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1981-02-14 第94回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十四日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    石井  一君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       越智 伊平君    片岡 清一君       鴨田利太郎君    倉成  正君       後藤田正晴君    近藤 鉄雄君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田昇左右君       藤田 義光君    細田 吉藏君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       阿部 助哉君    石橋 政嗣君       大原  亨君    岡田 利春君       関  晴正君    中村 重光君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    神田  厚君       林  保夫君    岩佐 恵美君       栗田  翠君    寺前  巖君       松本 善明君    河野 洋平君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         行政管理庁長官         官房審議官   林  伸樹君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         行政管理庁行政         監察局監察審議         官       佐々木晴夫君         北海道開発庁総         務監理官    大西 昭一君         北海道開発庁計         画監理官    富士野昭典君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局審議官         兼物価局審議官 川合 英一君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁企画調整         局長      藤森 昭一君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁大都市圏         整備局長    伊藤 晴朗君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       萱場 英造君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁長官   渡部 周治君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省年金局長 松田  正君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省航空局長 松井 和治君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省計画局長 宮繁  護君         自治大臣官房審         議官      大嶋  孝君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     石井  一君   海部 俊樹君     近藤 鉄雄君   始関 伊平君     片岡 清一君   原田  憲君     原田昇左右君   野坂 浩賢君     関  晴正君   不破 哲三君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     上村千一郎君   片岡 清一君     始関 伊平君   近藤 鉄雄君     海部 俊樹君   原田昇左右君     原田  憲君   関  晴正君     野坂 浩賢君   岩佐 恵美君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   栗田  翠君     不破 哲三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  質疑に入るに先立ち、理事会の協議に基づき、武器輸出に関する問題について委員長より所見を申し上げることといたします。  一、武器輸出原則及び政府統一方針を貫徹するため、武器輸出に関し法的措置をとるべきであるという御質問趣旨を踏まえ、政府は制度上の改善をするとともに、なお新たな実効ある措置をとるべきである。  二、武器輸出禁止法の問題については、与野党間で話し合いを行い、衆議院予算審議終了までに結論を得るものとする。  三、政府は、事実関係に対する調査を行い、総括質問期間中に回答するものとする。  以上でございます。  この際、ただいまの委員長発言について、政府所見を求めます。田中通商産業大臣
  3. 田中六助

    田中(六)国務大臣 政府は、ただいまの委員長の御発言の御趣旨に沿い措置いたします。
  4. 小山長規

    小山委員長 鈴木内閣総理大臣しり発言を求められておりますので、これを許します。鈴木内閣総理大臣
  5. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま通産大臣から申し述べたとおりでございます。
  6. 小山長規

    小山委員長 総括質疑を行います。岡田利春君。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 本予算委員会憲法問題に関連する竹田発言、また武器輸出に関連する問題で中断されまして、途中、補正予算及び公聴会が入りましたから、ちょうど八日目で総括質問が再開をされたわけであります。私は、この際、端的に素直に御質問いたしますので、政府もきわめて明快な御答弁をお願い申し上げたいと思います。そこで、本委員会で問題になりました憲法武器輸出に関して、去る二月の九日、全国紙のある新聞社世論調査が発表されましたことは御承知かと存じます。  この世論調査の内容では、憲法第九条の改正については反対である、七一・二%であります。賛成は一三・五%、この賛成のうち女性の賛成はわずかに八・八%であります。一五・三%の人は答えていないのであります。また、武器の海外輸出問題については、反対が七四・九%、賛成はわずか一〇・七%であります。答えを寄せていないのは一四・四%、実はこういう結果が、ごく最近の世論調査の中で明らかになっておるのであります。  私は、このことは、今日、平和憲法というものが国民の間に定着をしておることを示しておるのではないか、同時にまた、武器輸出禁止に関してもこれはもう国民の合意が形成されている、このように素直に受けとめるべきであると思うのでありますけれども、この際、総理見解を承りたいと思います。
  8. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私も、その世論調査にあらわれたところ、岡田さんが見ておられるとおり、私も同感でございます。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど田中通産大臣から、委員長発言に対する所見が述べられたのでありますけれども、すでに、本委員会質問以外の事項についても、それぞれ疑点が述べられている問題があります。第一には、マレーシアにおける軍港建設に関する問題、あるいはまた、ソ連のウラジオストクに対する浮きドック輸出の結果、アメリカ人工衛星による調査では、これが空母ミンスクの修理に使用されたという問題、あるいはまた、参議院で問題になりました韓国に対する軍事技術協力の問題、そしてまた、日本製鋼見積書の問題では大商社がこれを認めるという問題も報道されておるのであります。したがって、今後の委員会の中で、いままで問題になってまいりました武器輸出のいろいろな問題の調査報告をするということを述べられておるのでありますけれども、これらについても通産省として調査をされて報告されるものと私は理解をいたしておりますが、結構ですか。
  10. 田中六助

    田中(六)国務大臣 岡田委員御指摘の三つのそういう問題につきましては、私どもも、いまも詳細な調べあるいは報告を行うよう指示しておりますけれども、今後十分な調査あるいは報告を受けたいというふうに思っております。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 歴代総理自民党総理の場合には、米国政権が交代をすると、まず真っ先にワシントンを訪問するということが従来のパターンであったと思うのであります。だが、鈴木総理は、ASEANをこのたび訪問されたわけであります。私は、それなりで評価できると思う次第です。  だがしかし、鈴木総理施政方針演説の中で、特に米国との関係に触れて、米国の強い指導力への期待、同時に日本期待される役割りを果たすという決意を表明されておるのであります。このことについて、国民はこの真意をはかりかねておるという面があるのではないか、こう言わざるを得ないと思います。  私は、すでに過去の動きになっておるパクスアメリカーナ、アメリカの支配による平和、そういう時代がレーガン政権の登場によって復活するのではないかという期待があるのではないかな、という勘ぐりも実は生ずるのであります。そうであるとすれば、私はこれは大きな錯覚であると申し上げなければなりません。総理は、ASEAN訪問の中で、特にわが国軍事大国にならない、同時に専守防衛に徹する、そして他国には軍事的脅威は与えないという立場を、繰り返し繰り返し表明されてまいっているのであります。私は、この立場米国に対しても一貫して貫き通せるかどうか、国民はきわめて注目をいたしておると思います。  いま、レーガン政権のそれぞれの首脳陣の高い調子の対ソ強硬論発言もあります。だが、米国内の世論も、これに対する疑念の表明も出ているのであります。あるいはまた、レーガン政権はともすれば東西問題の水平運動、横糸には強いけれども、南北問題の縦の糸は非常に弱い、そういう発言の前もすでに見られておるのであります。私は、そういう意味で、国際問題に対する日本アメリカ認識のギャップというものがあるのではないか、こう言わざるを得ません。したがって、鈴木総理は、日米間には率直な意見交換する、だが同時に、その中において、ASEANで述べた基本方針に立って、問題によってはぴしっと苦言を述べるところは述べる、あるいはまた、わが国として注文をつけるところについては注文をつけるという姿勢が今日一番望まれておるのではないか、私はこう思うのであります。  そういう意味で、総理から、国民のこういう疑念や心配に対する決意をひとつこの機会にお聞きいたしたいと思いますし、同時にまた、いま自民党内部でも、日米安保条約自動延長から十一年目を迎えている、この際これは再検討して改正すべきであるという声もあることは、総理も御承知かと思います、そういう意味で、日米安保条約については、鈴木内閣としては今日改正する意思はないということが表明できるかどうか、あわせて御答弁願いたいと思います。
  12. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の外交についての基本的な姿勢方針についてお尋ねがございました。また、今後の日米両国外交問題なり国際政治に対する考え方、私が施政方針演説で、レーガン政権の強い指導力期待するということに触れた問題についてのお尋ねがございました。さらに、日米安全保障条約を改正する意思があるのかないのか、こういう点についてのお尋ねであったと思います。  私は、今日、困難な問題を抱え、また激動する国際情勢の中で、自由陣営かなめであるアメリカが、レーガン政権、その後のレーガンさんや国務長官等発言を通じまして理解できるところでありますが、新政権は、一貫性信頼性を持った外交政策国際政治に対する対応をしていこう、こういう意欲に燃えておるようでありますが、私も、自由陣営の有力な一員であり、そのかなめにあるアメリカ政権は、そういう一貫性信頼性のある指導力を持って国際の平和と繁栄のために外交を進めてもらいたい、それに強い期待を寄せておるということを率直に申し上げたところでございます。  私は、いずれ、国会の御了承等を得ますれば、適当な時期に訪米をし、レーガン大統領並びに新政権首脳と隔意のない意見交換をいたしたい、こう考えておりますが、その際におきましては、日米両国の二国間の問題はもとより、両国の関心のある国際的な諸問題につきまして十分率直な意見交換をいたしたい、このように考えておりますが、その際におきましては、日本平和憲法のもとに、平和主義民主主義基本的人権の尊重という基本理念の上に立って、日本国際社会における役割りを果たしていきたい。先ほどもお話がございましたように、日本経済大国であるけれども軍事大国にはならない、専守防衛に徹する、非核三原則はあくまで堅持していく、近隣諸国脅威を与えるようなそういう軍事力を持つなどということはできない、日本に軍事的な国際間における役割り期待してもらってはそれは間違いである、日本平和国家として、経済的あるいは技術的その他の面で世界の平和と繁栄に貢献していきたい、そういう面を率直に申し上げたい、こう思っております。  したがいまして、現在、日米安保条約を改正するということは毛頭考えておりません。その意思もございません。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理ASEAN訪問の中で、特にバンコク・スピーチの中で、カンボジア問題に触れておられます。  私は、この際、政府見解を承っておきたいと思うのですが、民主カンボジア、いわゆる旧ポル・ポト政権でありますけれども、最近、イギリスがこの政権承認を取り消す、あるいはまた、オーストラリアは承認を取り消そうという態度を表明しておる。いわば西側に、この政権の支持を取り消すという傾向が広まりつつあるように、今日思えてならないのであります。このような理由は、わが国政府としてはどのように認識をされて受けとめられておるのか、この際、率直に承りたいと思います。
  14. 伊東正義

    伊東国務大臣 岡田さんにお答えしますが、いまの民主カンボジア政府、まあポル・ポト政権ということを言われているわけでございますが、ポル・ポトが過去において民衆、国民人民に対してひどい取り扱いをしたとかいろいろ言われるわけでございまして、そういう面から民主カンボジア政府承認について、取り消すとか疑問を持つとかというような声がぼつぼつ出ておることは、先生おっしゃったとおりでございます。  日本としましては、ASEAN考え方を支持していこうというのがインドシナ半島の平和に対する基本的考えでございますので、ASEAN諸国がそういう動きはしておりませんので、これの承認を云々するというようなことは考えておらないのでございますが、ただ一つ、民主カンボジア政府の代表をいまのポル・ポト以外の人にしたらいいじゃないかというような動きが若干出ており、新聞ソン・サンとかシアヌークとかいろいろな名前が出ていることは確かでございますが、いま日本としましては、ASEAN考え方を支持していくという基本的な態度を変えておりません。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま外務大臣が述べられたように、今日、カンボジア問題をめぐる情勢はいろいろな動きが出ておるわけであります。だがしかし、いわゆるポル・ポト派といいますか赤色クメール、大体一万五千から二万の武装軍隊を持っている、ソン・サン人民解放戦線は大体二、三千人の影響力を持っている、こう伝えられておるわけであります。いずれにしても、新しい政権が誕生したとしても、その主体赤色クメール主体になることは間違いがない、こう言わざるを得ないと思うのであります。  もちろん、わが国ASEANの動向を考えて、とこう言いますけれども、私は、ASEAN内部でも、フィリピンあるいはまたマレーシアあるいはインドネシア、そしてシンガポール、タイとの間には、若干の認識のずれもあるのではないかと思うのです。  また、伝えられるところによりますと、アメリカ政府の特使が今日ベトナムに派遣をされて、いろいろベトナム接触を持っているという報道もなされておるわけであります。わが国は、ベトナムに対しては経済援助を今日凍結をいたしておるわけですが、わが国がカンボジア問題をめぐって行動的にいわゆる期待にこたえるとすれば、やはり積極的にベトナムとの接触をまず開始しなければならないのではないか。政府はそういう動きを示しているのか、努力をしているのか、どう考えているのか、この機会に御説明を願いたいと思います。
  16. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  ベトナムとの関係を特に先生御質問になりましたのでその点を申し上げますが、いま経済協力凍結しておりますのは御承知のとおりでございます。またそれを解除する環境にないということで凍結をしておるわけでございますが、ベトナムとは御承知のように国交がございます。総理ASEANに行かれた後にもベトナム代理大使が二度外務省に来まして、その間のいろいろな経緯を説明してくれというようなことで説明をしましたり、あるいはベトナムに行っております野田大使向こうの要人と会いまして、総理ASEANに行かれたときの模様を向こうに話す等、いろんなルートを通して日本ベトナムとちゃんとした外交関係がございますので、それを活用して話していることは事実でございます。たとえば国際会議の場に着かせるとかいろいろな問題があるわけでございますが、そういう交渉を持って、ASEANと違って糸は若干細いことは確かでございますけれども、やっていることは、いま日本立場説明し、あるいはASEAN立場説明するというようなことを大使を通じてやっておるというところでございます。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般イスラム首脳会議が開催されて、従来同様にエルサレムの奪回の決議が行われて、今後三年間イスラムの行動的な方針としてまた決められたのであります。もちろん、わが国は、中東政策に関しては従来の政策を堅持するといったてまえは変わらないだろうと思いますけれども、その点はどうか。  同時に、いま最も注目されているイランイラク戦争でありますけれども、私は、イラクイランに勝てるということは絶対あり得ないと思うのであります。そして、このイランイラク戦争の終結というものは、今日、産油国であるという両国の地理的な条件から考えて、一九七五年三月に協定されたアルジェ協定、このアルジェ協定の国境画定というものを何らかの形で双方が確認するという段階が来ない限りイランイラク戦争は解決しない、こう言わざるを得ないと思うのです。したがって、これらの問題でそういう認識がお互いに生まれない限りイランイラク戦争は長引いていく、このようにも判断せざるを得ないのでありますが、この点について政府はどういう判断を持っておられるか、この際、承っておきたいと思います。
  18. 伊東正義

    伊東国務大臣 イランイラクの紛争解決の問題は世界じゅうが非常な関心を持ち、いろんな国際的な調停をしようということで、先生がいまおっしゃったイスラムあるいは非同盟あるいは国連というところで、国際的な何か仲裁か調停かという動きをしておりますが、先生おっしゃったように、イランイラク見解が非常に隔たっておりまして、なかなか調停の糸口がつかめぬというのが事実でございます。  実はきのうも私、イランから来ておられます宗教界の代表という人に会って、一時間ぐらい議論したのでございますが、これも、イラクが撤退をしなければいかぬということを盛んに言われる。三週間前ほどはラマダンというイラクの副首相が来まして、またその話もしたのでございますが、見解がこんなに離れていて、なかなか交渉のテーブルに着くという段階に至っておらぬのでございます。  私ども日本としましては、この紛争の解決に一番影響力があるというのは、やっぱり国連でありあるいはイスラム関係の国じゃないかと思っているわけでございまして、日本としてはイランイラク双方に早期解決ということを話しておりますが、国際的な話し合い、調停の努力というのが一番私は効果があることだと思いまして、国連の非常任理事国になりましたので安保理事会の中で話をする、あるいはイスラムに呼びかけて、何とか調停の場に両方が着くような努力をしてもらいたい、国際的な努力に日本は積極的に参加してもいいし、支持するからということを実はやっておるわけでございますが、いま申し上げましたように、意見が非常に食い違っておりまして、なかなか話し合いの場に両方が着かぬというのが実情でございます。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国は、PLOをパレスチナ人民の代表として認めて、すでに東京事務所も開設されておるわけであります。  そこで端的にお伺いいたしますけれども、東京事務所というのは一九七七年、四年前に開設をされておるのであります。だがしかし、まだ外交特権を付与していないという状況にございます。また、アラブ議員連盟はアラファトPLO議長の招待をいたしまして、訪日が予定されておるのですが、日本側の準備が進んでいないのでこの訪問がどうなるかということも実は伝えられておるのであります。当初、議員連盟に対しては、政府も、議長が訪日をする場合には準国賓待遇として扱う、また総理も親しく会見をする、こういう態度を表明されておったように私は覚えておるのであります。こういう一連の態度について変更はないのかどうか、そういう態度であるかどうか。また、東京事務所に対しては当然外交特権をも付与すべきだと思いますけれども、見解を承っておきたいと思います。
  20. 伊東正義

    伊東国務大臣 PLOに対しましては、パレスチナ人の代表だということは言っております。これは有力な代表の団体だと認めておりますが、ただ、唯一合法ということは、これは日本が言うことじゃなくて、パレスチナ人が唯一のものであるかどうかということは決めることでございますので、日本はそれは言っておりませんが、有力な代表だということは認めておるわけでございます。  ただ、外交特権の問題は、これは国家を代表する外交使節でございますとか、あるいは国際機関というものに外交特権は認めているわけでございますが、PLOは国家代表というわけでもございませんし、国際機関の代表というわけでもございませんので、あの事務所ができるときから、外交特権は付与しないということで、話し合いの上で事務所を認めたという経緯があるわけでございますので、外交特権の問題はいま変える意思はないわけでございます。  それから、議員連盟の方々がアラファト議長の招請をしておられるということは知っております。これはわれわれは、政府が招待するということはできないわけでございますのでやっておりません。議員連盟が招待をやられるということを承っておりますが、来られればお会いする、お会いしていろいろ中東の和平について意見交換をするということはやるつもりでございまして、その旨は議員連盟の会長さんにも伝えてあるわけでございます。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 その場合には、もちろん準国賓待遇として扱うかどうかという問題についてもいま明確ではないし、総理自身も、積極的に、来日された場合には話し合いをする、会見をする、こういう御意思はおありですか。
  22. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま、中東紛争のできるだけ早い機会の解決ということが、世界平和の面からも望まれておるところでございます。そういうような観点からいたしまして、中東紛争の当事者の方々とは私もできるだけお会いをして、そして和平への貢献をしたい、このように考えております。  PLOのアラファト議長がおいでになり、私にぜひ会いたい、こういうことであれば喜んでお会いをいたしまして、十分、中東和平の問題について隔意のない意見交換をいたしたい、こう思っております。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年十二月、日中間の第一回の閣僚会議が開催されたわけですが、特に、この閣僚会議の後に日中の閣僚会議共同新聞発表が行われたのでありますけれども、この席上、わが国は中国側に対して、この文書の内容にポーランド問題やアフガン問題をぜひ入れるべきである、そして反覇権というものを明確にこの文書に載せるべきではないか、こう主張されたように漏れ承っておるのであります。しかし、共同新聞発表には、残念ながらこれらの文字は見当たらないのであります。どういう理由によってこれはこの新聞発表に載らなかったのか、御説明願いたいと思います。
  24. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先般の十二月初旬の日中閣僚会議におきまして、国際情勢万般について外務大臣、それから先方は黄華外交部長意見交換されました。その中身としましては、カンボジアの問題であるとかアフガニスタンあるいはポーランド等の情勢について非常に率直な意見交換されましたが、共同新聞発表等において覇権の問題をどうするこうする、それをどういうふうに表現するといったようなやりとりはございませんでした。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、この点について、従来の共同発表から見れば必ずこれは載る事項が載ってないというところに注目をいたしたのであります。私は、新しい中国政権は、内政に関してはソ連と非常に似通ってきたのではないか、こういう見方も実はいたしておるのであります。そういう意味では、中ソのいわゆる和解といいますか関係改善というものが進んでいくのではないか、そういう動きが出てくるのではないか、こういう見方も実はいたしておるのであります。外務大臣は率直な意見交換されたと思いますけれども、これらについてはどういうお考えでしょうか。
  26. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  複雑な国際情勢でございますから、先の見通しをここで云々するのはいかがかと思います。差し控えたいと思いますが、去年十二月、日中の会談をやりましたときに、いまの中国とソ連との和解といいますかあるいは雪解けといいますか、そういうような話は一切出ません。むしろ逆なことは出たことはございますが、先生のおっしゃったようなことは一言も出なかったのでございます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 大来さんが中国を訪問されて帰ってまいられたのでありますが、その間いろいろなやりとりが行われております。もちろん、この問題を解決する方法というのは、これからの日中の経済協力の発展、日中関係の前進のためには、中国側が契約の破棄を再考される、そして契約どおりやる、破棄の場合には当然損害の補償を実施をするということが望ましいのであります。だがしかし、今日の中国の経済情勢を考えてみますと、なかなかむずかしいという面もあるのではないか。私は、そういう意味では、一と二を含めて、同時にまた、何らかの政治的な決着をもこれに加味して、日中間の経済協力の体制を維持をして、将来に向かって発展をさせていく、やはりこういう弾力的な姿勢が今日どうしても避けられないのではないかと言わざるを得ないと思うのです。この点についてどういう態度か、承っておきたいと思います。
  28. 伊東正義

    伊東国務大臣 日中の経済関係につきまして、御承知のように大きなプロジェクト、石油化学でございますとか宝山製鉄所の建設につきまして延期とか中止というようなことが、民間を通して話が来ているというようなことが新聞にも大きく出たことは御承知のとおりでございます。  それで、私どもは、この経済関係がこじれて日中の政治問題化するとか日中の間の友好関係に傷がつくというようなことがもし万一あってはいかぬというふうに思いまして、実は大来政府代表に各省からの役所の人にも一緒に行ってもらいまして、向こうの実情を聞き、あるいは今後の見通し、いまの問題についてどう向こうは対処するつもりかというようなことをいろいろ率直に話し合って帰られたわけでございます。山にかかっていた霧で山が見えなかったような状態だったのですけれども、ある程度のことがわかってきまして、私は、大来代表が行ってくれたことは非常によかった、こう思っているわけでございます。  この次は先方から参りまして、個々のプロジェクト等につきまして具体的な話をされるということになる順番だと私は思っております。  それで、この問題は、日本の民間の企業が向こうへ話されて成立した仕事でございますので、まず民間同士で、日本の企業が向こうの公司と十分話し合う。その結果がどういうことになりますか、私どもまだわかりませんが、中国側も誠意を持って対処するということを言っておられるわけでございますので、いま政府がこれをどうしようということよりも、まずその話し合いを見守っていく。最後にどういう問題が残るかというそのときに、もしも判断する問題があれば判断するということで私は考えているわけでございまして、何としても、こういう問題で日中間の友好関係に傷がつかないように、しこりが残らぬようにということを心がけて考えていくというつもりでおります。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国は、一九六五年に、朝鮮半島を代表する唯一の合法政府として大韓民国、そして日韓基本条約を締結いたしたわけであります。そのときの理由の一つとして、外交関係の設定国数においては大韓民国が七十三カ国、朝鮮民主主義人民共和国は二十一カ国であることが述べられておるのであります。  では、今日の両国外交関係の設定状況は一体どうなっているのか、この機会に御説明願いたいと思います。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 韓国側が外交関係を設定しておるのは百十五カ国でございます。それから朝鮮民主主義人民共和国が百一カ国ということでございまして、韓国側が若干多いということでございます。この中で、双方を認めている、韓国も朝鮮民主主義人民共和国も、両方と外交関係を持っているという国が六十三カ国含まれておるわけでございます。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 ある情報では、たとえばニカラグアあたりは韓国と国交を断交するのではないか、あるいはまた、グレナダでもそういう傾向があると言われておる。また、ペルーやパナマ、エクアドルについても、この朝鮮半島の問題に対して朝鮮共和国の承認というような傾向も出始めておると承っておるのであります。いわば韓国と朝鮮共和国との外交関係というものはその意味で近い将来にも同数近くになるであろう、こういう傾向にあることだけは、ここ数年来の傾向として言えるのではないかと思うのです。  したがって、そういう現実を踏まえて、外務大臣外交演説で述べられておりますけれども、従来のこの政策を一歩前進させる必要があるのではないか。そして貿易、経済やあるいはまた文化の交流、こういう面にもう一段レベルの高い交流を行う。経済協力についても、技術的な援助などはエネルギーの分野を中心にして積極的に進める。政府としてもこれは了解を与えていく。あるいはまた、人事の往来についても一段レベルを上げるというようなそういう努力があって、私は、朝鮮の緊張緩和の問題やあるいはまた南北の話し合いの機運というものを醸成させるように、わが国もこの国際情勢の中で現実的に対処すべきではないか、こう思うのでありますけれども、どういう見解でしょうか。
  32. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、外交演説でも述べたのでございますが、日本にとりましては朝鮮半島の平和ということが、北東アジアだけでなくて日本の安全にも非常に関係のあることだというふうに考えておりますので、この間、全斗煥大統領から南北間の首脳会談をやろうじゃないかという呼びかけがあったのでございますが、私はあれを非常に注目していたのでございますが、そういう南北間の自主的な話し合いが行われるというようなことは私は非常に結構なことだと思いますし、あらゆる機会に北側が南に南進をするというようなことはあってはいかぬというようなことを、中国とも常に話しているところでございます。  御承知のように、日本は韓国と友好関係を結んでおる、外交関係を持っておるわけでございますので、この友好関係を維持していくこと、発展させることは当然でございますが、先生のおっしゃったような趣旨で北側と人事の交流を進めるとか経済の交流を積み重ねをしていくということもまた、私は必要なことだというふうに考えておるわけでございまして、朝鮮半島の平和ということにつきましては非常に私は関心を持っておるということでございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、ぜひ従来の実績を一歩前進をさせてほしいということを、この機会に要望いたしておきます。  この際、特に対ソの経済措置の問題について一間承っておきたいと思うわけであります。  政府は、いわばケース・バイ・ケース、こういう姿勢で対応する、こう述べておるのでありますが、大体。いままでの継続案件のヤクート炭田の開発、森林資源の開発、これらには追加バンクローンを供与いたしておりますし、サハリンの天然ガスの導入についてもこれは合意をいたしておるのであります。そうしますと、政府の言うケース・バイ・ケースというのは、いわば資源及びエネルギー、わが国と補完的な関係にある資源及びエネルギーあるいはこれに関連するインフラの整備、こういうものについては認めるという考えではないが、そして装置工業のようなプロジェクトについてはこれは原則としては認めないというのが、いわゆる政府のケース・バイ・ケースの内容ではないか、こう言わざるを得ないと思うのですが、この点についてどうか。  同時にまた、いま問題になっておりますヤンブルグのプロジェクトでございますけれども、シベリアのパイプラインについては、西ドイツの間にもほぼ合意に近い点までいっておるのであります。アメリカにおいても、この点については天然ガス用のブルドーザーの七千九百万ドルの許可も、レーガン政権以前のカーター政権で与えておるわけであります。わが国も、このシベリアのパイプラインの新規バンクローンの供与は当然認めるという方針ではないか、こう思うのでありますけれども、この点、承っておきたいのであります。
  34. 伊東正義

    伊東国務大臣 岡田さんおっしゃったように、石炭でありますとかあるいは石油でございますとか、天然ガスでございますとか、森林関係でございますとか、こういうものにつきましてケース・バイ・ケースでやったことはございます。そのとおりでございます。シベリア開発のうちでも、これはお互いの互恵の原則ということでございまして、一方だけが利益があって、一方だけが何の利益もないということではいかぬ、互恵の原則原則だということでやっておりますので、結果において日本側にも利益がある程度上がる、資源的にですね、そういうものについてやったことは確かでございます。  それから、いまのガスのヨーロッパ送りの配管の問題でございますが、これはいま岡田さんおっしゃったように、西欧が――ドイツとかオランダとかフランスとかに行く天然ガスでございます。いま、どのくらいの量のガスあるいはその価格が幾らというような商談が続いているということでございまして、現実の問題として建設とかいうところにはまだ至っていないわけでございます。カーター政権の最後のころに、パイプラインの敷設機械の輸出を認めるということをアメリカがやったことは確かでございまして、あのとき日本も、輸出入銀行に話をしまして、もし向こう関係の人が輸出入銀行に来てあのパイプライン敷設についていろいろ話があったら、それはよく話し合いを聞いて、そして商業的にいけるものかどうかということも判断をしてもらいたいということを言ったことは確かでございまして、まだ、ヨーロッパとのガスの量、ガスの価格その他が決まっておりませんので、具体的な問題としてはまだ建設の入札とかそういうことにはなっていない、ヨーロッパもなっていないということでございます。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、次に領土問題、北方領土の問題について御質問いたしたいと思います。  これは中山総務長官にちょっとお尋ねしますけれども、国後、択捉が千島と呼ばれるようになったのはいつからでしょうか。御存じでしょうか。
  36. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  国後、択捉が千島と呼ばれるようになったということの具体的な史実については、十分認識をいたしておりません。ただ、先般も答弁がございましたように、国後、択捉はわが国の古来の領土であるというふうに国際的に認められたのは一八五五年の二月七日、このように承知いたします。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 国後、択捉が千島と呼ばれるようになりましたのは一八六九年ですね、明治二年の八月十五日であります。蝦夷を改めてこれが北海道となったときに、十一の国と八十六郡で北海道は構成されたわけです。そのときに根室国の根室郡及び花咲郡、この中に歯舞と色丹が含まれたわけであります。同時に、千島の国という行政区画になりまして、このときに、国後郡に国後、択捉郡に択捉、振別、紗那、蘂取郡、四つの郡が設けられたわけですね。ですから、明治二年からでありますからもう一世紀以上たっているわけですね。千島と呼ばれておるのであります。また、平和条約が結ばれるまでを考えても、八十年を実は経過いたしておるわけです。そういう意味でいわば千島・樺太交換条約以前にすでに国後、択捉は千島の国、千島と呼ばれてまいった。そして明治九年に返ってきた、交換された得撫から占守の十八島、これを千島の国に入れたわけですね。それ以来千島と称するのが正しい史実であります。このことをまず、われわれは念頭に置いておかなきゃならぬと思いますね。  そこで私は、一九五六年十月十九日に協定された日本とソビエト社会主義共和国連邦との間の共同宣言、日ソ共同宣言、私はこの共同宣言は、領土問題を除く、平和条約で規定されなければならないほとんどすべての内容が盛り込まれておる、そういう意味では、これは日ソ間の基本条約の内容を持つものである、こう認識するのが当然と思いますが、いかがでしょうか。
  38. 伊東正義

    伊東国務大臣 鳩山さんが行かれた共同宣言には相当なことが網羅されていることは確かでございますが、ただ一点、領土問題が解決できなかったために平和条約ができなかったということでございます。これは平和条約ということになってきますと、領事の問題とかいろいろなものが入ってきますから、内容はもっとつけ足すということもありましょうが、日ソ間の骨子は中に盛られておるということでございます。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府が言う歯舞、色丹、国後、択捉は、ソ連が今日実効支配をいたしておるのであります。この実効支配をしておる領土について、政府はこれは不法占拠だという認識でありますか。
  40. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとおりでございます。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 その認識はいつからでしょうか。
  42. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。不法占拠はいつからであるかということでございますが、これは日ソ共同宣言が結ばれまして、それ以前の状態は一種の戦時占領であるというふうに了解できるわけでありますが、日ソ間に国交か回復しました以後におきましては、戦時占領ということではございませんで、やはりそれは不法占拠というふうに観念せざるを得ないものだと考えます。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理が北方領土の日にごあいさつを述べられておりますけれども、不法占拠とは言っていないのですね。占拠、こう述べています。外務省は一九五六年、昭和三十一年十一月二十九日の参議院の外務委員会で、下田条約局長は次のように答弁いたしております。共同宣言第九項で平和条約締結後現実の引き渡しが行われることを日本が認めているから、それまで事実上ソ連がそこを支配することを認めているから占拠が不法とは言えない、国後、択捉も事実上ソ連が押さえることを不問に付すという意味合いを持っておるものだから不法占拠とは言えません、こう明確に答弁されておるわけです。もし不法占拠であるとすれば、国際法上どういう法律に基づいて不法占拠と言うのでしょうか。
  44. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  日ソ共同宣言が締結されました当時におきまして、政府委員の国会におきます答弁が、不法占拠であると決めつけることではなく、実際上ないしは事実上これは一応認めたものであるというような表現を使っておることは、その後も若干の答弁において使われていることは事実でございます。  しかし、法的に申しますれば、先ほども申し上げましたように、日ソ共同宣言により日ソ間の国交が回復いたしました時点におきまして、ソ連の日本固有の領土である北方四島の占拠といいますのは不法占拠であるとしか言いようのない状態でございまして、当時におきましても、ただいまお挙げになりました下田条約局長の答弁も、実際上とか事実上というクォリフィケーションをつけた上での答弁でございまして、これは、当時日ソ国交回復の時点におきまして、これから平和条約交渉を行おう、そして領土問題をお互いに解決していきましょうという双方の合意のある段階におきましてあえて不法占拠という烙印を押すということはしない方がよろしいという判断に基づいて、そのような御答弁がなされたものだと考えます。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 日ソ共同宣言が基本条約でありますから、しかも歯舞、色丹については明確に宣言の中にありますし、領土の問題についても日本は引き続き平和条約の交渉の中に含まれているという解釈でありますから、私はそういう意味で、不法という言葉は適当でないと思うのですね。  では、総理が領土の日に、不法という言葉を外して、占拠という言葉についてだけ述べられたというのはどういう意味でしょうか。なぜ不法占拠と言わなかったのでしょうか。
  46. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 不法占拠という言葉そのものは、法的に厳密に申せば、ソ連がわが国の固有の領土である北方四島を占領してそこに施政を行使するということには何らの法的根拠がないという意味において不法占拠であるということを言っているのみでございます。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、やはり不法占拠という言葉はそういう意味で適当でないと思うのですね。しかし、平和条約の交渉が双方誠意を持って系統的に行われないということは不当かもしれませんね。そういう意味でこの不当は主張できても、不法であるという点については行き過ぎではないかと思うのです。だから。総理が北方領土の日にも注意深く、不法占拠と述べないで占拠とだけ述べられた、ここに意味があるのではないかと思うのですね。この点は、時間がありませんから見解を述べておきます。  そこで、ソ連側は領土問題は解決済みである、こう述べておるのでありますけれども、政府としては、ソ連の領土は解決済みであるという理由はどういう理由だと思いますか。
  48. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生も御承知のように、最初、鳩山さんとの共同宣言には、歯舞、色丹はちゃんと書いてあるわけでございます。松本・グロムイコ書簡で懸案の領土問題を含めて交渉する、そのときは歯舞、色丹だけじゃなくて国後、択捉もあったということは確かでございますが、その後、経過的には、日本に外国軍隊がおるということで歯舞、色丹も返さぬというようなことを理由として言ったことがございます。その後は、総理田中さんが行かれて、懸案事項の中には領土が入っているのだということを向こうもはっきり認めたということは、当時の関係者みんな異口同音に言っておるところでございますが、またこれが変わりまして、領土問題は解決済みの問題だ、そんな問題はない、もともとないのだというようなことを、去年、私がグロムイコ外相といろいろ議論したときに、もともと領土問題なんというのはないので解決済みのものだ、こういうようなことを言いましたので、いや、共同宣言に書いてあるじゃないかというようなことでやり合ったのでございますが、向こうも、解決済みという理由は一言も説明しないということでございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、もし外交文書が公開されればよりいいと思うのでありますけれども、ソ連が解決済みであるという認識と、わが国は解決済みでないという認識の違い――領土の問題については、日ソ共同宣言締結の経過あるいはまた、田中・ブレジネフ共同声明の中でも領土という言葉はないわけです。そういう意味で玉虫色になっている、こう言わざるを得ないのではないか、こう思うのであります。  当時は、自由民主党が保守合同でちょうど一本になった直後でありますから、党内でも大変な議論があったのであります。松本・グロムイコ会談の交換公文というのは、鳩山さんからブルガーニンに書簡を出したその後に行われておって、その後にブルガーニンから鳩山さんに書簡が参ったのであります。この中にも領土の問題は触れていない。これで大紛糾になったわけですね。そして自民党総務会はかんかんがくがくやって、二十人のうち十五人の賛成で交渉再開が通ったという事実もあるわけであります。  したがって私は、そういう経過等を考え、また最終的に河野・フルシチョフ会談が三回にわたって行われて、三回目に本国に訓令を仰いで妥結するという場面があったのであります。この場合も結局、歯舞、色丹は、平和条約を締結したときには日本の希望で返すということは譲歩して本文に載せましょう、だがしかし、平和条約締結を引き続き交渉する、領土を含めることは絶対まかりならぬという強い向こう態度で、ついにこの領土の問題は外して、その結果、自民党の新しい党議に一応即するという意味で松本・グロムイコの書簡を公表するという点で、いわば国内的に説明をしてこれが批准されたというのが歴史であります。ここに認識の違いがあるし、ソ連の解決済み、わが方は解決済みでない、この違いがあると厳格に受けとめる必要があるのではないか、こう言わざるを得ないのであります。  そうであるとするならば、結局領土問題というのは、さかのぼってサンフランシスコ平和条約までいかざるを得ない、私はそう考えざるを得ないと思うのです。サンフランシスコ平和条約にまいりますと、これまた、実は見解の相違が出てくるわけであります。本委員会でもこの点は質問なされておるわけであります。そこで、アメリカわが国に対してメモランダムをよこして、注意深く検討した結果、国後、択捉は固有の領土である。私の認識も国後、択捉は固有の領土だという認識であります。だがしかし、この際、わが国は単にアメリカだけに千島の解釈について照会をしたのか、それ以外の国にも照会をしておるのか、この点を明らかにしてほしいと思うのです。
  50. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  アメリカ以外、イギリス、フランス等にもしたわけでございますが、詳細は政府委員から申し上げます。
  51. 武藤利昭

