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1981-02-09 第94回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月九日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小澤  潔君       小渕 恵三君    越智 伊平君       海部 俊樹君    鴨田利太郎君       倉成  正君    後藤田正晴君       近藤 元次君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       細田 吉蔵君    宮下 創平君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       阿部 助哉君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    大原  亨君       岡田 利春君    中村 重光君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       草野  威君    正木 良明君       渡部 一郎君    神田  厚君       林  保夫君    瀬崎 博義君       寺前  巖君    藤田 スミ君       松本 善明君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣法制局長官 角用禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         行政管理庁長官         官房審議官   林  伸樹君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省理財局次         長       楢崎 泰昌君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         国税庁長官   渡部 周治君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生大臣官房長 吉村  仁君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 松田  正君         厚生省援護局長 持永 和見君         社会保険庁医療         保険部長    吉江 恵昭君         社会保険庁年金         保険部長    新津 博典君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         中小企業庁次長 中澤 忠義君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         気象庁長官   増澤譲太郎君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省婦人少年         局長      高橋 久子君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         労働省職業訓練         局長      森  英良君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         会計検査院事務         総局次長    藤井健太郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   始関 伊平君     近藤 元次君   塩崎  潤君     小澤  潔君   正示啓次郎君     宮下 創平君   砂田 重民君     倉成  正君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   草川 昭三君     草野  威君   矢野 絢也君     渡部 一郎君   不破 哲三君     藤田 スミ君   河野 洋平君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     塩崎  潤君   近藤 元次君     始関 伊平君   宮下 創平君     正示啓次郎君   草野  威君     草川 昭三君   渡部 一郎君     矢野 絢也君   藤田 スミ君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     不破 哲三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十五年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十五年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十五年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和五十五年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原(亨)委員 補正予算審議に入るわけですが、いままでの審議全体を通じまして鈴木内閣議会政治に対する考え方というものが、一問一答を通じて明らかになったと私は思うのですが、私はここで、質問に入る前に念のためにお聞きをいたしておきますが、議会制民主主議というのは少数意見の尊重あるいは多数決原理、こういうことであることは当然であります。しかしながら、審議過程を通じまして、予算委員会総括質問において総理以下が答弁をしたことは、これは内閣も与党も責任を持つべきである。このことは、自由民主党国民の支持から言うならば半分を超えていないわけですから、審議を通じて真実や国民の願いや国民の合意を追及するということが議会政治目標である。したがって、審議過程において政府答弁をしたことについて、あちらからもこちらからもいろんな異論が差しはさまれるということは、これは議会政治自殺行為である。そういう点について、これからの質疑応答において総理以下各大臣は、国会に対する答弁国民に対する答弁ですから、そのことを肝に銘じて、党人である鈴木総理大臣は、いままでのとかくの批判について、この議会政治を守るという観点でこれからの審議を進める、そういう心構えがあるかどうか、そういう点についてあなたのお気持ちをお答えいただきたい。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国会運営につきましての私の考え方、基本的な姿勢は、しばしば申し上げておりますように、国会審議の場である、したがいまして、十分与野党ともに論議を尽くし、少数意見といえどもとるべきものはこれを尊重する、そういう国会の話し合いの中に民意を十分反映し、吸収させるようにいたしたい。自由民主党は、衆参両院で安定多数を確保いたしましたけれども、数におごることなしに謙虚に国会運営に今後も当たっていきたい。また、政府において御質問に答えました点につきましては、方針等につきましては、責任を持ってこれを実行してまいる、このようにいたしたいと考えております。
  5. 大原亨

    大原(亨)委員 具体的な事実については、いま私が指摘をする時間がないから、また全体を通じて申し上げたいと思います。  そこで、第一番目は、新年度予算を昨年に引き続いて編成をしたわけですが、その予算編成過程を通じまして、本年度予算は非常に大きな質的な転換をしたのではないかと言われておる点は、いままで質疑応答があったとおりであります。これは、国民生活とか福祉の問題よりもむしろ軍事予算、その方にウエートを置くような、そういう一歩を踏み出したのではないか、こういう議論があるわけであります。それから、いま国民生活観点から言って、社会保障福祉の位置づけをこれからどうするかという問題があるけれども、その問題については、鈴木内閣方針としては確たるものがないのではないか、ぐらついておるのではないか、その場当たりではないか、財政主導型ではないか、財政再建というそういう至上命令を掲げて、国民生活福祉をないがしろにするものではないかという国民の疑惑があるわけであります。不安があるわけであります。私は、それに対して鈴木内閣はきちっと答える責任があるだろう、こう思います。  具体的な問題で私は順次進めてまいりたいと思うのですが、一つは、年金スライド制に関する問題です。五十六年度予算関係いたしまして、年金スライド制に関する問題であります。  経済企画庁長官に最初にお尋ねいたしますが、いままでの質疑応答を通じまして、政府見通し消費者物価、五十五年度六・四%、これでも定期預金の利子との関係で言えば高いわけです。それは外国は二けただと言うのですが、これはそれぞれの政策の失敗あるいはしわ寄せの結果であって、そのようになったならば日本は大変です。たとえばアメリカは、ベトナム戦争では百兆円以上のドルをたれ流したわけです。産業構造が変わったわけです。国際競争ができなくなったわけでしょう。その中で日本の商品が進出していったわけです。だから、自由競争原理を原則とする相互のいまの体制の中において大きな矛盾に逢着をいたしておると思うのです。六・四%でも高い。高いのに、七%を絶対に達成しますというふうにしばしば政府は言明したわけですが、これも達成できない。  現在、最も近いところの情勢分析では、年金スライドとの関係があるので申し上げるのですが、経済企画庁は、五十五年度内の消費者物価上昇をどのように分析をしておられるかという点についてまずお答えいただきたい。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府の方では、物価政策経済政策の中で最重点に考えまして、物価の安定のためにいま全力を尽くしておるところでございますから、五十五年度は七%程度ということを目標にいま物価政策を進めておるところでございます。
  7. 大原亨

    大原(亨)委員 もう二月の半ばに入ろうとしておるわけですが、七%では絶対に済まない。七・七%あるいは八%になるかもしれない。そして、経済企画庁消費者物価のとり方に大きな問題があるのではないか。実際は八%は超えておる、九%に近づいておる、こういう民間の専門家やあるいは調査の結果が出ておるわけですが、七%台に抑えることができるという確信がありますか。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十五年度消費者物価につきましては、先般もこの委員会答弁をいたしましたが、七%程度ということを目標にしていま力いっぱいやっております。いまの御質問は八%を超えることはないか、こういうお話でございますが、そういうことは絶対ございません。
  9. 大原亨

    大原(亨)委員 七・七%という予測も出ておりますが、二月、三月の状況によっては、二月の結果を見て、東京都区部あるいは全国の状況を見てそういうふうに言われておるが、七・七%ということがあり得るのじゃないですか。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 この間この委員会で七・七%という数字が出まして、一応その数字議論の対象になりましたが、それは一定の仮定前提条件をつくりまして、その仮定前提条件のもとに一つの計算をいたしますとそういう数字も出てくることがありますということを政府委員答弁をしたわけでございますが、いま政府目標は七%程度ということを目標にいたしまして、残る二カ月間に全力を尽くしたい、このように考えておるところでございます。
  11. 大原亨

    大原(亨)委員 もう二カ月はないわけですよ、一カ月半ですね。  そこで、七・七%くらいもあり得るということなんですが、七・七%になりますと、厚生年金国民年金のこの国会に出す法律案仕組みから考えて、スライド率はどうなりますか。もし七・七%と仮定いたしますと、法律を変えるわけですね。予算も変わるわけですね。
  12. 園田直

    園田国務大臣 物価上昇については、いま発言がありましたように、内閣としては全幅の努力をいたしているところであります。  年金スライドは、大体それに見通しをつけて、ただいま七%引き上げを考えておるところでありますが、今後の物価変動ではこれがどうなるか、いまのところ、はっきりいたしません。かつ、これに加えてスライドの時期を、本来ならば厚生年金では本年十一月実施を六月に、国民年金は一月を七月に繰り上げて引き上げること等を考慮して、これに対する対応の処置をとるつもりでおります。
  13. 大原亨

    大原(亨)委員 これに続いて本予算も、国庫負担等関係で変わってまいりますね、当然。その所定の措置を次の補正予算でとるわけですか。  それはひとつ後で一緒答弁願うといたしまして、私が指摘をいたしたいのは、そういう消費者物価上昇情勢にありながら、老齢福祉年金初め各福祉年金は、上昇率法律で決めてないわけであります。その上昇率は、今度は法律には何%で出しますか。そしてこれは、物価変動がありましたら修正しますか。
  14. 松田正

    松田政府委員 御承知のように老齢福祉年金については、スライド制をとっておりませんので、従来の実績その他を勘案して毎年予算編成することにいたしております。(大原(亨)委員「幾らだ」と呼ぶ)五十六年度予定いたしておりますのは、老齢福祉年金につきましては千五百円、ただし……(大原(亨)委員「比率、スライドの率」と呼ぶ)率は約六・七%でございます。
  15. 大原亨

    大原(亨)委員 福祉年金スライドについては、予算編成過程でいろいろな駆け引きがあったわけです。厚生大臣もかなり努力をされたことは承知いたしております。いたしておりますが、話がございましたように、共済年金賃金スライド人事院勧告です。しかし、厚生年金国民年金は、制度上は消費者物価上昇率で七%を見込んでおるのですが、今度は七%で済むわけはないわけです。これは明らかであります。そういたしますと、福祉年金改善率は、法律が決まっておりませんから予算上の措置をとっているわけですね、それで六・七%。がんばったと言いながら六・七%です。これは予算編成上いまだかつてなかったそういう率であって、二万二千五百円の老齢福祉年金を二万四千円にいたしまして、これが六・七%といたしましても、金額の絶対額が低いところが六・七%ですから、片一方が七%であるならば、格差が拡大いたします。その中には障害福祉年金もあれば、連動いたしております母子福祉年金児童扶養手当特別児童扶養手当もあるわけです。これは明らかに格差の増大ではないですか。いかがです。
  16. 松田正

    松田政府委員 御存じのように厚生年金及び国民年金につきましては、七%ということでスライドを実施することにいたしております。福祉年金につきましては、五十六年度予算編成に当たりましては、従来の実績を考慮するとともに拠出制スライドを考慮いたしまして千五百円、これは従来の実績でございます。非常に財政が厳しい折からでございましたけれども、私どもといたしましては、少なくとも前年度実績を確保したい、こういうことで予算編成したわけでございます。
  17. 大原亨

    大原(亨)委員 これは私は鈴木内閣予算編成過程における姿勢だと思うのですが、つまり、老齢福祉年金や各種の福祉年金等については、それぞれ独自の経過がおるわけです。非常にたくさんの人がこの生活に依拠いたしておるわけであります。その方が六・七%の上昇率であって、片一方七%であるならば――これは制度上も、共済年金一緒に、賃金なり物価スライドいたしまして修正する仕組みになっておるわけですが、老齢福祉年金については、あるいは障害福祉年金等につきましては、こういう問題は制度上も、言うなれば全く予算措置に任されておるわけです。ですから、福祉についてどういう考え方を持つかということはきちっと考えていない、こういう問題については一貫した政策ができない。  格差の拡大ということについて、厚生大臣の経験もある総理大臣、認めますか。格差がどんどん拡大しますよ。絶対額が低い上に率が低いのですから格差は拡大しますよ。それは認めますか。
  18. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 五十六年度予算の中におきますところの福祉関係予算、これは大原さんもすでに御検討いただいておりますように、予算全体の実質的伸び率四・三に比べまして七・穴と、こういう伸び率を示しておるわけでございまして、私は、今年の厳しい予算編成の中におきましても、社会保障社会福祉関係予算につきましては特に配慮をしたということがこの数字でも明らかになっておるところでございます。
  19. 大原亨

    大原(亨)委員 そういう認識というものが問題になるのは、福祉予算については七・六%上がりました。しかし、防衛庁予算については七・六一%で〇・〇一ではあるけれども、いまだかつてない、言うなれば一つの歯どめというか、国民生活との関連を無視いたしまして上がったわけです。しかも、後年度負担が非常に大きいということについては、いままで議論があったわけです。特に、福祉の伸びました内容と、そして軍事予算が伸びた内容というものが本質的に、違うわけです。そういうことについて分析をしたことがありますか。いかがですか、大蔵大臣
  20. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま総理大臣からお話があったように、今回は非常に厳しい財政事情でございますが、その中でも、総理大臣としては極力社会福祉というものには配慮をしてくれという話もありまして、われわれといたしましても、これは大変金を食う話なんです。しかし、限りある財源の中で極力社会保障関係には金を使った。御承知のとおり、今回の増税が一兆四千億と言われますが、実際上は、政府一般歳出に用いられるものは一兆三千億になってしまう。あとは地方交付税へいってしまうわけです。したがって、一般歳出の額と政府が増税をして一般歳出に充てられる増税の額とはほぼ同じ。そのうちの半分ぐらいが社会保障費の増加分に充てられておる。このことを見ましても、社会保障関係には力を入れているということはおわかりだ、かように思います。  一概に防衛予算がふえた、こう言いますが、率においては七・六になったが、額では御承知のとおり千七百億円弱であります。社会保障費の方は六千二百億円ぐらいふえておるわけでありますから、ふえ方が額で全然違うわけです。ですから、社会保障の方を大きく率で伸ばすといっても、それは財源的になかなかそうできない。全体を平均すると四・三。農林関係予算などは、いままで非常に順調に伸びておっても三%ぐらいしか伸びてないわけですから、他の費目と比べてみれば、その率においても総額においても社会保障関係には十分に配慮をしておるというように御理解をいただきたいと存じます。
  21. 大原亨

    大原(亨)委員 それはテレビやその他を通じて大蔵大臣政府が繰り返して言ったことです。しかし、その中には二つの間違いがあるのです。これは厚生大臣にも総理大臣にも聞きますが、間違いがあるのです。  というのは、いま言いましたように、年金スライドの場合には、たとえば厚生年金でも最高の人は二十万円の年金をもらう人があるわけですが、その人は七%ほどアップいたしますと、共済はまだ上がありますが、一万四千円ほどアップするわけです。二万二千五百円の老齢福祉年金は、六・七%アップいたしますと、これは千五百円です。こっちは千五百円、こっちは一万四千円ですよ。それを裏返したような議論をいま大蔵大臣は、厚生大臣をしておるのですが、言ったわけです。というのは、防衛庁予算は、いまの話を別の角度から言えば二兆四千億円、厚生省の予算福祉予算は言うなれば八兆八千億円、こう言うでしょう。同じ率で、七・六一とか七・六というふうに増加しても金額が違うということをいま答弁したわけです。ある場合には、年金の場合等では逆のことを言う。ある場合には、もとが違うから上がった内容が違う、こういうことを言う。しかしながら、福祉関係予算がふくらんでいったのは、言うなれば物価上昇分に対してスライドする、目減りを防ぐための最低の政策の修正に伴う当然増経費なんです。福祉の方は内容が上がっていない。たとえば年金スライドにしてもそうでしょう。そういうことの結果、軍事予算の方は、新しい正面装備や後代負担が新しく芽を出しているわけです。ですから、内容を見ましたら逆に違うわけです。全く違う。大蔵大臣はそういう中身に触れない。あなたは知っておって触れないのだろうと思いますが、そういう宣伝をしてはいけない。そういうことは間違いだ。  特に私が指摘をしておるのは、年金において、障害福祉年金母子福祉年金児童扶養手当、重度障害者の特別児童扶養手当、それらを含めて六・七%であるならば、経済企画庁長官が言ったように七%程度、七・七%を超えることは間違いないらしいが、それから考えてみまして、実質生活が切り下がるわけですよ。スライドについては、法律で規定がないからというので、そういう点については抑える。そして低いところを抑える。こういう考えは、厚生大臣はかなり努力をされましたが、全く財政再建についての構造的な要因についてメスを入れない、そういう場当たり的な財政主導型の予算編成の中において非常に不公平が増大しているのではないか、こういう点を私は指摘いたしますが、厚生大臣は、いままでの予算編成努力にもかかわらず、自分の考え方としてはどうだという点を、福祉の問題の将来、これからの問題に関連をして、あなたのお考えをお述べいただきたいと思います。
  22. 園田直

    園田国務大臣 御審議を願っておる予算で、社会福祉行政が切り捨てられて防衛費に回ったとは、私はいささかも考えておりません。予算折衝の段階でなかなかまとまらずに、三回大臣折衝をやったことは御承知のとおりでありますが、大蔵大臣と私の間には相当議論がありました。しかし最後は、私が横車を押したわけでもなし、大蔵大臣が私を抑えたわけでもなくて、将来もろもろのことを考えて同意をした予算であります。かつまた、予算編成過程において総理から、社会保障費が切り捨てられて防衛費に回ったと言われることがないように十分努力しろという注意を二、三回承っているわけであります。  いまの年金のことを具体的に申し上げますと、あなたは非常な専門家でありますけれども、第一は物価変動、第二は給付と負担の公平、第三番目には数十年間で急速に老齢化していく、この三つの問題を考えますると、年金について根本的なことを考えなければ、これは年金をふやすとか減らすとかいっても、国民の方からいただく税金でやることでありますから、どのようにこれを解決するか、これは非常に大きな問題でありますので、いまの御注意は考慮しながら今後努力をしていきたいと考えております。
  23. 大原亨

    大原(亨)委員 総理大臣、あなた経験者ですが、私が言ったことがわかりますか。つまり、年金制度の中における矛盾から、経過的な年金福祉年金という名前がついている児童扶養手当特別児童扶養手当あるいは障害者福祉年金等を含めまして、母子福祉年金等も含めて六一七%しか上がってないわけです。これは物価上昇率ほども上がっていないわけです。いつも老齢福祉年金だけをよく議論するけれども、上がっていないわけです。片方は、国民年金それから厚生年金の本体年金は七%上がって、そしてこれ以上消費者物価上昇しますから、それにつれてスライドして修正するようになっているわけだ。共済年金人事院勧告賃金スライドするようになっている。そうするとますます開くではないですか。障害者福祉年金もあるわけですよ。全部あるわけですね。もし物価上昇しましてもこれは修正しないでしょう。そうするとますます開くということになるのではないか。これは負担と給付の公平ということから、税金で負担しようが保険料で負担しようが国民負担は同じだと言って計算するじゃないか。政府の方はいつも資料を出すじゃないか。だから、そういう点は政策の問題である、後で議論するけれども。そういう点から言って、格差が拡大しているということを総理大臣は認めますか。
  24. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、先ほど来申し上げますように、福祉重視という姿勢はいささかも変わっておりません。いまの年金の問題につきましても、こういう厳しい財政の中で政府としては精いっぱいの努力をしたということをはっきり申し上げておきます。
  25. 大原亨

    大原(亨)委員 私が言ったことについて答えていないじゃないですか。格差が拡大しているということは認めますかと言っているんですよ。いかがですか。
  26. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 見方の差でございます。過去いままで、石油ショック以来、非常に物価問題というのがやかましくなりました。それで、昭和四十八年の石油ショック以前と昭和五十六年とを比べてみますと、消費者物価は一・八倍に上がっています。昭和四十八年と五十五年では税収は大体二倍なんです。五十六年が増税だと言われておりますが、それを加えましても、四十八年の税収と五十六年の見込みの税収では二・四倍でございます。しかるに、実際は社会保障関係費においては、同じ期間で大体四倍にふえております。文教が二・九倍とかいろいろございますが、その中で一番大きな伸び率を示しておるのは社会保障費でございます。老齢福祉年金につきましても、たとえば四十八年と五十五年を比べると、四十八年当時は月五千円でございましたが、現在は月二万二千五百円でございますから、四・五倍になっているわけです。その間、物価上昇よりも税収の伸びよりも、はるかに急激に老齢福祉年金は伸ばしてきたということも事実でございます。たまたま、ことしの年度において七%以上に伸ばすべきものを六・七ぐらいでは足らないというあなたの仰せでございますが、それでも七、八年という間を見てもらえばわかるように、物価の伸びよりもはるかに大きく伸びておるんだということだけは御了承いただきたい、かように考えます。
  27. 大原亨

    大原(亨)委員 それはいままで、たとえば野党修正等を含めまして、政府昭和四十八年の福祉元年といった当時は、各種の福祉年金、五年年金、十年年金を含む経過年金については底上げをするという方針をとってきたのですよ。野党修正もあったわけですよ。その努力の結果として、一番低いところの明治、大正、昭和と生きたそういう高齢者に対応する政策として重点を置こうという方針を決めたわけです。決めたわけですが、その方針を、本年度予算編成を通じて、当然増経費で福祉予算がかなりふくれるのは当然であるけれども、そのことについて本体年金以上の格差を増大させるような方向にあるし、あるいは、これからこの制度内容において、スライド内容が変わるのに対応する制度がないということはいけない、これは当然に本年度予算審議した経過において国民の立場から修正をすべき問題点である、こういうふうに私は思う。老齢福祉年金等については、高齢化社会を展望いたしてみまして、二十年後にはがたっと減りまして八万人ぐらいになるわけです。ですから、これについては積立金の運用等を変えていってコンスタントに出す方法を考えればいいということを、われわれ社会党は出しておるわけです。こういう問題については十分考え方をきちっとしていくならば、物価がどんどん上昇して目減りをする、最低ぎりぎりのところで数百万人の人が依拠しているそういう福祉年金――福祉年金は経過年金ですから、障害福祉年金その他たくさんの問題があるわけです。そういう問題を考えて、一定の方針でこの改定についてやるべきである。こういう点について無方針で、財政当局の財政主義で抑え込まれて全体のバランスを失うというようなことはいけない。これは総理大臣答弁した趣旨とは違う。こういう点、私は指摘をしておきます。  それから第二の問題は、本年度予算福祉に対する特色は、所得制限が非常にふえたということです。強化されたということです。これは大蔵省主導型です。所得制限をどの項目で強化をして、どれだけの財政効果が生まれてきたか、こういう点について、これは政府委員でもよろしいから、簡潔に的確に答弁してください。
  28. 園田直

    園田国務大臣 所得制限について今年度予算からいろいろ変わってきたことは御指摘のとおりであります。しかしながら、それは財政当局の意見によって決められたのではなくて、将来も見通しつつ、苦しい財政の中にどうやっていろいろな福祉制度を確保していくか、こういう観点からできたことであります。たとえば、児童手当の所得制限は残念ながら締められました。締められたかわりに、同じ児童手当の所得の低い人に対する手当はふやしております。かつまた今度は、一般の児童手当と児童扶養手当との差をつけてあります。年金の方もそうであります。たとえば、増額いたしました額も、わりに裕福な方にはふやし方を少しがまんしてもらって、つらい方にはふやすというように、今日の所得制限の考え方は、つらい財政の中でどうやっていまの制度を維持するか、そのためには、がまんのできる方はがまんをしてもらう、そのかわりつらいところにはうんと手当てを厚くする、こういうことで、財政的な数字を減らすためにやったことではございません。
  29. 大原亨

    大原(亨)委員 いや、財政的な方針でやったということは、ずっと編成過程を見ればわかるのです。ゼロリストその他を通じてがたっと切っておいて、そういう印象を与えておいて、そしてちびりちびり、また非常に努力されましたけれどもね。園田厚生大臣、あなたが努力したことは認めますよ。認めますけれども、これは言うなればマッチポンプみたいなものであって、こっちでがたっとやっておいてちょっと上げる、こういう仕組みです。なかなかやっているなということになる。しかし、結果として見れば無方針であり、格差が拡大している、非常に不公平である、こういうことは非常にはっきりするわけです。  私が具体的、聞いているのは、所得制限を今年度予算でやった項目について、その内容財政効果について的確に数字答弁してくれ、こう言っているのだ。政府委員でよろしい。
  30. 松田正

    松田政府委員 年金関係の所得制限について申し上げます。  まず、本人の所得制限につきましては、現在二人世帯で二百十六万四千円、これを現在受けておられる方が受けられなくならないように、こういうことで二百二十六万六千円に引き上げたところでございます。それから障害福祉年金につきましては、現在二人世帯二百十六万四千円、これは老齢福祉年金と同じでございますが、これを三百万円に大幅に所得制限を緩和いたしました。これは、障害の方が二人世帯で働いておられる、やはり障害の方がその障害を克服して一生懸命働いておることに対しまして、こういった所得制限の緩和によって処遇を改善していこう、こういう趣旨でございます。これに要する経費は約八億円でございます。母子につきましては、二人世帯三百六十一万円据え置きでございます。  なお、扶養義務者の所得制限につきましては、現行六人世帯で八百七十六万円、これも据え置きにいたしておるところでございます。  障害につきましては、是正をいたしましたので、約八億円の増、平年度にいたしまして二十四億円の増でございます。扶養義務者の所得制限を据え置きにいたしまして、なお対象数も減っておりますので、約七億九千万円減でございます。
  31. 大原亨

    大原(亨)委員 老齢福祉年金児童扶養手当特別児童扶養手当、児童手当はどういう財政効果があるのですか。財政効果がありましたか。これは大蔵省が切ったから、大蔵省でもいいから答弁してください。財政効果について答弁してください。
  32. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 児童手当について申し上げたいと思います。  児童手当につきましては、現在所得制限が六人世帯で四百九十七万でございますが、これが四百五十万ということになったわけでございます。しかしながら、一方におきまして、低所得者分の手当額につきましては、現在月額六千五百円でございますが、これを七千円に引き上げることとなったわけでございます。この結果、五十六年度におきましては、所得制限につきましては十七億の減になるわけでございますが、一方におきまして、低所得者分の手当額の引き上げによりまして十億円の国庫負担増になっております。ただし、これは年度途中でございますが、満年度計算、四月からという計算をいたしますと、所得制限によりまして二十六億の減でございますが、一方におきまして、低所得者分の手当額の引き上げによりまして三十億の増になりますので、差し引き満年度といたしましては四億円の増ということになっております。
  33. 大原亨

    大原(亨)委員 扶養義務者の所得制限は、六人家庭で、六人家庭というとり方も問題ですが、八百七十六万円をずらりと据え置いたわけです。それを扶養義務者の所得制限、個人の所得制限、これは二人で計算する、そういう場合に所得制限を据え置きますと、物価上昇いたしますから課税最低限の議論と同じで、どんどんどんどん水準なり給付対象が下がってくるわけです。  そこで、いま私が質問いたしましたところを全体的に見てみますと、老齢福祉年金は、その制限によりまして八千人ほど減っておるわけでありますが、減っておる金額は七億円であります。障害福祉年金は、いま話がありましたように八億円、これは七億九千万円と言ってもいいでしょう。児童扶養手当については、千人ほどカットいたしました。制限すればカットするわけですから、もらっておる人がもらえなくなる、それで一億円の減です。特別児童扶養手当については、人員の増減なしですが、しかしながら、扶養義務者についての所得制限を据え置きますと、これは実際上はだんだん減ってくるわけだ。児童手当については、所得制限をふやして、いままでもらっておった人が十万人ほど減ってまいります。そして財政効果は、いま話がありまして十七億円、ふやした方が十億円、そういたしますと、言うなれば七億円の減になる。全体を見てみまして十数億円の財政効果があるわけです。そのために何千人の人が、最低のところで生活を依拠いたしておりまする福祉年金児童扶養手当や児童手当というものが減ってくることになるのです。  問題は二つある。所得制限は、それぞれ今年を契機にいたしまして強化されてまいりましたが、これは社会保障の質が変わるのではないか、そういう方針をずっと進めていくと。こういう問題が一つある。質が変わる。言うなれば、生活保護から年金制度の総合的な整備へというふうに、あるいは福祉施設に対する内容の充実へというふうに今日まで社会保障は進めてきたわけですが、あらゆる面で最低の所得に対しまして所得制限を強化いたしますと、適用者が減ってくるだけではなしに、内容が切り詰められてまいりまして、そして実質上生活保護に社会保障の各年金や医療保険その他の制度が入ってくる。キリのところで、福祉年金障害福祉年金等を含めて詰めてまいりますと生活保護をもらう人がふえてくる。そうすると、生活保護というのは救貧的恩恵的なものであるから人間らしくない、こういうこと一であるから、福祉といたしましては逆コースであり後退なんです。そういう質の変動が起きつつある。これが一つ。  所得制限は、財政効果ということの圧力でやりとりをいたしましたけれども、厚生大臣はかなり努力をいたしましたが、しかし結果といたしましては、財政効果はほとんどないのに非常に制限を受ける人が厳しくなった。  こういうふうに二つの面で、本年度予算は画期的な予算である。そういう面において、所得制限について無原則である。こういう二つの点が特色である。  社会保障制度審議会の答申の中にも、所得制限をこの段階で強化するということは、高齢化社会に対応してどういうふうに福祉を持っていくんだという原則を決めてやらない限りは、これはこのままで見過ごすわけにはいかぬだろうという問題点を指摘をいたしております。  私は、本年度予算は、パンか大砲かという意味において、新しい福祉の切り詰め、切り下げの予算であるという点を二点にわたって質的な問題を指摘をいたしておきましたが、これに対しまして総理大臣の見解をお聞かせをいただきたい。
  34. 園田直

    園田国務大臣 児童審議会の答申どおりいかなかったことは残念だと考えております。予算数字については、先ほど申し上げましたとおり、いろいろ議論をいたしましたが、大蔵大臣と私の意見は一致をしました。ただ、児童手当の問題について、いま御発言の中にいろいろありましたが、将来児童手当をどうするつもりだ、これが所得制限からずっと発展していく問題であり、これについては、児童手当というものは、高齢化社会が急速にくる、次にはヨーロッパその他は児童だけには特権を与えている、こういう意味で、児童手当の問題はいい方向へ大改革をしなきゃならぬ時代である、そのための足踏みとしてことしは認める。これについては大蔵大臣の同意を得たわけではありませんので、御指摘は十分拝聴いたしましたが、来年からの厚生行政の予算は大変だぞ、こういう御注意は身にしみております。
  35. 大原亨

    大原(亨)委員 私は、五十六年度の新予算について、質的に変わった点については、各種の福祉年金児童扶養手当等そういうずらっと横並びの政策があるわけです。原爆関係もあるわけです。横へ並んでおるわけですが、そういう面については六・七%のスライドですけれども、非常に低いところを切り詰めてスライドをいたしておりますから、格差を拡大しているという点を指摘をいたしました。  第二の点は、所得制限について無原則な取り上げ方をいたしまして、そして質が変わりつつある。福祉の性質が変わりつつある。救貧的な恩恵的なものに変わりつつある。人間らしいとか基本的な人権尊重とかいったてまえになっていない。こういう点について大きな転換をしつつあるのではないかという点を指摘をいたしましたが、二つの点について的確な答弁がない。これは政府の方が、この問題、福祉の切り下げについてのそういう私のこの分析に対する反論がないということに私はなると思います。  それから第三の問題点は、いま児童手当の問題について厚生大臣から答弁がありました。児童手当については、一体、これをつくって以来どうしているのだ、どういう考え方を持っているのだということが問題であります。いまお話しのとおり問題であります。  四十年代に、佐藤内閣のときに、私も当時予算委員会におりましたが、いろいろと議論をいたしまして、児童手当を発足させたわけです。そのときに佐藤さんは、議事録を見てみましてわかるように、児童手当の問題は、児童養育に対する社会連帯の問題であるし、国際的な水準から言ってもあるいは企業における労使関係を近代化する道でもあるから、小さく産んで大きく育てる、それを繰り返して議事録に言っております。児童手当が出ました当時からこれを言っているわけです。小さく産んで大きく育てる。  しかしながら、いまの児童手当は、つくりまして以来全くつくった当時のままでありまして、若干の低所得階層に対する手直しをいたしておりますが、そのままであります。一人五千円であります。ずっと続いている。その五千円にも縛りがかかっておりまして、三人ほど子供を産まなければいかぬ。三人子供を産んで、十五歳以下、中学生以下の子供が二人以上いないとだめだ。三人目から出す。三つも四つも縛りがついておりまして、二百数十万の人がいま児童手当五千円を受けているわけです。結局、ヨーロッパその他先進国では、五十七カ国が第一子から児童手当を出しておるわけです。児童手当は、ヨーロッパにおいては、今日まで高齢化社会が進んできたわけですから、高齢者がどんどんふえていったわけですから、一定の出生率を確保するような、そういう条件を整備する問題といたしましても今月まで進んできたわけです。日本はこれからいよいよ本格的な高齢化社会、昭和五十年六十五歳以上八%ですが、猛烈なスピードで高齢化に進もうといたしているわけです。後で引き続いて議論いたしますが、高齢化社会に対応する政府政策はないと言ってもよろしい。そこで、児童手当についてどう位置づけるがということが問題です。厚生大臣から話があったとおりです。  児童手当審議会は、税金の中の児童の扶養控除の問題に関係をいたしまして、外国でやりましたようにそれを振りかえて第一子からやっていく、こういう議論を出しているわけであります。児童手当については所得制限を強化して切り捨てておりますが、低所得階層だけを五百円ふやしたのです。ちょっぴりやったわけです。だけれども、児童手当は一体どういうふうに考えてこれから進めようとするのか。児童手当を切ってしまおうというのか、それともこれをいろいろな工夫を加えて改善をして、そして児童を養育する条件を整備するという重要な課題の一環として改善しようとするのであるかどうか、この点について厚生大臣のお答えをいただきたい。
  36. 園田直

