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1981-03-24 第94回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月二十四日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 田邉 國男君    理事 菊池福治郎君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 福島 譲二君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       逢沢 英雄君    上草 義輝君       小里 貞利君    亀井 善之君       川田 正則君    岸田 文武君       北口  博君    北村 義和君       近藤 元次君    菅波  茂君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    丹羽 兵助君       保利 耕輔君    渡辺 省一君       小川 国彦君    串原 義直君       島田 琢郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    日野 市朗君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    近藤  豊君       山原健二郎君    木村 守男君  出席国務大臣         農林水産大臣  亀岡 高夫君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         水産庁次長   山内 静夫君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部審         査統括官    相場 照美君         警察庁刑事局保         安部保安課長  内田 文夫君         大蔵省関税局監         視課長     田中  史君         農林水産省経済         局統計情報部長 関根 秋男君         通商産業省生活         産業局通商課長 末木凰太郎君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     寺前  巖君     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁船損害補償法の一部を改正する法律案(内閣  提出第三一号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起  草の件  農林水産業振興に関する件(畜産蚕糸問題  等)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  3. 新盛辰雄

    新盛委員 本案については、昭和五十一年十月から漁船船主責任保険臨時措置法に基づいて試験実施をしてきた漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険実績等を踏まえて、本年十月からこれらの保険漁船損害等補償制度の一環として確立をしようという法改正でございます。これ自体についてはとやかく申し上げることもございませんが、これからの漁業を取り巻く諸問題を考えてみて、きわめて有効適切な措置を講じなければならない問題もあるわけで、特に漁業関係保険共済制度全般にわたって一応確認すべきところは確認をしていきたいと思います。  それで、水産政策の全体的展望につきましては、前回大臣に対してその所信表明を含める質問を展開しましたし、その後の現状認識もそう変わっているとは思いません。したがって、もうその辺は省略しまして、特に今回のPI保険の問題、これまで試験実施をやってきたわけでありまして、これから新しく本格実施に入るわけでございますが、この認識について、いわゆるこれからの漁業情勢を考えながら、そしてまたこうした保険充実を、あるいは共済制度をどう拡充していくか、あるいはその位置づけについて大臣お答えをいただきたいと思うのです。
  4. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 いよいよ本実施ということで、今度法案の御審議をいただくことにいたしたわけでございます。  漁業に関する政策的な保険共済制度は、とりわけ中小漁業者相互扶助の精神に基づいて、不慮の事故または異常の事象による損害をお互いに補てんをし、漁業生産の阻害の防止と経営の安定に資するということを目的としたものでありまして、経営安定対策あるいは水産資源の維持、増大、沿岸漁業などの生産性向上、そういう対策と相まって水産物の安定的な供給を図っていく、それによって水産振興を図り、漁業家生活の安定を期していくという上にきわめて重要な役割りを果たしているものと考えております。  また、今回のこの漁船船主責任保険は、沿岸海域の利用の高度化や世界的な環境保全思想の高まりのもとで、漁船所有者などが漁船の運航に伴って負担することのある責任または費用補てんをして、漁業経営の安定に資すると同時に、被害者の救済にも遺憾なきを期そう、こういう趣旨のものでありまして、内外におけるわが国漁船の信用を高め、外国水域における操業円滑化を図る上でも、今後この保険の果たすべき役割りはまことに大きなものを持っておる、こういうふうに認識をいたしておる次第でございます。
  5. 新盛辰雄

    新盛委員 次に漁船保険収支状況を見てみますと、たとえば船体保険普通保険勘定の場合、この五十四年度末までに約五十六億円の繰越剰余金が出ているわけであります。またPI保険損害率は五十四年度末まで約四〇%、これは十八億円の利益に相当します。積荷保険損害率は、五十五年末までに約六〇%、これは約十二億円の利益に相当するわけであります。  こういう状況で、利益が出ていることは結構なことですけれども、これは保険支払いに必要な準備金を当然積み立てなければならないのでありますけれども、この制度は、漁民にとってあるいは漁船船主にとりましても政策保険という位置づけになっているわけです。安易に漁船保険中央会に交付するやり方というのはいかがなものだろうか。それよりむしろ保険料の率の引き下げ、こういうことにした方がいいのではないか。そのことによって損害てん補の範囲の拡大、充実を図るというやり方保険本来の任務に立ち返るということでも。このことについて大臣はどういうふうにお考えになっておられるか。これは基本的な問題でありますから、ぜひお答えいただきたいと思います。
  6. 山内静夫

    山内政府委員 最近における漁船保険損得勘定でございますが、先生指摘のように繰越利益増加傾向にあるわけでございます。これは、昭和五十一年度以降危険率が物価の鎮静化等によって予想外に低下を示した、こういうことによりまして剰余金が累増してきている、こういう現実にあるわけでございます。  こういう問題に対応いたしまして、先生指摘のように、本来危険率の動向を見ながら保険料率を勘案する、こういう考え方から、昭和五十六年度から保険料率平均約七%引き下げていきたい、こう考えているわけでございます。したがいまして、今後多額の剰余金が生ずることは恐らくないであろう、こう考えているわけでございます。保険料率引き下げ等につきまして、先生指摘のように今後とも十分対応していきたい、こう考えているわけでございます。  船主責任保険料率の問題につきましても、試験実施期間中におきまして三回にわたりまして料率を下げたわけでございます。しかし、先生指摘のように十八億円、こういう剰余金がある関係で、試験実施から本格実施に移った段階におきまして約二二%、こういう料率引き下げを現在予定しているわけでございます。
  7. 新盛辰雄

    新盛委員 確かに、保険中央会の方へ剰余金を上げて、またそれで各種事業を行う、その仕組みの問題なのですけれども、これは四十一年で十二億円中央会へ交付しておるし、四十八年で三十五億円中央会に交付している。五十四年度はどれくらいになるのか、五十六億の剰余金が出ているわけでありますから。だから、いま保険料率引き下げということについて、それは配慮するという言い方で終わっているようでありますが、いまこの法律の最たる問題は、保険料率引き下げるのか引き下げないのか。これは、私どもとしては、中央会にどんどん吸い上げるのではなくて引き下げることに主体を置く。ある場合には、損害率が非常に大きくなる場合もあるかもしれませんが、いまの段階ではこうして現実剰余金が出ているのですから、この処置についてどういうふうにされるのか。  PIの場合、これは相当引き下げられる余裕があるやに思うのですし、船体の場合でもそういう面では、大蔵省等いろいろと事情はありましょうけれども、どれだけ引き下げられるかということについてここでぜひ明確にお答えいただきたいと思うのです。
  8. 山内静夫

    山内政府委員 漁船保険等の問題につきまして、政府の管掌する保険でもありますし相互保険である、こういうことから、いたずらに利益を累増させる、こういう方向はとるべき方向でない、こう考えているわけでございます。  先生指摘の問題につきまして、船体部分漁船保険につきましては、昭和五十六年度から平均約七%の料率引き下げ船主責任保険につきましては、試験実施から本格実施に移行した段階におきまして約二二%の料率引き下げを予定しております。
  9. 新盛辰雄

    新盛委員 私の計算では、これは損害率あるいは安全度を見ましてももっと引き下げられるのじゃないか。これからの剰余金あり方にもよるでしょうが、この料率、いま二二%あるいは七%の引き下げというふうに御回答ございましたので、それ以上に最善努力を払っていただいて、引き下げ率現実に照らして、営利主義じゃないとおっしゃっているのですから、そういうことにひとつ力を置いていただきたい。これからの問題としてぜひお取り組みをいただき、適正な料率引き下げ実施していきますようにお願いしておきます。  次に、これまでの付加保険料格差経営基盤強化という問題で、漁船普通損害保険の二十トン未満の漁船加入隻数による統計が出ております。皆さんもお手元に持っておられると思いますが、この中を見ますと、北海道南後志保険組合付加保険料率、これは一・三六%ですね。付加保険料率がそうなっています。そうすると、東北の宮城県の〇・二五、これはまさに差が五倍もあるわけです。こういうふうな格差については、事務費の問題もですけれども、特に隻数関係も出ますが、五十六年度の予算でも漁船保険付加保険料率適正化事業として約六億円組んであります。これは事業費関係であります。これは、これまでも何回か附帯決議でもしておるのでありますが、漁船保険中央会でも同様の事業を行ってきているのですけれども組合合併化問題と関係がございまして、どういうふうにしておられるのか。漁協関係の方は合併計画を立てているのですが、こちらの方は、保険組合の方は何らそういう対策を立てていらっしゃらないように見受けられますので、この点についてどういうふうに指導しておられるのかお答えをいただきたいと思うのです。
  10. 山内静夫

    山内政府委員 付加保険料格差の問題につきましては、先生指摘のように、非常に大きな組合、大きな組合といいますと非常に加入隻数が多い組合であるとかあるいは大型船がありまして一船当たりの単価が大きい、こういう関係付加保険料率が低くても付加保険料の額としては上がる、こういう組合につきましては低くなっているわけでございます。  それで料率格差、これは先生御承知のとおり非常にあるということについては遺憾なこととも考えているわけでございます。ちなみに申しますと、昭和五十年度におきまして全組合付加保険料率平均値が〇・六五%、こういう数字でございまして、その後五十四年度につきましては平均的な数字が〇・五九%、こういうぐあいに下がっているわけでございます。しかし組合間の格差、こういうものは必ずしも是正されなかった、これが現実であると思うわけでございます。  したがいまして、五十五年度まで行いました組合に対する事務費補助金という格差是正一つ方策に加えまして、昭和五十六年度以降につきましては付加保険料格差を是正するために約六億円という補助金を組みまして、付加保険料格差是正等につきまして強力に指導してまいりたい、こう考えているわけでございます。これを行いますと、現在の予定といたしましては、付加保険料につきましては平均値といたしまして〇・四九%に下がる、それから格差是正等につきましても、大と小の格差等につきまして七六%に減少する、こういう考え方に立っておるわけでございます。  付加保険料格差是正の問題につきましてそれ以外の方策といたしまして、現在政府といたしましては、要するに加入隻数、これが少ないために付加保険料が上がる、こういう観点から加入率とか付保率向上、こういう指導をしておるわけでございます。それから第二点といたしましては、事務合理化によりまして経費の節減を図る、こういうような指導もしておるわけでございます。  これ以外の問題といたしまして、組合合併、こういうことがいろいろ言われてきているわけでございます。過去におきまして組合合併問題につきましていろいろ論議が交わされたことは事実でございまして、水産庁としてもこの問題について重大な関心を払ってきたわけでございます。しかし、関係者といろいろ話し合いをした結果によりますと、従来漁船保険組合というものは過去の伝統もあり、それからかつ漁船保険組合地域都道府県行政機関地域と一致している、こういう点、あるいは地区の漁業者が現在の漁船保険組合と密接な連絡を保っている等、こういう長い伝統のもとになかなか府県を越えた合併が容易でない、こういう実態でございます。しかし、付加保険料格差是正、こういう問題に限って申し上げますならばやはり組合合併、こういうことも考えられるということから、今後この問題につきましても、わが方といたしましてもその推進十分努力を払っていきたい、こう思っておるわけでございます。
  11. 新盛辰雄

    新盛委員 せっかく四十八年に漁船損害補償法の一部改正をして、都道府県区域を越える合併の道を開いたわけです。だから、いまお答えになったのですが、いろいろとむずかしい問題はございましょうけれども、積極的にひとつ指導とお取り組みをいただきたい。組合経営格差というのはとりもなおさず組合員へのサービスの格差という問題ともつながるわけでありまして、政府合併計画を立てて推進していくという決意で、また漁業者の負担と受益の公平を確保していくのだという、そういう立場に立ってひとつ積極的にお取り組みをいただきたいと思うのです。まだこれも四十八年以降そのまま遅々として進まないというのは、やはりその取り組み姿勢に問題がありはしないか。ぜひひとつ御考慮いただきたいと思います。  次に、漁船保険中央会性格の問題についてぜひお聞かせをいただきたいと思うのですが、昭和五十一年の漁船船主責任保険臨時措置法でこの委員会論議をしました際に、本格実施に当たる組織については、漁船保険中央会あり方をも含めて速やかに検討しなさいという附帯決議をいたしました。いわゆる性格について明確にしなさいということで、したのでありますが、この本格実施に当たっても相も変わらず、この内容については試験実施の際と同じように、再保険者として事業団体としての性格を加えておられるわけであります。  本来、この漁船保険中央会指導団体であるというふうに私ども思うのでありますが、なぜ試験実施と同じようにまた事業団体性格をそのまま持たしているのか。これはどういうことでしょうか。せっかく論議をしましても、こうして試験実施をしたのですから、本格実施になったら変わってくるということでなければ、何らいままでやってこられたことについて性格の面においても明確でないというのは、これは怠慢じゃないかと思うのです。どうなんですか。
  12. 山内静夫

    山内政府委員 従来漁船保険中央会につきましては、法律規定によりまして指導団体である、こう位置づけられたわけでございます。たまたま船主責任保険試験実施におきまして中央会事業主体として再保険を行う、こういうかっこうで来たわけでございます。新たに船主責任保険本格実施に移す場合におきましてどういうぐあいに組み立てていったらよかろうか、こういうことが議論になったわけでございます。もちろん再保険をどこかでやる、こういう必要性がございますが、この場合にはやはり全国を統一的にやる必要がある、こういうことが第一点でございます。  全国統一という観点から申しますと、中央会であるとかあるいは政府、こういうことになりますが、試験実施の際におきまして漁船保険中央会が比較的スムーズに事業を行えた、なおかつ組合員間におきましていろいろ損害査定等におきましても十分公平にできた、こういうようなことから、中央会が行うのが妥当であろう、こう考えたわけでございます。もちろん業務繁閑等につきまして、政府が行う場合、こういう財政事情等の問題もございます。中央会が行う場合におきましては非常にそれが弾力的に対応できるし、過去の経験もあるし、こういう観点から、本格実施に当たりましては中央会を再保険団体と、こういうかっこう法律改正した次第でございます。
  13. 新盛辰雄

    新盛委員 性格としてはこれは中立機関的な事業だ、これまではそういうふうに位置づけされていたわけです。事故損害査定とか料率の算出を行う、指導事業としてこれまで漁船保険中央会というのは存在をしていた。しかし今回の本格実施では損害査定、そして同時に事業も一緒にやるのだ。査定支払いをやるというのですから、これは器用なこともできるものだと思うのですが、いろいろな要素はあったにしましても、公正な損害査定というのが行われるだろうか、これは漁業者皆さん、少し不安になってきているのじゃないかと思います。だからそういう面で、この性格の面で少し甘く考えておられるのじゃないか、中立機関としての性格をやはり明確に持たす必要があるじゃないか、そういうふうに私は思うのであります。  そういう中で、経理関係の諸規定を設けて検査監督強化を図るようになっているようであります。これもまた問題があるのですが、たとえば運用の面で、これは責任体制についてもあいまいでありますから、例の北海道事件が起こるのもむべなるかなであります。毎年一回常例検査を行うということが確立されておれば問題なかったのでしょうが、こういうことですから、中央会の内部にも常勤の監事、こんなものは置いてやらなければいけないじゃないか、こういうことも言われておるのです。結局事務執行体制というのが、査定もして、そして支払いもしなければならぬという、言うなら中立機関的要素一つも負ってないというところからやはり問題が出ているのじゃないかと思うのです。この点についてもう一回、どうするのだということについて明確にしていただきたいと思います。中立機関なのかそうでないのか、それだけでいいですから……。
  14. 山内静夫

    山内政府委員 漁船保険中央会全国元受け五十三組合の合同によってできている中央会でございます。したがいまして、一組合であるとかあるいは一漁業者の特段の利益を図る、こういうことは、中央会性格とかあるいは相互保険性格からあり得ない、こう考えているわけでございます。  なお、今後の中央会等に関しまして、事業を行う、こういう観点から、政府としてもいろいろの指導監督強化、こういう方向法律改正をお願いしているわけでございます。先ほど先生の御指摘常例検査も年一回行うような規定も織り込みまして、中立、こういう立場があくまでも守れるような方向政府といたしましても指導監督していきたい、こう考えているわけでございます。
  15. 新盛辰雄

    新盛委員 次に積荷保険についてお尋ねしておきます。  この積荷保険試験実施昭和四十八年から行われているわけです。私も当委員会でこの問題の議論に入っていろいろと提言をしておりますが、いまだに安定した制度ができない、これが現実でございます。本格実施に入らなければならないのでありますが、五年間の試験実施期間をまた延長したという現実からもう三年を経過しておりますが、いまどういうふうな経過をたどっておりますか。
  16. 山内静夫

    山内政府委員 積荷保険につきましては昭和四十八年十月に試験実施を開始いたしまして、同五十三年十月に試験期間の延長を行いまして現在試験期間中でございます。  積荷保険につきましては比較的大型船が被保険者になる、こういうたてまえから二百海里時代の影響を非常に受けやすいということでございます。御存じのように各国の二百海里設定によりまして、わが国漁業禁止区域設定であるとかあるいは入漁隻数の減であるとか、漁獲の制限、こういうことからなかなか従来の操業計画が立てられなくなったということから、積荷保険等につきましても保険設計について多少のぶれが出てきておる、こう理解しておるわけでございます。  このような変化は積荷保険収支につきましても影響を非常に与えておりまして、支払い金の純保険料に対する割合、損害率からいいますと、五十一年度が六〇%前後であったものが五十二年度には八〇から九〇、こういう大幅な上昇を示しておるわけでございます。したがいまして、こういう傾向等につきまして今後いろいろ見きわめまして、漁船積荷保険につきましても必要なデータが集まり次第、本格実施に移行させたい、こう考えておるわけでございます。
  17. 新盛辰雄

