方として、現在の裁判のシステムというもの、いわゆる拒否してもいまの現行の裁判のところへでも訴える、こういうことはもう自由を認めているわけでしょうね、その自由は。まあ小西さんのことを出すまでもなく。そうしますと、門の前でビラを配った、服務規程違反というだけでも五年も十年も裁判がかかってしまうのですよ、五年も十年も。そうすると、これはシビリアンのことです。善意と、できるだけないようにと、憲法の枠だと、罰則規定を入れられないと、こういうお考え。そうすると、自衛隊の場合にはただでさえも定員を割っている。その自衛隊がいざとなって有事の場合に戦乱のちまたになったときに、敵前逃亡する、これで七年だと。じゃ、おれは裁判に訴えると、こんなものになった日にはこれは大変である。ということは、何らかしらやはり自衛隊法というものも、まあいまのはただ一つの例ですよ、変えないと、この有事に対しての即戦対応の自衛隊にはならない、こう思うのですが、いかがですか、この点。
  145. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 非常にむずかしい問題でございますが、私ども自衛隊の隊員が有事に際して敵前逃亡するというようなことがあるとは考えておらないわけでございます。というのは、自衛官に任官する場合には、これは「服務の本旨」にもありますように宣誓をして自衛官になっているということから、それは全然皆無とは申しませんが、大多数の自衛官というのは、何といいますか、命ずるままに死地に赴く、国を守るために敢然として戦う、銃をとるということを期待しているものでございます。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、この有事法制というのは善意と期待を持ってこれをつくるということになるのですか。そうすると、どこかの人が、そんなばかなことがあるかと、また超法規発言に準ずるようなことになる可能性もできてくるのじゃないですか。まあ私は何もこれをぎしぎし憲法の枠の中でもっとぴしぴしやれということじゃなくて、これは二回同じことを言いますけれども、研究されている中間報告という意味でお聞きするということなんで、その善意と期待中心にしてやってもこれだけやはり厳しいものになると、こういうことですね。そうすると、いま言ったような自衛隊法、そういう罰則規定については全く手をかけないで、有事のときには全員銃を持って戦ってくれることを期待すると。その中において少数の者が出たら、これは現行法の裁判システムにおいて五年かかろうが十年かかろうが、これはもういたし方がないのだと、これは憲法で決められているんだから。こういうことですか。
  147. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 自衛隊の任務というのはあくまでも外敵の侵入に当たり国を守るために働くということで、そういう意味合いから、専守防衛という立場から国内戦というものを考えなければいかぬ。国内戦を考えた場合には、国民の信頼と期待と善意の笛方というふうなものを前提にしなければ、私ども自衛隊の行動というものも効果を発揮しないと思います。当然のことながら、そういった前提に立ってでき上がっているというふうに理解しております。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛庁長官、これから研究が行われて、さらに法制化もという可能性だってあるわけでしょうな。その前提には国民の理解、それから自衛隊の政治ないしは為政者に対する期待、理解度、こういうものは全部ひっくるめなければならない。そうなりますと、こういうものについてもっともっとオープンにして、国会の場でどんどん論議していかなければならないのでしょうか。いま社会党の先生がおっしゃったように三年たってできた。だからこれはどこか隠してあるのじゃないか。私は素直なものでそこまでは極論は言いませんですけれども、ひとつこれからこういう報告をどんどん国会の場に上げて、そしてお互いにより広く国民の皆さん方のいい意味での認識と理解を求めるための資料にしなければならない、こう思うのですが、よろしゅうございますか。——それは結構ですね。  そしたらその後、この後これはいつごろ、その期待にこたえて資料が出てきますか、目標。
  149. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  三年近くかかりまして、本日御報告しましたような研究の成果を御報告いたしたわけでございます。残りの問題になりますると、防衛庁所管以外の法令でございますし、また所管のはっきりしないものもございますので、これまで以上に時間がかかる可能性が多いわけでございますが、先生が御指摘になりましたように研究の成果をできるだけ詳しく国民の前に明らかにする、また国会の御審議を通じて問題点をはっきりしていくという点につきましては私全く同感でございますので、今後の研究作業が済み次第、この問題につきましては御報告させていただきたい。  いまのところ、いつこの分について御報告できるという見通しを持っておりません点はまことに残念でございますが、気持ちとしましては先生御指摘の点を深く心に銘記いたしまして今後とも努力させていただきたい、さように存ずる次第であります。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 終わります。
  151. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、日米会談問題について質問いたしますが、その前に有事法制、つまり戦時立法問題について大臣から最初中間報告がありましたので、二間だけお伺いいたします。  これは憲法違反の自衛隊がいままで日陰の存在だったのが表に出てきて、表に出てきただけでなく、憲法に規定された国民の基本的人権、財産権、これを今度じゅうりんしようという中身を持っているという点で、そこに一番大事な大問題があると思う。  防衛庁長官にお伺いしますが、自衛隊というのは憲法九条で禁止されておる戦力に当たっておる、少なくとも何も書いてない存在ですが、その自衛隊がたとえば二十九条財産権、公共のために補償をもって用いることができるとありますが、そういう財産権を侵すとか取り上げたりするわけですな。戦時中の国家総動員法とか徴発令、徴用今、そういうようなものをやる憲法上の根拠はどこにあるのですか。——いや長官、長官。そのぐらいわかるよ。
  152. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) その前に政府委員から。
  153. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず、今回の有事法制中間報告というのは、去る五十三年九月二十一日に出された防衛庁見解にありますように、私ども現在の憲法の範囲内、枠内でまず研究をしたということが第一点でございます。したがいまして、現在の憲法の枠を超えるような徴兵制であるとか戒厳令であるとか、いわゆる徴発令に関したものは一切検討をしていないということが第一点でございます。  それから、この有事法制研究というのは、あくまでも有事における自衛隊の運用というか、行動というものの円滑を図るという意味から、法制上の問題点を整理するという観点から行ったものでございまして、私ども有事の場合におきましても国民の権利あるいは国民生活というものを不当に圧迫するようなことはまた考えておらない。国民の財産権についても同様でございます。中身を見ていただけばわかりますように、私ども決して財産権をみだりに侵害するようなことは一切考えておらないわけでございます。  先生がいま御指摘になった財産権の具体的な問題としましては、百三条によって土地を使用する場合に防衛出動待機命令からこれを使用するようにできることというのが第一点。それからまた工作物の撤去の問題がありますが、こういった有事における当該土地の、特定の土地が必要であるというふうなことをかんがみて、私どもとしては当然この程度のことは認められるのではなかろうか、しかも、それは一定の手続なり補償手続をやった上でなおかつこういうことをお願いしたいというものでございまして、決して憲法の枠を超えるものだとは思っておりません。
  154. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 自衛隊そのものが憲法の枠の外なんですから、憲法の枠内でということも全く意味がないと私は思います。  もう一問。安保条約によると日米共同作戦ということもあるわけで、自衛隊がこういう有事立法、戦時立法が必要なら米軍のためにもこういう有事法制が必要になるとあなた方はお考えになっていると思います。以前、予算委員会でもそういう答弁がありましたけれども、この中に「未検討のもの」とありますけれども、米軍のための有事法制、こういうものも研究しているのか。それとも将来必要だと考えているのか、お答え願います、官房長。
  155. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 先ほどもお答えしましたとおり、今回の有事法制というのは、自衛隊法第七十六条による防衛出動が下令された時点において自衛隊がいかに有効に機能し運用するかという点からの法制上の諸問題というものを検討する、問題点を整理することを目的としたものでございまして、米軍とのかかわり合いについては今回の研究対象にはしておりません。
  156. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 将来必要となるということも考えていますか。
