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1981-02-27 第94回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十七日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君       井出一太郎君    上村千一郎君       太田 誠一君    高村 正彦君       白川 勝彦君    森   清君       小林  進君    鍛冶  清君       木下敬之助君    林  百郎君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 前田  宏君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局総務局長  梅田 晴亮君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         最高裁判所事務         総局民事局長  西山 俊彦君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所梅田総務局長大西人事局長西山民事局長及び小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質議の申し出がありますので、順次これを許します。高村正彦君。
  5. 高村正彦

    高村委員 まず、法務省司法法制調査部長お尋ねいたします。  今回の増員理由は、地裁における特殊損害賠償事件差止訴訟事件民事執行法に基づく執行事件覚せい剤取締法違反等刑事事件労働関係民事行政事件家裁における家事調停事件簡裁における民事調停事件の適正迅速な処理を図るためとあるわけでありますが、その理由をもう少し詳細に御説明ください。
  6. 千種秀夫

    千種政府委員 御説明申し上げます。  裁判適正迅速化のために裁判所裁判官及び裁判官以外の職員増員するということは重要な要素の一つでございますが、裁判官あるいはそれ以外の職員増員するということになりますと、一つには給源の問題がございます。といいますのは、やはり非常に高度な知識、経験を有する仕事でございますから、急にふやすといいましても供給源が必要でございます。また、一方におきまして、幾ら人をふやしましても、裁判という手続が非常に高度に複雑な技術でございますために、その関係制度なり施設なりを同時にふやしていきませんとうまく機能しないということがございます。そういうことから、増員を図ると申しましても、いろいろな施策とともに少しずつ充実していくということが行われなければなりませんので、そこで毎年裁判所職員増員お願いしてきたわけでございます。  今回も、そういう観点から裁判官あるいはそれ以外の職員充員関係を見つつ、また、裁判現状におきまして重要な問題はどこにあるか、そこを重点的に充実していこう、こういう観点から今度の裁判所職員定員法改正お願いしている次第でございます。  そこで、いまの裁判現状から何が重要であるかということを見てまいりますと、民事事件におきましては広い意味公害関係事件というのが非常に大きな問題になっております。これは公害基本法に出ております大気汚染水質汚濁、こういったものに限らずもう少し広く私ども見ておるのですが、たとえば最近問題になっております医療過誤であるとか医薬品の問題でございますとか、欠陥商品に対する消費者保護事件でございますとか、さらには航空機、列車の騒音といった問題も含めまして、こういった社会全般に大きな被害をもたらす事件、これを広く公害と申しますと、こういった問題が民事裁判で大きな問題になっているわけでございます。これには損害賠償という形の事件もございますし、公害発生源を差しとめるという意味差止請求事件と呼ばれているものがあるわけでございます。  もう一つ目立ちます問題は、最近特にございます問題は労働事件でございますが、これは労働者権利を確保するという意味労働条件に関する争いが多くなってきております。これもまた二種類ございまして、労働関係民事事件というのは、個々の労働者が自分の権利を守るために起こしてくる事件が多うございますが、一方、労働行政事件と申しておりますものは、これは国家公務員あるいは地方公務員公務員関係にまつわる労働事件、あるいは労働委員会を相手とする行政事件、こういうものがございます。  もう一方・民事関係します問題としましては、最近民事執行法改正になりまして、執行手続適正化のために裁判所がいろいろと関与をするようになってまいりました。これが施行されたのはごく最近でございますので、これから先のことがどうなるかということはまだ予測の段階ではございますけれども手続内容から申しまして裁判所事務がだんだんとふえるであろうということが予想されております。民事関係をちょっと見ますとこういった問題がございます。  ほかに刑事関係につきまして見ますと、最近特に覚せい剤取締法違反事件がふえてまいりました。ここ数年の傾向を見てまいりますと、やや古い数字になりますけれども、五十二年に受理件数が一万九千四百四十七件でございましたものが、五十三年には二万三千六百五十五件、五十四年には二万五千二百五件、こういったふうに急速に覚せい剤事犯がふえてきております。  第一審の地方裁判所事件の中で大きな問題を拾ってみますと、いま申し上げたような事情になっているわけでございます。こうした民事事件について共通な問題は、まず関係当事者が非常に多いということでございます。また、公害などにつきましては、その主張、因果関係あるいは損害額の算定、こういった問題が非常に複雑でございまして、審理も長くかかりますし、また、その証拠、記録の保存、こういったものも大変な手間がかかります。当事者の連絡にもかなりの手数がかかる、こういうことから裁判官及びその補助者であります書記官事務官増員が非常に急務であるということが申せます。  そういうことから、裁判官につきましては、その欠員及び充員関係をにらみまして合計十六人の増員お願いしているわけでございますが、その十六人のうちの六人を先ほど申し上げました特殊損害賠償事件の方へ振り向けたい、また三名を差止請求事件の方に充てたい、またその二名を民事執行法関係事件に充てたい、また覚せい剤取締法違反につきましてはそのうちの三名を、また労働関係事件につきましてはその余の二名を、こういうふうに割り振って、合計十六名の増員お願いしたいということでございます。  また一方、裁判官以外の職員につきましては、先ほども申し上げましたような事情から、書記官合計で十三名増員お願いをしたい。その具体的な割り振りにつきましては、特殊損害賠償事件につきましてはそのうちの四名を、差止請求事件につきましては二名を、また民事執行法関係につきましては、書記官仕事がふえるということもございましてそのうちの五名を、また覚せい剤取締法違反事件につきましては一名を、労働関係事件につきましてはさらにその一名をということでお願いをしたいということでございます。  なお、それ以外に事務官がございます。事務官につきましてもいろいろなことから合計三十三名の増員を図りたいということでございますが、これは裁判所におきまして、政府職員削減計画に関する内閣決定趣旨をも尊重いたしまして内部削減計画をこしらえておりますが、その計画にのっとりまして、裁判所に置かれて地方裁判所簡易裁判所あるいは家庭裁判所司法行政事務に従事している事務官三十三名を削減し、それをもってその増員に充てたいというふうに計画されていると承知しております。
  7. 高村正彦

    高村委員 次に、最高裁の総務局長お尋ねをいたします。  今回の裁判所職員増員は、判事十六名、裁判官以外の裁判所職員十三名となっておりますが、この程度増員で足りるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  8. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 ただいま定員法改正で提案されております判事十六名、裁判官以外の裁判所職員十三名の増員で十分かとのお尋ねでございますが、何をもうて十分であるかというむずかしい問題がございますけれども、もちろん私どもとしましてもこれで理想的なものだというふうに考えているわけでは決してございません。今後もさらに増員お願いしなければならないこともございましょうし、増員以外の点で訴訟の促進を図る工夫、施策も必要となってまいろうかと存じます。  増員関係で申しますと、判事につきましては、先ほど調査部長からのお話にもございましたように、給源の問題もございますし、また、裁判官の質を低下させるというわけにはまいりませんので、その点の問題もございます。  書記官につきましても、年々養成できます数に限度もございまして、一挙に多数の増員お願いいたしましても、それを埋める、充員するだけのことができるかどうかという点もございますので、今後とも充員との見合いで地道な努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  9. 高村正彦

    高村委員 次に、人事局長お尋ねをいたします。  資料によりますと、昨年の十二月一日現在で判事二十三名、簡裁判事三十五名の欠員となっておりますが、年度末には欠員はさらにふえるものと思われるわけでありまして、今回の増員との関係はどうなっているのか、また、欠員補充見通しについて説明していただきたいと思います。
  10. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 それでは、裁判官充員計画につきまして御説明を申し上げたいと思います。  ただいま仰せになりましたように、資料の十六ページにございますが、昨年の十二月一日現在で判事欠員が二十三でございます。それ以後退職等による減耗がございまして、もう少し欠員がふえる、そのほかに今回お願いしております増員十六人というのがあるわけでございまして、これらを合計いたしますと、今年の四月の上旬におきまして大体六十をちょっと超える程度欠員が生じる予定でございます。この欠員につきましては、ちょうど本年の四月以降に判事任命資格を取得いたします判事補が大体それに近い数字ございますのと、他からの任官予定もございますので、今年の春以降におきましてこの欠員は全部埋まるという予定でございます。  次は判事補でございますが、判事補は、資料にございますように十二月現在では欠員がございませんが、ただいま申しましたように四月に判事補から判事になって抜けていく者がございますのと、十二月以後に少しの減耗がございますが、それを合わせて四月に埋める必要がございます。現在、ちょうど修習生筆記試験をやっておるところでございますが、六十名ちょっとの志望者がございますので、それで判事補は大体埋まる、そういう予定でございます。  それから、簡易裁判所判事でございますが、簡易裁判所判事につきましては、やはり資料にございますように、昨年の十二月現在で欠員が三十五でございますが、これもやはりそれ以後退職等による減耗がございます。この関係につきましては、逐次判事検事等定年退官者からの御希望がございます。それから、四月にはもう少し、数名、退官者等からの任命がございます。それ以外に、御承知裁判所法の四十五条で選考によって簡裁判事任命できる制度がございますが、これは大体毎年八月でございまして、その八月の選考任命をいたしますとかなりの数が埋まる予定でございますが、簡易裁判所判事につきましては、先ほど申しました判事判事補と違いまして、今年の八月そういう充員をいたしましてもなお若干の欠員が残るのではないか、そういう予想でございます。  以上でございます。
  11. 高村正彦

    高村委員 資料によりますと、裁判官以外の裁判所職員は、昨年十二月一日現在で書記官が九十三名の欠員家裁調査官調査官補を含めまして三十七名の欠員事務官が二百六十二名の過員、その他速記官等が三百十七名の欠員となっているわけでありますが、その理由及び補充見通しについてお尋ねしたいと思います。
  12. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 まず、欠員の生じている理由を簡単に申し上げますと、御承知のように、裁判所全国で千二百に近い組織がございますので、どうしても若干の欠員は避けられないわけでございます。あるところで欠員が生じてそれを埋めますと、よそでまた欠員が起きるというふうなことがございまして、そういう意味での若干の欠員は常に避けられないところでございますが、そのほかに、たとえば書記官でございますと相当資格が必要なわけでございまして、裁判所では書記官研修所というところでそれを養成しております。それから、調査官につきましても、上級甲試験をやって、その試験合格者の中から採用するというふうなことをやっておりまして、それも書記官と同様に毎年春に採用が行われる、そういう状況でございます。速記官なんかにつきましても同じように書研養成しておりますので、新しい人が生まれてくるのがどうしても春ということになりまして、年度途中で逐次補充できないという状況がございますので、ある程度欠員年度途中におきましては避けられない、そういう状況にあるわけでございます。  そこで、書記官等充員につきましてごく簡単に申し上げますと、書記官につきましては、資料にございますように、昨年の十二月現在で百名近い欠員がございますが、それ以後の減耗を加えますと今年の春で大体二百を少し超える欠員が生じる見込みでございますが、四月に書研を卒業して書記官資格を取得する者が大体二百名ございますのと、そのほかに書記官任用試験というのをやっておりまして、その合格者を加えまして、五十六年予算年度の当初には全部充員できる、こういう見込みでございます。  それから、家裁調査官でございますが、これも資料にございますように、十二月一日現在で欠員が三十七でございます。これにつきましても、ことしの四月に先ほど申しました上級甲を通りまして新たに調査官補になる者が四十名ちょっとございますので、十二月以後の欠員の増加、減耗を加えました欠員をほぼ充員できる、そういう見込みでございます。  速記官につきましても、速記官はわりあい欠員が多い職種でございますが、これも書研養成しておりまして、今年の四月に、全部埋まるとは申し上げられませんが、逐次充員をしていく、そういう予定でございます。  以上でございます。
  13. 高村正彦

    高村委員 総務局長お尋ねしたいと思います。  裁判官以外の裁判所職員定員については、第五次定員削減計画への協力による昭和五十六年度削減分として裁判所事務官三十三名を減員させているようでありますが、そのことによる事務支障はないのかどうか、また、今後の削減計画について説明していただきたいと思います。
  14. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 裁判所事務官三十三名減の点でございますが、御承知のとおり、昭和五十四年の九月に「昭和五十五年度以降の定員管理について」という閣議決定がなされ、同年十月に「昭和五十五年度以降の定員管理計画の実施について」という閣議決定がされまして、五カ年計画国家公務員の一定数を削減していく方針が決められたわけでございます。裁判所に対しましては、内閣官房長官の方から事務総長の方に、政府方針協力してほしいという依頼の趣旨決定が参考送付されてまいりました。裁判所といたしましては、もとよりこの閣議決定に拘束される筋合いのものではございませんし、国民から負託されました適正迅速な裁判の実現にいささかでも支障が出ますような裁判官あるいは裁判所書記官を削減するわけにはまいりません。  ただ、裁判所事務の中にも、裁判事務には直接関与しない司法行政事務がございます。裁判所事務官が担当しております。それらの職務内容は、行政事務とは全く同一ではございませんけれども政府部内の行政と似たような面もございまして、事務を機械化するとか、たとえば報告事項を整理していくとかいったようなことで事務運営能率化簡素化を図ることによりまして多少人員に余力を生じてまいりますので、政府方針協力申し上げることに内部で決めまして、自主的に削減することにいたしたものでございます。裁判部門につきましては、ただいま御審議いただいておりますように、書記官十三人、事務官三十三人の増員がされますとさらに強化されることになります。したがいまして、裁判事務司法行政事務のいずれにつきましても支障はないものと考えております。  今後の削減計画でございますが、昭和五十六年度は五カ年計画の二年目に当たりますので、政府としてはやはり昭和五十九年度まで継続されることと思われますが、裁判所といたしましても、今後も司法行政事務運営につきまして能率化を図り、協力はいたしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  15. 高村正彦

    高村委員 増員理由の中に述べられております地方裁判所における公害関係事件その他の特殊損害賠償事件とは、具体的にどのような事件をいうのか、お尋ねしたいと思います。
  16. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  先ほど司法法制調査部長からもちょっとお話がございましたが、公害対策基本法によりますと、公害種類といたしましては、「事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる大気汚染水質汚濁、土壌の汚染騒音、振動、地盤沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」とされておりますが、私どもの方では、そのほか、鉱物の採掘による地盤沈下ですとか、日照、通風の妨害、水の浸害眺望妨害といったようなものも加えまして、一括して公害関係事件と呼んでおります。  その他の特殊損害賠償事件には、医療関係、薬品・食品関係航空機関係、自動車の欠陥によって生ずる事故関係労働災害等に起因する損害賠償等を申しておりますが、具体的なものといたしましては、御承知のとおり、全国各地裁判所に係属しておりますスモン訴訟でございますとか未熟児網膜症事件、こういった医療関係事件がございます。  以上でございます。
  17. 高村正彦

    高村委員 差止訴訟事件についてあわせて説明していただきたいと思います。
  18. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 これもいわゆる公害事件関係で多いものでございますけれども従前は、公害によって被害が生じましたその損害に対しまして金銭賠償を求める事件が通常でございましたけれども、最近、損害発生の後に金銭賠償を求めるのでは救済として必ずしも十分でないとする考え方が広まってまいりまして、公害をその発生前に予防しようとする発生源の停止を求める差止訴訟が多数提起されるようになってまいりました。したがいまして、損害賠償差止請求とを同時に、過去の分につきましては損害賠償、今後の分につきましては発生源を差しとめるという複合的なものもございますし、純粋に差止だけを求めるものもございます。たとえば東北新幹線の建設工事差止でありますとか、有名な大阪空港騒音差止でありますとか、横田基地夜間飛行差止でありますとかいったようなものがございます。全国各地相当散らばって存在しております。  以上でございます。
  19. 高村正彦

    高村委員 民事執行法に基づく執行事件というふうに増員理由の中にあるわけでありますが、いままでも執行事件はあったんですが、新しい民事執行法に基づいた場合にどういう理由増員が必要なのか、簡単にお願いしたいと思います。
  20. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 執行事件は、資料の二十六ページに昭和五十二年以降の事件の推移が出ておりますが、ごらんいただきますと、不動産競売のところを見ましても、五十二年に三万件ちょっとでありましたのが、五十三年には三万三千件、五十四年には三万五千件近くになっております。昭和五十五年の不動産競売の全体の数はついに四万件を少し超えることになりました。御承知のとおり、昭和五十五年の十月から新しい民事執行法が制定施行されまして、それによりますと、従前ございませんでしたたとえば不動産に対する強制競売ですと二重に開始決定をする、あるいは現況調査を非常に詳しくする、評価の方法を適正にするために非常に強化した、物件明細書を詳しいものを作成して執行裁判所に備え置いて一般参加者への情報の提供に遺憾なきを期するとか、公告等権利者関係の擁護を強化するとか、期間入札という新しい制度を設けて一般の方に買いやすくするとかいったようないろいろな事務がふえることになりまして、先ほどちょっと申し上げましたように五十五年の十月から施行でございますから、ことしあたりから相当飛躍的に事件が増大していくのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  21. 高村正彦

    高村委員 訴訟関係者から速記官が足りないのではないかという意見をよく聞くわけであります。そのために、証人調べ期日がなかなか入らなかったり、あるいは要約調書にせざるを得なくて、要約調書が非常にずさんで訴訟進行上困ったということもよく聞くのでありますが、その点に  ついてどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。
  22. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほどもちょっと申し上げましたが、速記官定員が九百三十五ございますが、現時点におきましても百をちょっと超えるぐらいの欠員があるわけでございます。もっとも、この速記官の九百三十五という数字そのものの問題でございますが、これはもともと書記官補とか事務官とかいうものから順次組みかえ——ちょっと予算上の技術上の用語で恐縮でございますが、他の官職を速記官にかえてそういう定員をつくっていった、そういう経過ででき上がった定員でございますので、先ほど申しましたのは、百名ちょっとの欠員そのものが、たとえば従前いたのに速記官がやめてその後が補充できない、そういうふうな形での欠員では実はないわけでございます。  速記官養成につきましては、先ほども申し上げましたように書記官研修所養成を続けておりますが、もともとは志望者適性を持っている人がかなりおったわけでございますが、なかなか最近は進学率等もふえまして、高等学校卒業から採るわけでございますが、速記官適性を持った人で志望してくる、そういう適性を持った人を採用していくということがかなり困難な情勢になっております。実は昭和四十九年ごろまでは部内から採用しておったわけでございますが、それではいけないということで、五十年ごろからは部外からも募集いたしまして、高校卒業者初級試験を受けさせまして、適性検査をして書記官研修所に入れて二年間の養成をする、そういうことをやっておるわけでございますが、先ほど申しましたように適性のある人が少ない上に持ってきて、養成の過程でついていけない、あるいは適性がないことがわかるということでやめていく人も出てくるということで、一挙になかなか百名を超える欠員を埋めることができない、そういう状況にあるわけでございます。大体最近の傾向としまして毎年二十名ちょっとずつぐらいは欠員を埋めていっておりますので、そう来年、再来年すぐにというわけにはいきませんが、近い将来に全員を埋めることができるだろう、そういう予定になっておるわけでございます。  ということで、現在欠員がありますために、高村委員ただいま御指摘のように、訴訟関係人からの速記による逐語調書をつくってほしいという要望に全部応じられないという面があるわけでございますが、これも全国的にそうだというわけのものではございませんで、場所場所によってほぼ要望にこたえ得るところもありますし、なかなかこたえ得ないところも実はあるわけでございます。  それともう一つ、翻って申しますと、この逐語調書というものが大体どの程度必要なのかということも一つの問題でございまして、たとえば極端な例で申しますと、刑事で情状証人に速記が必要かということになりますといろいろ議論があるわけでございますが、こういう場合でも逐語調書をとってくれという要望が場合によってはあるわけでございます。そういう要望までかなえようといたしますと、欠員を埋めただけでは足りないという問題も実は出てくるわけでございまして、そこら辺のところ、真に逐語調書をとるべきものについてだけとっていく、要約調書で足りるものは要約調書にゆだねていく、そこら辺の振り分けと申しますか、そういうことが裁判官訴訟関係人を含めまして適正な振り分けをするということが大事ではないかという感じもいたしますが、何はともあれ、現在欠員が若干ございまして、できるだけその欠員を早急に充足しなければいけないというふうには考えておりまして、そういう方向での努力は続けてまいるつもりでございます。  以上でございます。
  23. 高村正彦

