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1981-05-07 第94回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月七日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 田邉 國男君    理事 菊池福治郎君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 福島 譲二君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       逢沢 英雄君    上草 義輝君       小里 貞利君    亀井 善之君       川田 正則君    岸田 文武君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    菅波  茂君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    丹羽 兵助君       保利 耕輔君    渡辺 省一君       井上 普方君    小川 国彦君       島田 琢郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    日野 市朗君       吉浦 忠治君    神田  厚君       寺前  巖君    野間 友一君       木村 守男君  出席政府委員         農林水産政務次         官       志賀  節君         農林水産大臣官         房審議官    矢崎 市朗君         農林水産大臣官         房審議官    高畑 三夫君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君  委員外出席者         気象庁予報部予         報課長     立平 良三君         気象庁観測部産         業気象課長   尾崎 康一君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常務         理事)     榊  春夫君         参  考  人         (全日本農民組         合連合会会長) 足鹿  覺君         参  考  人         (全国食糧事業         協同組合連合会         会長)     金山國次郎君         参  考  人         (日本米穀小売         商業組合連合会         理事長)    片岡 森寿君         参  考  人         (全国商工団体         連合会食管問題         対策委員長)  三田 忠俊君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会会長         理事)     中林 貞男君         参  考  人         (農業情報研究         所常任委員)  林  信彰君         参  考  人         (東京大学農学         部教授)    逸見 謙三君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     安井 吉典君     ————————————— 本日の会議に付した案件  食糧管理法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)  農林水産業振興に関する件(異常気象による  果樹等被害対策)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  昭和五十五年十二月中旬以降の降雪寒波等による果樹等農作物被害概況とその対策について、政府から説明を求めます。高畑審議官
  3. 高畑三夫

    高畑政府委員 昭和五十五年十二月中旬以降の降雪寒波等による農作物被害概況とその対策につきまして、御説明いたします。  まず、被害概況につきまして申し上げます。  昨年十二月中旬からことし三月上旬にかけまして、日本の上空には強い寒気がほぼ連続的に流入したため、日本海側東北南部大雪になるとともに、特に二月末には西日本中心に記録的な低温に見舞われ、果樹野菜等農作物に甚大な被害が発生いたしました。  四月三日公表しました農林水産省統計情報部被害状況調査結果等によりますと、この大雪寒波等による農作物全体の被害額は、樹体被害約五百億円を含め約一千二十一億円となっております。  これを作物別に見ますと、果樹が七百七十八億円、うち樹体被害約四百九十七億円と総額の七六%を占めており、このほか野菜約百六十五億円等となっております。  また、地域別では、愛媛県が樹体被害を含めて約二百三十九億円と最も大きく、次いで徳島県約百二十六億円、広島県約百十七億円などとなっております。  果樹被害について見ますと、二月末の寒波により、主として中四国九州近畿南部において、樹上越冬中の晩柑類日向ナツ三宝カン等果実の凍結によるす上がり、梅、ビワの幼果の枯死等々の果実被害が生じております。  また、樹体被害について見ますと、二月末寒波により、西日本において柑橘類落葉枝梢の枯れ上がり等が、また、降雪により、主として東北、北陸においてナシ、ブドウ等に枝折れ等がそれぞれ発生いたしております。  なお、野菜について見ますと、近畿南部九州等において開花、結実中のサヤエンドウ等に凍害による被害が発生しましたが、その後わき芽の成長による生育の回復が見られております。なお、サヤエンドウは現在ほぼ収穫を終えております。  次に、これまでに講じた措置といたしまして、農林水産省といたしましては、今次災害の重大さにかんがみ、被害状況把握のための現地調査を行うとともに、対策早期かつ円滑な実施に努めているところでございます。  具体的には、天災融資法及び激甚災害法早期発動、二番目に、農業共済金早期支払いについての指導、三番目に、つなぎ融資及び既貸付金償還条件緩和についての関係金融機関等に対する依頼、四番目に、被害最小限度に食いとめるための技術指導等措置を講じてきております。  今後の措置といたしましては、これまでに講じた各種対策の円滑な実施に努めますとともに、自作農維持資金の融通につき、被害程度被害農業者資金需要を踏まえ、実態に即して適切に対処するなど、被害農家経営再建に努めてまいりたいと考えております。  なお、果樹樹体被害に関し、農林水産省試験研究機関による最近の現地調査によれば、木全体が枯死し改植が必要となるものは少ない見通しでありますが、現時点におきましては被害樹体萌芽状況が十分明らかになっておらないことでもあり、今後ともその推移を慎重に見きわめつつ、適切な対応を行ってまいりたいと存じております。  以上でございます。     —————————————
  4. 田邉國男

    田邉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 ただいま御報告のありました二月末以降の、特に西日本、さらに東北等におきます寒波災害につきまして、一千二十一億という被害額現時点把握をされておるようでありますが、昨年暮れの豪雪、冷害に引き続いて、相重なる異常気象下災害が見舞っておるわけです。これにつきましてただいま要約御報告を受けましたが、農林省として、この災害特徴と、特にこれからの対策の大きな柱になるような事項につきまして、重ねて御報告をいただきたいと思います。
  6. 志賀節

    志賀(節)政府委員 ただいま高畑審議官からも説明がございましたとおりでございますが、今回の被害において特に顕著なのは、柑橘類落葉、枝の先端の枯れ上がり等樹体被害がその大きな部分を占めている、それが特徴でございます。  この被害に対する対策といたしましては、四月十七日にすでに発動いたしました天災融資法、それから激甚災害法による激甚災害の指定、これも同じく四月十七日でございますが、それから農業共済金早期支払いについての指導、また、すでに貸し付けてございます貸付金償還猶予等条件緩和についての指導等措置を講ずるとともに、被害最小限度に食いとめるための技術指導をあわせ行うなど、対策に万全を期しておるところでございます。それが農林水産省として講じておる対策でございます。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 いまお話のありました特に天災融資法発動が四月十七日に行われまして、今回の寒波災害発生時点からいたしますと、大変早い時期に天災法の特に激甚地発動がなされて、最近災害については大分対応が早くなっておる、そんな感じは私どももいたしますし、現地でも非常に災害対策として喜んでおると私も思います。思いますが、この災害特徴は、いまも御報告がありました樹体被害であります。御承知のように温州ミカンが非常に多いわけでありますが、温州ミカンにつきましては、過剰だということで転換施策農林省でも進められ、何にかわるかということでネーブルとかハッサクとかポンカンとか、こういう中晩柑と普通称しておりますが、そういうものへ温州の木に高接ぎをして何年かたってきたところへ、この寒波が来たわけですね。  そこで、樹体でありますから、柑橘は永年作物で、これが立ち直るためには恐らく早くて三年、普通五年程度の歳月が必要なのではなかろうかと思います。したがって単年度対策というわけにはいきません。特に当面枯れてしまうのか生き延びるのか、先ほどの御報告では、全部枯れるのは少ないのではないか、こういう技術者報告等も寄せられておりますが、なおまだ現地ではどうなるかわからないということでありますし、余りいろいろな手もつけられにくいという技術的な問題もあって放置しておる。だんだん枯れ枝がたくさん出てきて、地区の関係者はどうしたらいいのか、いまなお戸惑っておるという状況であります。  そこで、樹体被害について当分事態推移しなければ対策が立てられないという意見もありますが、しかし、現地ではすでにもうだめだということで伐採をしておる農家もあります。あるいは私の県などでは、すでにもう温州ミカンについては見切りをつけて、極端に言えば、落葉果樹あるいは野菜などへの転換計画を策定して、これに必要な団体などの援助の体制も、資金も含めて考えられておる動きも出てきております。  そういう事情を見ますると、できるだけ早急に政府として、いま述べられました事項にとどまらず、特に昨年の豪雪に伴っていわゆる森林折損木に対する激甚法一部改正が議員立法で提案をされ成立をしておるわけでありますが、森林果樹園とは公益的な側面で違う、こういう意見がございますけれども、いわゆる木であることには間違いないのでありまして、そういう意味ではこの折損木に準じた特別な措置をぜひやってほしい、こういう要望がございます。  いま一つは、日本農家ほとんどでありますが、特に果樹地帯もこれまで非常にたくさんな資金を借りておりまして、天災法あるいは果樹植栽資金近代化資金、いろいろございますが、いわゆる融資よりも何かの助成をしていただかなければ再起ができない、こういう声が市町村なり県なりあるいは団体から強く要請をせられておるところであります。  そういう意味も込めまして、この際、樹体被害に対して何らかの特別措置をお考えいただきたいということを災害特別委員会などで各党から強く要請をせられ、災害対策特別委員会委員会はきょうこの件についての各党の話し合いを正式に持つ、こういうことになっておるはずでありますが、農林省としてこの樹体災害に対する特別措置として何か検討せられておるかどうか、この機会にお尋ねをしておきたいと思います。
  8. 高畑三夫

    高畑政府委員 先ほど御指摘のように、今次寒波等災害の主たる特徴樹体被害にあるわけでございます。樹体改植等の必要な農家に対しまして、農林漁業金融公庫果樹植栽資金、それからまた、先般発動を決定いたしました天災資金融資がございます。これらによりまして生産早期回復に努めるというのが現在の方針でございます。このように公庫資金などで対応できることになっておりますので、特別な補助等助成につきましてはむずかしいというふうに考えておるわけでございます。  なお、現時点におきましては、被害樹萌芽状況等がなお十分明らかでないということでもございますので、今後ともその推移を見守ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうも災害が起きたときからほとんど前進してない御返事でありますが、当委員会はこの問題初めてですけれども、災害特別委員会では、この件については各党ほとんど一致をして、国土庁、農林省に対してこの寒波災害については何らかの特別な方途を講ずべきである、少なくとも折損木に対してとった措置に準じた措置をとるのが政府のとるべき方向ではないか、こういう指摘があって、もう少し事態推移を見て検討したいとまではおたくの方は言ってないかもわからぬけれども、全体としてはそういう方向で進もう、こういうことになっておると思うのですよ。ですから、激甚法に伴う天災融資なり果樹植栽資金なりいろいろございますよ。ございますが、それではなかなか事足りない。こういう状況に立って、農林省として、当該担当局として、ぜひこの樹体災害に対しての何か新しい施策を打ち出してほしいということなのでございまして、具体的にすでにきょう関係知事が寄って正式に要請を決めると言ってもおりますし、すでに団体関係県市町村からは相次いで、いわゆる高接ぎなりあるいは改植に対して新しい助成措置を講じてほしい。国の促進事業ミカン園転換をやって二年か三年したら災害でこれまたつぶれてしまったわけです。それをもう一度やり直さなければいけないわけです。ところが、それをもう一度ミカン転換促進事業を対象にしてほしいと言っておるけれども、これもなかなかできぬと言っておるわけでしょう。ですから、何かこの際、こういう災害に対する方策をやはり打ち立ててもらいたいというのは、山林の際に立てた考え方と余り変わらないと思うのですよ。そういう意味で言っておるわけでありますが、この高接ぎ改植などについての、被害園に対する再生処置についての助成、あるいは樹勢が非常に弱っておるわけでありますから、木が弱っておりますから、樹勢を強くするために、技術的にも、あるいは肥料なり農薬なり、あるいは土壌の管理などについて別途ないろいろな方策が必要であります。そういうものについても新しい援助方法を検討していただきたい、こういう要望があるのですが、これはどうですか。一遍取り組んで、どういう方法でやれるのか検討してみませんか。どうですか、政務次官
  10. 高畑三夫

    高畑政府委員 今次災害に対しましての地元からの、ただいま御指摘のありましたような希望があるということは十分承知いたしております。それで、ミカン生産県知事会議あるいは果樹に関します地方団体等の正式の御要望も来週あたりまとまるというふうに伺っておりますので、それらの御意見あるいは御要望も十分伺いまして、内部的な検討はしたいと考えておりますが、現在までのところでは、先ほどお答えいたしましたように、やはり災害につきましては現行制度がございますので、補助という手法はなかなかむずかしいのではなかろうかと思っておるわけでございますが、そういった知事会なり団体等の正式の要望がございましたら研究いたしたいと考えております。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、これは災特のときにも申し上げたのですけれども、いま果樹農家というのは大型の畜産農家と同じような借金を抱えておるのですよ。これは私の近くの町の農協の貸付状況でありますが、千六百九十一戸の組合員が七十六億一千五百八十一万の金を借りております。これを平均いたしますと、一戸当たり四百五十万であります。件数にいたしますと一万六百四十七件の金を千六百九十一戸の農家が借りておるわけです。ですから、お金をたくさん融資をして貸してあげますということだけでは済まないし、それから、ミカンというのは基本法ができて以降政府が、特に農林省が非常に勧めたわけですよ。そして、果樹計画がこの七、八年、十年近くからは次から次へと初めの計画から変わって、米に次いでこれはもうだめだということで、今度は転換をさせようとしておるわけです。そういう政策路線に乗ってこれは拡大してきたことも事実なんです。  そこへ持ってきて災害である。しかも、普通の災害と違って樹体が、木が痛めつけられてきたということですからね。これはやはりこれまでのそういう経過の上に立っても、何らかの新しい処置を打ち立てていただきたいし、これは果樹だけではありませんけれども、日本農業全体がこういう状態に追い込められてきておる。特に果樹の場合はアメリカの輸入というものに圧倒的に押さえ込まれてきておるわけでありますから、政府も、そういう意味も込めて、この際、この寒波災害について少なくとも折損木に対するような、類した新しい改植なりあるいは樹勢回復についての新しい助成処置をひとつ講じてもらいたい、このことを強く要望しておきたいと思うのです。  私などは現地へ行っていろいろ皆さんと相談をしておりますが、確かに全国画一的にいかない面もあるでしょう。それぞれの園によって、それぞれの地域によってさまざまであります。特に県などにおいては、もうすでに今度の県会で具体的にそれぞれの県でいま手を打とうとしておるわけです。九州から中国四国関係県、それからブドウなどをやられたこちらの方も、それぞれ県費で単独予算を組んで助成をやろうとしておるわけです。だから、国がいままで天災融資法なり果樹植栽資金なり近代化資金なり共同化資金で事足れり、こういう姿勢で逃れられると思うのは、現状の動きからして私は対応が非常におくれておる、こう思いますので、ぜひはっきりしてもらいたいと思うし、できれば、たとえば一つの園に対して、その地域共同作業班のようなものを編成して、そこへ行って、この園はこのままもう枯死するから全部改植しなければいけないとか、これは何とか生き延びるからこういうふうな対策を立てようとか、こういう地域地域一つ被害園再生復旧事業のようなものを起こさせて、それに対しては、県も市町村団体も国も、何らかの責任を持ってひとつ一緒にやっていこう、こういうものをひとつぜひ検討していただきたい、こういうふうに考えておるところですが、これらも含めてもう少し前向きの意見をこの際ひとつお示しをいただきたいと思うのですが、政務次官、どうですか。
  12. 志賀節

    志賀(節)政府委員 選挙区の状況なども先生つぶさに御研究で、全く被災農民には同情の言葉もないほどでございます。  ただ、私個人は、五十二年にも御承知のとおりこの種の大きな被害がございまして、そのときに手を打ちましたような措置が今回もほとんど誤りなく農林水産省によって施されたと私は理解いたしておりますが、にもかかわらず、前回はそれで御満足をいただけましたが、今回はなぜそれでなお足らないか、その辺をもう一度洗い直さなければいけないではないかという考え方に立っていま研究中でございますので、そのように御理解をいただきたいと存じます。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 五十二年の災害よりも広がりは、局地的に寒気団が滞留したのですから、滞留した地域に集中的に来ておるのですから、これは密度というか、それぞれの被害園なり被害農家の受けておる打撃は、五十二年に比べると、金額は全体としてはさほど変わりませんけれども、被害密度は非常に大きいと思うのです。  それから、やはり災害対策について、水稲を中心としていろいろな制度が基本的には組み立てられてきておると思うのです。こういう果樹などの災害、あるいは樹体などに対する今回のような集中的な災害、こういうものは私はやはりまだ突き進んだところまでいってないと思うのです。だから、こういう災害一つの経験にして、農政としても、農業というのはやはり災害対策というのが何といったって大きな柱でありますから、問題があって現地関係県からこれほど強い要請が出ておるのであれば、前向きに当然取り組むべきであるし、すでに今度の、果樹樹体だけじゃないので、これは森林の木が折損をして雪でやられたというのと実態は変わらぬわけです。ただ、山は公益性があるのだということで一定理屈をつけたということだけでありまして、変わらぬのですから、何か今回の樹体災害に対する別途な助成処置を、ひとつこの際、当局としてはっきり打ち立てていただきたい、こういうことを重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、ちょっとお聞きをしておきますが、やはりこういう災害に見舞われますと、確かにこれまでミカンあるいはミカンにかわっていま中晩柑類と言われるものに急速に転換しているわけでありますが、これは一体大丈夫なのか、こういう心配が、県なり市町村の勧めた側では一番これは憂慮しておるわけであります。ミカンがこういう状態になって、今度はいま中晩柑が同じような状態になるのじゃないか、そうしたら何をあと植えさせたらいいのか、このことの迷いがあるわけであります。この点についても農林省として一定考え方を示さなければいけない時期になっておる、私はこういうふうにも考えますが、温州ミカンはいまの状況では非常に先行き不安で過剰であるから、そこでその他の果樹転換をせよ、こういう指導で中晩柑への転換が急速に進んでおります。これはいまから九州あるいは中国関係など本格的に動き出すと思いますが、一体、中晩柑需給見通しというものは農林省としてはどういうふうにお考えになっておるのか、この機会に御報告をしていただきたいと思うのです。
  14. 高畑三夫

    高畑政府委員 中晩柑需給見通しにつきましては、昨年十二月に昭和六十五年度を目標年次といたします果樹農業振興基本方針で公表されたところでございます。  この基本方針におきます中晩柑類全体見通しにつきましては、昭和六十五年度の総需要量百六十万四千トン、これは五十三年対比で一五四%になります。それから、国内生産量は百七万九千トンということで、これは五十三年対比一六一%となるわけでございますが、このように順調な需要を反映して、いずれも大幅な増加が見込まれておるところでございます。  しかしながら、近年の中晩柑類生産動向を見ますと、温州ミカンからの転換中心栽培面積が急増しておることもございまして、このままの勢いで植栽が進みますと、中晩柑類につきましても生産過剰が懸念されるという状況にあるわけであります。したがいまして、今後、中晩柑類植栽に当たりましては、各府県におかれまして、先般定めました基本方針に即して定めます県計画の範囲内で植栽を進められますとともに、中晩柑類栽培適地を選んで実施しますように指導をしておるような状況でございます。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 少し細かい災害対策について御質問いたします。  天災融資法発動されておるわけでありますが、天災融資法の使途、使い方で、関係者には、もう少し応用のきく方法はできないのかという声が案外強うございます。これは生産関係に対する災害資金、こういう性格があるのでありますけれども、災害であるからもう少しそれぞれの自主性に、借りた金は返すのでありますから、任せてもらえないのか、こういう意見が一、二ございます。  これも理屈を言えばむずかしいのでしょうが、たとえば自家労賃災害復旧をしたら、これは経費の中に入らないということで資金の枠が制限されていく、こういうようなことについても何かいい方法はないのか。いまは人を雇って復旧をやるなんということは、実際農村では、人は皆少しでも時間があれば土方に行って、自分のところの園の復旧事業をやるのに人まで雇ってというのはないので、皆自家労働でやっておるのです。だから、雇用労賃は認めるが自家労賃は認めないという点も、理屈を言えばわかりますよ、わかりますけれども、何か応用動作は考えられないのか、こういう声もありますので、この辺もひとつお考えいただきたいと思う。  それから、天災資金の償還期限でありますが、激甚地の場合は四年から七年ですか、そういうことになっておりますが、これも果樹などの場合は、完全に再生をしてくるのに、長いものになれば七年も八年も十年も一〇〇%もとへ戻るのにはかかると見なければいけません、再生、転換などをいたしますと。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕 ですから、これももう少し期間を延長してほしいという要望もございます。こういう点もいますぐできればしてもらいたいと思いますが、十分検討をしていただきたいと思います。  それから、やはり自作農維持資金というものが比較的農家災害関係者にとりましては——生活資金がないわけですからね。一番困るのは、生産資材、生産関係の費用もさることながら、災害者は生活資金でありますから、そういう意味で、比較的余裕を持っておる自作農維持資金のありがたさというものが非常に求められておるようでありますが、これの今次災害についての融資の枠はどういうふうになっておるのか。それから、相当借りておりますから、限度枠を切り上げなければいけないと思うのですが、そういう貸付限度の上乗せについてはどういうお考えなのか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
  16. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 融資関係で幾つかの御質問でございますが、まず、天災融資の問題でございます。  対象をできるだけ弾力的に広げるようにという御指摘でございますが、御案内のとおりこの資金は、農家が経営に要する資材等の購入によります経営費を、現金を出す場合に、災害を受けた方はなかなかそれができない。それにかわって、できるだけ低利でそのめんどうを見ましょうという仕組みになっている制度でございます。そのために、対象といたしましては、私どもできるだけ弾力的に広げてカバーするようにという運用をしているつもりでございます。  ただ、御指摘のようないわゆる自家労賃につきましては、現金支出を伴うわけでございませんので、この天災融資の中でその問題のめんどうを見るということは仕組み上なかなかむずかしいのではないかと私どもは思っておりますが、そういう場合に備えての自作農維持資金という制度がございますので、こういうものによって十分にその辺の対応が可能なように、弾力的な資金の組み合わせによります運用を図ってまいりたいというふうに思っておるところでございます。  次に、償還条件でございますが、特にその償還の期限が短いという御指摘でございます。果樹の場合は、比較的実は制度の中では長く償還期限をとっておりまして、一般に対しまして五年ないし六年、さらにそれが激甚になりますと六年ないし七年というふうな措置をとっておりますし、また、連年災で、すでに前に借りております天災融資が償還期限に来ているような場合につきましては、それの返納については二年の範囲で延納も認めようという対応もいたしておるわけでございます。また、今度の状況におきまして、特に運用措置として、七年の中で、通常は据え置き期間というのはないわけでございますが、三年間の据え置き期間を設けるというふうな、そういった弾力的な措置も私どもはとり得るところはとっておるつもりでございます。ただ長い目で、制度自体が本当にマッチするかどうかという御議論はあろうと思いますので、そういう点につきましては、また今後とも将来にわたりいろいろな研究はしてまいりたいと思っております。  それから、自作農維持資金でございますが、これにつきましては、一応の災害対応いたします枠組みというのは現在ございますが、今般のような大きな災害になりますと、通常のその枠組みでは間に合わないのが通例でございます。そういう場合には特別枠を設けるというふうなこともいたしておるわけでございます。また、それに関連いたしまして、災害の場合には、貸付限度についても通常の六十万が百五十万円というふうなことで災害につきましての特例の限度になっておるわけですが、それでも大きな災害の場合には、地域によりますと対応できない場合があるということで、過去におきましても、さらに特例的な貸付限度を地域によっては設定するというふうな運用をいたしたこともございます。私ども、今般の豪雪及び特に寒波あわせましてその種の措置が必要であろうというふうに考えておりまして、現在鋭意検討いたしておりますが、災害特別枠の設定なり、それから貸付限度の特例の設定なりにつきましても、前向きに取り組みたいというふうなことで、いま詰めをいたしておるところでございます。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 この自家労賃は、たとえば共同でそれぞれ自分のところもやる、お隣の園もやる、こういう共同作業でやった場合には、これは構いませんね、そういう場合には。  それから、自作農維持資金の特別枠、限度枠の上乗せ、これはいまどうですか、いつごろまでに時期がわかりますか。
  18. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 自作農資金の場合におきましては、資金需要もさることながら、個々の農家によりまして、現実にすでに過去において借り入れているものがどれだけあるのか、それがまた府県別あるいは地域別によって実情が違っておりますので、その辺もよく十分洗い立てまして、綿密な検討の上で設定をいたしたいというふうに考えておるために、天災融資よりは通常これはおくれるのが常でございますが、しかし、やはりいつまででもというわけにはいきませんし、できるだけ私ども早期にいたしまして、今月のうちにもそういう具体的な設定をして府県におろせるようにと、こういうスケジュールのもとに作業を詰めておるところでございます。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろと対策をお考えいただいておるわけですが、これまでの借入金の償還延長などをめぐって利子補給の役割りというのもやはり大きいわけであります。このミカン転換農家安定資金等利子補給事業、これを今回の災害に少し弾力的に運用をさせてほしい、あるいはやってもらいたい、こういう声が出ておるわけでありますが、これの内容は、比較的これ、非常にこの災害対策にぴったり合っておるような気もするわけですが、これを少し今度の災害に適用させるような、これまで幾つか積み立てておると思いますが、処置をお考えになっていないでしょうか。
  20. 高畑三夫

    高畑政府委員 ミカンから他作物へのミカン転換農家経営維持安定資金等利子補給事業を行っておりますけれども、これにつきまして、今次災害被害農家に適用できないかというお尋ねかと思いますが、この事業は温州ミカン需給バランスを回復しますために、ミカン園転換事業を補完するということで、転換した農家の経営の維持安定のための低利融資を図るという趣旨でございますので、災害対策として、これに適用するということは困難かと存じます。やはり救済措置につきましては、果樹共済制度もございますし、天災資金それから自作農資金もございますので、これらの制度の活用によりまして対処するという考え方でございます。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 既存の制度、内容の中でやれればそれにこしたことはないのですけれども、それではなかなか思うようにやれないから、特別な処置をしてほしいということと、同時に、既存のさまざまな制度の中で最も集中的にやれるようなものを考えてほしいという声が強いわけですね。私は、やはりこういう新しい作物部門については、全国的なものでもないし、今度の災害は額は非常に大きい、一千億を超しておるわけですから、しかし部分的で、たとえば愛媛県などでも私の選挙区などは実は余り影響を受けておりません。非常に部分的であります。しかし、受けておるところの度合いは非常に重いというのが、関係県一つの大きな特質だろうと思うのですね。そういうところはあの手この手のものを使って何とかこの危機を乗り切って、もう皆くたっとなっているわけですから、この方向をひとつつくり出したい、こういうことでいろいろな知恵を集めて要請事項を明らかにしておるところでありますから、ぜひこれらの問題も含ませて検討していただきたいと思います。  それから、先ほど果樹共済の問題が対策としても出されておりましたが、稲の災害の場合は確かに共済制度というものは大きな支えになって、被害があってもその大半はこの共済金で賄う、こういうことになっておりますが、果樹の場合は共済の加入が御承知のように非常に少ない。これは樹体については一割を切っておる。果実についても二割内外の加入率で、この果樹共済金というものがどれだけ適用されるかというと、ほとんど微々たるものであるというところに、当面の災害対策一つの問題があるわけです。  同時に、この果樹共済というものになぜ皆さんが入らないのか、入っていないのかというところも、果樹共済の内容についてもう少しこの制度をこの際やはり考え直さなければいけない点があるのだと思うのです。これは水稲のように技術や収量が平準化しておりませんから、いわゆる園によって地域によって収量なりあるいは技術水準なりさまざまであるところに一つの大きな問題があるわけでありますが、今後のこの果樹共済制度の運用について、やはり方向としては、果樹農家がこういう異常な事態に遭ったときに共済でもって一定の、最低の収入は支えられるという条件をつくらせるということは大切だと思いますので、共済に入らせるということは必要でありますけれども、しかし、入りにくい、入っても役に立たないという実態があることもまた事実なんであります。だから、そういうものを含ませて、この果樹共済制度の抜本的な改正と、これからのやはり運営について、ひとつ御意見をお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。  それから同時に、やはり共済の問題でありますが、野菜とか特作についての施設園芸というものが、私はこれからやはり相当伸びてくると思うのです。これに伴って施設共済というものが最近設計をせられまして、これは加入をしておる人も相当多くなってきております。しかし、この施設共済をいろいろ聞いてみると、需要が非常に多くて、需要が多いということは関係者から喜ばれているということでありますが、逆に共済会計が赤字で将来の運営について非常に心配をしている、こういう関係者の意向が非常に多いわけであります。そういう意味で、この施設園芸などに対する共済制度の今後のあり方についてもこの機会に明らかにしておいていただきたいと思うわけです。
  22. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 共済の関係につきましての御質問でございますが、水稲の共済の場合は、御指摘のとおり実は当然加入制度をとっておるわけでございまして、災害が起こった場合にはそのために非常にてん補される、こういうメリットが出てまいります。それに対しまして、果樹共済の方はいわば農家の任意加入、お入りになりたい方に入っていただく、こういう制度、仕組みをとっているために、実は加入率が問題になるわけでございます。果樹共済は制度が発足しましたのが四十八年でございまして、まだその他の共済制度に比べますと日が浅いということもございまして、私ども浸透には十分に努力しているつもりでございますが、必ずしも農家の方にはまだ本当にその必要性というものが御理解いただいていない面もあろうというふうに思っております。  しかし、御指摘のとおり、特に技術水準の高い専業農家にとりまして、現在の、これまでの果樹共済制度というのがいろいろの問題をはらんでいて魅力がないという点もあるのではないかという御指摘は、かねがね私どもも実は受けておりまして、その点でできるだけ魅力のあるものに改善すべきものはしよう、こういうことで、昨年農業災害補償制度の一部改正をお願いいたしたわけでございます。この中身は果樹共済の関係がほとんど主たるものでございまして、それまでの関係者の御意見等を踏まえましてかなりの改善措置をとってきたつもりでございます。今後、このせっかく改善されました制度を基軸にしまして、また、今般のような災害が起こりますと非常に共済の重要性というものは御認識いただけるというふうに思っておりますし、まさに御指摘のとおり、災害に対しましては本来は災害の共済制度というのがその中心になる制度として支えていくべき性格のものだというふうに、私どもも全く同感でございます。そういう意味でこれからも引き続きひとつ加入促進には努めてまいりたいというふうには思っております。  次に、園芸施設の関係の共済制度の問題でございますが、これもまだ制度といたしましては発足いたしたばかりでございまして、必ずしも十分なものではないという点は御指摘のとおりでございますが、実は本年度からの引受部分として、政府と連合会との間の持ち分関係を改善いたしまして、従来五〇%以上の災害でなければ連合会にお願いして政府が持たないというふうになっておりましたのを、三〇%に引き下げるというふうな改善もいたしております。さらにこれからもいろいろと、この施設園芸の関係につきましてはできるだけ制度になじむ形でどこまで改善が可能かということを研究し、詰めてまいりたいというふうに思っております。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 果樹共済は、この間の法改正で確かに一定の問題点の打開のようなものができておりますけれども、しかし、なお果実の価格形成が市場取引で非常に差がありますから、どこの地域の単価でいくかということで同じ地域でもさまざまでありますから、よほど趣旨を徹底させて、さらにその辺の問題をいろいろな点で克服するような条件を今後とも検討していただかないと、いまの二〇%内外の加入率が倍になり、三倍、四倍になるというわけにはいかないような気が私はしてなりません。そういう点で、なお十分御検討いただきたいと思います。  それから、今回の寒波災害を通して、これからもそうでありますが、当面の処理もそうでありますが、やはり技術陣営を、相当力を入れてこの復旧対策に技術的な指針を示していただかなければならないと思いますし、農林省もそういう意味で、現地関係者を派遣して状況把握せられておるようでありますが、寒さに対する柑橘の技術指導指針といったようなものをこの際少し本格的に検討していただきたい。非常に樹園地が広がって、従来であれば柑橘などの適地ではないと思われるところへずっと植えておるという実情になっておりますので、これはこのままでいいのかどうかということも一つございますが、同時に、この寒波災害を契機として、従来は果樹園に対する防風林を整備しなさい、こういう程度のことであったのですが、もう少し本格的に防寒栽培についてのいろいろな技術指導陣営の指導方向というものを明確にして徹底をさせていただきたい、こういうふうに思いますので、この点、技術センターなどを中心に試験研究、開発に力を入れてほしい、このことを特に要請しておきたいと思います。  それから、気象庁が来ておると思いますが、昨年、冷害から豪雪寒波と一年間に三度も非常に大きな災害に見舞われたわけです。この異常気象日本だけではなくて世界的な傾向である、こういうふうにすら言われておるわけでありますが、この異常気象というものは一体どこに原因があるのか。こういう点については、気象庁を中心にどういう研究対策が立てられておるのか。それから、災害が起きると、これは被害額で見てもはっきりしておりますように、農作物に対する被害が圧倒的に多いわけでありますので、気象庁の気象速報、気象予報、通報のあり方がいまどういうふうになっておるのか。  私は、やはり農作物農業気象速報といったようなものが的確に、寒波などの問題は相当事前にわかると思いますので、関係地区に対する徹底をやれば、今回の寒波は相当ひどいものでありまして被害も大きいわけですけれども、しかし、技術者に聞いても、木が傷むということは零コンマ以下の気温の差で傷むところと残るところとあるということでありますので、もし早くわかっておれば、熱心なところはダイヤを燃やしたり園を守るために必要な処置をするわけであります。そういうことを考えると、農業気象速報のあり方というものについてもう少し力を入れていただかなければいかぬのじゃないか、こう思いますので、この点について気象庁の御意見をお聞きしておきたいと思います。
  24. 尾崎康一

