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1981-04-24 第94回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月二十四日(金曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 鍛冶  清君    理事 岡田 正勝君       井出一太郎君    上村千一郎君       大西 正男君    太田 誠一君       亀井 静香君    高村 正彦君       白川 勝彦君    中川 秀直君       森   清君    大島  弘君       小林  進君    下平 正一君       前川  旦君    武藤 山治君       塚本 三郎君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         警察庁刑事局長 中平 和水君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   漆間 英治君         法務省民事局参         事官      元木  伸君         法務省民事局参         事官      稲葉 威雄君         国税庁直税部所         得税課長    冨尾 一郎君         労働省労政局労         働法規課長   中村  正君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   下平 正一君     大島  弘君 同日  辞任         補欠選任   大島  弘君     下平 正一君     ――――――――――――― 四月二十四日  商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案内閣提出第六九  号)  出入国管理令の一部を改正する法律案内閣提  出第七〇号) は本委員会付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第五  九号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 これより質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  5. 小林進

    小林(進)委員 それでは第一問として、これは委員長にお伺いすればいいのか、法務大臣にお伺いすればいいのか、どなたでもいいや、お答え願いたいのですけれども、この商法改正というものが、商法商行為に関する法案法務委員会にかかる理由、これがわからない。本来、この会社法だとか商法だとか、商法に基づく商行為などというものは、これは国会で言えば商工委員会ではないか、また、この改正せられる法律そのものを事実動かし、あるいは監督し、その行為を見ているものは通産省ではないかと私は思うのです。これは私は担当大臣通産大臣がしかるべきではないかと思うのだな。その商行為に関する法案を何で一体法務委員会へ持ってこなければならぬのか、これがどうも私はわからないのであります。これは国会ですから、交通整理をやっているのは議院運営委員会だろうから、議運へ行って聞けばいいのだろうけれども、ここへ議運参考人で呼ぶわけにいかない。そこで、こういう法案をなぜ商工委員会に持っていかないで法務委員会に持ってきたのか。これは委員長、あなたの答弁ですか、あるいは大臣、二人のうちのどなたかひとつ答弁してもらいたい。
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。  議案付託に関しましては、やはりこれは政府側答弁すべきことではなくて、国会が決めることですから、私の方から申し上げさせていただきますが、ただいま小林委員が申されましたように、議案付託については議院運営委員会交通整理をして議長が付託をされるわけでありますから、したがって、もしその点に疑義があるならば議院運営委員会の方にお申し出をいただくべきであって、当委員会としては、今日までの長い経緯の中で、商法については当委員会審議をすることといたしてまいりました関係からも何ら疑義なく付託を受けておる、こういうことでございます。(「了解」と呼ぶ者あり)
  7. 小林進

    小林(進)委員 いや、そんなはたで了解というわけにいかぬな。それは長い歴史があろうとも、長きをもってとうとしとせずです。何も長いからといって間違いないやという理屈は成り立たないのであって、誤れば直ちにそれを改めなければならぬし、議院運営委員会だって何もわれわれの上に上級機関として存在するわけじゃないのであって、やはり一つ理屈、筋というものが通っていかなければならない、その筋を私は聞いているのです。慣行を聞いているのじゃないのだ。その筋を教えていただきたい。何で商行為あるいは私企業に関する会社法法案通産省行政に行かないでこっちへ持ってきたかということを、筋を通して委員長、お答え願いたい。
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 小林委員に申し上げますが、衆議院規則の第九十二条、常任委員会規定がございまして、その中で、法務委員会法務省所管に関する事項を審議するということに決められております。そして、商法法務省所管に関する法律でございますので、そうした関係からも当委員会に当然のこととして付託されたものと思います。
  9. 小林進

    小林(進)委員 やや回答が一歩前進いたしました。一体どうして商法行政庁として法務省主管にされているのか。私はこれは通産省主管にするのが普通常識のように思うが、これは行政庁の問題ですから、どうぞ大臣、ひとつお答え願いたい。
  10. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務省所管法律に、私法関係といたしましては、民法でありますとか商法でありますとかいった法律がございます。私人間の行為を規律する法律といたしましてこれらを法務省所管しているわけでございます。通産省なり農林省なりは、それぞれの商取引行政の立場でいろいろ指導、監督しているということだと思います。その間の基本的な法律法務省所管をしまして、国会の御審議をいただいているわけでございます。したがいまして、法務省所管の問題を法務委員会でお取り扱いいただいている関係上、商法もまた法務委員会審議をお願いすることになったのだろう、こう考えております。
  11. 小林進

    小林(進)委員 これは私だけじゃなくて、ここには法律専門家もいらっしゃるが、いまの法務大臣説明で納得がつきますかな。どうも私は、私法とおっしゃいましたかな、私法民法あるいは商法は、これは刑法等と違う性格のものであることはわかりますが、そうであるがゆえに、法務省の管轄に入らなければならぬというのはどうもわからぬ。これはひとつ私もまた勉強してみまして、これはネックにしておきましょう。これはネックにしておきまして、次にまた御質問を繰り返すことにいたします。  次にお伺いいたしたいことは、今度の商法改正は、八百有余条の大法典の中から百有余条を動かしていらっしゃるわけでございます。あの中には基本的な単なる手続に関するものもありますが、いずれにしても百有余の条文を動かされておるのでありますから、これは大改正であります。こういうような改正をおやりになるからには、なぜこれをやるかという法改正目的、基本的な目的がまず一つ明確でなければいけない。それから次には、改正の重点、要点といいますか、どこと何と何をねらいにして改正をやるのだ、こういうことが明確に示されなければならぬと思います。改正目的改正すべき要点、ひとつ御説明をいただきたいと思うわけであります。
  12. 中島一郎

    中島(一)政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正作業の発端は、昭和四十九年に始まるわけであります。昭和四十九年に前回の商法改正がございまして、同時に、監査特例法という法律が新設をされたわけでございます。その際に、衆参両院法務委員会におきまして附帯決議がつけられたわけでございますが、その附帯決議趣旨は、要するに、今回の改正はこれはこれでよろしい、しかし、商法全面的改正が必要でないか、会社法実情にかんがみ、あるいは経済情勢現状にかんがみて株式会社に関する商法全面改正が必要であると思うので、政府は速やかにその点を検討すべし、こういう趣旨のものでございました。  法務省といたしましては、諮問機関でございます法制審議会において、それらの点を含めまして商法全面的改正審議していただいておったわけでございます。四十九年から作業を始めまして、昭和五十三年の末までにその幾つかの項目につきまして一応の審議を終わりました。第一に株式制度であります。第二に株式会社機関についてであります。第三に株式会社計算公開制度についてであります。一応の審議が終わりまして、いずれもその結果を法務省民事局参事官室におきまして試案の形で取りまとめまして、公表いたしまして各界の御意見を伺っておったわけでございます。  ところが、昭和五十四年のことでありますが、だんだんと経済情勢変化あるいはその他株式会社運営実情にかんがみまして、商法改正が緊急を要するのではないかという声が起こってまいりました。さしあたり現在すでに法制審議会審議を終わっております先ほどの三項目の分だけでも切り離して緊急に改正をすべきだということになりまして、審議会では昭和五十五年にかけまして、先ほど一応の審議が終わっておったと申しました三項目につきましてもう一度見直しの審議を行いまして、そして本年の一月二十六日にその答申をいただいたわけでありまして、私どもとしてはその答申趣旨にのっとって法案を作成したという次第でございます。  なお、先ほど昭和五十三年というふうに申しましたのは、昭和五十四年というふうに訂正させていただきます。
  13. 小林進

    小林(進)委員 三項目、いま一回言ってください。
  14. 中島一郎

    中島(一)政府委員 第一は、株式制度についてであります。これは衆議院法務委員会における附帯決議株式制度検討ということが掲げられておりました。第二は、株式会社機関でございます。株主総会取締役取締役会監査役、そういった株式会社機関についての検討でございます。第三は、株式会社計算公開関係でございます。
  15. 小林進

    小林(進)委員 四十四年ですか、四十三年ですか、四十九年の附帯決議でも結構でございますが、その後続けられた作業が、株式会社といいますか、商法全般改正をやるというのは私は非常に結構だと思います。それが五十四年に至って、経済状況社会情勢変化で、その中の一部分、いまおっしゃった株式会社総会なり機関なり公開なり計算なりを、そこに限定してこれだけ急がなければならないので、急遽法制審議会に対する、まあ作業答申、あるいは国会に持ってくる方針を書いた。これがどうも私はわからないのです。一体、緊急に変更しなければならなかったその理由を具体的に教えていただけませんか。
  16. 中島一郎

    中島(一)政府委員 昭和五十四年の春から秋ごろにかけまして、直接のきっかけになりましたのは、そのころできました航空機疑惑に関する協議会というのがございまして、その提言の中に、会社経理を正すということがあったわけでございます。それに基づきまして、当時の古井法務大臣から法制審議会商法部会長でありました鈴木竹雄先生に対しまして、法制審議会としてもひとつ審議を急いでもらいたい、従来一応の審議を終わっておる部分だけを切り離して立法するということでも意味があるのじゃなかろうかというようなお話もあったということを聞いております。  で、商法部会検討されました結果、従来一応の審議を終わっております項目のみを切り離して答申をしても、これが改正法となりました場合には一応の目的を達し得るというような結論になりました。それからさらに、数項目検討課題が残っておりましたが、この検討課題を引き続いて審議するということになりますとさらに数年の年月を要する、それを待つよりも、この際、すでに審議を終わっておるものを切り離して答申すべきだという結論になったというふうに伺っておるわけでございます。
  17. 小林進

    小林(進)委員 専門家の説はいろいろありまするけれども、こういう大法典改正は、少し拙速過ぎるのじゃないかという御意見も私のところに来ている。いま一つ刑法改正などは十数年、もう二十年近くなお訥々としてその改正作業に入っているという、これを称して遅きに失すると批判する者はいないのであります。ところが、商法が、たまたま新しい事情ができたから急にカーブを切って別な方向に、一部分改正に走ってしまった、こういうわけであります。そこが第一点、私は皆さん方の考えに同調するわけにいかない。私は、全面的に改正するという最初のスタートは正しいと思います。これが一つ。  それから第二番目にお伺いするのは、いま、たまたま五十四年に新しい事態が起きた。それは航空機輸入だ。別な言葉で言えばロッキード事件でしょう。あるいはその後に起きた日商岩井等事件でございましょうが、一体日商岩井といい、丸紅といい、あるいは全日空といい、そういう会社経理がずさんにして、贈収賄といいましょうか、為替法違反といいますか、いろいろの事故、犯罪に類する事件が起きたというのだが、しかし、それが四十九年に新しく公認会計士による制度特例法が設けられて、会社内部監査というものがこれでもっとしっかりいくという法改正が行われた、その後になりますか前になりますか、これは厳格に言えば、事件は四十七年から四十八年、四十九年ですか、あるいは法改正の前かもしれないな、事故の発生したのは。私も質問しながらちょっと考えてみたら、そういうことにもなった。なったが、いずれにしても、それならば、このたびの新しい会社法改正、あなたのおっしゃる三原則に基づく改正をやって、こういう会社事故をこれで防備することができますか。拙速ではありますけれども、それが法改正目的であるとすれば、一体、大企業のそういうロッキードやグラマンに類するような事故が、このたびの法改正によって改めることができるという自信がありますか、どうですか。  民事局長、あなたも大臣になったつもりで盛んにやっているけれども大臣がそばにいるのだから、そういう基本的な答弁はなるべく大臣にさせなさい。大臣はだてに座っているわけではない。
  18. 中島一郎

    中島(一)政府委員 まず、私から答えさせていただきます。  先ほど、私言葉が足りませんでしたけれども、今回切り離して御答申をいただいた中には、先ほども申しましたように、株式制度というようなものもあるわけでございます。株式制度につきましては、すでに現状の一株五百円という制度、実際はむしろ五十円が原則であろうかと思いますけれども、こういうものが現在の経済情勢から考えまして非常に不合理な形になってきておる、その改正を急ぐべきであるという声はすでにかなり以前からあったわけでありまして、そういうものの改正を切り離して急ぐべきである、それから、日本企業がだんだん国際的な活動をするようになりまして、新株引受権つき社債というような新しい社債制度というようなものも、これは緊急に創設をする必要があるということにもなってきたわけでございます。  そういった株式制度の問題を中心として、そしてさらにただいま申しましたような自主的な監査機能を強化する、監査役監査あるいは会計監査人による監査というものを強化するという点をも含めまして、緊急を要するものを取り上げて改正法をつくった、こういうことでございます。  ただいま、そういった法律の実効はどうかというような御質問がございましたのですけれども、私どもはそういうものを防止できるような、できるだけそれにふさわしい制度をつくるということについて努力をいたしておるわけでございまして、その制度が生かされて所期の目的を達するようにということが私ども期待でございます。
  19. 小林進

    小林(進)委員 あなた頭脳明晰で、りっぱですよ。あなたの答弁はりっぱですけれども、やはりあなたの答弁はお役人で、官僚で、行政官だ。行政官らしい答弁にこれは終わるのです。私も、ここは立法府だから、やはりいま少し行政のベースから離れて哲学的に、政治家としてまず大局的な基本的な話をお聞きしているのだ。そのために大臣をここに置いて、大臣答弁を求めているのです。またそこに行政官としての答弁大臣答弁というのはおのずから変わってこなければいけない。また変わらなければ、何も立法府を設けてこうやって仕事をしている必要はない。  私は、自分で言いたいことは、こういう大きな法改正をするからには、やはり基本的な姿勢というものが一つなければならない。それは何だ。言わなくてもわかっているけれども、やはり株式会社の健全な育成とともに、やはりわれわれは大衆投資家だ、大衆というものを目的に置いて、大衆利益をどう擁護するかという基本的な姿勢がなければ立法府の任務というものは果たせないのです。私があなた方に聞きたいのは、手続を聞いているのじゃないのだ。四十九年に附帯決議がついたからああだこうだということを聞いているのじゃなくて、少なくともこの法律改正を持ってくるならば、その改正基本的姿勢をどこに置くかということ、これはやはり大臣答弁が出てこなくちゃいかぬ。それが守られているかどうか。今度の改正によって大衆利益、小株主利益、一般の国民に対するそういう企業信頼感がこれによって回復されるかどうかという基本的姿勢がなければいかぬ。  その次に、私は一体要点は何かと言った。その要点は、あなたは触れておられたけれども、第一に、いまのこの社会の中で一番悪いのは総会屋ですよ。これがやはり企業株式というものをいかに悪くしているかわからない。ならば、法改正要点一つに、やはりそういう総会というものを公開、明朗、公正にして、そして総会屋などというあいまいなものを排除する、そういう要諦というものがびしっと出てこなくちゃいけない。出ているか出ていないか、これから質問していきますよ。  それから、監査制度もそのとおりだ。いままでのようなあいまいもことして、あってもなくてもいいような監査制度から、本当に大衆投資家、あるいは大衆利益を守るという、血の通った監査制度に持っていかなくちゃいけない。これが現在の欠陥を排除する法改正であるならば、そこがもっときちっと出てこなくちゃいけないと私は思う。そこが出ているか出ていないか、そういうことも私はお聞きしたいと思います。  いまの単位株の問題もそのとおりですよ。株式発行単位数の問題もこれはやはり基本的な姿勢だ。大衆利益を守るという観点に立って、それが進歩的なやり方か、あるいは後退しているのか、単なる事務的に手続を省いて、株式会社社長株式会社にかかる余分な費用を排除するために単位を大きくしたという単純な理由では、われわれは安易に賛成するわけにはいきませんよ。それを私は聞いているわけだ。  そういう基本的な改正に対する姿勢がまずきちっと打ち出されて、そこで総論が位置づけられたら、次は各論にどんどん入っていく、こういうことでなくちゃいけませんが、余りしゃべっちゃって時間がなくなりますから、行きます。  大臣、いかがでございましょう、大臣の御所見をひとつ承らせていただきたい。――それじゃ、いま言いますけれども株主代表社長あたり仕事をやりやすいようにこの改正をやるのか、あるいは総会屋をもっとうまく牛耳るために改正しようというのか、少数の株主大衆なんかどうでもいい、そういう観点でやっているのかどうか。そこまでは極端に考えていらっしゃらないだろうけれども、私はこの改正案を見ていると、一体どこに中心を置いてこの改正作業をおやりになっているのか、なかなか疑わしいところがあるものだからあえて問題を提起したわけです。どうぞひとつ大臣から明確な御答弁を承りたいと思うのであります。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 民事局長からお答え申し上げたわけでございますけれども、やはり商法経済情勢の実態に合わせていかなければならない。貨幣単位もすっかり変わってきているわけでございますし、また、株式市場における株式売買に当たりましても、五十円株、五百円株の額面であります場合には一株単位売買は行われない。五百円株でありますと百株単位、五十円株でありますと千株単位売買が行われている。ということになりますと、それに合わせて株式の将来の発行が行われるようにしていかなければ、不合理な状態がいつまでも続いていくということでございます。また、不合理な状態が続いておりますから、株主の中で、単位株制度をとりました場合には二七%の株主がそれにはまってしまい、しかし、株数でいくと〇・八%か何かであるという御説明も申し上げてまいっているわけでございます。また、株主一人当たりについてかかる経費が二千円から三千円、こう言われているわけでございます。そうなりますと、やはり早く合理化しなければならない、これは急がれるべきことじゃないか。経済界合理化、これは日本経済社会のために非常に重要な課題だと思っておるわけでございます。  また、最近の事例で申し上げてまいりますと、誠備事件で、代表取締役が大きな権限を持っている、わがままをやっていく、取締役あるいは取締役会はあってなきがごとしだ、これはやはり取締役会の専権というようなものも法定することを通じて、代表取締役だからといって勝手に何もかも自由にできるわけのものではないというようなことを明確にしますことが、株主保護あるいは債権者保護に当たっていくことになるのではないだろうかな、こう思います。同時に、そういう意味合いにおきまして、できる限り会社自体が自主的に監視していける機能を充実していくということは非常に大事なことだと考えるわけでございまして、そのためにももろもろ規定を置いているわけでございます。  また、最近の、ちょっとお触れになりましたけれども総会屋の問題もございました。また、総会屋と右翼の関係もいろいろ論議されておるわけでございまして、やはり不当な資金源というものはなくすことが私は早急を要するのではないかな、こう思うわけでございます。今回は、株主権の行使に関しまして利益を与えた者も利益を受けた者も刑事罰に問われる、こういう規定を置いたわけでございますから、今後はこういう問題につきましても格段に自粛されていくんじゃないだろうかな、刑事罰にも触れるようなことをだれもやりたくないわけでございますから、私は、当然自粛されていくのではないかな、こう思うわけでございます。  そういういろんな意味合いにおきまして、私たちはこの商法の一部改正は早急にぜひ成立させていただきたい、こういう期待を持っておるものでございます。
  21. 小林進

    小林(進)委員 私は、この法案改正を見まして、やはりいまの会社もろもろの、悪という言葉で表現されるならば、悪くしているものは大会社だと思っている。その大会社の中でも、いみじくも大臣がおっしゃったように代表取締役だと思っている。そういう人たちに対する規制は今度の法改正では実に緩慢だ。実にないのです。けれども、これは抽象論ですから、もう抽象論はやめて、ひとつ具体的な質問に入っていきましょう。  第一番に、ひとつ総会からいきましょう。総会及び総会屋について御質問しますけれども、警察庁もお見えになっているはずだが、それじゃ、総会屋の実態について質問したい。  一体総会屋というのはいつごろから発生したのか、これが一つ。  現在総会屋と称するものの人数は一体どれくらいいるのか、これが二番目。  第三番目、総会屋に流れる金額、これは累計したら無限でありましょうから、大体最近の年一年間で一体総額どれくらい金が流れているか。  それからまた、総会屋などという俗称を持っている職業人にあらざる職業人が一体日本以外にどこの国に存在しているのか。これは類似するものが他の国にあるならば、それもひとつ教えていただきたい。これが四番目。  時間がありませんから急ぎますよ。  第五番目には、これを根絶とは言わぬけれども、規制するために取り締まり当局は何らかの手をお打ちになった。これは新聞紙上その他においても私はよく承知をしておるのでありますけれども、それを具体的にどんな手をいままでお打ちになったか、ここで公開をしていただいて、それに対する成果があったかどうか、一体どれくらいの実績が上がったか。  六番目、いま大臣もおっしゃって、刑事罰も加えたから、何か総会屋の跳梁、暗躍が規制できるようなお話もありましたけれども、私はそう甘くは考えていない。このたびの法改正によって取り締まり当局は成果を上げ得るという確信をお持ちになっておるかどうか。  以上、六点についてひとつお答えをいただきたい。
  22. 中平和水

    ○中平政府委員 お答えいたします。  第一点の総会屋の歴史でございますが、私どもでは総会屋がいつからこういう形態になったかということについては詳細には承知いたしておりませんが、恐らく株式会社制度の歴史とともに総会屋というものは発展をしてまいった、そういうふうに一応理解をいたしておるわけでございます。  それから、総会屋の現在の数でございますが、私ども警察で把握しておりますいわゆる総会屋の数は、五十五年末現在で約五千八百名程度というふうに考えております。このうちでいわゆる暴力団の構成員というのが、約千百人がこの中の純然たる暴力団である、こういうふうに考えておりますので、その余の者につきましては、暴力団とあるいは結託しあるいは暴力団の支配下、影響下にある者が相当数を占めている、こういう実情であろうと思っております。  それから第三点の、暴力団に流れている金の状況でございますが、これは実は暴力団というのはああいう団体でございますから、金が幾ら流れているかということにつきましては、私どもはきちっと把握をしていないわけでございます。ただ、従来の取り締まりの実態から見た推計、私ども昭和五十三年に警察庁の科学警察研究所におきまして、従来の取り締まりの経緯あるいは暴力団の資金別の態様から見た暴力団の資金の推計等をやっているわけでございますが、そのときのおおよその推計によりますと、大体一人当たり暴力団の年間の所得の平均を一千万円程度であろう、こういうように見ているわけでございます。したがいまして、五千八百人ございますから、単純に申し上げますと五百八十億円程度ではなかろうか。昭和五十三年現在で調べたときの推計では、四百二十一億ぐらいの数字だったように記憶しておりますが、同じ推計方法でいきますと、大体その辺の数字、五百八十億ぐらいになるだろう、こういうふうに考えております。  それから、これらについて一体どういうふうな取り締まりを警察としてはやってまいったか、こういうお尋ねがあったわけでございますが、暴力団の取り締まりの中でも、特に最近の暴力団の態様といたしまして、暴力団の犯罪の態様がだんだん知能化してまいっておりまして、その一つの流れとして企業関係の犯罪、企業に対する恐喝あるいはこの種の総会荒らし等の行為あるいはその他企業に寄生する各種の犯罪がふえてまいっていることは事実でございます。したがいまして、暴力団取り締まりの一つの重点を知能暴力、なかんずくその中核である総会屋総会屋と関連する暴力団あるいは総会屋がすでに暴力団化しているもの、こういうものについて重点的な取り締まりを実施をいたしておりまして、昨年一カ年のこれらの取り締まりを通じての検挙件数で申し上げますと、総会屋で三百六十八名を五十五年中に一応検挙いたしておるわけでございます。  総会屋の問題につきましては、先ほど先生から御指摘ございましたように、これは現在の国民の持つ社会的な公正感からいいましても許しがたいことでございますし、また、健全な社会経済秩序を維持するという観点からも、これまた許しがたい存在でございます。したがって、先ほど申し上げたような方針で取り締まりをやっておるわけでございますが、企業側にそれなりの対応をしてもらう必要があるわけでございます。したがいまして、私どもの方といたしましては、取り締まりと並行いたしまして、企業自身がそうした総会屋と手を切る、もっとクリーンにやっていただく、そういうことでの指導と申しますか御注意と申しますか、そういうことを逐年あわせて続けてまいっているわけでございまして、現在、そういう趣旨に賛同いたしましてほとんどの府県で、要するに企業が自主防衛の組織というものをつくってもらいまして、その加盟の各社申し合わせによって賛助金をカットするとか、あるいは新規のそうした賛助金を出すことを認めないとか、あるいはこうした総会屋がやります各種のゴルフコンペだとかいろいろな行事がございますが、そうしたところには積極的に参加しない。そういうような方針を打ち出してもらうことにより、それをさらに実践してもらうことを通じて、そうした手を切ってもらう、そういう方向を進めてまいっておる、こういう状況でございます。  それから、今回の法改正に伴う効果いかん、あるいは今後の警察の取り締まり姿勢いかん、こういう御質問が最後にあったように思いますが、今回の商法の四百九十七条の新設によりまして、取締役あるいは使用人等は、株主の権利の行使に関し会社計算において財産上の利益を人に供与したときは、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金に処せられる。情を知ってこの利益の供与を受けた者または第三者に供与した者も同罪である、こういう規定が設けられたわけでございます。これは現在の総会屋の主たる活動の態様である株主権の行使に関連して金品の授受が行われてまいっているわけでございますから、この規定は、先ほど大臣のお答えにもございましたように、企業自体に対する一種の抑止の効果もございましょうし、これをやれば当然犯罪になるわけでございますから、総会屋等につきましてもかなり抑止的な効果もございますし、それからさらに、これを根拠にいたしまして、私どもが積極的に検挙取り締まりしてまいる法的な根拠にもなるわけでございますから、この法律が通りました暁にはこれを積極的に運用してまいりまして、さらに総会屋対策の前進を期してまいりたい、このように考えております。
  23. 小林進

    小林(進)委員 いまの御答弁の中に、企業に対して彼らの主催するものに出席しないとか、賛助金ですか、それを中央においても地方においても企業側に指導していらっしゃるというのですが、企業はそれを受け入れて何分かの成果を上げておりますか、どうですか。
  24. 中平和水

    ○中平政府委員 これは数字で申し上げる方が端的でわかりやすいと思いますので申し上げますが、五十五年末現在におきます総会屋に対する企業の賛助金の打ち切りは四百六十三名、賛助金のカットをいたしましたのが九百四十二人あった、こういうことをこうした加盟の企業から私どもの方に連絡を受けております。
  25. 小林進

    小林(進)委員 世の中には法律刑法を論ずる者は性善説の立場に立たなければならないというけれども会社に関する限り私は性諸悪説である。総会屋なんかが跳梁して世の中を悪くしている半面は、企業、特に取締役以下重役にあると私は見ているのですが、いまのお話で大分数字も上がっているようですけれども、今度の法改正で、株主権行使に関する利益供与の禁止、これは先ほど法務大臣がおっしゃった条項ですが、これは二百九十四条ノ二ですね。先ほどの条文とちょっと違いますが、その株主権行使に関する利益供与の禁止によって、いまおっしゃる株主総会における総会屋の跳梁をどの程度まで一体防止することができるとお考えになっておりますか。これは法務省にひとつお伺いいたします。
  26. 中島一郎

    中島(一)政府委員 今回の改正法におきましては、総会屋の排除ということにつきましていろいろと規定を設けておるわけでございます。まず第一に、いわゆる総会屋の跳梁を排除するという方策といたしまして、株主総会運営の秩序を維持するために議長に対して、議長の命令に従わない者は総会の場から退場を命ずることができるという規定を置いたわけでございます。  それから第二番目に、いま問題になっております株主権の行使に関する利益の供与の禁止というような規定も置いておるわけでございます。この株主権の行使に関する利益の供与の禁止でございますが、従来は、この利益の供与を求める総会屋の方が悪い、こういう考え方が中心であったかと思いますけれども、今回は、そういった総会屋に金品を供与する会社側と申しましょうか、会社計算において金品を供与する会社側が悪いのだ、こういう考え方をも加えまして立法をしたわけでございます。  条文は、先ほどから問題になっております二百九十四条ノ二ということでございまして、「会社ハ何人ニ対シテモ株主ノ権利ノ行使ニ関シ財産上ノ利益ヲ供与スルコトヲ得ズ」ということになっておりますが、こういうような利益供与がされました場合には会社はその返還を請求することができる、会社が行使をしないときには株主会社のために返還請求の訴訟を提起することができるということにいたしておるわけでございます。  また、取締役がこの利益供与をいたしました場合には、取締役はその供与した利益の額、それに相当する額を会社に弁済をしなければならないというような規定も置いております。そういった利益の返還または弁済の請求に関しましては、利益の供与が無償でされたかあるいは供与された利益に比べまして著しく少ない対価しか支払われていないという場合には、その利益の供与は株主権の行使に関してされたものと推定するという推定規定を置いておるわけでございます。でありますから、こういった訴訟が立証の困難ということを避けることができるということになるわけであります。  さらに、先ほどから問題になっておりますように、こういった利益供与の禁止に違反する行為については刑事上の罰則もあるということでございますので、従来に比較いたしまして、この点でこういった利益の供与の禁止ということはかなりの効果を上げ得るのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  27. 小林進

