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○
木村(
武千代)
委員長代理 これより会議を開きます。
本日は、
委員長が所用のため、その指名により私が
委員長の職務を行います。
本日の
請願日程第一から第三三二の各
請願を一括して議題といたします。
各
請願の内容につきましては、文書表ですでに御承知のことと存じますし、また、先ほどの
理事会において検討いたしましたので、この際、
紹介議員の説明を省略し、直ちにその採否を決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
本日の
請願日程中、日程第四、第八、第一四ないし第三〇及び第三五の各
請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
残余の
請願は、採否の決定を保留いたしたいと存じますので、御了承願います。
なお、ただいま議決いたしました
請願に関する
委員会報告書の作成につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 なお、今国会、本
委員会に参考送付されました陳情書は、捜査段階における司法的抑制の強化に関する陳情書外六件であります。念のため御報告を申し上げます。
――――◇―――――
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○
安藤議員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました
利息制限法の一部を
改正する
法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
サラ金にまつわる悲惨な事件が社会問題化し、規制法の
制定を求める声は、年々強まっております。警察庁の調査でも、昨年一年間に暴利営業で検挙されたものが四百五十四件にも上るなど、政府の調査によってさえも、異常な高金利、行き過ぎた貸し付け、暴力取り立て等の悪質行為の横行が明らかにされております。
サラ金悲劇をなくすためには、十分な行政指導、健全な庶民金融制度の充実育成などとあわせて、免許制の導入、過剰貸し付けの規制、悪質取り立て行為の禁止等を図るほか、特に野放しとなっている高金利を規制することが必要です。
金銭消費貸借契約上の金利の量局限は、現在、民事上では
利息制限法によって、元本の多寡により年一五%ないし二〇%とされておりながら、刑事上では出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律で年一〇九・五%を超える場合にしか処罰されないこととされているため、サラ金業者の中には、この限度すれすれの高利を当然視し、暴利をむさぼる例が少なくないのであります。しかも
利息制限法では、契約上制限超過利息は無効とするものの、任意に支払ったときはその返還を請求することができないと定めております。
この高金利の横行に対して、昭和四十三年の最高裁判例を初めとする一連の判決は、
利息制限法の立法の精神である債務者保護の立場から、制限超過利息の元本充当や元本消滅後の利息の返還を認めるとしており、これらの判決はサラ金被害者を救済する上で、大きな役割りを果たしてきております。
今般の、サラ金規制法制化の動きの中で貸金業金利については
利息制限法の
適用除外を図ろうとする方向が示されておりますが、これはサラ金悲劇の実態を無視し、
利息制限法本来の精神をないがしろにする危険なものにほかなりません。わが党は、別途小口消費者金融業法案、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の一部を
改正する
法律案の二法案を提案いたしておりますが、それらとあわせて、ここに本
法律案を提案する次第であります。
この
法律案は、法定の制限超過利息を支払った場合、元本がある間は超過部分は元本に充当され、充当額が元本額に達して元本が消滅した後は、超過部分は不当利得として債務者は返還請求ができるという最高
裁判所の一連の判決の趣旨を立法的に明確にし、経済的弱者である債務者の保護を図ろうとするものであります。
この
法律案の要旨を申し上げますと、第一は、任意に支払われた法定の制限超過利息の返還請求ができないとする規定を削ること、第二は、第一と同様の趣旨から、任意に支払われた賠償額予定の制限超過部分の返還請求ができないとする規定を削ることであります。
なお、この法律の施行期日を昭和五十六年十月一日とし、この法律の施行前になされた契約については、なお従前の例によることといたしております。
以上が、本
法律案の提案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決されますようお願い申し上げます。
-
-
○
稲葉議員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました
利息制限法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
最近いわゆるサラ金による被害が大きな社会問題となっておりますが、その原因の一つに高金利による貸し付けがあります。そこで、高金利による貸し付けを防止し、消費者を保護するためには、出資法を
改正して、刑罰の対象となる限度を引き下げるとともに、利息の最高限を超えて任意に利息を支払ったときにおけるその超過部分の返還を請求できることとすることが重要であります。
したがって、この際、高利金融の横暴から経済的弱者の地位に置かれる債務者を保護することを立法の趣旨とする
利息制限法についても
改正を図る必要があります。
現行
利息制限法の欠陥と言われております第一条第二項及び第四条第二項につきましては、すでに、最高
裁判所が、昭和三十九年十一月十八日の判決におきまして、債務者が利息、損害金として支払った
利息制限法超過部分は残存元本に充当されるという元本充当説の見解をとり、さらに昭和四十三年十一月十三日の判決では、債務者が
利息制限法超過の利息、損害金を支払い、それが元本以上となった場合は超過分について不当利得として返還請求することができるとして、債務者の過払い分に対する返還請求権を認めているのであります。
これらの判決は債務者の保護を主目的とする立法趣旨にのっとって、現行の
利息制限法の欠陥を是正してきたものであり、これによって、
利息制限法第一条第二項と第四条第二項はいわば空文化されているのであります。
いまこそ、消費者金融、庶民金融が普及している一方で、高金利による被害が多発している状況を踏まえ、債務者保護をより徹底させるための措置を講じなければなりません。これが本法案
提出の理由であります。
次に、この
法律案の内容について申し上げます。
第一に、現行法の第一条第二項を削除すること.としております。本項は法超過分の利息の支払いについて債務者が任意に支払ったときは、その返還を請求することができないと規定しておりますが、最高
裁判所の判決に基づき削除することが適切と考えるものであります。
第二には、現行法の第四条第二項を削除することとしております。本項は法超過分の損害賠償額の支払いについて債務者が任意に支払った場合にはその返還を請求することができないと規定しておりますが、さきに述べた理由により削除することにいたしました。
そのほかに若干の所要の
改正を講じております。
以上が、この
法律案の理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、御賛同賜りますようお願い申し上げます。
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 これにて趣旨の説明は終わりました。
――――◇―――――
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○
木村(
武千代)
委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
次に、閉会中審査におきまして、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合に・は、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
次に、閉会中の
委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
閉会中審査のため
委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、
委員派遣承認申請を行うこととし、その派遣地、期間、人選等につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○
木村(
武千代)
委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
――――◇―――――
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○
木村(
武千代)
委員長代理 お諮りいたします。
本日、最高
裁判所小野刑事
局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○
木村(
武千代)
委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
――――◇―――――
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○
稲葉委員 私が昭和五十六年、ことしですね、四月二十二日に議長あてに「「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問主意書」を出したわけです。これは、内閣に行ったのは二、三日後だと思いますが、これに対して内閣の方からは、防衛庁だと思いますが、いろいろ調整したり何かしなければならないから時間をいただきたいということでありました。普通ならこれは一週間ということになっているのですが、一週間という規定は私も無理だと思いますが、いずれにいたしましても一週間後の十四日くらい延ばして決めるのが普通ですね。今度のライシャワー発言などのあれは一週間で答弁していますね。ところが、これに対して私のところに、各方面といろいろ調整したりあれしなければならぬから五月三十日まで延ばしてくれという話があったわけです。私は了承しました。それはそれでいいのです。
ところが、来たものはやけに簡単なんですね。実に簡単で、私の予期していたものとは全く違うのです。しかし、これは見解の相違ですからかれこれ私は申し上げるのではありませんが、後から質問の中で明らかにすべき点は明らかにいたしますが、これはどうしてこんなに遅くまでかかったのか。どういう点が問題となったのですか。その点をひとつ明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
-
○夏目政府
委員 確かに、
稲葉委員から
提出の質問主意書に対する答弁が約一カ月かかったことは事実でございますが、おくれました理由、るる弁解がましいことを言うつもりはございませんけれども、まず一つには、質問内容がきわめて複雑多岐であったという点が挙げられようかと思います。それから、その答弁の打ち合わせにつきまして関係官庁が幾つかにまたがっておりましたので、それとの協議調整に時間がかかったという点、さらには、これも全く言いわけになるかもしれませんけれども、たまたまこの時期、具体的に申し上げれば、五月に私ども扱った質問主意書が六件集中いたしました。それらの事情みんな総合しましておくれたということでございまして、まことに遺憾であったというふうに思っております。
-
○
稲葉委員 私は、おくれたことをかれこれ言っているのじゃありません、私が了解したのですから。それはそれでいいのですよ。内容が余りに私の質問に答えてないということに問題があると私は思います。
そこで、まず私は集団的自衛権というものの定義を聞いているわけですね。内閣としての統一した定義というものを私は聞いています。私は聞くときに、最初にまず定義を確かめるわけです。それでないと幾ら議論したって議論が空回りしますから、定義を確かめておる。それに対してこういう答えが出てまいりました。「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているものとされている。」こういうことですね。これが鈴木内閣の集団的自衛権に対する統一見解だ、統一定義だ、こういうふうに承ってよろしいわけですか。
-
-
○
稲葉委員 いま言った定義の中には、自衛という言葉、自衛という概念はどこにも出てきませんね。どういうわけでしょうか。どういうわけで自衛という言葉や自衛という概念がこの中に出てこないのですか。したがって、いま言った統一見解で自衛という概念がどこに含まれているのか、御説明をしていただきたい、こう思うのです。それでなければ、集団的自衛権という意味がありませんからね。
-
○夏目政府
委員 私ども、集団的自衛権という言葉の意味、いま先生がお読みになりましたとおり、集団的自衛権というのは「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」、これを集団的自衛権というふうに理解しておるわけでございます。
-
○
稲葉委員 それは書いてあるのだから、わかりますよ。どこに自衛という概念が入っているのですか。どれが自衛なんですか。集団的自衛権というのだから、自衛権でしょう。それはあたりまえだ。どれが自衛なんです、この中で。「自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する」こと、これがやはり自衛ですか。
-
○夏目政府
委員 自国と密接な関係にかかわる他国に対する攻撃というものが、集団的自衛権の中の自衛という言葉に入るのではなかろうかというふうに理解しております。
-
○
稲葉委員 だから、集団的自衛というのだから、自分の国が何らかの攻撃を受けておるとか受ける可能性があるとかいう言葉は当然入らなければ、自衛権という言葉は意味が生まれてこないのじゃないですか。この定義はきわめて不完全じゃありませんか。いろいろな人の学説がありますけれども、これは恐らく森脇さんの学説によったのではないか、こういうふうに私は思いますね。森脇さんの学説とケルゼン流の横田喜三郎さんたちの考え方とは相当違うわけですけれども、たしか国際法の外国の雑誌に載った森脇さんの論文、これを参考にしたのじゃないかと私は思うのですが、これでは自衛という言葉はどこにも出てこないですよ。言葉じゃなく、概念が出てこないじゃないですか。わからないじゃないですか。
だから、これはこういうふうなことが入るのじゃないですか。「すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、」ここで文章が入るわけですよ。いいですか。「これをもって自国の安全を侵害するものと認める国が実力をもって阻止する権利を有しているものとされている。」自国の安全を侵害するものとこれを認めて、初めて自衛権という概念が入ってくるので、この定義だけでは自衛権という概念が入ってこないのじゃないですか。きわめて不正確じゃないですか。どうですかこれは、法制
局長官は。
-
○角田(禮)政府
委員 御疑問はごもっともだと思います。恐らく御質問の根底については、集団的自衛権が果たして真の意味の自衛権と言い得るかどうかということについての御疑問があるのだと思います。確かに集団的自衛権というのは、御承知のように国連憲章五十一条によって確立された概念でございます。従来の伝統的な意味の、自国が攻撃を受けた場合に対してその侵略を排除するという意味の自衛権そのものではございません。確かに、自国と密接な関係にある他の国が攻撃を受けて自分の国は攻撃を受けていない、しかし、それをあたかも従来の自衛権の観念に置き直してみれば、自国に対する攻撃と考えることによって他国を援助するというか、他国に対する別の国の攻撃を排除する、こういう意味でございます。したがって、おっしゃるとおりでございます。
-
○
稲葉委員 だからおっしゃるとおりだといま法制
局長官が言っているので、だれが書いたか知らぬけれども、あいだが抜けているのですよ、このページは。これでは定義になりませんよ。こういう書き方をしちゃいけない。不親切な書き方ですね。それで問題点をごまかそうとしている書き方ですね。これは学説はありますよ。いろいろなむずかしい学説があってぼくらもわかりません。わからないけれども、この定義は、いま法制
局長官が言ったようにきわめて不完全な定義だ。そこにあいだが入らなければいかぬですよ。あいだが入っていないのです。これではだめです。そう私は思いますよ。
そこでお聞きしておきたいのは、「自国と密接な関係にある外国」というのは、日本から見るとどこの国を指しているわけですか。
-
○角田(禮)政府
委員 これは集団的自衛権の国際法上の観念を一般的に申し上げたわけでございますから、特にわが国と密接な関係にある国がどこの国であるかというような、そういう特定の国を意識して定義したものではございません。
-
○
稲葉委員 しかし、現実の問題としては、それはおかしいでしょう。一般的な抽象論としてはあなたの言うとおりだ。だけれども、防衛庁の答弁としてはそれではいかぬですよ。法制
局長官の答弁としてはそれでいいわけだ、一般論ですから。防衛庁としては、密接な関係の国というのはどこの国を指しているのですか。当然あなたは考えて答弁していなければおかしいじゃないですか。防衛庁から言えばどこを指しているの。防衛庁から答えてください。
-
○夏目政府
委員 法律的な意味では、いま法制
局長官からお答えになったとおり、特定の国を指し
たものではございません。
-
○
稲葉委員 法律的な意味は、法制
局長官の答えでわかったのよ。私の言う意味は、これは具体的に何を指しているかを聞いているわけです。具体的にはどういうことになるのかと聞いているのですよ。そんなものはあたりまえの話じゃないですか。
-
○夏目政府
委員 一般的にこの質問主意書に対する答弁を離れた意味でお答えをすれば、たとえば日米安保条約という形の上から見た密接な関係のある国と言えば、アメリカを指すであろうということだろうと思います。
-
○
稲葉委員 アメリカだけですか。日韓の条約の場合の韓国はこれに入りますか。どういうふうになっていますか。
-
○夏目政府
委員 一つ一つの国を挙げることが必ずしも適切でなかったので、いま日米安保条約を例に挙げて申し上げたわけで、その他については御推察にお任せいたします。
-
○
稲葉委員 いや、推察できないのよ。私の聞いているのは、「自国と密接な関係にある外国」でしょう。こういう定義をしているんだから、抽象論は法制
局長官の答弁でわかった。防衛庁としてはそれでは答弁にならないですよ。アメリカはわかったよ。アメリカは安保条約だと言うからわかった。では日韓の場合、日韓の条約あるでしょう、韓国はどうですかと聞いているのですよ。そんなものはあたりまえの話じゃないですか。答えてください。
-
○夏目政府
委員 どうも私、先生の質問の趣旨がよくわからないのですが、この質問主意書に対する答弁書の作成の中身というのは、内閣一体として法制局、関係省庁とも協議して決めた、そういう意味合いでの答弁を申し上げているわけでございまして、防衛庁の立場でどうだというふうなことを申し上げるべきでないのじゃないかというふうに考えております。
-
○
稲葉委員 いや、だからこの答弁に即していますけれども、必ずしも全部これにそのまま聞いているわけじゃないのですよ。じゃ、これを離れて、集団的自衛権というものを自国と密接な関係にある外国があれした場合には、あなたどうだということになるのでしょう。国際法上この権利を日本は持っているというのでしょう。それならば、防衛庁としては自国と密接な関係にある外国というのがどこだということはわかるでしょうが。
アメリカのことをあなたは例に挙げましたね。だから、私はアメリカだけですかと聞いたら、御推察願います。御推察しろと言ったって、ぼくはわからないからあなたに聞いているわけですよ。どうして防衛庁として答弁できないのですか。あたりまえじゃないですか。自国と密接な関係にある外国に対する攻撃だ、こう言っているのだから。まずアメリカはわかったよ。それは答えなさいよ、あなた。あたりまえじゃないですか、答えるのは。なぜ答えられないのです、そんなことが。そんなばかな話、ないじゃないですか。
-
○夏目政府
委員 一般的な集団的自衛権の中における密接な関係にある国というのはどこを指すかというのは、そのときによっても変わるでしょうし、一概にどの国が密接な関係にあるかということを申し上げるのは適当でないのではないかという意味で先ほどから答弁申し上げているわけであります。
-
○
稲葉委員 一般論を聞いているのじゃないのよ。一般論は法制
局長官の答弁でわかったのよ。だからこの質問から離れて、具体的に、じゃいまこの密接な関係にある国というのはどこかと聞いているわけですよ。そうでなければ問題が少しも発展しないでしょう。現実化しないじゃないですか。ここで単なる法学教室をやっているわけじゃないのですよ。現実にいまの日本の問題をとらえてどうするかということを私は聞いているわけだから。
いまあなたはアメリカと言ったじゃないですか、一つの例として。アメリカだけかと今度は聞いているのですよ。そうしたら御推察願います。と言ったってわからないから聞いているのだ、こっちは。韓国も入るのですかと聞いているのですよ。入るなら入ると答えたらいいじゃないですか、そんなこと。隣の国じゃないですか、韓国は。地理的にも密接な関係にあるでしょうが。こんなことはあたりまえじゃないですか。答えないからおかしくなるのだ。(発言する者あり)自民党の人だって言っているのですよ。答えないからおかしくなるのだ。
-
○夏目政府
委員 先ほど来申し上げることにつけ加えることはございませんが、再三の御質問でございますが、日本はアメリカ合衆国との間に安保条約を結んでいる、そういう意味合いでの密接な関係にある国はアメリカであるということを申し上げて、その他についてはそのときそのときの状況によって変わるでしょうから、一概に私の方から名前を言うのは適当でないのじゃないかということを申し上げているわけであります。
-
○
稲葉委員 だから、現在どうだと聞いているのだよ、私は。そのときそのときによって変わると言うのだから、そのときのことを聞いているのじゃないのだよ。いまはどうかということを聞いて、そのときに日韓の条約があるでしょう、防衛条約と言うのか何か知らぬけれども、防衛条約と言わないけれども、韓国と日本とは集団的自衛権の関係で密接な関係にある外国に入るか入らないかと聞いているのですよ。入るなら入るでいいじゃないですか。入らないなら入らない。入らないなら入らない理由はどこにある、入るなら入る理由はどこにある、こういうことを聞いているのじゃないですか。
じゃ、アメリカが入って韓国が入らないという答弁ならば、アメリカが入って韓国が入らない理由はどこにあるのですか。
-
○夏目政府
委員 どこが入る入らないでなくて、アメリカの例ははっきり安保条約によって密接な関係の中に入るだろう。それは安保条約においても集団的自衛権は認められているという意味合いから明確なことを申し上げているわけで、それ以外については、いま集団的自衛権について関連してその国を挙げるようなことは適当でないのではないかというふうに申し上げているわけです。
-
○
稲葉委員 適当でないというのは、どういう意味で適当でないの。それは外交的ないろいろな配慮があるから適当でない、こういう意味ですか。防衛上の配慮があるから適当でない、こういう意味ですか。
-
○夏目政府
委員 いま直ちに集団的自衛権を云々するような環境にないという意味であります。
-
○
稲葉委員 すると、アメリカの場合は、いま直ちに集団的自衛権を云々する状況にあるということですね、あなたの答弁は。
-
○夏目政府
委員 日米安保条約があるという意味において、おっしゃるとおりだと思います。
-
○
稲葉委員 そこで、一体この自国と密接な関係にある国ということで集団的自衛権というものを考える場合、条件はそれだけですか。自国と密接な関係にある外国における武力攻撃、これだけが条件ですか。その国に攻撃を受けることが日本の国家の存立その他に関係があるということになれば、それも密接な関係にあるということが言える、こういうことでしょう、理解は。だから、必ずしも地域的な問題――密接というのは地域的な問題も重要ではあるけれども、それには限らない、こういうことと承ってよろしいですか。
-
○夏目政府
委員 当然地理的な関係のみならず、いわゆる条約上の関係であるとか政治体制の問題とかいろいろな協力関係、いろいろな意味での密接な関係というふうな立場にある国というふうに御理解いただきたいと思います。
-
○
稲葉委員 そうすると、日本が国際法上集団的自衛権を持っていると言うのですね、主権国家だから。これはわかりました。日本は主権国家だから、国際法上のみならず国内法上も集団的自衛権を持っているのですか。そこら辺が非常にあいまいなんですよ、この答弁は。それを私は聞いたんだけれども、答えてないわけだ、この答弁書は。
そこで私は聞いているわけですね。いいですか。問題はどういうことかというと、おわかり願えるでしょう。まず、国際法上日本が集団的自衛権を持っているというのはどういう意味なんですか。そこからどういう具体的な問題が出てくるのですか。
