○嶋崎譲君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま
議題となりました
放送大学学園法案の成立に強く反対する討論を行います。(
拍手)
まず最初に、昨日の文教
委員会における不当な質疑打ち切り動議、一方的
採決に強く抗議するものであります。(
拍手)
昨日の文教
委員会では、
政府案と、それに対し代案として
提出した
日本社会党案とが初めて並行
審議という形で
審査に付されたのであります。
委員会の
審議に入るに当たって、理事会は、二つの案は並行
審議すること、その際の各党の委員の質疑の順序を決定し、質疑に入ったのであります。
ところが、わが党の木島喜兵衞委員、共産党の山原健二郎委員の質疑時間が理事会で決定されていたにもかかわらず、木島委員の質問の直前に、一方的に自民党の理事が質疑打ち切り動議を
提出したのであります。
この
経過は、
委員会運営の基本である理事会の決定と、その権威を覆し、
委員会運営にあしき慣行を残すことになるのであります。しかも、自民党理事は質疑の継続を認めず、そのまま
採決を迫ったのであります。
かかる暴挙は、
国会運営における民主主義、ひいては議会制民主主義への否定を意味するものであります。したがって、昨日の文教
委員会の
本案採決に断じて承服することができないのであります。(
拍手)
本案は、
昭和五十四年の八十七
国会以来、五回の
国会で、衆参合わせて六十五時間という文教
委員会での最長の
審議時間を記録したことに示されているとおり、筑波大学以上の管理体制の問題や、準国営放送に伴う危険性、大学の自治、学問の自由といった根本問題にさかのぼり、論議が交わされてきたものであります。しかし、
政府・与党は、
委員会での
審査、参考人の
意見などに耳を傾けることなく、何らの修正、変更もなく、かたくなに原案を固執し続けてまいりました。
そこで、わが党は、
政府案に対し、
日本社会党の代案を法案として
提出し、国民の前にその選択を問うてきたのであります。
確かに、近年における
わが国の高等教育の急速な発展と社会の複雑、高度化の進展を背景に、国民の、大学教育の
機会の拡大、大学の社会への開放、あるいは学問の成果を国民に還元することへの要請はますます大きくなっております。さらには、受験地獄の解消、大学格差の是正も緊急な
課題であります。これらの国民的要請にこたえるため、放送を効果的に利用する大学を設置することは、まことに重要な意義を持つものと考えるのであります。
しかし、このような放送を利用する大学が国民の要請にこたえて、いつでも、どこでも、だれでも教育を受ける生涯学習権が保障されるためには、少なくとも次に述べる四点について十分な配慮がなされることが不可欠であります。
その第一点は、学問の自由、大学の自治が保障され、国からの独立が
確保されていることであります。
第二に、放送の本質、公共性にかんがみ、実質上の国営放送になってはならないことであります。
第三には、学問の自由、大学の自治と、
放送法制上の公共、公平の原則、言いかえれば権力からの言論、表現の自由とを適切に
調整する必要があるということであります。
そして第四は、全国的に教育の
機会均等を保障するとともに、
文化の多様性及び
地域性を
確保するということであります。
しかるに、現在
政府提出の
放送大学学園法案は、これまでの
審議の中で明らかなように、これらの点に対する配慮がまことに不十分であり、とうてい国民の期待にこたえる大学になるとは思えないのであります。
そこで、わが
日本社会党の案は、国民の、大学教育及び生涯学習の
機会に対する要請に真にこたえるために、学問の自由、大学の自治が確立されている国立の大学として放送大学を設置するとともに、その教育に必要な放送は、国からの独立性が保障されている
日本放送協会が行うことが最も適当と考えたのであります。(
拍手)
そこで、このような社会党案と
政府案とを対比しながら、
政府案に反対する
理由を述べたいと存じます。
まず第一に、
政府案は、放送大学の設置主体として特殊法人放送大学学園を設けることとしておりますが、特殊法人であるという特質を全く配慮することなく、その理事長、監事及び運営
