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1981-04-08 第94回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月八日(水曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 田邉 國男君    理事 菊池福治郎君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 福島 譲二君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       逢沢 英雄君    上草 義輝君       小里 貞利君    亀井 善之君       川田 正則君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    玉沢徳一郎君       丹羽 兵助君    保利 耕輔君       三池  信君    渡辺 省一君       小川 国彦君    島田 琢郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    近藤  豊君       寺前  巖君    野間 友一君       木村 守男君  出席国務大臣         農林水産大臣  亀岡 高夫君  出席政府委員         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         大蔵省関税局輸         入課長     忠内 幹昌君         大蔵省銀行局特         別金融課長   日向  隆君         水産庁漁政部水         産流通課長   真板 道夫君         通商産業省貿易         局輸入課長   横山 太蔵君         通商産業省貿易         局農水課長  古澤松之丞君         参  考  人         (駒沢大学教授)林  修三君         参  考  人         (日本蚕糸事業         団理事長)   松元 威雄君         参  考  人         (日本蚕糸事業         団労働組合執行         委員長)    羽田 有輝君         参  考  人         (糖価安定事業         団理事長)   岡安  誠君         参  考  人         (糖価安定事業         団労働組合執行         委員長)    芝田  顕君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 四月三日  昭和五十六年度畜産物政策価格及び畜産経営の  安定強化に関する請願赤城宗徳紹介)(第  二六八二号)  畜産対策に関する請願福島譲二紹介)(第  二七一〇号)  食糧管理制度に関する請願福島譲二紹介)  (第二七一一号)  食糧管理制度の堅持及び健全化に関する請願  (渡部恒三紹介)(第二七八三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  蚕糸砂糖類価格安定事業団法案内閣提出第三  二号)  農林水産業振興に関する件(水産問題)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  すなわち、大蔵委員会においてただいま審査中の内閣提出財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案について、同委員会連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田邉國男

    田邊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等は、大蔵委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。      ————◇—————
  4. 田邉國男

    田邉委員長 蚕糸砂糖類価格安定事業団法案議題とし、審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  蚕糸砂糖類価格安定事業団法案審査のため、本日、駒沢大学教授林修三君、日本蚕糸事業団理事長松元威雄君、日本蚕糸事業団労働組合執行委員長羽田有輝君、糖価安定事業団理事長岡安誠君、糖価安定事業団労働組合執行委員長芝田顕君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田邉國男

    田邉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 田邉國男

    田邊委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。蚕糸砂糖類価格安定事業団法案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、林参考人松元参考人羽田参考人岡安参考人芝田参考人の順でお一人十分程度意見をお述べいただき、その後委員から質疑がございますので、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人委員長の許可を得て発言をしていただき、また、委員に対しては質疑ができないことになっておりますので、御了承ください。  それでは、林参考人にお願いいたします。
  7. 林修三

    林参考人 私、駒沢大学教授をしております林でございます。本日、この委員会目下議題になっております蚕糸砂糖類価格安定事業団法案に関して意見陳述をいたすことになっております。  私は農林政策については別に専門家でも何でもございません。本日ここで参考意見を申すことになりましたのは、私がつい最近まで行政監理委員会委員をいたしておりまして、行政機構問題等に携わってきた関係であろうと思うわけでございます。本日の私の意見陳述も、主としてその観点からいたしたいと思います。  この蚕糸砂糖類価格安定事業団法案は、現在それぞれ法律に基づきまして特殊法人として設けられております日本蚕糸事業団、それから糖価安定事業団、この二つ特殊法人統合して蚕糸砂糖類価格安定事業団というものをつくろうというのが内容でございます。  日本蚕糸事業団及び糖価安定事業団は、いまさら私から申し上げるまでもございませんけれども、現在それぞれ繭糸価格安定法あるいは砂糖価格安定等に関する法律、こういう法律に基づきまして生糸あるいは砂糖類輸入砂糖及び国内産砂糖あるいはブドウ糖の価格安定に関して重要な事業をやっております事業団でございます。それぞれ現在の経済状況のもとにおいてその重要な役割りを果たしておる事業団だと思うわけでございます。  この二つ事業団を今度統合して新しい事業団をつくるということになりましたのは、主として行政改革ということの一環としてであろうと思うわけでございます。現下の財政経済状況から、行政機構あるいは行政運営に関するいろいろな問題について、経費節減あるいは機構簡素化ということが強く求められておりますことはいまさら申すまでもございません。目下いわゆる第二次臨時行政調査会も発足して、また新しい行政改革の問題に取り組んでおられるわけでございますが、過去におきましても歴代の内閣において行政改革問題についてはずっと取り組んでこられたわけでございます。  今度のこの事業団統合問題は、昭和五十四年におきまして当時の大平内閣において企画された行政改革一環として取り上げられた問題でございます。たしか昭和五十四年十二月二十八日だったと思いますが、閣議決定昭和五十五年以降の行政改革方針が決められたわけでございます。その際におきまして、それまでやってきております各省庁の定員の削減計画の問題あるいは地方支分部局統廃合の問題、そういうものと関連いたしまして特殊法人統廃合という問題が重要な項目として取り上げられたわけでございます。  この特殊法人はそれぞれ法律に基づいて設置されたものでございまして、公的あるいは公共的な事業をそれぞれやっておるわけでございます。特殊法人をつくります理由は、こういう公的あるいは公共的な事業財政あるいは会計法規の非常に厳しい枠にはめるよりは、より緩やかな法律的な規制のもとに、民間における事業運営構想を取り入れて、より能率的、効率的に公的あるいは公共的な事業をやっていくという構想のもとに特殊法人というものはそれぞれつくられているものだと思います。  それぞれ特殊法人設立理由はあるわけでございますが、全体として見た場合に、特殊法人が数も少しよけいにあるのじゃないか、あるいは、設立するときの事情はいろいろございますけれども、その後の状況にかんがみて、特殊法人について整理あるいは統廃合して事業運営簡素化する余地があるのじゃないかというようなことで、昭和五十五年行政改革においては特殊法人の問題が主要な項目として取り上げられたものだと思うわけでございます。その特殊法人統廃合計画一つとして、この日本蚕糸事業団、それから糖価安定事業団統合問題が農林水産省所管関係においては取り上げられたのだと考える次第でございます。  この二つ事業団をなぜ統合するかということにつきましては、恐らくこれはともに畑作物価格統制問題についての事業をやっておりますこと、主として輸入関係仕事をともにやっておられること、そういうことからこの二つ事業団統合して、より簡素な機構で能率的な運営をするような新しい事業団をつくることが効果的であるというふうに考えられてこの法案ができてきたものだと思います。五十五年の行政改革においては、この二つ事業団統合を本年の十月を目途としてやるということになっております。その計画に基づいて今回の国会にこの法案が出されたものだと思うわけでございます。  最初に申し上げましたとおりに、現在までの両事業団のやっております価格安定あるいは価格仕事は、これはやはり現在の経済情勢のもとにおいてはもちろん継続していく必要のあることだと思うわけでございます。したがって、この新しい事業団においても当然に従来と同様な価格安定の業務はそれぞれやっていくわけでございます。  この新しい事業団をつくるメリットといたしましては、結局、二つ事業団統合いたしますれば役員の数についても若干の減少が図れるわけでございます。それから当然に事務機構につきましても、管理部門等についてはこの統合によってその簡素化ということも図られる。若干の経費節減もそういうことによって可能になると思うわけでございます。そこにこの二つ事業団統合ということの趣旨があるのだと思うわけでございます。  先ほど申し上げましたように、両事業団のいままでやっております価格統制あるいは価格安定の業務はもちろん今後とも必要なわけでございます。この法案におきましてはそういう事業は従来どおり大体やっていけるようになっておりますし、そうしてまた機構の問題につきましても、あるいは役員の問題については、統合による経費節減あるいは簡素化というようなことが図られておるわけでございまして、そういう点から申しましてこの法案は、現在の財政経済状況に照らして適切な法案であろう、かように私考える次第でございます。  簡単でございますが、私の意見陳述はこの程度にいたしたいと思います。(拍手
  8. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  次に、松元参考人にお願いいたします。
  9. 松元威雄

    松元参考人 私、日本蚕糸事業団理事長松元でございます。よろしくお願い申し上げます。  蚕糸砂糖類価格安定事業団法案につきまして意見を申し上げます。  このたび、行政改革一環として日本蚕糸事業団糖価安定事業団とを統合して蚕糸砂糖類価格安定事業団とするということで本法案国会に提出される運びとなったわけでありますが、私は、この蚕糸砂糖類価格安定事業団の成立のときにおいて解散することとされております日本蚕糸事業団立場において若干申し上げたいと存じます。  日本蚕糸事業団は、昭和四十一年、日本蚕繭事業団日本輸出生糸保管株式会社とを統合して設立されたものであり、繭及び生糸価格変動を小幅な範囲にとどめ、適正な水準に安定させるための生糸買い入れ売り渡し委託を受けて行う乾繭売り渡し等業務を行うこととされました。  その後主要な改正として、昭和四十四年に糸価安定特別会計から異常変動防止措置を承継し、日本蚕糸事業団が繭及び生糸価格異常変動防止に関する措置と、繭及び生糸価格の中間安定に関する措置との二つ業務を担当することとなり、次いで昭和四十七年に生糸一元輸入措置が創設され、四十九、五十年と実施した後、五十一年にこれを当分の間実施することに改められました。また五十四年には、蚕糸業振興資金を設置して蚕糸業振興に資するための事業助成することとされました。  以上のような繭糸価格安定制度改正を受けまして、日本蚕糸事業団は、繭及び生糸価格について、安定価格帯を超える異常な変動防止するとともに、安定価格帯の相当な水準において価格の安定を図るため、生糸買い入れ輸入、売り戻し及び売り渡し、繭の保管に要する経費助成委託による乾繭売り渡し等業務を行ってまいったのでありますが、その間、四十三年、四十六年には糸価低落に対処して国産糸買い入れを行い、さらに四十九年には石油ショック後の需要減少外国生糸輸入の増大による糸価低落に対処するため、生糸一元輸入制度を発動するとともに、国産糸の大量の買い入れを行って糸価の安定を図ったのであります。その後も国産糸買い入れ外国生糸輸入売り渡しの操作によって価格の安定を図ってまいったのでありますが、五十四年以降は需要減少外国産の生糸、絹糸、絹織物の流入という厳しい事態のもとで、事業団国産糸を大量に買い入れるとともに、輸入した外国生糸売り渡しを停止することによって価格を支えているという状況にあります。  このように日本蚕糸事業団は、これまで繭糸価格安定制度実施機関として蚕糸業経営の安定に資するため、繭及び生糸価格安定の機能を果たしてまいったのでありますが、昨今の蚕糸業を取り巻く厳しい情勢のもとで、その任務はますます重要となっております。  このたび、行政改革一環として特殊法人整理合理化を進めるという観点から、日本蚕糸事業団糖価安定事業団とを統合して蚕糸砂糖類価格安定事業団とするということでこの法律案が提出されることとなったのでありますが、私といたしましては、この趣旨に即して統合が円滑に行われるようにするとともに、統合後、新事業団によって従前の業務が適確かつ効率的に行われるようにしなければならないと考えております。  法案によりますと、新事業団業務は、従来両事業団が実施してまいりました業務を引き続き行うということで、繭及び生糸価格について、異常変動防止及び安定価格帯の中での相当な水準における価格の安定、いわゆる中間安定を図るため、生糸買い入れ及び売り渡し外国生糸一元輸入、繭の保管に要する経費助成等業務を行うとされており、また新事業団財務会計につきましては、繭糸価格異常変動防止に関する業務及び中間安定等に関する業務、並びに糖価安定に関する業務ごと勘定を設け、経理を区分することになっており、日本蚕糸事業団に対する政府及び民間出資はそのまま新事業団に対する出資として引き継ぎ、蚕糸関係勘定で経理するということになっておりますので、蚕糸関係業務が従来どおり行われることが明確なわけであります。したがいまして、この業務が適確かつ効率的に行われるよう所要の組織を整備する等しなければならないと考えます。  職員につきましては、統合によって不安を抱かせることがないよう、雇用確保、健全な労使関係維持等について十分配意しなければならないと存じます。  このように、蚕糸関係業務は従来どおり行われるわけでありますが、これが新事業団によって効率的に行われるようにしなければならないと存じます。  両事業団業務は、畑作物関係価格安定、輸入調整に関する業務ということで類似性がありますが、法案によりますと、行政改革趣旨に沿って役員の数も削減されることになっておりますし、そのほか、今後における組織及び人員の活用等により、業務の効率的な遂行が図られることを期待する次第であります。  時あたかも、蚕糸業はきわめてむずかしい事態に際会しており、繭糸価格安定に資するための蚕糸事業団機能関係者の重大な関心事になっております。したがいまして、この法案日本蚕糸事業団が従来実施してまいりました業務が新事業団で引き続き行われることは明確になっているわけでありますが、従来蚕糸事業団が果たしてきた機能がいささかも損なわれることなく発揮されるよう運営していかなければならないと存じます。  以上をもちまして私の意見開陳といたします。ありがとうございました。(拍手
  10. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  次に、羽田参考人にお願いをいたします。
  11. 羽田有輝

    羽田参考人 このたびの蚕糸砂糖類価格安定事業団法案の審議に当たりまして、日本蚕糸事業団労働組合を代表して御意見を申し上げたいと思います。  まず、行政改革そのものについてでありますが、行政機構の適正な整理簡素化を行い、国民の要望にこたえる適正な行政改革を積極的に推進するということの意義につきましては、国の財政硬直化という状況の中で何ら異論を申し上げるところではございませんが、このたびの日本蚕糸事業団糖価安定事業団統合につきましては、その決定経緯から申しまして、私どもにとりましていまだに納得のいかないものであるということであります。俗な言葉で申し上げることはどうかと思いますが、単なる数合わせであり、かつ、あたかも木に竹を接ぐような統合であるということであります。この木に竹を接ぐということにつきましては、当初私どもが申しましたことではなく、労使交渉の場におきまして使用者側発言の中にあった言葉でもありますし、私どもが聞き及ぶところによりますと、そのような認識が一般的であろうかと思います。  もう少し具体的に私ども考えを申し上げますと、まず第一点は、日本蚕糸事業団糖価安定事業団統合は、今回の行政改革の目的であります政府財政硬直化打開趣旨に全くそぐわないものであるということであります。すなわち、日本蚕糸事業団設立時に出資された資本金をもとに、その運用をもって運営されてきておりますし、また、今後ともこの方針に変更があろうとは思えないことから、日本蚕糸事業団糖価安定事業団統合させたからといって何ら国の財政支出が軽減されるものではありません。  第二点は、統合される両事業団業務内容が異質な性格を持っていることであります。すなわち、日本蚕糸事業団生糸価格安定を行うことによって、生糸原料である繭の価格を安定させ、生産者及び製糸業者等経営安定を図るとともに、繭及び生糸生産流通並びに需要増進に対する助成を行うことが主な仕事です。このことは、ひいては国民衣料素材である絹の供給を安定させており、需要量大半は国内産で賄い、不足分輸入でもって調整しています。一方、糖価安定事業団については、需要量に占める割合の少ない国内産糖価格安定と、需要量大半を占める輸入糖価格調整を主な仕事としています。  したがって、単に同じ価格安定の業務といっても、二つ事業団を取り巻くその環境は全く異なり、生産地盤においても、繭の生産が関東、東山の火山灰地帯を主産地としているのに対しまして、砂糖原料でありますサトウキビが沖繩及び鹿児島、また、てん菜が北海道においてしか生産されていないという事実がありますし、両事業団の現在置かれている関係業界も、食べ物業界着物業界というように、全く異なる業界となっています。  第三点は、日本蚕糸事業団職員数は現在三十五名でありまして、そこに組織しております私たち日本蚕糸事業団労働組合組合員数はわずか二十二名であります。また、糖価安定事業団につきましては、統合案について閣議決定が行われました昭和五十四年十二月時点においては労働組合が結成されておらなかったやに聞いております。したがいまして、私どもといたしましては、このたびの行政改革一環としての統合案決定に当たりましては、その事業団の果たしている役割り機能及びその背景を配慮せず、弱いところにその不合理性のしわ寄せが来たのではないかと考えざるを得ないということでありまして、労働者犠牲の上に行政改革というものが推し進められているのではないかと危倶するところであります。  一方、日本蚕糸事業団を取り巻く諸情勢に目を転じてみますれば、わが国社会経済構造の変化並びに国際環境変動に伴いまして、当然、行政における機能の積極的な対応が切実に要請されているにもかかわらず、日本蚕糸事業団在庫は十四万八千俵の多きに上り、この滞貨の処理は、日本蚕糸事業団にとってはもとより、広く蚕糸絹業界にとりましてもまことに重大かつ緊急を要する課題であろうかと考えます。その一つの証拠といたしまして、現在、生糸価格は本来制度として守るべき基準糸価を大きく下回って推移しております。このことは、単に事業団生糸在庫の大量に上るその重圧についてのみ反映されたものであるわけでなく、その背後にあります制度に対する不安といいますか、信頼感の欠如といいますか、いわゆるそういったものを反映しているものと考えます。  したがいまして、このような状況の中で、最近の財政硬直化の名のもとに、先ほど申し上げました単なる機械的な数合わせ統合を行いますことは、いまこそ日本蚕糸事業団の持っている機能を最も効率的にかつ円滑に発揮させて問題の処理に当たらなければならないこの時期に、無用の混乱を招き、単に事業団だけの問題にとどまらず、価格安定制度そのものに対する不安を一層つのらせ、混乱をさらに大きくするばかりでなく、わが国蚕糸絹業界に与える影響は大きなものがあると強く危倶するところであります。  次に、統合を前提として日本蚕糸事業団に働く私ども雇用労働条件の問題について意見を申し上げます。  まず第一点は、雇用の継続及び労働条件の承継についてであります。私ども労働組合使用者である事業団当局との間における統合に当たっての労働条件に関する団体交渉経過について申し上げますと、本年一月二十六日に現在の労働条件について確認を行い、さらにその後二月末において、統合時における職員雇用関係はそのまま引き継ぐこと及び労使間で取り交わした確認事項等により、職員が現に受けている労働条件のすべては新事業団への移行に当たってそのまま承継するという文書確認を行ってきています。しかし、これらの確認を行った事業団当局が新事業団の当事者であるかどうか未定であるという私どもの不安があります。ですから、私どもとしましては、二月末の確認書をもって新法人に引き継がれるよう、この機会に十分審議していただきたいと考えます。  第二点は、両事業団労働条件等は、それぞれ、それなりの経緯がありますので、同じ特殊法人といっても両者に違いがあることは当然であると考えますが、やはり、統合によって一つの職場で働くことになる以上、いずれは両者を一本化することが望ましいと考えますので、その辺のことについては、今後私ども労働者犠牲にならないという保証がなされた上で、労使間の円滑な話し合いが行われる方向でぜひとも皆様のお考えをおまとめ願えれば大変ありがたいと考える次第であります。  次に、事業団運営民主化についてであります。現在、事業団自立的運営を妨げている要因の一つは、一般的に言われております天下り人事であります。公団、事業団等をいわばそれぞれの外郭団体のようなものにして、特に、上級公務員の退職後のポストの場として確保するという、いわゆる天下りとか渡り鳥とか言われるものを見ますと、それぞれの官庁人事のしわ寄せが公団、事業団等特殊法人に来ているということは否定できない事実であります。  現在、日本蚕糸事業団におきまして、農林水産省及び大蔵省の官僚出身者が、理事長を含む役員を初めとして、一般職員における部長クラスにおいても大半のポストを占め、かつ、それが世襲化されてきており、内部プロパー職員の勤労意欲の低下を招いている現状にあります。したがいまして、さきに述べたとおり、蚕糸絹業界にとって最大の危機という現下の情勢日本蚕糸事業団が弾力的に対処するべく、円滑かつ効率的な業務運営が保証されますよう、この際、役員を初め幹部職員への天下り人事を制限し、事業団内部からの人材を登用することを申し上げるとともに、新事業団設立というものが、監督官庁の天下りポストの拡大に利用されている向きがあることから、そういったことにこのたびの統合が利用されることのないよう願う次第であります。  最後に、この法案の審議に当たりましては、養蚕農家を初め広く蚕糸絹業に携わっている方々へ将来に対する展望を与えるものであってほしいと思います、さらにそこに働く労働者の生活と権利を守る方向で審議されますよう強くお願い申し上げまして、参考人としての意見にかえさせていただきます。(拍手
  12. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  次に、岡安参考人にお願いいたします。
  13. 岡安誠

    岡安参考人 糖価安定事業団理事長の岡安でございます。  ただいま御審議いただいております蚕糸砂糖類価格安定事業団法案に関しまして、糖価安定事業団立場から若干意見を申し上げたいと存じます。  わが国砂糖は、戦後、輸入糖につきましては外貨割り当てによりまして需給の調整が行われてまいりましたが、昭和三十八年に粗糖の輸入自由化が行われたことによりまして、国内の糖価は国際糖価の影響をまともに受けることになったのでございます。  元来、砂糖は国際相場の騰落の頻度及び変動幅がきわめて大きく、これによる輸入糖価格変動が、国内産業及び国民生活に与える影響も少なくないため、この変動調整し、国内糖価を平準化、安定させるとともに、国内産糖類の価格支持を行うことを通じて、甘味資源作物等による農業所得の確保国民生活の安定を図るための制度が必要となり、昭和四十年六月に砂糖価格安定等に関する法律、いわゆる糖安法が制定されたのでございます。  そして、この目的を達成するため、輸入砂糖価格調整と、国内産の砂糖とブドウ糖の価格支持のため、砂糖とブドウ糖の買い入れ及び売り戻しの業務を行う機関として、昭和四十年八月十九日に糖価安定事業団設立されたのでございます。  事業団の主な業務は、輸入砂糖の売買業務と国内産の砂糖の売買業務でございます。  輸入砂糖の売買業務につきましては、輸入申告者から砂糖買い入れ、直ちに売り戻すわけでございますが、その際、平均輸入価格水準に応じ、安定資金や調整金を徴収したり、または安定資金を支払うことによりまして、輸入糖の国内供給価格を安定上下限の価格帯の中に調整することとしております。  御承知のように、一昨年秋から昨年の暮れごろまで国際糖価が上昇しましたために、昨年六月から本年一月まで安定資金を支払っております。他方、国内産の砂糖の売買業務は、国内産の砂糖製造事業者の申し込みに応じ買い入れ輸入砂糖との価格差を調整した価格で直ちに売り戻すわけでございますが、その際生じた売買差額は国の交付金と輸入砂糖から徴収した調整金によって充当されております。  次に、糖価安定事業団設立以来の、国の内外の砂糖事情の推移について簡単に申し上げます。  当事業団は、設立以来約十五年余り経過いたしておりますが、この間、砂糖は国際的な相場商品であるという商品特性から、数度にわたる価格の暴騰、暴落を経験しましたし、また、需給事情も大きく変化してまいっております。  一方、国内の動向を見ますと、総需要量は、昭和四十年当初は年間約二百万トン程度であったものが、四十年代半ばごろから急激に増大し、四十七、四十八年には三百万トンを突破するほど大幅に増加いたしました。しかしその直後、いわゆる第一次石油ショック時の価格の暴騰の影響を受けまして、急激に消費が減退し、昭和四十九年には年間で約二百七十万トンとなったのでございます。そして、その後消費は次第に回復基調にありましたが、最近はいわゆる甘味離れ現象のほか、でん粉を原料とする異性化糖の増加等甘味の多様化もあり、砂糖の消費は減少傾向にあります。  次に、国内産糖について見ますと、北海道で生産されますてん菜糖については、昭和四十八年をピークとして一時減少傾向をたどっておりましたが、昭和五十二年を境として作付面積が着実に増大し、五十五年産は六万四千八百ヘクタールに達し、単収も大幅に増大いたしまして、産糖量も約五十三万トンに達することが予想され、史上最高を記録しようとしております。  また、鹿児島県南西諸島及び沖繩県で生産されます甘庶糖につきましては、最近においては作付面積が若干の増加を示してまいりましたが、単収については、台風その他の気象災害や病害虫による被害もあり変動しておりまして、産糖量も二十二、二十三万トン程度で推移しております。以上から、国内産糖全体の生産量は、昭和五十五年産で七十五万トン程度に達しようとの見込みでございます。  次に、内外の砂糖価格について若干申し上げますと、まず、砂糖の国際価格は前にも申し上げましたように騰落の激しいものでございますが、第一次石油ショックに端を発した暴騰は、ロンドンの現物相場、いわゆるLDPの月平均で四十九年十一月に五百六十六ポンド、瞬間的には六百五十ポンドまで暴騰しましたが、その後しばらく百ポンド台で低迷を続けました。  しかし、五十四年度後半から上昇に転じ、五十五年二月には二百ポンドを超え、以後次第に上昇して、一時は四百ポンドを超えるような高水準で推移しましたが、現在やや落ちついてまいりまして、二百二十から二百三十ポンド程度となっております。  一方、このように国際糖価が三、四倍に高騰する中にあって、国内の価格につきましては、国際糖価の上昇により若干上昇しておりますが、その幅は小さく、糖価安定制度のもとで比較的安定的に推移しております。  なお、割り高な豪州長契糖の引き取り拒否が日豪間の外交問題となったことを背景として、砂糖の需給調整を目的としたいわゆる臨時特例法が昭和五十三年二月から施行されておりまして、昨年の法律改正により来年三月まで期限を延期されて実施されております。  以上申し上げましたように、糖価安定制度のもとにおきまして、糖業を取り巻く情勢の変化はありましたが、事業団の目的とする価格調整につきましては、大筋において十分その機能を果たしてまいりましたし、今後においてもその必要性は変わらないものと考えております。  次に、日本蚕糸事業団及び糖価安定事業団統合し、蚕糸砂糖類価格安定事業団設立する問題でございますが、新事業団業務につきましては、両事業団が現在実施しております業務は区分経理の上引き続き行うこととされておりますし、附則第八条において、糖価安定事業団の一切の権利及び義務は蚕糸砂糖類価格安定事業団が承継することとなっておりますので、機能的には何ら支障はないものと理解しております。  特に、当事業団の場合、価格がめまぐるしく変動する砂糖の売買を行うわけでございますので、事務の停滞等により業界に不測の損失をおかけすることのないよう迅速に事務を処理するため、出先機関として全国に事務所、出張所合わせて十六カ所ございますが、事業団統合に際しましては、業務の停滞や関係業界へ迷惑をおかけすることのないよう、円滑な移行に努力する所存でございます。  最後に、統合に当たっての職員に関する問題でございます。この問題はきわめて重要でございますし、また、健全な労使関係の維持が、新事業団がその機能を十分発揮する上でぜひとも必要であるわけでございます。糖価安定事業団には従来労働組合はございませんでしたが、つい最近、三月末に労働組合設立されましたので、今後、労働組合とも十分話し合った上、新事業団への移行が円滑に行われるよう対処してまいりたいと考えております。  以上、いろいろ申し上げましたが、今回の統合行政改革一環として行われるものであることを念頭に置きつつ、円滑な移行が行われますよう私の立場として努力することを申し上げ、私の意見陳述といたします。ありがとうございました。(拍手
  14. 田邉國男