-
○角田(禮)政府
委員 先ほども申し上げましたように、集団的自衛権の観念というものは、国連憲章五十一条によって確認されたものだと思います。恐らくその国連憲章五十一条でそういう集団的自衛権の観念というものを確立したのは、やはりいわゆる戦争というものが一般的に違法視され、その中においても、自国が侵略を受けたときにそれを個別的自衛権をもって反撃をするということは、少なくともこれは固有の国家の権能として何人も疑い得ないところだと思います。
ところが、御承知のように、国連憲章のできる前からいろいろ地域的な取り決めがあって、共同防衛というような形ができていたわけです。それを何らかの形で国連憲章上認めようというところから、集団的自衛権という観念がそこへ出てきたのだ。そういう意味では、本来的な意味の自衛権ではございませんけれども、いわば主権国家として、すべての国は個別的自衛権と集団的自衛権とを持つということが確認されたわけで、わが国も国連に加盟をするというときに、平和条約によって独立を回復し、さらに国連加盟によってそういう点が世界のほかの国々と同じように主権国家としてそれを持った、こういうことになると思います。その点は御容認願えると思います。
ところが、それにもかかわらず、わが憲法というのは世界のどこにもない憲法でございまして、そして憲法九条の解釈として、自衛権というものは政府がたびたび申し上げているように持っているわけでございますけれども、その自衛権というものはあくまで必要最小限度と申しますか、わが国が外国からの武力攻撃によって国民の生命とか自由とかそういうものが危なくなった場合、そういう急迫不正の事態に対処してそういう国民の権利を守るための全くやむを得ない必要最小限度のものとしてしか認められていない、こういうのが私どもの解釈でございます。
そうなりますと、国際法上は集団的自衛権の権利は持っておりますけれども、それを実際に行使することは憲法の規定によって禁じられている。つまり、必要最小限度の枠を超えるものであるというふうに解釈しているわけです。そこで、国際法上は持っているにもかかわらず、現実にそれを行使することは国内法によって禁止をされている、こういうふうにつなぎ合わせているわけでございます。
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○
稲葉委員 いまの説明の後半は、これは何回も言われていることであって、わかっているのです。私の聞いているのは、国際法上集団的自衛権を日本も主権国家である以上持っているというのでしょう。これはあたりまえの話。それならば、同時に国内法上も集団的自衛権を持っているか、こう聞いているわけですね。そうしたら、あなたはいま最初の段階で持っていると答えられたのじゃないですか。いいですか、そこをひとつ確かめますから。
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○角田(禮)政府
委員 それは言葉の問題だと思いますけれども、もともと集団的自衛権というのは国際法上の観念でございますから、独立国家としてそれは持っておりますけれども、結局集団的自衛権は憲法によって行使することができないわけでございますから、それは国内法上は持っていないと言っても結論的には同じだと思います。
-
○
稲葉委員 そこをあなた方の方では、私から言わせれば答弁でごまかしておるのですよ。これは憲法で禁止されておるかどうか、初めに聞いておるのですよ。だから私の言うのは、国際法上という概念がどうもはっきりしないところがあるけれども、集団的自衛権というものは、主権国家である以上、国際法上も国内法上も持っておるのだ。そこが第一ですよ。持っているけれども、憲法によってその行使が禁止されておるのだ、こういうことならば、私も了解するのですよ。そういうことでしょう。
-
○角田(禮)政府
委員 ちょっと別の例で申し上げて恐縮でございますが、いわゆる個別的自衛権、こういうものをわが国が国際法上も持っている、それから憲法の上でも持っているということは、御承認願えると思います。
ところが、個別的自衛権についても、その行使の態様については、わが国におきましては、たとえば海外派兵はできないとか、それからその行使に当たっても必要最小限度というように、一般的に世界で認められているような、ほかの国が認めているような個別的自衛権の行使の態様よりもずっと狭い範囲に限られておるわけです。そういう意味では、個別的自衛権は持っているけれども、しかし、実際にそれを行使するに当たっては、非常に幅が狭いということを御了解願えると思います。
ところが、集団的自衛権につきましては、全然行使できないわけでございますから、ゼロでございます。ですから、持っていると言っても、それは結局国際法上独立の主権国家であるという意味しかないわけでございます。したがって、個別的自衛権と集団的自衛権との比較において、集団的自衛権は一切行使できないという意味においては、持っていようが持っていまいが同じだということを申し上げたつもりでございます。
-
○
稲葉委員 それは観念的な議論になるかもわかりませんが、持っておるということが前提になって、初めて行使できないという議論が出てくるんでしょう。それはあたりまえの話でしょう。だから、国際法上も国内法上も、主権国家たる日本は集団的自衛権を持っておるのだ。持っておるけれども憲法によって行使できないのだということは、理論的に違うわけですよ。そこをしつこいけれども、私は尋ねておるわけですよ。それならそういうふうに答えてくださいよ。私の言うとおりだ、結論は実際には同じになるかもわからぬけれども、理論的には違うのだということをはっきり答えてくださいよ。
-
○角田(禮)政府
委員 私どもは、集団的自衛権を確かに持っている、そしてそれを行使できないのだという説明を理論的にはできると思います。しかし、私どもの立場から見ますと、集団的自衛権というものは全く行使できないわけでございますから、それを国内法上持っていると言っても全く観念的な議論なんです。そういう意味において誤解を招くおそれがありますので、私どもは集団的自衛権は行使できない、それはあたかも持っていないと同じでございます。個別的自衛権の場合と同じように持っているけれども、行使の態様を制限されるものとは本質的にやや違うということを実は強調したいわけでございます。
-
○
稲葉委員 そこで、外国に対する武力攻撃があるわけですね。それがひいては日本なら日本の安全に、直接じゃないですよ、間接に影響がある、こういうふうになってきた場合には、集団的自衛権というものは一体どういうふうになるのですか。あるのですか、ないのですか。それが一つ。それから、直接の攻撃だ間接の攻撃だというふうなことを、一体だれがどのようにして判断するのですか。
-
○角田(禮)政府
委員 外国に対する武力攻撃がたとえば間接的にわが国の安全を害するというような場合に、わが国がその行使を禁じられている集団的自衛権との関係がどうなるか、こういう御質問だろうと思います。私どもは、間接にわが国の安全が害されるようなときにもわが国は自衛権を行使することはできない。つまり、そういうものは当然集団的自衛権の範囲として行使しなければいけませんから、わが国としてはそういうものは行使できない、こういうふうに考えております。
-
○
稲葉委員 私の言うのは、外国に対する攻撃を直接自分の国が攻撃されているというふうに考える場合には、それは個別的自衛権の問題になるわけですから、直接とか間接とかいうのはだれがどのようにして判断するのですかということです。
間接だと言っているものも、だんだん広がってくれば直接の範囲に入ってくるのじゃないですか。結局、集団的自衛権だと言っているものが、その範囲がだんだん直接の範囲に入ってくるものが出てくるのじゃないですか。両方がオーバーラップしてくる、そういうことが考えられるのじゃないですか。だから、いわゆる他衛、他を守るということは自衛だというふうになってくるのじゃないですか。日本に近いある国が攻撃された、その国を守るということは直接日本を守るということにも関係してくるのだと考える場合もあるし、あるいは間接と考える場合もある。では直接、間接とはだれがどういうふうに考えるかということになってくれば、両方がオーバーラップしてきますから、間接だと考えているものも直接だというふうに考えれば考えられるのじゃないですか。そういうことを言っているわけですよ。
-
○角田(禮)政府
委員 わが国の自衛権を発動する要件が備わっているかどうかということは、わが国自身が判断する問題だと思います。ただ、その判断をする場合に、いま御指摘になったような間接的に攻撃を受けているとか、間接的に安全が害されているとか、そういうようなことはわが国の自衛権の発動の要件にはならないということははっきり申し上げておきます。
-
○
稲葉委員 間接的に攻撃を受けている場合にならないのはあたりまえでしょう。間接的というのを直接的というふうに考える場合だって、状況の進展によってはあるのじゃないですか。日本に近接したある国が受けている場合に、それは間接的だからだめだというのじゃなくて、日本の運命にかかわってくるということになれば、日本が直接受けているのと同じことになってくれば、そこで自衛権の発動ということは当然考えられてくるのじゃないですか。
-
○角田(禮)政府
委員 運命にかかわりあるというようなことではわが国の個別的自衛権は発動できない。あくまでわが国に対する直接の攻撃がある場合に限る、こういうふうに申し上げておきます。
-
○
稲葉委員 そうすると、自衛権の行使の条件ですね。それは、日本の場合でも、開始するときに行使の条件が整っておれば、開始した後には整っていなくてもいいわけですか。不戦条約の場合はたしかそういう考え方でしたね。そこのところはどうなるのですか。
-
○角田(禮)政府
委員 自衛権行使の要件として、前々からいわゆる三要件というものを申し上げているわけです。これは、開始の要件というか発動の要件と、発動した後の実際の行使の要件と両方を含んで三要件、たとえば第三の必要最小限度の範囲にとどまらなければいけないというのは、発動した後の行使の態様についても
適用される要件だと思います。
-
○
稲葉委員 そういう中で私がどうもよくわからないのは、これは前に私の質問主意書にも入れておいたのですが、昭和四十七年五月十二日の参議院内閣
委員会、大分古いことなのであれですが、この中でいろいろな問題があるのです。これは真田さんが答えたことで、真田さんはいま亡くなられましたからあれかもわかりませんが、その中で、たとえばこういうのがあるのです。これは十九ページのところです。「かりにわが国が集団的自衛権の行使ということを行なっても、外国はわが国を目して国際法違反であると、国際法的に見て違法な行為をしたのだというべき立場にはないということだろうと思います。」こういう答弁があるのです。これがまた私はよくわからないのです。どういうことを言っているのかよくわからない。また、なぜこういうことを言う必要があったのか、これもわからない。
-
○角田(禮)政府
委員 これは
稲葉委員の質問主意書に対する答弁の八というところでお答えをいたしておりますけれども、結局、国際法上わが国が主権国家として集団的自衛権を有していることは間違いないという、いわば国際法の解釈をポイントに置いて、それを御説明したいという気持ちで答弁したんだろうと思います。したがいまして、「かりに」というようなことで何かわが国の集団的自衛権の行使をやり得る余地があるような意味でお答えしたわけではなくて、全く純粋に理論的に、国際法的な面の理論を強調したということだろうと思います。
-
○
稲葉委員 だろうと思いますということだが、真田さんが亡くなられてしまったからわかりませんけれども、なぜこういうことを言う必要があるのですか。わが国が集団的自衛権の行使を状況によっては行うことができるんだというふうにこれはとれるのです。だからこういう答弁が出てくるのだと私は思うのです。
その後の二十ページの上から二段目で、「わが国に対する武力攻撃があった場合に日本の個別的自衛権は限定された態様で発動できるというだけのことでございますから、」これはあたりまえの話ですね。「韓国に対する脅威が、危害がありましても、これは直ちにわが国の自衛権が発動することになるとは毛頭考えておりません。」「直ちに」という言葉がここに入っているのです。これは日本語として読めば、直ちに発動することにならないけれども、場合によっては、将来においては発動することがあり得ると解釈できるんじゃないですか。私はそういうふうに読みましたがね。
どうも法制局は違うのだという方向に理屈をくっつけて解釈しているのだと思うけれども、「韓国に対する脅威が、危害がありましても、これは直ちにわが国の自衛権が発動することになるとは毛頭考えておりません。」直ちには考えていないけれども、進展によっては考えられる、常識的日本語で言うとこういう答えじゃないですか。これはどうなんですか。
-
○角田(禮)政府
委員 どうも私からお答えしにくいのですが、「直ちに」というのは、確かにそういう日本語の使い方もあることは私も認めざるを得ませんけれども、しかし、答弁の本旨としては、いわゆる朝鮮有事といいますか、そういうものが即わが国の自衛権発動の要件になるような疑問というか議論があるのに対して、即なるというような考え方は全く私どもはとっておりません。そういう意味で「直ちに」という言葉を使ったんだろうと思います。現にそのことは、速記録で言いますと一ページ前で、第三国に対する攻撃はわが国の自衛権の発動の要件にはなりませんということをるる申し上げているわけでございます。そういうものを受けて、いま御引用になりました答弁の直前にも、「わが国に対する武力攻撃があった場合に日本の個別的自衛権は限定された態様で発動できるというだけのことでございますから、」ということを申し上げているわけでございまして、決して直ちにはだめであっても場合によってはいいというような意味で申し上げたものではございません。
-
○
稲葉委員 そういうあなたの言うようなわけで言りたのならば、後のことは全部要らないじゃないですか。そうじゃないですか。いま真田さんはいないからね。ぼくの先輩だし、どうもあれだけれども、これは要らないのじゃないですか。言ったのなら、これは何かの意味があるというふうにとれますよ。頭の中にそういうことがあったというふうにとれるのじゃないですか、それならばここのところは全部要らないのじゃないですか。「発動できるというだけのことでございます」、これだけでいいのじゃないですか。あとは要らないのじゃないですか。どうでしょうか。
-
○角田(禮)政府
委員 それは前に韓国との問題が取り上げられているので、それを言い直すということでただ申し上げたつもりだと思います。つまり、水口
委員の御質問が、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン会談の中のいわゆる韓国条項を引いての御質問であったものですから、一般論として申し上げた上で、さらに韓国に対する脅威がわが国の自衛権発動の要件にはなりませんということを具体的事実に即して申し上げたわけで、その辺はもう全く他意はございません。
-
○
稲葉委員 法制局は、全体としていまのところはそういうふうに解釈しているのでしょう。そう解釈しなければ、この「直ちに」というのは意味があるのだというふうに解釈したら、あなたの方で後で大きな問題になるから、それ以上の答弁はできないでしょう。
私は、たとえばこういう質問をしているのですよ。尾崎記念財団発行の「世界と議会」に法眼晋作氏の「日本の外交」という講演が載っているのです。ぼくは法眼さんの講演も聞きましたが、この人は外務官僚の中ではなかなかタカ派的な論理を持った人で、「たとえば、日本が集団的自衛権がないということをいうでしょう。法制局がそう解釈しているのですが、しかし、安保条約を見てごらんなさい。日ソ共同宣言を見てごらんなさい。国際連合憲章をみてごらんなさい。どの国も個別的に、集団的に自衛をする固有の権利を持っているということが書いてあります。それを日本の解釈は、集団的自衛権がないということをいうものですから、安保条約の解釈も、日本が自分だけを守ることをやっておっていいけれども、それ以外はアメリカと協力しない、という建前で議論するわけです。そんな独断的解釈が通るでしょうか。」と、ずっと言うているのですね。
だから、法制局はそういうふうに解釈しているけれども、外務省としては、いま言ったような考え方でなくて、個別的にも集団的にも自衛する固有の権利を持っておるのだ、それが日ソ共同宣言にも安保条約にも国際連合憲章にも出てくるのだ、こういうふうな理解の仕方をしているのじゃないですか。
現に、日ソ共同宣言の中でも安保条約にもそれが出てきますね。平和条約の五条(c)項、それから安保条約の前文にもそのことは書いてありますね。だから、日本は集団的自衛権がないのと同じだと言うならば、いま言った平和条約の五条(c)項、あるいは安全保障条約の前文ですね、こういうようなこともわざわざ書く必要はないのだし、日ソ共同宣言の中にそれを入れる必要もないということになるのじゃないでしょうかね。
どうなんでしょうか。外務省はこういう考え方で言っているのじゃないですか。法制局はこうおっしゃったけれども、実際はそうじゃないのだということを言っているのじゃないですか。これに対しても私は言っているのですよ。そういうふうに質問しているのだけれども、あなたの方は全然答えないのだ。法眼さんに聞いてごらんなさい。外務省はそういう考え方ですよ。
-
○角田(禮)政府
委員 法眼さんのお話しになったものを私が直接コメントするのはいかがかと思いますが、この「世界と議会」は私も詳細に読みましたけれども、まず第一に、国際法上の解釈だけをしておられるのだと思います。一音も、憲法のケの字も言っておられません。ところが、結論としては、憲法の議論に触れられないで、わが国が集団的自衛権を持っていないという解釈を法制局がしているのはおかしい、こういうことを言っておられるので、そこに非常に議論が欠落していると思います。私どもは、国際法上集団的自衛権をわが国が主権国家として持っているということは絶えず申し上げていることで、その限りにおいては少しも差異はないわけでございます。ところが、先ほど来申し上げているように、憲法があるわけでございます。その点についての論及が全然なくて、結論だけは法制局の解釈はおかしいと言っておられるので、そういう意味において、議論の仕方自体がすでに間違っているのじゃないかというふうに私どもは考えます。
それからもう一つ、外務省がこのような考え方をとっているのじゃないかということについては、絶対にそのようなことはないと私は申し上げていいと思います。と申しますのは、先ほど四十七年の参議院における水口
委員と法制局とのいろいろな議論を御引用になったわけでございます。そのときには、外務省から高島政府
委員が出ておりまして同じような趣旨で答弁しておりますから、そういうことについて議論の差異は全然ございません。また、今回の答弁書の作成についても、当然のことながら外務省も入っておるわけでございまして、そういう意味において、外務省が法眼さんと同じような考え方をとっているというふうには私どもは思っておりません。
-
○
稲葉委員 あなたの答弁を聞いていますと、こういう疑問がわくのですよ。なるほどね、しかし、国際法上、日本が主権国家として集団的自衛権を持っているということを言う場合、それは具体的にどういう意味があるのですか、どういうときにそれが動くのですか。その点がよくわからぬな。
-
○角田(禮)政府
委員 これは、たとえば日ソの条約とか安保条約で、一つの条約技術論としてはということで高島政府
委員が答弁しておりますけれども、日本は集団的自衛権を持たないというような書き方もできるかもしれませんということも言っています。しかし、それはあたかも、わざわざソ連やアメリカに、私どもの国は集団的自衛権を持っていませんということを約束するというか、そういう意味で、独立国家として、主権国家としてそういう条約というものは恐らく書き方として非常に不適当であろう、そういうことで、ソ連との宣言でも、また安保条約でも、両方が確認をするということになっているわけです。その根源は、先ほど来申し上げているように国連憲章の五十一条にさかのぼることができるわけでございますから、いわば独立の主権国家であるということを世界に宣明する、そういう意味では意味があると思います。しかし、実際に日本の集団的自衛権の行使は絶対できないわけでありますから、そういう意味では意味がない、こういうことになると思います。
-
○
稲葉委員 意味がないならば、日ソ共同宣言でも、平和条約でもあるいは安保条約の前文でも、そんなことを何も書かなければいいじゃないですか。日本にとって意味がないならば書かなければいいんだよ。それをわざわざ書くというところにまた疑問が起きてくるのじゃないですか。どうもぼくはよくわからぬですな。
-
○角田(禮)政府
委員 いまその点をお答えしたつもりだったのですけれども、外国との条約で、私どもは集団的自衛権を国際法上も認めてもらいたくない、認められないような国であるということを外国に対して約束する、これは条約の書き方としていかにもおかしいのじゃございませんでしょうか。むしろ、集団的自衛権というものは持っているのだ、国際法上は持っているのだ、しかし、わが国は憲法で、それは全然行使しませんよということを世界にいわば独自の立場で自主的に宣言をしているという方が、どうも私は日本国の立場としていいのじゃないかという気がいたします。
-
○
稲葉委員 私の言うことを取り違えている。私はいま、国際法上集団的自衛権がないということを書けなんて言っているのじゃないですよ。実際上、日本はそんなものは行使できないのだ、あっても意味がないのだと言うならば、そういうことを全然書かないようにした方がいいのじゃないか、こういうことを言っているわけですよ。いいですか。あなたの方は、何もないということを書けというふうに言っているようにあれしますが、そんなことは書く必要はないのでね。
もう一つ、私がどうも疑問に思いますことは、結局集団的自衛権集団的自衛権と言うのでしょう。だけれども、日本と密接な関係にある外国が侵害を受けたときに、それは間接に日本に影響があると言うのでしょう。そういうのは行使できないと言うのでしょう。間接か直接かを一体だれがどのようにして判断するのか。直接影響を受けているということならば、それは個別的自衛権の発動となるのでしょう。ならないのですか。外国が侵害を受けている、それが結局日本に対する直接の攻撃とみなされるというような場合は全然ないですか。その結果として日本の国家の存立や何かに関係するという場合でも、日本は何もできないということですか。そんなことはないのじゃないですか。そこら辺のところをはっきりしてもらいたい。
-
○角田(禮)政府
委員 私は先ほど注意深く申し上げたつもりでございますけれども、わが国に対する武力攻撃がなければ、わが国の自衛権の発動はないということを申し上げたわけであります。
それから、直接であろうが間接であろうがわが国に対する武力攻撃がなくて、ただ平和と安全が脅かされるおそれがあるとか影響があるとか、そういうことではだめだということを申し上げたわけで、直接の影響があるから自衛権が発動できるというようなことは申し上げたつもりはございません。影響ではございません。武力攻撃がなければいけないということを申し上げております。
-
○
稲葉委員 同じような議論をたくさんしてもあれだと思うのですが、私はいろいろ詳しい質問をしたつもりなんです。それに対する答えがいろいろあったのですね。いま言ったようなこの答弁書なら、前に戻りますけれども、あなたの言ったような見解をずっと並べるなら、こんなのは一週間でできますよ。この答弁書は三日ぐらいあればできるわけです。それを一月、約四十日かかっているのですよ。前に言ったことと同じことを申し上げてもあれですが、私は、何かここのところでいろいろ配慮したのかどうか知りませんけれども、非常に考慮した答弁をしていることは間違いないわけです。
そこで、防衛庁に念を押した方がいいと思うのですが、いま言ったような集団的自衛権の行使はできない、これはわかった。わかったけれども、集団的自衛権の行使という形の中にいろいろな内容がある。いろいろな分類ができる。いろいろな分類ができて、それがその分類によっては日本が直接攻撃を受けたと同じように考えられる場合もあるという場合には、日本に対する攻撃として武力攻撃とみなすということもできるんだというふうな理解の仕方を、いま防衛庁なり外務省あたりはだんだんしてきているんじゃないですか。だから、集団的自衛権というものを抽象的な論議をしているのじゃなくて、それを個別に分類をして、こういう場合ならば集団的自衛権という名前で呼ばないで個別的自衛権という名前で呼んで、それに日本が対抗できるという形にして事を運ぼうという研究をいましているんじゃないですか。
私の言う意味はわかりますか。集団的自衛権というものを一つのものとしてではなくて、その中を幾つかに分けるわけです。分けてきて、それがきわめて個別的自衛権のものと近いものについては、それを個別的自衛権の範囲の中にだんだん含ませていこう、こういうふうなオーバーラップをしてそれを広げていこうという解釈をしていく、集団的自衛権の行使というものの態様をいろいろ分けて研究をする、こういうことを防衛庁でも外務省でもやっているんじゃないですか。
-
○夏目政府
委員 先ほど来法制
局長官からるる御説明しておりますように、私ども、わが国が持っている自衛権というのはあくまでも個別的自衛権である、厳格に守っておりまして、そういうものを広げるとかあるいは影響の多少によってそういうものは読み得るものがあるのではないかというふうなことを特段研究しているということはございません。
