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1981-05-06 第94回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月六日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 熊川 次男君    理事 山崎武三郎君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 鍛冶  清君    理事 岡田 正勝君       井出一太郎君    今枝 敬雄君       上村千一郎君    大西 正男君       太田 誠一君    高村 正彦君       小林  進君    下平 正一君       前川  旦君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席政府委員         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      元木  伸君         法務省民事局参         事官      稲葉 威雄君         参  考  人         (日本公認会計         士協会会長)  中瀬 宏通君         参  考  人         (日本税理士会         連合会専務理         事)      四元 正憲君         参  考  人         (社団法人経済         団体連合会会社         法問題小委員会         委員長)    坪内  肇君         参  考  人         (東京大学法学         部教授)    鴻  常夫君         参  考  人         (神戸大学法学         部教授)    河本 一郎君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 五月一日  スパイ防止法制定促進に関する請願(始関伊平  君紹介)(第三六一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第五  九号)      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案審査ため参考人として日本公認会計士協会会長中瀬宏通君、日本税理士会連合会専務理事四元正憲君、社団法人経済団体連合会会社法問題小委員会委員長坪内肇君、以上三名の方々に御出席いただいております。  なお、東京大学法学部教授鴻常夫君及び神戸大学法学部教授河本一郎君には、午後二時から御出席の上、御意見を承ることとなっております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、本委員会審査参考にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見の開陳は、中瀬参考人四元参考人坪内参考人順序でお一人十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員からの質疑に対しお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず中瀬参考人にお願いいたします。
  3. 中瀬宏通

    中瀬参考人 日本公認会計士協会会長中瀬宏通でございます。  本日は、参考人として意見陳述機会を与えられましたことに深く感謝いたしております。  さて、現在御審議中の商法等の一部を改正する法律案につきましては、昭和四十九年商法改正案審議の際、本衆議院におきましての企業社会的責任を全うすることができるよう所要の改正を行うこととの附帯決議に沿ったものであり、また、昭和五十四年九月に発表されました航空機疑惑問題等防止対策協議会提言趣旨にも合致しておりますので、日本公認会計士協会といたしましては基本的に賛成であることをまず申し上げます。  しかし、このことは、私どもが一〇〇%満足しているという意味ではございません。と申しますのは、本年一月二十六日に発表されました法制審議会答申に全面的に賛成立場に立っておりましたが、その後法案として提出されましたものは、その趣旨が若干後退したかの感があるからでございます。しかし、私どもが自己の主張を繰り返しているだけでは、改正の成立の妨げになるばかりでございます。そこで、現在提出されております改正案でも相当の前進であると判断し、基本的に賛意を表することといたした次第でございます。したがいまして、この法案は納得できるぎりぎりの線でありますので、これ以上後退することなく今国会において成立することを心から念願するものであります。  次に、私どもに特にかかわりのあります監査特例法改正案のうち、幾つかの条項について意見を述べさせていただきます。  まず第一は、第二条に規定されております会計監査人監査対象となる会社範囲についてであります。  法制審議会答申にございました売上高基準が削除され、また、負債額基準が百億円から二百億円に修正されましたことは、債権者保護観点からはなはだ遺憾に存じております。なお、資本金五億円は法制審議会答申そのままの唯一の基準であり、本則にすでに盛られておりますので、この点につきましては、負債額基準とともに、これ以上決して後退することのないよう切望する次第でございます。また、資本金一億円から五億円までの会社につきましての任意監査規定が削除されましたことは、提言におきます自主的監視機能を強化促進させるという趣旨にかんがみましても、まことに遺憾であると存じております。  第二番目は、第三条に規定されております会計監査人選任についてであります。  公認会計士は、アメリカにおいてサーティファイド・パブリック・アカウンタント、通称CPAと呼ばれております。職業名称の中にパブリック、すなわち公共ためにという名称が付されているという点でもおわかりいただけると存じますが、CPAは、公益的見地から社会一般ために尽くすことを使命としている職業でございます。わが国公認会計士という名称も、公に認められたというばかりでなく、公共ために尽くすという意味も含まれていると私は理解しております。私どもは、常に公正不偏立場に立ち、適切な監査を実施し、社会信頼にこたえ得る監査意見を表明することを職業的使命といたしております。この使命に反し、独立性を喪失して、社会信頼を失う行動をとったとすれば、私ども職業をみずからの手で滅亡に導くものと、すべての公認会計士が深く自覚しているところでございます。  協会におきましても、多くの施策を適時適切に行ってまいりましたが、近年におきましては、法定監査実施要綱を抜本的に改正した組織的監査要綱を制定し、さらに、各会員監査実施状況を監視する機関として監査業務審査会を設けるなど、監査水準の向上に努め、独立性の強化を図ってまいりました。  このように、私どもは常に独立性を堅持すべく、会員協会ともども一丸となって努力を重ねているところでございます。したがいまして、本来的には選任母体がどう変わろうと、会計監査人独立維持には影響ないものと考えております。しかしながら、株主総会選任されるようになりますことは、会計監査人の地位をさらに制度的に強化するものとして賛意を表する次第でございます。  第三番目は、第四条の会計監査人の資格に関する条項でございます。  ここで、法制審議会答申にはありませんでした会計監査人業務制限に関する条項が第二項として新設され、同時に、第七条第五項で、監査補助者についても同様の規定が設けられました。  公認会計士業務制限規定は、公認会計士法第二十四条を基本規定として、政省令により厳しい規制が行われておりますので、必要ないものとして監査特例法においては特段の規定はありませんでした。しかしながら、今回は会計監査人独立性監査特例法におきましても明確にする必要があるとの理由から、この条項が新設されたのでありますが、これはまさに屋上屋を重ねるものであり、私どもは必要ないと判断しているのであります。ただ、私どもは、いささかでも第三者から依頼人と特別の関係にあると疑われるようなことは避けなければなりませんので、あえて拒むことをいたさなかったのであります。  最後に、第十六条の計算書類定時総会における取り扱いについてであります。  今回の改正では、会計監査人適法意見を述べ、監査役会計監査人監査相当と認めた場合には、計算書類の確定を取締役会の権限とし、定時総会には報告事項とすることとされております。  これは、会計監査人選任規定と表裏一体の関係にあり、株主個々が専門的かつ技術的な計算書類内容適否を判断することはむずかしいとの考え方から、その適否の判断を会計職業的専門家である会計監査人の手にゆだねたものと解されます。この改正によって会計監査人の職責がさらに一段と重くなると痛感いたしております。私ども公認会計士は、常に不断の努力を重ね、協会もまた、適切な監査が実施されるよう常々会員を指導してまいりましたが、法律改正されました暁には、さらに一層監視機能を強化して、万が一にも法の期待を損なうことのないよう努力することをお誓い申し上げ、第十六条の改正案賛成であることを申し上げたいと思います。  以上、私どもに直接かつ深く関連する条項について意見を述べさせていただきましたが、今回の改正により会計監査人はさらに一段と強い責任を負うことになると受けとめており、協会独立性維持監査の充実にいままで以上に努め、公認会計士一同わが国経済の発展に多少なりとも裨益したいと念願しておりますので、今後とも先生方の御理解を賜りますようお願い申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、四元参考人にお願いいたします。
  5. 四元正憲

    四元参考人 日本税理士会連合会専務理事四元でございます。  日税連に対しまして本日このような機会を与えていただきましたことを、まず御礼申し上げます。  商法等の一部を改正する法律案について、日税連としての意見を言えということでございますが、商法等のうち商法本法につきましては日税連として特段の意見は現在ございません。といいますのは、その前提となりました法制審要綱、さらにそれをつくりますたたき台となりました法務省民事局参事官室の試案に対しましてその都度意見を申し上げております。そしてその結果、日税連意見を、ほかの方々意見と同様だったせいだと思うのでありますけれども、ほぼお認めいただいておりますので、特に申し上げることはない、こういうわけでございます。  ただ、監査特例法の方につきましては、日税連の申し上げた意見はことごとく入れられなかった、そして法制審要綱ができたと申し上げても過言ではないわけであります。したがいまして、税理士業界としては非常に不満が高じまして、法務省はもとより、与党、野党の議員各先生方にそれぞれ陳情申し上げまして、日税連の意のあるところをくんでいただきまして、法制審要綱を大幅に修正された、そして法律案ができたというわけでございます。しかしながら、その法律案の中に対しましても、なおわれわれとしましては大きな不満が残っている、こういうわけでございます。  その辺について申し上げたいと思いますのは、第一点はまず監査対象会社範囲、これは資本金基準におきまして十億を五億に下げるという問題でございます。これは非上場会社に関します特例でありまして、四十九年の商法改正において十億以上になっていた、これを下げるというわけでありますが、法務省の方の担当官のお書きになったものを見ますと、その理由としまして、本則に戻すのである、本則は五億であるからそれに戻すのであるということと、それからもう一つは、証券取引法におきまして上場会社が五億とな?ているからやはり五億にするのだ、商法においても五億にするのだ、こういうことのようでございます。  しかし、この理由は、はなはだおこがましいのでありますが、理由になってないのじゃないかと思うわけであります。といいますのは、わが国におきましては、上場会社と非上場会社というのははっきり区別すべきではないかと思うわけでございます。「誰がために鐘は鳴る」という言葉がありますが、誰がため監査があるのかということでございます。監査は、上場会社につきましては、株主それから将来の投資家ため監査をやるべきである。これは現在証券取引法がやっているとおりでありますから、文句のないところであります。商法におきましては、さらに債権者保護観点から監査をやるということも、また当然だろうと思うわけであります。ところが、非上場会社となりますと、いわば同族会社でございます。身内会社でございます。そういう会社におきまして、株主ために果たして監査をやる必要があるだろうか、こういうわけでございます。むしろこれは債権者ためにやるべきである。でありますから、負債総額基準としまして監査範囲を決めるということなら話はわかるわけでありますし、またそうあるべきであると思うわけでありますけれども資本金基準ということが、ただやみくもに導入されたような気がいたしまして、その辺につきましていかがかなと思っているわけであります。  これもまた法務省側説明によりますと、資本金の規模というものと、それから負債総額、それから会社営業収入というものは大体バランスがとれている、資本金が大きくなれば負債も大きくなるし、それから営業収入も大きくなるから、大体は資本金基準にしていいのだというような説明のようでございますけれども、これはちょっと統計のまやかしじゃないかと私は思っております。といいますのは、平均をとれば、当然資本金が大きくなれば負債も大きくなる。平均をとればそうなるわけであります。しかし、これはちょうど平均気温みたいなものでありまして、六月は五月より暑いに決まっている。五月は四月より暑くなるに決まっております。それは長年の平均でとればそうなります。しかし、個々の日々をとってみれば、六月だって寒い日がある。五月だって四月より寒い日がある。同じように、会社を見ましても、それは同じ資本金といいましても、資本金は少なくても、五億以下であっても負債を二百億、三百億抱えている会社もあります。と同時に、資本金は大きくとも、これは本当の身内だけでありまして、そうして負債もまたないという会社もあるわけであります。こういう会社に対しましてどうして監査をやる必要があるのか、全く不思議に思わざるを得ません。  特に、いま申し上げたような会社はいわば中企業でございます。その中企業に対しまして公認会計士監査監査法人監査が入るということは、とりもなおさずそこに莫大な経費がかかる。しかも、今度の法律案によりますと、常勤監査役を一人置かなくちゃならぬ、これもまた相当経費でございます。とても五百万できくものじゃない。一千万相当の金がかかるのじゃないか。中企業にとりましては相当な負担でございます。誰がため監査があるのか。株主ためでもない。債権者ためでもない。公認会計士ためでなければ幸いである、こういうふうに思っているわけであります。これが第一点であります。  それから第二点は、監査会社に対しますところの会計監査人税理士業務かかわり合いの問題であります。これは特別利害関係としまして排除してもらいたいということは、会計監査人独立性の点からいきましても当然でございます。それについて日税連は、これを従来公認会計士法あるいは証券取引法に乗っかっていたものは、さらに今回の商法に盛り込んでもらいたいということをお願いいたしまして、監査特例法に乗っけていただきましたけれども、その内容はまだまだ、先ほど公認会計士会会長のお話だとあれで不満のようでございますけれども、われわれもまた逆な意味から不満でございます。しかし、これは何か大蔵省の方としまして、現行の公認会計士法あるいは証券取引法基準よりも著しく広げることはできぬ、あるいは広げることはできぬというような話があったそうでありまして、現状に落ちついた。  したがって、いまのところは監査特例法に入れていただいただけでもありがたいと思わなければいかぬのかというような立場でございますけれども、なお申し上げさせていただくならば、われわれの方の考え方としましては、商法監査の場におきまして監査する側からいきますと、公認会計士本人、それから配偶者、二親等以内の親族、それから使用人といったようなもの、それから受ける側としましては、被監査会社はもちろんでありますけれども、そこの重役、それから親会社、そこの重役、子会社、その重役といったようなものが税理士業務で結びつきますと、そこにやはり公認会計士としての独立性を乱されるおそれがあるし、そしてまた、その税理士業務を通じまして、今度は税理士本人税理士業務を専業にしていますところの税理士の職域を侵されるおそれも出てくる、こういうわけでございます。いまの線を結びつけますと、われわれの方の希望としましては、監査する側が八件になります。監査を受ける側が六件になります。組み合わせば六、八、四十八であります。ところが、今度の監査特例法の案におきましては、個人公認会計士につきましては十本であります。それから監査法人の方については非常に甘くて三本であります。つまり、四十八本こちらがお願いしたのに、十三しか乗っけられていないというのが実情でございます。  ところで、なぜそういうことを申し上げるかといいますと、税理士独立した公正な立場でとなっておりますけれども、なおかつ納税者信頼にこたえましてやっているというわけでありまして、いわば弁護士的立場であります。公認会計士は、言うまでもありません、公正な中立の立場でございます。いわば裁判官的立場あるいは公証人的立場とでもいいますか、この二つは両立しないと思うわけであります。だから、この二つがまざらないようにしていただきたいというのがわれわれの方の従来の主張であります。  第三点としましては、これは税理士業界としてこういうことを言いますと、はなはだおこがましいと言われる、おしかりをちょうだいするかもしれませんけれども、現在の会計監査人制度に対しますところの疑問でございます。これが果たして社会的に実効性があるものなのかどうなのか、つまり、公認会計士独立性の問題でございます。もう一つ事後審査の問題でございます。  独立性といいますのは、最近学者がよく言っておりますけれどもアメリカではいわゆるボード・オブ・ディレクターズというものが社長の上にありまして、それが社長を選ぶ、と同時に公認会計士監査人も選んでいる。そして選ばれた公認会計士社長の方を監査するというわけであります。西ドイツにおきましてもやはり同じように監査役会というのがありまして、ちょうど同じような関係であります。ところが、わが国におきましては、申し上げるまでもございません、公認会計士あるいは会計監査人を選ぶのは社長であります。その公認会計士があるいは会計監査人がその社長をよく監査できるかという問題であります。これは結局そこを頼るのは、先ほど会計士会会長から話がありましたけれども公認会計士のモラル、自覚と職業の倫理だと思います。当然であります。しかしながら、それはもちろん公認会計士が一生懸命やられることは必要でありますけれどもシステムとしてちゃんとそういうものができるようなシステムにするということが大事であると思うわけであります。  それからもう一つ事後審査の問題でありますけれども、これも事後審査がないということは、いわば学生が試験がないと同じであります。それで、アメリカ証券取引法まねをするわけじゃありませんけれどもアメリカでは二千人の証券取引委員会の職員がおりまして、百億の金を使って事後審査をやっております。しかし、そういうことは日本では、いまのような行政改革の時代でありますから、望むべくもありませんけれども、われわれ口幅ったい——税理士の場合で言いますと、これはやはり事後審査、国税庁が事後審査したいという考え方があるわけであります。弁護士にしましても、裁判所の場に出まして下手なことを言うと負けるわけでありますから、一種事後審査であります。医者にしましても、でたらめをやれば病気は直らない。一種事後審査であります。しかし、公認会計士商法監査につきましては何の事後審査もない、やりっ放しであります。だから、この点はやはり考えるべきじゃないかという基本的な問題があるわけです。  そういうことにおきまして、いまの会計監査人制度は、何か欠陥と言っちゃ大変申しわけないのでありますけれども、組織的にシステムとして足りないところがあるのじゃないか。しかし、決してアメリカまねをしろと言うのではございません。下手にアメリカまねをしまして企業がまた衰えてしまっても困るわけでありますから、日本的なやり方で公認会計士独立性、そして事後審査の問題を解決していただきたい、こう思うわけであります。  じゃ一体、結論としまして日税連は今度の商法監査特例法についてどう思うかということでございますけれども、これは先ほども申し上げましたように十億、五億、つまり十億の線を非上場会社について五億に下げられるということについてはきわめて不満でございます。これはむしろ十億の線よりも、そういう監査基準として負債基準だけにすべきじゃないかと思うほどでございます。それから、いまの特別利害関係の問題につきましても、もっと徹底したものにしていただきたいと思うわけでございます。しかし、例の五億、十億の問題につきましては政治的な問題も絡んでいるやに聞いておりますし、また、事がここまで来ておりますと、なかなか今国会におきましてそれをば御修正願うということも、率直なところむずかしいのじゃないかなというふうには思っております。  しかしながら、いまの公認会計士の基本問題、公認会計士と言っては大変失礼でありますけれども会計監査人のそういう基本問題につきましては、将来の問題としましてぜひ一つ根本的に解決していただきたい。あわせまして会計監査人税理士業務とのかかわり合いの問題、それからさらには、税理士業務公認会計士業務が競合する面が多いわけであります。したがって、事あるごとに、去年、おととしの税理士法のときもそうでありました、今度の商法監査もそうでありますけれども、ことごとく公認会計士協会税理士業界がいがみ合う、いわば百年戦争みたいなかっこうになっております。こういうことを根を断ちますように根本的に御解決願いたい。そうしてさらに、今度の会計監査制度につきましても、法律案につきましてもいま申し上げたような欠陥がいろいろとあるわけでございますから、それも一つ根本的に見直していただけないだろうか。しかし、それは今国会のこの場においては無理でございましょうし、これは多分に行政レベルの問題ではなくて、政治レベルの問題ではないかと思いますので、いま自民党それから各野党先生方に対しましてその基本問題につきまして抜本的に御研究願いたいということをお願いしているところでございます。  日税連としましては、その基本問題の方がとても大事なことであるというふうな発想の転換というものを一応行いまして、十億の線についてはなおお願いしたいわけでございますけれども、十億を余り固執するがゆえに、ここでまた廃案運動とかいろんなことをやって御迷惑をかけるというような、そういう積極的な反対はよしにして、とにかく反対反対でありますけれども、基本問題の線におきましてぜひこれを抜本的に解決していただきたい、こういうふうに意思統一を行っております。  なお、それにつきましては、今後の審議におきまして私がいま申し上げましたようなことはぜひ附帯決議として残していただきたいということと、それからもう一つは、法務省の方としましては、基本問題についてはもはやそれは法務省の問題ではないというふうなお考えのようでありますけれども、やはりもとは法務省に発しますし、また、これが一定の成果が出ますと、また商法改正としまして法務省に返るわけでありますので、どうぞ人ごとみたいな顔をなさらないで、ひとつ十分に関心を持っていただきたい、こういうふうにも思うわけでございます。  いろいろと申し上げまして、時間も超過いたしまして申しわけございません。日税連の意のあるところを申し上げました。ありがとうございました。
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、坪内参考人にお願いいたします。
  7. 坪内肇

    坪内参考人 経団連の会社法問題小委員会委員長を仰せつかっております坪内でございます。  本日は、経団連がどのような考え方で今回の会社改正作業に臨んできましたか、また、この法案段階でなお残されている問題は何かについて申し述べたいと思います。  まず初めに、昭和五十年以降の会社改正審議に対する私ども経済界の基本的な考え方を申し上げたいと存じます。  われわれが経済活動を進める上におきまして、会社法とは会社の組織、運営を合理的に行わしめるための基本法であります。したがいまして、経済社会の進展に即応して時期を失することなくこれを改正することが必要であると考えております。しかしながら、その反面、法の規制的側面につきましては、規制すべき弊害の実態がどうかということ、規制手段が目的と合致しているかどうかにつきまして十分な検討を加えることが重要でありまして、いやしくも規制手段が経済の実態から遊離し、あるいは過剰規制によって会社の効率的な運営を妨げることのないよう慎重な検討が必要であると考えております。  今回、会社改正が急がれましたのは、一部企業の不正事件も改正の大きな契機となっているようでございますが、例外的な事件のために一般の企業にまで過度の規制を課しますならば、企業の機動的かつ円滑な運営に支障を来すであろうことは疑いを入れません。規制強化は、官民双方におきまして必然的に経費増、人員増を伴うものでございますが、このような方向は、国民の要望に基づいて現在政府及び第二臨時行政調査会がその実現を目指し、尽力されつつあります行政改革による行政全般の見直しと、歳出削減や民間企業の活力発揮に逆行するものと言わざるを得ません。また、会社運営の適正化のためには、厳格な法規則によってではなく、情報開示の充実によって対応していくのが基本であろうと考える次第でございます。会社の利害関係者にとりまして必要かつ十分な情報の開示は、自由かつ公正な企業の運営にとりまして不可欠の要素と考えられるからでございます。もとより、情報開示の充実と申しましても、企業機密との関連及びコスト・ベネフィットの観点から、この開示すべき範囲とその限界につきましては慎重に検討する必要がございます。  欧米におきましては、行政の過剰な介入は民間活力の発揮を妨げ、経済を非効率にするという見地から、政府による各種の規制が全面的に見直されているようでございます。特にアメリカ合衆国では、その一環としてSECによるディスクロージャー規制の簡素化、合理化が進められております。しかるに、わが国におきましては、会社法と証券取引法という二元的法制のもとで重複したディスクロージャーが余儀なくされておりまして、それぞれの法律が果たすべき役割りについての基本的な議論がほとんどなされていない実情を考慮いたしますと、法改正は必要最小限のものにとどめ、今後基本的問題に関する十分な審議を待って必要な改正を図るべきであると考える次第でございます。  次いで、商法等改正案の問題点について申し上げます。  会社改正に対します私ども経済界の考え方につきましてはただいま申し述べましたとおりでございますが、この考え方につきましては、法制審議会商法部会でも十分発言の機会を得ることができ、したがいまして、改正要綱案及び改正法案はおおむね妥当な内容のものになっていると考えられます。すなわち、改正法案にはディスクロージャーの強化が打ち出されるなど、企業の対応がむずかしくなるという面もあるのでございますが、他方におきまして、株式単位の引き上げや新株引受権つき社債の導入など、かねてから経済界が要望してまいりました事項が取り上げられており、まずまずの内容であろうかと考えられます。  せっかくの機会でございますので、今回の改正法案に対する意見ないしは要望事項といったようなものを若干述べさせていただきまして、あわせ皆様方の御理解をいただきたいと存じます。  まず第一の問題は、いわゆる資本組み入れの割合についてでございます。  法律案によりますと、額面株式、無額面株式とも発行価額の二分の一以上を資本に組み入れることとしておりますが、私どもは、以下のような理由から、むしろ現行法の方が妥当であると考えております。  すなわち、諸外国にも改正法案のような法制は全く見られないのでございます。つまり、諸外国におきましては、わが国の現行商法と同様、額面超過金の全額を資本剰余金または資本準備金に組み入れることを義務づけております。  また、改正法案は株式の無額面化を志向していると見られますが、現実には会社が無額面株式を選択することはほとんどない実情と考えられます。無額面株式が一般的と見られていますアメリカ合衆国でも、無額面株式は三分の一にすぎないと言われております。  なお一部にはこの改正によって企業が増配することを期待する向きもあるようでございますが、このようなことになりますれば、企業は増配圧力を回避するため資本市場からの資金調達を敬遠し、間接金融、つまり銀行借り入れへの依存を高めることになりかねません。これでは資本市場は沈滞し、また、わが国企業の長年の課題である自己資本充実の要請に逆行することになりかねないのでございます。  したがいまして、時価発行した場合の資本組み入れ割合につきましては、現行法制の方が望ましいと考えております。  次に、自己株式の取得緩和について申し上げたいと存じます。  経済界はかねてから自己株式の取得緩和を要望しておりましたが、今回の改正では残念ながら見送られております。そこで、今回においては無理といたしましても、来るべき改正におきましてはぜひとも緩和を実現していただきたいと要望する次第でございます。  何となれば、まず、自己株式の取得は、役員や従業員にインセンティブを与えるためのストックオプション、株式の交換による合併あるいは緊急避難的な事態に対処するために必要であるからでございます。次いでこれ以上に重要なことは、ようやくわが国で広く定着してまいりました従業員持ち株制度の拡充を図る上でも自己株式取得が必要不可欠ということでございます。  しかし一方では、自己株式取得には弊害が伴うという意見もございます。その一つとして株主総会決議の歪曲化が問題とされますが、これにつきましては議決権行使の禁止によって、また、資本充実の原則に反するという批判につきましては自己株式取得の範囲を利益剰余金の枠内に限るとすれば、それぞれの弊害は除去し得ると考えるのでございます。さらに、株価操作及び内部者取引の弊害も指摘されますが、この点につきましては証券取引法の規制強化により除去し得ると考えております。  これらのような理由によりまして、自己株式取得緩和の早期実現をお願いした次第でございます。  さて、最後に簡単に情報開示の強化問題に言及いたしまして、私の意見陳述を終わらしていただきたいと存じます。  この情報開示の強化問題、特に営業報告書及び附属明細書等の記載内容につきましては、その内容いかんによりまして、私どもは実務上の対応がすこぶるむずかしくなることを懸念いたしております。そこで、情報開示につきましては、先ほども申し述べましたように、総合的また慎重に検討されることを期待しておる次第でございます。  以上、会社改正に対する経済界の考え方を簡単に申し述べさしていただきましたが、諸先生方の御理解をいただければ幸いと存じます。  御清聴ありがとうございました。
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  10. 横山利秋

    ○横山委員 短い時間でたくさんお伺いをしたいのですけれども、ひとつ簡潔にお答えを願いたいと思います。  まず、使途不明金の問題であります。これは中瀬さんとそれから坪内さんにお伺いをいたします。  国税庁の調査によりますと、使途不明金の金額は、五十一年度、資本金一億円以上一万五千社のうち五千社について調査した結果、使途不明金は二百九十五億円、五十二年度もございますが、大変な金額になっております。この使途不明金について一体会社監査役はどんな監査をしておるのか、税理士としては、これは税務上使途不明金とすれば国税庁はいいということになっておるわけでありますが、一体会社としてはどうあるべきか、また公認会計士としてはこの使途不明金がどうあるべきか、それぞれの立場からお伺いをいたします。
  11. 中瀬宏通

    中瀬参考人 お答え申し上げます。  私どもは、使途不明金問題が出ましたときに、早速会員に、昭和五十四年十二月十日「不正支出、使途不明金等に係る監査の充実強化について」という通達を出しまして、会員により一層充実した監査を実施するよう要望しております。  私どもは、企業の損益計算について意見を申し述べております。使途不明金というのは税務上の用語でございまして、会計上は費用が費用として出ていればそれでよろしい、それを国が費用として認めるか否かは、これは国税局の立場でございまして、私どもは、ある種の証憑を突合いたしましてその費用が費用として出ているということになれば、それで損益計算としては正しく表示されている、こういうふうに理解しております。
  12. 坪内肇

    坪内参考人 使途不明金が、取締役の職務執行に関しまして不正の行為または法令等に違反する事実がありますれば、監査役監査報告書に記載することが義務づけられておりますが、私も監査役でございませんので、会社の役員の一人として申し上げますと、費用を全部計上いたしまして、これが税務調査の結果使途不明金という言葉が生まれてくるわけでございますので、会社といたしましては努めてその使途不明でないようなぐあいに持っていくのが正しいことであり、また費用として計上するのが当然だと考えております。その中で使途不明と称されるものが出てくるということでございます。  お答えになったかどうか知りませんけれども、簡単に……。
  13. 横山利秋

    ○横山委員 お答えになりませんが、それだけ苦しい御答弁をなさるということを記憶をしておきます。  坪内さんにもう一つお伺いをいたしますが、今回の改正で取締役というものの権限がふえて、代表取締役が悪いことをやっても連帯責任があるよ。おれは平取だから知らぬ、おれは支店長平取だから本社のことは知らぬ、何かかんかと言っても連帯責任があるということになります。そういうことが実態に合うのかどうか、質問はこういう意味であります。「ものいえば唇寒し取締役」という新聞記事がございます。今回、取締役会というものの権限を強化した、そして、代表取締役といえども勝手にはできぬ、何か勝手なことをやったら、取締役会で物を言わなければ平取にも責任がある、そういう状況がいまこう改正をして果たして全会社に徹底するだろうか、実効が担保されるだろうか。経団連を含めて、どうしてそういう趣旨が全国の、まあ中小は別としても、大会社に徹底され、実行され得るかどうかという点についてどうお考えですか。
  14. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまの御質問でございますけれども会社の機関ということの一環でございますが、会社の機関に関しましては、この運営がやはり一番問題になると思います。法律上ある程度の規定ができておりましても、この運営のいかんによってはこれはどうでもできるわけでございますので、結局は、代表取締役あるいはそれに類似する右翼の方の幹部の取締役が、そういう正しい公正なことを身をもって実現するような経営をするということ以外にはないんじゃないかと思います。  今回の商法改正におきましても、いろいろ会社の機関について取り上げられておりますけれども取締役会が唯一の決議機関であるということは変わらないわけでございまして、この取締役会の運営いかんという問題は、実施面の経営上の問題でございますけれども、これはすべてその衝に当たる人の態度によって左右されると私どもは考えておりますし、法律でいかに規制しようとも、運営が正しくなければやはり正しくないことが行われるのじゃないか、そのために今度、取締役会にもやはり監査役出席いたしまして、監査役がある程度それをチェックするというような機能にしてあるのではないか、こう考える次第でございます。
  15. 横山利秋

    ○横山委員 四元さんにお伺いをいたします。  先般この法務委員会で、日本税理士会と自由民主党とがいかなるお約束をなさったのか、これは陰の問題ではあるけれども商法審議にきわめて重大なことであると言いまして、理事会で山崎委員から一応の話を伺ったわけであります。ここで政府に聞きましたところ、政府は、仄聞しておるけれども、よくはわからないということでございます。もちろん法務省です。この機会に、自由民主党と日本税理士会がいわゆる基本問題なることについてどんなことを約束されたのか、明らかにされたいと思います。
  16. 四元正憲

    四元参考人 お答えいたします。  その自民党の肝心の理事がいらっしゃいませんので、果たして申し上げていいのかどうか、ちょっと懸念がございますけれども、どっちにしましても、もう内部で発表したことでございますので、申し上げます。  これは余談でありますけれども、とにかく、現在の監査特例法の中にいろいろ不満があることは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、これを一時的に、たとえば資本金十億以上ということでとまったとしましても、また数年後に、二、三年後あるいは四、五年後に、商法の全面改正のときにこれが出てくる。それから二次監査の問題も出てくる。それから、先ほど申し上げましたように、絶えず公認会計士税理士の職域のトラブルの問題が出てまいります。こういうことを抜本的に解消していただくためには、どうしてもいま横山先生の御質問のようなことはやっていただく、そうでないと、われわれとしましてもうとにかくやりきれぬ、こういうわけでございます。  その内容を申し上げますと、約束という、これは自民党もああいう大きな政党でございますから、総務会あるいは政調会の辺でちゃんとそういうことがまとまったというわけでございませんけれども、まず最初、担当者との段階におきましてこういうことを考えようと、つまり、会計監査人独立性を確保するため会計監査人選任または解任についてチェックをすることができるような制度、その他会計監査に関する基本問題を自民党内にて検討する、こういうわけでございます。  この会計監査に関する基本問題というのは、それではまるで人ごとじゃないかというような批判がわれわれ税理士業界内においてもあったわけでありますけれども、これはいわく言いがたしということでありまして、当然この中には、公認会計士制度と税理士制度の職域調整、それから制度的な調整も含んでおるというふうに理解しておりますし、さらには、先ほど申し上げましたように、たとえ今度の商法改正案、監査特例法改正案がこのとおり決まったとしましても、それのいろいろさっき申し上げたような理論的な問題におきますどうかと思うところがあるわけでありますから、それに関しますところの見直しも含んでいる、こういうふうに理解しております。  幸い、自民党の段階におきまして、総務会の段階でこの話が出まして、それで大体何か御了承——われわれは総務会を傍聴もできませんけれども、また聞きするところでは、何かそういう御発言がありまして、それは結構じゃないか、大いにやるべしというようなことになっていると伺っておりますので、ぜひ、これが片づきましたら、その方向で抜本的検討をお願いしたいと思うわけでございます。  さらに、これは自民党だけでございません。横山先生の社会党の方に対しましてもすでにもうお願いしているところでありまして、幸い商法対策特別委員会が設けられているようでございますから、その場におきましてこの問題を抜本的にお願いしたいと思いますし、また、ほかの公明党あるいは民社党の先生方にも、同じようにこのことはお願いしておるわけでございます。ぜひとも各政党におきまして、この問題を前向きに御検討願いまして、ひとつ抜本的な解決方法を見出していただきたい。そうしますと、こういう問題は根本から解決いたしますし、先ほどのそういう年来の百年戦争みたいなことも片づくんじゃないか、これを期待しているわけでございます。  以上でございます。
  17. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっとその点についてもう少しだめを押したいと思うのですが、基本問題といいますと、四元さんの言葉をとらえるわけじゃありませんが、一つ公認会計士独立性一つは組織調整とおっしゃる。この独立性と組織調整というのは、ちょっと次元が異なるのではないかと思います。  独立性の中にいわゆる選任、解任を、先ほど触れられましたように被監査会社公認会計士との関係という意味においては、これは理解できないわけではありません。しかし、百年戦争を終結させるための組織調整といいますと、どういう意味だか私にはよくわからないのであります。たとえば両協会のだれかが、いつか大蔵省の某退職官僚が申しました合併などということをお考えになるのだろうか。先ほどあなたは弁護士と裁判官という例をお用いになりましたが、弁護士と裁判官が合併するはずはないわけであります。そういう点に理論的な矛盾を感ずるわけですが、日税連がおっしゃらなくても、日ごろ公認会計士協会社会的地位、独立性、そして公正性、そういうものを力説しておるわけでありますから、私どもとしては、前者については理解できないことはないけれども、後者の組織調整という意味がよくわからないのであります。その点を四元さんと公認会計士協会中瀬さんからお伺いいたしたいと思います。
  18. 四元正憲