    小林(進)委員 いま二つの問題をあなたはおっしゃいましたが、一つは、議長が総会の議場の秩序を維持するというが、この議場を維持するという議長は、この法律によって何か総会で選出するという規定が何条かにありましたな。そういうふうにして出た議長ならばまだいいけれども社長あるいはその企業の会長が議長を務めるということは、もう定款に定められている一般通念だ。ところが、私が先ほどから言っているように、大体総会屋などを跳梁ばっこせしめている半面は、この社長とか会長にあるのです。こんな者が――こんな者と言っては言葉は悪いけれども、それが総会になったときに議長席に着くのだ。総会屋を雇っていって、このたびの総会をひとつ十分くらいで終わらしてくれ、終わらしてくれれば君の功績だ、賞金はやるよ、これが通例ですよ。そしてどんなにトラブルがある株式会社でも、総会を十分で終わらした、十五分で終わらした、二十分で終わらした、これは実に大成功をしたと。そういう関係をいたしまする総務部長だとかあるいは庶務課長などというものは、総会をつつがなく過ごした、金は幾らでも使ってもよろしいからやらせるということでやって、それがうまくいった。ところが、たまたまその総会質問する者なんか出て、混乱になって一時間も二時間もかかると言えば、総務部長が首になるとか、総務課長が首になるとか、秘書課長が左遷されるとか、そういうことを議長たるべき会社社長、会長がやっているのだから、こんなものは単なる文章の羅列であって、実績が上がらぬと私は考えざるを得ないけれども一体この問題どうですか。  それから、第二番目のあなたのおっしゃったいわゆる「株主ノ権利ノ行使ニ関シ財産上」云々というこの問題でありまするけれども、第一には、いま本当にこういう総会屋株主としての利益を提供している者は社長なのですよ。会長なのですよ。代表取締役なのです。だから、私はこうやって質問するからにはそんな根拠のないことを言えないから、数社の私の友人その他に聞いてみたけれども、それは小林君そうだよ、常日ごろ総会屋と重役はマージャンをしたり、一緒にゴルフに行ったり、兄弟ただならぬもっと深き親密の情を通じているよ。むしろ、社長とか会長あたりの仕事の半分は何だといったら、総会屋とゴルフをやったりマージャンをしたり一杯飲んだり、あるいは小うたをうたったり長うたをうたったりするのが商売の一つだという極端な言い方をする者もあるくらいなのだ。そういう人たちに向かってこの法律を与えて、それで効果があるとお考えになりますか。これが一つ。  それから二番目は、あなたは民事あるいは刑事によって立証の困難を避けることができるということをおっしゃった。あなたの説明では私はちっとも理解を得ぬ。この法律を設けることによって、社長総会屋と結託して、ともに共通の利益に立つのです。社長だって突っつかれればみんな悪いことがあるのだ。あんた二号さん持っているだろう、三号さん持っているだろうとか、あんたの悪いことを書きますよとか、それが総会屋の奥の手だ。あなたは不当な会社利益を払っているじゃないですか、そういうことを内緒にしてもらいたいと、共通の基盤に立つのだ。悪者同士の類は類を呼ぶという共通の基盤に立つのだから、二人して、おまえ金をやったろうと言うとやらない、もらったろうと言うともらわないと言う。そういう結果になりたものをどうして立証しますか。どうして具体的に立証するか。  私は、時間がないから演説はなるべくやめますけれども、まず、その総会屋というものがそういう大企業からしぼり取るやり方を例示的にひとつ示してください。あるいは三文新聞を持ってきて金をよこせと言ってみたり、あるいはゴルフのコンパだかカンパだかやるから金を持ってこいとか切符を買えとか、そういう具体的な形を例示的にずっと並べていただいて、そしてそれらをちゃんとこの法律によって取り締まれると言うならば、その取り締まれる具体的方法をひとつ教えてください。さもなければ、私はこんな法律はあってなきにしかずと思っているのだから、どうぞひとつお教えをいただきたい。
  28. 中島一郎

    中島(一)政府委員 まず最初に、議長の権限でございますけれども総会屋の中には、もし自分の金品要求が入れられない場合には議場を混乱させるぞということで、混乱させないための対価として金品を受け取るという者がいるということであります。会社側としてはこれをむしろ正当な方法によって制止したいのだけれども、議長の権限が必ずしも法律上明らかでないので、やむを得ず金を払うというケースもあるということでございますので、それに対応、対処するために議長の権限というものを法律に設ける必要があるのではないかということを考えたわけでございます。  それから第二番に御質問ありましたのですが、会社総会屋に金品を供与しておるのだから、そういうものが返還を求めることは期待できないのじゃないかということを考えまして、会社が請求をしない場合には株主会社にかわって総会屋に対して返還請求を起こす、さらには取締役に対して供与した金品と相当する額の弁済を求める、そういう請求権と申しましょうか、訴訟を提起する権限を認めたわけでございます。  立証責任についてのお話ございましたのですが、それは株主権の行使に関して金品の供与、利益の供与が行われたかどうかということが必ずしも明らかでない場合がございますので、株主権の行使に関して行われた場合ということについての推定規定を置いたということでございます。  それから次に、総会屋のいろいろなやり方ということのお尋ねがあったわけでございますが、私どもそのすべてを承知しておるというわけではございませんけれども、聞くところによりますと、あるいは雑誌でありますとか印刷物、新聞の購読料というようなことで利益の供与を受ける、あるいは自分の出版いたしておりますそういう印刷物に広告を載せるということで、広告料という名目で金品を請求する。あるいは先ほどお話もございましたように、ゴルフのコンペをするということで会費や賛助金というような形で金品を請求する。そういういろいろな形で金品の授受が行われるということでありますが、その実態が株主権の行使に関しての金品の授受であって、購読料でありますとか会費、賛助金あるいは広告料というものは単なる名目にすぎないという場合が少なくないわけであります。そういった場合には、株主権の行使に関して行われたということの立証が困難でございますので、会社側の提供した利益とその反対給付として会社側が受けた利益というものを比較して、それが会社の受けたる利益が供与したる利益に比し著しく少なきときは、それは株主権の行使に関して授受されたものであるということを推定するというのが新設の規定趣旨でございます。
  29. 小林進

    小林(進)委員 こういう議論をしていると時間がなくなりますからやむを得ず言うのですが、第一番目に、総会の議場の秩序を保つということを本当にお考えになっているならば、この法律に、社長とか会長が総会の議長になるということを禁じて、議長は総会によって選ぶというふうにし、社長や会長が議長にならないということを明確に示すべきである。これをおやりになるのかどうか。同じ穴のムジナがのこのこ来て議長席に座ったって、そんなことはうまくいかない。これは一つ提案です。  それから第二番目に、あなたは簡単なようなことを言っているが、いまのあなたの説明では、そういう会社利益を供与したということを立証することはできないと思う。あなたの説明を聞くとなおさら困難だ。裏を返せばこういうことになる。会社が供与した利益と本人が反対給付したものがバランスがとれていれば犯罪は成立しないことになりますね。そうでしょう。三文新聞を持ってきて新聞を買ってくれと言ったところで、それに代価を払ったところで、それが正当な反対給付であるか否かということは一体だれが判断するのですか。君が持ってきた広告などというものは第三者が判断したところで価値がない。しかし、会社の方で、これはなかなか値打ちがある、これは私が払いましょう、百万円の広告料に該当するのです、正当な価格ですと言われたら一体どうなるのです。著しく格差があるかないかという問題も含めて、この立証は大変困難だと私は思う。  そのためにあなたは、取り調べだけでなく、株主にもその権限を与えている。この株主がまた問題なのです。後でまた機会があればお聞きしますけれども、こういう会社の不正等に本当に憤りを感ずるような大衆株主は、いま五万円という単位をかぶせられてはねられているじゃないですか。大株主というのはみんな一つ穴のムジナだから、そんなことをみずから提訴したり告訴したり摘発したりするようなことをやるわけはない。これもただ言ってみるだけの話だと私は考えざるを得ないのでありますけれども、ともかくこの三つの点について答弁してください。
  30. 中島一郎

    中島(一)政府委員 まず、議長の点でございますけれども、現行法におきましては、定款で定めないときには株主総会が選出をするということになっておりますが、定款で代表取締役あるいは取締役の一任を指定しておる場合が大部分であろうかと思うわけでありますけれども会社側といたしましていろいろ事情も詳しく知っておる代表取締役株主総会運営に議長として責任を持つということも、それなりに意味のあることであろうというように考えるわけでございます。  それからその次に、金品の授受についての立証が困難ではないかということでございますが、この点は、現在はまだ省令で決めることになっておりますので確定はいたしておりませんけれども、何らかの形で株主にディスクローズすることを考えるべきであろうというふうに考えておるわけでございます。附属明細書に書かせるあるいは監査報告書に書かせるというようなことを考えなければならぬと思うわけでありますが、監査役がいろいろと業務の監査あるいは会計の監査をいたしまして、こういう支出がある、総会屋に対するこういう利益の供与があるということをチェックすることができるわけでありますから、そういった監査役機能期待をしたいというふうに考えるわけでございます。  それから第三番目といたしまして、その利益の供与が株主権の行使に関するものであるかどうかというのはだれが判断するのかという点でございますが、これは最終的には訴訟で裁判所が判断をするということになると思うわけでございます。その場合に、先ほど申しましたように、会社側の供与した利益会社側が受け取った利益が非常にバランスを欠くという場合には、これは反証がない限り、株主権の行使に関して授受されたものと推定が働くわけでありますが、仮に一見バランスがとれておるように見えましても、当事者双方の金品の授受の趣旨が、先ほど申しましたような雑誌の購入代金であるとか広告料であるとかいうことでなくて、株主権の行使に影響を与えるための金品の授受であるということが認定されましたならば、それはこの禁止に該当するということでございます。
  31. 小林進

    小林(進)委員 局長、あなたが幾ら繰り返されても、私はあなたの説明に対してちっとももっともだと思うことがない。私も何も株式会社運営したわけではないけれども、これは世間の常識です。こういうような総会屋を跳梁せしめているのが会社代表取締役であり、会長であり、その実力受益者であることはわかっている。そして彼らが共通の利益の上に立って秘密の中でこれをやっておるということはわかっているのだから、それを外部から摘発をして大衆株主利益を守るということには、この条文ではいきませんよ。警察庁の刑事局長にもお聞きしたいけれども、同じ答弁が返ってくるだろうから聞きませんが、腹の中で同じだと思っているようなことではだめです。それから総会の議長もそのとおりだ。あなたは、むしろ会社に精通しているから、定款に定めれば社長、会長が議長を務めてもいいと言うけれども、これも実に妥協的な甘い見方です。  そこで、この法律改正の重点が総会屋退治の一点に置かれるならば、ここで一つ私は提案するが、法務大臣、アメリカには証券取引法というのがありますね。例のわが日本ロッキード事件も、そもそもアメリカの証券取引法ですかに基づくSECの活躍によりまして、アメリカにおいて暴露せられた。たしか松野頼三さんの日商岩井も、震源地は日本じゃなくて、アメリカのSECの活躍に基づいてこれが暴露せられてきたはずであります。これはもう私が申し上げるまでもない。私はロッキード関係いたしまして、アメリカのSECの本部まで行ってそのシステム、組織、活躍を全部見てまいりましたが、これはやはり大衆株主を擁護する、会社の重役、執行部その他の不当な金銭の支出やらそういう不正の癒着を大衆の立場に立って明らかにし、公開してその不正を正す。だから、これは裁判所でもなければ刑罰を加えるというところでもないが、アメリカ独特の株式会社の正当な運営のためにアメリカの民主主義がつくり上げた英知に富んだ組織であります。  こういうのを一体日本につくるということをこの際考えられないものかどうか、どうでございましょう。法務大臣、こういうのをつくってこそ、いま私がこうやって質問しているこの質問がぴたっと生きるのです。私も信頼して皆さん方にこの法の成立を任せることができるのであります。どうでしょう、この際、法改正に並行して、いわゆるアメリカの証券取引法のようなもの、日本的証券取引法というものを制定するお考えがあるかどうか、承っておきたいのであります。
  32. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御審議願っておりますのは商法の一部改正でございます。私人間の行為、それを律する基本的な法律であるわけでございますけれども、アメリカのSECのような規定を置くことがいいかどうかということになりますと、大蔵省の所管になります証券取引法をどうさらに拡充していくかという課題になるんじゃないかなと思います。  いずれにいたしましても、アメリカと日本とかなり国情が違っているわけでございまして、アメリカは連邦国家でございますので、州それぞれ証券に関しましてもいろんな規定を持っておるわけでございます。私の聞いているところでは、それぞれの州が自分のところに工場を誘致するとかあるいは企業を誘致するとか、自分のところで企業が活発な活動をすることを好むものでございますから、それなりに有利な規定がある。そういうことから連邦で、州と州とにまたがるものにつきましては、株主保護でありますとか、債権者保護でありますとか、そういう見地から統一的な監督をしていかなければならないというような見地で、あのSECが生まれておるのだという話も伺っておるわけでございます。  商法に関しまする限りは、官権が商行為に直接に介入していくようなことじゃなしに、あくまでも監視を必要とするならば自主的に監視を強化するということを通じまして、株主保護債権者保護に徹していきたい。それぞれの会計が会計原則に基づいて適正に記録されていく、記載されていく、そういうものを担保するように仕組みを考えていく、それが商法のあるべき姿じゃないだろうかなと思っておるわけでございます。
  33. 小林進

    小林(進)委員 大臣も余り積極的におなりにならないようでございますからやむを得ないといいますか、私は、この改正する法律は、ともかく総会の保持、総会屋退治、厳格な監査制度、それから株主の整理といいますか体制の改正、三点の改正だと思う。特に総会屋というものが流している蠹毒というものは実に社会的に大きいのでございまするから、ここを一つでもきちっとせられれば、私はこの法律改正の意味があると思っている。けれども、いままでの二百九十四条ノ二、このままではせっかくの法改正も魂を入れたことにならぬというから、私はこの問題は賛成するわけにはいきません。この問題は、一番重要なところがまだ一本骨が抜けていると見なければならないのであります。その点だけ申し上げて次に移ります。  なお、ここで一点お聞きしておきたいことは、総会のときには株主は提案権といいますか、はあります。提案権はあるが、委任状制度、いままでのように何々総会やるから定員をそろえるために委任状に判こを押してくれといって委任状を出す、これは執行部の方で株主総会の成立のために委任状をつくるわけであって、出てきた委任状をそのまま採用するも採用せざるも執行部、取締役の自由勝手という制度になっているのでありまするが、これが今度の改正には少しも手はつけられていないのであります。やはり現状どおりでいいのかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思うのであります。
  34. 中島一郎

    中島(一)政府委員 従来の委任状による議決権の行使はそのままでございますけれども、それとは別に、今回の改正案におきましては、大規模会社でしかも株主の数が千人以上という会社につきましては、書面による投票制度を新設いたしております。これはどういう制度かと申しますと、株主総会の前に会社側からあらかじめ株主に対しまして参考書類を送付いたします。会議目的あるいは付議されるべき事項、それに対する賛否の意見を述べるに参考となるべき事項、そういうものを明らかにした参考書類というものを送らせまして、それと同時に投票用紙を送る。株主は、参考書類を見まして、その投票用紙に自分の意見を書いて会社に送る。会社では、それをそのまま株主の議決権の行使として取り扱わなければならないという制度でございます。  先ほど御質問にもありましたように、従来の委任状による議決権の行使でありますと、会社の方から委任状用紙を送ります。これは株主に対する委任の申し込みの勧誘でありまして、それに対して株主の方から委任状を送る、これが委任の申し込みであります。でありますから、会社側はこれを承諾するもしないも自由であります。それでは非常に不徹底でありますので、今回、書面投票制度というのをつくりまして、少数株主がわざわざ会社株主総会の場に行って議決権を行使しなくても、容易に自分の権利を行使することができるという制度を新設しようとするものでございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 書面による投票をお認めになったのは一つの進歩だと思います。この点は無条件に賛成いたしますが、いままでのように委任状で勧誘をしておいて、そしてそれをほごにして捨てるも可なりというやり方は、どうも少し無責任なことではないかという感じがしますが、これによってどういう弊害が起きるか、これもまだ寡聞にしてわかりませんけれども、これも一つ問題を留保しておきましょう。  総会の問題はまだ幾つもございますけれども、時間がありませんから、次に行きます。  いま一つ改正の重点である監査制度の強化の問題について質問をいたしたいと思います。  結論から言いますると、基本的には監査制度を完全に独立させるということでなければ、今後会社の会計経理に対する客観的な公平なあるいは鋭い調査、監視はできないと思っておるわけであります。それがこのたびの監査制度を見ておりますと、これもヘビの生殺しというか、非常に中途半端ではないかという感じを持たざるを得ない。監査は二段ロケット方式だ。社内の監査役の一人を常勤にすることによって強化をする。あとは大会社――大会社というのは五億以上でごさいましょうが、会計監査人には公認会計士をつけなければならない、こういう形で会社監査制度を強化したとおっしゃるのだが、まず第一番目の社内における監査役、これは先般、わが党の稲葉議員の質問にもあったように、監査役のカンは閑人のカンじゃないか。最も世の中で暇なのは会社監査役だ。その監査役を選ぶには、もう功成り名遂げたけれども、とてもエリートコースに乗って重役、取締役にさせるようなわけにはいかない、そういう人を監査役にするとか、あるいは出世街道から外れてしまって、いたずらに馬齢を重ねたそういう非主流派の人間を持ってきて監査役にするとか、そういう監査役というものは名実ともに暇な職だ、これが日本監査役だというのです。  四十九年の改正以来これは改められたと皆さん方はおっしゃる。しかし、改められたと言うなら、改められただけの実績がどこかに上がっていなければならぬ。形は改められても、その形を裏づけるような実績がどこかになければ、むだな改正であると言わなければなりません。監査役という制度を改めた四十九年以降、その新制度によって一体どういうふうに実績が上がったか、お聞かせ願いたいと思います。
  36. 中島一郎

    中島(一)政府委員 監査役の実績の実態、必ずしも全部詳しく承知しておるわけでございませんけれども一つ御紹介させていただきたいと思います。  名前を具体的に出してどうかと思いますけれども、山崎製パンの損害賠償請求事件という非常に有名な事件がございます。昭和五十年七月一日から十二月三十一日までの第二十八期の監査報告書で、監査役が、代表取締役が競業取引をしておる、だから競業避止義務違反であり、善管注意義務の違反であり、忠実義務の違反であるという意見をつけたわけでございます。それに基づきまして、会社から代表取締役個人に対しまして損害賠償請求の訴訟が提起をされております。裁判所の事件でありますからいろいろな公刊物にもその内容は掲載されておりますけれども、請求金額が五十億七千万円余りという莫大な請求でございます。結局は判決に至らないで解決を見たというふうに承知いたしておりますけれども、こういうものがその一例であろうかというふうに考えるわけでございます。  確かに、以前におきましては、監査役に対する評価というものは必ずしも高くないものがあったと言えるかと思います。とかく取締役の下位にあるというような見方があったことも事実でございますけれども、四十九年の改正によりまして監査役の地位の強化、権限の強化というものが図られまして、それ以来は監査役に対する評価というものが著しく変わってきたと私どもは考えております。  それにつれまして、いわゆる大物の監査役というものが就任をされ、選任をされるというケースもふえてきたと承知いたしております。これも名前を出して大変失礼かと思いますけれども鈴木竹雄先生でありますとかあるいは大隅健一郎先生でありますとか、私ども非常に尊敬しております商法の大学者も、社外から大きな会社監査役に選任された、就任されたというふうな例も聞いております。あるいは会社社長から監査役になったというような例もございます。  そして社内ににらみをきかすというようなことになろうかと思うわけでありまして、それとともに監査役の方でも非常に職務の重要さを自覚いたしまして、やる気が出たと申しましょうか、非常に勉強をしておられるということを承知しておるわけでございます。監査役協会というような協会、団体もできまして、お互いに研さんを積んでおられるということでありまして、私どもは、今回の改正におきましてさらに監査役の地位を高め、権限を強化し、独立性の保障を考えるということをしたわけでありまして、この監査役に対する評価が高まる方向がさらに推進されるようにと望んでおるわけであります。
  37. 小林進

    小林(進)委員 山崎パンのお話は、私は新聞紙上その他で見るだけでありまするから詳しくは知っておりませんけれども、これがそもそも摘発をされ、裁判にかけられたのは、もちろんそれは当面監査役仕事かもしれませんけれども、やはり内紛なんです。きのうですかおとといですか、ここで質問いたしました例の梓ゴルフ場の井上弁護士の件も、もとをただしたらやはり内紛だ。二つの関係団体があって、その小さな方から最高裁判所に証明書付の密告書だか告発書を出した。それから問題が派生をして裁判官が身柄を拘束されるというような事件に発展したということになっているのだが、例は一つだ。山崎パンも、監査役がその平穏無事の中から営々努力をして問題の不正を摘発したのじゃない。内部から飛び上がったのだ、これは。その意味において、監査役会社の不正を告発した例は、山崎パンをおいてほかになし。監査役取締役の不正を摘発した経験もなし。私はそう断じてもいいのではないかと思っているのであります。内部からです。例外は別ですよ。私はないと思う。  それから、大隅健一郎先生だか何先生だか、大物が監査役をおやりになっているという例も、この監査役制度を進歩、発展、向上せしめる理由にはどうもならないと私は思っている。むしろ、大物をそこに置いて捨てぶちを食わせて、そして外形だけを飾っているおそれなきにしもあらず、こういう感じを持っておるわけでございます。  そこで、この問題に対していま二、三点御質問したい第一は、昔は監査役というものは取締役会にも出られなかった。それが四十九年の改正以後取締役会には出られるようになった。今度の法改正では、その監査役がときに取締役会の招集ができるようになった。形の上においては確かに監査役の独立といいますか、地位の向上といいますか、それが図られているようでございますが、実際の面においてこの監査役取締役会を招集するような場面が一体考えられましょうか。これは実際問題としてどういう場合でしょうか、具体的にお聞かせを願いたいと思います。
  38. 中島一郎

    中島(一)政府委員 監査役による監査、これはもちろん申し上げるまでもなく内部監査でありますから、事を荒立てるということが何もねらいではないわけでありまして、事前にいろいろとチェックをする、あるいは業務執行の立場にある人が監査役意見を聞いて業務執行に違法なきを期するというのが本来の監査役機能であろうかというふうに考えるわけであります。  ただ、そうは申しましても、場合によっては、監査役が注意をしたにもかかわらずそれが入れられないというようなこともあろうかと思います。そういった場合には監査役取締役会を招集して、その取締役会において自分の意見を述べて、そして会社としてどう対処すべきかということの決定を求めるということにならざるを得ないということで、そういう制度を設けておりますけれども監査役による監査本来のあり方ということから言えば、そういう事態がしばしば行われるということは決して望ましいことではなくて、ただいま御質問にありましたように、そういうことはほとんど考えられないというのがむしろ健全な形であろうかというふうに考えるわけでございます。
  39. 小林進

    小林(進)委員 招集しないことが平常健全な情勢であるということも考えられますが、正当な権限をいつでも行使し得るようなそういう状態にあって行使をしないということは、これはいいんでありまするけれども、そういう行使をする力がないんじゃないか、招集するだけの独立が与えられていないんじゃないか。ということは、今度の法改正で、監査役取締役、一期において取締役手当、役員の手当を幾らという一括して総会に出されたそういうやり方から監査役は独立して、取締役役員とは別個に独立した一つの手当といいますか俸給といいますかをもらうことになっている。取締役と独立した、これはこれで一つの進歩でしょう。けれども、しかし人事権は一体だれが持っているのですか。監査役を任命する者はだれですか。
  40. 中島一郎

    中島(一)政府委員 監査役は、株主総会において選任するということになっております。
  41. 小林進

    小林(進)委員 その株主総会に提案をして、取締役もみんな総会で決めるのですけれども、提案権といいますか、それはだれが持っているのですか。
  42. 中島一郎

    中島(一)政府委員 原案を提出するのは取締役会ということでありますが、監査役はそれについて意見を述べることができるということにいたしております。
  43. 小林進

    小林(進)委員 問題はそれなんですよ。私の言いたいのはそれなんです。取締役あるいは代表取締役、それが一つの提案権といいますか原案を持っておる。むしろ、それは取締役会だとか取締役とは別個に監査役というものが任命せられる、たとえて言えば、この国会の議長のようにいわゆる監査役というものは株主総会から選出をせられるとか、こういう形になってくればまたこれは人事権が独立しますから、そうするといわゆる監査役の権限というものは非常に重くなるけれども、従来どおり執行部が提案権を持っているということになれば、まず人事において独立はしていない。給料、手当において半分ばかり独立したけれども、完全な独立ではあり得ないからです。そこで私は、執行部に頭を抑えられる従来どおりの監査制度が残存をしていくんではないか、こう考えざるを得ない。形は変わったけれども、内容においてはちっとも進歩がないと考えざるを得ないが、この点いかがですか。まだそれでも力を発揮し得るとお考えになりますかどうか。
  44. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ある一面からだけ考えて理想的な形というものはいろいろあり得ようかと思いますけれども、やはり現実に根差した制度でなければならない、日本の国情にも合った制度を考えるということにいたしますと、現状が最も望ましい形ではなかろうかというふうに考えるわけでありまして、それでありましても、やはり監査役というものの地位を強化し、権限を強化するということによって、何と申しましても内部監査でありますからその限界はありますけれども、それなりの監査機能を果たしておるというふうに私どもは考えております。
  45. 小林進

    小林(進)委員 こういう法案をおつくりになるには、株主の立場あるいはわれわれのような立法府の立場だけではなくて、重役やいろいろな方面の意向を参酌しながら、妥協の案としてこういう原案を国会にお出しになったんでしょうから、この中には代表取締役株式会社の執行部の意向も十分入っているから、これ以上にやれば資本主義を支えているそういう重役社長会の反撃を受けるから、あなた方としてはここら辺が手いっぱいだということを言わざるを得ないんじゃないかと思いますけれども、われわれから言わせれば、ちっともこれは改革の余地がないと思わざるを得ない。そういう余り実効性のないものを広げられたわけだ。いわゆる法定監査というものを広げられたわけだ。  その法定監査は、資本金五億円以上の会社には商法会計監査人監査を受けなければならぬ、こういうふうになったわけでございますが、その原案の中に、営業収入二百億円以上という項目があった。それから負債額百億円。それを国会へお出しになったのを見ると、負債総額二百億円と資本金五億円以上というふうになっているが、営業収入の条項は削除せられているのですね。それから、これは時間もありませんから駆け足で申し上げるのですが、いま一つは任意監査。法定監査の対象ではない会社で資本金一億円を超える会社の場合に、会社の任意によって会計監査人監査を受けることができる、これも削除されてしまったのですが、これはどういうわけで削除されたのか、お聞かせをいただきたいのであります。
  46. 中島一郎

    中島(一)政府委員 先ほどからお尋ねございましたのは監査役による監査でございまして、ただいまお尋ねになっておりますのは会計監査人による監査ということであろうかと存ずるわけでございますが、その場合に、監査対象会社といたしまして売り上げ基準を落としたわけであります。確かに売り上げの額というものは企業の大きさをはかる基準とはなり得えますけれども会計監査人監査一つの重要な目的であります債権者の保護ということから考えますと余り関係がないんじゃないか、どちらかというと薄いんじゃないかということを考えたわけでございます。売り上げよりもむしろ債務額の方が重要ではないかと考えまして、債務額の基準を残しまして、売り上げ額の基準をやめたわけでございます。  それから、任意適用会社につきましては、これは法制審議会答申にもあったわけでありまして、まことに合理的な案であるというふうに私どもも考えておったわけでありますけれども、一挙に制度を拡大するということにつきましては摩擦もございます。一方、何分この監査は費用のかかることでもございますから、みずから進んでこの制度を利用される会社もそれほど多くはないんじゃないかというようなことも考えまして、任意適用会社規定法律案には取り入れないということにいたしたわけでございます。
  47. 小林進

    小林(進)委員 費用もかかりますことは、時間があれば後でまた紹介したいと思うのでありますが、いずれにしても任意監査は一億円の企業の自己の希望に基づいてやるのでありますから、何でも官の側や権力者の側から強制するわけじゃないのだから、いやならいやでやらぬでもいいのであります。任意でもそういう公認会計士監査を受ける、監査人の監査を受けるということになると、いわゆる貸借対照表あるいは損益計算書を会計監査人が承認する、監査役会計監査人と両方ですが、承認をすると株主総会の承認は必要ないわけですね、省略していいわけですから。やはりそういう利益があるわけです。だから任意でも、やってもらうことによって常任監査役の給料やらあるいは会計監査人の手当やらの金は確かにかかるだろうけれども、しかし、一方にはそういう利益があるのだから、それを勘案をして任意監査を受けることにしようとしたのは好ましい姿ではないか。あなた方の立法趣旨から言えば、もちろんこれは存続してしかるべき法案だと私は思うのです。  なぜ一体削除したか。妥協の所産じゃないのですか。法制審議会から出てきたのでありますけれども、途中でもろもろの団体、利益団体から、こんなもの取ってしまえ、われわれの職域までだんだん狭めてくるのだから取ってしまえ、そういう要望に基づいて泣き泣き削除されたのではないですか。どうです。正直に言ってください。
  48. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私どもといたしましては、法律案をつくります段階で十分に関係者の御意見ども聞いたわけでありまして、その上で慎重に検討いたしました結果、今回の法律案としてはこの程度のものでいこうという結論を出したということでございます。
  49. 小林進

    小林(進)委員 そういう関係団体の意見を聞いて、それを尊重しながら削除するべきは削除する、実にいいことをおっしゃいました。それよりは、私ども立法府でありまして、そう言ってはなんですが、これは国民を代表している最も権威のある一つの舞台でありますから、この私の意見を他の利益団体以上に尊重していただきまして、いま私は二時間近く質問してまいりました中に大分私の意見も述べましたから、ほかの団体の意見はみんな用いて改めるときは甘いのだけれども、おまえの意見は尊重しないというようなことが万々なからぬことを強く御要望いたしておきます。  それに関連をいたしまして、一方の陣営からは、この任意監査の削除とともに監査の範囲を拡大したことに対しては、得よりはむしろ損失が多いのではないかという一つ意見がある。これはいまあなたのおっしゃった費用の問題です。これは法定監査制度になると常勤の監査役をまず置かなければならない。それから会計監査人による監査を受けなければならない。その常勤の監査役企業が抱えるためには少なくとも一年間一千万円くらいの人件費、それに関連する諸経費がかかるのではないか。それから、会計監査人監査を受けるための諸手当、費用を考えると数百万あるいは六、七百万円かかるのではないか。そうすると、いまの五億から十億あたりの企業は大企業とは言えない。そういう五億そこそこの企業にこういうような二重の監査制度、しかもその監査制度が先ほどから申し上げているように実効が上がるならいい、監査役のカンはいわゆる閑人のカンだということで、制度は変わったってちっとも実効の上がらないようなものをさらに抱えて、年に一千万円もの人件費その他の負担をさせることはむしろ改悪だ、だからこんな五億足らずのところまでこういう制度をおろしてくることは反対であるという意見がありますが、これは一体いかがでございましょう。やはりそれだけの報酬を支払うに足るだけの成果が上がるとお考えになりますかどうか。
  50. 中島一郎

    中島(一)政府委員 確かにおっしゃるような費用がかかるというふうに私ども聞いております。しかしながら、資本金五億円以上の会社ということになれば、大会社であるというふうに私どもは考えるわけでございます。現在わが国に九十七万五千の株式会社があります中で、資本金五億以上の会社といえば四千社余りしかないという非常に上位の方の会社であります。また、資本金が五億円以下で負債二百億以上ということになりますと二百社前後ということでありまして、これまた大規模会社であると言わざるを得ないと考えるわけであります。しかも、この経費の使い道というのは、会社経理を適正にするという重要な公益的な目的でありまして、こういう点を考えますと、ただいま問題になっております程度の負担は過重なものとは言えないのではないか、この程度の費用は負担するだけの十分なメリットはあるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  51. 小林進

