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1981-02-04 第94回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月四日(水曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       石井  一君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小里 貞利君       小渕 恵三君    越智 伊平君       海部 俊樹君    鴨田利太郎君       倉成  正君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    近藤 元次君       始関 伊平君    椎名 素夫君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    辻  英雄君       中村  靖君    橋本龍太郎君       浜田卓二郎君    原田  憲君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       細田 吉蔵君    牧野 隆守君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       阿部 助哉君    井上 一成君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大原  亨君    岡田 利春君       中村 重光君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       草川 昭三君    正木 良明君       矢野 絢也君    神田  厚君       塚本 三郎君    林  保夫君       寺前  巖君    不破 哲三君       松本 善明君    三浦  久君       河野 洋平君    田島  衞君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣審議官   後藤 利雄君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         総理府統計局長 島村 史郎君         公正取引委員会         事務局経済課長 伊従  寛君         警察庁長官官房         長       金澤 昭雄君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         科学技術庁研究         調整局長    勝谷  保君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         公安調査庁長官 鎌田 好夫君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 清水  汪君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁長官   渡部 周治君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      高石 邦男君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省年金局長 松田  正君         社会保険庁年金         保険部長    新津 博典君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    矢崎 市朗君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省立地         公害局長    松村 克之君         通商産業省基礎         産業局長    小松 国男君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    若杉 和夫君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         中小企業庁長官 児玉 清隆君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松井 和治君         気象庁長官   増澤譲太郎君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         郵政省簡易保険         局長      小山 森也君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省河川局長 小坂  忠君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     中村  靖君   江崎 真澄君     近藤 元次君   海部 俊樹君     近藤 鉄雄君   澁谷 直藏君     辻  英雄君   砂田 重民君     倉成  正君   瀬戸山三男君     椎名 素夫君   根本龍太郎君     石井  一君   藤田 義光君     小里 貞利君   村山 達雄君     浜田卓二郎君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   中村 重光君     井上 一成君   林  保夫君     塚本 三郎君   不破 哲三君     三浦  久君   河野 洋平君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     根本龍太郎君   小里 貞利君     藤田 義光君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   倉成  正君     砂田 重民君   近藤 鉄雄君     海部 俊樹君   近藤 元次君     江崎 真澄君   椎名 素夫君     瀬戸山三男君   辻  英雄君     澁谷 直藏君   中村  靖君     牧野 隆守君   浜田卓二郎君     村山 達雄君   井上 一成君     中村 重光君   塚本 三郎君     林  保夫君   三浦  久君     不破 哲三君   田島  衞君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   牧野 隆守君     宇野 宗佑君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  この際、一昨日の石橋君、大出君の質疑に関し、鈴木内閣総理大臣大村防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木内閣総理大臣
  3. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政治軍事に対する優先は、民主主義国家においてぜひ確保しなければならないことは言うまでもない。自衛隊は、国会の審議を経た法律、予算等に従うことはもちろんのこと、さらに内閣を代表して最高の指揮監督権を有する内閣総理大臣及び隊務統括者である防衛庁長官の指示する基本方針に従ってその任務を全うするよう、十分に管理されるべきものと考える。  今回の竹田統幕議長見解表明は、統幕議長という立場上、たとえ個人的見解であっても適正を欠く面があり、まことに遺憾である。  政府としては、シビリアンコントロール確保について国民にいささかの疑念も生じないよう留意し、今後とも民主主義のもとにおける自衛隊の適正な運営に努めてまいる所存である。  なお、この点については、私から防衛庁長官に注意を促したところである。
  4. 小山長規

  5. 大村襄治

    大村国務大臣 今回の竹田統幕議長雑誌インタビューにおける発言は、適正を欠く面があり、まことに遺憾であります。  自衛隊員なかんずく統幕議長、各幕僚長等高級幹部たる者は、その地位と責任の重大さを認識し、節度ある行動をとるよう絶えず留意すべきことは論をまたないところであります。  私といたしましては、今回の問題を契機とし、竹田統幕議長に対し処分をするとともに、陸、海、空幕僚長を初めその他の幹部に対しても、外部に対して発言する場合は、あらかじめ上部の了解を得るように指導したいと考えております。  なお、一昨日の予算委員会における私の発言について、十分意を尽くせなかった点がありましたことは遺憾に存じております。
  6. 小山長規

  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この際、問題の竹田統幕議長発言に関連して念を押しておきたいと思うのです。非常に重要な問題でございますし、国民皆さん方の関心も強いわけですから、はっきりさせておく責任があろうかと思うわけですが、それは徴兵問題についてであります。  竹田統幕議長は、徴兵をやらないというのは政策だと思いますから、それはそれでいいんです、しかしそれを憲法にひっかけて言うことは次元が違う問題がある、こういう言い方をなさっているわけですね。ここが一番ポイントだと思うのです。私どもは、単なる政策の問題ではないと思います。現行憲法のもとにおいて、これは政策として選択できない問題だ、このことをはっきりしていただきたい。間違いございませんか、総理
  8. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 現行憲法のもとにおきましては、徴兵制度は考えられないことでございます。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それは平時であれ有事であれ同様だ、したがって、徴兵制度をどうしても採用しようということになれば憲法改正をしなきゃならないんだということも、御確認願いたいと思います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ただいま総理大臣から、シビリアンコントロールの問題についての政府統一見解が述べられたわけでございますが、率直に申し上げまして、私はこれで一件落着ということにはならないと思うのですよ。第二の栗栖、第二の竹田、次々にやはり問題が出てくると思いますね。いままでだって、何回、シビリアンコントロール確保、確立について政府統一見解をここで述べられましたか。三矢計画以来、何か問題が起きるたびに、シビリアンコントロール確保に努めますという政府統一見解は、ここで私が聞いただけでも何回あるかわからない。  それは問題が残るのですよ。一昨日の質問の際にも申し上げたのですけれども、制度さえ確立しておけば、シビリアンコントロールというものは機能するものじゃございません。コントロールする側の、われわれの側の、政治家の側の、政府の側の識見、能力、それを支える筋の通った理論がなければいけない。こうしなさいと言って、わかりましたと制服の諸君が納得するだけのものがきちっとなければ、これは幾らシビリアンコントロールを言ったって機能しないのですよ。私はそのことを言ったのです。軍事論としても、妥当な筋の通った理論がなければだめでございます。いまの憲法のもとにおいて、憲法解釈の歪曲、拡大をやって無理やりつくっているような状態の中で、そんな筋が通った理論が確立するはずがない。だから、どうしても承服しないから、機会あるごとにその不満が噴き出してくるわけです。  私は、時間があれば、きょうはそれを一つ一つ例を挙げながらここでお尋ねするつもりだったのですけれども、残された時間はほんのわずかですから、大体一、二点にしぼって浮き彫りにしてみたいと思うのです。これに対して明確な答弁ができるならば、まだまだ可能性がありますよ。  というのは、日本防衛というものは日本単独では不可能、これはもう確認されているわけですね。竹田さんもこの対談の中でも触れています。アメリカとペアだ、日米防衛協力だ。そこで、この日米防衛協力を推し進めるために必要なガイドラインが、昭和五十三年十一月二十七日に策定されたわけです。私はこのガイドラインを一生懸命読んでみましたが、たくさん問題点があるわけです。たとえばその一つシーレーン確保に関しての問題についてちょっとお尋ねしようというわけです。  日本は、原材料、燃料の大半を外国に依存しておる。海上交通路というものが確保されない限り日本の生存もない、ぎりぎりの問題だと、みんな大体そう確認しております。それじゃ、どうしてこのシーレーン確保するのかと言えば、日本自衛隊の受け持つ部分というのはほんの限られておる。それも単独でできないけれども、とにかく日本周辺だけは海上自衛隊が主にやろう、その先は全部アメリカにお願いしようという点も、これは統一されているのですね、見解として。去年の予算委員会でも、ここで何度も繰り返し答弁が行われています。  さて、ここで、それじゃ考えてみましょう。憲法上、集団自衛権は認められない。一昨日、私の質問に、対してこうお答えになった。いいですか。そうすると、ガイドラインでも指摘されているように、非常に急迫した事態、まだ日本施政下のもとに攻撃がかけられたという事態にはならないけれども、武力攻撃のおそれが多分に満ち満ちておるという状態の中でも、まず皆さんがお考えになるのはシーレーン確保でしょう。しかも周辺以外はアメリカにお願いするというんでしょう。この輸送船タンカーがどんどんと攻撃を受けたらどうするんですか。アメリカには防衛義務がない。日本施政下にある領域が攻撃をされない限り、アメリカ集団自衛権の発動もない。タンカー輸送船が全部撃沈されたってアメリカは守れない。どうするんですか。防衛白書でもそれを問うておるわけですね。どうしたらいいんですか、そのときにと。  非常に巧妙に出てきて、日本本土攻撃しない、海上交通路だけは破壊してくる。手は出ない。やられっ放し。そんなら日本も、攻めてこなくたって、これだけでお手上げじゃないですか。そのときに政治家が、政府が、どうしろと言えないで、どうしてシビリアンコントロールが機能するんですか。これに答えられますか。答えられないでどうしてシビリアンコントロールが機能するのかという、ここなんですよ、問題は。  憲法がある、憲法解釈をどんなに拡大しても、集団自衛権があるとは言えない。何度も確認している。集団自衛権は認められません。そこからいま言ったような矛盾が出てきている。どうにもできない。どうしたらいいんですかと防衛白書を突きつけられて、答えられない。政治がこれに答えられないで、どうしてシビリアンコントロールができるんですか。どうしたらいいんですか。教えてください、総理大臣
  12. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  海上交通の安全を確保するため自衛権を行使する場合のその海域範囲憲法上どこまでであるかは、わが国防衛に必要な限度において、わが国の領海のみならず周辺の公海にも及び得ることは、政府としてこれまでたびたび申し上げているところでありますが、それが具体的にどの程度範囲かは、そのときの客観情勢対応等で異なるので、一概には申せません。  海上防衛力整備方針については、わが国周辺海域数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイル程度において、海上交通保護のための作戦を海上自衛隊が主体となって実施できることを目標としておるわけでございます。これらの海域についても、海上自衛隊能力の及ばない分野については米海軍部隊の支援を受け、また、これらの海域を越える部分については一般的に米側に依存することとし、米側にコントロールを確保してもらうことを考えている次第でございます。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私の質問を聞いているんですか。その答弁はもう、いやというほどお聞きしました。暗記してますよ、私も。去年の予算委員会から何回ここで答弁しましたか。その先を聞いているんですよ。  アメリカにお願いしますとあなたおっしゃるけれども、日本本土攻撃される前にアメリカ日本防衛義務を負わないんですよ。だから、本土攻撃しないで、輸送船タンカーだけ攻撃してきたらお手上げですかと聞いているんです。お手上げですか。アメリカ条約上、日本防衛義務を持たないのだから。それは日本集団自衛権を持たないからですよ。双務的な条約になっていないからですよ。憲法にさかのぼるんです。憲法を改正しない限りこの矛盾は解決しない。どうしてくれるんですかといって、ユニホーム政治家に求めているんですよ。だから、そのときどうしろと——しようがない、沈められっ放しにせいとおっしゃるんですか。そんなこと言えないでしょう。言えない限りは、シビリアンコントロールシビリアンコントロールと言ったってユニホームは納得しないじゃありませんかと私は質問している。そこを答えてください。
  14. 塩田章

    塩田政府委員 いまのお尋ねにお答えいたしますが、先生、まだ日本本土攻撃されていないという段階で日本の船舶が攻撃を受けるというケースをいま御指摘でございますが、その際は二通り考えられます。いわゆる海上における秩序の破壊といいますか、そういう段階で海上警備行動の対象になるような段階が、または、いま先生の御指摘のようなケースが実は組織的な武力攻撃であって、わが国に対する侵略とみなしてわが国防衛出動を行う段階が、それによって判断が異なってくると思います。たまたま一隻攻撃されている、どこかでまた一隻攻撃されているものが本当に相手国の武力的な、組織的な攻撃であるかどうかということによって対応が異なってくると思います。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 こんな大切な問題を役人に答えさせなきゃ、政治家は答えられないですか。何がシビリアンコントロールですか。総理大臣も問題はわかったでしょう、私がお尋ねしていることは。これは奇襲でも何でもないんです。あなた方のつくった防衛白書に書いてある。どうにもならない。集団自衛権がないのでどうにもならない。どうしたらいいでしょうと去年の防衛白書で提起してある。それじゃ検討しているはずでしょう。どうにもならないということで済みますか、いまの問題が。日本攻撃しなくたって、この輸送路を切断してしまえば、実質的にはもう日本はどうにもならない状態になる。そういう方法が全然とられないという保証がどこにありますか。それが日本では守れない、アメリカにお願いします。アメリカ日本本土が、施政下における領域が攻撃されない限り集団自衛権は発動できない、守れない。守ってやりたくてもどうにもできません。どうしたらいいんですかと問われているんですよ。ほんの一つの例ですよ、これ。答えられない。答えられないで何でシビリアンコントロールができるかと私は言っているんですよ。  問題はここにある。憲法を無視して軍事力による防衛を何とかしようという無理な解釈のスタートに問題があるんですよ。成り立たないんです。軍事力による防衛は成り立たない。そのことをあなた方はこれで立証することになるんですよ。  もう時間がありませんから、私は次の機会にまたやらせていただきます。  関連質問井上議員に譲ります。
  16. 小山長規

    小山委員長 この際、井上君より関連質疑の申し出があります。石橋君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井上一成君。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 私は、武器輸出の問題について二、三触れて質問をいたします。  まず、堀田ハガネの韓国に対する武器部品の輸出についてですが、このことについてはクレームがつき、再加工をして日本から再輸出をされているわけです。もちろんこれは無為替輸出でありますし、当然その中でキャップチューブ一一一二、つまり迫撃砲のキャップが五十五本、リング一九B、口径百三十五ミリのりゅう弾砲の砲尾環が十本、これが輸出承認番号一〇〇四—一三三七四という形の中で東京税関は承認を与えているわけなんです。このことはさらに船長託送という船積み書類にも、「一〇六ミリCHAMBER」と明確に武器部品であるということが書かれておるわけなんです。そういう薬室というものが明記されながら堂々と輸出された、こういう事実に対して政府はどう弁解をされるのか、お答えを願います。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 堀田ハガネの税関の関係についてに、関税局長から答弁させます。
  19. 清水汪

    ○清水政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘の東京税関の承認の件につきまして調査をいたしましたところ、本件は、東京税関長が外国為替管理令第十一条に基づきまして通産大臣から権限を委任されております範囲内の案件という認識のもとに処理をしたものでございます。つまり、その場合につきましては、本件はただいま御指摘のとおり、その前に輸出をいたしました貨物のクレームの処理という形で輸出承認の申請がございました。これは昭和五十二年の八月のことでございます。税関におきましては、通常そのような場合におきましては前回の輸出申告に対して許可をした写しがついてまいりますので、その写しを確認いたしまして、その貨物が前回許可をしたものと同様の品名のものだというような認識のもとに、これを特に問題にしないで承認をしたものである、このように私ども承知をいたしております。  それから、ただいま御指摘の問題の中に、しかしながら、そのような貨物につきましては、別途船長の託送書等におきましてさらに別の情報があったのではないかというような御指摘がございましたが、私ども、いままで調査いたしましたところ、船長の託送書云々の点につきましては、現在までのところ、申しわけございませんが、またよく確かめられておりません。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 輸出承認申請書は、再輸出だから最初のときには許可をしたということですが、それじゃ、最初のときもキャップチューブあるいはリングとして明記されて、部品であるということをわかりながら承認したのですか。
  21. 清水汪

    ○清水政府委員 当初におきましては、これはほかの税関で輸出許可が行われた案件数件でございますけれども、この場合には品名の表示が七十三分類あるいは八十四分類、これは税関の輸出品目分類でございますが、そのような分類のもとに、たとえばチューブとかいま御指摘のリングというような品名で申告があったものでございます。その段階におきましては、税関は、もちろん通常注意を払って審査はいたしておるわけでございますけれども、値段の問題その他の状況から見まして特にこれが武器の部分品の半製品であるという認識は持てなかったということで、特に疑問視しないで処理をした、このように理解をいたしております。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 この点については、時間がないから、明日、大出議員からも特に指摘をしてもらいます。そういう言いわけをしてあなた方は逃れようとしている。  それではさらに、堀田ハガネのその武器部品ルートが、山陽特殊鋼、泉鋼材、大屋熱処理、近畿検査というルートと、関東特殊鋼の一貫生産という二つのルートがあるわけです。関係会社はこれだけなのかどうかということをまず聞いておきましょう。
  23. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 お答えいたします。  堀田ハガネ関連のメーカーが、いま先生がおっしゃったメーカーであるというふうに存じております。  なお、そのほかの取引に関連した企業といたしましては日綿がございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 そうじゃないでしょう。日本最大の兵器メーカー、三菱重工もこの鍛造加工の一部を担当していた、こういうことなんですよ。  さらに、私の調査によれば、それらのことが事実明らかになっているわけです。堀田ハガネと大韓重機工業との間で組んだ第三次のLC、これはブリーチリング一一一一、三菱重工の加工賃が一本について四万九千八百円、運賃が二千円。さらにはブリーチリング一九B、これについては十三万五千二百五十円、運賃が五千円。チェンバーについては五万円。さらには、第四次の原価計算表にはブリーチリング一一一一、三菱重工の鍛造費として十本について四万四千円が計上され、さらに加工分がそれに加わっている。こういう点について政府はどういうふうに対応するのですか。
  25. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ただいまお話しの三菱重工の件につきましては、私ども、本件の堀田ハガネに関連している企業というふうには、ただいまのところ存じておらない状態でございます。したがいまして、さらに調査をさせていただきます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 私は、私の調査で指摘をしたわけです。調査をされますか。
  27. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 よく調べさせていただきます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 調査するんだね。
  29. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 はい。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 速やかに調査をして、当委員会でその報告を私は待ちたいと思います。委員長、お願いします。  さらに私は、もう一点ぜひ聞いておきたい。マレーシアのサイン少将、これはマレーシア海軍の参謀総長ですが、この参謀総長が昨年の三月三十日から四月四日までの間に日本にお越しになっているわけです。このサイン少将に防衛庁の関係幹部が会っているわけです。だれが会ったのか。さらには、何の目的で会ったのか。  もう一つ、ここで夫人を同行なさっていると私は認識しているのですが、夫人以外にだれが同行したのか。これはエーシャン・ディフェンス・ジャーナルのチェアマンであるサイ・フセインさんが同行しているわけなんです。このことは何を意味している。私自身、特に指摘をしておきたいのは、武器輸出あるいはわが国の平和外交を損ねるいかがわしい商談がその機会にあったという事実、このことを特に指摘しておきます。
  31. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  昨年、マレーシアの軍事高官が公式に防衛庁を訪問したという事実も、また、来日に際し自衛官と会談したいとの申し出を防衛庁として受けた事実はございません。  なお、詳細につきましては官房長をして答弁させます。
  32. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 特段補足することございませんが、私どもの調査によれば、マレーシアの参謀総長が防衛庁を正式訪問したことも、関係者が会ったということも、私どもの調査ではございませんので……。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁の幹部、関係者が会ったとフセイン氏が私に話しているわけなんです。これは委員長、特に事実関係を調査していただきたい、こういうふうに思います。  時間がありませんが、最後に鈴木総理、あなたがASEANを訪問して平和外交を推進したい。私は、それはそれなりに意味があると思うのです。その反面にこういう事実があるという、このことはとりわけ、あなたも御承知の親日家、日本に対して好意的な人たちを利用した。ノン・テクさんだとかブンチッタラさんとかいう、日本に非常に理解のある人、あなたも会っているわけですね。そういう人たちを日本人が悪とい商法で利用するという形でこういう武器輸出が展開されているという事実について、やはり日本鈴木総理の真意を逆に先方に伝えるぐらいの平和外交を進めなければいけないと私は思うのです。この際に総理からの姿勢、所見を承って、私の残された質問は明日、大出委員からも指摘をしていただきますが、答弁のできなかったことについては留保したいと思います。
  34. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国は平和国家として、武器輸出の問題につきましても、武器輸出三原則並びに昭和五十一年二月二十七日の政府方針、これを今後とも堅持してまいる所存でございます。今後も厳重にこの方針を守らせるように最善の努力をいたします。  なお、ASEANにおきましては、私は、日本としてはASEAN各国に対しては平和的な経済協力、技術援助、そういう面を通じましてアジアの平和と安定に寄与したいということを、公式の場におきましても、また記者会見等におきましても、日本方針というものを十分理解願えるように徹底的にお話をしたわけでございます。  なお、私がどういう人に会ったかというようなことでございますが、私は、ASEAN五カ国の首脳、閣僚、そういう者と公式に会っただけでございまして、個人的に個別には会っておりません。
  35. 小山長規

    小山委員長 これにて石橋井上両君の質疑は終了いたしました。  次に、矢野絢也君
  36. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、経済問題、財政、防衛憲法問題等々で総理並びに関係閣僚に御質問いたします。  そこで鈴木総理鈴木内閣は、昨年の衆参両院同時選挙の後に誕生したわけでございます。選挙中、当時の大平総理大臣は、まことに不幸なことでございましたが、突然逝去された。有権者は、事実上、総理不在の状況で投票をしたわけでございます。その後、鈴木内閣が誕生したわけでございますが、鈴木内閣として国民の信をまだ問うたことになっていない。鈴木内閣国民の審判をもうお受けになったものであるとお考えでございますか。まだだとお考えになりますか。
  37. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の議会制民主主義のもとにおきましては、政党政治が定着をいたしておるわけでございます。私は、自由民主党が国民の支持を受け安定多数を与えられた、その政党の党首として首班に選ばれたわけでございます。したがいまして、私の政権の基盤である自由民主党は国民の大多数の支持を得ておる、このように私は確信をいたしておりますから、私の内閣で、改めていまの時点で解散をし民意を問う、信任を求めるというようなことは考えておりません。
  38. 矢野絢也

    ○矢野委員 何も解散をしなさいとか信を問いなさいと言っているわけではないのです。去年の選挙で信を受けたことになるかどうかをお尋ねしているのですよ。そして、政党政治が定着しておる、自由民主党が勝利をされたとおっしゃったわけでございますが、そういった意味では、自民党が政権を担当すべしという国民の審判はあったと言っていいと私は思うのですよ。しかし、この選挙中、大変失礼ですけれども、鈴木さんが次の総理大臣になるなどというようなマスコミ情報を新聞で見たことはないわけですよ。また党首になられるということも、これは失礼ですけれども、選挙中は国民は知らなかった。ですから、くどいようですけれども、鈴木さんが内閣総理大臣として政権を担当すべしという審判はあったのですか、なかったのですかということを聞いているわけです。
  39. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 自由民主党が国民の多数の支持を得た、現在の議会制民主主義の中で政党政治の上に政権が成り立っておる、こういう前提の上に立ちますと、その信任を受けた自由民主党が党議でもって私を選んだ、こういうことでございますから、私は国民の意思に反したものではない、このように確信をいたしております。
  40. 矢野絢也

    ○矢野委員 何もあなたが国民の意思に反したなんて言っているわけではない。いまのあなたの論理でしたら、自民党の政権であればだれが総理大臣でもいいという理屈になるのですね。自民党は信を受けたという前提でおっしゃっておる。私は、ほかのりっぱな方もたくさんいらっしゃるわけだけれども、鈴木内閣には鈴木内閣としてのそれなりの個性、それなりの、おれでなければならないのだという自負心が鈴木さん御自身にもおありだと思うのですよ。たとえば来年は一般消費税をやってみせるとか、あるいは憲法改正論議を野放しにしておくとか、これは鈴木さんの個性というものです。鈴木内閣の個性。少なくともあの選挙中には、国民はそんなことは全然知らなかった。その後、鈴木内閣において憲法改正論議が出てくる。ひょっとすると五十七年度には大型消費税が行われるかもわからぬ。びっくり仰天しているわけです。つまり、自民党政権ということと鈴木政権ということは、昨年の選挙という意味で考えればおのずから意味が違うわけで、いささか落ちつきが悪いだろうと思うのですよ。  そこで、私がここでちょっといやみったらしいことを申し上げるのは、一昨年、大平総理大臣は、一般消費税をなさろうとお考えになったときに、その前に選挙をなさった。そして国民の審判をお受けになったわけです。結果は国民の痛烈な批判があったわけですが、この国会中、本会議の代表質問等で鈴木総理は大型消費税を示唆されておる。大蔵大臣もそれを強く示唆されておる。もし仮に来年大型消費税等、逆に言えば昨年の選挙で自民党の公約として掲げてなかったようなことをなさる場合には、その前に国民の信をお受けになるというお考えはございますか。
  41. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、大型消費税の導入ということを示唆したことはございません。政府の税調で、この課税の基盤の相当広い間接税の問題は、これは研究をしていかなければならない課題であるという中間答申的なものが出ておることは承知をいたしておりますが、しかし、こういう問題を政府が採用するかしないか、これは今後の社会、経済情勢、その他財政一般の事情、これからの財政需要、いろいろなことを総合的に判断をしなければならない問題でございまして、慎重の上にも慎重に扱う問題でございまして、私がそういうことをやるとかやらないとかいうようなことを申し上げておるわけでございません。
  42. 矢野絢也

    ○矢野委員 大型消費税を示唆していないとおっしゃるわけですが、示唆されておると私たちは受けとめておるのです。示唆した、しないはいいですよ。来年大型消費税をなさるときには、国民の信をお受けなさいますかということをお尋ねしておるのです。
  43. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 まだそういう私の判断が固まっておりませんから、したがって、そういう問題について民意を問うか問わぬかというようなことは、いまの時点で考えておりません。
  44. 矢野絢也

    ○矢野委員 まだ決めてないから考えてないとおっしゃるわけですけれども、それでは大型消費税、一般消費税、これは同じようなものですけれども、これは大平総理国民の信を問うていらっしゃるわけでございます。仮にそういったことになったときには、これは国民の信を問わねばならない重大な問題であると私どもは受けとめておりますが、それほど重大な問題であるかどうか、そんなものは国民の信を問わなくたって勝手にやればいいんだ、あるいはまた、先ほど言いましたとおり、鈴木内閣として、あの衆参ダブル選挙は洗礼を受けていらっしゃらないわけであります。この点はどうですか。
  45. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 矢野さんの貴重な意見として、私、承っておきます。
  46. 矢野絢也

    ○矢野委員 まあ後からもう一遍ゆっくりこれはやりましょう。  そこで次に、私は、本年度の経済見通しについていろいろとお伺いをしたいわけですが、その前に、いまお手元にお届けしたいと思っておりますが、政府がお出しになった大蔵省の「財政の中期展望」、これについての私どもなりの資料をつくったわけでございます。政府に文句ばかり言うのじゃなしに、こちらはこちらなりの対案というものをお示ししたい、こういうつもりです。  大蔵省の中期展望、これを拝見いたしました。従来は財政収支試算というもので、新経済社会七カ年計画というものがありまして、この計画の資料に基づいてGNPが幾らになる、租税弾性値を幾らにするとか、そういったデータで昭和六十年度の数値をまず想定されて、そこから逆に五十五年度、五十六年度の数値を、六十年度の数値を決めてから機械的に引き戻してお決めになる、こういうやり方だったわけです。ところが今回の中期展望、少なくとも各費目についてどうなるかということを積み上げていく、計算する、積み上げ方式をとるという意味で、一方、私どもがお願いをしておりました財政計画、これに近づいておるという意味で、私は、大蔵大臣、評価したいと思うのですよ。敬意を表します。いままでいろいろな苦労もあっただろうという意味で敬意を表したい。しかし、これにはやはり幾つかの批判点がございます。後からこれは御質問します。しかし、問題点だけ先に申し上げておきます。  一つは、投資部門につきましては、公共投資というものと建設国債、これは従来、たとえば五十五年度、五十六年度は公共投資の伸びが事実上ゼロ。それに対応して建設国債も伸びはゼロ。つまり、公共事業が大幅に伸びておるときには建設国債も伸びておる。しかし、公共事業の伸び率を抑えたから建設国債も抑えた。これは事実上、五十五年、五十六年、そういうことですね。ところが、投資部門の五十七年以降の数字を見ますと、建設国債だけはいままでと同じ金額でありながら、公共事業は七カ年計画に基づいて百九十兆円。これを均等割りですか、どうですか、それに合わせて、建設国債はふやさないが公共投資の金額はべらぼうにふえている。これじゃ投資部門で赤字、要調整額が出るのはあたりまえのことなんです。つまり、建設国債と公共事業をパラレルの形で五十五、五十六年のようにやっておれば、これは投資部門には要調整額は出ない。出ないのを、わざとそういう金額の差をわざとなんて言うと失礼ですけれども、つくって、要調整額、つまり赤字を無理やり捻出しておる、こういう問題が一つある。  さらにまた経常部門についても、これは歳出の過大見積もり、それから歳入の過小見積もり、こういった作為が感じられます。作為と言うと、そうじゃない、積み上げでこうなったんだとおっしゃるかもしれませんが、以上三点、これが私たちの批判点の主要な点なんです。  そこで、私たちは次の前提を置いて手前どもの考え方を示したわけです。つまり、経常部門につきましては、地方交付税を除く「その他」の項目、これは五十六年度予算では、鈴木総理がんばられたというわけで四・二%の伸びになっておる。全予算の国債費と地方交付税を除けば四・三ですが、この部門では四・二の伸び。それから歳入につきましては、五十六年度予算の税収、つまり対前年度の伸び、これはことしの一兆四千億の増税は除きまして、増税がなかったと仮定して、対前年度の税収の伸びは一八・一、経常部門で申し上げますとね。つまり、鈴木内閣がおやりになった五十六年度予算の「その他」の伸び四・二、税収は一八・一、これは私が勝手につくった数字じゃない。鈴木内閣のこの予算の数字なんです。この数値を当てはめて、しかも税収の伸び一八・一というのは、ここ数年来一番低い数字だと私たちは判断いたしております。これで計算をしました。もちろん地方交付税も、税収の変化があれば変化がございますから、それに合わせて数字を変えました。あとの数字は、この中期展望、大蔵省の数字どおりを使わしていただいたわけでございます。もちろん赤字国債を減らすという方針も、そのとおり踏襲いたしております。五十九年度には赤字国債発行ゼロ。こういう前提で試算をいたしましたのが、私どもの試案でございます。  もちろん、あなた方の方が財政の専門家でございますから、私どもの案に対する御批判、この点が間違っておるという御指摘もあろうかと思います。その御批判もひとつ後から伺いたい。しかし、私たちのこの試案は、財政再建のイブと言われた五十五年度予算、あるいは財政再建元年と言っておられるこの五十六年度予算の歳出歳入の諸前提を素直に受け入れてやっておるつもりです。ぜひひとつこの後、分析をし、御批判をいただきたい。左もできるだけ詳しく書いておきました。こちらも中期展望の批判をいたします。  結論は、大蔵省の中期展望では、毎年巨額の要調整額、つまり赤字が出る。その赤字は歳出削減か大増税によらざるを得ませんという選択。歳出削減は、どうもことしの予算を見ておると余り見込みがなさそうだ、結果的には大増税のキャンペーンということになっておる。私どもの案では、調子がよ過ぎるとおっしゃるかもわかりませんが、五十八年度以降要調整額は黒字になっていく。しかもその黒字は減税にも回せる、あるいは歳出をむしろふやすこともできる、新規政策もできます、こういう選択が可能になって、しかも赤字国債は五十九年度にはゼロにできる、こういうわけなんですね。  こういう資料をお出しして議論をしたいというのは、頭ごなしにあなた方の考え方を大増税だ、ああだこうだというような決めつけた言い方をしたくないという意味で、こちらなりに対案を示しつつ議論を進めたい、こういうわけでございますので、この後、私、経済見通しの質問をさしていただきますから一遍研究を願いたい。そして、それなりの御批判なり御答弁を願いたいと思うわけでございます。あらかじめこのことを申し上げておきたいと思います。  さてそこで、経済見通しの問題でございますが、これは五十六年度に入る前に、五十五年度、あとわずかになっておりますが、実質経済成長率を実績見込みで、当初見通しのとおり四・八%というふうにしていらっしゃる。しかし、企業の業績も五十六年度三月期は内需、輸出とも非常に伸び悩んでおりまして、市況も軟化しておる。たとえば自動車産業なんかでも大変な苦しみになってきておる。減益が予想されておるわけですね。あるいは景気動向指数というものも五〇%を割っておるというようなわけで、果たして五十五年度四・八%の成長率、これは不安はないでしょうか。まず概括的に総理、あとこの二月、三月の動向でございますが、経企庁長官でも結構ですよ。——では、河本さんお願いします。
  47. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経済成長の実績についての正確な数字は第二・四半期までしか出ておりませんけれども、第二・四半期までの数字を基礎にして考えますと、おおむね四・八%は達成できるのではないか、こう思っております。
  48. 矢野絢也

    ○矢野委員 景気は、現時点におきまして、これはもう政府の数字はどうあれ、経営者や中小企業の実感としては停滞ぎみである。生産も一年前の水準にとどまっておる。企業倒産は史上二番目を記録しておる。住宅投資、実質賃金も全然よくならない。むしろ実質賃金は〇・九減っておる。中小企業の売り上げも悪くなってきておる。わずかにいいのは大企業の設備投資、あるいは問題はあるとは言いながら輸出が、何だかんだ言いながらいっておる。こういうことで、多くの国民は、数字の問題じゃなしに、実感として、どうもぐあいが悪い、景気が悪い、こういう判断をお持ちだろうと思います。総理が五十六年度、ことしの経済が緩やかに拡大しつつあるという経済見通しにもしお立ちになっておるとするならば、こういう御認識では五十六年度の見通しも間違ってしまうのではないか、こういう心配をしているわけです。ぜひこの辺については、五十五年度経済、現在ですね、まずくならないように御配慮を願う必要があると思います。  そこで、五十六年度経済は、政府の見通しによりますと、五十五年度はどっちかというと輸出中心の経済であったけれども、内需中心の経済、こう言って差し支えないと思いますね。五・三%の成長率を見込んでいらっしゃるわけですが、五・三%の成長率に対して国内需要が四・〇、そして経常海外余剰は一・三%、こういうことになっている。国内需要が四・〇。この四・〇のさらに内訳を見ますと、個人消費が二・〇、伸び率で言うと四・九ということですけれども、四%のあれに対応しますと二・〇、設備投資は一・三、こういったことになっております。このとおりいけばいいのですけれども、どうも私たちは心配があるわけです。  このことを中心にずっと議論をしていきたいのですけれども、まず、いまの時点、在庫調整、これは生産動向との関係が非常に深いわけですが、個人消費が非常に低迷しておる関係もありまして、在庫調整も影響を受けております。そして在庫調整は昨年の九月までにもう終了する、こんな見通しがあったわけですが、これがとにかくずれ込んできておりまして、一月−三月までずれ込んできておる。在庫調整はいつ完了するか、経企庁長官、どういう御判断ですか。
  49. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十五年度の経済は、いま御指摘がございましたように、輸出が大幅に伸びたということも背景になりまして、おおむね目標を達成できると思っておりますが、五十六年度の経済も、これまた御指摘がございましたように、内需中心の経済でございます。そこで、現在の在庫調整の模様はどうかというお話でございますが、政府の方も、実は昨年の九月ごろまでにおおむね在庫調整は終わるであろうと考えておりましたが、ずっとおくれております。うまくまいりましてもあるいはことしの四、五月ごろまでかかるのではなかろうか、こういう感じがいたします。
  50. 矢野絢也

    ○矢野委員 一—三月までには終わらない、四月ないし五月までかかる、こういう御判断のようでございます。どうでしょうか、この五十六年度経済、上半期は停滞ぎみ、あるいは上昇機運に乗る、どういう御判断でしょうか。
  51. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在、ある程度の経済成長は続いておりますが、これは先ほども申し上げましたように、内需はどうも思わしくないのですけれども輸出でもっておるというのが現状でございます。これから内需中心の経済に持っていくということのためには、このままではなかなかいかないと思うのです。いろんな工夫と努力が必要だ、このように思っております。特に個人消費が五十五年度は停滞しておりましたので、五十六年度個人消費をどのように伸ばしていくか、あるいは住宅投資の問題、あるいは設備投資の問題、幾つか課題がございますので、それぞれの対策を機敏に進めていく必要があろうか、このように考えております。
  52. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、停滞ぎみか、ちょっと上向きになるか、上半期ですね。
  53. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の状態を一言で申しますと、曇りだ、内需は曇りの状態である、まだ雨にはなっていない、こういう状態でございます。これからの経済運営を適切に進めることによりまして後半晴れに持っていきたい、そして年度間を通じて政府目標を達成をしたい、こういう考え方でございます。
  54. 矢野絢也

    ○矢野委員 曇りだそうでございます。国民の感じから言うと、曇りどころか集中豪雨みたいな感じがするのだけれども。  日銀総裁、お時間の御都合もあるようでございますから先に伺っておきたいのですが、この曇りぎみ上半期、やはりどうしても金利政策、主として公定歩合の問題に関心が集まるわけでございます。これは後にも関係があるのですが、お時間の都合もあるのであわせて伺っておきますが、日銀券の発行残高が最近減少の方向にある。この日銀券の発行残高というのは消費動向とも多分に関係がある。これを反映する指標でございますが、減少の一途をたどっておるというのは、消費の盛り上がりがどうも心配でございます。マネーサプライも大きく減少しておるということで、この動向はどういうお見通しをお持ちであるか。  その前に、曇りであるという五十六年度上半期の経済事情から見て、公定歩合をどう御判断であるかということをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 前川春雄

    ○前川参考人 景気状況につきましては、先ほど来お話にございますようにかげり現象が広がりつつある、昨年の後半から始まったということでございます。これだけ原油価格が上昇いたしましたので、実質所得のOPECへの移転ということで、ある程度の景気の後退というのはやむを得ない面もございますが、世界各国同じような状況になっておるわけでございます。  これから先の見通してございますが、最終需要項目、消費、住宅投資等、自動車の売れ行きも含めまして悪うございますが、一方、設備投資は、中小企業の方の設備投資は冷え込んでおりますけれども、大企業中心の設備投資あるいは輸出は底がたいような状況でございますので、全体から申しますると在庫調整もおいおい進んでくるのではないかというふうに考えております。景気全体、企業の景況感が、現在の状況から判断いたしますると、ここで大きく底割れするというようなことではないのではないかというふうな見通しを持っております。  そういう事態に対応いたしまして、政策対応でございまするが、私ども、昨年の後半以来、金融政策につきましては、従来の非常に厳しい引き締め政策を漸次緩和してきております。公定歩合につきましては、昨年の八月並びに十一月、二回にわたりまして引き下げをいたしました。また、金融の量的な面も、いわゆる窓口規制というものを昨年の十—十二月から緩和してきております。ことしの一—三月につきましては、地方銀行、相互銀行等につきましては実質的には窓口規制がないのと同じような状態にしてきておるわけでございます。  これからの対応でございまするが、金利政策についてどういうふうに考えていくかということでございます。環境から申しますると、物価はかなり落ちついてきておる、国際収支の改善傾向も顕著である、円相場も比較的安定した推移をたどっておるということでございまするので、従来に比べますれば、経済状況については幾つか非常に変化が出てきておるということでございます。ただ、これからの金利政策を考えてまいりまする場合に、国内の市場金利が海外の金利高に影響されているという面がかなりございます。世界的なインフレ傾向でございまするので、海外の金利水準はかなり高い状態でございまして、それが日本の国内の金利にも影響を及ぼしておるということが一つございます。消費者物価につきまして、卸売物価はもうかなり安定しておりまするけれども、消費者物価につきましても鎮静傾向をたどっておりまするけれども、いま一つということがございまするので、そういうものとあわせました、総合して考えまする金利水準全体をいますぐ下げ得る状態であるか、また、下がる状態であるか、その辺につきましてはもう少し環境を見きわめたいというのが私どもの考え方でございます。  銀行券の伸びがこのところ、かなり鈍ってきております。これは、昨年の初めごろは前年比一〇%ぐらいの発行高の増加でございましたけれども、それが八になり六になり、最近、十二月、一月では、平均残高でございまするけれども、前年比で三%ぐらいの増加でございます。かなり低い状態でございますが、その背景は、景気あるいは消費が落ち込んでおるということが一つございます。そのほかにいろいろの原因があるというふうに考えておりまするが、一つは、最近、現金をだんだん使わなくなってきている。クレジットカードであるとかあるいは給与の振り込みであるとかいうこともございましょう。それから、大衆、国民一般の金利選好と申しますか、少しでも高い金利のものに運用したいという気持ちから、現金を有利な金融資産にかえるという動きがあると思います。その寄与度がどのくらいであるかというのはなかなかわからないわけでございまするけれども、そういうことが総合されまして銀行券の伸びが低いということになっておると思います。  マネーサプライでございまするが、私ども、一昨年以来金融引き締め政策をとってまいりましたけれども、第一次のオイルショックの経験を生かしまして、マネーサプライが余りふえないようにということで、金融政策も早目早目の対応をしてまいったわけでございます。マネーサプライの中のいわゆるM2という一般金融機関の当座性の預金と定期性の預金、これを合わせました分の計数が、前年比が余りふえないようにというのを一つ政策目標としてまいりました。昨年の前半ぐらいは前年比一〇%ぐらいの増加でございましたけれども、昨年の夏場ぐらいからそれが八%なり八を割るというような状態でございます。マネーサプライがこういうふうに減ってまいりまするのは、私どもそれをねらってきたわけでございまするから、ある程度政策目標の効果が出てきておるということであろうかというふうに思います。  これからもそういうやや弱い状態が続くと思いますが、これまた若干、通常の経済活動を反映いたしました動きのほかに特殊の要因がございまするのは、先ほども銀行券のときに申し上げました、利回りのいい金融資産にかえようという動きがございます。いわゆる郵便貯金へのシフトであるとかあるいは金融債へのシフト、そういうものもございましたので、したがってM2の伸びが悪いということが起きております。郵便貯金を含めましたマネーサプライで見ますると、それほど大きく落ち込んでおらないという状態が続いておるわけでございます。  マネーサプライにつきましては、やはりやや長期間にわたっての判断が必要であろう、余り短期間の動きによって判断を変えるということでない方がいいのではないかというふうに基本的に考えておりまするが、私ども金融政策をやってまいりまする上においては、やはりマネーサプライが余り大きく変動しないようにしたいというふうに考えておりまするので、いま申し上げましたいろいろの事情、背景を全部総合的に判断いたしまして、十分注意深く見守ってまいりたいというふうに考えております。
  56. 矢野絢也

    ○矢野委員 るる御説明いただきまして、どうもありがとうございました。  そこで、五十六年度経済の動向、いま河本さんからお話がありましたが、やはり消費だと思うわけですが、内需中心の消費で、これを四・九%というふうに伸び率を見ている。これはかなり強気の見通したと思うのですね。去年はたしか二%。だから、伸び率で言うと約二・五倍になる。どういう理由で四・九%というふうに見ていらっしゃるのですか。
  57. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 個人消費は、五十三年度は六%台、五十四年度は五%、それから五十五年度、現在はずっと落ち込みまして二%、それを五十六年度は四・九%と想定をしておりますが、それは一つは、五十六年度は物価が相当安定するであろう、安定をいたしますとやはり個人消費は、五十三年、五十四年までは回復いたしませんでも、それにだんだんと近づいていくのではないか、これが最大の背景でございます。
  58. 矢野絢也