    園田国務大臣 児童手当の将来については、私はただいまの発言と全く同意見であります。  第一は、一方には人口問題が非常に大きな問題になっておりますが、出生率が非常に低下をいたしまして、日本は最低の出生率にございます。出生率の低下というのは民族の力が弱まったということであり、これに相反して急速に高齢化の社会が出てくる、こういうことから、私は、政策に特別の特典を与えてはならぬと思いますが、特典を与えるべきは児童だけだという考え方は断じて変わっておりません。したがいまして、出生率からも、高齢化社会の意味から言っても、将来の民族の未来を背負う、こういう意味で、児童に対する手当、これは特別に改革をすべきことである。しかしながら、現実は三年間近く、実質上の手当はだんだん目減りをする程度にある。今度また所得制限が上は締められた、そのかわり下はふやしてもらった。だが、この三年から、明年度予算に関する児童手当は、いま御発言のとおり、ヨーロッパ諸国でどこの国もやっているような児童に対する特別の制度をさらに強化すべきだという意味において、これを足場にするよう、三年間の足踏みがあり、今度の所得制限があった、こう私は信じ込み、今後も全力を挙げる所存でありますが、これについては必ずしも大蔵大臣は同意だとは言っておりません。
  37. 大原亨

    大原(亨)委員 厚生大臣の御答弁がありましたが、総理大臣、あなた答弁してください。
  38. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 まず、所得制限の問題について私どもの政府考え方を申し上げるわけでありますが、御承知のような厳しい財政の中におきまして、社会福祉関係の諸施策を内容的に何としても質を高めていくということを考えなければならない。そこで、比較的所得も高い、御負担の能力もある方々に所得制限を幾らかひとつ御協力をいただいて、所得の低い階層の方々にできるだけ手厚くしてあげたい、そして、限られた資源の配分を社会福祉の趣旨に沿うように効率的にやってまいりたいというのが政府考え方でございます。  なお、児童手当の問題につきましては、いろいろの考え方がございますが、わが国がいま高齢化社会の急速な進展を迎える中で、出生率が低下をしておるということを私も憂慮をい。たしておりますが、これは児童手当の額の問題ではなしに、国民全体の意識の問題、特に私は、生活が比較的恵まれておるところの中堅階層以上の社会におきまして子供を産むことを避けようという風潮がありますことを非常に心配をいたしておるわけでございます。社会全体の意識を高めましてこういう問題に対処していかなければならない、こう思っております。
  39. 大原亨

    大原(亨)委員 所得制限を児童手当についても、低い上にさらに引き締めていったわけでありますね。所得制限を強めるということは、私がいままで指摘をした以外に、大蔵大臣、こういうことがあるわけです。つまり所得制限は、所得の捕捉が公平でないと、所得制限をやりましても公平な制限にならぬわけです。わかりますか。たとえばトーゴーサンとかいうふうな問題がありますね。捕捉率が公平でないとサラリーマンだけに厳しくなるわけです。そういたしますと逆再配分になるわけです、所得制限をやりますと。ですから、特に、何でもかんでも所得制限に持っていきながら、児童手当ではがたっとやっておるわけですが、これでしかも財政効果は十数億円でしょう。そして質が変わってくるでしょう。そして不公平が拡大するのです、所得制限を強化いたしますと。そうすると、申し上げたような矛盾が拡大するという点はわかっていますか。そのことだけ答弁してください。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 所得制限は、確かに所得の捕捉されない人があればその人は所得制限に引っかからぬわけですから、所得の捕捉される人と捕捉されない人が存在するという前提に立てば、大原委員の御主張のとおりだ、そう思います。
  41. 大原亨

    大原(亨)委員 ですから、社会保障に対しまして所得制限を安易に取り入れるということは、不公平を拡大するだけでなしに、申し上げましたようにいわゆる所得制限だけでなしに財産制限まで持っていっている生活保護の方までずっと流れていく、結果といたしまして。こっちがふえていく。そうすると、生活保護がふえていくということは福祉の質が変わるわけです。質が後退するわけです。そうすると、総理大臣、あなたがたしか内閣をとられたときに、確信があって言われたかどうかわからぬが、昔社会党におったから言われたのかもわからぬが、乏しからざるを憂えず等しからざるを憂う、こういうことを言ったのです。そのとき言っただけで、それで終わりだけれども、これは公平と安定という原則を貫いていかないと、高齢化社会におきましては、社会の連帯、国家安全保障よりも社会の安全保障、これが崩壊しますよ。そのことについてわかっていますか。
  42. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 社会的公正というような観点からいたしまして、こういう厳しい財政事情の中で、御負担願える能力のある方にはこの際御協力をいただく、そして恵まれない方に、さらに手厚くしてあげなければならない階層には手厚くしよう、これが私の考えでございまして、大原さんの考えも変わっていないと思いますが、いかがでしょうか。
  43. 大原亨

    大原(亨)委員 これは社会主義とか資本主義という問題じゃないですからね、民主主義の問題ですから。  あなたは、いつも総論だけはすっといいこと言うのだが、やっていることは皆逆をやっているのですよ。いいですか、いまの年金制度について、福祉年金、五年年金、十年年金、各種の福祉年金、これは連動しておる低所得階層をずっと詰めてある。これが一つ。それから第二は、所得制限という財政当局の考え方を安易に導入いたしまして、わずか十数億円しか財政効果がないものについてずっとやっていった。第三は、児童手当について、高齢化社会に対応すると言いながら、これについては若干の努力の跡は認めるけれども、しかしながら、児童手当をどうするかというそういう児童福祉の問題については、展望のない政策をやっておる。こういう意味において、今度の五十六年度予算案は福祉切り捨てだと言われても言い返す言葉がない、そういうふうに私は結論づけるのであります。  そこで問題は、ばらまき福祉が悪いということは私は認めるわけです。しかしながら、医療費のようにばらまいて、薬づけとか検査づけとか機械づけ、そういうもの等についてぴしっとするということと一緒に、内容を充実させるということの二つを、二律背反ではなしに同時に実現をする、これが政策というものである。  そこで、質問を進めてまいります。高齢化社会に対応するという幾多の文献や分析はあるし、演説はあるわけです。しかしながら、鈴木内閣にはそれに対応する政策がない、こういうことを私は結論的に申し上げておきたいと思います。  以下、順次指摘をいたします。一つは、日本の高齢化社会に対する認識ですが、総理大臣は、どういう点で高齢化社会が重要な問題であるということを、演説の言葉の内容として御理解になっておりますか。
  44. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国は近年、世界にも例を見ないような急速な高齢化社会を迎えておるわけでございます。そういう際に私どもが特に考えなければならないことは、この高年齢層の方々が健康で、そして働ける間は十分社会の先達として働く機会を与えられる、そして社会全体が活力あるものでなければならない、このように考えるわけでございます。  そういう観点からいたしますと、健康の管理の問題あるいは医療の問題、年金の問題あるいは職業訓練の問題、雇用の問題あるいは生活環境の問題、いろんな角度から総合的に高齢化社会に対応する諸施策を進めていかなければならない、このように考えておるわけでございます。
  45. 大原亨

    大原(亨)委員 高齢化というのは、普通常識的には六十五歳以上が七%というのですから、昭和五十年から日本は高齢化が始まったわけですが、しかし学者その他専門家は八%ということを言いますから、一九七五年、昭和五十年からこの八%台に入っておりますから……。そして、日本は四十数年にわたって外国の二倍ないし四倍ほど速いスピードで高齢化が進む、そうして石油危機に入ってから日本は高齢化が進む、スタグフレーションの中で進んでいく、そういう特色があります。そして、御承知のように二十一世紀を目指してという演説があるのですが、二十一世紀、二〇〇〇年を山といたしまして、外国の高齢化の比率を超えて、一四%という高齢化率を超えて、そして最高は二二、三%までいく、こういう異常な高齢化社会を日本は迎えることになるわけです。  それで、もう一つ政府が見過しているというふうに思われるのは、いまも若干の議論をいたしましたが、日本は高齢化と一緒に出生率が異常に低下をしておる。政府の諸統計、諸計画は旧態依然といたしまして、合計特殊出生率、一人の女性が一生を通じて産む子供、あるいは簡単に言えば夫婦で何人の子を産むかという点について、二・一児、合計特殊出生率を二・一児というふうにいたしまして諸統計をとっているわけですが、二・一児で出生率がずっとこのまま進んでいきますか。いまずっと落ちつつあるわけですが、これがずっと落ちたままでいくんじゃないですか、いまの政策では。その見通しのやり方について、だれがそういう分析をするのであるか、政府としてその基礎のデータを整えて、それで計画の基礎をつくるのであるか、そういう点について責任者が御答弁をいただきたい。
  46. 園田直

    園田国務大臣 ただいま発言されました人口の推計は、昭和五十一年の十一月に人口問題研究所で推計した数字でございます。先般十月に国勢調査が実施をされましたので、その結果に基づいて、本年の秋には人口問題研究所において新しい推計を行うことになっております。
  47. 大原亨

    大原(亨)委員 いま慶応大学の安川教授、安川推計とか日大推計とかいうことが三、四年前から出ておるわけですね。そこで、出生率がなぜ低下したかということを究明するならば、これはすぐ政府の統計を修正できるはずなんですね。去年行いました国勢調査において出産調査についてはしておるのですか。国勢調査の主管庁、答弁してください。国勢調査をしましたら、日本の出生率がこれからどういうふうに移っていくか、変わっていくかという点について、データが間違いなく出てきますか。
  48. 吉村仁

    ○吉村(仁)政府委員 国勢調査をいたしまして、出生率、人口の再生産率というものがすぐ出てくるわけではございません。しかしながら、最近続いております出生率の動向がどうなるかというのは、やはり五十五年の国勢調査の結果を見ますとある程度推計をすることができる。出生率の低下については、いろいろな御議論がございます。なぜそういう出生率になったか。いま大原先生おっしゃいましたような安川推計も一つの推計でございますが、私どもは五十五年の国勢調査の結果を見まして新たな推計をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  49. 大原亨

    大原(亨)委員 厚生省の官房長が答えるというのは、人口問題研究所の所管であるからでしょうね。  それで、政府の二・一児、夫婦で二・一人ほど子供を産む、簡単に言えばそういうことになるのですが、それは現在は御承知のように、一九七九年、昭和五十四年では一・七七人になっておるはずですね。これは一・七人を本年から来年にかけて切るだろうというふうに言われているわけですね。もしそういうことになりますと、労働省や経済企画庁や建設省や国土庁、各省全部の計画をやり直さなければならぬと思います。ですから、そういう問題については、あらかじめ全体として、なぜ出生率がこのように政府の予測を離れて、二・一人というのが一・七七人と割っているわけですから、そういうふうに進んでおるのかという点について分析をして対策を立てる必要があると思うのですが、これは総理大臣、どの省が中心となってやるのですか。各省全部またがりますよ。あなたは、出生率の低下についてどういう認識を持っておられますか。このままでずっといくという推計を出すならば、日本の経済や社会保障は間違いなく失速いたしますよ。いかがですか。どこが責任持ってやるのですか。
  50. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  先生御指摘のとおり、出生率が二を割るという状態は、これから迎える高齢化社会におきましてはきわめて重大な国家としての問題でございます。問題は、高齢化社会を迎えるこれからの二十年間、その中でわが国の成長率がどうなるか。つまり、いままでは、石油ショック以前は高度経済成長、こういう中で経済が大幅に拡大してまいった。しかし、国際的な石油の枯渇を契機に、先進工業国における経済成長率が低成長に七〇年代から入り始めたわけでございまして、これからの二十年間というものはそう高度な経済成長を期待するような日本の状態でないことは御承知のとおりでございます。  こういう低成長時代の中で高齢者がふえてくる、しかも再生産率が落ちる、こういうことになりますと、老人の社会におけるいわゆる経済の状態がどうなるか、ここに一つの国としての大きな問題が存在しておるということは、私どもも実は重大な関心を持っておるわけでございます。  それで、生産に携わっている人口の階層に所属する国民の家庭生活は、やはり三十代、四十代においては、努力によってその所得を向上する余裕が残されています。しかし、高齢化社会におきましては、老人の所得格差というものはきわめて固定的になっていく、こういうことで、老人になってから自分の所得を大幅に向上することは非常に困難である。こういう状態の中で政府といたしましては、ただいま、いわゆる低経済成長下における高齢化社会というものに対しては、具体的に政策の検討をするために総理府が中心になりましていろいろと研究をいたしておる、こういう状況でございます。
  51. 大原亨

    大原(亨)委員 二十一世紀を展望する、あるいは場当たりでなく五年、十年、二十年後の展望、高齢化は四十年間ですからこれを展望しなければならぬのだが、少なくとも二十年間ぐらいは展望する。こういう政策が必要なわけです、これからの政策というのは。いまの御答弁のとおりです。しかし、それに全然対応していないじゃないか、こういう指摘を私がしているわけですよ、総理大臣。  出生率が低下をしたという原因の中に専門家が挙げている点はたくさんあるのですが、出生率がどんどん低下しつつあるというのは、一つは何かといいますと、先行き不安があるのです。子供をたくさんつくったらこれは先に大変だぞと。インフレの問題もある。あるいは戦争があるかもしらぬ、これがあるんです、一つは。それから、言うならば高学歴化があるわけです。ヨーロッパに比べましても異常な高学歴化がどんどん進んでおるわけです。それから住宅ローンがある。住宅政策がある。建設省、後で一問触れますが、住宅政策がある。いまのように狭くて高くて遠かったら、これは子供を産む余地がないのだ。核家族化は、政府政策にもかかわらずどんどん進んでいる。それは別居するなり同居するなり、そういう住宅の選択ができるような政策日本にはないわけですよ。人口が三大都市にばあっと半分以上が集中いたしまして過密になって、過密の圧力で出生率が低下しておる。これが一つ。また一つは教育ローン。住宅ローン、教育ローンの負担があって子供をつくれない。そのために共かせぎをやる。高学歴化と一緒で、共かせぎをやる。こういうことで出生率はどんどん下がっておって、これがよくなるといういまの政府政策なり、そういう日本見通しはありますか。ないでしょう。その根底にはインフレがあるのです。インフレは高齢化時代における最大の敵ですよ。まさに敵です。これはソビエトの脅威以上の敵ですよ。社会保障を、社会連帯を根底から崩すのですよ。  ですから、そういう点について総合的に考えて、そして、産めよふやせよの人口問題ではないけれども、高齢化社会に対応する総合政策をつくらなければならぬ、こう思います。いまの体制では、政府の体制としては非常に不完全であって、厚生大臣が逆立ちをいたしましてもこれは全然できないような、そういう官僚政治の仕組みになっておるわけです。総理大臣、いかがですか。
  52. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま大原さんが御指摘になりましたように、出生率が低下をしてまいります原因につきましては、幾つか挙げられましたが、私はそれらも影響を与えておる、こう思います。しかし、先ほども申し上げましたように、経済的に比較的恵まれた階層におきましても、子供を一人か二人しか産まない、経済的余裕、条件があっても産まないという風潮、こういうものを国民全体として考え直す必要があると思います。特に高学年教育、女性も短大、大学というようなことになりまして、生産年齢を相当大きく経過した段階でなければ結婚をしないというような問題も大きく影響があると思います。  なお、御指摘になりましたように、住宅の問題から経済問題からいろいろな問題があると思いますが、これは先ほど総務長官が申し上げたように、政府全体として総合的に政策を検討してまいりたい、こう思っております。
  53. 大原亨

    大原(亨)委員 それで、大体どこが中心となって総合政策をつくるのですか、こういう政策について。つまり、出生率の低下は昭和五十年から、石油危機の直後から、スタグフレーションへ入ってからずっと進んでいるのです。これはベビーブームの波との関係はありますよ。ありますけれども、昭和五十年から進んでおるのですよ。確実に統計に出てきておるわけです。  出生率が低下いたしましたら、厚生大臣、富士見病院のあのでたらめな事件がありますね。婦人科のベッドは、いま出生率の低下で一年間に二、三十万人減るのですから、がらがらになっておりましていそれは避妊に対する技術も進んだということもあるのですけれども、昔はやたらに中絶しておったが、婦人科のベッドががらがらになると、客の引き合いが始まるわけです。そうでしょう。そういう問題があるわけですよ。それは幼稚園だっていまつぶれているでしょう。保育所も立ち行かぬという状況があるでしょう。全部に出てきておるわけですよ、出生率の低下というのは。  そういう問題についてどうするかという問題を考えないで、それはそうだというふうに大蔵大臣言っておられるが、たとえば児童手当の問題だけを考えてみても、それと逆なことをやっているじゃないか。厚生大臣は少しぐらい、半分ぐらい合格であるけれども、全く場当たりの政策をやっているじゃないですか。総理大臣、そう思わないですか、あなたは。漂流内閣とだれかが言った。あちらへふらふら、こちらへふらふら。やはりぴしっと現状分析をして総合政策を立てるということが、あらゆる分野において大切なんです。  そこで、順次質問いたします。  高齢化社会に対応いたしまして、雇用政策についてどういう転換が必要であるか。これは政府の新経済社会七カ年計画の中にもあるんですが、異常な出生率の低下、全体的な出生率の低下ですが、夫婦で二・一人だったらコンスタントにいくわけです。再生産していくわけです。高齢化になりましてもいくわけですが、子供を一人しか産まないんです。子供を一人しか産まなかったら、子供は一人ぼっちになりまして、孤立感があって、排他的になって、そういうのが学校に行ったら暴力学生になる。暴力問題を起こすんです。子供がたくさん、五人も七人もおったらある程度白制心、社会性ができてくる、家庭生活の中で。ほっておくという面もあるけれども、それぞれ長所を伸ばすという点もある。だれもかれも大学に入れるということを考えないわけです。農業国で発展途上国では人口がふえるというのは、子供をふやしておいて、そして自分で自営しようという気持ちがある。それができる、工業化社会ではそういうことはできないわけです。  雇用について根本的に考え方を転換しなければならぬということは、政府の資料にも出ているんです。新経済社会七カ年計画の中で、労働力人口は、これから昭和六十年までの間に三十歳以下の労働力人口は二百十万人減ります。五十歳以上の中高年齢人口は二百六十万人増加する、こういう分析を出しているんです。五十歳以上は二百六十万人ふえるんですよ。そして三十歳以下は、平均いたしまして二十歳から就職いたしますから、十年間というのは二百十万人減るんですよ。さらに、昭和五十年以降の出生率が低下いたしますとがたっと減ってくるんですよ。  雇用政策を経済との関係でどうやっていくかということは、労働大臣は非常に大きな責任がある、政府全体としましても。労働大臣は伴食大臣ではない。これは本当に名実ともに中心の大臣である。あらゆる面において雇用の問題を考えないといけない。言葉だけでなしに雇用政策の質的な転換をしなければならぬ。それについての認識。と、これからの方向についてお答えをいただきたい。
  54. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいま大原委員から非常に適切な御意見があったわけでございますけれども、私ども考えてみまして、私どもの人口構造が高齢化をしてきておるということは、ただ単に数学的に高齢化してきておるということだけではありませんで、生理的にも私どもの体力がそれ相当に伸びてきておるということも含んでおるわけでございます。でございますから、いままでのように五十五歳とかあるいは六十歳とかというような非常に静態的に労働能力をとらえるということが一つには誤りがあろう、私はかように考えます。したがいまして、その能力の伸び、そしていま御指摘になられました人口構造の変化、こういったものをあわせて考えてまいるということが今日、私どもに課せられました一つの側面である、かように考えます。  しかしながら、私どもの人口が出生率の低下によりまして先細りになっていくということを、私どもは、ただ労働政策の面から非常にエゴイスティックに、唯物的にとらえていくということには必ずしも賛成できないのでございまして、この人口問題といいまするものは、日本国の国力という観点からもっと他に総合的な面で考えていくべき問題である、かように考えます。私どもといたしましては、私どもといたしましての対応の仕方、それには万全を期すつもりでございます。
  55. 大原亨

    大原(亨)委員 労働大臣は、本会議場でも予算委員会でも非常に姿勢がいいですよ、声も大きいんだけれども。しかし、これは内容についてもう少し私がやりますからね。  私は時間の関係で大切な点だけやりますが、高齢化社会というのは雇用政策の質的な転換が必要である。高齢化社会における雇用とか労働というものは、私はランニング型だとこう言っている。働く、休む、そして社会の変化、技術の変化に対応できるように学習する。余暇の時代とこう言われる。元通産次官の佐橋さんという人がおられて、余暇センターをやっておられるが、非常に私はりっぱな方だと思っているのですが、高齢化社会は余暇の時代、労働時間に対して余暇の時間が倍ぐらいあるわけだ。その余暇の時間をどのように活用して労働の質を変えていくかということが非常に重要な問題になってくるのである。ランニング型というのは馬車馬型ではない。高度成長型ではないわけです。だから、雇用については、労働時間とか定年について頭をかえなければいかぬ。労働大臣、いかがですか。
  56. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  大原委員の御指摘のとおり、ランニング型といいますのは、その労働の質といいまするものがちっとも変わらないで物的なものが馬車馬のように回転をしていく、こういうことを御指摘になっておられるんだろうと思います。そういった労働の質の中に、学問、技術の変化、そういった進歩といいまするものを加えて、より合理的に回転をさせていく、そういった大原委員の御指摘は、私ども、労働政策の中に敢然として取り上げていかなければならぬ大きな視点であろう、かように考えまして、御高説に非常に感服をいたしておるわけでございます。
  57. 大原亨

    大原(亨)委員 労働時間短縮にいたしましても、定年延長にいたしましても、定年法を出しておりますが、総理大臣、全く頭が進歩してない。  定年法でもそうでしょう。高級官僚の諸君たち、そうですよ。私が個人的に話をすると、そうだと皆言っている。たとえば、五十三とか五十五でやめさしたらどこかへ行かなければいかぬわけだ、高齢化社会になっておるのだから。平均的に八十歳生きるのだから、八十歳生きますと、八十歳、五十五歳の夫婦がおる、それから三十歳代の夫婦がおる、子供がおる。三世代じゃない、四世代おるわけです。ですから、五十三歳でやめるわけにいかぬわけだ。そうすると、六十歳ぐらいまで管理職だってやるのは当然じゃないか、七十歳の総理大臣がおるんだから。余りよくないけれども……。  そういうふうにして、たとえば六十歳、公務員だって六十五歳、今日までの技術を生かして、労働条件については労使が交渉すればいいんだ、六十五歳ぐらいまでは働けるようにしなければいかぬ。そうしないと、天下って癒着をするということが出てくる。そういうことを考えないで、短絡的に、財政的な見地から六十歳ではっと切るというそんな一律強制解雇の定年制は、先進国で、世界じゅうでやっておるところがあるか。  労働時間の短縮でも、経営者も一つの社会的な責任としてやっていかなければならぬ。たとえば、ヨーロッパはいま高齢化社会を卒業いたしまして出生率がふえておるんだ、こう変わってきておる。バランスがとれておる。その過程でどういうことが起きているかというと、イギリスでもフランスでも西ドイツでも、外国人労働者は二百万人くらい入れているわけだ。一定の年齢まで養って、生活費を出して、そしてこれが出かせぎに来るわけだ、船や自動車や汽車で。そして二百万人くらい。それでようやく経済を保っている。一日本は、難民条約をいま批准しようかどうかということを、後で議論いたしますけれども、やっている。出ていくことと入ることを含めまして流動性がない。その中で高齢化社会を急速に迎えていきましたら、日本の経済はやっていけませんよ。ですから、仕事を分かち合って、ランニング型で働く、休む、勉強する、馬車馬のような形でない、そういう雇用保障の関係を切りかえるということを急速にやる必要があるのだ。労働時間短縮と定年延長については、雇用がある六十五歳までは、少なくとも、それを超えても鈴木さんのように働いてもいいけれども、意思と能力のある者はそれぞれ働く、個人的な能力を生かして働く、そういう社会をつくっていかないと、高齢化社会を切り抜けていくことはできませんよ。ですから、いま私の話に賛成だと言われましたが、六十年六十歳ということではなしに、六十五歳を目標にして雇用政策を転換しなさい。いかがですか。
  58. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  確かに大原委員指摘のとおりでございまして、定年といいまするものを五十五歳からさらに六十歳に、六十五歳に、これを発展的に進めていかなければならぬ、私はこれは理想であろうと思う。そのとおりやらなければいかぬと思います。  しかしながら、法といいますものが常に環境といいまするものの後追いをしておる、こういう状況の中では、いまの五十五歳の定年といいまするものを一気に六十五歳まで飛び上がらせるということには多少の危険が伴います。したがいまして、とりあえず、過渡的な一つ考え方といたしまして、六十年までに六十歳の定年を実現しようという国会の御決定があったものと、私はかように考えておるわけでございます。  しかしながら、それは法でございまして、法の精神はそれを一年でも二年でも早く達成をして、そうして、いまの環境、状況に適応をしますように六十五歳に向けて再出発をさせなければならぬ、こういうことを意味しておるわけでございますから、六十歳までの定年を六十年までに達成をしろということが決められておるということは、決してそれでとどまるべきものではない。六十歳の定年を達成された企業、事業所におかれては、直ちに六十二歳に、六十三歳に、六十五歳に向けて出発をしていただかなければなりませんし、私ども一つの行政機関といたしましても、そちらの方向に続けてそれが延びていけるような行政的な配慮をやっていかなければならぬ、当然のことであろうと考えます。
  59. 大原亨

    大原(亨)委員 当然のことが行われていないで、いま日本の経済界では、最近ちょっと声が低くなったけれども、たとえば減量経営というのは、四十歳以上を大体対象にしているわけですよ。あるいは窓際族というような、働くのがいやになるような条件をつくっておいて、そして若い労働力に簡単にかえていく、こういう考え、そういうことを続けておったら、これはもういけない。ましてや、一律解雇というふうな公務員の定年制なんかというのは、時代錯誤ですよ。六十歳ということを一応切りを設けておいても悪くはないけれども、しかし、それ以上についても、意思と能力のある者は経験が生かせるような、技術や知識が生かせるような、条件によっては生かせるわけですから、そういう条件をつくっていくような先進的な定年法をつくっていかなければならぬ。一律解雇だといってばんと切るような、そんなことをやっておるのは最も知恵のないやり方であります。官庁がそういうことをやったらだめなんですよ。これは総務長官のところかな。人事院、きょうは総裁が見えておらぬけれども、政府全体がその頭の切りかえをしなければいかぬ。  総理大臣、私の言っていることがわかりますか。労働大臣はかなりわかっているけれども、あなたはわかっていますか。
  60. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 大原さんのおっしゃっておることはわからぬでもないわけでありますが、労働大臣からも申し上げましたように、まず当面、日本の実情からいたしまして、六十歳定年制を目標としてこれを実現をし、また民間等におきましてもそれに準じて、それを促進をするようにしてまいりたい。それを達成した上でまたさらに六十五歳というようなぐあいに漸進的にこれを進めていこう。これをやりますためには、いろいろな年金制度の問題でありますとか、各般の施策を総合的に進めなければならぬわけでございます。それをただ六十五歳というわけにはいかない、私はそのように思っております。
  61. 大原亨

    大原(亨)委員 あなたは六十歳を超えているからそういうことを言われるが、あなたの意見が正しいというわけではないわけですよ。だから、そういう切りかえができないというところに問題があるのじゃないですか。たとえば労働時間短縮だって、これはここまで啓蒙段階が来ましたら、週休二日というのは、銀行も何も全部ぴしゃっと、準備をしておいたらやったらいいのです。やればいいのです。そうして雇用の仕事を分かち合って、そしてたくさんの人を雇用して、これが細く長く、そして蓄積をしながら、再生産しながら進んでいくような、そういう体制をとるということならば、企業には責任があるわけですから、法制化は進むわけですよ。労働大臣、時間短縮についていかがですか。
  62. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、労働時間にいたしましても、私どもは、週休二日に象徴されておりまするように、できるだけ早くこれを達成をするということが私どもの当面の目標でございます。しかしながら、これまたいま御案内のとおりで、週休二日を達成いたしておる事業所といいまするものがまだ五〇%をそうたくさん超えていない、こういう状況でございますし、なかんずく中小企業等におかれましては、この採用につきましていろいろとまだまだ問題を抱えておられる、これが実情でございます。したがいまして、ある時期が来ましたならば、それに向けて右へならえができるように、一層の加速度をつけて進めるということが私ども労働行政に与えられた課題でございまして、いままで、ややもすれば、非常に難色があったというようなことが言われておりました金融機関等におきましても、積極的にこれに取り組んでいただく、そのような機運がいまどんどんどんどん出ておりますから、御指摘にまつまでもなく、必ず御期待に沿うように実現をしてお目にかけますから、どうぞひとつよろしく御期待のほどをお願いします。
  63. 大原亨

    大原(亨)委員 労働大臣、あなたは実力大臣だ。あなたは回れ右して、大蔵大臣やみんなにそれを言ってやりなさい。もっとも、ここで答弁されることは、それを含めて答弁しているのだが……。  さて、去年の国会におきまして非常に大きな問題になりましたが、厚生年金年金開始年齢を六十歳から六十五歳にする、これは訓示規定もカットいたしました。いたしましたが、また出すというふうに言われております。私は、雇用政策を転換すれば――たとえば共済年金も、国鉄を初め行き詰まろうとしているのです、いま袋小路に入って。全体を見て、年金を高齢化社会に対応するかということについて計画を立てて実行する人は、この中にはだれもいないわけです。無政府状況なんです。このままずっといきましたら、各年金は――公務員年金は調べてみると二十七に分かれています。地方公務員だってそれぞれ小さなグループをやっておる。国鉄を先頭にいたしまして全部袋小路に入りますと、年金は保険料の負担の限界が来る、給付についての限界が来る、国庫補助の限界が来まして、年金はパンクする。そうすると高齢化社会に対応できないわけだ。大変なことになるわけです。そういう体制がない、  厚生大臣厚生年金の開始年齢を、六十歳を六十五歳にするということで、去年、決定的な理由として与党も認めた議論が二つある。一つは、雇用保障政策がまだ見通しがついていない、これが一つ。もう一つは、公務員の共済年金との均衡、バランスがある、これが二つです。この二つだったのです。このことの情勢は変わらないし、厚生年金だけは財政上の見地から開始年齢を延ばすということについては、絶対にやらない。働いていれば年金をもらう人は少ないのですから。共済だって、働いていれば年金は少ないのですけれども、五十五とか若いときに切るものだから、八十までずっと長い間やるものですからパンクしちゃうのですから、雇用との関係を考えない年金の改悪の考え方は主客転倒である。こういう点を厚生大臣は、厚生年金国民年金の大きな年金を担当しておる大臣として、ひとつ見解を述べてもらいたい。
  64. 園田直

    園田国務大臣 年金を初めとする老齢者に対する補助の問題、福祉の問題、これは一方の定年の問題が議論されている最中に、一方の出す方だけ早目から出すのをやめる、これはどういう面から見ても矛盾でありまして、その時期にこそ一番医療についても年金についても必要なわけでありますから、いまの老齢者の定年あるいはその他の新しい職業、こういうものと見合わせつつやるべきであると考えております。
  65. 大原亨

    大原(亨)委員 厚生大臣年金の改革の問題なんですけれども、ここでは基本的な問題だけ言っておきますが、厚生年金の保険料はかなり多くなっております。年金の掛金の負担は限界があると言われているのです、厚生年金でも、保険料負担は。それはなぜかと言いますと、大蔵大臣、あなたも知っているとおりです。それは課税最低限というのがあって、所得税等については生活費にできるだけかけないという原則があるわけです。しかし、厚生年金とか社会保険、健康保険の掛金は、低所得階層も掛けておるわけです。そういたしますと、どんどんこの方が負担がふえてまいりますと、逆再配分になってくるわけです。わかるでしょう。これは税金の一種なんですか。ですから、国際的にも限界があると言われておる。被用者年金、労働者年金の保険料の限界は、いままで答弁がありまして千分の百八十というふうに言われておりますが、これは変わっていないか。国民年金の負担金もどんどん大きくなっておるけれども、つまり月五千円ということが言われておる。妻が任意加入しております。主人が職場で払っております。妻が勤めている場合には保険に入っておりますから入っておりませんが、無年金の妻が任意加入の国民年金に入っております。入ってない人がおります。これはばらばらです。その入っておる人の負担の限界というものがある。月五千円だと言われておる。そのことについて、いまもこの鈴木内閣政府も見解は変わらないか。
  66. 園田直

