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1981-05-13 第94回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月十三日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 鍛冶  清君 理事 岡田 正勝君       井出一太郎君    今枝 敬雄君       上村千一郎君    大西 正男君       太田 誠一君    亀井 静香君       高村 正彦君    佐藤 文生君       白川 勝彦君    中川 秀直君       森   清君    池端 清一君       小林  進君    前川  旦君       柴田  弘君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君  委員外出席者         警察庁警務局人         事課長     椿原 正博君         警察庁刑事局保         安部保安課長  内田 文夫君         法務省民事局参         事官      元木  伸君         法務省民事局参         事官      稲葉 威雄君         最高裁判所事務         総長      矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局総務局長  梅田 晴亮君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     池端 清一君   沖本 泰幸君     柴田  弘君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     武藤 山治君   柴田  弘君     沖本 泰幸君     ————————————— 五月十三日  スパイ防止法の制定に関する請願原田昇左  右君紹介)(第四五〇六号)  同(村田敬次郎紹介)(第四五〇七号)  同(青木正久紹介)(第四五六〇号)  同(宇野宗佑紹介)(第四五六一号)  同(狩野明男紹介)(第四五六二号)  同(塚原俊平紹介)(第四五六三号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第四五六四号)  同(水平豊彦紹介)(第四五六五号)  在留外国人に対する国民年金法適用等に関す  る請願田中恒利紹介)(第四五〇八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第五  九号)  商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案内閣提出第六九  号)  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 本委員会は、商法に関してずいぶん長時間、当委員会としてはまれに見る慎重審議を尽くしてまいりまして、いよいよ審議も本日をもっておおよそ終了をすることになっているわけでありますから、この際、改めて審議を振り返りまして、大臣を初め、担当の各員の御意見を承りたいと存じます。  まず、大臣に伺いたいと思うのでありますが、委員会におきましてもずいぶん指摘をされたことでありますが、長年にわたって、法務省内部商法部会、いろいろな機関において討議をされてきた、政府部内においてもさらにそれの討議を加えられた、そして今回、この衆議院法務委員会においてさまざまな角度から討議が行われました。まだまだ十分とは言えません。言えませんけれども、私ども、ずいぶん勉強をしたのであります。  ただ、振り返って考えてみまして、一体われわれがこの商法、特に日本における経済社会の中枢をなしておる株式会社実態に果たして本当に触れているかどうかということになりますと、じくじたる思いがしないわけではありません。特に法務省というところは、商法改正についてはアカデミックに検討もし、また十分な精査をするけれども、一たん法律が制定いたしますと、商法について後でアフターケアをするところではないわけであります。法律が動き出すについて、それをフォローするのは大蔵省でありあるいは他の省であって、法務省商法運用商法の欠陥その他について日ごとごとアプローチをして、そしてその適正な運営を図るというような役所ではないわけであります。ここに、私どもがどうしても、自分たち商法改正に血となり肉となるような、はだえに感ずるような仕事をしておるのだろうか、日ごろ検討をしておるのだろうか、問題を常にえぐり出しておるだろうかというような反省を私は持つわけであります。  そこでまず第一に、法務大臣審議を通じて、まあ御熱心にあなたも答弁をされ、あるいは細かいことはじっと聞いていらっしゃったのでありましょうけれども、振り返ってみて、商法改正についていろいろな各方面意見、当委員会意見等を通じてみて、いまどんな感想をお持ちであるか、それを承りたいのであります。
  4. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 おっしゃいましたように、当委員会におきましてもいろいろな角度からの御意見をお寄せいただきましたので、国会が終わりましたら、委員会で御論議いただきました問題点を拾い上げてみたいな、こう思っておるわけでございます。  それと同時に、商法全面改正を意図しながら、今回、さしあたりできたものを一部改正の形で御審議いただいたわけでございますけれども、根本的に、大小会社の区別の問題とか、いろいろここで御論議いただきましたが、全面改正も急いでいかなければならないな、こういうことも考えたわけでございます。  いずれにいたしましても、法制審議会商法部会でなお継続していろいろの御論議をいただいているわけでございますので、そういう論議も早急に尽くしていただきまして、次の改正をなるだけ早くしたいな。また、いま御指摘いただきましたように、現実の運用の問題は、薬でありましたら厚生省でございましょうし、証券でありましたら大蔵省でございましょうし、むしろそういう各省の方が実態に触れたいろいろな問題を把握しているじゃないかということもごもっともだと思います。そういうもろもろ意見も、私は、商法部会に反映されていくんじゃないか、こう思うわけでございますけれども、進んでいろいろな意見を拾い上げる努力法務省としてはしていかなければならない。アフターケアのことにつきましても、そういう配慮をしていくように、私としても十分注意していきたい、こう思っております。
  5. 横山利秋

    横山委員 実務担当してきた中島局長ほか参事官、ずいぶん長らく審議に参画をされたわけでありますが、いまの大臣の総括的な感想のほかに、実務的に本審議に際してどんなことがあなた方として反省され、どんなことを今後の問題としてお考えになるか、承りたいと思います。
  6. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいま大臣が申し上げたとおりでありまして、私も今回、こういう大きな法律改正というのは初めての経験でありましたけれども法案作成過程を通じまして、また国会審議、まだ前半が終わったところでございますけれども、これを通じまして、いろいろなことを学んだわけでございます。  今回の改正が、ただいま大臣が申されましたように、全面改正の一部を取り上げての改正ということでございましたので、今回の教訓を生かしまして全面改正に取り組んでまいりたい、こういうふうに決意をした次第でございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 大臣に伺いたいと思いますけれども商法改正は、民事局のみならず、法務省にとってもきわめて重要な問題でございまして、私ども、後で触れますけれども民事局仕事というものにつきましていろいろ考えるところがございます。  特に、サービス行政としての法務省の一翼を担う民事局仕事が、登記所を含めてきわめて問題があり過ぎる。定員削減の今日、民事局系統仕事だけが年々、私どもも与野党そろって要望いたしておりますために、多少ながらの増員の傾向がある。それはきわめて不十分な条件下にある。今後も、その国民の権利を守る民事局サービス行政の面については十分にしなければならぬところである。ところが一方では、行政改革の波がいま政治的に最大の重点となっておる。その矛盾をどう考えるかという点なんであります。総理大臣政治生命をかけるという行政改革法務省とはどんなかかわり合いをこれから持っていくのであろうか。  私ども社会党といたしましても、立場の違いはありましても、行財政改革については、社会の進歩、経済社会の進み方に適応した行財政制度改革をしなければならぬと思って、鋭意検討をいたしておるわけであります。社会党法務部会としても、今日法務行政の中における行財政改革はどうあるべきかという点について検討いたしておるわけでありますが、大臣として、法務省行財政改革についてはどういう具体案をお持ちでございますか。
  8. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 行政改革は、人の面だけをとって申し上げますと、ただ減らすことが行政改革じゃなくて、今後の事務の動向を踏まえながら減らすところは思い切って減らし、ふやすところはむしろ思い切ってふやしていくということでなければならないなと思っておるわけでございます。  民事局実態につきまして、大変御理解のあるお言葉をいただいてうれしく思っておるわけでございます。法務省の出先にいたしましても、特に法務局、登記関係事務は忙殺されているようでございまして、多くの方々を登記の場合も閲覧の場合もお待たせをしたりして恐縮しておるわけでございます。こういうことにつきましては、私は不動産登記あり方にも検討を要する問題があると思いますし、またマンションなどを見てまいりますと、土地建物との所有権あり方にもいろいろ問題があろうと思うわけでございまして、そういうもろもろの問題も法制審議会検討を始めておるようでございますから、そういう点について改革を進めていくことが行政改革の線に沿った改革になっていくのじゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、いろいろな視野から問題を拾い上げながら改革を進めていくということが非常に大切じゃないか、こう思っておるわけでございまして、今後とも鋭意そういう方向で努力をしていきたいと思っております。
  9. 横山利秋

    横山委員 もう少し具体的にお聞かせ願いたいと思います。閣僚の一員として行財政改革について責任を負われる立場であり、また法務省を所管する大臣として具体案が少なくともなくては不思議だと思います。  一例、二例を挙げてお伺いをいたしますが、大体法務省の予算というものは、いわゆる物件費だとかあるいは事業費だとか、そういうものはきわめて少ないわけですね。人件費がかなりのウエートを占めておるという中における行財政改革というものは、首切りしかない、定員の縮減しかない。しかし、定員の問題については、いま申しましたように他省と違ってむしろ増員が必要とされる状況ではないか。この定員をどうお考えになるかということが一つであります。  それから二つ目には、公安調査庁の問題があります。公安調査庁につきましては、私ども十分な審議内容を持ったことが余りありませんけれども、少なくともたびたび指摘をいたしておりますように、一番大きなウエートを占めておった朝鮮総連あるいはまた日本共産党、いまは調査指定団体ということはございません。しかしながら、まだまだそれがウエートを占めておるのでありますけれども、その両団体ともいまやきわめて合法的、きわめて健全な運営をして、社会的な地位を得、認知をされ、あるいはまた政党として国会で活躍をしておるところであります。そういうところがいまなお大きな公安調査庁調査の対象となっておるということは、私はきわめてむだなことだ、こう思うわけであります。公安調査庁廃止ないしは縮小ということが行財政改革の一環として浮かび上がってくるのは当然ではないかと私は思います。  それから、この次の法案として入管令の問題がございます。入管仕事もまた、この登記所の問題と別な意味においてきわめて変革、改革を要する条件下にあると思います。今回提出される入管令改正については、かなり実務を緩和した内容を持っておると思うのであります。しかしながら、ある時期においてはイナゴのように襲いかかる密入国者を水際でとめるなんということはきわめて至難なことだ。いま日本に数万人の密入国者があると私ども推定しておるわけでありますが、それをどうして一体今度の改正をもってしても発見することができるか。アメリカとは違いますけれども日本密入国者の問題も、戦前から戦後にかけて日本社会においてある意味では息をひそめて生活をしておる諸君犯罪の温床となっていないとは言えないと私は思っておるわけであります。そういう点でも、入管行政について思い切った改革をすることによってこの問題の摘出をすることができるのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。  それらの問題を含めて、法務大臣も、もうこれで長らくおやりになったわけでありますから、法務省行財政改革について御意見がないとは言えない。あなたの構想のほどをもう少し具体的に聞かせてもらいたい。
  10. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務省は、金額的に言いますと八五%が人件費、人で動いている役所でございます。しかし、人で動いている役所でございますけれども登記関係でありますとか出入国関係でありますとかいうところでは、むしろ増員を要するわけでございますので、ことしも、ほんのわずかでございますけれども法務省は数少ない省の一つとして実質的に定員をふやしてもらったというところでございます。  その中で、いまのお話を伺っていますと、公安調査庁のようなところは廃止縮小考えたらいいじゃないかという御意見のようでございます。私は、国の治安に関係するような問題は短期的に考えてはいけないな、長期的に見ていかなければならないな、こう思っているわけでございまして、いますぐ廃止したり縮小したりする時期に当たっているというふうには私には思えないわけでございます。やはり大事なことでございますので、なお今後の推移も見ながら結論を出すべきじゃないだろうかな、こう思っております。  出入国管理行政につきましては、いずれ法案を提出いたすわけでございますので、その機会にいろいろな御意見を伺わせていただけると思いますけれども、おっしゃるとおりいろいろ改善を図っていってしかるべき点もあろうと思います。さしあたりは行政機構を先に改革させていただいたところでございますけれども、今後の運営につきましてもいろいろと考えていかなければならないだろう、こう思っているところでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 御多分に漏れず、あなたも結局は行財政改革について、法務省としては総論賛成各論反対というふうに思えるのですが、そういうことになるでしょうか。  私は、この間ある新聞社アンケートを見まして、行財政改革の難点は何かというアンケートを見まして、十数項目ぐらいマルをつけよということについて、一番最初マルをつけたのが、役所が反対するだろうというところへ一番最初マルをつけたわけです。法務省の特色がいま言いましたようにないとは言いませんけれども、しかし、いまのあなたのお話によれば、法務省には行財政改革をするべき余地はない、事実上はこういうふうに判断してよろしいのですか。
  12. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 行政改革とは何ぞやというところから議論をしていかなければ、結論はなかなか同じようにはまいらないのじゃないかと私は思うのです。たとえば経費を節減する場合でも、一律に経費を削ったら行政改革じゃなくて、まず赤字を出しているところから赤字を出さないようにしていかなければならない、また、不要不急仕事経費を思い切って削っていかなければならないというようなところから金の問題でも論じていかなければならないと思いますし、私は人の問題でも同じだと思うのです。同時にまた、効率を上げるためには、公務員担当するにふさわしい仕事もありましょうし、むしろ民間に譲った方が効率が上げられるようなものもあると思うわけでございまして、現業的なものは公務員がやらないで、できるだけ民間に譲っていかなければならないとか、行政改革には数多く問題があるわけでございます。一言、二言の横山さんと私とのお話し合いだけで、総論賛成各論反対だときめつけられる姿勢は、どうも横山さんらしくないなという感じで私は伺ったわけでございます。私は、いまの大切な問題は行政改革だと思っておりますし、私もそれなり努力をしていかなければならない。  そういうことを考えていきますと、たとえば一番最初におっしゃいました登記の問題一つとりましても、いまのようなマンションなどを考えますと、建物土地所有をばらばらにしたような考え方でいいんだろうかなということもございましょうし、登記あり方もいろいろあるだろうと思うのであります。そういうことから根本的に改革案考えていく必要があるだろう。やはり行政効率を上げていく、最小の経費最大の効果を上げる、それにはどういうような改革をしたらいいかということを考えていくのが根本じゃないだろうかな、私はこう思っておるわけでございます。決して各論反対じゃございませんで、問題点がございましたら積極的にその問題と取り組んで、国民の期待にこたえるような改革努力をしていかなければならない、成果を上げていかなければならない、こう思っておるわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 法務省内に赤字を出しているところがあるのですか。一般論お話をしているわけじゃなくて、法務省としての行財政改革具体策があるかと言って聞いておるのですが、いままでのところ、私の言っておるような増員の必要があるというようなところには賛成をなさいましたけれども、むしろ改革をするという点については大臣から具体案が何にもないというふうにいまもお話を聞いておって思うのですが、法務省の問題として具体案をお持ちでございますか。
  14. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 行政改革は始まったばかりでございまして、各方面意見が出てくるわけでございます。臨調の方でも各省のヒヤリングを始めたばかりでございまして、それらの意見も徴しながら具体案を固めていくべきだと私は思うのでございまして、始まる前から法務省具体案をどうこうと言うのはいささか先走り過ぎているのじゃないかな、こう思います。決してそれをおろそかにしているつもりじゃございませんで、積極的に取り組んでいきたいという気持ちには変わりはございません。
  15. 横山利秋

    横山委員 要領を得ませんな。  もう一つ大臣に伺いたいのですが、この商法改正ということはもちろん常時検討してきたところでありますが、一番政治的に問題になりましたのは、ロッキード・グラマン航空機汚職、あのときに巨大会社のありようを含めまして大会社社会的責任ということが一番天の声、地の声、人の声になったわけであります。そして閣僚懇談会を設け、そこでいろいろと取り組みが行われた。ところが、法務委員会刑事局長などがそれに対して言いますことは、実際問題としては刑法贈収賄罪改正はできません。何だ、そんなことでは閣僚懇談会の決定というもの、結論というものは作文であったのかと言って反発をしたのでありますが、結局は、刑事局長自分専門的職分から言うならば実効が担保できないということで終わってしまっておるわけであります。  私どもは、もちろんオーソドックスな商法改正についても判断はするけれども、もっぱら政治的に、ロッキード・グラマン以来国民の声となった大企業社会的責任という視野をいささかも外れてはならぬ、政治家の一人としてそういうふうに考えておるわけであります。その角度からいいますと、果たして今回の改正というものがその角度を正しくとらえておるだろうか。それは商法部会諸君あるいは政府担当者は、商法というものをそういう政治的な視野から見ずに、アカデミックな立場からとらえたにしても、国民が大企業に対する社会的責任という角度からとらえた立場からいうとまだきわめて不十分な点があるのではないか。当時、あなたは法務大臣ではなかったにしても、閣僚として、決めたそのラインからいうと今度の改正はきわめて不十分なものである、そう思いませんか。
  16. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、一応考えられるところは改正案に盛り込まれたのじゃないかな、こう思っておるわけでございます。従来と違いまして、代表取締役が勝手なことができないように取締役会責任を持たせてまいってきておるわけでございますし、また、監査役あるいは会計監査人の活動しやすいような仕組みにも今度なっているわけでございまして、独立性を強化しているわけでございますし、また、それらの責任それなりに重くなってきているわけでございます。同時にまた、できる限り株主総会が形骸化しないようにということで、その機能を発揮できますように事前にいろいろなものを株主に資料として送付する、あるいは株主総会で質問をする、自然にそれに対して答えていかなければならないというふうな仕組みも明らかにしていくなど、一応考えられるところは網羅しているように思うわけでございます。  そうすると、今後犯罪はなくなるかといいますと、これはまた別の問題じゃないだろうかな。犯罪につきましては、刑法という法律があってもなおかつ犯罪が行われていくわけでございますので、それとは別問題じゃないか。しかし、一応企業がそれぞれ社会的公正を保てるように配慮するとすれば、いま考えられるところは一応網羅しているのじゃないかな、こう思うわけでございます。しかし、いろいろな御意見も今後できる限り生かせるようなことを、次の全面改正の際にはさらに一段の工夫をしていきたいものだな、こう思っております。
  17. 横山利秋

    横山委員 企業社会的責任というものを論ずるに当たって、企業社会的責任を果たすためには会社内容を常に公開をし、そして株主を初め国民の中で公正な企業運営を図るということが、重要な要件の一つであることは言うまでもありません。その開示の問題について、草案の段階から改正に至りますまでの段階で、経団連の圧力を受けて後退をしたということは紛れもない事実なんであります。これは将来にわたって企業社会的責任を高めるに当たって、さらに越えなければならぬ道程である。そしてまた、将来もその社会的責任の数々のことを考えなければならず、その意味においては企業がより社会的に、民主的に会社内容公開というものの大道を進まねばならぬ、こう思いますが、いかがですか。
  18. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私たちは、できる限りそれぞれの創意工夫、自由な活動を担保しながら社会的公正を確保していきたい、こう考えておりますので、両者を満たしながらよい案をつくっていかなければならない。もしそういうことを考えなければ、監査人国家公務員を派遣して監査させる、こういう手もあろうかと思いますけれども、それは私たちが自由を守ろうという基本に反することでもございます。そうしますと、ある程度会社から報酬をもらいながら監査仕事に当たるわけでございます。自然そこにはある程度監査の限界が出てくるのではないだろうかと思います。それもいけないとは言えないのじゃないかと私は思います。  私は、法制審議会審議に参加しておりませんけれども企業秘密をどう守ろうか、あるいは企業としてやはり営利活動をやっているのですよという批判があったのではないかなという感じがするわけであります。しかし、それも理解をしながら、できる限り社会的公正を守っていくためにはどうしたらいいかということから、営業報告や監査報告も、法務省令でこれだけのものは書かなければいけませんよということを求めていこうとしておるわけでございまして、両者の調和を図っていかなければならないわけでございます。そこに、ある人は行き過ぎだと思われるし、ある人はなまぬるいと思われる、そういう点を生じているのではないかと私は思います。しかし、これらの点につきましても、今後のいろいろなわれわれの努力によって、できる限り必要な社会的要請は満たしていかなければならないなという決意は持っているわけでございます。
  19. 横山利秋