    ○矢野委員 四・九の消費の伸びが実現しなければ五・三の成長率も厳しくなる、内需中心ということになると。そして、その四・九の消費を支えるのが物価の安定である、こういう理屈ですね。  そこで、物価問題を伺いたいのですが、時間の関係もありますから、こちらの方から申し上げて、確認だけ願えればいい。総理府総務長官もしくは経企庁長官に御確認をいただければと思うのです。  ことしの一月の東京区部の消費者物価の値上がり、対前月比は、たしか一・一でしたですね。これを全国ベースにスライドいたしますと、恐らく一月の消費者指数というものは一四一・一になるんじゃないかと思います。そこで、二つのケースを中山さんもしくは河本さんにお答えいただきたいのですが、つまり五十五年十二月の消費者指数一三九・六、これは確定しておる。一月は、いま東京区部の一・一%という対前月比値上がりを全国スライドすると、一四一・一になる。そこで、第一のケースは、一月の一・一の対前月比の伸びが二月以降横ばいであるというケース。それからもう一つのケースは、一月は一・一でございますが、二月の値上がり、三月の値上がりを、五十四年度並み、つまり五十五年の二月、三月ですね、五十五年の二月、三月は、二月が対前月比〇・九、三月は〇・八、こういうことなんです。ですから、第一のケースは、一月は一・一でございますが、二月以降横ばい、こういう場合の五十五年度の年度平均の指数は幾らになるか。それは対前年比で何%の伸びになるか。  私どもの場合は、横ばいの場合は年度平均が一三九・三、そして対前年度比の物価上昇は七・七。そして、第二のケースの二月は〇・九、三月は〇・八、対前月比の値上がりですね、つまり五十四年度並みですね、この計算をしますと、年度平均は一三九・六、対前年度比は八%、こうなるのですが、前提をそういうふうに置きますと、この計算間違いないかどうか、御確認だけ願いたいと思います。
  59. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  先生の御質問のような前提、仮定を置きまして機械的な計算を行いますと、まず、全国の一月が東京都区部速報並みに上昇するといたしますと、指数は一四一・一。そして、それを二月、三月横に並んでいくといたしますと、五十五年度平均で七・七%ということになります。  次に、野菜等を中心にいたしまして消費者物価が一番高騰いたしました昨年並みではどうかというお尋ねでございますが、これは御質問の予定がございませんでしたので、いま算定いたしておりません。  以上でございます。
  60. 矢野絢也

    ○矢野委員 えらく政治的なことを言う。きのう、そういう前提で私こういうことを聞くから、ちゃんと計算しておきなさいよと言ったんだよ。総理府の方でもいいし経企庁でもいい、両方にこれはお知らせしておいたんだから、えらく役人さんがそんな政治的なこと言っちゃだめですよ。答えてください。
  61. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  ただいま経済企画庁の局長が御答弁申し上げたように、第一の設問はそのとおりでございます。第二の設問は、いま局長申しましたとおり、御連絡ございませんでしたので計算をいたしておりません。
  62. 矢野絢也

    ○矢野委員 とんでもないことを言う。予測八%になるのですよ。ちゃんと、きのう、こういうケースをお知らせしてあるんですよ。——まあいいや、こんなところで押し問答しても始まらぬ。  つまり、一月は一・一、そして二月、三月は横ばい、つまり対前月比ゼロでいって七・七%になるのです。これは確認願った。ところが、ゼロじゃない〇・九、〇・八で上がると、こちらの計算では八%になるのですよ。先ほどの計算間違ってなかったから、これも間違ってないはずですよ。しかも、野菜その他の値上がりを見ますと、これは昨年並みのことになりそうですよ。ひょっとしたらこれ以上になるかもわからぬ。  大体、政府が、五十五年度は六・四でおさめます、こう約束なさって、途中で、これはぐあいが悪いということになって七%に変更なさった。しかもこの七%も、いま申し上げたとおり、少なくとも七・七は間違いなくなりますよ。そうでしょう。二月、三月は対前月比ゼロ%としても七・七になる。言いましょうか、ホウレンソウの値段から大根の値段から。たとえば十二月から一月にかけてべらぼうな値上がりしてますよ、一々細かい金額言いませんけれども。  どうですか、経企庁長官、八%未満に抑えられますか、五十五年度の物価の値上がり。これは春闘にも重大な関係があるし、どうでしょうか。
  63. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話がございましたように、一月の東京区部、前年同月比は六・八%ということで、非常に高い水準になりましたが、残念ながら、これは異常気象が続いておりまして、そういう関係で、いま御指摘がございましたように野菜が急上昇した。ここに最大の原因がございまして、いま野菜対策を懸命に進めておるところでございます。そして、政府目標七%程度というように修正をいたしておりますが、なお最大限の努力を二月、三月と続けていきたい、このように考えております。
  64. 矢野絢也

    ○矢野委員 八%超すんですか、それ以下ですかということを聞いているんです。
  65. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 七%程度というのは若干の幅があるわけでございますが、できるだけそれに近づけるということで、いま全力を尽くしておるということでございます。
  66. 矢野絢也

    ○矢野委員 確かに七%程度とおっしゃったんです、最初六・四であったのが。七%程度といったって、七・一から七・九まである。二月、三月が一月に対して伸び率がゼロであっても七・七になる。これはお認めなさっているんですよ。この豪雪の状況において対前月比がゼロ以下になるという自信、経企庁長官、お持ちですか。お持ちでなければ、少なくとも七・七以上になるじゃありませんか。しかも、昨年並みの値上がりであれば八%になるのですよ。どうですか、八%以下になるか、それ以上になるか。理屈はもうおわかりになったでしょう。総理の確信をひとつ聞かしてもらいたい。
  67. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 消費者物価の大勢は悪くないんです。卸売物価もここ数カ月間急速に下がっておりますし、したがって、野菜以外のものは比較的順調に安定の方向に行っておるわけです。問題は野菜だけにあるわけでございます。そこで、一部の備蓄もございますから、その備蓄を二月になりましてから放出をする、こういうことも考えております。それから、冬野菜を契約栽培したものもございます。しかし、これは寒波で育ってはおりませんけれども、ある程度……(矢野委員「理屈はいいんだ。八%を超えるか超えないかと言っているんだ」と呼ぶ)それは野菜をいま下げるべく全力を挙げておる。御質問の八を超える、そういうことは絶対ないように今後努力をするつもりでございます。
  68. 矢野絢也

    ○矢野委員 もう一つ、物価問題で重ねていきますわ、この問題はもっと詰めたいので。  この資料、去年の「昭和五十五年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」これがことしの「昭和五十六年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」同じものです。  それで総理、これは聞いておいてもらいたい。  昨年の最初、物価上昇六・四にいたしますというときのこの資料は、「主要経済指標」の消費者物価指数のところが、五十三年度の実績は消費者物価指数は一二三・四でした。そして五十四年度の実績見込みは消費者物価指数は一二九・二でした。この五十四と五十三を割り算をされまして一〇四・七、これは五十四年度のことですね。それから、五十四年度実績見込みは一二九・二、五十五年度見通しは一三七・五、消費者物価指数がこうなります。年の初めと年の終わりの消費者物価指数の数値をお出しなさって、そしてたとえば五十五年度の物価見通しは、五十五年度見通しの一三七・五というものを五十四年度の実績見込みの一二九・二で割られて一〇六・四となった、物価の値上がりの見通しは六・四でございます、こうなっておるわけですね。  ことしのこの経済見通しを見ましたら、まことに不親切。不親切というかでたらめ。消費者物価指数のところを見ましたら「七%程度」と書いてあるだけ。五十六年度のところは「五・五%程度」と書いてあるだけ。七とか五・五と言うためには分母と分子がなくては出てこない。去年のものは分母も分子も出ておるのです。総理、たとえば年の初めの消費者物価指数はこれでございます、終わりにはこうなります、割り算したら六・四ということになったわけです。これならまだわかる。このたび、見通しを大幅に間違えましたよね。いま八%近く、恐らく超える。ことしの経済見通しの数字は分母もないし分子もないのに、何で七だとか五・五という計算ができるのですか。経企庁長官、そんなばかなことがありますか。
  69. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最近の物価の動向を申し上げますと、五十五年度見通しは当初の六・四というものを大幅に修正せざるを得なかったというのは、まことに申しわけなく思っておりますが、これの最大の原因は、やはり戦争が始まりまして石油価格が急上昇した、ここに一番大きな原因がございます。それからもう一つは異常気象というのがありますけれども、しかし、それよりもはるかに大きな原因が石油価格の急上昇というところにございまして、こういう激動期でございますから、おおむね七%程度とかあるいは五・五%程度というおよその目標を設定した、こういうことでございますが、細かい計算の基礎につきましては政府委員から答弁をいたします。
  70. 矢野絢也

    ○矢野委員 これは適当な数字ですか。
  71. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  お尋ねのように、本年度の経済見通しにおきましては、物価それから生産といったものにつきまして御指摘の指数というものを計上いたしておりません。経済見通しにおきまして主要なものは騰落率だろうと思います。そういう観点で騰落率を主体にいたしまして、簡素化の意味も含めまして本年度の経済見通し全体の様式を改めております。ただ、具体的には、たとえば前年度の指数も、先ほど先生の言われましたものより実際の数字は〇・一ポイント上がっております。そういうものがじきじき後ろに及んでもくるわけでございますし、主要なものは騰落率であるという観点に立ちまして、そういうふうな改正をいたしております。
  72. 矢野絢也

    ○矢野委員 この物価、特に五十六年度の物価の見通しというのは、これは先ほども申し上げたとおり、五・三の成長率を確保するためには消費が四・九伸びなくてはならぬのでしょう。その四・九の消費を支えるのが物価の安定だとおっしゃっているのでしょう。物価を安定するという前提で、消費は四・九だから成長率は五・三。その物価の安定、つまり五・五%だというのは、これは冗談じゃないですよ。五・五というのは、従来、毎年、前年度の実績見込み、今年度の見通し、これを分母、分子にして割り算して出ているのです。消費者指数の実績見込みもわからない、ことしの最終の消費者の指数の見通しもわからないのにどうして五・五が出たのですか。騰落率がどうだとか簡素化するだとか、そんな簡単な問題じゃないですよ、この五・五という数字は。国民生活に重大な関係のある数字じゃございませんか。この五・五の基礎になった消費者物価指数、当初見込みとそれから見通し、この二つの数値を示していただきたい。
  73. 廣江運弘

    廣江政府委員 政府の経済見通しの中にも述べておりますが、自由市場経済を中心にいたします日本の経済におきましてはすべて幅を持って読まるべきであるということで書いております。また、五十五年度の実績見込みは七%程度と言っておりますし、来年度もそれを基礎に五・五%程度と言っておりますので、程度という、いま大臣も答弁いたしましたように一つの幅のある数字でございますので、そういう取り扱いになっているということを御了解願いたいと思います。
  74. 矢野絢也

    ○矢野委員 程度といったって、七%程度という場合もあれば一五%程度という場合もあるのです。仮に七%程度という答えを出すためには、実績見込みの消費者物価指数が何ぼ程度、そして見通しが何ぼ程度、この程度程度があって五・五%程度というのが出てくるのでしょう。そういうものもなしに、分母も分子もなしに、何か当てものでもして五・五を決めたのですか。そんなばかな計算で五・五%程度でございますと、総理、物価を安定するとあなたは何遍も大みえを切っておられるけれども、安定すると言われているこの基礎がこんないいかげんなものなのですよ。経企庁長官、先ほど消費の最大の柱は物価の安定だとおっしゃったけれども、こんなことで納得できますか。
  75. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 物価の大勢は、先ほど申し上げましたように、卸売物価が急激に下がっておるということ、たとえば五十五年度は卸売物価を一四%と想定をしておりますが、五十六年度はおよそ四・一%、こう想定しておりまして、一〇%以上も卸売物価が下がる。卸売物価が下がりますと、数カ月たちますと大勢として消費者物価も当然下がってまいります。それから同時に、石油価格も五十五年度のような、戦争直後のようなあのような急上昇はしないであろう、若干は上がってもああいうような予想外の急上昇をすることはあるまい、この二つが前提になっておるわけでございますが、数字の計算の基礎につきましては、もう一回政府委員から答弁をさせます。
  76. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  基礎になった指数でございますが、先ほどもお答えいたしましたように、七%程度ということでございますので、五十五年度の実績見込みにつきましては一三八台、あるいはその見当という感じでございます。五十六年度見通しは一四六台、その見当というふうに見込まれると思います。
  77. 矢野絢也

    ○矢野委員 一三八台、一四六台、しかし、その計算の結果七%という数字が出たんですね。ところが残念ながら七%、七・一とか七・二でおさまらない。少なくとも七・七は超える。八に近くなる。これがいまの状況なんです。でありますと、いまおっしゃった一四六台というのは、これは去年の最初に見積もられた、つまり、割った結果が七になるという場合の一四六なんです。これが仮に八になるとした場合は一四六はもっと上がる、実際問題として。そういうことになりますね。五十五年度実績見込みというのは、七の場合は一四六台だったのかもしらぬけれども、どうやら八になる。そうすると一四六というのは、これは上がるわけです、五十五年度実績見込みの消費者物価指数というものが。上がったものを前提にして計算しますと、当然ことしの五・五も変わってくるし、上がってくるのです。経企庁長官、ぼくの理屈、間違っていますか。
  78. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  五十五年度の土台が変わってきますと五十六年度は変わるということは当然でございます。
  79. 矢野絢也

    ○矢野委員 であるならば、七の当初見通しをなさった土台が変わった。五十五年度実績見込み、つまり消費者物価指数の実績見込みは変わらざるを得ない。七%というのは、これは八%に近くなる。下手をすると八%を超える。そうすると、この五十六年度のスタートになる数字も変わる。つまり五・五も変わらざるを得ない。そうすると、この八%近くの数字で計算なさると何ぼになるのですか。  総理、ことしは五・三%の経済成長をやるのです、それは内需中心でございます、その内需の柱は消費でございます、その消費を四・九伸ばすのは物価が安定しているからですと先ほどおっしゃったのです、経企庁長官は、物価が安定しているというのは、去年は七%程度だが、ことしは五・五%に物価がおさまるから、物価が安定しているとおっしゃっている。これは全然計算の基礎が狂ってきているじゃありませんか。これは経済の見通しを全部変えなくてはなりませんよ。その経済見通しに基づいて予算を組んでいらっしゃるのでしょう。理論の根底が全部狂ってくる、経企庁長官、どうなんですか、これは。これはうかつに、いいかげんなことでは済ませませんよ。春闘にも関係がある、経営の動向にも関係があるのです。
  80. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま御質問がございまして、八%を超えることはないか、こういう御質問でございましたから、八%を超えることは絶対ない、こういうことを申し上げたわけでございますが、七%程度という政府の目標を設定しておりますので、いまなおそれの実現に向けて全力を尽くしておるというのが現状でございます。
  81. 矢野絢也

    ○矢野委員 余りはっきり言うと悪いからと思って、わざと七%という数字を使ったのですけれども、去年の最初の数値は六・四という数字をお出しなさったのです。その六・四という数字の基礎がこの五十四年度の実績見込み、五十五年度の見通し、こういうことなのです。そしてまた、ことしの場合は七ということで申し上げた。その理屈は、私の言うとおりだとお認めなさっておる。八%超える、超えないという——七をはるかに超える、七・七か七・八、この事実をお認めなさいますか。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま政府委員答弁をいたしましたのは、一つの仮定を置いての御質問がございましたので、その仮定に従って七・七という数字を答弁をしたわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、野菜の備蓄もございますし、契約栽培のものもありますので、それをどんどん放出をして、全力を挙げて野菜価格を下げるように、いま努力をしておる。七%程度という政府の目標をできるだけ実現するように、いま力いっぱい努力をしておるということでございます。
  83. 矢野絢也

    ○矢野委員 中山長官、あなたは、この東京区部の一月対前月比が一・一%だという数値が出ましたときに、閣議において報告なさいましたですね。二月、三月——これは、たとえば二月は一月に比べて伸びはゼロ、三月も二月に比べて伸びはゼロ、横ばい、こういう前提で物をおっしゃってなかったわけです。これは新聞にちゃんとあなたのおっしゃった数字が出ていますね。つまり、この方は仮定だとおっしゃっているんですよ。仮定ではないですよ。どうですか、あなたの閣議の報告の数値をもう一遍おっしゃってください。
  84. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  いま、経済企画庁長官お話しのとおり、仮定でございます。
  85. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは、もう一遍戻っていやだけれども、二月、三月は対前月比〇%になると確信がありますか、企画庁長官、仮定じゃないんですよ。もうすでに二月なんです。七%とおっしゃるけれども、現にもう七・七を超えそうじゃありませんか、
  86. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 こういう激動期でございますから、将来のことにつきましては、正確な数字を事前に申し上げることは大変むずかしいのですけれども、一つの目標を設定をいたしまして、その目標に向けてそれを実現すべく、いま政府は挙げて努力をしておるというのが現状でございます。
  87. 矢野絢也

    ○矢野委員 そうすると目標なんですな、こうなるという数字じゃないんですね。しかも、先ほどから言っておりますように、当初見込みも見通しも数値をはっきりさせない。分母、分子の計算もない、それだけわかればいいんですよ。いかにこの消費の伸び四・九がいいかげんなものであるかということもそれではっきり出てくるし、五・三も成立はむずかしい、これも願望であり、目標であるということもわかった、これは春闘その他の関係もありますから、総理、最後にこの議論、五十五年度は七%に必ずおさめる、そして五十六年度は五・五にしてみせますと、所信を述べてください。
  88. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 五十五年度消費者物価につきましては七%程度、さらに五十六年度につきましては五・五%程度、これに全力を尽くすことをお約束いたします。
  89. 矢野絢也

    ○矢野委員 次に行きましょう、質問を急げと言うのなら。  それでは、財政問題をやりましょう。  五十六年度予算案で国債の発行が二兆円減額された、これは私、結構なことだと思うんですよ、総理、去年は一兆円、国債が減額された、ただ、国債を二兆円減額するということは、これは五十九年度に赤字国債発行をゼロにするという前提があるわけでしょうけれども、ことし二兆減額するというのは、これは高度の財政政策的判断、そうでしょう、一兆にするか、二兆にするか、三兆にするかは、しかも総理は、あらかじめそれを約束しておられた。私は敬意を表しますよ。ただ、二兆という数字を総理が言い出された理由、背景はどういうことですか。
  90. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御承知のように、特例公債の本格的な償還の時期、これは六十年度から始まるわけでございます。この七兆円余の特例公債を五十九年度までに何とかして解消したい。(矢野委員「なぜ二兆なんですか」と呼ぶ)そこで、財政再建元年として、私は当初、二兆円程度、こういうことを申し上げたのでありますが、財政再建を不退転の政府の決意としてやりますために、二兆円減額ということを私、指示をいたしました。しかも、それは特例公債二兆円ということにしたわけでございます。
  91. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、その二兆という数字をお決めなさったのは、いやみな言い方をすれば、大蔵省主税局の方でがんばって、どうやら一兆四千億増税ができそうだということから、二兆をお決めなさったのか。二兆の減額を総理が言い出されたから、それじゃこれに合わせて税金取りまくらなくちゃ帳じりが合わぬということで、この既存税制の中で一兆四千億を増税することをお決めなさったのか、二兆国債減額と増税の因果関係はどっちが先で、どっちが後ですか、大臣。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは非常に重要な問題でございます、ただいま総理がおっしゃったように、二兆円を減額するという決意を固めたのは、大体四兆五千億円程度の自然増収が何とか見込まれそうであるということになれば、二兆円減額というものはやってできない数字ではない。そこで、四兆五千億円のうち二兆円を減額すると、その歳入に充てるために、四兆五千億円あってもあと二兆五千億円しか残らない。あと二兆五千億円で、大体国債の利払いと一部償還、つまり国債費ですね、それと地方交付税の交付金に充てられるということでございますから、それで、ひとつ国債の減額は何といったって諸般の情勢から一番重要なので、それでいこうということになったわけであります。
  93. 矢野絢也

    ○矢野委員 財政の危機や財政再建の意味をやはりここで考えなければいかぬと思うのですよ。やはり財政収支の改善をする、総理は二兆円減額をお決めなさった、これは御見識だと思うのです、ただ、収支の改善ということも大事ですけれども、財政赤字になったというのは、やはりいままでの、高度成長以来のいろいろな財政体質のひずみというのがあるのですよね、だから、財政体質の改善というものがそれに並行して行われて、そしてその結果として二兆円の減額ができた、これが一番正しい姿なんですよ。ところが総理が張り切って、二兆円国債を減額する。結構ですよ。しかし、その前提になる財政体質、簡単に言えばむだ遣いの整理、これがなされないまま二兆円の国債減額を決めますと、いま大蔵大臣が言われたとおり、四兆五千億の自然増収、そこから二兆円、総理大臣が言うんだから、これは取られてしまう。あと二兆五千億しか残らぬ、これで歳出増は賄い切れない、そんなら増税や、こうなるわけなんです。つまり国債減額というのは、結果的に増税という形にツケが回ってしまっておる、こう言わざるを得ないでしょう、大蔵大臣。
  94. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結局、国債を減額しないということになれば借金をそれだけ余分にする、(矢野委員「結構だ、いいことだと言っているんですよ、それは」と呼ぶ)ですから、これはどちらをとるか。要するに、国債を減らすということは、後年度の負担を減らす。国債を……(矢野委員「わかっています、そんな説明してもらわぬでも」と呼ぶ)だから、それは政治判断の問題でして、国債を減らせば、借金ですから、利息がついた債務が減る。だから、そういう意味でどちらをとるかということで、要するに国債減額を優先した、こういうことでございます。
  95. 矢野絢也

    ○矢野委員 ですから、財政収支、赤字、この改善も大事だと言っているんですよ、しかし、その前提には財政体質の改善が先行しておらなければ、あなたの言うように、すぐそれが増税という形でツケが回るのですよ、私はあなたの言っていることを否定しているわけではない。残された赤字国債、またこれは大分残高——残高というか発行高がありますね。簡単に言えば、毎年二兆ぐらい減らさなければいかぬということでしょう。こういう安易なやり方をしたら、毎年これは増税をやらなくちゃだめだということになるんですよ、この議論は、またあなた、わかり切ったことを言うに決まっておるから、もうやめておきます、  そこで、自然増収四兆五千億という数字が出ましたが、この多額の税の自然増収をもたらした理由といいますか、所得税、法人税、間接税、その他いろいろあると思います、この所得税、法人税、間接税、四兆五千億はどういう比率になりますか、金額とね。簡単に答えてください、理屈はようわかっていますんやから。
  96. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四兆四千九百億円の当初自然増収の中で、給与に係る源泉所得税の増が一兆二千百四十億円、二七%、その他、これは主として利子配当でございますが、その他に係る源泉所得税の増加が八千六百六十億円、一九・三%、申告所得税の増が一五・四%で六千八百九十億円、合計いたしまして所得税で二兆七千六百九十億円、六一・七%であります、法人税は二七・三%の一兆二千二百四十億円、その他相続税を含めました間接税で四千九百七十億円で一一・〇%、かようになっております。
  97. 矢野絢也

    ○矢野委員 くどいようですが、この所得税、給与所得者、まあサラリーマンの源泉分、それから営業者の申告分、この自然増収から見ましてどちらが好調だったですか。くどいようですけれども、もう一遍。
  98. 高橋元

    高橋(元)政府委員 伸び率で申し上げますと、給与所得に係る源泉の伸び率が二一・八でございます。営業、庶業、その他申告に係ります分の伸び率は二七・七%でございます。それから、給与以外の利子配当等の源泉所得の伸び率が三八・二%であります。
  99. 矢野絢也

    ○矢野委員 いずれにしても、給与所得者に対する所得税の自然増収がきわめて莫大であったということが立証されたと思うのですが、とにかく、この五十二年度以降四年連続して所得税の減税をなさってない。  そこで、五十二年度の決算額から五十六年度の予算額、このお渡しした表の1があると思いますが、この表の1をごらんいただきたいのです。私のこれでいきますと、要するに全体で八六・二%ふえているわけですね。五十二年度の決算から五十六年度の予算、税収は八六・二%ふえておる。しかも、この税目別で言いますと、所得税は九八・八%ふえているのですよ。約倍ですね。法人税もかなり好調です。八五・九%ふえておる。間接税その他で七〇・六%。所得税の増加が圧倒的に高いわけなんです。金額で申しましても、所得税は六兆五千七億円、法人税は四兆七千八百五十八億円というわけで、所得税が一番大きい。それで不公平税制の是正をいろいろなさったというわけでしょうけれども、どう見たってこれはサラリーマンに対する増税が、この数字から見ましても、五十二年度決算から見て九八・八%、倍にこれはふえているわけですよね。つまり自然増収四兆五千億を支えてきたのは、サラリーマンのいわば税金、こう言わざるを得ないと思います。もう少し詳しく分析したいことがありますが、時間もありますからこの事実だけを指摘しておきたいわけです。  そこで、こういうサラリーマン増税、勤労者への実質増税というものは、一つは大衆課税の強化ということにつながる、二つは急激な負担増ということになる、三番目は低所得者ほど負担がふえるという結果になるわけです。  渡辺さん、一つは大衆課税の強化、納税者が急増しておりますな。先ほど申し上げたが、五十三年度から四年連続所得税減税を見送っておりますが、この間、給与所得者は百七十一万人もふえている。お給料もらう人は百七十一万人ふえたが、税金を納める人は四百四十一万人もふえておるのでしょう。また、給与所得者に占める納税者の割合も、五十二年度の七四%から五十五年度は八四%もふえておる。このような納税者の急増の事実を大蔵大臣、認めますか。認めるか認めないか、簡単に答えてください。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 所得がふえれば納税者の数はふえる。認めます。
  101. 矢野絢也

    ○矢野委員 急激な負担増という二番目、中間所得層にこれはシフトする。五十三年から五十五年度の間に給与収入百万円以下の納税者は七十八万入減った。また、二百万円以下で二百六万人納税者が減った。しかし、二百万円から三百万円の階層が、納税者は九十九万人ふえた、三百万から五百万の階層は四百二十八万人ふえた、五百万から一千万は百二十二万人ふえたというわけで、急激に負担がふえてきておるということが言えます。低所得者ほど税負担がふえておるのです。皆さん御存じでしょうけれども。累進課税制度のもとにおいて、名目賃金がふえる、しかし物価の値上がりのために実質賃金は五十五年度なんか〇・九減っているんですね。実質賃金が〇・九減っておりながら、名目賃金がふえるために、累進課税制度のために税金だけべらぼうにふえる、こういった傾向が、所得の少ない人ほど負担増が大きい、この事実は認められますか。
  102. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 所得の少ない人ほど負担増が多いということは、よく私わからぬわけですが、たとえば……(矢野委員「問題発言ですよ、それは」と呼ぶ)いやいや、たとえば三百万円の夫婦、子二人の給与所得者があって、五十五年で三百万のものを仮に五十六年に七・五%給与が上がったと仮定をいたします。そうすると三百二十二万五千円になる。そうすると、給与の名目上は二十二万五千円ふえる。しかし、税額では幾らふえるかといいますと、二万一千六十円しかふえない。住民税では九千百円しかふえない。したがって、税額は三万百六十円ですから、税引き手取り額は十九万四千円ふえる、こういうようなことになるわけです。したがいまして、税額がある程度ふえるのは、これは当然ふえるわけです。しかしながら、可処分所得もそれ以上にふえているということも御了解を願いたいわけです。所得がふえれば税額がふえるということは、避けて通れない問題なのです。(「だから、いままで調整減税やってきた」と呼ぶ者あり)
  103. 矢野絢也

    ○矢野委員 一方で物価が上がっておるわけでしてね。いまも声がありますが、調整減税の必要があるわけですが、あなたの理屈を聞いておりますと、少しでも手取りがふえるからいいじゃないかという理屈じゃありませんか。名目賃金がふえても、いままでの払っておった税金に比べて次に払わねばならない税金のアップのパーセンテージが高くなっておるということを私は指摘しているのであって、何ぼ税金が上がったかて手取りが——あたりまえさ。月給ふえたら手取りふえるのあたりまえじゃありませんか。その月給がふえた中で、本来ふえなくちゃならないほどふえない。この累進課税制度のために、いままで以上の高いパーセンテージで所得税がふえるから、実際使えるお金が少なくなるという意味で低所得層ほど負担が重くなるということを言っているのですよ。そんなへ理屈こねたらだめですよ。納税者が納税意欲を失いますよ、そんなこと言ったら。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 二つ、見方があるのです。一つは、私が言ったようなのもこれは間違いのない一つの見方。それから、先生の指摘するように、下の方はたとえば二百一万五千円に課税最低限がなっていますね。そこで結局、外国と比べて日本の場合がふえ率が多いというのは、要するに最初の税率が一〇%なんですよ。イギリスのように、最初から二〇%でぼんと高く上げておいて、かなりのところまで税率の刻みをつけないということになりますと、その比例的な税額しかふえないが、日本の場合は非常に細かく税率を刻んであるわけです。したがって、結局、課税対象になる場合には、給料がふえると累進効果というものは強くなっておる。それは最初から高い税率を用いてない。非常に低い税率で、二%刻みとか、まあ非常に低い税率の刻みになっておるということが原因でございます自したがって、そこでは累進効果が強く出ておるということも事実であります。
  105. 矢野絢也

    ○矢野委員 低所得層ほど勤労者の所得税の負担は比率からいって大きくなってきておる。しかも、税の自然増収を支えておる六一%が所得税の自然増収である。その税の自然増収の所得税の中でも、給与所得者、サラリーマンの分が一番多いということは、もう総理もおわかりだと思いますね。所得減税、これはやっぱり物価調整減税という形でなさるべきじゃないでしょうか。総理の御意見を伺いたいと思います。これじゃ勤労者がかわいそうですよ。
  106. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げましたような日本の窮迫した財政事情を何とか改善をしたい、こういう至上の、避けて通れない要請が一方においてあるわけでございます。そこで私は、行財政の肥大化をできるだけ圧縮をするということに全力を挙げました。しかし、この問題は五十六年度一年でなかなかできない。特に文教でありますとか社会保障関係でありますとかいうものが全体の七十数%にも上っております。しかも、それは法律に基づく補助その他に相なっております。これを一挙にはなかなかできない。行政水準も、これを維持すべしという御意見もあったわけでございます。そこで、今回いろんな努力をいたしましたが、税負担につきましても、現行税制の中で国民皆さんにお願いをしなければならない、こういうことにいたしたのでございます。  そういう中で、いまの物価調整減税とか所得税減税の問題があるわけでございますけれども、しかし、御承知のように日本の所得税の中では課税最低限、これが諸外国に比べましても非常に高くなっております。それだけに、いままでは税負担というものが低位に抑えられておったわけでございます。四年間の据え置きにおきまして、確かに給与所得者の低い階層の方々がそれだけ負担が多くなっているという事実は、私も認めます。しかし、前段で申し上げたような事情もございますので、しばらくの間ひとつごしんぼうを願い、御協力をいただきたいというのが私の率直な話でございます。
  107. 矢野絢也

    ○矢野委員 税収全体の枠はともかくとしても、所得の少ない方々に対する負担が大きくなっておるという事実はお認めなさっておるわけですね。税収全体を減らすと言っているのじゃないのです。所得の少ない方々に対する所得税減税を行う。たとえばいろいろな方々について不公平税制の結果、税の上で得をしておる方がたくさんおるわけなんですよ、総理。こういった方々からもう少し御負担をいただいて、お認めになっておるように所得の少ない方々の負担というものを軽くするという意味から、所得税の減税をなさるのが筋だと私は思うのですよ。総理が冒頭で申されました財政難だということはわかっているのですよ。しかし、この所得税の不公平というのは、まさに税制の中での不公正になってきているのです。私は歳出との見合いで言っているのじゃない。  そういう意味で、私どもなりの具体的提案は持っております。きょうここですべてを説明するわけにはいきませんが。総理、いまの税制度の中で、所得の多いところ、大きいところ、そういったところを是正して、その分を所得の少ない方々に減税という形で政府としてお報いしていくということはどうなのでしょうか。先ほど国債は減らさなければいかぬとか、歳出がどうだとか——私の言っているのはそんなことじゃない。いまの税制度の中での改革を行って減税をしたら、総理もお認めなさったように所得の少ない方々に気の毒だというようなことを、こんなところで言わなくても済むのですよ、総理。そういう立場で所得税減税をやりませんか。もう答えだけで結構です。
  108. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私、先ほど申し上げたようなことでございまして、課税最低限が先進諸国等に比べてもまだ日本の方が高いという実情からいたしまして、私は、この際は物価調整減税その他をできる状況ではない、何とか御協力をいただくことをお願いしたいのでございます。
  109. 矢野絢也

    ○矢野委員 もう答え要りません。  税の負担ということをおっしゃいますけれども、昭和六十年度の時点で租税負担率を二六・五というふうに決めていらっしゃる。私どもの計算では、ことしの予算で租税負担率はたしか二五近くまで来ていますよ。外国と比べる議論はもうやめてもらいたい。政府は、六十年度時点で租税負担率が二六・五だ、これと比べて現在の税がどうなっているということを議論すべきですよ。すぐ外国の例、全然、住宅事情とか違うじゃありませんか。こういうことを指摘しておきたいと思います。これはもう返事要りません。  それで、表の二をひとつごらんいただきたいのです。大蔵省がおつくりなさった中期展望は、投資部門まで含めまして要調整額、つまり不足分、赤字ですね、全体で、五十七年度は二兆七千七百億円、五十八年度は四兆九千六百億円、五十九年度は六兆八千億円。その表にはこの金額は載っておりません。  まず、投資部門における要調整額であるこの二兆五千七百億円、これは私たち水増したと思うのです。なぜかと申しますと、一つは、四条国債を五十六年度と横並びにしていらっしゃるわけですね、金額。それから公共投資は、新経済社会七カ年計画の目標、百九十兆円ですね。この計画はある。それに基づいて五十七年度以降九・六%ずつふやすことにしていらっしゃる。ところが、五十五年度も五十六年度も公共事業は伸び率はゼロにされている。いきなり五十七年度から目をむいたみたいに九・六%。それは百九十兆円にしなくてはならぬという理屈はわかりますが、そういった場合はおのずから建設国債とのパラレルな関係というのが、従来はあったわけです。建設国債の発行は五十六年度並みにふやさないで抑えておいて、そして公共事業の方は百九十兆円に合わさなければいかぬといって九・六%ずつふやしていらっしゃる。そうしたらこの投資部門において要調整額、つまり赤字が二兆五千七百億円出てくるのはあたりまえのことなんです。  これは公共事業の伸びを五十五年、五十六年度並みに伸び率をゼロにすることによって、建設国債というものを従来並みの金額でとどめることができる。そうすればほとんど要調整額はゼロになりますね。出てきません。どうしても公共事業をふやしたいとおっしゃるなら、それとの見合いで建設国債もふやさざるを得ない。その場合も要調整額はゼロになってくる。いずれにしても、投資部門における二兆五千七百億円という赤字は出てこない。だから私は水増したと申し上げておる。そして、これだけ足りません、これだけ足りませんなんて大げさな、オオカミ少年みたいに、赤字の金額を膨大にふくらまして増税必要です、こういう見え透いたトリックはまずめやていただきたい。  この投資部門についての要調整額二兆五千七百億円は要らぬ、もうゼロでいいんじゃないかという私の指摘に対して、この問題に限って——問題点は後からまた申し上げますが、御批判なり御答弁なりを願いたい。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはおっしゃるとおりです。ということは、これは百九十兆という前提が置いてありますから、しかも四条国債は横並びということになると要調整額が出てくる。したがって、公共事業をふやさないということになれば、また要調整額が減るわけです。それはそのときどきの情勢に従ってどういうふうに対処するか、そのときどきに決めていく問題であります。
  111. 矢野絢也

    ○矢野委員 ということは、中期展望の要調整額、総額で六兆八千億ですか、五十九年度の時点ですね、このうち二兆五千七百億円はそれほどの必然性、理由というものはない、こう判断をいたします。  それから経常部門の方ですね、そこにリストがございますが、歳入を過小見積もりしておる、歳出を過大見積もりしておる、こういうことなんです、私たちの見方は。まず、この税収の過小見積もりの点でございますが、政府は一一・七%の名目成長率、弾性値一・二を掛けまして毎年度一四%の税収の伸び、これは低過ぎます。たとえば五十六年度の増税分を除く、つまり五十六年度の経常部門のうち、増税は私たち反対ですから、増税は前提にしませんが、この増税を除いた部分の税収の伸び率は五十五年度に比べまして一八・一%、こういう計算になっております。この一八・一%というのは、五十五年度あるいはずっといままでのあれから見ても、決して不当な数字じゃない、むしろ低い目に遠慮して見積もっているつもりです。この一八・一%という五十六年度の増税分を除く税収の伸び率を五十七年度に当てはめますと、八千九百億円、政府案よりもふえます。五十八年度は二兆三千百億円ふえます。五十九年度は実に四兆一千八百億円、税収がこの中期展望の金額よりもふえることになる。したがって、五十九年度におきましては、歳出はそのままにほっておいても、つまり中期展望の数字のとおりであっても、要調整額はなくなってしまうのです。つまり、五十六年度の対前年度税収の伸び率、増税を抜いた分の一八・一で計算しても税収は十分ある。つまり、経常部門の要調整額はなくなる。この点についての御批判なり御答弁を願いたいと思います。
  112. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま公明党試算の中期展望をいただいたわけでございまして、中身をしさいに検討したわけじゃございませんから、的確なことを申し上げることは困難だと思います。ただ、直観的に私考えましたのは、政府の方では一四%の増収というものを毎年見ているんだが、公明党の試算は一八%を見ておる、ちょっと高過ぎるんじゃないかなという気が一つしておるわけであります。それは別な新増税でもやれば別ですが、これは政府の方はやらないという前提に立って書いてあるわけですから、それで見ると、ちょっと高過ぎるんじゃないか。  もう一つは、歳出の方が……(矢野委員「歳出は次に申し上げますから」と呼ぶ)ああ、そうですか。じゃ、その程度を直観的に考えました。
  113. 矢野絢也

    ○矢野委員 一八・一の公明党の税収の伸び率は高過ぎると言ったって、五十六年度予算は現実にそうなっておる。しかも、たとえば五十二年度で申し上げますと、税収の伸びは、対前年度比一七・五%伸びておる。五十三年度も一七・六%の伸び。五十四年度は確かに少なかった、一〇・六%。五十五年度は二二・九%伸びているのです。五十六年度は二二・二%伸びているのです。経済を安定成長路線に乗せるという御努力をなさったならば、五十五年度は二二・九%、五十六年度も二二・二%、一昨年のあの石油ショックの非常に苦しい中においても、このように二二・九%とか二二・二%と、税収の伸びは対前年度に比べて伸びているのです。ですから、私どもが言う一八・一%というのは決して高過ぎやしませんよ。あなた方の数字は毎年間違っておるじゃありませんか、税収の見通し。補正のときにいつも、あなた、べらぼうに、実はこれだけ出てきましたと言っておるじゃありませんか。ですから、一八・一%は私たち、それほどむちゃな数字だとは思いません。  それから次に、歳出の問題にいきます。後また、御不満があったら何なりと文句を言ってください。  歳出増をできるだけ少な目にしなくちゃならぬ。それで経常部門の歳出ですが、地方交付税を除く「その他」の項目では、五十六年度は四・二%になっているわけですね。ところが、五十七年度には六・七%になって、五十八年度、五十九年度は五・四%と、ぐんぐん上げていらっしゃる。まだこれはかわいらしい。この上にまだ、巨額な「予備枠」というのをおとりなさいました。予備枠というのはわからぬでもないですよ、いろいろ新規政策もやらなくちゃならぬということでしょうから。しかし、この五十六年度の予算を見ますと、四・二%の中に、すでにもう予備費は三千五百億含まれておったんですよ。ですから、この予備枠を歳出増に加えて計算すると、大変な伸び率になってしまうんですよ。この表をごらんいただいたとおりです。  これはやり方が実にこそくなんですよ。余り急にパーセンテージの上で大きく出てくるとすぐ文句を言われるから、できるだけここのところの数字は抑えなければいかぬからといって、ぐあいが悪いというわけで、予備枠という形で別にこれをとられました。だから、予備枠を足すと、たとえば五十七年度を見ますと、十三兆七千二百億に七千七百億を足しますと十四兆四千九百億、足しましたら対前年度比一二・七%もふえておるんだ。これはむちゃくちゃ。渡辺さん、五十六年度は四・二%。実際予算編成しておきながら、五十七年度は予備枠を足して計算したら一二・七%の伸びになる。五十八年度も同じ理屈で一一・五%の伸びになる。こんなむちゃくちゃな歳出の伸び、つまり地方交付税を除く「その他」のところ。こんなことをやっておったら、それは赤字が出るのはあたりまえです。それで足りません、足りません、だから来年は大型消費税だみたいな理屈に結びつけたいらしい、断言はしませんけれども。先ほど総理はそうでないとおっしゃったから。こういうやり方は、私は言語道断だと思うのです。この地方交付税を除いた「その他」、ここを五十六年度並みに四・二%に抑える。抑えることが、総理先ほどおっしゃった歳出削減の努力ということなんですよ。抑えれば、私どもが申し上げているとおり、たとえば四・二%でいきましたら、五十七年度は十三兆四千億でございます、五十八年度は十三兆九千六百億でございますということになるわけです。  そういう立場で計算をし、かつ、税収についても先ほど言った一八・一つまり、いままでの実績よりも低目に遠慮して計算した税収の伸び、これで表をつくったわけです。そうすると、大蔵省さんが言うようなそんなにべらぼうな要調整額は出てこない。五十七年度には、この経常部門では一兆九千八百億足りません、こうおっしゃっている。確かにこの公明党の案では、五十七年度は二千二百億円足りません。二千二百億円くらいなら何とか不公平税制の是正とか、場合によっては、こんなことを私、言いたくありませんが、国債の増減ということも含めて調整可能な、増税をしなくてもこれはやれる金額なんですよ、総理。それを大蔵省の案のような、税収はことさら低く見積もる。いままでの実績に、こんなに低い税収はなかった。そして歳出の方は、予備枠だなんて手品を使われまして、さも五十六年度は四・二でございますが、五十七年度は六・七、これでもべらぼうにふえておるんですよ、控え目な感じを装いながら。別に七千七百億、これを加えると一二・七%の伸びになるじゃありませんか。これを大蔵大臣、認めるつもりですか、こんなべらぼうな伸びで認めるわけにはいかぬでしょう。こんな表、だから出さぬでもいいんですよ。  私たちが出せ出せと言っているのは、財政再建という前提に立って、税収ももっと科学的に計算してもらいたい。歳出もこんな手品みたいなことをやらないで、五十六年度に四・二にやったんだという立場で歳出を抑制する。そうすると、公明党の案のように、たとえば五十七年度は確かに二千二百億円は足りません、しかし五十八年度には五千七百億円も余っちゃうんですよ、渡辺さん。気分いいぜ、これ。五十九年度になると二兆三千九百億も余っちゃうんだ。この分、減税だってできる。減税がどうしてもきらいだとおっしゃるなら、歳出の上積みだってできるじゃありませんか。四・二なんて、これじゃいかにも貧乏くさいから、これも新規政策として、余った分はそっちへ回しますということだってできるんです。私どもの案の方で、もう一遍中期展望をおつくりなさるお気持ちはありませんか。それと歳入については御反論をいただきましたが、歳出についての御反論がもしあればお聞かせいただきたい。
  114. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 お断りはしてありますように、この中期展望というのは、増税もいたしません、それから制度の改正、所得制限とかいろんなこと、そういうようなこともいたしません、その予算を政策目的で補助金なり何なりを特別に切り込んでいく、今回はそういう姿勢もとりませんというようなことで、いまのままで政策変更がないという形ならばこうなりますということを書いたわけです。したがって、政策変更があれば別なわけでございますから、当然そこには、いまの矢野議員のような御指摘があって当然でございまして、これをたたき台にして、そして徹底的な御批判をいただいて、そうして要調整額を少なくしていくということを目的にしておるわけでございます。  それから、この予備枠については、この金額では人件費のアップを一%しか認めておりませんから、ずっと一%しか人件費は上がらないという前提で書いてございます。そのほかにいろいろな新規の問題等も取り上げるというふうに考えておりません。ただ、物価上昇とかそういうものはとってあります。したがって、人件費が一%しかずっと上がらないというのも非現実的ではないか。あるいは上がらないということもあるかもわからない。しかし、そういうような、予測されるようなものも多少のスペースをとっておかなければならぬということで、全体の一・五%というものを予備枠として別に計上してあるわけでございます。  したがって、ことし四・三%に一般歳出を抑えだというのは、これはかなりのいろんなことをやっておるわけですから、そういう政策的手法を用いてことしは抑え込んできた。七・五の要求があったものを四・三に抑えだというのは、それなりのことをやってきたわけです。したがって今後とも、このままで予算なんて組めるわけがないわけですから、当然これはいろいろ皆さんの知恵もかりて、抑え込むこと、切り込むこと、そういうことをやっていかなければならない、そう考えておるわけでございます。  したがって、公明党の案等につきましても、十分に今後ともお聞かせをいただいて、また政府の方についてもいろいろと叱咤激励をいただいて、一緒になって経費を少なくし、そして負担をできるだけ少なくしていくということは大賛成であります。
  115. 矢野絢也

