○岡田(正)
委員 私は、四月二十一日の
質問のときに、二時間の時間をかけまして六点にわたりまして、
法務省、大蔵省、警察庁に
質問をしたわけでございます。その中で残りました
質問点を、労働省の
関係がずいぶん残っておりますので、
質問をさしていただくわけでございますけれ
ども、先般六点
質問いたしました中の
一つである
株主の提案権という問題について、労働省に関連して、本日
質問する六つのうち四つが関連して
質問として出ますので、そのいきさつをちょっと聞いておいていただきませんと何のことやらさっぱりわけがわからぬ、こういうことになりますから、
質問の内容は簡単でありますが、
株主の提案権の問題について、ちょっと前知識として私の主張点を聞いておいていただきたいと思うのであります。
さて、今回の
法改正で大きな目玉の
一つといたしまして、非上場
会社あるいは中堅
企業というような
会社に対する
単位株制度との問題でつながりがあるわけです。簡単に申し上げますと、中堅
企業というのは、非上場
会社というのは
単位株制度を採用しないと非常に不利になります。しからば、定款を変えれば
単位株制度をとれるということになっておりますから、定款を変えて
単位株制度をとればいいじゃないか。ところが、
単位株制度をとってもまた不利となります。そこで、これはえらいことになったというので、そこで気がついてもう一遍定款をやり変えて元の中小
会社に戻ろうといたしましても、それはだめだよと
法律は
規定をしてあるのであります。まさに前に行くこともできなければ、後ろに退くこともできない。言うならば王手飛車取りという
状態に追い込まれるのであります。
そこで、何のことかおわかりにならぬと思いますから、少し中身のことを申し上げておきますと、なぜ中小
企業が不利になるんだろうかという
一つの例であります。時間がありませんので
一つだけ例を申し上げますと、その中に提案権という問題があります。この提案権というのは、今度の
法律が
改正をされますと
単位株制度というのがとられますけれ
ども、通常言いますところの、今回の
法改正があれば、資本金五億円以上の
大会社が
単位株制度にどうしても従わなければならなくなるわけでありますけれ
ども、その他の中小
会社におきましては、その株数の百分の一、一%または三百株の
株主であれば
株主総会に提案をする権利を持っておる、こういうことになっておるのであります。
さて、その三百株の
株主から提案をされましたならば、それは
総会の招集通知状にその議題をはっきり明記しなければならない、こうなっております。しかもそれが一人で提案、いわゆる三百株を一人で持っておらなければいかぬのかというと、そうじゃありません。五、六人の人でも構わないわけであります。だから五、六人の人が集まりまして三百株集めて提案をすることができるということになるので、
総会においていきなりぽっと手を挙げて発言するのとは違うのであります。招集通知状にはっきり書かなければいかぬ。たとえば提案された内容がまことにショッキングな問題でありまして、いままで健全に隆々とやっておる
会社の
株主総会へ、
会社解散に関する件とか、あるいは
代表取締役解任に関する件というふうな問題が出ても、これは書かなければなりません。ということになれば、
会社にとっては大変なイメージダウンになることは間違いのないことであります。
そこで、この
法改正が通りますと、来年の五十七年十月一日よりは、新
会社設立のとき額面が一株五万円に引き上げられます。無額面の
株式でありましても、五万円相当のものでなかったらだめであります。またさらに、無償交付をいたす場合でも、一株当たりの純資産が五万円以下ではだめ、
株式分割も準用して五万円以下はだめ、こういうふうに分析をしてまいりますると、今回の
法改正にあります二百三十二条ノ二というものはわざわざ三百株という
規定が残してありますが、この三百株というのは明らかに三百
単位株を指しておるのではないか、ここに非常な間違いがあるのじゃないか、いわゆる
大会社だけを念頭に置いてつくり変えた
法改正ではないかなと思わざるを得ないのであります。
さてそこで、これが通りますると、新
会社だけではなくて、いままでにありました
会社にも全部それが適用されるわけでありますが、その
人たちはいわゆる
単位株制度をとらない限りいままでの株でよろしいわけです。そこで、五十円株のいわゆる百分の一もしくは三百株ということになりますと、五十円掛ける三百株ですから、一万五千円くらいの株を持っておれば容易に提案をすることができる、
株主総会に提案をすることができる、こういうことになるわけです。それでしかも、その提案権というのは、先ほど申し上げたように、一人でなくてもいい。数人で三百株でもよろしいわけであります。これはその提案をすれば、
総会の招集通知状に書かなければならぬという非常に重要な問題を含んでおります。それを印刷したからといって
総会にかければ、恐らく現在の体制としたら、何を言うとるかといって、通るはずはないでしょう。否決されることは間違いないと思います。ところが、否決はされましても、
会社のイメージダウンだけは逃れることはできませんという重要な問題を含んでおるのであります。
ところが、片や上場
会社、いわゆる資本金五億円以上という
会社になりますると、今度は五万円株になるわけでありますが、たとえての話、五十円の株をいま持っておるといたしますと、千株集めれば五万円になりますから、そうするといわゆる
単位株五万円としてこれは成立するわけであります。ところが、上場
会社の場合の提案権というのは、百分の一または三百
単位株となっておりますから、ということは、中小
会社で言う一株というもので言えば三十万株持っていなければ提案権を有しないということになるのであります。
大会社の場合は三百
単位株ということになれば、一
単位が五万円ですから千五百万円、千五百万円の
株主ともなればこれは非常識なこともまずまずあり得ない、非常識なことはしないであろうという予測も十分につき得るわけでございます。
そこで、そんなに上場
会社のまねがしたいなら、
会社のイメージダウンになることが非常にこわいなら、この際どうや、あなたのところも、非上場