    小林(進)委員 いま、いみじくも九十七万五千社とおっしゃいましたが、それに関連して一つお伺いいたします。日本における一億円から五億円以内の会社が幾つ、五億円から十億円までの会社がこの四千社の中で幾つ、それから十億円以上の会社が幾つか、ちょっと数字をお聞かせ願いたいと思います。
  52. 中島一郎

    中島(一)政府委員 法律案関係資料の資料の部に数字を掲げておきましたが、一億円以上三億円未満の会社が現存の会社数で一万五百一社、三億円以上五億円未満の会社が二千三百七十三社、五億円以上十億円未満の会社が千九百四十二社、十億円以上五十億円未満の会社が一千八百三十八社、五十億円以上の会社が七百六社、こういうことになっております。
  53. 小林進

    小林(進)委員 関連をいたしまして、この法案改正に対し税理士会、これは後で大島さんが御質問になりますから重複を避けますが、私は一つだけ言っておきたいことは、会計監査人による監査の行われていない会社、これは五億であろうと八億であろうとよろしいが、これは不正経理の温床になるおそれがある、こういう考え方が法案作成者の中にある。そのために今後この会計監査制度を重視するのだ。  ところが、監査のいかんを問わず、多くの中小企業は適正経理を心がけているし、自分の経理を不正しようと考えていない、正しく持っていこうと考えている。その上に税理士は、商法、法人税法、税理士法に基づいて適正経理の指導と助言を行っている。すなわち商法第三十二条二項では、「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ勘酌スベシ」と規定しており、法人税法でも、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される」同法二十二条四項と規定されてある。税理士法にも「税理士の使命」同法一条、「信用失墜行為の禁止」同三十七条の規定もある。また、税務申告については、査察までも含む厳しい事後チェックがなされている。でありまするから、税理士は会計経理のいわゆる指導と助言を以上のような法律に基づいて行っているのだ、だからこれ以上の規制を一体なぜ中小企業に強いる必要があるのだ、一千万円もあるいは数百万円も金をかけて、税理士がめんどうを見るところはちゃんと見ているにもかかわらず、なぜそんなに二重、三重のことをやらせる必要があるんだ、こういう主張が一部に叫ばれているのだが、この問題に対していかがでございますか、御所見を一つだけ承っておきたい。
  54. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私ども会計監査人期待しておりますのは、これは監査でございまして税務事務ではないということでございます。会計監査人による外部の人間による監査ということでございまして、それは税理士の税務事務では代置することができないものであるというふうに考えておるわけであります。  先ほどから中小企業というお話がございましたけれども、中小企業というのはどういう企業を指すと見るべきかということについては人それぞれ考え方はございましょうが、私どもも、いわゆる中小企業については現在のところ会計監査人監査までは強制するべきではないというふうに考えておるわけでございまして、私ども会計監査人監査を必要とすべきだというのは、あくまでも大会社、大規模会社ということでございます。
  55. 小林進

    小林(進)委員 五億円という会社を大企業と見るか中小企業と見るか、これは抽象論の議論ですからやめますが、これに対して、これは自民党のどこのセクションだかわかりませんけれども、税理士と公認会計士の接点の問題について、この法律が実施される、動き出すのが二年後の五十八年四月ですか、それまでの間に中に入って調整をするという約束ができているということでございます。これはもちろん調整ですから、口約束じゃない、法律改正か何らかの形で出てくると思いますが、これはもちろん政府の方も御存じだと思いまするけれども、どういうふうな調整がとられるのか、知っている範囲でひとつお教え願いたいと思う。
  56. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいまお尋ねのございましたような調整ということにつきましては、私どもは全く聞いておりません。  以上でございます。
  57. 小林進

    小林(進)委員 聞いておいでにならないならやむを得ませんけれども、また二年以内にそんなことで法律改正などといって二重、三重の若労をわれわれにかけないように、もしあるならば、いまのうちに法律改正のの中にそういうこともきちっと含むことをお約束しておいていただきたいと思います。  時間も参りましたから、次に私は問題を変えまして、株の問題についてお聞きをしていきたいと思うのであります。  これは先ほどの大臣の御答弁の中でも、五万円の単位にすることによって非常に事務の繁雑が省略をされる、それによって少数の株主は〇・八%で案外被害は少ないというような御答弁がございましたが、これについてはいろいろの意見がある。これは学者側にも意見がある。特に私が教えを受けた田中誠二先生なんかも、崇高な学者としての立場からやはり反対をされている。  その一つ理由は共益権と自益権、いわゆる共益権と言えば一般株主の持っている権利でありまするが、株主総会における議決権その他、ところが自益権は配当請求権、残余財産の分配請求権などに限定をせられるが、この共益権と自益権というものを分離すること自体が矛盾だ、これは裏表だ、二つにして二つならず、これは一つのものなんだ、これを無理に分離することは間違いではないか、これが第一点であります。どうお考えになるか。  第二番目は、これは株主平等の原則に反する。株主というものは、一票であろうと十票であろうと一万株であろうとも、株主としての権利は平等でなければならぬ、その平等の原則に反する、こういうわけでございます。全国の証券取引所の調べによりますと、これは資料がちょっと古いのでありまするが、五十三年度末現在で、全国に上場されている株式会社でなおかつ千株未満の株式を持つ株主は延べ五百三十七万人いる。株主総会の活性化あるいはそれを盛んならしめるためにも、この五百三十七万人の個人株主株主権を制限するということは、これはいわゆる株式大衆化、株主大衆化というものに対する時代錯誤だ、反逆である。もしこんなことで総会屋対策ができると考えればそれは全く逆だ。総会に乗り込んで重役、社長をおどかして多額の金を取ろうなんという者は、五万単位や十万単位の資本はいつでも投資して自分が株主になって乗り込んでいく。昔のように会社にいやがらせをやるために一株株主だなんという無知なる総会屋はもういなくなった。だから、これは総会屋退治ではなくて、むしろ大衆投資家を締め出すやり方であるということが言われているわけでございます。  第三番目には、単位株制度の導入は健全な証券市場の育成にはならない。個人株主の持ち株比率が年々低下をしてきている。中には誠備グループなどといって、けさの新聞のように個人でも一億円の金なんか物の惜しみもなく捨てて歩くような大株主もいらっしゃるようでございますが、そういうのは例外といたしましても、年々低下している。五十四年度末には個人の株主は三〇・四%だった。むしろ法人の持ち合いといいますか、そういう比率がどんどん大きくなってきた。しかも、その中で個人株もまた大きな株主だけに制限されていくということは、これはまことに大株主擁護、法人株主擁護であり、時代錯誤もはなはだしい。これくらいへんぱな、アンバランスな制度一体欧米先進国にあるのかどうか、これはわが日本の特有な現象ではないか、この商法改正によってそのアンバランスをさらに拡大せしめていく方向へ持っていく改悪ではないか、こういう意見がありますが、いかがでございましょう。  以上、三点についてひとつお答え願いたいのであります。
  58. 中島一郎

    中島(一)政府委員 自益権と共益権というお話がございましたが、確かに自益権と共益権は二でなくて一である、あるいはうらはらをなすものであるというような御意見もわかるわけでありますけれども、現実の問題として考えました場合に、私どもは、こういう単位未満株程度の株主の分布状況あるいは意識というものはどうであろうかというようなことを考えるわけでございまして、大臣も申し上げましたように、単位未満株のみを持っておる株主の数は全株主の二七%、しかし、その総株式数は〇・八%ぐらいであるというふうな数字を承知いたしておるわけであります。これに議決権を与えないことにするということの合理化の効果というものはかなり大きなものがあるのに対しまして、株主権の行使を制限するということの弊害は、それに比較すれば非常に小さなものであるというふうに見ることができるのではないかということでございます。  それから、現在でも実際に株式を取得しようという場合には、いわゆる千株単位、五百円株であれば百株単位という単位株単位でなければ、通常の形では取得できないということになっておるわけでありまして、どうして単位未満株の数字にすぎない株主が出てくるかと申しますと、売買単位株にまとまれば非常によいのでありますけれども、それ未満では売買が非常に煩わしく条件も悪いというようなことから、処分をいたします場合に千株なり二千株というようなまとまった分だけは処分をいたしまして、それ未満のものは放置をしておく、忘れ去っておるというようなことが多いというふうに言われております。こういった人は株主としての意識も非常に薄く、自分がその株式によって議決権を行使しようというような気持ちもそれほど強く持っておらない。むしろそういう気持ちはないというのが現実であるということでありますので、そういった現実に着目をいたしまして共益権は制限をする。しかし、株主でありますから、自分の持っておる株に対してどれだけの配当があるのかないのかということは非常に大きな関心を持っておる。でありますから、この部分については保障をするということで、自益権と共益権を分けて処理をしたということでございます。  次に、権利の侵害になるのじゃないか、あるいは株主平等の原則に反するのではないかというお尋ねでございましたけれども、先ほども申し上げましたように、確かに抽象的な法律論で申しますならば、それは権利の侵害あるいは平等の原則に反するというような見方も出てくるかというふうに考えるわけでございます。現実の問題といたしまして、それによって得られるメリットというものはかなり大きなものがある、それに比べまして、制限をすることによる犠牲というものは非常に小さなものであるということを考えまして、こういった最小の犠牲によって株式制度合理化と申しましょうか、そういったものを目指したというのが今回の改正でございます。  それから、単位株制度をとることによって個人株主がさらに減少するのではないかということでありますが、個人株主の減少の原因がどこにあるかということはいろいろなことが言われておりますけれども、要するに株式に対する魅力がなくなった。配当も非常に少ない配当しかございませんし、一時ありましたような新株の引き受けによって財産的な利益がもたらされるというようなことも数が少なくなっておりますので、個人株主がだんだんに株式からほかの投資に向かったというのが実情ではなかろうかというふうに考えておるわけでありまして、単位未満株について議決権を制限するというようなことは、これとは無関係であるというふうに考えておるわけでございます。
  59. 小林進

    小林(進)委員 もう私が与えられた時間も五、六分しかありませんから、残された質問を全部やるわけにはいかないので残念ですが、後日に問題を留保することにいたしまして、最後に質問をいたします。しかし、いまの株の問題もあなたの説明に納得したわけではありませんよ。たとえて言えば、会社が増資をする、あるいはいままで持っておる株に比例して無償交付なんかをするなら、いつでも株の端数が出てくる。そのたびにおまえ端数を売ればいいじゃないかとか、その点は共益権はないとかいう問題は、いまの会社制度がある以上は常について回る。そういうわけで、いろいろな問題を勘案してみると、なかなかあなたの説明だけでは了承できないが、これは留保いたします。  次に、かいつまんで申し上げます。いま一つ私が今度の改正で言いたいことは、取締役の権限をむしろ強化したということです。むしろ少数株主も含めて大衆を擁護しなければならぬのが法律改正の基本であるにもかかわらず、逆を行っておるぞということです。  その一つの例としてここで御意見を承っておきたいのは、第一には、いわゆる競業禁止の規定です。現行法では、株主総会の三分の二を要する特別決議をもって競業を許可されておるにもかかわらず、今度は取締役の権限だ。総会ももう必要でない。取締役の権限でその競業を許可するというふうに移ったことは、私は株主の権利の縮小ではないかと思う。  それから二つ目は、二百六十条ノ四の四項です。「株主ハ其ノ権利ヲ行使スル為必要アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ前項に掲グル議事録ノ閲覧又ハ謄写ヲ求ムルコトヲ得会社ノ債権者が取締役又ハ監査役ノ責任ヲ追及スル為必要アルトキ亦同ジ」、こういうことになっていて、現行法ではそういう閲覧、謄写は自由であったのを、今度は裁判所の許可を得なければならなくなったということは、私は株主権に対する権限の大変な縮小ではないかと思っているのですよ。なぜ一体こんなに権限を剥奪しなければならないのか、これが第二番目です。  第三番目として、日本会社取締役ほど強大な権限を持っておるものはないと私は思っている。そこで、取締役がいまお取りになっている役員手当と欧米諸国の役員手当とを比較してどうなっておるのか。営業費等に対する取締役の権限使用は、欧米諸国と比較してどうなっておるか。特にわが日本においては、大企業といわゆる政党献金というものは不離一体である。実に惜しげもなく政党献金をおやりになっておるが、これはアメリカ等は先ほども言うSECなどというような組織があって、そういうような使用はかたく禁じている。禁じているからこそ、わが日本ロッキード問題までもそこから暴露されてきたのでありまするけれども、諸外国と比較してわが日本取締役のそういう金の使い方というものはまさに無限に近いほど幅広く行われているが、その点はどうなのか。  以上、御質問をいたします。
  60. 中島一郎

    中島(一)政府委員 まず、競業の点でございますけれども、確かに、今回の改正案を形式的に見ますと、その要件を緩和したかにも見えるわけでございますけれども、反面、取締役会の議決において賛成をした取締役は、もしその競業によりまして会社に損害が生じました場合には、商法の二百六十六条の二項によりまして責任を負うということになっておるわけでございます。現行法におきましては、株主総会の認許はその競業につきまして取締役に免責の効果が生ずるということになっておりますけれども、今回の改正案におきましては、取締役の承認は単にその競業が違法なものでないという効果を生じさせるだけで、免責の効果がないというようなことにもなっておりまして、この点から責任を強化しておるというふうに言えると考えるわけでございます。取締役は、競業をしたときは、その重要な事実を取締役会に報告をしなければならないということにもなっております。さらに、取締役会の承認を受けないで競業取引をした場合に、取締役会はその取引が会社のためにしたものであるというふうにみなすこともできる、いわゆる介入権でございますが、その介入権を行使することができるということになっておりまして、もしこの介入権が行使されない場合には、取締役に対する損害賠償の請求に当たっては、取締役または第三者が競業によって得た利益会社の受けた損害と推定するということで、実質におきましては取締役の責任を強化しておるというのが改正案の立場でございます。  それから第二点は、二百六十条ノ四の規定でございますけれども取締役会の議事録というのは企業秘密などもいろいろと書いてあるわけでありまして、公開したくないという性質のものもあるわけでございます。従来は、二百六十条ノ四の第四項、第五項というような規定がございませんでしたので、取締役会としては、議事録になるべくそういうことを書かないでおくというむしろ弊があったわけでございます。総会屋などがその企業秘密にわたることの記載してある取締役会の議事録の閲覧を求めましていやがらせをする、その閲覧の申し出を撤回することのために金品を請求するというような事例もあったように聞いておるわけでございますので、今回は、その閲覧、謄写を裁判所の許可にかからせまして、そこで株主取締役会議事録を見る権利、そして会社企業秘密を守る権利というものの調和を図ったというのが改正案趣旨でございます。  それから、日本取締役と外国の取締役との比較ということでございますが、日本取締役は、従業員からなるというような取締役が多い。外国の取締役は、株主が自分たちの権利を守るために外部からスカウトしてくるというようなことが基本的な違いであろうかと思うわけでありまして、それによっていろいろな点で差が出てくるということもあるわけでございます。
  61. 小林進

    小林(進)委員 自余の質問は保留いたしまして、本日はこれで質問を終わることにいたします。どうもありがとうございました。
  62. 高鳥修

    高鳥委員長 大島弘君。
  63. 大島弘

    大島委員 最初、二、三大臣に御答弁いただきまして、もし明白な御答弁が得られれば、大臣それで退席していただいて、あとは事務当局と質疑を交わすつもりでおります。  まず、先ほど小林委員からちょっと御指摘がありましたように、今回の商法改正が税理士に及ぼす影響と申しますか――ちょっと最初お断りいたしたいのでございますけれども、私は弁護士でございますし、また各国税局に通知しておりますので、いわゆる通知税理士でございますが、どこの税理士会にも所属しておりません。したがって、そういう意味で、ある業界の利益代弁だというようなことで質問しているわけではございませんので、その点、念のためお願いいたしたいと思います。  現在全国に税理士が大体三万あるのか四万あるのか存じませんが、たとえば、現在毎年国税職員がやめて五百人ぐらい新規に税理士業務を開業していく。それから、現在国税職員五万のうち約一万五千というのがいわゆる潜在税理士で、もうすでに税理士の資格を持っているという状況で、しかも普通役人をやめれば政府関係機関とか天下るのですが、国税職員はほとんどが税理士、自由業を開業して決して天下らない。りっぱなことだと思うわけです。しかし、こういう事情を勘案してみると、将来非常に狭き門になって、過当競争になってしまう。もちろん税理士と会計監査人との職務は違いますけれども会社単位で見ますと相当程度関係がある。こういう点で、今回の商法改正は税理士業界にどの程度影響を及ぼすのか、ちょっと大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  64. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法制審議会答申をいただきましてから、税理士会の方からいろいろな要望がございました。その間の調整を図ったわけでございまして、結果として今度の商法改正案によって税理士会に特別な影響を及ぼすことはないのじゃないだろうか、私はこんな感じを持っておるわけでございます。資本金額につきまして五億以上の上場会社は、すでに公認会計士必置にしているわけであります。非上場の会社だけ五億から十億の間、当分の間は適用除外にしてきたのを、今度の改正で適用するようにするわけであります。この会社法務省事務当局が調査しているところでは六百社余りではないだろうか、こう言っているわけでございますけれども、この六百社余りにつきましても、すでに公認会計士仕事をしておられるところが相当ございますし、税理士が税理士業務を担当しておられるところはほとんどないのじゃないだろうか。あってもほんの数社にすぎないのじゃないだろうか、こんな話を伺っておるわけであります。  それから、今度の改正で売上金額が二百億円以上の会社にも公認会計士必置にしようとしたのを取りやめました。それはそれなりに理由があって取りやめているわけでございますけれども、同時にまた、負債が百億以上の会社についても適用しようとしておったのを、二百億円以上にしたわけでございます。この会社も二百社余りのようでございまして、直接税理士が担当しておられるところは非常に少ないのではないかな、私はこんな感じがいたしております。  もう一つ、税理士会が大変気にしておられましたのが、資本金一億から五億円の範囲の会社につきまして置くことができるということで、だんだんそれを勧奨していこうというような姿勢を法文の上であらわそうとしたわけでありますけれども、これも取りやめたわけでございます。同時に、公認会計士が担当しております会社につきましては、関係者が税理士業務はやれないということが証券取引法等に書いてあるわけでございまして、この規定商法の上でも明確にしたわけでございます。これも税理士会の御希望に従ったわけでございます。したがいまして、税理士会が御心配になっておったことは商法改正の中では大体全部実現されたのではないか、こう思っておるわけでございます。また、税理士業務の範囲をこの法律関係から狭くするような関係になるものはないのではないだろうか、こんな感じを持っておるものでございます。
  65. 大島弘

    大島委員 大臣は、税理士業界に及ぼす影響は大したことはない、こうおっしゃられるのですが、実は税理士の業務は、記帳事務のほかに相談業務というのがあるわけで、この面で大きな影響を及ぼすと私は思うのですが、これはまた後から事務当局と打ち合わせしたいと思います。  それに関連して、大臣、今回五億まで監査対象範囲を広げましたが、将来これを一億まで及ぼして、最低資本金制度というものを設けて、それ以下は株式会社とみなさないというような考えが法務省にあるということを仄聞しているのですが、この点はいかがですか。
  66. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 四十九年に法務委員会附帯決議をいただいた。その中には、会社の大小の区分に応じて律する法規も別にしていくべきではないかというものがあったわけでございます。もっともなことでございます。御承知のように、株式会社の最低資本金の規定はないわけでありますから、一円でも株式会社にできるのだ、こういう理屈になるわけでございます。また、現実の株式会社は小さいものから大きなもの、大変な違いでございまして、同じような規定で律し得るものではございません。これは一つの研究課題になっておるわけでございます。大小の区分に応じてこれをどう規制していくかということは根本問題だと考えておるわけでございまして、そうなりますと、資本金の最低は幾らであるかということまで規定していかなければならないようになるのじゃないかと思います。そういう課題はまだ今後の法制審議会の研究課題でございまして、法務省がいまどうしようという考え方を持っておるというところまでは至っていないわけでございます。  もう一つ、かつて法制審議会から、会社の財務の実態を明確にしていく、そういう意味において公認会計士制度を必置にすべきだという御答申をいただきましたときには、株式会社の資本金一億円以上ということでございました。しかし、まだ公認会計士制度が充実しているわけでもございませんので、それは多少広げ過ぎているのではないかなという判断で、五億円以上ということになっておるわけでございます。今回の答申でまた、一億から五億の間について、勧奨的な精神を明らかにする意味において置くことができるという答申になったわけでありますけれども、これも削らしていただいたわけでございます。現在のところ、法務省として、資本金五億円以上について必置義務にしておりますのを、さらにこれを下げていくというような考え方は持っておりません。今後またいろいろな御意見が出てさましたら、その際によく研究した上で結論を出すべきだ、こう思っております。
  67. 大島弘

    大島委員 現在のところ、これを突破口として五億から一億までに拡大するというような考え方はない、こう解釈いたしておきます。  それから、最後に大臣にお伺いしたいのです。  商法全般のことですが、私は、過日大蔵大臣に対して、いまの税法は全くわかりにくい。典型的なのは租税特別措置法などで、これはなぜわかりにくいかといいますと、税法はもともと難解ですけれども改正改正を重ねておる。そういうことで引用条文の関係で非常にむずかしくなっているので、これは国民の大多数が、読んでわかる人は恐らくいないと思うのです。そういう法律をつくっておくことは法律の錯誤を生じますし、極端に言えば国民を欺罔するようなものではないかどいうことで質問したのです。  逆に、今度商法全般を見てみますと、相当改正改正を重ねておる。国税犯則取締法、国犯法というのは明治三十三年ごろにできて、古いなと思ったのですが、商法は明治三十二年、一年先にできている。日清戦争と日露戦争の間にできておるわけです。確かに第一条に、本法に規定なきときは商慣習により、商慣習なきときは民法による、こういうりっぱな規定もあるわけです。これが結局田中先生の商的色彩、世界法の理論にまで発展した有名な条文ですが、それはそれとしまして、いまちょっと商法の総則三十八条を見ますと、「支配人ハ番頭、手代其ノ他ノ使用人ヲ選任又ハ解任スルコトヲ得」。大臣、「手代」とは何ですか。これは徳川の商法だと思うのです。
  68. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私もよくわかりませんけれども、番頭の下で、番頭の指揮を受けている者のようでございます。
  69. 大島弘

    大島委員 こういう徳川時代の商法のような規定もあるし、さらには、株式会社計算におきましても、企業会計準則やあるいは連結貸借対照表というようなものを取り込んで、これを一度いつかの機会に全面的に法改正するというお考えはお持ちでございますか。
  70. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘は私も全く同感でございます。商法はかたかなの法律でございまして、またいろいろな思想が継ぎはぎでできていると思います。だから全面改正ということで法制審議会で取り組んでいただいておった。しかし、いろいろな問題が起こってきたので、急遽急ぐものだけ今回提案させていただいたということでございます。引き続いて法制審議会でも全面改正の気持ちで御検討いただいておるわけでございますので、なるたけ早い機会に全文を改正して、また、かたかなもいまのひらがなの口語体に改めなければならない、こう思っています。
  71. 大島弘

    大島委員 大臣、退席していただいて結構です。  次に、法務省にお伺いいたしますが、先ほど小林委員から出ました総会屋対策の規定でございますが、「会社は、何人に対しても、議決権の行使に関して利益の供与をしてはならないものとするとともに、これに違反する行為につき罰則を設け、これにより、会社総会屋に対し賛助金等の名目で金銭を交付することを防止する。」こういうことでございますけれども、実効性が果たしてどうかということでございます。先ほどの説明によりますと、新聞代あるいは広告代あるいはゴルフコンペ等の賛助金というような形態が多いというのでございますけれども、たとえば新聞代あるいは広告代、これらは会社としては税法上損金として落ちるわけですね。それでどれが総会屋に行ったものか、どれが通常の朝日や毎日の新聞代と違うのか、そういう区別の根拠はどうして見られるわけですか。
  72. 稲葉威雄

    稲葉説明員 お答えいたします。  そういう個々の項目の支出につきましては、監査役なりあるいは会計監査人が帳簿等の照合をやることに相なろうかと思います。
  73. 大島弘

    大島委員 ここで私は一つの提案があるのですが、こういう大会社経理につきまして、これらは相当明白に規定しておりますから、いわゆる使途不明金というようなことで経理するものはまずまずない。しかし、こういう規定があるからといって、これはおかしいなということでそれを見破る能力のあるのは国税調査官、いわゆる国税職員なんです。そういうことで、国税当局の職員の協力をもらうことも一つの方法だと思うのですが、国税局には守秘義務がある。国税職員には、税法によって秘密を漏らしてはならないという守秘義務がある。しかし他面、刑事訴訟法では、公務員は犯罪ありと思量されれば告発しなければならない。したがって、国税職員としては守秘義務と告発義務の両方の間にはさまれているのですが、これは法務省としてはどういうふうな解釈をとっているわけですか。
  74. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 一般的に申しまして、国税当局と捜査当局、特に検察当局との協力関係は、従来から、大島委員も御案内のとおり大変密接でございます。したがいまして、そういう一般的な協力関係の中でいろいろな情報等も得られるわけでございますから、そういうことから総会屋の違反の端緒が得られることもあろうかと思うわけでございます。  ただ、いま御指摘の刑事訴訟法の告発義務と国税職員としての守秘義務の問題でございますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、ある面では衝突するような関係に立つわけでございます。従来から、一般的な理解といたしましては、捜査当局の立場からすれば、当然のことながら、できるだけ端緒を得たいということで告発をお願いしたいわけでございますけれども、いまお話のありましたように守秘義務がある。その基礎になりますものは、これも大島委員に申し上げるまでもないと思いますけれども、税務調査というものが今後とも円滑にかつ適正に行われるようにするためにはむやみやたらに漏らしてはいけないという趣旨だろうと思いますので、そういう正当な事由があるといいますか、行政機関の業務の執行上特に支障があるという場合には告発義務は免除されるといいますか、そういう関係に立つのじやないか。ただ、その辺の御判断は当該行政機関の御判断でございますので、特に支障はないということで、できるだけ協力していただくというお考えで運用していただくことが望ましいと考えているわけでございます。
  75. 大島弘

    大島委員 そうしますと、やはり告発義務よりも守秘義務の方が優先するというふうな解釈と承りますけれども、しかし、それは国税職員が漏らしたときなんでありまして、むしろ捜査当局としてはそういうことに直接協力をお願いするということ、つまりこちらが知ったのだ、捜査当局が知ったのだというような方法で税務調査を利用するわけにいかないのですか。
  76. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどもそういう趣旨で申したつもりでございまして、守秘義務というのも、罰則で処罰されます場合は、いま仰せのとおり特に漏らしたという場合でございます。ただ、いわゆる守秘義務ということは、罰せられる場合だけではなくて、国税当局の代弁をするようで恐縮でございますけれども、やはり税務調査一般というものが円滑に適正に行われなければならない、今後の調査に支障があるということでは困るという趣旨から考えられているものじゃないかと思うわけでございます。しかし、その辺はいま仰せのようなことでございますから、犯罪捜査というものも十分考えていただいて、支障のある範囲をできるだけしぼって考えていただいて、捜査に御協力いただくという運用が現になされておりますし、今後ともそういうことが望ましい、かように考えているわけでございます。
  77. 大島弘

    大島委員 私はいま一案を申し上げただけで、今後これをやらないと、永久に抜本的な総会屋対策にはならないのじゃないかと思うわけでございます。やはり現行の規定だけでは仏つくって魂入れずというようなことにもなりかねないので、その点ひとつ捜査当局にも十分激励をしていただきたいと思うわけでございます。  もう一つ聞きますが、この場合に、総会屋対策の規定でも、何でもそうでございますけれども商法は必ず行為者を罰する。税法なんかは両罰規定で、行為者も罰するし、会社も罰する。ところが、商法はずっと行為者だけを罰して、会社には罰則は及ばない。この総会屋対策なんかでも、行為者も悪い、会社も悪い、こういうふうになぜ両罰規定を設けないのですか。
  78. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいま御質問にもございましたように、商法規定は、伝統的にと申しましょうか、行為者のみを処罰しておるわけでありますが、これを変更して商法の罰則に両罰規定を設けるためには、商法の罰則全部について慎重に検討する必要があるというふうに考えるわけでございます。今回、総会屋を取り締まるための法制を早急に整備する必要があるということで規定を設けたわけでございまして、従来の商法の体系の中で四百九十七条を新設したということでございますので、両罰規定のことにつきましては、今後の検討課題としなければならないというふうに考えております。
  79. 大島弘

    大島委員 そうしないと本当におかしいと思うのです。行為者だけを罰して会社を罰しないということは、税法との関係、その他の法律との関係からしてもおかしいと思うので、これはひとつ根本的に、先ほど商法全面的改正ということもしなければならないと法務大臣はおっしゃっているのだから、そのような機会をとらえてぜひとも入れていただきたいと思うわけです。  次に、監査役制度でございますけれども、今回の改正によりまして、大会社にあっては必ず一名を常勤としなければならない。それから、監査役の報酬の決議は取締役の報酬と区別する。さらに、監査役は、取締役の職務の執行が法令または定款に違反すると認めるときは、取締役会を招集することができる。これは先ほど小林委員から御指摘がありましたが、果たしてこの実効性はどうか。御答弁によりますと、なるほど、大隅先生あるいは鈴木先生というような商法の大家が監査役につかれた、それはもう事実ですけれども、百万近い株式会社の中でそういうのはもう本当の一握りだと思うのです。大部分の会社ではいまだに取締役の下におる、発言権もないというのが実態だろうと私は思うのですが、その辺はこの改正によって果たしてどの程度期待できるのか。先ほどの小林委員の御質問と重複するかもしれませんが、もう一度これの期待感というものを教えていただきたいと思うのです。
  80. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私どもの考え方は、先ほど小林委員の御質問に対して申し上げたとおりでありまして、徐々に変わりつつあるということは多くの方がお認めになっておるのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございまして、なかなか一気にというわけにもまいりませんけれども、私どもは、こういう方向で徐々に充実強化、監査役の発言権が増すようにということを期待しておるわけでございます。そういう願いも込めまして、今回の改正案におきましては、監査役の地位の強化、権限の強化ということで幾つかの規定を新設したわけでございます。
  81. 大島弘

    大島委員 次に、会計監査人の問題に参ります。  法務省の「会社法改正主要項目説明資料)」の中に、「会計監査人は、総会で選任することとして、その地位の独立性の強化を図るものとする。」と書いてありますが、「地位の独立性の強化を図る」というのは、具体的にどういうことですか。
  82. 中島一郎