    ○矢野委員 財政元年、イブといわれた五十五年度予算では、一般歳出の伸び、これは五・一%、そして五十六年度は財政再建元年、一般歳出の伸び率は四・三%。ところが、これを見たら、いきなり五十七年度は一〇・四%、これは財政元年からまたもとに戻っちゃうのですか、こういう発想は間違っておる。  大蔵省の立場から見て、私は冒頭に、いままでのようなやり方じゃなしに積み上げ方式で計算をなさった、そのこと自体は御苦労があっただろうという意味で敬意を表しておるわけです。しかし、その結果が、いま私がるる指摘したような五十五年度、五十六年度に比べても、イブとか元年に比べても、余りにも安易と申しますか、いいかげんな数字になっておる。そこへもってきて投資部門で二兆五千七百億でしたか、水増しと言ったら失礼ですけれども、とにかく赤字の幅がこれだけたくさん出るのですみたいなことを、装うと言うと失礼ですけれども、そういうテクニックまでお使いなさっておる。それは矢野の言うとおりだということは、先ほど大蔵大臣もお認めなさった。経常部門についても、歳出を余りにも多く見積もり過ぎておる、制度は一緒だとおっしゃるけれども。予備費、予備枠、これは人件費もあるかもしれませんけれども、それだけじゃないですよ。  というわけで、これは昼からの時間もまだございますしあれですから、さらに重ねて議論はいたしますが、こういうようなことでございますので、この中期展望が出たからといって、余りそう簡単に閣議で、そうかそうかというような了承をなさらないで、閣議に出す前に渡辺さん御自身が目を三角にして、こんな中期展望で恥ずかしくて出せるかというぐらいの御見識をお持ちなさらなくてはだめですよ。要するに、増税キャンペーンのお手伝いをなさっておる、そうなっちゃう。いまごろ、いや、この要調整額は歳出をこれから削るのですよと言ったって、だめですよ、こんな水増しをした要調整額の赤字を出しておいて。  そこで総理政府の税制調査会で五十七年度からの大型消費税導入について特別部会をおつくりなさって、本年三月から実質的な審議をスタートさせる、こういう御方針のようでございますね。総会がありました後、小倉会長がこの方針総理に報告された。報道によりますと、それを基本的に総理は了承されたというふうに承知しております。  この政府税調は、中期税制改正答申、五十五年の十一月ですが、消費に着目した、課税対象の広い間接税は避けて通れない検討課題、また十二月二十日の五十六年度答申でも、税制面で五十七年度以降にどのような対応措置を講ずるか、早い時期から検討を加える必要がある、こういうようなことで、私はきめつけはいたしませんが、五十七年度よりの消費を対象にした、課税対象の広い間接税、かつての大型消費税、これは避けて通れない、こういう方針政府税調はお持ちである。  失礼ですけれども、政府税調の御判断というのは、大分大蔵省からのいろいろなアドバイスなり示唆なりというようなものがあってそういうことになったのだ、また、データ的にもそういうことになるのだと思うのだけれども、先ほど私が申し上げたとおり、何も公明党の試案が絶対だ、そんな偉そうなことは私は言いませんよ。少なくとも歳出を削減し、税収についても五十五年度、五十六年度の実績から見て、しかもそういう税収を確実なものにするような安定経済成長路線に乗っけるための経済政策、こういうものをとれば、大型消費税などというものはもう考える必要もない、検討する必要もない、私はそう思うんですよ。私どもの試案で言えば、五十八年度から黒字が出ますね。大型消費税なんて、大型減税をやってもらいたいぐらいに思っている。  というわけですから、政府税調のこういった総理に対する御報告、これをどう受けとめ、今後どういう方針で臨まれるかを、ひとつ総理、お答え願いたい。
  116. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政府税調の答申は、矢野さんいまお述べになったとおりでございます。しかし、これを採用するかどうか、これは高度の政治判断、総合的な判断を要する問題でございます。私は、今後の社会経済情勢の推移だとか、財政の展望だとか、国民生活の実態だとか、また国際経済の動きだとか、いろいろな状況を総合的に判断しながら結論を出したい。また、いまるる公明党の政策についてのお話がございました。十分参考にさしていただいて、慎重に対処したい、こう思っております。
  117. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は、そんな不必要な大型増税をやらなくても、税の自然増収という形で税収を確保し、そして歳出を厳しく切り詰めていく。厳しくといったって、ことし並みに、四・二%にしましょうと言っているのですからね。そうでしょう。こういう前提に立てば、大型消費税などというものは必要ない。この私の意見に賛成していただけますか。それで財政再建がちゃんとできるのです、二兆円の国債減額が毎年できるのですから。
  118. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど御答弁申し上げたようなことでございまして、せっかく掘り下げた検討もいたします。
  119. 小山長規

    小山委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時開議
  120. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢野絢也君
  121. 矢野絢也

    ○矢野委員 本会議の代表質問におきまして、わが党の竹入委員長から、武器禁輸法の制定について具体的な提案をいたしました。改めて政府の御見解を伺います。
  122. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政府といたしましては、武器の輸出問題につきましては、武器輸出三原則、これをあくまで堅持いたします。また、昭和五十一年二月二十七日の武器輸出に関する政府方針、これを引き続き堅持いたしまして、この実効について十分なチェックがなされて、確実にその目的が達せられるように、関係当局を督励をして今後万全を期してまいりたい、このように考えております。したがいまして、新たな法律をつくることを現段階で考えておりません。
  123. 矢野絢也

    ○矢野委員 つまり、その必要はいまのところない、いまの制度、法律で十分やっていける、こういう御判断のようでございますね。これは逆に言えば、いま仰せの武器禁輸三原則あるいは政府方針というものを政府は当然かたくかたく守っていく、いささかも例外とかいいかげんなことは認めない、こういうお考えだと受け取ってよろしゅうございますか。
  124. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおり考えております。
  125. 矢野絢也

    ○矢野委員 その御決意は結構なんですが、いまの制度、いまの法律、いまの方針で私は不十分だという判断を持っております。午前中も社会党さんから武器輸出の問題で御提議があったわけでございますが、これではだめだという判断を持っております。  具体的に伺っていきたいと思うのです。いきなり具体的な問題に入りますが、防衛庁に伺いますけれども、アーマープレートというのがあるのです。これは戦車などの前面、側面をカバーする防弾鋼板、アーマープレート、これは各国とも高度の最高機密になっておるわけですね。こんなものがわかると、相手方からその鋼板を撃ち抜く大砲とか銃が研究されるわけですから、アーマープレートというのは高度の最高機密である。当然、輸出貿易管理令別表百九十七番から二百五番の品目に含まれる、こう思います。  そこで、防衛庁の秘密の保全に関する特約事項というのがあるわけですが、その特約事項によるアーマープレートを製造しておる会社、企業名をお知らせ願いたい。
  126. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねにつきましてお答え申し上げます。  専門的事項でございますので、政府委員の装備局長から答えさせます。
  127. 和田裕

    和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  アーマープレートの製造会社がどこであるかという御質問でございますが、三菱長崎機工という会社でございます。
  128. 矢野絢也

    ○矢野委員 それ一社ですか。
  129. 和田裕

    和田(裕)政府委員 アーマープレートというのは、定義の問題にもよりますけれども、いま私どもが頭に考えておりますのは戦車のアーマープレートのことでございまして、戦車のアーマープレートについては三菱長崎機工だと承知しております。
  130. 矢野絢也

    ○矢野委員 通産省にお伺いしたいのですが、株式会社日本製鋼所という会社があります。この日本製鋼所は、武器等製造法による許可事業の企業であり、鏡とか砲とか発射機、防弾鋼板、こういったものを製造しておる一部上場の企業であると承知しておりますが、御確認を願いたいと思います。
  131. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 お答えいたします。  日本製鋼所でございますが、武器等製造法に基づく許可事業者であるということでございます。
  132. 矢野絢也

    ○矢野委員 そこで、第一番目に申し上げたいわけでございます。  通産省並びに防衛庁にお尋ねしたいのですが、私の手元にあるこの資料によりますと、武器製造法の許可企業である日本製鋼所の大阪営業所鋼材課、昭和五十一年の二月二十八日の日付です。こういうものです。この日本製鋼所の大阪営業所鋼材課、ちゃんと担当者の判こも押してある。ここから堀田ハガネ前川専務あてに、日本製鋼の正式の文書ですが、この正式の文書によりますと、文面は「アーマープレートの化学成分について」というタイトル、そして「首題の件、先般御来社の際依頼ありましたこと、下記のとおりでございます。」云々とありまして、一、化学成分、ここにこういうふうに分析表が載っておる。何だかずいぶんむずかしいことが書いてあります。それから機械的性質、どういう機械的性質であるか、これが書いてあります。これは推測するとかなり高度の機密に属すると思いますから、この化学成分まで読み上げるのはやめておきます。つまり、日本製鋼所が堀田ハガネより依頼されて持ち込まれたアーマープレート、これは後ほど申し上げますが、軍需用品です。武器の部品です。それを分析したという事実は、この文書によりますときわめて明確なんです。こういうことはいいことなのかどうなのか。この事実を御存じであるかどうか。御存じでなければ、よく調査をしていただきたい。この三点。
  133. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日本製鋼所が堀田ハガネを通じて大韓重機工業から武器用のものの受注の話し合いを受けた。しかし、それについてはお断りをしたという報告は受けております。
  134. 矢野絢也

    ○矢野委員 えらく返事が早過ぎて、こっちがかえって恐縮します。  それで、二番目に伺いたいのですが、これは通産省にお尋ねしますけれども、今度は昭和五十一年の三月十三日、帝国ホテルにおきまして、大韓重機の金社長、当時の金専務、堀田ハガネの首脳が会談をして、大韓重機から引き合いの一覧表が堀田ハガネに渡された。こういうものをもらいたいのだ。引き合いですね。ここに引き合い一覧表がございます。この中に、十一番目の項目に、百五ミリアーマープレート、そしてMIL−S四六〇九九。このMIL−S四六〇九九というのは、アメリカの国防省の武器についての規格指定ということなんですね。こういう大韓重機から堀田ハガネにアーマープレート百五ミリだ。これはMIL—S四六〇九九というアメリカ国防省の規格によっての品物だ。これは明らかに武器部品でございます。こういうことを通産省は御存じでございますか。もし御存じでなければすぐお調べを願いたい。書類はここにございます。
  135. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 五十一年の春ごろに、装甲板につきまして、堀田ハガネから日本製鋼所が引き合いを受けたという話は聞いております。ただ、受注は断ったというふうに私どもは聞いております。
  136. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、そんなことを聞いているんじゃない。大韓重機と堀田ハガネの話をしているのです。
  137. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 大韓重機、堀田ハガネのただいまのお話し合いの件は、私どもは承知しておりません。
  138. 矢野絢也

    ○矢野委員 すぐお調べをいただきたい。  第三番目に申し上げたいのですが、同じ五十一年の八月二十九日、堀田ハガネの前川専務さんが韓国を訪問する、こういうことになりまして、訪問の目的の一つが武器部品としてのアーマープレートのLC、つまり信用状とでも申しましょうか、この信用状の問題で大韓重機とお打ち合わせをする、こういう用件で前川専務が韓国を訪問しておられる。これが事実だという証拠もございます。ここにそういう出張計画書がございます。  先ほどからいろいろ申し上げましたが、第一番目に私が申し上げたことは、かねてから堀田ハガネよりアーマープレート、戦車用の武器部品ですね、この分析を日本製鋼所に要請をし、そして五十一年の二月二十八日に日本製鋼所が、分析した報告書をきちっと正式文書で回答しておる。こういう事実。  第二番目に、五十一年の三月十三日、大韓重機の金社長らより、先ほど申し上げた百五ミリアーマープレート、MIL−S四六〇九九、こういう国防省の規格によるアーマープレートについて、堀田ハガネに引き合いを出しておる。  第三番目は、それとの関連において、堀田ハガネの前川専務が五十一年の八月二十八日訪韓をされまして、大韓重機とこのアーマープレートのLC、信用状の問題で打ち合わせをした。この三点を私は御指摘をした。これは私は、いずれも確実なことであるということを示す資料あるいは情報に基づいて御指摘を申し上げておる。  そこで、四番目に申し上げたいのですが、ここにテレックスがあるんです。このテレックスは、五十二年の八月三日、韓国ソウル在住の権氏が日本の企業に対しまして発信してきたテレックスです。韓国の権さんから発信してきたテレックス。ちなみに、この権という方は、韓国国防部の元少将、現韓国軍需産業振興会の常勤副会長である申優徹という方、その方の義理の弟さんだと承知しております。つまり、韓国の軍需産業の動向、シークレットの動きについて確実な情報、内部の動きに非常に詳しい方でございます。この方がテレックスを日本の企業に打ってきた。日本の企業と申しますと、はっきり申して堀田ハガネに対してテレックスが入った。このテレックスの内容は英語でございます。私は英語の発言は非常にいいのですが、日本語にしておいた方が無難だと思いますから日本語にしておきますが、緊急連絡、確実な情報である、昨日日本製鋼の複数の首脳が大韓重機を訪問し話し合った、すぐ電話をもらいたい、このテレックスによりますと、日本製鋼の営業、技術の担当の首脳が大韓重機を訪問しておる、そして会談をした、こういうことをこの権氏がテレックスで通報してきた。複数の首脳なんていいますけれども、ここには名前まで書いてある。日本製鋼所の幹部の役職も氏名もここに出ております。あえて、ここではその実名は伏せておきましょう。必要があれば通産省なり防衛庁にお知らせしてもよろしゅうございます。  さて、この会談内容、どんな会談が行われたか、そのメモがここにございます。五十二年八月二日、日本製鋼所のこの首脳たち、技術、営業その他の首脳、トップの首脳でございますが、KOHEMA、つまりコーリアン・ヘビー・マシナリー、つまり大韓重機の社長、副社長と会談、商談を行った。この会談で重要なことが七点ございます。全部この七点は、具体的に資料がある。  一つは、韓国軍需産業振興会常勤副会長、元国防部少将の、先ほど申し上げた申という方、この軍需産業振興会の常勤副会長の申さんがこの会談に同席をしておる。  第二点は、武器製造法の許可企業である日本製鋼所が防衛庁に武器を納入しておる。この会社が防衛庁の幹部の紹介で大韓重機に行っておられる。この実名もわかっております。防衛庁長官、よろしゅうございますか。武器製造法の許可を受けておる日本製鋼所が、防衛庁に勤務する人物、幹部ですよ、この方の紹介で韓国に行き、そして武器製造企業である大韓重機の社長、副社長と会談をされておる。その席に韓国の元少将、そして韓国軍需産業振興会常勤副会長の方が同席していらっしゃる。(「これは本当なら大変なことだ」と呼ぶ者あり)いや、これは本当なんです。ちゃんと資料がある。これが第二点目。  第三点目は、この資料から明らかになりますことは、金副社長もかねて日本を訪問されておる。そのとき日本製鋼所に、武器あるいは武器部品についての供給要請をしておられる。そしてこのときは、日本製鋼所は憲法上の理由で辞退した、こう資料にある。日本においてそういう供給要請をされたときには、日本製鋼として、これは常識をお持ちでございますな、憲法上の理由でそういうことはできませんとお断りをなさった。通産大臣がおっしゃったが、このことをあなたは言っている。憲法上の理由ということは、武器だからということですな。これが普通のトラクターとか耕運機なら憲法上の理由なんかありません。  しかし、第四点目は、これまでも日本製鋼所より——これまでというのは、先ほどの日付のそれまで、見積もりを出していた、こういう形跡がございます。  第五点目は、今回、つまり五十二年八月二日、防衛庁のしかるべき人の紹介を受けて大韓重機に行った。今度はこっちから行った、日本製鋼の方から。そして軍需産業の大物、元国防部の少将と同席されて、今回は日本製鋼所の方からアプローチをした、こういうことが明らかになっております。  第六点目は、そのとき正式に大韓重機から、改めて日本製鋼所に引き合いを出した。そして日本製鋼所も見積もりを出すことになった。  第七点目は、韓国の国防部も日本製鋼所を推薦しておる。  そういうことがこの資料に明らかになっておるわけでございます。  以上のことは、私が勝手に推測して言っているのじゃないですよ。すべて、私の手元にある資料、さらにそれを補足する確実な情報によって、これが事実であると判断できるわけです。  そこで、防衛庁に伺いたいのですけれども、防衛庁勤務の人物が、武器製造法の許可企業である日本製鋼所を外国の武器製造会社である大韓重機制紹介をする、こういうことはいいことなんですか、ぐあい悪いことなんですか。仮定のこととは言わせませんよ。名前まで、必要なら言ってあげますよ。こんなところで防衛庁長官に私から言わない方がいいでしょう。
  139. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま急に、防衛幹部の紹介で云々という御発言がございました。私は、そういった関係のお話はいま初めて伺ったわけでございますので、その点につきましては、早速、そういった事実があったのかどうか調査させていただきたいと思います。
  140. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、いや、仮定によって答えて、仮定で。
  141. 大村襄治

    大村国務大臣 そういうことはなかなか常識的にはあり得ないと思うわけでございますが、仮定の問題としてお答えするわけにはまいらない。
  142. 矢野絢也

    ○矢野委員 仮定だと言われると、事実はこうだと私、ここで名前から役職から全部言わなければいかぬ。私は気がやさしい人間ですからね、余りこんなところで特定の人物について名前を言いたくない。もうちょっと言ってあげましょうか。防衛庁の技術研究本部の技官です。このテレックスによれば、何とか博士という敬称までつけられておる人物です。どうなんですか、長官
  143. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  いま具体的にお話がございましたので、早速調査をしてお答えいたします。
  144. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、仮にそれが事実ならどういうことですか。
  145. 大村襄治

    大村国務大臣 ということになりますと、また仮定ということになりますので、その点は……。
  146. 矢野絢也

    ○矢野委員 仮定でもそういうことはいいことなんですか、悪いことなんですか。
  147. 大村襄治

    大村国務大臣 調べた上でお答えさせていただきたいと思います。
  148. 矢野絢也

    ○矢野委員 通産省に伺いたいと思います。  先ほど私、資料に基づいて、日本製鋼所の幹部が韓国を訪問し、大韓重機の幹部と会談、商談をされた。防衛庁の幹部の、防衛庁の職員といいますか、人物の紹介である。そして韓国におけるその会談は、元少将であり、軍需産業振興会の副会長をなさっておる人物までが同席しておる。その席上、大韓重機から、改めて正式に引き合いを出した。そして日本製鋼所は見積もりを出すということになった。この見積もりをするという物品は、輸出貿易管理令別表百九十七から二百五に当たるものでございます。しかも、先ほど言いましたとおり、かねて、その前の引き合いに対しては、憲法上の理由でこれはぐあいが悪いと日本製鋼所も断っておられる。明らかに武器もしくは武器部品だ。ましてや、普通の品物について、防衛庁の紹介も必要なければ、防衛庁というか防衛庁の職員ですね、その会談に韓国の元軍人さん、軍需産業振興会の副会長まで同席する必要はない。そういうものについて引き合いがあり、見積もりを頼まれ、見積もりを引き受けるということは、これはいいことですか、悪いことですか。武器製造法適用の会社ですよ、この会社は。
  149. 田中六助

    田中(六)国務大臣 非常に悪いことで、私も実は初耳でございまして、その内容につきましてひどいことが起こっているものだというふうに考えておりまして、悪いことだと思います。
  150. 矢野絢也

    ○矢野委員 防衛庁長官、通産大臣の方が本当に率直明快でいいですね。  私は、この問題について、いろいろな具体的事実を先ほどから並べ立てておる。私がでたらめを言っている、そんなことはございません。皆、資料に基づいて言っているのです。ましてや、防衛庁のそういった方が介在する。それについて明確なお答えをなさらない。  それから、通産大臣に文句を言って悪いのですけれども、悪いことでございますとまるで人ごとみたいにおっしゃいますが、当然これは、いまのこういう制度、法律ではだめだということになるではありませんか。それは後にして、長官、どうですか。
  151. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  繰り返して恐縮でございますが、事実を早速調査いたしまして、悪ければ悪いということで適当な措置を講ずることにいたしたいと考えるわけでございます。おっしゃいますとおり、武器の輸出につきましては厳重な規制があるわけでございますので、御指摘のような紹介があったとすればいかなる趣旨で紹介しているのか、その辺をしっかり調べさせていただいた上でお答えさせていただきたいと思います。
  152. 矢野絢也

    ○矢野委員 通産大臣、悪いことでございますとおっしゃっておりますが、そうしますと、そういったことをなさった企業について徹底的に事情を調べ、かつ、武器製造法の立場からどのような対処をされるつもりですか。
  153. 田中六助

    田中(六)国務大臣 もちろん、通産省としては徹底的にこれを調べるということのお約束は申し上げます。しかも、それはできるだけ早い機会にしなければならないというふうに思います。  しからば、武器等製造法上どう見るかということでございますけれども、やはり先ほど総理が申しましたように、私どもは、国際紛争に巻き込まれたり、あるいはそれを助長するようなことは、日本の平和主義、民主主義、基本的人権というわが内閣基本方針からしても最も反することでございますし、その上、武器輸出三原則、それから政府方針というものがはっきりしておりますので、それに照らし合わせてこれを判断し、また、結論を出さなければならないというふうに思います。
  154. 矢野絢也

    ○矢野委員 私が最初アーマープレートのことでお尋ねしましたら、通産大臣えらく早回りをしてお答えをなさっておりましたね。つまり、そういう商談はありました、しかし断っておるのですという前提でお答えになったそうじゃない。引き合いがあって、見積もりを出すことになっておるのです。あなたはあらかじめそこまで御承知でありながら、このことについてなぜ今日まで、そんなゆっくりしたことで進んだのですか。問題ですよ、これは。
  155. 田中六助

    田中(六)国務大臣 これはそういう商談があって断ったという報告だけで、その後、日本製鋼からそういうむしろ積極的に商談を進めていったという矢野議員御指摘の後段の部分については、率直に申し上げまして、報告を受けておりませんし、実は全く知らなかったことでございます。
  156. 小山長規

    小山委員長 坂井君の関連を許します。
  157. 坂井弘一

    ○坂井委員 ただいまの矢野委員の指摘はきわめて重要な問題提起でありまして、すべて事実関係を、証拠に基づきながらそれを一々挙げて、責任のある立場で聞いているわけであります。いま挙がっております日本製鋼所、これはもう総理、閣僚、皆さん御承知のとおりでありまして、防衛庁に対しまして主要な武器を製造して納入をする、つまり、七四式百五ミリ戦車砲あるいはまたりゅう弾砲、さらにはまた速射砲等々、そうした主要な武器について防衛庁に納入をしておる、言うなれば唯一の最大大手メーカーである。この日本製鋼所が防衛庁の、いま矢野委員の指摘によれば技官の紹介によって韓国を訪れて、大韓重工、しかも大韓重工の社長と主要な立場の人、しかも、そこに同席したのは韓国の元軍人である。そして、そこでどういうことが交わされたかというと、見積書を出します、相手の引き合いに応じて見積もりを出す。しかも、前段指摘したように、このアーマープレートというものは各国とも高度の軍事秘密に属しておる、こういう重要な武器の製造の大メーカーでありまして、堀田ハガネ等小さな商社がたまたま功を焦って、そしてメーカーで製造させて半製品を売ったというようなこととはおのずからまた比重が違う、そういう大問題であります。いま、見積もりを出すということが行われたんだということを矢野委員は指摘しております、  たまたま、いま手にいたしました夕刊であります。この中には「武器商談、日製鋼も関与韓国企業へ見積書堀田ハガネにも回答」と見出しで書かれておる。この内容を読んでみますと、これは日本製鋼の関係者、開発技術副本部長、名前も挙がっております。池見恒夫取締役、「見積もりを出したことはある。」と明確に言っております。さらに「堀田ハガネがわが社の技術をねらって接触してきたのかもしれない。依頼されたので軽い気持ちでやっただけだ」こういう弁明。さらにそれに対して、関係者の説明によりますと、戦車用装甲板、つまりアーマープレートでありますが、それは「砲弾に耐えるように作られるため、各国ともその成分を機密にしており、「軽い気持ち」で分析できるようなものではない」、さらに「兵器部品の見積書まで出していたことは、ある時期、同社に輸出意図があったのではないか」こういう関係者の証言がございます。この兵器と目されるものの見積書、これを明らかに出したという日本製鋼所の責任のある立場の人の証言であります、こういう事実がここにはっきりしておる、  しかも、このことについて、先ほど矢野委員の指摘は、そのことがテレックスの中にあるのだ。池見という名前もあります。そこまではっきりしておる、これだけはっきりした問題。前段、総理がお答えになりましたけれども、わが方は禁輸三原則がある、また政府方針を持っておる、したがって武器の輸出は一切しない、将来にわたってもしないという政府の確たる方針は、これで全部砕けているじゃありませんか。事実、武器が輸出され、見積もりを出す、そういう行為が行われていることは歴然じゃありませんか。これに対する政府の確たる答弁がなければ、矢野委員質問はこういう事実を踏まえて次の質問に移ろうというわけでありますから、質問ができない。政府は即座にこのことに対して明確に、責任のある答弁をすべきであります。委員長から答弁を求めてくださ
  158. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほど申し上げましたように、矢野議員の御説明は全く、テレックスまで入っておるわけでございますし、報道にもそういうふうに書かれておる限り、私どもははっきり申し上げまして信用いたします。しかし、現実に私自身、矢野議員の御指摘になる七つの点につきまして具体的に知ったのはいまでございますし、これは必ず詳細に調べ上げますし、この点につきましていま直ちに答えを出せということは、本当はそういうことをしたいわけでございますけれども、いま直ちにそれができませんので、それはいま矢野議員にも、お約束申し上げます、必ず早急に結論を出して詳細に調べますということを申し上げて、御判断していただきたいというふうに思います。
  159. 坂井弘一

    ○坂井委員 ただいまの答弁、はなはだ納得しかねます。矢野委員質問提起は、わが党竹入委員長が本会におきます代表質問において、武器の輸出については非常に問題がある、この際武器輸出禁止法を制定すべきであるという主張をいたしました。そういう必要はないんだ、厳格に守られておるからということでございました。しかるに、いま指摘している問題は、事実関係を克明に挙げて責任を持って問題を提起した。テレックスの内容にまでわたって示した。しかも、そのことに対して、見積もりを出すということが行われたということを関係者がきちんと証言をしておる。こういう内容は即座に調査をして、いますぐそのことに対する明確な回答がなければ、次の質問に移れません。次の質問に入るわけにいかぬ。(発言する者、離席する者多し)
  160. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは、委員長からのいろいろなお話があったようでございます。問題は、先ほどから言っておりますからもう繰り返しませんが、いま私がお尋ねしたことを確認しつつ、これが果たして——いま見積もりのことしかまだ聞いてないのですよ。見積もりの次は物が動くということになるわけです。しかもアーマープレートというしろものは、大砲の砲身なら、見たら大砲らしいなとわかるのだけれども、それこそ建築用の鉄矢板と区別がつかぬようなしろものですよ。材質検査をしなければアーマープレートだかどうかわからぬ。そういう意味ではきわめてカムフラージュしやすい物ですわな。  私は、次の質問が、この物が動いたか動かなかったかということ、それともう一つは、防衛庁にお答えいただいた三菱長崎機工、秘密保持の義務づけがされている会社、この会社についてもここにこういう問題がある。こっちの方は防衛庁の品物をつくっている。これについてお尋ねをしたいと思っておるけれども、どうもいまのことじゃ次の質問の前提が固まらない。そういう意味ではこの問題は保留をさせていただく。そしていま、私に持ち時間を残して、次の同僚議員が御質問をなさる、それに関連しておまえも質問してはどうかという御提案でございますから、私は時間をあとわずかばかり残して、これで終わらしていただく……(発言する者あり)
  161. 坂井弘一

    ○坂井委員 矢野委員は、この問題に対して次の質問、これに関連する問題があるわけです。しかるに、いまの答弁では、これに関連した武器禁輸、それに向かっての質問ができない。したがって、たとえば見積もりを出すこと、このこと自体は禁輸三原則に一切抵触しませんか。全く関係ないとしますか。そうじゃないでしょう。禁輸三原則に触れるのでしょう。そうであれば、政府の禁輸三原則あるいはまた政府方針、これは実態は、あなた方は武器は輸出されていない、将来にわたっても輸出されないんだ、しないんだ、こうしながら、実態は崩れておる、こういうことになるでしょう。  したがって、一点お聞きします。見積もりを出すということ、兵器製造メーカーが相手国のこれまた兵器製造メーカー、軍需工場であります。それに向こうとこちら、相手国は軍人さん、こちらも軍人紹介、向こうは立ち会い、そういうもとで武器の見積もりを出す行為は、憲法上あるいは三原則上あるいは政府の大方針上あるいは輸出貿易関連法上問題はない、こういう答弁ができますか。問題はあるのでしょう。あるのかないのか、そこをはっきりしてください。
  162. 田中六助

    田中(六)国務大臣 そういう行為はやはり問題があると思います。
  163. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理にお尋ねします。それは違反であるか違反でないのですか、二つに一つ、どっちかお答えください。
  164. 田中六助

    田中(六)国務大臣 問題はあると思いますし、そういう手紙のやりとりは確かに問題があると思いますけれども、ただ、それが違反かどうかにつきましては、それこそまた問題があると思いまして、私は、これは非常に遺憾に思います。
  165. 坂井弘一

    ○坂井委員 私の聞いておるのは、その問題は……(発言する者あり)
  166. 小山長規

    小山委員長 静粛に願います。
  167. 坂井弘一

    ○坂井委員 その問題は法律に違反であるのかないのか、こう聞いたわけです。違反なのか違反でないのか、そう聞いておるわけです。
  168. 田中六助

    田中(六)国務大臣 その手紙のやりとり自体は、私は違反ではないというふうに思います。
  169. 坂井弘一

    ○坂井委員 見積もりを出す行為は違反であるのかないのか、はっきりしてください。
  170. 田中六助

    田中(六)国務大臣 そのこと自体、見積もりを出すこと自体を違反かどうかということでございますけれども、これは非常に問題のあるところであると思います。
  171. 坂井弘一

    ○坂井委員 いまの答弁では納得できません。私は、その問題の内容が法に触れて、違反の内容ではないか、違反であるとするならば、政府の禁輸三原則あるいは政府方針は崩れてしまったという認識に立たざるを得ない。したがって、問題の内容は違反であるのか違反でないのかと聞いておるにもかかわらず、問題はあろうと思います、また問題を生むと思います、そういう抽象的な答弁で私は納得するわけにはまいりません。
  172. 小山長規

    小山委員長 通産大臣、見積もり自体が違法であるのかどうか、武器輸出三原則に触れるのか触れないのか、なおその実態を調べなければわからぬのか、その辺をひとつ。
  173. 田中六助

    田中(六)国務大臣 見積もりを出したこと自体が違反であるかどうかということでございますけれども、それは早急には答えられないと思いますけれども、私は違反ではないと思います。(発言する者多し)
  174. 小山長規

    小山委員長 事実を調べなければいけないのではありませんか。(発言する者多し)古田貿易局長、答えられますか。(発言する者多し)ちょっと静かに、静かに。古田貿易局長、その点を明確にしてください。——許可しました。答弁を許可しましたから。
  175. 古田徳昌

    ○古田政府委員 ただいまの答弁を補足させていただきたいと思います。  武器の輸出に関しましては、武器の輸出につきまして、それによりまして国際紛争を助長することを避けなければならないという政策判断のもとに、政府としては従来から武器輸出三原則の設定あるいは昭和五十一年二月の政府方針を表明いたしまして、それらに基づいて武器の輸出につきまして厳格に対応しているところであります。  したがいまして、見積もりを引き受ける、あるいは見積書を作成するというようなことにつきましては、武器輸出三原則あるいは政府方針といったものには抵触しておりません。もし、それに基づきまして品物ができまして現実に輸出するということになれば、そこで現実に……(発言する者、離席する者多し)
  176. 小山長規

    小山委員長 それでは、この問題に関しまして角田法制局長官の答弁を求めます。
  177. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 輸出貿易管理令の解釈について、ただいまの問題と関連してお答えをいたします。  まず、外国為替及び外国貿易管理法第四十八条という規定がございまして、「特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者又は特定の取引若しくは支払の方法により貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。」こういうことがございます。  そして、それに基づいて輸出貿易管理令というものがございまして、輸出貿易管理令では「貨物を輸出しようとする者は、左の各号の一に該当するときは、通商産業省令で定める手続に従い、通商産業大臣の書面による承認を受けなければならない。」一言で言えば、貨物を輸出しようとする者は承認を受けなければならない、こういうことになっているわけです。  そして、いま違反であるかどうかということが問題になっておりますが、これには無論罰則がございまして、外国為替及び外国貿易管理法の第七十条の第二十九号に「第四十八条第一項の規定に基づく命令の規定による承認を受けないで貨物の輸出をした者」これが違反になって罰則を受けるわけです。  そこで問題は、現在引き合いの何かある種の行為が始まったという段階で結局輸出の承認を受けないで、そして輸出をした者ということになるかならないかということだろうと思う。現在の段階では、始まったといいますか、すでに行為の初めは始まっていると思いますが、まずそこまでいくかどうかは、刑法の予備とかなんとかそういうものに当たれば別ですけれども、すぐに当たるかどうかは、いろいろ構成要件を調べてみないとわかりませんから、ここでは確言はいたしません。そういうことでございます。
  178. 矢野絢也

    ○矢野委員 いまの答弁、納得できません。私が先ほどから申し上げているのは、一つは、日本製鋼所から積極的にアプローチをしているんです。それまでは、あちらからお話があったときは、憲法上の理由で御辞退いたしますと言って断っている。私が申し上げているケースは、日本防衛庁のあるお方の紹介を受けて、日本製鋼所の幹部が韓国へ行って大韓重機に話をし、そしてその席で引き合いがあり、見積書を出す、こうなっておる。あっちから一方的に頼まれたんじゃない、こっちから頼みに行っているわけです。しかも、見積もりを出すということは、普通の物の見積もりじゃないのです。武器の見積もりですよ。そういうものが制度、法律に違反しないなどという答弁をされたんでは、何をやってもいいということになるじゃありませんか。明らかに受注する意思を持って見積書を出すということをやっている。こっちからアプローチしているのですから。そういうことを言われたんじゃ困ります。  ただ、同僚議員が二時から御質問なさる、こういうことでございますから、私、何も委員会をもめさせて、ストップさせて喜んでいるわけじゃない。事柄を明らかにしたいと思っているだけでございますから、この問題については、委員長、時間を残しておりますので、私が依頼したことについて至急調査をしていただく。かつ、先ほどの、見積もりは違反ではないという政府見解。しかも、大臣の方は問題があるとおっしゃっているのを部下の方が違反じゃございませんなんと言う。これは大臣、ばかにされているのじゃありませんか。あなたの方がまだ正直でよろしい。どうなっているのですか。鈴木内閣は大臣よりもお役人の方が偉いのか。そういうことにも私は大変不満を感じます。というわけで、この問題は留保させていただいて、私の質問は、この場においては一応これでやめます。
  179. 小山長規

    小山委員長 これにて矢野君の質疑は、保留分を除き一応終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  180. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、安全保障あるいは経済問題、さらに教育問題等、万般の問題につきまして御質問いたしたいと思います。範囲が広うございますので、できるだけ端的に御質問いたしますので、政府の方もできるだけ時間をきちっと詰めて御答弁をいただきたい。最初にこのことをお願い申し上げておきます。  昨日から本日にかけまして、シビリアンコントロール確保につきまして、総理は、政府として、統幕議長のとられた態度につきまして、適正を欠く面がありまことに遺憾でありますということで、さらに一層のシビリアンコントロールを強化することのお約束をいただきました。それはまことに結構なことだと申し上げておきます。  周知のとおり、シビリアンコントロールとは、政治軍事に優先し、政治軍事を統制するのが原則だと言われております。力を持つ軍隊が政治を離れて独走する危険をチェックするために確立されてきた制度でありましょう。しかし総理、といって、この原則は、制服が——制服というのはいまの自衛隊の諸君ですね。制服がその専門分野について発言することを禁じたものでないことは言うまでもありません。むしろ逆に、間違いのない政策決定のため、軍事専門家の意見が積極的に求められているのが世界の実情だと思います。  ところが、わが国の場合、広く公にされるのは防衛白書ただ一つであります。彼らの意見を述べるところは防衛白書だけです。ようやく昨年、わが民社党の主張が入れられまして、国会に安保の特別委員会が設置されました。しかし、これも制服の出席は、私たちは主張いたしましたけれども、いまだ認められておりません。厳しさを増す国際情勢下、これで誤りのない防衛政策が期待できるでありましょうか。制服自衛官が焦りにも似た感情から、許される範囲発言しようとする前に、政府がなぜもっと正規のルートで彼らの意見に耳をかさないのかという内部の意見を、私たちは重視していかなければならぬと思います。政府が彼らの意見を静かに聞いてあげるならば、まさかイタチのへのように、おやめになる直前に、雑談ではあったといっても、あのような、政府がここで遺憾の意を表せられなければならないような発言は出てこなかったのではないか。内部の問題として、政府みずからが制服自衛官に対して意見を聞いてあげるという配慮がなかった、こういうふうには御反省なさりませんか。総理、いかがでしょう。
  181. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 塚本さんの、制服の意見も正規のルールに従って政府は十分聴取すべきである、その機会を与えるべきである、こういう御意見につきましては、私も賛成でございます。  私は、上司である防衛庁長官に対して制服の幹部は常に、わが国防衛上の問題について意見を具申する、見解を述べる、それをわが国防衛政策の上に反映せしめるということはきわめて大事なことであると考えておりますし、私自身も、就任後、統幕議長初め三幕僚長を招致いたしまして意見を聴取したことがございます。今後におきましても、できるだけ機会をつくりましてそのようにいたしたいと考えております。  なお、国会の安保特別委員会に出席を求めて意見を聞いたらどうか、こういう御見解に対しては、これは国会の問題として各党各会派において御協議をいただきたい、こう思うわけでございます。
  182. 塚本三郎

    塚本委員 政治の最高の場は国会であります。ならば、シビリアンコントロールならば、国会が事情を聞くことは当然のことではありませんか。内閣と与党の皆様方が、国会の場ですと言って、野党の一部の諸君を悪者にして呼ばないという態度はいけないと思います。アメリカを初め世界の各国は、政府だけに防衛を任せておいてはいけない——シビリアンの最高の場はこの場であります。その国会の場でわれわれ国会議員が意見や事情聴取することができないということ、そのことがシビリアンコントロールに違反するんじゃありませんか。したがって、今後、いろいろな情勢や彼らの意見等を外でしゃべらせる前に、この場できちっと事情聴取する。これはアメリカの上下の各議院など、しょっちゅうおやりになっておる。ヨーロッパでもすべて行っております。私たちだけが、背広のところで全部ストップして、また聞きでなければ聞かれないというような立場はおかしいじゃありませんか。  かつて私は、栗栖問題のときにもそのことをしようといたしましたが御賛成いただけなかったので、残念ながら私個人でホテルの中で、三幕僚長に来ていただいてお聞きしたことがあります。こんなことがありましょうか。シビリアンコントロールというのは、内局の諸君が制服を管理監督することじゃありません。政治がこれを監督することでしょう。国会の私たちがこの是非を論じ、意見を聴取することが最高のシビリアンコントロールだと思います。国会の場でと言って、一部の野党の皆様方を悪者に仕立てて逃げる態度はよくありません。国防会議の議長としてそうしていただくべきだと御発言いただきたい。どうでしょう。
  183. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国会の安保特別委員会に制服の幹部を招致して防衛問題についての意見を聴取する、この問題は、国会が最高のシビリアンコントロールの機関である、こういう観点から、いま塚本さんがおっしゃったような御意見が有力な意見として出るわけでございます。この問題につきましては、今後、国会における各党間において十分論議を尽くして、国会がシビリアンコントロールの機能を十分発揮できるようにお願いをしたい、こう考えております。
  184. 塚本三郎

    塚本委員 依然として逃げの御答弁しかいただけません。残念です。  昨年七月二十五日、社会党の稲葉議員の方から、徴兵制問題に関する質問の主意書が出されました。総理の名前で御答弁が八月十五日にありました。平時と有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨から見て、徴兵制は許容されるものではないと考えると答弁しておられます。  私は、十三条は妥当だと思います。そしてまた、民社党は徴兵制には賛成いたしておりません。しかし、なぜ十八条の条文を適用しておられるのか。この条文は、自衛隊員が奴隷的拘束とか苦役に服していると見ておられるのかとの疑問を抱くではありませんか。これは自衛隊員の愛国心や国家に対する献身の魂を傷つけておりはしないか。この点のお考えはどうでしょう。
  185. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは法制局長官から答弁させます。
  186. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 昨年八月の徴兵制度についての政府答弁書の趣旨というものは、徴兵制度についての定義を述べた後、徴兵制度は、結論だけ申し上げますと、憲法十三条、十八条などの規定の趣旨から見て許容されるものではないというふうに述べております。確かに十八条を引用してはおりますけれども、その考え方というものは、現在の自衛隊の任務に従事することは、これは明らかに志願制による隊員の自由意思に基づくものでありまして、憲法十八条に規定する「奴隷的拘束」や「その意に反する苦役」に該当しないことは言うまでもございません。したがって、憲法十八条を引用したからといって、現在の志願制の自衛隊の任務に従事することを直ちに「奴隷的拘束」や「その意に反する苦役」と政府答弁書が見ているということは、全く当たらない批評であると考えます。  徴兵制度をしくことは憲法上許されないと、結論において政府答弁書は述べておりますが、その場合にも「奴隷的拘束」に当たるとは、私どもは全く考えておりません、「奴隷的拘束」というのは、非人道的な、人格を無視した自由の拘束を指すものであると解されております。いかなる場合においてもそういうものに当たるとはとうてい考えられないと思います。ただ、「その意に反する苦役」に当たるかどうかといいますと、それは苦役という言葉の解釈いかんによるわけであります。語感の上から申しますと、苦役というのは非常に苦痛のはなはだしい労務の提供というふうにとられますけれども、これは制憲議会のときからいろいろ問題になりまして、政府としてはそのときの答弁ではっきり申し上げておりますが、苦役というのは労務の強制ということであって、決して苦痛の程度の非常に高いものだけではないという答弁をしております。それを受けてお答えをいたしますと、徴兵制度というのは強制的な労務の提供ですからそれに当たると言えます。しかし、決してそうではないということを申し上げておきたいと思います。
  187. 塚本三郎