-
○
稲葉委員 では、一応いま言った答弁をお受けをしておきますが、私の聞く範囲内では、外務省でそういう研究をしているということを聞いているんですね。ジャンルに分けて、集団的自衛権の行使の態様を分けて研究しているということを聞いていますが、これはまたよくあれしましょう。
そこで、きょうは官房長官においでを願っていろいろ核の問題に関連をしてお聞きしたい、こういうふうに思ったし、それから質問も、これに関連して総理大臣の名前が出ていますから、総理大臣が来られなければ官房長官が出てくるのが本当だと思うのですが、御都合で来られないというので、国務大臣である奥野さんにお聞きをしたい、こういうふうに思うのです。
一つの問題は、これは奥野さん、どういうふうにお考えでしょうか。非核三原則を法律にしませんね。法律にしない理由については国会で総理からるる説明がありました。それはわかります。説明があったということはわかるのですが、その中には入ってないけれども、こういう考え方が政府部内にはあるのではないでしょうか、あるいは脳裏の中には。
その一つは、非核三原則を法律にすると、日本が核をつくらず、持たず、持ち込まずということを内外に法律できちんと声明してしまうと、いわゆるフリーハンドの幅が非常に狭くなってくるということから、それは法律にしない、ある程度フリーハンドの幅を残しておいた方がいいということで、それで非核三原則という形にして法律にしないのだ、こういう考え方が政治家として脳裏の中にあるんじゃないでしょうか。そこはどういうふうにお考えでしょうか。
-
○奥野国務大臣 私、よくわかりませんけれども、絶えず政府として政策を明確にしているわけでございますから、それで足りているのじゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。-
-
○
稲葉委員 そうすると、ではいま言ったようなことについては防衛庁としてはどういうふうに考えているのですか。そういうふうなことをあなたの方としてもそうですと答えるわけにもいかぬかもわからぬわね、いまの段階では。大変な問題になるかもわからぬけれども。だから、そういう非核三原則を法律にしない理由というのは、総理があそこで言った理由もあるけれども、内心ではやはりある程度日本の防衛政策の中でフリーハンドの余地を残しておこう、こういうふうな考え方が相当あるんじゃないですか。そういうふうに考えるのが常識的ではないでしょうか。これはどうなんでしょうか。防衛庁としてはどういうふうに考えているのか。
-
○夏目政府
委員 私ども憲法の問題あるいは非核三原則というものは、国の政策の最も基本的な原則と理解しておりますので、それ以上のことを全く考えたことはございませんので、いま御指摘のような点についてコメントするような立場にございません。
-
○
稲葉委員 これはあなた方に聞いてもあるいは無理かもわかりません。総理に聞くのが筋かと思うのですが、それなら非核三原則を法律にしたらいいじゃないかという議論になるのですよ。法律にしたら非常にコンクリートになるでしょう。コンクリートになっちゃって、そしてなかなか変えるわけにいかなくなりますね。原則だからある程度緩やかであって、そこで解釈の幅も出てくる、こういうことがあって原則という形にしているのじゃないでしょうか、私はどうもそういうふうに思われるのです。この点、官房長官に聞こうと思っていたのだけれども官房長官が来ないものだから――そうも言えないだろうけれども、答弁としてそういうふうに言ったら後で問題を起こすから言えないと思うけれども、法制
局長官、笑っているが、どうなんですかその点は。あなたに聞いても答えは出てこないと思うのだ。
それから、これは防衛庁に聞いたらいいのかな。いま安保条約があるわけですね。安保条約がある以上、核を積んでおっても、アメリカのそれが寄港したりあるいは通過するということで日本に実害があるのですか、ないのですか。その点について一体どんな実害があるのですか。
-
○夏目政府
委員 私ども、核のことについては、非核三原則というわが国の原則をアメリカも十分理解しておるということで、もしそういうことがあれば事前協議という問題が出るでしょうし、その事前協議があればノーとお答えになるということも再三るるお答えしていることでございまして、私どもの国是というか三原則というものについてはアメリカも十分承知しておる、そういう中で日米安保体制による共同対処を考えておるということでございますので、いま私どもがその核の問題についてとやかく言う立場にございません。
-
○
稲葉委員 私の質問が誤解を与えてはいけませんが、私の立場は、党の立場ですから、これははっきりしているのです。はっきりしていることを踏まえて、いろいろな答えを引き出したいから、いま言ったような質問をしているのですから、そうでなければ、いつまでたったってこれは進展しないのですよ、誘導かどうかは別として。これも一つのイントロダクションかもわからぬわね。これは導入部門だよ。導入部門がなければ話は進展しないからね。とにかくそういういろいろなことで、これは率直に言うと危険な質問なんですよ。非常に危険な、もろ刃の剣みたいなところをすうっと通っている質問だから、これはなかなかむずかしいので、質問する方も注意しないと危ないところです。
そこで、私はこの問題について、いろいろなことでどうも納得できないのです。
最初に、一番納得できないのは、集団的自衛権という問題にこだわるわけじゃありませんけれども、国際法上あるということだな。あるということをなぜ書くのか。日ソ共同宣言やその他安保条約に書くのかということもよくわからぬ。書いても意味がないというのなら全然書かなければいいので、それを書いているということは、将来集団的自衛権というものが行使できる余地を残しているんだということは言える。それから、憲法で禁止されているのかと聞くと、憲法で禁止されているとも答えない。それははっきりしないですね。いまの段階では禁止されているようにも聞こえるけれども、それを行使することについてそういう制約があるというふうに答えをしているわけですね。そこら辺のところが、あるのだけれども、あるかどうかということについても、あってもなくても同じようなものだというような言い方もするし、どうもそこら辺のところの解釈が私自身もよくわからないところがたくさんありますね。
前の法制局の答弁なんか見ると、将来、直ちにはそれを発動しないけれども後からは発動するようにもとれるし、国際法上それを何ら非難を受ける問題でもないというようなことも言っているのですね。こんなことをどうして言う必要があるのかとぼくは思う。ここで国際法上非難を受けないとかなんとか、そんなことを言う必要があるのか。ということは、それを行使するということがあり得るということを前提として答弁しているというふうにとれるのですよ。私はどうもその点が納得がいかないと思います。
それから、密接な関係というのが、これはどういうふうなことかということについても何かはっきりしないですね。意味がはっきりしない、ただ密接な関係だと言うだけで。だから、密接な関係ということが地理的近接性だけではないということは言えるわけでしょう。これはまたしつこい言い方になりますけれども、密接な関係というのは地理的近接性も含むけれども、地理的近接性だけではない、こういうことははっきり言えますか、どうですか。
-
○夏目政府
委員 いろいろな意味での密接な関係がある国ということだろうと思います。
-
○
稲葉委員 だから、いろいろな意味というのを前から聞いていて、また前に戻っちゃってぐあいが悪いけれども、私の聞いているのは、密接な関係というのは地理的近接性も含むのですかと聞いているわけだから、答えは、含みますということでしょう。そのほかにもあります、こういうことでしょう。それならばそういうふうに答えてくださいよ。
-
○夏目政府
委員 一般的にそういう国も含み得るというふうに思います。
-
○
稲葉委員 そうなれば、一体その国はどこかということになってくるでしょう。答えは、あなたはアメリカとは答えて、ほかのものは答えないからこれ以上押し問答しても始まりませんが、何回やったって同じだから。そんなことは答えられるんじゃないですか。密接な国はどこかということだって答えられるし、いろいろなことあるのでしょうけれども、そんなものが何で言いづらいのかな。
だから私は、非核三原則というものをしっかり守らなくちゃいかぬし、そうしてその上に立って自衛権の行使ということも、自衛権の行使という名前によって幾多の侵略戦争が行われているということを考えれば、それは行使は厳格にしなくちゃいかぬ、こういう党の基本的な立場に立って質問をし、そして答えをイントロデュースするためにいろいろ聞いているわけですから、この点を誤解されると困るというふうに思うのです。なかなかあなたの方は慎重ですね。これは慎重過ぎるくらい慎重だな。これはやはり別の人に聞く以外にないということになると思います。
では、その質問はそれだけにしておいて、
国籍法の問題を中心としてお聞きをしたいというふうに思います。
これは最初大臣に、
国籍法の第二条の問題を中心として今後法務省としてどういうふうに取り組んでいくかということ、これはまとめてお答えを願いたいと思うのです。
御案内かと思いますが、第二条はいわゆる父系主義ですね。父親が日本人であれば日本人になるという考え方をとっておるわけですね。父系優先主義と言いますかね。それに対して、これが両性の平等に関連して憲法違反だという説が出てまいりまして、父母両系主義にしろという議論がこのごろ出てきておるわけですね。そういうふうなことで、各国は日本と違って父母両系主義にしておる国がだんだんふえてきておるというわけですね。これは確かにいろいろな問題があるとは思います。この問題に関連して、細かいことはいいから、大臣としては今後どういうようなスケジュールでこの
国籍法の
改正に取り組んでいくのかという一つのお考えを示していただきたい、こういうふうに思います。
-
○奥野国務大臣 日本のいまの父系による血統主義、それを父母両系による血統主義に改めたいという考え方のもとで、事務当局で検討を重ねておるわけであります。さしあたり各国の法制を集めることに努力をしておりまして、並行的に法制審議会の審議を求める、その答申を得て法律
改正案を国会に
提出したい。
いつかの国会でも申し上げましたが、事務当局に来春法案を出せないかと言いましたら、とてもそれは無理ですということでございましたから、来々春には、言いかえれば五十八年の春の国会に出してくれるものと期待をして、私としては促進を図っているところであります。
-
○
稲葉委員 それで結構なんです。
では、細かい点になりますから、
局長でもあるいは説明員でも一結構ですがお聞きをしたいわけです。
この両性の平等というものを
国籍法に導入して二条を変えるわけでしょう。これはいまのままだと憲法違反だという説もあるわけですが、私の一つの考えの基本になりますことは、親子の
国籍の独立主義というものと夫婦
国籍独立主義というものを日本は採用しているわけですね。親子の
国籍独立主義というものを採用している国は少ないということを言われているのですね。未成年の場合に限ってとかいろいろな限定はありますけれども、この点はどういう経過で親子の
国籍独立主義というものを日本はとったわけですか。これも占領政策の一環かな。
-
○
中島(一)政府
委員 わが国におきましても、二十五年の
国籍法の前の
国籍法の時代には、親子あるいは家族
国籍同一主義というものを採用しておったわけでございますが、二十五年の
国籍法によって現在のような親子、家族の
国籍の独立主義というのを採用したわけであります。
その理由でありますけれども、これはやはり個人の尊厳と申しましょうか、憲法にうたわれました個人の独立、個人の尊厳というようなものから由来しておるのであろうというふうに解しております。
-
○
稲葉委員 それはわかります。確かにそのとおりなんです。だけれども、これは未成年の子供とか生まれた赤ん坊もいて、親が向こうへ行っちゃって籍が向こうへ行って、子供だけ残っちゃったというのも変な話ですね。私もよくわからないというか相当無理――無理と言うとおかしいですが、そういう問題点が確かにあると思うのですね。
それから、親と子供の
国籍が同一であることが望ましいとして、親の帰化に伴って予供に
国籍を付与する、これは随同入籍というのですか、それから随同喪失、これは日本の場合はどういうふうになっておるのですか。
-
○
中島(一)政府
委員 現在随同入籍という制度をとっておりませんので、親は親、子は子ということで別に申請をしてもらって、必要ならば同時に帰化をするという形になっております。
-
○
稲葉委員 そうすると、いまの随同入籍なり随同喪失というものも、日本の場合は世界の動きとは違うわけですか、外れているのですか。
-
○
中島(一)政府
委員 諸外国の事例としては、むしろ親子同一
国籍という制度が、大勢とまでは言えないにしても、かなり実例が多いというような実情であります。わが国におきましても、今回の
国籍法改正の場合にその点をどうするかというようなことも一つの検討課題になるのではないかというふうに考えております。
-
○
稲葉委員 これは、この前西ドイツの法務
委員会の議員が来まして、そこでいろいろ話が出て質問も出たのです。それから、いまオランダのへーグの大使館へ最高裁から細川君なんかも行っていろいろ研究しているようですね。確かにいろんな問題がありますね。一番大きな問題はロイアルティー、忠誠義務の問題が出てきますね。だから、その場合にどういうふうに法制をしていくかという点も、確かに私はむずかしい問題があると思うのですね。あると思うけれども、これは法務省だけで決めるわけにいきませんね。外務省なり何なりとしたりあるいは外交上のいろんな交渉なり何なりをした結果でないと決められないと思うのです。
むずかしいむずかしいと言っていたのではいつまでたっても
国籍法の
改正ができないし、日本は世界の大勢からどんどんおくれます。そのうちにあなた、いま裁判になっているのが憲法違反だという判決でも出てごらんなさいよ。どうにもしようがない。法務省は目も当てられない状況になってきます。だから、いろんな問題があるけれども、いま大臣が言われたように、五十八年の春には必ず間に合うように事務当局としてもしていただきたいと思うのです、法制審議会のメンバーも大体進んでいるように聞いていますから。
そこで、ことしの三月三十日に東京地裁で、
国籍確認で二つの判決が出ましたね。これは国が勝ったわけだ。勝ったことには違いないけれども、しかし、その中でいろんなことが言われております。人によってこの見方、判例に対する解釈の仕方は違うし、いま原告の方で控訴しているわけでしょう。学者によっても違いますね。東大の石黒助教授の見方と立教の沢木さんかな、あの人の見方が大分違う。沢木さんたちは共同鑑定の中で、
国籍法二条は憲法違反である、こういう意味で鑑定しているわけですね。三人の方、名古屋大学の山田さん、あれは江川先生の弟子かな。もう一人東洋大学の人が鑑定していますね。そういうふうなことでその鑑定が入れられて、高裁か何かでこれは憲法違反だなんという説が出たときには、法務省としては目も当てられませんからね。だから早くやらないとまずい、こう思うのです。
一審の判決の中でもこういうことを言っているのでしょう。これは新聞なんかでは、合憲判決が出た合憲判決が出たという書き方をしておったようですが、結論は合憲かもわからぬけれども、中身を見るといろいろな問題点を投げかけておって、しかもこの中では「著しく不合理な差別であるとする非難を辛うじて回避得るものとして」、こう言うわけですね。これがこのまま生きてくるとすれば――生きてくるかどうかわかりません。最高裁がどうなるかわかりませんが、これが生きてくるとすれば、この法務省の考え方というものは相当問題点があるということになるわけです。
だから、いろいろな問題がありますから、その点についてもよく研究をして――私も、どういう問題点があるかここで言うと、また外交上のいろいろな問題を起こしますから、詳しいことは聞きませんが、日本の場合複雑だから問題を起こすけれども、それはそれとして、いま大臣が言われたように、五十八年の春までには法務省としては全力を尽くして各方面と連絡して国会に提案をするという決意のほどを民事
局長から再度述べていただいて、私の質問を終わりたい、こう思います。
-
○
中島(一)政府
委員 先ほど大臣から申し上げましたように、私どもは五十八年の春の国会を目標に置いて、全力を挙げて作業に取り組んでまいりたいというふうに考えております。ただ、審議会にお願いすることでございますので、時期について確たるお約束はできませんけれども、私たちの気持ちとしては、五十八年の春にはぜひということでございます。
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 午後一時十分再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十六分休憩
――――◇―――――
午後一時十分
開議
-
-
○
横山委員 本国会ももう数日で終わりとなりました。当法務
委員会は、商法初め各法案につきまして、同僚諸君とともにきわめて熱心かつ具体的な諸問題について数々の質疑応答をいたしまして、私はかなり成果のある、実のある法務
委員会を終わりつつある、そういうふうに確信をいたしておるわけであります。しかし、そうは言いましても、質疑応答を通じて十分な結論に立ち至らなかった、あるいはまた継続をして次の国会に引き継がれるという問題が少なからずあるわけであります。
そこで私は、法務
委員会がこれでもう終わりでございますから、本国会におきまして話題になりました、積み残しになりました諸問題を含めまして、次期国会について政府側も政党側、政治家としての私どもも、準備をするべき諸問題を整理していきたいと思うのであります。
その意味で、第一に、次期国会に政府が
提出される予定の法案、また、まだ確定はしておらないにしても準備をされておる法案はどんなものであるか。また、次期国会ならずとも、これからの国会へ
提出しようとする作業を始めております諸法案の準備状況について、まず伺いたいと思います。
-
○筧政府
委員 現在、準備等を進めております法案につきましては、まず御承知の刑法でございます。それから監獄法、少年法、更生保護関係諸法、これらのいずれも刑事関係の法案でございます。そのほか問題になっております
国籍法、それから建物の区分所有等に関する法律、さらに外国人登録法、大体いま申し上げました法案について準備を進めておる次第でございます。
-
○
横山委員 いずれも本
委員会におきましてずいぶん討議がされました問題でございますが、すべてが次の国会へ出るとはもちろんお考えになっておらぬでしょうが、その順序はどういう順序になってまいりますか。
-
○筧政府
委員 お答え申し上げます。
順序と申しますのも、今後の諸事情によりますので確定的には申し上げられないと思いますが、次期国会提案を目指して現在準備を進めておりますのは監獄法でございます。
その余につきまして順次申し上げますと、刑法につきましては、御承知のように法制審議会の答申を得たわけでございますが、その後さらに検討を続けておる段階でございます。なお御承知のように一番関係の深いと申しますか、弁護士会との話し合いもいま続けておる次第でございます。
それから、少年法につきましても中間答申を得たわけでございますが、それにつきまして、現在、担当の刑事局でさらに検討を進めておるわけでございます。
更生保護関係諸法につきましても、これも刑法、少年法との関連もございますが、現在保護局で検討中で、いつということはまだお約束できないかと思います。
国籍法につきましては、今朝御質問もございましたが、来々国会提案を目途に現在作業を進めておる次第でございます。
外国人登録法につきましても検討中でございますが、できるだけ早い機会に
改正案を
提出したいというふうに考えております。
建物の区分所有等に関する法律でございますが、これも御承知のように、マンション等で登記等について非常な難問が生じておりますので、現在その基本問題を検討しております。いずれにしましても検討を終えました上で法制審議会にお諮りをして、その答申を得た上で
提出したい、これもできるだけ早い時期にと考えております。
-
○
横山委員 そういたしますと、私ども法務
委員として、いまのお話によれば、次期国会は大体監獄法が焦点になるだろうというお話でございます。私どもとしても別に順序に注文もないわけではありませんけれども、政府側がそういうことであるならばあるように、監獄法をいろいろな形で内外の諸情勢も含めまして検討を続けなければならぬと思うのであります。
二番目に挙がりました刑法についてちょっと御意見を伺っておきますが、日弁連との話が、公開の問題とか多少入り口で議論があるようでございます。いまそれをとやこう申すつもりはございませんが、一つお伺いしたいのは、保安処分だけ別に刑法
改正としてお出しになる、そんなことがあり得るのですか。
-
○
前田(宏)政府
委員 まだ結論を得ておるわけではございませんけれども、現在のところ私どもが考えておりますのは、刑法全面
改正の中で考えたいと考えております。
-
○
横山委員 そう願いたいものだと私も思います。
先般、新宿のバス事故の問題で、法務大臣と保安処分についてかなり一問一答を本
委員会で行いました。それはそれとして意義はあると思うのでありますが、しかし、それが余りにもトーンが高かったものですから、法務大臣が何か刑法
改正の中で保安処分だけ抜き出して刑法
改正をやろうとするような一部のうわさが流れたわけであります。そういうことでは、私どもとしても、刑法の整合性からいいましてどうも余り感心したことではなくて、しかも、のみならず、全国百数十万の患者さんあるいはまたその家族、周辺の聞こえもいかがかと思うのでありますから、いま刑事
局長のお答え願ったような趣旨で、刑法
改正は全般的な問題としてとらえて検討してもらいたい。法務大臣、よろしゅうございますか。
-
○奥野国務大臣 それは筋道だと思っております。
-
○
横山委員 七つぐらいの
法律案がいま準備中というお話がございました。私どもが思いますのは、建物の区分所有、これが私も選挙区で法務
委員であるためにいろいろと接触する諸問題が多いのでありますが、これが事務的に現地で非常に複雑な問題が――あわせて私はいま建設
委員も兼務しておりますが、マンショントラブルを含めて建物の紛争がかなり多いのであります。ですから、建物の区分所有に関する諸問題については早急な解決を望まれるのでありますが、現在の進捗状況はどんなものですか。
-
○
中島(一)政府
委員 区分所有権に関する法律は、ただいま御指摘ございましたように、登記の問題にいたしましても建物の管理の問題にいたしましても、非常に国民生活に密着をしております。また、
法務局の仕事にも非常に大きな影響を与えるものでございまして、私どもといたしましても一日も早くこの法案をつくりたいということで努力をいたしております。ただいま法制審議会の審議が行われておるわけでございますが、現在法制審議会では、主として建物の管理に関する部分の審議をお願いいたしております。登記の方は一応審議会で審議をしていただきまして、問題点を持ち帰りまして、そして登記の実務を担当しております法務省民事局の担当の課の方で、現場の登記官などを集めて細かい問題を検討しておるわけであります。その検討の結果をもう一度法制審議会で審議をしていただいて結論を出していただくということであります。
その時期でありますけれども、私どもはできるだけ来国会にというようなことも考えて努力をしておったわけでありますけれども、現在のところ、ちょっとそれは無理ではなかろうか、ちょっと物理的にと申しましょうか、時間的に無理になっておりますので、その次の機会にはぜひというようなことで考えておるわけでございます。
-
○
横山委員 もう一つ希望を申し上げたいのですけれども、更生保護関係の諸法律の一元化を私個人としても唱えて久しいものがあり、検討もされておる。それから一方では、少年法の問題については少年法の
改正が年長少年を中心にして考えられたが、いま年少犯罪の方が社会的課題になっておる。だから、少年法の法案についての在野法曹なりあるいは政府との意見の食い違いは、けんかの材料が変わってきた、けんかと言っては失礼でありますが、問題の所在が変わってきたという感じがするわけであります。
更生保護関係の一元化と少年法、それは刑法にも関係があるという点はわかりますけれども、刑法は確かに重要なものであるけれども、もう基本法であるから、この際監獄法の後に更生保護関係の一元化法、それから少年法、そういうものならば政府、在野、与野党の間にまだまだコンセンサスの余地がわりあいにあるんではないか。いきなり刑法という問題が、まだ未成熟のままに、いま来々だとおっしゃるわけですが、そういうものを持ってきたら、いまの話で建物区分にいたしたところで、
国籍法にしたところで、来々国会は大変な課題になる。だから、刑法は十分成熟するのを待つとすれば、来々国会の中心になりますものが更生保護関係の一元化化、少年法、建物区分、そういうところヘポイントを置いて作業を進められたらどうかと思うのですが、どうお考えですか。
-
○奥野国務大臣 刑法は四十九年に法制審議会から答申をいただいておるわけでございます。すでに七年たっておるわけでございまして、いろいろ伺っていますと、一番の反対の中心は、私は刑事治療処分と呼ぶべきだと言っているのですけれども、いま