    中島(一)政府委員 従来の制度でありますと、会計監査人取締役会において選任をされるということであります。会計監査人は、取締役会あるいは取締役の責任に属する会計処理その他を監査する立場でありながら、取締役会によって選任をされるということは適切でない。取締役の選任者である株主総会と同じその株主総会によって会計監査人も選任をするという形が会計監査人の地位から見てふさわしいのではないかということが、この新設規定趣旨でございます。
  83. 大島弘

    大島委員 取締役会の選任といい株主総会の選任といい、大した変わりはないと私は思うのです。  それから、監査に対するアフターケアといいますか事後審査、これは現在商法では全然配意してないのですが、これはなぜですか。
  84. 中島一郎

    中島(一)政府委員 商法と申しましょうか監査特例法と申しましょうか、これには特別の規定はないということは事実でございますけれども監査人協会、公認会計士協会におきましては、監査の適正性につきまして協会として自主的なチェックをしようというような計画があるということも聞いております。特例法によりますと、粉飾決算を見逃したような場合につきましては、民事上の責任についての規定を置いております。特例法の十条というような規定もございます。それから、公認会計士法による懲戒処分というようなものもあるわけでありますので、むしろそういった自治的な審査と申しましょうか、自治的なチェックに期待するという方がよいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  85. 大島弘

    大島委員 実際問題として、監査人の独立性は必ずしも保障されてない。それからいま言いましたように、監査に対する事後審査が全然行われてない。それから選任につきましても、株主総会に移ったといったところで、実際上は監査人というのは会社のいわば使用人的な立場に立たされるというのが現実だろうと思うのです。したがって、先ほどわが党の小林委員が指摘しましたように、アメリカのSEC、これを一遍つくったらどうか。たとえば審査会というようなものを設けて――政府は審査会というような、いろいろ委員会をつくるのが大変お好きなようですが、こういうことこそ審査会というのをつくって、そこで公認会計士代表法務省代表、大蔵省の代表等を入れて、監査人の選任や解任、あるいは独立性の保障、あるいはその事後審査の確立、そういうふうなものをつくるということはなぜ考えられないのか。  先ほど大臣でしたか、それは大蔵省の所管だ、こう言われましたから、もちろん大蔵省も関係あるのですが、商法にこういう組織の設置を義務づけるということは何らおかしくないんじゃないかと思うのですが、この点、そういう審査会というふうなものをつくって監査人の独立性を保障するというような気持ちがあるのかどうか。さらには、それは大蔵省の所管であるのかどうか。その点をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  86. 中島一郎

    中島(一)政府委員 証券取引法という立場からそういう機関を考えるということになれば、それは大蔵省の所管であろうという趣旨で先ほど大臣は申し上げたかと思うわけであります。と申しますのは、先ほどアメリカのSECということが引き合いに出されましたので、SECということになれば、それは証券取引法の立場からする規制である、監視である、だから、日本の証券取引法に引き直して考えれば、それは大蔵省の関係である、こういう趣旨であろうかと思うわけであります。それとは別に、商法あるいは特別法におきまして公的な監査機関、監視機関というものを設けるということになれば、これは法務省としても考えなければならない問題であろうというふうに考えるわけでございます。  その場合に参考になりますのが、やはりSECというような制度であろうかというふうに思いますけれども、これは先ほど大臣からも申し上げましたように、国情の違いもあるということで、こういうものを考えましても、果たしてうまく機能するかどうかというような点についても疑問がないわけではございません。私どもといたしましては、当面自主的な監査というものをできるだけ充実をする、それによって事態を適正化するということを心がけまして、そしてその結果を見まして、公的な監視機能というようなものの検討をしなければならない場合もある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  87. 大島弘

    大島委員 SEC、何もアメリカにまねしてつくるというのじゃなくて、いわば日本型のSECというようなものを考えてみたらどうか。また、これは考える必要があるんじゃないか。それでないと、現在の公認会計士実情を見ますと、極端に言えば、全く会社の言うとおりだというのが実情だろうと私は思うのです。上記監査しましたところ、支障はない。その結果、日本熱学とかいろいろの不祥事件が出てくるわけです。そういうことを防止するために、SECという言葉を使ったらいけないと思いますけれども、私はどうしてもいわゆる公認会計士等審査会というようなものをつくることが必要だろうと思うのですが、もう一度民事局長意見を聞かしていただけませんか。
  88. 中島一郎

    中島(一)政府委員 確かに、現在の会計監査人会社によって選任をされておりますので、会社によって選任をされた会計監査人が果たしてどれだけの監査ができるのかという御意見は、一面ごもっともな点があるというふうに私は考えるわけでありますけれども、やはり会計士は外部の人間でありますし、公認会計士という資格を持っておるわけでありまして、大蔵省の監督も受けておるというような立場にあるわけであります。それよりもやはり職業人と申しましょうか、専門職としてのプライドというようなものあるいは職業倫理というようなものがあるわけでありまして、会社によって選任される立場ではあるものの、それはそれなりに監査役とは違った意味での独立ある監査期待できるというふうに私どもは考えておるわけであります。  それでは足りない、もっと公的な監視機能監査機能検討すべきであるという御意見、一面ごもっともだというふうに考えますけれども、私どもは、当面は先ほど申しました自主的監査機能の充実に全力を挙げて、そしてその後において必要があれば、公的監査機能の必要性というようなものについて検討をするべきではないかどいうふうに考えておるわけでございます。
  89. 大島弘

    大島委員 先ほど言いましたように、SECという言葉を使うと本当に誤解があるので、そうじゃなくて、公的な審査会というような意味でこれは十分御検討になっていただかないと、これも先ほどの総会屋対策と同じく、仏つくって魂入れずということになりかねないと思うので、これは検討事項としてひとつ検討していただきたいと思うわけです。  それから続きまして、現在日本では監査人は商法の規制も受けておる、逆に証券取引法上の規制も受けておるということになっておるわけですが、一体世界にこういう国があるのかどうか。さらにはまた税理士、もちろんそれぞれ職務は違いますけれども、同じ会計に関して税理士という制度がある。この税理士というのは、フランス、イギリスやアメリカにないわけなんですね。これは西ドイツにはあると思いますが、日本だけじゃないかと思うのです。こういう非常に複雑な入り組み方をしている監督規制におきまして、こういうふうな国がほかにあるのですか。一遍、その辺の諸外国の事情を簡単に説明してください。
  90. 稲葉威雄

    稲葉説明員 会社法と証券取引法が併存している国は、日本のほかには主要国といたしましてはアメリカがございます。アメリカにおきましては、各州法によって会社法が定められているわけでございますが、この中にはそういうインデペンデント・アカウンタントという制度があるとともに、先ほど来お話が出ております証券取引法の関係におきまして、SECに対する財務諸表についても、CPAと申しましてサーティファイド・パブリック・アカウンタントの監査証明が要るというようなことになっておりまして、そういう点ではアメリカと日本とは軌を一にしているということが言えるかと思います。ただ、ヨーロッパ諸国におきましては、御承知のように証券取引法がございませんで、もっぱら会社法の規制によって会計監査人、外部監査人と申しますか、そういうものが要求されている、こういうたてまえになっております。  さらに、私ども税理士の関係については余り詳しくは存じませんけれども、先生のお話でございますとドイツと日本だけだということのようでございますが、そういうふうに幾つかの規制がなされているというのは、日本のこれまでの歴史的背景に基づいてこういうことになってまいったわけでございますので、それを一朝一夕に変えるのは非常にむずかしいことなので、それを尊重した上で徐々に制度の調整を図るべきではないか、かように考えているわけでございます。
  91. 大島弘

    大島委員 アメリカが日本と同じだ、こう言われましたが、アメリカの商法あるいはアメリカの公認会計士法の規制の仕方と日本のそれとは、ほぼ同じですか。
  92. 稲葉威雄

    稲葉説明員 アメリカの会社法というのは余り規制が厳しくございませんで、たとえばカリフォルニア会社法の百十五条というような規定にそういう独立監査人の規定が載っているわけでございます。さらに細かい会計士の制度がどうであるかというのはむしろ大蔵省の所管に属することでございまして、私どもも余り詳しいことは存じておりません。
  93. 大島弘

    大島委員 先ほどの「会社法改正の主要項目」という中に、盛んに大会社大会社ということが出てくるのですが、この大会社というのは、五億以上の会社のことを想定しているわけですか。
  94. 中島一郎

    中島(一)政府委員 改正案によりますと、資本金五億円以上の会社、それから貸借対照表上の負債総額が二百億以上の会社ということになろうと思います。
  95. 大島弘

    大島委員 世の中にインフレというのは毎年毎年進行していっているので、いま資本金五億ぐらいの会社大会社と言っていいでしょうか、いかがなものでしょうか。
  96. 中島一郎

    中島(一)政府委員 大会社と小中会社、中小企業というふうにどこで線を引けばよいかという点につきましては、これは人それぞれに考え方も違うと思いますけれども、私ども考えましたのは、監査対象会社とするにはどの程度の会社がふさわしいであろうかという観点から考えたわけでございます。その場合には、企業社会的責任というようなことも今回の商法改正の場合に問題になったわけでございます。企業社会的責任を果たすためには、会計監査人による監査というようなものも非常に重要な役割りを果たすであろうというようなことを考えました。さらには、中小企業に関するいろいろな保護法がございます。中小企業基本法というような法律もございます。中小企業金融公庫法あるいは中小企業指導育成に関する法律というようなものもございますが、これらの法律はいずれも資本金一億円以下の会社ということになっておるわけでございます。そういう点をいろいろと勘案をいたしました結果、資本金五億円以上の会社監査対象会社にするということがいいのじゃないか、こういう結論になったわけでございます。
  97. 大島弘

    大島委員 これは御参考になるかどうか知りませんが、国税調査として大法人として特別調査官がやるのは、大体資本金十億以上をやはり目指しているようなんです。そういう意味におきまして、私は、五億程度のものを大会社というのはおかしいので、むしろこれは中会社だ、こういうふうに観念しておるわけですけれども、それはそれとして言葉の問題ですから……。  今度負債を二百億と、こう決めた根拠は何ですか。
  98. 中島一郎

    中島(一)政府委員 法制審議会答申におきましては、御承知のように負債百億以上ということになっておったわけでございます。百億とか二百億とかということを考えます場合に、私ども参考にいたしました数字といたしましては、資本金十億円以上十五億円までの一部上場会社の負債の総平均が約百四十億であるというような数字、あるいは資本金五億円の二部上場会社の全会社の負債の平均が五十九億円であるというような数字を参考にいたしたわけでございます。このような数字を参考にいたしますと、負債が二百億であるということは、資本金五億円との対比で考えましてかなり高額というべきではなかろうかというふうに考えまして、資本金が五億未満で負債が二百億というのはかなり問題がある、監査対象会社にすべきものであるというふうに考えたわけでございます。
  99. 大島弘

    大島委員 しかし、負債二百億でも、その負債がたとえば一人の負債、大法人の負債というような場合もあろうし、あるいは数多くの債権者の負債が締めて二百億以上ということもあるだろうし、なぜ債権者の数をここへ入れなかったわけですか。
  100. 中島一郎

    中島(一)政府委員 負債二百億ということになれば、債権者もかなりの数に上るというのが通常であろうというふうに考えまして、負債額に加えてさらに債権者の数をも掲げるというような複雑な規定を設けることはいたさなかったということでございます。
  101. 大島弘

    大島委員 最後に、税理士との関係を再びお伺いしまして、私の質疑を終えたいと思います。  先ほど奥野法務大臣は、今回の法改正によって税理士業界を圧迫することはまずまずないというような御答弁でしたが、今回資本金十億を資本金五億に広げる、あるいは負債基準を設けると、こういうことになる予想対象法人は大体何件くらいございますか。
  102. 中島一郎

    中島(一)政府委員 資本金五億以上十億未満の証券取引法非適用会社というものが、私どもが把握しておりますのでは六百社前後ということになっております。それから、資本金五億未満で負債二百億以上という会社が二百社前後というふうに理解をいたしておりまして、合計八百社前後ということになるわけでありますが、このうちには、先ほど大臣も申し上げましたように、すでに公認会計士監査をしておる会社がかなりあるというふうに考えております。従来からの大規模会社の関連会社、子会社というような会社も多くございますので、そういう関係ですでに公認会計士監査をしておるという会社がかなりの数に上っておるというふうには承知しておるわけでございますけれども、それが約半数というふうな数字も聞き、四割くらいであるというような数字も聞くものでありますから、その辺のところは必ずしもはっきりした数字をつかんでおらないというのが実情でございます。
  103. 大島弘

    大島委員 最後に、その中には税理士が関与している会社はどのくらいございますか。資本金五億から十億くらいまでの法人の中で、税理士が関与しているという件数はわかりませんですか。
  104. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私どもの聞いておりますところでは、七社前後というふうに聞いております。
  105. 大島弘

    大島委員 それはそうかもしれません。しかし、税理士には申告書の作成事務のほかに相談事務というのがあるわけです、別に税理士の事務として。恐らくその七件というのは申告書等の作成事務のことを言うのであって、その資本金五億から十億までの会社は、ほとんど税理士がいわゆる相談事務というものをやっている実情なんです。先ほど大臣が税理士業界には余り圧迫を及ぼさないと言ったのは、恐らく作成事務だけなのであって、この対象を広げられますと、いわゆる相談事務というのが税理士がずいぶん入っていますから、おまえはもう要らない、出ていけ、こう言われかねないと思うのですが、最後にその辺の法務省の見解をもう一度お伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  106. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私どもは税理士が関与しておる会社ということで聞いておりましたので、当然ただいまの税務相談も含まれておるというふうに理解をしておるわけでございます。
  107. 大島弘

    大島委員 時間はまだ少しございますけれども、一応これをもって質疑を終了いたしたいと思います。
  108. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、休憩いたします。     午後一時十三分休憩      ――――◇―――――     午後三時四十七分開議
  109. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍛冶清君。
  110. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 先日に引き続きまして、商法等の一部を改正する法律案について御質問をいたしたいと思います。  質問の数が若干ございますので簡明にお答えいただきたいということと、私の方もいろいろな説明をなるべくはしょって簡明に御質問申し上げますので、よろしくお願いを申し上げます。  最初に、単位未満株式についてお尋ねをいたしたいと思いますが、今回の改正法律案におきまして、単位未満株式については、再発行の場合を除きまして株券を発行できないというふうにされております。これは株主株式譲渡の権利を不当に制限するということになるのではないだろうか、こう思うのですが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  111. 中島一郎

    中島(一)政府委員 既存の会社につきましても株式単位を引き上げる必要があるわけでありまして、そのために、現在以上に単位未満株式あるいは単位未満株主の拡散と申しますか、広がるのを防止するためにこのような措置をとっておるわけでございます。単位未満株式につきましては、会社に対しまして適正な価格をもって買い取るべきことを請求することができるということにいたしておりますので、株主株式譲渡の権利を害するおそれはないというふうに考えております。
  112. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 じゃ、次に進みまして、改正法律案の二百三十条ノ三でございますか、ここで端株券についての規定が置かれているわけでありますが、この端株券につきまして三つお尋ねをしたいのです。  まず一つは、どのような場合に発行されるのか、二番目は、またどのような目的に用いられるのか、三番目といたしまして、その法律的性質はどのようになっているのか。  以上の点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  113. 中島一郎

    中島(一)政府委員 お答えを申し上げます。  端株の発行される場合でございますけれども株主に対する新株の割り当てあるいは株式の無償発行という場合に、株主の保有しております株式数に対して一割とか二割とかというような一定の割合をもって発行されますので、端株が割り当てられるという事態が生ずるわけでございます。その場合に、現在の制度におきましては、有償発行の場合は無視をする、無償発行の場合は金銭にかえて分配をされるということにいたしておりますけれども、一株の単位が引き上げられまして五万円ということになりますと、この端数も無視し得ない価値のものになるというわけでございます。そこで、このような場合に、一株の百分の一の単位で端株を発行するという制度を設けたわけであります。端株の場合は、株主がそれを希望いたします場合には会社に登録をしておきまして、そしてやがてこれが積み重なって一株になる、あるいは他から端株を取得してきて手持ちの端株と合わせて一株にするということができるようにしておるわけでございます。  それから、端株の性質と申しましょうか、端株主の権利ということになりますが、これは議決権その他の共益権はもちろんございません。自益権につきましても、利益配当請求権は当然にはございません。ただ、残余財産の分配請求権というような出資者として基本的に持っております経済的な権利、これは保障しております。それから、定款で定めた場合には、利益配当請求権その他の自益権を与えることができる、こういうことにいたしておるわけでございます。
  114. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、自己株式の取得の件につきましてお尋ねをいたします。  改正案の中では二百十条となっておるかと思いますけれども、これも三点お尋ねをいたしたいのですが、第一に、自己株式の取得については制限を緩和しないということにしているようです。この点についてどういうわけか。さらに二点目には、この点に関する諸外国の法制は大体どのようになっているのか。三番目として、質受けについてはその制限を一部緩和した。これはどういうわけでそういうふうに改正をしようとしているのか。その点についてお尋ねをいたします。
  115. 元木伸

    ○元木説明員 まず最初に、諸外国の法制からお答え申し上げます。諸外国の法制といたしましては、ヨーロッパの会社におきましては、原則として自己株式の取得は禁止いたしております。これに対しましてアメリカでは、自己株式の取得を原則として認めているということになっております。  したがいまして、アメリカあたりで事業をやっているわが国の会社におきましては、アメリカの会社と事業を提携するという場合に、株式を交換する必要から自己株式の取得を認めてほしいという希望がかなりあるわけでございます。そういう希望もわかるわけでございますけれども、実はアメリカの法制におきましても、自己株式の取得を認めるかわりに、取得をいたしましたならばその分は資本から差し引くということにいたしております。ところが、実際の問題といたしまして、自己株式を市場から買い取りますと、額面では買い入れられないわけでございまして、必ず額面以上で買ってくるというのが普通でございます。そういたしますと、その額面超過額をどこから差し引くかということにつきまして、実はアメリカの実務でも非常に混乱が起こっております。したがいまして、もしわが国でそういう制度をとるということになりますとその点を明確にしなければいかぬ、解決しなければいかぬということでございますけれども、その点の解決というものは一朝一夕にできることでもございませんので、今回は残念ながらこの点は見送らざるを得ないんじゃないかということで、緩和しなかったわけでございます。  ただ、そのかわり、自己株式の質受けでございますけれども、これは特に銀行などでは、余り価値のない担保を取るよりは、かえって自分の会社株式を担保に取った方がより会社にとっては有利であるという場合もございますので、そういうことも考えまして、発行済み株式総数の二十分の一までは自己株式を担保に取ることができるということにしたわけでございます。
  116. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、先日もちょっと触れた問題ですが、書面投票制度についてでございます。今回これが新設実施されるということになりますと、従来から多くの会社が行ってまいりました委任状勧誘制度との関係一体どういうふうになるのだろうかと思うのですが、この点についてお尋ねをいたします。
  117. 元木伸

    ○元木説明員 お答えします。  この前も申し上げましたとおり、書面投票制度の方が、株主の意思を明確に総会で反映するという点から申しますと、委任状勧誘制度よりはすぐれているということでございます。したがって、理屈といたしましては、今回の改正におきましては書面投票制度だけを取り上げて、委任状勧誘制度はやめてしまうということでよろしいのではなかろうかと思うわけでございますけれども、ただいまの御質問にもございましたように、委任状勧誘制度というものが相当古くから行われてきておりまして、各会社ともこれになれてきておるということがございます。したがって、いま直ちに急激にこの委任状勧誘制度を廃止してしまって書面投票制度一本にまとめてしまうということになると、どうも実際問題としては混乱が起こるのではないかという危惧がございます。したがって、当分の間は、書面投票用紙の送付にかえまして株主全員に対して委任状を送るならば、それはそれでよろしいということにいたしたいということでございます。  また、現行の証券取引法に基づきます委任状勧誘規則、これは法務省所管の規則じゃございませんけれども、この規則も制定後相当長期間たちまして、今回ももうそろそろ見直さなければいけないのじゃないかという時期に来ているといううわさを聞いております。そういたしますと、委任状勧誘規則自体も直すということになりますと、また今度の新しい制度とどのように整合性を保たせていくかという問題もありますので、当分の間これも置いておくというたてまえから、両方の制度の併存を認めることにしたいということでございます。
  118. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、第二百四十七条の一の二の項になりますか、現行法では、総会の決議の内容については、定款に違反するときは総会決議無効確認の訴えの理由となる、こういうふうになっているわけですが、今回の改正法律案におきましては、決議取り消しの訴えの理由としている。私は全く素人で、ここらあたりの細かいことはわかりにくいのですけれども、どうも非常に後退してきているような気がするわけですが、この点につきましての御説明をいただきたいと思います。
  119. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  御承知のように、総会決議取り消しの訴えと申しますのは、総会の決議がありましてから三カ月内に、一般の会社におきましては取締役監査役または株主が訴えを提起できることになっているわけでございます。これに対しまして総会決議無効確認の訴えというのは、そういう無効原因がありましたときはだれからもいつでもその主張ができるということになっているわけでございます。現行法のもとでは、決議の内容が定款に違反するときは無効確認の訴えの原因になっているということでございます。  ところが、この定款と申しますのは、言ってみれば会社の内部規律でございます。会社の内部規律に違反したということについて何人もがいつでも主張できるということ自体、ちょっといろいろ問題があるのではないか。内部規律違反というのは、あくまでそれに縛られる会社内部の人ということになるわけでございますから、その違反があったということで主張できるのは、株主なり取締役なり監査役だけでよろしいのじゃないか。また、そういう内部の人であるならば、そういつでも訴えが提起できるというまでの必要がないのじゃないか、内部の人であればそれを早急に知ることができるわけでございますから、そういう点からも、取り消しの訴えの原因としてできるだけ法的関係を安定させたいということでございます。
  120. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 さらに、総会の決議の関係でお尋ねいたしたいのですが、これも現行法では総会の決議に特別の利害関係を有する株主は議決権を行使することができない、こういうふうにされているわけであります。第二百三十九条の五項で「総会ノ決議ニ付特別ノ利害関係ヲ有スル者ハ議決権ヲ行使スルコトヲ得ズ」、こうなっているわけですが、改正法律案の中ではこれを削除いたしておるようでございますが、この点についての御説明をいただきたいと思います。
  121. 中島一郎

    中島(一)政府委員 現行商法によりますと、総会の決議について特別利害関係を有する者ということになっておるわけでございますけれども、この特別利害関係を有する株主の範囲というものが必ずしも明確ではないわけでありまして、これまでも実務上あるいは裁判上いろいろ問題があったわけであります。会社の実質的な所有者であります株主について、利害関係があるからといって議決権を行使させないことは適当ではないのじゃないか、むしろその行使を許すことにして、その上で、そういうものに行使させたことによって特に不都合な結果が生じました場合には、これを決議取り消しの事由とすることによって是正を図るということの方が適当ではあるまいかということを考えたわけでございます。
  122. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、取締役関係に入りたいと思います。  改正案の二百五十四条ノ二の中で、取締役たり得ない対象をずっと挙げてあるわけでありますが、これは試案と比べてみますと、試案の方ではこの対象として法人が入れてあったと思います。ところが、これが今度の改正案の中では削除されているわけでございますが、この削除されました理由をお聞かせ願いたいと思います。
  123. 元木伸

    ○元木説明員 現行法のもとで法人が取締役になれるかという問題でございますけれども、これにつきましては、実際はなれないのではないかという解釈が強うございます。その理由といたしましては、取締役と申しますのは、その個人の業務執行に対する能力を信頼された上で選任されるということになっているわけでございまして、その観点から見まして、当然のこととして法人は取締役になれないという解釈が出ているようでございます。もし現行法のままの解釈が通用するということでございますれば、この新しい改正法案のもとにおきましてもそういう解釈ができるのではなかろうかということで、一応法人はなれないということにしておいてもよろしいのではないか。もちろん将来いろいろと事情が変わってまいりました場合には、その解釈も変わってきまして、法人も取締役になれるという考え方も出てくるかと思いますけれども、それはそのときのことといたしまして、またそのときに考えればよろしいのではないかということでございます。
  124. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今度は、ちょっと違いますけれども、二百六十条の二項でお尋ねをいたしたいと思います。  今回の改正法律案で本項が新設をされているわけでありますが、取締役会が決議する事項を列挙してあるわけですね。こういうふうにしてある目的はどういうところにあるのか、この点をお尋ねいたします。
  125. 中島一郎

    中島(一)政府委員 会社の業務執行につきましては、取締役会が決定するというのが原則でございます。これは従来から商法二百六十条の第一項に定めておるわけでございますが、実際には、すべての業務執行について取締役会が決するということは不可能でありますために、その一部についての決定は代表取締役に委任せざるを得ないというわけであります。しかしながら、余りに過大な権限が代表取締役に移されることは、取締役会の権限の弱体化につながるということで、今回の改正案におきましては、ただいまの御質問にありました二百六十条の二項におきまして、取締役会がみずから決定をしなければならない事項、したがって代表取締役には委任することができない事項というものを列挙いたしまして、これによって取締役会の専決事項を明確にいたしまして、代表取締役に対する監督権限の強化を図ったということでございます。
  126. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 二百六十条の二項で、いま問題になったわけですが、  取締役会ハ左ノ事項其ノ他ノ重要ナル業務執行ニ付テハ取締役ニ決セシムルコトヲ得ズ  一 重要ナル財産ノ処分及譲受  二 多額ノ借財  三 支配人其ノ他ノ重要ナル使用人ノ選任及解任  四 支店其ノ他ノ重要ナル組織ノ設置、変更及廃止 こういうように四つの項目がうたわれているわけであります。試案の段階といろいろ比較してみますと、これはどうかなという点が若干あるのですが、この点についてお答えをいただきたいと思います。  まず第一点のお尋ねは、二の項目で「多額ノ借財」とうたわれておりますけれども、これは試案の段階では、「重要な寄附、出資、貸借、保証及び担保の供与」というふうに明確に一つずつ例示がしてあったと思うのです。これが「多額ノ借財」という形でくくったと申しますか、表現されているわけです。これはやはり試案のようにきちっと書いた方がいいのではないかというふうにも思うのですが、この点についてお尋ねをいたします。
  127. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  試案と二百六十条の二項に列挙いたしました事項とが違っているという御質問でございますけれども、この条文を起案いたしました立場としましては、試案とは全く内容は変えないというつもりで書いたわけでございます。したがいまして、試案では、先生御指摘のように、寄付、出資、貸借、担保、保証というふうなことが挙がっていたわけでございますが、たとえば寄付、出資、貸借、それから担保に供するということは、「重要ナル財産ノ処分」で読めてしまうのではないかということでございます。また、保証につきましては、これは条件つき債務の負担であるということでございますので、「多額ノ借財」の中で読めるのではないかということで、内容を変えるという意図はなかったわけでございます。
  128. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 こういう法律的な書き方というか読み方というのは、私も再々申し上げますように素人で非常にわかりにくいのですが、「多額ノ借財」という中できちっとした形で運用できるということであればいいのかとも思いますが、この点についても、いまの答弁はきちっとした形で理解をしておきたいと思います。  次に、三の項目で「支配人其ノ他ノ重要ナル使用人ノ選任及解任」とあるわけですが、この「重要ナル使用人」というのは、具体的に言いますとどういう使用人を言うのか、この点についてお尋ねをいたします。
  129. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  この「重要ナル」という言葉でございますけれども、これは現行の商法の二百四十五条等でも使われているわけでございますが、あくまでその会社にとっての相対的な概念ということで「重要ナル」という言葉を使っているわけでございます。したがいまして、この「重要ナル」というのは、一律に、たとえば部長が入るのだとかあるいは課長が入るのだというふうなことは必ずしも申し上げられないわけでございますけれども、少なくともその会社にとりまして相当な権限を持っている、そういう使用人はこの中に入るということで御理解いただきたいと思います。
  130. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そうしますと、大きな会社、小さな会社、零細といろいろあると思いますけれども、こういう中でいろいろと、会社の内容によってはこの「重要ナル使用人」の内容といいますか、これが変わってくるということになるわけですね。
  131. 元木伸

    ○元木説明員 仰せのとおりでございます。
  132. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、四の項目で「支店其ノ他ノ重要ナル組織ノ設置、変更及廃止」とうたわれておりますが、この「重要ナル組織ノ設置、変更」という点について、具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  133. 元木伸

    ○元木説明員 「重要ナル組織」の中には、もちろん工場あるいは営業所で支店と並び称せられるくらいの規模を持っているものが入りますし、そのほかの組織の面といたしましては、事業本部をつくるとかそういうことが入るかと存じます。
  134. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 先に進みますが、業務担当取締役の件についてお尋ねをいたしたいと思います。  これは試案の中で、会社代表権と業務執行権は必ずしも一致しないというようなことで、会社の内部における業務執行を担当する取締役に関する規定を設けて取締役の業務執行に対する権限と責任を明確にすべきだ、こういう意見があったというふうに聞いておりますが、いわゆる業務担当取締役についてはそのときになお検討することというふうにされていたようでありますけれども、今回の改正法律案の中ではこれが取り上げられていないという状況にありますが、この理由はどういうところにあるのか、お尋ねをいたします。
  135. 元木伸

    ○元木説明員 今回の商法改正法制審議会商法部会における審議におきまして、取締役会というものをどのように考えていくかということで二つの方向があったわけでございます。一つは、取締役会というものはあくまで監督権限を有する合議体ということで、それは理想的な形といたしましては代表取締役の上にありましてこれを指揮監督していくという考え方と、それからもう一つは、現実に目を向けまして、言ってみますれば代表取締役を頂点といたします一つのヒエラルキーといいますか、そういう形で、その中に経理部長であるとか総務部長であるとか、いわゆる業務を担当しながら取締役仕事もしていく、言ってみれば代表取締役の下にあるような取締役、そういうものの存在を認めた上でこの責任を明確にしていく、この二つの考え方があったわけでございます。  でございますから、これは両方とるというわけにはまいりませんで、いずれか一つをとらなければいけないわけでございますけれども、結局最後には、理想的な形ということで、この取締役会というものはあくまで代表取締役を指揮し監督していくという権限を持つ合議体であるということにしたわけでございます。そうしてまいりますと、今度はいわゆる業務担当取締役という観念は、これは一応今回は見送らざるを得ないということになりまして、今回は何も規定しなかったわけでございます。
  136. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 一応見送らざるを得ないということは、将来また検討はしていこうという、こういうことでしょうか。
  137. 元木伸