    田邊委員長 ありがとうございました。  次に、芝田参考人にお願いいたします。
  15. 芝田顕

    芝田参考人 このたび糖価安定事業団日本蚕糸事業団とが統合されるに当たりまして、一般職員を代表して御意見を申し上げます。  当事業団行政改革一環としまして統合されることになりましたことに対し、職員は大変動揺いたしております。当事業団は、砂糖の国際的、流動的な変動の中で、砂糖価格安定業務を行い、また、役所と業界との間にありまして、行政サービスの窓口として、わずか九十名足らずの人員で着実に効率的に業務を遂行してまいったわけでございますが、こうしたところに起きてまいりました今回の統合問題でございます。  当初の職員感情といたしましては、御承知のとおり両事業団の取り扱っていますものが、流通機構の上から申しましても砂糖生糸といった異質なものでございますし、また、当事業団が国の補助金によって運営されているのに対しまして、蚕糸事業団資本金を持って運営されているといった組織の特殊性から申しましても、体質の違う両事業団統合されまして果たしてそのメリットはあるのだろうかという、そうした見方もございます。職員にとりましては、全く不本意な統合ではございます。  しかしながら、事ここに至りましたならば、業務内容はもちろんのこと、労働条件の相違、天下り出向人事、そういった実態の中で統合されることに対しまして、職員の抱いております不安感をまず取り除くことと、いかにすれば両事業団がスムーズに統合することができ、新事業団が円滑にその機能を発揮することによって国民に迷惑をかけないようにすることを考慮しなければならないと考えております。それには次の事項を明確にしていただかなければなりません。  第一点といたしまして、現職員の新事業団への継続雇用による身分保障の問題でございます。事業団法案附則第八条の規定によりますと、一切の権利義務は新事業団に承継されることになっておりますが、この権利義務の承継には、現職員を継続して雇用する義務を含めたものと理解しております。この点につきましてさらに具体的な確約をいただきたいと思います。  また、当事業団は、国内における砂糖消費量のおよそ七五%に及びます輸入原料糖の価格調整を行うとともに、国内で生産される砂糖価格支持のための重要な業務を、全国の八事務所、八出張所におきまして必要最小限度の人員で行っております。この機構は、砂糖の国際機関からも評価されておりますように、実に能率的、効率的な機構でございます。今回の統合後におきましても、砂糖行政の国際性と、国内の砂糖生産を初め砂糖価格安定という国民生活に欠くことのできない重要な地位にあります。今回の統合を引き金といたしまして、このように重要かつ効率的な機構の縮小から人員の削減へとつながらないように、この際、明確な歯どめをしていただきたいと考えます。  第二点といたしまして、労働条件の問題でございます。新事業団がその機能を十分に働かせるためには、そこに働く職員労働条件が同じであることが不可決の要件でございます。ところが、当事業団にはつい最近まで労働組合がありませんでした。こうしたこともございまして、他の政府関係特殊法人の一般職員と比較いたしまして、労働条件は全般的にかなり低い水準にあると認識いたしております。万一現状の格差のあるままで統合されますと、相互の職員感情からいたしましても好ましくなく、むしろ統合によりますひずみとでも申しましょうか、職員の士気に影響を及ぼし、ひいては新事業団での業務の遂行に支障を来すことにもなりかねないと考えております。この点を十分に考慮いただきまして、新事業団が発足するに当たりましては、労働条件が改善され、職員が安心して業務に精励できますよう強く要望いたします。  最後に、一般的に言われておりますところの天下り人事でございます。これにつきましてはすでに政府関係特殊法人の多くが指摘されているところでございますが、現在の当事業団の実態は、役員、管理職員二十八名の大半が農林水産省及び大蔵省からの天下りと出向人事によって位置づけられております。内部から登用された者はわずかに六名でございます。それぞれの官庁の人事の都合により交流され、ポストもほぼ固定されているのが現実の姿でございます。  これでは事業団の自主性、主体性が失われているばかりではなく、職員の士気にも影響し、業界人の心証からしても好ましいこととは言えないと考えるのは当然のことであります。こうした体制はこの際はっきりと変えていただかなければならないと考えています。新事業団が真に自立し、民主的運営を図っていくためには、こうした天下り及び出向人事を取りやめて、内部から広く人材を登用することが必要であると考えております。  以上申し上げましたことは、統合を目前に控えました職員の最小限の願望でございます。事業団法案の御審議に際しまして、どうか職員の不安が払拭され、将来に希望を持たせていただけますよう強くお願い申し上げまして意見といたします。(拍手
  16. 田邉國男

    田邊委員長 ありがとうございました。  以上で各参考人意見の開陳は終わりました。
  17. 田邉國男

    田邉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  18. 松沢俊昭

    ○松沢委員 参考人の皆さん、大変お忙しいところおいでいただきまして、貴重な御意見をお聞かせをいただきまして本当にありがとうございました。若干御質問を申し上げたいと思います。  まず両方の事業団理事長にお伺いを申し上げたいと思います。  いまいろいろと両事業団の歴史的な経過やあるいはまた業務内容につきまして詳しくお話をいただきました。日本蚕糸事業団の場合におきましては政府民間からの六十億円以上の出資金をもとにしながら業務運営をなされてまいりましたし、糖価安定事業団の場合におきましては運営補助金、そしてまた交付金、こういうような金で運営がなされているわけなんであります。したがって、運営の方法そのものというのが大変違っております。  それからもう一つは、業務内容というのが非常に専門的であるわけでありますし、そしてまたこの事業団の背景におられるところの業界の皆さん、あるいはまた生産者の皆さん、それもまた、さっきも羽田参考人の方から御意見がございましたように、砂糖の場合におきましては北海道と鹿児島及び沖繩、それから蚕糸の場合におきましてはそれ以外のところに集中している、こういうことでございますから、したがって事業団を利用するといいますか、事業団の恩恵にあずかっているそれぞれの層は全然違ったところの層であるわけなんです。  こういう事業団というものが合併をやることによってどういうメリットがあるのか、私もこの事業団法を精査すればするほどその疑問が出てくるわけなんであります。そういう点で両方の理事長の方からそれぞれこれにつきましての御見解をまず承りたいと思います。
  19. 松元威雄

    松元参考人 ただいま先生お話しのとおり、従来両事業団はそれぞれの業務を営んでまいりましたし、その業務処理する財政的な手法と申しますか、それも確かに違っているということは事実でございます。しかしながら、やはり価格安定あるいは輸入調整といった似た面があるわけでございまして、特にこのたびの統合行政改革と申します重要な課題、その一環として特殊法人整理合理化するという観点から行うものでございますから、両者類似性ということもございますし、当面さしあたっては、先ほどございました役員の数も減少する、それからまた共通管理も簡素化するというメリットもあるわけでございますし、さらに長期的に見ますれば、その組織、人員を活用する等いたしまして事業が効率的に進められる、こういうメリットがあろうと存ずるわけであります。
  20. 岡安誠

    岡安参考人 いま蚕糸事業団理事長からお話があったとおりでございます。別につけ加えるものもないわけでございますが、行政機構改革というのが現下におきます重要事項であり、その一環としてわれわれ事業団の合併が取り上げられた以上、われわれはその合併によりまして生ずるメリットをできるだけ大きくするといいますか進めると同時に、多少の混乱はできるだけ少なくするということによりまして統合の実を上げまして、一般国民行政改革に対する期待にこたえるということにいたしたいと思っております。
  21. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私は行政改革というのは、財政の硬直化、そこから端を発しまして行政改革をやっていかなければならぬじゃないか、こういう意見に実はなってきていると思います。私も行政改革そのもの、やはり効率的に業務が行われるような、しかもむだな金を使わないような、しかしまた幾ら小さい事業団であっても役割りが大きいということになれば、それには金を使っていってもいいと私は思うのですが、そういうのが本当の意味の行政改革だ、かように実は考えているわけであります。  そういう点からいたしますと、出ている法案からいたしますと、この合併によって現在常任の役員の方々が両方合わせまして十二人、それを九人にするのだ、なるほどその分におきましては安上がりになるじゃないか、こういうことになりますけれども、ただ、その他の人員の縮小だとかあるいはまた事務所、出張所、特に糖価安定事業団なんかはあちこちにあるわけでありまして、こういうものは、先ほども意見がございましたようになかなか削るというわけにいかない。最低の人員で最大の効果を上げている、私はこういうふうに認識をいたしているわけであります。  あるいはまた日本蚕糸事業団にいたしましても、数からいたしまして職員の数が三十五人、これ以上縮小するわけにもいかないという状態でございますから、そういう意味でのメリットというのは出てこないのじゃないか。しかしそれを強引に縮小をやっていきますと、今度はその及ぼすところの影響が、この事業団によって恩典を受けているところの業界だとかあるいは生産者にいくのじゃないか。そういうようなことであっては何のための行政改革であるかわからぬ、こう実は私は思っているわけであります。そういう意味で、林先生もおいでになっておりますので、林先生の方からも、こういうような行政改革というのはいかがなものかという御意見を再度承りたいと思います。  それからもう一つは、蚕糸事業団の場合におきましては、これは経理がきちんと区分されてそれぞれの勘定になっている。振興資金なんというのもございますね。今度同一の事業団になりましてその金を一時的に流用するなどということがあり得るということになりますと、これはまた大変な問題になるわけでありまして、そういう経理の操作等はどのようにお考えになっているか。これは新しい理事会において考えられると思いますけれども、現在のところまだ理事も決まっておりませんので、その辺も両理事長の方からお伺いを申し上げたい、かように思うわけであります。  まず、林さんの方からひとつお願いします。
  22. 林修三

    林参考人 いま松沢先生の御質問でございますが、この行政改革という問題は、これは典型的な総論賛成、各論反対の問題だということが常に言われます。それで、現在ございます行政機構、これは国の行政機構のみならず、特殊法人の問題にしてもあるいは地方団体の機構の問題にいたしましても、それぞれその存在理由は皆持っておるわけでございまして、個別的に当たっていけば皆それぞれ有用な働きをしておるわけでございます。ただ、これを財政問題あるいは行政事務の能率的な運営、あるいはいわゆる安上がりな政府とか、そういうような観点から取り上げて、全体として見てその機構簡素化とかあるいは特殊法人なら特殊法人について統廃合の余地はないかというようなことを考えませんと、行政改革というのは実はうまくいかないわけでございます。いわゆるマクロ的な見方によって全体の考え方を出し、それをいかに個別的な問題に当てはめていくかというところが行政改革一つの行き方だろうと思うのでございます。  そこで、マクロ的な見地から申しまして、たとえば全体としてどうも公務員の数が多過ぎるとかあるいは機構が複雑過ぎるとか、特殊法人の数が多過ぎるとか、そういうような問題は一応は出てくるわけで、それをいかに具体化するかということになると、これは個別的に当たらざるを得ません。個別的に当たりますと、いま松沢先生のおっしゃったような問題は必ずどこかに出てくるわけであります。出てまいりますけれども、しかし、それはやはり全体的な見地としての財政再建に資するとかあるいはより簡素、効率的な行政をやっていくという見地から、いままでやっておりますことから言えばそこに若干の問題は出る場合もございますけれども、あえてそれをやってまいりませんとこの行政改革というのは実は実行できないものだろうと思います。  そこで、今回の農林水産省関係特殊法人統廃合というような問題も、実はまずそういうマクロ的な見地で現在の特殊法人の数は少し多過ぎないか、そういうような見地で統廃合できるものはひとつ統廃合しようというのがこの昭和五十五年改革の一つの重要な内容をなしたものだろうと思うわけでございます。そしてそれを具体化する場合において、各省庁それぞれ特殊法人を持っているわけでございまして、各省庁にその具体化が求められたのだと思いますが、農林水産省においては、蚕糸事業団糖価安定事業団統合というような問題をその具体的な実行方法として考えられたことだと思います。  それで、これにつきましては、確かに両事業団は相当違ったものをやっております。それは事実でございますが、先ほど両事業団理事長からも申されましたとおりに、あるいは私もちょっと申し上げましたけれども、そこには若干の共通的な部面もあるわけでございまして、畑作物に関する価格安定というようなことが主たる業務である、あるいは輸入調整というような問題も両方がやっておるわけでございます。そのやり方は違うわけでございますが、そういう点にある程度の共通面がございます。これを統合することによる簡素な特殊法人運営ということのメリットはやはりそこに出てくるだろう、そのメリットはあるいは小さいかもわかりませんけれども、そういうことは全体として見れば必要なことじゃないか、こういうことでこの問題が取り上げられたのだと思います。  それで、先ほど御指摘のように役員の人員も統合すればもちろん若干減るわけでございますし、それから管理機構等につきましても、この統合によって共通管理部門については簡素、合理化もできますから、その点を事業運営部門の充実というようなことに向けることもできるわけでございまして、そういう点におけるメリットはある程度あると思います。こういうのは個々的に見ればあるいは小さいとおっしゃるかもわかりませんが、全体としての、行政改革一環として特殊法人統廃合をやってより簡素、効率的な行政運営を図るという点から見れば、個々のものは小さくても、やはりそれはやっていく必要があるのではないか、そういうふうな感じが私はいたしているわけでございます。そういう意味でこの問題が取り上げられたのだ、かように私は考えるわけであります。
  23. 松沢俊昭

    ○松沢委員 御答弁の前にちょっと。時間がありませんからまた質問します。  それと、この事業団統合することによってお互いの事業団労使それぞれ大変苦労しておられると思います。糖価安定事業団の場合におきましては最近労働組合ができたということを聞いておりますが、日本蚕糸事業団の場合におきましては、ずっと労働組合がございましたので、両方の職員の皆さんは、そういう意味で身分がどうなるか、待遇がどうなるかということで大変御心配だということだと思います。そしてまた事業団理事者の皆さんもそういう点についてもいろいろ配慮をされておられると思うわけであります。  そこで、松元さんにお伺い申し上げますけれども、ことしの二月二十八日に労働組合事業団理事長という名におきまして確認書の取り交わしをおやりになっておりますね。ここにございますが、時間がありませんから読み上げませんけれども、新事業団への移行に当たって従来の労使慣行は尊重する、実はこういうことになっているわけですね。今度事業団が解散、同時に新事業団設立、こういうことになりますと、この確認書がそのまま引き継がれる、こうなりますね。一方、糖価安定事業団の方から合併される職員の皆さんは、それなりに給与水準の面あるいはまた給与体系の面においても違っていると思います。そうすると、合併して今度二つ事業団から来るわけですから、違った給与体系、給与水準でそのままずっとやっていくことになるのか、当分はやっていくのだが、しかし同一事業団なんだからその辺は将来において一元化をしていくのか、あるいはまた新事業団設立するまでまだ大分時間がありますから、その間に両方の給与水準の面、給与体系の面をあらかじめ同一のものにして滑り込みをやる、こういうふうにするのか、その辺ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  24. 松元威雄

    松元参考人 先生の御質問、先ほどの問題も含めましてちょっと論点を整理して答弁申し上げます。  前段の御質問といたしまして、両事業団出資とか補助金の関係をおっしゃられまして、それは統合後どうなるのだ、彼此流用するとかという御質問がございましたから、それをまず申し上げます。  現在でも日本蚕糸事業団におきましては、業務としまして異常変動に関する業務中間安定等に関する業務がございまして、それぞれに政府出資異常変動政府出資のみ、それから中間安定等につきましては政府出資民間出資とございまして、両勘定で区分して経理するように法律上決まっております。統合後は、新事業団法におきましてその両勘定とそのほかに糖価関係勘定を設けまして、それぞれ別個に経理区分する、こうなっておりますから、いわゆる彼此流用ということはないわけでございまして一従来どおりの業務が従来どおりの会計処理財政的な担保をもって行われる、こういうふうになっておるわけでございます。  次の御質問の労働関係についてでございます。まず、御指摘のような確認をいたしたわけでございますが、その内容は、統合に際しましていまの雇用関係は引き継ぐ、それから労働条件は、今後労使間における合意によって変更されない限り引き継ぐ、それから労働慣行は尊重する、こういう内容でございます。そこで御指摘のとおり、今後労使間の合意で変更されれば別でございますが、変更がなければいまの労働条件が引き継がれる、こうなるわけでございます。その内容は糖価とは違っている面がございます。  そこで、新事業団といたしますれば、これはいつまでも二本立てというわけにはまいらぬと思うわけでございまして、いずれかは一本化しなければならぬ。ただし、一本化するにつきましてはいろいろ手順が要るわけでございます。特に労使間の交渉で決まりましたものは、交渉で合意が得られなければ勝手に一方的にどうこうはできないわけでございます。したがいまして、両者の違っている実態、これまたそれぞれ由来因縁があるわけでございます。蚕糸事業団労働条件内容あるいは糖価の内容、違っている面もございます。それなりの事情もあるわけでございますし、長年の経緯もございます。そういった実態を踏まえながら、そういった交渉、手順を踏みながら、もちろん監督官庁の指導も受けつつでございますが、そういう手順を進めまして、納得のできる形でもって一本化の方向に進めてまいりたい、現段階ではこのように考えております。
  25. 松沢俊昭

    ○松沢委員 同僚議員の竹内さんが質問したいということで、関連質問でやりますので、私はこれで終わります。どうもありがとうございました。
  26. 田邉國男

    田邉委員長 竹内猛君。
  27. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 参考人の皆さんには大変お忙しいところを貴重な御意見ありがとうございます。私は、参考人の皆さんに御質問の前に、農林省の関係者に対して委員長を通じて資料の要求をいたします。  第一は、いま松沢委員質疑をしておりました両事業団の給与表、それから勤務表について、これをひとつ次の審議の日程までに届けてもらいたいと思います。  次の問題は、繭の価格に関して、過ぐる三月の二十八日、次いで三十日、この両日にわたって審議会が開かれたにもかかわらず、ゼロの諮問で審議は進まず、新聞紙上によると、五月の二十日ごろまでに何とか決着をつけたいということが伝えられております。私たちはこの次の週から法案の審議をするわけでありますけれども法案が取り扱うべき繭の基準価格が決め得ない、しかも千円の価格引き下げを含んで臨まれたということを聞いておりますが、それならば五月の半ばになったら見通しはつくのか。つまり、十四万八千俵の在庫処理計画価格を引き下げることによってその見通しはつくのかどうなのか、こういう見通しをつけた資料を出してもらわなければ審議はしにくい。新聞によると、何か総合対策室をつくったようでありますが、そういうものをつくればつくるほどやはりその内容が具体的であってほしいし、その問題も当然質疑をしていきます。  なぜなら、統合する中で、特に蚕糸関係職員の皆さん、労働者は、今後日本の養蚕業というものはどういうふうになるのだろう、製糸業というものはどういうふうになるのだろうという展望を求めておるのです。ですから、これは資料として出してもらいたい。そういうものがそろわないと次の審議はなかなかしにくいということを、まず冒頭申し上げます。  そこで参考人の皆さんにお伺いいたします。特に両労働組合委員長がお見えになっておりますけれども日本蚕糸事業団の方はもう以前から労働組合をつくって政労協に加盟をされております。したがって、政労協の方式が賃金の基準になり、労働条件もそういう方向に進んでおるわけでありますけれども糖価安定事業団の方はつい最近労働組合をおつくりになった。これは非常に結構なことだと思いますが、まだ上部団体がないし、労働組合としてはきわめて新しい段階でありますから、従来の公務員準拠型の賃金になっておると思います。  したがって、賃金水準並びに労働条件、福祉、こういうものがかなり違っておると思うのです。これを統合して発足するのが本年の十月だと聞いておりますが、本来ならばそれまでに一緒にした方がよろしい、同じ事業団であるならば同じ労働条件でいくのが一番いいと思うのでありますが、これに対しては皆さんはどのようなスケジュールをお持ちか。  それから理事者の方は、二人の理事長がそのまま二人理事長に座ることはまずないのですから、まあこれはいま尋ねることはちょっと無理かもしれませんが、現在までの交渉の中で、十月の発足のころまでに労働条件なり福祉を一緒にしていくということについての見通しをお聞かせいただきたい。
  28. 羽田有輝

    羽田参考人 先ほど御意見を申し上げたとおり、行く行くは職場は一つになるわけですから、できる限り早目の一本化の方向が望ましいといます。それで、糖価さんの方は三月三十一日に組合ができたわけですが、その前の職員協議会の段階で私ども労働組合と交流がありまして、私ども労働組合としては何回か会っていますし、十日に一遍ぐらい電話連絡をして、連絡がとれてきておりますので、両事業団労働条件の違いの全貌はほぼ明らかになりつつあります。せっかく組合ができたことでありますし、私どもは上部団体がありますから、上部団体の協力を得つつ、なるべく早く、統合前に労働条件は一本化の方向にしてもらいたいと思います。
  29. 芝田顕

    芝田参考人 私どもは最近労働組合を結成したばかりでございまして、労働組合雇用条件については、十月の統合までにできるだけ努力して格差を縮めていきたい、そのように考えております。
  30. 松元威雄

    松元参考人 まず、両事業団労働条件に差があるということは事実でございますが、先ほど申しましたけれども、それにはそれなりの事情も経緯もあるわけでございますし、したがって、いずれは一本化しなければなりませんが、どういう手順で一本化してまいるか、また、その内容両者にはそれぞれお互いに言い分はあろうかと存ずるわけでございます。したがいまして、これを一本化するにつきましては、先ほども申しましたが、労使間の交渉という手順も要るわけでございますから、そういうタイミング、手順を役所の指導も受けながら今後検討を進めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  31. 岡安誠