    新盛委員 ひとつ、これからの本格実施に向けて最善の御努力をいただきたいと思います。  次に、一元化問題について、漁災制度改善という全般的な問題について触れておきたいと思います。これも五十三年の積荷保険法改正の際に私どもの方から委員会附帯決議として出しました。統合、一元化実施について前向きに検討を加えること、こういうふうに決議をしたわけでありますが、五十二年から五十四年までの三年間に五府県秋田県、京都府、三重県、徳島県、熊本県、ここで保険共済共同推進センターというのを設置して、一元化に向けていろいろと実態に触れていくということで試験事業を行ったわけであります。この結果はどういうふうになったでしょうか。一元化の問題について漁災制度を含めて御答弁いただきたいと思います。
  18. 山内静夫

    山内政府委員 保険共済業務の問題につきまして一元化問題がいろいろ国会におきましても附帯決議等で御要望されたわけでございます。水産庁といたしましてもこの問題を真剣に受けとめまして、自来水産庁の中におきまして検討会等を開きましていろいろ議論を闘わせたところでございます。その段階におきましてもなかなかはっきりした結論が出ず、こういうことから、先生指摘のように昭和五十二年から三カ年にわたりまして秋田県外四府県におきまして保険共済共同推進センター、こういうものを設けて実際論を勉強しよう、こういうたてまえになったわけでございます。  この仕事といたしましては、一番初めといたしまして漁協職員とか漁業者に対する保険共済事業の普及と宣伝活動、これを第一点に行って認識を深めてもらう。それから漁協事務担当者に対する研修活動を行う。三番目といたしまして、漁協役職員及び漁業者に対するアンケート調査。四番目に保険共済事業共同化合理化に関する調査研究を行う、こういう四本柱で、国も補助金を出してこの事業推進に努めたわけでございます。  この事業実施結果、各県からの報告によりますと、制度がそれ自体おのおの違っている関係で、いま即共同化することは非常にむずかしい、こういうものが意見としては多かったということでございます。反面、保険共済事業の総合化につきましても、必要性を認めるところもございますが、これは都道府県段階ではなく、中央でも制度面を含めて慎重に検討すべきである、こういう意見もあったわけでございます。とりあえずの問題といたしまして、現段階におきましては各制度の整備充実を図るのが急務でありまして、三制度の統合、こういう問題はこういう制度充実の暁にまた討議しよう、こういう結論になったことはわが方としても非常に残念でございますが、一応結果としてはそういう方向でやる、こういうことを御報告したいと思います。
  19. 新盛辰雄

    新盛委員 時間がございませんので、ひとつ答弁の方も簡潔に願います。所定の時間を少し縮めることにいたしておりますのでお願いします。  何よりも、わかりやすい保険、だれもが参加できる保険というのが保険のたてまえでしょうが、この漁船積荷保険だとかあるいは乗組員の厚生共済とか、通常ノリコーと言われておりますが、こうしたのやら、漁船乗組船主保険、こうしたのと一部に重複しているものがあるようであります。だから内容的にも非常に複雑になってきている。だからこの点、一つの契約ですべての事故に対応できるような、損害の場合にすぐ支払いができるようなものにつくり変えていく必要があるのじゃないかと思っております。この点どういうふうに考えておるか。これは政府考え方をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。  第二に漁業災害補償制度において、最近は魚価の低迷などが加わりまして非常に収支が悪化しております。支払い超過も二百億を前後しているわけであります。このために来年度この制度について抜本的な改正を行うというお考えがあるやに承っておりますので、その基本的な方向だけぜひひとつ聞かせていただきたいと思います。  続いてやりましょう。三つ目に、今回の法の改正によって、現行のPI保険制度保険組合組合員以外の者について、この方々が今回のPI保険に加入できることになっておるのでありますが、約百五十隻であります。しかし一年間の猶予期間、経過措置を見なければ、いろいろ入り組みがございますので問題がむずかしいのでございますが、その辺のことについて関係の向きとどういうふうに調整をされたか、また今後こうした問題の非組合員の取り扱いについてどのようにお考えになっておられるかお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 山内静夫

    山内政府委員 第一番目の漁業に関する保険共済制度の重複関係とか相互補完関係の問題でございます。漁業に関する保険共済制度につきましては、基本的には漁業者がわかりやすい、なおかつ非常に掛け金が安くてサービスを受けやすい、こういうような方向でやるのが至当と考えておるわけでございます。重複、相互関係等につきまして現状ではやむを得ないものが二、三あるわけでございますが、これらにつきましても先生指摘のように非常にわかりやすい、漁業者のためになるような方向で、今後うまい制度ができるような方向努力していきたい、こう考えておるわけでございます。  第二点の問題でございますが、漁業共済制度改正の問題でございます。漁業共済制度につきましては、先生指摘のように現在非常に多額の赤字が発生して、この制度をどうするか、こういう問題につきましていま関係者協議をしておるところでございます。水産庁におきましても、昨年の三月から学識経験者等で構成する漁業共済制度検討会を開催しまして、最近も頻繁にこの会合を開いておるわけでございます。したがいましてこの検討会の検討結果を待ちまして制度改正に取り組んでいきたい、こう考えておるわけでございます。  それから第三番目の漁船船主責任保険に加入できなくなる者、こういう者に対する指導方針でございます。現在漁船船主責任保険の単独加入者というもの、船体保険に入らないで単独加入者は、御指摘のように百五十名程度あるわけでございます。これにつきましては、船体につきましては民間保険に入っている、こういう状況、片や船主責任保険については漁船保険を利用している、こういう人たちでございますが、これらの人たちにつきましては、経過期間というものがございますが、今後の指導方針といたしましては、漁船保険制度中小漁業者相互扶助の精神に立って行われている、こういうことから、漁船保険船体の方にも漁船保険組合を通して加入していただくように指導してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  21. 新盛辰雄

    新盛委員 最後に、水協法による共済の関係でありますが、どうもメンツにこだわっているのかどうかわかりませんけれども、同じ制度という中で、たとえば漁船乗組船主保険とノリコーの関係、これは昭和三十五年以降全水共が実施しているわけでありますが、ノリコーの方はそういうふうになっておるのですが、漁船の乗組船主保険の方は昭和五十一年から、こうなっております。この関係をセット販売をしている状況もあるわけですけれども、今度の制度改正でどういうふうにおやりになろうとしておるのか。併存させるというか、この制度についてどういう方式をおとりになるのか、ぜひひとつそれを聞かせていただきたいと思います。  それから、全水共が行っております、火災だとか車なども扱っておるのですけれども、各種の共済制度、これと農業の場合の農協法に基づいて組合系統の事業としてやっております共済事業、こうした状況について、漁協系統の共済というのになりますと、非常に何かこう、範疇の中にどうも不安がある。農協の場合には、これは画一的に明確になっているのであります。この辺のことについてはやはり水協法を改正しなければいけないのじゃないかと思うのでありますが、そのお考えを聞かせていただきたいと思います。  そして総括的に、大臣、これからのこうした漁船保険制度なり共済制度ということについては、やはり何よりもわかりやすい共済制度あるいはこういう保険制度をつくっていく必要があると思うのです。そしてまた、この保険料率の問題も、剰余金が出たら、これはそれに振り向ける、中央会の方に吸い上げるというのじゃなくて、やはり保険料率引き下げ方向に、営利主義じゃないのですから下げて、漁民の、事業体の皆さんが安心して保険にかけられるように、また拡充、強化を図るという方向に進めていったらどうかと思うのですが、大臣の最終的お答えをいただいて終わりたいと思います。
  22. 山内静夫

    山内政府委員 漁船乗組船主保険関係と全水共のノリコーの関係でございます。  先生指摘のように、現在漁船保険組合保険と全水共のノリコーと併存しているわけでございます。この問題につきましては、船主責任保険等につきまして、民間団体である日本PIクラブであるとかあるいは民間保険会社、いずれも乗組員の人命損傷に係るてん補を行うというかっこうで、船主責任一つの柱にもなっておるわけでございます。一方、ノリコーも人命関係の特約につきましていろいろ共済制度を持っておるわけでございます。過去におきまして、試験実施期間中におきましても、相互で相競合するということより、相協力して乗組員の生命、傷害に対応する、こういう立場をとりまして、むしろ現在では相乗的効果が大きい、こういうぐあいに考えられておるわけでございます。したがいまして、本格実施につきましてもこのあり方を続けたい、こう考えているわけでございます。  それから、全水共が行う共済事業につきまして漁協との関係でございます。現在、農協と違いまして、水産業協同組合法で言う全水共につきましては、任意共済という関係で、漁協が元受けになっていない、こういうことでございます。全水共の方から、漁協を元受けにしてくれ、こういう声があることは十分承知しているわけでございますが、任意共済事業につきまして漁協を元受けとした場合におきまして、その上の組織をどうするか、いまあります県漁連とか全漁連とかあるいは全水共、こういう問題につきまして関係者の意見がまだ一致していない、こういうことから、これらの意見を集約しない限りなかなか法律改正には踏み切れないのではないか、こう考えているわけでございます。しかし、われわれといたしましては、今後関係者の意見を十分聞きながら、この問題につきまして慎重に対応していきたい、こう考えておるわけでございます。
  23. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 わかりやすい漁業関係保険制度、特に、できるだけ漁業者の負担を軽くするというような立場でこの仕組みを充実してまいるということは、農林水産省としては重点事項として取り組んでおるところでございます。また、剰余金等がありました際には、これはやはり漁業者の負担軽減ということで漁業者に還元をしていくという形で保険料率を下げていく、そういう方向にいかなければならぬ、そんなふうに考えて、とにかく本実施になるわけでありますので、また、試験実施中のものもできるだけ早期に本実施に移して、そして漁業者漁業経営の安定に資していきたい、こう考えております。
  24. 新盛辰雄

    新盛委員 終わります。
  25. 田邉國男

    田邉委員長 武田一夫君。
  26. 武田一夫

    ○武田委員 漁船損害補償法の一部を改正する法律案につきまして若干質問いたします。  まず最初に、この今回の措置によりまして漁船船主あるいは乗組員等々への過重な負担がないものかどうか、この点について確認したいと思います。さらにまた、ほかの同種保険に比較しまして不利な制度にはならないものかどうか。  それからもう一つ、これが本格実施に移行するに当たりまして、てん補範囲の見直しの要望があるというふうに聞いておりますけれども、その点につきましてどういうふうになっているのか。  以上三点をまずまとめてお尋ねしたいと思います。
  27. 山内静夫

    山内政府委員 第一点でございます。保険料が過重となっていないかという質問につきましては、今回本格実施する場合におきましては、保険料につきまして国庫負担を行う、こういうことから、保険料負担は大幅に軽減される、こう考えているわけでございます。なおかつ、保険料の絶対額につきましても、漁船保険に比べて非常に少額である、こういうことから、漁業者に関しての保険料負担が過重となるという考えは持っておりません。  第二点でございます。漁船船主責任保険とその他のてん補範囲の問題でございますが、今回行います船主責任保険につきましては、他の民間保険等に見られないようなてん補範囲が広がっている、こういう点が特徴でございます。一、二の例を申し上げますと、他船による自船乗組員の人命救助費であるとか、自船による他船乗組員の人命救助費、乗組員が死亡した場合の弔祭費、こういうものがてん補される、これが特徴になっていると思うわけでございます。  今後船主責任保険につきましててん補範囲を拡大する必要はないか、こういう問題でございますが、試験実施期間中におきましてもてん補範囲を徐々に拡大しておりますし、今後も漁業者の要望等を聞きながら、てん補範囲の拡大等につきまして努力してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  28. 武田一夫

    ○武田委員 私はいろいろと現地に行ってお話を聞きますと、やはり漁業経営というのは非常に厳しいなということを痛感してまいりました。  そこで、一例を申し上げますと、三百トンのマグロ船、私、宮城県の女川というところへ行ってまいりまして、漁業者の方々や関係者にお聞きしますと、大体年間の保険料を千七百万支払っているそうであります。内訳をちょっと申し上げますと、漁船保険に三百二十万、四億の掛金だそうでございます。それから積荷保険に百二十万、これは三億円だそうであります。それから船主責任保険が二十万、そして船員保険が一千百万、労災保険が二百万、大体そういうものを船主が掛ける。そのうち船員保険は七二%が船主ということでありますが、一千七百六十万、これは三百トンのクラスですが、こういう多額の保険を掛けているのが現実です。  そこで私はいろいろ聞いてみますと、こうした保険が払えなくて、延滞といいますか、そういうケースが非常にあるわけです。たとえばここに一つの例があります。これは船員保険の場合なんですがひとつ聞いてもらいたいのです。  昭和五十五年度の、五十六年二月分の船員保険料地区別収納状況というのがあるのですが、宮城県全体としまして掛金が大体七八%しか払われていない。二一%は滞納ですね。ひどいところでは五三%しか支払ってないというケースがある。これは一番ひどい。女川のマグロなんかの多いところですね。それからまた六六%というようなところもございます。そういうところでは日歩四銭の延滞金ですかを取られて、元金と合わせますと昭和五十六年の二月の船員保険の延滞金は何と三億七千万あるわけです。  こう考えますと、経営者にとりまして全体的な保険料支払いというものを考えますと相当な負担になっているな、しかも油の問題、さらにまた最近は機械化ということで、特に若い連中が船に乗り込むとなるといろいろな設備も近代化していくということで、かなり金もかかってきておる。こういうときに私が心配するのは、保険というのは総合的にかかってきますので、この漁船保険あるいは船主責任保険だけで処理できる問題じゃないのではないか。こういう意味で、今後の総合的な保険あり方というものを考えてやる必要があるのではなかろうか。まして、いま積荷保険につきましては試験実施中であるということでありますが、本格的な実施もこれは行われると思うのですが、その際に、やはり総合保険的なものを考えて、料率を少し低くしてあげるということでそういう経営の困難を救済してやるというような対応も私は必要だと思うのですが、その点いかがですか。
  29. 山内静夫

    山内政府委員 ただいま先生指摘のように、各種保険による保険料の支拡いが高額に及びまして船主の経営を圧迫している、これは一面事実だろうと思うわけでございます。  わが方の所管しております問題といたしましては、漁船保険とかあるいは積荷保険PI保険関係でございますが、これらにつきましては今後とも保険料率引き下げる、こういうような方向漁業経営者の経営の一助にいたしたい、こう考えておりまして、今後とも、積荷保険本格実施になった暁におきましてもそういう方向努力してまいりたい、こう考えております。
  30. 武田一夫

    ○武田委員 それから、地元で一つの要望としていろいろ話を聞いてきたのですが、百トン以上の漁船についても百トン未満の漁船同様に国庫負担をしてもらいたいという希望が非常に強うございました。現在百トン未満の漁船保険料の約一五%ないし二七%ですか、そういうふうになっているわけでありますが、船型によって異なっていましても、大きいものほど国庫負担率が少ないというようなことを考えますと、やはりこの問題につきましても考えてやることも必要でなかろうか、こういうふうに思ってきたわけであります。  それからもう一つ、無事故漁船に対する保険料の割引率というものも考えてもらわなければならない問題じゃないか。これは一年経過で一〇%、一年増すごとに五%加算されて四年で打ち切りだ、合計すると二五%ですか、これについてもそれ以降の割引を考えながら、できるならば割引率の引き上げ等も考えてやったらどうか。というのは、これは自動車なんかと比べるとちょっと違うかと思うのですが、常識的に考えますと、自動車の場合は総合保険というのによって対人、対物、車両ですか、この三つ、最高五〇%までの割引がありますね。そういうようなこととあわせまして、この点の軽減措置による経営者等の経営の負担を軽減する方向も御検討願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  31. 山内静夫

    山内政府委員 第一点の百トン以上の漁船に係る保険料の国庫負担の問題でございますが、御案内のように現在の漁船保険制度におきましては、中小零細、こういう漁業者を助ける、こういう考えから補助の制度が仕組まれているわけでございます。ほかの問題といたしましても、他の制度につきましても、百トン以上、こういう階層につきましては、補助制度をとる、こういうことが現在非常に困難な状態にある、こう考えているわけでございます。  第二番目の無事故割引の問題でございますが、先生指摘のように一年で一〇%、四年で二五%、こういう割引率を適用しているわけでございます。今後この制度を拡大する、こういう問題につきましては、今後の検討課題といたしまして十分検討してまいりたい、こう考えております。
  32. 武田一夫

    ○武田委員 それから満期保険の積立保険料の払い戻しですが、払い戻しの割合というのは木船を基準とした考え方だそうですが、現在大型の建造、これは木というのはもうない、ましてや沿岸小型漁船でもプラスチック船が非常に多くなってきているという現実を踏まえた場合、この基準というのも検討する必要があるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  33. 山内静夫

    山内政府委員 御指摘の点十分理解されますので、今後検討していきたい、こう考えます。
  34. 武田一夫

    ○武田委員 次に、組合に一割の責任を持たせることの必要性というものは何なのかという問題、その支払い準備金造成の見込み等につきましてお答えいただきたいと思います。
  35. 山内静夫

    山内政府委員 船主責任保険につきまして保険責任の一部を組合に保有させる理由でございますが、当初は、試験実施期間中におきましては、危険負担が多岐にわたるあるいは支払い保険金も非常に高額になる、こういう考え方から、危険分散が困難である、こういう前提のもとに中央会に全額再保険させたわけでございます。しかしその後の試験実施の経過によりますと、危険は多岐にわたっていても支払い額が非常には大きくならない、危険分散もある程度できる、こういうことから、ある程度組合に持たしてもいいではなかろうか、こういう考え方もあるわけでございます。  もう一点といたしまして、保険といえども一応商業ベース、こういう考え方も成り立つわけでございますから、円滑なあるいは適正な運営を期するためにも、元受け保険者が引き受けそれから損害査定、こういうものを厳正に行っていただく、こういうことから保険責任の一部を組合の方に負わせていただく方が非常に業務の運営がうまくいくだろう、こういう観点から一割の保有、こういう考え方に立ったわけでございます。  それから保険組合責任準備金の造成の問題でございますが、船主責任保険につきましては現在御案内のように各組合とも準備金はゼロでございます。今後の問題といたしまして、試験実施中の収支が非常によかった、こういうことから、各組合ともそのうちに準備金もできてくるであろう、こう考えているわけでございます。
  36. 武田一夫

