○武部
委員 時間の関係でこれをやっておったのではぐあいが悪いから、保留しておきましょう。この次にまた説明をひとつ聞かせてください。結構です。
私はこれから公取
委員長、それから通産省に、五十五年九月二十六日に東京高裁が出しました
石油やみカルテル裁判に対する判決についていろいろお伺いをいたしたいと思います。
今日、わが国の経済並びに
国民生活にとって
石油というものは欠くことのできない重要なものであります。この判決の持つ意味はそういう意味で大変重大だ、私はこう思っておるのであります。ここに判決文がございますが、非常に膨大なものでありまして、全部になかなか目を通すことはできませんが、問題点になったところだけは目を通したつもりであります。
先回もこの
委員会で同僚
委員から通産省の見解について発言がございました。議事録を見れば一番よくわかるので待ったのですが、きょうの午後でないとでき上がりません。しかし、私は同僚
委員の発言と通産省の答弁をここにちゃんと、当時メモしておりましたので、大体間違いのないところだけは記入しておると思いますから、これも参考にして聞きたいと思います。
この判決が出ましてから、前回申し上げましたけれ
ども、通産省の天谷審議官が文芸春秋に十八ページもの論文を書かれました。内容はこの間申し上げたとおりです。独禁法はアメリカのまねだというようなことがあの中に書いてあるし、いろいろなことがございましたが、それはそれとして、これは通産省のあの判決に対する反論ではないかということを私は申し上げました。その後、今度は
公正取引委員会の事務局官房の安田参事官が天谷論文に対して反論を同じように文芸春秋に出されました。これはそう長いものではございませんが、私も拝見をいたしました。そういう中で、今度は三月十六日付で「独占禁止法と
行政指導との関係についての
考え方」という文書が
公正取引委員会から各省庁に示されました。十六省庁というふうにこの間答弁がございましたので恐らくそうだろうと思いますが、こういうふうに出されたということを承知いたしました。
そこで、先般の当
委員会において文書が取り上げられたときに通産省の説明を聞いておりますと、こういう答弁がございました。
行政指導の有効性を重視して出した、こういう話でございました。それから、公取と意見を交換して出したので見解の差はないと思う、こういう答えがございました。これに対して今度は公取の側からは、カルテル判決を参考にして、誘発するおそれがあるものは何であるかということを出したのだ、こういう答弁がございました。また、通産の
考え方は三十年代と違っているし、カルテル判決後変わったと思う、こういう発言がございます。これはきょう議事録ができればよくおわかりですから、私はメモしたことを述べておるのであります。そういう意味のことを述べられました。また、公取としては、通産の
行政面で変化があるのではないかと思っておる。また、交通信号にたとえておられましたが、青、黄、赤の交通信号を例に挙げて、経済行為には色弱があるというたとえでありました。その色弱を明らかにしようとするものが公取の見解だ、こういうことを述べられました。同時に、公取としては産
業界あるいは産業官庁に警告したものであって、今後もしっかりやる、どういう決意のほどを述べられました。いま私が述べた両者の言い分、私
ども聞いておったわけですから、その言い分を聞いておっても根本的に
考え方に食い違いがある。そのやりとりを聞いておった者はだれしもそういうふうに聞いたと思います。私はそう聞きました。もう
一つ、通産省は、共謀してやったことはないし、
行政指導には細心の
注意を払ってやってきたし、今後もやりたい、こういう発言がございました。私のメモした点を抜粋すると大体主なやりとりはこういうものでございました。
ところが三月三十一日、参議院の
予算委員会の分科会で橋口
委員長はこう述べておられるのであります。これは議事録をここへ持っておりますから読めばそのとおりですが、通産省の文書は「私
どもは事前に拝見をして調整したものではございませんから、これは通産御当局のひとり言というふうに理解をいたしておるわけでございまして」云々、こう述べておられるのであります。
片一方通産省は、先ほど述べたように、公取と意見を交換して出したもので見解の差はないと言う、片一方はひとり言だとおっしゃる、これは全く私