    四元参考人 先ほど言葉が足りなかったようでございます。組織調整という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、むしろ方向は逆でございます。つまり、公認会計士独立性を強調いたしますと、当然税理士業務を兼ねるのはおかしいのではないかという問題が出てくるはずでございます。これは先ほどるる申し上げましたように、とにかく一言で言えば、税理士弁護士的立場で仕事をいたしますし、公認会計士は裁判官あるいは公証人的立場で仕事をいたします。したがって、いまの日本社会において弁護士は文字どおり裁判官を兼ねられない。公証人も兼ねられないはずでございます。これが現在一人両役でやっているというところに実際は問題の根源がある。  でありますから、これはわれわれ部内で両者の間のかきね論と称するのでありますが、かきねを取っ払うとか合併するという方向ではなくて——現在はかきねを乗り越えて公認会計士税理士の方にどんどん入ってきます。これは法律でそうなっているから入れるわけでありますけれども、比較的に入ってくる。ところが税理士の方は、こちらのかきねから向こうに行けないということになっておりますが、むしろそういうかきねに穴を広げるという方向ではなく、あるいは取っ払うという方向ではなくて、かきねをもっと強固な鉄筋コンクリートにいたしまして、先ほどの裁判官と弁護士が兼ねられないというような方向、つまり、公証人と弁護士が兼ねられないというような一つの理屈を持ち出しましてはっきり区分していただくならば、これですべては終わるのだ、これから先のいろいろなトラブルもなくなるのだろう、こういうふうに思っているわけでございます。
  19. 中瀬宏通

    中瀬参考人 公認会計士制度は昭和二十二年にできまして、会計職業的専門家として公認会計士と同時に税理士業務ができる、こういうふうに定められております。しかしながら、私ども監査いたします会社、さらにはその子会社関係会社等その監査している会社につきましては税理士業務ができないわけでございます。したがいまして、監査業務と税理士業務というものは明確に区分されていると私どもは理解いたしておりまして、抜本的改正等のようなことを考える必要は毛頭ないと私どもは考えている次第でございます。
  20. 横山利秋

    ○横山委員 坪内さんにお伺いをいたします。  先ほども、どんなに法律改正しても運用よろしきを得なければ意味がないとおっしゃったのですが、やや人ごとみたいに聞こえたのですけれども、もう一つの問題は総会屋の問題であります。総会屋対策が今度改正法に出ておりますけれども、こういうことで総会屋が一体抜本的に排除できるだろうか。無償のものをやってはいかぬよと言えば、雑誌を売りに来る、広告をとりに来る、追えども去らぬハエのようにやってくる。総会屋を育成しているのはむしろ会社ではないのか。会社さえ毅然とした態度でおれば総会屋の存在の余地はない。だから、会社こそまさにダニのようなこの状況について、法律改正、その運用においてももっと手厳しい措置をとるべきであるのにかかわらず、商法改正を先年やりました、今度もやりますが、これで会社が本当に真っ先に立って総会屋の排除に一体どういうふうに取り組むつもりなのか、それをお伺いいたします。
  21. 坪内肇

    坪内参考人 総会屋という言葉が一般に言われておりますけれども内容をはっきり規定するということはむずかしいのではないかと思いますが、一応いま言われております総会屋ということでございますが、今度の商法改正によりまして無償の利益供与は違法であるということがはっきりしてくるわけでございますので、企業といたしましても違法なことはしてはいけない、この法律を遵守するのは当然でございますので、各企業とも今後厳密に遵守するだろうとは思いますが、経団連といたしましても、当局から十分説明を聴取いたしまして会員に徹底化を図るというようなことで、この点については前向きに取り組みたいということでございます。私も、いま経団連の小委員長という身分と実際会社の役員という二つの身分を兼ねておりますので、実は大変お答えにくい点があるかもわかりませんけれども、本日は一応経団連の小委員長として一般論の立場からお答え申し上げておる次第でございますので、よろしく御了承をお願いしたいと思います。
  22. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つの問題として総会の問題があります。今般、総会屋がアメリカへ勉強に行って、アメリカは総会を長時間やって、そして自由に物を言わせておるということでむしろ感心して帰ってきたそうでありますが、日本では三十分で終われば、三分で終わればこれは総会屋のおかげ、あるいは会社の運営よろしきを得たといっていばっておる風潮があるわけであります。あなたは、先ほどのお話によると、企業秘密云々を理由にして情報開示には余り積極的ではないように思うのでありますが、日本株主というものが、五百円から四千円ぐらいのおみやげをもらって株主総会でただ拍手するだけで帰ってくる、そして会社もなるべく早く手じまいをしたいというような物の考え方を変えなければいかぬ。二時間かかろうが三時間かかろうが、会社内容なり運営なり将来の展望を株主に十分に話をするということをどうしてそんなにいやがるのか。そういう点については、別にあなたを例に出すわけではないのですけれども日本会社は、情報開示を法律的にどんなに打ち立ててもそれは釈迦に説法なのではないか。この機会に、情報開示及び株主総会の運営のあり方について改善をなさる意思が経団連としてもあるのかどうなのか、その点はどうですか。
  23. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまのお話のうち、まず、日本の総会屋さんが過日アメリカに行きましていろいろ御研究されたという問題でございますが、私どもアメリカ株主総会のあり方というのはいろいろ研究させていただいておりますけれども、やはりアメリカにおきましても、提示されました議題につきましては真っ先に全部審議を終わりまして、その後で会社の経営のいろいろな問題につきまして株主の方と自由に懇談的に二時間も三時間も、あるいは昼飯を食べながらも情報開示をやっている、まあ大変民主的なやり方だと思います。  日本会社におきましてもそういう会社が間々あるかのように承っておりますけれども、現実には十分とか十五分で議題だけさっさと済ませてしまいまして、後は、懇談のことは、特殊な質問にもよると思いますけれども、後日会社に来て話していただくとか、あるいはこの席上では不適当だから後ほど御回答いたしましょうということで大体済んでいるのが実情だと思います。  私自身も、また経団連といたしましても、情報開示というものは重要であり、株主との密接な関係というのはそういうところから生まれてくるものでございますから、努めて開かれた総会といいますか、こういうことをやるのが当然だと思いますが、何もこれも総会の席上だけでやらなければいかぬのじゃないかということも言えないと思います。いずれにいたしましても、会社株主あっての会社でございますので、株主会社との関係というのはやはり開かれたもので、会社側も懇切丁寧に質問には応ずるようにすべきだと一般的には考えております。
  24. 横山利秋

    ○横山委員 時間がなくなってまいりましたが、会社といい、あるいは税理士会といい、公認会計士会といい、少なくとも御来会の三者は、日本経済を、また企業の納税とかあるいはまた監査とか、こういうものが公正に行われることを担保するそれぞれの組織なのであります。その三者の意見が、三者の立場が違っておる。そして税理士会と公認会計士会が、いわゆる百年戦争という表現は適当じゃありませんけれども、そういう中でも結局は公認会計士のマーケットが少ないために、公認会計士の約半数ぐらいが税理士業務をやっておる、こういう状況で、頭は二つだけれどもしっぽは一つだ。その中でこの両組織の円滑なる協力関係が一体どうしてできないのだろうか。できる方法は、先ほど四元さんがおっしゃったように、職域を、まあコンクリートは別としても、きちんとしておれば何もいがみ合うことはないではないかと私は思うのです。  そういう意味合いで、特別利害関係者の問題について厳しくしてくれというならば協力をしましょうということをやっておるのですよ。やっておるのだけれども、さて、それなら本当に特別利害関係者に関する違法な監査と税務を実際に両方やっておるけしからぬ人がおるのかという点については、余り実例を聞いておらないのです。現在の現行法における違法性というものを余り聞いておらないのです。今回の改正によってさらにコンクリート化するということで進むわけなのですけれども四元さん、どうなのですか。現行法でいままでの経験上、そういう特別利害関係者の規定に違反して公認会計士が税務をやっておる事例というのはそんなにたくさんあるのですか。
  25. 四元正憲

    四元参考人 具体的事例としましてどうこう挙げるということは、むずかしいというよりも非常にわかりにくい。といいますのは、これは税理士が多分に泣き寝入りした部分が多いだろうと思うのであります。特に直接の被監査会社の場合は数も少ないし、はっきりするのでありますけれども一つの被監査会社について子会社がまず十件見当ある、孫会社が十件、そうしますとこれは百件になります。つまり、今度の五億、十億の間において税理士が関与している会社七件しかないそうじゃないかということを聞きました。私の方はつまびらかなデータを持っておりませんからわかりませんけれども、ひょっとすると直接にはそんなものじゃないか、そんなものかもしれぬと思っております。しかし、今度ふえる監査会社というのは大体七百社、最初は千三百と聞いておりましたけれども、いろいろ手直しがありましてか、七百と聞いております。そのうち四百はすでに証券取引法の子会社等の関係公認会計士が入っておる。だから、実際ふえるのは三百だと聞いております。しかし、三百社がいまほど申し上げたように子会社十社、孫会社となりますと三万であります。  これは実際私も経験があるのでありますけれども、私の関与しておる会社が、実はその親会社の方から指示があって、そちらの方の指定する人にかえてくれということで、先生申しわけありませんが。私もプライドがありますから、そうかそうか、それは結構だ。そういうときにがんばるのはいやなものでありますから、ということで目をつぶりましたけれども、こういう例は非常に多いのではないかと思うわけでございます。何も税理士が悪いことも何もしないうちに、親会社の方からの指令でかえさせられてしまうという例はあるわけであります。  どうしてそうなるかといいますと、なるほど公認会計士自体は被監査会社についてはやりません。奥さんもやりません。しかし、自分の事務員につきましては監査法人の場合はできるわけであります。つまり、担当の会社でなければできるということになっております。ましてや親きょうだいは自由でございます。二親等以内の親族については触れておりません。それから使用人の場合もいまのようなことであるし、ましてや友人なんかになったら全然関係ありません。したがって、Aという会社をやっています公認会計士は、そのAの会社のあれはできません。それは税理士はできません。しかし、今度はBの会社をやっておる公認会計士と相互に交換することは自由なわけでございます。現在は違法でも何でもない。  だから一説に、公認会計士の職域が広がればその分税理士の仕事が回ってくるじゃないか、こういうことをよく言われるのですけれども、これほど人をばかにした話はないわけでございます。そんなことをするほど気前のいい公認会計士なんかおりはしません。もしそうなれば、自分ができないとなれば自分の身内の者あるいは使用人あるいは友人の親しい者に必ず譲るのが順当でございまして、一般にこれをほうり出して、税理士だれでもやりなさいというふうになるほど気前はよくない。また税理士の場合だって同じことだと思うわけであります。ですから、こういうことは全く空念仏にすぎないのでありまして、とにかく公認会計士の仕事が広がるということは、その十倍あるいは百倍の範囲税理士の方が不安感を持つ。これは大きなものでございます。  私自体も、私は三十年前からの公認会計士でございます。しかし、公認会計士といいますか、監査業務は全然やっておりません。税理士本業でございます。しかし、私ですら、いまみたいな親会社を通じまして実際関与先を取られている。間違いない事実でございます。ですから、そういうことは非常にたくさんあるのじゃないか。ただ、みんな「武士は食わねど高楊枝」といいますか、侍でありますから余り泣き言を言わない、黙っているということで隠されているのじゃないか、こういうふうに思っております。  以上です。
  26. 横山利秋

    ○横山委員 中瀬さんも一言なかるべからずだと思いますから、中瀬さんには、その問題について言及なさると同時に、もう一つだけお伺いしたいと思いますのは、先般来新聞記事でいろいろな会社の問題を取り上げて、その中における公認会計士は一体どうなっておったのか、意見差し控えを出した公認会計士があるということなのですが、それは別として、一体いまのありようによって監査日数というのが適切なのだろうか、あるいはまた、やらなければならぬことをこの監査日数、この報酬の中で十分なし得ておるだろうか。一つには、たとえば税理士会の言い分としては、会社を広げるよりも監査日数をふやしてもっと密度の高いことをしてやったらどうかという意見もあるのですが、監査日数、監査条件、監査報酬の点について一言触れていただきたいと思います。
  27. 中瀬宏通

    中瀬参考人 二つのうちの最初の御質問でございますが、私ども公認会計士監査を主とした業務をしておるわけでございます。しかもその監査をしている会社あるいはその関係会社、子会社まで税理士業務はできない、こうされておりますので、確かに税理士会の方々は不安があるかもしれませんが、そういう現実がない限り、私ども税理士会の方の職域を奪ったというふうには考えていないわけでございます。ただ、もしもそういう御不安があるならば、私どもは苦情処理機関を会計協会税理士会とつくりまして、もしもそういう事例があるならばお申し出をいただいて調整をさしていただきたい、かように思っているわけでございます。  それから第二点の御質問でございますが、私どもは現在十分な監査を実施している、こういうふうに考えております。協会におきましても、監査業務審査会というのがございまして、会員の実際の監査業務を日々チェックしておりますし、またそのほかに組織的監査要綱というものをつくりまして、組織的な監査、大会社については組織のある監査を実施しよう。それからさらには、本年三月には監査マニュアルというようなものを発表いたしまして、どの会員でも均質な監査を実施するというようなことを指導いたしております。そういう意味で、私どもは現在十分な監査社会にこたえられる監査を実施している、こういうふうに考えております。
  28. 横山利秋

    ○横山委員 ありがとうございました。
  29. 高鳥修

    高鳥委員長 小林進君。
  30. 小林進

    ○小林(進)委員 私に与えられた時間はわずかに十分でございますので、ごくかいつまんでひとつ三先生に質問を申し上げたいと思うのでございますが、第一番目には、経団連の小委員長さんにお伺いいたしたい。  企業というものは、会社というものは、もうければ正しい。損して赤字を出せば、これは間違いなのだ、これは不正なのだ。でありまするから、会社の本体はもうけるか損するか、そのためにはときに手段を選ばずという形にならざるを得ない。この意味において私は会社性悪説なのです。会社というものは悪いのだ。社会正義なんて言ったのじゃ、企業はもうからないのであります。会社性悪説。刑法のたてまえは、御承知のとおりに悪意の推定はせずということで、そういう立場法律を進めていきますが、事企業に関する限りは、私は性悪説だ。会社というのは悪いのだぞ、もうけるためには手段を選ばないのだからという形で法改正というものをやっていかなくちゃならぬ。今度の商法改正には、そのいわゆる哲学的立場がどうも不明瞭だ。これが私は気に入らない。大変気に入らぬ。  それで、企業性悪説の中で一番社会に蠧毒を残しているものは、いろいろありますよ。しかし、その最たるものは二つだ。一つは、いま横山さんが言われたいわゆる株主総会における総会屋の跳梁を許していることだ。これが社会に大変蠧毒を残しておる。いま一つ会社による政治献金です。これは日本の政治というものを実に悪くしている。この二つをどう抑えるかということが私は法改正の中心に浮かんでこなければならぬと思うのだが、残念ながらそれがない。  それで、先ほどもこの株主総会の総会屋の話はありましたから重複を避けますけれども、私は、この総会屋を跳梁させているものは社長にあると思っているのです。会社性悪説は社長性悪説なのです。社長と総会屋が密着して、共同の利益に立っている。社長も隠したいことがいっぱいある。それを総会屋の力をかりてやろうとするのが結局総会にあらわれて、今度の総会はおまえ十分で終わらしたから腕がいいわい、三十分間も一時間ももめ抜いたからどうも腕が悪いや、こういうしきたりを社長会がつくってしまった。そのために個人的に総会屋と一緒にマージャンをやったりゴルフをやったり、あらゆる悪の癒着をやっているのであります。これが一体、このたびの法改正できちっとできるかどうか。  私は、与えられた時間が短いから演説しているわけにいかないから、これ一つ聞きます。総会屋の癒着は、法改正の前に社長みずからの姿勢を直さなきゃいけない。企業みずからの姿勢を直さなきゃいけない。それはきちっと、この法改正を契機にしてやり得るかどうか。  第二番目は、やはり政治献金です。いいですか、こんなことを理屈を言っちゃだめだから理屈はやめますけれども、労働組合なんて、自分のもらった賃金から、自分たちの自由に帰した賃金から社会党に政治献金している。会社の利益というものは重役の利益じゃないんだ。個人の財産じゃないんだ。それを皆手取りで、しかも表へ出さないで、あらゆる方法で脱税方式でそういうことをやって、世の中を全部悪くしている。これがこのたびの法改正で一体直せるか直せないか、きちっとひとつ——さっきのあなたの株主総会の話なんというのは、あんなのはおちゃらかしですよ。あんな答弁は私は了承できません。もっときちっと、良心に基づいてやってください。  それから、税理士の親方さんにひとつ申し上げますけれども税理士会と公認会計士との間に、あなたは先ほどのお話の中で、基本問題として職域の調整ということをおっしゃった。五億くらいの会社をわれわれは税理の仕事をやっておるときに、やはりその根幹に流れる会計というものは正しくなくちゃいかぬから、必然的にわれわれの方がそういう帳簿の正しさも見てやっているじゃないか、だからわれわれの手で間に合うんだ、何もそれを公認会計士のところまで新しく持っていって、そして一年間に公認会計士だけに払う金が数百万円、新しくその会計士を雇うことによって新しい費用が一千万円、二千万円近い余分な金を会社に負担せしむること、それだけで企業の生々たる自由発展にむしろ悪を流す、障害を来すじゃないか、われわれに任せて結構間に合うという主張があるようでありまするが、この職域の調整という問題についていま少し詳しくお聞きしたい。これが一点です。  時間がないから、これはいわゆる会計協会会長さんにお伺いしますけれども、皆さん方は非常に能力をお持ちの紳士である、りっぱであるけれども、一体会社の不正というものをいままで具体的にどうお挙げになったか。私どもはここで論議をしながら、公認会計士によって会社の経理が整々とやられ、不正を正して社会の人ももっともだという実例を教えてくれ、教えてくれとここで何十回質問したけれども、残念ながらその実例というものは挙がってこない。まあ日本の制度とは違いますけれどもアメリカへ行くとSECの制度がありますな、客観的に。その制度は、会社株主の利益を損なうような行為に対しては、このSECは実に正しく監督している。残念ながら、ロッキード事件なんかもみんなこのアメリカのSECから日本に漏れてきた事実だ。彼らはそれくらい株主の利益を擁護するためにきちっと正しい会計検査をやっておりますが、先ほど四元さんはあなた方のことを裁判官、これはおかしいよ、あの例は。あなた方が会社に臨むときに裁判官や.公証人みたいな立場できちっとやるなんというのは、言葉として存在するけれども、冗談じゃありません。いまのところは、公認会計士なんというものは会社重役のサーバントですよ。しっぽを振ってついて歩いているようなものでありますから、それが名実ともにいわゆる裁判官のように、会社の不正あるいは経理の不満あるいは至らざるところをきちっとやった過去の経歴があるかどうか。今後も、この法律改正によってきちっとやるだけの自信があるかどうか。  もうこれで私の質問、十分間になってしまいましたから、残念ながらこの三つにして終わっておきますけれども、ひとつ一人一人お答えをいただきたいと思うのであります。
  31. 坪内肇

    坪内参考人 ただいま小林先生から大変高邁な経営のお話を伺ったように思いますけれども、まず第一番目に、企業は当然利潤を上げなければならない、これはもう当然でございまして、利潤を上げない企業は何ら社会的な責任も果たすことはできません。したがいまして、利潤を上げるのはいいと思いますけれども、その利潤を上げる手段が、すべて企業が性悪なるがゆえに利潤を上げているという、これはちょっといただけないのじゃないかと思います。まあそういうところもあろうかと思いますけれども企業は非常にまじめに一生懸命働いているという前提でひとつぜひお考えになっていただきたいと思います。  それから、簡単なのは政治献金でございます。これはもう政治資金規正法というのがございますので、その法律にのっとりまして合法的にいま企業は政治献金もしているということでございまして、これがいかぬということになりますと、ちょっとその以前の問題じゃないか、こう思います。  それから、総会屋と社長の癒着、これは確かに経営姿勢の問題でございます。それで、もう非常にりっぱな社長のある会社は、総会屋とは一つも癒着してない、こういう会社も現にあるわけでございます。もうすべてすべからくそういうぐあいに持っていくべきだと思いまして、お答えが大変精神的なもので申しわけございませんけれども、おっしゃるとおりだと思います。
  32. 四元正憲

    四元参考人 税理士は、残念ながら、公認会計士法によりまして企業会計監査はできないことになっております。しかし、先ほどお言葉がありましたとおり、あの程度の会社につきまして税理士がタッチしている場合には必ず全部の証憑に目を通す、そうして決算についてもちゃんとタッチしている。といいますのは、これは事後審査のところで申し上げましたように、税理士の仕事はやりっ放しではございません。後ほど税務署あるいは国税局、国税庁の調査の目にさらされるわけでありますから、それこそ慎重にならざるを得ぬわけであります。したがいまして、税理士がそうしてやったあるいは国税庁において受理して通ったものは、むしろその方が信憑性が高いのじゃないか。でありますから、これを公示、公告するという方法で公認会計士の、会計監査人監査にかえる方法もあるのじゃないか。一つの便法としまして、多分に経費の節約になることだと思うわけであります。  もう一つ先ほど私が職域の調整のところで、公認会計士監査だけ、税理士は税務だけということを申し上げたわけでございますけれども、現在公認会計士税理士となる資格を持っております。これはその資格を奪おうとなりますと、これまた大騒動になりますので、そこまで考えているわけではございません。資格をお持ちになっていてもよろしい。しかし、どちらか一方をやってほしい。両方やらない。これは弁護士が資格を持っておられましても、裁判官をやるあるいは公証人をやるというようなことで、どっちか一方しかできないはずであります。一つ会社についてだけでなくて、職業としてどっちか一方だけやってほしい。そうしますと、先ほど来申し上げておりますように万事解決する筋合いでございます。そしてまた、では公認会計士が現在監査と税務と両方やっている。どうだ。これは例の農地の交換分合の手で、少し乱暴でありますけれども十分できる。自分は監査なら監査専門、税務なら税務専門ということになれば、そこでお互いに交換分合すればいい線が出てくるのではないか、経済的にもほとんど問題がないのではないかと思っておりますので、そういう線でひとつお考えいただければ大変ありがたい、こういうわけでございます。  以上でございます。
  33. 中瀬宏通

    中瀬参考人 先生、デュアルリスポンシビリティーという言葉を御存じだと思いますが、会計監査というものは二重責任制度になっているわけです。会社が財務諸表をつくる。この財務諸表を税理士さんがつくる。そして会社のものとして提出する。つくった者はそれについて証明ができないわけですも必ず第三者による監査を行って初めてその財務諸表の真実性が保たれる。そういう意味で、会計あるところに監査あり、こういうことで、税理士さんがたとえ正しい適切な財務諸表をつくられましても、他の者が監査しなければならない。そういう意味で、私ども税理士さんと会計士が十分両立できると考えているわけでございます。  それからもう一点、ちゃんとしたどういう事例があるか。これは先生が先ほど申されましたように、会社はすべて性悪説で、悪いことをしようと思っているわけです。ところが、それを私どもがいままで全部防いできたわけですね。たまたま出て、防ぎ切れなかったのが一、二ございますけれども、大部分の会社は、悪いことをしようとしているのを私どもが全部きれいにクリアしてきたわけです。ですから、そういう問題がないというのはそれだけクリアした、こういうふうに御理解いただきたい。ただ、私どもは守秘義務がございまして、私がこういうふうにやりました、ああいうふうにやりましたということを先生に申し上げられないのはまことに残念でございますが、すべての会社についてきれいにしている、したがって問題がない。最近では不二サッシ事件以来一つもないわけでございます。その点で十分機能している、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  34. 小林進

    ○小林(進)委員 残念ながら、私の質問はこれで終わります。
  35. 高鳥修

  36. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間の関係もありますので、中瀬さんに最初にお伺いしたいと思うのです。  公認会計士独立性ということについていまいろいろお話がありました。私は、本当の独立性を保つためには、まず第一に大蔵省の監督を受けていることがおかしいと思うのですよ。弁護士会は法務省の監督を受けませんからね。そこら辺が非常におかしいというのが第一点です。第二は、会社から現実に給料をもらっておる。その契約は雇用ではないでしょう。委任契約かなんかになるのでしょうが、給料をもらっていて正しい監査はできっこない。正しい監査をやろうと思っていろいろやれば、この次はもうやめてくれと言われる、こういうふうになってきます。私は、経理課やなんかに勤めているいろいろな人から、若い公認会計士はやはり正義感に燃えて不正をあばこうとしても、年とった方の公認会計士がそれはやめておけというふうなことを言っておるという話を実際によく聞くわけです。そういうふうなことがあって独立性の問題についてどう考えるかということが第一です。  それから第二には、さっきから話が出ておる公認会計士が子会社、孫会社というようなところの監査をやることに関連をして、税理士の職務を侵食する、奪う、そういうことが具体的にあると税理士会の方では言う。あなたの方ではないと言われるかもしれませんけれども、これに対してしっかりとした監督というか倫理基準というか、もっと内部的な引き締めというか監査といいますか、そういうものをはっきりさせて、税理士の業務を何も公認会計士が奪わなくたっていいじゃないか、そういうことをぴしっとさせるような方策をどうやって考えていくか、こういうことをもっと公認会計士の方に考えていただきたい、私はこう思うのです。  それから第三点は、いま言った公認会計士監査が、私どもの聞く範囲では、目をつぶっている場合が非常に多い。非常に多いと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、黙っている場合が多い。だから不正があらわれないわけです。不正があらわれないから、公認会計士監査会社がクリアになったというのじゃなくて、目をつぶっていて、余りやかましく言うと契約解除されちゃうからやらないのだということが多いのじゃないでしょうか。そこら辺のところについて公認会計士会としてどういうふうにお考えだか、最初にお伺いしたいと思うのです。
  37. 中瀬宏通

    中瀬参考人 まず第一に、大蔵省から独立していないのではないかという御質問がございましたが、私どもは、公認会計士協会は全員加入の特殊法人でございまして、十分な自主監督機能を持っております。ただ、証券取引法におけるところの監査、これの適否について大蔵省が監督をしているわけでございまして、その他すべて公認会計士に関するものは協会が自主的に監督している、こういうふうに私どもは考えております。  それから、第二点の独立性の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、私は、独立性維持には二つあると思うわけです。一つは、いわゆる法律、ルールによって決められるところの身分的なあるいは経済的な独立性、いま一つは、いわゆるモラルないしはエチケットと申しましょうか、精神的な独立性、この二点の両輪で支えられているわけでございます。いままでいろいろ御議論をいただいておりますところはこのルールに基づいているところでございますが、私どもは、実はこの精神的独立性を非常に重視しているわけでございます。アメリカにおきましても、監査の当初はインデペンデント・オーディター、独立監査人という言葉を監査報告書に使っていたくらい、要するに公認会計士監査人独立しているのだということを社会一般に知らしめたわけでございます。この精神的な独立性がなければ、いろいろな手当てをしましても、私は、社会一般の期待にこたえられない、こう思っているわけでございます。この点について、協会では紀律委員会というものがございまして、そういうもののチェックを完全にしているわけでございます。したがって、税理士会が言われましたような人の仕事を取るというようなことについては、完全に紀律委員会でチェックしているわけです。そのほかに、先ほど申し上げましたように、もしも取られる疑いがあるというならば、税理士会と会計協会とで苦情処理機関をつくって、双方の者が出てそういうものを処理したらばどうだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。  それからもう一つは、会社から報酬をもらっているから監査が適切に行われないのではないかというお考えでございますが、私どもは、給与をもらっている、あるいは使用人であるという考えを一切持っておりません。自分の業務に対して正当な報酬を受け取っているだけでございます。またかつ、たとえば私がその会社社長と親しくても、私ども監査は二十人、三十人という大ぜいの人を使って監査の現場に行くわけです。そのスタッフに、一々ここは目をつぶれとか、おまえの発見してきたことは何も言わぬぞ、こういうことはいまの私どもの組織的監査の中ではとうてい不可能でございます。もし一時的にそういうことでふたをすることができても必ず噴き出す、そういう意味でわれわれの監査は完全なインターナルコントロールを持っておりますので、そういう御心配は全くない、こういうふうに私は考えております。
  38. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの公認会計士会の会長のお話は、一つの理想としてはそのとおりだと思うのですが、現実にそのとおりに行われているかどうかについては、私は非常に大きな疑問を持っているのです。  それはそれとして、四元さんにお伺いをいたしますが、大変失礼なことをお聞きするのをお許し願いたい、こういうふうに思います。  四元さんの監査法令のあれに対する考え方をお聞きしますと、不満はあると言うのですね。一、二、三、いろいろ並べられて、不満はあるけれども反対はしないというのかな、反対ため反対はしないというのか、何かそんなところのようです。そこでお聞きしたいのは、大変失礼ですけれども、率直な話、四元さんの御意見日本税理士会連合会を代表する御意見としてお聞きしてよろしいのかどうかということです。というのは、いまでも下部からは絶対反対だという声がどんどん上がってくるわけです。四元さんの意見は一部の人たちが集まって決めた意見であって、われわれ下部の意見を代表してないんだ、こういうことを盛んに言ってくるわけです。だから、また例によって日税連というのはまとまらないところだな、まとまらないところが民主的だと言えば民主的だけれども、まとまらないところだなという考え方を持つんですね。だから、大変失礼だけれども、あなたの御意見日税連の代表的な御意見として公の場ですから受け取ってよろしいのかどうかということです。ということは、結論的に言うと、不満ではあるけれども反対はしないということにとれるわけです。それが第一点です。  もう一つは、あなたの言われた中で政治的問題が絡んでいると思うのだけれどもとかなんとか話がありました。よくわかりませんけれども、五億円、十億円で政治的な問題が絡んだんでしょうか。何にどういう政治的な問題が絡んでこの特例法なり何なりが上程されたのか、そこら辺のところがどうもよくわからないのです。それでいろいろな情景が出ましたね。たとえば任意監査の問題、負債の金額の問題、売上金の問題、売上金の問題が削除される、任意監査の問題が削除される、負債の金額が上がった、そういうことからあなたとしてはというか、法務省との間でこの法案についてはやむを得ない、オーケーだ、こういう約束をしたんだということを言う人もいるんですね。どうも真相がやぶの中でよくわからぬのです。そこら辺のところもはっきりさせていただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一つは、システムとしての基本的問題ということを言われましたが、この内容は、これは山崎氏とあなたの方が交渉したのかもわかりませんが、基本問題というのは、具体的に会計監査のあり方について、いままでのようなあり方ではなくて別の新しい制度をつくるということを自民党側も了承をしたという意味なんですか。あるいはそういうふうにあなたの方だけがとっておられるのか、よくわからないんですよ。山崎君に聞くと、いや、それは話はあったけれども、自民党の法務部会で検討するという話をしただけだ、こう言うのです。この基本問題という意味がよくわからぬのです。具体的に何が基本問題でどういう話し合いが行われたのか、新しい制度をつくるという形であなた方が了解をされておるのかどうか、失礼な質問かもわかりませんけれども、こういう点について四元さんにお伺いをしたい、こういうふうに思います。
  39. 四元正憲