    岡安参考人 いまお話しのとおり、確かに両事業団職員労働条件に違いがございますが、この違いもそれぞれいきさつがあって違ってきたわけでございまして、一概に片方が有利、片方が不利ということではないわけでございます。しかし、いま組合の方からもできるだけ一本化が望ましいというお話もございましたし、また、いずれ新しい事業団ができれば、職員労働条件というものは一本化するというのが普通でございます。したがって私どもも、組合の方からいろいろ御要望もあるようでございますので、よく話し合いたいと思います。  ただ、私ども事業団は、給与その他業務上の必要経費はすべて国の運営補助金に依存しているわけでございますので、金が非常にかかるような事項等につきましては、私どもとしましては監督官庁の方のお考えも聞かなければなりませんし、また、しかるべき手続を経なければ実現することもできないわけでございます。したがって、今後多少時間もございますので、組合の意見も聞きながら対処してまいりたいというふうに思っております。
  32. 田邉國男

    田邊委員長 竹内猛君に申し上げます。  ただいまの資料要求の件でございますが、昼間の理事会におきまして協議をさせていただきたいと思います。
  33. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの資料要求に対する理事会は結構ですけれども、蚕糸の問題で、統合事業団が取り扱うべき繭の価格が当然決めるべきときに決まり得ないというのは、われわれも問題の多いことは知っているし、本委員会でも価格の問題については適正な価格ということで決議もしているわけですから、政府と自民党との間で話し合いをして五月の半ばということに新聞ではなっている、しかし、これは生産者及び消費者も含めた関係のそれぞれの団体、あるいはわれわれもまたある意味においては参加をしなければならないと考えておりますが、意見が幾つかあるわけですから、ともかくこの問題を官民一体で処理するということをしばしば言ってきたように、ゼロ回答、見通しがない、そして末端では非常に批判が出ているというものを、何としても早急に見通しを立てなければならないわけであります。  ですから、ぜひこれは理事会において十分に審議をして、資料が出せないというようなことのないようにしてもらいたいということを重ねて要求をしたいと思います。そういたしませんと、これはなかなか審議が進まないということになります。  そこで先ほどの労働条件の問題ですが、両理事長のお話を承っておりますと、新事業団仕事の方だけはきちんと引き継いでいきます、そして労働条件もそういうことになっているけれども、今日の段階で両方とも労働組合ができたわけですから、とりあえず現状の労働組合との間の約束はがっちり守っていくということ、これはきちんと引き継いでいきますね。権利義務その他福祉とか、そういうものは約束どおりにしていきますね。
  34. 松元威雄

    松元参考人 先ほどの御質問ないしそれについて答弁がございましたとおり、労働組合との間に確認をいたしておりますから、確認いたしたことはもちろん実行いたします。
  35. 岡安誠

    岡安参考人 組合との間に話し合いがつけば、それは当然引き継いでまいりたいと思います。
  36. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこでこれからは、前に質問したように両方の基本条件が違っているわけですから、これを一本にしていくためにかなりの努力が必要だ。その努力についてこれからまたそれぞれの話し合いの中で進めていって、十月の段階までにはどうしてもそれを近づけて一本化の方向に何としても持っていくように、これは農林省当局もあるいは関係省庁もそれに加わっていかなければならないと思いますけれども、働きやすい明るいものにしていくために努力をしていただきたいということを私の方からは要望をしておきたいと思います。このことについてはこれ以上申し上げることはないわけです。  そこで、先ほど松沢委員からの質問もありましたが、質の違った両事業団を、林参考人の御意見であれば、これは畑作であるということとそれから両方とも輸入を共通にしているというようなお話がございましたが、そういうことは確かにありますけれども、一方においては北海道と鹿児島、沖繩、一方は東北、北関東それから山陰、九州、四国というように相当広い地域にわたっているし、砂糖の方は三割程度が自給で、逆に養蚕は三割程度のものを輸入する、そういうようなことになっていて、およそ質の違ったものであり、同時に職場も、砂糖の方は十八カ所ですか、そういうような職場があり、養蚕は三カ所、こういうふうになっていますね。そういうことでいろいろ質の違い、あるいは働き場所の違ったものを統合しなければならない、こういうようなことは、その利用者から出たものであるのか、事業団が発議をしたものであるのか、これはどういうところから発議をされてそういうことになったのか、ちょっとその経過を知らしていただきたい。
  37. 松元威雄

    松元参考人 御指摘のとおり両事業団それぞれ従来その役割りを果たしてまいってきたわけでございまして、その役割りは今後とも重要であるわけでございます。したがいまして、発議というお言葉がございましたが、両事業団はそれまでちゃんとやってまいったわけでございまして、もちろんこれまでの行政改革の過程で問題にされたことはございましたが、それにも対応してまいりましたし、現在に至っている、こういう経緯があるわけでございます。そこで、政府全体の行政改革という大命題がございまして、その一環として特殊法人整理合理化を進めるという観点から今回の統合に至ったという経緯でございます。
  38. 岡安誠

    岡安参考人 松元参考人の御意見と同じでございます。
  39. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 両方の労働組合はこれについて、自分たちの意に反するというような気持ちをお持ちになっておられましたが、これは行政改革一環として考える場合に一体どれだけのメリットがあるかというと、およそ役員が三人減るぐらいのものでしょう、実際の話が。財政的にもそう大きなそれはないはずだし、むしろ条件を整えなければならない場合においては、これはもう去年の事業団あるいは公団の統合によって結果が出ている。むしろ補助金などはふえているような結果にもなっているわけであって、利用者からして見ればはなはだ不便なことになるわけですね、当然果たす機能が違っているのですから。だから、今後こういうことについては、これはここでの議論ではありませんけれども、私の意見としては余りいい方向じゃない、こういうことだけは申し上げておきます。これは私の意見です。  それから次の問題は、かつて私どもは機械開発公団から農用地開発公団の審議をする際にも申し上げたわけですが、これはそれぞれの経過があるわけでありますからみんな同じ形じゃありませんが、できるだけ内部の登用というものをしてもらいたいと思うのですね。いわゆる天下りというものについては極力避けてもらいたいと思う。そうでないと士気がふるわないのですね。どうしても天下りの方々はかつての役所でかなりの地位を持ち、それぞれのあれをもらい、また再び今度はそこへ来てやるのかということで、どうも本人の意思はそうじゃありませんが世間の評判は悪い。  だから内部登用ということについては、先ほど組合からの意見が共通のものとしてありましたが、これはぜひひとつ進んで採用してもらいたいと思いますけれども、両理事長、次の機関にぜひ申し送ってもらいたいと思うけれども、その点はどうだろうか。
  40. 松元威雄

    松元参考人 天下りとか出向という言葉にとらわれるわけではございませんが、ちょっと私としてはひっかかる面がございます。やはり人事の基本は業務を適確かつ円滑に遂行するという観点から、その人の学識、経験、能力等を考慮いたしまして、それで適材を適所に配置するというのが基本であろうかと思うわけでございます。しかし、そこでその人材というのは内外を通じて見るのが基本だろうと私は思いますが、いろいろ内部の優秀な人材があった場合、それの意向も配慮しなければならぬということも事実でございますし、そういう基本的観点から実態を見ながら人事は対処するようにしてまいりたい、こう存ずるわけでございます。
  41. 岡安誠

    岡安参考人 いま松元参考人がお話しになりましたとおり、われわれは仕事を適確にかつ円滑に行うために必要な人員を確保し、それぞれ適材適所につけるということでいままで人事をやってきたわけでございます。したがって、従来も当然ながら内部登用を私どもはやってまいっております。  ただ、事業団設立いたしまして十五年余りでございます。その間におきましては、仕事内容から民間からも御協力を得なければならないこともございまして、民間から多数の出向者を受け入れた時期もございます。しかし、現在は民間からの出向者は全部いなくなっております。また官庁方面からもそれぞれのエキスパートに来ていただいて仕事を手伝ってもらったというような時期、それぞれございます。しかし私どもは、プロパーの職員がそれぞれ経験を経ましてしかるべき地位につき得る時期になりました場合には、それぞれポストについていただきまして、仕事の円滑な実施を従来もしてまいりましたので、今後もそういうことは変わることはないというふうに考えております。
  42. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 蚕糸の方は出資がありますね。それから糖価の方は補助で来ているというこの違いというものは、これが一緒になった場合において、先ほど岡安理事長のお話だと経理を分離するというようなお話がございましたが、ずっとこれは将来もそういう方向で行かれるのか。それとも一緒になったのだから何とかこれをしようとするのか。その辺はどうですか。
  43. 岡安誠

    岡安参考人 これはいま御審議いただいております蚕糸砂糖類価格安定事業団法案の中の三十一条に「区分経理」ということがはっきり出ておりまして、私ども砂糖関係仕事は一括して、これは他と分離して区分経理をするということで法律上決められるということになりますし、また三十七条におきましては、従来からそうでございましたけれども、糖価安定資金は砂糖の経理の中でもまた特別に区分をいたしまして経理をするということになっておりますので、従来と同じように、ほかと混淆いたすというようなことはないものというふうに考えております。
  44. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは、そうだとするとますますこの二つを一緒にするという意味が小さくなるのです、実際の話は。看板を一つにし、理事長を一人にし、相互の窓口を一つにするぐらいのメリットしかなくなってくる。それだけに農林水産省が、行政監理委員会ですか、行革の中のいけにえにどうもこの二つのものをしたのじゃないか、こういう感じを持つけれども、これは労働組合御両氏どうですか。
  45. 羽田有輝

    羽田参考人 全く先生が言われるとおりだと思います。メリットという面、私も先ほどの冒頭陳述で申したとおり、本当に木に竹を接ぐような統合ではないか、そのように考えております。
  46. 芝田顕

    芝田参考人 私どもも先ほどの御意見で申し上げましたとおり、いまなお若干納得できない点がございます。
  47. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまお話があったように、やむを得ざるものとしてこれは受けたという形になって、法案もかなり無理をした個所が各所に見受けられますね。この法案の中には随所に見受けられる。  そういう中で、一体この養蚕業の将来というものはどうなんだろうというのが非常に心配なわけですね。砂糖については最近は非常に使用量が減ったということになっているけれども、それはそれなりに理屈があるわけですけれども、養蚕の将来はどうだろうかということを考えると、やはり日本の伝統的な、文化的な、そして民族的な固有の産業であるという立場からこれを何としても守らなければならないということから、これからも養蚕の問題については官民一体となって努力をしていきたい、こういう考え方を私は持っている。したがって、これは理事長の私見という形でもいいですが、養蚕業に対するあり得べき方向について一言聞かしてもらいたいと思う。
  48. 松元威雄

    松元参考人 先生も御承知のとおりでございますが、当事業団は、繭糸価格安定制度実施機関でございますから、政策にわたることはなかなか云々しがたいシチュエーションにあるわけでございます。それであるいは私見とおっしゃったのかも存じませんが、私は、現在事業団を預かる者といたしまして、いわば事業団運営にいまの蚕糸業をめぐるいろいろなむずかしい問題が象徴されているわけでございます。端的に申しますと、現在十四万八千俵に上る在庫を抱えているわけでございます。したがいまして、この処分の見込み等をめぐりまして蚕糸業の将来に対していろいろな危倶が持たれているということも事実でございます。  そこで、この在庫がいろいろ云々されるわけでございますが、やはり在庫を抱えるに至ったにはそれなりの理由があるわけでございまして、事業団の任務は、過剰な場合には過剰のものをたな上げするというのが私どもの任務でございますから、ある意味ではこの事業団機能を発揮した結果だ、そうも言えるわけでございます。しかしながら、このままに放任しておきますれば、これが市場を圧迫いたしますし、さらに当事業団といたしましても将来の財政の不健全化の原因でございますから何とかしなければならぬ、関係者も重大なる関心を持っているわけでございます。ただし、この処分ということ、私これもちょっとひっかかるのでございますが、ただ処分しさえすればいいというものではございませんで、むしろ事業団在庫がさばけるような環境条件を整備していく。無理して出すのではなくて自然と出ていくというようにすることが必要だろう、こう思います。  しからば、その条件整備というのは何かということでございますが、結局は需給のバランスを回復させるということでございます。需給バランスということは、要件は三つございまして、需要、それから供給のうち国内生産輸入、三つがあるわけでございまして、この三者の相関連になってくるわけでございます。現在かなり輸入がございますが、何と申しましてもまだまだ日本の蚕糸業は、生糸に関しましてはまだ七割程度のウエートを占めておりますし、絹関係全体を見ますともう少しウエートが下がると思いますが、そこで、今後の蚕糸業をどういうふうに持っていくか、世界全体の中で日本の蚕糸業が存立するためには、何と申しましても生産性を高めて足腰の強い養蚕経営を育てていかなければならぬと思うわけでございます。そういう生産の方向を求める。  輸入につきましても、これは何と申しましても一元輸入という国際的には多少問題のことをあえていたしていることもございますから、なかなかむずかしいのですが、できる限り輸入調整をしていく。これは生糸だけではございませんで、絹糸、織物を含めまして全体として輸入をできる限りの努力をして調整していく。もちろん長期的な需要振興を図る、そういった需要、国内生産、それから輸入、三者の相関連の中で事業団在庫が自然に出ていくような環境条件を整備していくということが必要であろう、こう考えている次第でございます。
  49. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に林参考人にお伺いをしますが、先ほどから両事業団の合併に関しては、理事長のお答えと労働組合委員長のお答えとの間にはかなり距離があるようでございます。しかしながら、一緒にするということに対して労働条件をできるだけ統一をして努力をしていこうということも組合の方々は言っていらっしゃるし、それもまた理事者は引き継いでいこう、こういうふうにおっしゃっているわけですが、やはりメリットというところからいけば私はそうないと思いますけれども、先ほど松沢委員にお答えになりましたが、もう時間がありませんので簡単で結構でございますが、一言お答えをいただきたいと思います。
  50. 林修三

    林参考人 いま先生の御質問でございますが、先ほど松沢先生にもお答えいたしましたとおりに、行政改革というのは、細部の議論をいたしますと非常にむずかしい問題をそれぞれ含んでおるわけでございます。やはりある程度マクロ的な議論で議論してまいりませんと、なかなか行政改革の実現というのはむずかしいものでございます。したがいまして、あるいは公務員の定数の問題にいたしましても、あるいは機構の問題にいたしましても、さらには特殊法人の問題にいたしましても、ある程度全体の財政経済状況等に照らしての総論的な議論がまず必要なんだろうと思います。総論的な議論に基づいて、より簡素、効率的な行政運営をやっていくというような観点でどういう問題を取り上げるかということが、行政改革を実現する第一歩だろうと思います。  それで、五十五年改革ではその中心点に特殊法人統廃合という問題が取り上げられておるわけで、これは特殊法人の数が多いか少ないかというのはいろいろ観点があろうと思います。あろうと思いますが、やはり昭和三十年代あるいは四十年代において特殊法人というものが非常にふえたことは事実でございます。したがいまして、これは統廃合できるものはできるだけ統廃合していこうという方針は、これは私は、方針としてはやはり一つの方向だろうと思うのでございます。  これをいかに実現するかということになりますと、個々的に当たると、どの特殊法人に当たりましてもそれぞれの存在理由を皆持っておるわけでございますから、なかなかむずかしいわけでございますが、その中で、やはり若干の共通点でも持っており、若干の統廃合によるメリットのあるものについては、この際ある程度の、若干のがまんをしていただいてもやることが、行政改革を成功させるゆえんじゃないかというような気がいたします。  農林水産省においてこの二つ事業団統廃合を選ばれたのも、やはりそういうような見地からだろうと思うのでございまして、個々的な部面に当たればいろいろな問題点があることは、先生御指摘のとおりでございますが、やはりこの際大きな意味の行革の成功のためには、これが実現することが全体の行革の成功のためにも必要じゃないか、私そう思うわけでございます。
  51. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうもありがとうございました。
  52. 田邉國男

    田邊委員長 武田一夫君。
  53. 武田一夫

    ○武田委員 きょうは大変お忙しいところを参考人の皆さん方には御苦労さまでございます。二十分の持ち時間でございますので簡潔にひとつお答えいただければ幸いだと思います。  まず最初に林参考人にお尋ねいたしますが、今回行われる行政改革というのは、先ほども参考人の方の話の中にもございましたが、行政機構、特に特殊法人全体を見直し、改善すべきという、そういうことよりは、単純に各省庁別に一つないし二つ統合するのだという数合わせによって世間の眼を欺くような行政改革ではないか、そういう意見もございまして、果たしてこれで本当の行政改革と言えるものかという御意見があるようでございますが、このことにつきまして、林参考人のお考えをまずお尋ねしておきたいと思うのです。
  54. 林修三

    林参考人 いまの武田先生の御質問でございますが、この昭和五十五年行政改革は、先ほど申しましたように特殊法人の問題が主として取り上げられたわけでございます。政府の当時の方針といたしまして、その前に定員の年次的な計画による削減計画もできております。それから別に、地方機構の問題につきましては地方支分部局の若干の整理統廃合ということも計画されておりましたので、五十四年の十二月の閣議では特殊法人の問題が中心に取り上げられたのだと思うわけでございます。  特殊法人につきましては世間にもいろいろな議論があるわけでございますが、特殊法人昭和三十年代から四十年代にかけまして非常にふえたのには、やはりふえただけの理由があったと私は思います。経済の高度成長というような時期において、行政分野が、あるいは公的、公共的な部面で担当すべき分野が非常に拡大してまいりました。それを政府なり国自身がやるのがいいか、あるいはより民間の創意工夫的な、あるいは民間的な事業運営考えを取り入れていわゆる特殊法人、公的なあるいは公共的な事業運営確保する意味においては純然たる民間機関でもそこに問題がございますので、公的な性格を持っている特殊法人にして、しかもそこに民間的な効率的、能率的な事業運営を取り入れる、そういうようなことで特殊法人がいろいろできてきたのだと思います。  これは、できたときにはもちろんそれぞれの必要性もあり、存在理由を持っておるわけでございますが、全体として見てみますと、特殊法人の数が相当ふえた。この百幾つかに上る特殊法人の数が多いのか少ないのか、これはいろいろの見方のあることはあるだろうと思いますが、一概に多過ぎるとも言えませんし、また、多過ぎるという議論もあるわけでございます。しかし、いずれにいたしましてもそれは相当の数に上りますので、しかも特殊法人運営については、ものによってはいろいろの世間的な議論を招いたものもあるわけでございます。これは事実でございます。そういうことを受けまして、やはり特殊法人全体のあり方の見直しが必要であろうというようなことで、この五十五年以降の行政改革では大きな項目に取り上げられたのだと思うわけでございます。  その際に、統廃合する方向として、個別的に法人を取り上げるというような問題ももちろん必要になるわけでございますが、同時に、そういうような相当大幅な改革を成功させる場合においては、やはり各省庁間のバランスというようなことも実際問題として私は必要だと思うのであります。そういうようなことから、結局、この五十五年改革におきましては、それぞれ特殊法人統廃合できるものを各省庁に自発的に選ばせるというような方針がとられたのだろうと私は考えております。  それで、そういう行き方については、いま先生のおっしゃったような御批判もあるかもしれませんが、従来の行政改革経緯から申しますと、そういう方法がわりあい行政改革をスムーズに進行する上においては一つの要件かと思います。したがいまして、こういう方法がとられたこともある程度やむを得ないことだろうという気が私はするわけでございます。そういう方針のもとに、農林水産省でこの事業団統合を選んだというようなことであろうと思うのでございます。  単なる数合わせとおっしゃれば、そういう面がないでもないかもわかりませんけれども、やはり特殊法人全体としては、マクロ的に見れば若干の統廃合の必要はあるわけでございまして、その中でどういうものを選ぶかということになりますと、これは各省庁に選ばせる以外に方法がございません。農林水産省としてはこれを選んだというようなことでございまして、やはり両事業団の間には、先ほど申しましたような若干の共通点もあるわけでございます。それから統合のメリットも若干ながらもあるわけで、これを選ばれたのだろう、私はそう考えておるわけでございます。
  55. 武田一夫

    ○武田委員 次に松元岡安参考人にお尋ねいたします。  これは、一番小さい二つ事業団がねらわれたのじゃないかと言う人がいるわけでございますが、この二つが一緒になりまして、それでは経費節減というのは果たして具体的に年間どのくらい削減されるかという問題、それから事務の簡素化あるいは効率化ということがその一つ統合理由にも入っているようでありますが、果たしてこの事務が効率的でなかったのかどうか、仕事の面のそういうものについていかにお考えであるか。あるいは簡素化、効率化ということをこれから努力していくというときに、その反動として、今度は実際の仕事をなさる上での事業面に支障を来さないかという心配、この両面があるわけでありますが、その点について両参考人からお答えいただきたいと思います。
  56. 松元威雄

    松元参考人 経費節減ということでございますが、当面、直接的には役員が三名減るというところの金額でございますから、私もただいま細かな数字を覚えておりませんが、そうさしたる金額ではないと存じます。それ以外、職員につきましては必要な人員を確保いたしておりますから、減員は役員の減ということでございますから、その直接の経費を算定しますればそれほど大きくはございませんが、やはりこれは今後の長期的な展望で考えなければならぬ問題かと存ずるわけでございます。たとえば、今後の業務によってあるいは増員を必要とする場合も出てくるかもしれぬ、そういう場合、お話しにございました共通管理部門の合理化によって浮かぶ人員で対応するということも可能でございますし、少し長い目で見て考えなければならぬというふうに考えるわけでございます。  そこで、先ほどございましたが、効率化ということと、一方逆に、余り効率化ばかり言うと従来の業務がちゃんとできるかという不安も出るということもございましたが、確かにそういう問題ございますので、まず何と申しましても、従来の業務が適確に行われることが基本でございます。適確に行われなければならぬ、そしてその上で効率的に行われなければならないというふうに考えて、そういうことで運営しなければいけないというふうに考えるわけでございます。
  57. 岡安誠

    岡安参考人 両事業団統合によるメリット、特にそういう点につきましては長期的に見なければならないという松元理事長の御意見のとおりでございます。  ただ、私ども蚕糸事業団との違いは、私ども経費は、役員に関する経費職員に関する経費、すべて含めまして国からの補助金によっているわけでございます。したがって、役員の減その他につきましては直接的に国からの補助金の減につながる、節約につながるということでございます。  それからもう一点、私ども、先ほど申し上げましたとおり、業界の便ということを考えまして全国に事務所、出張所を多数擁しておりますが、それはきわめて効率的に行うように従来からも心がけておりましたし、今後もその心がけは変えないつもりでございます。したがって、直ちに効率化を図るために人員の余剰が出るということではございませんが、今後いろいろ努力をいたしまして、できるだけ一般の御要望にこたえるように人員、経費の節約には心がけるということではなかろうかというふうに思っております。
  58. 武田一夫

    ○武田委員 羽田芝田参考人にお尋ねしますが、少ない人間で効率的な、効果的な仕事を一生懸命なさっているという先ほど御発言もございました。いまも参考人のお話の中にありましたように、従来の業務が適確に行われることがまず第一であるということは私も当然のことだと思いますが、今回のこうした統合によって、今後長期的に見まして間違いなくそういう方向でいくものかどうかという心配も私はしている一人であります。そうした危惧の念というのはないのか、あるいはあるのか。あるのならばいかにその点を是正しなければならないかということについて御両人の御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。
  59. 羽田有輝

    羽田参考人 労働組合としましては毎年定員要求をしておりまして、蚕糸事業団一元輸入の発足以来大分仕事がふえてきまして、そういう関係で若干人数がふえましたけれども、その後全然ふえてきていないということで、組合員の労働過重になりつつある現状にあります。こういうことで私どもことしの三月にも、春闘の要求書に定員要求を当局にしております。  それで、統合による面ですけれども、私どもが現在の仕事をこのまま引き継いでやるということではありますから、当然いままでの状態がある程度続くということが考えられますので、私たち労働組合考えるに、いまでも人数は足らないと思っていますし、組合員の労働過重になっている面がありますので、統合してもそのような状況は変わらないのではないかと懸念しているところです。
  60. 芝田顕

    芝田参考人 機構の縮小というようなことにつながるおそれがなければ、現在の人員で効率的な運営は可能であろうと考えております。
  61. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、最後に一つだけ松元岡安参考人にお尋ねします。  この二つ事業団はいろいろと問題を抱えているわけでありますが、一つ松元参考人にお尋ねしますが、在庫の問題がいろいろと取りざたされているわけです。それの処分が今後非常に大きな問題になってくるということで、いわゆる需要対策の問題等々含めまして、事業団として今後どういう方向にこの対策を持っていかなければならないかということについてのお考え、そういうものをひとつお聞かせ願いたいと思います。  それから、岡安参考人には、精糖業界の方ではたびたび構造改善ということを言われておりますが、思うように進んでいないということも言われておるわけであります。こうした問題の解決のためには今後いかなる方策といいますか、対応をしなければならないというふうにお考えか。おのおのお考えをお聞かせ願いたい、こう思います。
  62. 松元威雄

