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1981-02-27 第94回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十六年二月二十三日(月曜日) 委員会において、設置することに決した。 二月二十六日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       愛野興一郎君    越智 伊平君       金子 一平君    塩崎  潤君       村山 達雄君    阿部 助哉君       稲葉 誠一君    岡本 富夫君       大内 啓伍君    河野 洋平君 二月二十六日  塩崎潤君が委員長指名で、主査選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十六年二月二十七日(金曜日)     午前九時三十一分開議  出席分科員    主査 塩崎  潤君       愛野興一郎君    越智 伊平君       金子 一平君    阿部 助哉君       池端 清一君    稲葉 誠一君       上田 卓三君    横山 利秋君       岡本 富夫君    柴田  弘君       西中  清君    大内 啓伍君       河野 洋平君    田川 誠一君    兼務 井上 普方君 兼務 上原 康助君    兼務 岡田 利春君 兼務 川本 敏美君    兼務 横路 孝弘君 兼務 草川 昭三君    兼務 神田  厚君 兼務 瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         外務大臣官房会         計課長     恩田  宗君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君  分科員外出席者         経済企画庁調整         局経済協力第二         課長      西谷 浩明君         大蔵省主計局主         計官      日吉  章君         大蔵省銀行局特         別金融課長   日向  隆君         文部省体育局ス         ポーツ課長   戸村 敏雄君         厚生省援護局庶         務課長     岸本 正裕君         水産庁海洋漁業         部国際課長   中島  達君         通商産業省通商         政策局経済協力         部経済協力課長 井上 宣時君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     上田 卓三君   稲葉 誠一君     池端 清一君   岡本 富夫君     西中  清君   大内 啓伍君     中野 寛成君   河野 洋平君     田川 誠一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     渡部 行雄君   上田 卓三君     横山 利秋君   西中  清君     石田幸四郎君   中野 寛成君     大内 啓伍君   田川 誠一君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     阿部 助哉君   渡部 行雄君     森井 忠良君   石田幸四郎君     柴田  弘君 同日  辞任         補欠選任   森井 忠良君     稲葉 誠一君   柴田  弘君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   有島 重武君     岡本 富夫君 同日  第一分科員横路孝弘君、第三分科員上原康助  君、第四分科員井上普方君、神田厚君、瀬長亀  次郎君、第五分科員岡田利春君、川本敏美君及  び草川昭三君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 塩崎潤

    塩崎主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。  本分科会は、外務省大蔵省及び文部省所管につきまして審査を行うこととなっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。伊東外務大臣
  3. 伊東正義

    伊東国務大臣 昭和五十六年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  外務省予算の総額は、三千五十三億六千四百八十一万円であり、これを昭和五十五年度予算と比較いたしますと、百九十三億七千三百五十五万二千円の増加、六・八%の伸びとなっております。  激動する国際情勢下にあって、有効かつ機動的な外交の展開を図るためには、外交実施体制を一層整備、強化する必要があります。この観点から、昭和五十六年度においては、定員の拡充と在外職員勤務条件に格別の配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実外務省にとっての最重要事項でありますが、昭和五十六年度においては、定員八十名の純増を得て、合計三千五百六十三名に増強されることになります。また、機構面ではジンバブエに大使館を開設することが予定されております。  次に、経済協力関係予算について申し上げます。  経済協力は、平和国家であり、大きな経済力を有するわが国世界の平和と安定に寄与し得る主要な分野であります。中でも、政府開発援助の果たす役割りはますます重要なものとなっており、このため政府は、従来の三年倍増に引き続き、五年間にわたる新たな中期目標を設定し、経済協力強化に努めておりますが、その一環として、五十六年度予算においては、技術協力関係予算、なかんずく国際協力事業団交付金を前年度比一一・八%増の六百十億円としたほか、無償資金協力予算を前年度より八十億円増の八百三十億円とした次第であります。  このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校三校の増設を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に「国会に対する予算説明」とした印刷物を配付しておきますので、主査におきまして、会議録に掲載されますようにお願い申し上げる次第でございます。
  4. 塩崎潤

    塩崎主査 この際、お諮りいたします。  ただいま伊東外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 塩崎潤

    塩崎主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  6. 塩崎潤

    塩崎主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 塩崎潤

    塩崎主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間は限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。まず、上田卓三君。
  8. 上田卓三

    上田(卓)分科員 外務大臣御存じのごとく、一昨年の九月二十一日にわが国国際人権規約を批准したわけでございまして、大変おくれてではあったが、われわれとしては非常に関心を持ち、またその批准は正しかった、こういうふうに確信をいたしておるわけでございます。  その国際人権規約の趣旨というものは、内外人の平等ということを中心にいたしまして、わが国におけるところのさまざまな差別の実態を取り除く、こういうことであっただろうと思うわけでございまして、特に国内法役割りを持ちますところの同和対策事業特別措置法も十年が経過し、さらに国会決議をいただきまして三年の延長、そして三つの附帯決議がなされたわけでございます。そういう意味におきまして、国際人権規約なりあるいは同和問題、部落問題につきまして若干の御質問を申し上げたい、このように思うわけであります。  さて、一九七六年でございますが、外務省もこのことについて御存じだと思うのでありますが、ベネズエラで行われましたところの国際犯罪予防学会で、ポーランドポドコロツキーという教授が「孤立した社会」という題で世界部落差別をばらまくといいますか拡大するような、そういう悪質な報告がされておるわけでございます。  この報告は、ジョージ・デボスという方とそれからヒロシ・ワガツマという二人の学者が「日本の見えざる種族」という本を出しておりまして、その中にこういうような文言があるわけでございます。「穢多に関する話はいろいろあるが、」こういうくだりから、二人の間に子供が生まれたが、その子が白痴で皮膚に斑点が出ていたので、その女性部落民であることがばれたというような、本当に聞くにたえない、部落問題のイロハもわからない、にもかかわらず、さも何か部落問題の権威者であるがごとくこの本が出されておるわけでございます。これが先ほどのポーランド学者学会での報告のねたになっておるようでございます。ところが残念なことに、この「日本の見えざる種族」という本が、差別図書がいまだに発行されておる。それが世界にばらまかれているという現実があるわけでございますが、これを外務省は知っておるのかどうか、これに対してどう対処されようとするのか、この点について御質問を申し上げたい。  また、御存じのように、一昨年の八月から九月にかけましてアメリカのプリンストンで行われたところの世界宗教者平和会議で、日本代表格でありますところの当時の曹洞宗の宗務総長の町田さんが、これまた重大な差別発言をし、その責任をとってこの平和会議の役員をおりられるというような事件もあったことも御存じかもわかりません。  また、去年の十二月に国際人権規約にちなんで東京と大阪で人権シンポジウムが行われまして、そのときにマーチン・カネコという方が、ドイツ語圏でも日本の部落問題を大変ゆがめた形で宣伝されている向きがある、こういうことも報告されておるわけでございまして、いま申し上げた問題とあわせて大臣から御報告もいただき、また見解を述べていただきたい、このように思います。
  9. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は、そういうものがまだ発行されている、どういう措置をしているかということは、政府委員から申し上げますが、いま上田さんおっしゃるように、条約は、たしか法の前に平等じゃないか、宗教、人種、言語、そういうもので差別待遇はおかしいということが大きな眼目でございますので、私は本当にそのとおりだと思います。こうした場でまだそういうことが議論されるということがおかしいぐらい――私は東北でございまして、そういう問題につきましては、私の方は余りなかったものですから、もともと体でそういう差別があるというようなことは余り経験していないのでございますけれども、そういうことがあることは事実でございますので、こんな上田さんがおっしゃるようなことが議論されるということは、今後本当になくなるようにすることが一番大切だと私は思っております。  詳細につきまして、いまの図書等につきましては政府委員から申し上げます。
  10. 天羽民雄

    天羽政府委員 ただいま先生指摘の点はまことに重大な点でございます。いま御指摘のございました昭和五十一年でございますか、カラカスにおきますあの会議におきまして、ポーランドポドコロツキー教授の「孤立した共同体」でございますか、あれも確かにいろいろございますけれども、またその会議におきまして、そのもとになりました、いま先生指摘ワガツマ・ヒロシ先生でございますか、あの御本につきましてもやはり問題があるかと思う次第でございます。  その後、私どもといたしましては、最寄りの総領事館を通じて、あれはカリフォルニア大学でございますから、ワガツマ先生の方にアプローチしたり、またポーランド先生自身につきましても、関係課長が出張いたしまして、オランダで接触するということをいたしております反面、また英文でこの問題につきましての現状対策というパンフレットもつくりまして、一応在外公館にも全部配付いたしまして、必要あらばこれを使って、その問題の訂正に努力しているということでございます。いま先生指摘なさいました、この問題につきましては、またその後あるいはあちこちで不幸にして出るような場合もございますもので、在外公館の方に対しましても、随時対処方いたすよう申している次第でございます。
  11. 上田卓三

    上田(卓)分科員 いずれにしましても、現実にこの本が出回っているということは事実でありますから、これは早急に回収するなり、あるいはワガツマ氏を初めとする、そういう共著なされた方の部落問題に対する逆にまた正しい本を出すとか、そういうことをして、現実に出回っているわけですから、その点について外務省としてひとつ責任を持って対処していただきたい、このように思います。  それに関連してでありますが、何を言いましても部落問題が非常に国民的課題として国会でもしばしば論議をされておるわけでございますが、特に諸外国においては、そういう人権問題がやはり非常に大きく世界政治の中にいま位置づけられてきておるわけでございまして、そういう点で、諸外国方々に正しく知ってもらうということが非常に大事じゃないか、こういうように思っております。  そういう意味で、いま政府委員の方からお話がありましたように、「同和問題-現状施策、」という英文の本が出ているのですけれども大変部数も少ないということもありますし、非常に簡潔なものであって、もっと正しく――正しくというのですか、本当に中身のある読みごたえのあるそういう書物を、ただ英文だけじゃなしに、できましたらフランス語であるとかドイツ語であるとか中国語あるいはロシア語スペイン語というような形で、もっともっとそういう本を出していただくことがぜひとも必要ではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  それからもう一つは、外務省ではたくさんの外国向けの新聞とか雑誌とか映画も出されておるようでございますが、ここに資料があるわけですけれども、相当なものが出ておるようでございます。こういう場でももっと部落問題を宣伝というのですか、啓蒙していく必要があるのではないか、このように思います。  また同時に、民間の学術研究機関外国向け出版物を出しておられるわけですから、そういうところでももっともっと同和問題を取り上げてもらうように政府として援助していただきたい。部落解放研究所などでも、このような英語版の部落問題の本を出しておるわけでございますから、ぜひともそういう点についてもお願いを申し上げたい、このように思います。  時間の関係がありますので、幾つか申し上げるわけでございますが、それから、国連の中に人権部というのがありまして、また人権委員会があるわけでございます。その人権委員会の中にマイノリティー委員会というものがあるようでございまして、これは差別された集団に関する委員会ということのようでございます。この委員会が毎年であるかどうかちょっと私どもわかりませんが、世界各国で持ち回りで会議がされておるようでございます。できましたら、そういう世界の中にあるいろいろさまざまな差別の問題について関心を持ち討議をされる委員会ですから、ぜひとも部落問題を理解してもらうという意味においても、一度日本マイノリティー委員会を開いていただくということも大事かと思うのでありますが、その点についてと、いま申し上げた諸点についてお答えいただきたい、このように思います。
  12. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 少数者委員会でございますが、これは御指摘のように、回数としてはやはりジュネーブニューヨーク回数が多いわけでございますが、ほかの国でも開催可能でございますから、ひとついろいろ検討させていただきたいと思います。
  13. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま政府委員から申し上げましたように、原則としてはニューヨークジュネーブということですけれども、経費を出せばほかの国でも開けるということで、いま政府委員から答弁しましたが、これはひとつ具体的にどうするか考えてみます。  それから、出版物の問題は、英文だけでなくてほかの言葉でももっとやるべきだ、あるいは外務省の広報の中ででも何かもう少し考えろというお話でございます。これもいま確か英文だけということでございますが、予算との関係はございますが、お話でございますから、そこでいま言われたように、全部の言葉というのはなかなか大変だと思いますけれども、どこが大切かというポイントを考えてみまして、具体的にどうするかということを中で相談してみます。
  14. 上田卓三

    上田(卓)分科員 予算関係あるとはいうものの、大した予算ではないわけですから、ぜひとも積極的にひとつ取り組んでいただきたい、このように思います。  国際人権規約が発効したときに、当時の外務大臣でありました園田さんがこういうような談話を発表しているのです。「国内的には、人権の保障に関する従来の国内施策を一層充実強化させるための大きな契機となるという意味をもつものと考えられ、極めて大きな意義を有する」こういうように述べられておるわけでございまして、そういう点で、国際人権規約にかかわるそういう差別撤廃についての外務大臣の考えというものを、園田さん以上にひとつ取り組むのだというような意味発言をぜひともいただきたい、こういうように思います。  あわせて、人権規約解説書というもの、外務省はこういうりっぱな冊子を出されておるのですが、これは間違っておるのです。これの二十八ページでありますが、簡単に言いますが、「わが国には、ここにいう少数民族に該当するものは存在しません。」こう言っているのです。確かにわが国単一民族であることは事実であります。しかしながら、御存じのように、北海道にはアイヌ方々がおられて少数民族として現実差別を受け、またその差別を取り除くためにいろいろな形で厚生省中心にして予算が組まれていることも私事実だと思うのです。だから、そういう点で、もとを正せば日本自身が多民族国家と当然言えるわけでございまして、大陸から多くのいろいろな方々日本に来て日本民族が形成されておるわけでありますから、少なくともそういうアイヌの問題などを欠落させるということ自身大きな問題があるし、いわんや部落問題自身が全然触れられていない。これだけ見るならわが国は何も問題がないのだと言わんばかりです。何も問題がないということにはならぬかもしれませんが、そういうような印象を与えるような重大な誤りがあるわけであります。そういう点も含めてひとつ御答弁をいただきたい、このように思います。
  15. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御指摘の赤い本でございますが、これの二十八ページ、御指摘のように「少数民族に該当するものは存在しません。」という記述があることは御指摘のとおりでございます。部落問題につきまして人権規約観点から申し上げますると、先生も御承知のように、A規約第二条、B規約第二条にいずれも社会的出身とか国民内出身ということに基づく差別をしてはならないという規定がございますので、全体としてはこの規定を踏まえまして対処しておるということでございます。  少数民族に該当するかどうかということにつきましては、これは御指摘もございましたので、さらに検討させていただきますが、この冊子を作成いたしました段階では、この解釈で私どもは対処しておったわけでございまして、少数民族に対する対処ぶりにつきましては、人権規約の全体の精神と個別規定において遺憾なきを期し得るのではないか、このように考えております。
  16. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま上田さんおっしゃった園田外務大臣のときは、たしか条約の採択に当たって決議がございまして、その決議に対して、園田外務大臣から当時考え方を述べられたわけでございまして、私もさっき申し上げましたように、本当にこういう問題を議論しなくていいようになることが望ましいわけでございますから、そういう気持ちでおりますので、園田外務大臣がおっしゃった気持ち、あるいはそれ以上のひとつ努力をしてみようというふうに思います。
  17. 上田卓三

    上田(卓)分科員 この冊子の中にアイヌ問題がそういう意味では欠落しているということ、これはお認めになって検討しようということですからぜひとも検討していただきたいし、また同時に、社会的身分云々ということで、その裏には部落問題も含めてという、それはちょっと口実でありまして、はっきりと国際的にもそうことが議論されている折ですから、はっきりと日本においても、こういうものがあってこういうものを取り除くために同和対策事業特別措置法があってこうだというようなことが当然出されるべきだ。何も部落問題だけじゃございませんよ。在日朝鮮人韓国人方々の問題とか、とりわけわが国在日外国人に対する差別がきつい国でありますから、そういう点も取り除いていくという決意が当然あってしかるべきであって、言葉ではなしに実際の行動が大事ではないか、こういうように私は思っておりますし、外務大臣のいまの決意のような、園田外務大臣よりも云々という言葉だけじゃなしに、実際行動で示していただきたい、こういうように思っております。  さて、去年十二月に国際人権規約にちなんで人権シンポジウムがかりまして、外国から著名な人権問題と取り組んで研究している学者方たちが何人がお見えになって講演をされたわけでございます。たとえばアメリカから来られたところのロジャー・ヨシノという、これはアリゾナ大学教授でありますが、アメリカでは黒人差別撤廃を初め国内のあらゆる差別撤廃するために大統領が先頭になってがんばっているのだというような報告がありましたし、また差別禁止とともに、積極的なそういう特別施策を施しておる、こういうような報告がございました。またフランスの代表でカトリーヌ・カトウという女性パリ大学日本研究員でありますが、この人は、日本の多くの人は部落差別を避けているのではないか、日本に滞在中私は二回部落差別現実を目撃しているということを報告されております。自分が目撃しておるにもかかわらず、日本人自身がそれを注意しなかったということを述べておるようでございます。それから部落問題は差別の原点として非常に大事な問題ではないか、こういう報告がなされております。またインドのガルードさんという方でございますが、この人は、向こうにもカースト制度がございまして、アウトカースト出身でございますが、ネルー法科大学の学長をされている方でございます。インドでは差別禁止法律がある。現行犯で逮捕したり、罰金を取ったりという、そういう法律があるわけでありますが、さらにさまざまな分野にそういう差別された人たちが進出できるように特別の枠がある。人を採用するときは一五%という枠があるのです。国会議員でも差別された人たちは一五%の権利を持って特別枠で国会議員になっているのです。ぼくらそんな枠をもらって出てきているのじゃないのですけれども。そういう意味で、だからと言ってこういうことをしたからインド差別がなくなっているというのじゃないのですよ。なおインドにおいてもアメリカにおいても諸外国においても差別はあります。しかしながら、そういうように。努力しても、なおかつ差別があるのだという、それだけ差別の問題は根深いものだということだと私は思うのです。そうすると、さらにわが国において、やはりこの問題に対して、外国においてさえそうなんだから、わが国においてはもっともっと取り組むべきことは言うまでもなかうう、私はそういうように思っておるわけでございます。  そこで、同和問題と国際人権規約とのかかわりについて若干お述べになったと思うのですけれども、私の方で若干申し上げたい、こういうように思います。  たとえば社会権規約の第六条などを見ますと、失業者に対して計画的完全雇用をしなければならぬということで、すべての人々に働く権利を保障するという立場のものがあるわけであります。ところが、たとえば部落地名総鑑などが出回っているように、部落の人間を雇用から締め出すという意味でこういう悪質なものが出ているわけでございまして、これもしばしば国会で取り上げられ、こういう悪質な差別事件に対して法的な取り締まりというのですか、差別したって本当に軽犯罪程度で、それも訴えて初めてそういうことでありまして、本当にこういう差別を売り物にする、それを商行為でもうけのためにする、そういうような悪質な探偵社などもあるわけでございますから、こういうプライバシーが野放しにされているということに対して、法的な規制が大事ではないか、こういうように思っておるわけでございます。まさしくこれは国際人権規約で言われているところの社会権の第六条に違反する行為であると言わざるを得ない、このように思っております。また自由権規約の十七条では、先ほど言ったようなプライバシーの問題が禁止されておるわけでございます。同じ自由権規約の第二十条では、戦争と差別、扇動を禁止しておるわけでございます。ところが全国の至るところで、掲示板であるとかあるいはトイレであるとか学校の校舎のへい、そういうところに、部落民を殺せとか○○住民を消せとか、そういうような悪質な差別文言が出ておるわけでございまして、これはまさしく二十条違反と言わざるを得ないのではないか、こういうように思っておるわけでございます。来年の三月三十一日で同和対策事業特別措置法が切れるという状況でございまして、いまなお残事業と言われるものが相当数あり、また現実部落差別がこのようにあるという問題を踏まえて、三項目の附帯決議大臣はよく御存じであろうと思いますが、その点についてひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  18. 伊東正義

    伊東国務大臣 いろいろ例を挙げておっしゃったわけでございますが、いま上田さんもおっしゃるように、枠を設けるなんということは、これは本当に逆のことかもしらぬので、そういうものの存在を前提にしてその上に枠を設けるということですから、そういうことは本当はおかしいんだ。(上田(卓)分科員「何がおかしいのですか」と呼ぶ)いや、もともとはそういう差別をなくすのではなくて、差別を固定化するような問題で、先生おっしゃったのも、本当はおかしいのだということが前提についていたようでございますが、その上に立ってそういう枠をつくっている。国会議員の枠とかいろいろなことをおっしゃったわけですが、先ほど言いましたように、本当はそういうものは一切なくすのが一番いいんだというのが私の考えなものですから、そういうことは本当は望ましいことじゃないと私は思っておるということを申し上げたわけでございます。  いまおっしゃったことは、いろいろな法律的な問題もありますが、まあ教育ですかね。人間がみんなそうでなければならぬと感じなければ、それはなかなか実現できないことでございますので、教育の問題とか、もっともっと広い本当の人間愛といいますか、そういうようなことを国民みんなが考えてくれるようになることがこの問題の解決の根本だというふうに私は考えているわけでございます。延長の問題とか法律の問題は、国会で御議論になるところでございますので、これはいまここで私からどうこう言うことではないわけでございますが、先ほどから申し上げますように、園田大臣同様の、あるいはそれ以上の気持ちと私言いましたのは、これは言っただけではなくて、本当にそういうことを実行していく、なるべく一歩でもそういう差別をなくしていくことが大切だということは私はよくわかりますので、努力をしてまいりたいと思います。
  19. 上田卓三

    上田(卓)分科員 大臣、基本的にわかっていないんじゃないですか。差別されるということは、特別に抑えられているわけでしょう。だから、その部分を特別に取り上げて引き上げるということは、これは差別でも何でもないのですよ。本来ならば、差別がなかったらそれを特別にするということはおかしいと思うのですよ。格差があれば、その格差を是正することは当然のことじゃないですか。そうでしょう。道でもでこぼこがあれば、そのほこのところを上げるということは何も特別のことではない。そういう意味では、そのことは特別のことでないかもわからぬ。だから、そういう点でひとつ考えてもらいたい。  私は何も一五%を云々せいとは言っていないのですよ。しかし、少なくとも同和対策事業特別措置法という法律があって、一般予算でしながらも、さらに特別の予算をもって同和対策事業をされているわけですから、そのことをひとつ考えていただきたいし、特に、そういう法律があってもこれだけの差別事件があるわけでしょう、それがいま切れようとしているのでしょう。まあ、その問題は国会で皆で決めることであるわけですけれども、やはり部落問題をもっともっといまから取り組んでやらなければならぬ状況のもとで切れようとしているということでありますから、そういう点について、もう時間もありませんが、もう一言答えてください。
  20. 伊東正義

    伊東国務大臣 延長するかどうかという法律の問題は、これは国会で、各党の皆さんでよく討議される問題でしょうから、私自身がここでどうこうということは申し上げません。  それで、そういうものがあるのだから、なるべくそれをなくするためにいろいろなことをやれとおっしゃる、それはもうわかるのですよ、全然違っていない、同じ考えだと思うのです。なるべくなくそうということは、先生の考えておられることと私は全然一緒なんです。表現がちょっとまずかったのかもしれません。その点はおわび申し上げますが、気持ちは全然一緒でございます。
  21. 上田卓三

    上田(卓)分科員 時間が来ましたので、終わります。
  22. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて上田卓三君の質疑は終わりました。  次に、横路孝弘君。
  23. 横路孝弘

    横路分科員 昨年の国連の総会において、大川大使が軍縮の問題で演説をしております。また、伊東外務大臣も一般討論演説の中でこれに触れているのですが、軍縮の前提として、国家間の相互の信頼関係をどうやってつくるかが大変大事であるということを述べまして、効果的な信頼醸成措置役割りを高く評価しているわが国としては、現在実施されている信頼醸成措置の研究が成果を上げることを期待するということを軍縮問題の議論の大前提として述べておるわけでございます。  さらに先日、ソビエトの二十六回共産党大会でブレジネフ書記長が演説をして、この信頼醸成措置について、その策定と適用が緊張をやわらげる、世界平和の強化にとって大変有益な地域があるとして。日本を挙げているわけであります。  そこで、一般論としてまず最初にお伺いしたいのは、従来政府が信頼醸成措置についていろいろ議論をされ、しかも専門家グループの会議の中でも具体的な提案をされておるわけでございますが、一般論として、こういう信頼醸成措置がアジアにおいても必要であるということについては御同意いただけると思うのですが、いかがでしょうか。
  24. 伊東正義

    伊東国務大臣 国連で専門家が研究しているのはおっしゃるとおりでございまして、この秋の国連の総会に報告が出るということも知っております。横路さんおっしゃるように、ヨーロッパではヘルシンキで欧州安保会議というものが合意をされて行われているわけで、これもそのとおりでございまして、今度極東にもそういう信頼醸成措置を拡大するという意味の提案が初めてあったわけでございます。その後、ソ連が具体的にどういう行動に出るかわかりませんが、欧州と極東とではいろいろな違いがあることも御承知のとおりでございますし、信頼醸成ということは本当にそういう環境をつくることがまず大切でございますので、そういう環境が極東でもできることが望ましいということは、これは私も同じ考えでございますが、これが具体的にどうなるかということはいま見守っておるところでございます。
  25. 横路孝弘

    横路分科員 専門家会議の方は、これは七九年の国連決議に基づいて多分来年の国連総会にその議論の結果を報告することになっておりまして、日本からもホットラインをつくろうとか、あるいは軍事費を公開しようとか、周辺国の警戒心を惹起するような軍事行動を自制しようとか、具体的な提案をされているわけですね。これは地域は限っていませんけれども、いずれにせよこの信頼醸成措置というのは地域的な問題だと思うのです。したがって、日本もこういう提案を国際的な場でしている以上、どういう措置が考えられるかは別にして、アジアにおいてもこの信頼醸成措置というものをわが国の安全保障政策の一環として具体的に考えるべき時期に来ているのではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  26. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはことしの秋の総会で報告されることになっているのです。日本から専門家が出ていることも確かでございます。  それで、いま、信頼醸成措置というものは、日本、極東の平和ということから考えても具体的に何か考えてもいいのじゃないかというお話がございました。極東の置かれた地位というのは、朝鮮半島、中国あるいはソ連というような非常にむずかしい地域であるということは横路さん御承知のとおりと思いますが、その中の平和を考えていく場合にそういうことも一つの考えの中に入れてもいいじゃないかという御意見は、私は確かに傾聴に値する御意見だと思います。いままでは、そういうことを具体的にどういう手段でということを考えたことはございませんが、ことし国連総会にも報告が出ますから、その報告も参考にしまして、その問題を真剣に考えていくということは大切なことだというふうに私は思います。
  27. 横路孝弘

    横路分科員 もともとキューバ危機が一つのきっかけになって、あれ以後、米ソ間のホットラインの設置であるとか、米ソにおいては偶発戦争を防止する協定であるとか、例のヘルシンキ宣言、全欧州安全保障会議における部隊移動の事前通告であるとか、制限はされておりますが、軍事演習の相互公開であるとかというようなことの積み重ねが行われてきておるわけです。  私は、去年の安保特別委員会でも議論したのでありますけれども、たとえば日本の周辺においてもソビエトのいろいろな軍事行動がある。まあ日本もそれなりの行動をしていると思うのでありますが、たとえば偵察であるとか、訓練であるとか、演習であるとか、ソビエトの場合ですとミサイルの実験というようなことが、日本海であるとかオホーツク海、あるいは日本の周辺の太平洋海域においても行われているわけですね。そういう問題についても、たとえば海空域について一定の制限を行うという合意ができれば、スクランブルにミサイルを積んで飛び立つ必要も少なくなってくるわけです。そんな意味では、従来、軍縮といいますと主として軍備縮小ということを議論してきたわけでありますけれども、国連の議論をいろいろ検討してみますと、アームズコントロール、つまり軍備規制という問題が大変大事な要素として考えられるわけでして、われわれよく脅威を意図と能力に分けて考えるわけですが、こういう信頼醸成措置あるいは軍備規制を行うことによって、能力に対する規制もやろうと思えばできるわけですね。  もちろん、中ソ国境の問題であるとか朝鮮半島の問題というのは、日本だけでできる問題ではありません。あるいはソビエト側のねらいとしては、こういう提起をしながら、つまりヨーロッパの全欧州安保会議に準ずるようなものをアジアでもつくろうというようなねらいがこの提案の背景にあるのかもしれません。しかし、ソビエト側のねらいはねらいとして、日本側は日本側として、日本の国の安全保障という立場から、必要な措置がもしとれるものならばとるべきだと私は思うわけです。そんな意味では、ソビエト側が提案してきたということも一つの要素ではございますが、同時に、国連の場でこういう専門家グループの検討も進められています。  従来、日本というのは国連の動きをフォローするだけで、自国の安全保障政策としてこういう問題を考えるということがきわめて弱かったわけです。まあそれはそれなりの理由があると思いますが、いま私がお話しした日本周域における軍事行動、偵察であるとか、訓練であるとか、演習であるとか、実験であるとかというものについて、海空域の制限だとか相互通報というようなことをとるのは必要なことではないかと私は思うのですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  28. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま、それなりの理由があるのかもしれないとおっしゃったように、極東地域についてはそういうことをやるような環境がいままで出てきてないということで、国連の専門委員会決議の結論を見ようということを私はいま申したわけでございまして、そういうことが全然だめだということを言っているわけではございません。それは、軍縮、軍備管理、軍備規制といろいろな段階があるわけでございまして、何とか平和を守っていくためにそういうことが必要であるということであれば、そういうことができる環境をつくっていくという努力をすることは大切なことでございますので、いまのソ連の具体的な提案というものは、ソ連がどういう行動をとるのかということを見守りながら検討していく問題だと私も考えます。
  29. 横路孝弘

    横路分科員 つまり、外から提案されて考えるのじゃなくて、わが国自身のみずからの政策として軍縮というものを安全保障政策の中に位置づけるべきである。軍縮の中に、一つは信頼醸成措置の問題があり、一つは軍備規制の問題があり、もう一つは核軍縮を中心とした軍縮の問題がある。そのトータルを軍縮と見て言えば、軍縮全体を安全保障政策の中に位置づけるべきだというように考えているわけで、どうもその辺のところが、何か世界的な平和環境をつくるという視点での軍縮だけが日本で進められてきて、日本の安全保障政策という中で位置づけられるという点が弱かったわけなので、そこのところを外務大臣、恐縮ですが、私は防衛庁の方にも要求しているのでありますが、ぜひ外務省としても、そういう一つ日本の安全保障政策として軍縮の問題を位置づけるという努力を続けていただきたいと思うのです。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 軍縮といいましても、これは先生のおっしゃるとおり、現実の問題は安全保障との兼ね合いの軍縮、そういうことでございます。これはもう全く同意見でございまして、安全保障を考えながらの軍縮、その安全保障の場合にどういうことが具体的な問題として考えられるかという中に、先生一つの考え方として信頼醸成ということを言われたわけでございまして、これは私は傾聴に値する御意見だというふうに思っているわけでございます。
  31. 横路孝弘

    横路分科員 次に、ガイドラインの問題についてお尋ねしたいと思うのですが、主として「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」という点にしぼってお尋ねをします。  最初に、防衛局長に伺いますが、この中で二つのことが言われている。一つは随時協議ということ、一つは米軍に対する便宜供与という問題でありまして、この随時協議をするというのがちょっとよくわからないのです。安保条約には、第四条に随時協議の規定があるわけですね。これは特に何か意味があるのか、一般的にお互いに協議をしようということを確認し合ったにすぎないのか、これはどうですか。
  32. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもは、いま先生のおっしゃった後段の確認的な意味で書いてあるというふうに理解しております。
  33. 横路孝弘

    横路分科員 安保条約の六条で、日本は施設、区域を米軍に提供することになっているわけです。そうしますと、この便宜供与は施設、区域の提供に伴って生ずるものだというように理解してよろしいですか。
  34. 塩田章

    ○塩田政府委員 基本的にはそういってとでございます。ガイドラインの三項というものは六条の事態の場合を考えているわけでございますから、基本的にはそういうことでございます。
  35. 横路孝弘

    横路分科員 ちょっとガイドライン全般についてお尋ねいたしますが、安保条約あるいはその他の国内法律的な枠組みに規制されるとか、あるいは規律されるとか、範囲の中で行われるとかいうことがこの中で何カ所かあるわけでございますね。特に強調しなくてもいいところを強調しているところに疑いが生ずるわけでありますが、一つだけ確認しておきます。  このガイドラインに基づいて、制服で現在、防衛庁長官の指示に基づく日米間の共同作戦を含めた作業というのが行われていますね。その作業の範囲はあくまでも日本の憲法並びに国内法の枠の中であるということは断言できますか。
  36. 塩田章

    ○塩田政府委員 憲法の枠の中であること、これは前提に書いてございまして、当然のことでございます。それ以外の法律面につきましても、先生の御指摘のように、この研究作業は両国のそれぞれの現行法体系を前提にして研究しようということになっております。したがいまして、考え方としまして、この研究作業が両国の立法、予算をいかなる意味でも制約しないということになっておりますので、そういう意味では現行法体系の中での研究だということに合意をされておるわけでございます。
  37. 横路孝弘

    横路分科員 その制約するかしないかというのは、ミリタリーがやったからといって何も国会が制約されるわけはない。それはあたりまえのことなんで、問題は、あなた方のその説明がちょっと危ないんだな、聞いていると。つまり、その研究自体を憲法や法律に反しないその枠の中でやるのか。やった結果が拘束するかしないかという問題じゃないですよ。あくまで皆さんは研究だと言って逃げているわけでしょう。最後までそういうことでしょう。研究なんだ、しかもこれはエンドレスなんだとおっしゃっているわけですね。しかし、そうは言われたって、これは実戦を想定した研究をやっているわけでしょう。そうすると、われわれの心配は、制服同士が話をすればどうなるかというのは、この間の統幕議長が堂々とああいう発言をするわけですから、われわれはやっている中身に疑問を持つわけですね。  したがって、枠をはめるとしたら、それはやった結果が拘束するかしないかではなくて、やっている中身があくまでも憲法や法律の枠の中だということを皆さんがしっかり押さえなかったら、これはどこに行くかわからないじゃないですか。だから、そこをしっかり押さえてもらいたい。そのためにこれは何カ所も枠内だ枠内だと書いてあるわけでしょう。ところが、従来の議論の議事録を見ると、どうもそこがいま局長答弁したように、拘束しないというところに逃げてしまっている。そこにちょっと論理操作があるものですから、私は念を押しておきたいわけです。ミリタリーの研究は日本国憲法並びにこの国会で制定した法律の枠内で行う、それを超えるような研究は皆さん方がチェックしてコントロールするということを明確にしてください。
  38. 塩田章