    塚本委員 総理、こういうふうにだらだらとやっておいでになるけれども、心の中に温かみがないのですよ、あるいは法制局長官は二十二条等の引用を、折にしておられるわけでございますけれども、十三条だけで結構なんです。それを言いわけのためにだらだらおっしゃるものだから、それは自衛隊員に対する温かみがないところから出てくるのです、二十二条、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。」とあります。これもあなた、ときどきそういうことを言い過ぎでしゃべっているんです、公共の福祉に反しない限りの居住や移転や職業選択の自由なんです、  稲葉先生の御質問はそうじゃないのです、有事の場合に、自衛隊が足りなくて戦場になった場合を想定して、そのときでも憲法でこれは違反になりましょうかと聞いているんでしょう。そのときにあなたは逃げてこういうことを持ってくるから……。公共の福祉に反しないということが前提だけれども、有事の場合には、公共のために自衛隊さん、がんばるんですよ、要らぬことをあなたがべらべらしゃべるものだから、よけい、総理お困りですよ。十三条だけでぴしっとしておけばいいじゃありませんか。  総理、思いやりがないということが、私は今度の問題のすべてだと言わなければなりません。いまは亡き大平総理のお葬式のときだって、事務次官は一階の前列に座らしておいでになって、同格の統幕議長を三階の上の天井裏に座らしておる。アメリカの司令官でさえも一階のところで一緒に並んでおるじゃありませんか。制服はことごとく三階の天井に行けというこういう態度。アメリカの軍司令官から、あなた、総理大臣の葬式になぜおいでになりませんでしたかと問われて、恥ずかしかった。このことが政府の扱いのすべてを決めておるのじゃないか。もっと温かい意見でそれをお聞きいただくという態度がなければ、逃げの答弁ばかりで、べらべらしゃべればしゃべるほど、またぼろが出るじゃありませんか。総理、いかがでしょう。
  188. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御趣旨は十分理解できます。今後私ども十分注意いたします。
  189. 塚本三郎

    塚本委員 注意してあげていただきたい。  もう一言だけ。なぜ十八条を持ってこなければならなかったか。これは誤解があるのです。私は、憲法違反じゃないから徴兵制をやれと言うのじゃないのです。徴兵制は反対しているのです。十三条だけで結構じゃないか。どうして十八条を持っておいでになったのですか、その根拠を言ってください。
  190. 小山長規

    小山委員長 法制局長官、簡潔に。
  191. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 十三条だけを引きますと、十三条は、基本的人権一般についての制約を合理的なものと考えられるかどうかという根拠規定でございます。ところが、徴兵制度というのは肉体的な労務の提供を伴うわけであります。そこで、当然のことながら、十三条だけを引きますと徴兵制についての説明としては不十分であるというおしかりを受けると思いまして十八条を引いたわけであります。これはもう十年前からそういうことをずっと私どもは言っております。
  192. 塚本三郎

    塚本委員 総理、この十八条の引用は総理の名前で出ておるのです。これはまずかったということを、あなたの責任できちっともう一遍おっしゃってやることが必要だと思う。きょうもなお、御承知のとおり福井を初めとして富山や新潟やあるいは岐阜では雪かぎを一生懸命がんばっておる。水が出なかったら彼らはわざわざ草津まで出かけていって努力しておる。そういう彼らの心情を思って、やはりそういう奴隷だとか苦役だとか、そういうような言葉で誤解を受けるようなやり方はまずい。それでなければ憲法が守れないならいたし方ありません。十二条だけで結構じゃありませんか。そういう不満というものが彼をして言わせしめたのだと思います。  一言だけ総理から御答弁いただきたい。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十八条に触れましたのは、法制局長官が御説明申し上げたとおりでございますが、多少、法律的に完璧を期そうと考えました余り、いろいろな意味で意図しない解釈を生むようなふうに思いますので、今後どういたしますか、その点を再検討させていただきます。
  194. 塚本三郎

    塚本委員 それじゃ総理、いま官房長官から再検討を約束されましたが……。
  195. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのようにいたします。
  196. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、稲葉先生に対する御答弁の十八条の適用は、官房長官総理も再検討するとおっしゃいましたので、そのように受けとめて話を進めます。  さきの施政方針演説で総理は、「わが国防衛は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とならず、さらに、非核三原則を国是とすることをその基本方針としています。」と述べられております。わが民社党は、昨年十月二十四日、佐々木委員長総理との間で、防衛について三つの原則を確認いたしました。一つは、平和憲法を守り、その範囲内での防衛力の整備であること。もう一つは、平和外交を積極的に展開して、軍備が防衛のすべてではないこと。そして第三には、財政事情を十分勘案して福祉などを犠牲にしないということの、三つを確認いたしました。その確認は、これからもまた、きちっと守っていかれるというふうに約束できましょうか。
  197. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 佐々木委員長との党首会談におきまして、いまお話しのように、防衛問題につきましては基本的に共通の認識に立っておるということを確認し合ったわけでございます。いまもそのように考えております。
  198. 塚本三郎

    塚本委員 そこで、今度の総理の施政方針演説の中で「節度ある質の高い防衛力の整備を図り」と述べられております。「広く外交、内政の諸施策を総合的に、かつ整合性を持って進めていくことが肝要」であるとも述べられております。このことは、内閣が一体となり、防衛防衛庁のみの仕事ではないはずであります。ところが、私どもがお見受けいたしますと、防衛庁だけが一生懸命に御努力なさって、他の省庁との連係プレーが一体になっておらないというふうなことを私は心配いたしております。  この際、運輸大臣おいででありますね。国鉄大湊線の廃止は、これはもう再建の問題になってまいりますが、海上自衛隊の基地が大湊にあります。貨物輸送を初めとするいろいろな軍事輸送等の自衛隊に対する問題等があります。伝え聞きます津軽海峡の封鎖等までが実はうわさされております。これらの輸送等は国鉄が中心になっておりますけれども、その点は十分連係がとれておるでしょうか。これが第一。  ついでに、時間がありませんから運輸大臣だけ答えていただきましょう。  第二は、戦車といいますか、いま陸上自衛隊においては八百両、全国に散在しておるようであります。重量物でありますから、道路を走ると壊れてしまいます。戦車は百五十キロから二百キロしか自分では走れません。戦場で走るのが限界であります。全国からどこか一点に集中しようとすると、大型のトレーラーが必要であります。チキとかシギとかいろいろな、そういう五十トン積みのトラック。これは一カ所に集中するには、国鉄の能力としては十五日間かからなければ、全国に散在しておる自衛隊の戦車を一点に集中できません。防衛の戦は済んでしまいます。この点に対して防衛庁と運輸省はいかなる連係がなされておるのか。  なお、ほとんどが電化されました。電源が一発やられてしまったら、もはや動きません。各国ともそのことを配慮いたしまして、必ずディーゼル車を備えている。電源が動かないときには必ずディーゼル車を用意できるような連係プレーがなされております。  以上三点につきまして運輸大臣、お答えいただきたいと思います。
  199. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お答えいたします。  重要な大規模演習地あるいは兵器、弾薬等大量に輸送する地点あるいは重要な自衛上の施設、そういうものにつきまして、いわゆる赤字ローカル線廃止問題に関し防衛庁と十分に協議をいたしております。まだ協議中でございますので、基準設定のところまではまだいっておりませんけれども、協議をいたしております。  それから、お尋ねの特殊な車両、トレーラー、そういうことでございますが、これは自衛隊法第百十四条に基づきまして適用除外となっておりまして、いわゆる道路運送車両法の適用除外でございますので、自由に活動はできるということでございます。  それから、第三点のディーゼル車と電気動力車との関連につきましては、鋭意研究はいたしております。
  200. 塚本三郎

    塚本委員 通れないと申し上げているのじゃないのです。自分の力で走ったら、戦場へ着いてから動けなくなりますよと、こういうことなんです。おわかりでしょうか。その意味さえもよく受け取られてないような御答弁でありますけれども、道路を走っていけないというのじゃないのです。走ることが仕事じゃないのですから。現地まで行ってから戦争をしなければならないのでしょう。それまでに百五十キロ以上走ったならば——端から端まで四千キロの日本の国土の中で、それは現地まではトレーラーに載せていかなければだめですよ、そのトレーラーが十五日かかりますよ、こういう認識なんです。  あるいはまた、それじゃ建設省、建設大臣、本四架橋はいま工事中であります。下を船が通るときに、レーダーですか、ひっかかる。あわててかさ上げなさったようですけれども、これで米軍の航空母艦もやっと通れるようになったと言われております。しかし、ミッドウェーももはや二年で退役と言われておりますが、次に、新しい、戦後できた航空母艦が来たならば、これはどうするでしょうか。瀬戸内海は防衛は要りませんとアメリカには言うつもりでしょうか。呉におって、呉から弾薬を積んで回ってくるときに、大阪の守りは豊後水道を通って紀淡海峡を通らなければ、瀬戸内海は通れない。どうしてそういうことを初めから相談なさらないのでしょうか。  高速道路はわざわざ曲がっております。居眠りを防止するためだと言われております。世界のどこの国でも、三千メーターから五千メーター、分離帯を取っ払えば必ずそれが軍用に使えるというのが、国防国家とは言いませんけれども、アメリカ、ヨーロッパから、韓国から、すべての国が、アウトバーンはドイツのですが、やはり防衛にも使えるように、わざわざそれがための滑走路をつくらなくても高速道路がそのまま利用できるように——防衛が必要でないという意見は別でありますけれども、それならば、わざわざそういうものをつくらなくても道路そのものを使えるようにしていく。それをわざわざ居眠り防止のためにカーブをつくって、三千メーター以上のところは一本もない。なぜ、そのことぐらい連係がとれないのでしょうか。お金をかけなくても、総理が中心になってこんなことをおやりになったならば、質の高いものができるじゃありませんか。  いざ有事のときに、ざんごうを担いで行きましょうか。そんなことはいまの時代じゃないですね。セメントで固めなければなりませんけれども、土地収用法にひっかかってしまうのです。発動されなければこれはできない。ところが、セメントが固まるのに十五日間かかりますよ。事前にそれが準備できるようなことが、なぜ建設省との間にできないのでしょうか。  一つ一つ考えたら、質の高い——専守防衛ということは、いわば日本の国家で籠城することですよ。外で戦争するのじゃないのですから。攻められて、日本が戦場になることを前提にして戦うのを専守防衛と言うのでしょう。防衛庁だけで、建設省も運輸省も通産省も科学技術庁も全然別々でやっておって、質の高い、一体となった防衛力の整備と言えましょうか。一%の議論の話が出ますが、お金じゃないのでしょう。本当に防衛庁だけに任せておくことに彼らの不満があると思うのです。国防会議の議長として、建設大臣の意見を聞く前に総理からお伺いしましょう。
  201. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘の点、まことに傾聴に償いたします。  私は、防衛、特に専守防衛という観点に立ちますと、すべての行政が整合性を持って、総合的な判断のもとに遂行されるということが必要である、このように基本的に考えております。十分そこに至っていないという御指摘がございますが、今後十分そういう点に配慮してまいりたい、こう考えます。
  202. 塚本三郎

    塚本委員 一々、各省ごとに指摘を申し上げて、御質問を申し上げようと思いましたけれども、これは無理だと思いますから、改めてひとつ、総理が国会で演説をなさるだけではなくして、お金よりももっと、本当にわれわれは外へ出て戦うのではない——専守防衛ということは、もう一度申し上げますが、昔の戦争では籠城なんです。一億国民はこの国土を守って戦わなければならぬ。十分の備蓄も、食糧も、弾薬も武器も、水も米も、何年戦えるかということを考えるのが専守防衛じゃございませんか。そのときに、防衛庁だけに任せて、橋一本、道路一本、全然関係なし、みすみす、もう少し真っすぐにしてくれたならば日本じゅうが飛行場になると、彼らには垂挺の的になっても、くちばしを入れることができない。この体制を総理よく考えていただいて、われわれは外へ出て戦うのじゃない、内で守るとするならば、それをするのが本当の意味の専守防衛じゃございませんか。重ねてこのことを御注意申し上げ、総理からも神妙な御答弁をいただきましたので、鋭意、在任中に具体的に進めていただきたい。  それから、防衛研究についてお尋ねしたい。  自衛隊の行動は、常識的に見て、いま申し上げたように、敵が来てからではだめなんです。だから、来る前にいろいろな準備行動が要るでしょう。警戒態勢、準備に着手するのにどうしたらいいか、防衛出動をどうするか、米軍が来るまでどうしたらいいのか、四段階について幾つかの問題があります。何ら触れられておりません。どこまで研究が進んだのか、その防衛の研究についてお答えいただきたい。
  203. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  防衛研究の作業はかねてより鋭意作業中でございまして、予定より若干おくれておりましたが、このほどようやく報告書がまとまり、私が報告を受けたところでございます。  防衛研究は、先生御指摘のとおり、有事の際、わが国防衛力を効果的に運用して、その能力を有効に発揮させるため、陸海空各自衛隊の統合的運用の観点から、各種の侵攻事態における自衛隊の運用方針防衛準備の要領、その他自衛隊の運用と、これに関連して必要となる防衛上の施策についてどのような問題があるか、また、どうあるべきかを総合的に研究したものであります。  本研究は、国際情勢の緊迫からわが国に対する武力侵攻に至るまでの間生起すると考えられるさまざまの状況のうち、研究上適当と考えられる主要な特定の状況を取り上げ、その状況に対応して自衛隊のとる措置を考え、その際の問題点を検討し、警戒態勢、防衛準備、統合的対処構想等の事項についてはその改善策の概括的な検討を行ったものであります。  なお、防衛研究はあくまで研究そのものでありまして、これをそのまま直ちに施策に移すという性格のものではなく、具体的施策に移す場合には、改めていろいろな角度から慎重に掘り下げて検討し、結論を出す考えでございます。  以上、御報告申し上げます。
  204. 塚本三郎

    塚本委員 当然、外へ出てやるのでなければ、警戒態勢のときから十分気をつけていかなければならない。専守防衛ということは警戒が一番に必要なんです、遠くにおいて行われた戦争も、わが国に及ぶ危険性のあるときはわが国はどうすべきか。そして出動命令の発動されるまでの間、準備はどうするか。先ほどの、コンクリートを固めるのだって半月かかります。車両だって、運搬するのに半月かかるのでしょう。具体的にそれに着手するのにどうするのだということ等がなければならぬと思います。もう少し進んだ話ができませんか、長官
  205. 大村襄治

    大村国務大臣 政府委員防衛局長から、いまお尋ねの点、補足説明をさせていただきます。
  206. 塩田章

    塩田政府委員 お答えいたします。  防衛研究といたしまして取り上げました主な項目を申し上げてみますと、まず第一に、情勢の緊迫度に応じた段階的な自衛隊の警戒態勢、それは警戒の監視でありますとかあるいは待機の態勢でありますとか、そういったことを警戒態勢の区分を定めまして、それぞれの区分に応じていかなる措置をとったらいいかといったことの研究でございます。  二番目は、情勢の緊迫に伴います防衛準備でございます。有事におきまして防衛力を有効に発揮することができますように、自衛隊の人員の充足でありますとかあるいは作戦用資材の確保でありますとか、そういったことが防衛準備の段階の研究事項でございます。  それから三番目には、陸海空三自衛隊の統合的な運用といった点から対処構想を考えまして、いかなる問題があるか。たとえて言いますと、現在、陸海空、各異なった自衛隊の統合部隊をつくることができることになっておりますが、それは防衛出動の下令があったときにできることになっておりますが、そういった時期はそれでいいのかどうかというような統合的運用の観点からの検討であります。  その次は、有事におきますところの防衛庁長官の指揮監督に関連しまして、統合幕僚会議議長、各幕僚長の長官に対する補佐のあり方、こういったことを研究いたしております。  五番目には、有事の際におきます船舶、航空機の運航の安全を図るために関係機関及び自衛隊のとるべき措置はいかがなものであろうかといったような項目につきまして研究を行ったものでございます。
  207. 塚本三郎

    塚本委員 特に、陸海空三幕の統合的運用についてはもっと早く詰めていただかないと、ただでさえもばらばらだという意見が強うございます。この点を十分に詰めていただくことが必要ではないかと指摘をいたしておきます。  次に、有事法制について、それらの問題等を詰めてまいればまいるほど、具体的には法の不備がたくさん出てきておることは御承知のとおりでございます。研究中ということは伺っております。私は、かつて、あのベレンコ中尉のミグ25が函館に参りましたとき、この席から三木元総理にお尋ねをしたが、一刻も早く法の不備を是正するために準備をしますと、たしか総理はお答えいただいたはずです。にもかかわらず進んでいない。そのことから栗栖の超法規的発言が出てまいったと私は受けとめております。にもかかわらず、このような状態になってきております。  そこで、自衛隊法第七十七条、防衛出動がなされなければ予備自衛官の招集ができないことになっております。待機命令が出た段階で予備自衛官を招集できるようにする点はどうなっておるのか。それから第九十五条、自衛隊の持っている武器が何者か過激派等に破壊されるような場合は、警察行動として武器使用が認められております。しかし、レーダーサイトや通信施設のときには、破壊されても、これに対して武器使用ができないというようになっておるようであります。かつて、あの成田が爆破されて開港ができず、国際的な汚名を着たことがあります。私はわざわざ、当時政府に申し入れて、緊急に本会議を開いていただいて、そして法務大臣に対して質問し、管制塔に対して侵入する場合には武器使用は検討すると、時の法務大臣にお答えをいただいたことがございます。なぜならば、管制塔が破壊されれば、一機ジャンボが落ちたならば四百人の殺人を直ちに行うと同じ形になるでしょう。空港周辺に何十機おるかわからない、こういう状態であるとするならば、そういうレーダーサイトや通信施設等を守るためには、やはりこういう措置等が法的に進められておかなければならないということだと思います。特に、わが国を守る、水際で防ぐということになれば、警戒態勢のためのレーダーや通信施設が不可欠の条件となりましょう。その点どこまで有事法制が進んでおるか、お答えいただきたい。
  208. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  有事法制の研究は鋭意進めておるところでございますが、その対象としましては、防衛庁所管の法令にかかわるもの、他省庁所管の法令にかかわるものと、所管の範囲が必ずしも明確でないものに区分されますが、現在、防衛庁の所管の法令にかかわるものにつきましてはかなりの程度検討を進めておりますが、ほかの区分のものにつきましては、まだその一部についてしか検討が加えられていない状況にございまして、全体としてまとまるという段階には至っておりません。  防衛庁所管法令のうちで検討している事項を、現段階までの研究から例示的に申し上げますと、自衛隊法第百三条に関する検討や、ただいまお話のございました予備自衛官の招集に関する検討、こういったところが主なことでございます。また、ただいま御指摘のございました九十五条の関係も検討いたしているわけでございます。なるべく早くこの中間報告をまとめまして、御報告できるようにいたしたい。いま鋭意作業中であるというところでございます。
  209. 塚本三郎

    塚本委員 総理、いま防衛庁長官からは、防衛庁内における法制については準備が進んでおるというお答えをいただきました。しかし、総理が本会議でおっしゃった質の高い防衛ということは、最初私が指摘いたしましたように、防衛庁内でもこんな状態です。運輸や建設やその他科学技術庁から、万般のそういう各省庁にまたがるものについては何ら触れられておりません。これはやはりお金の問題や、アメリカから言われたから仕方なくお金をふやすということが専守防衛じゃございませんことは、さっきから指摘しておるとおりです。総理が中心になって、他省庁にまたがるものも、自衛隊の中における問題と並行して、いわ障る法制の問題を御検討なさってしかるべきではないか。もうすでに六、七年になります。三木元総理がお約束なさってから今日の状態になっております。どうぞ総理みずからイニシアをとって、有事法制について取り組んでいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょう。
  210. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 目下、防衛庁から、有事法制の問題につきまして検討の結果、これからの問題、いろいろの問題点等について事情聴取しておる段階でございます。御指摘のように、各省庁関係のものを十分督励いたしまして、できるだけ早い機会に有事法制をまとめていきたいと思います。
  211. 塚本三郎

    塚本委員 それから、ついでですから安全保障の問題で提案いたします。  イラン・イラク戦争は長期化の様相を呈しております。双方の被害は当事者としていたし方ないとしても、日本が大変被害を受けておることは御承知のとおりであります。戦争終結に最も影響力を及ぼすであろうアメリカ及びソ連は、従来のいきさつからなかなか手が出しにくいという状態になっております。さればといって、ヨーロッパは、かつて、このペルシャ湾近辺では余りよくないことをした歴史があるようであります。したがって、日本が調停に乗り出すということが一番ふさわしいのではないか。さわらぬ神にたたりなしと、身を縮めて成り行きを見ておるだけではだめです。世界から見たら、日本はすでに経済大国であるだけではなく、あらゆる面において大国と尊敬を受けておると私は信じております。そのときに、どうしてこれを仲裁しないのか。ある商社の諸君は言っております。おれたちはどれだけこの両国に対して献身してきたかわからないと。彼らも日本の立場を知っておる。イラクの石油担当大臣は、日本が手を出してくれたらなと、すでにコマーシャルの舞台では言っておるのですね。イランも、三井石化を初めとして、日本は犠牲を何度も重ねております。日本だけが恩恵を与えている。これに対して堂々と調停をさせていただくだけの資格はあると思うのです。これが停戦になったときには、発電所の問題から石油の問題からパイプラインから、すべて技術から資金から協力することができるではありませんか。どこの国が見ても、日本がこれを行うことが一番ふさわしい。ある人は言っておりました。日本外交は、何度ストライクが来ても見逃し三振ばかりだと。こんなすばらしいチャンスに、日本は国際の舞台で、もう三十五年だったから、一回ぐらいいいことをなさったらいかがでしょう。しかも一番受益者は日本なんだ、私はそう思います。  総理、いかがでしょうか。勇気を出して調停に乗り出していただきたい。
  212. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理が答えられる前にひとつお答え申し上げます。  塚本さんの御意見、私もよくわかります。いま先生は、日本は従来あの地域で何もそう悪いことをしていないじゃないか、手は白いじゃないかという意味のことをおっしゃったわけでございまして、それは事実でございますが、この間もイラクのラマダン副首相が参りました。イランは、人質の問題がありましたので、経済制裁があって、なかなか直接の連絡はとれませんでした。今度はそれは解除したわけでございますが、イランとイラクの主張が非常に違っておるということで、いま国連、非同盟あるいはイスラムというところが中心になって、実は何とか仲裁の方法を探るということをやっておるわけでございます。  日本としましては、日本単独ということは、先生おっしゃいますけれども、なかなかむずかしい問題がございますので、こうした国際的な力による調停、仲裁が一番有効じゃないかということで、今度は国連の非常任理事国にも当選しましたので、国連の中で、イラン、イラク両方が非同盟でございますので、非同盟の代表でございますとか、あるいはイスラムにも連絡をとりながら、何とかこの紛争を早期に解決するようにということで実は努力はしておるわけでございます。先生おっしゃるように、まだその解決の曙光が見えないということははなはだ残念でございますが、今後ともひとつ、国際的な力と協力してこの問題に取り組んでまいる決意でございます。
  213. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま外務大臣から御報告を申し上げたとおりでございますが、確かに日本は、いままであの地域に対し、特に両国に対しては友好協力関係を高めてきております。また、日本にとりましても、石油の輸入の相当大きな部分をあの両国から輸入しておるというようなことで、この両国の和平を早期に実現するということは大変重要な問題であり、外務省を督励いたしまして、先般も中近東の公館長会議を開き、意見の集約もいたしておりますし、また、外務大臣自身もあの地域を訪問いたしまして、いろいろな角度から事態の推移を検討いたしております。私も、先般、イラクのラマダン第一副首相と長時間にわたりまして会談をいたし、早期和平の問題を強く勧告、要請いたしたような次第でございます。  いずれにしても、御承知と思うのでありますが、この背景というのは、最近の問題だけでなしに、古いいきさつ、経緯がある問題でございまして、外務大臣から御説明申し上げたように、イスラム諸国、非同盟諸国あるいは国連、いろいろな方面とも連絡をとりながら努力をいたしております。今後とも一層の努力を積み重ねてまいりたい、こう思っております。
  214. 塚本三郎

    塚本委員 失敗するかもしれない。しかし、失敗してももとっこじゃありませんか。失敗を恐れてはいけないと思います。アメリカのイランにおける大使館人質でも、後から報道されたところですけれども、西ドイツが一々裏でもって努力をしておられたことが報道されておりますが、実りませんでした。しかし、西ドイツはほめられております。失敗してもいいじゃありませんか。もう日本も国際的に物の言い得る立場に立っております。特に建設会社や商社など、あの地に行っておる諸君は言っております。もう政府が堂々とやってくださるそういう地位におれたちの努力でなったんだ、政府の努力とは言いませんでしたけれども。だから、失敗してももとっこなんだから、いいことをするんだから、この点を強く希望いたしておきます。解決するように強く希望いたしますではなくして、みずから手を汚して努力をしていただくことを改めて要望いたしておきます。  経済問題に移ります。  大蔵大臣、実は一昨日、わが党の高橋高望代議士が亡くなって葬儀をいたしました、そのとき葬儀の場で彼の奥さんがこの書類をひつぎの中に入れるのを佐々木委員長が認めまして、私にコピーして渡してくれました。私はこれを読みまして、彼が死ぬ前日まで、質問をこの舞台でやろうとして勉強していたことを知りました。したがって、時間の関係がありますから、彼にかわって二、三だけ質問をしたいと思いますので、最初に申し上げてみます。  彼の文章そのままです。わが国の財政は、国、地方を通じ巨額の公債、借入金に依存しなければやっていけない状態であり、このような状況が今後も続くならば、国民生活、産業経済に及ぼす影響ははかり知れないものと考えます。すなわち、財政の健全化を早期に確立しなければならない。いわゆる財政再建はいまや国民的課題であります。このような前提認識に立って若干の質問をいたします。こういうことで、たくさん質問の要旨が並べてありますが、時間の関係で要点だけ、私が同感し、特に強調したい点だけを抜粋して申し上げます。  国民は、当面財政再建に協力したとして、一般歳出の伸びが低く抑えられているにかかわらず、反面、租税負担率が五十七年度には二五・五%に達します。一般歳出に占める国債費、地方交付税、防衛費などは、黙っていても自然に増加していくような形にいまの政府ではなっております。このように財政再建とは、国民に高い税負担を強いて、それによる歳入分を大きな政府の固定費につき込むということではないと思います。真に財政再建とは、この大きな政府から安上がりの政府へと脱却することではないか、こう言っております。大蔵大臣、どうでしょう。
  215. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まことにそのとおりであります、
  216. 塚本三郎

    塚本委員 昨年の予算委員会政府は、財投資金、資金運用部資金でありますが、その資金での国債引き受けは市中消化の原則に反しないとの見解を示されました。  そこでお伺いしたい。一般歳出の国債費、地方交付税等の自然増を賄うために国債を発行し、その分を資金運用部資金引き受けでするということになると——国民の金を取ってくるんじゃないですね、もう取ってきて、もらっている金をこれに充てるとするならば、国民生活はインフレに苦しむ結果となるであろう。政府は、財投資金で国債引き受けが市中消化の原則に反しないと言うならば歯どめが必要と考えるが、その歯どめをどうかけるか、御説明をいただきたい。大臣。
  217. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、国債は市中消化をするということでございますが、市中消化がうまくいかない、そういうことのために、財政投融資の中で資金運用部資金等で一部引き受けておるのは事実でございます。
  218. 塚本三郎

    塚本委員 歯どめを聞いておるのです。
  219. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 歯どめにつきましては、今回も財投計画の中で三兆五千億円を予定しておるというようにあらかじめ申しております。
  220. 塚本三郎

    塚本委員 ちょっとそれじゃ、金額だけでは。何かきちっとした基準なり何なり設ける必要があると思いますよ、これは。恐らく彼はそれが言いたかったのではないか。  次に、第二予算と言われている財被計画について、予算ではなく財投の方ですね、若干質問をいたします。  五十六年度の財投規模十九兆四千八百九十七億円、これは前年対比一三%の伸びで、一般会計可算の何と四一・七%を占めております。このような大きな規模の財投計画も、このところ、その実行状況を見ると、繰り越し、不用が多額に、しかも恒常的に発生している。その理由は何か。また、五十五年は、現在までのところ実行状態はどうなっておるのか。実は四〇%を超える大きな金額になりながら、国会での目が比較的届きにくい。だから実行がそのまま残ってしまっておる、恒常的になっている。これはしり抜けではないかと私は思います。いかがでしょう。
  221. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財投の金が非常に余ったということ、特に五十三年度等において批判をされたわけであります。これにつきましては、当時の経済事情が非常に悪かったということ、それから財投資金は、輸銀等を通して外国への貸付金の原資にもなっております。中国などで、それらの国の事情によってその資金を要しないということが後になってわかる場合がありまして、そういうところで大きな食い違いがあったのは事実でございます。それらにかんがみまして、ことに貸付対象あるいは貸付機関等に対しても一層きめの細かい注意をして、五十四年度では大体その半額、五十五年度ではさらにその三分の一というように、御指摘のようなことがないように一層注意をしていきたい、かように考えております。
  222. 塚本三郎

    塚本委員 彼の言っているのはそうじゃないのですよ。次に出ておりますけれども、このように多額の繰り越し、不用が発生しているのは融資対象の機関に問題があるのじゃないか。外国の輸銀、そういうことではないのですね。いわゆる貸し付けておる対象に問題があるのではないか。たとえば、政府が五十四年十二月二十八日に閣議決定した五十五年度以降の行革(その一)において、すでにこれは整理する対象となっておる公団、事業団、特殊法人にまで、五十五年とか五十六年にはもうつぶすのです、あるいはどこかと一緒になるのですという、なくなるものにまで前よりもよけい金を貸しておるのです。こういう不始末があるということが実はしり抜けになっておるということで、一般予算は目が届いても、財投はなかなか細かいところまで目が届かない。私は後からいわゆる財投関係のあれを論じてみたいと思いますけれども、彼も死ぬその前日までこのことを筆にしておったのです。時間的にこのことだけでも相当な時間をとりますから、この点、いわゆる整理をする公団や事業団にまでなぜお金を貸しておるのかということ等について、もう少しきちっとした、それならばもう来年度分だけだよという、しりぬぐいのためにわずかにしておくとかいうような措置がなければいけないのではないか、こういう意見です。大臣、いかがでしょう。
  223. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 中には御趣旨のような点も私はあろうかと存じます。したがって、今後そういうことがないように十分に注意をしてまいりたいと存じます。
  224. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、高橋君の質問は、残念ですけれどもこれくらいにしまして、次に移ります。  さて、大蔵大臣、あなたは参議院の本会議におきまして、わが党の田渕議員の質問に対して、精神分裂型の予算だと田渕議員が指摘をしたのに、本当に私もできるものなら首尾一貫した——ここは述べると、これは差別用語ですから省きます、あなたがおっしゃったことですけれども。もっとりっぱな、精神分裂でない予算をつくりたいと答えられました。不穏当の部分を陳謝されました。  大臣、あなたの意図は大体わかります。そこで、どういうところが不本意なところであったのか。あなた自身が不本意であったけれどもつくらざるを得なかった。どういうところか。もし不本意なところがあるなら、野党も一緒になって手直しをさしていただこうじゃありませんか。いかがでしょう。
  225. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いろいろ田渕議員から御指摘があったわけであります。それらの御指摘についても、見方によってはそういうような御指摘があって差し支えないと私は思います。(「どういうところ」と呼ぶ者あり)まあいろいろ、長くなりますからね。  そこで、私といたしましても、できるだけそれは理想的な、完全無欠、一言も批判を認めないような予算をつくりたい。しかし、そういうことは不可能に近いということでございまして、一例を挙げて申し上げたわけです。たとえば補助金は切りました。千六百億円くらいの補助金はカットしました。カットしておきながら何で六千五百億円補助金がふえるんだということは矛盾しておるわけですね。しかし、切れるものもあるが、どうしても制度その他で切れないものもある。それにはなかなか、その制度までは今回は手が及ばなかったというようなことを例示的に申し上げたわけでございます。
  226. 塚本三郎

    塚本委員 総理。大蔵大臣の立場からごらんいただいても不十分なところがある。それは野党、私たちも協力をして、いわゆる非難とか言いわけで逃げるのではなくして、国家の予算は鈴木内閣の予算ではない、国家と国民の予算なんだから、私たちは半分の責任もあり権利もあると申し上げたい。したがって、大臣みずからが不本意だとおっしゃったならば、それはノーマルな、あるいは円満な予算になるようにお手伝いをさせていただく。  私は自衛隊の問題を、先ほど申し上げておりますように、改めていただくところあるいはもっとがんばっていただくところを指摘いたしました。予算についてもそういう意味で、胸襟を開いてそれを直したいと思います。そういう点お互いに話し合う。これから審議の過程で同僚の議員が意見を出されるでしょう、そのときにやはりよりノーマルな意見になるように。政府としては完全無欠だとお思いになったでしょう。にもかかわらず、反対の方から見たら、気がつかない点が指摘せられたという点も幾つかあると思います。そういう点は胸襟を開いて、そしてそれを改めていくようにしたいと思いますが、総理、いかがでしょう。
  227. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国会に提案をし御審議をいただいております五十六年度予算案は、政府としては、いろいろの置かれておる条件、環境、事情等を総合勘案をいたしまして最善を尽くした予算である、このように考え御審議を煩わしておるわけでございますが、予算委員会における各議員の皆さんの御論議、御意見というものは十分聴取してまいりたいと思っております。
  228. 塚本三郎

    塚本委員 聴取はしても手直しをしないじゃ困るのですよ、満足なものにしようというふうに私は発言しておるのですから。いまこれをやってくれというわけではありませんが、まず第一に私は、そのことの手始めに提案いたします。これはきのうも社会党の武藤委員から、そして本日も矢野委員から、繰り返し、長時間かけて主張せられた問題です。  というのは、いわゆるインフレになる、物価が上がる、それだけ給与が上がってくる。実質的には、物価が上がっただけ後追いでもってベースアップをして、実質はとんとんなんです。ところが、先ほどの話のように、いわゆる中身は同じだけれども基準より上がれば累進で高くなってまいりますから税負担だけは下の方が重い割合になってきておるということは、もうしばしば、きのうときょうにわたって論ぜられたわけです。私は、その中身についてもはや論じ尽くされておりますので、説明は不要だと思います。  そこで大蔵大臣、ここに一つの表がありますが、たとえば今年三百五十万円の年収のサラリーマンを例にとって、わかりやすいから三百五十万円、この方は所得税が九万五千四百円というのは、これは四人家族ですから、二人の子供、夫婦とで四人標準家庭を言うのです。三百五十万円の所得のある人は九万五千四百円の所得税であります。ところが、大体六%から九%台で一年、二年と物価が上がっております。上がっただけベースアップをして実質は同じという計算をいたしますと、二年前三百五十万円の方は三百万円の実質所得なんですね。そのときの税金は五万三千八百円なんです。同じでありながら、五万三千八百円が今年は九万五千四百円にと、約四万円の税負担がふえております。  さらに、この三百万円の所得の人が二年前、六%から七%のベースアップをしたとして、二年前というのは五十二年です。大蔵大臣、五十二年のときにこの法制が決まったんですね。そのときに二百六十七万円の人が五十四年に三百万円となり、そして今年は三百五十万円となるのです。したがって、五十二年、この法律で決められた率でいきますると、二百六十七万円の人は三万三千円の所得税なんです。  四年の間に二百六十七万円が、物価が高くなっただけベースアップで実質は同じでありながら名目所得は三百五十万円になっておる。ところが税金は、三万三千円の所得税が、ことしは同じ税率で掛けて九万五千四百円。三倍なんです、これは。税負担が三倍なんです。これで勤労者の諸君が黙っておられましょうか。ようやくにして今度総理は、日本経済がこんなになってきたことは日本人の英知、産業界。しかし、堅実な産業労働者のことも挙げておられます。私は、その言及は敬意を表します。しかし、それに報いるに三倍の税負担になっておることは、余りにも不公平ではありませんか。この手直しだけはなさることは、やはり不本意な中のものを戻す一つの例だと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  229. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり日本の課税最低限は、先進諸国の中でフランスに次いで高くなっておるわけであります。最初から高くなっておるわけですから。それで結局いま言ったように、物価が上がって賃金が上がって、そうして税金もふえたじゃないか、これも事実なんです。事実なんですが、いまでも世界の先進国と比べてそれほど高くはないということで、私はそういう点を考えますと、まことに残念ながら、現在の財政事情のもとで、本年物価調整減税をするだけの余裕は持っていないというのも事実でございます。
  230. 塚本三郎

    塚本委員 渡辺さん、あなたは本会議でも、それからしばしばそのことを例に出して、頭のいい方だから暗記なさっておられるからいろいろな数字を出されるが、これはだめなんです。為替レートにおける名目のお金は、確かにおっしゃるとおり間違いじゃありません。しかし、そのお金で食料を買うときは、日本人は三倍も高いものを買わされておるのですよ。住まいをするときには五倍から十倍ですよ。だから、日本のお金で日本の国で購買力という立場で見ると、あなたのおっしゃった逆で、二倍から三倍の高い税負担になっているのですよ。  自動車だけはごりっぱです。テレビや鉄鋼はごりっぱです。産業労働者の努力だと思います。この世界に強いものを中心にして国際レートが決まっておるのです。しかしながら、わが国農産物等は、土地の関係もあって高くなっておる。衣食住でしょう。住まいの問題と食べる問題は三倍から五倍ではありませんか。そのことを度外視して何度あなたがおっしゃってみても、実質的には大蔵大臣は、まあべらべらとお話しになるけれども実感がわかないよと。頭のいい方だとはみんな認めますけれども真実味は薄いよと。善人のあなたにそんなことをいつまでも言わしておくことはよくありませんね。どうでしょうか、これはもう少し、ここでおっしゃるときには実質購買力を言ってください。ウサギ小屋と評されて経済大国日本と言えることができるでしょうか。この実質的な問題、このことから考えて、いまそれを改めると言ったって土地の問題等がありますからできないから、せめて不公平な税制はその実質に従って手直しをなさることが不公平税制是正だと、こう申し上げておるのです。総理、いかがでしょうか。
  231. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 塚本さんおっしゃるように、課税最低限を手直しをしない、所得税減税をやっておりませんから、四年間に確かに税負担はふえております。私も、その点につきましてはよく承知をしております。勤労者の皆さんがそれだけ御苦労をなさっておるということを私は承知をいたしておるわけであります。  そういう観点から、消費者物価の問題につきましては、政府を挙げて努力をしてまいっております。季節商品である野菜等を除きましては、世界各国でも日本は非常によくなってきておると私は思いますが、残された問題は野菜その他の生鮮食料品の季節物、これが冷夏であるとか豪雪であるとかいろんな問題で、いかんともなしがたいような事態になっております。手は打っておりますが、なかなか十分な効果をあらわしておりません。そこで、いまの所得の面で十分結果的に伸びない、こういう事態に相なっておりますことを私はよく承知をいたし、今後そういう面で最善の努力をなお一層重ねていきたい、こう思っております。
  232. 塚本三郎

    塚本委員 お金がないからできないと言いつつも、本当は腹の中で思ってみえると思うのです。一方において増税をしながら、一方において減税はしにくいという気持ちはわかるのです。だけれども、こんなにひどく差ができてきておるのです。  それじゃ、それができなかったら、提案いたしますが、いかがでしょうか、最低基準を上げられなかったら、いま一番苦しんでおられるのは、最低限の独身の諸君よりも、中高生を持っておるところの一番大事な中堅家庭だと思います。一人の控除二十九万円というのを三十五万円か四十万円まで、せめて子供だけでもその控除の額を一時的にでも変更なさるという思いやりのある態度をなさったらいかがでしょうか。譲歩してそういう提案をいたしますが、いかがですか。
  233. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先生の御主張は、諸控除のうち扶養控除、そういうようなものを引き上げてはどうかというわけでございますが、一つの控除だけをここで取り出して引き上げるということも、税法上、税制の理論上いかがなものかということが一つと、何といいましても財源的に余裕がないということで、今回はひとつ御勘弁をいただきたいということを申し上げている次第でございます。
  234. 塚本三郎

    塚本委員 財源的にない、ないと言って、削る意思がないじゃありませんか。国民は何と言っているか。お役所だけがでぶでぶに太ってしまって、おれたちだけがりがりのところから、なおかつ、あぐらをかいてしぼり取ろうとしておる。国民は見ておるのですよ。でぶでぶに太っておるのです。なぜこれを改めようとなさらぬのでしょうか。少なくとも主権在民は、物をつくり物を商って利益を得て税金を納めておる国民でしょう。その国民が一生懸命努力しておるときに、赤字だらけの政府がでぶでぶに太って官僚王国を謳歌しておる。こんな姿が黙っておられましょうか。  私は、この際、一つの例として国鉄の問題を取り上げてみましょう。  一体、いつまでこんな状態を続けておくのでしょうか。具体的にこのことを民間並みになさったらどうでしょうか。国鉄総裁、おいでになりますね。同じ日本の国内で同様の営業を続けています民鉄と比較しておやりになったらいかがでしょうか。民間人はできるけれども、役人だけは三分の一しか働きませんぞ。これで、大蔵大臣はここで、財源がない、財源がないと言っている。五十五年度だって一兆七千三百億じゃありませんか。一兆七千三百億でしょう、七千億の補助金と一兆三百億の赤字と。まじめに一生懸命お働きになって赤字が出るなら、みんな負担しましょう。働いてないじゃありませんか。民鉄と比較して運営をなさったことがありましょうか。総裁、いかがでしょう。
  235. 高木文雄

    ○高木説明員 昭和五十二年でございましたか二年でございましたかに、私どもの機関でございます監査委員会でかなり突っ込んで私鉄と国鉄との比較をやっていただいております。これは大変有力な参考材料になっておるわけでございまして、現在、再建計画を立てまして、五十五年度で四十二万人の職員でやっておりますのを六十年度には三十五万でやっていきたいというふうに考えて、年々縮小、合理化を図っておりますが、その見当をつけましたのはやはり私鉄の経営状況等を参考にしたものでございまして、われわれとして、私鉄のいろいろな実態というのは大いに参考にさせていただいておる次第でございます。
  236. 塚本三郎

    塚本委員 中曽根行管庁長官、六十年といいますとまだ四、五年あるのですが、それで三十五万人にすると言うのです。民営ならば十五万人でりっぱにやってみせると言っているのですよ。数字を調べてみると十五万人でできるのです。ようございますか。五年間かかって三十五万人にすると言うのです。もう民営に任じたらどうでしょうか。あるいはそのまま株式会社日本国有鉄道か、あるいは関東、中部、関西と三つぐらいに区切って、電力みたいにしていただきましょうか。行管庁長官、いかがでしょう。
  237. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 民間にはそういう声が非常に強いようでございます。これは大問題でございますから、今度できる臨時行政調査会でも多分議論していただく大問題であると思いまして、その結論をまって実行いたしたいと思います。
  238. 塚本三郎

    塚本委員 全然とぼけておるのです、国鉄のその計画というのが、民間から考えてみると、五年たってみてなおかつ五倍ぐらいの悠長なことをしている。五倍ですよ、五割じゃないのですよ。そういう状態になっているのです。最も問題なのは、国鉄なら労働組合のうち国労、勤労だと世間の声は言っております。一般のまともな民間産業の労働組合のようにどうしていかないのであろうか。運輸大臣、これは怠慢じゃありませんか。どうでしょう。
  239. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私も、就任以来ずっと組合のあり方につきまして、いろいろと国鉄総裁に指示すべきところは指示し、また、運輸省として講ずべき処置は講じてまいったつもりではございますけれども、しかし、昨年の十月ダイヤ改正をいたしました当時から、やはり組合も、営業的な感覚を持ってこの事態を切り抜けなければならぬという気分は、若干出てきておるように思っております。しかしながら、長年にわたりまして今日まで来ましたいろいろな習慣等、そういうものの根本的な惰性を打ち切って改善しなければ、早急に立ち直る状態ではないという感じがいたしております。
  240. 塚本三郎

