○石橋(政)
委員 そういうところにこの言葉が出てきているわけじゃないのです。いわば
政治姿勢として、アメリカのレーガン大統領が強力な指導力を発揮してもらいたいということをばしっと言っているわけですよ。あなたがもし自分の指導力というものを放棄し、自分に何の
政治理念も
政策も
哲学もないとすれば、大統領、私の行く道を教えてください、どっちに行ったらいいんでしょう、こういうふうに聞こえるわけです。それじゃいまからやりとりしますから、あるんだ、アメリカが何と言おうとおれはがんばるんだとおっしゃるならば、あなた、明確にしていただけばいいわけですよ。いまここで私、質問に入る前に決めつけようと思いませんけれども。
いま必要なのは、レーガン大統領に強力な指導力を発揮させることじゃないと私は思う。
世界の平和のために逆じゃないんですか。アメリカのレーガン大統領というものは何で生まれてきたか。一般に言われておりますね、強いアメリカを願っているんだ。いままでのアメリカはだらしない、イランで五十三人も人質にとられているのに何にもできないような弱いアメリカじゃだめだ、もう一度強いアメリカになろうという
国民の願望が強いレーガンを生んだんだと言っているんです。これが一般的な見方です。そういうものに指導力を発揮されて、あなた、それに追随して、あなたのおっしゃる平和とどうつながるのですかと私は思う。
少なくともいままでのアメリカにはベトナムの反省というものがあったわけです。(発言する者あり)黙って聞きなさい。ベトナムの戦争でアメリカの政府も
国民も反省したんだと私は思うのです。結局、人民の支持のない政権、独裁政権というものは、何十万の兵を送っても支えることはできない。一千億ドルと言われるような軍費を投入しても支えることはできなかった。結果的には敗北した。そして、支えることができなかっただけではなくて、アメリカの国力がものすごく低下したわけですね。
経済力も低下した。ドルの値打ちも下がった。そして、強いアメリカになろうと言ったってなれなくなったのですよ。それだけじゃない。人心も荒廃した。自分の国がやられたわけでもないのに、ただ反共というだけで戦場に赴けと言っても簡単に若者たちが立ち上がらない、マリファナに逃げた、それが国内に持ち帰られた、人心の荒廃も生んだ、そういう反省があったと私は思うのです。レーガン大統領の前に仮に弱いアメリカというものがあるとするならば、私は強い、弱いという基準をそういうところに置くのは間違いだと思いますけれども、私はそういう反省の上に立ったアメリカがあったと思うのです。だから、本来
政治となじまない人権
外交なんという言葉も生まれたと私は思う。
それがいけない。やはり強い、
世界の憲兵としてのアメリカ、それを望んでレーガン大統領が生まれたと言われるような、もしそれが事実だとするならば、これは危険なんです。指導力を発揮してもらいたいと言うのは危険なんです。どちらかというと冷静に、
日本もあるいはECの各国もこのアメリカの今後をしっかりと見据えて、場合によっては、危険と見たらブレーキをかけるぞ、こういう姿勢こそ望まれるのではないかと思うから、いかがなものかと私は申し上げているだけなんです。もしそうだとあなたおっしゃるならば、本当にそうかどうか、いまからのやりとりで明らかにしていただけばいいわけですよ。そうあってもらいたいと思うのです。どう思っても、これは誤解を招く言葉ですよ。少なくとも、いままでリーダーシップを発揮する気はない、ないと言われた方だけに、アメリカの大統領には指導力を発揮してもらいたい、強く期待するというのは誤解される言葉であるということを最初に申し上げておきたいと思うのです。
とにかく、事実関係から見ても、どうもアメリカの要請、要求といいますか、そういうものに屈しておるんじゃなかろうかという気がするわけです。最初から申し上げているように、
防衛問題にしぼってみましても、アメリカが強く要求しているでしょう。その一番きっかけになったのは、確かにあなたの先代の大平さんのときです。忘れもしません、去年のあの連休の前に、大平さんがアメリカに行く前にこの予算
委員会で何とおっしゃったか。いまの時点でわれわれの最大の目標は
財政再建なんだ、こういう中で
防衛費をふやすわけにはいきません、これ以上の
防衛費の増額ということをやろうと思えば、三つの選択を迫られます。三つの選択って何だ。国債依存あるいは歳出の削減。私たちは、それは主として福祉の後退につながったり、供給削減につながると見ておりますが、この歳出の削減。そして三つ目には増税。この三つの選択を迫られることになる。
国民の理解はなかなか得にくい。だからできないのでございますと言って、ここで
答弁したのですよ、予算
委員会で。ところが、アメリカに行って、具体的に要求を突きつけられた。さっきから話に出ております着実かつ顕著に
防衛費をふやせ、ふやせ。しかも、政府の内部にすでにある計画を一年前倒しでやれ、それが中期業務見積もりのことであろうということは、当時の
官房長官であった伊東さんも、当時の外務
大臣であった大来さんも、記者会見で明確に認めておる。そのアメリカの要請をのんで、いま五十六年度予算がスタートしたのじゃないのですか。あのとき大平さんも言いましたし、大来さんも言いました。五十六年度
予算編成の段階で明らかになるでしょう。明らかになったじゃありませんか。着実かつ顕著な
軍事費の増額に踏み込んだではありませんか。これが何よりの事実だと私は申し上げるのです。これはもう本
会議でも飛鳥田
委員長から
指摘されましたとおりです。初めて社会保障関係費の伸び率よりも
軍事費、
防衛費の伸び率の方が上回ったのです。大蔵
大臣はわずか〇・〇一だ、こう言いますけれども、五十六年度は〇・〇一上回っただけにすぎないかもしれぬけれども、だんだん開くわけですよ。五十六年度
予算編成に当たっては、上回ったという事実をつくったところに意味があるのでしょう。これは中期業務見積もりが一年短縮ということになれば、もう五十九年度にはGNPの一%に達するわけですからね。急速に伸びていく。間違いない。しかもそれはアメリカの要求に屈する形で。自主的に必要があるというならば、何でこんな形が要るのですか。自主的にどうしておやりにならないのですか。アメリカが言うから、アメリカが言うから。その方が
日本の
国民を説得しやすいとお考えになっているのですか。いざとなればアメリカの救援を仰がなくちゃいけない。その肝心のアメリカがふやせと言うのだから、ちゃんとするだけのことをしておかぬと、いざというときには間に合いませんから、皆さん納得してください、この方が説得力があると思って、自主的にやらないで、アメリカから言われてやるのだという形をとるのですか。それとも、かつての
日本の軍国主義によって被害を受けた国がいっぱいある。絶えず警戒しています、
日本に対して。これはアメリカ国内にすらまだあるわけですね。そういう警戒心を持たさないようにするためにも、自主的にやるよりは、アメリカからわんわんわんわん言われるから渋々やるといった方式をとった方がいいとお考えになっているのですか。とにかく結果的には、だれの目にも明らかなように、アメリカから言われてやるという形が出ているのです。ここのところをどういうふうに納得すればいいのでしょう。お尋ねします。