  157. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) いま私どもこの有事法制研究の一環としてはそういうものを対象としていないということを申し上げたのでございますが、これと別にそういった検討を未来永劫しないのかするのかということにつきましては、私防衛庁の将来とられる措置について半永久的なことについて答弁をする立場にございませんので御容赦を願いたいと思います。
  158. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 否定されなかった。これは非常に大事な問題なので今後われわれもさらに追及したいと思いますが、私はこういう危険な憲法違反の作業は即事中止すべきだということを一言申し上げておきたいと思います。  さて、日米会談ですけれども、外務大臣、レーガン大統領との会談、五月七日、八日と言われておりますが、健康上の都合もあってレーガン大統領と鈴木首相とは一日だけであろうという報道もありますが、その点とうなっていますか。
  159. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 当方としては五月七日、八日を希望し、向こうも事務レベルでは五月七日ということを言っておりますけれども、第二回の会談がわが方の希望どおり行われるかどうか、いま現在の時点では未定でございます。
  160. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほど外務大臣ワインバーガー国防長官から首相との会談申し入れがあったということを認められました。となると鈴木首相は大統領とは一日だけ、二日目には国防長官と首相が会談するという非常に異例な事態も生まれ得るかもしれません。それからきょうの夕刊には、大河原駐米大使が鈴木首相と日米首脳会談に臨む問題について二人で協議したという記事があって、大河原大使は、米政府は今回の首脳会談防衛問題を最重要の問題としているという説明があったというのがきょうの夕刊に載っております。私は会談の中身も非常に大事だけれども、会談後の共同声明、また首相のナショナルプレスクラブでの演説、これが非常に重要になると思うのですけれども、共同声明並びにプレスクラブの演説、もう準備が進んでいると思いますが、日本側としてはどういう骨子を考えていますか。
  161. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 会談もこれからでございますし、いま申し上げたように二日をこっちは希望しておりますが、次の日のことはまだ未定である。ワインバーガー国防長官もこれは表敬の希望があることは確かなんですが、まだ日程上詰まっておりませんのでこれも未定でございます。そういう日程上も未定がございますし、議題がまだ実は最終的に決まっておらぬわけでございますので、いま先生がおっしゃった共同声明の内容あるいは新聞の諸君に対する記者会見の内容等についてはまだ未定でございますので、いまここでこういうことでございますというような段階にはまだなっておりません。
  162. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 われわれ先日の党首会談でも申し入れたのですが、少なくとも会談、共同声明、こういう演説で、軍事問題に対処する最小限の原則的態度として、日本憲法の平和条項、非核三原則、これは明確に表明すべきだと思うのですが、いかがですか。外務大臣、この間の日米協会での演説で一言もあなたは触れられなかった。今度は必ず触れてほしいと思います。
  163. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 向こうと話しましたときは、私はこういう内容のことは話したわけでございまして、今度総理が行かれましてどういう議題、どういう話し合いをされるかまだ未定でございますので、上田さんの御希望は伺っておきますが、これをいまここで必ず入れますとか入れませんとか、そういうことはまだお答えする段階ではございません。
  164. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 岩国の核持ち込みの疑惑の問題、今度のポラリス原潜の問題で非核三原則が非常に重要になっておりますが、外務大臣、今度のポラリス原潜の事故地点が領海から何キロ離れていた場所だったか正確に御存じですか。
  165. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 大体領海外十一海里ぐらいといま覚えておりますが、キロで直すとちょっと違いますので、海里で御勘弁願います。
  166. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私はこの問題をこの前のこの委員会でも言いましたけれども、宇治群島の領海から十六キロなんですね。外務大臣日米会談を前にして非核三原則問題を重視しようとしていながら、今度の事故が領海からわずか十六キロ、そういうところで起きたということさえすぐ答えられない、淺尾さんと打ち合わせなければ答えられないというところに問題がある。  毎日新聞の四月二十一日に「安保と非核 灰色の領域」という連載があります。ここで故大平首相が急逝される二カ月前の四月末に、「大平はまわりの官房長官・伊東正義、同副長官・加藤紘一、首席秘書官・森田一に」この非核三原則のことを述べた。日本は「核の存在をあいまいにしているという現状だ。そんなごまかしがあるだろうか。非核三原則のうち持ち込みの問題を、もうなんとかしなくてはいけないのではないのかな」と、「それまで黙って聞き入っていた三人は、話がここに及ぶと、先を争うように口を差しはさんだ。とんでもない。現状ではとても無理ですよ」云々とありますけれども、あなたは官房長官として四月末に大平首相が非核三原則の持ち込まずということについては手をつけなければならないのではないかということを聞いた記憶がございますか。正直な方なので正直に答えてください。
  167. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) さっき相談しましたのは、十一海里は何キロになるかという相談をしたのでございまして、全然知らぬのじゃございませんから、弁解をしておきます。  大平総理との話でいまのようなことが出たかということでございますが、全然私は記憶ございません。
  168. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカ側からこの非核三原則の「持ち込ませず」を何とかしなければならぬのではないかということが公式あるいは非公式に伝えられたことはありませんか。
  169. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は全然そういうことを聞いたことがございません。
  170. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほどから首脳会談にも関連してポラリス原潜問題が審議されております。私も先日この問題を幾つか質問したのですが、なかなかわからない問題がいろいろあるわけです。  海上保安庁にお伺いします。乗組員の多くの証言には、衝突のときに飛行機が飛んでいた。それから漂流俊二、三時間後にまた飛んでいたというような証言があると思いますが、どういうふうに証言しておりますか。
  171. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) ただいま先生の御指摘になりました点につきまして乗組員の供述によりますと、衝突直後に飛んできた飛行機は衝突後七分から八分たったときから日昇丸が沈没するころまでの間に飛来し、機体の色は銀色または白銀色で、標識は丸印の中に星のマークがあり、その両わきに白い線があるものが低空で二回から三回旋回したと述べております。なお、飛行機の形につきましては、プロペラ機、双発機、飛行機、ジェット機と乗組員の供述は異なっております。さらに漂流中におきます航空機につきましては、乗組員の供述によりますと、沈没三十分後から九日夕刻までの間に飛来しているのを視認しているが、航空機の形、機体の色、標識については不明確であり、沈没直後に見たのと同じ飛行機であると述べている者、前に見た飛行機とは異なっていると述べている者、民間機と述べている者等、乗組員の供述内容は異なっております。
  172. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、先日この問題を取り上げてE2Cではないかという疑惑を表明したのですが、翌日私どもの党のメンバーがもう一度黒沢二等機関士に那珂湊まで行ってお会いしました。E2Cの写真を見せたら、どうも違うという答えでした。しかし、非常に明瞭に答えたのは、もう本当に沈没したとき上がって、見て、よく見た、明らかに小さな飛行機で、双発のプロペラ機だったというのです。P3Cでは絶対ないと、漂流してから見たのはP3Cだったと、黒沢さんはですよ。四発で、向こうの方を旋回して行ったというのですね。それでどうも私は、だから二つ飛行機がいたのじゃないかというふうに思うのです。  それで、塩田防衛局長はP3Cだということをレーダーサイトの磁気テープ、これで確認されたと、そう証言しておられますけれども、P3C以外に甑島のレーダーサイトの記録の中に米軍飛行機が当日飛んでいたという記録はありませんでしたか。
  173. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ございません。