    ○尾崎説明員 先生の御質問にお答え申し上げます。  農業と気象は密接な関係にございますので、気象庁は情報の効果的な伝達に努めているところでございますが、農業に関する気象情報は、都道府県の農林担当部局と地方気象台で組織しております農業気象協議会というのがございますが、ここで前もってどのような通報をするかについて討議をいたしまして、これに基づきまして地方気象台が農業気象通報として地方気象台から都道府県の農業担当部局に通報いたしまして、これを受けまして都道府県がその伝達組織を通じまして農業団体に伝達している現状でございます。  なおこのほか、たとえば異常低温あるいは霜、こういった農作物被害が予想される場合におきましては、注意報を発表いたしまして、テレビ、ラジオ等で広く一般に御通知申している次第でございます。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま言われたような仕組みがうまくなされていないのじゃないですか。そういうふうにはなっておるということですけれども、気象庁の方から作物気象についてのいろいろな通報などがあってということは、災害ごとに余り聞かないですね。だから、いまお話しのあったようなことをひとつ徹底して進めてもらうように、災害が起きれば確実に農作物被害がぐっと乗せてくるわけですから、テレビなどで台風が来るあるいは雨になるということはよくわかるのですけれども、それが作物に影響するような場合には、別途に県なり関係指導機関に速報を流していただいて、万全の対策をとるように特に要請しておきたいと思います。  時間が参りましたので以上で質問を終わりたいと思いますが、この寒波災害一つの大きな焦点は、前段ちょっと御要請をしております樹体災害というものに対する対策が、現状の災害対策では非常に立ちおくれておるのではないかというふうに私どもは理解をいたして、党としてもいち早くこの点について農林大臣に要請をし、農林大臣も、意見としては全く同感である、こういう御回答もいただいておるわけでありますが、ぜひ樹体災害に対広する方策を、この災害を契機として道をひとつ切り開いていただきますように、これは何も今度の災害の救済措置ということだけではなくて、今後日本農業が新しい部面で当面をしていく災害の恒久的な道筋になっていくと思うので、そういうつもりで取り扱っていただきますことを特に重ねて御要請をして、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 井上普方君。
  27. 井上普方

    井上(普)委員 私は、このたびの寒波によります柑橘類被害についてお伺いいたしたいのでありますが、私どもの徳島県におきましては集中的に寒波が参りました。零下十三度というのが七、八時間続いたということで、先ほども政府委員並びに委員の皆さん方にお示ししました写真が示しますように、大体温州ミカン関係におきましては九〇%の被害、それからハッサクは一〇〇%、スダチは八八%というような被害をこうむっておるのであります。  そこで、先ほど来から専門家であります田中君の質問に対する御答弁に対しまして、どうも納得できない点が多々ありますので、再度お伺いいたしたいと思うのであります。  このたびのミカンの樹木の被害、これがほとんどであります。そうしますと、皆さんに写真をお見せいたしましたように全滅なんです。これは改植なければならない。改植するということになりますと七、八年は大体収穫は全然ない、こういうことになるのでありますが、その間、農民は一体何で飯を食っていくかという悲惨な状況になるのであります。特にこの地帯は、徳島県におきましては百三十年の歴史を持つミカン地帯であります。言いますと日本における温州ミカンの先進地でもあります。昭和六、七年ごろに農村の復興ということで政府援助いたしました。勝浦町のごときは全町がミカンで飯を食っているというところなんです。それが今後七、八年の間何も収穫がないということになるのでありますが、農林省、こういう農村に対しては一体どうやったらいいと思いますか。政務次官、どうしたらいいのですか、ひとつお伺いしたいのです。
  28. 高畑三夫

    高畑政府委員 今次寒波災害につきましては、現地調査も行いまして、それからまた各方面からの御要請等もいろいろ行われまして、これに対する対応をしてまいっておるわけでございます。  それで、今回の被害に対します対策といたしましては、すでに御説明いたしましたとおり、天災融資法発動激甚災害法発動、その他災害共済金の早期支払い等につきまして措置をしておるわけでございます。  さらに、どのような対応をという御指摘でございますが、先ほどもお答えいたしましたように、国会の御質問、御指摘等もございまして、いろいろ内部的には研究いたしておりますけれども、従来の前例あるいは災害に対します現行制度の体系等から見まして、補助という手法による対応が困難であるというふうに考えておるわけでございます。御指摘のように、特に著しい被災地域におきましては、落葉あるいは枝梢の枯れ上がりといったほかに、樹全体が枯死するというものもあると見られますけれども、全体的にどの程度樹全体が枯死に至るか、あるいは萌芽によりましてまた再生する樹も相当出るということも過去の災害等の経験に徴しますとございますので、そういった被害樹萌芽状況等も十分見きわめる必要があるということで、現在その推移を見守っておるような状況でございます。
  29. 井上普方

    井上(普)委員 ただいまお見せいたしましたその写真は、四月早々に撮った写真なんです。私はこの連休中に実は被災地を見てまいりましたが、いかにも芽は出てきています。少し出ています。芽が少し出ているものもあるのですが、しかし、これも過去の例から言うならば、樹体が傷んでしまっているのだからだめだ、こう試験場では言うのです、果樹試験場もそこにあるのですから。これは全滅です、こう申しております。  そこで私は、一体農民は何して飯を食ったらいいのかということをお伺いしたい。今後七、八年の間、改植するとしますと、一体どういうようにしたらいいのだ。天災融資法発動であるとかあるいはまた自作農維持資金であるとか、それでは間に合わぬのではないですか。百三十年続いたミカン地帯をもとの土地のようにするには一体どうすればいいのだ。いまのお話では、現在の補助金によるようなやり方では対応はできない、こうおっしゃるが、一体どうすればいいのです。  およそ明治以来の農林省の農政の指導というものは適切に行われておった。農林省の特に技術屋さんがこれをつくりなさいと言ったら、大体それを農民が忠実に守ってきた。そのために日本農業というものは非常に進んだのだと私は思います。この点、農林省の改良普及員の諸君の御努力というものは、農民にあれだけの信頼を与えた技術屋さんは世界にもそう例はないのじゃないだろうか、日本にもそう例はないのじゃないだろうかと思うくらい優秀であったと思う。しかし、いままで二十年間の指導員というのは一体どうだったのだろうか。ミカンがいいと言えば全国にミカンを植えさせてしまって、それでだぶつかせてしまう。ブドウだってつくれば、ああブドウがいいわということでブドウをやらせてしまって、だぶつかせて国内で余ってしまうというように、お上に対する信頼というのは失われてきておる。これはいまの農林省の役人の諸君は考えていただきたい。明治以来延々として続いてきた農林省に対する農民の信頼というものは一挙にここで崩れ去っておるのが現状ではありますまいか。先輩諸君に対しまして農林省の役人諸君の深刻なる反省を私は求めたいと思う。  それはともかくといたしまして、いまの田中君に対するお話によりますと、私への答弁にもそうですが、ただ内部的にいま検討しているのだ、あるいはまた過去の災害実態を調べますと芽が出てくるのではなかろうか、こういうようなことをおっしゃっている。一体どこに技術屋としての良心が出てきているのです。私はこの質問をするに際しまして、現地にあります果樹試験場に行きまして話を聞いてきた。現地では、とてもこれじゃ芽が吹いてきてもだめです。恐らくこの秋になりましたならば全部枯れることは間違いございませんと太鼓判を押している。一体、農林省本省における役人諸君の姿勢が問題じゃございますまいか。  そこでお伺いするが、内部的にいま検討していると言うが、具体的に何を検討しているのです。この点ひとつお示しを願いたい。
  30. 高畑三夫

    高畑政府委員 先般来の国会の御質疑あるいはお申し入れ等によりまして、改植を要する被災農家に対しまして助成によって改植等進められないかという御要望なり御指摘があるわけでございます。それにつきまして過去の例あるいは現行の災害対策の体系というものに照らしまして内部研究しているわけでございますけれども、五十二年に総額におきまして今回を若干上回る程度のやはり寒波災害があったわけでございます。樹体被害も総額としましては今回を上回るような被害があったわけでございますけれども、五十二年の際も、災害対処といたしましては、天災融資法激甚災害法自作農維持資金制度等によりまして対応していただいておるという、前例から申しますと、そういう状況になっておるわけでございます。  そういうことで、現在の体系、それに先ほど先生、被災農家は今後その七年、八年をどうしていくかというお尋ねでございましたけれども、これにつきましても、現在の災害対策の体系の中では、公庫資金の中に果樹植栽資金というのがございます。これにつきましては、災害果樹農家に対しまして二十五年という非常に長い償還期間で低利融資をするという制度があるわけでございまして、このような現行制度の活用によりまして現在は対応できることになっております。そういう現行制度の中で、今次災害、特に樹体の今後の萌芽、それがさらに樹体として回復できるかどうか、回復できるものそれから枯死に至るもの、そういったものの状況がいまひとつ十分明らかにされておらないという段階でもございますので、ただいま御指摘がございましたように、地域的には枯死だというものもあろうかと思いますけれども、全体の状況把握してまいる必要がありますので、なおその情勢を見ておるという状況でございます。
  31. 井上普方

    井上(普)委員 内部的に検討するといま田中さんに答弁するし、私に答弁したけれども、内部的に何ら検討してないじゃないですか。いかにもやっておるようなことを言うけれども何もやってない。  それから、五十二年ので対応できるだろうとおっしゃいますけれども、五十二年の災害と、私は果樹試験場で聞いてきたのだ、少なくとも徳島県においては問題になりません。五十二年のときはいかにも秋になって高接ぎすればあるいは枯死した枝を切るとそこから芽が出てきた、そして助かるものも半分ぐらいあった、こうは申しております。しかも、五十二年のデータと今度のデータと両方突き合わせての話なんだから。これはとてもだめです、こう申しておる。審議官、あなた技術屋さんですか。技術屋さんならわかると思う。問題にならないほどの被害なんです。全村それなんです。  そこで、当然ここにおいては、先般行われました豪雪被害による折損木と同様な処置が行われてしかるべきだと私は思う。先ほどもこれにつきましてはむずかしいようなことをおっしゃっていましたけれども、やるべきだと私は思うのですが、政務次官、いかがです。先ほども写真をお見せして、あなたもびっくりしたような顔をされておったが、当然、折損木同様な処置がなされてしかるべきだと思いますが、どうでございます。
  32. 志賀節

    志賀(節)政府委員 確かに、先生から御郷里の大変な樹体被害状況をお撮りいただいた写真をしかと拝見をいたしまして、被災農家に対する私の同情の気持ちは余りあるものがございます。ただ、いままで農林水産省事務当局からお話をいたしてございますとおり、現段階でまだすべてのデータが相整ったというふうには理解をしていないわけでございます。すべてのデータが整い、かつ、ただいま井上先生は試験場の方で五十二年のデータと今回のデータと突き合わせたということをおっしゃっておられましたが、五十二年のはすでに完結した上に出てきたデータであると私どもは理解をいたしますし、今回のデータはまだ完結した上に出てきたデータではなくて中間的なデータであるという理解なんでございます。しかがいまして、やはり完結したデータに近いものを求めて、その上に立って私どもは判断を下さなければいけない、こういう考え方でございます。
  33. 井上普方

    井上(普)委員 五十二年の被害状況と現在の被害状況とを比べているのです。そして研究データを調べて、結果、問題にならないぐらいひどい、こういうことなんです。認識が薄過ぎますよ。それはもう枯死なんだから、これじゃ芽が出てきません、出てきてもこれはだめですというのが実態なんです。私も、一体樹体が傷むというのはどこが傷んでいるんだと聞きました。そうすると、新皮の中にある細胞の浸透の状況が狂うのです。浸透が狂うのだったら細胞膜が傷むのかどこが傷むのかと言いましたら、遺憾ながら、実はそこまではいまの植物学ではなかなかわかってないんだなんて申しておりました。もう少しそこらあたり農林省調べてみているのかと言ったら、いや農林省から何もそういうような補助も来ておりませんしデータも出ておりません、こう申されておりました。おかしいな、もう少し植物病理学的に調べておるのかと思ったけれども、調べてない。しかし傷んだところはわかるか、どれぐらいの傷みが五十二年あるいは昭和六年と、昭和六年にはここには試験場がなかったのだから恐らくわかるまいが、全国的なデータを調べてどういうようになっているかと言ったら、いやこれほどひどいことはございません、こういう話なんです。  あなた方、とにかく寒波で傷んだけれども、実際基本的な資料というものは、試験場の学者諸君、研究員の趣味ぐらいにしか補助金は与えてないようなんです。これじゃ本当の被害は一体どういうものであるか、これを直すにはどういうような品種改良をやればいいか、あるいはまた肥料をどういうふうにすればいいかというような指導もなかなかできはすまいという感が私はした。それはともかくといたしまして、五十二年の被害と今度の被害とは全然違う。程度が違う。程度というよりももう質的にも違ってきている。こういうのが研究員の話でございました。  そこで、そういうことを申してもしようがないのですが、これは改植する以外に道はない。とするならば、五十二年の災害というものは、少なくとも今度の災害に対しましては余り参考にならないということに相なるという結論が自然に出てくるのであります。  そこで、いますべてのデータがそろってないのでまだ対策が講じられないのだと申されます。いつが来たらすべてのデータがそろうのですか。政務次官、いつが来たらそろうのですか、ひとつ御答弁願いたい。
  34. 高畑三夫

    高畑政府委員 具体的にいつまでとまだはっきりとは申し上げられる段階ではございませんけれども、各都道府県、団体等を通じまして、萌芽状況、その他樹勢回復等検討に必要な資料なり現地の情報につきまして早急にいただくように要望しておりますので、極力早く検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  35. 井上普方

    井上(普)委員 私は、データがそろってないから対策が講じられないのだ、こう申されるから、データはいっそろうのだ、こう言っている。それの見通しもない。見通しないのでしょうが。これからあなたさっさと行けばいいんだ。何もできてないのじゃないですか。どうなんです、そこらあたり。
  36. 志賀節

    志賀(節)政府委員 今回の樹体被害も御承知のように気候不順から生じたことでございます。したがいまして、この後順調に推移するか、気候がまた不順の事態が訪れるか、これは神ならぬ身のわからぬところでございます。したがいまして、いつ幾日になったならばその被害状況が確定するということはお答えできないわけでございます。しかし、この事態がはっきりした場合には当然対策を講ずることができることになるわけであります。
  37. 井上普方

    井上(普)委員 おかしいじゃないですか。データがそろってないので対策が講じられないと言っているのですよ。いいですか。ところが、データはいっそろうのだと言ったら、お天気次第でこれからまだわかりません、こうおっしゃる。そろったところでやりますと言って、一体いつやるのです。そんな論理の合わぬことを平気で言うのですか。論理が合わぬじゃありませんか、あなた。データがそろってないからここにその対策が講じられないのだ、はっきりしたことを申されないのだと平気で言っている。データはいつまでにそろうのだと言ったら、政務次官あなたは、天候の不順によって生じたので、今後の天候によって左右されるので予測がつきません。何言っているのだ。それなら何もやらないのかということだ。
  38. 高畑三夫

    高畑政府委員 四月上中旬にかけまして農林水産省果樹試験場、九州農試、四国農試等におきまして、今次被害地域のうち特定のところへ樹勢状況被害状況等につきまして技術的な調査に入っております。その時点におきましてはまだ萌芽しておらないわけでございますけれども、五十二年の際も、被災直後は激甚地域におきましては関係者も枯死するのではないかと非常に心配いたしましたが、その後四月から五月にかけましてかなり雨も多くて、それで萌芽しまして、結実枝も出てまいっておるという状況があったというわけでございますので、やはりこの四月から五月にかけてかなり雨も多いわけでございます。そういう経過を経まして、その萌芽の中でも正常な結実枝に至るものと、それから、まあ萌芽したけれども正常な果樹としての機能を失うというものもあるわけでございますから、そういった見分けというものもやはりそういう四月、五月の雨の時期を経てみないと的確な判断がつきにくいというのが、五十二年のときの激甚地域についての経験であったということでもございますので、そういった経過を今回も見たいというふうに考えておるわけでございます。
  39. 井上普方

    井上(普)委員 だから、いつできるのだと言っているのだ。あなたの方は先ほど、データがそろってないがそろったらやりますとおっしゃったが、データはいつまでにそろうのだと言って聞いているのだ。
  40. 高畑三夫

    高畑政府委員 先ほども申し上げましたように、四月から五月にかけましての雨を経まして萌芽、それがどう落ちつくかという判断をしたいというわけでもございますので、今月いっぱいを目途にいろいろ的確な情報も集めまして判断いたしたいと考えます。
  41. 井上普方

    井上(普)委員 さっさとそう言えばいいのだよ。何だ、追い詰められたら少しずつ出していくというような態度。このたびの寒害に対する真剣な対応が全然ないのじゃないかと言わざるを得ない。私は、先ほども申しましたようにこの連休中に見てきた。枯れておったけれども芽の生えておるのも出てきておると正直に先ほど申した。しかし、それはこの秋になると恐らくだめですというのを試験場の研究員から聞いてきて私は申しておるのです。少なくともあなた方はそれで飯食っているのでしょう。プロでしょうが。プロがその態度は何だ。われわれは素人でも見てきているのです。被害が一体どういうようになっているだろうか。あれだけ枯れておる木がどういうようになってきておるだろうかと思って私は聞きに行ってきた。プロである、飯食っているあなた方が、農民を保護する立場にある農林省の役人が、一体その態度で果たして日本の農村を、農政を守り抜く決意があるのかどうか、私は大きな疑問を感ぜざるを得ない。そこで、この問題につきましてはさらに次の機会においてお伺いすることといたします。  次に、農民が困っておるのは、改植する、全部これを切り倒さなければならないが、その際に苗木が不足である。苗木が一本三千円から八千円ぐらいもする。こういう状況で、手当てをした人もおるけれども、手当てのできない農民もおる。これらに対しては、これは共同育苗というようなことを当然考えなければならないが、これに対する助成ということはお考えになっておられますか。いかがでございます。
  42. 高畑三夫

    高畑政府委員 今回の寒波によります樹体被害につきましては、先ほども申し上げましたように、全体的に見まして木全体が枯死して改植を要するものがどの程度になるか、まだ的確な見通しはついておらないわけでございますけれども、共同育苗圃の設置につきましては、被害樹体萌芽状況も見守りつつ検討してまいりたいと考えております。
  43. 井上普方

    井上(普)委員 これはぜひともやっていただかなければ、被害農民は苗木に困っておるし、かつまたそれによって多額の資金が要る。これに対する余り補助金もないというようなことでございますので、この点はひとつ真剣にお考え願いたい。  続いては、もう時間が参りましたので申し上げますが、温州ミカン転換促進事業というのがございます。しかし、ミカンがこういうような被害をこうむり、特に勝浦町のごときは全滅しておる。しかも百三十年の歴史を持つミカン地帯。ところが、温州ミカン転換促進事業についてこれが認められぬということになりますと、これこそ農民は踏んだりけったりになる。でございますので、こういうような歴史的な先進地のミカンの更新は認めるべきであると私どもは考えますが、農林省のお考えはどうでしょうか。ぜひとも認めてやってほしいと思うのですが、いかがでございますか。
  44. 高畑三夫

    高畑政府委員 温州ミカン転換促進事業は、恒常的な過剰傾向にあります温州ミカンから他作物への転換を進めるということを目途に、温州ミカン需給均衡を図る目的で五十四年から実施しておるものでございます。五十四年度から三カ年計画で開始したわけでございますが、昨年十二月に公表いたしました果樹農業振興基本方針によりまして、温州ミカン需給見通しは一層厳しいものとなりましたために、温州ミカン転換計画を強化いたしまして、年次計画も五十八年度まで延長いたしております。このような状況。それから、温州ミカンから他の作目への転換という本事業の趣旨から見まして、温州ミカンから温州ミカンへの改植ということにつきましては、これを事業対象から除外することになりまして、今後におきましてはこれが対象にならないということになっております。ただ、五十六年度につきましては、苗木の準備をしてあったものにつきましては、特例措置として事業対象にすることにいたしております。
  45. 井上普方

    井上(普)委員 五十六年度だけ特別と申しますけれども、この地帯は百三十年の歴史を持っておる先進地で、これ以上の適地はない。ところが、あなた方が農政の指導の錯誤によってほかに温州ミカンを奨励した、そのためにだぶついているのでしょう。先進地はきゅうきゅう言っているのです。だから、温州ミカン転換事業については、ミカンの更新ということはぜひとも認めていただくように、五十六年のみならずやることを強く要求いたしまして、時間が参りましたので、質問を終わります。
  46. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 武田一夫君。
  47. 武田一夫

    ○武田委員 昨年の十二月中旬から本年の三月上旬に非常な寒波の到来がございました。特に二月末、二十六、七日の西日本中心とした記録的な低温によって、果樹野菜等が非常な被害を受けたわけであります。私たちも早速被害の多かったと言われる愛媛県を初め各地の状況をつぶさに見てまいりました。そして、状況のすさまじさ、農家の皆さん方の御苦労をいろいろとお聞きしてまいりまして、農林水産大臣にはその救済対策につきまして直ちにお願いをしておるわけであります。政府としてもるる御配慮いただいているということでありますが、この果樹中心とした問題につきまして二、三御質問いたしたいと思います。  まず一つは、先ほど被害状況を一応お聞きいたしたわけでありますが、今後これはもっとふえるものかどうか。特に樹体の損傷被害はどうなるかというはっきりしたものがわかるのはいつごろなのかという問題。これは五月から六月になると一通りわかるのじゃないかということを現地の方々には聞いてきたのでありますが、農林省としましてはこれをどのようにごらんになっているかという問題について、まずお答えいただきたいと思います。
  48. 高畑三夫

    高畑政府委員 今次の寒波被害によりまして損傷を受けました樹体につきまして、それが今後回復できるかどうか、そういった状況につきましては、その後の樹勢回復あるいは雨によります萌芽といった推移が、現在のところまだ全体としては把握するに至っておりません。これらの推移につきましては、五十二年のときの経験等に徴しまして、やはり四月から五月にかけましてそういった状況を見きわめる必要があろうかと考えております。
  49. 武田一夫

    ○武田委員 枯れたものは別にしまして、枯れないものが今後樹勢回復するにはかなり時間がかかるのではないか。聞くところによると、三年ないし五年くらいはかかるのじゃないかというようなことも聞いてきたのであります。となりますと、正常な場合と比べると農家にとってはかなりな損失なわけであります。こういうような状況の中で、こうした生産農家の救済を十分考えてやらなくてはいけない。ですから、短期的に救済したからいいというのではなくて、今後そういう状況を踏まえながら、それなりに随時新しく対応を考えてやる必要があるのではないか。非常に意欲的に生産に励んでいる生産農家の方々を私たちは多く見てまいりましたし、こうした不幸な災害から立ち上がることを考える場合には、まずそうしたバックアップが必要だと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  50. 高畑三夫

    高畑政府委員 今次の寒波被害を受けられました被害農家等に対しましては、天災融資法発動あるいは激甚法発動等の措置を行いますとともに、被害をこれ以上拡大させないための技術的な指導も三月末に指導通達を発しまして、地方農政局、都道府県を通じまして末端被害農家にこれらの指導が行き渡るように配意しておるところでございます。  今後の対応策につきましては、先ほども御答弁いたしましたように、なお樹勢回復なり萌芽状況を見きわめる必要があるわけでございますが、これらの的確な状況把握いたしまして、さらに技術的な指導等につきまして万全を期してまいりたいと考えております。
  51. 武田一夫

    ○武田委員 開拓パイロット事業などの地域もありまして、そういう地域ではことしあたりから借りたお金も返さなくてはいけないという地域もあったようであります。現実にどうしたらいいのかという非常な戸惑いがあったわけでありますから、そういう対応についても、ひとつ十分に農家の皆さん方の苦労を回避させてあげるような方向をお考えいただいて、対応策を十分にやっていただきたいということをお願い申し上げます。  二番目に、共済の加入という問題でありますが、今回西日本、これは五十二年にもあったそうでありますが、今回の場合また地域が違っていたし、非常にひどいということであります。五十二年にもあった、今回もこういうのがある、今後もまたあり得るということは、今後の一つ対応として十分考えていった方がいいのではないかと私は思うのです。共済問題というのは、暖かい地域だから大丈夫だというので入ってない方々が多かったようであります。こういう状況を今後改めていくような方向が必要だと私は思いますが、現在の加入状況と、今後加入促進のためにどういうふうな手を打たなければならないか、この点について御答弁いただきたいのです。
  52. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 果樹共済のような共済制度というのは、災害の場合の最も中心になるべき措置として今後も育成していく必要があるという御指摘、全く同感でございます。  現在の加入の状況はどうなっているかということでございますが、収穫共済で二七、八%、それから樹体共済になりますと一割未満、まだ非常に低い水準にございます。これは一つには、制度発足後まだ比較的日が浅いということもございますが、同時に私ども、関係者からは、果樹共済というのが本当に技術水準の高い専業農家にはそれだけなりのメリットが少ないという点があるのではないかというふうな御指摘を受けてまいったわけであります。そういうことで、実は昨年国会でお願いいたしまして、災害補償法の一部改正は果樹中心とした改善を幾つか図ってきたわけでございます。私ども、今回のこういった災害を控えまして、まさに制度改善もいたしたところでございますので、これを軸にして、今後関係府県とも提携をいたしまして、これの加入に対しましては促進を十分に図ってまいりたい、こういうつもりでいるところでございます。
  53. 武田一夫

    ○武田委員 いざという備えの場合にこの大事な共済という性格が十分に生かせないという、そういう非常な残念なところがあるわけですが、内容の充実を一層図って対応してもらいたい、こう思います。  それから三番目に、産地復興のための改植あるいは接ぎ木に要する苗木、穂木といいますか、その確保、これはどうなっているのか、あるいはまた樹勢回復への助成というのはどうなるのかという問題であります。特にもう一つは、晩柑類を対象とする改植費に対する助成措置をぜひお願いしたいという声が強かったのでありますが、こういう点についてどういうふうな取り組み方をお考えであるか、お聞きしたいと思うのです。
  54. 高畑三夫

    高畑政府委員 今次寒波被害を受けられました被災農家に対しましての対策につきましては、特に御指摘改植等が必要になってまいるという農家につきまして、いろいろ国会の御質疑なりお申し入れもございますので、部内的には研究をしてございます。     〔菊池委員長代理退席、福島委員長代理着席〕 ただ、現在の災害に対します措置の体系なり過去の事例等から申しまして、率直に申しまして、改植に対する補助という形での助成は困難というふうに考えております。やはり農林漁業金融公庫果樹植栽資金というものがございますし、天災融資法激甚災害法によります災害の低利資金、それには自作農維持資金もございますので、これらの活用によって対処するということになっております関係で、困難ではなかろうかと考えております。  なお、樹勢回復なり萌芽状況につきまして見きわめる必要もございますので、これらの推移を現在見守っておるという状況でございます。
  55. 武田一夫

    ○武田委員 次に、農業気象観測の問題でありますが、これは毎回いろいろと問題になるわけでありますが、東北は冷害でやられまして、今度は西日本寒波と、世界的に寒冷化というようなことも言われているわけでありますが、これは農業にとりましては非常に重要な課題でございますが、世界的なこの情勢から言いまして、今後こういうような寒冷化という問題、寒波の襲来というものはどういうふうに気象学的に考えられているか、そういう見通しのようなものをまず最初にお聞かせ願えればありがたいと思うのです。
  56. 立平良三

    立平説明員 いま問題になっております低温の予報につきましては、それを前日に予報するということですとかなりの精度で予報できるのでございますが、それが一週間先となりますと精度はなかなか上げることはむずかしい。さらに一カ月先あるいは三カ月先にそういう低温を予報するということになりますと非常にむずかしい問題になってきます。現在、世界的に見まして、幾分過去の経過を見ますと気温が下がってくる状態にありますが、これが、このままこの傾向が続くかどうかという点につきましても、非常にむずかしい問題がございまして、いまのところは余りはっきりしたことは言えないというふうな段階にございます。
  57. 武田一夫

    ○武田委員 非常にむずかしい。日本は世界的には非常に優秀な技術を持ってやっているということを伺っておりますが、しかしながら、それでなおかつこうした問題が起こるということは、今後さらに一層の気象観測の体制というものの強化が必要だと私は思いまして、鋭意努力をして、こうした面の予算の措置等も含めあるいは人材の確保も含めてさらに充実しなければならない、こう思っておるのであります。そういう意味でひとつ今後十分な取り組みをお願いしたい、こう思うのです。  それとあわせまして、今度は、指導する国あるいは県、市町村、組合等の方々とお話をしますと、その地域が果たしてミカンをやっていいものかどうかという、そういうようなことがちらっと出てきて気になったわけでありますが、金を取りいいから種類を転換する、ところがその種類はどうも合わないのじゃないかというようなところまで植えてこういう無理が来たのじゃないかなという、私は現地に行ってそういう危惧の念を抱いたのであります。適地適作という問題も指導を十分しなければいけない、こういうことについての当局の取り組みというものは、こういう事件といいますか事故を防ぐための一つの大きな防備策になるのではないか、こう思われるわけでありますが、その点の対応というものはどうなっているのか、この点についてお尋ねしたいと思うのです。
  58. 高畑三夫

