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1981-03-03 第94回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月三日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主査 塩崎  潤君       愛野興一郎君    越智 伊平君       金子 一平君    村山 達雄君       阿部 助哉君    後藤  茂君       中村  茂君    村山 喜一君       大久保直彦君    岡本 富夫君       田中 昭二君    大内 啓伍君       伊藤 公介君    兼務 河上 民雄君 兼務 土井たか子君    兼務 辻  第一君 兼務 村上  弘君    兼務 渡辺  貢君  出席国務大臣         文 部 大 臣 田中 龍夫君  出席政府委員         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      松浦泰次郎君         文部省社会教育         局長      高石 邦男君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         文化庁長官   佐野文一郎君         文化庁次長   別府  哲君  分科員外出席者         青少年対策本部         参事官     佐野 真一君         警察庁刑事局保         安部少年課長  石瀬  博君         警察庁交通局運         転免許課長   越智 俊典君         大蔵省主計局主         計官      篠沢 恭助君         厚生省児童家庭         局企画課長   北郷 勲夫君 分科員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     村山 喜一君   稲葉 誠一君     後藤  茂君   岡本 富夫君     田中 昭二君   大内 啓伍君     部谷 孝之君   河野 洋平君     伊藤 公介君 同日  辞任         補欠選任   後藤  茂君     中村  茂君   村山 喜一君     阿部 助哉君   田中 昭二君     大久保直彦君   部谷 孝之君     岡田 正勝君   伊藤 公介君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   中村  茂君     稲葉 誠一君   大久保直彦君     岡本 富夫君   岡田 正勝君     大内 啓伍君 同日  第一分科員土井たか子君、渡辺貢君、第三分科  員河上民雄君、第四分科員辻第一君及び第五分  科員村上弘君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算  (文部省所管)      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  主査が所用のためおくれますので、主査が御出席になるまで、指名により私が主査の職務を代行いたします。よろしくお願いいたします。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算中、前日に引き続き、文部省所管について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤茂君。
  3. 後藤茂

    後藤分科員 三十分という大変短い時間でございますので、質問焦点をしぼりまして、高等教育の面についてだけひとつ御質問をしてみたいと思うわけです。  文部省の方としては高等教育計画があるやに聞いておりますし、またこの五十六年度予算で、この場合、国立を主として申し上げたいと思いますが、国立新設学部あるいは新設大学計画されているやに聞いておるわけですが、最初に、ごく手短にその動向についてお伺いをしておきたいと思います。
  4. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御質問の点につきまして、ディテールにつきましては担当の局長からお答えさせます。
  5. 宮地貫一

    宮地政府委員 国立大学設置についてのお尋ねでございますが、昭和五十四年十二月に大学設置審議会大学設置計画分科会におきまして「高等教育計画的整備について」というものがまとめられております。既設大学におきます教育研究充実し、またそれぞれ特色ある発展を図るということを眼目に、高等教育地域間の格差でございますとか、あるいは専門分野構成というものを勘案しながら、特に地方におきます国立大学整備充実を図るということを基本的な方針といたしておるところでございます。  以上のような方針にのっとりまして整備充実に努めてきておるところでございますが、御案内のとおり、無医大県解消計画ということで医科大学を順次つくってまいりまして、琉球大学医学部ということで一応無医大県解消計画は完成を見るに至ったわけでございます。  なお、そのほか、いわゆる新構想大学ということで、筑波大学を初めといたしまして、従来、長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学あるいは兵庫教育大学、上越教育大学というような新しい教育大学をつくってまいりまして、それらの設置は私どもとしては一段落を迎えることができたというぐあいに考えております。  地方におきます既設国立大学整備充実ということが当面の重要課題というぐあいに考えておりまして、具体的にいま昭和五十六年度の国立大学設置についてのお尋ねがございましたが、昭和五十六年度予算にただいま御審議をお願いしているものといたしましては、従来ずっと調査を進めてまいっておりました鳴門教育大学鹿屋体育大学設置するということをお願いいたしております。ほかに、地方国立大学整備ということで香川大学の法学部設置千葉大学の人文学部の改組というようなものをお願いをいたしておるところでございます。
  6. 後藤茂

    後藤分科員 いまの高等教育整備計画の中で今年度の計画説明があったわけですけれども、こういう整備計画を進めていく上において、いろいろな角度から検討なさっていることは十分承知をしているわけですけれども、その決定に至る背景、これはどういうようになっているのか。後で幾つ問題点指摘してみたいわけですけれども、いまのお話だと、無医大県解消とか、あるいは地方における大学整備充実というような大きなうたい文句があるわけですけれども、実際にはどうなっているのだろうか。  そのことを私が申し上げますのは、文部行政の中でこの高等教育整備というものは恐らく全国をずっと見て進めておられるのだろうと思いますけれども、しかし地元の大変な陳情なりあるいは圧力なりというようなものが強ければよけいに動き、そうでなければ余り計画に上ってこないのではないか、こういうようにも私は危惧いたしておりますので、そういった新設決定に至る背景というものをこれまた簡潔にひとつお聞かせいただきたい、大学局長の方で結構でございますから。
  7. 宮地貫一

    宮地政府委員 ただいま五十六年度の予算案でお願いしておる点を申し上げたわけでございますが、たとえば鳴門教育大学につきましても、これは四十九年に設置調査というようなことで、これは考え方としましては、教員養成の面で教員資質向上が特にやかましく言われておるわけでございますが、現に教職についております先生方資質向上ということで、いわば現場の先生方にもう一度大学院へ入って資質を高めていただくというような観点で、新構想教員養成大学院大学というようなものを重点としたものを置くことについて当時議論が出ておりまして、その当時全国的に何カ所か候補が挙げられて、具体的に四十九年以来調査を進めてきておったものでございます。  鹿屋体育大学についても、当初は四十九年当時から調査が進められまして、五十三年、五十四年に体育系大学として、高等教育機関として設置をすることについて調査が進められてきておったものでございます。  いずれもそういう相当長期間の調査を経まして今日創設に踏み切ってきておるわけでございますが、いま御指摘のそれぞれ大学設置についてはまたそれぞれの地元の御要望ということももちろんあるわけでございますが、私どもとしては全体的な高等教育均衡のとれた配備と申しますか、そういうことを念頭に置き、また教官組織としてどうであるか、あるいは地元協力大学としてどういうものがあるか、そういうようないろいろの観点を総合的に勘案いたしまして、順次設置をしてきているというのが現状でございます。
  8. 後藤茂

    後藤分科員 そういう均衡のとれた計画を総合的に進めていくという場合に、わが国高等教育の長い歴史の中で、国立旧制高校だとかあるいは専門学校、高商とか高校とかあるいは師範とか、こういうのが明治以降全国的につくられている、これは私は大変りっぱな高等教育行政であったと思うのです。と申しますのは、非常にへんぴなところ、いまは余りへんぴではないでしょうけれども、そういうところにうまく配置をされてきておる。そういうことが最近では全く欠落してしまっているのではないかというように実は思えるわけです。  大臣旧制高校が所在しておった、あるいは旧制の高商なり高校なり専門学校が所在しておったところで、現在高等教育、つまり国立大学、これは総合であれ単科大学であれ、こういうものがないというところはあるでしょうか。
  9. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 旧制学校がありましたところでただいま先生のおっしゃったようなものが若干ございます。局長の方から逐次お話しいたします。
  10. 宮地貫一

    宮地政府委員 もちろん戦後の学制改革新制大学発足を見たわけでございますが、先生十分御案内のとおりかと思いますが、旧制高等学校旧制専門学校等は、その新制大学発足の際にいわゆる一県一大学というような原則によりまして、現在の国立大学のそれぞれの部局でございますとか、あるいは単科大学に発展的に再編成されたという経緯がございます。  お尋ねの点でございますが、たとえば旧制官立姫路高等学校で申しますと、新制神戸大学教養課程、後に教養部ということになったわけでございますが、それと文理学部ということになりまして、後に文学部、理学部という構成になったわけでございます。したがいまして、従来姫路市にございましたそれらは神戸大学部局として構成をされたために、現在、姫路市には国立高等教育機関は存在していないという例がございます。  なお、同様の事例といたしましては、弘前大学医学部前身でございますが、青森医学専門学校、後にこれが官立弘前医科大学になったわけでございます。ほかに、名古屋大学教育学部前身でございます岡崎の高等師範学校というようなものがございます。そういうように幾つか例もあるわけでございますが、国立大学はその後の移転統合整備充実を図るというようなことも具体的には行われてきておりまして、所在地が変更している事例としてはほかにも幾つか前例がございます。
  11. 後藤茂

    後藤分科員 いまの御説明をお聞きいたしておりますと、大体旧制高校では姫路が、神戸大学にすべて学部充実強化されていったということで、なくなっているわけですけれども局長は総合的に、あるいは地方実情等も見て高等教育機関を設立したいということを言っておられましたが、その念頭歴史的、地理的、文化的条件というものがないと思うのです。県の大小を申し上げるわけじゃないですけれども姫路の場合は、神戸総合大学を強化充実していかなければならぬ、これはもちろん大変結構でございますが、生活圏経済圏文化圏というものが全く違うのです。つまり、神戸のある摂津と、姫路のある播州、それから裏日本の但馬というのは、一つの県でありますけれども全く違っている。しかも、姫路の場合には四十五万都市周辺播州の人口を加えていきますと百万という大きな都市になる。これがその機能を神戸大学に吸収したからというわけにはまいらぬところがある。これを案外見ていないのではないだろうか、こういうように実は考えるわけです。  そこで、私の見解でございますけれども、どうしてわが国では大都市大学を集中していくのだろうか。欧米各国を見ましても、こういう大都市にどんどん大学を集中しているなんという例はないのですよ。今度鹿屋体育大学ができる、あるいは鳴門教育大学ができる、私はいいことだと思うのです。これも徳島大学なりあるいは鹿児島大学というのがあるわけですから、そこの学部充実すればいいということにいまの局長答弁だとなるかと思いますけれども、しかしそうじゃなしに、大学というのは施設をつくってそこに学生を入れて、人材を養成して社会に送り出せばいいというものではないのですね。これは大臣、私が申し上げるまでもなく、やはり大学というのはその地域における一つ文化センターだと思うのです。したがって、いまのように地方時代と言われる中で、それぞれの地域にそういった文化センターをつくり上げていくというのが高等教育整備計画の中には重点的に置かれていかなければならない、こういうように私は考えるわけです。  日本大学というのは、商工業政治にぞろぞろくっついている、そして都市に寄生してしまっている。ヨーロッパなんかの例を見てみましても、商工業都市とは全く違った、別個にそれぞれの大学都市というのがあるわけでしょう。私もこの前行きまして、ハイデルベルク大学に寄ってみたのですけれども、校舎がどこにあるのか、民家がどれなのかわからぬくらい、つまり大学都市としての雰囲気を持っているわけですね。オックスフォードやケンブリッジにしてもそうですし、アメリカのエールやプリンストン大学なんかでもそうです。つまり、政治経済関係なくその土地を定めていっているわけです。それがわが国大学というのは都市大学大学都市じゃなしに都市大学ということになってきている。  いまの局長の御答弁を聞いておっても、神戸大学総合大学として強化充実すればいい、あるいは東京の東大整備充実していけばいいということでは済まない、長い歴史的な文化経済生活圏というものを大切にしていくということを考えていくと、あの全く違った歴史を持ってきた、特に旧制姫路高校があったところにそうした国立高等教育機関というものが設置されなかったというのは、私は奇異に感ぜられて仕方がない。圧力をかけていけば、あるいは陳情の声が大きければそこにつくるということなのか、一体その整備計画というものはどこに焦点を当ててやっているのか、私には奇異に感ぜられてならないのです。そうした都市大学化、そして大変過密な、行政あるいは経済あるいは生活の大マンモス都市をつくっている中に、さらに高等教育機関を集中していくということはやめた方がいいだろう、もっと牧歌的な場所に、地方時代だと言われるなら当然そういうところに整備充実が図られていかなければならないのではないか、かように考えるわけですけれども基本的な物の考え方として大臣にお伺いしたいと思います。
  12. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お説のように、とかく大学のような教育機関というのが雑踏のちまた、都会に偏在するということについては、前から非常に厳しい御批判もありまして、最近におきましては、特に筑波大学にしろどこにしろ、学部というものを新しい国土計画的な見地から分散していこう、こういう動きのあることは先生承知のとおりでありますが、なおまた国立大学設置につきましては、五十四年十二月の大学設置審議会の報告によりまして、後期の計画と申しますか、いろいろと整備が図られておるような次第でございます。しかしながら、今後その計画がさらに年間二千人程度の範囲内において整備を進めるといったような目途で進められておりますけれども行財政整理あるいはまた財政負担という点から、今後はなかなかむずかしい状況下に置かれるのではないかと思います。  国立大学整備が一応終わりました後におきまする今後の進展計画につきましては、局長の方からお答えいたします。
  13. 宮地貫一

    宮地政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げたとおりでございますが、先ほど先生の御指摘の中で、日本大学の場合大変大都市に集中しているという現状についての御指摘がございました。確かにそのとおりでございます。それで、最初に御説明申し上げました高等教育計画的整備というような取り組みにおきましても、極力量的拡大を抑えて質的な充実を図るということを基本方針としながら、特に大都市での大学設置については原則的に認めないという対応で、五十一年に前期の計画ができたわけでございます。その当時から、大都市では認めないという原則的な対応でまいってきております。したがいまして、もちろんまだ大勢はそういうことでございますが、五十一年から五十五年までの実績から申しましても、大都市地域の立地が全体的な数字で申せば下がってきている、傾向はそういう方向に向かってきておるわけでございます。  そこで、先ほど来申し上げておりますような地方大学整備ということを基本に置きながら進めてきておるわけでございまして、私どもとしては、従来から調査を進めてきておりますもので申し上げますと、これも今国会継続審議をお願いしておりますが、一つは放送大学創設ということに取り組んでおります。これも大変長い経緯のあるものでございまして、四十四年当時から今日まで検討を続けてきておるものでございます。これも非常に大きな大事なプロジェクトとして私ども推進をしておりまして、現在すでに国会で御審議をお願いしている段階のものでございます。  はかに、たとえば具体的なプロジェクトとして取り組んでおる点を申し上げますと、短期の高等教育機関設置ということで、富山大学の工学部、現在高岡にあるわけでございますが、それの移転問題と絡んでおりまして、これも大変長く従来から経緯のある問題として取り組んでいるものでございます。また、ことしは国際障害者年でもございますので、これもすでに五十三年から調査を実施しておりますが、身体障害者のための高等教育機関設置について具体的な調査に取り組んでおるわけでございます。ほかに農水産系連合大学院というような問題について、これも五十三年から準備を進めてきておるものでございます。  ただいまのところ、具体的に取り組んでおるものとしてはそういうものがあるわけでございまして、私どもとしては、順次そういうものについて着実に前進をしてまいりたい、かように考えております。
  14. 後藤茂

    後藤分科員 時間がありませんので、私が言いたいのは、地方時代というもののあかしを高等教育に求めるとすれば、大学都市といいますか、都市大学じゃなしに、大学都市というものを常に念頭に置いてほしい。特に文部行政の中で、何回も繰り返して恐縮ですけれども歴史的、地理的、文化的な条件が違ってきておった、そういう地域があるわけですから、旧制高校がそのために設置をされておったところがある。それがいまは全く大学がないということですから、これもひとつそうしたプロジェクト念頭に置いていただきたいと考えるわけです。  特に私が大変尊敬いたしております神戸大学学長をされておった須田勇先生が、長い間、これからの高齢化社会を考えていった場合に、人間健康科学というものを専門に見ていく人材を養成する必要があるのではないか。先ほど局長の御答弁の中でも、無医大県解消していく、これがほぼ完成した。医者をつくるということも大変結構だと思うのです、病気をした者を治すという専門的な人材もそうですが、これから高齢化社会に入っていって、もうきょうは時間がございませんし、皆さん方専門でございますから中身に触れることはないですが、医療費だって十兆円から五十兆円、百兆円の医療費がこれからかかっていくということが言われている、こうした高齢化社会対応する人間の健康を維持増進させていくための人材をどう養成していくかというのは、これからの高等教育の中では一番大きな課題ではないかという観点に立って、健康科学大学という名前、あるいはそこに盛られておりますカリキュラムが適当であるかどうかということはなお検討していかなければならぬと思いますけれども、そういった視点というものは大変大切だと思うのです。そしてその中で、神戸大学の理学部的なものを強化充実すればいいじゃないかということではなくて、そうした総合大学学長として仕事をされてきた経験から、健康科学的な部面専門に扱う六年制の大学をつくるべきではないか、しかもその背景としては、旧制高校があった姫路が一番適当ではないかというようなことを指摘されているわけです。  この点について、大分前からこうした陳情文部省には上がってきていると思うのですが、全く歯牙にもかけられてないように私には思えるのです。歯牙にもかけないなら、こんなものはだめだとしてもっと練り直せと言えばいいのに、そうでもない。ですから、若干の期待を持たしていきながら、しかし全く高等教育整備計画の中には私は入っていないのじゃないだろうかというように思います。もっと親切に、こういうものは時代に合うとか合わぬとか、あるいはこのカリキュラムはどうだとか、テキストとしては十分でないとかあるとかいうことがもっと文部行政の中で出されていくべきじゃないか、私はこのように思うのです。この問題は初めて私は取り上げさせていただいて、長い間先生方がいろいろな観点から苦労してそういう計画を立案していきながら、文部当局の方にも要請していると思いますので、どのようにお考えになっていらっしゃるか、これもごく簡単にお願いします。
  15. 宮地貫一

    宮地政府委員 お話健康科学大学構想は、これからますます重要となってまいります国民の健康問題に取り組もうというものでございまして、その趣旨自体については私どもなりに理解はいたしておるつもりでございます。しかしながら、健康科学という学問の概念そのものでございますとか、あるいはその研究の進め方、特に私どもとしては、たとえばそういうものを設けました際に、それでは卒業生の社会的処遇というようなものがどういうぐあいに位置づけられるか、これはむしろ文部行政と申しますよりも厚生行政の領域であろうかと思います。そういう基本的な事柄につきまして、なお検討を要する問題点が多く残されているというぐあいに受けとめております。構想そのものについては今後さらに慎重に検討してまいりたいと考えておりますが、私ども取り組みといたしましては、現在神戸大学に、教育方法の改善というようなことにつきましてのプロジェクトに経費を配分していくという対応をいたしております。
  16. 後藤茂

    後藤分科員 時間が迫ってまいりましたが、確かに神戸大学に、プロジェクトのためのわずかな調査費が計上されているということは承知いたしておりますが、これからのそういった人材社会に出ていく場合の受けざら、これも定かでないというようなお話もございました。言葉を返すようですけれども、そうだとすれば、たとえば国立千葉大学看護学部看護学科だとか、あるいは東大保健学科だとか、琉球大学保健学科、あるいは私立ても幾つかあるわけです。こういった人々が一体どういう分野でどう仕事しているか。特に保健だとかあるいは健康管理だとか看護だとか、こういうようなもので、医学部あるいは体育学部等の範疇に入っていかない部面というものがこれから大切になりますよ、高齢化社会あるいは二十一世紀に対応して。それを旧来の観念でそういったとらえ方をしない方がいいと思う。  私は、非常にユニークな提案だと思います。ところが、名前がなじまない。それから、すぐ皆さん方のようにそこで教えていた学生社会に出て一体どこに行くのだろうかということじゃなしに、もっと積極的にこういった分野、つまり健康な人、それから病気になった人、それぞれには対応する学問の分野がありますけれども、その中間、あるいは患者、病人にさせていかないための健康管理保健というようなものに対して専門的に人間工学の観点からとらえていくという学問あるいは高等教育、こういうものが必要ではないだろうか、そのためには、きょう申しませんけれども、資料も出ておるわけですから、その周辺の医療機関だとかあるいは教育施設を考えていきますと、ちょうどエアポケットのように姫路周辺のあいているところが一番こういった教育環境にはふさわしいのではないかということを須田先生等も指摘をされているわけです。  私も、このカリキュラムについては実は問題提起をしたのです。これはどうも理学部なのか、医学部なのか、あるいは体育学部なのか、はっきりしない面もいっぱいある、もっと整理すべきではないかという指摘を私もしました。しましたけれども、これに対してもっと文部行政の中で高等教育整備計画の中で取り上げて、どうもこの辺はなじまないならなじまない、こういうようにすべきじゃないかということを取り組んでいくべきではないかというのが、私の御指摘をしたい点でございます。  時間が参りましたので、いまここですぐに、わかりました、それじゃやりましょうということは言えないでしょうけれども、これからの二十一世紀に向かって私たち自身も発想の転換をしていかなければならぬ、いやでもおうでも高齢化社会に入るし、医療費は高騰していくわけですから、これは大きな政治課題だろうと思います。ぜひひとつ大臣、この問題に対して単に神戸大学プロジェクト調査費をわずか計上しておるということで済まさないで、真剣に取り組んでみたいという御答弁をいただきたいと思います。
  17. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 先生も私のところに一度会いにお越しになりまして、いろいろ御本人から構想を承ったことがございます。いままでの普通の考え方とは違った大変ユニークな構想だと思います。  なお、この点は、学術の進歩、開発というものは、いままでの既往のものがこうだったらからそうでないものは排除する、そういうような狭いことではいけないのでありまして、新しい学問、新しい分野、新しいエリアを開拓するということが当然必要でございましょう。が、その問題につきましてはよく内部でも検討をしなければならぬし、また各方面の意見も徴したい、かように考えております。
  18. 後藤茂

    後藤分科員 終わります。
  19. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 これにて後藤茂君の質疑は終わりました。  次に、村山喜一君。
  20. 村山喜一

    村山(喜)分科員 文部大臣、きょうは私は、いま非常に問題になっております子供たちの学校内暴力の問題を中心に、文部行政の所信をただしてまいりたいと考えております。  この「文部広報」を見てまいりますると、大臣も所信表明の中で次のように言っていらっしゃるわけでございます。「最近、児童生徒の校内暴力等が増加し、社会的な問題となっていることは、誠に憂慮にたえません。校内暴力等を防止するためには、まず第一に、教育関係者が学校教育の現状について謙虚に反省し、この問題に積極的に取り組むことが肝要であります。先般、教育課程の」改正を云々ということで、「学校はもとより、家庭及び地域社会が一体となって」解決をしなければならぬ、全くおっしゃるとおりだと考えるわけです。  そこで、最近の校内の暴力という問題は、これは荒れる中学生という姿の中で、特に中学校の子供たちの中に日常的な暴力行為というものが発生をしてきているという事例が全国的に見られるというような傾向がございますね。それは一体どういうところから生まれてきたのであろうかということで、教研集会の中でも日教組の場合でもこの問題にまともに取り組んでいくという姿勢を示しておりますし、文部省もそういうような態度でいまいろいろ指導をされているようでございますし、あるいは総理府の青少年関係の連絡会議の申し合わせ等もあるようでございます。  そこで、具体的に、そういうようないわゆる非行生徒が中学校に特に多く発生をしてきた、それは一体どこから来ているのだろうか、どうしたらこの問題についての解決ができるというふうに考えておられるのか、文部省考え方、単に通達を出したからそれでよくいくでしょうという通達主義では私はこの問題は解決をしない問題だと思うので、大臣、もし大臣がお答えができなければ初市局長の方からまずお答えをいただきたいと思うのでございます。
  21. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 この校内暴力という問題は、決して単発的な一過性のものではない。戦後、戦争のつめ跡としての長い背景と沿革があると私は思うのであります。そういうことで言えば、現在暴れておるといわれる非行青年だけの問題、校内の学生だけの問題じゃなくて、やはりそこには環境なりあるいは背景なりというものがありまして、その一つの結果として今日の校内暴力というものがある。また、それに対する考え方としましては、単に文部省なり学校当局なりが苦しんでおり、取り組んでおるというだけではなく、今日はもうあらゆる家庭においても、社会においても、およそ今日の日本を論ずるときに、次の世代を担ってもらわなければならない大事な青少年のこういう姿というものについては、私は、国民のすべての監視の日がこの校内暴力の問題に集中しておると申しても過言ではない、かようにさえ思うのでございます。それに対する対策も、もちろん教育の責任を持っていまする文部当局一また学校においても取り組んでおりますが、同時にまたそれが学校外のいろいろな非行との関連を持っておるというようなことから、この問題はあるいは総理府の青少年対策においても取り上げられ、あるいはさらに自治体においても取り上げられ、また外部勢力とのいろいろなつながり、非行の問題と関連しまして、警察治安当局もこれに対して努力をしておる、こういうふうな姿であると存じます。  なお、具体的な問題は局長からお答えいたします。
  22. 村山喜一

