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不破委員 大いに厳重な、納得できる対処を通産省も含めてお願いしたいのです。
次に、南関東の直下型地震の問題を伺いたいと思うのです。時間が大分詰まってまいりましたので、まとめて
質問しますから、
質問は三点ぐらいになりますけれども、分業で結構ですからまとめてお答え願いたいのです。
それで、東海地震はきわめて大型だが、首都圏の予想される直下型地震、これは学者にいろいろ伺いましても、地震の大きさとしてはもう一回り小さい。大体、萩原さんにこの間伺いましたら七前後、大きい場合には七・一とか三とかのマグニチュードがあるでしょうが、そういうものだ。しかし、これが一たん起きた場合の被害の規模というのは東海以上のものがあるわけですね。たとえば首都圏には、東京、神奈川、千葉、埼玉、合わせますと約二千八百万の人間、
日本の人口の四分の一が集中している。それにコンビナートも集中している、この東京のように、大体、地震の巣と言われるところに首都をつくった例は世界にないのです。だれが間違えたのか知りませんけれども、いまの地震学でもいろいろなプレートが重なり合っている一番地震の危険の多いところへ首都ができちゃった。それで三千万近い人が住んでいる。これは世界に例がないわけですね。しかし、これはもう与えられた条件ですから、それに対して備えることが非常に大事だ。
それで、東海地震と直下型とを比べてみても、どちらが先に来るかということはわからぬ、どちらもいつ起きても不思議でない。ただ、東海の方は予知できるシステムがあるから先に法律化されただけで、危険の度合いというのは変わりないのだというのが予知連の会長の御意見でした。その点では私、この間のイタリアの地震が非常に教訓的だと思うのですが、この間、東京都の調査団が行って帰ってきた報告を見ますと、大きさは六・五マグニチュードだというのですよ。だから余り大きくないわけですね。それでもあれぐらいの被害があった。調べてみると、震源があったアベリーノ県というのは東京より広い面積なんですが、人口四十万台なんです。人口密度百五十人
程度。ところが東京は、二十三区というのは、その面積からいうと五分の一ですけれども、人口は約十九倍ですから、密度九十倍以上なんですね。だから、もし同じような型の地震が東京に起きたら、あのときにイタリアは、あれでも被害が一万六千平方キロメートルの
範囲だと言いましたから相当広くなるわけですけれども、はるかに大きな被害を受ける。その点ではやはり本格対策が最も早く望まれると思うのです。その点で私、三つの問題を
政府に提起したいのです。
一つは、予知という問題でも、東京は観測体制がまだ空白だということですね。七〇年代にようやく深井戸が三つ東京都
周辺にできて、去年から三番目が動き出して、地下の地震を測定する体制の最小限はようやくできているのです。東京というのは谷間に沖積がたまって、そこの上に建物や工事がしょっちゅうやられているところですから、相当地下深く掘らないと本当の地震の動きがわからぬ。この観測体制の第一歩がようやくできたところなんです。
ところが、地震の観測では、もう御存じでしょうが、そういう実際の微小地震の観測と同時に、地殻の変動を絶えずはかるということが大事なんですね。ところが、いまのところ東京では、この地殻の変動をはかる観測点というのは日野に一カ所あるだけと学者に聞きましたが、東京都
周辺に全くないのです。東海に比べると相手はもう一回り小さい相手ですから、これを観測しようと思うと、本当ならもっと細かい網の目が必要なんだが、それがまだできていない。これは私は第一優先で、観測の空白網だと言われないように、この東京での観測体制を完備して書いまでも学者に聞きますと、明治の初めに
日本じゅうの測量をやったのがいまじゃ地震で生きているんだと言いますけれども、これだけ科学技術が進んで、後世に役に立つような観測網を首都に整備しなかったら、これは申しわけないと思うのですね。これをまず第一優先でいま以上にテンポを上げでやってもらいたい、これが第一番です。
それから第二番は、そうやっても、予知は東京の場合なかなか大変です。地震が起きたときに、それに対して人的被害を最小限に食いとめるような防災都市化、これが次の問題だと思います。
この点で、たとえば東京で言いますと、いまから十数年前に、江東のデルタ地帯が一番危険だ、逃げ場所もないというので、逃げ場所だけをつくろうという拠点計画ができたんですけれども、大体五千億円かかると当時言われました。十年間かかって六カ所のうちの
一つの半分がいまできかかりです。それだけでも一千億かかったそうで、
政府から百九十五億の予算が出ていますが、これは道路をつくるとか公園をつくるとか住宅をつくる補助が大