    高畑政府委員 果樹のように永年性作物につきましては、特に適地適作につきまして意を用いる必要があるということにつきましては御指摘のとおりでございます。  そこで、かねてから果樹農業振興基本方針におきまして果樹植栽に適する自然的条件に関する基準というものを定めております。これによりまして適地への植栽指導いたしますとともに、気象災害対策につきましては、春夏作の技術指導通達によりまして技術指導を行っております。特に今次の寒波被害につきましては、その状況にかんがみまして、趣旨の徹底を図りますために、三月末に以上のような点をさらに具体的に、被害果樹につきまして新芽が伸びその緑化が終わるまで暫定を控えるということや、落葉した木では日焼け樹脂病の発生防止のために幹や枝に白塗剤を塗布するとか、被害程度樹勢に応じた施肥等の肥培管理を行うこと、そういった具体的な事項につきまして技術指導の通達を発しまして、地方農政局、県等を通じまして被害農家等に対する指導の万全を期しておるところでございます。  今後とも果樹農業振興基本方針の長期需給見通しに即しまして、温州ミカン転換の促進、晩柑類計画的な植栽を図りますとともに、植栽を一層強力に指導することによりまして、柑橘類農家の経営の安定を図ってまいりたいと考えております。
  59. 武田一夫

    ○武田委員 まだ時間がありますので、同僚の吉浦議員に関連質問で質問の時間を譲らせていただきまして終わらせていただきますが、最後に、指導というもの、そういう一つ対策を打ち出しても十分に徹底しないきらいがあると、私はいろいろな関係者に会って痛感するのです。そのときは自分たちがいろいろやったつもりが、いろいろなところで漏れているというようなことを実感しているわけですね。あのときあそこのところをちょっと転換するのをやめさせておけばよかったのではないかというようなことがちらっと出てくるということ、これはまことに遺憾なことであります。そういうことが、農家の皆さん方にとっては、そういう指導があってやったのである、それがこうなった、どうしてくれるのだという大変な不満と不信となっているわけでありますから、十分なる対応といいますか、指導強化の面の取り組み、担当官の方々の努力、そういうものを今後ひとつ十分に指導していただきたい。私はこのことを要望しまして、吉浦議員に残りの時間を譲らしていただきます。
  60. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 関連して残りの時間を質問さしていただきたいのですけれども、すでに農林省の方に私の方から房州ビワの被害の件についてお願いをいたしておきましたけれども、きょうは通告をしておりませんので、一点だけお答え願えればいいということでお願いしたいと思うわけでございます。  本年の被害は、二月の末の思わぬ大雪に見舞われまして、房州では珍しい零下七、八度というふうな温度に下がりました。摘果時期から、ちょうどいま袋かけ等が終わりましたけれども、房州ビワが七割方、平均して五、六割というところが被害状況のようでございます。十七億円のところ、恐らく十億円くらいの被害じゃないかと言われているわけでございます。私も現地に飛びましていろいろ調査をいたしました。天然現象と言ってしまえばそれまででございますが、五十二年に続いて今度の被害でございます。五十二年のときは恐らく九割方の被害を受けましたが、今度は大きくいって七割だろうというふうに思います。  そこで、五十二年のときの現地の方々の天災融資法の適用の利用状況でございます。ビワに関係すること以外は一切使ってはいけない、生活資金に困っているというふうな点で農家の方はお願いしたのでしょうけれども、ビワに関すること以外は一切だめだということで、大変お困りだったようでございます。基準が厳しいのは結構でございますけれども、農家の方々の天災融資法の利用というものについて、農林省がどういうふうな利用状況かをどういうふうに御判断なさっているのか、その点を私は聞きたいわけでございます。  と申しますのは、資材等の準備はすでに昨年の十月ごろに終わっているわけです。お金はその面で全部、箱の準備やら、あるいは肥料の準備やら、あるいは消毒の準備やら、すべての点で申し込みをしているのに、さて被害を受けてお借りする段階では、その生活に困っている現状を見ますときに、その使い道というもの、一枚一枚の領収証によってしか天災融資法の手続がとれないというふうな状態では大変困る、こう思うわけでございます。そういう点で、農林省はどういうふうな指導をし、また現状をどういうふうに把握なさっているかをお尋ねしたいのです。
  61. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 天災融資は、農家の経営の状況、たとえば果樹農家あるいはその他の農家等によりまして償還条件がそれぞれ違っておりまして、五十二年のときに、いまのお話ですと、ビワの関係以外の被害に対しては一切融資対象としてはいけないというふうな運用がなされたというふうに承ったわけですが、それはやや厳し過ぎる感じが私どももいたします。果樹農家であれば、やはりビワのみならずその他の果樹関係もいろいろ被害を受けていると思いますし、そういうものに要する必要経費でございますれば、これは本来の趣旨から言いましても融資対象であってしかるべきであろうというふうに思っております。  それから、いまのお話ですと、すでに購入してしまった資材の資金は対象にならないのかというお話でございますが、私どもは、要すれば今次のような災害を受けた場合に、その災害に関連して必要な資材その他の経費の資金のめんどうを見るという趣旨でございますので、たとえばすでに昨年購入してしまっておるものにつきましても、それの支払い等がこれから今後に延びるというふうなものにつきましてはやはり対象にしてよろしいというふうに考えております。ただ、過去において購入し、過去において支払いをしてしまったものについてさかのぼってということになりますと、これは本来の趣旨から変わってまいりますので、そこまでは広げられませんが、今回の趣旨に照らして運用できるものは、弾力的にできるだけ私どももできるように指導をいたしてまいりたいというふうに思います。
  62. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ありがとうございました。
  63. 福島譲二

    ○福島委員長代理 稲富稜人君
  64. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、本年度の柑橘の寒冷による被害等を中心にいたしまして、すでにこの問題は災害対策特別委員会でも相当論議されておりますし、国としてもこれが対策はすでに立てられているだろう、かように考えておりました。私も福岡県の被害現地を見たのでございますが、すでに四十年、三十年というミカンが枯れかかっている。こういうような状態を見ますと、今回の被害は三十年あるいは四十年にさかのぼってなかったのじゃないかというような大きな被害現象だと思うのでございます。  それで、この罹災者というものは一体どうなるのか。ことしはだめだろうが、樹木そのものが枯れてしまったらどうなるか、こういうような非常な心配をいたしているというのが現状でございます。こういうときこそ政府は率先して、これが対策はどうすべきであるか、あるいは樹体がこれによって枯死したものに対してはどうするのだ、あるいは特別立法措置でもやって融資関係もやるのだ、こういう方針を早く決めて、そして罹災者が安心して次の生産に取り組むことのできるようなことをやらせることが親切だと私は思う。  ところが、先刻から話を承っておりますと、まだどのくらいの被害があるかわからないから、統計をとらなければわからないのだとか、私もそれを聞いて全くあきれ果てている。もしも被害があった場合こうするのだ、それでこれに対して、樹体回復のためにどういう手を打てばいいのだということを早く指導するということなんです。そして、もしも樹体回復しなかった場合は政府としてはこういうような救済の方法を立てるのだ、こういうことを示すことが必要であると私は思う。しかしながら、今日になって、統計が出ましてデータが出ました上で何とか処置をとりますというようなことは、非常にこれは不親切だと言われてもいたし方ないと思う。それで、この際、これほどの被害に対しては場合によっては当然特別立法措置も必要であるし、どういうような対策を具体的にとるか、しかも罹災農民が安心し得るような指示が必要だと思うのでございますが、これに対してはどういうお考えを持っていらっしゃるか承りたいと思うのでございます。
  65. 高畑三夫

    高畑政府委員 今次の寒波被害に関連いたしまして、早急に手の打てる措置につきましては、天災融資法発動、激甚災法の発動、さらには農業共済金早期支払い等につきまして措置をしてまいったところでございます。  御指摘果樹樹体そのものの被害につきましては、被害直後の判断と、それから四月、五月の雨を経まして樹勢回復とか萌芽とか、それがまた枝になってまいりまして正常な果樹としての枝になり樹体として残り得るか、それとも芽は出たけれども正常な機能を失うに至るか、その辺の判断につきましては、やはり過去の例に徴しましても、この四月、五月のそういう時期を経ませんと的確な判断がつきがたいということがありまして、現在その推移を見守っておるというところでございます。
  66. 稲富稜人

    ○稲富委員 私が申し上げたいことは、こういうような異常災害に対しましては、やはりデータをとって何らかの処置をとるのだ、あるいは天災融資法も当然なことなんです。何らかの処置をとるのだということを示さなければ、各町村でもどうしていいかわからないのですよ。ただ現地を見て右往左往しておるだけなんです。どうなるでしょうかと罹災者が憂慮しておる状態でございますから、すべからくこういう問題に対しては、こうなった場合はこういう対策をやるのだ、あるいは樹勢回復しなかった場合は育苗の対策もやらなければいけないと思うし、そういうことをあわせて指導することが私は非常に必要だと思いますので、今後速やかにそういうような方策を示していただきたいということを、私はこの機会に特に希望として申し上げたいと思うのでございます。  それから、これは先刻武田君も質問になっておったのでありますが、今回の災害に対してわれわれが思いをいたすことは果樹共済でございます。  私たちが今日までのこの果樹共済の現状を見ますと、どうしても加入率が少ないのですね。たとえばミカンを見ましても、私の知っておるものでございますから、違っておったらお教え願いたいと思いますが、温州ミカンのごときは、今日までこれに加入しているのは二十二県、夏ミカン八県、指定柑橘が四県、こういうわずかな状態でございます。それで、樹体共済の方は、温州ミカンは六県、夏ミカン一県、指定柑橘は一県、こういうような僅少でございます。樹体共済の問題は後からにしまして、果樹共済に対しましてこういうように非常に加入者が少ないというのは、どういうところに原因があると解釈していらっしゃるか。また、先刻の質問に対しましては、各県とも連絡をとって推進するというような御意見でございますけれども、こういうように推進されない原因はどこにあるか、あるいは掛金の問題であるとか支払いの問題、いろいろありましょうが、どういうふうに考えていらっしゃるか、承りたいと思うのでございます。
  67. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 果樹共済の加入状況がいまだ非常に低いということは御指摘のとおりでございまして、私どもも共済制度を正常に発展させていくためにも、また、農家が今回のような異常な災害に遭遇した場合に、何といってもそれを救う本体になる制度として共済への加入促進を図っていきたいというのは、実は前々からの考えでございますが、こうした加入状況が低いのは一体どこに原因があるのか、私どもの認識としましては幾つかの原因がある。  一つは、先ほども申しましたのですが、共済制度が本格実施後まだ日が浅いということが、十分に浸透していない一つの原因であろうというふうに考えるわけです。日を経るに従いまして現在でも少しずつ加入率はふえておりますが、いまだきわめて不十分である。  第二の理由といたしまして、これは前から指摘をされたことでありますが、果樹農家というのは技術水準が非常に区々まちまちでございまして、特にいわゆる専業農家といいますのは、技術水準が非常に高い農家が多いわけでございます。こういう農家にとってみますと、現在の共済制度というのはどうもそうでない農家の方に焦点が合わされていて、特に水準の高い農家はそれほどの魅力が持てないという点があるという御指摘が幾つかあったわけでございます。  この点につきましては、私どももいろいろと検討いたしまして、実は昨年法律の改正をお願いをいたしまして、ほとんど果樹の問題を中心に、いわゆる集団加入奨励金の交付でありますとか、無事故農家に対する共済掛金の割引の問題、あるいは全相殺方式や特定危険方式の足切り水準の引き下げの問題、それから、従来府県別に一本で設定されておりましたいわゆる共済金額につきまして、府県別なりさらに地帯別なり樹種別なりにきめ細かく設定をしていくことによって、地域の実情を十分に反映するように運用するという問題を含めまして、多くの改正をお願いをし、成立いたしたわけでございます。  時期もまさにそういう時期でございますし、また、今回の災害も経験したわけでありますので、ひとつこれを大きなきっかけといたしまして、共済加入につきましては、府県や団体とも協調いたしまして、十分に農家の方に御理解をいただき、もっとたくさん入っていただくように図っていこう、こう考えているところでございます。
  68. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、樹体共済のごときは、やはり制度そのものを考える必要があるのではないか。被害をこうむりますと、もちろん掛金も安いのだが一年間に二年分払ってしまう。樹体の場合、枯死した場合、植えかえると何年間は収穫がないということになってくる。ここが樹体共済に加入する方の期待が非常に少ないのではないかと私は思う。こういう樹体共済をやろうとするならば、果樹共済もそうでございますが、内容に対しましても加入者がもっと魅力の持てるような制度にしなければいけないのではないか、かように考えますが、この点は将来どういうふうにやろうと考えていらっしゃるか、承りたいと思います。
  69. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 果樹共済の中でも特に樹体共済が加入率が低いというのは実は御指摘のとおりでございまして、これは、一つには、先ほどの収穫共済と同様な理由以外にも、樹体自身が災害を受けるケースが非常に少ないということが、やはり農家にいたしますと加入しようという意欲がそれだけ阻害されるということもあろうと思います。しかし、そういった過去の災害の頻度等も考えながら保険設計がされているわけでございますので、やはり万一の場合に備えるという本来の趣旨を生かすためには、十分に入ることが農家にとってもそれなりの受益を受けるのだという御理解をいただくことが実は何よりも大事だろうと思うのでございます。  そこで、先ほどの改正点を幾つか申しましたが、その際も、これは農家の側からの御意見としてあった点でございますが、樹体共済の支払いで、従来は農家単位で一割以下の損害については支払いはしない、一割を超えるものについて支払いを開始する、こういった制度になっておったわけでございます。そういたしますと、とかく大きな専業農家の方はかなりの被害を受けても一割に至らないために支払いを受けない、それに対して比較的小さな兼業農家等につきましては、それが比較的少なくても受けられる、いわゆる共済金の支払いを受ける機会が非常にまちまちになってくる、こういう御意見もありまして、その点も確かに私ども考えなくてはいかぬことだろうということで、今回の改正では、一割以下でありましても、一定額、たとえば十万円を超えるような場合については支払いの対象にするというふうな改正もいたしたわけでございます。  しかし、果樹共済の特に樹体の共済をめぐっては、まだいろいろな問題点もはらんでいるということは私ども承知いたしております。制度の問題でございますので、災害が起こり、直ちにそれに向けて改正するわけにはまいりませんけれども、これまでの検討結果なりまた農家の声なりを蓄積いたしまして、やはり不備な点については改善していくという姿勢は、今後も私どもは努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  70. 稲富稜人

    ○稲富委員 果樹共済に対しましては、ただいま申しましたように、収穫共済でもあるいは樹体共済でも、いま矢崎さんお述べになりましたように、今後伸ばさなければいけないという希望をわれわれは持ちます。これはもちろん、いまの内容の問題も魅力のある内容にするということも一つと、一つは、やはりこういう事業というものは理解をさせること、これが必要なんです。これがためには現在の農業共済の組織そのものにも問題があるのじゃないか。たとえば、かつて農業共済というものが非常に苦境なときにあった時分に町村移管をいたしました。今日でも農業共済の事業は町村移管をやっているのがたくさんあります。あなたも現に福岡へいらっしゃって知っていらっしゃると思う。こういうような町村移管をやって、共済事業というものはこれに携わる者が内容を知るためには何年かかかるのです。それを町村の役場の吏員がただその共済をやらされたから受け持っておる、こういうようなことでは、共済制度が本当に国民のみんなに理解されるような、浸透し得るような状態になり得ないと思う。これはやはり制度上の問題から、今日の共済の、あるいは町村移管の問題、あるいは共済の組合というものの統合とか、そういう組織そのものから検討する必要があるのじゃないか、私はこういうことを考えておりますが、これに対してはどういう考えを持っていらっしゃるか、承りたいと思うのでございます。
  71. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 農業共済を円滑に進めていくためには、まずその母体をなしている組織自体がしっかりしないといけない、こういう御指摘であろうというふうに思います。御指摘ごもっともの点でございまして、私どもも組織体制の整備という点は意を用いておりまして、基本的な考え方としましては、団体共済というものを主体といたしまして、できるだけそれも基盤を強化するように広域に合併を進めていく、こういう姿勢で指導いたしておるわけでございます。今後とも、よく地域の実情に応じた、画一的でない指導については、十分に手落ちのないように進めてまいりたいというふうに考えております。
  72. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんので、この機会に一言お尋ねしたいと思うのでございます。  御承知のとおり、今日種苗法というのがあります。この種苗法の第一条に「流通の適正化と品種の育成の振興を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする。」ということがはっきり明示されております。ところが、この種苗法の登録の問題につきまして、いろいろこれを悪用する、かえってこれが品種の発展を阻害するというような例もよくありますので、これが取り扱い方、登録等に対しては慎重にやるべきものである、かように私は考えておるわけでございます。  たとえば、一例を申しますと、こういう問題があります。今日、登録品種の柑橘の中に大谷イヨカンというのがあります。これは登録をされたのが五十五年八月十三日でございますが、これを大谷政幸という人が登録している。ところが、これを農協が軽視をしまして、そして相当な値段でこれの許諾権を売買されている、こういうようなことが事実あるわけなんです。こういうことになりますとかえってこれが阻害されるということになりますので、これはよほどそういうことのないような行政的な指導というものが必要である、かように考えるわけでございます。  さらに、この行政的な指導をやらなければいけないのはミカンばかりではございません。ブドウでもございます。御承知のとおり、ブドウに、今日福岡県でも非常に通用しておりますオリンピアというのがあります。このオリンピアというのは非常にいいブドウであって、相当広範に栽培されております。ところが、これに対しまして別なところの人が、同じようなものを「あけぼの」という名によって登録申請をしておるはずなんです。そういう問題を十分調査してこの登録をやられないと、これがために従来オリンピアを栽培してやっておる者が、同じ品物が別な登録で「あけぼの」だといって、これが利権につながるということになりますと、発展に非常な阻害をするということになります。そういう点から、この種苗法に対する登録というものは実に慎重にやると同時に、これに対する行政指導というものを誤らないようにやらなければ、法の立法の精神に逆行することになりますので、これに対して特にどういうような考えを持って処理していかれようと思っておるのか、今後のことがありますのでこの機会に承っておきたいと思うのでございます。
  73. 高畑三夫

    高畑政府委員 新品種登録制度につきましては、発足後三年近くを経過するわけでございます。この登録並びに登録されました品種の適正な生産、販売等につきましては、慎重にかつ適正に進めるべきことは御指摘のとおりと思っております。  御指摘になりました許諾料等の問題につきましても、この種苗法が制定されました当時の両院の委員会の附帯決議もございます。これらにつきまして適正な指導をするようにという御趣旨でございましたが、それらを十分に踏まえまして、必要に応じ適正な指導をしてまいる所存でございます。  特に許諾料につきましては、本来当事者間の契約、合意によりまして定められるべきものでございますけれども、一応一般的な考え方といたしましては、他の類似の品種の種苗の価格に比べまして不当に高くない水準であり、農林水産業の用に供せられますにふさわしいような水準であるということと、他方、品種登録者にさらに育種の意欲を生じさせますような利益が得られる水準であるという、二つの要素が満たされますような水準が最も望ましいというふうに考えております。  ただ、現実の問題といたしましては、登録品種の許諾料の水準は、多数の既存品種との競合関係の中で、その品種を用いられる方の経済的な効果と、それからその品種を育成される方のコスト等のいろいろな要素の総合的な勘案によって決定されるということになっておりますので、この許諾料の妥当な水準というものを一般的な姿で定めることは技術的に困難だと思っております。新しい種苗法の運用に当たりましては、御指摘のように、適正な登録、それから登録されました品種につきましての許諾料等の適正な運用といったことが非常に重要でございますので、特に許諾料等をめぐりまして種々問題が生じますような場合には、まず、種苗関係の公益団体もできておりますので、これらの公益団体のあっせん等に期待したいと思っておりますけれども、やはり農林水産省といたしましても、登録品種の円滑な普及が阻害されることのありませんように、必要に応じまして適切な指導を図ってまいりたいと考えております。
  74. 稲富稜人

    ○稲富委員 もう時間がありませんので結論だけ申し上げますが、いま私が最後に申しましたブドウのオリンピアの問題でございます。このオリンピアというのが非常に広範になっておりまして、新品種として同じようなものを「あけぼの」としていま申請されておるはずなんです。これがもしも許可になりますと非常に大きな問題が起こると思いますが、その点をどういうように把握していらっしゃるか、よほどその品種を双方ともお調べになって対処していただきたい、かように考えます。時間がありませんので、そういうことを重ねてお尋ねしまして、あなたの方の考え方を承りたいと思います。
  75. 高畑三夫

    高畑政府委員 御指摘のオリンピアと類似の「あけぼの」という品種につきましての登録の問題でございますけれども、当省の所轄の審査体制によりまして審査しました結果、やはりオリンピアそのものとは違うという形質の認定もございまして登録したという経緯でございます。  そういうことでございますけれども、やはりこの登録の行政運営につきましては、先ほど御指摘のような、いやしくも疑惑を生じ、関係者の間に品種行政につきまして不信の念を抱かせないように、十分配慮してまいりたいと思っております。
  76. 稲富稜人

    ○稲富委員 それじゃ「あけぼの」の方はもう許可になっておりますか。そうなりますとこれは重大な問題が起こるのですが、「あけぼの」の登録を認められておりますか。
  77. 高畑三夫

    高畑政府委員 「あけぼの」の登録につきましては、現在登録いたしました月日につきましてはちょっと手元に持っておりません。これまた至急、後刻御連絡いたしたいと思っております。
  78. 稲富稜人

    ○稲富委員 登録されたとするとあるいは訴訟が起こるかわかりませんよ。ほとんど同じもので、何か農林省が種が少し小さいから品種が違うじゃないかという解釈をされていると聞いておったのですが、農林省に非常に圧力がかかって農林省は認可するのだという話を私たち承っておったのですが、それをすでに、そういう反対もあっておるのに認可されたというと、将来この問題は訴訟までやられるという問題が起こらぬとも限りませんので、この点はひとつ十分考えておいていただくように、この機会に私からも強く警告申し上げておきます。  終わります。
  79. 福島譲二

    ○福島委員長代理 野間友一君。
  80. 野間友一

    ○野間委員 異常寒波による被害についてお聞きをしたいと思いますが、とにかく大変な被害なんですね。愛媛あるいは私の地元であります和歌山、ここなどで柑橘の産地に特に多い。和歌山の場合には、統計情報部の三月十六日現在調査、これは六十億円になっておりますが、三月二十五日調査では実に百十二億円、大変な額になっております。先ほど論議がありましたが、樹体被害については、その後四月に入りまして若干回復しつつあるものもあるやに私も承知しておりますけれども、何といいましてもことしの、今回の異常寒波は各地とも記録的な最低の気温で、それもしかも長期間にわたって続いたということ、その結果が最悪だということになると思います。  柑橘あるいは梅、ビワ、これらが特徴的に出ておりますが、農家の減収は大変なものだ。五十二年の被害との関係も云々言われますが、これは大変なものだと私たちは思うわけなんです。何とかしてほしい。農水省は天災融資とかあるいは激甚災害、これの指定、あるいは既存の借入金の償還期限の延長あるいは共済の早期支払いの準備、こういうものをいま準備されておるやに聞いております。私も前からずっと要求しておりましたが、この被害金額、ちょっと見ましても、愛媛県の東予市では平年の柑橘生産額の三倍強の十億円、和歌山の田辺市では梅、柑橘で三十五億円、南部川という村がありますが、ここでは梅を中心に全農家被害が出て、被害額が村の年間予算の半分、十億円です。こういうかつて経験したことのない被害が生まれております。御案内の徳島の勝浦町、これは何度も農林水産省にも陳情に行っておりますが、町の年間予算の約六倍、百十億というのが被害金額として出ております。  そこでお伺いしたいのは、いま私が申し上げた幾つかの救済の措置は講じられておりますが、これで一体いいのかどうか。被害救済にとりましてこれだけでいいというふうにお考えなのかどうか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  81. 高畑三夫

    高畑政府委員 今回の寒波によりまして被害を受けました果樹農家に対します措置といたしましては、早急にとり得る措置につきましては、天災融資法発動激甚災害法激甚災害の指定、果樹共済農家への共済金の早期支払い、あるいは金融機関に対する既貸付金償還猶予等指導等につきまして措置をしてまいったわけでございます。  今回の災害特徴でございます樹体被害が大きいという点につきましては、樹体被害状況という面につきましては、やはり寒波の後、樹勢回復あるいは雨が降りまして萌芽してくる、それがどの程度正常な果樹としての機能を回復できるか、そういった点を見きわめる必要がございます。したがいまして、そういう萌芽等の状況につきまして現在その推移を見守っておるというところでございます。
  82. 野間友一

    ○野間委員 順次お聞きしますが、時間がありませんのでできるだけ簡潔にお答えいただきたいと思います。  いつも問題になります共済の問題です。やはり共済に対する期待が大きいのは間違いないことでありますが、すでに樹体が枯死をして着果しない、つまり被害が確定したもの、あるいは被害割合が大方推定できるもの、こういうものについてはぜひ仮払い、これをしてほしいという要求が非常に強いわけでありますが、農水省は仮払いは何とか応じたい、あるいは本払いももちろんそうですが、その時期をいつごろ払うのか。いろいろ種類があります。たとえば和歌山ではハッサク、三宝、梅、愛媛ではイヨカン、あるいは徳島ではそれぞれの樹体についての被害の共済がありますが、大方のめどがありましたら簡潔にお答えいただきたいと思います。
  83. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 共済につきましては、その被害実態がかなりはっきりした段階ではできるだけ需要に応じまして仮払い等もするように、こういった指導をいたしております。  ただ、いま御指摘の中で、たとえば樹体共済と収穫共済の関係では、農家単位にどれだけの率を超えたら支払いをするというふうなところでの相違点も実はあるわけでございます。したがいまして、樹体を支払ったら直ちに収穫共済につながるというわけではありませんけれども、ある時期を待って、収穫の見込みがかなりわかるという段階はどうしても必要になるわけでございますが、それにいたしましても、ひとつできるだけ時期は早めて措置をしていきたいというふうに思っているわけでございます。  およその時期はいつごろになるかというふうなお話でございますが、たとえば温州、ナツミカン等は、収穫共済で言いますと、年を明けて温州では一月、それからナツカンでは七月というふうなのが収穫共済の時期でございます。仮払いではかなりそれよりも、およそのめどがつく時期というのは、たとえば温州ミカンで言いますと、ことしの秋九月ごろになりますとほぼ見当がつく、そういう段階を迎えますといまのような仮払い等の対象に可能になるというふうに私ども思っております。それから、樹体の時期というのは物によって時期が違いますが、大体時期的に申しますと、樹体共済の支払いが可能になりますのは七月ないし八月ごろというのが通常の時期でございます。
  84. 野間友一

    ○野間委員 ぜひこの早期支払いをお願いしたいと思います。  それから、共済に関連してお聞きしたいのは、露地野菜の共済ですね。たとえば、今度の異常寒波で、和歌山でも印南というところがありますが、この町でキヌサヤエンドウあるいはウスイエンドウ、こういうものが中心となりまして約六億円の被害を実は受けているわけですね。そこで、私どもも露地野菜の共済をぜひつくるべきだということをいままでも申し上げてきたわけですが、これはいま農水省でも検討しておると思うのですが、こういう要望に対していつごろをめどに検討を進められておるのか、この点についてお答えをいただきたい。
  85. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 露地野菜につきましても、これはできるだけ資料を蓄積してこれを共済の対象にしていきたいという方針は私ども同様でございます。ただ、そのためにはいろいろと保険設計上なかなかむずかしい問題がございまして、現在、本年度から白菜その他につきまして府県にお願いしまして試験的な調査をいたしておるところでございます。これを制度に仕組める段階がいつごろになるのかという点、なかなかいつをめどにというふうにはいま申し上げられない段階でございますけれども、できるだけこういうものの試験調査のデータ等を十分私ども分析しまして、これなら保険設計が可能である、なじむ、こういう段階を迎えましたら、制度に仕組んで、そういった農家需要にこたえるようにいたしたいというふうに思っております。
  86. 野間友一

    ○野間委員 できるだけ早くということですが、これは一年とか二年とか、言葉で言いますと非常に不明確になりますので、大体どのぐらい先をめどにしておられるのか、大体で結構ですから……。
  87. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 これはようやくそのための資料蓄積に取りかかった段階でございまして、まさに御質問どおり、何年ごろをめどにというふうに私どもスケジュールにのせて始めるという段階は、もう少し状況を見ませんと、いまそういった目標を設定しておる段階ではございませんので、何とも申し上げられないわけでございますが、できるだけ早くそういったスケジュールを立てられるよべにめどをつけたい、これをこの試験調査の中でひとつめどを立てていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  88. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、次にお聞きします。  先ほどもいろいろ論議がありましたが、共済の加入率が非常に低い。特に樹体共済の場合にはこれが特徴的にも出ておるわけですが、先ほどからも私申し上げておりますように、今度の被害についてどう救済していくのかという点で、樹体被害が非常に多いということですね。これが一つ特徴だと思うのですが、これに対してどう対応していくのか。特に、いま申し上げたように共済に入っておる人がまだ低い。その理由についてはいま審議官も言われたわけでありますが、徳島の勝浦町、これは私も町長さんほかからいろいろ直接陳情を受けまして話も聞いたわけですが、樹体被害一〇〇%というのが実に二百八十五ヘクタール。これは全部の栽培面積が約千ヘクタール弱ですね。このうちで二百八十五ヘクタール、相当な被害なんですね。しかも、これは永年の作目ですから数年かかる、あるいは一〇〇%の被害ということになりましたらこれは改植せざるを得ない。この農水省の調査でもかなり大きな被害金額が見込まれており、五百億円ですか、そういう報告を私も受けたわけですが、いままでこういう五百億円以上の樹体被害というのは経験したことがあるのかないのか。この五十二年度の被害との対比で、いろいろともう少し時期を見なければというようなことがいままで言われておりますけれども、恐らくいままでなかった。一体五十二年度はどのくらいの樹体被害の金額があったのか。これは調査しておるのかどうか、それもあわせてお答え願いたい。  と同時に、この改植に際して、いまのそういう制度的ないろいろな結果の中で何とか果樹植栽資金、この金利をせめて天災資金並みにしてほしいという要求が強く出ておりますし、これも農水省につとに要求しておるわけであります。せめてこの程度のものを、農民の希望にこたえるというようなことでぜひ私は検討する必要があると思いますが、この点についてもあわせてお答えいただきたいと思います。
  89. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 樹体中心といたしました果樹につきまして過去においてどうかというお話でございまして、先ほど来そういった議論も出ておりますが、これは地域によりまして被害実態がなかなか違いますので、本当は府県別に判断をいたしませんと、それと比較してどうこうということは申せませんが、全体の樹体被害額という点だけで申しますと、比較的最近ではただいま御指摘の五十二年がございます。このときといまとは評価それ自身の物差しが違うものですから、これは単純にできませんが、いわゆるデフレーター等で修正いたしますと、一つの試算でございますが、五十二年における樹体被害が五百六十七億、こういった数字が出てまいります。ちょうど今回の被害にほぼ匹敵する、あるいは多少上回るかという程度被害であったというふうに思っております。  次に、果樹植栽資金の問題でございますが、これは御案内のとおり六・〇五%、こういう金利になっております。実はこの種の金利の設定といいますのは、それぞれ他の制度との横並びあるいはそういった考慮も含めまして災害対策として設定されているわけでございまして、たとえば六・〇五といいますのは、天災融資の三段階ございます上限の数字と同じ。それから共同利用施設などが倒れた場合の、そのための資金制度もございますが、これも主務大臣指定施設と言っていまして、やはり同様の金利水準といったふうな体系をなしておりますので、これだけを取り上げて直ちに引き下げるというふうなことはなかなかまいらないわけでございますが、それをカバーするほどのメリットもまた逆にございまして、二十五年というふうな非常に長期で、しかも据え置き期間十年というふうな制度というのは、これまた余り例のない果樹災害だけの特色を実は生かした制度であるわけでございます。その辺のところは、いろいろ御指摘ございますが、限界がございますので、御理解をいただきたいわけであります。  同時に、この資金制度というものが必ずしも農家の方には十分にまだ存在を認識していただいてない面もあるようでございます。私どももこの機会にひとつよくPRしまして、活用していただくようにしたいというふうに思っております。
  90. 野間友一