    村山(喜)分科員 そこで、私は、どういう状況でこういう問題が発生をしたかという分析が必要だと思うのですね。いろいろなケースがあるだろうと思うのですが、文部省は、今日特に中学校にこういうように多発しているという状態はどこから生まれてきているのだろうかということで分析をされているに違いないと思うのですが、いろんな立場から問題のとらえ方をやっていらっしゃる方もおいででございます。  校内暴力の原因は三つに分かれる。その一つは、学校と教師が管理を強化され、子供が落ちこぼれて非行に走っている、いわゆる管理主義の弊害というものが今日端的にあらわれてきているのではないかということが指摘をされております。それはもちろん、無気力で、そして無責任で、事なかれ主義でサラリーマン化した教師、しかも教室では学力による選別を好んでなし、落ちこぼれた子供たちを無能呼ばわりをする。最近は管理あって教育なしというような姿の中で、管理職に当たる校長や教頭が職員を締めつけていく、そうすると今度は教師が子供たちに対して管理主義の立場に立ってそういうようなことで差別をしていく、こういうところから校内暴力が生まれてきているのではないかという見方が第一であります。  第二は、子供たちの幼児的な甘えが学校内で安易に教師に対する暴力の形であらわれてきている。最近は一人っ子が多い、きょうだいが少ないものですから、長幼序ありというような姿のものを家庭や地域社会の中でつくることができない。そういう中からやはり暴力に訴えていく。自分の子供のしりっぺたもようなたいて教育をしてこなかった父親の存在というようなものなどにより、甘えの構造の中でしつけができていない、そういうところから第一の反抗期においても反抗期の状態を通らないで、中学生の第二の反抗期の段階の中で爆発的にあらわれてくるのだ、こういう甘さ、子供の甘えというものが原因ではないだろうかという分析をしておるわけです。  第三は、子供が社会の変化の中で精神的に未発達である。いわゆる情緒不安定の状況の中でアンバラが出てくる。こういうところから自制心がなくなっていくというような意味において問題がこのように多発をしてきているのではないだろうか。いろいろな分析の仕方があると思います。  受験競争体制の中で落ちこぼれた子供たち、授業についていけない子供たちが自分の社会を形成するために、自分の存在を意識させようとして起こす行為でもあるとも言われている。こういう受験体制の中で選別主義が進んでいくと、勢い非行が増加していくことは間違いない。こういう状況の中で子供たちを非行の状態に追い込んでいく社会現象、教育を取り巻く条件というものを文部省としては一体どう解決をしてやるのか、どういう指導をしてやればいいのかということが文部行政に問われる方向ではなかろうかと私は思うのでございまして、そういうような意味から、初市局長としては何か通達を出されたようでございますが、そのよって立つ原因を分析し、それに対処していくためにはどうすればいいのかというようなものが出ておるわけでございますか。出ているとするならば、その中身を明らかにしてもらいたい。
  23. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいま村山委員が挙げられましたいろいろな要因というものについては、大体において私どもも同様の感じを持っております。特に中学校において最近校内暴力がふえまして、しかも従来は物に当たるというか、物を壊すということでありましたのが、最近は教師に対する暴力というのが顕著になっておるわけでございます。  その分析でございますけれども、第一には、非常に物質的に豊かになりましたけれども、その反面、精神面の重要性が見失われているようなところがある。社会的にも自分本位の考え方でございますとか、あるいは自分に振りかかってくるのでない限り、行われております暴力のようなもの、あるいは暴力的なことを見逃したりするというような事なかれ的な傾向が見られるということがございます。  それから、いま村山委員も御指摘になりましたが、子供に対しまして十分なしつけを行うことなく放任の状況が見られる。特に欲望を抑えるといったような面でのしつけが十分でございませんで、放任でなければあるいは過保護という家庭が見られることも挙げられると思います。  それから、学校教育についても、学校の運営が適正に行われず、一人一人の児童生徒に対する配慮が十分でないという場合に、そういう学校において問題が発生するということがあるかと存じます。  ただ、ちょっと申し上げさせていただきますが、管理主義ということをいま仰せになったわけでございますが、私どもとしては、学校で管理ということがないような運営をするのが一番上策であり、理想であると思います。ただ、校長という立場で、責任者としていろいろなことを考えまして先生方に協力を求めた場合に、非常にいい状況で学校が一体となって協力することが望ましいわけでございますけれども、何らかの事情で校長の考えに対する完全な調和がない場合には、場合によりましては校長がその責任上、職務命令というような形で学校の組織としてのいろいろな面の活動についてそれを推進していくということがどうしても必要な場合があり得るわけでございまして、そのようなことにつきまして、これを管理主義というようなことでは私どもは考えたくないのでございます。  それから第四といたしまして、これは中学校の生徒が心身の発達の上で、特に身体面で早熟化の傾向が見られまして、さらにこれがちょうど思春期と申しますか、自我意識に目覚めまして、心理的に、先生もいま情緒の問題をおっしゃいましたが、非常に不安定な時期に当たる、こういうことがあるかと存じます。さらにまた、これまた委員御指摘でございましたけれども、ちょうど高等学校への進学でございますとか、あるいは就職といったような問題を控えまして、そういういろいろな意味で心配なことが多い時期に当たっておるわけでございます。  これに対しまして、私どもとしては御指摘のように先般通達を出したわけでございますが、通達が文字だけでは意味をなさないことは御指摘のとおりでございまして、この通達の趣旨を十分に理解していただいて、教育の現場でいろいろな意味の努力を重ねてほしいと思っておるわけでございます。  やはり学校といたしましては、校長のもとに先生方が、問題が起こりそうな場合、あるいは不幸にして起こった場合はもとよりございますが、打って一丸となりまして、教育体制のもとに全力を挙げて事に対処する、特に平素から問題の早期発見に努めまして、そうしてできるだけ一人一人の子供が学校生活充実して送れるような指導をしていく、そういうことによりまして、いろいろな意味のいわゆる落ちこぼれとか、あるいは学校から見放されたというような気持ちになる子供ができないように努めるということが基本的に必要であろうというふうに考える次第でございまして、やはり師弟の関係と申しますか、その間に温かい人間関係というものをつくっていかなければなりませんし、それから学校という組織でございますから、生徒同士が仲間としての触れ合い、交友関係というようなものも十分につくり上げていくというような体制が必要でございまして、そのためには学校自体がその経営を弛緩させることがないように、常に緊張して子供たちに対していかなければならない、そういうことを基本にして、それを支援するようないろいろな施策は文部省の方でも考えていきたい、こういうふうに思っております。  なお、学校学校だけで十分でない場合、地域社会関係団体等の御協力を席に平素から連絡を緊密にして確保していくことも必要であるというふうに思っておるのでございます。
  24. 村山喜一

    村山(喜)分科員 警察庁の石瀬少年課長お尋ねをしますが、最近警察庁は、昨年の一月から十月までの間の校内暴力事件のうち、対教師暴力事件の全国的な調査をされたというふうに聞いているのですが、この中身がどういうふうになっているのか説明を願いたいと思うのです。この文書を見てみますと、授業中に教室で公然とやられている事例がございますし、それから卒業期に限らず、年間を通じて多発しているという状況が見られるようでございます。その理由をいろいろ調べてみると、感情的な反発とか仕返しとかいうようなものが多数を占めている。これははっきりわかりませんが、事件で検挙された子供が一体どれぐらいおるのだろうか、成績の低い子供が圧倒的に多いということも聞いておりますし、被害を受けた教師の数が三百人を超えるというふうにも聞いております。その中から、いわゆる暴力生徒の多くが校外の暴走族グループや暴力団とのつながりを持っているということも言われておるわけでございますが、その実態はどういうふうになっているのか、御説明を願いたいと思います。
  25. 石瀬博

    ○石瀬説明員 ただいま昨年一月から十月というふうにおっしゃったわけでございますが、年間の数字で御説明申し上げたいと思います。  昨年一カ年間の校内暴力事件といたしましてわれわれが認知し検挙いたしました件数は、千五百五十八件でございます。前の年に比較しますと、二九%の増加になっております。このうち、特に問題の多い、教師に対する暴力事件につきましては三百九十四件ということで、六九・八%、約七割の増加でございます。  それで、昨年、教師に対する暴力事件についてのみ特別調査をいたしましたところ、発生時間帯あるいは発生場所別で見ますと、大体七割以上が授業時間あるいは休憩時間に行われている、場所も教室、職員室あるいは教室に付属した廊下で行われているということで、一部の学校では暴力教室さながらの状況になっているということであろうかと思います。  それから、年間を通じて見まして、従前は大体卒業期の前後に多かったわけでございますが、オールシーズン的と申しましょうか、夏休みの八月のような場合は別といたしまして、大体年間コンスタントに校内暴力事件が発生している、こういう状況でございます。  それから、校内暴力事件を引き起こしました生徒の状況でございますけれども、学業成績を見ますと、上中下のうち下に位置するところの者が八五・三%ということで、成績の非常に悪い生徒、適当な表現ではないかもしれませんが、落ちこぼれの生徒によってこの種の事件が引き起こされているという状況であろうかと思います。  被害教師については、生徒指導担当教師がねらい撃ちされているというような現象もございまして、被害者の総数に占める生徒指導担当教師の割合が一三・九%というふうなことになっております。  それから最後に、こういった校内暴力事件、特に教師に対する暴力事件というのは、校内の番長グループあるいは不良グループによって行われる場合が多いわけでございますが、最近の事件を見ておりますと、こういった校内の粗暴集団の背後に卒業生の元番長や地域不良グループ、さらには暴走族、暴力団といった校外の粗暴集団が存在いたしておりまして、その影響のもとに暴力行為が行われるというケースが非常に目立っております。警察としましては、校外補導活動の強化等によりましてこうした背後関係の解明を徹底し、関連を切断するとともに、背後集団に対しましては検挙、解体を徹底するというふうなことでやっておるところでございます。
  26. 村山喜一

    村山(喜)分科員 石瀬課長にもう一度お伺いしますが、この校内の番長グループあるいは不良グループと校外のいわゆる粗暴集団というものとのつながりは、どれくらいの割合ですか。
  27. 石瀬博

    ○石瀬説明員 すべての校内暴力事件につきまして悉皆調査をしておりませんので、この割合はよくわからないわけでございますが、暴力団との関連のあるものは十件に満たないというふうに御理解いただいて結構だと思います。暴走族との関連につきましてもその程度ではないかというふうに考えております。ただ、元番長グループとのつながりにつきましては、これも割合ははっきりわかりませんけれども、かなりの部分がそういう影響を受けているというふうに理解いたしております。
  28. 村山喜一

    村山(喜)分科員 そこで、私は総理府にお伺いしたいのですが、二月六日に非行対策関係省庁連絡会議で「青少年の暴力非行防止対策の推進について」ということで申し合わせがなされて、それをそれぞれの各省庁で責任を持って遂行しようということになっているようでございます。いま学校内の暴力行為というものは、外とのつながりの中でどう考えていけばいいのかという問題と、それから社会全体の中でどういうふうにしてこの問題の解決に当たるかという両面からの問題を含んでいると思うのですよ。この申し合わせをやりまして、総理府としての見解、その方向性というものを一応明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  29. 佐野真一

    佐野説明員 校内暴力の問題につきましては、先ほど来文部省及び警察庁からその原因について一応の説明があったわけでございますが、総理府といたしましてもほぼ同様の見解に立っておりまして、校内暴力の背景、原因というものは学校内にとどまるものではなく、地域社会、もちろん学校も含みますが、特に家庭などとの絡み合いから発生してくる根の深いものであるというふうに考えておりまして、これらの諸条件といいますか、もろもろの背景を解明していかなければ、その原因及び対策は立たないのじゃないかというふうには考えております。
  30. 村山喜一

    村山(喜)分科員 大臣、先ほど警察庁の方からその背後的な関係のつながりの説明を受けたわけです。やはり私は、外のいわゆる粗暴集団、暴力団とのつながりがあるとか、あるいは暴走族集団とのつながりがあるというのが大部分ではなかろうかと思って聞いたら、それはほんのわずかですね。とするならば、警察に通報することによって解決ができる問題ではなくして、やはり学校集団の中で教育が燃え立つようなものにならなければ、この問題の解決はできませんね。基本はやはり学校の一体的、組織的な物のとらえ方の中で教育を推進していく、子供たちのそういうような民主的な組織を通じましてみずからの規律としてそれをつくり上げていくという体制をつくっていかなければいかぬし、そして教師集団がそういうような教育に対する情熱を盛り立てて、それと裸でぶつかり合うような体制というものをつくっていかなければならぬ、そこから解決をしなければならないということを考えますときに、きわめて民主的な集団づくりという問題が今日非常に大事な問題じゃなかろうかと思うのですよ。それがばらばらになりまして、そして一人で問題の解決ができるわけじゃございません。また命令によって解決ができる問題じゃない。このことを基本に踏まえながらやらなければ、この非行というのはやはり子供たちの悲鳴だ、悲鳴を上げている、そういうようなとらえ方をしないと問題の解決はできないのじゃなかろうかと思うのでございます。そういう立場から御指導されているのだろうと思うのですけれども、時間もありませんので、大臣の方からその取り組みの姿勢についての重点をお聞かせをいただきたいのでございます。
  31. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 私は常に申しておるのでございますが、この青少年の非行という問題の責任は一体どこにあるのだろうかと考えますときに、やはり一番責任を感じなければならないのは家庭と学校だろうと思うのです。それならば、その家庭と学校の非行少年に対しまするあり方は、やはり本当に愛情を持ってこれに対する。そうしていろいろ非行少年の姿を考えましても、自分のやっていること必ずしもいいと思ってやっているとは思いません。やはりそこには気持ちの上で非常なさびしさというものが内在していることは当然でありまして、それはやはり家庭における母なりあるいは両親なり、そういうところがまず考えなければならぬことでもありますし、学校内におきまする教育に当たる責任のある者としましては、やはり学校先生の深い愛情というものがなければならない、決して管理主義で弾圧したからといっておさまるとは私は思いません。むしろこれに対しましては本当に温かい気持ち、愛情というものがまずなければ解決しない、かように私は考えております。
  32. 村山喜一

    村山(喜)分科員 時間が来ましたのでやめますが、やはり全校一体で当たっていく。家庭に責任がある、社会に責任があるということで逃げてはいけませんね。やはり学校教育が、そういうような状態の中で無気力集団の状態に教師が陥っているということであるならば、それをみずからの手で直して、そしてそういう社会的なゆがみの現象に学校の中で対処していく、そういう構えがなければこの問題の解決はできないと思う。その点で、文部大臣のそういうような民主的な集団づくりに対する今後の御指導のほどを要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 これにて村山喜一君の質疑は終わりました。  次に、田中昭二君。
  34. 田中昭二

    田中(昭)分科員 私は、青少年問題についてお伺いします。  いまも論議なされておりましたが、まず、小中学校におきます校内暴力が最近目立っておりますが、一部にはその問題に対して警察力の導入などという憂慮すべきこともあるようでございます。また先日は、この校内暴力対策について安孫子自治大臣は、警察の力を十分取り入れて対策を講ずべきであるというような趣旨の御発言を任されておると聞いておりますが、この考え方について文部大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  35. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 安孫子大臣のおっしゃいましたのは、つまりこの暴力事件に対して文部当局なり学校当局が、自分の責任であるからという意味の過度の気持ちから、外に通報しないで、できるだけ校内で自分のところで片づけてしまおうというふうな考えが強く、警察の協力を求めない事案が多いのじゃないか、そういうことから、それはやはり行き過ぎであって、ことに外部勢力との連携が相当程度ある校内暴力に対しては、警察に対しての協力を求められてしかるべきものだ、こういう好意的な御発言だと存じます。  ただいまも申しましたように、この校内の非行青少年の問題というものは、やはり何といいましても教育の責任を持っております学校当局にお願いしなければならぬ問題でありますが、同時に私は、もう一つは自分の子でありますから、家庭における両親なりあるいは母なり肉親の方々が、これまた自分のことでもあるのでございますから真剣に考えていただかなければならぬ。それで、われわれ文部当局として考えますのは、そういうふうなことに対しましてもあくまでも深い愛情を持ってこの少年に対したい。しかし、この少年がどうしても悔悟しないといったような教育職の手に負えないという段階におきましては、これは教育委員会なり、あるいは校長先生なり、地元なり、現場の方々の御意思によって、警察のお力を拝借しなければならないことが起こるかもしれないということでございます。
  36. 田中昭二

    田中(昭)分科員 ですから、そういうことに対して文部大臣として何をいま考えておられるかということをお聞きしたわけですけれども、とにかく先ほどから言われておりますように、愛情を持って云々というようなことに尽きるわけです。どうもいまの大臣の御答弁、そして政府の機構の中でのものから考えますと、やはり好意の上からといえども警察権力というものに頼っていくというような感じを受けてならないのです。そういうものに頼っていって警察力というようなものをもって対抗することはどうだろうか。その証拠に、そういうことで力の対応では根本的な解決にならないということも先ほどから言われております。なぜかと言えば、力と力であれば敵対関係しか生まない。これはもう極端に言えば破壊へ通ずるのではないか、私はこういうような認識です。その反面、あるところで、問題が起こった学校で教師が根気よく対話を重ね、授業においても実習体験等を取り入れていったために、そして教師の努力と誠意が通じたために非行暴力がおさまったということも多く報道をされておりますし、私たちも聞いております。このような状態は文部行政の方からも重大な関心を払うべきである、私はこういうように思います。ひとつ簡単に大臣から御所見を伺いたい。
  37. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまるる申し上げましたように、次の時代を担ってもらわなければならない大事な青少年に対しましては、いまやこの非行問題は国全体といいますか、社会全体の大問題になっております。そういうことからいたしまして、その直接の責任であります文部当局といたしましては、ただいまお話し申し上げたように、いろいろな審議会でありますとか組織というものを通じまして、その問題について指導をいたしております。その指導の詳細なことにつきましては初市局長からお答えいたしますけれども基本をなしますものは、何遍も申しますとおりに、決して警察の権力でもなければ外部のあれでもない。言うならば愛情という一点に帰する。それは学校におきまする教師の愛情であり指導であり、同時に家庭、根本は自分の子でございますから親がまず第一に当然真剣に考えなければならない、こういう点を私は強く主張いたしたい。また、家庭のしつけという問題も最も重大であろうと思います。
  38. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いま大臣お話で、この問題は社会全体の問題だというとらえ方、基本は私も大臣も大体同じ方向を持っておると思うのです。  そこで、そういう社会についての態勢といいますか、姿勢といいますか、先ほども議論されておりましたけれども、この問題については時間も制約されておりますからまた後ほどするとしまして、いま私がお聞きしましたそういう力と力の対決じゃなくて、学校の中で大変な努力をして根本的な解決に進んでおるということについて、教育行政としてそういうものにどう関心を持っていくか、簡単にお答えいただきたい。
  39. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいまの田中委員のお考えのように私どもも考えておりまして、やはり学校がみずから主体的にその責任で非行防止に取り組むということが基本であると思っております。そういう責任、みずからの職務を怠りまして、安易に警察の方に頼るということがあってはならない、こういうふうに考えておる次第でございます。  それで、私どもも実は昨年末に、各都道府県の教育委員会に対しまして非行の事例について報告を求めておりまして、いままとめております。その中からただいま委員御指摘のような、学校として鋭意努力して立ち向かっていった、そういうケースについて分析をし、まとめてみたいと思います。その結果をやはり全体の参考のために生かしていきたい、こういうふうに思っております。
  40. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そういうことを早急に生かしていっていただきたいと思います。  それに関連しまして、いまの社会問題、暴走族、高校生等のバイクなどによります交通事故も大変多発しておりますが、最近の交通事故の死傷者の増大に関係なしと言えないのでありまして、この高校生等のバイクなどによる事故対策に、学校等では、免許を取らない、車を持たない、運転をしないとかという三ない運動などを行いながら、免許証を保管する等々で対処しておると聞いておりますが、全国でその実態はどうなっておりますか。それから、この三ない運動が進められていることについて文部省としてどのような考え方を持ち、対処されようとしておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  41. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 青少年の教育を預かります高等学校等に対しまして、勉学の途上にある生徒が交通事故による死傷を受けるということは何としても防止する努力が必要であると考えております。  御指摘の免許証の保管等の規制措置を講じております府県は最近ふえてきておりまして、全面的に三ない運動を申し合わせて実施に移しておりますところが十数県に及んでまいっております。また、運転免許証の規制校でございますが、ほぼ全面的に二輪車の使用を禁止しておるところが約千校、それから通学事情、アルバイト等の特定の場合に限って乗ることを認めるというような形で規制をしておりますところが約三千校、それから、運転免許証を学校で保管するという措置をとっておりますところが千五百校というような状態でございまして、その実施の結果、明らかに二輪車による事故件数が減少してきたという報告も受けているところでございます。  このような規制の措置につきましては、現在の交通環境等を踏まえまして、また父母や地域社会の要請も受けて、学校として教育的配慮のもとに行われており、いま御報告申しましたような事故防止に成果も上げてきておるところでございまして、私どももやむを得ない措置であると考えておる次第でございます。
  42. 田中昭二

    田中(昭)分科員 やむを得ない措置というのはちょっとひっかかりますね。  そこで、警察庁にお尋ねしますが、最近の交通事故の状況を見ますと、特に青少年に係る事故が多い。この痛ましい事故が根絶するくらいの対応が必要であろうと思います。  そこで、青少年の特にオートバイ等の免許年齢の引き上げを含む安全教育について、その展望と具体的取り組みについてお聞きしたいと思います。
  43. 越智俊典

    越智説明員 お答えいたします。  社会生活における自動車の利用実態とか、あるいは人間の知力、体力と年齢の関係、あるいは諸外国の制度といったようなもの、こういう問題を総合的に考慮いたしますと、現行の運転免許の取得年齢、二輪車が十六歳、四輪車が十八歳でございますが、これを一律に引き上げることについてはきわめてむずかしい問題があるというふうに考えております。  しかし、先生指摘のように青少年の事故が多いということも事実でございます。これを防止するために、警察としては青少年運転者に対する安全教育を充実することが重要であると考えております。特に二輪免許を取得した十八歳未満の年少運転者に対しましては、免許を取得した時点で安全運転に対する意識を徹底する必要があるところから、これらの年少者の特性を考慮した講習を昨年秋から実施しておるところでございます。また、二輪免許取得のための自動車教習所における教習を充実するために、今年四月からは技能教習の時間を二時限、学科教習の時間を四時限、計六時限延長することとしております。  この問題につきましては、現在のモータリゼーションの進展の中で非常に車志向の強い青少年に対してどのように安全運転させるかという観点から、今後とも安全教育を中心として総合的に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  44. 田中昭二

    田中(昭)分科員 次に、アメリカとか西ドイツ等では、学校の授業の中に車の運転のマナーも含めて安全教育を取り入れて、積極的に取り組んでおります。そういう車社会対応するような状態を考えますと、わが国もようやく第三次の交通安全基本計画では中学校高校の授業に実技等の指導を導入するということですが、文部省としての具体的な取り組みと方策をお聞かせ願いたいと思います。
  45. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 交通安全につきましては、わが国では従来から学校における安全教育の重要な内容といたしましてこれを取り上げておりまして、具体には特別活動のホームルームあるいは学校行事等を中心にいたしまして、教育活動全体を通じて計画的、継続的に実施することといたしてきております。  文部省といたしましても、交通安全指導の手引きを小中学校につきまして、また高等学校につきましては自動車運転も含めましての手引きを作成して、いまこの面の指導の徹底を期しておるところでございまして、今後一層この教育指導の充実を図ってまいりたいと考えております。
  46. 田中昭二

    田中(昭)分科員 よく質問を聞いておってください。いままでやったことではなくて、今度の第三次の交通安全計画もあるのだから、それをどう考えているか、こう聞いているのですよ。前もって質問を言っているのですから、こっちの質問をよく聞いて答えてください。
  47. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 いま申し上げましたとおり、学校の教育活動全体の中での指導の徹底を強化するという方向で取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  48. 田中昭二

