○寺前
委員 言葉では変えたわけではないと言うけれ
ども、実際的には変わっていっているし、現に
経団連などはこういう意見を言っているのじゃないですか。「食品工業からみた
農政上の諸問題」というのをことしの二月十日に出しておりますが、その
報告の中で、麦の増産に強い不満を唱えて、
小麦やビール麦云々と書いて、急激な増産に対し引き取り側としても当惑していると述べ、また
日本製粉社長の八尋氏は、麦の増産を無条件に歓迎するわけにはいかない、
国内産麦の適正な増産をゆっくり進めていくほかはない、こうやって
政府の
長期見通しに対してブレーキをかける発言を出してきておる。
臨調の第一
特別部会の
報告を見ても、
水田利用再編対策経費の節減のために、転作作物の選択という問題に配慮せよと、転作
奨励金単価の高い麦などの選択を抑える
方向が具体的に言われるようになってきているだけに、私はこのように
自給率が上がったといっても、まだ
小麦の場合で九%とかあるいは一七%という
大麦、
裸麦の
状況を考えたときに、積極的に、この
奨励金問題というのは従来の範疇で考えるというならば、あの二つの点を強調した点を守るべきではないかというふうに思うのであります。十分に検討願うということにして、次に移りたいと思います。
もう一つは、米の場合もそうです。食管財政対策問題がいろいろ言われるようになってきているわけですが、しかし
生産者
部門に非常にそれが大きな打撃を与えているという結果に対して、軽視することはやはりできないと私は思うのです。
昨年は据え置きに等しい
米価決定がやられました。ところが、御
承知のように米関連の
生産資材
価格は、五十五年の十一月からことしの三月、対前年比で見ると九・二%上がっています。
農業経営費も一一・九%上昇しているという
数字が出ているわけです。ですから、私はいまこういうふうに考えてみると、
生産資材
価格にもっとメスを入れていかなければならないのじゃないだろうか。
この間うちから、農水省の
統計情報部が三月にお出しになった「米及び麦類の
生産費」という五十四
年産の
資料が配付されましたので、これを読ましていただいておりますと、こういう
数字が出てきます。米の場合に、この十年間、
生産費の中で
労働費はどういう位置を占めているのだろうか。見ると、
昭和四十四年には
労働費が五二・一%を占めていた、それが五十四年では四二・八%、逆に言うと物財費というのはどんどん上がっていっている。麦の場合でも、五〇・三%であったものが三一・九%というふうに
労働費が下がっているわけです。つまり米で六割、麦で七割が物財費になっている。農民の実際の取り分は非常に少なくなっていっているという傾向がこの十年の中で見えるわけです。
そうすると、どうしたって考えなければならないのは
生産資材
価格、そこのところにメスを入れてみるという必要はないのだろうかということを考えざるを得ないわけです。
日本の
農産物が割り高だとか
生産性が低いとか、いろいろ言われてきました。実際にその間における十年間の姿を見ると、米の場合で十アール
当たりの投下
労働時間は、この
資料によると百二十八・一時間から六十九・四時間へと四六%も減らしている。十アール
当たりの
収量は四百八十四キログラムから五百十六キログラム、七%もふやしている。そうすると、
生産性の分野はかなり前進をしている。ところが、この間に十アール
当たりの物財費はどうなっているかというと、二万五百七十七円から六万八千四百八十三円、三・三三倍にもふえていっている。ですから、その投下資本、物財費の
生産費に対する位置というのは、農民にとってずいぶん高い位置を占めてきている。
それを細かく分野別に見ると、農機具の場合には七千七百三十二円から三万二千十九円、十年間に四・一四倍も農機具代はふえていっている。肥料代は四千八百二十二円から九千二百七十円、一・九二倍。農薬費は千四百六十四円から五千五百四十円、三・七八倍もふえている。一方、
労働費はどうかというと、二万二千四百九十三円から五万一千三百三十二円ですから二・二八倍だ。農機具、農薬などの独占的な企業は低成長期の中でもずいぶん大きく利益を上げていくという結果になっているわけです。