    ○野間委員 関連して言いますが、自創法の自作・農の維持資金ですが、この限度額はいま百五十万なんですね。これを五月の中旬ぐらいをめどに枠の拡大というものを検討されておると思いますが、それは事実かどうかということと、それから百五十万からどの程度枠の拡大を考えておられるのか、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  91. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 自作農維持資金につきましては、通常の災害対応する資金枠というのはすでに設けられておるわけでございますが、今回のような大きな災害につきましては新しく枠組みを設定するということが必要になるわけであります。そのためには、資金需要がどれだけあるのか。それからまた、災害だけに特別の枠として貸付限度額百五十万円というのが設定されております。ただ、大災害の場合に、過年度で抱えた残がたくさんあるという場合には、これでも対応できないということがございますので、いま現地にいろいろと照会をし、どの地域では一体どういう状況なのかということも踏まえた上で、前向きにその点も含めて私どもは取り組みたい、こういう考え方でおります。時期としましては、遅くとも今月中には各府県にそれが具体的に流れて貸付態勢に入れるようにというふうなことをめどに進めているところでございます。
  92. 野間友一

    ○野間委員 大変大がかりな今度の被害状況が出ておりますので、百五十万円なんという限度額ではとうてい対応できない、これは当然だと思いますので、改めてもう一度お聞きしますけれども、百五十万という貸付限度額、これは低過ぎる、現状にマッチしないという認識を持っておられるのか、まあそうだと思いますけれども、とすれば、大体どの程度限度額を引き上げるという目算なり検討がされておるのか、重ねて質問しておきたいと思います。
  93. 矢崎市朗

    ○矢崎(市)政府委員 現在の百五十万という制度は、必ずしも災害によって生活費等を全面的に補てんするものをすべてめんどうを見るべく設定されているわけではございませんで、やはり緊急的に最小限必要なものにつきましては対応しようというふうなところから設定されているわけでございまして、それはそれなりに意味があるわけでございますが、今次の災害について一律百五十万円ということで運用できるかどうかという点については、私どもも御指摘のとおり疑問を持っているわけでございます。  ただ、具体的にそれではどれだけの枠をどういう府県には適用する必要があるのかということは、実態把握要望とをよく兼ね合わせまして私ども検討しなければいけないわけでございますので、いまその額それ自身を申し上げるわけにいきませんし、それから過去におきましてごく特例的にやったケースにつきましても、百五十万円それ自身を引き上げるやり方をやったこともございますし、それからまた、百五十万円の上に今回の災害で幾ら借りられるというふうな設定の仕方をした地域もございます。これらはいずれも地域の実情によるものでございまして、そこらを十分含めた上で私どもは判断したいと思っているところでございます。
  94. 野間友一

    ○野間委員 それでは質問をまたもとに戻すわけですけれども、特に樹体被害が多い。その際いままで既往のいろいろな行政上の施策をとってこられた。ところが、なかなかそれが当てはまらない。特に共済については、入らないのが悪いという理由は全く成り立たぬわけで、共済にも入らない、しかもいま幾つか要求をしたわけですけれども、なかなかいま差し迫って救済の策がない。こうなりますと、樹体被害を受けた、しかも共済に入っていない、そういう人たちの被害救済は一体どうなるのかということですね。特に、今度の報告の中でもいろいろと指摘されておりますが、西日本の中でも四国とか中国地方あるいは九州、和歌山は特にひどいわけですけれども、こういうような地域的なかたまりのある被害、これがしかも地域経済にもろに影響してくる。いまではたとえば町の大工さんとか砂官屋さん、建築業者も、仕事をしたっていつお金になるかわからない、また実際、農家の方々も先行きどうしていいかわからない。こういうような状況で途方に暮れておるのがあちこちで相当あるわけですね。私も直接調べてまいりました。こういうような人たちに対して一体どう対応していくのか。  あわせて聞きますけれども、ミカン園転換事業、これについても先ほどからいろいろ質問がありましたが、要するに、目標を上回っていま転換が進められておるわけですから、この際特例を設けて、ミカンからミカンあるいは晩柑からさらに温州ということについても、一定のたとえば農協あるいは自治体などと十分協議しながら、何とか立っていくような方法を講ずる、そういう検討の余地があるのじゃないかというように思いますけれども、この点についてどういうお考えを持っておられるのか、あわせてお聞きしたいと思います。
  95. 高畑三夫

    高畑政府委員 温州ミカン転換事業につきましては、昨年十二月に果樹農業振興基本方針を策定公表いたしまして、その中で、温州ミカン需給見通しにつきまして、従来よりも一層厳しい見通しということになったわけでございます。これに基づきまして、温州ミカン転換計画につきましても従来の計画を改定いたしまして、年次計画を五十八年度まで延長いたしまして、従来より一層転換の促進を図るということに改めております。したがいまして、この事業の推進につきましても、このような見地から一層転換促進の実が上がるように運営する必要があるわけでありまして、その意味からも、本事業を温州ミカンの被災農家に適用して、ミカンからミカンへの改植助成に適用することは困難であると考えておるわけでございます。  それから、今回の寒波被害を受けました農家対策といたしまして、先ほどもお答えいたしましたように、早急に打てる手は打ったわけでございますが、樹体被害がどの程度になるかということにつきましては、樹勢回復萌芽状況、その定着のぐあい、そういうものを的確に判断する必要がございますので、現在これらの推移につきまして見守っておるという状況でございます。それらを踏まえまして今後どのような対応が必要か考えてまいるということになろうかと思います。
  96. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので、最後に政務次官にお答えいただきたいと思うのです。  先ほどからもいろいろ言われておりますように、今度の異常寒波による被害というのは、非常に範囲も広いし、そしてまた被害金額も多いわけです。しかもこの中で、いままでの措置ではなかなか救済できない、特に樹体被害の問題について申し上げておるわけですが、こういう被害地域経済にも大きな被害を及ぼしておるというような事情もございますので、確かに事態をさらに正確に把握するということが必要かもわかりませんが、できるだけ速やかに把握した上で、抜本的に全体を見通した上で適切な施策をする必要があるのじゃないか。いままでの措置ではどうにもならない、そういうことがたくさんあると思います。その点について、農水省として抜本的に検討する必要があるのじゃないかと思うわけですが、その点を踏まえて答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  97. 志賀節

    志賀(節)政府委員 野間先生先ほど来御指摘のとおり、大変な被害状況でございまして、農林水産省事務局といたしましても、被害の全貌をつかんで、現段階ではいわば中間的なものでございますから、よってこれに対応したい、こう答えてまいっておりますし、私もさように先ほどもお答えしたわけでございますが、この問題に関しましては、確かに樹体被害のあるものがまた芽を吹き出しておるというような、いわば明るい見通しのものもある反面、今後事態推移によってはもっとひどい状況になるかもしれません。したがいまして、余り軽々に扱うわけにもいかぬという慎重な気持ちもございますものですから、そういうことを踏んまえてやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。おっしゃるとおり、このような被害地域経済に及ぼしている深刻な事態も当然私どもは理解をいたしております。そういう地域の問題等をも踏んまえた対策は講ずるべきであろう、かように考えておるわけでございます。
  98. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  99. 福島譲二

    ○福島委員長代理 この際、午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  100. 田邉國男

    田邉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出食糧管理法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、食糧管理法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人として、全国農業協同組合中央会常務理事榊春夫君、全日本農民組合連合会会長足鹿覺君、全国食糧事業協同組合連合会会長金山國次郎君、日本米穀小売商業組合連合会理事長片岡森寿君、全国商工団体連合会食管問題対策委員長三田忠俊君、日本生活協同組合連合会会長理事中林貞男君、農業情報研究所常任委員信彰君、東京大学農学部教授逸見謙三君、以上八名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。食糧管理法の一部を改正する法律案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、榊参考人、足鹿参考人、金山参考人、片岡参考人、三田参考人、中林参考人、林参考人、逸見参考人の順で、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員から質疑がございますので、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人は委員長の許可を得て発言をしていただき、また、委員に対しては質疑ができないことになっておりますので、御了承ください。  それでは、榊参考人にお願いいたします。
  101. 榊春夫

    ○榊参考人 全国農業協同組合中央会常務理事の榊春夫でございます。  当委員会の諸先生方には、常にわが国の農業並びに農家の実情に深い御理解をいただき、その安定と向上について御指導、御高配を賜り、心から御礼申し上げます。  また、本日は、食糧管理法の一部を改正する法律案につきまして、参考人として意見を述べる機会を与えていただき、光栄に存ずるとともに深く感謝を申し上げます。  これより、生産者並びに系統農協としての食管法の一部改正案についての意見を述べさせていただきます。  まず初めに、今回の食管法改正の前提について私どもの考えを申し上げたいと存じます。  食管法は、御承知のとおり国民食糧の確保及び国民経済の安定を図ることを目的に制定され、今日までその役割りを果たしてきております。それがいま、社会経済、国民生活の変化の中で、この法律と実態の乖離を是正する必要が生じてきましたことが今回の法改正の中心かと思います。この是正の必要性は十分に理解するものでありますが、ここでお考えいただきたいことは、単に法律制度の改正だけでは問題は解決できないということであります。なぜそのような事態が生じたのか、今後再びこのような事態を生じさせないためにも、この点を明らかにすることが重要と考えます。  私は、その原因は、食糧、農業についての基本的な認識がわが国においておろそかにされてきたことだと考えます。ここで申し上げるまでもなく、食糧の安定確保、とりわけ自給力の向上は、国と民族の安全、独立に欠くことのできないものであります。このことについての国政の基本、国民的合意がなければ、どのように法律制度を改正しても、法と実態の乖離を是正し、運用の万全を期することは不可能と考えます。  幸い、昨年、本院におきまして、食糧自給力の向上について御決議をいただきました。また、食管制度の目的とその役割りの重要性についての国民的合意は保たれていると考えております。今後、本委員会の審査を通じ、さらにこれらの点が明確にされ、食糧、農業についての正しい認識が確立され、国民的合意の醸成が飛躍的に向上することを強く願うものであります。  次に、今回の食管法改正についての私どもの基本的な考え方、立場について申し上げます。  このたび政府から提案されました改正案につきましては、いま申し上げましたような食糧、農業についての基本的な認識をどうするかという前提、いわば食管法以外の問題がありますが、私どもは、長期的な視点に立って理解し、その改正が必要と考えております。その改正を要する問題点につきましては後ほど申し上げることといたし、ここでは、食管法の中で堅持さるべき基本原則の再確認について申し上げたいと存じます。  食管法は、昭和十七年に制定されて以来、戦中戦後の異常事態を経験するとともに、戦後復興、高度経済成長期を経て安定経済成長を目指す今日まで、それぞれの情勢変化に対応してきわめて弾力的に大幅な運用改善を行い、主要食糧の安定供給を通じて、国民経済の発展、国民生活の向上に寄与してまいりました。そうは言うものの、現段階においては、購入券制度のような法と実態の乖離、やみ流通の公然化とこれに対する法的措置の不徹底、無力化といった事態に陥っております。  それにもかかわらず、いやそれだからこそ、食管法の基本原則に立ち返り、その本来の機能を回復しなければなりません。このような幾多の激しい変動の過程を通じて、食管法がよくその命脈を保ち得たのは、食管法が過不足いずれの場合においても、政府の責任において流通する米麦の全量管理を行い、生産者に対しては再生産を確保するに足る価格を補償するとともに、消費者に対しては家計の安定を図るに足る価格で安定供給を確保してきたからであります。幾多の歴史的試練に耐え抜いた真価を十分に認識した上で、これらの基本原則の確保を前提として法改正に取り組むべきであることを強く訴えたいと思います。食糧の重要性、食管制度の役割りが正しく理解されるならば、食管法はりっぱに再生するものと考えております。  次に、改正法案の内容についての意見を述べさせていただきます。  改正法案は、政府の提案理由の説明にもありましたとおり、現行第八条ノ二以降の削除による厳格な配給統制の廃止にその出発点があると考えます。そのため、新たに第八条ノ四に、逼迫時における配給統制の復活を明記していますが、その保証として第三条の生産者の売り渡し義務は存置されたものと理解しております。  実態に即し厳格な配給統制を廃止することに伴い、逼迫時の配給統制を明記することは、国民生活上重要な主食であり、当然のことと考えますが、問題は、生産者の利益を害することなく、また消費者の納得を得てそのような切りかえが実際に可能かどうかということであります。私は、そのような事態に至らないことを願うものでございますし、政府も国民も同じ考えだと信じます。だとすれば、逼迫時の配給統制の前に重要なことは、備蓄に対するしっかりした考え方と、それを重要な事項として法に明らかにしておくことではないかと思います。  この点については、第二条ノ二の基本計画の中で明らかにする考えと聞いておりますが、私どもとしては不安に感ずるところであります。ただいま申し上げました点と関連いたしますが、私どもは、備蓄については、現在の全量回転を前提とする方式を改め、一定量を通常の需給とは切り離し、いわばたな上げした形で備蓄し、何事もなかった場合にはこれを他の用途に処分する方法制度化することが必要と考えます。  次に、新たに規定される第二条ノ二の基本計画についてであります。この基本計画は、改正法案による米の管理の、文字どおりの基本となるものと考えております。この基本計画について三点意見を申し述べさせていただきます。  その第一は、基本計画は「米穀ノ需給ノ調整其ノ他本法ノ目的ヲ遂行スル為」定めるとされています。この「需給ノ調整」というところが率直に言って気になるところでございます。基本計画によって米の生産や価格の抑制を意図するものではないとの言明がございますが、この基本計画の決定がどのような場で検討または審議をされるのか、特に生産者の立場、生産事情等がどのように反映され、守られるのかといった点を明確にされることを要望するものであります。  第二点は、政府管理すべき米穀の数量等についての規定であります。ここでは、政府管理すべき米穀の数量について、用途別、品質別、さらには政府米と自主流通米といった流通における管理の態様別に定められることになっておりますが、この中には、転作目標を達成しても、天候等によって発生が予測される予約限度超過米と、改正法案において新たに認められることとなる縁故米等は含まれないことと聞いております。縁故米につきましては後ほど意見を申し上げますが、予約限度超過米といえども、現に流通する以上、全量管理の当然の帰結として、政府管理すべき米穀の中に明記すべきものであると考えます。  予約限度超過米は、これまで転作等目標面積を大幅に上回った達成の中で、しかも平年作ベースでも発生しております。この超過米は、従来、自主流通ルートでの集荷、販売を行っていますが、政府の消極的な取り組み姿勢によって、やみ流通の温床となりつつあります。改正法案は、このやみ流通の取り締まりの強化を目指しておりますが、単に取り締まり強化というネガティブな対応だけでなく、この予約限度超過米を正規流通させるよう基本方針の明確化と、万全の積極的対策を講ずることを強く要望いたします。指定集荷業者といたしましても、この政府施策と相まって、自主的な全量集荷の努力を払う所存でございます。  第三点は、備蓄と消費拡大についての明確化であります。備蓄についてはさきに申し述べたとおりでありますが、消費拡大につきましては、学校給食への米飯導入以外、政策としての裏づけは皆無と言っていい状態となっております。一方、米作農家は、公平確保という名のもとに、ペナルティーを科せられた生産削減を余儀なくされております。そのような中で、米の消費は年々その計画量を下回っております。このことが、さらに生産調整の強化と生産者米価の抑制という形で生産者にしわ寄せされているのが現状であります。このような事態に対する生産者の不信、不満はいよいよ充満しつつあります。私は、米の消費拡大の目標を基本計画に明示するとともに、その内容として、備蓄用米の処分方法とも関連して、加工原料向け等、新規需要の開発拡大を含めた積極的な拡大均衡対策を推進されるよう要望いたします。  次に、自主流通米制度について意見を申し述べさせていただきます。  自主流通米制度は、発足十年にしていまなお議論のあるところでありますが、米の流通上大きな役割りを果たしていることも確かな事実でございます。この自主流通米制度について、改正法案の第二条ノ二並びに第三条において法的位置づけを明確にされたことは、事態に即応した前進と評価するものであります。ただ、運用改善の考え方の中では、自主流通米の質的改善ということが言われております。これだけではどのような改善が意図されているのか明確でありませんが、政府米と自主流通米との基本的な性格づけやその運用の基本を明らかにするとともに、一定のルールのもとでは、自主流通制度が持つ機能や役割りに必要以上の国の干渉や制約を加えることのないよう、十分な配慮をお願いする次第であります。  次に、流通業者の地位と責任の明確化の関連についての意見であります。  今回の改正法案では、現行法では明らかでなかった集荷業者の位置づけを第八条ノ二で規定するとともに、第八条ノ三に販売業者を規定し、いわゆる流通ルートの特定を行っております。集荷を中心とする系統農協として歓迎するところであります。改正法案はこれら業者について、集荷は農林水産大臣の指定、販売は知事の許可と、これまでの登録制と異なる決め方をすることとしておりますが、その指定や許可の基準を早急に明確にしていただきたいことをお願いいたします。  さて、食管法改正の契機と申しますかその原因ともなりました不正規流通の規制についてであります。  冒頭にも申し上げましたが、法と実態の乖離を是正するということから末端流通規制が緩和され、個人間の無償の譲渡行為、つまり贈答米や縁故米が認められることになります。この点につきましては、米の自由化ムードを助長するとして私どもの組織内には警戒する声が多くありますので、その適正な運用を強く要望したいと考えております。  特に、これら贈答米や縁故米に名をかりた不正規流通の発生を強く懸念いたしております。そこで、これらの米の取り扱いについて一定の基準などを明らかにすべきだと考えます。それとともに、これらの米以外の米も含めて、不正規流通の防止とその取り締まりをどのように行うのか、その方針を明らかにし、体制の確立強化も含めて万全の対策を講じていただきたい。もちろん、不正規流通の防止については、集荷、販売の衝に当たる私どもが第一に率先してその責任を果たすことをここでお誓い申し上げる次第でありますが、政府の責任ある対応があってこそこれらも生きるものと考えております。  最後に、法改正に伴う運用改善事項に関連する集荷、販売面への競争条件の導入の問題についてお願いを申し上げます。  米の消費拡大を図る見地から卸、小売業者の新規参入、小売の複数卸との結びつき等の施策を含め、流通に競争条件を導入することは適切な措置であると考えますが、集荷と販売とではその事情が全く異なっている点に御留意いただきたいと存じます。  販売面では消費者のニーズに合ったサービスの提供による需要の拡大が最大の課題であり、競争条件の導入に整合性があり、よい方向を指向するものと考えます。しかし、集荷面につきましては、円滑かつ適正に全量集荷する体制の確立が重要でありますとともに、それ以前の問題がさらに重要となっております。それは言うまでもなく需要に合った米の計画的な生産、つまり生産調整の遂行と良質米生産指導の強化徹底であります。生産された米をどのように集荷するかという以前に、どのような米をどれだけ生産するか、その指導は、行政指導とも相まって、時としては農家を十分説得して行わなければならないのが実情であり、そのことが食管制度を守る基本でもあると確信いたしております。このことは国の政策の基本でもあろうと存じます。  この点を配慮せずに、集荷だけを念頭に置いての競争条件の導入は、いたずらに混乱を招くだけでなく、国の政策、地方公共団体の行政指導との整合性を欠くものであり、私どもとしてはとうてい承服できません。特に、伝えられるところによれば、集荷業者の事業区域を隣接市町村にまで拡大することを考えておられるようでありますが、このことが、ある市町村において指定集荷業者となった者は、その隣接市町村においては指定を受けることなく、自動的かつ任意に集荷業務を行うことができることとなるものとすれば、このような体制は、国の直接買い入れを基本とする食管制度にとってゆゆしい問題であり、致命的な破綻となる懸念があります。隣接市町村といえども必ず指定を受けた上で集荷業務に従事するようにすべきものと考えております。何とぞ御理解と御高配をお願い申し上げる次第であります。  以上で私の意見を終わりますが、諸先生方も御賢察のとおり、過剰過剰と言われながら、本米穀年度の米の需給事情はさま変わりとなり、新たな事態に直面しております。食管制度の健全な運用が国民的な課題としていよいよその重要性を高めつつあります。当委員会におかれましては、これらの事態に対処する新たな米の流通管理についての指針を早急にお示しいただくことをお願いしますと同時に、重ねて、意見を申し述べさせていただきましたことに心から感謝を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  102. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  次に、足鹿参考人にお願いいたします。
  103. 足鹿覺

    足鹿参考人 私は全日本農民組合連合会の会長をいたしております足鹿覺でございます。  本日は食糧管理法の改正に際しまして意見を求められました。以下、申し述べたいと存じます。  政府提案の食管法改正案は、現状追認であって、引き続き米の流通は全量政府管理下に置くことで、米の過剰期、不足期に対応できるようにするためのものだと説明されております。したがって、米価、食管政策は大きく変わることがないかのように言われております。しかしながら、私ども農民の立場から見てまいりますると、見過ごすことのできない多くの問題があるように存ずるのでございます。  その第一点は、米の減反の拡大と深くかかわり合っているばかりか、米の管理のあり方が部分管理化への傾斜を深めようとしていることであります。  御承知のように、昨年の減反の政府割り当ては全国平均一八%でありましたが、来年と再来年は二四%、そしてその後は三〇%減反へと拡大されようとしております。減反の拡大は、産米の政府買い入れ限度数量の削減に連なっているのは申し上げるまでもございません。このことは、米穀市場における政府管理米の比重を低下させて、自主流通米の比重を高くすることを意味しております。昨年の米穀市場における政府米と自主流通米の相対比は二対一ですが、減反の拡大はこの相対比をさらに縮めていくことになるのではないでしょうか。  現行食管法では自主流通米は容認されておりません。今回の改正は、現状追認に名をかり、自主流通米を本法で公認し、産米の政府買い入れ制限強化を可能とする法体系の整備を図ろうとするものであると言われておりますが、それは減反の拡大と相まって、自主流通を米穀流通の本命に仕立て上げるものと言わざるを得ません。ということは、米管理のあり方が事実上部分管理化への傾斜を深めることにほかならないからであります。  第二に指摘しておきたいのは、低米価政策が強化されるということであります。  昨年秋、農政審議会は「八〇年代の農政の基本方向」を示しました。その中で、米価政策は、需給価格へ転換すべきだとされ、その段取りは、まず、取引当事者間で価格が決まる自主流通米制度の活用を図ることが肝要である旨強調されております。この具体化は、現行の良質米を対象とした自主流通米におけるUターンを取り外すことで、そのもとで形成される需給価格をもって、これを政府買い入れ米価にも反映させるということになると想定されます。これは生産費補償の立場に立つ米価決定のあり方を根底から覆すものであると言わざるを得ません。  今回の食管法改正は、自主流通米制度の拡大再編成に道を開きつつ、それをてこに一層の低米価強化を可能とする仕組みをつくるようねらったものと言わなければなりません。その反面、消費者にとっては、割り高な自主流通米の押しつけが拡大されるということをあわせて指摘される必要があります。  次に、第三でありますが、指摘しておきたいことは、米不足が生じた際は強制集荷を行うとしている点であります。  現在、米は過剰だとされておりますが、それは国内での米の生産の二倍にも上る外麦、飼料穀物等の輸入とのかかわりで起きておるのであります。食管法改正案が想定する米不足とは、穀物輸入に支障が起きた場合のことであります。  食管法は、かつて明治憲法下の天皇制政府が戦時立法として制定したものでありました。御存じのとおりであります。その目的は、国内産の主要食糧の確保と、低米価、強権供出で米を集め、国民に平等に配給を行うということに置かれておりました。  今回の改正は、穀物の外国依存を基礎に据え、それとの見合いで、輸入可能期には減反と低米価を農民に押しつけ、輸入に支障が生じた際には低米価、強権集荷で米を集めようというものではないでしょうか。しかも、有事立法とさえ呼んでもよい米不足の際の強権的な米集荷は、政令事項とされているということであります。政府への白紙委任としか言わざるを得ません。政府の意向一つでかつて天皇制政府やアメリカ占領軍の行ったファッショ的強権集荷をよみがえらすことができるような仕組みをされては困るのであります。第二次大戦直後の混乱期における米の強権集荷にしても、食確法の制定が伴っておったのであります。このことを忘れてはなりません。強権発動の行政一任は、新憲法の精神に反するばかりか、議会政治の否定とすら呼んでいいのではないでしょうか。私は、行政権力の優位性は議会制度を空洞化していく、法律の上にあぐらをかく、そういうことがあってはならないと憂えるからであります。  以上、政府提案による食管法改正案について若干の所見を述べましたが、次いで、私どもの若干の要望を述べさせていただきます。  まず、今回の食管法改正の根底に流れている国民食糧確保の一つの発想は、外国穀物依存主義の貫徹にあります。そうであるからこそ、輸入依存がきかなくなった場合を想定してのファッショ的な米の集荷措置の温存が不可欠的に絡んでおるのではないでしょうか。これを容認すれば大変なことになるのではないでしょうか。  私どもは、このような立場から要望したいのは、日本農業の発展と結びつけた食糧確保への食管制度としてほしいということであります。それには、まず、食管制度の対象品目は米麦だけではなく、えさ米も含む飼料穀物や大豆にも拡大をし、基本食糧である主要穀類の自給率を引き上げるようにすべきであると存ずるのであります。また、それとともに、政府が年次別生産計画を立て、輸入の計画的削減を行うようにすべきであります。さらに、生産計画を達成するには、価格保障の確立と無制限政府買い入れの構造が確立される必要があるのであります。生産計画と価格決定については、農民と政府との話し合いを基本に、民主的な手続によることが肝要であると確信をいたします。  日本はすでに世界第一位の農産物の輸入国となっております。輸入の中心は基本食糧である穀類にあることは先ほども申し上げたわけでありますが、世界の穀物需給は、気象状況の著しい変化により長期的に逼迫度を強めていくのは不可避ではないかと存ずるのであります。このような自然的条件、長期的ないわゆる逼迫、こういうものを考えずして、いかようにして今後の安全な食糧の確保が可能というのでありましょうか。その点がきわめて重要であるにもかかわらず、その点がうたわれておらないということは、はなはだ私どもとしては不満に存ずる次第でございます。昨年春の食糧自給力強化に関する国会決議がなされましたのも、こうした背景があってのことではないでしょうか。  今回の食管法改正政府案に対し、社会党より提出された総合食管法案は、私どもの要望にまさしく一致したものであり、国会決議の精神に沿うものと言ってよいと存ずるのでございます。いたずらに軍備を拡大することが国の安全を保障する道ではありません。国の独立と安全を保障する重要な柱は、まず国民が必要とする食糧はみずからの国で最低限賄うというようにすることに求められなければなりません。社会党案はその道筋にかなったものと言ってよいと存ずるのであります。よって、政府案には強く反対をし、社会党案に賛同の意を表するものであります。  最後に、米の第二次生産調整とえさ米公認の問題についてであります。  最近のえさ米の実情と所信の一端を申し述べて陳述を終わりたいと存じますが、私たちは全国三十五都道府県において、本年から、権力やまたは何人の援助も受けず農民みずからの自力で、えさ稲アルボリオ系の本格的な栽培を始めました。先ほど議員の皆様方のお手元に委員長の了解をいただきまして回覧を願ったものがそのものでございます。一つは茨城県の産、小室秀俊さん、二つは鳥取県の産で、一つ田中宏さん外一名でございます。そのように、識別も明瞭であり、粒も日本米の倍近く大きいものであり、このようなものが、今日、いわゆる農民の自主的努力によって全国に広まっておるのであります。  私どもが取り扱った種子の配布状況から推定をいたしますと、私の居住地である鳥取県において六・七ヘクタールで約三十五トンの収穫を予定しておりますが、全国での推定面積七十ヘクタール、平均収量を十アール当たり最低六百キロと見れば、大体千キロ以上と見るべきでありますが、中には若干の落ちこぼれもあろうかと思いまして、低目に見て六百キロと見れば、四百二十万トンに達する見込みであり、われわれは一月二十三日、東京都において仲間が相寄り、エサ米運動推進連絡会議を設立、不肖私がその会長に選任をされました。かくして全国的に団結したわれわれは、政府の第二次生産調整計画に対し、この推定実績に基づきえさ米の公認を強く迫りつつあるところであります。  政府は今日までの経緯にとらわれることなく、来年はこの実績を二ないし三倍に上回るであろうえさ稲に対し、一切の行きがかりや偏見を捨てて、水田の多目的利用の立場からも、水田を畑地化するなどということはやめ、えさ稲の栽培は水田をそのまま水田として使うところに妙味があるのでありますから、減反目的がそのまま達成されるという、えさ米を無視して果たして政府の目指す第三次減反計画が達成できるでありましょうか、静かに反省してもらいたいと思います。いざ有事といえばいつでも食用稲への切りかえはできるはずでありまして、えさ稲は飼料の自給の立場からも改めて見直されるべきであり、今日も現に全国で田植えが行われておりますが、全国のえさ米栽培者は一衆議院農林水産委員各位の深い御認識によって、一日も早くえさ米公認の朗報がもたらされることを念願をいたしておる次第であります。どうか農民の期待に沿うように、格段の御努力、御協力をいただきますことを農民にかわってお願い申し上げまして、私の陳述を終わる次第でございます。(拍手)
  104. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  次に、金山参考人にお願いいたします。
  105. 金山國次郎