    高村委員 いろいろ事情はあろうと思いますが、速記官等欠員を一日も早く補充していただくことを御要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 高鳥修

    高鳥委員長 横山利秋君。
  25. 横山利秋

    ○横山委員 お待たせをして恐縮です。  実は、本法案を機会にいたしまして、検察審査会の問題につきましていろいろと現場の実情やそのほかのことを調査いたした次第でございます。昭和二十三年にこの法律ができましてから三十有余年、検察審査会の制度はようやく着実な軌道に乗ってきたと考えられるわけであります。この法律は、その第一条で「公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図る」ことを目的として創設されましたが、わが国の伝統的特質とされる検察官の起訴便宜主義に対して国民が参加するきわめてユニークな制度であります。したがって、今日までにはいろいろ難関がありまして、ときには廃止したらどうだ、戦後のアメリカのまねをするというようなこともいかがであろうかという廃止論さえありましたが、ようやくにして、私の調査いたしましたところ年間約二千件くらいの審査が各地で行われまして、適切な機能を果たしておると思われるのであります。この間、その経験と実績の上から、法改正及び運営の改善がしばしば問題になりました。日弁連や検察審査協会からの要望が提出され、ときには最高裁においても改正の検討をされたというのでありますが、諸般の事情で実現をいたしませんでした。  そこで私は、以上の経緯にかんがみまして、この際、いろいろな角度から御質問したいと思いますが、まず、検察審査会の現状といいますか取り扱い件数及びそれがどういう結果をもたらしたかの統計的な説明を承りたいと思います。
  26. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  詳細な統計はただいま持参しておりませんので、正確な資料は後ほどお届けいたしますといたしまして、いままでに審査員、補充員として関与した方の数は約二十九万人でございます。事件数といたしましては六万件になります。審査期間としましては大体七カ月を要している。実質的な審査期間は二カ月でございまして、会議の回数、一人が関与した回数というのは大体一人の審査員について八回、こういうことになっております。  詳細はいま持ち合わせておりませんので、後ほど資料をお届けいたしたいと思います。
  27. 横山利秋

    ○横山委員 検察官が不起訴と決めた、検察審査会が不起訴不適当と決めた、そしてそれに対して検察官がもう一度審査をして起訴としたか不起訴としたかという点についての統計はどうですか。
  28. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 恐縮でございますが、ただいま資料を持ち合わせておりませんので、後ほどお届けいたします。
  29. 横山利秋

    ○横山委員 私が事前に審査会の問題について逐一あなたの方へも連絡をしておいて、そういう資料の不整備なことではいけませんね。  私の承知いたしましたところによりますと、不起訴となってから検察審査会が起訴適当というふうに決めた数が平均一八・九%、東京の場合でございますが、約二割近く検察審査会において決めておるというふうに承知をしておるわけであります。本来、検察審査会というものは、法律で定められておるように、うどん屋のおじさんやサラリーマンやあるいは一般の市民が選挙人名簿から抜粋せられてくじで当たって、そして審査員になる。そういうことであるから検察陣にとっては、何も知らぬげた屋のおやじやうどん屋のおやじが何をこくという気持ちがありはせぬか、潜在的にそういう認識がありはしないかということを私は心配しておるのですが、刑事局長、どうですか。
  30. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 検察審査会の制度は、先ほど横山委員の仰せになりましたような趣旨でできたものでございまして、いわば民意を反映すると申しますか、そういう意味を持つものであろうと思います。したがいまして、審査員の方はまあ法律的には専門家でない方ももちろんおられるわけでございますけれども、その制度趣旨は十分尊重して対処しておる、かように考えております。
  31. 横山利秋

    ○横山委員 この制度が長い間の懸案であり、私が検察審査協会の主立った人の意見を聞いてみましても、どんなにわれわれがこの運営についての改善をしようと思っていろいろ提案するのにかかわらず、最高裁もなかなか言うことを聞いてくれない。最高裁が言うことを聞いてくれぬということは、法務省が言うことを聞いてくれぬ。法務省が言うことを聞いてくれぬということは、要するに検察陣がわれわれを、言い方は適当じゃないかもしれませんが、ばかにしているのじゃないか。起訴便宜主義というものの原則を乱そうとは思わないけれども、これほど定着をした検察審査会のありよう、改善について十分な配慮を払わないということは本当に腹が立つ、こういうことを言っておるわけであります。したがいまして、この際、この審査会の法律なり運営の改善について、先ほどの話だともうすでに審査員の経験を経たOBが数万人おるわけでありますが、それらの人々の体験から来る諸問題についての改善にひとつこの際耳を傾けるということが必要ではないかと私は思います。  そこで、それらの人の中からわき上がった意見について、順を追って政府の意見を伺いたいと思うのであります。  まず、審査員の被選定年齢制限の問題であります。いま選挙人名簿でありますから、選挙権を持ったらすぐに審査員になれるわけであります。この点については、実は私どもの党の内部でも意見が違う点がございまして、若いから社会経験が十分でないからといって三十に引き上げるということもいかがなものであろうか、若い人には若い人なりの判断があっていいではないかという説と、やはりこれだけの重要な、起訴が適当か否かということの判断をするという点については、私どもでも被選挙権は衆議院二十五歳、参議院は三十歳ということもあるから、この際三十歳に引き上げるべきというふうに意見が分かれるところでありますが、この点についてどうお考えですか。
  32. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 この点につきましては、これまでに、審査員の質の向上という面から二十五歳以上にした方がいいとか三十歳以上にした方がいいとか、いろいろ意見がございまして、かつて最高裁判所事務当局におきましても、これらの意見を入れまして三十歳以上とするという案を考えたこともございましたけれども、これにつきましては、単に年齢を引き上げるだけでは質の向上が図れることにはならないのではないか、あるいは三十歳未満の人たちの事件の実相がわからなくなるのではないか、あるいは広く国民が参加してその意見を表明できるという法の趣旨にむしろ逆行することになるのではないか、こういうような御意見もございまして、この意見にはいろいろ傾聴すべきいい点もあると思います。  現在におきましては、この法の施行後三十二年も経過しておりまして、その後の教育あるいは文化の向上というものには目覚ましいものがございます。そういうことを考慮いたしますと、果たして現在年齢を引き上げるというようなことが必要かどうかははなはだ慎重でなければならない、むしろ疑問ではないか、こう考えます。最近では年齢を引き上げるという意見は少なくなっているのじゃないかというふうに考えております。
  33. 横山利秋

    ○横山委員 第二番目に、「検察審査員の欠格事由を若干拡張整理する」という希望が出ておりますが、これは最高裁で審議の際にどういう問題からそういうことになったんですか。
  34. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 当時の経過、必ずしも定かではございませんけれども、いろいろな方面からの御要望がある、そういうものを一応まとめたということだと理解しております。
  35. 横山利秋

    ○横山委員 欠格事由は、第五条に、「小学校を卒業しない者。但し、小学校卒業と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。」二番目に、「破産者で復権を得ないもの」、三番目に、「耳の聞えない者、口のきけない者及び目の見えない者」、四番目に、「一年の懲役又は禁錮以上の刑に処せられた者」と現在の欠格事由としてはあるわけですが、それを拡張するということの理由ないしはその具体例について、あなたは聞いていらっしゃらないのですか。
  36. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 その点についての何をどうするかという具体案については、現在のところ把握しておりませんが、ただ、たとえば五条の四号に「一年の懲役又は禁錮以上の刑に処せられた者」、こういうのがございますが、これはただいまの公職選挙法の規定とは異なるわけでございます。この制度が衆議院の選挙の名簿というようなものを利用するようなこともございますので、あるいはこれと同じ方が適当なのかもしれない。あるいは弁護士会の方からなどの御意見も、たとえば不具廃疾で自分の身も賄えないような人たちは欠格にした方がいいのじゃないかというような御議論もあるということは承知しております。
  37. 横山利秋

    ○横山委員 三番目に、「一の検察審査会に予想される受理事件数に応じて複数の検察審査会を置くことができるものとし、一の検察審査会の担当事件数の限度を三件とするものとすること。」ということが出ていました。いまの法律では、一つの検察審査会に複数の検察審査会を置くということが法文上読み取れないという判断ですか。これが第一であります。  それから、「担当事件数の限度を三件とする」。先ほどお話によりますと、実質二カ月一件について八回ですか、この意見について、実際問題としては検察審査会の運営はどういうふうになっているか、御説明を願いたいと思います。
  38. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 まず第一点でございますが、ただいまのところとしては、一審査会は一個の審査会のみである、そういうふうに考えております。  それから、審査会等の回数でございますが、平均いたしますと三・三回、それで、月間にいたしますと平均して大体一・五回というところのようでございます。審査員、補充員の出頭率は約七〇%、こういうことでございます。  それから、先ほどちょっと資料を持ち合わせないと申し上げて失礼いたしましたが、受理件数を申し上げますと、これは施行以来五十三年まででちょっと古うございまして恐縮でございますが、受理件数合計は五万六千九百五十一件でございます。既済は五万五千六百九十七件、その内訳は、起訴相当、不起訴不当というのが四千四百六十六件、不起訴相当というのが四万六百九十件、その他、これは審査打ち切り、申し立て却下、移送というものでございますが、これが一万五百四十一件、こういうことになっております。どうも失礼いたしました。
  39. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、法律上では一つの検察審査会は一つしか置けないんだけれども、運用で複数を置いておる。いま複数あるんでしょう。そうですね。
  40. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  「各地方裁判所の管轄区域内に少くともその一を置かなければならない。」ということでございまして、その管轄区域内に二つ置いてあるというところ、たとえば東京とか大阪というのは二つ置いてございますが、その審査会の中に審査会議、いわゆる十一名ずつの審査会をたとえば一部、二部というように置くことは考えておりません。
  41. 横山利秋