    四元参考人 不満ではあるが反対しないという言い方はしなかったわけでございます。反対の程度によりけりでございますけれども、かつて四十八年、九年のときにやりましたように、いわゆるむしろ旗をおっ立てまして盛んに陳情また陳情といいますか、そういう形で廃案をねらう、あるいは継続審議、廃案をねらうというような激しい反対運動はしないという意味でございます。  去る三月二十四日に法務省から衆議院の方に法案が提出されましたときに、そのあくる日に日本税理士会連合会におきまして、これは御承知の政治連盟もあるわけでございますけれども、その正副本部長会を招集いたしました。これは両方の会長、各税理士会の会長、私、専務理事も入ったわけでございますけれども、その場において、これはかってお手元に届けた書類でございますけれども、なお、念のためにここで読みますと、こういうことを申し合わせております。つまり、第一点としましては、「自民党内において合意があったと聞く」、これはまた後ほど申し上げますが、「「会計監査に関する基本問題を抜本的に検討する」という構想を極めて適切かつ貴重なものと評価し、早急にこれが本格的始動に至ることを希求する。」お願いする、こういうのが第一点でございます。  そこで、ではいままでの十億維持をおろすのかということになるわけでございますが、そうではないんだ。第二点としまして、「資本金基準十億円の維持については、なお各方面にお願いを続けるが、自民党及び野党筋に対する陳情に当たっては、一とセットにして」、さっきの基本問題のお願いとセットにするといいますのは、むしろ旗をおっ立ててわんわんやりますと、すでにこの法案は自民党を通っている法案でありますから、当然自民党筋の御気分も害しますでしょうし、基本問題なんかほったらかすぞということになりかねませんので、それを壊さない程度にやる、セットにしてやるというのはそういう意味でございます。そして、せめてこの十億円維持が成功しないという場合におきましても、少なくとも一のそういう構想、つまり基本問題のそれが国会附帯決議として取り上げられるとともに、自民党並びに社会党、民社党、公明党各野党において強力に具体化され実現に至ることを期する、こういう申し合わせをしたわけでございます。  その線で動いているわけでございますけれども、なお国会方面に陳情に行きましたとき、いまの商法対策実行正副本部長とは一体何だというような御質問がございましたので、注書きとしましていまのような組織のものであるということを答えて、また反対なのか、よもや賛成ではないだろうけれどもどういう反対なのかという御質問に対しまして、一の例の基本問題での早急始動を希求する関係上、商法等改正法律案審議引き延ばしないし廃案を策するなどの積極的な、つまりむしろ旗をおっ立ててのそういう反対運動は行わない、念のため、こういう注書きをつけましてお願いに上がったというわけでございます。したがって、四十八年、四十九年のときとは大分趣を異にしているとおっしゃればそういうことだと思いますけれども、それは先ほど申し上げましたように、その基本問題ということにつきまして切実に自民党筋、あわせまして各野党筋にもお願いしたい、こういうわけでございます。  そこで、では自民党の方とちゃんと約束ができているかということになりますと、先ほど申し上げたとおりでありまして、法務部会の筋には十分お願いしてあるところでございますけれども、なお幸い総務会の席においてその発言がありまして、それは大変結構じゃないか、やるべしというお言葉があったと聞いておりますので、今後期待するわけでございます。  ただ、その問題はタイミングとしましてこの商法が上がらないとなかなか始動しない問題だろうと思いますので、その辺がなかなか微妙である。これで引き延ばしあるいは廃案あるいはということになりますと、本格的始動の方がそれだけおくれるわけでございます。期限は附則によって二年くらいしかございませんので、だんだんそちらの方の期限が短くなる、だから兼ね合いでございます。言うに言われぬ微妙なところがあるのでございますが、決して法務省と個人取引をやったとか賛成したとか、そういうことではございません。先ほど来申し上げているように、非上場会社につきまして上場会社と同じように五億円を適用するということは、債権者保護ためのものでございますから大変おかしいんじゃないかということは年来の私の持論でございます。大変おかしいけれども、いまの法制審から法務省法務省から自民党、そして国会というあれを見まして、お願いしたいところではありますけれども、大変困難だなという印象を持っていることは事実でございます。  そこで、政治問題もあるじゃないかということでございますけれども、これは余り言いたくないわけで、もうこれだけ申し上げれば国会議員の先生方全部おわかりかと思ったわけでございますけれども、御質問でございますのであえて申し上げさせていただきます。  税理士法改正法案がおととしの五月十二日に国会に上程された。その前に、自民党におきまして税理士問題小委員会というのがありまして、一つの案をつくりまして大蔵省がそれを作案に入ったわけでありますが、その内容に対しまして公認会計士協会が猛烈な反対をいたしました。まさしくむしろ旗をおっ立てての反対だと記憶しておりますけれども反対した。そこで税理士法改正法案づくりがとんざしたわけでございます。また、こう申しちゃなんでありますけれども社会党の先生方の中に大分公認会計士側に耳を傾けられる先生がいらしたものですから、自民党と社会党の調整がつかなくなったということは事実のようであります。  その結果、政調会長レベルで話し合いができたそうでございまして、一つの文書が交わされているというのを私も望遠鏡か何かでほのかに見たことございますけれども、今度の税理士法問題という言葉は決して書いてございませんけれども、将来公認会計士の職域拡大につきまして監査基準の引き下げ、それから公益法人に対する職域の拡大等について考慮するということが政調会長レベル、これには民社党、公明党もお入りになりまして四党におけるそういうものがある、これが果たして公的にどういう性格のものか私は存じませんけれども、とにかくそういうものがある。  それで、税理士業界に対しまして、もう亡くなりました山本会長に対しまして、税理士業界はそういうことを納得するのか、これは山本会長言下に、即座にお断りいたしております。税理士業界としてはそういうことはお約束できません、反対でございます、税理士法改正と引きかえにそういうお約束はできません、しかし政党レベルにおいてなさったことでございますので、それはそれなりにわれわれとしては知ってはおるけれども、どうしようもないという考えでおりましたし、また、部内におきましては、機会を見てそういうことも私、理事会等の席上において説明いたしておりますので、税理士業界としては大体のことはわかっております。  しかし、それはそれとしまして、とにかくさっきも申し上げましたように、理論的に十億円を五一億円に下げる必要は全くないじゃないかということは本当に割り切れない気持ちでおりますけれども、これはいわゆる政治力学とやらで仕方ないのではないかなというのが私の個人的な考えでありますし、日税連としては、さっき申しましたように、とにかくお願いするだけは最後までお願いするんだ、決して十億円を下げて五億円なりあるいは七、八億円なりでいいということは申し上げられないし、申し上げてもいないわけでございます。  以上でございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉委員 ほかに四元さんにいろいろ御質問したいのですけれども、私の配当の時間がなくなりましたのでこれで質問を終わって、あとは法案の中でいろいろ質問させていただきたい、こういうふうに思っています。
  41. 高鳥修

    高鳥委員長 鍛冶清君。
  42. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 三十分時間をいただいておりますので、その範囲内でそれぞれ三人の参考人方々に御質問申し上げます。  本日は、本委員会ため参考意見をお述べいただき、また質疑に応じていただきまして本当にありがとうございます。最初にお礼を申し上げておきます。  最初に、坪内参考人にお尋ねをいたしたいわけでありますが、これは先ほどからのやりとりの中でも問題になりましたし、また坪内参考人に最初にお話しいただきました中にも出てまいりましたが、情報公開、開示の問題でございます。  このディスクロージャーの問題は、この点については、営業報告書ないしは会計監査人監査報告書の内容、こういうことについては法務省令で定めるということに今回の法案の中ではなっているわけですが、これらについて試案が出されて、その試案の中では、特に営業報告書等については注の中で細かくこの報告の内容、記載事項というものが記載されてあったわけです。それが今回の法案の中では、法務省令に定めるということにはなっておりますけれども、落とされちゃった。これは国民サイドから見ますと、やはりいろいろな社会的な問題があり、先ほどから議論されました政治献金や使途不明金とかいうような話も出ましたが、そういうことを含めて、国民サイドから見ればそういうものははっきりしておいた方がかえって会社ためにもいいんではないかというふうな考え方が私は強いと思うわけです。しかし、御意見の中では、それをやると会社の営業活動等に云々というふうなこともございましたが、私たちは、むしろそうではなくてプラスになる面が多いのではないかというふうな考え方を持つものであります。  こういう方面、私素人でございますのでよくわかりにくい面もございますが、そういう観点から、こういう点についてもっともっと明らかにしていく方向、お考えはないのか、また、試案で落とされたものについてはそれは妥当であったのかどうなのか、こういった点について御意見があればお聞かせをいただきたい。
  43. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまのお話でございますけれども、営業報告書あるいは附属明細書の明細につきましては法務省令で後に定める、今度の改正法案では確かにそういうぐあいになっております。われわれが懸念いたしますのは、非常に詳細に法律で、たとえ法務省令とはいえ規制されますと、これに対応するのが企業としては非常にむずかしくなってくるんではないか。それは根本的な考え方で冒頭私申し上げましたように、やはり法律は、企業の運営をむしろ助長する、助けるというような意味でこそ初めて生きてくるというふうな観点から申し上げまして、余り細かい規定をつくっていただかなくてもいいんじゃないかという気がいたしております。  しかしながら、今回の法律改正につきましても数年かかっておりますけれども、われわれ経済界あるいはほかの業界にも丁寧に諮問していただきましたり、これに対しましてわれわれも御答申したわけでございますけれども、今度の法務省改正につきましても、そういうような手続でひとつ企業とのすり合わせを十分した上で、双方納得いくような省令をつくっていただければというぐあいに考えております。
  44. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 試案に対する意見書というもの、ずいぶんいろいろと項目別にお出しになっていらっしゃるようですが、非常に意地の悪い言い方かもわかりませんけれども坪内参考人の最初の御意見の中でございましたが、どんなに法律をつくって規制をしても、問題は運営上の問題だ、こうおっしゃったわけですね。そうすると、法律なんかここで審査していること自体がちょっとおかしくなるので、私ども聞いておりまして、これはどうかいな、われわれこれだけ手間暇かけてやっているが、ああいうふうにおっしゃっていたら、会社というものは、幾ら法律で決まったって、運営上いい方に向けばいいのですが、悪い方に向いたときにはもうどうでもできますよというふうに、意地悪く考えればとれるわけです。  そういうお考えであるとすると、これは大変な問題になる。それならば、何も試案に対する御意見やその他経団連あたりからこういうふうに変えてくれとお出しになる必要もないのじゃないかと、極論かもわかりませんが、そう思うのでありますが、その点についてはどういうお考えなのか。  さらにもう一つ、いま申し上げました法律案の中で省令に任せるということになっておりました特に営業報告書の内容を、一つ一つああいうものは省令の中でも定めて云々というようなことをしても——むしろわれわれの側は、細かいかもわからないけれども、した方がいいというような気もしますが、坪内参考人のお考えとしてはどういうふうな受け取り方をなさっていらっしゃるのか、その点お尋ねします。
  45. 坪内肇

    坪内参考人 法律は、先ほど先生おっしゃいましたように、大綱を大体決めていただきますれば、それに従いまして枠内で対応していくというものじゃないか、こう考えておるわけでございます。今度の商法改正に関しましても、一つ例を挙げますれば、たとえば無償の供与というのは非常に悪いことだということがはっきり法律に出ますと、守る方もそれを守るというようなことになりますし、今回の改正商法では、監査役の地位の強化あるいはその他ディスクロージャーの問題等いろいろ規定してございますので、われわれはこれを非常に前向きに受けとめていいのではないか、こう思っております。  それで、運営と申しましたのは、結局は、特に会社の機関についてでございまして、たとえば株主総会でも、先ほどから御質問が出ておりますように、そういう運営をすればりっぱな運営ができるわけでございますし、取締役会も民主的にやればやれるはずでございますけれども、それが非民主的であったりあるいはワンマン社長であったり、いろいろな人が間々出てくるわけでございますから、いろいろ物議を醸す。そういうことで、経営の姿勢というのは法律の根本精神に基づいて正しい方向にあるべきだということで、何千あるいは何万という社長がいらっしゃるかもしれませんけれども、後はその方々がその方向に従って行動されるということを経団連としても指導していくということしか言えないのではないか、こう思っております。  御質問に対して明快なお答えができないのでございますけれども考え方はそういうことで、法律改正はやはり正しい方向にどんどん持っていっていただきたい。しかし、過度の規制は企業の自由な活力を縛るという根本だけは忘れないでいただきたいということでございます。
  46. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、モラルの問題をお尋ねしたいのです。  運営上の云々とおっしゃったのは、そこのかみ合いもあるような気がするのですが、最近のいろいろな事件を見ておりますと、確かに法の規制はされてきても、根本の姿勢がはっきりしないと中には変なのも出てくるのです。むしろ、そこらあたりが私どもといたしましても一番大切なような気がいたします。こういうような点について、経団連の方になりますか、そういう経営者側、これもちょっと抽象的な精神論になるかもわかりませんけれども、そういうモラルといいますか姿勢というものは具体的にはっきりと持っていただかなくてはならないと私たちは思うのですが、こういう点について皆さん方はふだんからどういうような努力なりいろいろなことをやられているのか、また、そういう悪質なものに対する対処方法というものもお考えがあるのかどうか、坪内参考人に御意見を伺いたいと思います。
  47. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまの御質問の受けとめ方は大変むずかしゅうございますので、私、直ちにお答えできないのではないかと思っております。いずれ十分考えさせていただきました上で、何ならば、またいろいろお話し合いをしたいと思っております。よろしゅうございますでしょうか。
  48. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では、中瀬参考人にお尋ねをいたします。  先ほどからのお答えの中で、われわれは十分な監査をしておるんだといったようなこともおっしゃいましたし、りっぱにやっているんだということもおっしゃいました。確かに、それはそれなりに努力はやっていらっしゃると思います。ただ、世間を騒がしている問題をいろいろ見ますと、不二サッシの問題とか日本熱学等監査意見等も適正ということで出されておるものが、意外と巨額な粉飾決算を露呈して倒産した。そして多くの株主の皆さん、それから債権者の皆さんに御迷惑をかけているというようなことも、われわれが見ますと現実にあちこちで起こっているというふうな気がするわけです。  そういう意味からいって、今回の改正についてもそういう含みもあってのことだろうと思いますけれども、実際、おっしゃっているように本当に十分やっているんだ、公正にやっているんだということについては、若干納得しがたいような感じがしますが、この点についてひとつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  49. 中瀬宏通

    中瀬参考人 確かに、証取法監査が始まりました当初はいろいろ問題がございました。事実、粉飾を見過ごしまして処罰された事例は、昭和三十九年までは七件、昭和四十年から四十四年までは三十四件、昭和四十五年から四十九年までが七件、昭和五十年以降はただ一件でございます。このように昭和五十年、すなわち商法監査が始まりましてからはほとんど皆無である。  ただ、確かにいろいろ不正支出があったとか、世の中を騒がせました実例があるようでございますが、私どもはそのすべてを完全に見破るということではないわけです。財務諸表の全体としての適正性ということに責任を持っておりまして、一つ一つ不正支出があった、あるいはこういうことがあったということについて責任を持っているわけではないわけです。私どもは、これはいわゆる正当な注意の原則、デュー・プロフェッショナル・ケアというのがございまして、この正当な注意を払っでも発見できないものは多々あるわけでございます。というのは、私どもは、検察当局とか国税当局のように、相手方まで行って調べるとかそういうことができないわけです。やはり企業の中にある資料あるいは確認ということで注意をもって調べている。したがいまして、いろいろ問題が出るケースがございますが、私どもとしては、正当な注意を払ってもなお見つからなかったというケースについては御容赦を願いたい、ただ、私どもはそういう事件が発生しないように日々努力している、こういうことでございます。
  50. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これもちょっと意地悪な質問になるかもわかりませんが、私があちこちでお聞きしてみますと、これも先ほどから御答弁のありました独立性という問題はちゃんといまのあれであるのだ、われわれは何物にも左右されずちゃんとやっているのだ、これは確かにそういう姿勢でおやりいただかなければいかぬと思いますが、現実はなかなかそうではないという話を聞くわけです。そしてこれを本当にきちっとした形で、経営者側と対等な立場で対処するところまで引き上げる必要があるのじゃないか。そのためには、これはどういう形になるかよくわかりませんし、公認会計士の皆さんがお集まりの諸団体、法人であるのかどうかわかりませんが、そういったものの権限といいますか力というものを、経営者側と対等に持っていくような形のものを何かつくりながらきちっとやらないとできないのじゃないか。現実は会社側のいろいろな制約によって、もうあなたはだめですよと言われたらそれで終わりだというような率直な裏の意見が、むしろ本音のところはそうじゃないかという気がするのですが、聞こえてくるわけです。  そういう点について本当に本音のところでおっしゃっていただいて、いま私が申し上げたようなことは事実ないのか。あればあったで、私どもも本当にきちんとした形にお手伝いをしながらやる方向が好ましいのではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点についてお尋ねをいたします。
  51. 中瀬宏通

    中瀬参考人 昭和五十年以降、毎年約一〇%近い監査人の交代があるわけでございます。私どもは、監査人が交代させられても、実はある意味ではやむを得ない、こう考えているわけでございます。と申しますのは、企業監査人を選ぶ自由な選択権を持っているわけでございます。私どもが持っている自由は、要するに十分な監査手続を実施する、それから自己に忠実な監査意見を述べる、ここに私どもの自由があるわけです。そこでちょうどバランスがとれている。ただ、勝手に会社にかえられてしまったのでは会社との信頼関係も失われますし、そこのところを法制上いろいろなお手当てをお願いしたい、かように思っているのでございます。
  52. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これも先ほどから御議論が出ておりましたように、今回の法改正がもし実施されますと、税理士の皆さん方との職域の問題があるということがいろいろと言われております。私どももそうかなという気もいたすわけでありますが、実際この改正法案がもし現状のままで通過して実施されました場合、公認会計士の皆さんの側としましては、職域というものが税理士の皆さんの分野にどれくらい食い込んでいくのか、これは具体的にお調べになった数字があるのかどうか、こういうものがあればちょっとお知らせをいただければと思います。
  53. 中瀬宏通

    中瀬参考人 この実数というものは非常に把握しにくうございます。特にクローズの会社が今回は多いわけでございますので、オープンの会社でございませんので、そこで、法務省が答弁された資本金五億円以上六百社、それから負債額二百億円以上二百社、そのくらいかなというふうに感じているわけでございます。私どもの職域がふえればふえるほど税理士の方の業務がふえる。これは利害関係で、そういう会社は、いままで税理士業務をやっておりましても退かなければなりませんので、いわゆるマクロ的に見ますと、当然に税理士会の先生方の仕事がふえる、こういうふうに私は理解しております。
  54. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それでは、四元参考人にお尋ねをいたしますが、最初に、いろいろと私の方にも御陳情、税理士会連合会、政治連盟の皆さん方、本当に足をお運びいただいていろいろお話を伺ってまいりましたし、また、陳情の趣旨の書類もいただいたわけですが、ここにございますように、五十六年二月にいただきました陳情書の中では、御要望として、あの法案に対しまして、会計監査人監査適用会社を、十億円以上を五億円以上に下げるのは反対だ、これが一つありますね。それから、資本金基準のほかに年間営業収入基準二百億円以上及び負債総額基準百億円以上、これは試案の中にあった数字だと思いますが、これが法案の中に盛り込まれるであろうということを想定されてだと思いますけれども、これはこの三基準のいずれか一つに該当する会社に当該監査を適用することとする改正には反対だ、こういうふうな御陳情がございました。  現実は、今度は法案になりましたときは、五億という資本金の引き下げはそのままですが、この年間営業収入基準、こういうものは外されたわけですね。そして負債総額基準というものが百億円から二百億円ということにアップされました。アップというよりも、どうなんですかね、皆さん方から見ればむしろ拡大されたという形になるのでしょうか、御要望の方向にずいぶんとこれは変わってきておるというふうに思うのですね。さらにもう一つ先には、従来、資本金が五億円未満の会社で一億円を超す会社の場合、定款で会計監査人監査を受ける旨を定めることができるという項目、これも反対ということでありましたが、これも外れてきておる。  相当税理士会の皆さんの御意見が功を奏してか、話がうまくいってかどうかはよくわかりませんけれども、だんだん取り入れられた形になってきておるわけですが、そういう流れの中で、先ほどからのいろいろ出ておった議論というものが言われておるような気がいたすわけですが、こういうような改正になっても、先ほどちょっとお答えもございましたが、あくまでもこれは反対であるのか、付帯条件等がつけばまあまあやむを得ないのかというふうな、そこらあたりの感触、これをもう一度ひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  55. 四元正憲

    四元参考人 大変むずかしいことでございまして、まあまあいいかと言われますと、どうにもいわく言いがたしでございますが、しからばこれでわれわれ税理士会の方が、いや十億円でなければどうしても困るのだということで、むしろ旗という言葉は適切ではございませんけれども、一生懸命運動しましたら果たして十億維持が成功する可能性があるのかどうかということになるわけでございますけれども、大変むずかしいことであるだろう。国会審議権に関することでありますから、われわれ見通しもつきません。  それで、確かに先生おっしゃいましたとおり、五十六年二月の陳情書というのは、例の法制審要綱に対しまして、これは大変だということで、こちらもねじりはち巻きでやった陳情でございます。その結果、冒頭の私の陳述のところで申し上げましたとおり、大変御理解をいただきまして大幅に修正された。それは心からお礼を申し上げるわけでございますけれども、さてということになりますと、なかなかどうもお答えしにくいわけでございますが、ただ、基本問題につきましてぜひともお願いしたいという表題を掲げますと、十億、十億と突っ張りまして変なふうにこじらしてしまったのでは、基本問題は恐らくはうり出されるだろう、しかも十億も果たして成功するかどうか、これはまさしく二兎を追う者一兎をも得ずということにもなりかねませんので、神様のみぞ知る、なかなかむずかしいところでございます。そこで、日税連としましては、基本問題を根本的に解決してもらう、あわせて公認会計士税理士の職域調整、制度調整の問題もやってもらうということが一番大事なことじゃないか、これについてはほとんどの者が異存ないわけでございます。  ただ、方法論としまして、私が先ほど申し上げ、また読み上げましたように、基本問題を大事にするために十億円についてはむしろ旗を立てないんだという考え方の者と、あるいは、いや十億を最後の最後まで突っ張るんだ、その中におきまして自然と基本問題も解決せられるんだという二つ考え方があるわけでございますが、前の方が多数説でございます。  これは税理士法改正のときにもやはり同じような現象が起きまして、基本要綱、御承知かどうかわかりませんけれども税理士業界の理想と願望を掲げたものが基本要綱でございます。基本要綱でなければ一歩も退けないんだ、あのとおりでなければ税理士法改正は望まないんだという考え方と、いや、現実的に処理しようという考え方がぶつかった。その結果、いろいろと御迷惑をかけましたし、また、非常に理想にはやる税理士の人たちがいろいろないわゆる改悪反対運動をやったわけでございますけれども、今度それとほぼ似たような感じがしないでもございません。  つまり、税理士法改正の基本要綱にかえまするに、十億維持、十億死守、十億固守というようなことで、十億は何が何でも金料玉条である、これをおろすわけにはいかぬという考え方の人たちもおります。しかし、幸いなるかな、日本は民主主義でございます。いろいろな意見がございますけれども、それはそれとして、その方々がそういう運動をするということは、これは抑えようのないことであります。でありますから、黙認しております。  それから、税理士会としてはこれは公式にやられては困るということで、税理士会としてはやっていないはずでございますけれども税理士会はちょうど裏表に政治連盟というものを持っております。政治連盟に対しましては、公式に、公的に日税連の決定は及びません。だから、この間も社会党の某先生のところに行きましたときに、東京税理士会の政治連盟の某委員長といいますかが名刺を持ってきて廃案運動をやっているぞ、廃案にしてくれと言っているぞ、これはどうかと言われましたので、それは廃案ということは、さっき申し上げたように廃案運動はしないということになっておりますということは申し上げたわけでございますけれども、大変日本はありがたいお国柄でありますから、思想、信条は自由でございます。したがって、そういう行動をなす者もいるわけでありますけれども日税連としましては、先ほど申し上げましたようにああいう申し合わせをやっている、こういうわけでございます。  以上であります。
  56. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 先ほど中瀬参考人にお尋ねしたと同じ内容になりますが、資本金基準の引き下げによりまして、五億円に下がることによって、実際に五億円に下がってそれが実施されたと仮定いたしまして、実質中小会社を顧問先としておられる税理士の皆さん方の業務が大きな影響があるというふうにも伺っておるのですが、実際、実質的にどの程度の数減るというふうな数字、具体的に探っておられれば、その数字をお聞かせを願いたいと思います。
  57. 四元正憲

    四元参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたけれども、実際今度の五億、十億の適用会社、六百社、八百社と伺いましたけれども、その中にわれわれの方でアンケートをとって調べたところでは、その税理士、その会社にストレートにタッチしておる者はわずか七人しかいないということでございます。しかし、これは先ほど公認会計士会長の言われたとおり、そこの職域保全につきまして両会で話し合いまして、あるいは事前登録制みたいなものをつくりまして確保するということはむずかしくないだろう、こう思っております。  ただ、これまた私が先ほど申し上げたとおり、子会社、孫会社に至りますと、十掛ける十というのは大げさにしましても、相当大きな影響がある。しかも、これは子会社、孫会社という法律的に過半数を持っているというだけではなくて、いわゆる取引先、仕事をもらっているつまり元請に対しまして下請の会社でございます。下請の会社というのはやはり元請会社に弱い立場にあるわけでありますけれども、これらが、ひとつうちの公認会計士の系統の者を使ってくれぬかというような話がありますと、なかなか断りにくい。  現実また、私さっき恥ずかしい自分のことも申し上げたわけでありますけれども、実際私もその被害者であることもあるわけでありまして、だから、とても何百とか何千という数字じゃなくて、万単位の数字で税理士業界に波及するんだ、波及効果はあるんだ。もちろん税理士がしっかりした仕事をしておれば取られないというのは、これは理想論、理屈であります。先ほどのように上部から圧力がかかってきますと、先生まことに申しわけない、長年のおつき合いで申しわけないのだけれども、こうこうこういう事情で自分の会社として仕事をもらわなければいかぬ都合上、ひとつ目をつぶっていただきたいのだが、こういうことがありますと、税理士たる者、内心は煮えくり返るような気持ちがありましても、うんとおおようにうなずかざるを得ぬという場面になりますので、相当大きな規模である。  これにつきましては苦情処理委員会、この構想はすでに税理士法改正のときに日税連の方から話した構想でもございます。幸い公認会計士協会でも理解を持っていただきましたし、また、大蔵省証券局の方でも前向きに考えていただけるようでございますので、そういうこと。これは取られてしまってからでは間に合わないわけでございます。むしろ事前に何かそういうような登録制度というものでも考えまして、取られないように、動かないようにという方策を講ずる必要があるのではないか、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  58. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 最後に、中瀬参考人四元参考人に、簡単にお答えいただいて結構でございますが、資本金基準の引き下げ、五億円に引き下げることによって、もし実施されるといたしますと中小会社監査制度の強制ということになる部面が出てくると思いますが、その場合に、中小企業経営者に大きな負担を強いるということになるのじゃないかということを一つ思うわけですが、その点について一言ずつお答えをいただきたいと思います。
  59. 中瀬宏通

    中瀬参考人 私は、五億円以上という会社ないしは負債額が二百億円という会社は、中小会社とは理解していないわけです。当然に二、三百万の監査費用の負担というのは社会的責任として企業が支払うべきである、こういうふうに考えております。  なお、そういった五億円以上十億円ぐらいまでの会社は、そうたくさんの子会社を持っていないわけですね。したがいまして、何万の子会社がふえる——私ども公認会計士全体で六千人しかいないわけです。そのうちで税理士の登録をしている方は四千人弱でございます。したがいまして、何万という会社を私ども税理士業務をやるなんということは全然考えられないわけです。私どもは常に監査を実施したい、かように考えておりますので、そういう意味ではこの任意監査範囲までやはり広げていただきたい、かように思っておるわけでございます。
  60. 四元正憲

    四元参考人 税理士平均関与件数は六十件ぐらいでございます。日本会社は株式会社で六十万、有限会社その他でやはり六十万、あるいはもっとふえているかと思いますけれども。でありますから、公認会計士が何万ということでなくても、それは算術でわかることでありまして、大変な危険性がある、こういうわけでございます。  それで、五億ないし十億の会社、これは負債総額が二百億もあれば、債権者に対してまさかのときには大変な迷惑をかけるわけでありますから、当然強制監査してしかるべしと思うわけでありますけれども、そうでない本当に同族的な会社も多々あるわけであります。そういう会社にとりましては、ここで強制監査を受けるということは全く無用なことであるだけじゃなくて、何のメリットもない。しかも、経費先ほども申し上げましたとおり一千万ないし二千万かかるわけであります。大変な苦痛だろうと思うわけでございます。何かそういう点を抜本的に御解決願えれば大変ありがたいが、こういうわけであります。  以上であります。
  61. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 きょうはありがとうございました。各参考人の方に心からお礼を申し上げます。
  62. 高鳥修

    高鳥委員長 岡田正勝君。
  63. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 三参考人の皆様には大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。心から厚くお礼を申し上げます。  さて、質問でありますが、一番巷間うわさに上り問題になっておりました監査対象会社資本金十億円から五億円にという問題でありますが、この問題について先ほど来からずっとお二方の答弁を伺っておるのでありますけれども、どうもいま一つすっきりといたしませんので、重ねて質問をするようでありますが、この十億円の会社から五億円ということに資本金を落とすことによりまして、一体公認会計士協会としては何社ぐらい監査対象会社がふえるとお考えでしょうか、それから、税理士会の方としては何社ぐらい減ると考えておられるものでありましょうか、簡単にお答えを願います。
  64. 中瀬宏通

    中瀬参考人 私ども協会としては実数を把握しておりませんが、法務当局の御答弁によりますと六百社程度ふえる、こういうふうに伺っております。私ども監査がふえることによって税理士会の方の仕事が減るということは、全くないというふうに私は理解しております。  なお、この私ども公認会計士監査が入りまして一千万とか二千万というような費用がかかるというふうには、私は考えておりません。そんな多額の金を経団連さんが払ってくださるなら、こんなありがたいことはないわけでございます。
  65. 四元正憲

    四元参考人 お答えいたします。  余り金がかからないということでありますので、関与税理士としては一安心ということかもしれません。  実数としましては、私の方もまた残念ながらはっきり把握いたしておりませんけれども会員からアンケートをとって調べたところでは、そのものストレートには七人ぐらいしか返事が返ってきておりません。でありますから、そんなにたくさんのものではないだろう。しかし、たびたび申し上げておりますように、子会社、孫会社あるいはいわゆる取引上の下請会社、こういう点におきまして公認会計士の要望によりまして関与税理士をかえる。またこれは、関与税理士がちゃんと自分の息のかかった者であった方が、会社の計算なんかも非常に明瞭にしてくれるというような期待があるし、また下請会社も逃げないという期待も元請会社から見ればあるわけでありますから、これは容易に起こり得る現象でございます。その点において非常に心配にたえないというわけです。  幸いと言ってはなんでありますけれども、適用期間が二年後でありますので、それまでの間に何とか先ほどお願い申し上げました基本問題を前向きに御解決願えないだろうか。これは、公認会計士会計監査といいますかいわゆる商法上の会計監査が非常に社会的に有効に機能しまして、そして民主主義の大変前進になるものだとすれば、税理士税理士として、一つのディスクロージャーでありますから忍ばなくちゃならぬ点もあるだろうと思うわけでありますけれども、現実はお聞きのとおりでございます。実際果たして——公認会計士の皆様が大変やっておられるということはわかるのでありますけれども、しかし、システム独立性の問題あるいは事後審査の問題において不完全でありますから、システムの面においてどうしても欠陥が露呈してくるのはやむを得ぬ、そういうものについて税理士がそういう犠牲を払わなければいかぬのだろうかという気持ちがするわけであります。実際、たとえば土地なら土地、農地なら農地を取られまして、そこの取られた土地がちゃんと国家、社会に有効に働いておれば農民もあきらめもつくと思いますけれども、それが全くいいかげんなふうにしか使われていないということであれば、税理士業界としてはがまんできない、こういう気持ちで反対せざるを得ぬというわけであります。  以上であります。
  66. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 中瀬参考人の方に重ねていまのことでお尋ねをいたしますが、約六百社ということであるが、減るということは全くないでありましょう、こういうお答えであります。これは六百社以上減ることはないという意味でしょうか、六百社は減るという意味でしょうか、そこら辺がちょっとあいまいなんです。  それからもう一つの問題は、一千万も二千万も費用がかかると一部でおっしゃいますけれども、さようなことはございません、安心してもらって結構だ、こういうお答えのようでありましたが、しからば幾らぐらいかかるのでありましょうか。
  67. 中瀬宏通

    中瀬参考人 先ほど減ることはないと申し上げましたのは、私どもの仕事がふえることによって税理士の仕事が減ることはないと申し上げたわけでございます。ですから、私どもの仕事がふえれば税理士会さんの仕事もふえるのだ、こういう御認識を持っていただきたいという意味で申し上げたわけでございます。  それから、監査費用の点でございますが、これは一概に簡単に申し上げられません。先ほど四元専務理事もおっしゃっているように、非常に簡単な会社もございます。それから、たとえば貿易会社等非常に日数のかかる会社もございます。したがいまして、個々会社につきましては幾らとは申し上げられません。ただ、今度の新しい五億から十億の被監査会社において一千万円以上の報酬になるとはまず考えられないということを申し上げたわけでございます。
  68. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 坪内参考人の方にちょっとお伺いをいたします。  大変失礼なことをまずお尋ねいたしますけれども、現在経団連に入っていらっしゃる会社の中で資本金の下と上の方、それと経団連へいま入っていらっしゃる会社の数、およそどのくらいでありましょうか、お教えください。ラフな数字で結構です。
  69. 坪内肇

    坪内参考人 私、不肖にしてよく存じ上げなかったのですが、いま事務局から聞きますと、経団連には九百社入っているそうでございます。これも約でございます。  それから、資本金の点では大体三十億円以上じゃないかというようなことで、受け売りでございましてまことに申しわけございませんけれども、そういう返事でございますのでよろしくお願いを申し上げます。
  70. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、坪内さんに重ねてお尋ねをするのでありますが、今回の法改正一つの目玉はやはり総会屋対策。総会屋というのが適当な言葉かどうか存じませんが、俗称総会屋対策が一つの目玉と言われておりますが、果たして今度の法改正でその実効が上がるというふうにお考えでしょうか。
  71. 坪内肇

    坪内参考人 今度の法改正で総会屋という言葉は出てこないようでございますけれども、無償の利益供与ということがそれを意味しているのじゃないかと思います。したがいまして、無償の利益供与は違法であるということにはっきり今度なるわけでございますので、先ほど申し上げましたようにその線に沿って適法な運営をするのが企業でございますので、経団連といたしましてもそういう方向に指導していくというようなことと思います。
  72. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 重ねてお尋ねいたします。無償の利益供与という言葉がなるほど改正案に書いてございます。ただ、総会屋さんにいたしましても、知恵のない人ばっかりおるわけでございません。大変知恵が発達しておりますので、たとえばおまえさんのところの会社でやっておる保険業務、これはひとつおれのところで新しく取扱店をつくるから全部任せいというようなことを言われる。あるいは非常にりっぱな新聞をつくったから、これを買えと言う。あるいは冊子をこしらえたので、これを買えと言う。いろいろな手があると思うのですね。これに対しまして、無償の利益供与ということでそういうことは防ぐことはできないと私は思うのです。まず、それを防ぐことができるかできぬか。私はできぬと思う。  そこでその次の問題は、そういうようなことは公然と行われてくるでありましょうが、そうすると、結局は排除する方法がないのではないかという心配がある。この問題についていかが思われますか。
  73. 坪内肇