    園田国務大臣 先般、格差の問題が出てまいりましたが、公的年金だけでも八つあります。この年金の沿革、実情、受給者の環境、こういうものから格差がどうしても出てくる。これが格差が出ないように、バランスを壊さないようにしなきゃならぬことは御発言のとおりであります。  したがいまして、そこに基本年金などという有力な提案もあり、これを何とかして一本化する方法はないものか、これは今後の非常に大事な検討事項だと思いますけれども、今日受給者の数、環境の相違、これから混乱なしに一本にまとめることはこれまた非常な問題でありまして、どのように一本化していくか、格差をどのようにして抑えるか、今後真剣に取り組むべき問題だと考えております。
  67. 大原亨

    大原(亨)委員 共済年金政府における主管大臣、総まとめをするという大臣で、これは前の内閣のときに、当時の伊東官房長官年金閣僚会議をつくられたことがあるのです、国会議論を受けまして。しかしながら官房長官は、失礼な話なんですが、年金のことはよく御承知でなかったわけです。だから、いまの年金制度は八つに分かれておるのですが、公務員の年金だけでも二十七に分かれておる、細分化しておるのです。それが全部個々ばらばらに目先だけのことをやっておるわけです。年金全体をどうするかということについて、専門家の意見を入れまして、そしてきちっと政策化するような、そういう長期計画を立てなければいけない。  国鉄共済一つ見てみなさい。もう負担の限界に来ているわけです。これは満鉄その他をずっと入れた政策があるわけです。合理化がはね返ってまいりまして、どんどんやめておるわけです。そういたしますと、年金財政はもういけないわけです。いけないけれども、国の負担を入れるのにも限界があるわけです。たとえば広島県の呉市なんかというのは、地方公務員でも、年金をもらう人の方が出す人の数よりも多くなっている。これは年金を全体としてどう取りまとめて、官民格差議論もあるのですが、それぞれの経過と事情、特色を生かしながら制度として安定したものにするかということは、高齢化社会の絶対不可欠のことなのであります。これは鈴木内閣としてはどういうふうに取り組みますか。
  68. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 公的年金だけでも八つのグループになっておるわけでございます。この各制度の間におきまして給付その他掛金、いろいろな条件におきまして、御指摘のように確かに格差が存在をしておることも事実でございます。そこで、大原さんはこれを一元化して、一本化してそういう格差を是正すべきではないかということを年来御主張になっておるわけでありますが、私どもも、将来の目標としては同感でございます。  しかし、これらの八つの制度にはいろいろ今日までのいきさつあるいは発生の歴史、いろいろなことがございます。内容的にもいろいろございますので、これを一挙に一本化をはかるということは現実問題としては非常に、困難であるでありますから、いま各関係省庁におきましては、これらの格差是正は、できるだけ公平化をはかるという方向で関係省庁の連絡協議会を設けましてそれに努力をしておるという現状でございます。
  69. 大原亨

    大原(亨)委員 だから、前の大平内閣とは一つも進んでないのですよ。むしろ、鈴木内閣になりまして後退しているのです。そうじゃないと言ったって後退しているのです。大平内閣はその当時、最初からやはり閣内においてそういう一元的に――一元的にというのはみそもくそも一緒にするというのじゃないですよ。あなたは間違ってはいかぬですよ。一本化するということはそういうことなんです。一元化するといったら内容的に整備をするということなんです。その一つの方法として、私どもは財源の問題についてはずいぶん議論しなければならぬ。いろいろな議論をしておるけれども、基本的年金という共通の年金をつくらないと、そうしてその上に積み上げていくような方式をとらないと、年金打開のめどはつかない。  たとえば、国鉄は政策的な理由からずっと合理化とか、外国の、満鉄職員その他全部入れたから、それが全部退職する、もらう者が多くなったらパンクする。もう限界に来ているわけです。どうにもできない。運輸大臣、そうでしょう。それで国鉄の共済を電電や三企業体で一緒にしたらどうかといったら、とんでもないといってほかの方が切ったわけです。そういうことはどこでもみんな、どこかで来るのです。厚生年金も二十年後には来るのです。現在十五人で一人の受給者を抱えておるのですが、これがどうなるかといえば、二十年後には五人で一人でしょう。もうすぐじゃないですか。そのときに全部にわたる基本年金をやっておいて、これに対する国民的な合意を得る財源をつぎ込んでおいて、そうして所得比例やその特色を生かした上積みの年金もやっていくということを考えないと、年金制度は成り立っていかないことははっきりしているのです。私の意見について、厚生大臣もう一回答弁してください。
  70. 園田直

    園田国務大臣 基本年金の構想は、あなたの党やあるいはその他の方々からも具体的に意見を承っております。社会党では、出された分厚い、社会福祉国家、老齢化社会に対応する一つの問題点を具体的に研究しておられますが、その中にも基本年金の構想がありました。これは有力な提案であるというよりも、これを中心に将来物を考えていかなければ行き詰まると私も考えております。  したがって、それをどのようにして混乱なしに持っていくかが今後の問題でございます。十分検討いたします。
  71. 大原亨

    大原(亨)委員 こういう問題には、社会党はこう言ったからといって絶対にこれがいいということはないのです。さらにいい案があれば全部持ってくればいいのです。そういう国民的な合意を得てこういう政策を訂正するという能力があるかないかということが、あなたのいわゆる調整能力の問題だ。あっちで閣僚は勝手なことを言う、こっちで党幹部が言う、国会議論して国民に約束したことがパーになっている、そんなことではだめなのだ。そういう調整能力じゃないのだ。そういう漂流をするということは政策をつくるということじゃない。年金についてもぴしゃっとやらないと、絶対に年金は崩壊しますよ。  もう一つは医療の問題だ。昭和五十五年度は、恐らく税金を含めて十二兆円の国民の医療費の負担があるはずです。これは厚生大臣だけでなしに大蔵大臣もよく知っておられる。十二兆円。これが国民の所得を超えてふえておるわけだ。医療費が増大している。そこで、高齢化社会八〇年代の医療というものは、資源の効率的な利用、むだを排除することと一緒に、内容制度を充実することが必要である。  その一つは、その頂点に立つものは高齢者に対する保健医療である。老人保健医療と言うのでなしに高齢者保健医療と言う方が私はいいと思うけれども、その高齢者に対する保健医療の法律案はこの国会に出しますか。費用負担についてはどうしますか。費用負担と給付する方、支出する方が整合性がなかったならば、これはたれ流しになりますよ。医療費全体から見ますと、大蔵大臣もよく知っておられるからうなずいておられるが、国民全体から見ますと保険料で負担しようが税金で負担しようが同じですから、これはいつつくるか、費用の負担と対応する給付の制度をどうするかという基本的な原則について、厚生大臣はこれはかなり議論しておるベテランですから、明確に国民の前に示してもらいたい。
  72. 園田直

    園田国務大臣 いま今国会に提出を予定しておる法律案は、名前は仮称でありまして、どういう名前にするか別として、意味は、いまおっしゃいました老人医療ではなくて高齢者に対するというふうに書いた方が適切であると考えております。  これに対する意見は各方面からいろいろございます。たとえば、いまの出来高払いというのは矛盾があってすべての間違いのもとはここにある、したがってこれは変えたらどうだ、こういう別枠、別建ての御意見もあります。また、一方から言えば、同じ治療をして老人と若い者が診療費が違うというのはおかしいじゃないかという意見もあります。いずれにいたしましても、この高齢者に対する法律の要旨は、単なる病気だけではなくて、予防それから健康管理、特に健康をつくるという点に重点を置いてやるべきだと考えておりますが、この法律案のまとまり方いかんによって、医療制度からすべての問題に新しいみぞをつくることになりますので、慎重に検討しておるところでありますが、いずれにしても、今国会において出す覚悟で準備をいたしております。数字その他については、必要であれば事務当局からお答えをいたします。
  73. 大原亨

    大原(亨)委員 私が指摘をいたしましたように、一番大切な点は、国が出す、地方が出す、保険者が出す、必要なものだけ出す。たれ流してはなしに、それに対応する医療給付の使い方について原則的な話があったが、整合性がある制度にしなかったらいけない。それは点数出来高払いであり、あるいは指導監査の問題であり、薬づけ医療の問題であり、機械づけ医療の問題であり、いままで健康保険の問題で議論されたそういう点を全部すっと総洗いをして出す、内閣全体で責任を持ってこれをやる、こういうことでなくてはいけないと思うが、そういう原則について、保険の負担と支出について、高齢化社会に対応する、低成長に対応するものでなくてはいかぬ、それでなかったら保険自体が崩壊する、基礎が崩壊する、そういう認識であられるかどうかについてお答えをいただきたい。
  74. 園田直

    園田国務大臣 答弁が下手でありますが、私が先ほど答弁したのはただいまの御発言のとおりであります。
  75. 大原亨

    大原(亨)委員 これの中身については、分科会その他もあるわけですから、別の機会にやります。  そこで、特徴的な問題は、この前の国会におきまして、去年の予算委員会におきましても議論があったのですが、薬価基準の改定です。薬価基準の改定で、世間では、三年に一回ですから一五%から二〇%の間ということが言われているわけです。たとえば一八%といたしますと――薬価基準は四月二十六日までにはやりますと、去年の予算委員会では答弁したのです。議事録があるのですよ。毎年一回やらないとギャップができて、少なくとも四兆円の薬剤費の中で一八%は、国民から見ればどこかへ行っておるわけですから、それをどこかへ行っておる形をとると、既成事実ができておりまして、卸やその他いろいろなものに利害関係がはね返ってくるわけです。公取の議論もそうですが、そういうルールを決めておかないと、便宜的にやるといけないのです。私はここで、去年の議事録を見てみましたらはっきりありますが、阿部委員や私が質問いたしましたときに、四月二十六日までには薬価基準を改定します、年一回やるようにします、医療費の診療報酬とは切り離しますということが、ぴしゃっと方向づけになっているのです。このことだけをここで追及すれば、国会で約束したことをやらぬということになってストップをしてもいいのだが、そういうことはやらないで言うのですが、これを放置すればするほど矛盾が拡大するのです。国民から見たら、これはむだ遣いですよ。それぞれ、たとえば医療機関は、薬が下がるのだから医療費を上げなければだめだ、医療費が上がっておらぬ場合には現在よりも薬をさらに下げろ、こういうようないろいろな要求が出てくるのですが、そういう無理な要求も通るようになる。そうすると、それが一つ仕組みになるわけです。  薬価基準を年一回改定するという原則に、立って、その薬価基準の改定は三月中に行われるということがやや明らかになりつつあるのですが、この内容について具体的に厚生大臣のお答えをいただきたいと思います。
  76. 園田直

    園田国務大臣 薬価基準の改定が三年間も行われなかったということは、確かに大変なことでありまして、今後は少なくとも一年に一回は間違いなしに薬価基準の改定は行うべきである、このように考え、事務当局にも示しております。したがいまして、ただいま薬価基準は何とかして年度内に改定できるよう作業を急がせておるわけでありまして、年度内にやるという目標全力を尽くしておるところでございます。
  77. 大原亨

    大原(亨)委員 診療報酬の引き上げが一部で言われておるのは、七、八%と言われておるわけです。診療報酬になりますと、全体ですから十二兆円全体に響くわけですから、薬価基準というのは四割、薬剤費比率は日本は世界一、非常に多いのです。それでも、一八%だか二〇%と言えばかなり大きいわけです。それで、診療報酬は新年度に来たならばやるということで日本医師会と話をしていると言われているのですね。診療報酬の値上げをいたしますと、いままでやっておる健康保険法その他にはどういうふうに影響いたしますか。
  78. 園田直

    園田国務大臣 診療報酬の引き上げについて私の方と医師会と話をしたり約束したりしたことはございません。また、診療報酬の引き上げについては、その機熟さず、議論すべき段階ではない、こう私はずっと一貫して言っているわけであります。  薬価の改定は今度大幅に行うつもりであります。その薬価の切り下げた分にどれくらい追加するか、これは今後の問題であります。
  79. 大原亨

    大原(亨)委員 資源の効率的な利用、むだの排除のことで最近の特色的なことで、いままで議論したことで答弁されていない点があるのですが、簡単に答えてもらいたい。  最近、医師の優遇税制について一定の制限を設けたことは大蔵大臣も知っている。それに対応する対策といたしまして、病院や診療所が奥さんの名前を使いまして第二薬局を設ける。第二薬局を設けまして、院外に処方を出し、調剤いたしますと、一件について平均一千円ほど入るということになる。そういたしますと、税法上も得であるし、一千円出すということになると、百人、内科のお医者さんへ行くということになると、一日十万円、二十五日間働いて二百五十万円、一年間で三千万円、こういういわゆる税金対策と、それから、言うなれば所得をふやす対策といたしまして、奥さんが他の薬剤師の名前を借りてやっている第二薬局。これは民医連等も従来やっていると言われた。第二薬局は、医薬分業からいいますと原則を外れている。独立した医者、独立した薬剤師がチェックするというシステムが医薬分業のシステムである。そうじゃなしに、一緒財政負担でもうけるためにやっておると癒着になってしまう。そういう分業は世界じゅうにないわけです。  医薬分業の制度を逆用いたしまして税金対策その他をやっているが、それに対しては厚生省はどういう方針で臨んでいるか。実態はどうか。
  80. 園田直

    園田国務大臣 いわゆる第二薬局、これは各所でいろいろ問題になっておるところでありまして、厚生省としては、行政指導なり監督によって、これがないように十分監督しているところであります。医薬分業というものは、これは将来の方向であり大事ではありますけれども、医薬分業ができるような社会環境ができることが先決問題であって、それができないで一方だけ急ぐと第二薬局などということが出てくるわけで、十分今後注意をいたします。
  81. 大原亨

    大原(亨)委員 どういう方向で指導するかということを後の機会にまた質問いたします。これは一般質問、分科会その他がありますから。  それから、来年は国際障害者年です。障害者対策で一番の欠陥は、国連が長期行動計画を勧告しているのです。総理大臣、御承知ですね、あなたは本部長ですから。十カ年のその国の総合計画を立て「完全参加と平等」この原則に従って総合政策をつくりなさい、こう言っているのです。これはつくるのはどこがつくるのですか。
  82. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  御案内のように、国連の言う特別委員会、国内委員会は特別委員会として六十人の委員で設置が行われており、さらにその下に五つの部会がございまして、企画部会で今後の長期計画についてただいま御検討をいただいているところでございます。
  83. 大原亨

    大原(亨)委員 それは答弁としては不足なんですね。つまり、国際障害者年推進本部の本部長鈴木総理、副本部長厚生大臣、それから総務長官、二人がなっているのです。しかし、総合政策はそうじゃないのです。いま言ったように、一番大切なのは雇用政策なんです。雇用、年金福祉生活保護、施設、住宅、移動については運輸省、それから教育訓練は労働省、そういうのがあるわけです。それで、推進本部というのは一年で解散するのでしょう。総理、そうでしょう。国際障害者年対策推進本部ですからやるのでしょう。いま総務長官が言われたのは、中央心身障害者対策協議会のことなんですね。これは厚生省が事務局を持っているのですが、しかし、それでは、全体として長期総合計画をつくることはできないと私は思うのです。その点はもう一回、閣内において再検討してもらいたい。再検討して、そしてこの総合政策をつくるようにしてもらいたい。総理府に事務局を置くにいたしましても、実際は事務局はあそこにはないわけです。事務局は厚生省なんです。ですから、そういうことの取り組みの体制に欠陥があるのではないか。いかがですか。
  84. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  この長期計画を実施するために組織をつくれという御意見でございますが、御案内のように国際障害者年推進本部は一年限りのものでございます。ただし、心身障害者対策基本法の二十七条によりまして、中央心身障害者対策協議会というものが設置を規定されております。そこはいわゆるいろいろな心身障害者対策に関する長期的かつ総合的な政策を調整検討するところでございまして、それが総理大臣に対していろいろ意見を具申することになっておりますので、そこを中心に、政府といたしましてはいろいろ御意見を聴取しながら長期計画を実施してまいりたい、このように考えております。
  85. 大原亨

    大原(亨)委員 実際に総合計画を立てて推進する委員会としてはそういう体制は強化する必要があると思うのですが、厚生大臣はどう思われますか。たとえば労働省の雇用の問題にいたしましても福祉の問題にしましても、非常に複雑ですよ。つまり、だれかが言ったように、これは薄まき、ばらまきなんですよ。だから、ある一面においては、中央の縦割り行政の中でばらばらに使われて、非常にむだになっておるのですよ。すべての政策がそうなんですよ。福祉は薄まき、ばらまきなんですよ。かなり間口は広げているのですが、いままで議論いたしましたとおり、内容については統一的でない。これからはそれが大切なわけです。ですから、それを実行する体制というものをきちっとしていかないと、これからの生活行政は進んでいかない。これは例を挙げてずっとやればいいのですが、そういう時間がないので、いままでも議論がありましたことを踏まえて、厚生大臣からひとつお考えをお聞きいたします。
  86. 園田直

    園田国務大臣 五十六年度予算で御審議を願っておる予算の中で、障害者対策の費用は各省についております。一番少ないのは法務省の三百万。こういうふうに、汽車などの乗り物からホテルから一切が、身体障害者の問題は関係あるわけでありますから、御発言のとおりでありまして、総合的にこれを統括し、実行することが必要であります。したがいまして、いま総務長官からお答えがありましたとおり、この年次が終わりましても、これを連絡協議会にするかあるいは基本法によるものをもっと強化をしてきちんとするか、それは必ずやるべきだと考えております。また、やるつもりでおります。
  87. 大原亨

    大原(亨)委員 長期行動計画を勧告しておりますが、日本が十年計画を立てるといたしますと、初年度はいつですか。十年計画の初年度。――それでは後の機会に答弁を求めます。  十年計画をつくれといって、初年度もわかってないじゃないですか、厚生大臣。総務長官もそうでしょう。初年度もわかってない。決まってないのですよ。結局、国際障害者年は行事だけで、はんと、これで終わりだと、こういうことじゃないですか。それじゃだめなわけです。いま厚生大臣からお話がありましたように体制を立て直してやってもらいたい、これは強く要望しておきます。総理大臣、よろしいですね。  国際人権規約と同和対策事業特別措置法のことですが、いま同和対策事業特別措置法は十年余り経過したわけです。これは事業法中心でありましたが、その欠陥ももちろんあるけれども、私は大きな成果を上げておると思うのです。しかしながら現在、差別事件は決して少なくなっていないわけであります。法務大臣もこれは主要なる所管の問題でありますから、憲法問題だけでなしに、このことをあなたはちゃんとやらなければいかぬです。こういうことをひとつちゃんとやってください。あなたは地元をよく知っておられるのだから。  地名総鑑というのがある。部落地名総鑑というのは御承知のとおりです。これを大きな企業が買う。銀行が買う。買っておるわけですよ。そうして興信所が持っておる。押さえても押さえてもずっと蔓延しておるわけです。それがどんどん出ておる。一方で表面化しておるということは、関係者が泣き寝入りをしないということの、ある一面では行政が進んでいることの証拠です。しかし、差別事件はずっとあるのです。中曽根長官もおられますが、プライバシーの問題はあるのですが、そのために結婚とか就職とかいうものに決定的に影響を与えるということが残っておるわけです。そのために自殺をする人がある。将来の幸、不幸を左右する問題があるのです。総理大臣、あなたは岩手だろうけれども、岸さんとか佐藤総理大臣は山口でしたから、これは非常に熱心だった。同和対策事業特別措置法をつくられたのです。十三年たったのです。事業を進めてきたのです。しかしながら、それだけであってはいけない。雇用とか、人権とか、教育とか、全部を一緒にして、総合的に第一線の自治体において考えるような体制を国がバックアップしなければいけない。そうしないとこれを一歩進めることができない、こういうことなわけであります。国際人権規約を園田大臣のときに批准をしたわけです、一昨年。その国際人権規約に対応する国内法の整備といたしましても同和対策事業特別措置法があるわけです。  ですから、法務大臣に答えてもらいたい。差別の現実が厳としてあり、これはある意味では事件がだんだんと拡大しているという現象があるかどうかという点と、であるとするならば、国際人権規約、多国間の条約に対応する国内法に現状でピリオドを打ってしまうということは私はいけないと思う。それについては総理大臣は前向きの答弁をされたわけです、本会議場で。奥野法務大臣から私が指摘をした点と、総理大臣から、どういうふうに対処するかという点を含めて、問題点に触れて、できるだけ具体的にお答えをいただきます。
  88. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 御指摘の同和問題、いわれない差別がいまだになお根強く残っておりますことはわれわれとしましてもまことに残念でありますし、また、この社会悪は何としても早く解決をしたいものだなと念願し続けているわけでございます。心の問題でございますから、やはり私は、絶えざる啓発活動、根気のよい努力、これを続けていくことが最大の力になるんじゃないだろうかな、なかなか短兵急に解決できる処方せんというものもむずかしいんじゃないかな、あれば一番よろしいのですけれども、やはりそれぞれの自覚にまつ、そしてみんなが新しい認識のもとに考えを新たにして、それぞれの人権を最大限度に擁護していく努力をする、そういうように展開をしていく、そういう環境をつくっていかなければならない、これが根本ではないだろうかな、こう思い続けているわけでございます。
  89. 大原亨

    大原(亨)委員 法務省はいままでの答弁でも、そういう事件が最近発生しておる事実については率直に認めて、このままでやることはできない、法務大臣答弁は、総合的に粘り強くやる必要がある、こういう答弁であります。  総理大臣、来年の三月で十三年、三カ年間延長いたしましたのが切れるのです。それで附帯決議を三項目つけまして、法の改正についても前向きに検討することになっておるわけです。それで、前向きに検討されるというのです。これは先般も秋田さんと廊下で話したのですが、一党一派の問題ではないんですよ。憲法の人権の問題です。国際人権規約もそのことを言っているんですよ。言っているのに、このことを途中でやめてしまうというふうな印象を与えることは、月本は民主主義の国でないという批判を受けるわけです。あなたの方の答弁が出てきておるわけですね。ですから、一党一派の問題ではないという観点でこの問題を処理して、そしてそれに対応する法的な措置についても十分前向きで検討する、そのことについてよろしいですか。
  90. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 改定に当たりましては、いままでの審議の経過並びに附帯決議の趣旨、これを十分踏まえまして、それを実現できるように最善の努力をしてまいります。
  91. 大原亨

    大原(亨)委員 これは安保のころ、岸さんも大変だったのですが、前、亡くなった八木一男さんなんかがいまして、一生懸命国会でも議論しまして、岸さんも一役買って、佐藤さんのときにこの問題が実ったわけですよ。ですから、いまここで問題をすりかえるようなことはいけない。一生懸命やると言われますから、総理大臣は熱意を持って、指導性を持って閣内統一について意見を調整して、期待にこたえてもらいたい。もう一回。
  92. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 最善を尽くしてまいります。
  93. 大原亨

    大原(亨)委員 中曽根さん、プライバシーの問題でいま研究会を持っておられますが、その中には民間情報と言って、たとえばアメリカでしたら探偵社は、探偵士と言って一定の資格が要るのです。そしてプライバシーを侵したようなところは、企業は登録停止になるんですね。日本は、興信所なんかでだあっとばらまいて、結婚やその他に使っているわけです。なければ使わないのだけれども、それを使うようにしむけて商売をしているわけです。企業もそれにかこつけて、いまだに差別待遇をしておるところがあるわけです。  だから、民間情報、プライバシーについても、国民がこの問題について保護を要求することができるような法律仕組みをつくってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 人権擁護の面から見まして、大原委員の御質問は法的にも非常に重大な示唆を与えていると思います。  行政管理庁におきましては、昭和四十九年に行政監理委員会に、行政機関等における電子計算機利用に伴うプライバシー保護に関する制度のあり方について諮問いたしまして、五十年に中間報告がありまして、その中で具体的方策として、個人情報システムの設置及び個人情報の入力に関する規制、個人情報システムの公示に関する規制、個人情報の他への提供に関する規制、維持管理等運用に関する規制、個人の閲覧請求、訂正削除請求及び不服申し立ての権利の設定、特別の機関の設置、受託業者の規制、こういう項目を法的に研究せよ、こういうことになっておりまして、今回、プライバシー保護研究会が加藤東大教授を中心につくられまして、大原さん御指摘のような、人権尊重、社会調和ということを目標にして、これをいかに。法的に措置すべきか、検討を推進させよう、こう思っております。
  95. 大原亨

    大原(亨)委員 文部大臣、先般、衆議院の文教委員会等におきまして非行少年の集中審議がございました。私は議事録を見ました。議事録を見ましての印象は、警察庁の方が実態をよく把握しているんですね。これはおかしなことだと思うのです。文部省の答弁の仕方は、おざなりと言っては不満だろうけれども、警察庁の方が真剣です。実態の把握と原因とこれに対する対応策について、私はこれを見まして非常に一びっくりしました。  非行少年、学校暴力の問題は、住宅環境とか、あるいは出生率の低下の問題等からも追跡しておって、そこがずっとひっかかってくるわけです。共かせぎ等もひっかかってくるわけです。教育ママの問題や、教育ローンの問題や、高学歴化の問題との関係があるのです、受験戦争と。ランニング型になって、一生涯実力主義の勉強だということになればまた別です。そういうことをつくらなければいかぬですが、いまのような学歴社会においては、受験戦争があって、これに対して総合的な対策を立てなければいかぬ。一日教組の問題だとかいう議論ではないわけです、これは。労働運動は憲法二十八条で認められておるのですよ。組合運動と暴力を区別ができないようなことはおかしい。暴力は、だれであってもいけないのですよ、そんなことは。そうではなしに、校内暴力、青少年の非行化という問題はもっと根が深いのです。もう少し科学的な、総合的な分析をして、全部で対応できるような政策を立てる必要があるのではないか。私は集中審議の議事録を見まして感想を持ったわけですが、いかがですか。
  96. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  先般の委員会等の答弁で、文部省の責任者といたしましての答弁の歯切れが悪い、こういうお話であろうと存じます。  御案内のとおりに、今日の非行少年の問題は、必ずしも学校教育だけで解決できるものではございません。警察庁その他の場合は具体的な非行に対しての、あるいはそれに対する補導でありますとか何かでございまするが、文部省といたしましてはその非行少年の教育全般を担当いたしております関係から、いまの非行少年の問題に対して、あるいは家庭教育の面あるいは学校教育の面あるいは社会教育の面、幅広い全体としての補導なり矯正を要する、かように存じます。  なおまた、ただいまのお話の問題でございますが、いま学校教育の活動の充実を図りますることは当然でありますが、学校が家庭や地域社会の関係機関や関係団体との密接な連携のもとに取り組んでいくような指導をしておりまするのみならず、生徒指導研究推進機構でありますとか、あるいは生徒指導研究推進地域を設けまして、学校が中心になりまして地域ぐるみの生徒指導に取り組んでおる次第でございまするが、なおまた、社会教育の面におきましても、家庭教育、学校教育総合セミナーといったようなものを促進いたしております。  なお、本件につきましては、御案内のとおりに、教育委員会の所掌事項でございまして、特に地方教育委員会を指導いたしまして、県とともにこれが将来に向かっての努力をいたしておるところでございます。
  97. 大原亨

    大原(亨)委員 家庭においても学校においてもそうですが、直接児童や生徒に対して、言うなれば対話が欠けておったのではだめなんですよね。家庭においてもそうなんですよね。子供が少なくなったらもう全くそれがなくなっておるわけですよ。教育ママが、いい学校を受けろ、受験勉強しろ、悪かったらだめだ、おまえはばかだ、成績が悪いから、私立の高等学校へ行けば授業料がふえるじゃないかというふうなことで、ことごとく社会の矛盾がそこへ集中しておるから爆発するわけですよ。爆発する背景は、たとえばアメリカでもベトナム戦争のときにあった。黒人問題が背景にあってあったんだ。やはり日本以上にあるわけでしょう。要するに社会的な背景があるわけです、社会的な背景がね。それを総合的、科学的に分析をして、職場の実践家も入れて十分議論を尽くして、文部省としては問題の所在を把握をしながら、みんながそれに取り組んでいけるような、そういう対応策を練り直してとっていくべきではないか。いかがですか。
  98. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御指摘のとおりでございまして、せっかく努力いたしておるところでございます。
  99. 大原亨

    大原(亨)委員 警察庁からも話を聞きたいのですが、これはまあ時間で……。  それはそうと、最近いろいろ、例の建国記念日ですね、民間でやっておる。いままで基準は、政治色とか宗教色がないということで後援の原則を決めておったと思うのですね、政府では全体で。これはちょっと違うんじゃないですか。憲法改悪も言っておるのですね。憲法問題について取り組むんだということを言っておるのですね。これは総理府がやって、文部省がやるという。文部省はどこの所管なんですか、どこの局が所管しておるのですか。
  100. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 文部省といたしましては、本件に当たりまして官房において十分と精査をいたした次第でありまして、官房長からお答えいたします。
  101. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたとおり、文部省の後援につきましては大臣官房において所掌いたしております。  この建国記念の日の奉祝式典の問題につきましては、この事業の目的が、国民の祝日でございます建国記念の日を「建国をしのび、国を愛する心を養う。」という、そういう立法の趣旨に沿った事業内容でございまして、文部省といたしましても、精査をいたしました結果、意義のあることと考えて後援を決定いたした次第でございます。
  102. 大原亨

    大原(亨)委員 キリスト教団体が一番熱心なのですけれども、これは宗教色があるんじゃないか、そういうことが言われておる。主催者団体を構成いたしておるのもね。そうすると、政治色、宗教色等がないということでいままで政府が言っておったけれども、憲法改正問題があるということなんかを中心的な一つの呼びかけにしておるわけですね。ですから、これはずい分ひん曲がっておりまして、総理府が後援することについて、私はここでまた議論する時間はありませんが、しかし、文部省がやりましたら、今度は中川さん、中川さんのところの科学技術庁もやるんですか。それから奥野さん、法務省もやりますか。後援をするのですか。非常に便宜的ではないですかね。中川さん、やりますか。いかがです。
  103. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私が出席することは、科学技術庁が後援するから出席するわけではございませんで、私は、日本はいい国である、日本に生まれてよかったとしみじみ感じております。日本人に生まれたことに感謝をし、さらに愛国心を高揚して、よりよい日本国をつくりたい、こういうことで、要請がありましたから行くのでありまして、科学技術庁としてやるという意思はございません。
  104. 大原亨

    大原(亨)委員 総理大臣総理府がやるということは、設置法を見てわかるように、総理府の所管は各省に属していないとか、総合的なものなんですよ。これは事実上、総理大臣が後援するようなものなんです、内閣が。それを総理府総務長官がやっているのです。これはいい悪いについてはまた議論いたします。行政の中立性というけじめがあるわけですよ、税金を使うんですから。ましてや、文部省が宗教を所管しているから、密接な癒着の関係で宗教団体から言われてやったということになると、また憲法問題が起きますよ、この問題は。ですから、そういう便宜的なことでなしに、これがやって、これがやったら――科学技術庁はやらないと言う。法務省もやらぬと言って答弁するでしょうね、あれでもわからぬけれども……。そういう便宜的なことで、多数を持っているからといってわがまましちゃいけませんよ。そうすると、これは必ず国民が見ているんですから。そういう点、もう少し慎重でなければいかぬ。個人がどうしようということは、私は一々言っているわけじゃないけれども、こういう問題については取り扱いが少し乱れているんじゃないか、全体がそうですけれども。総理、いかがですか。総理大臣がやるということじゃないですか。
  105. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 憲法記念日の奉祝式典に対する政府方針考え方は従来といささかも変わっておりません。憲法記念日に対する……(「建国だ」と呼ぶ者あり)建国記念日に対する……(「間違えているようでどうするんだ」と呼ぶ者あり)建国記念日に対する政府考え方、取り扱いにつきましては、従前といささかも変わっておりません。  文部省の今回の問題につきましては、先ほど大臣並びに官房長から申し上げたような趣旨で文部省としてとった態度でございます。
  106. 大原亨

