○大内
委員 武器問題は、これから与野党の間で十分煮詰めなければならぬ問題ですから、その辺を
政府も十分勉強していただかないと、この程度でつっかかっておりますと先が思いやられるわけでございます。ひとつ十分御検討いただきたいと思います。
外交問題についてお伺いをいたします。
最近は、防衛費の問題でいろいろ議論が行われました。私が非常に重要だと思いましたのは、この七・六%という防衛費が決定された直後、これは言うまでもなく昨年の十二月二十九日に閣議において決定されたわけでありますが、その明くる日の十二月三十日、
アメリカの国務省並びに国防省は異例とも思われるようなステートメントないしは
見解を発表しておられます。
まず、国務省はこういうふうに言っていますね。「
日本の防衛当局がかねて設定していた目標、あるいは先進
民主主義諸国間において相互安全保障の負担を公平に分担するとの要請のいずれに照らしても、今回の
日本の決定は、失望を与えるものと考えざるを得ない。」まず国務省が失望の
見解を表明されました。
しかし、私がもっと重要視しましたのは国防省、ブラウン
長官の
見解なんです。十二月三十日、ここではこう言っているのです。「われわれは、
日本政府が十二月二十九日に発表した予算
政府原案において防衛費の顕著な実質増を図っていないことに遺憾の意をもって留意せざるを得ない。」こう言いながら、次のところが非常に重要なんです。「十二月二十九日発表の予算
政府原案の防衛費増は、控え目にとどまり、現実とかけ離れた安閑とした
態度を示す感がある。」こういう言葉は、宮澤
長官もめったに英語で見ないと思うのですね。「右防衛費増は、安全保障上の
情勢、」次が重要なんですよ。「過去一年間にわたる
日米両国政府幹部間の話合い、あるいは公平な責任分担のいずれの見地から見ても、はなはだ不足している。」
私がこの二つの
見解ないしは
意見の表明というものが非常に重要だと思いますのはなぜかといいますと、この
アメリカの不満表明というのは、明らかに過去一年間の
日米両国政府の幹部間の話し合いとは違う、こういうことをはっきり言っているという点で実は非常に重要な
意味を持っていると思うのです。ある
新聞は、
日本政府高官の言質にだまされた――私は
アメリカの友人も実はたくさんおります。それらの人々はやはりそうした実感を持っている。私はなぜだろうと思って検討してみた。というのは、私は、政治家にとっても国家にとっても一番重要なことは、大きな約束も小さな約束もともに誠実に守る、これが一番大事なことだと思っている。もし
アメリカの国務省ないしは国防省のこうした異例の不満表明というものが
日本政府高官の言質によってもたらされたということになれば、
日米関係の信頼という面から見ても重要だという
意味で、私はこの問題を出したのです。
カーター大統領は、昨年の五月一日の
日米首脳会談でこう言ったのですね。「すでに
日本政府内にある計画を早めに達成するよう努力してほしい。」そして、これに対して大平
総理は、真剣に努力することを約束する。もちろん、言葉はたくさんありました。ここにもその原文があります。そして、
伊東外務大臣もこの間、これは一般論としてそう
総理はお答えになりました一でも、これはちょっと国会答弁に過ぎるのじゃないですか。
と申しますのは、大平・カーター会談の前にどういう状況があったかということを見れば一目瞭然です。大平・カーター会談は五十五年の五月一日です。しかし、その前の年の五十四年の八月十六日には、山下
防衛庁長官が訪米してブラウン国防
長官と会談し、ここで中期業務見積もりを詳細に
説明されております。これは
政府も認めるところです。さらに五十四年の十月十九日、つまり二カ月後、ブラウン国防
長官が
日本に来日され、再び山下
防衛庁長官と会って、中期業務見積もりについて話し合っています。これは
外務省の記録にもあります。さらに
昭和五十五年、つまり大平・カーター会談が行われるその年の一月十四日に、ブラウン国防
長官と久保田
防衛庁長官との会談の中で三たび中業が話し合われています。
そして、さらに
昭和五十五年三月二十日には大来外相が訪米し、ブラウン国防
長官との間で会談し、そのときにブラウン国防
長官は、中業の早期達成を要望されています。ですから、ことしの一月十九日に発表された
アメリカの国防
報告におきましても、
アメリカは
日本に対して中期業務見積もりの一年繰り上げを要請したと、文言ではっきり書いている。その上に立って大平・カーター会談が行われているのです。ですから、カーター大統領の言う「
日本政府内にある計画」というのは、まさしくこの中期業務見積もりを指していた。そして、それに対して大平
総理は一般的にただ答えたにすぎないというのは、それは
新聞発表用の言葉です。だって、たくさん証言が後から出ているのですよ。
では、ひとつ
日本側の証言を紹介してみましょうか。
「大平首相も、はじめは、ありのままを「公」にしてもよいと考えていた。しかし、考えてみると中期業務見積もりは、防衛庁の
内部資料にすぎず、国防
会議にもかけられていない。そうしたものを
首脳会談の議題とし、「検討と努力」を約束したとなれば、
日本国内で大問題になり、野党の追及は必至になる。そのことを配慮したわけだ」会談の
出席者はこう述べているのですよ、あるところで。「大平首相は、カーター大統領が早期実施を要請した「
政府内にある計画」が「中期業務見積もり」を指すものであることを
認識したうえで応答し、「真剣な検討と努力」を米側に約束した」のである。
では、もっと付言してみましょうか。
この大平・カーター会談後、
アメリカ側は
アメリカなりに記者会見していますよ。ブリーフィングをちゃんとやっておりますよ。ここで
アメリカ側のスポークスマンは、カーター大統領が要請した
日本政府部内にある計画とは、
日本の防衛庁の中期業務見積もりを指すことを明らかにしたのですよ。
これで明らかじゃありませんか。単に一般論を答えたのではないんでしょう。だって、そうじゃありませんか。
鈴木総理が会談するときだって、
アメリカがどんな計画をこういう問題について持っているかということを詳細にレクチュアを受けて会談に臨むということは、常識じゃございませんか。カーター大統領だってその常識を踏んでいるだけですよ。まして、これだけのプロローグがあるのです。ですから、大平
総理の言う、真剣に努力するというこの約束というのは、中期業務見積もりについて約束をされた、こう理解することの方が、これらのデータから言って常識ではございませんか、いかがでしょう。