    坪内参考人 ただいま無償の利益供与と書いてあるから申し上げましたけれども、実は利益供与に無償というのは本当言いますとなかなか考えられない。何か反対給付があればこそ利益供与するので、語弊がございますけれども、こじきに物をやるというようなことじゃないと思うのでございます。したがいまして、今度のものでも無償の利益供与はディスクローズしなさい、あるいは附属明細書、営業報告書に、今後の省令によりますけれども、書きなさいというようなことでございますけれども、経団連といたしましては、この件につきましては、そういうことを書いたって、内容がわからないのを総額だけ書いてもしようがないのじゃないかという気がいたします。むしろ会計監査する監査役でございますけれども会社監査役が非常におかしい点があったら監査報告書に書く、その方がいいのじゃないかというような意見をただいま申しておる最中でございまして、後の問題にこれはしぼられておりますので、その辺でもまたその主張を今後とも続けていきたいと思います。確かに無償というのは大変問題がある言葉ではないかと思っております。
  74. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 坪内さんに続いて恐縮でありますが、先ほど意見を陳述されましたときに、今回の法改正の中で単位株制度を採用したということは大変いいことである。非常に高く評価をしておられましたが、どういう点を評価されたのでしょうか。
  75. 坪内肇

    坪内参考人 今回の法改正で、経団連といたしましては、まず一株当たりの管理費用と申しますか、これが二千円ないし三千円と言われております。しかるに、それが五十円の株券であるということでございますので、この株の単位を引き上げるのが大体いまの時世に適したやり方ではないか。ただし、五十円をたとえば五万円とみなすなんというような規定にしたらとんでもない騒ぎが起こるわけでございますので、既存の会社ではたとえば五十円のものは千株を一単位とするとか、あるいは五百円株券のものは百株を一単位とするという今度の改正趣旨は、先ほど申し上げました管理費用その他の点からいいまして大変時宜に適したやり方だという意味で、あるいはこの法改正がおくれることがありましても、これだけは何とか先に取り上げていただけないものかというくらいなまでに賛成したわけでございます。
  76. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これはちょっと坪内さんにお尋ねするのは失礼かとも思うのでありますが、今度の法改正の中で単位株制度を採用するに当たりまして大きな特徴点といたしましては、株主の提案権の問題があります。その提案権の問題の中で、いわゆる資本金五億円以上の会社ということになりますと、これは単位株制度をとるわけでありますが、そうなった場合は一単位株が大体五万円ということになりますね。五十円券なら千株ですね。今度提案権を有する株主というのは三百単位株、こうなりますね。三百単位株ということは、五十円の場合掛ける一千株でありますから、そうすると三十万株持っていないと提案権がない。なかなかスマートになってくるわけです。これは坪内さんとしてはわが意を得たり、こういうところであろうと思うのであります。  さて、先ほど私が冒頭に、どの程度の資本金会社が何社くらいお入りになっているのですかということをなぜお尋ねをしたかといいますと、ほかでもないわけです。この法律案の中にいわゆる中小会社がありますね、日本には。そうすると、その中小会社の方はいままでの株のままでいいわけであります、単位株をとらないわけでありますから。そういたしますと、そこで百分の一以上の株もしくは三百株以上を有する株主であればいわゆる提案権を有する、こういう制度になることになるわけです。ということになりますと、この三百株というのは一人でなくてもいい、これが五人であろうと六人であろうとそれは関係ないというふうになってまいりますと、たとえば会社に意図的な何かの意思を持って、あるいは総会屋から裏をつつかれてというようなことで、会社解散に関する件とかあるいは社長解任に関する件とかいうような議題を提案されましても、握りつぶすわけにいきません。株主総会の通知状にきちっと印刷してから配付しなければならない。こうなりますと、これが外部に漏れました場合、おやおやあの会社はえらい悪いんだな、あの社長はえらい悪いんだなという、とんでもない会社のイメージをダウンさせる大きな原因になる、こういう問題が起こり得るわけであります。  そこで、そういういやがらせはかなわぬからというので、単位株制度をとることは法律で許されております。単位株制度をとりますと、そこには当然単位未満株が出てきます。今度はこれの買い取り請求権がこの法律では生じてまいります。買い取り請求権が出てまいりますと、御存じのとおり、これは話し合いがつかなければ裁判所へ訴えます。裁判所へ訴えれば、裁判所では相続のとき・に評価する評価額をもちまして一株当たりの評価をいたしますから、一番最近の例は昭和五十一年でありますけれども、一株の値段が、五十円の株券でありましたけれども、裁判所の御決定は二万六千円となりました。五十円の株券が二万六千円になるということになりますと、それを一千株未満でございますから、たとえば九百株買い取りをせいということになったら一体どうなるでありましょうか。そういうのが何人も出てまいりますと、あるいは何十人も出てきたら、たちまち会社は運営資金すらない、枯渇してしまうというような問題が起きてきますから、これはしまったと思って、定款をまた変えましてもとの中小会社に戻ろうと思いましても、この法律は戻ることができない仕組みになっておるのであります。  そういう点のいわゆる中小会社に対するおもんばかりというのは、経団連というのは関係ないのでございますか。
  77. 坪内肇

    坪内参考人 私も法律のエキスパートでございませんので、ただいまの御質問、法解釈その他で大変むずかしい点があったのでございますけれども会社の大小と申しますか、これも今度の商法改正には当然議題として上がるべき問題だったのを後に回してございます。したがいまして、最初の質問でございますけれども、その辺今後の審議におきましてこの問題はやはり正式に取り上げられるんじゃないか。いまのところは法律にありますように大会社だけがこういうことをやるということではないかと思いますし、また、私もよく存じ上げなかったのですけれども、五十円の株券を二万六千円で裁判所は査定した、これは恐らく上場会社の場合は時価というのがございますので、この時価を基準にして判定すると思いますが、そうじゃない場合は、たとえば会社の合併とかなんとかいう場合に株をどのくらいに評価するかというときは、資産基準とかあるいは利益基準とかいろいろな基準がございまして、これで計算したそのあげくが、大変内容がいい会社で一株二万六千円に当たっておると思います。したがいまして、そんな会社ばかりはないのでございますけれども、当然の評価でございますので、その点もまたそういう会社もあるということで御理解願っておけばいいんじゃないかという気がいたしました。  私自身、この問題詳細に知りませんものですから、あるいはいいかげんなことを申し上げておるかもわかりませんけれども、御了承願いたいと思います。
  78. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは質問を変えます。  いまの公認会計士協会の問題でありますけれども先ほどからいろいろ伺っておりまして、やはりどうも問題点がありはしないかなと思うのは、公認会計士さんというのはその会社と契約を結んでいわゆる監査をいたしますね。それに対する適法な報酬をいただく、こういうことになるわけでありますから、非常に厳しく監査をやろうとしても、むずかしい問題、困るような問題がいろいろあるのではないか。余り厳しくやると、この会計士はどうもならぬわいということになって、契約を破棄して別の会計士と契約しようというようなことになりかねない。これはやはり相手あってこその契約ですから、そういうことが非常に心配されるわけでありますが、先ほどからお伺いをしておりますと、会社というのはとかく悪いことをしたがるものである、それを抑えておるのは、クリアしておるのはわれわれ公認会計士でござるという非常に高邁な御意見があったのでありますが、実際にそうでしょうかね。本当は言いたいことが余り言えなくて、大変失礼な質問でありますが、契約を継続するために、まあなれ合いと言っちゃおかしいのでありますけれども、まあまあというところでやっていらっしゃるというようなことがないのであろうか。これは心配です。それが一つです。  それに基づきまして、ならば、どうしたら公認会計士というものはその独立性が保てるであろうかということについて、何か御意見を持っていらっしゃれば教えていただきたいと思います。  これは中瀬参考人と、それから四元参考人にも、相対峙する立場と言っちゃおかしいのでありますけれども会計協会立場が十分にうかがい知れる状態にいらっしゃるわけでありますから、その方面からの御意見も、もしあれば、差し支えがなければ聞かしていただきたいと思います。
  79. 中瀬宏通

    中瀬参考人 監査が厳しくなれば交代させられるのではないかという点でございますが、私どもは、どの監査人に頼んでも同じような監査を実施する、Aの監査人は厳しい、Bの監査人は甘いからBへいくんだというようなことがないように、私ども協会は常に均質な監査を保つように、これは実はアメリカでもそういうような方法で対抗しているわけでございます。したがいまして、いま現在もしもそういう甘い監査をするような監査人があったとすれば、これは私ども協会に紀律委員会、それから監査業務審査会というものがございまして、厳しくチェックしているわけでございます。そういうふうなことを繰り返せば、企業も厳しいからほかの監査人にいこうというようなことにはならないわけでございますね。そしてまた、企業の方も、そういうふうにしょっちゅう監査人をかえたとすれば、あの企業は何か問題があるのじゃないかと逆に社会的な批判を受ける、こういうところでチェックされるというふうに考えております。  また、企業昭和三十六年証取法監査以来、やはりディスクロージャーの精神、社会的な責任を全うするというふうに、経営者の意識が変わってきていると私は思います。それほど性悪説でお考えいただかなくても結構ではないかというふうに考えております。
  80. 四元正憲

    四元参考人 いま公認会計士協会会長から陳述がありましたとおり、全くそれはモラルの問題としまして、あるいは公認会計士の自覚、職業倫理としまして、与えられた条件のもとに最大限の努力をしておられるということは、われわれも認めるにやぶさかではございません。しかしながら、与えられた条件そのものが日本の場合足りないのじゃないか、欠陥があるのじゃないか。つまり、先ほどから何度も指摘されておりますとおり、監査する人を選ぶのが監査される人である、しかも報酬を払うのだということでありますから、これはどう考えましても——まして今度は株主総会選任するとなっておりますけれども、いまの日本株主総会は形骸化しておる、まあ早い話が社長の言いなりになるということはもう先刻御承知のとおりでございます。  だから、これは大蔵省にも私は申し上げたことでありますし、公認会計士協会にも申し上げたいのでありますけれども、現在がいいんだいいんだ、われわれが一生懸命やっているからいいんだということでなくて、やはり前向きに何かいい方法はないだろうか、といいまして、これはアメリカのようにもう一つ経営者の上にああいうものができまして、いわゆる受託経営層といいますか、経営者の首をどんどん切っていくということになりますと、経営者も萎縮する。それがいまのアメリカの自動車業界、鉄鋼業界に出ているのじゃないかと思いますので、すぐそのまま日本には受け入れられないかもしれません。しかし、日本日本なりに何か工夫をこらしまして、そこに一定の審査といいますか、チェックシステムをつくって会計監査人選任なりあるいは解任といいますか不再任といいますか、自動的に再選されるわけでありますから、その不再任をチェックするということをやるべきじゃないかと思うわけでございます。  それで、このことにつきましてわれわれがこういうことを言い出しましたら、よけいなお世話だ、黙っていろ、これはがまんいたしますけれども、私は、これは公認会計士協会自体が側面援助を受けることでありますから、大変喜ばれると思っておりましたら、案に相違してそうじゃない、むしろ反対先ほども抜本的検討には反対ということを言われましたけれども反対される。実に不思議であります。摩訶不思議であります。自分たちのそういう独立性が保たれて社会的地位が確立するのに、なぜ反対されるのか不思議であります。あえて推測すればいろいろなことに思い至りますけれども国会の場でございますから控えますけれども、むしろそれは容易ならぬことではないか。むしろ、それに反対されること自体が、いまの監査制度をゆがめている容易ならぬことではないか。  もう一つ申し上げさせていただきます。  先ほどいわゆる企業特別利害関係人の排除のことにつきまして、われわれの方であらゆるケース、つまり公認会計士側と企業側とあらゆるケースは一切いけないようにしてほしいのだ。それは日本人はどこでどういうふうにつながっているかわかりません。以心伝心非常に人情に厚い国民性でありますから、そういうことが往々にして行われますので、ぜひそういうふうに、いままで公認会計士法あるいは証取監査の面においては不十分であるから、今度の商法監査におきましてぜひお取り上げ願いたいということを自民党の理事の方にお願いし、法務省にもお願いしたのでございますけれども、これに対しまして、私の仄聞するところでは、公認会計士協会の幹部の方がおっ取り刀で血相を変えて反対に回られた。  なぜ反対されるのか。先ほどのような、公認会計士の仕事がふえたって税理士の仕事に何にも影響ありませんよ、むしろ公認会計士の仕事がふえればそれだけ税理士の仕事をやれなくなるのだから税理士の仕事がふえるはずだとおっしゃいますけれども、全くこれも先ほど申し上げたとおり、そういうことは口先では言えるのでありましょうけれども、どこにそういう、いままで自分が公認会計士あるいは税理士としてタッチしていた会社が今度監査指定会社になったということで税理士の業務をほうり出して、これはだれでも好きな人が取りなさい、日本税理士会なりあるいは最寄りの税理士会に提供しますと言うほど奇特な方がいらした話は聞いたことがありません。必ず身内の人に行くに決まっているのであります。だから、決して税理士会のプラスにはならないわけでございます。そういう意味におきまして、いまがいいんだいいんだとおっしゃらないで、やはり前向きに御検討願いたい。そうすればまた税理士業界としましても少しは納得する面が出てくるのだろう、こういうふうに思うわけであります。  以上でございます。
  81. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  持ち時間が参りましたので、残念でありますが、質問を終わらせていただきます。  大変貴重な御意見、ありがとうございました。
  82. 高鳥修

    高鳥委員長 安藤巖君。
  83. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ三人の参考人方々の御意見をお伺いいたしまして、ありがとうございました。それぞれのお立場がおありなようですから、それぞれのお立場を話しておられる向きもあるかと思いますけれども、やはりそれぞれのお立場を踏まえてこの商法改正問題について専門家としての御意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  最初、中瀬さんにお伺いをしたいのですが、これは先ほど四元さんがお話しになったことで、一昨年の税理士法改正問題のときのあのお話の中には私ども共産党は入っておりませんので、自民党、社会党、公明党、民社党とおっしゃって、いろいろ政治的な何やらがあったというようなお話をお伺いいたしました。それが具体的には五億円の問題だというようなことも先ほどお聞きしましたが、四元さんは先ほどおっしゃったので、公認会計士協会として中瀬さんの方ではこの問題はどういうふうにとらえておられたのか、そしてその中身というのは一体どういうものだったのか、中瀬さんからお伺いしたいと思います。
  84. 中瀬宏通

    中瀬参考人 昭和四十九年当時、私は協会の役員でもございませんでしたし、会長でもございませんでしたので、その間そういううわさは聞いておりますけれども、私自身知っておりません。
  85. 安藤巖

    ○安藤委員 知っておられなければ何ともしようがないのですが……。  そこで、中瀬さんと坪内さんにお伺いしたいと思うのですが、監査制度の問題、公認会計士さんの仕事の中身の問題あるいは社会的評価の問題、中瀬さんの方はしっかりやっておるのだというふうにおっしゃっておられたのですが、公認会計士あるいは会計監査人独立の問題、いろいろ努力もしておられるというお話もありましたが、組織的監査機構の確立というようなことも言っておられたのですね。私も本当にいいのかいなと気になるし、いままで質問された同僚委員方々も、いいのかいなというようなものが根本にあって、そしてその独立の問題についていろいろお尋ねになったと思うし、先ほど四元さんがやはり問題があるのだというふうにもおっしゃっておられるわけですね。  そこで私は、公認会計士の人を会計監査人選任する問題について、先ほど言いました組織的な機構的な独立性というものを、だれが考えても本当に独立しておるのだなということがもっとわかるような制度として、たとえば公認会計士協会選任の委託を受けてだれということを指名する、こういうような方法、第三者機関が選任するということは会計協会の方としては全くお考えになっておらないのかどうか。そして経営者団体の方としてはそんなことはとんでもないことだということになるのか、お伺いしたいと思います。
  86. 中瀬宏通

    中瀬参考人 初めに、先ほどのお答え、ちょっと違った点がございましたので、訂正させておいていただきます。昭和四十九年のときと申し上げましたけれども、一昨年の税理士法改正のときのことでございまして、その当時、私、役員でなく、会長でなかったという意味でございます。  それからいまの御質問でございますが、私ども昭和四十九年の商法改正のときに、こういった問題、たとえば協会選任したらばどうかとかいろいろな点を考えたわけでございます。しかしながら、現行の制度以外に——ほかの諸外国におきましてもすべて同じような制度になっておるわけでございます。他の方法によってそれを何とかしよう、と申しますのは、たとえばお互いに会計事務所がチェックし合うというようなピュアーレビューであるとか、あるいは監査責任者を十年ごとに交代させるとか、そういったほかの制度でこれをチェックしていくというようなことがアメリカでは考えられているわけですが、日本ではまだピュアーレビューの制度が採用されておりません。しかし、今後そういうものを考えていきたい。私ども商法監査受け入れプロジェクトチームというのをつくりまして、そういう問題も今後検討していきたい、かように考えております。
  87. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまの御質問でございますけれども公認会計士あるいは監査役、この二つの制度につきましては、経団連も従来から、独立的にそれぞれの権限を強化して監査機能を充実するようにということで業界を指導してきたわけでございますが、今回の改正に当たりまして組織的監査の充実といいますか、監査役は二人置かなくちゃいかぬという一つ規定ができまして、これは監査役を組織的に充実することができるんじゃないかと思っております。  それから、公認会計士でございますけれども、これを今度は総会で選任するという規定に変えてきたわけでございますが、これもその独立性、あるいは取締役との結びつきの問題その他を排除して、独立的な監査機能をますます推進させるのに役立つのではないか、こう思っております。
  88. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうことも相当積極的にお考えになっているんじゃないか、中瀬さんもいろいろお考えになっているというようなお話ですが、たとえばもう一つ、これは私は質問のときにも法務省の方にお尋ねしたのですが、検査役を裁判所に選任してもらうというような制度、いまありますね。だから、裁判所に会計監査人選任してもらうというようなことも一つのユニークなアイデアとして考えてもいいんじゃないかと思うのですが、これはこの制度全体の問題の一つでございますから、三人の方々にその点についてのお考えをまずお聞きしたいと思います。
  89. 中瀬宏通

    中瀬参考人 私は、どこが選任母体になろうと、だれが選任母体になろうと、独立性維持には関係ないということを最初の意見陳述で申し上げたと思うわけです。それよりも、やはり報酬を企業から直接もらうから云々ということの方が大きいんではないかというふうに感じているわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、たとえば私がもらいましても、その部下にたくさんの人間がいて、それぞれがチェックしているわけですね。私が会社へ行っているわけではございません。スタッフ、公認会計士、二十人、三十人使ってそれぞれの会社に行っておりますので、それらの正義感のある人たちの意見を口をふさぐということはまずあり得ない。それをすれば必ずどこかで漏れてきますので、やはりスタッフの意見をそのままストレートに会社に伝え、監査報告書につなげていく、そういう意味で、十分な内部統制機構でこれはチェックされている、こういうふうに考えているわけでございます。
  90. 四元正憲

    四元参考人 お答えいたします。  非常に唐突なアイデアでございますので、ここで即答いたしかねますけれども先ほど申し上げておりますように、とにかくアメリカではあるいは西ドイツでは、社長を選ぶ一つのボードあるいは監査役会というものが、これは社長に対しまして監査権と人事権を持っている、その組織が公認会計士を選んでおるわけでありますから、公認会計士は悠々として心置きなく監査ができる。ある学者が言っておりましたけれどもアメリカ公認会計士社長の不正を指摘すると社長の首が飛ぶが、日本公認会計士社長の不正を指摘すると公認会計士の首が飛ぶ、これはまさしく言い得て妙だろうと思うわけでございます。  また、現状のままでいいんだというお説に対しましては、どうしましても税理士業界、いわゆる会計士会を近々から見ています者として承服いたしかねるという気持ちで、これは私が申し上げると大変暴言になるのでありますけれども、先日、たしか毎日新聞に載っておりました。まるでいまの日本公認会計士の選び方は大変——私が言ったんじゃございません。ある学者が言っております。暴力団が警察署長を選ぶようなものだ。まさしく暴言かもしれませんが、一面の真理があるかもしれません。そういう言葉で毎日新聞に載っておりましたので、そういうあれもあるんだということを御披露申し上げました。  だから、現状でいいのだいいのだと言うのではなくて、私は、アメリカ、西ドイツの式のものをいますぐ日本に持ってくるということは必ずしも受け入れられないだろうと思いますけれども、何か前向きで考えるべきじゃないか。いまの裁判所選任一つのアイデアとしまして考えていいことじゃないかと思いますけれども、具体的には、それがそのものずばり税理士会としまして賛成しますとちょっとなかなか声が出ないわけでございます。  以上でございます。
  91. 坪内肇

    坪内参考人 裁判所の選任という一つのアイデアでございましたけれども、大体会計監査人会社というのは、相当お互いの信頼関係がないと十分な監査ができないということは御承知と思います。仮に対立するような人が会計監査をやりましても、片方の会社企業側の方ではそれに対抗するようなこと、そういう関係が生じたらとんでもない話でございますので、まずこの両者の信頼関係というのが大事かと思っております。  それから、裁判所の選任、裁判所というのが出てくるわけでございますけれども、公の権力でございます。この公権の介入というのは、やはりあくまでも企業側にある不正があったときに初めて介入すべきものでありまして、ふだん何でもないときに余り裁判所あるいは国家権力が介入するということは好ましいことじゃないと思っております。それからまた一面、そういうことになりますと、公認会計士さんが自主的に努力しておられるその努力が阻害されるようなことにもなりかねないのじゃないが。これはいま思いつきで考えるわけでございますけれども、そういうもろもろの事情から、今度の改正のように、まず株主総会選任するというのが一歩前進のいい案じゃないかと私どもは思っております。
  92. 安藤巖

    ○安藤委員 ここでいろいろ議論するつもりはありません。選任の問題は、報酬もそういうしかるべきところから出てくる、第三者機関なり、あるいは裁判所であれば裁判所のところで決めるとか、そういうようなことも当然考えられると思うのですが、会社会計監査人との信頼関係、これは大切だと思うのです。ところが、余り信頼関係が深過ぎて癒着というようなことがいろいろ懸念をせざるを得ない実情にあるということなんですので、その辺のところも含めてお考えいただければありがたいと思います。  四元さんにお伺いしたいのですが、今度の法改正で中小企業にとって一千万とか二千万とか、いや、そうじゃないというお話もありまして、それは常任監査役とかあるいは会計監査人選任する、その報酬とかいうような費用のことをおっしゃったのですが、そのほかに、税理士さんの方から見て、中小会社に対して今度の商法改正によってどういうような負担がふえるというふうにお考えになっておられるのかと思いまして、全部でなくてもちろん結構ですが、一つでも二つでも思い当たられるところをお話しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
  93. 四元正憲

    四元参考人 例の監査特例法によりますところの基準が十億が五億に下がるということは、先ほど来申し上げましたとおり、ちょうど中企業に当たるわけでありますけれども、これが莫大な負債を抱えておれば、もちろんその債権者ために強制監査が必要であるだろうと思いますけれども負債も大してない、全く内輪の株主だけであるという場合には、ストレートにそれは負担になるわけでございます。必要のないところに監査をやる、何でだということになるわけでございますので、現在の段階としましては、われわれそれが一番大きな痛手じゃないだろうかと思っております。  あと、商法の本法の方で、これも最初、冒頭申し上げたところでありますけれども法制審議会要綱のもとになりました民事局参事官室の試案につきまして、株式制度、機関制度あるいは計算・公開の場で逐一申し上げまして、それは主として中小企業立場から申し上げたわけでありますけれども、その点についてはほぼ受け入れられておりますので、さほど目くじら立てて申し上げることはないわけでありますけれども、強いて言いますと、たとえば単位株制の場合、これは中小企業としてわりに大会社の株を持っているという場合に、単位株制によりまして非常に不自由な思いをすることがあるだろうと思いますし、また今度は、自己株式の質権ということが認められるわけでありますけれども、その面におきまして、会社によりましては、大会社が自分のところの株を買えということをほぼ強制的に、力関係でありますから押しつけまして、それを質権として設定しまして自分の方で取り上げまして、中小企業が逃げ出さないようにするというようなことも可能じゃないか。これはやってみませんと、いろいろな弊害が出てくるかどうかわかりませんけれども、細かいところではいろいろなことがありますが、大体はお聞き届けいただいたというふうに理解しているわけであります。  以上であります。
  94. 安藤巖

    ○安藤委員 御承知のように、今度の商法改正のきっかけは、これは私どもはいろいろ問題があると思っておりますが、会社企業内の自主的な監査ということと、そのことを完遂することによって企業社会的な責任を明らかにし、それを全うしていくのだというのが柱になっておるわけです。  そこで、今度監査特例法、それから商法改正案が出ておるのですが、いろいろ御検討なさった結果、たとえばロッキード事件のあの五億円というお金はどういうふうに今度の改正によってチェックできる機構になっておるのだろうかということですね。それから、卑近な例では札幌トヨペットの岩沢さんのああいう問題、あれは従業員はたまったものじゃないですよ、倒産してほっぽり出されるということになれば。ああいうようなことが今度の改正案によってどこでチェックできるのだろうかと私は思っておるのですが、どこかにあるのかしら、よくわからないのですが。これは三人のお方にそれぞれのお立場から、公認会計士としてのお立場からこういうところでチェックできそうだ、あるいは税理士さんのお立場からこういうところでチェックできそうだ、あるいは経団連の代表の方は、ここのところはチェックできるかもしれぬ、企業、特に大企業社会的責任はこれではっきりさせることができるのだ、企業は悪なりという汚名はこれで払拭することができるのだというのが何かあったら、お聞かせいただきたいと思うのです。
  95. 中瀬宏通

    中瀬参考人 先にロッキードの件でございますが、あのような多額の不正支出、もしもそれがわが国にあったとすれば、私ども監査において十分発見できたと思います。ただ、あれは逆にこちらは受け入れの側でございますので、受け入れの簿外というのは非常に発見がしにくい。そのために、私どもさっきデュー・プロフェッショナル・ケアということを申し上げましたけれども、要するに、正当な注意を払って、細心の注意を払ってさらに細かくチェックしておく、そういう意味で、ことしの三月に監査マニュアルというものを発表いたしまして、すべての監査人がそれに沿うようにしております。また、不正支出等につきましても、先ほど申し上げましたように通達を会員に出しております。  それから、北海道の件につきましては、簿外の債務保証でございますので、この件につきましては、大光相互事件がありましたときに、早速にそういう簿外の債務保証が発見できるような監査手続を実施するように各会員に通知しております。したがいまして、もしもあの会社が私ども監査の適用会社であったとすれば、必ず事前に発見できたと私は確信しております。残念ながら、あれは被監査会社ではないわけです。したがいまして、ああいうような会社を今度は監査対象にして未然に防止するというふうに期待しているわけでございます。
  96. 四元正憲

    四元参考人 先ほど申し上げましたとおり、私は税理士を本業としております。公認会計士の資格はあるというものの、監査はやったことございません。したがいまして、御質問にストレートにお答えできないわけでございますけれども、ただ、税理士立場としましてわれわれが関与している会社につきましては、昨年の税理士法改正におきまして、税理士独立した公正な立場でということになっております。そういう立場で仕事に当たっていきますし、また、いさかいの反対もあったのでございますけれども、いわゆる助言義務、会社が不正をやっていると気がついたとき、あるいはやろうとしているときには助言しなさいということもやはり税理士の倫理でございます。これは法律に書く書かないは別といたしまして、とにかく一つ職業倫理でございます。そういうことでやっておりますので、税理士業界としてあるいは税理士個人として一生懸命やっております。また、先ほど申し上げましたように、われわれの方には事後審査という国税庁の審査がある。ここで、税理士がいいかげんな仕事をしていますと、ひどい指摘を受けるわけでございますから、そういう面におきましてもできないような仕組みになっております。そういうことで万全を期している。  ただ、やはり三万六千名の税理士の中にはやはり例外もございます。先般来新聞をにぎわしました芸能人の脱税云々がある。これは本当の例外中の例外として御理解願いたいのでございまして、税理士はそういう方面におきましてはとにかく一生懸命やっているというふうにお答えさせていただきたいと思います。
  97. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまの具体的な五億円というのが会社から出たか、あるいはどこから持ってきたか、不肖にして知りませんけれども、少なくとも一件五億円というような金が動くということになりますと、これは従来でもそうでございますけれども会社の各機能がチェックいたしております。たとえば会計あたりでも、これはどういう金だろうか、直ちにチェックするわけでございますが、それにも増して、今度の法改正でも自主的監視機能と申しますか、公認会計士さんあるいは監査役、これが相当権限を強化されておりますので、そちらの方から恐らくそういう不正な支出はチェックできるのではないか。いま中瀬さんのお話を伺っておりましても、チェックできたのだというお話でございますので、その自主的監視機能という点から、今度の法改正によって相当これはチェックできるようになるのじゃないか、こう思っております。
  98. 安藤巖

    ○安藤委員 チェックできるのかできないのかということは、これからやってみないとわからぬような気がするのですが、その関係坪内さんにお尋ねしたいのです。  よく株主総会の形骸化ということが言われておるのですが、形骸化というのはあるべきことじゃないと思うのですが、やはり株主総会はある程度審議すべきところだろうと思うのです。そうして株主のまとまった意見をきちっと決定するというところだと思うのですが、その形骸化はやはりなくす方がいいと思うのです。しかし、これは形骸化を助長した方がいい、たとえば三分で終わったらこれはよかった、三十分なんというのはもう長い、一時間なんていうのはもってのほかだ、総務部長、社長は一体何をやっていたかというようないまの株主総会の開催状況の実態からすると、どうなんですか、やはり三分で終わった方がいいですか、三十分、一時間かけてやった方がいいのですか、形骸化の問題についてお答えいただきたいのです。
  99. 坪内肇

    坪内参考人 形骸化というのがどういうことか、なかなかむずかしい問題だと思いますけれども、総会の議事自体は波乱なく終わるのがいいのじゃないかと思います。ただし、そのほかいろいろな、せっかくの株主総会、年に一回でございますけれども、この総会におきまして、出てこられた株主さんが、そのほかの問題でもいろいろ会社に聞きたいことがある。経営上の問題でございましたら、やはりその場でお答えするか、会議が終わった後の懇談会でお答えするか、そういう開かれた株主総会を目指すのが本当だと私は思っております。
  100. 安藤巖

    ○安藤委員 後の懇談会が総会になるのかどうか、これははっきりしていると思うのです。総会じゃないと思うのですが……。  いろいろ法制審議会商法部会で学者の先生方が御議論になって、法務省でおまとめになって試案というのができて、それからいろいろ要綱案、要綱法案というふうになってきたわけですが、これは先ほどもちょっと議論になりましたが、貸借対照表、損益計算書ですか、これは会計監査人それから監査役が特に違法ではないという意見をつければ、取締役会で決定すれば株主総会で報告すればいいのだ。これはどうなんですかね。私は、形骸化の一つじゃないかな、やっぱり報告でスムーズに済ましてしまうということの一つの事例じゃないかと思うのですが、この点そういうふうにはお考えになっておられないのでしょうかね。
  101. 坪内肇

    坪内参考人 ただいまのお話でございますけれども会社計算書類、貸借対照表にしましても損益計算書にしましても、非常に内容的には込み入っているわけでございます。それを株主総会でぺらぺらと表面の数字だけ読むか、あるいはそれも省略して、あらかじめ皆様方にお配りしてございますので十分御検討いただいたものと思いますがというように冒頭で賛成を求めるわけでございますけれども、こういうのの方がむしろ形骸化しているんじゃないか。それよりも、今度の法律のように、はっきりと公認会計士あるいは監査役が承知した書類であれば、専門家が見るわけでございますからこれ以上の監査の方法はないわけでございますので、その方がむしろ株主さん全体にとりましても本当の内容がつかめる、安心して任せられるということからいきまして、これは総会事項じゃなくしたというぐあいにわれわれ思っておりますが、そのとおりではないか、こう思っております。
  102. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、先ほどからいろいろお尋ねしておりますように、会計監査人の役割りというのは大きくなってくると思うのですね。そういうところを踏まえて、本当に株主総会が形骸化じゃないというのなら、そこのところをきっちりとチェックする必要があるでしょう。そこでいろいろ申し上げておるのですが、その関係で、監査役ですが、今度は常任監査役一名必ずつけなければならぬというふうにいわゆる大会社ではなるわけなんですが、これも会計監査人と同じように、いまおっしゃった趣旨からすると、そういう専門家がこういうお墨つきを与えたのだからもうこれで大丈夫なんですよ、信頼してくださいよというシステムになっていくわけなんですね、この改正案が通っていくとすると。そうすると、監査役の役割りはやはり非常に大きく強くなってくると思うのですよ。  そこで、常任監査役というのは一つわかるのですが、監査役という役ですね。この役は、私も会社のことは余りようわかりませんけれども、よく知人なんかから聞くところによると、取締役を相当年度お務めになって、悪い言葉で言うと営業とかいろいろ肝心なところではもう余り任せられぬ、じゃあ監査役でもやってもらおうかというような扱いをなされている方があるんじゃないか、監査役になっている人がいるんじゃないか。あるいは取締役にはなれないけれども監査役までにはあの人は何とかなれたんだというような位置づけという話をよく聞くのですが、そういうような点はいままであるのか、今後そういう点はどうなっていくのか、どうなんでしょうかね。
  103. 坪内肇