    ○金山参考人 日ごろは何かと格別の御指導を賜っておりまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  私、全国食糧事業協同組合連合会会長金山國次郎でございます。私ども全糧連系統組織は、戦中戦後にわたりまして食糧営団、食糧配給公団ということで米の配給をいたしてまいりましたが、食糧配給公団が閉鎖されました後は、民営米屋として三十年この方、国内の要配給量の七割を配給をいたして現在まで来ております。この間、何かとお世話をちょうだいいたしております。この機会に厚く御礼を申し上げる次第でございます。  今回、食糧管理法改正に関連して意見を申し上げる機会を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。  今回の食糧管理法の改正は、結果から申し上げまして賛成でございます。現在の消費者の消費構造の現況、不正規流通の現況、また配給の現状から申しまして、すべて食管法との乖離が相当な幅になっておりまして、できるだけ早い改正が必要、かように考えます。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕 特に改正法案の二条ノ二、八条に、その改正条文の中で需給調整及び供給実施計画の策定、こういう項目があるのでございますが、私ども配給業者の立場からはこの項目に大きな期待をいたしております。それは消費者の需要にマッチした政府米並びに自主流通米の買い受けの方途が期待できると思うからでございます。ぜひこの点は実現してほしい、かように念願をいたします。これには積極的に私どもは協力してまいるつもりでおります。  ただ、二、三の点で要望がございます。それは、現行の法律から新しい法律にかわりますこの移行の場合に、混乱がないように慎重に対処してほしいということでございます。あくまでもこの移行に当たっては慎重な配慮をぜひともお願い申し上げたいのでございます。特に流通改善問題が並行して行われるであろうと思うのでありますが、これにつきましては、あくまでも流通上の混乱を防ぐためにも連続性を十分に考慮していただきたいのでございます。また、特定される販売業者につきましては、現行の販売業者を特定していただきたい。それから、いまの制度で小売販売業者が卸しを受ける卸業者を指定できる制度があるわけでございますが、この制度はぜひとも残しておいていただきたいと思います。現行の卸、小売の結びつきと称しておるのでありますけれども、この制度は踏襲しておいていただきたい、こう思うのであります。  それからさらに、縁故米と贈答米の関係でございますけれども、これは取り扱いいかんによりましては流通が乱れる心配が実はございます。これは慎重にさらに慎重を重ねて御措置を願いたい、かように存じます。これに名をかりたいわば営業行為などが起こり得るのではないかと心配する向きが少なくないのでございます。これは限度数量を超えた米の集荷、これに十分な配慮を願うことで相当の分は消化されるのではないかと思うのでございますけれども、これにつきましては十分な配慮を願いたい、かように存ずるのでございます。  なお、現状ではなかなか罰則の適用ができないのでございますけれども、新しい制度になりますと罰則の適用もできることに相なることと思いますが、新しい制度になりましたら罰則の適用もきちっと行われますように、これも期待をするわけでございます。  なお、最後になりましたが、分野の調整に関連してお願いが一つございます。本来食糧管理法がきちんと行われますためには、集荷の仕事が一つあって、もう一方に配給の分野がきちっとあって、その中間に政府があって初めていわば食管法がきちんと存在するのであろう、これが基本であろうと思うのでございます。新しい制度動き出す段階で集荷と配給が現場面でごっちゃになって混乱が起きることなどがないように、これは十分にひとつ御配慮をお願い申し上げたいのでございます。もう一つは、配給面だけにおきましても、ともすれば次第に零細化していきます部面と巨大とも言える配給面でのいわば確執みたいなものが起きる心配もなしとしないわけでございます。この辺の分野の調整、こういうことにつきましても十分な配慮をひとつお願いを申し上げたい、こういうわけでございます。  なお、販売業者といたしましては今後とも従来以上に消費者にサービスすることを念頭に置きまして、みずからの体質も十分に改善することを考えながら、食管制度の基本を維持することを念頭に置きまして十分にこの基本に忠実な姿勢を推し進めてまいる、これが現在の考えておる基本でございますので、今後とも何分の御指導を賜りますようにこの機会にお願いを申し上げる次第でございます。  簡単でございますけれども、お願いを申し上げまして終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  106. 津島雄二

    ○津島委員長代理 ありがとうございました。  次に、片岡参考人にお願い申し上げます。
  107. 片岡森寿

    ○片岡参考人 私は、日本米穀小売商業組合連合会理事長を汚しております片岡でございます。  今回の食管法一部改正についての意見を述べる機会を与えていただきましたことを、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。  食管法についての周到な御努力に心から敬意を表します。ほぼ四十年この法律のもとにある私どもとしても、この法律がいまや満身創痍、守られぬ法律の代表のごとき批判にさらされているのははなはだ残念であります。改正によって、国民各層が長い風雪に耐えたこの法律の価値を真に理解し、将来ともこれを遵守するよう、鮮やかによみがえることを願わずにはおられません。伝え聞くところによると、今回の法律改正についての政府の趣旨はまさにその方向にあると聞いておりますので、その推進に努力されることをお願いするとともに、改正に当たっては十分御留意いただくよう、この法律の中で生きてきた者としての意見を申し上げますので、速やかに御措置くださいますようお願い申し上げます。  制度運用の基礎というべき米の県別作付面積、単収、収穫量、ひいては予約限度数量、農家消費量等が実態と著しく乖離していると思われます。このままでは、これがいわゆる不正規流通の大きな源泉となることは明らかであります。この際、御勇断をもって洗い直しを行われるべきだと信じております。  少なくとも改正の時点では現小売業者のみを特定していただきたい。ただし、不正規流通等にかかわり係争中の業者については除外をされたい。  いわゆる贈答米、縁故米については、あくまでも個人間の無償によるやりとりに限定されることが必要であり、いやしくもこれに名をかりて大量の売買行為が行われるということのないよう、趣旨の徹底及び指導に万全を期せられたいと考えます。  小売業者の販売活動については、改正による米供給実施計画の策定実施上からも、米需給逼迫時等の復元措置との関連からも、一定地域を基礎としたものであることが基本的に必要であり、現行の事業区域及び営業区域の考え方を原則として踏襲されたいと考えます。  いわゆる不正規流通の規制については、取り締まり当局とも十分打ち合わせ調整の上、条文に明記し、かつ断固たる措置をおとりになることがぜひ必要と考えます。このことが十分行われない場合、国民各層の改正食管法に対する遵法精神は全くゼロになること明らかであります。制度崩壊が決定的になることを深く懸念いたします。また、不正規流通の実態を最もよく把握している小売商業組合の代表者を中核とする仮称米商業調整協議会というものを設置し、この規制に協力せしめることとあわせて、新規参入、小売、卸関係等、改正以後逐次拡大が予想されるいわゆる商業調整を行わしめることが適切と考えます。  なお、改正法律の公布に当たっては、法律施行までの間に混乱の起こらぬよう、たとえば改正事項の先取り、あるいは適切な御配慮、たとえばマスコミへの周到な接触等が必要と考えます。  以上、簡単でございますが御要望申し上げまして私の意見といたします。ありがとうございました。(拍手)
  108. 津島雄二

    ○津島委員長代理 ありがとうございました。  次に、三田参考人にお願いいたします。
  109. 三田忠俊

    ○三田参考人 私は、全国商工団体連合会の三田でございます。  ただいま私の前に話をされました片岡さんは、同じ組合の仲間同士なんですけれども、片岡さんは全国の組合の理事長という立場で参考意見を述べられたわけです。私は理事長が話された内容や意見と変わらない点はたくさんあると思いますけれども、なるべく重複をしないように、特に中小零細な小売販売業者の立場に立って、本改正案が与えるであろう影響について申し上げたいと思います。  もちろん、この改正案そのものは、私ども小売販売業者だけでなく、生産者から消費者まで含めて相当大きな影響が出るということが考えられるわけですけれども、初めに、私どもはいまどういう現状の中で小売販売業者をやっているかというところからお話し申し上げたいと思います。  いま全国の六万一千軒の小売販売業者が、昭和三十七年以来、米食率の低下が非常に激しくなりまして、それ以来無登録業者の問題を含めて、その全国の六万一千軒の業者の二〇%近い業者がすでに、二〇%というとちょうど一万三千軒近くになるわけなんですけれども、それが最低取扱基準量、これは都会とか農村、生産地含めて大体平均して年間三十トン以上扱わなくては登録は与えないよというふうなものなんですけれども、それが大体米俵にして月に五十俵くらいを扱うような形になるわけです。それをすでに割り込んでいる業者が一万三千軒も全国でできているという状況です。それは三十七年以来の米食率の低下と、そこから生まれてきております問題、あと余剰米の問題とか縁故米の問題とか、そういうことから発生をしております無登録業者の本当に放置と言っても差し支えないような現状の中で、そういうふうな本当に最低取扱基準量を割るような業者がどんどんふえているわけです。  一つの例を言いますれば、鹿児島県にはいま千五百軒の小売業者がありますけれども、その中で千軒が基準量以下になっております。それから、私は東京世田谷で米屋をやっておりますが、東京の墨田区では区の全部の業者の平均がもう基準量の三十七トン以下に落ち込んでいる、区全体がそれ以下に落ち込んでいるというふうな状況が出ています。  それから、無登録業者の問題では、現実に神奈川とか大阪、京都、愛知、東京というふうな大消費地の周りでは、これは急激にその数がふえてきております。既存小売業者の経営不振というものの大きな原因がそこにもあるわけであります。私は、昭和二十六年に、いま話された食糧配給公団から民営に移管をしたときに、同時に独立をして米屋をやっておりますが、これまでの経験で、ちょうど三十年になりますが、その三十年間の中でいままで、米が売れなくて廃業したというのは一回も聞いたことがない。ところが今度、もうことしに入ってから東京都内だけでも百軒近くの米屋が廃業しております。その大半が売り上げの減少からもうすでに見切りをつけてきているということです。それと同時に、そこに専門の、見切りをつけた業者の権利を買いあさっている業者が発生をしているというふうな状況も出ております。  食糧庁の皆さんがこれまでもたびたび言われているのですけれども、果たして小売業者の販売意欲の低下とか、それから自助努力の不足ということがこういうふうな現状を生み出したのだろうかということを、ちょっと皆さんにも考えていただきたいというふうに思うわけです。これは食糧庁の統計なんですけれども、ここ六、七年の間に全国の小売店の数が七千二百軒ふえているのですね。これは新規参入されているわけなんですけれども、その逆に全国の米の販売数量というのは、これはわずかですけれども、年間五十四トン、五万四千キロですか、それだけ減っているのですね。これはどういうことをあらわすかといいますと、実際それだけ零細な業者がどんどんふえているということがこの中に数字的にも示されているのではないかというふうに思います。  私ども販売業者は、決して販売意欲がないとか自助努力がないとか言われるような状況では実際にはないわけです。いま八時間労働とか週休二日制とかいって世間で言われておりますけれども、私どもは一日十三時間から十五時間店を開いて、いつでも配達ができるような、たとえ五キロの米でもアパートの五階まで階段を駆け上って配達をしております。前にも申し上げましたように、意欲や努力だけでは本当に解決ができない状況というのがその中にあるのではないでしょうか。  日本の食糧政策のしわ、これは米食率の低下というのはそういうところから来ているのだと思うのですけれども、それと無登録業者のはんらん、これもそういうところから出てきているわけです。そういうふうな大きな波の中で、流通業界の中で一番大きなしわ寄せを受けているのが小売販売業者ではないでしょうか。こういうふうな、四苦八苦しながら現在営業を続けているというのが、いま小売販売業者の本当の姿ではないかというふうに思います。  いま、こういうふうな非常に困難な状況の中に今回の法改正が提出をされてきたのですけれども、今回の改正案の中で、私ども米を扱う業者でもどうしてもわからない点があります。たとえば今回改正点の中でまず取り上げられている問題というのが、使っていない通帳の廃止の問題があります。これは通帳の廃止の問題なんですけれども、いまになってそれに対してここで異論を唱えるということではありませんけれども、これが無登録業者の取り締まりができない原因にされているわけです。通帳で米を買わなくてはならないというのに、通帳も使ってないところで無登録業者が出たからといって、それを取り締まることはできないという食糧庁の方の話もあるわけです。  一体どういう原因でそうなったかということを一言だけ小売業者の立場でお話をしたいと思うのですけれども、実際私ども小売商としては、通帳があればいまでも使っているはずです。ところが、いま役所が発行していない。発行をしていないことが使われない原因になっているのです。そこのところをはっきりしていただきたいのですけれども、昭和四十四年ですか、私どもと消費者の結びつき登録の廃止というのがありまして、それと同時に新規参入の制度ができました。そういう中でちょうどそのときを境にして通帳をつくらなくなっているのですね。現在、五十五年の資料を見ますと、三千百七十四万五千世帯の中で一%、三十一万世帯分しか印刷をしていない。だから、その通帳がわれわれの手元にも来ないし消費者の手元にも来ない。だから、使わなくてもいい。使わなかったら死んじゃうわけですよ。それがなかったら米が買えなかったらば、消費者はもらえないのだから米は買えないということになるわけです。その責任をいまここで云々するということではありませんけれども、それが原因で無登録業者の取り締まりができないということになると、やはりわれわれ小売業者としては何か納得がいかない問題がそこにあるような感じがするのです。  それから、このほか縁故米とか贈答米、今度の法案の中ではそういうふうなものを認めていく。それから集荷とか流通の業者の特定というふうな、表面上は本当にだれが聞いてもこれは当然と思われる問題ばかりです。理事長の話ではありませんけれども、この中には一部私どもの組合員の中にも期待すら持った点がたくさんあります。ところが、いままでに食糧庁の方々を呼んだり、そこへ行ったりして四、五回にわたって説明を受けました。そういう中で、まだ現在も明らかにされていない、ただ、これは省令で決めます、これは政令で決めますということだけで片づけられている問題がたくさんあるわけです。それらの問題で細かい点や的確な納得がいく説明を受けたい事項が、いま数限りないくらいたくさんあるわけですけれども、それが全然というくらい明らかにされないままで、この法案は食管制度を根幹は崩さないで守るのだという話だけなんですね。その点が一つ、まだまだ納得のいかない問題としてあるわけです。  ここで特に二つだけ申し上げたいと思うのですけれども、私どもは小売販売業者ですから、生涯を通じて営業を続けている限り消費者とは切っても切れない縁があるわけです。ですからその意味からも、今回の法改正の中で消費者に与える影響についても強い関心を持っております。  それは自主流通米制度を法文上認知をしていくという問題です。これはいま消費都市に限らずどこの場所においてもそうなんですけれども、自主流通米の販売量というのは年々増加をしてきています。ことしのように冷害の影響で低品位米が普通の政府管理米の中に混入されて、特例標準米というふうな形で配給をされる。そのことによって、ますますいま標準価格米を食べていられる消費者の方はまずい米を食べていられるわけです。そうすると、どうしても自主流通米に自主流通米にと移行していくのは当然なことなんです。それが実際、東京都内の卸業者もそうですけれども、卸の方がここにもいらしゃいますけれども、もうすでに自主流通米は制限販売をしているというふうな卸も出てきております。  ですから、これが一層このままの形でどこの歯どめもなく助長されるようなことになれば、当然自主流通米が大幅にふえて、本当に消費者が安くてうまい米という長年の願望も縁遠いものになってしまうというふうになりかねないのではないかというふうに思います。ですから、この自主流通米の枠を現在以上に拡大をしないという問題と、政府管理米そのものの銘柄の改善の問題、それから需給の安定策、その辺はやはり今度の中でも明らかにしていただきたいということが一つあります。  それからあと一つだけ心配になることを申し上げますと、いま全国の一万三千軒以上にもなる取扱最低基準量を割っている業者の処遇の問題です。これは新法の施行時には六カ月を限って継続をして営業することを認めていくのだということになっております。これは混乱を来さないためには当然の措置だと思いますけれども、いままでの説明会とかそのほかの会合の中でも、一貫して、その後どうなっていくのだということが明らかになっていない。ただ、小売販売業者の努力、意欲ということが非常にその都度強調をされているのですけれども、やはりそれと同時にされなくてはならないわれわれの営業を圧迫している無登録卸、小売の問題、この処理については本当に確かな答えを得ていないというのがただいままでの経過なんです。  いまこのまま推移をしていけば、これらの弱小の本当に小さな小売業者は、急速な競争原理の導入という大波の中に巻き込まれて、本当に自然淘汰を待つばかりというふうな形に追い込まれかねないわけです。それと同時に、また、大型の小売業者の問題とか商社等の新規参入の問題をどこで歯どめをかけていくのか、それとも歯どめをかけないでそのままにしていくのかどうか、その辺もまだはっきりしていません。いまこそやはり、既存業者そのものの安定した経営が今後の安定供給を確保する上でも重要な役割りを果たすということを、御認識を新たにしていただきたいというふうに思うわけです。  いろいろ申し上げましたけれども、私ども小売販売業者の営業の実態と法改正の与える影響について、いま申し上げました本当にほんの一部分だけしか申し上げられる時間がないわけですが、この法のもとに営業と生活のすべてをかけている私ども小売販売業者の立場からも、今後この国会審議の場で十分な時間をかけていただいて、本当にわれわれも、国民すべてが納得ができる法案の御検討を心からお願いをしたいと思います。  きょうは貴重な時間をお与えくださったことを感謝をいたしまして、発言を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  110. 津島雄二

    ○津島委員長代理 ありがとうございました。  次に、中林参考人にお願いいたします。
  111. 中林貞男

    ○中林参考人 私は、ただいま御紹介をいただきました日本生活協同組会連合会の会長をしております中林でございます。  きょう国会において、農業問題に一番お詳しいこの委員会の先生方の前で参考人として意見を述べさせていただくことを非常に光栄と思います。しかし、私はあくまで消費者の立場で素人でありますので、先生方にはお聞き苦しいことを申し上げるかもわかりませんが、よろしくお願いをいたしたいと思っております。     〔津島委員長代理退席、菊池委員長代理着     席〕  ただ、私たち消費者は、米というものには非常に大きな関心をみんな持っております。恐らく国民の九二%の者は、毎日必ず一回以上米を食べて生活をしていると私は思っております。そういう意味で、食管制度がどうなっていくのかということをみんな心配しております。  特に、かつてアメリカのニクソン大統領が大豆の輸出規制をやったら、お豆腐とか納豆がたちまち上がった。あるいはまた、石油パニックのとき、これがもしも食糧であったら一体どうなったかということをみんな心配をいたしました。またこれからの世界の食糧がどうかと言えば、長期的に見た場合には食糧不足ということが言われております。そういう点から、消費者はみんな、日本の食糧の給源である農業がどうなっていくのか、日本農業はやはりぜひ消費者の立場からも守っていただきたいというふうに思っております。そういう点から、私は、やはり食管法というのは国民の日常の生活にとって不可欠なものだという考え方は国民の中に定着をしてきているというふうに思っております。  そういう点から、消費者は日本農業に非常に関心を持っているわけですけれども、ただ、これは私というよりも消費者がみんな非常に不満を持っていることは、いまや農業の問題、食糧の問題は国民的な課題であるにもかかわらず、たとえば農政審議会に消費者代表は委員として入っておりません。専門委員は入っております。農業の問題がこれだけ重要な問題であるにもかかわらず、農政審議会に正式の委員として消費者代表が入っていないことを、これはみんな不満に思っているということを、まず先生方に私はこの場をかりて消費者の立場からひとつお訴えをしておきたいというふうに思っております。  そうして、現在お米は過剰だ、また消費の拡大が現在非常に大切だということが言われております。しかし、現在の食管法は戦争中につくられ、いろいろ先ほどから各参考人の方がおっしゃいましたように、陳腐化している部面がたくさんあります。私はやはり消費者の立場から、消費の拡大を図っていくためにも、食管法において流通面の一定の改正をすることは必要だというふうに思っております。そういう立場から今度の食管法の改正には一定の評価を私たちはしております。しかし、評価をしているからといって、それで安心だというようなものでは決してありません。いろいろと心配な点がたくさんあります。  第一に、私は法改正をして全部問題が解決するものとは決して思っておりません。現在のお米の過剰とかあるいは消費の減退ということの中にも、今日まで生産農民の気持ちなりあるいは消費者の心理というものを逆なでにしたような政治や行政があったかなかったかということを私は考えてみたいと思います。消費者の間で標準米がまずいまずいということが言われております。そういう形で米に対する不信感というものが拡大されてきております。しかし、標準米がどうしてまずくなっているのか。消費者はおいしい米を食べたい。おいしい米を食べたいということの願いの中には、価格の問題が非常に強くあります。しかし、その消費者の気持ちを逆なでするような価格政策というものが今日まであったかなかったかというような点も、私は今後大いに先生方の御審議の中において御検討をいただきたいと思うわけであります。  私は、米の消費拡大ということについては、米に対する消費者の信頼を回復することが現在何より大切なことではないかと思っております。もちろん、米の消費減退の大きな原因は戦後のパンの給食、それが米に対する関心を減退させた何より大きな原因であり、また消費生活、特に食生活の多様化という形の中で米離れが必要以上に進んでいることも私は事実だと思います。しかしながら、流通面におけるところの価格政策、消費者の信用を確保していくような政策がこれまで十分であったかどうか。そうして生産面においては、米は余っているということで余り物のように、農民の皆さんの立場から見れば何か必要以上に米をつくっているのではないかというような気持ちを持ったり、消費者の立場から言えば、おいしい米をできるだけ安く食べたいという人間の本能的な、本来的な気持ちというものが政治の中でもっともっと生かされなければならないし、ぜひ生かしていただきたい、そのことが今度の食管法の改正、特に流通面において消費拡大を図るに当たっては大事なことではないかというふうに私はまず考えるわけでございます。  それから、食管会計の赤字ということが、これもしょっちゅう新聞に出ております。私も御承知のように米価審議会委員を長くしているわけで、その中で、食管制度の赤字が無限に拡大することは食管制度そのものが崩れることになりますから、食管における赤字というものはみんなで縮めていく努力をしなければならないと私は思っております。しかし、私らがいただきました資料によりますと、四十五年には一般会計においての食管の経費は五・九%であったが、五十六年には二・一%になって少なくなっている。また、農林関係の予算の中でも、四十五年は四九・二%でしたが、五十六年は二六・九%という形で、赤字はずっと縮小されてきているわけであります。特に現在財政問題がやかましい中において、こういう食管の赤字を縮めていくことはみんなで努力はしなければならないと私も思っておりますけれども、その中においてももうちょっと工夫をすれば考える余地が十分あり得るのじゃないだろうかと私は思っております。  そういう点では、ここにおいでの先生方は私とほとんど同じお気持ちの先生方ばかりじゃないかと思うわけですけれども、私は、三K三Kと言って、国鉄とか健保と一緒に食管の赤字のことを言われるのはどうも心外にたえないのです。これは農民の皆さんも忍びがたきを忍んでいろいろながまんをされているし、消費者もいろいろ考えている。また、私は農林省の肩を持つわけではないのですけれども、農林省も言われるから何とか赤字を縮めなければいかぬということで、米審で皆さんのいろいろなことを聞いていまして、そういう努力は私は非常にされていると思っていますので、その点も先生方にもう少し御理解をいただいたらと思っております。  そうして、現在、米の取り扱いについて私が非常に心配しますことの一つの例として、もう七、八年になりますか、かつて全中の会長であった宮脇さんが米審の席上で、麦を安楽死させるのなら、政府は安楽死させるということをはっきりと言えということを非常に悲痛な声で訴えられたことを覚えております。そこで、麦がなぜ生産がずっと減退をしてきたのか。私は子供のころ、おやじの実家が百姓でしたので農家で麦がうんとつくられていた実情をよく知っているわけですが、そういう中で麦がつくられなくなってきたという農民の気持ち、二、三年前に農協の婦人部の代表の人二人が私のところへ見えて農業の問題を話し合いましたときに、お二人とも息子さんを東京の農業関係の大学へやった、夏休みに子供が友達を連れて遊びに来たから、いろいろ接待をして、別の部屋にいたら、その自分の子供も遊びに来ていた友達も二人とも、大学を出たら農業をやりたくないということをささやいているのを耳にして、母親として、何のために東京まで出して勉強させているのか考えさせられたということを私に言っておいでになりました。そういう点から、今度の食管法の改正の機会に、先生方のお力で若い人たちがみんな自信と希望、誇りを持つような農業というものをぜひお考えいただきたい。これは消費者の立場からも、法律体制とともに、それ以上に非常に現在重要なことではないだろうかと私は思っております。  そうしまして、今度の改正は米の消費拡大と流通面の改正に大いに特徴があるわけでありますけれども、第一条の「配給ノ統制」を「流通ノ規制」というふうにしたところから始まって、各条を見ますと流通面に非常なウエートを置いておいでになります。この機会に何とか米離れをもう少し弱めて消費拡大できないか。それからまた、現在いろいろな点から日本型食生活ということについて各方面で検討をされております。それから、これからの日本経済が長期の不況に入っていくということになれば、米に対する関心はいままで以上に強まっていくと私は思っております。現に私の方の生協でも米を扱っております。しかし生協で扱っております米は全部農協の経済連との関係において扱っている米であります。それで生協の米はおいしいという形の中で、生協で扱っております米は、正直言いまして生協の組織拡大のために役立っているわけであります。今度の流通面におけるいろいろな改正が細かなことはほとんど政令にゆだねられておりますので十分わかりませんけれども、流通面においての農協と生協の関係によるところの米の拡大というものの事実をぜひ皆さん方に御検討いただきたいと思います。  今度の改正で、流通ルートというものを国や都道府県の監督のもとに置いて、そうして集荷、販売業者の地位とその責任を明らかにしてきている、そうして自主流通米に法的な地位を与えているという、このあたりが今度の改正の特徴だと思いますけれども、この中においても、これからつくられるところの政令、そういうものについても法律の審議の中で私は十分御検討いただきたい。  流通面に経済競争の原理を導入する、あるいは新規参入を認めていく、そういう形で流通面を活発化して、活性化していくということはこの際必要なことだと私も考えております。しかしながら、そういう中で十分お考えをいただきたいのは、卸の段階で自由選択によるところの入札制度が導入されて、品質別に見た米の需給均衡を図っていくとか、いろいろなことが考えられているようでありますけれども、競争原理を導入する、経済原理を導入していくという形の中で、下手をしますと、企業サイド、しかも商業資本の介入ということが非常に強まってくる危険性があるということを私は憂えるわけであります。そういうことを中心にしていろいろ考えられましたら、消費者の立場から見たら、そういう中で米の値段のつり上げということが行われないかどうか、それから品質の問題がどうかという点で、細かな点でいろいろと私は問題があるのではないだろうかと思っております。  生協でももちろん自主流通米を扱っております。しかしながら私たちは、今度のこの改正の中においてもおいしい標準米をぜひとも確保していただきたい。特に標準米については、大都会においてまずい、地方へ行って標準米を食べるとおいしいのです。そういうような点についても十分御検討を私は諸先生方にお願いいたしたい。そして今度の改正が本当に消費者の立場から、米は日本人の主食だから米を食べようという気持ちが消費者の中からも出てくるようにぜひお考えをいただきたいと私は考えるわけであります。  私たち消費者はやはりできるだけ安く食べたい。日本の食糧は高いと言われております。しかし安易に外国から食糧を輸入するということについては問題がある。日本における米を中心にする政策というものをぜひとも消費者の立場に立って先生方に御検討いただきたい。そういう点につきましては、今後の流通面においても生協の位置づけ、私たちはお米屋さんがなくていいというようなばかな考え方は毛頭持っておりません、お米屋さんと私たち生協の者も十分消費者の立場に立って競争をすればいいのであって、だめな生協はだめで消費者から忌避されることも十分あり得ると私たちは思っておりますし、そういう生協でつぶれたものも幾つもあります。公正な競争ということが流通面において十分果たされるように、そうしてそういう中で一番心配になりますのは不正規流通といいますか、やみ米の横行というものについても十分先生方に御検討いただきたい。縁故米とか贈答米というものも今後認められるわけですが、そういう中でいろいろないかがわしい流通などが行われないように、ぜひ先生方の御審議の過程で明らかにしていただきたいということをお願いいたしまして、私の参考人としての陳述の責めを終えさせていただきたいと思います。(拍手)
  112. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 ありがとうございました。  次に、林参考人にお願いいたします。
  113. 林信彰