    ○武田委員 次に、組合員以外の保険契約者の取り扱いにつきまして質問しますが、組合員以外の漁船船主責任保険加入者に対する指導方針といいますか指針というものをひとつ明らかにしていただきたい、こう思うのです。
  37. 山内静夫

    山内政府委員 漁船船主責任保険の単独の加入者は、船体につきましては民保を利用している、こういう階層でございます。これは漁業者につきましても船体保険必要性、こういうものは十分承知しているわけでございまして、中小漁業者相互扶助の精神、こういうものが漁船保険の根幹をなすものでございますから、今後とも漁船保険を全面的に利用していただくように保険組合等を通しまして指導してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  38. 武田一夫

    ○武田委員 次に、中央会性格上、中立的機関としての性格を確保しなければならないと思うわけです。そういう意味で、この問題につきましてどのような対応をしていくか。これによっては漁業者間の不信を招くようなことがあってはいかぬ。新しい制度の発足に当たってそういう万全の体制というのを私は要望するわけでありますが、その中立性のいわゆる保持、そういう問題につきましていかがお考えか。
  39. 山内静夫

    山内政府委員 中央会の行う事業といたしましていろいろあるわけでございますが、現在、損害調査事業、こういうことも行っているわけでございます。これは会員である組合員の委託によって行われまして、これにつきましても中立厳正な立場から行われている、こう理解しているわけでございます。今後、中央会船主責任保険等についての再保険を行う、こういうかっこうになるわけでございますが、中立的な機関として業務を行う先ほどの部門と再保険業務、こういうかっこうで、組織上いろいろ問題もあると思いますから、業務運営とか会計経理上につきましては経理区分を明確にする、こういうことによって両者が混同しないような措置をとる、こういう考え方に立っていろいろ法律改正を行っているわけでございます。政府といたしましても、法律改正を契機といたしまして指導監督強化していく所存でございます。
  40. 武田一夫

    ○武田委員 この問題は非常に重要な問題になってくると私は思います。何せ金にかかわる問題になってきますので、十分なる御配慮のもとに指導というものを徹底していただきたい、このことを要望します。  最後に、漁船事故防止対策につきまして、最近の事故の動向あるいは原因等々踏まえまして、対策に当たりましての当局の対応につきましてお尋ねいたします。
  41. 山内静夫

    山内政府委員 海難防止につきましては海上保安庁が主として対策を講じているわけでございます。内容といたしましては、訪船指導であるとか海難防止の講習会、海難防止強調運動、こういうことを通じましていろいろ指導啓蒙を図っているところでございます。水産庁といたしましても、運輸省、海上保安庁との連携を密にいたしまして、漁船法に基づく漁船検査であるとかあるいは漁業無線局の整備、このほか漁船乗組員技術向上の講習会、こういうものを開催いたしまして事故の未然防止に努めているわけでございます。
  42. 武田一夫

    ○武田委員 事故の中で、最近無理な操業によって、しけの中で人命が失われているケースが、私の宮城県の場合なんかは去年から比べてみますとありますので、やはりこういう点の対応というものも指導監督していく必要があるのじゃないか。経営が非常にせっぱ詰まってのそういうこともあるのじゃなかろうかと思いますが、やはり若い方々が命を失う、そして一家が悲惨の中で暮れているというケース、中には遺体もまだ見つからないというようなケースも出ております。最近の状況から考えますと、経営の非常な厳しさから無理をするというような傾向がなきにしもあらずでないかと私は見ておりますが、それについては十分なる御配慮と対応をして、こうした事故のないように私は指導監督してほしいなと思うのですが、これは大臣からひとつ最後に御答弁いただいて終わりたいと思います。
  43. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 海難防止、安全操業ということはもう漁業家にとって最も大事なことでございますので、やはり漁船の建造の面からさらには天候、気象上のいろいろな常識を得るための教育等十分にいたしますとともに、何としても漁業経営の安定という基本問題を確立するということが事故を防ぐ一つの大きな手がかりになるというような立場から、総合的に海難防止に対処していきたい、こう考えております。
  44. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、時間前ですが、終わらせていただきます。
  45. 田邉國男

    田邉委員長 神田厚君。
  46. 神田厚

    ○神田委員 漁船損害補償法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  最初に、この漁船船主責任保険制度昭和五十一年から五年間の試験実施として行われておりますけれども試験実施期間中の収支状況等はどういうふうになっておるのでありましょうか。
  47. 山内静夫

    山内政府委員 漁船船主責任保険収支は比較的順調でございまして、五十一年度引き受けから五十四年度引き受けまでの累計といたしまして、保険料の収入が三十億、乗組員特約で一億三千万、こういう数字が計上されているわけでございます。損害率は基本契約で四一・三%、人命特約で七九・二%、こういうかっこうで、剰余金は合計して十八億円現在出ております。
  48. 神田厚

    ○神田委員 この実績を見ておりますと非常に損害率が低い。そして繰り越しの利益も相当数出ているわけであります。こういう事態となりましたのは、保険料率の算定の際に安全率を高くとったということではないか、あるいは試験期間中の事故の発生が想定したよりも異常に低かったということなのか、この損害率が非常に低い原因についてお聞かせをいただきたいと思うわけであります。予想よりも事故の発生が少なかったということでありますならば、これから先のこの試験実施から本格実施に移る際に、なおこれから先問題が出てくる可能性がある、そういうおそれがあるというように考えておりますけれども、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  49. 山内静夫

    山内政府委員 五年前に船主責任保険試験実施する際におきまして保険料率をどう設定するか、こういうことにつきましては、漁船保険自体でのデータがなかったわけでございます。したがいまして、日本船主責任相互保険組合保険料率等を参考にしながら保険料率設定したわけでございます。しかし、試験実施の結果によりますと、先ほど申しましたように事故が非常に少なかった、危険率が非常に低かった、こういうことから、先ほど申し上げましたような剰余金が生じたわけでございます。  水産庁といたしましても、過去試験実施期間中におきまして三回にわたる料率引き下げ、こういうことを指導いたしましたし、今後本格実施になった場合には二二%、こういう料率引き下げを図りまして、漁業者の負担をできるだけ軽くするような方向、こういう考え方で現在対応しているわけでございます。
  50. 神田厚

    ○神田委員 ですから、その料率の問題は後からお聞きするのでありますが、試験期間中の事故の発生というのは予想したような形であるのか、それとも予想より異常に低いというような結果なのかということはどうなんですか。
  51. 山内静夫

    山内政府委員 予想外に低かった、こう理解しておるわけでございます。
  52. 神田厚

    ○神田委員 そういうことでありますならば、本格実施への時期がちょっとこれだけで、データとしてこれを取り扱うというのではこれから先に問題を残しませんでしょうか。
  53. 山内静夫

    山内政府委員 船主責任保険等につきましては、積荷保険と違いまして、加入件数が比較的多い、母数がある、こういう関係、それからもう一つの問題として、最高限度をいろいろ制約している、こういう関係から、現行の保険料率であっても本格実施に移行した場合においても十分であろう、こう考えているわけでございます。
  54. 神田厚

    ○神田委員 本格実施ということになってきたわけでありますが、実質的には四年間のデータしかない。また、漁業をめぐる情勢というのが大変厳しくなってまいりまして、カツオ・マグロ、イカ釣り、こういうものの減船が行われようとしているわけであります。こういう中で果たして本格実施に踏み切って大丈夫か、そういう心配の声もあるわけでありますが、本格実施となった後も、当分の間は実情に合わせまして弾力的な制度の運営を行う必要があると考えておりますが、これに対してどういうようにお考えでありますか。
  55. 山内静夫

    山内政府委員 船主責任保険等につきまして、試験実施期間中もいろいろ試行錯誤を加えまして、てん補範囲の拡大であるとか料率引き下げ等、いろいろ図ったわけでございます。今後も国際関係漁業情勢の変化、いろいろあるわけでございますから、制度の運用、こういう問題につきまして固定的に考えることはいろいろそごを来す、こう考えているわけでございます。したがいまして、制度の運用に当たりましては、弾力的な運用を御指摘のように図っていきたい、こう考えております。
  56. 神田厚

    ○神田委員 それから、一番最初にお話がありました試験期間中に累積をしました漁船保険中央会剰余金、これはどのように処理をするお考えでございますか。
  57. 山内静夫

    山内政府委員 船主責任保険につきましても、保険でございますから、異常の事故が発生した場合の危険に備えるために、準備金として特別会計を設けまして積み立てるような方向指導してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  58. 神田厚

    ○神田委員 剰余金の処理の問題は、剰余金性格その他もいろいろあるわけでありまして、この処理の仕方はわれわれとしては、準備金だけという問題ではなくて、保険料率引き下げ、つまり保険料率の今後の設定にこれを有効に使っていかなければならないというように考えておりますが、今後の保険料率設定方針というのはどういうふうに考えておられるでありましょうか。また、PI保険のてん補範囲を見直す必要はないかどうか、この二点についてお伺いいたします。
  59. 山内静夫

    山内政府委員 先ほど申し上げました十八億円につきましては、過去に累積された剰余金、こういうかっこう準備金として積み立てる、こういう考え方でございます。今後等の問題につきまして、相互保険でございますから、中央会段階あるいは組合段階におきまして剰余金が不当にたまる、こういうことは望ましいことではございませんから、料率引き下げ等にその剰余金を向ける、こういう考え方を持っているわけでございます。現に、本年十月からの本格実施におきましては、約二二%保険料率引き下げたい、こう考えているわけでございます。  二番目のてん補範囲の拡大でございますが、試験実施期間中におきましてもいろいろでん補範囲の拡大を図ったわけでございます。今後も、二、三要望もございますから、てん補範囲の拡大等につきまして十分前向きに検討してまいりたい、こう考えております。
  60. 神田厚

    ○神田委員 この前の試験実施の問題が出たときにこの委員会での質疑の中で、不当に黒字が出ないように努力をする、こういうふうなことで言っておられるようなこともございまして、そういう意味では、この運用益の使い方というものは非常に重要だと思っているのです。船体保険とかPI保険、積み荷保険、それぞれの剰余金性格があるわけでありますが、剰余金の内訳を見ますと、保険料収入に相当するものと保険料収入の運用益に相当するもの、この二つがあるわけであります。保険料収入は当然保険支出に充てられるわけでありますが、運用益に相当する部分が累積した場合には、まず支払い準備金の一部に先ほど答弁があったように充てられることはもちろんでありますけれども、必要な準備金を超えるほどの額が積み立てられた場合には、やはり保険料率引き下げ等の形で処理をすべきだ、こういうふうに考えております。  政府は、そのやり方としましては、昭和四十一年に十二億円、昭和四十八年に三十五億円これを交付をしまして、漁船保険中央会がその運用益を漁船保険振興事業に使っているわけでありますが、私はやはりこの運用益の問題は、第一に保険料率引き下げの財源としてこれを使って、必要以上の保険料を漁民から徴収しないように努力をすべきだ、こういうふうに考えているのでありますが、その点に対しましてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  61. 山内静夫

    山内政府委員 御説のとおりでございます。現に運用益に相当する部分といたしまして、特別会計漁船保険の本体につきましては、零細漁民の付加保険料を安くするための付加保険料格差是正、こういう方向で一部を使っておるわけでございます。今後とも剰余金等が出ますれば料率引き下げ、こういう方向につきまして努力を重ねていきたい、こう考えております。
  62. 神田厚

    ○神田委員 ひとつ、その点が一番大事なところでありますから、そういう方針で対処していただきたい、要望しておきたいと思っております。  次に、本案の附則の第五項に、漁船保険中央会は補完再保険事業を行うということになっております。私が聞いておりますように、組合引き受けの九割を再保険して、その残りの一割を補完再保険する、こういう制度でありますけれども、こういうことであるとするならば、組合責任を全く負わないことになるわけでありまして、組合経営努力をしない、そういうおそれが出てくるわけでありますから、この制度を設けた意義とかあるいは具体的仕組みについてどういうふうに考えているのか、ひとつその点をお聞かせをいただきたい、こういうふうに考えております。
  63. 山内静夫

    山内政府委員 船主責任保険につきましては、従来は一〇〇%再保というかっこう漁船保険中央会が再保険したわけでございます。今度の制度改正に当たりまして、原則として九割再保で一割は元受け組合の保有、こういう改正をしたわけでございます。しかし、組合の中には従来全額再保というかっこう準備金も現在ないわけでございますが、弱小組合におきまして一割を即座に保有させることにつきましていろいろ問題がある、こういうことから当分の間補完再保険事業、こういう方向で一割再保を、何%かわかりませんが、今後中央会あるいは漁船保険組合あるいは水産庁と協議の上決めるわけでございますが、補完再保険事業としてそのうちの何割かを中央会の方に再保険していただく、こういう仕組みを考えたわけでございます。  これにつきましても「当分の間」と、こういうことでございまして、あくまでも各組合経営努力、これが健全な漁船保険の運営、こういうことにつながるわけでございますから、こういう方向を見きわめながら、とりあえずの措置として補完再保険事業設定した、こういうことでございます。
  64. 神田厚

    ○神田委員 最後に大臣にお伺いしますが、いよいよ試験実施から本格実施に移行するわけでありますが、試験実施の期間が短くて、さらにこの試験実施に当たっての想定した資料等が、事故率等が非常に低かったりするような問題がございます。したがいまして、本格実施に当たりましてやはり相当注意をしながらこれの運営をしていかなければならない部分もあるというふうに考えておりますが、その辺のところ、これから先の問題についてお伺いをしたいと思うのであります。
  65. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 神田委員指摘のとおり、この本格実施に入るわけでありますので、漁業者の負担をできるだけ軽くする方向制度は成長していかなければならないと思いまするし、したがいまして、剰余金等がありました際にはこれをできるだけ保険料率引き下げに回すという着想、さらには損害防止、海難防止というような面に対しても十分政策的にも配慮をしていくということで、あらゆる総合的な面から事故を少なくすることが、すなわちこの保険の負担を軽くするゆえんでもある、こういうことでもございますので、漁船の構造等についても、先ほど来いろいろ御指摘のとおり海難が非常に多い、とうとい人命が年々失われていく、こういうことのないような日本の漁業界を目指してつくっていかなければならない。それにしても、いざそういう事故があった際には、漁業の再生産というものをやっていけるような保険制度にこれが育っていくように十分配慮していきたいと思います。
  66. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  67. 田邉國男

  68. 山原健二郎

    ○山原委員 漁船損害補償法の一部改正について、三つの点で質問をいたします。  一つは、危険防止のための検診技士の充実の問題でございます。  五十一年から始まりました漁船船主責任保険が今回の改正本格実施になるわけですが、試験実施五年間の状況を見てみますと、漁船の安全性を高め、事故件数を少なくすることが大前提として求められておると思います。そこで、漁船保険中央会では漁船の検診技士を各地の保険組合に配置して補助をいたしておりますが、この検診技士の仕事は申し上げるまでもなくきわめて重要な任務を持っております。しかし、現在三十人しか配置されておりません。私がいただきましたこの資料を見ましても、全国には五十三の保険組合があるわけですから、配置されていない組合もたくさんあるわけです。ことに青森、千葉、静岡、長崎など加入隻数の多い県にこの検診技士がいないという状態がございます。私は四国でございますけれども、四国四県を見ますと、相当の加入隻を持っておりますが、一人もいないという現状にあるわけです。  今日の漁業を取り巻く情勢を見ますと、御承知のように、二百海里問題等でこれまでの漁場以外の海域にまで行って魚をとっておるのが実態でございますし、さらに減船も伴いまして漁船の数が減るなど、危険度が増しております。検診技士をふやして事故の事前防止を図る必要性はいよいよ高まっておると思います。ところが、五十六年度の補助金では前年より五百万円ほど金額が減少しております。今後の予定ではさらに削減されると言われておるのでありますけれども、こういう方向を改めまして、検診技士制度充実すべきではないかと思います。この点について大臣の所見を伺いたいのであります。
  69. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御指摘のとおり、検診技術員の業務は、機関の事故率が高い二十トン未満の漁船を対象としておるわけでありまして、主として大型漁船を引き受ける漁船保険組合については、必ずしも検診技術員制度が有効に機能していないという面があるのは私どもも実は理解するところでございます。したがいまして、検診の技術員を設置していない組合については、専門的な知識を有する職員の養成確保に努めさせておりますとともに、漁船事故防止を図るように今後も積極的に指導していかなければいけない、こう考えておる次第でございます。
  70. 山原健二郎

    ○山原委員 漁船保険中央会の配置の技士を減らして漁船保険組合にやってもらう方向だということをお聞きしておりますが、そういうことなんでしょうか。
  71. 山内静夫

    山内政府委員 現在検診技士につきましては、中央会には一名もおらず、全部元受け組合に配属している、こうなっております。
  72. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう情勢の中で国の補助を減らすべきではないと思います。いま申しましたように、二百海里時代に入ったという点や、漁船保険制度充実、拡大しているという趨勢から見まして逆行するのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  73. 山内静夫