    ○塩田政府委員 おっしゃいますように、現行法体系の中で研究をしておるわけでございまして、それははっきりしておるわけです。それで制約しないとか拘束しないとかと言っておりますのは、研究の結果、現在の制度、やり方等について日米相互に改善した方がいいということがあっても、それは相互の国を拘束するわけではない、当然と言えば当然でございますけれども、そういうことをうたっておるわけでございまして、制服の研究自体は研究をさせておるわけでございますが、先生おっしゃいますように、私どもがそれは現行法体系の中で、あるいは現行法体系をもし改正した方がいいということがございましても、それは日本の独自の判断で考えることである、アメリカとはいかなる意味においてもお互いに拘束しないということを申し上げておるわけでございます。
  39. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、その研究の中身は、憲法改正を必要とするような事項まで入るわけですか。法律改正を必要とするような事項までやるわけですか、研究は。それはとんでもないことですよ。
  40. 塩田章

    ○塩田政府委員 憲法改正とかそういうことは全然考えておりません。法律についてはどうかということでございますが、いま申し上げましたように、原則として現行法体系の中で研究するということを申し上げておる。その場合に、法律を改正した方がいいということがもし研究の中で出てきた場合の措置につきましては、それは私ども日本日本で判断をすることであって、お互いに拘束しないということをうたっておるわけでございます。
  41. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、たとえば有事立法にかかわり合いを持つような研究もやるわけですか。
  42. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在までのところそういうのは出ておりませんので、ちょっといまここで有事立法にかかわることがあるとかないとか申し上げるような材料はないわけですけれども、考え方としては、改正した方がいいということがもしあれば、それは有事立法の方で受けとめるということもそれはあるかもしれません。少なくともいままでの研究ではそういうことはございません。
  43. 横路孝弘

    横路分科員 外務大臣、これは防衛庁長官の指示に基づいてやっていますから、防衛庁の分科会のときにもやりますが、つまり問題は、どういう法体系がいいかとか、概略どういうような枠組みをつくるというのは、これはあくまでも国会であるとかあるいはシビリアンの仕事なわけで、ミリタリーの仕事じゃないわけでしょう。したがって、そのミリタリーの作業に有事立法が必要であるとかないとかいうようなところまで将来的にはかかわり合いを持つかもしれないということになりますと、その研究を受けて皆さん方が作業を始めるということになりますね。これは問題はやはり違う。しかもそれが米軍との話し合いの中からそういう問題も触れてくる、出てくるだろうということですと、これはやはり問題が大きくなるわけです。だから、あくまでも私はお願いしておきたいのですが、現行の法体系の中でやるにしたって、少なくとも枠組みというのは、その範囲の中に限られるのじゃないですか、そうすると、国会のコントロールなんて全然通らぬことになりますよ、これは。
  44. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどから何回もお答え申し上げておりますように、現行法体系の中でやるという原則は、これははっきり明示しておるわけでございます。
  45. 横路孝弘

    横路分科員 現行法体系の中でやるということを確認して、そうすると、有事立法なんというのはいまないわけですから、それはそういう研究には行かぬということですね。
  46. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げましたように、現行法体系の中での研究を命じておるわけでございます。
  47. 横路孝弘

    横路分科員 じゃ、角度を変えて、便宜供与の内容として自衛隊の部隊が米軍に対して直接協力関係に立つということ、これは従来から答弁していることですが、これはないですね。
  48. 塩田章

    ○塩田政府委員 自衛隊としまして、直接的には恐らくないのじゃないかと思います。
  49. 横路孝弘

    横路分科員 恐らくなんという言葉をそこで入れてもらうと困るので、従来の答弁は、ないということです。たとえば輸送であるとか、捜索であるとか、救助であるとか、米軍の偵察であるとか、戦闘であるとか、補給とかいうようなことに、この六条は施設、区域の提供に伴う便宜供与なわけですから、その中でかかわり合いを持つということはないというのは、これは従来から防衛庁の一貫した答弁ですよ、そうでしょう。
  50. 塩田章

    ○塩田政府委員 その研究自体、研究はいまからでございますけれども、自衛隊が直接米軍といまおっしゃったような協力関係に立つことはないだろうと思います。
  51. 横路孝弘

    横路分科員 研究はいまからと言っても、できないのだから、できないことをあなたは研究しないと言ったわけでしょう。つまり、第六条の施設、区域の提供に伴う便宜供与というのは、自衛隊が直接米軍に対して偵察、戦闘、補給などのいろいろな行動協力、たとえば輸送であるとか捜索であるとかを含めて、そんなことはできないのだというのが従来の防衛局長の一貫した答弁です。できないことをこれから研究するなんて、そんなばかなことはないわけでしょう。できないことはできないのだから、やらない。
  52. 塩田章

    ○塩田政府委員 ガイドラインの第三項に言います「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合」の協力については、これはいまから研究をします、こういうことを申し上げております。いままでまだ研究しておりません、こういうことを申し上げております。
  53. 横路孝弘

    横路分科員 いまから研究するのはわかるけれども、従来の国会答弁では、その場合には自衛隊が直接米軍に対して協力関係を持つということはありませんという答弁だったのだから、それは研究対象から除かれるわけでしょう。
  54. 塩田章

    ○塩田政府委員 たとえば施設の共同使用ということなら考えられ得るわけであります。しかし、いまおっしゃいましたような偵察だとか戦闘、補給とか、そういうことは一切考えられません。
  55. 横路孝弘

    横路分科員 だから、偵察、補給、戦闘というようなことについては一切考えられないのだから、考えられないことを研究する必要はないわけでしょう。
  56. 塩田章

    ○塩田政府委員 この三項は、自衛隊でなくて「日本が」となっておりまして、自衛隊がやるのは直接的にはない。日本がいかなることができるかということはいまからの研究だ、こういうふうに申し上げております。
  57. 横路孝弘

    横路分科員 地位協定の二十五条には「この協定の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本政府と合衆国政府との間の協議機関として、合同委員会を設置する。」こうなっていますね。これは外務省になるかな。  そうしますと、つまり施設、区域の提供に伴う便宜供与というのは、それがさまざまな問題が起きたときには、すでに合同委員会ができてたくさんの分科会ができてそこで運用されておるわけですから、いま日米でやっておるのは防衛庁長官の指示に基づく作業ですよ。一方、この協定というのは国会の承認にかかわった問題、つまり条約扱いしておるわけです。その国会で決めた地位協定の枠組みとしてはきちっと枠組みができている。だから、それ以外の機関でやるというのはそもそもおかしいじゃないですか。地位協定に反しますよ。
  58. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ガイドラインについては、御承知のとおり五十三年に決定されておりますが、これは安全保障協議委員会というところで決定されておるわけでございまして、安全保障協議委員会というのは安保条約に基づいて安保条約に関して協議するということでございますので、その中でガイドラインに基づいて研究協議するということは差し支えないわけでございます。  そこで、いまお尋ねのしたがってその結果ガイドラインに基づいて六条自体でいかなる便宜供与を日本がするかというのはこれからの研究でございますが、その際に、仮に施設、区域を提供するということであれば、これはいま御指摘のとおり、地位協定の二十五条に基づいて合同委員会でその施設、区域を提供するということに合意ができるということでございます。
  59. 横路孝弘

    横路分科員 ちょっとそこのところが議論しなければならぬところでして、安保協議委員会の方は、つまり交換公文に基づく機関ですね。主として第四条の随時協議と第六条の事前協議にかかわるものについて協議をしようという趣旨でできているわけです。この安保の六条を受けて地位協定というのができまして、これは国会でも余り議論をされていませんが承認されているもので、その二十五条に「この協定の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項」-法律で「すべての事項」なんて表現するのは大変珍しいこと。で、すべての事項について合同委員会で行う、そして合同委員会がこういう機関を持つというのが二十五条の二項で決められているわけです。つまり、法律できちんとした枠組みが決められて、機関まで決められている場合には、それが優先されるのですよ。四条の方の随時協議並びに事前協議に関する協議委員会ができて運用する。  しかも、ガイドラインはそこで決まったけれども、今日日米間の話し合いというのはそれじゃなくて、防衛庁長官の指示に基づくものでしょう。これについては外務省は何も責任を持つわけではないでしょう。防衛庁長官の責任においてやるものでしょう。そうすると、こういう枠組みがあるわけですから、この枠組みにも防衛施設庁が入ってやっているわけですね。施設、区域の提供に関する仕事というのは自衛隊の任務じゃなくて、防衛庁設置法でいけば防衛施設庁の任務ですよ。したがって、そこにかかわる問題を自衛隊がやるというのは、自衛隊のどこを探したって、米軍との協力関係を行うなんというのは自衛隊の任務に入ってないですよ。この地位協定の二十五条の一項、二項、ここできちんとした枠組みがあるわけですから、何か問題が出てきたときにはここでやればいいわけですよ。何も制服組でやる必要はない。こういうものをつくったのも一つのシビリアンコントロールなわけです。だから、防衛庁長官の指示に基づいて、五条の問題は別にして、六条の問題を議論するというのは地位協定違反ですよ。二十五条の一項、二項に反する。  わざわざ法律でこういう枠組みをつくっているのですから、その枠組みと別に、何もシビリアンコントロールが効かないような形の――外務省は全然かかわり合いを持たないわけでしょう、いま現に行われている制服同士の話し合いには。だから、地位協定でやれるのですよ。何か検討することがあれば防衛施設庁でやればいいじゃないですか。この地位協定二十五条で、施設、区域の提供に伴う問題についてはあらゆる問題を合同委員会で行うということになっているわけでありますから、少なくとも六条に関することをミリタリー同士が行うというのは、地位協定のこの規定に関して大変大きな疑義があるように思うのです。外務大臣、いかがですか。
  60. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現在ガイドラインに基づいているのは研究協議でございまして、しかもこの研究協議の前提としていろいろな枠が入っておりまして、研究協議の枠の中には、関連取り決めあるいは協定の枠内だということが明記されているわけであります。  そこで、六条事態はこれから研究していくわけでございますが、その結果として、仮に基地の施設の新規提供なり共同使用が出てくれば、これは当然二十五条に基づいて合同委員会で決定していくということでございますので、私たちは、ガイドラインに基づいて六条事態の研究協議をこれからしていくこと自体が二十五条の一項ないし二項に違反というふうには考えておりません。
  61. 横路孝弘

    横路分科員 合同委員会というのは単なる決定機関じゃないのですよ。協議機関なんですよ。決定のときだけ上げればいいというのじゃないのですよ、協議機関なんですから。しかも、あらゆる事項についての協議なんですから。わざわざ地位協定で決まっているのに、それ以外に協議をする場をつくるということはおかしいのじゃないですか。少なくとも合同委員会というものがあって、その中に十九か二十近い分科会があって、いろいろなものをやっているでしょう。防衛施設庁がやっているものだってあるわけですよ。その中でやれるのじゃないですか。合同委員会というのは単なる決定機関じゃないですよ。協議機関ですよ。
  62. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もちろん協議機関でございますが、協議には、何を協議するかという前提が出てきて、必要が生じた場合に協議し決定するわけでございます。他方、ガイドラインに基づいては、これからの研究でございますが、施設、区域の使用について何が出てくるかということをガイドラインでやるわけで、その結果出てきたのをこの二十五条に基づいて合同委員会で協議し決定していくということでございますので、私たちは安保条約及び地位協定に何ら違反してないと考えております。
  63. 横路孝弘

    横路分科員 外務大臣、この二十五条の二項を見ますと、「合同委員会は、その手続規則を定め、並びに必要な補助機関及び事務機関を設ける。」というようになっておりまして、随時いろいろ協議することができるようになっているわけです。したがって、ここでやっても何も問題はないわけですね。安保のガイドラインを決めた方の日米安保協議委員会、この協議委員会は本来は四条の随時協議と六条の事前協議にかかわるものをやろうというのが交換公文の趣旨なわけです。それに関連する問題をやろうということですね。その中から小委員会をつくって、ガイドラインの研究というのが出てきた。で、一定の結論が出て、そしてそれとは別に今度は防衛庁の長官の指示において制服の話し合いをそのガイドラインの枠内でやろうというようになったわけです。  ところで、一方、このガイドラインが提起をしているその中には、施設、区域の提供とそれに伴う便宜供与の問題だと先ほど防衛局長答弁された。だから、少なくとも第六条の施設、区域の提供に伴う便宜供与のあり方については、合同委員会という組織がきちっとこれで決まっているわけですから、この法律関係というのは、枠組みがきちっと決まっているときにはそれでやるというのが法制度の趣旨なわけです。そういうものがつくられているのに別のところでやるということは、これは大変大きな問題が残るのですね。  外務大臣、これはあと防衛庁の分科会でもやりますが、ひとつそこら辺のところをもうちょっと整理をしていただきたいと思うのです。この合同委員会と日米安保協議委員会関係ですね、特にその合同委員会でやってどういう不適当な点があるのか整理をして、まとめた統一見解をいただきたいと思うのですが、外務大臣、いかがですか。
  64. 塩崎潤

    塩崎主査 外務大臣、時間がありませんので、簡潔にお願いします。
  65. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま淺尾局長から御説明いたしまして、何もその法律とは矛盾はしてございません、準備のためのいろいろな相談をするのです、その結果出たものを協議の場へ持っていってそこで決めます、こういうことを言ったわけでございまして、私も聞いておりまして、それで説明がつくのじゃないかと思いますが、せっかく先生のおっしゃることでございますから、その法律関係を検討して整理をしてみて御返事申し上げるというのは、これは結構でございます。そういうふうにいたします。
  66. 横路孝弘

    横路分科員 では、時間が来ましたので。
  67. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて横路孝弘君の質疑は終わりました。  次に、横山利秋君。
  68. 横山利秋

    横山分科員 大臣御存じのように、去年円卓会議へ石田博英、赤城宗徳両先生を初め、各党こぞって十三名参りました。参りましていろいろと日本の立場に立って議論をしました。意見の違うところがずいぶんございました。けれども、日ソ間の友好と親善を何としてもアジアの平和のために確保しなければならぬという点については意見の一致したところであります。  そこで、短い時間でございますから、私の質問趣旨はきわめて具体的に御連絡申し上げてありますから、端的に真意をお答えを願いたいと思うのです。  いままでの政府の公式な話は、日ソ関係は、ソビエト政府のアフガン問題と北方領土問題、この問題があるからよくないということに一貫しておるわけであります。そこで、日ソ間の関係を打開いたしますためには、この二つは絶対条件なのか、向こうが一方的にアフガンから撤兵しなければ、あるいはわれわれの言う北方領土から軍事基地を撤去しなければ一切相手にならぬ、こういう絶対条件なのかどうか、そこに何らのゆとりも何もないような話なんでございますが、日ソ関係の打開のかぎは一体何であるか、一方的に向こうが悪い悪いと言っておるだけで話が済むものであるかどうか、その点について真意をお聞かせ願いたい。
  69. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま冷たい関係だということは、まあお認めになると思うのでございますが、私も日ソの友好協力関係、親善関係というものが相互理解のもとにできることを本当に心から望んでおります。  ただいまのような冷たい関係になりましたのが、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入あるいは北方領土に対する軍備の増強ということが直接の引き金になったことはそのとおりでございます。私どもはソ連側の誠意ある態度ということを言っておるわけでございまして、どういう態度がソ連の誠意ある態度かということについて、私どもはこうだこうだとは言っておりません。言っておりませんが、この間総理が、ちょうど田中総理がおいでになったときの戦後の未解決の問題ということに触れられて、あのような立場に戻ることだということを一つの例として言われたわけでございますが、私がグロムイコ外相に会いましたときは、もっと前の昭和三十一年の鳩山さんが行かれたときの共同声明、あのときは領土問題、歯舞、色丹というものを明示してあるわけで、その他の懸案事項についてまた相談をするというグロムイコ・松本交換公文があるわけでございますので、私は、領土問題を前提にした平和条約の話し合いというものをその後外相同士でやっていたわけでございます。ですから、そういうことも一つの方法ではないのかということをグロムイコ外相に言ったことがございます。でございますから、横山さんがおっしゃった二つに限定して、あとそれ以外のことはないのかという御質問でございますが、私はいろいろなことがあり得るんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  70. 横山利秋

    横山分科員 次に、北方領土の日についてでございますが、政府が判断して二月七日ということを決めた。そしてそれが行われた。行われたときに、各地で政府代表と見られる人は、日ソ友好の立場に立って北方領土の日の運営を図るという趣旨を言われたことはまだ恕すべき点があると私は思います。しかし、新聞論調や投書やいろいろなことを見ましても、また自民党の某領袖の意見をもっていたしましても、これはむしろソビエトに不快の念を与え、そして北方領土の極端に言うならば墓標を立てたようなものだ、北方領土というものが本当に日本へ返ってくるという方法を――われわれは学者でもありません、評論家でもありません、理論的に日本の土地だ土地だと何ぼ言ったって向こうが返すわけがないわけであります。言うならば、戦争をもう一遍やって向こうから取り返すか、金を払って、もらうか、何かの取引をするか。われわれ政治家とすれば、現実的な問題としてどうしたらということを考えるわけですが、そんなばかな戦争をやって、あるいは金を払って、あるいは何かで取引をしてということが考えられないとするならば、どうしても日ソ友好、相互の信頼の土俵の上でなければ返ってこないだろう、こう思いますが、どうお思いになりますか。  私はこの問題について、現実可能な――領土の問題はきょうあすという問題ではありません。長い将来にかけて、たとえば中国側が尖閣列島やいろいろな問題について日中の平和条約のときに孫子の代まで相談しましょうやと言ったことも一つの示唆に富む話だと思うのですが、尖閣列島やそちらの方の問題とこの問題とは多少ニュアンスは違います。しかし、領土の問題が一朝一夕の問題でないとするならば、どういう方法で長い道程でこの問題を解決できるか、外務大臣はどうお考えですか。
  71. 伊東正義

    伊東国務大臣 領土問題というのは、横山さんおっしゃるとおり、非常に長い問題になり得る可能性のある非常に重大な問題だということは、私も認識は一緒でございます。  北方領土の日の問題は、これは国民の総意で、国会でも何回も決議があった四島一括返還ということに対しまして、安政条約で平和裏に両方で話し合いで決めた日はこの日なんだから、この問題を解決することが、またそこにかえって、両方で平和の話し合いに入れる日になるんだということで、この日をまた平和友好の日にもしたいということであれは設定されたということでございます。何もこれは反ソで敵対してやっているという、反ソキャンペーンをやっているというようなことをソ連側では言っておりますが、それは全く誤解だと私は確信をしております。  この解決の方法につきましては、具体的にどういう話し合いをするかということは、現実の問題としていろいろな非常にむずかしい問題がありますことも了解しております。単に日ソ関係だけでなくて、あるいは国際的な環境の問題もいろいろ関連する問題だというふうに私は思っておりますが、これを平和的に話し合いのうちに解決するというのが基本原則でございますので、先生がいま二つのことを例示としておっしゃったわけでございますが、どういうことでそのきっかけがつかめるか、われわれも非常に慎重に考えている、苦慮しているというのが現実でございます。
  72. 横山利秋

    横山分科員 アフガンから撤兵しなければ話し合いに応じない、北方領土から軍事基地を撤去しなければ応じない、一面そういう強硬な姿勢が政府の姿勢だと国民は思っておるし、ソビエトも、日本政府はそういうふうに言っているなというふうに理解をしておるわけであります。私は何もソビエトの肩を持つつもりはありませんが、双方言い分があるわけですね。アフガンには、アフガンにソビエトが行かなければならなかった理由というものを向こうは強調しております。それから北方領土については、北海道に自衛隊を強化しておるじゃないか、おれの国に軍隊を少し増強したって、どうしておれの方ばかり文句をつけるのかということも言うわけであります。それは言い分なんでありますから、それぞれの言い分があるわけです。  それはそうといたしまして、アフガンの問題について政府が今日までとってまいりましたのは、アメリカの大合唱にこたえて経済報復をするということを言ってやってきたのですが、ここ二、三年の状況を見まして、西欧諸国は経済報復に賛成をしながら、実はこっそりとソビエトと貿易をやって、むしろ経済報復以前よりも以後の方が二倍、三倍と対ソ貿易がふえているわけですね。日本は後生大事にアメリカの大合唱に右へならえをしておるわけであります。先年の当委員会においても、政府側は、そうはおっしゃいますけれども、様子を見ておりますと言っておりました。様子を見ておるということは、おれのところばかりばかをみたりしてもしょうがないから、適当にひとつやろうという気持ちだったと思うのですが、その実績がとんと生まれていないわけです。対ソ貿易について一体いつまでアメリカの大合唱に義理を立てて右へならえをしようとしておるのか。  いま御存じのように、中国が大きなプロジェクトをみんなキャンセルをする、そして国内経済はきわめて不況である。そして防衛産業は、武器輸出禁止なんというとろいことを言わずに、将来の日本経済のてこ入れになるのだから、武器の禁輸なんかそう強いことを言わぬでくれ、こういうことを陰に陽に言い始めておるわけです。そういう中で私は、ソビエトへの経済報復というものをいつまでも後生大事にやっておったのではいかぬではないか。この際ひとつ、それはそれこれはこれという考えに立ったらどうかと思うのですが、どう思いますか。
  73. 伊東正義

    伊東国務大臣 この問題につきましては、日米欧よく相談して協調して物事を考えようという大前提で、日本がココムでのソ連に対する輸出の規制の強化とかあるいは公的信用の供与につきまして、新しいものにつきましてはケース・バイ・ケースでやりましょうということで、経済措置を――制裁とか報復とかそういう言葉は使っていない、経済措置と言っているのですが、やっていることは事実でございます。  日本としましても、新しい公的な信用供与を、それじゃ全部、いま先生のおっしゃったような見地で排除してやるからどうかということにつきましては、まだそういう結論を出す段階ではない、何も事情は変わっていないじゃないかということがございますので、私はいま横山さんがおっしゃいます御意見とは違うのでございますが、いまの方針はまだ続けていくという考え方でおります。  ただ、これはいろんな国際情勢、いろいろなことが関係あり、さっき言いました平和条約交渉の問題もありましょうし、いろいろなことを頭に置きましてこの問題は考えていかなければいかぬというふうに思っております。
  74. 横山利秋

    横山分科員 政府は対ソ政策について政経一致ということを考えておられるような気がするのです。政治と経済と一致させるというお考えのようであります。ところが、中国との関係については、先年政経分離で進めておったわけですね、実際問題として。中国には政経分離、ソビエトには政経一致。それでもって、政経一致と言いながら、たてまえと本音とを別に扱っていらっしゃるような気がするのであります。たてまえは、あくまでこういう場所では政経一致だと言いながら、実際は、まあ西欧がうまいことやっておるからといって、経済界が言われれば、ケース・バイ・ケースだと言いながら徐々に緩めておる。そんなことは底が割れておるわけであります。  ここまで来ますと、よそから見ると、まことに足元を見られておると私は思うのであります。政経分離ということで、経済的な対ソ貿易をもっともっと緩やかに発展させるというようなことが必要ではないか、そういう時期ではないかと私は思うのでありますが、これは時間がございませんから、苦言として十分配慮さるべきだと思います。  それから、その次に、円卓会議で参りましたときに、たまたま平和条約と日ソ友好善隣協力条約、その論争をいたしました。論争の中で、私がわざわざ時間を与えて、このソ日善隣協力条約草案についての意見を聞いたわけであります。  そうしたら向こうは、第一に、これは最後通牒ではなくたたき台だ、草案だ、それから平和条約へのかけ橋である、それから平和条約では国境画定が当然討議される、それから両国が第三国と締結している条約と矛盾しない、つまり日米安保条約があっても締結し得るんだという公式見解を明らかにしたわけであります。  このことについて、かつて本委員会でも私は取り上げたわけでありますけれども、改めてソビエトがそういうことを公式な発言として言っておるのですが、一番最初この草案が発表されましたときに、外務大臣、たしか園田さんでしたか、園田さんが、後進国並みだ、衛星国並みだということをおっしゃった。私は、そんなばかなことがあるか、よく調べたかと言って、ここで立って、それはソビエトがアメリカやフランスやカナダと締結している議定書と内容、性質は同じではないかと言ったら、同じとはおっしゃらなんだけれども、前言は取り消されました。後進国並みだとか衛星国並みだということは間違っておりましたというふうに取り消されたのですが、外務大臣はどうお考えですか。
  75. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ日善隣協力条約というのは、園田外務大臣が行かれたとき向こうから出されまして、園田さんは、それは検討するというんじゃなくて預かる、日本側は平和条約の草案、向こうも預かるというようなことであったということは聞いております。検討するんじゃない、預かるということでございますから、その後われわれは、文字どおり検討するというようなことはしておりません。  でございますので、そのもの自体が衛星国並みであるとか、あるいはECの諸国と大分協議の議定書があるわけでございますが、そういうものと一緒だとか、そういう批評をすること自体が私はおかしいじゃないかというふうに思いますので、どっちに似ているとかどうだとかいうことを言うのはひとつ差し控えたいと思います。
  76. 横山利秋

    横山分科員 あなたが差し控えると言っても、あの条約草案が出たときに、政府が、外務大臣が、衛星国並み、後進国並みというようなことをここで言われて、そして、いや、あれはちょっと遺憾だということをここで言われているのですよ。政府が、外務大臣がここで、国会で論評を加えられておるのですよ。  ですから、私はその後の問題として、いま円卓会議で向こうが言っていることについてどういうふうにお考えなのかと言っている。論評を加えているのですから、現職の外務大臣も、そんなことはわしは知らぬというわけにいかぬじゃないですか。
  77. 伊東正義

    伊東国務大臣 それは、園田外務大臣がおっしゃって、またそれを訂正されたとかいうことがあったということは速記録にございます。それは知っておりますけれども、だからといって、私がいまここで、それは右だ、左だ、こう言うのは――私は、大体これは検討するということでなくて、預かる、日本は領土問題を解決する平和条約ということが先じゃないかということを言って、向こうも預かるということになっているわけでございまして、両方、これは検討するんじゃなくて預かるんだ、こう言ったことがありますので、私はそれを忠実に守っていくというのが現状でございまして、園田大臣が言われたから私がまたそれをどうこう言うということはひとつ差し控えたい、こういうのが私の考え方でございます。
  78. 横山利秋

    横山分科員 この草案が発表されたのが、一九七八年の春だったと思います。それから三年たっておるわけです。当時、この草案を発表したことについて、日本政府としては、お互いに預かるということは、外交の通例として秘密にすることだ、それを向こうが一方的に発表されたのは、必ずしも外交慣例としては好ましいことではないという意見を発表されました。  しかし私は、まあそのときはそうであろうとも、いま日ソ関係をどうしたら打開できるかという問題の一つの双方、あなたも私もそういうことについて意見が一致するとするならば、向こうが三年前に発表されて、こちらは知らぬ顔をいつまでも続けておって、それで一体打開の何かのチャンスが生まれるだろうかということを心配するわけであります。  私は当時も、日本側の日ソ平和条約草案を発表したらどうだと言ったら、それはちょっと時間が悪い、向こうが言ったからこちらがやるということはいかぬと。それはまあ仕方がないと私も思いました。しかし、いまこれだけ日ソ平和条約ということについては与野党全部一致しておる、国民も期待しておる、そして何らかの打開をしなければならぬというときには、適当な方法、適当な条件、適当な時期に、日ソ平和条約草案というものを、日本側の案を発表するのが一つの方法ではないか、こう思いますが、どうですか。
  79. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうが発表したから日本も発表したらといういまの御意見でございますが、平和条約の草案は、内容は、領土、四島の返還ということが中心であることは間違いないのです。  ただこれは、本当に向こうも預かりますよと言って預かったものを、日本側が、向こうがやったからおれの方もこうだと言ってやることがいいかどうかということは……(横山分科員「三年たっているのです」と呼ぶ)それはたっていることはありますが、ソ連がやったんだからおれの方もやるわいということがいいのかどうかということは、私は、そういうことが外交がな、こう思いますので、いまでも、向こうはやってもこっちはやらぬ方が、国際信用というふうなことから考えれば、かえってその方がいいと私は思っております。
  80. 横山利秋

    横山分科員 この領土問題については、最近、大臣御存じのように、北海道の人たちで意見が分かれておるわけですね。そして一方では、本屋へ行けば、北海道へいつ攻めてくるかどうか、攻めてきたらどうするかというようなばかばかしい本が並んだり、右翼がもう毎日毎日国会の周りや全国の大都市で、黒い自動車を連ねて反ソキャンペーンをやっているわけです。  そういう中で、国民の中にやや冷静な雰囲気が生まれてまいりました。朝日だとかあるいは中日だとか、いろいろな書籍、新聞の中で、ソビエトを正しく見詰める、現実は何であるか、ソビエト脅威論の本質は一体何であるかという正しい理解を求めて、その理解の中で問題を考えるという雰囲気が出てまいったのは、大変私は結構なことだと思うのです。  そこで、そういうやさきに、総理大臣が北方の方を見るとか見ぬとかという話があるのですが、総理大臣外務大臣やそういう人が、北方の北海道の端っこへ立ってどんな意味があるかということを考えるのですが、そんなことを本当にお考えですか。
  81. 伊東正義

    伊東国務大臣 私が行ったことは事実でございますので、これは否定しませんが、総理は、日程が許せばという条件つきで言っておられるわけでございまして、具体的にそういうことを総理と私が協議をして、大体いつごろ行かれるとか行かないとかいうことは、実はまだ御相談したことはないわけでございまして、いまのところはまだそういう日程は何も立っていないということだけは私は申し上げます。
  82. 横山利秋

    横山分科員 新聞によりますと、昨年末、三十五回国連総会で、思いがけない日本政府の態度でございまして、日本政府代表は「「核兵器の使用は人道に対する犯罪と宣言し、そのための国際条約の検討を強く要請する」とした「核兵器の不使用と核戦争の防止に関する決議」」には反対投票、賛成が百十二、反対が十九。また「「軍縮交渉委員会に、核軍縮に関する作業グループをつくるよう要請する。核軍縮を終わらせ、核軍備を撤廃するための交渉は最優先されねばならない」との決議」にも、賛成百十八にかかわらず反対十八の中に入った。また「現在核兵器が配備されていない国への核兵器持ち込み禁止決議」にも、賛成九十五、反対十九の中に日本が入って反対をした。そのほか「新型大量破壊および、その兵器体系の開発・生産の禁止決議」にも棄権投票と、全く私どもびっくりしました。一体どういうことなんだろうか。国内で総理大臣以下みんなこの種のことについて言っておるのに、現地では反対投票をする。それで新聞によれば、外務省はそのことについて、「欧州のように通常戦力で不均衡状態にある地域については、一方的に核兵器使用を禁じることは、不均衡状態を固定することになり、不安定要因となる」「米国など各国の対応からみて実効性がない」という理由で反対投票をした。こんなこと説明になるのでしょうかね。日本国会及び日本国民に向かってはこの種のことをいやというほど言って、与野党とのコンセンサスを得ながら、国連に行ったらまるっきり外国の鼻面をさばいて反対投票をするというのは一体どういうことなんでしょう。
  83. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 先生指摘のことでございますが、これはよく提案の内容をしさいに検討する必要があるわけでございまして、核不使用と申しますのは核を使わないということでございますが、これは現在の全世界的な安全保障が核兵器と通常兵器の総和のもとに成り立っておる、これまた否定できない。したがって、核不使用ということを日本の立場から賛成するというわけにはいかない。これはわが国が何も去年の総会だけでございませんで、歴年とってきた態度でございます。わが国の非核三原則につきましては、非核三原則の堅持ということは明快にわが方の国連の発言において付言しております。したがって、核不使用ということは、核兵器を使わないという面に着目する限りにおいては、これは一つの大きな主張でございまするけれども、安全保障の全体の枠組みで核の抑止力というもの、少なくともわが国としてこれに依存するという面があります以上は、核不使用というものを唱道するわけにいかないということでございまして、この態度は何も昨年に限っておりません。これはわが国が従来から一貫してとってきた態度でございます。原水協の方から御同様のお話もあるようでございますが、近くいろいろ事情をお話をして、これは実は前からお話がございまして、一昨年のNGOの集会でも御質問がありまして、私どもがお答えをしたわけでございますけれども、この辺は従来から一貫した立場でございますので、御了承を得られることと存じております。
  84. 横山利秋

    横山分科員 時間になりましたが、もう本当にこれはあきれました。もう時間ございませんから、あなたが言う核の抑止力を日本としては期待しているから、この種の決議に賛成できないという論理というものは、私はまことに説得力のないものだと思うのであります。  最後に、外務大臣一つだけお願いがありますが、実は円卓会議でも言ったのですが、ソビエト、シベリアで抑留されておった人が何とかソビエトへ墓参もしたい、遺骨送還についても骨を折ってもらいたいというということを各党がソビエトに行ってみんな頼みました。向こう様としては、各党全部言うのであるから、これは友好団体の問題ではなくなった、これはソビエト外務省筋の問題になった、だからそちらへ話してくれ、こういうわけであります。それで、墓参、遺骨送還、遺骨といってもどういう方法があるのかそれはわからぬのでありますが、この問題について外務大臣の好意あるお取り計らいを願いたいと思いますが、いかがですか。
  85. 伊東正義