  174. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、問題の三沢基地からのP3Cは、現場到着は当日何時ごろだったと記録にありますか。
  175. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私が申し上げられますのは、九日の十時半ごろと事故の時刻が推定されておるわけですが、その前後に航空自衛隊のレーダーサイトがキャッチした飛行機がある、その飛行機は米軍のP3Cであると、こういうことでございます。
  176. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その後、漂流していたとき乗組員が見た飛行機、これの記録はありませんか。
  177. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 米軍の飛行機、当日はその一機のみでございます。
  178. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外務大臣、そのときに私は幾つか述べましたが、飛行機についても乗組員の証言で幾つかの疑惑があります。これは先日この委員会で述べましたように、演習をしていたという証言もいろいろ、演習と思われるのもあるんですね。その点で、やっぱりアメリカ側にきちんと追及しなければならない問題が非常に多いということを外務大臣もよく頭に置いていただきたいと思うのです。  演習問題については、海上保安庁、乗組員の証言はどうですか。シュルシュルという音とかドーンという音がしたとかいう証言があるんじゃないですか。
  179. 大塚正名

    政府委員(大塚正名君) 具体的供述内容につきましては、演習という言葉を使っているのもございますが、大体音としてドンドーン、ドスーン、プシュープシューというような音を各一回ずつ聞いたというような表現がございます。
  180. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは外務大臣アメリカ側の六日後に発表されるかもしれない中間的な報告でもとうてい解決できないようなさまざまな問題があるということを十分腹に据えて日米会談に臨んでいただきたいと思います。  私、この六十二年度達成の防衛大綱問題、その他その他お聞きしたかったのですが、残念ながら余り時間がございません。  そこで、総合安全保障ですね、こういう政策を掲げて日米首脳会談に臨まれるという態度が報道をされております。先日の党首会談でも首相もそういう趣旨のことを述べておられましたが、一つまず外相にお聞きしたいのは、あなたはこの間の日米協会での演説で、大平首相の演説ですね、犠牲を払ってでも日本はやらなければならぬというのを引用されておられる。どういう犠牲を払わなければならぬとお考えなんですか。
  181. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 大平総理の演説は、たしか衆議院の本会議でも参議院の本会議でも述べたと思うのでございますが、あれはイランの人質問題、それからアフガニスタンに対するソ連の軍事介入に基づいて西側がイランに対して経済制裁をするとか、あるいはソ連に対していろいろな措置をするということをやったときに使った言葉でございます。  それで、日本としましては西側の一員として連帯、協調を保つ、そして世界の平和を保つ、またイランの人質のような国際法を無視したやり方に対して反省を求めるということをしたわけでございますが、その際には日本もそういうことがなければ普通の貿易でございますとか経済関係でございますとか、あれはやったのでございますが、それは西側の一員としてある程度の犠牲を忍んでも連帯、協調を図ってやるべきだということを大平総理か言ったわけでございまして、国際秩序が乱れる、あるいは武力で他国に介入するというような場合に、やはりそれは痛いやけどをするということを友邦間で十分に討議をして、たとえ犠牲を払ってもそういうことはやめさせ、世界の平和を守っていくのだと、こういうことで犠牲を払ってもということをあのとき使ったということでございます。
  182. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、今度の日米会談は軍備拡張を初め、かなり大きな犠牲を国民に背負わせるものとなるのではないかという非常に大きな危険を感じている。  一つお伺いしたいのですけれども、ここに私コピーを持ってきておりますが、四月二十二日、英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン、これにアメリカの国防総省が秘密報告書「軍事支出についての同盟国の努力」、これを作成したということが報道されておる。これは近く議会に提出されるそうです。この報告書は、日本に対し「公平な分担とははるかに離れている」「あまりに努力が少ない」と批判している。一番問題なのはこう書いてある、南西アジアにおけるアメリカの軍事施設を補うために、アメリカは同地域における米軍と基地のための資金を同盟諸国、石油消費諸国がもっと負担すべきだと交渉中だと、イズ・ネゴシエーティングと書いてある。交渉を行っていると同報告書は指摘していると。この報告書によると、これらの費用の満足し得る分配はアメリカと同盟諸国、とりわけ西ドイツとの間にあらわれている。この問題に関与している他の国は、イギリス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグと日本であると、ジャパンということがこの秘密報告書にあるというんですね。  三月のレーガン・サッチャー会談では、ペルシャ湾沿岸で米英仏で国際部隊をつくろうという話が問題になって、ここで初めて表ざたになったのですけれども、この問題が日米会談でも出る可能性があると思うのですね。経済協力経済協力ということをあなた方は言われ、総合安全保障というふうに言われております。私ども、党首会談でも要求しましたが、中東ペルシャ湾沿岸地帯に対するアメリカなどの基地建設あるいは国際部隊常駐構想などに対して、軍事的努力は無理としても、経済協力、技術協力をやってくれという話が出たとき、いかなる負担も負うべきでないと思います。はっきり拒否するとお約束できますか。
  183. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまのような、日本に対して交渉中というようなことは一切ございません。われわれ聞いておりません。  それから、日米首脳会談でそういう話が出たときに日本は断るべきだというお話がございました。日本経済協力は、先ほども先生に御説明したように、南北問題を中心発展途上国の社会、経済開発あるいは民生安定、福祉向上ということがやっぱり主体でございまして、国会の委員会の決議もありますように、軍事目的とか、そういうものには一切使わぬということになっておるわけでございます。私どもとしましては、発展途上国民生上、たとえば農業をやりたいが水がないというような問題でございますとか、その国の需要というものはいろいろ千差万別だろうと思うのでございますが、その場合にわれわれは東西関係を主として物を考えていくということよりも、やっぱり南北関係を主として物事は考えていく、そしてその間に、先ほどもお答えしましたが、相互依存関係というのは、これは経済問題だけでなくて政治問題もございますので、その周辺国等にはパキスタンとかタイとか、そういうところには経済協力をある程度も考えるということをやっておるわけでございますので、南北問題を中心に、またひとつ幅広い立場で経済協力考えるということでございますので、いま抽象的にお話がございましたが、どの国でどういう需要があるのか、それはどんな需要なんだというようなこと、技術協力であるか、あるいは資金協力であるか、あるいはバンクローンであるか、いろいろな形があると思うのですが、具体的な問題でないと私はいまここで一般的にどうというお答えはできないわけでございますが、十分そういうことは注意をしたいと思いますし、首脳会談でそういう国を挙げて、こういうところをどうというようなことは私は出ないというふうに思っておるわけでございます。
  184. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛庁長官、この首脳会談の後、ハワイで日米安保協議委員会の事務レベル会議が六月十日と報道されている。それから、防衛庁長官訪米日程も六月二十九、三十、どちらかだという報道がありますけれども、この日程はどうなっていますか。
  185. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 事務レベルの方はまだ決まっておりません。  それから、私の訪米の時期は、ワインバーガー国防長官から六月の二十九、三十日が都合がいいというあれが来ておりまして、それに対する返事を最近お出ししたということでございます。
  186. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首脳会談でいわゆる軍事問題、防衛問題に関する大枠哲学が決まって、防衛計画大綱の六十二年達成とか、アメリカは早くもこれじゃ間に合わぬというのを言っているという大河原さんの報告がありますが、それを受けて具体的な段取りがハワイ会談で決まる、さらに、そしてそれを詰めて訪米する、そして、来年度の防衛予算の概算要求が行われるというのはこれまでの事例だったし、今度もそうなると思うのです。鈴木首相は伸び率ゼロということを指示されたそうですけれども、防衛庁は来年度の防衛予算の概算要求伸び率ゼロでお出しになるおつもりですか。このことを最後にお伺いします。