    塚本委員 それで大臣勤まるのですかね。びっくりしましたね、立ち直る状態ではないと思います、私はあと一年でやめるから次の人にお願いしますと言っているような感じになるのですよ、大臣。あなたは新進気鋭の方なんだから、私の在任中にここまでやってみせるとおっしゃったらいかがでしょうか。しかも、先ほど、六十年までかかって三十五万人体制にする。どうも新聞などでちらほらと、それを納得させるために——スト権ストによって生じた国鉄の損害といったらわれわれの税金です。国民の税金ですよ。二百億円に対して損害賠償訴訟を取り下げるという取引に使うという報道まで出ておる。まさかそんなことはなさらぬでしょうね、運輸大臣。
  241. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 そういう話は私どもには全然参っておりませんし、また現に訴訟が続いておる最中でございますし、そういうようなものを取引に使うという意図は全然ございません。
  242. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、三十五万人の体制をつくるということを言っておるのですけれども、能率を高めて三十五万人にするという腹じゃないのですよ。総裁はそういうお気持ちでしょうけれども、現場はそうじゃないのです、私、現場を全部当たって回っているのです。ここには百五十人おります。二十人残して百三十人やめさせます。やめさせてほかから持ってくるかと思ったら、そうじゃないのです。民間に委託で任せます。人が余っているが、整理しては気の毒だから、それをこちらへ持ってきて、みんなでよく働きましょうというのではないのですよ。切っておいて業務委託する。現場長に聞いてみました。どうして業務委託なんかするのですか。民間でやれば百三十人のものを五、六十人でやってくださるからです。これが三十五万人体制ですよ、総裁。  こんなことをしていては、いつまでたったってだめでしょう。佐世保重工の諸君は、会社をつぶしてはならないと言って、余り好まないところの原子力船の修理だってみずからやっているじゃありませんか。十万円の給料でもがんばってきたじゃありませんか。民間の産業はそういうものでしょう。国鉄の中においてそんなばかなことが行われて、五十五年度で一兆七千三百億といいますと、ここでは防衛費の問題がずいぶん議論されますが、防衛の装備費は昨年は四千億です。日本の全装備の一年間の四千億に対して、国鉄一社で四倍半を食っておるじゃありませんか。どうなっておるのですか。  これは総裁の口からも、スト権ストのときの賠償は断固として貫いて、そして現実に裁判で決着がついたらそれを実行していただくことと、三十五万人体制というものは国民の目から見たら怒りのものだ。そういう状態をはっきり受けとめて、それを整理したならば、業務委託をせずに職員でやる。返答なさい。
  243. 高木文雄

    ○高木説明員 二百二億の訴訟は、現在訴訟係属中でございまして、一部の報道で言われておりますようなことはございません。  それから、三十五万人体制というのはどういうふうにやっていくかということについて、いま何か、国鉄の職員は減らしますけれども業務委託でやっていくんだというふうにお聞き及びのようでございますけれども、そういう部分もございますけれども、やはり全体としての能率を上げる、あるいはまた、いままで人手によっておりますものを機械力等によるというようなことを総合して行うわけでございまして、すべて業務委託というわけではないわけでございまして、その点はいまいろいろ工夫をいたしておるところでございますので、もうしばらくたちました場合にその具体的数字をお示しいたすことになろうかと思いますから、それを御批判いただきたいと存じます。
  244. 塚本三郎

    塚本委員 民鉄と比較をしてみました。その第一は、資金と人の効率運用に欠け、経済性の追求が決定的に不足をしております。第二は、体質が役所的で、組合員に押され、エネルギーの大半は会議と団交で内部で浪費されてしまっておる。これは総裁にお気の毒だと思います。問題は、政府の姿勢がなければこれは改まらないと思います。一つやろうとするとすぐ団交と、こうなって、私は総裁に言い過ぎたかもしれないと思うほどなんです。調べてみると、これは政府責任じゃございませんか。運輸大臣、どうでしょう。
  245. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 政府にも責任はあると思いますが、しかし、やはり制度上から来ておるものでございます。そこで、とりあえず、昨年の臨時国会において議決いただきましたいわゆる国鉄再建法、これをまず第一に軌道に乗せることが国鉄を再建する唯一の道であろうと思っております。  それにつきまして、いわば経営改善計画を早急に提出せしめてこれを確実に実行せしめていく、そのことが昭和六十年までに三十五万人体制を確実にとらすことでもありますし、また、鉄道の特性を失っておる路線等につきまして、これを他の代替機関にかえていくということ等を積極的にやっていくことによりまして、とりあえず、国鉄の再建を一歩でも前へ進めていきたい。  要するに、長年にわたって今日に参りましたいろいろな制度なり規則なりあるいは習慣というもの、これらを見直していって新しい体制へと切りかえていくということがわれわれ運輸省としての責務ではないかと思っておりまして、その点は積極的に進めてまいるつもりであります。
  246. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、意思はわかるのだけれども、ピントが外れておるのです、運輸省のおやりになることも国鉄のおやりになることも。  昭和四十年初め、いまから十五年前までは、国鉄と民鉄とは、乗降人員も運賃もバランスがとれておったのです。ところが、赤字だからといってどんどこどんどこと上げるものだから、お客がどんどんと民鉄に逃げていっただけのことなんです。もう一遍お客を戻す方法を考えなければならない。それでだめだから、ちょんちょんちょんちょんと切っていってしまうものだから、よけいに後始末で金が要り、また反対されて、また団交団交で時間がかかって、だんだんと手の届かないところのものになってしまったんじゃありませんか。民鉄は逆に、安い運賃で数多くの旅客を送って、運営を維持してきている。こういう違いがあるんですよ。もはや国鉄は公共の機関でなくなってしまっておるのです。  私は名古屋でございますから、近辺を調べてみたのです。旅客だけの乗降人員でまいりましょうか。国鉄の岡崎駅。国鉄は乗降人員一万人に対して、駅の職員は旅客の職員だけで七十人。ようございますか。ところが名鉄という私鉄は、五倍の五万人の乗降人員で、その駅の職員の数は四十人。一万人で七十人の人がかかっております。五倍の五万人で半分近くの四十人ということは、八倍ではありませんか。八分の一しか働いておいでにならないということでしょう、給料は別にしましても。  岐阜の駅でも、三万人に対して何と二百五十人の旅客関係の職員がおる。名鉄は一日の乗降人員が三倍近くの八万人です。駅員は三分の一以下の九十人です。もう一遍申し上げましょう。三万人のお客様に対して二百五十人がかっている。三倍近くの八万人のお客様に対して、三分の一以下の九十人で旅客扱いをしておる。  これは、名鉄という民営鉄道と国鉄との違いではありませんか。六倍から八倍の人がかかっておるでしょう。六分の一か八分の一で仕事をしておるのです。だからこそ運賃もどんどん上げてしまわなければならなくなって、名古屋から豊橋の間、同じ駅から同じ駅まで乗降するのに——駅は同じなんですよ。名古屋から豊橋まで、国鉄も名鉄も一つの駅で、地下でつながっていたり、上も一緒、屋根まで一緒なんです。国鉄は八百六十円、名鉄は五百八十円。京王帝都のごときは、新宿から八王子まで二百四十円と四百八十円でしょう。また上がって五百円を超えたはずなんです。倍以上なんですよ、東京では。  こんなことをやっておったら、みんな同じ訳なんだから、五割も高いところを乗る人がありましょうか。しかも、つっけんどんなお役人様の国鉄様とサービスのいい民鉄様と。これがいまの国鉄の実態じゃありませんか。大蔵大臣、これで金がないと言えるのですか。一兆七千三百億円ですよ、昨年一年間につき込んだ国民の税金が。総理、どう思いますか。——総理に聞いているのだ。
  247. 高木文雄

    ○高木説明員 ちょっと事実関係だけ御説明させていただきます。  岡崎の駅と名鉄の駅の関係は確かにおっしゃる人数でございます。ただ、岡崎の駅の方は夜間も仕事をしておるわけでございまして、貨物扱いがございますので、貨物扱いを考えますと、乗降人員は一人当たりで言いますと確かにまだ相当な開きがあるのですけれども、絶対数に関する限りは、貨物扱いを別に考えさせていただきますればさほど大きな開きはないと考えております。  それから、運賃の問題でございますが、これは私どもも、どういうふうにしたらいいか非常に悩んでおるわけでございますが、現在の問題は、都会地においては私鉄の方が私どもよりも安い。それから地方に参りますと中小私鉄、バス等に比べますと国鉄の方が非常に安い。問題は、国鉄の運賃は全国統一運賃であるということがあるわけでございまして、それらを今後どういうふうにしたらいいか。これは日本だけじゃない問題でございます。世界各国とも皆都市交通では悩んでおるわけでございますけれども、今後とも取り組んで、どうしたらいいかを検討してまいりたいと思いますが、現段階では、にわかにこれを変えることはむずかしいという現状でございます。
  248. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、これはもう少し御勉強なさって、私は貨物を抜いているのですから、その点は、私はでたらめを言っているのじゃないのです。旅客扱いだけをとってきているのです。  ただ、私は名古屋ですから、遠く日本じゅうを調べるわけにいきませんから名古屋を中心にして見たのですが、田舎線だって、たとえば、皆さん方御存じのないところの国鉄の太多線と私鉄の広見線とを比較してみたのです。全くの過疎の訳なんです。国鉄の太多線につきましては、一日の輸送人員が五千五百人なんです。ところが、広見線は私鉄で、五倍の二万五千人を運んでおるのですね。どうしてこういうことができるのかと思ったのです。五倍運んでおるのです。簡単なんですよね。国鉄は四両から五両、六両の大きなもので走っておるわけです。これでは採算に合わないと言って一時間に一本に切ってしまうのです。私鉄は二両編成で、細かく十分ずつに走るのですね。細かくしてお客を拾ってかせいでおるのです。二両編成で十分置きに走らせるのです。国鉄は四両、五両でしょう。こういう長い列車でやっていれば採算に合わない。このときになぜ二両編成で、市民の足として十分なり十五分置きに出さないのか。一時間に一本ならば、自動車で行けば三十分で名古屋に出てしまいますから、みんなマイカーになってしまう。私鉄があれば私鉄で、これで行けば楽なんですから、安いんですから。だから、私鉄の駅に言わせるならば、国鉄の駅の前のうちの人も、私のところまで自転車で来まして、それで私鉄に乗っていきますよと言うのです。一時間に一本しかないからです。赤字線なんかは廃止する必要はないと彼らは断定しているのですよ。細かく国民の需要にこたえれば、自動車ばかりで公害を田舎まで持って行く必要はないと言うのです。  二両編成で細かく拾ったらいかがでしょうか。そうすれば、五千五百人に対して二万五千人、片一方、国鉄は四両から五両編成、私鉄は二両編成でいってお客様を五倍運んでおるのです。国鉄は昔からあったのですよ。後から私鉄が入っていってお客様を横取りして五倍やっておるのです。だから、この考え方を徹底して改めてくださらなければ、税金はしり抜けじゃありませんか。  総理、いかがでしょう。
  249. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 それは塚本さんおっしゃるとおりでございまして、私も、それはもちろん痛感いたしております。ですから、今度の経営改善計画の中で指示いたしますことも、やはり運転の回数をふやすということが大事なんです。車両数ではなくして、これは大事なんです。そういうことと、それからダイヤがうまく接続するようなこと、こういうことも検討材料にせよということでやっておりますし、いたしておりますので、これからも十分そういう体制にいたしたいと思っております。  いままでは、国鉄はまさに独占企業だという感じを持っておった、これは私も否定いたしません。しかし、おっしゃるように、いまはもう自動車なり航空機、こういうものとの激しい競争の中に鉄道は生きていかなければならぬ。この意識を十分に植えつけてまいりまして、これからの再建はそういう競争相手を意識しての再建計画を立てていきたいと思っております。
  250. 塚本三郎

    塚本委員 総理、どうですか。
  251. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国鉄の経営の問題、財政の問題につきましては、塚本さんから非常に厳しい御指摘がございました。私はそれをそのとおりに受けとめておるわけでございます。  これに対処する政府方針といたしましては、さきの臨時国会で成立をいたしました再建法に基づきまして、この精神を生かして再建に全力を尽くすということが、当面、政府として努力をいたしたいところでございます。  この再建法を国会に提案するに当たりまして、自由民主党の関係部会あるいは総務会等におきましても、これは国鉄再建の最後のチャンスである、もしこれでできなければ民営その他のことを考えざるを得ない、こういう厳しい意見すら出たわけでございます。私は、総裁以下国鉄の職員全員がこの厳しい事態というものを真剣に受けとめて努力することを期待いたしておるわけでございます。
  252. 塚本三郎

    塚本委員 総理、その再建法がピントが外れておると先ほどから言っておるのです。そんななまやさしいことじゃないと申し上げておるのです。民鉄がおやりになっておったら——彼らからいただいた税金でいま国鉄は支えられているのでしょう。それだったら、納税者の立場までお戻りになったらいかがでしょうか。そのことを言っているのですよ。  たとえば車両なんかどうですか。二十年たったらみんな払い下げておるじゃありませんか。私鉄ではみんな二十年前の、パノラマカーと言っておりますけれども、いま主力で動いておりますよ。なぜそんなものを払い下げて新しい車を使うのですか。私鉄は全部二十年前の車が主力で走っておりますよ。なぜ二十年たったら払い下げるのですか。レールなんか一本も買ったことがないと私鉄は言っておりますよ。国鉄さんから全部払い下げていただいておりますと。本当なんですよ。会社によっては、一本も買っておりませんと、私が当たった会社は言っておるのですよ。最初つくるときは別でしょうけれども、後は全部国鉄さんから払い下げてもらっているのです。まくら木だってそうですよ。碍子だってそうですよ。反対でなければいけないじゃありませんか。これが財政再建というものでしょうか。  大蔵大臣、よくもよくもこんなことがいつまでも続くのか。新幹線は真っ昼間だって電灯をつけて走っておりますよ。私鉄の経営者は言います。小さなところでも、燃料節約からもトンネルを出たら一々消させております、真っ昼間は。回送車だって昼間から電灯をつけて走っておるじゃありませんか。運転は必要ないというものまでわざわざ乗り込んで、乗せておるんだったら、しかも二人も乗せておるんだったら、なぜ電灯を消すぐらいの仕事をさせないのですか。こんなことをやっておるからこそ、気の遠くなるような金が要るのです。  国鉄、これも幾つか申し上げたいことはありますけれども、きょうは国鉄の時間ではございませんからこれぐらいにしますけれども、お金がないなんというふうなことを言えるはずのものではないじゃございませんか。大蔵大臣、いかがですか。
  253. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、国鉄の内情を知悉しているわけじゃございませんが、御指摘のような点も多々あろうかと存じます。しかしながら、限られた時間で予算編成をするわけでありまして、いろいろ内部で相談をした結果、その時間内においては、現在の条件の中では最善の予算をつくった、そういうふうに思っておるわけです。  しかしながら、財政再建は一年で終わるわけじゃございませんので、これを初年度として、さらに一層いろいろな機構や制度等につきましてもメスを入れていかなければならぬ、かように考えております。
  254. 塚本三郎

    塚本委員 私は、戦争中に国鉄に奉職をしておりました。敗戦の報を聞いたときも一分も列車をおくらせませんでした。それが国鉄マンの魂でした。私はそういう意味で、国鉄を見るときはふるさとを思って見ておるのです。総裁、いかにも情けない国鉄の姿です。  運転だって、国電は一日に三時間と仕事しないじゃありませんか。二時間五十分ですよ、一日に。石炭をたいておるときは準備に一時間かかりましょう。電車になったら十分で結構ですと私鉄はみんな言っております。後の点検だって、火の始末はもう必要ないんですから、十分でたくさんなんです。それを長い時間を計算に入れて二時間五十分しか働かない規則になっているんじゃありませんか。  こういう状態で、これは挙げれば切りがないんです。だからこそ八倍の人が要るんでしょう。私は、こんな国鉄にさしてもらったことに対して、本当に残念だと思うんです。いま手を入れなかったならば、完全に国民の足でなくなる。もう国民は言っているじゃありませんか。割引比率だって、私鉄の方がよくなってきているんですよ。通勤だって、国鉄は四八%しか割り引いていないじゃありませんか。私鉄は平均五二%割引いていますよ。通学に至っては、国鉄七七%、私鉄は八五%を割り引きしているんですよ。一体どちらが公共の機関でしょうか。どちらが政府の補助金をもらっているんでしょうか。こういう点を考えてみたら、この一つだけでもひど過ぎやしませんか。それで五年たって三十五万人にする。しかも、それは人員を減らすけれども、事業費の方でカバーしようと思って業務委託にしてやっている。現場長三人に私は聞いてみました。その団交で大変なんですと言っているんですよ。高木さん大丈夫だろうか。総理が乗り出して応援してあげなければ、高木総裁の細腕じゃこれは無理ですよ。総理、いかがでしょうか。
  255. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、国鉄総裁一人に任せる問題でございません。政府全体としてもこれを受けとめまして、真剣に努力いたします。
  256. 塚本三郎

    塚本委員 厳に要望申し上げておきます。  さらに総理、五十六年度予算は増税予算だと言われております。しかし、私たちから見るならば、お金が足りなければ、使う方の政府が節約をしなさい、税金を納めている国民と同等のレベルで合理化を徹底しなさいということを私は申し上げて、その極端な例として国鉄を例に出しました。  綱紀の粛正は、総理みずからもおっしゃってみえます。私は一年前この席から、電電公社に対するやみ給与、空出張の指摘をいたしましたが、責任者はありませんとおっしゃった。しかし、半年たってから大きな問題になりました。私は、こういう席で名前まで出すことは忍びないと思って、その点は、なければ結構ですと下がりました。その責任者が昨年の暮れ、私のところへ、きのう辞表を出してまいりました、おっしゃるとおりに全力を挙げておけばよかったのです、私の六十年の生涯を汚すことになりましたと言って謝っておいでになりました。  電電公社だけではないと思います。おおよそ国鉄を初め公社公団等、民間に直接に仕事をなさればいいのだけれども、退職者、OBが会社をつくって、そこをピンはねの機関として、下に流しておるじゃありませんか。これは大なり小なり、大きな企業については子会社をつくっております。しかし、彼らはいわゆる定年退職後における給与のために苦肉の策でおやりになっておられる場合が多いのです。だから、わずかなピンはねをして、あるいは便宜的にやって、親会社が利を十分に取るように運営をしておるのです。ところが、親会社が国家でありますから、赤字になっても知っちゃいないという、まあ意思ではないでしょうけれども、このOBの会社がでっぷりと太って、そう言ってピンはねをして下へ流しております。  十万円で一つの仕事が出てまいります。私がやっておる仕事は二万円か三万円です。直接やれば、一人前の交際費や折衝がかかっても半分の四万円か五万円でできます。こういうのが公団や公社の諸君の私が接した事例であります。この際、会計監査なりあるいは国税庁なり、一斉にそれらの問題を点検なさってみるならば、発注の単価は、半分とはちょっと大げさなところでしょうけれども、三分の一は必ず下がります。何百億浮くかわかりません。あるいは何千億を超えるかもしれません。会計監査と国税の調査に手を入れることを一会計検査院はきょう来てないですかな。呼ばなかったね。それでは大蔵大臣、国税だけでも一斉に手を入れるということをお約束いただけませんか。
  257. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国税庁長官から答弁させます。
  258. 渡部周治

    ○渡部政府委員 お答え申し上げます。  税務当局といたしましては、内外の情報等を十分に収集することなどによりまして、課税上問題があると認められる法人を的確に把握し、調査対象に選定して、充実した調査に努めておるところでございます。お尋ねのような企業につきまして、課税上問題があるかどうかということはいまだ承知をいたしておりませんが、先生御指摘の点につきましては十分に参考にさせていただきまして、課税上問題があると認められた法人につきましては適切な調査、処理をいたしたい、このように思っております。
  259. 塚本三郎

    塚本委員 総理、そんなことはあたりまえのことで、お役人に聞こうとしなかったのですけれども、これは各省庁に全部またがっておるのです。私はここで名前を出すことは、もっと資料はありましても申し上げるわけにいかない。それは個々の問題になりますから避けますけれども、公社、公団の中で、ある企業が仕事をもらいます。一千万円の見積もりを出します。二百万円削って、八百万円しか出してやらないという。明くる目五十万円を、その係長か課長の自宅へ持っていきます。そうすると、二百万円また戻って一千万円と来るのです。だから、一つの仕事をもらうにも、OBの諸君のところへ、会社へ、担当者に五十万円か百万円持っていかなければならない。そうすれば百万円、二百万円、三百万円と単価は上がるのです。ところが、所得申告をするときに了承いただけません。私が相談を受けたのは、一千万円の所得申告をしておる企業が一千二、三百万円の裏金を使わさせられておるのです。これは税務署長が否認いたします。名前は見せますと言うのです。日にちも書いてあります。しかし、裏をとられたら発注を断わられます。当然ですね。さすれば、明くる日から十人の従業員、いかがいたしましょうか。法人税と地方税と認定賞与と重加算税とで全部納めなければ全部取られてしまいます。それでも会社はつぶれても、従業員だけはあすから別会社で仕事がさせられるのです、こう言うのです。それが実は赤字企業の実態ではありませんか。  これは国鉄の例です。総裁、そういう形で赤字が軒並みに、キノコのように上へいくほど大きくなってきているのです。怒りにふるえてまいりました。一斉に査察を入れていただいて、私は一斉に逮捕状を出すべきだという気持ちにまで追い詰められたのであります。しかし、ここだけじゃないよというのです。みんなですよ、こういうのです。私は三つほど、電電だとかあるいは建設省関係の公社公団、みんなあります。必要ならば名前も教えてあげます。  どうぞ総理、この際は、行政機構を改革するだけではなく、綱紀粛正のために一斉に総点検をしていただいて、税金を納められておる国民の立場から見るならば、赤字の国家自身がこんな状態で、増税を大蔵大臣が提案なさりながら、政府と公共企業のこの事業体の実態を放置しておっていいでしょうか。総理、一斉に総点検することを約束していただきたい。
  260. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 官庁綱紀の粛正、また公社、公団等の綱紀の粛正につきましては、先般も電電公社の事件を契機といたしまして、私ども政府として、全部の関係機関に綱紀の粛正を示達いたしまして、監督者にもその点を強く指導を求めるようにいたしておるわけでございます。  この際、会計検査院あるいは行管庁その他あるいは監督官庁の機能、そういうものを総動員して綱紀の粛正、そういう間違った点があればこれを是正するということに努力すべきだという御指摘がございました。私も全く同感でございまして、これをさらに徹底するようにやってまいりたいと思います。
  261. 塚本三郎

    塚本委員 総理、もう一言だけ。総花的にやってもこれはむずかしいと思います。したがって、いわゆる各公社、公団、事業団等のOBがつくっておる会社だけでも——OBがつくっておるトンネル会社だ、私に言わせると。役所のトンネル会社、これだけまず、期間を区切ってやるということをお約束いただけませんか。
  262. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 十分研究してみます。
  263. 塚本三郎

    塚本委員 研究じゃないですよ。やるとおっしゃっていただきたいのです。
  264. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私はいまお話を十分承りましたので、研究ということは、やるという気持ちで研究するのです。
  265. 塚本三郎

    塚本委員 期待いたしております。  中曽根長官おいでになりますか。——第二臨調が動き出すようであります。私たちも久しく期待いたしておりました。三十一日まとまった原案では「低成長社会の中で、財政赤字の累積、経済の発展、国際的役割の増大、高齢化社会への移行などに伴って生まれている新たな課題に、行政がどのように対処するか基本的に問い直す必要がある」とうたっております。「政府は七十兆円にものぼる国債を抱え、財政再建が最重要課題となっており、調査会は財政再建にも寄与していかねばならない」として、「検討事項の柱となる行政の減量については」、私は、これは大賛成です。四つ出ております。「官業と民業の役割分担の見直し」、いま国鉄の問題もそうです。あるいは郵便の問題もそうです。病院の問題もそうだと思います。第二、「国と地方の機能分担の合理化」、わざわざ国の出先機関が地方へ行って県庁などを邪魔して、中二階のような出先機関がいまのままでいいかどうか、国と地方の機能の分担の合理化。第三が「行政サービスの合理化」、補助金さえやればいいというものではないということです。第四が「政府規制の緩和」、あらゆる許可、認可がふえ過ぎております。もはや共産主義でもこんなひどいことはないと言われるほどに、お役人様のいわゆる許可、認可です。教育から運輸から交通から、あるいはまた学校から、飲食から、もはや自由経済がどこにあるのだと言われておるほどの膨大な量をいわゆる許可、認可で持っております。この四つについて再検討をせよということが出ておるようであります。断固として行っていただきたい。行管庁長官の決意のほどを伺いたい。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まだ原案はできておりません。新聞が類推で書いたのではないかと思います。しかし、そういう方向で多分土光さんはおやりになるのではないかと思います。日程とかあるいは審議内容は委員会に自主的に決めていただくことになっておりますので、委員会でそうお決めになればその方向で進められると思いますが、要するに、いまおっしゃった趣旨は私も全面的に同感でありまして、決められた以上は断固としてやり抜く決心でございます。
  267. 塚本三郎

    塚本委員 実力者大臣が長官におなりになって、私はこのことを大きく期待いたしております。  思えば五年前、いまは亡きわが党の玉置一徳氏がここで三木総理に民社党の立場を述べて、一刻も早く第二臨調の設置をと主張いたしたわけであります。六年目にして、いまは亡き玉置一徳先生の意見が動き出したようです。いま中曽根長官は、検討事項の四点につきまして同じ方向だとおっしゃった。歯切れのよい形でやっていただきたいと思います。  官業というのは、国民の需要にこたえて、民間の企業では採算に合わないところを政府が国家の立場において実施するということが官業の出発でなければならない。ところが、その官業が実は惰性に流れてしまって、もはや民間が自分の力でやっても、それが独力でできるようになった。しかし、運輸においても、あるいは時に教育においても、さらにまた医療制度においても、国立、公立というものがないところでつくるときには国家として結構です。でき上がってしまって民間がどんどんやってきたら、逆にそれが民間の仕事の圧迫になってしまっておる。これでは何のための官業の仕事かと言わざるを得ない。ですから、その点をきちっと踏まえていただきまして、歯切れのよい答申をきちっと出していただき、そして実行に移していただきたい。この点、総理からも決意のほどを伺いたいと思います。
  268. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今後の行政改革、特に特殊法人あるいは三公社五現業等々の実際の仕事をやっております部門につきましては、今後どうしても官業でやらざるを得ないものであるかどうか、これを民業に移すことが可能であり、やった方が能率的であり、合理化も進む、サービスもよくなる、こういう点を十分検討いたしまして、私は、土光さんが会長になられた第二臨調、この民間的立場から思い切った答申を期待いたしておりますが、その答申につきましては、二カ年を待たないで、中間でも答申をいただいて、そしてできるものからこれを実行に移していきたい。そういう点におきましては塚本さんのお考えと全く同じでございます。真剣に取り組んでまいります。
  269. 塚本三郎

    塚本委員 そこで、それらの具体的な問題等もありますが、私は米の問題を質問してみたいと思います。  古米の処理について、膨大な米を政府は抱えております。これを調べてみましたら、もう古くなると、えさに払い下げるときにはトン当たり二万八千円とかということを聞きました。一年間持っている倉庫料が二万円ですから、二万円で持っておるともう捨てた方がいいという結論になってしまうのですね。だから、一日も早くこういうものは払い下げる。私は、いま農民の立場から考えて米価の問題等を論ずることは無理だと思いますが、せめて余った五十二年、五十三年産米等の古米を処理をする。倉庫料の方がもう高くなってしまっておる、こういう事態で、その米の検査員等をいまだ一万三千人も抱えておると聞いてびっくりしてしまったのです。こんなものはもう農協にお任せしたらいかがでしょうか。そうして古米を早く処理をなさったらいかがでしょうか。  幸か不幸か、お隣の韓国では冷害で米が足りないから百万トン分けてくれと言っておるにかかわらず、ないとおっしゃる。余って仕方がないのになぜないかと言ったら、港湾荷役が何とかとおっしゃる。私は、港湾荷役のそういう会社に親しいのがおったから話してみました。とんでもありません、私たちは正月でも徹夜でも運びます、くださいと言うのです。どうやら、売ってしまったら、倉庫が空になれば倉庫業者が困るといううわさが聞こえてくるのです。こんなことが本当だとは思いたくないのです。そうでなかったら、なぜ一刻も早く欲しいというところへ売ってあげないのでしょうか。えさだって二万八千円なら六万円で分けていただく——三十万円近くの買い取りからすると問題になりませんけれども、それだって、もはや、えさで二万円台で出すのでしたら、六万円ならありがたいではありませんか。運賃を向こうで持って、船を持ってくると言っているのですから。日韓親善のためにも大いに役に立つと思いますが、なぜ積極的になさらぬのでしょうか。農林大臣、どうでしょう。
  270. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 お答えいたします。  まず、韓国に米がありませんと言ったことはございませんので、その点だけは先生の勘違いでございますので御理解いただきたいと思います。  それから、古米でございますけれども、古米といえども一トン当たり二十九万円で、汗水流してつくった農家から買っている国民の財産でございます。したがいまして、これをできるだけ財政負担のかからないように処理をするということで、計画的に処理をすることにいたしております。これを一遍にやりますと、たとえば、それじゃえさに全部やっちゃえということになりますと、えさですと、トン当たり三万円ぐらいでございますから二十六万円の赤字でございます。これは膨大な財政からの穴埋めをしなければなりません。かといって、それじゃ欲しい国に全部輸出してあげましょうかということになりますと、もともと、米を輸出して生活をしておる国がございます。タイ、アメリカ等がございます。そういう国々から、市場を荒らしてもらっちゃ困る、こういうことでございまして、これはやはりFAOという国際機構の中で話し合いをして、その市場を荒らさない範囲内で出してあげましょうということで、今日までも、御承知のように韓国が一番多いわけですが、インドネシア、バングラデシュ、モザンビーク、タンザニア、マダガスカル、ペルー、カンボジア、シエラレオネ、ケニア等にずいぶん輸出をいたしております。この一部は海外経済協力事業の経費で買い上げてこれを無償で供与をする、そういう仕組みをとってやっておるわけでございます。したがいまして、七カ年計画で、全部古米が需給のバランスができるように処理をしたいということでやっております。  もう一つ、検査員の問題がございました。これは、先ほど申し上げたように国が買い上げるわけでございますので、国の検査員によって検査をしていくという原則だけは曲げるべきではないのじゃないかなと私は考えております。そのかわり合理化をしなければいけないということで、ここ六、七年の間に半減をしよう、そしてバラ検査あるいは抽出検査というようにいたしまして、このことはもう去年の十二月二十九日の閣議で決定をいたしておりますので、その線に沿っていま事務的に進めておるところでございます。
  271. 塚本三郎

    塚本委員 それはもう私が二年前、ここで米の検査員のことを強く申し上げて、いたし力なくか、渋々か、ようやく六、七年かかって半分にするということになっただけです。もう一遍私が言うと、これは一万三千人が半分にならぬかなと思って私は申し上げるのです。私の言ったことで仕方なしにそういう方針をお決めいただいたのですが、まあ率直に申し上げて一万三千人、常駐の職員でしょうが、だれが考えたって、千人おいでになればいいじゃありませんか。あと農協にお任せをなさったら——だれかが、どろぼうに米を渡すようなものだなんて言った人がありますけれども、そんなばかなこと、農協はササニシキだとかコシヒカリだとか、いい米をつくるためにみんな必死になっているんですよ。そのときに、お役人さんが一々こんなことをやっているような時代じゃないと思うのです。だから、それはその計画を縮めるということにもう一遍再検討を要望いたしておきます。  それから、米もおっしゃったとおりですけれども、そんな計画なんか実行できませんよ。最後には二万八千円のえさにするのが落ちなんですから、六万円で欲しい、百万トン欲しいと言っているときに——二百九十万トンあるのでしょう、五十二年産米、五十三年産米が。五十四年、五年の分は出す必要はないと思うし、あるいは危ないときのために持っておかなければならぬでしょうけれども、五十二年、五十三年産というものが二百七、八十万から二百九十万トンあるはずなんです。だったら三十万トンなんてちびらずに、せめて百万トンと言ったら百万トン出すように努力をなさったらいいと思うのです。欲しいと向こうから言ってきているときにお出しになったらどうでしょうか。それとも二百八十万トンはもっと高くという制約があるのですか。
  272. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御指摘のとおり、昭和五十四年度には、玄米換算で九十三万トン輸出をいたしております。それから五十五年度は、玄米換算で六十八万トン輸出をいたしております。さらに来年度は、先ほどお話のありました韓国等からの要請もございます。これも関係国とよく話し合いをいたしまして、国際的な混乱を起こさないように、話し合いのもとに、整々とした形で出していきたい、こう考えております。
  273. 塚本三郎

    塚本委員 少しでもたくさんの米を出していただくように希望いたします。  次は、生糸の問題について質問いたします。  蚕糸価格安定法のもとに蚕糸事業団が運営しておるところの中間安定制度並びに基準糸の値段、輸入一元化などの問題点について、昨年、わが党の永末議員が決算委員会で質問いたしたことは御承知のとおりであります。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 農林大臣、この蚕糸事業団というものが価格を安定させるために値段を下げないようにする、これは農家保護です。私は、いいことだと申し上げておきます。しかし、それで下がらないように余分なものだけ一定の割りで買って、値段を支えております。これがどんどん大きくなって、いまや十四万俵を超えて、価格にして千二百億を超えておるはずです。これはこのままいきますと、いわゆる下支えをしておるのですからだんだん高くなってくるんですね。利息もついてまいります。そうすると、よそから入ってくるところの絹以外の物が安いからどうしても需要が減退をして、この二、三年激減をしております。いまの農家は何とかやっていかれるけれども、やがては全滅に瀕することは火を見るより明らかです。高くなれば安い物の方に手を出す。だから、よその三分の一から半分ぐらいの中国産のものをいろいろと入れてきて、それで埋め合わせをして値段と採算を合わせようとしますが、入れれば量がまたふえて、よけいに支えの量が広くなっていく。農家からも、糸屋さんからも、消費のいわゆる業界からも、もうこの事業団がつぶれることは時間の問題だというのが一致した意見だと思います。  片や、伝統産業であります京都における西陣がとか、あるいはまた鹿児島における大島だとか、愛知におけるしぼりだとかは、保護しておっても、材料自身がすでに国際価格の倍を超えておる。まして加工の人件費等は三倍から五倍であります。保護すると言いながら、もとにおいてこれじゃどうしようもないという状態。それも、業界のことだけを申し上げては議論になりません。しかし、国民が絹から別れて手を放してしまったときには、農家も全滅をいたします。この事業団をどうするかということを具体的に考えてあげなければなりません。  したがって、私は一つ提案いたします。これをもう少し放出をして、中間マージンを取られないように安くする。たとえば京都の西陣であるとか、愛知におけるところのしぼりであるとか、大島であるとかという伝統産業のところだけまずは安く放出をして、荷を軽くしてあげる。そうして、いわゆる絹というものは日本の伝統として、いいものなんだ、そしてそんなに高くないものだという道を開かないことには、結果としてこの価格が下がっても農家の諸君もいたし方ないが、このままいけば共倒れになってしまう。この声をよく聞いて、国民全体が、絹はそんなに高くないものだ。私は肉のことを思い出します。肉が高くなったと、輸入肉を入れてきました。そして安く、隣のケースで輸入肉を販売しました。そのことによって、肉はそんなに高くないという慣習をつくりました。結果として肉の価格は安定しただけではなく、魚のお客様が肉にずっと広がってきて、そのことによって足を引っ張ったけれども、需要を喚起して業界は安定しつつあります。  絹だって、この事業団のものを安く売れないという法律になっているから改正が必要でしょうけれども、ひとつそういう試みでもして、農家がそれで困るならば別の補助の問題を考えて、価格だけを自由世界において安定させようとすることは無理で、これは先ほどの国鉄と同じことで、安い方へ行ってしまう。もの方に、綿の方にみんな行ってしまうと思うのです。そうなってからでは手がつけられませんから、何らかの、いわゆる事業団そのものをどう処置するかということを需要の立場と中間におけるところの業界と生産者と三者が一体となって、特に通産大臣と御協議の上、新しい道を開かなければならないと提言いたします。いかがでしょう。
  274. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 蚕糸事業団の在庫が十四万俵という御指摘でございますが、そのとおりでございます。これがおもしになりまして生糸の市価が低迷をいたすこと久しゅうございます。したがいまして、実割りができない。いま御指摘のように、外国から入ってきた生糸を安く絹業界に放出するという制度をとっております。これが、中間安定帯価格の一万四千七百円を市価が割っておりましたために、しばらくできませんでした。最近回復いたしまして、先般これをやりました。放出いたしましたけれども、相場は余り下がっておりません。私どもは、この蚕糸事業団の価格安定の制度、国会による立法措置によって生糸の一元輸入ということで国の意思を決めていただいておる制度がある限りは、やはり大丈夫というその安心感で相場もそう暴落するというようなこともございませんために、いま比較的低迷はいたしておりますけれども、先行き真っ暗ということではございません。  それで、この絹関係は韓国と中国の二国でございますけれども、二国間でよく話しまして、特に絹織物になって入ってくるわけでありますので、なかなか日本にも悪い輸入業者がおりまして、青竹とかあるいは赤竹とかいうことでいろいろな悪知恵を出して日本に絹織物あるいは絹糸等で入れてくるわけでありますが、通産省ともよく協力いたしまして、現在のところはほぼいい状態で業界も協力してくれておるということでございます。韓国、中国とも絹織物の輸入量が去年よりも約三割減、生糸は去年の輸入量の五割、半分ということで、そういう面でも、日本の非常に苦しい実情を話しますとよく理解して協力してもらっておるわけであります。  御指摘のように絹織物の原料の生糸は一キロ当たり一万四千七百円という原価でありますから、これを糸にして染めて織って反物にして着物にするわけでありますが、それが一反三十万とか四十万とかということになる。その原料代は、農家に渡るのが一万二千円そこらということでございますために、私は口ぐせのように申しているのでありますが、養蚕農家と製糸と織物業界と、これはいままで利害相反するということでなかなか一致しなかったのです、一致して、死なばもろともでやっていかなければこの業界は生きていけませんぞということで指導いたしておりますので、この点はもうしばらく時間をかしていただきたい。  そして、この蚕糸事業団も糖価安定事業団と合併されるわけでありますが、しかし、私どもといたしましては懸命の努力を続けまして、養蚕、製糸、織物業界三者とも相ともに繁栄していかなければなりません。そうかといって、それでは日本の養蚕農家は高いから、もう外国からの安い生糸だけでやればいいじゃないかということになれば、日本の養蚕農家が全滅すれば、絹は現在の日本の綱よりももっと高くなるであろう。これはシルクロードの故事を思い起こせば御理解いただけると思いますので、この点をよく考えて指導していきたいと思っております。
  275. 塚本三郎

    塚本委員 一元化の法律は、私は残念ながらいい法律だと思っておりませんけれども、いまとなれば、もはや重病人だから、本当は健康なうちに自由にさせておけばよかったのですけれども、危篤の状態だから外したら全滅するから、いたし力なくこれはしばらく守っていくべきだというのが私の見解です。しかし、そのうちに、もう事業団自身がこのままやっていかれません。そうして、先の業界がつぶれれば養蚕農家もつぶれてしまうから、それをつぶさないためには、需要喚起のために事業団もできるだけ名目の通るところの伝統産業のところからでも放出をして、そうして安く日本国民に供給するような形から、もう一遍需要を引き戻すという立場で、農林大臣は通産大臣とよく相談をしてやっていただきたい、このことを要望申し上げておきます。  次は、石油対策に移ります。民族系企業の取得する原油の価格はすでに四十ドル台に入っております。外資系企業の取得原油ははるかに割り安で、双方の正常な市場での競争は全く不可能であります。合理化するといっても、入ってきているときからもう値段が違っております。加えて、外資系のシェア戦略に対抗するため民族系は、向こうが安く入ってきてシェアを拡大しようとするから、それに対抗するために大出血を余儀なくされて、赤字発生は巨額に上っております。したがって、石油企業の公正な競争が図られるよう原油輸入並びに製品価格について適切なガイドラインを示し、国が強力な政治介入を行う必要があると思います。すなわち、各社別の原油割り当てやパニック時に実施した石油製品標準価格制度の再適用など、競争条件回復のための諸対策を実施すべきだと思いますが、大臣、どうですか。
  276. 田中六助

    田中(六)国務大臣 民族系の石油会社というものの育成は、私ども日本は御承知のように原油の九八%は外からでございますし、石油安定供給という観点から十分考えていままでやっております。たとえば共石などはその例でございますし、昭和四十年以来ずっとそういう、いま塚本議員御指摘のような精神でやってきておりますし、これからも開銀融資などについて塚本議員が御指摘になった項目のような目標を持って育成していきたいという根本的な考えでございます。
  277. 塚本三郎

    塚本委員 民族系企業にあっては、産油国やメジャーからの値上げに加えて、割り増し金、別途金など、別にまた取られておるんですね。積み増しを要求されております。これに応じざるを得ないなどの困難な対応を迫られております。これらの圧力を緩和し価格の引き下げを図るためには、国はGG、国家対国家ですね、このベースの拡大と、その果実の民族系企業に対する公平な配分や、共同輸入によって交渉時の日本側の力を相対的に強めるように配慮すべきであります。そして共同輸入にあっては、窓口として石油公団とかそういうものによって積極策を講じてこれらに対して助けてあげなければ、ますます外資系によってやられてしまうという状態になると思いますが、その点はいかがですか。
  278. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもは、石油安定供給あるいは備蓄というような観点から、多少外資系の会社に批判されましても、あくまで、私が先ほど申しましたような考えは貫いて、民族系の保護育成には当たりたいという考えでございます。
  279. 塚本三郎

    塚本委員 日本に資源がありませんし、外資系が七〇%近くで民族系が三〇%だから、これだけが強くなったって、民族系の会社がみんな赤字でしょう。これではどうすることもできないということでありますので、その点を十分配慮してやっていただきたい。  それから大臣、これは大蔵大臣も聞いていただきたい。石油税の課税も不平等になっているのです。入ってきた価格について税金がかけられるのです。高く買っておいて高い割合の税金を払わさせられるんですね。だから品物にかけておきさえすれば、高くても安くても一バレルなら一バレル幾らといかれるのです。四十ドルで買って、それでそれの割合で税金が取られるのと、三十ドルでしか税金を払わなくていいのと、税金でまた格差がついておるのです。これを改める必要があると思いますが、大蔵大臣、どうですか。
  280. 高橋元

    高橋(元)政府委員 エネルギー対策の財源に充てますために、五十三年度に石油税の創設があったわけでございますが、当時、税率についての考え方といたしますと、将来の財源ないし財政需要の増加に比例して税収が安定的に伸びるようにということで、従価という考え方をとったわけでございます。昨年策定されましたエネルギーの総合計画、それから代替エネルギーの計画、それらにつきましても、石油の今後の価格、それから単価、それらの伸びが織り込まれまして必要な財源を策定しておる、そういうことでございますが、現実の各年度の予算の執行につきましては、やはり計画でございますから、当初比較的少ない金額しかございませんので、まだ一般会計にかなりの繰り越しが残っておるという状況ではございます。
  281. 塚本三郎

    塚本委員 いや、そんなことを言っているのじゃないんですよ。割合を変えよう、こう言っているのです。これは大臣の立場じゃありませんか。量で決めたらどうでしょうかと言っているのです。価格に対して割り当てれば、安い人はさらに税金が安くてますますもうかって、高くしか買わせていただけないところは、これはますますその上に税金も高くなる、その率で来ますから。これは改めなさいと言っているのです。これは当然のことじゃないでしょうか、大蔵大臣。
  282. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それも一つの考え方だと思うのです。しかし、石油の値段が上がる。やはり上がるから節約をしてもらう。石油の量はふえない。なるべく量をふやさなくて、少なくしていけば一番いいわけですから、そのときに代替エネルギーの開発とか転換とか、いろいろな面でエネルギー対策費がかかるわけですね。量にしておけば、その量が減れば結局税収が減ってしまう。それで、結局は量が減っても、価格がどうしても上がるという傾向ですから、税収が入る、それによって転換促進が一層よくなる、こういう見方もございまして、実は現在のやり方がいいんじゃないかという気がいたします。
  283. 塚本三郎