    伊東国務大臣 墓参の問題はこれは本当に人道的な問題でございますので、何としても日本の希望を全部通してもらいたいという気持ちを持っておりますが、向こうは何か軍事上の理由ですか、外国人の立入禁止というようなところがございまして、希望を出したところ全部は通ってない現実でございますが、なるべく多くの地域に墓参ができるように、外務省としても、これは最善の努力をします。
  86. 横山利秋

    横山分科員 終わります。
  87. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて横山利秋君の質疑は終わりました。  次に、西中清君。
  88. 西中清

    西中分科員 きょうは、レーガン新大統領の登場で、国際政治、日米関係等新しい時代を迎えておるわけでありますけれども、今後の日本外交方針、外交姿勢について外務大臣に御質問をいたしたいと思います。  まず初めにお願いをしておきますが、外務省答弁はとかく差しさわりのない答弁が散見されるわけでございますけれどもわが国はいま世界では経済大国と言われ、国際社会においての立場というものも非常に重要な立場になっておるわけでございます。われわれとしても、率直に国際社会に目を向けていく、こういう立場でなければならぬと考えておるわけでございますので、率直かつ簡明なる御答弁をお願いしたいと思います。  そこでまず、二月十八日レーガン大統領が発表いたしました経済再建計画について、外務大臣は十九日の予算委員会で、わが国の防衛費増強要求が強まる懸念がある旨の御答弁をされております。アメリカが歳出削減をしたから日本が防衛費を増強すべきだという、考えようによっては非常に短絡的な論議になってくる。これは私は論理的にはどうかと考えておるわけなんですね。たとえばアメリカが歳出を削減したから米軍が日本から部分的に撤退する、こういうような事態であるならば、これは論理としては私はよくわかる。それは日本は増強をしなければならぬ、いわゆる政府の方針としては、そういう論理が成り立つと思います。しかし、そういうことで私は論理的には余りよくわからないのですが、その辺の外務大臣の御見解をお伺いをしておきたいと思います。
  89. 伊東正義

    伊東国務大臣 あのときお答えしましたのは、私はこういうことを言ったのです。財政再建計画というのが出た、歳出を減らすとか減税をするとかあるいはいろいろな規制をやめて小さい政府といいますか、あるいは金利の安定を図るということで、国内の労働意欲あるいは投資意欲を盛んにしまして、経済の繁栄、強化を図っていこうということでございますから、それ自身は、アメリカの経済が繁栄するということは、世界にとって非常にいいことでございますので、それは私はいいことでございますと申し上げたのであります。  一つ、こういう問題があります。それは歳出を減らすという中で防衛費だけがふやしてあるわけでございます。あの計画を眼光紙背に徹して見れば、防衛費のことは、特に世界にこうだということは言われておりませんが、国会における幕僚議長の報告でございますとか国防長官の発言とかいろいろございましたので、そういうものから推定すれば、防衛費だけはふやしてあるということは、これは世界の同盟国に対して、自分のところは歳出を減らす中で防衛費だけはふやしているのだから、ひとつ同盟国として防衛をしっかりやってもらいたいというような要請が出ることも多分にあるんじゃないか、眼光紙背に徹して見ればそうじゃないかということでお答えをしたわけでございます。
  90. 西中清

    西中分科員 そこで、三月に外務大臣、五月に総理、それぞれ御訪米されるということでございますが、過去いろいろの議事録その他新聞報道等ずっと見てまいりました。福田、大平、大来各氏の訪米、こういう流れを見てまいりますと、年々防衛力の増強について米側の厳しい要求が加わってきているというように思われます。そこでカーター前大統領よりもレーガン大統領の方がより厳しい要求をされるのではないか、いま大臣もちょっとそういうニュアンスのお話であった、そのように思っておるのでございますけれども大臣はいかがお考えですか。
  91. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は国会のお許しが得られれば三月下旬、総理も五月の上旬ということで予定はしております。議題は何もまだ決めておりません。広範な二国関係の問題とか国際情勢とかいろいろな討議をすると思いますが、その中で防衛の問題、必ず私は話が出るだろうと思っております。  その防衛につきましていままで出ておりますのは、責任ある人としては国防長官が、同盟国は最大限の努力をしてもらいたい、自分の国も最大限の努力をして信頼に値するような国としてもう一回やるから、同盟国も最大の努力をしてくれ、こういうことを言っておるわけでございます。これは抽象的で、具体的なことはこれから相談をするという意味のことを言われていますが、これはどういうことを言われるかということでございますが、さっき言いました、歳出を削減した中で防衛費はふやしているというのが現実でございますから、やはり強い期待が表明されるであろうということは予想しております。
  92. 西中清

    西中分科員 大臣、あなたが官房長官をなさっておりましたときに、大平総理が訪米されております。当時は、日米安保体制、いわば全世界から見れば比較的ローカルと言っちゃ悪いですが、こういう立場でのお話が非常に大きなウエートを占めておったんじゃないか、これは推測ですがね。しかし、今日に至りましては、もはやもっとグローバルな立場で、今回の訪米に当たって話し合いが行われるということになれば、もっとグローバルな立場で話が行われるのではないか、私はそう認識をしておるわけですね。それはわが国が国際社会の中で西側の一員として、西側の安全保障体制という枠の中で一体何ができるのか、どういう役割りが果たせるのかという問題。それからまた一方では、憲法上果たせない役割り、こういうことはできないというようなことは当然話し合いに出てくると私は思っておるわけでございます。そのように理解してよろしいでしょうか。
  93. 伊東正義

    伊東国務大臣 二国間の問題とかあるいは国際情勢の話し合いということは当然あるわけでございますから、その中で二国の問題、安保体制の問題あるいは国際情勢、グローバルな話が出る可能性は私はあると思うわけでございます。ただその場合、いまおっしゃったように、日本の憲法上の制約その他法令の制約もございますし、国民のコンセンサスがあるかどうかの問題もございますし、日本でできることとできないことがあるわけでございます。でございますから、その点はやはりはっきりこういうことは個別自衛権の範囲でできます、こういうことはその枠の外になりますという、できることとできなことははっきり言って、自主的に日本が防衛というものを考えていく、総合的な安全保障というものを考えていくという立場でアメリカと話をしたいというつもりでおります。
  94. 西中清

    西中分科員 くどいようですが、西側の一員として、西側の安全保障体制という枠の中で、いまおっしゃったようにできることとできぬことがある、私もそうだと思うのです。そういう立場で率直に話し合い、お互いが理解し合う、こういうことは重要である、このように認識しておられる、こう考えてよろしいですね。
  95. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとおりでございます。
  96. 西中清

    西中分科員 そこで、お伺いをしますが、アメリカはヘイグ国務長官が述べておりますけれども、中東地域に恒久基地の建設を考えていることを示唆しております。よもやとは思っておりますけれども伊東外務大臣、鈴木総理等が訪米された折、米軍基地、こういうものをつくるについて、米側から協力を要請される、その場合に協力を約束されるということはないと思っておりますけれども、確約していただけますでしょうか。
  97. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの話は、まだ正式にそういう話が、国防長官が言ったとかヘイグさんが言ったということは、実は私どもには来てないわけでございます。そういう話が出るか出ぬかという仮定のお話でございますが、私どもは、さっき申し上げました憲法上その他の法令の制約がございますし、そういう枠を超えることはできないわけでございますから、そういう枠内の範囲で日本でやれることはやりますということでございまして、枠を超えていろいろなところへエクステンション、足を出していくということは考えておりません。
  98. 西中清

    西中分科員 これはアメリカ側から言わせれば、日本は石油タンカーの七割以上がホルムズ海峡を通過しておるわけですね。いわばアメリカがお城をつくる。日本としてはいろいろあろうけれども、城の石がきの石の一つや二つくらいは少しは援助してくれたっていいじゃないか、あなたの船が非常に多いじゃないか、こういうように言われた場合に、日本側として、外務大臣としてむげにそれはだめです、こういうように断われるというように思っておられるのかどうか。私はそんな甘いことで済まないんじゃないかというように考えておるのですが、それでもなおやらないと確約できますか。
  99. 伊東正義

    伊東国務大臣 石がきの一つ二つという例で言われたわけでございますが、石がきがどこへできるのか、どんな性質の石がきか、いろいろあると思いますが、日本としては、さっき申し上げましたように、憲法の個別自衛権という枠はちゃんとあるわけでございますね。でありますので、その枠を超えて石がきを積むというようなことはできないわけでございますから、そこはできることの範囲で日本としてどれだけできるか、また日本としてそうすることが自主的に考えても大切だということには協力していくということでございます。しかし、できないことは、その場限りで甘いことを言って、後でできなかったなんということは一番信頼をなくすことでございますから、私はその点はっきり言うということだけは申し上げます。
  100. 西中清

    西中分科員 そうした姿勢は貫いていただきたい、このように考えます。  そこで、対外経済協力、こういう問題になるわけでございますけれども日本が今日力をつけまして、国際社会の一員として、これはどうしてもやらなければならない重要な課題であると思います。また積極的に乗り出していかなければならぬと私も思っております。さらにまた、今日まで外交一つの柱とも外務省は申しておられました。しかし、たとえば軍事空港、軍港、トーチカ、こういった明確な軍事目的に充てられる経済協力は、先ほどいろいろと答弁いただきましたけれども、そういう意味からいって経済協力はできない、こういうようにいくことになるのでしょうか。
  101. 伊東正義

    伊東国務大臣 円借款、政府が関与します経済協力については、外務委員会でも御決議がありまして、そういう軍事目的に使うというようなものについてはやらない。その国の社会経済の開発あるいは民生の安定、福祉の向上というものに経済協力はやるのだということの決議がございますし、政府としては、これはそのとおりやっておるわけでございます。
  102. 西中清

    西中分科員 それでは、してはならぬという法的根拠はございますか。
  103. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 政府の関与いたします経済協力で、軍事的な基地の建設に回されるようなことをしてはならないということで禁止をした国内法はございません。法的根拠と申しますよりも、これは憲法の前文その他、憲法によってもって立つ日本の平和主義というところから発生してまいります政府の政策、確固たる政策であると了解いたしております。
  104. 西中清

    西中分科員 これは大事なことですから、外務大臣に確認をします。  いまもお話があったように、法的には根拠はないということです。したがって、これはやはり政策といいますか政府の方針だ、こういうように理解しなければならぬと思うのですが、それで間違いございませんか。
  105. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま政府委員から申し上げましたとおり、憲法の精神からもそういうことはできないということで、政府の政策としてそれをやっておるということで御答弁したのでございまして、そのとおりでございます。
  106. 西中清

    西中分科員 ここで、たとえばいまアメリカ、ソ連の間で問題になっておりますエルサルバドルを一つの例として取り上げますと、ここに五十七億円の経済協力をいたして空港を建設しております。これは公式の文書に出ておるわけです。私は通産省から出ております「経済協力現状と問題点」を取り上げました。いろいろあるのですけれども、私の調査では、この国にはもう一つ小さな空港があります。そこに新しい空港をつくったわけですね。これは民間と軍用と一体で使用しているようでございます。政府は軍事的経済協力はしない、こういうように先ほどおっしゃった。この場合、民間と軍用と併用するというような形ですね。いま紙をはさんでおりますが、この中には若干そういう疑いが持たれる部分が私はあるように考えるわけでございます。この場合、軍民併用の経済協力、これについては協力していいというようにお考えか、いや、それはやはりまずいというようにお考えか、その点伊東外務大臣に明快に御答弁いただきたい。
  107. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま具体的な例でおっしゃいまして、政府委員から後ほど御答弁しますが、この前も私は言ったことがあるのですが、李下に冠を正さずということで、そういう疑いが持たれるようなところはなるべくやらぬ、別なところを選ぶ、そういうことが原則だということを私は申し上げたのでございまして、車もそこを併用で使うのだということが明らかになれば、それはやらぬというのが私は原則だというふうに思っております。
  108. 西中清

    西中分科員 だから、たとえば漁港をつくる、こう言って軍港になる。それから民間空港をつくる、こう言いながら軍用空港をつくる。これは経済協力の名のもとに、先ほど申した城づくりの一部といいますか、城づくりに手をかすというか、こういう結果になると思うのですね。新聞で報道されておりますオーマン援助拡大、こういう問題も、私たち人間を余り疑っちゃいけないのでしょうけれども、まゆにつばしてながめれば、ひょっとしたらという疑いを持たざるを得ない。そうじゃないと政府はおっしゃるかもしれません。しかし、一つの例として先ほど挙げました。またそれは可能なことでしょう、実際問題としてやろうと思えばできないことではない。そこで、平和日本として経済協力をする場合であっても、軍事に転用もしくは併用される可能性のあるものはなるべく慎しんだ方がいいのじゃないか。もっともっと経済援助でやるべきことはたくさんあるわけですから、少なくともそういうものは慎むべきであるというのが本来あるべき日本経済協力の姿である、私はそう思うのですけれども大臣はいかがお考えでしょうか。
  109. 伊東正義

    伊東国務大臣 もうおっしゃるとおりでございまして、疑わしいような場合は、相手側の政府に照会しまして、絶対軍事用には使わぬというようなことを一札とってやった例がございまして、それは相手側の国を信用してやるということでございますが、なるべくそういう手段も講じて、文書で向こうから返事をもらうとか確かめた上でやる。そしておっしゃるように、疑わしいなというようなことはなるべく避けていくということが原則で、さっき申し上げました社会経済開発あるいは民生安定、福祉の向上ということが基本でございますので、そういう原則でやってまいります。
  110. 西中清

    西中分科員 次に、さらにお伺いしたいのですが、わが国経済協力を行うことで国際紛争を助長するがごとき経済援助、これをやれば助長するぞ、こういう経済援助は平和安定のためにはなすべきでないと私は考えておりますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  111. 伊東正義

    伊東国務大臣 明らかにそうやることが国際紛争を助長するとか激化するんだというようなことは当然避けるべきで、さっきも言いました原則でやるということでございます。
  112. 西中清

    西中分科員 いままでの質疑の中で、外務大臣答弁を整理をさせていただきますと、まず第一点、軍事的用途に充てられる経済協力は行わない。第二点、軍事目的以外のものであっても、将来転用もしくは併用される可能性のあるものは慎みたい。第三点、国際紛争を助長するがごとき経済援助は行わない。以上三点になると思いますが、そのように認識してよろしゅうございますか。
  113. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃった中の第二点が、たとえばさっき御質問で、漁港をつくった、将来それを軍事目的に使うのだというような漁港はやらぬとおっしゃいましたが、実はやります段階では、向こうが漁港だと言いました場合に、いままでは経済援助をやっておるわけでございまして、そこは相手方を信頼して使わぬということでやるわけでございますので、そのずっと先まで見通してどうだと言われますと、なかなかむずかしいところで、現時点で、たとえばそれを五年先、十年先、十五年先のことを判断するといっても無理でございます。その漁港をつくることが本当に経済的な発展につながるんだ、あるいはあるところに船の修理場をつくるということが、それはそこの国の造船あるいは海運に役立つのだということであれば、それはやはり経済援助の対象になるわけでございます。ただ、それがどうも近いうちに疑わしいなということがあれば、一札を相手の国からとってやりますか、あるいはそこを避けるかというのは、そこはなるべく細心の注意を払ってやるということでございます。
  114. 西中清

    西中分科員 第二点で、先ほど御質問した際に、外務大臣は、軍事目的に転用もしくは併用される可能性のあるものはなるべく慎む、そのとおりでございます、こういうお話でございました。そういう意味において、先ほどの漁港の問題、よくわかります。わかりますけれども、可能性のあるものはなるべく慎む、こういうことは約束できますね。
  115. 伊東正義

    伊東国務大臣 それを私は李下に冠を正さずということを言ったわけでございまして、本当にこうやるとスモモに手が届くというようなものはなるべく避けていく、こういうことを言ったわけでございます。
  116. 西中清

    西中分科員 いま大臣がおっしゃったように、軍事的用途に充てられる経済協力は行わないこと、それから軍事目的以外のものであっても、これは相手方のあることだというお話がありますけれども、転用、併用の可能性が非常に大きい、こういう場合にはなるべく慎む、第三点、国際紛争を助長するがごとき経済援助は行わないこと、以上が大臣の御答弁だと思います。  私は、対外経済協力はこれから非常に大きくなるだろうと思います。さらにまた、先ほどその法的な根拠は、軍事基地に使用される、軍事基地を建設するについてのあれは憲法上の制約はあるとして、法的根拠としてはっきりしたものがない、こういう御答弁もございました。私としては、この三点、大いに、厳正に政府として守っていただきたいし、言わんとするところは、やはり何といってもアメリカ側からの経済援助ということについては、今度の外相及び総理の訪米においても非常に重要な問題になろうと私は推測いたしておるわけでありますから、この三点は絶対に貫いていただきたい。私に言わせれば、対外経済協力禁止三原則とも言うべき内容だと思っております。すでに武器輸出禁止三原則、国是でございます非核三原則と並んで、国際社会における日本の位置というものが非常に大きくなっている今日、いま大臣からいただきました答弁については、厳正にこれを守っていただいて、国際社会の平和と安定に寄与していただきたい。今度の訪米でも、政府はその方針をきちっとまとめた上で出かけていただきたいと私は思うのでございます。最後に大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  117. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃったとおりの気持ちで、向こうへそういうような問題が出れば話します。
  118. 西中清

    西中分科員 終わります。
  119. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて西中清君の質疑は終わりました。  次に、神田厚君。
  120. 神田厚

    神田分科員 まず最初に、外務大臣にお伺いをいたしますが、いま日本政府の一番早い外交日程は韓国の全大統領の就任式であると考えております。ここに鈴木総理に出席してほしいというように日韓議連を初めとする各方面の要請があるようでありますが、その点はどういうふうになるのでありましょうか。
  121. 伊東正義

    伊東国務大臣 韓国側からは、政府のしかるべき人ということで、具体的にだれだれというようなことは言ってきておりません。国内的には総理に行ってもらいたいという御意見のあることも知っております。各党の中でもそういう御意見があるということも私、知っております。ただ、国会の事情もございまして、今度は私が特使になっていくということでございまして、いろんな御意見はございましたが、総理でなく私ということに決定をいたしました。
  122. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、外務大臣が御苦労なさって行かれるわけでありますが、鈴木総理の親書といいますか、そういうものを持っていくというふうなお話でございます。いろいろと伝えられておりますところでは、日韓関係の全面修復あるいはこれからのアジア情勢等のいろんな問題を含めまして、この首相親書に日本のこれからの対韓国政策の概要というものが記されるというふうに報道されておりますが、その点はいかがでございますか。
  123. 伊東正義

    伊東国務大臣 親書は、実は外務省でひとつ案を練りましょうということでいまやっておるところでございますが、そう長いものということではなくて、いまおっしゃいました点につきましては、日韓の友好親善関係をこれからも緊密にしていこうというふうなことは入れたいと思っておりますが、具体的に何をどうというようなことまでは触れないで、いま私の言ったような形でその問題は触れようか、こう思っております。いま用意をしている最中でございます。
  124. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、親書それ自体はある意味で儀礼的なものを含んでおりますが、その親書を補完する形で、向こうにお行きになりましたときに外務大臣が韓国首脳との会談をなさる予定だというふうに聞いております。これは具体的な段取りについては進捗しておりますでしょうか。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 親書は向こうの大統領にお渡しするつもりですが、いま予定されておりますのは、向こうの外務部の長官とお会いする、それから総理、副総理にも大体お会いすると思います。それから大統領にも表敬をする。まだ時間等は決まっておりませんが、この四人の方々にはお会いをし、特に外務部の長官とは時間をとっていろいろ話をしたい、こういうふうに思っております。
  126. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、おのずから会談の内容の問題になりますが、首相親書において大まかないわゆる対韓政策といいますか、これからも仲よくやっていこうという形のものになるのでありましょうが、そういうものを踏まえまして、実務的な形での話し合いというものが当然なされるわけだと思います。この中で、特にどういう点がこれからの日本と韓国との間で重要な問題になってくるのか、その外務大臣と、あるいは全大統領等への表敬訪問で、主に日本側として伝えたい、協議をしたいというふうなことはどういうことでございましょうか。
  127. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は、お話し合いするとしますと、二国間の問題もあるだろうし、いろんな国際情勢の問題もあろうかと思うわけでございます。  二国間の問題で、たとえば経済問題でございますが、これは経済協力というのは毎年事務的に、それこそ民生の安定、福祉の向上というようなことで、ことしも病院、そして学校にやったわけでございますが、あとは民間の関係協力が主でございますので、政府としてこういうことがやれるというような具体的なことはなかなか言いづらいことがあると思いますが、向こうの貿易のアンバランスで、たとえば、去年でありますか、買い付けミッションを出すとかいろんなことをやりましたが、そういう経済関係のこともございましょう。  さしあたって向こうからは、日本からの米の輸出の問題や何かは具体的な問題としてあるわけでございますので、こうした問題も当然出てくるでしょうし、あるいは、米韓の共同声明の中にもありましたが、北側との、この間全斗煥大統領が平壌へ行って話してもいいというような呼びかげがあったわけでございますので、朝鮮半島全部の平和の問題、そういう話し合いについて日本は一体どういうことができるか韓国側が期待しているかとか、そうした朝鮮半島の問題でございますと一が、あるいはもっと大きく言えば、中国、ソ連、アメリカの問題とか、東南アジアの問題とか、広くいろんな話が出るんじゃないか、二国間の問題はもちろん、そういう問題が相当話が出るんじゃなかろうかと思っておりますが、まだ向こうとはこういう議題でやるという議題を出してはございません。それは、この間も大使に言いましたけれども、議題ということで拘束されず率直に何でも話をしようじゃないか、こういうことを伝えたわけでございまして、実は議題等はまだ決めておりません。
  128. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、かなり広範囲な問題について、具体的な、中期的な展望を踏まえての会談ということになるかと思いますが、特に韓国側から、いわゆる北朝鮮との交渉問題等について、日本自身としては、韓国がそういうふうな形での態勢をとっているということについての役割りといいますか、その支援といいますか、そういうものについては、積極的にこの問題に対しても対応していくというお考え方でございますか。
  129. 伊東正義

    伊東国務大臣 韓国側が希望されれば、もちろん積極的にどういう役割りができるかということで日本としましても考える必要があると思いますし、私自身としても、そういう首脳同士の話し合い、これは一般論でございますが、それは非常に大切なことだ、話し合っているうちに何かその中から出てくるのだと私は基本的に考えますので、具体的な呼びかけがあったのですから、私は、日本もできることは積極的にそういう環境をつくり、協力するということは必要だというふうに考えております。
  130. 神田厚

    神田分科員 それと同時に、韓国はアメリカとの関係で、新しいアメリカ政権と非常に緊密な関係を持つように努力をしているようであります。同時に、そのことから、アメリカと韓国とのたとえば韓国防衛についてのいろんな話し合いとか、そういうものもかなり積極的に出ていると思うのであります。これから外務大臣は韓国訪問の後、訪米をするわけでありますが、そのときにも、韓国情勢等を踏まえての防衛面からの話し合いも当然あるかと思うのですが、韓国の首脳に対しまして、アメリカの新しいレーガン政権がとっている極東の防衛政策等についての意見の交換をする御用意はございますか。
  131. 伊東正義

    伊東国務大臣 米韓の話し合いで、韓国における米国の駐留軍が引き揚げる計画はない、残るというようなことがありましたり、安全保障関係会議を米と韓国の間で持つとかいうことがあの共同声明にいろいろありましたが、そのこと自体について、それと日本がかかわりがあるのかないのかというようなことにつきましては、これは米韓は米韓、日米は日米、こういうふうに私ども考えておりますので、直接韓国に行ってこちらから積極的にそういう話し合いをするということは、私はいまの段階では考えておりません。
  132. 神田厚

    神田分科員 ただ、アメリカのレーガン政権の極東政策は、やはり東南アジアと日本、それから韓国、米国、こういうふうな形のものを一貫して、一つの弧状的なものとして守っていこうという政策があるようでございます。そういうことから考えますと、当然韓国に対する防衛的な要請、あるいは日本に対するそういうものがかなり均質化していくような方向をとってくるのではないかというふうに考えております。  そういう意味で、私はやはり、日韓の首脳会談といいますか、外務大臣同士での会談の中でも、当然この問題はあるいは韓国の方から触れてくる可能性があるのではないかと思いますが、その辺はどういうふうにお考えでございますか。
  133. 伊東正義

    伊東国務大臣 御質問でございますが、果たしてそういう問題が出るかどうか、私もちょっといまのところわからぬわけでございます。ただ、アメリカと韓国の間には双務的な義務を負った相互防衛条約があるわけでございまして、アメリカ、韓国の関係というものは、日米関係とまた非常に違った軍事的な条約のあることは確かでございますので、アメリカが極東の安全ということを考えた場合に、先生がおっしゃったような考え方でおるということも想像はされますが、この問題はやはり、日本は日米安保ということで日本の国を守る、個別自衛権というのが原則でございますので、もし話が出ましても、私は、その法律の制約、憲法上の制約ということを腹に置いて、これは日本はこう考えているということを求められればするという場合もあるかもしれませんが、そういう問題が出るかなあ、ちょっといまわからぬというのが現状でございます。
  134. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、この外務大臣の韓国首脳との会談の中から、当然全面的な関係修復と同時に、日韓の閣僚の定期会談の問題等も具体的な日程として持ち上がってくると思うのでありますが、この辺の見通しについてはどういうふうにお考えでございますか。
  135. 伊東正義

    伊東国務大臣 当然そういう話も出るだろうというふうに私は思っております。親書の中にはそういうことまでは実は書かぬつもりでございますが、口頭で話し合いをするときはそういう話が出るだろうと思いますので、出ましたときには、これは国会との日程、いろいろな向こうの選挙の情勢、新しい政府ができるということもありましょうし、向こうの政治改革の進め方とか国会の日程とかいろいろありましょうから、そういうことを頭に置きながら、向こうの要望も聞き、話し合いをしようというふうに思っております。
  136. 神田厚

    神田分科員 それでは、この親書の中で触れるかどうかという問題で論議をされたようでありますが、韓国全大統領のいわゆる訪日の要請、こういう問題について、文字どおりの日韓の首脳会談の開催の見通しについてはどういうふうにお考えでありますか。
  137. 伊東正義

    伊東国務大臣 親書の中でそういう問題につきまして若干触れると思うのでございますが、具体的にいろいろなもの、たとえば日時とかそういうものを書いてどうだとかいう形にはならぬじゃないかということで、私はまだ、どういう表現が一番いいのかな、こういうふうに考えているところでございますが、親書の中では。それはどういう形がでは触れようというふうに思っております。
  138. 神田厚

    神田分科員 それは要請という形をとるのでしょうか、それとも、こちらから向こうへ出かけていく形になるのでしょうか。その辺も検討中と言われればあるいはそうかもしれませんが、もう少しこの輪郭を御説明いただければと思います。
  139. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃったような具体的なことは書かぬつもりでございます。たとえばこちらから行くのだとか呼ぶのだとか、そういうふうな具体的なことは書かぬつもりで、いま中で親書の検討をしているのが実情でございます。
  140. 神田厚

    神田分科員 会談というのはどこかでやるわけで、あるいはどちらかから求めるということでありますから、具体的に書かないと言っても、これはどういう形かのニュアンスで触れられてくるというふうに考えています。まだ親書の検討中ということですので、これ以上のお話はあるいは伺えないかと思いますが、韓国問題では最後に、金大中氏の問題をめぐって日韓関係は停滞をしたわけでありますが、この問題については、外務大臣が向こうに訪問する際に金大中氏の消息等についてのお話をする御用意はあるのでしょうか。
  141. 伊東正義

    伊東国務大臣 この間まで、重大な関心ということで日本側の意向は向こうに伝え、そしてまた裁判の判決があり、大統領の減刑措置ということがあったわけでございまして、そのことを評価しますということを国会でも御答弁したことがございますので、全然触れないということではなくて、そういう形で触れようかというふうに思っておるわけでございます。
  142. 神田厚

    神田分科員 次に、韓国に行かれました後、いわゆる総理大臣の訪米の下準備といいますか、調整という意味も含めまして外務大臣が訪米をなさるという日程があるようでありますが、国会等の関係もあるでしょうが、訪米の時期についてはおおよそのめどがついたのでありましょうか。
  143. 伊東正義

    伊東国務大臣 国会のお許しが前提でございますが、三月の二十一日に出発して約一週間で帰ってくる予定でございます。  いまはっきり決まっておりますのは、ヘイグ国務長官と会う日時は大体見当がついておるわけでございますが、そのほか国防長官でございますとか、その他の経済関係大臣とか、それから大統領については会える時間等はまだ向こうから返事がないわけでございまして、私はできるだけ多くの人に会って日本の意見を言ってきたい、また向こうのいろいろな期待とか考え方もありましょうから聞いてこようというふうに思っておるわけでございます。
  144. 神田厚

    神田分科員 新聞等の報道によりますと、昨日外務事務次官が鈴木総理に、五月の日米首脳会談で話題になる問題等についてのいろいろなことについて進言をしたというふうに言われております。その中で、一つは、自衛力強化に対するアメリカの要請にどういうふうにこたえていくかという具体的なものをある程度用意をしなければならない、もう一つは、これはそのときに触れられたかどうかわかりませんが、当然自動車問題等についての日本側の態度といいますか、事前調整の項目の整備というものが必要だというふうに考えておりますが、この自衛力の問題について、特にアメリカについての新しい提案を持って伺うというような説明があったようでありますが、この点はどういうふうになっておりますか。
  145. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、次官にその後会っておりませんので、その真意はよく本人から聞いていませんが、常に私が次官と話しておることは、アメリカからこういう期待があったからこれができるかできないかとかいう返事をするというやり方ではなくて、いろいろな自動車とかなんとかを話す中に防衛の話が出れば、日本としては防衛についてはこういう認識でございます、あるいは防衛哲学といいますか、そういうものを持って、その中でこういうことはできること、こういうことはできないことという日本のそういう考えをむしろ積極的に話すことが必要じゃないか、向こうから期待表明だけあって、それはだめだとかそれはいいとか言っているのじゃ、日本の態度としてはいかぬじゃないか、自主的に判断をする、私はこういうことを言っているのでございますから、そういうことはちゃんと日本の考え方を持って、腹に入れておいでになることが必要じゃなかろうか、またわれわれもそうじゃないかということを言っているわけでございまして、具体的に比率がどうでございますとか、軍事上の細部に立ち入ったことまで何も用意してどうということじゃなく、そういう防衛哲学というものを、日本としては自主的にこう考えるということを腹に入れておくことが必要じゃないかということを、常に私は次官と話しておるのでございます。そういう意味のことを次官は言ったのじゃないかなと私は思っておるわけでございます。
  146. 神田厚

    神田分科員 いまの大臣の御答弁のように、つまり日本が西側の一員として世界の安全保障に対する貢献をしなければならないという認識を持たなければならない。こういうことから、新しい「それなりの哲学」というふうなことで言われておりますけれども、それを持たねばならない。そして「それなりの哲学」の具体的な内容としては、一つは「対潜、防空面などの防衛力を強化することで、日米戦力の相互補完的機能を一段と強めること」と言っております。二番目には、具体的に「中期業務見積もりの早期実現のため、五十七、五十八各年度の防衛費支出について積極的な財政措置を講ずる」、それから三番目は「専守防衛の立場上、国際的な軍事的役割はできないが、技術協力、経済援助など非軍事的側面で最大の努力をする」、こういうふうなことがアメリカに対しまして日本側として提示をしていく内容だと言われておりますけれども、その辺はいかがでございますか。
  147. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃいました最後のことはよくわかるのです。専守防衛ということで総合的な安全保障といいますか、経済協力でございますとか技術援助、これはわかるのでございますが、その前の方のおっしゃった二つの点まで次官が言ったのかどうか、いまの御質問でございますが、私はまだ本人から聞いておりませんので、その点は何とも申し上げかねます。これは二つとも防衛庁と非常に関係のあることでございます。外務省だけでどうこうという問題じゃございませんので、もしもそういう問題に触れて何か言うとするのであれば、これは防衛庁ともよく相談をしまして、外務省が第二防衛庁なんてよく国会でひやかされるのでございますが、そういうことになってはいけませんので、そこは十分に注意しなければならぬと思うわけでございます。長官も当然行かれるのでしょうから、その点は防衛庁とも十分協議した上で、総理がどう言われるかということについては政府としてよく考える必要があるのじゃないか、いまここで、そこまで次官が言ったのかどうかなと私は首をひねっているところでございますので、本人に少し聞きまして、また何かの機会にお答えすることにいたしたいと思います。
  148. 神田厚

    神田分科員 ですから、方向としては「それなりの哲学」ということで日米戦力の相互補完機能、これは詰めて言ってしまいますとこういう言葉になりますけれども、もう少し含んで言っていることだと思います。  さらには財政措置、五十七年、五十八年度の防衛費支出についての財政措置、これらについても考えなければならない、こういうことだと思うのでありますが、大臣の方で防衛庁長官と調整の上でどういうふうに表現するかについてはこれから考えていくということでありますが、そういう方向も当然検討していかなければならない、大事な問題として取り扱っていかなければならないという気持ちについてはお変わりございませんか。
  149. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理が向こうへ行ってどういう話をされるかということで、やはり政府として十分研究、検討しておかなければならぬことだとは私も思います。ただ、去年も大平総理が行きましたときに、そういう話は、カーターさんとはそんな中までは出なかったのです。一般的な話でございまして、私も今度のお話は防衛哲学といいますか、そういうところで総理は終わっていただいて、そういう具体的なことにつきましては、当然防衛庁長官と向こうどの話し合いの中に出てくることじゃないかと私は思いますけれども、ただ、いろいろな研究をしておかなければならぬということだけは確かでございます。
  150. 神田厚