  187. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 来年度の概算要求のいわゆるシーリングについては、これまでよりは早めたいとか、いろいろなことが言われているようでございますが、まだ具体的にどうかということは私ども一切承っておらないわけでございます。したがいまして、伸び率ゼロとか、そういう仮定の御質問に対しましても、全然承知しておりませんので、お答えのしようがないということでございます。
  188. 柄谷道一

    柄谷道一君 日米首脳会談を前にいたしまして、若干それに至る経緯についてまず確認を求めたいと思います。  三月二十日、ホワイトハウスで福田元総理とレーガン大統領の会談が持たれました。そして四月六日、福田元総理より鈴木総理訪米結果の報告があったとされております。新聞報道によりますと、その際、福田元総理は、アメリカは苦しい財政の中で国防を強化しているのに、日本はそれをせずに経済的な利益をひとり占めにしているという安保ただ乗り論の非難が出ており、防衛予算の伸び率を持ち出すといった従来の釈明的な手法は通用しない、アメリカ大統領は対ソ脅威など国際情勢に対する西側同盟国の基本認識を一致させる必要があることを強調しつつ、持論の力による平和論を述べ、暗にわが国の周辺海域における空と海の自衛力を増すように求めた、レーガン大統領は力による平和を主張しているが、その力では軍事力以外に経済力、第三世界への援助力、外交による結束力などさまざまな要素があり、鈴木総理が持論とする総合安全保障政策国内に限定せず世界的な枠組みに広げ、その中で日本の国際的役割りを明らかにして総理より米大統領に説明し、積極的に提案すべきではないかと進言した。鈴木総理はこの進言を全面的に賛成されまして、これを受けて四月二十三日総合安全保障閣僚会議が開かれた。それを前にして宮澤官房長官は四月十七日の記者会見で、首相の訪米でレーガン大統領に日本の役割りを国際的な規模で説明しなければならない、そこで国際的な安全保障のために日本として何ができるかを総合安保閣僚会議検討したい、日本が果たし得る軍事的役割りはきわめて小さいと言わざるを得ない。したがって軍事的役割り以外に何ができるかを各閣僚に検討してもらいたい、こう述べられた、これが一連の流れでございます。  そこでお伺いするわけでございますが、このような経過からすれば、当然首脳会談において鈴木総理は総合安保、いわゆるトータルディフェンスの立場に立った日本の立場を鮮明にすると同時に、日本として何が寄与し得るか、何が寄与し得ないか、これを鮮明にするというのが首脳会談における総理基本的立場であると確認してよろしゅうございますか。
  189. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 首脳会談で恐らく国際情勢認識でございますとか、あるいは日米間の問題で言えば防衛問題、そういうことが出るということは当然予想されるわけでございますが、総理がいつもおっしゃるように、日本には憲法で専守防衛ということで個別自衛権ということしかないのであるから、その他の地域で軍事的な協力を期待されてもそれはできないということは、予算委員会その他国会のあらゆる場所でおっしゃっているわけでございますから、それは当然総理はそういう考え方を述べられると思うわけでございます。ただ防衛というのはこれは総合的に考えなければならぬ問題でございます。西側は西側で団結していく、あるいは連絡、協調をするという中でも単に軍事的な問題だけじゃなくて、経済的にも石油ショック以来不景気とかインフレとか失業とかあるわけでございますので、こういう状態になっていてはいかぬのでございますから、当然自由貿易とかそれによる保護貿易主義が台頭するということは避けなければなりませんので、自由貿易、西側の中でもそういうことも御主張になりましょうし、また第三世界との関係でこれを第三世界というのは数が多いのでございますから、これをいわゆる東側に追いやるということでなくて西側につなぎとめる、友好関係を結ぶというためには経済協力も必要でございましょうし、また外交政治の面でもそういうことが必要だということも考えられましょうし、ソ連の問題につきましてもいまいろいろな対ソ措置ということを、軍事力だけでなくて経済的な問題でいろいろなことをやっておるわけでございますから、世界防衛の問題でもやはり安全保障の問題でも総合的に考えていかなければならぬということは、私は総理の頭にあると思うわけでございまして、そういう広い立場に立った議論は私は行われるだろうというふうに思います。
  190. 柄谷道一

    柄谷道一君 確認いたしますが、いわゆる国際的トータルディフェンスという立場に立ち、日本の果たすべき役割りを鮮明にするというのが総理基本的姿勢である、このように確認してよろしゅうございますね。
  191. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 世界の情勢認識をいろいろ議論されると思うのでございますが、さっき申し上げましたように、総合安全保障というのは、これは軍事力だけでなくてもう少し広い立場から考えなければならぬというのが総理のお考えでございますので、私はいま先生がおっしゃったようなことは当然総理はお考えになって議論をされるのじゃないかというふうに思っております。
  192. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは総合安全保障閣僚会議で、日本として何がなし得るか、日本として何がなし得ないか、こういう議論がされたということで、官房長官の記者会見によりますとそういうことになっておるのですが、何をなし得るというふうに確認されたわけですか。
  193. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は国会がありますので途中で国会に出ましたので最終的なところには私は立ち会っていないのでございますが、官房長官がそういう説明をされたということであれば、総理がいつも言っておられる集団自衛権というものはないのだから、日本を守るという軍事力以外にはこれは日本期待されてもできっこない、できないということをはっきりされて、日本は経済的に相当力がついた、あるいはそれをバックにした政治、外交というものがあり得るわけでございますから、いわゆる南北問題、発展途上国の政治不安というものをなるべくなくしていく、あるいはカンボジアの問題等を頭に置いて言われたかどうか、ASEANと協力してカンボジア問題の解決というふうな政治問題、外交問題、そういうものに取り組むというふうなことを頭に置いて官房長官が言われたのじゃないかというふうに私は思います。
  194. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは次に問題を進めまして、三月中旬に伊東外務大臣ワインバーガーアメリカ国防長官と会談をされております。  四月二十日付の東京新聞を読みますと、これは複数の政府筋が明らかにしたという前提を置きまして、国防長官は、アメリカ第七艦隊がインド洋などに展開し、手薄になった後を埋めるためグアム島以西、フィリピン以北という具体的地域を指定してわが国の防衛分担を求め、わが国の対潜能力だけでなく、バックファイア爆撃機や中距離多核弾頭ミサイルSS20などの戦域核に関心を示し、対空能力の向上にも期待を示した、こう報じております。それでまた御丁寧に、防衛庁及び外務省筋のコメントもあわせて報道いたしておりますけれども、そのような要請があったわけですか。
  195. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) まことに摩訶不思議な話でございまして、全然そんなことはないのです。ワインバーガーさんと私が会談しましたときに、一般論としてアメリカ防衛努力をしているという際の説明に、ペルシャ湾でございますとかインド洋でございますとか、あるいはいま先生のおっしゃったグアム以西、フィリピン以北の太平洋の問題でございますとか、そういう問題についてアメリカは非常にそういうところで防衛の努力をしているのだということ、その地域にまたソ連の潜水艦とか飛行機が出てきているのだというふうな一般的な話がありまして、その後に、日本も経済力がついたのでございますから防衛努力の強化をしてもらいたい、また一つの具体的な例としては、米駐留軍の経費を地位協定の範囲で負担増を考えてもらいたいというふうな一般論があったのでございまして、いま先生のおっしゃるような地域、グアム島以西、フィリピン以北の海域を日本防衛分担を考えてくれとか、そういうことは全然なかったのです。ございませんで、ただ私はそういう話が出ましたから、誤解があるといけないと思いまして、海域分担というのはこれは集団自衛権に関連することになりますので、そういう海域分担のような考えでいまの具体的な名前を言われたら、それは違う。  もう一つは、日本防衛計画大綱というのは航路帯千海里、周辺数百海里ということを頭に置いてやっている、それ以上に足を伸ばすような広い海面のことを日本考えてくれというようなことは、誤解があってはいかぬからそういうことはむずかしいのですよということを私は言ったのでございまして、そういうところの防衛を分担してくれとか、そういう話は全然なかったのでございます。
  196. 柄谷道一