横山さんの言われた保安処分のようでございます。でありますから、できる限りどういうところに問題があるのか、話を詰めなければいけませんけれども、詰めて、私はできる限り来春国会に提案をする、そういうことで努力してまいりたい、こういうことで事務当局に強く求めておるわけでございまして、ぜひそういうことにして責任を果たさせてもらいたい。
これをどう扱われるかは国権の最高機関であります国会の問題であって、ある団体が反対しているからいつまでも出さないでいいということは政府は怠慢だ、私はこう考えております。あとう限り団体と話を詰める努力はします。しかし、特定の団体が反対をしているから政府が提案をサボっている、これは私は無責任だと思うのでございまして、それらの問題をお裁きになるのは国会だと考えているわけでございます。
事前に政府がそれをチェックしてしまう、これは無責任。法制審議会が多年にわたって御努力いただいたことに対しまして、私は、いままで政府は責任を果たしていない、このそしりを免れない、こう思っておるわけでございまして、特に弁護士会が反対しておられまして、これは反対の意見はすでに青表紙の印刷物になって出ているわけでございますから、話し合いに応じないというならば、弁護士会の意見はそれだ、こう判断をして政府は対処すべきだ。しかし、あとう限りそういうことのないようにもう一度お互いの話が通じますように、とことんまで話をしていきたい、こう考えておるところでございます。
-
○
横山委員 えらい強気で物をおっしゃるので、ちょっと落ちついて話をしようとするのにけんかを売られたような気がするわけですけれども、そう大臣が、反対しているから政府がやらぬのは怠慢だ、自分は責任を感ずる、こんな気持ちで、反対をするあるいは意見があるという人たちなり団体というものをそういう感情的な立場でおとらえになっては、これはいかぬと思いますよ。日弁連ならずとも、私どもも反対ですからね、いまの状況では。だから、そういう感情むき出しで、反対しているやろうらはと言わんばかりのお話では、よけいに私は刑法
改正の将来というものは暗たんたるものだと思うわけです。
それには、かすに時間が必要ではないか。そしていまあなたのおっしゃるようなことも含んで十分に作業をするとなれば、あなたのおっしゃるように、何が何でも話がつかなければ来春出すとおっしゃれば、来春は監獄法があるし、来春出たところで来春通ると思われぬし、継続審議になれば、次にメジロ押しにたくさんの法律が来々国会に出てくるということを考えれば、総合的に法務省関係の法案のこれから
改正しようという手順、手管というものをやはりお考えになって、更生保護諸法や少年法なら私はコンセンサスが得られそうだ――得られそうだと言うんですよ。得られそうだから、そこから糸口をほぐり出していって、順次信頼感というものを回復しながら刑法の方へ行くというのが順当な筋ではないか。それを、いまのような感情むき出しで、そんなもの、刑法は来春どうしても出すと言われると、聞こえもいかがかと思いますが、これは私の御忠告であるし、意見なんですが、どうですか。
-
○奥野国務大臣 少年法も法制審議会から一応の答申をいただいておるわけでございますけれども、これについては、なおいろいろなものを検討しまして、さらにもう一度法制審議会に諮問して、その答申をいただいた上で立案、国会
提出という運びになるものだそうでございます。
同時に、いま
横山さんが言われましたように、少年犯罪がさらに低年齢化の傾向をたどっておるものでございますので、関係者においてもさらにそういう点についての検討を必要とするようでございますから、若干おくれるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。そういう点もございますので、なかなかおっしゃるような順序にはいきにくいんじゃないだろうか、こう思ってお答えをしておるわけでございます。
-
○
横山委員 そちらの方にはそういうようなやわらかい分析をして、刑法の方は、反対があるならしようがない、おれの方で独断で出すという論理もおかしいじゃないですか。まあこれ以上は申しませんが、私ども法務
委員としてこれからの法務
委員会の与野党の信頼関係のある、意見の対立はありましょうとも、法案の審議をするに際して、そういうふうの方がいいですよという御忠告をしておきますから、そのつもりでひとつ御検討を願いたいと思います。
第二番目は、先般来、不動産登記法に関して、いつの間にやら農地が宅地になったという問題につきまして、農林水産省と法務省との間でいろいろ御相談をしていただきました。その結果はまだ正式に報告をされておりませんので、結果の御報告を求めます。
-
○
中島(一)政府
委員 前回、四月の二十八日であったかと思いますけれども、その段階における協議の進行状況を御答弁申し上げたことがございました。その後、私どもの方と農林水産省との方でさらに細部にわたる協議を数回重ねておるところでございます。
現在どういうところが問題になっておるかと申しますと、登記官が農業
委員会に所要の照会をいたしました場合に、農業
委員会から回答をいただくという方向で意見の一致を見たわけでありますが、その回答は遅くともいつごろまでにいただけるのかという点でございます。それからもう一点、その回答の中身が、県知事が原状回復命令を発した場合に、登記官がさらに若干の期間登記を留保するという方向で意見の一致を見ておるわけでありますが、その期間をどれくらいにするべきであろうかという点でございます。そういった点で、若干まだ意見の調整が必要でありますので、ただいま鋭意やっておるわけでございますが、遠からず結論を出して適切な措置をとりたい、このように考えております。
-
○
横山委員 作業が少しおくれ過ぎます。これは法務省並びに農林省が国会に対してこたえなければならぬとお約束を願った国会がいま終わろうとしておるのに、依然としてそんな事務的な問題で結論がつかないということは怠慢であると私は思います。
問題になりました事案につきましては、名古屋の農政局並びに
法務局で逐一見直しを行っておるわけです。見直しについては、先般私が手配をいたしまして、名古屋の
法務局の信用ががた落ちに新聞でたたかれたものですから、それでは余りにも
法務局が気の毒だと思いまして、新
法務局長を中心にして公開で新
局長の見解を求めたところ、新
局長は全部の見直し、それから今後の対策について明白な答弁をされたので非常に好評なんです。好評であったけれども、そのことについての最終的な締めくくりがいまもって結論がつかぬということは、あのときに国会並びに名古屋の
局長が新聞を通じて県民、市民に対してお約束なさったことがじんぜん日をむなしゅうされておるという印象を与えないとも限らないので、私ども地元としては、国会が終わりましたら、新
局長がもう一遍県、市の関係者を含めて、見直しの結果並びに今後の対策について、はっきり県民、市民に理解してもらうという演出の手配が実は進んでおるわけです。
だから、この段階においてまだなお中央における結論がそんな事務的なことでつかぬということは怠慢だと思いますが、いつごろおつけになるおつもりですか。
-
○
中島(一)政府
委員 見直しの点につきましては早急に手をつけまして、現に作業は着々と進んでおるという段階でございます。
今後の一般的な取り扱いということになるわけでありますが、この点につきましては、法務省、農林水産省というそれぞれの立場もございまして、不正な農地の転用を防止するために協力し合って適切な措置をとっていごうという基本的な方針においては一致しておるわけでありますけれども、細かい点につきましてはまだ若干問題が残っておるということであります。国会も終了したならば早速に精力的に協議を詰めまして、本当に遠からぬ時期に結論を出したいと思っております。
-
○
横山委員 ぜひ早急にやってもらいたいと思います。
実はそれに関連しまして、あなたのお耳に入っているかどうかわかりませんけれども、この間またこういう事案が惹起いたしました。それは、いつの間にやら農地が宅地になった事案で、その地目変更の申請者が
法務局、登記所に誓約書を出したというのです。自分のこの申請によっていかなることがあっても、貴登記所に一切御迷惑をかけませんという誓約書を出した。
これを新聞が大きく取り上げまして、一体そういう尋常普通の手続をするのに誓約書がなぜ必要なのか。それは新聞によれば、登記官は誓約書を求めたつもりはない、誓約書が出たからといってどうということはないというように弁解はしておりましたけれども、そうだとしたら、誓約書をもらう必要がない。勝手に出したって、そんなものは役所の仕事に関係ありませんと言ってなぜ突っ返さなかったか。そういう誓約書が出され、誓約書を取ったということには、これに絡まるいろいろな疑問が自分でもあったんじゃないか。しかも、それは地目変更が四十三年にさかのぼっての申請でございますから、それによっていろいろな不祥事件が起こることが予測されて念のために取ったのではないか、こういうふうに推量されるのもやむを得ざることなのであります。
そういう派生的な問題がまだあるわけでありますから、この種の問題は過去についても将来についてもその根を絶つような処断というものを早急にやらなければ、またどんな問題が惹起されてくるかわからぬ。あなたはその誓約書問題をお聞きになっていますか。
-
○
中島(一)政府
委員 誓約書問題はただいま初めて伺いまして、従来耳にしたことはございませんでした。
ただいまの御説明では、宅地化が市街化調整区域になった前に行われたという申請についての裏づけと申しましょうか、その申請が誤っておったことによるいろいろなトラブルについて
法務局に迷惑をかけないという趣旨のものであろうかと思われますが、ちょっと私どもも理解しかねる書面と申しましょうか、取り扱いであると考えておるわけでございます。
この問題につきましては、私どもも
法務局全体で十分反省して、将来の反省の資料とするということを考えておるわけでありまして、きのうときょう、全国の
法務局長及び地方
法務局長の会同をいたしておりますが、その会同における民事
局長の指示という中にもこの問題を取り上げまして、全国の
法務局長に厳重に事実関係を説明するとともに、改めてこれに対する対処の仕方についての戒心を求めた次第でございます。
-
○
横山委員 それでは、第二点の問題につきましてはくれぐれも速やかに、しかも明確な措置をされるように求めておきます。
第三番目は、法務大臣に今国会中幾多の同僚議員からも話が出ましたが、同和対策特別措置法の強化、延長についてであります。
本
委員会で大臣は、夏ごろでございましたか総理も判断すると言っておることであるからというのが答弁の骨子であったと思います。これは本
委員会のみならず各
委員会でも取り上げ、政党関係におきましても国対関係で共通の話題として野党こぞって強化、延長を求めておるわけであります。特に私どもが法務大臣に要望いたしたいのは、何といってもこれが人権問題である。人権問題の中心が法務省であり、人
権擁護局である。したがって、閣僚の中で最も骨を折ってもらいたいのが法務大臣である。あなたと私とは、部落差別の問題について、前の質疑応答でもちょっと感覚が違っておるようではありますが、それは認めながら、なおかつ当面の関係国民の状況を考えますと、どうしても強化ないしは延長が必要ではないか。この点についてはあなたと私とは意見が一致できると思うのでありますが、国会閉会後、本問題についての大臣の努力を要請して、決意を伺いたいと思います。
-
○奥野国務大臣 部落差別がいまだに続いているということは、非常に残念に思っている一人でございます。同時にまた、これまで部落差別をなくするための努力をいろいろやってきた、これをさらにいままで以上に充実強化していきたい、これも人一倍そういう気持ちを持っております。
問題は、いまあります法律をさらに延長するかどうかという問題でございまして、手段の問題だと思うのであります。この点については、総理が八月を目途に方針を決めたいと言っておられるわけでございますので、私としてはその決定を待ちたい、こう思っておるわけであります。いずれにいたしましても、差別をなくするためにこれまで行ってまいりました努力、それをさらに充実強化しなければならないということを強く感じております。
-
○
横山委員 これは、繰り返し申しますけれども、ひとつ奥野法務大臣の御努力を期待するところであります。
次の問題として、過ぐる国会、その前の国会で、この近くにあります最高裁、法務省あるいは東京地検、その中にあります日弁連、、東京弁護士会等の法曹関係地域につきまして本
委員会は歴代の
委員長を中心にいたしまして検討をいたし、前
委員長の場合におきましても、建設省、大蔵省並びに法務省、関係のところに第一会館でお寄りを願いまして、建設省にこの地域に関するマスタープランを速やかにつくるように、また大蔵省にも好意を持ってそれを推進するように要望いたしたところであります。
聞くところによりますと、日本弁護士会は弁護士会館を新築いたす計画があり、その計画を実践いたしますためにはどうしても前から全国の法曹関係者の募金を始めなければならず、その意味におきましては、このマスタープランの一画のどこに大体でき上がるかという地点の設定、予定地、それによる建設計画、建設費用等につきましてなるべく早く確定が願いたい、確定ができなければ大体の地域としての了解が願いたい、こういうことでないと募金活動がなかなか十分に進展しないということを、こもごも与野党並びに政府関係各省に要望をいたしておるところであります。その点についてまず建設省の作業の推進状況をお伺いいたします。
-
○
渡辺説明員 お答えいたします。
中央官衙の整備につきましては、国家機関の庁舎の狭隘あるいは老朽庁舎の建てかえを円滑に進めるために、昭和三十三年に決定されました東京都市計画霞が関一団地の官公庁施設の趣旨にのっとりまして、今後とも逐次合同庁舎等を建設していく方針でございます。
A地区につきましては、国家機関の庁舎として考えておりますのは、現在建設中の東京高等、地方、簡易裁判合同庁舎のほか、法務総合庁舎、それから合同庁舎第六号館が、これは仮称でございますが、予定されております。
それで、中央官衙の施設の需要を的確につかんで対応するためには、Aブロックのみでなくて、行政官署の区域全体の長期的な見通しに立った建設計画が必要でございまして、そのための作業を進めております。その一環といたしまして、昭和五十五年度は中央官衙施設の現況調査を実施いたしました。今後この結果を踏まえまして、これら施設の現況をもとに関係各省の御協力をいただきまして、弁護士会館の建設問題も念頭に置きまして建設計画の作成を急ぎ進めてまいりたい、かように思っております。
-
○
横山委員 時間の関係上端的にお伺いいたしますが、日弁連がいま会館を持っておる、したがってそれに、その既得権とでも申しますか地上権とでも申しますか、出ていけと言うことはない。いずれにしても、それはこの地域において新規の建築を認めなければならないだろう、その予定地としては一体どんなところが予定されるかという点について、もう少し立ち至って説明が願いたいと思います。
-
○
渡辺説明員 A地区のマスタープランにつきましては、マスタープランというものがこの地区全体を今後どういうふうに整備するかという方針を固める計画でございまして、どの地区にどの面積というのはマスタープランとしてはかなり詳細な段階でございまして、今後の作業を待っていただきたいというふうに思っております。
-
○
横山委員 法務省にお伺いいたしますが、法務省としても日弁連のこの計画を知らぬわけではないでしょう。法務省としての立場からいいましても、建設省に対して、どこに何を置いて、どこにどうしてくれ、こういうのが望ましい、その意味においては日弁連についてこういう配慮をしてやってもらいたいという点がなければならぬと思うのですが、その点はどういうことになっておりますか。
-
○筧政府
委員 私どもといたしましては、まず私ども自身がこのAブロックの中に入るわけでございますので、いわば査定を受ける立場にもございますが、日弁連からは数年前からいま先生御指摘の会館建設の敷地を確保したいという要望を私ども承っております。その結果、昭和五十四年のたしか秋ごろから、法曹三者という形で、日弁連と私どもとそれから最高
裁判所とで折々協議といいますか、打ち合わせをいたしております。現在まで六回行ったわけでございますが、その機会に日弁連の方からいろいろな御要望あるいは計画の進行状況等についてお伺いをいたしました。
私どもといたしましても、日弁連の会館があのAブロックに建つということが望ましいと考えておりますので、側面からの協力と申しますか、建設省あるいは大蔵省の方へ弁護士会の要望をお伝えしておる次第でございます。
-
○
横山委員 建設省に改めてお伺いいたしますが、いまのお話のように、法務省としても日弁連の要求はもっともだから検討してもらいたいということの立場ですね。建設省は、先ほどお答えがなかったのですけれども、日弁連にここから出ていけと言うおつもりはないでしょうね。それが一つ。それから、そうだとすれば、この地域の中でどこかでめんどうを見なければならぬというお考えでしょうね。それが二つ。そうだとすれば、日弁連の計画書はすでにいろいろ検討されておる、そう考えてよろしいか。
-
○
渡辺説明員 弁護士会館の問題につきましてはお話のとおりでございまして、この地域で考えるということで、これを念頭に置いて建設計画を進めるということでございます。
-
○
横山委員 大蔵省にわざわざ来ていただいたのは、財政的なこともマスタープランを推進する上において、いつの年度にそういうことをやるかについては議論があるでありましょうが、日弁連のみならず法務省も、少なからずこの建設については法務省のまた最高裁の建物についての推進をしておる立場がございますが、大蔵省はこのマスタープランの推進についてどういう立場でありますか。日弁連を含めて意見を伺っておきたいと思うのです。
-
○
中島(潔)説明員 弁護士会館の予定地につきましては、大蔵省といたしましても
裁判所等が所在するA地域に割り当てる方向で検討したいというように考えておりますけれども、先ほど建設省の方からもお話がございましたように、この地区につきましては法務総合庁舎等国の庁舎の整備も行う必要があるというように考えておりますので、弁護士会館の具体的な位置であるとかあるいは規模につきましては、このマスタープラン、これは建設省が案を作成いたしまして関係省庁に諮った上で決定される、こういうことになろうかと思いますが、その時期に具体的な位置あるいは規模等について調整をしたいというように考えているわけでございます。
そのマスタープラン、いつごろかということになりますと、いろいろ財政事情等もございまして、いつごろということをいまの段階では申し上げられないのではないかというように考えております。
-
○
横山委員 各省とも、それでは日弁連会館については既得権を尊重すること、それからこの地域において建設がされるであろうこと、そこまではコンセンサスが得られておるようであります。
いまの最後のマスタープランがいつごろできるかわからぬ、こうおっしゃるのであるけれども、マスタープランをつくることそれ自身がプランでありますから、必ずしも財政的にそんなに期間を明示しなければプランとしての存在が別にどうこうする問題でもございません。したがって、私は、でき得べくんば日弁連の会館を含めて、この地域のマスタープランを建設省が一刻も早くつくることを要望したいのでありますが、最後的にマスタープラン作成の時期判断、それは一体建設省が中心になるのでありますか、それとも大蔵省が中心になるのか、どちらか責任のある方で御返事を願いたい。
-
○
渡辺説明員 マスタープランの案につきましては、建設省が関係省庁の御意見、いろいろな要望を伺いまして、それをもとにまとめていくということになろうかと思います。
-
-
○
渡辺説明員 時期につきましては、これは各省ともいろいろ相談をして……。
-
○
横山委員 あなたの方としてはいつごろと考えておるのですか、私がこれだけ要望しておるのに。
-
○
渡辺説明員 鋭意やっていきたいということで、いっごろということにつきましては、これは御相談しながら進めていく問題でございますので、お許しいただきたいと思います。
-
○
横山委員 非常に不満でございまして、毎国会で私が請求していることでありますから、次期国会までにはひとつ十分検討を要望をしておきます。
では次に移りますが、飯島桂子事件であります。
本件は、成田におきます空港の襲撃事件、これに関連して起こった事件であります。先般私が本
委員会で警察庁も含めまして質疑を行いましてから、地方
裁判所の判決がございました。その結果は、飯島桂子有罪ということになり、控訴が東京高裁第十一刑事部に
提出をされております。私はその際にも言うたのでありますが、地裁判決を見ましても、私がこういうことはどういうことなのかと言った問題について十分な判断を下していないように思うのであります。
申すまでもなく、飯島桂子は、成田事件の際に本人は救護班としての行為をしたわけであります。そして、救護班として認知をされながら犯罪と見られたという事件であります。そしてまた、飯島桂子が成田襲撃に関する共同謀議に参画はしていないと私は言っておるのでありますが、この地検における起訴理由も共同謀議に参画しておったという立証がないわけであります。現場におきましても、現場の警官がこの陳述書を書いておるわけでありますが、抵抗なく飯島桂子は逮捕されております。それは、抵抗がないということは、襲撃に一切関係なく、自分が救護班を希望し、救護班をやっておったから、抵抗する気持ちは毛頭ないということも言えることなんであります。
本来、救護班というものは、広く言えば、日本赤十字社もそうでありましょうけれども、各国の国際法の中で赤十字というものを含んでどういうように国際的な判断があるかということは、これは常識的な問題だと思います。私が想像いたしますのに、成田事件というものは一世を震憾させた問題でございまして、政府並びに検察陣といたしましても全力投入をしてそれを阻止しようとしたことでありますから、あの当時の雰囲気としては、とにもかくにも何でもやってしまえという雰囲気が溢しておった。そして、それは単に現場における警察官のみならず、検察庁についても同じような雰囲気があったと思われるわけです。いわば感情的な問題やあるいは政治的な問題が先行したと見ざるを得ません。
私がきょう刑事
局長にお伺いをいたしたいと思うのは、控訴が出ておる、高等
裁判所で判断が改めて求められておるわけでありますが、顧みて検察陣としてもう一回冷静に判断をしてみて、一体飯島桂子事件というものが果たして起訴事実が適当であったかどうであろうか。先般、私はここで警察庁の方に質問をしたし、あなたにも質問をしたと記憶しておるわけでありますが、私の質問に対しましても十分なる反証が、御説明がなかった問題であります。それはいま控訴段階であえて私が
裁判所に言うべき問題でなくて、飯島桂子を逮捕し、そしてこれを起訴をした検察陣に改めて反省すべき点は本当にないだろうか。あの当時あらしのような雰囲気の中で、とにかく渦の中にあるやつはみんなつかまえてしまえというような雰囲気が果たしてなかったんだろうか。
救護班だけやって一生懸命にけが人の救護をしておる人間を、それも若い女が逮捕された。逮捕された飯島桂子は学校の先生である。学校の先生がそれによって首を切られた。一年収容された。そして、父も母もきる公共的なところへ勤めておるりっぱな御主人であり、りっぱな奥さんなんでありますが、やはり娘のやった行為それ自身についても理解は示しておりますけれども、その犯罪事実については、父母としては娘の主張なり弁護士の主張を全く正しい、救護班がめちゃくちゃに逮捕され、起訴され、一年拘置所におって、そしていま有罪となる、学校は首切られる、余りにもこれはひどいという意見で、涙を流して訴えておるわけであります。
いま刑事
局長にこれを言って、高等
裁判所の検事にどうこうしてくれと言うつもりはありません。ありませんけれども、少なくともこの起訴事実の詳細について検討すればするほど、あの当時の雰囲気が少し感情的、政治的に強過ぎたのではなかったかという感じを改めて私は力説をしておきたいと思うのでありますが、御感想を伺いたいと思います。
-
○
前田(宏)政府
委員 お尋ねの事例につきましては、ただいま
横山委員も仰せになりましたように、すでに一審の判決がございまして有罪ということになっておるわけでございます。前回、たしかもう一年くらい前になると思いますが、お尋ねを受けましたときはまだ公判中でございましたが、その後有罪の判決があった、そして被告人側の方から控訴の申し立てがあって、現在高等
裁判所に係属中、こういう状態であるわけでございます。
したがいまして、起訴の当否というようなことも含めて高等
裁判所の御判断が当然あるべきものと考えておりますわけで、ここで、そういう段階にあります現時点でどうこう言うことは適当でないと思いますけれども、問題の救護班に属しておったかどうかということ、これは第一審の公判の過程でも争点といいますか、問題点になっていたわけでありまして、判決でも、その点には簡単ではございますけれども触れているところでございます。また、共謀の証拠がないんじゃないかというような御指摘もあったようでございますけれども、これも判決の中で共謀共同正犯の成立が認められるということに相なっておるわけでございます。したがいまして、判文の上では比較的簡単でございますから御理解が十分いただけないかという気もいたしますけれども、その点が争点になり問題点になって、
裁判所も公正の立場で御判断があったというふうに理解すべきものであろう、当然でございますが、そういうふうに考えているわけでございます。