    大原(亨)委員 言われてきたからやったというのですよね、あれは。それで文部省が名前だけ貸したと、こう言うのですよね、聞いてみると。記録もそうですしね。そんなことが勝手にできるのですかと言うんです。じゃ、法務省がやってもいい、科学技術庁がやってもいいじゃないですか。そういうことになるのですよ。総理府がやるということはどういう意味があるのですか。そのことを慎重に検討していって、やってやるべきじゃないですか。文部省が宗教行政を管轄しているからやるとだれか言った人がある。それだったら問題ですよ。実際には宗教団体がやっているじゃないかと言って、キリスト教その他、他の団体も同じように反対している。その中には憲法改正問題を一つ中心的にやっている。そういうことについて、これはルーズ過ぎはしませんかね、あなた。  最後の質問ですが、通告しておりますように、被爆者対策基本問題懇談会の答申があったわけです。あったわけですが、その問題についての議論はしばらく別にいたします。その中に触れておられる問題で、これは非常に各方面から反対もあるし、反撃もあるし、厳しい意見もありますが、しかし、その中にも、非常に苦労いたしまして茅さんや田中さんがつくられた中では、広い意味の国家補償とか、あるいは特別の被害とか、いろいろな法律論はあるけれども、結果責任、危険責任については無視できないとか、相当の補償をすべきであるとか、そういう議論があって、最後に遺族補償の問題もあるわけです。  橋本元厚生大臣があそこにおられますが、橋本厚生大臣の時代に、いままでの社会保障の概念だけでやることはできない、基本理念を明確にすべしという制度審議会の答申を受けて、そうなんだということを決意をしてつくられたわけです。できたわけですが、たくさんの議論は後で他の委員会、一般質問、その他分科会等でもいたしますが、しかし、あなたの御答弁で私が納得できないのは、この答申の中には、遺族補償の問題については一般戦災者との関係を考えるべし、均衡を考えないで処置してはいけないという問題があるのです。ですけれども、現行国家補償の制度と見比べてみて、被爆者に対して弔慰金を出すとか、遺族年金を出すとか、たとえば一時金を出すとかいう議論がいろいろあるが、そういう問題については否定も肯定もしていないんだ、これは均衡を考えながら、被爆の性質を考えながらやることは国会政府責任です、こういうことを記者会見でも繰り返して述べているのです。それを先走った答弁をいたしまして、あなたは、この国家補償の精神による援護法をつくる意思はありません、困難ですという答弁を繰り返している。これは七人委員会の答申を正しく受けとめたものではないと私は思う。一方的に解釈しているのではないかとも私は思う。  私は、このことについての議論は別の機会に徹底的にやりますよ。唯一の被爆国であるとか、非核三原則であるとか、憲法を踏まえてどうすべきかという点について、もう少し真剣に考えなきゃいかぬ。そのことを歴代の厚生大臣も、あるいは社会労働委員会国会も決議したのです。最高裁も、そのことには昭和三十八年の判決では触れているのです。そのことをあなたは簡単に――七人委員会もそのことを否定したんじゃないと言っている。記者会見で何回も言っている。そういうことについて、隣の大蔵大臣がチェックしたのかどうかわからぬが、そういうふうに答弁されるということは非常に遺憾である。私は、七人委員会の答申の趣旨を踏まえたものではない、こういうことを指摘をいたしたいと思うのですが、総理大臣、いかがでしょう。
  107. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 原爆被爆者に対する措置につきましては、御承知のように原爆医療法及び原爆被爆者に対する特別措置法、これに基づきまして政府としてはできるだけの措置を講じてまいったところでございます。これを国家補償をする、そういうような観点からいろいろ御意見のありますことは、私は承知をいたしておるのでございますが、一般の戦災者との関連、比較等におきまして、弔慰金であるとか、あるいは国家補償を出すとかいうようなことは、政府としてはいまのところ考えておりません。
  108. 大原亨

    大原(亨)委員 一つだけ。  広い意味の国家補償ということは答申しているのですよ。特別の被害についてずっと述べているのです。結果責任についても指摘しておるのです。ですから、その点については、バランスを失するなということは当然の行政上の措置である。しかし、バランスを考えながら、遺族に対する弔意ぐらいは表してもいいじゃないか、そういうことも当然ではないかという議論も圧倒的に多いと私は思っているのです。そのことについて厚生大臣の最後の答弁を求めまして、あと、これはもう当時のあらゆる観点からの資料を私は出しておりますから、政府が隠しておる資料を持っておるから、これは徹底的に議論をいたします。いままで、そのことを一部は実行したのですから、現行援護法に準軍属で入れているのですから。準軍属で入れておって、そしてその境が非常に不公平になっておるということ、これが問題ですから、そういう面の公平、不公平もあるのですから、ぜひこの問題については厚生大臣のお答えをいただきまして終わりたいと思います。
  109. 園田直

    園田国務大臣 被爆関係の問題については、基本懇の座長である茅座長が記者会見で、弔慰金、遺族年金の支給について政府国会がなさることは勝手である、ただ、自分たちの方ではそういう結論に達しなかった、こういうことです。もう一つは、社会保障の理念から国家補償の理念に移ってきた、こういうことは橋本さんが大臣のときに答弁し、かつ今度の懇談会で出した結論でございます。  そこで、そういういろいろのあれもあって、御承知のとおりに今度は原爆被爆関係者の方々には、小頭症の手当の新設であるとか、あるいは所得制限の撤廃であるとか、あるいは放射線の影響の調査研究の促進、あるいは慰霊祭出席の遺族の補助など新しい予算をつけたわけでありますけれども、一方、法体系からいって、やはり援護法という名前をつけると、これはかつての軍人軍属、こういうものが対象であるという、そういう法律的な見解からも、残念ながら援護法ということを制定に至らなかったわけでございます。
  110. 大原亨

    大原(亨)委員 これで終わりますが、以上、審議を通じまして、やはり非常に重要な日本の政治の曲がり角にある。そして、これらの問題については、それぞれこれから各予算委員会や他の場所において議論を深めていく、こういう私の総括的な質疑応答の結果の所感を申し述べまして、終わりたいと思います。
  111. 小山長規

    小山委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  112. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川俣健二郎君。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣委員 午前中に医療、福祉問題が幾つかの例を挙げて取り上げられておりましたが、私たちの党はここ十年この方取り上げて政府の対策を迫ってまいりましたが、それは医療法人十全会、この問題が京都府政の指導下にあっていろいろと論議されてきましたが、厚生省はそれなりに手を打ったようであります。  そこで問題は、これでは事足りないという態度で伺いたいと思うのですが、その前にこの補正で特に明らかにしておきたいのは、予算審議の場において、例の世を騒がせた所沢市の北野の富士見病院、これを私はいろいろとパネルを出させてもらったりして伺ったのですが、これには政治倫理というのも絡んでおったし、医療荒廃という問題も絡んでおったし、もちろん傷害事件という、患者同盟がいま訴訟を起こしている状態でありますが、その後のてんまつというか、どうなっておるのか、ここで伺って、それから質問に入りたいと思います。
  114. 園田直

    園田国務大臣 富士見産婦人科病院の保険医療機関としての処分は、昨年十月監査を実施した結果、不正診療や不正請求の事実が明らかになりましたので、埼玉県で十二月三日、保険医療機関及び保険医三名を取り消し処分を行ったところであります。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕  また、昨年十月に、病院の開設者である医療法人芙蓉会の理事長北野早苗が医師法違反により起訴され、さらに昨年十月に、院長である北野千賀子が保健婦助産婦看護婦法違反で起訴されたため、埼玉県においては、医療法に基づく病院の閉鎖命令及び病院管理者の変更命令を出す方針のもとで、医療法に基づき、今月五日、芙蓉会より弁明の聴取を行ったところであります。この弁明の聴取をもとに処分手続を適切にやるよう埼玉県を指導しております。  なお、管理者北野千賀子に対する医師法の処分についても、今後弁明の聴取と必要な手続を行い、医道審議会の意見を聞いた上で処分を決定してまいる処存でございます。  なおまた、いま刑事事件になっておりますので、この事件の推移によってこれに対する最大限の処分を行うつもりでございます。
  115. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまの厚生大臣の御報告どおり、残念ながら私がこの委員会指摘したとおり、全くそのとおりであった。ついに厚生大臣姿勢を正して乗り出して、閉鎖命令。相手は廃除届を先に出した。廃除届じゃいかぬ、閉鎖命令だ、こういうことでようやく医療法というものを持ち出していただいたのですね。しかし、これでは問題は解決しないと思うのです。私たちが指摘すれば、これから十全会というものを何分か具体的に例を出して言いますけれども、この委員会総理以下、いわゆる総括質問等で取り上げれば初めて動き出す。  いまの報告によれば、医療供給側、いわゆる経営者、お医者さんを含めて、医療的にも人道的にも全く許しがたいいわゆる誤りを繰り返しておって、世に言われる医療産業化というかそういうものに、金融機関ですね、後で十全会なんか、特に証券局や銀行局も論議に入ってもらいたいんだが、こういったものの医療産業化に国民、患者がもう道具になっているだけだ。何年間も、だれからも何のチェックもされないでいた、ここに問題があると思うのです。何年間も、だれにも何のチェックもできなかった。この私の論理というものを政府が理解されるならば、病院の経営者側、医者が悪いんだということだけでは解決されないということがお気づきになると思うのです。医者が悪い、おまえは悪徳医師だ、やっぱり悪いやつだ、それを司直の手に渡してやめさせるということだけでは事足りないのだと思います。この非道な誤りとこの反復を防がなかった医療制度そのものに大きな原因があるのじゃないだろうか。  そこで一つは、それじゃ犠牲になった患者方はどうするんだろうか。閉鎖命令を下した。患者方はどうなるんだろう。えらいことになるわけだ。いわば女性の臓器が摘出されっ放しなんです。  それからもう一つは、これは全く言語道断なんだ。鈴木さんに聞きたいことなんだが、あなたは政治姿勢というと、教科書を読んできたように、わかりましたとおっしゃる。わかりましたと言うのだが、なかなかやらない。たとえば航空特だって衆参両院とも、鈴木内閣になってからやめさせちゃった。それから、ここで私たちが聞いておっても、いま理事会預かりになっておるのだが、例の憲法問題につながる徴兵制の問題にしろ、あるいは武器輸出の問題にしろ、質問者が高い声を出して質問するとそっち側に、ああそのとおりのように検討します。それは栄かしいのじゃないかと今度はこっちの方が質問すると、ああそのとおりのようにやります。だから、うちの石橋委員でしたか指摘したように、鈴木内閣のイメージというか性格というのは何だろうか。これはやはり選挙を通じて躍り出た人ですから、党内事情の関係鈴木内閣が生まれたというけれども、一つは増税は極力抑える、やらない、そして政治倫理が何といったって大事だ、ロッキードはどうなるのだ、こういうこと。  そこで私は、鈴木さんの性格というものを決めつける前に一つ伺いたいことがある。一つの例ですけれども、たとえば、あなたがASEANで大変御苦労されて、奥さん同伴でいろいろな外交をやってまいりました。その際、国内がえらいことになった。ちょっと新聞の見出しを読んでみると「「田中倒る!」軍団走る 見舞いにも先陣争い」ああえらいことだ、これは大変だ。「“角反応”自民に波紋」「ゴホンと言えば内閣参集」田中さんの絵がかいてある。田中さんがゴホンと言えばみんな集まってくる、田中ショック。こういったような新聞は、一日おくれぐらいで向こうでごらんになりましたか。
  116. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 新聞で拝見しました。
  117. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、一国の総理大臣がお留守をされるのですから、ばっちり中曽根総現代理が留守番役でいろいろと処理したようですが、ちょっと伺いたいのだが、あなたがおられなくてよかったのかな、もしおられたら真っ先に走っていった人だろう、ちょっと伺いたいのですが……。
  118. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私はASEANに行っておりましたから、いま国内におったらどうかというようなことにつきましては、その場面よく触れておりませんからお答えを申し上げかねます。
  119. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあある程度は聞いたっていいし、言うたっていいと思う。  そうすると、中曽根さんは、あなたと電話交換せずに勝手に走っていったの。ところが、国民から見ると、田中さんは無所属だ。しかもNHKのアナウンサー初め、被告田中と呼び捨てる。しかも自民党員じゃない。国内にいなかったから場面がわからないと言うのじゃなくて、もう少し言いようがあるでしょう。言いようがあると思うのです。どうです。
  120. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 川俣さんも同じ東北人でございまして、誠実な人柄で私も尊敬をいたしておりますが、言いようがございましょう。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 田中総理とは、私は昭和二十二年、同時に国会に入りました同期生でございまして、生まれたのも大正七年五月で、先方は四日ですが、私は二十七日で、同じうま年の仲間であります。そして長い間政治をともにしてまいりまして、あるときには仲よく、あるときにはけんかをしたり、いろいろあります。しかも私は目白に住んでおりまして、隣近所であります。そういう因縁を考えますと、それだけの仲であった者が、そういう重病であるということを聞けばお見舞いに行くのは人情としてあたりまえのことであって、私はあたりまえのことを友人としてやったと確信しております。
  122. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間があれば、今度は長嶋邸を借りて世田谷の方に、目白から離れていいのかなと思ったのだが、それはまあ別といたしまして、やはり総理、何らか言いようがあると思うのだな。これは友だちで当然走っていっただろうくらいは言うたらどうなんだ。ちょっともう一遍、わからないならわからないでいい。
  123. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。
  124. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあそういう性格だということがわかった。  そこで、十全会の、私たちがいままで指摘してきた問題、医療法人十全会、先ほどの政治姿勢からもう一つ伺いたいのですが、私たちが一々指摘してきましたが、事務当局は十分知っておるのですけれども、時間がないので申し上げませんが、簡単に言うと、売り上げの五十五億から四億五千万、それから七十六億の売り上げから十二億二千万、こういうような利益を上げておるし、それから、問題の信託銀行の大口融資、それから土地買い、取得。家屋取得、買い。さらに加えて、老人をベッドに拘束する、いわゆる練る。こういったような問題をいろいろといままで指摘してきたのだが、われわれが指摘してきたことが、どうですか、事実でありますか。
  125. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のベッド拘束その他不当な医療行為につきましては、昨年、京都府並びに京都市がいろいろ調査した範囲におきましては、認められておりません。
  126. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、そのほかはほとんどよろしいですか。
  127. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答え申し上げます。  土地の買収につきましては、われわれ、京都府に、十全会の財務内容調査という観点から、特に建設仮勘定が異常に多額であるという点に目をつけまして、それに関して詳しい調査を行ったところでございますが、建設仮勘定が異常に多いということで、この実態は医療法人が赤木個人あるいは関連産業が保有しております固定資産購入の契約をいたしまして、その購入契約額のほとんど全額を支払いながら購入を完結せずに、建設仮勘定というような形で長期にわたって実質上お金を赤木個人あるいは関連会社に流していたというような事実が判明いたしました。
  128. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、私はさらに聞きたいのだが、せっかく園田厚生大臣が再登場しまして、前の厚生大臣はどうやっておやめになったかということはきょうは触れませんが、再登場いたしまして、先ほどの富士見病院もああいう形で閉鎖命令という強い態度に出た。当初はできなかったけれども、厚生大臣はそういう意味においては大変評価できると思う。  そこで、今度はさらに厚生大臣の指導のもとに、ひとつ警察庁あるいは大蔵省、三省庁の連絡協議を密にしてもっと医療監視体制を強めるというところまでいって、そしてあなた方がしている四十二条、いわゆる医療法人がやっちゃいけない範囲、六十四条業務停止命令、その打っちゃいけない業務をまだ停止してないという場合には、その医療法人の認可を取り消しすることができるという六十六条、ここまで割り切っているのはやはり何らかの根拠があってでしょう。いまの説明だけでは、ちょっと疑いのにおいがあるという程度じゃ、これだけ強いあれにはいまの法律では出れませんよ。
  129. 田中明夫

    田中(明)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、建設仮勘定という名目でもって非常に多額の金が医療法人から赤木個人あるいは関連産業へ流れているということは、医療法人の財務調査で認められたところでございますが、その赤木個人あるいは関連産業に流れた金が何に使われているかということにつきましては、さらに詳しい調査を必要とするわけでございまして、現在の調査の結果をもってしては非常に疑わしい行為である、あるいは巧妙なる脱法行為であるということは考えられるわけですが、医療法人の金が株の買い占め等、医療法人にふさわしくない事業に使われたということをずばりと立証するというところまでは至っておりません。
  130. 川俣健二郎

    ○川俣委員 つまり、こういうことなんでしょう。医療法人の名前で土地を買った。普通の不動産というのは一割の手付金、そして九割を一年以内にやって固定資産に載せる。ところが、この人の買い方は道なんだな。九九%を買った形にして金を払い、あとの一%をそのままにして、したがって資産に上げなくたっていい、建設仮勘定でよろしいという手だてをとって法の盲点をくぐったわけだ。これはおかしいというので調査に入ったが、いまの医療法の範囲内では、立入調査権というのは病院の運営というかやり方、限度はここまでなんだね。そうですな、局長。ところが、医療法人いわゆる経営しておる帳面を見るとかそういったものの調査は、徴収する徴収権、聞き取るというところまでしかできない。したがって、あなたは改善命令権もない、役員の解任権もないんだから、いまの制度は。  そうなると大臣、どうなんです。何らかの手だてをしないとやれないと思うのですよ。その辺なんです。せっかく厚生大臣がいま、非常に姿勢を正して医療にメスを入れようという段階ですから、その辺を確認したいのです。これは総括質問では深く入りますけれども、どうか。
  131. 園田直

    園田国務大臣 十全会の問題は、御承知のとおり十年近くもいろいろ言われながら通ってきた問題であります。そして、与野党の各委員の方々からいろいろ御指導を願い、指摘をいただきました。それに基づいて始めたわけでありますが、医務局長答弁では、そういうことは確かめ得なかった、こういうわけです。もっと正直に言うと、いろいろ教えられたことは事実に間違いないが、その証拠をなかなかつかめなかった、こういうのが本当の答弁だと思います。  たとえばベッドの数にいたしましても、病院がたくさんありますから、こっちの病院を調査すればこっちのベッドと交換をして数を合わせる、定員もそういうふうに合わせる。それから、老人と精神障害者の区別がなかなか不分明である、これを巧妙に利用しておる。それからまた、金融機関を非常に悪用しておる。こういう点がございますので、私は決していい方法だと思いませんけれども、こういうことで来るなら来てみると言わんばかりの傲慢なる態度を見過ごしておくことは、将来の医療がますます荒廃する原因になりますから、大蔵省と警察庁と厚生省の三者を合わせてこれをやろう、こういうわけでやってきたわけでありまして、これに基づきましてだんだん十全会病院の方もいろいろ認めたり、あるいは拒否したりありましたので、最後に勧告を行い、その勧告を受諾したということで、今後も厳重なる監視が必要である。  なお、これに基づいて、こういうことがないように必要に応じては立入検査もできる、こういう点をお許し願おうと思って医療法改正を準備をしているところでございます。
  132. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこまでおっしゃられるのでしたら、これ以上内容に具体的に入りませんが、そうしますと、いま医療法ではどうにもならない。こんなものなんか本当に氷山の一角だと思われていますから、ここで大きな声を出せば富士見でも十全会でもそういう手だてをとれるが、恐らく全国的には、医療産業化というのは本当にたくさん、数え切れないほどある。こういう現状の中でどうしたらいいかということになると、先ほど申し上げましたように、一つは医療の監視体制というか医療制度そのもの。もう一つさらに申し上げたいのは、医療道徳というか、このごろ日本医科大学の裏口入学なんかもちらほら週刊誌に出ております。あるいは北里の寄付金の問題だって医学部の病院でございますけれども、本当に根本的にこういう医療というものにメスを入れない限りは、とてもじゃないが、将来健康保険制度も論議されることだが、幾ら健保料を上げてみたところで、こういうところのしり抜けをやったらだめだ。これは毅然たる態度でやると言ったって、ここで一々例を挙げれば、そのとおりでございました、やっぱりそのとおりでありましたので閉鎖命令を出しました、これが現状なんです。  それじゃ確認しますよ。いまの立入調査権というのは病院の運営だけではあるが、医療法人そのものにも調査権を持てるようにする、そして改善命令を行う、役員の解任権などもうたった医療制度の改正に着手する意向があるということをひとつここで確認できれば、私はこの質問を終えたいと思うのです。
  133. 園田直

    園田国務大臣 ただいま御指摘の点について、改正をするつもりで検討を行っております。  なお、答弁が長くなりますけれども、いろいろ問題がありますが、二つ大きな問題があると思います。  一つは、私としては医療を産業にしてはならぬ。銀行が金を出して、べらぼうなビルディングの病院をつくって、高い機械を据えつけて、それの減価償却のために銀行と経営者が一緒になって他の方向へ、営利の方へ進む、この医療が産業化することは断じて防がなければならぬ。こういうためには、医療法人の監督もさることながら、やはり金融機関が良識と自制心を持ってやることが大事でありまして、われらが守らんとする自由主義社会は、これが健全に発展するかどうかは、一に銀行が公的機関であるということを認識して、そして良識と自制心によって金融を運営するかどうかによって決まると思います。今度の十全会を中心にした問題を調べてみますると、相当有名な銀行が、もうかるということで金融をしている。そして、その金融でだんだん太って株を買い占められて、今度は自分の銀行の系列の会社の株を買い占められて、自分が金を貸して今度は逆にあたふたしている。こういうことはまさに笑止千万なことでありまして、これは大蔵省にお願いして、今後銀行はぴしっと締まっていただかなければならぬ、こう思うのが一つの問題。  もう一つは、立入検査あるいはその他の強化もございます。しかしながら問題は、やはり医療というのは技術に関することでありますから、大多数のお医者さんがそうであるように、お医者さんの良識と自制心によって行われるべきものであって、権力をもって弾圧すべきものではない。しかしながら、それを行わせるためには、こういう著明なものは断固としてこれをたたく。  こういう二つのことが私は必要だと考えて、今後もやるつもりでおります。
  134. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、大臣のそういう積極的な姿勢政府として全体で裏づけていただく意味で、いま厚生大臣もいみじくも言ったが、もうけるという意味ででたらめに銀行が金を貸しておる。何といったって医療産業化というのは金融が先なのだから。こういったものを十全会、医療法人の調査に当たって銀行局はある程度認められますか。是認できますか。
  135. 米里恕

    ○米里政府委員 金融機関の社会性、公共性の観点から見まして、金融機関が社会的信頼を損なうような融資を行うということについては厳に抑制的に取り扱うという一般的な方針で、私どももしばしばこれに関連いたします投機資金、思惑資金あるいは投機的な土地取得資金といったようなもりを抑制するように指導しているところでございます。  十全会の問題につきましては、これは個別の取引の問題でございますけれども、金融機関から見ましての担保保全面という点は十分配慮されておりますし、特に金融機関が投機的な有価証券取得を資金使途として貸し出したという事実はないというふうに私どもは認識いたしておりますが、なお今後、金融機関の公共性にかんがみまして十分任意して指導してまいりたい、かように考えております。
  136. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、せっかく厚生大臣が中心になりまして、厚生省、大蔵省、それに警察庁、こういう三者の体制で医療制度にメスを入れていくというお話は承りましたが、この予算委員会が終わると各委員会でこの問題は、健康保険法改正問題でかなり論議が深められるとは思うのだが、できれば近いうちにある程度そういったような考え方が、私の総括質問は後にありますけれども、そういう期間内に出るかということをここで確認しておきたい。  それからもう一つは、これは私の方の提案ですが、いま日本の国にせっかく医療監視員というのが各地方にいる。ところが、医療法というのは、これは厚生大臣責任だ。医療法の責任厚生大臣にありながら、医療監視員の所轄は各県知事にある。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕だから、所沢の富士見病院の問題でも、早く監視に行ってこいと言ったって、自分が監視員を持っていない。命令権もない。指示系列がない。そこで、これが何人ぐらいいるかというと、全国に五千人いる。ところが、その五千人はほとんど、ここで追及されて初めて動いているという状態なんです。ところが、各地域における医療の荒廃というか、大変な各町村の国民健康保険の赤字というものは、どうやらその辺にメスを入れていかないと片づかないんじゃないかというのが私たちの受けとめ方です。  そこで、私の提案は、ひとつ医療法を担当する責任者である厚生大臣の直轄のもとに医療監視員という体制を組織化する必要があるのじゃないか。この論議は行政管理庁もお客さんになるが、ひとつぜひこの問題を検討して、次の私の質問の際にある程度の御意見を伺いたいと思うのです。これは新提案でございます。大臣、よろしいですか。
  137. 園田直

    園田国務大臣 今度、富士見病院、十全会病院その他の問題が起きまして、責任厚生大臣にあるが権限、監督実施の問題は各都道府県知事が持っておる、そこで県あるいは府と連絡をしながら進めていくということで、こういう何か急にものが起こった場合には非常に不便を感じ、御発言のとおりの気持ちがいたします。しかしながら、実情把握という点についてはやはり地元の府県がよく知っているわけでありますから、いま直ちに監査課みたいな組織を厚生省でつくることがいいか、あるいは権限はいまのままにして、これを統括をする何か特別なチームをつくったがいいか、あるいは新制度をつくったがいいか、十分検討いたします。
  138. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は本当に自分でそう信じているというか、自分だけかもしらぬけれども、せっかくいる五千人の監視員というものを医療法の使い走りとして先になってやらせる、やるということでなければ、こんなのは氷山の一角じゃないかという声が多いだけに、私たちはそう思っています。そういう上に立って健康保険法というものの改正を審議しなければいかぬ。これは私の考え方ですから、ぜひまた後日の質問の際にも、ある程度のそういうめどがついたらさらにお話を承りたいと思い、この問題はこれで打ち切りたいと思います。  そこで、総括質問が遅れていまして先に補正が入りましたが、農業問題で一番いま何が大きな問題かというと、いわゆる世に言われる二期減反というか、六十七万ヘクタール、四分の一ないし三分の一の水田というものに稲を植えてはいけないという行政指導にどういうように現場では考えておるかということを大変に苦慮した結果、私はずっとこれを取り上げてきておるのだが、本論に入る前に、この減反政策というのはこれだけの金をかけておいて役に立つかどうか知りませんよ。転作すれば奨励金を出すといったって、その転作物が物になっていない。輸入の歯どめがかからない。農民は、いつまで減反というものがされるだろうか、いつ解除になるだろうか、こういう質問なんです。これは各大臣方も伺っていると思う。そうじゃないんだ、一たん減反したものはまたもとへ戻さないんだというのが政府考え方なんだ、国の考え方なんだ、こういうことを言いながら、下部の農協なり役場職員なんか、農林課なんというのは、それにすべてをかけてやっておるというのが現状です。これはみんな御存じだろうと思うのです。  そこで、この減反奨励金というのは、こういう金をかけて果たして意味があるんだろうか、こういうことになる。私は、この問題はしようがないんだ、一年間に千五百億も二千億もかけて土地改良をしてきたら、非常にはかどるようになって米も多くとれてきた、それに対して今度は米を食わなくなってきた、こういうことのあれでどうにもならないんだからということなんだ。そこで、一期減反というのは一割減反でありましたので、一割ぐらいでしたら、お上の言うことだから、これは何だかんだと言っても協力しなければならぬだろうという苦肉の策が、悪いたんぼを一割提供して、奨励金をもらって、あとの九割で十割分をかせごうという手だてに農民が出た。  そこで、ここで論争になったが、その当時の農林大臣に私の方から、一割ぐらいの減反なら消化すると思うよ、しかし目的の生産量は一割は減りませんよ、こう言ったのだけれども、面積が減ったら米が減るのはあたりまえじゃないか、こう構えられた。そこで三十九万一千ヘクタールというのをやってみたが、思惑どおりに生産量が減らなかったものだから、三年間固定だよと農民に約束をしていながら、二年で、約束を破るようだが何とか五十三万五千ヘクタールにということで、おわびをしながらやってきた。  さて、今度は六十七万ヘクタール。いま食糧というのは戦略物資の一つであるということは、これは確認できると思う。そこで、日本の国は二百万トンという備蓄米を計算の上で、その上に米が余っているならしようがないんじゃないか、これで議員諸公は最大公約数で納得しながらいまやっておるわけです。  ところが、米というのは何といったって気象に左右されるということがわかってきた。さてそこで、二期減反に入る段階において、どうにもならない米、いわゆる過剰米、余剰米を処理しない限りにおいては財政を圧迫してどうにもならないから、この過剰米処理に皆さん手をかしてくれぬかということで、ここに提案をした。六百五十万トン、一トン一年間もたせるための倉敷料が二万円だから、千三百億かかる。とっておいて価値のあるものじゃなく、一年とっておけばとっておくほどだめになる、宝の持ちぐされになるのだから、この処理をやったらどうかと言ったら、農林省がわかりましたということで、会計検査院も煩わしまして法律をつくってくれた日それで、五十三年に私が提案したのですから、五十四年から四年ないし五年間でやります、こういう御返事がありました。その経過はいかがでしょうかという質問から始めたいと思います。
  139. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御質問にだけお答えいたします。  五年間で六百五十万トンを処理するということで、五十四年で百二十万トン、五十五年で百十四万トン、五十六年度においては約百二十万トンといまのところ見込んでおりますが、このように五十四年度においては工業用に二十七万トン、輸出用においては九十三万トン、五十五年度は工業用に二十八万トン、輸出用に七十一万トン、飼料用に十五万トン、五十六年度では工業用に三十万トン、輸出用に四十万トン、飼料用に五十万トンで百二十万トンの処理をしたい、そうして五十七、五十八で残りの二百九十万トンの古米を処理してまいりたい、こういう計画で進めております。
  140. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大変簡単なものですけれども、資料をちょっと……。  そこで問題は、いま農林大臣に御報告いただいたように、日本人の口には入れてはいけない経理処理をしたいわゆる過剰米、余剰米というのはいま一体何トンあるのか。そこで工業用、輸出用、飼料用というようにして資料を配っていただいたのですが、この資料でいいかどうか、ちょっと見ていただきたいのです、これはきわめて簡単なデータですから。――こういうことになろうかと思います。五十年、五十一年、五十二年、五十三年と、これは日本人の口に入れない過剰米である。四十九年までの米はありません。こういうことだと思うのです。これが全国の倉に詰まっておったのが五十三年末だ。  そこで私が提案して、この六百五十万トン、一番右の計にありますが、六百五十万トンが残っておる、これに一年間の手数料が千三百億かかる、これをひとつ処理にかかろうではないかというので、法律をつくってもらったのです。  そこで、この六百五十万トンは、(2)の「過剰米の処理状況と今後の計画」、これをいま農林大臣にもお話し願いましたが、五十四年、五十五年、五十六、五十七、五十八と、五十六はいま計画の段階ですから見込みは入っておりませんが、こういうように五年間で処理するということになると、ちょうど五年間でゼロになる。特に私の提示するころ、あるいは提示する以前は、輸出用、東南アジアは日本のようないわゆるジャポニカ米というか、ねばねばした米は食わないんだという意見もあった。そんなことはないはずだ。ASEANで見てきたんだろうけれども、餓死者、いま死ぬという人が日本の米は合わないという人はいないはずだ、出すべきだということで、特にこの輸出用を皆さん見てください。五十四年度の二十万トンを試みに提案してみたら、九十三万トンもはけた。隣の韓国まで買いに来た。  そこで、今度は五十五年度になったら百二、三十万トンはいくなということになったときに、日米定期協議があった。だめだ、日本の米が余っているからといって、そんなにじゃかすか、野方図に東南アジアに持ってきてもらっては困るということになった。それで農林省ははたと弱った。だけれども、それは法律にうたわれた義務だ、やれということで、七十一万トンは見込まれる。五十六年度はどうしたものか。もう大概七、八十万トン見込みは乗せてもいいはずだ。しかし四十万トン乗せておる。これは輸出用のところを見ておりますよ。それで五十七、五十八の二年間ですから、七十六万トン、これは当然消化できるはずだ。そうすると、工業用、飼料用加えて五十八年度に六百五十万トンはきれいになる。私はそう思う。そういう見込みだと思うのですよ。どうです、農林大臣。事務当局でもいいのですけれども。
  141. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 何もかも御存じの川俣先生御推察のとおり、五十八年度には需給のバランスをとっていきたいということで進めておる次第でございます。
  142. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、二期減反にこれだけの金をかけて、泣かせて、おどして――半分おどしですよ、村では。そんなのはやらないんだったら補助金の方もちょっと加減するとか、御承知のようにこういう状態なんだから。ところが、そこまでいやがるものをさらに上乗せして、世に言われる二期減反をしなければならないだろうかということになると、今度は逆に消費者の方の食糧需給というか、食糧確保の方から声を出さしていただきたい。  五十四年度を見ていただきます。「参考」の欄です。生産量千百九十六万トン、作付面積二百五十万ヘクタール。政府が五百五十四万トン買った。自主流通米と称する米が二百六十四万トン。それでも予約限度数量であったが超過してしまった、減反したけれども超過しましたというのが十七万トン。合わせて八百三十五万トン。農家が保有しているのは大体三百五、六十万トンから三百七、八十万トンというのは これはもうずっと長い歴史です。これがいわゆる縁故米、自由米、世に言われるやみ米とかいうので消化されておる。  そうなると、五十四年度の米は、せんだっての五十五年の十月末で米穀年度が変わりますから、いわゆる古米になったわけです。百七十八万は古米になったわけです、しかし、上の方の余剰米ではない、古米です。これが二年続けば古々米になる。それ以上言うと舌をかんじゃう、古々々米となっちゃうんだけれども、この百七十八万トンだけを抱えて五十五年の減反体制をやってみたら、九百七十五万トンしかとれなかった。そこで政府は、ないのを買うわけにいかないから四百万トンにダウンさせた。自主流通米は、そんなこといっても農民はいい米をつくって売っているのだから、二百七十万トン。超過米なんというのはとても出るわけがない。そこで農民が保有する米をダウンさせて三百万トンから三百五万トンで帳じりが合うのだが、そうすると政府はいままで売っておった米が四百万トン。そうするとゼロになる。そうなると一体どうなるのだろうかな、どうしてくれるのか、こうなる。農林省、この数字いいですか、どうですか、まず第一。
  143. 松本作衞