    柄谷道一君 最近、佐藤誠三郎東大教授が集団的自衛権禁止という政府の憲法解釈に疑問を表明いたしております。また、外務省顧問であり、牛場元駐米大使も新聞紙上、フィリピン以北、グアム島以西の防衛海域分担程度のことは日本は前向きに考えるべきだという趣旨の談話を新聞で発表いたしております。アメリカの要請が防衛海域の分担ないしは防衛空域の分担ということを求めたとするならば、これは有事の際一つの海域ないしは一つの空域を一つの国で受け持って他国の船も守る、これは集団自衛の考え方に立つということにならざるを得ないと、私はこう思うのでございます。いろいろ新しい議論が出ておりますけれども、これは法制局にお伺いをいたしますけれども、依然としてそれは憲法に抵触する、この見解は変更ございませんね。
  197. 味村治

    政府委員(味村治君) わが国が集団的自衛権を行使いたしますことは現在の憲法上許されていないと解しておりますことは、従来から政府がたびたび答弁申し上げているとおりでございまして、これを変更する意思はございません。御指摘のように、一つの海域の防衛一つの国で受け持ちまして、たとえばわが国である海域の防衛を分担いたしまして、わが国の船舶のみならず特定の他の国の船舶も含めてすべて防衛するということになりますれば、これは集団自衛権の行使に該当いたしますので、わが国の憲法上許されないことと考えております。
  198. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま外務大臣は、新聞報道は摩訶不思議でどうもわからぬと、こうおっしゃったわけでございます。
  199. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そのとおりなんです。
  200. 柄谷道一

    柄谷道一君 それを信用いたします。  しかし、四月九日マンスフィールド駐日大使が日本新聞協会編集委員会で行った講演、四月十一日にハワイでロバート・ロングアメリカ太平洋軍司令官が日本記者クラブの太平洋視察団に対して行ったインタビュー、これを見ますと、アメリカが海上、海底とともに防空能力の整備を希望しておるということがうかがわれるわけでございます。  それで、日米首脳会談、これは外務大臣は、そこまで具体的なことは総理は言わぬと、こう言われるでしょう。しかしその後に、まだ日程は確定していないということでございますが、六月十日前後に日米安保事務レベルの協議が行われます。ただいま六月二十九日に防衛庁長官アメリカ国防長官の会談が持たれることも明らかにされました。こうした一連の会議アメリカが仮にこの北西太平洋での対潜能力の向上とあわせて防空能力の向上を持ち出されてきた場合、一体防衛庁としてはどのように対応されますか。
  201. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  総理の大統領との会談議題もまだ決まっておらないようであります。いわんや私の訪米は六月の末でございます。まだ議題等は何ら決まっておらないわけでございます。ただ先生御指摘のように、マンスフィールド大使の講演とかロング司令官の講演等につきまして、わが国周辺の対潜の問題、あるいは防空の問題、海上交通路の防衛の問題について関心を持っているということは私どももそういった報道等によって承知しているわけでございます。  そこで、この問題について防衛庁はどう考えているかと申し上げますと、現在防衛庁としましては、防衛計画大綱水準を達成するために陸海空それぞれの整備を図っているわけでございますが、現在備えております自衛隊の防空能力や海上交通保護能力などの点につきましては、いまなお不十分であると言わざるを得ないと考えておりまして、これを一層引き上げることに今後とも努力していかなければならない。そのためにも、今後の五六中業作成に当たりまして、そういったことを念頭に置いて取り組んでまいりたいと思うわけでございます。
  202. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛海域の分担、防衛空域の分担ということになると、いま法制局の方も憲法に抵触をすると、こう明確に言われたんですね。また日本の航空自衛隊アメリカ第七艦隊の空母艦載機の持つ攻撃的打撃力まで肩がわりをするということになれば、これまた当然憲法に抵触をするということになる、ここはもう疑問の余地はいまのところないわけです。しかし、仮にこの海域における要撃能力を持ってほしいということであったとしましても、この防衛計画大綱別表で定められております日本のいわゆる軍事力水準は領空侵犯及び航空侵攻に対処するためということが基本でございます。作戦用航空機四百二十機、航空警戒管制部隊二十八個警戒群、要撃戦闘機部隊十個飛行隊というのがこの整備の目標ですね。したがって、仮にこの水準が達成されたとしても、これは領空中心の防空で手いっぱいである、これが防衛水準前提であろうと思うのです。仮に、アメリカの要請にこたえるということになってまいりますと、たとえば、硫黄島にF15戦闘機を配備するなど、新しい航空機の配備が必要になってくる。ということは、当然この水準プラスアルファの装備を整えなければアメリカの要請にこたえることはできない、こういう結果に結びついてくると思うのです。いま防衛庁長官大綱水準の達成を早くしたい、こういう御答弁ですから、いろいろな点を総合いたしまして、対空能力、いわゆるアメリカ期待をしておる空域に対する防衛の力を日本としていま整える、その要請にこたえるということはできない、これが実態であろうと思うのですが、そのような認識でいいのですね。
  203. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 米側の具体的要請があるわけでございませんので、その点についてはお答えしにくいわけでございますが、ただ、先生が御指摘になりました大綱が実現しても、本土周辺以上の遠いところまでは手が届かないのじゃないか、こういう点につきましては、確かに、大綱水準が達成できますれば、わが国の領域または周辺空域において航空侵攻等に対処する防衛力の整備が相当整うということははっきり言えると思うのでございますが、この範囲を超える空域において海上交通保護のために航空自衛隊の防空能力の整備を行うということはいまのところ考えておらないわけでございます。
  204. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間もありませんのであと一問だけお伺いしたいと思います。  いままでの質疑を聞いておりますと、あしたの国防会議に出される防衛庁の姿勢は、防衛水準を五六中業で達成するという基本的あり方について了承を得られるならば各幕僚長に準備を指示したい、こう言われたのですね。これは間違いございませんね。  ところが、大蔵省は、中業内容自体について、いろいろ内容はこれからの問題であるから、変えることはいいけれども、しかしそれは計画が出てからの問題でございますと、いわば大蔵省として留保条件をつけておられると、こういう答弁と私は聞き取ったわけでございます。しかし、私はそれは一応横におきまして、ここで問題にしなければならないのは、この防衛水準というのはあくまでも防衛計画大綱の別表であるということですね。その別表がつくられる前提であり、かつ基盤でもある防衛計画大綱というのは昭和五十一年に策定されたものでございまして、中をずっと読みますと、これは明らかにデタントを前提にして国際情勢の分析が行われておる、そういうわけですね。そのデタントを前提にして水準が決められておるわけですね。いま日米首脳会談アメリカが求めようとしておりますのは基本認識の一致ということでございます。そうなりますならば、ただ別表を仮に持ち出して、これをいつやる、これをやると言ったって日米の合意が得られるものではないと私は思うのです。私は日本のあるべき姿としては、まず国際情勢認識について日米間の基本認識を一致させる、これは防衛大綱の見直しであろうと思うのです。第二に、同じ認識には立つけれども、専守防衛、非核三原則といった日本の憲法の制約がある、したがってこれはできない。日本として国際平和に寄与する役割りはこれであるということが明確になる。そしてこれを受けて日本の五六中業防衛力水準が明確にされる、これがあるべき姿であり、そういう姿勢なくして、ただ糊塗的に日米間の相互信頼を得ようとしても、これは基本で食い違っているわけですから、すれ違いの議論になるのではないかと、このように思えて仕方がございません。  民社党はこのような視点からかねがね防衛大綱の見直しを求めておるわけでございますけれども、政府はこれに対してイエスの答えを出しておられないわけです。基本認識の異なる前提のもとでの水準の時期を明らかにすることの意味が一体どこにあるのか、真の日米の信頼友好関係はそれで確立されるのか、この点に対する両大臣の明確な見解をお伺いいたしまして、大蔵省関係はまた決算委員会で細部御質問したいと思います。
  205. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私、お供するわけでございますが、恐らく議論は、基本認識の問題、それからいろいろ入っていくというふうに思われます。そして、その中で二国間の問題が出ましたときに防衛の問題は出るということは、これは予想されるわけでございますが、そこで、総理はいつもおっしゃっております、日本に対しましてできることとできないことがあるわけでございますから、そのできることの範囲内で日本としては防衛の問題にも取り組んでいく。しかし、それには国民のコンセンサスも必要でございましょうし、財政の問題もございましょうし、いろいろな点からこれは考えていかなければならぬので、自主的に日本で判断をするのだ、個別自衛権の範囲でということを常に言っておられるわけでございますので、私は、それを言ってもアメリカの人は、向こう側は理解をしてくれるというふうに思うわけでございます。それで、防衛計画大綱というのはまだ達成しておらぬのでございますから、これをまず達成していくということを総理もいつも国会でおっしゃっておりますので、そういう日本の立場というものはやはりアメリカに対してはっきり言う。できないことを約束して実行しないということは一番悪いことでございますから、その点はやはりはっきり言って、理解してもらうことは理解してもらう。そのかわり安全保障というのは何も軍事力だけじゃない、もっと広く考えなければいかぬというような議論を私は総理はされるだろうというふうに期待しております。