したがいまして、当時ああいう情勢のもとでいろいろと行き過ぎがあったんじゃないかというような御意見もいまあったわけでございますけれども、やはり刑事裁判でございますから、検察官といたしましても証拠のあるもの、ないものをより分けまして、証拠のあるものは起訴をする。そして
裁判所がまた改めてその証拠の有無によって、共謀の点なり共犯なり、いろいろな問題につきまして御判断をされているわけでございますから、それ以上に何か感想と言われましても、ちょっと申し上げにくいわけでございます。
-
○
横山委員 公判の中で明らかになったことを参考のために申し上げておきますと、ゲートの退却グループ、被告五名のうちの二名の逮捕警官、逮捕した警官は現行犯逮捕手続書にある逮捕理由が推測であったことを認め、実は逮捕理由もないのに逮捕したことを明らかに警察官がいたしました。この逮捕理由は検察側の冒頭陳述や起訴状と全く異なるのにかかわらず、検察官は表現の誤りと主張し、無差別逮捕の事実をおおい隠そうといたしました。また、この二名のうちの一名はさらにうそを重ねて、逮捕行為に当たっていないのに逮捕したと本人は言い張ったという事実が明らかになりました。
それから、検察側の主張が二転三転いたしました。最初は共謀共同正犯と実行共同正犯の双方が成立すると起訴状で言いました。次には、共謀共同正犯であり、一部実行共同正犯であると改めました。これは検察側の冒頭陳述であります。それから次には、実行共同正犯であると検察側の冒頭陳述で言い改めました。それから論告求刑では、共謀共同正犯としてはもとより、実行共同正犯としての刑事責任を負う。こういうふうに検察側の主張がくるくる変わったわけであります。
それから、違法逮捕という問題については、逮捕時に事実関係を正しく認識せよと要求することは困難を強いるものだという主張をいたしました。そして逮捕手続書の偽造については――これは明らかに偽造ですよ。偽造については、単純な誤りであるというふうに言い張りました。こういうことは、まことに通常の感覚からいいますと一この事実関係を明らかにせよということは困難を強いるものだという。ということは、できないということ。逮捕時に事実関係を立証できないということは、普通の常識からいうならば、本人が何をやっておったかわからないということなんであります。それを手続書が書かれたとおりにやっておったけれども、手続書が誤っておったということは単純な誤りだ、文章の作成上の誤りだ、こういうことを言うわけでありまして、これはまことに私ども、常識を疑うところであります。もちろん、弁護側は違法逮捕だと言っておるのですが、判決書はこれについて一切触れておりません。
救護活動についても、判決は、救護班は役割り分担にすぎないんだ。本人は、先ほど申しましたように、共謀共同正犯、実行共同正犯としての刑事責任を負うという検察の論告求刑を受けたものだと思うのでありますが、この飯島桂子が共同にして共謀したという事実関係は一切この証拠にも出ておりません。本人ももう一切それを否定しておるわけであります。
ですから、私は、当時の政時的雰囲気なり感情的雰囲気ということはわからぬわけではない。けれども、飯島桂子に関する問題については余りにも十把一からげ、怒濤のごとき警察官のあの成田の混乱の中に起きた、救護班の若い女の子が、正義心――あなた方は正義心を否定なさるかもしれませんが、純粋な正義心で救護班をやったことについて、余りにもその受けた打撃、物心両面にわたる打撃というものは気の毒ではないかと思うわけであります。あなたもいま私が申し上げたような諸点について、もう一遍ひとつ心を平らにして改めて検討を願いたいと思いますが、いかがですか。
-
○
前田(宏)政府
委員 ただいまの御指摘のような点は昨年の御質疑の中でもある程度出ておったように思います。その際にも申し上げたような記憶があるのでございますけれども、検察側としてはそれなりの証拠があって起訴したものと思う、ただ、いろいろ御意見もあるので、その点も重ねて検察側に伝えて検討してもらうようにしたいというようなお答えをしたと思います。事実、そのような措置もとりたわけでございますけれども、先ほど来申し上げましたように、そういう点を含めていろいろな点が争点となって裁判が行われ、結局
裁判所の判断で有罪の一審判決があった、こういう経過になっておるわけでございます。
したがいまして、先ほども申しましたように、余り細かい点につきましてとやかく申し上げるのはいかがと思いますけれども、たとえば逮捕の問題につきまして申しますと、確かに混乱状態の中での逮捕でございまして、逮捕時点ではいわば左の方から来た者と右の方から来た者と両方逃げてきたような者が混在しているところでの逮捕が行われたようでございます。そこで、片方から来た中に入っておった者を向こうから来た者というふうに、その時点では取り違って処理をしたというようなこともあったようでございますが、その後、関係者の供述その他客観的な証拠を検討いたしますと、実態が明らかになってきたというふうに考えられるわけでございまして、先ほど御指摘のような点も、そういうことを意味しているんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
-
○
横山委員 ここでその事実関係を、そうであった、ないという論争をやることも意義はないわけではありませんけれども、本来、私がそういうことについて、法廷でもございませんから、余りあなたと論争しようとは思いません。思いませんが、本件は、繰り返し申しますように、あのときにおける雰囲気の中において、とにかく怒濤のようなやり方でなさった中における瑕瑾が本当になかったかという点について、私は反省を検察庁並びに警察にも求めておるわけでありますから、したがって、間違いない間違いないと言うばかりでなくて、機会があれば、検察陣として間違いのない公判を進める上においても、ひとつもう一遍十分詳密な検討をしてもらいたい。しかも、だれが聞いても、救護班である、女である、それによって受けた犠牲というのははかり知れがたいものがある、そういう点をも考慮なさって、公判における検察陣の誤りなき処置について希望をしておきます。
次に、本
委員会で数年来取り上げてまいりました、世界基督教統一協会に関する問題でございます。
これは人
権擁護局が、私どもの要望によって、もう数年来、あるときには全国の人
権擁護部長会同もやってもらって、そして窓口としての適切な活動をお願いをしておったところであります。ところが、最近、話によりますと、再び合同結婚のうわさが高まっておるわけであります。
この世界基督教統一神霊協会は、宗教法人ではございますが、うらはらとして、勝共連合という政治団体を表裏一体として活動をいたしております。先年私が、この統一協会の違法、不当、人権じゅうりんという問題を数々の例証を挙げまして提起をいたしました。そして、具体的な事案を次から次へと列挙いたしまして、警察庁としても、また
法務省人権擁護局としても対応を求めたところであります。
私はその過程で、統一協会の会長久保木氏と会見をいたしました。私が久保木氏に要望いたしましたのは、一つは、キリスト教と言えば少なくとも愛がその教義の源泉になっておる、日本における、世界における愛の根源は家庭である、その家庭から、親をサタン、悪魔と言い、そして父母から告発が出る、こういうようなことは教義としての愛を中心となさる神霊協会としてはきわめて不穏当ではないか、家庭から反対が出ているのに、なぜうちを出させ、なぜ合同結婚を親の反対を押し切ってなさるのかということを懇々とお話しいたしましたところ、久保木会長は謙虚に、国際結婚を
横山先生は御否定はなさるのではないでしょう、それはそうです、わかりました、それでは親の反対がどうしてもある限りにおいてはいろいろな角度で善処します、それから国際結婚は日本では当面行いませんということをお約束なさったわけであります。自来ありませんでしたけれども、先年茨城県かどこかで、いわゆる合同婚約式がひそかに行われたということが話題になりました。
今回、多分韓国で再び三たび集団合同結婚式が行われるといううわさがございます。すでに文鮮明氏は韓国へその準備のために帰っておるという報道がございます。そうだといたしますならば、これから、いつかわかりませんけれども、合同結婚に出席いたしますためには、従来の経験によりますと、子供は親の反対を押し切って出国申請、旅券を求めに行く。そして、従来は五十万ぐらい自分が手当てをしなければなりませんから、従来の例からいうならば、朝鮮つぼ、朝鮮ニンジン、朝鮮のいろいろな高価な品物を親戚縁者に売る。そして、親の方で反対をし、それを阻止するために運動を展開する。世界基督教統一協会のところへ座り込みをする。トラブルが起こる、そういう問題が続出をする可能性があるわけであります。
私の手元にも、もうすでに二、三通の手紙が来ております。一時、久保木会長との幾度かの懇談の結果、違法、不当、人権じゅうりんの問題がやや少なくなったと思っておりましたところ、最近再び、子供が下宿から出ていってしまった、行方を追及したけれども、知らぬ、存ぜぬと統一協会は言う。それで、窓口となっている東京の
法務局の人
権擁護部へひとつとりなしを願いたいというわけで、私が人
権擁護局や東京の擁護部へお話をして、遺憾のないようにする、娘と会わせてやってもらいたい、とりなしをしてもらいたいという問題が数多くあるわけであります。こういう事例は、ここにたくさんの手紙が来ておりますから御
紹介をしたいのでありますが、時間がございません。
これらについて人
権擁護局に要望をいたしたいのは、速やかにいろいろな角度から情報を集めてもらいたい。そしてまた、親の訴えあるいは関係者の訴えについて受け入れ体制を整えてもらいたい。あるいはまた、統一協会に対して事実関係の事情聴取をしてもらいたい。あるいはまた、統一協会に対しまして、問題があった場合直ちに会談をする、あるいは父母と会わせる、その他の手配を準備をしてもらいたい。
具体的な諸問題についてはここでは差し控える。父母が自分の名前を明らかにしてほしくないという希望もございますから、いずれ具体的には私から問題提起をいたすにいたしましても、とりあえずいま申しました諸問題についての御見解を受けたいと思います。
-
○鈴木(弘)政府
委員 お答えいたします。
ただいま先生がおっしゃいました最近の情報については、詳しくはつかんでおらない一わけでございます。しかしながら、集団結婚等が強制にわたるような場合には、人
権擁護上きわめて重大な問題があると思っております。
そこで、私どもといたしましては、入信者から直接
法務局に対して、かくかくしかじかの強制にわたる事実があることを述べて申告がありますと、それを調べて人権侵犯の疑いがあれば、鋭意調査し適切な処置をとりたい、かように思うわけでございます。
-
○
横山委員 申すまでもないことでございますけれども、この種の問題は必ずしも狭義の意味の人権問題ではないということであります。
たとえば統一神霊協会に入信しております息子、娘、それが成人者である場合、それが洗脳されて自分が自発的に入信をした問題であると言い張る場合、そういう場合に一部の言い方をもってしては信仰の自由である。たとえばイエスの方舟におけるあの例を見ましても、成人しておる成年男女がイエスの方舟に入信をしてバーのホステスをやる、いろいろなことをやる、そういうことがなぜ悪いかと本人が言えば、これは必ずしも人権問題とは言えないわけです。
しかし、広い意味で言うならば、この洗脳ということ、十日も二十日も絶食状況に置いて昼夜兼行で思想改造を行わせる。人間がそういう極限に達した場合に精神病になった例があるわけですが、そういう病気になってしまうか、あるいはそれを思い込んで洗脳されてしまうか、あるいは逃げて帰ってくるか、数々の例からいうならば、そういう状況において統一神霊協会がかん詰めで行った洗脳のやり方というのは、結果としては彼らの目的をかなり達しておるわけです。しかし、一方父母の立場からいうならば、一週間も絶食をさせた、そしてめちゃくちゃ洗脳したということはひどいじゃないかという問題がある。
また、私が指摘したことは、地方条例にあります訪問販売あるいは街頭販売、それは無届けである。あるいは世界の気の毒な子供を救うためと称して募金をして、それをそこへ納めなかったという事例がある。あるいは本人たちの給料はたとえば十万円であるけれども、帳簿にはちゃんと十万円給料支払いとなっておるけれども、実際は八万円くらいは統一神霊協会に献金されておって本人もそれを承知しておる、こう言い張る。国税庁が一回それを脱税としてかなりの深度をもってやった事例があるわけですけれども、きわめて巧妙、きわめて合法的のような見せかけがあるわけです。
したがって、人
権擁護局といたしましても、きわめて狭義な意味における人権問題としてとらえる限りは問題の処置のしようがないということで、各所で余り相談の頼み相手にならないという意見があるわけであります。そこを人
権擁護局としては大所高所に立って、親と子の情理については広い意味の人権問題として統一神霊協会に十分な窓口を確保して、円満な親子関係、社会関係の設定に努力をしてもらいたい。これはおわかりになっておると思いますけれども、念のために強く注文しておきますが、いかがですか。
-
○鈴木(弘)政府
委員 お答えいたします。
申し上げるまでもございませんが、この問題は宗教の自由、信教の自由というものが絡まってまいりまして、微妙な問題があるわけでございます。統一協会側の布教活動あるいは宗教活動等の過程におきまして、先生がいまおっしゃいましたような事柄の中に強制にわたる事実も事案によってば出てくることも考えられないではないわけでございます。もし強制にわたるような事実がございましたら、これは先ほども申し上げましたが、人
権擁護上重大な問題でありますので、先ほど申しましたような手続を踏みまして適切な対応をしてまいりたいと思います。
なお、先ほど申し落としましたが、統一協会の入信が原因で親子の間に断絶が生じたり、入信者の所在がわからなくなったりしてその家庭が破壊されるといった事態が生じておることは、人
権擁護機関として看過できない問題でありますので、去る昭和五十二年、統一協会との話し合いによりまして、入信者の親らが入信者の所在を探したり面会を求めたりする場合には、東京
法務局に申し出れば同
法務局が同協会との仲介をしてその実現を図ることとし、その後現在に至るまで、多数の親たちからの依頼を受けて入信者の所在の確認や親子の面接等を実現してまいったところでございまして、つい最近にもそのような事例があるわけでございまして、今後ともこの活動は続けてまいって、できるだけ家庭が破壊されないよう努めたい、かように思っておるわけでございます。
-
○
横山委員 次に、法務大臣にお伺いをいたします。
本
委員会でしばしば取り上げられている問題に平沢被告の問題がございます。かつて前々法務大臣のころであったと思いますが、平沢被告に恩赦、仮出獄の話をされたかされぬかわかりませんけれども、一斉に――一斉にではありません、一紙ですか、大きく出したことがございます。要するにそれは間違いであったというような結果になっておるわけであります。
御存じのように平沢被告も高齢に達し、在監年数も実に長年月にわたっております。体も必ずしも十分ではありません。考慮さるべきことは、あの帝銀事件によって命を亡くした人々、その家族の心理状態あるいは社会の平沢被告に対する見方、そういうことも、仮に平沢が犯人であるか否かを除外しても考慮しなければならぬのではないかという点について、しばしば法務省側の意見も伺ってきたわけであります。それも私もそうだと思わないではありません。しかし、ここまでまいりますと、長年の刑務所生活によってそれもある程度薄らいできたのではないかと思います。
法務大臣の最終権限とは必ずしも専決で行える問題とは思いませんけれども、民事
局長をかつてやっておられた新谷さんがきのう本会議で
委員長に御就任になりました。こういう機会に一遍平沢被告の現状なりあるいは恩赦なり何なりについて検討をしてやってもいいのではないかと思うのでありますが、どうお考えでありますか。
-
○奥野国務大臣 数カ月になりましょうか、中央更生審議会で結論をお出しになった。その後で新谷さんから真剣にそれぞれの
委員があの問題と取り組んだお話を伺ったことがございます。今日また恩赦請求が出ていると思うのでございますけれども、いろいろな意見を私に寄せていただくわけでございますけれども、私情は差し抑えて中央更生審議会の審議の結論に従っていくのが私のとるべき道だ、こう考えております。
-
○
横山委員 一応御答弁としてはごもっともだと思います。中央更生審議会における審議に――国民が全部だとは言いません。長年恩赦に努力しておる人々、それから社会的にも一部、長年の生活によってある程度本人の贖罪といいますか、そういう角度も考えてもいいのではないかという意見が国会であったということを新谷
委員長にもお伝え願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
-
○奥野国務大臣 了承いたしました。
-
○
横山委員 次に、検察審査会につきまして改善を求める討議を本
委員会は行いまして、最終的に最高
裁判所と法務省との協議を待つという事項が二、三ございました。時間の関係で簡潔で結構でございますから、その検討結果を承りたいと思います。
-
○小野最高
裁判所長官代理者 三月二十五日の法務
委員会におきまして、
裁判所側といたしまして検討すると申し上げました点は、十一項目のうちの二項、三項と十一項であろうかと思いますので、その点について私からお答えをいたします。
二項、三項は、補充員制度を廃止して検察審査会に定足数制を設けるものとする。予備員の制度を設けるということでございますが、その際に、私どもといたしましては、構成員の数をどうするかということは検討に値することですが、そのほかに、定足数制を採用するということにつきましては検討の余地がある、なお、運用面の実績を踏まえて慎重に対処したいというふうにお答えをいたしました。
この点につきましては、二月二十七日の当
委員会におきまして
横山委員のお尋ねに対してお答えしましたとおり、検察審査会二百七庁の状態は必ずしも同じではございませんで、審査員、補充員の出頭率のきわめていい庁と余りよくない庁とがございます。
横山委員御提案の構成員十一名、定足数八名ということで考えてまいりますと、出頭率が計数上七二・七%なければならない、こういうことになるわけでございます。五十四年度の審査員及び補充員の出頭状況を調べたものがございまして、これは各地方
裁判所五十庁の管内別のものでございますが、約半数は出頭率が平均六〇%台でございます。そしてこの七二・七%に満たないものは約三分の二ございます。
そういうことでございますので、この構成員と定足数の比率をどうするかという問題、これはまた、全部が出てまいりましたときに会議がやりやすいかどうかというような面もありますし、それから定足数を余り低く抑えますと、少数の人でそういう決定をしていいのかという問題もございまして、この定足数をどうするかという問題は非常にむずかしい問題がございます。一応
委員の御提案の十一人の八人ということを考えますと、いま直ちにこれをとりますと、定足数に満たないで流会になる庁がかなり出るおそれがあるというふうに考えられます。
現在の全国の一回当たりの審査員、補充員の出頭状況を見ますと大体十三名あるいは十四名ということで、二名ないし三名の方がいわばむだ足を踏んでおるという形になっておるわけでございますが、実情は、そういう方々できょうは会議を傍聴してもいいと言われる方には傍聴していただきまして、次回に、審査員に欠席がありましたようなときにそのまますんなり会議に入っていただくというようなことで運用しておるという面もございます。
そういうことでございますので、私どもといたしましては、この出頭状況というようなものを含めましてもう少しこの察査会のいろいろの実態を把握し、またあるいは検察審査会の事務
局長の協議会というようなものもございますので、そういう状況などをいろいろ把握して、それから慎重に対処したい、こういうふうに考えているわけでございます。
それから、十一項目目の「審査員、補充員の出席日の賃金カットや皆勤手当を補償すること。」というのがございますが、この点につきましては、従来審査会の事務局職員が審査員らの勤め先の理解を得るようにいろいろ努力をして成果を上げている、そういうことで提案の趣旨の立法を行う必要性について慎重に検討したいとお答え申し上げましたが、ただいまも申し上げましたとおり、ただいまのところではこういうことで問題が起きているというふうには考えておりません。なお、まだそういう状態が起こるかどうかというようなことも、実態をあわせて調査いたしまして、そして改めてそういう必要性があれば検討したいというふうに考えております。
-
○
横山委員 次に、愛知県日光川の海底土地について、本
委員会並びに建設
委員会におきまして、建設省、法務省の基本方針についての協議のコンセンサスを求めてあります。この日光川の問題は、名四国道の堤防の改修という公共的な必要性がございまして、愛知県としてはどうしても速やかな解決を求める、こういう立場に立っておる問題でありますだけに、愛知県はいわゆる地主、債権者側との統一的な協議が実は進んでおるわけであります。そういう点で、地元側としては、
法務局並びに中部地建、愛知県等の協議が進むについては、建設省及び法務省の理論的な問題もさることながら、現実的な公共事業の推進のために、速やかに現実的な方途についてコンセンサスを得たいという希望がある問題であります。この点について結論がついたかどうか、伺いたいと思います。
-
○安仁屋説明員 先生から御指摘のありました日光川の下流部につきましては、堤防、護岸の補強、それから河床のしゅんせつ工事というものをやりまして、安全性の増大を図るという計画がございます。その工事の施行に必要な用地を取得するために、愛知県土木部におきまして関係地権者等と折衝を続けておるところでございます。
これと並行いたしまして、先生からの御指摘もございまして、河口部の締め切り堤防敷に係る不動産登記上の問題につきまして、現在法務省と協議しておるところでございますが、この問題は不動産登記に関します基本的な問題にかかわる非常にむずかしい問題ということで、現段階ではまだ結論を得るに至っておりませんが、先ほど申し上げました用地取得の話が進んでまいりまして話がつけば、当然移転登記ということが生じてまいるわけでございますので、その時期までには合意を得るようにこれからも鋭意努力してまいりたい、このように考えております。
-
○
横山委員 民事
局長からは、前回の質問の際にきわめて簡潔ではありましたが、いま建設省からお話のある筋について尊重するという趣旨を承っておったのでありますが、建設省の、また地元におけるいまの作業の進展について好意をもって受け入れ体制がある、こう考えてよろしゅうございますか。
-
○
中島(一)政府
委員 日光川に関しましては、私どもは二つ問題があるというふうに考えておるわけであります。
一つは、例の水没地でございます。それを愛知県の方で権利者といろいろ和解をやっておられる。それは大変結構なことでございますので、私どもといたしましては、それについて側面的にできるだけの協力を申し上げたいという基本的な考え方でございます。
それからもう一つは、ただいまもお話出ました締め切り堤防敷の登記の問題でございます。これも私ども前向きに考えたいわけでありますけれども、先ほどの問題にいたしましてもいまの問題にいたしましても、いずれも現在の水没地を土地と見るか土地と見ないかということに関連をいたしまして、私どもと建設省あるいは県との間で基本的な見解の相違というものがございまして、現在訴訟中でもあるという容易ならぬ事件でございますために、私どもの協力にも限度があるということでございます。その限度内におきましては、私どもとしてはできるだけ側面的にもまた直接の担当者としても前向きに協力的に考えたい、こういうことでございます。
-
○
横山委員 いま
局長のおっしゃる第一と第二の問題は非常にむずかしい問題でございますが、私は理論上にもまだ法務省の見解に対して意見を持っておるわけでありますが、時間の関係上、前段が強く言われた――建設省としてまた地元としてそういう努力をしておることが、私は重ねて言いますけれども、土地所有者の問題ではない、名四国道及びその堤防の改修が公共的にどうしても必要なんだ、県が私にるる説明いたしましたそういう立場で速やかな解決を求めるわけでありますから、御協力をお願いをいたします。
委員長に大変恐縮ですが、もうちょっとの間お許しを願いたいと思います。簡潔にお伺いいたします。沖繩における弁護士が、明年暫定的な措置が終わりまして、数人かの人が資格を失うおそれありということで、法務省内及び弁護士会内部でも議論があるわけでありますが、この点はどうお考えでありますか。
また、最近新聞にも報道されておるわけでありますが、外国人の弁護士が日本国内で活動をしたいという希望に対してどういう扱いをなさるおつもりでありますか。私は、商法の
改正に際して公認会計士の外国法人の日本上陸は時期尚早である、こう言ってきたわけでありますが、その二点について見解を伺いたいと思います。
-
○千種政府
委員 第一点の沖繩弁護士の特別措置に関する問題でございますが、この問題は、五十二年に一部
改正が行われましたときに暫定措置が五年延長になって今日に至っております。その点御承知のとおりと思いますので省略させていただきますが、法律のたてまえから申しますと、この期間内にこの暫定措置を受ける弁護士は仕事を終わるようにというのが法律の趣旨でございます。したがいまして、特別の事情がない限りはそれで終わることになっておるのでございますが、この特別の事情があるかないかということは、多分に現地の弁護士会あるいは日本弁護士連合会の関心のあるところでございまして、現在日本弁護士連合会の中で検討中ということでございますので、その検討結果を待って私どもも考えていきたいと思っております。