どもここでいろいろなことをお聞きをし、また議事録を見ておる者にとってはまことに不可解であります。しかも三月十六日の公取のああいう見解が出た間髪を入れず、その翌日ですか、この通産の文書、ここにありますが、出ておるのであります。私は表現の仕方が下手でございますからたとえが悪いかもしれません、あるいは失礼なことを言うかもしれません、この点はお許しをいただきたいのですが、このやりとりを聞いておって、この二つの文書、ここにあるわけですが、一日置いて出された文書に大変な食い違いがある。きょうはそこに一緒におってもらって大変言いにくいかもしれませんが、遠慮なしに発言をしていただきたい。私たちも遠慮なしに聞きたいのです。そうでなければ、
一つの判決をめぐってそういう見解があちこちで文書に出されたりして大変迷惑だと思うのです。意見の食い違いは意見の食い違いで結構ですから、自分の意見は堂々と述べていただいて、そうしてよりよい結論を出すということが最も望ましいことだと思って、私はきょう公取と通産と一緒に来ていただいた。エネ庁の長官は何か商工
委員会の方で来られないそうでございますから、神谷審議官においでいただいたわけですが、私は冒頭にそういう点が大変不思議だというふうに
指摘をしたいのです。
もう一点は、通産省はこういうことを述べておられる。四十八年末の
石油ショックの際に、
石油業界が千載一遇のチャンスというような言葉を使って
価格を引き上げた、この
石油業界に対して通産事務次官は、諸悪の根源だということをお述べになった。われわれは報道を通じてそれを知りました。当時この言葉は大変はやったのです。諸悪の根源、これが
石油業界だ。
石油業界の体質を次官はそのように表現をされておった。われわれは記憶に新しいところであります。そうして、この判決が出てから
石油業界はどういう態度をとっておるか。当
委員会に参考人として石連の会長の永山さんにおいでいただきました。そのときに永山会長は何と答弁されたか、ここに議事録もございますが、私は抜き書きしてきておりますが、こういう答弁であります。
価格に関するガイドラインの案を
業界側が通産省に提案して、そして通産省の
指導案、ガイドラインというものを決めていただいた、そして、そのガイドラインに即してそれぞれの
石油会社が製品
価格の調整をしたということで、要するにあくまで通産省の
行政指導を仰いで、それによって
価格調整をしたというのが私
どもの信念である、したがってこの判決は不服だ、こういうことで、
日本石油を除いて全部が上告をしたのです。全くこの発言のとおり反省の色はみじんもない。たとえは悪い、言葉も悪いかもしれませんが、われわれはあの言葉を聞いておって、これこそまさにトラの威をかるキツネだと私は思いました。そういう発言と態度がこの石連の会長の答弁で出てきた。こういう背景の中で間髪を入れず通産省が翌日にお出しになった、こういう前提に立って私はこれからお伺いをしたいのであります。そういう背景があるということから私は以下お伺いをいたしますので、御答弁をいただきたいのであります。
まず最初に公取
委員長にお伺いをいたしたいのでありますが、法律的に根拠があるとかないとかということがいろいろ言われておりますが、法律的に根拠がない
行政指導で強制力を持っているものは、これは独禁法以前の問題、らち外だ、こういうふうに私は思うのですが、
委員長の見解を聞きたいのです。なぜこういうことを言うかというと、わが国におけるところの
行政指導に強制力があるかないか、これは非常に微妙です。これは背景があるからであります。強制力があるかないか、これが微妙だというのは背景があるからです。その背景とは何でしょうか。私
どもの理解によれば、少なくともわが国の産業官庁を
中心とした
行政の中でお上の御意向に逆らったら産業政策上から必ずしっぺ返しが来る。それがどういう形で来るかと言えば、補助金で来る、あるいは外貨の割り当て、助成金、交付金あるいは利子補給金、そういうものが待ち構えておる。したがって、新しい政策が出されたときには従っておらなければかやの外に置いてけぼりにされてしまう、そういう背景がわが国にはある。そういう点から
考えて非常に微妙な問題ですが、――微妙になってしまっておる。したがって、私はいま
委員長にお伺いしたいのは、法律的に根拠のない
行政指導で強制力を持っているのは独禁法の以前の問題、らち外の問題だというふうに思うのですが、
委員長の見解をひとつ聞きたいのです。