    神田分科員 次に、北方、対ソ関係という形になるのでしょうか、外務大臣、非常に熱心に北方領土の問題その他で御尽力をいただいておりますことに心から敬意を表するわけであります。新しいソビエトの平和戦略といいますか、平和攻勢が始まったと言われているように、第二十六国の党大会で軍縮を中心としたものが出されてきております。そういう中でいま日本としましてもどういうふうな形がで対ソ関係改善の糸口を探っていかなければならないということでございまして、特に極東の問題についてもこの中では触れられております。そういうことについてのお考えもお聞かせをいただきたい。  と同時に、北海道におきまして日ソ友好会館というものが続々と設立をされている。この日ソ友好会館は五十二年に釧路、札幌、五十五年稚内、こういうふうにつくられておりまして、近く函館、小樽にもつくられる。この日ソ友好会館がどういう仕事をしているのか、あるいはこれがどういう経緯で建設をされているのか、非常に問題が多いというふうに聞いております。つまり、あめとむちといいまして、これらの会館建設等に協力をする者には漁獲量の割り当てをたくさんやるとか、こういうふうなものでの非常に不明朗な会館運営といいますか、そういうものがされているというふうに聞いておりまして、地元でもこれは固まったものだということで取り扱われている面もあるようであります。しかも、その会館建設が全部漁業基地であります釧路、稚内、函館、小樽、こういうところにつくられているというところに問題があります。これらについては外務省としてはどういうふうな内容の把握をして、これからこの日ソ友好会館等についてはこれをどういうふうに指導していくようなお考えがあるのかどうか、その二点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  151. 伊東正義

    伊東国務大臣 ブレジネフ書記長の演説、平和攻勢、これは伝統的でございますが、平和攻勢の演説内容であるということに受けとめております。米ソ首脳会談の提案とか、信頼醸成措置を極東まで及ぼしたらいいじゃないかとかいうこと、これは新しいことでございますが、日本につきましては、軍国主義だということを言いながら最後は善隣友好の関係を支持するというようなことでございまして、私はそれ自身はそう目新しいことじゃないことが多い平和攻勢だと見ておるわけでございます。  ただ、これは言うだけでなくて、具体的にどういう行動にソ連が出るのかということをやはりもう少し見守っていかないといかぬことだというふうに思いますので、その辺の情勢を私どもはもう少し十分に検討したいというふうに思っておるわけでございます。ただ、日ソの関係を恒久的に平和な関係にするということにつきましては私も同じ考えでございまして、どういう機会が、ということを慎重に考えている。  日ソ友好会館の話が出ましたが、これは詳細は政府委員から申し上げますが、これも本当に漁業者の人が中心になって日ソ友好ということを考えることは当然のことでございますが、その場合もやはり日本側としては主張すべきことはちゃんと主張する、そういうことを無原則に日ソ友好と言っても、これは私は領土問題その他ございますので、そういう態度はとらぬわけでございますが、この日ソ友好会館の状態、それの運営等につきましては、詳細について政府委員から答弁させていただきます。
  152. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 日ソ友好会館、ただいま先生の方から釧路、稚内、それから近く建設予定と伝えられております函館という漁港関係の友好会館につきまして御質問があったわけでございますけれども、実はこれらの友好会館はすべて純民間ベースのところでございまして、私どもといたしましても新聞報道等では承知いたしておりますけれども、そういう直接の実情を把握し得る立場にはないということでございます。  それからまた、外務省としてどのように指導する考えかという御質問もあったわけでございますが、そのような純民間の団体であるということで外務省として直接指導するような立場にはないわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、いま外務大臣から申し上げたとおりということでございます。
  153. 神田厚

    神田分科員 時間がありませんので、これで終わります。
  154. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて神田厚君の質疑は終わりました。  次に、川本敏美君。
  155. 川本敏美

    川本分科員 企画庁、通産省来ていますね。  それでは外務省外務大臣や経企庁、通産省等について、わが国の海外経済協力の基本的な理念の問題から、私は御質問したいと思うわけです。  わが国も、戦後今日まで経済成長をしてきて、そしていまや本格的な海外協力、援助、こういう時代に入ろうとしておるわけです。これはもう申すまでもないと思う。数字で見ますと、昭和五十二年には十四億ドルであった海外援助が五十五年には二十八億ドルになる。さらに、これから向こう五カ年間でこれを倍増しようというわけですね。だから、これはもう大変なことですけれども、GNPの比率でよく言われるのですけれども、GNP比でいきますと、昭和五十三年度で〇・二三ということで、大体DAC加盟国十七カ国の平均が〇・三五ですから、まだ最下位にあるわけです。そういう状態の中で、将来わが国としては、これをGNP比で〇・七まで引き上げていこうというのが大体の構想として決まっておるわけです。こういう状態になりますと、わが国政の中で占める経済協力、援助というもののウエートは非常に大きくなってくると思うのです。  しかし、考えてみますと、大体この経済協力とか援助というものの形を考えてみますと、一つアメリカやソ連のように、ソ連はもちろん共産主義圏を拡大し、それを守っていくというような一つの基本理念を持っておる。アメリカは逆にソ連の浸透といいますか、それを防ぐためにという基本理念に立脚している。これはもう明らかであります。あるいはスウェーデンやオランダやカナダ等の国々は、いわゆる純然たる人道主義的立場に立って世界の最貧国といいますか、そういう国々に対して人道的な援助を無償でやっていこうというようなこと、あるいはイギリスやフランスはいわゆる旧植民地の支配者であった、こういう歴史的な経験にかんがみ、さらに現在もその宗主国としての立場からやはり援助をしておる、こういうようなことになっておるのじゃないか。日本の経済援助というのは一体何なのか。何を目的に、どういう哲学を持って海外経済協力をやっておるのか。まず外務大臣、さらには経企庁や通産省からもそれぞれ考え方をお聞きしたい。
  156. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  おっしゃるとおり経済的には非常に強力な国家になったわけでございまして、世界の平和、安全、それが日本の平和、安全、繁栄につながるということで、その中で日本がどういう役割りをやれるかということを考えますと、やはり経済的な協力というのは一番大きいわけでございます。それで経済協力を考えます場合には、軍事目的とかそういうものに使われるようなものには援助しない、あくまで相手の国の民生安定、福祉の向上、社会経済の開発ということをやって生活水準を上げ、その国の安定を図っていくということを中心にしましてやっておるわけでございまして、日本は御承知のように資源もないという国でございますので、そういう特に発展途上国との関係が先進国の中でも非常に深いわけでございます。相互依存関係が深い、そういうことを今後も円滑にやれるように、あるいは人道的な問題で、難民の問題等御承知のとおりでございまして、そういう問題も頭に置いて考えるということから言えば、余り所得の高い国に政府の援助をやるよりも、あるところ以下の所得の低い国に対しまして援助をしていこうというような人道的な問題でございますとか、そういうことを頭に置いてやっておるわけでございます。御承知のように、南北問題というのは世界で非常に大きな問題になっておるわけでございまして、南北問題の一つの解決の方法としまして経済協力を重視していく、それが日本の平和にも安全にも繁栄にもつながるんだという考え方でこれをやっているというのが国際経済協力の基本の理念でございます。
  157. 川本敏美

    川本分科員 経企庁と通産省。
  158. 西谷浩明

    ○西谷説明員 御説明申し上げます。  経済協力の考え方につきましてはいろいろなものがあろうかと考えますけれども世界における第二の経済大国であり、世界に占める比重も高いわが国といたしましては、現在貧困でありますとか国際収支の赤字でありますとか、いろいろな意味で先進国と格差を持っております発展途上国に対しまして、その国の経済社会開発の促進を支援することによりまして、その国の国民生活の安定と向上を図っていくことが、ひいては世界の平和と繁栄に寄与するということが経済援助の基本的な考え方ではないかと考えておりますし、それがわが国の責務でもあると考えます。また同時に、こういうふうにして発展途上国に対しまして援助を行っていくということは、途上国との間に非常に深い依存関係を持っておりますわが国といたしましては、いろいろな関係を通じましてわが国の安全と発展に特に寄与していくものである、こういうふうに考えます。
  159. 井上宣時

    井上説明員 八〇年代におきましては、世界的に相互依存関係が一層深まっておるわけでございまして、そういう中で発展途上国の経済社会開発に対して側面的に支援するという経済協力というのは、ますます重要なものとなっておるというふうに考えています。  わが国にとりまして経済協力の持つ意味でございますが、端的に申し上げますと、私どもとしては、経済的な面での安全保障というふうな面に寄与するという側面が非常に大きいのではないかと考えております。わが国は、御承知のように発展途上国との関係が他の先進国に比べてとりわけ深いわけでございます。またエネルギーでございますとか、その他の資源の面での依存関係あるいはマーケットの面での依存関係等々非常に深いわけでございまして、そういった直接的な発展途上国との依存関係を一層深めていくという観点から、経済協力の持つ意味が大きいと同時に、日本の経済が世界の中で相当な経済大国になってまいりまして、世界経済の相互依存関係の中に非常に深く組み込まれておりますので、発展途上国を含めて世界経済全体が安定的に発展していくことが、日本の経済の安全保障にも寄与する。日本の経済というのは、世界経済の安定があって初めて成り立っておるというふうな認識に立っておりますので、そういった面からも発展途上国の経済開発、社会開発が進められることが、ひいては日本の経済の安定、発展にもつながる、そういう理解に立って経済協力を進めておる次第でございます。
  160. 川本敏美

    川本分科員 いま外務大臣初め各省庁から、ちょっとニュアンスは違いますけれども、大体世界の平和と繁栄に寄与するとともに、日本の平和と安全、そして繁栄を守るためだ、こういう言い方をされました。日本の経済援助の六〇%はアジアで、そのうちの半分がASEANだと思うのです。一九%がアフリカ、一〇%が中近東、そして九%が中南米、そういうような形になっておると思うのです。ところがそれらの国々が言っておることは、日本はそういう意図で経済協力をしておるのだというけれども、向こうは、逆に言いかえれば、最近大変やかましく言われるように商社主導といいますか、そういう形の中で、いわゆる企業の利益のために政府が一緒になってやってきておるのではないか。言いかえれば、経済侵略じゃないかというような受けとめ方もされておる一面も私はあると思うわけです。それはいろいろ問題になる点はたくさんあると思う。たとえて言えば、無償にしても、円借款にしてもひもつきの援助が多いためにいろいろ誤解が生まれてきておると思うのです。  私はこの前ちょっとバングラデシュに行ってきたのです。バングラデシュでもダッカ郊外のジョイデプールというところに、日本が五十一年にバングラデシュ農業研究所というものを約一億四千万円ほどで建設して、現在でも四名の園芸部門、野菜とか種子、柑橘の専門家を派遣していろいろ努力しておるわけです。そこで聞きますと、日本人の専門家が言われるのですけれども、たとえていいますと、農業用に使う金網とか肥料あるいは農薬は現地でも生産されるのだ。ところがそういうものを現地で調達することはできないのだ。全部日本から送ってもらわなければいけない。そういう契約になっておる。だから現に、そういうものを一々日本まで言って取り寄せることになると時間がかかり高くつく。特に向こうの国内で生産される肥料とか農薬とか金網とかになりますと、向こうは三〇〇%くらいの関税がありますから、送ってもらっても引き取れない。零細な農家の人々は引き取れないようなことがあるわけです。なぜ日本は現金でそういうものを供与して、現地で調達するようにできないのだろうか。スイスとかスウェーデンとかオランダは、そういうふうに現金で供与してやっているじゃないか。金網とか肥料とか農薬、現地でできるもの一で日本がひもつきで援助するというのはおかしいんじゃないかということを、日本人の向こうに派遣されておる方が言っておるわけですよ。私はそういう点について、商社主導だとかあるいは経済侵略だと言われる根源は、そういうところにあると思うわけです。少なくともそういうことをなくしていくということが、今日わが国経済協力の一番基本でなければいかぬ。最近、総合安保体制とかいうような言い方をされますけれども、軍事力は持たない日本として。いまの憲法で日本の国を繁栄さそう、そういうことになれば、世界の平和を守らなければいけない。そのためには日本の友好国をふやさなければいけない。その平和と友好のために経済協力をやるというのなら、経済侵略と誤解をされるようなことは断じてやめるべきではないかと私は思うわけです。  最近、環太平洋連帯構想とか、八〇年代は太平洋経済圏の時代だとかいろいろ言われていますけれども、そういうことの発想が経済侵略を中心にした発想であってはいけない。少なくともその基本には人道的立場に立って世界の平和を守るんだ、そして世界の繁栄を、南北問題の解決をやるんだ、こういうような基本的なきちっとした哲学を持たなければいけない。それを持たないから商社主導の経済協力になってしまう。そういうことがかえって東南アジア――韓国でもそうですよ、アメリカの韓国援助やベトナム援助もそうだったのですよ。相手の政権を腐敗させ、ロッキード事件のように、今度は日本国内の政権まで腐敗させる、そういうことになったのじゃ何をやっているのかわからぬことになりますね。マイナスしか残らない。そういうようなことを断じてなくしていくためには、これからだんだんとウエートの大きくなる経済協力関係について、わが国の取り組むべき基本姿勢はどうあるべきかということをこの際考えなければいけない。  そのために、私はここで、外務大臣、ひとつ提案申し上げたいのですが、そういう経済協力、たとえば無償援助もあるいは円借款等も含めてですけれども、それを国民的な合意の上に立ってやれるようにすべきだと私は思うわけです。現在でしたらいろいろ評論等でも書かれていますけれども、商社が先に行って向こうの国へ売り込んで、そして向こうの国との話し合いで今度は円借款にしてもらった方がいいとかいうようなことで、向こうの国から日本の国へ持ち込んでくるというようなものもあることは事実ですよ。そういうことがいろいろ問題を起こしておるわけですが、そういうのが外務省中心に、現在は経企庁あるいは通産省、そういう官僚の仲間の中で、あるいは日本商工会議所とかあるいは日経連とかそういう方々が先発で使節団で向こうへ行って話し合いをしてきて、それを後で政府がしりをふいていくというような形になっておるところに一つの問題がある。少なくとも外務省の中に、あるいは経企庁の中でもいいと思うのですけれども、審議会を設置したらどうですか。経済協力対策審議会といいますか、そういうような審議会を設置して、官民、それに学者も含めて、この経済協力が本当に必要なものであるのかどうか、あるいはそれによってどういう効果があるのか、あるいはそれはどういう形で、無償でやるべきなのか、あるいは円借款でやるべきなのか、技術協力でやるべきなのか、こういうような問題についても国民的な立場で審議をし審査をする、こういうことでなければこれから経済協力が本当に国民の合意と納得の上でやれるような体制はできないと私は思うのです。その点について外務大臣、どう思いますか。
  161. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は政府委員の方から申し上げますが、私も、この間ASEANに参りまして、インドネシアへ行ったとき、インドネシアの青年と座談会をやったときに、どうも借款が一部の企業にだけ使われるのじゃないか、もっと広く考えてほしいというような意見があったことを聞きました。私は、それはそういうことでなく、大分直ってきているはずだというふうに思うわけでございますが、一部にそういう声があったことは確かでございまして、いま先生がおっしゃったように、経済協力が単に経済進出だ、商社の進出だというようなことになっては、これはまさに目的と反することでございますから、その点は十分に注意しなければならぬことだというふうに思うわけでございます。  援助については、大体日本側で押しつけるということではなくて、現地からの要望ということで、それをみんなで相談して決めているということでございますが、先生がおっしゃったのは、現地から出てくる要望の前に、日本が行ってやっているのじゃないかということを言われたので、そこまで私、よく実情を知りませんので、政府委員の方からお答えしますが、少なくともそういう経済進出のためにこれが使われているんだ、一部の企業の利益になるんだというようなことでは、これは確かに目的と反しますので、その点は十分に注意しなければならぬことだというふうに思います。  おっしゃった肥料とか金網というのは、恐らく無償援助でやったものじゃないかと思いますが、円借款についてはなるべくアンタイ、一般入札でやるようにということで、これは大分改善されているわけでございますが、……(川本分科員「有償でも現金でやればいいのですよ、向こうで買えるんだから」と呼ぶ)先生のおっしゃったこともここで聞いておきまして、それに関税がかかるんだとか、わずかなものまでそういうことでないといかぬというのは、私もどうもそういうことはおかしいな、なるべく直した方がいいなという感じを持っていま伺っていたところでございまして、今後改善すべきことは極力改善してまいるというふうに考えたらいいだろうと思っております。  それから、審議会の御提案がございましたが、これをどうするかということは、またいろいろ中で相談しなければならぬことでございますが、審議会で一つ一つの案件や何かを相談するというのは、私は余り適当ではないと思うのです。一般的な方針とか、いまのタイ、アンタイなんということ、大きな方針をやるということは審議会でよくやることですが、一つ一つの案件ということまでどうということは、これは審議会の性格に合うかなどうかなと思うわけでございます。要するに、先生がおっしゃったことは、本当の目的に合致しているかどうかということをいろいろな人の意見を集めてやるべきだという御提案でございますから、それはどういう形が一番いいのか、いまの形でもそれをもっと直せばできるのか、いろいろな問題がございますので、これは十分に検討させていただきたいと思います。
  162. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先生のお尋ねのまずひもつきの援助じゃないかという点でございますけれども、円借款と無償援助で少し……(川本分科員「両方一緒にして話してください」と呼ぶ)  円借款につきましては、わが国といたしましては、一九七八年以来一般アンタイを基本方針としております。その結果、昨年、一九八〇年におきましては、円借款につきましてつくりました交換公文の六五・二%が一般アンタイになっているという状況でございます。  それから、無償援助につきましては、無償援助によりまして日本から出ていくものは、日本国民の役務か日本国の資財ということになっておりますけれども、ただいま先生から御指摘のございましたバングラのケース、私よく承知してなかったのでございますが、一応たてまえ、原則といたしましては、日本国の資材が出ていくということになっておりますけれども先生指摘のとおり現地で買った方がはるかに安い場合もございます。そういう場合には、先方政府と協議いたしまして、現地の資材を買い付けるということも最近やっているわけでございます。
  163. 川本敏美

    川本分科員 いま昭和五十年から一般アンタイでやっているという話ですが、ところが実際日本が一般アンタイに踏み切ったのは一昨年ですよ。だから、それまでは円借款についてもまだ全部ひもつきだったわけです。そういう点については、私は当然の措置だと思いますけれども、これからさらにそういう点をもっと考えていかなければいけないのじゃないかと思うわけです。  それから、いまバングラデシュの話をしましたが、これはやはり世界最大の最貧国ですね。ところが私、向こうへ行って感じましたことは、日本外交というのはおかしいのじゃないかと私は思うのですよ。というのは、向こうの九千万人に及ぶ国民は全部ベンガル語でしゃべっておるわけです。私が行ったとき、日本の大使館にベンガル語をしゃべれるのは一人ぐらいしかいなかった。日本語とベンガル語の辞典というのは外務省にありますか。ないのじゃないかと思いますよ。向こうの国の一部のいわゆる首脳の人たちといいますか、そういう方々は、大体もとのイギリスの植民地ですから、カルカッタ大学とかケンブリッジ大学とか出てきて英語をしゃべる。その一部の人たちとだけ接触をしてやっておるのですから、これでは本当の友好親善あるいは国民の期待しているものが何なのかということも理解できないわけですから、そういう点については根本的に改めるべきじゃないかと私は思っておるわけです。そういう点について、そういう最貧国援助というものに対しては、やはりもっと現金を供与して、向こうで調達した方が安いものは向こうで調達をしていく。  特に大切なのは、技術援助、技術協力だと私は思う。ところが技術協力についても三千四百名程度がいままで日本から出ておるわけですが、これも世界のレベルで見ると日本が最低ですよね。人口百万人当たりわずか五人ですか。スイス、フランス、デンマークといった国でも七十九・七四人、フランスは百五十二人ですよ。だから、日本の技術援助あるいはボランティア、海外青年協力隊員等の派遣についての体制を整えて、そしてそれが向こうでも一番有効なのですから、そういう面のウエートを大きくしていくということで、本当に日本と向こうの人たちとの心と心の触れ合いをやっていく、そういう中からお互いに理解しあって、お互いに繁栄と平和を守る友好国にしていく、こういう基本的な理念を持っていかなければならぬ。政府が商社の金もうけの手先になっておる、経済侵略をやってきておる、こういう誤解を受けるようなことは断じてやめるべきである。この辺のことを私は特に申し上げたいと思っておったわけです。  時間がありませんから、また改めて私はこの問題をさらにいろいろ深く掘り下げて追及していきたいと思うのですけれども大臣、最後に、いま申し上げたように、平和外交を基本にして、そしてこれらの国々の人々との平和友好関係をさらによくしていく、そのために人道的な立場も含めて経済援助をやっていく、そういう基本的な哲学、理念をはっきりと伊東外務大臣の間に定めて、それがこれからの経済援助の日本の原則になるということをぜひきちっと位置づけてもらいたいと私は思うわけなんです。その点をさらに決意のほどを聞きたい。
  164. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃること、私は一々ごもっともなことだと思います。言葉の問題あるいは技術協力の問題、おっしゃるとおりでございます。われわれも何とか定員を少しでもふやして、そういうベンガル語ならベンガル語の専門家をふやすということ、今後ともひとつ私は努力をいたします。  それから、援助の基本理念といいますか、これは実は昨年の暮れに外務省でつくって新聞発表したのがあるのです。しかし、まだまだPRが足りませんことはわかりますので、さっき申し上げたようなことは、そこの中に述べておるのでございますが、先生にも一部お届けしますから読んでいただきたいと思うわけでございます。そういう考え方をはっきりして、出社のためとか一部企業のためとか経済侵略というようなことのそしりを受けないようなちゃんとした方針でやれと言われることはおっしゃるとおりで、そのとおり私は思いますので、極力PRもしますし、そういう方針でやってまいります、
  165. 川本敏美

    川本分科員 終わります。
  166. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて川本敏美君の質疑は終わりました。  午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  167. 塩崎潤

    塩崎主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。池端清一君。
  168. 池端清一

    池端分科員 私は、日ソ交渉、とりわけ当面する懸案事項の交渉の問題についてお尋ねをしたいと思います。  その前に、日ソ間の関係についてでございますが、今日、はなはだ残念なことではございますけれども、日ソ間の関係というのはきわめて冷え切った、冷却した状況にあります。人に言わせると、戦後のある一時期を除いて最悪の状態である、こういうふうに評する人もおるわけであります。こういう状況をもたらした要因は何か。政府の言をかりますならば、それはソ連のアフガンに対する武力侵入の問題であり、あるいはまた北方領土におけるところの軍備増強、これらによるものである、こういう説明を終始繰り返しておるわけでございます。確かにそのこと自体私も否定するものではございません。しかし、それは余りにも一面的過ぎるのではないのだろうか。わが国外交の姿勢に果たして問題がなかったかどうか、私は大いに疑問とするところなわけであります。  たとえば、外務省の高島事務次官が、昨年の十一月二十一日札幌で北海道政経懇話会の講演会が開かれましたが、そこで「緊迫下の国際情勢と日本外交」と題する講演を行っておるわけであります。その講演の要旨がここにございます。それを見ますと、高島事務次官はこう言っているわけです。対中ソの関係について言うならば、現在は中国に非常に偏り、ソ連には冷たい、中国との関係を友好的に進めるのは結構だが、日本の安全にとって一方に偏しないことが大切で、友好関係にある程度均衡を保つことが必要だと思う、このように述べておられるわけであります。中国に非常に偏りソ連には冷たい、これが外務省首脳、高島事務次官の発言でございまして、その要旨がここにあるわけでございます。これは外務省の、あるいは外務当局といいますか、本音というものを率直に吐露せられているのではないだろうか、私はこういうふうに思うわけでございます。こういう中国傾斜という外交姿勢にこそ問題がある。そのことがいま問われなければならない。一面的に相手方の非を責めるよりも、みずからにも外交姿勢にやはり欠くるところがなかったかどうか、この反省がなければ、今後の友好的な日ソ関係あるいは関係の修復というものは望み得ないのではないだろうか、私はこのように思うわけであります。その意味で、外務大臣のこの問題についての率直な御見解を承りたいと思うわけであります。
  169. 伊東正義

    伊東国務大臣 高島次官がと言って例を引かれて、私はおやおやそんなことを発言したのかなと思っていま聞いて、ここでこれをもらったわけでございます。恐らく真意はこういうことじゃないかと私は思うのです。日本外交というのは、要するに日米関係が基軸になっている。そして政治経済とも理念を同じくするいわゆる西側の一員として、その基礎というものははっきりしている。そしてどの地域でも、どんな政権でもできるだけの友好関係を結んでいくというのが日本外交の基本でございまして、基本は西側の一員ということは間違いないので、これは動かすべきことではないのですが、どの地域でも、どんな政体、政権とでも友好関係を結んでいく。一方に偏って一方をないがしろにする、そういうことは実は考えておらぬわけで、私もそういう考えで外交をやっているわけじゃないわけでございます。  たまたま中国とソ連とを比較しまして、いまはソ連との関係が冷えているということ、これは事実でございます。中国とは、前からの、正常化して以来の日中友好関係を維持しているということでございまして、日中は日中、日ソは日ソということでこれは考えて、日中ソ、こういうことで考えておるわけでは少しもないわけでございまして、その点はもしも誤解を与えるような発言をしたとすれば、私は本人に会いましてよく真意は聞いてみます。聞いてみますが、私が申し上げたことが外交の基本方針でございます。  ただ、ソ連との間は、いま先生おっしゃったように、アフガニスタンへの武力介入、それから北方領土への軍備の増強ということを契機にしまして、冷たい関係が出てきたことは事実でございまして、私どもははなはだこれは遺憾な状態だと思っております。何とか平和条約、これは相互理解の基本でございますが、平和条約を結んで恒久的な友好親善関係が結ばれるということ、本当にそれを心から願っているわけでございまして、その前提が何とか早く解決されないかということを考えております。一方に偏し、一方には温かくし一方に意識的に冷たくする、そういうことではなくて、客観的な事情からそういうことになっておるというのが現状でございまして、外交はそういう片方に偏るとかいうことを考えてやっておりません。
  170. 池端清一

    池端分科員 誤解を招くような発言があったならば云々、こういうお話でございますが、私は別に誤解も何もしておらないわけであります。本音を吐露された、日本外交現状を素直におっしゃられた、私は素直な発言だというふうに理解をしておるわけでございます。片言隻句をとらえて云々するつもりはございませんので、次の問題に移りたいと思います。  過般、鈴木総理は施政方針演説の中で「日ソ関係発展への展望を開くためにも、ソ連側がその誠意を具体的行動をもって示すことを強く期待いたします。」、こう述べられました。また外務大臣伊東さん、あなたも同様なことを言われておるわけであります。外交演説で、「ソ連側において、みずから強調してやまない善隣友好を言葉の上だけでなくて、誠意のある具体的行動で示すよう切望する」ものである、こう外務大臣は述べられたわけであります。  そこで、具体的にお尋ねをしたいのでありますが、そこで言われている「誠意のある具体的行動」、「具体的行動」というのは一体どのようなことを指しておられるのか、どのようなことを具体的に希望されておられるのか、その点を承りたいと思うのです。
  171. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはソ連側の行動について言ったことでございまして、ソ連側が具体的にどういう行動をとったら誠意ある具体的な行動なのか。     〔主査退席、阿部(助)主査代理着席〕 Aは誠意ある行動だけれども、Bはそうじゃないとか、そういうことを決めているわけではございませんが、私ども考えて、ソ連と話したことがありますのは、私はグロムイコ外相と話したわけですが、あのときにやはり領土問題を話し、あれは昭和三十一年でしたか、鳩山さんが行かれて共同声明を出したときに、グロムイコさんは向こうの第一外務次官でよく知っているわけで、領土問題はあなたが一番知っているのじゃないか、ひとつあのときの原点に返って領土問題を相談し、その上で平和条約を結ぼうということを私は言ったのでございます。グロムイコの返事は、もうそういう問題はないのだということでございましたが、日本からは領土問題を議題とした平和条約の交渉をすべきではないかと言いました。その後、向こうからグロムイコさんが来て平和条約の交渉をすることになっているのですが、ここ二年くらい切れて交渉していないわけでございます。  あるいは、総理はこの間本会議で、昭和四十八年でしたかの田中総理がおいでになったときにブレジネフ書記長と話されて、第二次大戦以後の未解決の問題という声明の中には条約が含まれているのだということをあのとき口頭で了解したのだ、日本が立ち会ったときには。皆そう言うのでございますが、その後そういうことはないというのがソ連側の主張でございますが、総理はそのときに立ち返って、そういう態度で出ることが一つの誠意ある行動ではなかろうかという意味の、それを契機にしていろいろな話し合いをしていくという答弁をされたわけでございます。アフガニスタンの軍事介入から撤兵するとかあるいは北方領土の軍備増強を縮小するのだとか、いろいろなことが考えられるのでございますが、日本としてこうでなければだめだというようなことをソ連側に具体的には言ってないわけでございまして、そのところはソ連が善隣友好ということを主張してやまないのでございますので、それは具体的な誠意ある行動に移せばどういうことになるのだということを示してもらうのが、ソ連側の方がそれを考えることじゃなかろうか。こっちからこうしなければだめだと言うべきことではない。しかし、考えられることは、いま私がいろいろ言ったことから推察願えれば、それは一つの例じゃないかというふうに思っていただければ結構と思うわけでございます。
  172. 池端清一

    池端分科員 共同声明の原点に戻ることが基本であるけれども、しかし、特にわが方からこうでなければだめだというようなことを言うつもりはない、こういうことだと思うのであります。現実の問題としては、昨年、日ソの外相定期協議も行われておりません。日ソの外交関係は空白状態が続いていると言っても決して言い過ぎではないと思うのであります。しかし、いたずらに日ソ関係現状のままで放置することは許されないと思うのであります。今日のような冷却した状況でそのまま推移するということになれば、これは大変な問題になるわけです。  特に、私は北海道出身の者でございますが、北海道では領土問題あるいは漁業問題、墓参問題、いろいろな問題を抱えておりますし、またソ連とは隣接する地域でございます。したがって、関係の改善、修復を求める道民の声が非常に強まっているわけでございます。外交を推進する場合には、原則を高く掲げてこれを堅持していくということは当然のことであります。しかし、現実処理に当たっては、国益を損なわないという立場、そういう前提に立って柔軟に対応することも、これまた外交の基本でなければならないと私は思います。そういう意味では、この漁業問題なり墓参問題という道民が熱望しているいろいろな事項がございますので、これらのものを一つ一つ具体的に解決をしていく、その中から関係改善の糸口を見出していく、こういう方式をとるべきではないだろうか。単に原則論の応酬だけでは問題の解決にはならない、このように考えるのでありますが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  173. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃいました墓参の問題とか漁業、コンブの問題とかいろいろございます。私も水産庁長官をやっていたことがございますので、漁業問題、特に漁民の方々の心が痛いほどわかるような感じがするわけでございます。  おっしゃったように、原則は曲げてはいかぬ。しかし、教科書と応用問題で言えば、応用問題も考えなければいかぬではないかということでございます。私どもも無原則に妥協するとか、無原則に何でも頭を下げるというような考えは、先生もおっしゃいましたが、国民でございますから国益を守るのは当然でございまして、これはできない。ただ、その中から、いまおっしゃったような何らかの糸口でそれをほぐしていくことも必要ではないか。私は、お説は傾聴すべきことだということはよくわかります。いま経済措置につきましては、実はケース・バイ・ケースでオーケーと言っているものもあるわけでございまして、何らかの糸口をということは私どももよくわかります。ただ、大原則を曲げてはいかぬという立場でございますが、平和友好関係といいますか、冷たい関係が少しでも温かくなるための努力をしろとおっしゃることはよくわかりますので、われわれもそういうことは慎重に考えてまいりたいと思います。
  174. 池端清一

    池端分科員 情緒に走らず冷静に、しかも懸案事項を一つ一つ解決していく、そのことによって問題の全面的な解決の局面打開の糸口をつかんでいくことを私はぜひお願いしたいと思うのであります。  そういう観点から一、二具体的な問題をお尋ねいたします。  北方墓参の問題でございます。午前中の本委員会においてもお尋ねがあったやに聞いておるわけでありますが、北方地域の墓参の問題については、昭和三十九年に開始をされて以来、一時中断はございましたものの昭和五十年まで実施をされてまいりました。しかし、昭和五十一年以降今日まで五年間、残念ながら中断の状況が続いているわけでございます。北方四島に限ってみましても、総理府の統計でございますが、この地域における物故者は三千二百六名、その遺族数は約六千名に及んでいるわけでございまして、北方墓参の問題は、これら遺族の皆さん方の熱望してやまないところでございます。一日も早い再開を待ち望んでいる現状でございますので、外務省はこの問題を今後どのように打開をし解決していこうとされているのか、その姿勢をお尋ねしたいと思うのであります。
  175. 伊東正義

    伊東国務大臣 墓参の問題は純粋に人道的な問題でございますから、大原則が解決される前にでも何とかしてこれを実現したいという気持ちはいまの先生と変わりません。これは交渉を続けていこうと思っておるのでございます。  ただ、北方地域についていまソ連側が言っておりますのは、外国人立入禁止区域だ、こういうことでございます。そういう理由でいまだめだ、こう言われているわけでございます。あとソ連の方でも、若干そういう希望をしてもここはだめだというところがあるわけでございますが、そういうところを含めまして、これは本当の人道問題なんだということを強く主張して、何とか早く実現するように、今後とも外務省としては努力していくつもりでございまして、いままでの経緯、交渉等、詳細ありましたら政府委員から答弁させていただきます。
  176. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、当初は身分証明書による渡航を認めておりましたものを、旅券を持って有効な査証を取らなければだめだということで中断が始まったわけでございます。その後先方は、外国人立入禁止区域だからだめだという言い方に変えているわけでございます。私どもとしては、その先方の説明に納得しているわけではございませんで、外国人立入禁止区域であっても、特例で認めることは可能なはずだということで、毎年粘って交渉しているのでございますが、残念ながら現在までのところ実現を見るに至っていないということでございます。
  177. 池端清一

