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堀昌雄君 私は、ただいま
議題となりました
銀行法等の
改正案について、
日本社会党を代表して、その
基本理念について
鈴木総理、具体的な問題について
渡辺大蔵大臣に質問をいたし
ます。
まず最初に、
銀行法の
歴史的背景を見
ますと、
現行法は
昭和二年三月三十日に制定をされており
ますが、この三月三十日という日はきわめて重大な時期にあるのでござい
ます。
皆さんも御
承知のように、
昭和の
金融恐慌というのは、
昭和二年三月十五日に
東京の
東京渡辺銀行が休業いたしまして、この休業に始まって、全国の
銀行の取りつけ騒ぎに
発展をいたしたものであり
ます。まさに現
銀行法は、そういう
意味では大変な
金融恐慌のさなかに
法律が成立をしたという歴史的な問題があるのであり
ます。
それから五十四年たちました。そうして今度、この
銀行法は、目的を含めてすべての条項がほとんど書きかえられて、新法が
提案をされるということになったのであり
ます。
そこで、当時は
普通銀行が千四百二十四行もありましたけれども、それが今日は御
承知のような数になってまいりました。これらの問題を下敷きにしながら、私は私なりの
金融という問題についての基本的な考え方を持っており
ますので、まず、その問題を
皆さんに申し上げ、その土台の上で、
総理に
基本理念について伺い、具体的な問題を
大蔵大臣に伺うことにしたいと思うのでござい
ます。
金融というのは、
皆さんも御
承知のように、
企業に対して金を貸すという部分が
一つござい
ます。しかし、
企業に金を貸すためには、
金融機関に金が集まらなければ貸すことはできません。そこで、当然
国民の
貯蓄という問題があるわけでござい
ます。言うなれば、こちら側に
日本経済というものがありまして、この
日本経済は、現在の
市場経済という
仕組みの中では当然
合理性、
効率性が求められるわけであり
ます。そうして、この
日本経済というところで考えられている
金利というのは、実は
貸出金利なのであり
ます。
今度は、この
日本経済をずっと
細分化をしてきまして、一番
細分化をしてきた
最小単位、原点というのは何かといい
ますと、これは
家計であり
ます。個人の
家計がこの
日本経済の
最小単位であり
ます。言うなれば、
日本経済というのは、この
家計が全部全
国民の中に集積されたものが
日本経済に見合うわけであり
ます。
そこで、この
家計の面を考えてみ
ますと、
家計というものの裏側には私たちの
生活があるわけであり
ます。
生活ということになれば、われわれは、その日その日で暮らす時代はもう終わりました。少なくとも五年、十年、二十年という
生活設計をしながら
国民は
生活をしていると考えるのであり
ます。
その際に、
貯蓄はきわめて重要なものになってくるのであり
ます。五年、十年先を見通しながら
貯蓄をしておる、この
貯蓄の資金が、
物価の異常な上昇によって
目減りをするならば、その
生活設計というものは大きく狂ってまいるわけであり
ますから、
家計で見る
貯蓄金利というのは、まさにそういう
意味では
物価に
関係があるわけでござい
ます。
かつて、あの
狂乱物価のときに、私どもは
福田大蔵大臣に、この異常な
預金の
目減りを調整するために何らかの処置を講ずるべきであるという要求をいたしまして、皆様も御案内のように、
福祉定期預金というものがつくられたわけでござい
ます。まさにこれは
物価に着目をした
金利決定の商品であったわけでござい
ます。
ですから、こう考えてみ
ますと、
家計において重要なのは実は
貯蓄金利、
預金金利でありまして、こちらは
貸出金利、こちらは
預金金利、両極端がそういう
仕組みになっているのであり
ます。
そこで、
預金金利は
皆さん、高い方がいいわけであり
ます。より高い方がいい。
貸出金利はどうか、より安い方がいい。この
預金金利と
貸出金利がどこで
一つになるかというと、これは
金融機関というところで初めて
一つになるわけであり
ます。その
意味では、
金融機関は、できるだけ高い
預金金利を
国民に払いながら、できるだけ安い
金利で
企業に貸し出すということが、いまの
仕組みでは求められていると私は思うのでござい
ます。
そうなり
ますと、そのときには当然
銀行の
経営というものは、できるだけ経費を
最小にして、いまの
国民と
企業の要望にこたえる方向にならなければなりません。これがすなわち
金融行政に対する
効率化の
導入なのであり
ます。
すでに、前回の