    横山委員 いずれにしても、政府商法社会的責任という項目を盛り込むことについて、気持ちはわかるけれども、まだ踏み切れない点がありますが、そういう点を含めましても、なおかつ社会的責任、そして企業公開という点については大道であるという点については御異存はないと思うのです。問題は、その大道といわゆる企業秘密との調和とはどういうことなのかという、大臣のいまのお話のとおりであります。  そこで、刑法改正について付言をするわけでありますが、刑法の草案の中における企業秘密漏示罪ですね。この漏示罪を特定することによって、またこれを法律化することによって、社会的責任なりあるいは企業の民主的な運営社会に対する開示、公開という道を大きくふさぐのではないか。調和は必要であろうけれども、この社会的責任法律の中に盛られない。行為の問題は経団連の圧力によってそう十分なことは書けない。そういう状況の中で、企業秘密漏示罪を刑法の中に特定する政治的な結果というものはどう考えたらいいのか。どういうふうに企業秘密漏示罪を書きましょうとも、法律として確定をして、それによって歩き出すという結果は明らかに商法改正の大道を阻害するのではないか、そういうふうに私は考えられてならないのであります。  もしそれ調和を図るというのであるならば、社会的責任あるいは企業公開というものを法律にまず明記して、その後に、どうしてもなければならないというならば、企業秘密漏示の罪というものも検討の対象にすることもないわけではなかろうけれども、ひっくり返して企業秘密漏示罪だけをさらに前に持っていこうということについては、これは問題があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまおっしゃっているのは、昭和四十九年に法制審議会で答申された刑法改正草案の中にある企業漏示罪をおうしゃっているように思ったのですが、そうでございましょうか。
  21. 横山利秋

    横山委員 そうです。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これは単に企業秘密を漏らした場合に罪になるという内容ではないと私は伺っておるわけであります。莫大な経費を投下して新しい手法を企業が発見した、それを簡単に盗んで他に売りつけるというような場合には、やはり刑事罰で守ってやらなければいけないのじゃないだろうか。国際間で大変なそういう秘密の奪い合いをやっているときに、日本だけが何も刑事罰に問わないでほうっておいたのでは日本の経済の発展が阻害される、そういう心配にかんがみて設けられた罪だと思います。これはいまだ草案の段階でございますので、いずれ御論議いただいたらいいのじゃないか、こう思うわけでございます。これは単なる企業秘密をばらしたら罰しますよという内容のものでは全然ございませんので、それはひとつ御理解をいただいた上で、今後の企業漏示罪をどうするかという御批判をいただいた方がいいのではないだろうかな、こう思っておるわけでございます。  企業秘密につきましては、何が何でも守らなければならないとは思っておりません。ただ、それぞれが競争の中で営利活動をやっているわけでございますから、企業のいろいろな内容をすっぱ抜かれたのでは競争にならないというようなことで、企業それぞれがそれなりに競争上の秘密を持っていることは事実だろう、私はこう思っているわけでございまして、私が先ほど企業秘密と申し上げましたのはそういうことで申し上げたつもりでございます。企業漏示罪というのは、ちょっとそれとは別な角度から検討されなければならない性格のものだろう、私はこう思っております。
  23. 横山利秋

    横山委員 社会の進歩に即応する企業の技術進歩については特許制度がある。そして特許制度も、またそれを公開することによって別な意味で技術革新、技術知識を社会に役立たせようということにほかならないと私は考えておるわけであります。その会社だけが自分の技術秘密を守って一切社会の進展に応じない。自分の独占的利益にしようとすることについてはいかがなものかと思います。また、そういう秘密を特に刑法をもって守ってやらなければならぬような積極的な理由は私はないと思う。それは現行法あるいは会社の内部の規定、それらによって十分にいま差し支えない状況になっている。それを特に刑法の中へ置こうとするところに波及的な効果、悪影響を私どもは心配するわけであります。  そこで、この企業秘密漏示罪とあわせて今度は国家機密の問題に移るわけでありますが、大臣スパイ防止法の制定に賛成でございますか。
  24. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 スパイ防止法といいますか何といいますか、やはり防衛機密というものはあるのだろうと思うのでございまして、防衛機密は守っていく必要があるのではないだろうかな、こう思っております。
  25. 横山利秋

    横山委員 私も昨日、私の手元で長年月かかりました情報公開法を発表したわけでありますが、少なくとも防衛にしろ外交にしろ、個人のプライバシーあるいは企業の秘密にしろ、最小限、きわめて制限されたもとにおける機密が存在することを必ずしも否定するものではないのであります。しかし、それを今日外交は捨てておいて、防衛だけ特定しようとするところに政治的にきわめて危険なものを感ぜざるを得ない。先般も本委員会で外務省を呼んで、防衛だけが機密が存在するのか、外交はほうっておいていいのかと言ったら、不快な気持ちを禁じ得ない、こう言っておるわけです。  私は、いまそういうような一定の制限された中における機密はあろうと認めるにやぶさかではないけれども、今日最も重要に考えられるのは国民の知る権利の問題だ。ほうっておけば、どんどん役所企業もあらゆるところが機密だ機密だといって勝手に機密を決めてやっていくよりも、むしろ知る権利というものを国民の中に、役所の中に、経済社会の中に安定させるという情報公開法の制定こそ最も緊急なものではなかろうか、そう考えるのですが、あなたはスパイ防止法の方が優先的だとおっしゃるのですか。
  26. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国の安全を守っていくことが大切であることは、国民みんなが理解していると思います。その場合に、国の安全を守る範囲、安全保障、これをどういう範囲で考えるかというようなところから総合安全保障という考え方も生まれてまいりまして、そしていままで安全保障の際の国防会議といいましょうか、若干ふやしたメンバーで総合安全保障の会議を内閣として持つようになったわけでございます。私が言います防衛機密も、どの範囲を防衛機密としてとらえるかということについては十分詰めていかなければならない、こう思います。その機密のあることは基本的に認めると横山さんもおっしゃっていただいたわけでございますから、その範囲は詰めるとして、それを守ることは大切だということは御理解いただいたのじゃないかなと思います。  同時に、私も、いろいろな情報を公にして、国民みんなで理解の上でまたいろいろな意見を寄せていただくことが行政の進展に役立っていく、こう思っておるわけでございまして、国民に知らせていくべき情報はできる限り公開していく姿勢を強めていくべきだ、こう思っております。
  27. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げておるのは、一定のごく制限された中におけるそれぞれの個人のプライバシーの機密を含めて、企業の機密、防衛の機密あるいは外交の機密の存在を認めるというわけです。認めるけれども、そういうものが先に走ってはいけない。それは情報公開法なり企業社会的責任なりそういうものが先に前へ歩いて、歩く過程において注意をするという意味において言うのです。あなたの考え方は、防衛機密が先へ走る、企業機密が先へ走る、そして多小は社会的責任も考慮するというふうにとられて仕方がないのでありますが、そこにあなたと私との間に非常な隔たりがある。あなたは知らせない権力というか、知らせてはならぬことが先行する、私は知る権利が先行する、そういう違いがあるのです。その点についてあなたはどうお考えですか。
  28. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どちらが優先するということでなしに、両方同じように進めていかなければならないというのが私の考え方でございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 それは少しごまかした物の考え方だと思います。あなたが、私の言う知る権利が先行して、その知る権利についての多少の制限はいろいろな機密の存在からいってやむを得ないということであるならばいいのですけれども、知らせない権力が先行する、そしてその配慮として知る権利を尊重するということであれば、あなたと私とは天地雲泥の政治的な観点の違いというふうに考えざるを得ない。そういう抽象的な論理ではなくして、いま私が具体的に言っておりますのは、いまやるべきことは情報公開法であって、スパイ防止法ではない、企業機密漏示罪ではない。まず情報公開法から先に制定すべきであるという点についてはどうお考えですか。
  30. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 情報公開法という法律はできておりませんけれども政府としては情報公開にすでに手をつけていることは御理解いただけると思うのであります。こういう資料を見たいとおっしゃれば、各省は窓口も決めておりますし、またそれぞれの担当者も決めておりますし、いままでと違いまして、機密の範囲もうんと狭めてまいってきておるわけでございます。法律はありませんけれども、情報公開という姿勢ですでにどんどん進めてきておることは御理解いただけるのじゃないか。それを法律までにしていきますと、さらによく精査しないと、どこまでいける、いけないという問題があるものでございますから、なお時間を要している。  情報公開法をつくりたいという一つの目標は持ちながら、とりあえず情報公開を広げるということでいろいろな努力をしてきている、こう私は考えておるわけでございまして、いまのあり方について御指摘をいただきながら、また行政運営上改めるものはどんどん改めたらいいと思うのでございまして、法律があることはベターでございますけれども法律がないから情報公開できないわけのものではない、各省それぞれに努力をしてきている、こう私は思います。また、戦後、特に何々白書でありますとか何々青書でありますとかいうようなものを積極的に各省がつくってきているわけでございますし、また、法務省におきましても、いままでお見せしていなかったような資料まで、要求があればどんどんお見せするように姿勢を変えておるわけでございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 認識の相違とでも申しましょうか、あなたは事実上情報公開が進んでおるとお言いになるけれども、私はそういうことが進んでいるとは思えない。特に日本の官僚気質というものはよほどでなければ知らせない。そしてその知らせない気持ちの中には役人気質というもの、役人かたぎというものがあって、自分責任がかかるのを恐れる、あるいはまた、自分がポケットに持っておって恩恵的にそれによって何かのペイを求めようとするという気質が日本の官僚かたぎだと私は思っておるわけです。情報公開法は、そういう意味合いにおいては、知らせない役人から知らせる役人、知ってもらう役人、提供する役人に意識革命をしなければ情報公開の目的は達しない、単に法律をつくるばかりでなくて、法律と同時に役人の気質を変えなければ、日本における情報公開というのはなかなかうまく進まないとすら思っているくらいでありますから、あなたが情報公開が事実上進んでおるという点については大変な認識不足だと思います。  さて、民事局長に少し、いままでの長い間の討議を含めてだめ押しのようなことでございますけれども、二、三詰めていきたいと思います。  第一は、各委員が言いましたように、われわれの論議経済社会における企業実態というものが遊離しておりはせぬか、特に商法意識というものが定着していないのではないか、会社運営に当たって商法に違反をするということのおそれあるいはそれに対する警戒というものがきわめて少ないのではないか、仮に違反をしても商法違反として罪に問われるということは少なくて、会社の人事の変更をすることによって済んでしまいはせぬか、そういう点が痛感される。  今回においても、結局平取締役が取締役会の決議にすべての責任を負う、平取だからといって、物言えばくちびる寒しとして黙っておったのでは商法違反になる、そういうような改正が一体定着するだろうか、今日の日本企業が社長のワンマン的色彩が強いときに、平取の権限を、また義務を高める改正が本当に定着するだろうかということがいろいろ指摘をされたところであります。したがって、この法改正の趣旨をどういうふうに経済社会企業に徹底するのか、その改正が本当に効果ある運営が一体できるだろうか、あるいはまたその問題に違反をしたときにだれが一体その摘出をするのか、それをフォローする役所は一体どこなのか、法務省が一々やるわけでもなかろう、そういう点について多大の疑念を持っておるわけですが、どうお考えでありますか。
  32. 中島一郎

    中島(一)政府委員 改正法律内容と趣旨が正しく理解をされまして適切に運用されるということは、私どもの切なる願いでもあるわけでございます。そういう意味におきまして、従来からもあらゆる機会を通じて改正作業の内容について周知徹底を図ってまいったわけでありますけれども法律が成立いたしました場合には、なお一層積極的にこの問題に取り組んでまいりたいと思います。あるいは法律雑誌に紹介の記事を書く、あるいは講演会、講習会に講師を派追するとか、あらゆる機会を通じて努力をしてまいりたいと考えております。  それから、罰則の適用その他違反の場合の処置につきましては、罰則に関しましては担当の機関に趣旨をよく御説明をいたしまして、適切な運用が図られるようにお願いをしたい、こういうふうに考えております。
  33. 横山利秋

    横山委員 第二番目に、しばしば各委員から議論を呼びましたのは、営業報告書及び附属明細書について具体的な省令案が提示をされなかったということであります。この点につきまして、われわれとしては、法制審議会の答申と審議内容を尊重し、少なくとも使途不明金だとかあるいは政治献金だとか各委員から指摘されましたようなことは、営業報告書及び附属明細書を見ることによって十分社会的責任企業が果たし得るというような内容とすることを期待しておるのでありますが、よろしゅうございますか。
  34. 中島一郎

    中島(一)政府委員 この点につきましては、従来の法制審議会における審議の結果を尊重するということはもちろんでございますけれども、今後法制審議会において御審議いただくことになるわけでありますが、その際、企業社会的責任にかんがみまして、本委員会における審議の経過なども十分に伝えまして、慎重に審議をしていただきまして、その結果を尊重して省令の作成に当たりたい、こういうふうに考えております。
  35. 横山利秋

    横山委員 これだけ各委員が強く指摘したところでありますから、よもや営業報告書、附属明細書の内容が議会の意見を尊重なさらないとは思いませんけれども、その結果を十分われわれとしては注目をしておりますことをお忘れないようにお願いします。  次に、今回の改正が、零細株主やあるいは中小企業に多大の影響がありはしないか。単位株制度の採用が、少数株主あるいは零細株主に対して、まあそんなことならという気持ちを醸成し、大衆投資の減退、株主の法人化という勢いにさらに加速度をつけやしないかということが心配をされる。あるいは中小株式会社におけるこの株主提案権が、かえって中小株式会社において紛争の種になりはしないか。大体中小株式会社で、私ども指摘したように、結局株主総会をやるといったって、おむつを専務が裏で洗たくしているようなものも株式会社でございますから、そういうようなところで、同族会社のようなところで一体どういうことが起こるだろうかということを考えますと、実情に即した権利保護や行政指導ということが必要だと思いますが、整理をして御返事を願いたい。
  36. 中島一郎

    中島(一)政府委員 確かに御指摘のような問題点も全くないわけではないというふうに考えておりますので、零細株主の権利の保護につきまして、あるいはまたいたずらに大衆投資家の減少あるいは法人株主の増加というようなことを招くようなことのないように、できるだけの配慮をしてまいりたいというふうに考えております。  また、提案権につきましては、中小企業の実情に即しまして、正しい提案権の趣旨の周知徹底に努め、これがいやしくも中小企業の経営の安定あるいは発展を妨げることのないように努力をいたしたいというふうに存じます。
  37. 横山利秋

    横山委員 監査あり方については、もうさまざまな角度から議論がされました。これを集約いたしますと、一つ会計監査人独立性、それから監査の的確性ということに集約をされましょう。それからもう一つは、日本会計監査人の国際的な条件が非常に劣弱である。他方においては、個人の公認会計士がせっかく狭い門を通って公認会計士となりながら、税務署で税金の相談において生計を維持しておる。むしろ個人の公認会計士として監査をするよりも、税務署へ行って仕事をした方が収入が多い、こういう条件下にあります。公認会計士の監査法人と個人の公認会計士との間にまた一方では格差が広がるばかりである。そして会計士補の将来性というものがきわめて展望が悪い、こういうような状況にあります。きょうは大蔵省は来ておりませんけれども大蔵省にもその点について、公認会計士のあり方について十分検討をし、行政で適切な配慮をするようにと要望をいたしたところであります。  一方、本法案をめぐって日本公認会計士協会と日本税理士会との間に少なからぬ摩擦がありました。参考人を呼びまして、われわれ同僚諸君とともにその意見を聞いたわけでありますが、大変残念な関係にあると私は思っております。この税理士と公認会計士との職域の調整を図って相互の職域侵害が起こらないようにすることは、どうしても政治的にも、行政的にも、法律的にも、運用上にも必要なことではないか、こういうふうに痛感されるわけであります。この監査及び公認会計士の業務のありようについてさまざまな角度から質疑が行われたのでありますが、民事局長として総括をしてどういうふうに反省し、また今後対処されようとしておるのか、承りたいと思います。
  38. 中島一郎

    中島(一)政府委員 公認会計士の能力の向上、業務の確保という問題でございますけれども、所管の官庁でございませんので、その立場でのお答えはできないわけでありますけれども商法担当いたしました私どもといたしましても、監査法人あるいは公認会計士の能力の向山、業務の確保ということについては非常に深い関心を持っておるわけでございますから、所管官庁にもお伝えをしまして、適正な指導が行われるように努力いたしたいと考えております。  なお、公認会計士と税理士の職域の問題につきましては、今回の改正法におきましても、特例法の改正におきましても所要の立法をしたつもりでおりますけれども運用の実績に照らしましてさらに立法措置が必要であるかどうかを考えたいというふうに考えております。  なお、運用上のトラブルが起こりました場合の解決策につきましては、両業界あるいは監督官庁において解決されるということを期待しておるわけでありますけれども、もし必要があれば、私どもといたしましてもその解消に協力を惜しまないつもりでございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 最後に、今後の商法改正あり方について、これまた各委員からさまざまな角度で今後の期待、今後の問題点というものが質疑が行われました。これを要約いたしますと、企業社会的責任企業の結合、合併、分割、特にいま言いました中小企業に適切な規定の新設、株式の相互保有というところが今後の問題ではなかろうかと思います。今回商法改正に当たって、参考人並びに政府側から、しばしば本委員会が前の商法改正の際に満場一致決議いたしました附帯決議を尊重してという発言がありました。その意味におきまして、今回の改正に際して一体これから商法改正はどんなことが政府側として積み残した問題、あるいはまた経済社会の発展においてどんなことが予想されるのか。また、われわれは国会筋といたしましても今度どういうふうな問題を検討すべきかという点についていろいろな感想を持っておるわけでありますが、政府側もこの機会に、今後の商法改正についての判断なりあるいは意見を整理して御返事を願いたい。
  40. 中島一郎

    中島(一)政府委員 今回の改正作業のいきさつから考えまして、今後における商法改正の方向は、ただいま御指摘がございましたような諸項目、すなわち企業社会的責任あるいは企業の結合、合併、分割、中小企業に適切な規定の新設、株式相互保有等というような項目になろうかと私ども考えておるわけでございます。引き続きこれらの項目につきまして改正作業を進めてまいりたいと考えております。
  41. 横山利秋

    横山委員 終わります。
  42. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  43. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これより両案について討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  44. 稲葉誠一