    田中(昭)分科員 強化してもらわなければならないのは当然ですよ。だから、今後中学校高校の教育の中に実技、技術、そういうものを全部含めてやっていこうということを政府で決定しているのですよ。それに対して何も見通しも持たないようなことじゃ困るじゃないですか。私は、この問題は緊急な問題であると思います。いまの文部省の御答弁のようでは、これはもうどうしようもないですよ。政府の基本計画の内容をあなたたち御存じないのですか。そういう答弁をするのだったら、聞く必要はありません。  ですから、その基本政策もこのような文部省対応では後手後手になってしまいますよ。せっかくの基本計画の目的達成も、文部省が引きずった、達成もできない、こういうふうに言われても仕方がないと思いますが、いかがですか。
  49. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 第三次の基本計画につきましては、三月末を目途にいま関係省庁での協議が重ねられておるわけでございまして、その中におきましてわが国の交通安全のこの面の指導の徹底について協議を重ねておるところでございます。
  50. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そういう協議を重ねてほかの官庁がやっていることに対して、教育ということは文部省の所管でしょう。だから、そのことについては先陣を切ってやらなければいけないじゃないですか。そのことについていろいろ難問題もあるということは、私もそれなりに理解しております。ですから、文部省としましては、やはりいままでこの安全教育の問題でおくれておるのは教育の問題なんですから、それについては進んで取り組む姿勢なり方向なりというものを打ち出してもらいたい、こういうように思います。それでは次の質問ができないじゃないですか。  今後さらにこういう高度な車社会を迎えることは明らかでありますが、そうであれば、この車社会に対して積極的に交通教育を学校教育の中に導入することは、いわゆる子供の生命を守るという上で大事なことだと思いますが、ひとつ大臣から二言お答え願いたいと思います。
  51. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 当然われわれの方といたしましては、バイクその他の車社会対応する教育を率先して指導いたします。
  52. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いま私が申し上げたかったことは、いままでの交通安全という問題に対して文部省取り組みはそれなりにやってこられたわけですけれども、このように日本が欧米先進国と肩を並べて、車社会から引き起こす問題はいろんな問題がある。それで、特にヨーロッパ等の安全教育というものに対する取り組み方とわが国の状況を比較してみると、いろんな調査とかアンケートもございます、ここに出ておりますが、自動車社会と言われる時代がやってきて、受験勉強の指導よりも命の大切さこそ高校で教えるべきであると思う、単なる禁止では若者の心も今も救えない、極端な言い方ですけれども、私は筋が通っていると思うのです。また、徹底した交通安全教育を学校で施すべきである、小学校からでも幼稚園からでもやるべきであるとか、高校の教育の中でいまやらなければならないのは、そういう車の禁止運動でなくて徹底した交通安全教育だ、こういう世論といいますか、もちろん大臣が言われるような、父母も関係当局も含めてそういう考え方があって、いまの交通問題に対しましては、簡単に言えば交通手段、車の安全性、改良がそれなりに進んでおります、それから道路環境の改善、これも盛んにやってきてもらっております、残るのは交通安全教育ということになるわけでございます。  私も昨年ヨーロッパに行ってまいりましたけれども、交通安全の知識というのは人間の生命を維持していく上で必要な基本的な問題であるとか、そういうことを多く述べられておるわけです。交通安全教育の制度は義務教育制度にすべきであるとか、いろいろございます。その中で特に私、感銘を受けたことは、人間の形成は教育以外にない、大臣のいつもの持論であります、交通事故の追放はつまるところ人間教育以外にないというこの理念、思想というか、こういうものでございます。  こういうものに対する政府の施策というのは、当然安全教育は国及び地方公共団体が進めることが生存権を重視することである、こういうことが言われておりますから、しっかりひとつがんばってもらいたいと思います。どうぞ言ってください。
  53. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 先生指摘のとおり、交通安全教育が大変大事なことであるということは十分自覚しておりますが、いま問題は、具体に中学校、高等学校で安全運転の指導までするかどうかという問題でございます。  この問題につきましては、わが国の現実の交通環境、子供たちがいま注意して学校に登下校しております。しかし、その子供たちの注意にかかわらず、車による事故が絶えないという問題がございます。この辺のところは大変大きな課題でございますので、全体の交通安全環境の整備、それと人間教育ということの調和の問題としていま真剣な取り組みをしておるところでございまして、従来とも交通安全の二輪車あるいは四輪車における事故の発生の状況、自動車の特性、これに対する交通安全ということにつきましては、それなりの指導をして学校も努力をしておることでございますが、もう一歩進めて安全運転までいま学校で取り上げることはどうかという問題につきましては、各方面の御意見を聞いて結論を得ていきたいということで検討しておるところでございます。
  54. 田中昭二

    田中(昭)分科員 次に、文化庁の方に来てもらっておると思いますが、著作権の問題についてお伺いします。  世界各国いろいろ国情が違いますから一概には言えないのですが、いわゆる欧米先進国に比べて文化面で大変おくれておる、こういうことが言われております。その中の一つに著作権の問題がある。わが国は、著作権については国民全般にわたって大変意識が低い。そういう中で、最近複写、録音技術が大変向上しておりますし、著作権が著しく侵害をされておるというふうに聞いておりますが、その中での書物のコピーについては文化庁としてどういうお考えをお持ちでしょうか。
  55. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように、複写機器の広範な普及に伴いまして、大量の情報が急速かつ容易に提供できる状況になっている、そのこと自体は積極的に受けとめなければなりませんけれども、そこでコピーされる情報の大半が御指摘のように著作権のある著作物である、そしてそのコピーの状況が著作権法が許容している範囲を超えて行われていることによって、著作権者なりあるいは出版権者の経済的利益が侵害されているのではないかという問題が起きているわけであります。  このことについてはすでに著作権審議会の関係小委員会においても検討された経緯がありますけれども、問題は、そうした利用の態様の中において個々の著作権者がそれぞれにその利用の状況をチェックするということが不可能のような状況で利用が行われているということであり、したがって、権利者の保護を図りかつ著作物の利用の円滑なあり方との調和を図るということになりますと、どうしても権利者側の、たとえば権利の集中的な管理というような実効のある対応が必要になるわけであります。こういった点について、現在文化庁では、専門家の御参加も得まして鋭意具体的な方策についての検討を進めております。事態におくれないように対応を急ぎたいと考えております。
  56. 田中昭二

    田中(昭)分科員 書物のコピーだけじゃなくて、音とかそれからレコードとか、こういうものに対して大変な問題があるというふうに聞いておりますし、著作権を守ると同時に、またそれを利用する人たちの立場に立っても考えなければいけない、こういうように思うのです。私の乏しき知識の中でも、このような情報社会の中で進んできたわが国の立場、その情報社会の先端を行くのは何といってもコンピューター機器というもの、具体的にはビデオとかカセットとかこういう機器が大変発達して私たちの生活の中に入り込んできているわけですが、その反面、先ほど言ったように国民は著作権ということについては大変知識が低い、そういう中で著作権が侵害される、こういうことのようでございますから、法律の枠外でいろいろなことが起こる、そういうことがしばしば見られるような状態です。  そこで、私が考えることは、やはり著作権ということについて国民の多くの方々に認識をしてもらうということが文化庁としても一番大事なことではなかろうか。ですから、国民によく認識、浸透させるための具体的な事柄としてどういうことをやっておられるのか、また、いままで以上にどういうことを至急にやるお考えなのかお聞かせ願って、終わりたいと思います。     〔愛野主査代理退席、主査着席〕
  57. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり、現在生じている著作権問題に対する対応を考える場合には、著作権思想の普及徹底ということが欠かせない前提となります。文化庁としては、これまで一般社会人あるいは図書館の職員、さらには都道府県の担当職員あるいは学校の教職員をそれぞれ対象といたしまして講習会、研修会を実施する、そのことを通じてできるだけ著作権思想の普及徹底を図ってまいっておりますけれども、御指摘のようになお努力をしなければならない事柄でございますので、そうしたこれまでの努力をさらに強めてまいりたいと考えております。
  58. 田中昭二

    田中(昭)分科員 以上で終わります。
  59. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて田中昭二君の質疑は終わりました。  次に、渡辺貢君。
  60. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 まず文部大臣お尋ねいたしたいと思うのですが、今日子供の非行が戦後最高のピークを示しているわけであります。この問題では現場の教師やあるいは父母の皆さんも大変心配をしていらっしゃる、当然教育行政に携わる文部省としても非行の増加あるいは校内暴力の激増に対して大変な決意を持って取り組んでいらっしゃると思うのです。とりわけこの非行や校内暴力の性格を見ますと、人間の命や人格を尊重し、社会生活に必要なルールを自覚しないで子供たちが成長するということになると、これからの日本、八〇年代から二十一世紀にかけてのわが風の進歩や民族の将来にとってもきわめて重大な問題である、こういうふうに私は考えております。そういう意味で、この問題はまさに重大な国民的な課題一つであるというふうに認識しているわけでありますが、まず田中文部大臣基本的な認識についてお尋ねをいたしたいと思います。
  61. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 基本的な認識という御質問でございますが、よって来る原因は何か、こういう点であろうと存じます。今日の非行青少年のあり方という現実が、やはり敗戦後の一つのつめ跡であるということは覆い切れない問題であろう。戦後のあの窮乏と混乱と無秩序の中にはぐくまれた存在、そうしてまたそこには社会倫理あるいはまた社会的な家庭におけるしつけ、あるいはまた社会教育上の礼儀、そういうふうな一つ一つの問題が余りにも無関心に放任されておったということが根本の原因であろう。しかし、そのもっともとを尋ねるならば、やはり私はいつも申すように、愛情というもの、親子の本当の愛情、教師と生徒との心のつながり、しつけ、そういうふうなものが等閑視されておったことが原因であろう、かように私は考えます。
  62. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 大臣の認識が明らかになったわけでありますが、この非行の問題を歴史的にたどってみたいと思うのです。  特に戦前戦後を通じまして幾つかのピークがあったと思うのですが、戦前では昭和十七年から十八年にかけて十四、五歳から二十歳未満の青少年の非行が約五万件から六万件というふうに言われております。戦後における第一のピークは、昭和二十六年の十三万三千六百五十六件、さらに第二のピークは昭和三十八年から四十年ぐらいにかけて十七、八万人、また戦後の第三の今日的なピークでありますけれども昭和五十四年から十四万人、昨年は一年間で十五万人を超えた、こういうふうに、これは警察庁の調査でありますけれども指摘をされているわけであります。  特に最近は非行の年齢が低くなってきている。十四歳で二二%、十五歳で二四%と言われております。この社会的な背景を見ますと、戦争中になぜ非行が多かったのか。ある意味ではあの極限の侵略戦争の中で人間の生命が軽んじられる、天皇の民草として身を鴻毛の軽きに置けというふうな教育でもありました。青少年の中に展望がなくなる、そういう中での非行であったと思いますし、昭和二十六年には朝鮮の侵略戦争、そうして特需景気という異常なブームがあり、また昭和三十八、九年ごろには高度経済成長とオリンピック、ベトナムに対する侵略戦争、さらに五十四年から今日にかけては軍事費の増大などに見られておりますように、さまざまな核戦争の危険性の増大など、そういう点で子供たちの心の中に、そうした人命の軽視や社会経済の変化あるいは最近の総理大臣の犯罪等に見られるような政治の腐敗、ここに根源があると私は考えております。ですから、単に狭い愛情だけの問題ではないのではないかというふうに思うわけでありますが、こうした歴史的な段階における非行の実態について数を述べて指摘をしたわけでありますが、この点については事実どうなのかお答えいただきたいと思います。
  63. 三角哲生

    ○三角政府委員 過去に、いま御指摘ございました青少年非行が増加した戦前の末期の時代、それから昭和二十六年ごろと昭和三十八、九年ごろ、さらに最近においては経済的に急速な発展を見まして、また物質的に非常に豊かな社会が実現するといったようなことで社会的変化というものがあったわけでございます。それから御指摘のように、国際紛争も生じたわけでございます。そして、それらのときにたまたま青少年非行の件数が増加をしているわけでございますけれども、これらの社会的、経済的変化というものが青少年の非行の増加と端的に結びつくか、どういうように影響を与えたかということは必ずしも明確ではない、これを社会科学的に証明するというようなこともむずかしいことだと思っております。  ただ、やはり人間は環境から影響を受ける存在であるということは一般的に言われておりますので、こういったことが人間の物の考え方や行動に何らかの影響を及ぼすことは否定できないと思いますけれども、私ども教育を扱う立場といたしましては、やはり人間は主体的な存在であるということで、みずから考えかつみずから判断して行動ができるし、そうしなければならない存在であるという前提を持ちたいと思っております。そうでないと、教育というようなことが成り立つ基本がぐあいの悪いことになるのではないかと思っておりまして、やはりまず人間の内在的なものから考えたい、単に外的な要因にのみ今日のこういった非行あるいは校内暴力の状況を帰することはできないというふうに考えておるわけでございます。
  64. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 数字はよろしいですね。確認していただければ結構です。
  65. 三角哲生

    ○三角政府委員 ちょっと手元に戦前のものがございませんけれども、十七、八年ごろは大体仰せの感じ、五、六万とおっしゃいましたけれども、刑法犯少年の数で申しますと、私の手元にあるのはグラフでございますのであれでございますが、六、七万程度ではなかったかと思います。それから二十六年のピークが、交通業過を含む触法少年を含む非行少年の補導人員は十六万六千人、主要刑法犯少年の補導人員が十二万六千五百五人。それから三十九年のピークでございますが、触法少年を含む数字が二十三万八千八百三十人、主要刑法犯少年の補導人員が十五万一千八十三人。そして昭和五十五年度の刑法犯少年の補導状況は十六万六千人でございます。
  66. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 おおよそ変わりありませんが、いま社会的な外的な要因はある程度あるだろうというようなお話でありましたけれども、ここに一つ端的なものをお示ししたいと思うのです。  これは大手のスーパーで売られているものなんですが、ノースモーキングというふうに書かれております。しかし、かかれている子供たちはたばこを吸っております。これは学用品ですね。筆箱で、ノースモーキングと書いてあるんですが、中をあけますと、こういうふうに灰ざらになっているわけですね。ですから、灰ざらの学用品が売られている。これもノースモーキング、みんなたばこを吸っておりまして、やはり灰ざらです。幾つかのそういう商品がありますが、これは著名な大手スーパーで最近販売をされているものであります。これだけ国民的な問題として非行の問題が指弾をされて、この克服に教師やあるいは父母が全力を挙げているときに、売らんがためのこういうものがはんらんをしているというのはきわめて遺憾であると思うのですが、その点について大臣の見解を承りたいと思います。
  67. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 われわれはあくまでも教育という観点から子女の正常なあり方、勉学の姿勢というものを慫慂いたしておりますが、反面におきましては、いわゆる商業社会、売らんかなということであらゆる物が出回り、また、たとえばマスコミあたりにおきましても、放映の内容が非常に教育的なものもあると同時に、また非行を非常にそそるような内容のものもある、こういう点でございます。  しかしながら、われわれの力で社会全般のそういう問題をいかに抑制してもらうかということは、私の立場といいますか文部省としては、ちょっとできない範疇でございます。そういうことから内閣に青少年対策本部というものができまして、縦割りの、ある省庁においては権限事項としてできないものも、政府なり内閣という立場において各省庁の統合調整をする、そういう意味合いの青少年対策本部の存在は、これまた非常に有効なものである、かように考えております。
  68. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 直接文部大臣がこれを取り締まれというふうには私は主張していないわけなんですが、教育的に悪いということははっきりしているわけですね。そういう点で、ひとつそういう立場を貫いていただきたいと思います。  この非行の問題では、先生方の努力が大変多いと思うのですが、ややもすると、校内暴力の問題などその矛盾が先生に集中的にあらわれるという傾向もございます。  ここに、私のところに来た手紙があるのでひとつ紹介をしたいと思うのです。これは先生が発行している「若木」という学級通信です。「この膨大な学級新聞「若木」は、鈴木敏則先生が命をかけるが如く発刊し続け、時には血を吐く様な思いで綴られ、時には疲労で腕がちぎれる様な中で綴られた生徒と父母たちにとって、貴い愛の記録です。先生の不屈の努力によって校内暴力とはおよそ縁のない学級であることを一L父母たちは誇りに思っております。」ということで、これはぜひ紹介をしていただきたいという父母の願いです。朝刊、夕刊と言われて、朝子供が登校すると先生から渡されるわけですね。そして帰るときにも渡される。初めは子供たちは、先公はこんなもの出したって続かないだろうというふうに言っていたんですが、新学期以来今日まで続いております。そして子供たち自身がこの「若木」を見ながら、いまの教育のあり方や自分たちの成長について考える、先生の努力について感謝の念を持つ。また父母がそういう真剣な教師の取り組みについて、やはり自分たちも一緒になって子供たちの成長のために力を合わせていかなければならない、そういう努力が続けられております。これは埼玉県の与野市にある県立高等学校一つ事例でございますけれども、この学校では、この鈴木先生の努力に対して全部の教職員が一緒に協力をしていく。ですから、学校全体が明るくなり、暴力や非行はもちろんございません。同時に、校長先生や教頭先生も、単に先生を一人の人間として、労働者として管理するということではなくて、先生の創造性やあるいは教育に対する情熱、そういう先生の真摯な教育実践への取り組みを励ましている、包んでいる。これは一つの実践のあらわれなんですが、そういう意味で、私は教師集団の努力が今日大変重要であるというふうに考えております。  また、これは「埼玉教育新聞」という埼玉の小中学校先生方でつくられている組合でつくられた新聞です。「どうすれば非行・問題行動を克服できるか」という特集号でして、この中では「教職員が今すぐとりくむ六つの重点」、もうどうにもならないのじゃないか、教師をやめたくなったというような深刻な感想を漏らす教師もいます、しかし、決してそのようなことはありません、みんなの知恵と力を合わせて努力すれば必ず克服することができる、そういう確信を持った内容が記載をされております。これは地方の朝日新聞でも取り上げられているわけでありますけれども、いま非行や校内暴力を考えてみた場合に、やはりその最先端にいる教師の活力、教師の努力を評価しながら、またそれを中心に父母や地域の住民たちの協力、そうしたものを文部省の教育行政がしっかりと支えていく、こうすれば必ず非行は克服できるというふうに私は確信をいたしております。  そういう点で、文部大臣のこうした教師の努力等についての御所見をお伺いをいたしたいと思うのです。
  69. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 当然われわれは学校先生方を中心に教育を展開いたしておるのでありまして、教育をいたします。その根幹は、お説のとおり学校先生でございます。学校なるものが本当化いろいろな非行のあらしにさらされておりますけれども、その中におきましても、本当に勇気を持って先生が校長先生を中心に一体となった学風をお立てになる、そして生徒の教育に当たられる、その姿に対しましては非常に感謝もし、敬服もいたしておる次第でございます。今後ともになお一層父兄とも緊密な連絡をとられ、またPTAとも一体となられまして、教育の目標を達成されるようにこいねがってやみません。
  70. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 ぜひそういう立場で御努力をいただきたいと思うのです。  特に、最近この問題で二、三指摘しなければならないと思うのですが、校内暴力が起きたということになると、すぐに警察を導入しなければいけないというふうな意見が出てくるわけなんですね。警察官の導入によってこの問題を解決することはできません。いま大臣からも御答弁があったように、先生方あるいは校長先生など一体となって克服をしていく課題であろうかというふうに思いますし、また暴力や非行の関連をたぐってみると、右翼暴力団などの動きが非常に活発であるというふうに指摘されております。昭和五十三年末の警察庁の発表によると、全国的に暴力団の数は二千五百二十五団体、十万八千七百人、さらにこれはふえているというふうに言われているわけでありますけれども、そういう点で、こうした暴力団の介入やあるいはすぐに警察が学校に入るという問題に対しては、学園の自治を守るという点からも厳しい態度をとらなければならないと思うのです。  この問題の最後になりましたけれども、この点についての御見解を承りたいと思います。
  71. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 生徒を取り巻く周囲のいろいろな誘惑があると思います。そういうふうなものに対しましても、父兄とともに先生方が生徒を守っていただかなければならない。またそういうふうな外部的な勢力、あるいは番長でありますとか、あるいはいまそこにお持ちになりました喫煙とか麻薬とかというふうないろいろな外部的なものに対しまして、本当に愛情を持って先生と父兄が子供を守るということが最も必要な段階だろうと思います。
  72. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 それでは、次に移りたいと思うのですが、ことしは国際障害者年でもございます。特に教育の分野においても障害者教育、昭和五十四年度から養護学校が義務制化されております。私も川口の赤井というところにある県立の養護学校を見学させていただいたわけなんですが、スクールバスが入ってくると、先生方はもうトレーニングウエアに着かえで、子供たちを抱きかかえたり背負ったりしながら教室に連れていく。一日の教育課程を見ましても、もう本当に、心が触れ合うというよりもすれ合うくらいの大変真摯な努力があります。しかし、そういう中で先生方の精神的、肉体的な疲労は大変深刻なんですが、埼玉県内の六百五十四名の養護学校、特殊学校で働く先生方の健康を調査すると、約二六%が腰痛や頸腕症候群あるいは貧血の症状などを訴えているわけです。そういう点で、一般の教職員に比べても大変疾病が多いというのが実態だと思います。この中で養護学校の定数の基準を見ますと、現在の基準は、重複クラスの場合には教師一人に対して生徒が五名、一般クラスは教師一人に生徒が八名でありますが、川口の養護学校の例などを見ますと、大体教師一人で二人ぐらいの子供たちを扱うのが限界なんですね。そういう意味で、国際障害者年でもございますし、こういう教員定数の基準をもっと改善していく、そして障害者が教育を受けて成長できるように、また教師の条件を改善していくということが大変必要だと思いますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  73. 三角哲生

    ○三角政府委員 公立養護学校の小中学部の学級編制と教職員の定数につきましては、従来からも配慮をいたし、かつその改善に努めてまいったわけでございますけれども、このたび昭和五十五年度を初年度とするいわゆる第五次教職員定数改善計画を立てたわけでございますが、これに基づきまして、ただいまもちょっとおっしゃったわけでございますが、重複障害学級一学級当たりの児童生徒数、現在五人でございますが、この計画ではこれを三人にしよう、それからその他の学級の一学級当たりの児童生徒数、先ほどおっしゃいましたように八人となっておりますが、これを七人に引き下げよう、こういうことにいたしております。それからあわせて養護訓練担当教員や寄宿舎を置く学校へのプラスアルファの加配教員充実、そういったことのために、教員定数増とそれから寮母の配置基準の改善を図っているところでございます。それから高等部の学級編制、教職員定数につきましても、小中学部に準じた改善を図っている、こういうことでございます。
  74. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 それをぜひ早く実現をされるように、一層努力をしていただきたいと思います。  次に、とりわけ人口急増地域における高等学校教育の問題でありますが、昭和五十一年度から高等学校生徒急増に伴う新増設建物に対する補助制度ができまして、一応五十五年度で終わるということになっておりましたけれども、今年度、最終段階で五十六年度以降も継続をするという方針決定を見ております。たとえば埼玉県内には公立の普通高校が百二校あるのですが、この約八年間に、埼玉に新しい革新の県政ができてから五十四校建設をされております。八年間で五十四校。全県で百二校ですから大変な努力でありますが、この五十四校のうち三十七校は補助制度ができた以降五年間に建設をして、国からの補助、助成をいただいたわけです。内容を見ますと、三十七校の校舎建築費の総額は三百九十億七千九百万円、このうちの国庫補助が八十八億四千五百万円なんですね。基準では三分の一ということでありますが、現実には二二・六%。そういう点で、生徒一人当たりの面積の基準の問題やあるいは単価が実勢に合うかどうかという点での問題も残されております。  そこで、二点ですけれども一つは五十六年度以降あるいは五十七年、五十八年、たとえば埼玉県なんかの場合には昭和六十年には約十万人の進学者が推定されております。昭和五十五年度が七万七千人ですから、そういう点を展望すると、これから約四年間ないし五年間に三十七校の高校が必要だという点でこの制度の継続と充実が大変求められているわけですが、その点について簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  75. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 今後の高等学校生徒の急増傾向に対処いたしますために、ただいまおっしゃられましたように、高校建設費補助制度をさらに五カ年間延長することといたしております。いま埼玉県を初め特に急増の地域におきましては、建築費に多額の財政支出を要するわけでございますが、三分の一という国庫補助が実勢に比べてかなり下回っているのではないかというような御趣旨と承ったわけでございますが、最近におきましては、この建築費補助単価につきましてかなり改善をいたしております。昭和五十六年度の予算案の中におきましても、物価上昇率等を勘案いたしまして七・三%の引き上げを行う、そういう積算にいたしております。  そういうようなことで、たとえば埼玉県に例をとりますと、昭和五十五年度の単価におきましても、補助単価と実施の単価の間にほとんど差がない、こういうふうに年々引き上げてまいったわけでございまして、私どもは今後の高校の新増設に当たりましても、補助単価につきましては十分配慮してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  76. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 最後に、文部大臣お尋ねしたいのですけれども、そういう非行の増大あるいは子供たちのこれからの成長、大変教育行政が大事だと思います。そういう点で、憲法や教育基本法に基づく教育の充実と発展、また教育施設の充実に取り組んでいかなければならない。これはまさに国民的な課題でありますから、単に文部大臣あるいは行政官庁だけではなくて、私たち自身政治に携わるものとしても全力を挙げていかなければならないと思っております。そういう点で、最後に一言大臣の決意を述べていただいて質問を終わりたいと思います。
  77. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 当面いたしました非行問題に対する対処並びに学校教育の今後の振興につきましては、先生と御同様に、これがりっぱな教育に戻るように全力を傾けなければならぬと考えております。  それから、埼玉県のごとき人口急増地域に対しまする施設の整備、拡充、これとても、今般期限を延長いたしましたのも御案内のとおりでありますし、今後ともにこれらの対策は特に考えてまいらなければならない、かように考えております。
  78. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 では終わります。
  79. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて渡辺貴君の質疑は終わりました。  次に、中村茂君。
  80. 中村茂