    ○横山委員 「一の検察審査会の担当事件数の限度を三件とするものとする」という意味は、要するにこういうことでしょうか。半年の間に余りたくさんあったのではいかぬから三件でもう終わらせる、そして慎重さを持たせる。そうすると、三件済んだらその検察審査会は期限になる前にもう解散、こういう意味でしょうか。
  42. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまの点でございますが、これは審査員の方々が非常にお忙しい、御負担も大きいということで、いろいろな事件をたくさんやっていただくにはお気の毒だ、お一人の方一件、半年で大体三件ぐらいやっていただくのがいいんじゃないか。一応三件やったら、任期は六カ月ございますけれども、その方々はそれ以上は事件は割り当てないで、さらにほかの人たちを審査員に選ぶ。先ほどちょっと申しましたが、一つの審査会の中に一部、二部、三部というふうに置いていくという新しい構想だというふうに考えます。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、四番目の「検察審査員の選定は年二回定期に行うほか、受理事件を担当すべき検察審査会がなくなったときその都度行うものとする」というのは、三件が済んだ、もうあなた方は結構ですというときには、すぐ解散してかわりの選定を行う、こういう意味ですか。
  44. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 当時の試案というものは、これは三項と四項、あるいはほかの項と全部脈絡のある条文というものではございませんで、こういう点もこういうふうなことを考えたらどうかという程度のものでございますので、三項と四項は必ずしも一定はしておりません。ただ、その選定は定期に行う、これは現在は半数ずつ四回に行うのでございますけれども、これは二回に行うということで、その予定する部のようなものをあらかじめ抽せんで、この人は第一順位、第二順位というふうに決めるのかどうか、そこまではちょっと定かでございません。  ただ、この案は事件数の少ない当時ですと一応考えられることでございますが、最近のように、五十四年度ですと二千四百件くらいございますが、その中で一庁に二百件を超えるような件数が受理される、これは特殊なことでございますが、そういう例もございます。この一人が三件を限度とするということにしますと、現在の候補者から半年で選ぶといたしましても、二百人の中からとにかく十一名を選ぶということになりますと大体十八組できるわけでございます。そうしますと、三件を掛けますと六十件もできない、五十数件しかできない、こういうことでございまして、事件数の少ないときには考えられましたけれども、候補者数を大幅に増すということであれば別でございますけれども、ただいまの候補者の数ということからは、辞退の可能性などを考えますととうていこれはできないというふうに考えております。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 第五番目に、「前項の選定には、地方裁判所判事、地方検察庁の検事に限らず、広く裁判官、検察官が立会することができるものとする」という意味がちょっとよくわからないのです。こんな言葉が入らなければならなかった理由はどうですか。
  46. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 これは検察審査会法の十三条でございますが、それぞれ四群までございます候補者の中から一月に五人、四月に六人、七月に五人、十月に六人、各末日でございますが、そういうふうにその数の審査員と補充員をくじで抽せんするわけでございます。そのくじに立ち会うのは地方裁判所判事、地方検察庁の検事及び関係市町村の吏員各一名となっておりますが、これは本庁所在地の検察審査会でありますれば問題はないのでございますが、支部所在地の検察審査会あるいは離島などの審査会におきましては、その土地に判事、検事がいない、判事補あるいは簡裁判事しかいない、検察庁の方も検事がいらっしゃらないで副検事しかおいでにならないというようなことで、抽せんのためにわざわざ本庁から判事、検事が出張しなければいかぬということで、抽せんの立ち会いですので、裁判官、ほかの判事補あるいは簡裁判事あるいは副検事でも足りるのではないか、こういう考えでございます。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。  六番目に、「検察審査員の任期は、六カ月の経過又は担当すべき事件のすべてを処理し終ったときのいずれか早い時をもって終了する。担当した事件を六カ月の経過前に処理することができないときは、当該事件の処理を終った時までとするものとすること。但し、通じて一年を超えることができないものとすること。」の項は、私はわりあいに説得力がある問題ではないか、こう思いますが、いかがですか。
  48. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまのこの任期の点は、古くから、任期六カ月では十分な審査あるいは処理というものができないのじゃないか、少し短過ぎるのではないかということで、一年にしたらどうかという御意見が多数ございました。この一年にするかあるいは六カ月でいいのかという点についてはいろいろ議論のあるところでございますが、これは確かに事件の処理の能率化という面からは、任期は長い方がよろしい、しかし、審査員には非常に過重な経済的、時間的あるいは労力的な負担をおかけしている、特に最近では一週一回会議を開いているところもありまして、他に職業を持っている方にとっては相当の負担であるというふうに思われます。そういうことで、一応六カ月という点はそのままにしておいて、もし事件が長引けばということで、それを終わるだけはやっていただこうか、しかし、一年以上を超えてはいけない、こういうふうなつもりでつくった規定であろうかと思います。  これは先ほど申しました一つの審査会が三件を限度とするということとあるいは平仄を合わせているのかもしれませんが、ただいまのように事件が非常に過重なところもありまして、週に一回も会議のために御出席いただいているというような負担を思いますと、果たして延ばしていいのかどうかという点は非常に疑問があるのではないかというふうに思っております。  ちなみに、昭和五十一年の十月に、七十七の検察審査会で千九十九名の審査員の経験者の方々を対象といたしまして調査をいたしたことがございます。それによりますと、六九・七%の方が六カ月が適当である、六カ月でも長過ぎるとおっしゃる方が三・二%、これを合わせますと七二・九%の方が六カ月以内ということを希望しておられる。六カ月では短過ぎると答えられた方が二〇・六%、こういうことになっております。  また、事件の処理状況を見ますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、過半数のものが受理後大体六カ月以内で処理されております。これは受理したときから終わるまでの期間を申し上げたのですが、実質的にいよいよ審議に入って議決をするというまでの期間を見ますと、六カ月以内に大体九十数%、これは年によって多少違いますが、九四、五%のものは六カ月以内で大体実質審理は終わっている、そういうこともございますので、任期の点は果たしてこれがいいかどうかということは、現在は多少疑問に思っているところでございます。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 私もいろいろ面接調査をいたしましたところ、市民の法律による責務として自分の仕事を放棄してこれらをやることについては、まあ六カ月以上はという意見の方が強い。しかし、六カ月直前になっていままで調べたことを全部パアにして新しい人がそれを調査するということはむだが多いから、それで六項目、七項目の問題が生ずると思うのであります。  次は八項目で、「補充員制度を廃止し、会議の定足数制を設けるものとすること。」という点についてはいろいろ調査をいたしましたところ、十一人の審査員と同数の補充員を同じように出席させておいて、審査員が欠員があったときには、三人足らないから補充員から三人入ってくれ、あとの人は別室で待機しておってくれ、そういうやり方で、しかも日当は正委員は全部満額もらって補充員は半分だという決めに対して、それはみんな来ているんだから、全部そういうことにしてならして平等に割り当てましょうという運営を図っておるそうであります。そういうことを考えますと、この会議の定足数制を設けるということは妥当なことではないかと思いますが、いかがですか。
  50. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 この定足数の採用、補充員の廃止という点でございますが、補充員が出頭してもむだ足を踏む、そこらはただいま横山委員御指摘のとおりでございまして、そのために補充員の意欲をそぐ、あるいは不満感を持たせるということがあることは否定できません。そういう意味で定足数の採用、補充員制度の廃止ということも一考に値することだというふうに考えております。  ただ、現在の段階におきましては、検察審査会二百七庁ございますが、そこでいろいろ問題にしておるところは各庁いろいろでございます。たとえて申しますと、ある審査会では非常に審査員あるいは補充員の出頭率がいい、そのために補充員がむだ足を踏むというようなことがある反面で、非常に出頭率の悪い庁がございまして、審査員、補充員十一名ずつ、合計二十二名を招集しておるのでございますが、定員の十一名に達しないということで流会になるというような地方もございます。  それで、定足数をどういうふうにするか、構成員を何名にして定足数をどうするかということにもよりますけれども、その決め方、定足数を余り、たとえば二十二名の十一名ということであればただいまと同じことになるわけでございますし、たとえば構成員を十五名にして定足数を十一名とかあるいは九名とかということにした場合に、ただいまの状態で出頭が確保できないで流会になるというようなところでは、さらに流会の数がふえてくるということも予想されます。いまそういう出頭率の悪い庁につきまして、何とか出頭していただくようにということで努力しておるところでございまして、そういう出頭確保ということが大体全庁まんべんなくいきますと、そういう定足数の問題ということも考えられるのではないかというふうに考えております。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 九番目は、いまの八番目と同じような問題でございます。「補欠の検察審査員となるべき者として予備員の制度を設ける」、これもいまの問題と同じであります。  十番目の、「定例の検察審査会議制度を廃止する」とありますが、これはたしか二回でございましたね。  それから十一の、「証拠調は検察審査会の指名する一部の検察審査員においてなし得るものとする」、十二番目の、「証拠調の嘱託制を設ける」こととありますが、ここの十の「審査会議制度を廃止する」ということについては、廃止までいっていいのだろうか。定例が何も用事がないのに集まる、だからやめようという意味でしょうか。これは少なくともへんぴなところで事案がないということかもしれませんけれども、国民がこういうような仕事をやって、いろいろ打ち合わせなり教育なり、いろいろ懇談をするという意味においては、定例ということを廃止するというと、何もやらずに済んでしまうということがありはしないか。それから、十二番目の「嘱託制を設ける」というのは、だれに嘱託するという意味を考えていたのですか。
  52. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまの定例会議を廃止するという点でございますが、これは何もないのに集まるというのはどうか、経費の節減ということから、あるいはお忙しい方がいらっしゃるのに、それなら廃止した方がいいのではないかということであったろうと思いますが、ただいま私ども事務当局といたしましては、事件数も非常にふえておりますし、あるいは事件のない庁もないではございませんけれども、定例会議というものは、ただいま委員もおっしゃいましたようにいろいろ必要なことであると思っておりますので、これは私どもといたしましては、定例会議を廃止するというつもりはただいまのところはございません。  それから、証拠調べの嘱託でございますが、これは審査会から他の審査会に嘱託するという考えであったようでございますが、これもただいまのところでは、この調拠調べの嘱託というのは、専門家でも大変なことでございまして、受けた方で果たして満足なことができるかという問題もございまして、ただいま刑事当局としてはこれはやはり消極に考えております。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 十三番目の、「検事正は起訴相当の議決があった事件につきとつた措置を検察審査会に通知するもの」ということは、私は、当然これはなさっておることだと思っておったのですけれども、単にとった措置だけでなくて、措置及び理由を検察審査会に通知するのが、機関と機関との間で、御意見のあった点についてはこういたしましたということを当然やっておるものだと思うのですが、やっていないのですか。
  54. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 審査会で起訴相当あるいは不起訴不相当の議決がありました事件につきまして、検察庁の方からその措置の結果を審査会の方に御通知をするということは、すでに現在運用によりましてやっておるところでございます。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 その運用について、十四番にも関係するのですが、「検察官は刑事訴訟法第二百六十条により告訴人、告発人又は請求人に対し不起訴処分の通知をするときは、あわせて検察審査会に審査の申立ができる旨をも通知する」こととなっておりますが、私が承知しておりますところによりますと、大分の検察庁だけが、不起訴の通知を告訴人及び告発人、請求人に対して通知をするときに、検察審査会というものがありますから御不満でしたらどうぞということが印刷に付されておるんだけれども、あとの検察庁は、やらなかったり、口頭で言ったり、きわめてまちまちで、この問題について協会から何回言うてもやってくれぬ、きちんとやってくれぬ、こういう訴えがあるのですが、いかがですか。
  56. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いまの点でございますが、実際はむしろやっていないと言うとおかしいのですけれども、一律にはやっていないというのが実情であると思います。ただ、やっていないと言うと誤解があるかもしれませんが、この試案といいますか要綱で決められているように義務的な形でやっているということではないという趣旨でございまして、告訴人等から不起訴処分について不服があるというようなことがありました場合には、審査会という制度もあるのでそちらに申し立ててはどうかというようなことは、随時口頭で申し上げているというのが実態でございます。  ただ、この問題について考えてみますと、いままでの議論が、御指摘のこの要綱の項目にございますように、検察官としていわば義務的に告知をするというとらえ方で議論をされておるように思うわけでございます。そうなりますと、検察官の立場で審査会制度があるということを教えるということは、果たして検察官の立場としてそういう義務を法律的に負うような立場にあるかどうかというような議論もないわけではないというふうに思うわけでございます。  むしろ、いろいろと考えてみますと、この審査協会等の御決議等も拝見しておるわけでございますけれども、事柄の本質は、むしろこの審査会制度というものが国民に周知徹底していないということ、そのことによってこの制度が必ずしも十分に活用されていないのじゃないかというところに問題があるのじゃないかというふうに思うわけでございます。そうなりますと、この制度の普及徹底ということにつきましては、従来から最高裁御当局でもそれなりの御努力をされておるわけでございますし、そういう協会等においてもいろいろとPRをしておられるということでございます。しかしながら、結果として必ずしも十分満足するような状態でないということはまた否定できないのじゃないかというふうに思うわけでございまして、そういう意味で、この制度を国民の皆さん方に知っていただくということについての努力というものについては、法務省、検察庁におきましてもそれなりに、協力するという言葉が適当かどうかと思いますけれども、そういうことは考えていいのじゃないかというふうに考えております。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 PRをすればそれで済むということなんですが、PR予算がどのくらいあるかということは、もう私もよく承知をしておるわけで、とてもそんな、検察審査会が現在年間二千数百件ということを、もう定着しておるということを知っておる人は、国民の中にはそんなにありはしません。これは税金でもそうですが、更正決定が来る、もし御不満だったら不服審判所がございますからと言う。それから、国民が行政について不満がある、それを訴えていってだめだというときには、もし御不満があれば行政不服審査法でおやりになれますよということをちゃんとやっておるわけです。文書で出しておるわけですよ、税務署も役所も。検察陣だけが、自分がやったことについて、告発人等から不起訴はおかしいよと言って訴えた、それに対して検察審査会もそうだと言った、そういうような国民から訴えたものに対して、もし御不満だったら検察審査会というものがありますよということを教えるのはおれの義務じゃない、そんなものは国民なら知っておるはずだ、また、知っておらぬならほかの機関が知らせるべきであって、検察官がそんな義務を法律上負う必要はないというのは、ぼくはこれは不親切きわまる問題だと思います。  十五番目の「検察審査員の不出頭及び宣誓拒否に対する制裁規定を廃止するものとすること。」これはどうですかね。本人が自分が審査員になるということに承諾しておいて宣誓拒否をするということはおかしいと私は思うわけですが、なぜこんな言葉が入ったのですか。
  58. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまの点は、審査員に御負担をおかけする、そういうことであるのに不出頭あるいは宣誓拒否ということで制裁を課するのはいかがか、そういうことであったと思いますが、当時からやはりこれは残した方がいいのだということで、すでにそれは法改正を求めないと裁判所では考えておりました。ただ運用で、法としては残すけれども、だからといって不出頭あるいは宣誓拒否をされた方に直ちに制裁を科するというようなことはしないんだ、とにかくおいでをいただいてやっていただくことに主眼を置くというように考えておるわけでございます。  なお、つけ加えますが、先ほどこの改正要綱試案に基づいて一つ一つお尋ねがございましたが、先ほど来お答えしておりますように、これは三十一年ごろのことでございまして、まだ法が施行されて間がない時代に、この審査会法もまだ定着してないという状況のもとで、各方面からいろいろな御要求が寄せられたのにつきまして一応刑事当局でまとめたというものでございまして、先ほど来申し上げておりますようないろいろな事情あるいはその後の情勢の変化というようなことで、これも現在全部維持しているというものではございませんので、その点御了解願いたいと思います。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 最後に、日弁連が長い間時間をかけて考えた結論が、「検察審査会の起訴相当、不起訴不当の議決に検察官が従がわない場合、審査会は検察官の関与した不起訴処分の理由を検討し、なお起訴することを相当と認めて再議決をなすことができ、その場合検察官はその再議決に拘束され、起訴する義務を科されること。」まあ、起訴便宜主義に対する非常な制肘になるとは思うのですが、これを私どももずいぶん議論をしてみたわけであります。しかしながら、実に日弁連の討議も、そのことによるプラス面、マイナス面というものをかなり理論的に整理した結果こういう結論を持って私どもにも意見を言っておるわけですが、この点についてどうお考えになりますか。
  60. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のような御意見があることは十分承知しておるわけでございますが、これは横山委員に申し上げるまでもなく、わが国の刑事訴訟手続におきましては、基本的に検察官に公訴権がゆだねられておる、また、その内容として起訴便宜主義というものが設けられておりまして、この制度というものは、長年にわたります運用の実績を経ましてわが国の刑訴法制度の中で定着しておるものというふうに考えておるわけでございます。また、そういう実態からいたしまして、いまのような御意見というものは、いわば刑事訴訟制度の根幹に触れると申しますか、基本に触れる問題であろうというふうに思うわけでございまして、直ちには賛成しがたいと考えておるわけでございます。  先ほど若干おしかりを受けましたけれども、私の申し上げたかったことは、やはり国民の間にこの制度が周知徹底されるべきであるということにおいては全く同感でございまして、それが欠けるところがあるとすれば、法務省あるいは検察庁におきましても十分何らかの方法で御協力申し上げるのが筋じゃないかということを申し上げたわけでございます。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 そのほか問題点としては、行政上この検察審査会の諸君の会議をする諸施設の整備が改善されなければならない。日当の引き上げが行われなければならない。出席した補充員も同額の支給がさるべきが当然である。それから、いまおっしゃったPRの徹底が必要である。それから、審査員や補充員等の出席した日、それがサラリーマンであろうがニコヨンの諸君であろうが出席日の賃金カットが行われる。それから、会社では皆勤手当がそれによってだめになる。こういうような要望があるわけであります。  以上、きわめてじみちな問題ではございますけれども、検察審査会の運営並びにこの問題につきまして、審査員及び補充員等の諸君が、国民の義務として思いがけなくくじで当たった、自分が検察審査員になるという話で、何もわからない人間が何かしかられるのじゃないかと思って行った、そうしたら案外関心が強まった、やめるときには、こういうような国民が検察の諸問題に関与するという重要なシステムが日本に存在しておることについてきわめて認識を新たにしたという感懐をみんな持っておるわけであります。  そして、年に一回の総会、ことしも五月に開かれるそうでありますが、その総会までに、いま私がいろいろとだめを押しました諸問題について——私自身もそれは三十一年の案についての若干の意見は申し上げましたけれども、いずれにいたしましても、長年にわたる問題についてわれわれの要望がまじめに討議をされたとはおっしゃるかもしれませんが、一つ一つ少しも表に浮かび上がっていないではないか。われわれは何のために検察審査会の委員になって、忙しい人間が一生懸命にやるのか。そして、そう言うと検察陣がいやな顔をするかもしれませんけれども、大体検事さんたちの気持ちは、うどん屋さんやげた屋さんやサラリーマンがいきなり出てきて、検事のやったことが間違っておるとか起訴が相当だとか、そんなわかりもせぬのにという顔をする人が多いというのです。ところが、実績を見てみますと、不起訴になったもののうち約一割九分ぐらいが起訴になって、そして裁判の結果、一般からいうと思いがけなくもその犯罪事実が明らかになって、そして罪に問われている数も少なくないわけです。  そういう事実から考えてみますと、このシステムがより有効に働く、そして審査員になった人が後顧の憂えなくまじめにその審査に協力をする、それに対して検察陣が十分理解と協力をする。検事に言わしてみれば、自分が不起訴にしたやつが、起訴相当ということになって自分がもう一遍起訴にすることは、まあ人がかわるかもしれませんね、かわったにしたところで、検察陣一体の精神からいうと不名誉なことだ、そういう気持ちが、検察審査会に対する検察陣の感覚というものが、容易に庶民的な気持ちとして私は想像されるわけであります。しかしながら、裁判官も神様でなければ検事はもちろん神様でもない。裁判官は衆人環視のうちに判決をするんだけれども、検事は、そう言っては失礼でありますけれども、密室の中で取り調べが行われる。密室の中の取り調べが時としてどういうようなことになっておるかということは、私もいろんな経緯を通じてよくわかるわけであります。  だから、検察陣も、まあ老婆心ながら言っていることだと言えばそれまでの話でありますが、検察審査会に対する評価、それに対する尊重というものについてもう一歩ひとつ思いを新たにする必要があるのではないか。この機会に、いま申しました十数項目の問題について、それは全部が全部とは言いません。けれども、心を新たにして、長年このために、日本の法秩序の確立のために、正義のためにがんばってまいりました数万の検察審査員経験者の気持ちをくんでやる、そういうことが必要ではないかと思うのでありますが、法務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  62. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 検察審査会の果たしている役割りにつきましてるるお尋ねがございまして、また、最高裁判所で問題点をおまとめになっているそれにつきましてのいろいろの質疑応答伺いまして、検察審査会が果たしている役割り、私も大変教えられるところ多々ございました。  今後とも検察審査会が有効に機能していくようにお互いに勉強していかなければならない、こう思っております。
  63. 高鳥修

    高鳥委員長 午後一時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  64. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍛冶清君。
  65. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 初めての法務委員会でございますので、多少いろいろと思い違いとか舌足らずのところがあるかもわかりませんが、御容赦をいただいて御答弁をお願いいたしたいと思います。  提出されました法案につきましての質疑をやらしていただきますが、午前中分科会の質問の関係で、私に先立って質問なさった方の質問内容をお聞きいたしておりませんので、大変申しわけございませんが、もしダブる点等ございましたときにはひとつ御容赦を願いまして、簡明に御答弁をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。  最初に、この法案によりまして裁判所職員増員が提案されているわけでございますが、その増員理由について内訳別に、資料として一応はいただいておりますけれども、詳しくお聞かせをいただきたいと思います。
  66. 千種秀夫

    千種政府委員 御説明申し上げます。  今度の改正法案におきまして判事合計十六名、裁判所書記官、これは裁判官以外の職員と書いてございますが、中身は書記官でございます、十三名の増員お願いしておるわけでございます。  その理由となりますところは、結局、第一線の地方裁判所におきまして最近非常に困難な事件が多くなっておる、それに対処するためのものでございます。  その内容を若干申し上げますと、まず第一に、民事関係でございますと、公害関係と申しますか、多くの庶民に大きな被害を与えるような事件が非常にふえてきております。これは法律上公害基本法で定義しておる公害以外にいろいろなものがございまして、医療過誤でございますとか薬品の問題でございますとかいわゆる欠陥商品の問題でございますとか、私ども一般公害と言っておりますときにはそういった広い意味で使っておるのでございますが、こういう事件は理論的にも非常に困難な問題があると同時に、関係者が多数でございまして、裁判所の手間が大変よけいかかる。これには損害賠償を請求する事件と、その公害源でございますいろいろな騒音であるとか何かの発生源をとめるという意味差止請求という訴訟がございますが、いずれを見ましても同じように非常に複雑困難であり、手数がかかるということから、この公害関係事件につきまして、十六人の中から、裁判官につきましては合計九名、さらに内訳を申しますと損害賠償請求事件について六名、差止請求事件について三名、九名をその公害関係事件に充てよう。書記官につきましては、十三名のうち損害賠償請求事件について四名、差止請求事件について二名、こういう割り当てを一応考えておるわけでございます。  民事事件のその他の問題としまして考えられる問題は、訴訟事件でございますと労働関係事件がございます。労働関係というのはいろいろと種類はございますけれども、最近多いものは、労働者が首を切られたとかあるいは労働条件上不利益を受けたということからいろいろな種類訴訟が出てまいります。こういう事件は理論的に複雑であるとともに、最近は企業が不景気になって大量に首を切るというようなこともございまして、関係者がやはり多うございます。公害訴訟と同じように、手間がかかると同時に期間もかかります。こういうことから、これにつきましては裁判官を二名、書記官を一名増員お願いしたいと考えているわけでございます。  そのほか、最近のことでございますが、民事執行法というものができました。これは強制執行、たとえば競売などの手続がいろいろと批判があってスムーズにいかないということから、抜本的な改正をいたしまして新しく民事執行法という法律ができわけでございますが、これが昨年の秋から施行になりました。改正趣旨は、裁判所が強制執行の適正迅速化を図ろうということでいろいろと関与するような改正が盛られているわけでございまして、これが施行されることになりますと、現にもう施行されておりましてその兆しは見えておるわけでございますけれども裁判官あるいは書記官が分担する仕事はふえてまいります。たとえば不動産競売事件でございますと、競落する人、これは一般の庶民でございますが、その人たちの権利を擁護するためには裁判所はちゃんと現況を調査して権利関係を確定して、買った人が損がないようにということをしなければなりません。そういう現況調査手続、こういう調書の作成とかそういう手続裁判官書記官の負担を増加させることは十分予想されるわけでございます。そのために、民事執行法関係事件のためには裁判官二名、書記官五名の増員お願いしたい。  一方、刑事事件につきましては、最近顕著な例でございますが、覚せい剤取締法違反事件が急激にふえてきております。ここ数年の例でございますが、受理事件で見てみますと、一万件台のものが二万五千件ぐらいになってきたということもございまして、そのために裁判官の方は三名、書記官については一名の増員お願いする。  それを合計いたしまして判事十六名、書記官、そこでは裁判官以外の職員、それが十三名、こういうふうになっているわけでございます。  なお、申し加えますけれども裁判所職員につきましては、裁判官書記官以外に事務官がございます。この事務官については、この法案には入っておりませんけれども、これは裁判所内部におきまして司法行政事務、要するに裁判部門以外の一般事務と申しますか、そういう事務に携わっている職員手続の合理化によって削減して、その三十三名を裁判部門に向けたい、こういうふうに計画しておられるようでございます。その点はこの法案には盛られておりません。  大体以上のとおりでございます。
  67. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これの増員は、法案としてここにこういうふうに定員法で出てきておるわけですが、当初にお考えになった増員——いまいろいろと増員理由について御説明をいただきましたが、これは素人考えでございますけれども、確かに私たちがはだで感ずる感触も、いろいろな問題がふえてきているというふうにも思いますし、いま御答弁をいただいた内容は、そのまま確かにそうだなという実感でお聞きをしておったわけでありますが、そういうものがふえてきておる中で増員がこれぐらいでいいのかなという感触を、感触でございますからわかりませんが、私は持つわけで、当初から定員増についてはここで提案されているような内容でお考えになっていたのか、ないしはこれぐらい要るという中で大蔵省、いわゆる内閣の方ですかと折衝されたのか。その当初の計画、これぐらい必要だというふうなお考え、これをひとつお聞かせ願えればと思います。
  68. 千種秀夫

    千種政府委員 増員につきましては、御指摘のように予算の問題もございますし、いろいろ関連する問題がございますので、ものによりましては裁判所の方からまたお聞き取りいただきたいと思いますけれども増員一般の問題につきましては、いろいろな関連する問題がございます。と申しますのは、一遍に裁判官を倍にしたいと仮に考えたといたしましても、裁判官になるためには高度の技術、経験を要するのみならず、一定の資格が要るわけでございます。そういうことから、その給源が確保されないと定員だけふやしても十分な増員が得られない。これは書記官事務官についても同様なことが言えるわけでございます。それともう一つは、これを急にふやしますと、一部質の低下が起こるということも考えられます。  そういうことも勘案いたしますと、毎年欠員が出てそれを補給するための給源があるわけでございますが、その欠員関係充員関係というものも見ながら漸次これをふやしていくという方法をとるのが賢明な策であろうかと思うわけでございまして、過去四十年からこの方十五年間を見てまいりましても、判事につきましては八十五名、判事補につきまして七十六名、簡裁判事につきましては六十四名、合計二百二十五名の増員を図ってきたわけでございまして、この基調を続けてさらに充実していくのがよかろうということで、今回は十六名という増員になっているようなわけでございます。
  69. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大蔵あたりと折衝なさったときの最初の数、これはちょっとお答えできないと言われたらそれまでですが、わかりましたら……
  70. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 昨年八月の当初要求の段階では、判事十八名、裁判官以外の裁判所職員七十九名、合計九十七名の概算要求をいたしました。それは、合議体をもう少し増強していこうとか審理期間をさらに短縮していこう、その他いろいろ計算しました数字でございまして、当時としては理想像として描いたものでございます。  しかしながら、折衝の過程で、事件の動向でございますとか、あるいは先ほど調査部長からもお話のございましたように、充員のめどというようなことから、現実的な要求として、ただいまお願いしております判事十六名、裁判官以外の裁判所職員十三名というふうな数字になってきたものでございます。そこには、充員の問題、給源の問題、それから質を低下させてはいけないといったようないろいろな配慮も総合的に勘案されて、そのような数字になったものでございます。
  71. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そこで、いろいろ疑問が出てくるわけでありますが、司法権というものが憲法で保障されておりますし、三権分立という立場で大変重要な部門を受け持っているところだ、私たちはこう考えておるわけです。これも本当に素朴に考えますと、それだけ当初定員についても必要だ。いまお聞きしましたら、法案として出てきました数との差が合わせまして六十八名になっているわけですね。これは理想像として要求された、こうおっしゃっているわけでありますが、憲法にもうたわれていますように、憲法上司法権の独立が保障されて、裁判官は良心に従い独立して職権を行い、憲法、法律にのみ拘束されて裁判を行うとされるというようなこともお聞きしておりますし、そういういろいろな立場から見ると、やはり長期展望に立って、また現状を明確に踏まえ、また将来どう推移していくかということも踏まえながら、こういう定員というものはかくあるべしということで当初要求をなさったんだろう。これはやはり司法府の権威にかけておやりになったのではないかと思うのですね。  だから、その要求なさったことについては、先ほど千種部長からも御答弁がございましたようにいろいろ隘路があるということではございましたけれども、これがそのままもし認められれば、ちゃんとそれを裏づけといいますか、さっきおっしゃったようなことは解決できる、こういうもとに当初要求をなさったんだろうというふうにも思うのですが、これは私は変な意味で意地悪く質問するようで大変恐縮ですけれども、私の意図は、やはり司法府というものをしっかりとした立場に置くということから、定員増にしろ予算にしろ、独自に、繰り返すようですが、将来展望やら現状把握の上からかくあるべしという確たるものを持ってそれを提案もし、それを財政当局に認めさせるということについては、もう万全の体制で臨むというふうなことが一番必要じゃないか、特にいまそういうことがわが国にとって求められているのじゃないか、こういう立場から申し上げているわけで、当初の要求というものがそのままもし認められれば、部長がおっしゃったようなことは心配なくできるという考えでされたと思いますし、それがこういうふうに減ってきたということは私どうも心外なような——心外と言うと大変表現が悪いかもわかりませんが、気がするわけです。そこらあたりをひとつ私の意図するところをおくみ取りいただいて御答弁を願えればと思います。
  72. 千種秀夫