    坪内参考人 私もそういうお話を聞きますし、あるいは現にそういう地位におる方もおられるわけでございますので、これは従来からあったと思います。今後もないとは言えないと思います。しかし、今度の法改正では、とにかく二人以上でそのうちの一人は常任だということでございますので、組織的に今度は監査役自体が、監査役は仮に前身が取締役であろうとあるいは取締役になれないぐらいの身分の人が監査役になったというような前身が何であろうと、取締役とは別の監査役の機能を果たしさえすれば私はいいのではないかと思いますので、あえて前歴その他にはこだわる必要はない。  しかし、御心配のように過去においてそういうこともありましたし、今後もそういうことはございます。これは代表取締役が監査役をもっぱら選任して、選任と言うと語弊がありましたら、推薦して株主総会が決めたわけでございますけれども、今度の改正ではそれも大分監査役の自主的な、報酬その他にいたしましても取締役とも画然と区別するんだというような改正でございますので、だんだんと監査役の地位の強化というのは四十九年以降逐次強化されてきて、今度あたりも相当制度としては強化されてきている、こう思っております。しかし、おっしゃるとおり会社の機関というのはみんなそうでございましょうけれども、運営のいかんでございますので、この点は経団連としても正しい運営をするように極力指導していくべきではないか、こう考えております。
  104. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。
  105. 高鳥修

    高鳥委員長 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  106. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  商法等の一部を改正する法律案について引き続き参考人から意見を聴取いたします。  本案審査ため参考人として東京大学法学部教授鴻常夫君及び神戸大学法学部教授河本一郎君に御出席いただいております。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  両参考人におかれましては、それぞれ御専門のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、本委員会審査参考にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見の開陳は、鴻参考人河本参考人順序でお一人二十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員からの質疑に対しお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず鴻参考人にお願いいたします。
  107. 鴻常夫

    ○鴻参考人 鴻でございます。私の本務は東京大学法学部の教授で、商法の講座を担当しております。  本日は、商法等一部改正法律案について、本委員会委員各位を前に参考人として法案についての意見を申し述べる機会を与えられましたことについて、委員長初め委員各位に対し厚くお礼を申し上げます。  今回の商法改正は、会社法に関し昭和二十五年以来の大改正であるといえるものでありますが、この法律案の基礎になったのは、御高承のように、法制審議会が本年一月二十六日法務大臣に答申したところの法律案要綱でございます。それはまた、昨年十二月二十四日にその審議会の商法部会が六年有余にわたって慎重審議した結論である要綱案を原案どおりに承認したものでございます。私は、その商法部会の審議に終始委員立場で参加しておりましたが、昭和四十九年に監査制度の改正を実現した商法の一部改正といわゆる監査特例法の制定の後、私ども会社法の全面改正の作業に着手するに当たりまして、四十九年の法律の成立を見た際における本委員会と参議院法務委員会の両方の附帯決議を踏まえた上のことであるということをよく記憶いたしております。  当初は、文字どおり会社法の全面的改正を考えて、広く会社法に関する問題点を取り上げて検討を加え、また、各界の意見を求めもしましたが、やがて会社法の全面改正作業の基礎として、株式制度から実質的な審議に入り、その後、株式会社の機関の問題を審議し、続けて会社の計算・公開の問題の審議を順次に進めておりました一昨年七月になって、当時特に問題となっていたことでありますが、企業の不正経理の防止のためには企業の自主的監視制度を早急に強化すべきであるとの社会的要求が大きかったことを考慮して、それまでの全面改正の方針を変更し、今回の法律案におさめられている諸問題だけで改正要綱案をまとめ上げることになりました。  私は、このような方針の変更は適切であったと考えております。と申しますのは、会社法の全面改正審議の全体が完結するのを待つとすれば数年先のことになったでしょうから、それよりも、すでに審議をあらかた済ませていた部分であって、会社法の他の部分と切り離して改正することができるものについては、少しでも早く改正を実現することの方が望ましいことは明らかであるというふうに考えられるからでございます。  今回の法律案は、商法の一部改正監査特例法改正二つを含んでおりますが、両者を通じて項目的に柱となっているのは、株式、株式会社の機関、会社の計算、新株引受権つき社債の四つであります。株主総会監査役会社の計算の三つの項目だけは二つ法律改正に出てまいります。会社に関する一般法であり株式会社制度の基礎をなす株式制度を含んでおる商法の一部改正はもとより重要であることは申すまでもありませんが、それにも増して、今回の商法等一部改正法律案の中では、いわゆる大会社に関する法規制の整備という点が一層重要性を有していると申せるかと思います。と申しますのは、現今、法制度の緊急な改善が望まれているのは、社会的な影響力の大きい大会社に関してであることは明らかだからであります。  私は、以下に改正法律案の中の幾つかの重要事項について私の意見を申し述べることにいたします。  株式会社制度の基礎をなすものは株式制度でありますが、この株式に関する改正法律案の最大の眼目は、株式単位の是正ということであります。現在の株式の単位が五十円では小さ過ぎるということは、経済合理性の見地からして争いがたいことであると存じます。今後新設される株式会社について株式の発行価額を設立に際して五万円以上に限ることについては余り異論のないところでしょうが、既存の会社の株式単位の是正の方法として、改正法律案は単位株制度を採用しております。本来の筋から申せば、昭和二十五年の改正の際に採用されたやり方、すなわち株主総会の特別決議によって株式を併合して額面株式の券面額を引き上げるという方法、あるいは法律上株式の併合を直ちに強制するという方法、このいずれかということなのですが、そのいずれにも実際上の難があるということから、株式の本質をめぐっての理論的な批判がなくはなかったにもかかわらず、実際的解決策としては暫定措置としての単位株制度以外に名案がないというふうに判断されたのであります。  単位株制度は単位未満株主の権利を侵害するという議論もありますが、単位株制度というものは言うなれば法律によるなし崩しの株式の併合という本質を持つものであるというふうに理解するならば、会社に対する財産的な権利と買い取り請求権を認めている改正法律案内容は、実質的に妥当なものと認めてしかるべきものと考えられるのであります。しかし、単位株制度は何といっても変則的な形のものでありますから、単位株制度の採用によって法の期待どおりに株式の単位の引き上げが促進され、株式の併合を定める別の法律をできるだけ早い時期に制定できることになることを私は願望しておるのであります。  一株の単位が引き上げられることとの関連から、その端株というものを無視するわけにいかないということで、改正法律案は端株の法律関係について詳細な定めをしておりますが、私は、端株について端株券を発行してその流通を認めるということなどは適当でありましょうが、定款の自治により端株のままでも会社に対する権利を認めるという制度には賛成ではありませんし、一方で株式の単位を引き上げながら、他方で一株の単位が大きくなる以上端株主の権利を無視することができないということを同時に主張することは、株式理論の立場から無理がないのか、筋が通るのかどうかということを少しく疑問に思っております。  次に、株式の相互保有の問題でありますが、改正法律案のこの点の規制は、結合企業の規制としては確かに不十分かもしれません。しかし、わが国において広く見られる環状式の相互保有に対して有効な規制を加えるうまい法律技術はそう簡単につくり出せるものではなく、結合企業についての法規制全般の問題の一環として今後じっくり検討するほかはないことだと思います。ただ、むしろ株式の相互保有という状況が商法立場からも好ましいものではない、あるいは放任すべきことではないという基本精神が商法自体の中に示されることになった点を評価することができるのではないかと存じます。  第二の柱である株式会社の機関の問題は、株式会社の運営機構を定める部分でありますが、改正法律案は、まず株主総会について、現在形骸化していると言われている総会を蘇生させようという基本的な考え方の上に立って総会の権限を再検討した上で、一方で株主株主総会への積極的な参加、少なくとも参加意識を持ち得るような制度をつくり上げる、他方で総会形骸化の一つの大きな外的要因となっている総会屋、特殊株主の動きを制約しようとしております。  総会の権限の点は、商法本則の適用のある会社では現行法を維持しながら、特例法適用の大会社については貸借対照表、損益計算書は各会計監査人及び各監査役適法意見があれば総会の承認を要せず、定時総会への報告事項でいいというふうにしておりますが、これは計算書類の確定権限だけは取締役会に移し、利益処分の権限は総会に残すという考え方でありまして、大会社における決算手続のあり方として、合理的な解決であろうと思います。また、株主の総会への参加の点では、取締役、監査役説明義務と株主の提案権を一般的に法定し、株主数千人以上の大会社について招集通知への参加書類の添付を要求し、議決権の書面行使と委任状勧誘の制度を商法へ導入していることも、総会運営の健全化への内的要因として役立つことでありましょう。  さらに、総会の形骸化の外的要因となっている総会屋等の動きを制約する立場からの改正点として、株主の権利の行使に関する利益の供与を全面的に禁止し、民事責任、刑事責任の両面にわたって規定を整備している点は、今回の改正法律案の当初からの中心課題の一つを解決したものとして評価してよいことだと存じます。  以上に対し、取締役及び取締役会については制度的には大きな改正はありませんが、取締役の義務と責任取締役会の権限と運営に関する幾つかの改正点は、いずれも株式会社の運営の改善に役立つものと思われます。特に、経営に関する重要事項の幾つかを取締役会の決議事項として一括して法定したことは、注目してよいことでありましょう。  株式会社の機関の三番目は監査役ですが、今回の改正法律案は、四十九年の改正で一応整備された株式会社監査体制の一層の強化という点が一つの大きなポイントであるだけに、特例法適用の大会社について複数監査役制、常勤監査役制を強制したこと、監査役の報酬と費用について立ち入った規制を加えて監査役独立性の法的保障を図っていること、その他監査役の権限を幾つかの点で強化していることなどは、株式会社監査の一層の充実強化に役立つものと認められます。  株式会社監査制度については、監査役監査と並んで会計監査人監査の問題がありますが、改正法律案監査特例会社範囲を拡大して、これを資本の額が五億円以上または負債の合計金額が二百億円以上の株式会社としていることは特に重要な改正でありまして、このように資本の額のほか負債総額という、会社の規模ないしは経営活動の大きさをより正確にあらわす基準を取り入れて監査特例会社範囲の拡大を図っていることは、株式会社監査の充実強化に役立つことは疑いを入れないことでありまして、このような拡大が監査制度の改善に真に必要であると認められる限りは、職域侵害を理由とする一部の強い反対意見によって妨げられるべきものではないというふうに私は考えております。  このほか、改正法律案は、会計監査人選任、任期等について相当詳細な定めを設けておりますが、その中では選任に関する点が最も重要であって、会計監査人選任については監査役の過半数の同意を要する点は現行法と同じですが、その選任権を取締役会から株主総会へ移しております。これまた、会計監査人監査の適正を確保するためにその独立性を保障する必要があるとしたものでありますが、他面、監査役が主導権を握りながら総会で会計監査人選任を行うことが監査役の地位の向上につながるという意味でも、監査制度の充実強化になるわけであります。  第三の柱である会社の計算につきましては、改正法律案は五項目について規定を設けておりますが、まず、決算・監査の手続として営業報告書の記載事項を法定していることは、その詳細を法務省令にゆだねているにしても、会社の開示、公開、言うところのディスクロージャーとして大きな前進でありましょうし、附属明細書の提出時期の改正といい、監査役会計監査人の両監査報告書の記載事項の整備といい、いずれも監査の充実強化をさらに進めるものであります。  制度的に大きな改正は、資本及び準備金の構成の点でありますが、とりわけ、改正法律案が資本準備金となし得る額を株式の発行価額の二分の一を超えない額までとしていることは、その割合の数字こそ経済界との妥協の結果であるにしても、株式に対する配当率というものを資本ないし額面を基準とすればよいといった少なからぬ経営者が従来安易に持っていたところの必ずしも健全とは言えない考え方、これへの反省の材料を提供するものであることは確かでありまして、大衆投資家の利益の擁護につながることを私どもは期待しておるところであります。  次に、引当金の問題は、総会の権限に関連して言及しました特例法適用の大会社の決算手続との関係で格別に重要な意味を持ってきている問題でありますが、引当金として計上することができる具体的な範囲いかんについて、現行商法二百八十七条ノ二の規定の解釈をめぐって今日も議論の多いところでありますだけに、改正法律案は、利益留保性のものは引当金として認めないという趣旨を強く打ち出すことによりまして、取締役会による利益操作を防ぐものとして大きな改善であることは疑いがありません。  ただ、引当金の問題は、純粋な会計理論のみによって決められ得べきことではなくて、税法とか特別法の取り扱いをも含めた上での公正な会計慣行の形成を期待しつつ、そのような公正な会計慣行によって決めるべき性質の問題であろうと私は考えております。  最後に、改正法律案は、新株引受権つき社債の制度を新設し、相当詳細な規定を置いております。これは株式会社の資金調達の多様化を図るものでありますし、別して、現時のような経済活動の国際化の時代において法の適切な対応を示すものであると認められ、私としては大いに賛成であるということを一言申し上げるにとどめておきます。  以上、改正法律案の今日的意義と、その内容をなす重要な改正点の幾つかについて私の意見を申し述べてまいりました。私としては、改正法律案内容個々の点については、全部が全部賛成というわけではもちろんありませんが、会社法全面改正の重要な一部を内容とし、監査制度の充実等企業自主的監視機能を整備強化せよという現下の重要な社会的要請にもこたえようとしている改正法律案が少しでも早い時期に成立することを強く希望いたしております。  もとより、会社法の改正として、この改正だけで十全というわけにはまいらないでありましょう。これからも、必要があれば不断に改善することも必要でありましょう。しかし、この大改正が実現することにより、会社企業としての社会的責任を果たすことがそれだけしやすくなるというふうに考えられますし、改正法律案の一日でも早い成立は、今後に残された会社法の全面改正の作業、特に大小会社の区分や結合企業の規制等の問題の審議検討を促進することになると存じます。  現代社会の株式会社を少しでも早く真に国民のためのものとするために、私も、微力ではありますが、一商法学者として及ばずながら今後も一層勉強し、力を尽くしてまいる存念でございます。  内容の乏しい意見を申し上げましたが、本委員会審査の御参考になるところがありますれば、大変幸いでございます。  長時間をどうもありがとうございました。
  108. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、河本参考人にお願いいたします。
  109. 河本一郎

    河本参考人 河本でございます。  ただいま鴻教授からかなり個別的な点につきましてもお話がございました。二人、あらかじめ報告の内容を相談し合ったわけではございませんが、少し違った形で御報告をさせていただきます。  今回の商法、中でも会社に関する規定改正は多岐にわたっておりますが、それを貫いておる基本的精神は、わが国の自由企業体制の健全な発展を図ることを目的としまして、企業、ことに大企業のワンマン的経営者の独走をチェックし、これをコントロールするため企業の自主的監査機能を強化、整備することにある、こう考えております。この目的を達成するために、この数年来作業を続けてきたわけでありますが、最終的にこの改正案は次のような施策を用意しております。  五つの大きな柱で御報告をしたいと思いますが、一つ株主総会の健全化、二つは業務執行における合議制の貫徹、三つは監査制度の強化、四つはディスクロージャー制度の強化、五つは株主構成の是正という五つの柱を立てましてお話をさせていただきます。  第一の株主総会の健全化ということでございますが、これは、昭和四十九年に監査役制度の強化を中心とする商法改正がなされましたときに、株主総会のあり方について所要の改正を行うべきことが衆議院法務委員会附帯決議として特に指摘されていたということは、先ほど鴻教授のお話の中にも出たとおりでございます。これは、わが国株主総会の著しい形骸化の改善の必要性を指摘したものでございます。  これを受けまして、改正法案は、その形骸化の最大の原因であるいわゆる総会屋を排除するための施策を講じております。すなわち、会社株主権の行使に関し何人に対しても財産上の利益を供与することを禁止し、これの違反につきましては、取締役の民事責任、かつ関係者に厳しい刑事責任を課しております。  このような総会屋の排除を前提として、株主権の強化を図るため株主の質問権、条文では取締役、監査役説明義務となっておりますが、これを明文化し、さらに提案権を新設しております。さらに株主の意思の総会へのよりよき反映を目指して書面投票制度を導入しておりますが、ここで総会屋への金銭供与を厳禁しましたことは、わが国企業内に存する金銭で物事を片づけようとする弊風をなくするために、法律が強力な一歩を踏み出したものとして評価すべきではないかと考えております。  第二番目の業務執行における合議制の貫徹でありますが、ワンマン社長による独裁が企業の倒産やあるいは社会的責任に反する行動に企業を導いた、そういう多くの実例にかんがみまして、法案は、取締役会が監督機関であるということを明らかにすると同時に、重要な業務執行は取締役会で決すべく、社長等代表取締役にゆだねてはならぬということを定めております。このような合議体としての取締役会の権限を発動せしめるために、各取締役に取締役会招集権を保証し、他方、代表取締役の取締役会に対する定期的な業務報告義務を課しております。  第三番目に、監査制度の強化でありますが、企業行動の自主的コントロールの方法としまして、いま申しましたそういう取締役会という合議体を通じて取締役の職務の執行を監督する方法がございますが、それ以外に、取締役会とは制度的に独立した機関である監査役による監査と、さらに外部のより独立した会計監査人による監査とがございます。改正法案はこの二つ監査制度のより一層の強化を図っております。  その一といたしまして監査役監査の強化でありますが、いわゆる大会社にありましては監査役を複数置くべきものとし、しかもそのうち一名は常勤でなければならぬとして、常時監査の体制を制度化しております。  それから、監査役の地位の独立性を財政的面から強化するために、その報酬の額は取締役の分とは別にして定めるべきものとし、さらに、監査ために要する費用の請求に当たっては、会社側にその費用の必要でないことの立証責任を負わせております。  さらに、監査役は、取締役に法令違反、定款違反等の行為があることを知ったときは取締役会においてそのことを報告する義務を負い、そのため必要があればみずから取締役会を招集する権限を与えられております。  ことに監査役の権限強化の例として指摘すべきことは、監査役が支配人その他の使用人に対して直接報告を求めることができる旨の規定を設けようとしている点であります。これによりまして、監査役は代表取締役を通さずに会社の従業員に対し、たとえば先ほど申しました総会屋への不正支出あるいはその他の者への不当、不正な支出等の有無について直接自分に報告せよということを命ずることができるようになります。  それから、その二といたしまして、会計監査人監査の強化でありますが、会計監査人監査を受けるべき会社範囲資本金五億円以上の会社並びに負債の合計額二百億円以上の会社に拡大するとともに、その独立性を強化するためこれを株主総会において選任することとし、かつ、その選任議案の提出には監査役の過半数の同意を要することにしております。総会が監査役を解任するときも監査役の過半数の同意が要ることになっております。  会計監査人の任期は一年と法定いたしますが、定時株主総会で再任しない旨の決議がない限り再任されたものとみなされます。そういうことにし、再任しない旨の議案を提出するには監査役の過半数の同意が要ります。こういうふうにしてできるだけ会計監査人の地位の代表取締役からの独立を強化しておるわけでありますが、その反面、会計監査人が代表取締役と癒着してしまいまして十分その職責を果たさない、そういうおそれがある場合には、今度は監査役の過半数の同意をもって別の会計監査人選任を取締役に求め、そういう議案を総会に出すように請求することができるようにしようとしております。  それから、会計監査人につきましても、監査役と同様に、支配人その他の使用人に対し直接会計に関する報告を求めることができることにしております。  それからその三といたしまして、監査役会計監査人の連係の強化ということがございます。大会社の行動を効果的にコントロールするためには、監査役会計監査人の連係を緊密にする必要がございます。会計監査人選任、解任の段階で両者の関係が強化されることは上述のとおりでありますが、具体的な監査活動の面におきましても、監査役は、必要に応じ会計監査人に対しその監査に関する報告を求めることができる旨を定めようとしております。現行法でも、会計監査人は、会計監査に当たり取締役の不正行為を発見した場合には監査役に報告すべき旨を定めておりますが、改正法案では、監査役の方から積極的に会計監査人に対し、広く監査に関する報告を求めることができる旨を明文でもって定めております。そして、もしも会計監査人に職務上の義務違反や職務怠慢があることがわかりましたら、監査役全員の同意で会計監査人を解任することができるという規定も用意しております。  次に、大きな四はディスクロージャー制度の強化でございますが、現代企業の行動をコントロールする立法技術の一つに、企業内容の開示制度、いわゆるディスクロージャー制度がございます。これはもともと証券取引法の分野で発展したものでありますが、明るいところでは悪いことはできないものであるという発想に基づきまして、企業の不正、不当な行為を予防する効果があると言われている法技術でございます。  今次の商法改正に当たりましても、営業報告書、附属明細書及び監査報告書の記載内容の充実によって企業内容及びその行動の開示を強化することが検討されました。しかし、営業報告書や附属明細書の記載内容はすべて今後の省令にゆだねられております。したがいまして、私の希望を述べさせていただきますならば、試案の段階で発表されておりましたような事項が記載事項として省令に盛り込まれるのが望ましいと思います。そして、そのような省令を前提としまして、監査役が省令どおりに営業報告書や附属明細書が記載されているかどうかを監査し、さらにその会計事項に関しては会計監査人監査し、それを監査報告書に記載するという、こういう仕組みが望ましいのではないかと考えております。  それから、最後の大きな項目といたしまして、株主構成是正のための処置であります。  以上のような諸施策を通じて、企業経営者の独走をコントロールすることによって自由企業体制の健全な発展を図ることを改正法案は目的としておるわけでありますが、より根本的に考えなければならぬ問題がございます。それは、わが国企業の持つ株主構成の特殊性でございます。これは二つの面においてあらわれております。一つは、額面五十円を基本にした株式制度のもとでの極度に零細な株主の存在ということが一つであります。もう一つ株主法人化の現象であります。  第一の問題は、およそ財産権としての株式の価値を守るという、そういう意識を持つとは思えないほど低価値の株式一株を有するにすぎない者が私的企業としての株式会社の最高機関である株主総会の構成員になるというのは、いろいろな制度との整合を考えました場合にどうも不合理でございます。改正法は、そこでこの単位を現在の証券取引の単位に合わせて五万円に引き上げようとしております。  しかし、いま直ちにこれを実行いたしますことは莫大な数の株券の交換を必要といたしますし、ひいては上場されておる株式の流通の阻害を生じます。それからまた、既得の株主の権利の保護から考えましても多くの問題がございます。また、従来わが国企業が行ってきました小さな割合での株主割り当て新株発行や無償交付は、一株の額面額を五万円とこう一挙にいたしますと多量の端株を生ずるために、そのような財務政策は困難となってまいります。  そこで、当分の間、一株の額面額はいままでどおりとし、ただ千株未満の株主には利益配当請求権、新株引受権、株式の無償交付を受ける権利等のみを与え、総会に出席して決議に参加する権利は与えないことにするといういわゆる単位株制度を採用することにしております。そして、株券の整理の状況と今後の企業金融の実態の推移等を見て、適当な時期に一単位の株式を一株に併合することを考えている非常に実際的な法であります。これは生きて動いている経済の実態にショックを与えることをできる限り少なくしつつ、法改正を実現しようとするものとして採用された施策であろうと考えております。  それから第二の問題は、わが国上場会社株主構成が法人株主に偏し、個人株主が極度に減少していくのを放置しておくことはできないという問題であります。このことはいろいろな弊害をもたらしておりますが、経営者のもたれ合いの大きな原因の一つでもございます。  このため商法としてできることは、まず子会社による親会社株式の取得を禁止いたしました。さらに、相互保有を規制するために、会社が他の株式会社の発行済み株式総数の四分の一を超える株式を取得したときは、その株式会社はその有する会社の株式について議決権を行使できないことにしております。もっとも、これだけでは、わが国の特徴であります企業集団における広範囲な株式の持ち合いを規制することはできません。その規制のために実にいろいろな方法が部会においても検討されましたが、先ほどの鴻教授の御報告の中にもありましたように、立法技術的に非常に困難であります。結局、上述のような措置にとどめざるを得なかったわけであります。  次に、個人株主減少の大きな理由一つとして、わが国の株式の極端な利回りの低さということが指摘されておりますが、時価で資金を調達しながら、配当は額面すなわち資本を基準にして、多くの場合一割をもってよしとするという、わが国経営者の一般的な考え方に基づくものとも言われております。この考え方を打ち破るために、改正法案は、発行価額の少なくとも半分は資本に組み入れなければならぬ、こういうふうにしております。試案はもともと、御承知のように三分の二を提案しておりましたが、財界の反対等々で二分の一に落ちついております。不十分ではありますが、これによって、わが国の経営者が、わが国の株式の極端な低利回りの是正の方向に心理的にでも動いてくだされば結構だ、こういうふうに期待をしております。  私は、先ほど申しましたように、今回の改正は大体この四つの大きな柱で動く、こう考えておりました。したがって、またそれぞれの点につきましてはもっと進んだ方法も考えられると思っておりました。しかし、現実との妥協におきまして最小限できるのはどういうことかということになりますと、やはりこの辺がやむを得ない線ではないかと思っておりますし、そしてまた、四十九年の改正のときにもいろいろ言われましたが、少しでもよくなった、また今後少しでもよくなればいいという線から、基本的にはこの改正案賛成しておるわけであります。なお、個々的な問題につきましては、後ほど御質問に応じましてわかる範囲内でお答えさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  110. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の陳述は終わりました。     —————————————
  111. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 御多忙のところ、両先生方には大変恐縮でございます。先生方商法について御専門家でございますが、長年御検討になっておる法律を、専門家でもない私どもがわずか数回の法務委員会審議をするということは、実は大変ちゅうちょを感じておるわけであります。私どもは政治家としての立場からかかわり合いを持ち、先生方は学問という立場からかかわり合いを持っていらっしゃるのですが、私がいま感じますことは、両先生からいろいろお話がございました。もっともな御意見で、両先生とも法案に御賛成のようではありますが、考えてみまして、一体日本企業商法意識、商法理念とでも申しましょうか、そういうものがいま本当に定着しているのであろうかどうか。  現行法はもちろんでございますが、いまお二人からお話ございましたが、改正法の数々の重要な柱とでも申しましょうか、単位株にしても、取締役の義務と責任にしても、監査体制にしても、株主総会の健全化にしても、この改正が、直ちにとは言いませんけれども、本当に日本企業に定着をしていく能力と誠意がいま企業の中にあり得るだろうか、そう私は心配せざるを得ません。  商法は、うどん屋株式会社であろうが何であろうが、零細な株式会社であろうが何であろうが適用されるのでありますが、下へ行けば行くほど、零細企業になれば、商法なんかくそ食らえ、何も知らぬ、ああそうかね、届け出が要るのかね、それじゃ税理士さん、済まぬけれども株主総会の議事録をつくってちょうだい、こういうかっこうで全然定着しておりません。  今度はポイントが大企業にあるわけでありますから、私どもとしては、午前中も、前の法務委員会でも、どうやってこれを定着させるのだ、こう法務省に質問をしたわけでありますが、経団連の参考人も、運用は人によるなんてうまいことを言って逃げちゃったわけなんです。これらの改正企業の中に本当に定着し得る土壌を持っておるか、また、十分でないとしたならば一体どうしたらこれが定着するのだろうか。絵にかいたもち、絵にかいた構図にすぎないおそれはないか、こういう点についてどうお考えでございますか。まず、鴻先生から伺いたいと思います。
  113. 鴻常夫

    ○鴻参考人 横山さんの御質問は、法と実際といいましょうか、法と事実との関係の一番基本的なむずかしい点の御質問でございまして、長年法律を専門にやっております者もそう簡単に答えがたい面が御質問の中に入っておったかと思います。  まず、事実として今日の大企業の経営者に商法意識が定着していると見れるのかどうかという点につきましては、一般的にはこれを肯定してもいいのじゃないかと私は思います。しかし、それが全部でないために、間々社会的にひんしゅくを買うような問題をいろいろ起こしている。今度の改正は、そういうことも極力なくしようということでつくられているわけであって、すべての大企業経営者が現行の商法改正法が意図している内容の方も十分に正しく理解し、そして法律の期待どおりに行動するということを楽観的に予想するわけにはまいりませんけれども、大部分の経営者というものはそれだけの能力も持ち、また、横山さんの言われる誠意を持ってないということはないのじゃないか、能力は持っているし、それだけの誠意を予定して立法を考えていいのではないかというふうに思います。  もっとも、善人ばかりの世の中でしたら、法律は余り細かいことまでは要らないとも言えるわけで、これほど今日、会社法が専門の私でも全部の条文などをそらんじるなんていうことはとても不可能なくらい複雑になっておりますのは、やはり会社法の適用を受ける人たち必ずしも善人ばかりではないということから法律が要るのだということも確かに言えるわけでございますけれども、そうかといって、法の適用を受ける者がみんな悪人ばかりだというふうには、私は考えておりません。しかし、現在そういう点で必ずしも横山さんの期待されるとおりにそういう面が十分だということが私として言えるかというと、それほど十分ということも申し上げにくいわけでございます。  したがって、法律改正という機会はいいチャンスでございますので、実際会社を運用する経団連その他実際会社の経営者はもちろんでありますけれども会社法の運用に携わる者、さらに私のように学問の立場からこういう問題を取り上げている者も、力を合わせて、商法意識というお言葉でしたが、そういうものが漸次定着するように努力していく必要があるのではないかと思っております。  今日、わが国の経済が世界有数の力を持ってきております根源は、もちろん戦後における関係者の努力もあると思いますけれども、私は、やはり戦前、戦後を通じてコンティニュティーというものがあるのであって、昔からわが国会社企業というものは商法の適用の上に立って事業経営が行われてきたものでございまして、何回も会社法の大改正がございますけれども、そのたびに改正された法律に即した形の事業経営というものを心がけて経済人はやってきておったのではないかと思います。しかし、近時目につくところでは、昔以上におかしな事件などが次々とあらわれてきておりまして、はなはだ残念に思うわけでございますけれども、そういうことが今度の改正法によって少しでも起こらないようになるということを私としては期待しているところでございます。  以上でございます。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 私に与えられております時間は二十五分でございますので、なるべく簡潔にひとつ。  河本先生に伺います。先ほど今後の商法改正について相互保有とか大小の区分とかあるいは結合企業にお触れになりました。私どももこの審議に際して何を積み残したのか、これからの商法改正、また数年がかりになると思うのですが、われわれは何を考えるべきかということについて深甚の関心を持っておるわけであります。御両所から御意見を伺いたいと思いますが、まず、河本先生から、今後の商法改正、積み残しないし新しい進路はどんなことがあるか、お聞かせ願いたいと思います。
  115. 河本一郎

    河本参考人 これはあるいはむしろ法務省当局のお答えが一番的確かと思いますが、これは私、全く個人的な考えであと何をやったらいいかと自分が考えておるか、それをお答えさせていただきます。  私は、最近はやりの言葉で申しますと、いわゆる企業結合法、これはいまの企業が、ことに大企業は単独の企業として存立しているのではなくて、その周辺にちょうど宇宙の衛星のように非常に多くの天体を従え、さらにそれをまた従えている、そういう形をとっておりますが、そういうものをまとめて一つの規制の対象にしていく、こういうものをやはり考えていかなければならぬわけであります。ところが、これには、わが国はまた独特の、どこの国にもない企業集団というようなものがありまして、非常にむずかしい立法技術が要りますので、これはこれでよほどじっくりと腰を据えて考えなきゃならない。その過程であるいは先ほどのような相互保有等々の問題も考え直さなきやならぬかもわかりませんし、それからまた競業取引等あるいは自己取引等々も別の構想を考えなきゃならぬかとも思いますが、その問題が一つ。  それから、わが国にとりましてこれまた困難な問題は、やはり中小会社、これに向けて最も適した着物、服をこしらえるにはどうしたらいいか。それは先ほど先生おっしゃいましたように、そこらではほとんど商法なんか守る気はないのではないかとおっしゃいますが、それは法律そのものが非常に高度過ぎるあるいは詳し過ぎる、だからそこらに合わせたものを考えなきゃならぬのではないか。ただ、これも余り合わせていきますと、実は中身がなくなってしまうということにもなりますので、法としては限度がございますが、それは考えなきゃならぬ。しかも、そう言いながらも、株式会社という名前は、それを剥奪すると憲法違反の議論が出てくるほど大事なものだと言われておりますので、実と名、その辺の調整をとりながら、非常にむずかしい仕事を今後やらなきゃなりませんし、そういう問題を残っておる大きな問題だ、私はこう考えております。
  116. 鴻常夫

    ○鴻参考人 私の考えております点も、ただいま河本参考人が言われた企業結合法と中小会社に適した立法をするという二点が非常に大きいと考えておりますが、むしろむずかしい問題は、私ども商法部会でこういう問題を審議するときに、この順序をつけるということにあるのではなかろうか。大会社の方の法的規制、今回大改正をするわけでございますけれども、それでも残された問題は決してないわけではない。はっきりといま河本参考人の言われた結合企業に関する法規制というものは後に譲った面が大部分でございます。また、中小会社について、この問題は大小会社の区分ということで、今回の会社法の審議の最初には項目として入っておった大事な項目でございますが、これもこれまで十分に審議いたしておりません。しかし、この両方はいわば会社法の両極に存するような問題でございまして、こういうものを同時並行的に検討を加えて、両者について早期に結論を出すというためには、審議のやり方自身にも相当な工夫が要るのではなかろうか。  かてて加えまして、こういう基本的な法律改正といいましょうかというもののほかに、会社制度は生きて動いておりますから、やはりそのときどきに商法会社法の緊急な改正を必要とするというような問題も起きてくるのではないか。そういうものもその都度審議対象にするということになりますと、いま積み残しの課題の審議はかなり時間をかけざるを得ないのではないかというふうに私は考えております。  そういうことで、一番大きな項目は企業結合法と中小会社法ということでございますが、恐らく近い将来に株券振替決済制度というものの商法への導入、特に現在ペーパークライシスをいかにして解決するか、一つのすぐれた技術的制度である振替決済制度というようなものも取り上げざるを得ないのではないかと思います。そういうことで、基本的な問題と緊急かつ重要な問題というものを今後処理していかなければならないというふうに思います。  さらに、前の当委員会附帯決議の中にありました企業社会的責任といったような問題も、今度の改正で、個々の制度を改正することによって、会社企業社会的責任を少しでもよく果たせるようにはなってきておりますけれども、これだけでいいという問題ではなく、なお今後の検討は残っているのではないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 公認会計士の業務についてお伺いをいたしたいと思うのです。  これは商法改正をいたします際に必ず問題になるのですが、端的に言えば、今度数百の被監査会社がふえる。そうすると、公認会計士監査法人は一生懸命に注文を取りにいく。それで、何とか自分のところに監査を委嘱してもらいたい、こう言う。そして、それじゃおたくにしましょう。そういうことから始まって報酬をそこからもらった公認会計士が、本当に社会的責任を十分果たし得るだろうかという疑問がどうしても残るわけであります。いま、さりとて白紙に地図を描いて、全部パアにして、公正な第三者機関を置くということも困難だということなんでして、午前中も公認会計士協会から、一人でやっているのじゃない、数十人でやっているのだからそういう御心配は無用だということがありましたが、実際はそうかもしれませんが、理論的にはどうしても残る。この問題について両先生、いいお知恵があったら聞かしていただきたい。
  118. 河本一郎