    山内政府委員 先ほどの、五十六年度予算につきまして五十五年度より減っているではないか、こういう御指摘を含みまして、実はこの問題につきましては、検診車の配車が各組合とも終了になった、こういうかっこうから技術的に減額になった、こういうことでございます。検診技術員制度の問題につきましての重要性はわれわれも十分認識しているところでございますから、今後いろいろの問題等につきましてできるだけ努力を払っていきたい、こう思っております。
  74. 山原健二郎

    ○山原委員 私の県などの遠洋漁業実態を見ましても、ずいぶん長距離、長期間、そして相当の危険度の中へ突入していって操業しておるという実態がありますので、この点についてはぜひこの充実に向かって、前向きの姿勢でがんばっていただきたいと思いますが、再度所見を伺います。
  75. 山内静夫

    山内政府委員 検診技術員の重要性にかんがみまして、あらゆる面でわが方として万全の措置をとってまいりたいと考えております。
  76. 山原健二郎

    ○山原委員 次の問題は職員の問題でございますが、今回の本格実施によりまして、これまでの普通保険に含んでいた衝突賠償特約が漁船船主責任保険に加えられます。さらに本格実施に伴い保険料に国家負担が行われることから、加入隻数も増加してくると考えられます。衝突損害賠償特約の加入隻は十六万余りで、漁船船主責任保険の加入隻も四万ないし五万余りと聞いておるのでございますが、さらにこれまでと同様に積荷保険も行われておるわけです。元受けの保険組合では職員数が非常に限られておりまして、この資料を見ましても、多いところで十六名、十四名。こういう状態で十分対応できるかどうかという不安があるわけでございますが、これはどのようにお考えになっておりますか。
  77. 山内静夫

    山内政府委員 最近漁船保険組合業務量が、試験実施積荷保険であるとかあるいはPI保険、こういう方向が義務づけられたために非常にふえている、これは否定できないことでございます。現在その体制でもやっているわけでございます。一般的に申しまして、漁船保険組合業務の執行に要する経費、こういうものは付加保険料で賄われている、こういう考え方によっておりまして、業務が非常にふえていくということに伴いまして収入もふえる、こういう観点から、事務費であるとか人件費等は付加保険料の増収の範囲内で賄えるのではないか、こう考えておるわけでございます。
  78. 山原健二郎

    ○山原委員 さらに二年後には漁船積荷保険本格実施に入るという状態でございますし、またコンピューターの導入によって事務処理を効率化するという考えもありますけれども、現在コンピューターが入っているのは十数組合で、ごく一部という状態でございます。こういう実態で、業務の拡大に応じて必要な人員をふやすのは当然ではないかと思うのでございますが、五十三組合がコンピューター等の導入などに対応できる態勢をいつごろまでにとることができるか、そのような計画があるかどうか、伺いたいのであります。
  79. 山内静夫

    山内政府委員 現在、五十三漁船保険組合のうち二十七組合事務合理化を図るためにコンピューターを設置しているわけでございます。コンピューターの設置につきましては、各組合とも真剣に取り組んでおりまして、自分の組合業務量等を勘案しながら、コンピューターを導入した方が適か不適か、こういう問題についていろいろ検討しているわけでございます。コンピューター導入組合は徐々にふえているわけでございますから、業務量がふえるに従いまして当然ふえていく、こう理解しているわけでございますが、何年後にすべての組合が、こういうことは各組合の自主的な問題でございますから御答弁は差し控えさせていただきたい、こう考えております。
  80. 山原健二郎

    ○山原委員 三つ目の問題でございますが、去年の十一月に漁船保険組合から陳情書が出ております。漁船船主責任保険とあわせて漁船積荷保険本格実施にしてほしいという要望でございます。積荷保険試験実施期間がまだ二年余り残っておりますが、漁船保険の体系を整え、漁船船主責任保険と同様に保険料への国庫負担を行うなど加入者の負担軽減を図るべきだと思いますが、その点はどのようにお考えですか。
  81. 山内静夫

    山内政府委員 積荷保険本格実施PI保険に比べましておくれたわけでございますが、積荷保険につきましては、被保険者が比較的大型船である、こういうことから二百海里時代の影響をもろに受けている階層が多かった、こういうことでございます。したがいまして、その危険率等につきましても、二百海里時代が厳しくなるにつれましてだんだん上昇傾向にある、こういうことから、もう少しデータを集めた方がよかろう、こういう考え方のもとに試験実施を続けているわけでございます。われわれといたしましても、試験実施の継続したデータの収集ができますれば、できるだけ早い機会に本格実施を図りたい、こう思うわけでございます。  本格実施に当たりましてどういう仕組みにするか、現在ここでいろいろ言うことはなかなかできないわけでございますが、できるだけ漁業者の使いやすいような、負担の軽いような方向本格実施を仕組んでいきたい、こう考えておるわけでございます。
  82. 山原健二郎

    ○山原委員 大体積極的な御意見のようにも伺うわけでございますが、特に積荷保険の面では遠洋向けの漁船加入数が多いということはいまおっしゃったとおりであります。そういう意味では危険度も高いわけでございますし、昨年十一月に出ましたところの要望書に基づきまして、これらの要望に対して本格的実施を進めていくという方向で今後努力をしていただきたいと思うのでありますけれども、いま一応おっしゃいましたが、今後どういう実態調査をされようとしているか、あるいはいつごろそれを十分に把握されて先の見通しを立てられるかということについて、再度説明をいただきたいのです。
  83. 山内静夫

    山内政府委員 第二回目の試験実施期間の終了期間が五十八年九月ということになっておりますから、それを一つの節として検討してまいりたい、こう考えております。
  84. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  85. 田邉國男

    田邉委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  86. 田邉國男

    田邉委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  87. 田邉國男

    田邉委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  88. 田邉國男

    田邉委員長 この際、本案に対し、新盛辰雄君外四名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党の共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を求めます。新盛辰雄君。
  89. 新盛辰雄

    新盛委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党を代表して、漁船損害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     漁船損害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、昨今の漁業をめぐる極めて厳しい情勢に対処し、漁業経営の維持安定対策に万遺憾なきを期するとともに、外国周辺水域における操業実績の確保、新漁場の開発、我が国周辺漁業振興等を積極的に推進し、併せて本法の施行に当たっては、左記事項の実現に努めるべきである。       記  一 漁船損害等補償制度及び漁船積荷保険制度については、保険収支実態に照らし純保険料率の適正化を図るとともに、損害てん補範囲の充実に努め、他の同種保険に比して、不利な制度とならないよう留意すること。  二 漁船保険組合経営格差が、付加保険料率等の格差としてあらわれている現状にかんがみ、組合経営基盤強化のための施策の充実を図るとともに、その抜本的改善のため、組合合併につき積極的指導を行うこと。  三 本法施行に伴い、従来の中立機関としての機能に加え、再保険者としての機能を併せ持つこととなる漁船保険中央会については、それぞれの機能に係る業務が適正に行われるよう指導監督強化を図ること。  四 漁船積荷保険制度は、保険設計に必要な基礎資料が整備され次第可及的速やかに本格実施に移行すること。  五 漁業関係保険共済制度の統合、一元化及び漁業災害補償制度改正問題については、引続き前向きに検討を加えるとともに、それぞれの保険共済制度についても相互に調整を図り、漁業者にとって分かり易く、簡便な制度となるよう努めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通してすでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。
  90. 田邉國男

    田邉委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  91. 田邉國男

    田邉委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議に関し、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。亀岡農林水産大臣
  92. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして十分検討の上、善処するよう努めてまいりたいと存じます。     —————————————
  93. 田邉國男

    田邉委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 田邉國男

    田邉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  95. 田邉國男

    田邉委員長 次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来理事会におきまして御協議願っていたのでありますが、ここにその協議が調い、草案がまとまりましたので、その内容につきまして、便宜、委員長かち御説明申し上げます。  本案は、酪農の健全な発達に資するため、農林漁業金融公庫が行う乳業者に対する牛乳の処理または乳製品の製造に必要な施設の造成等に必要な資金の融通に関する臨時措置をさらに五カ年を限り延長しようとするものであります。  以上がその内容でありますが、その詳細につきましては、お手元に配付してあります案文により御承知願いたいと存じます。
  96. 田邉國男

    田邉委員長 本起草案について別に御発言もありませんので、この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案といたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  97. 田邉國男

    田邉委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決定いたしました。  なお、ただいま決定いたしました本案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 田邉國男

    田邉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  99. 田邉國男

    田邉委員長 次に、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  100. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、養鶏の問題あるいは養蚕の問題、それから養豚、なおこれらに関連して生産調整にかかわる問題について質問をしていきます。  まず最初に、日本の農業は、国内の工業製品の見返りとして外国から、特に先進国からたくさんの農畜産物が入ってきて、果汁にしてもあるいは生糸にしても酪農製品にしても、在庫が非常にふえてきた。そして、これを一掃するためには相当な金利、倉敷料がかかる。これは消費者にかかわる問題として、財界あるいは労働者の一部からそれに対していろいろな意見が出ております。また生産者の方からすれば、電力料金や諸資材が上がって、値を上げてほしいという要求が当然のこととして出てくるわけでありますが、これに対しては、値下げあるいは据え置き、または金を貸すというような状態でこれを切り抜けようとしておるわけです。  こういうような状況というものが、単に米の過剰だけではなくてすべてのものに構造的にやられてきたということ、これはやはり日本の農業が持つ最近の特徴じゃないか、こう思う。この問題について、国際分業論がかくも定着してしまったのではないか、これについて大臣はどういうふうにお考えか、まず大臣からお考えを伺います。
  101. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 竹内委員の御指摘のとおり、日本における各種農産物の過剰という問題があること、これは全くの現実でございます。その原因が輸入農産物による影響ではないかという御指摘、私もそのように考えます。したがいまして、私といたしましても、国内で生産できるものはできるだけ国内で生産をしたい、もう万やむを得ないものだけ外国から輸入するような方向に持って行くのがやはり農政の範疇であろう、こういう考え方を基本的に持っておるところでございます。  しかるところ、やはり日本との貿易のバランスを主張します各国、特に農産物を輸出しております国々、特に農産物しか輸出できない開発途上国等々ございまして、日本においても二百数十億ドルから三百億ドル近い農林水産物資を毎年購入をしておるという現状でございます。しかしながら、遠き将来あるいは食糧安全保障という立場を考えましても、先ほど申し上げましたとおり、日本で生産できるものはできるだけ生産するような努力をする、そうして万やむを得ないものを外国から輸入をするという一つの基本の上に立って、基本構想なり生産と需要との長期見通しなりを閣議決定したゆえんもそこにあるわけでございますので、その点御理解をいただきたいと思います。
  102. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま大臣から、かなり強いお答えがあったわけです。昨年の国内の自給力を高めるという決議等々から後退をしないように、そして競争の原理などというものをいきなり農業に持ち込んできて価格の面だけで物をとらえていくということだけは考え直してもらわなくてはいけないし、特に最近第二臨調の中で農林水産省が極度にねらわれている。一番末端で苦労して物を生産する農林水産省の補助金や機関に対して手を加えようとする。こういうことについても、正すべきものは正さなければならないけれども、何でもかんでもこれに手を入れられてしまうと非常に困る。  こういう点で、十分にこれに対応してもらいたいということをまず先に申し上げながら、最近、私のところに幾つかの投書が来ているのですが、ことしの天候は非常に不順だと言われている。特に北陸方面は夏冷であると言われている。そのときに、一体米の需給の見通しはしっかりしているのか、これはどうなんですか。
  103. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  五十六米穀年度の需給についてでございますが、五十五年産米の生産は御承知のとおり冷害等によりまして作況指数が八七ということで、生産量は九百七十五万トンに低下いたしました。一方、五十六米穀年度の需要量は千七十五万トン程度と見込まれます。したがいまして、単年度の需給ベースでは約百万トン程度の不足が見込まれることになりますが、政府はこのような不測の事態に備えまして従来から備蓄を行ってきたところは御存じのとおりでございまして、本年の場合も備蓄米として持ち越しました五十四年産米が百七十八万トンございます。この活用により十分対応できると考えておりますし、お話しのように仮に五十六年産米が不作であるということを想定いたしましても、五十六米穀年度末には五十五年産米で八十万ないし九十万トン程度の持ち越しと、さらに五十六年度の転作目標面積も四万六千ヘクタールほど軽減したというような調整的措置もとりましたので、五十七米穀年度へ参ります需給関係では百ないし百十万トン程度の供給余力を持って対応できるのではないか。相当の不作の場合にも耐え得るものと考えております。
  104. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 仮定の問題だからこれ以上議論をしませんが、十分に天候を配慮しないと、水田の再編は評判が悪いのですから、再割り当てをなんということであわてないように十分に展望してやってほしいということ、まずこれを一つ要望しておきます。  そこで、私のところにまた投書が来ている。飯米農家になぜ減反を押しつけるのか。飯米農家、米を買ってくる農家に減反を言ったらおかしいじゃないか、米を売らないのだから。こういうことについてわかりやすい答弁をしてもらいたい、こういう要求が来ていますが、これについてわかりやすい答えをしてもらいたい。
  105. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田利用再編対策につきましては、農業の再編成という側面もございますが、何といいましても米の需給調整というものを大きなねらいにしている、こういうことでございます。したがいまして、すべての農家、専業農家も飯米農家も、すべての稲作農家の協力を得て実施していく必要がある、かように考えるわけでございます。  それから、地域ぐるみの転作を進めるということで、定着性の高いそういう形でやっていきたいというふうに思っておりますが、集落内の土地の利用調整というようなことなどの観点からいたしまして、やはり地域の実情に応じまして飯米農家の方にも直接、間接的に御協力を求めなければならないというような事情もございます。そういうようなことから飯米農家の方につきましても、実情に応じていろいろ御協力をお願いしているわけでございます。  いずれにいたしましても、農家ごとの配分ということになりますれば、これは何といいましても、地域の実情に一番精通をされておられます市町村長にゆだねているということでございますので、その段階で農家ごとの経営条件等も十分配慮した適切な配分が行われるというふうに期待をいたしておるわけでございます。
  106. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは末端ではなかなか理解のできないことだけれども、米を買ってくる農家に、売らない農家に減反というのは、これは筋の通らない話だ、実際の話が。こういうことは、もうこれだけの面積がふえてきたからそろそろ改めていかなくちゃならない。ペナルティーはしないというけれども、実際は米を売らない農家にまでペナルティーがかけられたことと同じことじゃないか。これはよくないから再検討してもらいたい。  きょうはこれを議論をする場じゃないから本論に入りますが、養蚕の問題に関して、先般わが党の串原委員から本委員会で養蚕問題について、生産費のふえたこと、それから事業団の在庫のふえていること、そのふえた理由、それから青竹の問題をめぐっていろいろ質問があり、基準糸価を上げるのか上げないのか、こういうような質疑がありました。それに対する一定の答弁があったわけでありますが、引き続いて私はこれに対して質疑をしていきたいと思います。  最近、生産者団体と輸入業者との間に著しく考え方が違う文書が流れてきました。特に輸入する団体からは、外国に安いものがあるのだから一元輸入なんというのはやめてしまって、安いのをどんどん輸入してきたらいいじゃないか、こういう意見なんです。これは去年の通産省の事務次官の矢野発言と同じことだ。日本の養蚕はぶっつぶしても構わないから、安い外国のものを入れてきて織物をつくったらいいだろう、こういうむちゃな意見にこれは通ずる。こういうものを黙って見ているわけにいかない。  養蚕業というものは日本の民族的な、伝統的な産業だ。農林水産省の六十五年の見通しの中にも、十七万戸の農家、そして十二万ヘクタールの養蚕と約三十万俵に近いものを見通しをしているわけなんです。そういう中でそのような勝手な意見を述べる団体があるというのは、これはけしからぬ話だ。そういう点でいまの要請に対してどう答えられるか、まずその辺から考え方を聞きたい。
  107. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在、蚕糸のいろいろな制度につきましては、特に今月末までに五十六生糸年度の基準糸価等を決めなければならぬということがあるわけでございますが、これに絡みましていろいろな制度改正といいますか、そういうものも含めた要望なり御意見が各方面から寄せられております。ただいま先生からもお話がございましたように、蚕糸サイドの御意見、それと織物業界サイドの御意見、大体相反する御意見が鼎立をしておるということでございます。いずれにいたしましても、確かに現在のこの蚕糸の仕組み、特に繭糸価格安定法に基づきます安定価格帯、異常変動防止なり中間安定措置等もございますが、この辺の運用とも絡みまして種々御意見が出ているわけでございます。具体的な御意見につきましては、農林省の中でも確かに業界からの御意見はいろいろ検討したわけでございますが、なかなか直ちに採用するというようなことは困難であろう、こういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、基本的には絹需給が不均衡であるというところに要因があるようでございますので、その辺の絹需給の不均衡を是正していくということが基本的に重要である。そのためにいろいろな需要増進対策なり輸入対策なり、あるいは価格対策なり生産対策なり、こういうものを有機的、総合的に検討して、それぞれ実施に移せるものは移していくというようなことで取り組んでいくべきではなかろうか、こういうふうに考えております。
  108. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま絹需給の問題が出ましたが、特に在庫の問題、十四万数千俵、その中の十一万俵というものは二カ年の間に入ってきたものであって、非常に短期に入ってきたということはこの間串原委員の質問の中でも明らかになっておる。そこで、これはやはり見通しの誤りなんですね。こういうものをどういうふうに処理をされるのか。私はやはり五カ年ぐらいで、外国から入ってくるのをとめてそしてこれを計画的に処理をしていくということで、必要な在庫のところまでは生産の方も努力をしていくし、なかんずく外国からのものはとめる、こういうような臨時的な緊急措置をとらなければだめだと思うのですね。その点について大臣、どうですか。
  109. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいまお話がございましたように、この二月末現在で十四万五千俵の生糸が在庫いたしております。その後も逐次、毎日買っておりますので、どんどん積み上がっておるという姿でございます。  それで、この事業団在庫、これの解消はどうやるかという問題になるわけでございますけれども、いずれにいたしましても海外に輸出するというようなことはできません。前と違いまして最近におきましてはもう輸入一方でございますので、これは海外に掃くというわけにはまいりません。そういたしますと、やはり国内で処分するしかないわけでございますけれども、これを処分するためには何といいましても絹需給の改善がなければ、売りに出せばそれは糸価の下落になる、絹価の下落になるということになりますので、やはり需給改善というものを図っていくということに非常に精力的に努力しなくちゃならぬものと思います。  このためのいろいろな手段としては、先ほども申し上げましたように輸入政策の問題もございましょうし、あるいは需要増進対策もありましょうし、価格政策の面でも考えるべき点はあろうかとも思いますし、生産政策面でもあろう、そういうものをやはり適時適切に逐次実行に移していくというようなことで、有機的、総合的に対処していくべきものではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  110. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、一部には原料が高いから需要が伸びないのだ、こういう意見がある。いろいろ調べてみると、四十数万円もする振りそでにしても、その原料は一万数千円なんです、原価は。だから、どこに一番問題があるかと言えば、卸から小売に至るところの段階が非常に金がかかっているということでしょう。だから、その問題に全然手を触れないで、糸価を上げるということはまた需要が減るのだという、そういう物の考え方に対してどうお考えか。  私はそういう考え方はとらない。四十五万円のものにしても原価が一万五千円、そうして織物の段階になったときに物すごく金が高くなってくる、その辺のことをどうするか。織物の方がそういうふうに問題があるならば、その方面をどういうように近代化していくのか、こういうことをしなかったら需要の伸びなんか考えられないのじゃないか。生産者ばかり圧迫をして、それで需要が伸びるというものではない。これはどうですか。
  111. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいまお話がございましたように、最終の絹製品、これに占めます生糸代ということで見ますと、確かにわずかなものでございます。高級な振りそでで二・五%程度、あるいは小紋でございますが、これでは一五%程度ということで、最終製品の面では非常に比率が少ないわけでございます。  ただ、ただいまも先生からお話がございましたように、この最終製品になりますまでにいろいろな複雑な流通過程、これが介在をするということでございます。したがいまして、こういう流通面につきましても、いろいろこれを近代化するというようなことは必要があろうかと思います。この面につきましては、所管の通産省の方ともよくその辺は打ち合わせつつ、そういう面の努力はしなければならぬかと思います。  ただ、一番問題は、白生地をつくります機屋さん、これが一番生糸を買って白生地をつくる。この機屋さんの段階になりますと、白生地の中で、振りそででも小紋でもそうでございますが、大体六割方が生糸代でございます。したがいまして、この生糸の価格が五百円上がる、あるいは五百円下がるというようなことは、機屋さんにとってはこれは非常に大きな問題でございまして、この機屋さんが倒れてしまいますと最終のきれいな着物はできないということでございまして、やはり各般の流通過程がそれぞれ存立をしていってこそ初めて末端できれいな着物ができ上がる、こういうことでございますので、その面の配慮といいますか、そういうことも十分留意しなければならぬだろう、こう思っております。
  112. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、今度はその機屋との関係ですが、この前青竹問題というのが出ましたね。その青竹問題については、七月の段階でフィリピンから十二万平米が入ってきた。続いて十月に百三十七万平米。これは着物にすると四十数万着に値をするものだそうです。それだけのものが入ってきたという。前段階では非常に少なく、そして後段になると大量に、一定の期間を置いて。これはだれが見ても計画的であり、作為的であり、構造的だと見なければならぬですね。  こういうものは、前にも外為法違反であるとかいろいろな違反だというふうに関係当局は答えられたが、その後何かこの問題について変化はありませんか、大蔵省、通産省。
  113. 田中史