    武藤政府委員 ただいま大臣から申し上げましたとおり、アメリカ以外、イギリス、フランスにも照会をいたしているわけでございます。  イギリス、フランスの回答でございますけれども、これは先方の方から、日本の国内において公にすることについてこれを差し控えてくれるようにという要望がございまして公にできないという事情がございますので、御了承いただきたいと存じます。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 非常に残念でありますけれども、公開できないということで公開されないわけですけれども、大体この返答というのははっきりしているわけですね。これはもうその後松本さんもこの点については触れられて、どういう見解が寄せられたかということは明らかになっているわけです。  そうしますと、サンフランシスコ平和条約の講和会議で、この二条(C)項に触れた発言をしたのはアメリカ代表よりいないと思うのですね。アメリカ代表はどのように触れたのですか。
  53. 伊東正義

    伊東国務大臣 千島列島という地理的名称が歯舞群島を含むかどうかという質問があったことに対して、ダレスさんが答えているわけでございますが、その場合には色丹もどこも触れてないのです。もちろん国後、択捉にも、何も質問がなかったもので触れてないということは事実でございます。したがって、質問にもなかったので答弁にも国後、択捉、色丹に触れてないということをもって千島列島にそういう島々がみんな含まれて放棄されたのだというふうにはわれわれは解釈していない、こういうことでございます。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここには、「第二条(C)に記載された千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むかどうかについて若干の質問がありました。歯舞を含まないというのが合衆国の見解であります。」こう明確に述べているわけですね。これ以外に、サンフランシスコ条約の場合には(C)項についての解釈はないのであります。  同時に、その前段には、「連合国の間には若干の私的了解がありましたが、日本も又他の連合国もこれらの了解に拘束されたのではありません。」この条項はヤルタ協定を指しているわけですね。ですから、この場合には日本を含めてアメリカ、また参加した二十数カ国の認識日本はもちろん後から吉田さんが見解を述べておりますけれども、とにかく第二条の(C)項については、千島列島については歯舞、色丹は含まないというのが参加国の認識であった、そのことがやはり後からイギリスやフランスの照会に対する回答になってあらわれてきている、こう言わざるを得ないのでありますけれども、こう認識するのは無理がありますか。
  55. 武藤利昭

    武藤政府委員 ダレス代表の演説につきましては、いま外務大臣から申し上げたとおりでございまして、第二条(C)に記載されている千島列島の範囲について、歯舞諸島についてのみ触れているわけでございますが、これは歯舞諸島が含まれるかという質問があったので含まれぬ、そういう答えをしただけのことでございまして、それ以外の範囲には触れていないということでございます。  それから、第二条(C)についての連合国の見解でございますが、何と申しましてもサンフランシスコ条約というものはアメリカが起案したわけでございまして、起草者として最も権威があると申しますか責任のある立場にあったアメリカ政府見解というものがやはり大きな権威を持つものであろうというふうに、われわれは理解しているわけでございます。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府は、領土問題について国際世論に訴えて、あるいはまた佐藤総理初め、国連の総会でこれを訴えている、こう言うのでありますけれども、しかし、平和条約の二十三条、これには十二カ国の名前が挙げられておるのであります。この過半数が批准した場合に条約が発効するという、条約に挙げられておる国は十二カ国であります。これらの国々はいずれも日本ときわめて緊密な関係のある国ばかりであります。これらの国に対しても、領土問題についてわが国見解を述べて支持を求める努力をしたことがありますか。
  57. 武藤利昭

    武藤政府委員 領土問題についてのわが国立場と申しますものは、サンフランシスコ平和条約の当事国、旧連合国のみならず、国際的にできるだけ日本立場を知っていただくということが重要だと考えまして、外務省といたしましても、いろいろな手段を通じまして日本側の立場というものを国際的に説明しているというのが現状でございます。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 答弁としては、努力をしている、こう述べられておるのでありますけれども、個々にそういう努力をしたということは、私は知らないのであります。私が知らないからやっていないとは言いませんけれども。そういう点について若干疑問を私は感ぜざるを得ないのであります。  この際、総理に聞きますけれども、領土の返還交渉は、まず第一に、外交手段を通じ平和的に解決されるということが一つ。第二には、日ソ両国は平和五原則について双方厳格にこれは確認されなければならない。第三には、重光外相が交渉の過程でも、領土には基地は置かないということを再三ソ連側にも述べているし、国会でもそういう答弁がなされておるのであります。そういう経過を踏まえれば、返還される領土は基地のない非武装地域とするということを明確に領土返還のわが国態度として、いわば領土返還の三原則といいますか、そういう姿勢を明らかにすることができるでしょうか。
  59. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この北方領土の問題は、あくまで話し合いにより、平和的な手段によって解決しなければならない。そのために私どもは粘り強く誠意を尽くしてこれに当たる考えでございます。  なお、その中で、交渉に当たって返還された後における条件、いまの非武装問題とかそういう条件につきまして触れることは適当でない、私はこう考えておりますが、武装すべきでない、非武装地帯にすべきだという岡田さんの御意見、これは貴重な御意見として拝聴しておきたい、こう思います。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 いままでの日ソ間の経過を踏まえますと、特に領土問題で険悪になったのはいわば安保条約の改定時期ですね。そして歯舞、色丹についてもソ連側の書簡が触れた、そういう経過を考え、また日ソ交渉におけるわが国全権の、この返還される、われわれが求めている領土には基地は置かない、こういう経過を踏まえれば、私は、そういうきわめて積極的な姿勢を示して、領土問題について日ソ間で、総理が言われるように、しんぼう強く話をされるということがきわめて妥当性を持っている、こう思いますので、私の提言として述べておきますので、今後の交渉の中でひとつ御検討願いたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、総理が特に北方領土隣接地域の問題について、十一月十四日、閣議で発言をされたのであります。この総理発言というものが昭和五十六年度の予算でどう生かされておるのか、なかなかわからないのであります。ただ、領対協の貸付金が二億ふえたというのはわかるのですけれども、それ以外わからないのであります。この点についてどういう措置を予算上とられたか、御説明願いたいと思います。
  61. 原健三郎

    ○原国務大臣 いまのお尋ねでございますが、これは総理から私の方に指示がございまして、昨年の十二月に、関係省庁で構成する連絡会議を設置いたしました。その問題について前向きに取り組んで、いろいろ体制の整備を図っておるところであります。  それで、いまお尋ねの、当庁が所管する開発予算についてどういうことをやったかということですが、予算編成の段階においては、第一は、この地域の開発道路の新規採択をいたしております。たとえば落石-初田牛線の道路の新規採択をいたしております。第二は、中標津空港の整備が予算の中に入っております。第三は、この地域の漁業の振興対策などについて、今後予算の執行段階で十分配慮いたしたい、こういうふうに考えております。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま説明があったのですけれども、空港の場合は全国のべつありまして、初めから計画の中に組まれています。あるいはまた落石の開発道路についても、これはもう大体既成の事実になっておりましたし、結局まだ検討が不十分であると思うのですね。そういう点について指摘をしておきたいと思うのであります。  総理が指摘した根室地域というのは、はや日魯の撤退が行われて、中核的な水産加工業は倒産をいたしております。漁獲も著しい減の状況にあることは御承知のとおりであります。内陸の主産業は酪農でありますが、酪農もいま、生産制限という点で問題を抱えております。一方、道立農業試験場がこの地域から撤退するという。そして、いま政府が考えているローカル線の問題は、内陸全般これを廃止するという状況に立たされておるのであります。特に根室管内の医療水準は全国最低であります。県で最低なのは沖繩県ですね。沖繩は人口十万人当たり医者は六十八・一人です。これが最低なんですね。根室管内はずっと下回って四十八・一人であります。全国最低の医療水準が根室管内の実情であります。  そういう点について、とにもかくにも、せっかく総理発言されるのだけれども、命を守る医療水準さえも最低。北海道に僻地中核の病院があるけれども、今度二カ所追加されて九カ所あるが、根室は一番後回しなんですよ。ですから、総理の意図と政策とはテンポ、方向というのが全然合っていないわけですね。  厚生大臣などはこれらをどう思われますか。
  63. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、根室地区は無医地区がたくさんありまして、僻地中核病院もございません。しかしながら、いま北海道庁ともいろいろ話しておりますが、標津病院、根室病院、どちらにするか別として、医師などの供給の強化を図ればこれらは中核病院になれるあれでございますから、早急にそういう措置をして、僻地医療供給体制をつくることにいたしたいと考えております。
  64. 岡田利春

    岡田(利)委員 私がしばしばこの委員会で問題にしたのでありますけれども、それは北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律の適用の問題であります。一万七千人の三分の一近い五千人程度の人がもうすでに物故者になられておるわけであります。もうずいぶん長く時間がたってしまいました。三十六年になるわけであります。したがって、権利の一代継承では問題が出てまいっております。政府は、これは検討して法律改正の方向でやると言っているのですが、一向に腰が上がっていないのであります。この機会に法律で定めている一代継承の枠を改善し、次代継承の方向に認めていくという法律の改正案をぜひ今国会に出すべきだと思うのでありますが、準備はありますか。
  65. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 ただいまの問題は、岡田委員承知のとおり、昭和二十一年のGHQ覚書によって北方四島に施政権が及ばなくなった結果、この地域に対してわが国の旧漁業法が適用されない状態となった、これに基づく免許によって設定されていた旧漁業権はその時点で消滅したと考えておりまして、昭和三十五年当時からそのような方向での御答弁を申し上げてきておることは承知いたしておるわけでございます。政府として、これに対して新たな法律による漁業権というものを設定いたしたわけでありますが、その時点においてはすでに歯舞、色丹、国後、択捉の四島についてはもう適用がないということになって、したがって補償をせずともよろしい、こういう見解でずっと来ておるわけであります。  この件について岡田議員からずっと続けて、再考をすべきではないかという御指摘をいただいておるわけでありますか、私も、就任いたしまして、この問題について勉強し始めたのはつい最近でございまして、まことに申しわけありませんが、もう少し時間をかしていただきたいと思います。
  66. 岡田利春

    岡田(利)委員 本当は、いまの私の質問は総務長官が答弁することでしょう。しかし、いいです。それはいずれ別の機会にやりますが、私が言っているのは総務長官が答弁する問題でしょう。いかがですか。
  67. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  いま農林水産大臣が答弁申し上げましたような経過をたどっておりますけれども、いま先生御指摘のように、すでに多数の方がお亡くなりになっている。そしていまの融資対象も、その御家族が世帯主の仕事をやっておられる場合には融資の対象になるという扱いをしておりますが、この際次世代の方々の実態調査をするべきであるということで、五十六年度予算で調査費を計上させていただきまして、ただいま御審議をいただいているところでございます。調査の結果につきまして、政府としては検討させていただきたいと考えております。
  68. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理府はこの問題になると非常にスローテンポですね。三原さんもおりますけれども、指摘をしておきます。  時間がありませんから、私は次の問題に進めてまいりまして、消費者物価の問題について質問をいたしたいと思うのです。  経企庁長官は二億の金を投じて、いま、並み級野菜の出荷促進とか、冬野菜の生産、出荷促進、緊急輸入の促進、こういう手を打っておるわけですが、果実、野菜の価格はこれだけの手段で二-三に必ず鎮静する、こうお考えですか。
  69. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 野菜価格は、残念ながら、ただいままでのところはまだ鎮静化しておりません。ただ、先般いろいろな対策を立てましたので、これからある程度の影響は出てくるであろうと期待をしております。
  70. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府は九月の経済閣僚会議で、六・四%の消費者物価の上昇率を七%程度ということに上方修正をされたわけであります。七%程度というのは上方を見れば二、三%か、日本的に言う四捨五入で見ても七・四%以内というのが大体七%程度の表現の常識であろう、こう思うのであります。しかし、一月の東京都区の速報が出ておるのでありますが、これで参りますと、残念ながら、消費者物価の上昇率は七・七%になるのであります。全国の水準は、昨年四月以後をずっと見てまいりますと、傾向としては東京都区の速報よりも若干高目、十二月の下がったときだけは全国が〇・一低目に出ておるわけです。そういう傾向から考えますと、東京都区速報、これは全国的に直しても下がることはないだろう、こう言わざるを得ないと思うのです。  そうしますと、七%程度と上方修正をされて、昭和五十六年度の消費者物価上昇率は五・五%であると目標を定められたのでありますけれども、その場合、五・五%の中に、げたは一体どの程度含めて積算をされたのか。私の判断では、七%程度というものを分析しますと、げたは〇・五%程度、極端に言えば〇・五%以内という積算の基礎の上に五・五%の消費者物価上昇率、こう目標を定められたと理解するのでありますけれども、いかがですか。
  71. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 げたの計算につきましては、政府委員から答弁をさせます。
  72. 廣江運弘

    廣江政府委員 先生御承知のとおり、いわゆるげたにつきましては年度末の物価のレベルが前提となりますが、政府が見通しております物価の見通しは年度平均で出しておりますので、それにつきまして計算はできない状況にございます。
  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 計算はできないけれども、全然げたを含めていないということにはならないのではないか、こう思うのであります。  そこで、長官は本予算委員会での答弁で、八%になる可能性はないかという質問に対して、八%には絶対になりません、こう明確に断言されたのであります。  私は資料を配っておりますけれども、このケース三とケース四の場合。ケース三の場合には、五十一年から五十四年の二月、三月のいわば平均の上昇率を出したわけであります。したがって、ケース三の場合には、平均の上昇率で計算をすると七・八%、げたは二・四%になる。ケース四というのは、昨年五十四年の二月、三月の、二月〇・九、三月〇・八、これを一応想定して計算をすると消費者物価上昇率は八%、そしてげたは二・八%、こうなるのであります。私は、長官が八%にならないと言う意味は、結局八%以下だという憲味でしょう。しかし、七・七%以上であることはもはや間違いがないのではないでしょうか。そうするとこの中間か、ケース三なのか、ケース三とケース四に近いのか、この点が予想として、長官の答弁から感じられるのであります。  そういう意味で五十一年からずっと見ますと、三月はずいぶん、この消費者物価上昇率の低い場合でも大体〇・八平均なんです。一番低いのが五十一年の〇・六であります。二月の場合には、マイナス〇・三という月も五十三年にありました。だから、こういう傾向から見ると、いま長官がいろいろ手段を講じておられるけれども、ケース三の傾向で今年度の消費者物価がおさまる可能性が最も強い、若干これよりもプラスになるかもしれない、こう判断せざるを得ないと思うのですが、長官の真意をお聞きしたいのです。
  74. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま資料を拝見をいたしました。ただしかし、先ほども政府委員が答弁をいたしましたように、げたというのは年度末の消費者物価を基準にして決めるわけでございますから、そういたしますとまた計算の仕方も若干違ってくるのではなかろうか、こう思います。
  75. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はなぜこのげたの問題を提起したかということは、宮澤経済企画庁長官時代にもげたの問題がずいぶん論争されておったのであります。昨年は三・六のげたをはいた。そういう結果、石油の問題を要因に挙げられたけれども、円高でもってこれは吸収して、むしろ七月には二千円ほど値下げをしているわけですね、実際、末端の場合には。そして円高傾向がずっと続いてまいって、卸売物価は依然としてわずか減少、マイナスの傾向を示して推移をいたしておるわけであります。お天気の問題については、長官がおっしゃるとおりでありましょう。だが、そういう点を加味しても、来年度の場合、いろいろな民間の予激も出ておりますけれども、たとえば石油問題一つとらまえても、実質四十ドルを超えるでしょう。大体サウジの場合には、いままでのパターンからいうと一-三、二ドル、四-六、二ドル、いずれにしても四ドル上昇させれば実質四十ドルを超えるのであります。これは決定的な情勢と見なければいけないでしょう。そういう要因をも含める。四月以降は特に二段階方式で石油価格、仕切り価格が上昇することも、三月を抑えれば、すぐ四月から始まるでしょう。このことも間違いのない事実だと思いますし、政府予算関係をずっと見ましても、この〇・五の影響が物価を押し上げるというような数字にもなるわけであります。  そういう数字をずっと全体的に傾向を考えてみますと、最近の消費者物価の動向と五十六年度を展望する場合に、もう初めから五・五%は無理である。やはり五十六年度も七%程度の消費者物価の上昇が、努力しても避けられないのではないか、こう言わざるを得ないのでありますけれども、ずいぶん情勢も変わっていますからね。政府の経済見通しも、五十六年度の経済見通しを決める場合と今日とは情勢も変わっておるわけでありますけれども、この私の意見に対して長官はどのようにお考えになりますか。
  76. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまのお話は、公共料金の値上げでCPIがどの程度上昇するかというお話でございますが、予算関連の公共料金といたしましては、米、麦価、国鉄運賃、国立学校入学金、塩の消費者価格、電話料金、これは引き下げの方でありますが、これらを全部合計をいたしますと、大体消費者物価への影響は〇・三%と考えております。五十五年度は電気料金、ガス料金の値上げがございまして、これが消費者物価一%以上の影響ということになりましたので、非常に大きく公共料金の値上げが影響しておりますが、五十六年度は、以上申し上げましたように〇・三%でございますが、そのほかに間接税の増税の影響等も若干ございますので、これが大体〇・二%ぐらい出てくるのではないか。それを合わせて、いまお話しの〇・五%ぐらいになるであろう、こういう計算をいたしております。
  77. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで五十六年度、国民負担の面で見ますと、いま予算関連では大体いずれにしても〇・五ぐらいになるということになるわけですから、それ以外に、もうすでに私鉄やらタクシーの運賃の値上げの問題がある。公立高校の授業料の値上げも自治省は指示をしておる。また、健保の料率が上がる。そして所得税あるいは住民税のいわば自然増という問題がある。そして物価上昇率が五・五%、政府の言うように試算して、これだけの要素を含めて計算すると、国民の負担増は十一兆八千八百八十二億になるのであります。これがもし物価が七%を超えるということになりますと、これだけの内容で国民負担は十五兆五千五百二十八億円の負担増になるわけです。国民一人当たり実に十三万四千円程度の負担増になる、こういう試算が実はあるのであります。  だから、この消費者物価の五十六年度の動向というものはきわめて重要だと思いますね。もう石油問題一つとらまえても、これは私がいま指摘したとおりの方向ですから、これは避けられないわけでありますから、私はそう断言してもいいと思うのであります。したがって、年度末、そしてまた来年度にかけての物価問題はきわめて重要だと思うのです。だが、五百億の物価対策費は四十億若干より使われていない。これなどは当然来年度に繰り越して、やはり物価対策というものをしっかりやる。  もう七%になってしまえば、いま銀行の預金金利の二年間の金利は七%ですよ。預金は目減りをするのであります。来年度また七%を超えるということになれば、これはもし公定歩合を下げれば大変な預金の目減りになるわけです。いま公定歩合の問題がいろいろ議論に上っておりますけれども、この物価の動向の中で公定歩合を下げるということは非常にむずかしかろうと思うのです。そういう点の苦慮が、私はいま最大の金融政策の問題点だろうと思うのです。そう考えると、物価対策は重点、重点と言うけれども、これからも来年度に向けて最重点に取り組まなければならないのではないか。でなければ、国民は今度は逆に十三万円を超える負担増があり、そしてまた預金金利はもうずっとことしから来年にかけて目減りをする、これには耐えられないのではないでしょうか。その点についていかがでしょうか。
  78. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 物価問題は、いまは単なる経済問題ではございませんで、私は大きな政治問題だと考えておりますが、ただ五十五年度と比べまして比較的物価対策がやりやすいのは、五十五年度は電気、ガス料金が大幅に消費者物価を引き上げましたので、公共料金全体でざっと二%以上影響しております。しかし、五十六年度は、先ほども申し上げましたように〇・五%、こういうことでございますから、この点が比較的やりやすいということが第一点であります。  それから第二点は、昨年の春、ちょうどいまごろは狂乱物価前夜だと言われる物価情勢でございまして、卸売物価も年率に直しまして二割見当急上昇する、こういう状態でございまして、公定歩合も二月、三月と連続引き上げをしなければならぬ、こういう緊急状態になっておりましたが、現在は、卸売物価は昨年の八月以降急速に鎮静化をいたしまして、いまでは年率六%台に下がっております。五十六年度は四・一%と想定をしておりますので、五十五年度の平均一四%に比べますと非常にこれが鎮静化いたしまして、卸売物価から来る消費者物価への悪影響というものはある程度防ぎとめられる、こういうことになっております。それからまた石油の方は、昨年の九月にイランイラク戦争が勃発をいたしまして、予想外の油の急上昇になりまして五十五年度の消費者物価を大きく押し上げた、こういうこともございます。五十六年度は石油価格の若干の上昇は見込んではおりますけれども、しかし、五十五年度のような戦争による急変はないだろう、こういう判断でございます。  そういうことを総合いたしまして五・五%という数字を出したわけでございますが、しかし、いずれにいたしましても物価問題は最大の課題でございますので、昨日も、三党の要求に対しまして自民党の方から回答をいたしましたが、それによりますと、時と場合によれば、引き続いて五百億の残りのものも年度内に使っていく、こういうことにもなっておりますし、また、五十六年度につきましては、企画庁の持っております三十億という物価対策費をまず使いますが、それでも足りないという場合には一般会計を機動的に運営する、こういう表現をいたしておりますが、その意味は、必要とあらば一般会計から金を出します、予備費から金を出します、こういう趣旨であることは昨日自民党の方から説明したと思いますが、そういうことで、物価対策はすべての政策の前提条件であるという考え方に立ちまして、全力を挙げてこの問題と取り組んでいきたいと考えております。
  79. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、確認をしておきますけれども、三月末にならなければげたは想定できないのだから、確定しないのだから、五・五%にはげたは全然見てないんだということを断言できますか。
  80. 廣江運弘

    廣江政府委員 物価の見通しにつきましては先ほど長官がお答えいたしましたとおりでございますが、もともと物価の見通しは経済見通しの中の一環といたしまして、いろいろの経済活動、経済諸指標と整合を持つようにしてつくっております。そういうふうにしてつくりまして、需給要因、コストの要因等をそれぞれかみ合わせまして総合的に考え、かつ、現在の物価動向をも考慮いたして、来年度五一五%程度と見ておるわけでございます。  なお御参考までに、先ほど先生も言及されました民間の経済見通しにおきまして、この辺の平均でございますが、政府の経済見通しよりももう少し安定的に消費者物価を見ている見通しもございますし、見られるところ平均で大体五・三%ぐらい、卸売物価につきましては四・一より少し低いぐらいの見通しもございます。そういう状況をも考慮いたしまして、全体の経済活動の中でこう見ておるわけでございます。
  81. 岡田利春

    岡田(利)委員 結局そういう面から言うと、五・五%というものは七%程度になる可能性が非常に強い、こう私は警告を強く発せざるを得ないわけであります。  いま民間の問題もございましたけれども、民間の場合のレートの見方は、大体百九十円から二百円ぐらいの間に見ているわけですね、円高傾向はさらに続くという前提に立って試算をいたしているのであります。政府の試算は一応二百十三円で試算をいたしておるわけでありますから、この点の相違はもちろんあるわけであります。だが、残念ながら、いまの政府の答弁では五・五%にはおさまらない、二・四%程度のげたをはいて、結局は七%程度の消費者物価上昇にならざるを得ない、そのくらい厳しく物価問題については考えなければならぬし、そうでない限り公定歩合の、いわゆる金融政策についても重大な配慮を払わなければならない、こう思うのです。  最後に、総理大臣の、いま私がやりとりした政治問題としての物価問題についての所見を伺っておきたいと思います。
  82. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 経企庁長官から申し上げましたように、物価問題は今後のわが国の経済運営の基本に触れる問題であり、国民生活に最も大きな影響をもたらす問題でございます。また、これから春闘を前に控えまして、この物価の動向というのは今後の経済の運営にも非常に大きな影響をもたらすものだ、私はこう考えております。  そこで、政府としては全力を挙げましてこの物価の安定、幸いにして卸売物価は鎮静化の方向にございますし、また、消費者物価におきましても、季節商品を除いては非常に堅調の方向に動いております。こういう点を踏まえまして、いろいろな総合的な施策を進めまして物価の安定には全力を尽くしていきたい、こう思っております。
  83. 岡田利春

    岡田(利)委員 実質増税、そして物価が政府目標よりも上回るということになりますと、国民の不満というものは非常に強く高まってくるものと厳しく認識することを私は求めておきたいと思います。  そこで、時間もございませんので端的にお伺いしますが、私はこの際、地方交通線の問題について承っておきたいと思います。  初めに、自治大臣にお伺いいたしますが、今日の地方自治体は、公営交通企業などの経営の改善に大変努力をいたしておりますし、また、過疎バス路線の確保のためにも補助金を出す等の措置をとっておるのであります。したがって、この地方交通線を第三セクターで、自治体が主体になって引き受けるということは不可能に近い実態にあると私は思うのです。また、地方自治体の実情から見ても、この政府の当初示した運輸省の基準をその方向で実施をするということについては相当問題点が多いと私は理解をいたしておるわけですが、まず自治大臣の見解を承りたいと思います。
  84. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 特定地方線の問題はきわめて重要な問題だと考えております。しかし、法律が通っておるのでありまして、政令の段階でございます。その辺の基準もどうしても設けなければならぬという段階でございますが、自治省といたしましては地方の実情をひとつ十分に認識をしてもらわなければいかぬということです。国鉄の問題というのは地方にとっては生命線に近いような、そういう感覚があるわけなんでございます。したがって、こうした地方の実情というものを十分に認識をしてもらわなければいかぬ。国鉄の赤字の原因から申しましても、特定地方線の占める割合というものは比較的少ないわけでございます。赤字の大きな原因はほかにあるわけでございまして、特定地方線の問題で赤字が解消し得るなどという性質のものではございませんので、この点は地方の実態を十分に認識してもらわなければいかぬということ。それからもう一つは、バスに転換という場合におきまして、やはり物理的な条件も必要でございますし、それからバス営業に関しましての適正な延長という問題もあるだろうと思うのです。この辺ひとつ十分にバス転換については考慮すべき重大な問題じゃないかということ。もう一点は、この転換に関連いたしまして地方公共団体に財政を負担させるというようなことは絶対困る、いまの地方自治体の実態から見てそれは困るんだというようなことで、せっかくいま誠意を持って運輸当局といろいろと相談をしている最中でございまするから、この点だけ申し上げておきます。
  85. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、国土庁長官でもあり、北海道開発庁長官でもある原国務大臣にお伺いいたします。  北海道開発審議会では、これは与野党区別なく満場一致で大臣に対して要請がなされておるわけです。ローカル線の廃止は反対であるという要請がなされておることは御承知のとおりであります。国土庁の立場からすれば、全国モデル定住圏の構想が今日進められております。北海道開発庁の場合も地域総合環境圏構想が今日進められておるわけです。特に北海道の場合には、九州、四国プラス広島県プラス山口県の面積でありますから十三県分であります。北海道は十四支庁あるわけですから、一支庁が一県の単位であります。そういう中で、いまの基準でローカル線が廃止をされるということは、北海道の開発発展にとって死活の問題であると言わざるを得ないわけであります。そういう意味で、これらの重大問題に対して長官はどういう態度で運輸省と話し合いをされておるのか、見解を承りたいと思います。
  86. 原健三郎

    ○原国務大臣 岡田先生にお答えいたします。  北海道開発審議会からの要望が出されまして、それは篤と私も拝聴いたしております。それで、御承知のように地方交通線の選定基準を定める政令についてこれからいよいよ各省庁の間で進めていくわけですが、もうすでに相談を受けて話は進んでおるわけですが、まだ具体的に決まっておりません。私といたしましては、国鉄が北海道開発の推進上基幹的交通として非常に重大であることは、よく承知いたしております。いまおっしゃったように北海道は広大な地域であるし、さらに、この地方線を廃止する半ばは北海道にあります。でありますから、全面的にいきますと北海道が非常な被害を受けるという結果になります。そういうことを踏まえて、今後北海道開発の推進に支障を来さないように十分配慮してこの政令を決めていくように尽力いたす考えであります。
  87. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産大臣にお伺いします。  運輸省の計画の中には、既存の石炭を輸送している輸送線まで廃止をするという内容が含まれておるのであります。あるいはまた今日、エネルギーの輸送線の確保も重要であります。また、産炭地域振興法は十年延長するということで法案が今国会に付託されることになっておりますが、この中でも地域交通網の整備ということが特に重点にうたわれておるわけであります。特に、たとえばいまの歌志内線とかあるいはまた幌内線、これなんか廃止すると、もう車では石炭の輸送はできないのです。火力発電所に引き込み線をつけることによって石炭は自動車よりも国鉄で輸送する、こういう方向にむしろ転換すべきなんですね。そういう努力をまずしなければならぬのであります。この際、通産大臣見解を承っておきたいと思います。
  88. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答え申し上げます。  国鉄が大赤字を抱えていることは国民の大きな負担でございますし、この整理統合というようなことは至上命題としてやらなければならぬと思います。しかし、一方、エネルギーの安全確保という点からしますと、わが国のエネルギーというもので大きな位置を占めるのはやはり石炭だと思いますし、この点、各大臣が答えておりますように、地方の実情というものを十分認識した上で、政令についてはその基準に対処しなければならないというふうに思います。
  89. 岡田利春

    岡田(利)委員 防衛庁長官にこの際承りますけれども、私の選挙区には日本最大の演習地、矢臼別演習地があるわけであります。当初、戦車初め重車両が明け方、夜中通って、地域で大問題になったことがあります。しかも毎年毎年、大型の演習が行われておるわけです。これを国鉄で輸送する。もちろん、自衛隊が保有している弾薬あるいはまた火薬などの輸送に関しても、しばしば地域で問題になっておるのであります。そうしますと、運輸省の基準からいえばこれは非常に大きな問題が残されると思います。防衛庁長官としてこのローカル線の運輸省の示している基準についてとてものめるものではないと私は判断するのでありますが、防衛庁長官見解を承っておきたい。
  90. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  国鉄再建法に基づく赤字ローカル線の廃止の問題につきましては、運輸省が中心になって政令の作業をやっておるように承知しているわけでございます。防衛庁としましては、国の防衛に任ずる官庁としましてその所掌事務の遂行の上で、いわゆる赤字ローカル線が廃止された場合に生じる不都合な事情について、運輸省の理解を得る必要があると一般的に考えておるわけでございます。  そこで、お尋ねの問題につきましては、主として大規模な訓練を行う演習場とか、大量の物資輸送が行われる駐とん地等に関係する各路線について、道路輸送の代替の可能性を含め、廃止された場合の問題点の分析、検討を行っているところでありますが、現在、運輸省との間で事務的な調整を行っている段階でございます。
  91. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここまで来ると、これは運輸大臣に質問するよりも、総理見解を承らざるを得ないと思うのです。それぞれ関連のある各省の見解はいまお聞きのとおりなんです。私は、この法律は欠陥法律ではないかという感じがするのです。ローカル線の赤字というものは小さいわけであります。むしろ道路は整備されるけれども路線はなくなる。これは重要な問題なわけです。ローカル線を、もし道路と同じように道路財源でせめてこの路線の維持を見てやると、あとはもう少し合理的な方法、たとえば軽量な貨車を走らせる、こういうような方法をとれば赤字の解消の方向に大きく前進するだろうと私は思うのです。だから、この際基準をつくるのに拙速主義ではなくして、そういう点を十分踏まえて、また、従来からの惰性ではなくして、もう一歩改革ができる条件の整備等をもう一度深く検討して、しかる後にこの政令基準を定めるべきだ。これは悔いを千載に残してはならないのでありますから、いま急ぐ必要はないと思うのです。ひとつ総理見解を承っておきたいと思います。
  92. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私から先にお答えをいたします。  この国鉄経営再建促進法、これを欠陥法ではないかという御指摘があったのですが、これは地方ローカル線の整理の問題だけでなしに、御承知のように国鉄財政再建のために必要な改善計画の設定でありますとか、あるいはいままでの累積した借入金等に対するたな上げの措置でありますとか、いろいろなことを含めまして国鉄財政の再建を目途にしながら合理化を図っていこう、こういう法律でございまして、国会の多数の御賛成をいただいて成立したことでございますから、政府としてはこの法律の適正な運営によりまして目的を達成していきたい、こう思っております。  いま取り上げておりますところの政令の問題につきましては、各省庁の責任者からいまいろいろの立場でのお話がございました。各方面の意見もあわせ踏まえまして慎重に、しかしこの法律を早く軌道に乗せなければいけませんから、慎重かつ、できるだけ早く政令の制定をしたい、こう思っております。
  93. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 岡田先生、なかなかうまいこと質問されまして、まさに各大臣に、自治大臣、北海道長官通産大臣防衛庁長官に御意見をお聞きになりましたが、そこがいま一番われわれ、折衝が難航しておるところでございます。しかし、法律が公布されましたし、できるだけその法律で委任されております政令を早期につくりたい。私たちも、国鉄が百年にわたりまして築いてまいりました地方との関係、これを尊重しながら、それでもなおかつ特定地方交通線を一部廃止せざるを得ないというような、そういう事態にまでなっておるという国鉄に対しましての認識もまた同時にしていただきたいと思っております。でございますから、私はこの際、国鉄の従事者並びに管理者、これが一体となってやはり根本的に国鉄を立て直すということと、この地方交通線の整理というものは一体の問題として考えてもらわなければ、地方交通線だけを廃止して国鉄の再建を図るのか、こういう議論になってまいりますと、私はいささか再建についての考え方が違うのではないか、こう思ったりいたしております。  そこで、この地方交通線の廃止につきましては、先ほどいろいろと先生が各大臣に聞かれましたそこが問題点でございますから、われわれもそういうことについて十分協議を経て、政令の制定をいたしたいと思っております。しかしながら、何といたしましても三月の末までに国鉄があの法に基づきますところの経営改善計画を出さなければなりませんので、したがって、それまでにこの特定地方交通線の基準というもの、つまり運輸省としての方針というものを確定しなければならぬのでございまして、その意味から申しましても、政令の策定というものについてできるだけ早く煮詰めていかなければならぬという時点にあるということも御承知いただきたいと思うのであります。
  94. 岡田利春

    岡田(利)委員 いずれの交通線の建設にも相当長い年月を要して、そうしてまた、長い年月が今日経過をいたしておるわけであります。総理はしばしば憲法問題では、慎重の上にも慎重を期してという言葉を使われるのですが、特にその言葉どおりに、ひとつ慎重の上にも慎重を期して、まあ急がないというわけにはいかぬでしょうけれども、慎重の上にも慎重を期してぜひ対処されたいことを要望いたしておきます。  時間がありませんので、最後に、私と同じ選挙区である中川大臣に一つだけ質問いたしておきたいと思います。  動力炉・核燃料開発事業団があって、それぞれ任務の執行を行っておるわけであります。最近、高レベル放射能の廃棄物処理について、これは大体三つの方法があるだろう。一つは海洋投棄、一つは大変な費用がかかるという宇宙投棄、第三にはいわゆる地下投棄という、大体三つの方法が考えられるわけであります。ところが、先般北海道の下川町の下川鉱山において、高レベル放射能廃棄物の地下投棄の可能性に関する基礎データの測定、これが問題になって、地元では大変な反響が出たのであります。もちろんこれは岩石の、輝緑岩の水圧試験とか熱伝導試験、こういうのを行うんだ、こう言われておるわけであります。ただしかし、これ以外にも、たとえば低レベルの場合は秋田県の尾去沢鉱山の跡地で実験いたしておりますし、また、兵庫県の明延鉱山においても同様な試験が行われておる、こう聞いておるわけであります。  第一点は、一体どういう場所でこういう実験が行われておるのか。第二点は、これらの問題についてはやはり正々堂々と事前に計画を発表して、地元に説明をしてからこういう試験に入るということをぜひ約束してほしいと私は思うわけです。それと第三点としては、わが国の鉱山というのは非常に複雑なものであります。したがって、鉱山跡地に投棄するという考えはあるのかないのか。ないということがはっきり言えるか。  この三点について長官の答弁をひとつ願っておきたいと思います。
  95. 中川一郎