    河本参考人 一年ほど前でございますか、私、近代経済学者の伊東光晴先生と対談したことがありますが、その中でも、いま先生がおっしゃったように公認会計士信ずるに足らずということを非常に強く述べられて、公認会計士の方から抗議を申し込まれたこともございます力理論的には、そこの金をもらって監査しておるという以上、本当の監査ができるかということは絶えずつきまといますが、そのためにいい知恵があるかとおっしゃいましたが、結論的には実は余りいい知恵がございません。たとえば協会でまとめて受注して協会が適当な監査法人を割り振って、そこから謝礼を払っていくというようなことも出たこともございますけれども、果たしてそれで現実が動くかということも保証がございません。  結局、はなはだ迂遠なことでございますけれども職業的良心の涵養を待つよりほかないのではないのか。職業的精神の涵養をバックアップしていくのはやはり法律制度ではないのか。こうしてあなた方にまさに日本企業の実質的監査制度の最後の柱としての役割りを与えておるのです、それに対しては万が一のときにはこういう責任もあります、そういうことで支えていくよりほかないのではないかと思いますので、実は余りいい知恵はございません。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 鴻先生には、それとあわせてお伺いしたいのですが、先ほど結合企業の話が出ました。私ども長年国会議員をやっておりまして、いろいろな企業の問題を取り上げておりますが、多国籍企業ですね、外国の多国籍企業はもちろんだけれども日本の多国籍企業も海外にずいぶん支店を持ちあるいは子会社を持っておる。そういう日本の多国籍企業についても状況把握が十分できてない。政府も実態把握が統計的にも十分できていない。そういうところに商法並びに諸法令の適用が十分ではないのではないか。公認会計士監査も、それが十分手が届かないところに外国の子会社、支店というものはあるのではないか。そういう多国籍企業についてどんな方法がこれからあり得るのだろうかということをあわせてお伺いします。
  120. 鴻常夫

    ○鴻参考人 第一の、公認会計士なり監査法人というものは信頼するに足るかというか、あるいは法の期待どおりの社会的責任を果たせるのか、また、果たせるようにするにはどういうふうにしたらいいのか、いい知恵はないかというお尋ねでございますが、私の考えておりますことも河本参考人の言ったところとほぼ同じでありまして、そう簡単な名案は持っておりません。いかにして公認会計士がプロフェッショナルとしての自覚を持ち、社会の期待にこたえるような行動をするかということについては、やはりそういう職業人になるプロセスにおけるきちっとしたトレーニング、さらには、そもそもそういう資格を持つための試験制度その他最初の段階から機会をとらえて検討するということも必要なのではないか。そういうものについてさらに日常のトレーニング並びに協会等を通じたいろいろな意味でのチェックというようなもの、そういう体制をこしらえていくほかないのではないかというふうに思っております。  それから、二番目に多国籍企業について、日本の政府等も実情、状況の把握ができていないのではないか、これをどういうふうに把握していけばいいのかという問題は、御指摘のように結合企業法制に関連する問題でございます。今回の会社改正審議にありましても、そういう問題も当然織り込むべき重要な課題ということで、ある程度の審議をいたしたところでございますが、結合企業規制全般を後に回したために、今回の改正案の中には織り込まれておりませんが、たとえば連結財務諸表制度を商法に導入するか、商法ですと連結計算書類ということになるかもしれません。これも財務の面を通じて外国にある実質日本企業というのでしょうか、多国籍企業の状況を把握する道でございましょう。また、どこまでそういう結合企業としての状況を書かせるかという問題がございますけれども、しかし、これは営業報告書の記載事項という面でも検討すべき問題ではなかろうかというふうに思われるわけでございます。等々今後に残された課題の中でそういう問題もおのずから取り上げられることになるのではないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 ありがとうございました。時間です。
  122. 高鳥修

    高鳥委員長 小林進君。
  123. 小林進

    ○小林(進)委員 私に与えられた時間は十分でございますので、まとめた質問は何もできませんが、両先生のお話を承りまして、いずれも方向はどうも大体大差なしということに了解をいたしました。両先生どちらでも都合のいい方でお答えいただければいいと思いますが、私は、理論的な問題と実情に即した問題と二つに分けてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  一つは、理論的な問題といいますとやはり単位株の問題でございまして、これはどうも学者の意見の中でも一株も株主株主だ。一株の権利と五万単位の株主とのその株に権利の行使に格差をつけるのは、どうも株式の原則に反するのじゃないか。こんなことしゃべったら時間がかかりますけれども、大体私の尊敬する田中誠二先生等は、やはり一株も株主だ、株主平等の原則に立って同様に権利を認めるべきだという御主張のようにも承っておりますが、この問題が一つでございます。これは理論的な問題。  それから、これは理論的じゃないかもしれませんけれども先生方は一体この商法改正に対する法制審議会のメンバーでおいでになったかどうか、私は寡聞にして知りませんけれども、これが実に歳月を経て慎重に審議されて、一月にようやく法制審議会答申ができた、政府におやりになった。ところが、その政府が、今度はそれに至るまでも、私は、利害関係人の相当意見を全部集中されて法制審議会ででき上がった原案それ自体が妥協の産物じゃないかと考えている。その意味においては、先生の御供述にちょっとちゃりを入れたりして失礼なんでございますけれども、私は、やはり株主総会社長や取締役の意見も大分入っているから、こういう企業公共性といいますか、社会性なんというものは大分薄められていると考えざるを得ないのであります。もっと企業社会性というものが厳格に守られるならば、もっと厳粛であっていいという気持ちはあるのでありまするけれども、それらを含めて妥協の産物として法制審議会答申ができた。  ところが、できたその後にまた利害関係人が、今度は政府・与党と称するところへワッショワッショと繰り返し陳情、請願をおやりになった。その間、三カ月であります。その間にはまた相当の手直しが行われました。たとえて言えば、例の大会社を五億円以上にすると同時に、負債百億だとか利益百億という法制審議会の原案が、負債二百億ですかというふうにして利益の方は削除せられたというふうにずっと内容が変わってきて、そしてようやく立法府であるこの国会に出された。  出てくると、政府・与党から、委員長も含めて、一カ月で早く上げてくれ、このたびの国会中で上げてくれ、これはどう考えたって、一体だれが法律をつくり、だれが法律審議するのか、これくらい立法府軽視の思い上がったやり方はないと私は思う。これでは全く立法府軽視ですよ。いままでは全部原案で来たんだ、ここの場所へ出てきたら、立法府はもう修正権もなければ改正権もない。持ってきただけの原案をさっさと賛成——反対なら反対でこっちは与党は多数決、政府は多数決だから、いやなら反対でもよろしい、さっさと通してくれというやり方は、理論的に見ても実に民主政治の根幹に関する大変な間違いだと思いまするけれども、いまの審議のあり方に対する問題と単位株の問題と二つです。  第二番目の実際問題といたしまして、先ほどの先生のお話にもありましたけれども、今度の商法改正の根本は、何といっても総会屋の撲滅ですよ。それから同時に、企業の悪を根絶する。いま申し上げました総会屋というのは非常に悪い。警察庁からも伺いましたけれども、実に不当な金を吸い上げている。  第二番目は、午前中も申し上げましたけれども、政治献金ですよ。ところが、この二つは単なる企業だけの問題じゃない。政治献金なんというものは、日本の民主政治それ自体の根幹を危うくしているのですから。根幹を危うくして政治を腐敗、堕落させている一番の罪は政治献金にあるのです。これはいま少し厳格に考えなければならないということで、われわれの先輩等も、これを撲滅する一つの方法として政治資金規正法の改正なんかをおやりになりました。やれ個人は百万円だ、それ以上は届け出制だ、株式会社は二百万だとやりましたけれども、先生にお伺いしますが、この政治資金規正法という法律改正が現在正しく行われているとお考えになりましょうか。  確かに表面的な法律は各政党——と言っては大変影響がありまするから、政府・与党と言っておきましょう。政府・与党の方は正しく行っているようだけれども会社から流れてくるトータルは変わらない。うんとふえていますよ。いわゆる届け出だとか法律の法網の面の形は一応整っているけれども、政治献金が行われているトータル、総合計はさらに悪くなっております。さらに悪くなっているということは、もっともっと巧みに法律を逃れ、もっともっと巧みに政治資金規正法をごまかしているのだ、そして悪をもっと陰湿に、もっと陰険にやっているという証左と見なければならない。私は、こんなこと大きな声で演説するのが私の目的じゃありません。時間がありませんから申しわけない。簡単に言いますけれども、これはひいてはいまの会社法の改正にこういう形が出てこないという確信が一体どこにありますかと私はお聞きしたいのであります。  先ほど企業社会性がこれによってある程度改められるとおっしゃった。本当にそういくという自信があるなら私はうれしいのですけれども、いま第一番に株主総会の総会屋を跳梁せしめているのはだれだ。社会人じゃないのです。会社の取締役なんです。会社重役なんです。会社社長なんです。この人たちが、企業というものは、先生の前で釈迦に説法で悪いですけれども、本来は慈善事業でもありませんし、公共事業でもありません。利益の追求団体が企業の本体でありますから、もうけるためにはある程度法網をくぐれとは言わぬけれども、薄やみぐらいの、白でもなければ黒でもないくらいの道を歩まなければ企業というものはもうかりません。もうかるのが目的です。そういう弱点を押さえてもらうために、総会屋と取締役、重役というものは利害一致するのです。利害関係一つなんです。彼らは決して利害相反しないのであります。そのために総会を五分でやらしてくれ、十分でまとめてくれ、そのためには金も出しますと言って、何百億の金が流れていく。いわゆる悪の共同体とは申し上げませんけれども、この共同の形が一体この法律改正によって今後破られるという見通しはありましょうか。私は両先生にお伺いするのです。  私は、ちっともこの法律改正の中に——こういう一つの癒着です。共同利益に立った悪の癒着がこれによって回避されないという一つの見通しがありますし、政治献金もそのとおりです。一つ企業が利益を追求するときに、国家権力を活用しあるいは政党を活用する。何らかの余得があるからこそこういう政治献金をやる、と言っては少し言い過ぎかもしれませんけれども、神社、仏閣に浄財を奉納するようなことと政治献金とはおのずから性格が違うと考えておりますが、こういう一つの利益に向かって共同で進むというこの関係が、このたびの法律改正によって一切払拭せられると先生方は一体お考えになっておるのかどうか。  大先生に対してちょっと失礼でございますが、これが私の性格でございまして、根性はいい男でございますから、あしからずお答えを願いたいと思います。
  124. 鴻常夫

    ○鴻参考人 小林さんの御質問は、理論的な面と実情に関係した問題で、後の方は私大変むずかしい問題だと思いますが、前の単位株制度は、一株は一株、そういう意味での株主平等の原則に反しているんじゃないかという御指摘の点は一面ごもっともと言っていいんじゃないか。しかし、今日の株式会社で一株は一株というときの一株というものは、どういう単位のものとして考えた方がいいのかというのが今回の改正一つのポイントだったのではないかと思います。  したがいまして、先ほど冒頭に私意見を申し述べましたときに申し上げたように、単位株制度の単位未満株、これも株式であるということは、今回の改正の制度は確かにそれはそれとして認めておるのですが、単位株制度の本質は、本来は株式の併合で処理すべきものを、直ちに実施するということになると、先ほど河本参考人がその難点というものを具体的に掲げられましたが、そういう問題があるということから、やむを得ず採用した制度というふうに私は考えております。そういうことから、いかなる範囲で単位株と単位未満株とで取り扱いを違えるのかというところで実質的に妥当な解決を見出せば、法律の処理としてはそれで差し支えないのではないかというふうに考えている次第でございます。  それからもう一つ、実情に関連して、総会屋を根絶するという点で、総会屋が企業経営者と一体的に動くのを今度の改正法律案で防げるかという問題でございますけれども、これも先ほどの最初の説明で触れた点でございますが、株主の権利の行使に関する利益供与を全面的に禁止して、民事責任制度の方はほぼ完全かと思います。それから刑事責任の方も、昔からありました四百九十四条で罰則の量刑というのですか、法定刑の方の引き上げ等をやっておりますが、私ども審議の際にも、四百九十四条にある「不正ノ請託」の「不正ノ」という言葉がいろいろひっかかりまして、これが今度の改正案ではそのままに残っておる。そのもとにおいて従来なかなか運用がむずかしかった点も、もし商法の罰則に触れるものがあれば厳正な態度でもってその対応をしていただくということは必要ではないかと思います。  いずれにしても、総会屋に対する無償利益の供与あるいは実質的無償利益の供与みたいなものを商法が正面から違法であるということを打ち出して、しかもかなり細かく規定しておるということは、実際の運用もいままでとはかなり違ってくるのではないかということを私は期待しているわけでございます。  そこで、小林さんのお話では、法の適用という面で、私の聞き違いでなければ、政治資金規正法との関連で、政治の世界におられる方々も一〇〇%これを守っていないのではないかというふうに私にはうかがえるようなお話を聞いたのですけれども、もしそういうことがあるとすると、私は、改正法が実現したときに、その精神に沿って企業経営者が会社法を運用してくれることを期待しているわけですけれども、そう大きな期待を持っていいのかどうかということがやや心配になってくる面がございますけれども、これは小林さんとしては、いわば自分たちの世界のことで、それを引き合いに出してのお話だろうと思いますので、私としては、先ほども申し上げましたように、企業経営者の方もその中に不心得の者が絶対出てこないというようなことをここで断言する自信ございませんけれども、大方の経営者はそういうことはないだろうと私は考えておって、実情の点における経営者と総会屋との結びつきみたいなものは、この改正を契機に大分状況は変わってくると考えていいのではないかと考えております。
  125. 河本一郎

    河本参考人 総会屋との件だけについて私から申し上げますが、四百九十七条で相当厳しい刑罰が科せられるようになりました。これは私、今度の改正法の中でいわば目玉商品だと言っていいくらい考えておるわけでありまして、私はもっぱら関西におりますが、関西で株式懇談会等々ずいぶん長くつき合っておりまして、総会屋との直接の仕事をしておる方々の話も聞きますが、今度のこの法律で、そういうことに従来なじんできた人には相当厳しい状態に置かれるということを彼らも言っておりますし、私どもも、講演等々の機会があるごとに、これからは大変ですよと言って、言葉は悪うございますが、おどしたりすかしたりしておりますので、相当効果があるのではないかと私は考えております。  それともう一つ、これは先ほど柱の一つといたしましてディスクロージャーという制度を立てましたが、幾ら総会屋に対する金のお世話をやることを禁止いたしましても、いわば株主でないいわゆるブラックジャーナリズムというものがたくさんおるわけですね。われわれが聞くところでもそれがむしろ多いのだと聞いております。そこへ流れる金というのは、実は商法の上ではなかなか具体的に規定できません。それは特別背任罪等で持ってくれば別でありますが、一般にはできません。そこで、そういうものは、先ほどもちょっと申しましたように、そういう寄付の総額を開示させるかというようなことも、試案では法務省では出しておられたわけですね。先生おっしゃるように、過程でいろいろなことがあって、引っ込んだかどうか、それは省令を見なければまだわかりません。したがいまして、私はむしろ、先ほども申しましたように、それこそ省令の中に、ひとつ先生方のお力でそういう方向へ、開示の中身にそういうものを掲げていただくという方へ御努力していただきたい、これは私の方からむしろお願いしたいわけでございます。
  126. 小林進

    ○小林(進)委員 ありがとうございました。残念ながら、時間がありません。
  127. 高鳥修

  128. 稲葉誠一

    稲葉委員 鴻先生と河本先生にお聞きしたいのですが、実は河本先生からもお話がありましたディスクロージャーの問題ですね。私も興味を持って読んでいるのですが、お二方にお聞きしたいのは、営業報告書が省令に譲られたわけです。私の記憶では、最初これは法律の中に入っておったように聞いておるのですよ。法律の中に入っておって、それが細かく記載されておって、出てくれば本当のディスクロージャーになるけれども、これはもうディスクロージャーに賛成する企業というのはあり得ないはずですね。全部企業反対ですね。だから、できるだけこれをやらせまいとして、結局これを省令に譲ってしまったのではないか、こういう疑いを私は持っておるのです。たしか初めの案では、会社の資金の出どころをずっと詳しく書いて法律で決めるようになったはずだと思うのですが、私の記憶違いかもわかりませんが、とにかくそれが省令に譲るということになって、大幅にディスクロージャーが後退してしまったのではないかというふうに考えるのですが、そこら辺は鴻先生それから河本先生、いかがでしょうか。
  129. 河本一郎

    河本参考人 私どもの理解では、当初試案では、営業報告書、附属明細書の記載内容は省令で定める、ただ、どういうものを決めるかということをかなり注で挙げておったのでございます。そして審議の途中で、主なものを逆に法律で書こうかという話がありましたが、結局は最終的にはやはり省令ということになっておりますので、試案ではむしろ省令になっておりました。そう記憶しております。
  130. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまのお話は、ですから結局、ディスクロージャーというものが形の上ではあるけれども、非常に財界が反対しているということは、これはもう二人の先生方、事実でございましょう。経団連なんかも法制審議会反対したということは事実なんじゃないでしょうか。これに対してはどうでしょうか、鴻先生。
  131. 鴻常夫

    ○鴻参考人 いまの稲葉さんの御質問は、どの点に反対したということをお尋ねになっているのでしょうか。この試案がつくられる前に、そもそもこの法律自身で営業報告書の記載事項を法定することに反対したのじゃないかということですか。それとも試案以後に、この試案では注に書かれておりますことの幾つかを省令で定めることに難色を示しているような、あるいは反対しているような項目が少なくないというお尋ねでございましょうか。
  132. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の言うのは、いまの営業報告書の点は説明でわかったものですから、そうではなくて、一般論として、全体としてディスクロージャーということ自身に財界は反対しているのじゃないでしょうか、こういうことなんですね。だから、証券取引法でいきますとだんだんやかましくなってくるから、商法でいけば、監査役というのは取締役のお古とか窓際族だ、会計監査人というのは会社から金をもらっているのだ、だから結局商法監査というものは緩やかなんだ、会社にとって結局有利なんだというようなことから、日本の財界というものはディスクロージャーというか開示制度全体にいい感じを持っていないのじゃないか、こういうことなんです。
  133. 鴻常夫

    ○鴻参考人 わかりました。私も、経済界というものが、企業に関する事項、それも重要な事項について何でもかんでもディスクローズするということに、感覚的に抵抗感を持っているのではないかということは感じないわけでもございませんが、ディスクロージャー一般に反対の態度をとるということはないのではないか。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 開示の中にも、やはり直接開示と間接開示というものがありますけれども、われわれは直接開示してもいいことじゃないかということに対して、いやこれは間接開示にとどめてほしいとか、そういうようなことはいろいろあるかと思います。また、(注)に挙がっておったようなたくさんの事項の中で、ここまで書かせるということだと書いたことが、どういう意味を持つのかということで不安だというような問題ももちろんあるかと思いますが、一般的にディスクローズには反対だという態度というふうには、私は受け取っておりません。
  134. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはディスクロージャー全体が、これはアメリカの影響もあるし、日本証券取引法関係もあって、私はいま神崎さんの書かれた本を読んでいるし、河本先生の「現代会社法」というのですか、あれをいま読んでいるところなんですが、いろいろあると思うのですけれどもね。  もう一つ河本先生がさっきおっしゃったこの法案の目玉は総会屋対策だというのですね。これは私率直に言いまして、大変失礼なんですけれども、この法律ができて十歩前進なら、総会屋というのは二十歩前進しているわけですよ。もう現在、この法律ができるということで総会屋は何をやっておりますかというと、ほとんどと言っていいくらい政治結社に変わっているのですね。政治結社になりまして、そして政治献金をもらいに会社に行っている。もう始めようとしているわけですね。そうすると、政治献金の一定の枠がありますから、枠の中から政治結社へ政治献金を出せば、決して総会屋が法律に触れないわけですね。これをいま盛んにやっているわけですよ。総会屋と暴力団が政治結社をつくって会社へ金をもらいに行こうとしておる、これがいまの事実なんです。  これはこの前の総会屋対策ができたときにも、ある程度の実を上げようと思ったのですが、形の上では確かに目玉なんですよ。条文を見るとそうなんですが、なかなかそのとおりいかないのではないかということを私は考えている。今度は政治献金の奪い合いになっていくわけです。ある政党、特定の政党と総会屋との——総会屋が政治結社をつくって、政治献金の総量の枠がありますから、奪い合いがこれから始まってきているといういま状態ですね。そこら辺のところがなかなか私も実態がよくわかりませんからね。  もう一つ、鴻先生ですか、特殊株主という言葉をお使いになりましたけれども、それは総会屋というものに対してはいいかもわかりませんよ。だけれども、いわゆる少数株主といって市民運動をやっている、たとえばチッソの問題で市民運動をやっているような一株株主がありますね。そういう株主の権利までが害されてしまうということはあってはいけないのではないか、こう私は思うのですね、大阪高裁の判決がありましたけれども。そういうふうに考えますと、総会屋といわゆる市民運動というか正しい公害撲滅運動やなんかやっておるそういう人たちとがごちゃごちゃになってしまって全部排除されたんじゃ、これは仏つくって魂入れずというんですか、そういうふうになってしまうのではないか、こういうふうに思うのですが、そこら辺はどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。
  135. 鴻常夫

    ○鴻参考人 いまの稲葉さんの御質問で、後の方を先にお答えいたしますが、私が先ほど総会屋と特殊株主ということを並べた言葉の使い方があるいは不用意な点があったのかもしれませんが、そこでは実質総会屋を言いかえただけというふうにお聞き取り願えれば幸いかと思います。  そうして、一株運動あるいは市民運動ということとの関係において特殊株主という言葉が使われているのかどうか、私存じませんけれども、総会屋の根絶という面でのそういう規定、それを意図する規定は、そういう市民運動等に影響を及ぼすものとは私考えておりません。ただ、単位株制度は、わずかの株を持っている総会屋であろうと、それからたとえば一株を持ってこれまでは株主として総会で発言権のあったような者も、単位株制度によってその機会が奪われるという面では、これは反射的でありまして、法律の直接的意図がそういうところにあるわけではないということは間違いないと思いますけれども、同じような影響を受けることはあるのではないかと思います。  それから前の、今度の改正案はいまよりは十歩先進んでいるが、総会屋の方が二十歩先を行っているんで、なかなか実効ある制約にはならないのではないかという点のお話がございました。私もその実情をつまびらかにしておりませんけれども、政治の問題にかかわってまいりますと、これはまた憲法上の問題等いろいろむずかしい問題が出てくるかと思うわけでございます。問題は、会社から好ましからざる金が外へ出るということがないようにするという見地からは、今度の改正法の規定は、民事責任の点を先ほど申し上げましたが、かなり整備された規定であるかと思います。  それから、先ほどの御質問のときにちょっと言い落とした点を補足いたしますと、商法上も違法であるということを民事的にはっきりしたということは、監査の面からのチェックというものがおのずからつながってくるという面もあるわけであって、そういう点からは政治献金等広い意味での会社の寄付について今後の会社の公開規制、ディスクロージャーの問題についてどういう処理が最終的になるのかはわかりませんが、これからの問題かと思いますけれども、そういうものの中で別に総会屋と政治献金とそのまま並べて私言うつもりはありませんけれども、そういう角度からは似たような規制が当然及ぶべきものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  136. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは河本先生も御案内のことだと思うのですけれども、最初四十九年ですかね、試案が出たときに監査役の任期は三年だったわけですね。ところが、取締役の任期は二年だというので、三年説に反対が出て二年になってしまったわけですね。三年ならば、取締役の任期と関係なく、独立性を持って監査役監査できるわけですよ。ところが二年になってしまえば、取締役をやめるときには監査役もやめざるを得ないということになってきますから、ここら辺も財界から反対が起きたか何かして、三年説が削られてしまったわけですね。こういうふうなこといろいろございまして、どうも形の上ではなかなかうまくできていると言えばうまくできているのですが、考えてみれば、株式会社というものは資本主義社会のチャンピオンですからね、それをいろいろな形で規制しようというのが少し無理ではないかとも私自身も考えるんですけれどもね。いずれにいたしましても、この法律はよくわからぬ点が非常に多いように私には思えてなりません。  それから、引当金の問題でも、率直な話、またよくわからないのですよ。いわゆる公正なる企業慣行との関係で、企業会計審議会で企業会計原則というのがあるでしょう。それだって、継続性の原則とかそのほかいろいろむずかしいことを言うのですけれども商法との間がどういうふうにつながっているのか、いままではっきりしなかったわけですね。どうもよくわからないのです。利益留保性のものといったって、利益留保性のものとは一体何と何と何を言っていたのか。いままでが非常にあいまいで広く認めていた。それをいまになって急にやかましく言うようになったところで、それが一々賄えるものでもないしというようないろいろな疑問がたくさんありまして、私自身もこの法案についてはじっくり質疑をしていかなければならないということでいまやっているところなんですが、非常に大きな問題がたくさんあるのですね。  それから、もうさっき河本先生からお話が出ました企業の結合法の問題ですね。規制の対象というのですが、規制というのは企業結合の場合に一体何をどういう方向で規制をされようとしておるのか、率直に言ってなかなかむずかしいですね。これは恐ろしく抵抗が強いと思いますけれども、何をどういうふうに規制をされようとされるのでしょうか、これを河本先生からお伺いしたいと思うのです。
  137. 河本一郎

    河本参考人 これは、商法部会でも何を規制するかということをまだ取り上げておりませんので、もしも私がそういう法律を考えるとすればどういうものが考えられるかということで申し上げますが、実は、先生御承知のように、具体的な立法例がドイツにございますね。ところが、このドイツの法律というのは、いわゆる規制といっても、抑えつける面と助長する面と一体どちらがあるかというと、これはバランスをとりますと、実はどちらともはっきり言えぬ点がありまして、むしろいまの企業がそういうコンツェルンを形成するというのは経済的実態としてもうやむを得ないのである、そのこと自体は認めながら、しかも、その中でできる限り弊害を少なくしていこう、ことに大株主と小株主との利害対立のところで、支配は認めてやろう、好きなように子会社を処理していいけれども、そのかわりそのことによって生じてくる少数株主の損失は何らかの形でカバーしてやりなさい、こういうような立法例がございますね。  そこで、日本でこの問題を考えるときにも、一体本当にいまそういう方向へ持っていっていいかどうかということも実は一つ問題なんですね。といいますのは、一面そういう企業結合を助長するという面もございますので、ある措置さえとったら認めてやろうということでございますから、そういうこともあって、私自身は果たしていまやっていいかどうかということさえも実はまだ問題だと思っておりますので、先生ちょっと、何をやるかということは御容赦をお願いいたしたいと思います。
  138. 稲葉誠一

    稲葉委員 いろいろ問題がありましたときに、ドイツの場合は監査役制度というものがちょっと特殊ですね。あれは共同決定法がありますからちょっと違いますし、アメリカはまた監査役制度というのはないわけでしょう。いまは何か別な形になっているわけですね。それでSECがあって、あそこに二千人ぐらい人がいるわけですが、日本ではこの前、証券局の証券監査官というのを聞いたら十九名しかいないわけですね。二千名全部があれをやっているわけじゃありませんけれどもアメリカの場合には、ああいうふうにSECがあれほど大きな力を持っておっても、そのことによってアメリカの経済のバイタリティーがなくなったとは言えないと思うのです。だから、日本でもそれに類するような機関というかそういうものを持ち、証券取引法による監査というかそういうものをもっと拡大強化していってもいいのじゃないか、こういうふうに私は考えておるのです。それはなかなか抵抗は強いと思うのですけれども、そこら辺はいかがでしょうかね。
  139. 鴻常夫

    ○鴻参考人 アメリカにおける会社規制というものがSEC、御指摘のような二千人もの多いスタッフといいますか職員でもって実質的なコントロールを加えているというのは、そのとおりでございます。しかし、これはやはりアメリカにおける大恐慌後のニューディール時代からの歴史と伝統があるところで、そういう形に発展してきたということもあるかと思います。しかし、公開会社について相当徹底したガバメントによるコントロールということを考えるとすれば、稲葉さんの言われるように、この面の充実強化ということの必要もあるのではないかと思います。  しかし、商法改正立場からいたしますれば、現在、こういう点について会社に対する規制が二本立てというのでしょうか、民事関係法務省あるいはそれを通して裁判所というのと、いまは大蔵省証券局ですかによる会社規制といったようなものとが二本立てにあるままで、これをどうやって充実していくかということにはいろいろむずかしい問題があるのではないかというふうに思っています。わが国においても、制度発足のときには独立した行政委員会制度でこの証券取引委員会というものが発足したのが、数年のうちに現在のような形に改められたという経緯もございますが、二本立てのものを一本化するとすれば、アメリカにおけるような行政委員会的なものでやるということも一つ検討に値する問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  140. 稲葉誠一

    稲葉委員 もう一つお聞きしたいのは、中小の会社の分け方の問題ですね。これがまた今後の大きな問題になってくる、こう思うのですね。これまた公認会計士税理士とのえらいシェア争い、けんかになってくるわけですね。有限会社があるのですから、有限会社があるのになおかつ中小というような分け方をしなければならぬ必要が実際にはあるのでしょうかね。そういうふうに考えますね。それから、中小会社法論というのが大分学者の中でもありますし、出てはおりますが、そういうときに一体どこで区分けをするのか、そこら辺についてはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか、これは御両者にお願いしたいと思うのですが。
  141. 鴻常夫

    ○鴻参考人 私どもの課題といいますか、大小会社の区分というものが前から入っておったわけでございますが、大と中小を分けるといった問題になりましたときに、中小というか、あるいはより正確には中小かつ閉鎖的というのでしょうか、そういうものに向いた会社形態として戦前から有限会社法というものがあることは確かでございます。そこで、それと区別された形の中小株式会社法でしょうか、そういうものをこしらえていくということが必要なのかあるいは適切なのかというのは、まさにこれからの問題として重要なポイントをなす点だろうと思います。  しかし、どうしてか日本では、株式会社と有限会社では、株式会社形態をとる方が世間の通りがいいというようなことがあって、それでも有限会社は近時その数は飛躍的にふえてきていることでありますから、そういう点もだんだん変わっていくのかもしれませんが、率直に言って、現在の有限会社法というのは、中小、特に小で家族企業的なものがそれによって事業を行うという、そういう根拠の法律だとすれば、はなはだわかりにくい法律になっております。というのは、株式会社の小株式会社の若干変形という頭でできているために、必要以上に株式会社法の規定を準用するなんということをしておりますから、私ども専門でも、準用規定というのはまゆにつばをつけて、その意味内容をじっくり考えてみないと解釈を誤りかねないという条文もございます。  そういうような有限会社法よりは、中小の企業家が、その法律を読めば内容もわかり、これなら安んじて守れるというような、先ほど河本参考人の方からそういうものに合った着物ということを言いましたが、そういうものをこしらえる必要は大きいのじゃないか。そういういい中小株式会社法ができれば、有限会社法というのは、現にあるものをどうするかという問題がありますから、すぐに廃止するなんというわけにはいかないかもしれませんが、だんだん中小株式会社法による会社の方に乗りかわっていくことになるのではないかというふうに私は見ております。  もっとも、この中小会社をどういう基準で認めるかというのは、これから検討すべき問題ですが、一番むずかしいところでございます。それを二つに分けるというのは、その限界が常に争いのもとになるわけでございまして、そういうときには、学説でも主観説、客観説、また折衷説というもので解決する方がいいなんという議論があると同じように、大と小、その間に中があるならば、中と小、大と中の間はなかなかむずかしいかもしれないが、大と小なら分けられるのだから、まず小について、先ほどのようなぴったりした会社形態法というのでしょうか、組織法というようなものを用意するというようなところから始めでもしないと、この分け方はなかなかむずかしいのではないか。  現在、大会社と中小会社というものが、商法監査特例法の上で、いろいろ区別した形で規制を受けるように、実際的にはある程度分化しておりますけれども、これをもっと一本の形で分けるというのが大小会社の区分なのか、あるいは現在よりももっとたくさんの基準の組み合わせによって法の適用を考えていった方がいいのかというような点もこれから検討しなければならない問題じゃないか、こう考えておるわけでございます。
  142. 稲葉誠一

    稲葉委員 ありがとうございました。
  143. 青木正久

    ○青木委員長代理 鍛冶清君。
  144. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 鍛冶でございます。時間を三十分いただいておりますので、その時間内で両先生に御質疑を申し上げますので、よろしくお願い申します。  最初に、いまの稲葉委員の質問の後を継ぐようで、どうも稲葉先生にも大変悪いのですが、ちょっとお聞きしたいのですが、いまの大中小の問題です。これは今回の改正の中ではやはり取り残されている部面で、今後の問題になると思います。私は、この方面には全く素人でございましてよくわかりませんけれども、そういう中で手探りで当たってみた感触で、やはり大中小と三つに分けた方がいいのじゃないかという気がしているわけですが、そういう点について両先生の御意見を承りたいと思います。
  145. 河本一郎