    田中説明員 お答えいたします。  まずスペイン青竹問題につきましては、現在東京税関におきまして、関税法百十三条の二、虚偽申告罪に当たるのではないかということで調査を行っているところでございます。調査が終了し、関税法違反の事実が明らかになれば、厳正な処分を行いたいというふうに考えております。  それから、昨年の七月二十五日にフィリピン産ということで輸入申告された事案につきましては、当初の段階では犯則事件ということの調査を開始するための資料も特になかったわけでございますが、スペインの事件が発生いたしましたので、これもあわせて分析検討いたしました結果、昨年の十二月以降、スペインの事件と同時並行的に強制捜査を行い、同時に調査を進めてきているところでございます。したがいまして、これの処分につきましても、スペイン産のものと同じように考えていきたいと思っております。
  114. 末木凰太郎

    ○末木説明員 御説明いたします。  昨年七月フィリピンから約十二万平方メートルのいわゆる青竹と言われるものが入りましたこと、それから、十月にスペインから約百三十七万平米の同様なものが輸入されましたことは御指摘のとおりでございまして、いま大蔵省の方から御説明がございましたが、私どもも、これが輸入貿易管理令の違反の疑いがあるのではないかという意識を持ちまして調査中であるということは、先週十九日の当委員会で御説明したとおりでございます。  その後今日のところは、これはフィリピンとかスペインなどの外国を舞台にしておりますので、その辺の状況をいま重点的になお調査を続行している段階でございます。今後の扱いの方針につきましては、先週申し上げましたとおり、法律違反がはっきりしてまいりますれば厳格な処分をする考えでございます。
  115. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この輸入に関して同一人物が陰に陽に介在をしているということになるとしたら、これはまさに一つの犯罪行為だ。そこで、警察庁の方にこれの捜査を依頼したというのですね。警察庁の方ではどういうような捜査をされているか。
  116. 内田文夫

    ○内田説明員 ただいまお話のありましたフィリピンあるいはスペイン産ということで、まあ恐らく中国産ではないかという疑いの濃い絹織物が輸入されたという件につきましては、それぞれ関係省庁からその点についてのお話は承っております。
  117. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ここまで来て、大蔵省なり通産省なりというものが十分に手の届かない部分については、違反として告発をする意思はないかどうか。どうですか。
  118. 末木凰太郎

    ○末木説明員 先ほど御説明申し上げましたとおり、現在なお、主として海外関係につきまして重要な点の調査を続行中でございます。  少し敷衍して申し上げますと、たとえばスペインのものにつきましては、スペインの地方のある商工会議所から本件のための原産地証明書が発給されているという事実は確認しているのでございます。しかし、これは正当な手続で発給されたものとは思われません。したがいまして、そういった原産地証明書の交付申請なり発給なりがどういう状況でだれに対して行われたのか、この辺のところもなお外交ルートを通じて調査いたしまして、つかむべきところをつかまなければならないと考えております。そのような点を詰めた上で、法律の要件に照らしまして法違反がはっきりしてまいりましたときには、御指摘のような告発という点も具体的な問題になってくるかと思いますが、いずれにしましてもなお調査した上で結論を出したいと考えている段階でございます。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大蔵省はどうですか。
  120. 田中史

    田中説明員 お答えいたします。  関税法違反につきましては、大きく分けまして、一つは情状が懲役刑に相当すると認められます場合には税関長が検察官に告発するということになりまして、その後は司法手続に移行することになるわけでございます。それから、それ以外の場合につきましては、罰金に相当する額を犯則者に通告いたしましてこれを履行させる通告処分というものを行う権限が税関長に与えられているわけでございます。したがいまして、この告発は訴訟条件というふうにもなっておるわけでございます。税関長におきまして告発をするか通告処分をするかのいずれかの権限が与えられているわけでございますが、現時点におきましてはまだ捜査中でございますので、そのいずれになるか判断し得る段階には至っておりません。
  121. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これだけ一元輸入の道があり、二国間協定、それから事前確認制ということをしてきても、なおかつこれだけ悪いことをする者がいる。しかも、同じ人間がそれぞれ陰に陽にあらわれながらやっている。こういうことについてもっと強い規制をしなければ、まじめな者が大変ばかをみる。だからこの際われわれは、在庫の一掃とそれから安定して需給ができるまでは、特別な立法措置を講じてでもこれに対して防いでいかなければならない。大臣は蚕糸の専門家であって、これについては恐らく大変憂えていると思われるのだが、心境はいまいかがですか。
  122. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 青竹といいまた赤竹といい、いろいろなケースが今日まであったわけでございますが、ただいま通産、大蔵両当局からお答えいたしましたとおり、告発をしても公判維持ができるための証拠を十分握りたいということで調査中であるわけでございます。農林水産省といたしましては糸価暴落というような中で糸価の決定をしなければならないという情勢から判断いたしましても、養蚕、製糸、機屋、それぞれ死ぬか生きるかという全くのピンチの中にある、こういう日本の状態を考えますとき、通産、大蔵両当局においてもそういう立場の気持ちになって、速やかに捜査を進めて法的な措置をきちっと国民の前にとる、こういうことが国家公務員に与えられた一つの大きな使命であろうと私は考えております。
  123. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひけじめをつけてもらいたいと思う。いつまでもだらだらしないでけじめをつけて、きちんとわかりやすい措置をとってもらいたい。  そこで一部に、供給の方がどんどん増しているからこの際養蚕の減産をしようではないかというような説をなす者がいるそうですが、はなはだけしからぬ話です。水田利用再編対策の対象に養蚕はなっている。われわれは五年間なければりっぱな桑畑ができないと言っておるのに、三年間でがまんをしろと言って三年間は奨励金をくれている。三年たって、五年でいまやりっぱな畑になっているのです。こういうものを減反しろなんていう話は、水田も減反、畑も減反、とんでもない話だ。そういう考え方はないだろうね。
  124. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お話しございますように、稲転対象品目から桑を外すべきだというような御主張をなす向きもないわけではございません。ただし、私たちといたしましては、現段階ではそういうことは考えておりません。先ほど言いました絹需給の均衡を図っていく過程において、お話の点も含めて今後の研究課題であろうというふうに考えております。現段階では考えておりません。
  125. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 余りそういうことは研究しない方がいいですね、そういうことは研究するのは骨が折れるから。現状は五年たったらりっぱな桑畑になっているのだ。それに対して余り研究されると困る。研究しないで、もっとやっていけるようにする。  そこで、価格の問題をちょっと相談します。価格を決めるのは三つしかないですね。この前串原委員が言ったように、資材、賃金、電力、生産者の方は生産費が上がっていますね。だから、上がったように、再生産ができるように基準糸価を上げていく、これが一つ。ところが二瓶局長は、しばしばマスコミを通じて今度は値を下げるのだということを言っておる。局長が一言うたびに神戸や横浜の生糸の値が下がってしまう。これは非常に困る。そして世論操作をする。それはよくないですね。それなら据え置きをしようじゃないか、据え置きということは、またぞろ乳価も何もかも据え置きをして、それで今度は、困れば金を貸してやるから金を使え。無利子ならいいけれども、ちゃんと金は返さなくちゃならない。やはり基準糸価を上げる以外にはないのですよ、どんなことがあっても。どうですか、これは大臣だな。——まだ早いと言うのかな。
  126. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 基準糸価につきましては、この二十八日の蚕糸業振興審議会繭糸価格部会に諮問をして、その意見を聞いた上で決定をしたいということで、いま諸般の準備を取り進め中でございます。まあ基準糸価につきましては大きく言えば確かに三つしかないわけです。上げるのか、据え置くのか、下げるのか、これしかないわけでございまして、その辺、いろいろ資料を集めまして検討をやっておるというのが現在の状況でございます。  いずれにいたしましても、繭糸価格安定法に定めておりますとおり「生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として」定めるというふうになっておりますので、法の定めるところによりまして適正に決定をしたいということで鋭意検討中でございます。
  127. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 養蚕問題について、これはひとつ大臣にお尋ねし、また決意を聞きたいと思うのです。  これは異常な事態だと思うのですね。かつてこういうことはなかったでしょう。これだけの滞貨があって、なおたんぼの減反、それが今度は生産に返ってきて、生産は通常で言えば上がる、去年は冷害だったから少し下がった。そこで、こういう場合には生産者も消費者も、それから機屋さんも糸屋さんも働いている労働者も、みんな一緒になって緊急対策を考えるべきであって、生産者の方に向かって輸入業者がああいうようなことを言って国内を混乱させないようにする、そういう緊急懇談会、対策委員会みたいなものをつくって処理をするお考えはないかどうか。
  128. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 私はもう四年ほど前から、死なばもろとも、養蚕、製糸、機屋、この三者が息を合わせてこの急場を乗り切らないと大変なことになりますよと、言い出しっぺであり言い続けてきたわけでございます。  しかし、竹内委員御承知のとおり、糸価の決定については戦後ずっといつも非常に謙虚な立場をとってきまして、労賃も、ほかの農産物資、食い物ではないというような立場から一番労賃が低位に見られてきた、しかしお米が二年据え置きというようなときでも糸価は上がってきておる、乳価は三年、四年据え置きというときでも糸価は上げてきた、こういうことで、その間に養蚕農家が生・産性の向上を図る努力を行い、製糸は製糸としての近代化を進め、機屋は機屋としての企業としての基礎を築くということでやってきたわけでございます。  しかるところ、それだけの努力をしながらも今日のような状態にぶつかっておる。外から糸を入れるからだ、織物を入れるからだ、こういう指摘もあるわけでありますが、これはおととしから去年、特に私が就任いたしましてから、二国間協定で厳しく、通産、農林の諸君の協力を得て輸入数量を相当思い切って減らしてきておるわけであります。したがって、もうそろそろよくなっていっていいのではないかな、こう思っておるにもかかわらず、糸価は去年、ことしと低迷して先行き真っ暗というか、事業団に糸がたまるばかり。原因は一体どこにあるのだろう。私なりに考えてみまして、結局いままで問屋とか機屋とかの倉庫にあった生糸がいまなくて、そうして蚕糸事業団の倉庫に集中してしまっている、こんなふうになっていやせぬか。死なばもろともというようなことを業界で大体わかってもらったつもりでありましたが、私の見方は甘かったのかなという感じはするわけであります。  先ほど一番先に御指摘のあったとおり、養蚕農家は基準糸価を生産費及びその他の条件で上げるべしという声が強い、一元化を守れと言う。機屋の方は一元化はもう自分らの首をくくるゆえんだから、あんなのは撤廃してしまえと陰では言っておる。こういう状態であったのではこれはもう危機突破はできない。こういうことで、死なばもろともという形ができたのかなと思っておったのですが、現実になかなかできないわけです。ここにこの糸価の問題の非常に厳しい、むずかしい問題が出てきた、こういうふうに私は理解しております。  それじゃどうするかというと、この死なばもろともという気分を実行にあらわしてもらって、それぞれの立場立場で信頼関係を回復してもらうことが一番大事じゃないか。それには政府が腹を固めて、蚕糸業というものをどんなふうになっても大きくバックアップして、伝統産業だから維持存続、発展させていくのだというきつい姿勢をとらなければいけないな、こういうことであります。しかし、現実は厳しい。その厳しい試練も酪農家はとうに何年か前から、厳しい情勢を踏み越えようとして努力しているわけです。米作農家も努力しておる。養蚕農家も製糸も機屋も、この際そういう意味においてほぞを固めてやっていってもらわなければいかぬなという感じを率直に申し上げて、ただいま局長からお答えいたしましたとおり、最善の策を尽くして結論を導き出したい、私はこんなつもりでおる次第でございます。
  129. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ただいま大臣から強い所見が述べられたわけですが一何にしても伝統的な産業であり、日本の民族的な産業でもありますから、これを壊さないようにしっかり守ってもらいたいということを要望したいと思います。  そこで、私は今度は養鶏問題について触れますが、昨年の十一月二十六日のこの委員会で、やみ増羽者に対するえさ基金からの排除の問題について主張しました。これについては農林水産省当局はそれを守っていただいて大変敬意を表します。ただし、その後鶏卵需給安定対策検討会というものが開かれたのですが、これはわずか三回くらい開いて一つの結論を出されたようですけれども、重大な問題に関してかなり乱暴ではなかったか、もう少し慎重にやるべきではなかったかと思うのですが、どうですか。
  130. 森実孝郎

    森実政府委員 研究会自体の回数は御指摘のようなことで報告をまとめたわけでございますが、事前に関係者のいろいろな話し合いがあったこともまた事実でございます。いわゆる根回しがいろいろ行われたことも事実でございます。  内容につきましては、四十九年五月を基本としている凍結羽数の見直しの問題と、もう一つは無断増羽者に対する協力確保の問題、もう一つは計画生産の計画的な実施のための鶏卵の需給調整協議会への団体ないしは生産者の参加の促進の問題、それからいま御指摘がありました飼料の価格安定制度からの無断増羽者の排除という問題を決めているわけでございまして、いろいろなことがございましたが、私どもはこの方向は妥当なものではないかと思っております。
  131. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 現在は卵価がやや安定してきているのですが、問題は四十九年五月から生産調整に入って、五十五年五月からまた再出発をする、それについての基礎が五十五年の五月だという。こうなると、四十九年から生産調整を守ってきた者とやみ増羽者との区別がつかない。区別をするとするならば、百一戸三百四十六万羽に対して二〇%くらいの減羽をしてそれで落ちつかせよう、こう考えているようだけれども、これはやみ増羽者に対する温情じゃないか、恩恵じゃないか。悪いことをした者には徹底的に鉄槌を加えるというのが筋じゃないですか、どうですか。
  132. 森実孝郎

