○稲葉
委員 これはなかなかむずかしいですよね、法曹一元ということもありますし。法曹一元というのは非常にいいところもあるし、同期の判検事、弁護士が友達になりますからね。仲よくなり過ぎるんじゃないかな。昔は判検事、弁護士というのは仲よくならないですよ。ろくに話もしなかったですよ。一緒に酒を飲むなんということもなかったですよね。近ごろは、同期だということでいろんなことで集まって何かやるでしょう。そうすると、判検事と弁護士が、同期だからということでいろんな話がつい出るわけですね。その中でいろんな秘密の話が出てくるわけですよ。秘密といったってどうということないけれ
ども、出てくるわけですね。たとえばある
裁判所からある
裁判所へこういう
裁判官が転勤してきたけれ
ども、この
裁判官はもとの
裁判所でどういうような評判だったかというふうなことを聞いてきているわけだ。そういう話がぼくらのところに伝わってくるわけです。どこで君そんなことわかったんだと言ったら、同期のA
判事と話したときにA
判事がこういうことを言ったということになってきて、ぼくらの耳に入ってくるわけだ。入ってきて悪いということはありません。ですけれ
ども、余り仲よくなり過ぎてくることは、これは私はやはり考えなければいけないんじゃないか、こういうふうに思いますね。だから、やはり弁護士は弁護士としてちょっと違うんだから、
判事や検事と余り仲よくなって飲んだりなんかして歩くのは、考えようによっては余りよくないというふうに思いますね。限度があるということを私は考えるわけです。
それから、
裁判官によって、これは
裁判を批評するわけじゃないですよ、批評するわけじゃないけれ
ども、よけいなことを言い過ぎる人があるんですね。よけいなことを書き過ぎる人があるわけですよ。
裁判のそのことについて書けばいいわけですよ、与えられた
裁判について。それをよけいなことをずっと書くんですね。この捜査はこういう点がまずいとかなんだとか、わあわあ書くわけね。いい気持ちになって書いているわけだ。そんなことはよけいなことよ。名前は言いませんよ。名前は言いませんが、そういうのを見れば、何をと思って検事の方だって怒るよ。だから、そういうように
刑事十四部にいたときも、勾留なら勾留、却下するなら却下するだけでいいわけです、多少の法律的な
理由だけ書けば。それに加えてああだこうだ、もういろんなことを書くわけだというんだね、ある人は。それを見て検事の方でもおもしろくないというわけで準抗告するという形になってきて……。これ以上の話はしませんけれ
ども、名前はあるいはわかっているかもわからぬけれ
ども。近ごろは
裁判官が少しよけいなことをしゃべり、よけいなことを書き過ぎるんじゃないかな。よけいなことを言い過ぎたというのは、安川という人もいましたけれ
ども、これは例外かもわからぬけれ
ども、そういう点がありますね。
それから、よくこういうことを聞くんですよ。私の判決が月報に出ていますと喜んでいる
判事さんがいるわけね。交通事故何とかというのがありますね、十巻か十一巻続いているやつ。青いような黄色いような本があるでしょう。交通事故判例研究会かな、ああいうところに交通事故の判例が出ていますね。あれは一体どうして出るの。
裁判官が送るんですか、こういう判決したからといって。どういうふうにしてああいう判決が出るの。ある
裁判官は、私の
裁判がこれに今度出ていますなんて喜んで得意になっているわけですね。得意になっているわけじゃないけれ
ども、喜んでいるんですね。だから、何か
裁判官は珍しい判決をしたい、まあ若いうちですからそういう気持ちがあるのも無理はありませんけれ
ども、そういう判決をする危険性というか可能性というのは、このごろどうも少しあるのではないかというように思うのです。
あの交通事故何とかという本がありますね。いま十何巻出ているかな。参考になるでしょう。出ているけれ
ども、一体どういうふうにして
裁判官のああいう判決があったということがわかるのですか。
裁判官の方で送るのじゃないの。どういうふうにしているのだ。そして小遣いかせぐわけじゃないだろうけれ
ども、どういうふうにしているのかな。よくわかりませんがね。まあそれは答えなくていいけれ
ども。
その中の判決の非常にいいのがあったのよ。ぼくはそれを引用して書いていたら、何だ、後で見たら八王子支部の鬼頭
判事補のあれだったけれ
ども、なかなかいい判決だったよ。判決としては大した判決だったよ。それは負けちゃったけれ
どもね。それはちょっと無理な判決で、無理なんだけれ
どもやけに勇気のある判決で、なかなかおもしろい判決だなと思ったら、八王子支部鬼頭何とかと書いてあった。そういうことがある。近ごろ
裁判官は少しそういう点、珍しい判決をしたいという気持ちがちょっとありますね。
昔はああいうことなかったのですよ。
裁判官は弁解せずというのは大森洪太さんのころからよく言われたことなので、判決にすべてのことが書いてあるのだから判決を見てください、こう言えばいいので、それを、何かやると後で、ここに新聞記者の人がおるけれ
ども、終わって記者会見をする人がいますね。テレビの場なんかで記者会見をしている。ああいうことは一体
裁判官としてすべきことですか。ぼくは反対ですね、マスコミの人には悪いけれ
ども。
裁判官は、私のことは判決に尽きております、法廷で申し上げました、それでいいのじゃないですか。
裁判官がヒーローになったような気持ちで記者会見して、それでテレビに映ったといって喜んでいるわけじゃないのでしょうけれ
ども。テレビに映ったといって喜んでいるのは国
会議員くらいなものだと思いますが、ぼくはどうもそういう点が、このごろ少し何か
裁判官が昔のような重厚さというものを失っているような感じがしますね。
ある
裁判官が今度転勤しますといって喜んでいる。どうしてですかと言ったら、いや今度は高裁へ行くのだ、おかげさまで今度は人の判決を見るようになりましたとか言って、一生懸命喜んでましたけれ
どもね。いろいろ人によって違うから何とも言えませんけれ
どもね。だからそういう点、いろいろ非常に考えさせられる点があります。
そこで、また前に戻りますが、その中でこういう
事件がふえたと言っていますね。
地方裁判所における
特殊損害賠償事件ですね。これは具体的に言うとどんな
事件がふえたのですか。
ぼくらが求めておいてこういうことを言うのはいけませんけれ
ども、ぼくらが国会として法務
行政の視察に行きますね。そうすると、
裁判所が、こういう特殊的な
事件がありますといって
内容を報告するわけです。あれはぼくは要らぬと思いますよ。ぼくらの方で求めているかもしれないが、国
会議員が視察に行ったからといって、
裁判の
内容を特殊な
事件として報告する必要はないのじゃないですか。概要ならいいですよ。その概要というのは抽象的にこういうあれならいいけれ
ども、その
内容まで私は印制して報告する必要はないのじゃないかと思いますよ。検事の場合は別ですよ。検事の場合は
行政官だから別として、
裁判官がそこまでやるのは、私はちょっと行き過ぎのような気がしますがね。これはそうでないという議論の人もありますけれ
どもね。
それから、国
会議員が行ったからといって、
裁判所の所長が出てきて接待なんかする必要ないですよ。ああいうのは本当によくないよ。
裁判官は
裁判官としてのプライドを持たなければいけないですよ。ああいったお流れちょうだいしますなんてやってきたらみっともないですよ。そんなことは
裁判所長がやるべきことではないと私は思うのです。ぼくはああいうのきらいですがね。
それはそれとして、
特殊損害賠償事件というのはどんな
事件がありますか。
内容はいいです。具体的なことはいいですよ。