    河本参考人 現在の法制、それから今度の改正案がもしも法律になりますともっと進んで、実際にもうすでに大中小という区別ができてくるわけでございますが、ただ、小の方が中身がまだそれにふさわしいものになっていない。ですから、今後そこのところを手当てしましたら、まさに大会社、中会社、小会社、そういう株式会社法というものができてくるのではないかと私は思います。  それで、先ほど来鴻さんがお話しになりましたように、実際界というものはどうも名前に非常にこだわるようでございますので、何も株式会社に大中小という言葉をつける必要はございませんが、実質的には株式会社という形の中に三つのものがある、こういうふうに実際進んでいきつつあるし、そういうふうに進めていくのがむしろ一番実際的じゃないかと私も思っております。
  146. 鴻常夫

    ○鴻参考人 私、先ほど稲葉さんの御質問に対して、大中小に分けるときに、結局、大中との境、中小の境がやはり問題になるということで、しかし、大と小は同じような法規制の対象ではおかしいということ、これはだれもわかることなんだから、小規模の会社ため会社法の整備というものが非常におくれている、有限会社というものはあるけれども、それが必ずしも十分でないということであるならば、小会社法、私の言う小会社は単に資本が少ないというだけでなしに、実際的に関係者が多くない、そういう意味で小規模閉鎖的企業というものについてならばある程度大小会社の規制の一部解決かもしれませんが、やりやすいのではないかということを申し上げたわけでございます。  しかし、一度に大中小という法規制に分けるということになると、問題が倍加するという面もあるいはあるのじゃないかというふうに思います。のみならず、これまた同じような言葉を何度も使って恐縮ですけれども、これまでの会社法の改正で不十分ながらもなし崩し的に、大会社、中会社、小会社の規制を区別してきているということもあって、その不十分なところも今後進んでいくと思いますけれども、余りその区別の基準が複雑過ぎるということは、適用を受ける会社あるいは国民の立場からも適切を欠くと思いますから、そういう段階になれば、やはりわかりやすい大中小で区別するという、その大中小の基準を何にするかはなお今後の問題でしょうが、最終的には鍛冶さんの言われるような形にした方がわかりやすいのじゃないかというふうに私も考えております。
  147. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 鴻先生にお尋ねいたしますが、今回の商法改正は、先生もお述べになっていらっしゃいましたように、昭和四十九年に成立いたしました商法改正附帯決議を受けて法制審議会において審議を進めてこられて、今回この改正法律案の出てくる順序になっておるというふうに伺っております。今回の改正で、やはり大企業に対するいろいろな非行防止という面が考えられていかなければならぬわけですが、そこらあたりがどの程度まで防止できるのか、ちょっと疑問な点もあるわけです。この点についてお尋ねをしたいことと、もう一つは、大企業の規制は商法規定すべきではなくて、別途に特別法で規定すべきだというふうな意見もあるように伺っておるわけですが、この二点について先生の御意見を承りたいと思います。
  148. 鴻常夫

    ○鴻参考人 今度の改正法律案が大企業の非行防止ということにも役立つものであるというふうに私考えておりますが、それはあくまでも会社の組織を通じてというのでしょうか、これは監査制度を含めて運営、機構等、そういう面から内部的にチェックが相当程度行い得るようになるという面でそういうことが言えるわけでありまして、それで鍛冶さんがお考えになっていると思われるような大企業の非行防止のすべてが完全に解決できるというわけのものではないだろうと思います。そういう意味で、オイルショック等の時期に見られたような特別法によるようなもろもろの規制、大企業をも含めて広く企業社会的に好ましからざるような活動を行うことを抑えるというものを、特別法によって規制するという必要は起こり得るかもしれないというふうに考えております。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、そういうことを今度の改正機会に、大企業がそういう特別法をこれからは必要としないような方向に、経営者が自覚して企業活動をやっていってほしいものだというふうに考えております。
  149. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 河本先生にお尋ねをいたします。  先生が最初に御意見をお述べいただきました最後のところで、本改正案について総括的におっしゃった中で、もっと進んだ形が考えられたというふうにおっしゃっていらっしゃいました。しかし、現実とのすり合わせの中でこういう形も賛成である、こういうふうにおっしゃったように記憶いたしておりますが、もっと進んだ形が考えられたという点について、具体的にひとつ先生の個人的な御意見を伺えればと思いますので、よろしくお願いいたします。
  150. 河本一郎

    河本参考人 私は、試案に出ました段階のもの、これは相当進んでおったと思います。先ほども申し上げましたが、これはまだ決まってないことでありますから、むしろ希望としてはまだ残っておるわけであります。  たとえば営業報告書とか附属明細書なんかに記載されるべき事項、これは先ほどほかの先生の御質問にありましたように、企業の出す寄付金等々、そういうものの無償供与の開示なんかは、私自身はよく法務省がお出しになったと思ったぐらい評価しておったわけでございます。と申しますのは、いろいろな形で、とにかく法が進むとそれより先へ進んだ形で抜けていきますから、民事規定だとか刑事規定ではなかなか抑えられません。そこで客観的な基準で、開示という方法がいいのだろう、それで私ども賛成しておったわけです。ただ、これは省令の段階で、まだ残っておりますので、復活してくれればありがたい、あるいはそういうものが今後制定されればありがたい、こう思っております。  それから、ほかの点等々で申しますと、たとえば先ほど申しましたが、資本組み入れ額の三分の二までいく、これなんかも私どもは非常によく効く薬だと思っておりましたが、これは二分の一まで落ちました。これもせめてこのぐらいの段階でとどまってほしいというようなこともございます。  あとまだちょっと頭に十分浮かんできませんが、思いつきました点を申し上げました。
  151. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまディスクロージャーに関係して営業報告書の問題をお答えいただいたわけでございますが、これは実は私も午前中にもちょっと触れたのでございますが、試案の中では注記として、具体的に先生がいまおっしゃったような内容が九項目ですか、きちっと明記されておった。これが法律要綱の中では落とされた、削除されたという形です。ただ、省令にゆだねるということについては、これは試案と変わりなく残っているわけですが。これはいまの先生の御答弁をお聞きいたしますと、法律要綱の段階で記載事項が削除されたのはやはり後退であるというふうな、ちょっと私の早計な判断かもわかりませんが、記載事項が果たして細かく省令の中でうたわれてくるのかどうか、これは大変わかりにくいが、希望としてはぜひ入れてほしいものだ、こういうふうにいまおっしゃったのだろうと思いますが、そういう考え方でよろしいのでございましょうか。
  152. 河本一郎

    河本参考人 そのとおりでございます。
  153. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 鴻先生にいまの件でお伺いいたしますが、こういう記載事項ということについては、特に、「会社が無償でした金銭、物品その他の財産上の利益の供与(反対給与に比し著しく過大な給付を含む。)の総額」、こういう項目が注記の中に入っておるわけです。こういうところなんかは、国民サイドから見ても私個人として見ましても、ぜひ省令の中でも入れてほしいものだ、こういうふうに思うのですが、午前中の経営者側の参考人の方に御質疑申し上げたら、具体的には触れてはおりませんけれども企業活動を制約する部面が多々——この注記項目を全部入れてくると活力を減殺するという方向が出てくるのではないか、だから少し幅のある形で、いわば緩めた形でというふうなお答えがあったわけですが、この点を含めて注記事項について、省令とのかかわりの中で鴻先生にこの点のお考えを伺いたいと思います。
  154. 鴻常夫

    ○鴻参考人 確かに改正試案の注記に、いま御指摘のありましたような会社が無償でした金銭等財産上の利益の供与総額というのが挙がっておるわけでありますが、こういう問題を営業報告書か何らかの形でディスクローズさせる必要があるということは、私も全く同様に考えておるわけでございます。  ただ、具体的にどうすることがディスクローズの本来の趣旨に合致するような、そういう記載を営業報告書なりその他の会社関係から出るそういうドキュメントに示すのが一番適切かという点は、なおいろいろ検討した方がいいのじゃないか。そういうときに、単に余り内訳が明らかでなく、総額だけ示すということで目的を達するのかというような問題もあるかと思います。こういうのは細かければ細かいほど、見る人が見ればわかるということもあると思いますけれども、やはりこれはディスクローズを受けることによって、会社法の問題として、その利益を受けるといいますか、見る必要がある人たちにはどういう開示をするのが最も適切かということも考えなければいけない。そういう意味で、経済界の方々は、余り何でもかんでもディスクローズさせることはかえって活力を減殺すると言われているのですが、そういうことがあっては困りますけれども、しかし、やはり開示すべきものは開示させるという方向で今後の営業報告書の記載事項を法務省令の上でも詰める必要があるのではないか、こういうふうに考えております。
  155. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 試案との比較で考えるから、ディスクロージャーの点で後退をしたというふうに私どもひょっとしたら考えるのかもわかりませんが、現行法との絡みの中でも、やはりディスクロージャーの強化の方向に若干逆行するのではないかというふうな感じの部面もございます。といいますのは、具体的に申し上げますと、これも前に私ちょっといろんな質疑の中では触れたことがあるのですが、二百六十条ノ四の四項の中に取締役会の議事録の閲覧というところがございます。この中で、現行法では株主債権者、いつでも取締役会の議事録を閲覧することができる、こうなっておるのが、今回の改正法律案では、裁判所の許可を要するということで制限されてきているわけですね。  これはディスクロージャーの強化という方向にその面から考えると非常に逆行しているのではないだろうかというようなこと、さらに、このことは株主の権限を縮小するという方向にも行っているんじゃないかというふうにもなるのですが、改正法律案の中ではこういう形であらわれてきております。こういう点について、先ほどの営業報告書等も含めて逆行しているのではないか、即断はできませんが、そういう感じがあるわけですが、こういう点についてどういうふうにお考えでしょうか。河本先生にお伺いしたいと思います。
  156. 河本一郎

    河本参考人 この点につきまして、学者の中にも先生と同じような意見を持っている人もございます。ただ、これは二面ございまして、一つは、取締役会で十分の審議をさせて、できるだけ詳しいものを取締役会議事録に書かせる、そのためには余り素っ裸で、議事録がいつでも目的も全然示さずに見せられるというのでは、逆に十分なことを書かなくなる、十分なことを書かなくなるということは結局十分な審議をしなくなる、こういうことを考えて、ある程度の制限をかけようと、こうしたわけでございます。  それともう一つは、これはそういう意味では、確かに形の上では制限でありますが、また、本当にこういう関係の実務を担当しておる株式課の人たちに聞きますと、逆にこれは会社としてはそれほどありがたがることはないというふうに言いますね。といいますのは、裁判所へ行きまして見せてくれと言うと、裁判所は正当な理由があればばんと命令を出しますので、そうしますと、会社の方では有無を言わせず見せることになる。いままでだったら、何かごたごたとやれるわけですが、そういうことができなくなる。そういう意味ではこれは実は実務界が望んでおったものではないということを言う者もありまして、私は、その両方、プラス・マイナスで考えてみると、どちらかというと、そうディスクロージャーの制約ということにはなってないのではないかというふうに思っております。
  157. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いま株主の権限の問題もちょっと出てまいりましたので、それに関連して御質問申し上げるのですが、単位株制度、これは先ほどからも議論にございましたが、少数株主の権利侵害ということになるのではないだろうかと思うわけですが、この点について再度河本先生にお願いいたしたいのです。
  158. 河本一郎

    河本参考人 先ほどどなたかの先生の御質問にありましたように、田中誠二先生が学界で代表者となられまして、この制度が株式制度を理論的に破壊するものであるということを強く御主張になり、それを支持しておられる学者も少なくございません。これに対しまして、私はしゃべったり書いたりしておりますのは、実はそんなに大層な問題ではないのではありませんか、と申しますのは、これは先ほど来鴻参考人がるる述べられましたように、結局は併合へ持っていくまでの、実際の経済に余り大きなショックを与えずに運んでいくなし崩しの併合なのである。だから、これは永続するというのであれば確かにおかしなものになります。しかし、併合してしまいましたら、もう共益権どころか自益権もなくなってしまいます。そこへいくまでの間、せめて自益権でも残しながら持っていこう、こういうわけでございますから、先生、いわば考え方ではないかと私は思うのです。  つまり、共益権を奪う奪うと言われるけれども、しかし、本来なら全部一遍に併合したいのだが——その併合そのものには田中先生なんかも反対なさらないのです。そうすると、一遍に併合すれば全部なくなってしまう。そのうち株主にとって実際上一番大事に思っておる自益権は残しておくわけですから、奪うと考えずに、むしろなくなるものを残しておるのだ、そして決して永続的な制度でないのだ、こうお考えくだされば、理論的な破滅であるということまで大層に考えることはないのではないか、こういうふうに学界では申しておるわけでございます。
  159. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 鴻先生にお伺いいたします。  これも先ほどからの議論の中にもずいぶん出てまいりましたが、今回の改正で、会社機関の中で株主総会の形骸化ということが一番大切な問題だろうと思いますが、それについて、総会屋対策とか個人株主計算書類を見ても判断できない等の理由によって、貸借対照表それから損益計算書等は、会計監査人監査役の適法とする意見があるときは株主総会の承認を必要としない、こういうことも言われております。ただ報告だけすればよいということになっているわけでありますが、こういった関係のものを見ていきますと、株主総会というものが、形骸化とは違った意味で、何か権限が縮小されていくというふうにも考えられますし、株主の平等の原則というものにも反するものになるのではないだろうかという素朴な疑問が起きてくるわけでございますが、こういう点についての先生のお考えを承りたいと思います。
  160. 鴻常夫

    ○鴻参考人 確かに、いままで株主総会の権限であったものを外すということは、形式的には権限の縮小というお言葉があったとおりでございますけれども、これは、実質的にこれをどう理解するかという問題だろうと思います。大会社に限りまして、計算書類のうち貸借対照表、損益計算書については、総会の承認なしにでもその内容取締役会の決議だけで決められるということにしたのは、権限の面だけではそうかもしれませんが、その裏づけとしての十分な監査制度というものを考えていることであって、私は、よく言われるように、株主は大会社にあってこういう損益計算書、貸借対照表の内容を判断できないというふうには必ずしも考えておりませんが、しかし、どうしても総会にかけなければならないような性質の問題ではない。むしろ、法律の定める正しい会計規則にのっとって処理している限りにおいては、取締役会で決めようと株主総会が決めようと同じ問題でなければならないはずでございます。そういう意味で、この問題については、決算手続の合理化という見地で株主総会の承認事項から外しただけというふうに私は理解しておるわけでございます。  今度、改正法律案株主総会の形骸化をなくすと言いながら、多少ともその種の面が出てきているとすれば、一般的に逆行ではないかというお話でございましたが、私は、やはり大会社における株主総会を通しての株主会社経営の参加というものは、どうしても株主の権利から外せないような会社経営の重要事項に限るというのがむしろ本来のあり方であって、その重要事項が何かということについては、またいろいろな考え方があるかと思います。たとえば定款変更みたいなものは、いわば憲法改正みたいなものですからもちろん外せませんし、合併その他会社の組織を基本的に動かすようなものは当然総会の決議事項でございます。こういうのは特別問題だと言われるかもしれませんが、ノーマルな状態のもとにおける総会の権限としては、一番大事なのは取締役選任権だろうと思います。  現行法で株主の権限として、取締役の選任監査役選任ももちろんそうですが、役員の選任、今度は会計監査人選任も入りました。そういうものと並んで、それとは性質が異なる重要な権限は利益処分権だろうと思います。この利益処分権は絶対かという点も、なお検討する必要がある問題だろうとは思いますけれども、そういうふうに株主総会の権限は本来いかにあるべきかというところに立って今度のが形式的に権限が縮小されておるというならば、そういうものがそういう角度から見て適切なりや否やということは当然問題にすべきですけれども、必ずしも株主総会の形骸化を解消するということに逆行するというような性格の問題ではないんじゃないかというふうに私は考えております。
  161. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 最後に、二点両先生にお伺いして、質問を終わりたいと思います。  一点は、経営者の姿勢とか監査役方々の姿勢とかいうようなことに関する問題ですが、いろいろと最近起こっております事故、事件というものを見てみますと、これは法の規制でやりにくい、しにくいところの心の問題と申しますか、姿勢といいますか、モラル、こういう点が大変重要なポイントになるような気がするわけです。今回、いままでよりは一つ立ち入った形で法律改正が行われようとしているわけですが、こういう法律改正を行うことによってそういうモラルの面というところまで踏み込んで影響を与えて、これはいい方向に今度の法律改正案というものが機能するんだろうかどうかということ、これがまず第一点でございます。  第二点は、衆参両院の附帯決議で指摘されておる項目の中で、会社社会的責任の問題、それから先ほどありました大小会社の区別の問題、それから企業の結合等の問題、こういったようなまだまだ大切な問題が残されているわけでございますが、こういった点についても一日も早く改正の方向にいくべきではないかと私は思うわけでございますが、この点について、今回実現できなかったそういった問題点等についてのお考えをお伺いしたいと思います。  以上、二点でございます。
  162. 鴻常夫

    ○鴻参考人 第一点の方の、今度の改正法律案が経営者、さらには監査役のモラル、姿勢なり心の問題の方にもちゃんと行き渡って法律の期待どおりうまく機能するかどうかという点でございますが、この心の問題はなかなかむずかしいし、法律だけでそういう心の問題の方に影響を及ぼすという——これは積極的に影響を及ぼすということになるのかどうかわかりません。しかし、改正会社法が実現をすれば、関係者としては、その精神というものを正しく理解されるように十分その普及、啓発にも努めるというようなことと相まって経営者等のモラルも一層向上する、そういう意味において改正法が本当に機能したということが言えるようになるように、これからあわせて努力しなければならない問題ではないかというふうに考えております。  それから、四十九年の国会における当委員会、また参議院法務委員会附帯決議で挙げられた点で今回の改正で残された問題については、先ほども私まとまった意見の中でも触れましたように、こういう点の残された項目についての審議、検討を少しでも早く進めるということは大事なことではないかというふうに私として考えております。そのためにも、繰り返しになるかもしれませんが、会社法全面改正の重要な一部分をおさめている今度の改正法律案が少しでも早く成立、実現するということを願っているわけでございます。
  163. 河本一郎

    河本参考人 モラルの問題と申しますのは、法律との関係で考えますと、法律にこういう禁止規定あるいはこうしなさいという命令規定ができて、それに違反した場合にはこういう民事責任、こういう刑事責任を負いますよ、こういうことになって、そこでこれは先生えらいこっちゃというのでこうせにゃいかぬ、こういう形でしか法はモラルの向上に力を注げないと思いますね。ただ、何も法律をつくらずにしっかりやりなさいと言うのでは、これは法律のやることではございませんので、それで今度の場合なんかでも、私も大阪で、たとえば監査役さんのプライベートな法律相談を受けることが月に一遍ありますが、やはり非常に気にしておりますね。たとえば先ほどの総会に対する考え方、実はうちにはこういうのがありますということを全部あけすけにさらけ出されて、どうしたらよろしいか、そういうふうなところを見ましても、やはり相当皆真剣に考えてきているようになっておる、そのぐらいに今度は具体的な法律に大分近づいておるのじゃないかというふうにも私は考えておる。そういう意味で、モラルの向上に大いに役に立つのではないかと考えております。
  164. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 質疑を終わります。大変どうもありがとうございました。
  165. 高鳥修

    高鳥委員長 岡田正勝君。
  166. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 両先生には長時間にわたりまして貴重な御意見、ありがとうございます。三十分ほど御意見をいただきたいと思います。  まず第一に伺いたいのは、監査役の地位が今度は非常に強化された、まことに結構なことだということでありますが、その中でごく微細な点をちょっとお伺いしてみたいと思うのでありますが、特例法の十八条におきましては「二人以上」、こういうことに相なっております。なお、至るところに——至るところにと言ってはわかりませんが、三条、六条、六条の四などに、監査役は過半数の同意をもってと、こういうふうになっております。ところで、二人以上となっておれば、会社経費の都合もありましょうから、ほとんどが二人、こういうようなことをとるのではないかと思うのでありますが、その場合、一人が意見を言いましてそれを提案いたしましても、一人が反対なら過半数にはなり得ませんですね。これは組織上でも議会においてもそうでありますが、一人が賛成、一人が反対では過半数という意見は出てこないという問題がありますが、こういう点につきましては先生どういうふうにお考えでございましょうか。やはり三名以上置くものと見ていらっしゃるわけでありましょうか。両先生から……。
  167. 鴻常夫

    ○鴻参考人 大会社は現在でも監査役を二人以上置いているところが多いのじゃないかと思いますが、今度の改正法律案のようにその監査役が複数あることから、どうでなければならないというような法の規制を、監査役一般の権限は別ですけれども、そういう規制がございませんでしたから、しかるべく法に反しない範囲ではいろんな面で監査を行えたわけでございますが、今度二人以上というふうに書いてそれで過半数ということを要求したときに、監査の同意ということが法律で要求されるときに、二人では困ることが出てくるかどうかということになるわけですけれども、おっしゃるように過半数は得られないということは、その同意が得られない、これは一人の場合で監査役の同意を要求したときに得られないと同じことになるわけでございます。  問題は、二人だといわば可否同数みたいなもので、動きがとれないというようなことになる不都合が予想できるから、三人以上置くということになるかどうかという点になりますと、これはやはり会社の判断でそこは決めていくほかはない問題ではないか。もし二人にしておったときに二人の同意が得られないときには、法律の要求している監査役の同意が得られないという状態になるほかはない。それは当該会社のリスクでそういう意見の合わない監査役を二人置いておいたというところから出てくる問題ではなかろうかというふうに思います。特に御質問にあるいはなかったことかもしれませんが、常勤の監査役の問題がさらにそれに絡んでくるという問題もあろうかと思いますけれども、この辺も御質問の範囲外でございますので、触れないことにいたします。  私の考えは以上でございます。
  168. 河本一郎

    河本参考人 解釈といたしましては、鴻先生のおっしゃったとおりでございまして、それ以上私がつけ加えることはございません。
  169. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  それでは次に伺わさせていただきますが、二百九十四条ノ二に、無償の利益供与の禁止ということで、今度の改正の目玉の一つであります総会屋の防止対策ということになっておるのでありますが、これで実際に総会屋対策がなれりと両先生はお思いでしょうか、ちょっと伺いたいのであります。
  170. 河本一郎

    河本参考人 なれりとおっしゃいますと、なる面もあるし、ならぬ面もございます。といいますのは、これはやはり適用の範囲が限定がございます。たとえば「何人ニ対シテモ」とはなっておりますが、「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」ということがございますので、たとえば、いま総会屋が動いておる方向として、もういっそ株式は手放して、もっぱら雑誌屋だとか新聞屋だとかそういうものになる、それから出版部数をふやしてどんどん会社に買ってもらう、むしろ株主になるぞと言うておどかして金をもらう、だから株主になってくれるなと言うてこう逆に金を出すという、そういうものもこの「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」だということに解釈できますれば、これはひっかかりますけれども、やはり総会屋もいろいろなことを考えますでしょうから、なかなかこれにぴったりと当てはまらない。ことに刑罰規定になってきますと、また解釈が厳重になりますから、当たらないものも出てくるかもわからぬと思います。  ですから、いわゆる株主で、そしてあれは名うての総会屋だということになっている者、そういう者に金を渡していくというのは、この条文で、先生御指摘の二百九十四条ノ二と、それから四百九十七条の刑罰規定とをあわせ使いますと相当効き目はありますし、そしてまた、私どもも実務家から聞きます話では、皆相当真剣にこれの適用を考えておると思います。  だから効果はあると思いますが、ただ、いま言いましたように、抜けていくやつ、それをどういう形で追っかけるか、これはちょっと商法のプロパーの範囲からは超えていくんじゃないかという気がいたしますので、その点はどうしても、先ほど来ほかの先生の御質問に答えましたように、そういう無償供与の開示制度というようなものなんかをできれば採用していただければと、こういう希望を先ほど来述べたわけでございます。
  171. 鴻常夫

    ○鴻参考人 私も、二百九十四条ノ二並びにその関連の規定で総会屋の跳梁を抑えるということについて、万全だとは必ずしも思っておりませんが、また河本参考人も触れられましたように、刑事罰の問題になりますと、条文の文言というものも、罪刑法定主義で非常に厳格な運用にならざるを得ないという面もあるかと思います。そういう点で、要はこの新しい条文の運用にもかかわってくるかと思いますけれども、二百九十四条ノ二の規定は、事民事に関する限りはかなりよくできている、これ以上はちょっとこの段階では考えられない規定ではないか。あとは、河本参考人も触れられましたように、これらの規定とディスクロージャーの問題を適切に結びつけて、そういう面からも総会屋のばっこを抑えられるような法制を整備していくということが必要なのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  172. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、いまの四百九十七条の罰則、この関係もありますし、相当業界においては、これはずいぶんシビアになってくるぞという効果もないことはない、こういうふうに先生方は見ていらっしゃるようでございますが、ここでちょっと私不思議に思いますのは、改正試案の中ですかにありました四百九十四条ですね。昭和十三年に貴族院におきまして、「請託」という文字の上に「不正ノ」というのをわざわざ修正をして書き入れましたね。これが今日まで残っておりますので、この文字が大変捜査上困難を強いる状態になってくる。だから、この「不正ノ」という字だけはのけたらどうかということは、各界からも声が大きかったし、改正試案にも事実上出ておったわけでありますけれども、今回はどういうことか、そのまま「不正ノ請託」という言葉はそのとおり残っているわけです。こういうものを残すということは、四百九十七条を新設したんだからいいじゃないかと言うけれども、余りにもパンチが小さ過ぎるというふうに私は思うのです。  それで、先生方といたしましては、この試案の中で出ておりました「不正ノ」というのを除くべきだというのが除かれないで、このまま残ったということについてどういう御感想をお持ちか、両先生の御感想をお聞かせいただければありがたいと思うのです。
  173. 鴻常夫

    ○鴻参考人 この四百九十四条の問題について、私もほかの方の質問の中でちょっと言及したところですけれども、総会屋の活動を抑えるという面からは、やはりこの条文の「不正ノ」という字を取った方がより一層強力であったのではないかというふうに思います。  四百九十七条の二の方に、民事の二百九十四条ノ二の規定、これを受けた形で、ともかく別の罰則規定というものが設けられていることで、場合によっては、この運用でその点はカバーされ得ることもあり得るかと考えておりますけれども、しかし、罰則規定は、まさに岡田さんの御指摘のように、四百九十四条についてそういう経緯もこれまでございましたのですから、同じような運用上の問題というものが残らないかということを私としては気にしておるわけでございますが、運用としてはそうならないことを希望いたしておるわけでございます。
  174. 河本一郎

    河本参考人 私も、実は先生と同じような感じを持ちました。四百九十四条も「不正」を取り、そしてまた四百九十七条に当たるものも残されるのであろうと実は思っておったのですが、そうならなかった。  しかしまた、考えてみますと、実は、四百九十七条のような刑罰規定が置かれることにつきましては、やはり刑事局等々でも最初から難色があったんだということも私どもは聞いておりました。そこで、実は四百九十七条を見たときに、よくここまで広範な刑罰規定がつくられた、そういう感じを私は四百九十七条から受けまして、その途端に、四百九十四条の「不正」がそのまま残ったことの不満がなくなったような、そういうようなことでございます。
  175. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 先ほど来もお話が出ておりましたが、株を手放して、総会屋さんという職業があるかどうか知りませんが、一応俗称の総会屋でありますが、その総会屋が、たとえば保険屋をやる、あるいは雑誌屋をやる、あるいは新聞屋をやる、あるいは絵を持ち込むというようなことで、あの手この手で、無償ではない、とにかく反対給付があるんだということで、このもぐっていくやつをどうやってとめたらいいのか、とめる方法というのは全くないのか、学者の先生方がお考えになりましても全くお手上げかどうか、この点をぜひひとつこの際伺っておきたいと思うのです。  それからもう一つは、四百九十七条の罰則規定ができたからまあまあ多少は救われたよということになるのでありますが、この四百九十七条というのが、これがまた私から思えばちょっと難があるのじゃないかなと思いますのは、渡した方も受けた方も両方が同罪、こういうことになるものですから、結局は見えないところ見えないところへ隠されていくのではないか、なかなか容易に出てこぬようになってしまいはせぬか、これを心配しておるのでありますが、その点はいかがでございましょうか、両先生の御意見をお願いいたします。
  176. 河本一郎

    河本参考人 確かに幾ら民事責任を科し、刑事責任を科しましても、それが出てこないことにはどうにもなりません。そこで、繰り返し申しますが、私どもは、やはりある客観的な基準でディスクローズさせていくという、そういうものを考えたのです。それが、将来の省令の問題は別といたしまして、現在出ておりますところを見ますと、二百八十一条ノ三のところに、これは従来からもある条文でございますが、監査報告書に会社の取締役に違法な重大な事実があったときはそのことを書け、これが実は先ほど来先生御指摘の二百九十四条ノ二ができましたり、それから四百九十七条ができまして、総会屋に金をやることは非常に商法が力を入れて抑えておることなのだ、こういうことがはっきりいたしますと、監査役としてはその点を十分監査するということが大きな職責になってくるだろうと思いますし、また、それで非常にやりやすくなると思います。  従来のようでしたら、一体あれが犯罪になるのか、あるいはいかぬのかいいのか、それさえももう一つはっきりいたしません。だから、これがはっきりとだめだということになりますと、それがあるかないかを調べられる。しかも、監査役は自分で直接担当のたとえば秘書課とかへ行ってそれを調べることができる、報告させることができる。こういう点を使いますと、これは一種のディスクロージャーでございますが、先ほどおっしゃった出てこないものをどうするかという点を制度的にはカバーしておるのじゃないか。  ただ、それじゃいまの監査役にそれができるかという問題が実は一番基本にございます。つまり、そこまで首を突っ込んだら、彼は二年でちょんじゃないかという最も基本的な問題がございます。これをどうしてくれるのだと言われると、もう私どもも返答に窮します。  そこで、もう一つそれを何とかしてほしいのは、外部から入っている公認会計士ということになりますのですが、これはそういう意味ではまだ監査役よりは独立性は強いのだろうと思いますのですが、もうそこまでが限度でありまして、これ以上の自主監査ということでは、現在の体制のもとではまだ不可能ではないか、私はこういうふうに思っております。
  177. 鴻常夫

    ○鴻参考人 総会屋が雑誌社等にかわって、実際会社から従来と同じように財産上の利益を受けるようなことをどうやってうまく抑えるかということですが、総会屋がほかの職業につぐということは憲法で保障されているわけで、いかんともし得ないことで、このこと自身をけしからぬとかなんとか言うことは、憲法の精神を忘れたということになるでありましょうが、だからといって、そういう雑誌社をしている者であっても、従来の総会屋が会社から不正の利益を受け取っておるようなことと同じようなことをやれば、やはりこれは二百九十四条ノ二の二項の解釈の問題にかかわってくることでありて、判断はむずかしくはなるが、できないという問題ではないのじゃないだろうかというふうに私は考えておるわけでございます。  しかし、どうやってそういう問題を明るみに出して、けしからぬ者はたたき、そういうことが広く行われないようにするうまい方法はないかという点になると、これはやはりいろいろな方法の併用以外にはないのではないかということで、今度の改正法律案は、とにかくその基本をなすような条文をこしらえ、それを民事、刑事の両面にわたって整備したわけですが、なおそれに関連して、河本参考人も言われましたように、こういう規定ができたことによって監査役による監査という問題もやりやすくなるという面がございますし、さらに、最終どういう形になるかはこれからの問題かもしれませんが、ディスクロージャーの方で何らかの形でこの面を開示制度に結びつけるということと相まって、私はある程度以上の効果を持っているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  178. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  そこで、いま一点お伺いいたしますのは、最近それから前にも問題になったことがありますが、常にわれわれがニュースを見て腹立たしく思います大きな事件の中に、たとえば大光相互銀行事件あるいはつい先々月ですかありました北海道の岩沢グループ事件、いずれも三百五十億とか七百億とかいうような非常に大きな債務を生じまして、倒産というようなことになっております。これは突き詰めたところ、いわゆる簿外債務という問題がいいかげんなことになってしまっておるので、そのために、そこへ勤務しておった従業員が、うちの会社はりっぱな会社だと思い込んでおりましたのに、ある日突然ばたっとその会社がなくなってしまう、それで大ぜいの従業員、家族が路頭に迷うという惨事がちょこちょこ出てくるわけです。こういうものがなぜ防げないのだろうかという素朴な疑問があるのですよ。  それで、今度の改正試案の中でも、私の聞き及んだところでは、簿外の債務というようなものもやはり入れるべきだという御意見もあったかのように聞いておるのです。これは私の聞き違いかもわかりませんが、こういう簿外の債務という、最近起きておる大きな悲劇的な事件を防ぐための措置というのが今回の法改正の中でとれるものかどうか、この点先生方の御意見を一ちょっと時間がありませんので、まことに恐縮でありますが、河本先生の方からお伺いをさせていただきたいと思います。
  179. 河本一郎