  206. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えいたします。  まず、あすの国防会議に付議する事項につきましては、私どもといたしましては、次の中業作業に入る前にその作業の仕方について基本的な事項をまずお諮りをして作業を開始いたしたい、そして作業がまとまりましたならば何らかの形で国防会議に付議するということを考えておるわけでございますので、そういった意味では、大蔵省が述べられましたこととそう大きな矛盾はないと思うわけでございます。二重のチェックを受けるということで国防会議に臨んでおるわけでございます。  次に、この大綱の見直しの問題についてでございますが、確かに大綱策定当時の国際情勢と今日とでは相当な変化があるということは否めないところではないかと思っておるわけでございます。ただ私ども、さればと言ってデタントが崩れ去ったわけではない、米ソの信頼関係が揺らいできている、こういうふうに認識しているわけでございます。したがいまして、核兵器の使用を伴う大規模戦争の発生の差し迫った危険が目の前に来ているわけではない、しかしながら、通常兵器を使用する脅威、危険がなくなったわけではない、そういった認識のもとに、今後のわが国の防衛力の充実を図っていかなければならないと考えているわけでございます。その場合に五年前に策定されました防衛計画大綱がまだまだその水準に達しておらない、いわば平時における最低の水準とも言うべき大綱水準が実現していないということはまことに遺憾でございますので、これを一刻も早く、なるべく早く達成する必要があると考えているわけでございます。そして、現在の大綱をいますぐ見直すという考えを持っておらないということはしばしば申し上げているとおりでございます。今後大綱を見直すことがありとすれば、国際情勢状況、そして国民世論の動向、そしてまた現在の大綱の達成の状況等、そういった点を見定めた上、その段階で見直しの可否を決すべき問題ではないか、さように考えている次第でございます。
  207. 秦豊

    ○秦豊君 外務省、最初に原潜をちょっと伺っておきたい。  「ジョージ・ワシントン」の修理は終わったらしいのですが、損害の程度等についての把握はありますか。
  208. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ございません。
  209. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、さっきからずっと伺っていて確認したくなったのですが、連日御苦労と存じますが、しかし、首脳会談を控えてやはり外務大臣としてなすべき余地がまだあると私は思う。もっともアメリカとしては報告のしようがないというデリケートな時期だと思う。しかし、外交チャンネルを通じ大河原氏から、あるいは伊東外務大臣からマンスフィールド駐日大使に等々、さまざまなチャンネルを通じて、場合によっては大村防衛庁長官からペンタゴンの長官にという感じで日本政府としてもまだなすべきことがあるという認識を私は持っているのですが、ベストを尽くしてもらうという観点であえて伺うのですが、どういう方法が残されていると思うか。また特に伊東外務大臣アメリカに対してこういう点はぜひやってみたいというあれはありますか。
  210. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 最後まで努力をしろとおっしゃるのはそのとおりでございまして、いままでのルートはマンスフィールド大使を通じてのルート、もう一つは大河原大使がヘイグさんあるいはワインバーガーさんに会って、向こうでも督促をし、やっているのでございまして、大河原大使はあした帰りますので、そのことを先ほど私からも話しておきましたし、私は今週中マンスフィールドさんに会いますし、これはいままでのそういうルートを通じて、大統領の書簡の内容にもかんがみ、何としても首脳会談前にある程度のことがわかるようにということを最後まで努力をしていくつもりでございます。
  211. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁はもう外務省に任せっ放しですか、この場合は。
  212. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) いま外務省中心に準備をされておりますので、外務省中心に進めていただく、かように考えている次第でございます。
  213. 秦豊

    ○秦豊君 北米局長、ときに一遍聞いてみようと思ったんだが、「ジョージ・ワシントン」の艦長というのはどんな罪になるのですか。
  214. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まさにその点が、アメリカ側が現在事故の究明に当たっておりますので、その調査の結果を待たなければ、どういう刑に付するかということをここで申し上げるわけにはいかないと思います。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 外務省は当然専門家の集団だから、アメリカの軍刑法は研究したでしょう。先般どこかの委員会で海軍規則というのが論議されたらしいが、軍刑法というのがあって、艦船を危険に陥れた罪、事故現場から逃走した罪、極端な人命軽視を行った罪と、まさに該当条項がずらずらっと並んでいるんですな。まさに艦長はこれに該当する。  そこで、私の質問は、こういう場合、伊東大臣ソ連の何かよくわけのわからない実弾射撃には抗議というふうな反応がすぐ出るんだが、原潜というと、まず慎重に、慎重にと。麗しい日米友好も係結構だけど、国民感情とは隔たりが多過ぎる。そこで、日本政府というのはこういう場合に責任者、つまり艦長等の処罰をなぜ断固要求できないのか、この辺どうなんです。
  216. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ソ連の砲撃があったということについては、早速来てもらいまして、向こうも、大使館は知らぬということでございますので、実情を早く知らしてくれということを言っているわけでございまして、それを見てから政府措置というものは考えようと、こういうことを考えておるわけでございます。  アメリカの場合も、これは調査報告を見まして、その結果によって、日本側の見解をはっきり述べるということを言ったわけでございまして、その中には抗議をする場合もあるかもしらぬというものを含めて、調査の結果を待って日本側の態度を決めるということを私は国会で何回も答弁をしているわけでございまして、いま断固責任者の追及を、ということをおっしゃったわけでございますが、これは向こうでも、そういう問題が恐らく起こるだろうということで、それには調査をして、はっきりした証拠の上でやるべきだということを理由にして、中間報告はそれに予断を与えるということでなかなか無理だと、こういう報告があるわけでございますので、私どもとしましては、実情がどうだったかということを調べることがまず第一番でございますので、それを実は待っているということでございます。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 補償の問題、これはまあ言うまでもありませんわね、日昇丸並びに乗組員あるいは遺族等とアメリカ政府、次元が違う。日本政府アメリカ政府は、断然たる責任者の処罰要求という感覚、方法はね、大臣、これは内政干渉でも何でもない、国際的に通常行われている処置なんですよ、けじめのつけ方なんですよ。いまあなたの答弁の中では、まだ全容が把握されていない。では、正規の回答等を含めて、全容が把握された後には、日本政府として、追加措置として、責任者の断然たる処罰を要求することもあり得るというふうに理解してよろしいですか。
  218. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 向こうで、その点に、まさにその点にかかわる問題だから調査を慎重にしているのだということでございまして、アメリカではそれを頭に置いていま調査をしているということがありありとわかる報告がわれわれにあるわけでございまして、私は、アメリカ自体として、当然場合によってはそういうことがあり得るのだということを、いままあ当然のこととしてわれわれは考えておるわけでございまして、その調査結果が出た場合に、向こうでこうやると言った場合に、ああ、日本もそうやってくださいと、そうやりなさいというふうなことを言うか言わぬか、それは私は事情調査の結果によってのことではないかと、それを見ているということでございます。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、こういうことに余りエクスキューズでない方がいいと思うのですよ。過度な、過剰な反応では決してない。一国の外務大臣として、向こうの国務長官あるいは国防総省、ルートを経て、国民感情からしても断然たる処断を望めるという一言ぐらいは私は外交慣例に違反しないと思うので、いま大臣の答弁の後段の部分は、そういうこともあり得るという受けとめ方をしていいんですね。重ねて。