    中村(茂)分科員 私は、長野県の浅科村にあります五郎兵衛新田古文書、この問題について、質問というよりもいままでの経過がございまして、特に文部大臣にお願いと要請をまず申し上げたいというふうに思います。  この古文書の内容、それからこの古文書が実は学習院大学に行っておりまして、それが返還されるというような問題がございます。それと、この古文書の持っている意義というか意味について簡単に大臣に御理解していただく意味で申し上げてみたいというふうに思います。  この古文書は、江戸前期寛永年間でありますけれども、市川五郎兵衛という人が五郎兵衛用水を開発いたしました。この五郎兵衛用水の工事の模様、用水の維持管理、水利権また入会権などずっと記されているわけであります。そしてこの資料全体は、当時の村の生活文化の記録が全部残っております。特に人の生命というふうに言われましたこの用水を中心にいたしまして、部落の形成過程、そういう点がきわめて克明に記されている古文書になっているわけであります。  たまたま一つの事件が、五十三年だと思いますけれども、春に起きました。ここに「水と村の証言」、副題として「五郎兵衛新田物語」、こういう本があるわけですけれども、その十四ページにこういうことが書いてございます。途中からですから、ちょっと入り口があれですけれども、「ここからほど遠くない家に、二年前の早春のある日、七センチ角の小さな紙が誰かの手ではられた。」どういうものがはられたかというと、「「チョウリッポの住む土地は、このミマヨセには一坪もない。早く出て行け、区民一同」。その一枚のはり紙から、この物語は始まる。」これは細かいことを書いてありますが、大臣に理解していただくために、これを大臣に差し上げますから、また暇なときにひとつ読んでいただきたいと思います。  私がこういうふうに申し上げただけではなかなか理解のできない深い内容があるわけですが、そういう張り紙を受けた被差別部落の人たちが非常に悲しんだわけです。よく考えてみれば、この用水を中心にして部落が形成されてきた。そして私どもの祖先は特に石屋ということでこの用水をつくってきたんだ。ということになれば、出ていくのはこの張り紙をした人じゃないか。そのためにもこの部落が形成されてきたということをお互いに研究したい。ところが、この古文書が三万五千点あるわけでけすけれども、その大部分が学習院大学にすでに行っていた。じゃ学習院大学からそれを村に戻してお互いに研究しよう。そこで学習院大学に行っている古文書を返還させようではないかという運動が起きたわけです。皆さんの努力と学校の配慮、また文部省にもいろいろお手伝いしていただきまして、その学習院大学に行っている古文書は全部村に寄託いたします。その方法は、原本は全部村に持っていきます。しかし、大学にいままであったもの、村にあったもの三万五千点を全部リコピーにして学校の方へももらいたい、そういうことで協議が成立いたしました。  そこで、文部省にも大変御厄介になってきたわけでありますけれども、二つの点についてまたお願いしたいというふうに思うのです。そういうことで、一つはリコピーで三万五千点ですから、それを全部とって返すというふうに言っても大変な事業になったわけです。そこで文部省の補助事業として近世文書緊急調査事業ということで緊急に予算を見積もっていただきまして、五十四年に七百万円、五十五年に千二百万円、そして今度五十六年度の予算になっているわけですけれども、村の方の要請は千二百万円、それから五十七年度の計画として八百万円、このくらいな予算で、何とかこの事業を完成させたい、整理したい、こういう事業が進んでいるわけですけれども、いままでの経過に照らして、この面について文部省の絶大な御協力をひとつお願いしたい、こういうふうに思うわけですが、いまどんなふうにこの事業費はいっているのでしょうか。
  81. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり三万六千点に及ぶ貴重な古文書を散逸することなく適正に保存をすべく、国庫補助事業として調査を行っているわけでございます。御指摘のように五十四年度、五十五年度両年度、いま先生がお上げになりました事業費の二分の一に相当する国庫補助を実施をいたしておりますが、何分にも非常に膨大な調査の対象でございますので、この事業につきましてはなお継続中であり、今後二年間程度はいま御指摘のように、やはり事業の継続が必要であると思われます。私どもといたしましては、長野県あるいは浅科村とも十分に御相談をいたしまして、従来と同じように調査をお助けしてまいりたいと思います。
  82. 中村茂

    中村(茂)分科員 それからもう一つの問題は、これから研究をいろいろしていかなければなりませんし、そちらに本をいま差し上げたのですけれども、またその本を編集したのも信州農村開発史研究所でして、これはすでに長野県下有識者、文化人の手によって組織ができまして、研究体制はできたわけですけれども、それを進めていく場所というか全体的な施設がまだ完備していない。こういう状況で、いま研究中でありますけれども、県を含めて研究を深めていきたい、こういうことで県の絶大な御協力をいまいただいているさなかです。  そこで、私どもひとつ考えておりますのは、民俗資料館的なものを柱にしていきたい、こういうふうに思っているのですけれども、この民俗資料館というようなものについて、文部省の目から全国的に見たいままでの例、国が直接やっている場合もあるでしょうし、県が主体になって国が補助している場合もあるでしょうし、さまざまの例があると思いますけれども、一番有効な方法は、文部省の目から見てどういう方法がいいのか、例があったらひとつ参考にお聞かせ願いたいと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  83. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘歴史民俗資料館、これはそれぞれの地域で県なり市町村なりが十分に御検討になりまして、それぞれの地域の特色を生かした歴史の資料あるいは考古資料、民俗資料等の保存、活用を図り、そして郷土の歴史文化に対する理解を深めようということで、これまで各地に建設されてきている施設でございます。現在の時点で、都道府県立て建てられておりますものが六十二館、市町村立て建てられておりますものが七百九十四館、計八百五十六館が全国に建設をされております。この建設に当たりましては、昭和四十五年から国庫補助金をもってこれを助成する制度を設けております。補助金を受けて建設されました歴史民俗資料館は、県立が十二館、市町村立が二百五十四館でございます。それで、それぞれの県あるいは市町村におかれまして、いま申し上げましたように、それぞれの地域の特色を生かしながらはっきりした目的をもってその建設を計画されるわけでございますので、私どもとしましては、そうした県なり市町村なりの御計画というものを十分伺いながら、これに対して対応していくということで進めてきております。やはり県あるいは市町村の段階で十分に的確な御計画をまずお立てをいただくということが必要ではなかろうかと思います。
  84. 中村茂

    中村(茂)分科員 それでは、私ども先ほど申し上げた研究所を中心にしていろいろ計画を考えておりますし、県の方も御助力をいただいておりますから、また十分相談に乗っていただきたいということを御要請申し上げておきたいと思います。  そこで、次の課題に入りたいと思いますが、同和対策事業特別措置法の一部改正で、いわゆる三年間この事業が延長されたわけでありますけれども、このときに附帯決議が出されております。その附帯決議を中心にして二点ほどお伺いしたいと思います。  御存じのように、その附帯決議の一には、「法の有効期間中に、実態の把握に努め、速やかに法の総合的改正及びその運営の改善について検討すること。」いわゆる実態の把握に努めなさい、こういう附帯決議になっているわけでありますけれども、特に学校教育の面で実態把握をされたと思いますけれども、そういう中で部落の子供たちの教育実態はどうなっているか。学力の面、進路、進学、就職の面、いわゆる家庭の教育環境の面について具体的に実態調査の結果を明らかにしていただきたいと思います。
  85. 三角哲生

    ○三角政府委員 文部省関係の実態につきましては、担当官の現地視察でございますとかあるいは府県からの事情聴取等を行いましてその把握に努めてまいっております。  いまいろいろ御指摘ございましたが、たとえば高校進学率につきましては、昭和五十四年度で見ますると、全国平均が九四%に対しまして同和地区は八九%でございます。これは昭和四十六年の調査と比較いたしますと、当時は全国平均が八五%でございましたのに対して同和地区は七二・八%でございました。でございますから、いろいろな意味の努力がこのような数字であらわれておりまして、だんだんに改善が図られてきているというふうに考えておりますが、この点についてはさらに努力を続けたいというふうに思う次第でございます。  それから、学校でございますとか地元の教育委員会でそれなりに把握している学力実態等についてみますると、これについてもなおまだ若干の格差が指摘されておるというふうに聞いております。いろいろとすぐにはできないような状況もございますが、努力を重ねまして改善を図っていきたいということでございます。
  86. 中村茂

    中村(茂)分科員 私ども調査によりますと、高校の進学率は、奨学金制度が拡充されてから比較的によくなってきているという傾向が出ていると思いますけれども、しかし、これは全国的に見ますと非常に格差がありまして、やはりこの制度、施策というものが全国的にすみからすみまでというか、まだ普及が行き渡っていないのではないか。したがって、いい面は出てきているけれども、まだ格差が出てきている、こういう調査の結果が出ているわけであります。それから大学の進学につきましても、高校と同じように格差の問題は是正されておりません。  そこで、この格差是正という点について文部省は今後どのような施策と実施方法をもって対処しようとしているのか、お考えを明らかにしていただきたいと思います。
  87. 三角哲生

    ○三角政府委員 御指摘のように、それから先ほど申し上げましたように、高校についてなお五%、これは全国平均とのいわゆる格差でございますが、あるわけでございます。文部省といたしましては、同和対策高等学校等進学奨励費補助事業、ただいまおっしゃっていただきました事業でございますが、これにつきまして、これを継続実施してまいりたいと思っております。ただいま本院に御審議をお願いしております明年度予算案では、従来の奨学金の仕事を従来どおり続けますと同時に、あわせて私立の高校、それからただいまおっしゃいました私立の大学、これらの奨学金の単価につきまして、公立についてももちろん単価の手直しをしたわけでございますが、私立については、公立よりもさらに大幅な単価の引き上げを図るなどいたしまして、こういった奨学金が十分同和の関係の方々に生かしていただけるよう措置を講じた次第でございます。
  88. 中村茂

    中村(茂)分科員 もっと努力をしていただきたいと思います。  それから次に、やはり附帯決議の三項でありますけれども、「同和問題に関する国民の理解を深めるため、啓発活動の積極的な充実を図ること。」こういうことになっていまして、特に啓発問題について考えてみますと、学校教育の面、それから社会教育の面、二つに分けて考えることができるわけでありますが、どちらの方もここ数年いままでよりもいろいろな事件が多く発生しているという傾向になっているわけであります。  私は、学校教育の面でこんな事件が起きているということを指摘して、皆さんの考え方をお聞きしたいというふうに思うわけであります。一九八〇年、昨年一年間に東京大学で起きた差別、これは落書きですが、差別落書き事件が七件起きまして、昨年の二月十八日、どういう落書きがなされたかということを紹介してみますと、場所はトイレの中に落書きしてあったわけですが、「エタ死ね、部落破滅、生きる価値なし、石川に死刑を、部落研センメツ、テイノウジ。全国(学生)落書連絡会議東大支部」。これと類似したのが七件ずっと起きたわけです。前にはこういう学校、しかも日本の学究の府というふうに言われるところのトイレの中に、こういう差別落書きというのは余り例を見なかったのですけれども、ここ数年こういうことが顕著になってきた。この落書きの中身をずっと検討してみますと、何かセクトの活動の面も若干含まれているような意味もありますけれども、いずれにしても、見ても聞いても許すことのできない差別用語が羅列されているわけですね。ですから、こういう傾向に対して文部省はどのように考えているのか、そしてどのように対処しようとしているのか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  89. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘大学構内におきまして差別的な落書きが目立って発見されているという点については、まことに遺憾なことだと存じております。私どもといたしましても、各大学に対しまして、同和問題への理解を深めるとともに、そういう差別事件が起きました際、適切な対応をとるように努力を促しておりますが、東京大学の教養学部の御指摘の問題につきましては、現在学内の関係機関でその対応検討中であるというぐあいに伺っております。ただ、こういう構内の差別落書きについては、何人が書いたのか、それを確認することが大変困難であるというような事情もございますが、いずれにいたしましても、御指摘のようなことがふえておるというようなことでは対応が十分でないと私どもも考えております。これらの点については、特に今後各大学対応を十分指導いたすように徹底させたい、かように考えております。
  90. 中村茂

    中村(茂)分科員 これはほんの一例を挙げたわけでありますけれども、全国的にも学校、学内のこういう差別事件の傾向というものが非常に強くなってきております。  それから、社会教育の面から見ましても、特に結婚問題、それから就職の問題、これは非常に顕著になってきております。私も直接この結婚問題で差別の問題にぶつかったことがあるわけですけれども、二人は結婚しよう、こういうふうになったけれども、親の方、特に被差別部落以外の片方の親が、二人は一緒になろうと言うけれどもどうしても反対する。やっと説得して、親はよかろうということになったけれども、今度は親戚が、それを認めれば親戚づき合いしないぞ、こういう問題になってくる。そこで私も非常に苦労をしまして、親に話をして、その一人の方を他の家にもらって、それでそこから出してやる。私も俗にいう媒酌人をやって中へ入って非常に苦労をした経験があるわけです。これは長い間の歴史的な中から出てきた差別観念、こういうことから出てくる問題で、一朝一夕には解決できないわけですけれども社会教育の中で非常に重要な問題ではないかと思うのです。  それから、先ほど申し上げました古文書の問題、それの発端がああいう一通の紙、その差別用語、そういう中からみんなで研究しようというふうになってきて、大きな問題になってきている。この古文書の問題を私は内藤文部大臣のときにもっと時間をかけてその内容を切々と訴えたわけですけれども、そのときに大臣は、よくわかった、確かに部落が形成された過程をよく研究してみんなのものにしていけば、そのことを通じて差別観念とかそういうものはなくなってくる、だから文部省も一生懸命応援しよう、こういう御回答をいただいたことがあるわけです。  いずれにしても、同和対策事業が三年打ち切りということで五十六年度で打ち切りになります。次に五十七年からどうしていくかということが大きな課題になっているわけです。特にあの法律は事業法で特別事業というふうに名がついているわけですから、環境問題に力点を置いてやってきた。まだ解決していませんから、環境問題も十分力を入れていかなければなりませんけれども、これからは特に教育の面、いわゆる同和教育という面に法律的にもそれから財政的にも力を入れていく時期に来ているではないか、ちょうど三年で切れるわけですから。したがって、法の改正もいま申し上げたいわゆる同和教育的な面、社会教育、学校教育の面、こういうところに力点を置いた法の改正、むっと言えば人権基本法的なものに改めていく時期に来ているではないか。そういう立場に立つとすれば、文部省の果たす役割りは非常に重要だと私は思うわけです。先ほど申し上げました古文書、それからそういうことから発展してきているいままでの問題、それから法の強化、延長という問題について、大臣の御決意を最後に承りたいと思いますが、いかがでしょう。
  91. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 古文書の問題につきましては、責任の文化庁長官からお答えしましたので、皆様方御安心になっただろうと思います。  なお、同和教育の問題でございますが、基本的人権尊重の教育を徹底しますとともに、教育の機会均等に照らしまして、同和地区の教育を高めていくことは当然でございます。このために文部省といたしましても所要の事業を実施いたしまして、同和教育の推進に努めてまいりましたが、御案内のとおり同対審をつくりましたときは、私総理府の総務長官で、責任者としてその十カ年の時限立法にも関係をいたしております。先生のおっしゃることもよくわかります。同時に私は山口県の出身でございますから、同和問題は山口県なかなかむずかしいところでございまして、その点ははだで感じておる次第でございます。  なお、延長の問題につきましては、附帯決議の趣旨を尊重いたしまして、現在も総理府の方でこの問題については中山総務長官が担当いたしておりまして、またいろいろと協議もあるだろうと思いますが、先生もよく御承知のとおり非常に重要な問題でございますと同時に、また大変政治的にもむずかしい問題であります。その意を、先生のお気持ちもよくわかりましたので、文部省といたしましてはこの点善処いたしたい、かように考えております。
  92. 中村茂

    中村(茂)分科員 文部省の御努力を強く要請いたしまして、私の質問を終わります。
  93. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて中村茂君の質疑は終わりました。  次に、河上民雄君。
  94. 河上民雄

    河上分科員 私は、きょう日本大学の国際化ということにつきまして若干御質問をさせていただきたいと思うのであります。  先般、鈴木総理大臣がASEAN諸国を歴訪した際に、発展途上国の若手外交官を招いて、東京で十カ月の日本語研修をさせるという計画をいわば手みやげとして持っていかれまして、先方でも好評であったようでありますけれども、先日の朝日新聞二月二十二日付によりますと、どうもこれが必ずしも行き届いた案ではなかったということで、なかなか思惑どおりいかないという記事がございました。つまり日本側が費用を出すのは往復の旅費と研修費だけで、一番金のかかる滞在費は支給されない仕組みになっておったということで、せっかくの案ですがなかなか希望者がない、こういうようなことだという記事が出ておったのでありますけれども、こういう点につきまして、私は、日本大学及び研究機関の国際化ということにつきまして、日本はいよいよ本格的に本腰を入れなくてはいけない時期が来ているのじゃないかということを非常に強く痛感するわけでございます。  そこで、文部大臣並びに外務省の方、及び厚生省の方に若干御質問をしたいと思っております。  ユネスコでしょうかが発表しております世界の留学生交流の状況を見てまいりますると、受入留学生の数及び国内の全高等教育学生数に対する比率、このいずれを見ましても、日本は必ずしも高い地位にございません。一番高いのは、絶対数ではアメリカ、そしてフランス、西ドイツ、レバノン、カナダ、イギリス、ソ連、アラブ連合、アルゼンチン、フィリピン、日本、オーストリア、スイス、ベルギー、オーストラリア、こういうふうに一応なっておりますが、この数字を見まして、文部大臣日本大学の国際化のために留学生の数をもっとふやすためにどうしたらいいとお考えになっておられますか。
  95. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 私就任以来最も力を入れておりますのは、日本への留学生あるいはまた開かれた日本という意味から申しましても、学術関係やその他文化関係、そういうところの交流問題でございます。一生懸命に努力をいたしておりますけれども、今日は大分一般の認識も強くなったと存じます。  本日は、先生のいろいろな御質問に当たりまして、私の方の国際局のみならず外務省その他関係の諸君もみんな参っております。計数その他具体的な問題は、また担当官の方々から申し上げることにいたしまして、文部省といたしましては、今後留学生の問題については全力を挙げてこの拡充強化を図っていこう、かようなつもりで運営をしてまいります。
  96. 河上民雄

    河上分科員 計数のことになりますけれども、これはちょっと古い統計のようですが、現在日本の受入留学生の数はどのぐらいになっておりますか。
  97. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 五十五年度の状況で申し上げますと、国費で招聘しております留学生が千三百六十九人、私費で参っております留学生が五千二百三人、合計で六千五百七十二人というような状況でございます。
  98. 河上民雄

    河上分科員 日本政府がユネスコに対して報告したものによりますと、これは大分古い数字でありますけれども、すでに一万人を超えておるという数字になっておるのです。この報告はどういう根拠によるものですか。
  99. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 その点につきまして私も詳細存じませんが、出入国の手続におきまして、短期の研修等で参ります者も留学生というように扱われている数字じゃないかと思うのでございます。先ほど押し上げました六千五百七十二人と申しますのは、大学以上の高等教育に関する留学生の数字を申し上げた次第でございます。
  100. 河上民雄

    河上分科員 いや、これは日本政府がユネスコに発表した統計に、すでに六〇年代から一万人を超えている、その結果、日本は世界第十一位になっているというのは、在日朝鮮人、中国人の子弟を外国人と考えて——当然のことでありますけれども、子弟で日本大学に在籍する者を算入して世界の第十一位、こういうことにしておるのです。もしこれを除きますと、とても世界第十五位までも入らないという状況にあるということを、私まず文部大臣に十分認識していただきたいと思うのです。つまり日本大学の国際化という問題には、一つ大学研究機関を国際的に開放するということもありましょうし、また外国からの留学生日本に喜んで留学の道を選ぶ、そういう環境づくりをすることもありますけれども、ユネスコに日本政府が報告した統計が示しますように、在日定住外国人の日本大学への進学という問題も、国際化の重要な一面だということを私は文部大臣に強調したいと思うのです。文部大臣、いかがですか。
  101. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ちょっと先生のおっしゃったことがわからないのですが、在日……。
  102. 河上民雄

    河上分科員 定住外国人。中国人や朝鮮人ですね。
  103. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 それは国籍の点から申しまして当然であると思いますが……。
  104. 宮地貫一

    宮地政府委員 留学生以外の外国人学生日本大学にどういう在学状況になっているかということについてのお尋ねかと存じますが、国公私立大学を通じまして昭和五十四年度で約七千人、うち国立大学が約八百人でございます。そのうち韓国、朝鮮人は約六千人というぐあいに承知をいたしております。なお、在日韓国人子弟の大学入学資格の取り扱い等につきましては、日本人子弟の場合と同様でございまして、能力、適性に応じ、広く大学進学の機会を開いているということでございます。
  105. 河上民雄

    河上分科員 いま、大臣局長は、在日外国人の日本大学への進学については日本人と同様であるというお話がありましたけれども、この点につきましては、私また後で御質問したいと思うのであります。  その前に、なぜ日本大学に世界の留学生がたくさんやってこないかという問題につきまして、私は幾つかの原因があると思うのであります。その原因につきまして、実は文部省大学学生課編の「厚生補導」という雑誌を私は拝見いたしました。そこに日本にかつて留学しなことのある留学生OBの座談会が出ております。これを大臣よくお読みいただきたいと思うのですが、そこに彼らの日本に対する不満というものがはっきり出ております。特に、彼らが帰国した後、それぞれの国で、日本に留学した者が欧米留学者に比べて著しく冷遇されておる、たとえば役人になっても欧米留学の人はたちまち局長なり何なりになっていく、しかし、日本留学の人は、日本の相当有名大学を出ても一生平である、こういうような状況が非常に切実に訴えられておるのです。それはどこから起きたかということを文部省もこの際真剣に考えていただかなければならぬと思うのであります。  そして私は、文部省のこの雑誌の題がすでにおかしいと思うのでして、「厚生補導」というのですね。大体補導という言葉は、少年少女に対して非行というのが新聞でよく出ますけれども、この補導という話感から見まして、これがどういうものであるかということがもう端的に示されていると私は思うのです。もし日本に留学した外国の留学生日本語をマスターして日本語をわかるにつれて、この「厚生補導」という雑誌の題を見たときに、自分たちはどういう取り扱いを受けているかということを感ぜざるを得ないと思うのです。文部省がもし日本大学の国際化を図るとすれば、まずこういう表題から改めてもらわなければならない。改題してもらう必要があると私は思うのです。改題だけではなく、基本的に何か危険な人物が入ってきたというような感覚で留学生を取り扱っている限り、日本大学の国際化というものは絶対あり得ない、私はこんなふうに思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  106. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の「厚生補導」という雑誌は、大学局の学生課で編集しているものでございますが、文部省組織令で学生課の所掌事務を書いておりますけれども、「大学及び高等専門学校における学生の厚生補導に関し、次に掲げる事務を行うこと。」以下各号列記がございますが、もちろん大学局の学生課の所掌事務といたしまして、厚生補導ということが組織令上も規定をされておるわけでございまして、たまたま雑誌の名称といたしまして、そういうようなこともあってこういう名称にしていることであろうかと思います。この題名そのものと大学の国際化そのものとは直接かかわるものではない、私はかように考えております。
  107. 天羽民雄

    ○天羽政府委員 ただいま先生の御指摘になりました、留学生が帰りましてからきちんとしたポストへつけないというふうな悩み、これは私どもも遺憾ながら聞き及んでおりますけれども、これにつきましては、日本側におけるあり方とかなんとかいうことよりも、より受け入れ国側の国内事情がいろいろあるやに聞いておる次第でございます。確かにこの問題は、国内問題の非常に機微な問題に触れますものですから一概に言えないかと思いますけれども先生の御指摘の点は、今後とも十分やっていきたいと思っております。
  108. 河上民雄

    河上分科員 いま宮地局長は、そういうのは直接関係ないとか法令に従ってこういう題を選んだと言うけれども、そういう姿勢そのものが、日本大学で一生を決める青春を過ごす気持ちにだんだんさせていかない。ですから、統計を見ましても、かえって英米とか先進国の留学生が最近ふえてきて、東南アジア諸国、第三世界と言われるような国の留学生がむしろ減りぎみであるという事実はそれを端的に示していると私は思うのです。大臣、その点、そういう無神経なことでは、こういう「厚生補導」などという雑誌を留学生対象の雑誌として倍として感じないというのはまことに残念なことだと思うのでございます。  ちょっと時間がありませんので、少し話題を変えますけれども、ことしから中国の留学生が非常にふえておりますけれども現状はいかがでございますか。その中に国費留学生の方が何人ぐらいおられますか。
  109. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 中国政府からの留学生につきましては、昭和五十六年二月現在におきまして五百二十九名がおります。学部レベル九十七名、大学院レベル三百七十名、訪問学者六十二名、このうち五十名が文部省の国費外国人留学生の扱いを受けております。
  110. 河上民雄

    河上分科員 国費留学生の場合、留学に当たりましていまでも誓約書をとっておりますか。
  111. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 とっております。
  112. 河上民雄

    河上分科員 日本の留学生が外国に行った場合、そういう誓約書をとられたりすることがありますか。
  113. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 多くの場合、とられるようでございます。
  114. 河上民雄

    河上分科員 これはもと東大学長をされました加藤一郎教授が中国へ行かれたときに、向こうから強く言われたそうでありますけれども、どうも中国の場合、国費留学生になりますといろいろ誓約書をとられる、また外国人なるがゆえに指紋をとられる、この二点が大変問題になっておるということでございます。日本から外国へ留学した日本人が指紋をとられて暮らすということは、恐らくほとんどないんじゃないかと思うのです。しかし、日本へ留学する場合、特に国費留学生になった場合、この二点が大変問題になるそうでございまして、その点文部大臣、いますぐ即答できないかもしれませんけれども、この二点は中国側も非常に大きな問題としているだけに、基本的に考えていただかなければいかぬことだと思うのです。いかがでございますか。
  115. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御趣旨のほどはよくわかりますし、なおまた現在の日中関係から申しまして特段の配意が必要かもしれません。と同時に、またいろいろな出入国管理の問題は法務省でございますけれども、今回も法務省におきまする在日の規定を大分緩和したようでございますが、国際慣行その他もありまして、これは私一向存じませんので、外務省なり担当の方からお答えいたします。
  116. 天羽民雄