部分で、震災用ということでの補助はまだ九十二億
程度ですね。ですから、これを本気でやろうと思ったら、いままだ六カ所全部については計画も立たない段階なんですが、そういうものはやはり国のプロジェクトでやらないと、なかなかいざ地震に間に合うような体制はできない。
その点で私、ちょっとここで
皆さんにお見せしたいのは、そうなった場合、一体東京のどこが被害を受けるか。十年前には下町が一番危ないと言われていました。これは一番最近、消防庁でつくった地図なんです。火事が起きたときに燃えやすい危険地帯はどこにあるかという地図ですね。赤いのが一番危険なところです。火事だけですよ。全東京二百五十メートルメッシュで区切って、その中に一カ所火事が起きたらどれぐらい燃え広がるか、消防力を含めてやったのがこの地図なんです。そうしますと、昔危険だと言われた江東、これはまだ危険ですけれども、火事という点で言うと、それ以上にこの東京の周りが一番危険地帯で、一たん火がついたら大
部分焼けてしまうようなところに東京は囲まれている。それで実際に調べてみると、この周りについてはどうやって防災都市化するかというプランまでいまだにできていない
状態です。これは、プランができたとしても実行するには莫大なお金がかかるでしょう。この間、川崎に行きまして伺いました。川崎では昔からコンビナート地帯に生活圏が接続している。コンビナートが地震で被害を受けたときに、それを生活圏にどう広げないか。遮断計画というのは、建設省も入っていろいろ計画を立てました。しかし、これも現状では全然進まないわけですね。とてもどこの自治体の手にも余るわけです。公共事業の中では、こういう防災化ということに関しては非常に優先度が高いわけで、自治体に任せられるわけじゃないわけですから、いろいろあるだろうけれども、本当にいまの経済力のベストを尽くして、三千万も住んでいる首都圏が、いまの経済力の条件で少しでも人命の安全な地帯になるように、この点でやはり抜本的な
政策や財政措置の再検討を私はお願いしたい、これが二番目です。
それから三番目は、これも非常に痛感しているのですが、いざ地震が起こって東京などが火事になったとき、一番問題になるのは消防力です。ところが東京などの場合には、地震が来るとすれば水道は期待できないから消火栓は使えないそうです。いまでしたら、消防体制というのは、火事が一カ所あると二つぐらいの署から十何台の消防車が集まって消しに行く、こういう体制でしょう。ところが、地震のときの火事の想定は、
一つの消防署の管内に何十カ所も火事が起こる想定ですから、とてもそんな体制はとれない。東京の消防庁で聞きましたら、二台編成のチームをつくって、ここから先は火事は広げませんよ、逃げ道だけ
確保しますという山火事を消すときのような遮断計画がせいぜい精いっぱいだ、どこの消防署でもそういう計画を持っているんだと言うのですね。その遮断計画をやる場合にも水が要ると言うのです。
それで、貯水槽をそれだけ完備しなければできない。いまの計画では、ああいうメッシュの中に百トンの貯水槽とか四十トンの貯水槽とか、これをつくる計画だ。東京ではちょっと進んでいますが、大体千個足りないそうです。それで百トン貯水槽で二台の消防自動車がフルに働いて何分もつかと聞いたら三十分だというのです。しかし、その三十分という最小限の水も、まだ東京で手近くの数が足りない、それで、大体財政のことがあるから十年計画で完備したいんだ、しかし、
政府があり、経済、文化の中心があり、そしてこれだけの人間が集中している東京で、消防体制の最小限の水さえも、地震はいつ来るかわからないというのに、十年かからなければ貯水槽の保証ができないということでは、私は、これはやはりベストを尽くしたと言えないと思うのですね。問題はたくさんありますけれども、私は、もし起きたら
日本で最大の被害を与える首都圏の直下型地震に備えるためには、ぜひ東京及び近辺の予知計画について、いまある地震計に加えて、これは見に行きましたが三千メートルも掘ったりっぱなものですけれども、それに加えて、地殻のゆがみを刻々はかれるような地殻ひずみ計の網の目をぜひつくることを日程に上せてもらいたい。
二番目に、もう防災が自治体の手に余る。しかも
日本の人口のかなりの
部分が住んでいるところを防災化するために、国が自分のプロジェクトとして乗り出せるような
政治と財政の手だてを講じてもらいたい。
三番目に、最小限の問題としては、こういう危険地域に対する消防水利の
確保だけは、いま東京で計画している十年計画なんて言わないで、もっと早くできるような措置をとってもらいたい。これはどんなに財政事情がいろいろ複雑であろうとも、
日本の財政危機が長く続くことを考えると、解決してからといって待っていられない問題だと思いますので、そういう点について関係大臣及び
総理の
答弁をお願いしたいと思います。