  220. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) たとえば、向こう報告がどういう報告が来るかわかりませんが、責任者はこういうところにかけて、こういうたとえば裁判をするとか、どうするとかいうことが私は報告の中へ来るのじゃないかというふうに見ているわけでございます、はっきりはわかりませんが。これは仮定の問題でございますが、そうしたことがあった場合に。さらにこっちから、向こうがそういう処置をするのだという場合に、また追いかけて、そういうことをやりなさいと言うことは必要ないのじゃないか。でございますから、向こう調査の結果を待ってそういうことは判断するのだというのが私の気持ちでございます。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 今度の首脳会談は、外務大臣、相当、チャンネルで言えばマルチチャンネルで来ると思うんだな、憲法の制約、財政、百も承知で押してくるんだから。その場合、軍事的な協力には限界があるだろう、それも承知。そうすると、向こうは手口を変えてくる。そういう非常に複雑な交渉になると私は思うのです。  そこで、かなり包括的な話へ、基本認識の後、ずっと広がっていくと思うのだけれども、こういう場合、伊東さん、どう考えていらっしゃいますかね。首脳会談に出るか出ないかは不確定ですが、首脳会談を含めて、今後の日米協議の中で、アメリカの願望としては、日本のあり方として、対ソ経済協力に絡んではソビエトないしソビエト圏全体を利することのないような、つまり選別融資に踏み切ってくれないか、それを基調にしてくれないかというふうなやや複雑な要請が仮にあったとした場合に、外務大臣としてはどういうふうな回答が考えられますか。
  222. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま交渉と、こうおっしゃいましたけれども、今度のは、やるものを持ち出して交渉して決めるとか、そういう性格のものじゃ私はないと思うのです。国際情勢認識の問題でございますとか、いろいろ経済問題に対する考え方とか、そういうことの上に首脳同士の個人的な親密な関係を築き上げるということが今度の会談の私は大きな目的だと思いますので、いろいろなことを交渉して物をまとめてくるとか、そういうことではないということだけはまず御了承願いたいと思うわけでございます。  それからいま秦さんのおっしゃった、たとえば経済協力の場合に、いろいろな要望が出るじゃないかということでございましたが、私はこの間ヘイグさんと経済協力の問題で話しましたときに、日本は南北問題というものがやはり中心なんだ、重点なんだということで話をした。ヘイグさんは東西関係ということを盛んに言ったわけでございますが、そういうことを頭から決めてやることは第三世界を追いやるような形になるのじゃない海ということで二人で議論した記憶がございます。  日本経済協力でもこの間は一億円をやったりしたことがございまして、私はやはり原則として南北問題が中心なのだということを日本側としては主張し、これは相互依存の中にはもちろん政治問題もございますから、西側として紛争周辺国等にやっている事情はございます。そういうことは話しますが、向こうから言われたことを、そうだ、そのとおりやるとか言って話をまとめるとか、そういうことは私はないだろうというふうに思っております。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 関連して伊東外務大臣、一問だけお答え願いたい。  これは国務大臣としての立場も加味して、例のヤンブルグの長大な天然ガスパイプラインの敷設プラン、日本に対しても一応の要請は来ていると思いますけれども、これはアメリカとそれからEC諸国、日本とはかなり反応の濃淡が違いますからね、強弱が。国務大臣としての伊東さんはこういう問題についてはどう対応すべきだとお考えでしょうか。
  224. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) この前行きましたときに、ヘイグさんがまさにいま御質問のヤンブルグの話をしまして、ドイツに対して、つまり国防その他考えれば、安全保障考えれば、大きな部分をヤンブルグのガスに依存するということは好ましいことじゃないということを自分は言ったと、しかしそれはドイツ側を納得させるだけにはまだ至らなかったという話がございまして、それだけでこの話は終わったわけでございます。日本に対してそれをどうしてくれなんという話は私は今度私がヘイグさんと会ったときにも恐らく出ないというふうに思っておるわけでございますが……。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 いや日本の対応。
  226. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日本は、このヤンブルグの問題につきましては、いまのところまだソ連側から政府に対してどうしてくれとか、こういう協力をしてくれということがないわけでございまして、この間、輸出入銀行でございましたか、に向こうの担当官が来て説明をしたというだけで、また会おうということで別れたという話でございます。ヨーロッパ自身もまだガスの量とか価格とか、そういうものについては話し合いができていないということを聞いておるわけでございまして、日本には、いま対応と言われましたが、話は、まだどういう協力をしてもらいたいということがないわけでございますので、いまここでこうしますとは申し上げませんが、ドイツその他の対応ぶりも日本では十分参考にして、向こうがどうしてもこれはやるのだというような話があった場合には、日本もどれだけ協力できるかということについてはその段階で日本検討してみたいというふうに思っております。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 まだたっぷり時間がありますから、あとは防衛庁有事法制、同僚議員も聞いておりましたけれども、念のために、長官、この中間報告の大前提になっている有事というのはどういう事態を言っているのですか、念のために。
  228. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛出動が下令された場合を言っております。
  229. 秦豊

    ○秦豊君 あなた方が三年前に出した有事法制についての研究という文書の中には、特に第四項で、幸いにしてわが国をめぐる情勢は急いで有事法制の裏づけをする必要がないという認識がうたいとげられている。三年間で事態が急変し、有事法制をある程度急がねばならぬというふうに認識が変わったということですね、前提は。
  230. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先生がいま御指摘になりました文書においては、こういう状態であればこそ冷静な検討ができるので進める必要があるというように後段ではっきり書いてあるわけでございます。情勢が変わりましたが、変わらぬ、前の状態におきましても急ぐ必要があると思うのですから、その点は引き続いて研究の成果をまとめる必要が生じていると私ども考えておるわけでございます。
  231. 秦豊

    ○秦豊君 さっき同僚議員が聞いたら、夏目官房長はああいう程度の答弁であったが、これはどこから押していっても自衛隊法、場合によって設置法、つまり防衛二法の全面改定でなければ対応できませんよ。あなたの答弁は、もう非常にいまは言わねばならぬから無理している。たとえば、たとえばですよ。じゃ夏目さんに聞くけれども、ときどき西廣さんに聞きたくなるかもしれないけれども、百三条に絡んでこれは政令だと、これはまとめておりますわな。じゃ仮に、いまあなたが有事規定された七十六条、防衛出動の場合なんか、これは隊法の改定ということでしのけるのか。自衛隊法の改定でいいのか。それとも有事における特別措置に関する法律というふうなものの立法を必要とするとお考えか、この点にまず限定して聞いてみたい。
  232. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 私どもまず現在の自衛隊法は、有事における自衛隊の運用、行動に関連して基本的な分野についての仕組みというのはある程度できていると思います。しかしながら、実際にしさいに検討してみますと、現在の法制で十分かどうかというふうな問題点がございますので、それを五十二年の福田総理の指示によって検討を開始したということでございまして、私ども検討の中身を再三申し上げるように第一分類、第二分類、第三分類と分けて検討したわけでございますが、まず第一の問題としまして、現在の防衛庁所管法令、すなわち自衛隊法防衛庁設置法、給与法等について七十六条が発令された場合において自衛隊の行動に関して法制上の問題があるかないか、あるとすればどういう問題があるかということを検討したわけでございます。これで必ずしも全部がカバーされたかどうかということについてはいろいろ御意見があろうかと思いますが、当面、私ども現在の自衛隊の法体系の中において、少なくもこの程度のものは整備する必要があるだろうというふうに考えて御報告したのが今回の中間報告でございます。
  233. 秦豊