    ○天羽政府委員 いま河上先生指摘の点でございますけれども、遺憾ながらいますぐ即答しかねる状況でございますけれども、その点調べまして御連絡いたしたいと思います。  在外における日本の留学生に対する取り扱いは、恐らくケース・バイ・ケースだろうと思いますけれども、いずれまた調べましてお伝えしたいと思います。
  117. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 指紋の点につきましては、さらに私ども研究いたしたいと思いますが、担当者の話によりますと、外国から来ます長期の留学生は全部そのように指紋をとられることになっているようでございます。その点で、中国側の非公式な意見としましては、ほかの外国人と同じような扱いを受けるのであれば気にしないということを言っている人もあるように聞いております。
  118. 河上民雄

    河上分科員 大臣日本政府は何かというと相互主義ということを言うのですけれども、少なくとも日本大学の留学をする人が受けたことのない取り扱いを、外国から来た留学生に対して日本政府が強制することは、大学の国際化という原則から見てやはりまずいのじゃないか。その辺を乗り越えないと、本当に日本大学の国際化あるいは日本の国際化ということにはならないと私は思うのでございます。特に中国の留学生の場合、明治以来周恩来、魯迅等々非常にすぐれた方々が日本へ来ておられるわけです。先ほどお話のありました五百二十九名という現在の留学生の方々が、いま日本でどういう感じを持って帰るかということは、実は三十年後の日中関係決定的に決めていくのではないかと私は思うのでして、その点いま即答は求めませんけれども、この問題も含めて、その他宿舎の問題とか日本語教育の問題とかいろいろありますけれども、そういうことを含めて慎重に考えていただかなければいけない、私はそう思うのであります。  私はそこで、日本の国際化ということに関しまして、一般には見落とされているのでありますけれども、実は、在日外国人子弟の教育の機会の問題、これが非常に重要であろうと思うのであります。まずここを突破しない限り、本当の国際化はできない。最近法務省は、ベトナム難民を受け入れるという事実から一種の衝撃を受けたのでありましょうけれども、入管法を変えて、在日外国人の永住許可に関しまして一段踏み出すということが新聞で報道されております。そのこと自体は大変結構でございますけれども、私は、在日外国人の子弟の教育の機会につきましても、ここでやはり考えなければいかぬのじゃないかというふうに考えております。  まず、在日外国人の子弟が日本大学を受けようとした場合、受験資格というのが一つ問題があると思うのです。いま宮地局長は、日本人との間に何の差別もないということでございましたけれども、必ずしもそうではない。在日外国人のためのいわゆる民族学校を出た人は、日本大学の受験資格がありません。その人たちは、たとえば韓国の場合を例にとりますと、韓国の大学の受験資格はある。また日本の高等学校を出た者が、たとえば外国の大学の試験を受けようと思えば、それは受けられる。さらにオーストラリアなどは、日本学校を出た者、つまりオーストラリア政府の学校でない日本学校を出た者でも、オーストラリアの大学の受験資格がある。そういう状況を考えますときに、在日外国人の子弟だけは、いわば谷間に落ちている、こういう状況があるわけです。  そして、そういうことをかえって先鋭化したのが共通一次試験だと思うのです。外国からの国費留学生の場合は、共通一次試験、日本人と同じ試験を受けなくてもいいわけですね。ところが在日外国人の場合はそうではない。そういう問題につきまして、私は、ここでよほど真剣に考えないと、いま言った大学の国際化というのは絵にかいたもちになるのではないか、こんなふうに思うのですが、いかがでございますか。
  119. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほど御答弁申し上げたのは、日本人子弟の場合と同様であるという点で御答弁を申し上げたわけであります。  先生のただいま御指摘の点は、日本国内にあります民族系の学校、たとえば朝鮮人学校等のことを指しての御質問であったかと思うのでございますが、大学入学資格は、現行制度では、高等学校を卒業した者、つまり学校教育の正規の十二年の課程を修了した者を標準として定められているわけでございます。  もちろん、外国人が日本の高等学校を卒業すれば、当然に日本人と同じように大学の受験資格があるということは、先ほど御答弁申し上げたわけでございます。また外国の学校で修学したものにつきましても、わが国学校制度による場合と同様に、その国の学校制度に基づく十二年の課程を修了した場合には、大学入学資格を認めているわけでございます。  そこで、日本国内の外国人学校の卒業者でございますが、この日本国内の外国人学校につきましては、その目的なり性格、教育内容等から、各種学校、専修学校と同様、正規の学校教育の課程としては位置づけられていないわけでございます。したがって、その卒業者に対して大学入学資格が認められていないという学校制度の仕組みのところで、その点は、現在の取り扱いとしては、ただいま御説明申し上げたような仕組みになっているということでございます。
  120. 河上民雄

    河上分科員 いま局長は、十二年の教育課程を終えた者のみが日本大学へ入れる、それは外国人であろうが同じ条件のもとにあるというお話でしたけれども、中国の場合は違いますね。中国の場合は、十年の教育課程であっても、中国の留学生は受け入れておるのです。ですから、いまの御答弁は事実に反すると私は思うのです。  じゃ日本文部省学校を出たらいいじゃないか、こう言うかもしれもせんけれども、しかし、在月外国人には、日本のいわゆる義務教育なりあるいは公立、私立の学校を出ましても、そこにはまたそこでいろいろな差別があるわけでして、極端なことを言えば、王貞治選手は甲子園で優勝したけれども、その年の国体には出られなかったのですね。そして何年かたって福田総理大臣から国民栄誉賞なんかもらったわけですけれども、彼の心境はどんなものだったかというのは、私は察するに余りあると思うのですね。  いま文部省は養護教育の義務化ということを言っております。皆義務化をやろうとしております。障害児に対しまして、特別児童扶養手当というものが支給されておりますが、しかし、これは外国人の親には支給されない。養護学級の先生方の一番頭の痛い点は、同じ重度身障者の子供たちを預っておりましても、在日外国人の子弟については、この特別児童扶養手当というものは支給されていない。日本人には支給されるけれども外国人には支給されていないという事実がある。一方では文部省は、養護教育の義務化を推進している。  しかし、いま言ったように、局長は、じゃ日本文部省の認定した学校を出ればいいじゃないかと言うけれども、そこにはそこでまた重大なる差別があるということについて、私どもはここで根本的な反省をしなければならぬ。私は、先般の法務省の入管法の改正案ということを新聞で見まして、やはりそういう点まで全部洗い直していく必要がある、こんなふうに思うのでありますが、いかがでありますか。
  121. 塩崎潤

    ○塩崎主査 時間が経過しておりますので、簡潔に願います。
  122. 宮地貫一

    宮地政府委員 先生指摘のような問題点もあるということも、私どもも十分わかるわけでございます。ただ、制度の、入学資格全体の問題でございますので、先ほど御答弁申し上げたような、現行制度としてはそういう仕組みになっているという点を御説明申し上げたわけでございます。
  123. 河上民雄

    河上分科員 厚生省なりはいかがですか。
  124. 北郷勲夫

    ○北郷説明員 特別児童扶養手当の問題につきましては、先ほどちょっとお触れになりました難民条約との関連で、難民条約の批准に伴って、いわゆる国籍要件を撤廃する法案を出すべく、現在検討中でございます。
  125. 塩崎潤

    ○塩崎主査 時間が経過しておりますので、簡潔に願います。
  126. 河上民雄

    河上分科員 もう時間が参りましたという御注意ですのでやめたいと思いますけれども大臣日本大学の国際化ということは、文字にすれば大変かっこいい話ですけれども、現実は必ずしもそうではないということですね。その背景には、先ほど制度に基づいてという局長お話がありましたが、日本の制度そのものにある一つの排他的な考え方というものが大きな障害になっているわけでして、これを打ち破るように、文部省を中心に外務省、厚生省、法務省その他、力を合わせて推進していただきますように要望いたしたいと思いますが、大臣一言……。
  127. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 冒頭申し上げましたように、国際化の問題、特に海外子女教育等の問題についても、具体的にはたくさんの問題を抱えております。いまの先生の御指摘のようないろいろな問題が伏在いたしておりますから、やはりその問題は逐次解決していかなければならない、かように考えております。
  128. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて河上民雄君の質疑は終わりました。  午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  129. 塩崎潤

    ○塩崎主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について質疑を続行いたします。大久保直彦君。
  130. 大久保直彦

    ○大久保分科員 きょうは非常に限られた時間でございますけれども、現在の教育の荒廃と申しますか、非行、暴力の問題に限って大臣のお考えをただしたいと思いますが、その前に、本日東京の中野区議会で、区議会の同意を得まして、過日行われました教育委員の準公選の結果、新しい教育委員が誕生する、きょう三月三日はそのような段取りになっておるそうでございまして、いろいろないきさつがあってこの準公選が行われたことは承知いたしておりますけれども、現時点におきます大臣の所感をお伺いしておきたいと存じます。
  131. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 中野区の準公選の問題につきましては、今日までも再三申し上げましたとおりに、文部省といたしまして、また文部大臣といたしまして、既定の考え方を踏襲いたしております。何ら変化をいたしておりません。
  132. 大久保直彦

    ○大久保分科員 余り多くを語りたがらないようですから、それ以上は伺いません。  さて、教育問題につきまして、私はきわめて素朴な、初歩的なお尋ねをいたしますので、端的にお答えをいただきたいと存じます。  教育そのものは、生徒当人が勉強をし、みずからをつくり上げていくことでありまして、学校や教師の役割りというものは、そのための条件整備と申しますか、環境づくりと申しますか、そういうことにあると思いますが、現在日本の教育界の中において非行、暴力の問題が取りざたされておるわけでございます。日本には何千万という生徒がおる中で、先生を殴ったとか暴力を働いたというたぐいにはきわめてまれな実例であって、九九%はそういう生徒ではないことが事実であろうと思いますが、こういうことは何もきのうきょう始まったことではなくて、大臣旧制の浦和の御出身だと伺っておりますけれども大臣学生時代もそんなことは二、三あったのではないでしょうか。
  133. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 校内暴力というかっこうじゃありませんが、個人的な、要するに腕力の強いやつが同級生をぶん殴ったり、けんかしたりということは幾らでもあった事例でございます。しかし、今日問題になっておるのはもっと集団化した姿において、ことに外部勢力とのいろいろな連係とかなんとかというところまで問題が発展いたしておるということが非常に問題でありまして、これは個人的な、腕力の強いやつが弱い者をぶん殴ったりなんかしたのとは本質を異にすると思います。
  134. 大久保直彦

    ○大久保分科員 昔の高校の寮生活などを伺っておりましても、一部の教師に対していろいろな意見が集中いたしたりなどいたしまして、そういったことが一年に一度や二度あったことも聞いておりますし、現在、いわゆる現象面だけを見ますと、昔もいまも余り変わっていないと思うのですが、しかし、それがいま大臣がおっしゃったように、いわゆるグループ化し、また外部の勢力と結託をして何か脈絡を保つというような事態になっていることについては、昔のそういう学校内問題と現在の校内問題と特に何か差があると申しますか、どういう点が違うのであろうかという点については、何か御認識がございますでしょうか。
  135. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 なおまた、つまり申すならば、生徒たるの資格と申しますか、親を敬い、先生を尊敬する、そういう点・先生もまた本当に生徒を愛してその補導に当たる。教育を受ける生徒というものは、冒頭先生から教育を受けるのであるという言葉がありましたが、まさにそのとおりでありまして、要するに、児童といい生徒といい、本当に未完成の子供でありますから、やはり両親から物を習い、先生から物を習う、習うということに対しましては、先生を尊敬し、また先生の言うことを本当に素直に聞くというその師弟の関係というものがなければ、教育目的を達することができないわけでございます。そういう点で、高等の人格が形成されてしまった後、大人になってから、他の師を求めて自分の教養を高めていくとか学問を深めていくというのとは、この小学校、中学校の義務教育の場合においては本質が違うと心得ます。     〔主査退席、愛野主査代理着席〕
  136. 大久保直彦

    ○大久保分科員 いろいろなことをおっしゃっていますけれども、昔の教師と生徒の間の信頼関係といいますかスキンシップみたいなものは、いまの教育の状況の中でどのような形になっているのだろうかということを考えますと、確かに昔の生徒と先生との関係は、いまは大きく変形をしていると断定していいのではないかと思うのです。私はそんなことを考えながら、現在の非行、暴力の低年齢化、また女子生徒へ移りつつあるというような問題を社会現象としてとらまえておりますけれども、そのような事態の中で、いわゆる学校の中での先生の生徒指導の見直しと申しますか、指導体制のあり方というものをいまここで基本的に見直さないと、この非行、暴力の問題等はきわめて皮相的な一面であって、根本的な解決には至らないのではないか、そのように思うわけでございますが、従来の管理的と申しますか訓育的と申しますか、そういう指導体制を続けていく以上は、いまの教育のあり方についての何か一つの限界を感じなければならないのではないかと思うのですけれども、この点についてはいかがでございますか。
  137. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいま申し上げたように習う方、教えられる方の生徒の人格が完成しておる場合におきましては、そういう御意見もあると思いますけれども、まだ白紙の児童であり生徒に対しまして、教育課程に従ってそれを教えていく、あるいはまたしつけをするということは、私はこの生徒と先生との師弟の関係というものは、周囲の客観情勢が変化いたしましても変わるものではない、かように考えております。  なお、学校教育の詳細なことにつきましては、担当の局長から御説明いたさせます。
  138. 大久保直彦

    ○大久保分科員 いや、そんなことを伺っているのではなくて、いまのままのあり方では、この非行、暴力の問題に対応しましても一つの限界というものを感じざるを得ないのではないですか。先ほど大臣お話しになったような、昔のような生徒と先生の信頼関係をいまの教育体制の中に持ち込むとすれば、何かここで工夫がなされなければならないのではないか。いまの体制のままの延長の中で、現在社会現象化しておりますこの非行、暴力問題というのは解決できる、こういうお考えなのかどうかということをお尋ねしているわけでございます。
  139. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 大変むずかしい御質問でございますが、しかしながら、教える者と教わる者の関係というものは、体制の変化によって異なるものではない。でありますから、やはり教わる者は教えてくれる者に対しまして謙虚でなければならぬという気がいたします。
  140. 大久保直彦

    ○大久保分科員 現在学校教育相談という、カウンセリングという言葉が最近の教育問題の中に取り上げられてきております。いまそういうカウンセリングの充実といいますか、体制をいろいろな問題を総合して考えてみますと、いまこそ積極的に検討もし、取り入れる必要があるのではないかということを考えるから、前段のようなお尋ねをいたしておるわけでございますけれども、いまの教育全体の中で、カウンセリングそのものの重要性といいますか、そういったことは、議論になっても位置づけが明確になっているわけではございませんし、またもちろん法制化されているわけでもない。しかし、ここ数年来全国の教育者の間では、現場教育の中にカウンセリング的な考え方を導入しようという声はかなり高まりつつあり、その熱も非常に高まっておる、このようにお伺いしておるのですけれども、この点について大臣の御認識はいかがでしょう。
  141. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 カウンセリングの問題につきましては局長からも聞いておりますが、その教育効果の問題なり、また現行法制上の関係なりは、ひとつ局長からお話しいたします。
  142. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいま大久保委員御指摘になりましたように、カウンセリングということは生徒指導上非常に必要なことでございまして、そういう問題意識も現場で出ておりまして、私ども文部省といたしましては、生徒指導というとらまえ方での生徒指導講座というものを毎年やっておりますけれども、それとはまた別にカウンセリング技術指導講座というのを開催いたしまして、この面に携わる教員資質向上を図るということをいたしてございます。
  143. 大久保直彦

    ○大久保分科員 ここに東京都が昭和五十一年に五百人の先生を対象にした調査がございます。この五百人の先生方が担当しておる生徒は一万九千名おりまして、この調査の結論は、学習問題、生活慣習並びにその性格行動等の見地から五百人の先生方が何とかしなければならないという認識を持っておる生徒は三千人に及ぶという結果が出ておるのです。これは全体の約一六%に相当するわけでございますけれども、この一六%の生徒に対して、ただいま申し上げました学習問題、生活慣習の面からも何とかしなければならない。また、この何とかしなければならないという度合いは、小学校から中学、中学から高校に行くほどその率が高いのでございますが、もう一つ別の調査で、昭和五十二年度に入学した都立の高校生を三年間追跡調査いたしてみますと、転校、退学、さらには原級留置というのですか、これは落第ですな、等の生徒数は全日制で九・六%、それから工業科の場合は二五・六%という数字が記録されております。二五・六%というのは、工業科の場合は四人に一人はこの三年間のうちにいわゆるドロップアウトしてしまう、全日制で約一割の生徒が退学もしくは落第をしてしまう、こういう実態を見ますと、教育の現場で一人一人の先生方が、先ほども局長がおっしゃった生徒指導、教育相談というものをいまこそ本格的に取り入れまして、教科の教育だけではなくて、こうしたいわゆるカウンセリング、教育相談にじっくりと時間をかけて、一人一人の生徒の教育に当たっていかなければならないということがいま教育現場の実態として浮かび上がっておるわけでございますが、ただいま申し上げました私の数字、またそれに対応してそういう声が教育現場で起きているということについて、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  144. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 当面いたしました非常に困難な教育指導の現状を何とか打開する方法はないか、あるいはまたカウンセラー制度によって少しでも教育というものの効果を上げていきたいという先生方の、指導者の方々の非常な御苦心と研究の結果、そういう方法もお考えになった、こう思うのでありますが、しかし、ただいまの、現行の学校制度としてどういうふうにそれに対応するかということにつきましては、局長からお話しいたします。
  145. 三角哲生

    ○三角政府委員 やはり高等学校は義務教育ではないものでございますから、生徒によりましては、学業になかなかついていけないとかあるいは家庭での経済的な事情とか、そういうこともございまして、若干の退学ということはあるわけでございますけれども、いま御指摘のように、職業高校について、特に工業高校について多いという傾向もあるわけでございます。東京都の場合には、若干都としての特殊な状況、工業高校の数が多いようでございまして、そういったこともあろうかと存じますが、いずれにしても、中学から高校に上がるときのいろいろな進路指導、進学指導の面の問題がかかわってくると思いますが、やはり工業のような一種の実学をぜひやりたいということで入ってきておる子供が果たしてどれだけあるか、いろいろなほかの事情でそちらへ回っていったというような場合もあろうかと存じまして、入った後で、これでは自分の希望なり何なりに合わないというようなことも内在的にあるのじゃないかというふうに思っております。
  146. 大久保直彦

    ○大久保分科員 工業科の生徒の実態を伺っているのではなくて、現場の中から教育相談みたいなことをやらねばならないという声が起きていることをどう思われますかとお尋ねをしているのです。
  147. 三角哲生

    ○三角政府委員 そういう声が当然ございますし、もちろん私どもは、以前から学校におきまして、先ほど申し上げましたが、生徒指導を充実していくということが学校全体の教育のまとまったあり方としてどうしても必要である、こういう認識の上に立っておるわけでございます。
  148. 大久保直彦

    ○大久保分科員 現在教育相談をしている先生は、この調査によりますと九%、また教育相談の勉強をしておる先生が八%、さらに勉強したいという希望を持っておる先生が六一%、こういうデータが出ておるわけでございますけれども、現在中学校においては十八学級以上に一人の生徒指導担当教諭というのを設けておられるように聞いておりますけれども、これは間違いありませんか。
  149. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいま御指摘の点は、昭和四十四年度の第三次定数の改善計画以降、十八学級以上の公立中学校に生徒指導担当教員を専任として配置する、こういうことでございます。専任でない生徒指導主事というのは、現状におきまして中学校で九千百六十九人置かれておりまして、率としては学校の中での約八割五分に相当いたします。
  150. 大久保直彦

    ○大久保分科員 いま局長がおっしゃった四十四年の改正の際、十八学級で担当教諭を一名ということで改正されまして、当時一万百十八校あった中で、実際にこの制度が実現されておりますのは二千八百八十五校、きわめて低い数であると思いますし、また高校についても二十一学級以上のものに一人というきわめて低い数値になっておるわけです。現在養護教諭という制度がしかれまして、いわゆる保健衛生の面から身体上のいろいろな相談、悩み事を聞いておる。この養護教諭の制度というのはかなり定着をしておるわけでございますけれども、先ほど来申し上げて問題にしなければならないのは、生徒の内面的な相談相手といいますか、そういうものが残念ながらいまの学校の中には見つけることはできない。そういうところから、結論を急ぐようでございますけれども大臣、現在のこういう非行、暴力の問題が大きな社会現象として話題になっている際に、教育カウンセリングのような学校教育相談といいますか、こうした資格認定を設けることをそろそろ検討しなければならないときに来ているのではないか。きわめて限られた時間で結論を急ぎますけれども、石川県などでは県独自で教育相談なんかを研究所を設けたりしまして非常に活発に行っているようでございますけれども、こうした考え方をいまの教育制度の中に盛り込んでみようというような意見についてはどんなお考えでございましょう。
  151. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 今日とかくいろいろと言われておりまする非行の原因の一つが、何と申しますか、気持ちの上で自分の本当に信ずる先生なりあるいはまた親きょうだいと腹を割って、打ち明けて相談をするという機会に乏しくなっておる、断絶しておるというところが私は大きな欠陥であろうと思うのです。そういうことから言いまして、生徒指導講座でありますとかカウンセリングの技術指導講座というふうなものを、いま先生のおっしゃったような姿において指導面で取り入れるということは、確かに貴重な御意見であろう、かように考えますが、それを固定して制度化するかどうかという問題につきましては、また行政機構上の問題でございますので、十分にひとつ検討をしたい、かように考えます。
  152. 大久保直彦

    ○大久保分科員 たとえば、これは私の個人的な考え方でございますけれども大学マスターコース終了あるいは教育心理学の専攻の方にプラスいたしまして、教職の現場の経験を五年以上持っておられるような方あるいは文部省とか地方自治体の何らかの特定の研修機関と申しますか、そうしたところで一定の資格を得られた方、こうした方々をいわゆる学校教育相談というような資格を持っていただいて、そしていまの教科教育とあわせた教育相談というものがあたかも車の両輪のように行われていくことが健全なる生徒の育成の上にきわめて重要ではないか、そのように思ってお尋ねをいたしたわけでございますけれども、直ちにこれを制度化するということについては、まだなお時間はあるものの、大臣のお考えとしてはぜひそういうことを検討しなければならない時期が来ておるという御認識である、このように受けとめてよろしいでしょうか。
  153. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 心の問題の解決といたしまして、多感な悩みの多い青年期の方々にそういうふうな本当に兄貴のような先輩あるいはまた指導主事というものの必要性を私は先生と同じように感じます。
  154. 大久保直彦

    ○大久保分科員 そういうことを将来いろいろ御検討いただく上でも、教員の養成といいますか、教育の基盤の部分、これを急がねばならないことがきわめて重大であろうと思いますけれども、現行法では、教育基盤部分での教員養成という問題についてはかなりむずかしい問題もあろうと思いますけれども一つだけお尋ねしたいのは、教育職員免許法施行規則の教職に関する専門科目改定という問題がございますけれども、これは昭和五十四年度予算、五十五年度予算でたしか大蔵との折衝でゼロ回答になって日の目を見てないように伺っておりますが、この点はどうなっておりますか。
  155. 宮地貫一

    宮地政府委員 御質問の大蔵との折衝でゼロ回答という点については、私意味が十分つかみがたいのでございますが、先生指摘のカウンセリングと教員養成との関係の問題でございますけれども国立大学を中心といたしました教員養成を目的とします大学学部におきましては、従来から教職を志望する学生がカウンセリングとかあるいはそれらに関連する授業科目を履習することができるように配慮をいたしておるわけでございます。そしてまた、現職の教員につきましては、生徒指導担当教員等を対象といたしましてカウンセリングについての各種の研修も実施するということなど生徒指導の充実を図っておるわけでございます。ちなみに、現在国立教員養成大学学部におけるカウンセリング関係の授業科目の開設状況は、昭和五十五年度でございますが、カウンセリングとか教育相談、相談心理等については二十一大学、生徒指導ということでは十五大学、計三十六大学でそういう授業科目を開設いたしておりますし、また残りの十一大学におきましても、臨床心理学というような授業科目で、具体的に教員養成を目的としております国立大学におきましては、そういう授業科目を設けてカウンセリングの単位を生徒が履習し得る体制にはなっておるわけでございますが、御指摘のように、経験豊かな現職教員に対して、カウンセリングについての積極的な研修と申しますか、そういうものを施すということは今後ぜひとも検討していかなければならぬ課題、かように考えております。
  156. 大久保直彦

    ○大久保分科員 時間がまいりましたので終わりますけれども、この教育問題について全く。素朴な、初歩的なお尋ねをいましたわけでございますが、学校教育相談という制度は、確かに教育は学校の校舎の中だけで済まされる問題ではありませんし、いまの価値観の多様化した社会の中で、家庭の問題または社会環境全般の問題と相まってきわめてふくそういたしておる問題だと思いますが、しかし、この教育相談制度を現行教育制度の中に取り込むことが、いまいろいろな問題を抱えておる問題解決の一つの活路ではないのだろうか、こんな認識を持っておるものでございますが、あわせて今後ともこの制度の一日も早い導入のために御尽力されることを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  157. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 貴重な御意見、ありがとうございました。
  158. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 これにて大久保直彦君の質疑は終わりました。  次に、村上弘君。
  159. 村上弘

