○小沢和秋君 私は、日本共産党を代表して、
財政運営に必要な
財源の
確保を図るための
特別措置に関する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に対し
質問いたします。
今日、
わが国の
財政は戦後最大の危機に直面しております。この法案どおり来
年度も十二兆二千七百億円の
国債を
発行すれば、来
年度末には、その残高は実に八十二兆円、
国民一人当たり七十万円の巨額に達します。
その一方、
国債費は六兆六千五百四十二億円、
予算総額の一四%に上ります。これはすでに来
年度の
国債発行額の半分を超えております。
赤字国債の本格的な償還が始まる
昭和六十
年度以降は、毎年の償還額がいまの四倍、実に二十兆円にもなり、
事態はさらに深刻になります。この危機をどう打開するかは、まさに今日の
わが国の最も重要な緊急課題と申さなければなりません。
そこで、まず第一に、この
財政危機の原因と
責任についてお尋ねいたします。
財政法第四条は、第二次大戦での
財政破綻の教訓から、
赤字国債の
発行を禁止しております。
しかるに、
政府は、この精神を踏みにじり、一九六五年から
国債発行を始め、特に第一次石油ショック以後、野放しの
大量発行に踏み切ったのであります。そして、これを
財源にして大型
公共事業費を集中的にふやしました。七六年の対前年比一九・七%増を皮切りに、七七年の二〇・七%、七八年三四・五%、七九年二二・五%と、わずか四年間で二・四倍化したのであります。
また、
公共事業費とともに
財政危機のもう一つの原因となっているのが、軍備の急速な拡大であったことは、いまや
国民の常識であります。
軍事費は、同じ七六年からの四年間に三五・六%も増額されました。そして、
財政危機が表面化し、
公共事業費の伸びが抑えられてからも、軍事費だけは、日米軍事同盟の攻守同盟化、世界有数の軍事大国化という危険な方向を目指して加速度的に膨脹を続け、
財政を一層の破綻に陥れてきたのであります。
総理は、これまでしばしば
国債大量発行の原因が福祉の行き過ぎにあったかのごとき
発言を繰り返していますが、これは以上のような歴史的事実を偽るものであります。
総理は、この際、
国債大増発が大
企業向け
公共事業と軍備拡大のためであったことを、率直に認めるべきではありませんか。(
拍手)
総理は、今日の
財政危機について、どう反省しているのか。いま、軍事費を削り、暮らしと福祉、教育の充実をという
国民の要求はますます強くなっています。
総理は、この要求に謙虚に耳を傾ける気持ちはないのか、お尋ねいたします。
第二に、この
国債増発政策が、
わが国の
経済と
国民生活にもたらした結果についてであります。
大
企業は、確かに、このおかげで不況を切り抜け、ついに八〇年九月期決算では、軒並み史上空前の利益を上げるに至りました。しかし、その一方、労働者の実質賃金は、労働省の統計始まって以来、二十八年目にして初めて低下いたしました。農民は米の作付制限と冷夏による減収で大きな打撃を受けました。中小業者は不振にあえぎ、倒産の危険に脅かされ続けています。
まさに大
企業の繁栄は、このような
国民生活の犠牲の上に咲いたあだ花にすぎません。もし
政府がこのような結果を直視するなら、今後の
国債償還の
負担は
国民に負わぜるべきでなく、
国債増発の直接の恩恵をこうむった大
企業などに負わせるのが当然ではありませんか。(
拍手)
総理の明確な
答弁を求めます。
しかるに現実には、
政府は、すべての犠牲を
国民に押しつけようとしているのであります。
来
年度予算では、
国民に対し、過去の
国債増発のツケと、将来の軍備拡大の
負担の両方を一挙にかぶせようとしています。その結果、
自然増収分を含め、実質五兆九千億円の大
増税、一兆七千億円の公共料金引き上げなどによって、一世帯当たり実に年間二十万円もの新たな
負担を押しつけようとしています。
この打撃は、特に旧産炭地、筑豊など、
日本経済の矛盾が集中している地域では何倍にも増幅されて響きます。
政府は、この地域で来
年度から国鉄ローカル線の廃止や失業対策事業の打ち切りを推し進めようとしています。これが、産炭地振興に逆行し、失対事業で細々と暮らしてきた身寄りのない老人たちの生きる道を奪うものであることは言うまでもありません。
来
年度予算が
国民に対し、このような耐えがたい犠牲を押しつけることを
総理はわかっているのですか。わかって、やろうとしているのですか。明確な
答弁を求めるものであります。(
拍手)
第三に、今回の法案で、初めて幾つかのところから
納付金の形で
財源を吸い上げようとしている問題であります。
これがこの法案の目新しい部分でありますが、全部合わせても一千四百五十億円程度のものでありますから、大した実利があるとは思えません。
むしろ、この
措置の真のねらいは、
政府がいよいよなりふり構わず
財源をかき集めている印象を
国民に与え、来
年度以降、大型間接税などの導入やむなしの機運を高めることにあるのではないか、
大蔵大臣にお尋ねいたします。
次に、
電電公社からの