    塚本委員 それはあなた、税を取る立場だけで、エネルギーのことを考えてないじゃないの。そんなばかな考え方を大蔵大臣が持っておってどうするんですか。四十ドルのところで買った人は、たとえば一〇%ならば四ドル取られるでしょう。三十ドルの人は三ドル払えばいいんでしょう。そうすると、三十三ドルと四十四ドルで差が開くじゃありませんか。これでは、民族系を育成すると言った通産大臣との立場が全然違ってくるじゃありませんか。これはどうしようもないんでしょう。国ごとに大騒動して油をいただきに行ったってそんな程度なんだから、そんなばかなことをいつまでも言っているのはおかしいと思うのです。これはやはり検討なさるということをお約束いただきたいと思います。どうでしょうか。——政策はいいんだよ。そんなことは関係ないんだよ。大臣、答えなさいよ、時間がないから。私はまだほかのことをやらなければいけませんから。
  284. 森山信吾

    森山(信)政府委員 塚本先生の御指摘は、民族系が相対的に高い油を買っているから、同じ税率で石油税を払うと高い結果になる、こういう御指摘でございまして、まことにそのとおりでございます。したがいまして、私どもは、原油の価格そのものを、民族系が安く買えるような政策をとるべきだという考え方のもとに、先ほどうちの大臣からも御答弁申し上げましたように、たとえば共同購入等々の方策を講じて、メジャーと同じような価格で買えるような政策をやっていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  285. 塚本三郎

    塚本委員 そんなことは、先ほどの総理のいわゆる減税と物価と同じことなんですよ、おっしゃったってできないのですから。できるのならいいですよ。努力することは認めるのです。できないときに不公平がさらに広がるからこうしてほしいということを言っているんでしょう。それは当然おやりになるべきですよ。それにしても、なおかつ見通しを立てるならば、日本の国力としてはできない状態にあるんでしょう。だから、その不公平を直しなさいということを言っているのです。大臣、どうでしょうか。
  286. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはただいまエネルギー庁長官からも言いました。私からも理由は申し上げました。せっかくの御提案ですから検討はいたしますが、少し時間をかしてもらいたい。
  287. 塚本三郎

    塚本委員 結構です。よくやってください。とにかく七〇%を占める外資系だけが強くなって、さっと引き上げられたら、一体、日本のエネルギーはどうなるのですか。いま円が高くたって、これはもうふうふう言っているんでしょう。だから、こういう状態をよく考えて、せめて政府としてできることはこんな程度しかできないのでしょう。森山長官は努力なさっておられるけれども、にもかかわらず、民族系の入ってくる油というものには限界があるんだから、その点よく考えていただいて、日本のエネルギーという立場で考えていただきたい。検討を再度強く求めます。  それから、商法の改正。  かつて、商法改正の問題のときに、いわゆる監査をするとき、資本金十億円以上の企業に対して監査をするということで、私が法務省の方と折衝いたしまして修正で通した経緯があるのです。ところが今度、聞くところによると五億ということになり、そしてまた、五億から一億の間についていわゆる監査さえ、公認会計士のそれさえ手を入れるならば、財務諸表その他の計算のものを株主総会にかけなくてもいいというような、また逆戻りの案が出されるやに伺っております。物価が高くなってきたから十億のところを十五億にするというなら話はわかるんだが、なぜ十億からまたもとへ戻してきたのか。これは法務大臣ですか。
  288. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 御承知のように、いわゆる大会社の範囲をどうするかということがかなり政治的な課題になっております。先般、法制審議会から会社法の改正につきまして答申をいただいたところでございまして、その案によりますと、大会社の範囲を、資本金五億円以上、営業収入年間二百億円以上、負債百億円以上というところにすべきだという答申をいただいておるわけでございます。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 これを中心にして、いま会社法の改正を事務当局において法案準備をしておる最中でございまして、十分に検討した上で結論を出したい、こう考えております。
  289. 塚本三郎

    塚本委員 まだ検討中だから幸いです。法務大臣、事故を起こしておるのは五億から十億の間の会社じゃないんですよ。十億以上の大会社で、公認会計士がたくさんおったって、ずさんで、やってなかったところですね、そういう事故を起こしておるのは。なぜ五億のところまで食ってくるのか。こんなことで中小——まあ中小企業じゃないかもしれぬけれども、最近は中小企業でも成長してまいりました。そんなところまで一々、公認会計士の監査なんといって割り込む必要はないじゃありませんか。それを意地になって、まあ奥野さんの時代じゃありませんけれども、五億で出してきたのを、改正のときに、私は折衷案でいわゆる暫定的としたのです。暫定的だけれども、もう固まってきてうまくいっておるのだから、この際はこれを戻すというようなことはすべきではないというふうに思います。  なお、一億から五億の問題につきましても、これを必要としないようなことになれば株主に対する権限まで問題が出てまいりますから、この点等については強く反対がありますし、私も中小企業の経営に対する相談にあずかっておって、税理士さんで簡単にやってきてくださったものを、これからわざわざ、いかめしい公認会計士さんの方へ回さなければならぬというようなことになると、業者の方も中小企業対策として困るだけではなく、やはり税理士の諸君にするなら、せっかく十年も二十年もかかってしとねてきた企業がよくなると公認会計士にあげさらわれてしまう。これは業界としてそれこそ血みどろの闘いになります。だから、せっかく数年前に落ちついたところですから、これは相当の大混乱になると私は心配しております。落ちついたところだからこれをしばらく続けて、できるならばやがてこういうものを落ちつかせて、時代の進運とともに逆に金額を上げていくのが本当だと私は思いますので、検討中ということでありますから要望申し上げておきます。  それからもう一つ、在日韓国人の年金の問題について申し上げてみたいと思います。  国籍条項を一切撤廃するという方針政府から出されるようであります。これは難民条約等に対する問題でありまして、幸いこれができるならば、いわゆる在日韓国人の諸君も国民年金等が受けられるようになります。結構なことです。  ただ、彼らの意見を聞いてみると、国民年金は三十五歳未満の人は受けられますけれども、それを過ぎた人は受けることができないという状態になります。これは日本の人たちは過去三回、経過措置がありました。しかし、在日韓国人の諸君は、資格がないんだから経過措置も何も手の出しようがなかった。ようやく基本に従って三十五歳までの人はかけることができるようになりました。そうすると、三回にわたって経過措置がなされた日本人でも、まだ百万人ほどは国民年金に入ってない。だから、もう一遍これを救うという意味でいわゆる経過措置をとってやっていただくことによって、特に三十五歳以上の人というのは戦争中に韓国から連れてこられたり、あるいは戦前にこの国で生まれた人なんですから、そういう人たちがせっかくこの難民条約が通ることによって同じ待遇が受けられるとするならば、経過措置をこの隊とってあげることが至当ではないか。税からあらゆる国民義務は平等に負担しておられるこの人たちでありますから、経過措置をぜひとっていただきたい。どなたからお答えいただけましょうか。
  290. 園田直

    ○園田国務大臣 難民条約に伴いまして、年金その他について、在住される外国の方々と日本の国籍を持った人と平等にしたい、これは仰せのとおりでありまして、ただいま検討いたしております。  ただし、いま御発言の中にありましたとおり、内国民も入らない部分がある。そこで、これをどうするか。沖繩のような一つの試練もありますが、こういうことについていま各関係省庁と検討中でございますが、十分考慮して検討いたします。
  291. 塚本三郎

    塚本委員 十分考慮していただけるという話でありますから、御期待申し上げます。  私は、残る時間、教育問題に移ってまいりたいと思います。  毎日毎日の新聞の三面記事は、誘拐殺人、強盗殺人、毒入り殺人、替え圧殺人、銀行強盗等、犯罪の記事に事欠かないような残念な社会状態になっております。最近は、中学校の校内暴力が次々と報ぜられるありさまであります。最近行われた都内の日教組研究集会では、家庭破壊の実情が次次と述べられております。これらの家庭の問題を学校教育がどれほど防ぎ切れるか疑問だと論じております。家庭が全くひどい状態になっておる。学校の舞台では限界があると先生方は叫んでおります。  しかし、一方におきましては、おとといはこの委員会におきましても、政府と自民党さんとのやりとりの中において、道徳教育が不足しておる、そういう点、文部大臣は道徳教育を強く進めていくべきだという議論がありました。あるいは一般の家庭や親や、さらに産業界では、問題は日教組にある、日教組の指導方法に疑問を投げかけるという声も多く耳にいたしております。私は、いずれの指摘もすべて的を射ていると思います。しかし、相手が悪いのだと言って批判をしておる、それは正しいと思いますけれども、日教組にしても、家庭にしても、学校の先生方にしても、そういう自分に向けられた批判を消化しなければ問題の解決にはならぬというふうに私は思います。  私どもが一番心配するのは、日本の社会と家庭が、戦後三十五年の間に日本人のよき風習が壊されつつあることであります。私たちの望んでおる家庭とか社会というものが、核家族となって、地域と人の横のつながりが絶たれつつあることを痛感いたしております。老人夫婦、親夫婦、それに子供を交えた三世代が一つの場所で生活できてこそ、日本の理想の家族だと私は思います。おじいちゃん、おばあちゃんたち、そしてお父さん、お母さん、そして子供たちという三家族が一つの場で生活することが理想だと私は思います。しかし、現実には、住宅問題やあるいは夫婦が共かせぎで、日本の家庭というものの温かさが分断されてしまっております。おじいちゃんたちが老人ホームヘ、それで子供はかぎっ子になってしまう、そういう都会生活で日本人の家庭というものが失われつつあります。そこへいわゆる学歴社会が受験戦争を盛り上げて、受験に適しない子供まで、中学校や高校の受験競争の中に巻き込まれてしまっておると私は憂えております。  したがって、まず、じいさん、ばあさんに親に子供という三世代が一緒に住み得るような住宅を、いままでは仕方がなかったが、これからはそういう広い家庭、住宅を目指すべきだ、これが一つ。  もう一つは、中学と高校と大学と三つに区切ってあるけれども、この際、中学と高校を一つにして、五年にするか六年にするかいろいろな方法がありますが、小学校から中学三年、そして高校三年、大学四年と区切ればほとんど受験戦争に巻き込まれてしまうこの制度を再検討して、戦後の混乱をもう一遍新たなる観点から、日本の社会のいいところだけをもう一遍立ち戻らせることが政治責任ではないかというふうに思います。  文部大臣、いかがでしょう。
  292. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えをいたします。  ただいまの先生の御意見、いろいろな問題といたしまして、具体的な問題からまことに当を得た御意見であろうと存じます。ことにわが国の純風美俗と申しますか、家族制度というものに対しまして、三世代というただいまの御表現でございます。一方、老人の方々の生きがいという上からいいましても、あるいは核家族の解消という点からいいましても、本当に家庭教育、学校教育、それからまた老人の生きがい、社会教育、一体となった教育の目標というものを具現する上からいって、御意見の点は非常に傾聴に値すると存じます。  それから、後の六・三・三制を改めるべきではないかという学制の問題がございます。これもいろいろと議論のあるところでございますが、義務教育の六・三の問題にさらに特殊教育その他の実業教育を加えた高等教育をどうするかという問題は、また別途いろいろな議論のあるところでございまして、御意見は十分に拝聴いたしまして今後検討いたしたい、かように考えます。
  293. 塚本三郎

    塚本委員 基本的に私は、住宅の問題とそれから制度の問題を根本的に検討していかなければならないということをまず提言をさせていただきます。その上で学校の問題と教科書の問題を論じてみたいと思います。  中学校で生徒が先生に暴力をふるうということが激憎いたしております。私は、現場の皆様方によく聞いてみました。大臣、よく聞いてください。校長先生はなぜ殴られないか。いいですか、校長先生はほとんど殴られないというのです。どうしてなんだ。非行を見ても注意をしないからだ、校長先生はほとんど注意しないからだ、だから殴られる心配がない、こういう意見が多くはね返ってまいりました。なぜ注意をしないんだ。注意をするとやられるから注意をしないんだ。だから、非行を見ると担任の先生に、あれはいけないと言って注意する。直接に注意しない。自分が注意をすると自分がやられるといけないから、担任の先生にあれを注意しなさいと言う。それから、黙っていて、事なかれ主義で見て見ぬふりをする校長先生。もう一つ、担任の先生を通じずに直接生徒に注意をすると、組合から抗議を申し込まれる学校が多い。ここが問題ですね。見たら、担任の先生でなければくちばしを入れられない。こういう三つに分類されるというのです。もう一つ、中にはりっぱな先生がおる。毅然としてそれを注意をすると、生徒もしゅんとなるから殴られないのだ。  校長先生はなぜ殴られないのか。非行を見ても注意をしないからだ。なぜ注意をしないのだ。注意をするとやられるから、担任の先生に責任を任せる。あるいは自分が直接注意をすると、職員組合から抗議を申し込まれる。あるいは事なかれ主義で黙っておる。たまに注意をする先生がおって、厳然とすれば、校長先生の権威とともに生徒は従う。こう四つに分類される。  私は、この事態を幾つか聞いてみて、さもありなんというふうに思ったわけであります。生徒が学校で生きがいさえあれば——先生方は言うのです。大臣、授業だけぎゅうぎゅうやっても、授業に適さない子供はおります。しかし、この子供たちは、体育の時間とかあるいは美術とか別の特徴があります。こういうところにさえ生きがいがあるならば、決して非行には走らないでしょう。だから温かく、彼らに対してそういう彼らの特徴を見た教育をすることが必要ではないでしょうか。  文部省から都道府県に対して通達が出ております。校長あるいは教頭が、管理者が理想を持って教育活動に生かすことが大事だとかいうようなことが出されております。ところが、学校の中において日教組が、教育の方法に干渉するな、こう言ってはね返ってくるとどうすることもできません。これは東京都が多いのです。聞いてみると、それには共産系が多いそうでございますけれども、社会党系はほとんどそういうことをなさらぬと言って感心しておりました。いや、これは東京都の話です。だから、校長先生は授業参観にもなかなか行けないというのですよ。廊下を歩くだけで、教育方法に干渉すると言って押しかけてくるというのです。校長先生は、玄関から校長室と便所以外は歩けない、それが自分の学校の校長さんだと言う人があります。こんなことが日本の国内にあっていいのですか、文部大臣。
  294. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  まず、教育の考え方でありますが、あくまでも愛情を持って、そうして同時に信頼の上に立ち、厳しい姿において教育をしなければならぬということは、先般来、本会議におきましても、総理発言にもございましたとおりであります。  なおまた、学校内の秩序、管理という問題は、あくまでも校長を中心として、そして一体になった組織のもとに真剣に教育に当たらなければならぬ、これは教育のあるべき姿であります。現実の問題としてさようないろいろの事案がありますことも承知をいたしておりますが、ただいま申し上げた方針のもとに厳として教育の任に当たりたい、かように考えております。
  295. 塚本三郎

    塚本委員 方針はいいのです。ところが実施ができないのです。なぜできないのでしょうか。できないようになっていることを大臣、御存じないでしょう。研修会をやって、そして勉強なさった先生方が現場でそれを生かそうとする、学んだことをしようとする。校長先生や教頭さんが陣頭指揮でやろうとすると、組合と摩擦が起こる。だから、一体になろうとしたってできないような状態になっておるのですよ。  特に東京都などはひどい。人事権だってなきにひとしいのですよ。校長先生はこの人をこっちに転任させたい、そうしようとしたってだめなんですよ。美濃部さんのときに都教委といわゆる日教組との間、都教組との間に協定が交わされておるのです。希望と承諾がなければ転任できないというルールができちゃっておるのだから、計画的にやろうとしてみたってできないじゃありませんか。管理者に対して人事権を与えていなくて、どうしてできましょうか。これが実態なんですよ。いや、知事がかわったからいいでしょうと言ったら、まだだめなんです、都教委、ふるっておってようやりません、こう言うのです。文部大臣、どうでしょうか。
  296. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘の数点につきましては、私も資料を持っております。また、これに対しまして、かくあるべしという意見も出してございます。教育委員会を通じましての文部省の指示、指導、あるいはまた、学習指導要領に基づきましての今後の教育態度、措置、こういうふうなものと相まちまして、ただいまの実態は実態、それからまた、あるべき筋は筋でございます。われわれはその目標に向かいまして真剣な努力を今後払わなければならぬ、そうして学校の秩序、管理、教育の大本に向かって正すものは正してまいりたい、かように考えております。
  297. 塚本三郎

    塚本委員 こんな、人事権を放棄したような——大臣、そこにおってください、もうあなただけですから。人事権を放棄したような協定をそのままにしておくこと自身が問題じゃありませんか。転任は希望と承諾がなければならない。それは本人の意思を無視してできませんけれども、それが逆の盾になって人事権が圧殺されているのです。  もっとひどいのは、教頭さんになるときの試験になりますと、単なる試験だけじゃないんですよ。内申書を校長が都教委に出さなければならない。その内申書はどうして出すんだ。先生方の投票によって決めるのです。そうすると、日教組の強いところでは、あいつはペケを出せと言うと、皆ペケになっちゃうのだから、なれないのですよ。だから、勇気を出してやろうとしたって、永久に平の教員で、教頭さんの試験のときに内申書でマル・バツをつけられることになっているのですから、この協定を破棄しなければどうすることもできぬじゃありませんか。だから組合の方針に反することはできない。文部省、田中さん、幾ら厳として厳としてと百回おっしゃってみたって、もうここで全然ストップになっておるから、こういうような形でおりますから当たらずさわらずになってしまう、こういうことになるでしょう。  どこの企業だって、どこの事業体だって、どこの組織だって、その責任者が厳とした人事権を持っておらなければ、それは確立できないんですよ。ところが、上に協定でもって都教委が結び、地方の県教委が結んでおるところはだめなんです。だから、帽子をかぶっていなければ帽子をかぶれと言うと、軍国主義復活だ、こうなるわけです。えりを正せと言うと、軍隊生活は反対だ、こういうふうな形になってくる。一々そういうことでしょう。そして授業参観で監督に行こうとする。新しい先生方は、教育大を出て理想に燃えてやろうとしても、経験がないから、その若い先生方は先輩や教頭さんたちに指導してもらいたい、現場でのそういう勉強を手をとってほしいと思っておるのです。ところが、歩きますると、すぐその後から日教組が出てきて校長室に押しかける。それを子供が見習っておるから、子供たちが教員室に押しかけてたばこを盗んで帰っていく。つるし上げるから先生も次にやられる。因果応報ではございませんか。  この実態をはっきりと改めていくということでなければ問題の解決にはならぬ。だから、ベルが鳴っても教室へ入ってこない。勝手に便所へ行ってしまう。頭もじゃもじゃでも注意もできない。こういうときにきちっと注意をするということ、注意のできるような、そういう教育体制をつくることがあなたたちの仕事なんですよ。こんな通達を、私も持っておりますけれども。通達を何遍出してみたってだめなんです。おっしゃることは書いてあるんですよ。だけれども、やれるようにしてくださいということを言っているのです、先生方だって。これが本当の教育じゃありませんか。全部一斉に点検をなさって、組合がそういうことをおっしゃるならば、待遇改善はお任せします、組合の方の自分の政治活動はその許される範囲でおやりください、しかし生徒を巻き込みなさるな。厳然として日教組と話をなさったら、最近は槙枝さんだって、なかなかりっぱなことをおっしゃっていただけるように変わってきましたから、いままでの、かつての間違っておった美濃部さんの時代のことを、あるいはまた京都における蜷川さんの時代のことを改めてください。それを具体的にこういう条例……(発言する者あり)身に覚えがある人が叫んでおるようでありますけれども、そういうことだと思うのです。厳然としてやれるようになさってください。どうでしょうか。
  298. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまの協定の有無の問題につきましては明確にいたしておりませんので、これは調べてみます。  なおまた、教育の立場にあります者のあるべき姿に対しましては、御趣意の気持ちを体して今後の行政に当たってまいりたい、かように存じております。
  299. 塚本三郎

    塚本委員 具体的にそれはもう手を入れて、そういった話し合いをなさって、そして学校の先生方が本当に生徒と一体になってやっていただくということで、こんな通達だけじゃだめなんです。そうしてやって、安心してお母さん方が、学校へ行っている以上は大丈夫だという形にしていただきたいというふうに強く希望いたしておきます。  次に、教科書の問題。  五十六年度から全国の中学校で使用されることになっている社会科の教科書は、まず、口絵のカラー写真が、はち巻き姿のデモとか石油基地、横田米軍基地、生活危機突破デモ、新幹線反対デモ等、権利の主張と公害反対、基地反対を示す写真で始まっております。ここへ持ってきております。もちろん、私たちもデモを行います。労働組合と一緒にいろんなことを権利主張いたします。それがすべて悪いと言うわけじゃありませんけれども、しかし、これは一番初めのとびらからして、みんな石油基地が悪いようなことに想定されるようになっておるのです。総理、ちょっとごらんください。みんなこういうことなんですよ。  私は、デモを悪いと言っておるわけじゃないのですよ、私たちもやっておるのですから。しかし、再三申し上げておきますけれども、この中を読んでみますと、権利主張だとか戦争反対、それは反対に決まっておりますけれども、いかにもそのことが自衛隊反対につながるような文章にことごとくなってきておるんです。われわれも民主社会主義だから社会主義を非難するつもりはございませんけれども同社会主義だけがユートピアで、資本主義が経済の罪悪のような記述、そう類推させるようなことから、あるいは文部省の手の届かない指導書に至りましては、共産主義がユートピアとまで書いてあるのです。こういうような教科書がいわゆる市場にこれから出回るのです。いままででも出回っておる。これは前のですが、これからみんな出回ってくるのですよ。権利の主張に対して、義務責任は三十分の一から五十分の一しかページ数で載っていないのです。全部データがあります。これが私たちの子供たちのもとに、これから三年間はいわゆる基礎教育としてたたき込まれてまいるのです。これが教科書の実態です。  もう時間がありませんから、最後にまとめてお答えいただきたい。  こういう教科書がどうして採択をされるのか。私も相当の時間をかけて調べてみました。先生方が各区ごとに集まり、そして市ごとで採択をするのです。そのときに日教組の方から指令が飛ぶのです。まず第一に戦争反対、権利主張のデモ、公害反対、福祉増進、こういうものを中心にして、何ページどの本は余分に書いてあるかということでもって優先順位を決めるのです。国家だとか責任であるとか、親に対するいわゆる敬愛だとか、こういうようなものは悪い記事、先ほど申し上げた記事がいい記事というふうに基準を設けて、そしてそれを研修会でもってたたき込むのです。採択されるときにはみんなそうなってくるじゃありませんか。そういう本が出るのです。  そうすると、教科書会社はどういうふうになっていくかといいますと、先生方が使ってくださるんだから、使ってくださるそういう日教組の丸の多い方に偏って、まともと私は言いたいんですが、まともな先生方の執筆者は、みんな教科書会社からお払い箱なんです。そして日教組のいわゆる担当の講師方に執筆を依頼せざるを得なくなる、こういう形で教科書が採択されてくるのですよ。こういう形で子供たちに行っている。  文部大臣、これをお読みになったことがありましょうか。
  300. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 よく存じております。
  301. 塚本三郎

    塚本委員 これをいいと思っておいでになるのですか。ノーマルだと思っておいでになるのですか。
  302. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 私は、先生の御意見と全く同様でございます。いま先生のは、十二分に御調査の上で私にあえて質問をしておられるので、大体私が答弁申し上げることもよくおわかりと存じます。  御案内のとおりに、この法律の規定によりまして、二十三条に基づき当該教科書の問題は採択せられることになっておりまして、都道府県の教育委員会の指導のもとに行われております。  それから同時に、文部省は、自民党その他各方面からのいろいろな御指摘にもよりまして、この偏向教科書という問題につきましては、これからいかにすべきか、さらにまた、教育委員会等に対しまする検定の問題等々もございまして、そうして、あえて教科書の無償給付という今回の問題も、それあるがために特に強調いたした次第でございます。
  303. 塚本三郎

    塚本委員 最後に、教科書はまだ検定がありますから、類推してそうなるようにというふうに、またこれは検定の関門をくぐらなければなりませんが、検定と関係のない、先生方はこう教えるんだよという指導書になりますると、もっとひどくなってくるのです、文部省の手が届かないから。  読んでみましょうか。「ユートピアは政治上の民主主義、経済上の共産主義、及び教育の門戸開放と信教の自由とを説いている。」というところから始まって、「古来の理想社会論はすべて共産主義的経済体制に基づく「欠乏からの自由」と「平等の権利」との要求」こういうふうにしてやっておるわけなんです。指導書で、そういうふうにしてこれを教えなさい、こう言っているのです。これは文部省の手の届かないところなんです。  世間では言っているんですよ。教科書は共産主義の先生方がおつくりになるのです、教えるのは社会主義の先生方が教えるのです、金を出して一生懸命に配るのは自民党の先生方がやられるんです。私は先ほど申し上げた。やはり親に対する孝行ということをなさる親のあるところは、子供もまた親に対して暴力はふるわないと思うのです。そういう意味で、いわゆるじいちゃん、ばあちゃんと親と子供との三家族が住めるような、これはわれら政治家の務めだと思う。そうして受験、受験でいく、いわゆる小学校から中学、高校、大挙と全部——もちろん、受け入れる社会のいわゆる学歴偏重が悪いと思いますが、それはいまさわることはできない日本社会ですから、どうぞひとつこの際は、制度そのものも、せめて一番子供の成長期の中学と高校の間だけでも受験をなくすように一本にして、五年がいいか六年がいいか、あるいは子供の成長が早くなったから六年で中学へ上げた方がいいという説もあります。二つの制度、佐々木委員長が本会議で提案いたしました制度の検討を、この二つは政治の舞台として十分、これから戦後三十五年たった日本の新しい時代をつくるために考えていただきたい。そうして学校の中の問題は文部大臣直接に手を出していただき、そうして教科書の問題は国民の問題として私は皆様方に御一読いただいて、自分たちが自分の中学生の子供ぐらいには公民教育ぐらい一遍教えてやろうじゃないか、国民が親の立場でもう一遍将来の日本のために手を加えていただきたい、そういうことを提言いたします。  この私の提言に対して文部大臣と鈴木総理大臣との御意見を伺って、私の質問を終わります。
  304. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御高見に対しましては深く傾聴いたし、また、今後の文教の責任者といたしましてお話の意を体して指導してまいりたい、かように考えております。
  305. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 最近多発しております学校内暴力、しかもそれが十四、五歳の少年の年齢層に多いということを深刻に私は受けとめておるわけでございます。これは小学校時代からの教育にもやはり根差すものだ、こう思っておりますが、家庭、社会、学校、これが三位一体になってこの児童生徒の教育に真剣に取り組んでいかなければならない、このように考えます。  そういう際におきまして、この制度の問題あるいはいま御指摘になりました教科書の問題あるいは指導書の問題、こういう問題は児童生徒に大きな影響を及ぼす問題でございますから、政府としても真剣にこれを検討し、取り組んでまいります。
  306. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  307. 小山長規

    小山委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  308. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党を代表して、総理及び関係閣僚に内外の政策の問題について質問を行いたいと思いますが、外交問題、安全保障の問題、経済と国民生活の問題、そして国民の安全にとって重大な震災問題について、この順序で伺いたいと思います。  まず最初に、外交問題でありますが、政府は二月七日に北方領土の日を設定いたしました。  御承知のように、北方に関する日本の境界が決められたのは幕末から明治にかけてであります。幕末に、一八五五年二月七日、下田で安政条約が結ばれまして、このときには樺太の境界が決められないまま、樺太は日露両国の共同の地とされて、択捉、国後までが日本の領土とされました。つまり日露の境界は過渡的でした。その二十年後の明治八年、一八七五年五月七日、樺太・千島交換条約で初めて両国間の国境が最終的に確定したわけであります。  政府は外交上のいろいろなやり方として、領土の問題でいろんな段階的なやり方をとる。これはそれぞれなりに理由があると思います。しかし、領土問題で記念日を設定するというのは、これは国民的な領土要求の原点をそこで定めるという意味があろうかと思います。そのときに政府が、日露両国間で最終的に国境を確定した一八七五年五月七日の条約を記念日にしないで、いわば一番最初に、まだ過渡的に決められた一八五五年二月七日の条約設定の日を記念日にされたのはどういう考えからなのか。それは北千島は放棄するということを国民的な立場の原点にしてしまうということなのか。そのことをまず最初に伺いたいと思うのであります。
  309. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  御案内のように、隣国であるソ連とわれわれ日本とは友好関係、平和条約の締結というものをわれわれ国家としては求めていかなければならない。しかし、その前提としていわゆる北方領土の領有権問題、この領土の領有権につきましては、いま先生も御指摘のように、わが国古来の領土でございますけれども、一九四五年の八月八日に、日ソ不可侵条約をソビエトが一方的に破棄をして、九月三日にこの北方領土の四島を占領完了した、こういうふうな歴史的な経過がございますから、私どもといたしましては、われわれがサンフランシスコ平和条約でこの北千島のクリール諸島を放棄する、南樺太も放棄するということを宣言しておる、こういうことから、われわれ民族の歴史を振り返ってみると、いま御指摘のように、一八五五年二月七日というものがロシアと日本の間で平和裏に、しかも両国がお互いに領有権を尊重して、この得撫島以北はロシア領、択捉以南は日本領だということを条約として締結した日でございますから、この日をわれわれとしてはこの北方領土の日ということに決めさしていただく、こういうことで一月六日の初閣議で決定したようなことでございますが、これにつきましては、政府が決めるという経過の中で、昨年の八月には北海道・東北国民参加総決起大会、あるいは十月二十五日の北方領土返還を要求する国民大会において北方領土の日をぜひ決めなさい、こういう提言がございました。しかも労働団体からございまして、これを受けてどうするかということで、私どもといたしましては、有識者の懇談会で御意見をちょうだいし、その中で最も平和的な日ということで二月七日を決定さしていただいたような次第でございます。
  310. 不破哲三

    不破委員 しかし、一八七五年の五月七日条約も平和的に結ばれたものじゃないですか。
  311. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 不破さんおっしゃるように、一八五五年の安政条約も、一八七五年、明治八年ですか、樺太・千島交換条約も、平和裏に話し合って決めた条約だとわれわれは思っております。きょうの新聞でしたか、一部の新聞に、ソ連側があれば戦争後の疲弊したときに日本に圧迫されてつくった条約だというようなことを書いてありました。私はそうは思っていない。両方とも平和条約だ、こういうふうに思っております。  それで、いま総務長官からお答えがありましたように、サンフランシスコ条約では、いわゆる千島列島を放棄するということにしたわけでございます。でございますので、日本としましては、法律的に、条約的に固有の領土、それは一八五五年の安政条約ではっきり千島の択捉と得撫の間に国境があると決まったわけでございますので、その日にするのが適当だ。千島列島はサンフランシスコ条約で放棄しているという関係で、前の一八五五年の条約で決めた四島が日本の固有の領土であるということでこれは決まったというふうに、われわれはそれを選択したということでございます。
  312. 不破哲三

    不破委員 サンフランシスコ条約に対する態度の問題は後で議論したいと思うのですけれども、そのときどきの政府がサ条約に対してどういう態度をとるかというのは、これは一つの問題ですね。しかし、これは国民的な記念日の設定でしょう。ですから、これは外交上のいわばそのときどきの方針上の問題でなしに、領土問題に対して日本国民としてどういう態度をとるのかという基本点を決めるものだと思うのです。ですから、私たちはこの問題を当然考えるならば、安政条約もそれから一八七五年条約も、これは平和的に結ばれたものだ、そしてしかも、日本が近代国家として一応足を踏み出して、ロシアとの間に国境を確定した最終結論が一八七五年五月七日の条約ですね。だから、われわれが国民的に領土問題を考えるならば、当然そこを出発点にすべきだ。私どもは千島の日として五月七日を提案したわけですけれども、しかし、呼び方はいかにせよ、領土問題として考えるならば、当然、平和的に日本がロシアとの話し合いによって最終確定した全千島ということを原点に置くべきだ。ところが、その国民的な原点の設定をわざわざ二月七日にするということは、もう将来にわたって日本国民として得撫以北の北千島は放棄するという宣言にならざるを得ないと思うのです。その点について政府見解をお伺いしたわけですけれども、そうすると、結局歴史はそうなんだが、サンフランシスコ条約で千島列島の放棄を宣言してしまったから、歴史的には全千島が日本の領土として確定しているんだが、サ条約に合わせて今度の記念日を設定した、こう考えていいわけですか。
  313. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いまお答えしましたように、日本のいわゆる固有の領土ということではっきりしたのが一八五五年の安政条約で、樺太はおっしゃるように確かに雑居、混在するということで決まりませんでしたが、千島ははっきりと得撫と択提の間に国境があるということを安政条約で、これは本当に平和裏に決めて、固有の領土は歯舞群島、色丹、国後、択捉ということを一八五五年にもう決めているわけでございます。でございますので、その後の領土返還の運動も、われわれは固有の領土ということで四島一括返還ということをやっておるわけでございまして、それとまさに合う条約の日が一八五五年二月七日でございますのでこれを選んだということは、いま総務長官がお答えしたとおりでございます。
  314. 不破哲三

    不破委員 そうすると、北千島はもう領土返還運動の対象にはしないということですね。
  315. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 千島全島について返還すべきといういろいろ御意見もあることは私は知っておりますが、これは日本がサンフランシスコ条約で千島列島は放棄しますということをはっきり言ったわけでございます。これは日本が一方的にそれを取り消すとかいうような種類のものではございませんので、やはり日本としては固有の領土としてひとつ四島を返還してもらいたいというのが日本の態度でございます。
  316. 不破哲三

    不破委員 私は、サンフランシスコ条約の問題について言えば、たとえ一たん条約で宣言しても、これに間違いがあることがわかれば、これを変更するのは当然だと思うのですね。たとえば、先年ヨーロッパでヘルシンキ会議が行われて欧州の安全保障についての文書が採択されました。ヨーロッパというのは、御承知のように、第二次世界大戦の戦後処理というのは各国間の平和条約の中で全部済んでいるところですね。つまりヨーロッパの戦後の国境というのは、日本のように日ソ間に平和条約がないとかというところはなしで、全部済んでいるわけです。済んでいるところでも、これは平和的手段によって変更の余地があるんだ、変更はあり得るんだということをわざわざ安全保障会議の文書で確認をしているわけですね。日本が占領下にサンフランシスコ条約を結ばされた。そのときにアメリカはヤルタ協定に縛られていたから日本に千島列島の放棄条件を、サ条約を押しつけたということはあったでしょう。それに反対できなかったという当時の事情はあったかもしれません。しかし、日本が敗戦のときに受諾したのはポツダム宣言なんですね。そのポツダム宣言にはカイロ宣言の条項は遵守されると書いてあるわけで、そのカイロ宣言というのは、今度の戦争では暴力によって略奪したところ以外は取り上げないのだ、だれも領土を拡大しないのだということをお互いに宣言しているわけですから、私たちは、もう戦後三十六年たって、一体あのときの戦後処理がサンフランシスコの平和条約を含めて国際的な道理に合っているのかどうかということを見きわめて対処する時期に来ていると思うのです。ところが、その点で言えば、明らかにあのときのサンフランシスコ条約の領土条項で、朝鮮の問題とか台湾の問題とか樺太の問題とか、こういう問題は日本が暴力によって略取した地域ということに当てはまりますから、これを日本が独立を認めたり、中国に返還したりするのは道理に合いますけれども、千島のように、日本とロシアの間で平和的に日本が取得したものを放棄させられた、これについて、いまの日本政府が今日の政治態度としてサ条約を守るというのは一つ方針かもしれないけれども、国民的にこれを将来にわたって遵守するということを宣言する必要はさらさらない。その点では、やはり明らかにされた国際的な道理に従って、サンフランシスコ条約の千島放棄条項の問題も当然再検討すべきだ。しかし、そこまでいかないにしても、国民的な運動の原点を設定するんだったら、当然、近代国家に踏み出した日本とロシアの間で一八七五年に最終的な国境になったところを運動の原点にするように、記念日を設定すべきだ、こういうように考えるのですが、いかがでしょうか。
  317. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先生の御意見でございますが、われわれとしましては、固有の領土の返還ということを日本の立場として主張している。もう一つは、先生もおっしゃいましたサンフランシスコ条約で世界に、日本はあの戦争の敗戦の結果、こういうものは放棄しますということをはっきり日本として宣言したわけでございますから、これはこれで日本としての信頼は守る。返してもらいたいというのは、前から問題になっております固有の領土ということを、これは国民の総意としてやろうではないかということで、日が二月七日と決まった。それは一八五五年で平和裏に決まった国境である、問題なく最初平和裏に決まったのでございまして、そこへ根拠を置いたというのがわれわれの考え方でございます。
  318. 不破哲三

    不破委員 四島返還論についても、私は、サンフランシスコ条約に手を縛られたといいますか、このサ条約は正しいのだ、これはもう有効なんだという立場で日本が対ソ外交に当たっていると、本格的な交渉ができないということを本当に痛感するのです。たとえば、率直に伺いますけれども、サンフランシスコの講和会議であの条約が結ばれたとき、それからそれが日本の国会で批准されたとき、あの放棄した千島列島についての日本側の解釈はどういう解釈でしたか。
  319. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 あのときの全権の吉田さんは、はっきり四島は日本の固有のものだということを言っておられます。でございますから、われわれは当然、全権がそういうことを言われたのでございますので、それが正しい日本の主張だというふうに考えております。
  320. 不破哲三

    不破委員 あのときに、国会で問題になったのですね、放棄した千島列島はどの範囲かと。政府はどういう答弁をされましたか。
  321. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 条約局長の西村さんが、前段と後段でちょっと相矛盾するように見える答弁をされたことはございます。そのほかの答弁は、これは私ども従来一貫して、やはり四島が固有のもので、千島列島というのは四島を含まないという解釈でおるわけでございます。
  322. 不破哲三

    不破委員 外務大臣がそういうことをよくお知りにならないのは困るのですよ。ぼくは初めて国会に出てきたときに、亡くなった愛知さんが外務大臣でしたが、沖繩北方領土特別委員会で、一体、日本政府はいつから四島は千島に含まないという解釈に変わったんだという質問をしたことがありましたが、そのときは率直に言われましたよ。  実際に、サンフランシスコの講和会議吉田全権が話した話というのはこうですよ。日本開国の当時、千島南部の二島、択捉、国後両島が日本領であることについてはロシアも異をはさまなかった。「千島南部の二島」とはっきり言っているのですよ、あの講和会議で。それから「得撫以北の北千島諸島」というように、得撫は北千島で、択捉、国後は千島南部なんだということをちゃんと言って、しかし、この南千島、北千島を放棄させられるんだが、これは歴史的に言えば不当に取ったものじゃないのだという発言をされたのですね。  ですから、この条約を批准したときの国会では、何遍も何遍も千島列島の範囲ということが問題になって、それで、いま政府が問題にしているような交換条約では北だけを言っているじゃないかという質問をした議員までいて、それに対して条約局長や当時の外務次官が、この条約に千島とあるのは北千島及び南千島と解釈いたします、これが政府の確認ですと繰り返し繰り返し答弁しているのです。もしお知りの方がいたら、その解釈がいつから変わったのかということを御存じだったら、御答弁願いたいのです。
  323. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま不破委員御指摘のように、サンフランシスコ平和条約締結の後に国会において御審議が行われました際に、当時の西村条約局長が北千島、南千島を含むものであるということを言っておられますけれども、直ちにその後におきまして、しかし、南と北とでは、歴史的に見て全くその立場が違うことは、すでに吉田全権がサンフランシスコ会議の演説において明らかにされたとおりである。「あの見解日本政府としてもまた今後とも堅持して行く方針であるということは、たびたびこの国会において総理から御答弁があった通りであります。」という答弁をしておられるわけでございます。この点は確かに明確を欠く答弁でございまして、そのことは、私どもは当時におきまして、日本が置かれた国際環境及び各国が批准をするかどうかわからないというサンフランシスコ平和条約によってようやく日本が独立を回復しようとするときに、そのような微妙な国際情勢にあったということも含めてはっきりとした回答がなされなかったというふうに推察をしているわけでございますが、しかし、その後におきまして、やはり明確さを欠くことではいかぬということでございまして、昭和三十一年に当時の森下外務政務次官が国会におきまして、これにつきまして統一的な解釈というものを明らかにいたした次第でございます。  それによりますと、これは長いものですから、読み上げませんけれども、「御承知のように国後、択捉両島の日本領土であることは、一八五五年、安政元年下田条約において、」調印されました「日本国とロシヤ国通好条約によって露国からも確認されており、自来両島に対しましては何ら領土的変更が加えられることなく終戦時に至っております。一八七五年、明治八年の樺太・千島交換条約においても、両島は交換の対象たる千島として取り扱われなかったのであります。」ということを言っておりまして、日本のサンフランシスコ平和条約第二条(c)項における「千島列島」の解釈としては、歯舞、色丹はもとより、国後、択捉は含まないものであるということを明らかにした次第でございます。
  324. 不破哲三

    不破委員 私、さっき言いましたが、愛知さんに伺いましたら、愛知さんは、はっきり四年後に変わったと言いました。一九五一年の国会では全千島と言って答弁した。一九五五年に変更したんだ。愛知さんの方が正直でしたね。  それで、いま話があった西村答弁解釈は、これは歴史的な事情が違う、しかし放棄させられたのは全千島だ、これは一貫しているのですよ。国会の議事録をごらんなさい。  それで、私、ここに一九五五年から日ソ交渉に当たった全権の松本俊一さんの回想録を持っていますけれども、この中で、松本さんが一九五五年の六月から日ソ交渉に当たって、それで始めるときには、もう全千島を放棄したつもりで交渉している。ところがその夏になって、いきなり解釈が変わったという電報を東京から受け取って、びっくりして、弱ったという話を書いていますね。これが愛知さんが言う一九五五年に変わったという話なんですよ。だから、もう日ソ交渉をずっと平和条約を始めている最中に急に日本解釈が変わった。それで、変わったわけで、これは平和条約で言われた条項の解釈ですから、その当時日本だけが勝手に変えたのでは、これはソ連に対しても主張の妥当性がないと思ったのでしょう、当時、日本政府からサンフランシスコ会議に参加したアメリカとそれからフランスとイギリスに対して、この放棄した千島列島の範囲はどう解釈すべきか、日本は択捉、国後は入っていないと解釈するが、それで支持してもらえますかという照会をしたはずですね。そのときに各国の返事はどうでしたか。
  325. 武藤利昭

    武藤政府委員 お答えいたします。  当時、ただいま御指摘がございましたとおり、主要連合国でございますアメリカ、イギリス、フランス等に対しまして、千島の範囲に関するそれぞれの見解を聴取したことがございます。この問題に関します米国の回答、これはもう繰り返し御報告申し上げているところでございますので御承知のとおりでございますが、要約して申しますと、「サン・フランシスコ平和条約——この条約はソ連邦が署名を拒否したから同国に対してはなんらの権利を付与するものではないが——は、日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、この問題は、サン・フランシスコ会議で米国代表が述べたとおり、同条約とは別個の国際的解決手段に付せられるべきものとして残されている。」云々と書いてございました後に、「米国は、歴史上の事実を注意深く検討した結果、エトロフ、クナシリ両島は(北海道の一部たるハボマイ諸島及びシコタン島とともに)常に固有の日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本国の主権下にあるものとして認められなければならないものであるとの結論に到達した。」という趣旨の回答がアメリカから寄せられているわけでございます。  イギリス、フランスにつきましては、当時も国会で御質問をいただいたわけでございますが、当時お答え申し上げましたとおり、この英仏の回答を公にするということにつきまして先方の了承がとられ得ませんでしたので、御報告は差し控えている次第でございます。
  326. 不破哲三