    千種政府委員 裁判所予算の面に関しましては、私ども法務省の方では直接タッチしておりませんので、先ほど梅田総務局長から若干経過について御説明があったところでございます。  裁判所ももちろんいろいろな考えがあってそういう結末になったというふうに理解しておるわけでございますが、司法権の使命の重大さということに関しましては、まことに先生の御指摘のとおりでございまして、私どももその気持ちで一生懸命取り組んでおるつもりでございます。そのためには、御指摘のように裁判官を含めました職員増員というものを長期的な展望に基づいて着実にやっていかなければいけない、そういう心構えであることは先生のおっしゃったとおりでございます。  それでは具体的にどうするかということになりますと、先ほどからちょっと出ております予算の問題もございますし、給源の問題もございまして、それが短期間に急激にできないというようないろいろな事情があるかと思います。その事情につきましてさらにまた必要がございましたら、私どもまた裁判所の方から申し上げたいと存じます。
  73. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 要するに私の理解は、当初要望された定員増については、これはぜひ必要な数字であるし、これがもしそのまま認められれば、先ほど部長がおっしゃったような質の低下とか養成能力とかいうことも心配なく対処できるという自信を持って要求されたんだと思いますが、そこらあたりはいかがですか。
  74. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 先ほどの御説明必ずしも十分でなかったかもしれませんが、実は増員といたしましては、裁判官判事十六のほか、書記官十三、裁判部門における事務官三十三がプラスでございます。したがいまして、六十二名の増でございます。ただ、司法行政部門におきます裁判所事務官の減を三十三立てておりますので、差し引きいたしますと二十九というふうに相なりますが、裁判部門につきましては事務官の三十三の増も計上されているわけでございまして、折衝の過程でだんだん時間がたってまいりますと、実際に必要な、しかも増員をしていただく以上はすべてそれを埋めたいという現実的な要請とのマッチの上においてこのような数字に相なったものでございます。
  75. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 余り細かく言いましてもあれですが、ほかの省庁は、たとえば各省庁で予算要求を出される、積み上げをする八月の時点で、あるいはこの程度は削られるであろうということを予想して、上積みと言いますと変な言い方になりますが、そういう形でする場合もあるかなという気はいたしますけれども、司法府の関係については、先ほど申し上げたような立場から権威あるものを要求して、これについては一歩も譲れない、予算についても場合によれば二重予算制度というようなものがあるようでございますし、そういうようなものも留保しながらやっていく。確かに行政改革という立場で、むだなところにたくさんいるとか、世の中日進月歩でございますから、過去のいわゆる職制なりいろいろな形のものが残っていてはまずいというところ、そういうところはもう厳密にびしびし減らしていかなければならぬと思いますけれども、現時点では、私も地元等でいろいろな方と話し合い、接触する機会がございますけれども、やはり司法関係裁判関係についてはむしろプラスしてでもきちっとやってもらいたいという要望が大変強いわけですね。ですから必要なところはきちんとしていくべきであろう。  そういう意味で、私がこういうことを申し上げては大変言い過ぎた言い方になるかもわかりませんけれども、当初要求についても、先ほど申し上げたように、人員にしろいろいろな予算にしろ権威あるものにして、これは絶対譲れないというぐらいの形でやらなければならぬのじゃないか。また、そういう形で今後はぜひ取り組みをやっていただきたいし、われわれも応援させていただけるところは十分させていただいていいんじゃないか、こういうふうに思います。御要望として申し上げておきます。  次に進めさせていただきますけれども、それだけ当初の要望より減ってきたということになりますと、残念ながら、現在働いていらっしゃる判事判事以外の職員の方々も含めて、非常に過重な形で仕事をやっていかざるを得ないというふうな状況が出てくるような気がいたすのでございますが、そこらあたりはいかがでしょう。
  76. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 今回は定員法改正お願いいたしまして判事十六名、裁判官以外の裁判所職員十三名の増員お願いしたわけでございますが、果たしてどれだけの裁判官なり裁判所職員がおれば負担として適当なのかという点は非常にむずかしい面もございます。現在の姿が理想的だとは私どもも決して思っておりません。今後もさらに増員につきましても努力を続けてまいらなければなりませんし、増員以外の面におきましても、訴訟の促進等に工夫を重ね、いろいろな施策も講じてまいる必要もございます。  先ほど来申し上げておりますように、裁判官にとって質を下げるということはもうとても考えられないことでございますし、書記官その他の一般裁判所職員について見ましても、養成等の人数の問題もございますので、一挙に増員してもなかなかその欠が埋まらないということではどうも非現実的な面もございまして、私ども充員との関係増員につきましては毎年のようにじみちに努力を続けてまいりたいと思っております。  負担の点は、先ほど調査部長かちもお話がございましたように、ここ十数年の間に相当数の人数の増を見ておりまして、昭和三十年ごろに比べますと大分とよくなってまいっておることは確かでございます。よく判事が家にまで記録を持って帰って大変だということも言われますけれども、重要な使命を担っておる仕事でもございますので、ある程度の忙しさというものはもうやむを得ないところかというふうに思っております。
  77. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そういうふうに職務に対して過重が少しぐらいあってもがんばれるという精神には敬意を表するわけでありますけれども、それはそれとして、やはり過重なものは過重として手当てはしなければならぬだろう。御答弁、それ以上は言いづらいところもあるような感じもいたしますし、これ以上はお尋ねはいたしませ丸けれども、意図するところはひとつ含んでいただいて、今後それをぜひ生かしていただきたい、こういうふうに思います。  定員増と絡んで、いただいた資料の中でちょっと気にかかるのが欠員の方でございますけれども欠員資料として出ております。これの内容について、どうも欠員が多いというようなところもありますし、さらには、事務官の方ですか、定員オーバーというような形になって数字として出ております。ここらあたりの理由についてお聞かせをいただきたいと思います。
  78. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 欠員関係について御説明申し上げます。  まず、裁判官の方でございますが、裁判官につきましては、お手元に差し上げました資料の十六ページのところに出ておりますが、昨年の十二月一日現在で判事に二十三名、簡易裁判所判事に三十五名の欠員、こういうことになっております。裁判官については、申し上げるまでもないことでございますが、高い資格を必要とするわけでございまして、判事判事補につきましては、司法試験を通り、司法研修所で二年の修習を経て判事補になり、十年たって判事になっていく。簡易裁判所判事についても、判事判事補等からなった者もございますし、選考任用ということで別のルートから採用している者もございますが、みんな大体春四月ないしは簡易裁判所判事につきましては夏に採用するというのが通例になっておりますので、年度の途中におきましてはどうしても欠員は避けられないところでございます。この判事簡易裁判所判事欠員につきましては、詳しく申し上げるのは省略させていただきますが、ほぼことしの四月以降におきまして充員される、簡易裁判所判事については若干の欠員が残る予測でございますけれども判事判事補につきましてはまずみんな充員される、そういう予定でございます。  それから次に、裁判官以外の裁判所職員欠員関係につきましては、十九ページのところに出ておりますが、書記官につきましても、これは書記官研修所というところで一年ないし二年養成をいたしまして書記官に任用するわけでございますが、この関係が十二月では九十三名となっております。その後若干の減耗がございまして、春ごろになりますと大体二百名程度欠員になる予定でございますが、その関係は四月に書記官研修所を卒業する者によってほぼ充員される、こういう予定でございます。  家庭裁判所調査官につきましても、これは上級甲というかなり高い程度試験を通った者から採用するということでございまして、これもやはり四月の採用でございまして、この欠員関係は四月に埋まる予定でございます。  それから、事務官過員が二百六十二あるというのがやや奇異にお感じになると思いますが、この二百六十二と申しますのは、実は先ほどちょっと申し上げました書記官研修所事務官として大体二百名ぐらい、いわば書記官の卵でございますが、そういう者が入っておりますが、ほぼそういうものに当たるということであります。そういう関係で、やや奇異にお感じになるかもしれませんが、過員状態が生じておるということでございます。  その他の職員欠員三百ばかり、これはいろいろなものがあるわけでございます。午前中にもちょっと申し上げましたけれども裁判所の組織、これは東京だけではございませんで、北海道から九州まで、簡易裁判所を入れますと二千ぐらいございます。一方で欠員ができますと、そこを埋めるとまたこっちで欠員ができるということで、どうしても若干の欠員は避けられないわけでございまして、ある意味ではこの程度欠員はやむを得ないのではないか。ただ、こういう欠員ができるだけ生じませんようにいろいろ工夫をいたしまして、いつもできるだけ定員に近い数が埋まっているような状態にするような努力は従前からも続けておるところでございますし、今後もそういうふうにやっていきたい、かように考えているわけでございます。
  79. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまの説明で、「その他」のところの欠員内容の御説明がなかったのですが、この点、相当欠員も多いようでございますかち、御説明をいただきたいと思います。
  80. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 「その他」の内訳といたしましてはいろいろなものがあるわけでございますが、たとえば裁判所速記官でございますとかタイピストでございますとか廷吏でございますとか、そういうものがあるわけでございます。「その他」の職員の中でやや欠員が多いと言えますのは、実は裁判所速記官というものでございまして、現在百名を少し超える欠員を持っておるわけでございます。  ただ、この裁判所速記官と申しますのは、ここでも速記をおとりになっておられますが、裁判所速記官はいわゆる速タイプというものを打ちまして、それを反訳して調書等にするということをやっております。その特殊な機械の操作をして速記をとるという関係上、だれでも簡単にすぐできるというものではございません。この速記官につきましても、高等学校を卒業した者について試験をいたしまして、それは学科試験適性検査、いろいろいたしまして、裁判所書記官研修所というところに入れて二年間養成をするわけでございます。最近進学程度がだんだん高くなってまいりまして、高校卒でそういう機械の方それから学力の方、どちらから見ても適性だという職員を採ることがなかなかむずかしゅうございまして、それを採りましても、途中で養成段階で脱落していく者も幾らか出てくるわけでございます。そういうことで非常に難渋しておるわけでございます。ただ、これは四、五年前に比べますと欠員はほぼ半分に近くなっておりまして、次第に充実してきておる。一遍にはなかなか、すぐことし来年というわけにはいきませんけれども、できるだけ近い将来に充員できるような努力を鋭意いたしたいというふうに考えております。  それ以外のものにつきましては、先ほどちょっと御説明いたしましたように、廷吏、タイピストその他全国にたくさんございますために、ある一日をとった場合にどうしてもこの程度欠員ができる。ある特定の部署についていいますと翌日埋まっているかもしれない、そういう数字でございまして、こういうものは途中ででも幾らでも採用できるわけでございますから、そういう意味での採用は常に続けている、こういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  81. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ちょっと変なお尋ねですが、「その他」の項目のところは、前は内訳がちゃんと資料なんかには書いて出ていたというふうに伺ったのですが、こういうふうに「その他」にひっくるめてしまったというのは、何か出してしまったら悪いという理由があるのですか。いまお聞きしていたらそうでもないようだけれども、なるべく私たちにいただくときには内訳をはっきり書いていただいた方がいいような気がするのですが、その点はいかがでしょう。
  82. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほどのお答えでちょっと数字が違っておりますので、もう一度申し上げたいと思いますが、二千の組織というふうに申し上げましたが、千二百の組織でございます。まことに失礼いたしました、訂正させていただきたいと思います。  それから、「その他」の欄の内訳でございますが、これは特に隠すとかなんとかそういうつもりでこういうふうにしておるわけではございませんで、非常に細かいものがたくさんございます。それこそ昇降機運転手、自動車運転手とか細かいものがいっぱいございますが、そういうものは一般的には給与表で申しますと行政職(二)表適用職員ということになっております。細かく一々、タイピスト、廷吏、定員が全体としてそう多いものでもございませんし、むしろそこら辺一括してお出しした方がわかりやすいかというふうにも考えましてこういうふうにいたしておりますけれども、特に他意があるものではございません。
  83. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 「その他」の中で先ほど速記官ですか、これが百四十名近く欠員があるということで、この半分近くを占めておるわけですね。やはりこれは定員の増の問題との絡み、それから補充の問題との絡みでいろいろむずかしい面があるとは思うのですが、速記官の方々に応募するというか適格者が少ない、ないしはむずかしいというのは何か理由があるだろうというような気がいたしますけれども、それは克服しなければならぬだろう。  現実にやはり、ここにあります日弁連の出された司法白書、四十九年度版ですから古いのですけれども、これに書いてある速記官というところの記述を読んでみますと、やはり相当過重になっているし、それから、証人調書作成等については、地裁の一部でテープにとったものを外に出しているというようなシステムも何か入っているというような形で書かれてあるわけですね。ところが、それはやはり正規の養成を受けていない人が、また、法廷の中にかかわっていないで反訳ですか、調書を作成するというのは正確性の面で大きな問題がある、だから、正確性を保とうとすれば書記官の校正の励行を促す以外にないとか、こういうようなことがずっと書かれてあって、私もそうかなということで思っているわけです。こういう定員補充についてはいろんな難点はあるでしょうが、これはどしどし思い切った形で何か手が打てるものならやられてはいかがかという気もいたします。  時間が大分なくなりましたから、細かいのははしょってやります。  さらに、定員の問題で私も非常に疑問に思いますのは、裁判を行わない裁判官の方々の数が、私の方でちょっと調べさせていただいた資料では七十四名くらいいらっしゃるようですね。こういう定員を含めて欠員補充の問題、それから、そういうふうに裁判官でありながら裁判をなさっていない方々もいらっしゃるとかという問題について、それから、事務官のオーバーしている人数ですね、こういったものは研修所にいる人がほとんどだということですが、実務をしていないのであれば、定員事務官の外で何か措置するという方法はないのか、そんないろんな素朴なことで、専門的に考えるとどういうふうな考え方になるのかわかりませんけれども、そこらあたり大変疑問なんですが、そういった面を含めて定員というものは思い切った形で措置をするという必要があるのではないかという気がいたしますが、そういう点についてはいかがでございましょう。
  84. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判に現実に従事していない裁判官先ほど七十何名とおっしゃいましたが、ちょっとその根拠よくわからないのでございまして、実は私ももともと判事でございます。裁判をしないでこういうところで御答弁申し上げておるわけでございますが、事務総局で局長とか課長とかおりますが、それが大体四十数名おるわけでございまして、そのほかに最高裁判所調査官というのがございます。それから司法修習生養成に当たっております司法研修所の教官、こういうものも裁判官でないと実際養成指導できませんので、裁判官で充てられているということでございまして、そういうものをいろいろ合わせますと大体百名くらい実はおるわけでございます。これは詳細は省略させていただきますが、やはり必要ということでこういうことになってきておるわけでございます。  いま鍛冶委員が仰せになりましたこういうものを定員外にして、たとえば百人を現場で働かせたらという御質問だというふうに存じますけれども、仮にそういうふうにこの百人を定員外にいたしましてその百人を現場に充てるといたしましても、その百人を実際に埋める必要があるわけでございます。定員としてありましても、そういうものが現実の裁判官として埋まらなければいけないわけでございますが、先ほどから調査部長、総務局長から申し上げておりますように、なかなか一挙に充員できないという事情がございまして、そこら辺を考えますと、定員外とすることによってすぐ問題が解決するわけではない。  この定員法お願い申し上げておりますように、地方裁判所における各種の事件の複雑困難さ、事件の増加といったようなことから増員お願いし、かつ、それは全部裁判官が埋まるという形での増員お願いする、そういう形でのじみちな努力を続けることによって裁判官の充実を図っていきたい、こういうふうにやってまいりましたし、今後もそういう形でお願いしていくのが一番適当ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  85. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 細かいことはまたの機会に譲って、いろいろ議論することがあればやりたいと思いますが、裁判官の方がたとえば事務次長とか、これは最高裁の方ですか、それから各局長さんとか課長さんとかいろいろされていらっしゃる。裁判官の方でなければやれないのかな、それでなくたってやれる仕事はずいぶんあるというふうに、これも素人考えですが、思うわけですね。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  だから、そこらあたりはやはりそこの裁判官以外の定員の中で増をしてふやしてしまうとか、裁判官の方は、裁判官の方がどうしてもやらなければならないというところは別でありますけれども、それは本来の裁判業務に帰っていただくとかいうふうな形、こういうものがやはり考えられるのではないかというふうなことですが、これもちょっと時間もございませんので、こういった件について、また機会があればお尋ねをするということにしますが、そういう形にやられたらいいのではないか。これは素人の考えでありますが、御要望を申し上げておきます。  次に進ませていただきますが、これは補充判事というのでしょうか、この前の毎日の五十六年二月六日の新聞でございますが、ロッキード裁判全日空ルートの関係で「判決、大幅遅れ」ということで記事が出ているわけですね。この中で、金裁判長がお亡くなりになったということで、裁判が大変大幅におくれるんではないか。  詳しい手続とかいろいろなことはわかりませんが、こういうことがないためにも、何か補充判事という制度ですか、補充裁判官制度があるというふうに伺っているのですが、こういうような長期にわたってやるというような場合に、やはり不測の事態に備えては、そういう制度があるものはこれを生かしてやるというのが必要なんじゃないのかな、どうしてそういうのをやっていなかったんだろうという、これも素朴な疑問が起こるのですけれども、ここらあたりのお考えはいかがでございましょう。
  86. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 補充裁判官制度は、裁判所法の七十八条に定められております。同条によりますと、訴訟が複雑困難等の理由により長期に及ぶことが予想される場合に、予備的に本来の合議体の構成員以外の裁判官を審理に関与させて、構成裁判官が異動等で審理に関与することができなくなりました場合に、本来の構成員にかわって合議体を構成していく、そうなりますと、審理に従前から関与しておりますので、手続を更新すると申しますか、やり直す必要もない、したがって訴訟経済が図られるという制度でございます。  これにつきましては、実情を必ずしも十分には把握しておりませんけれども民事事件については、この制度が利用されたということは聞いておりません。刑事事件では、たとえば松川事件、メーデー事件、吹田事件等、戦後間もないころごく少数の事例が見られるようでございます。  事案が複雑困難で審理も長期になるような事件も確かにございますが、このような事件を担当する裁判官につきましては、異動等によって訴訟の遅延を招くというような事態を避けるよう、できる限り人事の面でも考慮されているというふうに承知しております。最近補充裁判官制度が余り活用されておりませんのは、そのようなためでもあろうかと思います。  ただ、裁判官が、先ほど例に挙げられましたように、不測の事故等で死亡されるとかいうようなことで事件の審理に関与できなくなる場合もございますけれども、これはもう本当に例外的な場合だというふうに思っております。  戦後間もないころには、新しい刑事訴訟の運用面でもまだまだ固まっていない点も多うございまして、先ほど申し上げましたような事件につきましては、被告人が多数であったり、証拠調べに多大の時間を要するというような点から、長期化が事件相当早い時期から予測されておりまして、この制度が活用されたのであろうと推測いたしておりますけれども、その後次第に戦後制定されました刑事訴訟の運用も固まってまいりまして、最近ではむしろ、特に刑事訴訟は、訴訟関係人の協力のもとに短期間で処理をしていこうという方向での努力が重ねられておりまして、平均審理期間も、わずかながらではございますけれども、短縮してまいっておるような現状でございますので、補充裁判官を多く活用すべきであるとまでは申せないように思われます。
  87. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この新聞の記事のようなことも、これは全く予測しなかったということだろうと思いますし、そういうふうな御答弁のようでありますけれども、しかし、そうだからといって、ないとは言い切れない、現実に起こっているわけですから。だから、その内容によってそれはどうすべきかという判断にはなりましょうけれども、一見余り必要がないとか、いますぐに役に立たないでむだみたいに見えても、やはりしておかないと、いざというときに大変だということがある。これはもう起こってからでは遅いわけでございますので……。  これはまた定員との絡みも出てくると思います。そういったいろいろなことを含めて、やはり対処をこの定員関係についてもお考えいただくときじゃないかなという気がいたします。定員問題だけでなくて、いまの日本自体が、全体が、一つのいい意味での遊びといいますか——遊びと言ったら悪いのですが、必要なそういうものが大いに欠けている。そういうところから人間性というものがすさんでいっているというような気もいたしますし、これとはちょっと別かもわかりませんが、そういう一つの考え方として持っていいんじゃないか。そういう意味を含めて、やはりこれは国民の皆様のいろいろな人権を守る意味からも大切なことではないかな、こういうふうに私は思いますので、そこらあたりを含めて、こういう定員の問題も今後お考えをいただきたいと思います。  最後になりますが、これはずいぶん前の話でありますから、現在は変わっておるのかもわかりませんが、たまたま私が裁判所なんかへ行きますと、どうも応対が非常にぎすぎすしているような感じがするのですね。大体ここでお会いしてお話し合いをしたり、議員会館等やら出かけていってお話を皆さん方とすると、私は、大変すばらしい方ばかりだなというように思うのですけれども、どうもほかに行くと態度ががらっと変わるのかなと——まあここにいらっしゃる方はそういうことはないと思いますけれども、どうも役所に行きますとそういう感じが強い。  特に裁判所というと、まあ先入観があって行かれるわけですから、私もそういう先入観がなかったとは言いませんけれども、行ってみますと、どうも冷たいというか、取っつきようがないというか、説明が足りないというか、一応事務的な説明はなさるようでありますけれども、それはあくまでも事務的な説明であって、本当に来られた方の立場に立ってわかりやすく応対もし、せめてにこにこぐらいしてもよさそうだと思うのだけれども、そこらあたりもどうも足りないんじゃないか。いわゆる変な形での接触をして安川判事みたいなことを起こすということは、これはもうけしからぬことでありますけれども、それはそれで峻別をして、その応対その他については、もっともっとやわらかい雰囲気の中で、親切という感じ、むしろ裁判所に行くと気持ちがよくなって人間性を取り戻して帰ってくるということがあってこそ、初めて裁判所の司法府の役目も達せられるのではないかというふうに私は思うわけでございます。  これは苦言になるかもわかりませんが、私や聞いた方々が行ったときにたまたま悪い相手にぶつかったということかもしれませんが、そういう印象がないようにひとつ今後行政面での指導もやっていただいて、司法府の権威をさらに高め、親しめるものにしていくというふうにお願いをいたしたいと思います。  きょう、定員の問題でいろいろ申し上げましたが、司法府という権威を守り、そしてそれを遂行していくという立場から、本当に権威のある形で予算並びに定員等についても対処していただきたいと思いますし、さらに、いま申し上げたようなことについても万全の行政指導等もやっていただいて、国民の皆さんに対する応対もきちんとしていただきたいと思いますが、これらについて最後に大臣にお答えをいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  88. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 裁判所の機能を充実する意味合いにおいていろいろな御意見を聞かしていただきまして、いずれも大事な御意見だと拝聴いたしております。これからも十分留意して、われわれが協力でき得るものは裁判所に対しましても十分に協力しながら、裁判所をさらに国民の信頼を得るような、また十分な働きがなされるようなものにしていかなければならぬ、こう思っております。