    森実政府委員 どういうふうな削減率にして実施していくかという問題は現在検討しておりまして、まだ結論は出しておりません。五月ごろまでにはしっかりした結論を出したいと思っております。  御指摘のように、従来から生産調整に協力してきた生産者の心情を考える、これはまことに重要なことだと思います。しかし、他方、できるだけ多くの生産者の協力を確保することも重要な課題だと思っております。そういう意味で五十四年度における削減率等も頭に置きながら関係者の意見も十分聞いて慎重に検討させていただきたいと思います。
  133. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 えさ基金の問題に関しても、イセのように会社があってあっちこっちに養鶏場を持っているというようなものについてえさ基金からチェックしていく、依然として守らないものについてはチェックしていくという方式をどのように考えられるかという問題がありますが、これについてはどう考えておられますか。
  134. 森実孝郎

    森実政府委員 御案内のように、全国基金と県基金を通じまして、やみ増羽者については飼料基金としては契約を締結しない、また、その後の無断増羽については解除できるということにしているわけでございます。現実には鶏卵の県の需給調整協議会から県の基金協会を通して全国へ通知されることになっておりますので、私は御指摘のような事態はかなり避けることができるのではないかと思っておりますが、また別に、先ほど申し上げたように無断増羽については基金サイドからも契約を解除できるわけでございまして、いま申し上げましたような連絡の関係を改善していくことと、それから今回打ち出しました飼料基金の姿勢論というものの徹底を図ることによって、できるだけ抑えてまいりたいと思っております。
  135. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題は、せっかくいままで努力をされてきたのですから、その努力を了とすると同時に、これからもやみ増羽者の取り扱いというものについては、まじめに守ってきた人がばかをみないように、自主的に調整してきたものですから、それに十分にこたえていただきたい。  時間が来てちょっと恐縮ですが、次の質問者から二、三分時間を協力してもらって、最後に私は、水田利用再編に関して、キリンビールとトマトジュースとの関係について公正取引委員会に要請をしたいと思うのです。  麒麟麦酒は確かに日本のビールの中の六〇%以上のシェアを持っていると思います。もっとあるかもしれません。この麒麟麦酒がビールを卸に売るときに、トマトジュースを抱き合わせをする、こういうことが行われている。このためにあちこちの作付に影響があります。関係者はこれを知っているかどうかわかりませんが、これでは非常に困るので、ビールはビール、ジュースはジュースですから、しかもそのジュースの値を安くしてこれに抱き合わせているということは、はなはだけしからぬ。独占体であるものがいよいよ今度は独占行為に出たということですから、これについては厳重に調査をしてもらいたいと思うのです。  関係者はそのことについて知っているかどうか、これを聞き、それから公取に要請をして終わりたいと思いますが、いかがですか。
  136. 相場照美

    ○相場説明員 お答えいたします。  御指摘の問題につきまして、私どもも十分に実態をまだ把握いたしておりません。したがいまして、直接その問題についての意見を述べることは差し控えたい、こういうふうに考えております。ただ、有力な大企業が非常に強い商品といいますか、有力な商品に抱き合わせまして他の商品を販売していくという行為は、一般論といたしますとやはり不公正な取引方法に当たろうか、その疑いがあろうかというふうに考えております。  ただいま先生の御指摘の案件につきまして、私ども事件の端緒といたしまして十分に承り、今後十分注意してまいりたい、このように考えております。
  137. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がないからきょうはその実態については触れません。実態もありますが触れませんが、いずれにしてもキリンビールと抱き合わせにジュースが無理やりに売られている。しかもそれは値が下がっている、定価よりも安い。明らかにこれは独占禁止法に違反するわけだから、次の段階ではその実態を明らかにしますから、これは農林省の関係者も十分に監視をしてもらいたい。  以上、終わります。
  138. 田邉國男

  139. 田中恒利

    田中(恒)委員 畜産物の問題、飼料問題などについて御質問いたしたいと思います。  まず、統計情報部からお答えをいただきたいと思いますが、昨年対比で、ごく新しいところで賃金、物財費の状況はどうなっておるのか、牛乳など関係畜産物の生産費の調査でまとまっておりますものがございましたら、お知らせをいただきたいと思います。
  140. 関根秋男

    ○関根説明員 五十五年の畜産物の生産費の調査結果についてのお尋ねだと思いますが、先日肉用牛及び肉豚について生産費調査の結果を公表しておりますので、それに従って申し上げますと、肉用牛につきましては、昭和五十五年の去勢若齢肥育牛の生体百キログラム当たりの第二次生産費は十万二千二百三十三円でございまして、前年を六・二%上回っております。これはお話がございましたように、配合飼料の値上がりと労賃単価の上昇等によるものでございます。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕  また、乳用雄肥育牛の生体百キログラム当たりの第二次生産費は七万一千八百五十九円でございまして、前年を一五・七%上回っております。これも配合飼料及び労賃の値上がりに加えまして、素畜等の価格が上昇したことによるものでございます。  肉豚につきましては、生体百キログラム当たり第二次生産費は三万六千七百七十円でございまして、前年を四・五%下回っておりますが、これは配合飼料と労賃が値上がりいたしましたけれども、素畜である子豚の価格が大幅に下落したことによるものでございます。  牛乳につきましては目下調査結果を取りまとめ中でございまして、明日公表の予定にしております。  以上でございます。
  141. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、賃金と、特に畜産経営費の半分近く、ところによっては六割を占めておりますえさですね、これの値上がりの状況を……。
  142. 関根秋男

    ○関根説明員 飼料費につきましては、肥育牛は前年対比で一三・三%の増でございます。それから労働費につきましては四・八%の増でございます。  豚の方について申し上げますと、飼料費につきましては一〇・一%の増でございます。労働費につきましては五%の増ということになっております。
  143. 田中恒利

    田中(恒)委員 乳価の方は大体わかっているのでしょうが、いずれにせよ、いま御報告ありましたような飼料、特に賃金、生活資材の値上がりはおおよそ予想されておるところでございますが、いよいよ三月末の畜産物の支持価格決定の時期に入りまして、本委員会でも数日来畜産問題についての議論がなされておるわけであります。伝えられるところ、牛乳の据え置き、その他の畜産物についても微増ないし据え置き、こういうことが一般的に伝えられておりますが、これまでの算定方式をそのまま採用したといたしましても、私どもの推計で四%ないし五%の保証価格、標準価格の値上がりは必至であるという認識をいたしておるのでありますが、この点につきまして畜産局長はどういう認識で審議会に臨もうとせられておるのか、この際御所信をお尋ねをいたしたいと思います。
  144. 森実孝郎

    森実政府委員 二十六日に食肉の審議会を、二十七日に酪農の審議会を開きまして、今週末までには価格を決定したいと思っております。  御指摘のように、生産費の動向自体はやはり算定に当たっては織り込んでいかなければならないと思いますが、算式をどうするか、また結果をどうするかについてはまだ最終的な結論を得ておりません。ただ需給事情その他の経済事情という点から、やはり今日の畜産をめぐる情勢は非常に厳しいものがあるということは御理解を賜る必要があるのではなかろうかと思っております。  牛乳につきましても本質的に需給ギャップという問題がございますし、また膨大な過剰乳製品の在庫があるわけでございます。豚肉はおかげで二割方価格を昨年の春に比べれば戻しておりますが、実際はかなり生産調整をやることによって需給均衡をようやく回復しているという事情もあるわけでございます。そういった事情を一切勘案いたしまして決定をしなければいけないと思っております。
  145. 田中恒利

    田中(恒)委員 まあ法律の解釈をきわめて都合よくせられるわけで、これは米価も同じでありますが、需給事情その他の経済事情を勘案して算定方式がぐるぐる変わる、ここに私どもからすれば農林省の価格政策の不信が非常にあるわけであります。昨年の方式でいけば一体幾らになるのか、この点の計算はしていらっしゃいませんか。
  146. 森実孝郎

    森実政府委員 まだしておりません。
  147. 田中恒利

    田中(恒)委員 私どもの方で非常に粗っぽい計算ですけれども、保証乳価は四・五%程度上がるべきではないかというふうに考えておりますが、巷間据え置きということがきわめて一般的に宣伝をされております。恐らく農林省から出ておると思いますが、私はこの価格政策で据え置くということは、いまも局長おっしゃったように、厳しい需給事情、乳製品の滞貨、こういう状態をにらんで生産を刺激したくないということだと思いますが、間違いありませんか。
  148. 森実孝郎

    森実政府委員 商品の価格でございますから、需給事情は十分考慮しなければならないと思います。そういう意味では、現在の需給ギャップあるいは過剰在庫というものは、牛乳について言うならば、やはり生産刺激的な乳価が従来設定されていたのではなかろうかという反省を要する点もありますし、また今後の態度については厳しい姿勢が必要になるのではないかと思っております。
  149. 田中恒利

    田中(恒)委員 御承知のように、生産者団体の方は昨年以降特に乳牛につきましては自主調整というものを進めておるわけでありまして、昨年度は計画よりもたしか二万トン程度上回ったと思いますが、昨年度の五十五年度の状況、今年度の状況はいわゆる計画どおり、農林省の基本計画あるいは生産者団体の見積もりのままにほぼ動いておると思うのですね。ですから私どもが現地へ参って酪農家の皆さんと話をすると、この前自由民主党の方もおっしゃったように、乳をしぼりたい、牛もおる、なぜしぼらしてくれぬのか、こういう声が満ち満ちておるわけであります。  しかも、その効果は予定どおりのベースで実績としてあらわれておるのです。乳価を上げたって、ことし乳は局長御承知のように六百五十一万トンですね。しかも昨年の余剰乳というものが七万八千トン、これを差し引いてその数字をはじいていま各県別に割り当てをしておりますね。その形で末端では受けとめて、酪農家に対してこれだけの乳をしぼってほしい、これ以上は受け付けません、こういう厳しい自主規制をやってその効果が上がっておるわけですから、ここで物財費や労賃やえさ代の上がりに対応する価格を上げても、そのことで結果的には牛の生産がふえたり乳量がたくさんになったり、そういうことにはならないと思うのですよ。そういう心配は要らぬと思うのですよ。ですから、やはり法律的に決められた処置で進められていいのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  150. 森実孝郎

    森実政府委員 一つの御意見であろうとは思います。しかし、今日の状況では、絶えず酪農生産というのは拡大するエネルギーを持っていることは事実でございます。やはり放置するならば、需要の伸びと供給の伸びにはかなりギャップがあるわけでございますし、そういった状況から見ますと、生産刺激的な乳価を決めることは、全体の中で生産エネルギーに拍車を加えることは私は避けられないと思います。また、われわれといたしましては、今日の酪農政策を長期的視点で考えるならば、この過剰在庫をこれからどうやって処分していくかも深刻に考えなければならない状況であるということも御理解を賜る必要があると思います。  生産者の皆さんが、これは別に役所が決めたわけではございません、もちろん相談には、報告はあずかっておりますが、計画生産実施について御尽力いただいておることは私どもも感謝しているところでございまして、当面とにかく計画生産を通じて需給の調整を図っていくということが必要だろうと思います。米の場合と牛乳の場合は本質的に違う要素もあるわけでございまして、次の段階において果たしてこの生乳の需給調整をどう考えるかという問題は、さらにこれから一年かけて研究しなければならない面もあるだろうと思っているわけでございます。
  151. 田中恒利

    田中(恒)委員 米の場合と違うと思うのですよ。長期六十五年見直し計画でも、牛乳の生産は伸ばす、こういうことになっておるわけですから、何も抑える必要はないと私は思うのです。当面在庫を抱えて、乳製品市場はこういう状態になっておるというところに、ことしの乳価についてのブレーキをおたくの方ではしようとしておるのだと思いますけれども、しかし酪農家というか、畜産農家の立場に立つと、御承知のように日本の酪農の場合は平均頭数十八・八程度ですか、ともかくEC並みの状態に接近して、北海道などは上回っておる、こういう状態なんですね。  いままでのように二頭、三頭、五頭飼いで、価格政策やその他のもので調整ができるという状況には立ち至ってないので、これ以上生産費を割るような、しかも五年連続で据え置きするというような、四年間据え置いてきた、ことし据え置く、五年の間にどれだけの経費が重なってきておるか、およそ常識で考えられる。それを見ましたら、これはいまの傾向の一つになっております畜産農家の借金をずっと上乗せをして、破産をさせてしまうかどうかという状態に追い込められていくと思うのです。ただ頭数を減らすとか、乳量を少なくするとかいうような小手先の状況では済まぬ事態になるという不安を感じます。それだけに、本年度の畜産物価格の決定に当たっては、きょうはここでその詰めをするようなわけにいかぬわけでございますから、十分に審議会の御意見などもお聞きして決定をしていただきますように御要望しておきたいと思います。  次に、畜産局長は、この間の畜産振興審議会で、問題になっておりますナチュラルチーズの生産振興のための工場の建設は断念せざるを得ない、こういう情勢報告をせられておるわけでありますが、この点につきまして、どういう経過で断念しなければいけないような状態になったのか御報告をいただきたい、こういうふうに思います。
  152. 森実孝郎

    森実政府委員 私、先般の審議会で申し上げましたのは、従来のチーズ工場、国産のチーズの建設構想は事実として断念せざるを得ないだろうということを申し上げたわけでございます。  経過を申し上げますと、はっきり言うと、全体としては生産者団体と乳業者との間になかなか合意ができない。それからもう一つは、市況が、チーズ自体についてもかなり在庫がふえてきて悪化してきておる、乳業会社の経営状況も悪化してきておるという状況もございますし、それからもう一つは、工場をつくって物をつくり売るわけでありますから、販売の見通しをどうつけるかという問題がなかなかゴールを発見できないということにあったのだろうと思います。  しかし私は、チーズの国産化という問題は、飲用乳の需給と価格の安定と並んで、長期的に見ればやはり酪農の重要な課題であるということはその審議会でも認めております。そういう意味におきまして、視点を新たにして、生乳取引のあり方、チーズの種類、販売の仕方、特に乳業者と生産者の合意の形成ということに力点を置きながら、これから関係者の具体的な提案を待って、その評価の上に立って現実的にひとつ応援の施策を考えてまいりたいと思っておるわけでございまして、やめたということを無条件に申し上げているわけでないことは御理解を賜りたいと思います。
  153. 田中恒利

    田中(恒)委員 生産者と乳業者の話し合いがつかないのでこれまでの構想については断念をするとはっきり言っているのかどうか、この辺ちょっと私ども気がかりな面があるのです。しかし、一番いいのは生産者、乳業者の話し合いで合意ができればいいでしょうが、もしそれができない場合、たとえばいま問題になっておるように、生産者独自でやっていくのだという動きもありますね。そういう場合でも、チーズの国産化という方向は、いずれにせよいまの輸入の状況なり日本の国産乳製品市場というものを新しく創造していくという立場では、局長おっしゃったように非常に重要な問題だと思いますが、農林省としては積極的に進めていく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  154. 森実孝郎

    森実政府委員 基本としては積極的に進めるべきものと思っております。  ただ、私先ほど申し上げましたのは、従来構想の合弁ということは無理になったということを申し上げているわけでございまして、生産者団体と乳業との広い意味での協調関係がないと、チーズという商品をつくってうまくいくということはなかなかむずかしいということも重要であるということを申し上げたわけでございます。
  155. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に、前の委員会でも皆さんから御質問がありましたが、調製油脂の輸入規制につきましていろいろお話がありました。今日段階では外交折衝の大詰めであるということで明らかにされておりませんけれども、おおよそ言われ、われわれが認識する範囲では、自主規制あるいは行政指導が完遂するような国内体制の整備に力を入れる、こういう意味の御答弁が前回あったように私の頭の中にあるわけでありますが、私どもはこの問題については、島田委員指摘をしておりますように、やはりIQ制を何としても実現をしていただく、その方向で処理すべきである、こういう基本的な態度で今後も要請を続けていきたいと思っておりますし、政府におかれましてもそういう措置をとっていただきたいと思いますが、自主規制というものが果たして言われるような形で実を結ぶかどうか、大変疑問に思っております。  すでにココア調製品の自主規制が行われておりますけれども、今日ココア調製品は一万七千トンの上限を上回って二万トンに達しておる。すでに自主規制の計画は破れておるわけでありまして、特に調製油脂の内容等に関して、聞けば聞くほどこの自主規制というのはなかなかむずかしい。それだけにぜひIQ制への方向に努めていただきたいと思います。  特に、私ども見てみると、昨年の十一月の初めにIQの方向をほぼ腹を決めて各国に対しての意向打診をせられておる、各省間の話し合いが進められておる、そういうバックグラウンドの造成が、業界をして、この際ともかく早く入れておかなければ大変だというような、駆け込み輸入というものが今日調製油脂の大幅な輸入増につながっておると思うのですね。こういう形でつながったものを一定の実績として評価して自主規制の枠の中でやっていくということになっていくと、これは全く農林省主導型で調製油脂の輸入量をふやしていくということに結果的にはなるので、酪農家の立場から言えばペテンにかけられたということになると私は思うのです。  したがって、そういう点については今後どういうふうに展開していくか、まだ未知な分野がございますけれども畜産局当局としてもこの点についてはぴしっと押さえるところは押さえてもらって、もし仮に自主規制という事態になりましても、これらの駆け込み輸入的なものを実績として認めるということのないように措置していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  156. 森実孝郎

    森実政府委員 先般大臣からも申し上げましたように、私ども状況が許す限り、今後ともIQ化への努力は農林省としてはなお続けなければいけないと思っておるわけでございます。当面、歯どめをかけるということで、輸出国に合理的な輸出抑制の姿勢を求める交渉を、大詰めに来ている段階で続けている、同時に行政指導もしっかりやっていく、またこれらを結びつける何らかの仕組みを考えて、各種の手法を組み合わせて抑制を考えたいと申し上げているわけでございまして、したがって単なるいわゆる業界指導とか自粛というふうなものよりは、もっと強いものでなければならないと思っております。     〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕  御指摘の点は確かにあると思います。しかし、いま申し上げましたように、私ども従来のココア調製品の場合とは大分違った仕組みを検討中でございますし、また駆け込み輸入という御指摘もありますが、実は最近は少し輸入が落ちてきているわけでございまして、どれだけの数量に抑えるかという問題もありますので、いま先生指摘の点も十分頭に置きながら合理的なチェックをしていきたいと思います。
  157. 田中恒利