納付金について見れば、もともと
電電公社は、
昭和二十七年の設立以来、
公共事業体として
国民への利便の還元を原則として
運営されてきました。
今回、
政府は、
電電公社に一定の剰余金が出たことに目をつけ、今後四年間、毎年千二百億円ずつを
一般会計に繰り入れようとしております。しかし、これは全く筋が通りません。
剰余金が出たということは、五十一年一月の
料金値上げが不当であったことを示す以外の何物でもありません。(
拍手)そのことは、先ほど
中曽根長官が
料金値上げを余裕を持って決めたと
答弁されたことでも裏書きされたと思います。
公共事業体である
電電としては、料金引き下げなどの形で利用者である
国民に還元するのが当然であります。
赤字になれば
値上げを押しつけ、黒字が出れば
政府がすぐ剰余金を吸い上げるというようなことを許せば、際限ない
料金値上げで、ここを
財源吸い上げの機構に変えてしまうことは目に見えています。
このような不当な
納付金はやめるべきであり、これと絡めての
料金値上げなどは絶対に認めることはできません。
郵政、
大蔵両
大臣は、
納付金を取っても絶対に
値上げしないと言い切れるのか、見解を示していただきたい。(
拍手)
さらに、昨年十二月の
郵政、
大蔵、
電電の三者による合意では、
国庫納付金問題の見返りに、
公社のファクシミリの普及など、大
企業が要求する
サービスを強化するため、長期に莫大な
借金を抱え込ませる合意が成立しています。
このような
経営方針は、
電電公社にますます私
企業的な
運営を強要する危険があります。
郵政、
大蔵両
大臣は、
電電公社の
経営の
公共性と利用者の利益を今後どう守っていくのか、明快な
答弁を求めるものであります。
一方、これときわめて対照的なのは、
産業投資特別会計から
一般会計に繰り入れる
措置であります。
電電公社からは何が何でも取り上げる姿勢ですが、こちらの方は
日本開発銀行から産投会計に百六十五億円
納付されるのに、三分の二以上を残し、五十億円だけ繰り入れるというのであります。このように、大
企業が絡んでくると何かと配慮したがる姿勢が根本的に間違いであります。
もともと
政府資金、つまり
国民の血税を大
企業に、産投会計をパイプとして湯水のようにつぎ込んできたのが正しくなかったのであり、
財政危機打開のためにも、今後、積極的にこれを回収していくべきであります。
私は、この立場から、百六十五億円全額を
一般会計に繰り入れるべきだと
考えますが、
大蔵大臣の見解をお尋ねいたします。
さらに、
日本中央競馬会からの
特別国庫納付金徴収についてであります。
これは五十六
年度限りの
措置とされておりますが、年間一兆五千億円もの売り上げがあり、三千億円近い内部留保を保有していることから見て、さらに
国庫納付金をふやす方向で検討すべきであります。むしろ、こういうところに不必要な内部留保を認めることが腐敗の温床となることは、過日の日本発馬機汚職事件からも明らかではありませんか。これについて
大蔵、農林水産両
大臣はどう
考えるか、お尋ねいたします。
第四は、
財政再建と
行政改革についてであります。
政府が昨年九月に
決定した
行政改革大綱や、今
国会での施政方針演説、十六日の第二次臨時行政調査会
発足に当たっての
総理あいさつなどによれば、
行政改革の基調は、行
財政の減量化によって
赤字国債を減らすということになっております。
こうした
仕事減らし、人減らしは、これまでの実績から見ても、自衛隊、公安調査庁などを対象から除く一方、老人医療無料化
制度や過疎対策、農業、中小
企業保護などを不均衡な行政
サービス水準と決めつけて、これらを一方的に切り捨てる反
国民的な
内容にならざるを得ません。
総理、あなたは先日「
行政改革に
政治生命をかける」との
決意を表明されました。
総理は
一体どの部門を
政治生命をかけて削ろうと
考えているのか、この機会にはっきりさせていただきたい。(
拍手)
また、これと関連して、昨日、
総理は「任期中、
大型消費税を
考えない」と言明いたしましたが、これは五十七
年度以降一切
増税しないことと理解してよいのか、お尋ねいたします。
先日、わが党は、第二次臨時行政調査会会長に対し申し入れをいたしました。すなわち「行政の公開を土台とした清潔な行政の実現、軍事・公安部門や大
企業奉仕部門の圧縮、
国民生活密着部門の充実、機構の簡素・効率化と
特殊法人の民主化、地方自治を強化する方向での事務・権限・
財源の再配分、公務員
制度の民主的改革」などを、当面の
行政改革の課題として
提案したのであります。これらを実現するならば、
国民のために
行政水準を高めつつ、あわせて
財政危機を打開することができるのであります。
しかるに、この法案は、こうした立場とは全く相反するものであり、したがって、このままでは
国民を二重、三重に苦しめ、
財政再建をも失敗に導くことは明らかであります。
この際、
総理は、根本的に
財政再建策を検討し直す意思はないのか、明確な
答弁を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