    松元参考人 蚕糸事業団繭糸価格安定制度実施機関でございます。したがいまして、決められたところに従って業務を適確かつ円滑に行うということが本務でございますから、政策にわたることを直接云々はしがたい立場にあるわけでございますが、現在の問題といたしますと、事業団が過剰在庫を抱えているということが蚕糸業界の問題の象徴になっているわけでございます。そこでこの在庫をどのように処理していくか。私、先ほど申し上げましたが、処理という言葉を使うとむしろ問題があるので、そうじゃなくて、事業団在庫が無理なく出ていけるようにはどうしたらいいか、そういう前提条件を整備する。これはもちろん政策にわたることでございますが、そういうことにつきまして役所にも意見を要望もいたしますし、話し合いもいたすわけでございますが、やはりこれには需給バランスを回復させるしか方法がない。長期的に見ますれば需要を伸ばしていくという方向、これは当然努力として継続しなければならぬ。ただし、これもなかなか即効の効果はそう期待しにくいわけでございますが、方向はそうした努力を続けなければならぬ。  それからまた生産につきましては、いわば低いコストで生産ができる、そういった経営を育成していかなければならない。さらに輸入につきましては、これはもちろん二国間交渉等で政府において最大の努力を払っていただいているわけでございますが、さらに撚糸、織物を含めまして最大限の努力を輸入調整について払っていただくようにお願いいたしたい。そういう三者がうまくかみ合いまして在庫が無理なく出ていける、そういう条件を整備していただきたいということで政府にいろいろ要望いたしているわけでございますが、そういう方向で問題の解決を図っていかなければならぬというふうに考えております。
  63. 岡安誠

    岡安参考人 砂糖業界の構造改善と申しますと、これは輸入砂糖の精製業者の構造改善の問題でございますが、これはかつてこの委員会で御審議いただきました豪州糖問題に絡みます特例法の制定のときから、精製糖業界の設備過剰というものは問題であったわけでございます。この問題は業界の方でもまた行政当局でもいろいろ御努力をいただきまして一内部で検討を重ねていることでございますが、私の私見でございますけれども、最近におきます砂糖業界は大きく変化をいたしております。  これは三つの点で変化いたしておりますが、一つは甘味類全般に対する消費減退、いわゆる甘味離れからする消費の減退の問題、これが最近大きく出てきたということ、それから国内産の砂糖生産が非常にふえてまいりまして、従来予想しておりましたテンポよりも速いテンポで増産が進んでいるということ、第三番目は砂糖にかわる代替甘味物といたしましての異性化糖の進出が、これも最近予想以上に急テンポに進んでいるということ、そういう三つの条件が重なりまして、最近におきます輸入砂糖の精製業界は設備の過剰に苦しんでいるというのが現状であろうというふうに思います。  そこで、新しい事態に対処して先ほどお話しの構造改善はどうあるべきかということ、これは業界を挙げてもう一回検討し直すべきである、その検討の結論が出たらしかるべく早く実行すべきであるというふうに思いますが、いろいろむずかしい問題もあるようでございます。これは官民を挙げて取り組んで、できるだけ早く解決をしていただきたいというのが私どもの願いでございます。
  64. 武田一夫

    ○武田委員 時間があと一分ありますが、終わらしていただきます。大変ありがとうございました。
  65. 田邉國男

    田邉委員長 神田厚君。
  66. 神田厚

    ○神田委員 参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。限られた時間でありますので皆さん全員に御質問できるかどうかわかりませんが、ひとつよろしくお願いを申し上げます。  最初に林参考人にお尋ねを申し上げます。林先生は行政監理委員という形で大平行革の具現のためにいろいろ御努力をいただいておりましたが、この二つ事業団統合したわけでありますが、この新しい事業団の発足というものが、果たしてそれなりの行政改革としての実利というものをきちんと求めることができるのかどうか、そういうふうな点はいかがでございますか。
  67. 林修三

    林参考人 これは先ほども申し上げましたけれども、この二つ事業団事業内容についてある程度の共通点もあるわけでございます。したがいまして、この二つ統合することによって役員数の若干の減少もできますし、それから機構なんかについても、管理部門等については若干の簡素化もできるだろうと思います。それで人員は、職員はそのまま引き継ぐとすれば、そういう管理部門で減少した分を事業部門に配置するというようなこともできるのではないかと、私はそういう点に余り専門的な知識はございませんけれども、そういうような気もいたします。  そういうような点から申しまして、やはりこの両事業団統合することによる利益は、経費的にはそれほど大きなものではないかもわかりませんけれども、長い目で見ればある程度の実利と申しますか、そういうものが期待できるのじゃないか、かように考えております。
  68. 神田厚

    ○神田委員 個々の事業団がそれぞれ特色を持って運営をされてきたわけでありますが、この二つ統合されましてその中身の面で、仕事内容の面で果たしてそれなりの効果を持ち得るというお考えでございましょうか。
  69. 林修三

    林参考人 私は実は個々の事業団運営の実態は余り存じないものでございますから、いま先生の御質問のようなことについて的確なお答えはちょっとしにくいのでございますが、これは今後統合した暁において、この事業団を引き受けられる方の方針によっては、まさにいま申しましたような若干の経費節減あるいは役員数の減少あるいは機構簡素化というふうなものを踏まえてその実績を上げることはやはりできるのじゃないか、かように考えております。
  70. 神田厚

    ○神田委員 役員問題等も、二つ事業団統合して、そして機能的に効率的にこれを運営するということになりますれば、本来役員数の大幅な削減とか思い切った機構の改革とかというものが出されてくるわけでありますが、今回出されてきております内容を見ますと、役員もほとんど現状、これをわずかしか減らさないというような形でありますと、どうもやっておりますことが、こういう形に事業団を新しく変えたけれども、しかしそれぞれの前の古い事業団経営機構そのもので進みそうな感じがする。こういうところに、まだ何か形だけ、器だけを変える、そういう行政改革の非常にあいまいな点があるというふうに考えるのでありますが、その辺、思い切った役員等の削減ということは可能なんでありましょうか、その辺は先生いかがでございますか。
  71. 林修三

    林参考人 私もなかなか的確には申し上げられないのでございますが、いままでそれぞれ事業をやっておりました特殊法人統合する場合におきましては、やはりいろいろな経過的な問題もございます。したがいまして、いま先生のおっしゃるように、新しく白地に物をかくのとは大分違うわけでございますから、やはりいままでのいきさつは尊重しなければならないだろうと思います。したがいまして、いま先生のおっしゃったようにどうも思い切った改革ができてないじゃないかというような御批判もあるいは出るのかもわかりません。  過去においてもこういうように特殊法人統合した例は幾つかございますけれども、やはり最初の段階においては、いままでのそれぞれの特殊法人機構なりあるいはいろいろな問題をある程度そのまま引き継いでいくことはやむを得ないだろうと思います。それで長い経過のうちにおいていろいろ統合の妙を発揮していく。その後新しく引き受けられた方が事業運営に当たる過程において、統合したことによる妙味はそういう方の経営方針によって発揮できるのじゃないか、そういうときに将来どういうふうな形になるかは、少し長い目で見る必要があるのじゃないか、かように考えます。
  72. 神田厚

    ○神田委員 松元参考人にお尋ねをいたしますが、これは事業団が新しく発足しまして、旧来の事業団と変わって、統合されたことによってのメリットといいますか、そういうものはどこにあるというふうにお考えでございますか。
  73. 松元威雄

    松元参考人 新事業団になりましても、両事業団が従来行った業務はそのまま行うわけでございますし、それに必要な経理区分もいたすわけでございますから、そういう意味では基本的には従来を引き継がれる。しかしそれを執行するいわば執行機関といたしまして、役員数が四分の一減員になるということもございますし、それからまた共通管理部門の簡素化ということもあるわけでございます。さらにもっと長期に見ますれば、その組織人員をいろいろ活用いたしまして、より効率的な運営を期待し得るわけでございますから、その辺を、いわばある程度長期的な展望のもとにメリットを考えなければならぬというふうに考えるわけでございます。
  74. 神田厚

    ○神田委員 新しくなっても決してそれ相応の大変画期的なメリットもないということで、どうも私どもはこの両事業団統合については非常に疑問を持っているわけでございます。たとえばそれぞれの違う性格の事業団が、それぞれ違う仕事をしているものが一つ仕事をするということになりますと、蚕糸関係にしますれば、特に財源等の問題には、繭糸価格安定法改正で毎年度利益の何割かを振興事業助成するようにしている。五十四年度には九億九千八百万円、五十五年度には二十億四千万円計上されておりますけれども、もしそういうふうなことで今回同じような事業団にするということになりますれば、たとえば砂糖勘定糖価安定事業団、そちらの方の関係が非常に経営が悪くなってきたというときに、蚕糸の方から資金をつぎ込むというような形をとっていくのかどうか。その辺のところの基本的な考え方というのはどういうふうになっているのでしょうか。
  75. 松元威雄

    松元参考人 新事業団は基本的には両事業団の従来の業務を引き継ぐということで、しかもそれを、それぞれの経理を区分して行うということに法律もなっておるわけでございます。  御指摘の蚕糸業振興資金、これは蚕糸の勘定二つございまして、異常変動に関する勘定中間安定等に関する勘定二つございますが、その中間安定等に関する勘定で利益を生じた場合に、その八割以内において蚕糸業振興資金に積み立てまして蚕糸業振興のために使う、こういう仕組みでございます。特に原資となります中間安定等勘定出資には民間出資も入っておるわけでありますから、やはりそれは蚕糸業振興に使うのだ、関係者もそう理解しております。そこで法律上もそのように規定して担保いたしておるわけで、他に流用するということはないわけでございます。
  76. 神田厚

    ○神田委員 次に、岡安参考人にお尋ねを申し上げます。  先ほど同じように御質問を申し上げましたけれども糖価安定事業団としては、この蚕糸事業団との統合ということについてどういうふうなメリットがあるとお考えでございますか。
  77. 岡安誠

    岡安参考人 これは新しくできます蚕糸砂糖類価格安定事業団が、従来日本蚕糸事業団糖価安定事業団がやっておりました仕事をそのまま引き継いで行うということになっておりますので、問題は、メリットがあるとするならば、事業は同じことをやりますけれども、その事業を実施する機関、これをより簡素化、合理化して効率的に行うということではなかろうかと思っております。  先ほどもお答えいたしておりますように、短期的には役員若干名を中心とします経費節減にすぎませんけれども、長期的には管理部門を中心といたしましてより合理化が進み得るものというふうに考えております。
  78. 神田厚

    ○神田委員 さらに内容の問題に関しましては、効率的な業務運営、それを図るという意味では内部組織の再編成等いろいろあると思いますが、そういう中で、たとえば輸入糖価格調整国内産糖価格支持業務、この物流との関係で非常に悪影響を与えるのではないかというような指摘もありますし、瞬間タッチ方式で行われていることから、いわゆる事務所の配置の問題や、そういう全体的な問題はどういうふうにお考えになっておられるのでありましょうか。
  79. 岡安誠

    岡安参考人 先ほど申しましたように、輸入糖価格調整並びに国内産糖価格支持の方法と申しますか、現在の糖安法のシステムはそのまま継続されるというふうに新しい事業団法でもなっておりますので、それを実施いたしますための機構は、現状においてはきわめて効率的にできているというふうに私どもは思っております。したがって、事業団が合併いたしましても、砂糖関係の実施機構は直ちには大きな変更はないというふうに考えております。
  80. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、経営改善その他いろいろな機構の問題については、どちらの事業団機構は余りいじらない、現在のままの体制でやっていくという形で、ただ表面的にこれは合わせただけだというふうに考えてよろしゅうございますか。蚕糸事業団の方では現状と相当変わった形の機構になるようなことになるでありましょうか。
  81. 松元威雄

    松元参考人 機構の中に、直接業務を担当します業務関係機構組織と、それから総務でございますとか経理でございますとか、ある意味の共通性のある部門が両方にあるわけでございまして、したがって業務関係は、蚕糸もそうでございますし、糖価もそうございますが、その組織は従来どおり。問題は共通管理部門をどうするか、そういった場合、総務部二本というわけにまいりませんから、そういうところは一本に合理化していく、こういうかつごうで考えておるわけでございます。
  82. 神田厚

    ○神田委員 たとえばそうすると、事業量としては機構の中で何割くらいが共通的な、非常に大ざっぱな質問で恐縮でございますが、共通管理のような状況というのは全体のどのくらいのパーセンテージでそれが整理をされるのでありますか。
  83. 松元威雄

    松元参考人 ちょっと何割と言われますと、蚕糸の場合で申しますと、業務部という部がございますし、別途総務、経理という部があるわけでございますし、逆に糖価の方は業務部が二部ございまして、経理関係は総務に入っておるというふうに違うわけでございますから、ちょっと計数で何割と——強いて申しますれば、それに従事している人の数で案分して申し上げるのかもしれませんが、ちょっといま私も的確に数字をお答えしかねるので、あるいは必要でございますれば後で申し上げます。
  84. 神田厚

    ○神田委員 いずれにしろ、お答えの感触からするとそんなに大幅な機構の改革も、それから共通の管理、お互いに経営をしていく、管理していく部門というのもまだそんなに多くないというふうな印象を持っておりまして、どうも二つ事業団を無理にくっつけたような感じで、効率が果たしてうまく発揮できるのかどうか非常に疑問であります。  最後に、働く勤労者の立場として、二つ事業団の執行委員長さんが来られておりますけれども、代表いたしまして蚕糸事業団羽田委員長さんに、二つ統合した事業団、新しくできる事業団の今後の問題について、労働組合立場からどういう点が一番心配なのか、どういう点をきちんと、一つの見通しの上で歯どめをかけてほしいのか、この辺はいかがでございますか。
  85. 羽田有輝

    羽田参考人 私たち労働組合は、先ほど申しましたとおり、基本的にはこの統合に反対してきたわけですけれども、現在この法案提出の状況になってきましたので、その最低限の条件としまして、完全継続雇用、それと現在の労働条件を引き継ぐ、それから天下り出向人事をこの際やらない、こういう要望を持っておるわけです。  不安点と申しますと、現在の統合される両事業団職員労働条件が違いますものですから、この辺を要するに足して二で割るというのか、低い方に合わせるというのか、労働者犠牲を強いるような統合がされるのではないか、そういう危惧を持っております。それがまず一つでございます。  それと、先ほどお話があったように、仕事も別々にそのまま引き継ぐということですから、私ども考えまするに余りメリットのない統合ということがありますので、労働組合は自分たちの労働条件を向上することだけが目的じゃないと思いますし、あくまでも私たちは政府関係特殊法人に勤務する者ですから、国民のニーズによる、そういうものにこたえなければならない使命もあると思いますし、まだまだ私たち勉強不足でございますけれども、行く行くは、蚕糸事業団なり統合される事業団業界に対してどうあるべきかというようなことも事業団当局に提言してまいりたい、そのためには最低限労働条件については譲れぬものがある、こういうふうに思っております。
  86. 神田厚

    ○神田委員 終わります。ありがとうございました。
  87. 田邉國男

    田邉委員長 寺前巖君。
  88. 寺前巖

    ○寺前委員 いま労働条件の問題が出ましたのでちょっと確認をさしていただきたいと思うのですが、主な労働条件の違いというのはどういうふうに存在しているのか、調査をされていると思うのですが、事業団の方からちょっと聞かしていただけますか。
  89. 松元威雄

    松元参考人 多少細かい問題はあろうと思いますが、一番大きな問題といたしますと、いわば給与体系が違う。つまり給与水準特殊法人全部共通であります、平均と申しましょうか。いろいろ体系がございまして、たとえば五等級、四等級、こういう体系がございます。その体系のつくり方が違うというのが一番大きな相違だと思っておりますし、これはそれぞれの職員の給与規程が両事業ともございまして、これはもちろん主務官庁の認可を得るわけでございますが、その給与体系の違い、これが一番基本だと思います。あとはそれぞれ内部で、たとえば私どもの場合でございますと労使間の交渉で決まる、そういう事項がございますのですが、一番基本はそういうものだと思っております。
  90. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、いま労働組合の側から提起されました、低い水準で統一するのか高い水準で統一するのか不安だという話が出ていますね。これはどういうふうにするのですか。低い水準で合わすといったら、高い人は、全部低い水準だからこれは従来の労働条件より悪くなる。高い水準で合わすというなら、低い人はよくなるのだから、全体として不満は出ないことになると思うのです。だから、従来到達しておったものを下げるということにはならない、全体として一つの統一方向を打ち出すというならば、それは高い水準に体系をつくりかえていくという方向を打ち出していかなければならぬということになると思うのですが、そこはそうはしないのですか。従来のままで別々で行くのだという態度をおとりになるのですか。そこはどうなんですか。
  91. 松元威雄

    松元参考人 この問題は両事業団でいろいろ問題でございますから、私がお答えするのは適当かどうか存じませんが、ちょっと言葉遣いではございませんが、私、先ほど申し上げましたのは、給与水準は同じである、体系が違うと申し上げたわけでございます。平たく申し上げますと、蚕糸事業団の場合はいわば若い人の方はいい、たとえば同じ経歴、同じ年齢の糖価の人に比べて。逆に上の人、つまり入ってから長くなったという上の人は蚕糸事業団の方が悪くて糖価事業団の方がよろしい、そういう差がある。ならせば、もちろん構成が違いますから一律にまいりませんが、抽象的に水準は同じである。開く場合に、いわば蚕糸事業団の場合は下の方がいい、俗に上薄下厚と申しますが。したがって、バランスの問題になるわけでございます。したがって、同じ職員間でもいろいろ言い分があるわけでございまして、その辺をどう調整するか、単純にレベルをぽんと上げるという問題ではないわけでございますから、そこでまた苦心が要るわけでございます。
  92. 寺前巖

    ○寺前委員 苦心が要るだろうということはわかりますよ。わかるけれども、さっき労働組合の人が低い水準に合わすのか高い水準に合わすのかというお話があったから聞いているので、低い水準に持っていくという意図はないのですね。そこはどうなんですか。労働組合の人の提起された問題に、提起の仕方に問題があったのですか。もう一度ちょっと労働組合の側から聞かしてもらいましょうか。
  93. 羽田有輝

    羽田参考人 私ども糖価の方の職員協議会と大分交流してきましたけれども、まだ糖価の方は組合ができたばかりで、組合としての交流は一、二回しかないわけです。まだ全部データがそろっているわけではありませんけれども、全体の水準としまして、年の差のあれがあろうと思いますが、二月くらいのものでは私どもが若干高いのではないかと思います。それとその中でのあれですけれども、確かに私どもの方で、要するに蚕糸の方の組合員の方が糖価さんに比べて高い、そういうことはあります。いわゆる管理職の給与体系については糖価さんの方が逆に高い、そういう傾向にあるのは確かです。  それで、私が言いました給与の低い水準、高い水準の話ですけれども、この給与表は決め方いかんによりましては非常に大きな意味を持つというような考えを持っているわけです。というのは、私たち事業団役員さんとは違いますけれども、退職金の算出基礎にもなりますし、その辺のあれで、要するに労働者が、組合員がやる気の起こるような給与体系にしてもらいたいというのがわれわれの念願でありまして、これが幾ら働いてもやる気がなくなるような、希望がなくなるような給与水準、給与体系、テーブルをつくるようなやり方はおかしい、そのためには最低条件としまして私たちの現在ある労働条件、給与水準、これを最低限守りたい、こういうふうに思っております。
  94. 寺前巖

    ○寺前委員 よくわからないのですけれども、専門的な関係の分野のことですから、意欲を失わさないように、退職金の計算もいろいろあるようですけれども、そういう点は十分保障することに労使間の話し合いをやっていきたい、労働者の不安に対してこたえるという態度で今後の統一に当たって処理をしていくということは言えますね、両事業団理事長さん。
  95. 松元威雄

    松元参考人 先ほど来お話が出ますように、両事業団が少し給与体系が違っているわけでございます。そこで蚕糸事業団の場合で申しますと、給与体系を決めるのは労使間の交渉で決めております。その結果合意に達して現在の給与体系ができ上がり、それを役所の承認を得て実行している、こういうことになるわけでございます。先ほど出ましたが、統合に際して、今後労使間で合意による変更がない限り引き続くことになっておりますから、これから話し合いで組合の方が了承してくれば別でありますけれども、合意がなければいまの給与体系がそのままいってしまう、こういうことに相なるわけでございます。一方糖価は糖価の事情がございますから、いずれ糖価の理事長からお話があると思いますが、そこでどう調整するかが課題になってくる、こういう問題でございます。
  96. 岡安誠

    岡安参考人 実は先生十分御承知と思いますけれども、これは非常にむずかしい問題でございます。と申しますのは、両事業団、先ほど松元理事長もおっしゃいましたとおり給与体系が違いますが、合併に当たりましてこれを一本化をする、これは筋でございます。一本化に当たって両方のいいところだけとればこれは一番いいことになるのですけれども、それでは政府関係機関の給与体系として従来よりもよけいな月給を支払うということになるわけでございます。そうすると、われわれはやはり毎年の人事院勧告等に準じましてそれぞれベースアップの原資等を考えて、それをどういうふうに現在抱えておる職員の構成に応じて割りつけるかということを従来から検討し、行政官庁の認可を得て実施してきたという経緯があるわけでございます。これを一緒にする場合に、先ほど申し上げましたように、現状で比べれば蚕糸の俸給体系で月給をもらった方が高い月給をもらえる人もいるし、またある人は糖価の給与体系によって月給をもらった方がよけい月給をもらえるという人もいるわけでございます。  これをどういうふうにやるか、きわめてむずかしい問題ではございますが、これはいずれ一本化しなければならない問題でもございますし、またこれは当然のことながら労働組合とも相談して、合意をして決定しなければならないという問題でもございます。むずかしい問題ではございますが、私どもよく労働組合とも相談いたしまして、お互いによりよい結果が得られるように努力をいたすということをこの際申し上げるだけでございます。
  97. 寺前巖

    ○寺前委員 意欲を減退させないようにして新しく統一したものがされていくという方向は、十分にひとつ考慮してもらいたいと思います。  それから天下りの批判について労働組合の側から提起をしておられましたが、政府関係者が天下りとしてどういう状況に、それぞれの事業団はあるのですか。現状です。
  98. 松元威雄

    松元参考人 いわゆる天下りということでございますが、それを官庁出身者というふうにとらえてみますと、役員でございますと現状蚕糸事業団の場合は役員は六名おります。そのうち三名が農林水産省出身者でございます。それから二名が養蚕関係の団体の方、製糸関係の団体の方、いわゆる民間の方でございます。もう一名は長年蚕糸事業団職員であった人を登用したのであります。役員はこういう現状にございます。  それから職員につきましては、いわゆる役所出身者というのはたしか部長クラスで五名いたと存じますが、ただしこういう事情も御理解いただきたいのは、もとの出は役所でありましても、長年事業団職員に溶け込んでいる、たとえばすでに十年以上たっている人もおります。そういうのは私どもとしますとやはり職員と見てしかるべきではないかと思うわけでございまして、単に出身だけでは論じられませんが、仮に出身ということを言えばそういう実態でございます。
  99. 岡安誠

    岡安参考人 糖価安定事業団の場合は、まず常勤役員六人おりますが、そのうち一人が民間の精糖会社の経験がおありになる方で、あとの五人は官庁関係の出身でございます。なお、非常勤の役員三名はすべて民間の出身でございます。  職員は現在九十名でございます。そのうち官庁出身者が十人名、それから官庁の出向者、これはもとへ戻るということで、六人でございます。それ以外はプロパー職員で六十六名ということになっております。先ほどちょっと申し上げましたけれども、かつて事業団が発足してから三、四年になる間におきましては、民間から最高十六名ぐらいの出向をお願いいたしまして仕事をしてまいりましたが、漸次事業団職員仕事になれましたので、最近は民間出向者がゼロというようなことになっております。
  100. 寺前巖