  89. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大変どうもありがとうございました。
  90. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 稲葉誠一君。
  91. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に関連して質問をいたします。  いま鍛冶委員の質問を途中からお聞きしておったのでございますが、補充裁判官の話が出ておりました。実はこの前、ロッキードの裁判のときの一部をやっておられた金裁判長が急に亡くなられたわけですが、あの裁判では補充判事をもちろん置いてなかったわけですね。なぜ置かなかったか。そう複雑な事件でもないしということで置かなかったのか。  それから、ああいう事件になると陪席判事ですね、右陪席なり左陪席かな、だれが主任なのかわかりませんが、若い判事補は別として、主任判事は普通転勤しないで終わりまでやらないと、裁判長の負担が非常に重くなってしまうわけです。あの場合には主任の判事の方が途中で転勤しているわけです。そういう関係裁判長に負担が非常に重くかかっておったということが言われておるのですが、その間の事情はどういうふうになっておりますか。
  92. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ロッキード事件は何件かございまして、そのうちのどれか私ちょっとよく存じませんけれども、金裁判長のところであったかどうか記憶がありませんが、たしか右陪席がかわったところがあるのではないか。稲葉委員よく御承知のように、若い間は三年くらいで動くことが多うございまして、そういう意味ではわりあい頻繁な異動があるわけでございますが、だんだんと年数がたつに従いまして、それほどの異動は行われないようにはなってきておるわけでございます。  ただ、そうは申しましても、ある事件相当の年数がかかります場合には、それを絶対に異動しないということは、全国的な人事計画との関係で考えますときになかなかむずかしいわけでございますけれども、ただ、毎年春に行っております定期異動等におきましては、高裁長官を通じて地裁所長、さらには部の総括等の意見をも十分に吸い上げまして、事件の処理にできるだけ影響のないような人事異動を心がけたいということで、従前そういうふうにやってきておるわけでございますし、今後もそのようにするつもりでございますが、具体的なロッキード事件の場合に実際どうであったかということは、私、当時の所管でもございませんでしたのでちょっとわかりませんけれども、人事のやり方としては、事件処理にできるだけ支障を生じないような異動というものを心がけなければならないというのは、稲葉委員の御指摘のとおりでございます。
  93. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 よく聞くのですが、田中角榮さんの裁判のときに、裁判所としても何かSP、警備員をつけて警備をする、それから昼食時にあの中にある部屋を特別に提供して、そこで食事をさせるようにし、特別待遇をしているということですが、それは事実ですか。
  94. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 実は私も、新聞報道でたしかそういう特別な部屋で昼食をされたことがあるような記事を読んだことがあるような気もいたしますが、それはある特定の方についての特別な待遇、配慮ということではございませんで、これはどの事件でもよく起こることでございます。被告人の身体の安全というものは、裁判所が法廷を開いております限り裁判所の責任でもございますので、それは被告人に限りませんで弁護人でもそういう場合がございますし、裁判官についてもある種の事件では特別の警備をすることもございますし、要するに、法廷を主宰いたしております裁判所の責任といたしまして、そういう危険が察知されるような場合には、どの事件ということではございませんで、危険がある限りそういう措置をとることになるのではないかというふうに考えております。
  95. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 部屋といったって、そういう部屋はないわけでしょう。被告人食事室というのは裁判所にはない。それは何の部屋を使ったのですか。
  96. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 弁護人控え室とか証人控え室というものは裁判所にあることはございますが、被告人控え室というものはございませんで、これはちょっと推測で申しわけありませんが、たとえば他の会議室とかそういったところで休憩していただくとかいうようなことがあり得るのではないかというふうに思います。
  97. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これはこれ以上聞くほどのことでもございません。  そこで、資料の1の裁判所職員増員、これはまた後でお聞きをいたします。  それから、2の「下級裁判所裁判官定員・現在員等内訳」というものがございますね。この下級裁判所という意味ですが、何で下級という言葉を使うのですか。片方は最高と言うのでしょう。最高だから一番えらい人がいるのかもわからぬけれども、片方を下級と言うのは変ですね。どうしてこういう言葉を使うのですか。
  98. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 いま急いで六法全書を広げましたが、憲法七十六条に「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」というふうになっておりまして、今回改正お願いしております定員関係は、この下級裁判所定員ということで法律の題名がつけられておるのではなかろうかというふうに考えます。
  99. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 憲法の問題はきょうのあれではありませんから、また別のときにやりますから。法務大臣、何か手持ちぶさたのようだからあれですがね。  そこで、これを見ますと、高裁の判事が二十三名欠員なんですか。これは具体的に言うと、どこにどういうふうに欠員になっておって、これで裁判事務支障はないのですか。
  100. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 判事欠員二十三名がすべて高裁のところで欠員になっておるというのは御指摘のとおりでございますが、この欠員自体は、もう稲葉委員申し上げるまでもないことでございますけれども年度途中ではどうしても欠員ができまして、四月に埋まるのがいつもの繰り返しでございますが、この高裁の二十三名の欠員が具体的にどこの地方にあるのかということは、いまちょっと手元にございませんので非常に申しわけございませんけれども、地裁がなく高裁に欠員がありますという意味は、この定員法でも地裁の増員が必要だということでお願いしておるところからおわかりいただけますように、地裁の方が裁判官のいわば充足が足りない、高裁よりは地裁の方がやや忙しい、簡単に申しますとそういうところがございますので、高裁のところに欠員ができておりまして、地裁はすべて埋まっておる、そういう関係になっているのではないかと思います。
  101. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、高裁の判事といっても、初めから高裁の判事になるわけじゃないでしょう。高裁判事というあれがあるわけじゃないでしょう、裁判官でしょう。皆判事であるわけですね。高裁には判事補いませんから、判事だと思うのです歩、なぜ高裁のところにこういうふうにこれを集中させたのですか。これはちょっとよくわからぬな。高裁の判事になっていた人がやめたとかあるいはどうこうしたとかということなんですか。地裁の判事だって途中でやめたり何かすることはあるでしょう。それがどうしてここへ集中しちゃったんですか。各高裁管内のものはわかるでしょう、いまはわからなくたっていいですよ、三日にまたやりますから、あるいはもう少し延びるかもわからないですよ。どういうわけですか。
  102. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ちょっと私の先ほどの御説明が悪かったのかもしれませんが、もちろん高裁でもおやめになる方があり、地裁でも年度途中におやめになる方があるわけでございますが、地裁の方がどうしても事件数等の関係欠員のままに置いておくことの支障が大きいということから、仮に地方裁判所年度途中におやめになったような方がある場合に高裁から地裁への異動が行われるというふうなことから、高裁に判事欠員が生じておる、そういう結果になるわけでございます。年度途中の異動もあり得るわけでございます。
  103. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、高裁判事何名、地裁判事何名、家裁判事何名、簡裁判事何名という定員の仕方をしておるわけですか——簡裁判事は別ですよ、資格が別だから。何もそうでなくて、高裁、地家裁判事を分けて定員を決める必要はないんじゃないですか。どうしてこういうふうに分けて決めるのですか。
  104. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 この裁判所職員定員法におきましては、第一条でそれぞれの官別の定員をまとめて決めてあるわけでございますが、予算の面におきましては、一応高裁、地裁、家裁簡裁にそれぞれ分けまして、法律定員のうちの何名が高裁、何者が地裁というふうな予算定員上の区分けがございますので、そういう関係予算上の定員を分けて、高裁、地裁、家裁別に分けて書いておるわけでございます。
  105. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、お話を聞くと、私の言ったように裁判官として必要なわけですからね。だから、こういう分け方は、定員法から言うと少しく筋が違うんじゃないですか。筋が違うという言葉は悪いけれども、正規なものじゃないんじゃないですか。高裁だけにこんなに集中させてしまったというのは、いかにも地裁の判事をふやしたいということからくるあなたの方の一つの作戦と言うと語弊があるけれども、そういうような形でやっているんじゃないですか。それじゃ具体的にこれを分けてごらんなさい。高裁判事が何人、東京高裁が何人あれで、どこの高裁が何人欠員があるか、分けてごらんなさい、出てこないでしょう、数字。出てきますか。
  106. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ちょっと私、先ほど予算上というふうに申し上げましたけれども、かつては予算上こういうふうに分かれておったようでございますが、現在では、一応予算の枠は取り払われておるようでございます。従来からの伝統で一応こういう分け方をしておるということであります。  ただ、ただいま御指摘のように、地裁で増員をしたいために操作をしてこういう数字をつくり上げておる、と言うと語弊がございますが、そういうことではございませんで、実際に現在高裁判事として発令されておる者、地裁判事として発令されておる者をそれぞれ数字を掲げますと、十二月一日現在でこういう結果になったということでございます。
  107. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 最高裁に、作戦というほどではないけれども、そういう形でこういう数字を出すだけの悪さはないですよね。非常に人柄のいい人が多いからそんなことはないですよね。法務省がつくったのかな……。そこへいくと法務省の方が行政的というか、あれなのが多いから。後で各高裁別に分けてごらんなさい。おかしいな。  そうすると、高裁で二十三名というのは、いつから二十三名なの。ずっと二十三名が続いておるのですか。それから、現在員というのは五十五年十二月一日でしょう。きょうは二月二十七日だけれども、その後これはまた変わっていますか。
  108. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 この欠員二十三と申しますのは、この資料の備考にございますように、昭和五十五年十二月一日現在、その日現在の欠員でございまして、その前後となりますと少し変わってくるわけでございます。  きょう現在でどうかというのは、正確な資料を持ち合わせておりませんが、きょう現在では二十三よりも欠員の数がふえておるというのは間違いないところでございます。
  109. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 その後、どこの裁判所かちょっと忘れましたが、定年退官した人もおられましたよね。そういう関係なんかあって、これはもっとふえていますね。  そこで問題は、五十六年度中に定年退官される人というのは何人ぐらいいるわけですか。
  110. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 五十六年といいますのは、五十六年の四月一日から五十七年三月三十一日までの予算年度をとって申し上げたいと思いますけれども、現在わかっております分といたしましては、定年でございますとか依願免でございますとか任期終了その他合わせまして、大体七十くらいの予想でございます。
  111. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 定年は日にちでわかりますよね。依願免とあと何だって、よくわかりません。それが何人ぐらいいるのですか。
  112. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 もう少し詳しく申し上げますと、判事判事補簡易裁判所判事を含めまして定年でおやめになる予定の者が三十五名でございます。それから、一応現在わかっております範囲での来年度中にやめたいという御意思の方が二十五名おられます。それからあと、任期終了とか転官等が十四でございまして、合計七十四くらいになるのではなかろうかという予想でございます。
  113. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 依願免で二十五名やめたいというのはよくわからぬな。それは五十五年度の話じゃないですか。五十六年三月三十一日までにやめたいというのじゃないの。今年の四月一日から来年の三月三十一日までにやめたい、そんなことわかりっこないじゃないの。これはおかしいぞ。任期満了とか転官とか、そんなのいまわかるわけはないんじゃないですか。
  114. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 五十六年の四月一日から五十七年三月三十一日までの間で、その間にやめたいという意思を内々表示しておられる方がそういうふうにあるということでございます。あくまでこれは予想、予定でございまして、確実にそうなるかどうかというのはそのときになってみないとわかりませんが、一応予想としてはそういう予想でございます。
  115. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 任期と転官というのは何ですか。
  116. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判官の任期十年でございますので、その任期終了でやめたいという方でございます。(稲葉委員「転官は」と呼ぶ)転官は五名ぐらいあるのではないかということでございます。
  117. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 転官というのは、裁判官が検察官になるという意味ですか、ちょっとよくわかりませんが。そうすると、任期十年で再任になるでしょう。そのときにやめる人はいますわね。大体やめるのは成績の悪い人、こんなことを言っちゃ悪いけれども、田舎に飛ばされそうになって、行くのいやだからというので、それでやめるというの多いのでしょう。あなた田舎の支部の方に行ってください。成績が悪いからとも言えぬけれども、適当な理屈をくっつけて田舎の支部の方へ行ってくださいと言うと、とてもとてもということでやめる人が相当いるわけですね、実際問題として。必ずしもそうばかりじゃないですよ。失礼なことを言っちゃいけないからあれですが、言っちゃってから言っちゃいけないと言うのもどうも申しわけありませんが。  そこで、今度七十四名が減るわけですね。そして今度は、よくわかりませんが二十三名が欠員だということでしょう。二十三名欠員にプラスこれだけするわけですか。そういうわけですね。ちょっと待ってください。そうすると九十七名ですか、これを司法修習生から判事補になる人で補充する、プラス十六でないと全体が埋まらないという数字になるのですか。ちょっとよくわからないのですが、計算の仕方が。
  118. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 昨年の十二月一日現在で判事二十三の欠員がありますが、その後少しずつやめる方がおられまして、これはちょっといま手元に正確なのはございませんが、四月の上旬ぐらいでとりますと、判事のみについて見ますと六十名ちょっとぐらいの欠員になるのではなかろうか。これは今回お願いしております判事十六名の増員をも含めました定員を基準にして考えた場合のことでございますが、六十名ばかりの欠員が出るのではなかろうか。それを今度判事補から判事任命資格を取得する者によって埋めるということでございまして、先ほど申し上げました七十四名と申しますのは、簡易裁判所判事をも含んでおりますし、時期的に申しまして、五十六年の四月一日から来年の、つまり五十七年の三月三十一日までの間の退官予定者を申し上げたわけでございまして、ことしの四月現在ではこんなにはおやめになるという予想にはなっていないわけでございます。
  119. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、二十三名の欠員がこれは高裁判事欠員ですね。それが六十名になるというのは——だから、これは高裁判事という考え方がおかしいわけなんだな。それが四月上旬には六十名になるというのは、全体を通じての判事が六十名欠員になるということですね。そうすると、それを司法修習生から判事補になる人で埋めるということですか、大体は。
  120. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 四月の上旬ごろに六十名ぐらいの欠員になるというふうに申し上げましたのは、判事全体として六十数名ということでございます。それを現在判事補でことしの春以降十年たって判事になる者で埋める、こういう趣旨でございます。
  121. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 わかりました。そうすると、判事補から判事になる人というのは今度何名ぐらいいるんですか、四月何日現在かで。
  122. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいまの予想では、五十六名ぐらい、ちょっと前後するかもしれませんが、それぐらいの数字でございます。
  123. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、この二十三が六十ぐらいになる。五十六が上がってきてということで大体大ざっぱに埋められる。だけれども、これは上がってくる人は地裁の判事ですから、地裁の判事が今度は高裁の方へ上がっていかないとこの表としては埋め合わせにはならないわけですね。だから、それを高裁、地裁というふうに分けてしまうからごだごだしてかえって誤解が生じてくるのではないか、こう思うのですが、それはそれとして、そうすると、判事補から十年で判事になる人でこれが埋まるとすると、五十六年四月から五十七年三月三十一日までの間に考えられる減というのは七十四だ、こうおっしゃるのでしょう。これはどうやって埋めるんですか。
  124. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 まず、判事について申し上げますと、先ほど申し上げましたように、四月上旬現在で六十名ぐらいの欠員が埋まるわけでございますが、先ほど申し上げました七十四と申しますのは、判事判事補簡裁判事全部をひっくるめてのものでございます。もう少し分けて申し上げますと、判事については二十七、八ぐらい、判事補については九人くらいではないかという予想でございますが、それは来年の三月三十一日までにおやめになる方、それも四月までにおやめになる方をもこれを含んでおりますので、ことしの四月からになりますと、埋まった後二十八と九、合計三十七というものは欠員判事判事補通じてふえるわけでございますが、それはまた来年の春に判事になる者、判事補になる者によって埋めていく、こういうことになるわけでございます。
  125. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ちょっとよく数字がわかりませんけれども、今度は、修習生で二年のあれ終わって判事補に採用するというのは——十六名ふえるということは、判事がふえるわけですね。判事がふえるということは、判事補判事になるから、判事補が人数が減るからその分もふやすということになるのかもわかりませんが、修習生から判事補に採る人数というものは、十六名との関係はどういうふうになるんですか。
  126. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 もう少し砕いて申し上げますと、現在と申しますか、昨年十二月一日現在二十三名の欠員に、それ以後ことしの四月上旬までの減耗、それと今回の十六を合わせまして合計六十名ぐらいが欠員になりまして、それを今度判事補から判事になる者によって四月上旬に埋める。そういたしますと、判事補欠員ができてまいります。その判事補を今度の春修習生を終える者から埋める、こういう関係になるわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 修習生から判事補になる人は、何名採ったならば十六名が入ったことになるのですかということを聞いているわけですよ。それでなければ、採り方が少なければまた欠員になってしまうのでしょう。そこはどういう計算になるのかよくわからないな。こういう分け方をするからわからなくなってしまう。いま六十名の中にも、あなたの話では十六名が初め入っていないような話だったけれども、今度は十六名入っているようにも聞こえるし、三十七名だと言うけれども、三十六名じゃないですか。何だかよくわからない。
  128. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 今回増員お願いしております十六名は判事でございまして、判事補には全然関係がないわけでございますので、判事給源といたしましては、大部分が判事補給源でございます。その判事補から先ほど申しました五十六名ぐらいが判事になりますので、それによってこの判事は埋まる。今度の増員分及び現在及び四月までの欠員を含めまして全部埋まる。そうしますと、判事補にこれも大体六十くらい欠員が出てくる。そこで今度司法修習生から判事補に大体六十名くらい採れば判事補も埋まる、そういう順番と申しますか、そういう関係になるわけでございます。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、大体四月五日ごろの最高裁判所裁判官会議判事補の採用が最終的には決まる。その後の閣議を経て決まるのかな、火曜と何曜日でしたか、ちょっと私、忘れましたが。そういうことから考えると、いま修習生から判事志望者というのは、ことしは少ないんじゃないですか。前は一番多いときは八十何名、九十名近いときもありましたね。私は横田喜三郎さんとお話ししたときに、横田さん、今度は八十何名志望者が出たと言って非常に喜んでおられたのを覚えておるのですが、そういうことですね。そうすると、いまの希望者は、私なんか聞いている範囲では、何か四十七、八名しかいないのじゃないですか。
  130. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 本日現在で修習生から判事補になりたいという希望を出しておられますのが、六十一名ございます。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 その六十一名というのは、そうすると、普通の状態から言うと多い方なんですか、少ない方なんですか。大体普通かな。大体、検事が四十七、八人ですね。検事は四十七士というので大体四十七人くらいなんで、裁判官は普通その倍くらいいたんじゃないですか、いままでは。倍まではいないかな。これは平均くらいですか。平均よりはちょっと少ないくらいかな、どこら辺ですかね。
  132. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 判事補志望者は年によって相当ばらつきがございますけれども、昨年、一昨年あたりも六十名ちょっとでございますので、昨年、一昨年あたりとは大体近いわけでございますが、もう少し前には七十名台のこともございましたし、もう少しさかのぼりますと、二、三年くらいは八十名くらいの時代もございました。もっとさかのぼりますと、五十名台のこともございました。いろいろございますが、まあ平均と申してもいいのではなかろうかという感じがいたします。平均よりもやや少な目ということになるかもしれません。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、司法修習生から判事になるためには、これは司法試験の成績よりも修習生としての成績、内部の成績がありますね。これが余り悪いと採らないわけですね。これはあたりまえの話。何だ、あれが裁判官になったのか、あんなのに裁判を受けるのじゃかなわぬといって、同期の弁護士になった連中がぼやきますから、だからそれはない。大体、常識的に言うと、いま五百何名いる修習生の中の真ん中以上という一つの線があって、大体成績は真ん中以上ということで線を引いているというのが常識ですか。