第二の外国人弁護士のわが国における活動の問題でございますが、最近、企業の国際化に伴いまして、わが国の国内におきましても外国の法律に関していろいろ法律相談をしたいという需要がふえているようでございます。あるいはアメリカの弁護士で、日本に参りましてそういう需要にこたえたいということで、入国を希望している者もあるやに聞いております。
そういうことは昨今の新聞にも出ておりますので、これまた実情につきましては御説明を省略させていただきたいと思いますが、この問題につきましては条約あるいは弁護士法の解釈をめぐっていろいろと意見の相違もございますし、また外国との問題でございますから相互主義の問題もございます。また、仮にある条件のもとにわが国で外国の弁護士が一定限度の活動ができるといたしましても、それをどのような手続でやるか、あるいは登録、認可、許可あるいは監督、そういった問題もございまして、これは運用上きわめて複雑困難な問題でございます。
そこで、弁護士会といたしましては、現在アメリカの弁護士会、ABAと言っておりますが、こちらの方と接触を持って協議をしていきたいということをいまやっているところでございます。これにはいま申し上げましたような複雑困難な問題がございますので、かなり時間がかかるのではないかということは予測されておりますが、ただいま先生御指摘のような事情も当然考慮いたしまして、いま日弁連が検討していることでございますので、私どもも並行的に法律問題につきまして種種検討いたしまして、各界の意見を聞いて妥当な結論を得るように努力してまいりたいと思っているところでございます。
-
○
横山委員 最後に、農用地利用増進法が昨年通過をいたしまして、それによる政令が施行されました。それによりますと、地方自治体が嘱託登記をすべき細目の条文が決められておるわけであります。これによりますと、率直に言えば、司法書士はこれらの仕事が農業
委員会なりあるいは地方自治体に全部取られてしまうのじゃないかという危惧の念を持っております。
それからもう一つの側面は、新聞によりますと、岡山県及び熊本県におきましては、県が新会社をつくって県に関する諸問題をその新会社にやらせる。岡山県では社団法人相互協力事業団ができておるわけであります。こういう新会社の案を見ますと、「登記事務処理手続の概要」と称しまして、登記事務全般をこの種のところでおやりになる。そして承ったところによりますと、県が一カ月のうち二十日くらいを県の職員を嘱託にして出張させて、県職員というようなかっこうでこの司法書士の仕事をやらせてしまう。十日くらいはおらぬでもその新会社の社員がやっておるというようなやり方で、司法書士法の法の抜け道をくぐろう、こういう計画のように見えるわけであります。
そこで、自治省からおいで願っていると思うのでありますが、まず第一に、これは一体地方自治法上問題がないのだろうかという疑問が、細かい条文は省略いたしますが、あるわけであります。司法書士を初め数々のこの種の民間の仕事を、県が外郭団体をつくってそこへOBをやって、資格がないなら県の職員、地方公務員の名義を使わせてやるというこの種のやり方が一体妥当であろうか、違法の疑いがありはせぬかという問題を自治省から伺いたい。
それから民事局に対しては、これを含めて農用地利用増進法の政令案の細目が、あなたの傘下にあります司法書士会のただでさえ仕事がないものを取り上げてしまう結果になりはしないかという点について御意見を伺いたい。
-
○
木村説明員 御指摘の岡山県の事業団につきましては、事情を調査いたしましたが、現在県で実施いたしております仕事を事業団に行わせるということでございまして、民業の圧迫にはならないものと考えております。また、県の方でも、将来の委託につきましても民業圧迫にならないような方法で行うよう十分注意をしたいと申しておりますので、御了承いただきたいと思います。
-
○
横山委員 あなた、これごらんになっているの。いま県が嘱託登記はできるわけですね。その仕事を持っていくんだから別に差し支えはないという意味に聞こえるのです。これをごらんになったか知らぬけれども、「登記事務処理手続の概要」といって、岡山県が社団法人の〇〇協会に渡す手続を全部書いてあるのですよ。だから、県がやっているものを持っていくのだから差し支えないじゃないか、おまえらの仕事を取り上げたことにならないと言うのだけれども、持っていってそこの協会でやらせるのですよ。これをごらんになりながら物を言ってちょうだい。
-
○
木村説明員 私どもが聞いておりますのは、現在県が実施いたしております調査事務等を委託するということでございまして、それにつきましては問題はなかろうと考えております。
なお、どこまで仕事をすれば司法書士等の民業と抵触するのかという点につきましては、法律所管の省にお尋ねをいただきたいと思います。
-
○
横山委員 あなた、それあげるから、ようそこで見てごらんなさい。見ずに物を言っておってだめじゃないか、せっかくやったのに。
-
○
中島(一)政府
委員 まず、農用地利用増進法の件でございますけれども、私どもは、この農用地利用増進法の推進をしようとしております事業は、あたかも土地改良法における交換分合の登記の小型版とでも言うべきものではなかろうかというような見方をしておるわけでございます。でありますから、本来ならば、その登記は事業者であります市町村が嘱託をするということを原則にしてもいいわけでありますけれども、交換分合とは若干違うという点もございますので、ただいま御指摘の政令におきましては、当事者本人による申請を原則として、そして市町村の嘱託を例外的に認めておる。事業の当初から深くかかわり合いを持ってまいりました市町村において、やはり当事者が求めれば、最後まで、登記までめんどうを見るという形が好ましい形ではないかということで考えておるわけでございます。
なお、それによります司法書士等の業務に対する影響につきましては、司法書士が市町村の嘱託をさらに代理をして、そして嘱託をするというような方法もあるわけでありまして、公共嘱託を司法書士が受託をするということについては、司法書士会においても拡大について非常に力を入れておられるわけでありまして、私どもその方向に賛成で協力を申し上げておるわけでありますから、そういう方面で解決をしてまいりたいと考えております。
それから、岡山県の事業団、協会の問題でありますけれども、新聞等によりまして私どもごく最近その概略を承知いたしたわけでありまして、若干問題になる点もあるやに考えまして、ただいま現地の
法務局において実態を調査をいたしております。その調査結果を踏まえて検討いたしたい、こういうふうに考えております。
-
○
横山委員 どうも、時間が超過いたしました。ありがとうございました。
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 ちょっと速記をやめてください。
〔速記中止〕
-
-
○
三浦(久)
委員 まず最初に、地方自治法の第百条に基づく地方議会の調査権の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
この調査権というのは、国会に広範な国政調査権が認められていると同様に、やはり地方議会の権能というものを十分に発揮をさせたいという、そういう趣旨から認められているきわめて重大な権限だと私は考えておりますけれども、いかがですか。
-
-
○
三浦(久)
委員 したがって、この調査権の行使というのは、円滑かつ効果的に行われなければならないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
-
-
○
三浦(久)
委員 ことしの三月三日の日に、静岡県の富士宮市議会で、地方自治法の第百条に基づく調査を行うための調査特別
委員会が設置をされたわけであります。富士宮市というのは、御承知のとおり日蓮正宗総本山大石寺があるところであります。また、創価学会の非常に大きな墓園でありますが、富士桜自然墓地公園、これがあるところであります。そしてこの富士宮市に百条
委員会が設置されたのは、ここ数年の間富士宮市で創価学会のいま言いました墓地建設、これをめぐって特別土地保有税の脱税の疑惑がある。また、大石寺正本堂の建設をめぐって農地の不正取得の疑惑がある。このことが非常に大きな社会問題になったわけであります。
そして、その真相を解明すべきだという市民の声が非常に大きくなった。そしてまた一方、市議会内でも、昨年あたりから百条
委員会を設置しろ、そういう声がだんだん強くなりまして、市議会は百条
委員会を設置すべきだという推進派が十二名になりました。ここは市議会の定数が二十四名です。ちょうど半分が推進派になる。そして百条
委員会を設置すべきでない、こういう立場の人が市議会では十二名、いわゆる同数になったわけなんですね。推進派の会派は清新クラブという会派と共産党であります。反対派の会派は芙蓉会、公明党、市民クラブ、自民党であります。
そこで、あくまでも百条
委員会の設置に反対する勢力は、この百条
委員会の設置そのものに反対をすることはもちろん、内外の世論に押されてこの百条
委員会が設置された後も、議会の内外で執拗にこの百条
委員会の活動を妨害している。これは余りフェアな態度ではないというふうに私は思っているのですね。そういう意味で、私は、百条
委員会が法の趣旨に沿って公正な活動を行い、疑惑の真相解明を行って市民の要望にこたえ得るように、そうなることを心から願いまして、具体的な妨害行為を明らかにしながら、自治省の見解を承りたいというふうに思っております。
まず最初に、この百条
委員会の設置をめぐってどういう悪質な妨害が行われたかということについてお尋ねしたいんですが、まず、警察庁お見えですね。――昭和五十五年の十二月十五日、日原造園の社長の日原茂子が逮捕されたと思いますが、これはどういう事件だったんでしょうか。
-
○漆間説明員 ただいま昨年の十二月十五日というように御質問がありましたけれども、静岡県警が逮捕いたしましたのは本年の二月十六日でございまして、ただいま御質問の人物を贈賄申し込みの容疑で逮捕いたしております。
-
○
三浦(久)
委員 もうちょっと詳しく言っていただけませんか。だれに対する贈賄容疑なのか。
-
○漆間説明員 昨年の十二月の富士宮市議会の定例会におきまして、同市の地域内にあります富士桜自然墓地公園の建設工事あるいはその用地問題をめぐる疑惑があるということで、これを解明するためにいわゆる百条
委員会の設置が提案されました。被疑者は、これが可決された場合には影響が出るということで、ある議員に対して反対に回るようにということで金員を供与した、しかし返されたという事案でございます。
-
○
三浦(久)
委員 これは滝川さんという市会議員なんですね。これは百条
委員会推進派の人であります。先ほど申し上げましたように、この推進派と反対派というのは十二名対十二名ですから、そういう意味では一名がどっちかに回れば勢力比は逆転するという状況なんですね。そういう中で、いわゆる推進派の滝川市議に対して五百万円も贈賄をして、そして反対派に回ってもらおう、こういうようなやり方というのはきわめて悪質なものだというふうに言わなければならないと私は思っているわけであります。しかし、こういう贈賄事件というものが明るみに出まして、結局百条
委員会を設置しろという世論が非常に高まりまして、そして市議会はこれは全員一致、反対派も賛成派もなく三月の三日には全員一致でもって百条
委員会が設置をされた、そういう結果になったわけです。
ところが、この百条
委員会が設置されましたけれども、その直後からその活動の妨害というものがもう始まっておるわけですね。たとえばこの百条に基づいて百条
委員会が調査のために市当局、日原造園、大林組それから創価学会、その代表役員である
森田一哉、それから大石寺及び吉田義誠に対して、おのおの記録の
提出要求、それから吉田義誠に対しては証人出頭の要求をしたわけであります。ところが、市当局と大林組と日原造園はこれに応じて資料の
提出をいたしたわけでありますけれども、創価学会と大石寺、そして先ほど言いました吉田氏と森田氏は、いずれもその要求を拒否いたしておるわけであります。
自治省にお尋ねしますが、そのような事実はありますか。
-
○
田中説明員 県を通じて聞いてみましたところ、御指摘のように市議会が創価学会等に対しまして資料の
提出等の請求を行いましたところ、その要求に対しまして、求められた記録と調査事項との関連性が不明確であるとか、あるいは特別
委員会の調査目的が特定していないというようなことを理由といたしまして
提出を拒否した。かつ、記録の
提出請求等の取り消しを求める訴訟を提起していると聞き及んでおります。
-
○
三浦(久)
委員 また、百条
委員会が市長を通して宗教施設の現地調査をしたい、そういう申し入れをした。これについても創価学会が拒否したという事実を御存じですか。
-
○
田中説明員 いまお述べになりました点は聞いておりません。
-
○
三浦(久)
委員 そうですか。それはもう間違いがないんですね、私ら文書を持っておりますから。
いまいろいろな理由を二つほどあなたは挙げられましたけれども、もう一つ大きな理由に、訴訟をやっているから応じられぬということもその拒否の理由になっていると思うのですね。いまお話がありましたように、記録請求取り消しの行政訴訟であるとか、それから証人要求取り消しの行政訴訟、こういうものを出しているわけですね。それを理由に拒否をしている。これは一回、二回じゃないんですね。きのうも百条
委員会が開かれまして、そしてまた四回目の記録
提出の要求をやっている。いままで三回やっているのです。でも、強引に拒否をし続けているという状況が続いているわけです。
法務省にちょっとお尋ねをいたしたいと思いますけれども、この百条
委員会の記録
提出要求や証人出頭要求、こういうものについて抗告訴訟の対象になるんでしょうか、ならないんでしょうか。
-
○柳川(俊)政府
委員 御指摘の問題につきましては、地方公共団体の訴訟に関する問題でありますし、現在法務省としては関与しておりません。また、事件が
裁判所に係属しているということでもございますので、私どもが国の立場でお答えすることは御容赦いただきたいと存じます。
-
○
三浦(久)
委員 そんなことが言えないのですか。私ちょっと判例を持ってきていますが、これは広島地方
裁判所の昭和五十三年(行ウ)第九号事件、五十三年十二月十九日の判決、それとそれの控訴審である広島高等
裁判所昭和五十三年(行コ)第十二号、昭和五十四年六月二十日の判決、これによれば、地裁では抗告訴訟の対象になり得ないんだと言って、この訴訟は門前払いですね。却下していますね。そして、理由がちょっと違いますけれども、高等
裁判所ではこの却下判決を維持しておりますね。それはいかがですか。
-
-
○
三浦(久)
委員 そうすると、抗告訴訟の対象にならぬ、中身は審議しなくていい、門前払いだということで、これは却下されているのですよ。
そこで、そういうことを幾ら議論してもしようがないから議論を進めますけれども、行政訴訟を出す出さないにかかわらず、百条
委員会から出頭の命令が来る、また
提出の命令が来た場合に、それを受けた人は出頭する義務、また記録を
提出する義務、これを負うのではありませんか。そういう出頭要求についてのたとえば執行停止とか、そういうものが裁判で出されていない、または判決でそういうものが出されていない限り、出頭する義務、
提出する義務、こういうものを負うだろうと思うのですけれども、いかがですか。
-
○柳川(俊)政府
委員 一般的、抽象的には、そういうことになると思います。
-
○
三浦(久)
委員 一般的、抽象的にはそうなると言うんだが、それは恐らく正当な理由との関係だろうと思うのです。しかし、正当な理由というのは、正当な理由があれば拒否できるということだけであって、そういう判断が最終的に
裁判所で決着がつかぬ間は、それは当然、要求を受けたら出頭する義務、
提出する義務を負うんじゃないですか。この判例もそう書いていますよ。出頭の義務を負うからこそ、それが裁判の対象になるかならないのかということが問題になるわけであって、もともと出頭する義務を課するものでないというのであれば、それは裁判の対象にはならないでしょう。ですから、当然負うんじゃないですか。一般的、抽象的にも、具体的にも負うんじゃないですか。どうですか。
-
○柳川(俊)政府
委員 具体的な義務を負うかどうかということは、最終的には
裁判所の判断で決まることでございまして、それまでの間は、義務があるとかないとかいうような判断は必ずしもできないのではないかというふうに考えております。
-
○
三浦(久)
委員 そんなことないですよ。そんなこと全くないでしょう。これはたとえば出頭を拒否するとか資料の
提出を拒否した場合、その正当な理由がないと百条
委員会が判断をしたら、告発をしなければいかぬでしょう。これは百条に書いていますね。刑事事件でもって判決が下されるまでそういう判断ができないということはありませんですよ。そんなことないですよ。いま市議会が百条違反で告発するかどうか、それは議会が判断すれば当然告発できるわけでしょう。どうなんですか。
-
○柳川(俊)政府
委員 最終的に決着がつけられるのは、先生の御指摘のとおり結局
裁判所ということになるわけで、それまでの間に、いろいろな行政的な措置と言えるかどうかはまた別問題としましても、何らかの措置が議会の方でなされるということになりますと、それに対応して何らかの態度が相手方の方に出てくるということになるわけでございます。その場合に果たしてそれが最終的な意味で正当かどうかということの判断を除外するとすれば、一応の抽象的な義務というものは考えられるのであろうというふうに申し上げたいと思います。
-
○
三浦(久)
委員 そうすると、そういう義務に違反をした場合には、法律上はどういう処罰を受けることになっておりますか。
-
○柳川(俊)政府
委員 六カ月以下の禁錮または五千円以下の罰金ということになっております。
-
○
三浦(久)
委員 自治省にちょっとお尋ねしますが、市議会は百条違反で告発しておりますか。
-
○
田中説明員 告発を行ったということを聞いておりません。
-
○
三浦(久)
委員 市議会では告発の決議はしたけれども、その時期については議長に一任、そういうふうになっているんじゃありませんか。
-
○
田中説明員 告発をまだやってないということは確かめたのでございますが、その間の事情は実はつまびらかにしておりません。
-
○
三浦(久)
委員 そうですか。私は議会からそういうように聞いております。
では、自治省にお尋ねしますけれども、拒否すると裁判にかけられるかもしれない、そういう非常に大きな危険を冒しても、創価学会や大石寺がそれをもいとわずに記録の
提出を拒否するとか出頭要求を拒否するとかというのは、私は大変異常な出来事じゃないかというように考えているのですね。それで、百条の問題で全国的にこういう
提出拒否とか出頭拒否はどのくらい事例があるのですか。
-
○
田中説明員 いわゆる百条に基づきます調査というのは、われわれの資料によりますと、五十一年九月から五十三年三月までの間におきまして、市町村段階で百四十九件の事例が報告を受けているわけでございますが、このうち百条の第九項の規定によりまして議会が告発した事例というのが十件ございます。
-
○
三浦(久)
委員 そうすると、大変希有な事例だというふうに言うことができると思うのですけれども、自治省は、百条
委員会がその機能を円滑にかっ効果的に発揮できるようにということは思っていらっしゃるんでしょう。ところが、こういうようにいろいろな理由をつけて出頭を拒否するとか
提出を拒否するとかということになると、大変調査が難航するわけですね。それで、市議会の人人は大変困っておるわけです。デッドロックに乗り上げちゃっているようなかっこうになっていますね。自治省としては、こういう事態を解決するためにはどういうふうに措置をしたらいいとお考えになっていらっしゃいますか。
-
○
田中説明員 御承知のとおり、百条調査権はたとえば九十八条の検査権等と異なりまして、罰則の担保によるいわば強制力を持つ、こういうように一般に説明されているわけでございます。しかし、御指摘のような出頭の拒否とかあるいは記録の
提出の拒否ということが行われますと、御承知のように非代替的なことでございますので、たとえば行政代執行というようなものには性質上親しまない。だから直接に強制する方法はないわけでございます。ただ、罰則の規定がございますので、それを背後に持って強制するということでございまして、議会のサイドといたしましてこの調査権の発動が円滑にいきますようにという指導は常々やっておるわけでございますが、相手方のそういった態度に対しまして有効な法律的な手段というものは、ちょっと恐らく考えられないのではないかというように私は思います。
-
○
三浦(久)
委員 そうすると、当事者の良識にまつ以外にないといいますか、そういうふうにお考えなんですか。
-
-
○
三浦(久)
委員 いま私が申し上げましたように、創価学会と大石寺による出頭拒否とか資料
提出拒否というものは、いま続いているわけなんですけれども、その手段として裁判を起こしているわけですが、この裁判を今度は妨害しようという動きがあるのですね。これも私は大変しつこい動きだなと思っているのです。
たとえば、これは議会が訴えられているわけですから、当然議会がそれに応訴しなければいけませんですね。応訴する場合には弁護士に頼まなければいけないから、金が要ります。これは原告側も弁護士をたくさんつけておりますから、議会も当然弁護士をつけなければいけないわけなんです。この弁護士費用を――弁護士費用というと狭い。もうちょっと広く、裁判費用といいますか、そういう裁判費用を支出させまい、そういう意味では市議会を兵糧攻めにしてしまう、それで防御権の効果的な行使をさせないようにしてしまおうという動きがあるのです。これも私、大変フェアな態度ではないと思っているわけなんです。
たとえばことしの五月八日に臨時市議会が開催されたわけであります。この市議会は、市当局が五百万円の訴訟費用を議会に提案をする予定になっておりました。反対派は、五百万円は高過ぎる、大体答弁書なんというのは議長が書けばいいんだ、だからといって三十万円にこれを修正するという修正案を準備したのですね。三十万の根拠はどういう根拠か知りませんけれども、三十万でいいじゃないか、こういう修正案を用意しておった。それでその審議が始まろうとしておったのですが、その前の日の五月七日、これは百条
委員会推進派の赤池という市会議員が収賄容疑で今度は逮捕されるという事件が起きたわけであります。
警察庁にお尋ねいたしますが、そのような事実はございましたでしょうか。
-
○漆間説明員 本年の五月七日に富士宮市議会議員の赤池実を収賄容疑で逮捕しているかという御質問でございますが、そのとおり、事実ございます。
-
○
三浦(久)
委員 私もその事件の内容に立ち入ることは避けますけれども、これは偶然の一致にしても何となく釈然としないという気持ちを市民に抱かせているのですね。
ここに静岡新聞の五月十三日の「大自在」というコラム欄がありますけれども、ここでこういうふうにこの筆者は言っておりますね。
いままで推進派、反対派が同数で対立していた市議会勢力が、収賄事件で推進派の市議が逮捕され均衡が破れた。しかも資料
提出請求を拒否している創価学会、大石寺の告発問題を討議しようという臨時市議会の前日、逮捕されたのだから推進派にとってはショックだ。偶然の一致といえ、市民の中には割り切れぬ気持ちを抱いている人もいるようである。
これはちょっと事実が違うのは、臨時市議会で告発問題が討議されるようになっておった、これは事実と違うと思います。しかし要するに、百条
委員会がこれから活発に活動しようというその時期に推進派が一人逮捕された。これは大変ショックで、また市民も割り切れない気持ちを持っている、こういうことが言われているのです。
それはさておいて、赤池市議が逮捕されますと、反対派は直ちに八日の日の臨時議会に赤池市会議員の辞職勧告決議案を用意いたしました。もちろん、先ほどの訴訟費用五百万円から三十万円に修正するという修正案も用意されたわけなんです。ところが、議会を開きますと、こういう反対派の主張がそのまま多数決で通ってしまう、そういう可能性が出てまいりまして、双方反対派、推進派いろんな思惑があったのでしょう。これは流会になってしまったわけなんです。その結果、裁判費用五百万円も三十万円も何も決まらないで、そのまま今日に至っているわけであります。ですから、議長は五月の十一日の日に、無報酬で引き受けてくれるような弁護士さんに頼まざるを得ない、こういうことまで言明をしているわけなんです。それで現に無報酬で裁判を引き受けようという弁護士がかなり集まっているようでありますけれども、しかし、これはやはり公正な態度ではないと私は思っております。
先ほど述べました静岡新聞の五月十三日の「大自在」というコラム欄を見ますと、その問題についても書いてあるのです。
百条委が設置されるまでずいぶん難航したものである。しかし結局、設置に落ち着いたのも、ゆ着・疑惑問題を徹底的に解明し、ウミを出し切ろうというので.はなかったか。市民もまたそれを熱望していた。富士宮市の本年度予算は百七十五億円だ。五百万円ぐらいの捻出はすぐできるはずだ。それで応訴に勝ち疑惑を徹底解明できるなら安いものだ。税金を納めている市民も納得するに違いあるまい。
こう言っています。また続けて