    村上(弘)分科員 田中文部大臣は、さきの文教委員会におきます所信表明において、まず第一に、初等中等教育の改善充実の問題を取り上げられております。その中で「初等中等教育は、国民能力の基盤を培う重要な課題であります。」こう述べております。私は、高等学校の教育、とりわけ私立の高等学校の教育について、ゆとりのある、しかも充実した学校生活を実現するという立場から、幾つかの点をお尋ねしたいと思うわけです。  まず初めに、初中教育の中での高等学校教育の持つ意義、国民能力の基盤を培う上でどのような重要性、どのような意義を持っているか、大臣の見解を簡潔にお伺いいたします。
  160. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御案内のとおり、高等学校教育というものが義務教育から引き続きまして、すでに今日は九四・二%に達しておる、こういうことを考えましても、生徒の能力、適性上きわめて重要なものでございます。今回、学習指導要領の改定におきましても、教育内容の改善を図りますとともに思い切った基準の弾力化を図りまして、生徒一人一人に応じた多様な教育が行えますように配慮いたしたところでありますが、今後ともに改善充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  161. 村上弘

    村上(弘)分科員 進学率が九四・二%にもなっておる、事実上準義務教育化しておる、私はこう言えると思うのです。高校卒業の生徒のうち四一・五%が社会へ出る、それから三一・九%は短大その他大学へ進学する。これは社会にとりましても、また高等教育の基礎という角度から見ましても、非常に重要な意義を持っておるんではないか。だから国際人権規約におきましても、中等教育の面において、すべての者が一般に中等教育を受けることができるように、かつ開放されているものとしなければならぬ、こういうことも言われていると思うわけであります。私は、文教委員会の所信表明とただいまの御見解からいって、また国際人権規約からいっても重要な意義を持つ今日の高校教育が、さまざまな矛盾と問題点を抱えておるということを指摘したいわけです。  特に父母の教育費の負担、これが私立高等学校の場合大変な状況になっておる。ここに今日の高校教育の最大の矛盾の一つがあるんじゃないかというように思うわけです。この矛盾を解決することが、高校教育の本来の意義を生かしていく上でいま不可欠になっておるのではないか。高校全生徒数四百四十六万人のうち百二十九万人、二八・九%、約三割が私立の高等学校で学んでいるわけです。したがって、私学への公費助成の拡大、とりわけ父母や生徒に対する直接の補助、これが非常に重要になっておるし、これを求める運動が全国で進んでおる、このことを重視する必要があると思うわけです。  いまの九十四国会におきましても、父母の負担を軽減すること、公私格差を縮小すること、授業料等学費に対する直接的な助成を大幅に行うこと、こういうことを内容とした請願署名がすでに二百万も、わが党だけでも来ております。  大阪では、去年の十月に大阪私学助成をすすめる会というものがつくられておりますが、大阪府議会に対する請願署名をやっております。おまええらが怠けたから私学や、こういうような偏見が世間にはまだあるわけです。そういう中でお母さん方が街頭に立ち、あるいは団地の住宅を一軒一軒訪ねながら約二百万の署名を、ことしの一月三十日に大阪府議会に出しておりますが、これは四名に一名の大阪府民が署名をしたということになるわけです。また京都では、経常費の二分の一の補助を義務づける条例制定の署名運動であるわけですが、七十万人の有権者から署名を集めております。これは京都の有権者の四割に当たるわけですね。愛知県でも二百三十五万人の請願署名が県議会に出されており、一万人の大集会もやられておりますね。  毎年、国会に請願署名が出されますが、昭和四十六年から五十四年の間に三千七百四十一万の署名が国会に出されておるわけです。昭和五十四年には、この年だけで一千万の署名が出されておるわけです。これほど多数の請願署名が国会に出されるというのは、私は日本の議会史上でもまず前例がないのではないかというように思うわけです。  そこで、大臣お尋ねしたいわけですが、なぜこれほどの運動が起こっておると思われますか。また、この運動をどう見ておられるか、この点をお聞きしたいと思うわけです。     〔愛野主査代理退席、主査着席〕
  162. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 就学上の経済的負担という問題で、特に高校の場合におきましては公私立間の格差というのが御指摘の問題のポイントであろうと思いますが、国といたしましても、都道府県の私立高校に対する経常費の助成の水準を高めますために、私立高等学校についての経費補助を年々拡充しておる次第でございます。私学助成は、私立学校振興助成法の趣旨に沿いまして経常費の補助を中心に、だんだんと拡張をしてまいっております。しかしながら、学費に対します直接的な助成を行うことは考えておりません。  このいろいろな、さらに詳細な問題につきましては局長からお答えいたします。
  163. 村上弘

    村上(弘)分科員 大臣は聞いたことに答えてもらわなければいかぬですね。いま経常費助成、直接助成の問題についてどうかということを聞いておるのではなくて、こんなにたくさんの署名運動が行われておるしとについてどう見ておるのかということをお聞きしておるわけです。これは時間がありますから、このことを次にあわせてお答え願いたいと思います。  私は、こういう大変な状態になっておる私学助成の問題、この父母の願いに真っ正面からこたえるということが高校教育の意義、あなたが最初に言われた、初中教育がそれこそ国民の能力の基盤を培う重要な意義を持っているんだという、この意義にこたえる一番の課題ではないかというように思うわけですが、その点についてどう思うかということと、確かにいま言われたように、私学に対する助成措置というのは年々改善はされてきております。まあ国会や政府も一定の努力をした。もちろんこれは、先ほどの父母の運動の大きな前進というものを抜きには考えられないわけですが、しかし、いまなおこんなにたくさんの運動が起こっておるということは、やはり私学における公私の格差がまだ解決されていないところか、ますます広がってきておるということを示しておると思うわけです。ですから、運動に対する大臣の御認識と、それから、こういう公私の格差がいまどのようにあるかということについてどう見ておるか、その現状についての認識とあわせてお答えいただきたいと思います。
  164. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 前段の、高等学校教育につきましての父兄の非常な願望というものは、すでに今日のような日本の段階になりますと、義務教育に引き続きまして、将来の進路の決定でありますとか、あるいはまた職業選択の問題とかいうふうな問題に関しまして、どうしても高等教育をしたいという父兄並びに学生諸君の願望であるということについては、私も同様に考えております。
  165. 村上弘

    村上(弘)分科員 その国家的意義はどうですか。
  166. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 もちろん、教育のレベルが上がりますということは、これはもう国家的な重大な意義があることでございまして、それにつきましては、文部省といたしましても極力推進をいたしておるところでございます。  さらに、後段の面につきましては、いまのやはり父兄負担という問題に帰しますが、それについての詳細な制度上の問題は、局長からお答えいたします。
  167. 村上弘

    村上(弘)分科員 制度上ではなくて、格差の現状について認識を聞かせてください。
  168. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 高等学校におきます公立、私立間の格差の実態でございますけれども昭和五十五年度の授業料について見ますと、私立高等学校は公立高等学校の約二・八倍となっております。また、入学料等を含めました初年度納付金で見ますと、約六・〇倍というふうになっております。  こういうことで、なお公私間の格差はかなり大きなものがございますけれども、ここ数年来の動きを見てみますと、私どもは、その公私間の格差がかなり縮まってきたということを申し上げることができるわけでございまして、昭和五十年度と五十四年度を比較してみますと、授業料におきましては、昭和五十年度では私立は公立の八・八倍でありましたものが、五十四年度では三・三倍に減っております。それから、入学料等を含めました全初年度の納付金で比較いたしますと、昭和五十年度では公立の十六・七倍でございましたけれども昭和五十四年度では六・九倍ということで下がってきております。そういうことで、年々、公私間の格差については縮小をしつつあるというふうに言うことができるかと思います。
  169. 村上弘

    村上(弘)分科員 いまのお答えでいきますと、公私間の格差は、数年間の流れを見ると比率は縮小してきておるということなんですが、それ自体は悪いことじゃないと思う。しかしながら、問題なのは、この絶対額がどうなってきておるかということですね。授業料等納付金の公私格差、この比率が縮まったかもしれないけれども、金額の差は、たとえば初年度納付金の全国平均では、昭和五十四年の公私格差は実額三十万円でありましたね。これは五十年の二十万八千円の格差に比べると一・五倍にふえておるわけです。そして大阪では、この格差が三十五万円にもなってきておるわけです。ですから、このように実額がむしろ広がってきておるということを見る必要があるわけです。通学交通費などの面を見ましても、これは昨年の十月の一カ月調査ですが、公立が三千四百二十八円、私学が六千七十三円。やはり一・八倍からの開きがあるわけです。ですから、こういう直接支出や間接支出の両面から公私の格差は非常に広がってきておって、それは父兄だけじゃなしに、生徒に対しても物心両面から否定的な影響を与えているわけですね。  これはある新聞に出ておりますが、ある生徒がこういうことを言っています。両親の夫婦げんかをふすま越しに聞いていると、ぼくの学費のことらしい、授業料の振り込み用紙を親に渡すのがためらわれる、きげんのいいときを選ぶが、そうじゃないときは黙って目につぐところに置いておくんだ、こう言っているわけですね。また、これはある私学の先生が言っておられましたが、年三回の授業料納期になると、生徒同士で授業料の話がしょっちゅう交わされておる。そして、授業料をもらうときが一番つらいとか、また金かと言われるとか、月謝袋で頭をぽんとたたかれるとか、こういうことを生徒同士で話しているのですね。子供もつらいし、親もつらいわけです。  それから、格差はそれだけじゃなくて、いろいろな面にあります。たとえば学校の敷地や校舎、運動場の広さの問題、これは私学は公立の六割から七割ですね。それから一人当たりの生徒数も、私学は公立の二十年前ぐらいの水準ですね。  これは大阪のある私学の教室の写真なんですけれども、一クラス五十四名です。縦が六列で、一列に九人座っていますね。とにかくぎりぎりで、もう端から端までいっぱいになっているわけですよ。もう一人生徒をふやそうと思えば、教壇の横に生徒の机を置かなくちゃならぬ、こういう状況もあるわけですね。  準義務教育化しておる高校教育がこういうような状態にあることについて、重要な意義があると強調したこの高校教育の問題についてどうしてこんなに格差が生まれておるのか、父母が非常に不信を持つのは当然だと思うのですが、このような格差が生まれておる責任は一体どこにあるのか、だれの責任か、本人の努力不足なのか、あるいは親の責任なのか、この点についての大臣の見解をお聞きしたいと思うのです。
  170. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 大臣がお答えになる前に担当の政府委員の方からお答えいたしますが、私立の高等学校は、先生案内のとおり、たてまえといたしまして、その設置者の責任におきまして自主的に経営されるわけでございまして、また、それぞれの高等学校が、公立学校とは異なった建学の精神に基づきまして特色のある教育を行っているものでございます。したがいまして、私立高等学校の授業料等生徒納付金がなるべく低額であることが最も望ましいわけでございますけれども、実情は、御案内のとおり、私立高校の主要な財源といたしましては、いま申し上げました授業料等生徒納付金が中心になるものでございますので、公立の高等学校に対して父兄負担が高額になるのはやむを得ないものと考えているわけでございます。
  171. 村上弘

    村上(弘)分科員 そういうような制度があることはわかっている。なぜそういう制度になり、そういう格差が生まれておるのか、その責任の所在を聞いておるのです。
  172. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 だれに責任があるかという御質問でございますが、これは、特定のだれにある、かれにあるという問題ではなくて、やはり戦前からある私立高校、戦後に生まれたものもございますけれども、私学というものが本来的に、先ほど申しました自主的に経営されるべき性格のものとして設置されておるわけでございますので、特定の者にそういった格差についての責任があるということはなかなか言いがたい問題ではないかというふうに考えております。
  173. 村上弘

    村上(弘)分科員 責任の問題については、国会に出された請願署名の中に、こういう事態になっておるのは国の責任である、したがって次々の措置をとるべきだという請願署名が出されて、その請願は八十四国会と九十国会の二回にわたってこの国会で採択されているのですね。ですから、これはそれこそ自民党から共産党、すべての会派も一致して認めておることなんですよ。そういうことを明らかにしておく必要があると思うのです。初等中等教育をそれこそ国民能力の基盤を培うものとして重視して、そのためにも公対の格差があってはならぬのだという請願を採択された上に立って、昭和五十四年度にこれを解決するための予算要求、つまり授業料軽減への補助を要求した概算要求を文部省が大蔵省に出したわけですね。これを出した意味、その理由は一体どこにあったのかということもこの際お聞きしておきたいと思います。
  174. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 昭和五十四年度の概算要求に当たりまして、いま先生のおっしゃいましたそういう要求をしたことは事実でございます。  その中身をかいつまんで申し上げますと、私立高等学校設置いたします学校法人が当該学校の生徒につきまして授業料等学費の減免を行った場合に、当該学校法人に対しまして都道府県が助成するに必要な経費、第一義的には都道府県が助成するわけでございますが、都道府県が助成するに必要な経費の一部を国が補助するというような趣旨で要求したものでございます。  要求の内容は、対象生徒数で申しますと第一学年は全体の一〇%相当のもの、第二学年以上のものについては二%相当のものとして要求いたしたわけでございます。
  175. 村上弘

    村上(弘)分科員 それは概算要求の内容を言っているのであって、なぜそういう概算要求をしたのかということについて答えになっていないのですよ。
  176. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 要するに当該特別補助の要求は、それぞれの私立高校学校法人の実施状況がさまざまであるわけでございますので、私立高等学校自体として授業料の減免措置をとられる、あるいはいわゆる特待生制度を設けるわけでございますが、そういう場合に、それに都道府県が補助をした場合に国がその一部を補助するためのものというような考え方で概算要求をいたした経緯がございます。
  177. 村上弘

    村上(弘)分科員 的をついていないと思いますが、それでは、そういうことをかつてやったのになぜ本年度は概算要求しないのかということについて、後でお答え願いたいと思うのです。  それからあわせて、現在、私立高校生を持つ父兄は、同じように税金を払っておるのにそれが公平に受益されない、公立高校の生徒に対する公費の支出と私学の生徒に対する公費の支出というのが大変なアンバランスがあるわけですから、これは納税者としても非常な不信を持っておられるわけですね。たとえば昭和五十三年、大阪で、生徒一人当たりの経費は、公立高校の場合は三十五万円に対して公費負担が三十一万円、つまり八八・七%までは公費負担しているわけですね。あとはいろいろ交通費その他父兄が持っているわけです。私学の場合は三十一万九千九百円に対して公費負担は九万二千六百円で、公費負担分は二八・九%ですね。八八%対二八%、公費負担にこんなに大きな格差があるわけです。ですから、直接補助に対して当然、かつて行った概算要求を今年度も行うべきである。なぜ行わないのかということと、こういう直接補助についてはいろいろなやり方がまだほかにもあるじゃないか。たとえばいまの税制上の問題です。私学に対する納入金の一定額を所得控除するとかあるいは授業料減免措置をもっと拡大するとか奨学金制度を拡充するとかいろいろあると思うのだけれども、こういう点をもっと検討し強化する必要があるんじゃないかということと、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  178. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 最初に、御質問の第一点の、昭和五十四年度の概算要求がどうして実現しなかったのかということでございますが、これは、当時の予算折衝の過程におきまして大変厳しい一般的な財政事情という背景がございましたことと、また、この要求はいわゆる学校法人に対する機関補助の形式をとっているわけでございますが、実質的にはいわゆる児童生徒に対する直接補助というふうに言い得るかと思いますけれども、そういうことで、この直接補助の問題ということになりますと、たとえば育英奨学制度との関連の問題もございますし、あるいは私学助成はそもそも機関補助で行うべきかあるいは直接補助で行うべきかというような、そういった基本的な問題にもかかわることでもございますので、当時、慎重な検討を要することであるということで一応見送りにされたものでございます。そういう経緯がございましたけれども、私どもは、いま先生が大阪の実例をお挙げになられまして、そのとおりだと思いますけれども文部省といたしまして、私立高校に対して、あるいはその児童生徒等に対しまして、決して傍観視しているつもりはございません。  昭和五十六年度の予算案についてちょっと申し上げたいと思いますが、御承知のような厳しい財政事情の中で前年度よりも一二・一%増というような大変大幅な増をいたしておりまして、七百八十五億円を計上いたしておるところでございますし、また、地方交付税による財源措置につきましても、対前年度比で申しまして一〇%増の二千八十一億円が計上されているわけでございます。したがいまして、両者を合わせますと二千八百六十六億円ということで、対前年度比一〇・六%のアップでございます。この二千八百六十六億円という金は私立高校等の経常費実額の三四・八%、もちろん推計でございますが約三五%弱に当たるものでありまして、私どもは今後とも、私立学校わが国学校教育の中に果たしておられる役割りの重要性にかんがみまして、財政事情の許す限り私立高等学校等経常費助成費補助金の充実に努めてまいりたい、そういうことによってできるだけ父母負担の軽減に貸すようにしたいと努めてまいる所存でございます。
  179. 村上弘

    村上(弘)分科員 経常費助成についてふえてきているということは認めておるのです。直接助成について概算要求をやりながらなぜやめたかということについて尋ねておるわけで、こういう点については当然、財政上の理由でこれを後退させるということでなしに、もっと国家百年のお立場に立って努力すべきじゃないかということを重ねて申し上げておきたいと思います。  最後に、こういう重要な問題についていま文部省がいろいろな調査をやっておりますが、教育上、経済上の格差というものが高校生活全般にわたって否定的影響を及ぼしておって、たとえば親に負担をかけさせないためにアルバイトをするとか、お母さんたちがパートに行くとか、家庭生活にも異常な変化が生まれ、非行にも影響してきておるわけですね。そういうところで、いま文部省が公立高校の父兄が支出した教育費の調査と中退者の調査をやっておりますが、この調査を公立だけではなくて私立に対しても同じ条件でやるべきではないかということと、いま言いました生徒のアルバイトの問題なども含めて、あるいは通学条件ども含めて公私ども調査を全面的に行う必要があるんじゃないかということをお聞きし、これらについての大臣の決意をもお伺いして質問を終わりたいと思います。
  180. 塩崎潤

    ○塩崎主査 時間が経過しましたので、簡潔に答弁をお願いいたします。
  181. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 冒頭の、われわれが高等教育についてかけておりまする熱意と申しますか、また、その非常な需要の多さということは、国民生活のレベルがだんだんと向上いたしておる中におきまして高校生の急増、それに対応いたします公立学校整備がなかなか、予算その他の関係もございまして十分でない、同時にまた、高校教育というものの特色といたしましてのいろいろな多様性ということからいたしまして私立が非常に多くなっておりまして、御案内のとおり公立と私立との間に、学校数におきましても非常な格差が出ております。同時に、そのために要しまする経費の点でございますが、われわれといたしましてもこの私立高校の重要性ということを考えますと同時に、でき得る限りの協力を惜しまなかったことも先生よく御承知のとおりだろうと存じます。ほぼ三千億近い二千八百何十億というものを出しておりますが、それが今後の学校の客観的な情勢等にかんがみましても、なお一層われわれといたしましてはこれの充実に努力をしていく覚悟でございます。  同時に、これまた負担につきましても、ただいま局長から申し上げたように、都道府県を対象にいたしましてその助成を図っておる、こういう現状でございまして、今後なお一層の高等教育充実を図っていく、それは日本自体の向上発展の一つの大きな証左であると同時に今後の土台でもある、かように思っております。
  182. 村上弘

    村上(弘)分科員 私学の調査、一言……。
  183. 塩崎潤

    ○塩崎主査 簡潔にお願いします。
  184. 三角哲生

    ○三角政府委員 前段の部分について私からお答えいたします。  高校中退者の条件につきまして、私ども必ずしも正確な数字を持っておりませんでしたので、先般行われました都道府県の指導事務主幹部課長会議の席上で、すでに各都道府県が資料を持っておればそれを報告してほしいというふうに依頼をしたものでございまして、したがいまして、相手が都道府県の教育委員会でございますので、これが公立学校についての資料ということになりますが、御指摘の私立学校の中退の問題の実態調査については、公立の方の資料を得て、それを見ました上で検討をしてみたいと思います。
  185. 塩崎潤

    ○塩崎主査 簡潔に願います。
  186. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 私立の高等学校の生徒の生活費の調査でございますが、これは御承知のように、教育費につきましては官房で五十三年度から、私立の高等学校を含めて調査をいたしております。しかし、その生活全般にわたりますことは、ただいまのところ非常に困難が伴いますので考えておりません。
  187. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて村上弘君の質疑は終わりました。  次に、土井たか子君。
  188. 土井たか子

    ○土井分科員 きょうは端的に私は、自分の意見も含めて質問を申し上げますから、ひとつ文部行政の中で生かしていただきたいと思うわけであります。  まず文部大臣、国連婦人の十年後半期の行動プログラムの中で、政府が着手しなければならないいろいろな問題がございます。その中で、男女間、農村婦人と都市人間、恵まれない層の婦人とその他の婦人間におけるあらゆる部門での、特に雇用、健康、教育の分野での達成状況の格差の除去を目標にすべきであるということが掲げられているわけであります。これは大臣も御案内のとおりであります。  ところで、いままでに国内行動計画は、国連婦人の年でございました一九七五年から五年を経過いたしまして、ただいまはいよいよ後半期の十年に向けて一年目ということになっておるわけでございますが、いままで五年の間、立てられてまいりました国内行動計画に従って、どのような施策を女性に対して教育面で行ってこられたか。特にいまから申し上げたいのは、社会の底辺で苦しんでいる女性の実態把握というのが進められてきたか、この点がまず第一にお尋ねをしたい点でございます。大臣、いかがでありますか。     〔主査退席、阿部(助)主査代理着席〕
  189. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまのお話よくわかりますけれども、非常に広範な面にわたります。私も具体的にこれとこれというふうに列挙的に挙げるだけの知識を持ちませんので、担当官からお答えさせていただきます。
  190. 高石邦男

    ○高石政府委員 国際婦人年のちょうど中間年に当たりまして、前段までに文教行政ではいろいろなことをやってまいりました。たとえば国立の婦人教育会館を設置し、その場で積極的に婦人問題についての研究討議を行う等の教育面での施策を進めているわけでございます。  なお、各省庁にまたがる問題でございますので、雇用の問題等につきましてはそれぞれの各省庁でそういう面の解消のための努力を行っているところであります。
  191. 土井たか子

    ○土井分科員 ここでこういうことをお尋ねしても、びんびんとはだに感ずるようなお答えが出てこないのです。確かに大臣がおっしゃるとおり広範にわたる問題でもございますけれども、どうも実態把握ということに対して、具体的に実態に即応した調査というものがいままでなされていないんじゃないか、このことが、まず第一に申し上げなければならない問題だと思うのです。大臣も御承知のとおりに、いままで婦人白書というのが出ておりますが、特にわが国においては、差別を受けております女性の中でもさらにいろいろ格差がございます。いわゆる差別を受けておる地域、同和地区の中の婦人に対して雇用がどういうことになっておるか、健康状況がどのような点で問題があるか、それに対して一体施策はどうとられてきたか。わけてもここでは教育の問題を取り上げなければなりませんが、教育の分野においてそれがどういうような実態であるかというふうな総合的な社会調査というのが実施されてこなかったと思うのですが、これは実施されてきたのでございますか、いかがなんでございますか。
  192. 高石邦男

    ○高石政府委員 具体的に御指摘のようなことを一々は調査しておりませんけれども、われわれといたしましては、婦人の地位向上をめぐりましていろいろな問題がありますので、社会教育の分野でもそういう面の教育事業の振興を積極的に毎年進めてきているところであります。
  193. 土井たか子