この間、私は「
農業協同組合」という雑誌の去年の秋ごろからことしにかけて出しておられるものを読んでおりましたら、分析が載っていました。東洋経済「会社四季報」や日経
新聞の「日経会社情報」などをデータにしていろいろな
資料が載っておりましたけれ
ども、農薬主軸企業の総資本の経常利益率はどう変わっていっているのかを見ると、
昭和五十年に七・二二%あった。そのときに農機具も大体七・二九%、同じくらい、ですが、この分野の産業全体の
平均を見ると一・二七%ですから、ざっと六倍、農薬や農機具というのは産業全体の中でうんと利益を上げておったのだということが、この時代わかります。
その後ずっと変化をしてきて、五十三年を見ても農薬は九・五〇、農機具は二・二四、産業
平均が三・〇八ですから、農薬の分野は産業全体の中でもやはり三倍を占めているということが言えるわけです。五十四年を見ても同じような
数字が出てきます。
それでは農機具が産業の中でももう一つ
伸びていないなと思って見ると、これはまたそう単純には言えないわけです。たとえば井関という会社がありますが、利子負担率というのは四十七年に七・一四%であった。製造業の
平均はそのときは三・四七%ですから、倍からの利子負担率を持っていたわけですが、それが五十四年になると一・六%に減っているわけです。製造業
平均で言うとそのときは二・五四%ですから、利子負担率をこれだけ減らしてしまうというふうな蓄積の仕方をやったわけです。あるいは久保田というところを見ると、四十七年に内部蓄積は三六%であったものが五十四年には四八・一%、機械の分野についてもこうやって資本蓄積がどんどんされていく。不況の中でも
農業のこれらの資材メーカーなどが高収益を上げているというのは、ちょっと振り返って皆さん方が出しておられる
統計なり「会社四季報」を見ると出てくるわけです。
いかにこれらの分野のメーカーが高い製品を農民に売りつけているか。ここにメスを入れなかったならば、農民の皆さんが
米審にたくさんいつでも押しかけてこられるというのは自分の生活を改善したいからだ、あるいは都市並みの
労働者のような生活にならぬか、いま実際は逆になってきているじゃないか、ここを改善するためにお願いしますよと言って押しかけてくるのだけれ
ども、そこで取り上げられた
米価の
決定なり
麦価の
決定、逆ざやをいろいろ論議するけれ
ども、一番メスを入れなければならないのは、こういう農民の要求とは別なところで実は食い物にされておったというのは、私はちょっと
統計を整理してみただけでも歴然たるものがあると思うのです。
この間、全国農民総連盟など農民五団体の方々が私のところにお見えになりました。そのときに、
農業生産諸資材の原価を公表して
価格を大幅に引き下げるように御指導願えないですかという話をされていきました。私はこの
数字から見るならばできる相談ではないか。
そこで私はお聞きしたいのですが、私のいま提起してきた問題の
資料というのは、皆さん方が出しておられる
資料の整理の中からだけでもこうやって出てくるのですから、もっと細かく分析をされて、そうして農民団体の皆さんが言われるように、
生産費
調査の形で農民の場合には原価が明らかにされるのですけれ
ども、資材の分野については少しもみんなの前に公開されていない。
米審の審議のときにみんなにそういう
資料を配って、そしてみんながわかる中で、やはりべらぼうにここに利益がいっているのだから、そこにメスを入れるようにしようじゃないかというふうな審議の仕方をするべきではないでしょうか。
あるいはまた
政府自身も、農民がこんなに困っているのにその分野の諸君たちだけがこうやってうまいことをやっている、原価を国民の前に知らせて、それではちょっと済まなんだということでそこの利益を減らさせるように、
政府の場合でも積極的に指導しなかったならばいけないのじゃないだろうかというふうに私はつくづく感ずるのです。この私の問題提起について、一体どこが間違っているのか、皆さんの意見をひとつ聞かせていただきたいと思います。