きのう市議会議長は、議会費はいっさい使わないで、報酬なしで弁護を引き受けてくれる弁護団に依頼するつもりだと表明した。議会勢力の逆転から十分な応訴ができないと判断したからだろうが、地方議会の権威と自治を守るためなら、なにも外部から助けを得ないで、正々堂々公費を使って弁護士を雇い戦うべきである。
こういうふうに言っているのです。
市議会が一致してつくった
委員会ですから、その市議会が応訴せざるを得なくなる。これも百条
委員会の活動だと思うのです。重要な活動だと思うのです。そうするときに議会が応訴できないというような兵糧攻めにするというような、そういう卑劣な手段というのはとるべきではないというふうに私は考えているわけなんですけれども、自治省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。それからまた、どういうように御指導をなさるつもりでいらっしゃいますか、お承りをいたしたいと思います。
-
○
田中説明員 自治省といたしましては、それぞれの議会の良識により適切に調査権の発動が行われるということを期待いたしておるわけでございます。
-
○
三浦(久)
委員 もう一問さしていただきますが、五百万円は高い、三十万円の修正案を出す、こういうやり方というのは良識に違反しないと思っていますか、どうですか。
-
○
田中説明員 具体的な諸事情をつまびらかにいたしておりませんので、その点については、判断は差し控えさしていただきたいと思います。
-
○
三浦(久)
委員 しかし、あれだけ大きな事件、それに幾つもあるわけですよ。それがだれが考えても三十万円で応訴できるとは言えないだろうと私は思うのです。
警察庁にお尋ねをいたしたいと思いますが、いま反対派ばあらゆる機会を使って警察の力をかり、そして自派に有利な政治状況をつくり出そうというので、躍起になっていると思うのです。たとえばこれも百条
委員会の推進派の秋鹿という市会議員がおりますが、この人が発行責任者になって「疑惑をただす市民会議ニュース」というのを出しております。ここに市の顧問弁護士の山本弁護士のことがちょこっと書いてあるわけなんですが、この山本弁護士が秋鹿市会議員を名誉棄損だと言って告訴したりしているのです。私はこれを見て、どうして名誉棄損になるのだろうかと思って首をひねっているのですけれども、事ほどさように、全く理由のないような告訴も平然として行っていると思うのですけれども、そういう告訴の事実、ございますか。
-
○漆間説明員 静岡県警に照会してみましたけれども、そのような告訴を受けているという事実はないということであります。
-
○
三浦(久)
委員 もう一つお尋ねしますが、百条
委員会へ市当局が
提出した資料の中から、ある議員の、これは反対派の議員の脱税が判明して、そして税金を徴収された。それに腹を立てて課税課の職員を守秘義務違反だというので告訴をした、そういうことを聞いておるのですが、そういう事実、ございますか。
-
○漆間説明員 それも先ほどの事案と同様でありまして、告訴を受けているという事実はないというように報告を受けております。
-
○
三浦(久)
委員 これも百条
委員会推進派の河原崎市会議員に対して、富士見小学校用地取得に疑惑ありということでこれも監査請求が出され、そうして反対派のビラの中で、この河原崎市会議員に黒い疑惑がある、県警も内偵中である、こういうことで大々的に宣伝をされているわけでありますけれども、この河原崎市会議員にそういう用地取得で不正があるということで、県警が内偵をしているというような状況はございますか。
-
○漆間説明員 まず前段の、そのようなビラがまかれたということについては、県警も承知しているということでございます。後段の部分につきましては、具体的の事柄について捜査をしているかどうかということについては、捜査機関としてはお答え申し上げられません。
-
○
三浦(久)
委員 これからも反対派からいろいろな告訴とか告発とか、そういうものが出されてくる可能性は私は非常に強いと思うのです。しかし、そういうやり方というのは、事案の真相というものを解明をする、そしてまたそういう事実に刑罰法令を
適用して法の秩序を保つ、そういうような目的から出されるのじゃなくて、逆に推進派の議員にいろいろな悪いことがたくさんあるのだというようなことをどんどん市民に宣伝をする、そうして自分の派に有利な政治状況をつくり出そうという、そういう思惑からなされる告訴、告発が多くなるだろうと思うのです。
警察法の第二条では、警察官が職務執行するに当たっては不偏不党、公正中立にやらなければならぬというのがありますが、いまの時期、より慎重にこういう告訴、告発には対応をしてほしいというふうに考えておりますけれども、警察庁の考え方はいかがですか。
-
○漆間説明員 御質問のとおりでありまして、警察が捜査を行うに際しましては、厳正公正に行うべきことは当然のことであります。先ほど、たまたまその前日に赤池議員を逮捕したことが、その前日にねらいを定めて逮捕したかのごとき御質問でございましたけれども、警察としては決してそういうことではございませんで、一連の捜査の流れの中でたまたまその日になったということでございます。その辺については御理解を賜りたいと思います。
-
○
三浦(久)
委員 最後に自治省にお尋ねしますけれども、いまの法律の中でこういうように徹底的に資料要求も拒否する、証人要求も拒否する、裁判になっても構わぬというような態度でやると、百条
委員会の機能は十分に発揮できないと私は思うのです。
それで、いままで私の指摘した一連の事実、こういうものをお考えになっていただければわかるのですけれども、まず非常に大きな宗教組織である創価学会と大石寺、これは大きいというだけではなくて社会的な影響力もある、政治的な力もあるそういう宗教団体です。この宗教家団体だけがそういう
提出や出頭を拒否している、そこにこの事件の異常さというものを私は感ぜざるを得ないわけでありますけれども、創価学会や大石寺が疑惑はないんだというふうに確信をしているのなら、積極的にこの百条
委員会の調査に協力をして真実を明らかにすべきだ、疑惑を晴らすべきだ、そういうふうに私は思っているのですね。それをいつまでも理由をつけて拒否し続けるということになると、市民の疑惑の念はますます深くなっていくばかりだというふうに思うわけなんです。
それで、自治省のいまの論議を聞いての御見解と、今後真相解明のために百条
委員会が実効のある活動をするためにどういうふうに指導をしていくのか、どういうことをしたらいいというふうにお考えになっていらっしゃるのか、そのことをお聞きして質問を終わりたいと思うのです。
-
○
田中説明員 自治省といたしましては、議会を初め関係者一同の良識ある行動によって、この調査権の発動がスムーズに行くことを期待しておるわけでございます。ただ、記録
提出の拒否等の問題は、先生も御指摘なさいましたように、結局は正当の理由の存否ということに係る問題だと考えるわけでございまして、この点について、それに疑義がありという関係者について法律上の手段によってそれを争うということは、あながち批判といいますか、禁止されるべきものではなかろう、このように考えておる次第でございます。
-
○
三浦(久)
委員 それは形式論だと思うのですね。しかし、たとえば広島地裁の判決、高裁の判決でも実際に門前払いを受けているとか、それからまた、ほかの人々はみんな応じているとか、そういう具体的事実、それからまた、そういうことを拒否する人はほとんどいないというような現実もあるわけであって、やはり中身を十分に吟味しなければならないというふうに私は思うのです。
終わります。
-
-
○林(百)
委員 私は、いわゆる原潜の当て逃げ事件とそれからはえなわの切断事件、この二つにしぼって質問をいたしたいと思います。
まず第一に、原潜の当て逃げの問題でございますが、その後日米の外交交渉の間でこの問題についてどのように事実を詰め合わせたのか。たとえば海上保安庁の報告といわゆるアメリカ政府側の中間報告との間に大きな食い違いがありますが、その食い違いを詰めるような話とかあるいは賠償問題についての進展だとか、われわれの調べたところによりますと、日昇丸の乗組員は船がありませんから船に乗ることができない。船に乗っていますと乗員手当というのが月に十五万ぐらい出るのですけれども、それが出ないために本給の十七万ぐらいで一月暮らさなければならない。中学生を初め子供が二人、三人あるような乗員がいるのですが、そういう人たちが生活もできないような状態に陥っている。それで、これは日本人の生命が二人失われていることなんですから、日本の国の主権を厳粛に考えるならば、この問題はいいか、げんに片づけてはならない。これはマスコミの論調などにも出ておりますが、そういう観点から、その後の外交交渉がどうなっているか、御報告願
いたいと思うのです。
-
○丹波説明員 お答え申し上げます。
去る四月二十二日に林先生に対しまして本件の御説明で申し上げたことでございますが、まず第一に、政府として本件事故をきわめて遺憾に考えておる。まさにお二人の方が生命を失われた、その他の方も物的人的損害をこうむったということで、政府としてもまさに遺憾としておりまして、本件を、先生のお言葉を使わせていただきますと、うやむやに終わらせるというようなことを考えていないことは、四月二十二日に再三御説明したとおりでございます。
第二点の、その後の状況はどうかということでございますが、五月五日でございますか、たまたまニューヨーク訪問中の総理一行に対しまして、アメリカ側が本来困難であるということを言っておった中間報告を日本政府に提供してきたということは御承知のとおりでございます。しかし、中間報告によってすべての問題が解明されたかと言えば、それは解明されていないというのが日本政府の立場であり、アメリカ自身も、これはまだ中間的なものだ、今後変わり得るかもしれないということを認めておるわけでございます。
それでその後、それを受けた形ではないのですけれども、海上保安庁の方から「日昇丸の沈没事故について」という報告書が国会にも
提出されております。外務省といたしましては、五月十四日に在京の米大使館にこれを手交いたしまして、海上保安庁の文書によれば、これは基本的に乗組員の証言をもとにしてつくっておるわけですが、こういう内容になっているので、アメリカ側の報告書作成に当たってはぜひこれを照らし合わせてほしいということを十四日に申し入れ、実はその前の五月八日に、アメリカ側の中間報告に対する対米照会事項というものをやはり在京米大使館に手交しておるわけでございます。
補償の問題につきましては、四月二十二日にも御説明申し上げましたとおり、基本的に当事者間で話し合いが進められておるということで、あのときにも申し上げましたが、しかしながら困難な問題が生じた場合には私たちとしては全力を挙げて援助することはやぶさかではない。その後関係の弁護士さんの方からは若干の問い合わせがあった程度で、基本的な問題についてどうこうしてほしいという話は来ておりません。複数の弁護士さんが絡んでおるようですが、私、たまたまそのうちの一人の方と実はけさ話しましたところ、補償の話し合いは順調に行われている、こういうお話がございました。
以上、御報告いたします。
-
○林(百)
委員 順調に行われておるということだけで、ああ、そうですかで外務省は聞いていたのですか。たとえばこちら側の請求が幾らでアメリカ側が幾ら補償するとか、それから外国人請求法によりますと限度額が二万五千ドルですね、それから海事請求処理権限法によりますと百万ドルという限界があって、それ以上の場合は、この前もあなたの答弁にありましたように議会の議決を要するということになっていますね。こういう上限が詰まっている中で順調にいっているというのはどういう意味なんですか。あなたは専門家だから、ただ、ああそうですかで帰ってきたわけじゃないと思いますがね。
-
○丹波説明員 順調にいっておるということに対しまして、まさに私、順調というのはどういうことですかと弁護士さんに聞いたのですが、それは日本側から提起した請求書類が現在アメリカ側に、恐らく本国政府に行ってワシントンでいろいろ議論が行われているんではないか、これまでの過程で特に問題は生じてない、私の方から何かやることがございますかというのに対して、弁護士さんの方はいまのところございません、そういうやりとりでございます。
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○林(百)
委員 幾らの請求をアメリカの本国の方へ送ったと言っているのですか。
-
○丹波説明員 私が聞いておりますところ、物的損害につきましては五億六千万円程度、人的なものについては三億円という話を聞いております。
-
○林(百)
委員 そうすると、この前あなたからお聞きしましたのと若干数字が違いますが、その数字をワシントンの本国の方へ日本側の弁護士から送って、それが順調に進んでいると聞いていいのですか。そうすると、外国人損害賠償法、海事請求処理権限法の限界がありますが、これとは関係なく行政的な補償が行われる可能性がある、これは専門家の外務省ですからそうごらんになっているのですか。この二つの法律と順調にいっているという日本側の弁護士の請求との関係はどうなるのでしょうか。
-
○丹波説明員 これは先般も先生に御説明申し上げたところで、まさに先生自身それを言っておられるわけですが、外国人請求法によれば、これは人的損害を対象にするわけですが、二万五千ドルが上限になっておる。それから物的損害につきましては、海事請求処理権限法によって百万ドルが上限になっておるということです。その上限の意味は海軍長官が自分で処理できる金額としての枠を言っておるわけで、これを上回れば処理できないということではなくて、議会にこれを上回りますよという、サーティファイという言葉を使っておりますが、証明をすればその上限を超える額も処理される、こういうふうに了解しているわけでございます。
-
○林(百)
委員 この前のあなたのお話ですと、議会の議決を要するから非常に時間を要する、だからいまアメリカから出ている行政的な処置で満足する方が早く問題が片づくんじゃないかと言いました。そうすると、あなたの言うのは、議会の議決ではなくして、議会への海軍長官の報告、それで足りるわけですね。
-
○丹波説明員 先般申し上げましたのは、「アメリカ側もそれを上回る補償が必要であると判断する場合には、海軍長官がそのことを米国議会に証明して、」ということを申し上げて議事録に残っておるわけでございますが、まさに証明をすれば足りる、私はそういうふうに了解しております。
-
○林(百)
委員 この前私が聞いたのよりは、一歩前進だと思います。
そこで、補償もさることながら、海上保安庁の最終報告とアメリカ国防省の中間報告との間で事実が大分違いますので、主な点だけここで挙げてみますと、たとえば国防省側では日本側で確認したのと約六・五キロメートルの食い違いがあって、日昇丸についての情報は原潜の司令室に伝えられたが、当直士官の耳に入らず確認されなかった。海上保安庁の方では、衝突直前に上甲板左舷通路出入り口から日昇丸の左横に大型商船の煙突のようなものを発見、衝突すると思った。十一ノットで航行中どかん、がつんなどという衝撃とショックがあり、船体が持ち上げられるような感じを受け、同時に電気が消えた。間もなく機関も停止した。ところが、国防総省の方では、衝突の模様については黙秘。ソナーで音波探知ができるはずでありますけれども、艦長は相手の船と自分の船との安全、戦略ミサイル潜水艦としての自艦の秘匿を考慮した行動をとった、こういうように言っているわけです。
それから、沈没状況ですが、海上保安庁側では、衝突直後日昇丸は船長の命令で後部マストに遭難信号旗を掲揚、約十五分後に沈没。ところが国防総省の方では、衝突後原潜は浮上したが、日昇丸が視界から消える三―五分間、同船が遭難しているいかなる徴候も認めなかった。それから海上保安庁の方では、衝突一分後から救命ボートに移乗した直後まで米原潜を見た、一番近い者は二十メートルのそばに見た。十一人が証言している。
今度はP3Cの方ですが、十一人がP3Cがボートの上を低空で飛んでいたのを見て、手を振って信号弾を打ち上げた。それからもちろん緊急救助の信号旗も掲げた。ところが国防省の方では、P3Cは当該水域を一〇〇%捜索したが発見できなかった。海上保安庁の方の報告では、十一人が、操縦席が見えるほど低空だった、手を振って信号弾を打ち上げた。P3Cは、国防省の方は、当該水域を一〇〇%捜索したが発見しなかった。
日本側への通告は、十日の午前八時四十五分、在日米海軍司令官に問い合わせた。二十三時間後ですが、該当事故なし。それから国防省の方の回答では、在日米軍当局に二時間半後に衝突報告をしているはずだ。ところが、日本側が在日米海軍司令官に問い合わせたところが、二十三時間後もまだ該当事故なしと答えている。米側から正式に日本側に連絡があったのは二十五時間後、十日正午前、米大使館、衝突事故を外務省に通達。非常に食い違っているわけなんです。
この点については海上保安庁、私の言ったのは海上保安庁の最終報告をまとめたものですが、大体こういうように乗組員は言っているのでしょうか。それから、国防総省の中間報告は私の言ったようなものであるかどうか、これは外務省の方へお聞きしたいと思います。全く食い違っているのですね。一方は上にP3Cが見えて手を振っているというのに、P3Cは全然ボートも何も見ませんでした。一方では潜望鏡が二十メートル前に見えているのに、潜望鏡では遭難の様子は見えませんでした、異常なく航行していました。こんな大きな食い違いはあったものじゃない。これは日本の主権を侮辱しているもはなはだしいと思うのです、こんな報告をするのでは。
要するに、自分が原子力潜水艦だから、その行動を秘匿するためにこういううそを、二枚舌を使って言っていると言うよりほか言いようがないと思うのです。そんな二枚舌に日本の外務省が乗って、ああそうですか、中間報告で誠意を認めますとか、そういうことを言っていたのでは、日本の外務省の権威にかかわると思うのですが、まず海上保安庁の方の報告は大体いま私の言ったようなことですか、外務省の方の報告は、これでその後この違いを煮詰める交渉をしているのですか、・どうですか。
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○丹波説明員 お答え申し上げます。
先生、外務省の権威の問題に触れられましたけれども、私は、若干先生は結論を急いでおられるという感じを持ちます。なぜならば、アメリカは、まさにこの報告は中間的なものですということを断った上で最終報告をいまようやくつくり上げた、それを見てからの御意見でございましたら私はまともに受けて立ちますけれども、そのときに外務省がどうこうということでございましたら、それは私も聞きます。しかし、いまの段階ではお言葉はちょっと早いのではないかと私は考えます。
先生がいろいろ中間報告と海上保安庁の報告書との間の違いを多々挙げられましたけれども、いまの点のほとんどにつきましては^まさに日本政府として疑問を感じておればこそ、五月の八日に対米照会事項というものをまとめて、まさに先生の御指摘の質問をアメリカにぶつけておるわけです。その点をぜひ御了解していただきたいと思います。
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○吉野説明員 ただいま先生がお読みになりました海上保安庁の報告でございますが、これは乗組員から事情を聴取したところをそのまま整理したものでございます。外務省からも御説明ありましたように、私どもとしても、いろいろとアメリカの中間報告との間には食い違いとかあるいは不明な点というものがありますので、外務省を通じましてその点さらに詳細な説明が得られるようにお願いしております。
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○林(百)
委員 丹波さんにお聞きしますが、レーガンと鈴木総理の会談ではこの問題が話題に出たのですか、どういう機会にしろ。そう聞いておりますか、どうですか。あなたのお立場もありますから、わかっていたら言ってもらいたいと思います。
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○丹波説明員 この点につきましては、私、いまちょっと資料を持っておりませんのであれでございますが、たしか出たと記憶しております。レーガンの方からの遺憾であったという趣旨の話があったと承知しております。
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○林(百)
委員 丹波さんは、私の質問が少し性急な質問だ、最終的な調査結果がアメリカから出るはずだ、そうお答えになりました。しかし、、この前こういう中間報告が出たときは、これはあなたが言ったのか、あるいはあなたではないかもしれませんが、中間報告を出すのはアメリカ側が誠意を示したと言っているのですが、こんな二枚舌の中間報告を出したって誠意とは私は考えません。そうすると、丹波さんが林
委員の質問は少し性急で最終的な回答がアメリカ側から出るはずだと言うのですが、それはいつごろ出るのですか。日本国民もまたマスコミも、このことをいいかげんに片づけてはいけないということを強く主張しているところなんですがね。
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○丹波説明員 この点につきましては、五月の二十日でございましたか、園田大臣が外務大臣に御就任されて直後、マンスフィールド大使と会談された際、マンスフィールド大使の方から、報告書がすでにできておる、第七艦隊司令官がこれをレビューをして、その後ワシントンの米海軍作戦部長の手元に上がったはずだ、アメリカ側としては、日本国民がまさに先生御指摘のようにできるだけ早く本件に決着をつけたいということを十分承知しておるので、できるだけ早く報告書を公表できるようなものにしたい、こう言っておるわけですが、具体的にいつかということは、もちろん私がこの場で、相手があることですからできる問題ではないと思います。
ちなみに、最近、御承知のとおりアメリカの第七艦隊司令官が乗組員の関係者を懲戒処分に付しました。一人はウォール艦長で、これは艦長たる資格を剥奪するという懲戒処分。それからハンプトン大尉、これは当時の当直士官でございますけれども、やはり戒告処分を受けております。そのほか潜水艦のゴールドクルー三人が行政処分を受けておる。しかもその原因といいますのは、何のために処分が行われたかという点につきましては、アメリカ側は、艦長につきましては本件衝突後日昇丸の状況と安全を確認するために適切な措置をとらなかった点で合衆国海軍規則第九百二十五条の規定を遵守しなかったことにより、統一軍法第九十二条に違反したことに対してこの処罰が行われた。ハンプトンの場合には、衝突の前にもっと徹底的な潜望鏡監視を行わなかったことに対してこの処罰が行われたものである、こういうふうに通報してきております。
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○林(百)
委員 それは新聞に出ているから、そんなに詳しく言わなくてもよくわかっていますが、問題は、これが第七艦隊の司令官から出ておるのだ。マスコミの一部では、これは太平洋艦隊の司令官と海軍省の承認を得なければ最終的な処分にならないのだという意見もありますが、その点はどうかということと、それからウォール艦長はジョージ・ワシントンの艦長としての資格を永久に剥奪されたのであって、他の原子力潜水艦の艦長になることはできるのですか。その二つの点を、これはアメリカのやったことを外務省に聞くのですから、答えられたら答えてください。
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○丹波説明員 この点につきましては、上部機関はすでに行われた処罰をどのように処理するのかという御質問だと思うのですが、アメリカ側からの通報では、上部機関は統一軍法第十五条による処罰を保留して、本件を一般軍法会議に付することもできる、こういう回答になっております。
それから、艦長の資格の問題ですが、申しわけございません、アメリカの法律の解釈で私は必ずしもそこまで通じておりませんけれども、現実の問題としては、このようなケースの場合には大抵の人は退職して終わることになる、こういうふうに聞いております。したがって、現実の問題としては、ほかのたとえばSSBNの艦長になるということは、私は考えられないと聞いております。
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○林(百)
委員 私も専門家でないのでもうちょっと詳しく聞きたいのですが、行政的な処分をされたが、第七艦隊の司令官の処分はそれで、上官の承認について軍法会議にかけることができるということはどういうことなんですか。上官の承認はもうこの行政処分には得ておるということなんですか。その上にさらに軍法会議にかけることができるということなんですか。それとも、第七艦隊の司令官はこういう行政処分をしたけれども、太平洋司令官あるいは海軍省の上官はこの行政処分に対してまだ署名はしておらない、承認はしておらない、軍法会議で処置をするという意味ですか。
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○丹波説明員 ただいまの点につきましては後者の点、後者のとおりだと思います。後者の点と申しますのは、太平洋艦隊司令官あるいは海軍省の上級の判断によって、これだけでは足りない、これは軍法会議までいかなければならないという判断を示し、そういうぐあいに持っていくことができる、こういうことです。