    稲葉委員 商法等の一部を改正する法律案とこれに関連する整理法案、両案に対しまして、日本社会党を代表して反対の意思を表明して、討論をさせていただきます。  率直に申し上げまして、この商法改正について二年有半といいますか三年近くの年月を法制審議会を通じて法務省当局が重ねられた努力に対しては、私は深い敬意を表するものであります。しかし、その内容を見てまいりますというと、一体それだけのことをやってこれしか一つ法案としてできないのだろうかということを痛切に感ずるわけでありまして、試案から要綱、それらのものがだんだん骨抜きにされつつあるという印象を受けざるを得ないのであります。  私は、反省をいたしますのは、本来、この商法改正につきましては、六法にある大法典でありまするから、逐条的な審議をするのが筋ではなかったかということをいまになって反省をいたしておるわけでございます。しかし、委員長が非常に言論の自由を尊重されて……(発言する者あり)余り尊重しないという声もありましたが、私は言論の自由を尊重されてやられたというふうに考えるわけでありまして、その点については敬意を表します。今後ともこういうように法案については徹底的な審議、これは徹底的な審議までいかなかったのですけれども、今後はそういうふうにいくように、いまの気持ちを忘れないでひとつ審議に当たっていただきたい、こういうふうに考える次第でございます。  そこで、法案につきまして、逐次その法案提案説明の順序に従いまして私は反対の理由を述べていきたい、こういうふうに思います。  この提案理由説明書によりまするというと、「最近の経済情勢及び会社運営実態にかんがみ、会社の自主的な監視機能を強化し、」ということを第一の目的として掲げておるわけであります。ところが、その内容の第一に入りまするというと、「株式の流通及びその管理の実態に照らして株式制度の合理化を図るため、」となっておりまして、一体第一の「株式制度の合理化」というのが「会社の自主的な監視機能」とどういうふうに脈絡があるのか、どうもよくわからないわけであります。提案理由の中には、もちろん「その運営の一層の適正化を図る等のため、」こういうふうには出てはおるわけでありまするが、そういうことを言えば、この株式の流通の合理化のために発行価額が五万円以上でなければならないようにするということが一体どこにこれと結びつくのか、私にはどうもよくわからない。この書き方はちょっとおかしいのではないかというふうに私は考えます。  これならば、むしろ株主総会なり何なりの方が第一に出てこなければならないのではなかろうかということを私は思うわけですけれども、それはいずれにいたしましても、第一の点で、「株式の流通及びその管理の実態に照らして株式制度の合理化を図る」ということ、一体株式制度の合理化とは何かということを私どもは真摯に考えてみなければいけない、こう思うのでございますが、ここに掲げられておりますのは五万円以上の単位株である、一単位の株式を五万円にするということの単位株制度の導入といいますか、こういうふうなものがここに掲げられておる。  一体、これは合理化とどういう関係があるのかと言えば、結局、経済界の要請によって全体の運営というものを経費のかからないようにしよう、あるいはまた簡素化といいますか、そういうふうにしようということの意味にしかとれないのでありまして、これに漏れた株主の提案権のない百分の一以下あるいは三百株以下ですかの株主の権利というものが、この法案が成立するまであるいは成立した後におきましてもどういう権限を持っておるか、いまの法律と比べてどういうふうなものになるか、こういうことについて、私はチッソの例を挙げて、後藤孝典弁護士の株主権の例を挙げて聞いたのでありますが、それに対しては答えがないという状況でありまして、この株式制度の合理化を図るということは、結局大会社の合理化であって少数株主の保護にはならない問題である、こういうのが第一の反対の理由でございます。  第二に、「株主総会運営を適正化するため、株主株主総会における議題を提案することができるとの制度を新設すること」にした、そういうようなことの中に総会屋と称するものの排除を目的といたしまして、「株主権の行使に関して会社がする利益の供与を禁止し、その利益の供与を受けた者はこれを会社に返還しなければならないものとするとともに、これに違反して会社の計算でそのような利益の供与をした取締役等は刑罰に処すること」としておる。懲役六カ月または罰金三十万円ですか、こういうことにしておるということであります。  いかにも総会屋というものは日本の特有の現象でありまして、アメリカにもイギリスにもその他の国にもないということは、一体どこにそういう社会現象というか社会事象の原因があるかということをわれわれは深く反省しなければいけないというふうに思うわけでございますが、それでは、この条文ができたからといって総会屋がなくなるかということになってまいりますと、この条文というものは事実上非常に適用がしにくいというか、事実上適用にならない法案であるというふうに私は考えるわけであります。  なぜかといいますと、第一、会社から株主総会でその議決権の行使に関連して利益の供与を受けたということを自白する者はおりません。また、自白したところで、それが証拠に残るわけはありません。会社の方でも、それをほかの方にふくらまして帳簿をつくっておるということでありますから、これは多少は総会屋の、何と申しますか心理的な強制、圧迫になるかもわかりませんけれども、この法案自身は事実上適用にはならないというふうに私は思います。一年に少なくとも二件以上この条文に即した立件というか送検、そして判決があったならば、私はこの席上で頭を下げて私の不明をわびることはいたします。これはできないと思いますよ。実際上はこれは空文ですよ。  そこで、いま総会屋はどういう現象を呈しているかというと、総会屋は政治結社をどんどんつくっておるでしょう。政治結社をどんどんつくって、会社の方から政治資金をもらっている。こういう慣行がどんどん移っていく、こういう状況でありますから、それを政治資金としてもらえれば、結局総会屋であったところでそれは決して違法ではないということになるわけですから、この条文というものは意味がない条文であるというふうに考えて、内容がないということで私はこれに対して反対をせざるを得ないのであります。  それから第三に、「監査役の権限を充実強化する」というようなことを言っております。  ところが、日本監査役というのは、実態調査がありまするが、どういう人がなっているかというと、これは大体取締役を終わった御隠居さんがなっている場合が多い。隠居というのは、隠れて居るというのも隠居と言うのですが、隠れて去るというのも隠居だということを言う人があります。まあ隠れて居る方でしょうが、隠居というのは。そこで、それだけではなくて、年齢的にもまた五十五歳の定年以上、六十歳以上が圧倒的に多いわけですね。いまは時期が変わってまいりましたから、六十歳でもどんどん働いている人がおりますけれども、結局、こういうように会社の役員、会社の機関である、会社から報酬をもらっておる、こういうことでいわゆる自己監査、これによって監査が十分にできるわけはない。日本人はアメリカ人などと違いますから、報酬をもらっておりますると非常にウエットで、会社のためにならないようなことはしないというのが事実ですね。だから、よく忠勤を励む人は、贈収賄事件があると必ず自殺が起きるのはそういうところからも出ているわけです。  アメリカ人は非常にドライですから、金は金、もらいはもらい、することはする、こういうのがアメリカなどの行き方ですけれども日本はその点が違いますので、監査役というものはそういうような人がなっているのは十分でないというふうに考えまするし、監査役の権限というものは、業態の検査というものについて当、不当を検査ができない、会計監査だけできるということ。違法な場合はできますけれども、違法であるかどうかということについてはなかなかわからない。それから、会計監査のことについては、会計監査人がおるわけですから、そちらの方の監査をそのままうのみにしていく、こういう状態でありまするから、監査役の権限を幾ら強化したところで問題にはならぬ。いわんや二人以上置いて一人を常勤にするというけれども、常勤とは何かと聞いたならばはっきりしない。いまの常任監査役と大して違いがない、こういうことでありますので内容がない。こういうことで、努力は認めますけれども、私は賛成するわけにはいかない、こういうふうになるわけであります。  第四は、「会社の業務及び財務の内容株主及び会社債権者への開示を強化するため、営業報告書及び監査報告書の記載内容の充実を図ることとしております。」こう出ております。  いわゆるディスクロージャーでありますが、このディスクロージャーの一番大事なところの九項目というものが法務省令にゆだねられておるわけです。この前、学者の鴻さんと河本さんに来ていただいたときの話でもありましたように、法制審議会の中ではそれを法律事項にするという議論もあったところが、それがつぶれてしまった。しかもその九項目の中の(g)項というのが一番大事なのでありまするが、その点についても法務省令のしっかりとした内容というものがまだ明らかにされておらない。まだ未確定の状態に置かれておる。これではディスクロージャーの本質というものに対して果たして法務省当局、政府が熱意を持っておるかどうかということについて私は疑わざるを得ないのであります。  これは御案内のとおり、アメリカではたとえばニューヨーク州あるいは連邦におきましても、会社が政治献金をすることを禁止しておる。イギリスでは五十ポンド以上の場合にはそれをディスクロージャーする、こういうようなことが決まっておる。そのことから比べると、日本のディスクロージャー制度というものがいかに後退したものであるか、いかに未発達なものであるかということがおわかり願えると思うのでありまして、今後こういうディスクロージャーの制度については、私どもは皆さん方の行き方というものをしっかり見守りながらやっていきたいと思いますが、きわめて不完全である。こういうことから反対をせざるを得ない、こういうふうになるわけでございます。  その他いろいろ申し上げたいこともございまするが、討論でありまするし、討論の時間の制限はないわけですけれども、といって余り常識的な点でないといけませんので、この程度で終わりにするわけであります。私は常識人ですからこれで終わりにするわけでございますけれども、いま言ったような多くの欠陥を持っておる。これをこのまま承認しろ、こういうふうに言われても私どもは承認するわけにいかないのであります。そういうような事情から、本法案に対しては反対をせざるを得ないということを申し上げまして、私の討論を終わらせていただきます。
  45. 高鳥修

    ○高鳥委員長 安藤巖君。
  46. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、日本共産党を代表して、商法等の一部を改正する法律案並びに同法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案に対して、反対の討論をいたします。  まず第一に、株主総会の形骸化の点であります。  改正案は、商法第二百八十三条の改正で営業報告書を株主総会の承認事項から除外して報告事項にするとともに、株式会社監査等に関する商法の特例に関する法律で第十六条を新設して、会計監査人監査を要する大規模会社については、貸借対照表並びに損益計算書についても、会計監査人及び監査役のこれを適法とする意見があったときは、株主総会の承認を受けることを要しないとしています。  この点について政府法案趣旨説明では、「専門的かつ技術的な計算書類の内容の適否を一般の株主が判断することは困難である」ので、監査役等の適法意見があればよいと述べていますが、これは財界の言い分をそのまま代弁しているものと言わざるを得ません。すなわち、一九七九年六月の経団連意見書では、株主総会について「株主総会を決定機関としてよりは、報告的色彩の強いものとして性格づけていくべきである。」と述べ、さらに計算書類について「その適否の判断には技術的・専門的知識を必要とする。」また、「会計監査人および監査役の適法とする意見があった場合に、計算書類を取締役会において確定しうることは当然である。」と主張しているのであります。  右に見ましたように、今回の改正が、財界の要請を受けて株主総会を承認機関から報告機関に変質させようとしているのは明白であり、株主総会をますます形骸化させるものとなっており、反対であります。  第二に、株主にとって重要な取締役会の議事録の閲覧また謄写の制限についてでありますが、現行法では、株主及び債権者は営業時間内ならいつでも閲覧できるのに、改正案では、裁判所の許可を得なければならないと公開を制限しているのであります。これは今回の改正のねらいであったディスクロージャー、開示の拡充にも逆行するものであり、認めるわけにはまいりません。  第三は、単位未満株式の株主の共益権を剥奪する点であります。  改正案は、株式を原則として五万円とするとともに、既存会社について五万円を単位とする単位株制度を導入し、単位未満の株主については、利益配当請求権等の自益権は認めるが、議決権等の共益権は認めないとしています。これは零細株主から議決権を奪うものであり、株主平等の原則に反するものと言わなければなりません。今回の株式制度の改正は、株主の管理コストがかかり過ぎるためとしておりますが、現実には、法人と個人の株主比率が戦後三対七であったものが現在七対三に逆転していることに見られるように、株式の相互保有によって企業間の協調を促進し、企業集団の資本支配を推し進めようとする大企業の要請が背後にあり、総会の形骸化と相まって多くの大衆株主から議決権を奪い、大企業の専横を助長することになるものと言わざるを得ません。  第四に、監査制度についてであります。  この点では、確かに外形的には幾つかの改善点が見られます。しかしながら、改正案は当初の試案からも後退し、大企業社会的責任、不正防止を求める国民の要望からはほど遠いものであると指摘せざるを得ません。それは、法制審議会審議途中で法務省が発表した改正試案で社外監査役の導入が打ち出されていたにもかかわらず、経団連の強い反対で改正案から姿を消してしまった一事を見ても明らかであります。  第五に、ディスクロージャーの点についてもその内容が後退している点であります。  さきの試案が発表された当時、マスコミは一斉に大企業の不正防止に役立つものとして試案のディスクロージャー部分を高く評価しました。すなわち、試案では現行法で「営業報告書」となっているのを範囲を広げて「業務報告書」として、会社の財務及び財務以外の情報で貸借対照表または損益計算書で開示されないものを含ませ、なおかつ業務報告書並びに附属明細書の記載事項について法務省令で「会社が無償でした金銭、物品その他の財産上の利益の供与の明細」を定めるものとしていたのであります。  ところが、本委員会におけるこの点に関する法務省の答弁は、経団連の反対理由と全く同一の理由、すなわち企業機密とコスト・ベネフィットを述べて、試案の内容すら省令に定めることを約束しないという後退姿勢をとっているのであります。かくして、今回の商法改正の目玉となるはずであったディスクロージャーは、試案から後退するだけでなく、逆に前述のように重要な開示の場である総会での承認事項から除外したことによって現行法よりも後退し、むしろ改悪と言わねばなりません。  最後に、本改正案が中小企業に対して負担の増大を強いることになる点であります。  自己株の質受け制度の創設がその一つでありますが、大企業は取引先の中小企業に取得させた自己株を債権の担保としてみずから保有し、債権保全の手段とすることは明白であり、中小業者は従来行ってきた取引先大企業の株式を担保にして銀行等の融資を受ける道を閉ざされてしまうことになります。また、三カ月ごとの取締役会への業務報告の義務づけも、中小業者には過大な負担となる懸念があります。  一方では、新株引受権つき社債の創設が、今回の改正に当たって、その趣旨、目的からいっても全く関係ないものが財界の要求によって突如として盛り込まれるなど、大企業の資金集めのためのものと言わなければなりません。  以上述べてきましたように、本改正案は、株主総会の形骸化、ディスクロージャーの後退、大衆株主の権利剥奪、さらに大企業社会的責任の明確化、不正防止の点でも何ら実効を有しないことが明らかであります。  日本共産党は、すでに企業監視委員会日本型SECの設置など大全業の不正防止の政策を発表しているところでありますが、私は、少なくとも商法についても社外監査役制度の導入など真の監査制度の実質上の強化や大企業の反社会的独占価格についての原価公開、政治献金や使途不明金の明確化などを含むディスクロージャーの拡充がきわめて重要である点を指摘して、本法案に対する反対意見といたします。  なお、本法案に対し附帯決議案が提案されることになっておりますが、この案につきましては、賛成できる部分もありますが、一部に偏った内容もあり、本法案に反対する立場からとうてい賛成できない部分を含んでいるので、棄権せざるを得ないのであります。  以上で討論を終わります。
  47. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  48. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これより採決いたします。  まず、商法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  49. 高鳥修

    ○高鳥委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  50. 高鳥修

    ○高鳥委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  51. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、ただいま可決いたしました商法等の一部を改正する法律案に対し、横山利秋君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。横山利秋君。
  52. 横山利秋

    横山委員 私は、提出者を代表し、附帯決議の趣旨について御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   商法及び監査特例法は、株式会社についての基本的な骨格を定め、かつ、その公正な運営を図るものであることにかんがみ、今回の改正に伴い、政府は、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 法改正の趣旨及び内容を、社会とくに適用される株式会社に周知徹底し、法の円滑な施行を確保するとともに本法違反について適切に処置すること。  二 大会社社会的責任がますます強調されることにかんがみ、業務及び会計に関する情報については進んで公開するよう指導するとともに、更にこの点について法改正検討すること。  三 法改正に伴う省令中、営業報告書及び附属明細書については、法制審議会の答申とその審議内容を尊重し、社会的責任が明示できるよう十分な内容のものとすること。  四 単位株制度の導入が零細株主の利益を害し、ひいては株式市場における大衆投資の減退及び株主の法人化を招くこととならぬよう零細株主の権利保護について格段の配慮をすること。  五 中小株式会社における株主提案権が、かえつて経営の安定・発展に弊害を及ぼすことのないよう中小企業の実情に即した行政指導措置を講ずること。  六 多国籍企業の行動の適正化を図るため、商法上の諸制度の改善について検討すること。  七 公正なる会計監査人独立性監査の的確性を一層高めるための方策について積極的な検討を行うこと。  八 監査法人の国際的能力を高めるとともに、他方個人公認会計士の業務を確保するなど適切な指導を行うこと。  九 公認会計士と税理士の職務上及び制度上の調整を図り、相互の職域侵害が起こらぬようにするとともに、監査対象会社の範囲についても十分に検討すること。  十 会社にかかる犯罪の防止を徹底させるため、更に実効ある制度の検討をすすめるとともに、いわゆる総会屋については、あらゆる角度からその絶滅を図り、株主総会の民主的運営が行われるよう指導すること。  十一 政府が認可し、その監督下にある公益法人については、会計基準を法制化し、公認会計士の監査を義務づけることを検討すること。  十二 商法上の商業帳簿については、マイクロフィルムによる記録も正規の帳簿として取扱うことができるよう検討すること。  十三 今後の商法改正に当たっては、企業社会的責任企業の結合・合併・分割、中小企業に適切な規定の新設、株式相互保有等について、経済社会の進展に即応した検討を行うこと。  本案の趣旨については、すでに委員会の質疑の過程で明らかになっておりますので、省略いたします。  何とぞ本附帯決議案に御賛同あらんことをお願いいたします。
  53. 高鳥修

    ○高鳥委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決いたします。  本動議に賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  54. 高鳥修

    ○高鳥委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付するに決しました。  この際、奥野法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。奥野法務大臣
  55. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重して、善処いたしてまいりたいと思います。     —————————————
  56. 高鳥修

    ○高鳥委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 高鳥修

    ○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  58. 高鳥修

    ○高鳥委員長 午後一時再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  59. 高鳥修

    ○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所矢口事務総長、梅田総務局長、大西人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 高鳥修

