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塩崎委員 非常に茫漠たるお答えで、わかったようなわからぬようなことですけれ
ども、私は、この
商法の二百四十一条の
改正はとうてい——空振りみたいなことで終わる。証券局の希望には沿わないで、依然として持ち合いは進んでいって、そして株は少なくなって、暴騰暴落がしやすいような体質の証券市場になっていく。したがって魅力がなくなってくる。鶏と卵みたいなことじゃないかと思うものですから、やはりその根本を押さえないと、こういった
規定だけで——
規定だけとは言いませんけれ
ども、
規定は恐らく皆さん方がそのうちに何ら効果がなかったということで、今度の全文
改正の際にはまた直して持って来られるということを私は期待したいと思うのです。
そこで、だんだん時間がなくなりましたが、次は大事な問題は、皆さん方の今度の
改正の大きなねらいは大
企業の粉飾決算
防止、そこで会計監査を充実するんだということで、いろいろ手当てをされておる。そこで、その中に一つ引当金という
規定がございます。三十七年に私も
法務省で幹事をやらしていただきまして、当時の上田明信参
事官、味村第四課長に大変御薫陶を受けて引当金、繰り延べ資産、この
議論をやらしていただきました。まさしく損益法の計算原理をとるという
商法にしては大英断であったわけでございます。しかし、繰り延べ資産の方は、むしろ限定的な
意味を持っておったために乱用はなかったが、問題は引当金、この二百八十七ノ二の
規定の仕方は大変おおらかだった。そしてそのときの
規定では、御案内のように、姿、
目的さえ特定できれば自由に引き当てられる。損金性があろうがなかろうが、利益
処分としての——利益
処分と申しますか、損金性がなくても引当金として考えられる。価格変動準備金でもそのような性格で考えられるんではないかという、きわめておおらかである。
今度はえらくまた厳密な会計理論に変えられたと見えて、引当金で、今度は、当該「営業年度ノ費用又ハ
損失ト為スコトヲ相当トスル額ニ限リ」計上することができる、こうなっておりますから、これに
違反したら直ちに粉飾決算、これが損金性のない偶発
損失準備金みたいなものならばこれは粉飾決算、こう言われることになるわけですね。
さて、主として皆さん方の御
説明はもういつものとおり。
商法三十二条の公正な会計慣行によって引当金が決まるんだ、こう言われる。さて、公正な会計慣行が何かというのは、きわめて日本では発達しなかった、これからもなかなか発達しそうにないものだと思うのです。なぜかと言うと、どうもこれは、
商法の公正な会計慣行だというような自信を持って、税務署に否認されたら裁判をしてまで争うという習慣がないからなんだと思うのです。
皆さん、今度どうですか、退職給与引当金、これが税法で、財政収入上の見地からという理由が先行しておると思うのですよ、これまで半分であったものを四割にした。何かいろいろ理屈はつけたけれ
ども、私は、
企業によっていろいろ支給の仕方があり、ケース・バイ・ケースだと思う。それがまさしく公正な会計慣行だと思うのですが、そんなことを言っておられない。ぱっと四割にすれば、
企業はまずまずそのとおり上げていく。いや、価格変動準備金は税法が認めれば、これは損金性があるかどうか私はわからぬと思う。それでも上げてくるんですね。しかし、これは
商法上利益の留保じゃないかというふうにも思われるわけですけれ
ども、果たして皆さん、公正な会計慣行を税法に振り回されないでやっていく自信がありますか。
法務省は裁判所を
中心として物事を考える。
会社側も文句があれば裁判所まで行けるのじゃないかと言うのですが、日本で税務署に弓を引いて裁判所まで訴える人はいままでおらぬ。それは民主商工会ぐらいしかない。大
会社になればなるほど、国税庁の通達の方を簡便なものとして考えて、通達を出してくださればそのとおりやります、こういうふうに来ておるのですね。ですから私は、公正な会計慣行をつくるためにはどうしたらいいか考えなければならぬ。こんなようなことをやらなければ、本当に粉飾決算の征伐はできぬと思う。
本当の粉飾の種は引当金であったり、それから繰り延べ資産なんです。普通の損益は問題ないんだが、あとのこの評価勘定で大変むずかしい引当金が、当期の支出ではないんだけれ
ども、発生原因が当期にあって将来支出せざるを得ないというところに大変むずかしい論理があることはもう御案内のとおりなんですね、私はこれで苦労をしてきたんだから。三十年もこれで飯を食ってきていまだにわからないので、
民事局長、私はこの
議論なら何時間でもやる。こんなようなことでまた大混乱を生じたら私は大変むだだと思う。したがって、このような会計慣行を確立する努力をやるべきである。資本金の十億円を五億円に下げるようなことよりも、まずこういったことをかっちりやらなければならぬ。そんなことをやらぬで、ただいたずらにあれもこれも突っつき回して、子供がおもちゃ箱をひっくり返すようなことをして、肝心なことができておらぬのじゃないですか。この引当金がしばらく大変な混乱を起こす。皆さん方は
会社から照会が出てきてもなかなか答えができない。私が今度の
商法で引当金としてどんなものが引き当てられるかと
質問したらなかなか答えられぬと思うのですが、それはどうですか、
民事局長。