    池端分科員 ソ連側の姿勢がきわめてかたいということは私も十分承知しておるわけであります。それだけに外交努力というものが必要だというふうに考えますので、一層の御努力をお願いをしたいと思うわけであります。  次に、時間がありませんのではしょって申しわけございませんが、ソ連地域の抑留死亡者の遺骨送還の問題についてであります。  第二次大戦後ソ連に抑留されて亡くなられた方は、厚生省の推計によりますと約五万五千名、民間団体では六万二千名と直言われております。ところが、その中で今日まで遺骨が送還されてきたのはただ一つ、近衛文隆氏の場合だけ、ただ一件だけだというふうに私承知をしているわけであります。これはジュネーブ条約にも反する問題でありまして、これまた人道上の大きな問題だと思うのであります。ソ連側は一時、日本政府からの正式な要望があれば、この問題については検討したいという態度の表明も、昭和五十四年当時あったやに聞いておるわけでありますが、しかし、依然としてこの問題も解決をいたしておりません。したがって、本件についての交渉の現状と今後の見通し、展望等についてお尋ねをしたいと思います。
  178. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま御指摘のございましたとおり、昭和五十四年当時でございますけれども政府から要請があれば検討してもいいというようなことを、これは政府ベースではございませんが、そのような発言をソ連側がやったことがございます。それを受けまして、昭和五十四年七月でございますか、その翌月でございますけれども外交ルートを通じましてソ連側に遺骨の収集の申し入れを打つたわけでございます。その後なかなか先方から返事が参りませんでしたので、再三再四督促を重ねていたわけでございますが、昨年の八月に至りまして、先方から、現段階ではこの日本側の申し入れを受けることはできないという回答があったわけでございます。これが現段階では一応ソ連側の正式な回答ということになっているわけでございますが、これも現段階ではと言っているわけでございますので、今後ともわれわれといたしましてはソ連側の翻意を促すべく最大限の努力を払いたいと考えている次第でございます。
  179. 池端清一

    池端分科員 この問題については、厚生省援護局も密接なかかわりを持っておると思いますので、厚生省からもおいでであれば、ちょっと厚生省の見解も承りたいと思います。
  180. 岸本正裕

    ○岸本説明員 厚生省といたしましては、遺族の御要望にできるだけ沿いたいということでございますが、この問題は、何分にも相手国との円満な了解のものに初めて実現できる問題でございますので、正式の外交ルー小を通じて、一日も早く実現できるように私どもお願いしていきたいということで、外務省にもお願いしているところでございます。
  181. 池端清一

    池端分科員 この問題は外務大臣のところにも請願が参っていると思うのでありますが、いま本当にこれらの遺家族の方々中心にいたしまして大きな運動となって盛り上がっております。強い願いとなっているわけでありますので、これらの問題の一日も早い解決をひとつ特段にお願いをしておきたいと思います。  最後に、貝殻島のコンブ漁の問題についてであります。  いみじくも先ほど大臣言われたように、伊東外相はかつて水産庁の長官もされておりました。漁民の心は痛いほどわかっておられると私は思います。昭和三十八年以来民間協定で継続されてまいりました貝殻島のコンブ漁は、その後いろいろな紆余曲折がございまして今日に至っているわけであります。昭和五十二年以来協定は締結されておりません。出漁不能という状況に陥っているわけであります。昭和五十三年に飛鳥田・スースロフ会談が行われまして、その経緯を踏まえて北海道水産会が窓口になって交渉を進めるということになっておったわけでありますが、しかし、依然としてこの問題は解決を見ておらない。六月が漁期でございますから、この六月の漁期を日前にして、地元の漁民はもうことしは待てない、もうがまんができないという気持ちで、いまや一日千秋の思いで速やかなる協定の締結を待ち望んでいるという状況でございます。民間協定なのだからとあるいはおっしゃるかもしれませんが、交渉当事者の一方はソ連政府でございます。日本政府としても、いたずらに手をこまねいて民間のその話し合いに任せるということであってはならない、こう私は思うのであります。本件についての外務省、それから水産庁からも来ておられると思いますので、明確な御見解を承りたい、このように思うわけでございます。
  182. 伊東正義

    伊東国務大臣 高碕さんが始められまして民間協定で始まり、いま先生おっしゃるとおり最初は大水でしたが、いまは北海道水産会の金沢君が主にやっておるわけでございます。これは民間協定だから外務省は知らぬという、そんな態度でいてはいかぬ。民間協定であれ相手は向こうの政府でございますので、われわれもこの問題について重大な関心を持っていることは確かでございます。  先生おっしゃいませんでしたが、これも実は領土問題という大原則に関連した主張が向こうからあるものですから、いままで解決がつかぬということで、漁民の方々が非常に待望しておられるということも私ども聞いております。ですから外務省としては、これは民間協定だからあなた方だけでやりなさい、われわれは知らぬという顔ではなくて、何とか民間協定でもできるように後ろからの応援をしていくということは考えていかなければいかぬことだというふうに思っております。
  183. 中島達

    ○中島説明員 貝殻島のコンブ漁業の問題につきましては、先生から御指摘もございましたように、長い歴史を有しておったにもかかわらず、五十二年以来操業ができないままで今日に至っているわけでございます。私どももこれは何分にも多数の零細な漁業者の生活の問題にかかわるということでもございますので、従来から外務省御当局とも十分御相談申し上げて、漁業者の方々の御意見も聞きながら、何とか現実的な解決ができないものかということでいろいろ考えてきてみているわけでございます。今後ともできるだけ早く操業の再開にこぎつけることができますように、十分また関係御当局のお知恵もかりまして、いろいろ検討を進めていきたいというふうに考えております。
  184. 池端清一

    池端分科員 いまお話がありましたように、私はいろいろ知恵を出し合えば現実的な解決の方法はあり得る、このように思うわけであります。ともあれ、これは漁民の本当に切実な願いでございますので、一日も早い解決をこれまた特段に望んでおきたいと思います。  最後になりましたが、このほかソ連漁船による日本近海での操業に伴う漁業損害賠償問題もございます。ほとんどこの問題も解決しておらぬ。七億一千万円程度の被害に対して何万円か程度の損害補償が行われたというふうにも聞いております。あるいはまた、他方シベリア開発の問題等もございます。いろいろ日ソ間には懸案事項が山積をしているわけであります。そういう意味で、対ソ関係の改善、修復を図るためにも、いま私が申し上げましたような一つ一つの切実な国民の要求を解決する。その懸案を一つ一つ冷静に解決することによって、その積み重ねによって関係修復なり改善を図るということが今日きわめて重要な課題になっている。そのことに思いをいたして外交を推進していただきたいということを重ねて申し上げて、もう時間がありませんので、最後に外務大臣決意の表明をお願いしたいと思うのです。
  185. 伊東正義

    伊東国務大臣 御質問のありましたコンブとか墓参とか、そういう問題を解決して、そして大きい問題の糸口にしたらいいのじゃないかとおっしゃることは、私はよくわかります。どういう方法でそういう問題を解決するかということは、まさに政府の考えなければならぬことでございますので、今後ともひとつ一生懸命努力してみるということを申し上げまして、お答えにかえる次第でございます。
  186. 池端清一

    池端分科員 質問を終わります。
  187. 阿部助哉

    阿部(助)主査代理 これにて池端清一君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬長亀次郎君。     〔岡部(勘)主査代理退席、愛野主査代理     着席〕
  188. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私は、最初に外務大臣に、特に三月には外務大臣は訪米されるので、改めて八〇年代の外交の基本路線について述べてもらいたいと思います。
  189. 伊東正義

    伊東国務大臣 三月に訪米の予定でございます、国会の了解を前提としますが。五月には総理が参られます、これも国会の御了解が前提でございますが。それで、アメリカ側と話しますときの基本的な問題でございますが、これは日本平和国家としてということはもう憲法でもはっきりしているわけでございますので、基本は平和外交を進めていく、世界の平和、安定ということなくして日本の平和、安定、繁栄もないわけでございますし、そういう考え方に立って日本が今日のような経済的な力を持った国になったわけでございますから、一体どういう役割りが果たせるのか、どういう責任が果たせるのかということを十分考えまして、国際的にも日本に課せられた役割りというものは果たしていかなければならぬと思うわけでございますが、その際に、御承知のような経済、政治に対しまして考え方を同じくするいわゆる米国、ECでございますとか、ASEANでございますとか、豪州、カナダとかいう国々、こういう西郷の国々と十分に協調をしなければならぬ、そういう原則の上に立って、どの国とも、どの政権とも、どの地域とも仲よくしていこうというのが外交でございますが、そういうことを踏まえまして、日本アメリカとの二国間の問題、あるいは国際的に御承知のようないろいろな緊張がございますので、そういう問題について話し合いをするということで参ろうというふうに思っているわけでございます。
  190. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 まあ、自主平和外交ということなんでしょう。
  191. 伊東正義

    伊東国務大臣 そうです。
  192. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 ところで、きょうの朝刊各紙には、外務省の高島事務次官がきのう総理に進言したとありますね。一つは、「西側同盟国の一員としての役割を果たし、防衛力の質の向上に努力する旨をレーガン大統領に積極的に表明すべきだ」、二は、「その裏付けとして五十七年度以降の防衛予算、防衛力整備計画の具体的構想を訪米前に固めておく必要がある」ということを進言した。これを受けて総理は、世界の平和と安定に日本がどのような役割りを果たすかをこちらから伝えたいと述べたということを、これは朝日新聞にも全部書いてありましたが、これを受けて外務省は、「ソ連脅威論を軸とする国際情勢に対応して、わが国の役割と措置などについての防衛認識を前面に打ち出す方針を固めた、この認識にもとづき五十七年度以降の防衛予算を引き続いて増額し、「中期業務見積もり」に沿った防衛力整備の促進や、在日米軍基地経費負担などを具体化する形で、米側の理解と協力を求めていく」、これを三月に外相が訪米される一つの方向として外務省ははっきり決めだということを書いてあるのです。これはきょうの各紙に書いてあるのですよ。これについて、いまの自主平和外交路線との関連でどうお考えですか。
  193. 伊東正義

    伊東国務大臣 外務次官に私、その後会う暇がなくて、けさ私もそういう新聞を見たのでございます。ですから、その新聞が全部正確かどうかということを本人に聞いてみませんと私わかりませんから、その点はよく本人に聞いて、また先生にお答えするときがあると思うのですが、私、外務次官と常々話していることがございます。  それは、日本の防衛の問題は、いま先生がちょっとお読みになったところに入っていなかったかもしれませんが、まず総合的に考えなければいかぬ。経済協力とか援助の問題でございますとか、そういうことも、広い意味の総合安全保障ということで考えなければならぬということは常に言っているわけでございます。そして、狭義の防衛の問題につきましても、アメリカがいつも九・七がどうかとか七・六がどうとか、数字でいろいろな期待表明があったり、向こう側からこういった期待表明があったからそれはどうかというような受け身でいつも議論をしているということじゃなくて、むしろ、哲学と言っては少し大げさかもしれませんが、一体日本の防衛の哲学というものはどういうものだ、考え方はどういうものだ、これには前提として御承知のような憲法があり、憲法というのは個別的自衛権、専守防衛ということでございますが、非核三原則もそうでございましょうし、いろいろ憲法上、法律上の制約があるわけでございますから、そういう制約のもとに日本が一体自分の国を個別的自衛権で守るにはどこまでできるのだ、どこができないのだということを、やはり日本としてははっきり考え方を持っている必要がある。  そして、日本はこういう考え方なんだということをはっきりアメリカなり外国にもだれにも言えるというものを日本が持っていないと、これはどうだ、イエスかノーかとかと言われて、期待されて、そういう受け身の姿勢ばかりじゃいかぬじゃないか、日本はそういう考え方を持つべきだということを、私は次官とよく話をしているのでございまして、それは日本がそういうことを自主的に考えなければいかぬということのあらわれでございます。  私は、そういう意味のことでありますれば、次官とはしょっちゅう話しておりますので、恐らく次官は、総理も行かれますので、そういうことをよく日本として研究しておかなければならぬということを言ったのだろうと想像するわけでございますが、五十七年度以降の予算の問題とかそういうような問題が出てくれば、これはいまここで軽々に言うような問題じゃなくて、そういう具体的な問題になってくれば、これは防衛庁の仕事でございますし、防衛庁とも十分に協議を受けなければならぬ問題でございます。  ただ、総理が行かれるまでにはいろいろなことの研究はしておかなければいかぬということを私どもは言っておりますので、研究すべき項目としてそういうようなことをいろいろあるいは具体的な話まで――私はどうも少しそれは踏み込んでいるなというような気がしますけれども、いまのは本人に聞いてみないとわかりませんが、研究の項目としてはいろいろ研究しておく必要がある。そして、さっきの防衛の哲学、考え方というものをやはり腹の中に入れて、そして積極的といいますか自主的といいますか、そういう態度で日米の協議に臨む、話し合いをするということが必要だ、私はそう思っております。
  194. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 大臣、少し無責任ですよ。高島さんが言われたことは、はっきり各紙がみんな一致しているのですよ。しかも一、二、三に分けて進言している。またこれに対する総理の意見までついている。さらに、それを受けて外務省が協議した結果が出ておるのがこの新聞なんです。これは朝日にも出ておるし、毎日、読売にも出ておるのですよ。そういった意味では、最初に自主平和外交路線は間違いないですなと言ったのですが、こういった高島事務次官あるいは外務省で決めたようなことになると、自主平和外交じゃないのですよ。アメリカの力、軍事力を背景とする外交、そういったアメリカの圧力に屈してと言うのはおかしいかもしれませんが、その路線でしか外交の方向は出ていないじゃないかということを心配したから聞いたのですよ。こうなりますと、たてまえは自主平和外交、本音は対米従属外交と言わざるを得ない。これをはっきりさせないと国民を欺くものになる。  私は時間がないからあと詰めませんが、糾弾したいのは、そういったような、いかに安保条約があるとか尊重するとか言っても、国民の血税で賄わなくちゃいけないような防衛予算までこういうようにするんだというのじゃいかぬですよ。これが一点。また、これを受けて外務省がいろいろ問題を整理して、伊東外務大臣アメリカに行かれるときにあるようなことを全部報道しておるのですよ。ですから、たてまえと本音が分かれないように、われわれとしてはあくまでもどの軍事同盟にも参加しない非同盟中立の路線、これが八〇年代の正しい方向だと思いますが、それはとれないにしても、自主平和外交と言われましたからそれに徹していただきたいと思いますが、いかがですか。
  195. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、責任逃れをする意思なんで全然ございません。その点は事務次官にも確かめてみます。外務省で何か決めているように出ておるということでありましたが、まだそういうことを私の前でみんなで相談して決めたなんということはありませんので、その点ははっきり申し上げておきます。たしか私が読んだ新聞には、終わりの方に、まだ外務省はそういうことまで決めてないということを書いてあるように私は記憶していますが、書いてある、書いてないは別にしまして、そういうことは決めていません。  まだこれからの研究課題であることは間違いない。しかし、それはあくまで日本が自主的に決めることでございまして、日米安保があるからといって、何でも先生のおっしゃるようにアメリカ追随でやるんだということではございませんで、日米安保があり、向こうが大きな関心を持って期待するということは当然その関係上あり得ることでございますが、そこは自主的に判断をするということは間違いないわけでございます。昨年も予算が終わった後で、非常に失望したとか遺憾だというようなことをいろいろと向こうの国務省とか国防省の責任者が言ったというようなことが新聞に出たことがございますが、これは追随してそのまま言うとおりやっているということでない証拠だと私は思っておりますし、先生のおっしゃった自主平和外交ということは、本音もたてまえもなく、一本でこれから取り組んでまいります。
  196. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 次に、この前の沖特委での大臣の所信表明とも関連して、「伊江島における機銃被弾事故に関する意見書」これが外務大臣にも出されていると思います。これは二月五日に起こった伊江島の射爆場での米軍ヘリコプターCH46機から発射された機銃弾の事件で、この点につきまして沖繩県議会は自民党を含めて全会一致で三つ決めてあるのです。一つは、事故の原因を究明しその結果を早急に県民に明らかにすること、二つ、県民の安全を脅かす実弾射撃演習を即時中止すること、三つ、伊江島飛行場を早期全面返還すること。これは自民党も加わって、演習の中止と、しかも射爆場の全面返還を要求することは、容易ならざる事件だということなんですよ。最初に伺いますが、これに対して外務大臣、どのような姿勢をとられますか。
  197. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細はアメリカ局長が出ておりますので政府委員の方からお答え申し上げますが、いま言われたこと、原因究明は当然でございまして、それを明らかにするということも恐らく現地ではやっているのじゃないかと思います。また、あの事故の起こった後にたしか中止をしているわけでございます。  問題は、一審後の撤去の問題だと私は思います。このことについては前にもそういうことが合意されているわけでございまして、その後、硫黄鳥島に移ったらどうかというようなことがあってそれを施設庁で調査されるとか、あるいは問題があってまだしていないか、というようなことがあったことを私は聞いておりますが、全然やめてしまってどこにもやるところがなくなるということは、これはなかなか簡単にそうはならぬと思うわけでございまして、現実の問題としては、代替地として適当なところがあればということ、それを探すのが先決でなかろうかというような感じを私は持っておるわけでございますが、生命に危険を及ぼすようなことは厳に避けなければならぬということだけはわかります。  その後の経過等につきましては、具体的に政府委員からお答え申し上げます。
  198. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 事故の発生直後から、外務省も施設庁と協力しながら日米合同委員会事務当局に対して申し入れをいたしました。それから、越えまして十二日の日米合同委員会の席上で日本側の代表から、事故の発生について遺憾であるということを表明するとともに、早急に事故原因の究明を行って、事故再発防止のため万全の措置をとるよう申し入れをいたしました。それに対しましてアメリカ側は、本件事故が伊江島の住民に非常に不安を及ぼしたということについて遺憾の意を表明いたしまして、事故再発防止のため目下事故原因について調査中であるという回答を得ております。  それから、その前にすでに現地において、現地の司令官の方から、今回のCH46ヘリコプターの訓練の結果それが真謝地区に跳弾した可能性があるということと同時に、アメリカ側においては安全管理について再検討し、同時にそれが終わるまで訓練を中止しているという回答を得ております。  なお、移設につきましては、すでに安保協議委員会で移設を前提にいたしまして合意ができておりまして、まだ現在のところ実現を見でおりませんが、政府といたしましても、鋭意その実現に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  199. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 いまお話があった米軍からの回答ですね、私、持っておりますが、「この種の実射訓練に対する手続及び管理について、現在米軍機関で再検討している。この再検討が完了するまで伊江島におけるCH-46ヘリコプターからの五十口径機関銃の実射は中止される。」これが発表なんです。  この検討の結果、危ないからもうやめるというのか、あるいは安全施設ができたからやるというのか、まあいずれかだと思いますが、問題は、この事件について跳弾説があるのです。いわゆる弾が跳躍した跳弾説があるのですよ。一つは直撃説があるのです。沖繩県議会で決議する前に警察本部長を呼んで確かめたら、その返事はやはり跳弾説をとっておるのですね。跳弾の場合、三キロないし四キロの範囲で跳弾する。伊江島の形は卵型で、狭いところで四キロなんです。ほとんど全村が跳弾地域になるということであります。もう一つの直撃説をとりますと、器物毀棄とか破壊とか、あるいは場合によっては殺人未遂になりかねない実態があった。これを明らかにしませんとどうもならぬですよ、うやむやにすると。  なぜかというと、一方では跳弾説、警察はアメリカの言うとおりの発表です。ところが、那覇防衛施設局は、跳弾説に限定すると将来どうなるかというような、跳弾説を否定をしないがまた直撃説もとってはいない、非常にあいまいとした返事をしておる。いずれにしても非常に危険なんです。  外務省はよく実態をつかんで、アメリカと交渉をする場合に、いまの警察及びアメリカが発表した跳弾説をとるのか、あるいは直撃説をとるのか。現地の証言はほとんど直撃説をとっているのですよ。スモーク弾、これを見たと言う新聞記者もいる。そういう場合に、外務省としてははっきりこれを究明して初めてアメリカの納得がいくような外交交渉ができるのじゃないか。したがって、外務大臣は両方の意見を合理的に、跳弾であるとかあるいは直撃であるとかいうふうな両方の意見がありますから、これをすっきりした形で整理して住民に発表しないと、この問題の解決はうやむやになっていく。  もう一つは、直撃説をとろうが跳弾説をとろうが、伊江島というあの射爆場は実に危険きわまりない射爆場だということなんです。もうキューキューバカバカドンドンやられるということになるわけですから、跳弾説をとっても直撃説をとっても、直撃説をとったら最後、もうぴゅんぴゅん飛んでくるわけですからね、人家であろうが動物であろうが。牛、馬もいます。そういう危険であるといった問題。  もう一つは、嘉手納の十八戦術戦闘航空団、これの射爆場だったんですね。ところが、ごく最近ではF15が低空での射爆が非常にむずかしい機種であるということもわかり、F15にかわって、いまむしろマリンが使っておるような形態である。七六年の八月ですか、十六回日米安保協でこれが決まってから、もうすでに五年間移設が決まらない、代替地が決まらない。これは私、アメリカは伊江島を人質にしてもっと条件のいい場所を探すような外交手管じゃないかというふうにしか考えられないのです。五年間経過した今日、適当な場所がないから、来年切れる軍用地の特別措置法に伊江島をまた載せて、法的に強奪してくるということがいま現実に進められておるのですよ。  私が申し上げたいのは、こういった危険な射爆場、これの即時撤去が非常に必要である、移設の条件をつけないで、しかもあの射爆場は以前持っていた機能をすでに喪失しているといったような背景もあるので、こういった点に外務省としては綿密に、真剣に取り組んでもらって、早期返還、いわゆる移設という条件つきじゃない、伊江島という人質をとられたような移設の方向ではなくて、こういった危険な存在を日本領土からなくする。まずないですよ、日本の領土の演習場で。これが全地域に及んでいく。そういった意味を含めて安保協議委員会を再開してもらって、本当に演習場の返還が早期に実現できるようにされることが、自主外交の路線から言っても、また、大臣はこの前の沖特委でも沖繩県民の民生の安定というものについては十分注意を払っていくつもりであるという方針も述べられた、そういった意味からも、この問題は早急に撤去の方向へ向けて安保協議委員会を再開されることをまず要望したいのですが、いかがですか。
  200. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私からまず先に答弁をいたします。  いま先生が挙げられた跳弾説か直撃説が、こういう問題でございますが、その点についてはアメリカ側の発表はさっき委員が言われたように跳弾の可能性がある、現地の警察もそういう意見をとっております。私たちはアメリカ側に申し入れて、いずれにしても、事故の原因の究明をしてほしいということでございますので、その究明を待ちまして態度を決定するということでございます。  それから移設の問題でございますが、これはすでに安保協議委員会で決定しておる問題でございまして、むしろ日本側の内部の事情によっておくれておるということでございます。移設を前提にしないで撤去しろという御意見でございますが、私たちとしては、やはり米軍が駐留している以上その訓練場というものは必要でございますので、安保条約の目的に照らしてかつ必要であるという認定に立っておりますので、従来どおりの線で対処していきたいということでございます。
  201. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 時間がありませんので、最後に大臣にお答え願いたいのですが、そういったかた物的な返事をされると、沖繩県民の要望にも国民の要望にも沿えないのですよ。少なくとも条件つきの移設ですからね。また協議委員会を開くことを検討して善処するといったくらいの返事は大臣できないですか、いかがですか。
  202. 伊東正義

    伊東国務大臣 前に一回、合同委員会で決めた問題でございますので、それをそうでなくて決めろ、こういうことでございますが、本当に生命の安全に危害が加えられるということでは、現実にそういうことが今後も起こり得るということになりますと、やはり問題になるわけでございますから、まず第一段階は、そういうことは絶対ないのだということにするのが第一段階でございましょうし、その次は、いま決定になった移設ということもできれば早く考える。そういった二つのことがどうしても満足されぬという場合に、いまおっしゃったようなことを考えなければならぬと思うわけでございますが、どうもかた物のお答えをしてまことに申しわけないのですが、少しはやわらかいと思うのです。
  203. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 これにて瀬長亀次郎君の質疑は終わりました。  次に、岡田利春君。
  204. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は、対ソ関係について若干質問をいたしたいと思います。  アフガン問題が起きて、日本アメリカ、西欧とともに対ソ経済措置をとっておるわけですが、もしこの経済措置がなかりせば、一体日ソの貿易はどうなったのだろうか、いろいろ説があるわけです。ある報道関係によりますと四十億ないし五十億ドル、また日本の新聞によればというソ連側の要人の発表もあるわけですが、しかし、私は内容を分析しますと、日本が得べかりし大型商談は大体十五億ドル程度ではなかったろうか、こういう認識を持っているのですが、どういう見解でしょうか。
  205. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいまの御質問でございますが、私どもも何とも推定しかねるということが正直なお答えかと存じます。
  206. 岡田利春

    岡田(利)分科員 一九八〇年は日ソ関係は四十五億ドル、したがって私の判断では、十五億ドルとすれば六十億ドルベースになった。六十億ドルになれば大体三五%の伸びということになるわけです。しかし、一-九の実績で見ますと、フランスの場合には五一・五%、西ドイツの場合には三一・七%、大体そういう意味日本の経済措置を過大に評価することも問題があるでしょうし、そういう意味ではそれぞれのプロジェクトがあるわけですから、ある程度把握をしておく必要があるのではないかと思います。  そこで、私が予算委員会質問しましたヤンブルグ天然ガス田の開発計画に対するプロジェクト問題でありますが、オランダとドイツの場合にはすでにソ連との間に合意に達したわけであります。きのうあたりはフランスとの間に合意に達しておるだろうと思います。きょう新聞には出てないようでありますけれども、大体三国の関係は合意に達したと私は判断をしていいのではないかと思うのです。したがって、シベリアの天然ガスの対応について、外務大臣予算委員会において、まだそこまでいってない、そういう状況を見きわめてひとつ対応する、こう言われたのでありますけれども、現時点ではオランダやあるいはまたドイツ、フランスのように、このプロジェクトについては大体三十億ドル程度、こう言われているのであります。もちろん最終的な話し合いの問題もあるでしょうけれどもわが国としてもこれには参加をする、こういうように前向きに取り組まれるものと思いますが、いかがでしょうか。
  207. 伊東正義

    伊東国務大臣 予算委員会でお答えをしたわけでございまして、そのとき申し上げましたのは、オランダとかドイツは、その天然ガスの供給量を幾らにするか、あるいはその天然ガスの価格をどうするかという問題がプロジェクトにかかる前にあるわけでございまして、そういう問題がソ連とまだ話はついてないのだということを私は申し上げて、供給量の問題、価格の問題が話し合いがついてから建設の問題だということを申し上げたのでございます。  いま、新聞に云々、こういうことでございますが、私どもの知っている限りでは、そういうプロジェクトの建設費についてどうこうというところまで決まってない、実は私どもの持っているニュースではそういうことを持っておるわけでございます。  いま先生がおっしゃった、それでは日本もドイツ、フランス、オランダ等が参加する場合にどういう態度をとるかということでございますが、アメリカでは御承知のように、パイプを敷設する機械の輸出というものを一回カーター政権の時代に許可したということがございまして、レーガン政権になりましてからそれをどうするか、まだ聞いておりませんが、日本も、そういう話があった場合にはそれは全然だめだということでなくて、いろんな融資の条件の相談とか、そういうことをするようにというようなことを伝えたことがございます。私どもはいまもその状態は変わっておらぬ、まだ具体的に向こうと話し合いがついたとは思っていないわけでございますが、そういう話し合いがあった場合にはひとつ具体的な相談に応じるような態度を持っているというのが実はいまの考え方でございます。
  208. 岡田利春

    岡田(利)分科員 オランダとかドイツとかフランスの場合に、少なくとも日本と同じようにバンクローンの信用供与を合意したということは、これは以前からずっと継続的な協議が続けられておりますから、しかも天然ガスというのは国際価格で決まる問題でありますから、これはもう問題はないわけなんですね。したがって、そういう供与が合意に達したということは、このガスは当然将来受けるし、しかも参加をする。私の情報ではその点について、信用供与については条件について合意に達した、こういう情報を得ているわけですから、外務省とずいぶん違いがあるのじゃないか、こう思うのですがね。
  209. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 もちろん、私どもといたしましても本件は非常に関心があるわけでございますので、西欧の関係の方面にいろいろ情報は収集するように努めているわけでございますけれども、新聞で伝えられているようなところまでまだ実際には話が進んでいないというのが私どもの受けておる説明でございます。
  210. 岡田利春

    岡田(利)分科員 いずれにしても、業界筋でもこの点についての対応の準備もあることでありますから、そういう点で情勢はまさしく、いわばこのプロジェクトは国際的にまとめの段階に入っておる、こう認識せざるを得ないと思いますので、この点の対応方を強く期待をいたしておきたいと思います。  第二の問題は、欧亜局長国会の方で大変忙しいらしいですけれども、問題は、日ソ貿易の五カ年の支払い協定の問題なんですね。これが結ばれないと、同付属文書の沿岸貿易の交換公文の期限が切れているわけでありますから、大変な問題になるわけです。特に中小企業の場合に事態はゆゆしき状況になりつつあると私は認識をいたしているわけです。しかし、従来の国会答弁では、ソ連側からまだこの点についての話し合いの申し出もない、ソ連からの話もあって、こう言われておるのでありますけれども、すでにソ連通商代表部の方からは欧亜局長の方に、速やかに話し合いをしたい、欧亜局長の方は何か国会で忙しいからそのうちに対応する、こうなっているらしいのでありますけれども、この点はいかがですか。
  211. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 たしか予算委員会だったと思いますが、一月の中旬でございますけれども、日ソ貿易年次協議を行いましたときに、ソ連の外国貿易省のアジア諸国貿易局長のキセリョフさんという方が見えまして、その際にすでにこの問題につきましては予備的な話はしたといういきさつがございまして、その後、ソ連の方から日取りの提案でもしようかということで日が過ぎていた。その段階で、たしか予算委員会でそういう事情の御説明を申し上げたと思いますが、先生すでに御承知のようでございますので、うそをつくわけにもまいりませんので申し上げますと、確かにソ連の方からいつごろどうだという話はあったわけでございますけれども、いろいろ日本側の事務的な都合等もございまして、まだ本格的な交渉を開始する段取りについてソ連との間に最終的な結論に到達するには至っていないというのが現状でございます。
  212. 岡田利春

    岡田(利)分科員 この貿易に参加している会社は百四十社に及んでいるわけですね。特に中小企業が圧倒的に数は多いわけであります。中小企業ベースでも昨年は一億ドルの実績があるわけですから、これがないといま新年度を迎えてやはり大変だと思うわけです。私は、今日の日ソ関係でまだ問題は残っているという政府側の認識があっても、この問題を解決するのにそう障害はないのではないか、こう思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  213. 伊東正義

    伊東国務大臣 ことしの一月に年次協議をやったわけでございまして、そういうメンバーで顔合わせをやったのでございます。それで、このことについての意見交換もやったわけでございますので、いま先生のおっしゃるように、これは本当に事務的なものだ、租税条約等も交渉はしたわけでございますので、そういう事務的な問題だという御意見もよくわかりますし、早急に結論を出してどうするかということをやっていきたい、こう思っております。
  214. 岡田利春

    岡田(利)分科員 一月十二日から十四日まで、ただいまの日ソ貿易支払い年次定期協議が開催されたわけです。そこで、この席上、日本側としては、特に商社側からもモスクワに駐在事務所を開設したい、あるいはまた駐在員を増員したい、こういう希望があって、日本側から述べられたとわれわれは承知いたしておるわけです。ソ連側からはその点に対して、特にダリントルグ、沿岸貿易公団の事務所の設置、多年の懸案の問題であります、新潟または他の都市でもいいわけでありますけれども、ぜひダリントルグの事務所を開設させてほしい、双方そういう意見が述べられたと思うわけです。特に沿岸貿易の場合には中小企業でありますから、そういう意味では双方の利益というものがこの面では一致するのではないか。したがって、この問題は早急に打開できないだろうか、私はこう考えておるわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  215. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 モスクワにおります日本の商社が新たに事務所を開きたい、あるいは駐在員の増員をしたいという要望があるわけでございまして、ただいまお話がございましたとおり、一月の年次協議のときに日本側からそのような要望を伝えまして、善処を要請したわけでございます。  片やソ連の方が、ただいまお話がございましたダリントルグの事務所、あるいは東京にございます通商代表部の支部を大阪に設置したいというような話がございまして、ソ連の方は若干相互主義だからというようなことを言ったいきさつもあるわけでございますが、ただ、モスクワにおります日本の商社駐在員と、それからソ連の日本にございます通商代表部、これは実は性格が違うわけでございまして、日本にございますソ連の通商代表部は、御承知のとおり大使館同様の特権を持っておるわけでございます。それからまた人数の点につきましても、ソ連の方はいわば国家貿易ということで独占的に行われるのに反しまして、日本の場合は自由競争でございますから、一つの商談に複数の商社がかかわり合うということで、人数上のバランスということも事柄の性質上あり得ないというようなことを私どもの方から指摘したということはあるわけでございます。  ソ連側の要望でございますが、たとえば通商代表部を大阪に設置したいということにつきましては、現実の問題といたしまして、日ソ貿易はほとんど東京で行われているということでございますし、それからいま大阪まで新幹線でも飛行機でも非常に速く行き来ができるというようなことで、大阪に別の支部を設けるという必要性は現段階ではまだ政府としては認めておらないわけでございまして、そのようなことをソ連側に説明したということはあったわけでございます。現に、西側の主要先進国いずれも、ソ連の通商代表部の支部を設けておるという例はないようでございまして、これは数年来の調査でございますが、その後変更はないと思いますけれども、たしかアメリカのような大きな国でも通商代表部はワシントンにあるだけで、ニューヨークにもシカゴにも支部はないというような現状、もちろん日本日本独自の立場で判断するわけではございますが、そのような西側の現状というものもやはり参考にはなるかと思っているわけでございます。  それからダリントルグについてでございますが、これもたてまえといたしまして、東京にございます通商代表部にダリントルグの代表も含まれている、そういったてまえになっておりまして、別個の事務所を地方に設けるということについての必要性も現段階ではまだ認めるに至っていないというのが現状で、そのような日本側の考え方は、この一月の時点でキセリョフ局長に私の方からるる御説明したということでございます。
  216. 岡田利春