金融制度調査会で、この問題をわれわれも論議をいたしました。そこで初めて
日本の
金融機関の中に
効率性追求、
競争原理が
導入をされました。それから後、今日に至って、さらにこの問題は大きく
国民やあるいは
企業から求められているのであり
ます。
金利一元化という問題がいま大きく問題になっており
ますけれども、これは私はおかしいと思い
ます。
金利というのは、
貸出金利と
預金金利と異質のものがあるのであり
ますから、いま申し上げましたように、
金利の一元化を求める者は
貸出金利を中心に物を言っておるわけです。しかし、
国民の側は、
貯蓄金利についてやはりその保証を求めるわけであり
ますから、この二つの問題をどこで調整するかというのが、いま郵便貯金と民間
金融機関の中の大きな問題点で、その調整こそがまさに政治にかけられておる、私はこう考えるわけであり
ますから、そういう
意味では、この問題については、ひとつ
皆さん方がおのおの冷静な判断によって、
国民的な規模における調整を考えていただかなければならない、こう考えるわけであり
ます。
もちろん、個人の
家計の中の支出面の方に消費と
貯蓄があるわけであり
ます。収入面はそれでは何に
関係をしてくるかといい
ますと、
日本経済の状態に
関係をしてくるわけであり
ますから、収入面について
日本経済の問題を考える際には、やはり
貸出金利の問題を無視するわけにはいかないのでありまして、
一つの
家計という問題を見ながら、いまの
貸出金利の問題と
預金金利の問題の調整をするというのが、今日政治に求められていると考えるわけでござい
ます。
これが私の
金融という問題に対する
一つの基本的な考え方でござい
ます。
二番目に、現在の
仕組みは
市場経済ということであり
ますが、これは、
企業においては自己責任というものが厳しく求められなければならない体制なのであり
ます。
ところが、これまで
銀行行政というのを見ており
ますと、ともかく大蔵省が細かい監督や検査を行って、手とり足とりして処理をしてきたというのが今日までの歴史的な
経過でござい
ます。
しかしもう今日では、この
仕組みの中では、
企業がみずからの責任において、
国民に公共性の上でこたえるような対応をしなければならないところへ来ているのであり
ますから、その点で、
政府の介入を
最小限にしながら、自主性を尊重するということはきわめて重要なことでござい
ます。
今度、自由民主党の中では、例のない逐条
審議などということをなさって、新聞にも大分いろいろ報道されましたが、しかしその中で、自主性の尊重という問題が目的に入ったことと、監督命令という細かいことを
規定した二つの条が削られたということは、私の立場から見るとそれなりに評価に足るものである、こう考えているのであり
ます。
しかし
皆さん、ここで問題なのは、片方で監督権を減らして自主性を尊重するというならば、
国民の側からどの
銀行が一番安全なのかという選択の基準を
銀行は示さなければなりません。要するに、これが公開の原則なのであり
ます。
民主主義の世の中では、この公開の原則を欠いたのでは実は無責任になり、公共性が損なわれるわけであり
ます。であり
ますから、そうなれば当然このディスクロージャーと言われる問題は、
銀行の責任において、
国民に明らかにわかるようなものをつくってもらわなければなりません。
私は、何も
政府が監督をすることだけが万能だとは思いませんが、いまの
銀行の体質では、何らかの公的介入を行わない限り、自分たちの望まないことはやりたがらないというのがいまの
銀行の体質であり
ますから、この問題についての自民党の対応は、この基本的な物の考え方に立つならば、きわめてアンバランスな対応であったということを、ここで明らかにしておかなければならない、こう考えるわけでござい
ます。(
拍手)
そこで、ディスクロージャーの問題の次に非常に大きな問題になっており
ますのは、さっき
大蔵大臣も触れられましたけれども、あの
昭和二年の当時と大変違うのは大量
国債発行という問題であり
ます。
昭和五十四年には、もう御
承知のように、
銀行が集めた
預金の九割を実は国は
国債で吸い上げた、こういうような事態があったわけであり
ます。いまの
銀行の対応の中で今度一番大きく問題になったのは
証券業務の問題でございました。特に
国債の
窓口販売とディーリングの問題というのが一番大きな課題になっておりましたけれども、なぜそういうものが出てくるかというのは、まさに民間
金融機関が一生懸命集めた
預金を力ずくで国が
国債として取り上げる、この
背景の上にこの問題が出てきているわけであり
ます。
私は、そういう