    ○林参考人 ジャーナリストとしまして農業、食糧問題の取材に当たってきました経験から、今回提案されております食糧管理制度の改正案について若干の私見を述べてみたいと思います。  すでに各参考人から出ておりますように、現在の食管制度が一種の空洞化している状態であるということはすべての人々が認めるところであります。特に米過剰の構造的な定着化あるいは末端流通における自由米の横行、こうした問題が食管制度の抱えている問題としてきわめて深刻であるということは十分認識されるところであります。こうした問題につきまして、昭和四十年代から行政的手法によりまして数々の改善あるいは改正が行われてきたわけでありますが、それらの行政的手法ではもはや解決できない段階に達した現在において、改めて法的な改正が必要になってきたというふうに私は認識しております。  ただ、この法的な改正が必要にになってきたということは認めるわけでありますが、さらば、いわゆる現状追認的な改正ないしは当面をつくろうびほう的な改正によってこの問題が果たして全面的に解決できるであろうかというふうに考えますと、これはこうしたものでは解決できないという認識に立っております。  食管制度につきましては、諸先生方御承知のとおりすでに四十年間の歴史を持っております。そして、依然として現在においても、これはわが国の食糧政策の基本的な法制であるということには変わりがないというふうに考えております。食管制度の持っておりますいろいろな側面、これはわが国の食糧政策の基幹であるということに現在においても変化がないし、今後の食糧問題を考えていく場合には、この機能を弱めることではなく、むしろ機能を強化していくことが今日の最も重大な課題ではないかというふうに考えている次第でございます。  では、今日の食糧問題、食糧政策についてどのような問題があるかと申しますと、一つはやはり米過剰の問題がございます。米が昭和四十五年以降構造的な過剰状態に陥っているということについては私も認識しておりますが、同時に考えなければならないことは、米が過剰でありながら他の穀物が圧倒的に輸入に依存しているという、この食糧供給の二重構造の問題について切り込まない限り、米の過剰の問題あるいは米の流通改善の問題にどのような手を加えていっても、それは当面を糊塗するにすぎないものではないであろうか、矛盾は矛盾としてあくまでも尾を引いて出てくるのではないかというふうに考えられます。  この食糧、特に穀物供給の二重構造問題につきましては、すでに農政審議会その他においても、これをいかにして変えるか、わが国の農業生産構造を変えようというような方向に進みつつあります。そういう中で特に食糧政策の問題として問題になりますのは、昨年の両院の本会議における食糧自給力強化に関する決議、あるいは農政審議会の答申にありますよべに、食糧の安全保障論というものが国民的な関心を呼び起こしております。  現在食糧の安全保障が言われておりますが、わが国の食糧問題を見た場合、日本における食糧危機というものがどのような形で来るのか、このような点についてはまだ十分に詰められておりません。私見によりますれば、私は、日本の食糧危機というのは、今後十年ぐらいの間に栄養水準の極端な低下といった絶望的な食糧危機を招来するというようなことはあってはならないし、また当面は考えられないことだというふうに思います。しかしながら、出てくる問題は、食生活の体系を維持することができないという形の危機は、すでに今日においてもその萌芽的な状態においてあらわれているというふうに思います。  それは何かと申しますと、先ほど言いました穀物供給の二重構造、わけても国内生産がわずかに二%にすぎないという飼料穀物の圧倒的な輸入依存、この体制が今後の世界の食糧情勢の中できわめて不安定性を増しているということであります。このえさ問題を端緒にしまして、われわれ国民が消費しております畜産物について、これを十分消費できない、供給が不可能になるという形で現在の食生活が維持できないというような状態が出てくるのではないかというふうに思うわけであります。そういう認識に立ちますと、今日の食糧政策としましては、この食管制度の機能を、食糧供給、穀物供給の二重構造を改善するという方向に充実させるということをまず基本に置いて考えなければならないのではないかというふうに考えます。  具体的には、これは米麦のみならず飼料穀物を食管の対象物資とするということがまず何よりも大事であろうというふうに思います。昭和二十六年まで、あの戦後の絶望的な食糧危機の中では、雑穀に至るまで食管物資でありました。それ以前においては芋まで食管物資でありました。そういうようなことを考えますと、今日の時点においては、飼料穀物を対象にするということは、八〇年代に生ずるであろう畜産問題を中心とする食糧問題に対処する上において基本的に重要であるというふうに考えます。  そして、これは現在三三%まで落ち込み、やがて近い将来には三〇%台を割るのではないかと思われる穀物自給率を引き上げるための基本的な構想になるというふうに考えます。私も、現在輸入されております千四百万トンを超える飼料穀物のすべてを国内で自給できるというふうには考えておりません。そのようなことになれば大変な投資が必要でありましょうし、国民的な、国民経済の負担というものはきわめて大きいということを承知しております。しかしながら、少なくとも食糧の安全保障を言う以上においては、これは具体的な対策としてこの問題に対処しなければならないというふうに思います。  その具体的な方策とは、いわゆる生産力備蓄の考え方であります。生産力を備蓄して、有事の際にこの生産力をフルに発揮させるという方法が必要だろうと思います。農政審議会の答申はこの件に関してやや具体性を欠いております。不測の事態に備えるということは、生産力を常にいつでも発揮できるように備蓄をするということが必要であります。そのためにはすぐれた生産装置としての水田、これを維持していくということがわが国の食糧の安全保障にとって不可欠な問題だというふうに考えております。これを可能にするためには、やはり食管の機能を拡充して、そして飼料穀物についての適当な国境保護措置を講ずる、つまり、輸出入の国家による規制を行うということが必要だというふうに考えます。  そして、場合によっては、水田の生産力の維持のために最も重要な問題は、先ほど足鹿参考人からも話が出ましたように、一部をえさ米として生産するというこの方法こそが具体的な手法であるというふうに考えます。私も農業情報研究所の中にエサ米情報センターを設けまして、全国のえさ米に関する情報を収集しておりますが、本年度全国で百ヘクタールを超える試験田がつくられております。こうした実情を見るならば、国家的な要請に基づく穀物自給率の向上と同時に、これは農民の要求である米をつくっていこう、水田をつぶさないようにしようというものが全く合致しているものであるというふうに思います。食管法の条文の審議とは別に、こうした基本的な今後の食糧政策に関する諸問題に関して、本委員会においで諸先生方の十分な御検討をお願いしたいというふうに存じます。  第二に、政府案について若干の私見を申し上げてみたいというふうに思います。  政府案につきましては、これは一般マスコミは、私を含めてでございますが、現状追認という言葉を使っております。そしてその内容につきましては、本法案本文にあらわれたものより、むしろ政省令あるいは今後の運用にゆだねられている点が非常に多いわけでありますが、これらについてまだ私も十分承知しておりませんが、やや気になる一、二の点を指摘したいと思います。  まず第一の問題は、基本計画を定めることになっておりますが、この基本計画で当然に、現在まで行われてまいりました予約限度数量という形での買い入れ制限が一種の法制化へ進むというふうに理解できるのではないかと考えられます。生産農家の理解と協力を旨として進められる政策について法制化をされるということになれば、ある場合には強権的な強制力が加わるのではないかということについて、現地の農民たちが大変心配をしております。こうした問題が果たして今後の運用の中でどのように行われるのか、この点はひとつ明らかにされなければならないというふうに考えられます。  第二に、自主流通米の法的な公認、これは本文第三条においてもすでに明らかにされておりますが、この中で特に問題なのは、自主流通米のUターンが一体どのように扱われるのかという問題であります。現在であれば、これは政府の全量管理というたてまえを崩さないためにも、予約限度数量内の米であれば、これは自主流通米であっても、自主流通米として販売されなかったものについては政府に売り渡すことができる、いわゆるUターン制度を認めております。今後、これは類別あるいは自主流通米、政府米という流通態様別における計画の中でこの枠を決めるということになれば、このUターンを認めるのかどうかということが一つの焦点になるかと思います。もしUターン制度が崩れるということになれば、国民の必要とする米の全量を国家が管理するという食糧管理の基本的な構想が崩れるわけでありまして、この点も審議の経過の中で明らかにしていただきたいというふうに考えます。  それから第三は、価格形成の問題であります。価格形成につきましては、これは特に自主流通米を主体として市場原理によって価格形成が十分行われるようにする、その市場原理による価格形成がやがては政府買い入れ価格に反映するという形で、価格による需給調整という構想が今改正案の一つの柱になっているというふうに考えられます。特にその場合、低品質米と称される四類米、五類米につきましては、自主流通米の中にも組み込むということになっておりますので、これは現実において政府買い入れ価格を下回る価格で取引されるということが常態になろうかというふうに考えます。そうなりますと、政府買い入れ価格、つまり現在までは最低保証価格と考えられていたものが、いわゆる安定帯価格の中間値になるということになります。これは食管制度の中において価格を国家で管理する、管理価格のもとに置くという制度に対する根本的な改正点であろうかというふうに思います。  以上のような点を考えてみますと、これは単に現状追認にとどまっていないのではないだろうか、食糧管理制度一つの大きな変化を伴う改正であるというふうに考えます。そういう点から、これらの問題についての具体的な内容について明らかにするということが必要ではなかろうかというふうに考えます。  第三に、今回の改正に当たって特に考えていただきたい点を二、三申し述べておきたいと思います。  一つは、食糧管理のための財政負担の問題であります。今回の改正の背景にも、この財政負担がふえてきている、これは財政再建策の中での問題というふうに思います。しかし、いままでの食糧管理のための財政負担を考えますと、やむを得ないいわゆる社会保障的な性格が非常に強くあったというふうに考えます。今後この財政負担をどのようにするかということを考えますと、今後は食糧安全保障のいわゆる社会的な保険料としての考え方、これを貫かなければならないのではないかというふうに思います。その社会的保険料がどの限度でいいかということについては、十分諸先生方の御議論にまつところでありますが、性格としては、そうした性格で今後とも財政負担は必要であるというふうに考えております。  それから第二に、改正案の中にあります基本計画実施計画の問題に関連いたしますが、基本計画については、これはわが国の農業生産のあり方に基本的に関連いたします。実施計画については、これは国民の食生活のあり方に関連いたします。こうした重要事項でありますから、これを単に行政の手にゆだねるのではなく、生産者、消費者の参加する審議機関によってこれがチェックされなければならない、そういう性格であろうかと思います。これらについては、法制上こうした審議機関を設けるということが明らかにされる必要があるというふうに思います。  第三に、備蓄の問題でありますが、備蓄については今回の食管法の改正案の中では明らかにされておりません。しかし、今後の食糧安全保障の立場から見ますと、米麦に関しては少なくとも六カ月分くらいの備蓄が必要であろうかと思います。しかもこの六カ月分の備蓄は、三年間でいわゆる主食用としての限度が参りますので、三年間でたな上げ方式を行う、つまり六カ月分の二カ月分ずつは加工あるいはえさに回していくというような形で行う必要があるのではないか。あるいは米については特に農家段階におけるもみ貯蔵の奨励、こうしたことを行いまして、国民全体に備蓄というものについての再度の見直しということの必要性を盛り上げる必要があるのではないかというふうに思います。  これと関連いたしまして、もみ貯蔵を奨励しますれば、当然今後産地精米が十分定着できるような手段も行い、同時に精米検査という手法も取り入れるべきだというふうに考えます。現在のところは政府が買い入れるという形で玄米検査だけに限定されておりますが、消費者保護ということを考えれば、格上げ混米その他の問題から考えましても、精米を検査する、そして商品として政府が保証するということが、先ほど中林参考人も言われました米に関する不信感を一掃するためにも必要であるというふうに考えます。  最後に、これは農業団体の問題でありますが、特にこのような計画生産を行い、そして国民の必要とする食糧の生産を行うという場合においては、単にこの計画生産を行うということとうらはらの関係になりますのは、当然、米を中心としました穀物を一元集荷しそしてこれを多元販売するというこの方式を、農業団体、特に農協に保証しなければならないというふうに思うわけであります。このための道を大きく開くということが重要であろうかと思います。これは単に法制上の問題ではなく、農業団体みずからもこの方向に努力していただくということが、国民全体の食糧確保を図る農業団体の役割りではないかというふうに思います。  その他、流通面の改善については、現在考えられております方向について、先ほど申し述べました基本点に留意されて十分な運用を図っていただきたいというふうに考えます。  以上で私の意見を終わります。(拍手)
  114. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 ありがとうございました。  次に、逸見参考人にお願いいたします。
  115. 逸見謙三

    ○逸見参考人 時間がもう予定を超過しておりますが……。  私はほかの参考人のように実際の食管制度の運用の中におられる方と違いまして、必ずしも運用に詳しくございませんので、あるいは勘違いがあるかと恐れるわけでございますが、その点御容赦いただきたいと思います。  四十四年の自主流通米の導入以来、かなり大がかりな問題、たとえば予約限度制の導入とか物統令適用廃止とか、四、五類をさらに自主流通米制度に導入する、あるいは備蓄というものに重点を置いていく、こういういろいろな改正があったわけでございますけれども、二十七年以来食管法そのものは改正してない、こういうことでございますので、やはり現状は不自然なのではないかというふうに思います。この意味で、私は現状追認の改正だという意見に対しては賛成したいと思います。  現行の食管制度に関しましては、なかなかいろいろな極端な御意見があるのじゃないかと思います。たとえば全くこういうものは要らないのだ、もっと徹底した間接統制にすべきだ、こういう意見もおありになるかと思います。ただ、私が存じ上げております国民のいろんな世論調査、こういうのを見ますと、国民の大部分は、依然として将来の食糧供給に不安を持っている、食管の維持を望んでおる、こういうふうに考えます。  オイルショックのときに、洗剤だとかトイレットペーパーなんかで起こったようなことが最も重要な主食に対して起こらなかった、こういうようなことを考えますと、基本的な骨格は維持すべきだ、こういうふうに考えまして、現状に合わなくて、先ほど来いろいろ御意見出ておりますような財政面のいろんな問題がある、あるいはそのほか心理的にも、コストがいろいろかかっている、こういうようなことと妥協点をとりまして、需給計画を持ち、備蓄を持ち、いざというときには政令で配給統制が発動される、こういうような妥協点を求めた、あるいはこのために流通ルートをできるだけ確保していく、流通業者を指定したり、許可制にしたり、そういうことをする、こういうことはそれなりに意味がある。私はそういう意味で、大枠の点では賛成するわけでございます。  ただ、お米を取り巻く経済事情に比べまして、私は麦類を取り巻く経済事情の方がもっと大きな変化がこの間にあったと思いますので、今回の改正が米に偏り過ぎていたのじゃないか、こういう点には不満を持つわけでございます。せっかくお米に関しまして品質を考慮した需給計画をお立てになるなら、お米よりもその用途はいろいろある小麦に関しましては、品質を入れた需給計画、こういうようなことをもう少しうたってもよろしかったのではないか、こう思いますし、先ほどの参考人の意見とは食い違って恐縮でございますが、大・裸麦は主食とは言いがたい、こういうことで外してもよろしいのじゃないか、こういうふうに私は考える次第でございます。むしろ流通飼料の方、需給計画の方は畜産の方でおやりになっておられますけれども、これは、私の印象ではいささかおざなり、こういうことでございますので、食管物資から外して、大・裸麦に関しましては、もっと本格的な流通飼料の需給計画、こういうふうにお考えになった方がよろしいのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  まあ、希望でございますけれども、昭和二十七年以前はかなり頻繁に食管制度を改正しておられましたので、今後ももう少し現状に合わして、今後の問題でございますけれども、頻繁に改正された方がよろしいのではないか。これは経済の実態でございますので、生産者も末端の消費者も流通業者も経済の誘因ということに動くことは法律で規制することは不可能でございますから、いたずらに罰を受ける者が出ないように、こういうような観点から頻繁に、朝令暮改も困りますけれども、もう少し今後は改正に勇気を持ってやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  若干の要望事がございますが、ほとんどが先ほど来出ておりますように、運用面の方が非常に大事でございまして、私は価格、米価をいじることとそれから生産調整をいじることと、この二つのバランスということをくれぐれもよく図っていただきたい、こういうふうに希望するわけでございます。  次に、備蓄というものがますます重要になってまいります。まあ全部加工用とかえさ用に回してしまうなら、それだけ国民が財政負担ということを覚悟されるなら結構でございますけれども、そうじゃなく、味と財政負担というものとの兼ね合い、こういうことに関しまして、国民にくれぐれも理解を得るような努力をしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  次は流通ルート。流通ルートは非常に重要でございますが、これをある一定の確たるものを確保するということと、絶えず流通ルートの効率化を図る、こういうことを両立させることは非常にむずかしいことだと思いますけれども、そのバランスということに関しましても御配慮いただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  最後に、府県別需給計画でございますけれども、この府県別の需給計画が主要生産県というものに生産調整面積でより多く負担がかかる、こういうことのないように希望するわけでございます。  時間が超過しておりますので、以上で終わらせていただきます。(拍手)
  116. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 ありがとうございました。  以上で各参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————
  117. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  118. 松沢俊昭

    ○松沢委員 きょうは参考人の皆さんには大変お忙しいところをお出ましをいただきまして、大変貴重な御意見をお聞かせをいただきまして本当にありがとうございました。  若干御質問を申し上げたいと思いますのですが、さっきも中林さんの方からお話がございましたように、いわゆる三Kという、そういうことで、米の管理の問題につきましていろいろと非難も出ております。私ははっきり申し上げますけれども、今回のこの改正、これは皆さんもおわかりのとおり昭和十七年にできたところの法律でありまして、一切がかたかな法、こういう法律でございますから、あの時代は戦争をやるには米を集めなければならぬ、食糧を集めなければならぬ、こういうことででき上がった法律でありますから、やはりいまの時代に合わないところの面というのもたくさん出てきていることは間違いないと思います。しかし、いま行革だとかあるいはまた財政再建だとかということが実は新聞等においては花盛りになっているわけなんでありまして、今回のこの法律の改正、考えてみますと、確かに合わなくなってきているというけれども、もう自主流通米の導入だとか、あるいはまた統制令からの除外だとか、いろんなことが、これは法律改正でなしに、まあ政府の役人の手によって改正されてきている。これを見ますと、法律十八回、施行令が四十一回、規則が九十五回、関する件というのが百五十六回、これぐらい法律改正しないでどんどん空洞化をやってきた。それがいまになって見るならば、法律と現実というのが大分乖離が大きくなってきた、こういうことになると思うのです。  今回の法律改正に当たっても、運用の面等につきましてはやはり政令で決めることになっておりますので、こういう食糧管理のあり方というのが果たしていいのかどうか、こういう一つの疑問を持っておるわけなんでありますが、この辺につきまして、学識経験者の立場で御出席を願いましたところの林先生と逸見先生に、食糧の管理をやるのに、要するに国会で決まったものとは別に食糧管理が動いているという管理のあり方についてどうお考えになっているか、まずお伺いしたいと思います。
  119. 林信彰

    ○林参考人 お答えいたします。  政令あるいは省令で行う事項、これは当然先生方にはおわかりのとおり、法律に基づいて行われるべき性質のものだというふうに思いますが、食管制度の中では若干この辺に疑義がある点もございます。たとえば、買い入れ制限が事実上行われている、予約限度数量がつくられたという問題がございます。これにつきましては、農政審議会におきまして、米過剰の状態の中においては、要すれば特別立法ないしは食管法の改正によってこの買い入れ制限を行うべきであるというような答申が行われております。それにもかかわらずこれは政令事項として行われた、こういう点についての若干の疑義がございます。  もちろん政令、省令によって行ってはならないということではございませんが、こういう基本的な事項に関して法律改正を行わずにやるということについて、これは多くの国民の間に疑問を生ずる。特に生産農家の間ではどういうふうになっていくのかわからない。今回の改正においても、政正の条文はここまでしか言っていないけれども、そこから先はまた運用という形で、どんどんなし崩しが行われるのではないかという疑問を生ずるということがございます。これは改正案の提案理由の趣旨の説明にもございますように、遵法精神を失わせるもとにもなるかと思いますので、その辺に関しましては先生方にいわゆる歯どめ措置を明確にしていただく、どこまでは法律条項であるかということについてのお考えを法律の中へ盛り込んでいただきたいというふうに考えております。
  120. 逸見謙三

    ○逸見参考人 私、先ほど申しましたように、もう少し法改正が過去頻繁にあった方が自然ではなかったか、こういう印象を持っておりますのは、いまの御質問の趣旨と一致するのではないか、こういうふうに考えております。ただ、私自身としましては、行政でやり得る範囲がかなり大きくないと、国会でいろいろ絶えず御審議いただいているわけではございますけれども、経済の実態というのは非常に頻繁に動きますので、そういう審議の手数というものを余りいとわずにお持ちになるのもいかがか、こういうふうに考えております。非常に一般論で恐縮でございますが……。
  121. 松沢俊昭

    ○松沢委員 次に、榊さんに御質問申し上げたいと思います。  実は農協も生産調整に協力をしてこられたわけなんであります。生産調整に協力して食管の根幹を守っていかなければならない、こういうことをずっと言ってこられたわけでありますが、今回のこの法律の改正、第一条の「配給ノ統制」というのが今度は「流通ノ規制」に変わる、こういうことになりますと、いままでの食糧管理法とは本質的に大変違ったものになってきたのじゃないか。私たちは、根幹というのは、一つは全量買い上げ、それから二番目といたしましては二重価格制、三番目といたしましては政府の直接管理、要するにこの三つを根幹だと実は心得てきたわけなんでありまして、この点は農協さんとやはり同じような考え方であったのではないか、こう思っておりますが、今回のこの改正によって「流通ノ規制」ということになりますと、農協がいままで主張してこられたところの根幹というものはなくなってしまうのではないか、こんな考え方を持っております。  それからもう一つの問題といたしましては、さきも触れましたけれども、米を管理するにはやはり金がかかるという前提で議論していかなければならぬと思いますけれども、政府の方では、財政再建、行政改革、安上がりな管理を考えるということからこの法律の改正というのが行われてきているのじゃないかというふうにも考えておるのです。その点は農協の立場でどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  122. 榊春夫

    ○榊参考人 ただいま御指摘の点につきまして私どもの考え方を申し上げたいと思います。  今回の法律改正の中では、先ほども冒頭に申し上げましたように、われわれが要望しております食管法の根幹は堅持されておるというふうに私どもは一応政府説明を信じております。しかしながら「配給ノ統制」というものを「流通ノ規制」というふうに改めたその真意とするところは、やはり政府需給均衡、需給調整について責任を持つということを積極的に明らかにしようとしたものであるというふうに考えるものでありまして、その限りにおきまして、確かに過剰、不足ということがあり得るわけですから、政府が全責任を持って国民に対する安定供給を確保していく、そのために必要な需給調整において政府が主役を演じていく、責任を持って対処していくという体制が必要であるというふうに私どもとしては考えております。  ただし、現状のような過剰の中でこの需給均衡を図っていくということが行き過ぎになって、生産の規制といいますか、作付の統制というふうなことにまで及ぶことがあるとするならば、これは法の運用としては行き過ぎではないか。やはり出回るもの、流通するものの規制が限度であって、生産の調整にまで介入することは食管法の運用としては行き過ぎではないかというふうに考えているところでございます。その辺はひとつ十分政府に責任ある答弁をしていただき、そういった運用を確保していただきたいというふうに考えている点でございます。  それから財政負担の問題でございますが、これは基本的に食管法が、生産者に対しては再生産補償価格、消費者に対しては家計安定価格ということが法律上定められている以上、そういった必要上価格が二手になる、それがたまたま逆ざやになるということも当然あり得べきことであって、その財政負担を問題にするというわけにはまいらぬではないか。必要な財政負担というものは政府で甘んじて受けていただかなければならぬ、これは国民経済全体でその財政負担というものは支えていっていただかなければならぬというふうに考えているわけでございます。  ただ、近ごろいろいろと言われております中で、実は食管の赤字というものの中に水田利用再編対策補助金、奨励金等が含まれておるわけでございます。これは四千億に達する多額な財政負担でございますが、このものが果たして食管法で負担すべき経費であるかどうか、食管会計に属すべき負担であるかどうかということについては、私どもは若干別な考え方を持っております。  米の生産調整が始まりました当初には、米をとにかく供給しないようにしてくれということで、休耕を含めた生産調整が行われました。これはまさに緊急避難的に米をつくらないでくれ、まさに米の分野の対策として講じられた措置でございますから、これが食管会計の負担になったということは経過としてはわかるわけでございますけれども、いま行われております水田利用再編対策というのは、ひとり米の問題ではございません。農業生産全体で農業をどう再編成していくか、水田の利用をどう転換していくか、こういう農業全体の問題でありまして、これを食管会計の経費なりということで食管に対する批判を高めておるという措置は、私ははなはだ不満でございます。  以上でございます。
  123. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それと、第二条ノ二で基本計画というのを立てることになっていますね。この中で自主流通米、政府米の仕分けをやったりなんかしているわけでありますが、そうなりますと、この農政審の答申でも出されておるように、需給均衡の価格でこの生産者の価格というのを考えていくべきであるという意見があるわけでありますが、確かに三条の一項というのは改正されてありませんけれども、しかしこの自主流通米そのものが一つにはUターンができないという可能性が実は出てくるわけですね。そして、要するにその価格というものを参考にしながら政府の価格というものを決めていくということになりますと、いままでは政府の価格というのは底どめの役割りというものを果たしておりましたけれども、今度はUターンができないというようなことに仮になったとするならば、底どめではなくなってしまう。そうなりますと、生産者価格というのが保障されないという結果になる可能性というのが出てくるのじゃないか。こういう点、農協の方ではどうお考えになっておるか。  それからもう一つ、八条ノ四でありますけれども、これはもう明らかに強権発動ができるということになっているわけですね、政令でやることになるわけですから。自衛隊法の百三条に、戦争状態になった場合、もう物も金も全部集めることができることになっておりますけれども、しかしこれにつきましては罰則というのはないのですよ。私はやはりこの食管で大変いじめられてまいりました。戦後生産農民といたしまして強権発動でひどい目に遭ったわけであります。でありますから、やはり改正するということであるならば、昭和十七年ころというのは明治憲法でありますから、いま新憲法でありますから、新憲法には基本的人権というものが尊重されることになっているわけですね。そういう点からすると、この第八条ノ四というのは農民の基本的人権というのがじゅうりんされる結果になるのじゃないか、こんなぐあいに実は考えるわけでありますが、この点は生産者の立場で農協はどうお考えになっているか、お伺いしたいと思うのです。
  124. 榊春夫

    ○榊参考人 前段の御指摘の、自主流通米のUターンができるのかできないのかという点でございますが、私どもがいままで聞いております範囲では、政府はUターンは今後もやるというふうに言っておりますので、それを信頼をしております。  確かにUターンを禁止するということは非常に問題だと思っております。現に、本年行われました四類、五類米の自主流通扱いの取り扱いの指針を出されました中で、これはひとつUターンを考えない自主流通をやってほしいというふうに指示をされております。この点につきましては、私どもは四類、五類の自主流通米扱いというのは、これはきわめて例外的な、一種の市場リサーチみたいな意味で実験的にやっておるというふうに理解をしておりますし、また一方で、生産者がどこまで政府の売却価格ないしはそれを下回るような価格でも量的に消化することを期待するか、そういった生産者の意向もくみ取りながら実験的にやったものでございます。  そういう意味で、自主流通全体についてUターン制度というものは堅持されなければならないものというふうに思っておりますし、もちろん政府が買い入れ価格で保障している価格水準というのは、あらゆる米について保障されなければならぬというのが私どもの基本的な考え方でございます。  それから、需給が逼迫した場合の配給制の復活ということから、強制供出を伴うのではないかという問題点がございます。確かに強権供出も可能な法律のたてまえにはなっているわけでございますが、しかし私どもは、そういった有事の場合においても、特に需給が逼迫をしておるという段階におきましては、安定した米の供給を確保していくという必要性は最も緊急度の高い事態であるというふうに理解せざるを得ないと思っております。  ただ、問題になりますのは、そこで価格の問題であろうと思います。特に、自主流通のような姿で売り手も買い手も納得をして取引ができるというふうな条件下で行われる価格形成と違いまして、強権発動生産者のものを取り上げるというふうな事態になりますと、いかなる角度から見ても生産者に犠牲を与えることのないような、そういった価格を前提にして行われなければならないものだというふうに考えるわけでございまして、そういった事態になりましたならば、ぜひとも先生方のお力によりまして、一人の米生産者も泣く者がいないように、損失をこうむる者のないように、そういった価格をぜひ保障をしていただきたい、そういう面で生産者の利益を守っていただきたいということを切にお願いを申し上げます。
  125. 松沢俊昭

    ○松沢委員 榊さん、私考えまするに、第二条ノ二の基本計画でありますけれども、政府を信用するのは結構であります、政府の方としてもUターンというのは認めないなんということは言っておりませんけれども、しかし、認められても意味がないというようなUターン、意味のないところの価格政策ということになってしまう危険性というのがあるのじゃなかろうなというふうに私は心配していますが、その点はどうお考えになりますか。ここにははっきりと出ておりませんからね。
  126. 榊春夫

    ○榊参考人 普通の一般の自主流通の分野におきましても、自主流通米は、消費者が特に高くても味のいい米が欲しいということで、そういった需要対応するために自主流通扱いという道が開かれたのだと思います。したがいまして、自主流通米で扱う以上は少なくとも政府買い入れ価格以上の価格が生産者に支払われるのでなければ、これを積極的にやる意味が薄いということになるものと考えております。そういったたてまえからしまして、政府の買い入れ価格以下で扱わなければならぬような自主流通米というものは原則としてはあり得べからざるものというふうに私は理解をいたしております。したがって、そういう価格でなければ売れないということになれば、当然政府に買い入れをしてもらわなければならぬ。少なくともそういった生産者に保障された生産者価格というものは、生産者にとって貫徹されなければいかぬという立場で自主流通米の取り扱いに当たらなければならぬというふうに考えております。
  127. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それから生協の中林さんにちょっとお伺いしますけれども、消費者の立場で品質と価格が保証されることが一番大事だと思いますが、具体的にどのようにやったら一番うまくいくかという問題ですね。それからもう一つは消費の拡大。やはり消費者の立場で、こういうふうにしてやれば消費は拡大されるという御意見がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  128. 中林貞男

    ○中林参考人 お答えいたします。  私たち、先ほども申しましたが、米はわれわれの主食で非常に重要な商品だと思っております。しかしながら、主婦の皆さん方の間でしょっちゅう問題になるのは品質の問題、それから表示の問題です。それがはっきりしていない。最近、食糧庁でもいろいろ検討され、また各県段階の流通適正化協議会の中でもいろいろ論議がなされております。それでこの際、品質表示の問題を徹底的にきちんとしていただきたいというふうに私は思っております。  それから自主流通米が最近頭打ちをしたりなどしているという点も、お米の値段が消費者の期待に反して上がっていくという点について問題がある。消費者はいい米を安く食べたい。そういう点で消費拡大のためには、標準米というものを何か邪魔者のような、どうも悪い米、悪い米というひがみを特に都会の私たちは持っておりますが、標準米をどうしておいしくするのかということをぜひ御検討をいただきたい。  それから、生協でも自主流通米をコープ米とかいろいろな名前をつけて扱っております。しかし、これは農協の経済連ときちんと品質の相談をして、品質表示が間違いないというような消費者の信頼のもとで生協の米が拡大しているわけです。それですから、流通面の改革の中において新規参入とかいろいろそういう形で競争原理を導入されていく過程で、農協と生協の関係生産者と消費者の信頼関係による直結、そしてお米の品質を保証する、そして価格を適正な価格に抑制するという機能を今度の改正の機会にぜひ十分御検討をいただき、その面に諸先生方にお力添えを私はお願いをしたい。  私たちはこれからの政令段階において農林省とそういう点については十分相談をしてまいりたい。そして現在も各県にあります流通適正化協議会とか、そういうようなものをできるだけ活用し、特に流通面において新しい面を開拓していこうということでありますので、特に消費者の声なりニーズというものが十分取り上げられるように、政令改正の中においても、またその前提として各県におけるいろいろな施策の中においても、婦人団体や生協や消費者の声をできるだけ積極的に聞くように諸先生方に御配慮をお願いをしたい。そういう形の中でお米に対する信頼を拡大していく。特に発育盛りの子供さんを持っている家庭などではお米に対する関心は非常に強うございますので、そういう点十分御配慮をお願いしたいというふうに思っております。
  129. 松沢俊昭

    ○松沢委員 さっき三田さんの方から小売業者の実態というのをお話しいただきました。そこで、これは過当競争ということにもなっていると思いますが、その辺どういうふうにしたら米屋さんが安定するのか、その辺もう少し具体的にお伺いしたいと思います。  それから、時間がございませんから、ついでですが、全糧連の金山さんにも御質問申し上げたいと思います。  生産者がたとえば銘柄米を農協を通じて出しますね。ところが消費地に参りますと、たとえばコシヒカリならコシヒカリあるいはまたササニシキならササニシキというものが消費者のところに渡るときにおきましては、ブレンドされて渡されているということを耳にするわけなんでありますが、これは米屋として常識なのか、あるいはまたこれは常識ではないのか。消費者の方からするならばそういうものはそのままの状態で渡してもらいたい、こういう意見がございますが、この辺は一体どうなっているのか。どこでどうなるのか、この仕組みがよくわかりませんので、お聞かせを願いたいと思います。
  130. 三田忠俊

    ○三田参考人 それでは先に失礼して。  いまの過当競争になるのじゃないかという問題なんですけれども、実際新規参入が新しく制度ができましてから、新開地とか新しい団地が急にできたとか、そういう空白地帯、そういうところに対しての出店という問題については、これは組合などでも進んでそういう形をとっているわけなんですけれども、新規参入の場合にはそういう場合ばかりではないわけです。本当にいまでも、一つの町の中に十店舗の小売業者がいるとすると、そこへやはりいまの段階ではほとんど自由というくらいに、早くて三カ月、遅くても六カ月後には出店ができるような要綱ができているわけです。ですから歯どめがないわけですね。ですから、どう込んできても歯どめがないような状況になっているというのが新規参入の現状ですね。そういうことが一つあります。  それから自主流通のあれですが、コシヒカリとかササニシキとか、そういう問題について、ちょっと私が実際にやっている立場でお話をしたいと思うのですけれども、実際に新潟のコシヒカリなんというのは、私の店にも年に二回くらいしか、それも十俵単位くらいしか入らないのですね。このササニシキとかコシヒカリというのが消費者の間であれだけ大きく宣伝されたのは、やはり自主流通米制度がつくられたときなんです。つくられたときに、自主流通にするとコシヒカリやササニシキが本当に単品でどんどん食べられますよ、うまい米ですよというふうに、これは私どもじゃないのですね、自主流通米制度をつくろうという側のところで宣伝をされたわけですね。あらゆるマスコミの機関なんかも通じてそういうことがされた。その結果、ササニシキ、コシヒカリであればどんな米でもうまいのだろうということを消費者が考えてしまっているわけですね。  ですから、新潟のコシヒカリと宮城のササニシキなんというのは、それ単品で売るという問題は、組合としては、役所の方との関係も、三点セットと申しまして産地と年度とコシヒカリとかササニシキの名前、その三点が別の帳簿に記載がしてあれば単品でも売っても構いません。それが、三点セットの届け出がしてないところは、単品であってもコシヒカリだとかササニシキだとかということを表示をして販売することは禁止されているのです。ですから、その三点セットをしない店は、ブレンドであってもそうですし、ササニシキ、コシヒカリが単品であっても何も表示をしないでそのまま販売をしているというふうな、非常に複雑な内容になっているわけです。  それと同時に、ササニシキ、コシヒカリが需要を満たすだけあるかどうかという問題になりますと、新潟の場合なんかは全然ないわけですね。新潟の県内の小売販売業者が、それこそ自分の県内のコシヒカリを使うのに非常に苦労をしているわけです。ほとんど年間に何回というくらいしか入らないということで、苦情を言っているわけです。ですから、特に消費地なんかの小売業者も、そういう面では非常に十分な需要——今度の新法の中でも、消費者のニーズに合ったような需要計画とか供給計画を立てるのだということなんですけれども、とてもじゃないけれども、いまの段階で考えますと、そういうふうな形になるのは何年先になるのだろうかというふうな気がしているわけであります。  以上であります。
  131. 金山國次郎