    ○寺前委員 林参考人にお伺いをいたしますが、出向なり、いわゆる天下りなりが政府機関の中でも批判になったし、それから社会的にも批判になっています。同時に退職金の問題がこれまた常にその際には話題になります。たとえば今度統一をしたら、一応まず退職金を払って、そして次に同じ人がおなりになるのかどうか、そこは知りませんが、次へまた移っていく。ちょっと資料をいただいて整理をしてみると、蚕糸事業団理事長さんは五十四年の三月に就任されて、この九月で二年になる。給与月額は七十九万五千円だ。退職金をこの九月で計算すると九百四十四万円になる。五十年三月に理事におなりになった方は六十二万五千円の月額の給与で、六年間おられるから千九百五十七万円になる。わずかの間にずいぶんたくさんの退職金をおもらいになる。これがあそこで働いている人で考えてみると、毎月二十五万円の俸給をもらっている人が二十五年勤務しても千二百五十万円にしかならない。毎月の給与水準自身が役員さんとの間にものすごい違いがあるだけではなくて、わずかの年限仕事をされただけでこうやって非常に大きな退職金の違いが生まれてくる、こういう分野を含めてもまた批判が起こっているわけです。これについて、退職金の計算の仕方なり、こういう役員さんの俸給の問題をめぐって林参考人意見を聞かせていただきたいと思います。
  101. 林修三

    林参考人 私の個人的意見を申すのはいろいろ問題がございますので、実は勘弁していただきたいと思うのでございますが、この特殊法人役員の給与とかあるいは退職金について世間でいろいろ御議論があるようでございます。これはまあ従来の決め方が、私自身がそれにタッチしたわけでもございませんから余り大したことは申し上げられないのでございますが、考え方の基本は、特殊法人役員は一定の期間、任期がございます。四年ぐらいが普通でございますが、あるいは三年とか、五年というようなものもあるかもしれません。あるいは二年というものもあるようでございますが、要するに一定の任期をもってその地位に就任するということを基本として計算されていると思うのでございます。  それからもう一つは、やはり特殊法人につきましては、役員は、もちろん官庁出身者も入りますけれども、同時に民間関係者もそこに入ってくる。そういたしますと、民間からの人を迎える場合には、やはり民間のしかるべき会社等の機関の役員の待遇も考えませんと、そういうところに民間の優秀な人を迎えることもできない。そういうような両方の見地で恐らくこの役員の給与は決められていると思います。  それから退職金は、いま申しましたように一般の職員は相当長期間継続して勤務するという前提でございますから、これは一般の公務員の場合と同様に年限に応じて逓増していく、長ければ長いほど有利だという考え方で退職金の規程ができておると思いますが、役員につきましては、先ほど申しましたように一定の期間、二年ないし四年というような期間で在職する。その在職の期間に見合うだけの退職金を出す。これは民間の会社等の役員の退職金というようなものもやはり基準といたしませんと、民間から人を受け入れることもできない。基本的にはそういうようなことで決まっているのだと私は思います。そういうのを役所の出身者にそのまま適用するのが果たしていいのか悪いのかということで従来からいろいろ御議論があるようでございますが、これはどうも同じ役員でございまして、役所の出身者と民間から来た人を分けることも恐らくなかなかむずかしいのだろうと思います。  それから特殊法人なら特殊法人役員としての給与は、どこから来たかということにそうこだわらないで、その役員の地位に応じて決めるというのが本当は筋だろうと私は思います。そういうことで、過去において役人をしていたか、あるいは民間にいたか、役人で退職金を幾らもらったかということは、本当を言うと特殊法人役員の給与なり退職金を決める場合には別問題として考えていい問題じゃないか、私は個人的にはそう考えております。
  102. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、ここで議論するわけでもございませんのでこれでやめますけれども、役所の人が出てきて役員のポストについて、俸給体系はうんと高いし、わずかの間にまた退職金をもらっていくという国民的批判問題は私はやはり非常に大事な問題だと思いますので、これはぜひとも当委員会においても、政府関係者においても検討すべき問題だという意見を申し上げて終わりたいと思います。
  103. 田邉國男

    田邉委員長 以上で各参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  104. 田邉國男

    田邊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  105. 新盛辰雄

    ○新盛委員 昨日の閣議で五十五年度の漁業白書が決定、了承されたようであります。この白書の内容については、すでに各新聞も取り上げておりますように、最近の厳しい漁業の危機的状況の中にあって、魚離れ、消費の伸びが非常にないというようなことを含めたものが出されております。これらに対しまして、大臣、水産物需給の現状を見ましても、また漁業生産体制の現状を見ましても、きわめて厳しい状況になっていることは御承知のとおりです。まず、この白書に対する大臣のお考えを伺いたい。どういう所見を持っておられましょうか。
  106. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 昨日漁業白書で発表いたしましたように、まず、日本人の食生活の中から、魚に対するウエートと申しますかシェアと申しますか、それがぐんとダウンしてきておるということでございます。これは、反面肉類の方の比重が上がってきておる、こういう実情が統計上にあらわれてきておる、これが水産物の価格の低迷というようなことに影響をしてきておる、こういうふうに見ておるわけでございます。したがいまして、その面からは、やはり米と魚といったようなことで、米と同時に魚の需要喚起ということも今後の大きな政策目標の一つとして、農林水産省としては努力をいたしておるところでございます。  漁業をめぐる環境は、二百海里の問題等とも関連いたしまして、外国の規制の強化、入漁料の引き上げ、さらには燃油の高騰等々、どの要素をとってみましても非常に厳しい要素が加わってまいる。また、つくる漁業とは申しながらも、経費もかかり、労力もかかるということで、一方ではコストダウンを図る、経営の近代化ということも講じながらも、なおかつコスト高の要素も無視し得ない。これら両々相まって、水産物の将来に対する困難さというものは、御指摘のようにますます厳しくなってまいろう、こういうふうに見ておるわけでございます。  したがいまして、非常に値が安くなると需要が伸びる、ところが、値が安くなると今度は漁業者の方が非常に経営が困難になってくる、この辺の調節をどううまくとっていくかということでございます。これにはやはり、たくさんとれる魚類の国民の食ぜんに出る回数をどうして多くしていくかといったような問題等も含めまして、食生活の指導というものも強めていかなければならない、こんなふうに考えている次第でございます。
  107. 新盛辰雄

    ○新盛委員 もう大臣も十分理解をしておられるようでありますが、やはり消費者というのは価格を媒介として厳しい選択をするようになっているわけですね。食料支出の中で水産物支出の伸びを見ますと、五十四年は前年対比で二・六%と低くなっておるのです。こういう状況の一番の原因は魚価なんですね。そしてまた安定的供給という側から見て、生産、流通、価格、さらには消費、こういう系列の総合的な漁業構造のあり方についてこれから十分メスを入れなければならなくなったのじゃないかと思うのです。近年の水産物価格動向というのは、産地価格と消費地の価格の間に非常に乖離が生じているのです。こういう状況では、市場の外での流通の形成とか加工食品の増大とか輸入品の増加というのが大きな要因になっていることも事実ですね。  大臣は三時からお出かけになるようですから、詳しいことは後で担当者の方にお聞きするとして、一応総論としてぜひ大臣からお答えいただきたいのですが、五十三年のわが国輸入額は三十億ドルで、世界の貿易額の四分の一ですね。こういう世界第一の輸入国になっている。しかも水産国日本の安定的な生産量、これも相当減ってきて、五十四年は千五十九万トンというふうになってきているわけです。だから輸入の圧力というか、これは後ほど、イカとかマグロとか具体的な問題で議論をしたいと思いますが、どういうふうに抑制をするか。秩序ある輸入、そしてまた海洋における漁場の確保ももちろんのことでしょうが、各国間の強力な漁業外交が必要になってきているのじゃないかと思うのです。そのことできょうもニュージーランドの副総理とお会いになるはずですが、そういうことについて大臣はまずどうお考えになっているか、そこをお聞かせいただきたいと思うのです。
  108. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 農林水産業関係の問題は、いずれも貿易の問題を一つの原因としてもろもろの困難な事態を生むに至っておる、こういうふうに私は認識いたしておるわけでございまして、この前ASEANを回りました際にも、漁業の技術を教えてほしい、漁業を振興させたい、そうしてとった漁獲物は日本に買ってほしい、どこの国に行ってもそういうことを申すわけであります。これはニュージーランド、豪州、太平洋沿岸諸国家、特に最近太平洋上で独立してきております島興国家等においては、いずれもそういう要請が強いわけであります。そういう中で、日本の漁業者を守りながらこの貿易問題を解決していかなければならない、まことにむずかしい情勢があるわけでございます。輸入をしないということになりますと、こちらの漁業者の漁業そのものをストップさせられてしまうというような問題も現にかつてあったわけでございまして、あれやこれや、もろもろの困難な事態が現に存在をしておる、こういうことでございます。  また、この漁業問題と農産物の問題あるいは畜産物の問題等とも関連をして、複雑な事態をこれまた外交上起こしておるということもあるわけでございます。そういう中を、いかにわが国の漁業者を守りながらわが国の漁業を発展せしめていくかということをきわめていかなければならぬわけであります。強力なる漁業水産外交を展開をいたしてきておるわけでありまするし、一番大事なことは日本の実態を相手の国によくわかってもろうて、そうして日本の漁業者とできるだけ競合しないような方途が確立できないものであろうかというようなことを考えながら、水産庁においても鋭意漁業外交の推進と遠洋漁業、沿岸漁業の振興に苦心をいたしておるというのが現況であり、これからもそのような道を進んでいきたいと考えておるわけでございます。
  109. 新盛辰雄

    ○新盛委員 また後ほど具体的に入る問題等もございますので、大臣のいらっしゃる間に、当初大臣だけに総括的にひとつお願いします。  この六日から一応仕切りを始めました本年度の日ソ漁業交渉、これに対してそれぞれ日本側の態度というものもお決めになっていらっしゃると思います。昨年の交渉は十二日間交渉で調印されましたし、五十四年度の一昨年の内容とほぼ同一のことでございましたが、特に漁業協力費というのが、一昨年三十二億五千万が五十五年度は三十七億五千万、本年度はさらにこのところが一番大きな山になるのじゃないかと思われるのですが、まず漁獲量、操業区域、操業期間、こうした問題の取り決め、これに対する日本側の態度をお聞かせをいただきたいと思います。  それと、きょうお会いになりますニュージーランドのマッキンタイア副総理との漁業の諸問題等ございますが、入漁料とかいろいろな問題等もございましょうけれども、どういうお話をされるのか、差し支えなかったらひとつお聞かせをいただきたいと思います。  さらにもう一つ、運輸省と厚生省がつくりました例の今国会に提出をされておりますフェニックス計画でございます。このことについては農林水産省に事前に相談があったということは、前回私が質問をした際に水産庁長官からお答えをいただいたのでありますが、私ども漁業の関係者は、この広域臨海環境整備センター法案についてきわめて関心を寄せているということであります。このことの扱いについて、事前に約束事を関係省庁と水産庁としてはしておられるようでありますが、総括的に、この問題の取り扱いについては農林水産省としてはどうお考えになっているか、大臣のお考えを聞きたい。  以上三点についてお願いをします。
  110. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 日ソ漁業交渉につきましては、六日からモスコーで行われておるわけでございます。いま御指摘の問題につきましては折衝の最中でございますので、私どもといたしましては、ひたすら今日まで農林省を中心にして先輩が築いてきた、日ソ漁業関係を積み上げてまいりましたところの両国の信頼関係というものを、今後長く続けていくことのできるような気持ちで実は折衝に臨んでおる次第でございます。  いろいろ環境としては厳しい情勢等も、アフガンをめぐっての問題等があるわけでありますけれども、しかし、私といたしましては、漁業関係の問題については、とにかくお互い今日まで信頼関係を結んできておるわけでありますから、その上に立って今後も日ソ間の親善関係の土台をむしろ大きくしていくといいますか、強くしていくといいますか、そういう方向に進むことのできるような形で、しかも、やはりこちらの主張は主張として十分述べて、そうして話し合いが合意に達するようにという努力をいま続けておる最中でございます。  それから、ニュージーランドのマッキンタイア副首相兼農業水産大臣と三時からお会いするわけでありますが、ニュージーランドとの漁業関係につきましてはいろいろ問題もあるわけでございます。率直に私はいつも申し上げておりますとおり、日本の立場をもう少し理解を示してもらえないかということを申し上げたいな、こんな気持ちでおるわけであります。幸い、畜産関係の問題につきましては、擬装乳製品等についても話し合いを先般つけたわけでございますので、漁業の問題についてこちらの要請を希望として述べたい、こう思っております。  それから広域臨海環境整備センター法案の問題についてでございますが、大都市圏における広域的な廃棄物の処理の問題を円滑にするためにこの法案が発想され、各省間の協議を経た上で提案をされたわけでございます。大規模な海面埋め立てという問題を経なければならぬわけでありますので、この法案提出に当たっては、環境を悪くしない、われわれといたしましては特に漁業関係に絶対に悪影響を及ぼさないということを基本方針として協議、調整を行ったわけであります。この法案に基づく具体的な埋め立て計画は今後の問題でありますから、計画策定及び実施の各段階において、関係漁業団体への説明、意見聴取が十分に行われると同時に、漁業への悪影響を及ぼさないように配慮されるように対処してまいりたいと考えております。
  111. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最近、イカ漁業とかマグロ漁業、極端にあらわれているのはこういうものでございますが、すべてにわたって在庫過剰である。こうした状況の中で、マグロの方は少し状況が変化しつつあるそうです。こうした全般的な問題として、いわゆる調整保管事業がございますが、特に輸入の実態ということに対しましては、先ほどお答えもございましたけれども、魚価を安定的にする、その前提はやはり輸入の枠組み、IQ品目にありながらそうでない形の中で現に輸入があることも私どもよくわかるのです。そういう面で大臣、輸入がすべての価格に大きく連動するという現在の構造は何とかなりませんか。——いや、それは大臣ひとつお答えください、大臣がいらっしゃる間だけですから。これが一番大きな問題ですよ。
  112. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 輸入水産物が価格の低迷をもたらしている一つの圧力を及ぼしているという見方も私は成り立つのだろうと思います。したがいまして、需給のバランスで足りなくなれば値が上がるというのは常識でございますから、その意味において、滞貨が相当あるということ。したがいまして農林水産省といたしましても、そういう面についてはいわゆる冷凍水産物の定期的な調整を始めさせていただいたわけでございます。これらの調査データも逐次実績を積み重ねていくことによって、特に冷凍関係業界の協力というものも強く呼びかけてまいりまして、適正な輸入という点に持っていくようにしていかなければならない、こんなふうに考えております。
  113. 新盛辰雄

    ○新盛委員 政府制度、政策融資という適切な措置を講じておられますし、「昭和五十六年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」の中でも明確なのですが、「財政及び立法措置」の中で、制度資金の融資、貸し付けを行うことになっているわけです。油が上がったと言えば五百億を一千億にとか、あるいは漁業の経営維持安定資金の方で五百億を六百億にするとか、こうして融資枠の一応の措置をおとりになっていただいておりますが、現実に水産関係の一般会計の総額三千百五十一億、最近の漁業振興という役割りから見ますと、予算的には前年度に比べますと百四億くらいしか上がっていない。きわめて厳しいのでありますが、財政的にも総体がそういうふうに厳しくなっているから、そうした受けとめ方をしております。  農林漁業金融公庫の貸付計画が千二百四十七億円というふうに決められておりますし、漁業近代化資金が千二百五十億、本年度はこういうふうに枠を決めてあるわけです。それはいいのですが、漁業経営者なり、あるいは燃油の高騰によりまして融資を受けられる側の方では、すでにこれまでの融資残高というか、固定的に負債を背負ってしまったのが、私の推計でございますが、二兆五千四百七十億という融資残高があるのだそうです。これはもうどうしようもない、返すことができない、大変困っておられるようであります。  確かに本年度のこの中でも、燃油資金と経営維持安定資金だけでございますが、中間据え置き期間を二年、償還期間の延長二年、沿岸で三・五%を三%、遠洋で五・六%を三・五%、これは利子の方でございます。こういうふうに一応若干の手だてをしておられるのですが、今度の酪農問題でいろいろ議論がありましたように、農業者にもいわゆる固定化負債の整理をやろうじゃないかという議論が出ました。そして今回も若干、その面の一応の手だてというか、ある意味では当面的措置というのがされたわけです。このことに対しては後ほど小さく詰めていきますが、何か一時的にたなに上げると言うと語弊がありますけれども、これはどうしても返済できないという状況ですよ。こういう負債整理について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思うのです。
  114. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御指摘のように、負債対策といたしまして五十六年度から一つ道を開いたわけでございます。これは先般の酪農問題のときも、負債というものを頭の中に置いておいたのでは、酪農家の皆さんあるいは漁業家の皆さん、なかなか思い切った将来への処置も図ることができない、こういうことで、私は農林水産業の将来の一つの大きな窓口を開いた、こういう考えを持っているわけでございます。そして、魚価が回復してまいりまして景気もよくなるという時代が来れば、そして利益が上がったときには、そういう問題についての負債の一部を整理をしていく、こういうことによって希望が持てる経営というものが成り立っていくのだろう、こんなふうに考えているわけでございます。この制度をつくっていただきましたので、これを大事にいたしまして、今後育てていくという方法をとっていきたいものだな、こんなふうに考えております。
  115. 新盛辰雄

    ○新盛委員 さらにひとつ具体的な措置が講じられるように要望をしておきます。  次に、長官以下各担当者の皆さんにお聞きしますが、先月の十七日、長官はイシイルカの混獲問題を初めとする日米間の漁業の諸問題について大変御苦労さまでした。それでイシイルカ混獲許可問題を中心にする日米漁業調整等について、それぞれの新聞とか、あるいは機会のあるごとにお聞きもするわけですけれども、ここで、この日米漁業の交渉に当たられた御感想を、ひとつ報告をお願いしたいと思います。
  116. 今村宣夫

    ○今村政府委員 日米の漁業関係は私は大筋としては円滑に推移をしておるというふうに思っております。貿易問題で若干の問題がございましたが、これは昨年の夏、私とフランク長官の間で話し合いをしまして、その問題が解決を見ておるわけでございます。したがいまして、アメリカの割り当ても昨年は百四十万トンの割り当てを受けておりまして、ことしもすでに百二十万トンの割り当てを受けておるわけでございます。そのように大筋としては大体うまくいっておると言っていいと思いますが、御指摘のようなイシイルカ問題とズワイガニの問題とトロールでのサケ・マス混獲問題という、何といいますかとげのような問題があるわけでございます。  まず一番大きな問題としてはイシイルカの混獲問題でございますが、これにつきましては現在行政審判手続が進行中でございまして、私は許可が円滑におりるようにということを、向こうのノアの関係者あるいは商工大臣にも伊東外務大臣と一緒にお会いをいたしましたが、議会筋その他についてそういう要請を行ったわけでございます。アメリカの方も現在行政審判手続中でございますから、行政当局としてこれをいいとか悪いとかということのメンションは避けております。避けておりますが、現在までのところ日本にイルカの許可を出していけないという声は幸いにしてございません。日本は五千五百頭の許可を申請いたしておりますが、これもまた幸いにして五千五百頭は多過ぎるという声もございません。ただ、行政審判でございますから楽観は許さないわけでございまして、四月二十四日に審判が出ますから、それまでにやはり審判手続に万遺漏なきを期していかなければいけないと思います。  その結果によって五月八日にノアの局長が決定をいたすわけでございまして、審判として日本にイルカをとらす許可を出すべきだというものが出ましたならば、それの具体化及びいろいろ条件がつくかもしれませんが、そういう内容について早急に詰めを行って、五月一日、あるいは母船式は六月一日でございますが、それの操業に支障のないように対処をいたしてまいりたいと思います。  ズワイガニの問題はいろいろとやりまして、伊東外務大臣も商工大臣と会いましたときに強くこれを要請したわけでございますが、アメリカの中におきます諸般の情勢上、私はこの見通しは非常に困難な状況にあると思っております。  それからトロールの方のサケ・マスの混獲でございますが、これはこちらからも業界のミッションが行き、また水産庁の担当官も同行いたしまして、向こうの原住民と非常に困難な交渉を行ったわけでございます。これは幸いにして話し合いがまとまりましてRCの決定を見ておりますから、この問題は一応解決を見ておるわけでございます。したがいまして、総体として申し上げますならば、ズワイガニの問題を除けばまず解決は可能であるというふうに見込んでおるところでございます。
  117. 新盛辰雄

    ○新盛委員 わかりました。ズワイガニの見通しが非常に暗い、米国側の態度はきわめてかたい、こういう状況ですが、今日の二百海里時代の厳しさというのはここに集中的にあらわれてきたような気がしてなりません。またブロー法案等の経緯から見ても、これからこうした例が出てくるであろう。したがって、ここに漁業労働者というのがおるわけでして、こういう皆さん方がこれからの新しい時代の操業秩序確立という面からきます抑制を受けます。だからこの救済について考えていかなければなりません。と同時に、見通しは暗いということではございますが、やはり全力を挙げて従来の標準値は守っていただくようにできないものかどうか。これは見通しとしてはどうでしょうか。
  118. 今村宣夫