    ○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  61. 高鳥修

    ○高鳥委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  62. 稲葉誠一

    稲葉委員 最初に、最高裁の方にお伺いをしたいわけですが、一連の裁判官の不祥事件が続いたわけです。それについての感想や何かはこの前の委員会でどなたかがお聞きになりましたので、それは別といたしまして、その後そういう問題が起きないように、最高裁当局としてはどういうふうに考えられて、どういう点を実行したいとお考えになっていらっしゃるかというところからお伺いしたいと思います。
  63. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 東京地方裁判所の民事二十部の不祥事件につきましては、先般稲葉委員からもお尋ねがございまして、その時点までのことについてお答え申し上げたところでございますが、谷合裁判官につきましては、四月十七日に最高裁長官から訴追請求があったわけでございます。板垣裁判官の関係につきましては、それまでも板垣裁判官から直接事情を聴取いたしておりますし、その後も呼びまして、いろいろな疑惑につきまして事情聴取を行ってきたところでございます。谷合裁判官の問題は、一応あの時点でわかった事実について訴追請求しておるわけでございますが、板垣裁判官の関係につきましてはいろいろと問題点がございまして、一生懸命事情聴取をやっておりますけれども、まだ十分に事実関係の全貌が把握できたというところまでは至っていないわけでございます。これにつきましてはいろいろ問題点考えられるわけでございますけれども、何と申しましてもまず事実関係を確定することが第一でございまして、その上で、二度とこういうことが起きないようにどうすればいいか、いま問題点としてはいろいろ考えておるところはございますけれども、まずもう少し事実関係を解明いたしました上で今後の施策を十分考えるようにしたい、こういう状況にあるわけでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉委員 私は、これらの方の個人的な問題についていま直接お伺いしているわけではなくて、全体を通じて今後の裁判官のあり方とか司法修習のあり方とか、そういうものをめぐって、一体どこをどういうふうにしたらいいかということについてどうお考えでしょうかとお聞きしているわけです。個別的なことは、これはまた次の段階でお聞きをしたいと思っているわけです。
  65. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいままでわかっている事実関係からいたしますと、先般も申し上げましたように、破産部で起きた事件でございまして、通常の対立する当事者の訴訟事件を扱う部ではなくて、破産事件という非訟事件を取り扱う部で起きたということでございます。そこで、そういう非訟事件の処理のあり方と申しますか、非訟事件の執務体制、そういうところに問題点があるということは一つ考えられるわけでございますし、それから、ただいまも御指摘になりましたように法曹養成の過程に問題がないかどうか、さらには裁判官の研修、修養の点について問題がないかどうかというようなことを検討しておるところでございます。それでは、具体的にいまどういうふうにするという施策が確定したのかというお問いでございますと、いまのところ検討中であるということを申し上げざるを得ないわけでございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉委員 確定しておるわけではございませんね、それはそう急に対策が決まるわけじゃありませんから。私もそのことをお聞きしておるわけじゃないです。  ちょっと質問を変えます。  井上という弁護士、この人が自衛隊の安全対策か何かの問題で国を相手にして次から次へと訴訟を起こしておりましたね。法務省の訟務局ではこのことはよく知っていたはずですね。この人がいわゆる相当なやり手であるということでマーク——マークと言うと言葉が悪いですが、しておったということは東京地裁の方ではわからなかったのでしょうか。これは相当著名な話じゃないでしょうか。何か自衛隊の安全の問題に関して次から次へと訴えを起こしていたでしょう。この方は国を相手にしてずいぶんやっていたのじゃないですか。
  67. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 井上弁護士が自衛隊に関する訴訟をやっておられたということは、私個人としてはちょっと漏れ聞いたことはございますけれども、どの程度やっておられるのか、どういう活動をしておられるのかということについては、そう詳細に知っておるわけでございません。ただ、そういう事件を取り扱っておられたことは、新聞報道等もございますし、聞いた記憶はございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉委員 法務省では相当著名だったらしいですよ。法務省の訟務局では相当著名でマークしておったのじゃないですか。各弁護士会でも大体一人か二人いるんですよ。ちょっと変わったというか常識外れと言うと言葉が悪いけれども、いろいろ問題になる人が必ずどこかにいるのですよ。この人がそういう関係の方であることは法務省としては知っていたはずですよ。これはだれから聞いたということは申し上げませんけれども、相当著名な人だったらしいですね、俗に言うやり手として。そのやり手というのは、危なっかしいという意味でのやり手として著名な人物だったことは法務省の中では知っていたはずなんですね、それが最高裁の方へ行っていたか行っていないかは別ですけれども。  そこで、事件として聞く前に、司法修習のあり方について何か非常に問題点があるというふうなことも言われましたね。これは私、修習生から間接に聞いたのですが、ことしの修習生、まだ入ったばかりですね。それが、研修所の中がこの事件があってからいろいろなことが極端に厳しくなったと言うのですね、前と比べるとという意味らしいのですが。そこで、司法修習の中で教養を高めるとかなんとかいったって、一部の人を呼んで聞いている程度でしょう。この前呼んだのは長島敦さんかな。この人はりっぱな人ですけれども、あとは小説家かなんか呼んだの。だれかを呼んで講話を聞くとかなんとかいう程度のことじゃないんですか。  いわゆる二回試験ということで、記録に基づいての試験をやるわけでしょう。そこで点数をつけられるということで、ことしは十一人ぐらい落ちたのですか、大分落ちましたね。そういうふうなこともあって、ただ技術的な修得ばかりを研修所で図っておるということで、さっぱり人間的な形成の余裕がないのですね。そういう点はちょっと問題ではないですか。どうなんですか。といって、学者や文芸家か何かの話を聞いたってどうということはないわけで、どうやって法曹人としての教養というか一般的なモラル、そういうものを高めていくかということについて、二年間の研修所の時代でどういうふうにしていくかということを考える必要があるのではないでしょうかね。そのことが直ちにどういうふうになるかという点を聞かれてもちょっと私もわかりませんけれども、そこのところをどういふうにするということなんでしょうか。
  69. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 稲葉委員ただいま御指摘のように、研修所は単にそういう技術的な教育だけじゃなくて、りっぱな法曹人を養成する場所であるということ、その点はまさに御指摘のとおりでございまして、司法研修所といたしましては、法曹としての幅広い教養を修得させる、法曹倫理の涵養にも十分意を用いておるわけではございますけれども、ただ一方、研修所は、現在の大学教育を前提といたしまして二年間の修習期間中に法律実務家として最低限度の法律技術、そういうものをも修得させなければならない、そういう役割りを担っておるわけでございまして、そこら辺をカリキュラムを組みます場合にどういうふうにバランスを考えるかということは、非常にむずかしい問題になるわけでございます。  現実にどういう科目をどういうふうにして教えていくかということにつきましては、御承知と存じますけれども、研修所では裁判官、検察官、弁護士、それぞれの御出身の教官がおられまして、そういう教官会議で決める、それも長い間のいままでの経験を踏まえまして、この辺が一番いいのではないかということでいままでやってきたわけでございます。ただ、最近のこういういろいろな不祥事件等にかんがみまして、研修所の教育にもやはり問題があるのではないか、そういう御批判もあるわけでございますので、改善すべき点はやはり改善していかなければいけないと考えますけれども、いま差し当たって具体的にどういうふうにすればいいのかということにつきましては、いまのところまだ暗中模索、そういう状況になっておるわけでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉委員 研修所の研修時代、二年間でしょうけれども、前は相当自由な雰囲気があった、こういうことが言われていますね。たとえば、大分古い話ですけれども、安倍能成さんの弟さんが、安倍恕さんかな、所長をやっておられましたよね。ところが、この人が自由主義的だということで、どこかに出張をしているときにやめさせちゃったのでしょう。どこかに出張しているときにやめさせたのですよ、事実上は。そういうふうに私は聞いているよ。それで、余り研修所のやり方がひど過ぎるといって修習生がみんな怒ってぼくらのところに来たことがあるもの。安倍能成さんがああいう人だったから、あの弟さんも非常に自由主義的な、そういうタイプだった。それから、かわって、ぐっと締めつけが厳しくなってきた、こういうことですね——こういうことですねというのは私が言うので、あなた方は認めないかもわからぬけれども、そういうことが盛んに言われているのですね。そこで、何かというと落第するぞと言っておどかすのですが、できないのが落第するのはあたりまえで、そんなに甘えることはないと私は思うのですよ。できないのが落第するのはしようがないと思うのです。  そこで、いま研修所長は安岡さんですか、安岡さんの談話の中に出ていたのは、マル・バツ式の第一次試験、あれはいつごろからできたのか知りませんけれども、とにかく志望者が多いから第一次試験マル・バツでやるのでしょうけれども、一体マルとかバツで問題の中からこれが正解だとかこれが何だとかということは、そういう法律家の養成の方法というのは理論的に考えたっておかしいじゃないか、法律家というのは物事を論理的に、しかもそれを客観的に広い視野から見て思考するということが大事なのであって、この問題のうちどれが当たっているかといって、同じような似たような問題があって、これにマルだとかなんとかつけて、それで一体法律家として適性であるかどうかということがわかるかどうかということですよ。  そんなことはわからないじゃないかという意見、前からそういう意見はあるのですね。私はどなたかに聞いたことがあるのだな。だから、あのマル・バツで非常にできる人が落っこっちゃうのです。余り考え過ぎるから落っこっちゃうわけですね。同じような問題がいっぱい出ているから、考え過ぎちゃって落っこっちゃうのでしょう。そしていいかげんなのは、鉛筆を立てて落っこったところへマルをつけておけなんというのもなきにしもあらず。それでなきゃ、二番なら二番に全部マルをつけておけば、とにかくある程度のパーセンテージで当たるからなんというのもありますしね。だから、思考力を養わないああいうやり方の試験制度というのは法律家としておかしいのじゃないのですかね。  それから、いままでは正解なしというのがあったでしょう。意地の悪い質問だな。国会の質問みたいなものだ。正解なしというのがあるのだ。そうでしょう。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 ABCDあって、どれが正解かといったって、正解がないのがあったでしょう、問題の中で。それを見つけるのに受験生は大変骨を折るわけですよ。いまは正解なしはなくなったのでしょう。なくなったのですよ。問題をつくるのも大変だろうと思いますけれども、ああいうふうにマルとかバツとかで、常に十把一からげにするような試験制度のやり方というのは、これはどうも考えなきゃいけないのじゃないでしょうかね、というふうに思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  71. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 司法試験そのものは、現在法務省が御所管になっておるところでございまして、裁判所としていま司法試験の現在のやり方がどうかということについてここで意見をすぐに申し上げるというのは、ちょっと差し控えさせていただきたいとは思いますけれども、一応やはりそういう御指摘のような御意見があるということは、私どもも承知しておるわけでございます。
  72. 稲葉誠一

    稲葉委員 といって、あれだけ三万も四万も来る人を、一次試験で論文なんかやってどうやって採点できるかといったら、それは大変なことですよね。なかなか採点できない。コンピューターでやる以外、第一次試験としてはないかもわかりませんけれども、だけれどもマルやバツで人間を、いろいろな問題をあれして、そこで法律家としての素質、資質というものを見分けるということはできないですよ。どうも私は反対なんですけれども、といって別な方法があるかと言われてもちょっと困るのですがね。それはそれとして、この問題は法曹教育全体の問題として今後いろいろな各方面意見を聞いて、そしてもっと論議を組み立てていかなきゃいけないのだと私は思います。  そこで、いま問題になりました板垣判事の問題ですが、これは何かもう四回ぐらいあれしているわけでしょう。それで相当な時間をかけていてまだ究明するところがあるというのは、これはよくわかりませんね。土地問題か何かがあるとかなんとか言うのだけれども、そうすると、いまはどういう段階になっておって、いつごろになると結論が出るということなんですか。これはみんな注目しているところですが、そこのところは一体どうなんですか。
  73. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 最高裁判所調査委員会で現在鋭意取り調べ中、主として私が事情聴取に当たっておるわけでございますけれども努力はいたしておりますが、何分能力不足もございまして、なかなか十分に事実の解明ができないという状況にあるわけでございます。  先般もちょっと申し上げましたけれども、板垣裁判官、供述がずっと完全に一貫しておるというものでもございませんし、説明が完全に合理的だというふうに納得できない面もございまして、いろいろ苦労しておるわけでございますが、事実関係といたしましても、最初にあらわれましたのはゴルフの問題でございましたけれども、その後やはり次々と、奥さん名義でたとえば三百万円という金が出ておりますこととか、せんべつの十万円というようなことも出ておりますし、それから、土地を購入いたしましてそれを担保に提供するというような事実も新たに出てまいりましたし、さらには、最近では本人名義の三百万円という融資と申しますか出資と申しますか、そういうものもあるというふうな事実も次々と出て、新たな事実が出てまいっておりまして、そういう新たな事実を取り調べますとともに、従前調べました、事情聴取をいたしました中での非常に不合理な点、矛盾した点等につきまして板垣本人だけから聞いておる、そういう状況にあるわけでございます。  何分、もちろん強制力があるというわけでもございませんし、完全に任意の形で、しかもいままでのところ御本人だけを聞いておる、関係者では勾留されてある方もありますから、そこら辺から聞くというわけにもまいりませんし、いろいろ隘路がありまして、努力はいたしておりますけれども、なかなか十分に事実の解明ができないという状況にあるわけでございます。なお、今後引き続いて努力はいたしたいと思っておりますが、いつごろになればめどがつくのかというお問いに対しましては、まことに恐縮でございますけれども、いまのところいつごろになったらということが明確に申し上げられる段階ではない。ただ、できるだけ早く正確な事実をつかみたい、そういうことで努力はしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉委員 まあ、その勾留中の方というのも出られたようですし、あなたの方で事情聴取されているのに、私どもが口をはさむわけでもございませんから、できるだけ早く、結論は別として、事実関係は事実関係としてやはりつかまないといけない、こういうふうに思うのですね。よく私どもが言われましたことは、結論を先に考えてしまうのですよ。結論を先に考えますと、たとえばこれはかわいそうだから勘弁してやろうと思うと、やはり調べが手抜きになるのですよ。調べは調べとしてちゃんとして、そして結論はまた結論として、そこで情なら情というものを加味して考えるということが必要だ、こういうふうに私は思うのですがね。いずれにしても、それ以上立ち入るわけにいきませんから、とにかく国民も注視していることですから、最高裁自身としての結論をできるだけ早く出していただきたい、こういうふうに考えるわけです。  そこで、法務省刑事局長がおられますのでお聞きをいたしたいのですが、きのうですか、この事件に関連して谷合判事補、井上弁護士らが処分保留で釈放になったということですが、それに至る経過ですね、素朴な疑問を考えますと、処分保留で釈放するなら何も逮捕しなくてもよかったのじゃないかというのが、一般の素人と言っては悪いけれども、一般の人の議論ですね。そこら辺のところを一体どういうふうに解明したらいいかということですね、一つは。それから、いかにもこれは何か見込み捜査であったというようなことが一部に言われていますね。そこら辺を法務省としてはどういうふうに考えるのか、こういうことですね。
  75. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いまお尋ねにございましたように、昨日、身柄の勾留期間が切れました三名の者につきまして、とりあえず釈放するという措置をとったわけでございます。これは稲葉委員に申し上げるまでもございませんけれども、逮捕、勾留しております場合に、期間が定まっておりますから、その期間内に起訴するということになりますれば勾留中起訴ということも考えられますけれども、そこのそういう結論になりません場合には、いわば期間切れということで釈放せざるを得ないということになるわけでございます。そういうことで釈放になったというふうに基本的には御理解をいただきたいわけでございます。  そこで、現段階ではそういうことでございますから、この事件の処分をどういうふうにするかということは全く白紙な状態で、白紙といいますか未確定な状態でございまして、決まっていないということでございます。したがいまして、その内容なり見通しにつきまして、また逆に釈放の理由につきまして申し上げるのも、この段階では適当ではないのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。まあ、報道等でいろいろな見通し等あるいは釈放の理由等についての想像を加えたような記事も出ておるわけでございますけれども、私ども立場といたしますと、いま申し上げましたようなことでございますから、捜査の内容なり現段階の状況なりについてはもうしばらく御猶予をいただきたいというふうに思うわけでございます。  それで、二点先ほど御指摘がございまして、逮捕しなくてもよかったのじゃないかということでございますけれども、やはり結果的に言えばそういう言い方もあるいはあるのかもしれませんけれども、その時点その時点で捜査は流動的に行われるわけでございますし、詳しく申し上げるのは適当ではございませんけれども、一応在宅で調べを進めておった、しかし、なかなか調べが進行しない、つまり関係者がいろいろあるわけでございますので、それが連絡がとり得るような客観的な状況のもとで捜査をするということが、事案の実態を明らかにする上において適当でないということで、身柄の拘束という措置に出たわけでございます。  その時点で新聞報道等でも、いろいろと見込み的なことといいますか、疑惑的なことといいますか、逮捕するに至ったのはこういう点があるからではないかというようなことも言われておったわけでございます。それをあながち否定するわけではございませんけれども、やはり捜査は、いま申しましたように、その時点時点で合理的な疑いがあるということを根拠にいたしまして進めていくわけでございます。そのとおりになる場合もございますし、そのとおりにならない場合もあるわけでございまして、それを結果的に見て、見込み違いじゃないかと言われれば、それもまたやむを得ないというか、御批判を受けることになるかと思いますけれども、やはりその時点その時点で関係証拠というかに基づきまして合理的な判断をしながら、その場合場合に応じた必要な措置をとってきたということしか申し上げられないんじゃないかというふうに思います。
  76. 稲葉誠一