    ○中川国務大臣 原子力開発利用に当たりまして、廃棄物処理問題というのは非常に重要な問題でございます。そこで、昭和五十年十月の原子力委員会が決めました基本方針に従って処分をするということになっております。  御指摘のように二通りございまして、低レベルのものと高レベル。低レベルの放射能廃棄物につきましては、大体法律その他基準が決まりまして、まず海洋投棄をやろうということの方針が決まり、諸外国あるいは国内の水産業界に話し合いをしておるという段階でございます。地上処分については今後またさらに研究をしていきたいというのが基本方針であり、もう一つはハイレベルの廃棄物でございますが、これについては、少なくとも三十年ないし五十年間は貯蔵しておく、かなり長い間はこれを貯蔵しておく。その先にどういう処分をするか。いろいろありますが、まず固化をするということ、そして被害の少ないものにし地層処分というようなことも考えられるのではないか。  こういうようなことから、先々のことではありますけれども、たとえば熱水の動きがどうなるかというような基礎的なことを研究をしよう。下川で問題になりましたのも、放射性の物質、放射線や放射能を含むものではなくて、単なる熱水がどういう動きをするかという基礎データを求めたものでございまして、地域の皆さんに被害を与えるものではない。それじゃ、実際どこで行われたかということについては、事務当局からまた補足をさせます。  それから、地元の皆さんに十分話し合いをしてという御指摘でございますが、この点は、不安がないように、また、われわれもやましいことを考えてやっておるわけじゃございませんから、十分連絡をとっていきたい。下川町の皆さんにも説明をして理解を得たように思っております。  三番目の廃鉱等の地層処分というものも、やはり一つの方向として考えの中にはありますが、まだ決定したわけではございません。
  96. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答え申し上げます。  大筋につきましてただいま大臣から御答弁申し上げたところでございますが、五十六年度から、さらに下川以外にも幾つかの場所で、同じような試験研究を開始したいという希望を持っておりますが、まだ場所は決まっておりません。  なお、現在、尾去沢では低レベルの廃棄物を対象に考えまして、やはり同じようなデータをとっているということは事実でございます。また、先生御指摘の明延のお話につきましては、過去サンプルをとったことがございますが、現在終了しております。  以上でございます。
  97. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  98. 小山長規

    小山委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十二分開議
  99. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  100. 正木良明

    ○正木委員 非常に制限された時間の中でございますので、重点的に総理以下関係閣僚の皆さん方から、いろいろとお尋ねし御答弁をいただきたいと思います。  来年度の予算審議が始まりまして以来、本会議におきましても当予算委員会におきましてもしばしば問題になりました給与所得の減税問題について、私からも質問をいたしたいと思います。  御承知のように政府は、昭和五十三年度以来四年間も所得税減税を見送っているわけでございます。減税の見送りは、サラリーマンに対しましては、納税者の六百万人の増加がございます――これはお手元に渡っていませんかな。まだ行きませんか。大蔵大臣に先に渡してください。  この資料の下の方です。給与所得者の「税金の推移」とございますが、この中で、納税人員が五十二年度の決算におきましては二千七百九十八万人、五十六年度予算では三千四百万人、六百二万人の増。一人当たりの給与額は、五十二年度におきましては二百七十五万円、五十六年度予算においては三百四十八万円、七十三万円の増、平均こうなっておりますね。一人当たり幾ら税金を納めるかということになりますと、五十二年度では十三万六千円、五十六年度では二十一万二千円となっております。七万六千円の増になるわけで、これはあくまでも平均でございます。これは租税及び印紙収入予算の説明、主税局の資料等から抜き出したものでございます。これから見ますと、いわゆるサラリーマンの一人当たりの税金の伸びというのは、給料の倍以上になっている。二一・五%人員増、給与額が二六・五%増、この給与額にして納税額が五五・九%ですから、当然二倍以上ということになるわけです。  こうした状況の中から、所得税減税ということについてしばしば議論になったわけでございますが、政府の答弁は大体二つにしぼられているように思います。財政再建の途上で財源がありませんというのが一つ。もう一つは、外国の所得税に比べて日本の場合は非常に低い、低いという意味は軽い、こういう考え方であります。しかも、大蔵大臣に至っては、実に巧妙なるすりかえ論を出しているわけです。たとえば、あれはたしか三百万円の例を引かれたのじゃないかと思いますが、日本の場合は六万何がしてある、これが仮に倍になったって十二万円じゃありませんか、そうすると諸外国に比べて非常に低いじゃありませんかと。しかし大蔵大臣、そういう比較の仕方は、実は非常に公正を欠く比較であろうと私は思うのです。単純計算においては確かにそのとおりであろうと思いますが、しかし、税金を納めた後、いわゆる可処分所得というのはどれだけあるかという比較をしてもらわなければなりません。  これは大蔵省が予算委員会に提出した一人当たりの可処分所得、収入から税金等を引いた国際比較でございます。これは一九七九年分ですが、これを見ますと、一九七九年十二月二十一日の対ドルレート、一ドル二百三十九円九十銭、これはちょっと無理でしょう。きょうのお昼のニュースでも、ちょっとこの前よりも円安で二百七円ぐらいになっているようでございますが、昨年の十二月二十一日の対ドルレート二百三円六十銭、まあこれがいいところでしょう。これで計算いたしましても、可処分所得は、アメリカにおいては百五十二万円、フランスにおいては百五十一万円、西ドイツにおいては百三十九万円、イギリスにおいては百十六万円。日本の百三十六万円というのは決して飛び離れて大きい数ではない。可処分所得については非常に暮らしやすい状況にあるということは決して言えないと私は思うのであります。この点について確認をいたしておきますが、どうでしょうか。
  101. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それはまあ計算の仕方はいろいろございます。あなたのような見方も、もちろんあるわけであります。しかし、大蔵省といたしましては、一般普遍的なものとして円レートで計算をしておるというのが実際でございます。
  102. 正木良明

    ○正木委員 いや、レートを聞いているのじゃありませんよ。要するに、だから一ドル二百三円六十銭という状況、その為替相場のレートで考えてそれぞれの可処分所得がこれだけだと言っているわけです。要するに、収入の中から税金等を引かれて自由に使える金というものが、諸外国に比べてどれぐらいあるか。日本は百三十六万円しかないわけなんですが、これはあなたがおっしゃるように、必ずしも税金が安いために可処分所得が日本では大きいんだとは言えないのだということ、暮らし向きから言うならば、この可処分所得というものの場合については非常に問題が多いのだ、そういう税金だけの比較では問題が多いのだということを指摘している。これは大蔵省の資料から出したものですがお、確認してください。
  103. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 したがって、そういう見方もございますということを私は言っておるわけであります。
  104. 正木良明

    ○正木委員 また、エンゲル係数の国際比較から言いましても、日本のエンゲル係数を日本銀行の国際比較統計等の資料で見てまいりまして、これは一九七八年のものしかございませんけれども、わが国は三二・六%、英国の三〇・五%、フランスの二九・六%、西ドイツの二六・五%、アメリカの二〇・一%、先進国の中で一番高いわけです。要するに、支出の中で食費等の占める割合というものを出しているのがエンゲル係数ですね。ということになってくると、残された可処分所得の中で非常に日常的に高い食料費関係の支出を強要されているというのが日本の実情でございます。また、アメリカを除く各国におきましても、一九六五年には三〇%台であったのが最近は三〇%を割っている。これは明らかに日本の生活水準の低さ、貧困度というものを示すとともに、物価水準の高さを示しているわけです。  言ってしまいましょう、一々聞いていたらもう時間がないから。  牛肉の一人当たりの年間消費量の国際比較においても、わが国の一人当たりの牛肉消費量は先進国中の最下位です。米国の十六分の一、西独の十三分の一です。食生活の違いというのは理解できますけれども、一九六〇年ごろから比べると約二倍になっている。エンゲル係数や可処分所得の国際比較で見ると、物価水準の高いことを無視できない。したがって言うべきことは、要するに税金というものが、いわゆる給与所得者の所得税に対する控除が依然として四年間据え置きにされておる。もっと言い方を変えると、標準世帯において二百一万五千円が課税最低限である。このまま放置されている。だから、それはやはり物価水準から考えても、また生活程度から考えても、大蔵大臣や総理大臣が主張されるように、日本の給与所得におけるところの所得税の負担というものは外国に比べて非常に低いという一方的な見方だけで判断できることではないのだ。その税金が引かれた可処分所得、生活費が非常に日本は高くついていることから考えても、このことが実質所得の中にマイナス現象を起こしてくると、ますます生活が苦しくなるということになると思うのですが、どうでしょうか。
  105. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先ほどから申しておりますように、統計のとり方はいろいろあるわけでございまして、私の言っていることが絶対だとは私は申しませんが、しかし、正木さんの言うことが一番正しいのだというようにも、私はなかなか認めがたいところがあります。それは生活様式等が違いますから、外国人が日本へ来て生活する場合、日本人が外国で生活する場合、いろいろ違うわけでございまして、それらの統計上の食い違いの問題その他については、政府委員から答弁をいたさせます。
  106. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いまお話のありますように、一人当たりの税引き後の所得、可処分所得を国際的に比較いたしますと、確かに日本よりも、たとえばアメリカ、西ドイツ、フランスの方が高くなっております。しかしながら、これはそれぞれの国の一人当たりの所得がすでに違っておるということの反映だと思います。私どもの方では二百十七円という対ドルレートを使ってやっておりますが、日本の一人当たりの国民所得は百八十万円でございますが、これに対しましてアメリカは百九十三万二千円、ドイツが二百十一万五千円、こういうふうに高くなっております。  いままでたびたび御答弁申し上げておりますのは、そういう所得を与えられたものをもとにして所得に対する税の負担率は、日本の場合には、たとえば三百万円の給与所得者について二・二%である、それからドイツが八・七%であり、フランスが二・三%であり、イギリスに至っては一八・九%である、そういうことを申し上げておるわけでございます。したがいまして、日本の一人当たり所得そのものが、すでに国際的に見て第一位とは言いがたい。それで、国際的に追いつかない分を全部税負担から外すという論理にはなかなかならないのではないかということを、たびたび大蔵大臣から申し上げておった次第でございます。
  107. 正木良明

    ○正木委員 ですから、確かにそれだけを比較すれば、税の負担率ということから比較すればそういうことが言い得るだろう。しかし、それは一面的な見方ですよ。冒頭申し上げたように、所得減税はどうしてできないかと言えば、財政再建途上であって財源がないということと、外国と比べて税負担が安いから、低いから、軽いから、だから減税はできないんだという主張をなさっているが、それは公平ではありませんよ。税の負担だけを比較しているというだけでは、公平ではありませんよ。しかし、庶民はその税負担をしながら、サラリーマンは天引きで源泉課税をしながら、税金を納めながら、残された収入というものを比較すればこういう状況です。国民所得を出してくれば、それは引き算すればわかることだから当然のことではあるけれども、しかし、税金が安過ぎます、安過ぎますという宣伝は不公正でありますよということを申し上げているのです。どうですか。
  108. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは見方でございまして、日本国民の実感からして、所得税、月給袋を見ましてそれでいろいろな引き算をされておりますが、上の方はかなりきつくなっておりますが、五百万円以下というのは実態的に、実感的に、私は所得税は非常に重い税金だというふうには感じられないんじゃないか。これはイギリス人やドイツ人などといろいろぼくらも話をする機会がありますが、税の重さというものは向こうの方が非常にきついというように私は見ております。彼らもそう言っておるわけです。  ただ、日本国民の一人当たり所得というのは平均してそれらの国よりも低いじゃないか、絶対額においては可処分所得が低いのだからというお話でございます。それは私はそのとおりだと思います。しかしながら、低いとは言いながらうんとまた低いわけでもないし、少し低いということであって、その可処分所得の中における税負担の割合では、日本は非常にまた安いというか少ないんですということも事実でございます。したがって、現在のような事情の中では、いろいろな事情からして調整減税ということをやるだけの余裕もないし、また、今回は御容赦願いたいというのは、そういう点でかねがね言っておるところでございます。
  109. 正木良明

    ○正木委員 要するに物価は高いのです、外国に比べて。特に住宅の購入費だとか生活必需品、牛肉等は高いのです。これはもう世界的な国際比較があるわけですからね。たとえば、参考のために申し上げておきましょう。これは住友商事が調べたものですが、昨年の八月の中間における各国の物価サービス価格調査、二十九品目やっている。この中で牛肉は、日本を一〇〇として西ドイツで四七、フランスで二三、イタリアで六五、イギリスで六九、アメリカで一三。ガソリンは、日本を一〇〇として西ドイツ六八、フランス九九、イタリアのミラノはばかばかしく高いのですが、二二三、イギリス一三七、アメリカ三一。牛乳は、日本を一〇〇として西ドイツ六四、フランス五五、イタリア一一四、イギリス五八、アメリカ四六、象徴的なのを抜きますとこうなるのです。そういうふうな生活をしているからエンゲル係数が高くなる。だから可処分所得というものの使いでがなくなってくる。だから、こういう面に重大な関心を持たない限り、本当の税の公正というものを期することができないのではないかというふうに考えます。  そこで、次の問題に進みますが、これはこれでよく記憶しておいてください。  いわゆる執行上の不公正がある。これは外国の比較と違いますから、生活様式が違うとかなんとかは関係ありません。世にトーゴーサンだとかクロヨンだとか言われている課税客体の捕捉率、いわゆる所得捕捉、これはもう御承知のように、サラリーマンは一〇〇%給与所得として捕捉されています。ところが、実際においては所得捕捉について非常な差があります。これは税調も認めています。  たとえば、今回の中期答申の見解の中でもこういうことを言っています。所得税及び個人住民税のことに触れているのですが、「しかしながら、所得課税については、執行面で把握差が生じやすく、実質的な公平の確保の面で批判が少なからず見受けられ、とりわけ、個人が稼得した所得に対して直接に負担を求める所得税等については、制度上、執行上の公平確保が一段と強く要請されるところから、これまで以上に、これらの問題に配意して、広汎な角度から検討することが要請される。」税調が言っているのですよ。「所得課税については、上述したような問題があり、これに大きな増収を期待する場合には、こうした問題がそれだけ増幅され、かえって負担の公平を損うおそれがあることに留意する必要がある。」要するに、所得税をどんどん増税するということになってくると不公平の格差がもっと広がってくるであろう、こう言っているのです。  それから、具体的に、実態的にちょっと考えていただきましょう。これは国税庁長官お尋ねしますが、いまお手元にずっと配ってある資料です。「所得の申告もれ状況」という数字を出していますが、この数字、間違いありませんか。
  110. 渡部周治

    ○渡部政府委員 お答え申し上げます。  正木委員御作成の資料でございますが、これは私どもが発表いたしました五十三年分の調査事績及び課税事績に基づいて作成されたということでございまして、原資料とチェックさしていただきましたが、間違いございません。
  111. 正木良明

    ○正木委員 この表に従って申し上げますと、申告所得税課税人員が二百三十五万八千件、これに対して実地調査をいたしました件数が十二万五千件、実地の調査率は全体の五・三%です。その中で申告漏れの件数が十一万三千件ありました。これは実地調査件数に比して申告漏れ率が九〇・七%です。ほとんどです。そして一件当たりの申告漏れの額が二百八十三万円です。譲渡所得、山林所得、相続税、贈与税、いずれも申告漏れ率は六六・七、七二・八、九二・二、八九・〇というふうに、法人税においても七八・三。これはもちろん相当悪いことをしているだろうというところを重点的におやりになっていますから、全部が全部、九〇・七%の申告漏れ率が出てくる、というふうな非常識な言い方で私は申し上げているわけじゃないですよ。ないですけれども、少なくとも五・三%の実地調査をやって、そのほとんどが申告漏れだということです。こんなことがサラリーマンの税金に存在しますか。どうです。
  112. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 そのような状況のことはないと思います。
  113. 正木良明

    ○正木委員 いわゆる一〇〇%捕捉されているのです。一〇〇%捕捉されているサラリーマンの所得が、何ら減税の措置が物価においてもスライドされないで、四年間放置されているのです。そうしてこの申告所得者の方は、たとえば個人事業者の場合、必要経費というのを見られる。必要経費というようなものは、どうです、物価スライドしてませんか。事実上購入するものは物価の上昇率に見合って高くなっているんですから、それを必要経費で見られるということは、これは明らかに物価にスライドされた控除が行われているのと同じことだと考えていいじゃありませんか。にもかかわらず、これに匹敵すべき給与所得控除であるとか基礎控除であるとかというものについては四年間放置されているということは、物価上昇というものについて、どんどん必要経費は物価の値上がりに応じてサラリーマンも購入しなければならないのにもかかわらず、それが全然さわられてないということは、これは明らかに不公平と言えませんか。
  114. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは事業所得と給与所得とについてそういう比較は必ずしもできないと私は思います。といいますのは、御承知のとおり事業所得は発生主義でやっておりまして、仮にもうけがあったといっても、それは現金化しているとは限らない。所得があっても売掛金になって所得がある。その売掛金は取ってみないことにはわからない。かなり焦げついておる売掛金も直ちに経費には見てくれぬわけですから。また、決算間際に品物を買って、その品物が売れるか売れないかわからない、それであってもそれは所得の中で計算をされるわけです、在庫品は。要するに所得で買えば。したがって、そこの場合に値上がりのものは、やはり高く買ったものは高いたな卸しの評価をやるというようなことになるので、そういうような物価の値上がりという点からだけ給与所得と一般の事業所得との差が、不公正があるじゃないかというわけには一概に言えないんじゃないかと思っております。
  115. 正木良明

    ○正木委員 あなたは専門家だけれども、そういう言い方をしちゃいけませんよ。そういうものは単年度で見るものじゃないでしょう。それはやがては翌年度、翌々年度というものに引き続いて解決されていくじゃありませんか。利益が少なくなれば三年さかのぼって計算してくれるじゃありませんか。そんなことしてくれますか、サラリーマンに。それは一見、何となくあなたの言っていることはもっともらしく聞こえるけれども、実態的にはそれはあり得ることではないと私は思いますよ。どうですか。
  116. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 給与所得控除というものの性格についてはいろいろな意味合いを持っておりますけれども、給与所得控除が給与収入を得るに必要な経費の概算控除という性格を持っていることは否定できないと思うわけであります。そういう点から見まして、事業所得者の必要経費は、たとえば仕入れでございますとか経費でございますとか、毎年毎年の実際の価格で引かれるのに、給与所得控除の方は引かれないではないかという御指摘かと伺ったわけでございますが、給与所得控除も、百五十万円までは四割、三百万円までは三割、三百万円から六百万円までは二割、六百万円から一千万円までは一割、一千万円を超えますと五%というふうに定率で給与収入から引いて、残りを課税所得としておるわけでございますから、そういう点だけの比較で申しますと、正木委員の仰せがありますような、給与所得控除については定額だから、したがって収入が過大に出るということにはならないというふうに考えておる次第でございます。
  117. 正木良明

    ○正木委員 ちょっと待ってくださいよ。じゃ、変えたんですか、率を。そのままじゃありませんか。率はそのままでしょう。
  118. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 率がそのままであるということは、すなわち、給与収入に応じて引かれる給与所得控除がふえてまいるということでございます。三百万円の方が三百五十万円になれば、そのふえた五十万円につきましてその二割が給与所得控除として引かれるわけでございますから、したがって十万円だけ給与所得控除がふえる。そういう意味では収入に応じて経費もふえていくわけでございます。
  119. 正木良明

    ○正木委員 だから、その率というのはどうして段階的にするのですか、それでは。
  120. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 これは家計調査等で私ども毎年チェックをしておるわけでございますが、勤労者の家計のさまざまな消費支出の項目の中で、たとえばレーンコートの新調でございますとか雑誌の購入でございますとか、かなり幅を広げまして、給与を得るに必要な経費と思われるものを項目別に集計をいたします。それを仮に非常に広義の給与所得を得るに必要な経費というふうに考えましても、これは各所得収入階層を通じまして大体二%ないし一〇%でございます。これは上下ともほぼ差がない。したがって、それを超える部分につきましては、給与所得がかなり弱い所得と申しますか、サラリーマンが病気になればたちまち収入の道を失う、資本を持って仕事をしている人とそこが違う、そういうところをしんしゃくしておるものというふうに考えているわけであります。  そういう意味で、給与に、伴う経費がふえていくと申しますことは、私ただいま申し上げました実際の給与収入を得るに必要な経費という点ではほぼ定率の一〇%内外の経費に相当する部分でありまして、それをたとえば一千万円を超える人についても四百万円を給与所得控除として税金から除外することは適当かどうかという判断から、四割、三割、二割、一割と逓減する所得控除率を使っておるということでございまして、五十四年にはさらに、一千万円以上の給与所得控除を五%に減らさしていただいておるわけであります。
  121. 正木良明

    ○正木委員 実際問題として、所得を把握する、課税客体を捕捉するという問題について、これは長らく言い続けられているわけですね。大きな差がある、実態的に見まして。私は別に、零細な個人事業者の課税を苛斂誅求にやれということを言っているのではありませんよ。少なくともそういう人たちが受けているような恩典はサラリーマンにも与えるべきではないかということを主張しているわけですよ。だって、それ以外にも恩典はあるのです。  これは国税庁の資料だから、これは文句を言うまい。「給与所得者に比し事業所得者が有利となっている制度上の事項」というのがあるのです。あなたのところの資料だからね。「白色申告者の場合 事業専従者一人につき四十万円が控除される(所得税法五十七条三項)」要するに妻を専従者と見た場合、サラリーマンの配偶者控除は二十九万円だけれども、白色申告の者には四十万円見てくれるから十一万円の差がある、こう言っています。「青色申告者の場合、試験研究費の額が増加した場合の所得税額の特別控除(最高所得税額の一〇%)の特例及び青色事業専従者に、支払った給与を必要経費にする特例」こんな特例がある。事実あるのです。妻を青色申告の事業専従者にした場合、妻はサラリーマンとなるため一家の所得を分けることになって、税率の下降、給与所得控除、最低五十万円の適用などで有利になる。これをふやせと言っているんじゃないですよ。こういうふうにサラリーマンもしろと言っているんですよ。間違わないようにしてくださいよ。そっちのマスコミの方も間違わないようにしてくれよ。そうじゃないと、苛斂誅求の質問をしたなんて言われたら困る。  みなし法人課税の選択者の場合は「事業主本人についても報酬(給与所得)が認められる。所得税の超過累進税率に代えて、法人税率(二三・九%又は三四・一%)を適用することができる。」要するに所得税率の最高七五%と比べるとはるかに有利になる。本人も妻もサラリーマンになって収入を分割することができる特典があるのです。「一般の青色申告者 青色申告控除(十万円)が控除される」大蔵省が言っているんだから、これは間違いないよ。農業所得者に至っては、青色申告、みなし課税を選択できる。そうして独特の経費計算がある。細かくは言いません。現にこういうことが存在しているのです。  仮に大蔵省の言うように、物価スライドという問題について経費の問題を考えたときに、先ほどおっしゃったように固定された控除額の上に、収入によってパーセンテージでどんどん控除しているんだから、それはスライドしているんだという見解は正しいとしても、正しいとは私は思いませんけれども、そういう問題がやはり残ってくるのです。どうでしょうか。
  122. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は、この事業所得と給与所得について、制度的に不公正というのはほとんど存在しないと思っているのです。ただ、捕捉率の問題等については御指摘のような点がございます。例示的に申し上げますと、たとえば専従者控除、自分の妻や息子に四十万円も認めている、けしからん、こうは言えないのですね。たとえば、帳面をつけてない農家の人が働いておって、場合によっては妻の方が町会議員のおやじさんよりよっぽど働く場合が、現実にはいっぱいあるわけですからね。人を頼んだら、年間四十万なんかで頼めるもんじゃない。それは月に二十万円も十八万円もかかっちまう。しかし、女房や息子が働いても、ほかに出かせぎに出れば百万円か百五十万円働ける息子も、家で働いていれば、青色申告でない限り四十万しか経費は認めません、こう言うのですから、私は、専従者控除四十万円認めるのが多過ぎるということにならぬ……(正木委員「そんなこと言っていませんよ」と呼ぶ)だから、そうなりますと結局給与所得者について……(正木委員「これは議事録に入るから、そんなことは言っていませんよ、多過ぎるとは言っていませんよ」と呼ぶ)ですから、そういうようなことで比較をその点でするということは、私は必ずしも適当であるかどうか、非常に疑問がある。  もう一つ申し上げますと、たとえばパートというのがございます。パートで、今度の税法改正にのっておりますが、七十八万ですかまで所得があっても、それは配偶者として認めます。ところが、これは同じ袋張り、仮に自分で紙とのりをもって袋を張って、それで納める内職の人がいるとする。この人は自分で材料持ちだから、そこで四十万円とかもし所得があれば、それは配偶者控除から落とされてしまうわけですね。それは給与所得ではないから、材料持ちで自分でやるから事業所得であると、こういう見方になるわけです。ですから、一概に制度上は、給与所得、事業所得というのにそんな大きな不公平というのはないんじゃないか。見方によっていろいろ見方がありますが、問題は、正木先生の言うように捕捉率の問題なんですよ。サラリーマンの場合は一〇〇%源泉で押さえられちゃいますから、捕捉率がぴしっといく、一般の事業所得という申告所得については捕捉率がなかなか思うようにぴしっといかないという点は間違いない、私はそう思っております。
  123. 正木良明

    ○正木委員 白色申告の専従者控除四十万円とサラリーマンの配偶者控除二十九万円の差ということについて申し上げましたけれども、これはあくまでも家事労働というものの状況においての比較なんですよ。よろしいでしょうか。それはおわかりいただけますね。それからパートタイマーの問題も、もし仮に個人事業主の奥さんがパートタイマーに行けば同じ適用を受けるのです。そうでしょう。ですから、このことはこの比較の問題とはまた別の問題であるということが言えるわけです。  実は、私が申し上げたいのは、物価動向というものが非常に厳しい。昭和五十年を一〇〇とした場合には、五十五年の十二月で一三九・六%、約四〇%の値上がり率です、減税の最終年であった五十二年を一〇〇といたしました場合でも一一八・二です。こういうふうにずいぶん物価が上昇しているにもかかわらず、この問題が配慮されていないということになるわけです。主税局長が言うような話は、これはとんだところへ発展していくのです。給与所得というものが年々上がっているのです。それに対して五十万円という固定額のほかに控除をいたしているではありませんかということになりますと、これが物価に見合っているということになると、賃上げが物価上昇率を下回っては、この理論は成り立ちませんよ。いいですか。もとの額が上がっているのだから控除額はふえているのですというのならば、もとの額が物価上昇率以上上がっていなければ、これ以下だった場合はこの理論は成り立ちませんよ。そうすると、昨年の春闘におけるところの賃上げが平均して六%台であったということは、もし仮に物価上昇率が八%近くなるということになるとこれは大問題が起こりますよ。理論的にそうなりませんか。
  124. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 さっき私が申し上げましたのを四十万円の固定額があってというふうに御理解いただいたとすれば、それは私の申し上げようが足りなかったわけで、百五十万円以下の給与収入については四割の給与所得控除が認められておるわけでございますが、それを最低五十万円に切り上げておる、こういうふうに御理解いただきたいわけであります。したがって、四割、三割、二割、一割、五%というのが給与所得控除で、これは給与収入がふえるに従ってスライドして大きくなってまいります。これは給与所得控除の現在の制度から当然そうなるわけでございます。  その次に、いまお話しのことを数字的にちょっと検証させていただきたいわけですが、税収の見積もりで申し上げております納税人員一人当たりの給与総額の動きでございますけれども、五十四年の実績に対して、五十五年度の補正後の一人当たりの給与総額でございますが、これは七・五%ふえておるわけでございます。これに対して、課税額の増加がございますことは、課税額の増加がその伸び率では上回っておることは確かでございますけれども、社会保険料、住民税、源泉所得税を差し引きました後の手取りで申しますと、五十四年の実績に対して五十五年の補正後、総体の給与所得者の総人員平均で七・一%ふえております。もちろんこれは給与所得者全体の平均でございますから、したがって、たとえば七、八百万円より高い人については、むしろ手取りの増加率は物価の上昇を下回っておるでございましょう、これは累進税でございますから、当然収入が大きいほど税金が高くなりますから。しかしながら、比較的低い所得の人につきましては、七・五と七・一と総平均で申し上げましたその割合というのは、やはり実質手取りは物価の上昇を上回っておるということになるのではないかというのが、私どもがいま給与の源泉所得について御提出申し上げております見積もりに従って計算をいたしました結果でございます。
  125. 正木良明

    ○正木委員 要するに、これは聞いている方がちょっとおわかりにならないかもしれないから一から言うと、四人家族で二百一万五千円になった中を分解しますと、社会保険料控除が十万六百円ですね。給与所得控除が七十五万四千五百円、基礎控除が二十九万円、配偶者控除が二十九万円、扶養控除が、子供二人ですから、二十九万月、二人で五十八万円、二百一万五千百円になるというところが課税最低限になっているのですね。  この部分ですよ。この部分について、給与所得控除というような問題について、私はいま議論しているわけでしょう。これは事業者の場合には、自分たちが必要経費として税務当局が認知するところのものというのは、物価上昇に従って事実高い物を買っているわけです。もっと極端に言うと、こんなことを言っていいかどうかわからないけれども、たとえば表に店があって後ろに家があるような家なら、営業用の石油ストーブの灯油は、店用と家用と分けて買うかというと、それは絶対に買いませんわ。マイカーは、サラリーマンの場合、税金からガソリン代から全部自分持ちですよ。商売用に使うといったてまえで買った、それは商売に使うでしょうが、そのマイカーは全部税金も必要経費でしょう。そこらに問題がありますよ。それは税の捕捉の問題になってくる。制度上の問題ではありませんけれども、そういう問題がある。だから、ぼくはそこまで言わないから、少なくとも物価スライドをこの給与所得控除でちゃんと見ていくのがあたりまえの話ではないでしょうかと、きわめて常識的な問題として申し上げているわけなんです、  このことは、税調だって毎回毎回そのことばかり言っています。やはり所得の捕捉に不公平があるということです。たとえば、昭和四十九年度の税制改正で給与所得控除をそれまでの最高額七十六万円の頭打ちから現行制度にした理由を、当時の政府税調が答申でこう言っているのです。要約して言いますと、まずサラリーマンの場合、所得の捕捉が一〇〇%で課税されている。二、納税者の増加が著しい。これは狂乱物価の時代ですけれどもね。三、他の所得者に比べて負担が相対的に重い。四、資産所得者に比べて担税力が弱い。こういうことが理由に挙がっているのです。  また、過去の税調の答申を見ましても、一九六〇年、三十五年です。一、勤務に伴う必要な経費の概算控除。二、担税力が乏しいことによる調整。三、所得の捕捉率の高いことの相殺。四、源泉徴収による金利の調整。こういうことが全部加味されて減税の理由になっているのです。  昭和四十三年。一、所得の捕捉率の高いことの相殺。二、資産所得に比べて不安定かつ有期的なこと、有期的というのは期限があるということですが、それに対する考慮。三、収入に応じた費用の負担があること、余暇の犠牲、居住地選択の制限等の負担があることに対する配慮。要するに、遠距離通勤になったり何かしているのだから税金をまけてやらなければいかぬ、こう言っているのですよ。頑強にあなたはそうおっしゃるけれども、税調あたりはそういう点については、この税負担の問題については不公平があるということを明らかに認めていると言わざるを得ません。  それを是正するのはきわめて困難であるから、なかなか是正措置というのがとられていないことは私は了解いたしますが、しかし、こういうことかあるのだから、私は、サラリーマンが一〇〇%所得を捕捉されているのだから、ほかの所得者も全部一〇〇%捕捉しろと言っているわけじゃないのです。そんなことは、税務職員の増員から何から考えたらとてもできることじゃないでしょう。だから、それはいたし方のないことです。ならば、この不公正を改めるためにはせめて何をすべきかというならば、サラリーマンの控除額というものを物価にスライドしていく、要するに課税最低限を上げていく、累進税率を改めていくということがやられていかなければ、不公平さというのはなくならないですよということを言っているのです。どうですか、大臣。
  126. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先ほどから申し上げておるように、制度上、事業所得者とそれから給与所得者とで不公平がいっぱいあるということは、私は税制上はないと思う。問題は、把握率の問題だ。ところが、事業所得者の中には、捕捉されない人もいるではないか。どれぐらいいるか。これは私は九割いるとか、そんなことは考えておりません。ある程度いることも事実でしょう。しかし、正確に記帳をしている人もいるのも事実なんです。かなりの数いるのです。そうすると、そういう人たちをそれではどうするのか。事業所得者で正確に書いている人、その人にも何か控除をつくるのかという話になってくるわけですね。したがって、これは所得税全体の問題であって、正確につけている人に控除をつけるわけにもいかない。では、君たちも、家事関連経費は必要経費でないのだけれども、少しぐらい必要経費と認めてやるよというわけにもいかない。ということになれば、やはり正確に事業所得等については申告を慫慂し、捕捉をきちっとしていくという前提に立って、そして所得税をどうするか、こういう問題ではないか、こう思うわけであります。
  127. 正木良明

    ○正木委員 それでは渡辺さん、どうですか。財源がないということは大体わかるが、ぼくは財源がないと思っていませんよ。自然増収の額の過小見積もりがあるから、三千億ぐらい出てくると思うのです。それも納得できないけれども、少なくとも二番日、減税ができないのは諸外国の税負担に比べて日本の給与所得者の税負担が非常に軽いのだということだけを理由にするということを改めていただけませんか。
  128. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それだけを理由にしておるわけじゃございませんで、やはりこういうような非常に財政的に窮屈なときでございますから、いずれにいたしましても今回は所得税の減税については御容赦をいただきたいということをあわせて申し上げておる次第でございます。
  129. 正木良明

    ○正木委員 私は不公平は拡大すると思いますよ、そうなってまいりますと。それと、私が心配しますのはことしの春闘です。昨年は、いわゆる組合側もまさに良識を発揮いたしまして、そうして非常に控え目な結果で妥結をしています。これはもう河本大臣なんか御存じだと思いますけれども、OECDでも非常に評価が高い。第二次石油ショックをどうして乗り切ったのか。これはもう今世紀の奇跡だとまで言われたような、この第二次石油ショックを非常に、滑らかな形で乗り切った。その理由の中に、一つは、組織労働者が賃上げに対して非常に手控えたということを明確にOECDでも言っているわけです。フランスにしたってイタリアにしたってイギリスにしたって、そこらの指導者は、これだけは逆立ちしてもまねができぬと言っているのです。このように、非常に全体観に立って日本の経済を考え、日本の国益を考えて労働者たちが行動した、これはもう明らかな事実だと私は思うのです。そういう状況の中で、物価の問題と税負担の問題で実質収入にどんどんどんどん食い込んでくる。しかも制度上には不公平はないかもわからないけれども、私はあると思うのですが、まあないならないでいいや。しかし、所得の捕捉においては、片方は完全に一〇〇%つかまれている。そしてばっちり税がかけられている。しかも、それは源泉で全部天引きされている。これもまた実質収入のマイナスの一つの大きな要因であるということになってまいりますと、これはもう明らかに物価の問題と税負担の不公正の問題で、私は、大変先鋭的な賃金要求になるであろうということを心配します。  だから、この問題について、いまもう労働四団体を初めとして一斉に、この課税最低限の引き上げというものを中心的な課題として政府に要求しているし、われわれにもその協力を要請されてきているのですが、これを心配するのです。ですから、この問題についてどうですか。
  130. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは賃金の上昇よりも物価が低く抑えられるということが一番望ましい、私はそう思っております。したがって、政府としてもそのためいろいろ手を打っておる。ただ、去年の状況を見ると、確かに物価を上回った賃金を取った国もございます。しかし、それらの国は、たとえばイギリスなどにおいては、その反面、本年に至って非常に多数の失業者が出ておる。日本では確かに賃金よりも物価が少しぐらい上回るかどうかということがいま言われておるわけですが、幸いに、失業者はアメリカの三分の一とかイギリスの四分の一とかというような状態にある。こういうものも全体的に考えてみなきゃならぬ。結局は失業がふえるということは犯罪につながるわけであって、法務省の調べによると、日本で窃盗が一件発生した場合、東京で一件発生すると、ニューヨーク、ロンドン、パリは大体三件ないし四件とか、あるいは強盗が十件とかということは、やはり失業の問題と全然関係ないということはないのじゃないか。失業の問題とそういうような犯罪の問題というものは、私は全く関係ないというようには言えないのじゃないか、そう思っておるのです。
  131. 正木良明