    河本参考人 いま先生のおっしゃいました簿外債務というのは、簿外保証債務ですか。(岡田(正)委員「保証債務です」と呼ぶ)これは実は部会でも出たことがございましたのですが、余り深く議論せずじまいで、特には上がってはおりません。そんなので、私も詳しく部会で考えたこともございませんし、結局は取り上げなかったいきさつも十分には知りませんのですが、ある程度現在でも本当に中身のないもの、つまり見返り債務がほとんど立たないようなものの場合には、解釈上も乗せなければならぬというふうにも解釈できますし、特にそこのところを法律で決めなければならぬこともないということじゃなかったかと思います。  それから、ああいうことが起こりますのを見ますとまさに挫折感を感ずるというのは私どもこそそうでございまして、何のため商法をやっておるのか、あるいはこういう法律改正を一生懸命やっておるのかということを絶えず思うわけでございます。しかしまた、大阪の大証信なんかでは、やはり取締役全部相手にして債権者からの六千万円ほどの民事責任の追及が起こっておりますね。そのほか、最近はああいう事件が起こりますと、数は少ないのですが、株主からの責任追及が始まっておりますし、そういうものが単なるモラルではなくて、本当にえらい目に遭う、そういうこともありますので、ただ、だめだ、やってもだめだと言うばかりではなくて、少しでも努力をすることが大事ではないか、その効果は少しずつでも出てきておるのではないか、こういうふうに私は思っております。
  180. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 鴻先生の御意見も聞きたいのでありますが、時間がないものですから、まことに恐縮であります。  それでは、最後の質問に入らせていただきますが、私、今度の商法改正で、この委員会審査を通じまして何回となく意見を申し上げてきたところでありますが、鴻先生も、この単位株制度の採択というのは非常に前進であると、非常に高く評価していらっしゃいますね。ところが、単位株制度の評価というのはいいのですけれども、大会社にとってはいい制度ではありましょうけれども、さっきから言われております大中小の会社ということで言いますと、中小の会社の皆さんというのは、百分の一以上、三百株以上の株券を有する株主から提案権がありますから、総会の議題を提案されたらこれを通知書に載せなきゃならぬ。そういう中に、たとえば総会屋が苦し紛れに今度は中小会社がえさだというのでそっちへ目がけて行こうと言えば、目がけて行くだけの余地が残っておるのです。  いま物すごいたくさんの会社がある。それでこういう三百株くらいのが、何人寄ってもいいわけでありますから、一人でなくてもいいわけでありますから、簡単に寄せられる。そしてあるいは委任ができる。そういうところでひとついやがらせをやってやろうというので、会社解散に関する件あるいは取締役社長解任に関する件なんというようなことを突如として提案をいたしますと、これはどうしても株主総会の通知状に印刷せなきゃならぬ。印刷するということは、だれが見るかわかりませんから、会社のイメージダウンにつながる。これは大変というのでそれを取り下げてもらおうと思えば、何ぼか金を積まなければ言うことは聞いてくれぬだろうということは想像にかたくないですね。  ということになりますと、そんないやな目に遭うのだったら、ついでのことに定款を改正して単位株制度の会社になればいいじゃないか、そういう余地があるのですよ。定款を改正してその単位株制度になりましたら、今度は単位未満株が出てきます。小さい会社になればなるほど単位未満株という数は、大会社とは比較にならぬくらい出てくるはずですね。大会社ではおよそ一%もないだろうと言われておりますけれども、中小会社になったら、下手をすると半数くらいもあるかもわからぬ、こういう状態です。  この単位未満株が出ると、今度はそれの買い取り請求権がありますから、それに応じなければいかぬ。それに応じようといたしますと、上場された株ではありませんから、時価評価のしようがありません。ということになれば、裁判所へ訴えます。裁判所でこの評価を決めるとなりますと、御承知のとおり税法で決まっております相続財産の評価というので資産評価をされて、一株で割り当てるわけでありますから、現に広島県でもあった例でありますが、つい五年ほど前に、一株五十円の株券が二万六千円に裁判所で評価されまして、その会社が危うく倒産しかけたことがあるのであります。  そういう問題がありますから、この単位株制度をとると未満株の買い取り請求がある。買い取り請求に応じたら、五十円の株券を二万六千円で会社が買い取ったものをまた二万六千円で——五十円の額面のままで二万六千円で買うばかはおりませんね。配当は一割あっても五円しかないわけですから、二万六千円で買っても五円しかない。そんなあほなことに金使う人はおりません。ということになれば、当然自社株として抱え込まなければいかぬ。抱え込むということは資金枯渇に通ずるわけですね。そうすると、次第に運転ができなくなってばたんといくという可能性が非常に多く残されるので、これは大変、もう一遍定款を変えてもとの中小会社に戻りましょうというのには、法律ではいけませんと新法では規定をしてある。ということになれば、進むこともならず、退くこともならず、まさに王手飛車という状態になるわけであります。  大会社は、いわゆる三百単位以上の株主でないと提案権がないわけですから、株券で言うたら、五十円の株券なら三十万株ですから相当なものです。千五百万円の株を持っておる人でないと提案権がないわけですから、まあおよそ常識的なことをなさるでしょう。非常識なことはなさらぬでしょう。それから、未満株の買い取り請求があっても、いま調べておるところでは大体〇・八%ぐらいしか買い取り請求の要求はなかろうという状態でありますから、これも問題はない。時価評価も毎日出ている。それをそのまま時価で買い取りましても、その日のうちに兜町に回せばそれですぐさばける、こういうことになるのですから、大会社は痛くもかゆくもない。それから無償交付をするにしましても、株式分割をするにしても、一単位株は今度は千株と読みかえができるようになっておりますから、実際には一単位株五万円でありましても、無償交付するときだって、株式分割するときだって、一額面が五十円で大会社はできるわけですね。  ところが、中小会社になりますと、今度は、新しく無償交付あるいは株式分割しようと思うたら、もう、一つの単位が純資産に評価しまして五万円でなければできない。ということになれば、ますます舞が舞えなくなるということになってくるわけで、今回の法律改正というのは案外落とし穴があります。落とし穴と言ってはいけませんが、見落としがありまして、大会社のことだけをオンリーに考えた商法改正ではないだろうか、中小会社のことをさっぱり忘れているのじゃないか、あるいは大会社だけが株式会社であって、それで中小会社というのは有限会社に早くなりなさいということを奨励する法律ではないかというふうにすら、実はちょっぴりひがんで考えておるのでありますが、両先生の御意見はいかがでございましょうか。
  181. 鴻常夫

    ○鴻参考人 岡田さんの御質問の問題の所在は、単位株と株主提案権とのつながりの問題のようにお聞きしたのですが、私、単位株制度について評価はしておりますが、高い評価というよりも、これ以上の名案がこの際ないという意味で評価しておるわけでございます。  それから、株主提案権の方については、私は、株主総会形骸化というものを少しでも改めるということで、株主に積極的な総会への参加をしてもらうあるいは参加意識を少なくとも持ち得るような、そういう方法の一つとしてそれなりに評価していい制度ではないかというふうに考えておりますが、率直に申し上げて、私ども商法部会の中でその株主提案権の問題を審議しておりましたときに、ほかの人がどうであったかということは私の推測以上には出ませんが、私自身、頭の中には大会社を考えて、それで持ち株要件等をどうすべきかというような点も審議に参加しておったように記憶しているわけでございます。  そこで、この問題を中小会社に当てはめたときにどういう問題が出てくるかということについて例を挙げられて、これは実際の例か、岡田さんがおまとめになられた例か、私存じ上げませんが、そういう例に即してこの問題を考えたときにどうかということですが、確かに、会社経営に伴って株主からのいやがらせというような問題がいろいろなところであることは確かでございます。株主提案権の制度というものは、これが乱用されると確かに困るということは、もう中小に限らず大会社でも同じことでありますけれども、大会社にあっては、この持ち株の保有要件によって事実上そういういやがらせ的な権利の行使が少ないだろうということが言えるのに対して、中小の場合はその持ち株の要件からするとそういう機会が確かに多いのかもしれないという気はいたします。しかしまた、この提案権自身は、受けて立てば何でもない問題でもあるのですね。そこで、こういう制度が入るときには、これは中小の会社のみならず大会社の方も、経営者としての頭の切りかえも法律は同時に予定しているのではないかと思います。しかし、中小の経営者に直ちにこういう提案権との関連について頭の切りかえをしろなんというのは、大会社の経営者、関係者に対するよりも一層むずかしい問題があろうかと思いますから、いま御指摘のような問題を伺いますと、どうすれば乱用も防げ、かつ株主提案権という制度が持っているいいところも生かせるような形で法律となし得るのかということを私も考えてみたいと思います。
  182. 河本一郎

    河本参考人 いまの先生の提案権と無償交付と単位株制度の問題でございますが、最初に挙げられました提案権の問題、先生の数字が、実は私個人的に事件で広島のある酒会社の鑑定書を書いたこともございまして、その数字とぴったり合っておりまして、名前は申し上げませんが、あるいは同じ会社かもしれないのです。それを頭に置きながら、この問題をどう考えたらいいか、ちょっと考えてみたいと思います。  この会社は、資本金が五百万円ぐらいなのに非常に大きな売り上げのある東京でも有名な酒屋なんです。ここでは、もちろん非上場株でありますが、実は譲渡制限をつけておりまして、問題が起こりましたのはそのうちの一部の株主で、おやじが死んで子供が相続したために、会社に対する愛着心がなくなって、あるうるさい人に売った。会社はもちろん、譲渡制限がついておりますから、その名義書きかえには応じない。そこで、裁判所へその値段の決定を申し立てて、裁判所はようもうかっている会社だからというので二万五千円とつけて、それを会社自身は買い取れませんから取締役が買い取ることになったのですが、これは高過ぎるのでちょっとまけてくれ、それで安い鑑定書書いてくれ、こういうことで関係したのです。  ただ、先生、この場合は譲渡制限しておりますので、いまの株主であればまず提案権を使ってくるというのは入ってこないわけでございます。今度のは、株主に入られたら提案権を使うような人でしたが、これは譲渡制限してあるので、その名義書きかえを認めず、結局ほかの取締役が買い取りましたからもう片づいたわけです。あの会社はそれでも二、三百人株主がおるのですが、その中でだれかがまさに一株五十円で三百株集まって提案権行使するというなら、ぼくはあの会社ならやらしていいのじゃないかと思います。増資でもしてあるいは無償でもしてちょっと株主に報いたらいいのではないかと私自身は思いますので、先生のお考えの会社と私の思っておりますのは同じかもしれませんが、ああいうのを考えますと、三百株持っておれば結局六百万円ですから、やってもいいのではないかと思います。  もう一つ、実はこれは大阪でも問題になりましたが、それまでは上場しておりましたが、公害が大問題になってきて、結局会社内容が悪くなって非上場になってしまった。しかし、株主相当おるわけです。譲渡制限しておりませんし、株価は安うございます。ところが、こういうところで三百株といいましたら、たちどころに集まります。そして、そういうところは提案権の中身になるようなものはたくさん持っておるわけです。総会屋どころか社会派の株主だってどんどん使ってくる。その場合に会社はというと、まさに一株五十円で三百株、これで提案権を受け入れなければならない。これはえらいことだ、アンバランスじゃないか、こういうことは確かに実務界でも大阪あたりでは私どもにも言われます。  それは一発でとにかく五万円に上げたらいいじゃないか。そういう場合、上場しておりませんから一遍に引き上げることにそれほど手続に困難もございませんし、また、本来この法律は、できるならば最初から千を一株に併合して五万円に上げたいのだけれども上場会社でたくさん株主がおって株が流通しておるときは無理だから、ちょっと何年かかけていこうか、こういうことですから、その心配がなければ一遍に五万円に上げなさい。先生おっしゃるように、単位株をとったらこれは大変です。死ぬ思いをしなければなりません、毎日買い取り請求をやられますから。値段はついていないわけです。だから私は、それはどんどん、五万円に一遍に上げなさい、そう困難はないはずだ。無償交付も、五万円のものにつきましては、端株等々かなり手当てを法律がいたしましたので、企業金融の面でも心配ないのではなかろうかと私は思っておりますので、そういうふうに私自身も話をしていこうか、こう思っております。
  183. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大変貴重な御意見、どうもありがとうございました。
  184. 高鳥修

    高鳥委員長 林百郎君。
  185. 林百郎

    ○林(百)委員 最初にお二人の先生がお話しになりましたように、今度の商法会社法の改正の基本は、ロッキード事件その他の会社社会的な指弾を受けるような問題が起きて、それをどのように規制するかということから出ていると思うのですね。それについて、衆議院では、会社社会的責任を明確にするように改正すること、参議院では、企業社会的責任を全うすることができるよう株主総会及び取締役制度等の改革を行う、いずれにしても、企業社会的責任ということが衆参両院で議決されているわけなんです。  法務省民事局からの「会社改正に関する問題点」、これは先生方に御諮問のときに参考として提出されたと思いますが、これを見ますと、「企業社会的責任」というので、「いわゆる企業社会的責任に関する論議の一環として、株式会社法においてもこの問題をとり入れて法改正をすべきであるとする意見があるが、株式会社法の体系において、この問題をどのように取り扱うのが相当か。この点に関し、」と言って、たとえば一つの方法としては「株式会社法中に、会社社会的責任に関する一般的規定として、取締役に対し社会的責任に対応して行動すべき義務を課する明文の規定を設けること等を検討すべきであるとする意見があるが、どうか。」ということと、一方では、「企業社会的責任については、これに関する一般的規定を設けるということよりも、むしろ現在の株式会社法の個々の制度の改善を図り、これを通じて、企業社会的責任を果たすことを期待するという方向で検討すべきであるとする意見があるが、どうか。」両先生の御意見をお聞きしておりますと、この後者の方に御意見が一致しているようなんですが、私はその点について問題を提起いたしたいと思うのです。  これももう学者の先生方の間で十分論議されたと思いますが、たとえば民法では、一条に、「私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ」「権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス」「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」、それから「法律行為」のところで、「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス」、民法にはこういう一般的な規定があるわけなんです。法人擬制説もあることは、私が言うまでもなく先生方御存じだと思います。  いま企業は非常に大企業に集中化されてまいりまして、たとえば牛乳の問題一つをとってみても、明治、森永、雪印三社で日本の牛乳の大部分を支配する、ビール一つをとってみても、麒麟とサッポロとサントリーですか、それらに集中している。鉄鋼で言うと新日本製鉄が西ドイツの鉄鋼の生産と同じくらいの生産をしている。企業企業として利潤を追求するだけの存在ではなくして、われわれの社会生活に非常に重要な影響、場合によっては国の政治、経済、財政にも決定的な影響を及ぼすわけなんです。  こういうときにロッキード事件だとかKDDだとか、ああいう社会的な指弾を受けるような問題が続々と起きてくる。そういうときに機構の内部的な手直しだけでいいのか、社会的に重大な責任を負っているということを自覚させるような一般的な規定を設けることが必要ではないかと私は考えるわけなんですが、この点、先生方審議会の論議でどのように論議されてこういう結論になったのか。もちろん民事局の参事官意見の中にも、株式会社法の個々の制度の改善を図ることによって企業社会的責任を達するようにしたいという意見がありますから、それぞれの先生方の御意見が分かれたとは思いますが、その間の経緯を明らかにさせていただきたいと思いますので、両先生にこの点をお聞きしたいと思います。
  186. 鴻常夫

    ○鴻参考人 今度の会社改正問題の検討の過程の中での企業社会的責任会社社会的責任の問題の地位づけというものは、いま林さんから詳しくお話しのあったとおりだと私ども受けとめております。河本参考人もあるいは同じ意見かと思いますが、私自身商法部会の審議に参加しておりまして、一般的に会社社会的責任の問題を取り上げました段階では、最初にその問題を検討するよりも、いま林さんが民事局の考えとして言及されましたような取り組み方、すなわち株式会社法の個々の制度の改善を通じて会社社会的責任というものを果たし得るような制度をつくり上げることをまず検討対象として審議するのがいいという方向での意見を述べたように記憶しておるわけでございます。また、私の記憶しているところでは、当時その審議に参加しておった者の大部分はそういう取り組み方をしておったかと思います。  しかし、私自身は、この会社社会的責任の問題は、国会の両法務委員会附帯決議にあるように、今日の会社法の中できわめて重要な問題であるので、審議を開始した最初の段階で結論を出すというような簡単な問題ではないと考えておりますので、会社法全面改正の全部の締めくくりのときには、結論はどうなるにせよ、正面からこの問題に対して意見も闘わし、林さんのようなお考えがこの際どうしても必要だという御意見の方もあるかもしれませんし、あるいは私も今後考え直すこともあるかもしれません。  ただ、会社社会的責任というのは、法律規定の外ですと会社にそういう社会的責任があることは確かなんでありますけれども、いまの会社法の中に卒然とそういう規定を入れたときに、せっかくある会社法の他の規定の解釈といいましょうか理解というものの基準が失われることにならないだろうかという点の心配もありまして、一般的規定をもし置くとすれば、文言の上でも工夫というか、相当慎重な対応が必要ではないだろうかというふうに私としては考えておりまして、会社法全面改正の作業を今後続けるとして、当初予定したものが一段落するような段階においては、どうしても避けては通れない問題ではないかと受けとめておるわけでございます。
  187. 河本一郎

    河本参考人 いま鴻参考人が申し上げられたことそのことは、そのまま繰り返してお答えにさせていただきたいと思うことでございます。それに対して少し補強させていただきますと、私自身は、どちらかといいますと、こういう条文にむしろある程度危険を感じております。  それは先生御承知のように、ドイツ株式法がナチスの時代にいわゆる社会的責任に関する条文を置きました。特に会社の経営者は、むしろ株主という言葉が抜けて、国家あるいは従業員の共同の利益のため会社を指揮しなければならぬという、これは戦後落ちたわけでありますが、われわれがドイツの有名な商学者を呼びましたときに、実は先生のその本の中に、この条文は国家社会主義の精神をあらわしたものなんで、私はそういう意味でこれに反対だった、そう書いてあるのです。そこで、なるほど文章がそういうように抽象的でありますだけに、どのような政府ができてもその都合のよいように使われる。ところが、しばらくしてからまたもう一度先生を呼びましたら、今度は、先生、いまでもあの条文はナチスの精神のあらわれだとお思いになっておりますか、こう聞くと、いや、私はいまならあの本にそう書かなんだ、ちょっと考えを変えた、こう言われるのです。といいますのは、ドイツが、これは共同決定等々の問題もあるでしょうが、やはり政治状態が変わってくるとこの条文が必要だ、こう言い出す。これはイギリスでもそうであります。労働党のときの法案にはそんなものが出てみたり、サッチャーになると引っ込んでみたり、つまり非常に抽象的な条文は時の政府の自由に使われるというおそれがございます。  また、たとえばいまの日本の銀行が、国債を大量に買い込んだがために、評価の仕方によっては何百億という赤字が出ますが、これは一体株主にどう説明するのかというと、これはお国のためだ、つまり社会的責任だ、こう言うよりほか仕方がないと思うのです。しかし、果たしてこれがいいかどうかということも考えなければなりません。  そこで考えますと、いま鴻参考人が言われましたように、置いてもそう弊害もないかもしれぬが、私には、どちらかというと、余り役に立たないで逆に勝手な使い方をされるというおそれがあるのではないかという懸念がございますので、いまのところまだこれの制定には賛成いたしかねておる次第でございます。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 どうもナチスの国家社会主義の法律まで援用されては、はなはだ私の本意に反するわけなんです。たとえばカルテルを結んでいく。あるいは石油ショックのとき、石油をわずか三つか四つの会社が買い占めて、しかもそれを売り惜しんで、値段のつり上げを待って消費者に高い石油を売りつけるとか、あるいは諸物資を隠してしまうとか、田中内閣のときなんか大企業が土地をどんどん買い占めて、いま宅地に非常に困っているということは、大企業が土地を買い占めて持っているからなんです。そういう反社会的な行為がいまの制度でいけばできるわけなんです、大きな資本を持っていますから、そして資本が集中していますから。だから、そういうことに対して倫理的な規定を置く必要があるじゃないか。  民法では、先生のおっしゃるようなことを心配しなくても、ちゃんと「私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ」ということがあり、以下私が読んだようなことがあって、それがもう定着して、何らナチスの、何もヒトラーが化けて出るようなことはないわけなんですから、やはり商法でも、鴻先生もおっしゃっておりますけれども、基本的に、社会的に重要な責任企業は持っているんだ、そこを自覚して商行為をしていかなければいけないじゃないかという自覚を促すことが必要じゃないか。  たとえば株主の問題を見ましても、もう法人が七〇%株を持っているのですよ。今度は一株を五万円にしまして、そうしますと一部上場会社の数、八百五十社でいまの株が一億八千万株なんですけれども、それが約三〇%、五百万人減るわけなんですね。そういうように株主が整理されて大会社が、一部上場会社の株の所有比率が七〇%になり、個人はもう三〇%に減じているというときなんですよ。  だから先生方は、先生方と言っちゃ失礼ですが、少なくともいまの河本先生の御意見を聞いていると、いま存在する株式会社をどのようにスムーズに運用させていくかということが中心になっていますが、いまある株式会社をスムーズに運用していくというのは、もうその株の七〇%は法人が持っているのですよ。事実上は大株主なんですよ。しかも大株主が支配している大会社日本の経済を支配しているのですよ。そうであればあるほど、その会社のあり方というものについて、河本先生も商法、ことに株式会社法律を御勉強なさっていますから、将来の見通しとして、私の意見を出すと途端にナチスが飛び出してくるようなことではなくて、もう一度お考えくださることが必要じゃないでしょうかね。どうでしょう。そんなとっぴもない例を出さなんでくださいよ。
  189. 河本一郎

    河本参考人 これは実はとっぴもない例ではございませんのでありまして、つまり、りっぱな立法例がございます。われわれ法律の制度をつくりますときには、どういう社会体制のもとでどういう条文ができたか、それが戦後どうなっていったか、そういうことをずっと追いまして、その条文をつくることがどういう機能を果たし、どういう利益をもたらし、どういう弊害をもたらすか、それを調べていくわけでございます。そうしますと、いま言いましたまことに生々しい事実があった、しかも、それは先ほど挙げましたように、ドイツの学者を呼んでごく最近に研究会をやったら、そういうことがあったということを申し上げたわけでございます。  それから、先生のおっしゃいましたような反社会的行為、これは私ももう当然認めておりますし、それにつきましてはやはり個々の、たとえば独禁法でありますとかあるいは買い占めに関するその他の法律とか、個々法律で押さえていけばいいわけであって、商法ではちょっといま具体的にはこれ確かにできません。そういう意味で、私も絶対にこういう条文を置くなと言うているわけではありませんのでありまして、私個人としては、メリットよりもいささかそういういままでの歴史から見ますと危険の方があるのではないか、こういうふうに思いましたので、きつく例を挙げまして申しわけございませんでした。
  190. 林百郎

    ○林(百)委員 河本先生と私とここで論戦を交わしてはいけませんが、民事局からも意見が出ているのですよ。別に日本の民事局がナチスになろうと思っているわけではないですよ。学者の間でも審議会で論戦が交わされたのですよ。これは鴻先生がよく御存じだと思います。そして結局、とりあえず具体的なものをやっていこうじゃないか、根本的にやるということになると方々手直ししなければならないからということでなったわけなんですから、先生も将来の構想として、いまある法人の社会的な責任を自覚させるようなことを株式会社の法の中にもうたう。それはいろいろの法令と関連してくるかもしれない。そういう法人のやった法律行為は無効になるとか、あるいは独禁法に違反するような行為あるいは証券取引法に違反するような行為は無効になるとか、そういうことをやった取締役の民事的、刑事的責任だとかいろいろあると思いますので、そういう点は将来お任せするにしても、やはり現実的にはそういう社会的な責任をもっと自覚させるような会社法の改正あるいはそういう条項をうたうことが必要ではないか、こういうように私考えて質問したわけですから、先生もどうぞ御了承願いたいと思います。  そういう意味で、単位未満株の扱いですが、これはどなたか、これも河本先生のお話にあったかな、五十円くらいの株を持っていながらいまの大きな企業の中で物を言うとは取るに足らないと響くような御意見があったので、あるいはそうでなければ失礼ですが、しかし、いま五十円といいましても、いまから五、六十年前は決していまの五十円ではなかったわけですよ。そのころ五十円株でいまの資本主義的な原始的な蓄積がなされたわけなんですよ。そこから会社が成長していっていまのような円の単位が軽くなるような時代に来たわけで、そこで商法を現実と変えなきゃならないじゃないかということなんで、五十円の株主が吹けば飛ぶような株主だということは、その人が株を買った当時がいつか、たとえば明治時代、先生は御年輩でないから余り御存じないかもわからぬが、われわれの年輩なら、大正の初めに五十円あったら一月十分生活できたですよ。五万円以上の値があったのですよ。そういう株主の権利を、そんな五十円ばかりで何を言うんだといってこの共益権を奪ってしまうということは、これはやはり慎重に考慮しなければならないじゃないかと、田中誠二先生なんかもそういう御主張をなさっているように漏れ聞いてます。  なぜ私がそう言うかというと、いまのような、たとえば石油あるいは土地の買い占めをするというような場合に、消費者の側で会社の株を一株二株買って、それで総会で、そういうことは消費者のためにならないから、会社が持っている石油を全部解放してくれ、あるいは会社の持っている物資を解放してくれ、そういうことを言う監督権あるいは会社の管理権が小さい株主にもあるわけなんですよ。しかも、こうなってくると、ほとんど法人が七〇%も株を持っているという時代になりますと、そういう意見がむしろ聞かなければいけない意見かもしれないわけですね。そういう意味で、私はこの単位未満株の処置については考えるべきではないかというように思うわけです。  あと時間がありませんから、まとめて御両人に御質問しますが、そういう問題と、株主総会に議題を出すことのできる株主というのは言うまでもなく百分の一以上に当たる株主または三百株ですが、しかし、株主総会の運営を見ますと、二百三十七条ノ三「取締役及監査役ハ総会ニ於テ株主ノ求メタル事項ニ付説明ヲ為スコトヲ要ス但シ其ノ事項が会議ノ目的タル事項ニ関セザルトキ、説明ヲ為スコトニ因リ株主共同ノ利益ヲ著シク害スルトキ、説明ヲ為スニ付調査ヲ要スルトキ其ノ他正当ノ事由アルトキハ此ノ限ニ在ラズ」と、議題を要求してもその議題について取締役、監査役説明しなくてもいいという条項があるわけですよ。これが相当範囲に運営されれば、これはせっかくの株主の議題提案権が無になってしまうのではないか。それから、二百三十七条ノ四「議長ハ其ノ命ニ従ハザル者其ノ他ノ総会ノ秩序ヲ乱ス者ヲ退場セシムルコトヲ得」、もうめんどくさくなれば退場させることもできる。だから、各委員株主総会の形骸化と言いますが、やはりこういうような点を心配しているのではないかと思いますので、株主総会の形骸化については、やはりさらに慎重に御検討されることが必要ではないかというように思うわけです。  それからもう一つ、時間がありませんから、私の用意してきた質問をまとめていたしますが、引当金は、たしか現行法よりは改正案の方が非常に規制をされてきていると思うのですね。「特定ノ支出又ハ損失ニ備フルタメノ引当金ハ其ノ営業年度ノ費用又ハ損失ト為スコトヲ相当トスル額ニ限リ之ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルコトヲ得」これは二百八十七条ノ二です。  いま大会社で問題になっているのは膨大な社内保留があることで、これはもう釈迦に説法で、先生方御承知だと思うのですね。一部上場会社だけでも二兆円近くの社内保留があると言われておりますが、これによって、たとえば貸し倒れ準備金あるいは退職引当金、輸出損害金というような、現実に損害を生じてそれを埋めたもの以外は全部利益の方へ回さなければならないということになりますか、それとも、それは会計法によって決まっているので、会計法によって決まっているものは貸借対照表の負債の部に計上することができるのだということになるのでしょうか。たとえば銀行などは、担保をどっぷり取って貸し倒れ準備金を取ってきます。これは租税特別措置法などにも関係してきますから、商法だけでこの問題が解決するとは思いませんけれども、そういう膨大な社内保留をこれで十分規制できるとお考えになっているのかどうか。  その三つの点を両先生に御説明願って、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 鴻常夫

    ○鴻参考人 三つ問題があるうちの第一の点は、河本参考人先ほど述べられた御意見の中にかなり強い表現があった点についての御批判だと思うわけでございますけれども、私、先ほども聞いておりまして、河本参考人の御意見は、いまの貨幣価値を基準にしたときに五十円は問題ではないかということだと思います。やはり経済合理性の見地からいってそういうものは単位を是正した方がいいという判断があるのであって、そのときに単位の引き上げをすれば単位未満株というものの処理が当然問題になるわけで、それがほかにメリットがあっても、デメリット一点でそういう改正をすべきでないというふうな考え方は私はとらない。また、それは硬直的に過ぎるのではないか。  やはり改める際には、メリットとデメリットの比較考量の上で、ある程度デメリットがある面も、そのデメリットを最小限度に抑えるような形で改正ができないかということでまとめられたのが単位株ではないかというふうに私は理解しておるわけでございまして、結果的にあるいは河本参考人が言われたような扱いになってしまっているかもしれませんけれども、私はそのように理解しております。  それから、二番目の株主の提案権にしても、説明義務との関連でこの改正法律案の条文を見たときに、運用いかんによっては株主の権利が十分に確保されないという点の御心配かと思いますが、私ども商法部会で審議しているときに、この表現のもとにおいてはそれほどの心配はしないでもいいのじゃないかというふうに考えておりましたが、林さんの御指摘になったような面もあるので、これらの条文の解釈、運用については十分注意をもって対応していった方がいいかということを現在考えております。  それから、最後の引当金の点、これはいろいろ問題があるところかと思いますが、今度の改正法律案というものは、利益を社内保留の形で表に出さないようにするということはないようにという趣旨を強く打ち出しておるわけでございまして、配当可能利益自身を全部利益として配当に回すかそうでないか、これは会社の財務政策で自主的に決めていいことなのだから、それを表に出さないような形で引当金としての計上をすることは、会社の財務状況を正しく示すことにならないことから抑える必要がある、こういう性格の問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  192. 河本一郎

    河本参考人 まず、最初の単位株につきまして、私はもう少し複雑な言い方をしたのですが、申し上げようと思ったことは、実は先生のおっしゃったとおりでございます。はなはだ率直なことを申し上げて申しわけないのですが、ただ田中誠二先生は、単位株制度に御反対になっておられますが、決して株式を併合して金額を五万円に上げることには御反対になっておられないはずでございます。結局先生の御意見のような、株式併合そのもの、額面引き上げそのものに反対だ、それより心むしろ社会株主として小さな、それこそ五十円一株、しかも値段も余り高くないようなところであると、本当に五十円か百円金を出せば株主になれるわけですが、そういう人たちも総会に出ていって、そうして会社のよからざる行為があればそれを追及できるようにしておくのが、公的性格を持った大企業にふさわしいのだ、こういう考え方主張される方は私どもの周辺にもおられます。  それはそれで一つの株式会社のあり方かと思いますが、ただ私は、率直に申させていただきますと、株式会社というものが私的企業というたてまえをとりまして、そしてそれの運用の最高機関としての株主総会という機関を立てましたときには、そこへ参加する人は、自分の財産権としての株式を守るという意識を持つような人が集まることがこの制度を合理的に動かす基本ではないか。おれの株式の値段は五十円かあるいは百円くらい、これでは、およそ私的企業としての株式会社のあり方ということを考えるのとは全く別の面でこの問題を考えることになるだろう、こういうふうに思いますので、やはり自分の財産権を守るという意識を持つ程度の財産的価値を与えるそういう単位、こういうふうに申し上げておりますので、これは全く基本的な考え方が違うとおしかりを受ければ、それはそのとおりだと申し上げるほかございません。  それから特定引当金、これは私どもも先生と全く同意見でございまして、貸し倒れ引当金なんかは真っ先にいまの特定引当金から外れまして、純粋に利益として出して、それを改めて総会場で利益処分で残すかどうかという判断になろうかと思いますし、それから問題は、例の退職引当金でございまして、これも役員に対する退職引当金のように法律に定めてないものは、もう今度はここには、載せられないと思います。しかし、従業員に対するものは、例の電力会社なんかでしょっちゅう問題になりますように、これは法律の債務といいましても、中身が一〇〇%から場合によると半分あるいは四〇%ぐらいまでございますから、これをどうするか。なるほど、これはまさに負債そのものでありますから、今度の特定引当金の問題と違いますけれども会社経理、企業会計法自体の持っておる本来の不明確さといいますか、あいまいさだと思いますが、これは先生がまさに御指摘になったように、税法というような面で何か考えるほか、ちょっと商法では手が出ないのではないかと思っております。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 私はこれで終わりますが、一つ両先生にお願いしておきます。  単位未満株、これはいまの会社、たとえば五十年前に設立されたときには、その五十円はいまの五十円じゃないわけなんで、それはスライドして考えてやらないと、その五十円の資本が蓄積されていまの会社の基礎ができたわけなんですから、それをいまの貨幣価値で言えば五十円が何だ、河本先生非常に軽くおっしゃいますけれども、そういうことはやはり考えてやる必要があるのじゃないか、ことに財産権を擁護するという点では。それは技術的には非常にむずかしいと思うのです。それは先生方の学者の御意見だけで、それじゃ林さんのおっしゃるとおりにいたしますなんて言えるものじゃないと思いますが、考えてやる必要があるんじゃないか。理論的にはそう思いますので、それを私申し上げておるわけですから……。
  194. 河本一郎

    河本参考人 ちょっと私も先生のお話を聞いておりまして、いささか虚をつかれたような思いがいたしましたのですが、しかし、これはこういうことじゃございませんでしょうか。つまり、五、六十年前あるいはもっと古くでも、もしも五十円払い込んでおった株主がおりましたら、そのときは大変な金を払い込んでおったわけなんですね。しかし、その一株が、いまその人が株を持っておりましたら、果たして一株でございましょうか。それはもう大変な財産にふくれ上がっておるんじゃございませんか。もう何千株どころか何万株ぐらいにまでこれはふくれ上がってきておりまして、いま申しておりますのは、いま市場で五十円の株式一株買った人の話をしておるわけでございまして、ちょっと私も、なるほどそういうお考えがあるかと、いささか虚をつかれた感じがいたしましたのですが、よう考えてみたら、どうも話が全然食い違っておるんじゃないかという気もいたします。
  195. 高鳥修

    高鳥委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明後八日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会