    松本(作)政府委員 ただいま先生の御指摘数字につきましては、そのとおりでございますが、五十五年度につきましては、政府の前年産、五十三年産の買い入れ量が百万トンほど不足いたしますが、前年持ち越しの百七十八万トンがございますので、これを順次使っていくことによりまして、五十三年産米につきましては八十万トンないし九十万トンは次の年に送り越せる。そのほかに実は生産調整を、災害対策ということで若干五十六年度に緩和いたしますので、その分といたしまして約二十万トンほどこれに上乗せすることができるというふうに考えております。
  144. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっと、それはおかしいよ。六百五十万トンの米にこの五十三年米の百万トンが入っているのですか。これは認識が大分違う。百万トン借りるという意味がわからない。
  145. 松本作衞

    松本(作)政府委員 この五十三年産米の方は別にいたしまして、五十五年産米につきまして八十万トンないし九十万トン、それに先ほど申しました生産調整の緩和分が二十万トンほどございますので、約百十万トンほど持ち越しができるというふうなことでございます。
  146. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、さっき私は聞き違いかな。五十三年の米をお借りしなければならないというのは違うんだな。五十四年の米だな。
  147. 松本作衞

    松本(作)政府委員 五十四年の米を順次、五十六米穀年度、これから消費をしてまいりまして、それで昨年とれました五十五年産米を百万トンほど次の年に送り込んでいくという考え方でございます。
  148. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、六百五十万トンという上の数字は一切気にしなくたってよろしいということは確認できた。この六百五十万というのは、下の欄で、輸出、工業、飼料で使えるのだから。  さてそこで、五十五年の十月末に百七十八万トン残っておったものを、五十五年度につくった米が不足なためにこれに食い込むということはわかった。ところが、五十六年の十月末でしょう、ことしの十月末はゼロなんです。ゼロにならざるを得ない。そこで百七十八万トンの方からお借りしてきてくれますと言ったところで、七十八万トンしかないはずなんです。そうですか。
  149. 松本作衞

    松本(作)政府委員 ただいま申し上げましたように、五十五年産米につきましては約百万トンほど不足いたしますので、五十四年産米の百七十八万トンを使いまして、これを五十六米穀年度、これからの米穀年度に充てていくということにいたしますと、順々に送ることによりまして、約八十万トンないし九十万トンありますが、このほかに生産調整を緩和した分が二十万トンほどございますから、百十万トンほどを送り込むことができるということでございます。
  150. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはおかしいよ。百七十八万トンある。しかし、冷害だったためにこれにお世話にならなければならない。その数字は百万トンである。したがって、あえて言えば、五十六年十月末に上の方の消費量から言えば七十八万トンだけここへ残る。ところが、二百万トンの備蓄体制というのは崩してないのでしょう、どうなんです。
  151. 松本作衞

    松本(作)政府委員 備蓄量につきましては、主食用につきまして、この表にもございますように五十四年産までで百七十八万トンほどあったわけでございますが、これが不作でありますためにその備蓄に食い込んでくるということになりまして、結果として備蓄量が百万トンほどになってくるということでございます。
  152. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこが違うあれだけれども、どのくらい消費するかというのが問題ですが、いずれにしても二百万トン体制なんというのはとても見込めないという状態なんです。そこで、一体、消費量が減るだろうかという問題なんです。  では、さらに論議を深めていくために、これは総理府の広報室が出した世論調査です。これは新聞にも出ましたけれども、これによりますと、あなたは米飯ですか、パンですかという世論調査に対して、主に米飯七一・二、主にパン一九・四、米飯とパンと同じ程度八・六、こういうのが一つあって、さらに、「ところであなたは、今後の国民全体の主食はどのようになると思いますか。」「現状程度の米飯、パンやめん類が続くと思う」というのが四七・七。ところが「米飯を中心とした食生活が見直されると思う」というのが二六・三%ある。それから三つ目、「おコメは日本人の主食として最もふさわしいと思うか。」「そう思う」というのは八九・四、「そうは思わない」二・九、こういうことなんです。そうなると、皆さんが出した五十五年の十月の「農産物の需要と生産の長期見通し」これによりますと、今後の消費の維持拡大努力をも考慮するが、一人一年当たり消費量が約二割減となるであろう、こういうようにうたっておる。ところが、この世論調査によるとそうではない。  時間がないからもう一つ言うと、文部省、ちょっと答えてくれませんか。米飯給食というものを閣議でもいろいろと論議したことだろうから、学校でも米飯給食にしよう、導入しよう。いろいろ抵抗があった。米を食うとどうしてもミルク、バター、ソーセージ、ハムなど売れないということで、その方のメーカーからかなり圧力があった。しかし、いろいろな医療的な、健康的な、あるいは消費拡大の問題等あわせて、学校給食に米飯給食をさらに拡大していこうという計画があるはず、実績もあるわけです。五十一年から読んでみてください。ぼくばかり言うと、何か私がつくってきたような文章になってしまうから、おたくの方で読んでみてください。
  153. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまの年次別計画につきましては、担当官からお答えいたします。
  154. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、米飯給食の学校給食導入につきましては、わが国の学校給食として教育上も意義があるといったてまえから、五十一年より年次計画を追いまして、五十六年度に当面週二回の米飯給食の実現ということを目途に計画的な進めをしておるところでございまして、いま精米の所要量で申し上げまして、五十一年度一万一千七百トンの消費、五十二年度二万五百トン、五十三年度三万二千百トン、五十四年度四万六千五百トン、五十五年度、見込みでございますが、六万五千トンの消費というように、年次逐年進行いたしておるところでございます。
  155. 川俣健二郎

    ○川俣委員 五十六年度の計画はどうなっておりますか。
  156. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 お答え申し上げます。  五十六年度は、実施人員千三百五万人の児童生徒を対象にいたしまして、十万四千トンの結末の消費を見込んでおります。
  157. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうです、皆さん。あんなに、学校給食に回したらいいんじゃないかと各委員がわんわん騒いで、五十一年が一万一千七百トン、しかも五十五年が六万五千トン、五十六年が十万四千トン、こういう数字が出るのですよ。食糧庁長官、どのくらい余ると思うのですか。
  158. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 川俣委員の御指摘のように、米の消費が伸びてくれれば、農林水産大臣、本当にほっとするわけでありますけれども、終戦後三十年かかってでき上がってまいりました現在の国民の食生活というものを急速に米中心に戻そうという努力を最大限にやってまいりましてから、もう十年近くなるわけでございます。しかし、これだけ努力しておりますにもかかわらず、また一方、米の需給のバランスをとるということで、本当に農家の気持ちを逆なでするような生産調整までしなければならぬ、こういう無理に無理を重ねた施策を行って、そして国民に対し特に農民諸君に対して米の消費を伸ばすようにという農林水産省としての指導、これが文部省の方にも反映をさしていただきまして、学校給食も、ここ二、三年と言っていいのじゃないかと思いますが、やっと米食の重要な役割りというものがわかりかけてきておる、こういうことでございますので、農政審議会においても一年半、実はあらゆるデータを集めまして、十年後の米の消費の動向というものを想定するに当たりましては、慎重にも慎重を期して、あらゆるデータを駆使してやっておるとこみでございまして、農林水産省としては、その権威ある審議会の検討の結果を踏まえて十年後の見通しを閣議決定をさしていただいた、こういうことでございますので御理解をいただきたい、こう思う次第でございます。
  159. 川俣健二郎

    ○川俣委員 弁明は理解できるけれども、数字が理解できないんだよ。何で二期減反上乗せしなければならぬだろうかということ。もし、ことしも冷害みたいなものがあったらどうするのですか。米買いが始まるのですか。
  160. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 古米処理の点で申し上げましたとおり、これは食糧として輸出をいたしておるわけでございます。したがいまして、先ほど来食糧庁長官から申し上げておりますとおり、去年のような不作、五十六年ももしああいう状態になったとした場合にはどうか、こういうことでございますが、そういう凶作、不作というような際には、これは輸出を一応ストップいたしまして、五十三年産米の一部をやはり食糧に回さざるを得ないという処置をとらざるを得ないな、これは私が腹で考えておるところでございます。
  161. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そんな農政ないよ。五十三年までの米なんというのは、はっきり言えば食われないよ。いまの日本人の口に合わない。だから、五十三年までの処理計画というのはここでオーソライズしているじゃないですか。どういう意味なんだ、これは。会計処理だってしているのでしょう、法律によって。また戻すのか、どうなんです。
  162. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 五十三年産米でも、低温貯蔵をいたしておるものにつきましては、私自身も農林省に参りましてから何回か試食をいたしております。これは輸出して外国の方々に食べてもらうわけでありますから、食べられないものを輸出するわけにまいりません。したがいまして、その点につきましては私も責任を持って試食を行い、そうして十分精査の上で輸出をいたしておるわけでございますから、いざとなって、冷害、凶作という場合になりました際には、非常の措置としてそのことも考えておかなければなるまい、こういうことを申し上げた次第でございます。
  163. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いいですか、日本の国内の消費量を減らさないためになるべく新米を食わせようという政策をわれわれは考えようとしているんでしょう。だから、六百五十万トンは損失が出ても処理しようという意思決定をしたから法律ができたんじゃないですか。そうじゃないの。そうだと思うよ。それから、二百万トンという備蓄体制を崩していないんだ。そうしたら、何も金をかけていやがる農民を二期減反という減反面積をふやさないで、一期減反でまずいってみたらどうかと言うんだ、このあれが落ち着くまで。これはどうなんです。
  164. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 実は、昭和五十一年までに古米処理をやったことは御承知のとおりでございます。あのときも大体需給のバランスができて、もうこの辺でいいな、こう思っておったところが、生産調整の面で、ちょっと冷害関係で不作になるのではないかということで生産調整を緩めた。それが六百五十万トンの米のたまる十つの理由になったということを私ども経験をいたしておるわけであります。したがいまして、今回もあるいは川俣先生の言うがごとく、ことしは去年のような冷害になるかもしれません。しかし、いままでの統計から見ますと、冷害の翌年は大豊作というときもあったわけでございます。したがいまして、第二期は第二期としてやらせていただく。しかも、確かに、一度約束したことを変えるというようなことは責任大臣としては忍びないことではありますけれども、しかし、人為をもっていかんともしがたい凶作という年になった場合には、その辺のことは理解してもらえるんじゃないかな、こういう気持ちもいたしますのでその点を申し上げたわけでございまして、もちろん川俣委員の御指摘のとおり、ひたすら、昭和五十六年も豊作であるように、一方で生産調整をしながら豊作であるようにと祈る気持ちというのは、非常に複雑なものがございますけれども、これもまた、つらい農林水産大臣の立場としてやむを得ないことであるというふうに御理解いただきたいわけであります。
  165. 川俣健二郎

    ○川俣委員 とてもじゃないが、そんなのは理解できないよ。六百五十万トンの処理の方は法律で拘束されるんですよ、農林大臣。六百五十万トンの方は法律だから。ところが、減反政策というのは法律じゃないでしょう。どうなんですか。これをちょっと聞かせてください。
  166. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御指摘のとおり、第二期対策は法律で執行するわけではございません。
  167. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、ためにする減反じゃだめなんだよ。やはり需給計画と食糧自給体制というか備蓄米という二百万トン体制を確認していながら、そこが理解できないんだな。皆さん、どうです。理解できますか。理解できないでしょう。  いま天候の話をしたから、それじゃ私も天候の話に入らせてもらいたい。「寒い夏は今年もくるか “予報官”はこうみる」いろいろある。「大きい火山の影響」、昨年以上ではないかというのは、かつて予報官として鳴らした大学の先生です。それから「五月目射量が問題」、それから「昨年の再来は濃厚」、こういったものをこの「ひまわり」の絵から出してやっておるのだ。これなんか全然無視するの。これはどうですか。ちょっと気象庁、どうです。これは私が拾ってきたようなあれじゃないですよ。オーソライズされた文章です。
  168. 増澤譲太郎

    ○増澤政府委員 お答え申し上げます。  今夏の気象状況はどうかというお尋ねかと思いますが、近年の天候は先生御指摘のとおり変動が大きく、今夏の天候も変動に見舞われる可能性があると考えられます。気象庁では現在資料を検討している段階でございまして、来る三月十日に、それらを解析して暖候期の予報を発表する予定でございます。  なお、昨年のセントヘレンズ火山爆発の影響は、いまのところ、日射量等の観測値には影響があらわれておりません。しかし、火山の爆発の影響は一年後にあらわれると考えられておりますので、今後の推移を見守る必要があるかと存じます。  以上でございます。
  169. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、もうこれはあとは後日の質問に譲りますが、ことしの夏の長期予報というのはいつごろ出るのですか。
  170. 増澤譲太郎

    ○増澤政府委員 三月十日でございます。
  171. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、これは総理に、聞きたいところだけれども、気象予想は外れる、これはまず大体外れるよ。いまのお話だと外れるよ。外れるというのは農林省の予測だよ、気象庁がこれだけ言っているんだから。それから、消費量も皆さんの思惑は外れた、総理府統計だもの。それからさらに、学校給食などは五十一年に比べると十倍になった。こうやってみると、何で二期減反を金かけて無理してやらなければならぬかということがわからぬな。どうなんです、これは。後日に譲るけれども、最後にそれを聞いておきたい。この次は面積の問題をまたさらにやるから……。
  172. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 先ほど申し上げましたように、何もかも御承知の上での御質問である川俣委員でございますから、もう二期減反をしなければならないという理由については、私以上に事実関係を御承知のはずでございます。したがいまして、これからの強力な農政を展開してまいる、特に高度所得国家とでも申しますか、そういう中で第一次産業の農業を進展せしめてまいりますためには、よほど知恵を出し、努力をし、そうして基盤整備を行い、技術の開発一進歩を行ってやってまいらなければ、農業に従事する人がなくなるであろう、そういう方面に思い切った予算措置を講じていくべきであるということは、これはもうこれ以上の方策は今後の農政にないわけである、こう思いますので、どうしても需給のバランスをとらなければならない。食べないものをつくるということであってはいけないわけでございますので、やはり過剰なものを抑制をし、足らざるものを生産してまいるという道を農政審議会からも答申をいただいておるわけでありますので、その線を実行してまいりますために、どうしても二期対策、減反は避けて通れない道である、こういうふうに私どもは考えまして、各自治体並びに農業者、さらに農業団体の協力をいただきましてやってまいっておるところでございますので御理解いただきたい。
  173. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題は後日の質問に、続けます。  終わります。
  174. 小山長規

    小山委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  175. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、通告いたしました質問を申し上げる前に、トピックがいろいろあり過ぎる内閣でありますから、ちょっとそれをお尋ねしなければならないだろうと思います。  奥野法務大臣が、これまで憲法は事態に応じて適宜解釈しながら運用してきたが、大きく客観情勢が変化した中でどこまでそれで行けるか、これまでは憲法をいいように解釈しながら運用してきたがそれにも限界があると御発言になっておられる旨、本日の新聞各紙等にも掲載あるいは転載されているところであります。これは、総理の十月九日の本委員会における御発言の中で、私が所信表明で述べたとおり、鈴木内閣として憲法はこれを尊重し、これを擁護するとともに改正の意思はないと述べられ、また同日、奥野法相も、鈴木内閣の法相として、憲法問題に関する鈴木内閣方針に即してまいる決意であるという御発言、この総理と法務大臣の御発言に反したものではないかと見られるところであります。  私は、これで本委員会をストップさせようなんて思っているわけではありませんから穏やかに聞いておるわけです。釈明の余裕をまず与えたいと思いますから、法務大臣にまず、この事件に関して、短い時間で結構ですからどうぞ。
  176. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先月、週刊ポストの方が見えまして、昨年私が国会で発言してまいりましたこと、その真意を聞きたいんだ、こういうことでございまして、それに答えたことでございます。  いまお話しになりましたことについての私の考え方は、憲法九条をめぐっていろいろな話がございました。憲法をつくりましたときには御承知のとおり非武装でございました。それが二十五年に覚書で警察予備隊をつくることになったわけでございまして、それがさらに保安隊になり、自衛隊になり、今日二兆四千億円の予算の御審議をいただいておるわけでございます。そして険しい国際情勢の中で自衛隊を整備していかなければならない、これは日本が現実に迫られておる問題だと思うわけでございます。  そうしますと、ここで憲法九条をめぐりまして自衛隊が違憲である、合憲である、大きく割れている。その結果、いろいろな弊害が起こっていると思うのでございまして、私が一番憂えている問題は、自衛隊の士気の問題であります。お金をふやせばそれで自衛隊は整備されたというわけにはいかないんじゃないだろうか、やはり自衛隊の士気のことについても考えをめぐらしていかなければならない。そうしますと、事態の変化に応じて適宜解釈、運用するというよりも、根本の問題をみんなで考えていかなければならないんじゃないだろうかな、こういう気持ちを申し上げたわけでございます。  当然、憲法を守っていかなければなりませんし、鈴木内閣が憲法改正は考えていない、それはよく理解しているわけでございますが、昨年、国会におきまして、私はこの種のお尋ねをいただいたわけでございまして、そしていま申し上げましたようなことも、自衛隊の士気のことを心配しているということも申し上げたわけでございまして、それに関連する言葉でございます。
  177. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、法務大臣の信念の野太いと申しますか、所信を断固強調されるところにかねがね敬意を表し、愛情を感じている一人であります。しかし、このお話を伺っておりまして問題がやはり残っておるわけでございまして、今後の御質疑でまたお話が詰まっていくだろうと思いますが、十一月十七日の政府見解に、内閣として憲法改正という問題を政治日程にのせることは考えてない、こう総理が言われました。この御発言の中に、次の八三年の国政レベルの選挙で参議院選挙があるわけだから、結論が出ればそこで国民の批判を求めたらいい、憲法改正を政策として掲げた政党が一敗地にまみれるかもしれないし、あるいは圧倒的勝利を得るかもしれないと御発言になっておられるわけであります。また、いまの御発言のとおり、憲法をいいように解釈しながら運用してきましたが、これに限界がある。憲法は厳正に運用しなければならないのを、いままでの憲法の運用を全部いいように解釈した、どういう言い方かわかりませんが、とりようによっては、いいかげんにごまかしながら弾力的にというように受け取られかねない点がございますね。  そうしますと、この間からの鈴木内閣の足並みの乱れというものをひどく感ずるわけであります。恐らく総理も困惑され、宮澤官房長官も困惑されて下を向いておられるのだろうと思いますけれども、私は、いま御返事がないなら御返事がなくても結構、後から御返事をいただいても結構でございますが、少なくともこの内閣は、この件に関しては少しみっともないと思います。もう一回閣議をやり直されて、しかるべくぱしっとした見解を表明されるように希望したいと思います。そうでないと、この内閣は頼りがないな、何やってもだめなのかな、壊れかかる前なんだな、たがが緩んでおるな、おしゃべりがそろっておるな、どれが総理がわからぬな、総理が五、六人いるな、こういうふうな印象を濃くせざるを得ないのであります。  さて、私、一つずつぎゅうぎゅう詰めていないのですから、この御発言の中にある二つの項目、八三年の憲法改正を賭しての選挙という法相の見解と、もう一つ、この問題の中にございました。いままで憲法をいいかげんに、いいように運用してきたというこの御発言は、ちょっとまずかろうと思います。これについての現在時点の総理あるいは官房長官の御発言をいただきたいと思います。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 奥野法務大臣に直接伺ったわけではございませんが、いまのいいように云々ということ、法律というものは、憲法はもとよりそうでございますが、ある程度抽象的に書いてございます。しかし、世の中は具体的にいろいろなことで変化をしてまいりますから、そういう抽象的に書かれたものをその限界の中において、具体的に変化していく世の中にどういうふうに適用していくか、そういう意味のことを言われたものと思います。  八三年の選挙云々につきましては、これは私から申し上げることではないと存じます。
  179. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、内閣が憲法改正を考えないと言っておるわけでございますので、その姿勢に疑いを持たせることは避けなければならない、こういう自覚はしているつもりでございます。  ただ、憲法制定から今日まで三十五年の年月を経ておるわけでございますので、当然その変化に応じて、今後の日本の進むべき道、憲法とあわせて各政党で考えておられるわけでございますし、自民党におきましても、憲法調査会を設けて鋭意この問題を検討されておるわけでございます。したがいまして、結論が出れば、次の国政レベルの選挙でその問題が提案されるべき性格のものだ、どういう一般論を申し上げたわけでございます。自民党に対する期待と申し上げましょうか、そういう一般論を申し上げたわけでございます。
  180. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はちょっと気の毒に思うのですけれども、奥野さんは信念の人ですから、ああいうふうに自分のお立場を弁明されようとする。それはよくわかるし、この場外だったら恐らくあなたの御意見を拝聴される方も多いだろうし、また別の議論のしようもあると思う。しかし、内閣の閣僚です。鈴木内閣の基本方針は、憲法に対する態度は、宮澤官房長官の御説明にもかかわらず、この間から何転もしているわけですね。もう二度も三度も弁明しなければならないような印象を与え続けてきた。そこでまたこれであります。それでは内閣の信が問われていく。私は穏やかに言っておるのですけれども、これは総理にお答えいただくしかないだろうと思います。  まず、八三年度の憲法改正かどうかというのは、総理の、鈴木内閣の基本的方針がどうか、そして、閣僚の発言を適当と思うかどうかをお答えいただきたい。  第二番目は、このような御発言がいろいろありますが、いままでの憲法の精神というのを厳格に執行していくのか、いいように、解釈によってはどうにでもなるように憲法をごまかしながら運用していくというような方向をおとりになるのか、その点だけはぴしっとお答えをいただきたい。  そして三番目に、閣内不統一の印象を与えないように今後どうしたらいいか、それだけをお答えいただきたい。
  181. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 第一点、八三年の参議院選挙に憲法改正を問うべきであるというようなことは、私は全然考えておりませんし、内閣としてはそのような行動は一切とりません。このことを明確にいたしておきます。  なお、憲法解釈につきましては、厳格にこれを行うべきものである、国の基本法でございますから、いささかもこの点について国民に疑惑を与えるようなことがあってはいけない、このように思います。  憲法九条の問題につきましても、わが国は独立国家として、自衛のための自衛権はこれを保持する、そのために最小限度の防衛力を整備をする、こういう観点に立ちまして自衛隊を持ち、そして「防衛計画の大綱」の線に沿いまして自衛力の整備を着実に行っておる、こういう方針には変わりはございません。  それから、今後の問題につきましては、このようにいろいろな雑誌等々から要求をされて、閣僚がインタビューに応じたりいろいろあるわけでありまして、後でそれが問題になる。私は、大変そういうことが――事前に相談があり、そして内閣として、それは行き過ぎである、誤解を与える、そういう形において、今後閣僚の言動につきましても十分慎重であるように期待をし、進めてまいりたい、こう思っております。
  182. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、今後どういうふうにいまの御決意が実行されるかということについて見守りたいと思いますし、また、同僚各位がその点は言及されることと存じます。  本日は補正予算審議でございますので、補正予算そのものをちょっと話題にいたしまして、次へいきたいと存じます。  まず、今回の補正予算を拝見いたしまして、税収の見積もりの問題がいろいろあるだろうと思っております。税収を正確に見積もるということは、適正な資金配分を行う上で欠くことのできない条件でございますし、税収が過小に、つまり非常に少なく見積もられますと、福祉予算が削られたり、その他問題点が多くなることは御承知のとおりでございます。  五十五年度補正予算原案におきましては、租税及び印紙収入を七千三百四十億円追加計上をしておりまして、当初予想よりかなり見積もりが少ないということはもう明らかであります。こういうような見積もりを続けているということはどういうことなんだろうか。特に、五十四年度の、前年度でありますが、補正予算でも一兆九千九十億円が追加計上されまして、五十五年の二月十三日、参議院予算委員会におきまして公明党の原田参議院議員から、余りにも金額が大きいというので追及されたところであります万五十五年度補正予算案における七千三百四十億円の見込みは過小と言えないかどうか。  さらに、三月におきましては確定申告や三月期決算法人の法人税でかなりの伸びがあることは、もういままで認められているところであります。十二月の税収は多少鈍っておるといたしましても、それでまた伸びがあるんじゃないか。  昨年度、五十四年度は一兆九千九十億円あって、その上に決算剰余金というのが三千三百三十五億円ございました。今度は七千三百四十億円の補正があって、決算剰余金がさらに出る。去年と同じであると思いますならば、一兆円は出るだろうと思われるわけであります。  このようなやり方というものは、非常に人を驚かせることはなはだしいものでありまして、私はちょっとおかしいのではないかと思うのでございますが、この辺の御見解からまず承りたいと思います。
  183. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十四年度につきましては、ずっと五十二年度の後半から五十四年にわたって、だれも考えつかなかったような実は景気の回復があったわけです。それが一兆九千億というような大きな数字になった。五十五年度に至りましては、そんな大きな数字ではございませんが、源泉税、特に利子所得、利子の引き上げ、こういうようなものをやったために、二千数百億円当然にふえてきた。  その他委細については政府委員をして答弁させます。
  184. 高橋元

    高橋(元)政府委員 七千三百四十億円の税収の増加額を今回御提案しております予算に計上いたしておりますが、その内容につきましては、いま大蔵大臣からお答えがありましたとおりでございますが、これは、利子が昨年の三月及び四月に合計一・七五%引き上げになりました。その関係で預金の利子の支払いが増加し、源泉所得税の増収があったものが約二千三百七十億でございます。  それから、昨年の十一月の段階で、経済見通しに合わせまして、雇用、賃金等を見積もりまして給与に係る所得税をはじいたわけでございますが、その後雇用者所得が当初見通しの八・七が九・七%の伸びと相なりました。それに伴いまして、給与に係る源泉所得税が千九百五十億円増収となっております。  法人税につきましても、物価上昇いたしますし、それから鉱工業生産の増加がございます等によりまして収益の増加がありまして、二千五百億円の増収と相なっておるわけでございます。  ただし、酒その他の間接諸税につきましては、昨年、五十四年度の最終で、いわば仮需要が発生いたしまして、五十四年度に五十五年度の税収が繰り上がったというような事情がございますので、今回補正減を計上いたしておる次第であります。
  185. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま七千三百四十億円の追加の内容について御説明のようなものがありましたけれども、ここで注目しなければいけないのは、そんな利子の分が二千億上がったなどということが問題ではなくて、給与所得に対する源泉分というのが大宗をなす源泉所得税が五八・九%を占めていることであります。この一年間に限って見るために。五十四年度補正予算と五十五年度補正予算を比べますと、源泉所得税において二二・二%増加しているわけであります。さらにさかのぼりまして五十三年度以降を見てみますと、五十三年度以降所得税減税を延期されておりまして、いわゆる物価調整減税というのが行われませんでしたから、五十二年度決算から五十五年度補正予算まで見ますと、源泉所得税は実に六六・一%ふえているわけであります。六割六分ふえているわけです。したがって、こういうふうに源泉所得税のところが急上昇していくということは、国民の中の基本的な不公平感というものを増強するものではないか。このようにふえるのだったら、五十五年度において税収を厳しく見積もりまして、物価調整減税さえも可能だったと思います。  こういうような源泉所得税の増収という異常な増収状態というものが制度的に生まれているわけでありますから、今後の自然増収については物価調整を行うという、まあ、そういう慣行をつくり上げることもどうか、この際、物価調整減税を考える必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  186. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 物価調整減税の問題につきましては、かねて再々答弁をいたしておりますが、課税最低限等が、諸外国と比べてまだ日本が非常に高い状態にある。一方、非常に現在財源難であって、あえて増税をもお願いをしなければならないというような状況でございます。そういうような状況の中でございますので、今回の予算におきましては、物価調整減税はお見送りをいただきたいということをお願いしておるわけでございます。
  187. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま、財源難だしとかいろいろおっしゃったわけですけれども、わが国において所得税の課税最低限というものがいままで低過ぎたんだ、また官房長官もNHKのテレビで、早く課税最低限を引き上げ過ぎちゃってえらい高いものになっておるというような言い方をいままでに何回もなさっておられまして、これ以上減税する余地というのは余りないと二度も三度も言われているわけであります。私は、それはちょっと誤解だと思います。  それはなぜかというと、国際的な課税最低限が日本が低いわけではないのは、日本の食料とか住宅の費用というものが外国と比べて非常に高いわけであります。たとえば、何回か応酬がありましたけれども、そのデータは古いとか国連職員のデータがどうとか、一々反論をされましたから、きょうは労働省のデータを持ってまいりましたよ、労働大臣。労働省の御説明によりますと、五十四年上半期、ドルの購買力で計算いたしますと、当時のドル換算が二百九円五十九銭でありますが、食料は三百八十五円、住宅費は三百三十八円、光熱費は二百二十九円へ被服費が二百五十七円、雑費は二百二十六円。つまり日本の場合、食料は一・九倍である、住居は一・六倍である、光熱費は一・一倍である、被服は一・二倍であるというのが明快に記されているわけであります。それを無視して課税最低限というものの水準が高いからと言うわけにはいかない。  税金というフローの部分でなくて、社会構造の差、そして住む家というものが非常に代価が高い、被服費がかかり、食料費がものすごく高いというわが国の情勢を勘案いたしますならば、このような所得税の税率というものは当然見直さなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  188. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大臣からお答えになられます前に、ただいまお示しのございました諸外国の実質的購買力の点について……。  私どもも常に国会でいろいろ御質問もいただいておりますし、所得税制についての見直しを常時行っておるわけでございますから、たとえば日経連でございますとか国連でございますとか、それからビジネス・インタナショナルでございますとかドイツの連邦統計局でございますとか、さまざまな資料を拝見いたしております。ただ、共通して申し上げられますのは、それらの指数の中に断り書きがございますように、たとえばヨーロッパの人間が外国へ行ってヨーロッパ的な生活をする場合のマーケットバスケットが幾らかかるかというような推計でございますから、ただいまお話してございますけれども、これをもって直ちに日本の所得税の課税最低限の国際比較というわけにはいかないのではないかというふうに考えておる次第であります。
  189. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 所得税におきましても、日本も、要するに一千万以上の階層はかなり高くなっています。特に二千万以上というものは、税率から見ても世界的にも非常に高い方の部類に入ります。ただ、一千万以下の、特に三百万、五百万というような普通のいわゆる中堅階層といいますか、そういうようなところは、かねて私が言いますように、三百万円で子供二人だったら、日本では所得税は六万六千円です。アメリカだと二十二万四千円です。イギリスだと五十六万八千円の税額です。しかしながら、それは円レートの見方が悪いとか、あるいは購買力で言えばそれほどではない、もっと、倍ぐらいではないかという御議論がございます。それでは、一歩どころか百歩を譲りまして仮に倍ぐらいだとしても、日本は十二万二千円ということでございますから、ほかの国よりもそれでも安いということも、これも現実であります。
  190. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この話はさして詰めなければだめだろうと思いますけれども、これは五十三年度の労働省の労働白書であります。名目賃金、実質賃金の国際比較を見てみれば、日本を一〇〇といたしまして、実質賃金日本が一〇〇、アメリカが二〇五・二、これは五十四年の分に換算してあります。そして西ドイツが一七四・五、これほど差があるわけであります。それなのに源泉所得税の方は全く一つも手をつけない。これは異常ではないかと私は思います。これほど大きな差があるのにそのままにしておくというのはもってのほかです。ワシントンにおける日本大使館が購入されましたとき、ワシントンの大使館の方ではなくて、あそこに居住する総領事の建物がありますけれども、六寝室大体十二部屋で千五百万円で購入がされました。数年前のことでありますが、当時日本でそれを買いますと一億円かかると言われた話を、私はワシントンへ行ったときにしみじみ思い出すわけであります。これぐらい住宅でも差がある。そういうわが国のお金の値打ちのなさというものの実感があるのに、それを言葉の上でごまかそうというのは、私は当を得ないことだと存じます。いわんや、そうした食料と物価の費用というものの大きな差を無視して、そうして一方的に源泉所得税だけに六六%というふうな極端にひどい税率アップを課して平然としているなどということは、許されないことではないのか。それでは国民の中に、いまの政府というものはわれわれサラリーマンに対して過酷だという印象が込み上げてくると私は思います。  本来ならば、当予算委員会で本予算の討議の際に、正木委員からすでにクロヨン、トーゴーサンと言われる課税の不均衡、不公平についてるる説明がされた時期なので、私はそれを避けて議論をしているわけでありますが、実際問題としてサラリーマンの課税は一〇〇%取られる。ところが、他のグループはそうではない。そしてこの率を見ましても、ますますその差は開きつつあるのが納税者の人口の増加でも明らかだし、そして課税される金額のパーセンテージ比率を見ても明らかだ。これほどの差があるのに何にもしないというのは問題だと私は思います。  特に問題なのは、五十五年の当初予算を組んだ際、安倍政調会長が、物価の値上がりの六・四%が実現しないときは所得減税を考慮すると堂々と言われました。すでに七%に修正され、このままの率でいくならば八%もおかしくないというほど物価が上がり始めております。そういうことを公言されているのに、この問題について検討の余地もないと言われるのは、私は冷酷きわまりない態度ではないかと思います。税金というのは民の膏血であります。血のにじむような国民の税金というものを用いる際にこれほど一つの大きな不均衡が存在しているのに、これをそのままにしていいかどうか、総理、御見識を伺いたい。
  191. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理 大臣先ほど来大蔵大臣からるる申し上げておりますように、現在の財政事情、また財源の問題、さらに諸外国との課税最低限の比較の問題、また、諸外国の中では消費税的な間接税を相当取っておる国もあるわけでございます。そういう点を総合的に勘案いたしまして、この際は、しばらくこの調整減税等の減税を御猶予を願いたい、御勘弁を願いたい、こういうのが政府の考えでございます。
  192. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、政治の要請は乏しからざるを憂えず、等しからざるを憂えると、あなたはいままでの間にも何回かそれを述べられました。私は、その等しからざるところが最近拡大しつつある、ますます等しからざるようになってきた、そこのところをいま問題にしようとしているわけであります。どうか御勘弁をいただきたい、増税のときにそれこそぬかずいてお願いするのが課税当局の精神だろうと私は思いますが、その不均衡が存在したままで、さらに拡大している中でそれをお願いするというのは、遺憾ながら鉄面皮と言われても仕方がない。私はそれを思うと胸の中が熱くなる思いがいたします。私は細かいことを論じているのではなく、そのような大きな課税の不均衡が存在している中で、少なくとも国民が、その不均衡はこの辺で見直しを開始したのだなとか、何かの意味でみんなが傷が痛んでいるのだなとか、そういう物の思いが国民に通ずるようなものであってほしいと思います。ところが、ないじゃありませんか。ただ、がまんしてくれと言うだけだ。サラリーマンがこうした言葉を聞いたら何と思うでしょう。私はそこを言っているわけであります。今回の課税のそうした実施というものは、余りにも私は安易をきわめておったと思います。そしてその安易をきわめていたときに、この分の物価調整減税というものが全くなし、ゼロ。物価調整という言葉は私は余り妥当ではないとは思うけれども、こうした極端に、ある階層だけが課税の水準が上昇しつつあるという事態に対して、何らかの配慮をし、検討するぐらいの言葉があってしかるべきではないか、私はそう思いますが、鈴木総理、あなた、どうお考えでございますか、重ねてお尋ねいたします。
  193. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げたように、確かに四年間据え置いておるわけでございますから、税負担がその階層にかさんできておるということは私もよく承知をいたしております。ただ、こういう際でございまして、私どもは、財政再建という立場からいろんな経費の節減も図り、そして実質的な予算の伸びを四・三%というようなぐあいに極力抑えまして予算編成に当たっておるという事情にございます。そういう観点から、この点を御理解を賜りまして御協力をいただきたいというのが私の考えでございます。
  194. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理に私はつらい答弁を求めているわけでありまして、私は、どなたが総理をなさっても、この問題に対するお答えはきわめてつらいものになるだろうとは思います。しかし、これに対しては何らかの対応がなされなければならないし、そうでなければ、わが国の安定は大きな打撃を受けるだろうと思います。  今回の政府の税収見積もりについて、もう一つ疑問があります。それは当初予算における「税制改正の要綱」「租税及び印紙収入予算の説明」でそれなりに「各税の見積り方法」というのが掲載されております。しかし、補正予算案では、税収の見積もりが変更になっても説明資料が添付されていないわけであります。もちろん、「昭和五十五年度補正予算の租税及び印紙収入見積概要」については承知いたしておりますし、これはこれなりに評価しているわけでございますが、当初予算のそれと比べましてきわめて不親切であります。たとえば給与所得に対する源泉所得税を見ましても、給与総額を対前年度九%増としたのを一〇%程度増とすることだけ修正されておりますが、納税人口とか各控除額等の説明はございません。申告所得税につきましても、業種別に納税人員等一切触れられておりません。こうしたものは資金配分や財政再建の上から見てきわめて重要でありますし、これは補正予算の説明と同時に提出なさるのが本当ではないか。だから、ここのところで補正予算審議をしようとしても材料がない。どういうふうに見積もられたかわからない。そして結局、源泉所得税だけは九%増が一〇%増になりましたよというだけで、たくさん取りますよというだけではありませんか。前々からの方針も痛ましいのに、補正のところへ来て、さらにもうちょっと取りますよだけで突っ放すとは、これは余りにもひど過ぎるのではないか。私は重ねて、所得税の再検討を、所得税の課税最低限の引き上げを含めまして再検討をなさるとともに、こうした資料の不十分さについて今後御反省をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  195. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 重ねての強い御要請でございますが、たびたびいままで理由はもう申し上げておりますから、くどいことは申しませんが、今回の予算につきましてはとうてい所得税の減税をする余裕がございませんので、御了承を願いたいと存じます。
  196. 渡部一郎