    ○土井分科員 地位向上と言われる部面でも、これはだれでもが考えることだと思いますけれども、特に取り残された立場、それからおくれている地域、差別を特に受けている状況にある人たちに対してどのように施策を講じていくかということがなければ、全体を向上させることにならないのですね。特に婦人の問題なんかについては、底辺の婦人、差別された婦人の地位向上ということを優先的に考えて、婦人についての施策を向上させるために講じているということに初めてなるだろうと私は思うのです。こういうことからいたしますと、どうもいままでのところ、社会のいろいろな調査の中で無視をされてまいりました婦人に対しての調査のあり方の中で、社会の恵まれない層の勤労婦人に対する調査、それからそういう地域、こういうことを取り上げて、優先的ないろいろな調査と施策を講じていくべきだということが、国際人権規約の上からでもこれは言うことができると思うのです。  わけても、大臣もこれは御承知だと思いますが、一九六五年に同対審答申が出まして、部落差別の解決は国の責務であるということが明確にうたわれている。こういうことからいたしますと、あの同対審答申からすでに十五年たっているわけでございますね。この十五年の間にただの一度も、同和地区の女性の総合的な実態把握というのが行われていないという実態からかんがみましても、ひとつおくればせながら同和地区の婦人白書というものを、婦人白書の中で取り上げるか別枠で取り上げるか、いずれにしろ、文部省もひとつその中でしっかりと責任を持っていただいてこれをつくっていくということが必要だろうと思います。これは単に白書をつくるということではなくて、そういう調査に基づいて施策を講ずる、実態に即応した調査を厳密にやることが大切だという意味でまず申し上げたいと私は思いますが、大臣、これはいかがでございましょうか。これは政治問題だから大臣から……。
  194. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御案内のとおりに、御一緒に同対審をつくりました。先生もよく御承知のとおりであります。  なお、その後の実態調査の十カ年、これはあくまでも現地に即した実態の調査をするためにやったのでありますが、その十年を経過してもまだ完結しないということで延長したのは御承知のとおりであります。  ついては私は、どうもこれは文部大臣という立場で申し上げるよりも、総理府総務長官として最初にいたしましたあのときのことから申しまして、私が一番気になっておりますのは、ことに婦人の結婚の問題でございます。就職の問題、就労の問題もさることながら、結婚問題。私も九州の近く、山口でございますので、その問題については本当に心を砕いておりますけれども、なかなか解決しない、頑迷固陋の一つ社会慣習というものがあることはよく存じております。しかし、どうもこの問題は、文部省ではなく総理府の方の所管事項でございますからあれでございますが、いまの文部省所管の婦人年に即したいろいろなテーマというものも、学校内における差別の問題とか男女間のいろいろな地位の問題というものがあるであろう、かように存じます。
  195. 土井たか子

    ○土井分科員 これは大臣がいま御説明を賜った限りでございまして、私が御質問を申し上げているのは、そういう同和地区の婦人白書というものを、このあたりでおくればせながらつくることに大臣としても御尽力を賜るわけにいかないかという問題なんです。これは所管が違うとおっしゃればそれまでかもしれませんが、教育面にわたってもいま大臣が結婚問題など深刻に私なども考えているとおっしゃている部面からいたしましても、やはり大臣がそのことに対して熱意を持って提唱していただくことが大変大切だと思いますから、そういう意味で申し上げているのですが、いかがでございますか。
  196. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御案内のとおり総理府所管の事項でございますが、みんなと一緒になりまして、心を合わせまして、そういうふうな先生の御設問に対しましてもおこたえをしなければならぬ、かように考えております。
  197. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、このための御努力を大臣としては払っていただけますね。
  198. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 みんなと一緒にいたします。
  199. 土井たか子

    ○土井分科員 みんなと一緒にいたしますというのは結構なんですが、大臣として熱意を持って、文部大臣というお立場で努力を払っていただけますねということを私はお伺いしているのですよ。よろしゅうございますね。
  200. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 冒頭申しました、余り人の所管を侵食してもいけませんが、何といいましてもこの問題は同対審のころからずっと手がけてきた問題でございますので、私にとりましても重大な関心でございます。
  201. 土井たか子

    ○土井分科員 そこで教育の部面が入るわけですから、いまのことについても重大な関心をお持ちになっていらっしゃる文部大臣としては、やはり最大限の御努力を私は喚起してやまないのですが、このことについては重大な関心を持って努力するということでございますから、あとは大臣の御努力のほどに待つばかりであります。  現在、この同和地区の婦人の地位向上に向けていろいろ国が実施している特別な対策というものがあるようでありますけれども、どういうものがあるかというのは、大臣、御存じでいらっしゃいますか。
  202. 高石邦男

    ○高石政府委員 かわってお答え申します。  国といたしましては、団体の育成事業といたしまして、婦人会活動それから婦人学級、成人学級、PTA活動それから各種の集会所における学級講座の開設等の事業を展開して、婦人の問題のみならず、広く同和教育全体の社会教育面における振興策を講じているところでございます。
  203. 土井たか子

    ○土井分科員 ただ抽象的にそういうお答えを聞いているとまことに結構のように聞こえるのですが、この同和地区の、特に婦人の地位向上に向けて国が実施している特別な対策、同和対策事業ということになりますと余り多くない。これは限られてしまうのですね。国が実施している同和対策事業、そのうち婦人関係、女性関係のものは健康検診、それも妊婦の健康診査ですね。これに限るのです。それから同和保育所への保母の加配、さらに同和保育所の運営助成、いま申し上げたのはすべて国の方が二分の一補助というかっこうになっているようでございますが、大体挙げていってこれ限りなんです。  これから私が申し上げるのは、実はこれは文部省所管のことにも関係をいたしますから、ひとつ文部大臣の御努力をぜひぜひ私はお願いを申し上げたいと思いますが、それはどういうことかというと、大阪市内のある同和地区での調査結果が現にここにございます。これを見てみると、実はびっくり仰天するのです。何に驚くかといいますと、義務教育未終了の婦人が全体の二〇・九%、まさに五人に一人が義務教育すら終えていないという結果が出ているのですね。いろいろそれには理由があるでしょう。この理由というのは、やはり実態に即応した調査をやることがだから必要だと私は言うわけでありますが、しかも、読み書きできると答えた人はわずかに五六・六%、二人に一人は読み書きができないという実態が調査の結果として出てきているのです。  これは、読み書きできないというのは生活そのものが難儀ですよ。これはわれわれの想像に絶するものがあります。教育国家だと言って日本が世界に誇っているわけですけれども、こういう現実がなおかつ存在しているということを、この数字を見ていると忘れるわけにはいかない。就学率というのは世界第一だとか、大学の進学というとさらに世界第一位だとか、教育水準というのは行き渡っているという意味ではもう世界第一位だとか、特に大臣は、外国なんかにお出かけになっていろいろ教育問題なんかをお話になるときに、もうすでに日本では読み書きができないような国民はただの一人もおりませんなんというようなごあいさつをなさる場合が間々あるんじゃないかなと私は思ったりいたしますけれども、しかし、現実はそうじゃない。  この大阪市内のある同和地区での調査結果を見ると、二人に一人は読み書きができないという女性に対しての調査結果が出てきております。電車に乗りたくても、最近は、御案内のとおり自動販売機で切符を売っておりますから、文字が読めないことのために切符を買うことができない。人に文字を読んでもらいたいと言ってこんなことを頼むなんて恥ずかしい限りでありまして、この結果、このことに対して非常に難儀をするということにもなりますし、子供が学校から持ち帰ってくる授業参観の案内さえ読めない。ましてや安定した仕事につくなど全く不可能だと申し上げてもいいでしょう。こういうことからいたしますと、この問題というのは非常に厳しい問題だと私は思います。  このように発達した現在の社会において、三十代、四十代の人が読み書きできないという結果が数字を見ますと出ております。したがって、これは何とかしなければならぬ。生きる権利がここで奪われていると申し上げてもいいと思う状況なんですね。字が書けたら運転免許証が取れる、字が読めたら子供の勉強も一緒にできる、恥をかかなくても済む、何とかして字を書きたい、読みたい。これは切実なその人たちの気持ちであり要求であるということは、私は至極当然だと思うのですね。  そこで、そういうふうな要求から始まりまして、この同和地区では現在、そういう女性が集まりまして識字教室というものが開かれるようになって、そしてすでに十数年を経過しているのです。朝早くから夜遅くまで、いろいろ家内工業や行商やそれからパートタイマーなどで働いて、疲れた体にむちうって、そして字を覚えようといって集まってくる女性たちが、手になれない鉛筆を持って一生懸命に字を習っている。年とってから一生懸命に字を習っている姿というのは、ただただ真剣そのものであるがゆえに、われわれは見ておっても切実に胸に迫るものがあるのです。  しかし、こういう同和地区の女性の血のにじむような自主的な識字運動に対して、いま国の方では措置が何にもございません。現在こういう問題はどうなっているのかといったら、地方財政は行き詰まっている、赤字を抱えて非常に苦しい中で何とかという地域がわずかにやっているにとどまるのです。全国でこういうことをそれでもわずかにやっていらっしゃる地域というのはどれぐらいあるか。大臣、どれぐらいだとお考えですか。
  204. 高石邦男

    ○高石政府委員 国の方で社会同和教育推進事業として、まず一つは団体育成事業、これは先ほど申し上げました子供会とか婦人会とか青年会……
  205. 土井たか子

    ○土井分科員 そういう御答弁はいただきません。私が質問していることに対して答えてください、わずか三十分という時間なんですから。
  206. 高石邦男

    ○高石政府委員 国の方は全くやっていないのではありませんので、団体育成事業であるとか諸集会開催事業、集会所の指導事業、こういうものについての補助金を支出しているわけでございます。現に、これらの補助金を使いまして相当な学級が開設され、その中で識字学級を開設しているという地域もあるわけでございます。
  207. 土井たか子

    ○土井分科員 現実はそうじゃないのですよ。国の方からのそういう識字学級というものに対しての補助金というものは、現に具体化されていないわけです。市町村の方で苦しい中から出しているというのが現実の姿、形じゃないですか。幾らこれを御説明なすったってだめですよ、それは現実そうなんだから。  だから、そういうことからすると、いろいろあるけれども、字を読み書きすることを覚えるということは、何にも増して先決問題だと私は思うのです。大臣、そうお思いになりませんか。学校の教科の中でも国語というのは私は大切だと思いますよ。日本の国民を育成するという上から言ったって、これは非常に大切だと思います。いま私が挙げた大阪の例なんというのは一例です。現に全国でもっと深刻な地域もあるのですが、こういう識字学級というのを持っているのはどれぐらいの数があるとお思いですか。これについてのお答えは何にもまだいただいていない。どうなんですか。
  208. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほど申し上げましたように、国の事業の経費で実施している地域もございますし、それから都道府県ないしは市町村の単独事業で識字学級を実施している地域もあるわけでございます。したがいまして、両者相まってこの問題については取り組んでいかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  209. 土井たか子

    ○土井分科員 まだお答えがない。全国でこの識字教育というものをやっている地域というのはわずか百二十しかないのです。つまり講習、講座の内面で、文字を奪われてきたこういう差別の実態から成人教育で重視されなければならない識字教育というものは、全国にわずか百二十館しか存在してない。もちろん、いまお答えの限りであった教育集会所で取り組まれている場合も考えられるわけですけれども、それぞれ今後、全国的に識字教育というものを、地域に、特に同和地区に対して広げていく必要が十二分にある。いまそういう識字教育がないという地域が同和地区について調べていくと四百四十三、ある方がはるかに少ない。したがいまして、こういうことからすると、やはり地方自治体が誠意があるかないか、地方自治体が苦しい中から財源をそれでも削り取ってこのことに対して助成をするという気持ちがあるかないか、こんなことにゆだねないで、国として施策の上で責任を持って識字教育に対して助成をしていくという姿勢を出していただかないと、この中身というものは私が申し上げたようなことで、十二分に教育的効果というものを上げ得ないだろうと私は思うのです。どうですか、大臣
  210. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 いま大変貴重な資料を御説明いただいて、ありがとうございます。われわれ担当の方でいろいろ調べましてもなかなか的確にはつかみ得なかったところでありまして、いまの事例等につきましては、今後なお、文部省といたしましても調査をいたします。  それから識字の問題は、何といいましても、今日の高度の日本国におきまして字が読めない者があるということは、これは文教の恥でございます。その点につきましては十二分に今後措置をいたします。
  211. 土井たか子

    ○土井分科員 したがって、そういうことからすると、同和対策事業の中でこの問題を国の助成対象として考えていただけるということをお約束願いたいと思いますが、これは文部大臣、よろしゅうございますね。
  212. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 いまの国の助成対象とするか、自治体の措置といたしますか、その点は行政庁内において相談をいたします。
  213. 土井たか子

    ○土井分科員 ただ、これは自治体の方の助成対象とするかと気安くおっしゃいますが、いままでそれは自治体の助成対象であって現実はこうなんです。きょうお話しした限りなんですよ。したがいまして、これを十二分にすることのためには国がいままでどおりであってはいかぬということでもあるのです。読み書きの問題は、文部大臣大臣のお考え一つですよ。大臣政治家としての決断お一つです。読み書きがいまだにできない人たちがあるということを深刻に受けとめていただいて、このことに対して文部大臣の責任において何とかしようという熱意を示していただけるかどうか。いままでと違った行き方を積極的に前出しをしようとするとこれしかないと私は思って、きょうはこの御質問をしているわけです。いかがですか、大臣
  214. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 情熱は十二分に持っております。が、しかし、いまの行政のあり方からいたしまして、都道府県の措置に任すべきものと国が直轄でいたすべきものとの分野はおのずからあります。その点は行政慣行等について、ひとつ先生の方も私の方にお任せいただかないと、そこまでお指図をいただきますとなかなかやりにくくなります。
  215. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、指図を私はしているつもりじゃなくて、これは行政慣行の上からいっても、文部大臣がおやりいただいて十二分に矛盾しないということを、私たちも読みとして持っておりますからこういうことを申し上げているわけでありまして、このことを十二分にお含みの上、具体的な努力をひとつお願い申し上げたいと思います。これはよろしゅうございますね。はいと一言おっしゃっておいていただいて次に……。
  216. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 はい。
  217. 土井たか子

    ○土井分科員 まだほかにもここに関係がある問題をお尋ねしたいのです。  実は先日、予算委員会の席で私は、家庭科教育の、特に高校課程における女性のみに必須というあの問題を取り上げて少し御質問いたしましたが、あの後、教科書の検定について、小学校、中学校の義務諸学校で使用される教科用図書検定調査審議会の委員の方々の中身をお尋ねをしたのです。資料として私はこれをちょうだいしたのですが、見てみて私はあきれ果てたのです。よろしゅうございますか大臣、お聞きいただきたいと思います。  この検定の調査をする教科用図書検定調査分科会というのが御案内のとおりありますね。それで、検定の調査をする第一都会、国語、これの委員は九名で女性がお一人。第二部会は社会、この委員は十七名で全員男性。それから数学は委員が七名、これまた全員男性。理科は委員は十二名、これは全員男性。音楽、委員は五名で、ただの一人も女性はいない、全員男性。それからさらに図工、美術、書道という第六部会は、委員は七名、全員男性。第七部会、外国語、これは委員の数が六名で、やっとここで一人、女性。それからまた第八部会、保健体育、これは委員五名、全員男性。さらに問題の家庭、職業、第九部会でございますが、委員の数十六名。家庭科は高校においては女性のみ必須だったはずですね。ここで委員は十六名中女性はたった一人、ほかは全部男性ですよ。それから教科用図書分科会というのがありますが、これは十六名全員男性です。さらに教科用図書価格分科会、十一名全員男性です。  これをお聞きになって、大臣、どうお考えになりますか。
  218. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 先生の御指摘は、男が多過ぎて女性が少な過ぎるということだろうと思うのであります。だけれども、女性の方々も大変このごろは社会的に進出をせられまして、分野によりましてはかえって女性の方が上位のほどの活躍をなさっておられるようなところもございます。しかし、いままでの長い過去の過程におきまして、女性の方々がそういう公的ないろいろな場に進出せられておいでになった数が非常に少ないということは、これは現実でございまして、家庭に帰ればかえって女性の方が員数が五〇%以上でございますから多くとも、社会に出てくるそういう一つの断層の面にどれだけの女性が顔を出すかということは、平行線にはいかないだろうと思うのであります。  今後もそういう点につきましては女性の方々の進出を期待し、また、だんだんと人事の更迭の場合におきましては女性の進出した方を選考いたすようにいたしたい、かように考えますが、その統計そのものだけをとらえて女が少ないじゃないかとおしかりを受けましても、これは悪いのはみんな私が悪いんだ、こう申し上げればいいのかもしれませんけれども、それは今後、追って直すということにさせていただきたいと思います。
  219. 土井たか子

    ○土井分科員 大臣大臣をなじって私は言っているわけじゃいささかもないのです。ただ、大臣に申し上げたいのは、教科用図書というのは、学校教育の場でこの教科書によって教育が実施されるわけですから、非常に大切なんですよ。文部省としては、その教科用の図書を検定なさる場合の調査審議会のメンバーというのは非常に重要なんじゃないですか。  先日、大臣は、いまの現行憲法に対しては尊重擁護するという立場を披瀝されております。憲法の十四条から考えましても、教育の機会均等について保障のある部分から言いましても、この審議会は余りにも人員構成がへんぱじゃないか、これはやはり常識に考えてへんぱですよ。いま女性はどんどん社会に進出する数がふえているけれどもと、いまごろそんなことをおっしゃっていたら、文部大臣、大分おくれていますね、こう言われます。これはやはりへんぱですから、大臣がひとつ努力をして、この委員の中身を考えてみよう、こうおっしゃって私はしかるべきだと思いますが、大臣、どうですか。
  220. 三角哲生

    ○三角政府委員 土井委員の問題提起はよくわかるつもりでございますが、やはり審議会の委員でございますので、私どもはできるだけその面での有識者の方々から適任な方をお願いしたい、こう思っておるわけでございまして、頭から男性ばかりを集めようとかなんとか考えてそういう結果になったのではないわけでございます。したがいまして、女性の有識者で、私どもぜひお願いしたいというような適任者があれば、これはもうちゅうちょなく委員にお願いするという態度をとりたいと思っております。ちなみに、幼稚園の関係などでは女性にいろいろ御協力をいただいております。
  221. 阿部助哉

    阿部(助)主査代理 時間ですから簡単にお願いします。
  222. 土井たか子

    ○土井分科員 わかっております。  有識者は男女ともにある、女性の有識者もこの中に参加をさせていかなければならないという認識さえあれば、このメンバーの顔ぶれは変わるはずなんです。よろしゅうございますか。  もう時間ですから、最後に一つ、これだけ申し上げておきたい問題がある。学校教育法の七十五条を見ますと、「小学校、中学校及び高等学校には、次の各号の一に該当する児童及び生徒のために、特殊学級を置くことができる。」という条文があるのです。「特殊学級」と、いまだに法文の上でも呼んでいるのですね。最近は、法文の上で差別用語というものはひとつ訂正しようという動きがございますけれども、通達の上でも文部省は自治体に対して、やはりこの特殊学級とか特殊教育という用語をいまだにお使いになっています。これは学校教育法の七十五条が「特殊学級」と、こういう言葉遣いをいまだにしているから、これにも関連するわけでありますが、これは大臣、好ましくないとお思いでしょう、特殊学級とか特殊学校。これは自治体によれば、障害児学級とか障害児学校というふうに呼んでいますよ。特殊学校とか特殊学級というのは、一体どういう学校、どういう学級を指して言うのだろう、これはやはり特異な目で見られますし、やはり好ましくないです、この表現は。
  223. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 私が聞くところによりますと、身障者という言葉が非常に悪い、それで身障者というのが悪いからほかの言葉を使えというので特殊という名前にしたと聞いておりますが、先生がおっしゃるような意味では絶対ないことはお説のとおりでございます。身障者というふうにもとへ戻す方がいいのか、そうするとまた厚生省の方も、いろいろと身障者については問題があると思うのです。その呼称について、少し研究しましょう。
  224. 土井たか子

    ○土井分科員 時間ですから終わります。ありがとうございました。
  225. 阿部助哉

    阿部(助)主査代理 これにて土井たか子君の質疑は終わりました。  次に、辻第一君。     〔阿部(助)主査代理退席、主査着席〕
  226. 辻第一

    ○辻(第)分科員 私は、奈良県吉野郡大淀町の大淀旭ケ丘小学校に対しての部落解放同盟の不当な教育介入の問題について質問をいたします。  この吉野郡大淀町の大淀旭ケ丘小学校、これは桜で有名な吉野山に数キロというところの農村地帯です。生徒が二百十六名、教員は校長以下十一名、非常に小さい小学校で問題が起こったわけでありますが、この小学校は、自分だけがわかればよいという教育ではなく、仲間づくりを大切にし、子供同士がお互いに励まし合い教え合ってみんなが成長していく、このような教育を目指して班学習などを取り入れてきたわけでございます。  このような学校で、一昨年の十二月、五年生の家庭科の時間における児童の発言の一部をとらえて部落解放同盟が、これを差別発言として同校の教員の糾弾に出たのであります。  学校調査によりますと、児童のやりとりはおよそ次のとおりです。家庭科の時間に授業に集中できない、足をぶらぶらさせているA君がいました。たまたま前に座っていたB君のいすに何回か足が当たったので、B君が、「いま、遊びの時間と違うぞ」と注意をしました。A君が、「ちょっとぐらい遊んでもええやん」こういうふうに言い返したことに対してB君が、「そんなことしとるさかいアホになるんや。おまえみたいなんおるよって比曽が部落されるんや」と言った、こういうものであります。これを差別発言だということで確認会、糾弾会ということを学校当局に申し入れをしてきた、このような問題であります。  もちろん私どもは、これは差別発言ではなしに逆に子供を励ましている、このような発言である、このように先生方も考えておられるし、私どももそれを支持しているわけでありますけれども、この問題で去年確認会を申し入れ、先生方は、そういうものには出られない、このような差別発言でないものを確認会に出る必要はないし、教育の場で起こった問題だから教育の場で解決をしていく、話し合いならやりましょう、こういう態度で事が進んでいったわけであります。  これで昨年の初めごろは済んでおったわけでありますが、今度は十一月の段階になりまして、再度、糾弾会の申し入れということになりました。先生方は、それは出られない、こういうことになりますと、解放同盟は一月二十六日、二十七日に座り込みをやる。学校の前で数十人が座り込みをやる。一月二十八日には同盟休校に入る。そしてその同盟休校も、同じ大淀町にもう一カ所同和地域があるわけでありますが、そこの子供、ここは非常に多いのですが、百八十三名の児童のうちの百四十一人が一日目は同盟休校する、二日目は百二十七人が同盟休校する。隣の同和地域の子供まで同盟休校に入る。この学校の同和地域の子供はたしか二十九名だったと思うわけでありますが、そのうち、最初はたしか二十名同盟休校に入って、それからずっと、少ないときは十三名、多いときはまたふえるというようなことで、現在もまだ同盟休校が続いておる。もう一月を超えました。こういう状態であります。  そしてこの二月九日の、部落解放同盟が出しております解放新聞を見てみますと、この部落解放同盟が集会をやっておる。その集会に解放同盟の県運の執行委員が、狭山再審闘争とあわせた闘いである、こういうことを訴えておるのが解放新聞に載っておるわけであります。こういうふうな状態が現在まで続いておるというのが現状でございます。  しかも、何回も糾弾会に出ろということが繰り返されるわけでありますが、先生方は当然、そういう糾弾会には出られない、話し合いなら出られるけれども、糾弾会には出られないということで拒否をして今日までずっと来られたわけであります。たとえば二月二十一日、この段階では、土曜日ですから昼から糾弾会をやる、先生方は県民集会をやるというような、そういう形があったわけでありますが、十一時四十五分に授業が終わるわけです。先生方が出ようと思っても、その小学校の道々に、三カ所か四カ所しか道がないそうですけれども、何十人という人が邪魔をするわけですね。たむろしておるという状態の中で、もう先生が出られない。どんどんふえて、無論、向こう、解放同盟を中心に集会をやった数百人がしまいは取り巻く。中には、この写真にあるようなヘルメットをかぶった、昔はやった言い方で言えば黒ヘル集団というようなのが数十人おる、こういう状態ですね。結局、先生は約五時間少し学校を出られない、こういうような状態が起こった。それでその午後、学校先生を誹謗したビラがたくさんばらまかれる。また、学校先生には尾行がつくとか、それから、もう最近になりますと学校先生の実家ですね、自分の住まいでなしに実家のところまで、その糾弾に応じなければ先生を誹謗したビラをその近所へ張り回すぞというようなことまで起こる。夜中も電話がかかるというような、こういう状態になっているのが現状でございます。  こういう状況の中で、私は、この大人の運動あるいは主義、主張のために、義務教育である小学校の児童を学校に登校させない、同盟休校というような不法な手段を行っている、こういうことは本当に許せない。子供の学習権を奪い、教育の中立性、自主性までもじゅうりんをしておる。こういうことでは本当に学校教育の基本まで踏みにじられる、こういう問題であろうというふうに私は考えるわけであります。  そこで、この問題を一日も早く解決をし、旭ケ丘小学校を正常化させなければならないというふうに私は考えて質問をするわけですが、これまでも部落解放同盟は、たとえば奈良県でも、自分の意見が通らなければ同盟休校に訴えるということがありました。こういうふうに、教育の中立性、自主性、こういうものを侵害するようなこういう問題は、本当にこれからなくしていただく、そのためにも質問をしたいというふうに思うわけであります。  まず第一に、国の同和教育に関する考え方は次の三点に集約される、こういうふうに思っております。私、ちょっと読ましてもらいます。  「日本国憲法と教育基本法の精神にのっとり基本的人権尊重の教育が全国的に正しく行われることを推進する。」これが一番目です。  二番目は、「全国民の正しい認識と理解を求めつつ、具体的展開の過程においては、地域の実情を十分把握しこれに即応した配慮に基づいた教育を推進する。」  三番目、これが一番大切だと思うのですが、「同和教育を進めるに当たっては、同和教育と政治運動や社会運動との関係を明確に区別し、「教育の中立性」が守られるよう留意する。」このようにされているわけであります。  特に、国の同和教育に関する考え方、いま私が読ましていただいた点に集約されると思うのですが、その点はいかがでしょう、大臣にお答えいただきたいと思います。
  227. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  228. 辻第一