ちなみに、それでは処分を受けた側の乗組員はどういう行動ができるかというと、この二人の中佐と大尉は、処分を行った責任者の上司である責任者に対し、通例十五日以内に上告する権利を有するというふうに聞いております。
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○林(百)
委員 防衛庁に聞きますが、日昇丸の乗組員についてビデオテープを撮った事実がありますね。これはお認めになりますか。
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○萩説明員 そのとおりでございます。
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○林(百)
委員 海上保安庁でそのビデオテープを貸してもらえないかという話があったとき、どう処理なさいました。
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○萩説明員 東京で入手して、すぐに海上保安庁にお見せしております。
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○吉野説明員 そのとおりでございます。
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○林(百)
委員 これは外務省に聞いた方がいいと思いますが、アメリカ側では調査
委員が来て、日昇丸の乗組員について証言をいろいろとられたようですね。そうすれば、日本の方もこの問題の調査
委員会をつくって、アメリカへ行ってジョージ・ワシントンの乗組員についての証言をとるということはできるはずでしょう。どうですか。
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○丹波説明員 御承知のとおり、本件はそもそも公海上で起こっておりますし、合衆国軍隊の行動の問題につきまして、合衆国軍隊の構成員に対して日本政府が管轄権を及ぼすということは、一般国際法上できません。
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○林(百)
委員 それでは、公海上でやったということについては同じことなんで、アメリカの調査
委員が来て、日本の乗組員について調査したのはどういう権限ですか。旗国主義だからそういうことができるというのですか。
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○丹波説明員 これは先般の当
委員会での先生とのやりとりの中でも若干出ましたけれども、アメリカ側の調査団は、衝突事故に関する事実関係につきまして、日本側の当該乗組員より任意のべースで御意見をお聞きした、こういうふうに聞いております。
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○林(百)
委員 アメリカの原潜にも公海上の海難救助義務があるわけですから、国際条約に違反しているのだから、日本の調査
委員が行って任意に事情を聞くことは、アメリカができるなら日本ができないはずはないでしょう、あなたの言うように任意に聞くなら。これは国際法上違反なんです。条約違反ですよ。それはあなたは専門家だから知っているでしょう。
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○丹波説明員 その点につきましては、まさに米側が調査を行っており、日本側としても独自の乗組員その他からの事情聴取に基づいて調査を行っているわけです。ちなみに、アメリカ側の調査団が日本側の乗組員から御意見を聞いたというのは、日米領事条約第十七条の規定に従って行っておるわけでございます。
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○林(百)
委員 日米領事条約にそういう規定があっても、国際条約に違反した場合に、あなたの言うように任意という言葉を使うなら、違反されて主権を侵された国が侵した国の当事者について任意に取り調べすることができないということはないでしょう。そんなことはできないという規定はどこにありますか。
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○丹波説明員 この点につきましては、先ほども申し上げたとおり、他国の軍隊の活動に対して日本政府が管轄権を及ぼすことはできないわけでございます。
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○林(百)
委員 しかし、他国の軍隊であろうと、公海上で国際条約に違反していれば、違反した事実があるわけだから、その違反を見逃さなければならないということは、どうして日本国民はそれを承知しなければいけないのですか。どこにそんなことがありますか。公海上で、軍艦であろうとどういう船であろうと、人命の救助をしなければならないという条約はあるはずです。それは民間の船だけに限るなんという条約じゃないですよ。条約をごらんになればわかりますよ。
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○丹波説明員 この点は、本件のケースに限らなくても、もし日米間あるいは一般国際法上の条約違反がアメリカに存在する場合には国家責任の問題になりまして、日本としては外交的にアメリカの国家責任を追及する、理論的にはそういう仕組みになっておるわけでございます。
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○林(百)
委員 外務省の追及が少しも日本の主権を守るという立場から徹底的にされないので、いいかげんに片づけられそうだから、いま私がこういう質問をしているのです。外務省が本当に腰を据えておやりになるなら話は別ですが。
ここで
委員長、
理事会で御相談願いたいのですが、当
委員会へ日昇丸の乗組員を参考人として呼んでいただいて、その間の事情を――余りにアメリカ側の中間報告なるものがでたらめで、自分の行為の秘匿だけを優先して、日本人の生命なり財産なりを無視した報告書を出しておりますので、これはいずれ
理事会で御相談いただくことで結構だと思いますが、日昇丸の乗組員で事情がよくわかっている方を、当
委員会の参考人でも結構ですし、証人でも結構ですが、御喚問願って実情を明らかにする。それは日本国の主権を守る上にどうしてもやらなければならないことだと思うのです。
いいかげんなことで済まされないと思うのです。公海上で日本の船がアメリカの原潜に衝突されて沈没させられて、その後何ら誠意ある解決を見ない。しかもアメリカ側の報告が全く二枚舌のでたらめな報告で許すわけにいきませんので、ぜひ
理事会で御相談願いたい、こういうように要望しておきます。
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-
○林(百)
委員 次に、これもまた全く日本の国民の利益が阻害されているので、いずれも日米安保条約があるからといって、そのために日本の国がいかに従属的な立場にあるか。わが党としては日米安保条約をそういう意味でも廃棄すべきではないかという立場にあるわけですが、はえなわ事件です。
五月は北海道、青森、秋田、この辺はサケ・マスの最盛期で、この辺の漁民は五月、六月に命をかけて漁業に従事しているときに、どうしてここで演習をするようになったのですか、防衛庁から説明を願いたいと思います。
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○芥川説明員 お答え申し上げます。
今回の共同訓練につきましては、ことしの初めからアメリカ側と実施の時期、場所、内容等について調整を行ってきたわけでございまして、私どもといたしましては、この段階においてすでに、今回の訓練海域及びその周辺におきましては漁船が操業しておることは承知していたところであります。しかしながら、海上自衛隊の戦術技量の向上を図るためには、どうしても条件の異なった海域で訓練を行うことが必要でありますので、日米双方の訓練日程の調整を行いました結果、この時期、この海域で訓練することとなったところであります。
この際、私どもといたしましては、漁船の操業に極力支障を与えないという観点から、魚の蝟集しております大和堆というところを避けて訓練海域を決定いたしましたし、また、当初予定しておりました射撃訓練を取りやめた上で共同訓練を実施することにした次第でございます。
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○林(百)
委員 そういう相談をしたのにどうしてこんなに――百二十二隻のうちの五隻は網漁らしいので、正確に言うと百十七隻なんですが、漁民に言わせれば、わざわざ漁船を仮想の敵船に見立てて演習を行って、その中に入ってきてじぐざぐ行進をして、アメリカの軍艦がずたずたにはえなわを切っているというのですが、防衛庁ではそういう危険があるから時期をずらすとか、あるいは演習する地域をそういう危険のない場所にするということをアメリカ側に言ったのですか。漁民に言わせれば、アメリカの軍艦の後を日本の自衛艦がくっついているというのです。交渉の段階でそういうことを十分言ったけれども、アメリカ側はこういうことをやっているのですか。要するに、自衛隊があなたの言うようにアメリカ側に申し入れたけれども、アメリカ側は自衛隊の言うことを結果的には聞かなくて、こういう結果が生じたというふうに聞いていいのですか。
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○芥川説明員 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、海洋の特性というものは場所によって相当違いがございますので、私どもとしては、あるいは太平洋岸においてあるいは日本海において訓練を実施したいということは常日ごろから考えてきたわけでございまして、今回もアメリカ側と調整いたしました結果、どうしてもこの時期、この海域において行うことが必要であるという判断に立った上、先ほど申しましたような漁業に支障を来さないような手段をとった上で実施したわけでございます。しかしながら、米海軍との間の調整の過程におきましては、私どもが持っておりますところの全般的な漁業の状況を説明し、さらには、訓練開始一カ月前から数回にわたり航空機を飛ばしまして漁業の操業状況を調査し、それを逐一アメリカ側へ通報してきたわけでございます。
今回の一連のはえなわ等の切断事故につきましては、米軍の艦艇あるいはソ連の艦艇により発生した可能性があると言われておるわけでございまして、私どもはこの点は確認しておりません。現在のところ、外務省の方から米側及びソ連側に事実関係を照会中であるというふうに承知いたしております。
-
○林(百)
委員 水産庁、おいでになっていますか。――水産庁、漁民の言うことを聞きましたか。漁民はどういう国の旗が掲げられた船がそういう行為をしたかということを言っておりますか。そしてどういう状態ではえなわがこういう状態にずたずたに切られてしまったか、その損害は幾らかということになっていますか。ちょっとその状態を水産庁で説明してください。
-
○
中島(達)説明員 お答え申し上げます。
日本海におきますマス漁船の被害状況でございますが、まず、これまでに関係の団体及び関係の県からの報告によりますと、はえなわ漁船につきましては、五月の十四日から十六日にかけまして、延べにいたしまして百三十五隻、それから五月二十日から二十二日にかけましてマスの流し網漁船、これが延べ十隻に漁具被害が発生をしたという報告を受けているわけでございます。
これらの報告につきましては、五月十五日の朝から断続的に次々に報告が参ったわけでございますが、あわせてそのときの被害の発生状況につきましては、これはそう大きな漁船ではございませんので、また夜間であったりしますので、どういう国のいかなる関係の艦船が被害を与えたかというのは、現時点においては必ずしも断定できるところまで来ておりませんが、報告によれば、なわを海中に流しまして揚げるまでに付近に何らかの艦船を視認をいたした。その中には一部番号が報告をされているものもございますし、また番号がわからない、またどこの国の艦船かもわからないという報告もありますし、あるいはまた星条旗がついていたという報告もあるわけでございます。これらの被害の詳細な状況につきましては、すでに関係の道県に指示をいたしまして、目下これらの漁船が帰港をするたびに詳細を調査取りまとめを急がせているところでございます。
それから、これまでの報告にありました被害の額でございますが、これは五月十八日の報告でございますが、日本海さけ、ます延縄漁業協同組合の報告によりますと、この時点では被害の隻数ははえなわ漁船延べ百十七隻ということでございましたが、これに該当する被害額といたしましては、約九千二百万円に上っておるという報告に接したわけでございます。
いずれにせよ、いま関係道県に指示をいたしまして、詳細な被害状況の取りまとめを急いでいるところでございます。
-
○林(百)
委員 農水
委員会で、漁業組合の組合長の麓光成組合長、それから日本海ます流網漁業組合連合会の石山寛会長を呼んで、わが党の寺前議員が、ソ連の艦船の可能性があるなどと宣伝しているが、どのように受けとめていますかと質問したのに対して、両参考人とも、われわれが確認しているのは米艦であり、船艦番号も確認している、双眼鏡で自衛艦であることも確認したと防衛庁の責任回避を批判した、こう言っていますが、農林水産
委員会で組合長がこういう参考人の答弁をしているということは農林水産庁で知っていますか。どこの船だかわからないから損害もどうしていいかわからないという段階でないでしょう。
-
○
中島(達)説明員 お答えいたします。
農林水産
委員会におきましては、いま先生が御指摘になりましたような参考人の意見陳述があったわけでございますが、一言一句ここで記憶しているわけではございませんけれども、大体御趣旨のような陳述があったと記憶をいたしております。
-
○林(百)
委員 法務大臣、目覚めた。どうするんですか。このはえなわの漁民の損害九千万円、どうしたらいいんですか。ちょっと目を覚まして答えてください。
-
○奥野国務大臣 いずれにいたしましても、円満に話し合いのつく道もございますし、できなければ訴訟問題にもなっていくかと思います。できる限り円満に話がつくように、政府としても中間に立って努力をしてくれることだ、こう思っております。
-
○林(百)
委員 訴訟をだれを相手に、被告をだれにしたらいいんですか。
-
○奥野国務大臣 いま話し合いを続けておるわけでございますので、それで話がつくようにわれわれとしても見守っていきたいと思います。
-
○林(百)
委員 どこと話し合いをしておるのですか。
-
○奥野国務大臣 農林水産省が政府としては官庁になっているんだろうと思います。船の切った原因者、これがわかっていないわけでございますので、それらの問題が一番大事な問題だと思っております。
-
○林(百)
委員 それでは、水産庁と防衛庁にお聞きしますが、損害の賠償はどこを相手にしたらいいんですか。船がどこだか決まらなければ損害の賠償の請求のしようがないんですか、あるいはどこを窓口にしてどことどういう交渉をしているのですか。
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○
中島(達)説明員 今回の日本海におきます被害補償の問題につきましては、基本的には被害者から加害者に対しましてその損害の賠償を請求するという性格のものであるというふうに考えているわけでございます。現在水産庁といたしましては、先ほどお答え申し上げたように、早急に被害の取りまとめを行うべく目下調査を急いでいるところでございまして、その結果を待ちまして、速やかに加害者から適切な補償が行われるように努力をしてまいりたいと思っております。
しかしながら、今回のケースにつきましては、加害艦船が外国のもの、これはアメリカだけに限られるかどうか断定はできないわけでございますが、いずれにしても、今回のケースは加害艦船が外国のものと見られているわけでございまして、この加害責任を当該国に認めさせることが肝要であるかと思っておるわけでございまして、この点は外務省の御協力も得なければいけないと思っている点でございます。
-
○林(百)
委員 外務省にお尋ねいたしますが、これは物的損害ですから海事請求処理権限法、われわれの研究の範囲内では、アメリカの艦船がやったという前提のもとにアメリカと交渉する場合には、この法律でやることになりますか。どういう方法でアメリカに賠償請求する方法がありますか。
-
○丹波説明員 お答え申し上げます。
お許しをいただければ、ただいまの一連の問題に関しましてまず外務省の考え方を御説明申し上げたいのですが、お聞き及びと思うのでございますが、五月十七日に在京米大使館から私のところへ口頭で状況を説明してきた説明の中に、要するに、現時点におけるすべての情報によれば、言われているところの損害は米国艦艇の活動の結果というよりも、監視及び対潜水艦作戦活動を実施していたソ連の巡洋艦により引き起こされた可能性の方がより大きいことを示唆しておる、こういうことを言ってきておるわけでございまして、先ほどから政府側の答弁者が述べておりますとおり、必ずしもアメリカであるという断定をすることは、いまの時点ではできないということでございます。
しかしながら、アメリカは、本件の損害が生じた、事故が生じたことはまことに遺憾であって、この損害に対する補償をこの種の事柄の取り扱いに関する確立した経路を通じて迅速に処理することができるよう、まずその損害の額について日本側が調べて提起してほしいということを言ってきておりまして、私はそこにアメリカ側の誠意を感じるわけでございます。この点につきましては、先ほど申し上げた五月二十日の園田・マンスフィールド大使会談におきましても、マンスフィールド大使は本件に深く遺憾の意を表するとともに、日本側にすでにお伝えしているごとく、損害につき通報を受け、迅速に処理されることを期待しているということを述べておるわけです。
ちなみに、五月二十九日に外務省はソ連に対しましても、種々の状況からソ連の艦船が絡んでいる可能性がある、調査してほしいということをソ連側に申し入れて、先般ソ連側は関係がないという回答を持ってきたわけですが、私たちとしては、ソ連側の回答によってもソ連が今般の事故と全く関係がなくなったということは現段階では言えない、今後とも関係省庁と協力しながらその辺のところを解明したいと思っております。
最後の先生の御質問の点につきましては、もしアメリカ側が処理するとすれば、先生の言われたごとく海事請求処理権限法によることになろうと思います。
-
○林(百)
委員 ソ連がやったとすればソ連が責任を負わなければならないので、共産党だからソ連ませんけれども、しかし、を受けた漁民がアメリカの船だということをはっきり国会で証言しているのに、ソ連だソ連だと言うのもおかしいと思うのです。
それはそれとして、それじゃ艦船の数はソ連が何隻、それに参加したアメリカの艦船は何隻ですか。防衛庁、言ってください。
-
○芥川説明員 お答えいたします。
先生御承知のとおりだと思いますけれども、今回の訓練は前期と後期の二回に分けて行われたわけでございまして、前期の訓練は五月十二日から十五日までで、この訓練に参加いたしました参加艦艇は、海上自衛隊が護衛艦七隻、補給艦一隻、潜水艦二隻、対する米海軍の方は、駆逐艦四隻、潜水艦一隻でございます。
それから、後期の訓練は十九日より二十二日まで行われたわけでございますけれども、ここに参加いたしました海上自衛隊の艦艇は前期と同じでございます。合計十隻。それから米海軍の方は巡洋艦一隻、駆逐艦九隻、補給艦一隻、潜水艦一隻、このようになっておるわけでございます。
なお、先ほど先生の御質問の中に、ソ連の艦艇が何隻いたのかというような御質問があったように記憶いたしますが、私どもの確認しておりますところの艦艇は、三隻でございます。
-
○林(百)
委員 船の数からいっても圧倒的に米艦船が多いし、それから第一被害を受けた漁民が双眼鏡でも見ておるし、見たのは米艦と日本の自衛艦だとはっきり言っているわけなんです。
そこで、こういう法理論が成り立つかどうか、これは民事局にちょっと意見も聞きたいのです。
仮に米艦と日本の自衛隊の日本海における合同演習のためにこの被害が起きたという場合に、日本の自衛隊もその演習に参加しているわけなんですから、アメリカでは日本と違う法律なんですが、仮に国家賠償法の概念からいうと故意、過失ということになって、日本の自衛艦には国賠で請求することになると思いますが、日本の自衛艦との軍艦が加えた損害を何も免除するつもりはありませんけれども、しかし、常識から考えて、被害論は成り立たないのですか。そういう点はどうでしょう。
-
○
中島(一)政府
委員 事実関係が全く私どもの方には不明でございますので、確定的なと申しましょうか、具体的なことは申し上げられないわけでございますけれども、共同不法行為という理論があるわけでありますから、それに当たる事実関係があれば、共同不法行為が成立するという余地はあると考えております。
-
○芥川説明員 若干補足させていただきたいと思いますけれども、今回のはえなわ等の切断事故というものは、訓練海域内において訓練参加艦艇によって起こされたものではなくて、訓練海域外において、訓練に参加する予定で航行中であったと思われるところの米艦艇、あるいは当該海域の――当該海域と申しますのは、米艦艇が航行中であった海域の近くにおいて訓練を行っていたソ連艦艇と言われておるわけでございまして、共同訓練において海上自衛隊あるいは米艦艇が行動したこと自体とは関係がないというふうに考えております。
-
○林(百)
委員 ソ連艦隊はどういう訓練をしていたのですか。もう時間がありませんから、簡単に説明してください。
-
○丹波説明員 これは先ほど申し上げました五月十七日のアメリカからの通報によりますと、カラ級巡洋艦565はソ連のIL38メイ対潜水艦作戦機二機と一緒に要するに対潜水艦活動の訓練を行っていたということで、ソ連の艦艇はブイを投下させてそれを降下させたり、いろいろな活動をしていた、こういうことが報告されております。
-
○林(百)
委員 それはソ連側からの回答は何もない。アメリカ側がそう認定したという、アメリカ側の報告ですか。
-
○丹波説明員 冒頭で申し上げましたとおり、アメリカ側は当時のあの海域に四隻の艦艇がいたわけですが、その艦艇が観察したところを報告で取りまとめてきたものでございます。
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○林(百)
委員 アメリカ側がどういう報告をしようと、それは自分の都合のいいような報告をするということも考えられますが、ソ連の軍艦がやったとすれば、私たちは何もその責任を免除しようとは思いません。しかし、常識的に考えて、アメリカの海軍の演習がこうしたということは、もう漁民がみんな確認しているところですからね。それをそういう他人に責任をなすりつけるようなことに聞こえる言葉は、私たちには受け取れません。
ただ、最後にお聞きしますが、六月、ハワイで日米の安保条約に対する事務レベル会談が行われるわけですが、このときまだ安保問題で残されているこの原潜の当て逃げ問題あるいははえなわ問題、こういう問題はやはり議題にするつもりですか、議題から外すのですか。
-
○丹波説明員 従来からハワイで行っておりますところの日米安保事務レベル協議につきましては、特定した議題は定めないで、国際情勢その他の問題につきフリートーキングを行うということは従来からの慣習でございまして、特に特定の議題ということは考えておりません。日米間に現在存在しているいろいろな問題についてフリートークをしたい、こういうふうに考えております。
-
○林(百)
委員 そうすると、この当て逃げ事件ですか、原潜の衝突事件といいますか、この問題もあるいははえなわ問題もフリートーキングの中に入る可能性はある、これは全然問題にならないのじゃなくて、事務レベルの会談の中でのフリートーキングの議題となり得る、そう聞いておいていいですか。するかしないかはそのときの現実の状態で決めるのでしょうけれども。
-
○丹波説明員 先ほどお答え申し上げましたように、特定の議題ということは考えておりませんけれども、現在日米の安保関係の中に存在するいろいろな問題について話したい、そういうことで御理解いただきたいと思います。
-
○林(百)
委員 だから、これもその議題の中に入る可能性があるかどうかということなんですよ。全然可能性がないのかあるいは可能性があり得るのかということですね、日本側から提起すれば。全然提起することが禁じられているのですか。それとも、日米安保条約の問題について懸案になっているいろいろな問題をフリートーキングするのだから、日本側から問題を提起すればその問題も詰めたり、あるいは賠償をどうするかというようなことを話し合う可能性はあり得る、可能性の問題をあなたに聞いているのです。
-
○丹波説明員 いまの御指摘の問題を全く触れるつもりがないと言って、ここでがんばって御答弁申し上げているつもりは毛頭ないわけでございまして、そういう可能性はある、こういうことでございます。
-
-
○
木村(
武千代)
委員長代理 これにて散会をいたします。
午後四時三十二分散会