    ○正木委員 御趣旨、よくわかります。だから、私が申し上げたように、あの第二次石油ショックを乗り越えることのできた理由を、たった一つ賃上げの問題だけに限っているわけじゃないのです。それの条件の一つとしてそれがあるんです。そうすると、それが満たされない場合には自分たちが努力をして、こらえてそうしたけれども、それの誠意に対して何ら税の上ではこたえられない。物価の上昇を税で穴埋めせよとは何事だと大蔵大臣は腹の中で思っているのかもわからないけれども、物価の問題もこれは努力してもらわなければなりません。税負担の不公平の問題も、これはやはり緩和をしてもらわなければ、少なくともそういう労働者が良識をもって行動したことに報いたことにならないのではないですかと申し上げているのです。  確かに、なぜその良識ある行動をしたかという中には、それは世界でも希有のいわゆる企業別組合だとか終身雇用制だとか、いろいろな条件があるでしょう。いまおっしゃった失業率の問題もあるでしょう。あるでしょうけれども、これは一つの大きな柱であることは認めていただかなければならぬと私は思うのです。その点、総理どうですか。
  132. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 正木さんのおっしゃることも、痛いほどよくわかるわけでございます。政府も、賃金の値上がりを物価が追い起さないように、実質賃金が目減りをせぬように全力を挙げてきたところでございます。来春闘を前にいたしまして、私ども、今後の日本の経済運営を考えます場合に、健全な労使関係、信頼関係というものを大事にし、物価問題にもさらに全力を尽くしていきたい、このように考えておるところでございます。
  133. 正木良明

    ○正木委員 この税の問題、特に所得捕捉の問題の不公正というのは非常に量大な問題であるということでありますが、これは余り数がありませんので、ちょっと関係の大臣だけに渡すけれども、「福祉エリアにおける所得制限一覧表」これは全部網羅しておりませんで、大体関係の重立ったところなんですがね。  実はこの税の捕捉の不公正というのは、単に税負担の不公平のみにとどまらず、このことが、所得制限が導入されているあらゆる制度に大きな影響を及ぼしていくということです。たとえば、一番上に書いてあります保育料の負担ですが、所得税の場合は、三千円未満、三千円以上一万五千円、これは年額ですね、九段階に分かれているのです。そうして、これに従って保育料の額が全部違うのです。保育料の負担が全部違うのです。これを証明するのは何かというと納税証明書です。したがって、実態的にトーゴーサンというのが、これはちょっと証明のしようがないけれども、仮に、俗に言われているトーゴーサン、クロヨンというようなことが実際あるとして、トーゴーサン、一〇〇%はサラリーマン、そうして五が個人事業者としましょう。仮にですよ。そうすると、同程度の生活をしながら、所得の捕捉が半分だということになってくるとそれだけ税金が安いわけですから、ここの子供が保育所へ行くときとサラリーマンの子供が保育所へ行くときと、保育料が全然違うのです。  そういう所得制限が導入された制度というのは、大体重立ったものはこれだけあります。全部影響してきます。中には金額の高いのがありますから、それとはかかわりのないのもあるかもわかりませんけれども。  こう考えできますと、これは単に税負担が重いとか軽いとかという不公平だけではなくて、社会制度全般に対して、特に所得制限を導入されている制度に対しては全部影響を及ぼしてくる。ということになってくれば、これはもはや社会正義に反するものだと言わなきゃならぬと私は思っている。この点の御見解はどうですか。
  134. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは理論的には、所得制限をつけても、そのもとになる所得に不公正があれば不公正の拡大ではないかということは、私は理論的には全くそのとおりだと思います。しかし、よく言われるのが、これは農村の場合なんか言われるのですよね。私は、たとえば児童手当の所得制限をもっと強化したらどうだという意見だったのです、実は。仮に二百万円ぐらいまでして、それで単価アップをするかどうかは別として、二百万円ぐらいまで強化した場合はどうなんだということを計算さしてみた。ところが、サラリーマンの場合は、現在もらっている人の一五%しかもらえなくなるというのですね。ところが農村地区は、五割以上の人がそれでももらえる。ということになると、児童手当というものは、農村ではだれも負担していませんから、その制度そのものがおかしくなっちゃうじゃないかという議論が、実は予算編成の過程であったのです。  そこで、それじゃ農村がそれだけ脱税をしているのかというと、そういうことはないのですね。結局、所得が低いということなんですよ、たんぼでとれる米の数は隠しようがないわけですから。みんな標準だけのものはぴしっと統計で押さえられて、税務署が幾らと課税しているのですから、平均九俵とったら九俵だ、十俵とった人は幾らかよけいもうかっているかもしらぬ、八俵の人は損しているかもしらぬという問題はありますが、結局、所得が低いということです。ところが、現実の問題としては生活は楽なんですね。なぜかというと、サラリーマンの場合と違って、結局、家も屋敷もある。それから、食べ物も自給自足みたいな形になっているから、三百万所得があれば、サラリーマンにしてみれば五百万ぐらいの値打ちがあるかもしらぬ。まして、家なんか借りて高い家賃を払っている人と比べると。そういう問題は確かにあるのです。  そこで、それならばその不公正をなくすために、資産のある人は、たとえば所得制限と同じく資産制限を加えたらどうだ。東京の練馬付近で、億の財産を持っている人がわずかの固定資産税で、それで所得が少ないから老齢年金をもらっている、その隣の警察官のおばあちゃんが、ともかく未亡人だけれども年金をもらっているから老齢年金はもらえないという事態があるので、資産制限をしたらどうだということを研究してみたのです。ところが、それでは固定資産を持っている人はみんなつかまえられるが、分離課税のもとで預貯金で持っている人はどうしてつかまえるんだ、つかまえようがないじゃないかというむずかしい問題にぶち当たっておるわけです。  したがって私は、やはり所得の捕捉というものを正確にやるということが根本問題であって、もう一つは何か別な、資産がつかまえられるような問題がはっきりすれば、それを加味することは、研究課題として研究していってもいい、そう思っております。
  135. 正木良明

    ○正木委員 いや、ですから、全般的に不公正を全くなくしてしまうということは恐らく無理でしょう、いまの制度の上において、また、いまの税務署の人員において。したがって、私はごくごく単純なことを申し上げているのです。一〇〇%捕捉されている人たちは、事実上一〇〇%を捕捉しがたい人たちと比べて税負担は重いし、所得制限が加えられている制度においては不利な立場に置かれている、これはお認めになりますか。これだけ答えてください。
  136. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは認めます、青色申告でも、一〇〇%ちゃんときちんと書いている人は同じでございますから。
  137. 正木良明

    ○正木委員 したがいまして、先ほど申し上げたように、給与所得者の課税最低限の引き上げ、同時に累進税率の改正というものを、いま緊急の課題としてわれわれとしては取り上げざるを得ない状況にある。そのほか、公営住宅の入居資格だって幼稚園だって、育英資金であろうと老齢福祉年金であろうと、いろいろな点でたくさん、この所得制限が加えられている。全部不利な立場になってしまう。大臣が非常に広範なことをお考えになって、それはお考えになってくださることは非常に結構なことだと思うのですが、それは早急に答えが出るものじゃないでしょう。即効的に、直ちに効き目が出てくるという形でその不公平の是正がある程度できるというのは、これは部分的にやらざるを得ない。そのためには給与所得者の課税最低限引き上げと累進税率の改正しかないと私は考えているわけなんです。どうでしょう。
  138. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは青色申告者についても同じことが言えるわけです。ですから所得税全体の問題である、そう考えてい一ます。
  139. 正木良明

    ○正木委員 それで、あなたは政策推進労組会議とお話しになったときに、どうもこれは、新聞が報じていることと、政策推進労組の方にお聞きしたので、あなたが言ったとおりのことをおっしゃったかどうかわかりませんけれども、五十六年度は所得減税は無理だけれども、五十七年度は所得減税ということを考えてもいい。ただし、それは抜本的な税制改正――もうこの中で大型消費税の導入なんということのニュアンスが入っていると私は思うのですが、そういう中で所得税減税を考えたい。要するに、所得税減税をするためには、どうしても片方にそれに見合う、ないしはそれを上回るような新しい税が必要であるというように受け取って帰っているのですよ。私もその話を聞いたときそうだろうと思ったのですが、その点どうですか。
  140. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 そのようにとられても仕方のないような発言であったかと記憶をいたしております。
  141. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、大型消費税ということが全く大蔵大臣の頭の中になかったのじゃないだろうと思うのです、この大型消費税の問題はまた別の機会にやりますけれども。  それじゃ、五十七年度の所得減税ができるような状況というものは、片方で大型消費税を導入すれば財源の問題は片がつくでしょう、先ほど申し上げた二つの理由の。ところが、二つ目の理由は一年間じゃ片がつきませんな。諸外国に比べて税負担が低いというあなたの自説は、五十七年度には解決がつかないでしょう。財源的な問題は大型消費税を導入すれば――これは仮の話ですから、私は賛成するという意味ではなくて、財源的には片がつくでしょう。二つの理由の一つは片がついても、一つは残りますね。それにもかかわらず、やろうと思えばできるということなんだと私は思うのです。  財源以外の問題については、総理大臣、大蔵大臣並びに関係閣僚、そうして大蔵省の各局長国税庁長官、この辺が腹をくくれば、所得減税というのは可能なんですよ。そうとらざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  142. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは政策全体の問題ですから、全体的に財政再建もでき、それから税全体の見直しというような中でどこをどういうふうにするかという政策の問題ですから、私は、それはやろうと思ったらできるでしょう、しかし、ことしはできないということを言っているだけです。
  143. 正木良明

    ○正木委員 財政再建ができたらとおっしゃらないで、財政再建のめどとおっしゃってくださいね。昭和五十七年度ですから、いまから言えば再来年でしょう。したがって、この問題は、私はやろうと思えばできる政策上の問題である。だから、理由としては財源問題しか残らない。したがって、この減税すべき財源を何らかの話し合いの中で生み出してくるとするならば、政策的な決断さえすれば所得減税はできるんだと受け取らせていただきます。  ちょっとこれは参考のために聞いておきましょう、もうそろそろ時間だけれども。  いま公定歩合の引き下げの問題が議論されていますね。大蔵当局はどうも反対らしいけれども、河本長官はなかなか積極的な御意見をお持ちのようです。  その議論を私はしようとするのではありません。もし仮に、いま報ぜられているように、現在の七・二五から一%ないし〇・七五%という範囲のことが新聞に見出しで出ているようでございますが、企業の金利負担はどれだけ安くなりますか、軽くなりますか。
  144. 米里恕

    ○米里政府委員 お答えいたします。  公定歩合を引き下げた場合に企業の金利負担がどうなるかということでございますが、一般論としては金利負担を軽減させることになるということは、おっしゃるとおり言えると思いますが、さて、定量的にどの程度軽減することになるかということは、算出するのは非常に困難でございます。なぜかと申しますと、まず、仮に公定歩合一%引き下げということを前提といたしましても、その場合に預貯金金利がどうなるのか、あるいはまた、長期プライムその他の長期金利がどうなるのかということを決めないと出てこないということが一つ。それから、公定歩合一%に対して市中の実際の貸出金利がどのくらい下がるのか、いわゆる追随率とわれわれは申しておりますが、追随率がどのくらいになるのだろうか、それからまた、その追随率に至るテンポ、スピードがどういうふうになるのだろうかということは、種々さまざまでございます。  あわせまして、さらに企業のサイドから考えますと、まず負債、これは借入金が主でございますが、借入金の利子が下がることによっていわゆる支払い利子の減少になるわけでございますが、これはすべて新規の借入金についてということになりますので、借入金を初めとする負債の増加額をどのくらいに見積もるかという問題がございます。さらに一方、企業の資産、これは企業の持っておる預金とか有価証券でございますが、これが金利が引き下げになることによってこちらはむしろ受取利子の減少ということになります。それをどのくらいに見込むかというような種々の問題がございまして、定量的に申し上げますとかえって非常に誤解を招くということであろうかと思いますので、不確定、不透明要因が多くてなかなか定量的に算出できないと申し上げざるを得ないかと思います。
  145. 正木良明

    ○正木委員 それはそうでしょう。それはそうでしょうと思うが、それじゃ、去年は二回下げておりますわな。これはうまいこと〇・七五と一%だ。ですから、八月に行った〇・七五%の引き下げ、十一月に行った一%の引き下げ、これを実績で言えばどうなりますか。
  146. 米里恕

    ○米里政府委員 去年の引き下げの実績ということを申し上げるのは実際問題として非常に困難でございますが、たとえば五十五年九月末の法人企業統計がございます。その法人企業統計をベースにいたしまして、企業の、法人企業統計対象の企業でございますが、短期借入残高の全体を見ますと約百九兆円でございます。これがもし一%金利が下がるとして、追随率も置かなければなりませんので、恣意的なものになって恐縮でございますが、五十年から五十四年までの下げの過程を見ますと、その四年間を通じまして最後には公定歩合の九割下がっておるという実績がございますので、追随率を一応九〇%というふうに置きまして計算しますと、この分の支払い利子の減少額は約九千八百億円になります。  一方、受取利子の減少を計算しなければならないということがございまして、同じようにごく単純なラフな計算で申しますと、五十四年九月末の企業の現預金残高が約五十四兆円でございます。それを一%下がるというふうに仮定しまして、こちらの方はすぐ下がりますので、追随率の計算は要らないということになります。そういたしますと、これが約五千四百億円。  本当を言いますともっと複雑な計算が必要でございまして、長期をどうするかという問題が資産、負債両面でございますが、短期だけで一応考えますと、九千八百億円の支払い利子減少に対して受取利子減少が約五千四百億円、きわめてラフに申しまして、一%に対して四千億円余りのネット金利負担軽減額という計算が一応できますが、先ほど申しましたように……(正木委員「一%ですね」と呼ぶ)はい。ですから、〇・七五ですと、その四分の三で三千三百億円、いまの計算でいきますとそうなりますが、きわめてラフな計算でございますので、実態とはいろいろまた違うという問題があろうかと思います。
  147. 正木良明

    ○正木委員 私はなぜこんなことを聞いたかといいますと、総理、景気の状況によって公定歩合は上がったり下がったりするので、そういう背景がないのに突然ばさんとそれを恣意的にやるということはできないだろうと思いますけれども、法人税が二%上がったら、いいですか、公定歩合ということにおいて、もし公定歩合が下がれば金利負担が軽減される、金利負担が軽減されて利益がふえれば法人税の課税がふえてくるかもしれませんけれども、それは単純な計算だから計算しないとしても、少なくとも法人税の増徴額、要するに取る方から言うと増徴額、企業の方から言うと取られる額は、その金利負担の軽減でがばっと減ってくるのです。約四千億でしょう。法人税の税率引き上げの増収額はことし六千三百四十億ですよ。まあ、たまたまそういうふうに時期がぶつかるということもありましょうが、こんなことは一切サラリーマンにはないということです。これを覚えておいてほしいのです。それは天の助けか、政策的か、まあこれは政策じゃないとは言えないですけれども、ただ恣意的に政策適用はできないだろうと思うけれども、そういうことが起こるのですよ。サラリーマンにはそれがない。給与所得者にはそれがないということをよく覚えておいていただきたいし、これはぜひ真剣にこの問題を検討していただかないといけません。どうぞひとつ、それを御答弁をいただきたいと思います、これで税金問題は終わりますから。
  148. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いろいろ正木さんから掘り下げた御意見を拝聴いたしました。十分参考にしていきたいと思います。
  149. 正木良明

    ○正木委員 参考にして検討してくれますね。検討すると、議事録に残す関係がありますから、ちょっとおっしゃってください。
  150. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 参考にいたします。なお、参考にいたします以上は、検討いたします。
  151. 正木良明

    ○正木委員 どうも恐縮でした。  それでは、非常に財政再建の問題が厳しい状況の中で、政府としても大型プロジェクトという問題については相当大なたをふるわれたし、また今後も慎重な対処をなさるようでございますが、まずちょっと渡辺さん、この一問だけですから答えてください。  これからの財政計画というか財政運営の上で、たとえば関西新空港だとか新幹線の整備五線だとか、名古屋のオリンピックはこれに入るのかどうかわかりませんけれども、大体着工はしていないけれども計画にのっているというプロジェクトがありますね。しかも大型です。これはどういうふうな位置づけをなさいますか。
  152. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 当面財政再建を最優先課題としてやらなければならぬというときに、超大型のプロジェクトについては、なかなかそれをいまどんどん着工を進められるような情勢にはございません、一般論として。
  153. 正木良明

    ○正木委員 はい、それだけで結構です。  さて、そこから総理になるのですが、先に運輸大臣に聞きましょうか。これは答申があったわけですが、関西新空港というものは必要だと思っていますか、一言でいいです。
  154. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 わが国の将来の航空需要等を見ましたら、絶対にこの空港の建設は必要であると思っております。
  155. 正木良明

    ○正木委員 総理、同じ質問です。
  156. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 中長期的な展望に立ちますと、私は必要であると思っております。
  157. 正木良明

    ○正木委員 そこで、四十九年八月の航空審議会の答申は、まさに、大阪国際空港の騒音問題の抜本的な解決を図るということと、今後の航空輸送需要の増加に対処する、これを理由として関西新空港の建設を提言しているのです。もう六年もたってしまいましたが、いまでもこの答申の理由というもの、そしてその精神の尊重、これを肯定なさいますか、総理
  158. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お答えいたします。  航空審の答申は、現在におきましても、航空機が国際間における交通の主要機関としてますますその需要が増大してきておりますので、その建設の必要並びに空港の機能等につきまして述べております基本計画というものはあくまでも尊重して建設を推進いたしたいと思っております。
  159. 正木良明

    ○正木委員 これは総理、そのように答申を尊重していただけますか。
  160. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま運輸大臣が申し上げたとおりでございます。
  161. 正木良明

    ○正木委員 これは亡くなられた大平総理も、また、昨年の八月には鈴木総理も、この点についての必要性を強調なさっているので、いまの御答弁をいただいてその意味が再確認できたと思います。  さて、かねてから調査中のこの関西国際新空港ですが、これは近畿、西日本の経済、文化の発展のみならず、日本国土の均衡ある発展、ナショナルセキュリティーの観点からも不可欠な国家的プロジェクトだ、こういうふうに言われておるわけです。私はまだ賛否決めていませんが、要するに、これはローカルの問題ではなくて国の問題だということなんです。ところが、どうも国の態度が余り明確でございませんので、関係地元はヘビの生殺しみたいな状況で困っておるわけです。やるのかやらぬのか。それで片方では、もう土地の投機がどんどん始まって、それがやはり経済的に地元に大きな影響を与えているような状況があるわけです。  それについて質問を続けていくわけですが、この計画については、航空審議会が四十九年の八月と五十五年の九月に二度にわたって答申をいたしまして、この四年間に七十億円以上の経費をかけて、あらゆる角度から調査検討が行われてきたわけでございます。これは運輸大臣にお伺いいたしますが、空港計画案の策定状況、そして考え方、もう一つは空港建設計画案の策定時期の見通し、これについてひとつお答えいただきたいと思います。
  162. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 航空審議会から答申を受けまして、最終の答申は昨年の九月一日でございました。この答申案を拝読いたしますと、理想的な空港、将来あるべき国際空港のいわば基本的な考え方が全部盛り込まれておりまして、それに基づきまして建設するということは理想でございます。でございますから、この精神をわれわれは外しまして、これを現実的な建設にどのように持っていくかということについていろいろ研究いたしたのであります。  最近、特に財政事情がこのように非常に窮迫をいたしております時期に、これだけの大型のプロジェクトをするのでございますから、できるだけ財政事情に合ったもの、とはいえ、空港としての機能を阻害するようなことになってはなりませんし、特に日本の空港は全部内陸部にございまして、これが騒音問題に大変苦しんでおります。それがために、せっかく持っておる機能を十分に発揮できないというのが、日本の現在のあらゆる空港に共通しておるようなところでございます。ですからこの際、騒音問題というものに最重点を置き、大気汚染との関係というものを考えて、そういう公害をもたらさないで、十分に、思う存分空港の機能が発揮できるような、そういう設計を基本に考えなければならぬと思ったのであります。  それと同時に、航空審議会において出されました工法等につきまして精査いたしますと、これは十分に節約し得られる部分がございます。財政がこんなに苦しいときでございますから、その機能を最小限に発揮するとするならばどの程度の工事でいいかということを算定するという作業を鋭意続けてまいりました。現在、空港の基本計画、建設の工法並びにその手順等につきましては、ほぼ作業が終わった段階でございます。
  163. 正木良明

    ○正木委員 空港計画はそうですけれども、空港建設計画はどうですか。これは全然手がつけられないわけですか。
  164. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せの建設計画というのは、先ほど申しましたように、基本計画を建設工法とそれから建設を進めていく手順ということに分けまして計画いたしておりまして、それはほぼ計画は策定を終わっておる段階であります。(正木委員「建設計画ですよ」と呼ぶ)はい、そうです。
  165. 正木良明

    ○正木委員 いまもお話の中にもございましたけれども、地元の住民にとって非常に関心の高いのはやはり公害の問題なんです。関西の新しい国際空港計画というのは、そもそも現在の大阪国際空港、いわゆる伊丹空港の騒音問題、さらには全国的な各空港の騒音問題から検討を始められました。地元市町村も反対決議がずっとあるわけですけれども、これは徹頭徹尾反対であるという決議もあれば、必ずしもそうではなくて、結果待ちという反対決議もあるだろうと私は思うのです。そういうことから言いますと、特に環境アセスメントについては、何回か歴代の環境庁長官にも約束していただきましたが、全データを隠すことなしに公表して、そして住民の判断にまつ、こういう態度が必要だと私は思うのです。  それはそれとして、運輸省による環境調査の結果、そして新空港の設置が地域の環境にどの程度影響があるのか、そういう点の見通しがあるならば、運輸大臣からお答えいただきたいと思うのです。
  166. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 空港建設に伴い、あるいは建設された後の空港の運用等を想定いたしました環境影響評価、これはほぼ作成完了いたしております。御承知のように、この中には周辺整備に及ぼす影響等も考慮した環境影響評価を作成しておる次第でございます。
  167. 正木良明

    ○正木委員 少なくとも私が聞いている範囲では、運輸省が地元協議のために必要な現在まとめつつある環境アセスメント案は、その調査内容が空港の設置及び運航に伴う環境影響、要するに航空機の騒音、大気汚染、空港の設置による潮流調査、海洋汚染等に限られている。また、航空審議会の審議内容を見ましても、前に述べましたように、環境影響評価について審議したほかは、建設工法の比較のための工法の環境影響の審議をしたにすぎませんと私は聞いております。空港が開港するということになってまいりますと、当然、交通アクセスがやはり通過交通としても非常に重要な問題として、その環境に与える影響、空港建設に伴う建設公害等の環境影響、これらのアセスメントはほとんど行われていないのじゃないかと思いますが、この点は運輸大臣と環境庁長官にお願いいたします。
  168. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのように、アクセスに対する環境評価はまだ策定しておりません。したがいまして、これにつきましては、われわれといたしましては、そのアクセス個々の事業に着手いたしますにつきまして、事前に環境影響評価を各事業ごとにいたしたいと思っております。
  169. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 お答えいたします。  空港計画と密接な関係があると考えられるいまお話しのアクセス交通にかかわる環境影響評価は、空港計画の策定主体である運輸省が行っておりますが、まだ私の方に明らかになっておりません。もちろんこれは、万般にわたって私の方で詳細に、これは政府で決めて、やるということになった時点においては明らかにしなければならない、そういうことで鋭意検討いたしております。
  170. 正木良明

    ○正木委員 もう一度運輸大臣のいまの御答弁でお尋ねしますが、各事業ごとにとおっしゃいました。事業ごとにという意味はわかりますが、環境調査を実行する主体はどこなんですか。
  171. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 飛行場主体はもちろん運輸省、それから埋め立てや何かありますから、そういう万般の問題も運輸省、アクセス道路は、地方自治体の場合もあります。いまのところ、運輸省並びに地方自治体と考えていいのではないかとわれわれは考えております。
  172. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど環境庁長官のお答えのとおりでございますが、私が申しました事業ごとということは、すなわち事業主と読みかえていただいたら結構かと思います。
  173. 正木良明

    ○正木委員 これまた、ほかの問題にも飛び火していくのですが、いまの御答弁からいいますと、この空港は国際空港ですから、第一種空港で国がやらなければいかぬのだけれども、交通アクセスの問題については国が直接手を下さないで、地方自治体が事業主体になるということもあり得ることなんですね。
  174. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私たちがいま考えておりますアクセスの主なものは、一つは、阪神道路公団の湾岸道路がございます。それからもう一つは、日本道路公団が現在施工し、進行しております近畿自動車道がございます。これらはいずれも地方自治体ではなくして、それぞれの公団に相なっておるわけでございます。それからもう一つ、第二阪和道路がございます。これは現在、国の直轄事業といたしまして国道として建設を進めておるわけでございます。  それから、鉄道につきましては、南海電車並びに国鉄阪和線を導入いたすことにいたしております。  現在考えられております主なアクセスはそういう事態でございまして、これを過分に地方自治体に負担せしめるということにならないで、この主要アクセスは確保できるものと思っております。
  175. 正木良明

    ○正木委員 これは大変な答弁が飛び出してきたな。塩川さん、とてもそんな、運び切れませんぜ。こういう空港の計画がなくても、南大阪の交通網として湾岸道路が必要であり、第二阪和国道があり、近畿自動車道が必要なのですよ。パンクしますよ。仮に新空港建設に伴う交通アクセスとして予想される輸送手段がそれだけの道路、阪和線もそうですが、本当にこれだけしか考えていないのですか。
  176. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 開港当時におきますアクセスは、その道路三本並びに鉄道二本で供用に十分に耐え得るものと思っております。  お尋ねの中の阪神湾岸道路でございますけれども、これは御承知のように、現在、泉大津までしか計画されておらないのでございますが、もし泉州沖に決定し、それに着手するということに相なりますと、それからさらに二十四キロほど延伸しなければならぬ。この道路の許容量は相当大きいと思っております。それからもう一つ、近畿自動車道でございますが、あの自動車道が計画されましたときは、新関西空港がほぼ泉州沖に建設されるであろうということを前提にいたしまして、昭和五十二年であったかと思いますが、近畿自動車道の事業決定がおりたといういきさつ等もございます。したがって、この道路二本によりますところの交通量というものは、現在、成田と都心を結んでおります道路の交通許容量よりは、相当大きいものと私たちは認識しております。
  177. 正木良明

    ○正木委員 そうじゃないのですよ。現在、堺から南の交通量が非常にふえまして、どうしようもないから第二阪和国道が計画され、そして湾岸道路が計画されているのです。確かに泉大津までしか計画がないのを泉南まで延ばさなければなりません。しかし、空港へ行く人は泉大津から乗ってくるわけではないからね。全部大阪から来たり和歌山から来たりですから、この計画だけでは――いまあなたを余り責めたってどうしようもない、時間のむだだからこれ以上言いませんけれども、少なくともそれだけの交通アクセスでさばき切れると思ったら大変なことになりますよ。周辺地域整備の問題の中で十二分に道路網を考えていただかないといけません。  それから、近畿自動車道の問題も、その点には確かに誤解があります。空港に対する配慮としてそれが計画されたということがゼロであるとは私は申しません。しかし、あれは、うちの理事に怒られるかもわからぬけれども、要するに和歌山は大阪のチベットみたいになっているのですよ。だから、あれが関西経済圏の中にありながら飛び離れたところで開発が非常に急がれている、そのために計画されたのが近畿自動車道だとある程度考えなければいかぬと私は思います。ですから、それをやって、ほかの計画もあるらしい、泉南沖以外の計画もあるらしいが、とりあえず泉南沖というふうに答申ではもう決定したわけですから、その決定を尊重していくというのだから泉南沖ということでいいでしょう。  しかし、あれは和歌山の問題がもう本当に、非常に大きなウエートで考慮されなければならぬのですよ。このことは、私の身勝手な言い方かもわかりませんけれども、大阪の南は、琵琶湖の水ではもうとても水はもちません。これはとうとうとして流れているあの紀ノ川の水源を利用するならば、南大阪は、それこそ水は余り返りますよ。わざわざ府営水道を引いて南へ持ってこなくてもいいのです。ところが、和歌山県はそれを放しませんね。大阪に水をくれぬわけや。なぜかと言えば、水だけとられて後ほったらかしじゃ、いつまでたっても大阪のチベットになり果ててしまうと思うからです。(「陸の孤島や」と呼ぶ者あり)そうだろう。あの人も、ぼくは非常に親友だけれども、水のことに関しては断固として譲らぬ。そんなことは冗談ですけれども。  したがって、そういう点はやはり十二分に考慮して、この空港計画の交通のアクセスを初めとして、いわゆる関西の経済的な地盤沈下を防ぐという構想のもとにやられる限りにおいては、その圏内には和歌山をどうしても入れなければ話にならぬ。そのための道路ということも十分考えていただかなければなりません。これは答弁はいいです、もう時間ありませんから……。
  178. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 アクセスにつきましては、私は、供用開始後当面のということでございまして、それから能力をだんだんふやしていくに伴いまして、当然アクセス整備もやっていかなければならぬと思っております。でございますから、空港開始時における当面のアクセスというふうに認識していただきたいと思うのであります。今後、充実整備を図ってまいります。  それと、この泉州沖の空港、これには一つの都市圏構想というものを持っております。私は、現在の成田空港におきましてもそれを実現いたしたいと思って、鋭意地元と協議いたしておるのでございますが、空港がその土地にできたというだけであってはいけないのであって、その空港を中心とした新しい都市機能を持つべきだという考えを持っております。それを成田でも進めていきたいと思っておりますが、泉州沖に建設されます場合、当然、泉南並びに和歌山を取り込んだ一つの新しい都市圏というもの、しかもそれが独特の都市機能を持ったものに育っていくような、そういう構想もわれわれは持っておるものでございまして、それらはいずれも地元との協議の中においてそういうものを煮詰めていきたいと思っております。御支援のほどお願いいたします。
  179. 正木良明

    ○正木委員 それはちょっと困るんだけれどもね。まあまあ、口で言えぬこと、たくさんありますわ。  それで、環境庁長官、私は、こういうときのためにも、いま総量規制だとかいろいろの規制に基づいて環境調査をやられるんだと思うのですけれども、やはり基本的にどうしても環境アセスメント法というものがこの際、こういう大きなプロジェクトをやるために必要だと思うのですが、簡単で結構ですから、環境アセスメント法案を今国会に提出するのかどうか、その見通し等についてあなたの確信をひとつあわせて聞いておきたい。
  180. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 四十七年の六月に閣議了解で、公共事業を初め大きな事業はアセスメントをやらなければならぬということになっておりましたから、アセスメントの条例があろうが、法律があろうがなかろうが、アセスメントをやらなければならぬことは事実であります。ただ、そういうことに。なってまいりますと方々で混乱が起きますから、そこで各県なども条例をつくっておることは先生御承知のとおりであります。  そこで、国などがやる大きな事業については、国会の御審議を経て権威あるルールづくりをした方が万般にわたって混乱が起きない、こう考えまして、いまではおととしになりますか、中央公害審議会から答申がありました。それに基づいて去年の五月に法案がまとまりまして、それをいま自由民主党の政調会長のところで御審議をいただいております。総理も再三にわたってお話してございますが、一日も早くそれを通していただいて、国会に出して、それで国会で権威あるルールづくりをいたしたい、切に私はそう考えております。
  181. 正木良明

    ○正木委員 何遍も提案が流産しているのですが、総理、今回どうでしょうか。
  182. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま環境庁長官から申し上げたとおりでございますが、私も、先日来、党の三役、特に政調会長に党内調整を急ぐようにお願いをいたしておるところでございます。
  183. 正木良明

    ○正木委員 さて、次へ進みます。地元協議の問題ですね。これは運輸大臣と総理大臣にお願いしたいのです。  これは俗に三点セットと言われている空港計画案、環境アセスメント評価案、それから地域整備についての計画ですね、この三つを提示してもらいたいというのが特に大阪府、兵庫県、和歌山県、三府県知事の強い要望でもあるわけであるし、その点は答申の中でもやはり地元の――たとえばこの答申の説明書の結びにこういう言葉があります。「新しい空港の実現は、関係地域社会の受け入れの意志いかんによる。」ないしは「地域社会との合意が成ったときである。」こういうことで、地元との協議ということを非常に強調なさっているわけです。  どうでしょうか、ただいま申し上げたような三点セットによるところの地元協議というもの、これをいつごろ提示できるのか、また、提示される意思があるのか、意思があればいつごろか、それは合意を得るためのものか、単なる協議か、この三点について聞いておきたい。
  184. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 よく言われております三点セットというもの、その三点の中身につきましてそれぞれ違った考え方もあろうと思うのでございますが、私たちがいま言っておりますのは、空港建設の計画と環境影響評価と周辺整備計画、この三つを言っておるわけでございます。  空港建設基本計画というものは、先ほど申しましたように、ほぼ作業を終わって、いつでも提示し得るようになっております。それから環境影響評価も作成を終わっております。ただ、周辺整備計画につきましては、運輸省といたしましては、アクセスを中心とした周辺整備計画は作成できておるのでございますが、なお各省庁との調整をいたさなければならぬ点が多々ございますし、また、この周辺整備は単に中央政府関係だけで決めるわけにもまいりませんので、これは地元協議との間において作成を決定していかなければならぬと思っております。  そこで、とりあえず、先ほど申しました三つの計画が現在ほぼ作業を完了いたしておりますので、それをなお入念に各省との間に連絡をいたしまして、その連絡をもとにいたしましてでき得れば地元と予備的な協議をいたしたい、こう思っております。その時期は、でき得れば四、五月ごろにいたしたいと思っております。その予備的な協議をいたしまして、今後の地元と運輸省との協議の方法なり、あるいはそれに必要な資料の交換等はいたしたいと思っておるのであります。  なお、先ほど御質問の中にございました環境影響評価、これを地元に提示することによりまして、空港の関係はほぼこれに盛られてきておって、これによって空港に対する認識というものが相当変わってくるのではないかと思うのでございます。その要件等を申し上げますと非常に答弁が長くなりますので省略いたしますが、おおよそ大きい項目にいたしまして四項目、小分類いたしますと十四、五項目に分けまして環境影響評価をやっておるという次第であります。
  185. 正木良明

    ○正木委員 予備的な協議を行うという、これは一つの方法であるかもわかりません。予備的な協議ということは、要するに正式な協議をするに足るほどの資料というものが一部欠けるところがある、そういうことですね。そうして地元と予備的に協議をやりながら――恐らく地域整備大綱がおくれているんじゃないだろうかというような気がいたしますけれども、それをやりながら、正式な地元協議というのは大体見通しとしていつごろになりますか。それはまだいまのところわかりませんか。
  186. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは各省庁との連絡調整の問題もございますし、特に財政問題、それから空港の事業主体等いろいろございますので、正式協議になるのは、できるだけ早くいたしたいと思ってはおりますけれども、時期等につきましては、まだ申し上げる時期ではないと思っております。
  187. 正木良明

    ○正木委員 総理、予備的にということで、私は、それは一つの方法だと思うのです。その方法には総理は御賛成ですか。
  188. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 運輸省におきまして、関係省庁と話し合いをしながらいろいろ考えて進めておるわけでございますが、しかし、正式には、この建設の方針政府として決定をいたします段階におきまして、当然これは地方の御同意、御協力を得なければならないところでございます。そこに至る手順等につきましては、今後十分運輸省を中心に各省庁で検討してまいりたい、こう思っております。
  189. 正木良明

    ○正木委員 そこで、いまの運輸大臣のお話にもあったように、地域整備大綱というものがややおくれているから、どうもこれを待っていると協議がおくれてしまうから、そのほかのもので予備的にということでしょう。そして各省庁で協議をしようとする。これはわかりました。それも一つの方法だと思います。  私は、去年の通常国会の予算委員会で、この問題でやはり議論をいたしました。そのときに地崎運輸大臣は、この地域整備の問題について公益、根幹的な交通施設などについては国が一まあこれはいいや。大平総理は、局長クラスの関係省庁会議の設置について検討させる、こう答えました。いまもうおやめになりましたが、松本航空局長は、三点セットを同時に提示したいと考えているとか、地域整備のことについてのいろいろの協議の問題で、その当時の園田国土庁長官は、窓口を一本にしぼって国土庁で地域整備に取り組む、こういうふうな答弁をちょうだいしておりますが、この進行状況ないしはいわゆる局長クラスの連絡会議みたいなものはもうすでにできて、国土庁はその窓口になって一生懸命やってくださっていますか。長官、できるだけ簡単にひとつお願いします、余り時間がありませんから。
  190. 原健三郎

    ○原国務大臣 お尋ねのことで、前にもそういう答弁があった。まだ現在のところは課長クラスで進行して、局長クラスのところまでいっておりません。
  191. 正木良明