    岡田(利)分科員 大阪は二五%ぐらいのシェアを占めておるわけですが、ダリントルグの場合には特に近代的な取引をするという意味においても中小企業が対象でありますから、必要性は非常に強いのではないか、こう思うわけです。  したがって、では逆に、とにかく隣り合わせの隣国でありますから、そういう面から考えて、もし相互主義の原則でどういう条件が整えば、たとえばダリントルグならダリントルグの事務所の開設が認められるのか。相互主義でありますから、そこは何かやはり工夫しなければいかぬではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  217. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 確かに相互主義ということは日ソ関係ではいろいろ起こり得るわけではございますが、ソ連側の通商関係者とそれから日本側の通商関係者と、先ほど申し上げましたとおり基本的な違いがある。そのような前提のもとにおいて相互主義ということがどのようにして図られるか、その辺は知恵を出せということでございますから、せっかく検討はいたしたいと思いますが、どうもにわかに余りいい知恵は浮かんでいないというのが正直なお答えでございます。
  218. 岡田利春

    岡田(利)分科員 では、民間ベースの場合、たとえば日本の商工会議所でもソ連に事務所を設けたいという話も内部では出ておるわけであります。一方、それに対応して両国の商工会議所の話し合いの中でも、ソ連側も、では商工会議所の事務所を日本に出す、民間ベースの問題でありますけれども、そういう場合には、相互にその必要性を認めるという場合については外務省はどういう見解ですか。
  219. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 これは、一昨年になりますか、モスクワで日ソ・ソ日経済合同委員会がございましたときに、向こうの方からちらっとそのような話が出たことがございますが、そのときには日本の商工会議所の関係者の方から、もう少し話を詰めましていずれ御相談に上がらなければならない時期になりましたら御相談に上がるというようなことで、それ以来全然、関係者の方から私どもの方にアプローチがないというふうな現状でございます。
  220. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そこで、大蔵省からも来ておると思うのですが、いま輸銀の場合は、いわゆる大企業だけに、大型プロジェクトだけに輸銀の適用の道を開いておるわけです。だがしかし、国会では同銀行法の一部改正に際して附帯決議が満場一致でつけられておるわけでありまして、特にその中では中小企業の取り扱いについて触れておるわけであります。私も予算委員会で言ったのですが、これからのプロジェクトの輸出については大型のみを対象にしていくというのではなくして、日本はいろいろな面でテクノロジーの面では非常に進んでおるわけでありますから、中小企業の分野も非常に出てまいっておるわけです。したがって、田中通産大臣も、中小企業のためにも中小のプロジェクトの輸出を摩擦のなき輸出という面で配慮しなければならないという意味のことを私に答弁いたしておるわけです。この輸銀の適用を中小企業の分野に、もちろん内容によりけりでありましょうけれども、そういう分野に拡大をしていくという時期に来たのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  221. 日向隆

    ○日向説明員 委員もすでに御承知のとおり、中小企業のプロジェクトに対しまして輸銀の融資が法令上できないということはございません。また、いま御指摘になりましたように、昭和五十一年の輸銀法の改正に際しまして附帯決議がつきまして、中小企業向けのプロジェクトにつきまして輸銀が十分配慮を払うようにということについての御指摘があったことも、私、十分承知しております。  現実に輸銀の中小企業向け融資につきましてちょっと数字を申し上げますと、五十五年九月末の残高でございますが、企業数で申し上げまして、中小企業の概念で一億円以下というのがございますが、それで申し上げますと一五%、それから一億円超十億円以下の企業で申し上げますと一七%を占めているという状況でございまして、これを合計いたしますと、企業数のベースではございますが三二%を占めておるわけでございます。  ただ、これは一億円以下で見ますといま申し上げましたように一五%ということで、まだ少ないではないかという御指摘をいただくわけでございますが、委員も御高承と思いますが輸銀の融資対象案件の中には船舶、プラントといったものの延べ払い輸出であるとかあるいはエネルギー資源の輸入とかいったものがございまして、これは中小企業が直接の当事者になることは少ないということが一つございます。  それから、もう一点御理解いただきたいのは、商社等のいろいろな海外取引の経験を活用する、こういったケースもあるわけでございまして、この点、中小企業が直接の契約の当事者になるという点が少ないということは御理解いただきたいと思います。  ただいま御指摘がございました点もございますし、われわれとしても附帯決議も踏まえまして、これから輸銀が中小企業向けに十分配慮するように指導してまいりたい、こう思っておりますので、よろしく御承知おきいただきたいと思います。
  222. 岡田利春

    岡田(利)分科員 その場合、対社会主義国の場合にはどういう実績がございますか。
  223. 日向隆

    ○日向説明員 いま私の手元の数字では全体の件数でございますので、国別の数字はございませんが、たまたまソ連に対します中小プロジェクトに対する輸銀融資の状況が手元にございますのでそれで申し上げますと、延べ払い案件で申し上げまして昭和五十年度以降契約額が、十億円以下の企業、これは九件ございます。それから資本金一億円以下の企業によるもの、これが三件ございます。現時点ではそれで御了承いただきたいと思います。     〔愛野主査代理退席、主査着席〕
  224. 岡田利春

    岡田(利)分科員 時間がありませんから、鈴木総理大臣が北方の視察をするという発表があるわけですけれども、大体日程は決まっておるのでしょうか。
  225. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理の北方領土視察は総理の強い御希望なんですが、日程が許せば、こういうことを言っておられるのですが、まだ日程の相談まで至っておりませんので、日程はまだ決まっておらないということでございます。
  226. 岡田利春

    岡田(利)分科員 総理もせっかく閣議で発言をされ、大臣も視察をされているわけですが、問題は貝殻島のコンブの採取が三年間ついにできないで、漁民も大変困惑をいたしておるわけであります。今年はどうしても強行出漁するというような気配も現地においてはあるわけです。  そこで、水産庁、この歯舞、根室でありますけれども、コンブの漁獲高は一体どうなっているのでしょうか。貝殻島で採取しておった実態と、この三年間の実態についてお聞かせ願いたいと思います。
  227. 中島達

    ○中島説明員 従来、民間取り決めで貝殻島の周辺水域におきまして採取をされていたコンブは、たしか製品重量にいたしまして大体九百トン前後であるという数字がございます。
  228. 岡田利春

    岡田(利)分科員 北海道水産会がソ連側といろいろこの問題について接触をいたしておるわけです。その中で、やはり外務省としてこの問題について重大な関心を持っているし、外務省ともしばしば相談をされると思うわけです。  問題点は、島名をどうするかという問題、許可証の発給の問題、裁判管轄権の問題、三つの問題があるわけですね。従来、島名の問題は別にして、あとの許可証と裁判管轄権の問題については、私どもといろいろ詰めた話し合いの中では、いずれか一方の要件が欠けた場合にはわが国の立場を損うことのないことになるだろう、こういう見解を外務省も示されたことがあるわけです。その意味は、許可証の発給は認めるけれども裁判管轄権の面ではたとえば操業を取り消すということになれば、一方の要件が外れるわけですね。結局許可証と裁判管轄権というものは表裏一体の関係でございますから、一つの要件が外れればこのことについては認められるのではないか、こういう見解を私どもは承ったことがあるわけであります。宮澤さん時代だと思ったのですが、そういうことも考えられるという話を、私の聞き違いかどうか知りませんけれども承ったことがあるわけです。そういう見解はいかがでしょうか。
  229. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいまのお話は実は私、聞いておりませんので存じないのでございますが、従来は、先生御承知のとおりソ連側の許可証ということではなくて、日本側の自発的な措置としてやってまいったわけでございまして、もちろんこの許可証の問題、裁判管轄権の問題が、島の名前の問題とともに北方四島問題に対する日本側の基本的な考え方との間の矛盾が起こりかねないということが一番大きな難点になっているということでございます。このコンブ漁につきましては、私ども関係者の方としばしばお目にかかっておりまして、漁民の方の苦衷というものは重々承知しているわけでございまして、私どもとしても何とかお助けしたいと、側面的にではございますけれども努力はしているわけでございます。近く交渉が再開されるということでございまして、少し道が開けることを期待しているわけでございます。
  230. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私どもは領海と二百海里の問題について外務省の見解をしばしば承っておるわけですが、いずれにしましても、もしわが国の主張、立場が非常に問題があるということであるならば、この問題について日ソ、ソ日の七十八条と同じように双方の立場を損なうものではないという原則を政府間で打ち立てなければいかぬではないか。でないとなかなか問題は進まないのだと思うのですよ。でなければ、民間協定なんですから、アメリカあたりなんかの民間協定というのは日本みたいに厳しくないのでありますけれども、民間協定であっても、ソ日、日ソと同じように領海であろうと二百海里であろうと水域については変わりがないわけでありますから、そういう意味でソ日、日ソの七十八条と同じような面が確認されれば、私はそう問題ないというところで踏み切るべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  231. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 私どもの考え方といたしましては、日ソ、ソ日にはもちろん例のディスクレイマー条項というものがあるわけでございますが、これはあくまでも二百海里水域、経済水域についてでございます。片や貝殻島につきましては、これはまさに領土権そのものに影響してくるということで二百海里水域とは性格を異にするということでございまして、日ソ、ソ日のフォーミュラをそのまま適用することが理論的に一体可能かどうかというところまでさかのぼりましていろいろ検討しているわけでございますけれども、残念ながらいままでのところ、どうもやはり日ソ、ソ日のフォーミュラを適用することは適当でないという結論になっているわけでございます。
  232. 岡田利春

    岡田(利)分科員 先般も質問しましたように、コンブ操業というのは自由操業なわけです、これは明らかであります。かつてはこれは四島の水際まで行ってもいいのだ、こういう見解を示したこともあるのですが、今日では余りそういうことも言わないようになってきているように思うわけです。  そこで、では、私的な契約でそこの漁民が行ってコンブを採取してくる――もちろん大水時代は外為法の貿管令の適用を受け、大蔵省の関税法の適用を受けていたわけです、そういったてまえになっておるわけですよ。だが、もう自由操業なんですから、今度は本当にごくグループ的な私的契約で行ってコンブを採取してくるという場合には、これはいかんともしがたいと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  233. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 いま話し合いが進められております北海道水産会と先方とのいわば民間ベースの協定というものも、ある意味では私的契約と観念し得るものかと思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、せっかく地元の関係の方が北海道水産会という団体を通じまして数年来ソ連側と苦労を重ねておられるわけでございますので、そのような形式の中において本件が解決される、それがまた一番望ましいし、それ以外の方法はちょっと考えられぬのじゃないかと考えているわけでございます。
  234. 岡田利春

    岡田(利)分科員 しかし、北海道水産会も外務省と幾ら相談してもなかなか知恵が回らないし、相手方もあることでありますから、問題打開ができないとすればこれは断念せざるを得ないのじゃないでしょうか。そうすると、どういうグループか知らぬけれどもとにかくそこで安全に操業できるという条件だけあればいいわけですから、その自由操業であるコンブ業者がコンブをとってきて陸揚げしてもどうしようもないわけでしょう、その場合には。これは罰することができますか、いかがでしょうか。
  235. 中島達

    ○中島説明員 漁業関係の法令におきましては、先生指摘のように自由漁業でございますので、特段これに対する罰則というものはないというのが現状でございます。
  236. 岡田利春

    岡田(利)分科員 終わります。
  237. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて岡田利春君の質疑は終わりました。  次に、井上普方君。
  238. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、あなたは三月に入ったら訪韓されるそうですね。全斗煥大統領がアメリカへ行きまして、ワシントンのプレスセンターで、韓国は日本アメリカの防波堤と言って演説したことは御存じですね、これは有名な話なんだから。新聞によく出ていた。ところがこの間、私は直接大臣の言明は承っておらぬのでございますが、訪韓をされた際には、日本の安全保障の問題についても韓国と御相談になるという話を聞きまして、非常に危惧の念を深くしておるのでございますが、韓国へ参られますと、安全保障問題についてお話しになるおつもりでございますか、いかがですか。
  239. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は三月二日に立ちまして大統領の祝賀式に出ます。そのときに議題を決めてどうというようなことは言っておりませんが、この間日本に来ております崔大使に話しまして、議題は何も決めないが、率直にどんな問題でも話し合おうじゃないかと私は思っている。そして向こうの外務部長官との話し合いは当然やるつもりでございます。あと総理、副総理、それから大統領との話し合いをする。まあ表敬になりますか、その辺の時間が決まっておりませんが、そういう予定でおります。  ただ、議題は何も決めておりませんので、そういう話が出るかどうかはわかりませんが、きょうもこの席でお答えしたのでございますが、米韓は米韓、日米は日米ということでございまして、日本の防衛というのは、日本を守る個別自衛権という範囲でございますので、私は行きまして、先生質問のようなことをこっちから求めて話をしようというようなつもりはないということを午前中もお答えしたのでございまして、いまもそういう気持ちでございます。
  240. 井上普方

    井上(普)分科員 ところが新聞に出ているのです。大臣は日韓外相会談へ出られると、朝鮮半島の安全もこれまた協議すると出ているのですよ。これは十九日の新聞です。
  241. 伊東正義

    伊東国務大臣 それは表現が少しまずかったのかもしれませんが、私は、朝鮮半島の平和ということは、アジアにとりましても日本にとっても非常に大切なことだ、朝鮮半島の平和ということを言ったのでございます。それで米韓の中でも、大統領がどこへ行っても、ピョンヤンへ行ってもいい、首脳会談を提案したということで、それは支持するということが出ておったのでございまして、私は朝鮮半島の平和ということを言ったのでございます。表現がちょっとまずかったように出ているのでございますが、真意はそういうことでございます。
  242. 井上普方

    井上(普)分科員 それならば安心いたしますが、朝鮮半島の安全についてとおっしゃっているのです。「朝鮮半島の安全問題についても韓国側と率直な意見を交換したいとしている。」、こうある。これは、あなたはそういうおつもりで行かれるのだろうと思いますので、せいぜい平和のために御努力を願いたいと思います。  ただ、向こうさんが、プレスセンターの演説におきましても、韓国は日本アメリカの防波堤であるということを堂々と述べられておる、その中にあなたは飛び込んで行かれるのだ。あなたは平和のために行かれるんだとおっしゃいますけれども、そこらあたりのお心構えがなければちょっとむずかしいんじゃなかろうか、危険な話になるんじゃなかろうか、あなたの意図しない方向に進むんじゃなかろうかと思いますが、どうぞございますか。
  243. 伊東正義

    伊東国務大臣 その点は十分気をつけて向こうと話すつもりでございます。そこの安全という言葉は、私はちょっとおかしいなと思って聞いているのでございますが、朝鮮半島の平和ということを言ったのでございまして、話すときはそれを主にして話すつもりでございます。
  244. 井上普方

    井上(普)分科員 せいぜい御努力を願いたいと思うのです。と申しますのは、いまも私は防波堤という言葉を使いましたら、いや、防波堤ではなく韓国は日本アメリカのとりでである、プレスセンターではこう言っているのです。これはただごとならぬことでございます。そこへあなたは飛び込んで行かれて、向こうさんはとりでのつもりでおるのですから、日米あるいは米韓の間に安保条約がある。防衛条約がある。これが三角関係――アメリカ中心にして分かれておりますが、日本と韓国との間の安全保障と申しますか、防衛問題が直接結びつく可能性すらある。それをまた全斗煥は望んでおるんだろうと私らは思いますので、非常に危ないところに飛び込まれるのですから、よくよく心してしかるべきだと私は思うのです。ここらの御決意のほどを承りたい。
  245. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃるとおり心して行ってまいります。日本アメリカということで、日米安保ということもやっているわけでございますから、十分心して行ってまいります。
  246. 井上普方

    井上(普)分科員 さて、そこで次の問題でございますが、レーガン政権になりましての予算案ができまして、大分問題になってきて、特に対外援助が二六%も削除、もう少し違うようでございますけれども、大きく出てきている。その対外援助を削除いたしますと、今度日本に肩がわりする意向があると新聞紙上報じられておるのでございますが、こういう情報は得られておるのでございますか。
  247. 伊東正義

    伊東国務大臣 この間の財政再建、経済再建計画でははっきりわからぬのでございまして、これからの具体的な予算が出てみないとわかりませんが、私どもの推察では、ことしといっても八一年の予算でございますが、カーター政権がもっと対外援助をふやそうということで出した。そのふやそうというのを今度のあれは減らしている。集計してみれば、八一年よりも八二年の予算は減らないんじゃないかというようなことをいま推察しているのでございますが、正確にはまだわかりません。しかし、カーター政権が当時出したものよりは減らしていることだけはわかるわけでございます。カーター政権は八一年度のものよりもふやそうといって出したものを、ふやそうという部分は減らしているというふうに私どもは了解しております。  アメリカ日本に対して経済援助の肩がわりを何か言ってきているかということでございますが、まだそういうことは全然ございません。
  248. 井上普方

    井上(普)分科員 まだはっきりわからぬというのは本当ですか。対外援助がどうなるかまだわからぬのですか。
  249. 伊東正義

    伊東国務大臣 もしも数字でございましたら政府委員から申し上げますが、カーター政権のときには八一年度のものよりももっとふやそうと言って一応出したわけでございますが、そのふやそうというものを減らしているということはわかるのですが、八一年のものと比較して、今度レーガン政権が言っているものが同じなのか、多いのか少ないのかということについて、あちこちに経済援助というのが入っているものですから、正確にまだわからぬ点がございますが、私どものいまの推察では、カーター政権の時代のものよりは若干はふえるんじゃないかというふうに見ているわけでございます。
  250. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、ワシントンに日本大使館というのはあるのですか。あるならそれぐらいのことはわかりそうなものだと思いますが、どうなんです。
  251. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先ほどの大臣説明になりました対外援助の金額の問題でございますが、実は三月十日に予算教書が発表されます。その予算教書を見ないとわからない点がございますが、二月十八日に公表されました経済再建計画におきましては、大臣からお話しございましたとおり約二六%引いているわけでございます。この二六%を引くもとになりました七十二・五億ドルというのは、カーター提案の九十二億ドルの一部分でございます。現在私どもの得ております情報では、二六%を引きますと約五十四億ドルになるわけでございますが、この五十四億ドル以外に経済援助と難民援助がどうなるかという点がはっきりわからないわけでございまして、この点は三月十日に発表されます予算教書を見ればはっきりするものと、こういうふうに考えております。
  252. 井上普方

    井上(普)分科員 日米というのは、あれは私らもっと密接なものだと思っておった。予算教書が出て初めてわかるというんだったら、これはともかく日本アメリカとの間はどこまで密接なのかわかりゃせぬ。密接だ、密接だというが、それじゃこっちから向こうにおかぼれしておるだけじゃないんですか。どうもそんな感じがしてしようがない。予算教書が出たときはだれでもわかるんで、いま日本予算案を審議しておる最中だ。アメリカの経済援助、これまた日本に非常に影響のある問題だ。アメリカの肩がわりを、アメリカは国際機関を通さず二国間でやろうというんでしょう。そしてアメリカの力を誇示さしてやろう。いままでの人道上の経済援助というのは大体打ち切ってやろう、こういう意図がレーガン政権には出てきているんでしょう。新聞紙上にはそう出ている。予算教書が出なきゃアメリカの情勢がわからぬぐらいのところで、一体ワシントンの日本の大使館は何をしているんです。
  253. 伊東正義

    伊東国務大臣 どうも手厳しい御質問をいただいたわけでございますが、向こうでも正確につくるのは予算教書となって出るわけでございますが、その前の段階でいろいろな考え方をこの間経済再建計画の中で言ったわけでございます。  いま政府委員が言いますように、難民の問題でございますとか経済援助の一部約二十億ドルがあるわけでございますが、そういうものについては今度は触れていないわけでございます。ですから、いま言いましたのは概算ということで途中の、しかし考え方は出ているということで私ども見ておるわけでございますが、あちこちにこれから入る予算を集計してみて、本当によけいなのか、減ったのかということを正確に言うには三月十日の教書を待つということを申し上げたのでございます。いまのわれわれの推察、恐らく間違いないと思うのでございますが、これでは八一年度よりは減っていない、若干はふえているだろう、しかし、カーター大統領がふやそうと思ったような、そういうふうにはふえていない、こういうことを申し上げたのでございます。
  254. 井上普方

    井上(普)分科員 さて、そこで大臣日本予算編成の際のことを考えていただきたい。  日本の防衛費をともかく大幅にかさ上げしろということをアメリカは強く言ってきた。あるいはまた中期業務見積もりの一年繰り上げをやってくれということ、あるいはGNP比にして一%以上にしてくれということを盛んに日本に対して言ってきた。予算編成の途中ででも、これじゃいかぬと言ってアメリカから茶々が入ったやに私らは承っておる。そこまでアメリカ日本に対して厳しい注文をつける。日本は注文をつけるんじゃない、アメリカの考え方それ自体がわかってない。これで日米の友好が保てましょうか。どうです。アメリカの意図というのは、経済援助にいたしましても大体こういうものだ、あるいは日本に肩がわりしてもらわなければいかぬところがあるかもしらぬ。もうすでに言ってきているんだろうと私らは思う。言ってきてないと頭を振っていますが、(伊東国務大臣「本当です」と呼ぶ)本当という言葉は私は承ります。あなたは正直な方だと私は知っています。しかし、日本予算編成のときのアメリカ大使館あるいはアメリカの国防省の日本に対するあの圧力を考えてみたら、アメリカ予算がどんなことになっているのかわからぬ。まさに日本アメリカとは大きな差があるじゃありませんか。これは属国扱いじゃないですか。ともかく伊東外務大臣、私ある同僚議員に聞くと、あなたがつらそうな顔をするときは大体心にもないことを言っておるんだと言っていますが、いまあなたのお顔を拝見していますと、心ならずもつらそうな顔をしている。本当のことを言ってみてください。これは外交機密でも何でもないのですから。
  255. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  アメリカ予算局の考えで経済援助を減らしそうだということがわかったときに、日本側では大使館を通じまして、そういうことはこれからの時代に逆行することじゃないか、そういうことはおかしい、もっとふやすべきだ、減らすべきじゃないということを何回も申し入れしました。これは日本だけではなくて、実は予算局からそういう話が出たときにヨーロッパの国々も向こうに申し入れしたことがあるわけでございまして、それは考え方がわかったときには、日本でも言うべきことはアメリカに言うということで言っているわけでございます。  私がわからぬと言いましたのは、それじゃ一億ドル多いのか少ないのかというような正確な数字は、いまのところははっきりはしないということを言ったのでございますが、おおよその見当はそう去年より減るということはない、若干はふえているだろう、こういうことでございます。  防衛費のお話がありましたが、向こうから期待表明というのがあったのは確かでございますが、日本側でも向こうにこれはおかしいじゃないかということはちゃんと途中で言うべきことは言ったのでございます。でございますから、その点は一方的に言われっ放しじゃないかというお疑いでございますが、日本としては言うべきことは言っているということは確かでございます。
  256. 井上普方

    井上(普)分科員 まあ言ったということにしておきましょう。そうでなければ……(伊東国務大臣「言ったんです、本当に」と呼ぶ)しかし言ったんなら、もうそこまで来ているんだから、実はこうなりそうでございますという話もあってしかるべきです。追跡調査というのを外務省はやらぬのですか。物事をすべてやるときには追跡調査をやるのがあたりまえな話です。やってないじゃないですか。あなたが向こうに申し入れしてから何日ほってあるのです。やってないでしょう。どうも日本在外公館に対しては私は不信を持っておるんだけれども、せめてこのぐらいのことは言われてほしいと思うのです。
  257. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま先生質問の点につきましては、二月十八日に経済再建計画が発表されました直後に、経済協力局の方から在京大使館を通しまして私どもの懸念を表明したわけでございます。その後もアメリカ側といろいろと情報を交換しておりますけれども、向こうの方もまだ最終的に決まってない、三月十日の予算教書の発表を待ってほしい、こう言っておりますけれども、私どもの感じといたしましては、多少はふえるんではないか、先ほど大臣がおっしゃったとおり、そういう感じを持っております。
  258. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで大臣アメリカは国際協力機関の拠出金を減らそうというような話らしい。そして二国間の協力関係を増大さして、そしてアメリカ経済力、力の外交を展開しようというのがレーガンの考え方のように私らには見られてしようがない。そこで考えられるのは、国際協力というのは、もうおわかりのとおり、人道上の立場に立っての開発協力であるとか難民協力であるんだから、ここらあたりはひとつアメリカ側に強く要求することをお願いする次第であります。  年に一遍の分科会でございますので、まだまだ言いたいことはたくさんあるのでございますけれども、きょうは一つ、二つ私が痛切に感じておること、この間新聞に出ておりましたので申し上げたい。  それは日本外務省にはかなりの各省庁からのアタッシェの諸君が来ておる。ところがアタッシェの諸君とキャリアの諸君とがうまくいってない。新聞ではこう書いてあるのです。アタッシェの諸君はとにかく花見遊山のようなやり方で来ておるという、新聞記事には外務キャリアの言うとおりを書いているらしい。外務省OEは、「外交がふるわないのは、一つには第一線に素人がふえたからだ。」「奥さんを含めて外交官としての訓練ができていない。常に日本出身省庁を向いて仕事をし、三年たつと交代でまた素人が来る。一生に一度のレクリエーションのつもりの人もいる。」こういう認識でともかくアタッシェに出しておるらしい。  ところが私ら在外公館でお世話になる、海外出張すると。そうすると、まず第一番に私らが気づくのは、在外公館のわれわれ国会議員に対する過剰サービスだ。何とまあこれはひどい過剰サービスかいなということを私は痛感する。要求するのもおるんでしょう。しかし、日本国内へ帰って悪口を言われたらかなわぬというので過剰サービスをしておるらしい。私はそう感じて、このことは二回、三回この場で発言をしておる。ところが在外公館の諸君を比べてみると、アタッシェの諸君の方がはるかに全般について勉強しておる。各省庁から出て行っているのですから、警察庁から行っているのだったら治安関係を勉強しているのはこれはまた当然だ。しかし、その国の内情についてははるかにキャリアの諸君よりも勉強しておる。  こういうことがある。私はこの間バンコクへ行った。バンコクへ行って、私はドリアンという果物が好きなんでドリアンを食ってきた。そしてその晩外務委員会の諸君と一緒になった。ドリアンといううまい果物があるぞと言って私がほらを吹いたところが、そのときの参事官がすくっと立ち上がって、ドリアンというのはいまシーズンオフでございます。バンコクには全然ございません。私の辞書によりますれば、日本人はドリアンというのを好む人は二〇%しかございません。そしてこれは臭うございまして、とてもじゃないが日本人には合わないです。いまシーズンオフで全然ございません。こういうお話です。ほほう、今度は私の発言だ。私の辞書によると、ドリアンという果物は非常に美味なるもので、好む人もおるし好まぬ人もあるけれども、少なくとも好む人はこれに何するんだ。タイでは、これを品種改良をやって、においも少なくなるし味のいいのもつくっておる。産地はタイ国南部であると言ったらげっときて、それでもなおいまシーズンオフでございますからないと言うから、私はきょう午後三時どこそこで食ってきたまで言った。そうするとげっとなる。それくらいともかく庶民の実情を御存じないのがキャリアの諸君です。  なぜこういうことになるかといいますと、そして痛切に感ずるんだが、そこへ行かれたキャリアの諸君がその国に対する愛情を持っていない。これはここにおるキャリアの諸君に聞いておいていただきたい。ひどいものだ。余りにも侮べつ的な言葉を使っておったので、私はたしなめた経験もある。二年すればともかく転勤する、ほっておけば百何十人おる大使、在外公館の大使になってのうのうと過ごせるという意識があるのじゃなかろうかと私は思う。なければ幸いです。そして百四十人にわたるところの大使館のうちで、ノンキャリアの諸君が大使になっておるのは、今度高橋さんがデンマークの大使になられたので、わずか三人か四人じゃないですか。ともかくところてん式に大使になってしまうというので、キャリアの諸君はのんびりしておっても、やがてわしは大使になるわというような意識があるのじゃなかろうか。なければ幸い。そこに仕事に対する熱意というのが足らぬのじゃないか。その上に持ってまいりまして、ここに書いてある、キャリアの諸君の「奥さんを含めて外交官としての訓練ができていない。」という考え方、これがともかく非常にエリート意識のかたまりになっている。ここに日本外交日本外交と言いましても、このごろ私が外交官はのんびりしているわという話をしましたら、いや、外交官が忙しくなったときは日本は大変なんだ、のんびりしておるときが平和なときだ、こう言われました。なるほどな、逆説的にそういうことも言えるわなと思ったのではありますけれども、しかし、いまの外務省は果たしてどういうことなんだろうか。ここにも書いてございますけれども、やがてこのままであれば儀典と翻訳の仕事だけになるだろうというようなことも、私が言うのではないんですよ、新聞の記事で言われておる。本当にキャリアの諸君をそこに二年で転任さすというのはよしまして、もう少し長くおらして、そこで勉強さすというようなことの必要性があるのじゃないだろうか。それには国内における採用時の教育の仕方にも問題があるのじゃなかろうか。いままでは外国語を二カ国語以上でなければ採用しないなんという方針があったそうですが、これは変えたらしい。まことに結構なことだと思います。  私はアタッシェの諸君にいつも言っている。おまえみたいな優秀なやつはみんなともかく外務省のキャリアに転向せよ、日本で橋が少しゆがんだところで、道路がゆがんだところで日本の国は大したことはない。一番大事なのは日本外交なんだ、外交と教育ほど日本に必要なことはない。おまえみたいな優秀な者は外交官をねらえと、私はいつも冗談紛れに言っておるのです。しかし、それは日本という国がこういうような国でございますので、それで外交の重要さを私は痛感しておる一人のつもりです。もちろんいまの外交官に目覚ましい外交が展開されるならば、人員を三倍にし、予算を五倍にすることについても私らは賛成するのです。しかし、いまの外交官、キャリア諸君の行動を見れば、少なくとも私はその気にならない。心して日本外交を進めていかれんことを心から望みまして、質問を終わります。
  259. 伊東正義

    伊東国務大臣 いろいろ御注意ありがとうございました。私ども外交は本当に大切だということを考えまして、真剣に平和外交に取り組むつもりでございます。  いま外務省の人とアタッシェで来た人の話がございましたが、これはやはり両方気を使って本当に一本になってやっていくということが大切でございますので、私は出先に出たときに必ずそれを言っているわけでございまして、大使以下大使館員が心を一つにしてやっていくということが大切だということはよくわかります。先生がおっしゃったことは例外中の例外の人が中にあったのかなと思って私は聞いたのでございますが、大部分の人はそんな考えじゃなくて、本当に、瘴癘地にありましてもどこにありましても真剣にやっておりますし、私は御注意のようなことはないようにひとつ十分気をつけてまいりますが、今後とも温かい目で御支援いただきますことを最後にお願い申し上げます。
  260. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて井上普方君の質疑は終わりました。  次に、草川昭三君。
  261. 草川昭三

    草川分科員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  私は、海外経済協力の問題について若干お伺いをしたいと思います。  過日、鈴木総理大臣はASEAN五カ国の歴訪から帰られたわけでございますが、非常にそれなりの成果を上げられたという評価が出ておるわけでございます。特に、この訪問の中で問題になりましたインドネシアのアチエのプロジェクトの問題についてお伺いをするわけでございますが、どちらかと言いますといままで政府は工業化に対する援助から、農業や中小企業へ切りかえをするのではないか、こう言われてきておるわけでございます。今回、インドネシアで報告を発表されました、ASEANの尿素プロジェクトに九千万ドルの追加投資をされておる。これがいま触れましたように工業中心の援助から農業や中小企業への切りかえと一体どう関連をするのか、あるいはまた、なぜ九千万ドルの追加投資が必要なのか、私どもにとりまして非常に理解しがたい問題が多々あるわけです。  そこで、その問題についてお話をお聞きしたいと思いますし、さらに、いま各地の政権の基盤というのが、必ずしもASEAN諸国の基盤は安定をしておりません。これは、一つは工業化優先主義というものがもたらした現地でのひずみというのですか、格差が拡大をしておるのではないかという点にも問題があるわけでございますが、今回の追加投資はそういう意味で現地の二重構造の格差拡大につながらないのかということからお伺いをしたいと思います。
  262. 伊東正義

    伊東国務大臣 具体的な尿素の問題につきましては政府委員から御説明申し上げますが、今度鈴木総理が行かれました中でいわゆる工業プロジェクトに金額を決めて協力をすることにしましたのは、このインドネシアの尿素、それからマレーシアの尿素、二つの工場でございます。これはいずれも福田総理がおいでになりましたときにいわゆる十億ドルの工業プロジェクトの協力ということを約束されたものの、インドネシアが第一番目、マレーシアが第二番目に今度実現するわけでございますが、前の総理がお約束になったことを実行するということで、今度鈴木総理が行かれてやられたのでございます。  そういうことも、もちろん約束は実行するということとともに、鈴木総理は、農業とか中小企業とかエネルギーとか、あるいは人づくり、じみでございますがそういうことについて今後重点を置いていくということを言われたわけでございまして、これは実は前からの約束の実行が残っておりまして、それを取り上げたということでございます。
  263. 草川昭三

    草川分科員 そこで、いまの鈴木総理が新しく従来の路線からまた違った意味での問題提起をされたということは私どもも理解をしておるわけでございますが、海外援助の推移を見ますと、倍増というのですか、非常に大きくなってきておるわけです。五十六年度の予算で、経済援助というのは一般会計だけで約四千二百億円と言われておりますし、これは昨年に比べますと一一・二%のアップになっておると言われておりますが、財政投融資等を含めますと幾らくらい去年に比べてふくらんでおるわけですか。
  264. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先生指摘のとおり、一般会計につきましては四千二百五十四億円でございますが、私どもがODA事業予算総括と申しまして全体のODA予算の推定を行っております、それによりますと、五十六年度政府原案には全部は入っていないわけでございますが、私どもがODA事業予算として考えております数字は八千八百八十八億円でございまして、五十五年度が八千四百二億円でございますので、五・八%の伸びになっております。
  265. 草川昭三