    ○今村政府委員 アメリカのブロー法案等に見られますように、アメリカの国内の漁業の振興を図ることを第一義にするという態度、あるいはまた貿易とのリンク、魚をたくさん買う国に割り当てをたくさん出す、そういう政策につきましては、われらとして重大の関心を持って対応していかなければいけない問題でありまして、いますぐどうこうということはございませんが、ある一定の将来の問題としては非常に重要な問題を含んでおるということは確かでございます。見方によりますれば、ズワイガニも自分たちがとれば、そうして日本に割り当てをゼロにすれば日本は買うだろうという考え方でございますから、その点はきわめて遺憾なことであるということを強く言ったのですけれども、どうもこれはアメリカ内部の政治的な要素が非常に強いようでございまして、私はこれは見通しとしては非常にむずかしいというふうに踏んでおります。
  119. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先ほど大臣にお聞きしましたが、日ソサケ・マス交渉に今村長官お出かけになるというふうに承っております。そこで、漁獲量が最近の状況で毎年四万二千五百トン、もうこれ以上ソ連側はふやさない、昨年と同じだ、さらにソ連側の言い分としてもサケ・マスの状況は非常に悪い、したがって漁獲量としては一歩も譲れないという内容でありますが、さらにこうしたことに対して、長官ももちろんこれまでの交渉に当たってこられた経緯もございましょうが、漁業協力費などという問題になりますと、やはりほかの南方地域の入漁料の問題とすぐ重なり合って国内で議論が出てきます。この点、長官としてはどういうお気持ちでしょうか。
  120. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ことしはサケ・マスの豊漁年でございまして、ソビエトはベニ、シロ、ギンにつきましては非常にシビアな見方をしておりますが、マスについては資源状態は悪くないという話をしておるわけです。それを裏返しにして言いますと、ベニ、シロ、ギンのクォータといいますか割り当て数量を減らしてマスをふやすという出方をすることがあり得るわけでございます。マスをとりますと、ベニの半値でございますから、総量をふやしてもらってもベニとギンを減らされますと何にもならないわけでございますから、ただ単に総量のみにこだわることは得策ではないのではないかと私は思っております。したがいまして、豊漁年であること、同時にまた値打ち物のベニ、シロ、ギンの数量をどういうふうに確保するかという問題、あわせて考慮すべき問題であろうかと思います。  それから入漁料は三十七億五千万円ということで相当いい水準にいっております。またソビエトがどういう出方をするかちょっと見当がつきませんが、これも全体の一環としてその扱いを考えなければいけないところでございまして、相当いい水準にはいっておりますけれども、同時にまた、話をまとめるときの全体の一環としてどう取り扱うかという問題として対処する必要があるのではないかと思っております。
  121. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最低昨年の漁獲量なり禁止区域あるいは漁期、許可、こうしたことについてはぜひひとつ実益を守っていただきますように要望をしておきたいと思います。  イカ問題に入りますが、このイカの状況というのは、われわれが見ておりましてもまことに不可解なことばかりです。最近イカ流し網とイカ釣りの各業界との調整が成ったようであります。水産庁が懸命に努力されたおかげだろうとは思いますが、この経緯についてお聞かせをいただきたいと同時に、問題は、守られるかどうか。せっかくこうしてこの調整をされ、イカ流し網漁業の規制についてお約束ができた。今度は自由漁業から大臣承認漁業に移行になったし、あるいは操業区域も北緯二十度以北、東経百七十度以東の海域ということで明確に示されたし、それに見合う廃業の諸条件も整ったようであります。  しかし、こういうことが実は守られないじゃないか、監視体制というのは一体これからどうなるのか、あるいは漁業の秩序、こういうことに対して大方心配をしておられる向きもあります。いやそんなことを決めたって、アウトサイダーというか、百隻以上も、実は釣りの方の業界に入ってないのもあれば流し網の漁業協会に入ってないのもあるので、それまで取り締まるのはなかなか至離のわざだ、こういう話があります。だからこの辺は、幾たびか事が起こるたびごとにこうした協定の実効を失わしめるようなことになってはならない。このことについて水産庁はどういうお考えでしょうか。
  122. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカ釣り漁業とイカ流し網漁業をめぐります調整問題は非常にむずかしい問題でございまして、いろいろ御心配をおかけをいたしたわけでございますが、先般両代表の間で問題解決の大筋について合意を見たわけでございます。イカ流し網漁業につきましては、従来の自由漁業から大臣承認漁業にする。それから操業区域につきましては一定の取り決めをし、操業期間についても一定の取り決めをする。同時にまたイカ流し網漁業の承認に当たりましては、実績船であることに加えまして、イカ釣り漁業の廃業を見合いにするという形で合意を見たわけでございます。  そういう合意を見ても守られないではないかという御指摘でございますが、国内の漁業調整で話し合いがつきますれば、そういうことが守られる基盤ができたという意味におきまして、私は事態は相当違うと思っております。同時にまたイカ流し網につきましても大臣承認漁業にいたしたわけでございますから、その総体は十分に把握をし得るわけでございます。もとより取り締まりにつきましては従前以上の配慮をなさなければいけませんし、またアウトサイダーにつきましてはそれぞれの団体に速やかに加入するような指導をいたしてまいらなければいけませんが、私はこの問題につきまして両団体が合意を見、イカ流し網漁業を承認漁業にするということによりまして一定の秩序ができたと思っております。したがいまして、その秩序が守られるようにわれわれとしても今後十全の努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
  123. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今後の手順として、四月の下旬に中央漁業調整審議会に諮問をして、五月の中旬に漁業法関係省令の公布ということになって、八月一日から各船に承認交付書を出すという手順なようであります。したがいまして、いまこうして操業期間も一応決められたことでございますので、今後こうした現地でのイカ釣り業者同士の醜い争いにならないように、そしていずれの場合にいたしましても、百隻以上の何か全然つかみ得ないそういうイカ釣り業者もいるわけでして、そういうことについても十分組織化されるように特に要望しておきたいと思います。  次に、イカの一般的情勢でございますが、一体この供給はどうなっているのですか、需給はどういうふうになっておりますか、現在の輸入状況はどうですか、具体的に数字をお示しいただきたいと思います。
  124. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカの需給でございますが、五十五年度で見ますと、供給の方は期首の在庫が十六万八千六百トンでございます。輸入が九万四千四百トン、それから国内生産が六十四万トン、合わせまして供給が九十万三千トンということに相なります。需要の方でございますが、需要の消費としましては六十八万二千トン、輸出が一万六千トン、そうして期末在庫が期首よりも相当ふくれまして二十万五千トン、こういうことに相なります。それが五十五年度の需給の推計でございます。  問題は、一体生産部面と輸入部面がどうなっているのか、こういうことでございますが、五十五年におきます期首の在庫が五十四年より相当ふくれ上がったというところの要因をいろいろ分析いたしますと、一つは、前年度のカナダ、アルゼンチンからの輸入量の増加というのがこの期首在庫を相当ふくれ上がらせた要因ではないかと思います。それから国内生産では、大体昨年はイカの豊漁でございまして、これが約九万トンないし十万トンよけいにとれております。それからニュージーランド周辺水域が非常に豊漁でございまして、大体例年三万トンぐらいとれておりましたものが六万トンぐらいとれまして、これで約三万トンぐらいふえております。したがいまして、大体国内沿岸での生産増加とニュージーランドにとりに行きました生産増で十三万トンぐらいふえております。そういうことで期首の在庫がふえ、国内生産及びニュージーランドの生産増と合わせまして、先ほど申し上げましたように期末在庫は大体二十万トンになっておるわけでございます。  輸入につきましては、そういう状況でございますから、五十五年上期の輸入は全部ストップをいたしております。下期につきましては一万八千トンの輸入をしただけで、昨年の輸入割り当ては年間を通じまして一万八千トンのみでございます。
  125. 新盛辰雄

    ○新盛委員 期末在庫が二十万五千トン、こうおっしゃっているのですが、内容的に見て、五十五年の一月から十二月までのイカの輸入状況は、お話もございましたけれども、一万トン以上日本が輸入している国というのは、韓国、タイ、スペイン、カナダ、アルゼンチン、これらが大どころですね。輸入量総計が十五万五千八百トン。こうして在庫が出てくるのも、モンゴウイカはIQじゃないからという状況でありますね。ムラサキイカはIQ品目の対象になっているのですが、だからこれが商社の関係かなにか知りませんが国内産として入ってくるのじゃないか。九万トンとか十万トンの輸入の量だという状況は、現実に国内において生産するものと、輸入してこういう統計的に出てきているもののほかに、やはり何らかの形で入っているのじゃないか、こういうこともうかがわれるわけです。だから、その実態が杳としてつかめないのでありますが、輸入の方は野放しになっているのじゃないかという気がしますが、これはどうなんですか。
  126. 今村宣夫

    ○今村政府委員 いま申し上げました五十五年の九万四千四百トンのうち、モンゴウイカが大体七万トンぐらいと推定いたします。これは通関統計ではモンゴウイカはいままでは別になっておりませんのでわからないのですが、私たちの推定では大体七万トンぐらい、これは毎年そう大きな変動はございません。そういたしますと、先ほど申し上げましたように、五十五年度は一万八千トン輸入割り当てをいたしておる。五十四年に割り当てたものが五十五年に入ってくるということのずれがございますけれども、少なくとも五十五年の割り当ては一万八千トン以上はやっておりません。  したがいまして、恐らく業界の方にお聞きいただけばわかりますが、去年は、輸入が悪いのだ、イカの価格を引き下げた悪者は輸入であるということを非常に強く言ったわけでございます。これはイカの消費が伸びるものだということもあり、物価対策ということもありまして、五十四年度の輸入は若干多目であったことは確かであると私は思います。そこで、五十五年度は非常に無理をいたしまして、韓国やカナダその他からいろいろ文句があったわけですけれども、とにかく一万八千トンの割り当てに抑えたわけでございます。したがいまして、恐らくいま、輸入そのものが悪いのだという声は大分なくなっておると思います。  そうすると、今度は何が悪いかというと、どうもとりに行ったのがたくさんとってきたのじゃないかという話になりつつあるのでございまして、そうなりますとちょっとこれは問題の存するところでございますが、いずれにいたしましても、国内の生産の増それからニュージーランド等に行ってとってきました増等が需給に相当響いておるのではないかというふうに私は思っておるわけでございます。
  127. 新盛辰雄

    ○新盛委員 日本のイカ釣り漁業というものは果たして展望があるのだろうか、総論がなくて各論が先行しているような状況じゃないかと私は思います。そういう面で、いわゆる生産と消費の漁業構造、いわゆるイカの部面だけをとらえましても、これから先一体どうしたらいいのか、イカ釣り業界経営維持というものは今日の状況でどうなっていくのだろうかという心配もあるわけです。それで、そのことを踏まえて政府としては、今後の生産指導の主体、ポイントをどちらの側に置くのか、沿岸なのか近海なのか、あるいはニュージーランドなどの海外の海域、こういうところに出漁してやっていくのか、この辺のところをひとつ明確にお答えいただきたいと思うのです。
  128. 今村宣夫

    ○今村政府委員 なかなか明確にはお答えできないのが恐縮なんでございますが、小型イカ釣りの経営体が三万四千八百あるわけですね。これは、ことしのように日本周辺にイカがわきますとちょいちょいと行ってきても結構もうけになるということでございまして、農家で言えば兼業農家みたいな話ですから、これをやめてしまえということは、なかなかやめないわけでございます。そうしますと、大型イカ釣りと中型イカ釣りは一体どうなるのだ、こういうことでございます。これまた不思議でございますが、ニュージーランドへ行くと幾らの赤字、何千万の赤字になると言いながら、やはり船員を遊ばせておくよりもいいのだということで、赤字を覚悟で行ってたくさんとってくる、とってきて値が下がる、こういう悪循環を繰り返しておるのがイカの業界でございます。  私は、総体として見ましてイカの漁獲の能力は多過ぎるというふうに思っております。したがいましてこれは何とか、適正な規模というと非常にむずかしいのですけれども、ある一定の規模まで引き下げなければいけないと思いますが、先ほど申し上げましたように、小型イカ釣りを引き下げることはむずかしいということになりますと、中型と大型を一体どういうふうにするのかということになります。  ところが、イカの業界ほど複雑な業界はございませんで、また同時に必ずしも力を持っていないということで、カツオ・マグロのように体質改善をやろうとする機運が起こってこないわけでございます。これははなはだ残念なことでございます。しかし、行政庁が一方的に押しつけるというようなことはできないわけでございますから、何とか体質改善の機運を醸成して、業界がそういう気持ちになった場合におきましては、これ相応の対応を行政庁としてはなすべきものであるというふうに私は考えておりますが、残念ながらそこまでいっていないのが実情でございます。
  129. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ちょっと一言だけでいいのですが、生産指導の今後のあり方として、その力点をどちらに置くか、沿岸なのか近海なのか、あるいは外、いわゆる遠洋なのか。そのことによって、いま複雑快奇になって入り組んでいることに対して、小型、大型、トロール、流し網、いろいろございますが、そういう中の調整はやはり国内の、政府がきちっと方針を決めさえすれば何とかまたそこに結合するものが生まれはしないかと私は思っておるのですよ。どうなんですか、それは。はっきりどちらかに決めてください。
  130. 今村宣夫

    ○今村政府委員 小型、中型、大型、それぞれ役割りがございまして、水産庁長官として大型はもう、少しやめろ、こういうふうなことはなかなか言いにくい。ニュージーランドやオーストラリアのクォータが減ればまた話は別でございますが、クォータがあるのに、とりに行くな、赤字が出るのに行かなくてもいいじゃないかということは、去年あたりもずいぶん言ったのですが、なかなか言うことを聞いてくれませんで、行ってたくさんとってきて、倍もとってきた、こういう状況でございまして、ここに重点を指向して、よってあなたたちはこうこうすべきであるというふうなことを、現在の水産庁長官としてはなかなか割り切りにくい事態があるわけでございます。
  131. 新盛辰雄

    ○新盛委員 世界の海に一億一千万トンのイカ資源がある。それの一割ありましても一千百万トン。日本の国内需給が六十万トンから七十万トン。とらんかなとらんかな、やらんかなやらんかなでも、在庫はどんどん余ってくる、魚価はまさに低迷する。最近ニュージーランドから上がってきた船の応札も「落札は八%に終る」こう書いてある。まさに大変なことであります。働いている漁業者がいるのです。そういう人たちも、その外形的諸要素はあったにしましても、現実こういう状況に追い込まれていきますと経営を維持することはできない。ここは一番、ひとつ水産庁が腹をくくって指導するかどうかしなければ、いい知恵は浮かびませんということだけでは日本の水産漁業を守っていくことはできないのではないか。大変むずかしいことですけれども、これにも、白書のついでに書いてあります五十六年度の施策の中でも積極的にお取り組みいただいている内容を示していらっしゃいますけれども、ぜひひとつ長官、御努力をお願いしたいと思う。  それで、時間が余りなくなりましたが遠洋マグロ漁業の問題であります。昨年来騒ぎましたカツオ、そしてマグロもそうでありましたが、輸入規制を初めとして・灘価の安定対策あるいは燃油高騰に伴う諸手当ての措置の問題についても一応やりましたが、カツオの海まき転換、こうしたことについては情勢が少し変わってきたのじゃないかと思いますけれども、そのことを簡単でいいですからお聞かせいただきたいと思います。
  132. 今村宣夫

    ○今村政府委員 確かに、一昨年はもうカツオがいまにもついに倒れるようなことを言っておったわけですが、幸いにしてその後持ち直しまして、いまはまずまずの状況に相なっております。したがって海まき転換の状況も違ってきたということは確かでございますが、これは業界の意向を十分踏まえて対処しなければいけませんが、私は、いまカツオ・マグロ業界考えているような程度の構造改善の計画は進めていくべきものではないかと思っておるわけでございます。
  133. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そうしますと五十隻減船、十カ統の措置をされるわけですが、既存の海まき十四カ統ありますから二十四カ統、三カ年計画ということになっていますから、私はこれは転換する必要はなくなったじゃないか。しかし業界の日鰹連あたりでは積極的にそのことを進めたいと言っているようでありますが、こうした状況がくるくる変わってくるという、浜値の面で相当好転しつつあるという状況ですから、それを踏まえて、経営維持が一応安定をしてきたのならば、それに即応する体制をやはり立てるべきだ。これらの産地価格の動向とかあるいは経営維持の問題だとか、そういう総合的なものを見てぜひひとつ海まき転換という問題についてもお取り組みをいただきたいと思います。漁船同盟とか全漁連、日鰹連でお取り決めいただきましたああいう内容一つの大きな効果を奏しているのかもしれません。  だから、マグロの方についてこれから申し上げますが、現実の問題として二百隻の減船を余儀なくされているという状況に追い込まれているわけです。これについて、いままでもそうでございましたが、何らかの形でカツオのときと同じようにマグロの問題も、これは漁船員がいるわけですから、減船になるわけですから、雇用上の諸条件も変わってくるのですから、そういう問題について相談があったのかなかったのか。遠洋カツオの漁業雇用問題懇談会というものもありましたし、またマグロの問題だってそれよりも大きな問題を抱えているようでありますから、この辺について一体水産庁はどうお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  134. 今村宣夫

    ○今村政府委員 マグロにつきましての体質改善につきましては、現在カツオ・マグロの団体においていろいろ検討をされておることは承知いたしておりますが、まだカツオのように水産庁に対しましてこうするああするというふうな、方針が固まっておるというふうには承知をいたしておりません。これは業界の真剣な検討にまつべきものであると思いますが、もしそういう方向で業界が体質改善をやりたいということでありますならば、カツオの場合と同様に水産庁としては対応をしていくべきものではないかと思っております。この場合に、当然雇用の問題につきましても、カツオの場合と同様な対処の仕方をしていく必要があると考えております。
  135. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この減船せざるを得ないというその基礎ですね。これは日鰹連とかその他業界のいわゆる指向される方向でしょうが、資源の量というのは変動があったのだろうかどうだろうか、一隻当たりの釣獲率をひとつお示しいただきたいのです。第二に、産地価格の形成とこれからの見通し。第三に、流通経路が非常に複雑であります。マグロは消費者にとってみれば全然価格変動しないじゃないか、逆に高くなっているじゃないか、しかし産地価格では浜値は非常に下がっている、これは一体どういうことになっているのだ、これは流通の問題だろうと思いますが、調整保管事業の問題もございますけれども、これをひとつお聞かせいただきたい。それから消費者がマグロも食べなくなった、いわゆる魚離れが一般的である、消費拡大の問題についてどういうふうに考えているのか。こうしたことをせんじ詰めていけば、逆に減船をせずとも済むじゃないかという気持ちがするのですが、このことについてお答えいただきたいと思います。
  136. 今村宣夫

    ○今村政府委員 釣獲率は、全海域の平均で見てみますと、四十年には、百針当たりの尾数でございますが二・八五、四十七年は一・七八、五十三年は一・六五、こういうふうに相なっております。現在の科学者その他の見方によりますれば、マグロにつきましてはまず資源のほぼ限度まで利用をしておるのではないかという考え方であります。  産地価格がえらい下がってきた、こういうことでございますが、この点はいろいろな要素がありまして、一概にこれであるというふうにも決められないのでございますが、たとえば一船買いを商社がやめたというのが響いているのだという説もあり、あるいはまた赤身の魚、品質の悪いものばかりとってくる、石油が高いものですから、走り回っていいものをとらないで、とにかく満船にして早く帰ってくるということになって、赤身の魚ばかり揚がってくるのだという説もありますし、いろいろありまして、マグロはなぜ安いかということをよく検討調査をするように私が指示をいたしましても、これだという話は上がってこないわけでございます。幸いにしまして最近におきまして浜値価格もだんだん上昇を見つつあるわけでございまして、大分明るさを取り戻したというところまではいかぬのですけれども、大分気分がなごんできたような状況にございます。  流通問題につきましては、これは非常に重要な問題でありまして、私たちとしましても今後さらに力をいたさなければならない問題がございますが、水産につきましては鮮度の維持がむずかしいとかあるいは加工して消費者に提供しなければいけないというようなこともございまして、どうしてもコストが高くなる。そうすると浜値から考えてみて余りにも格差があり過ぎるじゃないかということをしばしば御指摘を受けるわけでございますが、今後流通の問題につきましても十分検討いたしてまいりたいと思いますし、消費の拡大につきましても、いろいろなPRでありますとか、あるいは消費者に直接提供できるようなパックしたものを山村にも農村地帯にも送り込むというふうな補助事業も実施をいたしておるところでございます。したがいまして、その消費の拡大、流通の合理化につきまして、今後におきましても一層の努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  137. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そこで、減船が現実の問題になっているのですが、四千名ぐらいの離職者に対する対策、これは今後どういうふうに立てられるのか。先ほど申し上げました例のカツオの場合に三者協定などというのがありましたが、どういう形にいたしましても、いろいろとこの取り扱いについて十分に相談されるというお気持ちがあるかどうか、いわゆる三者に対して。これはいかがですか。
  138. 今村宣夫

    ○今村政府委員 いざそういう事態になりますれば、私はそういう話し合いをしてよく対処するものと思っております。
  139. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ぜひ前向きに、その事態になればということよりも、そうならないようにすることが、まず減船にならないようにすることが大事ですが、そうなる場合に、前例もあることですから、ぜひ三者に対する調整をお願いしたいと思います。また、雇用安定対策として関係者との交渉を十分にしていただきたいと思います。これはわが国だけは減船しますが、韓国、台湾などは減船しないのですから、全く韓国、台湾はメリットを受ける。これも国際的なというか、漁業外交上の問題だと思いますね。このことについてもぜひ頭に入れておいていただきたい。そしてまた、減船実施になるという段階では、今度新しく予算で措置しました特定漁業生産構造再編推進事業十億円、これがその中身であろうと思います。そうした活用については関係者との十分なる御協議をいただきたいと思います。  続いてノリ、ワカメの問題であります。この現状はどうなっているかということなんですが、これもまた、ノリは繰越在庫が三十五億枚、生産量は八十億枚ぐらいというふうになっているのでありますが、一体これからどうされるのか。IQ品としては韓国だけが入れることになっているようであります。ワカメの方はAAでございますけれども、これも輸入の増加が見られている。特にワカメは日本産が十一万トン、韓国産が七万トン、これも過剰ぎみで、二万二千六百五十トン、すでに過剰であるという状況です。ノリ業者、ワカメ業者、これまた大変でございまして、これについてどういうふうにお考えかを、これからの対策について簡潔でよろしいですが、お答えいただきたいと思います。
  140. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように、干しノリの全漁連の共販価格を見てみますと、今年度の価格形成では、過剰在庫の圧迫でありますとか消費の停滞、下級品の販売困難等のために、共販は一枚当たり十円五十銭ということで、前年に対して六九%というふうに下落しております。干しノリの輸入は五十三年以降ゼロでございますから、やはり生産の増加ということが響いておるわけでございます。したがいまして、全漁連では本年二月から調整保管事業を発足しまして、干しノリの五億枚を対象数量として、一枚当たり基準価格下限十一円四十銭、上限十七円十銭で買い取り保管を実施いたしておるところでございます。  ワカメにつきましても、御指摘のように需給が相当不均衡になっておることは確かでございまして、これにつきましては、生産者団体の体制が整えば、魚価安定基金から調整保管事業に対する助成を行うことを検討する必要があるというふうに思っております。
  141. 新盛辰雄

    ○新盛委員 さらにこれも全般的な問題ですけれども、ぜひ前向きにお取り組みいただきたいと思います。  次に、先ほど大臣にも質問をしておきましたけれども、大蔵省見えておりますか。先ほど申し上げましたような制度、政策融資の融資残高ということで、経営者は大変苦労しておるわけです。今回も農林漁業金融公庫資金として、貸付計画額一千二百四十七億、こういうようなことも出されておりますが、返済についてどういうふうに処置したらいいだろうか。現実の問題として、制度資金は借りましたが、これを裏打ちする保証協会はどこの県におきましても塗炭の苦しみであり、それでこうしたことについて、五十六年度においては若干それらの手だてもしなければならないというふうに書いてございます。「中小漁業者等に対する融資の円滑化を図るため、都道府県が漁業信用基金協会に対し行う出資について助成する。また、中央漁業信用基金の保証保険業務の円滑な実施を確保するための保証保険資金及び漁業信用基金協会の保証能力の拡大と経営基盤の強化等を図るための融資資金に充てるため、中央漁業信用基金に対し所要の資金を出資する。」こういうふうになっています。  このようなことで、先ほど大臣に申し上げたように若干の手だてがなされているわけですが、こうしたいわゆる固定負債をどう整理したらいいのか。恐らくいまの状況ではとても返済能力がない。だから一定期間償還期間をうんと延ばすとか、据え置き期間を長くするとか、金利を下げるとか、こういうことについて大蔵省としてはどうお考えでしょうか。
  142. 日向隆