    不破委員 アメリカは相談してやっているのですから支持してくれた、ところが、松本さんは当時全権として、当然当事者だから知っているわけですよ、イギリスやフランスの回答も、イギリスは支持してくれなかった。それからフランスは、サンフランシスコ会議の議事録について見ると、特に日本代表が国後、択捉を南千島として言及しているところにわれわれは注意を喚起する、吉田全権が択捉、国後を千島南部として挙げた、わざわざフランスの方はそういう回答をよこしているのですね。だから、私は前のことを言いますと、愛知さんに、一体、世界の重要な条約でそれを結んだとき、国会で批准したときに一定の解釈があって、四年もたってから解釈が変わりましたと言っているような条約が世界にあるかと言ったら、寡聞ながら知りませんと答弁がありましたが、まさにそういうことで、五一年に一遍そういうことを内外に日本政府自身が宣言して結んだ条約を四年たってから変えだというのが真相なんです。変えたときに三国に対して照会したが、支持してくれたのはアメリカだけだった。米英仏の中でですよ。イギリスもフランスも支持してくれなかった。  私は、四島返還と言いますけれども、サ条約に縛られている限り、日本政府がソ連に対して要求できる国際法上の立場というのはこういう薄弱なものだということをやはり自民党政府はよく知るべきだと思うのですよ。いわばアメリカと一緒の同盟国で、仲間内だったイギリスやフランスからさえも支持されなかった主張を、条約を結んでから四年たっていきなり持ち出して、それで通してきている。私は率直に言いまして、この二十年間、千島問題の交渉、領土問題の交渉がさっぱり進まぬ、ソ連と接触するたびにわれわれはあそこに権利を持っていますよと一応言ってくるだけで、何ら前進を見ない根底には、日本側の国際法上の立場がそういう薄弱なところにある。  さっき共産党、交渉したらどうかと不規則発言で言われましたが、私たちはサ条約に縛られませんから、五九年、いまから二十二年前に官本委員長がソ連に行ったときにも、南千島の返還問題を堂々と交渉して、将来の可能性を明らかにしてきました。おととしモスクワに委員長が行ったときにも、このサ条約に縛られない立場でこの一八七五年条約を起点にして、それで戦後の処理がいかに間違っていたかということも明らかにして交渉してきました。そういう立場に日本の外交姿勢が立たない限り、領土問題というのは、一応挙げてはみるけれども、実際の前進なしというふうにならざるを得ない。  私はこの点について、もうこの条約吉田さんが結んでからでも三十年たっているのですから、いつまでも間違った条約に拘束されないで、道理と日本国民の利益に立った場合、領土問題については、原点から言えばこうなんだという立場を内外に明らかにして当然交渉すべきだ、そういうふうに考えますが、総理見解を伺いたいと思うのです。
  327. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま御質問ありましたが、先生おっしゃるように、御承知のとおり昭和三十一年、一九五六年日ソ共同宣言をやったわけでございます。あのときには領土問題というものをはっきり認めて、歯舞群島、色丹については平和条約があれば引き渡す、そしていま先生のお挙げになった松本・グロムイコ交換公文でその後引き続き領土問題を含めて平和条約の交渉をするという交換公文の効果があるわけでございます。でございますから、ソ連と日本との間ではそういう領土問題が懸案になっているのだということは、はっきりあのときの日ソ共同宣言にあるということも一つの根拠にして、われわれはいま考えているわけでございます。
  328. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国固有の領土である北方四島に対する歴史的条約上の見解、これは外務大臣からるる御説明申し上げたとおりでございます。政府は、その方針を堅持して当たってまいります。
  329. 不破哲三

    不破委員 いまのようなことで、私は領土問題の交渉に対する政府の態度といいますか立場の立脚点といいますか、それは非常に脆弱だ、弱いということを感じるのですけれども、これはこれでまた今後も議論を続ける必要がありますけれども、その一方で、軍事問題に関しては非常に冒険的といいますか、そういう問題がたくさんある。特にその点から、私は次の問題として安保の問題、安全保障の問題に入りたいと思うのです。  いま、日本の安全保障上の立場を考えますと、どうしても二つの面から考えざるを得ないわけです。一つは、在日米軍基地が一体どんな役割りをしようとしているのかという問題、もう一つは、それと連動する自衛隊が、名前は自衛、防衛なんだが、実際にそういう任務だけに従事しているのかという問題、これが検討されなければいけないと思うのですが、まず最初の問題として、私は、参議院の本会議で宮本委員長からも提起いたしました岩国の基地の問題について質問したいと思うのです。  それで、岩国の基地の問題は、実はちょうど二年前のこの予算委員会で私が質問したことがあります。きょうも資料としてお配りしましたが、その三ページ目から後が当時の資料ですけれども、私ども、岩国にあるアメリカの海兵隊の第三海兵師団の岩国の部隊ですけれども、核兵器の要員名簿というのを当時入手しました。  それで、アメリカの軍隊では、核兵器というのは扱い方が非常に厳重になっていまして、核兵器に接近するポストにある人、これは人間としても非常に厳重に管理されるわけです、途中で頭がおかしくなってボタンでも押されたらかなわぬとかという問題があるわけですから。それで軍の職務をいろいろに分けて、国防省の定義によりますと、核兵器を爆発させる技術的知識を持ち、引き金を引くことが可能な程度にまで核兵器に物理的に接近している職務、つまり核兵器を爆発させる知識もあれば、引き金を引く場所にもあるというようなポストですね。これは最重要ポストとして、クリティカル・ポジションというふうにしている。それから、指示があればそういうところまで行ける職務とか、三段階に分けて管理しているわけです。全部核兵器要員です。  それで、岩国の名簿を調べてみますと、この核兵器要員が、何と岩国の基地とそれから普天間の分隊ですが、合わせて二百五十八名の核兵器要員がいた。その中で七十四名は、核兵器を爆発させる知識を持ち、引き金を引くことができるところまで接近するポストだ、お配りしてある資料の下にナンバーリングがスタンプでありますが、四ページ目からそのリストです。七六年現在の部隊名とそれからメンバーの名前まで全部あります。これを手に入れまして、これはまさにわれわれが心配していたとおりの核兵器部隊だ。そのときに、一番濃密にそういう核兵器要員が配置されているのが、今回問題にしたMWWUという部隊なんです。  それで、これは今回の米軍の発表でも、定員いっぱい入れて四十九名という部隊ですけれども、そのうち三十七名が核兵器要員です、当時の調査でも。しかも二十三名が一番危険なクリティカル・ポジションだということもはっきりした。それで、岩国にはたくさん部隊があるのですけれども、大体、憲兵というのは核兵器要員に全くされていないのですが、このMWWUという兵器部隊だけは、三人の憲兵まで全部核兵器要員です。そういうことを指摘して、当時政府に調査方を求めました。政府は、あれはただの整備部隊だということで、結局非核部隊だという答弁を変えなかったわけです。  ところが、今度は資料の一番表を見ていただきたいのですが、去年のアメリカの上院の軍事委員会でナンという上院議員が、過去五年及び今後五年の戦域核戦力——アメリカでは核戦力を戦略核戦力と、シアターと言いますけれども戦域核戦力に厳重に区分しています。戦略核というのは、ICRMとか米ソの全面対決を予想した部隊です。戦域核戦力というのはいわば戦術核兵器で、もっと機動性があって、いざというときにはすぐ飛び出す部隊ですね。この戦域核戦力について、どれだけの兵員がいるのかを示せという質問がナンという上院議員からあった。それに対して当時のコマーという国防次官が、陸軍、海軍、空軍、海兵隊にわたって詳しく証言しているわけですが、この海兵隊の中に、岩国のMWWUが出てきたわけですね。  これは一ページに翻訳がありますし、二ページに原文がありますから、よく見ていただきたいのですが、このコマー証言というのは非常に大事で、たとえば彼は一番最後の三行で、核兵器にも使える、通常兵器にも使える、そういう両用部隊はいっぱいあるが、それは発表しなかったとわざわざ書いているわけです。だから岩国の問題でも、あそこにある攻撃機部隊とかそういう部隊は普通の爆弾も落とせる部隊ですから、これは両用部隊として、入れてないわけですね。核兵器だけを専門に扱う専用部隊だけを挙げている。これが陸戦用兵器体系として百五十五ミリ原子砲弾、八インチ原子砲弾、中規模並びに特殊核地雷、これを扱う部隊ですが、これは核弾薬小隊、NOPと呼ばれるものが三つある。これは専用部隊だ。  それから航空機に関して言うと、B43、B57、B61——B61アメリカの最新鋭の核爆弾ですが、この三つの爆弾を扱うものとして三個の海兵航空団兵器部隊がある。この海兵航空団兵器部隊というのが、MWWUという略語であらわされているわけですね。しかも、これは「航空部隊用の空中投下の化学兵器と核兵器の両方を装備している」部隊だ、そこまでここに書いているわけです。アメリカの海兵隊というのは三個師団あるわけですね。一と二がアメリカの本国にあって、三が沖繩と岩国にあるわけです。ですから、NOPの三つもMWWUの三つも、これはそれぞれの師団に配属されているわけですけれども、それがまさにこの岩国にある。この三つ以外には、MWWUの配置はないわけですね。  二年前に私が提起をして、当時の政府の閣僚の皆さんは、それは訓練だけだとか通常兵器を扱っているんだとか言われたけれども、それがまさに核専用部隊だということをアメリカの国防次官が去年の三月に答弁している。この議事録は昨年十月に公表されましたから、私ここに持ってきておりますけれども、こういう議事録の中で明確に証言している。  これだけ事実が明らかになった以上、事前協議の相談がないからないはずだ、はずだ、はずだの議論では、もう国民は納得しないと私は思うのです。政府が明確に調査するなり、それからこういう疑惑、こういう証言のある部隊については撤去を要求するなり、きっぱりした態度をとるべき段階に来ていると思うのですが、答弁を求めたいと思います。
  330. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 この間、参議院の本会議で宮本さんから御質問がありまして、過去にも何回も同じような御質問があったわけでございますが、せっかく御質問でございますからひとつ照会をして調査をしてみますが、私の確信は変わりません、こういうような御答弁をしたわけでございますが、その後アメリカに調査をして返事が来ております。いま政府委員の方から御答弁を申し上げます。
  331. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま大臣からお話のございましたアメリカ側の回答を申し上げます。   海兵航空団第一武器隊(MWWU−1)は、岩国に置かれているが、右部隊は核又は化学兵器の貯蔵、搭載の責任を有しない。海兵航空団武器隊とは、化学ないし核兵器を整備する能力を有しているものである。更に、この武器隊は、核兵器の取扱いに関する一般的な訓練も行っている。   核の時代において、多くの米軍の部隊は右のような能力を有しているが、能力を有することと実際に核兵器が存在することとは全く別個の問題である。如何なる場所に核兵器が存在するかしないかとの点についての米国の立場、及び米国は日米安保条約及び関連取極の下における日本に対する誓約を忠実に守って来ているとの米国の声明は良く知られているところである。   岩国に海兵航空団第一武器隊が存在することは、右の米国の立場及び声明に何ら反するものではない。 というのがアメリカ側の回答でございます。
  332. 不破哲三

    不破委員 私は、これは一片の紙切れで信用できる性質の問題ではないと思うのですよ。さっき私は、コマー証言というのは戦域核戦力の配置についての説明だということを言いましたが、戦域核戦力というのは、アメリカの核戦力の中でも一番緊急性の高い部隊なんですね。  たとえば、ここに七九年度の国防報告を私は持ってきておりますけれども、「戦域核戦力が抑止力として信頼されるためには、」「緊要地域に前方配備する必要」がある。一番危ないところの最前線に前方配備する必要があると言われているわけですね。海兵師団、海兵隊の三つのMWWUの中で前方配備されているのはこの岩国だけですよ。あとはノースカロライナのチェリーポイントとそれからアリゾナのユマにあるわけですから。ただ一つ、前方配備されているアメリカの海兵隊の戦域核戦力が、この岩国にあるわけですね。  しかも、この戦域核戦力は「高度の即応態勢に維持され、一刻の猶予も許されぬ目標を攻撃できるものでなければならない。」戦略核と違って戦域核戦力というのは、奇襲攻撃とか一たん有事の際に直ちに行動できるようにしなければいけませんから、これは核を管理する部隊だけ置いておいて、そして核そのものは遠くアメリカの本国に置いてさあとなったら運んでくるような、そういう部隊じゃないのですよ、戦域核戦力というのは。もう一たん緩急あれば、それこそ直ちに出撃できる。別の国防報告では、戦略核戦力が動く前に直ちに発動できるところに値打ちがあると言っているわけですね。  それから、もう一つ大事なところを読みましょう。この戦域核戦力を配置されているところは非常に危険だということを国防報告は言っているのです。相手にとっても非常に危険な目標になる。だから何か奇襲攻撃されるとかそういう攻撃を受ける危険、警戒警報が出る。ほかの場合と違って「戦域配備の核戦力に関する限り」攻撃されるという予報期間というのは非常に短くならざるを得ない。だから、生き残るためにそういう警報には依存できない。これから生き残ろうと思ったら、第二撃を別に用意しなければいかぬ。「人口の密集した陸地に信頼できる第二撃戦力を配置する問題は厳しい」問題である。そういうことまで国防報告の中で検討されている第一線の核部隊が戦域核戦力です。  その戦域核戦力の専用で海兵隊に何があるかと国防次官が問われて——陸戦用NOPというのは大砲で撃つ核砲弾だとかそれから核地雷ですね、沖繩の海兵隊がそういうものを持っているのじゃないかという問題を私ども前に提起したことがありますけれども、そのいわゆるNOPの部隊が三つある、それからMWWUという部隊が三つあって、これがアメリカの海兵隊の攻撃機に、化学兵器と核爆弾を、核爆弾の三つの名前まで挙げて、供給する任務を果たしているのだ、そこまで具体的に国防次官が言っているわけですから、当然日本政府は、国防次官の証言が正確なのかどうか、それともそれが偽証に値するような誤った発言だったのか、いま政府がもらってきた紙切れの方が本当なのか、立入調査して真相を明らかにする義務がある。  大体、いままでアメリカの基地のために、条約上必要がないお金まで思いやり予算といってつぎ込んでいる政府でしょう。岩国の米軍基地に対してだって、これまでの七三年以来の累計をしてみると、日本政府が八十六億を超える国費を支出しているのですよ。そういうことまでやっていながら、国民の前にこんなに疑惑があるのに、一片懐紙切れだけでこの疑惑を晴らそう、立入調査もしない、そういう態度では、私は、特に現場に基地を抱えている山口県やその近くにある広島県の皆さんを初め日本国民の前で、政府責任ある態度と言うわけにいかぬと思うのですが、明確な答弁を求めます。
  333. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いまいろいろ御質問いただいたのでございますが、従来もそうでございますが、核兵器につきましては持ち込み、これはもう厳に事前協議の対象になる。いかなる場合も、日本ではそれはノーということを常に御説明申し上げているわけでございます。  そして、日米間の安保条約の運用というものは、これはお互いの信頼関係でございまして、相手を信頼するということでなければ成り立たぬ条約でございますので、われわれとしましては相手を信頼するということで、いままでも立入検査でございますとか、そういうことは一切いたしてはおらぬ。これは相手に、いま先生のおっしゃったようなことはすぐに照会する。こういう問題が出ておる、これはどうかということで照会をするということをすぐに今度もやったわけでございまして、いまああいう回答をもらったということでございまして、われわれとしましては、お互いの信頼関係であの回答をそのまま信頼するというのが態度でございます。
  334. 不破哲三

    不破委員 信頼という話では、私は苦い経験があるんですよ。  沖繩復帰前の沖繩国会で、米軍の占領中に核模擬爆弾の核投下訓練が行われたという問題を私はここで何遍も提起しました。そのときに佐藤内閣——佐藤首相、福田外相時代だと思いますけれども、沖繩が本土に復帰したら日本の領域の中で核投下訓練なんかはやらないでくれ、そういう問題を取り上げる用意があるかと言ったら、そのときに総理も外相も、絶対やらせないように米軍に申し入れる、やらせませんと約束しました。もしそれで断られたらどうする気だと言ったら、そんなことは日米両国の信頼関係であり得ないことです、断られることを考えること自体が信頼を傷つけるんだ、そういう答弁がありました。しかし、そのときみごとに断られて、沖繩が日本に復帰してからも模擬爆弾による核投下訓練が依然続いているじゃありませんか。信頼が覆されるような事態が目の前にあっても、私どもは信頼しているんだからそんなことはなかったことにしましょうという態度であるとすれば、これは信頼とかなんとかというのではなくて、追従以外の何物でもないと思うのです。岩国の問題はこれぐらい重大になっているんですから、これは政府が明確な立入検査をして、そこにないことを確認すべきだ。  特に私、もう一つ申し上げますけれども、アメリカでは、そういう核戦力を人口の稠密な地帯に置かないことに非常に配慮しているんですよ。第一師団と第二師団は、これはいわば本国の予備部隊です。いざとなれば出ていく部隊です。それでもそれが置かれているノースカロライナ州チエリーポイントといいますと、市の人口は一・二万、州都のローリーというのは十二万ですが、二百キロの距離があります。アリゾナ州のユマに至っては市の人口二・九万、州都のフェニックスは五十八万の町ですが、二百五十キロの距離があります。非常に辺境の地ですね。ところが岩国は、岩国自体が十一万の都市であるばかりか、わずか三十五キロのところに今度第十番目の政令都市になった広島を抱えているわけでしょう。被爆都市の広島をわずか三十五キロの先に抱えた山陽道の人口密集地にMWWU、それによって核兵器の供給を受けると見られる攻撃機部隊が現に存在して天下に明らかになっている。この事態を私は一刻も猶予、放置するわけにいかないと思うので、厳重に政府が、政府自身の責任で、ここに核はありませんということを国会と国民の前に言えるところまで、責任ある調査をしてもらいたい。私たちはもちろん米軍にも申し入れ、可能な調査を行いますが、これは野党がやる調査でなしに、やはり責任ある政府がやるべき調査であります。明確な答弁を求めます。
  335. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 責任ということをおっしゃいましたが、いま私がお答えしたのはこれは政府責任でございますから、その答えについては政府がはっきり責任を持つということでやらなければいかぬ。先生のおっしゃるとおりでございます。
  336. 不破哲三

    不破委員 次の問題に移りたいと思いますけれども、私は、いまの岩国の核問題というのは、日米安保条約、日米軍事同盟のもとに置かれている日本の立場を象徴していると思うのです、日本国民には、防衛のため防衛のためと言われて宣伝されているけれども、実は非常に危険な戦争基地になっている。  それで、国防報告で戦域核戦力の説明を読みますと、別に日本攻撃されるときに対応するなんという言葉は一言も書いてないのです。アジアでは朝鮮その他、特に朝鮮ですが、朝鮮などで事変が起きたときに、それに対応するのが戦域核戦力、つまりアメリカの基地体系自体が日本防衛ではなしに、何度も証明していることですが、そういうアメリカの対外戦争の基地になっている。そしてそれに連動して、自衛隊アメリカの一翼をやらされてきている。そこに非常に危険な問題があって、よくソ連脅威論を言われますけれども、自衛隊の前提にしているアメリカ軍事戦略を見てごらんなさい。日本のような国がソ連から奇襲されるなどということを想定して、それに対して備えたようなアメリカ軍事戦略の文書は一つもありませんよ。一番書いてあるのは、ヨーロッパで米ソ対決になったときに、日本を含めたアジアの同盟国軍をいかにアジアで動員するか、あるいは朝鮮のようなところで紛争が起きたときに、日本のような同盟国軍を含めていかに対応するか、これがアメリカ軍事戦略の想定ですよ。  ですから、よく問題になっている三海峡封鎖作戦とかオホーツク海作戦とか対潜水艦作戦とか自衛隊が任務にしていることは、そういうアメリカの要請に結果としては応じた、いわば攻撃というものにならざるを得ないと思うのですけれども、この議論はまた次の機会に同僚議員に譲りまして、私、そういう意味では、そういう中で日本が財政危機、国民生活の危機でありながら軍拡への新しい道を踏み出した、非常に重大だと思うのです。そういう角度から、経済の問題に移りたいと思います。  これは、衆参両院の本会議で代表質問でそれぞれ言いましたけれども、いまの日本の経済の情勢を見ますと、確かに政府は財政危機です。この責任の問題はもちろんあります。しかし、国民の側から言いますと、たとえば中小企業の倒産がもう六十四カ月、毎月千件以上続いているとか、あるいは勤労者の世帯調査が始まってから初めてだそうですけれども、去年一年間実質生計費が下がったとか、そういう国民生活の側から言えば非常に危機的な事態がある。冷害、雪害が地方を襲っている。一方で、大企業の利潤だけは戦後最高。非常に特徴的なんですね。ですから、たとえこれまでの財政危機の責任についてどう考えるにしても、政府が経済政策を考える場合には、最優先の課題に置くべきなのは、そういうピンチな条件にある国民生活の防衛と向上にどれだけ政府が力を発揮するか、私はこれは最優先課題に置かなければいけないと思うのです。  ところが、実際に予算の内容、それから政府の行政を見ても、この一番肝心なところが逆に一番政治の光が過疎といいますか、当てられない、こういう現状にある。そして軍拡優先あるいは大企業にてこ入れ優先、こういう間違った構造が依然続いている。そういう問題を私は経済政策の全般の問題として重視せざるを得ないのです。そういう角度から、幾つかの国民生活上の問題について伺いたいと思います。  一つは税金問題です。これは大蔵大臣に伺いたいのですけれども、大臣は、所得減税の問題になりますと、日本の課税最低限はずっと高まってきている、国際並みになっているのだから、こういう時期に所得減税をやるわけにいかぬということをよく発言しています。しかし私、長期的に見て所得税問題を考える場合、たとえばいまから十年前ですが、税制調査会で長期税制について答申を出したことがありますね。これは昭和四十六年、一九七一年の時点の分析ですけれども、このときに、日本の所得税や課税最低限到達点についてこの税制調査会が——これは政府も尊重すると約束したものですけれども、どういう見解を持ち、どういう今後の展望を持っていたか、関係者で覚えておられたらちょっと伺いたいのです。
  337. 高橋元

    高橋(元)政府委員 恐縮でございますが、いま取り寄せておりますので、その上でお答えをいたします。
  338. 不破哲三

    不破委員 待っているわけにいきませんので、ちょっと紹介しておきますと、これは長期税制答申ですから、中期の答申と違って、少なくとも十年間は政府の指針にすべきものですね、そうでしょう。この中で、わが国の課税最低限は一応のところには来ているけれども——結論がこうなっているのです。いろいろな角度から現行の課税最低限について検討した結果、「所得の増加に伴う納税人員の累増を緩和することに留意しつつ、」これから所得がふえると納税者の割合がふえることがないようにしなければいかぬ。「少なくともある程度貯蓄のためにゆとりのある合理的な水準を確保していくことが必要である」との結論に達した。かなりのところまで来ているが、国民全般に貯蓄のゆとりのある条件を確保するように、納税者が余りふえないようにこの水準からだんだん引き上げることを考えていかなければいかぬ。これが昭和四十六年、一九七一年の課税最低限についての公の見解だったのです。  当時、四人家族で課税最低限は幾らぐらいだったか、これはすぐ出るでしょう。
  339. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昭和四十六年の給与所得者四人世帯の課税最低限でございますが、当時は百五十万七千円でございます。
  340. 不破哲三

    不破委員 それは四十九年じゃないですか。
  341. 高橋元

    高橋(元)政府委員 どうも失礼いたしました。四十六年の課税最低限は百万三千円でございます。
  342. 不破哲三

    不破委員 百三万七千円……
  343. 小山長規

    小山委員長 正確に。
  344. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四十六年の年所得に適用されます課税最低限は百万三千円、四十七年分所得につきましては百三万七千円でございます。
  345. 不破哲三

    不破委員 一昨日、大蔵省に問い合わせましたら百三万七千円という答弁だったのですが、まあそれでもいいです。  それで、その課税最低限ですね、これは消費者物価は昭和四十六年から昭和五十五年までに二・二一倍になっているのです、時間の関係で結果だけ言わせてもらいますけれども。そうすると、七一年に平年度でたしか百三万七千円になったと思うのですけれども、これをいまの物価に換算しますと二百二十九万二千円なんですよ。つまり、昭和四十六年に長期税制答申で、ここまで来たが、これから先もっと引き上げることを考えなければいけないといった水準をいまの消費者物価に合わせると、約二百三十万なんです。  現在の四人家族の免税点は幾らでしょうか。
  346. 高橋元

    高橋(元)政府委員 現在は二百一万五千円でございます。
  347. 不破哲三

    不破委員 いまの御答弁でわかりますように、いまから十年前に、これがまあ到達点で、ここから上げなければいかぬということを政府も税制調査会も認めた。それがいまの物価に換算すると二百三十万。ところが、いまの課税最低限は二百一万五千円ですから、それからはるかに低落が始まっているわけです。  それからもう一つ、私ずっと調べてみますと、七〇年代の前半までは、この答申に沿って物価の上昇よりも緩和する方向に進んでいるんですよ。一番のピークが昭和五十年だったのですが、これは免税点は幾らでしょうか。——言いましょうか。
  348. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昭和五十年分の課税最低限は、夫婦子二人の給与所得者、百八十三万円でございます。
  349. 不破哲三

    不破委員 昭和五十年から昭和五十五年までの物価の上がり方が、政府統計で三六%なんです。そうしますと、いまの物価に換算しますと、この百八十三万という課税最低限は二百四十八万七千円、約二百五十万なんですね。私は、国際比較でいろいろあって、為替レートの計算には異論がありますし、いろいろ議論がありますから、日本自体の課税最低限の推移の問題として現状を見てみる必要があると思う。  数字の問題ですからちょっとわかりにくいかと思うので、グラフをかいてきましたけれども、こういうカーブになるわけですよ。これが現在の物価に換算をして免税点の推移を見たものなんです。  それで、さっき言いましたように、六〇年代多少上がって、七一年のこの長期税制答申で評価した時点が二百九十万二千円に当たるのです。それから物価の関係で多少でこぼこがありますけれども、昭和五十年、一九七五年の課税最低限が二百四十八万七千円で、これが七〇年代のピークになります。それから物価によって下がる。そしてちょっと物価調整減税をやって上がるけれども、この七七年、昭和五十二年の調整減税は物価の上がりを補うに足りなかった。それから固定しているでしょう。いま二百一万五千円で、七一年水準よりはるかに下がっているわけですね。政府の五・五%の上昇率を掛けてみると、来年はここまで下がります。政府の計画で毎年五%の物価の値上げだというのを財政再建期間中ずっと掛けてみますと、このまま所得減税をやらないでいったら、大体六〇年代中ごろぐらいの水準になります。これだけ経済が大きくなって、本来なら前進しなければいけないのに、六〇年代中ごろぐらいの水準に免税点の実質が下がってしまう。私は、これは非常に重大な問題だと思うのです。  私たちは、所得減税を中心に六千億の減税をやる。計算してみますと、八〇年の、つまり今年度ですね、昭和五十五年度の物価でここまで戻そうとすると六千億の減税になるのです。しかし、来年の物価上昇分を考えて、七〇年に一遍達成した数字に戻そうと思うと八千億要りますね。財政も困難な折柄ですから、私どもはそれを六千億に抑えて主張していたのですけれども、これは決して無理な要求でも何でもない。一たん七〇年代にこの方針に基づいて政府がある程度到達した水準を回復するだけのことですから。  私は、長期の日本の税制問題を考えるならば、この所得減税の問題にいま本気で取り組まないと、もう大変な急カーブで転落していくことになる。この問題について大蔵大臣の大胆な意見を伺いたいのです。
  350. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり昭和四十六年の答申というのは、四十二、三、四、五ぐらいの資料をもとにしてつくられたものです。つまり、高度経済成長の一番の花形時代の答申でございます。減税をやっても自然増収がある、減税をやっても自然増収があるという時代でございまして、そういう時代がずっと続けば文句はないのですが、御承知のとおり第一次石油ショック以来、非常に経済のテンポというものに狂いが出てしまった。したがって、なかなかその当時のように減税が思わしくなくなったというのも事実でございます。  それから、ここ五十二年から五十六年まで課税最低限はいじっておりませんが、この間において物価が上がっておりますから、それは所得が一定でもし所得のベースアップがないということになれば、当然、ただいま御指摘のように実質目減りになっておるということも、これも事実でございます。それにもかかわらず二百一万五千円というのは、アメリカの百六十万やイギリスの百十万、西ドイツの百五十五万よりも現在でも課税最低限は高くなっておる。これも事実でございます。  したがいまして、そういうような諸般の事情を考えまして、ともかく余裕があるならば、私どもとしても物価調整減税というものはやりたいという考えはございますが、今年度におきましては、諸外国との関係も見て、国内の財政事情も勘案して、今年度はひとつ御勘弁をいただきたいということを申し上げてきておるわけでございます。
  351. 不破哲三

    不破委員 こうやって実質増税がずっと高まっている結果、たとえば総理府の家計調査報告を見ましても、七四年ごろと八〇年ごろでは、つまり昭和五十年と五十五年ごろでは家計の構造がうんと変わってきているんですね。たとえば五、六年前でしたら、税金と社会保障負担は大体家計支出の八・七%程度です。それが去年の統計では、税金と社会保障などの非消費支出が合わせて一三・三%までふえている。家計の七分の一ぐらいがそういう税金や社会保険料にいかざるを得ないようになっている。  それから、この前の答申で納税者がふえないようにということが一番強調をされていましたが、これも物すごくふえているんですね。昭和四十六年の答申当時、これは昭和四十五年も同じですけれども、給与所得者の中の納税者の人数は七七・八%でしたよ。このときに大体国際並みだと書いてあります、この答申には。ところが、五十四年の納税者比率は七七・八から何と八五・七に激増しているんですね。この点でも、日本のこういうほうってある税制が低所得者にまでいかに大変な課税をすることになっているか、それが国民の暮らしに対する圧迫と硬直化の要因になっていることはきわめて明瞭だと思うのですね。だから、そういう現実を前にして、それはそうなんだが外国に追いついたんだと言われても、これは為替レートのいわばいたずらであって、実際の購買力の水準で言えば、幾ら日本のレートが上がったって暮らしに何にも影響がないわけですから、そういう外国との上っ面だけの比較で満足しないで、現実にこのような数字にあらわれているように、実生活の上で大変な重税になっていることはあらゆる統計にあらわれているわけです。  私は、政府がぜひ減税問題で再考すべきことを強く要求したいと思うのです。総理見解を伺いたいのです。
  352. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先般来申し上げておりますように、一方において大変な財政困難の中にございます。これをいまにして再建しなければ、国民経済も国民生活も将来において大変な負担になる。こういう状況の中で、私どもは、税の面におきましても、法人税あるいは酒税等々、他の税目について御負担を願っておるわけでございます。そういう中におきまして、やはり所得税につきましても、課税最低限をさらに上げたりあるいは調整減税を行うということはしばらく御勘弁をいただきたいというのが政府の考えでございます。
  353. 不破哲三

    不破委員 この問題は今後も主張いたしますが、次の問題に移りたいと思います。  それは障害者対策の問題ですけれども、ことしは国際障害者年で、たしか鈴木さんが国際障害者年推進本部の本部長ですね。それで、いままでも障害者対策は大事でしたが、特にそういう年であるだけに、この問題についていろいろな角度から検討してみる必要がある。問題はたくさんありますけれども、私が取り上げたいのは、やはり障害者問題の中心になっております雇用問題です。たしか五年前に身体障害者雇用促進法の改定を行いまして、ことしはちょうど秋に五年目の見直しの時期が来るわけですね。それで、あのときに法の改正をして、企業に対する割り当て雇用がいままで以上に明確に制度化されて、これによって雇用問題の抜本改善が図られる、そういう期待の中であの改定が行われたことを覚えているのですけれども、それから五年たって見直しの時期ですけれども、実際に企業に対する身体障害者の雇用率ですね、五年間にどれくらい改善されたか、どれだけ法の力が発揮されたか、そのことをまず伺いたいと思うのです。
  354. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  先生御案内のとおり、当時から各企業におきまして一・五%の雇用率を達成をしていただきたいということをお願いをいたしまして、一生懸命に努力をしてまいったわけでございますけれども、ここ五年間わずかずつそれは上がってまいっておりまするけれども、なおかつ一・五%には達していない。昨年の平均で一・一三%でございますから。私どもの目標から申し上げましたならば、なおその距離があるということは認めざるを得ません。
  355. 不破哲三

    不破委員 やはり雇用の量から言いますと、統計で言えば千人以上と言われる大企業の雇用問題がどれくらい進むかが一番問題だと思うのですが、大企業の中でこの一・五%を守っていない企業の割合ですね、法の制定当時といまと比べるとどれぐらい変動がありますか。ふえていますか、減っていますか。
  356. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 細かい問題は政府委員に答えさせます。
  357. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま手元にございます数字で、千人以上の企業規模の実雇用率は〇・九〇ということでございます。それから、五百人から九百九十九人までが一・〇五、三百人から四百九十九人までが一・二〇ということでございます。
  358. 不破哲三

    不破委員 守っていない企業の割合と、それが制定当時からいままでにどれぐらい変わったか、その変動を聞きたいのです。
  359. 関英夫

    ○関(英)政府委員 いま申しました企業規模で、昨年の六月一日現在の数字でございますが、千人以上で雇用率未達成企業の割合が八一・五%、五百人から九百九十九人が六七・四%、三百人から四百九十九人のところが五七・八%、こういうことになっております。
  360. 不破哲三

    不破委員 制定当時からどう変わっているかということを聞いているのです。
  361. 関英夫

    ○関(英)政府委員 五十二年のときの未達成企業の割合を申し上げますと、千人以上で七八・九%、五百人から九百九十九人で六四・一%、三百人から四百九十九人で五四・五%、こういう数字でございます。
  362. 不破哲三

    不破委員 そうなりますと、法を制定したときに、千人以上で見ますと七八・九%が守っていなかった。ところが、五年たって八一・五%に守らない方がふえているというのでは、一体何のためにあの法律ができたのかわからなくなるのですね。  それで私は、これはただ企業の側の問題だけじゃなしに、法をつくったわけですから、そうしてその企業に対して守らせる責任政府が負って、しかもその点で一定の権限が与えられているわけですから、やはり行政がちゃんとそれだけのことをやっているかどうかということを問わざるを得ないと思うのです。  この法律によりますと、政府の権限で一番大事なのは、幾つかありますけれども、第十五条にある「雇用する身体障害者である労働者の数が法定雇用身体障害者数未満である事業主に対し」雇い入れ計画をつくれと命令することができる、これが第一の権限ですね。法を守らない企業があったら雇い入れ計画をつくりなさいと命令する、第一の権限。それで、その計画を出させて、これをちゃんと実行しない者に対しては勧告ができる、こういうことがあります。これが今度あの法律で政府に与えられた権限なんです。ところが、こんなにたくさん、大企業の中でも八割を超える企業が守らないのに対して、命令権というのはどの程度に行使したのか。そして、その行使する基準、どんな企業に命令を出したのか、それを伺いたいと思います。
  363. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  業種で申し上げますと、小売業等々の業種が余り達成率がよろしくありません。不破さんの大企業ということで申しますれば、化学、銀行、金融業、保険、不動産業というのがわりあいに達成率の悪いところになっております。
  364. 不破哲三

    不破委員 いや、そういう種類の説明じゃなしに、たとえば大企業で千人以上で言いますと八一・五%の企業が守っていないわけでしょう。これに対して全部命令を出しているのですか。それから、総企業数で言いますと一万七千を超える企業が守っていないと思うのですけれども、それに対して政府は全部ちゃんと命令を出して、実行するように努力したんだが、悪いところがふえてきたということなんですか。
  365. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  まず身体障害者の雇い入れ計画の作成命令でございますが、雇用割合が〇・五%未満というふうに著しく低いもの、あるいは雇用率達成のために必要な身体障害者数が十人以上と多い、それから今後年間の新規労働者の雇い入れが相当数見込まれるもの、こういうような企業に対しまして発出するということで、現在、千百十六の企業に対して雇い入れ計画の作成を命じております。その計画を、これは三年計画というようなものが多うございますが、計画期間中に計画どおりに適正に実施しなかった企業で、特に計画で新規に雇い入れを予定いたしました身体障害者の割合が、実際に雇ったのが計画数と比べて三〇%以下であるというような基準に基づきまして、そのほかにも細かい基準がございますが、そういう基準に基づきまして適正実施の勧告をいたすようにしておりまして、五十四年度発出いたしましたのが百十三件になっております。
  366. 不破哲三

    不破委員 そうすると、法律は一・五%雇い入れと言っているけれども、〇・五%以下なら命令が来る、〇・五一%ならこれは命令が来なくて、職安の普通の事務関係で一人三万円のお金、あれだけ払えばいいというシステムですか。
  367. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  雇い入れ計画を命令いたしましたのは、計画をつくって提出をする義務づけをいたしておるわけでございますが、雇用率未達成の事業所につきましては何もしないということではございませんで、雇用率の達成指導は、もちろん日常の業務として全国の出先機関において行っておりますし、また、自主的に計画をつくって身体障害者の雇い入れを努力するようにというような行政指導も行っているわけでございます。決して納付金を納めれば雇い入れはずっとしなくてもいいんだ、こういうことで行政に当たっているわけではございません。
  368. 不破哲三

    不破委員 一般的な通達を出す行政指導というのは、これは皆さん、どういう力があるか大体御存じだと思うのですが、一・五%の法律がわざわざつくられた。それがつくられて五年目の見直し期間ですよ。しかし、企業の方は統計上見る限り全然進んでいない、むしろ守らない企業の数がふえている。それに対して行政が何をやったかというのを見れば、何か〇・五%という別の基準ができて、〇・五%までは権限を行使するけれどもあとはほどほどだ、こういうことをやるのは、ずいぶん法律とは違うのじゃないですか。この法律には別に法で決められた基準の三分の一なんて書いてないわけですね。法に決められた基準未満の事業所に対しては労働省は命令することができる。ところが、実際には勝手に〇・五%という基準がつくられて、あとはそのポストについて三万円で済んでしまう。そういうことをやっていたのでは、これは幾ら法律をつくって法体系はりっぱでございますと言っても、国際障害者年にふさわしいような雇用計画の進展にはならない。行政の姿勢にやはり一番問題があると思うのですが、いかがでしょうか。
  369. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  先ほど申し上げましたように、わずかではございますけれども七五十二年以来ずっとそのパーセンテージは上がってきておるわけであります。私どもといたしましては、法律に書いてございますように、一・五%の目標を達成しない企業全部にそういうことをさせるような権限を持っておりますけれども、やはりこれはその努力の仕方というものを段階的に考えてみまして、一番達成率の低いものから、厳しく、より達成できるように努力をしてくれと言って御勧奨申し上げるのは私は当然だろうと思います。そうして、だんだんそれを上げていって〇・五%以下のものがなくなってきたということになれば、〇・八%以下の方々に対しましてこれを達成してくれといってお願いをし、それが達成できたら今度は一・〇%以下のものにそういった計画を立てて順次それに合わせていただくということにいたしまして、できるだけ早く一・五%の目標といいますものを達成いたしますように、具体的に、かつ、それが達成できるように能率的にこの行政を取り扱ってまいろうというのが私どもの考え方でございます。
  370. 不破哲三

    不破委員 認識が大分甘いと思うのですね、大臣。守ってない企業の割合は、五十二年四七・二%、五十三年四七・九%、五十四年四八%、五十五年四八・四%、だんだんふえているんですよ。それから千人以上で言いますと、五十二年七八・九%、五十三年七九・五%、五十四年七九・四でちょっと減ったと思ったら、五十五年は八一・五%と、ぐんと上がっているのです。五百人以上でも六四・一、六五・九、六六・〇、六七・四と、減っているのではなくて、守らない企業の割合がふえているから私は質問しているのです。  ですから、〇・五%と言いますけれども、たとえばこの法律の改定前に、たしか一九七五年の十二月です。これは労働大臣がその当時踏み切って、〇・五%以下の企業を名前を出して百社以上公表したことがあるのです。この法律がこうなる前でさえ、〇・五%以下というのは公表されても仕方がないくらいに扱われていたのです、今度そういう運用をするものですから、〇・五%以下の企業についても、まず命令で計画を出させる、計画を出させて、それで実行しなかったら勧告をする、それで勧告を守らなかったらようやく公表するというようになっちゃったわけですから、法律ができる前には〇・五%以下のはひどい企業だということで公表できたものも、そういう運用をしているものですから、〇・五%以下があっても公表もできない。全部手続が終わらないと公表もできない。そういう権限を勝手に〇・五%に切り縮めてやられたのでは、私は、せっかく国会を通した法律が泣くと思うのです。  それから、もう一つ含めてぼくは、推進本部の本部長である鈴木さんに伺いたいのですが、その問題と障害者問題でもう一つ、いま障害者の仕事の問題で、国際的にも心身の障害者に対していかに仕事ができるようにするかということが問題になっておりますけれども、その共同作業所というものが全国につくられているわけですね。この中には、政府公認のものもあれば、無認可のものもある。施設が間に合いませんから、親御さんたちや何かが協力をして、無認可の共同作業所というものが全国で相当数あります。ところが、これは残念ながら、ごくごく一部の間接に来るものを除いて、政府の補助の対象にならないのです。自治体の方は、四十七都道府県の中で大部分が補助をつくってやるようにしています。しかし、これもでこぼこがありまして、軽いところもあれば、かなりの補助をしているところもある。しかし、いまの障害者のこういう状況で、それこそ親御さんたちや周りの人たちの努力でようやく苦労して共同作業所をつくる、これを政府が全然ノータッチでそのままにしておくということは放置できない問題だ。  総理に後で、いまの労働問題と共同作業所の問題、両方伺いたいのですけれども、園田さんに、この無認可の共同作業所、いわゆる授産施設、これに対する補助問題について、やはりこの国際障害者年の機会に抜本的な踏み出しをすべきじゃないかということで伺いたいのです。
  371. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおり、本年は障害者の年でありますが、これは「ための年」ではなくて「障害者の年」、「フォー」ではなく「オブ」となっております。それは、いま発言された障害者に対する個々の施策よりも、障害者自身が健常人と同じように地域社会の発展、活動に参加する、こういうことでありますから、これが一番重点であると考えております。  そこで、労働大臣ともよく相談をしていろいろ尽くしますが、その前に、障害者年の対策本部としては、やはり授産所、共同作業所、こういうものをだんだん完備していって、それで障害者が完全に参加できるような素地をつくることが大事であります。共同作業所、授産所についてはしばしば発言もありまして、共同作業所のいろいろな条件がございます、専門職員であるとかあるいは数であるとか。ところが、だんだん現実に応じて、小規模の手近な共同作業所等を要望する声が非常に強いわけであります。その規模も三十人から二十人に切り上げまして、明年度の予算では約二倍にふやすことにしておりますが、二十名以下の小規模のものについても補助金を出し、これを助成していけ、こういうのがしばしばの発言の御要旨だと考えております。これについては、対策本部でただいま特別委員会をつくって検討しておるところでございます。
  372. 不破哲三

    不破委員 それで、この問題の最後に、本部長である総理に、やはり法をつくってもそれを守らせる体制がなければ空文になるという点で、運用の問題を含めて、雇用促進法とそれから授産施設の問題について、実りある障害者年になるように御見解を伺いたいのです。
  373. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国際障害者年を迎えまして、私は、これを契機に、この障害者年の共同の目標でございます社会完全参加とかあるいは平等の問題、こういう理念に立ちまして、いま不破さんからお話がございましたところの雇用の促進の問題、それから職業訓練あるいは授産所あるいはリハビリテーションの問題、そういうような参加に必要なところの諸施策を一層政府としても力を入れてまいりたい、こう思っております。
  374. 不破哲三