    稲葉委員 普通は、証拠がそろって起訴価値があれば、あたりまえの話ですけれども、二十日間の勾留でしょう、これは。勾留だから、そのときは一応身柄を入れて起訴するというのが普通でしょう。
  77. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどのお答えの中でも申したことでございますが、稲葉委員に改めて申し上げるまでもございませんけれども、身柄を拘束して二十日間捜査を進めた場合にどういう方法があるかと申しますと、いわば三つぐらいに分けられるのではないかと思います。一つは、そのまま、身柄の勾留中のままで起訴するという場合。それから、大きく分ければ釈放する場合。釈放する場合にも、釈放して即日なりあるいは翌日なりというくらいに接近した時点で起訴する場合もございます。また、補充捜査を要するということで、若干の期間をとりました後で起訴する場合もございますし、また反面、その直後なりあるいは何日かあるいは相当期間たった後で、いろいろな総合判断をいたしまして不起訴にする場合もある。こういう三つに分かれるんじゃないかと思うわけでございます。  そういうことでございまして、本件の場合には、少なくともきのうの時点で第一の方法といいますか、勾留中のまま起訴するという結論には至らなかった。そういう結論をとるにはなお慎重に検討すべき点があるということで、その第一の方はとらなかった。したがって、第二、第三のいずれかになるわけでございますけれども、それが未確定である、こういうふうに御理解いただきたいわけでございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉委員 話はよくわかりました。そのとおりですね。私も、逮捕して、そして勾留を延長して、それで勾留延長で再延長するでしょう。再延長で最終日の二日、三日前に起訴できないというようなときは、これは実にいやなものですよ。こんないやなものはないわね。自分自身の腕がないというふうにとられるし、上からは怒られるし、まあ実にそのときの気持ちというのはいやなものですよね。ぼくもその経験があるから、ぼくは腕がなかったものだからずいぶんそういうのをやって怒られてばかりいたのですが、いろいろ捜査というのはむずかしいですからね、そう簡単にいくものではありません。それはよくわかりますがね。  ただ、あれですか、証拠隠滅ということでやったときに、何かゴルフセットの入れかえがあるということ、そのことが証拠隠滅の一つの理由だ、こういうふうに思って逮捕したんだけれども、結局調べてみたらその事実はなかったんだ、こういうことになったということが、結論的には大きなポイントになるわけですか。
  79. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、そういうようなことが新聞報道等でも指摘されておるわけでございます。しかし、いまの立場で、そういうことがあったとかなかったとか、あるいはそういうことが客観的にどうであったかと言うのは、いまの時点ではちょっとお許しいただきたいというふうに思います。
  80. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは率直に言って、こういう事件というのはなかなかむずかしいですよね。うまくいけばあれされるし、うまくいかなかったときには非難を受ける。こういうのはある程度宿命でいたし方がないことですからね。この問題については私はこれ以上お聞きをしないわけです。具体的にどうなるかということは、これは検察庁が決めることですからね。  そこで、今度は前に戻って、全体を含めて、これは事務総長にお伺いしたらいいのか、あるいは人事局長か法務省刑事局長かわかりませんが、この破産部の書記官と弁護士との間の癒着関係で、常日ごろ——常日ごろじゃない、盆暮れとかなんとかに何かいろいろ品物をもらっておったんじゃないか、贈り物を受けておったのではないかというふうなことが一部伝えられていますね。そういう事実は一体あるのですか、ないのですか。どの程度の悪意があったとかなんとかということは別ですよ。そういう事実があるのかないのかということです。ことに民事二十部の書記官の場合にはどうなんでしょうか。
  81. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 二十部の書記官、事務官の関係につきまして、一部新聞等で、たとえば年末等における贈答の事実が報道されておるわけでございます。この関係につきましては、現在私どもで直接書記官を調べておるということはございませんけれども、東京地方裁判所の方で、書記官からある程度の事情聴取を行っておるわけでございます。詳しいことはちょっとここでは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、そういう事実が全くないわけではないという程度のことを、ここで申し上げさせていただきたいと思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉委員 田舎の裁判所などに行きますと、支部あるいは乙号支部とか、そこの弁護士の人が、いろいろなことで書記官に世話になるということで、盆暮れに品物を贈ったりする例はあるようです。それは日常の儀礼でしょうからどうこうということはないと思います。  いずれにいたしましても、最高裁の事務総長に最終的にお尋ねをするわけですが、こうした事件が次から次へ、ここのところ急に起きてきたわけですね。一体どこに原因があるのでしょうか。どうもよくわからないですね。いままで、裁判官というのは神聖な人であって、そういうことはないとみんな思っていたわけです。私らは、職業的な弁護士としてはそう思っていないのですよ。酔っぱらって、電車の中で酒飲んで暴れている裁判官もいるし、それから酒を飲むと酒乱みたいになる裁判官もいるし、乱暴な口をきいて依頼者をおどかすような裁判官もいるし、とにかく私は裁判官をそんな神様のように思っていないのですよ。普通の人間だと思っているのですが、率直に言って、相当いろいろなのがいます。いろいろなのがいて、それでバラエティーがあって、かえって民主主義なのかわかりませんけれども、それは別として、そういう事件が次から次へ起こる原因はどこにあるのか、それに対して最高裁全体としてどういうふうに考えているのか、それから今後どうするのか、そこら辺のところをまとめて事務総長からお答え願って、内部のことですから、質問をこの程度で取りやめたいと私は思うのですが、率直に言いまして、まだまだいろいろな問題があるのですよ。これはわれわれが口をはさむべきことじゃございませんから、私の知っていることもありますけれども、それはここで言いませんが、そういうことについてまとめて事務総長からお答え願って、終わりにしたいと思います。
  83. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 非常にむずかしい問題でございまして、お答えになりますかどうか、私としても自信がございませんが、現在約三千名の裁判官がおるわけでございまして、私ども、各判事補、判事、簡易裁判所の判事、それぞれの方を選ぶにつきましては、それなりに私ども考えておりますりっぱな人格の方ということで、私どもでできる範囲のいろいろな考慮をいたしまして、御希望の方の中から最も好ましい方を選ぶというふうにいたしておるつもりでございます。よく言われますけれども、何か一方に偏ったような感じで選んでおるのではないかというようなお話もないわけではございませんが、決してそのようなつもりではございませんで、むしろ非常な頭のやわらかい、いろいろな考え方のできる方であって、しかも将来性のある方、一般の社会人としても十分通用できるりっぱな方ということで選んでおるつもりでございます。  研修所の話が先ほど出ましたけれども、研修所は職業の教育をいたさなければいけないわけでございますので、特殊な職業に伴う専門的、技術的な教育、これはある程度はせざるを得ないわけでございますが、実はそれで事足れりとは考えていないわけでございまして、それを出発点といたしまして、社会人として将来伸びていくりっぱな方ということをむしろメーンの問題として裁判官を採用し、任命をお願いしてきたというのが偽らざるところでございます。現にこれまで御指摘の、個々にいろいろな方がときにおありになったかとは思いますけれども、何分にも数が多うございますので、非常にお酒が好きだとか、いろいろな方もないわけではございませんが、それはそれといたしましても、全体的に見ますと、世間から指弾されるような、あるいは非難をこうむるような方は決していないものとこれまで確信をいたしておったわけでございます。  ところが、最近相次いで各職種の裁判官の中に、それぞれ異なった方の、一般的に非行と言っていいかどうかわかりませんが、そういった好ましからざる行状といったようなものが出てまいりまして、実は私ども、これを裁判官全体像の中でどのような位置づけをもってとらえるかということに苦慮しておるのが偽らざるところでございます。一人一人をとってみますと、それなりにこれは特殊の例であるとか、これはある程度そういうこともあり得るかなというような、たとえばお酒が好きで、仕事をしておるときはまじめに仕事をしておるけれども、一たん余暇でお酒を飲むとやや飲み過ぎと申しますか、節度がなくなって周囲の方に御迷惑をかけるとか、そういったようなことはそれはそれなりに理解できないではないわけでございますが、今回の問題は、そういった個人の問題に帰するだけではどうも全体の位置づけができないのではないかと考えております。  長官も憲法週間の公式記者会見の一問一答の中でちょっとその点に触れておいでになりますが、裁判所が対質的な構造をとっておる訴訟事件にそういった問題が発生したのではなくて、いわゆる非訟事件の処理の過程においてこういった問題が発生した。もちろん裁判所だけの問題ではございませんで、相手方のある問題ではございますけれども、いずれにいたしましても、人が悪いことをしているから自分も悪いことをしてもいいということには決してならないわけでございます。人がどうであろうと、裁判官たる者はそれに乗ってはいけないわけでございまして、そういった心の緩みといったようなものが一体どこから出てきたのか。  これはたまたま非訟事件に出てきておることではございますけれども、一般的に戦後三十年、今日の憲法下においてある程度人の心がと申しますか、裁判官全体の心にやや緩みができてきたのではないだろうか。そしてそういったものが機構的に弱い面、あるいは仕事の性質上弱い面にあらわれてきたのではなかろうか、そういったとらえ方ができるとするならば、それに対する対策も、またその面に重点を置きました対策を立てなければいけないということに相なるのではなかろうかと考えております。  いずれにいたしましても、まだ全容の解明ができておりませんので、ここで確定的なことを申し上げる問題ではございませんが、ただ一言、少し先走ることになるかもしれませんが、個々の裁判官にこのような行動をとれといったような形で、一つ一つの身の処し方と申しますか、日常生活について厳しく模範的な姿勢を例示する、そういったようなやり方で物事を処理したいとは毛頭考えておりません。むしろそれよりも、現在の日本国の中において裁判官の占めておる職責の重要性というものをどのように裁判官一般が理解し、そういう理解の中からおのずと出てくる節度というものをどのように自覚していくかというような方向でもって事態の収束ということを考えていきたいというふうに考えております。  何分にもまだ事実解明の途中でございますので、それ以上の細かな措置等につきましては改めて検討をさせていただきたい、このように考えております。
  84. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、もう一つお聞きをいたしたいのは、今度は警察の方の関係なんですが、これもまた事実関係がよくわからないですね。  神奈川県警の高田という警部ですか、これはいまは多摩署の外勤課長になっているのですかね。この方をめぐる覚せい剤の問題だとかなんとかいろいろ出ておりますね。これはいままで調べた範囲で、一体その真相はどうなのかということをまず最初にお聞かせを願いたいと思います。  それから、神奈川県警では、何かほかにも自転車がどうだとか、万引きがあったとかないとか言われておりますけれども、そういう点も含めて、この事件については特に詳しく御説明を願いたいと思います。
  85. 椿原正博

    ○椿原説明員 お答えいたします。  例の問題の、現在多摩警察署の外勤課長高田安信という警部にかかわる疑惑でございますが、この事案は、被害者の女性、三十七歳でございますけれども、この方から去る四月初めに県警の監察官室の方へ訴えが出されたわけであります。四点ございますが、覚せい剤につきましては担当の保安課長が参っておりますので、詳しくはそちらに譲ることにいたしますが、四点ほど中心に訴えてきたわけであります。  その一点目というのは、高田警部から覚せい剤をその女性が初めて注射をさせられた。以後覚せい剤の常習者となりまして、高田警部から覚せい剤を譲り受けていた。そして、山手警察署にこの女性が覚せい剤で現行犯逮捕された事実があるわけでありますが、そのとき押収された覚せい剤は高田警部から譲り受けたものであるというのが一点目の訴えであります。これは被害者の女性の言うままでございます。  二点目は、高田警部に店のいわゆる顧問になってもらいまして、いろいろ相談に乗っていただいたとして、顧問料として謝礼を出しておったというのが二点目であります。  三点目は、高田警部と藤沢警察署在勤当時の部下職員とに不倫な関係があった、それの手助けをこの女性がしたというのが三点であります。  四点目は、覚せい剤を施用していたころ、高田警部は訴え人の取引先金融機関の職員とぐるになって、金を横領したという点などが主たるものであります。  覚せい剤につきましては譲るといたしまして、警察のいままでの調査いたしました最重点は、覚せい剤の密売等の事実があるのかどうかという点を中心に調査いたしまして、その他の面につきましては現在継続調査中でございます。  現在までの状況を申し上げますと、覚せい剤は後に譲りまして、店の問題で顧問になってもらって謝礼を出したという点についてであります。そもそも訴えた人との関係でございますが、この訴えた人は、以前に職業安定法違反で逮捕されまして、釈放になった数日後に、それをきっかけに知り合っているわけであります。そういうことから親しくなりまして、五十四年の一月ごろから頻繁に出入りするという状況になったわけであります。その間、訴えた人の経営する店のいろいろな問題につきまして相談に乗ってもらって、アドバイスも与えたということであります。いわゆる顧問らしき行為は事実としてあったわけであります。この間、高田警部というものは、報道もされましたけれども、時価九万円相当の革製のロングコートを受け取ったとかあるいは酒食の提供を受けたとか、タクシー代の支払いなどを受けた事実はある程度わかったわけでございますが、顧問料名下の現金の授受につきましては、その裏づけ資料が現在の段階では得られておりませんので、現在調査中でございます。  三点目の、高田警部と元部下女子職員との関係についてでありますが、高田警部というのは、以前藤沢警察署の防犯課保安係長をしていたわけであります。その在勤中の昭和五十三年八月ごろ、当時同じ防犯課に勤務しておりました女子職員と関係ができまして、自来、本年の三月まで断続的に続いておったという事実はございます。  それから最後の、金融機関の職員とぐるになって訴えた人の金を横領したという点でありますが、この事実はございません。と申しますのは、高田警部が訴えた人の依頼に基づきまして、その女の方が金融機関と交渉する場に立ち会った事実はありますが、行員と共謀して横領行為をしたという事実は、現在調査してもございません。  現在のところ、覚せい剤を除きました内容は、そういう四点が中心になりましてのことでございます。  それから、先生から御指摘がありました神奈川県下の不祥事件でありますが、五十五年以降で神奈川県で不祥事件がありまして警察庁に報告のありました四件について簡単に申し述べますが、内容は窃盗事件二件、拳銃不法使用事件が一件、それから飲酒の上、女性に抱きついたという事件が一件ございます。以上の四件であります。
  86. 内田文夫

    ○内田説明員 ただいま人事課長から話がありましたその訴えの内容の四点のうち、一番大きな問題であります覚せい剤をこの訴えた女性に高田警部が初めて注射をしたとか、あるいは彼がその女性に対して覚せい剤を密売したという点に関してでございますが、何といいましても、この点につきましては、事柄の重大性にかんがみまして、この一連の問題の中でも最も重点を置きましてその真偽を確かめるためのいろいろな調査をやってまいってきておるわけでございます。特に高田警部及びその訴え人からの事情聴取だとかあるいは裏づけの調査、それから、高田警部が現在までに手がけました覚せい剤の捜査における覚せい剤の密売ルートだとか、訴え人が覚せい剤の常用者と思われるところから、その女性が過去に覚せい剤を手に入れたと思われる覚せい剤の密売ルート、そのような関係者の場所的、時間的な行動等、徹底的に調査をしたところでございます。  その結果でございますけれども、まず第一に、高田警部はこの訴えの女性に対して覚せい剤を注射したり売り渡したことはないと強く否定をしております。それから、この訴え人が五十四年の初めに高田警部と知り合ってから覚せい剤の注射をされた、こう言っておるわけでございますけれども、現在までの調査によりまして、それより大分以前からこの女性が覚せい剤の密売ルートから覚せい剤を買っていたということにつきまして、複数の人の証言を得ているところでございます。それから、訴え人が覚せい剤所持違反として五十五年十月に山手警察署に逮捕されておるわけでございますが、そのときに押収されました覚せい剤が高田警部から譲り受けたものだとその女性は言っておりますけれども、これにつきましても、この女性が逮捕される二日ぐらい前に彼女に覚せい剤を売ったという人物及びそのルートを確認いたしたところでございます。さらに、その覚せい剤の密売ルートを非常に広範囲にわたりましていろいろ詳細に調査してみましても、高田警部が覚せい剤の密売をしていたという情報は得られていないということでございます。  以上のようなことから、高田警部が新聞等に出ておりましたような覚せい剤を譲渡、密売していたというような事実はなかった、こういうように存じておるところでございます。
  87. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま高田警部は密売しているという言葉が出ましたね。密売という意味にもよるかもわかりませんが、このたとえばA子ならA子という女の人に、Sですか、何とかという人を覚せい剤でつかまえるためのおとりのようなかっこうで覚せい剤を渡したという事実はあるのですかないのですか。そして、A子というのは捜査のいわゆる協力者のようなかっこうになっておったということはあるのですか。
  88. 内田文夫

    ○内田説明員 この点につきましては、高田警部がかつて、このA子ですかを協力者として使いまして、それによりまして覚せい剤の事犯を検挙したことがございます。そしてこの際に、覚せい剤の授受行為といいますか、女性の方がいわゆるサンプルというかそういうものを持ってきて、そしてそれをまた返した、こういう事実がございますけれども、これにつきましては、上司の了解を得た上で捜査上の必要から行ったものでありまして、神奈川県警の調査によりましても何ら違法な点はなかった、こういうことでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはいつごろのことです。そしてA子にどのくらいの覚せい剤を渡したのか。これは俗に言うおとり捜査でしょう。あへん法か何かでは認められたとか認められてないとかいう議論がありますが、それは別として、そのSならSという人にA子が覚せい剤を渡したのですか。どうもよくわからぬが、渡して、そのSが使っているところを逮捕したということですか。それで、Sという人はどういう処分をいつごろ受けたのですか。そこら辺もよくわからないのですね。
  90. 内田文夫

    ○内田説明員 具体的なその時期だとか、それによって検挙された者がどういう処分を受けたかというようなことになりますと、協力者を保護するという面からもいろいろ問題がございますので、その点の答弁は差し控えさせていただきたいわけでございます。  この過程におきまして持ってきた量というのは、ごくわずかな大体〇・〇二グラムとか〇・〇三グラムとかその程度のいわゆる一回分のものだ、こういうように聞いておりますが、それを持ってまいりまして、A子はこれを返さないと自分に大変危険が及ぶというあれがありまして、やむを得ず返した、こういうように承知しております。
  91. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞いているのは、その高田警部というのが、いわゆるおとり捜査でしょう、それが違法であるか違法でないかはいま別として、そのA子という女の人にその覚せい剤を渡したのでしょう。そしてA子はそのSならSという人にその覚せい剤を渡したのでしょう。そのSというのが、所持していたのか自己注射か知らぬけれども、逮捕か何かされて処分を受けていることは間違いないのでしょう。それをまず私が聞いているのと、それから、いま言った返したというのはよくわからないのですが、その渡したものそのものが全部ストレートにSならSという人に行っているのか、そうでなくて、一部分はA子が持っていて、それを高田警部に後から返した、こういうことなんですか。どうもそこら辺、ごちゃごちゃしちゃっていてはっきりしないのですけれども、どういうことなんですか、それは。
  92. 内田文夫

    ○内田説明員 いわゆるおとり捜査という言葉の概念にはどうもはっきりしないあれがあるわけでありますが、お尋ねのいわゆるおとり捜査というものが、犯意のない者に犯意を生じさせるというようなことであるならば、そういう捜査というものは警察としては全くいたしておらないわけでございます。この場合、後でその犯人になった者が所持しているのを確認をするということで、ごくわずかなサンプルでございますけれども、それを確認をして、またそのA子を通じて返した、こういうことでございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉委員 ちょっとよくわからないのですが、私の聞いているのは、そうすると、そのSというのは処分されたのですかされないのですか、まずそれを一つ聞きましょう。どうなったのです。おとり捜査が違法であるとか違法でないとかということをいまここで論議しても始まりませんからそれはしませんから、SならSという人は一体処分されたのかされてないのか、されたならどうなったのかということを聞いているのです。  それから、高田警部から渡ったものを、片っ方は密売を受けたと言うし、片っ方は、いや署長の協力者で渡したんだから密売ではないと言うのでしょうけれども、それが余ったかどうかして高田警部へまた返したのですかと聞いているのです。そこら辺のところがよくわからないのですがね。
  94. 内田文夫

    ○内田説明員 相手、いま先生がSとおっしゃっているそれは覚せい剤の所持で処分を受けております。そしてその物については、いわゆるサンプルということで本当に一袋でございまして、その一部を云々というようなそういう問題ではございません。一回分の一袋入っていたものをそのまま返しているわけでございます。
  95. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこでお聞きしますと、覚せい剤の捜査の場合に協力者というもののリストか何かあるでしょうけれども、それは発表するといろいろ危害を加えられるからそれはいいですよ。そうすると、このA子という人はいつから協力者になったの。高田警部の協力者なのか警察の協力者なのかよくわからぬけれども、いつから協力者になったのですか。  それから、返ってきたサンプルというのがどこかへ行っちゃったというじゃないですか。なくなっちゃったとかいう話がある。どこへしまっていたかと聞かれても、何だかわかったようなわからないようなことを答えているというようなことが出ているのですがね。  それから、よくわかりませんが、何かA子という人から高田警部が金をもらっておった、何に関連してかはっきりしないけれども、顧問料か何か知らぬけれども——あるいはおとり料、あるいは協力者なら協力者としての報酬は出るわけでしょう。それは報償費か何かでちゃんと捜査費に出ているわけですね。A子に対して警察の方から報償費が出ているのですか。また、逆にA子の方から高田警部が別な形で、名目は別として金をもらっている、こういう事実はあるのですか、ないのですか。いろいろあるけれども、問題はわかりますか。
  96. 内田文夫

    ○内田説明員 協力者とその時期ということでございますけれども、それは明確にいつから、こういうあれではございませんけれども、五十三年の暮れでございますか、高田警部と彼女がそもそも知り合ったといいますか面識ができたのが、五十三年の暮れに職安法の違反の事件で検挙された、こういうあれがあるわけでございます。そして、五十四年の初めごろから彼女とおつき合いが始まった、こういうようでございまして、そのころから覚せい剤についてのいわば協力者になった、こういうことでございます。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 稲葉誠一

    稲葉委員 では、協力者になって、高田警部はA子ならA子という女の人に一体何回ぐらい覚せい剤を渡しているのですか。あるいは協力者というのだから、高田警部の協力者じゃないでしょう。警察の協力者なのでしょう。そうしたら、ほかの人からも覚せい剤をもらっているのじゃないのですか。もらって、そして第三者のところに渡して、そしてそれを逮捕するという行き方をとっていたのですか。どうも協力者というのは意味がはっきりしないけれども、具体的に何回くらい高田警部からその人に覚せい剤が行っているのですか。協力者なら協力費を払っているわけですね。報償費を払っているわけだ。そこはどうなっているのですか。
  98. 内田文夫