  134. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 修習生から裁判官に採用いたします場合に、いわゆる二回試験、研修所におきます修習の成績、これは現地、実務庁におきますものも含めて二年間の修習成績というもの、その他本人の人物、性格、いろいろ総合勘案いたしまして決定をしていただいておりますけれども、その場合、ただいま稲葉委員御指摘のように、半分以上なら採って半分以下なら採らない、そういうはっきりした基準があるわけではございませんで、結局、全体として裁判官にふさわしい方であるかどうかということを頭に置いて選考していただいておるというのが従来の実情でございます。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、司法修習生の問題はいろいろあるわけですね。何期の修習生かな、何かこんな薄い本を書いてぼくのところに持ってきた人もありますが、いろいろな内容のことが書いてあって、それがすべて本当だということでもありませんから、そのことに関連してあれするわけでもありませんが、あそこで民事の起案、それから刑事の起案、いろいろありますね。いわゆる民裁というのがあるのですね、民事裁判の。これは成績がみんな悪いわけでしょう。修習生民事の起案が非常に成績が悪いですね。ぼくなんかでも、司法官試補と言ったときですが、民事のときはもう真っ赤に直されちゃうて、どこへ何が書いてあるのか全然わからない。「原告は、」しか残ってないんで、あとは全然真っ赤でわけがわからなかったのを覚えていますが、あれでいやになっちゃって、みんな途中で裁判官になる希望が変わっちゃうのですよ。判決を書くんで、とてもかなわぬからね。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕 刑事の場合でもそうですね。あの起案によって、いろいろな記録を参考にしてやるのですけれども、あれで本人の才能とかなんとかいうのがわかるのですかね。ぼくはどうもよくわからぬのですよ。  だって、実体審理をして、そして自由心証で事実の認定を決めるわけでしょう。量刑も盛るわけでしょう。そういうことを全然抜きにして起案と称して、あの記録か何かの書面を直したものを持ってきて、これで書けと言ったって、書けっこないのが普通じゃないですか、良心的な人は。ぼくはそう思いますね。だから、よく話を聞いたのですけれども小野清一郎先生が二回試験のとき——あの人も検事になったのだけれども、二回試験のときに記録で公判の再開決定を書いてきたというのですね。これではとても良心的な裁判はできませんと言って、再開決定を書いてきたという話があるのですね。再開決定一枚を書いてきたというのだけれども、そういうこともあるのですね。  民事の場合だってそうでしょう。とてもこれでは判決できない、判決に熟してないという考え方もあるわけですね。ことに自分が直接調べたのではないから、証人を調べたわけでもないし、とてもわかりっこないですよ。そういうふうなものでこれを書けと言ったって、ただ技術的な職人ができるだけじゃないですか。だから、どうもそこら辺のところは、私はああいうやり方でいいのかどうかということになると思いますが、非常に問題だと思いますね。あれで大体できる、できないがわかるということもあるでしょうけれども、旧態依然として修習生の教育指導というのは前と同じようにやっているわけですか。  今度は局長がかわったから、少し変わったような——心得なんとかというのはもうやめたのですか。何か人のうちへ行くときはお見舞いを持っていけというのでしょう。菓子折りを持っていけというのでしょう。持っていかないと司法修習生としての品位を疑われるなんて書いてあったようだけれども、いや、そこまで書いてなかったけれども、ああいう点なんかあって、あの司法研修所の研修ということに対してはどこが責任を持っておるのですか。あれは最高裁でしょう。それで司法試験は法務省でしょう。千種さん、あなたは知らないかもわからぬけれども、これは前に法務省と最高裁で、司法試験をどっちがとるか、修習生をどっちがとるかでけんかがあったわけですね。それでしようがないので両方分けたんだ。そういうわけですよ。これは本当ですよ。だから、司法修習生の二年間の教育というものを具体的にどういうふうにやっていくかということは、一体どこで決めるのですか。
  136. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 司法研修所の特に民事裁判技術性に関連してお尋ねがございましたが、法曹となりますためには、これは稲葉委員には釈迦に説法でございますけれども、やはり最低限の技術と申しますか、そういうものも必要なわけでございまして、たとえばその判決作成ということを全く度外視して、それを全然外に置いてしまってカリキュラムを組むということは、これはなかなかできないわけであります。仮にそれのみを基準にしてたとえば修習生の評価を考えるといたしました場合には、これは大いに弊害があることはそのとおりであろうと存じますけれども先ほども申し上げておりますように、それも司法研修所のカリキュラムのうちの一つとしてやはり考えなければいかぬという意味では必要なものではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。  それで、人事局長がかわったから研修所がどうなるかということでございますが、まだかわりまして三週間でございまして、どうするかということをいまここで申し上げるまでに至りませんけれども、現在の司法研修所におきます修習生養成が、いろいろ問題があることはあろうかと思いますけれども、基本において間違っておるというふうには考えていないわけでございまして、およそのいままでのやり方を踏襲していく。ただ、いろいろ細かい点になりますと、あるいは研究いたしました場合に改善すべき点があるかもしれませんが、それはそれとして改善に努めていく、こういう立場でまいりたいというふうに考えております。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまお話のありましたように、民事資料に基づいて判決を書くでしょう。彼らはいわゆる民裁と言っていますね。これが一番の苦手のようですね。これがなかなかうまくいかぬということで苦労しているようなんですが、これは裁判官になっても同じじゃないですか。裁判官になっても判決を書くのはいやなんじゃないですか。そういう人が相当いますね。私は和解大好きですなんて言って、第一回の口頭弁論からいきなり和解に持っていってしまう人がいるのですからね。和解があって結構なんですが、権利の主張とかなんとかいうことを抜きにして和解、和解。和解をやれば高裁へ控訴がないから判決を見られない、こういうことで和解を希望する人が非常に多い。これはいいことですよ。決して悪いことだと言うわけじゃないのですが、ことに民事の場合、裁判がおくれることを全部が裁判所の責任だとは私は思わないのです。これは弁護士の責任が非常に多いです。  たとえば、訴状が出るときに相手方被告に送達になりますね。そうすると十四日以内に答弁書を出せという催告文はついているけれども、依頼者は十四日以内に答弁書を出さなければならないものだと思っているわけですよ。それであわてて来るわけだけれども、弁護士の方は、いや、これは大丈夫なんだ、その日に出せばいいのだということで適当にやっているわけでしょう。人訴の場合なんかは一回は大丈夫なんだ、一回で結審になりっこないのだからということを知っているからあれですが、そこで、弁護士の方でもちゃんと答弁書を出しておいて、そして答弁書と同時に自分の方の主張も掲げておけば、原告の方でもそれに対応してまた出すとか、あるいは証人申請なんか第一回目からできるわけですよ。ところが大抵の主張は、追って準備書面で主張するという程度でやってしまうわけです。それに弁護士はときどきいろいろな関係で延ばしますからね。そういう関係があって、弁護士の責任で民事事件がおくれているのが全体の中で七割か八割ぐらいはあるのではないかと私は思いますよ。  民事の場合に裁判所の責任でおくれているというのはそうはないと思いますね。ただ、裁判所の責任でおくれることの一つは、民事の場合に結審して、そして判決を書かないのですよ。これが相当あるんだな。これは和解、和解のくせがついてしまって、書くのがおっくうになってしまって書かないのですよね。そうして、結審して一年以上そのままにして判決を書かない。書かないというより書けないというのが相当あるでしょう。それは調べてみるとどの程度ありますか。
  138. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 合議事件、単独事件の区別ははっきりしておりませんけれども、終結いたしましてから判決の言い渡しの未了の事件数は、五十五年の十二月末日現在では、一年以上二年未満のものが五十二件、二年以上三年未満のものは十四件という数字になっております。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 民事の場合、判決を書くのは大変ですよね。よくわかりますが、結審してから一年を過ぎてなおかつ書けないというのはどこかに欠陥がある。欠陥じゃなくて、その人が忙し過ぎる場合が一つありますね。非常に忙しい。忙しいというのは、合議部の部長をやっている場合があるのです。合議部の部長をやっておって単独事件の配点もまた受けている。これでは無理ですよ。月曜日からずっと土曜日も和解をやらなければ追いつかない。判決を書く日がないわけですよ。だから二十日夏休みをとって書くとか、正月休みに書くとかいうこと以外にはないわけです。これは事件の配点が無理なんです。いまの状況は、刑事裁判官事件の数に比較して多いのですよ。民事裁判官が少ないのですよ。四、五年前とはちょっと変わってきましたから。だからそれを入れかえて、民事裁判官をふやしていくように配点をしなければいけないんじゃないかと私は思いますよ。こういう点についてどういうふうに思うかということが一つ。  それから、私どものときには、よく聞いたのは、豪傑がいましてね、結審したきり判決書かないで外遊してしまうんですよ。裁判所から、あのころは大審院かな、法務省からの派遣研究員として外国に行ってしまうのです。そうして帰ってきてからまだ書かない。だから、判決が三年か四年かかるわけですね。そのかわり判決はがっちりしているんだ。控訴へ行っても絶対敗れないんだ。だから、控訴でもう一遍調べ直すということはないわけですよ。そういうのがいいのか、まあそこまではちょっと極端だけれども、ただ、急いで判決書いたら控訴へ行って、何だこの判決は、主張責任も立証責任も、肝心のポイントのところをちっとも調べてないじゃないかといって初めから全部調べ直さなければならないようなことになって、かえっておくれてしまうという事件もあるし、ここら辺は非常にむずかしいのですがね。ただ、全体として、民事裁判官事件のむずかしさに比較して数が少ない、刑事の方が事件に比較して数が多いということは言えるんじゃないですか。そこら辺はどういうふうに考えておられますか。
  140. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 最近におきます民事事件の増加傾向、それから複雑、困難さを加えておること等を勘案いたしまして、確かに民事刑事関係で見ますときに、漠然とした印象でございますけれども、やはり民事の方が大変だという印象はございますし、実際に民刑の事件を担当している裁判官の数を数字で割ってみたりいたしますと、そういう傾向数字の上でもあらわれているわけでございます。  ただ、何と申しましても、民事刑事にどれだけの裁判官を充てるかということも含めまして、事務分配そのものはそれぞれの裁判所で決めることでございますので、最高裁判所といたしまして事務分配そのものに介入すると申しますか、そういうことはできないわけでございますが、稲葉委員御指摘の点は確かにございまして、そこら辺のデータと申しますか、こういう実情であるということは折々各所長、長官等にもお話しいたしまして、事務分配上、案を立てるときにそういうことも頭に置いた案を立てていただくというふうなことは実はやっておるわけでございまして、民事の負担がやや重いという傾向は、そういうことで次第にそれぞれの裁判所事務分配上考えていただくようになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 民事の判決の書き方が、従来のはああいう書き方をしていますね。あれでは労力がかかってとても大変だと思います。私どもなんか、あれを書くのにはまいっちゃうですよ。それにしても、もらった人が仮に負けた人であっても、その判決を見て納得ができるような判決が一番いいと言われているわけですが、理由が非常に簡単で、何のために勝ったのだか何のために負けたのだかさっぱりわからないような判決もあるわけですね。それから、訴状と答弁書と準備書面と張りつけて、原告の主張は立証が認められないからという理由が上に三行か四行書いてあるのですね。これは原告の主張を請求棄却するなら一番簡単でしょう。これなら幾らでも事件はさばけるのですよ。それでいばっている人もいるのですよ。それは幾ら何でもちょっとひど過ぎるとぼくは思うのです。このごろはそういうのがなくなったかもしれませんがね。  それから、簡裁の判決で理由を書いてないのがあるでしょう。簡裁理由を書かなくてもいいわけでしょう。それで理由を書いてないのがあるわけですね。事実摘示を省略していいのかな、理由は書かなくちゃいけないのか、何だか忘れてしまったけれども、ぼくはそれで恥をかいたことがあるんだ。控訴へ行って、事実は原審のとおりだったと言ったら、原審が事実摘示じゃありませんよなんて言われて恥をかいたことがありましたけれどもね。  それは別として、もう一つ一番困るのは、事件がおくれるのは支部ですね。甲号支部はそうでもないのですが、乙号支部の場合、刑事でも一週間に一遍しか開廷しない、民事でも一週間に一遍しか開廷しない、そういうのが相当ありますよ。どの程度あるというふうにお調べですか。甲号ではないと思いますが、これは裁判官ですよ。その裁判官が一週間一回しかやらないというところと、それから裁判官を通じて刑事一回、民事一回というのもあるんですよ。  これではその土地にいる弁護士ならいいけれども、そうじゃない場合だと、本庁から行くとか東京から行ったらもうどんどん裁判がおくれてしまうのです。だから、支部の場合に、少なくとも民事なら民事を二開廷、刑事でも二開廷やってもらわないと期日が入らないわけですね。これで非常におくれますよ。この事実をどの程度最高裁としては調べられておりますか。一週一回の開廷、民事民事刑事刑事、その裁判官に限って一週一回、何曜日と決めているわけです。そういうのは相当あるのですよ。はなはだしいところになると書記官が違うからその日はだめだというわけですね。だから日が入らないわけですよ。こういうようなことがありますから、そこら辺どういうふうに把握をされていますか。
  142. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 適正迅速な裁判が私ども裁判所にとって課せられた永遠の課題でございますので、特に迅速な裁判につきましては、訴訟関係人の協力なしには実現できない面もございますけれども、幸い一般民事事件の平均審理期間は少しづつ減ってまいっております。  お尋ねの乙号支部の民事事件でございますけれども、非常に事件数の多い、たとえば大阪の岸和田ですとか越谷あたりのようなところもあれば、松江管内の隠岐島の西郷簡裁ですとか函館管内に簡裁と申しますか乙号支部で寿都というのもございますが、一概には申せませんけれども相当事件数の多いところでは週二回は開廷しております。中程度事件数のところでは週一回くらいが多いようでございます。それで、非常に事件数の少ないところになりますと、月一回というようなものもございます。  ところで、具体的な個々のある事件について考えてみますと、開廷数の多い庁は事件数自体が多うございますので、また逆に、開廷数の少ないところは事件数自体が少のうございますので、個別の事件の回転という点から考えてみますと、開廷数の多い少ないというのは、必ずしもそれだけで訴訟の遅延にはつながらないのではないかというふうに考えております。それで、現状といたしましては、事件数に応じた裁判官が配置されておりまして、特段、乙号支部は訴訟遅延が激しいということにはならないように認識いたしております。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 乙号支部の場合は、支部長ともう一人裁判官が普通いますね。一人のところもありますけれども、二人のところもあるでしょう。そうすると、支部長の場合は、たとえば刑事をやるなら刑事をやる、民事なら民事をやるほかにいろいろな家裁事件だとかありますね。それから雑件があるでしょう。そういうようなことがあるし、それから一人の判事はたとえば民事だから民事しかやらないというときに、その判事は一週間に一遍しかやらないのですよ。月曜日なら月曜日しかやらない、ほかの人は何をやっているか全然知らぬけれども、やらないというのが相当あるのですよ。だから、その土地の弁護士の場合には進展が早いのです。ほかから来るときに事件がおくれるのですよ。そういう点があるので、これは実情をよく調べてお考え願いたい、こういうふうに思います。  それからまた、一番困りますのは、いわゆる管轄を昔の郡で管轄していますね。だから、本庁へ行けば三十分で行けて両方とも非常に便利だというときに、その郡が支部の管轄だということで支部の裁判所へ行かなければならないとなると、これはもう汽車で乗りかえて行かなければならないところがいっぱいありますよ。たとえば私の宇都宮の近所で言えば、塩谷郡といっても、氏家だとかそれから非常に近い高根沢とかというのは、宇都宮へもう二十分ぐらいで来られるところですよ。だから宇都宮の方がいいんだけれども、それは大田原というところですから、ずっと真っすぐ行って西那須野で乗りかえて、また行くのです。西那須野というのは渡辺美智雄君のところですが、そこから乗りかえて行くのですよ。だから、もうこっちは弱り切っちゃうのですよ。  ところが、そういう場合は本庁へ合意管轄ということで出しても、初めの場合は相手の弁護士がだれだかわかりませんから、だから合意管轄というわけにはいかないということになってくる。そうすると、しようがないから本庁へ出すわけですね。本庁が便利だということで、知らぬ顔をして出すと、向こうへ回付してしまうのですよ。そうすると、もうどんどんおくれてしまう。だから、あの管轄を昔の郡の管轄の範囲でやっておるというのをもう再検討しなければいけないんじゃないですか。これは総務局の管轄ですね。  そうすると、確かに本庁にみんな事件は集まりますよ。本庁に集まってしまうけれども、しようがないんじゃないですか。そうでないと、もう依頼者なんかもえらい迷惑するんですね。そういう点も考えられるから管轄の再検討ということについては十分お考えを願いたい、こういうふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  144. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 地家裁支部の管轄区域につきましては、御承知のように、地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則によりまして、簡裁の管轄区域を基準として定められております。この規則につきましては、昭和二十二年の制定以来大規模な改正作業を行っておりませんので、その後の市町村の廃置分合ですとか、人口の都市への集中化あるいは都市を中心といたしました交通網の発達など、いろいろな社会経済的な情勢の変化に十分対処し切れなくなっている面が出てきておることは否定できない点がございます。市町村の廃置分合等があった場合には、基準となります簡裁の管轄区域は、管轄法の規定によりまして法律上当然に変更されるというものもございますので、支部の管轄区域もこれに伴って当然変更することもありまして、この限度での修正はされております。  地家裁支部の管轄区域の問題は、単に区域の側面からだけではなく、御存じのとおり甲、乙権限の別の支部がございますので、それらの支部の適正な配分等の問題をもあわせ見ました角度からの検討を要する問題もございます。交通事情とか人口分布とか事件数の変化等を考慮しまして、また、裁判所を利用されます地元住民の利便等も考えながら、今後検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
  145. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いま簡易裁判所の話が出ましたけれども簡易裁判所でたとえば刑事事件をやりますね。そうすると、身柄が勾留されている場合は、本庁のところの拘置所に入っている場合が多いわけですね。必ずしもそうではありませんけれども、入っている場合が多い。そうすると、裁判官も検事も弁護士も被告人も、みんな本庁かちわざわざ車に乗って簡裁まで行くのですよ。そしてそこで裁判が終わって、それでまたそれを連れて帰ってくるんですよ。栃木の場合は、ぼくのところで言えば今市という簡裁がありますが、そこで刑事をやるときはみんなそうですよ。みんなこっちから行くんです。  だから、検事の方でもそれは考えてくれといって、昔はいわゆる在庁略式というのがありました。そこの拘置所に入っていれば、拘置所にいるところを仮住所みたいに見て、そしてこの簡裁で起訴するということになればいいわけですけれども、そういうことは絶対にやらないわけですね。だからどうにも不便でしようがない。こういうようなことが現実に行われておりますよ。これは相当ありますよ。ぼくのところでは今市というところがそうですね。鳥山は余りありませんが、今市というところはほとんどそうですね。そこら辺のところを、そういうのがあっちこっちありますから、よくお調べを願いたいというふうに思うのです。  この定員法の問題で資料をいただいておりますから、資料に沿って質問をしていきたいというふうに思うのですが、ここでたとえば資料の十一ページに「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案新旧対照条文」というのがあるでしょう。これは人数を書いただけの話ですが、そこで、第二条にあります「裁判官以外の裁判所職員」というところで、「執行官」というのがありますね。これは一体どこの職員なんですか。裁判所職員ではないんだな。これを見るとどうもよくわかりませんが、員数で、執行官、非常勤職員何なりを除くと書いてありますけれども、そうすると執行官の員数というのは——執行官というのは何なの。
  146. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 執行官は裁判所職員でございますが、ここに言うところの職員ではないという意味でございます。
  147. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 裁判所職員ではないという意味は、執行官はどうして裁判所職員ではないわけですか。これは独立した官庁になってくるわけですね、執行官役場と。だれに雇われているわけですか。雇われているというと語弊があるけれども、給与なんかはどういうふうにどこから支給されるのです。
  148. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 執行官は手数料制の公務員でございますので、特に定員を定めることなく、事件数それから手数料の金額に応じて執行官としての員数を決めていくという状況になっております。
  149. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 執行官としての人数を決めていくとは、執行官に任命するというのか、委嘱するのか、どういうふうにするのですか。だけれども、それは地裁の所長が、任命という言葉かどうかわかりませんが、したり、それから希望者がいるときに面接したりして決めるんじゃないのですか。
  150. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございまして、任命権者は地方裁判所長でございます。
  151. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 地方裁判所長が任命をするというのは、任命するけれども裁判官以外の裁判所職員で——職員ではあるのですか。職員ではあるんだけれども、給与が手数料制で、裁判所からは給与は払わないということなんですか。どうもよくわからないな。昔やっていましたね、生活できる程度までいかないというと何か補助するのがありましたね。あれはいまでもやっているのですか。
  152. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 先ほど説明をちょっと訂正いたしますが、執行官を除いておるものですから、ここに言うところの裁判所職員であることは間違いございません。それで執行官は、先ほど申しましたように手数料制でございますので、それが国庫補助基準額に達しない場合には国庫から補助金を受けるということになっております。
  153. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、ここで定員法の一部を改正する法律案の提案理由の中を見ますというと、民事執行法に基づく執行事件というもののために裁判官増員しようということが第一点書いてありますね。これは何をするのですか。現実の執行は執行官がやるんでしょうけれども裁判官が一体民事執行法に基づく執行事件で何をやるのです。
  154. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 民事執行法の制定に伴いまして、裁判所の扱う民事執行事件が迅速適正に処理できるような手続がいろいろ定められました。それに応ずるような手当てということでございます。内容的には、不動産関係物件明細書の作成事務、あるいは二重開始決定の登記嘱託、それからあるいは債権執行の関係、それに要する裁判官あるいは書記官事務官の手当てということでございます。
  155. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いま言うように、民事執行法に基づく執行事件というのは、現実に執行法が施行になってからふえているのですか。そこら辺のところ、どういうふうになっていますか。
  156. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 まだ施行後日が浅いものでございますから正確な数字はわかりませんが、全般の傾向といたしまして、執行事件は逐年増加の傾向をたどっております。それにあわせまして新法事件が重なってきているということでございまして、執行担当の職員といたしましては、旧法事件の処理と新法事件の処理という面で現在は多少手間がかかっているというのが実情でございます。
  157. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いや、実情の話があったけれども、実情というのは、裁判官は全然ノータッチ——ノータッチと言っちゃ悪いかもわからぬ。実際よくわからぬというのが本当じゃないですか。執行事件というのは古い事務官がよく知っているのじゃないですか。事務官のところに行って裁判官が聞いてやっていて、実際にはただサインするだけじゃないのかな。執行事件ということは判事としてもよくわからない人が多いんじゃないですか。実際はこれは若い判事補にやらせるのでしょう。判事補だって実際問題として執行事件なんてわからないですね。  執行法なんて、いまは試験に出ないでしょう。今度は民事執行法は独立しちゃったから、今度は民事訴訟法の中に入るのですか、入らないのですか。試験課目の中でこれはどうなっているの。
  158. 千種秀夫