    ○元木説明員 これは当然将来検討していかなければいけない問題だろうと思います。
  138. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 じゃ、次に進みまして、これは午前中小林委員もたしか触れられておったと思いますけれども、ちょっと重複いたしますが、二百六十条ノ四の四項、取締役会議事録閲覧の件でお尋ねをいたします。  この件については、現行法では株主、債権者はいつでも取締役会の議事録を閲覧することができるというふうにされているのに、今回の改正法律案では「裁判所ノ許可ヲ得テ」ということで、制限されているわけですね。これはディスクロージャーの強化という方向から言えば大変反するものじゃないか。また、別の面からいいますと、これは株主の権限を縮小するという方向にあるのではないか。それであるのに、なおかつこういうふうに「裁判所ノ許可ヲ得テ」ということを入れたその理由についてお尋ねをいたします。
  139. 中島一郎

    中島(一)政府委員 先ほども申しましたように、取締役会というのは会社の業務執行を決定をする機関でありますので、業務執行の決定には本来企業秘密に属する事項が多く存するわけでございます。それが無条件で開示されるということになりますと、会社利益を害するおそれがございます。そのために、無条件の開示を定めております現行法のもとにおきましては、むしろ企業秘密に属することは取締役会にかけない、あるいはかけても議事録には記載しない、さらには、なるべく事実上議事録を閲覧させないというような扱いが行われていたというふうに聞いておるわけでございます。  これではむしろ法の理想とするところに反することになりますので、今回の改正におきましては、裁判所で企業秘密と株主、債権者の閲覧の権利というものを比較考量した上で、取締役会議事録の開示をさせることにしたわけでございます。これによって実質的にはディスクロージャーを充実することになったということに考えております。
  140. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いま御答弁になったように、ディスクロージャーを充実するということは、別に言えば議事録の内容が大変豊かになるというようなことにもなろうかとも思うのですけれども、しかし、実際に株主会社の債権者の役に立つような充実したものに本当に行くんだろうかというふうに思うのです。この件に関していろいろ学者の方々も議論しているのを見てみますと、見通しとしてはまずないんじゃないかという非常に断定的な意見を持っている方が多いようでありますけれども、そこらあたり、いまおっしゃったような形に行くという自信がおありなんでしょうか。これを重ねてお尋ねをいたします。
  141. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  これはたてまえといたしまして、およそ取締役会で決議されたこと、あるいは審議されたことにつきましては議事録等を作成するということになっておりますので、これは当然作成してもらわなければいけないわけでございます。それと同時に、従来からとにかく取締役会議事録は簡単にしか作成しない、それはいわゆる総会屋のえじきになってしまうからだというような、言ってみれば隠れみのと申しますか言いわけと申しますか、そういうものは今回法制上もなくなったわけでございますので、その点でさらに詳しいものはつくってもらえるのではないかと期待しております。
  142. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまのところでもう一点お尋ねしておきますが、「株主ハ其ノ権利ヲ行使スル為必要アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ前項ニ掲グル議事録ノ閲覧又ハ謄写ヲ求ムルコトヲ得」云々とあります。「株主ハ其ノ権利ヲ行使スル為必要アルトキハ」というふうにありますが、裁判所に許可を得る前提として、これは具体的にはどういうふうなときを指すのか、この点についてお尋ねをいたします。
  143. 元木伸

    ○元木説明員 具体的な例といたしましては、まず商法の二百六十六条に列挙してございます取締役会社に対して損害賠償あるいは弁済義務を負うという場合、株主代表訴訟をする場合ということになろうかと思います。それからまたそのほかには、商法の二百六十六条ノ三に基づきまして取締役に対して損害賠償請求をする、そういうことが考えられるかと思います。
  144. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 まだもう一つ具体的に欲しいような気もいたしますが、その点については幅も持たせながらやる方向で、この法が通りました暁には実施をされるべきではないかと思います。  次に参ります。今回の改正法律案の中で、第二百六十六条の四項になると思いますが、取締役取締役会の承認を受けないで競業を行ったときについては、会社のこうむった被害額の推定規定というものを置いているようでありますが、これを置きました理由についてお尋ねをいたします。
  145. 中島一郎

    中島(一)政府委員 競業的な取引が行われました場合に、それによって会社に具体的にどれほどの損害が発生したかということを算出をする、証明をするということは、これはかなりむずかしい問題でございます。で、その困難を解消いたしますために二百六十六条の四項は、会社の得べかりし利益の額は、競業取引をした者の得た利益の額と推定をするという規定を置いたわけでございます。
  146. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に参りまして、取締役計算書類等についての件についてお尋ねをいたします。  この計算書類等については虚偽記載の責任というものがあるわけですが、これを過失責任というふうにしてあるのはどういう理由によるのか、お尋ねをしたいと思います。この件は、取締役の責任強化という方向から見ると大変逆行をしているんではないか、私たち素人目に見てそう思えるのですが、この点について御説明をいただきたいと思います。
  147. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  現行の二百六十六条ノ三の一項でございますけれども、これは、取締役が職務の執行について悪意または重大な過失があったときは、それによって第三者に損害を与えた場合、第三者に対して直接責任を負うというのが前段になっております。そういたしまして、その後段で、計算書類等についての虚偽記載があった場合も同様であるという規定になっております。文理解釈からいいますと、その虚偽記載についても悪意または重大な過失があった場合にだけその責任を負うのかというようなことでございますけれども、これもいかにも結論としてはおかしいわけでございまして、そのために、この後段、つまり計算書類等の虚偽記載については無過失責任であるというような意見がかなり強いわけでございます。しかし、今回改正するに当たりまして、そしてその取締役の責任を明確にするという点からしますと、この点は何らかの意味で法文上明確にしなければいけないんじゃないかということでございます。  そこで、当然現行法の解釈のとおり無過失責任であるというふうな考え方にするという考え方もあり得ると思うのでございますけれども、ただ、現在わが国の私法原則といたしまして過失責任主義であるということでございます。過失責任主義をとるということは、やはりそれぞれの人の経済活動の自由というものを保障するという点から重要な原則だと思うのでございますけれども、その点から見まして、いきなりこの点について無過失責任にしてしまうということもいかがであろうかということでございます。したがって、過失責任にしたわけでございますけれども、ただ、取締役の職務の重要性ということを考えますと、それからまた、現在の証券取引法等の書類の虚偽記載についての責任というような点を考えまして、立証責任を転換いたしまして、この取締役の方で自分に過失がなかったということを立証しなければ、責任を負わなければいけないということにしてございます。
  148. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、議決権の行使の中でお尋ねをしたいのであります。  書面による議決権の行使ということがうたわれているわけでありますけれども、この書面による議決権の行使が実際あった場合に、会社としてはこれをどのように取り扱ったか、確認する方法はあるのだろうかと思うのですが、この点について御説明をいただきたいと思います。
  149. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  まず、これは今回新しくつけ加わった条項でございますけれども、この書面による投票でございますけれども、この書面投票用紙につきましては総会会社の本店に備え置いておかなければいけないということになっております。したがいまして、もしこれを見たい人はこれを閲覧、謄写することができますので、その書面投票によってどのように議決数が計上されているかということが明らかになるわけでございます。  さらにそのほかに、これも新しい制度でございますけれども総会の決議の方法及び手続につきまして検査役の選任を請求することができるということになっております。したがいまして、もし問題がありそうだというときには、あらかじめ検査役を選任しておいてこれを勘定してもらうということも可能でございます。
  150. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に進みまして、第二百八十一条ノ三の二項の五号になるかと思いますが、今回の改正案の中でこの五号を新設いたしまして、監査報告書の記載事項の範囲を拡大していると思うのです。この中で、会計方針の変更についての意見を記載させるということにしてあるわけですが、これはどういう理由に基づくのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  151. 中島一郎

    中島(一)政府委員 会社計算書類を作成するに当たりまして採用すべき会計処理の方針というものは、必ずしも一つに限られるわけではございませんで、複数の処理方針というものがあるわけであります。会社は、複数の処理方針のうちで一つの方針を選択することができるというわけでございます。この場合に、前の営業年度の決算において採用した会計処理方針を次の営業年度において他の適法な処理方針に変更するということ、そのこと自体は何ら違法なことではないわけでありますけれども、このような会計方針の変更が行われますと、複数の営業年度の期間損益の比較をする場合に非常に困難を来す場合がありまして、その結果、それが不当な目的による利益操作に用いられる場合が考えられます。  このために、今回の改正案におきましては、会計方針の変更自体を禁止することはいたしませんけれども、会計方針の変更があった場合には、会計の専門家である会計監査人及び会社機関でありまして社内事情に詳しい監査役に、その方針の変更がどのような影響を及ぼすか、さらには、その会社の置かれた状況のもとにおきましてその変更が相当かどうかということの意見監査報告に記載をさせるということにいたしまして、計算書類から会社の財務状況がより的確に把握できるようにということを考えました。さらに、会計方針の変更の乱用による不当な利益操作を防止しようというのがこの規定のねらいでございます。
  152. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に監査報告書、これに関してお尋ねをしたいのですが、今回、附属明細書とそれから貸借対照表などのその他の書類に対するものと区別せずに一本化をした理由、これはどういうところにあるのか、お尋ねをいたします。
  153. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  現行法のもとにおきましては、監査役計算書類と附属明細書が来る時期が異なっておりますので、言ってみればすれ違いでございます。つまり、計算書類について監査報告書を作成しまして、これを取締役に提出したのと引きかえに――引きかえというとちょっと言葉が穏当ではございませんけれども、同じ日に附属明細書が手に入るということになります。したがいまして、これは物理的にも計算書類に対する監査報告書とそのほかに附属明細書に対する監査報告書、これを二つつくらなければいけないわけでございます。このような計算書類と附属明細書のすれ違いにつきましては、特に会計監査人等から、計算書類と附属明細書が同時に手元にあるようにしてほしいという要望が非常に強かったわけでございます。したがいまして、今回の改正法律案におきましては、一週間程度でございますけれども会計監査人及び監査役にこの計算書類と附属明細書が同時に手にあるという期間を設けたわけでございます。そういたしますと、その間に附属明細書の方も監査いたしまして、監査報告書がつくれるということでございます。  ただ、一週間ということになるといかにも短いのではないかということでございますけれども、これは監査役会計監査人とも、監査というのは期中監査が主でございまして、何も計算書類をもらってからあわててすべて監査するということではございません。したがいまして、実際に計算書類あるいは附属明細書をもらってからの監査というのは、言ってみれば整合性があるかどうか、計算違いがないかというような後始末の問題でございますので、一週間程度附属明細書と計算書類が同時に手元にあるということでも監査報告書は作成されるのではないかということでございます。
  154. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それでは次に、半期報告制度についてお尋ねをしたいと思うのですが、これは試案の中では、年一回決算会社についての半期報告書を作成して株主に送付する旨の定めがあったようでありますけれども、今回の改正法律案の中ではこれが取り上げられていないわけですね。この点について、私どもはぜひ必要ではないかと思うのですが、この点についての御説明をいただきたいと思います。
  155. 元木伸

    ○元木説明員 仰せのとおり、この半期報告書を作成するということは、ディスクロージャーができるだけ細かくなる、多くなるということで、デイスクロージャーの強化という点からいいますと非常に望ましいことでございます。ただ、実際にはわが国で半期報告書を作成している会社がまだまだ少ないというような実情もございます。それとまた、業種によりましては、かえってミスリードをしてしまうというような結果になる業種もあるわけでございます。たとえば損害保険会社でございますと、これは営業年度というものを余り短く区切って会計報告をさせるということになりますと、その保険事故発生率というものが正確につかめないということで、コスト計算などにも問題が出てくるということもございます。あるいは季節産業でビール会社等でございますと、前期と後期ではなはだしい差が出てくるという問題もございます。したがいまして、半期報告書を作成させるためにはそういう点をどのように解決するかという、まだ解決すべき問題が残っておりますので、これはさらに検討するということで、今回は入れなかったわけでございます。
  156. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 入れるに至らなかった理由についてもお答えはいただいたのですけれども、これは報告制度をとった方がいいという会社も場合によってはあるだろうと思うのです。要するに、営業年度途中で会社の内容が非常に悪化したということ、最近倒産件数も年々記録を更新するほど多くなっております。そういう中にあって、自分がこの会社だと思っておったところが、一年の決算を見たところがもうことっといっていた、こういう心配もないとは限らない。逆に言えば、そういう株主の方々を守るためにも、こういう決算半期報告書制度というものはぜひ必要ではないかと思うのです。  さらに、ここに大和証券調査部の一九八〇年度版の株主総会報告書というのがございますが、これの中に半期報告書制度についてのアンケート調査をした結果が出ているのです。これを見ますと、「妥当と思う」、「妥当と思わない」、「無回答」、こういう中で、「妥当と思う」、これは株主の方がお答えになっているのだろうと思うのですが、総数六百三十三名のうちの三百二十一名、五二・三%というふうに過半数を上回っているのですね。こういう結果があったのに、どうしてこれが、検討はしますとはいうものの、取り入れられなかったのかというのは私も非常に疑問に思うわけです。将来検討するとは言っておられるわけですけれども、そういったことからいっても、これは早い機会にやるべきだろうと思うのですが、再度この点についてお答えをいただきたいと思います。
  157. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  おっしゃいますとおり、確かに半期報告書制度をつくるということはディスクロージャーの強化につながることでございまして、非常に望ましいことでございますが、むしろ商法という立場になりますと、それぞれ個別的にいろいろ性格の違う業種を通じて全部について半期報告書制度を強制するということになるわけでございまして、そういうことになりますと、先ほども申しましたように、業種によってはミスリードをする、あるいはかなり無理な要求になるということもございますので、その点をどうしてもクリアしなければいけないのじゃないかということでございます。したがいまして、そういう問題を解決した上でやりたいということでございます。
  158. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に参りたいと思います。  第二百八十七条ノ二の項だと思いますが、いわゆる特定引当金に関する規定について今回改正しようとされているようでありますけれども、この趣旨についてお答えをいただきたいと思います。
  159. 元木伸

    ○元木説明員 貸借対照表の負債の部に何を計上すべきかということになりますと、原則として法律上負債として認められたものを計上するということになろうかと思います。ところが、必ずしも負債でなくても、たとえば五十五営業年度におきまして機械が動いていた場合に、その機械が動いたために修繕が必要になった、しかし、五十五営業年度では修繕の契約はできていない、五十六営業年度で初めて修繕契約ができて負債になるという場合でございますと、実は機械は動いております、それで、機械が動いていろいろ物を生み出して利益も上げているということになりますと、その修繕費というものをその営業年度に計上いたしませんと、期間損益の比較のため、あるいは会社の正当な財務状態を開示する上からいいますと、どうしても不当なのではないか、やはり正当に表示するためには、そこで負債の部にその修繕費を計上した方がいいのではないかという問題がございます。そのために、そういう修繕引当金を立てるということが認められているわけでございます。  このようないわゆる将来負債となる、当然費用として計上されるものを引当金として立てることにつきましては問題がないわけでございますが、現行法のもとにおきましても、たとえば何十周年記念事業引当金というようなもの、つまり、本来そういう費用ではございませんけれども利益を留保するという性質の引当金が立てられるかどうかということにつきましては、現行法でもいろいろ議論がございます。ところが、そういういわゆる利益留保性引当金というものを現行法のもとでは立てる、立てないということは、理屈の問題ではいろいろ争いがございますけれども、実際の結果としてはそれほど大きな問題はないということでございます。それはなぜかと申しますと、現行法のもとでは、貸借対照表、損益計算書、それから利益金処分案、すべて株主総会の決議事項ということになっておりますので、一括してこれを決議してしまえば、そこで問題は起こってこないということでございます。  ところが、今回の改正案におきましては、大会社につきましては、貸借対照表と損益計算書は、会計監査人監査役の適法意見があったときは株主総会の承認を要しない、それに対して利益金処分案は株主総会の承認を要するということになってきますと、承認の機関が異なってくるわけでございます。そうすると、そういう利益留保性の引当金というものを貸借対照表の部に計上するということになってきますと、承認の機関が違ってくるのではないか、したがって、たとえば取締役会で貸借対照表を確定しようとしましても、利益処分案についての総会の承認ができるまでは確定できないというような問題が起こってくるのではないかということから、利益留保性の引当金というものを除外しなければいけないのではないかという問題がございます。  それからもう一つは、これは当然のことでございますけれども、本来費用というものを負債の部に計上して期間損益を明確にしていくことが目的でございまして、それ以外の利益留保性のものを引当金として計上することになってくると、そういう会社の財務状態を正確にあらわすという点から見ますと、どうも焦点がぼけてきやしないかという問題がございます。したがって、今回は、そういういわゆる利益留保性の引当金というものを排除するということで規定を改めたわけでございます。
  160. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今度は最後の質問で、第三百四十一条ノ八「新株引受権附社債」について、先日も私ちょっと御質問は申し上げたのでありますが、再度、違った角度から御質問を申し上げたいのです。  この新株引受権つき社債発行を認めるということは、この前も御答弁をいただいたと思いますが、確かにメリットも十分考えられるわけでありますが、別な面から言いますと、わが国にオプション制度を導入することにはならないのかというふうにも思うのですが、この点についてお尋ねをいたします。
  161. 元木伸

    ○元木説明員 お尋ねのように、新株引受権つき社債につきましては、新株引受権というものが社債権者に与えられるということになりまして、ことに分離型をとりました場合には、新株引取権証券が社債券とは別に流通するという点で、あるいはオプション制度を導入したのではないかという御疑問もあるかと思いますが、今回の改正案におきましては、そこのところはまだ踏み切ってはおりません。したがいまして、その具体的な結果といたしまして、今度の改正法律案の三百四十一条ノ八の三項「各新株引受権附社債ニ附スル新株ノ引受権ノ行使ニ因リテ発行スベキ株式発行価額ノ合計額ハ各新株引受権附社債ノ金額ヲ超ユルコトヲ得ズ」ということで、あくまで制限を設けまして、新株引受人だけが大きくふくらんでいくということを防止しているわけでございます。
  162. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 時間が若干残りましたが、私が用意いたした質問も終わりましたので、本日はこれで終わらしていただきますが、きょう逐条的に御質疑申し上げた内容も再度検討いたしまして、またこの法案に対する態度も決めていきたいと思いますし、さらに参考人等の御意見等も承り、質疑の機会もあるようでございますので、後にまた残された問題を質疑する中で明らかにしてまいりたいと思っております。  きょうは大変ありがとうございました。
  163. 高鳥修

    高鳥委員長 岡田正勝君。
  164. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は、四月二十一日の質問のときに、二時間の時間をかけまして六点にわたりまして、法務省、大蔵省、警察庁に質問をしたわけでございます。その中で残りました質問点を、労働省の関係がずいぶん残っておりますので、質問をさしていただくわけでございますけれども、先般六点質問いたしました中の一つである株主の提案権という問題について、労働省に関連して、本日質問する六つのうち四つが関連して質問として出ますので、そのいきさつをちょっと聞いておいていただきませんと何のことやらさっぱりわけがわからぬ、こういうことになりますから、質問の内容は簡単でありますが、株主の提案権の問題について、ちょっと前知識として私の主張点を聞いておいていただきたいと思うのであります。  さて、今回の法改正で大きな目玉の一つといたしまして、非上場会社あるいは中堅企業というような会社に対する単位株制度との問題でつながりがあるわけです。簡単に申し上げますと、中堅企業というのは、非上場会社というのは単位株制度を採用しないと非常に不利になります。しからば、定款を変えれば単位株制度をとれるということになっておりますから、定款を変えて単位株制度をとればいいじゃないか。ところが、単位株制度をとってもまた不利となります。そこで、これはえらいことになったというので、そこで気がついてもう一遍定款をやり変えて元の中小会社に戻ろうといたしましても、それはだめだよと法律規定をしてあるのであります。まさに前に行くこともできなければ、後ろに退くこともできない。言うならば王手飛車取りという状態に追い込まれるのであります。  そこで、何のことかおわかりにならぬと思いますから、少し中身のことを申し上げておきますと、なぜ中小企業が不利になるんだろうかという一つの例であります。時間がありませんので一つだけ例を申し上げますと、その中に提案権という問題があります。この提案権というのは、今度の法律改正をされますと単位株制度というのがとられますけれども、通常言いますところの、今回の法改正があれば、資本金五億円以上の大会社単位株制度にどうしても従わなければならなくなるわけでありますけれども、その他の中小会社におきましては、その株数の百分の一、一%または三百株の株主であれば株主総会に提案をする権利を持っておる、こういうことになっておるのであります。  さて、その三百株の株主から提案をされましたならば、それは総会の招集通知状にその議題をはっきり明記しなければならない、こうなっております。しかもそれが一人で提案、いわゆる三百株を一人で持っておらなければいかぬのかというと、そうじゃありません。五、六人の人でも構わないわけであります。だから五、六人の人が集まりまして三百株集めて提案をすることができるということになるので、総会においていきなりぽっと手を挙げて発言するのとは違うのであります。招集通知状にはっきり書かなければいかぬ。たとえば提案された内容がまことにショッキングな問題でありまして、いままで健全に隆々とやっておる会社株主総会へ、会社解散に関する件とか、あるいは代表取締役解任に関する件というふうな問題が出ても、これは書かなければなりません。ということになれば、会社にとっては大変なイメージダウンになることは間違いのないことであります。  そこで、この法改正が通りますと、来年の五十七年十月一日よりは、新会社設立のとき額面が一株五万円に引き上げられます。無額面の株式でありましても、五万円相当のものでなかったらだめであります。またさらに、無償交付をいたす場合でも、一株当たりの純資産が五万円以下ではだめ、株式分割も準用して五万円以下はだめ、こういうふうに分析をしてまいりますると、今回の法改正にあります二百三十二条ノ二というものはわざわざ三百株という規定が残してありますが、この三百株というのは明らかに三百単位株を指しておるのではないか、ここに非常な間違いがあるのじゃないか、いわゆる大会社だけを念頭に置いてつくり変えた法改正ではないかなと思わざるを得ないのであります。  さてそこで、これが通りますると、新会社だけではなくて、いままでにありました会社にも全部それが適用されるわけでありますが、その人たちはいわゆる単位株制度をとらない限りいままでの株でよろしいわけです。そこで、五十円株のいわゆる百分の一もしくは三百株ということになりますと、五十円掛ける三百株ですから、一万五千円くらいの株を持っておれば容易に提案をすることができる、株主総会に提案をすることができる、こういうことになるわけです。それでしかも、その提案権というのは、先ほど申し上げたように、一人でなくてもいい。数人で三百株でもよろしいわけであります。これはその提案をすれば、総会の招集通知状に書かなければならぬという非常に重要な問題を含んでおります。それを印刷したからといって総会にかければ、恐らく現在の体制としたら、何を言うとるかといって、通るはずはないでしょう。否決されることは間違いないと思います。ところが、否決はされましても、会社のイメージダウンだけは逃れることはできませんという重要な問題を含んでおるのであります。  ところが、片や上場会社、いわゆる資本金五億円以上という会社になりますると、今度は五万円株になるわけでありますが、たとえての話、五十円の株をいま持っておるといたしますと、千株集めれば五万円になりますから、そうするといわゆる単位株五万円としてこれは成立するわけであります。ところが、上場会社の場合の提案権というのは、百分の一または三百単位株となっておりますから、ということは、中小会社で言う一株というもので言えば三十万株持っていなければ提案権を有しないということになるのであります。大会社の場合は三百単位株ということになれば、一単位が五万円ですから千五百万円、千五百万円の株主ともなればこれは非常識なこともまずまずあり得ない、非常識なことはしないであろうという予測も十分につき得るわけでございます。  そこで、そんなに上場会社のまねがしたいなら、会社のイメージダウンになることが非常にこわいなら、この際どうや、あなたのところも、非上場会社であっても構わぬのだよ、定款さえ変えれば単位株制度がとれるんだよということを指導しております。単位株制度をとったらいいんだよということを指導します。ところが、それでは単位株をしましょうといって定款を変えて単位株にしたら、一体どういう問題が中小企業に起きるでしょうか。それは単位未満株というものが出てまいります。いわゆる一単位――いま五十円の場合ですが、千株に満たない場合の株があります。これは配当金を受けるだけでありまして、他にこれといった特典はない。一割配当があったって一株五円でございますから、こんなものいつまで持っておってもしようがないというので、その単位未満株を会社に買ってくれ、こう言う。今度は、買い取り請求があったら会社はこれを買わなければならないとはっきりなっておるわけです。  それを今度は買うとなりますと、これに応ずることになったら一体どういう問題が起きるかといいますと、その買い取り価格というのは、上場企業であれば毎日の新聞で御承知のようにその株の値段がちゃんと出ております。ところが、非上場会社のような会社でありますと、公開していないわけですから株の値打ちがわかりません。値打ちがわかりませんから、その会社がこれは五十円株ですから五十円でなら引き取りましょう、それには応じられぬ、そんな安いものではないということになって、裁判所へ訴えるという道が開けています。裁判所に訴えれば、この間大蔵省を呼んでお話を聞きましたように、当然これは相続権の問題のときに財産評価を税務署がいたしますが、その評価額をもって裁判所へ連絡をいたします。裁判所はその金目をもって判決といたしますから、たとえばこの間もお話ししたのでありますが、広島県の賀茂鶴という有名な酒屋さんがあります。この酒屋さんは、資本金二百万円で一株の額面は五十円です。年間配当一割を続けておりますが、配当金は一株五円であります。その株券を二万六千円で買い取れというのですから、たまげた話であります。  そこで、二万六千円でその会社が買い取ったからといって、この株をだれかに売ろうといったって、五十円と書いてある株券を二万六千円で買うばかは世の中におらぬでしょう。たとえば、あなたのことだから買うておこうかというので五十円の株券を二万六千円で買ったといたしましても、一年間のその一株に対する、二万六千円に対する配当は額面の一割ですから五円でございます。こんなあほなことに、そんな酔狂なことに金を使う人がおるでしょうかね。というようなことになってきますから、したがって、買い取りました株というのは全部自社株で抱えてしまいます。自社株で抱えるということは、資金枯渇に通ずることです。商売をなさる方が資金がなくなってきたら一体どういうことになるか、これは自明の理でございます。  しからば、上場会社はどうかといったら、買い取り請求が来ましたって、何ぼ来たって平気であります。その来たものは、ちゃんと値段がわかっているのですから、隠れもない、毎日新聞に出ているのですから、それをどんどん買い取りまして、それをまたすぐ兜町へぽんとほうり投げれば、兜町の方でたたたっと一日のうちに何千万株あったってさばいてくれます。一つも影響はありません。そこで資金不足を生じるということも、したがってありません。  そこで、その次に申し上げたいことは、賀茂鶴のこともいま御説明を申し上げましたから、その例を見てもおわかりになりますように、今回のこの法改正というのは、定款を変えれば単位株制度になり得る、なったら今度は引っ込みがつかぬ。買い取り請求が来る、資金枯渇になる、逃げてまたもう一遍戻ろうかと思ったら、どっこいそれは戻られぬ、法律で決めてある。全く王手飛車にかかったようなものでありまして、どうにもできぬようになる。だから、私は口が悪いようでありますが、今回の法改正がこのまま通りましたならば、非上場会社、中堅会社等にとりましては命取りになりはしないかという、きわめて危険なものがこの中に含まれておると言いたいのであります。そういうことをひとつ頭の中に含んでおいていただきたいと思います。  さらにいま一つの問題は、よく言われますそれだったら無償交付すればいいじゃないか、株式分割すればいいじゃないかというようなささやきが聞こえてくるのでありますが、それがどっこい、できぬことになっております。無償交付をしようと思えば、これも一株が五万円でなければできません。五十円じゃ出せないわけです。そして株式の分割もそのとおりでございます。純資産で五万円を下ってはならない、こういうふうに相なっております。ということになれば、たとえばいまさっき例に挙げましたが、広島県のごくごく優秀な企業であると言われた賀茂鶴のようなところでさえ、これは昭和五十一年の例でありますけれども、一株五十円の株を相続のときの財産評価にかえて評価したら二万六千円でございましょう。なかなか一株五十円の株が五万円に評価される企業なんというのは、私は中小企業の中ではまずまず皆無に近いのではないかというふうに思っておるのであります。  片や上場会社はどうなるのかといいましたら、上場会社が無償交付や株式分割をいたします場合はやはり五万円でなければなりませんけれども、その五万円というそのものは、いわゆる五十円の株を千株集めて一単位としておるとするならば、その五万円は千株で割って五十円と読みかえができるようになっておるわけであります。したがいまして、上場会社はこれが五万円になったからならぬからって、一つも痛いもかゆいもありません。いままでと全く同じ姿で、同じ状態で経営ができるわけであります。  こういうふうになってまいりますから、私は、今度の株主の提案権という問題は特に特に慎重にお考えをいただかなければいかぬ、こう実は申し上げてきたわけでございます。意見は分かれたままでございますが、以下、今度は外国の例は一体どうなっておるだろうかということにつきまして、まず法務省の方からお尋ねをしてまいりますが、アメリカの各州会社法はこのような株主提案権の規定一体どうなっておるでしょうか。それからイギリスやドイツではどうなっておるでしょうか、おわかりならお知らせいただきたいと思います。
  165. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  アメリカの各州におきましては、株主の提案権に関する規定はないようでございます。これは各州全部調べたわけではございませんけれども、少なくとも見たところでは各州の規定はないようでございます。イギリス及びドイツにおいてはございます。
  166. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次の御質問でありますが、関連してであります。  アメリカで証券取引委員会規則によりまして大企業だけに株主提案権が認められているのと同じように、これはアメリカの証券取引委員会規則で認められておりますようにわが日本におきましても特例法によりまして、たとえば今度の法改正が通ったものと一応仮定をいたしますと、資本金五億円以上の会社にだけ適用するというような形にするべきではないかと思うのですが、いかがでありましょうか。
  167. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  まさに御指摘のように、アメリカのSEC規則で、証券取引法適用会社については株主提案権の制度が認められているわけでございます。ただ、ここで問題になりますのは、日本とアメリカの制度の違いでございまして、つまり、アメリカにおきましてSEC規則で、先ほども申しましたようにこれは証券取引法でございますけれども、それが日本で言えば本来商法規定するような事項を規定しているという理由一体何だろうかということでございます。  つまり、アメリカの各州の会社法、これは会社法というのは各州の立法権限でございますから、そのために各州で立法しているわけでございますけれども、各州といたしましては、できるだけ自分の州に会社を誘致したいということのために、非常にリベラルといいますか、言ってみればルーズな会社法を各州がつくっているということでございます。そのために、実際に過去におきまして不当に株式分割等をやって株を詐欺的に売却して逃げてしまう、そういう例が幾つかあったわけでございます。そういう悪い点を除去するために、アメリカの連邦におきまして、連邦憲法の州際間通商については連邦に立法権限があるということでございますので、それに基づきまして、つまり州際間の取引をする会社、それからその発行している証券が州際間で取引される会社であって、しかもその年間売り上げが百五十万ドル以上というような制限をつけたわけでございます。  これは逆に言いますと、もしそういう制限をつけなかった場合には、連邦に立法権限がないわけでございますから、制限なしの立法でございますと逆に違憲の立法ということになってくるわけで、言ってみればやむを得ずそういう制限をつけていると言ってよろしいかと思います。その証拠に、アメリカのSEC規則に基づく提案権というのは一株株主権でございます。その点では非常に制限が緩いということが言えるわけでございまして、そういう国情の違いから見まして、あるいは本来アメリカにおきましても連邦としてはどんな会社についても株主提案権を認めたかったのかもしれませんけれども、その点からちょっと日本とは国情が違いますので、なかなかこれに軌を一にするということはむずかしいのじゃなかろうかと思っております。
  168. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではイギリスのことについてお尋ねしたいと思います。  イギリスの会社法第百四十条で議決権は二十分の一以上、または株主百人以上というふうに取り決めてありますが、これと同じように持ち株の割合と株主数とをもって要件としている。私はその方が正しいのではないかと思うのです。今回、日本商法改正のように、これは日本でも今回の改正で初めて出たんじゃないかと思いますけれども、持ち株数といわゆる持ち株割合というものを二つ並べて出しているというのは非常に珍しいのじゃないかと思うのです。日本でも初めてじゃないでしょうか。その点、私は何もイギリスに見習えという意味じゃありませんけれども、大体おおむね先進諸国というものはいわゆる持ち株の割合と株主数というものを要件にしておるので、それに準拠すべきではないかなというふうに思うのでありますが、いかがでありますか。
  169. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  まず、今回の改正法律案におきまして持ち株割合と株式数と両方の要件を出しましたということでございますけれども、確かに先生御指摘のように、現行法のもとでは少数株主権と申しますと、たとえば総会招集請求については百分の三、あるいは会計帳簿閲覧請求については十分の一という割合だけになっております。ただ、この総会招集請求であるとかあるいは会計帳簿閲覧請求であるとか、これは非常に大きな権利でございます。したがいまして、大会社についても相当の持ち株数の株主のみがこれをやることができるということでよろしいかと存じますけれども、提案権というのはそれに比べますとかなり軽い権利であるということが言えないだろうか。そうしますと、もしたとえば百分の一なら百分の一ということだけにいたしておきますと、実際問題としては、大会社についてはだれも――だれもと言うと言い過ぎでございますけれども、ほんのわずかの株主しかこれを行使することができないということになるわけでございます。したがいまして、やはり大会社のことも考えまして株式数の要件というものを付しておかなければいけないんじゃないかというのが今回の改正法律案の理由でございます。  そこで、諸外国の立法例でございますけれども、確かに先生御指摘のように、イギリスの会社法でございますと、これは二十分の一あるいは株主が百人以上であって持ち株一万ポンドでございますか、そういうことになるわけでございますけれども、ただ、このように株主数を持ってきたという立法例はイギリスぐらいではなかろうか。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 これはすべての立法例を調べたわけでございませんのでわかりませんけれども、そのほかの立法例でございますと、たとえばドイツ株式法でございましたら、これは資本の額か券面額、それからECの会社法案も同じでございます。それで、ドイツにいたしましてもECにいたしましても、実はこれは額面株式しか発行を認めておりません。したがいまして、券面額ということは株式数を同時にあらわしてしまうわけでございます。ところが、日本の場合でございますと、額面株式と無額面株式の双方発行いたしておりますので、券面額をもって表示するということが不可能でございます。したがいまして、株式数ということにいたしましたので、実質は額面株式のみを発行している国の券面額の規定と同じじゃなかろうかと思っております。
  170. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかります。よくわかりますが、いまの株主数ぐらいのところだったら私はいけるんじゃないかなという感じがしておるのであります。この点はひとつぜひ御勘案を願いたいと思うのです。  それから、さらにもう一度くどいようでございますが、いまの大会社といいますか、資本金五億円以上を大会社というなら、中小会社のそれに比べて五十円券でいうならば、資本金五億円以上になったら三十万株、片方は三百株、余りにも段差がどたっとつき過ぎているんじゃないか、何かこれは間違っているんじゃないかという気がいたします。そういう点もまた後日いろいろと論議したいと思いますのでお考えいただきたいと思います。  いまちょっと出ましたが、ドイツの株式法の第百二十二条におきましては、資本の二十分の一または額面百万マルク以上、こういうふうになっております。日本の三百株よりは非常に厳格であるということが一目でわかるわけでありますが、いま私が三つほど並べてまいりましたことなどを考えてみましても、比較法的にもどうもこれは不合理ではないかなという感じがするのであります。その点どう考えていらっしゃるかということをお知らせいただきたい。  さらに、ヨーロッパの会社法の、これはまだ案ですけれども、第八十六条第二項におきまして、資本の二十分の一または十万単位株式を有する株主が提案権を持つ、こういうことになっておりますね。つい最近のものでありますから、日本におきましても参考になるんじゃないかと思うのであります。  このようなドイツとヨーロッパ会社法第八十六条の二項、この二つをごらんいただきまして、私は、不合理ではないか、直したらどうだろう、こう申し上げておるのでありますが、いかがでございましょうか。
  171. 元木伸