    草川分科員 いずれにしましても、伸び率というのは高いものがあるわけでございますが、その金が本当に現地の民生なり社会的に役に立つような形で投入されておるかどうかが基本的な問題だと私は思うわけです。  そこで、とかく海外経済援助の問題については商社の介入が非常に強い面があると言われております。一九七六年の二月に第一回のASEANの首脳会議でこのインドネシアのアチエのプランが出たわけでございますが、かなり日本側の商社ペースで基本的なマスタープランが組み込まれているということが伝えられております。このような経済援助というのはもちろん政府間ベースが基礎でございますが、実際仲立ちをするのは、商社がどの程度の影響力を与えるものか、全く商社というのは影響力を与えないものかどうか、お伺いをしたいと思います。
  266. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お尋ねのインドネシアのASEAN尿素肥料プロジェクトにつきましては、七八年の二月から十一月まで、国際協力事業団からいわゆるフィージビリティーの、経済合理性があるかどうかという調査を行ったわけでございます。この調査に従いまして向こうのインドネシア政府から要請がございまして、その結果資金協力をしたということでございまして、私どもといたしましては、この開発調査の結果に従って円借款その他の資金協力をするかどうかということを決めていくことにしておるわけでございます。
  267. 草川昭三

    草川分科員 商社の介入についてはお答えがないわけでございますが、実質的には、FSという調査が行われると並行して、実はそのプロデューサーというのですか、演出家として商社というものがいて、現地の要人と話をつけて日本から援助資金を持ってくるというような形で実際上のスケジュールが組まれていくと伝えられておるわけです。  私は、ここで具体的に、JICAの報告が一九七八年の十一月に行われて、そしてその翌年の七九年の二月にインドネシア側、いわゆるASEAN側の方から資金要請があり、七月に意図表明があり、十月に交換公文が締結をされた、これは間違いないと思うのです。ここまでは、それは政府間ベースで、いいと思うのです。しかし、わずか一年過ぎるか過ぎない間に、十一カ月目に、現地側からの追加要請ということで九千万ドルの、日本のお金で当時のレートでは約百八十九億円でございますけれども、追加要請があったということが、私にはわからぬわけです。どうしてわずか十一カ月の日程の間に九千万ドルも追加融資が出るのか。物価上昇を年一〇%とすると六千五百万ドルぐらいは要るだろう、それからバースというのですか、港の使用変更で千六百万ドル要るだろう、あるいは金利が上がったから九百万ドルだという説明でございますが、では、一体なぜ工事計画が二年おくれたのか、そんなものは最初からわかっているじゃないか、最初からそういう計画を出せばいいじゃないか、こういう疑問があるわけでございますが、ここらあたりについてはどのようにお考えになられますか。
  268. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先生指摘のとおり、七九年の十月に四百七十五億円に達する、輸銀と基金と両方でございますけれども、資金協力をいたしまして、翌年の八〇年の九月、インドネシア側から九千万ドルの資金要請があったことは事実でございます。私どもといたしましては、この追加資金要請の中身につきましては、先ほど先生のお触れになりましたとおり、いろいろとコストエスカレーションの問題であるとか、プロジェクトの仕様の変更の問題、あるいは建設期間中の利子がふえたという問題もございまして、九千万ドルの追加要求の中身を詳しく検討いたしました結果、インドネシア側の要請を妥当と認めまして、ことしの一月鈴木総理大臣がおいでになりましたときに、九千万ドル分、百八十九億円の資金の供与の意図表明をいたしました。  私から申し上げたいことは、当初私どもが四百七十五億円の資金協力の意図表明を行いました時点におきましては、先ほど申し上げましたJICAの開発調査の結果に基づいて向こうから資金の要請が来たわけでございますけれども、そのJICAの開発調査の金額は七八年初頭の価格を基礎にいたしまして、八二年初頭に操業が開始されるという前提ではじいたわけでございます。ただ、これが八四年まで二年延びるということもございまして、かつ同時に、この金額の内容につきましては単にインドネシアのみならずASEAN五カ国が内容について一応承認しているということもございまして、当時としては四百七十五億円の意図表明をしたわけでございますけれども、その後の事情の変更によりまして、その内容を詳しく調査した結果、九千万ドルの追加借款をしたということでございます。
  269. 草川昭三

    草川分科員 全然私の答弁になってないのですよ。だから、事情変更があったというのは、どうしてそういう事情変更があったのかということを知りたいわけですよ。このJICAの担当はどこになるのですか、通産省になるのですか。
  270. 梁井新一

    ○梁井政府委員 外務省でございます。
  271. 草川昭三

    草川分科員 外務省ですか。JICAが最初にFS調査をしたわけですから、そのときにもうわかっておるはずですよ、十一カ月目に追加をしてくるわけですから。そこが、私がこの一カ月間、実は詳しく経企庁の方にも、JICAの方にも、あるいは対外援助資金の方からもお伺いをしても、どうしてもこの点については私にわかったという説明がないわけですよ。そんなに簡単に追加融資というのは出るのですか。総理大臣が行くから願を立てなければいかぬというのはわかりますよ。わかるけれども、いま言ったように十一カ月目に、おい、ちょっと金利が上がったぞ、港が一つ追加だよ、ああそうかいそうかいというふうに、そんなに簡単に出るものでしょうかね。どうですか、その点は。
  272. 梁井新一

    ○梁井政府委員 円借款一般の問題でございますけれども、私どもこの円借款につきまして、資金協力の意図表明を行います前に、わが方の開発調査その他の調査の資料を詳しく検討いたしまして金額をはじくわけでございまして、決して簡単に出しているということではございません。
  273. 草川昭三

    草川分科員 私が基本的に聞いておることについてどうしても外務省は御説明がないのですが、実はその間に、いま私が質問をしてお答えのない商社の方々がかなり働いて、そして追加融資にこぎつけた。その一つの理由としては、実は交換公文が七九年の十月に適用されまして、その後、日本プラント協会とインドネシアのプスリという国営肥料会社で、コンサルティングというのですか、スペックというのができて、いわゆる一番札を昨年の十二月十六日に東洋エンジニアリングが落札をしておるわけです。その東洋エンジニアリングの落札の値段というのは、一番低い値段で一番札を引いたわけですが、JICAのつくったいわゆるFSの調査より高い入札値段で落ちたと言われておるわけです。その差額が追加投資になったと伝えられておるのですが、その点はどうでしょう。
  274. 梁井新一

    ○梁井政府委員 このJICAが調査いたしました開発調査は、プロジェクト全体について開発調査を行ったわけでございます。それで、このプロジェクト入札について外務省は必ずしも十分把握する立場にございませんけれども、私どもの聞いておりますことは、日本の企業が応札いたしました部分につきましては、必ずしもプロジェクト全額についての応札ではないというふうに聞いております。
  275. 草川昭三

    草川分科員 では、お伺いしますが、いわゆるJICAがつくった見積書の総額を東洋エンジニアリングが受注をしないというのがいまの答弁なんです。だったら、ASEANのアチエの会社、現地側の会社が請け負う部分が一〇%なのか、東洋エンジニアリングの請け負う部分が九〇%なのか、その割合はどの程度になっておるのですか、お聞きします。
  276. 梁井新一

    ○梁井政府委員 実はこの問題は、プロジェクトの入札のときに、ゼネコン分とそれからゼネコン以外の非ゼネコン分がどういう比率で入札したかということかと思うのでございますけれども、私どもが承知しております範囲では、これはイ側の説明によるわけでございますが、ゼネコン分の総コストに占める割合は約八割弱であるというふうに承知しております。ただ、具体的にゼネコン分に落ちますお金がどこから出るかということにつきましては、このASEANプロジェクトはASEAN各国も資金を出しておりまして、その資金から出るお金とわが方から出ます輸銀ないし基金の金といろいろと資金源が違いまして、具体的にどの数字が該当するかということは私どもも承知していないわけでございます。
  277. 草川昭三

    草川分科員 だから、承知をしていないからぼくたちにも答弁をしないわけですよ。だから、そういう程度のことで九千万ドルという追加投資ができますかということを聞いておるのです。その程度で幾らでもお金が出るのですか。私もそういうような資金計画で持ってきたら、金を貸しますか、お伺いしたいと思うのです。
  278. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先ほど承知していないと申し上げましたけれども、入札のときには比較ができないという意味でございまして、入札が終わりますと、その部分がはっきりと把握できるわけでございます。そういうことで、私どもといたしましては追加借款を意図表明するに当たりまして、向こう側からの要請の内容を調べました結果、妥当と認めてつけたということでございまして、その点に問題はないというふうに考えております。
  279. 草川昭三

    草川分科員 句も私、問題があると言っているのじゃないですよ。何も問題があると言っているのじゃなくて、内容を聞かしていただきたいということを言っているにすぎないわけです。だが、実際は問題があるのですよ。いま局長がいみじくもみずから言われたように、問題があると思うのです。わかれば、もう結果なんだから発表されたらどうなんですか。私どもにそういうことが発表できますか。
  280. 梁井新一

    ○梁井政府委員 この追加融資につきましては、まだ交換公文をつくる段階に至っておりません。交換公文は公表するわけでございますけれども、その段階に至りますと、一応金額の張りつけにつきましては今後のインドネシアとの折衝を踏まえて多少の数字が出てくるかと思うのでございますけれども、ただ、この問題は基本的にはやはり円借款の実施の段階の問題でございまして、具体的にどの企業がどういうように入札するかということにつきましては、私どもといたしましてはまだいまの段階では十分把握していない次第でございます。
  281. 草川昭三

    草川分科員 だから、外務省も具体的なことが把握できないにもかかわらず、九千万ドルの追加投資がどうしてできるのかということを聞いておるわけです。もちろん、いま九千万ドルは出したわけじゃないけれども、表明をしたわけですから、表明をした以上はいずれは渡すわけです。だったら、少なくとも――私は国民のそれなりの代表として、過去一カ月の間、この点についてどのように使われておるのか調べたのですが、現実には、TECと言われる東洋エンジニアリングのサブコントラクトというのですか、ゼネコンは、日本国内でほぼ決定しておるわけですよ。そしていろんな対応を立てておる。そして現地側の、たとえばインドネシア六〇%、マレーシア一三%、フィリピンは一三%、タイが一三%、シンガポールが一%、それぞれ出資をしている国も、どっちにしてもトータルがふくらむわけですから、九千万ドル、おい、おれたち本当にいずれはこの金を返さなければならぬ、おれたちに余り相談もなしに九千万ドルもふやしていいのかという、そういう不満を述べている国も現実にあるわけですよ。日本は非常に気前よくぽんぽん追加投資をするのだけれども、おい、知っているのか、われわれはそういう話を聞くんだがと。  きょうは余り時間がございませんけれども、いろいろと国際的な入札をする場合、あるいは現地のいろんな要人の方々には、アンダー・ザ・テーブル、テーブルの下で少なくとも五%は払わなければいけないだろう、いわゆる政治資金が要るだろう、そういうもののトータルが今度の追加融資の大きな主要な金額になっておるのではないだろうかと言われておるわけです。現実にまだ仕事が始まっていないのだから、そういうときに十一カ月しか日にちがたっていないのにぽんぽん気前よく追加投資をするという気持ちが私はわからぬわけです。しかも、いま内容をお聞きしても明確な御答弁がないわけですよ。私どもがこういうことを質問することが間違っておるのか、間違っていないと思うのですよ。その点について答弁を願いたいと思います。
  282. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先生お尋ねの九千万ドルの件でございますけれども、まず、インドネシア側から追加融資の要請が参ります前に、インドネシアはASEAN各国と相談いたしまして、ASEAN各国の同意を得て日本側にも要請してきたわけでございます。そういうことで、特にインドネシア以外のASEAN諸国に何かの不満があるというふうに私どもは考えていないわけでございます。
  283. 草川昭三

    草川分科員 いずれにしましても、審査調書というのでしょうか、外務省の方で当然相談される、あるいは経済協力基金の方でも調査をされるわけですが、基金は、まだどこがトップゼネコンというのですか、内容になったかわからぬというのが、私どもが事前に聞いた範囲の答弁でございました。そういうお話を聞きますと、私どもますます疑問に感ずるので、ひとつ審査をする経過なり調査なり、その資料の公開と経過報告を私どもはぜひ求めたいと思うのですが、その点について大臣から一遍お答えを願いたいと思うのです。
  284. 梁井新一

    ○梁井政府委員 一般論で恐縮でございますけれども、私どもはいわゆる開発調査という形でプロジェクトのフィージビリティーを調べるわけでございますけれども、その場合に、先方政府から調査の内容いかんによりまして公表を差しとめてほしいという場合がございます。特に、向こうの政府の政策上の問題であるとか、あるいは資源の賦存状況というようなことが入っておりますと、向こうの政府といたしましても、日本政府がその国の政府のためにつくるという資料でございますので、外部に公表できないという場合があることをぜひ御承知いただきたいと思います。
  285. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまだんだん御質問でございますが、その御質問の中にアンダー・ザ・テーブルというようなお話があったりしたのでございまして、私は経済協力はそういう疑いを持たれるようなことが一切あっちゃいかぬことだというふうに思っております。  それで、いまの御質問でございますが、これはもう少し私の方も資料等を用意しまして、先生にもっと納得のいかれるような御説明をする必要があるだろう、私はそばで聞いておりましてそういう感じがしますので、その点はまたもっと調査をはっきりしまして申し上げた方がいいというような感じを受けております。疑いを持たれるような経済協力はあっちゃいかぬということ、私は厳に慎まなければならないと思っております。
  286. 草川昭三

    草川分科員 ぜひいま大臣からおっしゃったことを私は具体的にやっていただきたいと思うのです。  それで、いまもお話がございましたように、現地の方からそのような経過の公表を差し控えてもらいたいという場合があるとおっしゃられましたが、それこそ現地の政権に現地の住民の方々の疑惑の目を与えることになるわけです。オープンにしなければいかぬ、向こうからそういうことを言ってきた場合には。逆にクローズテンダー、いわゆる発表しないような入札の経済協力は避ける、オープンでいく。そして、どういう国際入札が行われたのか。そして、日本国内の場合でもどのような商社が動いておるのか。  商社間同士が話し合いをして、ここのプロジェクトはおれがもらうと言えば、その商社が実際は全部仕切るわけです。それが今日、国際経済協力、海外援助という問題がとかく言われておるところでございまして、従来の路線の工業化から現地の民生が安定するようにと言われる政策というものは、まさしくそれを裏づけすることにもなるし、りっぱなことだと思うのです。しかし、このような特にインドネシアの場合なんかは、一つの島に現地の住民を移動するわけです。これは新しいところに工業開発をするといいましても、うまくいけばいいわけですけれども、もしも失敗をしたら大変なことになると思うのです。その、ときに、向こうの混乱に日本が力をかすということになるわけでありますから、私どもが何回か申し上げておりますように、事はきわめて重要でございます。  きょうは時間がございませんから、実はアルゼンチンのソミサの軍需工場の問題についてもちょっとお聞きしようと思ったのでございますが、これは非常に重要な問題でございます。商社の役割りというものについては御答弁がございませんでしたが、商社の役割りが一番大きいわけです。それが余り過大になれば、過日どこかの新聞にも出ておりましたが、外務省の役人がそれに巻き込まれていくというような失敗もあるわけです。これは重要な問題でございますから、ぜひとも経過の公表をしてもらいたい。私が一カ月間関係各省に当たっても、少しも納得ができません。この問題についての窓口は外務省でいいのですか、経済企画庁が窓口になってくれますか。
  287. 梁井新一

    ○梁井政府委員 円借款の供与を決定いたします場合に、外務省も当然、現地政府との間に窓口といたしまして、また国内でも調整を図るわけでございますけれども、それぞれの省庁の分野がございまして、外務省は主として交換公文を結ぶと申しますか、円借款を決定し交換公文を結びまして、その執行につきましては執行機関であります経済協力基金から出るという形になるわけでございます。
  288. 草川昭三

    草川分科員 いや、私はそういうことは知っておるのです。知っておるから外務省に聞いて、細かい話になってくると外務省はわからぬと言うわけです。そして、今度は基金の方へ行くと、うちは金を払う段階でないとわからぬと言って、そこで切れるわけです。私の質問が一カ月間かかっても納得できないわけです。だから何回が言うのですが、ぼくはだれに聞いたっていいのです。外務大臣に聞こうと、通産省に聞こうと、ぼくは構わぬわけです。わかる窓口はだれか。この一つのプロジェクトについて全部わかる担当は外務省責任を持つなら外務省責任を持つということを、ここで明らかにしてもらいたいと思うのです。
  289. 伊東正義

    伊東国務大臣 四省で相談をしてやっているわけでございますが、どこへ聞いたら一番わかるのだ、こういうことでございまして、お答えできないのじゃ困りますから、お調べして先生に御報告するのは外務省から御報告します。
  290. 草川昭三

    草川分科員 では、時間が来ましたからこれで終わりますが、本当に重要な問題でございます、こんなに九千万ドルの追加投資をする重要な問題だけれども、この時間帯で皆さんのようなりっぱな方がお見えになっても私は納得できない問題があるわけですから、ひとつわれわれのこういう疑問を正しく解明ができるように資料の公開だけはぜひお願いをして、終わりたいと思います。  以上です。
  291. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて草川昭三君の質疑は終わりました。  次に上原康助君。
  292. 上原康助

    上原分科員 大変短時間ですので、二、三点だけ、外務省と防衛庁にお尋ねをさせていただきたいと思うのです。  まず、最近わが国の防衛力の増強をめぐって大変議論が沸騰といいますか、多くなってきていることは御承知のとおりです。特に外務省までが、自衛力の強化というか防衛力の増強問題について、昨年の八月の五十六年度予算の概算要求をめぐった時点から非常な勢いで防衛費の増額問題等についても口出しをというか、言い方は悪いかもしれませんが、やってきている。アメリカ側はアメリカ側で、九・七%とか、あるいはそれプラスの人件費二・二%を含めてというふうに、外務省、防衛庁、アメリカ一体となった防衛力強化を達成するための予算増額の運動というものがなされてきたように受けとめざるを得ません。さらに、その間、日本側もアメリカ側も政権の交代があったことも御承知のとおりです。米側の対日要求というか対日姿勢というのは、私はレーガン政権になってからますます厳しくなってきていると理解をしているわけです。  そこで、端的にお尋ねしたいのですが、五月の七日、八日ですか、鈴木総理が訪米をなさってレーガン大統領と日米首脳会談をやるというふうに日程が決まったようです。その前段として、すでに大来対外協力担当顧問ですかが訪米をなさっている。また、これからもなさるようです。さらに、外務大臣も三月には訪米をする予定だと聞いております。  そこで、すでに予算委員会などでもこの日米首脳会談に向けてのわが国の議題といいますか、会談内容について大方出てきているようでございますが、改めてお尋ねしたいのですが、特に防衛問題についてどのようなお考えで今後日米首脳会談に向けて話し合いを進めていかれようとするのか、その基本的な点をまずお答えいただきたいと思います。
  293. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の予算の経緯のことの御発言がありましたが、あれは私が国務大臣として国防会議にも出ますので、日本の日米安保体制ということを円滑に進めるにはやはり国際信頼というものが大切である、その場合に、日本はほとんど努力をしないでというような感じを与えては円滑な運営にはまずい、信頼関係を失うおそれがあるということで、あれは私が国務大臣伊東正義として総理に申し上げたのでございますので、その点は、外務省まで全部挙げて防衛予算の獲得に努力したのだということじゃございません。外務省は平和外交に徹してやっていくということでございますので、その点はひとつ誤解ないようにお願いをしたいと思うわけでございます。  それで、アメリカに行っての態度でございますが、総理が五月においでになります、私が三月に参りますが、議題等はまだ一切決まっておりません。何もそういうことは決まってないわけでございまして、これからの問題です。私が行きまして向こうと意見の交換をして、首脳会談では恐らくこういう問題というようなことを、地ならしということになりますか、そういうことをやってまいるつもりでございます。  ただ、そのときに、恐らくいま問題になっているのは、経済問題では防衛の問題あるいは国際援助の問題、国際情勢になりますとアフガニスタンとかカンボジアの問題がございます。防衛の問題も恐らく出るだろうということは予想されるわけでございます。先ごろレーガン政権が経済再建の計画を出しましたときにも、歳出は減らす、しかし防衛費はふやすというような案が出ているわけでございますから、アメリカとしましては、同盟の国々に信頼されるアメリカになりたい、それには最大限の防衛の努力をするが、同盟の西側の国々も最大限の努力をしてもらいたいというような意味のことが、あちこちで、国防長官ワインバーガーさんとかそういうところから出ているわけでございますので、当然そういう話は、期待表明といいますか、出るだろうと思っております。  その場合の日本の態度でございますが、防衛の問題はあくまで自主的に判断する問題だというのはもう本当に基本原則でございまして、そういう基本原則の上に立って、日本の憲法で認められておりますのは個別的な自衛権だけでございます。あるいは自衛隊法がございますし、そのほかに非核三原則を堅持する問題でございますとか、あるいは軍事大国にならぬとか、専守防衛ということを日本としては常に言っていることでございますので、そういうことを踏まえまして、できることできないことはあるわけでございますから、その点ははっきりアメリカ側にも日本の考え方を伝えるというつもりで防衛の問題は話そうと思っておるわけでございます。
  294. 上原康助

    上原分科員 外務大臣のおっしゃることそのものは、一応言葉の上、御答弁の上では理解できないこともないわけですね。しかし、残念ながら実態は、いま御答弁があったように、よく平和外交とか、平和憲法下で専守防衛を国是としてとか、あるいは非核三原則を国是としてということをおっしゃるのですが、防衛力強化の実態をわれわれはそう見ていないのですよ、正直に申し上げて。いま議題は何も決まっていないと言うのですが、これは素人で考えても明らかですね。米側はすでに、防衛力増強を最大議題にしたい、着実、顕著な防衛力の強化を求める、これはレーガン大統領が二月二十日に、五月にワシントンで行われる日米首脳会談に向けての最重要テーマとして国防問題を取り上げるということをもう言っているわけでしょう。すでにホワイトハウスは発表していますよ。  そういう面と、もう一つは、昨年の一月にブラウン前国防長官が来日したときから、顕著で着実なということが出てきた。その後、大平さんが行かれてそれを約束をして、そして五十六年度予算の概算要求をめぐって日米間のやりとりがなされている。外務省までを含めてやっていないのだと言うのですが、アメリカ側の出している公式見解、非公式見解を見てみると、外務省から盛んにサインを送っているのじゃないですか、そういうふうに努力するとか約束めいたことを。  そのことはいずれ細かくお尋ねしますが、そうしますと、レーガン政権は財政再建問題でいまおっしゃるように支出は削減をしても防衛費はふやした。一方では対外経済援助費も減らしているわけでしょう、アメリカ側の。そうすると、防衛費の増額と対外援助の肩がわりを日本側に迫ってくるであろうということは当然予想されることじゃないですか。そして、最大の経済課題となっている車の問題とリンケージするであろうことも明らかですね。ここらの交通整理というものを、日本側の外交責任者として首脳会談に一体どう臨もうとしているのか、これこそ国民の前に明らかにすべき事項じゃないですか。
  295. 伊東正義

    伊東国務大臣 昨年のことからいろいろお話がありましたが、亡くなった大平総理は、真剣に検討するということは確かに言いましたけれども、そのほか具体的に中業の繰り上げ達成だとかあるいは予算の率をどうするとか、そういうようなことは一切言っていないのです。これは確かでございますので、私の言うことを信頼していただきたいと思うわけでございます。  それから、レーガン政権が議題を言っているじゃないかということでございますが、これも実はないのです。副報道官のスピークスという人が着実、顕著なということを言ったことがございますが、自分は議題として防衛の問題が取り上げられるということを言ったのじゃないということをはっきり明言しているわけでございまして、議題は本当にまだ決まっていない。ただ、私も先生と同じように、恐らく防衛のことは議題に出てくるだろう、それは言いました。そのとおり私も思っているわけでございます。  自動車とのリンケージ、連関の問題を先生おっしゃったのでございますが、私どもとしましては、この自動車の問題がそういうふうにならぬように、何とかひとつ経済問題で片づけたい。大来代表が去年、むずかしかった電電、たばこの問題を十二月末に片づけたのでございまして、私は自動車の問題もそういう形で、両方は不満でも、まあまあこの程度ということで何とか解決したいと思っておるわけでございまして、この点は通産大臣ともまた密接に相談をしていこうというふうに思っているわけでございます。問題がそういうふうに、一足す一が四とか五になっていくということにならぬようにということを考えておるわけでございます。  防衛の問題につきましては、向こうではそういう話をいろいろな場所でいろいろな人が言っておられることは確かでございますが、具体的にどういうことをということの相談は、あるとすればこれからだということは、これは向こうが公式に言っているわけでございますので、私どもとしましては、防衛についての考え方、防衛の哲学といいますか、そういうものをよく検討して向こうに臨むつもりでございます。
  296. 上原康助

    上原分科員 これはまたいずれ細かいところはいろいろお尋ねしますが、そうしますと、防衛問題と最大の経済課題はいろいろ絡むので、防衛も経済課題の一環と言えば一環ですが、車の問題はリンケージさせぬで解決できる、皆さんはそういうお立場、お考えなのですか。これは通産の関連もあると思うのですが、その点は、日米首脳会談までに車の問題は切り離して、防衛は防衛問題で首脳会談に持っていける、そういう確信があるのですか。
  297. 伊東正義

    伊東国務大臣 議題は決まっていないということを申し上げましたが、いま問題になっているのは、防衛がよく話が出る、自動車の問題が出るということは確かでございまして、特に向こうの議会筋等ではそれに関連していろいろ議論されているということは確かでございます。ただ、私どもはそういうことにならぬように、車の問題はその前に何とか片をつけたい、解決したいという希望的な考えを持っているわけでございますが、これは相手のあることでございます。向こうも運輸長官が中心になりまして、大体三月の上旬に一つの案を考えて大統領に出すのだということを言われているわけでございますから、そういうものも見まして、私が三月の末に行くわけでございますが、そういう問題につきまして私は何とか防衛とは関連させないで解決するということで最善の努力を日本はすべきだと思っているわけでございます。
  298. 上原康助

    上原分科員 それと、もう一点、外務大臣の御認識の仕方ということでお伺いをしておきたいのですが、特に防衛を中心としてレーガン政権誕生後の対日姿勢、それはカーター政権時代より強力な対日姿勢なのか、あるいはカーター政権延長上という認識で対米交渉するのか、そこらはどういう御認識なんですか。
  299. 伊東正義

    伊東国務大臣 防衛に対する期待は、カーター政権のときも着実、顕著というようなことがよく言われたわけでございます。レーガン政権になりましても一部の人はそういうことを言う、あるいは最大限の努力、こういうことを言ったということでございまして、私は、防衛に対するアメリカの期待というものはカーター政権時代とレーガン政権時代と同じだ、やはり最大限の努力といいますか、そういうものをしてもらいたいという期待は同じだろう、変わっていないというふうに思っております。
  300. 上原康助

    上原分科員 それは御認識の仕方としては非常に甘いとしかわれわれは受けとめられませんね。その点だけ見解が違うという点を申し上げておいて、これからのいろいろな推移を十分見守っていきたいと思うのです。  そこで、防衛局長も参りましたが、また防衛庁のときにお尋ねしたいのですが、私は日本側の最近のいろいろな言動などを見て、これからの防衛問題の展開を大変危惧する一人なんです。そうしますと、いま、議題は決まっていないけれども大体防衛問題が出ることは確実だ、これはだれが見たってそうですね。それで、具体的に五十六年度予算をめぐっても、中業の前倒しとかいろいろ言われましたね。また一昨日ですか、防衛庁長官の安保特委での所信表明など見ますと、従来防衛白書などで言われておった「防衛計画の大綱」、われわれはあれが平和時における一応の上限だという認識で理解をしてきたのですが、それは下限だというふうに言っているわけですね。これなども重大な問題、これはこれから相当議論を深めなければいかぬ問題だと思うのです。  そういうような御発言などを見てみますと、日米首脳会談に向けて皆さん事務当局としては、内局としては一体どういうものを提起をしていこうとしているのか。防衛大綱の見直し作業を含めて中業の前倒しなりあるいは補強、こういうのも具体的に首脳会談に向けてやろうというお考えなのか、念のために聞いておきたいと思うのです。
  301. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど外務大臣からもお答え申し上げましたように、いまの時点で私ども日米首脳会談に臨む準備をしておるわけではございません。ございませんが、いまのお尋ねの防衛の基本的な考え方につきましては、私どもカーター政権時代であってもレーガン政権時代であっても防衛庁としての考え方を別に変えるつもりはございませんで、従前から申し上げておりますように、「防衛計画の大綱」の線に沿って整備を進めていく、その進め方として、現在五三中業というものは防衛庁限りであるけれども、そういう計画を持って進めておる、それを最近の国際情勢にかんがみまして前倒しに努めていきたいということをかねて申し上げているわけでございますが、そういった防衛庁の基本的考え方、これは少しも変えるつもりはございません。
  302. 上原康助

    上原分科員 大臣が言ったことを防衛局長に聞くのもどうかと思うが。  そうしますと、ここで言っている「平時において保持しておかなければならない、いわば最低限の防衛力ともいうべき大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに」云々とありますね。これは従来の防衛計画大綱に対する防衛庁の認識というか、作業方針の変更を意味するのかどうか。
  303. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘大臣発言は、「防衛計画の大綱」の見直しとか、あるいは従前の認識を変えるということではございません。大臣の申しました趣旨は、あくまでも「防衛計画の大綱」というのは、先生いま御指摘のように別表にも兵力量がございまして、これはいわばわれわれの整備すべき目標であります。そういう意味においては上限でございます。その点は一つも変わっておりません。  ただ、大綱の中で言っておりますように、あれは考え方としまして、いわゆる基盤的な防衛力構想というものは情勢の変化に応じてエクスパンドすることを前提にしました平時における持つべきものとしての考え方を示しておりまして、情勢の変化に応じてエクスパンドすることを前提にした兵力量であるという意味においては、大臣が平時においていわば最低限と直言うべきという表現をされたわけですが、「防衛計画の大綱」が具体的な整備目標上の上限であることは申し上げるまでもないことでございます。
  304. 上原康助

    上原分科員 大臣、いま防衛庁の防衛局長ですから相当の責任担当者だと理解しますので、そういうことであるならば若干疑問はありますけれども外務大臣の訪米あるいは首相の御訪米も含めて、「防衛計画の大綱」の見直しとか、わが国の財政に著しいインパクトを与えるような防衛力増強要求に対しては、主体的、自主的立場できっぱり断るところは断るという姿勢はお持ちですね。
  305. 伊東正義

    伊東国務大臣 防衛の問題については、正式に決定しているのは「防衛計画の大綱」でございますから、それを達成するということで努力をしているわけでございまして、先ほどからお答えしておりますように、やはり日本の防衛は日本が自主的に判断して最終的に決めなければならぬ問題でございます。その場合には、先生のおっしゃったような財政上の問題もありましょう、あるいは国民的なコンセンサスもありましょう、法令の制約があるということは当然でございまして、そのことにつきましてはやはり日本が自主的に考えていくという態度で向こうへ話をするつもりでございます。
  306. 上原康助

    上原分科員 自主的に御判断なさるかどうかは後ほどまたわかると思うのですが、どうも外務省が自主的自主的とおっしゃる割りには、非常にアメリカ側のペースに巻き込まれているいろいろな材料もありますので、いずれまた議論したいと思うのですが、できるだけ国民の期待といいますか、非常に懸念を持つ国民の意向も御念頭に置いてやっていただきたいことを要望申し上げておきたいと思います。  次に、時間がありませんので、在日米軍基地と中東のかかわりは一体どういう御認識なのか、外務省、防衛庁にそれぞれ一言ずつお答えいただきたいと思います。
  307. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お尋ねの点が非常に抽象的でございますので、どういうふうにお答えしたらいいか、必ずしも的確なお答えにならないかと思いますけれども、在日米軍基地は安保条約六条にその使用目的を定めておりますように、日本の安全及び極東の安全と平和のために米軍に施設及び区域を提供しているということでございますので、米軍がその施設、区域を使っているのはあくまでも安保条約の目的に合致しているというふうに私たちは考えております。
  308. 上原康助

    上原分科員 何かと言えば安保条約、もちろん一応たてまえはそうでしょう。しかし、私がお尋ねしたいのは、去る二月五日、インド洋上に浮かぶ貯蔵基地と言われている事前集積船が那覇軍港に寄港していることは、皆さん御承知のとおりでしょう。これはアメリカ側も認めていますね、インド洋上の事前集積船グループの一部であるということは。そうしますと、皆さん安保条約の適用云々と言いますけれども、実際は在日米軍基地、特に沖繩の軍事基地は、インド洋上、ペルシャ湾といった中東とのかかわり合いも持っているということです。こういう使用目的にしたいという変更とか、そういった新たな集積船の点検修理場にしたいというアメリカ側からの申し入れが何か事前にあったのですか。どうなんですか、そこらは。
  309. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいまお尋ねの点は、いわゆる事前集積船マーキュリーが二月三日に那覇に入港いたしまして、九日に那覇を出港しております。それは事実でございます。  今回のマーキュリー那覇入港については、アメリカ側から事前に通告がございました。目的は、御承知のとおり現在、韓国においてチームスピリット81という米韓合同演習が行われております。この船もそのチームスピリット81に参加するために那覇に参りまして、装備品を積んで韓国に向かったということでございます。
  310. 上原康助

    上原分科員 ですから、在日米軍基地は中東基地ともかかわりがあるということはお認めになりますか。
  311. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現実の問題としてこのマーキュリーがジエゴガルシアを中心にしてインド洋上に展開しておる、その船が今回那覇に入港したという関係では確かに先生の御指摘のとおりでございますが、あくまでもチームスピリット81参加のために那覇の港湾施設を利用したということでございます。
  312. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、今後もこのマーキュリーなりそういった洋上集積船グループが沖繩の那覇軍港を恒常的といいますか、定期的に使用するという点については、どういうふうにお考えなんですか。
  313. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一般的に事前集積船が那覇の施設、区域内を利用することはあるであろうということは承知しております。ただし、具体的に今後どういう形態でいつまた那覇に入港するかということは、まだ承知しておりません。
  314. 上原康助