    ○正木委員 いや、本当はこの辺で怒り狂わにゃいかぬのでしょうけれども。これはどうですか、大平総理の遺言ですよ。局長クラスの関係省庁会議の設置について検討させる、あのときは非常に前向きな形でこれは急がなければならぬということをおっしゃっていまして、課長クラスでは、とてもじゃないけれどもなかなか話が進まぬ。ところが片方で、閣議決定がない、政府の決定がないのだからそれができないとか、閣内でこの問題について非常に議論が分かれている。その理由は何かというと、別な話がまた出ているからだと思うのです。冒頭申し上げたように、答申を尊重すると言われた限り、どうですか、泉南沖から変わるということはあり得ますか、総理。これが決まらぬからややこしいのだ。
  192. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 こういう空港とか大きいプロジェクトを決定いたしますときには、やはり専門家によりますところの多方面からの知識を集約して、一番客観性のあるもの、これが審議されることは当然でございます。過去、航空審におきまして、先ほど申されましたように、昭和四十六年に諮問をいたしましてから答申まで九年の歳月をかけてきたのでございまして、その間におきまして、昭和四十九年に泉南沖にという位置決定がされた。この決定されるまでの三年間というものは、専門家のあらゆるデータによりまして、公正、科学的な、そして客観的な基準に基づいて泉南沖ということの位置決定をされたのでございますから、この答申の趣旨というものと、それからそれの判断に至るまでの審議の経過というものを十分に尊重し、われわれは、泉州沖に決定を前提といたしましてこれからの計画を進めていくということでございます。
  193. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御承知のように、五十六年度予算におきましては泉州沖案というものを基礎にしまして調査費を計上し、引き続き調査を進めております。その結果等を見まして、また財政事情その他、また規模等をどうするか、総合的に判断をして、最終的な決定をしたい、こう思っております。(正木委員「答申は尊重してくれますね」と呼ぶ)答申は、先ほど来申し上げるように、十分、精神は尊重しています。
  194. 正木良明

    ○正木委員 ありがとうございました。それで大体めどがつきました。  それで、国土庁が窓口になってというのだけれども、あと残るところは、主たるところは、運輸省は当然のことですが、建設省と自治省なんですが、この地域整備大綱という問題について相当積極的に取り組んでもらわなければいかぬと私は思うのですが、建設大臣と自治大臣、どうでしょうか。局長の連絡会議くらい置いてくださいよ。
  195. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  先ほど国土庁長官からお話がありましたように、まだ局長クラスまでいっておりません。鋭意その面につきましても、いまそれぞれの関係についてせっかく検討中でございます。
  196. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 地域整備計画につきましては、非常に重要なことでございますし、やはり地方の意思を決定してもらわなければいかぬし、中央としても財政負担の問題もございますから、十分連携をとって適切にやっていかなければならぬ。そういう密な連絡をとって、これからやってまいりたいと思います。中央の連絡につきましては、前のお約束もあるようでございますから、そういう点が実現するように努力をしてまいります。
  197. 正木良明

    ○正木委員 ずいぶん延び延びになった問題でありますから、この点はひとつ前向きにやってください。  もう時間がありませんから、最後の質問になるかもわかりません。要するに、今後の取り組みをどうするかということです。そのためには幾つかの問題があるわけですが、たとえば事業主体の問題、また資金配分の問題、こういう問題は地元に重大な関連のあることですが、事業主体はどうしますか。それから、金の負担の問題等はどういうふうにお考えになっていますか。それから、空港が当初の計画から相当縮小変更されているようだけれども、それを取りまとめて、運輸大臣、お話しください。
  198. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 事業主体につきましては、成田空港は御承知のように、全額国の出資によります公団によって建設されました。そのことが望ましいとは思います。しかし、私は、できるだけ地元の意向が反映され、そしてそれの建設、運営、管理、そういう面に地元の意向が反映される方法は何かないだろうかということを模索しておる段階でございまして、この事業主体決定に際しましては、財政当局なりあるいは国土庁、建設省、自治省、環境庁という関係省庁と協議をし、さらに地元の意向をしんしゃくして決定していきたいと思っております。  それから、お尋ねの地元負担につきまして、地元と協議して決定いたしたいと思います。
  199. 正木良明

    ○正木委員 では、もう一問だけ。  どうもあの答弁から言うと、事業主体は恐らく国の直轄ではないということは明確になった、これは地方の力をかりたいということでしょうから。大体第三セクター案だな、察するところ。公団新設は、恐らく中曽根さんの方が許さぬでしょう。あなた、しかし、簡単に言うけれども、成田は国の費用でと偉そうに大みえを切ったけれども、成田なんてひどいものですよ。この主体工事はいいです。ところが空港関連事業というのは、空港関連事業と準空港関連事業ということになっているのだけれども、準空港関連事業なんというのは起債と一般財源、要するに地元の一般財源を入れますと七〇%です、ニュータウン関係だとかいろいろあるのだけれども。あれは内陸につくって、住民の皆さん方に大変に御迷惑をおかけいたしますから極力国から金を出しますということで、これです。それでなくても関西の新空港は海上空港ですから、地元には余り迷惑をおかけいたしておりませんから成田並みにはいきませんなんて言っているのだから、成田で関連事業がこれですから、これはすごいことになるだろうということはわかります。だから、そういう問題も比較的早い時期に地元に明示いたしませんと、金が持ち切れぬで、空港は結構ですということになりかねぬです。ですから、そういう点も予備的にいろいろ折衝なさるということでありますから、それも一つの方法として――私はそんなことはやってはいかぬとは言いませんけれども、そういう点も十分配慮しないと本当の意味の協議にはなかなかならないだろうというふうに考えます心  そういう点、まだまだたくさん関連の質問があるのですけれども、時間がありませんので、これで終わりたいと思いますが、最後に運輸大臣と総理に、この空港問題についての締めくくりとして、お考えをもう一度確認して終わりたいと思います。
  200. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 関西空港は、一面から申しまして国の将来に必ず必要となるプロジェクトでございまして、それだけに着工の時期はできるだけ急ぐべきであると思っております。  また、一面から見まして、これが国土の均衡ある発展という観点から見まして、当該地域の発展に必要欠くべからざる一つの大きい施設であることは当然でございます。でございますから、国として進めるに当たりまして、地元の意向を十分に参酌し、万全を期して建設していかなければならないと思っております。  また、反対運動のために非常に難航するというようなことがあってはなりません。それがためにも十分な準備が必要であろうと思っております。特に、現在、財政状況がこんな事態でございますので、そういう点も配慮し、必要にして十分な、そして効率的な空港の建設に積極的に取り組んでまいたいと思っておりまして、できるだけ早い時期に地元と協議を開始し、そして成案を得て建設への手順を決めていきたいと思っておる次第であります。
  201. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政府としては、航空審の答申を踏まえてこの数年来調査を進めておるわけでございます。今年度の調査の結果等を見まして、財政事情その他を勘案をして早急に結論を出したい、こう思っています。
  202. 小山長規

    小山委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、大内啓伍君。
  203. 大内啓伍

    ○大内委員 政府はこの予算委員会に「財政の中期展望」、これをお出しになりました。私は、大蔵大臣並びに大蔵省当局に対しまして深く敬意を表します。こういう問題がございますと、やはり財政問題を相当具体的に論ずることができる、大変な御努力であったと思うのであります。  しかし、問題はその中身であります。私は、この「財政の中期展望」を拝見して一番重要だと思いましたのは、この要調整額、これは言うまでもなく、歳出と歳入の差が要調整額として計上されている。別の言葉で言えば財源の不足類。したがって、この問題は将来の大型新税、あるいはそれが間接新税とか消費税とか言われておりますが、そういう問題に直結する数字であるという意味で、非常に重要な数字として注目をいたしました。これで拝見いたしますと、要調整額、五十七年度は二兆七千七百億、五十八年度は四兆九千六百億、五十九年度になりますと何と六兆八千億、こういう数字が出ております。もしこの数字がそのとおりであるとしますと、これは相当の行財政の節約をやっても、増税という問題が必然的に出てくる。ですから、そういう意味では、ここに書いてある要調整額というのは巧妙な増税への誘導にもなりかねないという意味で重要であります。そうですね。  そこで、私はこれを拝見しながら非常に奇異に感じましたのは、この「財政の中期展望」というのは、この冒頭に書いてあるように、「国の一般会計について、昭和五十六年度予算における制度・施策を前提とし、」つまり新しいものは含まぬ。「その運営方針に変更がない等一定の仮定の下に、これを将来に投影する後年度負担類推計を基本とする財政計画試案であり、」こう書いてある。そして同時に、この中期展望は「適切な財政運営を進めていく上での手掛かりを提示しようとするものである。」  そうすると、この要調整額というのは非常に重要になってくる。私はこれを見ながら、この要調整額というものがきわめて作為的にふくらまされているという実感を深くするのですね。ここが重要なところです。と申しますのは、この要調整額の中には、経常部門と投資部門というものがある。そこで、大蔵大臣にお伺いいたしますが、この投資部門、五十七年度は七千九百億、五十八年度は一兆六千三百億、五十九年度は二兆五千七百億というこの数字は、本来四条公債で発行できるのではありませんか。いかがでしょう。
  204. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 この公共投資の額というのは、フォローアップの結果、経済企画庁七カ年計画百九十兆円、それをこの期間内で実行するということを前提として計上いたしました。その財源につきましては、ともかく国債の増額発行を行わない。したがいまして、その財源となるべき歳入については、四条公債を現状どおり固定をする。これはふやさない。四条国債であっても国債は国債ですから、特例国債を減らして四条国債をふやしていくということを一応考えに入れないということで計算をしてございます。
  205. 大内啓伍

    ○大内委員 そのことは私も説明を聞いております。しかし、少なくともこの要調整額の中の投資部門、いま私が挙げた数字は、当然四条公債として発行するケースの方が多いでしょう。と申しますのは、いま大蔵大臣御指摘のように、公共投資というのは決まっている、フォローアップして百九十兆、これが既定の計画です。そしてこの数字が、この二枚目の投資部門のところに、五十七、五十八、五十九年とちゃんとずっと書いてある。そしてこの投資部門でほかに財源を探すとすれば、その他の税収ですね。しかし、その他の税収というのは、ここに書いてあるとおり、たとえば五十七年度は一兆八千三百億、五十八年度は一兆九千二百億、これは皆さん御存じのように揮発油税とか石油税等々です。つまり、もう初めから税収そのものが規模が小さい。したがって、ここに財源を求めるなどということはそう簡単にできることではない。とすれば、投資部門のこの要調整額の大部分は四条公債にならざるを得ないじゃありませんか。そうでしょう。
  206. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 したがいまして、この百九十兆を実現するとすれば、公共投資額というところに書いてあるような数字で公共投資の費用はふえざるを得ない。それに対する財源は、ガソリン税その他従量税等いろいろな税がありますが、目的税をここへ当てはめて、それでは不足が生じる。不足が生じるものを、それを四条国債――建設国債でやれば、建設国債がふえるということになるわけです。しかし、建設国債も同じ国債なんですから利息はつくんですし、できるだけふやしたくないという考え方で書いたわけであって、その差額が要調整額ということで出てくるわけです。しかしながら、その公共投資の費用は、かつては、四条国債を発行しないときには一般財源を追加をしてやっておったわけですから、全部ガソリン税だけでやっておったということじゃなくて、やはり正常なときには、それらの目的財源のほかに一般財源もかなり入っておった。  したがって、国債をふやしていかないということを前提にしてこれは書いてあるわけであって、この要調整額というのを、じゃ増税の方で埋めるのかという御議論がすぐ出るわけです。しかし、そういうことも決めてあるわけではありません。それはそのときの情勢、たとえば一般の景気がうんとよくなった、そのために公共投資をこんなにやらなくたっていいじゃないかというような情勢になれば、それは公共投資の額も減ることもあり得るし、そういうようなこともそのとき、そのときにならなきゃわからない。だから、そういういろんなことを想定しながら、一応横並びでいくとすればこの程度の要調整額が出ますということを表示したにすぎません。
  207. 大内啓伍

    ○大内委員 それはごまかしです。では、この一に書いてあるのを消してください。ここにはこう書いてあるんでしょう。「五十六年度予算における制度・施策を前提とし、その運営方針に変更がない」、そうでしょう。それでは百九十兆を変更するんですか。
  208. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ですから、百九十兆を変更しないという前提でこれはつくってございます。
  209. 大内啓伍

    ○大内委員 そうでしょう。それではいまの議論は全然違うじゃありませんか。  それでは具体的に言いましょうか。五十七年度の投資部門の要調整額は七千九百億と出ていますね。これをどうやって埋めるかといえば、四条公債で埋めるか、あるいはガソリン税、石油税等々で埋めるか、あるいは公共事業カット、百九十兆を減らすか、この三つしかないでしょう。いま百九十兆はそのままの想定でやると言ったでしょう。ですから、一番最後のやつは問題になりませんね。公共事業をカットするというのは問題にならない、いま前提で百九十兆でやるという数字をここで書いていると言うのだから。――ちょっと待ってください。そうして税収増でやるというのは、ガソリン税とか石油ガス税とか石油税、その数字は、私がいま申し上げたとおり、その原資自身が非常に小さい。ですから、それで賄うなどということはとうてい不可能。だってこれは大蔵省が出しているじゃありませんか。財政の中期展望における投資部門の要調整額をすべて四条公債の増発によって調整するものと仮定する資料をわれわれに出しているじゃありませんか。四条公債でやるのでしょう。ほかにやりようがないじゃありませんか。五十五年と五十六年のこの数字を横並びで出したなんというのは、大蔵省の機械的な計算方法だけです。少なくとも百九十兆の公共事業をやろうとするならば、それに必要な四条公債の発行等、これは計上してここに数字に出すのがあたりまえのことじゃありませんか。だって、百九十兆の公共投資をやるためには、ここに書いてあるように、一つは、四条公債でとこれは書いてありますね。それと投資部門のこの七千九戸億を合わしたものでしょう、大体が。多少の増減の差はあっても。四条公債でやることがほとんど確実じゃありませんか。それをわざわざ要調整額ということで別枠に外してきて、それをふくらましているということは明らかに作為的なふくらましじゃありませんか。そんなインチキをやってはだめですよ。  つまり、私が申し上げるのは、この要調整額で書いてある投資部門の七千九百億以下の数字は、当然この歳入の四条公債として書いてくるべきものです。でなければインチキです。何とあなたが強弁しようとインチキです。ただ、たまたま機械的に五十五年度と五十六年度の四条公債は横並びにしたから、機械的にそういう立場に立って後を書いたと言っているだけです。ですから、そういうやり方は不当なんです。明らかに四条公債で出さなければならぬ。投資部門はここに数字で出ているのに、四条公債というこの項を持ちながらもそこへ入れない。その結果、要調整額だけをふくらます。これは作為的でなくて一体何でしょう。(発言する者あり)あなた黙ってください。おかしくも何ともない。これは答えられないじゃないですか。
  210. 松下康雄

    ○松下政府委員 大蔵大臣からお答え申しましたように、投資部門につきましては、四条公債につきましてこれを一応同額発行という前提を置きまして計算をしておりますから、要調整額につきましてこれをどういう方法で解消するかと申せば、先ほど大臣の申しました百九十兆を動かすかどうかという問題の前に、そのまた年割りの問題もございます。たとえば年次の調整をするかどうか、そういう問題が一つあるわけでございます。
  211. 大内啓伍

    ○大内委員 では、先に書いてあるのは、動かさないと書いてあるのは何です。既定の方針に沿って出しているのでしょう。いま大蔵大臣が言ったじゃないですか。
  212. 松下康雄

    ○松下政府委員 それは最後のところに説明がございますけれども、要調整額の問題で五ページでございますが、「要調整額は、投資部門歳入の増収措置又は公共投資の年次別実施額の調整若しくは出資金、貸付金等の歳出の削減によって調整されるべきものである。」と申しているわけでございます。そして第I表では、いまの特例公債との関係が混同をいたすといけませんので、経常部門と投資部門との要調整額を別個に記載いたしておるわけでございます。
  213. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、別の方法で聞きましょうか。大蔵省は、その「財政の中期展望」における投資部門の調整額をすべて四条公債で賄うケースがある、こう想定されていますね、これは資料を出しているのですから。大蔵省が出しているのですから、自分で言っているのじゃないですか。
  214. 松下康雄

    ○松下政府委員 ただいまお示しの資料は、予算委員会にお出しいたしました将来の国債償還の予定の表であろうと存じますけれども、その表には二つの計算をお示ししてございます。その一つは、四条公債につきまして、ずっと将来にわたりまして同額発行が続いたとした場合に、国債償還額あるいは残高がどうなるかというケースでございます。いま一つは、仮に全額につきまして四条公債でこれを賄っていったとしたならば、どういう国債残高あるいは償還の必要額が生じていくか、この二つのケース、いわば両極端のケースにつきましてお示しした次第でございます。
  215. 大内啓伍

    ○大内委員 両極端とかなんとかおっしゃいますけれども、投資部門の不足額を埋めるというのは、私がさっき指摘した方法しかないのですよ。そのことを政府もこれは書いているのです。しかも大蔵省は自分で、四条公債でその要調整額を全部賄った場合というこの数字を、こんなに細かく出してわれわれに示しているわけだ。つまり、この要調整額で示された数字というものは、その大部分が四条公債の発行によって賄われるケースが非常に大きいということを大蔵省自身が認めているわけなのです。とすれば、この四条公債の額をいかにも少なく抑えて、そして投資部門の中で当然建設公債、つまり四条公債として発行する面を要調整額の方に持ち込んだ。これは余りにも作為的過ぎる。したがって、当然この投資部門に盛られた数字というものは、この百九十兆の公共投資をやるという既定方針のもとにこの中期の展望が書かれたとするならば、四条公債の中に、入れて、あと別の原資でいろいろな穴埋めをするならそこから引いてくる、それの方がわれわれに対する正しい示し方ではありませんか。恐らくその点は、大蔵省もきっとよく御存じなのだろうと思います。  そこで、私はもう一つ申し上げたいと思います。予備枠というのがありますね。ここでは五十七年度七千七百億、五十八年度一兆七千億、五十九年度二兆八千三百億、こういう予備枠を実は出しておりますが、しかもこれは、一般歳出の中にこの予備枠が含まれています。予備枠というのはここに書いてあるとおりでしょう。これは二枚目に書いてありますよ。「将来の新規施策の財源等に充てるための予備枠」、こういうものを計上した。五十七年度一・五%、五十八年度三%、五十九年度四・五%、これは初めに書いてあることと違うじゃありませんか。だって、これは「五十六年度予算における制度・施策を前提とし、その運営方針に変更がない」という一定の条件でこれを書いたと言っているのでしょう。そして歳出の中では、これからやる新規施策の財源、これを一般歳出の中に入れてくれば、当然、要調整額の経常部門がぐっとふくれてしまうじゃありませんか。どうしてそんな作為的なことをするのですか。
  216. 松下康雄

    ○松下政府委員 予備枠につきましては、一ページ目の説明の中に「運営方針に変更がない等一定の仮定の下に、これを将来に投影する後年度負担類推計を基本とする」ものであると申し述べておりまして、この後年度負担推計の計算で将来の財政の姿をお示しいたしますのには、技術的な限界がございますために、基本としながら、これをなお補完する意味で予備枠を計上している次第でございます。  予備枠の内容は、この後の方の説明に、「将来の新規施策の財源等に充てるため」ということを例示いたしておりますけれども、さらにつけ加えますれば、この将来負担の計算方法自体の中に、将来の財政需要の一部につきまして必ずしも完全に計算し切れないという技術的な問題がございまして、やや過小の推計になる傾向がございます。それはたとえば人件費の計上方法でございます。そういう新規の財源あるいはこういう推定計算の限界から申しまして、過小になる点等の補完をいたしますために、各年ごとに歳出全体の一・五%に当たります分を予備枠といたしたものでございまして、これは同じような計算方法を使っております諸外国のいわゆる財政計画でも、このような手法をとっている例が多いところでございます。
  217. 大内啓伍

    ○大内委員 これは財政計画じゃないでしょう。中期の展望でしょう。将来の新規施策が予備枠だと書いてあるじゃありませんか。既定の方針、施策ではないでしょう。新規の施策が予備枠なんでしょう。ですから、そんなものを歳出に入れてはいけませんよ。入れたら、この要調整額というものがその分だけふくれてしまうのです。  ですから、大蔵大臣、このところは非常に重要なんです。私は決して揚げ足をとるために言おうとしているのじゃないのです。本当の意味で新規政策は別にしまして、いままでの制度、施策を前提にしていろいろな推計をやってみた、その数値をきちっと出していただく。そして、たとえば新規施策というのは、何が起こるかわかりませんものね。ですから、その分は全然別にごらんいただくことが重要なんです。たとえば四条公債についても、本来四条公債として当然出てくるであろう投資部門の問題については、四条公債の項の中にきちっと記入してくくる。もっと具体的に言えば、この要調整額の中の投資部門の項及び予備枠に計上されているこの数字を足しまして、そしてこの要調整額から引いたものが本当の要調整額だと言っているのです。そうでしょう。ですから、そういうことになりますとこういう数字になるのですよ。五十七年度の政府が出してきた、つまり大蔵省が出してきた二兆七千七百億というこの数字は、半分以下の一兆二千百億になります。五十八年度は、四兆九千六百億が何と一兆六千三百億になる。そして五十九年度は、六兆八千億が何と一兆四千億に減らされるのです。これが本当の要調整額です。  ですから、大蔵大臣、私は二兆円減額という問題が起こったときに、これがひとり歩きして増税に結びつくのではないか。これはこの前の臨時国会でも、私は口を酸っぱくして申し上げました。そうしてその結果、二兆円国債減額のうち一兆四千億が増税、電電公社等のあのお金を吸収しまして一兆七千四百億。私はこの要調整額がひとり歩きするのではないかと恐れるのです。きっとひとり歩きする。そしてこの二兆七千七百億以下が、行政施策がなかなかできない、補助金の整理がなかなかできない、だから増税だという、まさに増税を決定する基礎数字になる。そういう意味で、このようなからくりを持った要調整額というものを認めるわけにはいきません。これはミスリードになります。国民に対してもミスリードになります。これは訂正して出していただけませんか。いかがでしょう。
  218. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは考え方の相違でございましてね。四条公債をことしどおりしか発行しないという考え方だと、事業費がふえればその分不足するし、事業費がふえた分はみんな借金で賄うんだという考え方に立てば、税金というのは不足が起きないわけですね、借金をつくるわけですから。だから、それは物の考え方じゃないか。  それから予備費の問題について、七千七百億というのは新しいことが起こるかもしれないから別にとったんだ、ところが、前提でいままでどおりでやると言うのなら、何も新しいことが起きたら起きたでそのときにすればいいんじゃないか、こんなところにいまさら出さなくたっていいじゃないかという御意見なわけです。しかし、これにつきましても、いま主計局長が言ったように、見積もり方において、技術的にこれでいいかなという不安もある。たとえば人件費の問題一つ取り上げてみましても、ずっと一%だけしか見てないわけですから、この中では。ずっと三年間、果たして一%でいいのかなという不安がある。  それからまた、新しい事業の問題でも、みんなスクラップ・アンド・ビルドでできればいいが、そうばかりもいかないということになると、多少、一・五ぐらい普通はスペアをつくっておいた方がいいじゃないか。これは各国とも、アメリカとかドイツなんかでもやっていますが、似たような数字のものを予備枠でとってあるので……(大内委員「ドイツは財政計画なんです。見通しとは違うのです」と呼ぶ)ですから、アメリカなんかでもね。したがって、科学的根拠はぴしっとあるわけじゃないけれども、そこらのところは一・五%ぐらいを見込んだというだけのことであって、それ以上に深い意味はないのです。
  219. 大内啓伍

    ○大内委員 そんなことを言いますとですね、これは「適切な財政運営を進めていく上での手掛かりを提示」したというのでしょう。しかし、こんなインチキの要調整額をわれわれに示されて、これを「適切な財政運営を進めていく上での手掛かり」としてほしいなんて言われちゃ困ってしまう。これは明らかに作為的な数字のつくり方だ。これでは本当にミスリードになりますよ。  これは予算委員長委員長の許可を得てこの資料が配付されたのです。私はこれに対して、いま重大な疑問を提起したのです。何とか大蔵省を通じて、これは重要な資料だと言っているのですから、その権威にふさわしい内容をわれわれに示していただくという意味から、これを修正して出し直していただくことを、委員長において政府に対して言っていただきますように要求をいたします。
  220. 小山長規

    小山委員長 この問題は、後刻理事会で打ち合わせて決めることにいたします。  続けてください。
  221. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、これまで増税問題でいろいろな議論が出ております中で、この問題は、これから増税問題を争う基礎数字だけに、非常に重要であるということを大蔵大臣にも強く申し上げておきたいと思うのです。  ところで鈴木総理鈴木総理は今度の施政方針演説でこういうふうに述べられているのですね。「今日の不健全な財政状態を放置し、いわゆる赤字公債の償還のために新たに赤字公債を発行しなければならないという状況に立ち至れば、」まだ立ち至ってないですね。「立ち至れば、国家経済はもとより国民生活にとってもゆゆしい事態となり、やがてはより大きな国民の負担となることを憂えざるを得ません。」そしてこれは、大蔵大臣もほぼ同様のことをこの予算委員会で答弁されていると思うのです。そして、その基本的な立場に立って赤字国債からの脱却を五十九年度に達成したい、ゼロにしたい、こういう方針をお示しになっているのですが、私は全く合理性がないと思うのです。  なぜかといいますと、五十年の十年債はいつ償還なんですか。赤字国債のゼロはいつの時点であることが必要なんですか。五十九年ゼロである必要はないでしょう。六十年でいいのでしょう。これを三年でやりますと、その減額を均等にやりますと一兆八千二百八十億です。いま私が申し上げたように六十年でゼロにいたしますと、均等は一兆三千七百億、その差は四千五百八十億という多額のものですよ。中小企業を除いた法人税二%引き上げに匹敵するような、そういう財源差が生まれるのですよ。六十年でいいのでしょう。
  222. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 その返済は六十年から始まります、こういうことを言っているわけですね。しかし、われわれといたしましては、六十年から返済が始まるということですから、返済のときに赤字公債を、その減額するための財源というものを考えないで、五十九年度までで赤字公債のための財源探しはもうしなくたっていい、こういうふうにしたい、そういうことなんです。  大内さんの言いたいことは、恐らくそれは整理基金があるじゃないかというお話になるのだろうと思いますが……、(大内委員「そんなこと全然関係ありません」と呼ぶ)そうですか。
  223. 大内啓伍

    ○大内委員 五十九年度にゼロにしなければならぬという理由は全くないでしょう。六十年度でいいのでしょう。というのは、五十年に発行した国債というのは六十年から償還が始まるのですから、その六十年の時点でゼロにすればいいじゃないですか。なぜ五十九年にされたのですか。なぜ一年サバを読まれたのですか。そんな合理性は全くないじゃありませんか。いまの総理大臣の発言をそのままお受けしたとしても、大蔵大臣のいままで言ってきたことをそのままお受けしたとしても、六十年ゼロでいいじゃありませんか。そうでしょう。それを認めてくださいよ。
  224. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 仮に六十年で、それじゃ一兆八千億円かを減らす……(大内委員「いや、もっと下だ、ずっと下だ」と呼ぶ)たとえば減らすとすれば、その分の財源をその年に調達しなければならぬわけですね、六十年に。したがって、われわれといたしましてはその前の年に、赤字国債のための財源探しはもう五十九年で終わり、六十年からはその償還が始まるのだから、そういうことにしたい、それだけのことなんです。
  225. 大内啓伍

    ○大内委員 それだけのことで一年ごまかしているのでしょう。そんなつまらぬ理由でごまかしているのでしょう。六十年でいいのですよ。五十年に発行した国債の償還は、その赤字をゼロにする時点は六十年でいいのですよ。五十九年にするということと六十年にするということとでは、四千五百八十億円も違うのです。それだけ増税しなければならぬこともあるのですよ。ですから、まずここがインチキです。  これはどうしていけないのですか。赤字国債を償還するために、なぜ赤字国債を発行しちゃいかぬのですか。
  226. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は、できることだったら、いまの金融事情から見まして、国債は本当はもっと減らしたいのですよ、実際は。現にだぶついちゃって、ともかく金融政策はいろいろな点でなかなかむずかしい問題があるということですから、本来ならばもっと減らしたいぐらいの気持ちなんです。しかし、それを六十年にするか、五十九年にするかということは政策の判断の問題でございまして、われわれといたしましては、やはり六十年までいくと、六十年から返済が始まるということで、気分的にも、返済が始まるという年に結局また赤字国債のための財源をほかに見つけるというようなことは避けた方がいいじゃないか、どうせ返す金は返すわけですから。ですから、ともかく借金期間を長くするか少し短くしたかというそれだけのことであって、したがって、五十九年までにやることの方が現在の金融事情等とも合うし、その方が堅実である、私はそう思ってやっているわけであります。
  227. 大内啓伍

    ○大内委員 だんだん答弁が変わってくる。というのは、赤字国債を償還するために赤字国債を発行したくない、だから五十九年に赤字国債をゼロにしたい、これが政府の一貫して言ってきたことです。しかし、六十年でも政府方針は貫けるのです。ですから六十年でもいいんでしょう、こう言っているのです。(「六十年じゃ償還が始まる」と呼ぶ者あり)関係ない。六十年でいいのです。償還が始まっていいのです。六十年の時点でゼロになればいいのです。そんなことは大蔵省当局が知っています。大蔵省当局もこの間答えができなかったのです。ですから、そんなことをごまかさぬ方がいい。  そこで、私がいまついでにお伺いしたのは、赤字国債を償還するために赤字国債を出すということは、総理大臣の施政方針演説でも言っているように、それはゆゆしき事態で、いかぬ――じゃ、政府はとらないですか。赤字国債を償還するために赤字国債を発行しませんか。
  228. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 そういうことは避けたいと言っているわけです。
  229. 大内啓伍

    ○大内委員 じゃ、五十六年度予算をどうしてくれるのです。五十六年度予算の中にちゃんとそれが出て提案されているじゃありませんか。五十六年度予算の中で、赤字国債の償還は一兆一千三億円に上っているのですよ。そのために、五兆四千八百五十億円赤字風情を出しているのですよ。明らかに借りかえをやっているじゃありませんか。憂うべき事態だからやりたくない、なるべくやりたくない……(発言する者あり)外野黙っていなさい、君、さっきから――黙らしてください。
  230. 小山長規

    小山委員長 静粛に願います。
  231. 大内啓伍

    ○大内委員 それで力を得て一生懸命やっている。冗談じゃありません。言っていることとやっていることと違うじゃありませんか。赤字国債を償還するために赤字国債はいやだと言いながら、五十六年度予算ではちゃんと、一兆一千三億円の赤字国債の償還をやるために五兆円以上の赤字国債を発行しているじゃありませんか。五十六年度だけじゃないのですよ。五十七年度も五十八年度も五十九年度もやり続けるのですよ。だって、赤字国債というのは十年度だけじゃありませんから。三年度も五年度もございますから。数字を申し上げましょうか。よく御存じでしょう。ですから、そういうことをきちっと言わなければいけませんよ。  ですから、その辺をごまかさないで、政府としてはここまで実際にはやっているのですがなるべく避けたいので、なるべく早くそうしたいのですと言うのなら、私は素直な政府方針として受けとめますよ。しかし、いままで一回もそんなことを言ったことばないじゃありませんか。そうでしょう。私は、政府の、大蔵省の考え方も一つの考え方だと思うのですよ。しかし、それ以外の方法もあるということをやはり国民に示すということが、私は親切な大蔵省としての、政府としての姿勢だと思うのですよ。  それで、私は、いま皆様方に、これは配ってありますか、われわれなりに、「長期財政収支試算」というものをやってみました。そして、どうすれば増税をしなくて財政再建ができるだろうか。つまり、どうすれば大幅増税を回避できるだろうか、あるいは一般歳出財源、必要財源をどうすれば確保できるだろうか、そして、それらを通じて赤字国債の脱却がどうすればできるであろうか、こういう幾つかの要素を満たすためにこういう方法があるということを、数字で出してみたわけなんです。実はこれは表向きの数字だけで、この背後にはたくさんの計算があったわけなんです。そして、これはすでに大蔵省の主計局にも提示してあります。そして、欠陥があったら指摘してほしいということも、われわれまじめに提案している案なんです。  この二枚目をごらんいただきますと、「昭和五十七-六十二年度における一般会計予算の伸び率は、五十六年度予算と同じ九・九%とし、特例公債から脱却の時期を六十二年度とする。なお、一般会計予算に占める公債金収入の比率が一四・五%」これは一応健全な一つの水準と言われておりますが、「の時に、特例公債から脱却する」つまり、政府の五十九年ゼロ説を、六十二年度という時点にこれをゼロにするという前提を一つとります。  そして一般会計予算の歳入、歳出につきましては、次のように算出をいたしております。  税収については、六十二年度の税収と五十六年度の税収を各年度等率一二・九%、政府の場合は一四%台ですね。したがって、政府のやり方ですと、もっとわれわれの方に財源が転がり込んでくる。したがって国債の減額もできる、あるいは減税も可能になるということなんですが、われわれは渋く見積もって一二・九%、これで結んで算出いたしまして、六十三年度以降もほぼ同率で伸びるものとして算出をいたしました。  そして税外収入につきましては、五十六年度から七十二年度平均伸び率は八・〇%、そして各年度を等率といたしました。これは大体、政府がこれまで発表してまいりました財政収支試算並みであります。  そして四条公債の発行額は、五十六年度から六十二年度は等率で結んで算出をいたしまして、六十三年度以降は平均伸び率八%。  以下書いてあるとおりでありますが、こういう一つのやり方をとりますと、大蔵大臣、大幅増税は回避できます。第二に、その年々の必要な当然増及び準当然増は確実に確保できる。そして赤字国債の脱却が確実に六十二年度から達成される。もし政府方針でいきますと、先ほど私は要調整額の議論をしましたように、その不足額が非常に過大になって、それは大型間接新税へとどんどん入っていかざるを得ない。  私は、これは大蔵省の主計局でいろいろ感想を聞きましたけれども、この考え方も非常にまじめな考え方の一つだと思います、こういう感想をいただいております。したがって、これはわれわれも真剣に検討した案でございますから、こういう考え方に立てば増税、つまり国民が一番心配している問題を回避できるんだということについて十分御配慮をいただきたい。大蔵大臣の所見はいかがでございましょう。
  232. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これはいろいろな案があっていいと私は思うのです。政府の案を出して、それでやるんだということを宣言をしちゃったわけじゃなくて、財政再建の手がかりとしてこれは出します。確かに一長一短あると私は思いますよ。皆さんの案で言えば、それは確かに公債金収入は五十九年ごろまでにはふえていくわけですから、政府の方は六兆七千億に少なくなるけれども、この案だと十二兆七千億にふえるという問題が一つあって、今後の経済の見通しその他、そこでどういうふうにそれが調整がつくか、やはり経済の問題とも絡むわけです。ですから、今後の問題として、経済の見通し寺とも含めてそれは十分に検討さしていただきます。いろいろな案があって、大いに出してもらって、大変ありがたいと思っています。
  233. 大内啓伍

    ○大内委員 ぜひ大蔵省としても、一つの案で国民を追い込むのじゃなくて、やはり国民に対して選択を求める。私は、大蔵省はできるだけ財政を国民の前につまびらかにしようとする努力が最近出てきているように思うのですよ。とすれば、なおさら国民に対して、どういう財政の組み方についても二通り、三通りの考え方を示しながら、その選択を国民にお願いするというその謙虚な姿勢を強く要請したいと思うのです。  そこで、一つお伺いをしておきたいのは、昭和五十四年に例の財政再建に関する決議、例の一般消費税ですね、これが国民から理解が得られなかったということで、一般消費税はいかぬという意味の決議が行われました。そして、いま政府の税調等から大型間接新税という問題がちらちらと出てきて、この問題はやはり国民にとっての一番大きな心配になっている。  そこで、そういう問題を考えますときに、五つの方式というものが大型間接新税に該当するのではないか。一つは、よく御存じだと思いますがEC型付加価値税、二つは小売売上税、三つは卸売売上税、四つは取引高税、五つは庫出し税、製造者消費税、この五つくらいがそういうものとして該当するのですが、大蔵省はこういうものについて検討していますか。
  234. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 昨年の十一月までかけまして、今後の税制の方向について税制調査会で中期谷中をいただいたわけでございます。その際に、所得課税、それから消費課税、法人課税、それぞれについての今後の展望というものをやっていただきましたときに、個別の間接税を中心とします現在の税体系では限界があるということで、課税ベースの広い間接税というものについて御検討が進められたわけでございます。  いまも仰せのありましたように、五十三年の暮れでございますか、提案のございました一般消費税大綱につきましては、国民の理解が得られなかったということもあったものでございますから、税制調査会でも新しく外国における、八十四カ国くらい事例があるわけでございますが、課税ベースの広い間接税を、いまお話のありましたように課税段階に従って五つくらいに分けられると思うのでございますけれども、そういう類型があるということの検討はいたしました。ただし、その後、税制調査会の中期答申では、御案内のような避けることができない問題ではあるけれども、今後、各国の立法例なり、それから経済情勢なりというものに配慮しながら、幅の広い観点から検討を進めていくべきだという御指摘をいただいたにとどまっておりまして、その後、具体的な検討はまだ進めておりません。
  235. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵大臣にお伺いしますが、いま私が述べました五つの税ですね。これは私がさっき読みました財政再建に関する決議には触れるのですか、触れないのですか。
  236. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 その五つがどれが触れるか、あの場合は一般消費税(仮称)というやつが触れるということだったのじゃないかと思うのです。ですから、その中身については、私はよくわからない。わからないけれども、いずれにいたしましても、国会で通過しない法律案をつくってみたって意味がないわけですから、私はやはり国会に御承認をいただけるような、もし検討するにしても、検討する場合は御承認をいただけるということを前提にして検討しなければならぬじゃないか。また、具体的にそういうものを検討しているという段階では、もちろんないわけでございます。
  237. 大内啓伍