    ○元木説明員 まず、いま御指摘がございましたドイツ会社法でございますけれども、これは実は提案権の内容を、つまり追加提案権と反対提案権と選挙提案権と三つに分けております。そういたしまして、反対提案権と選挙提案権につきましては、単独株主権ということにいたしているわけでございます。それに対しまして、追加提案権につきましては、ただいま先生の御指摘のとおりでございます。ただ、百万マルクというのは、あるいは五十円株にして三百株だということになってきますと非常に低いわけでございますけれども大会社、つまり三百単位であるとか、あるいは新設会社でございまして一株五万円であるということになってきますと、これはまたそう差がないのじゃないかという問題がございます。  それで、今回のたてまえといたしましては、少なくとも株式というのは本来一株五万円であるというのが今回の改正法律案のたてまえでございます。したがいまして、小さい会社においてもできればそういうふうな大きな単位をとっていただきたい。したがって、株式併合の道もつけましたし、あるいは単位株を定款で定めるという道もつくったわけでございますので、できればそっちの方に合わせていただいて株式単位は大きくしていただきたい、そういう前提があるわけでございます。
  172. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかります。よくわかりますが、ただ、私非常に残念だと思いますのは、資本金五億円以下の俗称中小会社というのはこの単位株制度をおとりになった方がいいですよと元木さんはしきりに勧誘なさるのでありますけれども、実際には、額面が五万円、無額面であっても五万円というようなこういう券が発行できるような会社というのが、果たしていわゆる中小会社の中でどのくらいあるでしょうかね。私は非常に疑問に思うのです。  それで、これを実際に中小会社がまねをして単位株制度をとったら、いま言うとおり単位未満株というのはざくざく出てくるわけですから。中小企業関係で、一人の株主でたとえば何万株も持っているというような人はそうおらぬと思うのです。大抵が何百株か何千株ということになるわけですから、このいわゆる単位未満株というのが発生する量というのは、大企業の場合よりも割合がうんと多いと思うのです。そうすると買い取り請求権が来る、買い取り請求権が来れば買わねばならぬ、それはいわゆる裁判所が判決した金額によらねばならぬ、こうなってきたら、もうとんでもない金を流出しなければなりませんから、たちまち経営に困難を来すというような問題もありますので、法務省の方としては、五億円以上の会社なら単位株でいわゆる株主総会における提案権は――いま提案権だけの話をしているのですが、三十万株以上なければ提案できない、片方では三百株あれば提案できるという、いかにもどたっと物すごい差がついたこんな法律というのは世界にあるのでしょうかね。私は非常に不思議に思うのですよ。  だからその点、たとえばうっかりしておったのならうっかりしておったでも結構なんです。それから、これはやはり考え直さなければいかぬというなら考え直さなければいかぬということで結構ですから、私は、いまの提案権の問題については、後日また質問を重ねていきたいと思いますので、ひとつ十分お考えをいただきたいと思うのであります。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕  それから次に、これも法務省関係でありますけれども、先ほど私、前段のところでちょっと触れましたが、新株の無償交付のことについてであります。これは改正法を施行いたしました後は、非上場会社におきましては、株式分割や準備金の資本組み入れによりますところの新株の無償交付をするためには、無償交付後の一株当たりの純資産が五万円以上でなければならない、下ってはならないということになっておりますね、今度の新法では。実際上、そんな力を持った中小企業があるでしょうか。私は非常に不思議だと思うのです。それだけの力を持った、純資産評価が一株五万円という会社がどのくらいあると思いますか。中小企業を一〇〇としたら何%で結構です。
  173. 元木伸

    ○元木説明員 これは数字の方はつまびらかにいたしませんけれども、実はこのように株式分割、資本組み入れというものが認められた趣旨でございますけれども、これはつまり、上場会社といいますか、その株式が市場で取引されている会社が主たる対象ではなかろうかと思います。つまり、一株の値段が非常に上がってしまいまして、そして取引がなかなかできにくいというような現象が生じました場合に株式分割を行うということでございます。  またそれから、資本組み入れによる新株の無償交付でございますけれども、これも現在一般に行われておりますのは、上場会社がその新株を時価発行いたしまして、そして、現行法のもとでございますと、額面株式発行いたしますと、券面額だけは資本に入りまして、それ以外の分は全部資本準備金に入るということでございます。そのために資本準備金が非常にふくれ上がるということでございます。そのために、一般に株主還元なんという言葉を使っておりますけれども、つまり、株主サービスという趣旨で、その分を資本に組み入れて新株を発行するということになるわけでございます。したがいまして、ここで一応対象になりますのはやはり上場会社ということになるんじゃないか。  したがいまして、非上場会社につきましてこのような規定が利用される、あるいは利用することによって何か利益があるということはまずほとんどないんじゃなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、この制限規定を置きましても、特に中小会社について影響があるということはまずないのではなかろうかと思うわけでございます。
  174. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 というふうに、いまのような御説明になってくるのですね。ということになりますと、やはり今度の商法改正というのは、いままでずいぶん論議されておりましたが、大会社はこれだ、小会社はこれだという区分を、どうやら明確に一線を引く作業が一連にずっと行われておるというふうに感じられてならぬのであります。これはまた、深い内容につきましては後日に譲りまして、次に入らせていただきます。  そこで今度は、上場しておる会社で、この額面が五十円と仮定をいたします。五十円のところでありますと、一株当たりの純資産が五十円になるまで株式分割や無償交付ができますね。それで、非上場会社でも単位株制度を採用すれば同じことですよ、こう言うのでありますが、どっこいそうではないのでありまして、非上場会社単位株制度を採用いたしますると、今度は単位未満株の買い取り請求に応じなければならぬ。そうすると、それに応じたら資金不足を生ずる、こういうふうになってきますし、それで今度は、この単位株会社になりました中小の会社が、いわゆる大会社のまねをして単位株制度をとったといたしましたら、無償交付するにしても株式分割するにいたしましても、純資産の評価が五万円以上なければそれはどっこいさせないよということになってきますから、そういう力のある会社はない。  それで、元木さんのいまの御説明によれば、そういう小さい会社はまねをせぬでいいのです、こういうことになるわけでございますが、いやなら単位株制度をとればいいじゃないですかというのは、私は余り親切な指導ではないというふうに思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  175. 元木伸

    ○元木説明員 確かに、先生の御指摘のような問題はあると思うのでございますけれども、まず、今回の改正の主眼点は、ことに株式制度に関しましては、これは株式単位を引き上げるということに主眼点があるわけでございます。そのために、それはあるいは多少のいろいろなあつれきというものもあろうかと存じます。  結局、現行法でございますけれども昭和二十五年の改正におきまして一株を五百円ということにいたしたわけでございますけれども、これは既存の会社については、特別決議をもってすればその株式の併合はできるんだという規定だけを置いておきましたために、全然株式単位が上がってこなかった、そのためにさまざまの問題が起こっているということでございますので、今回は、多少いろいろな問題があるかとは存じますけれども、できれば大会社も中会社も小会社もそっちの方向に進んでいただきたいという考えでございます。
  176. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかります。  さてそこで、いまのように、この無償交付をしようと思っても、なかなか中小会社におきましてはそう簡単なわけにいきません。そこで、単位株制度会社にならなくても今度は非常にむずかしくなるわけですから、そうなりますと、これは大変な問題を生じてまいりますので、いわゆる無償交付の制限にいたしましても、私はむしろ、大会社だけに適用する、いわゆる特例法第二章に言う会社ということだけにするべきではないかというふうに思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  177. 中島一郎

    中島(一)政府委員 先ほどからの御質問にございましたように、私ども、今回の改正を考えました場合に、提案権の問題にいたしましても、あるいは併合の問題にいたしましても、まず、株式のあるべき券面額というものは五万円であるということが念頭にあって、いろいろ事柄を考えたということは事実でございます。  それで、これを単位株制度をとらない非上場会社に当てはめた場合にどうなるかということをあわせて考えたわけでございまして、その場合に、単位株制度をとっておる会社ととっておらない非上場会社との間の均衡というようなものも一応考えたわけでございまして、その間若干の問題があり得るということは無視したわけではなくて、問題があるということを前提にいたしまして、その上で果たしてどちらの制度をとるべきか、選択に迫られたということになるわけでございますが、仮に提案権ということについて申しますならば、これを大会社と小会社とで区別をするというようなことについても、これはもっと大きな問題があるんじゃなかろうかということを考えまして、結局、選択の問題といたしまして現在のような法案ができ上がっておるということでございます。  それで、方向といたしましては株式の金額を五万円に上げる、したがって既存の会社につきましても単位株制度を採用する、法律によって強制はいたしませんけれども、できることならば定款の規定によって単位株制度を採用していただきたい、それによっていろいろな問題が起こってくるかとは思いますけれども、そこはまた経営者の選択の問題であろうかと思うわけであります。単位株制度によって幾つかのメリットもあるしデメリットもある、単位株制度をとらないことによるメリットとデメリットというものも理論的には考えられる。その場合に自分の会社としてはどちらの選択をするのがよいのか、これが経営者の判断であろう。  そういった会社ということになりますと、株式の額面も二十円もあれば五十円もある、理論的には五百円もあればもっと大きな金額もあるわけでありまして、その会社会社によっていろいろなケースが考えられます。あるいは株主の構成にいたしましてもいろいろなケースがあるわけでありまして、先ほどから御心配になっておりますような、会社のイメージダウンを図るような株主の出てくるおそれのある会社もあれば、出てこない会社もあるということでありますから、そういういろいろな個別的の事情を考えて経営者に選択をしてもらいたいというのが私どもの考え方でございます。
  178. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので、次回にまた譲らしていただきます。  さて、これからあとの問題は、労働省と法務省と両方にお答えを願いたいと思いますが、次に、取締役の労働者に対する義務の問題であります。  一九八〇年、昨年の五月、イギリスでサッチャーさんが女性で初めて首相になられた、このサッチャーさんの手でイギリス会社法というのが改正されまして、この四十六条におきましてこういうことが書かれてあるのであります。「取締役はその職務の遂行に当り、株主利益とともに、会社の従業員の利益をも考慮しなければならない。」という規定を設けられたのであります。わが日本商法におきましては、そういうものはにおいもかけらも全然出てきておりません。こういうイギリスの昨年五月にできたばかりの法律を御紹介申し上げたのでありますが、取締役の労働者に対する義務ということにつきましてどう思われるか、御感想をお聞きしたいのであります。
  179. 岡部晃三

    ○岡部説明員 現代の企業におきましては、使用者は労働者の理解と協力というものがなければ、円滑な企業経営がなし得ないというのが実情であろうかと思います。使用者としては、労働者の利益というものを十分考慮しながら企業経営に当たるべきであるし、また当たっているというふうに考えるわけでございます。  一方、法律上の問題でございますが、労働基準法におきまして労働条件の最低基準を定めているわけでございますが、労働関係の当事者は労働条件の向上を図るように努めなければならないという規定がございます。すなわち、労使の一方である使用者につきましても、当然この労働条件の改善ということにつきまして努力義務が課されているわけでございます。そしてまた、この使用者概念でございますが、これは法律上、使用者というのは、当該企業主はもとより役員なども含まれているというふうに労働基準法十条に規定があるわけでございます。労働省といたしましては、現行の労働基準法のもとで、使用者がこのような規定趣旨を踏まえまして労働条件の改善について努力を払うということを期待しているわけでございまして、これはイギリスの会社法の方に規定があるわけでございますが、わが国におきましては、労働基準法におきまして同様趣旨規定があるというふうに考えるわけでございます。
  180. 中島一郎

    中島(一)政府委員 イギリスの一九八〇年会社法の四十六条にただいま御質問にございましたような規定が置かれておるということは事実でございます。それで、日本の場合どうかということでございますけれども日本の場合の会社の役員、特に取締役は、従業員から上がっていったと申しますか、上り詰めて役員になった、取締役になったという人が大部分でございまして、従業員の実情をよく知っておる、従業員のことに対して理解が十分であるという人が多いというふうに考えるわけでございます。そこで、取締役が職務を遂行するにつきましての基本的な考え方というものもイギリスの場合とは大分違うのではないか。イギリスの場合は株主がトレードをしてくる経営者であるということを考えますと、わが国の場合とは大分違うんじゃないかということを考えるわけでございます。ですから、たとえて言えば、イギリスの場合は経営者は株主の方を向いておる、それに対して日本の場合は、株主の方よりも内部といいましょうか、従業員の方を向いておるというのが実情ではなかろうかというふうに思うわけであります。したがいまして、法律規定をまつまでもなく、取締役は従業員の利益を考えていると言うことができるのではなかろうか。  いま労働省の方から法律上の規定もいろいろあるというお話もございましたのですけれども商法の上でも法律上の規定が全くないわけではございません。商法の二百六十六条ノ三という規定によりますと、取締役行為について損害賠償の責任というようなものを規定いたしておりますけれども、その前提といたしまして、取締役としては善良な管理者としての注意義務があるということになるわけであります。こういうことをいろいろ考えますと、現在の段階におきましては、商法においてイギリス会社法のような規定を置くということまでの必要はないというふうに考えるわけでありますけれども、情勢の変更によってはまたいろいろと考えていかなければならないというふうに思っております。
  181. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、次の質問に移らせていただきます。  今度は取締役ではなくて、株主の労働者に対する責任についてという問題でありますが、アメリカのニューヨーク事業会社法第六百三十条におきまして、非上場会社の上位十番目までの大株主は「会社に履行した労務の対価であるすべての労働者や従業員に対する債務、賃金又は給料であって、支払期が到来したものにつき、連帯して弁済する責任を負う」という旨を明確に規定をしてあるのでありますが、わが国においても、倒産会社の大株主が労働者の未払い賃金とかあるいは退職金に対する支払いにつきまして連帯責任を負うという旨を規定する御意思は法務省にはないか。また、こういう外国の法律がありますが、労働省におきましてはどうお考えになりますか、感想を聞かせてください。
  182. 岡部晃三

    ○岡部説明員 賃金は労働契約の基本的な要素でございますので、その支払いということにつきましては、事業主の当然の責務でございます。また、労働者あるいはその家族の主要な生活の原資であるということで、この支払い義務の履行につきましては、より一層確保するという必要があることは当然のことでございます。しかしながら、賃金の不払いということにつきまして、先生御指摘のような会社の大株主に連帯責任を負わせるというふうな法制についてどう考えるかということでございますが、これは現行法制度の根幹に触れる問題でございますので、慎重な検討を要するのではないかと思います。私、そのニューヨークの法律、つまびらかに存じませんが、どのような範囲でどのような要件のもとにそういうことになっているのかということも、いろいろと検討しなければならないというふうに考えるところでございます。
  183. 中島一郎

    中島(一)政府委員 御指摘になりましたニューヨークの法律によりますと、いわゆる閉鎖会社と申しましょうか非上場会社と申しましょうか、そういう会社についての規定のようでございますが、現在の株式会社法、申すまでもなく株主有限責任ということを根本原則というふうにいたしております。ただいま労働省の方からお話もございましたように、この株主有限責任に対する例外と申しますか、大きな例外を認めるということになるわけでありますから、よほど慎重に考えなければならないわけでありますけれども、いわゆるわが国の中小会社につきまして株主がどういう責任を負うべきかということは、一つの問題ではあるというふうに考えております。外国の立法例なども調査をいたしまして、将来検討するべき問題ではあろうかというふうに考えております。
  184. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  それでは、次の問題の今度は監査役についてお尋ねをいたします。監査役へ労働者の代表が参加するということについてお尋ねをしたいのです。  ドイツの株式法第九十六条におきましては、監査役には必ず労働者の代表をその総数の二分の一を参加させなければならない、こういうふうになっており、さらに、ヨーロッパ会社法の草案、これは草案でありますが、第七十四条におきましても、ヨーロッパ会社監査役の総数の三分の一は労働者の代表をもって構成しなければならない、こういうふうに規定をしてあるのであります。わが国におきましても、今回の法改正におきまして監査役は二名置かなければならない、そのうち一名は必ず常勤しなければならないというような規定があるのでありますが、このことと対比をいたしまして法務省の方ではどうお考えになるか。また、労働省の方では、労働者の監査役の参加、これはこのごろ大分やかましく言われてきております問題だけに、御感想をお聞かせいただきたいのであります。
  185. 中村正

    ○中村説明員 ただいま先生から御紹介のありましたドイツの労働者監査役制度、これは参加という大きな流れの中で余りにも有名なことでございますけれども、ただ一つ日本と違いますのは、先生御存じのとおり、会社の組織が日本とは違うという点が一つございます。それから、やはりいろいろな歴史的発展というのが日本と違うかと思います。  日本における参加の問題につきましては、職場段階、あるいは事業所段階、あるいは企業段階で、いろいろ諸外国に比べれば非常に進んでおるという実情はございますが、ただ、いま御指摘のございましたような労働者の重役制、あるいは重役の一つである監査役に参加するという例は非常にまれであるというふうに思っております。参加の問題につきましては、これからの経済環境であるとか、労働者の高齢化の問題であるとか、労働者の高学歴化に伴う意識の変化であるとかいうことを考えますと、わが国においても従来以上に労使の意思疎通を盛んにするという意味で、参加の場を広めるという必要があろうかと思っております。しかし、これにつきましても、必ずしも問題が解明されているわけではない。たとえば守秘義務をどうするかとか、あるいは労働組合、労働者代表の責任をどうするのかとか、あるいは団体交渉との関係をどうするのか、解明しなければならないいろいろな問題がございます。  そこで、私ども労働省といたしましては、現在、労使及び学識経験者を加えまして参加問題全般についての研究をいたしております。その中におきまして、先生御指摘の労働者の監査役の可否につきましても、これを加えて検討いたしておるところでございまして、御指摘ではございますけれども、現段階でこれを入れるべしというふうに申し上げるわけにはまいらない、こういう実情でございます。
  186. 中島一郎

    中島(一)政府委員 先ほど取締役のことが問題になりましたときにも申し上げましたように、わが国の場合は従業員の人がだんだんに経歴を経て監査役になっておるという例が多いわけでありまして、ドイツの事情とはかなり違うのじゃないかというように考えておるわけでございます。しかし、ただいま労働省の方からもお話ございましたように重要な問題でありますので、この点も将来の検討課題にさせていただきたいと思います。
  187. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 非常に前向きの御答弁をそれぞれいただきまして恐縮であります。ごく最近におきましては、わが国におきましても日本国有鉄道において労働者の代表が二名も監査役に入ったばかりでございます。あれはたしかことしですね、去年ですか。わが国におきましてももうすでにそういう胎動が始まっておりますので、十分御検討いただきたいと思います。  一番最後の質問でございます。単位株採用の場合、労働者持ち株制度に与える影響について、その見通しは一体どうであろうか、これは法務省ではなくて労働省だけに最後にお尋ねをいたします。  この労働者の持ち株制度によりまして株を有しております労働者の皆さんは、現在は株主総会への提案権を有しておりますために、労働条件の改善等につきまして株主総会で提案をすることができました。今度改正をいたしまして単位株制度の採用ということになりますと、これは提案権は与えられません。大体普通の場合、大会社のことの比較でいくわけでありますが、三十万株の株を有する者ということになってくると、労働者の代表といっても、ちょっと提案権というのはむずかしくなってくるというふうに思うのであります。このため労働者が株主に対しまして労働条件改善の提案を行うことができなくなるおそれが出てまいりますが、このことにつきまして労働省の所感はいかがでありましょうか、お尋ねいたします。
  188. 中村正

    ○中村説明員 労働者持ち株制度につきましては、諸外国にはいろいろ制度化されているというものがございますが、現在のわが国においては、制度化された労働者持ち株制度というのはございません。  先ほどからいろいろの御議論を伺っていて、まだ私も頭の整理ができておりませんけれども、しかし、株主総会機能と申しましょうか、その場というものは、恐らく株主としての権利を守るのではないかと思います。したがいまして、先ほどからお話が出ております新たな提案権というものも、果たして労働条件の改善というものを内容として提案権を認め得るのかどうか、私ははっきりいたしません。そういうことがございますが、現在でも株主総会で、私どもの知っている限りでは、余り労働条件の改善ということを積極的に提案されて、それが問題になったというような例も聞いておりません。むしろ、労働条件の改善といいますのは、現法制が労及び使の相互の自主的な交渉によって決めるということになっておりますので、やはり株主総会との関係では、執行機関たる取締役の責任において解決するということの方が現体制に合っておるし、その方が適当ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  189. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。非常にまじめな御答弁をそれぞれいただきまして、大変恐縮であります。  ただ、申し上げておきたいと思いますのは、きょうは特に労働省関係に重点を置いて四点にわたって御質問申し上げたのでありますが、日本以外の国、先進諸国におきましては、いまいろいろと質問申し上げたような新しい制度がどんどんと胎動いたしております。日本も先進諸国の雄たる者でありますだけに、これから十分御検討をいただきたいと思います。  さらに、監査役の参加という問題等につきましても、すでに国有鉄道においてすらそういうことが、実験的と言ったら怒られるかと思いますが、実際に実施されて、二人もお入りになりまして、りっぱな業績を上げていらっしゃるようであります。  大変頼もしいことでありますが、さて、一番最後の労働者の持ち株の問題等につきまして、余り聞かぬがなあというお話もございました。全くそうだと思います。だが、いわゆる株式会社の中小会社の場合におきまして、とにかく団体交渉権にもなかなか応じない。言を左右にして、やれ温泉へ行くのだ、どこへ行くのだと言ってなかなか会ってくれない。どうにもならぬ。ほかに訴える手がないからというので株主総会に行って、株券を有するいわゆる組合の代表の方がその意見を陳述して、涙ながらにその実情を訴えて、株主の皆さんの同情を得て、それはけしからぬじゃないか、取締役は何をしているのだというような逆におしかりを受けて円満解決をしたというような事例も数たくさんございますので、そういう点が使えなくなるがなあという心配が実はありましてお尋ねをしましたので、今後もひとつ前向きに御検討いただきますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  190. 高鳥修

    高鳥委員長 林百郎君。
  191. 林百郎

    ○林(百)委員 今回の商法改正の前提となっております昭和四十九年の改正のときに、衆議院及び参議院の附帯決議がありまして、それは会社社会的責任という問題が提起されておるわけであります。  私は、念のためにそれを申し上げますと、衆議院の方の昭和四十八年七月三日の法務委員会での附帯決議によりますと、「会社社会的責任、大小会社の区別、株主総会のあり方、取締役会の構成及び一株の額面金額等について所要の改正を行なうこと。」それから、「会計監査人の独立性を確保するため、その選任方法等について適切な方途を講ずること。」それから、「商法の運用については、政府行政機関において連絡を密にしその適正を期すること。」というようなことが具体的に挙げてありますが、その附帯決議の表題は、「商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律整理等に関する法律案に対する附帯決議」として、「わが国の株式会社現状にかんがみるとき、商法等改正を要する問題が少くなく、今回の改正をもってしてもその十分な実効をあげることは困難である。よって政府は、次の点について早急に検討すべきである。」ということで、いま申し上げたようなことがいろいろと書いてあるわけですが、「会社社会的責任」、こういうことが第一項の最初にあるわけですね。  それから、参議院の方でも附帯決議で、これは四十九年二月二十一日ですが、「企業社会的責任を全うすることができるよう、株主総会及び取締役会制度等の改革を行なうため、政府は、すみやかに所要の法律案を準備して国会に提出すること。」  「企業社会的責任」とか「会社社会的責任」ということが非常に強調されているわけですね。  それで、昭和五十年六月十二日の法務省民事局参事官室の「会社法改正に関する問題点」というところに、「株式会社法中に、会社社会的責任に関する一般的規定として、取締役に対し社会的責任に対応して行動すべき義務を課する明文の規定を設けること等を検討すべきであるとする意見があるが、どうか。」というようなことが言われているわけなんですけれども、しかし、いつの間にかこれが今度の会社法改正に消えてなくなってしまっているわけなんですがね、一般的な規定。技術的にはいろいろのあれはありますよ。だけれども、この民事局の問題としても、「株式会社法中に、会社社会的責任に関する一般的規定として、取締役に対し社会的責任に対応して行動すべき義務を課する明文の規定を設けること等を検討すべきである」と思うが、どうかという問題を提起しているわけですね。法務省民事局の参事官室で出しているわけです。  これは言うまでもなく、この衆議院附帯決議の「会社社会的責任」、それから参議院の「企業社会的責任を全うすることができるよう」に一般的な法律を設けるべきだ、私はこれはもっともだと思うのです。もう各同僚議員も質問していますし、あなたの方もいろいろ答弁されていると思いますが、技術的にいろいろなさっても、ここが非常に大事なところじゃないかというように私は思うのですが、この点がどうしていつの間にかなくなってしまったのか、あるいは今度の会社法改正にこれがどうしてうたわれなかったわけですか。
  192. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいま御質問の中にございました法務省民事局参事官室の「会社法改正に関する問題点」におきましては、企業社会的責任という問題を取り上げまして、「この問題をどのように取り扱うのが相当か。この点に関し、例えば、」ということで、ただいまおっしゃいました「株式会社法中に、会社社会的責任に関する一般的規定として、」云々という「意見があるが、どうか。設けるとすれば、具体的にどのような規定が考えられるか。」という問題点を一つ挙げまして、続きまして二といたしまして、「企業社会的責任については、これに関する一般的規定を設けるということよりも、むしろ現在の株式会社法の個々の制度の改善を図り、これを通じて、企業社会的責任を果たすことを期待するという方向で検討すべきであるとする意見があるが、どうか。」こういう形で問題提起をしたわけでございます。そして、先ほどおっしゃいました企業社会的責任に関する一般的規定を設けるという方向も、法制審議会においては一応検討の対象にされたと聞いております。  それに対しましては、たとえば民事法の基本法である民法の第一条にはこういう趣旨規定がすでにある。たとえば「私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ」とか、信義に従って誠実に行使しなければならないとか、「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」というような社会的責任に沿うような規定があり、これに加えて商法中にそのような一般的な規定を設けても、それは単なる精神的規定にすぎない、実効は疑わしいばかりでなく、商法の中に異質の規定を持ち込むものであるというような批判も多かったと聞いております。そこで、今回の法制審議会審議におきましては、先ほど申しました第二の方法、すなわち「現在の株式会社法の個々の制度の改善を図り、これを通じて、企業社会的責任を果たすことを期待するという方向」で立法を考えるということをとりあえず検討いたしまして、その結果を答申をいただいたと聞いております。第一の方法、すなわち一般的規定の点につきましては、今後の商法全面的改正の際に改めて検討するということになっております。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 株式会社はいま社会的に非常に大きな役割りを果たしているわけなんですね。同時に、それがまた悪の根源にもなっておるわけです、後で具体的な例を申し上げたいと思いますが。そういうとき、あなたは、一般的な道義的な会社あるいは取締役のあり方について会社法に入れるのは異質のものだとおっしゃるのですが、それは異質ですか。いまこそ会社あるいは会社取締役が本当に社会的な責任を感じて、公正な会社運営あるいは株主利益を図っていくこと、そして善良な市民に迷惑をかけないようにするとか、そういうことが必要じゃないでしょうか。あなたは倫理的な一般的な規定と言われるかもしれませんが、それは異質なものではなくて、いま最も必要なものじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。もっとも、あなたの答弁の中にも、この次に改正するときには十分検討の余地のある問題だと言われていますから、私はそこへ期待を置きますけれども、何か異質なもので、株式会社法の中へそんな倫理的なものなんか置く必要がないのだというのはちょっと受け取れないわけです。
  194. 中島一郎