審議会委員の任命権を無条件に文部大臣にゆだねております。さらには、理事会を法定することなく、理事長への権限の集中を図っております。この構想では、文部大臣の支配管理が可能となり、放送大学学園における放送の国からの独立をとうてい担保することはできません。
また、大学
組織についても、評議会のみを法定して、これに人事権を付与し、少数の評議員中心の大学運営を予定しております。この大学自治
組織では、教員全体の
意見が大学運営に反映する教授会が機能する保障はなく、学問の自由、大学の自治が脅かされるばかりでなく、教職員の積極的協力を期待し得ないのであります。
これに対して、社会党案のように放送大学を国立大学として設置すれば、既設の国立大学と同様に、人事権を初めとする重要な権限は教授会に属することとなり、大学運営に対する教員全体の
意見が反映され、大学の自治が担保されることになります。また、放送大学が、国立大学協会の一員として、国大協を構成する全国国立大学の
連合の共同利用機関として、その自治が支えられ、補強されることも見逃せないところであります。
なお、放送大学に不可欠な既設の国立大学等の教員の協力を得るなど、その提携協力
関係を確立する上でも、
政府案のように任期制をとる必要もなく、同時に、教育公務員の身分を保障したままで人事の交流を行うことができる点など、多くの利点があるということであります。
第二に、
政府案では、さきに述べたように、国からの独立性がきわめて弱い放送大学学園が放送
事業者となっており、事実上の国営放送になりかねないのであります。これでは、国民の世論操作や思想統制の手段に放送大学が利用されるおそれすら指摘せざるを得ないのであります。
これに対して、社会党案では、大学の自治を保障した放送大学が、国からの独立について
現行放送法制を前提として種々配慮されている
日本放送協会との協議を通じて、その教育に必要な放送を行うことによって、国営放送となる危険性を全く排除しているのであります。
第三に、
政府案では、放送
事業者の番組編集権と大学の教学権との
調整を同一法人内部の問題として処理するため、特殊法人方式を採用したとしております。しかし、特殊法人方式によって問題が解決したわけではなく、むしろ両者の
調整が国民の目に触れないところで、いびつな形で、しかも理事長の強い権限を背景に、番組編集権の優位のもとに安易に解決されるおそれが強いのであります。このことは、放送番組を水準の低い、魅力の乏しいものにすることになるのであります。
これに対して、社会党案では、イギリスにおけるオープンユニバーシティーとBBCとの
関係のように、放送大学と
日本放送協会とが教育界における提携者の
関係に立って、両者の
調整が国民に開かれた場で行われることを予定しております。確かに、イギリスのオープンユニバーシティーの場合でも、大学の講座や大学の制作した映画を放映する際、BBCがこれを拒否するという
事態が生じております。したがって、この両者の緊張した
調整関係は不可欠であります。この
調整のため、社会党案では、あらかじめNHKと放送大学との間に準則を設けて対処することといたしております。
第四に、国民の全国的な教育
機会をどのように保障するかについて、
政府案の場合、その将来計画があいまいなままに、とりあえず
東京周辺地区に放送大学を発足させようとしているばかりでなく、将来も画一的な放送番組を全国一律に放送することといたしております。
これに対して、社会党案は、将来計画の確定とその速やかな実現については、すでに全国放送の実績を持つ
日本放送協会の協力が大きな力となることは言うまでもありません。さらに、ローカル放送の活用等によって、
文化の多様性及び
地域性の要請にこたえる講義番組を提供する強みも見逃すことのできない点であります。
なお、国の財政逼迫の折から行政改革が叫ばれている今日、わが党案がはるかに経費の
節減を可能にするものであります。(
拍手)
以上、申し上げましたように、社会党案の方が
政府案よりもはるかにすぐれたものであると確信をいたしております。しかるに、わが党案に耳を傾けることもなく、並行
審議の最中に一方的に質疑を打ち切り、可決
採決に至ったことに対し、いま一度強く抗議するものであります。国民のコンセンサスも得られず、多くの疑義を残しつり……