    渡部(一)委員 資料提出はどうですか。
  197. 高橋元

    高橋(元)政府委員 一月二十八日に「昭和五十五年度補正予算の租税及び印紙収入見積概要」を御提出したわけでございますが、ただいまその内容についてもう少し詳しく記載せよという御趣旨もございましたので、私どもで検討さしていただきたいと存じます。
  198. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先ほど、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合で「物価対策についての申入れ」を行いました。  それによりますと、例の五百億のお金の件でございますが、野菜対策といたしまして二億円が支出されることになっておりますけれども、物価抑制に不十分でありますから、「一、野菜対策」として、「並級野菜の出荷促進対策の対象野菜品目に白菜を追加するとともに、対象市場の拡大も考慮すること。(2)三―四月にかけての野菜価格安定のため温暖地域の冬春野菜生産出荷の対象野菜品目をほうれんそうだけでなく、巻物葉菜類に拡大すること。(3)緊急輸入促進の対象野菜と数量を可能な限り拡大すること。」それから「物価情報の提供」として、「生活必需品について、生産出荷、入荷量や価格についてもテレビ、ラジオ、日刊紙、テレホンサービス等を通じ物価情報の提供を拡充し、消費者の選択によって物価抑制につながる施策を充実すること。」等、あと「公共料金値上げの抑制」「円高差益の還元」「別途物価対策費の有効活用」等、申し入れているわけでございますが、これについて政府に御検討を迫っているわけでありますが、簡単で結構でございますから御回答をいただきます。
  199. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 四党合意のいわゆる五百億の話でございますが、いままでも四党で合意したものについては、政府といたしましてもできるだけ誠意を持って支出をしてきたところでございます。したがいまして、今後、三党でなくて四党で合意をされまして、効果的なものがございますならば、誠意を持って対処したいと存じます。
  200. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さて、少し時間がなくなってきましたので飛ばして申し上げたいと存じますが、政府の歳出削減に対する今回の態度を見ましても、五十七年度大型消費税の導入が必至になってしまうのではないかというような感じが濃厚にいたすわけでございますが、国会では、五十四年十二月二十一日、財政再建に関する決議を全会一致で行いまして、一般消費税の導入を否定いたしております。政府税調の中期答申では「広く消費に着目する間接税」の導入を提言しておりますが、国会決議は、こうした「広く消費に着目する」大型の間接税などを否定していることだと私どもは理解しているわけでございますが、それについて総理の明快な御答弁をいただいたことはございませんので、この場をかりまして、ひとつ明快にお答えをいただきたいと存じます。つまり、五十四年十二月二十一日の財政再建に関する決議の中で、一般消費税(仮称)の導入を拒否しているのでございますが、総理はどうお考えでございますか。
  201. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 政府はまだまだなんですが、大蔵省としても、五十七年度でそういうような税を導入するというふうに決まったわけではないわけでございます。ただ、税制調査会の中期答申というものから考えて、今後の財政基盤の確立、つまりはいろいろ予想される財源のいろいろな出費のための準備、財源の確保、こういうような点から、広く消費一般に着目した税についても検討すべきじゃないかという答申が出ておる。したがって、この答申をわれわれとしては、答申が出ても全然見ないで通っちまうというわけにはいかないじゃないか、これはやはり非常に重要な問題の一つとして検討はしなくてはなるまいという程度のことでございまして、今後それをどうするかということは今後の問題でございます。
  202. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま申し上げたことは、国会決議を尊重するかどうかということを聞いているわけですよね。国会決議とこの税調の答申とはちょっと違っているわけでしょう。だからこれは言い逃れているわけです、この間から。だから、偉い人にちゃんとした答弁をしてもらいたいと言っているわけ。総理、お願いします。
  203. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、一般消費税に対しまして国会があのような決議をされておりますこと、これを重く見ております。これは今後政府として十分尊重していかなければならない。一方、政府の税調で御指摘のような提言がありますことも承知をいたしておりますが、政府といたしましては、国会決議の御趣旨を踏まえながら、幅広い観点から今後の税制のあり方等につきましては慎重に検討してまいりたい、こう思っております。
  204. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これはかなり矛盾した話で、税調の答申を得られましたとき、私は、大蔵委員会の税の小委員会におきまして税調の会長から答申の御説明があった際、あなたの言われているのは一般消費税(仮称)を無視してこういう答申をなさったのですかと聞いたのです。そうしたらこの方は、一般消費税(仮称)というものは特殊な、あのとき国会に出そうとした特殊な文章のものであって、税調で言う「広く消費に着目する間接税」というのはその項に触れないと理解いたしております。なお詰めましたら、そういう意味のサゼスチョンがあった旨の御返事をされたのであります。  これはまさに言い逃れのたぐいでございまして、私は、その意味では税調の答申というものは、断固一般消費税をやる、ただし、この間出されそうになった一般消費税(仮称)という特定のものはやらないというペテンの上に答申が行われたものと思います。こんな答申と決議が衝突するようであっては、そしてそれを、そのような言い逃れの中で税調の答申を取りつけて次の一般消費税を強行しようとなさったら、国民の憎悪というものは大きな紛糾を招くだろうと思います。だから、こうした言い逃れで税の問題、特に大きな消費に着目する税のような問題を扱うことは、私は現実問題としてとてもできないだろうと思います。  だからこそ、いま総理に対して私がお伺いしているのは、そういう小細工に満ちた問題の扱い方ではなく、まず財政再建に関する決議を尊重するとともに、この「広く消費に着目する間接税」の答申が税調で行われたわけですから、その答申をどう取り扱うかをいまにじり寄って伺おうとしているのです。答えの次第によっては大暴動が起きるでしょう。これは重大問題なんです。こんな細かい言い逃れでうまくやったとか、野党をひっかけてやったなんということを宣伝なさった方が現におるわけでありますが、私は、そういう小細工は大政党の領袖のとるべきところではないし、総理のとるべきところでもなかろうと思っているので、もう一回お尋ねいたします。
  205. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、財政再建は、肥大化してきておりますところの行財政、これに十分メスを加えて、その減量化、合理化を図る、そういう点を財政再建の基本に据えて考えておるわけでございます。しかし、五十六年度一年でそういう問題が解決するかというと、なかなかむずかしい問題でございます。  たとえば、一般歳出の七十数%を占めるところの福祉関係予算あるいは学校関係の教育費、そういうようなものは大部分が法律による補助金、交付金等になっております。こういう点は、国会全体の御理解と御協力を得てやらなければ、それにメスを加えることはできない。私は、腰を据えて国会の御理解、御協力を得ながらそういう問題に取り組んでいく、これが基本であると考えております。いたずらに、いまおっしゃたような税、それにウエートを置いて財政再建を図ろうという考えは持っておりません。あくまで国会の御決議の趣旨というものを十分踏まえながら、いま申し上げたような考え方の上に立って財政再建を進めていきたい、こう思います。
  206. 渡部一郎

    渡部(一)委員 りっぱな御意見を表明されました。私、憲法の案文を見ているような思いがするわけでありますが、これはきょうはそのままにお話を承ることにいたしまして、その御決意に基づかれまして財政再建のために御努力いただきたいと思います。私も、政府のことをただ批判しているのではなく、税務の問題について私、大変最近心配をいたしております。それはいろいろな穴があり過ぎるからだと思います。  まず課税の、税務制度も悪いのですけれども、執行上の不公平が極端化いたしておりまして、国民の怨嗟の的になっております。特に気に入りませんのは、税務の査察さえなければ税金というのは払わなくていいというように言う人がふえつつありますし、伺うところによりますと、平均して二十年に一回査察が行われている程度である。また、査察してみると、七八%の人が実質上税務の修正をしなければならない、あるいは罰金を科せられなければならないというような状況である。税務職員はここのところ非常に多忙なのに、さらにグリーンカード等でいろいろな用事が課せられておる。残業が物すごい時間に到達していて、とてもやっていけないということで、現場では悲鳴を上げております。  これに対して国会では、第八十回国会、八十四回国会、八十七回国会というふうに、これは所得税法、措置法等の審議の際、附帯決議が付せられております。大体趣旨は、「変動する納税環境の下において、複雑、困難で、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事している国税職員について、」処遇の改善、定員の増加等に配慮せよというのが、いずれも同様の趣旨であります。  総定員を抑えるということは、国会の場合に非常に大事なことではありますけれども、人数を切ればいいというものではないと思います。しかも、一人の職員を増加させる場合に、これも討論の中に出てくるわけでありますが、税収がどれぐらい上がるか。一人をふやすと、そういうのは言いにくいけれどもとおっしゃって、課税当局から、五千万円がふえる。いま税務職員の間から言われているのは一万人の増員であります。緊急で一万人ということは、五千億の課税が行われるということが予想されるものであります。ところが、本年はプラス・マイナス・ゼロ、前年度に至っては逆に減少いたしたわけであります。私がさっき、国会決議を守りますかなんてくどくど聞いておりましたのは、政府は少なくともその国会決議を尊重する立場であります。その国会決議を尊重するお立場なのにこうした職員については削ってしまう、あっさり葬ってしまうというのでは、さらに国政のゆがみを生ずるであろうと私は心配をいたしておるわけであります。  大蔵大臣は、この人数をふやす問題について、自分でお願いをして自分で査定をしなければならぬ立場におありになりましたから、私は大蔵大臣にお答えをさせるのは気の毒ですからきょうは言いませんよ。特別サービスをいたしまして、あなたに聞きません。  総理、こんなことはちょっと困るのだな、こういうようなやり方は。この点を御配慮いただいてしかるべくしませんと、毎年こういった調子で、ここ数年減少もしくは停滞現象を示しておる。私は、それは余りよくない環境だと思います。というのは、国民の中に、ごまかせば幾らでもごまかせる、中小企業の人たちが十人集まれば、必ず話の中では、税務署をいかにごまかしたかということがお互いに話し合われているという状況は、私は日本国家の税制としては問題があろうと思います。この点どうお考えになり、今後どう指示をなさるか、お尋ねをしたいと存じます。これは大蔵大臣、言わなくて結構です。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 税務職員をふやすべきであるという御議論は前から私たちも耳にしておりまして、われわれも大いにその線で努力したいと思っておるところでございます。  しかし、何しろ定員を厳格に抑制するという政府方針がございまして、昨年の十二月の末の閣議決定でもこれを再確認したところでございます。しかし、その中においても税務職員につきましてはできるだけ考慮したいと思いまして、大蔵当局ともいろいろ交渉し努力も願いまして、大蔵省の内部におきましてできるだけ税務署の方へ人間を回してもらって、そして大蔵省全体としては数をふやさないように努力してもらえないか。ほかの各省庁におきましては実は軒並みに数を減員しておりまして、概算を申し上げますと、一般の行政職から約千百人の人間を減らして、それから五現業から同じく千百人ぐらいの人間を減らして、それを国立大学と医科大学等にどうしても回す必要があるので、そちらへ回したわけでございます。ほかの省庁では減員をネットでも相当やっておるのでございますが、大蔵省は国税の方へその分はお回しなさいということで内部努力をいたしまして内部の操作において国税の方へ回していただく。結局大蔵省としましては全体として減になっておりますが、国税につきましては大体プラス・マイナス・ゼロ、結果的にはそういう結果になりました。これが現段階における精いっぱいの努力でございまして、将来につきましてはまた将来の情勢に応じて考えていきたいと思っておる次第です。
  208. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ああいう御答弁だから結局ふえなかったわけです。ああいう御答弁だから税務職員は倒れかかっている。ああいう御答弁だから不公平はますますひどくなってきつつあるのです。いままでのシステムからいけば、あの御答弁は正解以上の正解の御答弁だと私は思います。りっぱなものだ。だけれども、そういう通常ルールを延長していく考え方で物事がいく場合と、通常ルールではだめな場合とが世の中にはある。総トータルで人員数は各省庁みんな締めているのだ、大蔵省でも締めているのを融通しながらやってくれ、それはそうなんです。そうなんですけれども、それじゃやっていけなくなっているから基本的な改正が必要なわけですね。私はそこに、総理の見識と強いリーダーシップが要求され、各省庁大臣の大リーダーシップが必要とされると思っているのです。  私は、行管庁長官にそのリーダーシップがないとは思わない。あれはりっぱな人のはずです。しかし、恐らく時間が足りなくて今度はそこまでやらなかったのでしょう。ぼくはそう思うしかない。そして、渡辺大蔵大臣だって大変なリーダーシップの持ち主ですよ。鈴木総理は私は知りませんけれども、きっとおありになるものと私は信じております。こんなことではしようがないじゃありませんか。それで総理は、行管庁長官に答えさせておいて、にっこり笑って座っていられたんじゃいけません。ここはあなたが何かおっしゃらなければいけないところじゃないでしょうかね。どうでしょうか。
  209. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 税務職員の諸君が大変苦労されておることは私も承知をしております。そういう点には重点的に配慮すべきだという渡部さんの御意見、よく私も理解ができるところでございます。しかし、いま全体として行政の簡素合理化、許認可事務の整理等々、いろいろ工夫をこらしておる段階でございます。今後におきまして御趣旨を十分踏まえまして、改善すべきところは改善していきたい、こう思っております。
  210. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ついでに申し上げておきますけれども、これはお答えは要りませんが、税務署の申告書類はめんどうくさ過ぎますよ。現にあの書類の小さな欄というのが、ここの大臣席に座っている方には見えないと思います。私はかなり目のいい方ですけれども、申告書を書く段になるときわめて困難を感ずる。しかも、折り畳んであるのを後ろの方から書いて表をひっくり返すといいようになっているなんて、まるで千代紙みたいな仕掛けがあるのです。そんなことは普通の人は御存じない。しかも、控除なんという言葉は普通の人にとってはわからない。そして、千の欄掛ける三、三の欄掛ける四、四の欄足す五、三の欄と五の欄を足して七の欄で引くなんというそんな計算が、それは学校の試験ならともかくとして、そんなのはナンセンスである。そして、ページが小さ過ぎるから扱いかねておる。ぼくはあれは、みんなが税金を払う段になっていやになっちゃう気持ちを起こさせる一番ひどいものだと思いますね。すでに御研究もいただいているようですからこれ以上言いませんけれども、直していただきたい。  それで、税務職員がぱっと見たらわかるような書類にしなければしようがない。いまじゃ何が何だかわからないわけですね。私は、これは不必要な労力を不当にかけた典型的な例だと思います。もっと簡単でなければどうしようもないですね。税理士まで間違う税務書類なんというのは笑い話だよ、私に言わせれば。これじゃもうしようがないんじゃないでしょうか。総理、この辺も十分活眼されまして、現場の大きな叫び声というものを大蔵大臣ともどもやっていただきたいと、お願いいたします。これはやってくださるように首を振っておられますから、もう私、答えを求めません。  それからもう一つ、会計検査院の話をいたします。  会計検査院は、ただいま千二百二十四名で、今年画期的な御措置で、税務署がふえないのに二名ふえまして、千二百二十六名になったわけであります。まさに画期的と申し上げてよろしいかと存じます。ととろが、検査されている出資団体として公社、公団百十法人全部、国の各機関の会計検査全部、補助団体として年に五千カ所ぐらいやっておられるそうでございます。ところが、すべての個所といいますと四万二千カ所ぐらいあるそうでございまして、大きなところでは検査の施行率は三〇ないし三三%、小さいところは八%にしかすぎないそうであります。そして、その結果といたしまして、もう私の方でどんどん言ってしまいますが、不当事項というのが二百三十億、それから余り感心せぬというのが三百三十億、多少むだじゃないかと思われる多少というところが約五千億というような、合計五千七百億程度のものが指摘されているわけであります。したがって、簡単に言いますけれども、アメリカの会計検査院のように事前にチェックがされるならば、五千七百億そのままとは言わぬまでも、大分節約になることは明らかであります。こうしたところこそ人員を増強し、また、こうしたところこそ調査官を増員して、より適切な運営をするということに力こぶを入れなければならぬと思います。  会計検査院の方からおいでになっておられますから、この人員の増加について、会計検査院はどういう恥気持でおられるか、また、現在の業務は私の言ったとおりかどうか、その辺、簡単で結構でございますが、御説明いただきたい。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  211. 藤井健太郎

    ○藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、五十五年度予算定員は千二百二十四名でございます。そして、今回御審議願っております五十六年度予算の中にさらに二名の実員増が含まれているわけでございます。  確かに人員の少ないという点につきましては、近年、財政の複雑化あるいは膨大化が進行する中で検査密度の低下を招くおそれがないように、私たちといたしましても毎年、財政当局に対しまして人員の増をお願いしているところでございます。これに対しまして、定員の抑制という国策のもとにありましてもやはり御協力いただきまして、昭和五十年度以降計十二名の実員増をいただいているわけでございます。  なお、私たちといたしましては、さらに検査機能の充実ということに配慮いたしまして、今後とも人員増をお願いしていく予定でございます。
  212. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、いまお聞き及びのとおりでございますが、会計検査院というのは、要するに欧米型の場合は非常に大きなお役所で、かつ、政府に対しても独立している機関であります。私は、きょう会計検査院の院法を変えると申し上げているわけじゃありません。少なくとも日本型の会計検査院をもう少し重視する姿勢をとりませんと、これほど財政が厳しいときには、ふんまんというようなものがそういう点で爆発する可能性というのはきわめて高い。また、別の意味において非常にりっぱな、ある意味では育てなければならないお役所の一つだと思います。きょう、税務の方も会計検査院もふやす方ばかり申し上げて恐縮ですけれども、こういうところに着目するということはこういう時期だからこそ重要なんじゃないか。これは従来型の人数を一人ふやす、二人ふやすじゃなくて、これも先ほどの表現を使えば強いリーダーシップによりまして一歩前進、本質的な見直しというのが必要な時期が来ているのじゃないか。その点、総理の御答弁を求めます。
  213. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今日、いろんな情勢からいたしまして、会計検査院の強化、この機能の充実ということが求められております。政府としてもこの会計検査院の機能充実、こういうことを今後大事に考え、そういう方向で対処していきたい、こう思っております。  第二臨調等におきましても、これらの問題は行政の姿勢を正す、綱紀の粛正を図る、また合理化を図る、そういうような面からいたしましても、会計検査院等の機能の充実、体制の整備ということは重視していかなければならない、こういう基本的な認識で今後取り組んでまいります。
  214. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に私は、今度は節約の大きな話を一つ申し上げたい。  これは余り言われない話でございますが、厚生大臣の厚生業務と関係がございまして、大蔵大臣は厚生業務に非常に御関心が深くて、予算委員会で御発言になったのも承っておりました。私は大臣が述べられたこととちょっと違いまして、これは私の方に主計局からいただいた五十六年度予算についての説明書であります。この中を拝見しまして、私はちょっと妙なことに気がついたわけであります。  それは、医療費についていろんな配分が行われておるわけでありますが、いま医療費が急激に増加中であります。そしてその医療費の総額がいま十兆円とか、そのうち三兆六千億は薬代とかとんでもない話があるし、検査づけだとかいろんな問題がごちゃごちゃしておる。それについての議論はきょうは控えたいと思います。  というのは、私が見るところ、これは二言にして言うと、病気になってから治療する体制で組まれておる。だから、この「医療費支出の適正化対策の推進」という、今後やっていく医療費というのを適正化していくためのいろいろなのがあるんですけれども、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘとあるんですが、相談体制の整備というのが最後につけ加わっておりますから、それが多少そのニュアンスはあるかもしれないが、医療費で一番でかいのは、病気になって重くなってから治療するほど医療費というのは上がる。早いうちに治して健康を維持しておけば安くいく。これはもうあたりまえのことです。しかも、それは安上がりとか高いとかという問題ではなくて、国民の幸福の問題と関係してくる。だから、予防を徹底的にやって健康保持のためにうんとお金を出す、そうしておいて最悪の場合に治療していくというふうに、業務を分けていく考え方が必要だと思いますし、しばしば当委員会でも触れられたところであります。ところが、この中には、私は、遺憾ながらその予防に対して一歩前進されたところが見えないといいますか、余り数字的にはつけられていないように思います。もっとも、治療のところの金額が余りに大き過ぎますから、ネグリジブルスモールで見えなくなってしまう可能性もあります。  総理の御出身の岩手県というのは、健康保険の運動が全国で一番早く起こったところでありまして、その中には予防を前進的に行い、国民保険の給付率というものを現行の制度とは違って、何と家族も本人もことごとく十割にしたという先駆的な例をお持ちの村があると承っておりまして敬意を表しているものでありますし、また、ある種の企業の健保組合のところにおきましては、予防に全面的に力をかけることによって、これまでの給付というものの実質金額というのを三〇%、四〇%のランクでデパート協会等切り下げた実例があるように私は聞いておるわけであります。  したがって、まず厚生大臣にお尋ねしたいのでありますが、今後、将来の方向といたしまして、治療の方に重点のかかっている医療制度というものを予防及び健康保持の方向へ向かって一歩前進させることが必要なのではないか。もちろん多大の御見識の方でございますから、多数のお答えがあるのは承知しておりますが、その基本方針について御所見を承りたい。
  215. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおりでありまして、全国の市町村の中で、病気の治療よりも予防、健康管理に重点を置いて金を使い、実際成績を上げて、各市町村が保険財政で困っている中に、わりに楽な運営をしているところがございます。かつまた、全般の趨勢から言っても、病気を治すということから、病気をつくらない、それからさらに進んで健康な人をつくる、健康な老人をつくるということを重点に持っていくことは当然でありまして、今般、国会に御相談をしようと思っております高齢者の保健医療の問題も、それが一つの柱になっておるわけであります。かつまた、他の一般医療の問題も逐次その方向に変えていくべきであると考え、いまお願いをしている予算におきましても、八・九%以上の健康管理の増加を見込んでおるところでございます。
  216. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大蔵大臣、この問題は大蔵大臣にぜひ伺わないといけないと思います。  私は、いま仰せになった方向というのはきわめていい方向だと思います。むしろ大蔵大臣は、自分が大蔵大臣御在職の中でその方向に向かってもっと推していただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  217. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大蔵省は各省の予算の要求を待ちまして、それで相談をしながら限られた予算の中で予算づけをいたしております。したがいまして、厚生省から御要望のあった点については、そういう面においても十分配慮したつもりでございます。
  218. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは総理、ぜひ御返事をしてください。
  219. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘のとおり健康管理、健康の増進ということがきわめて大事だ、こう考えております。私はかつて自由民主党の医療基本問題調査会長の際に国民医療対策大綱というものを作成をし、発表をいたしましたが、その根幹は健康管理、健康増進というところに置いてございます。全く同感でございまして、そういう方向に進むべきだ、こう考えております。
  220. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次は、グリーンカードの問題です。  大蔵大臣と郵政大臣がグリーンカードをめぐってさんざんけんかしておられたのは、新聞紙上を通して承知しております。問題はこうです。郵便貯金へ向かって銀行等の預金が猛烈に大きくシフトしたということが、もう数字の上で出ております。そして、その問題について町の中では、どういう決着が行われたかを存じておりません。まだ両省では闘い合っているのかと思っておる方さえおるわけであります。率直に言って、中小企業者からわれわれのところへ、先生、郵便貯金が得ですかとか銀行預金が得ですかという御質問がまだ多数ございます。両省は一応の合意をされたとは思いますが、両省大臣ともにこの場でお答えをいただきたい。つまり、銀行から郵貯への一方的なシフトというのはおさまったのかどうか、今後再発の可能性はないのかどうか、どちらが得かなんということがあるのかないのか、その辺のところを両大臣から、庶民にわかりやすい言葉で言っていただきたい。
  221. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 郵貯は昨年の春以降、グリーンカード問題を契機といたしまして、金利の先安感の台頭に伴って長期の高利回り金融資産に対する選好の強まりなどを背景にして急増したということは事実でございますが、その後、年明け後は、最近ですね、増勢はやや落ちつき気配であるということでございます。  けんかをしたというわけではありませんが、要するに、郵貯にしておけば税金がかからない。それで、今度グリーンカードという問題が出たときに、銀行なんかみんなわかってしまうが郵便局ならわからないのかというようなこともあったのです。しかし、そういうことは困ります。三百万円だけ非課税にするというのは、郵便局は三百万円までしか預け入れできませんという法律があって、それ以上預け入れしないという前提があるわけです。ところが、巷間聞くところによると、どうも三百万以上でも預けている人があるんじゃないか、それでは不公平になるではないかということから、一般の民間機関に預け入れしても郵便局に預け入れしても、税金がまけてもらえると言ってはなんですが、無税になるのはどっちも三百万ですよということにしないと不公平になるという点からグリーンカードという問題が出てまいりまして、これにつきましては大蔵、郵政両省間で、五十九年以降の郵貯の限度管理については、五十八年から預け入れても、五十九年度以降は、その五十八年いっぱいに預け入れた分も含めて、五十九年以降のものは当然だけれども、いままでに入ったものもグリーンカードの番号によってきちんと限度管理を行う、こういうように話し合いがついたわけです。したがって、どっちも公平にできますから、郵便局に入れたから税金がかからない、市中だからかかるというのでなくて、条件はそれによって平等になる、こういうことでございます。また、そのように運営をしていかなければならないと考えております。
  222. 山内一郎

    ○山内国務大臣 ただいま大蔵大臣からお答えしたとおりでございますが、いろいろグリーンカードの導入をめぐりまして、まずその三百万円のチェックを、従来郵政省がやっておりました住所と氏名による名寄せということを言っておりますけれども、それによって今後もやっていくべきか、グリーンカードの制度ができたんだからその番号を使ってやったらいいじゃないか、こういう点で多少いろいろ議論をいたしましたけれども、現在はグリーンカードの番号によってチェックをしていく、こういうことで合意をしているわけでございます。
  223. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に怪しげな表情で引き下がられまして、きっとまだ言いたいことはたくさんおありなんでございましょう。これは後で逓信委員会でぎりぎりと聞かせていただきたいと存じております。一応、両大臣、調子を合わせてお答えになりましたから、許して差し上げたいと存じます。  さて、ところが実際問題から言いまして、過去にいろいろな事情で他人名義とか架空名義とか無記名で預金してしまった事業者というものも数多くあると思います。こういう人たちが、総合課税移行とグリーンカード制度の実施によりまして心配をしたりあわてたりされているというのは、余り感心したことではないと思います。  昨年三月二十一日の大蔵委員会におきまして国税庁長官は、「国税当局といたしましては利子配当の総合課税というものが適切に行われますように、やはりそこには無理のない実情に即した税務執行上の配慮といいますか処理をしていく必要があろうかと思います。」「かつての名古屋方式というものを十分参考にしながら無理のない形でこの新しい制度の移行に持っていきたい」と答弁しておられますが、これは名古屋方式という言葉でやわらかく包んでありますけれども、かなりのことを言われているわけであります。では、この辺はどういうようにされていくのか、まさに私どもが聞きたいところでございます。
  224. 渡部周治