    ○日向説明員 いま委員からもいろいろな点について御質問がございましたが、まず第一に、農林漁業金融公庫におきます長期延滞の状況を申し上げてみますと、御指摘がありましたように長期延滞の割合といいますのはここへ来て増加しております。  ちなみに数字を申し上げますと、五十年度から五十四年度までは、六カ月以上支払い期が経過したものを長期延滞資金として私どもつかまえておりますが、これにつきまして数字を申し上げますと、残高ベースで延滞率は五十年度は〇・三三、その後、省略いたしますが、五十四年度は〇・三七というふうに、大体〇・三%前後を推移してまいったわけでございますが、五十五年十二月末現在でつかまえてみますと、これが〇・四九%というふうに増加しております。またこの〇・四九%を業種別に見てみますと、御指摘のように水産業が非常にふえておりまして、農業の延滞率が〇・二一%、林業が〇・二三%に対しまして、漁業は二・七二%というふうに、ある意味では注目すべき数字になっておりまして、私どもといたしましてもその実態につきまして十分関心を持って把握しなければならないというふうに考えております。  それから第二点目に、こういった長期延滞に対してどういう措置をとったらいいかということについてのお尋ねでございますが、この点につきましては、委員も御存じのように昨年十一月十四日に水産庁長官の方から通達が出ておりまして、これは農林漁業金融公庫総裁あてでございますが、既往貸付金につきましてその条件の緩和を依頼しておるところでございます。その条件の緩和の中には御指摘のような償還猶予の問題、これは償還期限の延長でございますが、その中でも特に長期資金につきましての中間据え置き期間の設定等、貸付条件の緩和の問題が出ておりまして、それについて特段の配慮をするようにというお達しになっておるわけでございます。私どもこの点につきましては十分承知しておりまして、これと軌を一にいたしまして、私どもが所轄しております民間金融機関の協会あてに同様な指示を、口頭ではございますが、しておるところでございます。  それから第三点目にお尋ねの、各県に設置されております漁業信用基金協会の収支問題等でございますが、それは、御指摘のように事故率といいますか代位弁済の割合が高まってまいりましたり、あるいは中央漁信基の方で、一般資金につきましては普通七割てん補されますが、てん補されない部分につきまして、つまり三割相当につきまして回収が十分に進まなかったりいたしますと、やはり各県の漁業信用基金協会の財務状況とかあるいは損益に悪影響をもたらしてくるわけでございます。  私どもこの点心配をいたしまして数字を拾ってみましたところ、昭和五十四年度まではそう悪い数字は出ておりません。しかしながら、御指摘がございましたように、ここ一年の間に魚価の低迷とか燃油価格の高騰等の問題がございまして、漁業者をめぐります経営環境は非常に悪化しております。したがいまして、こういった状況がいま私が言いましたような代位弁済率だとかあるいはまた事故の回収につきまして悪影響があってはいかぬ、それが各漁業信用基金協会の収支に悪影響をもたらすということがあってはいかぬということで心配しておるところでございます。  長くなりますのでこの辺で省略いたしますが、御指摘がございましたように、昭和五十六年度におきましては、基本は私どもといたしまして漁業者の経営改善を図ることが大事だというふうに思っております。しかしながら、手当てといたしましては漁業信用基金協会及び中央漁信基の経営基盤の充実を図るというために予算上の措置を種々講じたところでございます。これは御質問にございましたから省略いたします。  以上でございます。
  143. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これから後のそうした固定負債等についての整理の仕方をどうするか。これは二百海里時代を迎えまして一応国の責任においてやらなければならない問題が多いと思うのです。水産庁の方でも前向きにお取り組みいただいておるようでありますが、大蔵省の方でもこの現状を認識していただいて、どうか一層有効な手段を講じていただきますように要望しておきます。  最後に、これも大臣に総括的にお答えいただきましたが、現在運輸委員会にかけられております広域臨海環境整備センター法案について関連してお伺いしておきます。  いま全国的に見ますと、一般廃棄物というのは年間四千万トン、産業廃棄物は二億四千万トン。これは年間の統計であります。これが排出されている主たる東京、大阪を見ますと、東京で一般廃棄物は約九百万トン、産業廃棄物が九千三百万トン、こういうことで、大阪の方もございますが、東京で五〇%、大阪で四〇%という状況であります。これは五十二年度の推計であります。  大規模に海面を埋め立てる、その埋め立てる目的は、内容として当然廃棄物によりまして処理をするわけであります。ところが海で仕事をしておられる漁業者に対する影響というのは度合いが非常に大きくなっていると思うのです。ちなみに四十八年から五十二年の間で全国で百二十五・三平方キロの埋め立てが実施されました。それに伴いまして漁業権が放棄されたのが百五十六・八平方キロに及んでいるというのです。ここで漁業で飯を食っておられる方はやむなく漁業権を放棄してその場所から去っていくわけでありますが、国民にとりましては動物性たん白質がどんどん失われていくという現況でございます。こういう安易に漁業権を放棄させるということについては、水産庁としても非常にみずからの手足を失うような気がするのじゃないかと思うのです。  こういう二百海里時代に入っておりまして、沿岸漁業の振興だ、資源管理型の漁業だとか、栽培漁業だとか、いろいろ議論が最近大きくなってまいりました。そこへもってきて逆に海の方へどんどんこういう廃棄物を捨てる。これは、運輸省が取り扱うというのは港湾の関係だと思うのですが、厚生省から見ると、これまた一般の廃棄物にしても産業廃棄物にしても、その影響というのは当然出てくるわけですし、環境庁の方にいたしましても関連があります。建設省もある。国土庁もある。あるいは通産省もあるだろう。すべてに回ってくるのでありますが、特に一番ひどいのは農林水産省の関係だと思うのです。  だから、こうしたことに対してどういうふうにお考えになっているのか。水産庁として、法案を提出される際に水産庁長官は十分相談をしましたとおっしゃいました。恐らくこれは取り決めを事前にされたと思うのですが、それをひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。覚書を他の省庁間で交わされたと思いますが、そのことをお聞かせいただきたい。  そしてまた、この計画によって漁業に悪影響を及ぼしてはならないと大臣が言明されましたが、この影響はどういうふうに受けるであろうか。非常に重大なる関心を持って漁業権問題を含めまして私どもとしては心配をいたしております。これはどういう工法になるのかわかりませんが、仮に二重鋼管矢板形式のものでいけば、これを海に打ち立てて二重になったその間にコンクリートを詰めて汚水が外に出ないように施工するだろう。しかしこれも土木技術者に聞いてみますと、完成時においても、護岸一メートル当たり一日約〇・一トンの統計でいきますと、東京湾で千五百トン、大阪湾で一千トンという汚水が今回のこの計画によって毎日にじみ出してくるのだそうです。  これは海洋汚染につながることは間違いないのであります。いま夢の島の周辺の海域は魚はそんなに汚れておりません、汚染されておりませんという話もありますが、現実にそういう面では相当汚染されていくのじゃないか、漁業権益の問題においても漁業者は非常に困っているのじゃないかと思うのですが、そのことについてぜひ見解を明確にして、水産庁としてはこうだというところをお示しいただきたいと思うのです。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕
  144. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように、埋め立てが行われてそれに伴いまして漁業権が放棄されるようなところは大体浅海海域でございまして、それは沿岸漁業にとりまして重要な漁場でございます。私たちといたしましては、大規模な埋め立てによりまして漁場が喪失し、水域が変化すれば漁業に大きな影響を及ぼすおそれがあるということで、埋め立てが行われます場合には、一つには、漁業環境への影響が事前に十分調査をされること、第二は、漁業に対する影響を最小限度にするための対策が講ぜられると同時に、関係漁業者の理解と納得を得て取り進められるべきものであるという立場のもとに対処をいたしてきておるわけでございます。  今回の法案につきましても、漁業者等の水産サイドの立場意見等が十分反映されますように、水産庁長官と厚生省の環境衛生局長、運輸省の港湾局長との間で覚書を取り交わしておるわけでございます。一つは、厚生省と運輸省は、広域の臨海環境整備センターが基本計画あるいは実施計画を作成しようとするときは、あらかじめ関係漁業者にその内容を十分説明し、広域処理場の建設が関係漁業者の了解を得た上で行われるようにセンターを指導する、それから厚生省は、広域処理対象区域を指定しようとしますときには、あらかじめ農林水産省に協議をする、それから運輸省は、広域処理場整備対象港湾を指定する場合、あらかじめ関係漁業団体に説明すると同時に農林水産省に協議をするという覚書を取り交わしておるところでございまして、この線に従って私たちとしては今後十分留意して対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  145. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間が来ましたのでぜひこれだけは要望しておきたいと思うのですが、フェニックス計画というのは、通産とか運輸とか厚生とか環境あるいは国土、各面にわたっているわけですから、その中でだれが一番困るのか。廃棄物を捨てる場所がないから海にという、海に捨てれば漁業者が困るのです。いま長官が覚書を読まれましたけれども環境汚染、特に漁業の汚染につながらないように、また漁業者が権益を失ってしまうようなことにならないように、漁業権をこれ以上放棄させるようなことにならないように、ぜひひとつ監視の目を向けてください、関心を寄せてほしい。積極性でやってもらわなければわれわれはこのいわゆるフェニックス計画については納得しがたい、こういう立場でございますので、これからの法律の審議は運輸委員会でございますが、そのことを明確に申し上げておきます。  終わります。
  146. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 小川国彦君。
  147. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は魚の問題を中心にして質問をしてまいりたいと思います。  先日、昭和五十五年度の「漁業の動向に関する年次報告」いわゆる漁業白書というものが発表されたわけでありますが、この内容を一言で言いますと、魚離れが一段と進んできているというようなこと、それからまた生産者においては低魚価に悩まされ、また消費者においては横ばいの状況にある魚価の中で魚離れという状況を起こしてきている、そういう実態があるわけですが、この白書はその問題に対しての取り組みが不十分だということも指摘をされているわけです。  水産庁長官として、一言にして言うならば五十五年を顧みての漁業白書でどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか、最初にその所感をお伺いしたい。
  148. 今村宣夫

    ○今村政府委員 私たちは、白書を作成いたしますときにはできるだけ現在時点までの状況を把握をして、それを記述するように努めたわけでございますが、この白書は分析の基礎となりますデータが五十四年のデータであるということから、必ずしも現在時点を的確に表現しておるというような面が薄いという印象はお受けになるかと思いますが、私たちとしましてはできるだけ最近の状況を把握するように努めたわけでございます。特に、今回の白書におきましては、水産物の需給問題と水産の経営問題というところに重点を指向して記述をいたしておると思いますので、この点は従来の白書よりも相当力を入れた点であろうと思います。  需給について申しますれば、先生ただいま御指摘のように水産物の価格の低迷、ところがそのもとにおきますコストの上昇、したがって水産経営はきわめてシビアな状況に置かれておる。同時にまた、魚の嗜好につきましてだんだん変わっていきつつある中におきまして、どうすれば今後消費者に魚を消費してもらえるか、その点について十分な留意が必要であるという指摘を行っておるところでございまして、いま申し上げたようにデータその他の関係で十分でない面がありましょうけれども、私たちとしましては、現在の水産の置かれておりますきわめてシビアな状況につきまして、できる限りの記述をいたしたというふうに考えておるところでございます。
  149. 小川国彦

    ○小川(国)委員 生産者にとっては、油が高く、魚は安く、減船というようなことで非常に厳しい状況があります。その問題についてはいままで同僚の議員から質疑がされてまいりました。  私はもう一つ、これを消費者サイドから見ますと、魚は決して安くなっていない、そういうようなことに消費の減退の大きな要因があるのではないか。特に動物性たん白質の摂取量を見ましても、水産物の割合というのが昭和五十年五一%でありましたのが昭和五十四年には四五%ということで、魚の摂取量が非常に減ってきているわけです。この原因はどういうところにあるか。私どもは消費者の買う魚が高いという点がかなり大きな要因を占めているのではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点、長官はどういうふうにお考えになりますか。
  150. 今村宣夫

    ○今村政府委員 私は、この一年あるいは一年数カ月の魚の価格は決して高くないとは思いませんけれども、しかし同時に、石油の魚に占める比率というのは、従来一五%ぐらいあるいは場合によっては二〇%のものもありますが、その石油が倍になっておるわけでございますから、魚のコストそのものは従来に比べて相当上がっておるわけでございます。しかし、魚の価格というのは大体横ばいないし弱含みというふうな形で従来まで推移してきているわけでございまして、そういう意味合いにおきましては、物価問題として見れば非常にいい成績をおさめておるのではないかと思っております。ただ、消費者のお立場からすればできる限り安い方がいいわけでございまして、安い魚を、しかも食べやすい形で消費者に食べていただいて需要を伸ばしていくということは、当然心がけるべき問題であろうかと思います。  ただ、御承知のように、最近の若い家庭におきましては、魚を料理する包丁も持っていないということでございますから、魚に対する嗜好の変化というものは見逃すことができないのではないかと私は思うわけでございます。尾頭つきの魚を家庭で料理して消費していただけるという家庭がだんだん少なくなっておるわけでございます。この点でやはり若い家庭においては肉に消費が向かっていく。したがって、御指摘のように動物性たん白質の摂取割合は一年に一%ないし一・数%落ちていっておるのが現実であろうかと思います。ただ、料理をしないでも直ちに消費し得る、たとえばイカの刺身でありますとかマグロの刺身というふうな形あるいは水産加工品等の形におきます需要というのはまだ根深いものがございますし、同時に中高年齢層の魚に対する消費嗜好というのは特に強いものがあるわけでございます。したがいまして私たちといたしましては、できるだけ安定した価格で、しかも消費者のニーズに合ったような形でどういうふうにいまから魚を供給していくのがいいかということは、業界挙げて、関係者も挙げて真剣に取り組むべき問題であると考えておるわけでございます。
  151. 小川国彦

    ○小川(国)委員 おっしゃるようにイカとかマグロの刺身、水産加工品、こういうものに対する根強いものはある、これは私どもも同様に思うわけであります。ただ問題は、いままで日本人の食生活の中で、魚は安くたん白質をとれるものだということで、庶民の台所では一番手近なところに買いやすい品物としてあった。ところが二百海里以後、商社や大手水産会社の魚転がしあるいは冷蔵庫による魚隠し、そういうような問題が起こってきて、魚は高いものだ、こういう認識が国民全体の中に非常に浸透してしまった。現実に、二百海里時代から、いまおっしゃる石油の高騰の要因の中で上がったものもありますけれども、それに便乗した大手水産会社や商社の便乗値上げというものが、そのまま横ばいで推移してきている。ここに徹底的なメスを入れて魚価を引き下げていく、そういう努力は、水産庁の行政の中でも取り組まれなければならないのじゃないか。  私は、先般マグロの買い占めや冷凍庫の問題をお聞きしましたが、きょうはエビとかイカの問題についてちょっとお伺いしたいと思うわけなんです。  昭和五十四年の日本の魚の輸入金額は九千三百七億円になっていますが、この中で一番大きいシェアを占めておりますのはエビの輸入金額で、三千百四十六億円、三四%という大変なシェアをエビが占めているわけであります。そしてまた、大変な勢いでエビの輸入量が伸びてきております。ところが数量の伸びと比較しますと、金額の値上がりの方が非常に激しい。たとえばエビの昭和四十八年の輸入数量、十一万七千四百七十四トン、これが五十三年には十四万九千七百五十一トンと、約三万トン程度ふえているわけでありますが、金額で見ますと、昭和四十八年に一千百八十二億七百万円でありましたものが、五十三年には二千二百二十五億二千八百万円と、数量では一・三倍でありますのに金額では二倍、こういう伸び方になってきているわけであります。  自由に輸入されるエビでありますけれども、そこには大手商社、大手水産会社による価格支配というものが大きく影響力を持っているのではないか。ここに水産庁が輸入行政の問題点というもの、魚の輸入の実態という流通形態の解明というものにさらに積極的に取り組んで、この価格を抑えていくという努力が必要なんじゃないか、私どもはそういうふうに考えるわけでありますが、そういう点の努力はなされてきたのかどうか、その点をお伺いしたい。
  152. 今村宣夫

    ○今村政府委員 輸入一般につきまして、私たちは、IQにつきましては需給を見ながら数量を割り当てていくという扱いにいたしておりますが、IQ以外の物資につきましては、輸入業者のコントロールというのはなかなかききがたいのではございますけれども行政指導の範囲内として、秩序ある輸入ということをやかましく言ってきたつもりでございます。  御指摘のように、かずのこその他につきまして買い占め問題などが起こりましたことはまことに遺憾なことであると思いますが、エビについて、数量は一定でありましても輸入価格は上がっていくというのは、日本のエビの需要それから海外におきます生産量と輸入状況を見れば、数量は一定でありましても輸入金額は上がっていく、これは別に商社が海外において買い占めして価格操作をしたからそういうふうになるのではなしに、やはり趨勢として、いまからでも、数量はそれほどふえなくても価格はそれを上回って上がっていくという状況は続くと私は思います。エビにつきまして、私どもは現在、商社が輸入に際しまして買い占めその他によって価格をコントロールしておるというふうには理解をいたしておりませんが、もとより秩序ある輸入ということにつきましてわれわれは十分監視の目を光らし、そういうことに反するようなことにつきましては所要の行政指導を行うことにやぶさかではございません。
  153. 小川国彦

    ○小川(国)委員 輸入エビのキログラム当たりの価格を見ていきますと、昭和四十五年ごろ一キロ当たり八百六十八円でしたエビが、五十五年には一千六百八十七円と、ほぼ倍になっているわけです。その価格を見ましても、四十五年八百六十八円が四十六年には九百三十一円、四十七年には一千二十一円、それから四十九年には千百四十円、五十年には千二百十二円、五十一年には千七百六十八円、五十二年は千七百十三円、それから五十四年には千九百十円、五十五年は千六百八十七円となっておりますが、いずれにしても価格は上昇傾向をずっととってきているわけです。  もちろん資源としては有限なものでありますし、繁殖が行われたとしてもそれは価格が上がらざるを得ないということはわかりますが、この上がり方というものは、自然の騰勢として上がっているということだけではなくて、そこにやはりどこかで人為的なものを加えるならば、この価格の上昇を抑えることができるのではないか、私どもはそういう実態把握の努力というものが必要ではないかと思うわけなんです。  先日、私は水産庁と通産省に対して、最近十カ年の大手商社、大手水産会社の輸入状況の報告を、大手一番から十社くらいまで、できるならば三十社くらいまでのそういう資料はないものかということを伺ったわけでありますが、これに対しては、両省ともこういう資料はないということなんですが、そういう事務当局の答えのように、これは提出できないものでございましょうか。
  154. 今村宣夫

    ○今村政府委員 各商社別に割り当て数量はないことはないわけでございますが、たとえばA商社は幾ら、B商社は幾らという形で商社の名前を挙げながら割り当て数量は幾らであるということにつきましては、従来からこれをオープンにしないという扱いになっておるわけでございます。もとよりエビ等は自由化されておりますけれども、それにつきましてのその商社そのものがどれだけの扱いをしたかという商社別の統計は出てきませんから、そのことについての数量は私の方としても把握いたしておらないところでございます。
  155. 小川国彦

    ○小川(国)委員 水産庁の方では商社別の集約はしてない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  156. 今村宣夫

    ○今村政府委員 自由化されておりますエビのようなものについては、商社別の扱い数量を把握いたしておりません。
  157. 小川国彦

    ○小川(国)委員 通産省に伺いますが、通産省では商社別の輸入の集約はなされておりますか。
  158. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 通産省といたしましても、自由化物資の各商社別の実績は把握しておりません。
  159. 小川国彦

    ○小川(国)委員 昭和五十五年九月の公正取引委員会による「冷凍水産物の流通実態について」という調査報告書によりますと、昭和五十二年のエビの輸入量、輸入額は、数量では商社において四五・七%、大手水産会社で二四・二%、これで六九・九%ということですから、約七割が大手の商社や水産会社で輸入が行われておる。金額でも商社が四八・二%、大手水産会社が二三・六%ですから七一・八%ということで、数量、金額とも七割近いものが大手の商社と水産会社で、いわば買い占め輸入が行われているということが公取の調査資料に出てくるわけです。  そうすると、当然ここで寡占による価格支配というものが行われるおそれがあるわけであります。水産庁は輸入魚の中で一生懸命価格の安定ということもお考えになっておると思うのですが、こういう形の中では、寡占支配による魚の高値操作なり高値維持が行われるという懸念があるわけであります。ここについて積極的に取り組むお考えがないのかどうか。  さらに、このエビの流通については、公正取引委員会においても実はこの流通経路の図面をつくりたかった。事実つくった。しかし、非常に複雑怪奇で、エビの流れというものが単純一様なものではない。品ぞろえと称して幾つも幾つもいろいろな形で取引の段階を経るために高値になってしまっている、こういう状況があるわけです。ですから、輸入商社、輸入水産会社の段階での状況把握、それから流通経路における状況把握、こうしたものが水産庁なり通産省でなされないと、価格安定ということを幾ら口で叫んでも、実態の把握がないところに安定の手だての打ちようはないのではないか、こう思うわけですが、その点についてのお考えをもう一度お伺いしたいと思います。
  160. 今村宣夫

    ○今村政府委員 私たちは需給を把握いたしますときに、たとえば輸入はどういうふうな形で行われておるか、それはたとえばいま御指摘のありました大手で大体どのくらいやっておるかというような、ヒヤリングといいますか、聴取というのはやりますけれども、しかし商社ごとに輸入を幾ら、どういうふうにやっておって、それをまた公表するとか公表しないとかいうふうなことは考えておらないのでございます。需給の全体としてどういう輸入がされておるかという状況のヒヤリングはもとよりやっております。  私は、エビについて特定少数の商社が価格操作をやっておるというふうには思っていないのですが、もし具体的にそういう御指摘があれば、もちろん一応調査をいたしてみますけれども、現段階において、エビが特定の商社によって価格支配が行われておるというふうには理解をしていないところでございます。
  161. 小川国彦

    ○小川(国)委員 エビ全体の消費量の中で七割近くが輸入である、しかもその輸入価格が、先ほど申し上げたように年々上昇傾向をたどってきている、こういうことでありまして、消費量があるから辛うじて支えられているようなものの、やがてはエビなども魚離れの要因の中に入ってくるのではないか、こういう懸念を感ずるわけであります。そういう点で私は、この点についてはもう一歩突っ込んだ流通の実態把握、輸入の実態把握というものを望みたい、こう考えるわけであります。  次にイカの問題であります。昭和五十三年の統計で見ますと、魚の輸入総額が六千七百六十四億五千五百万のうちの六%、四百二十五億九千万という、イカもエビに次いでかなりな輸入額になっております。  これも、エビのように価格の推移を見ますと、生鮮、冷凍のイカで、昭和四十五年ころにはキロ当たりの単価が二百五十九円でございましたものが、五十五年の段階では五百九円、ほぼ倍近い価格になっております。しかも、この単価も、やはり十年間の流れを見ますと、昭和四十五年二百五十九円から、四十八年ころには二百八十一円、四十九年には一挙に四百十円、五十年には五百一円、五十一年五百八十四円と、大変な急坂を上るように価格上昇をしてまいりまして、五十五年現在五百九円という、やはりイカも高値安定の形に輸入価格が落ちついている、こういう状況でありまして、国民が好むと好まざると、マグロに始まってエビ、イカという輸入魚によって魚の食生活というものを支えている現状の中では、やはりイカにおいてももう少し価格引き下げのための輸入ないしは流通過程における努力というものがあっていいのではないか、こう思うわけであります。  特にイカ輸入の推移などを見ましても、昭和五十年を一〇〇とすると、数量では五十四年で二六五、金額では二七〇と、二・七倍というイカ輸入の伸びの状況にあるわけでありまして、この点でもう一つ、イカの問題もエビとあわせて実態把握に努める必要があるのじゃないか。特にイカの場合には自由品目とIQ品目と二つに分かれておりますけれども、この輸入の自由品目の数量が幾らであるのか、それからIQ品目の数量が幾らであるのか、これも判然としないような状況にありますが、この点に対する分類の検討はなされておるのでございましょうか。
  162. 今村宣夫

    ○今村政府委員 IQの水産物につきましては、通産省が輸入割り当てに際しまして通関報告を聴取することにしておりますので、その報告により輸入数量の把握に努めておるというふうに承知をいたしております。  イカにつきましては輸入統計分類番号がAAのものとIQのものが同一の区分になっておりますので、御指摘のようにそれぞれの輸入数量の内訳は明らかではございません。このため水産庁としましては、従来から関係省庁にこれを分類するように申し入れてきたところでございますが、新たに分類番号を設けてイカの仕分けを行うということになりますと非常に作業量がふえる、あるいはまた、イカをやるとほかもまた要望が次々と出てくるのじゃないかというようなことで、まだ実現を見ておらないわけでございます。水産庁としては、御指摘のようにIQのものとAAのものとを分離して数量を把握するという必要があることを感じておりますから、関係省庁にそういう要望をさらにいたしたいというふうに思っております。
  163. 小川国彦

    ○小川(国)委員 通産省はこの点についていかがでございますか。
  164. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 イカにつきましてはモンゴウイカを除きましてIQにしておりまして、その割り当てに際しまして輸入実績の報告を求めております。その結果につきましてどのように入っているかということでございますが、この輸入実績につきましては各割り当てに当たっての参考資料にするとか、各商社が実績を割り当てどおりちゃんと入れているかどうかということを監視する材料として使わせてもらっております。
  165. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうじゃないのですよ。イカの自由品目と割り当て品目とが一緒になって入ってきているので、せっかく割り当て制を実施していても、それがどれだけの数量かということが判然としないということでは行政的な目的が果たされないではないか。いま水産庁の方では、これの分類を望んでいる、こう言っておられるのです。通産省としてはいかがですかということなんです。
  166. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 イカのうちでAA物資とIQ物資がどのように入っているかということを的確に把握するためには、何としても関税局でやっております分類による統計が一番正確じゃないかと思いますが、現在では分けてないわけでございますので、そういうかっこうで分けられて把握されることは、私たちとしても行政上非常に参考になるのじゃないかと考えております。
  167. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大蔵省の関税局に伺いますが、その分類をなさるお考えがあるかどうか。
  168. 忠内幹昌