    ○秦豊君 官房長 ちょっとお休みください。お疲れでしょう。  西廣審議官にあえて伺いたい。あなたは取りまとめの責任者であった、しかも折から政府委員である。私は、たとえば部隊編成に絡んだ第二十二条、予備自衛官に絡んだ六十六条、七十条、それから包括的には第六章、自衛隊の行動に絡んではいま私が申し上げた七十六条、七十七条、警備の範囲を定めた九十三条、例のレーダーサイトや何かです。さらに武器使用の九十五条、それから侵害した者の処罰百二十一条、私がちょっと拾ってみただけでもこれだけの自衛隊法絡みがばっと出てくるわけだ。そうすると西廣さん、これは隊法の改定、あなた方はなぜか改正と言うのだが、これは改悪ですわな。まあ、改定と中間的にやろう、改定が論理的にどうしても必要になりますよ。いいえ必要ありませんという主張は成立しませんよ、西廣さん。どうなんでしょう、純理で答えていただきたい。政治判断をすると官房長のような答弁になる、エンドレステープだ。純理としてどうなんですか、西廣さん。
  234. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えします。  先生のおっしゃる御質問の意味、よくわからないのですけれども、いま数々お挙げになりました点は必ずしも有事法制に限った問題でなく、平時の規定その他がありまして、自衛隊法そのものの改定という意味がちょっとわからないのですが、御質問趣旨がわかりませんけれども、私どもは、先ほど官房長が御答弁申し上げたように、現在の自衛隊法としては一つの枠組みができ上がっておる、あとは一部についての手直しをすることによって十分有事に機能し得る法体系になっておるというふうに理解をいたしております。
  235. 秦豊

    ○秦豊君 まあ、シャープなあなただから先の先を読んでいるとは思うが、じゃ、一部の改定というのはあなたの頭の中では何がイメージされていますか、特定されていますか。
  236. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 問題は、たとえば百三条の有事におきますいろいろな強権措置等でございますけれども、現在、基本的な物資の収用なり、あるいは土地の使用、あるいは業務従事命令等についての規定があるわけでございますが、それについて実効性を確保するための細部についての手だてが若干必要ではないかとか、そういった点が主体になろうかと思うわけであります。
  237. 秦豊

    ○秦豊君 これは逐条にやればもう二時間でも三時間でも欲しいね、きょうはそうないらしいからちょっとはしょるけれども。  じゃ西廣さん、こういう点どうなのかしらね。たとえば七十六条の防衛出動に当たっては、総理が出す防衛出動命令発動、この手続規定というのは必要なんでしょう。
  238. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えします。  現在、七十六条の発動に関しましては国防会議にかけるということで、当然それに関連いたしまして閣議決定が必要になるということになろうかと思います。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 それから、このいわゆる特別部隊、まあ統合部隊と言っても間違いではない。特別部隊の編成というのは一体だれが、どういう時期に判断をし、だれが下命をするのか、それからそれに伴っても、総理の特別部隊編成手続というのはこれは当然私は必要になると思うのだが、どう理解していますか。
  240. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 隊法二十二条の特別部隊というのは、平時、法で編成を定めなくてはいけないような部隊防衛出動下令下においては臨時につくることができるというものでありますが、これにつきましては具体的にどういうものがあるかということになりますと、陸海空の統合部隊というようなことも当然ございますけれども、陸なら陸の中で、たとえば待機命令が出てある部隊が前線に詰めかけるというようなことになった場合に、そのすき間のできたところに特別の部隊をつくってふさぐといったようなことも当然考えられるのではないかというふうに思っております。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 この今度の有事法制はバロンデッセだと言われておりますわな。根本思想は、そこのけそこのけですよ、お馬でなくて自衛隊が通る、下に下になんだ。憲法からはみ出すのはこれは明らかなんだ、憲法に有事規定ないのだから。これは論理的にはあたりまえなんだ。承知の上でやっているんだ、あなた方は。使命感過剰でやっているんだ。  それで、この百三条に絡んでさっきも同僚議員が聞いたが、民間人の処罰規定については言葉を濁したけれども、たとえば隊法第四節の「服務」の項で、五十二条以下というのはあのままでいいのかどうか。たとえば、「上官の命令に服従する義務」、これが、公務員法九十八条の「法令及び上司の命令に従う義務」と同じレベルに理解されているとすれば有事法制として欠落がないのかあるのか。これも純理で答えていただきたい。
  242. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 現在の自衛隊法における命令に服従しない罪あるいは反抗する罪につきましては罰則規定がございまして、この罰則規定は一般の公務員法とはおのずから限度が違うように規定されていることは御承知のとおりでございます。私ども、現在直ちにこれを改正するということは考えておりません。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 まあこの段階では、どういうふうに、どこを押しても音は出ますまい。  それで、われわれ社民連の場合に、すでに三年近く前に膨大な資料要求も楢崎の名前でしたけれども、回答ももう木で鼻くくったようなものだった。以後その姿勢は改まっていない。したがって、この有事法制問題というのは、関連委員会であらゆる場をとらえてしつこく食い下がる必要があると思うのだが、最後に、こういう問題についてはどう考えているのか。  たとえば、制服はかなり率直に最近発言を始めた。大村さん、たとえば四月二十二日の公式の場では、海上自衛艦隊の秋山司令官ですか、アメリカ海軍との協力の中で、洋上補給の場合に、自衛隊の艦艇はアメリカの艦艇から補給を受けることはできるけれども、自衛艦が逆に米艦に付する補給行動を行ってはならない。これは現行の自衛隊法あるいは物品管理規則等に抵触をする、ということは言わなかったけれども、どうもそうらしい、何とか改善はできないだろうかという意味の発言であった。これは広く報道されている。  これを確認した上で、今後のガイドラインに基づいて日米共同作戦研究がどんどん深まってきた場合、この種の具体的な問題はたくさん積み重なると思うのです。一つや二つの例じゃなくて、陸海空ともにあるかもしれぬ。そうでしょう。こういう場合に、この有事法制の面を、有事法制というものをずうっとやっていった場合に、有事法制日米共同作戦研究、両方でやっていくと、早晩私は自衛隊法がボトルネックになってくると思うんだな。どこからいっても自衛隊を改めなければにっちもさっちもいかない。つまり、警察行動を考えていた自衛隊が、三十数年で戦う戦闘集団への脱皮、対ソ共同防衛になったのだから、論理的には私は隊法の改定がかなり必要になってくると思う。切迫してくると思うのだが、いま秋山司令官が述べたような問題は、ある時期に自衛隊として、防衛庁として、自衛隊法の全面改定ではなくて一部手直しというふうなことによって事態に備えるというふうな考えがあるのか。あるいは有事法制全体も、さっきの大村長官によれば、あと何年もかかりそうだと、ゆっくりやって間に合うのです、本当は急がないのですからというのが本音であれば、ユニホームからどんな要求が出ようと、あるいは自民党の国防部会から何と言われようとも、自衛隊法は当面いじくる必要がありません、やるとしたら、一部手直しでその都度対応するのか、あるいは抜本的にワンステップで改定をするのか、基本的な考えだけを伺っておいて終わらねばなりません。
  244. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) まず秋山自衛艦隊司令官の発言でございますが、これは先日開かれました自衛隊の高級幹部会同で秋山司令官が日米共同訓練の現状とその成果についてという報告を行ったわけでございます。その中で、同司令官は問題点についていろいろ触れられたのでありますが、その一環として、いま先生御指摘の補給の問題も挙げられております。しかし、これはあくまで部内の研究でございますので、それぞれの立場で忌憚のない意見を発表することが私は防衛庁のためにも望ましいことであると考えておるわけでございます。  ところで、これの立法化の問題になりますと、まだまだ研究すべき事柄が多いと思うのでございます。まず、ガイドラインに基づく共同研究でございますが、これもようやく共同作戦計画についての部分がまとまっただけでございまして、補給等につきましては今後なお研究を続けなければいけないと、こういう問題がございます。また、それがまとまりまして、現行法との関係においてどうしたらいいかということになりますると、またその先と、こういうことになるわけでございまして、そういった状況を見ながらどうした対策を講じたらいいか判断してまいりたいと、さように考えているわけでございまして、現在進めておる有事法制研究とは、先ほどもお答えしましたところ、こういった問題は対象にしておらないというのが現状でございます。また、残された有事法制研究対象につきましても、私は憲法の枠内で必要最小限の法制の不備を研究するのが今回の有事法制研究趣旨でございますので、気持ちは急ぐといたしましても、これはゆっくり慎重に対処すべきものだと考えております。  お答え申し上げます。
  245. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時二十二分散会