    ○大内委員 いや、私は、その決議に触れるか触れないかということを聞いたので、そこまでお尋ねしているわけではありません。特に、いま自民党は安定多数を握っているわけですから、それに支えられた政府が出す法律案というのは順調にいけば大体通るという可能性が多いわけで、いまおっしゃったのは少し詭弁に過ぎるのではないかと思うのですが、庫出し税、製造者消費税はこの決議に触れると思いますか、その一つでいいです。いろいろあるがというお答えですが、一つに限定してそれじゃ聞きましょう。いかがでしょう。
  238. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 それは具体的に、たとえば現在立法しておりますのはカナダでございますが、カナダでどういう問題があり、それが日本でたとえば仮に実施するとしました場合にどういう問題を伴ってくるかというようなことも、もちろん検討でございますから進めなければならないわけでございますが、どういう具体案を得られるかということがわかりません。税制調査会の中期答申の中でも、五十四年末国会決議が行われ、また、各方面から批判や指摘が寄せられている、こういう点について十分配意して検討を進めていくことが必要だと言っておられることでございますから、国会の御決議でございますから十分尊重するということは、政府の税制調査会の方もよくその点は含みまして検討をしていくということになろうと思います。
  239. 大内啓伍

    ○大内委員 その検討の仕方によっては、製造者消費税というのは決議に触れないという場合もあり得るということになるのですよ、いまの御答弁というのは。そういう解釈になっちゃうのですよ。まあ、それは具体的な問題が今後起こってくるでしょうから、その段階でさらに検討することにいたしましょう。  そこで補助金の問題なんですけれども、これを何とか整理しなければならぬということは、政府もたびたび言ってきたとおりなんです。私どもは実は各県に出かけまして、補助金の実態というものを足で調べてみました。そしてその結果、この補助金の交付というものが、いかに多くの労力とむだなお金を費やされて獲得されているかということがよくわかりました。  実はここにあります資料は国道改良事業、つまり地財法の第十条の二に掲げてある事業の一つなんですが、この一つの事業を獲得するために、何月何日政府に対してどこに対して、何人が何日宿泊して交渉に行ったかということが連綿として書かれています。これは全国知事会が出した資料です。ところが、この国道改良事業、この一つの事業をとるために、何と県の職員が千九百七十二人も出かけていっているのです。三百三十一日も出かけていっている。そのために宿泊料、交通費等、金は一億八千八百万円も使っております。驚いたものですね、これは。大蔵省は、これだけ足を運ばなければ補助金をくれないのです。あなたのところは、これだけ足を運ばなければくれぬのです。(渡辺国務大臣「そんなことないよ」と呼ぶ)いや、冗談じゃありませんよ。これは全国知事会が綿密に――これ、ちょっと結論だけごらんください。大変なことですよ。  県では、一つの道路をつくるのに、一本の道路でちゃんと計画しますよ。ところが、大蔵省は補助金を査定するときに、その一本の道路をみんなぶった切る。そしてその一つ一つについて許可申請を求める。そして一つの事業に対して、いま申し上げたとおり二千人近い人が出かけてくる。九十五億円の事業費をとるために一億八千八百万円もかける。これは大変ですよ。しかも、この十条の二に関する補助金が、たとえば大出さんのいる神奈川県ではどのくらいあるかと思って調べてみた。そうしたら驚いたです。七百件以上ある。神奈川県がこの十条の二関係の補助金を取るために交渉しなければならない対象事業は七百件以上あるのですよ。一つの事業について、いまそれだけかかるのです。  これが補助金交付の実態です。この間党首会談で、補助金、特に地財法の十条の二関係についてはもっと包括的な交付をやらなければ、いろいろな意味でのむだ遣いが起こってしまうから、これをできれば一括して交付するような第二交付税というものを検討したらどうか。そして総理大臣は、基本的には賛成です。大蔵大臣もおられたのです。そういう点をぜひ御検討いただきたいのですが、いかがでしょう。そういう実態なんですよ。本当に県の皆さんもこのために困っている。まごまごすると、補助金もらうためにもっと大きな経費をかける場合もないことはないという話さえある。補助金の整理という問題は、そういうところから入らなければ本当の補助金の整理はできない。そして地方自治体のそういう窮状を救ってやる、これが大蔵大臣の使命じゃありませんか。その決意を示してくださいよ。
  240. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 補助金の整理合理化ということは大賛成でございまして、われわれもそれを進めておるわけでございますが、しかし、何千人も陳情に来なければ補助金を出さぬとか、そういうことは私は考えられない。現実の問題として、県の職員等がいろんな打ち合わせや何かで来ることはございますが、それほどたくさんの人が人海戦術をしなければ補助金がつかないというようなことも、それはあり得ないと私は考えております。  しかしながら、やはりむだはなくさなければならぬ。ただ、補助金を統合してまとめてくれてしまうというのも一つの考え方かもしれませんが、そうしますと、現在でも、一般交付税というものが行って、その中にはこういうのが入っているじゃないか、ああいうのが入っているじゃないかという議論になりましても、県知事さんとか市町村長さんによって重点的に金の使い方がみんな違うわけですよ。教育関係が好きな自治体の長もいるし、それから道路の好きな長もおりますし、それから社会福祉の大好きな長もおるのですよ。いまの交付税でもそういう問題が現に起きているわけですから、それをさらに大きくすることは、今度は町と町によって、こっちは道路がりっぱで、隣の町に行ったらがたがたで道が狭くなっちゃったとか、そういうようなことも困る。何かそういうことにならないようなことでうまく補助金が有効に、しかもそんなに手数がかからないで交付できないか、目的が果たせないかということについては、今後ともまじめに真剣に、各省庁とも相談しながら検討してまいりたいと考えております。
  241. 大内啓伍

    ○大内委員 いま私が指摘しました地財法十条の二関係の経費というのは、いま三兆円を超えております。補助金の全体の三八%に達します。そしていま、いや、そんなことはあり得ないとおっしゃいましたけれども、私は勘で申し上げているのではなくて、具体的な資料を出して申し上げているわけなんです。しかも、これは全国知事会で実際にやったものをきちっと整理してここに出したものなんです。ですから、そんなことはあり得ないなんておっしゃらないでください。現に、大蔵省が私の方の資料要求に対して陳情の件数を出していますが、一カ月足らずで五千人の陳情団が大蔵本省に来ています。一年間では十倍になるのです。大変なものですが、これは大蔵省が出してきているのです。  ですから、そういうような状況を防ぐために、私どもはこの前の党首会談で鈴木総理に第二交付税という問題を出し、そして鈴木総理も、いままでの若干の経験に照らしましてこの問題は真剣に検討したい、こういうことをおっしゃったわけなんです。これはいま大蔵大臣がいろいろ述べられましたが、改めて総理の御決意を承りたいと思います。
  242. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 補助金制度のあり方につきましては、大内さん御指摘のような問題も確かにございます。そこで、可能な限りメニュー化したらどうだろうかとか、いろいろの提案がなされております。民社党さんの第二交付税的な制度も一つの案であろうか、こう思いますが、いま大蔵大臣が申し上げたように、ある程度、公共事業その他の問題にいたしましても、教育の施設の問題にいたしましても、全国的な格差がないように整合性を持っていくということも必要でございます。御趣旨の意のあるところはよく承知をしておりますから、今後とも検討していきたいと思います。
  243. 大内啓伍

    ○大内委員 中曽根長官にお伺いをいたしますが、いまお話ししておりました第二交付税の問題は、ぜひ第二臨調の中でも御検討をいただけないだろうかということが一つ。  それからもう一つは、先ほど来私は、今後の増税という問題を議論しておったのですが、何とか五十七年度の歳出削減を可能にするような形で第二臨調の第一次答申を求められてはどうか。でないと、せっかく第二臨調の答申が出ましても五十七年度予算の編成には間に合わない、補助金の整理もできない、行政節約もできないということでは、みすみす増税路線という方向に入ってしまう。そういう意味で、歳出削減を可能にするような第二臨調の答申ということについての長官のお考え、これが二つ。  それからもう一つは、国鉄の一部あるいはアルコール専売等の民営移管についてはどういう諮問をされる方針なのか。この三つについてお考えを承りたいと思います。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 前の二つについては同感でございます。第二臨調におきまして補助金問題やらそのほかの問題は当然取り上げられる問題であり、大内委員がおっしゃられるような方向で検討が加えられるものと期待しております。  それから第二の、予算編成に影響を及ぼすという点も同感でございます。しかし、具体的にどういうふうにやるかということは、臨調の委員が自分で自主的にお決めいただくことでございますので、私といたしましてはそういう希望を持っているということを申し上げたいと思います。  それから第三の民営論につきましては、これはかねがねいろいろ議論がございまして、いままで答申のあるものもございます。それで、アルコール専売のようなものは、ある適当な処置を経た後、新しくできるエネルギー機構に吸収するとか、そういう処置の決まっているのもございます。これらの問題も、いずれ新しい臨時行政調査会において決着がつけられるものと期待しております。
  245. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、次の問題に移らせていただきます。  この数日来、武器輸出禁止の問題をめぐりましていろいろな議論が闘わされてきたわけです。そしてきょうは、与野党の国対委員長会談の合意事項という形で、この問題が継続的に与野党の間で話し合われるということが決まったわけでございます。したがって、私どもは本格的な議論はそういう中でやりたいと思うのでありますが、一つ二つだけ、この際確かめておきたい問題がございます。  その一つは、今後の武器輸出の問題の中で一番むずかしい問題でございます汎用製品の輸出の問題なんでありますが、これについては、これまで政府答弁書というものがいろいろな方に出されております。しかし、私の理解するところでは、これまでの政府答弁書によりますと汎用品についてはこういうふうに答えられている。「汎用品については、輸出の段階において当該貨物が輸出後仕向地で実際に何に用いられるかを客観的に判断することは極めて困難であるため、輸出規制の公正さ及び実効性の観点から規制対象とすることは適当でないと考えられる。」これがこれまで政府が出してきた汎用品に対する政府の答弁書であります。  そこで、何に用いられるか客観的に判断できないからという前提に立っておりますが、その使途がもっぱら軍用に使うということが明らかである場合、これはいろんな例があるのです。私はここに一覧表を持っておりますが、たとえばV107というようなヘリが一機四億五千万円で計七機スウェーデンに送られまして、これが対潜ヘリという形で軍事用にいま利用されているというような例が、ここにずらっと並んでいるわけであります。そうしますと、いまの政府答弁だと、何に使われるかわからないから汎用品については規制の対象にすることは適当でないというようなこの答弁書だけでは、今後問題がいろいろ起こってくる。したがって、この答弁書については再検討する必要が起こるのではないか。つまり、その使途がもっぱら軍用に使うことが明らかである場合については、政府としては、現状ではこの方針をさらに貫くとおっしゃるのか、いや、再検討の余地があるということなのか、この一つはどうしても伺っておきたいと思ったのです。
  246. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  まず、この問題に答える前に、武器とはということがどうしても頭に浮かぶと思います。と申しますのは、武器の定義が法律によってそれぞれ違っております。たとえば、武器とは軍隊が使用するもので戦闘の用に供するものとか、あるいはもう一つの法律では、火器、火薬類あるいは刀剣類などについて、これがまた爆発を目的とするものとかいうようにありまして、はっきりそういうふうな定義をして、それ以外のものは汎用品みたいに解釈できるわけでございます。  これにつきましても、私ども、武器原則あるいは政府統一見解における汎用品でないかどうかということは、まず輸出段階で外見上砲銃に見える、そういうことが第一。第二が、いま大内議員も指摘しましたように、客観的にそういう砲銃の部分品として認められるときというようなことを書かれておりますので、それを適用して承認を与える、あるいは税関で検査する場合にそういう判断からやっているわけでございまして、これを全部総ざらいに調査するということはほとんど不可能でございます。  汎用品ということは、これは相手側のやることで、一次の製品につきましてそれが武器ではなくても、向こうが輸入した場合に二次、三次製品で武器にするということまで私どもは調査、チェックができませず、したがって、武器とは何ぞやというような定義、あるいはこれに罰則を用いる場合に、外見上武器と見られる、あるいはそういう客観的な判断によってやるという、これは非常に抽象的なことでございますけれども、範囲が非常に広うございますので、私どもは、そういう武器とは何ぞやという定義に外れたもの、あるいは輸出の段階で客観的にそういうふうに見られるもの以外のものを汎用品と言っておりますので、大内議員指摘のように、くつの上から足をかくような感じも持たれるのは仕方がないことであるというふうに判断しております。
  247. 大内啓伍

    ○大内委員 この問題は非常に広い問題でございますから、私はあえて非常に限定して問うたわけなんです。政府の答弁書によりますと、たとえば、その使途がもっぱら軍用に使うということが明らかでも、汎用品であれば規制対象にすることは適当でない、こういうことになりまして、この答弁書は、これからの与野党の話し合いで、政府がその方針を堅持するということになりますと相当のネックになってくるものですから、この点に限定して私は政府考え方を問うたのですが、これ以上聞いてはまずいですか。苦しいですか。本当はここははっきりしていただきたいところですが、これは与野党の話し合いの中でさらに煮詰めるという問題にしましょう。  もう一つだけ聞いておきましょう。昭和五十一年の二月二十七日の例の政府方一針でございますが、ここでは、三地域以外「「武器」の輸出を慎む」。「慎む」という、これは非常にむずかしい表現ですね。慎まないときもあるのですか。つまり、「慎む」ということは、例外もあるということですか。これはちょっと聞いておく必要があるのですね。
  248. 田中六助

    田中(六)国務大臣 武器輸出原則には、はっきり三項目きちんとして書いておるわけでございますけれども、御指摘の点につきましては確かに「慎む」ということを書いておりまして、私どもも与野党挙げて三原則以上に発展させた、拡大させた解釈だというふうにやっておりますが、微妙な日本語で、「慎む」ということは、やはり慎まない場合はどうなるかという疑問でございますが、これを大内議員も疑問に思いますように、私も実は、この「慎む」ということはどういうことだろうかということで、事務当局ともいろいろ懇談いたしましたけれども、まあ多少輸出を逃れていく場合もその場所にはあるのじゃないかということで、結局「慎む」という言葉は疑問点のままいまおるわけでございまして、これは与野党の今回の話し合い、私どもの閣僚懇談会で決めてもらいたい。(発言する者あり)  それから、いま、野次に答えるのはどうかと思いますけれども、「慎む」ということは、やはり原則としてはだめだということ、それから発展させていく過程で問題を処理するというようなことではないかというふうに思います。
  249. 大内啓伍

    ○大内委員 これは政府方針でございますので、本当は政府としてははっきりした考え方が、この「慎む」ということについて解釈が必要だと思いましたが、通産大臣はこの「慎む」ということについて必ずしもはっきりした認識を持っておられないということがよくわかりました。  そこで、この政府方針の中の(三)に、「武器製造関連設備」としまして、これは「輸出貿易管理令別表第一の第百九の項など」と書いてあるのですね。一〇九項以外の「など」というのはどこを指しているのでしょうか、ちょっと念のために聞いておきます。
  250. 田中六助

    田中(六)国務大臣 一〇九ということ、具体的には私、正直に申しまして知っておりませんので、事務当局に答えさせます。
  251. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 たまたま資料を持っておりますのでお答えしますが、輸出貿易管理令別表第一の七十九の項及び百九の項に含まれるものが武器製造関連設備に当たると、当時説明されております。
  252. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、この「など」というのは七十九の項ということですか、間違いありませんね。
  253. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 はい。
  254. 大内啓伍

    ○大内委員 武器問題は、これから与野党の間で十分煮詰めなければならぬ問題ですから、その辺を政府も十分勉強していただかないと、この程度でつっかかっておりますと先が思いやられるわけでございます。ひとつ十分御検討いただきたいと思います。  外交問題についてお伺いをいたします。  最近は、防衛費の問題でいろいろ議論が行われました。私が非常に重要だと思いましたのは、この七・六%という防衛費が決定された直後、これは言うまでもなく昨年の十二月二十九日に閣議において決定されたわけでありますが、その明くる日の十二月三十日、アメリカの国務省並びに国防省は異例とも思われるようなステートメントないしは見解を発表しておられます。  まず、国務省はこういうふうに言っていますね。「日本の防衛当局がかねて設定していた目標、あるいは先進民主主義諸国間において相互安全保障の負担を公平に分担するとの要請のいずれに照らしても、今回の日本の決定は、失望を与えるものと考えざるを得ない。」まず国務省が失望の見解を表明されました。  しかし、私がもっと重要視しましたのは国防省、ブラウン長官見解なんです。十二月三十日、ここではこう言っているのです。「われわれは、日本政府が十二月二十九日に発表した予算政府原案において防衛費の顕著な実質増を図っていないことに遺憾の意をもって留意せざるを得ない。」こう言いながら、次のところが非常に重要なんです。「十二月二十九日発表の予算政府原案の防衛費増は、控え目にとどまり、現実とかけ離れた安閑とした態度を示す感がある。」こういう言葉は、宮澤長官もめったに英語で見ないと思うのですね。「右防衛費増は、安全保障上の情勢、」次が重要なんですよ。「過去一年間にわたる日米両国政府幹部間の話合い、あるいは公平な責任分担のいずれの見地から見ても、はなはだ不足している。」  私がこの二つの見解ないしは意見の表明というものが非常に重要だと思いますのはなぜかといいますと、このアメリカの不満表明というのは、明らかに過去一年間の日米両国政府の幹部間の話し合いとは違う、こういうことをはっきり言っているという点で実は非常に重要な意味を持っていると思うのです。ある新聞は、日本政府高官の言質にだまされた――私はアメリカの友人も実はたくさんおります。それらの人々はやはりそうした実感を持っている。私はなぜだろうと思って検討してみた。というのは、私は、政治家にとっても国家にとっても一番重要なことは、大きな約束も小さな約束もともに誠実に守る、これが一番大事なことだと思っている。もしアメリカの国務省ないしは国防省のこうした異例の不満表明というものが日本政府高官の言質によってもたらされたということになれば、日米関係の信頼という面から見ても重要だという意味で、私はこの問題を出したのです。  カーター大統領は、昨年の五月一日の日米首脳会談でこう言ったのですね。「すでに日本政府内にある計画を早めに達成するよう努力してほしい。」そして、これに対して大平総理は、真剣に努力することを約束する。もちろん、言葉はたくさんありました。ここにもその原文があります。そして、伊東外務大臣もこの間、これは一般論としてそう総理はお答えになりました一でも、これはちょっと国会答弁に過ぎるのじゃないですか。  と申しますのは、大平・カーター会談の前にどういう状況があったかということを見れば一目瞭然です。大平・カーター会談は五十五年の五月一日です。しかし、その前の年の五十四年の八月十六日には、山下防衛庁長官が訪米してブラウン国防長官と会談し、ここで中期業務見積もりを詳細に説明されております。これは政府も認めるところです。さらに五十四年の十月十九日、つまり二カ月後、ブラウン国防長官日本に来日され、再び山下防衛庁長官と会って、中期業務見積もりについて話し合っています。これは外務省の記録にもあります。さらに昭和五十五年、つまり大平・カーター会談が行われるその年の一月十四日に、ブラウン国防長官と久保田防衛庁長官との会談の中で三たび中業が話し合われています。  そして、さらに昭和五十五年三月二十日には大来外相が訪米し、ブラウン国防長官との間で会談し、そのときにブラウン国防長官は、中業の早期達成を要望されています。ですから、ことしの一月十九日に発表されたアメリカの国防報告におきましても、アメリカ日本に対して中期業務見積もりの一年繰り上げを要請したと、文言ではっきり書いている。その上に立って大平・カーター会談が行われているのです。ですから、カーター大統領の言う「日本政府内にある計画」というのは、まさしくこの中期業務見積もりを指していた。そして、それに対して大平総理は一般的にただ答えたにすぎないというのは、それは新聞発表用の言葉です。だって、たくさん証言が後から出ているのですよ。  では、ひとつ日本側の証言を紹介してみましょうか。  「大平首相も、はじめは、ありのままを「公」にしてもよいと考えていた。しかし、考えてみると中期業務見積もりは、防衛庁の内部資料にすぎず、国防会議にもかけられていない。そうしたものを首脳会談の議題とし、「検討と努力」を約束したとなれば、日本国内で大問題になり、野党の追及は必至になる。そのことを配慮したわけだ」会談の出席者はこう述べているのですよ、あるところで。「大平首相は、カーター大統領が早期実施を要請した「政府内にある計画」が「中期業務見積もり」を指すものであることを認識したうえで応答し、「真剣な検討と努力」を米側に約束した」のである。  では、もっと付言してみましょうか。  この大平・カーター会談後、アメリカ側はアメリカなりに記者会見していますよ。ブリーフィングをちゃんとやっておりますよ。ここでアメリカ側のスポークスマンは、カーター大統領が要請した日本政府部内にある計画とは、日本の防衛庁の中期業務見積もりを指すことを明らかにしたのですよ。  これで明らかじゃありませんか。単に一般論を答えたのではないんでしょう。だって、そうじゃありませんか。鈴木総理が会談するときだって、アメリカがどんな計画をこういう問題について持っているかということを詳細にレクチュアを受けて会談に臨むということは、常識じゃございませんか。カーター大統領だってその常識を踏んでいるだけですよ。まして、これだけのプロローグがあるのです。ですから、大平総理の言う、真剣に努力するというこの約束というのは、中期業務見積もりについて約束をされた、こう理解することの方が、これらのデータから言って常識ではございませんか、いかがでしょう。
  255. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま数々のお話があったわけでございますが、当時私が官房長官をしておりましたときから関係しておりましたことを申し上げます。  いま先生がおっしゃった中で、昨年の一月。ブラウン長官が大平総理のところへ来られたということがございました。私もその会談には立ち会いました。ブラウン長官が中国からの帰りに寄られたわけでございまして、当時の大平総理と会談があったわけでございますが、そこで中期業務の一年繰り上げ達成というような話は出なかったのでございます。ただ、防衛努力についてお願いするという意味のことはありましたが、中業の一年繰り上げということは、総理のところではございませんでした。  それから三月に、当時の大来外務大臣が渡米しましたときに、ブラウン長官に会ったわけでございます。ここでははっきりと、日本の顕著な着実な防衛努力をしてもらいたいという期待表明と、それから中期業務見積もりの一年繰り上げ達成ということをやってもらいたいんだという期待表明があったことは確かでございます。外務大臣が帰ってまいりまして、すぐにこれは総理にも報告かございましたし、大来外務大臣はブラウン長官に、それは帰って防衛庁長官にも報告するということを向こうで言ったということは明らかでございます。  その後で、大平総理がカーター大統領とお会いしたのでございますが、カーター大統領が言いましたことは、日本が防衛の努力をしておられるということについてこれは多とするということと、もう一つは、日本はいろいろな国内的な制約があるということも十分知っているということが二番目でございます。それからもう一つは、いま大内さんの言われたような、政府部内にある計画を早期達成することが、アジアの、あるいは極東でしたか、極東の平和安定にも役立つことだという話があったことも確かでございます。  それに対しまして、大平総理が言いましたことは、日本は防衛努力はいままでも精いっぱいやってきた、今後も自主的な努力はしていく、それからカーター大統領が日本に、これは恐らく憲法とかそういうことでございますが、いろいろな国内的な制約があるということを理解してもらっておることは、これは評価することだと言って、同盟国としてこれから何をなせるか、防衛の問題について何をするかということについて真剣に検討するということを言ったことは確かでございます。そしてその次に、防衛の問題はそういうことだけでなくて、アジアの政治的、経済的安定が必要だということで、タイでございますとか、あるいはパキスタンでございますとか、トルコとか、そういう紛争周辺国に援助している、この四つを言ったわけでございまして、その会談で、先生がおっしゃったように、中期業務見積もりということは、具体的な名前は出ませんでしたが、政府部内における計画ということが出たことは確かでございます。  そのバックグラウンドとして、前々から防衛庁で中業の説明もし、大来外務大臣にも話があったじゃないかということはそのとおりでございまして、私も当時こっちにおりまして、政府部内の計画というのは、当時いろいろ中業の話が出ておりましたので、恐らくそれを指したものだろうということを、私も新聞記者会見で言ったことは確かでございます。ただ、大平総理は、それは中業であるかどうかということは別にしまして、そういうものの一年繰り上げの達成の約束をしたということは、これは本当にないのでございます。先生がおっしゃるとおり、約束したことは守るということは、もう政治家の最大の責務だと思うことは私は全然同感でございますが、総理が約束したり外務大臣大来君が約束したことはございません。  それから、私が九月に行きましたときにブラウンさんと会ったときに、やはり着実、顕著という話、それから中業の一年繰り上げ達成の要望が出たことも、これは確かでございますし、また、駐留米軍の経費について日本が負担を増してもらっているということに感謝があったりしたことは確かでございます。そのときに私は、この防衛予算の問題は、これは日本が自主的に判断して決めることであり、財政の問題もあり、国民のコンセンサスがなければできないことであるということを私の方も言いまして、何ら約束というようなことはしたことはないのでございます。九月でございますから、もう概算要求は出ておりました。九・七というものも数字はあったわけでございます。そしてブラウン国防長官は、九・七という要求が出たが予算は削減されるということがある、インフレで実質が減るということもある、そういうことは心配だということを言ったこともございます。私も全然、約束ということはいたしておりません。  それから、これは私、立ち会っておりませんが、十二月にブラウンさんが来て鈴木総理に会いましたときにも、九・七の政治的性格は自分はよく知っている、日本の防衛予算は日本が決めることだということを言ったということを私聞いておりますので、その辺のところは向こうも理解はしていたというふうに思うわけでございます。
  256. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 五十六年度予算編成に当たりまして、最終的に防衛費の決定をいたしましたのは私でございます。そういう観点から御答弁を申し上げるわけでございますが、おっしゃるとおり、政治家の約束、政府間の約束というものは誠実に実行しなければいけない、これはもう国際信義を守るという観点からも最も重要なことでございます。  いろいろの経過があったようでございますけれども、十二月の上旬にブラウンさんが日本においでになりまして、私、お会いしました。その際に、国際情勢その他から日本の防衛努力の御要請がございました。私は、それに対しまして、国際情勢の厳しさということはよく承知をしておる、しかし、日本としては憲法上の制約もある、また、いま財政再建に政府は真剣に取り組んでおる段階である、また、国際情勢等を踏まえて、国民の防衛に対する意識も、認識も深まってきておるということであるが、急にこれを増強するというようなことであっては、かえって世論の反発を招くおそれがある、やはり国民のコンセンサスを得ながら、こういうものは一年で成ることじゃないから、着実に整備していきたい、私にお任せを願いたいということを明確に申し上げておいたわけでございます。そのとおりにやったのでございます。
  257. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、時間があればその辺もう少し詳しく立証したいのですけれども、時間がありませんので……。  しかし、いま外務大臣がお話しになりましたように、昨年の九月十九日に、伊東外務大臣はブラウン国防長官あるいはマスキー国務長官と会談をされまして、そこでは、いま述べられたようなこと、中業の一年繰り上げをはっきりアメリカは要望していますね。そして、これは当然、七月二十九日の概算要求決定の後の外相の訪米ですから、九・七%ということを説明されたわけですね。これは外務省の記録にもございます。ですから、恐らく九・七%を通じてアメリカの要望していることにこたえたいと外務大臣が言ったことは、それは変なげすの勘ぐりでなくて、自然な流れだと思うのです。  そういうものが、たとえば七月二十八日に渡辺大蔵大臣と大村防衛庁長官と話し合われていますね。そして、情勢が変化があれば考えてくれと大村防衛庁長官が言って、そのときにはそのときで話し合おうという趣旨のことが大蔵大臣から回答された。ところが、そういう話が全部いろいろなルートを通じてアメリカに、伝わっているのですね。防衛庁当局も、アメリカ大使館あるいはアメリカのワシントンのいろいろな関係筋にきちっと話をされておるのです。ですから、ブラウン国防長官が年末に来たときに、これは渡辺大蔵大臣と大村防衛庁長官の再協議の合意があるじゃないか、こう詰め寄るのも理のないことではない。つまり、そういうものが重なって、国防省、国務省の不満表明になっているのですよ。  いままで政府の皆さんが御答弁になったようなことで、政府は何らそんな約束はしてない。私は、約束をしたというようなことは言っているわけじゃない。間違いなくそういう強い印象を与えた、アメリカをして思い込ませた、その責任は重要ではないか、こう言っているのですよ。そして、それにまず間違いない。でなければ、この国務省と国防省の見解表明に日本政府はクレームをつけるべきですよ。過去一年間にそんな言質は与えたことはない、とんでもない話だ、こう言って日本が開き直ることがあたりまえじゃありませんか。そんなことはやってない。つまり、そういう形でこの九・七%という問題が日米間に一時ぎくしゃくした。こういうことは政府においてもこれから真剣にお考えをいただきたい。自分たちは自分たちで筋は通しているのだとおっしゃるかもしれないが、相手に対しては少なくともそういう印象を与えている。その結果が間違いなくこんな異例な国務省と国防省のステートメントになってきた、このことを十分お考えをいただきたいと思うのです。  そこで、話を少し進めますが、今度の五十六年度予算で中期業務見積もりの早期達成の足がかりができた、こういうふうに防衛庁長官もおっしゃっている。そうすると、五十七年度、五十八年度は防衛費は何%になるのですか。
  258. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  五十六年度の防衛予算総額は二兆四千億円でございますが、私どもは、中期業務見積もりのうち正面装備、またこれに伴います後方の経費を計上することに重点を置きまして、主要装備につきましては、先生いまおっしゃいましたように、早期達成の足がかりを得たものと考えているわけでございます。もとより、中期業務見積もりは五年間の見積もりでございます。五十六年度は二年目でございますので、五十七年度以降、継続努力しなければ、早期達成は不可能でございます。  五十七年度はどうなるか、こういうお話でございますが、その点はまだいろいろなファクターもございますので、具体的な見通しはまだ持っておらないわけでございます。
  259. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、早期達成の足がかりというのは、その場限りの言葉になってしまいますね。だって、五十六年度二兆四千億の予算を何とか成立さしていただきたい。そうすれば中期業務見積もりの早期達成の足がかりはこれで踏めますというのは、五十七年度、五十八年度の展望がなければそんなことは言えませんね。一兆三千五百億の後年度負担、これを含めると五十七年度、五十八年度は、自然に防衛費の伸び率は出るでしょう。つまり、新規にこれからいろんな正面装備を買う、あるいは後方支援体制を整える、そういう新規のものは別にいたしましても、既存のレールに乗ったものだけで防衛費の伸び、つまり中期業務見積もりの見通しというのは立つでしょう。五十七年度、五十八年度は、防衛費はしからば何%になるか、こう聞いているのです。
  260. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  早期達成の足がかりができたということは、五年間の見積もりでございますから、二年目におきまして主要装備を中心に相当な予算が計上されましたので、いわばこれがはしご段になりまして、五十七年度以降さらに努力することによって早期達成ができる見通しがつきかけたという意味で申し上げたわけでございます。  お尋ねの、五十七年度は何%伸びるかといいますると、いろいろなファクターがございますので、いまの段階で何%ということを申し上げることはむずかしいわけでございます。おっしゃいましたように、後年度負担の問題もございますし、また、主要装備について五十七年度以降どういうふうに予算を計上するか、中期業務見積もりは年次計画でございませんので、また、五十七年度の予算問題として財政事情等とにらみ合って決定しなければならないものでございますので、私どもといたしましては、現在まだ具体的な見通しを申し上げるわけにはいかない、こういう状況でございます。
  261. 大内啓伍

    ○大内委員 それならそれでいいでしょう。しかし、後年度負担の一兆三千五百億というものをそのまま均等に伸ばしますと、それだけで五十七、五十八年度はその分で六・一%になりますね。人件費が二・二%だったら、それだけで防衛費の伸び率は八・三%、これが最低ということですよ。つまり、五十六年度予算を決めれば、それが最低の防衛費として来年度以降かかってくる。まして、新規の装備等をここで買えば、これは莫大なものになってくるという意味なんです。  そこで、実は党首会談で、この中期業務見積もりについては国防会議に付議するということをお約束いただきました。これはいつ、どういう方法で国防会議に付議いたしますか。
  262. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 党首会談におきまして、私と佐々木委員長との間でお約束をいたした事項でございます。国防会議にどのような形でこれをかけて協議をするかという問題につきましては、防衛庁を中心に、ただいま鋭意検討さしております。
  263. 大内啓伍

    ○大内委員 これは非常にむずかしい問題があるのですね。総理も御存じだから、余り防衛庁長官に答えさして、ぼろを出してはいかぬということの配慮でしょう。これは方法論は非常にむずかしいのですよ。しかし、国防会議で、この付議の仕方は、それではいつ議論されますか。
  264. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いまのところ、まだ国防会議をいつ開くかということを設定いたしておりませんが、お約束の国防会議に付議するという問題につきましては、検討を急がしていきたいと思っております。
  265. 大内啓伍

    ○大内委員 もとに戻りまして。長官、五六中業というのは何ですか。
  266. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  五六中業と申しますのは、五十八年度から六十二年度までの、次の中期業務見積もりでございます。二年前に決めることになっておりますから、それで五六中業と申しております。時期につきましては、来年の春くらいまでに決めなければいけないもので、そこで、いま総理のお答えがありました問題を関係省庁と、具体的にどういう付議の仕方をするか、いま検討している最中でございます。
  267. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、付議の仕方は閣議決定とされますか。つまり、この中期業務見積もりは閣議決定という形で付議しますか。
  268. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  議題とする際の方式につきましては、たとえば国防会議の決定事項とするとか、同会議報告して了承を求めるものとするとか考えられるわけでございますが、その際の内容等ともあわせ、現在、関係省庁と慎重に検討を重ねているところでございます。
  269. 大内啓伍

    ○大内委員 言いにくいようですから、ただ一つだけ。党首会談でこれは出た問題でございますから、どうか誠実にその約束を果たされますように、これは中くらいの約束でございますから、よろしくお願いいたします。  そこで、ポストナイキはどうされるのですか。
  270. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  ポストナイキの整備につきましては現在検討中でございまして、まだ具体的な整備構想も策定されていないのでありますが、検討の状況について申し上げますと、ナイキの後継機種としましては、米国のパトリオット及び防衛庁の技術研究本部が検討を進めておりますナイキフェニックスが有力な候補機種として考えられております。  検討作業の一環として、パトリオットシステム及びナイキフェニックス開発の技術的基礎となるフェニックスシステムに関し、米国における前回の海外調査以降の動向等をフォローする必要があるとの考えから、今回改めて米国防省等に調査のための要員を派遣することとしております。  以上の状況でございます。
  271. 大内啓伍

    ○大内委員 いま防衛庁長官、むずかしく言っておりますが、要するに、パトリオットを買うか、それともナイキを改造するか、この二つを検討しておる、そして三月にはパトリオットの視察に行く、こういうことですね。場合によって買う意思があるということですね。  そうすると、パトリオットの開発費というのは、いまどのくらいがかっているのですか。
  272. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  アメリカの議会の証言等の資料によりますと、約二十億ドルというふうに伺っております。
  273. 大内啓伍

    ○大内委員 その認識はちょっとおくれています。すでに投資分は十八億ドルです。これにプラス新規増分が十六億八千万ドルです。これが新しい資料です。ですから、総計、この両方を足したものを大体円に直せばいいのです。三十四億八千万ドル、大体これがいまパトリオットにかけられている開発費です。  そうすると、このパトリオットを買うという意味は、パトリオットの展開数がわからなければこの値段がわからないですね。パトリオットの展開数は、アメリカあるいは日本を含めて大体何基と見ていますか。
  274. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまのお尋ねの点はまだ今後の検討課題でございまして、いま私ども、何基装備というところまで考えておるわけではございません。
  275. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ、アメリカ、NATO軍は何基ですか。
  276. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  アメリカは百をちょっと超える数というふうに伺っております。それからNATOにつきましては、まだ決まっておらないというふうに聞いておりまして、それも一つの今度の調査団の調査の対象になるというふうに考えております。  なお、日本については、御存じのとおり全く決まっておらない、こういう状況でございます。
  277. 大内啓伍