    中島(一)政府委員 会社法の他の規定などを見てみますと、たとえば訓示的な規定と申しましょうか、精神的な規定と申しましょうか、そういう規定はないようでありますので、そういう意味で異質なものであるという意見があるわけでございます。決してそれは重要でないということではございませんで、すでに会社社会的責任と申しましょうか、企業自体というような概念が育ち始めてから久しいものがございます。そういうことも非常に重要な問題であるとは考えておりますけれども商法の全体との調和の問題としてどうであろうかというような御意見があったことを御紹介したわけでございます。
  195. 林百郎

    ○林(百)委員 参考までに申しますが、ことしの三月二十八日の読売新聞に「社長社会的責任を問う」という社説があるのです。その結論を見ますと、「いま準備が進められている会社法商法)の改正案には、監査役株主総会の権限強化や経営の公開が盛り込まれている。」この株主総会の権限強化という点については、私は若干問題点があると思います。「しかし制度改正しても、経営者がその重い責任を自覚しない限り、せっかくの改善も有効に働かないであろう。」ということを言っておるのですよ。読売を一例として挙げましたけれども、他の新聞の社説を見ましても、マスコミの論説、社説の多くは、そういう機構いじりをしただけでは、いま日本株式会社が置かれている土壌の中では、株式会社が、ことに大会社が本当に社会的責任を果たすことにならないではないかという問題提起がなされているのですよ。そういう意味で私は、衆参両院附帯決議はもちろんですが、この民事局の問題点の提起は非常に重要だと思いまして、マスコミもみんな挙げていますので、それで聞いているわけなんですが、どうでしょうか。たしか先ほど言われましたように、会社法改正するためには、いま会社が置かれている社会的な地位から考えてそういう点も検討しなければならない分野だ、そうお考えになりますか。
  196. 中島一郎

    中島(一)政府委員 今回の改正案におきましては、より現実的であるということから、取締役監査役説明義務でありますとか、株主の提案権でありますとか、その他の個々の制度についての規定をまず置いたということでございまして、根本的な、先ほどの一般的な規定については、今後の検討にまつということであったわけでございます。
  197. 林百郎

    ○林(百)委員 今後の検討をぜひしていただきたいと思うわけです。  具体的に私がこの問題を提起しましたね。たとえばKDD事件、これは有名ですね。板野学元社長は業務上横領で刑事責任を負わされている。それから、佐藤陽一元社長室長は関税法違反、業務上横領の疑いで逮捕されている。ところが、これを見ますと監査役は三人いるのですよ。それから部外の公認会計士が六人から七人いるのですよ。これが年間二百日も監査をやっていたわけですね。ある監査役のごときは、取締役会や常務取締役会にも必ず欠かさず出席する一方、定期的に取締役から営業報告を聞いていた。それでもこういう乱脈な経理内容で、KDDがどんな問題だったかということは言うまでもないのですが、監査役が三人もいる。公認会計士は六、七人もいるのですよ。取締役会には必ず出ているのですよ。  それであんなことができるのですから、あなたの言うように、取締役会の権限は強化いたしました、あるいは会計監査人の権限を強化しましたとしても、しかし、日本がいま置かれている土壌、たとえば先ほども同僚議員から質問がありましてあなたも答弁されていましたけれども、大体取締役で役に立たなくなったような――役に立たなくなったというのは恐縮ですけれども、お年を召した方が監査役になるとか、あるいは監査役から取締役になるとか、選出する者と選出される者が一体になっているわけですね。それぞれ別な組織でやるわけじゃないわけですよ。だから、取締役から監査役になった者は、自分のやった事業の内容を全部知っていますから、それをひっくり返すような監査報告はできないですよ。また、今度は監査役から取締役になった人は、自分が監査をしていた事業について、取締役としてこれは私が監査役のころから不当でありました、こういうことはやめた方がいいですとは言えないのです、監査役取締役が両方密着しているのだから。これは取締役と執行機関を監督する者が別の組織から出ていく、これならわかりますけれども、いまのような株式会社の組織からは、あなたの言った民事局の第二の方法をとっても根本的な改善にならないのじゃないですか。  いまKDDの例を挙げましたが、そのほか監査役取締役になるステップになっている会社を私の方で一応調べてみました。第一声明、全日本空輸、近畿日本鉄道、松坂屋、大東紡織、こういうのはみんな監査役取締役のステップになっているのです。  それから、昭和四十八年四月から五年間にわたって四百三十億という史上最高の粉飾決算をしていた不二サッシ、これは監査役の強化を図ることを目的とした四十九年の商法改正の後にこういう事態が起きているわけです。監査役を強化するという理由で同社の常務が常勤監査役に就任して、この人は、不二サッシの主力取引銀行の取締役東京支店長や監査役などを経験してきた人で、それでも社長と専務が完全に経理を握ってしまって見ることもできなかった。要するに、この前の四十九年の商法改正のときも監査制度を強化するという名目で商法改正したのですが、その後史上最高の四百二十億円という粉飾決算をした不二サッシ問題が起きている。これは常務取締役であった人が常勤監査役になっておるわけです。だから、これでは幾らあなたの方が、今度は監査役監査制度を強化しました、あるいは会計監査人の権限を強化したと言っても、無理じゃないでしょうか。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕  この五十三年の五月三十一日の衆議院法務委員会で、民事局長の香川保一さんはこう言っているのです。「先般の昭和四十九年の商法改正で、御指摘のとおり、監査制度の強化ということで監査役の権限強化あるいは公認会計士による監査の強制その他のいろいろの措置を講じたわけでございますけれども、遺憾ながら今回のような粉飾決算が生じた。やはり私どもといたしまして、商法でそういった監査制度の強化を図りましても、その制度を運用する人を得るかどうかということが根本的な問題であるということは、この前の商法改正の御審議の際にも申し上げたかと思いますが、どうもこういう粉飾決算をつぶさに考えてみますと、おしなべて申しますれば、ワンマン社長と申しますか、そういった会社にきわめて例が多い」。民事局長も、いかに監査制度を強化し、あるいは会計監査人の権限を強化しても、人を得なければだめだということを痛切に感じましたと衆議院法務委員会で言っているわけなんです。  だからこそ、あなた方はこういう苦い経験をしているわけなんですから、四十九年のときの商法改正で今度と同じようなことを言って、それでやられたわけですから、その後史上最高の粉飾決算が出ているわけですから。だから、こういう形では会社経理をガラス張りにするとか企業社会的責任を明確にするとかいうことはなかなかむずかしいんじゃないか、こう思いますので、先ほどあなたの言われた一般的な規定会社や執行者の倫理的な立場を明示する、そういうものを商法にはっきり書くことが必要ではないかと私は言うわけですが、これはどうお考えになりますか。先ほどの答弁で大体あなたの意のあるところはわかっていますけれども、五十三年五月三十一日の法務委員会民事局長がこういうことを言っているわけなんです。どうお考えになりますか。
  198. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私どもといたしましても、商法規定が万能であると考えておるわけでございません。商法規定改正しさえすれば万事がうまくいくと考えておるわけではございません。人を得ることも大事でございましょうし、当該ポストについた人が本当にその職責を自覚して仕事をしていただくということが、より重要であろうかと思うわけでありますけれども、私どもとしては制度をつくることが仕事でございますので、よりよい制度をつくるための努力をいたしておるということでございます。
  199. 林百郎

    ○林(百)委員 参考までに申しますと、これは朝日新聞の二月九日に、「「KKニッポン」診断」というのがありまして、その記事の中にこうあるのです。「日本ミネチュアベアリング社長・高橋高見は海外の会社を積極的に買収するなど「国際的買い占め屋」として有名だが、監査役制度についてはこう批判する。「米国のように執行機関と選任機関がきちんと分かれていればいいが、いまの日本のように監査される方が監査する人を選んでいるのでは、どれだけ効果が上がるか疑問だ。商法をつぎつぎに改正して理想の姿にしていくのはわかるが、日本の経営風土そのものを変えていかなければ効果は期待できない」」、こう言っているわけです。  それから、同じ記事の中で、国際基督教大学の中島省吾さんが、「トップに直言こそ真の忠誠」とあって、「米国では取締役のなかに、外部の立場から第三者的に批判する役割の社外取締役がいる。また取締役会のなかに監査委員会があり、日本監査役のような仕事をしている。英国では会計報告を中心とする監査が最も重視されており、外部の公認会計士総会監査人に任命されて監査している。西独の監査役会は、取締役の選任をしており、実質的な力をもっている」。  ここで言うように、執行機関と選任機関がきちんと分かれていなければ、監査される方が監査する人を選んでいたのでは百年河清を待つじゃないかということが出ていて、これはもっともだと思って私も読んだのです。こういうこともあるのですが、どういうようにお考えですか。
  200. 中島一郎

    中島(一)政府委員 監査をされる人とする側との関係をどういうふうにするかということはかなり重要な問題でございまして、できるだけ独立性を保障することが望ましいわけでございます。そこで、今回の改正法案におきましても、監査役につきましては、選任関係は従来と変わりませんけれども、その地位を強化いたしますために、報酬の問題あるいは費用の問題について取締役取締役会の影響を受けないような法律規定を設けたわけでありますし、会計監査人につきましては、従来取締役会で選任いたしておりましたものを、今回の改正法におきましては株主総会で選任をするというような手当てもいたしたわけであります。  それでは不十分だという御意見もあろうと思いますけれども、それぞれの国の制度というものは、それなりに歴史もあれば沿革もあるというわけでありまして、ある制度が理論的に言えば非常にすぐれているからと申しましても、すぐにそれを持ってきてわが国の制度とした場合に、それがうまく機能するかどうかというようなこともあるわけであります。私どもとしては、諸外国の制度ども調査をしながら、一歩一歩理想的な形をつくってまいりたいというように考えておりますが、現在の段階におきましては、今回の改正案が私どもとしては一番好ましい形であるということで提案をいたしておるわけであります。
  201. 林百郎

    ○林(百)委員 監査役の選任を総会にかけても、取締役をやった者は監査役に選任されてはいけないとか、あるいは監査役をした者が取締役になってはいけないとかそういうことは別にないでしょう。従来どおりのことが依然として行われて、ただその承認がいままでは取締役の同意でいいということだったのが、今度は総会にかけるということになった。しかし、その総会も、私は今度の商法改正総会の形骸化ということを心配せざるを得ないわけなんです。  たとえばあなたの方から出されましたこの関係資料を見ますと、「第三は、このような大規模の株式会社におきましては、専門的かつ技術的な計算書類の内容の適否を一般の株主が判断することは困難であること及び計算書類については株主総会により選任された会計監査人及び監査役の厳重な監査がされ、かつ、その監査結果が監査報告書により株主に開示されることを考慮して、貸借対照表及び損益計算書については、会計監査人及び監査役のこれを適法とする意見があったときは、株主総会の承認を受けることを要しないこととしております。」要するに、大規模の株式会社になると、専門的かつ技術的な計算書類の内容だから、この適否を一般の株主が判断することは困難だと言って、そして会計監査人及び監査役が適法だと言えば、もう総会にかけなくていいというようなこともある。  それから、おたくの方から出ました「会社法改正の主要項目」を見ますと、「株主総会制度の充実」とあるから、どういうことかと思ってみましたら、「現在、会社計算書類は、株主総会に提出し、その承認を受けるものとされているが、一般株主計算書類の当否を判断することは、困難であるので、大会社については、特例を認め、貸借対照表及び損益計算書については、監査役及び会計監査人のこれを適法とする意見があったときは、株主総会の承認を要しない」、こうあります。  総会への議題の提案権は、総株の一%あるいは三百株の株の所有者と制限されていますね。だから、あなた方の考えを見ますと、一般株主素人論ですよ。一般株主なんてわかるものか、いまのような大会社になったもののバランスシートや損益計算書なんかわかるものか、それはもう監査役会計監査人に任せておけばいいのだ、こういう考えじゃないですか。だから、各同僚議員からも、端株券の問題だとかあるいは単位未満株の株主権の行使の問題なんか、方々で出ているわけでしょう。  あなたは株主総会へかけるからいいと言ったって、株主総会にそんなに権威をあなた方自体認めてないじゃないですか、これを見ますと。こんな大会社になったときに、そんな小さい株主や何かなんというのはわかるものか、だから、これは会社会計監査人監査役異議がなければ、それが承知すればもう総会へかけなくてもいいんだ、こういうことじゃないですか。だから、あなたの言う、いや、会社経理を権威あらしめ、社会的にも正当性を持たせるために監査役の選任を総会にかけると言ったって、あなた方自体が権威を認めない総会にかけたって、それが権威づけられますか。これは一体どういうことなんですか、株主はわからないのだから、会計監査人監査役の文句がついてなければそれでもういいんだ……。
  202. 中島一郎

    中島(一)政府委員 株式会社株主総会が形骸化しておるということの原因には、いろいろあろうと思いますけれども株主総会において審議をすべきにふさわしくないような事柄を審議するということによっても、株主総会における議論が低調になっておるということもあるんじゃなかろうかということを考えるわけでございます。そうなりますと、大会社におきます株主総会において現在の損益計算書あるいは貸借対照表というような計算書類を審議してもらうということは、これは理論的には株主総会株式会社の最高の機関でありますから、そこで審議をするということはかくあるべしということでありますけれども、現実の問題としては、その審査が非常に形式的になっておるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。  それならば、むしろ実質的に審査をするということで、監査役あるいは会計監査人監査をやってもらいまして、そしてその結果を株主総会に報告をする、株主総会は決してこれに対してノータッチというわけではございませんで、あらかじめ参考書類の送付も受けるわけでありますし、あるいは株主総会の場において質問をする、それに対しては取締役なり監査役説明義務もあるということでありますから、やりようによっては十分に株主総会においてこれを実質的に審議するということもできるんじゃなかろうか。  先ほどから私申し上げました会計監査人の選任の問題、これはむしろ株主総会において審議するのにふさわしい事柄である、だれを会計監査人に選任するかということは、計算書類の審議とは違いまして争点も少ない、問題の所在も非常にわかりやすいわけでありますから、こういうものを株主総会において審議してもらうということによって株主総会がそれにふさわしい事項を審議する、そのかわりに、株主総会の承認事項あるいは審議事項とされたことについては、フルにその持てる力を発揮して活発な審議をしてもらうということが、今回の私ども改正案の根本的な考え方でございます。
  203. 林百郎

    ○林(百)委員 それほど株主総会に権威を持たせるなら、それならば単位未満の株主あるいは端株株主についても株主総会に何らかの発言権を持たせるようにする必要があるんじゃないですか、急に五十円が五万円になるのですからね。そうなると一体何人の株主株主権を喪失すると思いますか。私たち計算ですと、いまの株主の総数は千六百万人、そのうち五万円を一株とすれば、その約三〇%の五百万人が減少するというのです。こういう数字はおわかりですか。  この五十円株だって、いまから数十年前はいまの五万円にも相当するものですよ。そして会社は、そういう金で会社をいままでずっと育ててきたのですよ。それがいまの貨幣価値から言えば五十円ということになる、そういうことで株主権を剥脱してしまうということは、田中誠二さんなどに言わせれば、民主主義の根本を破るもので、持っている財産権が行使できなくなるのは憲法違反だ。どうしてそんなことをするのですか。何年以前に現在の五十円株を持った人については、貨幣価値にスライドして現在の何万円と評価する。その五十円が非常に貴重な価値であったころ、五十円と言えば学生が一月暮らせたのじゃないですか。恐らく大臣などはそうだと思う。大学時代は五十円で一月暮らせましたよ。そのころはそれくらいの価値があったのです。それが、いま貨幣価値がこんなになったから、もうあなた方は株主じゃありませんよ、単位未満の株主では発言権はありませんよ、端株ではだめですよということになれば、民主主義の破壊ですよ。  そういう会社とともに苦労してきた人たち株主権の行使を認めるなら、私は株主総会の権威を認めますが、どうもあなたの言うようなことでは、結局大きな会社になれば、株主総会にかけて余りもまれないで、監査役会計監査人取締役で、一番会社中心をなし、株主の利害関係に最も影響のあるバランスシートや損益計算書などは、それだけで総会にかけなくたっていいということになるのではないですか。このことは大会社利益を守ることにつながるのではないですか。あなたの言うことと逆じゃないですか。
  204. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいまお話しございましたように、一株五十円というのは、明治三十二年の五十円でございますから、当時は相当な価値のあるお金であったということになるわけでありまして、それが昭和二十五年に商法規定で一株五百円になりました。しかし、既存会社株式については五十円あるいは二十円というものがそのまま維持されてきたわけでございます。それが先ほどもお話しございましたように、千株未満の株主というものが、人数にいたしますれば、私の方では二七%という数字を申し上げておりますけれども、ただいまの御質問の中には約三〇%というような数字も出ておるわけでございまして、現在では千株未満の株主は、人数にいたしますと、上場会社で約三〇%になっておるというわけでございます。そういう株主に対する株式管理費用というものは相当な高額になっておる。二千円、三千円、あるいはもっと高額であるというようなことを言う人もあるわけでありまして、そういうものを何とかすべきじゃないかということになるわけであります。むしろ、そういう過大な経費を節約するということが株主利益にもつながるのじゃなかろうかということであります。  それでは、単位株制度をとりまして千株ということにした場合に、それによって未満株になるような現在の株主というのはどういう人であろうかということでありますが、戦前からの株主は、会社が戦後発展をいたしまして、資本金も増資をされたということで有償の増資を取っておるわけでありますから、現在では単位未満株しか持っておらないというような人はいないというふうに私どもは考えております。それでは、最近株主になった者はどうかというわけでありますが、最近でありますと、通常の取引ならば千株単位売買しか行われておらないわけでありますから、通常の形ならば千株以上の株主である、こういうことになるわけであります。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕  それにもかかわらず単位未満、千株未満の株主が先ほども申しましたように二七%、三〇%前後にもなっておるという実情につきましては、これも先日申し上げたかと思いますけれども単位株、千株単位の株とその未満株とを持っております株主株式を処分いたします場合に、千株単位株式であれば処分は容易でありますから、その分だけをとりあえず処分をいたしまして、千株未満の株式については放置をしておくというか、比喩的に申しますならばたんすの中に入れてある、こういう株主にとっては、議決権を制限するということの弊害と申しましょうか、権利の侵害と申しましょうか、これは非常に小さなものであるというふうに考えていいのじゃないか。  それに反して、先ほど申しましたように二七%あるいは三〇%の株主に対して議決権の行使を制限する、したがいまして、総会の招集通知あるいはそのための必要な書類の送付をしなくてもいいということになれば、それによる合理化の効果はかなり大きなものがあるわけであります。特に今回の改正案によりますと、株主に対して書面による投票制度、議決権の行使制度というのを認めております。そのためにいろいろ参考書類を送らなければなりません。そうなりますと、費用もさらに増額を余儀なくされるわけでありますから、真に必要な関係についてのみそういう書類の送付あるいは総会の招集通知をする、こういうことで株式制度の根本的な改善を図りたいというのが単位株制度趣旨でございます。
  205. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの方でそういう株主素人論でもって、貸借対照表あるいは損益計算書という技術的なことは執行部に任しておけ、そういうことを株主総会にかけても意味がない、そういうようなことになりますと、ワンマン社長が出てきていろいろ不道徳なことが行われてくるわけですね。たとえば札幌トヨペット、これは会社の保証で金融機関から多額の金を借りて、株式投機のめり込みが三百億円を超す負債をつくってしまった、こういう事件があるわけですね。  それから、酒井水産株式会社なんというのは、実に戦慄するようなことなのですけれども、資本金一千万円、日商一億円ですが、四億円の負債が出たというので、自分の保険金を取ろうとして他人を自動車で当て逃げして、そしてその当て逃げして殺した人を、顔がわからないように、めちゃくちゃに顔や首などに乱暴してだれだかわからないようにして、そして社長が死んだということに愛人と計画して、四億円の負債を消却するためにそういう保険金目当ての替え玉殺人事件が起きるとか、こんなようなことが起きてくるのですよ。  結局これは、株主総会なんかあったって、この会社はおれがつくった会社なんだ、おれに任しておけばいいんだという考えでこういう問題が起きてくると思うのですよ。  刑事局に聞きますが、札幌トヨペットの岩沢靖氏の問題については、その後どういうようになっているわけですか。
  206. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 前回もお答えしたかと思いますけれども、いろいろと新聞報道等を含めまして問題が指摘されているところでございますけれども、具体的にどのように刑事事件として取り組むかにつきましては、捜査当局といたしましていろいろな角度から検討しているところでございます。
  207. 林百郎

    ○林(百)委員 刑事事件としての嫌疑もあるということなんですか、あるいはそういうものはないけれども、一応資料を集めているという程度なんですか。
  208. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 前回の御質問でも、新聞報道等が捜査の端緒になるかならないかというようなお尋ねを受けたわけでございます。その際にも申し上げたかと思いますけれども、こういうものは捜査の端緒になりますとかなりませんとか、また、そういうことでこういう疑いがありますということをこういう公の席で申し上げること自体、性質上適当でないという意味で、お許しをいただきたいということでございます。
  209. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、株が五十円単位の株は少数で、たんすの中に入れられていると言いますが、相当大きな株が自由に取り引きされている、そういうことがあって、いまのこういう証券取引についての投機的な取引が許されるとすれば、現行の商法でいっても、会社の株を一%とか、あるいは三百株ぐらい得ることは自由にできる、そういう組織になっているんじゃないですか。あなたの言うように、いや、株主といったって、それはみんな小さい端株はたんすの中に入れられているんだということだけで片づけられますか。  たとえば百万株ぐらいの株を一挙に買い占めて、それで株主になって、これは後の総会屋とも関係してきますが、そういうことだってできるんじゃないですか。だから零細な株主も入れての株主総会というものは必要じゃないかということなんですよ。会社乗っ取りのために株を買い取るというようなことが自由にできるようないまの社会なんですからね。どうなんですか。だからそういう意味で、執行部だけに任しておいて、零細な株主だから、それで総会の通知を出すのは費用がかかるからそういうのは省きます、監査役の選任のようなことだけは総会にかけます、あとは総会にかけないとはあなた言いませんけれども、そういうことだけで片づかないんじゃないですか。
  210. 中島一郎

    中島(一)政府委員 まず、いまの株主総会の権限の問題でございますけれども株主総会は、先ほども申しましたように、確かに株式会社の最高の機関でございますから、すべてここで重要な問題を決めるということが一面望ましいわけでありますけれども、現実の問題といたしましては、株主総会というのも、定時総会ということになれば一年に一回ということになるわけでありまして、本当に重要なことに限ってここで審議をするということにならざるを得ないというふうに思うわけでございます。  でありますから、その株主総会におきましては、取締役を選任する、監査役を選任する、会計監査人を選任するということにいたしまして、取締役会に責任を持たせる、取締役会の責任あるいは取締役の責任を強化する、そして代表取締役あるいは取締役に先ほども御指摘がありましたようなでたらめなことができないようにするというようなことになるわけであります。監査役あるいは会計監査人の職務と申しましょうか、責任についても同様でありまして、こういうものの地位を強化し、権限を強化いたしまして、そして会社の適正な運営を目指していくということになるわけでございます。  それからもう一つ単位株の問題でございますけれども単位株未満の株式の所有者、先ほど申しましたように、人数にしますと約三〇%前後ということになるわけであります。株式数ではどうかということは、これも先日申し上げたかと思いますけれども、統計によりますと〇・八%、こういうことになっております。一%未満だから無視していいというわけでは決してございませんけれども、この〇・八%の単位未満株につきましては議決権の行使を制限することによって得る合理化の効果というものを比較考量するならば、こういう単位未満株の議決権に制限を加えるということも、株式会社制度の根本である株式制度合理化するということのためには許されるのではないかということを申し上げておるわけでございます。
  211. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれの調査ですと、今度の商法改正によって株主権を奪われる者は、総株主数のうちのあなたも認めておる三〇%、約五百万人が減少するという数字が出ておるのですよ。この人たちの権限が奪われるわけなんです。しかもこの人たちは、あなたは明治三十二年と言いましたけれども、その後五十円株でずっと続いているわけなんですから、ことに明治三十二年ごろだとすれば、その五十円がいまの金にすれば相当の金になっているわけですから、会社は明治三十二年ごろの五十円の株の株金で出発したわけなんであります。それがいまのあなたの言うような大会社に成長してきたわけなんですから、そうしたらそれに対してスライドをして認めてやるということをしなければ、小さい株式しか持っていない者はもう切り捨てるということと通ずるんじゃないですか。それで――まあそれじゃお聞きしましょう。どうですか。私はどうしてもそこが納得できないのですがね。
  212. 中島一郎

    中島(一)政府委員 今回、単位株制度を採用するということで問題になっておりますような会社について申しますならば、資本金は、戦前から戦後に比べますれば、これはもう倍増、倍増、また倍増ということでふえておるわけでございます。それにつれまして、株主の持ち株券というものも、新株引受権が付与されておりますから、当然に倍増、倍増ということになっておるわけでありまして、当時の少数株主が現在もいまだに少数株主でとどまっておって、単位未満株主として議決権の行使を制限されるというようなことは、これは全くあり得ないことであろうかというふうに考えるわけでございます。  先ほども申し上げたわけでありますけれども、現在の単位未満株主というのはどうかと申しましたならば、それは概して議決権行使の熱意はない、株主としての自覚が薄い、そういう者が大部分であろう。そういう現実を考え、かつ先ほど申しましたようなそのパーセンテージが〇・八%であるという数字、さらにはそれが人数から申しますと約三〇%であるということとの比較、そういうものを総合して判断をいたしまして、現在の株主の一株当たりの額面額をどうするか、単位株制度をどうするかということを考えましたときに、法制審議会においても初期のころにはいろいろな御意見があったと聞いております、単位株制度はとるべきでないというような御意見もあったように聞いておりますが、しかし、そういう議論を重ねまして、最後にはこの答申は全員一致でされたといういきさつになっておりまして、私ども法制審議会審議の経過をつぶさに検討いたしまして、法務省としても法制審議会答申をそのまま受け入れて法律案にすべきだという結論に達し、法律案を作成したわけでございます。
  213. 林百郎