    ○内田説明員 協力者といたしまして物の授受があったのは一回だけでございます。この事件としてはこの一回だけでございます。  私の説明が十分でなかったかもしれませんけれども、それも高田警部の持っていた覚せい剤を渡したということでなしに、彼女がBならBという者からサンプルとして持ってきた覚せい剤を高田警部に見せて、確認を得て、ただ、私は返さなければ身に危険が及ぶということで、それで返してということでございます。本来的に、そもそもそのBが持っていた覚せい剤でございます。結局、高田警部の方から戻っていったということになりますのは、そういうものでございます。  それから、協力者としてのあれについては、先ほども申しましたように、これはただ一回だけでございまして、特別な謝礼をあれしたという話は聞いておりません。  それから、先ほど先生もお話のありました逆に高田警部が彼女から何かもらっているのではないかということにつきましては、さきに人事課長から話がありましたように、顧問云々というようなあれもありまして、これは私の方の直接の関係ではございませんけれども、何かタクシー代とかそういうようなことで幾らか金銭の授受があったというように聞いております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまあなたに聞くのは、それでは、覚せい剤を返したというのでしょう。返したというのは、A子が高田警部に返したという意味ですか。どうもはっきりわからぬのですが、返したという意味なら、その覚せい剤はどこに行ってしまったのですか。いろいろなものを見ると、何か覚せい剤をどこかにしまっておいたのだけれども、どこに行ったかわからなくなっちゃったというようなことを言っていますね。どうもそこら辺のところがはっきりしないのですね。  それから、人事課長には、いま言った金をもらったというのは、あなたの方では何かはっきりした金額を言わないけれども、一体幾らもらったということがわかっているのですか。この二つ。
  100. 内田文夫

    ○内田説明員 まず、サンプルの物のあれについてもう一遍よく御説明いたしますと、Bという後に検挙された者がおりまして、それが本来覚せい剤を持っていたわけでございます。それを本人が所持しておりまして、その中の一部をサンプルとして彼女に渡したということになるわけでございますが、その彼女が、Bが覚せい剤を持っている、あれは密売をやっているということで、私、サンプルをもらったのだ、こういうものだということで、いわば高田警部のところに持ってきた、こういうことになるわけでございまして、それで高田警部は……(稲葉委員「ちょっと待って。いわばじゃないでしょうが、持ってきたのでしょうが」と呼ぶ)はい。(稲葉委員「何でいわばなんてつけるのですか」と呼ぶ)失礼しました。それで、それにつきましては組織としての捜査に乗せまして、一々ちゃんと上司に報告をいたしまして、署で保管をいたしております。  そして彼女が、返さないと自分の身に危険が及ぶということで、ぜひ返してくれ、こういうことでございまして、それを彼女に返して、その返すに際しては、高田警部は彼女に、それは間違いなくBならBのところにちゃんと返しなさいよ、おまえ持っていてはいけないよ、こういうことは言っているわけでございます。そしてその後、高田警部の言によりますと、そのA子ですか、それから、私は返しましたということを言っておった、こういうことでございます。  それから、その後にこれを事件といたしまして、いわばBのところを捜索をしたわけでございますが、そのときに相当量の覚せい剤を押収いたしておりますが、これはやはり同じようなビニールの袋に入ったのがいろいろ数もありまして、実際にこれがこうだったのかどうだと、現実問題としてそれははっきりと申し上げるあれではちょっとないと思うのであります。
  101. 稲葉誠一

    稲葉委員 それで、一たん高田警部が預かったときに、署のものとして保管していたというのでしょう。ちゃんとそれは保管台帳に載っているのですか。どこへ保管していたということになって、保管台帳か何かに載っているのか。それが何か載っていないようなふうに、きのうだか金原本部長以下の記者会見か何か、そのとき答えがあっちへ行ったりこっちへ行ったりしておったというふうに出ているわけです。だからそれを確かめるわけです。ひとつそれはどうなっているのですか。本当に預かっていて、ちゃんと台帳に載っけていたのですか。載っけないで個人的にどこかに入れておいたということなんですか。そこがどうもよくわからぬな。机の中に置いたとかどこかにしまっておいたとか、ああだこうだ、そのときによって変わっているようなことが新聞に皆出ているが、本当のことはどうなんです。
  102. 内田文夫

    ○内田説明員 協力者が物を持ってきた場合には、通常の場合ですと、領置するなりそういう手続を踏んで、きちっと台帳によって後処理されるのが通常であることは間違いないわけでございますが、今回のこのケースについては、こういう報告を受けております。本人は初めから、これは返してもらわなければいかぬ、返してもらわなければ私があれなので、一たんお渡しして見てもらうけれどもすぐに返してくれ、こういうあれで、いわゆる返すという前提で警察としても扱っておるということから、そういう正規の台帳には載せておらない、しかし、ちゃんと上司の指示を受けて警察署に保管してあった、それから返すときもちゃんと上司の了承を得て返した、こういうように報告を聞いております。
  103. 稲葉誠一

    稲葉委員 人事課長、どうですか。
  104. 椿原正博

    ○椿原説明員 お答えいたしますが、全体としては現在調査中でございます。タクシー代が四、五万とか、食事代を支払われたという事実は明らかになっておりますが、全貌がわかっておりませんので、総額で幾らというのは、女の方の訴えた人が言っているのとまだ食い違いがございます。裏づけをとっている途中でございますので、その程度で御容赦願いたいと思います。
  105. 稲葉誠一

    稲葉委員 まだ結論が十分出ていない。いまのお話を聞きますと、一つは、捜査がきわめて甘いという感じを受けますね。これは警察官が身内の捜査をやっているのだから、非常に甘いという印象を一つ持つ。  それから二つ目は、これはいわゆる俗に言うおとり捜査だな。このおとり捜査はちょっとひど過ぎる。そしてBなりSというのは、SとBは同じ人間かどうか知らないけれども、SBならSBカレーになってしまうけれども、それはどうだか知らぬけれども、この警察のやり方はどうもおかしいね。警察はみんなどこでもこんなことをやっているのですか。これはちょっとおかしいぞ。それは特定の場合に、アヘンの場合なんかでおとり捜査が許される場合はありますよ。なきにしもあらずだけれども、それはちゃんと法文にもあるし、きわめて限定された場合のあれであって、こういうふうにやられたのでは危なくてしようがないですね。ちょっとこれを預かっておいてくれと言われて預かっていたら、後から来て、つかまって、おまえ、覚せい剤を所持していたじゃないかなんてやられたのでは、これは危なくてしようがないですよ。とにかくわけがわからぬですね。  それから、金をもらったというのはタクシー代四、五万といったって、タクシー代四、五万というのは警部が認めている金額でしょう。タクシー代四、五万というと一回、二回じゃないでしょう。一回で四、五万なんて、タクシーかかりっこないですよ。これは神奈川県のどこだか、どこだと言ったってわからないけれども、どんなにかかったって片道二千円かかることないでしょう。何回も何回もこういうことがあるんじゃないですか。何かもっと深い関係がなければ、四、五万のタクシー代が渡されるということ、恐らく女の人はもっと多く言っているんだと思いますよ、よく知らぬけれども。ちょっとこの事件はおかしい。捜査が非常に甘い。この捜査については手抜きが非常に行われている。  いま言った、返してくれと言ったから、預かっておいて台帳に載せなかったというのでしょう。返してくれと言ったって、すぐ返してくれというんじゃないでしょう。後で返してくれと言ったんでしょう。預けるときに返してくれと言ったんですか。そんなことないよ。預けたときと返してくれと言ってきたときとの間には時間的な経過があるはずですよ。その間、どこへどうやって預かっておいたのか。ポケットに入れておいたのか。ポケットへ入れる人もないけれども、机の引き出しに入れておいたとか、あっちへ入れておいたとかこっちへ入れておいたとか、きのう突っ込まれてはっきりしなかったらしいけれども、どうも何か、全体を見て捜査が甘いですね。  懲戒免にしてこれで終わりにしちゃおうというのはいかぬですよ心事実関係は事実関係として、しっかり調べなさいよ。どうですか。懲戒免にすればもうそれで終わりだ。これはさっき第三の問題が出ましたけれども、こんなことを問題にするのじゃないですよ。どこかの警察にいたときどうだこうだとか、そんなことじゃなくて、この事実が事実でないかあるかということを、覚せい剤の問題を中心にして、これは警察で内部でやらざるを得ないけれども、監察官室へ移すとかなんとかという形で、もっと徹底的に明らかにしなければいけませんよ。世人は非常に捜査が甘いという印象を受けますよ。非常に甘い。手抜きが行われている。そのうちに懲戒免にしてそれで終わりにしてしまうという印象を与えてはいけませんね。  しかも、それにしても、事件があって、それで協力関係ができた。一回だけだと言っているが、一回だけでタクシー四、五万使えるわけないでしょう。そんなばかな話はないでしょう。飯を食ったとか言っているんだけれども——きょうはもう時間がないからいいですけれども、これはどこか、どうせ地行の方で聞かれますよ。だからもう少しよく調べておきなさいよ。こういうようなことが公然と行われるということは、ぼくはどうも納得できないですね。もっとよく事実を、事実は事実ですよ、事実は事実として究明しなさいよ。結果は結果でまた別ですよ。そういう点が、内部的な事情もあって非常に手ぬるいですね。そういうようなことがありますね。どうもまだまだ調べが不十分だ、納得できない、私としてはこういうことだけをここで申し上げて、時間も来ましたから質問を終わりますが、懲戒免にしたからそれで終わりだという行き方はいけませんよ。ちゃんともっと調べて明らかにしなさいよ。その点はどうですか。その点のお答えを聞いて、終わりにします。
  106. 椿原正博

    ○椿原説明員 お答えします。  処分の問題は別にいたしまして、まず覚せい剤の疑惑がございましたので、それを中心に捜査したわけであります。捜査が甘いという御指摘もございました。そういうことで、ただ県警の刑事部だけじゃなくて、刑事部、保安部、警務部という三者でプロジェクトをつくってやっておるわけでございますが、とりあえず覚せい剤についての疑惑といいますか、それを中心にやったわけでございます。したがいまして、処分というのは、その他まだ解明しなければならぬ問題がございます。それを調査をいたしまして、それを待ってやるということで、現在の、きょうの段階でいつ処分をやるかということは考えておりません。そういうことでございます。  以上でございます。
  107. 稲葉誠一

    稲葉委員 これで終わりますが、私は、いつ処分しろとか懲戒免にしろとか、そんなことを言っているわけじゃないですよ。新聞にそう出ているから、まるできょう懲戒免処分にするようなこと——きょうとも書いてないけれども、すぐやるように書いてあるから聞いただけの話で、それは後でいいから、とにかく事実は事実としてちゃんと調べなさいということを言っているだけです。それでないと納得はできませんよ。それから、いまの捜査のやり方は、警察が全部それをやっているとなると問題だな。これは後で別な機会に問題にしますけれども、事実は事実として、とにかくよく調べてください。  終わります。
  108. 高鳥修

    ○高鳥委員長 安藤巖君。
  109. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、最高裁判所にお尋ねをしたいわけですが、いまさら言うまでもなく、ごく最近の東京地裁民事二十部の板垣判事、谷合判事補の問題、それから安川簡裁判事の問題等々、裁判所に対する国民の信頼が揺らいできているということは非常に残念なことだと思うのです。ですから、その信頼を回復するためには、信頼が揺らいできている信頼感を阻害するような事実を明らかにして、それをなくしていくという努力が必要なことは言うまでもないと思うのですが、その点は間違いないでしょうね。
  110. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 東京地裁民事二十部の疑惑に関しまして司法の威信が揺らいでおるという御指摘、私どもとしても、このような不祥事が出来いたしましたことにつきましては、まことに申しわけない遺憾なことでございまして、国民の皆様にもまことに申しわけないと考えておるわけでございます。事実関係は、先ほども申し上げておるところでございますけれども、早急にできるだけ詳しく正確に解明いたしまして、今後再びこういうことのないように、そういう措置を考えてまいりたい、かように考えております。
  111. 安藤巖

    ○安藤委員 東京地裁民事二十部の関係につきましては、いまおっしゃったようなことで最高裁判所としての責任を果たしていただくように、強く要望しておきます。  そこで、一般的に言いまして、いまの東京地裁の問題だけじゃないですよ。国民の信頼を回復する、信頼の阻害要因になっているものを除去する、それにはそれを明らかにしなければならぬというようなことで、各界あるいは国民の間でいろいろな集会をやったり、問題点指摘したり、論文を発表したり、あれこれというようなことが行われていることも御承知だと思うのですが、たとえばいわゆる在野法曹、私は、在野法曹という言葉はきらいなので、民間法曹と本当は言いたいのですが、弁護士会などでそういう裁判官の国民から受ける信頼の阻害の要因についていろいろ議論をする、論文を発表する、こういうような点については謙虚に耳を傾けるという姿勢でございますか。
  112. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 おっしゃいます民間法曹に限らず、国民全体の声に対しましては謙虚に耳を傾けなければならない、かように考えております。
  113. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、いろいろな労働組合あるいはその他婦人団体、青年団体等々あるわけですね。そういう団体が集会を開いたり、あるいはデモ行進もやるかどうか知りませんが、そういう意思表示をしたり、あるいは最高裁当局に対していろいろな陳情をするというような場合にも、要らぬことを言うなというわけではなくて、いまおっしゃったように謙虚に耳を傾ける、こういう姿勢だというふうに伺ってよろしいわけですか。
  114. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げておりますように、一部ではなくて、国民全体の意見、あちこちから意見が来るわけでございますけれども、もう少し申し上げますと、それが全部が全部正しいというふうには必ずしも考えておりません。やはり取捨選択の必要はございますけれども、まず謙虚に耳を傾けるということはいたさなければならない、かように考えております。
  115. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、私は、具体的に昭和五十四年二月九日、東京地方裁判所刑事第六部が同地裁の五〇三号法廷で行った法廷等の秩序維持に関する法律違反による監置処分事件、これに関連をしてお尋ねをしたいのです。  この法廷では、当日、全国金属浜田精機支部の冨永吉一副委員長に対する判決公判が開かれました。裁判長は小野幹雄判事であったわけです。この小野幹雄判事は現在最高裁判所刑事局長になっておられると聞いておりますが、そのとおりですか。
  116. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 小野幹雄判事が現在最高裁判所事務総局の刑事局長であるということは、そのとおりでございます。
  117. 安藤巖

    ○安藤委員 私もよくわかりませんからお尋ねするのですが、最高裁事務総局の刑事局長民事局長という局長さんが何人かおられるわけですが、これは東京地裁の裁判長経験者から選任する、あるいは任命するというのが普通のコースなんですか。
  118. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 最高裁判所事務総局の局長は、前職はどこであるかということはいま手元に詳細持っておるわけではございませんが、いろんなところから参られますけれども、東京地裁の裁判官からおいでになるということもわりあい多いのではないかというふうに思います。
  119. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、この法秩法による監置処分は、傍聴人の一人が「資本の犬」云々の言葉を発した、こういう理由で身柄が直ちに拘束されて、すぐ後で開かれた法秩法に基づく制裁裁判で七日間の監置処分に処せられておるわけです。この人は祝正巳という人ですが、この件について翌十日の、私は全部の新聞は持ってきておりませんが、たとえばこれは読売新聞です。「傍聴席のヤジ、別人を『拘束!』」こういう大きな記事が載っておるわけです。それからこれは東京新聞、「裁判官が“誤認処分”」こういうような指摘をされておるわけです。これは御承知のとおりだと思いますので、次に進みます。  このときに小野裁判長は、判決の言い渡しをして宣告をして閉廷を宣言をした後に、なおかつ裁判長席にとどまっておったというふうに報道されておるのですが、私もしばらく弁護士の経験があるのですが、裁判長は判決の宣告をして、ほかに事件がなければ、これで閉廷いたしますと言うと、普通は立ち上がって退廷をされるのです。ところが、このときは小野裁判長はしばらくそのまま座っておったということです。なぜそうしたかどうかということは、別にきょうはお見えになっておりませんからお尋ねしませんが、そういうようなことが普通なのですかということです。あるいは最高裁の裁判官の会同なんかで、そういうふうにしたらいいとか、しなさいとか、どうとかいうことになっておるのですか。私、ちょっと異常だったのじゃないかなという気がするのですが、その点どうですか。
  120. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 通常の場合は、判決言い渡しを終えまして閉廷を宣告いたしますと、直ちに立ち上がって退廷されると思います。本事件の場合には、多少喧騒状態が続いておったように聞いております。したがって、通常の場合よりは多少退廷するのに時間があったように承知しております。
  121. 安藤巖

    ○安藤委員 その点については重ねてお尋ねしませんけれども、新聞の報道によりますと、これは二月十五日の東京新聞の夕刊ですが、「ニュース双曲線」というところに、「傍聴人の目には、裁判長は自分が非難されることを予期して、待ち構えていたかのように映った。」こういうような報道もあるのです。これは本当にそうだったのかどうかということまでは、きょうの主題ではありませんので、続けてはお尋ねいたしませんが、そういうような報道もあるということは知ってみえると思うのです。  ところで、先ほどの監置処分にされた祝正巳という人が、国家賠償請求事件というのを国と小野幹雄裁判官を被告にして提起している。これは昭和五十四年三月二十七日付で行われているのですが、そういうことは知っておりますか。
  122. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 東京地裁に、原告祝正巳、被告小野幹雄、被告国間の損害賠償請求事件が係属しておることは承知いたしております。
  123. 安藤巖

    ○安藤委員 さっきちょっと聞き漏らしましたが、小野裁判官が刑事局長になられたのはいつですか。
  124. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 昭和五十六年、今年の二月七日付でございます。
  125. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、当然刑事局長になられたのはこの国家賠償請求訴訟が提起された後ということははっきりしておるわけですが、その国家賠償請求訴訟が起こされた当時から、国と小野裁判官が被告になっている国家賠償請求事件が提起されているということは、最高裁としては知っておられたのですか。
  126. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 事務総局の方に報告が参っておると思いますので、知っておったということでございます。
  127. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、司法行政と司法そのものとは別だということはもちろん私も承知しておるわけですが、こういうような指摘があるわけです。これは日本弁護士連合会が編さんをして、日本評論社から発行されております「最高裁判所」という題の本があるのですが、ここに一部引用をされておるのです。「公正な裁判の実現に奉仕すべき司法行政が、最高裁事務総局の、民、刑、行政各局の指導を通じ、裁判に方向性を示しうるまでに官僚体制が強化されているといわれている。」という指摘ですね。こういうような指摘があるということは御存じなんでしょうか。
  128. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 現佐、お読みになりましたその本にそういうふうに書いてあるということ自体は、前に見たような気もいたしますし、一般的にそういう御指摘があるということ自体は承知いたしております。
  129. 安藤巖