    ○辻(第)分科員 今回の問題を見てまいりますと、第三点は特に重要でございます。今回の問題では、解放同盟は、同校の教師集団が著しい解放運動への偏見と独善的イデオロギーでわが同盟の糾弾闘争や差別撤廃の取り組みに敵対してくるのは、教育と正しい部落問題認識を養うべき教育者としてあるまじき行為ゆえ糾弾会をやる、そのため同盟休校をやる、こういうことであります。これはまさに、先ほど申しました第三点に反する。そして、それに対して教員は、教育の中立性を守る、自主性を守る、そのために不当な圧力にもめげず努力しているのではないか、こういうように考えているわけであります。  そこで、次の質問に移るわけでありますが、文部省は教育の中立性を強調し、政治運動や社会運動との区別を明確にすべきとしている。先ほどのあれですね。今回の事件のように、未発達な小学生学校現場の中で起こった問題は、教育の場、教育の営みの中で基本的に解決すべきものである、このように考えます。そのためには父母だとか、あるいはPTAなんかと話し合いをすることももちろん必要であろうと思いますが、教育の場、教育の営みの中で解決をしていく、このことが基本であろうと思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  229. 三角哲生

    ○三角政府委員 やはり学校教育はあくまでも学校の主体的な判断のもとに実施されるべきものでございますから、それぞれの学校では、所轄の教育委員会との緊密な連絡のもとに、実際の状況に応じまして適切に判断をして対処をしてもらいたい、こういうふうに考えております。
  230. 辻第一

    ○辻(第)分科員 もちろんそのことは、中立性を強調し、中立性を中心に、政治運動や社会運動との区別を明確にするということですね。
  231. 三角哲生

    ○三角政府委員 同和教育を進めるに当たって、先ほど御引用のありましたような原則を私どもは持っております。これは同和教育という点からの原則でございます。  ただ、個々の事例につきましては、やはり私どもとしては、詳細な事情の把握に努めた上で判断をしなければならないという考えは持っております。
  232. 辻第一

    ○辻(第)分科員 次に、同盟休校は一月二十八日以来もう一カ月を超えております。最近では例を見ない長期にわたる不正常な状態ではないか。それで、同校には関係者の子供さんが二十九人いますが、最高時で二十人、最低時でも十三人、これは増減をしておるわけです。だんだん減ってまいりますと、また同盟から休校に参加しろというようなことでふえる、これが現状であろうと思うのですが、学校出席したり休んだりしている子どももおる。そして十三人が最初から、このことでは一貫して同盟休校をやっている。  こういうことで子供の学習権を奪うことでありますし、もうこのような同盟休校というのは、理由のいかんにかかわらず許されるべきではないと考えますが、このような同盟休校に対する文部省考え方をお答えいただきたいと思います。
  233. 三角哲生

    ○三角政府委員 同盟休校は、事由のいかんを問わず、まことに遺憾なことでございます。文部省としては、ただいま御指摘事例につきましては、こういった事態が一日も早く解決されますように奈良県の教育委員会を通じまして指導を行ってきているところでございますけれども、今後も引き続き指導を続けたい、こういうふうに思っております。
  234. 辻第一

    ○辻(第)分科員 いま奈良県の教育委員会に御指導されておるということでありますが、もう一カ月を超えておるんですね。そしてまた同盟休校をやっておる、これが現状であります。具体的にどのように御指導なさったのか、もう少しお答えをいただきたいと思います。
  235. 三角哲生

    ○三角政府委員 やはり今回の事例について見ますと、いろいろと関係者の間でも考えなりあるいは状況の認識なりが必ずしも一様ではないというような面もあるようでございます。何はともあれ、詳細な事情を把握した上で、先ほども申し上げましたが、こういった同盟休校というようなことが一日も早く解決される方向で指導してもるいたい、こういうことでございます。
  236. 辻第一

    ○辻(第)分科員 いろいろ御指導いただいておるというふうに思うわけでありますが、一層適切な御指導を賜って、早期にこのような不当な同盟休校が解消されるというために御努力をいただきたいと思います。  次に、この糾弾会に関して大淀町の教育委員会は、大淀旭ケ丘小学校の校長さんに対して、「校長として全教職員に同和教育研修として糾弾会に出席することを職務命令として提示することを命ずる」こういうような職務命令を出したわけですね。それから、これを受けて校長は、「糾弾会に出席することを命ずる」このような職務命令を先生に出したわけです。  もう少し経過を申しますと、一昨年の十二月に起こって去年の三月ぐらいに糾弾会、確認会云々があって、そのときには学校先生も校長さんも、これは差別発言でないということで確認会を否定されておったわけでありますが、その後、去年の十月段階から変わってきた。これは一つは、部落解放同盟のスケジュール闘争といいましょうか、そういうような形でも出てきたきらいがあるわけでありますが、そういう状態の中で今度は、部落解放同盟に屈服をされたと申しましょうか、校長さんも町の教育委員会も、差別発言だというふうなところへ変わってきたわけですね。糾弾会には校長、教頭、それから同推の先生、それからもう一人の先生、四人がこれまでには参加されたようですね。それから、あと七名の先生が糾弾会には出ない、こういうことでやっておられるわけでございますが、そういうように変わって、ことしになってからこういうふうな、糾弾会に出よという職務命令が出た。こういう例がほかにあるのかどうか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  237. 三角哲生

    ○三角政府委員 大淀町の教育委員会、教育長から旭ケ丘小学校長あてに、ただいま御指摘の糾弾会出席の職務命令書が発せられたということは承知をしておりますが、このような職務命令がほかにも出された例があるかどうかという御質問でございますが、そういったことについては、私ども特に承知しておりません。
  238. 辻第一

    ○辻(第)分科員 このようにめったにないことが、めったにないというより全くなかったことがこの奈良ではやられておるというのが現状であります。  それから、旭ケ丘小学校先生方は、このような大変な事態の中でも、日常の教育活動には最大の努力を払って毎日の授業を行っておられるわけであります。それに対し、先ほども私が申しましたように、この先生方に対して夜中の二時だとか三時にいやがらせの電話がしばしばかかります。それから通勤の際には尾行される。それから、これもさっき言ったのですが、先生の実家に対して、言うことを聞かないのなら先生を誹謗したビラを張る、こういうことを言っておどすというような行為が続いておるわけです。こういうことでは、先生方が本当に毎日の授業を一生懸命やっておられるわけでありますけれども、まともな授業ができないような状態、肉体的にも精神的にも本当に疲労が重なるということでございますし、これは先生の身分とかそういうものまで侵害をしている行為だと私どもは思うのですが、その点についてはどのように考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  239. 三角哲生

    ○三角政府委員 私ども、具体的な事実については承知しておりません。いま辻委員からお聞きしたわけでございますが、一般的に申しまして、いやがらせのようなことは私どもはあってはならないと思います。
  240. 辻第一

    ○辻(第)分科員 このような本当に不当な部落解放同盟の教育への介入、差別でない発言を差別だとし、そのための確認・糾弾会が自分の思うとおりにならないと、座り込みだとか同盟休校だとかハンストだとかいうことをやる。本当に大変な事態が続いておる、こういうことであります。  この問題は当然県の教育委員会が中心になって指導すべきことだ、そういうふうに考えております。それだけに県の教育委員会の役割りは大きいと言わなくてはならないと思いますが、しかし、現実の問題として、一カ月以上にわたってこのような事態が続いておる。しかも県の教育委員会も、十分不十分は別として、同盟休校はやめるべきである、その他の指導をされているわけでありますが、やはりそれは不十分な面は私はあると思うのですが、現実に解決をしていない、こういうことです。  ですから、文部省としまして一層の御指導をしていただいて、本当に早期にこの問題解決を図るために御努力をいただきたい。そして、あえて申すならば、県の教育委員会が本当に憲法、教育基本法に基づいた、また、先ほど一番初めごろに申しました文部省の同和教育の基本的な考え方、この考え方に基づいて正しい教育行政を進めるように御指導をいただきたい。そのためにはまた、十分な状況の把握もしていただきたいということを強く要望するものでございます。その点において大臣の考え、決意のほどをお答えいただきたいと思います。
  241. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 いろいろとお話を承りますれば、なかなかむずかしい問題でもあるし、深刻な問題でもある。しかしながら、この教育の重要性、ことに同和教育というものの不偏不党、中正な教育態度というものを貫いて今後ともにひとつ善処していきたい、かように考えております。
  242. 辻第一

    ○辻(第)分科員 もう時間も大体来ましたのでこれで終わりますが、本当に深刻な事態でございます。また、このようなことが今後まだ繰り返されるおそれがあります。そういうことのないように本当に十分な御指導や対策をいただくように重ねてお願いをして、私の質問を終わります。
  243. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて辻第一君の質疑は終わりました。  次に、伊藤公介君。
  244. 伊藤公介

    伊藤(公)分科員 最初に、教育が不偏不党で行われなければならないということは当然なことでありますが、ついせんだって、中学校の教科書の内容に触れて法務大臣の御発言がございました。私もたまたま子供のことで学校に参りまして、御父兄の方から非常に素朴な質問を実は受けたわけでございます。  これは自衛隊に関しまして、教科書に自衛隊の性格が載っているわけでございますが、その教科書を私も幾つか見していただいたのですけれども、総じて自衛隊について——一つの教科書の写しを持ってまいりましたけれども、自衛隊は自衛のための必要最小限の自衛力であり、憲法第九条で禁じている戦力に当たらないという見解に対して、第九条の戦力に当たるものであるから憲法に違反をするという主張が続けられているというように、実は考え方を併記しているわけであります。これについて、実はこういう教科書に載っている内容を指して、義務教育の、判断力のない子供たちに、憲法違反の疑いがあるというように自衛隊に疑問を起こさせるということは、国民として育てていく上に疑問を持っているという法相の発言があったわけでありますが、これは日本の憲法を、中学生ですからかなり理解ができる、そういう年代の若い人たちに理解をしていただくという非常に重要な点であろうと思いますが、文部大臣は法相の御発言はすでに御案内と思いますけれども、この教科書の内容、それから、さきの法相発言についての文部大臣の御見解をまず伺いたいと思います。
  245. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 自衛隊の合憲違憲の法務大臣の御発言とは、私に対する御質問は違うと思うのです。というのは、あのときの経緯は、つまり、そういうことを、文部省の検定を受けた教科書にこういう議論もある、こういう議論もあるといって両論併記してあることの可否という問題だと思います。教科用の図書の問題は、検定の調査審議会がございまして、そうして、そこにまでは違憲論に言及した申請本を合格とする答申が行われたので、これに基づいて検定を行ったものでありまして、なお、こういう議論とこういう議論と両論あるということをあくまでも公明に書いただけでございます。その点はひとつ、奥野君の合憲違憲の本質論とあのときの私の答弁の検定の問題と分けてお考えいただきとうございます。同時に、検定の調査審議会の方が両論併記ということになっておりましたので、文部省はそれをそのまま採用したわけであります。
  246. 伊藤公介

    伊藤(公)分科員 この問題で議論をしようと実は思っているわけでありませんけれども、一般の国民の皆さん、特に子供さんを抱えているお父さん、お母さん方が非常に素朴に、こうした議論を新聞紙上で読んだりニュースを聞いた上での理解は、どうも政府の中にも考え方かいろいろあって、自衛隊そのものに対する考え方も、本来であれば教科書をもって子供たちには教えるわけでありますが、法相の発言等を伺うとどうもそれでは十分ではない。こういう形では自衛隊というものに対して子供たちの理解がむしろ誤ってしまうのではないかという法相の考え方の根底にあるものを、やはり国民としてもどういう形で受けとめていけばいいのかということも、親として子供の教育の上からも非常に心配があるという御発言も私も直接伺いましたし、教育の上でいろいろな材料を与えて正しい認識と理解ができるような方向でぜひ御努力をいただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  私は、より具体的な問題で子供たちの話を申し上げましたけれども、幼児教育の問題をきょうは実はちょっと伺いたいと思っているわけでありますが、幼児教育につきましては文部省と厚生省との、幼稚園、保育園の問題も久しく議論をされてきたところでございますが、特に最近は、親御さんが共かせぎをされている。非常に活動的な婦人もふえておりますし、同時に、大都市において家賃が非常に高くなりつつあり、あるいは物価高騰で、どうしても必要に迫られて働きに出るという奥様方が非常に多いわけでございまして、子供たちの保育の費用あるいは幼稚園の入園費や負担というものが非常に大きくなっているわけであります。特に公立の幼稚園と私立の幼稚園との間の格差が非常に大きくなってきているのではないか、また、そういうことに対する不公平感を持ちつつある方が非常にふえているような気もいたしますけれども、その幼児教育の現状についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、まず伺いたいと思います。
  247. 三角哲生

    ○三角政府委員 幼稚園の入園料、保育料でございますが、五十五年度において見ますと、全国平均の年額で、公立の方は約四万円、私立の幼稚園は約十五万六千円でございます。特に、私立幼稚園に幼児を入園させている比較的年齢の若い保護者にとりましては、相当な経済的負担であろうというふうに思います。ただいまお尋ね一つでございます公、私立幼稚園の間の経費負担の差の問題につきましては、このところ数年間はほとんど横ばいのようでございまして、五十三年度は十一万七千円、五十四年度が十一万五千円、五十五年度は十一万六千円ということになっております。ここ三年間はこの差は拡大していないという状況になっております。
  248. 伊藤公介

    伊藤(公)分科員 実は東京の例なんですけれども、東京は、御存じのとおり住宅公団を初め急速に高層の団地が建設をされてまいりました。この団地を中心に、できるだけ身近で、しかもできるだけ安い費用で保育をしたいという、団地に住んでいられる保護者の方々の強い願いの中で、幼児教育の幼児教室というものがほとんどの団地の中に生まれてまいりました。本来であれば、高層住宅、特に住宅公団なんかの建設の中で保育園あるいは幼稚園というものが十分確保されている、最初から計画されていれば、こういう事態はなかったと思いますけれども、諸情勢のもとでいろいろな困難な問題もあったかと思いますけれども、そうした中で団地の方々を中心にして、自分たちもできるだけ交代制で子供たちを見ながら、私立の幼稚園よりももっと安い保育を自分たちの手でできないだろうかということで生まれたのが幼児教室でございまして、この幼児教室に対して、昭和四十八年度から東京都、それから各二十三区、市町村、地方自治体は、公認の私立幼稚園の在籍と同額の教育費負担の軽減のために助成金を実は出すようになりました。国の幼稚園就園奨励補助金の交付対象に当然、年齢的に言って入るべき子供たちでありますけれども、この幼児教室にはこれが加えられていないということでございます。東京の中で、東京都あるいは地方自治体が類似施設ということで認めてかなり施設の充実をしているし、またその内容の点においても私立あるいは公立の幼稚園に類似をしているものについては補助するという対象の中に入っているわけでありまして、そういう要求も非常にいま強く出ているわけでございますが、国の方の手が差し伸べられないということに対する皆さんの強い声があるわけでございます。国としてのお考えを伺いたいと思います。
  249. 三角哲生

    ○三角政府委員 伊藤議員からいま御紹介がありました幼児教室でございますか、そういったものがありまして、そうしてそれに子供を通わせている方々からも御指摘のような何らかの助成が得られないかという趣旨の陳情も、伊藤議員を含む議員の先生方からの御紹介で承っているわけでございます。この委員会で御提起になったことでございますから、それぞれの施設はそれなりに幼児教育としての機能を果たしておられるであろうというふうに私は推察するわけでございます。  実は私どもがいまやっております施策は、学校教育法の規定に基づきまして一定の施設設備の基準あるいは保母さんたちの数も確保されて、そうして正規に学校教育法に基づいて所轄庁から認可を受けましたものを対象として進めておるわけでございます。まだ認可を受けるに至っていない類似施設と申しますか無認可の施設というのは、伊藤議員がいまお取り上げになっているものもそうでございますけれども、私ども正確には、こういった施設の捕捉がなかなかむずかしいので掌握はしておりませんけれども、全国各地にいろいろな形であるようでございます。そういったものについては、現在やられておりますような就園奨励費の補助にしましても、経常費の補助にしましても、やはりこれは及ぼしていくわけにはまいらないというふうに考えております。いろいろな意味の制約があるんだろうとは思いますが、やはり私どもの立場といたしましては、それぞれ御努力をいただきまして正規の幼稚園としての認可を受けていただきたいというふうに考えるのでございます。
  250. 伊藤公介

    伊藤(公)分科員 この幼稚園の就園奨励の補助金ですが、これは当然、税金で負担している公立の通園児には交付をされているわけですね。補助金の本来の使命から言えば、やはり力を必要としているところに手を差し伸べてあげるというか、補助をしてあげるというところにあるんじゃないかと思うのですよ。いまお話しのように類似の施設はかなりあるわけですけれども、私ども見てみますと、大体、各団地に一つずつこの幼児教室は設けられているというのが実態でございます。団地の中ですから身近でもありますし、お母さんたちがバスに乗ったりあるいは子供たちを車でどこかへ送ったりということではなくて、まさに歩いて行かれる非常に近い距離、しかも事故に遣わない、そういうところにお母さんたちお交代で出てお互いに子供たちも見られる、そういう立地条件の中にできたわけです。  そういう実態を掌握して、東京都もあるいは地方自治体も、それでは類似施設ということで少し補助をしていこうということで、いま市の方、これは地方自治体によっていろいろだと思いますけれども、たとえば五歳児ですと年に五千円、四歳児ですと年に四千円、年にですから、市町村の補助というのは現実には非常に小さいものですけれども、都の補助は、月に五歳児で二千円、四歳児で千八百円。ですから、お母さんたちにとってみると非常に助かっているということだと思うのです。  東京都や市町村、地方自治体が実態を把握して、これなら類似施設ということで公平にできるだけその手を差し伸べようということで補助をしてきておるわけでありますから、理想は、公立の幼稚園にして、非常に安い保育で幼児教育ができるということが理想ですけれども、実態はほとんどそういう状況を備えているわけですから、国の方でも、恒久的ということではあるいはないにしても、地方自治体、市町村、東京都並みの援助は国の方でも手を差し伸べることはできないだろうかというふうに実は私ども思うわけでございます。  文部省の担当の方々の個別的な御意見も実は私ども伺ってきたところでございますけれども、類似施設といってもいま申し上げたとおり、大体、各団地に一つ一つできているのが実態ですから、無制限にあっちにもこっちにもあるものに対して全部やれということではなくて、せめて東京都が実態を認めて類似施設だという施設に対しては国としても、同じ子供たちですから、公平な意味からもそういう道を開くことはできないだろうかとぼくらは常々考えてきたわけでございます。公立の幼稚園に対してすら補助をしておるわけですから、そういう恩恵をいささかも受けていない幼児教室。高層住宅に入った、家賃は高い、しかし現実にそのすぐ近くに適当な幼稚園がないということで生まれてきた経過を考えますと、国としてもそうしたものに温かい配慮があっていいのではないかと思っておりますが、御見解を伺いたいと思います。
  251. 三角哲生

    ○三角政府委員 お話を承りますと、団地などができますと、施設がないということで、ただいまお取り上げになっておられますような幼児教室といったようなものができてくるのかと思いますが、私どもとしては、そういったところも、御指摘のように公立幼稚園があればそういうものは要らないではないかというお気持ちもあるのではないかというふうに感じておるわけでございます。できますことならば、そういったところに公立幼稚園、正規の幼稚園があればいいわけで、私どもは、地域の必要に応じまして市町村が公立の幼稚園の設置を推進してもらいたいということで、都道府県を通じてこれまでも指導をしてまいりまして、御案内のように幼稚園振興七カ年計画というのをずっとやっておるわけでございます。それで、設置に必要な施設費でございますとか設備費についても国から補助をしておる次第でございます。  団地などがたくさんできますと、公共団体によりましてはそういうことになかなか手が回りかねることもあって、不本意ながら無認可の類似施設というような形で住民の必要に応じてくれておるのだから、せめてそこに公共団体という次元で何かの援助はせざるを得ないというような関係が出てくるかどうか、私は実態を正確に掌握しているとは申し切れませんので、そういうはっきりした表現は避けたいと思いますけれども、そういうこともあり得るのではないかという気がするわけでございます。  それで、いまお取り上げになっておりますものは、恐らく、そこまで伊藤委員が御支持をしておられるのでございますから、内容的にもよくやっているような施設であろうとは思います。ただ、やはり無認可の施設というのは正規の幼稚園ではございませんので、いろいろな意味の私どもの指導とか、あるいは場合によりましては必要な監督とか、そういったことが及ばない世界でお仕事をなさっておる、こういうものでございますので、いわばそれに公費を使うということについて、個々の幼児教室をとらえれば非常にいいものがありましょうけれども、全体的な一つの枠組みとして公のお金をそれにかかわらしめていく場合に、いろいろなことでその予算なり補助なりがきちんきちんと実施といいますか、活用されるという上での制度的な保障がないわけでございます。実際論と形式論と両方あるわけでございます。そういう意味合いで、こういったものにも温かい手を伸ばしてはというお気持ちは非常によくわかるのでございますけれども、これはなかなかわれわれの予算執行なり国の仕組みとして考える場合にはむずかしい問題提起をしていただいたなというふうな感じでございまして、いますぐにどうのこうのということはちょっと困難であるというふうに申し上げざるを得ないのでございます。
  252. 伊藤公介

    伊藤(公)分科員 ちょうどいま予算編成のときで、私ども党の立場から言えば、できるだけ行政改革を進めて補助金の見直しをと言っているたてまえですから、その補助金の問題ですから、本来から言えば大変議論のしにくいところでございます。しかし、やはり生きた補助金制度というものを活用していく必要があると思いますし、正規な施設でないといまおっしゃいますけれども、正規ではないけれども実態としてそこにあって、しかも団地に住んでいる多くの方たちの子供たちが実際にその幼児教室の中で非常に大事な時期を送っているという実態をぜひ掌握していただきたいと思うのです。公立化されるということが理想であっても、しかし、必ずしも公立ばかりがいいわけではありませんで、先ほど申し上げたとおり入園料とか保育料にいたしましても、いま申し上げている幼児教室の入園料は五十五年度では四歳、五歳児で二万八千円、三歳児では一万二千円、それから保育料は同じ五十五年度で六千八百円、三歳児ですと五千円というように、やはり私立の幼稚園からするとけた外れに安い保育料なんです。入園料にしても恐らく三分の一くらいで済んでいるのではないかと思います。そういう形で民間の方たちも非常に努力しているこの実態に対して、やはり国が、正規のものであるからないからということではなくて、実態に合った形の補助金の活用ということが非常に大事だと私は思いますので、ひとつ実態をよく御研究いただいて何かの道を開いていただきたい。ぜひ御配慮をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  253. 三角哲生

    ○三角政府委員 重ねての御要請でございますが、先ほど申し上げた以上には申し上げにくいのでございます。もちろん、実態についてはなお勉強させていただきたいと思います。
  254. 伊藤公介

    伊藤(公)分科員 補助金の交付制度の交付要綱というのを読みますと、幼稚園教育の振興に資するために、幼稚園に就園する四歳児及び五歳児の保護者で所得が低い者に対して交付するんだ、こう書かれているわけでありますが、幼児教室の在籍者で当然これに該当する方たちがいるわけであります。そういう意味から言えば、交付対象から現実にはその要綱にあるけれども外されているわけですね。ですから、幼児教室に子供を預けている親御さんからすれば、みんな同じように税負担をしているのに正規でないからというがために非常に不公平だという意見を、皆さんが強く持っていらっしゃる。そういう不公平感というものに対してもぜひ御配慮いただきたい。いろいろなむずかしさがあることを私も百も承知で申し上げているわけであります。しかし、実態を掌握して市町村や東京都も手を差し伸べているわけですから、国は一切知らぬ、こういうことでなくて、せめて、市町村や東京都がそれだけの配慮をしているのですから、国の方が何か幼児教室、ちょうど非常に大事な時期の子供たちの教育に対して実態に合った形で新しい方法を考えていただきたいということを、もう一度強く要望しておきたいと思います。
  255. 塩崎潤

    ○塩崎主査 時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。
  256. 三角哲生

    ○三角政府委員 補助要綱のお話がございましたが、この補助金は、名前もそうでございますように、あくまで幼稚園就園奨励費補助金でございまして、御指摘の幼児教室は内容的にもかなりのものであるような気がいたしますけれども、およそそういうものに何かをやるとなりますといろいろなものが入っててくる。歯どめの問題が生じますし、いわば非常に私塾的なものまでつながってくるということもあります。でございますから、ある意味では私どもとしては当惑せざるを得ないような状況も予想してかからなければならないという問題を含んでいる感じでございますので、いわゆる幼児教育の本来は幼稚園という形でやっていただきたい。地方公共団体も、そういう類似の施設でしばらくしのぐということは現実の問題としてあるかもしれませんけれども、正規の幼稚園を建設していく方向でがんばっていただきたい。これは学校教育法上の学校でございます幼稚園という形で幼児教育は振興していきたい、基本的にそういう立場を持っておるものでございますから、いろいろなお話はよく承りましたけれども、いまここで御提案に対して、私ども前向きの方向ではお答えしかねるというのが実情でございます。
  257. 塩崎潤

    ○塩崎主査 これにて伊藤公介君の質疑は終わりました。  以上をもちまして、昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算文部省所管についての質疑は終了いたしました。  これをもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後四時四十分散会