    千種政府委員 司法試験に関しましては、外れたようでございます。
  159. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いや、司法試験に入っていても、ぼくらだって、あれは第六編でしょう、請求に関する異議とかなんとか二つか三つしか問題がないんだからやらなかった。やったってわかりゃしない。  それはいいけれども、いま言ったように、民事執行法に基づく事件はふえると言うけれども、それは数はふえるかどうか知りません。ふえるかもわからぬけれども、これは裁判官がやるんじゃないでしょうと言っているんです。書記官なりあるいは事務官がほとんどやるんじゃないですか。裁判官はよくわからないと言っちゃ悪いけれども書記官のところへ行って聞いたりなんかしているんじゃないですか。これは判事補がやるのでしょう。どういうふうにやっているの。
  160. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 実情といたしましてはおっしゃるような面がないわけではございませんが、その場合でも、決定書きなりの下書きを書記官がするということでございまして、それに対しての署名押印しての責任は裁判官がしょうというところで、裁判官としても目を全般に通さざるを得ないということでございます。
  161. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それはそのとおりですね。裁判官があれするんですから、決定なり命令を出すんですから、それはそうですがね。これをいま一番若い判事補の人の仕事にしているんじゃないですか。裁判所ではどういうふうにしています。
  162. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 各地の裁判所の実情によって異なりますが、左陪席の人がやっている庁が多いというふうには考えております。
  163. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは率直に言うと、左陪席の若い判事補ですね。なったばかりの判事補、あれは五年たたないと単独の裁判できないわけでしたっけね。だから、それまでの三年間ぐらいというのは、三年三年で三つぐらい回るのでしょう。最初の三年間というのは、判事補仕事がないわけです、率直な話。遊んでいるわけじゃないけれども仕事がないし、合議の陪席といったって、そう地方では簡裁から回ってくるだけだから合議はないですね。仕事がないのでどういうふうな仕事をやらしたらいいかというので、若い判事補、なったばかりの判事補にこういういわゆる雑件でしょう、これは何事件と言うんだったかな、何かの事件をやるというふうにさせておるわけですね。  だから、判事補が悩んでおるのは、こういうことじゃなくて、むしろむずかしい仮処分でしょう。いわゆる差止訴訟というのはどういう意味差止訴訟と言っているのか。労働委員会のあれで言っているのかな、これはよく知りませんが。このごろ断行の仮処分が非常に多いわけです。それを若い判事補の人にやらせるから、とても判事補の人には重荷で、あっち行って本をひっくり返し、こっち行って本をひっくり返し、大変ですよ。だから、これはなかなかむずかしいので、こういうのを、むしろ断行のような仮処分を若い判事補にやらせて、後で異議が出て、それでひっくり返っちゃったらもう大変な騒ぎになりますよ。大抵仮処分のときには弁護士が自分に都合のいいような資料しか出しませんからね。弁護士は仮処分、仮差し押さえで勝つことが一つの腕だということで、ルールに反するか倫理に反するかは別として、相当危なっかしい仮処分やなんかありますからね。だから、こういうときはよく審尋するとかあるいは審尋していったら間に合わなくなっちゃうと言われるから、若い判事補はまいっちゃうわけですよ。精神的にもまいっちゃうわけです。しかも、未知の分野だということで、それを若い判事補の人にやらせるというのは非常にむずかしいので、勉強にはいいかもわかりませんけれども、後の責任を考えると大変なんじゃないですか。  そこでいまふえておる仮処分、特殊な仮処分、ことに断行の色彩が非常に強い仮処分、これは一体どんなものがあって、どういう扱いで、だれが実際にはやっておるのですか。これに対する異議相当出ていますか。
  164. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 仮処分の場合には、いま委員が御指摘になりましたような断行の仮処分に類するような、あるいはそのほかの社会的な影響の大きいような仮処分は未特例の判事補に担当させないようにということを、いろいろな機会を通じて私どもは現場の裁判官の方々に、特に総括あるいは所長といったような人に連絡をしておるわけでございまして、現在の状態ではそういう例は非常に少ないというふうに思っております。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、断行なんかの場合で仮処分が出たときに、それを口頭弁論に回せばおくれるし、それから審尋をやればまたということになるし、非常に悩むのですよ。未特例の人にやらすのはちょっと気の毒なような気がするのです。  いま一番多く出るのはどんな仮処分が多いわけですか。日照権に基づくものとか、それから騒音公害に基づくものとかいろいろあるでしょう。そういうような、損害賠償事件よりもその前の段階の仮処分がむずかしいですね。これはどういう扱いをされているわけですか。大体合議体で口頭弁論を開いて早急にやるようにという形をとっておるわけですか。
  166. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 差止の仮処分として一番多いのは、いま御指摘がありましたような日照妨害の建築差止の仮処分ということでございますが、そのほかにも大規模な公害事件を仮処分で申請しているという例もございます。  ただ、そういう大規模な事件につきましては、必ずといっていいほど合議体で審理されて、しかも口頭弁論を開いているという例が多いようでございます。日照妨害の建築工事差止仮処分の場合には口頭弁論を開くまでの扱いはしてない例が多いようでございますが、慎重を期するために合議体で審尋をしているという例が多いと聞いております。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、合議体でやると部の統括をその裁判長がやる。それから、一般の統括の場合の合議ですね。民事の合議だから、簡裁から上がってくる場合の控訴の事件もあるし、そうでなくて、特殊事件を合議に回す場合も民事でありますね。そのほかに単独事件を持つわけですね。それでは地方の裁判官はまいっちゃうですよ。土曜日も全然休みないですよ。東京の場合なら月、水、金と行って、あとは自宅で記録を読んだり判決を書いたりできますけれども、田舎はそうはいかないですよ。それで土曜日も九時半ごろから和解を入れるわけです。九時半、十時、十時半といって和解を入れるわけでしょう。三十分おきに和解が入っていますから、とても三十分じゃじっくり和解なんかできっこないですよ。それはとても無理なんで、弁護士の方で協力してずっと話を決めてきてそこでやってくれればいいですけれども、そうもなかなかいきませんから。だから、東京の場合はわりあいに裁判官は暇と言うとおかしいけれども、多いからいいんですけれども、地方の場合は非常に裁判官は大変です。ここら辺のところを十分考えを願いたいというふうに思っておるわけです。  そこへ持ってきて司法修習生の指導があるわけでしょう。司法修習生の指導というのは具体的にはどういうふうにやるのか。検察庁の方は一人指導官がつくわけですから大変でしょうけれども、それだけとられるわけだから。裁判所の方は必ずしもそうでなくて、まあそこに列席していて簡単な判決を書かしたりなんかしているんじゃないですか、刑事や何かで。欠席判決もこのごろなくなっているからあれだけれども、簡単な事件の判決なんか書かしたりなんかしておるという程度で、これも重荷になっておるというふうに考えるわけです。  そこで、この前「法律のひろば」で本田正義さんが書いてましたけれども、いま司法試験では約五百人くらいしか採っておりませんね。ところが、これは一点くらいの差で何人も何人もいますから、ちょっと採れば千人くらい採れるわけですね。だから千人くらい採って、これを司法研習所の入所試験にするという形を考えてみたらどうかと本田さん言ってますが、あの人はなかなか学者ですから、そういう意見があった。しかし、千人採ったならば指導するのがとてもいまの段階ではできないじゃないか、こう私は思いますが、もう少し修習生の数を多く採ってもいいんじゃないですか。何であの程度しか採らないのですか。予算関係ということもあるでしょうけれども、法曹人口が非常に少ないのですから、もっと修習生を採ってもいいのじゃないかと思うのですが、いまどのくらいですか。四百何人ですかしか採らないのですか。五百人以上採ったっていいんじゃないですか。そこはどういうふうになっているんですか。
  168. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 本田正義元検事が「法律のひろば」にお書きになりましたものも拝見いたしました。本田元検事は、現在まあ大体五百人のところを、資格試験を入所試験ということにして千人にしてはどうかというふうな御提案をしておられるようでございます。本来、法曹人口の増大自体は、司法に対する要求というものが非常に強くなってきておる現在におきましては、望ましいことであろうというふうに考えます。ただ、何と申しましても、法曹としての職責の重大性ということから考えますと、やはり法曹資格には一定以上のレベルが要求されるということは当然でございまして、その数にはある意味で当然の限度と申しますか、そういうものがあるのではないかというふうに思います。いまさしあたって五百人を千人というふうな御提案として考えますときには、まず第一に受け入れ体制といたしまして、現在の司法研究所の設備、人員その他、それから実務修習の配属庁の受け入れ能力の制約、予算上の手当ても必要というようなことになってまいりまして、現在直ちに採用者を大幅に増加するということは非常にむずかしいことではなかろうかというふうに思います。  また、本田元検事のおっしゃっておられますような、大量に入所させて大量に退所させるというふうなやり方が、現在修習生を国費で養成しておるわけでございますが、そういう現在のたてまえとマッチするのかどうかということも、やはりひとつ検討してみなければいけないのではないかというふうな感じがいたします。  しかし、いずれにいたしましても、法曹人口の増大ということと絡んで修習生をもっとたくさん受け入れるべきではないかという御意見があることはよく承知しておりますので、修習制度の改善等によって採用者数をふやす余地がないかどうかということにつきましては、なお慎重に検討していきたいというふうに考えております。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、いま言ったように公務員でないわけですね。公務員でない者を一体何で国費で養成しなければならないかという疑問が出てきますね。そこはどういうふうに理解したらいいんですか。
  170. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所法には、修習生については一定額の給与を払うと書いてございます。これができました経過については、私、現時点において余りつまびらかにはしておりませんのであれでございますけれども、確かにそういうことも一つの問題ではございまして、問題とする意見もないではないわけでございます。ただ、現状といたしましては、法律でそういうふうに決まっておることでもございますし、三十年こうやってやってきたものでもございますから、それを先ほどの本田元検事のような構想と絡んで考えてきますと、やはりそういうことが問題になってくるのではないかということでございます。
  171. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これはなかなかむずかしいですよね、法曹一元ということもありますし。法曹一元というのは非常にいいところもあるし、同期の判検事、弁護士が友達になりますからね。仲よくなり過ぎるんじゃないかな。昔は判検事、弁護士というのは仲よくならないですよ。ろくに話もしなかったですよ。一緒に酒を飲むなんということもなかったですよね。近ごろは、同期だということでいろんなことで集まって何かやるでしょう。そうすると、判検事と弁護士が、同期だからということでいろんな話がつい出るわけですね。その中でいろんな秘密の話が出てくるわけですよ。秘密といったってどうということないけれども、出てくるわけですね。たとえばある裁判所からある裁判所へこういう裁判官が転勤してきたけれども、この裁判官はもとの裁判所でどういうような評判だったかというふうなことを聞いてきているわけだ。そういう話がぼくらのところに伝わってくるわけです。どこで君そんなことわかったんだと言ったら、同期のA判事と話したときにA判事がこういうことを言ったということになってきて、ぼくらの耳に入ってくるわけだ。入ってきて悪いということはありません。ですけれども、余り仲よくなり過ぎてくることは、これは私はやはり考えなければいけないんじゃないか、こういうふうに思いますね。だから、やはり弁護士は弁護士としてちょっと違うんだから、判事や検事と余り仲よくなって飲んだりなんかして歩くのは、考えようによっては余りよくないというふうに思いますね。限度があるということを私は考えるわけです。  それから、裁判官によって、これは裁判を批評するわけじゃないですよ、批評するわけじゃないけれども、よけいなことを言い過ぎる人があるんですね。よけいなことを書き過ぎる人があるわけですよ。裁判のそのことについて書けばいいわけですよ、与えられた裁判について。それをよけいなことをずっと書くんですね。この捜査はこういう点がまずいとかなんだとか、わあわあ書くわけね。いい気持ちになって書いているわけだ。そんなことはよけいなことよ。名前は言いませんよ。名前は言いませんが、そういうのを見れば、何をと思って検事の方だって怒るよ。だから、そういうように刑事十四部にいたときも、勾留なら勾留、却下するなら却下するだけでいいわけです、多少の法律的な理由だけ書けば。それに加えてああだこうだ、もういろんなことを書くわけだというんだね、ある人は。それを見て検事の方でもおもしろくないというわけで準抗告するという形になってきて……。これ以上の話はしませんけれども、名前はあるいはわかっているかもわからぬけれども。近ごろは裁判官が少しよけいなことをしゃべり、よけいなことを書き過ぎるんじゃないかな。よけいなことを言い過ぎたというのは、安川という人もいましたけれども、これは例外かもわからぬけれども、そういう点がありますね。  それから、よくこういうことを聞くんですよ。私の判決が月報に出ていますと喜んでいる判事さんがいるわけね。交通事故何とかというのがありますね、十巻か十一巻続いているやつ。青いような黄色いような本があるでしょう。交通事故判例研究会かな、ああいうところに交通事故の判例が出ていますね。あれは一体どうして出るの。裁判官が送るんですか、こういう判決したからといって。どういうふうにしてああいう判決が出るの。ある裁判官は、私の裁判がこれに今度出ていますなんて喜んで得意になっているわけですね。得意になっているわけじゃないけれども、喜んでいるんですね。だから、何か裁判官は珍しい判決をしたい、まあ若いうちですからそういう気持ちがあるのも無理はありませんけれども、そういう判決をする危険性というか可能性というのは、このごろどうも少しあるのではないかというように思うのです。  あの交通事故何とかという本がありますね。いま十何巻出ているかな。参考になるでしょう。出ているけれども、一体どういうふうにして裁判官のああいう判決があったということがわかるのですか。裁判官の方で送るのじゃないの。どういうふうにしているのだ。そして小遣いかせぐわけじゃないだろうけれども、どういうふうにしているのかな。よくわかりませんがね。まあそれは答えなくていいけれども。  その中の判決の非常にいいのがあったのよ。ぼくはそれを引用して書いていたら、何だ、後で見たら八王子支部の鬼頭判事補のあれだったけれども、なかなかいい判決だったよ。判決としては大した判決だったよ。それは負けちゃったけれどもね。それはちょっと無理な判決で、無理なんだけれどもやけに勇気のある判決で、なかなかおもしろい判決だなと思ったら、八王子支部鬼頭何とかと書いてあった。そういうことがある。近ごろ裁判官は少しそういう点、珍しい判決をしたいという気持ちがちょっとありますね。  昔はああいうことなかったのですよ。裁判官は弁解せずというのは大森洪太さんのころからよく言われたことなので、判決にすべてのことが書いてあるのだから判決を見てください、こう言えばいいので、それを、何かやると後で、ここに新聞記者の人がおるけれども、終わって記者会見をする人がいますね。テレビの場なんかで記者会見をしている。ああいうことは一体裁判官としてすべきことですか。ぼくは反対ですね、マスコミの人には悪いけれども裁判官は、私のことは判決に尽きております、法廷で申し上げました、それでいいのじゃないですか。裁判官がヒーローになったような気持ちで記者会見して、それでテレビに映ったといって喜んでいるわけじゃないのでしょうけれども。テレビに映ったといって喜んでいるのは国会議員くらいなものだと思いますが、ぼくはどうもそういう点が、このごろ少し何か裁判官が昔のような重厚さというものを失っているような感じがしますね。  ある裁判官が今度転勤しますといって喜んでいる。どうしてですかと言ったら、いや今度は高裁へ行くのだ、おかげさまで今度は人の判決を見るようになりましたとか言って、一生懸命喜んでましたけれどもね。いろいろ人によって違うから何とも言えませんけれどもね。だからそういう点、いろいろ非常に考えさせられる点があります。  そこで、また前に戻りますが、その中でこういう事件がふえたと言っていますね。地方裁判所における特殊損害賠償事件ですね。これは具体的に言うとどんな事件がふえたのですか。  ぼくらが求めておいてこういうことを言うのはいけませんけれども、ぼくらが国会として法務行政の視察に行きますね。そうすると、裁判所が、こういう特殊的な事件がありますといって内容を報告するわけです。あれはぼくは要らぬと思いますよ。ぼくらの方で求めているかもしれないが、国会議員が視察に行ったからといって、裁判内容を特殊な事件として報告する必要はないのじゃないですか。概要ならいいですよ。その概要というのは抽象的にこういうあれならいいけれども、その内容まで私は印制して報告する必要はないのじゃないかと思いますよ。検事の場合は別ですよ。検事の場合は行政官だから別として、裁判官がそこまでやるのは、私はちょっと行き過ぎのような気がしますがね。これはそうでないという議論の人もありますけれどもね。  それから、国会議員が行ったからといって、裁判所の所長が出てきて接待なんかする必要ないですよ。ああいうのは本当によくないよ。裁判官裁判官としてのプライドを持たなければいけないですよ。ああいったお流れちょうだいしますなんてやってきたらみっともないですよ。そんなことは裁判所長がやるべきことではないと私は思うのです。ぼくはああいうのきらいですがね。  それはそれとして、特殊損害賠償事件というのはどんな事件がありますか。内容はいいです。具体的なことはいいですよ。
  172. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 裁判所特殊損害賠償事件として考えております事件は、いわゆる公害関係事件のほかに医療関係、薬品・食品関係、船舶・航空機関係、自動車関係、それから労働災害関係、これらの事件特殊損害賠償事件というふうに考えております。その中で数が一番多いのは労働災害の事件でございますし、それとほぼ匹敵するくらいの数は医療過誤事件、次が公害事件ということになっております。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは、労災事件に関連しては例の六価クロムかな、あの問題をめぐって非常にむずかしい法律論がありますね。しかし、これはここで取り上げる筋合いのものではないと思いますから取り上げませんけれども医療過誤の問題は非常にむずかしいですね。むずかしいというだけでなくて、普通の裁判官ではなかなかできないのと、それから、これはいままでは日本医師会が団結して非常にやりましたけれども、近ごろ変わってきましたからね。だから、医療過誤の場合は、これは不法行為として取り扱うのではなくて、債務不履行として取り扱うという形が大体固定しているというふうに考えてよろしいですか。そうすると立証責任は転換されますからね。そういうふうに考えてよろしいでしょうか、それが一つ。  それから、あの場合にカルテなどを出してくれということを要求しますね。そうすると、カルテを出すところと出さないところとありますが、これに対してはどういう態度を最高裁としては指導しているわけですか。この前、カルテを出されたはいいけれども、乱暴なドイツ語で書いてあるから全然読めないですよ。普通のドイツ語なら読めないこともないでしょうけれども、乱暴なドイツ語で書いてあってとても読めなくて、だからカルテを出すのをいやがるのですよね。そのために医療過誤裁判はちっとも進まないわけです。これは債務不履行なんだから、考えれば医者の側、病院の側に主張なり立証責任があるわけですから、当然自分の方からカルテも出さなければならないのではないかと私は思いますが、カルテを出す出さないでいつももめているのですね。こういう点はどういうふうな指導をしているわけですか、指導というのはおかしいかもわからぬけれども
  174. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 医療過誤事件の請求原因を債務不履行として構成するか、不法行為として構成するかということは、事案によってかなり違っているのが実情でございますし、双方をあわせて主張しているという例も非常に多いわけでございます。これは結局、原告がどういう構成をとるかということに帰着するものでございまして、裁判所の方からどうしろというふうな示唆はしておらないわけでございます。  それから、カルテの関係でございますが、これも提出命令というふうな関係裁判例がいろいろ分かれております。また、実務のやり方でも、被告の方で進んで出している場合とあくまでも出さないというふうな例がいろいろあるようでございますが、それぞれ訴訟指揮の問題でございますので、私どもとしては別に特定の方向での指導はしておらないわけでございます。
  175. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 裁判官は独立ですから、その指導というのはおかしいわけですから、これは言葉があれでしたら直したいというふうに思います。  そこで、日本の場合医療過誤はどんどんふえてきます。イギリス、アメリカはこれが非常に多くなってきましたね。都立大学の唄先生がこの点を研究したいい書物を書いておられますが、どんどんふえてくると思うのです。そして今度は法曹過誤というのがふえてきますよ。弁護士が法律相談を誤ったとか鑑定を誤ったというので訴えを起こされるのがだんだんふえてくるのです。アメリカではどんどんふえていますよね。そのためにアメリカでは保険が成立しているというわけでしょう。これはどんどんふえてきていいはずですよ。弁護士がよく鑑定を間違えたり、弁護のやり方が悪くて裁判に負けたりなんかする場合もあるわけですから、これもなかなかむずかしいけれども、こういう事件もふえてくるということが考えられますね。どんどん新しい事件がふえてくる。  それで、ここにある差止訴訟という意味がわかりませんが、この差止訴訟というのは労働委員会のいわゆるインジャンクションというものですか、どういう意味の差しとめを言っているわけですか。これは断行という意味ですか。
  176. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 非常に紛らわしい言葉が使われておりまして恐縮でございますが、これは、先ほど申し上げましたような特殊損害賠償事件の中の公害関係事件につきまして、損害賠償を求めていくというのは結局被害が起こった後での救済の問題だというところから、その公害発生源そのものの機能を停止させよ、あるいはそこからの被害物件の発生を阻止しようということを目的とした訴訟、そのための差止という用語を使っておるわけでございます。
  177. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、仮処分ではなくて本訴のことを言っておられるわけですね。こういうのはどんどんふえているわけですか。場所によって非常に違うんじゃないですか。全然ないところもありますし、いわゆる工業地帯、開発地帯なんかにはふえている。たとえばどこがふえているのかな。岡山とかあっちの方、水戸なんかもふえているのかな。どこでふえているのかわかりませんが、そういうところへはやはり裁判官を多く配置しているわけですか。  それから、こういう事件についての専門的な会同をやって勉強というか、どういうのかな、会同をやること自身も司法権の独立、裁判の独立に反するのかな。会同の内容によっては反するということにもなってきますか。これはどういうのですか。こういう場合にはこういうふうにやった方がいいというサゼスチョンをしたり勧奨をするということも司法の独立に反するということになりますか。
  178. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 公害事件と申しますのは、一番多い事件が日照妨害による建築差止事件でございまして、そのほかには建築工事による騒音とか振動、地盤沈下というものがございます。これらは全国各地に起きておるわけでございますが、そのほかに、御承知のようなごみ処理場でありますとか、それから発電所関係でありますとかダムの建設とかいうことに関連して差止訴訟が起こっているという例がございます。そういう点はほぼ全国的に広がっているというのが実情であろうかというふうに思われます。  それから、そういう公害事件の審理の促進を図るためには裁判官にも自然科学の知識が要求されますし、そのために研究会を開催する、あるいは自然科学関係の図書を各庁に配付するとか、あるいは自然科学の関係の講師に一般的な基礎的な理論の講義をお願いしてそういう素養を深めるというふうなことでやっておりますが、その一環として協議会をやっていることもあります。この場合には、そういう具体的な事件を離れて抽象的な法律問題としてみんなで協議をするということでございますので、特定の方向を出すことを目的にするとか、あるいはこういうふうにしたらいいといった指導的な意味合いは全然持っておらない、もっぱら研究会的な色彩の強いものでございます。
  179. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、裁判官も、こういうふうな形で特殊な事件がどんどんふえてくる、予想しなかったような新しい事件がどんどんふえてきますから、ときどき休暇を与えるなり、研究の期間を与えて勉強をする日にちを与えないととても無理だと私は思うのですね。夏休みを二十日間とるでしょう。二十日間とって普通の裁判官は一体どうしていますか。大体あの間にたまった判決を書いている人が多いんじゃないですか。最高裁は別ですよ。最高裁はのんびりしているというか、自分の出世のことでも考えているのかもしれぬけれども、そうでないかもしれぬけれども、大体あの期間に判決書いている人が多いですよ。それから、年末年始の正月休みにたまったのを持っていって判決を書いているのですよね。それは大変なんですよ。だからそういう点をもっと考えてあげなければいけない。月曜日から土曜日まで和解をやっているんじゃどうにもしようがないですね。何とかしてもう少し余裕を与えて、考える時間を与えてやらなければいけない。裁判所の中の部屋で判決書けといっても無理ですよ。あそこで書けっこないですよ。いろいろな人が来たり書記官が書類を持ってきたりなんかしているのですから、それは無理だから、そういう点も十分考えてあげてほしいと私は思うのです。  それから、いま言われた自然科学の関係というのは、私なんかの経験から言えば、大体法律をやるような人は自然科学が苦手だから法律をやるというのが多いですよ。そうでない人もいますが、大体数学がきらいだとか化学がきらいだとか物理がいやだというので法律をやる人が多いのですから、とても無理なんだから、むずかしい問題はたくさんありますが、これからもそういう勉強をする機会を十分与えないといけないと思いますね。  それから、ここに覚せい剤取締法違反事件がふえたというけれども、これは確かにふえています。ふえているけれども、そんなむずかしい事件は少ないですよ。これは大体、自分で注射したやつは第一回は執行猶予に決まっているし、売ったのは重いのです。しかし、法務省はこの法案をつくるときに関係しなかったんだ。これは厚生省がつくっちゃったから、罰金もないものすごく重い法案なんですよ。それでも構いませんけれども、国民の衛生のためにはしようがないのですが。しかも、覚せい剤取締法がずっとつながっているけれども、一人一件でみんな起訴していますから、件数はどんどんふえる。しかし、そんなにむずかしい事件というのはないのじゃないですか。そうむずかしいのは検事の方で起訴しませんよ。物がなければほとんど起訴しないから、ふえてはいますけれども、そんなにむずかしいのはないはずですね。これでふえているからといって裁判官の数をふやさなければならないということにはならないのではないか。ことに刑事事件裁判官は多過ぎるくらいではないかと思います。  東京高裁などは、いま刑事は十二部でしょう。民事は十六ですか、十八になったのかな、とにかく民事の方はどんどんふえています。だけれども刑事はほとんどだめなのがいっぱいあるのです。控訴趣意書を読んだだけで、だめなのはよくわかるのです。ただ、寒いときに刑務所に行くのはいやだから暖かくなって行きたいとか、正月が過ぎてから行ききいとかいうのが多いのです。そういうのはばかではありません。そんなに刑事がふえたからといって裁判官をふやさなければならぬという理由にはならない。国際的には別だと思いますよ。  それから、労働関係民事行政、ことに行政事件というのは非常にむずかしい。国を相手にする訴訟というのはどんどんふえてきていますからね。東京地裁では、民事二部、三部だけではとても賄い切れなくなってくるくらいふえてきているのではないですか。だから手を抜いて、証人調べもしないで、本人調べからぱっぱっとやってしまうという動きが、二部、三部では場合によっては出てきているところもあるわけです。だから将来、行政事件というものがどんどんふえていくという見込みになれば、行政事件を専門とする裁判官をどんどん養成する必要があるのではないかと私は思うのです。どうなんでしょうか、その点どういうふうに考えておられますか。
  180. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 仰せのとおり行政事件は、少しずつではありますが、数がふえている傾向にあります。同時に、労働関係民事事件行政事件もふえているというのが実情でございます。このそれぞれの事件につきましては、やはり専門的な知識を持って処理するということが必要なものでございますし、事件の迅速な処理という面でも適切なことであろうというふうに思われますので、そういう専門的な知識を得た裁判官養成するということは非常に肝要なことであろうというように考えておりますし、現在、東京地裁、大阪地裁等にございます行政の専門部、労働の専門部というものは、そういう裁判官養成に役に立っているというふうに考えております。
  181. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 労働関係については、たしか東京にもあってやっておられますが、そこでの裁判官は、単に技術的に労働関係の法律がよくわかっておるというだけの問題ではなく、早く事件を片づけようという形で強圧的に出てくるという人が過去においてはなきにしもあらずで、訴訟指揮がものすごくやかましいのですね。過去において忌避されたり、いま訴追委員会に申し立てになっている人もありますね。だから、訴追委員会の申し立てになったからその人がどうということではありません。それはよく調べてみなければわからないのですが、やはりそれに適した、技術だけではなくて人間的なものを持った人を入れていかないとかえって混乱をしていくのではないか、私はこういうふうに考えております。ここら辺は分かれるところだ。  そうすると、判事の員数を十六人増加して、それを十五ページにある「裁判所職員増員内訳」に基づいてこういうふうな割り当てでやっていこうということになるのだろうと思うのですが、これはほとんどが東京に集まることになるわけですか。
  182. 梅田晴亮