    ○林(百)委員 単位未満株主ということで零細な株主を切り捨てるということは、個人株主を減少させる。私は、先ほどから、全体の約三〇%、五百万人を減少させて、法人の株主の増加、安定、あるいは少数の有力株主による会社支配を容易にして、いよいよ株主総会を形骸化する結果を招く。これは従来の商法学者が主張してきた会社の民主化の方向、すなわち支配的大株主と中小零細株主との力のバランスを後者の方、中小零細株主の力のバランスを保持しなければならないということに対してかえって逆行するものである、これは商法学者の挙げての主張なんですね。  私たちの方で調べてみましたら、昭和二十五年から四十九年までに法人株主の数は七〇%に増なんですね。それから、個人の株主数は六〇%から三〇%に減じているわけです。法人株主の計は三五、六%から七〇%に増加しているわけですよ。だから、あなたは零細な株主だからそういうものは切り捨てていいんだ、そしてまた技術的なことはわからないんだと言いますけれども、あなたの言うような大株主あるいは一株五万円というようなことになりますと、この傾向が一層強まっていくんじゃないか。これは五十四年度株式分布状況調査、全国証券取引所協議会で作成したものなんです。そしてまた、金融機関の株の所有は一〇%から三〇%に伸びてきている。そういうわけなんですね。  だから、金融機関の株の所有がぐっとふえてきて、それから法人の株の所有がずっとふえてきている。個人の株の所有はずっと下がってきている。そういう意味で、単位未満株だとか端株主の権威を認めないというようなあなた方の意見を聞いていますと、この金融機関株主になる数の増加と法人の株主になる数の増加と、二十五年ごろから比べればもう二倍から三倍になっている。こういうものの方に通ずるのじゃないですか。どうでしょうか。
  214. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  御質問趣旨が三つあると思いますが、まず最初に、いわゆる小株主の切り捨ての問題でございますけれども、まず、昔の五十円持ち株主がいるといたしますと、これは先ほど来局長からも説明がございましたように、次々と増資をやっているわけでございます。しかも、従来のわが国の増資の傾向といたしましては、株主割り当てによる有償増資あるいは資本準備金を資本に組み入れての無償交付ということでございまして、従来の株主がひとりでに会社が大きくなってくるに従って持ち株数がふえていくという形になっているわけでございます。したがいまして、昔の五十円株主、一株株主というものも現在ではもう大株主ということになるわけでございまして、それが昔のまま、一株の株主がいまも一株であるという状況にはないわけでございます。  それでは、一体いま単位未満株主というのはどうしてできるのかという問題でございますけれども、これは市場で買います場合には、現在普通の株式でございましたら千株しか手に入れられないわけでございます。ところが、先ほど来申しております株式配当であるとかあるいは無償交付によりまして百株、二百株というのが手に入ってまいるわけでございます。その株主がずっとその会社株式を持っていると、意欲があるならば、これでその百二十株がまたふえ、百三十株が百四十株になるということでございますけれども、もうその会社株式を持つ意欲をなくしてしまったということになりますと、取引単位に満つる株式、つまり千株につきましてはこれは市場で売れますけれども、その二百株あるいは百株という端数――法律的には端数ではございませんけれども、現在市場では端数と呼ばれておりますが、その端数、端株につきましては、実際に売るという手段が非常にないわけでございます。もし売ろうといたしますと非常に安い価格でしか売れない、しかも手数料が高いということで、売るに売れないという状態で持っている。  したがいまして、現在では株主権の行使についての意欲も何もなくしてしまっているというのが実情でございまして、これは幾ら少数株主だからと申しまして、株主権の行使をするようにということをやろうといたしましても非常に困難な状況にあるわけでございます。むしろそれよりは、こういう小株主が合理的な値段で売れるような方法に持っていった方がよろしいのではないかということでございます。したがって、今回も会社に対して買い取り請求することができるということにしているわけでございます。  それからその次に、学者がこの単位株制度については批判をしているという御意見でございますけれども、これは確かに、先ほども出てまいりました田中誠二先生あたりはそういう御意見でございます。しかし、学者の中にはいろいろな説があるわけでございまして、いわゆる議決権というものについて、田中誠二先生のように、議決権とそれからいわゆる自益権と申しますか利益配当請求権のようなものは、絶対に分離できないのだというお考えの方もおられます。しかし、学説の主流は、何と申しましても、株主の権利というのは自益権と共益権と二つに分かれるのだ、一応これは別の性質の違う権利だというふうに考えるのが主流だろうと思います。さらにそのほかには、前の田中耕太郎先生であるとか松田二郎先生であるとか、そういうふうにむしろ自益権と共益権というものは全く別の性質のものであるというふうに考えてしまうという考え方もあるわけでございまして、今回の単位株制度につきましては、田中誠二先生のような自益権と共益権が全く同一のものであるという考え方の説のもとについては、確かに反対であるという御意見も出てくると思いますけれども、それ以外の学者の方々からは大方の賛同を得ているのではなかろうかと思うわけでございます。  次に、法人株主の増加の問題でございますけれども、これはもちろん、今後の株式大衆化という面からはいろいろ問題があろうかと思います。ただ、これは証券行政の問題でございまして、法務省の問題でございませんので批判の限りではないわけでございますけれども、ただ、この法人株主の増加ということが直ちに単位株制度と結びつくのであろうか。つまり、単位株制度と申しましても、通常の株式であれば千株をもって一単位とするということになりますと、普通の素人が上場会社株式を買おうとすると、千株未満では買えないわけでございまして、少なくともこれは最低単位である。つまり、素人が買える最低単位をもって一単位としているということになりますと、そのことが直ちに法人株主の増加、個人株主の減少につながるということではなくて、まだいろいろこの点につきましてはほかに原因を求めてさらに対策が必要じゃなかろうかと思っております。
  215. 林百郎

    ○林(百)委員 私と皆さんと見解が違うので、私としてはやはりこういう方向を改善しなければいけないのじゃないか。すなわち、先ほど私が申しましたように、法人株主あるいは金融機関株主が非常にふえてくる、そして大株主がふえてくる、あなたの言うように一株五万円なければいけませんから、百株持つには五百万持たなければいけませんから。だから、総会もそういう少数の有力株主あるいは会社株主あるいは金融機関株主を擁護するような方向へ行く可能性が十分あると思うのですね。  そこで、総会屋対策の問題が出てくるわけなのですが、ちょっと警察庁へお尋ねしたいのですが、いま総会屋はどういう状態になっているのか。総会屋といっても、総会出席して議事進行などをやる場合と、広告料を取るような場合など、この新聞によりますと、守る側に立つ総会屋と攻める側に立つ総会屋とある、外国には余り例のない守る側の総会屋日本の国では育成しているのだというようなことを言っているのですが、今回の商法改正は、株主権の行使に関する利益供与の禁止を設けて、その罰則を整備して一応総会屋対策はしておると思いますけれども、これは二百九十四条ノ二を受けて四百九十七条で、「株主ノ権利ノ行使二関シ会社計算ニ於テ財産上ノ利益ヲ人ニ供与シタルトキ」あるいは「情ヲ知りテ」「供与ヲ受ケ」た者、こういうようになって、「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」であるわけですね。そして、従来は「左ニ掲グル事項ニ関シ不正ノ請託ヲ受ケ財産上ノ利益ヲ収受シ、」「不正ノ請託」というのがあるわけなのですが、取り締まる方の警察庁側にお聞きしたいのですけれども総会屋の最近の動向、実態はどうなっているのでしょうか。  新聞によれば千社から年に十億ももらうような総会屋があるとか、あるいは社長がみずからお酌をして歩いて総会屋のごきげんをとるとか、あるいは自分の会社の売り先を総会屋に頼んでいるような総会屋もあるとか、そういうようなことがいろいろ書かれているのですが、警察庁から見た総会屋というのはどういうようになっていますか。
  216. 漆間英治

    ○漆間説明員 最近の総会屋の傾向ということでございますが、私どもの取り締まりの立場から総会屋というものをながめてみますと、その傾向として次の三つのことが言えるのではないかというふうに考えています。  一つは、活動の形態が多様化してきているということで、従来、総会屋と申しますのは、いま御質問にもございましたように、株主総会における活動が中心で、それに伴っていろいろの財産上の利益を得るという活動が主でございましたけれども、それのみにとどまらず、たとえば雑誌とか新聞等の刊行物を発行して、それを背景にして金銭を得る、あるいは講演会、ゴルフコンペ、ゼミナール、そういうようなもろもろの催し物を開催して、それに関連して利益を得るというように、いろいろとその活動の態様が多様化してきているというのが一つの重要な傾向であろうかと思います。  それから二番目は、従来、活動の領域と申しますのが大体経済の中心である東京、大阪、この両地区に偏っていたわけでありますが、最近は、この両地区における取り締まりの強化と、それから対応する企業側の防衛の強さ、そういうものも影響しているかと思いますけれども、この両地区のみにとどまらずに地方都市へも進出している、そういう活動の広域化傾向というのが目立った特徴でございます。  それから三番目に、暴力団がこの総会屋の分野に進出してきている。暴力団自身がみずから総会屋的な活動をやるということと、もう一つは、既存の総会屋が暴力団の支配下に入るないしはこれと連絡をとって活動する、そういう態様のもとにこの分野に暴力団が進出をし、少なからぬ資金を得ている、そういうところが重要な特徴じゃないかというように考えております。  ざっと申し上げて、三つの特徴点があるというように考えます。
  217. 林百郎

    ○林(百)委員 大体実情はわかりました。  いわゆる総会屋というのはいま幾つというか幾人、何でもいいですが、どのくらいあって、そしてどのくらいの金が総会屋に動いているかというようなことはわかりますか。
  218. 漆間英治

    ○漆間説明員 昭和五十五年末現在で警察が把握しております総会屋というジャンルに属します人たちの数は、約五千八百人ということであります。そのうちいわゆる暴力団という定義のものに属しますものが千百人ということであります。  それから、どの程度の額が流れているかということでありますが、これはちょっと私どもも正確に把握いたしておりませんが、午前中小林議員の御質問に答えて私どもの刑事局長が一つの推計を御紹介したと思いますが、その際に御答弁申し上げましたように、昭和五十三年に科警研と部外の学者の先生とに委嘱をいたしまして、暴力団の収入の推計をやったことがございます。その中で、総会屋につきましては一人当たり年間約一千万の収入があると推計されるというような結論が出ておりまして、それをもとに計算をいたしますと、いま申し上げましたように五千八百人おるわけでありますから、年間約五百八十億ぐらいの金が流れているのではないかという推計も可能である。しかし、これはあくまでも五十三年当時の数字を基礎に試みにやってみましたということでございますから、必ずしもその正確性については私どもも十分な自信を持っているわけではございません。
  219. 林百郎

    ○林(百)委員 大体実情はそれに近いところではないかというように思うわけなんですが、さっき言ったように会社大会社になった、それで一株が五十円から五万円になれば総会屋さんの得る金も大きくなる。  それで、今度はそれに対する「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」云々とか「利益ノ供与」とかなんとかありますが、警察の方では、私たちが聞いておりますところによると、現行の四百九十四条の「左ニ掲グル事項ニ関シ不正ノ請託ヲ受ケ財産上ノ利益ヲ収受シ、要求シ又ハ約束シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五万円以下ノ罰金ニ処ス」、こうありますので、この総会屋は必ずしも株主の権利の行使だけに働くわけじゃないので、いろいろの請託を受けて総会屋が動くということは、これはもうマスコミでも伝えているところなのですが、聞くところによると、警察側は、この「不正ノ請託」という条件があったのでは思うような捜査ができないので、これをむしろ外してもらえないか、「左ニ掲グル事項二関シ財産上ノ利益ヲ収受シ、要求シ又ハ約束シタル者ハ」云々、こういうようにしてもらった方が捜査がやりいいんだがと、こういう意見が出たと聞いていますが、そんなようなことありましたでしょうか。
  220. 漆間英治

    ○漆間説明員 確かに、五十三年でございますか、法務省の民事局参事官室でいわゆる試案というものが公表されました折に、当時警察庁としてこれに対する意見を取りまとめて法務省の方に御通告申し上げておりますが、その中で、当時の試案ではこの「不正ノ」というのが抜けておりましたので、これは私どもの従来の取り締まりの経緯にかんがみまして、「不正ノ」が抜けることは大変取り締まり上都合がよろしいということで、歓迎であるという趣旨意見を言ったことはございます。  ただ、今回、そういうような経緯を踏まえまして、法務省の方でいろいろ御検討いただきました結果、この「不正ノ」というのは従来どおり残ったかわりに、四百九十七条が新設されまして、株主権の行使に関する利益の供与の禁止規定が設けられましたので、先ほど申し上げましたような総会屋の主たる活動の態様である株主権の行使に絡んで金銭を収受するという行為は、この規定によって十分封じ込めることができるというふうに私ども考えているわけでございます。
  221. 林百郎

    ○林(百)委員 たしか四百九十七条は総会屋に対する一つの前進的な取り締まりの方向ですが、これはあなたも言われましたように、株主の権利の行使だけなんですね。ところが、四百九十四条は、そのほか非常に多面的にあるわけなんです。だから、総会屋を取り締まるためには、やはり四百九十四条で、しかもあなたの方が望んでおられるような「不正ノ請託ヲ受ケ」というのを外して、総会屋を十分に取り締まりをするという方向が好ましいように思うわけなんですが、民事局の方ですか、この案をつくられた責任者の方は、警察の方からそういう要望もあり、そしてそれが依然として現行法で残っておって、それから四百九十七条が新たに設けられたのですが、この点については何かいきさつがありますか。いきさつがあったら説明してください。
  222. 稲葉威雄

    稲葉説明員 四百九十四条の規定と申しますのは、先生御指摘のとおり、各号に列挙をしてございますが、この態様はいずれも株主権の行使に関するものでございまして、むしろ株主権の行使のうちの限定的列挙ということになっております。むしろ四百九十七条の方の株主権の行使に関しというのが包括的でございまして、かなり広い範囲のものを、ほとんどの部分は四百九十四条に列記されていると考えておりますけれども、仮にそれから漏れた部分であっても、株主権の行使に関するものはすべて含まれるということになっております。  それから、四百九十四条の方の主体は必ずしも会社に限定されておりません。特に供与するものについては会社に限定されておりませんで、もちろん受けるものについても主体は限定されておらないわけでございますが、四百九十七条の方は、主体を供与するものからとらえまして、「会社計算ニ於テ」ということ、そして会社取締役その他会社機関にあるいは使用人に限定しているわけでございます。  この考え方は、あくまで今度の四百九十七条の思想は、むしろ供与する方が悪いという思想を明らかにしたわけでございまして、そういう意味で四百九十四条と四百九十七条とは若干思想を異にするというふうに申し上げてもよいと思いますけれども、効果と申しますか、総会屋封じ込めの効果というのは、いま問題になっておりますのはもっぱら会社が金を出すということが問題になっているわけでございまして、決して四百九十四条から「不正ノ請託」を抜くことによって得られる効果に比べて低いものではない。しかも、四百九十四条から「不正ノ請託」を抜いた場合には、いろいろ法律的に問題が残るということがございますので、このような規定の形にいたしたわけでございます。
  223. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたはどういう方なんですか。警察関係の方ですか。
  224. 稲葉威雄

    稲葉説明員 民事局の参事官です。
  225. 林百郎

    ○林(百)委員 二月二十三日の朝日新聞を見ますと、総会屋の動きというのはそう単純に――こういうような会社の存在が社会的に多面的になりますと、たとえばここに挙げてある例では「効果あがらぬ追放運動」、「だが、東京・丸の内特殊暴力防止協議会のある会員企業の総務担当者の証言」によると、「製品の売り込みや受注がうまくいかない場合、総会屋を通じて相手企業の担当重役に紹介してもらうこともある」と、総会屋と重役が非常に癒着しておるものですから、こういうことまで総会屋がやって、そしてそのピンをはねて、その上に暴力団がいるということになっているわけなんですよ。  だから、あなたは株主の権利の行使といえば非常に広範だと言いますが、いまの総会屋の動きなんというのは、そんな単純なものじゃない。表に出て株主総会をやるころはちゃんと根回しがしてあって、暴力団がそんな、あれは総会屋だなんて目のつくようなことをやらなくて、ちゃんと根回しをやって、相当な金をもらって、ちゃんとおさめておくとか、そういうことができるわけですね。ことに少数株主になればなるほどそういうことがやりいいわけですね。そういう場合は、やはり警察の言うように四百九十四条の「不正ノ請託ヲ受ケ」というようなものを除いて、ここにずっと列挙してある事案について取り締まりができるようなことを、まあ今度は改正して――私これは改正したのが後退であるとは言いませんよ、一歩前進だと思いますが、さらにいまの総会屋実情をよくお調べになって、そういうものは警察の捜査などがやりいいような方向をさらに将来検討する必要があるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  226. 稲葉威雄

    稲葉説明員 繰り返しお答えすることになりますけれども、四百九十四条に掲げております行為の態様というものは、すべて株主権の行使に関するものという範疇で入るわけでございまして、四百九十七条には該当をしないけれども四百九十四条には該当する、これはもちろん主体を会社計算においてする場合に限定してでございますけれども、そういう場合はないと私どもは考えております。  確かに、先ほど警察庁からもお答えがございましたように、総会屋の活動の範囲というものはかなり多面的になっておりますけれども、しかし、会社法はあくまで会社の組織に関する法律でございますから、その制度趣旨から考えまして、会社の組織法としての範囲を超えるわけにはいかないわけでございまして、総会屋という名が示すように、総会を典型的にいたします株主権の行使に関連して、株主権の行使に不当な影響を与える趣旨での金品の授受がなされるということを抑えるということが、会社法としてはやれる最大限のことであろうというふうに考えておるわけです。  それとともに、四百九十七条では「会社計算」ということを表に出しておりますので、会社の担当者と申しますか、取締役を初めといたしますそういう当事者、執行部、そういうものに対する総会屋に金を出してはいけないという自覚を与えるという意味では非常に意味のある規定ではないか、かように考えております。
  227. 林百郎

    ○林(百)委員 釈迦に説法ですが、四百九十四条をごらんになりますと、一項の一号には「創立総会株主総会、社債権者集会又ハ債権者集会ニ於ケル発言又ハ議決権ノ行使」、さらには「訴ノ提起」の問題等、私は四百九十七条よりは四百九十四条の方が非常に多面的な要素を含んでいると思います。しかし、援用条文たくさんありますから、ここであなたと援用の内容を一々論争していても時間がかかりますから、将来検討してみてもらいたい、こういうように思います。  そこで、実は少数株主あるいは法人の株主あるいは金融株主というようなことで大きな株が非常に動く可能性が出てきている。それで、これはきょうの毎日新聞で見たのですが、大貫という運転手さんが拾った一億円は、これは実は誠備の株投機代金だ、黒川木徳証券の幹部がそれを認めている、それは「秘密会員の代理人が加藤側から株売却金三億円を現金で受け取り、それを車に運び込む際、一億円の入ったふろしき包み一個だけを路上に置き忘れた」という、ちょっと私たちにとってショッキングな記事がありますので、こういう三億円単位の株のスペキュレーションが行われている。だから私は、大株主株主というように言いますけれども、小株主は問題でないと言いますけれども、しかし、そういうことを余りあなた方が強調すると、こういう大きな株がどんどんスペキュされる。誠備グループが動かせる資金は五百億円から一千億円と書いてあるわけですね。これについては刑事局長さん、もう加藤暠は逮捕されているわけでございますね。この秘密会員というのはあることは御存じなんですか。まさか刑事局が新聞に書かれて初めて知ったわけではないでしょうね。
  228. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 加藤暠という人の脱税そのものにつきまして、本人の脱税そのものにつきましてはすでに捜査を遂げまして、起訴をしておるところでございます。
  229. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、その二十三億の脱税について、ここには廿日会もある、その上に「政治家、芸能人の秘密会員もいた。」と新聞に書いてあるのに、刑事局長、加藤暠を調べて、そういう事実はありませんとここで言うのですか。
  230. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そういう意味で申し上げたわけではございませんで、加藤暠本人の脱税ということについては十分捜査を尽くして、起訴をしておるということでございます。そのほかの人のことにつきましては、まだ脱税の容疑があるとかないとかということは、国税当局の調査等もございまして、まだ把握してないということでございます。
  231. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、加藤暠を調べてみれば、こういう組織があったかなかったかということは、わかるわけでしょう。廿日会とか、あるいは廿日会の上に政治家、芸能人の秘密会員もいたというようなこと、国会でここであなたに余り具体的なことを聞いて言いにくかったら、この新聞に書いてあることは事実と違うか、あるいはそういう点については事実と違わないと言っては、これは認めたことになりますが、これはあなたの答えられる範囲で、新聞でこれまで書いてあるのに、しかも加藤暠はすでに二十三億円――それでは二十三億円の利得というのは何ですかね。国税庁、来ているでしょう。二十三億というのは、加藤暠の脱税というのは何の脱税だったのですか、ちょっと国税庁、答えてください。
  232. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 お答えをいたします。  この事件は、国税犯則事件として掌理をした事件でございまして、その内容については、直接の担当ではございませんが、一応所得税法上の株式の継続売買による所得であるというふうに伺っております。
  233. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう株式のスペキュによって得た所得が二十三億あったというのですが、それは何も加藤暠がひとり占めしておるわけじゃないので、ここに誠備グループというのがあったということは間違いないので、その誠備グループという――それじゃ刑事局に聞きますが、誠備グループのあったこと自体は認めるのですか。
  234. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 どうも認めるとか否定するとかいうことでもないような気がするわけでございますけれども、要するに委員の御指摘のような組織がございまして、その中で株の取引が行われて、その結果、加藤なる者が相当多額の収入を得てそれを脱税した、こういうことが認定されておるわけでございます。したがいまして、その捜査の過程におきまして、どういうやり方でどういう株の取引が行われたかということは当然解明されているわけでございます。
  235. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、この新聞記事によりますと、秘密会員の代理人が加藤から三億円もらうのを一億円置き忘れたと称して、これは後で加藤暠が埋めておりますけれども、そうすると、税法上からいいますと、株式を売却して三億円を加藤暠からもらったとすれば、このもらったいわゆる秘密会員なる者は、これに対する相当の税金を納めなければならないと思いますが、国税庁、いかがですか。
  236. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 国税当局といたしましては、課税に結びつくような事実につきましては日ごろから資料、情報の収集に努めて、適正な課税を行うように努めております。しかしながら、いま御質問の件につきましては、個別の事案にもわたりますし、また、資料収集の内容等につきましても個別の事案に関することでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  237. 林百郎

    ○林(百)委員 答弁を差し控えることは結構ですが、加藤暠の二十三億は所得税法違反で起訴されているわけなんですが、これはこれでまた新たに脱税があったかどうかということを調べなければならない対象に、新聞の記事だとすれば、仮定しましょう。あるいはあなたの方でこの事実も確定しなければいかぬでしょうが、新たな脱税事犯として国税庁が手放しにしておくというわけにはいかないのじゃないですか。そんなことをしたら国民はだれも納税の意欲なんか燃えてきませんよ、加藤暠から三億円もらった、国会で国税庁に聞いたら、それは別件ですから私の方は知りません、そんなことを言っていたら。ことにあなた、確定申告の期日がもう過ぎたときでしょう、どうお考えになるのですか。もっと国税庁らしい厳しさを持たなければ、あなた、困りますよ。
  238. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 国税当局といたしましては、あらゆる資料、情報を収集いたしまして、たとえば先生御指摘のような事案も含めまして、課税の端緒となるような情報につきましては、これを丹念に集めているわけでございます。したがいまして、課税に結びつくような事実がございましたら、それをもとにいたしまして、私どもとしてもそういう課税漏れというようなことがございましたら厳正に対処いたすというのが従来からの基本的な方針でございます。
  239. 林百郎

    ○林(百)委員 三月二十七日の参議院の大蔵委員会で、私の方の党の近藤議員が、誠備グループの中で政治家の名前がちらほら出ているけれども、脱税容疑の調査はしているか、大蔵省、申告の状況を見ながら調査をしています、こう答えているわけですね。これは政治家といえども脱税が許されるというはずはないのですが、もう申告は済んだ段階なんですけれども、この誠備グループに絡んだ政治家については、ここに名前と写真まで出ているのですよ。三月十五日号のサンデー毎日ですね。そうしたら、これに対して、こういう申告漏れがあったかなかったか、あるいはこういう誠備グループとの関係があったかなかったかというようなことを取り調べをするのは、検察庁もそしてまた国税庁も当然の任務だと思うのですよ。政治家だから、どんなことがあったって私の方は手を抜いています、そういうことじゃないでしょう。  それで、あなたは参議院の大蔵委員会で、申告の状況を見ながら調査していますと言っていますから、政治家のうちで申告漏れがある、修正申告をさしたというような事例はあるのですかどうですか。まず国税庁に聞いて、それから刑事局も、これまで書かれているのに刑事局が何も手をつけていないはずはないと思いますが、その辺のことを、国会ですから、言える範囲のことを言わないと国民が納得しないわけですよ。まず国税庁どうですか、ここに出ている人たちあるいはそれ以外でもいいんですが、政治家で修正申告をさせたのがあるのですか、ないのですか。
  240. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 ただいま先生が御指摘されましたように、昭和五十五年分につきましては去る三月十五日までに確定申告が出されているわけでございます。私どもといたしましては、一般的に確定申告の内容をチェックし、種々の情報、資料等と照応いたしましてこれから内容を検討するというのが現在の段階でございます。したがいまして、どれをどのように処理するか、調査するかどうかということは、これは個別の問題でございますので、そういう意味で、私どもとしてはそういう手順の中できちんとした処理をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  241. 林百郎

    ○林(百)委員 誠備グループの中で、これは政治家と言われていますから、われわれの名誉にも関係するので、いささかしつこく聞いているわけなんですけれども政治家、芸能人の秘密会員がいたというわけなんですから、政治家といえども、特に名前と写真まで出ているような人もあるわけなんですから、こういう人たちはもちろんのこと、政治家について国税庁としては何の遠慮会釈もなく、その申告について脱税があったかどうか、あるいは修正申告をさせるかどうかということはお調べになるのでしょうね。遠慮するのですか。
  242. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 これはもう先生に申し上げるまでもないことでございますが、私どもといたしましては、課税の公平ということが第一の使命だと考えております。したがいまして、納税者の方がどのような職業の方であろうと、私どもとしてはきちんとした処置をしてまいる、適切な納税をしていただくように必要があれば調査をする、そういうことで課税をきちっとやっていくということが大原則であるということは御承知いただきたいと思います。
  243. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、本件でも加藤暠から三億円もらった、実は一億円の入ったふろしき包みを一個だけ路上に置いた、後で加藤から一億円入っていますから、三億円を現金で受け取った、これが秘密会員の代理人がやったんだと言っていますから、この三億円の所得についてこれを課税すべきものであるかどうかということを、これだけ新聞に大きく出た以上は国税庁としてもこの問題についてお調べになるのでしょうね。あるいはこれに該当するものがあるかどうかということを申告の中から調査する、これについて意にとめて配慮するということは当然でしょうな。どうですか。
  244. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 私どもといたしましては、課税に結びつくような資料につきましては丹念に収集をしてまいりたいと考えておりますので、いま御指摘の事案につきましてもこれを参考としながら今後十分に検討をして、課税の内容として種々の検討をするという一般的な手順の中に入っていくということで御理解いただきたいと思います。
  245. 林百郎

    ○林(百)委員 国会ですから国税庁も余り具体的なことは言えないでしょうが……。  それで、刑事局長にお尋ねしますが、こういう新聞に出たからといって、何もすぐこの国会で責任ある答弁を私も早急に求めるつもりはありませんが、仮に国税庁で調べて脱税があった、しかもそれが政治家であった、そして国税庁から告発があったとすれば、当然刑事局としても、所得税違反として加藤暠もこうやって犯罪事実として起訴されているわけですから、そういう場合は、仮にそれが政治家としても、それには何らの遠慮もせずに毅然としてなお検察当局の態度をおとりになるでしょうね。これは国税庁から告発があった場合ですよ。そういう立場でお聞きしておきます。  私の方はもっと具体的なことを実は知っているんですが、いまここで余り具体的な名前を出したり――もうあなたの方だってこんなことはわかっているはずですよ。わかっているはずだけれども、私の方も遠慮し、あなたも言いづらいからと思っているのですが、もし告発があったとすれば、仮にそれが政治家であろうと、それは検察の権威にかけて毅然とした態度で取り扱うというたてまえでしょうね。
  246. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 仮に犯罪ということになりました場合に、それがどういう方によって行われたものでございましょうとも、同様に扱うことは当然でございます。
  247. 林百郎

    ○林(百)委員 奥野さん、実はきょうの新聞に政治家や芸能人が秘密会員だったと特に書いてあるわけですね。われわれも政治家ですし、あなたも政治家で、政治家の名誉に関することなんですね。それで、こんなに名前と写真まで出ているわけですね。だから、これは仮にですよ、仮に政治家であろうと、国税庁から脱税があったということで告発があった場合には、検察庁としては、あなたとどういう関係がある人が出てくるかもしりませんが、毅然とした検察行政の権威を示してもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  248. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これは、脱税問題としてやはり国民に疑惑を招かないような処理が国税当局においてとられるべきだと思います。また、その脱税額が多額に及びます場合には、告発になってくるわけでございますから、検察庁はこれを受けて適正な処理をしなければならないのは当然のことだ、こう思っております。
  249. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣としては当然の答弁でございますので、私もどうぞやっていただきたいと思います、政治家の名誉のために。こんな週刊誌に写真や名前まで出されて、いかにも荒かせぎをしている国会議員がいるようなことをそのまま放置するわけにいきませんので、もしこの中でそういう関係者が出たとすれば、厳正な措置をしていただきたいと思うわけです。  もう私いろいろと時間をオーバーしましたので、あと一つだけ聞かしていただきますが、民事局長、私どうしてもこう思うのですが、会社監査人、いろいろアメリカのSECの問題も現に出て、同僚から質問がありますから、同じ質問を繰り返してもいけませんが、何か公認会計士協会とか公認会計士の法人でもつくって、そこから推薦をする、そういうようにして公認会計士の中立性というか、やはり会社から金をもらって、しかも監査役の中から会社監査役が出るということになりますと、どうしたってそれは情実が絡んできますので、公認会計士の会計監査に中立性を保たせる、こういう点についてはもう一工夫する必要ありませんか。あるいは公認会計士協会とかなんとかというところに委嘱して、そこから推薦を受けて、そういう人を公認会計士にするというようなことは考えられないものですか。あるいはそういう方向を将来検討するなら検討するで結構ですがね。
  250. 中島一郎

    中島(一)政府委員 今回、改正案の内容を御説明に参りました場合に、ただいま御質問にありましたような意見と申しましょうか、提案と申しましょうか、そういうことをおっしゃる方がかなりいらっしゃったわけでございます。私どももそういう御意見も伺いましたので、将来の問題として検討さしていただきたいと思っております。
  251. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、せっかく公認会計士の会計監査を権威づけておるというのが今度の商法改正一つの目玉だと思いますので、ひとつ将来、局長の言うようにそういう点を考えてもらいたいと思います。局長の答弁を権威づけるために最後に大臣から一言聞いて、私の質問を終わります。  どうもそういうことが必要ではないか。アメリカのロッキード事件なんかも、SECが告発ですか、内情を調べて捜査権まで持って、それでああいう事件が明るみに出たわけですから、日本でもそれくらいの権威を公認会計士に持たせて、初めて公認会計士の会計監査というものが権威づけられると思うのですね。だから、将来そういう点についてさらに前進的な検討をしてもらいたい。
  252. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公認会計士公認会計士法に基つきまして重要な責任を負荷されている、私はこう思うのです。それをさらにもっと外部からの監査制度の活用という意味において工夫をすべきではないかというふうに、私はいま林さんのお話を受け取ったわけでございます。これらの点についても、将来にわたって検討すべき課題だと思っております。
  253. 林百郎

    ○林(百)委員 私の質問を終わります。
  254. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、来る二十八日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十五分散会