○加藤万吉君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
国家公務員法の一部を
改正する
法律案外二
法案について質問を行わんとするものであります。
総理、あなたにとって今年一月十一日は、生涯を通して忘れ得ぬ日でなかったではないでしょうか。現職総理大臣として満七十歳を迎え、なおかつ、かくしゃくとして国政に専念される姿は、その立場を超えて、私もまた陰ながら敬意と祝意を表した次第であります。
私は、総理が、その官職に必要な適格性と働く意思、労働能力が存在する限り、年齢には関係なく、その職務の遂行が可能であることを証明されたものであり、労働関係を終了させる定年制度も、身分の安定、生活権の立場から、総理と同様、その労働能力の限界によって決定されるべきであり、定年制を求める
政府の基本
政策もここに置き、中高年齢者の雇用の不安を取り除くべきであると信じますが、総理の御見解を承りたいと思います。(
拍手)
総理、わが国においては、すでに六十五歳以上の人口は一千万を超え、人口構造に大きな変化をもたらし、労働力もまた、その需給構造において大きな変化をもたらしつつあります。人生わずか五十年、この物差しをもって
政策化する時代は過ぎたのであります。
民間企業においても、ここ二、三年で最低年齢六十歳による定年制実施が五〇%になる条件も、単に労働者側の勤務条件要求に基づくものだけではなく、産業構造を支える労働力配置として、
企業の側もその必要性を認めているからにほかならないのであります。
政府が樹立をした新
経済社会七カ年
計画や雇用対策基本
計画においても、六十歳以上の就労構成をでき得る限り高める必要性を指摘をし、労働省は、五十五歳以上の雇用率を六%にする
企業指導を行っていることからしても、最高年齢六十歳をもって労働関係を断ち切る本法は、この時代の要請に逆行するものであり、
政府の
政策の整合性の上からも全く矛盾するものであります。(
拍手)この
政府がとりつつある
政策と本法との整合性についてどうお考えですか。
高齢化社会の中で、
政府関係機関のみが若返りをするということは許されないのであります。今日、
国家公務員全体でわずかに二・四% 地方公務員では〇・八%という六十歳以上の雇用率は、現在の高齢化社会において高過ぎるという立場から本法を提案されたのですか。
民間企業の五十五歳以上の雇用率を高めることを求めている立場からも、
政府関係機関こそが率先してその範を示すべきであると思いますが、総理大臣の見解を求めたいと思います。(
拍手)
最近、官民格差論や役人天国論が横行し、加えて、
政府の財政危機の大宣伝の中に、一般行政職にある公務員に
犠牲を強いることによって
国民感情におもねり、中央
政府の支配体制の温存と強化を図る意図がすりかえられようといたしております。
私は、戦後、民主的に制度化されつつある公務員制度を、そのときの
政府の政治宣伝の道具にさせてはならないと考えるのであります。働く人々の生活を左右する雇用問題が、スト権の代替機関として設置をされた人事院の
意見を書簡で求めたとして、
内閣及び
国会への答申を受けることなく、分限
規定の中で、
政府の一方的かつ画一的に、
法律によって労働関係を終了させるという本法は、公務員制度の基本的変更を意味いたしております。人事院の機能についてどのようにお考えをお持ちですか。
財政見直しが強調されているときに、現実には勧奨
退職よりも年齢を引き上げ、
給与財源をさらに拡大する本法
施行の真意を総理にお伺いをいたしたいと思います。
次に、本法
改正の
提案理由に新陳代謝の必要性を強調されております。総理府の資料でも明らかなように、現に勧奨
退職年齢は五十五歳から六十歳で三十六省庁が行っており、都道府県では、この勧奨
退職によって一般職で九一%、現業職では約八割がやめておるのであります。結果として、
国家公務員八十五万四千余人の中で約二万人、地方公務員に至っては、三百十一万五千人余の中で二万四千人余、わずかに〇・八%にすぎないのであります。
わずかに残ったこれらの人々の多くは、高度成長期における中途採用者が多く、やがて受給資格を得る
年金を加え、自分の肉体的条件に合った第二の人生へのスタートを探し求めている人々であります。
年金財源が危機的な
状況にあるとき、むしろ働く意思と能力のある人々を、その人の肉体的条件と特性に合った職場に配置転換をし、労働力として活用してこそ、効率の上からも、
年金財源の上からもとるべき
施策ではないですか。
新陳代謝は順調に行われているのであります。わずかに在籍する職員の進路を妨げているものは
年金への連動の不安と求人率一〇%という高齢者再雇用
政策の立ちおくれにあるのであります。
私は、定年制
法案に先立ち、公務員の任用、昇格、昇任、
退職、管理、そして
退職後の生活など総合的な検討を加え、同時に、官民共通の