    田中(恒)委員 それからもう一つ、非常に部分的な質問ばかりいたしますが、やはり牛乳であります。牛乳の問題でいま考えておかなければいけないのは、飲用乳のいわゆる値下げというか、ともかくダンピング的な販売価格、これをどうするかという問題がやはり大きな問題のように思うわけであります。いわゆる流通が非常に混乱をして、この委員会でも、いつでしたか、公明党の方が御質問をしておったのでありますが、ともかく牛乳の流通経路が形態を変えてきて、そこで乱売、いわゆる安売りというものが出てきておる、ここのところを抑えていかなければいけないと思うのです。  私が持っておる資料を見ましても、この間まではいわゆる牛乳というのは宅配で牛乳屋さんが配っておった。これが約五四、五%あったと思うのです。ところが今日、それはスーパーがその機能を果たして、スーパーのシェアが五〇%を上回る。そして小売店がずっと落ちてスーパーが上がっておる。そのスーパーがいわゆる目玉商品として牛乳の販売というものを、われわれ、これはちょっとひどいのじゃないかと思うような値段で、バナナのたたき売りのような状態になっておる。ここにやはり牛乳価格形成上の大きな問題があると思うのです。これがメーカーにもつながるし、生産者との取引条件を厳しくしていく形につながっているわけです。これは公正取引委員会のところまでの議論はしませんが、私はちょっと問題があるように思います。これについて畜産局はどういう指導をしていらっしゃるか。これをこのままにしておくわけにいかぬと思うのですが、どうでしょうか。
  158. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘の点は、恐らくいまの酪農で一番基本的な問題であろうと私も思っております。  問題は、幾つかアプローチの方法があるわけでございますが、まず基本は、どうやって需給を引き締めるかという問題だろうと思います。飲用乳に充当される量をどうやって合理的に抑えていくかということがどうしても必要だろう。いまのように過剰基調を背景としてそれぞれのプラントが乱売する限り、また下方においてスーパーマーケットの、先生も御指摘のようなバイイングパワーが非常に強力になった今日では、まず需給の引き締めがない限りは問題は片づかないと思います。これをどう考えていくか。そのためにはやはり、状況によっては、飲用乳の供給量をしっかり抑えて、余乳処理をしっかりする体制生産者の中に出てこなければならない、まずこれが基本にあると思います。  そういう意味で、実は私ども表向きの形ではまだやっておりませんが、これから組織的に進めなければならないと思っておりますが、まず第一は、それぞれの地域生産者団体間において飲用乳充当数量についての一つの合意を取りつけ、またうらはらに余乳をどうやって受けとめるかということについての合意をつくることがまず基本だろうと思います。それから第二は、その上に立って農協プラントと乳業プラントの協調体制をどうやっていくかという問題があると思います。そして第三に、先ほど公正取引委員会という御指摘もございましたが、やはり独禁法との関連を頭に置きながら、強力なバイイングパワーを持ったスーパーに対してそういった供給業者がどうやって対抗していくか、こういうふうに基本論から入っていかなければ問題はなかなか片づかない状況に来ている。重要な課題と思いますので、いろいろな手法を考え、段取りを追ってやりたい。まず北海道と内地の生産者間の合意を取りつけるということから着手しなければならないと私思っているわけでございます。
  159. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは非常に大きな問題でございますし、私も実はいろいろ考えるところがあるわけでございますが、きょうは時間がございませんので、問題の提起だけにとどめておきたいと思います。  次に、飼料問題につきまして残されました時間御質問申し上げたいと思いますが、まず、畜産の飼料の需給事情は今後の見通しなどを含めてどういうふうになっておるのか。大ざっぱで結構ですが、御報告をいただきたいと思います。
  160. 森実孝郎

    森実政府委員 長期的の問題といたしましては、飼料穀物需要は非常に根強い。生産については、何と申しましてもアメリカのセットアサイドの面積が非常に少なくなってきておりますから、供給力が少なくなって、あとは単収の増加の可能性がどのくらいあるかというふうに見ざるを得ないと思います。  ただ、短期的な見方といたしましては、昨年の十一月以降むしろ価格はある程度弱含みに転じておりますし、南半球の作付も順調でございましたし、作柄も良好であるということ、ソ連の飼料穀物輸入がほぼ限界に来ていること、そういったことから見まして、またさらに円高の影響という点もございますので、飼料穀物の需給及び価格については、当面はそう大きな不安材料はない。問題は、率直に申し上げまして、ことしの五月、六月の主要輸出国であるアメリカの天候条件、雨量がどうなるかということが一つの決め手であろうと思います。なお状況を十分注視してまいりたいと思っております。
  161. 田中恒利

    田中(恒)委員 大体そういう状況をお聞きしておりますが、しかし、長期的に非常に見通しは厳しいということは世界全体の穀物事情の大きな流れだと思いますし、特に、不確実な事件が国際的にいろいろ起きますとすぐ響いてまいりますだけに、非常に注意をしていただかなければいけないと思いますが、飼料の問題はやはり何といっても自給力をどう高めていくか、これがいろいろ言っても日本の畜産の場合もう大問題だと思うわけです。  私は、先般の大臣所信表明に対する質問の中で、穀物自給率は一体幾らあるのだと言ったら、一・五%と言って、私が考えておった、持っておった数字より低い御報告がありまして一層びっくりしたのですが、この間国会図書館などでいろいろ調べてみると、世界で穀物自給率一・五%なんかという国はちょっと見当たらぬように思ったわけであります。もちろん濃厚飼料の自給率で計算すると九・三%とここに出ておりますし、飼料自給率全体で見ると二七・七%、こういう状態のようであります。いろいろ政府の方でも施策は打っていらっしゃいますけれども畜産の全体の伸び、えさに対する需要の拡大に伴って、割合としてはずっと毎年毎年自給率は低下をしておるわけですね、決してよくなっていないのですね。見通しを見ると、六十五年の見通しでも自給率もぐっと上がるということになっておりますけれども実態は逆に、毎年飼料自給率というのは、濃厚飼料も純穀物自給率も全体の自給率も、全部毎年毎年低下をしておるというのが実態だと思うのです。  私は、ここに日本の畜産や日本の農政の基本問題がある、こういうふうに思います。これを一体どういうふうにしていくのか。その問題はやはり土地拡大に対する施策が弱い、弱いというかない、まあないとまでは言いませんけれども、そこじゃないかと思うのですね。この間の六十五年見直しの農政審の答申の中にも、いわゆる農地拡大の視点がないということが一つの問題でありますが、土地を広めていく、こういうことがないと、土地の利用やいろいろな作付体系などの研究はされておるようですけれども、やはり弱いと思うのです。そこに一番の問題があるように思うわけであります。一体、特に採草地などでありますが、どれほど日本でいわゆる土地をえさとして拡大し得る面積があるのか、この点を最初にお聞かせをいただきたいと思います。
  162. 森実孝郎

    森実政府委員 採草地として確保できる面積の限界という意味では百四十万ヘクタールという数字もあるわけでございますが、御指摘のように具体的な所有の問題なり利用可能性の問題から問題を詰めていかなければならないと思っております。特に傾斜度の高い十五度以上の土地が非常に多いものでございますから、そういった制約もあると思います。
  163. 田中恒利

    田中(恒)委員 土地の利用が、たとえば北海道、東北、九州にほとんど畜産の草地開発事業などは集中しておるわけですね。ほとんど全部と言っていいくらい北海道と九州と東北地方。いまおっしゃられた地形の関係もあると思いますけれども、私はそれだけじゃないと思うのですね、こういうような分布状態というのは。これは全国的にいわゆる草地開発事業を中心としたえさ対策の草をどうつくっていくかという面の視点やその内容が弱いのじゃないか、そういう指導もまことにまばらになっておるのじゃないか、そういう感じがするわけですが、その辺はどういうふうに見られておりますか。
  164. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま申し上げました百四十万ヘクタールという、これは草地開発の物理的可能面積でございますが、この中で、実は御指摘のように北海道と東北を合わせますと百六万ヘクタールになるわけでございまして、圧倒的部分が北海道と東北に集中していることは事実でございます。私ども基本論といたしましては、やはり内地、特に西では、既耕地に対する飼料作物の導入という問題に飼料対策としては傾斜がかからざるを得ない現実があると思います。特に西の方は、利用開発可能地がある場合、量が少ないだけではなくて非常に傾斜度が高いところが多いという実態があることは御高察いただけるところだろうと思います。
  165. 田中恒利

    田中(恒)委員 ともかく、これは四十五年ころは年率三万ヘクタール程度伸びておったものが、最近は二万ヘクタール程度に草地の開発事業ども減ってきておりますね。これなども、細かいことまで突っ込めませんけれども、私はいまの草の開発事業の中にも問題があると思うのです。ともかく草地開発事業はやるわ、後はそのままにしておりますから、なかなか経営的にも成り立たないということで、いろいろな問題を後に残しております。つくるまでの間はいろいろな援助もする、金のめんどうも見ていくけれども、つくった後はもうそのままになってしまって、なかなかやってもむずかしいというような声もあちこち聞くのですね。そういう問題なども含めて、草をどうつくっていくか、そのための土地をどこに見つけ、どう拡大していくか、こういう点をもう少し本格的に畜産政策の柱にしていかなければいかぬのじゃないか。  これはおたくの方も、いろいろ状況報告などを見ると、草のこと、草地開発事業のこと、えさの自給力拡大のこと、いつも教科書には書いておるのですよ。書いておるのですけれども、日本の畜産全体の状況に対応するだけのものになっていない。むしろえさというのは濃厚飼料を中心に輸入に依存していくという度合いをますます深めておる、こういう感じがいたしますので、ぜひこの点は根本的にひとつ考えていただきたいというふうに思うわけです。これは大臣どうでしょう。
  166. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 私も田中委員と大体同じような考え方をずっと持ってきているところでございます。特に大家畜は草を食う動物であるということを認識いたしますとき、もっともっと草資源というものの開発に力を入れるべきであるという御主張は、私は大変な卓見である、こう考えます。したがいまして、私といたしましても就任以来、この草資源の面に対する力の入れ方というものを、技術会議を中心にいたしまして、また畜産局を中心にいたしまして、日本の土地に合う草資源も造成をしてまいるということが大変に大事であると思っておるわけでございます。  御承知のように日本の農学というものは米麦中心に発展をしてきておるわけでありまして、草はつくるものではなくて生えるものだという意識すら持っておるわけでありまして、やはり役所においても草に情熱を燃やす人が少ない、こういうところも大変さびしいことなんでありまして、草資源に対して農林水産省としても力を入れ出してまだ十数年と言っても私は過言ではないと思うわけであります。したがいまして、逐次いい品種等の造成にもぼつぼつ成果があらわれてきておるという実態もございますので、私どもといたしましても根気強く草資源の確保に全力を挙げていかなければならない、こういうことで、五十六年度の予算編成においてもそういう点を特に考慮をして対策を講じておるということでございます。
  167. 田中恒利

    田中(恒)委員 ぜひ草の問題は技術会議などを使って研究していただきたいと思うのです。私どものところでも、これは大家畜だけではなくて豚も放牧をして、採草養豚、草を食わして結構一人前以上に成果を挙げておるところが最近出てまいっております。昔は鶏なんかでも草ばかり食べておったわけですが、最近は全部、一〇〇%濃厚飼料になっております。ぜひ技術的にも草をどうするかということは検討していただきたいと思います。  それから、時間がなくなってあれですが、えさの問題で、一つは備蓄であります。  飼料備蓄の問題は食糧全体の備蓄と絡んでこれからの一つの大きな政策課題であると思います。二十日の畜産振興審議会飼料部会の附帯決議にも、備蓄の強化、配合飼料の価格安定制度強化、こういう問題が指摘をされておるようでありますが、現在の備蓄量五十三万トン、大麦十七万トン、これで一体見通しとして大丈夫なのか。短期的にはいま局長おっしゃったような状況のようでありますが、長期的にはやはりこの備蓄量を拡大していかなければいけないのではないか、こういうふうに思います。そのことが飼料価格の高騰に対して非常に大きな調整役を果たしていくというふうに思うわけでありまして、大体一カ月分ということが一般的には言われているわけでありますが、農林省にお聞きすると過剰米なども含めて一カ月ということのようであります。  私どもは、やはり備蓄制度の中で約一カ月程度のものを持たなければいけないのではなかろうか。いますぐというわけにもいかないでしょうが、相当長期的な年次計画で、百二十万トン程度のものを備蓄し得るような、そういう体制を、特にいわゆる倉庫の配置を、一定のものはなされておるわけでありますが、今後とも力を入れなければいけないのではなかろうかというように思います。こういう点についての局長さんのお考えを伺いたいと思います。  それから、価格安定基金制度は昨年来のこの飼料の高騰に対して一定の役割りを果たしたというふうに私どもも理解をいたしておりますが、今日のこの準備財源はどういう状態になっておるのか、これからの見通しの上に立ってどういうふうな積み立ての目標で、どういう方法で進められていくのか、こういう点をちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  168. 森実孝郎

    森実政府委員 千六百五十万トンという膨大な飼料穀物を輸入しておりますから、わが国現実から見て、国際的な構造的需給変化と価格変化に立ち向かっていくということはなかなかむずかしいことは御理解いただけると思います。しかし短期的な摩擦なり価格の急騰に対しての衝撃緩和は重要だろうと思います。  そういう意味で、一つは量の確保という意味では備蓄があるわけでございます。私ども指摘のようにやはり備蓄の拡大ということは重要な課題と思っておりますので、乏しい予算でございますが、本年度も若干の増額を図ったわけでございます。現在研究会で勉強していただいておるところでございますが、やはり全体の在庫をふやすという政策をとりながら、同時に備蓄もふやしていくということが私重要であろうと思います。ただ、これから備蓄をやる場合、その負担をどう考えていくか、そのコストをどう吸収していくかも、だんだん量が大きくなるにつれて重要な課題となってくると思いますので、そういった民間在庫のあり方や費用吸収のあり方も含めてさらに前向きの検討を続けたいと思っております。  それから価格補てんの問題でございますが、異常補てんにつきましては本年四十八億の予算を計上しておりまして、九十六億の積み立て増が民間負担を含めればできると思っております。問題は、御指摘のありました、一番心配しなければならないのは通常補てん財源でございます。実は五十六年度は積み立て単価を引き上げることとして財源の強化に努めたいということで、現在関係業界を指導中でございます。重要な課題だと思いますので、できるだけ積極的な指導に努めてまいりたいと思っております。
  169. 田中恒利

    田中(恒)委員 最後に大臣に御意見をお聞かせいただきたいと思います。  ニュージーランドの総理が近く来日をされるということで、新聞等によると、いま問題になっております調製脂を初めとする乳製品の輸入と牛肉などの問題についての、いわゆる日本の自由化について強い期待を持っておる、こういう報道がなされております。この問題については予算委員会などの質疑を通して日本の鈴木内閣の閣僚間に不統一がある、こういう印象も与えております。外国の総理がお見えになるわけでありますから、その辺についてはきちんとした統一姿勢をとっていただけると思います。一方では漁業問題などわが国があちらとの間で話し合いをしなければいけない要素もあると思いますが、いまこの委員会でもいろいろお話しになりましたように、この乳製品の過剰の問題、養蚕の十四万俵の生糸の在庫の問題、さらに米の六百五十万トンの古米、古々米などの問題、あるいはミカンの調整保管についてのジュースの在庫の問題、日本農業はまさに在庫いっぱい、過剰という形で認識されております。  これに対して政府は、需要が冷えて生産が伸びたからだ、こういう主張をせられておるようでありますが、この委員会の質疑を通して最も強く出ておるのはやはり輸入の問題であるし、大臣もその点については同じ意見を持っていらっしゃると思う。この問題は、だれに聞いてもやはり輸入問題が最大の圧力であるということは否定することはできないと思うのです。  そういう意味で、自給力強化の国会の決議などがあるわけでありますから、当面ニュージーランドとの政府間の、どういうお話があるのか知りませんけれども、農産物の問題について若干のお話もあると思いますが、ぜひこの点についてきちんとした、大臣がここの委員会で答弁をせられたような形で処理されていただきますように御要望申し上げまして、大臣の御決意をお聞きして終わりたいと思います。
  170. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 まず事実関係の方を私の方から御説明申し上げます。  ニュージーランドのマルドーン首相が四月の十五日から二十一日まで政府の賓客といたしましてわが国を御訪問なさる予定でございます。マッキンタイア副首相兼農業大臣が随員として同行されることになっております。同首相の訪日に当たりましては、鈴木総理を初めといたしまして、農林水産大臣を含む関係閣僚の会談が予定されておりまして、多分一般国際情勢あるいは双方が関心を持つ二国間問題につきまして話し合いが行われるものと承知しておりますが、具体的にどういう事項が話し合われるかということにつきましては、目下外交チャンネルを通じて打ち合わせをしておりますので、詳細はまだわかっておりません。  ただ、私ども想定できる事項といたしましては、当省関係の事項といたしまして、ニュージーランドは農産物の貿易に経済を大きく依存しているという実情がございますので、先生お話しのように、酪農品あるいは食肉等についての輸入拡大の問題、あるいはラジアタパインと申しますところのニュージーランド産木材の規格改正問題といったような要請があるものと思われ、また漁業問題についても話題になるものと考えておる次第でございます。  これにつきましての御決意のほどは多分大臣の方からお話があるというふうに思いますが、私どもといたしましても、どうか大臣間で忌憚のない意見交換をやっていただきまして、特にわが国の実情につきましては、先方に十分に理解を求めるということで話し合いをしていただきたいというふうに考えている次第でございます。  ただ、いずれにいたしましても、今回の御訪問は、両国の相互理解を深め、日・ニュージーランドの友好親善関係のきずなを一層強化するということでございまして、特段の事項につきまして交渉するといったような会談ではないということは申し添えておきたいと思います。
  171. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 とにかくとことんまで話し合って日本の実情を頭によく入れてもらう、こういう努力をしたい、こう思っております。この間も、豪州との定期閣僚会議の際もこちらも言いたいことをみんな言いましたし、そして言って、日本の実態をよく理解してもらわないことにはもうどうにもならぬわけでありますから、そして向こうは向こうの希望を申すでありましょうし、それらの話し合いをつける際に、どこでどういうふうにつけたら一番お互いの農家に悪影響を及ぼさないで処理できるか、最小限にお互いの国益を損することのないような点で話し合いをつけるというのが日本の今後処していく方針ではないか、方向ではないか。  これはいまアメリカに行っております伊東外務大臣にもよく話してありますし、この間ASEANを回りましたときも、どこの国に参りましてもざっくばらんに日本の農業の実態、農家の実情、そういうものをよく話し合って、そしてお互いに競合し合うというようなところはどこまで譲り合えるかというようなことを率直に私は話して、それがやがては両国信頼関係を打ち立てるゆえんである、こういうふうに強く確信をいたしております。
  172. 田邉國男