会社であっても構わぬのだよ、定款さえ変えれば
単位株制度がとれるんだよということを指導しております。
単位株制度をとったらいいんだよということを指導します。ところが、それでは
単位株をしましょうといって定款を変えて
単位株にしたら、
一体どういう問題が中小
企業に起きるでしょうか。それは
単位未満株というものが出てまいります。いわゆる一
単位――いま五十円の場合ですが、千株に満たない場合の株があります。これは配当金を受けるだけでありまして、他にこれといった特典はない。一割配当があったって一株五円でございますから、こんなものいつまで持っておってもしようがないというので、その
単位未満株を
会社に買ってくれ、こう言う。今度は、買い取り請求があったら
会社はこれを買わなければならないとはっきりなっておるわけです。
それを今度は買うとなりますと、これに応ずることになったら
一体どういう問題が起きるかといいますと、その買い取り価格というのは、上場
企業であれば毎日の新聞で御承知のようにその株の値段がちゃんと出ております。ところが、非上場
会社のような
会社でありますと、
公開していないわけですから株の値打ちがわかりません。値打ちがわかりませんから、その
会社がこれは五十円株ですから五十円でなら引き取りましょう、それには応じられぬ、そんな安いものではないということになって、裁判所へ訴えるという道が開けています。裁判所に訴えれば、この間大蔵省を呼んでお話を聞きましたように、当然これは相続権の問題のときに財産評価を税務署がいたしますが、その評価額をもって裁判所へ連絡をいたします。裁判所はその金目をもって判決といたしますから、たとえばこの間もお話ししたのでありますが、広島県の賀茂鶴という有名な酒屋さんがあります。この酒屋さんは、資本金二百万円で一株の額面は五十円です。年間配当一割を続けておりますが、配当金は一株五円であります。その株券を二万六千円で買い取れというのですから、たまげた話であります。
そこで、二万六千円でその
会社が買い取ったからといって、この株をだれかに売ろうといったって、五十円と書いてある株券を二万六千円で買うばかは世の中におらぬでしょう。たとえば、あなたのことだから買うておこうかというので五十円の株券を二万六千円で買ったといたしましても、一年間のその一株に対する、二万六千円に対する配当は額面の一割ですから五円でございます。こんなあほなことに、そんな酔狂なことに金を使う人がおるでしょうかね。というようなことになってきますから、したがって、買い取りました株というのは全部自社株で抱えてしまいます。自社株で抱えるということは、資金枯渇に通ずることです。商売をなさる方が資金がなくなってきたら
一体どういうことになるか、これは自明の理でございます。
しからば、上場
会社はどうかといったら、買い取り請求が来ましたって、何ぼ来たって平気であります。その来たものは、ちゃんと値段がわかっているのですから、隠れもない、毎日新聞に出ているのですから、それをどんどん買い取りまして、それをまたすぐ兜町へぽんとほうり投げれば、兜町の方でたたたっと一日のうちに何千万株あったってさばいてくれます。
一つも影響はありません。そこで資金不足を生じるということも、したがってありません。
そこで、その次に申し上げたいことは、賀茂鶴のこともいま御
説明を申し上げましたから、その例を見てもおわかりになりますように、今回のこの
法改正というのは、定款を変えれば
単位株制度になり得る、なったら今度は引っ込みがつかぬ。買い取り請求が来る、資金枯渇になる、逃げてまたもう一遍戻ろうかと思ったら、どっこいそれは戻られぬ、
法律で決めてある。全く王手飛車にかかったようなものでありまして、どうにもできぬようになる。だから、私は口が悪いようでありますが、今回の
法改正がこのまま通りましたならば、非上場
会社、中堅
会社等にとりましては命取りになりはしないかという、きわめて危険なものがこの中に含まれておると言いたいのであります。そういうことをひとつ頭の中に含んでおいていただきたいと思います。
さらにいま
一つの問題は、よく言われますそれだったら無償交付すればいいじゃないか、
株式分割すればいいじゃないかというようなささやきが聞こえてくるのでありますが、それがどっこい、できぬことになっております。無償交付をしようと思えば、これも一株が五万円でなければできません。五十円じゃ出せないわけです。そして
株式の分割もそのとおりでございます。純資産で五万円を下ってはならない、こういうふうに相なっております。ということになれば、たとえばいまさっき例に挙げましたが、広島県のごくごく優秀な
企業であると言われた賀茂鶴のようなところでさえ、これは
昭和五十一年の例でありますけれ
ども、一株五十円の株を相続のときの財産評価にかえて評価したら二万六千円でございましょう。なかなか一株五十円の株が五万円に評価される
企業なんというのは、私は中小
企業の中ではまずまず皆無に近いのではないかというふうに思っておるのであります。
片や上場
会社はどうなるのかといいましたら、上場
会社が無償交付や
株式分割をいたします場合はやはり五万円でなければなりませんけれ
ども、その五万円というそのものは、いわゆる五十円の株を千株集めて一
単位としておるとするならば、その五万円は千株で割って五十円と読みかえができるようになっておるわけであります。したがいまして、上場
会社はこれが五万円になったからならぬからって、
一つも痛いもかゆいもありません。いままでと全く同じ姿で、同じ
状態で経営ができるわけであります。
こういうふうになってまいりますから、私は、今度の
株主の提案権という問題は特に特に慎重にお考えをいただかなければいかぬ、こう実は申し上げてきたわけでございます。
意見は分かれたままでございますが、以下、今度は外国の例は
一体どうなっておるだろうかということにつきまして、まず
法務省の方からお尋ねをしてまいりますが、アメリカの各州
会社法はこのような
株主提案権の
規定が
一体どうなっておるでしょうか。それからイギリスやドイツではどうなっておるでしょうか、おわかりならお知らせいただきたいと思います。