    渡部政府委員 お答え申し上げます。  グリーンカード制度を実施するに当たりまして昨年の法案の審議の際、当時の磯邊長官から、いわゆる名古屋方式にも触れられながら、この制度の円滑な実施のためにいろいろ考えていきたいという発言をしておるわけでございます。  この問題は、グリーンカードの交付が五十八年一月から始まるわけでございます。また、総合課税の実施が五十九年一月から始まるわけでございます。現在、グリーンカード制度の細目につきましては、まだ未決定な部分がございまして、その詰めが行われておる段階でございます。そのようなことで、まだわれわれは成案を得ておりませんけれども、お尋ねの場合のような対応につきましては、今後グリーンカード制度の細目と並行して検討してまいりたい、このように考えております。
  225. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、課税当局というのが、まことにやわらかいと申しますか、非常にソフトな対応をしておられるわけでありまして、私はこの際、海外に一挙にこうした資金が移転いたしましたり、あるいは宝石貴金属をめぐって狂乱したり、下手すれば不動産に殺到したりというような大騒動が起きないことを希望し、適切な処理が行われるよう期待したいと思います。  私は、利子配当の総合課税が税負担の公平を求める上からも絶対に必要だと思っているわけであります。特に、このグリーンカード制についていろいろ言われておりますが、少額預貯金者の保護という姿勢については、これは崩していただきたくない。実施面に当たってはいろんな問題点があるのはわかっておりますが、その基本的な部分についてこれを間違いなきように運用していただきたいと思うのでございますが、最後に御決意を承りたいと思います。
  226. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 もともと、このグリーンカードという話が出たのは、要するに、分離課税だと非常に得する人があるじゃないかというような話で、総合課税にすべきであるというのがスタートなんです。ところが、一方においては、グリーンカードを非常に細か過ぎるとかなんとか言う人がございますが、両方満足させるわけにはいかない。したがって、やはりきちんと、長期の定期等について得られた所得については、三百万なら三百万というものは平等に非課税にするが、それ以上のものについてはこれは総合課税にするという方針でございますから、そういう社会的公正の確保が一方でとれるようにして、少額のものについては十分に配慮してまいりたい、かように考えております。
  227. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしたら、次にちょっと言いにくい話を言いたいと思います。それは多国籍企業の課税についてであります。  これはまことに言いにくいのでありまして、私の質問を聞いてあの手でもうけようと思う人があると困るので、わからぬように質問いたしますが、これは大変問題でございまして、最近、いわゆる多国籍企業の活動の活発化に伴い、国際取引を通ずる租税回避行為が増加してきていると言われております。各国におきましても、これにそれぞれの対応策を講じておりまして、わが国におきましても、五十三年税制改正の際、税負担の著しく低い国、いわゆるタックスヘーブン、税天国にある子会社との取引に通ずる租税回避行為に対応するためタックスヘーブン税制が導入されたところでありますが、まず、その制度導入後の課税がどのようになっているかをお尋ねしたい。  それからもう一つ、このタックスヘーブン税制というのは、タックスヘーブンにある子会社の留保所得を日本にある親会社の所得に合算して課税することによりまして租税回避行為に対処しようとするものでありますが、最近の多国籍企業の活動を見ますと、製品や技術の輸出に際しまして製品価格を故意に操作する。たとえば税率の高い国にあるところの子会社には低い価格で出す、税率が低い国に存在する子会社のところには高い価格で出すことによりまして、グループ全体としての税負担というのをぐっと減らしてしまう、こういういわゆる移転価格操作、トランスファープライシングと言われる租税回避行為が目立ってきておりまして、これに対してはタックスヘーブン税制では対処できないのであります。というのは、日本のタックスヘーブン税制というのは初めから、そういう悪いことをするやつはいないのだという仮想のもとにつくられているという事情があるからであります。  海外子会社を通じて巧妙に取引を行えば税負担が少なくなるということは、税負担の公平の原則から見て非常に問題が多く、真剣な対応をされなければならぬ、こういうわけでございまして、国税庁としては、諸外国におけるこうした移転価格操作による租税回避行為に対して、制度上、執行上、外国ではどうやっているかをまずお尋ねをし、外国においては措置を講じているが、わが国においてはこういうものを把握したらどういうように対処するかをお尋ねしたい。  まず、そこまでにいたしましょうか。三問お願いをいたします。
  228. 渡部周治

    渡部政府委員 お答え申し上げます。  タックスヘーブン対策税制によりまする現在までの申告状況でございますが、私どもで大法人を所管しておりまする国税局の調査課所管法人に係りまする昭和五十四年七月から昭和五十五年六月までの申告の分は、現在課税申告のあった親会社数が二百二社でございます。課税対象の留保金額は百十億円でございます。  なお、このタックスヘーブン対策税制に対する調査でございますが、これは現在、昭和五十五事務年度から実施をいたしておりまして、まだその結果の計数は出ておりません。
  229. 高橋元

    高橋(元)政府委員 一九六〇年ぐらいからヨーロッパ、アメリカを中心にしまして、いまお話のございましたようなトランスファープライシングということが大きな問題になってきたわけでございます。いまもお話のございましたように、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、それぞれの国で、移転価格操作による租税回避を防止して適正な課税を行う、こういう目的で税制をつくっております。  それらの統一的な運用につきまして、OECDの租税委員会を中心にして移転価格対策税制のあり方について検討を行っておりまして、一昨年の一月、OECD加盟各国にも勧告があったわけでございます。これからその諸外国の制度、執行状況を参考にいたしまして、今後、移転価格対策税制について、国税庁と協力をいたしまして、どのような問題があるかということを含めまして検討を進めてまいりたいというふうに存じております。
  230. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今後この移転価格操作による租税回避行為に対する税制を整備していただきたいと思っているわけでありますが、総理、ここで大変めんどうくさいことは、親会社対子会社ならこれはトランスファープライシングでまだ抑えられます。このトランスファープライシングの税制を整備すると同時に、今度は、親会社、子会社の関係を持たない独立法人がこういう租税回避地域にあって経済活動をすることが、いまや世界の常識となりつつあるわけであります。ハーバード大学の多国籍企業に関する講座をお持ちの某教授は、多国籍企業化された企業と多国籍企業化しない企業との間の収益率は二倍違うということをすでに述べておりまして、このような事態が続きますならば、国家の租税課税徴収権というものに対して、多国籍企業はそれを免れ、国家の国内にある企業体は重税に泣くというような極端な差というものが生じてくるわけであります。こうした国際的な不公平感の助長というものは今後の大きな課題になるところと存じます。  ところが、わが国におきましては、こうした問題に対抗でき得る調査体制がありません。また、そういう国際企業の国際取引というものが最近ははなはだ高度なものになってきておりますが、これに対する税務調査官もおりません。したがって、企業の国際取引を通じての利益誘導や利益隠し――利益隠しというのは適切ではない、法律がないのですから。それから中小企業に対してもこういうことが見られるようになっておる。したがって、これに対しては、すでに外務委員会多国籍企業等国際経済に関する小委員会におきまして決議が行われたところでもございますけれども、これは重大問題としてお調べをいただかなければならない。  わが国の国際的な取引に関する調査官は、現在二十名程度と承っておりますが、アメリカでは現在五百名程度の規模に上昇しております。近々五千名規模にしたいと述べておるようであります。ただ、この場合、私は人数をふやせと言っているのではなく、こうした課税状況というものがもう急激に進歩しておりますから、簡単に言いますと、日本のいまの税制というものは、多国籍企業全般にとっては一種の越えなければならないハードル程度にしか見られていないという状況であります。  私は、お答えを求めようと思っておりません。問題提起にとどめます。これは重大課題であることを十分御認識をいただきまして、次の機会にこれに対する御研究の結果を問いたいと思います。そして、これは国家と企業という問題、いま地球上で言われておる国家と企業の関係が問題になってきておることを示しております。私は、よりよき結論を研究創出され、そして国家と企業というこの大難問に対して、国連の場等を通じまして、日本はいまや強いリーダーシップをとるときが来たのではないかと思います。その意味で今後の御検討をお願いしたいと思うのでございますが、どなたに御返答いただいていいのか、私よくわかりませんが、よろしくお願いします。
  231. 渡部周治

    渡部政府委員 お答え申し上げます。  最近、国際的な租税回避行為というものが増加しておるように思われるので、そういった見地から、国際税務調査官の育成を初めとして、執行上の対応措置を急ぐべきではないかという御指摘でございます。われわれの方もこの問題については十分そういう認識を持っておるわけでございまして、特に海外取引を利用しました不正所得に係る調査につきましては努力をいたしておるところでございます。  国税庁といたしまして、現在このような状況に対処するためには、一つは、外国に対しまする積極的な調査官の派遣ということも行っておるわけでございますし、また、租税条約等に基づく情報の交換あるいは調査官の育成ということで、先ほど二十名程度と申されましたけれども、わが方は現在国際租税セミナーというものを設けまして、年間五十名程度の人員の養成を行っておるところでもございます。また、このたび海外取引の調査の充実を図るという見地から、国税庁の中でも国際調査を担当する企画官を設けまして専担したいというようなことでございます。  なお、この問題につきましては、大変国際的にも関心のあるところでございまして、実は昨年来、環太平洋税務担当官会合というものを持っておりまして、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアの四カ国の税務当局のトップレベルの会合を持っておるわけでございますが、その際におきましても、そういったいろいろな情報交換あるいは国際的な租税回避あるいは脱税の企てに対処するアイデアの交換というようなことも行っておるわけでございます。  国税庁といたしましては、今後とも主税局と相寄りまして検討してまいりたい、このように思っております。
  232. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、正直に言ってこの問題は重大問題でして、要するに、税金を払わないで済ます方法というものがいまや知れ渡りつつあるわけであります。その方法というのは、簡単に言えば日本国内と海外とに両方に拠点を置けば、そういうことが可能なわけであります。こういう方法は知れ渡ってもらいたくない。しかし、現実合法的に行われるものだったら、それに対してわが国企業が飛びつくのを抑えることはできない。  これ以上を申し上げることはやめますが、あのいまの程度の対応ではとても対抗できませんね私は、日本国の法人税というのは近き将来、ほっておきますと二、三年のうちにゼロになると予言しておきますよ。塩崎さん、言っておきますよ、本当に。そういうことを知っている人が黙って笑っているということが問題なんだ、私に言わせると。じゃ、この問題はおいておきます。  次に、ちょっと時間がなくなってきましたので、一括でお答えをいただきたいと存じます。厚生大臣にお願いいたします。現在、保険業務医療の守秘義務について問題がございます。それは、診療を行われる方々、お医者さんについては守秘義務がございまして、この人はこういう病気を治したなんということは言う必要がない。総理大臣の病気だけは発表させられてしまうみたいでございますが、これはしゃべることはできない仕掛けになっておりまして、刑法百三十四条が課せられております。支払い審査機関は、社会保険診療報酬支払基金法の十四条の五において同じ守秘義務が課せられております。保険者の方は、政管健保の場合に国家公務員法百条によって規制されております。指導監督をされる方は国家公務員法百条で課せられています。  ところが、ここに一カ所だけ穴がある。それは組合健保なんです。健康保険組合に守秘義務がない。それのために奇妙な状況が起こっておりまして、これは実際的には、ないというのはちょっと語弊があるのですけれども、厳格なものがないためにどういうことが起こるかというと、会社の労務にその情報がリークする場合がある。  たとえば、妙な話でありますが、最近医者の間でささやかれている言葉があります。だれが言ったかを言うのは御容赦をいただきたいし、どの地域で聞いたかも私は事柄の性質上お許しをいただきたいのですが、梅毒、性病というようなちょっと人目に触れたり聞こえたら恥ずかしい病気にかかった場合に、それを組合健保でかかった場合に情報がリークしてくる、会社の労務を通して流れる、あるいは上司に行くという状況になっております。そのために、妙なことでありますけれども、そういう病気にかかると、初めはかかるけれども病名を隠す、カルテを書きかえてもらう、あるいはその病名について、仕方がないものですからそういうものは自費で治そうとする。そのために病気がよく治っていないとお医者さんが言うのです。特に、こうしたいま挙げた病気については、五百万人ぐらい患者がいると医者が言っております。かなり権威のある医者がこれを述べております。私は、こういうものはきわめてぐあいが悪いので見直しをなさるといかがか。  また、社会保険診療報酬支払基金法で規定されておる支払い審査機関も、帳簿を写すために多くのアルバイトを使うため、この守秘義務にちょっと問題がある場合がある、これを何とかすべきではないかと思うのでございますが、この点について厚生大臣に御見解を承りたいと思います。
  233. 園田直

    園田国務大臣 健康保険組合の職員に個人の秘密にかかわる問題が多いわけでございますから、守秘義務を考えることは、御発言のとおりでございます。ただいま支払基金その他はそれぞれ義務が課せられておるわけでありますが、健保組合だけは業務規程で規制しておるだけでございまして、これに対する処罰規定がございません。大事なことでございますから、十分注意をして指導し、今後も指導を徹底するつもりではおりますが、それでもなお効果がない場合には、御発言のとおりに法制化する必要があるのではないか、こう考えております。
  234. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間が参りましたので、恐縮でございますが残余の質問を終わりにさしていただきます。  最後に、総理、いまの問題は簡単に申しましたが、きわめて重大な問題でございますので、総理の方からもよろしく御指導を願いたいと思います。
  235. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、林保夫君。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  236. 林保夫

    ○林(保)委員 質問通告に従いまして総理に政治姿勢その他、率直に実はお伺いしたい。  と申しますのは、総理も施政方針演説に掲げられておりますように、八〇年代いろいろな問題が出てきております。特にその中でも国際関係は厳しいという御認識に立っておられるように思います。国民の立場から申しますと、本当に日本は安全なんだろうか、こういう心配もございます。また、施策をしていく場合に国益を踏まえていかなければならぬことも事実でございまして、その間御苦労の多いお仕事だ、このように思います。短い一時間半ではございますけれども、その質問を通じまして、ぜひひとつ、総理がこれからいわゆる日本のかじ取りとしてどういう対応をなさっていかれるのか、そのことを承らしていただきたい、このように思います。  施政方針演説そのほか十分見させていただいたのでございますが、まず印象的なのは、言うまでもございません、「二十一世紀への足固め」という言葉でございます。と同時にまた、「未来を切り開く」とかあるいはまた「高い理想を実現する」このように述べてもおられます。人の批判を口移しで申し上げるわけじゃございませんけれども、一体、中身は何なんだろうか、どういう未来にしようとするのか、二十一世紀をどう展望しておられるんだろうか、こういう声はたくさんございます。私も、これを読みましてそういう感じを持ちました。率直に総理、どういう未来をお考えになり、そこへ日本を持っていこうとしておられるのか、このことをお伺いしたいと思います。
  237. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 二十一世紀におけるわが国が目指す日本の姿、私は、現行憲法の基本理念でありますところの平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、こういう憲法の理念に裏づけられ、かつ、自由経済、市場経済体制のもとでわが国の経済が国際的にも発展をしていく、そして国民生活が安定し、向上された形の日本でなければならない、また、世界における経済大国として国際社会における有力な責任ある一員として、日本の国力、国情に応じた平和への寄与、そういうことを目指していかなければならない、このように考えておるわけでございます。  そういう日本の姿を二十一世紀において実現をしてまいりますためには、今日、私どもは、八〇年代以降なすべき課題がたくさんあると思います。七〇年代において私どもが解決に努力し、なおそれを十分に達成できなかった問題については引き続きこれに取り組んでいかなければなりません。  具体的には、エネルギーの問題もその一つでございます。私どもは、このエネルギー問題の安定的な供給の確保、また、日本が海外に多くを依存しておる国といたしまして、石油に対するその依存度を十年後には五〇%以内にする。代替エネルギーの開発等に真剣にわれわれは取り組んでいかなければならない。  また、こういう国柄でございますから、科学技術の振興を図って、そして先端技術の上に立った日本の経済の発展も図っていかなければならない、このように考えます。  また、そういう面から、開発途上国等に対する技術の協力あるいは技術の移転、そういう面でもやはり貢献するところがなければならないと考えるわけでございます。  また、私どもは今後一層努力を必要といたしますのは、開発途上国に対するところの経済協力の分野でございます。私どもは、軍事的な面においては国際的に日本に期待されるということはあり得ないことであるわけでありますが、先ほど申し上げましたような日本の置かれておる立場、そういう立場から、そういう面を通じて国際の平和と繁栄に寄与していく、こういうことでなければならない。  私は、そういうような問題を「二十一世紀への足固め」、こういうことを申し上げておるところでございます。
  238. 林保夫

    ○林(保)委員 各論で聞かしていただくことにいたしまして、次に、一昨日、北方領土の日を制定されまして、総理もそれなりの決意を表明しておられます。一節二節感銘深い節があったわけでございますが、私ども民社党、同盟は、十数年来、本当にひとりぼっちのような状態の中で北方領土の返還を叫び続けてきたという実績がございます。その実績を踏まえまして昨日の総理お話を聞き、そしてまた国内の世論といいますか、新聞紙上でもごらんのように、北方領土の日を設けるべきじゃない、撤回すべきだ、こういうような意見まで新聞に出ております。しかもそれが、政界の先輩からも出ているような状態でもございます。と同時にまた、ソ連側からは大変な激しいいわゆる対目批判というものが、常套手段かもしれませんけれども、なお出てきておると思います。やはりこの問題はむずかしい問題だと思います。  ここで改めて、総理がどういう決意で、そしてまた、どういう手順で国民の期待にこたえてくれるのか、改めてでございますけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  239. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 しばしば申し上げておるところでございますが、ソ連は日本の有力な隣国でございます。日ソの友好協力関係を私はぜひ実現をしたい、このようにこいねがっておるものでございます。しかし、真の日ソの協力関係を確立いたしますためには、わが国固有の領土である北方四島の返還というものを早期に実現をし、それを基礎に日ソ平和友好条約を締結する、これが私は、真の日ソの平和友好関係への発展の基礎である、このように考えておるわけでございます。  今日まで、戦後われわれの先輩は、このことのためにいろいろな努力をしてきていただいておるわけでございます。その中におきまして、私が特に日ソ交渉の出発点、基礎といたしておりますのは、一九七三年のモスクワにおける田中・ブレジネフ会談における共同声明、この中に、御承知のように、日ソ両国は戦後未解決の問題を解決をして、そして日ソの平和友好条約を締結するための交渉を行う、こういうことを合意し、確認をいたしておるわけでございます。私は、今後北方四島の返還交渉の問題はこれが出発点である、このように考えます。私どもは、あくまで平和的な話し合いによってそれを実現をしていきたい、このように考えておるわけでございます。  北方領土の日というものを国民各方面の大多数の御賛同を得て、一昨日ああいう記念行事も行ったわけでございますが、私は、この二月七日、北方領土の日が、早期返還が実現をして、本当に真の日ソ友好の目になることを心から期待をいたしておるわけでございます。
  240. 林保夫

    ○林(保)委員 御決意はわかります。手順の問題でございますが、北方領土を政府として視察されましたのはちょっと遅過ぎたと思うのですが、宮澤外務大臣が当時お行きになられたかと思います。先般は伊東外務大臣がおいでになった。地元の皆さんの声は、総理ぜひ来てくれ、こういうことが私の耳にたびたび入っておりますが、総理は、北方領土を視察に早い機会にお行きになる御予定があるかどうか、また、その御意思がおありになるかどうか、いつごろか、この辺を承りたいと思います。
  241. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この北方領土の問題は、先ほど申し上げたように、日ソ友好という観点から非常に重視をしております。今日までも私は、その置かれた立場において、微力ではありましたけれども。及ばずながら努力をしてまいりました。  それは、日ソ漁業協定あるいはソ日漁業協定の交渉をいたしました際におきましても、あれは単なる漁獲量を決めたりするような漁業協定ではなかった。ソ連の二百海里法というのは、わが国固有の領土である北方四島を抱え込んだ二百海里であったわけでございます。われわれがこれをそのまま認めることは、現在のソ連が力でもって北方領土を占有しておることを追認をするという結果に相なります。私は何遍か交渉を中断して帰りまして、そしてわが国もまた当然のことながら。北方四島を抱え込んだところの二百海里法、日本の二百海里法を制定をいたしまして、それをひっ提げて再度この交渉に当たったわけでございます。日本の二百海里を認めるのであればソ連の二百海里もわれわれは一応認めよう、こういうことで折衝いたしました結果、相互に認め合うということに相なっております。したがいまして、日ソ漁業協定、ソ日漁業協定におきましては、あの北方四島の沖合いというのはダブっております。そういう戦後未解決のベースの上にこの協定がなされた。  私は、私の置かれた立場においてそういう努力もいたしておるわけでありますが、今後におきましても、これが真の日ソ友好の道である、このように考え、努力してまいる所存でございます。  なお、現地を早く視察すべきだという御意見、私もよく承知をいたしておりますが、国会の都合その他諸般の事情を勘案しながら適当な機会に視察をしたい、こう思っております。
  242. 林保夫

    ○林(保)委員 総理が個人的にも大変この問題を重視しておられるということはよく理解できるのでございますが、現実の問題といたしまして対ソ交渉はなかなか厳しい。実は私も党から命ぜられまして、十一月行ってまいりました。短い期間でしたけれども、しっかり議論をやってまいりました。それはむずかしいと思います。  そこで、現実の問題でございますが、ソ連は北方四島を不法占拠しておる、こういうことになっていると思いますが、日本の立場から見まして、総理は、主権が侵害されている、このようにお考えになっておるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  243. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま総理がお答えになりましたように、隣人でございますので、まことに日本としてもいまの状態は遺憾な状態だと思っていることは確かでございまして、何とか一日も早く恒久的な平和友好関係を結びたいという考えでおるわけでございますが、先生おっしゃるように、なかなかむずかしい。どういう手順でいくかということはむずかしい関係でございます。国連の総会でも演説をしましたり、グロムイコ外相にも会ったりということでいままでもやってきたのでございますが、今後も続けてまいるつもりでございますが、われわれとしましては、いまの状態は当然不法占拠であるということに間違いございません。
  244. 林保夫

    ○林(保)委員 詰めたいのでございますけれどもこれはこの辺にしまして、ソ連側は常に繰り返して、領土問題は解決済み、こういうふうに言っております。御承知のとおりだろうと思います。なぜそうなんだろうか。やはり相手国の主張もそれなりに理解してかからないと交渉事はできないと思いますが、伊東外務大臣の方から、ソ連がどうしてそういうことを言っているのか、このことを承りたいと思います。
  245. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 サンフランシスコ条約のことは別にしまして、その後、昭和三十一年に鳩山総理がおいでになって共同宣言が出ましたのは御承知のとおりでございます。あのときに、九項でございましたが、平和条約が締結された後歯舞、色丹は引き渡すということがあの九項に書いてあります。そして、その直前に、松本・グロムイコ、向こうの当時の外務次官でございましたが、書簡で、今後未解決の問題の交渉を――これは平和条約の交渉でございますが、やるということの交換公文があるわけでございます。これは当然、あのとき択捉、国後がなかなか話し合いがつきませんで、九項には歯舞、色丹が書かれたが、その後の平和条約で懸案の問題の交渉をするということになったわけでございます。  ところが、その後、これはソ連側が一方的に言い出したことでございますが、安保条約があるので外国の軍隊が日本にいる、これは米軍のことでございますが、そういう状態では歯舞、色丹も返せぬということを言い出したことがあるわけでございます。しかし、昭和三十一年のときからすでに安保条約があったわけでございまして、これは一つのおかしな言い分でございますが、そういう事実がございまして、その後田中総理が向こうへ行かれまして、総理答弁になりましたように、大戦後の未解決の諸懸案を交渉するということになって、その中には、口頭でございましたが、領土問題があるのだということをはっきり先方もブレジネフ書記長が言ったということは、これまた、同席した人がみんな口をそろえて言うわけでございまして事実でございますが、その後、平和条約の交渉が何回かあったのでございますが、いま、御承知のように、領土問題を前提にしましたその平和条約交渉が切れているわけでございます。向こうが来る番でございますが、ここ何年も来ておらぬわけでございまして、これはいろんな事情があると思いますが、いろんな国際的な事情その他がみんな絡み合って、ソ連は一方的に、もう領土問題は解決しているのだ、田中総理が行かれたとき口頭で言ったというようなことを言うが、そういうことはないとか、いろいろなことを向こう側が主張している。私がグロムイコ外相に去年会ったときも同じ言い方をしたわけでございまして、私は、田中総理のときの会談あるいは鳩山総理のときの会談にソ連は返るべきだということを主張したのでございますが、これは向こうの一方的な理由で言っているわけでございます。
  246. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいま総理も、七三年一月の田中・ブレジネフ共同声明、あの線に返ってやられる、こういうことでございましたが、先ほど伊東外務大臣お話しのようにいろいろな経緯がある。その中でここへ返すというのは非常に努力の要ることだ、このように思われます。このことのためにどういう手をお打ちになるのでしょうか。問題はソ連の誠意だ、それがなかったらどうにもならぬのだということの御答弁をずっとこの席におりまして聞きっ放してございます。座して待つということじゃないだろうかと思われてならないのでございますが、どういう方法をお考えになっておられますか。
  247. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 本件につきましては何遍も御答弁をしておるわけでございますが、総理から、誠意ある態度とはどういうことかという御質問に対していまのお話のような御答弁があったわけでございまして、そのほかには北方領土からの軍備の撤退の問題とかアフガニスタンからの軍事介入の撤兵の問題とか、いろいろあるわけだと私は思うわけでございますが、日本としては、やはり言うべきこと、通すべき筋ははっきり通すということが必要だと思っております。  いまアフガニスタン軍事介入でとりました中で、一つの問題として経済措置があるわけでございます。この措置につきましては、政府ベースの信用供与をやるというとき、ケース・バイ・ケースで、石炭とかガスとか石油とか森林とか、そういう問題については日本側も政府ベースの信用供与をするというふうなことはやっておるわけでございまして、この問題については同じ考え方をとっていきますが、そうした問題の中で何か話し合いができるような情勢になるか。あるいはさっきから申しましたようなアフガニスタンの問題、あるいは田中総理の訪中のときのような問題になって平和条約をひとつやろうというようなことになりますか、相手がどういうふうに判断するか、また、こちらもそれを見きわめながらひとつ慎重に考えていこう。いまの状態がいい状態だとは決して思っておりませんので、このことについては慎重に考えていこうと思っています。
  248. 林保夫

    ○林(保)委員 恐らく、ソ連のことを一番よく知っておられる総理でございますので、いろいろな手を考えておられるのだと思います。かつて中国との関係、アヒルの水かきと言われましたけれども、それなりにやっておられたようでございますが、これだけ総理も決意しておられ、また国民も期待しております。このままでいいわけはございませんので、特使でもお出しになって話をされる御用意がございますかどうか。新聞報道ではちらほら出ておりますが、いかがでございますか。
  249. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理のお答えになる前に私からお答えしますが、いま一つの手段としてそういう特使の問題なんか考えられぬかというお話でございますが、いま政府の部内ではそこまで相談するとかいうようなことにはなっておりませんで、まだわれわれからは一切、そういうことがあるとか相談しているとかいうふうなことをお答えする段階ではございません。
  250. 林保夫

    ○林(保)委員 北方領土、平和条約の問題と離れまして、一つは、ソ連との間でもうすでに十二月末に日ソの貿易支払い協定の期限が切れておりまして、この交渉が急がれなければならぬ。と同時に、毎年五月になりますとサケ・マス漁業の問題が迫ってまいりますが、これらの問題については、今日北方領土の日を設けて、ソ連がああいうふうな対日反発の動きが出ておりますが、確信を持ってこれは解決できると、このようにお考えかどうか、お答えいただきたい。担当大臣に……。
  251. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 三月になりますとサケ・マスの交渉でございますが、昨年もサケ・マス以外の交渉は日本で行われたわけでございます。十二月の二十二日でございましたか、両院の御承認を得たのでございますが、これはやりました。三月のサケ・マスについても、モスクワへ日本が行く番でございますが、これは当然事務的なこととして行われるという考えでおります。
  252. 林保夫

    ○林(保)委員 貿易支払い協定の見通しはいかがでしょうか。
  253. 武藤利昭

    武藤政府委員 貿易支払協定につきましては、一月の半ばでございますが、年次協議を行いました際に、新協定についての非公式な意見の交換というものも行ったわけでございます。いずれ両方で相談して話し合いを始めようかという、その辺の非公式なところまででございまして、ソ連側の方からいずれ日取りでも提案しようかというような、その辺のところで話が終わっているというのが現状でございます。
  254. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう状況でありますと、やはり領土問題に対ソ外交の焦点がしぼられると思うのでございますが、かつて、五十三年一月でございますか、園田外務大臣のときだと思いますが、平和条約案を向こう側に渡しておられる、このように承知しておりますが、その内容、外務委員会で実は大臣から聞いたのでございますが、可能な範囲でお答えいただき、それが交渉の基礎になり得るものかどうか、この点の御見解を伺いたい。
  255. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 これは厚生大臣園田大臣が当時外務大臣でおやりになったので、現場担当の、そのときの状況等は一番大臣が知っておられるわけでございますが、向こうから善隣友好の条約の案が出され、こっちは、それはもう預かるだけだということで、中も検討はしておらぬ。また、向こうにも当時の園田外務大臣から平和条約案を、草案を渡されたわけでございますが、向こうも預かっておくということで、その後、この両方につきまして交渉とか、そういうことはないわけでございます。  条約の案でございますから、本当にこれをまとめようということであれば、中を案の時代に発表するなんということはできないわけでございますので、私どももこれは一切外には出しておらぬのでございますが、領土の一括返還、四島の返還ということが中心になっておるということだけは明瞭にお答えを申し上げておきます。
  256. 林保夫

    ○林(保)委員 ソ連での話し合いを、私ども野党の立場でございますけれども、善隣友好条約は、これはもうアフガニスタン侵略の基礎になっているからだめだということを含めまして、いろいろ話をいたしました。やはり向こう側は、何か出せ、こういうことでございますけれども、しかしなお、外務大臣お答えのような、園田厚生大臣がかつて御努力なさった、それが向こうに全く内容が知られてないばかりか、渡っていることすら知らない人が首脳部の中で多うございました。このことは実に意外に思って帰ってきたわけでございますが、大臣内容お話しできないという。  これは外交上の慣例その他あるのでございましょうから詰めませんが、ただ一つ、新しい情勢が今日出てきておると思います。そしてまた、鈴木総理にかわられて、北方領土の日を設けて、決意してやろうと――前の平和条約案は向こうが握りつぶしたのか拒否したのか、その辺の事情は私わかりませんけれども、なおそれを基礎にしてこれからいかれるのでございましょうか。それともまた、新しい案を用意して、新しい事態に対応してやっていかれる御決意なんでしょうか。この点をひとつ承りたいと思います。
  257. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  平和条約が結べない最大の原因は領土問題なんでございます。あのとき領土問題が解決すれば平和条約ができたわけでございます。今度の平和条約につきましても、先ほど先生に、領土問題が中心なんでございます、これだけはもうはっきり申し上げます、こう言ったのでございますが、その点は変わらない。もうこれが平和条約を結べない最大の原因でございますので、その点については、恐らく何も変わることはないというふうに思っております。
  258. 林保夫

    ○林(保)委員 この問題が解決しなくては日本の戦後は終わらないというぐらい国民の関心も漂うございますが、大変恐縮ですけれども、座して待つということでなくて、あらゆる手法を通じて、ひとつぜひ詰めていただきますように心からお願い申し上げたいと思います。  次の問題に移ります。  過般、総理、東南アジア五カ国を御苦労にも御歴訪なさいまして、その成果を大変高く評価されているように承っておりますが、あちらで総理が御発表になりましたいわゆるバンコク・スピーチを見ますと、日本の外交上、画期的じゃないかと思われるようないろんな諸点が浮き彫りにされております。  そこで、二、三承りたいのでございますが、総理がバンコク・スピーチの中で言っておられる「ASEANの挑戦」といったことが出ております。それはどういう意味なんでございましょうか。異質の民族、異質の国が仲よくやった、そのことを評価しての「ASEANの挑戦」と言われているようにもとれるのでございますが、どういう意味なんでございましょうか。そのことを承りたいと思います。
  259. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御承知のように、ASEAN五カ国は、ASEANというあの地域の協力体制を構築をいたしまして、そして多くの異民族を抱えながら連帯と協調を深め、相協力して、五カ国のアジアにおけるこの地域協力、地域の発展、開発、民生の向上、そしてアジアにおける平和と繁栄について、すばらしい成果をおさめておるわけでございます。私どもは、アジアの友邦としまして、この「ASEANの挑戦」を高く評価をし、今後におきましても日本のできまする面におきましてできるだけの協力をしていこう、こういうことを考えておるわけでございます。
  260. 林保夫