    ○忠内説明員 わが国の関税の統計品目表と申しますのは、関税協力理事会の品目表条約に基づく番号でございまして、これは四けたでございますが、これによりまして、国連の統計表及びわが国独自の必要性に基づく細分を加えた七けたの番号で分類し作成されておるわけでございますが、この統計品目表の分類体系と、貿易の規制を目的とするただいま先生おっしゃいましたようなIQとか輸入貿易管理令の分類体系とは、目的が異なるということで必ずしも一致していないという場合が生じておるわけでございます。  従来より、そういう輸入割り当て品目の統計上の特掲の問題につきましては、物資所管省からの要望を受けまして慎重に検討いたしておるところでございまして、ただいま先生御指摘のありましたイカの問題につきましても、私どもといたしましては慎重に農水省などの意見を聞きまして検討しておる、そういう段階でございます。
  169. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この点についてはできるだけ早く関係省庁の意見が一致されることを要望しておきたいと思います。  そこで、大臣がお見えになりましたので、情報公開制度というものと情報公開法制定という動きがあるわけでございますが、そうした世界的な動向と日本の方向、こういうものをにらんで日本の実態というものを大臣はどういうふうにお考えなのか。特に農林水産省の所管の中で、情報というものがもっと国民に公開されなければならないいろいろな統計なり数字なりデータなりおありになると思うのでありますが、この情報公開制度に対して農林大臣はどういうような御所見を持っていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  170. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 日本の政治の仕組みは主権在民ということであるわけでありまして、行政府も立法府も司法も国民のために存在しているわけであります。したがいまして、できることであれば国民の不利益にならない、言いかえれば社会公共のために不利益にならないということはすべてこれ主権者に報告、通報する責任があるのじゃないかという考え方を私は常に持っておるわけであります。  したがいまして、できる限り国民の不利益にならない——たとえば農林省で言いますと構造改善局の圃場整備事業でありますとか、あるいは用排水路とか、あるいは灌漑用のダムをつくるとか、そういうときの入札の関係のいろんな書類がございますね、こういうのを公表しろと言われても、ちょっとこれは公表することによって国民にプラスにならない、こう思いますので、そういうのはやはり秘というような形で公開はしてない面も行政遂行上は存在するわけでございますから、そういうものは秘なり極秘なりということでやる。たとえば漁業交渉をやっておるわけでありますけれども、そういう電報、いろいろな経過あるいは訓令を出すというようなものも余り公になってしまったのでは、これは国民のための外交折衝もできないわけでありますから、そういうものもしばらくは秘としておく、こういうことで、そういうもの以外は、統計でありますとかあるいは決定された行政内容でありますとか、そういうものは公開すべきである、こんなふうに私は考えております。
  171. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣の基本的な考え方は承ったわけでありますが、私はその考え方をさらに具体的な問題に当てはめてお伺いをしたいというふうに思うわけであります。  これは事務当局でも結構でございますが、水産物の中でIQ品目といいまして輸入割り当てになっている品目、これはイカ、スルメ、雑魚と言われるものの中ではアジ、イワシ、タラ、サバ、そのほかニシン、ブリ、貝柱、タラの卵、干しノリ、コンブ、干しするめ、こういうようなものが水産物では輸入割り当てになっているわけです。ところが輸入割り当ての内容を公表してないわけです。これについては従来国会の中で、これを公表せよ、こういう要求はなかったのかどうか、まずその点から伺いたいと思います。
  172. 今村宣夫

    ○今村政府委員 現在IQ物資につきましては、品目別の割り当て総量とそれから割り当てを受けている人の名前というのを公表いたしております。割り当てを受けておる社別の割り当て数量というのは公表いたしておりません。
  173. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この割り当て制度考え方というものはどういうところに根拠を置いているわけですか。
  174. 今村宣夫

    ○今村政府委員 IQとして残しておくということは、一つにはやはり国内の重要な漁業種類でありまして、これを保護しなければいけないという観点一つと、それから一般的に申し上げますならば、なお競争力が少ない、そういう二つの要素ではないかと思います。そういうIQの割り当てにつきましては、国内の生産の動向を見ながら不足する部分を外国から入れてくるという考え方に基づいて割り当てを行っていると承知をいたしております。
  175. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それでは具体的に私イカの輸入割り当てについて伺いたいのですが、昭和五十三年のイカの中の干しするめ、この輸入割り当ての数量は、水産庁の資料によれば韓国産を除いて昭和五十三年千五百九十四トンの輸入があった。それから通産省の昭和五十三年の輸入割り当ては、商社割り当てが六百十トン、需要者割り当てが六百十トン、計千二百二十トンとなっているのですが、この数字はそのように理解してよろしゅうございますか。それぞれの担当から御答弁願いたい。
  176. 真板道夫

    ○真板説明員 お答えいたします。  本件は通産省の方から公表されておりますけれども、先生のおっしゃるとおりだと思います。
  177. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、この数字がそのとおりとおっしゃられたわけでありますが、水産物の流通統計年鑑では千五百九十四トンの輸入があった。ところが通産省の商社割り当ては千二百二十トン、こういうことになっているわけですね。そうするとここの数字は食い違っているわけでございますが、これはどういうわけでございましょう。
  178. 真板道夫

    ○真板説明員 水産物の輸入割り当ては、物によりまして上期、下期という二期に分けておりますし、また物によっては年間一本の割り当てというようなこともしているわけでございますが、いずれにしましても、その輸入割り当てを受けましてから輸入できる期間が一定期間ございます。長ければ十カ月ないし十一カ月ということがございます。したがいまして、仮に下期に割り当てられた分につきまして、これが十二月ということになりますと当該年の間に輸入されるというわけではなくて、次の年にスリップするわけでございます。このような輸入割り当てとそれから現実の輸入数量には、タイムラグによりまして若干の相違が出てくるのはやむを得ないかと思っております。
  179. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういうことでいろいろ現実には割り当て数量というものを通産省が決める、しかし実態としてはこの数字が違って出てくる、こういうことが出てくるわけであります。そうすると、どういうところでそういう原因が起こったのかということを私どもは究明していかなければならないと思うのですが、まず、いわゆる干しするめの輸入に当たっては三つあるわけでございますね。商社割り当てというのと、それから最近一本になりましたが韓国割り当てがあり、もう一つは実需者割り当てがあるわけなんですが、そのうちの商社輸入割り当ての商社別の数量、これは水産庁は知っておられますか。
  180. 真板道夫

    ○真板説明員 本件につきましては通産省が所管しておりますので、通産省の方からお答えいただければ結構だと思います。
  181. 小川国彦

    ○小川(国)委員 通産省に答弁願います。
  182. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 するめの輸入割り当てを私の課でやっておりますので、各社別の資料は持っております。
  183. 小川国彦

    ○小川(国)委員 水産庁長官に伺いますが、なぜ水産庁はこの割り当てを知らされないのですか。
  184. 今村宣夫

    ○今村政府委員 商社別の割り当て数量は私の方にも通知を受けておりますが、商割り部分の扱いは通産省がどういう扱いをするかということにかかっておるわけでございます。
  185. 小川国彦

    ○小川(国)委員 水産庁は商社の割り当て部分の総枠は御存じでしょうけれども、どういう商社名でどういう商社に何トンの割り当てがあったか、こういう事実も御存じでございますか。
  186. 今村宣夫

    ○今村政府委員 商社割り当て部分は幾らであり、実需者割り当て部分は幾らであるということは聞いておりますけれども、商社割り当ての商社別の割り当て数量というのは聞いてないそうです。
  187. 小川国彦

    ○小川(国)委員 具体的な中身は水産庁は知らされていない、こういうことでございますね。
  188. 今村宣夫

    ○今村政府委員 そのとおりでございます。
  189. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それでは通産省に伺いますが、商社別の輸入割り当て数量を知っているのは通産省のどういう方々でございますか。
  190. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 担当しております私の課と、あとは行政機関で必要があって照会があったところに個別に必要に応じて知らせるという情勢になっております。
  191. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私の課とおっしゃいましたが、そうしますと、農水産課の課長さんがいまおいでになっていますが、課長さん以下課員の何名の方が知っていらっしゃるわけですか。それから同時にそのことは、農水産課が貿易局に所属するのであれば、貿易局長さんも御存じになるのか。およそ何名の方がこのことを知っていらっしゃるのですか、その役職名と人数を挙げていただきたいと思います。
  192. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 的確な数字は把握しておりませんが、十名以下であろうと思います。
  193. 小川国彦

    ○小川(国)委員 知っている方は十名以下。この方だけがこの情報を独占しておって、そして先ほど来申し上げているように、たとえばイカの輸入について自由品目と割り当て品目がある。それが統計上一緒になっているために大変に不便である。これを分離することを要望するというふうに水産庁長官はおっしゃられた。あなたの方もこれが分離されることを税関に望む、こうおっしゃられた。そうおっしゃられたその反面において、あなたの方はこの商社の輸入割り当て数量というものを決定している機関である、その決定している機関が十名以下の人しかこの事実を知らなくて、そしてその結果については今度は税関で知りたい、こういうふうにおっしゃっているわけですね。私は、このイカの輸入割り当て数量をなぜ通産省貿易局の農水産課の十名以下の人だけが知っていなければならないのか、その点伺いたいと思います。
  194. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 先ほど御説明しましたように、行政上の必要があるということで照会があるところについては、その事情に応じてお知らせし得ると考えておりますので、行政上の要請のある範囲が現在ルーチンで言えば十名以下というふうに判断しておるわけでございます。
  195. 小川国彦

    ○小川(国)委員 行政上の必要があるところはあなた方課長さん以下十名以下であって、水産庁はもとより国会がこの報告を求めた、それを必要としている、こういう場合に、あなた方はこれを公表する責任を負わないのですか、またそういうことを義務としてお感じになりませんか。
  196. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  私ども通産省で主管しております輸入管理の一般的な問題かと存じますので、その立場にございます私から御答弁を申し上げます。  いま先生の御質問は、主としてIQ物資につきまして、割り当てを受けている個々の業者の割り当て数量を公表できないかということかと理解いたしましてお答え申し上げます。割り当て物資の、個々の業者が受けます割り当て数量につきましては、確かに一面、割り当て物資でございますので、割り当てを受けます輸入業者の方々はある種の特権的な地位を得るわけでございまして、その中身が明らかにされることが望ましいという要請もあろうかとは存じますが、他面、何よりも、個々の業者が受けます割り当て数量は、個々の業者にとりましては自己の商取引に絡みます重要な情報でございまして、これを役所の立場から明らかにすることは、それぞれ商行為を行います輸入業者にいろいろな影響を及ぼすことでございまして、いわば個々の商取引の内容を役所が明らかにしてしまうという結果になるわけでございますので、従来から個々の業者に対する割り当て数量は公表いたさないことにしておるわけでございます。  さらに追加をして申し上げれば、そういった数量を明らかにいたしますことは、それぞれの業者が外国の輸出先と商取引の交渉を行います上で、その取引のポジションを弱くすることになりかねませんし、あるいはどの業者が幾ら持っておるという情報が明らかになりますと、逆にある程度大きな数量を持っておる人たちだけが簡単に話し合って、一種の買い占めあるいは売り惜しみ的な行為に出ないとも限らないといったような心配もあるわけでございます。  それからさらには、従来からの経験でございますと、何らかの事情で個々の業者の割り当て数量が知られた場合は、お互いに競争をしておる業者間の問題でございますので、自己の数量と他の業者の数量とを比較考量いたしましていろいろな不平不満を申し述べてくるようなことがございまして、割り当て事務が相当混乱を来したような経験もあるやに聞いておるわけでございます。したがいまして、そういった悪影響を考えまして、私どもは、従来個々の業者に対する割り当て数量の公表はいたしておりません。  さらにこのことは、最近東京ラウンドの結果といたしまして、ガットで、輸入管理につきましてなるべくその輸入管理の実態を明らかにしようと、先生御質問の御趣旨のようなライセンシングコードというものができたわけでございますが、そのコードの中にも、割り当て基準でございますとか、あるいは全体としての割り当て数量を公表することは国際間の約束でなるべく行っていこうということになっておりますが、個々の業者の割り当て数量まで公表するべきであるというふうにはなっておりません。したがって、個々の業者の割り当て数量を公表しないということは、ある程度国際的にも認められた慣行ではないかというふうにも考えております。  以上のような事情から、私どもは割り当て物資につきまして、個々の業者の割り当て数量については公表をいたしていないのが現状でございます。  答弁が長くなって恐縮でございますが、先ほど私どもの農水産課長からお答えいたしました、大蔵省の通関統計上イカにつきまして別の分類ができるのが望ましいと申し上げましたことは、これは総体の問題でございまして、しかも通関統計は公表して一般に入手可能な統計となっておるわけでございますので、その場においてそういうものが得られればいろいろな面で便利かということを申し上げたのだと了解いたしておりまして、あくまでも総体の数量というふうに御理解を賜りたいと存じます。
  197. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間がございませんから少しピッチを上げて具体的なことだけお伺いしていきますから、ひとつそれについて簡潔にイエス、ノーで御答弁いただきたいと思うのです。  私はいま干しするめについて聞いておりますから、昭和五十三年の干しするめについては、商社割り当てを受けた業者は九十三業者で六百十トン、需要者割り当てを受けた者は十八業者で六百十トン、韓国産の商社割り当てを受けた者は三十四業者で三千トン、こういうことになっておりますが、このとおりでございますか。
  198. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 いま先生のお話しになったのは、早かったものですから十分フォローできなかったと思いますが、するめの割り当ては、五十三年度につきましては、商社割り当てのものは韓国を除きまして六百十トン、商社の数は九十三社でございます。それから……
  199. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間がありませんからよろしいです。いま九十三社、六百十トン、商社割りの私の申し上げた数字と合っておりますから、以下も合っておる、こういう前提で議論を進めたいと思います。  この商社割り当てを受けた九十三社、六百十トン、これの社名と所在地、各社の割り当てトン数を国会が資料請求した場合に、あなた方は、先ほどの農水産課長の御答弁では、行政その他に必要がある場合には発表する、こういうふうに答えておりますが、これを報告することはおできになりますか。
  200. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  国会からの御要求がございましたら、各方面と御相談いたしまして、いかように扱うか御返事申し上げたいと思います。恐縮でございますが、いま即答いたしかねます。
  201. 小川国彦

    ○小川(国)委員 何か国会から要請があったら相談をして態度を決める、いわばケース・バイ・ケースのお答えなんですね。それではもう一つ突っ込んでまいりますが、この商社割り当てを受けた業者が、九十三社六百十トンが、皆さんが割り当てをなすったとおりに実質輸入輸入実績として行ったかどうか、その確認は皆さんおやりになっていらっしゃいますか。
  202. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 干しするめの商社割り当ては、過去の割り当てに基づいて輸入した実績に応じまして次回の割り当てを配分するということを原則にしておりますので、どれだけ輸入したかは把握できるようになっております。
  203. 小川国彦

    ○小川(国)委員 あなたの方はその輸入実績についての集計はない、こういうふうに私ども承っているのですが、いまのお話でございますと、輸入割り当てをしてそれが証明書を交付され、銀行の輸入承認を受け、それから大蔵省に輸入申告をして、そして輸出者の送り状をもらって輸入した、この輸入実績の報告というものは皆さんの方で全体きちっと集約していらっしゃいますか。
  204. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 先ほど御答弁申し上げましたのは、AA物資である貨物についての商社別の輸入実績は持っていないということを申し上げました。IQ物資であるいまの干しするめにつきましては、各社別にどの割り当てに基づいて幾ら入れたかというのは持っております。
  205. 小川国彦

    ○小川(国)委員 皆さんの方は、通産省の五十四年二月二日付の通商弘報の「「干しするめ」の輸入割当てについて」という資料によると定期的に報告を受けなければならないのだけれども、一部業者から報告をとっているものの全体の集約はなされていない、こういうふうに伺っているのですが、あなたの方に提出を求めれば、この輸入割り当てどおり輸入されたという輸入実績の報告というものは通産省として全部そろっている、こういうふうにもう一遍確認してよろしいのですか。
  206. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 うちの担当が申し上げましたのは、輸入発表に基づきまして干しするめでありますと三カ月ごとに集計して出してもらうということでございますが、これについては、担当が御説明したと思いますが必ずしも一〇〇%報告がない場合もありますので的確な報告にならないかもわかりませんが、割り当ての基準になります各社別にどれだけ輸入したかという数字についてはぴちっと把握しております。
  207. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ちょっとそこのところが明快でないのですが、あなたの方の通商弘報によると「この輸入発表により輸入割当てを受けた者は、当該割当てを受けた数量を輸入通関するまでの間輸入の有無にかかわらず、三月毎に集計し翌月十日までに報告書一通を貿易局農水産課へ提出すること。」「報告書の提出を行わなかったときは次回より割り当てを行わない場合がある。」こういうふうに書いてあるのですが、この三カ月ごとの集計というのはあるのかないのかを聞いているのです。
  208. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 私の御説明申し上げましたのは、同じ輸入発表で申請者の資格の欄に、ここで先生お持ちのもので言いますと、昭和五十五年二月一日から五十六年一月三十一日までの間に干しするめを輸入した実績を有する者ということで、その実績者については実績の報告を求めまして、その実績を勘案して割り当てをするということになっておりますので、それに基づく報告についてはぴしっと数量も把握しているということでございます。
  209. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この点はまたくどくなりますから後ほどに議論を譲りますが、私は最終的に皆さん方が輸入割り当てをした商社名を実は先般手に入れて持っているのです。しかしあなた方がこの輸入実績のとおりに本当に割り当てをした社が、干しするめをその社で輸入したのか、それからそれがどういうところに売られたのかということを本当に把握しておられるのかどうか。  それから特に干しするめの中には、韓国産をやっていた社というのは、下関あたりに本当に電話一つ一つしかないようなところがあって、しかもこれは下関辺の相当有力な政治家がいろいろ割り当てをとってやったので、その辺だけに割り当てを受けた業者が集中していて、机一つ電話一本しかないような業者もある、そして割り当てを受けた権利がペーパーとして売られている、そういうことも承っているのですが、あなた方は、この割り当てられた社がその所在地の場所にどういう事務所を持ちどういう業務を行っているか、たとえば労働基準監督署が事業所を回って実態を把握するように、そういう把握はされているのか。この皆さんが商社割り当て、実需者割り当て、韓国割り当てをなすった会社の実態把握というものを、わずか十名の方でやれるのかどうか。そこまで、ペーパーの上では仕事はできると思いますよ、輸入確認をして、事務所の上でデスクワークで確認はしてできるだろうけれども、実際それがどういうふうに輸入してどういうところに売ったか、本当に事務所が実在して実際どういう業務を行っているか、そういう確認は十人の方でできるのですか。
  210. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 私たちは実際にどのように輸入しているかということにつきましては、業者からの報告、エビデンスに基づいて確認をしているわけでございます。いま先生御指摘の実際に各商社の店に行ってやっているかどうかということまでなかなかできかねる実情でございます。
  211. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間が参りましたので私、水産庁や大臣に伺いたいのですが、こういうように通産省がわずか十人の人しか割り当ての内容というものを知らない。しかもペーパーの上では確認をしている、しかし実態が、それぞれの業態がどうであるか、私が見ても、この商社の名前と人名を見ただけで大変にいかがわしいようなものが、そう言っては失礼だけれどもあると思うのですよ。恐らく皆さんがこの会社に対して手紙を出して業務報告を求めたことが一回でもおありになりますか。
  212. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 私の記憶では業務報告というのを特にとったことはございませんが、話題になるといいますか、問題になります割り当て品目については一々個別に当たった事例もございます。その必要性ということを勘案して、必要であればほかの関係者の応援を求めてやることもやらざるを得ないのじゃないかと思っておりますが、現在するめについてそこまでやったかということになりますと、私が就任してからは特にやっておりません。
  213. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この割り当ては特定の人に与えられた利権なんですよ、はっきり申し上げれば。この一、二年の状況は別にして、国内産のイカの値段に比して国際価格は非常に安い。そういうものを割り当てを受けた業者は、これは利権を与えられているわけですよ。その利権が本当に国民の役に立っているかどうか。大臣が最初に言ったように、この情報が公開されることによって主権者たる国民の役に立つ、そういう考え方からいけば、あなた方はわずか十名の人でこの情報を独占して、そうして割り当てをして利権を与えた。そうして先ほどくどくどと輸入課長さんがおっしゃいましたけれども、業者の特権的地位である、それからその業者の営業に影響を及ぼす、そして数量を明らかにすることは外国との取引を弱くする、申し上げては悪いのですが、韓国産の割り当てを受けている三十四業者の資本金とか実態をお調べになればわかるように、零細な業者ですよ。そういうような零細な業者の実態の中で、数量がわかったから外国の取引が不利益になる、こういう会社は韓国産の中で何社ございますか。資本金別にこの三十四業者の実態を把握していらっしゃいますか。
  214. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 各商社の中身について把握しているかどうかにつきましても、申しわけございませんが、現在手元に資料がございませんので、帰ってみないと御返事できない実情でございます。
  215. 小川国彦

    ○小川(国)委員 帰ってみたら資料で御報告できますか。
  216. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 必ずしも自信ございません。
  217. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私はこういうところに商社割り当ての問題があると思うのです。国民は国内のイカがどう消費されていくかということを知っていると同様に、輸入されたイカがどういう経路を経て国民の手に渡っていくかということを知る権利があると思うのですね。それがわずか十名の通産省の役人の人たちがその情報を、利権ともいうべきものを与えるという情報、それだけに国民の目の中でこれは明らかにされていかなければならないのですよ。そういうものが独占的に支配されて、国会に対してもケース・バイ・ケースで答えなければならないというようなことに私は大きな行政の問題があると思う。これはひとり水産物だけじゃない、この前私が農産物のパイナップルの問題やオレンジの問題で質問主意書を出しても、通産省の農水産課の答えは、企業の秘密のために答えられませんという一片の答えしか出てこないのです。農産物しかり水産物しかりです。  そういうような情報というものは、農林大臣は通産大臣ではございませんけれども、やはり鈴木内閣の大臣という立場から見れば、こういうあり方は当然疑問を持たれるのではないかというふうに私は思うのです。情報公開法の制定ということが世界の動向の中で日本でも求められているときに、先んじてやはりこうしたものを改革していくお考えを私は農林水産大臣にも持っていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、最後に農林水産大臣のこれに対する所見を承りたい。
  218. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 いまの通産関係の問題でございます。通産省は通産省として省内で文書の管理規則をつくっておられるのだろうと思います。農林水産省におきましても文書管理規則というものをつくりまして、これに詳細に基準等も書いてございまして、それに基づいて関係局長あるいは課長が判断をして、公表すべきかあるいは秘文書とすべきかということを決めるようにいたしております。  したがいまして、通産のことでございます。国務大臣としてということでございますから、通産省は通産省としての細々した管理規則を私承知いたしておりませんので、いまここでその結論をどう申し上げていいのか、その基礎を持たないわけでございますが、いずれにいたしましても、やはりただいま担当課長から綿々と話がございましたように、営業関係の秘密にも通ずる、あるいは割り当てした数量がそれぞれの相手方にわかってしまえば、いろいろな価格的な面での取引上の問題も生ずるというようなことがあろうかなというような感じもいたしますので、担当課長から答えたのがその辺かなという感じを持ちますけれども、これも私ももう少し通産省の方、勉強してみませんと、いいころかげんなことを申せませんので、感じだけ一応申し上げておきます。
  219. 小川国彦

    ○小川(国)委員 どうも所管が違うのでちょっと歯切れが悪いようでございますけれども、最後に通産省の方、この問題について通産省として、これは省庁の中にはこうした問題が山積していると思うのですよ、これは一例にすぎないと思うのです。しかしこれは非常に重大な問題で、こうした情報を国民が知る、その中で行政が正確に、適正に、公正に行われていくということを期さなければならない。先ほど大臣が言ったように、主権者たる国民のために行政があるわけでありまして、その中でもちろん業者を維持するために最小限度守らなければならない点はあると思いますが、こうしたきわめて利権的な行政に堕しやすい問題を、一部の関係者だけの情報として持つのではなくて、国会の要請、国民の要請があればそういうものを明らかにしていくという考え方、姿勢が必要じゃないか、これについての検討の考え方だけでも最後に述べていただきたいと思います。
  220. 横山太蔵

    ○横山説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、本件は、先生も御指摘のように特権的な地位を与えられた、そういう立場と、もう一つは個々の商取引に伴います個別業者の秘匿事項と申しますか、そういったものとの兼ね合いの問題であろうかと思います。その辺のバランスをいかにとってまいったらよろしいかということは、私どもの現在の立場は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、おっしゃるような情勢もございますので、必要に応じまして検討することはやぶさかではございません。  一例を申し上げれば、個々の業者の数量ではございませんが、従来は全体の割り当て数量そのものも実は公表しておりませんでした。しかし、それを最近では公表するようにいたしております。さように、私どもの持っております種々の情報をどこまで公表できるかということは、いま申しました例からもおわかりいただけますように、絶えず検討をしておるところでございます。
  221. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一点だけ言いますが、これが現実の問題であればいろいろ問題があるにしても、何年か経過して過去のものになればこれは公開してもいい時期が来るのじゃないか、いま現在することによって問題があるとすれば、何年か経過後に公表してもいいという考え方も持てるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  222. 横山太蔵

    ○横山説明員 新たな問題でございますので、私ちょっと即答いたしかねますが、新しい課題として検討させていただきたいと存じます。
  223. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それでは、この問題はいずれにしても今後の検討課題ということで、できるだけ早い時期に私ももう一度御質問させていただきますので、通産省の方でも十分御検討願って、こうした問題に対してもう少し納得のいく方針が示されるように要望して、質問を終わりたいと思います。
  224. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 次回は、来る十四日火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十七分散会