    上原分科員 これも時間がなくて非常に残念なんですが、皆さん、これはどう考えても新たな軍事展開なんですよ。私も沖繩に長いこと住んで、ああいう事態というのは初めてですよ。大臣、これは現地新聞に載ったものです。こういう砂漠の迷彩色をした戦車やトラックやいろいろな軍事物資が那覇港いっぱいに広がるということは、沖繩基地、在日米軍基地のまさに強化ではありませんか。RDF問題と重大にかかわっているということは素人でもわかるのではないですか。ここに最近の軍事問題の増強論や安保条約の変質、極東云々と言いながらもうペルシャ湾、中東一帯にまで深いかかわりを持ってきているということは、否定できない事実なんです。  そうしますと、那覇軍港は御承知のように条件つき返還なんですが、六、七年になっているけれどもその前提は立っていない、そのこととはどう関係するのか、これについてお答えください。
  315. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 那覇軍港が移設の対象になっていることは承知しております。しかしながら、同時にこの那覇港湾施設というものが在日米軍のために港湾施設として機能しているということもございますので、今回のマーキュリーの寄港によって那覇の港湾施設それ自身が変質したというふうには私たちは考えておりません。
  316. 上原康助

    上原分科員 もう時間が参りましたのできょうはこれで終えますけれども、そういう認識では、沖繩の基地だけではなくして、在日米軍基地の実体というのは大きく変化をしつつあるというふうに受けとめざるを得ないのですね。外務大臣はそういうことも十分頭に置かれてこういう問題に対処していただくことをきょうのところは要望して、終えたいと思います。
  317. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて上原康助君の質疑は終わりました。  次に、柴田弘君。
  318. 柴田弘

    柴田分科員 私は、一九八八年の名古屋オリンピックの招致の問題につきまして、外務大臣初め文部省の担当者にお聞きをしていきたい、このように思います。     〔主査退席、愛野主査代理着席〕  このオリンピックの問題は、大臣、御記憶がと思いますが、ちょうど昨年、私は地元の意を受けまして、何とか名古屋に誘致ということで、大臣が官房長官だったときにお邪魔をしました。大臣から、大臣も以前は名古屋にお住まいになっていたことがあったということで、非常に理解のあるお話し合いをさせていただきまして、私も喜んでいるわけであります。  最近、御案内のように、全国的な招致委員会も発足いたしました。そこで大臣から、大臣がこの招致委員会の最高顧問ということでございまして、非常に力強い誘致のための激励のごあいさつがあったわけであります。私どもといたしましても、非常に意を強くしているわけでございます。御案内のとおり、この八八年名古屋オリンピック招致問題は、昨年の十一月二十一日の閣議の了解を受けまして、同月二十六日に名古屋市及び東海三県がIOCに招致申請書を提出をいたしましたことにより、国家的な課題になりました。去る一月末には招致委員会も発足をいたしまして、IOCとIFから出されておりました質問書の回答書も決定をされまして、この回答書がIOCの事務局に届けられた、こういうふうに聞いております。この回答書には鈴木総理の確認書が添えられておるようでありまして、日本政府といたしましても、開催成功のために積極的かつ最大限の支援をする、こういう確認書というものが添えられているそうであります。私は、この八八年名古屋オリンピックについては、やはり何といいましても、八〇年代の世界情勢、これは政治的、経済的に緊張の方向に向かうと予想されている、そういった中で、アジア地域の安定というものが、世界平和の維持、世界経済の発展を図る重要な条件であるということは間違いないと考えます。したがいまして、この名古屋オリンピックの開催が実現した場合、その意義というものはますます大きくなると考えられまして、八〇年代のわが国外交政策においても重要な位置を占める、このように思います。同時にまた、世界に類を見ない高度成長を遂げてきたわが国は、その国際社会における立場を認識をし、経済協力はもとより、広く教育、スポーツ、文化等にわたる国際交流を通じて、国際関係の円滑化と世界平和の実現に寄与しなければなりません。このように、国際的な使命を果たしていく上におきまして、八八年の名古屋オリンピックを開催するということは、スポーツを通して人種、思想、宗教を超越した国際的な友好と親善をつくり出し、よりよき平和な世界の建設に大きく貢献するという意義があると私は考えます。  でありますから、この名古屋オリンピックの招致活動、そしてその開催実現というものは、やはり平和を希望する日本国民の総意として、八〇年代のわが国の平和外交の最大の課題、最大の政策の一つとして位置づけて展開をしていくべきである、私はこういうふうに外交政策との関連で考えるわけでありますけれども大臣の御所見をまずお伺いをしたい、このように思います。
  319. 伊東正義

    伊東国務大臣 名古屋のオリンピックの招致委員会ができまして、私も田中文部大臣と一緒に最高顧問になれということでお引き受けしたわけでございます。  いま先生がおっしゃるとおり、一九八〇年代というのは国際緊張がいろいろあると予想されますが、その中で、平和と友好の若人の祭典を日本、名古屋で開くということは、平和外交を主張している日本外交にとっても非常に大切なことだと、私はこれは先生と同じ意見でございまして、何とか名古屋に招致できますように、ことしの九月の末バーデンバーデンで決まるわけでございますから、それに向けて外務省としましても、招致委員会の御活動に対して最善の御協力をするという考えでおります。
  320. 柴田弘

    柴田分科員 それで、いま大臣もおっしゃいましたように、九月三十日のIOCの総会ですか、ここでどうしてもこれは当選をしなければならないわけであります。最近のマスコミ情報等々によりますと、今回、この八八年のオリンピックに立候補しているのは、名古屋、オーストラリアのメルボルン、それからソウル、アテネ、こういうふうに伺っているわけですが、メルボルンが、財政難といいますか、これを理由にいたしまして断念をした、こういうふうに言われておりますが、この点について、外務大臣の御判断はどのようなものか。  あわせて、アテネ、ソウル、これが立候補したわけでありますが、これらと名古屋との戦いと言ったらおかしいわけですが、アテネ、ソウルの準備状況、こういったものについて――日本の当選の可能性というのは、私は、メルボルンが立候補を断念したということでもう相当有利になった、こういうふうな判断をいたしておるわけであります。現実にロサンゼルスで行われておりますIOCの理事会においても、スポークスマンは、もう八八年は名古屋しかないんじゃないか、こんなふうに言っているようでございますが、この辺の御判断というのはどうでございましょうか。
  321. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生おっしゃるように、メルボルンが、連邦政府もメルボルンのオリンピックを支持しないというようなことを決めたというようなこともあり、メルボルン市の財政の問題等から大体断念をするというニュースは、私の方へも入っております。     〔愛野主査代理退席、主査着席〕 ただ、これはまだ正式にオリンピック委員会に立候補したのを取り消すということはやっておりませんので、そういう意味で、正式とは申し上げかねますが、十中八、九そういうことになるんじゃなかろうかというふうに思っているわけでございます。  そうしますと、残りはアテネ、ソウルということになるわけでございまして、三者で競うわけでございますが、いま先生がおっしゃったように、これは無記名投票で決めるわけでございまして、そういう意味で言いますと選挙かもしれません。選挙を最初からおれは勝ったと思うのは必ず負けるというような例がございますので、投票日の二、三日前に勝ったと言うのならいいのでございますけれども、いまからそういう気持ちを出しては大変でございますので、私は文部大臣にも、これは最後の最後まで引き締めてやらなければいかぬということを言っておるところでございますし、外務省の中でもいろいろなことでいま協力をしているわけでございますが、最後までこの協力は緩めないようにやって、何としても招致したいということでやりたいと思っております。
  322. 柴田弘

    柴田分科員 これはいま大臣おっしゃいましたように選挙と一緒でございますので、油断大敵、最後の最後まで気を引き締めてがんばっていただきたいわけでありますが、私ここで一つ心配をしておりますのは、ソウルが立候補したということでございます。やはり名古屋が当選するための絶対条件、これはアジアの票固めが大事じゃないか、こういうように考えるわけでございます。この辺の対応策。  それからもう一つ、記憶にも新しいわけでありますが、昨年、日本はモスクワ・オリンピックをボイコットいたしました。この辺の悪影響はないのか、後遺症はないのかどうか、これもあわせて御見解を承りたいと思います。
  323. 伊東正義

    伊東国務大臣 後の方の、モスクワ・オリンピックに参加しなかったのはたしか六十何カ国あったわけでございまして、そういうところには制裁とかそういうものは一切課さないというようなことをこの前決めだということが出ていたわけでございますが、私ども外国にいろいろ当たっておるのでございますが、そのこと自体が招致に影響することはほとんどないというような見通しを持っております。そういうことを言った人はごくわずかでございまして、むしろ関係ないだろうというのが大部分でございますので、その点は私どもはひとつ関係のないことを期待しながら、今後も奮闘するつもりでございます。  ソウルの問題はおっしゃるとおりでございまして、アジアから二つ立候補があるということは、選挙をやる上には有利な条件でございません。しかし、そうといって、韓国にいろいろなことで日本側の希望を述べるということもなかなかむずかしい問題でございますので、私どもどうやったら一番いいのか――しかし最後まで、立候補になっても負けないようにということで、日本の名古屋の有利なことを世界に紹介するということでいま正々堂々と戦って招致を決めてもらいたいな、こういうふうに思っておるところでございます。
  324. 柴田弘

    柴田分科員 それで今後九月までの、IOC総会に向けての具体的な対応策でございますが、聞き及ぶところによりますと、八十三名のIOC委員の投票によって決まるわけでありますが、七月、八月は何か向こうの方もバカンスというようなことで、やはり招致はここ二、三カ月が山場だ、こういうことでありまして、海外における誘致のためのPR活動あるいは情報収集活動、こういったことについて政府外務省が果たす役割りは非常に大きい、このように私は考えているわけであります。この具体的な対応策を、ひとつ簡潔で結構ですのでお聞かせいただきたいと思います。
  325. 天羽民雄

    天羽政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、これは九月三十日から十月二日の例のIOCの八十三名の委員の投票でもって決まるわけでございますけれども、いまおっしゃいましたように、確かに二つの面、一つ世界の情報、世界の動きというものを、私ども世界に指令いたしましてできるだけ情報を集めているということでございます。これは去年の暮れからすでにやっております。  それからまた、いま先生指摘のとおり、名古屋の知名度でございますね。相当知られておりますけれども、まだまだいまおっしゃいましたPRが必要でございますから、所要の手を打っているわけでございますけれども、基本的にはこれは民間の問題でございますから、IOCの日本のメンバーの方その他の関係者が世界のあちこちに行かれまして、こういう方面でも活動されますときに、私どもわきから便宜供与その他でできるだけ御援助いたしております。  また、IOCの有力なメンバーを呼ぶことが大事だと思いますので、この方も春から初夏にかけていろいろプランを立てておる次第でございます。
  326. 柴田弘

    柴田分科員 今後の具体的なスケジュールということですが、ある新聞社の全国世論調査によりましても、名古屋オリンピックの招致については、国民の八二%が知っておって六八%が賛成しておる。換言すれば全国民的な関心と期待が寄せられていると思うのであります。招致委員会も発足しましたし、政府の閣議了解も得られましたし、またIOCへの回答書も出した今日、この問題を、ただ名古屋市とか東海三県とか、そういう地元だけのいわゆるローカル的な問題ということでなくて、ナショナルプロジェクトとして取り組んでいくということが当然ではないか、私はこのように考えますが、その基本的な姿勢、もし何かありましたらお聞かせをいただければと思います。
  327. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、閣議了解もしたわけでございますし、やはり日本の全部の人が関心を持っていることでございますし、恐らく大蔵大臣予算の問題もそのときになれば考える問題も出てきましょうし、私はこれはやはりナショナルプロジェクトとして考えて、日本の八〇年代の本当に国際的な大きな催しとして国も協力していくということが必要だというふうに思っております。
  328. 柴田弘

    柴田分科員 そこで、一つ私は心配をしておるわけでございますが、今回メルボルンが断念をいたした最大の理由というのは、先ほど申しましたように財政負担の問題、財政難ということであった。それで、名古屋オリンピックの開催についての施設整備費、大会運営費、関連公共事業費合わせまして八千四百億円かかると聞き及んでおるわけです。このうち、現在の段階では、政府は国の負担分として主要施設整備費、これは三百八十億円だそうでございますが、この二分の一以内を補助する、こう言うだけで、経費の大部分を占める公共事業費をどうするのか、また公共事業をどう進めるかということについては、問題が積み残されているわけであります。  IOCへ回答いたしました回答書の内容、これは地元側が当初考えていたような規模ではもう間に合わない、一つは観客席の増設といったような規模拡大化を図らなければならない問題が新たに起こっておるようであります。地元住民といたしましては、やはりこういった点をとらえまして、財政負担というものが一体どうなるのであろうか、正直言いまして、こういうことを非常に心配いたしているわけでありますね。やはりこういった問題は、早急に政府部内で調整を図っていただきまして、開催が決定をした場合には、どういった内容でオリンピックを行うのか、これは地元の県や市等といろいろ御相談をいただきたいと思いますが、とにかくその内容について一日も早く地元住民に知らせていただいて、そして住民の積極的な協力を得られるような方向の調整というものが今後必要な作業になってくるのではないか、私はこのように思います。これは外務省だけの問題ではありませんが、その辺の御見解をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  329. 伊東正義

    伊東国務大臣 閣議で決めようということで、関係閣僚で前段の相談をしましたときに、大蔵大臣がその点に非常に関心を持っておりまして、ひとつできるだけ簡素にということを言ったわけでございます。また地元の方々も、簡素にしてやる、国の予算というものに大きな期待をかけることよりも、収入とか放送代とかそういうもので相当賄われるということで、みんなの考え方はなるべく簡素にということでやったわけでございます。銭のことは大蔵大臣でないとお答えできないわけでございますが、希望は、やはりオリンピック精神の原点に返って、華々しく、商業主義に毒されたような、そういうことのないように、ひとつなるべく簡素に、しかし、本当に厳粛なうちに、平和友好のうちにできるということが一番望ましいと私は思っておるわけでございまして、予算のこと等は大蔵大臣がお答えすることだと思いますので、その点はひとつ御勘弁を願います。
  330. 柴田弘

    柴田分科員 どうかひとつそういう点は、実現が決まった場合には政府部内での御調整を早急に御要望したいと思います。  それから、せっかくのチャンスでございますから、スポーツ課長さんもおいでになっておりますので、お聞きしていきたいと思うのです。  八四年のロサンゼルス・オリンピックに向けての選手の強化策の問題ですが、最近、日本選手の活躍ぶりが国際的競技において低調であると言われております。もちろん選手の養成には長年月時間がかかるというふうに思うわけでありますけれども、とりあえずは八四年のロサンゼルス・オリンピック大会、私は実現の可能性が強いと判断しておりますが、八八年の名古屋オリンピックに向けての選手層の充実強化に対する積極的な対応がいまから必要ではないか、こういうふうに思います。あわせて、それにつれての小中学校体育の見直し、これが必要になっていくのではないかと考えるのでありますが、この辺の御見解をお聞きしたい。
  331. 戸村敏雄

    ○戸村説明員 先生も御承知いただいておると思うのでございますが、最近の国際競技会における世界のスポーツのレベルというものは大変上がってまいりまして、従来のような形ではなかなか日本選手が勝てない。一部の競技種目を除きましては、なかなかいい成績を残すことができないというようなことが出てきております。  そういうことから、五十二年度からではございますが、日本体育協会に対しまして国庫助成を行い、競技力向上のための対策を行ってきたわけでございます。ただいまのお話にもございましたように、ロサンゼルス、現在仮定の話でございますが、さらに八八年の将来というものを考えまして、一昨年からジュニア層を対象にいたしました競技力向上対策に重点を置いた対策を実は考えてきておるわけでございます。そういうことで、先行きの問題につきまして、私どもも一生懸命日本体育協会と相談をしてやってきておるということを御承知いただきたいと思います。  それから、学校体育の問題でございますが、ただいまのようなジュニア対策の一環ということで、五十四年に保健体育審議会に御相談を申し上げました。その結果、児童生徒の対外運動競技の基準の改定を行いまして、中学生のレベルにおいても全国大会を開催できるように、また従来は、小学生レベルでは対外運動競技は一切行えないという規定になっておるわけでございますが、同一市町村内の学校あるいは近隣の市町村との間の対外運動競技のようなものについては実施できるような改定を行ってきておるということでございます。
  332. 柴田弘

    柴田分科員 では、時間があとわずかですので、最後に一問、戸村スポーツ課長にお尋ねします。  学校教育においては知育、体育、徳育、この三つのバランスがとれた教育が必要だというように言われております。高度に都市化をいたしました日本現状から見てまいりまして、これに順序をつけていくならば、やはり体育が基本ではないか。健康ということが第一だ。同時に、高齢化しますわが国の人口構成を考えてまいりますと、健康維持のために社会体育の重要性というものもますます高まっていくのではないかというように考えます。もし名古屋オリンピックが実現をしたならば、こういったことを勘案しつつ、ここで新しいスローガンのもとにオリンピック国民運動を展開してはどうか、こういうように考えるわけでありますが、いかがなものでしょうか。
  333. 戸村敏雄

    ○戸村説明員 ただいまお話がございましたオリンピック国民運動でございますが、東京大会の際には百七十の民間団体、それに関係省庁が一緒になって、国民の健康増進あるいは正しいオリンピックのあり方とか、いろいろと国民運動を展開してきたわけでございます。その成果は大変なものがあったというふうに私も認識をいたしておるわけでございまして、仮に名古屋オリンピックの開催が実現するならば、その節に関係省庁とも相談いたしまして、強力なオリンピック国民運動を展開していったならばいかがかというふうに考えておる次第でございます。
  334. 柴田弘

    柴田分科員 最後に一言大臣に要望しておきます。  大臣もいまおっしゃいましたが、選挙だということでまだまだ気は許せないと私は思います。あと残り少ない月でありますが、九月三十日に向けまして、どうか外務省としても在外公館等に一層訓令をいただきまして、ぜひともひとつわが国の威信といいますか、そういうものをかけましての名古屋誘致の積極的な運動の展開をお願い申し上げまして、質問を終わります。
  335. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて柴田弘君の質疑は終わりました。  次に、田川誠一君。
  336. 田川誠一

    田川分科員 中国の大型プロジェクトの建設中止の問題でちょっとお伺いしたいと思います。  この問題は、日中間の貿易の問題だけではなくて、将来の日本と中国との友好関係にもかなり影響がある問題だと思います。そればかりでなくて、これをこじらしていったり、あるいはまた中国の経済調整が挫折したような場合には、日本世界戦略にも影響を及ぼしかねない大きな問題だと私は見ているわけです。つまり、今度の中国プロジェクトの建設中止の問題は、貿易上の問題だけではなくて国際政治にも関係が出てくるおそれがある、こういうふうに私は見ているのですけれども外務大臣のこの問題に対する見方と申しますか、視点、そういうことを最初にちょっとお伺いしたい。
  337. 伊東正義

    伊東国務大臣 実は私も田川さんと同じような認識を持っております。でありますので、最初五つの企業に中止とか延期とかいうことが来たということで大きく新聞に出たわけでございますが、その段階で、これは単に両国の貿易関係ということだけではなくて、先生のおっしゃるような日中の友好関係に傷がつくというようなことになっては、日本から見ますと日中関係というのは単に経済関係だけではなくて広い意味、大きな意味を持つものでございますので、そういうことにならぬようにと思いまして、実は大来代表に行っていただいて、向こうの責任者と話してもらうということをやったわけでございます。  向こう側も、この問題で日中友好関係をきずつけるようなことはしないように自分たちも考えるということで、いろいろな損害補償の問題とか話があったわけでございますが、おとといも実は黄華外相の夫人が人口開発の会議に来ておられまして、黄華外相の伝言も私、聞いたわけでございまして、黄華外相にも伝えてもらいたい、その点は外務大臣も同じ考えだ、つきましては、いま技術輸入公司の方が来ておられ、民間同士の話し合いもしておられる、これはこれで結構でございますが、谷牧副総理とかそういう責任者が来て日本責任者と話されることも必要じゃないかと私は思う、やはり何としてもこれで日中関係に傷を残すようなことはすべきじゃないということを先方にも伝えたような次第でございまして、認識は一緒でございます。
  338. 田川誠一

    田川分科員 大変大きな立場からごらんになっていることは大変結構でございますし、またそういう考えで将来もこの問題を見ていただきたいと思うのです。鈴木総理大臣が数日前、この問題は経済問題として解決していくべきだというような趣旨を述べられたのを私、記憶しておりますが、それはそれなりに正しいやり方だと私は思います。やはりすぐ政府が出ていくということでなくて、日本の場合、企業ベースで中国とできるだけ詰めていくということをやっていくべきだと私も思います。ただ、私ども外野席から見ておりまして、果たして民間サイドで解決できるかどうかというのは、ちょっと危惧の念を抱かざるを得ないのです。ですから私、最初に外務大臣の考え方をお聞きしたわけです。  中国の首脳の方が、国際慣例に従って日本の企業に補償するということを大来さんに言われたようですね。大来さんからちょっと聞きました。しかし、この補償の額あるいは規模の範囲、それから中国側の支払い能力、こういうことを考えますと、いま申し上げましたように民間サイドで片づけるということは大変困難であると思うのです。特に日本の場合は私企業ですけれども、中国の場合は実質的には国家、国家権力を背景として公司が日本の企業とやっているわけです。ですから、経済サイドで中国側と話し合うというのはおのずから限界があるのではないかと思うのです。そういう場合に、政府としてはいま大変大きな立場から見ていらっしゃいますけれども政府が出ていく場合に一体どういう姿勢でこの問題に取り組んでいくお気持ちを持っていらっしゃるか、ちょっと抽象的な聞き方ですけれども、もう一度伊東さんの姿勢をお聞きしたい。
  339. 伊東正義

    伊東国務大臣 大来代表が行きましたときに、谷牧副総理、鄧小平副主席から国際慣例に従って損失補償をするという話があったのでございますが、それ以上詰めましてどういう範囲、いつごろというようなことは、大来代表からも具体的に細かく詰めるということはしておりません。でございますから、その点はいま抽象的な話になっておるわけでございますが、五つのもののいわゆる契約の破棄といいますか、中止といいますか、集めて試算すると、全部の場合は三千億で大体十五億ドルくらいかなということを言われるわけでございますが、さてこれをどうするかという問題です。  向こうは一義的に希望しておりますのは、これはやめることが本当は目的じゃないので、やはり続けていきたいのだ、それには、と言いまして、これは正式な提案ということじゃないのですけれども、融資の問題でございますとか、合弁出資の問題でございますとか、場合によっては日本では石油の輸入をうんとしておるので、その一部を原料に回してもらうことも考えられぬかというようなこともいろいろ話題に出たことは確かでございます。今度の輸入公司の人がどういう話を具体的にしますか、まだ聞いておらぬわけでございますが、総理が言われることはそのとおりでございまして、一義的にはこれは民間の企業のことなんだからそれで詰めるべきだということはそのとおりでございます。  その後の問題がどうなるかということは、どういう種類の問題が残り、それは金額にすればどのくらいのものであるかということが具体的に出てくるわけでございますから、そういうものの扱いをどうするかということを検討しなければならぬわけでございます。きょうは聞くところによると経済企画庁長官が非常に積極的な発言をきれたということをいまも新聞で見たのでございますが、私、先ほど言いましたように、そういうために将来に両国関係に禍根を残す、傷を残す、そういうことは何としても避けなければいかぬ、私はそういうふうに信じておりますので、そういう考え方を持って出てきた問題には対処するという、抽象的で申しわけございませんが、そういう考えでおります。
  340. 田川誠一

    田川分科員 いまの外務大臣のお答えになった姿勢というのは、総理ともちろん同じと見てよろしゅうございますか。
  341. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理とこの問題をそこまで詰めてまだお話は私はしておりません。関係大臣等とは寄り寄りにいろいろ相談していることはございますが、まだ総理にそこまで申し上げておりません。相談をしておりませんので、私がいま、総理の御意思はということをまだ言える段階じゃございませんが、私は私のような考えを総理にはそのときになりましたら申し上げようというつもりでおります。
  342. 田川誠一

    田川分科員 私が質問しますと、何か中国側の立場に立って言っているように誤解されると大変困るのですけれども、私はそういう立場で質問をしているわけではなくて、やはりあくまで日本の立場でやっていかなければならないし、一時的に変な処理の仕方をしても、長い目でこれを見ていかなければならない問題でございますから、私も中国側には厳しい目で見ているつもりでございます。  そこで、もう一つ伺いたいのは、いま外務大臣も言われましたし、大来さんからもお話を聞きましたけれども、中国側はプラントの建設を続けてやりたいのだというお話でした。果たしてそうでしょうか。この辺がなかなか判断のむずかしいところで私もわかりませんけれども、単に資金の問題、あるいは近代化を急ぐ余りこれを調整しようということでやられた中国側の処置か、それとも中国側の近代化に対する計画がかなり変わった、だから資金の問題や融資の問題ではなくて、中国の近代化に対する基本方針が変わったのではないかなという懸念もあるし、またそういうことも配慮して判断していかなければならない問題ではないかと思うのです。  そこで、本当に中国がこの近代化あるいはプラントの建設の問題について何を考えているのかということをもう少し見きわめる必要があるような気がしてならないのですけれども、一体いかがでしょうか。
  343. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうが言いました理由は、やはり民生の安定ということをもっと考えなければならぬと思うということで、農産物買い上げ価格を引き上げるとか、あるいは労働する人の賃金を上げるということをやらなければいかぬ、それにはお金がかかることだ、あわせてそういうことをやっていくとどうしても財政の赤字が出る、この赤字も始末をしなければならぬということで、どうしてもインフレというものを防ぐということから言いますと、大型プロジェクトに出しているお金を減らさなければいかぬのだ、それでこれはいま中となり延期なりするのだということが理由になっているわけでございます。  これは大来代表も言ったのでございますが、それはそれでわかるけれども、それじゃ賃金を上げたり農産物を上げて水準が上がったときに、金だけもらっても買う物がないということではインフレになることは確かなので、少し長い目で考えれば、やはり石油化学製品や何かつくって、それを農村なり何なりに売るという、目先だけでなくてもっと長い目で考えるべきじゃないかというような忠告も大来代表は言っておるのでございまして、テンポの問題はありますが、鄧小平さんと話したときは、まあ三年はかかるかな、しかし、こういうことはもとへ戻すつもりだということを盛んに言っておりましたので、いわゆる近代化の路線が変わるとか、そういうことはないというふうに私は見ておりますし、特に大来代表が行くときに二人で話しましたことは、これは何か政治が裏に関係している、国内のそういう問題からこういうことが来ているということだとまた厄介な問題がある、そういう問題も行ったらひとつよく話をして聞いてもらいたいということを私は大来代表に言ったのでございますが、帰ってきての報告では、そういうことではないと自分は思う、そういう話はなかったということを言っておりました。  慎重に対処せにゃならぬ、もう少し見なければならぬとおっしゃることは私もわかります。やみくもにということじゃなくて、そこは十分注意しますが、さっき言いましたような基本的な問題の認識は私は変わらぬのでございまして、何とかうまく解決の道を見出すべきだという強い考え方で取り組もうと思っております。
  344. 田川誠一

    田川分科員 もう一度確認いたしますと、政府のこのプラント問題に対する見方は、中国としては資金の問題その他が片づけば、中止になった、あるいは破棄しようとしているようなプラントの建設は続けていきたい、こういうような見方と解釈してよろしいのですか。
  345. 伊東正義

    伊東国務大臣 中国側は鄧小平さんもそういうことを言っておりますし、谷牧さんも言っておりますし、黄華さんの私への伝言もそういうことを伝えてくれということで夫人から連絡を私も聞いたわけでございまして、中国側は、大来君が会った範囲ではそういう先生のような見方をしている、考え方をしているということでございます。
  346. 田川誠一

    田川分科員 私はこれは非常に重要な問題で、やはり大来さん一人の判断、あるいは外務大臣が鄧小平さんと会ったのは大分前でしたね、秋でしたか。
  347. 伊東正義

    伊東国務大臣 十二月です。
  348. 田川誠一

    田川分科員 十二月。それで判断をするというのはちょっと安易なやり方じゃないかと思うのです。やはりこの問題は、もうちょっと中国側の真意、本心はどこだ、たてまえじゃなくて、本心はどこにあるのだということをお確かめになる必要があるのじゃないでしょうか。  私は実際にタッチしておりませんからわかりませんけれども、新聞やその他を見ておりまして、資金や融資あるいは援助の問題で片づくなら、そうむずかしい問題じゃないと思うのです。しかし、根本的に政策や方針が変わるということになると、なかなかめんどうだと思うのです。将来も大変だ。だから、そういう問題をいわゆる腹を割って中国の指導者と話ができる、そうしてしかも経済の問題に明るい方をやはり中国へもう一人か二人ぐらい、交流があるのですから、依頼をすべきじゃないでしょうか。たとえば日中経済協会の会長の土光さんだとか、あるいは従来覚書貿易をずっとやっていた岡崎嘉平太さんだとか、こういう方なら貿易の問題についても国際経済についてもかなり明るい方であり、そうして中国側とかなり腹を割って話のできる人である。しかもそういう方がわざわざ行かなくても、ちょいちょい行っているのですから、岡崎さんはたしか三月初めに行かれるようなことをちょっと聞きましたけれども、そういう方に、何も正式に代表としてやらなくても、外務大臣から、今度いらっしゃるけれどもちょっとこういうところを中国側に打診してくれぬかね、話してくれないかねというような、弾力性といいますか、少し多岐にわたる処置をおとりになるべき問題ではないかと私は思いますけれども、いかがですか。
  349. 伊東正義

    伊東国務大臣 お名前を挙げられた方にも私、会って、実はこの問題を話したことがございます。それ以外の方でも適当な方があるかもしれませんが、おっしゃいましたことは、よく慎重に見きわめて判断しろよということでございますから、私はその御趣旨は賛成でございます。岡崎さんは、いまおっしゃったように、間もなく向こうへ行かれるということを私も聞いておりますし、まただれかそういう適当な人があるかどうか、よく検討をしてみます。おっしゃることは、私も、慎重によく判断した上で、熟慮といいますか、そういうことでやれということでございますので、十分注意します。
  350. 田川誠一

    田川分科員 時間がありませんから、あと一つ二つ続けてちょっとお伺いいたしますし、私の意見も交えて申し上げておきたいと思います。  この問題が起こりましてから、日本側の方では、中国のやることは危険で何をやるかわからない、長崎国旗事件で民間貿易を断絶したり、あるいは文化大革命でいろいろ貿易が中絶されたり、そうして今度の問題だ、不信感が日本の経済界でもかなり出てきている。中国側の方では、どうも売らんかなで高いものを売りつけようとしているというような話を、大っぴらではないですけれども、ちょこちょこっと聞いてきた人があるようでございます。だから、この問題が起こりましてから、日本と中国との間に多少ぎくしゃくした面がないと昼言えないと思うのですね。こういう問題をこのままにしておきますと、せっかく日本が好意的に中国の困っている問題を誠心誠意何とかしてやろうと思っても、相手の国の国民感情というのは余りよくならないということでは意味がない。ちょうど日本と韓国との間に一時そういう問題もあったし、現に多少そういう傾向もなきにしもあらずと思うのです。せっかくここまで来たのに、こういう問題で国民感情がおかしくなるということはもったいないことだと思うので、この辺のことを政府は十分考えていっていただきたい。  それはまず、中国側に対しては、民間ベースで片づけろというのはいいのだけれども、いま伊東さんがおっしゃられたようなことが果たして中国側に伝わっているかどうかという心配があるわけです。中国の指導者にはあるいはわかっているかもしらぬけれども、一般の国民と言うとちょっと大げさかもしれないが、たとえば第一線で仕事をしている、この問題に携わっている人たちに、伊東外務大臣が言ったことが果たして伝わっているのかどうか、こういう心配が一つあります。この心配を消すには、思いやり、温かい気持ち日本政府が持っているんだぞ、補償は日本が、企業がめんどうを見て何とかやる、そういうような具体的なことでなくて、日本の総理大臣外務大臣も考えているんだなということを何らかの形でおやりになる必要があるような気がするのです。具体的に言う必要はないと思う。政府も心配だ、外務大臣も心配しているんだ、総理大臣も心配しているんだ、その一言で私はいいのじゃないかと思うのです。そういうことをわかるように何らかの方法をとるべきではないか、こういう席ですからあからさまなことをおっしゃることはできないと思います。それはそれで結構ですけれども、ひとつ頭に置いておいていただきたい。  それからもう一つ、今度は日本側です。日本側で心配しなければならぬことは、こういう問題が起こったのを一つのいい機会として、何か日中間の友好に水を差すような動きが相当出てきているのじゃないか。それが起こらぬようにやってもらいたい。それをやるには、中国側の言い分ばかり聞いていたのではだめだ。やはり突き詰めるところはとことんまで中国側と民間ベースで話をつけるということ、ちょっと私の申し上げることがちぐはぐかもしれませんけれども、なまぬるいようなやり方ではだめだ。ですから中国側にはとことんまで、なぜこうなったんだということを十分突き詰めてやっていく。日本側の日中間に水を差すような動きはかなり出てきている。雑誌を見てもいろいろな動きもあるし、右翼が非常に強くなってきている、こういう点を外務省方々が十分気をつけてやっていただくことを、もう時間が来て、しまいましたから、私の気持ちだけを申し上げまして、お答えをいただける点がありましたらそれだけをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  351. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  御忠告ありがとうございました。確かに中国側の指導者には伝わっているかもしれないが、もう少し下の国民といいますか、そういうものには伝わっていないじゃないかとおっしゃる心配もわかりますし、日本の中の反応もわかります。一回大公報に香港筋で出まして、私もあれを見てちょっと心配したのでございますが、先生のような御心配はごもっともでございまして、当然日本政府としても考えなければならぬことでございますので、これはよく検討します。
  352. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて田川誠一君の質疑は終わりました。  以上をもちまして、昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算外務省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前九時三十分より開会し、大蔵省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会