    ○安藤委員 その指摘を認めるかどうかということはまた別個の問題になろうかと思いますけれども、一応そういうような指摘がある。そしてそれは、いま見たごとがあるというふうにおっしゃったように、承知しておられるということになると、国家賠償請求事件で小野幹雄判事は被告の立場にある。いまのような指摘内容からすると、いろいろな裁判、国家賠償請求事件の裁判にも方向づけを与えるのではないかというような批判なり疑念なりというのが出てくるわけなんですね。だから、その辺のところは、刑事局長に任命をされるについて何にも考慮はされなかったのかどうかをお尋ねしたいのです。
  130. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 まず、その民、刑、行政局長等が裁判、事件につきまして一定の方向性を与えるという御指摘、そういう御指摘自体があることは承知いたしておりますけれども、私どもとしては、その点につきましては全く意見が異なるわけでございまして、司法行政は、あくまで裁判の運営がスムーズにいくためのいわばサービスをやっておるにすぎないので、事件そのものに介入するとかあるいは指導するとかというようなことは毛頭あってはならないし、そんなことはないというふうに確信しておるわけでございます。  ただ、そういうふうな御指摘があること、それから、小野元判事についてそういうふうな当時の新聞等ももちろん承知しており、そういうこともすべて頭に置いた上で、裁判官会議におきましてそういう人事が決定された、そういうことになるわけでございます。
  131. 安藤巖

    ○安藤委員 知っておるけれども、一応別建てだということでこういう人事をされた、こういうことのようですね。こういう問題につきましては、後でまた機会を見つけて十分論議をしたいと思うのです。  ところで、この最高裁事務総局の刑事局と検察審査会との関係はどういうようなことになっておりますか。
  132. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 検察審査会は裁判所とは別個の独立官庁であることは、委員御承知のとおりだと存じます。ただ、検察審査会には中央事務局的な制度がございませんで、人事面あるいは予算面につきましては、検察審査会法によりまして最高裁判所が行っているところでございます。  御承知のとおり、最高裁判所の庶務をつかさどるものといたしまして事務総局が置かれておりまして、事務総局の内部分掌を定めております最高裁判所の規程によりますと、刑事局の第一課におきまして検察審査会に関する事項をつかさどることとされております。具体的には、検察審査会のPRですとか必要な資料の提供をするような事務がこれに当たろうかというふうに思っております。しかし、具体的な事件を審査するのは検察審査員十一名で構成しております検察審査会そのものでございまして、最高裁判所事務総局の刑事局は、これに関しましては何ら関与いたしておりません。  こういったところが検察審査会と最高裁判所事務総局の刑事局の関係ということになろうかと思います。
  133. 安藤巖

    ○安藤委員 いま御答弁いただきましたが、そう  いうようなことをおっしゃるだろうと思うのです。ですから、私は、ストレートに刑事局第一課が検察審査会の審査の内容にあれこれ介入するということは考えたくもないし、考えないわけなのですが、いま言いましたように、事務総局が人事、予算とで関係がある、それから第一課が、いまおっしゃったPRというようなことだけれども、あるいは庶務的な仕事だということであるけれども、そういう関係があるということになるわけなのですね。  この小野幹雄裁判官が、昭和五十四年十月三十日付で、特別公務員の職権乱用による逮捕監禁罪という被疑罪名事実でもって告発をされているということは知っておりますか。
  134. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 その事実は承知しております。
  135. 安藤巖

    ○安藤委員 この告発事件が現在第二東京検察審査会で審査をされているということも知っておられますか。
  136. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 存じております。
  137. 安藤巖

    ○安藤委員 この審査会で審査をされるようになってから小野幹雄裁判官が刑事局長に任命をされた、こういう順番になっておりますか。
  138. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 日時の関係としては、御指摘のとおりになるかと思います。
  139. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、先ほどおっしゃったように、関係している中身としては庶務的なことだ、あるいはPRのようなことだというようなことですが、人事、予算も最高裁の事務総局で握っているというようなことで、やはりつながりがあるわけなんですね。中身まであれこれとまでは言いませんよ。そういう告発をされている、そしてそれがいま検察審査会の審査に付されている、その審査の対象になっている人を、その審査会の、いまお聞きしましたような関係であるとは言い条、刑事局長に据えるというのはどうかと思うのですが、その辺のところは何にも配慮はされなかったのでしょうか。
  140. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど総務局長が申し上げましたけれども、刑事局で検察審査会の人事、予算というものと関係があるということでございますけれども、あくまで検察審査会の事務局の事務官などの人事とかそういう予算でございまして、検審の事案そのものは、先ほど総務局長御説明いたしておりますように、まさに民間から選ばれました十一名の検察審査員がおやりになることでございまして、そこは事件との関係は、刑事局で何らかの影響力ということはおよそ考えられる事柄ではございませんので、先ほど申しましたように、一応そういうことも頭に置いて人事が決定されたわけでございます。要するに、そういうことも頭に置いた上での適材適所ということで、その任命が決定されたのではないかというふうに理解しておるわけでございます。
  141. 安藤巖

    ○安藤委員 それが、私が最初にお尋ねしました裁判所に対する国民の信頼が揺らいでいる、何も東京地裁の民事二十部の問題ばかりではなくて、こういうようなことも、そういう信頼を揺らがさせるようなことは明らかにすると同時に、それは取り除いていく、これがやはり必要じゃないかと思うのですが、その点の努力がこれは本当にされてない、配慮されていないのじゃないか。これだと、いまおっしゃったような関係だということはわかりますけれども、一般国民が見たときに、いいのかしらんというふうにやはり疑問を持ちますよ。それで不公正な審査をされるのじゃないか、こういう疑念を持ちますよ。だから、その辺のところは考えるべきだと思うのですがね。どうなんでしょうか、もう一遍答えてみてください。
  142. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 安藤委員の御意見は貴重な御意見として承っておきますけれども、先ほど来申し上げておりますように、そういう懸念はまずないのだということも、ひとつこの際御理解をいただきますようにお願い申し上げたいと思います。
  143. 安藤巖

    ○安藤委員 最初に、広く一般国民のいろいろな御意見もよく拝聴します、尊重しますとおっしゃったでしょう。で、そういうような声が出てきておるから、私もいまお尋ねしておるわけなんですよ。それは私の意見は拝聴するけれども、しかし、やはりそんなことはないということでやったんだと言う。これでは、聞くけれども、こっちの耳から入ってこっちの耳から出ていってしまって、中身としてはちっとも実らないみたいな話ですよ。それではいかぬと思うのですよ。  そこで、それと関連してもう一つお尋ねするのですが、先ほど言いました監置事件の関係で、もちろん人違い云々というようなことがあるのですが、この関係で、東京地裁の所長が、新聞報道は誤りだ、裁判の信頼と裁判官の名誉が損なわれたと抗議を表明するに至ったというのですが、そういう事実は知っておりますか。
  144. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 当時、東京地裁の所長と司法記者クラブ所属の報道機関、新聞社一、二との間で多少のいきさつがあったことは、私も当時たまたま広報課長をいたしておりました関係で耳にはいたしておりますが、それほど新聞を強く非難したというふうには承知しておりません。
  145. 安藤巖

    ○安藤委員 あなたはそういうふうに思っているかもしれませんが、これは「判例タイムズ」の三七七号に「裁判批判」というのが載っているのです。読売新聞社会部の記者で滝鼻卓雄という署名入りの原稿です。結局いまおっしゃったようなことではなくて、この記者は、「この報道について、裁判所当局(裁判長ではなくて、司法行政としての裁判所という意味)は、厳しく反応した。」こういう書き方です。それでこういう問題の提起をしているのです。「裁判所当局の表現でいえば「裁判所の事実認定を一顧だにしない記事」「一方的に決めつける記事」は許されない、」そんな記事を書くのは許されぬ、こういうようなことを裁判所当局が言った、こういう言い方なんです。だから、「裁判所には決してミスはない。よけいな心配せずに、いわれた通り書け」、こう言われたのと一緒だというのです。これでは、最初におっしゃったように、いろいろな御意見をちゃんと尊重してやっていきますと言われたことと全く違う受けとめ方を新聞記者はしている。そんなつもりで言うたんじゃないと言われたって、こういう受けとめ方をしている記者が現におるわけですね。こうやって自分意見までちゃんと法律雑誌に載せている。だから、これは問題だと思うのです。ある裁判の判決があった、それに対して批判的な記事は何一つ書けないということにこれだとなってしまうのです。だから、こんなことではいかぬと思うのですが、どうですか。
  146. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 私の記憶では、たしか当時、読売新聞と東京新聞の記事のあり方について、東京地方裁判所の方で少し問題ではないかというふうにお考えになりまして、先ほどお示しになられました読売新聞の滝鼻記者と東京新聞のどなたかとが東京地裁の所長とお会いになったということは私も存じております。したがいまして、その席で記事のあり方に対する裁判所側の意向が伝えられたことだと存じますが、先ほど委員がお読みになりました最後のあたりの裁判所に決してミスはない、よけいなことを心配せずに言われたとおりに書けということは裁判所側から出た言葉ではございませんで、もしそういうふうに考えるとしたらという滝鼻記者の感想のようでございますが、言った側と受けとめる側との多少のニュアンスの相違というのはあるのかもしれないと存じます。
  147. 安藤巖

    ○安藤委員 私も、東京地裁の所長さんがそういうことを言ったというふうにこの記事を紹介したわけではなくて、そういう受けとめ方をしたというふうに書いてあるわけです。だからそういう受けとめ方をした。しかもこれを世に問うているわけです、ちゃんと「判例タイムズ」に載せて。というのは言い方に問題があるんじゃないか。「聞き間違いは言い手のそそう」というのがあるのです。これは昔からの格言といいますかことわざ。だから、これは裁判所当局の本音がつい出たんじゃないかという気もして、もしそれだったら、ここにも指摘してあるようにとんでもない恐ろしいことじゃないかという気がします。だから、この辺のところも裁判所当局は十分注意していただく必要があると思うのですが、その点が一つ。  もう一つ、いま私がお尋ねしたことも含めて、この監置事件については人ちがい裁判を追及する国民共闘会議の方から最高裁判所長官あてに公開質問状というのがことしの三月九日付で提出されておることは御存じのとおりだと思うのですが、こういう公開質問状に対しては裁判所は一切知らぬ顔という態度なのか、これに対して回答をお寄せになる用意はあるのか、ないとすればそれはどういう理由なのか、それをお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  148. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 それでは広報関係の点について私の方からお答え申し上げます。  私どもも、常日ごろから裁判所側と報道機関側とは決して対立的な関係にあるとは存じておりませんし、お互いに理解を深め合いながら迅速に正しく裁判報道を扱っていただきたいと思っておるところでございます。そういった観点から、今後も東京地裁のみならず、全国の各裁判所で報道機関への対処のあり方をうまくやってくれるとは思いますが、ある場合には抗議を申し込まなければならないようなこともあろうかと思います。その辺は適切な措置をとっていただくように現場の裁判所にもお願いしてまいりたいと思っております。
  149. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 公開質問状というものがただいま安藤委員指摘のように参っておることは、そのとおりでございます。ただ、この公開質問状の内容が特定の裁判官の具体的人事についての問題でございますので、この問題については裁判所としてはお答えする限りではなく、差し控えるべきだということで、そのままになっておるような次第でございます。
  150. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  151. 高鳥修