    ○金山参考人 金山でございます。  消費者に届けられます米に関連してでございますが、いま全国の消費者の台所に届けられます米の約六〇%は大型工場で搗精された米でございます。全国の二十県余りの県では、その県の全域で配給される米は、その県の大型工場で生産された米がすべてである県がございます。それらの県につきましては、すべて穀物検定協会または精米工業会の自主検定が行われておりまして、検定済みのものが配給をされております。東京、神奈川におきましては、大型工場の製品は比較的稼働が多くないのでありますけれども、昨年の秋以来、政府の店頭の検定制度が徹底してまいりまして、特に東京、神奈川等につきましては、穀物検定協会がそれぞれの店舗につきまして検定をいたしております。検定の要領は、先ほどの説明にもありましたように、すべて一類、二類、三類というようなこと、それから産地別、これが一つの基準になっておりまして、順次食糧事務所の先生方が巡回をいたしましてこれを検定をいたしております。  政府指導は、たとえばササニシキとかコシヒカリとか、そういう呼称はできるだけ使わないようにして、一類とか二類とか、そういう呼称を主として使うようにという指導をしているはず、こういうふうに私は存じております。大型工場の袋詰めの生産が年々多くなってきております。したがいまして、私どもといたしましては、政府のいわば袋詰めによる表示の指導が年を追って徹底してまいっておりますので、これが消費者の配給精米に対する信用が高まってきている一つの原因ではないか、かように考えます。  なお、先ほど標準価格米の味についてのお話が先生からちょっとございました。恐らく来年の一月以降の標準価格米は俄然うまくなるのではないか、かように存じます。それは、古米の混入が一切なくなるからでございます。いまはちょうど昨年の不作もございまして、五十四年産の百五十数万トンの古米が入っておりますので、標準価格米、特に現行配給されております米は特例標準価格米がございますので、多少味に御不満があるわけでございますけれども、これは年内にはすっかりなくなります。そういたしますと、来年は配給される米の全量が新米になりますので、そうなりますと、標準価格米だけをお使いいただいても味は上等、こういうふうになるのではないかと考えております。御愛用のほどをひとえにお願いする次第でございます。どうもありがとうございます。
  132. 片岡森寿

    ○片岡参考人 お答え申し上げます。  別にブレンドが常識ではありませんで、先ほどの参考人がお話ししたとおり、一つの県では消費者の要望にこたえられない、やむを得ずブレンドしているというのが現実でございます。仮に宮城のササと申しましても、東京に来たらあれだけを使うというわけにいかない。入荷の都合もある。大体入荷その他の都合でもって、結局はブレンドしてやる以外にない。つまり、いま全糧連の金山さんがおっしゃったとおり、大型精米すらブレンドしないと間に合わない。われわれ業者としては消費者の要望にこたえてブレンドせずに差し上げたい、しかし、それは年間を通じては不可能な状態で、やむを得ずやっておる、こういうような状態でございます。  以上でございます。
  133. 松沢俊昭

    ○松沢委員 大変ありがとうございました。これで終わります。
  134. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 新盛辰雄君。
  135. 新盛辰雄

    ○新盛委員 参考人の皆さんには大変貴重な御意見等をありがとうございました。時間が迫っておりますので、簡潔に御質問申し上げたいと思います。  まず、これまでの減反政策の中で、えさ米の転作運動に熱心に取り組んでこられました足鹿参考人にお伺いしたいと思いますが、えさ米の問題については、昨日この農林水産委員会におきましても、一定の条件はついておりますが、農家のえさ米試験田について本年度から転作の対象にしようという政府の意向も明らかになりました。そういう中で、えさ米が公認されていくであろう、奨励金の問題等その他なければ現実の問題ではありませんが、これによって日本農業の将来展望といいますか、またそれによって受ける影響というのは多くの問題もあろうかと思います。そうしたことについて、このえさ米の将来展望等について、少し時間がなかったのでしょうが、先ほど種子についても私どもも見聞をいたしましたが、その状況についてまず御説明をいただきたいと思うのです。  それと、林参考人の方からも、えさ米はいま水田をつぶしてはならないのだという面からも大いに奨励されるべきところに来ていると前向きの御説明もございました。こういうことについて、飼料の問題で畜産の問題にもかかわることでございますが、日本農業を考えていく面での提言かと思いますが、その辺のことについていま少し詳しく説明をお願いしたいと思います。
  136. 足鹿覺

    足鹿参考人 お尋ねのえさ米の件についてでありますが、一番大事な問題は、えさ米の将来展望はどうか、日本の水田農業に及ぼす今後の影響はどうか、こういう二点に尽きるのじゃないかと思うのであります。  えさ米と申しましても、私どもが言っておりますのはアルボリオ系のえさ米でありまして、このものにつきましての将来性につきましては、私ども今日まで五十三、五十四、五十五とことしで三年つくるわけになりますが、大体自信を持っております。  ただ、私どもがやっておりますことは、これをただ単なる一つのアイデアとしてやるのではなくして、きわめてじみな、まずこれを宣伝するときには、鶏か豚か牛かあるいは乳牛か何かを飼っておる人々よ集まれ、まず飼料の自給化からやっていきなさい、そのためにはこういう稲がありますよ、変な宣伝に乗って補助金に誘われて転作などをなさることはよろしくないと思う、まず自分の水田を生かして、そしてたとえ収支が十分でなくても、本当の自給の面から見てペイすればいいではないか、こういう考え方に立ちまして私どものグループは団体をつくりました。畜産農家を栽培者の対象にしておる一また畜産農家が役員になりまして運営に参画をしておる、こういうことで飼料の自給性を向上し、いわゆる自家配合によってできるだけメリットを多くしていこう、仮にこれが安くなっても、そうであったならば畜産に貢献をし、十分価値があるのではないか、こういう考え方で進んでまいっておるのであります。  これに対して私どもは、政府内部におきましても各局によってまちまちの見解があると聞いております。しかし、それはそれとして聞き流しておりますけれども、もとの問題は、畜産という問題一つを考えてみましても、飼料の国内自給が二%程度しかないと先ほど林さんも言われましたが、私も確かにそのとおりだと思います。その程度で、もし万一のことがあった場合には一体どうなるのか。卵も肉も何も食えなくなるではないか、こういう大局的な意味から見ても、えさ稲の将来展望というものはきわめて有望である、また有望でなければならないと考えておるのであります。  たとえば、これはまことに大衆向きの話でありまして先生方に申し上げるのはどうかと思いますが、私のところでえさ稲のわらと日本稲のわらとを一緒に刻んで与えてみたところ、酪農でありますが、えさ稲の分は一つも残さずに食ってしまうのですが、日本稲の分は残してしまうのです。これはまことに不思議なことだということで方々でやらせてみたのですが、わらのまま、束のまま両方与えてみても真っ先にえさ稲に食いついていく、不思議な力を持っておるものだなということをつくづく感じました。つまり、それほど牛が好いておる。鶏はこの米だけで十分産卵もしていきますし、黄身が濃いとか薄いとかというようなことを言いますが、あれは黄色味をつけようと思えば、百姓はつけるすべを知っております。でありますから、別にえさに関係があるわけではございませんので、黄色いのが御所望であればもっと黄色くして差し上げることも可能ではないかと思っておるのであります。  これは余談を申し上げましたが、いわゆる要素がそろっておれば家畜は十分育っていく。こういう点で、卑近な例を申し上げましたが、十分展望を持ち得ると思っておりますし、なおこの展望の範囲をもうちょっと広範に、エネルギーの面から考えて現在検討をいたしております。  つまり、省エネを叫ぶ前に、同時に並行して国内で、植物体はすべて油を含有しておるということは、最近の学説なり実際問題で皆さんも御承知のとおりであります。ブラジルではカンショからアルコールをとっておりますし、アメリカではトウモロコシからとっておりますし、ドイツでもトウモロコシあるいはでん粉等からとっておるわけであります。そうして、ハイオクタンの必要性をなくして、そのアルコールを混入する率によってスピードも出るし、爆発力も強くなる、こういうことで、すでにブラジルなりアメリカなりドイツ、その他各方面では実用化しておる段階になっておるのであります。  ところがわが国におきましては、風力の利用であるとかいろいろなことも思いつかれておりますが、いわゆる植物体からエネルギーを抽出していくことはできないであろうかということをいま考えまして、専門の人にいろいろと相談をしてみておりますが、いい油がとれることは確実であります。いま一つ、特に高たん白、高繊維のえさがとれます。これは一般のえさに混入していくための高度のえさでありまして、そういう点から見ますと非常にこのえさ稲の使用範囲というものは広範であります。  玄米からとった例も聞いてまいりましたし、トウモロコシからとった例も聞いておりますが、現在、日本では糖みつでやっております。この糖みつは外国から輸入しなければなりません。トウモロコシも輸入しなければなりません。そういう輸入しなければならないものがもし輸入できなくなった場合には一体どうなるかということを考えた場合に、日本の水田で、現在無理をして転作金を出して、いまも榊さんが指摘されましたが、食管会計の補助金の中から一般の農業の構造改善にまで及ぶ、日本農業の構造を変えていくような補助金の内容のものまで出していくということは一体どういうことかという御趣旨の御答弁がありまして、私も全くそのとおりだろうと思うのであります。  要するに、将来の展望があるかないかということは、まだ確実にそうだということは言い切れませんが、現在、えさとしての価値は十分認めることができます。したがって、大体給与実験に本年から入っていきたいと考えておりますが、それと同時に、アルコール化の問題を解決していきたい。非常に困難があるようでありますけれども、私どもはこの問題に取り組んで現在準備を進めておりまして、現在五キロばかりのものを委託いたしまして、出る油の量、性能、かす、そういったようなものについて実験をしていただいておるような状態でございまして、まだ発表するような段階に至っておりません。  そういう状態でございまして、私どもはえさ米を一時的な思いつきや、あるいは何か一つの流行を追うような形でやったのでは決してございません。きわめてじみな、酪農や畜産業や、肥育牛やあるいは豚やあるいは鶏のようなものに対しては、これでつくってさえおれば結局酪農は十分できるし、酪農は、畜産、肥育牛をやっておれば十分堆肥はできるし、堆肥を一トン以上やれば一千キロ以上できるのだから、特にいいことは、実が一トンとれれば一トンのわらがとれます。そこに一つ農業としての相関関係が成り立っておりますから、したがって私どもは、この問題は農家自身がやって間違いのないことである。  現在ブラジルやよそでとられておるものと比較いたしますと、非常に単価が安く見積もられておりますが、これは、はるかシカゴで相場が立ったものがサンフランシスコやあるいはその他の土地から商船に積まれて日本の港に着き、えさ会社にこれが配給をされて、そして初めて価値が生ずるわけであります。そのときの価格はつまり七万以上の価格になっておるわけでありますが、それとこれとを対比しないで三万円か三万五千円しかとれないんだそうなという、シカゴ相場で比較すれば安いに決まっております。しかし、配給してくるときの相場になれば、これは確かに七万ないし七万五千円の価値あるものとして評価してしかるべきではないかと私どもは考えておるわけであります。  そういう点から見まして、私どもは、きわめてじみに、なるべく現実的に、はでなことはやめて現実的に歩みを線けておるつもりでございまして、どうか皆さん方のお力によって、中には転作金を欲しがる人はおられます、おられますけれども、それがなければこの稲をつくらぬなどと言う人は一人もありません。みんな安きに甘んじて、やがてはこれは公認されるのだ、されなかったならば日本がいざというときに飼料はどうなるのだ、こういうことをおぼろげながら自覚しておる人でありまして、そういう点では、私どもは、鳥取県に二百七名の組合員を持っておりますけれども、安んじて組合の団結がまとまっておる、かように考えておりまして、どうかひとつその上に国が一歩乗り出して、筋の通った助成なり、筋の通った奨励金を交付されるということでありますならば、あえてこれを辞するものではございません。どうかひとつよろしく御配慮のほどをお願いいたしたいと思います。
  137. 林信彰

    ○林参考人 足鹿先生から基本的な問題についてもお話がございましたので、ごく簡潔に申し上げます。  米をえさにするということに関しましては、これはまだ諸外国でもやったことがございません。わが国において、過剰米の処理のためにやむを得ず金利、倉敷料を払いました大変高いお米をえさに回したということがございますが、これをもともとえさにするということで始めたことがないわけでございます。そのためにかなり奇異に感じられておりますが、やはり欧米諸国におきましては、穀物の過剰の場合、これを解決する、あるいは調整する手段としまして、穀物のえさ化というのは古くからの課題でございます。すでにアメリカでは、もう国内主要穀物の八割がえさ用でございます。フランスにおきましては、国内で使用している麦を中心とした穀物の五五%がえさ用でございます。あるいは西ドイツでは、日本の米にやや匹敵するようなバレイショの七割まではえさにしております。こうしたいわゆる過剰という問題を、動物の腹を通して消費するということ、これは同時に国民の食生活の水準を高めるということにもかなうわけであります。こうしたいわゆる畜産と耕種農業との結びつきというのが農業生産の新しい発展段階ではないだろうかというふうに考えます。日本もいまその段階に達したのだ、えさ米をつくらなければ困ってしまうのだということではございませんので、えさ米をつくれるほどの生産力が整ってきた、こういう発展段階へ来たということから私は考えておる次第でございます。  なお、日本の水田というものは御承知のとおりアジア・モンスーン地帯に属しておりまして、これを夏作物としまして、どのような総カロリーが上げられるかといいますと、これはやはり米にまさるものはございません。いま実験されておりますえさ米、これは十アール当たり一トンないしは八百キロ、こういうような多収穫米を中心にしております。これに対しまして、たとえば特定作物に指定されましたハトムギなどは、現在では、これは相当な努力をいたしましても、二百キロ、三百キロの水準にいくのはまだ容易ではないだろうというふうに考えられます。その他トウモロコシ、マイロ、これはもともと乾燥地の作物でございますので、日本において単収を大幅に上げるということは非常にむずかしかろうと思います。そういう意味から申しますと、えさ米というものを定着させまして、そして多収穫を上げる。そして同時に、これはいままでのコシヒカリやササニシキのように大変手間のかかる米づくりをしないで済む、いわゆる省力化して栽培できる、こうしたコスト安をねらっていくということがどうしても必要だと思います。  こういう意味におきまして、政府諸機関におきましても大変関心を払われております。私も先ほど申しましたが、われわれが主宰しておりますエサ米情報センターに全国から数百の種子のあっせん申し込みがございますが、そのほぼ三分の一が市町村の、地方自治体でございます。残り三分の一が農協でございます。残り三分の一が個人、こういう形になって、地方においてこうした機運が盛り上がってきたということを御理解いただきまして、ぜひこれを国政の一つの大きな柱に据えていただきたいというふうに考えております。
  138. 新盛辰雄

    ○新盛委員 非常に関心が高まってきたということで、私どもも力を得ているわけでありますが、農林水産大臣は、脱粒性があるとかあるいは収益性がないとかと、いまだに少し足踏みしておられるようでありまして、これから一生懸命努力はしてまいりたいと思います。  次に、時間がございませんので、もう質問だけして、あと御回答でお願いしたいと思いますが、卸売、小売販売の問題で、登録制度でこれまであったのですけれども、改正後は都道府県知事の認可によっていくわけです。従来の卸、小売の販売業者の結びつき、これは尊重して踏襲してほしいということが金山参考人からもございました。新しい方式での販売業者は、これは市町村外の区域の拡大を、あるいは農協系列の中では、卸売資格を持ってはおるのですけれども、こういう資格の状況の中で地域内に限るべきじゃないかという御意見とあるわけでして、この関係について榊参考人、金山参考人の方からお聞かせいただきたいと思うのです。  そして、産直の問題についていろいろこのごろ話題が豊富でありますが、中林参考人の方から、このことについてどうお考えになっているか、以上、お三人の方にお答えいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  139. 金山國次郎

    ○金山参考人 大変申しわけございませんが、もう一度私に対する御趣旨をお聞かせいただけないでしょうか。
  140. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いまあなたの方からおっしゃったのですが、従来の卸、小売の販売業者の結びつき、皆さん方の用語ではそうおっしゃっているらしいのですが、これを踏襲してほしい、こうおっしゃっておられますね。もちろん尊重してくれということなんですが、結果的に新規の皆さん方が今度は出てくるだろう、いろいろと御説明もございました。そういう中でのこの取り扱いとして、これからどうされていかれるのかということをお聞きしておるのです。  それと、市町村区域の中での限度で、外に出るのと中でやるもの、これは農協の榊参考人の方がよりいいのじゃないかと思いますが、その辺説明いただきたい、こういうことです。
  141. 金山國次郎

    ○金山参考人 いま結びつきと申しますのは、現行の制度は小売御自身が卸しを受ける卸を登録する、小売が卸を選ぶシステムでございます。したがいまして、人口急増等で新規参入が許される地帯で新規の小売屋さんが出ましても、その新規の小売屋さんは自分の必要な米の卸しを受ける卸を登録しなくちゃいけない、この制度がいま残っておるわけでございます。これは需給が均衡している事態が残りますので、この制度は残しておく方がよろしかろうというのが願いでございます。この件につきましては、一つの町村の中、外、そういうことは関係はないわけでございます。卸、小売間の連携がうまくいくためにこの制度は残す方がいいのではないかというのが申し上げた趣旨でございます。
  142. 榊春夫

    ○榊参考人 卸、小売の結びつきにつきまして、私どもは複数結びつきを積極的に要望いたしております。その趣旨といたしますところは、小売屋さん、卸屋さんそれぞれの置かれている環境、条件によりまして、必ずしも同じような米を同じように需要されるとは限らないわけでございます。ところが、政府の方が売却しますときには、やはり公平が旨でございますから、どの卸屋さんにも同じような品質のものを同じような程度に売却をするということが往々にして行われるわけでございます。多少の弾力はつけるとしてもおのずから限界がある。こういうことになりますと、その対応する需要の性格によって、ある卸、小売では上質米が残り、ある卸、小売では下級品の方がより歓迎されるというようなことが起こりまして、その間の調整が自由米という姿で図られているというのが現実であろうというふうに思うわけでございます。そういった自由米市場というものを介在させないようにするためには売却操作ということが非常に重要な問題になってくるわけですし、それを補完する意味で自主流通米の機能というものが大変重要であるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。そういった実情からしまして、自由米の発生を極力防止していくためには、卸、小売の結びつきを弾力化して、自由米の発生しないように企業努力でそういった問題を解決していくという方途を工夫してみる必要があるのではないかというのが基本的な考え方でございます。  それから、市町村区域内の問題というのは、これは集荷業務の方の事業区域の拡大の問題かと思うのですが、先ほども申し上げましたように、集荷業務というのは大臣が指定して行うというきわめて重大な責任を持った業務でございます。これがAの村で資格を取ったからといって、Bの村へ出ていきCの村へ出ていって自由に集荷できるというような事業区域の拡大というものは、いまの行政組織の運営となじまないであろう。その業者が隣接の村で活躍することを封ずるわけではないのですけれども、隣接へ行ってやるのならば、その隣接でやはり同じように指定を受けてやるべきである。いやしくも市町村単位で指定を受けないままに集荷ができるというような組織づくりは、食管法と全然なじまないものではないかというふうに私どもは考えているということでございます。
  143. 中林貞男

    ○中林参考人 産地直結の問題について簡単にお答えしたいと思います。  最近農産物について、消費者の自衛上産地直結ということがいろいろなところで行われてまいりました。しかしながら、農産物の産地直結と言いましても一定のルールというものを守らないとなかなかぐあいが悪い。そうして金銭の支払いとか、そういうことも保証されないと生産者の方にも御迷惑をかける。特に米の問題などにつきましてはなおさらそういうことは重要なことです。  それで、先ほどもちょっと申し上げましたが、生協では米をぜひ扱いたい。生協の扱っているところのお米は経済連とタイアップしてみんなやっているわけで、そこに信用の基礎というものがあるわけですので、生協では米を全面的に扱いたい。しかしながら、従来の食管法の登録制のもとではなかなかお米が扱えないというのが現状で、現在お米を扱っている生協の店舗は全国の店舗の中の三分の一くらいだと思います。それも毎年そういうふうにふえてきているわけですけれども、米の消費拡大なり消費者の要請にこたえるために私たちはぜひこの際生協の参入ということを拡大していきたいし、そういう立場で皆様方にも御協力をいただきたい。  特に、流通の面に新しい方針が打ち出されていくということになりますと、現在の経済社会のもとではどうしても資本の力というものが大きく動くことにお米の場合でもなってくるのではないだろうかということ、下手をしますとそれが米の値段をつり上げる形になったり、いろいろなことで作用いたしますので、そういうことに対するコントロールの機能としても、農協と生協による米の正常な扱いというものをぜひ皆様方の御努力によって拡大をしていきたいというふうに私は考えております。
  144. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大変貴重な御意見ありがとうございました。
  145. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 吉浦忠治君。
  146. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 参考人の方々には、大変貴重な御意見、どうもありがとうございました。しかも長時間にわたりまして、この食管制度の重要性を端的にあらわしていると言っても過言ではないほど、各界の方々に御参集をいただいたわけでございます。時間の関係もございまして、かなり延びておりますので、全部の参考人にお尋ねしなければ大変失礼だというふうに思いますけれども、時間がありますればお尋ねをいたしまして、当面林参考人と逸見参考人に最初にお教えを願いたいと思うわけでございます。  現在行革がらみで食管に対する批判も強いものがあるわけでございますが、特にこの食管への財政負担は、節減できるものは節減するという立場から努力することは必要だろうと思うわけでございます。しかし、食糧安全の上からも、必要なものはそれなりに必要であるわけでありますから、一般的には食管制度維持のためにはよけいな金がかかり過ぎるということが通念となっているようでありますが、私は必ずしもそうではないというふうに考えているわけです。  このたび、わが党が戦前と現在の米穀の中間流通経費に関する資料を要求しましたところ、食糧庁の方からいただいた資料が大変おもしろい回答でございましたので、それについてでございますが、自由市場下にあった戦前でございます、昭和六年から九年における生産者米価に対する中間流通経費の比率が三二・二%であるのに対しまして、食管制度下における昭和五十四年、一昨年における生産者米価に対する中間流通経費の比率を見ますと二九・二%であります。このように、食管制度下の中間マージンが割り安になっている、このような事実というのはもっと国民にアピールする必要があるのではないかというふうに私は思います。このような点も含めまして、食管への財政負担の必要性、あるいはまた現行食管制度が持つ重要な機能を損ねない範囲で食管財政の負担を節減できる余地があるとするならば、どういうことがあり得るのか、具体的にお教えをいただきたいわけでございます。よろしくお願いいたします。
  147. 林信彰

    ○林参考人 お答えいたします。  基本的に申しますと、政府管理下における経費の方が自由市場に任せる経費より安くなるであろうということは、いま御指摘のとおりでございます。特に今日の経済情勢下におきまして、これを自由市場にゆだねますと、単なる中間経費というものを超えまして、その間に種々の加工その他の経費がこれに上乗せされてくるというようなことから考えますと、戦前段階の単純に玄米流通における流通経費、これ以上の経費が上乗せされてくるというふうに考えますので、政府管理下における流通経費というものは、これは自由流通よりも安いというふうに考えております。  それでは、食管会計、食管制度のもとにおいて、そういう中間流通経費の節減の要素はあるのかないのかという問題があります。食管の中で最も大きなものは、いわゆる価格の逆ざやの問題がございます。これは経費というふうに考えるべきかどうか議論のあるところでございまして、この価格の逆ざやというものは、先ほども申し上げましたように、過去においてこれは必要やむを得ざる社会保障的経費であるというふうに考えております。最終的には勤労者の賃金水準が米価を吸収できるほど、逆ざやを生まない程度に引き上げられればよろしいのでありますが、今日の事態、特に低成長下の時代におきまして実質賃金が目減りするというような状況においては、この逆ざやというものの存在はある程度認めざるを得ないというふうに考えます。しかし、これについても、努力によって圧縮するということは必要かと思います。  流通経費の面につきまして言えば、これは行革の中で特にいろいろ問題にされております食糧庁職員、いわゆる職員費というものが食管経費の中に入っている。そして極端な言い方をしますと、年に何日かしか働いていないではないかというような御批判もあるというふうにわれわれも考えております。その面について、これはもっと考えるべき点は多々あるというふうに思います。  その一環としまして、先ほど申しました、いわゆる消費者保護のために精米検査を行う。検査を入庫検査だけではなくて、精米で出荷されるとき、消費者の手に渡るときに、これを品質保証する検査をやる。こうした消費者保護のための行政需要というものをつくり出していくということによらなければ、当然これは、現状のもとにおいては食糧庁職員というものについての整理という問題も行革の中では出てくるのではないだろうかというふうに考えます。この点についてはいろいろと御意見があろうかと思います。  もう一点、節約すべき点は何かと申しますと、これは特に金利の面でございます。これは食糧証券によって出来秋に一遍に政府が買い入れるわけであります。その買い入れたものについて、これは金利を支払っております。その原資になりますものは財政資金でございますが、これに金利を払っているということでありますが、いまの古米が累積するというような中で、この金利負担というものは容易にふえてまいっております。この辺を何らかの工夫する余地がないであろうかということについて、結論を持ち合わせておりませんが、ひとつ御検討をお願いすべき面ではないだろうかというふうに思っております。
  148. 逸見謙三

    ○逸見参考人 先ほど申しましたように、私は実際の運用には必ずしも詳しくないので、あるいは勘違いがあるかもしれません。ただ、食糧庁の統計によって現行の方がマージンが少ない、こういうことを根拠にしておっしゃるということでございましたら、私は不本意でございまして、その間に流通革命というのがございましたし、包装その他も非常な進歩がございます。私は、それが現行の食管制度で流通経費が節約になっているという証明にはならない、こういうふうに感じております。細かい点で一々申し上げるとなかなか大変でございますので、それは省略いたします。  それから逆ざやですが、もしの問題でございますけれども、もし国民が一定のお米を必要とする、こういうことでしたら、私自身は、消費者も払ってそれ相応の負担をすべきだ。もちろん所得の観点、社会福祉の観点から問題はございましょうけれども、一般的に申しますと消費者はそのコストは払うべきだ、こういうふうに考えております。社会福祉の観点から行われるなら、それは別途の方法でなさるべきだ、こういうふうに考えております。  最後に、現在非常に問題になっておりますのは、需給が均衡してない、過剰のお米が出ている。これに対して経費は批判があるのは当然ではないか、こういうふうに私は考えております。
  149. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、足鹿参考人と、全部にこれはお尋ねしたいのですけれども、三田参考人、林参考人に、それぞれ各層を代表してということでお尋ねをいたしますが、このたびの食管法の改正の中で、基本計画は農林水産大臣の決裁によって決まるということでございますけれども、私ども大変危惧の念を抱いている面が多々あるわけでございます。  そこで、現在あります米価審議会を格上げする形で主要食糧審議会というふうな、いわゆるお米だけでなくて、主要食糧に関することをその格上げした審議会で検討して大臣に諮問するなりというふうな形はどうかという案を党で持っているわけでありますけれども、この点についてお考えがありましたらお教えをいただきたい、こう思うわけでございます。簡単で結構でございます。
  150. 足鹿覺

    足鹿参考人 政府の基本計画でありますが、実際の問題として基本計画が基本計画としてまかり通っておる、実際に当てはめてどれだけの意義があるかということについて、私は基本的に疑問を持っております。  従来の農業白書を見ましても、いろいろな資料、統計を見ましても、特に最近は米価審議会に出てきまするいろいろな統計情報でございますが、統計情報部になってきましてからは、政府の恣意性によってある程度左右されておるではないかという疑わしい点は私は非常に遺憾に思っております。やはり統計というのは統計調査というようなものがもとになって、それがまた一つの基本計画の土台を形成していかなければならぬと思うのでございます。そうしないことには、実際において架空の加工された統計、その上に基本計画が立てられることはナンセンスではないか、かように思っております。  物の考え方として、具体的にどれがどうだというふうなことはお尋ねもありませんし、考え方としましてはもっと権威のある本当の農林統計というものを整備すべきである。そうして現在私どもが見ておりますと、末端の統計調査の依頼を受けておる人たちは大体村の中農以上の人たちでありまして、実際において貧乏な出かせぎ農家などの実態把握できておりません。そういう点で昔からの因縁でありまして、そういうことは相当の犠牲を払っておやりになっておることでありますから、格別に偏った偏見を持っておられるとは思いませんが、やはり自分の生活の反映がある一つの数字を形成していくことを左右するという意味合いからいいまして、やはりもっと階層別に統計調査員を配置するならするということが必要ではなかろうかと思っております。  それで、統計情報部というようなものになったときには私は国会におったかおらぬかわかりませんが、あれは政令で決まったのでありますか、一国の農林統計のあり方を決めるのに政令で決めるとは思いませんが、国会でああいうふうに変わったといたしますならば、私ははなはだ奇異に感じておる次第であります。統計というものは何人もこれを侵し、勝手にこれを改ざんしたりなどすることができない厳粛な事実としてこれを取り扱っていくためには、法律で定めるべきだと思います。もし政令によってああいうふうに変わったといたしますならば、はなはだ遺憾千万なことであり、それをもとにしたいろいろな基本計画がぐらぐらすることは当然であろう。もとから考え直していかなければならぬと思っております。  いま一つの問題は何でございましたか。
  151. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 食管制度に基本計画が盛られてきている中で大変心配していることは一いまの米審のような形のものを格上げしてそれで主要食糧の審議をして、それから答申をした方がよろしいのではないか、こういう意見でございます。     〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 足鹿覺