意味で、二月十日の大蔵
委員会の中でこの
国債問題に対する対応を問題提起いたしておきました。それはどういうことかといい
ますと、郵便貯金というのは、
皆さんも御
承知のように、あれは一覧払いの
貯蓄国債という性格を持っているのであり
ます。戦前においては、この郵便貯金の原資はほとんど
国債を買うために使われていたのであり
ます。ところが、今日では財政投
融資というものができて、郵便貯金の一部だけで
国債を買って、あとは財政投
融資にみんなほうり込んでいるという状態であり
ます。
そういう
意味で、ともかく
昭和五十六年度は八兆九千億郵便貯金が集まると言っているのであり
ますから、これでひとつ
国債を全部買い上げたらどうだ、本来そういう姿であり
ますから。そうすれば、実は市中に出るのはわずかに三兆余りになるのであり
ます。
もし三兆余りしか市中に
国債が出ないとするならば、
金融機関はどういう対応をするでありましょうか。いままで
国債で運用していたところに穴があくわけです。
貸出金利に穴があく。穴があいた部分はどうしようか。いまの経済状態ではそんなにみんな金を借りてくれません。必然的に
国債を買いたいという問題が、いまとは逆に起こるわけであり
ます。
国債を
銀行が買いたいということになれば、即、
国債の値段が上がって
金利が下がるのであり
ます。本日の新聞を見
ますと、今度の
国債の長期
金利について、
政府は〇・五%下げたい、民間は〇・三%だ、その折衷案で話が決まったようですが、それは過剰な
国債を出しておるから、こういうことが起こるのでありまして、
国債対策をまともにやらない限り、
日本の長期
金利は下がらない。そうすれば、
日本の経済の復興には大きなマイナスになるのであり
ます。
いま、行政改革について
総理は熱心にやっておられ
ますけれども、この行政改革について、行政改革デフレ論というのが企画庁から出ており
ます。これらの問題の試算をいたしてみ
ますと、私なりの試算では、もしいま二兆七千億というあの中期経済展望の中の費用を行政改革で処理をした場合には、成長率で約〇・七%程度は下がるわけであり
ますから、この行革デフレという問題は避けられない経済上の問題であり
ます。では、これをどうやってカバーするかと言えば、やはり
金利を下げて民間設備が拡大するようにしなければならぬにもかかわらず、いまの
国債発行のやり方がうまくないために
金利は下がらない。そこで中小公庫その他の
政府関係のところだけは特別に下げるという異例の対応をしなければならぬわけであり
ます。
そこで私は、そういう
意味で、
国債特別会計という問題を提起をしてござい
ます。この問題について
大蔵大臣はどう考えておられるか、ひとつお答えをいただきたいのでござい
ます。(
拍手)
その次に、週休二日制の問題がござい
ます。
この週休二日制の問題は、今度の
法律で、週休二日にできるだけの
法律は
整備をされておるのであり
ます。しかし、これはできることになっても、一体いつやるかというのは全然触れられていないのであり
ます。
いまや
皆さん、
日本の
国民は、本来非常に働くことが
国民性に合っておるといい
ますか、働くことが好きな
国民であり
ますから、そのために実は大変な長時間労働をやっておるのでありまして、今後
日本は、欧州その他との
関係で、アメリカとの
関係で、一番問題になるのは労働時間の問題であり
ますが、そういう対応をやらないでこのままいくならば、貿易、経済上の問題における大変なマイナスをもたらすことになるのでありまして、どうかひとつ
大蔵大臣、この点については、一体いつから週休二日制を行うのか、
実施のめどを明らかにしておいていただきたい、私はこう考えるわけでござい
ます。(
拍手)
さらに、グリーンカードの問題について自民党内部にいろいろな意見があり
ますけれども、私は、グリーンカードによって郵便貯金の定額貯金を、いま二億四千万枚の通帳が出ており
ますが、これをともかくも圧縮をして、一人に一枚というカードにしない限り、いまの民間
金融機関から問題が出ており
ますところの郵貯問題に対する対応はできない。
だから、このグリーンカードというのは、単に税制上の問題ではなくて、きわめて重要な郵便貯金と民間
金融機関との調整問題の
一つの手段である、こう考えており
ますけれども、
渡辺大蔵大臣は、これについてはどういう考えを持っておられるのか、あわせて、ひとつグリーンカードの
実施についての責任のある答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思い
ます。(
拍手)
〔内閣
総理大臣鈴木善幸君
登壇〕