政策課題である、年齢による雇用差別を行っているさまざまな条件を取り除く法と
政策こそ必要であり、
行政改革の視点のみからとらえた本法に疑問を持たざるを得ないのであります。関係大臣の答弁を求めたいと思います。(
拍手)
この際、私は、労使が合意、協定で生み出しました勧奨
退職についてお伺いをいたしたいと思います。
今日、行政の一部に弛緩があることを率直に認めたいと思います。特に高級官僚には、天下り、渡り鳥という
退職後の安定したいすを目指し、事なかれ主義に日々を送る態度は目に余るものがあります。勧奨
退職は、このような人々にとっては甘えの制度であり、
国民の多くから非難を受けているところであります。
しかし、このことをもって一般職員に適用することは当を得ておりません。大多数の職員は、勧奨
退職いわゆる肩たたきは、不安であり、苦痛であり、それを乗り越えて、組合も、またみずからも、官職の適格性について自覚をさせ、転職の道を選択させるという、労使間の知恵が生み出した勧奨
退職協定を私は評価をし、行政もまたこの中で新陳代謝をみごとに果たしているという、絶妙な
日本独自の合意、協定として大切にすべきであろうと思います。現に、八割から九割が五十五歳から六十歳の間に、この協定、合意によって
退職をいたしているのであります。逆に、定年制をしき、六十歳にすることによって、
政府機関の新陳代謝を阻むことになり、年齢はさらに高齢化することは必至です。勧奨
退職の評価について、総理府長官の見解を求めたいと思います。
最後に、私は、本法制定によって、労働関係法に重大な影響の出ることを指摘をいたしたいと思います。
第一に、本法
提出の
経過についてであります。
この法が、職員の分限に係るものとして、人事院に書簡を送り、人事院も、一片の往復書簡をもって、職員の身分にかかわる問題を総理府長官あて返信されておるのでありますが、
民間においても定年制そのものと年齢は、勤務条件の重要交渉条件であることなどから見て、法令の制度及び一般的制度の改廃として、
国家公務員法二十三条に基づき、
内閣及び
国会に
意見答申を行うべきであるにもかかわらず、これを怠ったことは、スト権、団交権否認の代替機関として設置をされた人事院の機能の放棄であり、自殺行為と言わざるを得ません。本法提案に当たって、本来、人事院が取り扱うべき案件としてその
意見の申し出を受け、手続を経た後法制化されるべきであろうと思いますが、この
経過と合法性についてお伺いをいたしたいと思います。
第二に、
国家公務員のうち現業については公労法の適用団体であり、地方の現業もまたこの法を準用することを定めております。
公労法は、労働条件について団体交渉権及び協約締結権を認め、その最重要課題が身分にかかわる課題すなわち雇用契約の是非であることは論をまちません。すでに紹介をいたしましたこの往復書簡でさえも、このことに触れ、国の経営する
企業に勤務する職員の定年制については、
企業の自主性を考慮し、別に
法律で定めることが望ましいと、団体交渉による協約化の道を指し示しているのであります。
しかるに本法は、定年制を、
給与総額を定める
特例法五条に別項として起こし、団体交渉案件から外すというこそくな手法を用いているのであります。もし、書簡どおり法制化するならば、公労法第八条団体交渉の対象にすべきであり、この
改正案のように分限
規定として一律に定めることは、労働者側の主張の場を奪い、交渉権の否認であり、公労法の適用される
国家公務員の雇用について交渉の対象にしてはならないという、労働法全般にかかわる問題として重視をしなければなりません。
この際、定年制については、勤務条件、雇用問題としての立場から、労使間の交渉案件として、その職種に合った条件を協定化をするという方法をとるべきと思いますが、公労法上の団体交渉の
範囲についてどうお考えですか、お伺いをいたしたいと思います。
第三に、
国家公務員と地方公務員の関係であります。
国の定年制導入と同時に、地方団体まで拘束することは地方自治の本旨にもとるものであり、国と違った清掃、給食、ホームヘルパー等、多様な職種を持つ地方団体は、その固有の事業に合った労働条件が労使間で設定されるべきであります。
仮に、これら地方公務員の統一的
基準を設定をするとするならば、これら職員の大多数で組織をしている中央における労働団体との中央交渉によってなされるべきであると思います。しかも、本
改正案は、国と地方との関係を、国に準ずる
規定から、さらに従属性を強める「
基準として定める」としております。自治、分権を否認すると言わなければなりません。
以上三点について、労働関係法については労働大臣、人事院の機能とのかかわり合いについては総理府長官、地方団体については自治大臣の御答弁をお聞かせをいただきたいと思います。
以上をもって私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