    ○林(保)委員 そういった評価を踏まえられてのことだと思いますが、その中で大変印象的なのは、わが国が政治的な役割りを果たす、このことを強く打ち出しておられます。日本外交は、かつて経済援助までいったけれども、そういう役割りはなるたけしないというような方向が強かったやに思いますが、これは、大臣はやはり画期的なことだ、こうお考えでしょうか。どういう形で政治的な役割りを果たそうとされているのか承りたい。
  261. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、今回ASEAN五カ国を訪問し、各国の首脳とひざをつき合わして、本当に率直な意見の交換をしたわけでございます。その中から共通の認識と目標をお互いに設定し合って、その実現に向かって相協力していこう、こういうことを誓い合ったわけでございます。  その中で、経済協力、技術協力あるいは農業振興、農村建設あるいは中小企業への協力、人づくりのいろんな分野での協力がございますが、現在、御承知のように、ASEAN五カ国の政治的な最大の関心事は、ベトナムとカンボジアのあの紛争をいかにして収拾をするか、このカンボジア問題の平和的な解決ということが一番大きな政治問題でございます。また、このことの平和的な解決ということがアジアの平和と安定の上から不可欠のことである、こういう認識を持っておるわけでございます。  現在、ASEAN五カ国は、この問題を解決いたしますために、国連の決議を尊重し、ベトナムに国際会議の場にひとつ出席を求めて、そして話し合いによってこの問題を平和的に解決しよう、こういう不動の方針をとっておるわけでございます。わが国は、このカンボジア問題の国連決議というものを実現いたしますために、国連の場におきまして、ASEAN五カ国のこの主張、方針を全面的にバックアップをいたしまして、国連決議に相なったわけでございます。  したがいまして、今後ASEANの首脳が、これを実現するためには日本の国際舞台における政治的な活躍に期待をする、特にアジアの多くの国国の支持を得て国連の非常任理事国にも就任をした日本としては、そういう立場をひとつ最高度に活用いたしまして、事務総長等がこの国際会議の開催等についてできるだけの努力をするように、日本としてもこれをひとつ強力に推進してもらいたい、こういう問題があるわけでございます。そういう意味合いから、経済協力等のほかに、政治的な役割りもひとつ期待をするというのが日本に対するASEANの根強い期待である、要請である、このように考えております。
  262. 林保夫

    ○林(保)委員 総理が言われるそのことは、ベトナム、カンボジア情勢で今日問題になっております第三勢力の政権を何かこう生み出そうとする動きがASEAN諸国に強いと思いますが、現地諸国の意を踏まえて、その方向で努力される、こういうことでございましょうか。そう理解してよろしいのでしょうか。
  263. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私からお答え申し上げます。  最近、シアヌーク殿下が名のりを上げたということがございますが、私ども向こうに行っておりますときに、シンガポール、タイ両国でやはり第三勢力の話が出たことは確かでございます。そのときに、日本側としては、カンボジアの中にどの勢力を育てようとがどうしようというような、そこまではできない。日本としては、カンボジアにベトナムが入ったことで迷惑をしている難民の問題、あるいは直接の第一線にありますタイに援助するとか、あるいはいま総理からお答えになりました国連に働きかけて、なるべく国連がリードして、イニシアチブをとって国際会議を開くとか、そういうことを国連に働きかけるとか、そういうことを日本としてはやっていくつもりだ。第三勢力をどうするか、育てるかどうかというようなことは、これは日本が直接手を出してやれる問題じゃないので、それはASEANの諸国がよく考えられる問題じゃないかということを、私はタイの外相にもシンガポールの外相にも言ったわけでございまして、そこまで政治的な役割りをして中へ入り込むことは、あのときは考えておりませんし、いまも、日本はそこまでは無理だ、国連に働きかける、あるいはタイに援助する、難民の世話をするというような政治的な役割りだろうというふうに私は考えております。
  264. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう従来の線からいきますと、新しい動きを総理は行かれてやられたようでございますが、そのことを一つだけお伺いしておきたいのです。  中国も大変大きな関心をあそこに持っております。私も、皆さんが行かれましたすぐ後行ってきたわけですが、そのときいろいろな話が出ておりました。皆さん方にもお話しになったというtとでございますが、いまの方向は、もしそれが実現いたしますと、ASEAN諸国、そしてまた中国、日本、このあたりが一挙に解決するような形になるものかどうか、その点を伺っておきたいと思うのです。
  265. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 中国側が大きな関心を持っているというのは先生おっしゃったとおりでございまして、タイに行きましたときも、趙紫陽総理がタイに来るのでそういう問題もいろいろ相談したいのだということをタイの外相も言っておりましたが、中国が非常な関心、影響力があるということは林さんおっしゃるとおりだと私も思います。  ただ、第三勢力が出るということで一挙に何か動き出すかという問題は、なかなかむずかしいのじゃなかろうか。やはり基本的にはカンボジアからベトナム軍が撤兵をして、そしてカンボジアの人々が自由な意思で選挙ができる、そして選んだ政権でカンボジアの自主独立を守っていくというのが基本的な解決でございますので、いまの動きだけでそこまで一挙にいけるかどうかというのは、これは見通してございますから、場合によってはそういうことはあるのかもしれませんが、なかなかそこまでは一挙にはむずかしいのじゃなかろうかな、ただ第一段階ではあるかなという感じは持っております。
  266. 林保夫

    ○林(保)委員 そういったことからでございましょう。ベトナムの外務省のファン・チャン・アジア局次長は、鈴木総理のバンコク・スピーチについて批判しております。そしてまた、ハノイ駐在のわが国の野田大使に対して、いかなる圧力のもとでもベトナムは国際的義務を遂行する、日本はベトナムに対する敵対行為をやめるべきである、こういうような抗議があったやに聞いております。この事実はどうか、それに対して日本側はどういう見解を持っておられるか。
  267. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 ベトナム側から総理のバンコク・スピーチに対しまして、いま林さんおっしゃったようないろいろな抗議的意見が野田大使にあったことはそのとおりでございますが、日本としてはASEANの考え方を支持するということをはっきり言っておりまして、国際会議をやる、その前提にはベトナムが撤兵をする、自由な選挙ができる、そしてカンボジアの自主独立を守っていくのだというのが日本の基本的な考え方ですということは、はっきりベトナムにも、これは何回も伝えたのでございますが、今度も大使から向こうへ伝えたという状態でございます。
  268. 林保夫

    ○林(保)委員 バンコク・スピーチの中にもございますが、「インドシナ地域に恒久的な平和が実現した暁には、わが国としては、その復興のため、できるだけの協力を行う所存であります。」ということで援助を約束しておられるようでございます。日本も大国になったな、時代が変わったなという実感でございますが、一方、ベトナムに対しましては援助を抑えておりますね。そういう関係にある国というのは、世界広しといえども日本以外にないのじゃないか、それが総理の言われる政治的役割りなのじゃないだろうか、このようにも考えられます。つまり仲裁とか裁定とか、これらをおやりになる御意思がおありになるのかどうか、また、その可能性というものを承りたいと思います。
  269. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 バンコク・スピーチで総理がおっしゃったことは、本当にインドシナ半島に恒久的平和が来た場合には、日本もその他の国と協力してあそこの復興には協力しますということを言ったわけでございます。日本としては東南アジアの平和、安定ということには重大な関心がありますので、インドシナ半島に平和が来た、安定が来たということであれば、その復興に協力するというのは、やはりアジアの経済力のついた日本としては当然の役割りでなかろうかという思いでそれを述べられたのでございますが、いま現在、ベトナムへの援助につきましては、ベトナムの問題、カンボジアの問題についてASEANの諸国が非常に重大な関心を持っているわけでございまして、日本の援助についても、日本がどうするかなということについて関心を持って見ていることは確かでございますので、日本の判断でいまはまだ援助をするような環境じゃない、こういうことで援助の凍結といいますか、まだ援助をしておらぬというのが実情でございます。  先生のおっしゃった仲介、仲裁という問題でございますが、これは先ほどから申し上げますように、まず国際会議を開くことが前提じゃなかろうか。それにはやはり国連の事務総長に強力に働きかけようということで、もう何度も事務総長に西堀大使から話もしました。ECの諸国の中でも、している国もあります。強力にそれをまず働きかけていく、それをまず第一段階にしまして、私どもとしましては、その次の段階で国際会議が開ければ一番よいわけでございますし、なかなかむずかしいというときにどういうことを考えるのかなということは、これはASEANの諸国の意向も十分に踏まえる必要がありますので、ASEANの諸国と十分協議していきたいと考えております。
  270. 林保夫

    ○林(保)委員 政治的領域に大きく踏み出すべき時期であろうかとも思われてなりません。しかし、なおむずかしい問題だろうと思いますが、このバンコク・スピーチの中で総理はこういうことも言っておられます。「ASEAN諸国こそ「太平洋の時代」といわれる二十一世紀において世界経済の原動力として大きく飛躍する」。「ASEANの挑戦」と同じように非常に大きな評価をしておられますが、これは総理の願望なのでしょうか。それとも、いわゆる太平洋時代に向けて到達する青写真を持たれて、そういうのを誘導しておられるのでしょうか。「太平洋の時代」というお言葉が出ておりますので、その点を承っておきたいと思います。
  271. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御承知のように、七〇年代前半から後半にかけまして大西洋時代であった。そういう意味で八〇年代、二十一世紀に向けて太平洋時代の到来ということを国際政治学者等も言っておるわけでございますが、太平洋に位置するところのアジア、豪州その他、アメリカ、カナダ等々、これらの国々は、やはり世界の平和と繁栄の面からいたしましても、また経済の面からいたしましても、ASEANとともに大きな役割りを担っておるものだ、私はこのように考えるわけでございます。わが国は、そういう明るい展望を頭に置きながら、今後ASEANの国々と相協力をして、まずアジア、東南アジア、日本の足場から世界の平和と繁栄に貢献していきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  272. 林保夫

    ○林(保)委員 次に移りまして、中国に対する政策でございますが、大変混迷をきわめているような政治情勢でもあるかのようでございますが、そうしてまた、日中関係が次第に深まってきた今日の状況において、産業界を中心にいわゆる中国ショックといったような、プラントの大きな解約などが相次いでおるような状況にあると思います。これにつきまして、急選、大来前外務大臣を中国に派遣するとかいうような手もとられるやに聞いておりますが、どういう展望を外務大臣、お持ちでしょうか。
  273. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 中国の経済問題、政治問題を含めての御質問だと思うのでございますが、昨年の十二月初旬に日中閣僚会議がございまして、向こうに行っていろいろ、向こうは鄧小平さん、趙紫陽さんにも話をする機会があったのでございますが、会議をやったわけでございます。そのとき、これは。鄧小平さんも言っていたのでございますが、中国の近代化、四つの近代化というものを進めてきて、やっていた。ところが、農産物の買い上げ価格を上げる、あるいは賃金を上げるというようなことがどうしても必要になって、物価の問題等もあり、いろいろな経済計画をやったが、一つは大きな財政赤字が出た、それからいろいろなプロジェクトをやったが、原料がこれに追いつかぬというような問題も出てきているというようなことがございまして、経済の調整ということをどうしてもやらなければいかぬ。本当は八一年から十カ年計画がまたできるはずであったが、調整が延びる。三年ぐらいは調整がかかるかもしらぬ。しかし、その調整をやっても、近代化を進めていく、あるいは外国に中国の経済を開放する、外国からプロジェクトを入れるなどというそういう方針は、それについては何も変わらない。ただ、一時的に時間がちょっと延びるという話があったのでございます。当時、宝山の第二期計画が出たことは確かで、これは文書とかそういうものではないのですが、口頭で出たことがございまして、農業あるいは軽工業というものを重視する、民生安定をしていくということをまずやらなければいかぬというような話があったわけでございます。そのときには、いまいろいろ新聞に言われるような、いろいろのプロジェクトの中止とかそういうことは実際まだ具体的にはなかった、宝山の話が出たわけでございます。大蔵大臣から、急に言われても困ることがあるので、もっと前広にそういうことは連絡してもらわなければ困るというような話があったのは確かでございます。  それから、政治の問題でございますが、特に政治の問題について説明はございませんでしたが、私の受けました感じは、堂々とわれわれに対しましても、自分たちは誤っていた、経済問題で誤っていた、だからこれは直さなければいかぬ、調整しなければいかぬということを、堂々と手のうちを見せて、これは直さなければいかぬという話があったわけでございまして、ちょうど四人組の裁判がございまして、テレビにも出ていたときでございますが、ああいうものを公開しても政治的に大丈夫だという判断あるいはまた経済が誤っているということを外国に堂々と言ってもという態度は、私は、ある程度政治的な見通しを持ってこれはやっておられるのだなという印象を受けたわけでございます。  それが去年の十二月でございましたが、最近、政府には直接はございませんが、新聞等で、向こうの公司から日本の企業に対しまして直接中止とかいうような話が来ておるということをわれわれは企業から聞いているということでございます。政府には連絡はございません。それで、これは民間の企業が向こうと話され、プロジェクトの進出を考えたわけでございますので、第一義的には、これは当然企業の方と相談することでございますが、政府としましても、この経済問題が政治問題になる、日中の間にいろいろ政治問題になってくるということは何としても避くべき問題だ、経済の問題は経済の問題のうちに何とか片づけていくということでやるべきだというふうに私も考えまして、総理とも御相談して、大来政府代表にあしたから行ってもらいまして、向こうの実情をよく聞いてもらう、どういう実情でその後こういうことになったか、あるいは今後の見通し等、向こうといろいろ話し合ってもらう機会をつくることが必要じゃないかと思いまして、あしたから大来政府代表に行ってもらうということにしておるわけでございます。  政府のやっております借款の六プロジェクトにつきましては、何も向こうから連絡がない、いまのとおり進んでいくものだろう、あるいは鉄道とか電気とか港湾とかそういう基礎的なものでございますから、そういうふうに私はいま考えております。
  274. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので、簡単にちょっとあれしたいと思うのでございますが、私も党のミッションの一人として十二月に行きまして、たまたま五百六十億円の円借款を皆さん方がお決めになってお帰りになった後でございますけれども、また宝山製鉄所を見ました。少し方向が違っているのじゃないだろうかという印象を禁じ得ませんでした。といいますのは、失業の問題、雇用の問題、何とか人を雇っていかなければならぬという問題で、余りにも近代的な設備過ぎるということで、もうちょっと基礎的な、農業、農家に援助すべきじゃないだろうかという印象があったのでございますが、こうした点で、先ほど大臣は、円借款の問題は影響ない、こういうことでございましたが、なお、これをこれから御検討される意思がおありかどうか。そしてまた、そのほかに輸銀の協力融資が二十億ドル決まっておりますし、また、十億ドルの内陸関係のプロジェクトの援助も内定していると思うのでございますが、こうした問題。そうしてまた、今度の民間のプロジェクトのキャンセルの問題について輸出保険の適用をおやりになるかどうか、簡単で結構でございますが、聞いて、次の質問に移らせていただきたいと思います。
  275. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 政府関係の円借款について私さっき申し上げたのでございますが、これは現時点で何も向こうから連絡がないわけでございまして、当然、大来政府代表が行きまして向こうの意向も聞くと思うのでございますが、これはさっき申し上げました鉄道とか港湾とかそういう問題でございますから、特に原料が不足とかそういうことにはならないわけでございますので、この問題につきましてはそう問題になる性質のものじゃないのじゃないか。重工業とか石油化学工業とかとは大分違う問題でございますので、いま申し上げたのでございますが、いままでやりました政府の借款も、あるいは民間の、先生おっしゃった二。十億ドルの問題も、これは中国側が近代化というために、経済の発展というために、向こうが必要だというか向こうの要望にこたえてやったわけでございまして、われわれとしてはそれが向こうの近代化につながっていくのだということで話し合いに応じたわけでございます。ただ、向こうの先ほど申し上げましたような事情でいろいろな問題が出ているということでございますが、日本としましては、先ほど申し上げましたように、これが政治問題化しまして、日中関係に何か禍根を残すというようなことになってはいかぬ、何とか円満に両方の話し合いで解決する方法はないものかと私は思っておりまして、大来政府代表にあしたから行ってもらうというのもそういう趣旨でございます。  なお、輸出保険の問題につきましては、通産大臣から、担当でございますのでお答え申し上げます。
  276. 田中六助

    田中(六)国務大臣 輸出保険の問題につきましては、もちろん保険でございますからいろいろ考えなければなりませんけれども、現在のところ、この保険が必要だというような事態は聞いておりませんし、私どもは事態の推移をじっと見守っておるところでございます。
  277. 林保夫

    ○林(保)委員 総理は四月八日の御予定でございますか、渡米の御意思を持っておられるやに聞いておりますが、レーガン政権登場という新事態を踏まえまして、そしてまた、今日国会でもいろいろと問題になっておりますような対米関係あるいは国際問題を踏まえて渡米されるのでございますが、どういう目的で、そしてまた、どういうことをアメリカとの間で話し合われる御予定でございましょうか、承りたいと思います。
  278. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の訪米の時期につきましてお尋ねがございましたが、私は、予算が成立した後におきまして国会の御承認が得られればなるだけ早い機会に訪米をし、レーガン大統領初めアメリカの新政府の首脳と話し合いをしたい、このように考えておるわけでございます。  その際におきましては、当然、日米二国間の関心の諸問題初め国際的な重要な関心事項について隔意のない意見の交換をし、今後の日米関係の強化発展に資したいものだ、このように考えております。
  279. 林保夫

    ○林(保)委員 所信表明演説の中に、「レーガン新政権との間にも、一層成熟した日米関係の構築に努力」したい。「成熟」という意味はどういう意味でございましょうか。
  280. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、日米関係は年とともに友好協力関係を緊密に発展をさせてきておる、このように考えております。また、日米安保体制のもとに、日本の安全と平和の確保のために日米の協力関係を持っておるわけでございます。また、今後、世界の平和と繁栄を考えました場合に、この日米両国が一層協力し合って、また、民主主義、自由主義、平和主義を基調とする西側自由主義陣営の協力関係を深めて、そして世界の平和、繁栄に協力をしていきたい、寄与していきたい、このように考えるものでございます。  先般、レーガン大統領から直接私に電話で就任のごあいさつがありまして、その際におきましても、日本は特に太平洋アジア地域のかぎを握っておる、日米の友好協力関係を発展させることが世界の平和と繁栄に寄与する道である、このようなことを強調いたしまして、できるだけ早い機会にお目にかかりたい、こういうことも申しておったわけでございます。
  281. 林保夫

    ○林(保)委員 米国との関係ではいろいろと問題があろうかと思いますが、昨年大平総理が渡米されまして、新しい文字が出てまいりました。それは「同盟」という言葉でございます。総理は、その同盟という日米関係の新しい関係を、さらに今度は「成熟」という言葉になっておるのでございますが、どういうふうにお受けとめになり、また、これから日米間を規定していかれるお考えでしょうか、承っておきたいと思います。
  282. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 亡くなりました大平総理が「同盟」という言葉を使ったのはそのとおりでございますが、私どもは、日米関係につきましてはもうこれが外交の基軸である、そして本当に日米の平和友好関係のきずなを強くしていくことが日本とアメリカの関係の基調なんだということを強調した、そして「同盟」という言葉を使ったんだというふうに私は理解をしておる。当時官房長官をしておりまして、帰ってきて、どういう意味かと私は聞いたことがあるのですが、そういうつもりで使ったというふうに私は解しているわけでございまして、今後とも、いま総理がおっしゃったように「成熟」というお言葉を使われまして御説明があったわけでございますが、総理は行かれて、この関係をもっともっときずなを太く、強くしていくということだろうと私は思っておるわけでございます。
  283. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう御説明でございますと、これから一層、経済、社会、文化関係、そしてまた防衛問題もございますので、軍事的な面も配慮いたして同盟関係を強化する、一層成熟させる、そのように理解してよろしゅうございますか。
  284. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  285. 林保夫

    ○林(保)委員 「成熟」という言葉にこだわるようでございますけれども、このバンコク・スピーチの中に「成熟した関係」というのが出ておりますが、この「成熟」とこちらの「成熟」とは大体似たようなものだ、こう理解してよろしいのでございましょうか。
  286. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は単なる友人関係とか仲よくしていこうとかいうことをさらに深めて、本当に一体になって肩を組んで、そして今後の国際社会に生き抜いていこう、また、協力し合って世界の平和に貢献していこう、そういう関係でなければならない、これを私は成熟した関係、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  287. 林保夫

    ○林(保)委員 総理はASEAN五カ国を御訪問になって大きな成果を得られた、こういうことでございますが、それを踏まえての訪米でございますので、今後いろいろな面での地域の協力関係が出てくると思いますが、ASEAN諸国と米国との関係についてどういうことをお考えになっておられるのですか、その点を承りたいと思います。
  288. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、今回のASEAN訪問を通じまして各国首脳と腹を割った話し合いをしたわけでございますが、その際におきまして、アメリカがベトナム戦争で大きな失敗を犯してから東南アジアから大きく手を引いた、後退をした、こういうことであったわけでございますけれども、最近ASEAN五カ国は、米国は東南アジアに対してももっと大きな関心を示してほしい、いろいろな面でひとつこの地域を重視し、できるだけの協力をしてほしい、こういう願望を持っておることが明らかに感得できた、くみ取ることができたわけでございます。私は、このASEAN諸国のアメリカに対する期待、こういうようなものを、今回の訪米に当たりましてはアジア情勢とともによく米政府にも伝えて、今後のアメリカのアジア政策の参考にさせたい、こう考えております。
  289. 林保夫

    ○林(保)委員 今度のASEAN諸国の御訪問で大変援助を増額しておられます。そしてまた、政府開発援助なんかは五カ年五倍でございますか、ということまで声明で述べておられます。一方、最近の新聞報道によりますと、米国の新しい予算でございますが、対外援助を大幅に切るとか、これは決まったわけではございませんけれども、予算局の意向として強く出ておるようなわけでございます。だといたしますと、現実の問題として、将来的に発展途上国の援助を日本がアメリカにかわって肩がわりするというような図も出てきかねないと思います。そこらについてどのような御判断をされ、また日本と米国、ASEAN、その三つの関係を取り仕切っていかれるお考えなのか、これも承っておきたいと思います。
  290. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この対外経済協力、特に発展途上国に対する協力を実施いたします際に、その地域の政府方針なりあるいは国民の中に自立自助の精神が横溢していなければならない。ただ援助をもらえるだけもらえばいい、そういうようなことでは、真の経済協力なり技術協力ということは成果をおさめることができない。政府並びにその国民に、本当に自分らが立ち上がり、自分らの国をりっぱにしよう、そして民生の安定を図ろう、こういう自立自助の精神があり、それに理解を示し、適切な経済並びに技術協力をすることによって初めて対外経済協力が成果をおさめ得るもの、私はこのように考えておるわけでございます。  アメリカは、御承知のように、日本と同じように大変な経済的な困難をいま抱えております。また、小さな政府ということで、いろいろな歳出の削減等をやっておる。しかし、軍備については、そういう中でやろうということのようでございますが、わが国はアメリカのようなぐあいに、世界の平和、繁栄のために軍事力の面で日本に期待をされることは筋違いである。日本はあくまで平和国家として、日本の経済力を通じて、前段で申し上げましたような経済協九なり技術協力、これを通じて国際社会の一員としての責務を果たしていこう、こういう考え方でございますから、アメリカが対外援助の予算を減らそうが減らすまいが、われわれとしては、日本としてはそういう面で協力をしていきたい、このように考えています。
  291. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 事実だけお答えします。  六月の二十三日から二十五日の間にASEANの外相会議をやると言っているのですが、ヘイグ国務長官をぜひこの拡大外相会議に出席してもらうようにということでASEANから強い要望がございまして、これは帰ってきてアメリカにすぐ伝えております。  いま総理のおっしゃったODAの開発途上国の援助の問題でございますが、アメリカが若干減らすのじゃないかということが新聞に出た途端に、これは予算局でございますが、ヨーロッパからも、日本ももちろん言ったのでございますが、これからの南北問題の重要性を言って、そういう方向はおかしいということを日本もアメリカに伝えましたし、EC諸国もこぞってアメリカにその意向を伝えているというところでございまして、そういうことにならぬようにと私らは考えております。
  292. 林保夫

    ○林(保)委員 そういたしますと、今度の訪米のいろいろな問題があります。防衛問題、援助の問題、経済摩擦の問題、いろいろございます。しかし、なお大臣がおっしゃられたように、これから同盟関係として一層成熟した日米関係をつくろうといたしますと常時問題がある、こういうことになろうかと思います。そこらあたりが過日、賢人会議で提議のございました日米閣僚会議を定期的にやれ、こういうことだと思いますが、これをおやりになる御意思があるかどうか、そのことをお尋ねいたします。
  293. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 日米関係は、これほど大きな貿易関係もございますし、安保条約もございますので、いろいろな問題が出ることは先生のおっしゃるとおり予想されるわけでございますが、そういう問題を政治問題にしないようにということでやるのがわれわれの役目だと思っております。  賢人グループから定期閣僚会議の提言があったわけでございますが、ずっと前にやっておりまして、いまやめまして、ハイレベルの協議ということでいまやっているわけでございますが、まず、定期的にこういうことをやるということが必要かどうか、必要があれば随時そういうことをそのときそのとき考えるか、あるいは一挙に一緒にたくさんの閣僚が長い期間留守するということが果たしていいかどうかということも問題がございますので、政府としましては、この問題につきまして慎重に検討してみよう。ただ、総理が向こうへおいでになるときまでには、これらについてどうするかということはやはり話題になると思いますから、結論を出さなければいかぬと思いますが、いまこれは検討中でございます。
  294. 林保夫

    ○林(保)委員 リムパック82でございますか、これには参加する御意思は御決定になりましたでしょうか。
  295. 大村襄治

    ○大村国務大臣 現在検討中でございますが、前回の成績にかんがみまして、同様の趣旨であれば非常に役に立つものと考えておるわけでございます。
  296. 林保夫

    ○林(保)委員 リムパックと直接関係をするかどうか、そういう点も含めましてお聞きしたいのでございますが、環太平洋構想というのが外務大臣の外交方針演説の中にあったと思いますが、その関連及びいろいろ構想が出ておりますが、どういう位置づけが外交政策の中でとられるものでございますか、ちょっとお伺いいたします。
  297. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 環太平洋構想につきましては、私の外交演説の中に触れております。これは亡くなった大平総理がこの考えを提唱しまして、豪州のフレーザー首相でございますとか、カナダのトルドー首相でございますとか、大分これについて理解を持った方が外国にございまして、去年の九月に豪州のキャンベラで民間の研修会がございました。ただ、この問題につきましては、環太平洋連帯構想というものが内容はこうだと有権的に決まって、こういうことをしますということがまだ決まってはおりませんで、いろいろ模索中、どういうことを具体的に考えたらいいかということを民間の段階で検討しているという段階でございます。あくまで民間がイニシアチブをとってやる。日本では大来代表が委員長になりまして、太平洋の協力委員会というものをつくろうということをやっておりますが、各国とも民間で、どういうものを取り上げるか、どういうことを考えたらいいかということを検討するといういま段階でございます。  ただ、その研修会等で問題になりましたのは、やはり経済の問題でございますとか――経済の発展段階もいろいろ違うわけでございます。あるいは文化の問題でございますとか、こういう問題から入っていくのがいいじゃなかろうかということを実は言われておるわけでございます。ただ、この構想につきましては、ASEAN等で、ASEANという上にまたそういうものができるのかとか、入ったらどういうメリットがあるのかとかいう、いろいろ議論があることは確かでございまして、今度ASEANの外相会議で、豪州の外務大臣も私も、ぜひ来てくれ、説明してくれと言われておりますので、説明しようかと思っておりますが、これはすぐあした、あさってに具体化するというものじゃなくて、私は、二十一世紀に向けた息の長い、太平洋沿岸の国々の連帯の構想ということがねらいである、先はひとつ長いんだというふうに考えて、しかしそれは必要だ、アジア太平洋地域ではそういうことは必要だというふうに思っているわけでございます。
  298. 林保夫

    ○林(保)委員 その上にEC、欧州との関係を承りたいのでございますが、時間がございません。しかし、なお欧州との関係も、内容は違いましても成熟した関係、こういうお考えだろうかと思います。それらを考えてみますと、先ほど来御質問申し上げましたように、いま各地域、ブロックごとのいろいろな外交的な対応、これはやらなければならぬことではございますけれども、なお考えでおられるように見受けるわけでございます。  だとすると、いわゆる集団防衛の線は否定しながらも、なおかつ、そういう地域ごとのいろいろな関係、これが新しい国際社会に対応する日本外交の方向かもしれませんが、総理、どういうふうにお考えになって、先ほど外務大臣のおっしゃったような環太平洋構想とかあるいは総理が言った太平洋時代とかあるいはASEANの関係、それをアメリカとつなげるとか、ECとの関係、中国、ソ連との関係もありますが、いわゆる二十一世紀の足固めとしてお考えになっているか、この点を承りたいと思います。率直にお答え願いたいと思います。
  299. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま御指摘になりましたように、欧州、ヨーロッパにおきましては、ECという地域ブロックを形成をいたしております。東南アジア五カ国は、ASEANという地域開発機構を持っております。私どもは、そういう地域の今日の協力関係、そういう体制というものを現実を見きわめながら、先ほど申し上げましたように日米関係を基軸として、日欧の間におきましても共通の理念の上に立っておるわけでございますから、協力関係を今後一層発展させていきたい。特に日本はアジアの一員として、アジアにおける唯一の工業先進国として果たすべき役割りというものを持っておるわけでございます。そのような地域のそれぞれの体制、協力関係、地域の状況ということを踏まえながら日本の平和外交、協力外交を展開していきたい、それを通じて世界の平和と繁栄に寄与していきたいという考えでございます。
  300. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がなくなってしまいまして、実は北海道周辺そのほかで、漁業そのほか生業が危ぶまれるような状態になりまして、これを何とか解決していかなければならぬ。これは北方領土の問題、ソ連の脅威の問題、同時にまた、貿易立国のわが国としてやはり安定した資源、エネルギーを運んでくるいわゆるシーレーンでございますが、これをできないということでなくて、どういうことができるのか、こういった点を御質問もし、研究していただきたい、こう思っていたのですが、時間がございません。  しかし、なお、先ほどの総理のお答えを聞きまして、わが党がいつも言っております総合安全保障、総理もこの中に書いておられます。その中で、いかに平和戦略を進めていくか。きちっとした国の安全を図ると同時に、世界的な平和戦略。安全も平和も、じっとしていては出てきません。繁栄もそうだと思います。構築していかなければならぬ。こういうことから、せっかくの御努力を御期待したいのでございます。  最後に一つ、伊東外務大臣、ポーランドの情勢はどうなっておりますか。それに対する対応を承っておきたいと思います。
  301. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 ポーランドに対する問題でございますが、ちょうど昨年の十二月ヨーロッパへ参りましたときは、クライマックスと言ってはなんでございますが、非常に緊迫した状態のときでございまして、EC諸国は、もしもポーランドにソ連が軍事介入すればデタントも軍縮も全部吹っ飛ぶということで、非常に真剣でございました。それで、ポーランドに経済援助、食糧援助等をしましてポーランド人を勇気づけて、そういう介入ということがないようにしようというのがヨーロッパの首脳の考え方でございまして、食糧の安売りとかいうことがあったわけでございまして、その後小康が保たれてきている。最近また情勢に少しかげりが来たかというようなことが新聞にも見れるのでございますが、去年の十二月当時よりは小康が保たれている、介入がなくて済むのじゃないかというような可能性の方が強いじゃないか、こういうふうに見られておるわけでございます。  日本としましては、これは政府の借款はないわけでございまして、民間の援助だけでございます。ヨーロッパの国々と協議をしまして、日本としてはどういう援助ができるかというようなことを民間で協議をしておられることは事実でございます。これは民間で国際的な協議をされている。返済の期間が来たものを延ばすとか、いろいろそういうようなことを相談になっておるというようなことを聞いておるわけでございます。  もしも最悪の事態で、ポーランドに軍事介入があるというようなときはどうかというような御質問だと思うわけでございますが、実はこれは、NATOの外相あるいはNATOに来ています大使がいろいろ具体案について相談をしておる。そして、もしそういう事態になったらNATOの外相が全部集まってすぐに相談をするんだというような態勢ができているということを聞いておるわけでございますが、日本はもちろんNATOとは関係のないことでございまして、ECの諸国とイランのときも相談をしたわけでございますが、日本としましても西側の一員として、アフガニスタンのときはアフガニスタンで考えたわけでございますが、どういうことができるか、日本はヨーロッパ、アメリカとまた違うことがございますので、その辺のところはどういうふうに考えるか、具体的な案につきましてはまだ何も決めてないところでございますが、もし万一というような場合には、よく西側の一員としての立場に立って、また日本の独自な点がございますので、慎重に関係国とまた協議もしようというふうに思っております。
  302. 林保夫

    ○林(保)委員 その件に関しまして、アメリカからもすでにいざとなった場合の制裁措置についての要請があったように聞いておりますが、ECとの関係、前回のアフガニスタンへのソ連の侵入、それに対応をするときと同じような手順をとられるんだと思いますが、総理としてやはり政治的な役割りを果たす、こう言う以上は、こういった国際問題に対してきちっとした態度をぜひとっていただきたい、このことを要望もし、最後にひとつ御決意を承って、質問を終わりたいと思います。
  303. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ポーランド問題、アフガニスタンの問題あるいは中東におけるイラン、イラクの問題、非常に情勢は厳しいものがあるわけでございます。こういう激動する世界情勢の中で、わが国はやはり世界の平和に責任ある国際社会の一員として貢献するところがなければならない、このように考えております。  そういう意味合いからいたしまして、アメリカ並びに西欧諸国と共通の価値観の上に立つ関係諸国と十分連絡をとりながら、連携を強化しながら日本としてできるだけの努力をしてまいりたい、こう思っております。
  304. 林保夫

    ○林(保)委員 終わります。
  305. 小山長規

    小山委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四分散会