    ○高鳥委員長 林百郎君。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 まず、刑事局長にお尋ねしたいのですが、戦後あるいは戦前、少なくとも私の知っている範囲で現職の裁判官が逮捕されたという例はないわけなんです。ところが、谷合判事補が逮捕された。私がこのことを質問したときに、逃亡はしないでしょうが証拠隠滅のおそれがあるということで、井上弁護士との間でそれぞれの供述が食い違っているから逮捕したというように聞いていたのですが、その後、昨日保釈をした。そういう前例のない逮捕をしておきながら未処分のまま保釈するということは、それなら逮捕しなくても十分捜査ができたのではないかという意見もあるわけなんです。十日の検事勾留が切れて、その間に起訴しなければ保釈するということになるわけなんですけれども、結局、もう証拠を隠滅するおそれはない、そう認定して保釈をされたのでしょうか。まずそこをお聞きしたいと思うのです。
  153. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いま保釈とおっしゃいましたけれども、起訴したわけでございませんのでいわゆる釈放でございまして、保釈というのは適当ではないと思います。  先ほどもお答えしたところでございますが、結局、いま仰せになりましたように、身柄を勾留して調べておりました場合に、期限の制限があるわけでございますから、その制限の日が来ますと、そこで起訴しなければ身柄は当然釈放しなければならないということになることは御案内のとおりでございます。したがいまして、昨日の釈放といいますのは、きのうの時点で身柄勾留を続けながら起訴するかどうかということの結論になりますれば、そういう措置がとられたわけでございますけれども、そういう措置をとるについてはなおまだ慎重に検討すべき点が多々あるということで、勾留のままきのうの満期の日に起訴するということには至らなかったということでございます。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、勾留中には起訴するかしないか決まらなかったということなんですね。それで釈放したというわけですね。これは二十日の検事勾留を終わった段階なんでしょうか、どうでしょうか。そうしますと、処分をすれば起訴できて今度は判事勾留になるわけなんですけれども、起訴しなくて釈放したということになりますと、これは今後どうなさるのですか。捜査はまだ依然として続ける必要があるのですか。それとも、釈放した以上は一応の捜査は済んだ、ただその処分をどうするかということを保留にしておくという段階なんですか。
  155. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 まず、勾留期間の問題でございますけれども、これはもう御案内かと思いますけれども、十日間の勾留期間が過ぎまして延長いたしております。したがいまして、二十日間の勾留ということになっております。  それから、先ほどのお答えと同じようなことになるかもしれませんけれども、そういうことで、勾留期間が満了いたします場合に、その時点で起訴しないということになりますと釈放ということになる、これはもう当然法律上もそうなるわけでございます。その場合に、一応とりあえず身柄はそういうことで釈放せざるを得ないというか、そういう言い方にもなるわけでございますから、釈放いたしましてその後に処分を決めるということは、本件に限らずよくあることでございます。  したがいまして、今後起訴するかあるいは不起訴にするかということは、これからの問題であるわけでございます。その場合に、引き続き補充捜査をして、そして事実をさらに固めて処分を決めるという場合もございますし、また、一応この時点で捜査を終わって、処分についていろいろ考えるという場合もあるわけでございまして、本件の場合に即して申しますと、一応捜査といたしましてはおおむね事実関係は解明できた、しかし、なお若干細かい点につきましては確定を要する点が残っておるようでございますし、また、それ以外にもいろいろな観点から処分を決めるについて考えるべき点、検討すべき点があるだろうというふうなことで、とりあえずきのうのところは期間が満了ということに伴って釈放した、こういうことでございます。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 一応の捜査は済んだ、まだ若干捜査する点が残っているという点は、もしここではっきりできるならしていただきたいと思うのです。ということは、新聞にいろいろ出てまいりまして、その後、十万円のせんべつをもらった、ある新聞では、これは贈収賄の容疑が濃いけれども、時効だというようなことを言っていますが、私は、いろいろ調べた結果、時効にはならないと思うのですけれども、こういうような点が残っているのか。あるいは、訴追を国会へしていますから、国会の弾劾裁判所の判断を見て起訴するかどうかを決めるということなんでしょうか。どういうことが残っているのですか。  刑事局長、二十日も勾留して、そして調べて、それで新聞へ出ているところを見ますと、谷合判事補の方はゴルフセットと洋服二着ということですかね、それでまだ何を調べる必要があるのですか。どうしてそこで起訴するかしないかが決まらないのでしょうか。裁判所の側にとってみれば、現職の判事補ですか裁判官を逮捕するなんということは全く大変なことで、国民にとっても大変なことなんですよ。検察当局が鬼面人を驚かして逮捕しておいて、処分がまだ決まらないからといって釈放している。これは全く鬼面人を驚かすようなものじゃないですか。ましてや、それが国会の弾劾裁判所の結果を待って見るなんということは、全く検察当局の権威、独自性を失うものじゃないですか。どういうことなんですか、ちっともわからないですよ。  中には、検察庁も裁判所も同じ司法関係だから、そこには若干の人情となれ合いがあるだろうなんということを書いているマスコミもあるわけですよ。そういう疑いも受けます。当然ですよ、それは。三十八万ぐらいのものを、ゴルフセットと洋服二着をもらったかもらわないかなんという問題、それが賄賂に相当するかどうかなんということは、恐らく大学の法学部の一年生だってわかることでしょう。それを検察当局が現職判事補を逮捕までしてまだ決まらないということは、何が残っているというのですか。これは全く検察当局だって責任ありますよ。
  157. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 まず、お尋ねの中で十万円のせんべつの点が残っているのじゃないかというような御指摘があったと思いますけれども、その点は、いろいろ新聞等でも出ておりますように、これは別な裁判官についてのことでございまして、谷合裁判官についてのことではないわけでございます。  その点お断りをいたしておきますが、二十日勾留して何をやっておったかという御批判もあろうかと思いますけれども内容は詳しいことは申しかねる点もございますが、最初から事実関係がはっきりしておったわけではございませんで、それだけに逮捕ということも、異例と言えば異例かもしれませんけれども、行わざるを得なかったというくらいに、まあ単純なように見えるかもしれませんけれども、いろいろな両当事者間の細かい供述なり何なりを含めまして、事実関係がはっきりしなかった。その事実関係の確定のために手間がかかったといいますか、時間がかかったというのが実態でございます。  あと、これから何を考えるのかということ、また、逮捕してどうして処分が決まらないのかというおしかりでございますけれども、先ほど申しましたように、内容が一見簡単なように見えますけれども、複雑と言えば非常に複雑でございまして、なお若干詰めが必要だというふうに聞いておるわけでございますし、また、異例なことであると言えばまさしく事柄自体異例なことでございますので、検察当局といたしましては、厳正な態度を持ちながら、かつ慎重な態度を持って臨んできたつもりでございます。したがいまして、事案自体が異例なことでございますので、まあ一般の事件が簡単に処理していいということではございませんけれどもそれなりの一層の厳正さと慎重さと両方を要するのじゃないかというふうに思うわけでございます。  それだけに、新聞報道等でもいろいろな見方が出ておるようでございまして、きのうの措置につきましても、検察がいろいろ悩んだであろうというような言い方も一部出ておったように思うわけでございますが、そういうようなことで、なおいろいろとあらゆる角度から処理の最終結論を出すにつきましては検討しなければならぬ点があるのじゃないか。お言葉で、鬼面人を驚かしておいて何をやっておるかというおしかりでございますけれどもそれなりに検察当局といたしましては、御批判は御批判といたしまして、最善の努力を尽くしてきたつもりでございますし、今後結論を出すにつきましても最善の努力をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 十万円は板垣判事のことですが、十万円のことですら新聞に非常に大きく書かれるほど、社会ではこの問題を重視しているわけです。重視しているのに、逮捕をして二十日間、検事勾留のいっぱいを勾留して、そしてまだ処分も決まらないで複雑な問題が残っているということですが、複雑な問題というのは何ですか、率直に言ってください。あるいは国会の弾劾裁判所の結果を待つということなんですか。それならげたをもう国会に預けられたということで、検察当局独自の判断というのはないということになりますね。その複雑だというのは何が複雑ですか。
  159. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどどういう言い回しをしたかと思いますけれども、複雑な問題が残っておるというふうに申したつもりはございませんで、二十日間かかったのは、大変簡単に見えるけれども、事実関係が複雑でその確定に手間がかかったという意味で複雑という言い方をしたつもりであるわけでございます。ただ、処分の結論を出すについては改めていろいろな角度から検討を要するであろうというふうに申したわけでございます。  なお、国会との関係でございますけれども国会の処置待ちということで釈放したんじゃないかというような報道もなされておりますけれども、そういうことは当面ないわけでございまして、検察独自として独自の判断でこれは処理するべきもの、かように考えております。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 新聞では、検察当局はわれわれはまだ疑惑を捨てたわけではない、処分保留の意味を尋ねられて検察幹部の方は憮然として答えたというのですが、二十日勾留をしていながら、その二十日間の間に起訴しなければ釈放になる、ということは、あなたの言うことによれば、まだ起訴しないという確定的な結論を出したわけじゃないので、起訴しないという場合もあり得るんですか。そういう場合もあるし起訴する場合もあるし、そういうことを考えているということなんですか、はっきり言ってください。
  161. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど稲葉委員のお尋ねにもお答えをしたわけでございますが、林委員に改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、勾留中のまま起訴する場合とそれから釈放する場合と二つに分かれるわけでございますし、釈放する場合に、またその釈放後起訴する場合もございますし、起訴しない場合もある。これは当然のことでございます。したがいまして、本件の場合にも、冒頭にも申したと思いますけれども、いまの時点ではその処理について結論が出ているわけではない。したがって、それは起訴すると決まったわけでもないし、不起訴にすると決まったわけでもないというのが現在の状態である、こういうことでございます。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、起訴しない場合もあり得るというように聞いておいていいんですか。起訴する場合もあるし、しない場合もあると言うんだから、起訴しない場合もある、こう聞いておいていいですね。
  163. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ですから、それは言葉の言い回しかもしれませんが、要するに、いまの時点では処分については未定であるということに尽きるわけでございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 最高裁判所の人事局長にお尋ねいたしますが、きょうの新聞に、板垣判事が新しく川崎とあわせて千葉の我孫子市でも土地を約百四十五・六平方メートル買って、それを井上弁護士のやっている株式会社の銀行の借入金の根抵当に設定してあるという記事が大きく出ております。東京二十ですか、変な名前ですからあれですが、これは捜査とは違いますので最高裁判所調査の範囲ですが、こういう事実が新しく出てきておるわけですか。
  165. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 新しく出てきているかどうかという点についてはあれでございますが、もともと担保に入れましたときに、登記簿上も共同担保目録の中にそれがあるわけでございまして、板垣裁判官所有土地が井上個人の債務の物上保証といたしまして、担保として提供されておるという事実は板垣君からも前から聞いておるところでございます。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 刑事局長にもう一つだけ聞いておきます。先ほどのせんべつの十万円は贈収賄の容疑にはなり得るのですか。それとも普通の社会的な儀礼としての範囲と考えられますか。その辺は非常にデリケートなことで、なかなか国会で答弁もむずかしいと思いますけれども、新聞では贈収賄の容疑が濃いというようになっていますが、これはどういうことになるのでしょう。
  167. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の十万円のことでございますけれども、確かにいろいろな見方があり得るわけでございます。新聞等でも報道されましたし、御関心も集めているところでございますから、今回の事件の広い意味での捜査の対象ということにはなり得ると思いますけれども、それが具体的に贈収賄になり得るかどうかというふうなことで見ておるかどうかということになりますと、これは捜査の内容のことでございますので、この時点では御容赦をいただきたいわけでございます。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 とにかく捜査の範囲内には入れておる、こう聞いておいていいですね。いいですか。それで結論をつけます。無理もないと思いますがね。
  169. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 これも言い回しの問題が非常にむずかしいかと思いますけれども、捜査というのが、狭い意味犯罪という疑いを持って手続上も立件をして捜査をするということになりますと、果たしてそういうことであるかどうかということを申しかねるわけでございますが、いろいろ問題になっているので、今回の捜査の中でそういうことを捜査当局も頭に置いておるということにとどめさせていただきたいわけでございます。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 人事局長にお尋ねしますが、板垣判事は職務を辞する、判事さんのあれですから、辞職願というのか退職願というのか、辞職願を出しているわけなんですけれども、これについてはどう処置するつもりなんでしょうか。そして、板垣判事も事態によっては国会の弾劾裁判所に訴追をするというようなこともあり得るのでしょうか。それを人事局長にお尋ねしたいと思います。
  171. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 板垣裁判官からは、たしか四月の末、二十八日だったと思いますけれども、事情を聴取いたしました際に辞表の提出がございまして、現在私の手元で保留といいますか、預かっておるという状況にあるわけでございます。  この辞表をどうするかということでございますけれども、何分、板垣裁判官の問題につきましてはまだ事実関係の全貌が明らかになったと言える段階には立ち至っておりませんので、まず事実関係の全貌を明らかにした上でそれについての処分を考えなければいけない、こういうことになるわけでございまして、どういう処分をするかということがはっきりいたしますまで、辞表をそのまま保留と申しますか、受理しないでとめておくというつもりで現在おるわけでございます。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 弾劾裁判所へ訴追することもあり得るのでしょうか。そういうことは全然考えていないと聞いておいていいんですか。
  173. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、まず事実関係が明らかになりませんと、いかなる処分をするかということが決まらないわけでございますけれども、その処分にはいろいろございまして、訴追の問題もございますし、分限法に基づく分限というような処分もございます。それら全体を含めた処分をどうするかということが今後の懸案ということになるわけでございます。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、退職願が本人から出ているのに、どういう理由であなたの手元へとどめておくのですか。
  175. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 退職願につきましては、手続といたしましては、それを受理いたします場合には、最高裁判所の裁判官会議の議を経ました上で内閣へ進達する、内閣でそれを受理されますと退官ということになるわけでございますが、退官ということになりますと、訴追、分限その他の処分、これはあくまで裁判官の地位があることを前提とするものでございますから、そのまま進達してしまいまして退官になりますと、そういう処分はできなくなるということになるわけでございますので、処分を決定するまでそれを留保する、こういうことでございます。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、弾劾裁判所への訴追も考えられるし、裁判官の分限法による懲戒もあります、こういうことも考えられるので、そうするためには裁判官という身分をそのままにしておかなければできないので退職願を留保している、そう聞いておいていいですか。
  177. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりでございます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、将来そういうことがあり得る、あり得るからこそあなたの手元へとどめておく、そう聞いてもいいんですね。
  179. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 いかなる処分をするかということはわかりませんけれども、処分をすることがあり得るということでございます。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つ事実関係をお尋ねしますが、私、率直に言いまして、私も弁護士として司法に関係している者ですから、司法に関係している裁判官のこういう事態については非常な重大な関心を抱かざるを得ないわけですし、国民にはなるべく事実をはっきりさせておく必要があります。それから、新聞に十万円、これはいまの金額としては大きな金額ではありませんけれども、裁判官がせんべつとしてもらった、しかもいま問題になっている裁判官がもらったということで、こんなに大きく出されたと思うのですよ。それは一つは、裁判所は神聖で権威があり、信頼のできるもの、国民がそういうものを持っているからこそ、それを裁判所おまえもかということで、こういうことがマスコミでも大きく取り上げられるというように考えなければいけないかとも思うわけなんです。  そこで、いろいろの事実が出てきますので、事実関係だけはっきりしておきたいと思うのですが、東京二十と板垣判事との関係、物上保証、根抵当もですが、そのほかの関係であなたがお調べになった範囲ではどういうことが関係があるのですか。必ずしも刑事責任にならないことだってありますね。民事的ないろいろな好意を示してやったということもあります。どういうことがあるか、ここで概略でいいですから一応事実を説明しておいてもらいたいと思うのです。たとえば千葉の宅地もというようなことが突如として大きく出ているというようなこともありますので、こういうことを一々大きく新聞に書かれて司法の権威を傷つけることのないように、ここで一応はっきりできることは言っていただきたいと思うのです。
  181. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 株式会社東京二十との直接の関係ということではございません。これは前から出ておることでございますけれども、板垣裁判官が井上管財人から購入した土地、それから自分土地を、井上管財人が恐らくゴルフ場を買い受ける受けざらとなる株式会社東京二十の関係で使われるということを知りながら、井上管財人個人の債務についてそのために担保として提供したというようなことが一つある。それからもう一つは、板垣裁判官の妻名義で井上管財人個人に対して、株式会社東京二十のそういう資金との関連で三百万円という金が貸し金と申しますか、そういう形で出されておる。そこら辺のところが、いままで板垣裁判官から事情聴取をいたしました限りにおいてわかっておる事柄でございます。  それ以外に若干、たとえば最近の新聞にも出ておりますように、板垣裁判官個人のと申しますか、板垣姓で三百万円というのが別口でまだあるというふうな報道もなされておりますけれども、そこら辺のところは現在まだ事情聴取の最中でございまして、十分に解明されたということではございません。はっきりしております事実としましては、担保提供の問題と妻名義の三百万円……(林(百)委員「担保に提供された土地はどことどこか」と呼ぶ)それは井上管財人から買い受けたということになっております百合丘の土地と我孫子の土地の二つということになっております。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 それ以外はないのですね。
  183. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 それ以外のことはいまのところわかっておりません。
  184. 林百郎

    ○林(百)委員 わかってないけれども、出るかもしれないということですかな。  そこで、法務大臣にお尋ねします。  先ほども申しましたとおり、前例のないことだと思うんですね、裁判官がしかも涜職の罪で逮捕までされて検事勾留の期限いっぱい勾留されておるということは。しかし、勾留されたけれども、何らの処分もなくて釈放ですか、まだ保釈の段階でないから釈放という言葉を使いますが、これは国民から見るとおかしいと思うのですよ。そんな戦前戦後を通じてかつてないことをやっておきながら、どうするかわかりません、出しますといって、自動車で出てくる写真も大きく載っているわけですね。これは私は検察当局も一つ責任があると思う。それは、一罰百戒で断固処置するなら処置するとか、あるいは情状の酌量の点があったから、こういう点で将来の本人の行き方、あるいは国会での処分の行き方を見るとか、そういうことをはっきりさせなければ、ただ釈放されたというだけじゃ納得できませんよ。だから、マスコミの諸君もきのう検察当局へいろいろお聞きに行ったと思いますけれども、いや、おれの方はまだシロだともクロだとも決めていないんだと憮然とした表情だったということも書いています。  これは検察当局の責任もここでお感じになる必要があると思いますが、どうでしょうか。要するに、鬼面人を驚かして出てきたのはネズミ一匹というようなことになる危険性があるのじゃないか。あるいは、げたは国会に預けて、検察当局独自の判断はそれを見てからやります、こういうことになりませんか。その辺のところをひとつ……。
  185. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま前田刑事局長がいろいろ御答弁申し上げておりましたのを聞いておりまして、事実関係がどうも明確でないからやむを得ず身柄を拘束して調査をしたのだということのようでございました。同時にまた、もう勾留の期限が来たわけでございますから、この時点で判断を決めてしまうということについてはなおさらに考えたい点もあるようだということを言っておったわけでございますから、そういう意味で処分保留になっているのだろうと思います。  おっしゃいますように、現職の判事を勾留して取り調べるというようなことは異例中の異例でございますし、私たちも全く好まないことでございます。しかし、こういう問題については、先ほど来お話が出ておりますように、事実を明確にする、そして的確な措置をするということが将来に対する問題の解決に資する道だ、こういう判断がみんなにあるわけでございまして、最高裁判所もそういうお気持ちで、非常に憂えを持ちながら、毅然として御努力になっているようでございます。そういう過程の中でのことでございますので、前田刑事局長から申し上げましたことをそのとおりにひとつお受け取りいただきまして、今後の推移を見守っていただきたいと思っておるわけでございます。
  186. 林百郎

    ○林(百)委員 私がお聞きするのは、国民から見れば、検察庁と裁判所は同じ司法関係だから、お互いに人情としてはかばい合うというような気持ちがあるのじゃないか。そういうわけで、一応逮捕という手段だけとって、それで国民に納得させて、結果についてはいずれ国会の弾劾裁判所の様子を見たりいろいろして、場合によっては起訴まではしないということじゃないかと国民は疑惑を持つと思うのですよ。また、持たれてもやむを得ないと思うのですね。少なくとも新聞に出ている限りは、谷合氏に対する関係は、家族の見舞い金も七、八万で、これは儀礼的なものだということで、結局犯罪の構成要件には入れないということになりますと、ゴルフセットと洋服二着をもらったかもらわないかという問題だけでそんなに二十日間も勾留しなければわからないなんということは、国民から見たらわからないことだと思うのです。だから、そういう点を心配していまあなたにお聞きしているわけです。  国民から見たら、検察庁と裁判所が癒着してお互いにいたわり合っているのじゃないか、いたわり合うということもないですけれども、思い切ったことができないのじゃないかということを疑われれば、これは検察当局も問題になると思うのですよ。何も裁判所だけでなくなると思うのです。そういう意味で私は質問しているわけです。  事務総長にお尋ねしますが、こういう異例な事態が谷合判事補あるいは板垣判事等に出てきているわけですね。その前までといえば、安川判事あるいは鬼頭判事等の問題もありましたけれども国民が非常に信頼と権威のあるものと考えている司法裁判所で近ごろこういう事件が起こるということについて、司法裁判所としてはあるいは最高裁判所としては一体どういう反省をなさっておるのか。それから、こういう事態については今後どう措置をしたらいいか。裁判官会同もやったようですけれども、しかし、何も裁判官だからといって、竹林の七賢人みたいにこの活社会からまるで途絶された生活をしろなんて、そんなことを要求したって私は無理だと思うのですよ。しかし、人一倍の道義性と倫理性は、やはり国民の信頼にこたえなければならないし、日本の民主主義の三つの柱、三権分立のうちの一つですから、そこは考えなければいかぬと思うのですが、最高裁判所としての今後の司法行政あり方からいって、どういう点を反省されて、将来どういう点を改善されようと考えておられますか。先ほど稲葉議員も聞かれましたが、何か抽象的であなたのおっしゃることがよくわからないのですけれども、もう少し具体的に、将来こうしたいと思うというのがまだ出ていないのですかね。反省とそういう改善の方法をお聞きしたいと思うのです。
  187. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 先ほど来人事局長も申し上げておりますように、まず、今回の事実の解明がどうしても急務になるわけでございまして、いろいろな点でまだ納得のいく調査を終えていない状況でございます。いろいろ調査をいたしましても、私ども調査委員会は特別の権限を持っておるわけではございませんので、それは捜査当局の取り調べにははるかに及ばない点がございますが、内部の問題といたしまして、私どもとしてはできる限りの全力を挙げた調査をいたしておる最中でございます。  一応、谷合判事補につきましては、私どもの措置としては最も重い長官訴追請求という措置をとりました。しかし、板垣判事につきましてはこれからの問題でございまして、今後も私どもとしてできるだけの調査方法をとって、まず事実の解明をいたして、そのことを国民の前に明らかにしたい、これが第一でございます。そういたしまして事実の解明ができました上で、しからばそれに対してどのような措置をとるか、また、なぜこのような問題が起こったのかということを検討いたしまして、それに対するこれまでの反省及び今後の改善ということを全分野にわたっていたしていきたいというのが現在の心境でございます。抽象的というふうにおしかりを受けましたけれども、何分にも事実の解明そのものが不十分でございますので、目下のところ、この点をこういうふうに改めたらいいというところにまでは至っていないわけでございます。  ただ、現在申し上げられます点といたしましては、破産事件の処理というものは、債権に対する債務が足りないということで債権者に非常に迷惑をかける、その場合に、裁判所が間に入りまして足りないながらも公平な財産の分配をする、これが破産法の精神でございます。そうであるからこそ、裁判所がそういう責務を負わされておる、裁判所がそういった事件を取り扱うのに最も適しておるとされて破産法というものができておるわけでございますが、そういう観点からして、この破産事件の処理等についてもう少し慎重な扱いをしていくべきではなかったか。現に東京地裁では、単独で処理いたしておりましたのを直ちに取りやめまして、全部を合議体で処理して、慎重の上にも慎重を期していくという扱いに改めております。  また、管財人の選任等につきましても、もちろん、客観的にりっぱな人格者であり、経験も豊富な弁護士さんの中から適任者を選ぶということは必要でございまして、その中には、場合によって同期の者あるいは同期に近いような人が入ってくることもございますけれども、ただ同期の友人であるというだけで選ぶ、かりそめにもそういったような選び方をすることのないように、管財人の選任につきましても十分配慮するように、直ちに現在の破産部において取り扱いを十分検討してまいっております。  その他、先ほどもちょっと触れましたけれども、訴訟事件の処理というのは、いわば対立する当事者の間における判断でございまして、両当事者がお互いに監視し合うというような構造の中に、監視体制と申しますか公平を保つ体制というものができておるわけでございますが、非訟事件の処理ということになりますと、ある意味での対立当事者というものがございませんので、どうしてもそこに気の緩みというようなものができてくる可能性がありますが、これをどのようにして緩みというものができてこないような、いわゆるチェック・アンド・バランスといったような形から来る処理体制というものをとっていくか、そういった点も早急に検討すべきである。幸い、来月の上旬には全国の長官、所長が集まりまして、重要な司法問題につきまして隔意ない意見を交換するいわゆる長官所長会同が予定されておりますので、そういう機会をとらえまして、全国の同じような事件の処理をいたしておりますところの実情を把握し、かつ、そういった事件処理体制から来る経験といったものを発表してもらって、さらに何らかの改善策がないか、そういったことを検討する、それに全力を挙げていきたいと考えております。  さらに、別途そういった特殊の事件を担当いたします裁判官、実はこれまで余りそういう特殊事件を担当するに当たっての研修といったようなものをやっておりませんので、この際、やはり裁判官研修の中にも特殊事件担当のための研修といったようなものもこれは取り入れていかなければいけないんじゃないか。そして、これまでりっぱにやり遂げてこられた先輩方の苦心談と申しますか、そういったようなものも十分後輩が吸収していくというような体制もとらなければいけないのではないか。もう一つ加えさせていただければ、これは前回にも申し上げたかと思いますが、ときに振り返っておのれを反省する余裕といいますか、そういったものを各裁判官に持たせるような仕組みというものをつくっていかなければいけないのじゃないか、それに必要なもろもろの措置をとっていくということも当然出てくることであろうと考えております。  ただ、繰り返し申し上げますように、途中でございますので、確定的にこういう措置をとるということまでは申し上げ得ないのがまことに残念な次第でございます。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 これで終わりですから。  私、裁判官分限法を読んでみたのですが、国会の弾劾裁判所で判断するのもいいですけれども、司法裁判所独自が裁判官分限法でこういうような問題を処置なさる、そして司法の独自性を保持するということも考えていいと思うのですが、これはどうして運用なさらないのでしょうか。最高裁判所の矢口さん、答えてくれませんか。
  189. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、分限法は、心身の故障で執務をとることができないときに本人の意に反してやめてもらうということと、それから、職務について怠慢がございました場合あるいは品位を傷つけるような行為がございました場合に、いわゆる懲戒処分を行うという規定でございます。これは当然これまでも必要に応じて発動をいたしてまいりましたし、今後も必要があればちゅうちょせずにやっていくつもりでございます。  御承知のように、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の裁判官につきましては、高等裁判所に分限部がございまして、裁判の形式でもって十分調査をいたした上、しかるべき措置をとるということになっておりますし、これからもその点につきまして必要があると認められれば、ちゅうちょなくその規定を発動するような措置をとりたい、このように考えております。
  190. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  191. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次回は、明後十五日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十四分散会