    足鹿参考人 まことにごもっともなお考えだと思います。大体、もともと米価審議会は法律に基づく行政審議会ではなかったわけであります。農林大臣の非公式の——昭和二十四年に私が初めて米価審議会委員に任命されたときには物価庁の所属でありまして、農林省ではありませんでした。そういう点を経てこれが農林省の付属機関、大臣の諮問機関として正式になったのは昭和何年ごろでありましょうか、よく記憶しておりませんが、相当たってからでございます。したがって、この米価審議会の範囲は米価を審議するとなっておりますけれども、運営上はいろいろな運営の方法がありまして、いわゆる前広米審であるとかあるいは本米審であるとかというようなことが最近はまたありまして、農政とくっつかないいわゆる米価論というようなものがあるでしょうか。私は、国の政治なり、特に農産物の価格問題を決める場合に、国の農政を論ぜずして米価を決定することはできないと思います。ですからこれは不離一体だと思いますけれども、やはり人によっては、前広米審で片づけるものは、農政論議をやるなら農政論議をやるで片一方でやっておいたらよかろう、米価は米価で具体的な算定方式をやったらよかろう、こういう議論が分かれておりまして、現在は分かれたままでやっておりますが、そう大した不便は感じはいたしませんけれども、やはりもう一遍戻って、米価が決まる前に大所高所からの農政論議を経ることが必要ではないかと思っております。  現在の米価審議会は非常に構成が、私どもから見ますと学識経験者と名のつく方々、各官庁で高官の職についておられた方々や、いろいろな人たちがたくさん入っておいでになりますし、私どものような草茅の間から草の根を分けて闘った者から見ますと一蹴されるようなこともたびたびございますが、やはり事実よりとうといものはないと私は思いまして敢然と闘っておるわけでございます。  どうも米価審議会そのものが形骸化したという議論がございますけれども、確かに内容は、昔は米価審議会は米を一等から三等まで何円何十何銭、くず米を何ぼ何ぼというふうに決定するがいかんという諮問がありましたが、このごろは米価を決定する上において参考となるべき見解を問う、あるいは別に試算を出して、試算についてはこうであるというふうな説明を受けておるのが米価審議会の最近の実情でございまして、米価そのものを諮問を受けておるのではございません。試算を別につくっておいて、留意すべき事項はいかん、こういう諮問をなさるわけでありまして、そういう点におきましては行政庁は非常に自由自在に使い分けておられます。そういう点でもわれわれはふんまんを持っておりますけれども、審議は審議としてまじめにやっておるつもりでございます。  そういう点から申しますと、いま先生がおっしゃいますような構想で穀物の審議会というようなものは一つのアイデアであり、あるべき姿であっても差し支えばなかろうかと思います。問題は、国内で決定する穀物それ自体が少ないわけでありまして、米のほかはほとんど審議に値しないというような状態の中で価格を決定するということもどうもいかがなものかと考えます。したがって、輸入穀物もあわせて価格を決定していく、こういう決め方に変わっていくとするならば、穀類の審議会というふうに変えていってしかるべきではなかろうか。いい結果こそ出れ、悪い結果は出ないであろうと思います。ただし、ある一方の方から猛烈な抵抗があることだけは承知してかかりませんと、なかなか容易にこれは実現困難ではないかと思っております。  以上でございます。
  153. 三田忠俊

    ○三田参考人 私は小売業者の立場ですから足鹿先生ほど詳しくはないわけです。ですけれども、いまの米審が、実際に食管赤字が問題になり始めてからの米審とその前の米審とでは大分性格的にも違ってきているのじゃないかというふうな感じがするのです。いまの米審が果たして、生産者米価にしても消費者米価にしても、米価を決める基本の再生産を償ったり家計の問題が考慮された形でそれぞれの米価が出されているだろうかということを考えますと、それがそうなっていないように毎回米審のたびに考えるわけです。  私どもは小売業者の立場ですから、消費者米価が値上げをされるということは非常に困るわけです。そのたびに言いわけをしなくてはなりませんし、われわれのマージンの問題にしても、消費者米価が値上げされるたびに本当に実質マージンそのものは低下を続けております。そういうことからいっても、本当に本来の米審のそれぞれの役割り、また米価の決定の基本的な点を踏み外さないような米審になっていただくことを常に考えております。  以上です。
  154. 林信彰

    ○林参考人 先ほども申し述べましたように、基本計画は、わが国の米を中心としました農業生産のあり方を決定する重要な問題でございます。実施計画の方は、米を中心としまして国民の主食をどのように、配給という言葉はなくなりましたが、供給するかという基本的な計画を決める重要な事項でございます。これを行政庁の判断によって、農林水産大臣及び知事の判断によって一方的に決めるということは大変問題があろうかと思いますので、主要食糧審議会というようなものにおいてこれを慎重に審議する、これは非常に重要な問題であるというふうに思います。先生の御提案、私、全く同感でございます。
  155. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。
  156. 田邉國男

  157. 稲富稜人

    ○稲富委員 本日は、各参考人の皆様方から専門的な御意見を開陳していただきまして、ありがとうございました。  実は、それぞれの参考人の方々に専門的なお尋ねをいたしたいと思うのでありますけれども、私が与えられておる時間が十九分でございますので、はなはだ勝手でございますけれども、二、三の方にしぼりまして要点だけをお尋ねいたしたい、かように考えておりますので、御了承いただきたいと思うわけであります。  一番最初に、林参考人にお尋ねいたしたいと思うのであります。  それは、政府は、食管の根幹を守るという名前のもとに、米価の決定に当たりましてもあるいは減反政策をやりましても、こうすることが食管の根幹を守るのだ、こういうことで今日まで進んでまいりまして、食管法というものを形骸化したというような事情もあるのであります。それでこの機会に、はなはだ失礼でありますけれども、元来食管の根幹というものは何であるか、何を指したらいいのであるか、ひとつ林参考人から承りたいと思うのでございます。
  158. 林信彰

    ○林参考人 これは私の意見と申しますよりも、政府昭和四十六年におきまして食管の根幹というものについての明確な回答をいたしております。これは一つは、国民食糧を確保するという前提に立ちまして、生産者米価は再生産を維持する価格で決定すること、消費者米価は家計の安定を旨として定めること、このいわゆる価格を政府管理するということが第一の根幹であるということを言っております。それから、これに関連いたしまして、それについての配給の統制を行うということ、これが第八条を中心といたしまして行われるということであります。そしてさらに輸出入の規制を行うということであります。これがいわば根幹と称されるものであろうというふうに思われるわけです。  私もこの問題について、食糧管理制度四十年の歴史をたどっておりますが、この基本的な、価格を政府管理すること、流通を政府管理し、そして現在の条件のもとにおきましては米穀については全量規制をするという形においてこれを管理する、これが基本的な食管の根幹であるというふうに承知しております。
  159. 稲富稜人

    ○稲富委員 私たちも実は食管の根幹というものは、食管法の第三条で規定がされておりますように、生産したるものは法律の定めるところにより全部国に売らなければならないと義務づけられております。政府が全量買い上げをやるということが義務づけられておる。しかもこれを管理する。こういうことによって、さらにその場合の買い上げ価格は食管法で決めておりますように次期生産を確保する価格をもって決める。そして、これを消費者に売り渡す場合は消費者の家計を安定せしめることを旨として定める、こういうことが根幹だと私たちは考えておりますが、そういう点から考えると、今回の食管法の改正というものが果たしてその根幹を守り得るかどうかということに対して、これも林参考人から承りたいと思うのでございます。  それは何かと申しますと、先刻もお話があったのでございますが「農林水産大臣ハ米穀ノ需給ノ調整其ノ他本法ノ目的ヲ遂行スル為政令ノ定ムル所ニ依リ毎年米穀ノ管理ニ関スル基本計画ヲ定ムル」、そして今度は、買い上げる場合は、基本計画によって買い入れするものは買い上げる。この基本計画というものは政令で決められる。そうすると、政令で定められる基本計画によって買い上げる、こういうことになると、果たして根幹というものは守られることになるかどうかという疑惑を持つわけでございますが、これに対して林参考人はどういう考えを持っていらっしゃるか、承りたいと思うのでございます。
  160. 林信彰

    ○林参考人 政府の全量買い上げがどのような形になるかということにつきましては、この基本計画の中で決められます類別の需給計画の中で政府米と自主流通米の仕分け、この事態の中でもし自主流通米のUターンを認めないということにでもなりますれば、これは全量買い上げの基本的な原則が崩れるというふうに考えておりますので、これは御審議の過程の中でこの点は明確にしていただきたいというふうに思います。もし自主流通米がUターンを認められるということであれば、まずそこの面においては全量買い上げというものは守られると思うわけであります。  ただし、現在すでに食糧庁当局なども認めておりますように、百万トンに及ぶいわゆる農家保有等から出ます自由米というものがございます。これはいわばやみ流通になっております。今回の食管法改正においてはこれらを流通業者の規制において取り締まるということになっておりますが、その発生のもとになります需給計画そのもの、つまり農家保有等は三百万トン以上になっております、実際の農家消費以上になっておるわけでありますが、そうした根を絶たないでおいてこのようなものができるだろうか。根を絶つということになれば、これは生産調整の強化をするということに通じてまいります。  そういうようなことが考えられまして、この買い入れ制限措置との関連ということが出てまいります。この関係から見ますと、一方において、いわゆる需給調整は買い入れ制限を強化して行う、そして余剰米が発生しないようにしつつ全量管理をするというのが改正案の考え方かと思いますが、やはり豊凶の差によりまして余剰米というものが出てくるということも考えられますので、全量管理というものを今回の改正案のように緩めていいかどうか、はなはだ疑問に思っておる次第でございます。
  161. 稲富稜人

    ○稲富委員 私たちもこの改正案を審議するに当たりまして一番心配するのはその点でございまして、これでもこの法律の改正は、政府といたしましては食管法の根幹を守るという意味でこの改正をやるのだということを言うだろうと思うのです。その場合に、その根幹というものは果たして守られるのであるか。しかも基本計画というものが政令で定められる、こういうことの扱いがいいのであるかどうか。もちろん私たち将来審議の過程においてこの問題は政府にたださなくちゃいけない問題でございますけれども、その点を専門的な林参考人から意見を聞きますと私たちも非常に参考になる、かように私たちは考えておるわけでございます。  さらに今日までの根幹というものは、やはり消費者に売り渡すものは「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ」となっている。当然二重価格制度であります。そうしますと、そこに逆ざやが出るのは当然でございまして、これがいかにも間違ったことのように言われることも非常に心外であって、法律上から、食糧管理法の性質から出てきた当然の逆ざや、これは赤字だというのでございますが、この会計状態であると思うのでございます。こういう問題に対して、いかにもこれを、赤字ができたことが誤った政策をやったがためにその食管の赤字が出たのだというような解釈をすること自体、非常に曲がった解釈だ、われわれはこういう考えを持っておるわけでございますが、こういうことに対しては、林参考人専門でございますから、失礼でございますけれども、この点に対してはどういうお考えを持っていらっしゃるか、念のため承っておきたいと思うのでございます。
  162. 林信彰

    ○林参考人 基本計画が、これは政令で定めるとお話しでございますが、政令というよりも農林水産大臣の専決的な事項としまして毎年これは決められるものだというふうに思っております。ただ、それの根拠となるものは政令ということでありますので、毎年毎年のいわゆる需給計画というものは農林水産大臣が定めていくというふうに思います。  そうなりますと、ますます現在の水田利用再編対策で行われております米の需給計画というものと同じような性質を持ってまいります。しかもそれは法律の裏づけを持つ強制力を持つものでございますので、これは先ほどの御質問にもお答えいたしましたように、やはり適当な審議会というような機関を設けて、その中で十分その審議をされる、そして特に生産者農民の計画生産への納得を得て行うということが必要ではないだろうかというふうに思います。当然これは米だけではなく、他の穀物との関係というものも広く論議されてしかるべきだと思います。  もう一点の、消費者米価は家計安定ということを旨として定めるということになっております。そして現在までのこの逆ざやの発生状況を見てまいりますと、やはり物価の急激な高騰期においてこの逆ざやが拡大しております。さらに物価安定の立場から、消費者家計を安定するために消費者米価の大幅な値上げを避けたという政治的な判断がこの背景にあるかと思います。この政治的な判断が正しかったかどうかということになれば、私は現在の時点においてはこれはやむを得ざる措置であるというふうに思います。当然これはいつでも逆ざやが出てしかるべきだという意見ではございませんが、現在の条件のもとではやむを得ざる措置であるというふうに思います。なお、今後これをできる限り圧縮する努力ということは必要ではないだろうかというふうに考えております。
  163. 稲富稜人

    ○稲富委員 私たち考えますことはいままでわれわれは、全量買い上げを政府がやらない、それは非常に食管法の趣旨に反するじゃないか、これを今度は基本計画を立てるのだということで、まくら言葉をつけて義務を逃げる。消費者に売り渡す価格は家計を安定せしめることを旨とするということになっておりますけれども、これに対しては、標準売り渡し価格というまくら言葉をつけまして何だかこれを逃げる。いままでそういう法律を逃げたようなことをやっておったのが、一つのまくら言葉によりまして正当づけられる。こういうことから、やはり追認だという問題も起こってくると思うのでございます。こういう問題は私たち今後審議の過程において十分政府の意をたださなくちゃいけないところでございますけれども、そういう意味から、私たちもこの二つの問題につきまして、いわゆる食管法の根幹ということから大いに検討すべき問題であるというふうに考えておりますからお尋ねしたわけでございます。  さらに、生産者の代表でございます榊それから足鹿両参考人にお尋ねいたしたいと思いますことは、今日わが国の農業が最も憂慮されるものは、農業に対する国民の魅力がだんだんなくなってくるということなんです。それがために農業に対する後継者さえもなくなってくるというのが、わが国の農業では一番大きな問題であると思うのです。そういう意味から私たちは、食管法をこの際改正するというならば、その改正することによって農民が農業に魅力を感ずるというような方向に持っていくことが非常に必要である、かように考えておりますが、今回の改正は果たして農民が農業に対する魅力を持つような改正内容であるかどうか、この点を生産者の方々の御意見を承りたいと思うのでございます。
  164. 榊春夫

    ○榊参考人 ただいま御質問の点でございますが、今回の法改正によって生産者が大いに農業に魅力を感ずるような、そういった方向づけができるのかどうかというお尋ねかと思うわけでございますが、その点につきまして、私どもはむしろ非常な不安を持っておるというのが率直な感じでございます。  と申しますのは、冒頭の陳述でも申し上げましたように、これによって生産が抑制されるのではないか、生産規制が行われるのではないか、あるいは価格の抑制が行われるのではないかという点に非常な不安を持っております。しかし、米麦を管理していく基本を失ったのでは、これはなおさら大変なことになる、何としても食管法の根幹は守っていかなければならぬという意味合いにおきまして、皆さんから現状追認であるというふうな御指摘もあるわけでございますけれども、私どもの受け取り方としては、現状に立脚して今後これをどういい方向に運用していくかということの努力を続けていく、そういう意味で現状に踏みとどまる足がかりをしっかり固める、こういうことが現状においては精いっぱいのわれわれの努力ではないかというふうに思っておるわけでございまして、農業全体が置かれておるきわめて困難な状況の中で、今後こういった立場をもとにしまして、一歩でも二歩でもいい方向に改善ができますように、皆さんのお力添えをいただきたいと考えております。
  165. 足鹿覺

    足鹿参考人 今度の食管法改正で、農民が魅力を持ち、また国民が安心してこの改正に賛意を表するであろうか、こういう御質問のようでありますが、私は、国民一般はこのたびの改正に対して大きな関心を持っておらぬ、そういうふうに見ております。だれに聞いてみましても、どういう法律がどういうふうに審議されておるか、そういうことも一向に知らないというのが、十中八、九まではそうでありまして、関心がない。つまり関心がないということは、われわれの生活には日常余り関係がない、こういうふうに軽く見ておるのでありますが、実際はそうではなくして、今度の改正が通過いたしますと、一方においては戦時中の強権立法が生きておりまして、必要に応じて農民からこれを取り上げていくという権利はちゃんと政令によって生きておる。この点についても、私は先ほども言いましたように、政令事項ではない、本来どうしても必要だというならば国会がこれを決定すべきことであって、法律で決めるべきではないかということを、非公式ではありますけれども、農林省の幹部の人たちとも会ったときにはよく議論をいたしておったわけであります。  元来、こういうことにつきましては稲富さんは全くよく御存じのことだと思いますが、あれを政令にゆだねていくということになりますならば、法律の権威はいずこにありやと私は伺いたい。大体最近の傾向を見ておりますと、当然法律で行われてしかるべきものが皆政令に依存をしておる。食糧庁が私ども米価審議会にくれております赤本、青本ですね、いろいろなそのときどきの政省令の改変ですね、この程度のものがございます。それぐらい綿密に、微に入り細をうがっていわゆる政省令による運用が図られております。  今度の種もみを配給するにいたしましても、つくった者が売る承諾をし、買う者が買う承諾をし、輸送の許可を得るというふうな非常な困難な手続をしてやっと希望者の方へお届けすることができた。一々食糧事務所の許可を得なければならぬ。百キロ以上は農林大臣の許可を得なければならぬ。でも、それだけでも食糧庁が一歩前進をしてくれた。もしあれがなくして全然その道も閉ざされたということになりますと、われわれは種を配ろうにも配る手がなかった。やはり食糧庁にも一片の良心と申しますか、もしこれをとめたならばどういう結果が生ずるかということを考える人がありまして、そして私どもにその道を教え、それによって私どもは合法的に、食管法の法どおり、一々判こをとって、一々売った人からまた判こをもらう、そして輸送者からも判こをもらうというめんどうくさい手続を現在の食管法によってやったからあれが配れたのであります。  事ほどさように、われわれの自由を拘束するような非常にむずかしい政省令で固まっております。これは元来、議会制民主主義の本旨に反しておるのではないかと私は考えております。これは食糧庁の問題のみならず、大事な問題が、当然法律事項であってしかるべき、いわゆる農民から強権買収するというようなことは——何ぼ幾らにしてくれと言っても聞くはずはない、ですから強権買収ということにならざるを得ないということでありまして、終戦後あるいは戦中の状態のものをそのまま残しておるということは、もはや足らないということを前提にして、先ほど私が冒頭に陳述いたしましたとおりの状態が続いておるのでありまして、今度の改正で私が最も遺憾千万に思っておりますことは、この足らなくて国民が困る状態がいつ起きるかわからない、有事がいつ来るかわからないという状態にあってこれを政令事項に依存したということは、国会の権限を無視した重大な、三権分立の国会の議決を要するとめんどうくさい、政令に依存していけばいつでも閣議にかけて発動ができる、こういう結果を考えておるのではなかろうかと邪推をしたくなるぐらい、私は、このことにつきましてはどんなに考えてみても非常に納得がいきません。  事ほどさように、万事がそうでありまして、ほかの問題につきましても、私どもが価格問題をやかましく言うことは、何か邪道のようなことが米価審議会などで議論をされます。しかし、一般の学識経験者、消費者の皆さん方からいろいろな御意見も出ますが、政府は勝手に買い上げ量を削減したり、去年までつくっておった算定方式はことしはくらっと変えたり、いろいろな算定項目の入れかえを勝手気ままにやることは、何らそれは違法ではない、それに基づいてわれわれは審議せざるを得ないように仕向けられておるのであります。  そういうことで、いわゆる家計を圧迫しない範囲内において再生産を確保することを旨とするけれども、経済事情または生産事情に基づくというただし書きによってすべてが葬られてしまうのでありまして、法の精神が全く政令に依存して縛られていく、私はこのことを非常に遺憾に思っておりまして、むしろこういう状態が続きますならば、悪いものは残って、いい面はますます消えていくという結果になりましたならば、日本の法治国家主義、三権分立の法治国家の中で一番空洞化したのは議会制度ではないか、こう言われても一言の言葉もないではないかという状態が来はしないか。いわゆる官僚的ファッショ時代が事実上において訪れるのではなかろうか、こんな取り越し苦労までしておるわけであります。  全く良心的に営々孜々としてやっておられるいわゆる行政官そのものに対しましては敬意を表しますが、国全体の一つの流れとしては、政令の方向方向へとすべてを持っていく、立法の方へはなかなか動いていかない。そういう方向で、弱き行政官は国の一つの流れに沿って一つの仕事をせざるを得ない。彼らの立場はよくわかりますけれども、しかし、やはりこれは国会の問題として、基本問題として、三権分立の基本とは一体何ぞやという点から国会の先生方の御論議を煩わして、本当に法律が優先をして、行政がついてこれを補完をするというのが私はたてまえであろうと思うのです。法律の精神をひっくり返して政令で逆なことをするようなことがあっては断じてならないと思うのでありまして、そういう点はぜひひとつ国会において十分御検討願いたいと思います。国民もそれを期待しておると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  166. 稲富稜人

    ○稲富委員 ほかの参考人の方にもお尋ねしたいのですけれども、時間がありませんので、失礼でございますけれども、私はこれをもって質問を終わります。
  167. 田邉國男

    田邉委員長 寺前巖君。
  168. 寺前巖

    ○寺前委員 せっかくの機会ですからいろいろもっと皆さんもしゃべりたいだろうし、私も聞きたいと思いますが、六時ごろには終わらないといかぬような状況にもありますので、あとしばらくおつき合いを願いたいというふうに思います。  私はまず最初に、出ていない問題として、流通機構がずいぶんいろいろ法律上もさわられておりますから、この分野において、資本力を持っている商社が新しくいい市場だということで侵入してくるという疑いはないのか、この問題について御意見を聞きたいと思うわけです。  というのは、御存じのように丸紅がかつて、モチが全量自主流通米になってくるという過程の中で買い占めするという事件が起こりました。確かに米の分野三兆円という大きな市場でありますから、大手商社がここに目をつけるというのはあり得る話だと思う。しかし、それが商社の手で握られてくるならば、単品物で大きな市場であるし、国民生活にとって不可欠な物資でありますから、これはえらいことになります。だから、そういうことをなさしめてはならない。私どもは、先ほどの足鹿先生のお話じゃございませんが、今度の法改正がその重要な第一歩になっておったということを後代言われないようにしなければならない。これは一つの不安でありますので、率直に御説明をいただける方はぜひここでお話をしていただいたらありがたい。まずは最初に、林参考人なり中林参考人なり、あるいは金山参考人からお話をお聞きしたいと思います。
  169. 林信彰

    ○林参考人 短時間でございますから、結論といいますか、率直に申し上げます。  先ほど小売業者の代表の方からお話がございましたように、今日における米の流通特に小売業界の状態を見ますと、大変経営的に苦しくなっております。この経営的に苦しくなっている状態の中で、もし現在の食管制度の空洞化がますます進むということになりますれば、これに対する資金の手当てないしは集中精米が進むことによる精米工場の大規模化への方向、こうしたものに対して大資本が参入してくるということが全くないとは言い切れないというふうに思います。商社その他の大資本の米に対する関心を見てまいりますと、先ほどお話がありましたように、昭和四十五、六年ごろから大手商社が米の流通に対してさまざまな参入を試みてまいりました。この場合は産地における集荷まで手を伸ばそうということであり、その一環として丸紅事件が起きたわけでありますが、現在ではこうした面から手を引いて、集荷に関しては農協を主体として行わしめる。そしてこれを精米加工し、小袋詰めにして流通させる、この過程に非常に目をつけております。この過程こそが米の流通革新のキーポイントになっておりますので、ここに資本力を集中したいと考えているというふうに私は率直に考えております。でありますから、今回流通業者の規制という問題についてどのような手が打たれるか、その運用いかんによっては大資本参入の可能性が全然ないとは申し切れないというふうに考えております。
  170. 中林貞男

    ○中林参考人 私は、いま先生の御指摘になりました点を実は一番心配をいたしております。現に精米市場というものもあるわけでございますし、数年前の丸紅の問題ばかりではなく、米という商品に対して商社が大きな関心を持っていることは事実でございます。私は、米の消費を拡大し、流通面における活性化ということは現在非常に重要なことだと思っております。しかしながら反面、現在の経済制度のもとにおいては、先生の御指摘になりますような大手商社の動きというものに対して十分監視をしていかなければならないというふうに思っております。  それで、私は先ほどから立つたびごとに、生協の流通面における役割りというものにつきましても、そういうような形の中で価格のつり上げなりあるいは消費者無視のいろいろなことが行われないように、せめて消費者の流通面における具体的な監視の役割りという意味において生協組織が重要になってきているというふうに思いまして強調しているわけでございまして、この点につきましては、今後いろいろと政令をつくられていく過程においても私らは十分消費者の立場から発言をしていかなければならないと思っておりますし、国会の先生方におかれてもその面についての十分なる歯どめになるような御審議をお願いいたしたいというふうに考えております。
  171. 金山國次郎

    ○金山参考人 商社というお尋ねでございますが、卸も小売も現況では業者経営のものは零細のものが非常に多うございます。小売六万と称されるわけでございますけれども、この六万の小売の中の五万近いものは決して大型とは言えないものでございます。卸三百余りでございますけれども、このうち二百五十程度の卸はこれまた規模の小さいものでございます。したがいまして、これらの零細な卸、小売にとりましては決して商社だけがいわば強敵ではないわけでございます。  零細な立場から言いますと、整ったりっぱな生協さんもある意味で強敵でありますし、また生産県等にありましては農協さんも大きな強敵になるわけでございます。特に農協さんの場合は、すでに御承知のとおり自主流通米を御自分で集荷をして御自分で売れるという立場にあるわけでございます。一方販売業者の方は販売一本でございまして、農協さんから自主流通米を買って売るという、ある意味で決して強くない立場でございます。それが対等に競争するということになれば、これはひとしく弱い立場と言わざるを得ないわけでございまして、強い、弱いと言えば決して商社だけが強い立場だというわけではない、かように理解をせざるを得ないわけでございます。  以上でございます。
  172. 寺前巖

    ○寺前委員 次に、先ほどどなたかおっしゃっておりましたが、法と実態との乖離という問題を正す、そこに今度の法改正があるのだ、こういう問題提起がありました。確かに政府はそういうふうに言っております。そこで、今度の法改正が果たしてそれでは法と実態との乖離を正していく道になっているのかどうか。  この乖離している問題の大きな一つにいわゆる不正規米という問題があります、あるいは未登録の店があります。先ほどからの発言の中にもありましたように、現在の米の管理の中に政府米があるし自主流通米があるし、その他農家のお米がある。ところがここに過剰米が出てくるし、さらにやみ米の発生源が農家所有のところにある。これは、やみ米として回る要素というのは市場の中に需要があるから回る。ところが需要分を一この政府米や自主流通米のあの範囲内にないからそれが発生源となって市場に出ているのではないだろうか。とするならば、発生源をもっと抑えるように計画の段階の中にこれらのものを組み入れなければならないのではないだろうか。このやみ流通というものが存在するのは需要があるのだというところから見るならば、計画自身に狂いが起こっているではないだろうか、こういう疑問を感ずるわけです。そこにメスが入らない限りにおいては、今後もこの法と実態との乖離、やみ米の流通というのは引き続き存在していくのではないか、ここに市場としての存在があるのではないだろうか。この問題が一つです。  それから、先ほどの新盛先生の質問でしたか、お答えが十分でなかったように私には聞こえたので、改めてもう一度お聞きしたいわけですが、過当競争が米離れをさせているとか、あるいはこういうやみ流通で、流通機構の中において競り合いが激しくなっているから、せざるを得なくなってつぶれていく運命になっている業者がたくさん出てきている。とするならば、法改正のもとにおいてどういう措置をしなかったらこの過当競争からつぶされていく道を救うことはできないのか、ここの問題に対する御回答をいただきたいという問題があったのですが、非常に不明確であったので、改めてそれをもう一度聞きたいと思うのです。  もう一つは、いまの消費の米の分野において、政府米二に対して自主流通米一という関係計画がなされて市場に出ている、こう言われている。ところが実態の、お米屋さんを通じて国民が消費している分野ではそれが、政府米が小さくなって自主流通米の方が多いということになってきているというのは、もちろんそこには混米、まぜ方の問題で、お米屋さん段階で変えられていっているのではないか。したがって、そうしなければやっていけないという実情があるからそうなっているのかどうなんだというのが、わかりやすく言えば、そのときの御質問でもあったと思うのです。私は、この実態についてもう一度明らかにしてほしい。片岡さん、それから三田さんにこの問題についてのお答えをいただきたいと思います。
  173. 片岡森寿

    ○片岡参考人 お答えいたします。  やみの米の問題でございますが、私が先ほど要望申し上げたとおり、農家の保有米と申しましょうか、農家消費量が三百二十万トン、こんなには要りません。百万トンから百二十万トン恐らく多いわけです。これを決して農家は捨てやしません。買い屋の手を通じて消費県の方に入ってくる。これをやみ米、あるいはまた無登録業者が販売しているのだろうと私は思う。でありますから、今回の法改正についても、われわれはこの二点の法改正には一応は条件はついているが賛成はしておりますが、こういう大きな問題でまだ私たちのわからない点があるわけです。これは政省令によってはっきりしていこう、皆さんとこの法案が通過したらまた改めて相談しようという声は聞いております。当然先生方にもこういった方面、いま御質問がありましたのでお答えするわけですが、まずやみの業者あるいは無登録業者の根幹はどこにあるかというのは、やはり農家の保有米が相当多い。しかしこの百二十万トンを減らすということはこれまた大きな問題じゃないかと思います。これはまた生産団体、いろいろな御意見もあると思いますが、まずまずやみ米の駆逐にはそういう方面から手をつけて、先生方のお力を拝借したい、こう思うわけでございます。  以上でございます。
  174. 三田忠俊

    ○三田参考人 やみ米の方の問題については片岡理事長の方から話されましたので、大体変わりはないわけですけれども、実際に米の小売業者が廃業に追い込まれている現状については、ことしに入ってから非常に多くなっているわけです。そういうことで、今度の新法の施行によってそれがどういうふうになっていくのかということを、ずいぶん長いこと食糧庁の方にもいろいろ説明会や何かの席上でも聞いているわけなんですけれども、そこのところは依然として政省令ではっきりさせるということで、ただ単に新法に移行するときに六カ月だけは継続的に営業を続けることを認めていくということだけに限られているわけです。その後現在のやみ業者をやっている人たちが申請をした場合どういうふうになるのだというふうなことを話してみますと、結局食管法に違反をして罰を受けた者については規制をするけれども、いまのやみ業者に対しては取り締まりをしていないわけですから、食管法に違反してないわけです。ですからそれは対象にならないわけです。ですからわれわれ既存の小売業者と同等の構利で申請をすることができる形になっているわけです。そういう意味で、また大型店についても、そういうふうな形で許可基準に合致したものであれば、これは恐らく新しい法律の範囲内では許可せざるを得ないような形が出てくるのではないかというふうなことが非常に大きな危惧の面として考えられています。  それから混米の問題がありましたけれども、いま各都道府県で一類、二類、三類というふうな形で一、二、三というふうな区分がされて、それを的確に表示するように指導されておりますけれども、実際には一にしても何種類もあるわけですし、二にしても何種類もある、三にしても、標準価格米、特例標準米というふうな形とか、本当に種類にすると十数種類の区別ができるわけです。そういうことから、実際それにそれぞれ合った米を単品でやるわけにいかないわけです。実際にはそこでいろいろ、一類の米を何俵、二類の米を何俵というふうな形で混米をしてその種類をつくり上げているのが現状です。それはやはりはっきりした需給の体制それから表示の中にも、実際には小売業者が本当に苦労して、いま困っているわけです。その内容というのは、実際表示を、一類で何が何%、何が何%入っていることを表示しなさいというふうに言われるわけですけれども、毎日毎日入ってくる米が違ったり、それから入荷をするたびに種類が変わった米が入ってくるわけです。それを実際に、そのたびにその袋の表示を一々何が何%、何が何%と書かないと表示違反になるわけです。それが帳面上でも一目瞭然はっきりしていなくてはいけませんよというのがいまの指示なんです。ですから、そういう中で小売業者が苦労しながらやっているのです。そういうふうに一生懸命やって、実際に消費が伸びていくということがあれば張り合いがあるのですけれども、そういうことをやりながらだんだん売り上げが下がっていくというのが現状なわけです。そういう意味では今度新法が本当にわれわれの立場に立った形でつくられていくように、最初にも申し上げましたように、時間をかけた討議が、まだまだ解明されていない部分が多いだけに必要ではないかと考えています。
  175. 田邉國男

    田邉委員長 以上で各参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る十二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会