    ○大内委員 大体アメリカは百をちょっと超えています。NATOは決まっておりませんので、まだこれはわかりません。しかし、ポストナイキということになれば、ホーク、ナイキにかわるものでありますから、最低限見たって陸あるいは空で二十、二十は必要でしょう。そうすると全部で百四十三くらいです。これで開発費の値段が決まります。私がいろいろ計算してみますと、これは相当高いものです。いまの数量で仮に最低限のものを計算してみますと、FMSで買っても八千二百八十億円――大蔵大臣、よく聞いておいてください、財政再建の問題なんですから。ライセンス生産で国産いたしますと一兆二千四百二十億くらいかかります。いままでナイキ、ホークに約一千億円かけています。パトリオットを買ってそれを捨てて一兆二千億以上の金をかければ、日本の防衛費の伸び率は約二〇%近くになります。そういうことを十分お考えいただくようにということを、この前も防衛庁長官に私的に申し上げました。  私は、この前の国会で短SAMの問題を取り上げました。私は、十数項目の疑問を持っておりました。しかし、この国会で出したのは四項目だけでした。全部を出しますと、これは対外的な問題にもなるのです。日本の安全保障を損なうという問題にもなるのです。ですから、遠慮をしたのです。私が指摘したことは、いまアメリカ等でも続続実行に移されています。よその国でもそうです。あの短SAMについての指摘をどういうふうに防衛庁としては受けとめられているのか。そして、いまのパトリオットという問題については、短SAMについて国産という一つの政策を防衛庁は打ち出されました。そういうことを中長距離のミサイルについても貫徹するというなら政策として一貫性があります。その辺を十分御検討いただきたい。
  278. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  自衛隊の装備品については、継続的に性能向上を図る必要があることから、国産短SAMの導入後も、運用実績を踏まえ、メーク・アンド・インプルーフの原則に立って、技術的な改善、改良を積極的に行っていく方針であります。  この実施に際しましては、大内議員から前回予算委員会において御指摘のあった事項も十分参考として、性能等にかかる技術的発展性、たとえば全天候性、対妨害性の向上のためのアクティブ電波ホーミング装置の開発及び秘匿性の向上のための無煙化の可能性等について研究を進めてまいる所存でございます。  なお、国産短SAMの改善、改良を行うに当たっては、所要の評価試験等を適正に実施するよう、さらに努めることといたしております。  また、ポストナイキについて貴重な御意見をお述べくださいましたので、それを重要な参考としながら慎重に検討を進めてまいりたいと考えます。
  279. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、本当は国防会議にもいろいろお尋ねをしたい問題があるのです。と申しますのは、たとえば昨年十二月に、二回にわたって国防会議が開かれました。私は、その内容もいろいろ検討させていただきました。しかし、総理大臣も各閣僚も構成メンバーは、細かい、たとえば兵器の性能等については御存じないということの方が私は自然だろうと思うのです。したがって、その国防会議の事務局長以下のスタッフが、国防会議の議長である総理が本当に信頼し得るそういう能力を持った機構というものをきちっと従えて、たとえば防衛庁から出してくるようないろいろな諸要求というものを検討する体制がなければ、私は本当のシビリアンコントロールではないと思うのです。シビリアンコントロールという形と制度があっても、シビリアンコントロールは機能していないということになるのです。  私は、あの短SAMの問題が起こったときにも、国防会議の事務局長をお呼びして、私の疑問をいろいろお話をいたしました。正直なところ、国防会議の事務局長も私の疑問に対して正確にお答えできなかったと思います。そういう状況のことを、恐らく総理にも官房長官にも事務局長報告されたと思うのです。そして、そういう状況の中で、たとえばそういう主要装備というものが決まっていくのです。これでは本当のシビリアンコントロールではありません。私は、もっと国防会議の機構というものを機能するような権威あるものに高めなければならぬ、そのことを痛感しています。総理も、本当に総合的な安全保障と言い、あるいは場合によってはそれを国防会議を改組してまでつくろうと言った、あの決意に対して、実は私は拍手を送っていたのです。しかし、これがだんだんお茶を濁されてきた。やはり本当の意味で国防会議の機能強化という問題をお考えいただかなきゃならぬのです。総理方針、御決意はいかがでしょうか。
  280. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の安全保障の問題につきましては、国防会議と安全保障閣僚会議と両両相まってその目的を達成したいということを申し上げておりますが、いま大内さんから、その国防会議の機能を充実するように、こういう御指摘かございました。私も、非常に大事な問題でございますので十分研究をさせて対応をいたしたい、こう思っております。
  281. 大内啓伍

    ○大内委員 まだお伺いしたいことがたくさんありますが、この際、通産大臣だと思いますが、あるいは大蔵大臣かもしれません。お伺いしたい問題は中国問題なんです。大来政府代表が帰られまして、例のプラント建設中止問題等についていろいろ報告がなされました。私は、これはただ単に、三千億円に上るプラントの建設が中国によって一方的に中止されたというような問題ではなくて、やはり今後とも中国を信頼し得る国家として経済協力をなし得るかどうか、こういう非常に重要な問題をはらんだ問題だと思うのであります。  そういう意味でお伺いをいたしますが、伝え聞くところによりますと、中国側は資金協力と中国のプラントに使う原油確保に関して協力を求めてきた、こういうお話を聞いております。これが事実かどうか。つまり、中国の経済調整とプラント建設を両立させるということを中国が考えているのかどうか。  もう一つは、したがって、さきのプラント建設中止通告というものが場合によっては撤回される可能性があるのかどうか。それから、もし撤回しないで中止を強行してきた場合に、中国はどんな損害賠償を考えているのか。  それから、宝山製鉄所については、日本にファイナンスの方法があれば完成が短縮できると言っているわけですが、この問題も中止が撤回される可能性があるのかどうか。  それから、輸入石油を中国に回すということも日本では考えられるのか。  たくさん一遍に質問して恐縮ですが、私の時間が非常に限りがありますので、その辺をまとめてお答えをいただきたいのと、中国側が求めているよい条件の融資というもの、つまり輸銀資金の融資という問題が、この種の問題について考えられるのか。  これらを実はまとめてお答えをいただきたいのでありますが、恐らく答弁が私の時間の範囲外に出ることが予想されますので、最後に一言だけ総理にお伺いをしたいのです。  いま私に入りましたメモによりますと、千葉県の川上知事が辞任を表明した、こういう報道がなされました。この報道はまず間違いないと思うのでありますが、総理所見を最後にお伺いしたいと思います。
  282. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 千葉県知事の川上君の念書問題、これにつきましては、大変遺憾な事件である。私は、この問題は、本人がみずからえりを正して、その進退については十分考えるべきことである、こういうことを申し上げてきたわけでございますが、川上君自身が県民世論、各方面の批判というものをみずから反省をし、自主的にそういう進退を決したということにつきましては、当然のことながらよかった、私はこのように率直に考えております。
  283. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  中国と日本との関係は、目中貿易取り決めという長期的な取り決めを一九七八年から一九九〇年までやっておるわけでございます。この取り決めの中枢になるものは、日本側は原油、石炭の輸入、それから中国側は重大なプロジェクトをやるということがこの取り決めの重要な問題だと思います。  ところが、宝山初め南京、北京東部、あるいは勝利というようなところのプロジェクトの中止まで考えておる。宝山はもう一応通告してきたわけでございますけれども、これらの問題につきましては、私ども、正式には何ら受けてないわけでございまして、実はこの二十四日に、そういうことの相談で向こうから特使が来るわけでございます。しかし、向こう側の特使が一月間滞在している間にそういう話を詰めてもいいのですけれども、その前に大来さんに行ってもらって、詳細なことをある程度聞いた方がいいということで、十日から十二日まで大来代表を派遣したわけでございますが、時間の関係上かいつまんで申し上げますが、大来代表は、あなたたちの言っているこのプロジェクトの取りやめというのは、中国が予測する以上に重大な問題ですよ、日本だけじゃなくて西ドイツその他、各国の援助についても同様に、あなたたちが考えておるように安易なものではないということを言ってきたわけでございます。鄧小平初め多くの人に会っているわけですが、事の重大さをある程度認識したという報告を受けておりまして、いま大内議員御指摘のように、向こうが石油も足らなくなった、何もない、金融もしてほしいと言うならば、金融の面も考えてやったらどうかということが一つの問題。それからもう一つは、石油が足らなければ日本からある程度これを供与したらどうかというような問題がございますが、はっきりした向こう態度が決定しなければ、私どももそういう安易なことはできませず、二十四日から一月間日本におるそうでございますので、そこで十分詰めた結果、まだまだプロジェクトを遂行する余地があるのかないのか、それから、いま石油の日本からの輸出ができるのかどうか、そういうことは、向こうからの特使が来た結果によって私どもも対応したいという考えでございます。あくまで私どもは日中両国の平和のため、あるいはひいては中国の平和が世界の平和につながるならば、日中両国の友好関係の維持という観点からこの問題をとらえていきたいと思います。
  284. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 昨年十二月の初めに訪中をいたしまして会談をしたときから、実は調整をしなければならぬ理由がいろいろあってと述べられましたが、その中の一つに、要するに、外国から買う品物のお金は借りられるのだが、国内の費用が持てない、したがってローカルコストに使う分をもっとふやしてくれぬかという話がありました。かねて、ある程度の有利な条件は示しておったのですが、私といたしましては、中国だけではなくて、日本は東南アジアその他、世界じゅうにたくさん援助をしておって、条件が余り極端に違うようなことは、それはほかにも響きますからこちらが持たないということで、それは困難でございますということを言ってあるのであります。
  285. 大内啓伍

    ○大内委員 まだたくさん質問したいことがございまして、わざわざお見えいただいた方もございましたが、時間の関係で失礼いたしました。  これで終わります。
  286. 小山長規

    小山委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部助哉君。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  287. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほど御質問で、川上知事がやめられたということでございますが、大変長いこともたついてまいりました。この委員会で、中学生の非行問題、暴力問題等が取り上げられ、やれ先生が悪いだとか、日教組がよくないだとか、教科書が偏向しておるなどというお話もたくさん出ました。ところで、いま千葉県知事がやめられたとはいうけれども、これだけ長いこともたついた。しかも、業者との利権に協力するなどという念書を書いて五千万円も受け取った。後で返したという話でありますけれども、県政を利権のえさにしようとした事実には間違いがないのであります。ところが、今日まで居座りを決めてみたり、自民党の県議団は不信任案を否決してみたり、こういう形で批判を浴びてまいりました。  こういう事実について、先生が生徒に、これはいいことなのか悪いことなのか、人の処すべき道として誤りがあるのかないのかというような質問を受けたときに、総理、文部大臣、一体、子供にわかるようにどう言ったらいいのか、ひとつ教えてもらいたい。
  288. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えをいたします。  今日のいろいろな事件に対しまして、われわれは衷心から遺憾の気持ちでいっぱいでございます。文教の府をお預かりいたします私といたしましては、あくまで世道人心を正し、そうしてりっぱな国家、りっぱな民族の再建に改めて乗り出さなければならないと覚悟を新たにいたしまして行政に当たってまいる覚悟でございます。
  289. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 川上念書事件は、まことに遺憾な事件であったわけでございます。政治倫理の確立の面からいたしましても、政界浄化の面からいたしましても、県政の最高の責任者にああいう行為があったということは、本当に遺憾なことでございます。しかし、きょう本人がその点に思いをいたし、自主的におやめになったということは、本当によかったと考えております。
  290. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それにしても大変もたついたものだと思うのであります。古いことわざに「なんじの国の青年を見ればその将来が占える」とか、「国家百年の大計は人をつくるにしくはない」というようなことがございます。いま、わが国の青少年の現状を見、聞くにつけて、民族の将来に暗い不安を抱かざるを得ないのであります。たとえば、金属バットで両親を撲殺するとか、いろいろな校内暴力の問題は、もう枚挙にいとまがないのであります。首相は、この事態をいかに考え、いかに解決しようとしておるのか、お伺いをしたいと思います。
  291. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいま総理からもお答えいたしましたごとくに、常に総理が言っておられますように、まず、今日の狂乱怒濤と申しますか、混乱極に達しておりまする日本、この日本をいかにして泰山の安さに置くかということこそ政治家の念としなければならぬところでございますが、そこにはやはり本当に家庭において愛情というものを基本に置いて、同時にまた、後輩に対し、あるいは社会に対する深い愛情と同時に真剣なまじめさ、さらにまた厳しい態度でもってこれらの問題に臨んでいかなければならない、かようなことを思う次第でございまして、まさに最もむずかしい、政治の上から申しましても、あるいは行政からいたしましても、ことに家庭教育、社会教育あるいは学校教育全般を通じまして正していかなければならないことばかりでございます。日本の将来のために、国家の百年のために、どうぞ御協力のほどをひとえにお願いを申し上げます。
  292. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  総理府は青少年対策室を持っておりまして、関係各省庁と昨年来数回にわたって協議をいたしております。問題はきわめて根が深い。社会全体に関係がございます。十二月十六日と一月十九日にも、警察、検察、文部、厚生、労働、総理府と、各省が局長会議を開きました。しかし、これをもってしたら全部が解決するという具体的な政策が具体的に出てこなかった。こういうことで、一月二十日に、青少年問題審議会に改めて非行問題に関して諮問をいたしたようなことでございますが、どんどん中間答申を上げ、私どものいわゆる政策研究とあわせて、できるものから関係各省と連絡をしながら具体的に政策を実行してまいり、社会のために努力をいたしたいと考えております。
  293. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はただいまのようなお答えを期待したわけじゃなかったわけであります。私は、最も責任ある政治家自身が、自分の責任の重さを自覚して、そうして具体的な行動をとることを総理からお話があるべきだ、こう期待したわけであります。  私は、今日の大変な事態を来した原因はいろいろあると思います。しかし、その中の大きな一つとして、高度成長政策の過程で社会のおきてあるいは道徳律が欠きく崩壊をした。たとえば、うそをついてはいけないというおきては、うそをつかなければ偉くならない、そう変わってしまった。「額に汗して働く人こそ真の幸せを得る」という教訓は力を失って、人生すべてが金であり、金もうけのためには人をだましても汚職をしてもいいという銭ゲバの論理に変化をしてまいりました。政治の世界から井戸べいという言葉がなくなりました。私を犠牲にして公に尽くすのではなく、公を犠牲にして私に尽くす風潮が満ち満ちておる。  その大きな原因は、やはりこの千葉県知事に見られるように、あるいはいろいろな問題に見られるように、政治家の姿勢、これがまず正されない限り、子供たちを責め、あるいは社会を責めるわけにはいかないんじゃないか。何よりも重大なのは、私は、政治浄化の問題、これこそが民族のあしたを語るに不可欠な問題である、こう考えるのでありますが、私は、総理から具体的な、中学生や高校生にもわかるような御答弁をいただきたいと思います。
  294. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政治家は国民の代表であり、選良であるわけでございます。その政治家が国政なりあるいは県政、そういう場を通じまして、教育の問題や国民生活、福祉の問題全般にわたりまして政治を行ってまいるところでございます。したがいまして、政治家が国民に信頼をされ、また、政治に対する国民の不信というものがなくなってこそ初めて教育の問題も規律が保たれ、また、青少年の教育もできる、社会の秩序、そういう点もしっかりしてくるわけでございます。そういう意味で、政治はすべての原点であり、国民注視の中にあるわけでございますから、政治家たる者、本当に自省自戒、えりを正してやっていかなければいけないという阿部さんの御指摘はそのとおりと承っております。
  295. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はその抽象的な御趣旨はわかります。しかし、そのためにいまわれわれが何をすべきかという問題でもっと具体的なお話を期待したわけでありますが、時間の関係上予算の問題に移らしていただきます。  私は、昭和五十六年度予算案を見て、これは戦後財政の大転換であると痛感をいたしました。現行憲法と財政法がかたく禁じておる赤字公債発行のもとで防衛費を膨張させ、本格的な大衆増税を行い、社会保障の改悪を行おうとしております。昨年十二月三十一日付の朝日新聞の「天声人語」では「戦後三十五年、ついに軍備拡大費の伸びが福祉を上回ったのだ。八〇年は「戦後」に死刑を宣告した年、として記憶されるだろう」こう述べておるわけであります。私も、この五十六年度予算案は戦後の平和と民主主義を根本から覆し、日本を危うくするものと考えざるを得ません。  首相は、この予算案をどのような指導理念で作成されたのか、まずお伺いをしたいと思います。
  296. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、予算の編成につきましても、また、予算の執行、運営に当たりましても、これは憲法及び財政法の精神にのっとって行われるものでございまして、五十六年度予算案の編成に当たりましても、そのような心構えで当たってきたわけでございます。防衛費の問題あるいは社会福祉関係の予算あるいは教育関係の予算等等につきましても、わが国憲法平和主義民主主義基本的人権の尊重、こういう基本的理念を踏まえて予算の編成をやってきた、こういうことでございます。
  297. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 憲法、財政法の精神に従っておつくりになった、こうおっしゃるのでありますが、大変失礼でありますけれども、総理は予算案をよくお知りにならないのか、知っておるとすれば少しまやかしなんじゃないかという感じがするわけであります。  そこで、具体的にお伺いいたします。  わが国の現行憲法は、明治憲法の天皇大権による制約を脱して、国民財政主義、国会中心主義の原則に立っており、憲法八十三条は、「国の財政を處理する權限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」とうたっております。この趣旨について、憲法制定の作業に参画された清宮四郎教授は次のように述べております。これは大変重要だと思いますので、ちょっとこのところだけ読みます。  「(一)国民財政主義 これは国の財政は、主権者たる国民に由来するものであり、国民意思にもとづいて処理され、国民全体の利益、幸福のために運営されねばならないとなすもので、これが根本の出発点であり、また窮極の帰結点である。(二)国会中心財政主義 国民財政の原理はさらに国会中心財政の原理として展開される。国政が国民の厳粛な信託であって、国会が国権の最高機関であるとする憲法のたてまえは、財政についても維持され、国会は主権者たる国民を直接に代表するものとして財政権の最高機関となり、唯一の議決機関となった。旧憲法の大権中心政治から国会中心政治にあらたまり、同時に、官僚財政から国民財政、国会中心財政へと移行した。これに基づいて、財政に関する国会の権限は著しく拡大、強化され、反対政府の権限は大幅に縮小された。」と述べておるわけであります。  首相はこの憲法八十三条に従うおつもりだろうと思うのですが、どうか。そして、それならば清宮教授のこの解釈に賛成かどうかをまずお伺いいたします。
  298. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 清宮さんの論文に一々私お答えする立場にございません。しかし、先ほど申し上げたように、憲法並びに財政法に従って政府は予算の編成に当たっておるということを明確に申し上げておきます。
  299. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大体反対ではないということであります。それでは、この予算の国会審議権が完全に、保障されると私は確信をいたします。  総理は、予算審議が、財政処理を国民の代表たる国会の監督下に置くという憲法の精神を実質的に保障する、こうお約束できますね。
  300. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の予算は、国権の最高機関である国会の御承認がなければ成立しないわけでございまして、こうして各党各会派の御意見を十分拝聴しておるのもそのゆえんでございます。
  301. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私の質問に少しはぐらかしたような感じがしますけれども、まあ次へ移りましょう。  私は、まず軍事費の問題からお伺いをいたします。誤解を避けるために、軍事費の概念、計数について一致を図っておきたいと思います。  まず、私が防衛費と言わずあえて軍事費と申しますのは、軍事費の国際比較に用いますNATO基準と、わが国の予算で表示されておる防衛費との間に差異があるからであります。NATO基準の軍事費は、わが国の防衛費のほか軍人恩給、海上保安庁費等を加えたものと言われておりますが、これはいかがですか。これは防衛庁長官でもいいです。
  302. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  各国が防衛費あるいは国防費と言う場合、その中にいかなる性格の経費項目を含めているかは各国の事情等により多様であり、共通の考え方は現在存在していないと考えております。御指摘のありましたNATO方式という軍事費のはかり方があることは承知しておりますが、これもいま申し上げましたような多様な防衛費計測の一つの方式にすぎないものでありまして、しかも、これはNATO秘とされているため、私どもとしましては、その詳細は承知しておらない次第でございます。  以上、お答えします。
  303. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 承知していないと言うけれども、これは否定できないですよ。NATO加盟国であるアメリカのグレン報告、ナン報告でも――ここにもアメリカ報告がありますけれども、明らかに日本の防衛費はGNP対比一・五%、こう報告しておるのですよ。  まあ日本の場合、保安庁費を除いて防衛費二兆四千億円、軍人恩給費一兆五千八十五億円、これだけ足しても三兆九千八十五億になります。この金額には大蔵省、間違いありませんね。
  304. 松下康雄

    ○松下政府委員 その数字には間違いございません。
  305. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、五十五年度に対する増加割合は九%となります。それで、皆さんが発表しておられる防衛費の伸び七・六%を一・四%も上回り、国債費、地方財政関係費の義務的経費を除きますと、エネルギー対策費、経済協力費に次いで第三位の増加率になります。NATO諸国の伸びを大きく上回り、GNP比で一・五%と、すでに一%という皆さんの決定を大きく上回っておるのであります。軍事費の支出額で見ると、政府の一%以下という説明は、世界で通用する比較方法を用いる限り間違いであると思いますが、いかがですか。
  306. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま防衛庁長官からお話がございましたように、それぞれの国によって分類が違っておりますから、われわれの方は恩給というようなものを除いて一%以内ということを閣議で決めておるわけであります。
  307. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ところが、防衛庁ではいかにも日本の防衛費は少なく見せるためなのかどうか、ここで日本の防衛費はサウジアラビアに次いでその下だなどと防衛白書に書いておるものだから、私はこういうことを言っておるのです。もっときちんと、こういうNATO基準が大体ある。わからないなどということはないのですよ。アメリカ自体がちゃんと発表しておるのです。そういう中で、皆さんがそれはやはり入れてやるべきなのじゃないですか、防衛白書でちゃんとこうやって数字を出しておるのだから。それでは国民に正直に――これはいわゆるシビリアンコントロールという面からいっても、私は疑問を持たざるを得ません。  私は五十六年度予算を見て、昭和十五年当時の歴史を思い起こさざるを得ません。国税、地方税を含めると国民一人当たり七万円もの大増税であります。加えて社会保障費や教育費を削り、公共料金を値上げしようとし、さらに十二兆六千億を超える国債の新規発行であります。このように大増税、国民生活の切り下げ、借金の増加を行いながら軍事費を増加したのは戦後初めてであります。私は、その理由を承りたい。
  308. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私どもといたしましては、防衛庁から、わが国の防衛力整備については「防衛計画の大綱」に従って、かつ、その具体的な実施に際しては経済、財政事情等を勘案して、いろいろな事情も考慮して、必要にして最小限度のものを認めたということでございます。
  309. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 全く私の質問にはお答えになっておらぬようであります。それではさらに詳しくお伺いいたします。国民にわかるようにひとつ御答弁願いたいのです。  五十六年度防衛費の増加の目玉は、戦車、戦闘機、軍艦というようないわゆる正面装備費であって、その金額は五千三百九十九億円、前年対比一七・一%の増であります。さらに後年度負担は七千七十五億円となり、これまでの分と合わせると、一挙に一兆三千四百八十五億円もの借金を五十七年度以降に残すことになります。わかりやすく申しますと、軍事費はふやしました、これからさらに大幅にふやします、そのために社会保障を切り詰めます、増税をやります、これが五十六年度予算編成に当たっての首相の基本理念でしょう。事実はそれを物語っておると思いますが、いかがですか。
  310. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 後年度負担の問題につきましては、御承知のとおり、艦船あるいは航空機のようなものも、それは一年ではできないものですから、当然に後年度負担という問題は起きます。しかしながら、後年度負担の国庫債務負担行為というものは、五十六年は五十五年よりも実は少ないわけであって、それはときどき波がありますから、私は特別に多くつけたということにはならない、そう思っています。
  311. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はちゃんと数字を挙げて、後年度負担が七千七十五億だとか一兆三千四百八十五億というのは、大蔵省と数字合わせをして申し上げておるのですよ。だから、大臣、もっとちゃんと答えていただかないと困るのです。どう言われようと、勤労国民の犠牲の上に軍事費の増額が行われようとしておる、これは事実でしょう。  そこで、さらにもう一つお伺いいたします。  すでに見られたように、今後多額の武器調達が予定されており、わが国の大企業は兵器産業のための新規投資を予定していると伝えています。たとえば昨年八月二十日の日本経済新聞は、富士重工は垂直離着陸戦闘機の開発を行う方針とか、同日の朝日新聞は、日立製作所が防衛技術推進本部を設けて防衛産業分野の充実を図ると伝えております。砂糖に群がるアリのように、大企業の軍事産業への傾斜が始まっております。加えて、通産大臣の諮問機関であり、影響力の大きい産業構造審議会は、飛行機など兵器産業を八〇年代の先導産業として育成の方針を明らかにしておるのであります。  そこで、政府は兵器産業の育成を図るおつもりなのかどうか。政府金融機関の融資や租税特別措置による公的援助は行うべきではないと考えます。武器輸出禁止とともに憲法立場から見て当然であります。私は、この場で明確なお約束をいただきたいと思うが、いかがですか。
  312. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  私どもは、ただいま与野党でこの武器輸出の問題は協議中でございますので、できるだけ発言は避けたいとは思いますが、阿部先生のお尋ねでございますからお答え申し上げます。  私どもは、武器輸出原則政府方針並びに今回の与野党の話し合い、そういうものを踏まえてあくまで武器輸出はやらない、それからその他につきましても、そういう方針でこれからやっていこうというふうに考えております。
  313. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 通産大臣、よく私の質問を聞いてないみたいですね。輸出の問題じゃない。武器輸出がいかぬと同じように、兵器産業に特別措置あるいは特別な金融という形の援助は行うべきでないと思うかどうか、こういう質問をしておるのです。
  314. 田中六助

    田中(六)国務大臣 阿部先生の御意見のとおりに、そう思います。
  315. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大蔵省は財政再建を理由に、たとえば、先ほど申し上げたように、社会保障関係費には所得制限、独立採算制、食管制度には減反の強制と生産者米価の抑制、消費者米価の値上げというように、国民負担の増加による財政負担膨張の歯どめを制度、政策の両面からかけようとしております。その教科書とも言うべき財政制度審議会の建議と報告は、軍事費についてはほとんど触れられておりません。報告には、一言の話も言葉もございません。わずかに建議で、各種施策とバランスを考慮して決定せよと抽象的に述べておるだけであります。これは大蔵大臣の財政審の報告と建議です。これを見たって、報告には一言半句も触れておりません。ところが、国民の大事な問題については、政策と制度両面からこれは締めておるわけです。  私はそういう点で、大蔵大臣は財政審に諮問するに当たって、財政の膨張に歯どめをかける方針だったのか、それとも軍事費は野放しにする方針だったのかどうなのか、疑問を持たざるを得ないのですが、大蔵大臣から御答弁願いたい。
  316. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 防衛費について、これを野放しにするなんという考えはもちろんございませんで、防衛庁から出された予算要求に対しまして厳正に査定をして、先ほど言ったように必要最小限度のものを承認したというだけのことでございます。
  317. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その防衛費の細かいことについては、もう少し後でお伺いをいたします。  首相も御承知のように、歴史を忘れる民族は滅ぶと申しますが、私もそう思います。われわれは、満州事変、日中戦争、太平洋戦争、そして破局という昭和の歴史を忘却してはならぬと思います。昭和史前半の戦争の歴史は、財政の面から見れば軍事費の絶え間ない膨張でありました。  その原因について、大蔵省の大先輩であり自民党の長老であった賀屋興宣氏は、朝日のカルチャーセンターでの講演でこう言っておられます。「文民統制がなかったこと、そして軍備拡張などがあると、企業などには利益がふえるものが出る、もうかるものが出る。会社には都合がいいし、軍備拡張論についていけという追随論者というものがたくさん出てきます。世の中というものはいつでもそうで、どんなよくないことでも勢いがいいと追随者が出る。」「どんなよくないことでも勢いがいいと追随者が出る。」うまいことを言っております。「そういうような状態で軍部横暴、戦争熱というものはどんどん進んでまいりまして、昭和十五年にはいわゆる政党解消、いままでの政党はみんな自分で解消してしまったのです」と説明をされております。この歴史がいま繰り返されつつあるのではありませんか。  日向関西経済連会長が徴兵制を主張したり、竹田統幕議長が、つい先日ここで問題になりましたけれども、文民統制を全く無視してわが国の防衛費をGNPの三%、すなわち米国に次ぐ軍事大国にしようなどという発言はそのあらわれであります。  首相、このような現実を前にしてどのようにして文民統制をお守りになるつもりなのか、また、軍事費の膨張に歯どめをかけるおつもりなのか、がけないのか、総理から具体的にお伺いしたいと思います。
  318. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、国民の大多数は、平和憲法のもとに日本があくまで平和国家としてやっていかなければならない、こういう国民的なかたい決意がある、こう思っておるのでございます。そして一番大事なことは、阿部さんも先ほど来御指摘になっておりますが、やはり国会が国政の最高機関でございます。国会がしっかりしておれば、一部の者があれこれ言いましても、私は、わが国平和国家としての政治の方向というものは絶対に心配はない。お互いにがんばりましょう。
  319. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大変いい御答弁をいただきましたが、それならば、本当にそれをお互いにがんばるために、もう少しお伺いをしてまいりたいと思います。  軍事費の膨張というのは本当に恐ろしいものだと私は思うのであります。企業の利益、軍人の地位、そうして産政官合同と言われる汚職の構造までついてくる。このようなたかりの構造がますます大きくなる。財政の歴史を見て、軍事費をふやして財政再建に成功した国は皆無だと私は思うのであります。もしあったらお教えをいただきたいのであります。  軍事費の、たかりの構造による絶え間ない増加を防ぐには、なまはんかな決意ではできないと思います。ある意味では命がけだと思います。そのために濱口雄幸、井上準之助、高橋是清さんが命を奪われました。しかし、それでも軍事費の膨張を防ぐことができませんでした。そうして財政破綻、日本の破滅まで、とどまるところを知らなかったのです。  個人と行政の力には限りがある。軍事費の膨張を防ぐには、一つは人事の問題もありましょう。しかし、大きな面として金の面でこれを防ぐ制度が必要であると思いますが、いかがですか。
  320. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 旧憲法と現在の憲法とは、まるっきり国会の重みが違うわけです。まして国会において、こういうような軍事予算でも何でも一切審議の対象になっておって、まるで国民から離れたようなことを決めたら落選しちゃうわけですから、それはやはり国民意思を無視したようなことはできるはずがない。私は、国会はもっと自信を持っていい、そう思っています。
  321. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大蔵省編さんの「昭和財政史」はこう言っておる。昭和前半の財政は「戦後の大激動とそれに対する新しい財政に対しては序説であった。」しかし「序説としてはあまりにも長い歴史であり、あまりにも犠牲と怨恨にみちた悲劇であった。」とこう結んでおります。  この犠牲と怨恨の歴史を繰り返さないために、憲法は、冒頭に述べた国民財政主義、国会中心主義を定めると同時に、制度的保障として、財政法四条は赤字公債発行の禁止、第五条で日銀引き受けの禁止、第六条で減債基金制度を定め、健全財政主義の立場を明定しております。まことに明快な定めであります。  当時、財政法の企画、立案に当たった平井平治氏は、著書「財政法逐条解説」の中でこう述べております。これは非常にいい、大事なところですから、ちょっと聞いてください。「第四条は健全財政を堅持して行くと同時に、財政を通じて、戦争危険の防止を狙いとしている規定である。財政が総ての国策の根本であり、健全なる国策遂行の要請は常に財政を健全に維持して行くことにある。而して、健全財政というのは、収支の均衡を得ていることが原則である。即ち赤字公債がないということである。」そして次に、「戦争危険の防止については、戦争と公債が如何に密接不離の関係にあるかは、各国の歴史をひもとくまでもなく、我が国の歴史を観ても公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明かである。提言すれば、公債のないところに戦争はないと断言し得るのである。従って本条は又憲法戦争放棄の規定を裏書保証ぜんとするものであるともいい得る。」こう述べておる。  この解釈、私も全く同感であります。総理の御感想をひとつ――これは総理だろうさ、一番大事な基本だからのう。
  322. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 一応財政の責任者でございますから……。  私は、やはりそれも一理ある話であって、だからこそ財政法を戦後新しくつくって、厳重にそれは国会の審議で、赤字国債は毎年毎年やっておるわけです。ですから、一年も早く赤字国債から脱却しないと危ないから、脱却をするということに努力をしておるわけであります。
  323. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大蔵大臣の御答弁はいただけません。この財政法の趣旨からすれば、防衛費は今日、赤字公債発行のもとでは縮小すべきものであって、私は膨張さすべきものではないと考えます。皆さんが赤字公債のもとで軍事費を増加、膨張させる、いつ、どのような理由でそう変えたのか、私はわからない。もう一遍、大臣からお答え願いたい。
  324. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 赤字国債下で防衛費を増額するな、それも一つの貴重な御意見だと私は思います。しかしながら、われわれといたしましては、国の安全保障というような高度の立場からして、現在の自衛隊の施設、設備それから艦船とかなんか、そういうようなものが非常に陳腐化をしてきておるというようなこともあって、そのことが非常に国防上困る問題であるというようにわれわれも認識をいたしまして、必要最小限度のものを計上した、そういうことであります。
  325. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは皆さんは皆さんの主観でそういうあれをするけれども、私は、憲法、財政法の精神を踏まえて軍事費の膨張に歯どめをかけるべきだ、こう言っておるのです。武装集団というのは、何としてもこれは大きくなりがちなものであります。それだけに武装集団に対してどこで一体歯どめをかけるのか、これは大変重要な、先ほど申し上げたようにむずかしい問題であります。そういう点で私は、憲法、財政法、この財政権の最高機関であり、唯一の議決機関である国会の場で審議を尽くし、国民の判断を仰ぐ以外、本当のシビリアンコントロールというものは成り立たないのではないか、こう考えるわけであります。ことに私は、予算審議という、ここは単に財政的な見地だけでなく、国政全般にわたって批判検討のできる本予算委員会こそシビリアンコントロールのその中心的な場である、こう考え、このことは政府の皆さんも、同僚の議員さんも御同意がいただける問題だろうと私は思うのであります。  そこで、福祉を削り、教育費を削減し、増税と公共料金引き上げを行ない、赤字公債発行下に、なおかつ軍事費、正面装備費を急増させる理由は一体何なのか。皆さんは最小限度とうのこうのおっしゃるけれども、これは財政法の立場からいき、憲法立場からいって私にはわからない、恐らく国民にはわからないだろうと思うのであります。  われわれは国防方針と防衛大綱は知っております。しかし、先ほど来、この国会でたびたび問題になっております中期業務見積もりというのは一体どんなものか、これが一体何なのか、国防方針と防衛計画、そうして中業見積もりとの結びつきは一体どうなのか、これはわれわれにはさっぱりわからない。数字だけ見せられてそれにいいか悪いかということでは、私は国民に対する国会の責務は果たしていないと思います。なぜ中業見積もりの前倒しが必要なのか。中業見積もりにはなかったと言われるC130がどうして必要になったのか、その理由は全くわからない。根拠のない数字のみを見てここで賛成反対を言うことは、国民に対して文民統制とは言えないと思うのであります。そういう点で皆さんは、中業見積もりというこの内部資料と日米安保という超法規的な聖域に隠れて、詳しい内容は国会に示さずに防衛費に賛成をしろとおっしゃっても、それは無理であります。  まず、われわれに審議の素材を提供して、そうしてやるべきであります。軍事費に対する議会の態度は、議会制民主主義の試金石であります。それなしにここで防衛費の審議をわれわれにしろと言っても、われわれに盲判を押せということにほかならぬのであります。私はこれは承知ができません。その資料をまず提出を要求します。
  326. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  まず、財政再建下における防衛力整備の基本方針はどうかという趣旨お尋ねがございましたので、その点お答えいたします。  わが国は現在、昭和五十一年に策定した「防衛計画の大綱」に従いまして防衛力整備を進めているのでありますが、現在の防衛力は同大綱の定める水準にも達しておらず、また、装備の老朽化、即応態勢の不備、抗堪性、継戦能力の不足等、種種の問題点があるところであります。一方、最近の国際情勢は厳しさを増しつつあり、したがいまして、防衛力の現状における不備等を是正し、平時における基盤的なものとして、いわば最低額の防衛力とも言うべき「防衛計画の大綱」に定める防衛力をなるべく速やかに達成する必要があると考えております。  このため、防衛庁といたしましては、五十六年度の防衛関係予算の編成に当たりましては、国の他の施策との調和を図るとともに、財政再建下という現下の厳しい財政事情も勘案しながら、防衛力の強化のため、できる限りの努力を行っているところでございます。  また、資料を出せという趣旨お尋ねがございました。防衛庁といたしまして、これまでもできる限りお求めのありました場合に提出しているわけでございますが、いま具体的にどういう資料というお話がございませんでしたので、一般的な……(阿部(助)委員「中期業務見積もりは」と呼ぶ)中期業務見積もりでございますか。これはたびたびお出ししておるわけでございますが、必要であれば、またお出しいたします。  また、なぜC130を予算に計上したかというお尋ねであります。これは輸送力の強化のためでございます。現在の中期業務見積もりは、いま申し上げました「防衛計画の大綱」の枠内で五十四年に防衛庁が部内の資料として決定したものでございまして、五十五年から五十九年度の装備の見積もりを内容としたものであります。いままでも資料を提示しておるわけでございますが、重ねて御要求がございましたので、その点につきましては提出するようにいたします。
  327. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたは中期業務見積もりを出していると言うけれども、出していないでしょう。要綱やら何かは出しているけれども、詳細は出していない。なぜこの大綱から、戦車が何ぼ要るんだとか何だとか、一体どうしてここから出てくるのです。編成はわかりますよ、この編成は。これはわかりますよ。ここからなぜそういういろいろな正面装備品が必要なのかというものが、われわれには一つも示されない。それで一体審議ができますか。防衛大綱からは、いまの予算に示されておる正面装備の問題は何もつながりがないのですよ。われわれにそれで審議しろと言うのですか。盲判を押せというのでは、われわれは承知できません。
  328. 塩田章