  173. 山原健二郎

    ○山原委員 私は当委員会に日ごろ所属をしておりませんので、いざ質問の時間をちょうだいしましても専門的なことを申し上げることはできませんが、蚕糸価格の問題、また乳価の問題、養鰻の問題も質問したいと思うのです。  農山漁村の県の出身として、日ごろ山村農業についてはいろいろ心配をしておるわけですが、この質問をするに当たりまして、全く山村の情勢というのは厳しい状態に置かれているということを痛感せざるを得ません。したがって、私は山村農民の気持ちを訴えながら幾つか質問をしてみたいと思うのです。  まず養蚕の問題ですけれども、私の郷里の方もかなりこれをやっているわけでございますが、とにかく厳しい情勢の中ではあるけれども、複合農業の重要な柱として養蚕問題があるわけでございます。そしてその中心は、先ほどから質問が出ておりますように、今度の基準糸価の決定がどうなるかということに最大の関心が寄せられておりまして、その決定の前に、新聞紙上等によりますといろいろな不安情勢が出てきておるわけですが、まさかそういうことはあるまい、希望を持ってこの仕事ができる情勢をつくってくれるであろう、こういう期待を持っておることは間違いございません。  たとえば私の県は高知県ですが、これは低温冷害等によりまして桑の減収、そのために昨年度は二割の減収になっております。その上に台風、塩害等も生じておりまして、これはどうにもならないということが一種の悲鳴のごとき言葉で語られておるわけでございまして、県の方としても計画増産に向けて三年間助成を継続するということで、少ない予算ではありますけれども、何とかこの厳しい情勢を切り抜けていかなければならぬということで努力がなされておるのが実態であります。  その中で一番問題になりますのは、先ほどからの質問の中にありますように、輸入の規制の問題と基準価格の引き上げの問題でございますが、これが基準が上がればまた肥料も入れて、そして意欲を燃やして仕事もできるんだという、この養蚕農民の気持ちにどうこたえるかということが農林水産省としていま問われておるのではないかと思います。先ほどからの答弁で、いろいろ困難なことはわかるわけでございますけれども、しかし、これは日本の山村農業を守る上での一つの大きな仕事であるわけですから、この点についてぜひとも最大の努力をしていただかなければならぬと思いますが、これについて最初に御見解を承りたいのでございます。
  174. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 わが国の養蚕業は、山村あるいは畑作地帯におきます複合作目といたしまして非常に重要であるということは十分認識いたしておるつもりでございます。  そこで、まず基準糸価の関係でございますが、今月の二十八日に蚕糸業振興審議会繭糸価格部会にお諮りをして決定をいたしたいという心組みで現在諸般の作業を取り進め中でございます。基準糸価につきましては、御案内のとおり、生糸の生産条件、需給事情その他の経済事情から見まして適正と認められる水準に糸価を安定させるということを旨として決めるという、法に定める規定にのっとっておりまして、適正に決定をいたしたいということでございます。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 養蚕農民の期待に背くようなことがないようにぜひとも努力をしていただきたい、また審議会の答申等によりまして、その中で十分な検討をしていただきたいと思います。  乳価の問題ですが、これも私の町の隣に一つの酪農地帯があるのです。これはほとんど若い後継者によってやられておる酪農なんです。私もたびたび行くわけですが、現在小さな町でありますけれども十九戸が乳牛を飼っております。頭数は三百三十頭です。それで昨年度の乳価代、大体一億二千万円を上げておりますが、そのうちの五〇%が飼料代となっているわけであります。これはもう本当に生産農民に言わせますと、かつてはわれわれが主導権を握ってやってきたけれども、現在はメーカーの注文もきわめて厳しくなっている、いわば農民が追い詰められている状態に置かれている、こういうふうに言っているわけです。急に生産調整を迫られましても、さて規模を拡大しようとしても金が要る、全くどうしていいかわからない、王手飛車をかけられたのがわれわれの今日の現状ではなかろうか、こう言っております。このままで進むならば、大牧場だけが残るけれども、しかし田舎のこういう小規模の農民はつぶされていくであろうということを言っているわけです。  この若い後継者たちは行動力は抜群です。いろいろ研究もし、また工夫もこらしてやっているわけでありますけれども、しかしこの意欲に絶えずさまざまなブレーキがかかってくる、借金も払うことができない、どうするかという問題が出ているわけです。昨日もここの酪農組合長に電話をしたのです。これは私の教え子なんですけれども、いま牛が鳴くときには英語で鳴いているというのです。全部外国の飼料を食っているから英語で鳴くんだというのですね。  そういう中で、この飼料の問題についても何か活路を見出さなくちゃならないということで、飼料用の稲をやり始めておるところがございます。私の町も若干それを始めているようです。非常に端緒的でありますけれども、しかしこれに対してはかなり農民は期待も持っておりますし、また興味も持っておりますし、魅力も感じておるというのが実態のようでございます。この飼料米につきまして政府は果たして積極的な姿勢を持っておるであろうかということが言われておるわけでございますが、この点についてひとつお伺いをしておきたいのです。いかがでしょうか。
  176. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 水田にえさ米をつくることに対して期待を持ち、希望を持ち、それによって活路を見出そうという農家の青年諸君のお話がいまございました。それだけにその期待なり希望なりに幻滅を与えるようなことがあってはならないということで、水田から超多収米とでも申しますか、えさに適した米というものを家畜用として飼料として提供できるまでには、農林省として自信を持って奨励するという段階までの品種改良が実際申し上げまして進んでおりません。せっかく実っても収穫のときにばらばら脱粒をするとか、さらにはもう一つ申し上げますならば、とにかく収益性が非常に低いわけであります。えさとしてやった場合に果たして採算がとれるかどうかという問題もあるわけでございます。特に技術的に、脱粒するというこれを改良しないでそのまま農家に奨励することになれば、収穫時には必ずや農家から何でこういう固定しない品種を押しつけたかということで、これまた私どもの大きな責任になるわけであります。  したがいまして、ここ二、三年というのはまことにつらいわけでありますけれども、農林省といたしましても積極的に五十六年度から全試験場においてえさ米の固定化に努力をいたしておるわけでありまして、決して消極的ではなく積極的に取り組んでおるということをひとつ御理解をいただきたい。
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 私も魅力だけで飛びつくということでは、これはもちろん先の見通しを立てることもできない情勢も生まれてくると思います。でも何とか活路を見出したいというあらわれの一つだということで、いま大臣がおっしゃったように、農林省としましてもさらに検討、研究を急速に進めていただきたいということを御要請申し上げたいと思います。  次に、またいろいろの仕事をやりながら同じような悩みを持っておるものだと思うのですが、養鰻の問題がございます。これは西日本全体に関係するものだと思いますけれども、現在の養鰻というのは、いわゆるハウスでやっている養鰻のことを私は申し上げたいと思うのですが、これは稲作の転換によって、そして稲転の資金も出ております。そして奨励もされ、また地場の産業として育成まで、各町村においてそういう方針をとって農民に養鰻を勧めていった実態もあるわけです。稲作転換をやりましてハウス園芸、施設園芸にかわろうとしても、施設園芸の方が頭打ちであるという状態の中で、加温技術を持っておるものですからこれを使って養鰻を始めたというわけですね。  これは一つの村ですけれども、吉川村というところ、高知県の南国市という飛行場のあるすぐそばですが、ここらでは最初三軒か四軒がこれを始めているのです。最初のうちは加温技術を持っておりますし、うまくいったわけですね。そして現在では五十戸の業者がおるわけでございますが、最近までは約一千トンから一千五百トンの生産を上げまして、年間十五億から十八億の総売上高を示しておったわけでございます。ところが情勢は急速に変化をしまして、たとえば飼料、これが四千三百円が現在は五千三百円、重油は御承知のとおりの値上がり、ビニールは一五%の値上がり、そして電気料は昨年四月から五四%の値上がりになっているわけであります。したがって、せめて電気料だけでも深夜料金の適用をしてもらいたいというような話が出てきまして、これに対する交渉も日鰻連その他を通じてやられておるようでございますが、そのような努力はされております。  さらにまた冷害の問題が関係をしてまいりまして、生育がよくないというような事態が起こります。天災、災害の補償制度がございません。そこへ持ってきて、台湾から御承知のように加工ウナギを含めまして二万トンが入ってくる。日本の需要は六万トンと言われておりますが、六万トンから六万五千トンといたしましても、この輸入の二万トンが大きな影響を与えております。しかも台湾における養鰻は、財閥養鰻とこれらの業者が呼んでおりますように大規模養鰻でございまして、とても太刀打ちできるような状態ではない、こういう事態が起こってまいりました。そこで抱えたのは施設のために使った借金であり、その借金をどう返していくか、金利をどうするかという問題が起こりまして、次々と財産を整理をしてやめていく、財産のない者はやめるわけにもいかないという状態が起こっております。  そして負債の整理のために農協自体も膨大な赤字を抱えてどうにもならないという事態が起こっておりまして、私の県ではあるきわめて模範的な農協、しかも非常にすぐれた農協の組合長さんが、この借金をどうするかという問題で辞職をするというような事態も起こっておるわけです。現実に辞職したかどうかは確かめておりませんけれども、とにかく大きな悩みを抱えておることは事実でございまして、あるところではこの養鰻に注ぎ込んだ約四億円近い負債を抱えております。またある農協では、約六億から七億の資金を養鰻に注ぐというような事態が起こっております。  このような不況、そして外国からの輸入をどう規制するかという問題を解決しなければ問題の本質的な解決にならないと思いますが、この問題について農林水産省はどのような把握をしておるか、お伺いをいたします。
  178. 山内静夫

    山内政府委員 ウナギの生産につきましては、昭和五十一年に国内では二万八千トン、五十四年には大分増加いたしまして三万九千トン、こういうぐあいになったわけでございます。一方、輸入につきましては五十一年に一万九千トン、五十四年には漸増いたしまして二万二千トン、五十五年には二万五千トンというぐあいに、両方とも増加してきたわけでございます。この結果、国内の供給量といたしまして、五十一年の四万七千トンから五十四年には六万一千トンになったというように数字が上がってきているわけでございます。このような供給の増加に対しましてなかなか需要が追いついていかないということから、ウナギの価格といたしましては昨年来非常に低迷をいたしておりまして、ことしの三月中旬現在、前年対比で七五%、約二五%ダウン、こういう数字になっているわけでございます。  そこで、需給の均衡を図るためには消費の拡大を図る必要があるとともに、輸入されている量の九〇%は台湾産であるということから、台湾からの秩序ある輸入ということも必要である、こう考えているわけでございます。もとより、自由化品目であるウナギにつきまして輸入割り当て制度等の規制措置をとるということは、現在のわが国の置かれている立場、開放経済体制をとっているわが国の政策、こういう基本的な問題にかかわることでございますし、あるいは台湾との一般的な貿易関係にあって、実際問題として即座に規制するということは困難である、こう理解しているわけでございます。  しかし、水産庁といたしましても、ウナギの輸入問題につきまして関係業界非常に苦慮されているということから、五十一年の五月一日から輸出貿易管令に基づきまして、わが方がウナギの稚魚を輸出するわけでございますから、この稚魚の輸出につきまして、十二月一日から四月三十日の期間につきまして承認体制をとることによりまして厳しく規制をしている反面、ウナギのえさとなりますフィッシュミール等につきましても輸出の規制を行っているわけでございます。  さらに成鰻の輸入につきましては、国交のない台湾との輸入問題のことでございますから、民間ベースによりまして現在協議を行わせているという現状でございまして、ウナギの養殖業団体であります日鰻連であるとか、あるいはウナギの輸入組合、卸売業者の団体が一体になりまして、台湾の生産者と輸入数量等について定期的に話し合っているというのが現状でございます。  そういうことで、本問題は民間協議でございまして、過去におきまして必ずしも決まった数量が守られたということではございませんが、今後この問題につきましては、両当事者が協議を続けていくことによりまして相互信頼関係を打ち立てまして、正常な輸入の秩序、こういう問題の確保に努めていきたい、こう考えているわけでございます。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つは、長期、低利の融資制度といいますか、そういう金融制度というものが何となくはっきりしない。たとえば県へ行きましても、農林課の方に所属するのかあるいは水産課の方に所属するのか、どちらが窓口になるのかというようなことがなかなかはっきりしない点もあるということを聞いているわけですが、これは確実に握っておるわけではありません。そんな問題がありまして、来年、再来年あたりに新しい情勢が生まれてくれば別ですけれども、このままほっておきますと軒並みに膨大な赤字を抱えたまま倒れていく、にっちもさっちもいかないという事態になりかねない情勢にあります。  したがって、もう時間もございませんのでこれ以上質問を続けるわけにはいきませんが、西日本の何カ所か、あるいは西日本だけではないかもしれませんが、ぜひこの問題について農林水産省として調査もしていただき、今日の実情を把握していただきたいと思いますが、そういうお気持ちがありますか。私はそれを強く要請したいのですが、いかがでしょうか。
  180. 山内静夫

    山内政府委員 ウナギの実態等につきまして関係業界、関係県からいろいろお話を承っているところでございますが、ことに高知県の問題等につきましては、ウナギの養殖漁業者が農協を中心にしていろいろお仕事をされているという関係から、金融関係につきましても必ずしもスムーズに流れていない、こういうことを伺っているわけでございます。こういう問題につきましても、県当局ともよく相談しながら、実態をよく把握しながら何らかの形で対応したい、こう考えております。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、これは大臣にお聞きいただきたいのですが、地方の時代という言葉は使われておりますけれども、考えてみますと、本当にどの状態を見ても先の明るい展望というものがなかなか見出し得ないような状態にあることは大臣も御承知だと思います。  たとえば、私がきょう質問をしようと思った一つの問題に山林労働者の問題があったのです。これは労働省を呼んで質問をしなければなりませんし、時間もそれほどありませんからあえて呼ばなかったわけでございますが、昨年の十一月と推定をされますけれども、労働省が内部資料といたしまして、山林労働に携わる労働者のチェーンソーによる振動病、いわゆる白ろう病に対して相当厳しい通達のごときものを出しております。「林業関係の労災保険収支の実情と問題点」というものでございますが、これを見ますと、たとえば白ろう病にかかった労働者の労災認定に当たりましても、労災保険の赤字を理由にして厳しく対処しなければならぬというように、いままで労働省がとってきた振動障害に対する前進的な姿を一変させた通達が出ておりまして、各労働監督局も非常に厳しい態度をとっている、こういう状態があるわけです。  これは労働省の問題としてこれから追及しなければなりませんけれども、しかし日本の山林を守っていくという意味では、四十五年にチェーンソーは一日二時間以上使ってはならぬという方針は政府として出しておりますが、それが守られていない段階でこういう状態が出てきております。たくさんの振動障害を受けている労働者が出てきているわけですが、これも農林水産省として、この山林で働く労務者の健康を守っていく、仕事を守っていくという立場で対処していただきたいと思っておるわけでございます。きょうは御答弁だけいただきまして質問を終わりたいと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  182. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 治山治水並びに林業の進展、振興を図ってまいりますために山林労働者の果たさなければならない役割りはきわめて大きいわけでございます。今後、水をつくり、土壌をつくり、空気を浄化し、酸素をつくり、木材をつくるといったような公益性のきわめて高い森林関係をりっぱにしてまいりますためには、どうしても山に人手を多くつぎ込まなければならぬわけであります。ところが、いろいろな面で御指摘のように山に人が入らないような、入りにくいような施策が横行していくということはまことに嘆かわしいことでございます。したがいまして、そういう点につきましては労働省の方にもよく連絡をとり、また山林労働者が病気になりやすいような条件で働けということができないことはきちんと決めてあるわけでありますから、二時間以上はチェーンソーを使ってはいけないということにいたしてあるわけでありますので、何といっても山林労働条件と申しますか労働環境と申しますか、そういうものをよくしていく方向に進めてまいりたい、こう考えております。
  183. 田邉國男

    田邉委員長 次回は、明後二十六日木曜日午前十時理事会、午前十時十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十二分散会