    不破委員 次に、また労働大臣、恐縮ですが、労働行政の問題をちょっと伺いたいのです。  と申しますのは、賃金の問題も、これはレート換算でいろいろありますけれども、実質購買力で言いますと、日本の労働者の賃金はアメリカの二分の一、西ドイツの三分の二と言われている。ところが、それに加えて、労働時間と労働強度というのは、これは世界でも画然といいますか、顕著なんです。  この間、私の自宅に日経連の労働問題研究委員会から最近の状況の報告書が送られてきましたが、この数字を見ても、日本の労働者の労働時間の長さというのはずば抜けていて、ちょっと数字を挙げますと、たとえば五十三年で日本の労働者の労働時間が年間二千百四十六時間、アメリカが千九百三十四時間、イギリスが千九百五十七時間、フランスが千七百九十九時間、西ドイツに至っては千七百二十八時間ですね。それで、ちょうど西ドイツの労働者の一年働いたのに三カ月加えただけ、十五カ月分一年間に働いておる。こういう数字が出てくるわけですが、これはやはり日本の労働問題では最大の問題の一つだと思うのです。  しかも、労働省の方で労働時間の短縮だとか有給休暇の完全消化だとか週休二日制とかいろいろ指導はしているはずなんですけれども、最近の統計を見ておりますと、年々所定内時間も所定外時間もふえている。むしろ逆行ですね。雇用問題に非常に重大な影響を与える。  こういう点で、日本の労働時間の問題を一体労働省がどれぐらい重視して、そして労働者が前から掲げている時間短縮という問題をどのような方法で実現しようとしているのか、そのことをまず伺いたいと思うのです。これはいろいろな問題で日本への国際的な経済非難の源泉にもなっている問題ですから、非常に大事な点だと思うのです。
  375. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  不破さんがお取り上げになられました資料は少し古うございまして、昨年の実績では、日本人の労働時間といいますものは年間に二千百八時間でございます。前年より、ありがたいことに六時間ばかり減りました。しかしながら、御案内のとおりでございまして、西欧各国の労働時間と比べてみますと、日本の方がやや多いということになるわけでございますけれども、それはたとえばイタリアその他で考えてみましても、マルチ・ジョブ・システムというのがございまして、あちらの方方は、早く自分のお仕事からお帰りになられましてから、また別のお仕事におつきになられておるわけでございます。でございますから、これを時間の中に算入して考えますと、私は、二千百八時間といいますものが非常に大きく飛び離れて多いということではないというように申し上げた方がよかろうと思います。  しかしながら、何と申しましても御指摘のとおりでございまして、いろいろと言われておりますから、できるだけひとつ労働時間の短縮ということを達成させまするために、週休二日といいまするものを御案内のとおり六十年までに達成いたしたい、こういうことをいたしておりますし、私の考えでは、そのような六十年まで待たないでも、五十八年中にでも、あるいはどんなに長くなりましても五十九年中にも必ずそれはさせられるというように私は考えております。  なお、私どものいき言っておりまするような所定外の時間、つまり残業といいまするものも、日本の場合にはいまは百六十二時間ということになっておるわけでございますけれども、これもできるだけ縮小をしていただいた方がよろしいということで、大企業におきまする所定内の時間は、もうすでにこれはヨーロッパあるいはアメリカの各国と比べまして決して長くないということになっておりますけれども、それが長くなっておるというのは残業が多いということでございますから、この残業をできるだけ焦点にいたしまして、その残業ができるだけ少なくなりますようなそういう指導をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  376. 不破哲三

    不破委員 外国じゃ内職もやっているんだというお話ですけれども、これはちょうど日経連がここで言っている言いわけでして、労働省の通達なんかを見ると、やはりもっと短くしなければいかぬということを力説しているわけですから、大臣が日経連の言いわけの方を先に紹介して、労働省のたてまえの方針の方を後から言われるようでは大変困るのですけれども、ともかく短くする決意には変わりないと言われた。  ところが、実際現場に入ってみますと、特に最近大企業の方が目立つのですけれども、定員の上からいっても仕事の面からいっても有給休暇がとりにくいとか、それからいろんな理由の時間外のただ働きが品質管理運動とかいろんな名目のサークルなんかでふえてくるとか、それから長時間残業が恒常化するとか、こういうことが、中小企業ということじゃなしに、大企業にもかなり目立つようになっているのですね。  そういう点では、個々の企業に対する基準法に基づく指導というものが非常に大事になってきていると思うのです。それをやらないと、幾ら一般通達を出しても、現実には労働時間がどんどん長くなって、最近のように有給休暇がとりにくくなるものですから、残業だけじゃない、所定内時間までが長くなるという傾向まで出ているわけですから、私は、そういう点では、世界で非難されるような長時間労働とか過密労働を規制する上で、労働基準監督の役目というのは非常に大事になってきていると思うのです。  そこで伺いたいのです。  労働基準監督官が全国に配置をされて、各事業所を定期に監督しなければいけないことになっていますね。年間監督率は、定期監督について大体どれぐらいになっているでしょうか。
  377. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 お答えいたします。  労働省におきます定期監督の件数は、五十年以降をちょっと申しますと、五十年が十六万五千件、五十一年が十三万二千、五十二年が十三万三千、五十三年が十三万七千、五十四年が十六万五千でございまして、監督の実施率は、適用事業場数も多くなっていることでございまして、五十年が七・一%、以下、六・〇、五・六、五・七、六・三、こういうようなことでございます。
  378. 不破哲三

    不破委員 いまのは臨時監督や申告監督、再監督を含めた実施率でしょう。定期監督はもっと少ないですね。定期監督の実施率はもっと少なくありませんか。
  379. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいま申し上げましたのが定期監督の数字でございます。  それから、実施率につきましては、そのほか申告監督なり再監督を入れた実施率でございます。
  380. 不破哲三

    不破委員 だから、定期監督の実施率を聞いているのですよ。
  381. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 失礼しました。  全体の定期監督並びに申告監督、再監督、それらを含めました全体の監督件数は、五十年で二十万六千……(不破委員「だから、定期監督の実施率、あなたが抜いたところです」と呼ぶ)失礼しました。わかりました。  先ほど申しました数字でございますが、率で申しますと、五十年が五・七、五十一年が四・五、四・三、四・四、五十四年が五・一、こういうことになっています。
  382. 不破哲三

    不破委員 だから、大体四%から五%なんですね。  これはILO条約、これはもう日本政府も批准している条約で、できるだけ頻繁に監督対象を監督しなきゃいかぬと決められているわけですね。少し前に決められた勧告では、少なくとも年一回の定期監督、大きな事業所についてはもっと頻繁にということで、国際的にも勧告されているのですね。ところが、いま実際に日本で実施されているのは、いま言いましたように、定期監督が四%から五%ですよ。この事業所を全部一回りしようと思うと二十年かかるのですね。  それで私、監督官にもずいぶん聞きました。そうしたら、この率を上げるのに、数字を上げるのに苦労するので、何かいろいろな言葉があるそうです。キョロ監といって、事業所へ行ってキョロッと一回り見てともかく員数に入れるとか、それから、これはやっちゃいけないんだけれども、事業所の責任者を集めて集団で話をして、それで報告を受けて、集団監督をしてしまうとか、そういうことをやってようやくこれだというのですね。しかも、たとえば労働省から災害問題が大事だというと災害で見に行く、災害は見に行くけれども、ほとんどほかのことは見ない。そういうことで、ようやく二十年に一回ぐらいの監督しかできない。  しかも、この労働省資料を見ますと、監督をして違反がわかった割合が毎年六割を超えているのですよ。だから、監督に行けば必ず違反があるのですね。そういう監督が、国際的には年に一回と言われたこともあるのに、日本でも三十何%という監督率をやったことがあるのに、いまでは四%、五%しかできない。私は、これはやはり非常に重大だと思うのです。  ちょっと時間がありませんので、私が調べた数字を申し上げて恐縮なんですが、これには高度成長に監督体制が伴わないという問題があるのです。昭和二十三年に労働基準監督の制度ができたときに、二千四百八十一名監督官がいたそうです。そのときの監督すべき事業所の数が五十万八千、対象の労働者が九百七十七万九千人、ところが、昭和五十五年になりますと、監督官は二八%ふえて三千百七十八名になった。事業所の数は六倍になって三百二十二万一千ですよ。監督すべき労働者の数は四倍になって三千八百十七万一千名。事業所が六倍になり労働者が四倍になって、監督官が二八%増し。しかも、聞いてみますと、この間に労働関係の法律がうんとできているから、昔なら一週間あったら六日監督に出られたけれども、いまは四日行ったら精いっぱいだというのですね。そういう状態の中で、世界で非難されるような基準法違反がたくさんある。  私は、行政改革というのは、ただどこでもかでも減らせばいいというものじゃなくて、ちゃんと決まった法律を国民の立場から守らせることが大事なんですから、その点では、こういうところは過疎が明白なんだから、やはり国際的な批判にこたえる意味でも大いに充実させる必要がある。特に私、いろいろ実態を調べて感じるのは、大企業が穴になっているということです。  実は一昨年ですが、神奈川県の共産党の委員会が、神奈川県にある大企業二十六社を調べて、特に労働時間問題が中心だったのですけれども、百三十六項目の違反容疑を提起して、それで神奈川県の労働基準局と労働省に申し入れて調査してもらったんですよ。数カ月たって神奈川県の労働基準局と交渉したら、全部われわれが提起したとおりだった。だから、そのときに二十四の事業所を監督して、それで違反についての命令書を出したり指導書を出したり、やりましたということを言っていましたが、こうやって大規模に大企業を調査するのは、言われなければ初めてだったんですね。  去年、埼玉県の党の委員会が、やはり二十三の大企業を百二十三項目、違反問題の容疑を調べて、これはまだ答えをもらっていませんが、一月下旬に交渉しましたら、やはり基準局が、かなり合っている、大体四十ないし五十はいままでにも指導して直させた、しかし、いままでそう言われるまで大企業に対するそういう監督をやったことがないのだ、とてもそんなに手が回りませんと言っているわけです。  それで、そういうところが出てくるのは、一つはやはり有給休暇をとれない体制、それからもう一つは、特に職制の人が多いようですが、QCだとかいろいろな運動があって、その運動に出なければいけないようになるのだが、出てもこれは時間にならないただ働きの時間外とか、そういう種類の問題が大企業に頻発している。これの監督の手が届かぬ。しかも、実際見ればわかるように、こういう監督体制ですから、私は、この監督体制は、やはり外国に向かっても国内の労働者に向かっても、労働基準法を決めたらちゃんと政府としてもベストを尽くしているのだと言えるように、体制を再検討してほしいと思うのです。労働大臣及び総理見解を聞きたいのです。
  383. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  御案内のとおり、日本人は非常によく働きますから、有給休暇というものはございましても、それを完全消化をするということが民族的性質からいたしまして非常にむずかしい、そういう性癖があることはあるわけであります。しかしながら、私どもは、できるだけそういったことのないように、与えられた有給休暇はぜひともとってお休みをいただきたいという御指導は申し上げておるわけでございますけれども、なかなか私どものそういった願いが達成されないというのが現実でございます。  しかしながら、何といいましても、いま御指摘がございましたけれども、大企業におきましてそういった有給休暇をとっていないというような基準法違反というものが続発をしておる、こういうことでございますから、その点は重々よく注意をいたしますけれども、要はそういったことができるだけありませんようにということをすればいいわけでございまして、それが基準監督官が行ったからどうということであっては非常に悲しいわけでございます。そうでなくて、だれも行かなくてもそういった違反は一切ないようにというところまで、私どもは監督の行政といいまするものの質を高めてまいりたい、かようなことで一生懸命に努力をいたしておるわけでございます。  なるほど、先生おっしゃるとおり、監督官の数が少ないというようなことはございますけれども、これはいたずらにそのような、やたらに厳しく取り締まる者の数だけをふやしていこうというようなことをやっておりましたのでは、いまの小さな政府という理想が片一方において崩れてまいるということもございますので、これはその調和点といいまするものを十二分に考えて、そしてこれを志向していくということがよろしかろう、かように考えております。
  384. 不破哲三

    不破委員 労働大臣の答弁が日経連の労働担当者の答弁みたいな感じになるのは非常に残念ですね。労働基準法をつくって、政府の側からそれをどう守る責任を果たすのか、これが行政の責任ですよ、企業の代表じゃないのですから。その点を問題にしているのに、政府が何にもやらないでも守るようになるのが望ましい——それは望ましいですよ、現実にそうなっていないのだから。有給休暇だって、日本人の民族的特性からとらぬわけじゃないのですよ。実態を調べてごらんなさい。どこの組合がやっている世論調査でも、とりたくともとれないという答えがずっと出ているわけですから。やはり労働大臣たる者は——まあ、余り任にふさわしくないところに割り当てられちゃったのかもしれませんけれども、しかし、なった以上は、労働法規にのっとって労働者の利益を守る立場で仕事をしてもらわないと困るわけですね。  最後に、もう一つ労働関係で聞きます。  これは二年前に私が大阪の松下の問題を取り上げて質問したときに、当時の労働基準局長が、コンベヤー作業の労働者について、頸肩腕症候群の労働者に対すると同じ基準で基準をつくり指導しますということをここで明言されました。それで、その後で松下については基準局からも政府からもいろいろ調査したようですけれども、しかし、この作業基準が確立していないために問題の徹底解決がなかなかできないわけですね、二年前にああやって明確に約束をしたのですが、このコンベヤー作業労働者に対する作業基準の確立についてどうなっているか。労働行政についてはこれが最後ですから、明確に、わかる人がお答え願いたいと思います。
  385. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 お答えいたします。  一昨年の当委員会におきまして先生から御指摘のあった点でございますが、大阪の松下の問題につきましては、その後現地の局署におきましていろいろな作業実態を見た上で、局におきまして当該松下に対しまして、作業方法の改善なり作業の自動化ということについて指導をしたところでございます。  それから、その基準の点でございますが、先生おっしゃるとおりでございますけれども、何せこの作業態様あるいは作業の工程、そういった点が非常にいろいろでございます。そういう意味で、もっぱら実態の把握をするということで、本年度、重点施策としてそういった点についての実態の把握を現在行っているところでございます。その把握のそろわない現在におきましては、それを一定のきちっとした、画一的なという意味での管理基準というような形にするのはなかなかむずかしいのではないか、そういうことでございますので、問題のある、そういった健康障害にひっかかりのあるような事業場につきましては、そういった点についての個別的な形での指導を行っていく、こういうことで対処してまいりたいと思いますし、また、コンベヤー流れ作業そのもののそういった作業形態自体に対する一つの把握ということが基礎であろう、こういうことで、そんなことで進んでまいりたいというふうに思っております。
  386. 不破哲三

    不破委員 二年前に労働基準局長が、あなたではなかったけれども、ここで明確に約束をしたわけですよ、基準を確立して指導しますと。はっきりとここでは、基準は確立してやっておりますと言ったのです。後で私のところへ来て、実はまだ確立してなかったので実際やりますからと約束をしたのです。それが二年たって、これから実態の把握ですというのは少しひど過ぎると私は思うのです。明確に国会で約束した以上、第一に優先的に、全国にコンベヤー作業労働者はたくさんいるのですから、そしてみんないろいろな問題で悩んでいるわけですから、早く確立するように要望して、私は次に移りたいと思います。  最後に私が取り上げたいのは、震災対策の問題なんです。  国民の安全保障ということで考えますと、政府は安全保障だから有事備える——有事立法のことを一番最初に問題にしたのが福田内閣のときでしたが、福田さんは、有事とはどれぐらいのことかと聞かれて、万々々が一ぐらいだと、その可能性でもということを言われました。計算しますと、これは一年三百六十五日ですから、万が一で三十年に一回、万々が一で三十万年に一回、万々々が一で三十億年に一回という、これは大変架空の話になるのですね。しかし、震災というのは、われわれが考えますと数十年規模で確実に来ることは間違いないのです。地震というのは一たん起きたところに必ず起きる性質を持っていまして、これは間違いないわけですね。ですから、本当に私たちが、まあ経済もこれだけ進み、科学技術もこれだけ進んでいる日本で、震災が目の前にありながらちょうど江戸時代のように無策に終わったというのだったら、これは現在に対しても後世に対しても申しわけないわけで、やはりこれに対してベストを尽くすというのが、国民の立場から言えば最大の安全保障の一つだと私は思うのです。  その意味で、きょうはちょっと突っ込んで伺いたいのですけれども、いま数十年単位で考えますと、どちらが先に来るかはわかりませんが、東海地震とそれから南関東・首都圏の直下型地震、この二つが一番差し迫った危険だということはだれも認めることですが、これに対して基本的にどういう備えているのか、どういう方針でいるのか。地震の関係は責任官庁が多くて、どなたに聞いたらいいのかなかなかわかりにくいのですが、どうぞお願いします。
  387. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねの点、実は大規模地震対策特別措置法というのができまして、これに基づきまして五十四年八月、地震防災対策強化地域として東海地域を指定いたしておりまして、それ以降、埋め込み式の体積ひずみ計その他海底地震常時監視システムをずっと整備してきております。それとまた並行いたしまして、大学なり各省庁の機関等を動員いたしまして観測をし、そして短期直前の予知に必要なデータを一元的に気象庁に集中いたしておりまして、これによって常時監視体制の強化を図っておるところでございます。  このデータにつきましての判定を得るために、地震防災対策強化地域判定会、われわれよく判定会議と申しておりますが、これを組織いたしておりまして、現在萩原先生に会長をお願いいたしております。これを発足させまして、この予知判定会で警戒の必要ありとしたときに、総理大臣気象庁長官から状況を報告し、そして総理大臣が警戒宣言をする、こういうシステムに実はなっておるのでございます。現在の学問、技術のレベルにつきまして、東海地震に対する予知体制の一応の整備は終わっておると考えております。今後はデータの処理、解析の強化を進めることが大事でございまして、それと同時に地震予知に関する研究を一層進めなければなりません。そして必要に応じてその予知体制を強化しなければならぬということでございます。  お尋ねの問題が非常に専門的なことでございまして、きょうは気象庁長官も来ておりますので、なお専門的に詳しいことは気象庁長官にお答えさせます。
  388. 不破哲三

    不破委員 東海地震に備えての予知関係は、私もずっと視察してまいりまして、これはなかなか国際的に高い水準に、あると思うのですね。そして、ずっとかなりの密度で計器を配置して、それが全部センターにリアルタイムでテレメーターで集約してやるようになっている、これはやはりなかなかのものだと思っています。  しかし、もう一方で、そうやって予知、警報、そういうシステムがかなり進んだのだが、数十年で言えば間違いなく地震が起こって被害が起きると予想される東海地方に対する——これが災害に強い地方にするという方についてですね、私は、これは非常におくれている、ここに落差があると思うのですよ、詳しいことは、もう時間が大分詰まってきましたから略しますけれども、むしろ大規模地震対策特別措置法ができてから、かえって予知ができるのだから大丈夫じゃないかということになって、肝心の国土の防災化という問題に関しては逆現象が生まれている。私は、これは非常に心配だと思うのです。たとえば富士のサファリという動物園ができましたね。それでわざわざ施行規則まで変えて、地震のときにはそういう猛獣はライフルでどうするとかいうことまで決めなければいけなくなったのだけれども、地震が起こることは間違いないときに何十頭の猛獣を置くようなサファリの認可がされるとか、これは一例ですけれども、そういう点では、これは一〇〇%ではありませんけれども、予知ができる可能性が強い警報のシステムができた。それに安心してあの東海地方に危険物がかえってふえる傾向がある。  それで、一番問題になるのは、私はやはり原子力発電所だと思うのです。浜岡に一号、二号の原子力発電所がいまあります。それで、東海地方の地震を予測してみたら、あれが震源の真っただ中だということがわかったわけですね。政府も認めていることですが、大体、長さ百キロから百二十キロ、それから幅五十キロの大体四角の範囲で断層が起きる、これが東海地震の姿だと予想されているわけですね。この断層を静岡県の地図の上にかいてみますと、浜岡原発の存在しているところがまさに真上なのですよ。だから、本来ならこの原発をどうするかということが次の課題になるはずなのだが、そうじゃなしに、第三号炉の建設がいま問題になっているでしょう。  もう地震が起こることは間違いないと、国の法律までつくって、その体制までつくっている大規模地震のただ中のところへ何で三番目の原発をつくるのか。この問題について、もうたしか通産省の方では認可が終わったと聞いておりますが、通産大臣、どういうお考えであそこに原発をつくることを許可されたのか。それから、いま科学技術庁の方に回っているところだそうですが、科学技術庁としてはどういうつもりなのか、お答えをそれぞれいただきたいと思います。
  389. 田中六助

    田中(六)国務大臣 浜岡の第三号炉は、これは原子炉等規制法、これに基づきまして、御承知のように昭和五十五年の十二月十二日に原子力委員会に諮問したところでございまして、目下検討中でございます。もちろん私どもは、基本設計から詳細設計に至るまで直下型の地震に耐え得るような調査、それからそれに対する研究というものをあらゆる角度から、文献はもちろん、ボーリングあるいはまたその他の地質調査、そういうものを含めまして十分な調査をいたしまして行うつもりでございまして、目下、ただいま申しましたように原子力委員会に諮問中でございます。
  390. 中川一郎

    ○中川国務大臣 原子力の立地問題についてはいろいろと考えなければなりません。したがって、地震が来た場合の予想される地震にさらに安全性を持って大丈夫だという確信を得てからやるということでございまして、三号炉については通産省の安全審査を終えまして、いま科学技術庁のいわゆるダブルチェックによる原子力安全委員会の審査を経まして、もし危険なところがあればやりませんけれども、安全であるという確信を得た上で初めて着工するということで、危険な中に強行しようとは思っておりません。
  391. 不破哲三

    不破委員 先ほど通産省の審査という話があったのですが、私ここに通産省が去年の十二月に出した審査結果の概要という文書とそれから詳細の文書を、二つ持ってきているのですが、浜岡の原発の審査に当たってどんな地震を想定をしているか。震度五を想定しているというのですよ、文書を見ますと。ところが、震度五だったら、東京は震度五だから強化地域から外されたわけですね。震度五なんて絶対あり得ないわけですね。これはあらゆる予想がそうですけれども、大体浜岡では震度七なんです。気象庁の震度階の最高です、七以上はないのですから。震源地ですからね。マグニチュード八クラスの大地震の震源地ですから、最高クラスに置かれているわけですよ。しかも、これは静岡県で調査したら、もうそのときに、ちよっと専門的になりますが、三百ガル以上の圧力が加わったらあそこは液状化する。新潟地震で御承知のように、地盤が地盤でなくなるというのですね。震度七といいますと三百どころか五百を超えるのですよ。だから、御前崎地区というのは安政地震のときにも一番ひどかったところだし、つまり地盤そのものがなくなっちゃうところなんですね。そこで幾ら耐震設計とかなんとか言ったって、これは理屈にかなうものじゃないのです。  先ほど塩川さんが判定会のことを言われましたが、判定会には五人の委員の方がおられて、その一人に力武さんという方がおられるのです。最近本を出されたので読みましたら、その中に「大地震を知らないもの」という項目があるのです。あんなに巨大地震の来襲が騒がれている御前崎地区で、なぜ浜岡原子力発電所の建設が進められているのだろうか。あの東海地震で判定の仕事を任された五人の判定会の一人の権威が、これは心配だと言っている。  実際にこの審査結果を見ますと、震度五というむちゃな想定をしている。実際には震度七なんだから、これ以上はないという大激震地域なんだ。そこへ何でわざわざ新しい原発をつくるのか。私、聞いているところですと、そのときに地盤が液状化して地盤でなくなる。そうすると一号、二号も危ないから、どうやって手を打ったらいいだろうかということを工事の関係者の間でいろいろ研究しているそうですけれども、そういう研究をしなければいけないところに原発を置くなんということは、日本でも世界でもまさに常識の域をはるかに超えたことなんですね。アメリカでは、たとえばボデガベイというところで原発が動いていたのです。地質学者がこの近くに地震の震源があるということを発見して、それで警告したために、動いていた原発をとめて中止させるとか、それから原発の計画があったら、それについて地質学者からここが危ないということを言われると、その点は学問に完全に従って、危ないところには絶対つくらぬということになっておるそうですけれども、東海大地震であれだけ大騒ぎしながら、その震源地で、この前の安政の地震のときに一番ひどかったところに、何で三基目の原発を置くことを通産省が許可するのか。私は、これは通産省としては大ミスだと思うのですよ。まだ科学技術庁が控えているから完全に全部アウトじゃないけれども、私は、通産省もそういう非常識なことを、判定会の地震学者が地震を知らない者のやることだとこういう本に書いているようなことを、日本政府の通産省は麗々とやるものじゃない。これは中部電力に引き回されていると言われても仕方がないわけですね。通産省もやり方を変えるべきだし、科学技術庁は、科学技術庁にいま預けられているわけですから、この点では絶対に後でしまったということにならないような厳重な審査ですね、これは耐震設計なんというものじゃないですよ。地盤がなくなろうというところに何で地震に丈夫な——その原発は丈夫かもしれないけれども、液状化すればひっくり返りますよ、アパートと同じに。そこになぜそれを据える必要があるのか。それが大規模震災対策の特別措置法をわざわざ制定した政府のやることかどうか、そこをよく考えてほしいと思うのですね。
  392. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま御指摘になりました浜岡三号につきましては、震度五以上のケースをすべて調査したわけでございまして、震度五を想定したわけではございません。私どもが三号の審査に当たりまして、原子力委員会がお決めになりました耐震設計審査指針に基づいて審査をしたわけでございますけれども、これは歴史上の最大級の地震動も想定いたしております。浜岡のケースで申し上げますと、安政年間にいわゆる安政大地震が起こりまして、この際のマグニチュードは八・四でございました。理論的に考えられます地震の最高震度は、マグニチュード八・六でございますから、(不破委員「震度じゃないよ、それは」と呼ぶ)マグニチュード八・六でございますから、私どもはそれを想定して、いかなる地震が来ても耐え得る、こういう判断のもとにしたわけでございまして、ただいま先生の御指摘になりました震度五で安全審査をしたということは、そういう事実はございません。震度五以上のケースをすべて頭の中に入れて審査をした、こういうことでございます。
  393. 不破哲三

    不破委員 それなら、震度七の場合もあり得ることを承知の上で審査、オーケーを出したのですか。
  394. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど申し上げましたように、歴史上の最大級の地震動及び敷地周辺の活断層、さらに地震地体構造から将来起こると予想されております直下型地震を含む最大の地震動すべてを勘案して安全審査をしたわけでございます。
  395. 不破哲三

    不破委員 よけい重大だと思うのですね。震度七ということは、これ以上の地震はないということですよ。先ほど塩川さんが言われた判定会の会長さんの萩原さんがかいた地図がここにありますが、これは御前崎が中心ですよ。ひどい地帯が六から七ですね。震度五なんというのは、五だったら強化地域に入らないわけですから、政府の決定が、御前崎を含めて全部六以上だということで決定しているわけでしょう。  それで、震度五と六と七ではけたが、二割、三割じゃないのですよ。もうめちゃくちゃに違ってくるわけですね、地震は御承知のように何乗でかかってきますから。だから、震度五以上を考えて最高の七も入っているんだ、これは全く詭弁だと思うのですね。七ということは、地震に関しては一番ひどい地帯だ。一番ひどい地帯に原子力発電所を、わかっていて置く……(「ばかだよ」と呼ぶ者あり)ああいう言葉が出るような状態ですよ。わかっていて置く政府や企業は世界には存在しませんよ。だから、本当に通産省が、震度七になり得ることを承知の上で浜岡原発の認可をしたのだとしたら、私は罪は一層深いと思うのです。ぜひ再検討を求めたいと思います。
  396. 高橋宏

    高橋(宏)政府委員 お答えいたします。  震度五以上では七が実際にどういうかっこうで審査されたか、こういう御趣旨の御質問だと思いますが、私ども耐震設計をやります場合に、最終的にはそこでどういう揺れがあるかということが問題になるわけでございます。その指数として、たとえば揺れの加速度とかあるいは揺れの速度というものをとります。さっき先生が三百ガルとおっしゃったのは加速度の意味でございます。  さて、この浜岡の三号でございますが、私どもは、先ほど長官が申しました耐震設計審査指針、いろいろな地震の条件を単一ではなくてたくさん考えますけれども、その中で一番影響力が大きい、激しいという趣旨で、実は浜岡三号の場合には、先ほど先生おっしゃいましたが、もっとひどい四百五十ガルというのを標準にやっております。そしてしかも、格納容器とか重要な施設につきましては、さらに六百ガルの地震をこの設計用の前提として計算をいたしまして、そして許容応力との安全度を見ましてチェックした、こういうのが実情でございます。この四百五十ガル、六百ガルというのが震度でどういうものと対応するかというのは、必ずしも一対一じゃないようでございますが、そういう意味で当然震度五以上を十分やっておるというぐあいに私どもは考えておりますし、そういう中身でございます。
  397. 不破哲三

    不破委員 幾ら構造物を丈夫にしてもだめなんです、地盤が壊れるのですから。  これは静岡県が調査に基づいてまとめたものですよ。これは地盤の液状化地図です。三百ガルの加速度が働いたら液状化して地盤でなくなるところがずっとかかれているでしょう。御前崎、浜岡というのはこのど真中にあるのですから。それでしかも、原発から海の中へ給水口を出していて、この給水口のルートから何から全部地盤が崩れたらどうなるかということがいま問題になっているのですよ。それを承知の上で、そんな地盤が液状化してなくなることがわかっているところに新しい原発を据えつけるということをまじめに考えて決定したのだとしたら、私は、もうその人たちは資源やエネルギー問題に対してタッチする資格がないと思いますね。そのことを、こういう性質の問題なんだということを関係者はよく見てほしいとぼくは思うのですよ。  もう一つ言いますと、そのほかに地震危険地帯というのは多いのです。ちゃんと地震学者の間で、予知連絡会で特定観測区域というのを全国につくっているわけですね。これは震度六以上の地震の危険が近い将来あるところ、その中にたとえば宮城の女川、福島あるいは新潟の柏崎あるいは愛媛の伊方、それから浜岡、島根、こういう原発がそういう特定観測地域として地震学者が心配して予知体制をつくろうとしているところへ、大体日本の原発の半分ぐらいがいま据えられているわけですよ。そのことをやはりよく考えて真剣な対処をしてほしいと思いますね。
  398. 中川一郎

    ○中川国務大臣 不破委員御指摘するまでもなく、原子力行政で一番大事なのは安全性でございます。必要性についていま国民の間に反論はないのでございますけれども、安全性ということが一番重大な関心があるところでございますから、御指摘の気持ちはよくわかるのでありますが、いま通産省では通産省での安全審査を終えたところでございます。  そこで、わが国ではダブルチェックと言って、役所側の安全審査だけでは事足りない。やはり民間の専門家等に十分チェックをしてもらって、いわゆるダブルチェックでやるということから、地震の専門家、地質の専門家、気象の専門家、そういった人に十分審査をしてもらって、考えられる地震、最高の地震が来ても、さらにその上に安全性を見込んで、これならよろしいということで着工を決定するのであって、まだ着工を決定した段階ではありません。着工予定地としていま審査の段階にございます。御指摘の点はよくわかります。日本の国は地震の多い国ですから、どこでも地震対策というのが一番大事でございますので、その点は国民に迷惑をかけないように、念には念を入れて納得のいく審査をして、着工できるものならできる、こういうことにしていきたいと思いますので、御了承願います。
  399. 不破哲三

    不破委員 大いに厳重な、納得できる対処を通産省も含めてお願いしたいのです。  次に、南関東の直下型地震の問題を伺いたいと思うのです。時間が大分詰まってまいりましたので、まとめて質問しますから、質問は三点ぐらいになりますけれども、分業で結構ですからまとめてお答え願いたいのです。  それで、東海地震はきわめて大型だが、首都圏の予想される直下型地震、これは学者にいろいろ伺いましても、地震の大きさとしてはもう一回り小さい。大体、萩原さんにこの間伺いましたら七前後、大きい場合には七・一とか三とかのマグニチュードがあるでしょうが、そういうものだ。しかし、これが一たん起きた場合の被害の規模というのは東海以上のものがあるわけですね。たとえば首都圏には、東京、神奈川、千葉、埼玉、合わせますと約二千八百万の人間、日本の人口の四分の一が集中している。それにコンビナートも集中している、この東京のように、大体、地震の巣と言われるところに首都をつくった例は世界にないのです。だれが間違えたのか知りませんけれども、いまの地震学でもいろいろなプレートが重なり合っている一番地震の危険の多いところへ首都ができちゃった。それで三千万近い人が住んでいる。これは世界に例がないわけですね。しかし、これはもう与えられた条件ですから、それに対して備えることが非常に大事だ。  それで、東海地震と直下型とを比べてみても、どちらが先に来るかということはわからぬ、どちらもいつ起きても不思議でない。ただ、東海の方は予知できるシステムがあるから先に法律化されただけで、危険の度合いというのは変わりないのだというのが予知連の会長の御意見でした。その点では私、この間のイタリアの地震が非常に教訓的だと思うのですが、この間、東京都の調査団が行って帰ってきた報告を見ますと、大きさは六・五マグニチュードだというのですよ。だから余り大きくないわけですね。それでもあれぐらいの被害があった。調べてみると、震源があったアベリーノ県というのは東京より広い面積なんですが、人口四十万台なんです。人口密度百五十人程度。ところが東京は、二十三区というのは、その面積からいうと五分の一ですけれども、人口は約十九倍ですから、密度九十倍以上なんですね。だから、もし同じような型の地震が東京に起きたら、あのときにイタリアは、あれでも被害が一万六千平方キロメートルの範囲だと言いましたから相当広くなるわけですけれども、はるかに大きな被害を受ける。その点ではやはり本格対策が最も早く望まれると思うのです。その点で私、三つの問題を政府に提起したいのです。  一つは、予知という問題でも、東京は観測体制がまだ空白だということですね。七〇年代にようやく深井戸が三つ東京都周辺にできて、去年から三番目が動き出して、地下の地震を測定する体制の最小限はようやくできているのです。東京というのは谷間に沖積がたまって、そこの上に建物や工事がしょっちゅうやられているところですから、相当地下深く掘らないと本当の地震の動きがわからぬ。この観測体制の第一歩がようやくできたところなんです。  ところが、地震の観測では、もう御存じでしょうが、そういう実際の微小地震の観測と同時に、地殻の変動を絶えずはかるということが大事なんですね。ところが、いまのところ東京では、この地殻の変動をはかる観測点というのは日野に一カ所あるだけと学者に聞きましたが、東京都周辺に全くないのです。東海に比べると相手はもう一回り小さい相手ですから、これを観測しようと思うと、本当ならもっと細かい網の目が必要なんだが、それがまだできていない。これは私は第一優先で、観測の空白網だと言われないように、この東京での観測体制を完備して書いまでも学者に聞きますと、明治の初めに日本じゅうの測量をやったのがいまじゃ地震で生きているんだと言いますけれども、これだけ科学技術が進んで、後世に役に立つような観測網を首都に整備しなかったら、これは申しわけないと思うのですね。これをまず第一優先でいま以上にテンポを上げでやってもらいたい、これが第一番です。  それから第二番は、そうやっても、予知は東京の場合なかなか大変です。地震が起きたときに、それに対して人的被害を最小限に食いとめるような防災都市化、これが次の問題だと思います。  この点で、たとえば東京で言いますと、いまから十数年前に、江東のデルタ地帯が一番危険だ、逃げ場所もないというので、逃げ場所だけをつくろうという拠点計画ができたんですけれども、大体五千億円かかると当時言われました。十年間かかって六カ所のうちの一つの半分がいまできかかりです。それだけでも一千億かかったそうで、政府から百九十五億の予算が出ていますが、これは道路をつくるとか公園をつくるとか住宅をつくる補助が大部分で、震災用ということでの補助はまだ九十二億程度ですね。ですから、これを本気でやろうと思ったら、いままだ六カ所全部については計画も立たない段階なんですが、そういうものはやはり国のプロジェクトでやらないと、なかなかいざ地震に間に合うような体制はできない。  その点で私、ちょっとここで皆さんにお見せしたいのは、そうなった場合、一体東京のどこが被害を受けるか。十年前には下町が一番危ないと言われていました。これは一番最近、消防庁でつくった地図なんです。火事が起きたときに燃えやすい危険地帯はどこにあるかという地図ですね。赤いのが一番危険なところです。火事だけですよ。全東京二百五十メートルメッシュで区切って、その中に一カ所火事が起きたらどれぐらい燃え広がるか、消防力を含めてやったのがこの地図なんです。そうしますと、昔危険だと言われた江東、これはまだ危険ですけれども、火事という点で言うと、それ以上にこの東京の周りが一番危険地帯で、一たん火がついたら大部分焼けてしまうようなところに東京は囲まれている。それで実際に調べてみると、この周りについてはどうやって防災都市化するかというプランまでいまだにできていない状態です。これは、プランができたとしても実行するには莫大なお金がかかるでしょう。この間、川崎に行きまして伺いました。川崎では昔からコンビナート地帯に生活圏が接続している。コンビナートが地震で被害を受けたときに、それを生活圏にどう広げないか。遮断計画というのは、建設省も入っていろいろ計画を立てました。しかし、これも現状では全然進まないわけですね。とてもどこの自治体の手にも余るわけです。公共事業の中では、こういう防災化ということに関しては非常に優先度が高いわけで、自治体に任せられるわけじゃないわけですから、いろいろあるだろうけれども、本当にいまの経済力のベストを尽くして、三千万も住んでいる首都圏が、いまの経済力の条件で少しでも人命の安全な地帯になるように、この点でやはり抜本的な政策や財政措置の再検討を私はお願いしたい、これが二番目です。  それから三番目は、これも非常に痛感しているのですが、いざ地震が起こって東京などが火事になったとき、一番問題になるのは消防力です。ところが東京などの場合には、地震が来るとすれば水道は期待できないから消火栓は使えないそうです。いまでしたら、消防体制というのは、火事が一カ所あると二つぐらいの署から十何台の消防車が集まって消しに行く、こういう体制でしょう。ところが、地震のときの火事の想定は、一つの消防署の管内に何十カ所も火事が起こる想定ですから、とてもそんな体制はとれない。東京の消防庁で聞きましたら、二台編成のチームをつくって、ここから先は火事は広げませんよ、逃げ道だけ確保しますという山火事を消すときのような遮断計画がせいぜい精いっぱいだ、どこの消防署でもそういう計画を持っているんだと言うのですね。その遮断計画をやる場合にも水が要ると言うのです。  それで、貯水槽をそれだけ完備しなければできない。いまの計画では、ああいうメッシュの中に百トンの貯水槽とか四十トンの貯水槽とか、これをつくる計画だ。東京ではちょっと進んでいますが、大体千個足りないそうです。それで百トン貯水槽で二台の消防自動車がフルに働いて何分もつかと聞いたら三十分だというのです。しかし、その三十分という最小限の水も、まだ東京で手近くの数が足りない、それで、大体財政のことがあるから十年計画で完備したいんだ、しかし、政府があり、経済、文化の中心があり、そしてこれだけの人間が集中している東京で、消防体制の最小限の水さえも、地震はいつ来るかわからないというのに、十年かからなければ貯水槽の保証ができないということでは、私は、これはやはりベストを尽くしたと言えないと思うのですね。問題はたくさんありますけれども、私は、もし起きたら日本で最大の被害を与える首都圏の直下型地震に備えるためには、ぜひ東京及び近辺の予知計画について、いまある地震計に加えて、これは見に行きましたが三千メートルも掘ったりっぱなものですけれども、それに加えて、地殻のゆがみを刻々はかれるような地殻ひずみ計の網の目をぜひつくることを日程に上せてもらいたい。  二番目に、もう防災が自治体の手に余る。しかも日本の人口のかなりの部分が住んでいるところを防災化するために、国が自分のプロジェクトとして乗り出せるような政治と財政の手だてを講じてもらいたい。  三番目に、最小限の問題としては、こういう危険地域に対する消防水利の確保だけは、いま東京で計画している十年計画なんて言わないで、もっと早くできるような措置をとってもらいたい。これはどんなに財政事情がいろいろ複雑であろうとも、日本の財政危機が長く続くことを考えると、解決してからといって待っていられない問題だと思いますので、そういう点について関係大臣及び総理答弁をお願いしたいと思います。
  400. 原健三郎

    ○原国務大臣 ただいま不破委員から非常に切実なお話を拝聴いたしました。まことに切実に緊迫している事情がよくわかりまして、のんきなことをしておられないということを痛感いたしました。  第一に、地震について、東京のような直下型地震の来るところに対してこの予知体制が少ない。御意見のとおりであります。これは地下だから、案外東海の方が激しくて東京の方がその次だというような考えもあるのですが、これほどの大人口を擁しているところは、御説のとおりぜひこの体制、予知施設をつくりたい、こう考えております。  第二は、防災化、この防災都市化のためにもっと財政的資金を投じて積極的に対策をやるべし、これもわれわれも考えておるところですが、いまのような政府方針もありましてなかなか思うようにいきませんが、趣旨としては賛成でございます。これは備えあれば憂えなしというので、早くやっておかなければ、ぱっと来られたときにあわてても間に合わないということは当然のことであります。  第三は、火事が起こる。東京などことに日本の建物は、地震がこわいというよりも地震に付帯する火事が一番恐ろしい、こういうことも言われておるほどでありますので、それにはいまおっしゃったように水が足らない、御調のとおりであります。まだ千個も貯水槽が足らぬとか三十分しかもたぬとか、考えてみましてもなかなか思うようにいっておりません。ぜひこれは消防庁の方も要求しておりますので、こういう点もやって、日本の持っておる地震に遭うという運命に対して勇敢に立ち向かっていくことが必要であると思います。われわれも大いにそれを準備をいたしたい、こう考えておるところでございます。
  401. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のように、東京の直下型地震というものはマグニチュード七ぐらいの中型地震と言われておるということ、もう一つはノイズ、東京ではいろいろな建物工事とかその他のノイズがあって観測がしにくいということ、こういうことでなかなか予知体制ができにくいところではありますが、科学技術庁としても、この間不破委員も観測いただいたそうですが、三千メートル級の深井戸三基もつくりまして相当積極的に取り組んでおります。いずれにしても、東京は大変な人口密集地でございますので、われわれとしてもとりあえずこの三本の井戸を中心にして観測を進め、まだ足りなければさらに増設をする等観測体制については万全を期していきたいと存じます。
  402. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 耐震性の水槽につきましては、御指摘のように東京でもある程度やっております。百トン級のものと、それから災害時におきまして飲料水をも供給できるような兼用の千五百トンの耐震性水槽をいま進めておるわけでございます。まだ十分でございません。これは早急にもっと強力に進めて災害時に備えたい、こう考えております。
  403. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 時間が長引いているところを恐縮でございます。  不破先生の御質問、特に地震対策について大変見識ある御質問をいただきまして、私は感謝申し上げます。実は私、党の地震対策特別委員長をやってきまして、東海沖地震については相当詳しく勉強してきましたけれども、特にそれにかかわって、関東地区の方々が案外に無関心であるということ、したがって、きょうの先生の御質問で、聞いておられる都民の方々がもう一度やはり自分たちの住居の防災について御理解をいただくということをまずお願いをいたしたい。  建設省といたしましては、避難地、避難路、特別防災地域等につきまして、積極的にこれを含めて従来からやっております。特に、先生御存じであろうと思いますけれども、木場公園、白髪、亀戸、大島、小松川、両国、中央地区等々をいま進めつつあります。特に、いま先生方にもぜひごらん願いたいのは木場公園、これは二十四ヘクタール、十五万人の方々のための避難地域であります。白髪は、東、西を合わせて五十八ヘクタール、二十四万人の方々のためのことをいまやって、千数百億投じてやりつつあるわけであります。  こうしたことをいま積極的にやっておりますが、先ごろのアルジェリア、イタリア地震を土木研究所、建築研究所の先生方に見ていただきまして、被害が多くなったのは、せっかくそれに対応する機械、器具があっても、道路が整備しておらなくて使えないということ、そうしたことがやはりあわせて防災関係についてはぜひ御理解をいただかなければならない問題であろうかと私思います。  ともあれ、担当建設省といたしましては、防災、不燃化につきましては積極的にやりますが、都民の方々もぜひ防災都市計画については御協力を願わなければなかなかこれはむずかしいわけで、この際、御披露申し上げるわけであります。いろいろと問題点もあろうかと思いますが、建設省といたしましては、積極的な対応をもって防災対策に積極的に取り組むことを申し上げましてお答えといたします。
  404. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 不破さんから特に首都圏を中心とする直下型地震対策、観測予知体制の早急な整備、また防災体制、耐震性、耐火性の不燃化の防災体制の整備、さらに消防等の施設の整備等、非常に重要な問題について御指摘がございました。政府としても、中央防災会議を中心といたしまして、関係閣僚、関係各省庁を動員しましてこの対策を進めたい、こう思っております。
  405. 小山長規

    小山委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十一分散会