    ○塩田政府委員 中期業務見積もりにつきましては、五十四年の七月にできましたときに中期業務見積もりについてという概要を公表いたしまして、五十五年の五月に付属資料を公表いたしたところでございます。中のいろいろな飛行機でありますとか戦車でありますとか、そういったものの必要性といったようなことについての資料要求等でございますれば、それに応じまして提出させていただきたいと思います。
  329. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 業務見積もりを全部出しているのですか。
  330. 塩田章

    ○塩田政府委員 中期業務見積もりの中身につきましては、かねてからお答え申し上げておりますように公表を差し控えさせていただいておりますが、中期業務見積もりについてという要旨を公表させていただいております。それから五十五年の五月には付属資料を公表させていただいた、こういうことでございます。
  331. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はそれで一番冒頭に、国会が最高議決機関である、憲法の八十三条が規定し、そうして国民が国会にそれを負託しておる。そういうことをくどく念押しをしたつもりであります。にもかかわらず、アメリカとの話の中ではいろいろ出てきておるようであります。アメリカの方には出せるけれども国民の前に出せないということは、一体どういうことなんですか。それで出しておるかのように言うけれども、要旨であったり何かであったり、どこがどう抜けているのか、われわれにはわからない。これだけの国民の血税を使うには、やはりそれなりの条件、バックグラウンドがあると私は思う。たとえば橋であれば、この橋をつければ交通がどう緩和するかというようなことは大体見当がつく。しかし、戦車はどれだけやって一体どうなるのか、本土決戦をやったら一体国民はどうなるのか、さっぱりわからない。そういうものが出てこなければ、この予算書に出ておる数字だけで、われわれがこれが正当であるとかという判断を下す素材としてはまことに貧弱であります。われわれは国民の負託にこたえるわけにはまいりません。それをちゃんと出してから審議してください。
  332. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  現在の中期業務見積もりは、五十四年の半ばごろに防衛庁の訓令に基づいて決定されたものでございます。その直後にアウトラインを公表いたしております。また、その後渡米しました当時の山下防衛庁長官が、公表しました範囲でアメリカ側との協議で説明いたしたものでございます。また、そのアウトラインの中におきましては、先ほどお尋ねになりました飛行機とか戦車とか、そういった主要装備品についての整備目標は一々具体的に挙がっているわけでございます。それを提出せよというお話でございましたならばさらに提出して御参考に資したい、さように考えている次第でございます。
  333. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 防衛庁長官、資料提出はいいんですね。
  334. 大村襄治

    ○大村国務大臣 いま申し上げました主要装備品の資料につきましては提出いたします。
  335. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そんなものではだめなんです。出すならみんな出さなければいかぬですよ。国会が最高の議決機関だということを皆さん確認したんでしょう。シビリアンコントロールの一番もとは国民であり、この議会なんですよ。それに隠しておいてアメリカさんにはみんな話しておいて、一体、何なんです。国会をつんぼさじきにするつもりですか。みんな出しなさい。だめですよ。審議できない。
  336. 大村襄治

    ○大村国務大臣 防衛の問題につきましては、お説のとおり、国会の議論を通じ一般に広く理解を得ることは最も重要なことであると考えておりまして、従来から、秘密の事項を除き、国会における議論に必要な資料は極力提出してまいったところであります。  防衛庁としましては、今後とも、秘密にわならない範囲で説明ないし資料の提出を行い、積極的に協力してまいる所存でございますので、国会における議論において十分な御理解をいただけるものと考えておる次第でございます。
  337. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういう秘密のものがある。しかし、アメリカの方には話をしておる。これは国民は納得しないですよ。昔は天皇大権、天皇統帥権、そういうことで、総理大臣といえども口出しができなかった。そういう中で軍部は横暴になっていき、あのような間違った戦争をやった。いままた同じように、秘密でございます、皆さんには出せません、安保集約でございますと言うならば、安保大権ということになってしまう。天皇大権から、今度は安保大権だからこれは審議ができないとなったら、一体、国会は何なんです。国会は最高議決機関だと、先ほどからくどく私は念押しをしておるでしょう。それを否定されるんですか。どうなんですか、総理防衛庁長官が何遍同じことを言ったってだめです。私は総理の御答弁をいただきます。
  338. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来防衛庁長官が申し上げておりますように、いままで国会からいろいろ御要請がございました資料につきましては、防衛機密に触れない範囲内でという防衛上の事情があるわけでございますけれども、できるだけ資料を提出をして御審議をいただいておる、こういうことでございます。  また、アメリカには知らしておるじゃないかという阿部さんの御指摘でございますが、皆さんに公表申し上げた範囲内でアメリカ側とも連絡をしておる、このように私は承知しております。
  339. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どういう秘密があるのかわかりませんけれども、そういうことをおっしゃっておると、先ほど来申し上げたように、防衛費については議会は盲判を押せ、こういうことになるんじゃないですか。われわれは一体何を根拠に防衛費の問題の論議をすることができるのです。私は、中期業務見積もりは全部出す。ある意味ではある程度のバックグラウンドも考えなければならない。防衛の問題というのはそういうものだと私は思うのです。それがあって戦車が必要だ何が必要だ、こうなってくる問題だと私は思うのです。そこのところは全然出さずに、数字だけここで論議する場じゃないのです。国会が最高の議決機関、シビリアンコントロールのもとだと言った。皆さんはシビリアンコントロールだ、自分たちで予算を決めたとおっしゃるけれども、現実は一つも国民は納得をしないわけであります。  トルーマン大統領は、方針を違えたと言ってマッカーサー元帥を首にした。この前のカーター大統領は、韓国におる司令官が韓国からの撤兵に反対をした、それで呼びつけて七十何時間でこれをやめさせた。こういうことが皆さんにできないじゃないですか。だれが考えたって、シビリアンコントロールなんてこれは空念仏だと国民は見ておる。せめて国会がこの防衛費の問題、そういう問題で十分な審議をすることなしに、シビリアンコントロールが達成できるはずがございません。私は、その資料が出るまでは、防衛費の問題を審議するわけにはまいりません。
  340. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 阿部助哉君に申し上げます。  資料はいま防衛庁で準備しておるようですから、続いてほかの問題について御議論願います。(「何を準備しているんだ」と呼ぶ者あり)提出の準備をしております。続いて御発言をお願いいたします。
  341. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは出さないと言っているのですよ。
  342. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 いや、必要なものは全部出すと言っております。
  343. 大村襄治

    ○大村国務大臣 出せるだけ出しますから。
  344. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 出せるだけじゃ困るんだ。何を出すんだ、一体。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  345. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  中期業務見積もり全体を出せという御要求のようでございますが、中期業務見積もりは、大まかに申し上げまして二つの部分からできているわけです。第一は能力見積もりでございまして、これは事柄の性質上最も重要な機密事項でございますので、この部分は提出することはできないわけでございます。もう一つの事業見積もりの方、これも全体としては秘でございますが、ただいま御質問のありましたような装備品の方につきましては、これまでもできるだけ具体的にわかりやすいように資料にして提出しているわけでございまして、その点につきましてさらに……(「いままで出しているのは要旨じゃないか」と呼ぶ者あり)要旨の中で、いまの事業見積もりの中の特にお尋ねのありました主要装備品の数量とか、そういったものの進め方につきましては、数十項目にわたって詳しく提出しているわけでございます。さらに提出せよということであれば直ちに提出して審議の御参考にしたい、そういうことを申し上げているわけでございます。なお、その点につきまして一層努力するということをお答え申し上げるわけでございます。
  346. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は本当を言いますと、本心は、こういう平和憲法のもとでわが党は非武装中立ということを言っておる、そういう点で、防衛費の論議そのものが腹の中では気に食わないのです。しかし、現実はある。しかもそれが、こうやって赤字公債発行のもとですらどんどん増大している。一体どこで歯どめをかけるのだ、せめてそれは健全財政というものが私は一つの歯どめだと思うのです。どうしても防衛費をふやそうとすれば国民の増税になってくる、国民はそれに対してある程度の批判をするのは当然だ、そういうところからシビリアンコントロールというものが成り立つのだ、こう私は思っておる。だからこそ私は、冒頭から時間をかけて、憲法と財政法の問題を念押しをしてきたわけであります。それがいまのように、一番肝心のところは出せません、数字だけは賛成してくださいと言われてみたって、これではシビリアンコントロールは成り立たぬ。私は、この一点だけでもいいから皆さんにもう少し、シビリアンコントロールと言うならばお考えをいただきたいということで、この問題は少し残します。  それで、次の問題に移ります。  私は、予算編成のあり方について政府見解を承りたい。  憲法、財政法が国会中心主義をとっておる、その中で予算の編成権、予算の提案権、これだけは政府に預けてある。私は時間がないから急ぎますが、これは一つは便利だということだと思うのであります。いろいろ複雑な、広範なこの社会現象をとらえてやるためには、整合性を持った予算をつくるには政府の方が便利である、また、これに責任を持たせるということだろうと思うのですが、大臣、どうですか。
  347. 松下康雄

    ○松下政府委員 政府におきまして予算の編成を準備いたしまして国会の御審議を受ける、このやり方が一番現実に適しておるということであると存じております。
  348. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 予算の性格でありますけれども、これは単なる見積書とは性格を異にし、歳入歳出の予定準則であります。法規範の性格を持つと言われております。私は、この考えに大臣は異存ないと思うのですが、いかがですか。
  349. 松下康雄

    ○松下政府委員 御承知のように、予算に歳出と歳入と両面がございます。歳入につきましては別でございますが、歳出につきましてはただいまの御指摘のとおりでございます。
  350. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大体同じようなことでありますが、そうすると、予算の性格から考えて、歳入歳出の見積もりはできるだけ正確であり、良心的であらねばならない、こう考えますが、いいですね。
  351. 松下康雄

    ○松下政府委員 そのとおりと考えております。
  352. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 歳入歳出の見積もりは、いわゆる評価正確の原則に従ってできる限り正確、的実になされなければならないと、制定当時のいろいろな学者は言っておるわけであります。予備費の支出及び補正予算について厳しい制限を付しておるのはその趣旨であります。歳入歳出の見積もりが良心的にかつ正確、的実に行われなければならない、いいかげんな政治的な見積もりをしてはいけないということでは、政府と私の意見は大体一致しておるところであります。  そこで具体的にお伺いしますが、五十六年度予算には公務員の給与改善費が一%しか組まれていない。これは一体どのような良心的な、かつ正確な見積もりなのか、お教え願いたい。
  353. 松下康雄

    ○松下政府委員 給与の改善につきましては、御承知のとおり人事院勧告を待ちまして、その後の財政事情、経済事情等を勘案して決定をいたすことになりますけれども、現在の段階ではその内容もわかっておりません。そこで、給与改善自体につきましての必要性は過去の推移等から見てはっきりいたしておりますので、そういう給与改善を行います場合の一応の財源の手当てといたしまして所要財源額の一部を計上することが、昭和四十四年度であったかと記憶いたしますが、それ以来行っているところでございます。
  354. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、その辺が私はおかしいと思うのです。五十三年度には五%、五十四年度には二・五%、そうして今年度は二%、五十六年度には一%だ。五十四年度は、二・五%の予算、千四百十六億円組んだけれども、二百三十二億円補正で直す。五十五年度は千百九十四億円組んだが、千二百十三億円補正をした。今度は一%。わからないなら組まない方が本当ですよ。わからないなら組まないのがいいんだ。  しかし、私はここでどうもわからぬのは、現在の公務員法の定めでは、国家公務員法の第六十四条で給与表は生計費と民間給与等を基準に定めることになっておる。相当以前から民間準拠によって定められておる。そうすれば大体大見当をつけて、できるだけ見当をつけるぐらいのことが大蔵省の頭脳でできないはずがない。それを一%というのはどういう考えなのか、私はさっぱりわからない。わからないから、まあ一%だけでもいいから組んだんだというお話だけれども、わかりません。  そこで、それなら私はもう一つ聞きますが、民間賃金の見通しが立たないということであれば、政府の経済見通しはどうなんですか。経済企画庁は経済見通しの中で、大体七・五%給与が上がる、それによって民間購買力はどうなるんだ、そこで来年度の成長率がどうだという計算をしておるじゃないですか。七・五%を組んでおる。そうすると、この経済見通しと予算との間には何らの因果関係はない、こう大臣はおっしゃるのですか。
  355. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 経済見通しは経済見通しであります。予算に公務員のベースアップを入れるかどうかという議論がありまして、先生の御指摘のように、入れなくたっていいじゃないかという議論も実はあるのです。あるのでありますが、これは一方、いままで長い間人事院勧告というものを政府は尊重してきた、そういうようなことでずっと計上してきているいままでの現実があるから、そういうものを入れなくてもいいという議論もございますけれども、やはりこの際は、私としてはできるだけ入れておいた方がいいのではないかということで、一%か三%か、幾らにするかという問題等いろいろあったのでございますけれども、いろいろな財政事情等にもかんがみ、ともかく一%を入れておくということにしたわけであります。
  356. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は先ほど来言ったように、できるだけ正確にやるようにということです。あなたは経済見通しと予算編成とは全然関係がないようなことをおっしゃるけれども、関係がないならないとおっしゃってください。経済見通しと予算編成とが関係がないなんて言ったら大変なことになりますよ。関係があるでしょう。そうすれば、一応経済見通しを七・五%とすれば、予算でも七・五%にするのはあたりまえなんです。大体、初めから補正予算を前提にして予算を組むということは、先ほど来申し上げる財政民主主義という点から問題があります。  もっと言いたいのは、皆さんは、来年度予算は二十二年ぶりとかで伸び率を一けたにすると言う。金がないのです、だから増税はしようがないのだ、調整減税はいたしませんという言いわけをするたびに、どうも最近の大蔵省は、先ほどほかの党の人たちも指摘したように、中期財政見通しにしても、あの悪名高いゼロリストにしてみても、どれから見ても少し故意の宣伝が多過ぎて、国民を信頼して、国民に真実を伝えてこの予算を国民と上もにやるという姿勢がなくなったのではないか。私は、この大蔵省の姿勢そのものに大きな疑問を抱かざるを得ないのでありまして、こういう予算の編成の仕方は、もうこの問題は余り追及しませんけれども、もう少し大蔵省は考えを改めて、財政法、憲法、そして国会中心、国民のための予算を編成するというのが当然の義務だと私は考えますが、その点だけお答えいただいて、次に移ります。
  357. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私としては、いまの御指摘のような趣旨をできるだけ尊重してつくったつもりであります。
  358. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ増税を前提にする中期計画だとかゼロリストなんというまやかしものは、余り出さない方がいいですよ。  昨年春以降、政府国民に、物価問題ではうそをつき通してまいりました。五十五年度の消費者物価の上昇見通しは当初六・四%であったが、この四月以降、七・七%を下回った月は一カ月もない。この結果、勤労者の家計は赤字続きであります。政府は、春になれば、夏になれば何とか物価は鎮静するだろう、そして夏になればなったでまた、秋になると何とかなるかのような期待を持たせる。今度はどうだと言えば、来春にはどうだ、いよいよだめになってこれを直していくと、やあ野菜が商うなりましたと言う。そんなのは初めからいろいろな条件があるのです。だけれども、物価の上昇によって被害を受け、実質生活がダウンをしている勤労者の立場は現実なんです。  この物価見通しの狂いについて、一体政府はどのような責任をお持ちになろうとするのか。これは河本さんですか。
  359. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしの消費者物価見通し作成の経過等はいまお話しのとおりでございますが、一番大きくことしの消費者物価に影響いたしましたものは、石油価格の動向、公共料金の引き上げ、それと野菜を中心とする生鮮食料品、この三つであったと思います。公共料金の方は、年初から想定したとおり約二%物価を上昇させておりますが、石油の価格につきましては、九月に戦争が起こりまして予想外の急上昇になりました。これは一つ大きな予想外の出来事であったと思います。それから異常気象による生鮮食料品の急上昇、この二点が見通しの狂った大きな背景であったということについて御理解をしていただきたいと思います。
  360. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いろいろな問題が起きてこうなったとおっしゃるけれども、それなら五十五年度の物価上昇率は何%になるのか、ひとつ具体的にお答えを願いたい。
  361. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般、物価の見通しを改定をいたしまして七%程度ということにいたしましたが、現在のところは、その目標にできるだけ近づけるように二月、三月、年度末まであらゆる努力を継続をしたい、このように考えております。
  362. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、私は程度では困るのです。国民の方は程度と言われたって困るのでして、この勤労者の家計が前年度に比べて低下させられた政治責任は大変重いと私は思うのです。それに対してどうしようということがない。中東で問題が起きました、大雪で野菜が上がりました、だからしようがないのです――それによって勤労者の家計が実質的に低下するなんというのは、二十二年ぶりですか、労働省が統計をとって初めてだという。これではその政治責任がどこにあるのか、これはやはり考えてもらわにゃいかぬと私は思うのです。その責任はどういうふうにしておとりになろうとするのですか。調整減税をやる以外にないじゃないですか、どうなんです。
  363. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 調整減税の話はこの委員会においても再々取り上げられまして、御主張は御主張としてわかることもあるわけですが、われわれとしては、今回の所得税問題というのは、税金を払わない人もいるわけですから、減税をやるほどの財政状況ではないし、課税最低限については日本は他の先進国と比べて遜色がない。(阿部(助)委員「もう聞きあきた」と呼ぶ)聞きあきるほど私も何回も言っておるわけであって、したがって、今回は御容赦をいただきたいということを申し上げておる次第であります。
  364. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、最近の景気の動向を見てまいりましても、十二月の住宅着工件数が十万件を割り、一月の倒産は千三百件を超えた。一月としては史上最高であります。この数字は、景気の落ち込みが政府の予想以上に深い、これを物語っておると思うのであります。また、在庫調整を見ても、四-六月までかかると河本さん自身が大体お認めになった。私は、このような景気の落ち込みの最大の原因が個人消費の落ち込みにあると考えるが、政府見解をお伺いしたい。  また、新聞の伝えるとこるでは、九日に政府自民党首脳会議で経済対策閣僚会議を開いて本格的な措置を講ずる方針というが、どのような景気対策をお立てになるつもりか。私は、その中で当然、中心的な政策として個人消費を回復させる具体的な施策、それがあるものと信じますが、どうなのか、その内容を少しお聞かせ願いたい。
  365. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経済の見通しと分析をせられましたが、その点につきましては同意見でございます。そういう経済の状態でございますし、それから、二月末から三月初めにかけまして政府関係のいろいろな経済指標が出てまいりますので、その時点における経済指標を分析いたしまして、どのようなことをやるべきかということについて、その時点で関係各省の間で相談をすることになっております。
  366. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 幾たびか幾たびか物価調整減税の話が出る、皆さんの方も耳にたこができるほど聞いた、われわれの方もまた政府から聞くのは、外国の課税最低限に比べて日本の課税最低限は低くないのだから、財政難の折からごしんぼう願いたいという、これ一点張りであります。本当に財源がないんだろうか。私はどうもその辺で疑問を持つ。たとえば五十六年度予算は明らかに補正を前提としております。そのための隠し財源があるわけであります。給料だってそうなんだ。初めから隠し財源があるんです。  そこで、具体的にお伺いしますが、昭和五十五年度の名目成長率は八%であったのに対して、自然増収額は当初予算との比較で四兆九千二百四十億円、二一%で弾性値は二・七となります。ところが、五十六年度予算で見ると、自然増収額は四兆四千九百億円、一七%で弾性値は一・八に低下するのであります。名目成長率が八%から九・一%に上昇しているにもかかわらず、弾性値が低下することはまことに不思議と言うほかはないのであります。名目成長率が上がれば弾性値も上がり、自然増収の割合も増加するのが当然であります。政府の経済見通しに誤りがあるのか、税収見積もりが作為的なのかわからない。これはどういうことなのか、御答弁願いたい。
  367. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 ただいま五十五年度の自然増収を四兆九千億とお話がございましたが、実はその中には三千二百六十億円増税額が入っておりますので、五十四年度の当初予算に対する五十五年度の増税前の税収の伸びは四兆五千九百八十億円でございます。それがいわゆる五十五年度の自然増収四兆六千億ということでございますが、これを少し分析をいたしますと、五十四年度内に実は相当の補正をいたしました。一兆九千九十億円補正をいたしたわけでございます。その金額は四兆六千億の中に入っておりますので、五十四年度の実績見込みに対して五十五年度の税収の伸びた金額というのは、実は二兆七千億であったわけでございます。  五十六年度、今回御審議をお願いいたしております税収につきましては、四兆四千九百億円の自然増収を見積もっておりますが、これは五十五年度の年度内に七千三百四十億円増収が発生する見込みでございますので、それを五十五年度、過般成立をいたしました補正予算の税収に追加計上をいたしました。したがいまして、三兆八千億が正味の五十六年度の経済に伴います増収でございまして、七千億は前年度からのげたということになるわけでございます。  両年度の実績見込みの成長率、または見込みの成長率によって弾性値をはじきますと一・五一と、両年度とも、たまたま同じ数字になるわけでございます力
  368. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは皆さんの方は皆さんの方でそういう挙げ方をするようでありますけれども、大体、この成長率が上がって弾性値は低く見る、私はどうもこれは納得ができないのであります。今度の鈴木内閣の経済政策は、余りにも大企業のみを考え、勤労国民に犠牲を強いる政策である。そこで私は、最近の日本経済の特徴について私の見解を述べ、皆さんの見解を承りたいと思うのであります。  日本経済は、第一次石油危機、第二次石油危機を巧みに切り抜け、きわめて強大になったと言われております。しかし、強大になったのは大企業であって、勤労国民ではありません。現在、大企業は史上最高の利益で三年連続二けたの増加を示し、また、巨大な蓄積に成功した。この主な理由は、第一に、政府が大量の国債を発行して過剰生産を吸収し、製品価格の引き上げを許したこと、第二に、首切り、賃金抑制等の減量経営を企業は強行し、政府が手をかしたことである。この結果が、大企業の高利潤である一方、財政危機と消費不況をつくり出したと思うが、私は総理見解を承りたい。
  369. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 第一次石油危機からの経済の推移につきましては、私どもの表現と違う言葉をお使いになりましたけれども、大勢としては大体そういうことであろう、こう思います。  そして、第一次オイルショックの後の状態と、現在第二次石油危機の後の時点にあるわけでありますが、その違いは、第一次オイルショックの後はすべての産業が、大企業も中小企業も悪い影響を受けて大変困っておったわけでありますが、現在は、大企業はおおむねいいということでありますけれども、それは第一次オイルショックの後減量経営、合理化を徹底して進めたということ、したがいまして、現在のような経済情勢、つまり減量経営のもとにおきましても大きな利益を上げることができますし、自己資金を調達できますから、それだけの力を持っておりますから、企業の設備投資は非常に大きく進んでおります。しかし、中小企業の方は、それだけの合理化ができておりませんから、非常に悪い影響を受けまして、先ほど御指摘のような倒産も史上空前の状態が続いておる、こういうことでございまして、大企業の状態と中小企業の状態は際立って相違があるということが現在の特徴であろう、このように感じます。
  370. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大企業の高収益が続く中で、すべての世論調査は、国民生活が苦しくなったということを示しております。私は、皆さんに資料を差し上げたと思うのでありますが、これは厚生省の調査を私が数字をはじいたわけであります。生活が「大変苦しい」「やや苦しい」という数字が、五十四年の三九・三%から五十五年には四九・二%と一〇%増加しました。ことに低所得、第一・四分位の人たちは、五十四年五一・九%から五十五年には実に六四・三%となり、一三%も増加しております。  政府は、この不況をいかにして脱却し、国民生活の向上を図るつもりなのか、私は、いまこれが一番大きな問題だと思うのですが、政府のお答えを願いたいと思います。
  371. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま中小企業の状態が非常に悪いということを申し上げましたが、一つは、仕事の量が減っておるということであります。したがいまして、無理して当然赤字になるような仕事もある程度やらざるを得ない、ますます悪くなるということでありますから、仕事の量をふやすということが第一だと思います。  それから第二は、中小企業の経営悪化の一つの背景は、金利が非常に高いということだと思います。それは大企業は、先ほども申し上げましたように、社内留保もございますし、証券市場で自己資金を調達することも可能でありますけれども、中小企業は、何かやろうといたしますと、全部外部の資本に頼らなければなりませんが、それは現在の状態では非常に高い金利の金を借りなければならぬ、経営を非常に圧迫するということでございますから、この高い金利水準ということが経営を非常に圧迫をしておる、こういう感じがいたします。  以上が主だった原因でございますので、それをどの時点でどのような形で解決をしていくかということが当面の課題であろう、こう思います。
  372. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは私の田舎の町ですが、三万もの人口のある町で、十一月、十二月に新築の届け出が一つもないのです。問題は、勤労者の所得が低下しておる、そのために家のローンも払う力がないということで、住宅建設が大変に落ちておる。やはり実質賃金が低下しておるというところに私は一番大きな問題があるのじゃないかという感じがするわけです。  五十六年度予算案は、今年度に比べて五兆八千七百三十億円という大増税を、主として大衆課税によって実施しようとしております。その上に公共料金は、国、地方自治体がもう例を挙げれば切りがないほど、競い合うように大幅値上げをいたしております。社会保障も引き上げになる。  ところが、大企業は、法人税を二%引き上げて四二%にするとおっしゃるけれども、主税局の資料によって見ましても、税制主要参考資料、これを見てまいりましても、日本の法人税は決して高くはないのですね。アメリカは年十万ドルを超す企業は四六%、イギリスは年間十万ポンド以上の企業は五二%、西ドイツは五六%であります。一つも高くない。その上に、公定歩合を近いうちに引き下げるというのはもう常識のようであります。私は、これが〇・七五になるのか一%になるのかはわかりません。しかし、計算の都合上一%引き下げたとすると、大企業の金利負担減、これは大変に大きいわけであります。中小企業を云々されるけれども、大企業の方は法人税の増加分は十分に吸収し、そうして価格の値上げを容易にするに違いがないのであります。たとえて申し上げますと、三井物産の借入金は一兆八千六百六十億円、もし金利が一%下がると百八十六億、金利負担が減るのであります。そうすると、法人税を二%上げられてみても、九十億円もうかるのであります。大企業は三年連続大変な利益を上げておる。それに反して勤労者の方は実質所得が低下しておる。そういう中でこの公定歩合の引き下げは、この二%増税なんというものはもう優に吸収してしまうという例であります。これは一番大きな借入金を持っておる企業であります。  それに引きかえ、先ほど来申し上げるように、勤労者の実質賃金は低下をいたしております。その低下をしておる中でも低所得層の人ほど、増税と公共料金の引き上げによって生活が苦しくなっております。皆さんに資料を差し上げましたとおりであります。これは企画庁の資料であります。勤労者の家計収入は、五十年と五十四年を比べれば、収入は三八%伸びましたけれども、税と公共料金の負担、ここには間接税は入っておりません、それが六七・五%と、大体二倍近い急増になっております。大企業に比べて余りにも不公平であります。中でも最も収入の少ない人々は、五十年の負担割合一二・六五%から五十四年には一六・二〇%と、三・五五%も負担がふえ、最も所得の低い人たち、これが最も厳しく政府によって収奪されているのであります。  首相はこの実態に目をつぶってはならないと思うのであります。これを是正されようとする意図はないのか、くどいようだけれども、もう一遍、総理からお伺いをしたいと思います。
  373. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 物価の値上がりというものが実質的な所得の増加を、足を引っ張っておるということは、これは事実でございます。しかしながら、課税最低限をいまのものをつくった五十二年度と五十六年度というものを想定した場合には、わずかではございますが、可処分所得はまだ少し伸びておるというのも事実でございます。
  374. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 政府の方では、いろいろ手を加えて不公平税制を手直ししたとおっしゃるけれども、私は、まだ幾つかの租税特別措置、こういうものが温存されておると思います。先ほど来申し上げるように、勤労者の方は、増税という法案をつくらなくとも、名目賃金が上がればひとりでに増税になっていく。それに比べて企業の方は、高収益であるにかかわらず負担は軽過ぎると私は思うのです。たとえば経常利益対課税対象額というもののパーセンテージは、不況のときにその比率は高くて、好況になってくると、景気がいいとその比率は下がるのですね。これは大蔵大臣、どうしてかわかりますか。
  375. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 お配りをいただきました法人企業統計年報から経常利益に占める税金引当額の割合という計算をお示しをいただいたわけでございます。これで拝見しますと、確かに五十年あたりは七五・六七、経常利益に対する法人税引当金の割合は非常に高くなっておりますし、四十八年という非常に好況の時期には、それが四一・八七と下がっておるわけでございます。その原因に、経常利益以外の特別損益、つまり土地及び株式の売却損益、それから繰越欠損の償却等、好況の場合には繰越欠損の償却をいたします。また、引当金の積み入れ、積み戻し、こういうようなことでございます。  したがいまして、通常、法人の所得に対する法人税の負担という点から同じ五十年度と五十四年度をとって申し上げますと、私どもの方で全国の法人について毎年実施しております法人企業統計調査というので出しておりますが、法人の所得に対する税の負担割合でございますけれども、昭和五十年に三九%、それから五十四年に三九・四%というふうに、その点は多少ふえておりますが、ほとんど変わっておりません。
  376. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 局長、いろいろなことをおっしゃるけれども、一つはやはり特別措置であります。だから、利益がうんと出ると準備金だ、特別措置が機能してくる。だからこの比率が下がってくる。不景気のときよりは景気のときに比率が下がってくる月その上に特別措置の手直しをしたとおっしゃるけれども、私はまだ不十分だと思う。その上にこの高収益、そういう中で省エネ投資減税を新設されるのはどういうことなんです。これは大臣ですよ。
  377. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 この省エネの投資減税については、もともと不況産業業種等に対するものがあったわけです。それをとりやめまして、その中で、ともかくエネルギー問題というものは今後日本にとって非常に重要なものだから、その方を進めていく必要があるということでつくったものでございます。しかも、その大部分は中小企業向けということになっております。
  378. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 財源がないから、実質賃金が低下しておるにかかわらず、ごしんぼう願います、こう言ってきておる。それで、先ほど来言ったように、大企業の方は、公定歩合一%下げれば、それなりに法人税の引き上げ分ぐらいは吸収してしまう。その上にこの省エネの減税であります。余りにも大企業に偏り過ぎているんじゃないか。これはだれが見たって納得できない。その政治姿勢自体に一番大きな問題があると私は思うのです。大企業だけを見ておったんでは、政治が不信を買ってまいります。私は、先ほど来いろいろな前の例を挙げましたけれども、こういう政治そのものが、余りにも偏った政治が政治不信を呼び、そうして議会不信を国民の中につくり出し、そしてあの昔のように、二・二六事件のようなクーデターを許す温床をつくるわけであります。  いま私は、物価調整減税、不公平是正、少なくとも不公平是正はやるべきだと思うのであります。これは政治の手で勤労者の生活低下を防ぐこと、蔓延しつつある国民の政治不信をやわらげ、議会制民主主義を守りたいと考えるからであります。この意味で物価調整減税は、いままでの質問者だれでもが主張しておるとおりであります。いかに皆さんが、やれ外国との比較がどうだとかこうだとかおっしゃいましても、私はやはりこれはやるべきだと思うのであります。  私は、そういう点で昔のことを思い出すのであります。私たちにとってみれば、高橋是清さんという人は、名前を聞くと、公債削減のために軍事費の抑制を主張して軍隊に殺害された英雄のように思いがちであります。しかし、一月の大蔵省の「ファイナンス」で大森とく子さんが大変にすぐれた論文をお書きになっておりますが、中でも、なぜ二・二六事件が起きたのか、国民が反乱を起こした軍隊に同情の念を寄せたのかということに反省がなければならぬと思うのであります。  高橋蔵相の日銀買いオペによる赤字公債発行によって企業は潤いました。不況から立ち直りました。しかし国民は、今日なお語り伝えられるように――ことに鈴木総理は岩手の御出身であります。大変惨たんたる状態であったことは、身をもって御承知のとおりであります。国民生活の困窮であります。当時大蔵省の文書課長で後大蔵大臣になられた廣瀬豊作氏が、思い出の中でこう高橋さんを語っておるのであります。これは大蔵省の「大臣回顧録」であります。高橋是清さんは「主として俗に言う資本家、すなわち大銀行の理事者あるいは産業大会社の重役の言に耳を向けられて、中小企業者に対する保護助成の面、あるいは昨今強調されている低水準生活者の保護安定に関する施策等に対しては、ほとんど耳を傾け目を向けるというふうが無かったのではないか」こう述べておられるのであります。  いままさに私は、鈴木総理のこの予算案、政策を見てまいりますると、大企業の方には、公定歩合の引き下げあるいは投資減税、金がないと言いながら投資減税を新設してまで企業のめんどうを見る。その一方、皆さんの約束された物価、これは皆さんが約束された以上に物価は上がる、実質賃金は低下をする。そういう中で、消費不況という今日のこの中小企業の倒産が続く。こういうことこそが私は、政治不信、議会制民主主義の崩壊の温床をつくるものだと思うのであります。そういう点で、私は総理の御答弁をお願いしたいと思います。
  379. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いろいろ五十六年度予算案につきまして阿部さんから御批判がございました。私は、全体としてこういう厳しい財政事情の中ではございますけれども、バランスを十分配慮しながらこの予算を編成したつもりでございます。  投資減税のお話もございましたけれども、これは従来、中小企業を中心とする不況産業に対する減税措置があったわけでありますが、おおむねその枠内におきまして、今回は一番将来にわたって重要なエネルギーに対する投資減税に振り向けた。しかも、それは大部分が中小企業向けである。もう省エネとかいろいろな設備投資は大企業は一巡をしておりますが、これから行いますところのものは中小企業に大部分向けられる、こういう内容のものでございます。  全体として私は、阿部さんが御指摘のように一方に偏ったものでなしに、全体のバランスを考えながら編成をされたものである、このように考えております。
  380. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、これは大企業には投資減税はやらないですね。どこで線を引いてあるのです。
  381. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は、大部分が中小企業向けのものであるということを申し上げたわけであります。細かい委細の点については、政府委員をして答弁させます。
  382. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 省エネルギー、石油代替エネルギー、中小企業用の省エネルギー、それらの設備、それらに対する新しいエネルギー投資促進税制の対象の機械については、いま通産省と協議中でありますが、おおむね全体、特償と重複を含めまして、その減税額はグロスで八百億円と思っておりますが、その中で五百四十億円が中小企業向けというふうに考えております。
  383. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 やはりやるのは大体大企業なんですよ。一巡したなんと言うけれども、やはり省エネのあれは大企業の方へ向きますよ。だから、いずれにせよ、金がない金がないと言いながら、企業には手厚く減税措置をとっていく、そうしながら勤労者に対しては、依然として実質賃金の低下する中でこれを放置するなんということは、いままで各党それぞれが全部これぞと言って物価調整減税を主張する中で、政府は頑強にそれを拒み続けておるけれども、われわれとしては納得ができません。  防衛費の問題は、いずれまた私は質問することにして、きょうの質問を終わります。
  384. 小山長規

    小山委員長 これにて阿部君の質疑は、保留された問題を残して終了いたしました。  次回は、来る十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十二分散会