    梅田最高裁判所長官代理者 配置の予定の点でございますけれども増員理由は、資料の十五ページにありますとおりでございますので、それらの事件の多い庁が考えられるわけでございますけれども、単にこれらの事件だけの係属状況のみではなく、現在のそれぞれの裁判所における他の一般的な事件の増減の傾向等を総合的に勘案いたしまして、事務量の増加の著しい庁に配置いたしたいというふうに考えております。ごく大まかに申しますと、この種の事件あるいは一般的な事件の増が著しいところは、東京、大阪、またその周辺の裁判所ということになる可能性が強いと思っております。具体的には現在検討中でございます。
  183. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 余り細かい内部のことに私は触れるつもりはございません。  そうすると、改正案の中で執行官の問題はわかりました。執行官もだんだん数がふえてきたようですね。  そこで、非常勤職員、こういうのが裁判所にいるのですか。どういう人がいるのです。
  184. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 現在、裁判所におります非常勤職員といたしましては、家庭裁判所等におりますお医者さんとか看護婦等で、余り多い数ではございませんが、そういう者がおるわけでございます。
  185. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ここに、「二箇月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を除く。」とありますね。「休職者」は別として、「二箇月以内の期間を定めて雇用される者」、これは労働基準法のあれでいくわけですね。こういう人が実際にはいるのですか。
  186. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 二カ月以内の期間を定めて雇用される職員といたしましては、賃金要員というような呼び方をする場合もございますけれども、たとえば電話交換手とかタイピスト等の産休等の場合に、代替要員としてごく短い期間賃金で雇うというふうなものがこれに当たるということになるわけでございます。
  187. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、午前中に横山委員から検察審査会に関連して何か質問があったというふうに思いますが、これを見ると、「九百九十二人は、検察審査会に勤務する職員とする。」ということで、こういうふうに括弧書きをここに書いたわけですか。検察審査会に勤務する職員はだれに任命をされることになるのですか。
  188. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 検察審査会につきましては、予算上は、裁判所と別に「組織」「検察審査会」ということでいわば別建てになっておりまして、検察審査会は裁判所から独立した機関でございます。ただ、予算としては裁判所と一緒に計上されることになっておるわけでございます。  なお、この定員法上は一応一括して書いてございますけれども、そのうち幾らが検察審査会に勤務する職員だということを、予算上も別建てになっておるという関係から、はっきりここで示しておるということになるわけでございます。
  189. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 検察審査会という制度はどういう経過からできたのでしょうか。これはたとえば神戸大学の三井誠さんとか、都立大学から今度は北海道大学に行ったんですか小田中さん、ああいう人たちがよくいろいろ書いていますけれども、検察審査会ができたのはやはりアメリカのあれかな。占領軍の押しつけか強い指示かどっちか知らぬけれども、これはアメリカの制度を写したんですか。
  190. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 いま御指摘のように、アメリカに大陪審というのがございますが、それにならって設けられたものだというふうに聞いております。
  191. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 大陪審、グランドジュリーですか。
  192. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  193. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 この検察審査会というものができて、いま言われておるのは、これは本当は議事録にとりにくいことなんで申しわけないのですがね。まずいけれども裁判所職員としてはここへ行ったらおしまいだという考え方が強いのよ。ラストだという考え方が非常に強いですね。ほかの者もみんなそう見ている。検審かと見ている。検審に行ったらおしまい、大体こういう見方が非常に強いですね。こんなことは議事録に書かれて配られちゃうとちょっとぼくも困るけれども、しようがない。そういうので、実際ここへ行ったらほとんどやめているわけでしょう、事務局長になると。あなたが答えにくければその点は適当に答えていいですが、そういう点でこれは何か盲腸みたいになっているんだね。そういう程度ですね。  そこで、この審査会の職員の異動はどういうふうにしているんですか。絶えず異動しているの。局長ですよ。これはやはり最後の登り詰めた点というふうに大体なっているのですか、従来の例は。
  194. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 この検察審査会の職員もやはり裁判所職員でございまして、相当異動を行っております。検察審査会の事務局長で終わる方もございますし、あるいは首席書記官事務局長等に転出してそういう官職で終わるという方もありまして、両方ということになろうかと思います。
  195. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 両方なんですけれどもね。だから、検察審査会の事務局長になったらもう終わりだというような考え方を彼ら自身に与えないように、これはよく空気をつくってもらいたいと思うのですよ。ほかの職員もそういうふうに見ちゃう。これはまずいですよ。下にいる人は別ですよ。そういう関係が考えられますからね。ちょっと孤立していますからね。そういうことのないように十分考慮していただきたい、こういうふうに考えるわけです。これについてはまた別に、「法律時報」とそれから弁護士会のあれに出ていますからね。あれに基づいてこの次にゆっくり聞きたいというふうに思います。分科会の方に行かなければならぬものですからね。  きょうはせっかく、これじゃ委員長、まだ三分の一くらいしか行っていない。そこまで行っていないのだけれども、こうやって質問していると次から次へといろいろな問題が出てくるものですから。  私、もう一つ疑問に思いますのは、きょうでなくてこの次聞きます。十七ページにあります最高裁判所が秘書官が十五人、これはあたりまえだね。書記官が四十八人、事務官は六百三十八人いるのよ。高等裁判所事務官が、八つの高等裁判所で五百五十六人でしょう。最高裁が六百三十八人も事務官がいるんですね。その他四百二十八人、こんなにたくさん一体何を——何をしているかといっても、一生懸命仕事をしておるんでしょうけれども、こんなに要るのかな。そういう点この点細かく聞きますから、用意と用心両方していてくださいよ。  きょうはこれで終わります。
  196. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、来る三月三日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会